2022年6月15日 (水曜日)

レアで幻のアルト・サックス奏者

長年、Twitterを利用している。自らも定期的にツイートしているが、他のジャズ者の皆さんのツイートの中に、小粋なジャズ盤の紹介ツイートがあって、いつも楽しく拝見している。これは、という小粋なジャズ盤のご紹介があった時などは、いそいそと該当盤を探し当てて、早速聴いている。一度も聴いたことの無い初見の盤もあるし、昔、聴いたことがあるが、しばらく御無沙汰だった盤もある。

『Jenkins, Jordan and Timmons』(写真左)。1957年7月26日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Jenkins (as), Clifford Jordan (ts), Bobby Timmons (p), Wilbur Ware (b), Dannie Richmond (ds)。ハードバップ全盛期、デビューわずか1年で消えた、幻のアルト・サックス奏者、ジェンキンスが、テナーのジョーダン、ピアノのティモンズとの共同リーダーで、クリフォード・ジョーダンのテナー・サックスと2管フロントを構えたクインテット編成。

ジョン・ジェンキンスは、幻のアルト・サックス奏者。リーダー作をブルーノートからもリリースしているので、アルト・サックスの腕前は確かなもの。癖の無いストレートで、少しファンクネスのかかったアルト・サックスが個性。しかし、1957年に録音活動を集中して行った後、デビューわずか1年でその活動は途絶え、唯一、逝去直前、1990年にクリフォード・ジョーダンのビッグバンドに参加したが、1962年以降は完全に引退状態。
 

Jenkins-jordan-and-timmons

 
そんなジョン・ジェンキンスの数少ないリーダー作(共同リーダー作ではあるが)の一枚がこの『Jenkins, Jordan and Timmons』。リズム隊が一流どころで固めているので、安定したハードバップな演奏を聴くことが出来る。ジェンキンスのアルト・サックスは、少しファンクネスのかかった、癖の無いストレートで明るいものなので、クリフォード・ジョーダンの無骨でブラック・ファンクなテナーとのバランスが良く、フロント2管の演奏はなかなかの出来。

リズム隊の要、ピアノのティモンズは「ファンキー・ピアノ」の代表格の一人だが、この盤では、こってこてファンキーなピアノをグッと押さえて、アーバンで小粋なバッキングに注力している。ベースのウエアはちょっと捻りの効いたベースで、当時のハードバップな演奏にちょっとした「新しい響き」を与え、リッチモンドのドラミングは堅実そのもの。1957年のハードバップな演奏としては水準以上のレベルで、こってこてハードバップな演奏をしっかりと楽しめる。

プレスティッジ・レーベルからのリリースなので、ジャケットはほとんど「やっつけ」。それでも、今の目で見れば、ちょっと味のあるデザインかな、とも思う(笑)。録音とマスタリングは、かの「ルディ・ヴァン・ゲルダー」が担当しているので、音はまずまず良い。歴史に残る名盤というものではありませんが、ハードバップな演奏を楽しく聴くことの出来る「隠れ好盤」として、良い感じのアルバムでした。
 
 

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2022年5月24日 (火曜日)

ナットとヴィンセントに外れ無し

「小粋な」ジャズ盤を求めて、まだ聴いたことの無い、「小粋な」内容そうなアルバムを発掘しては選盤している。基本的に、冒頭1曲目の演奏をじっくり聴いて、これは「小粋な」ジャズ盤として、2曲目以降を聴くか、1曲目で聴くのを止めるか、を判断している。逆に、パーソネルを確認して、これは「小粋な」ジャズ盤に違いない、と一気に聴き通す場合もある。

Nat Adderley Quintet『We Remember Cannon』(写真左)。1989年11月18日、スイスのアールブルク「Moonwalker Club」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Nat Adderley (cor), Vincent Herring (as), Arthur Resnick (p), Walter Booker (b), Jimmy Cobb (ds)。リーダーのナット・アダレイのコルネットと、ヴィンセント・ハーリングのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成。

このライヴ盤の録音年は1989年。純ジャズ復古が実現し、新伝承派やM-BASE派の硬派なネオ・ハードバップがトレンドになっていた時代。リーダーのナットは58歳。全盛期を過ぎて、大ベテランの域に差し掛かった頃。さすがに1980年代のナットのリーダー作は「平均点」レベルの盤が多いのだが、ヴィンセント・ハーリングとフロントを張ったアルバムは、どれもが充実した内容で外れが無い。
 

Nat-adderley-quintetwe-remember-cannon

 
このライヴ盤『We Remember Cannon』は、内容的には「キャノンボール・アダレイ」のトリビュート。ただ選曲を見渡して見ても、キャノンボールの自作曲は無く、ナットの自作曲も有名な「Work Song」1曲。他の6曲はスタンダード曲。どの辺が「キャノンボール・トリビュート」なのか良く判らないが、内容的には、白熱した素晴らしいライブ演奏が堪能出来る優れもの。

ヴィンセントのアルト・サックスが絶好調で、雰囲気的に「キャノンボール寄り」で吹きまくっている。この絶好調のヴィンセントのアルト・サックスに煽られて、ナットのコルネットもバリバリに吹きまくっている。良きフロント2管である。バックのリズム隊では、ジミー・コブのドラムが元気一杯。このライブ盤の時でコブは60歳。ドラムソロも交えて、バンバン叩きまくって、フロント2管を鼓舞している。

昔のハード・バップ期、ファンキー・ジャズ華やかなりし頃に戻った様な、熱気溢れるヴァイタルな演奏がとても良い。各曲のアドリブ・フレーズも、引用含めて「小粋な」ものが多く、聴いていて楽しい。やっぱり、ナットのヴィンセントとフロントを張った盤には外れが無い、と思っていたが、このライヴ盤についても「大正解」。「小粋な」ライヴ盤として、結構楽しめる内容です。
 
 

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2022年3月25日 (金曜日)

ホレスの「日本贔屓 (びいき)」盤

Horace Silver(ホレス・シルヴァー)ほど、ファンキーなピアノを弾き続けたピアニストはいないだろう。ファンキーなピアノというよりは、もはや「ホレス節」というほどの、マイナーでファンキーでダンサフルなピアノを弾きまくる訳で、ホレスのピアノは1曲聴けば「ああ、これはホレス・シルヴァー」のピアノと判る位に個性的なもの。これが「ホレス者(ホレス・シルヴァーのファン)」にとっては堪らないのだ。

Horace Silver『The Tokyo Blues』(写真左)。1962年7月13–14日の録音。ブルーノートの4110番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Joe Harris (ds)。ミッチェルのトランペット、クックのテナー・サックスが2管フロントのクインテット編成。ホレス・シルヴァー・クインテットの黄金時代の一枚である。

ホレスは1962年1月、初来日公演を敢行、全国19もの会場で大成功を収め、以降、すっかり「日本贔屓(びいき)」になったらしい。この盤はその初来日公演の半年後の録音なので、その興奮冷めやらぬまま、タイトルも明確に「東京ブルース」。収録曲も「Too Much Sake(日本酒が過ぎる)」「Sayonara Blues(さよならブルース)」「The Tokyo Blues(東京ブルース)」「Cherry Blossom(桜)」「Ah! So(あっそう)」と日本を想起させるタイトルばかり。
 

The-tokyo-blues_horace-silver

 
洒脱なファンキー・ジャズが良い感じに響いている。「The Tokyo Blues」のエキゾティックな響きも良い感じだし、どの曲も大胆な展開をしつつも、要所要所は繊細にキメているところがこの盤の特徴的なところ。ホレス・シルヴァー・クインテットの演奏のレベルが一段上がった様な感じがする。曲のラストに、そこはかとなく「オリエンタルなフレーズ」が出てきたりするが、これがまったく違和感が無いところがホレスの作曲&アレンジの優れたところ。

ホレスの優れた作曲&アレンジによって、フロントのミッチェルのトランペット、クックのテナー・サックスも実に気持ち良く、吹きまくっている。溌剌として明るくて、それでいて、しっかりキメるとことはキメる、テクニック良く、メリハリの効いたブロウが実に良い感じ。ジーン・テイラーのベース、ジョー・ハリスのドラムのリズム隊も、ファンキーなリズム&ビートをキメにキメていて、とても良い感じのファンキー・ジャズ盤に仕上がっている。

1962年1月、初訪日した印象をホレスならではの解釈で、鯔背に粋にファンキーにキメてくれている盤。ジャケット写真も思いっ切り「日本風」に、しかもカラーでキメている。この盤、ホレスの初来日時の「感謝」をそこはかとなく感じるなあ。ちなみに、ジャケット写真の左側の女性は、出光佐三の四女で映像作家の出光真子さんです。NYの日本庭園での撮影とのこと。良いジャケットですね。
 
 

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2022年2月24日 (木曜日)

スリー・サウンズのアレンジの妙

僕がジャズを聴き始めた頃、今を去ること40数年前になるのだが、その頃から、ブルーノートの企画型ピアノ・トリオ「The Three Sounds(スリー・サウンド)」の人気はイマイチだった。理由はいろいろあったらしいが、僕が記憶しているのは、レーベルが作った企画型のトリオだから、ブルーノートのドル箱トリオで商業主義のコマーシャルなトリオだから、スタンダード曲ばかり演奏していてオリジナリティーが無い、とかで、とにかく、ケチョンケチョンだった記憶がある。

ブルーノート・レーベルのドル箱トリオだったことは事実みたいで、オルガンのジミー・スミスの双璧の「ドル箱」トリオだったそうだ。とにかく判り易い内容、聴き心地の良いスタンダード曲をメインに演奏し、ラウンジ・ミュージックとしても、イージー・リスニングとしても聴くことの出来る「イージーさ」が米国ではウケて、我が国ではウケない理由なのかもしれない。

The Three Sounds『Hey There』(写真左)。ブルーノートの4102番。1961年8月13日の録音。改めて、ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ジャズの「多様化」の時代に差し掛かった、ブルーノートの企画型ピアノ・トリオの優秀盤である。
 

Hey-there

 
ラウンジ・ミュージックとしても、イージー・リスニングとしても聴くことの出来る「イージーさ」というが、このトリオの一番優れている点は「アレンジの妙」である。この盤も収録曲は全てスタンダード曲。しかも、俗っぽい「You Are My Sunshine」や「Stompin' at the Savoy」が入っていて、曲名だけみれば、これはもうイージー・リスニングなトリオ演奏なのか、と思うのだが、スリー・サウンズはそうはならない。

とにかく、アレンジが優れている。俗っぽい曲もしっかりしたアレンジで、硬派なファンキー・ジャズに仕立て上げられている。そう、この盤、優れたアレンジで、ちょっとマニアックなものから俗っぽいものまで、スタンダード曲を硬派なファンキー・チューンに変身させている。ネットリとソウルフルに陥ること無く、切れ味の良い、明快なファンキー・ジャズに留めているところが「良い」。

スリー・サウンズって、我が国の人気の無い理由は全く当たらないと思う。スタンダード曲ばかり演奏していてオリジナリティーが無いなんて言うが、このアレンジの優秀性は、自作曲を演奏するオリジナリティーに匹敵するレベルだと思う。そう、スリー・サウンズの最大の個性であり、最大の武器が、この「優れたアレンジ能力」なのだ。
 
 
 
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2022年2月19日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・228

ブルーノートの4100番台は、1961年からスタート。時代は、ハードバップが成熟し、大衆性と芸術性、2つの志向に枝分かれしつつあった時代。大衆性という面では、ファンキー・ジャズやソウル・ジャズ、芸術性という面では、モード・ジャズ、フリー・ジャズなどが代表例だろう。いわゆる「ジャズの多様化」が本格化した時期である。

Donald Byrd『Royal Flush』(写真左)。1961年9月21日の録音。ブルーノートの4101番。ブルーノート4100番台の栄えある第1作目。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Pepper Adams (bs), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのバードのトランペットとアダムスのバリサクがフロント2管のクインテット編成。

このパーソネルが、この盤の「肝」の部分。ドナルド・バードと言えば、この盤まで、理知的なファンキー・ジャズを前面に押し出していて、ファンキー・ジャズの先端を走っていた。この盤では、バリトン・サックスのペッパー・アダムスをフロント管のパートナーに引き入れ、それまで進めていた理知的なファンキー・ジャズのファンキー度を更に上げた感じがする。
 

Royal-flush

 
そして、もう1人のキーマン、ピアノのハービー・ハンコックの参加。プロデビューしたばかりのハービーだが、ハービーの参加によって、ドナルド・バードのバンド・サウンドがガラッと変わっている。ファンキーなハードバップから、モーダルな、新主流派の感覚が強く反映されている。

1950年代半ば辺りから、ハードバップの第一線に頭角を現して以来、ハードバップ〜ファンキー・ジャズの先頭を走ってきたドナルド・バード。この盤では、そのファンキー度に拍車をかけつつ、音の志向としてはモーダルな音の雰囲気を積極的に導入して、当時として新しい響きのする「ファンク度が増した理知的なモード・ジャズ」に演奏の志向を変化させようとしているチャレンジ精神は立派。

1961年という時代に、従来の手慣れたファンキー・ジャズにこだわること無く、プロデビューしたばかりのハービーを参加させ、モーダルなジャズの雰囲気を積極的に導入、かつ、自らのオリジナリティーであるファンキー・ジャズに拍車をかけて、他の新主流派の音とはちょっと違う「ファンク度が増した理知的なモード・ジャズ」に仕立て上げているのは見事である。
 
 
 
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2022年2月14日 (月曜日)

初来日のジャズMの未発表音源

Art Blakey & The Jazz Messengers(アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ)の音が好きだ。バンドの活動が好調な時代も停滞した時代も、ハードバップの良いところが詰まっている。リーダーのアート・ブレイキーのスカウト力の賜なんだろうが、常にその時代時代毎の良いメンバーが集まっていて、ジャズ・メッセンジャーズならではの音が詰まっている。

Art Blakey & The Jazz Messengers『First Flight To Tokyo : The Lost 1961 Recordings』(写真左)。1961年1月14日、東京の「日比谷公会堂」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Wayne Shorter (ts), Lee Morgan (tp). Bobby Timmons (p), Jymie Merritt (b)。ジャズ・メッセンジャーズの第1の黄金期のラインナップである。

1961年の初来日ツアーの模様を収録した未発表ライヴ盤である。1961年の初来日ツアーのライヴ音源は、既出の正式な音源としては、1961年1月2日、東京の「サンケイホール」でのライヴ録音(写真右)がある。

この既出の正式なライヴ音源は、当時のジャズの歴史の記録として貴重な音源。我が国のジャズ者の方々が、ファンキー・ジャズだ、と思っていたら、全く異なる「モード・ジャズ」が鳴り響いた、当時の「ジャズの進化」の洗礼を思いっ切り浴びた記録である。
 

First-flight-to-tokyo

 
この今回の発掘ライヴ音源も、既出の正式なライヴ音源と変わらず、当時のジャズ演奏の最新のトレンドのひとつ「モード・ジャズ」に、真摯に取り組むジャズ・メッセンジャーズのライヴの記録である。

リーダーのブレイキー、そして、メッセンジャーズに「モード」を持ち込んだ張本人ショーターは問題無く、「モード」に適応している。しかし、鯔背な天才トランペッターのモーガン、ファンキー・ピアノの申し子のティモンズ、ハードバップど真ん中のベーシストのメリットは、モードの洗礼を浴びて、時々、苦戦している姿が聴いて取れる。

しかし、大歓迎を受けた日本での初のライヴ。メンバーは全員、真摯で全力投球、精魂込めたパフォーマンスを展開していて立派だ。それぞれのアドリブ・ソロは鬼気迫る迫力も持って展開され、ブレイキー御大も珍しく、ロングなドラム・ソロを敢行。その「熱」の入った演奏に、日本の聴衆もビビッとに反応している様は、これまた立派。

ちなみに、この盤は、この初来日ツアーを追いかけたドキュメンタリー映画『黒い炸裂』用に記録されたものだったが、権利等の問題で。この映画がお蔵入り。フィルムは破棄され、それ以降、演奏を記録したマスターテープの所在も長らく不明状態に。しかし、2017年、当時の映画スタッフの遺品からマスターテープが発見され、リリース至った、とのこと。まだまだあるんですね。そういう貴重な未発表音源って。それが聴ける我々はラッキーでした。
 
 
 
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2022年2月13日 (日曜日)

硬派グリーンのポップな異色盤

グラント・グリーン(Grant Green)は、パッキパキな一本弾きファンキー・ギタリスト。そのブルージーかつジャジーなファンキー・ギターは唯一無二なもので、振り返って聴くにつけ、実にジャズらしいギターだなあ、と感心する。しかし、グリーンの現役当時は、あまりウケなかったみたいで、ブルーノートの売り上げに貢献した、という話は聞いたことが無い。

Grant Green 『Sunday Mornin'』(写真左)。1961年7月4日の録音。ブルーノートの4099番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Kenny Drew (p), Ben Tucker (b), Ben Dixon (ds)。

パッキパキなファンキー・ギタリスト、グラント・グリーンが単独フロントのカルテット編成。漆黒ブルージーなバップ・ピアニスト、ケニー・ドリューがピアノを担当しているのが珍しい組合せ。

1961年といえば、ハードバップなジャズが技術的にピークを迎え、それぞれの特質を活かした「多様化」に踏み出した頃。ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、フリー・ジャズ、モード・ジャズなど、ジャズのポップ化、イージーリスニング化、逆に、アート志向、精神性志向など、ジャズを音楽芸術のひとつとして捉える向きなど、様々な志向のジャズが現れ出でていた。
 

Sunday-mornin

 
このグリーンの『Sunday Mornin'』は、パッキパキな一本弾きファンキー・ギターの「大衆化」盤である。一本弾きが基本なので、メロディーをクッキリ表現し易い。そこに目を付けたのか、アルバム全体の雰囲気としては、グリーンのギターの個性を活かした「イージーリスニング志向」の演奏、という感が強い。

選曲をみるとそれが良く判る。当時の映画音楽「Exodus(栄光への脱出)」とか、聴き心地の良いスタンダード曲「God Bless the Child」、そして、マイルスの「So What」のポップ化には思わず苦笑い。グリーンの自作曲も主メロディーがキャッチャーで耳当たりの良いものばかりで、グリーンのギターの個性である「一本弾き」が活きて、聴き心地が良い。

ただし、パッキパキでファンキーなところは全く変わっていないので、「イージーリスニング志向」の演奏はしていても、どっぷりジャジーでブルージー、硬派でメインストリーム志向な雰囲気は相変わらずで、ポップでムーディーな雰囲気を得るには至っていない。逆に、パッキパキなファンキー・ギタリスト、グラント・グリーンが「ポップな弾き回しをした」企画盤として捉えると、グラント・グリーンのディスコグラフィーの中での「異色盤」と評価出来て座りが良い。

とにかく、ブルーノート・レーベルには、総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンには、ジャズのポップ化、大衆化は似合わない、ということが、このグラント・グリーンの「ポップな弾き回しをした」異色盤を聴いても良く判る。
 
 
 
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2022年2月 4日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・227

スタンリー・タレンタインは、ダンディズム溢れる、ファンキー&ソウルフルなテナー・サックス奏者。兄にトランペッターのトミー・タレンタインがいる。長い名前なので、スタンリー・タレンタインは「スタタレ」、トミー・タレンタインは「トミタレ」と省略して呼んでいる。

スタタレのテナー・サックスは個性が強い。1曲聴けば、スタタレと判る、骨太でブレの無い、こってこてファンキーで「黒い」テナー。フレーズを吹けば、歌心満点のブロウで、こってこてソウルフル。ストレートな吹きっぷりの「どテナー」である。スタタレのテナーを聴けばいつも「全くジャズらしいテナーやなあ」と思うのだ。

が、何故か我が国では人気はイマイチ。ジャズに精神性を求める向きが強い我が国では、スタタレの様な、こってこてファンキー&ソウルフルな判り易いテナーは「俗っぽい」とか、「ポップ過ぎる」とか言われて、硬派なジャズ者であればあるほど、スタタレのテナーを遠ざけてきた。でもなあ、スタタレのテナーほど、ジャズっぽいテナーは無いんだけどなあ、というのが、僕の本音。

Stanley Turrentine『That's Where It's At』(写真左)。1962年1月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Les McCann (p), Herbie Lewis (b), Otis Finch (ds)。ソウル・ジャズなピアニスト、レス・マッキャンのトリオがリズム・セクションに付いた、スタタレのテナーがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」な編成。
 

Thats-where-its-at

 
バックにレス・マッキャンのピアノが控えているので、アルバム全体の雰囲気は「ソウル・ジャズ」。硬派なジャズ者の方々が聞けば眉をひそめそうだが、そこはブルーノート・レーベル。過度に俗っぽくならず、過度にポップにならず、真摯でアーティスティックな「ソウル・ジャズ」に仕上げているところは流石である。

もともとスタタレのテナーは「ファンキー&ソウルフル」なので、レス・マッキャンのトリオをバックにしても、違和感は全くない。どころか、ばっちりフィットしている。レコーディングの為の急造カルテットとは思えない、素敵な一体感がこの盤の魅力の1つ。こういうところも、さすがはブルーノート、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの敏腕の成せる技である。

しかも、スタタレのワンホーン・カルテットなので、スタタレのテナーの個性がしっかり確認出来る。そういう意味でも、バックのリズム・セクションが、ソウル・ジャズなピアニスト、レス・マッキャンのトリオであることに意味があって、マッキャンのソウル・ジャズな要素に、スタタレのテナーの個性である「ファンキー&ソウルフル」がしっかり反応している。

この盤、意外と「隠れた名盤」だと思うんだけど、どうだろう。真摯でアーティスティックな「ソウル・ジャズ」の好例として、我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』では息の長い、長年のヘビロテ盤で、時々、思い出しては聴いています。ジャケットもいかにもブルーノートらしい、アーティスティックな、味のあるデザインで「グッド」ですね。
 
 
 
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2022年2月 3日 (木曜日)

レオ・パーカーの遺作になります

ブルーノート・レーベルは、ジャズのトレンド、演奏スタイルや演奏楽器の「おおよそ」を押さえているところが素晴らしい。ブルーノートと言えば、真面目で硬派なジャズばかりを押さえている「強面」の印象があるが、意外とポップな、例えば、R&B系のミュージシャンが奏でる、ソウルフルなジャズなども、しっかり記録している。

Leo Parker『Rollin' with Leo』(写真左)。1961年10月12 & 20日の録音。ブルーノートの4095番。ちなみにパーソネルは、Leo Parker (bs), Dave Burns (tp), Bill Swindell (ts), John Acea (p), Stan Conover (b, tracks 3 & 4), Al Lucas (b, tracks 1, 2 & 5-8), Wilbert Hogan (ds, tracks 1, 2 & 5-8), Purnell Rice (ds, tracks 3 & 4)。

さすが、R&B系のバリサク(バリトン・サックス)奏者のレオ・パーカーがリーダーのセッションなので、パーソネルを見渡しても知らない名前ばかりである(笑)。この盤は録音当時は、ブルーノートお得意の「謎のお蔵入り」(内容も良く、ジャケットやレコード番号まで決定されていたにも拘らず。何故かリリースされない)。1980年に、マイケル・カスクーナ の「発掘リリース」にて、目出度く、リリースされている。
 

Rollin-with-leo

 
レオ・パーカーは、当時の多くのジャズマンに見られた薬物依存、加えて、結核治療の為、1950年代は休眠状態だった。復帰後、直ぐにブルーノートから『Let Me Tell You 'Bout It』、そして、このアルバムと2枚、なかなかの内容のリーダー作を、立て続けに録音したが、このアルバムの4カ月後に帰らぬ人となってしまったのが、実に惜しいところ。

この盤も前作Leo Parker『Rollin' with Leo』と変わらず、こってこて「ファンキーでソウルフル」。バリサクって、重低音を担当する大型のサックスなので、速いフレーズが苦手でピッチが緩みがち。しかし、レオ・パーカーは、緩まず、意外と「バリサクとしては」速いフレーズをバリバリ吹きまくっている。R&Bなダンサフルなフレーズを散りばめて疾走する、心地良くアーシーでユルユルなバリサク。

バリサクの「重低音を鳴り響かせつつ、アーシーでユルユル」な音色が、意外とR&B系のソウルフルなジャズにバッチリ合う。速いフレーズが苦手な分、ユッタリと吹き上げるフレーズは実にスインギー。バリサクを愛でるアルバムとして、この『Rollin' with Leo』と前作『Let Me Tell You 'Bout It』はお勧めです。
 
 
 
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2022年1月27日 (木曜日)

ファンキーなモード・ジャズ

ウィントン・ケリー(Wynton Kelly)って、健康優良児的なファンキーで明るいタッチのピアニストなんだが、意外と結構、起用で、前進するピアニストだったと思うのだ。特に、1959年〜61年のVee Jay絵Rーベル時代の諸作については、パーソネルに「ウェイン・ショーター」がいたりして、かなり先進的な内容になっている。

Wynton Kelly『Kelly Great』(写真左)。1959年8月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。モーガンのトランペット、ショーターのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。ベースがポルチェン、ドラムがフィリージョーということで、当時のほぼベストの布陣である。

前リーダー作までRiversideレーベルで、ファンキーでハードバップど真ん中なサウンドを聴かせていたのだが、この盤では、ちょっと雰囲気が異なる。基本が「モード」なのだ。あのモード・ジャズ独特の旋律の響きがこの盤に充満している。これはパーソネルに名を連ねている「ウェイン・ショーター」の仕業だろう。ショーターが全5曲中2曲がショーター作で、バリバリ「モード」な曲なのだ。
 

Kelly-great

 
このショーターの存在が、この盤の「モード」な雰囲気を醸し出していることは明確。ショーターのテナーがどの曲においても「モード」なのだ。ケリーのピアノがファンキーだろうが、モーガンのトランペットがハードバップだろうが容赦無い(笑)。しかし、そこは一流ジャズマンの集まり。ショーターの「モード」の挑戦状をしっかと受けて立っているところがこの盤の聴きどころ。

ケリーが「健康優良児的なファンキーで明るいタッチ」のモーダルなピアノを弾いている。ショーターのモーダルなテナーに戸惑う事無く、逆にショーターの宇宙的なウネウネフレーズに、仄かに明るいファンクネスを塗している。健康優良児的な明るいモーダル・フレーズって、これ、ケリーにしか弾けないのでは。ケリーのピアノのポテンシャルを見せ付けられた様な気分になる快演である。

モーガンも負けじとモーダルに対応して、この盤は「ファンキーなモード・ジャズ」大会の様な雰囲気が蔓延している。この「ファンキーなモード・ジャズ」をもっと深掘りして欲しかったなあ、と思えるほど、意外とユニークな内容になっていて、そこに漂う不思議な訴求力が、この盤の最大の魅力である。
 
 
 
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