2019年9月29日 (日曜日)

クロスオーバーなタレンタイン

さて、久し振りにCTIレコードの聴き直し。スタンリー・タレンタインである。タレンタインのテナー・サックスは「漆黒のファンキー・テナー」。どっぷりマイナー調の、思いっ切りジャジーな、中低音中心のファンキー・テナー。1960年代はブルーノート・レーベルをメインに活動。1970年に入って、CTIレコードへ移籍。クロスオーバーな聴き易いジャズに身の置き場を変えた。

Stanley Turrentine『Sugar』(写真)。CTIの6005番。1970年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Freddie Hubbard (tp), George Benson (g), Lonnie Liston Smith (el-p), Butch Cornell (org), Ron Carter (b), Billy Kaye (ds), Richard "Pablo" Landrum (congas), Hubert Laws (fl), Hank Crawford (as), Johnny "Hammond" Smith (org), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc)。

パーソネルを見渡すと、ブルーノート・レーベル時代のメンバーとはガラリと変わった。ハードバップ時代からファンキー・ジャズと渡り歩いてきた「手練れ」のメンバーの顔は無い。どの顔も、これからのクロスオーバー〜フュージョン・ジャズを担っていく、若手〜中堅メンバーばかり。テクニックも優秀。高度な演奏を聴き易いジャズに仕立てて、心地良い響き。
 
 
Sugar-stanley-turrentine  
 
 
そんな若きクロスオーバーなリズム・セクションをバックに、タレンタインが「漆黒のファンキー・テナー」を朗々と吹き上げていく。プロデューサー、Creed Taylorの手腕が存分に発揮された、CTIレコード初期の傑作盤である。とにかくアレンジが優秀。冒頭のタイトル曲「Sugar」の「どっぷりファンキー度最高」な演奏だが、クロスオーバーなアレンジによって、極上のエレジャズに仕上がっている。

3曲目の「Impressions」は、ジョン・コルトレーンのモーダルでシーツ・オブ・サウンドな、思いっ切り硬派な純ジャズ曲なんだが、パーカッションとエレピの響きを全面に押しだして、8ビートでクロスオーバーな「Impressions」に変身させている。こんなファンキーでエレクトリックな「Impressions」は聴いた事が無い。しかも、これがなかなか「イケる」のだから面白い。

しかし、タレンタインのどっぷりハードバップでファンキーな「漆黒のテナー」がここまで華麗に転身するとは、実に見事である。ジャケットがちょっとエロチックで「イージーリスニングなジャズ」を彷彿とさせて、ちょっと敬遠気味になるが、中身はなかなか硬派なクロスオーバー・ジャズ。1970年初頭なので、メインストリーム・ジャズな響きをしっかり残っていて、意外と聴きものな内容になっています。
 
 
 
東日本大震災から8年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年9月11日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・120

Riverside(リヴァーサイド)レーベルは、1952年にオリン・キープニュースとビル・グラウアーによってNYに設立された。実質的な活動期間は約10年間、1950年代から60年代前半で、ハードバップからファンキー・ジャズ、モード・ジャズ辺りをカバーする。日本ではモダン・ジャズ三大レーベルの一つと言われるらしい。
 
このリヴァーサイド・レーベル、意外とマニアックなレーベルで、カタログを紐解くと「こんなアルバムあったんや」とか「何やこのアルバム」な、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されたことがほとんど無い「好盤」が沢山ある。どうも、リヴァーサイドというと、我が国では、モンク、エヴァンス、キャノンボール、ウェス辺りがもてはやされるばっかりで、他の「隠れ好盤」にはあまり着目することはなかったようだ。

Ben Webster and Joe Zawinul『Soulmates』(写真左)。1963年9月20日と10月14日の2回の録音を集めている。ちなみにパーソネルは、Ben Webster (ts), Joe Zawinul (p), Philly Joe Jones (ds), Thad Jones (cor) 【10月14日】, Richard Davis (b)【9月20日】, Sam Jones (b)【10月14日】。ウエブスターとザヴィヌルとフィリジョーは2つのセッション共通、ベースはリチャードDとサムJを使い分け、10月14日のセッションのみ、サド・ジョーンズのコルネットが入って2管フロントとなっている。
 
 
Soulmates-ben  
 
 
とまあ、編成の異なる2つのセッションを併せた盤ではあるが、この盤は、主役の2人のプレイが際立っている。1963年である。ベン・ウエブスターは既に54歳。それにしては、溌剌とした、いかにもテナーらしい「耳障りではない大きな音」で吹きまくっている。迫力満点である。音はまだまだ若い若い。しかも破綻無く、朗々と吹き続ける。

そして、ピアノのジョー・ザヴィヌルは、あのニュー・ジャズの伝説のバンド「Weather Report」のリーダー。このザヴィヌルのピアノが面白い。オーストリア出身のピアニストなのに、ファンクネス漂う、実に趣味の良い、典雅と形容してもよいほどの、ファンキーなピアノを聴かせてくれる。この典雅なファンキー・ピアノをバックにウェブスターが吹きまくる。この盤の「美味しいところ」である。
 
スイング時代から活躍する大ベテランのウエブスターと当時、新進気鋭なピアニストで新しい感覚のザヴィヌル。ミスマッチの様ですが、これが意外と、ベテランと若手の絶妙のコントラストが良い方向に作用して、なかなか聴き応えのある内容となっています。ウエブスターのテナーの適応力、包容力が素晴らしい、ということでしょう。お勧めの好盤です。
 
 
 
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2019年9月 8日 (日曜日)

おどろおどろしいジャケ・5

「おどろおどろしい」ジャケット・デザインの宝庫になってしまったブルーノート・レーベルの4300番台。4300番台のアルバムの名誉の為に言っておくと、アルバムの内容的には水準以上のものが大多数。たまに「あれれ」という内容の盤もあるが、そこはさすがにブルーノート・レーベル、「腐っても鯛」(?)である。

しかし、このアルバムなどは、何故こういうジャケット・デザインになったか、全く理解に苦しむもの。この盤に出会ったのは、今から15年ほど前。この盤の内容を確認して、これはちょっと酷いなあ、と思ったことを覚えている。当時のアルバム・ジャケットのデザインを担当者に確認してみたい位だ。

Reuben Wilson『Blue Mode』(写真左)。ブルーノートの4343番。1969年12月12日の録音。ちなみにパーソネルは、 Reuben Wilson (org), John Manning (ts), Melvin Sparks (g), Tommy Derrick (ds)。ソウル・オルガンの雄、リューベン・ウィルソンのギター入りカルテット盤である。
 
 
Blue-mode-reuben-wilson   
 
 
内容的には、ソウル・ジャズというよりは、しっかりした内容のファンキー・ジャズ、意外と硬派なファンキー・オルガンを聴くことが出来る。これは恐らく、テナー・サックスのジョン・マニングの存在の影響だろう。マニングのテナーが意外と新主流派で硬派な吹きっぷりで、このモーダルな吹きっぷりに引き摺られて、バンドの演奏全体が、意外と硬派なファンキー・ジャズな雰囲気になったのかと。

パーソネルを見渡すと、知らない名前ばかりが並んではいるが、演奏のレベルそのものは水準以上。ブルーノート・レーベル4300番台には珍しく、聴き手に迎合すること無く、ファンクネスも適度に硬派なファンキー・ジャズを展開しているところは「聴きもの」かと思います。リューベン・ウィルソンの硬派なファンキー・ジャズ盤ですね。

というまずまず良い内容の盤なのに、この「おどろおどろしい」ジャケット・デザインは何なんだ。このジャケットを見て、この盤の購入を決める人って、ちょっと替わった人では無いかと。まず、レコード屋のカウンターに持って行くのに勇気が要る。まあ、今の目で見ると、かえって、この「おどろおどろしい」ジャケット・デザインが愛おしかったりするけど(笑)。
 
 
 
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2019年8月30日 (金曜日)

おどろおどろしいジャケ・2

ブルーノートのジャケット・デザインのアート性は非常に高く評価されているのだが、4300番台には「これはなんだ」と首を傾げる凄まじいデザインのジャケットがある。昨日語った、ブルーノートの4300番台の「おどろおどろしい」ジャケット・デザイン。結構な数があるので、どんどん挙げていきますよ。

John Patton『Accent on The Blues』(写真)。ブルーノートの4340番。1969年8月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Marvin Cabell (ts, fl), James Blood Ulmer (g), Leroy Williams (ds)。後のアブストラクトでスビリチュアルなエレギで有名となった、ジェームス・ブラッド・ウルマーが参加している。ちょっと「ビックリ」。

まずは合成写真を使った、思いっ切りサイケデリックで、おどろおどろしいジャケットを探していこう。このジャケットも相当「きている」。中身はジャズである。オルガン・ジャズである。タイトルからブルースをメインにした曲選択をしている筈だ。なのに何故、こんなジャケットを選定するのか。まず、ぱっと見、何のアルバムか判らない。辛うじて、サイケなソウル・ミュージックかなあと思うくらい。
 
 
Accent-on-the-blues
 
 
しかし、中身は正統なオルガン・ジャズ。ちょうどハードバップ時代後期のしっかりと成熟したファンキー・ジャズな雰囲気がアルバム全体を包む。しかもメインは「ブルース風の曲」。決してポップには傾かない、しっかりと純ジャズの雰囲気を維持した、ちょっとライトで聴き易いトーンの演奏がズラリと並ぶ。4300番台にありながら、決してポップに傾いていないところがこの盤のユニークなところ。
 
パットンのオルガンは柔らかい温和な音。ジャズ・オルガンの最高峰、ジミー・スミスの様な切れ味良く攻撃的なフレーズは全く聴くことが出来ない。恐らく、後発のパットンはジミー・スミスのオルガンと比較されることを未然に避けたのはないか、と思われる。テクニックは確かだが、決して激情に身を任せず、切れ味を前面に出さない、柔らかくてエッジの角が取れたオルガンの音。これがパットンのオルガンだ。
 
そんなパットンのオルガンの傾向が、このアルバムで演奏されるブルース曲を通して、十分に確認出来る。ウルマーのギターも後の個性の片鱗を聴かせてくれていて、実にユニーク。演奏全体の雰囲気はハードバップ後期のファンキー・ジャズで、時代が進んでいる分、アーバンな雰囲気が色濃く漂う。おどろおどろしいジャケットだけど、中身はメインストリーム・ジャズ。意外と好盤です。
 
 
 
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2019年8月29日 (木曜日)

おどろおどろしいジャケ・1

ブルーノート・レーベルと言えば、そのジャケット・デザインのアート性が非常に高く評価されている。しかし、ブルーノート・レーベルの4300番台には、かなり「おどろおどろしい」ジャケットが沢山ある。どうして、そういうデザインを採用したのかはよく判らない。合成写真、イラストと表現手法は違えど、その「絵」の雰囲気は「おどろおどろしい」か「気色悪い」である(笑)。

4300番台がリリースされていた当時は、サイケデリック・アートやヒッピー・ムーヴメントが流行った時代。そういうトレンドに反応して、こういう「おどろおどろしい」ジャケット・デザインを採用したのだろうが、ジャズには全く合わない。しかも、その盤の内容にも、全く合致していないのだから始末が悪い。どうやって考えたら、こうなるのか。当時の担当者にその理由をしっかりと聞いてみたいものだ。

Lou Donaldson『Everything I Play Is Funky』(写真)。ブルーノートの4337番。1969年8月22日と1970年1月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as, vo), Melvin Sparks (g), Idris Muhammad (ds) は録音両日共通。1970年1月9日は、Blue Mitchell (tp),Lonnie Smith (org), Jimmy Lewis (b) が加わる。1969年8月22日は、Eddie Williams (tp), Charles Earland (org) が加わる。2セッションでメンバーの多少の入り繰りはあるが、音の統一感は揺るがない。
 
 
Everything-i-play-is-funky
 
 
さすがに4300番台。ポップで楽しみやすいジャズを追求している。冒頭の「Everything I Do Gon' Be Funky (From Now On)」はアラン・トゥーサンの曲で、もうこれはソウルそのもの。ソウル・ジャズというよりは、モータウンに通じるソウル・ミュージックそのもの。ソウルは声帯で唄うが、ドナルドソンはアルト・サックスで唄う。演奏全体のファンクネスの濃さは半端ない。
 
2曲目「Hamp's Hump」以降、ソウル・ジャズな演奏がズッと続くのだが、5曲目の「West Indian Daddy」はいきなり「カリプソ・ジャズ」が展開される。これが楽しい。ファンクネスを控えめに、ポップ度を増して、ルーさんが楽しく旋律を吹き上げる。この曲が始まると、周りの雰囲気がパッと明るくなる様な気がする。良い曲、良い演奏だ。そして、ラストの「Minor Bash」に至っては、ルーさんが大の得意の「ファンキー・ジャズ」。
 
切れ味良く、適度なテンションを張りながら、アルト・サックスで唄うようにファンキーなフレーズを連発する。これぞルーさん、と思わず声をかけたくなる、ご機嫌な「ファンキー・ジャズ」。おどろおどろしいジャケットだけど、中身は「ルーさん」てんこ盛り。しかし、どうやったら、こんなサイケで、おどろおどろしいジャケットになるのかなあ。ブルーノートの4300番台は不思議なことだらけである。
 
 
 
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2019年7月 2日 (火曜日)

Japanese Jazz Messengers

昨日に続いて、今日も日本人ジャズの新盤を。最近、日本人ジャズの新盤がコンスタントにリリースされている。最近は米国ジャズや欧州ジャズの新盤も比較的容易く入手することが出来る様になった。それでは日本人のジャズは日本人の手で創り出して、日本でいち早くリリースしようではないか、となったのかどうかは判らないが、内容の濃い、聴き応えのある新盤がコンスタントにリリースされている。
 
小林陽一 & J,Messengers『Niagara Shuffle』(写真左)。今年3月のリリース。バンド名を見ただけで、多くのジャズ者の方々は「Art Blakey & The Jazz Messengers」を想起する。この盤、それもそのはず。この盤はアート・ブレイキー生誕100周年記念盤。「日本のアート・ブレイキー」こと小林陽一によるアート・ブレイキーに捧げるトリビュート・アルバムである。
 
J,Messengersは「ジャパニーズ・ジャズ・メッセンジャーズ」の意。ちなみにパーソネルは、Yoichi Kobayashi (ds), Philip Harper (tp), Robin Eubanks (tb), Vincent Harring (as), Essiet Essiet (b), David Kikoski (p)。アルト・サックスのビンセント・ハーリング、トランペットのフィリップ・ハーパー、トロンボーンのロビン・ユーバンクスは実際にジャズ・メッセンジャーズのメンバーとして活躍したジャズメン達である。
 
 
Niagara-shuffle-kobayashi

 
冒頭の「Niagara Shuffle」を聴けば思わずニンマリする。この盤は現代の「ネオ・ハードバップ」である。ハーパーのトランペットはまるで「リー・モーガン」。ハーリングのアルト・サックスはまるで「ベニー・ゴルソン」。キコスキーのピアノはまるで「ボビー・ティモンズ」。ジャズ・メッセンジャース全盛時代のメンバーの陰が、それぞれの楽器の音に見え隠れする。といって、皆、物真似では無い。しっかりとそれぞれの個性を発揮している前提でのニュアンスである。
 
といって、小林のドラミングは小林独特のもの。躍動感溢れ、ダイナミックかつ繊細なニュアンスは小林の唯一無二なもの。聴いていて「惚れ惚れ」するくらい、気持ち良いドラムの音。2曲目の「Along Came Betty」、そして「Moanin’ 」はメッセンジャーズの様でメッセンジャーズの音では無い。「ジャパニーズ・ジャズ・メッセンジャーズ」の音。これが良い感じなのだ。
 
3曲目の「Ping Pong」では、ユーバンクスのトロンボーンをフィーチャーして、3管フロント時代の「メッセンジャーズ」が再現される。ユーバンクスも大活躍。それでもこの盤のリーダーは日本人の小林陽一。ファンクネスは控えめで乾いている。そんな日本人によるファンキー・ジャズの雰囲気をしっかりと醸し出して、素晴らしい「ネオ・ハードバップ」の好盤に仕上がっている。見事。好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年6月16日 (日曜日)

これはハードバップど真ん中

今日は昨日の雨とは打って変わって、ほぼ快晴の一日。風は強く日差しも強く、気温は30度を超えて真夏日に。風があって心地良いと油断していると、水分補給が疎かになる。気をつけなければ。で、これだけ気温が上がると、ほんわかホノボノなジャズが聴きたい。ほんわかホノボノなジャズと言えば「トロンボーン・ジャズ」。
 
『Curtis Fuller Volume 3』(写真左)。1957年12月の録音。ブルーノートの1583番。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb), Art Farmer (tp), Sonny Clark (p), George Tucker (b), Louis Hayes (ds)。ファーマーのトランペットとの2管フロント。ブルーノートらしい、若手〜中堅どころの精鋭を揃えた、充実のパーソネルである。切れ味良く、活きの良い典型的なハードバップが展開されている。

何か革新的なことをやっている訳では無いんだが、充実した演奏内容。フラーのトロンボーンは、ジャズを感じさせる濁りや重厚感が個性。決してテクニックに走らず、音のふくよかさ、フレーズの聴き心地の良さを前面に押し出したフラーのトロンボーンは聴き心地は満点。ファーマーのトランペットは、フラーのトロンボーンと相性が良い。後に「ジャズテット」のメンバーとして活動を共にしたくらいだ。
 
 
Curtis-fuller-vol3
 
 
ファーマーのトランペットは暖かい。ほんわかエッジの丸いトランペットの響きは耳に優しい。そして、クラークのピアノが効いている。クラークのピアノは良く回る右手のフレーズと、そこはかとなく漂う濃厚なファンクネスが個性。このピアノのファンクネスがこの「ほんわかフロント2管」の音をアーバンでブルージーな雰囲気にドップリと染め上げるのだ。
 
収録されたどの曲も良い内容。冒頭の「Little Messenger」は、ルイス・ヘイズのスネア連打から始まる、ジャズ・メッセンジャーズ風のフロント2管の音の響きも心地良いハードバップ。ソニー・クラークのピアノがファンクネスを供給する。左手のブロックコードのファンキーな響きはホレス・シルヴァーを想起する。しかし、シルヴァーよりマイナー調。どっぷりとアーバンでブルージーな雰囲気がこれまた「ジャジー」。
 
さすがはブルーノート・レーベル、さすがはハードバップのお宝ザクザクの「1500番台」。ハードバップど真ん中な演奏の数々に思わず聴き惚れてしまいます。最後にアルバムのタイトル「Volume 3」の表記についてですが、ジャズ者初心者の頃、「Volume 1」や「Volume 2」を探したのを懐かしく思い出しますが、単にブルーノートからリリースしたフラーの3作目、という意味だそう。意外とブルーノートってアルバム・タイトルに拘らないところがあって、これはこれで面白いエピソードです。
 
 
 
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2019年5月29日 (水曜日)

ルーさんのジャズ・ファンク

ブルーノート・レーベルの4300番台は、とにかく「ジャズのポップス化」がメイン。様々な中堅ジャズマンが、この「ジャズのポップス化」の洗礼を浴びている。しかし、ブルーノート・レーベルのポップス化されたジャズの音は、意外と「シュッと」していて、切れ味が良く、演奏内容は濃い。ただただ売れんが為のポップス化で無いところが「隅に置けない」。
 
ジャケットだってそうだ。ブルーノート・レーベルといえば、そのジャケットのデザイン・センスは芸術の域。しかし、この4300番台のジャケットは「芸術」な側面はどこへやら。思いっきり俗っぽいデザインばかり。しかし、当時のサイケデリックやフラワー・ムーヴメントを意識したデザインが多くあって、今の目で振り返ると、意外と「イケて」たりするから面白い。

Lou Donaldson『Hot Dog』(写真左)。1969年4月25日の録音。ブルーノートの4318番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as, vo), Ed Williams (tp), Charles Earland (org), Melvin Sparks (g), Leo Morris (ds)。この時、ルーさんは43歳。ジャズマンとして脂の乗り切った中堅。オルガンのアーランドは28歳。ギターのスパークスは23歳。ドラムのモリスは30歳。
 
 
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ルーさんは一回りも年下のメンバーと組んで、真剣に「ジャズのポップス化」に取り組んでいる。決して適当にやっているのではない。ルーさんのアルト・サックスの音は、ハードバップ時代そのままの艶やかでブリリアント。とても魅力的で訴求力抜群。キレ味良く、躍動感に満ちている。ブルーノート・レーベルの音の矜持をしっかりと維持しているところが素晴らしい。
 
バックの若手メンバーも良い演奏をしている。特にアーランドのオルガンが良い雰囲気。いやいや、モリスのドラミングのグルーヴ感も侮れない。スパークスのギターの適度に緩んだキレ味も捨てがたい。ルーさんとの相性はバッチリ。ライトですっきりファンキーなグルーヴ感が良い。爽快すっきりなジャズ・ファンク。
 
しかし、この盤のジャケットの凄いこと(笑)。ホットドックを持って笑う女性。雰囲気はフラワー・ムーヴメント濃厚。このジャケット、以前はとても評判が悪かったんですよね。ついでに演奏内容も硬派なジャズ者の方々からは散々な評価でした。でも、最近ではライトなジャズ・ファンクとしてしっかりと再評価され、このケバいジャケットもフラワー・ムーヴメント時代のアートとして再評価されています。目出度し目出度し。
 
 
 
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2019年5月22日 (水曜日)

ライトでポップなハードバップ盤

ブルーノート・レーベルの4300番台には、アルフレッド・ライオンがお蔵入りにした音源をアルバム化したものが幾枚かある。先にご紹介した、84310番のGrant Green『Goin' West』、4311番のDon Cherry『Where Is Brooklyn?』がそうだった。そして、この盤もそんな「お蔵入り発掘盤」の一枚である。
 
Lee Morgan『Charisma』(写真左)。ブルーノート・レーベルの4312番。1966年9月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Jackie McLean (as), Hank Mobley (ts), Cedar Walton (p), Paul Chambers (b), Billy Higgins (ds)。ちなみに録音時のプロデューサーは「フランシス・ウルフ」。

モーガン、マクリーン、モブレーのトランペット+アルト・サックス+テナー・サックスの3管フロント。リズム・セクションは、ウォルトンのピアノに、チェンバースのベース、そして、ヒギンスのドラム。粋で洒落たリズム・セクション。出てくる音は成熟したハードバップそのものである。いわゆる「corney(コーニー)」な出来の曲が多く、ライトでポップなジャズがお気に入りの向きにはなかなかの内容ではないだろうか。
 
 
Charisma-lee-morgan
 
 
録音年の1966年からして、この盤の演奏内容そのものは「流行遅れ」である。ただ、この3管フロントがジャズをやると、やっぱり自然と「1950年代のハードバップ」になってしまうのだろう。メンバー全員、とても自由にとても楽しそうにハードバップをやっている。発売当時からすると「懐かしいハードバップ」で、今の耳からすると「上質のハードバップ」である。
 
ファンキー・ジャズと呼ぶには、演奏の底に漂うファンクネスは「軽く」、アドリブ・フレーズも平易で聴き易い。ウォルトンのピアノも流麗で美しい。1曲目の「Hey Chico」の様にラテン風ジャズロックあり、モーガンのリーダー作の中では、一番ポップな雰囲気に仕上がっている。恐らく、演奏内容そのものが「流行遅れ」で、過度な「ライトでポップな雰囲気」がお蔵入りになった理由だろうと思料。
 
それでも、時代を越えて聴き直すと、上質のハードバップであり、モーガンのリーダー作としても出来は上位にランクされるのではないか、と思われる。ジャケットが古いイラスト調で、従来のブルーノート・レーベルらしからぬところが「玉に瑕」。それでも、モーガンのリーダー作として十分に楽しめる内容になっている。
 
 
 
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2019年5月13日 (月曜日)

見た目で判断したら駄目です。

ブルーノート・レーベルの4300番台は、1968年〜1972年の間のリリースなので、ジャズのポップス化の影響をモロに受けた時代。よって、4300番台のアルバムは、聴き易さ、ポップさを前面に押し出したプロデュースがなされていたように思う。ジャズらしい尖った要素は基本的に横に置いておいて、とにかく聴き易さ優先。

Horace Silver『You Gotta Take a Little Love』(写真左)。1969年1月の録音。ブルーノート・レーベルの4309番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Randy Brecker (tp, flh), Bennie Maupin (ts, fl), John Williams (b), Billy Cobham (ds)。往年のフロントである、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts) は既にいない。
 
今の目で見ると、凄いフロントである。かのブレッカー・ブラザースで一世を風靡するランディ・ブレッカーのトランペットに、マイルスやハンコックのバンドで活躍したベニー・モウピンのテナー。そこに、なんとドラムに、クロスオーバー・ジャズの雄、千手観音ドラミングで勇名を馳せたビリー・コブハム。これだけのサイドメンであれば、尖ったクロスオーバー・ジャズが炸裂しそうだが、この盤ではそうならない。
  
 
You-gotta-take-a-little-love-horace  
 
 
なんせリーダーが、ファンキー・ジャズの親玉、ホレス・シルバーである。尖ったクロスオーバー・ジャズなぞ、とんでもない。明らかに明確な、シルバー節満載のファンキー・ジャズが展開されている。ランディもモウピンもポジティブに神妙にファンキー・ジャズをやっている。しかし、これが「味があって良い」。やはり、ジャズの基本はハードバップなんやなあ、と妙に感心させられる。
 
コブハムのドラミングも千手観音ドラミングを封印して、オーソドックスなファンキー・ドラミングをやっており、これがまた、しっかりとファンキー・ジャズに「はまっている」。上手いんだなあ、これが。ということで、ブルーノートのホレス・シルバーらしいファンキー・ジャズ盤に仕上がっている。しかも、かなりポップな仕上がりになっているところが、時代背景を反映しているようで面白い。
 
しかしなあ、このアルバム・ジャケットだけがなあ。およそ従来のブルーノートの仕事とは思えない、思いっきりイラっとさせるジャケット・ワーク。これがまた、ブルーノートの4300番台の仕業でもある。でも、この盤のシルバー節満載のファンキー・ジャズは良い感じ。このギャップもまたブルーノートの4300番台の仕業でもある。いわゆる「見た目で判断したら駄目」な盤が多いので要注意である。
 
 
 
東日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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