2023年9月18日 (月曜日)

充実の『アフリカン・ワルツ』

リヴァーサイド・レーベルのキャノンボール・アダレイは、自らの個性を前面に出し、活き活きとしたパフォーマンスを発揮し、数々の傑作をものにしている。ひとえに、リヴァーサイドの総帥プロデューサーのオリン・キープニュースの賜物である、と僕は思っている。キャノンボールは本当に良いレーベルに巡り会えた。

Cannonball Adderley『African Waltz』(写真左)。1961年2, 5月の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ビッグバンドをバックにしたキャノンボール・アダレイの企画盤。

ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley, Joe Newman, Ernie Royal, Clark Terry, Nick Travis (tp), immy Cleveland, George Matthews, Arnett Sparrow, Melba Liston (tb), Bob Brookmeyer (valve-tb), aul Faulise (b-tb), Don Butterfield (tuba), George Dorsey (as, fl), Oliver Nelson (ts, fl), Jerome Richardson (ts, fl, piccolo), Arthur Clarke (bs), Wynton Kelly (p), Sam Jones (b), Charlie Persip, Louis Hayes (ds), Michael Olatunji (congas, bongos), Ray Barretto (congas),

要所要所に一流ジャズマンを配置した、内容のあるスキルフルなビッグバンドをバックにした、充実の企画盤。ビッグバンドをバックにしたキャノンボールと言えば、エマーシー時代の「ウケ狙いのイージーリスニング・ジャズ」を想起して、ちょっと眉をひそめるのだが、この盤を聴けば、それは杞憂であったことにホッとする。
 

Cannonball-adderleyafrican-waltz

 
アレンジが良い。アーニー・ウィルキンスのアレンジとのことだが、1960年代のジャズ黄金期の「録音の為のビッグバンド」といった音作りがとても良い。ウィントン・ケリーのピアノ、サム・ジョーンズのベース、チャーリー・パーシップとルイス・ヘイズのドラム、この1960年代ならではのリズム・セクションが、当時の最先端のハードバップらしいリズム&ビートを供給する。これが意外と洒脱なのだ。

ホーン隊は逆に、実に「俗っぽい」。どこから聴いても、下世話なスイングの雰囲気を引き継いだ、どこから聴いても、モダン・ジャズらしい、大衆受けするユニゾン&ハーモニー。新しさは無いが、ジャズ黄金期のブラスの響き、ブリリアントな音の輝きが「どジャズ」していて、とても良い。

そんなビッグバンドをバックに、キャノンボール・アダレイの初のシングルヒット曲「African Waltz」が展開される。これがまた実に良い。ただ、この「African Waltz」は、アドリブ・パートが無くて、ジャズの曲調を借りたビッグバンドをベースとしたイージーリスニング志向の演奏。それでも、曲自体が良くて、音的にもアフリカ色が散りばめられていて良い感じ。

他の曲も、スタンダード曲、若しくは、ミュージシャンズ・チューンがほとんどだが、演奏自体のレベルは良好。さすが、メンバーがメンバーだけに、それぞれのアドリブ・パートや要所要所のユニゾン&ハーモニーは聴き応え十分。

エマーシー時代とは一線を画した、リヴァーサイドでの内容のあるスキルフルなビッグバンドをバックにした、充実の企画盤。本当に、キャノンボールって、リヴァーサイドに移籍して良かったなあ、とこの盤を聴く度に、つくづく思うのだ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年9月15日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・266

キャノンボール・アダレイは、ファンキーで明るいアルト・サックスが身上。しかし、デビューから暫くは、エマーシー・レーベルの下、明るい明確なアルト・サックスをメインに、ストリングスやジャズオケをバックにした、大衆受け狙いの「イージーリスニング・ジャズ」志向のリーダー作を連発。

リヴァーサイド・レーベルに移籍して、ハードバップなジャズにやっと立ち戻ったが、ファンキー・ジャズには未だ至らす。しかし、1959年の『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』で一気にファンキー・ジャズ志向に大転換。以降、暫く、キャノンボール・アダレイは、ファンキー・ジャズ一直線で、売れっ子人気ジャズマンの仲間入り。

Cannonball Adderley『Them Dirty Blues』(写真左)。1960年2月1日はNY、1960年3月29日はシカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Bobby Timmons (p, tracks 5–9) , Barry Harris (p, tracks 1–4), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

ピアノをバップなピアニストであるバリー・ハリスとファンキーなピアニストであるボビー・ティモンスとで使い分けているが、編成の基本はアダレイ兄弟がフロント2管のクインテット編成。こってこてバップなピアニストのハリスが、とってもファンキーなピアノを弾いている。こってこてファンキーなティモンズのピアノよりファンキーなのでは、と思う位、ファンキーなハリスのピアノが効いている。
 

Cannonball-adderleythem-dirty-blues  

 
ナット・アダレイのファンキー・チューンの名曲、冒頭の「Work Song」が突出して良い出来。コール・アンド・レスポンスでゴスペルチックなテーマ、展開部は徹底的にファンキーなフレーズで埋め尽くす。根明でストレートなキャノンボールのアルト・サックスと、根明でブリリアントなナットのトランペットが映えに映える。

ちなみに、CDリイシュー盤では、バリー・ハリスがピアノを弾いているテイクと、ボビー・ティモンズがピアノを弾いているテイクとを聴き比べることが出来る。聴き比べると判るのは、LP時代、正式に採用されたのは、バリー・ハリスがピアノを弾いたテイク。ハリスがこってこてファンキーに切れ味良く、ファンキーなバップ・ピアノよろしく、フロントのアダレイ兄弟をバッキングしている。うん、やはり、これはハリスのテイクの方が良い。

2曲目以降もファンキー・ジャズ志向の演奏がてんこ盛り。ハリスのファンキー・ピアノが目立っているが、ティモンズのソウルフルなファンキー・ピアノが良い味を出している。

この『Them Dirty Blues』、スタジオ録音での、アダレイ兄弟のファンキー・ジャズ志向を決定付けたエポック・メイキングな盤という位置づけで、ファンキー・ジャズの名盤の1枚として良いのではないか。アルバムのどの曲を聴いても「ファンキー・ジャズ」。アダレイ兄弟の「ファンキー・ジャズ事始め」を、『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』と併せて聴いて確かめたい。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年9月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・265

この盤はジャズ者初心者の頃、バイト代を叩いて買った思い出の「名盤」。

当時、ブルーノートのLPは値が張った。他のレーベルでは「廉価盤」と銘打って、LPの通常の値段の千円ほど安い、手に入れやすい価格の盤があったのだが、ブルーノートにはそれが無い。

学生時代のバイト代では、ブルーノートのLPは1ヶ月に1枚がせいぜい。他のLPも買いたいので、これは「廉価盤」で数枚買う、という感じで、ブルーノートのLPは、ジャズ者初心者の僕にとっては、特別な存在だった。

Kenny Burrell『Midnight Blue』(写真左)。1963年1月8日の録音。ブルーノートの4123番。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Stanley Turrentine (ts), Major Holley (b), Bill English (ds), Ray Barretto (conga)。

リーダーのバレルのギターとタレンタインのテナーがフロント2管の、コンガ入り、キーボードレスのクインテット編成。バレルのギターとタレンタインのテナーの相性が抜群で、2つの楽器の相乗効果で、漆黒ファンクネスがだだ漏れ。
 

Kenny-burrellmidnight-blue

 
ブルージーでアダルト・オリエンテッドなファンキー・ジャズ。バレルの漆黒ギターとタレンタインの漆黒テナーが、アーバンな夜の雰囲気を醸し出す。コンガが良いアクセントとなった小粋な曲もあって、アルバム全体を通して、大人のファンキー・ジャズをとことん楽しむ事が出来る名盤。

とにかく、バレルのギターが良い。ブルージーでファンクネス濃厚。そして、どこか洗練された都会的な雰囲気が底に流れている。タイトルの「Midnight」が言い得て妙。都会の深夜のブルージーで漆黒な雰囲気がアルバム全体を覆っているのだ。

この盤は理屈で、蘊蓄で聴く名盤では無い。この盤は雰囲気で、直感で聴くべき名盤である。

特に、CDリイシュー時のボートラ含め、1963年1月8日のセッションの全てを欲しい。セッション全曲、捨て曲無し。充実仕切ったバレル・クインテットのセッションの全てを味わい尽くして欲しい。

この盤は、ジャズ者初心者、ジャズを聴き始めて2年位で手に入れた盤だが、まず、このジャケットに惚れた。そして、LPに針を落として、冒頭の名演「Chitlins con Carne」でドップリ感じ入り、そのまま、一気に聴き切った後、直ぐにA面の戻して、繰り返し聴き直した思い出のある名盤。

ジャズ者初心者でもこの盤の良さが直ぐに判る、ジャズ者初心者にとても優しいジャズ名盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年8月31日 (木曜日)

マンスの真の個性が満載な盤

ジュニア・マンスのピアノの真の個性とは何か、を追求している。初リーダー作『Junior』を聴き込み、そしてリーダー作2作目『The Soulful Piano of Junior Mance』を聴き込む。

『Junior』は大衆受けする売れる内容。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏。『The Soulful Piano of Junior Mance』は、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。さて、どちらがマンスのピアノの本質か。

Junior Mance『Big Chief!』(写真左)。1961年8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Jimmy Rowser (b), Paul Gussman (ds)。マンスの3枚目のリーダー作。お得意のトリオ作。

アタックの強い切れ味の良いタッチ。右手は多弁。しかし、五月蠅くは無い。「饒舌」一歩手前。ほど良い「多弁さ」。流麗で端正、破綻が無い。ファンクネスは軽め、爽やかでライトなブルージー感が個性。そんなマンスのピアノが溢れんばかりの3枚目のリーダー作である。

冒頭のタイトル曲「Big Chief!」はゴスペル風のブルースだが、決して、ファンクネス&ソウルはコッテコテでは無い。ピアノとベースのコール&レンポンスも印象的だが、決して、コッテコテのファンキー・ジャズにはならない。スッキリ爽やか、軽やかで端正なファンクネス&ソウル。
 

Junior-mancebig-chief

 
多弁な展開は意外と耳に付かない。タッチが明確なんだが硬質では無い。音のエッジが少しラウンドしている様な明確なタッチ。特に速いフレーズを弾き回す時、この個性が良い方向に作用している。この多弁な展開の弾き回しの個性はマンスならでは、だと思う。

逆にミッドテンポの曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。ミッドテンポの曲は、多弁なフレーズがちょうどフィットしていて、多弁なフレーズのエッジがほど良くラウンドしているので、多弁が多弁と感じ無い。

バラード曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。バラード演奏もバラードとしては少し多弁かもしれないが、ファンクネス&ソウルが爽やかな分、耳には爽やかさが残って、多弁でもフレーズが「もたれない」。

3枚目のリーダー作『Big Chief!』を聴き込んで、マンスの初リーダー作で代表作とされる『Junior』(Verve)は、マンスの本質を抑えて、イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易いピアノ・トリオとしてまとめた異色作だったことが良く判る。『Big Chief!』にはマンスの真の個性が満載。マンスの真の個性を感じるには、まずは『Big Chief!』。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年8月20日 (日曜日)

硬派でバップなキャノンボール

エマーシー・レコード時代は「大衆受けする売れるジャズ」を余儀なくされたキャノンボール・アダレイ。ビッグバンドや弦オケをバックにした、ゴージャズな「イージーリスニング志向のジャズ」盤を幾枚かリリースする。小コンボのリーダー作も3枚ほどあるが、当時、成熟しつつあるハードバップな雰囲気では無く、どこか聴き易い柔和なトーンで滑らかな吹奏に終始している。

Cannonball Adderley『Portrait of Cannonball』(写真左)。1958年7月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Blue Mitchell (tp), Bill Evans (p), Sam Jones (b), Philly Joe Jones (ds)。キャノンボールのアルト・サックスと、ミッチェルのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

この盤から、やっとエマーシーを離れ、リヴァーサイド・レーベルに移籍したキャノンボール。水を得た魚のように、伸び伸びとエネルギッシュに、ブリリアントな響きを振り撒きながら、お得意のファンキーなアルト・サックスを吹きまくっている。フロントの相棒、ミッチェルのトランペットとの相性も良く、エマーシー時代とはちょっと違う、エネルギッシュで切れ味良く、ファンキーな吹奏を繰り広げている。
 

Cannonball-adderleyportrait-of-cannonbal

 
リズム・セクションがとても良好。当時、リヴァーサイドの専属ピアニストだったビル・エヴァンス、ソリッドで躍動感溢れる重音ベースのサム・ジョーンズ、ミスター・ハードバップ・ドラマーのフィリージョーのトリオが実にストレート・アヘッドでバップなリズム&ビートを叩き出す。とても切れ味の良い、ストイックで硬派なバップ・ビート。このリズム隊が、この盤を上質のハードバップ盤に仕立て上げている。

キャノンボールのアルト・サックスとミッチェルのトランペットは、双方の個性通り、ファンキーな吹奏なんだが、前述の様な「ストレート・アヘッドでバップなリズム&ビート」を叩き出すリズム隊に合わせて、ファンキー度合い控えめ。ストレート・アヘッドな純ジャズ志向の、切れ味良いバップな吹奏を繰り広げるキャノンボール&ミッチェルは意外と珍しい。

リヴァーサイドに移籍して、いきなり、どっぷりファンキー・ジャズなアルバムにしなかったところに、リヴァーサイドの総帥プロデューサー、オリン・キープニュースの深慮遠謀を感じる。キャノンボールは決して「コマーシャルなジャズマン」では無い、第一線級の優れたハードバッパーなのだ、と主張するように、ストイックで硬派でバップなキャノンボールがこの盤の中で躍動している。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年8月17日 (木曜日)

力強くも優しいオルガン・ジャズ

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。もともと、マイルスの紹介で、オルガンの神様「ジミー・スミス」をデビューさせ、ドル箱人気オルガニストに育て上げた実績があるブルーノートである。オルガン・ジャズには他のどのレーベルよりも造詣が深い。ニッチなジャズ・オルガンではあるが、ブルーノートのカタログには、多くのオルガニストのリーダー作が散見される。

オルガンジャズの神様、ジミー・スミス。デビュー当時は「思いっきり尖ったアグレッシブな、実に攻撃的な」オルガン。半ば辺りで、圧倒的テクニックはそのままに、力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」ジャズ路線に舵を切る。そして、1962年、大手レーベルのヴァーヴ・レコードへ移籍する。

Jimmy Smith『Softly As A Summer Breeze』(写真左)。1958年2月26日の録音。ブルーノートの4200番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell (g, tracks 1–4), Eddie McFadden (g, tracks 5-6), Philly Joe Jones (ds, tracks 1–4), Donald Bailey (ds, tracks 5-6)。基本は、スミスのオルガンに、ギター、ドラムというオルガン・トリオ編成。

オリジナル盤は全6曲。1998年のCDリイシュー時に、1958年10月14日録音の4曲が追加されているが、オルガン・ジャズでありながら、何故か男性ボーカルが入っている、ちょっと違和感のある音源なので、ここでは割愛させていただく。以下、この盤の感想については、オリジナルの6曲で語りたいと思う。
 

Jimmy-smithsoftly-as-a-summer-breeze

 
この盤はブルーノート・レーベルお得意の「理由が良く判らないが、何故かお蔵入り」な盤の1枚。リリースは1965年だが、この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」音源では無い。1958年の録音で、『The Sermon』と『Home Cookin'』の間に入る録音になる。ブルージーでアーバンな雰囲気のもと、聴かせるオルガン・ジャズに落ち着いた頃の音源である。

雰囲気的には『Home Cookin'』の流れ。気負いの無い、リラックスしたジミー・スミスのオルガンがとてもジャジー。ファンクネスもコッテリ効いていて、まさに「大人のジャズ」。ミッドナイトでアーバンな雰囲気を増幅するのは、ケニー・バレルとエディ・マクファデンのギター。落ち着いたスミスのオルガンとアーバンなバレルとマクファデンのギターが絡んで、ブルージーな雰囲気が蔓延する。

ドラムがフィリー・ジョーなのが珍しい。フィリー・ジョーのひかえめハードボイルドなバップ・ドラム。ジミー・スミスと言えば、ドラムは「ドナルド・ベイリー」なので、このフィリージョーのドラムは異色。ベイリーとは明らかに違う。それでも、さすがは名手フィリージョー、ブラシによるシンバル・ワークなど、ドラムの達人らしい技を披露しつつ、フロントのスミスのオルガンを引き立てる。

当時、1958年に録音されて8年間眠っていて、1965年になって発表された未発表音源。フィリー・ジョーとの共演が4曲しか無かったので、やむなくお蔵入りになったのかもしれない。力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」内容が素敵なオルガン・ジャズ盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年8月16日 (水曜日)

軽快で聴き易いオルガン・ジャズ

4100番台はもう15年程前に「聴く」ことについて、つまりアルバムの蒐集についてはコンプリートしているのだが、当ブログでの「感想記事」についてはコンプリートしていない。現在、せっせと「記事」の落ち穂拾いをしているのだが、ブルーノートの4100番台の「記事」の落ち穂拾いも「あと8枚」。あと8枚で、当ブログの「記事化」のコンプリートである。

Big John Patton『Oh Baby!』(写真左)。1965年3月8日の録音。ブルーノートの4192番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Blue Mitchell (tp), Harold Vick (ts), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。オルガンのジョン・パットンがリーダー、ミッチェルのトランペット、ヴィックのテナーがフロント2管、グリーンのギター、そして、ディクソンのドラム。パットンがオルガンでベースの役割も兼ねるので、ベースレスのクインテット編成。

ビッグ・ジョン・パットンの4枚目のリーダー作になる。ジョン・パットンはデビュー盤以来、1960年代はブルーノートのハウス・オルガニストの位置づけ。リーダー作は全てブルーノートから、サイドマンとしては、アルト・サックスのルー・ドナルドソン、ギターのグラント・グリーンに絞って参加している。
 

Big-john-pattonoh-baby

 
ジョン・パットンのオルガンは、従来のファンクネスだだ漏れのネチっこいオルガンでは無く、軽快でテクニカル。この盤では、パットン・グリーン・ディクソンのオルガン・リズム隊が、軽快なファンクネスとソウルフルが疾走するかの如く、
ライトで乾いたグルーヴ感を醸し出していて、このジャズの多様化の時代、聴き易いソウルフルなオルガン・ジャズのお手本の様な内容。いわゆる「ながら」の如く、気楽に聴かせるオルガン・ジャズなのだ。

そこに、演奏の旋律をハッキリくっきりする様、ブルージー&ファンキーなトランペットのミッチェルと、ジャズとR&Bを股にかけるソウルフルなテナーのヴィックが効果的に吹きまくる。アドリブ展開もこのフロント2管が良いアクセントとなって、全編通して、オルガン・ジャズとしてマンネリに陥ることは無い。あっという間に聴き切ってしまう。

グリーンのギターのバッキングは絶妙。ディクソンのドラミングは軽快でファンキー。ちなみに、パットンのオルガンに派手な仰々しさが無いのは、レスリー・スピーカーを使用していないからだろう。このライトで乾いたグルーヴ感満載のオルガンがパットンの身上。オルガン特有の「コッテコテ」な雰囲気は皆無。ジャズロック志向でまとめられた好盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年8月12日 (土曜日)

教会音楽志向のソウル・ジャズ

ブルーノートの4100番台は、ジャズの多様化の時代を反映した、当時のジャズのトレンド、ジャズの奏法のほぼ全てに対応した多様なラインアップが素晴らしかった訳だが、4100番台も終わりの頃になると、ジャズの多様化の度が過ぎて、従来のモダン・ジャズの範疇を逸脱した、不思議な内容のジャズも出現してきた。

Donald Byrd『I'm Tryin' To Get Home』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4188番。ドナルド・バードのビッグバンド編成でパフォーマンスした、こってこての「ソウル・ジャズ」。ジャジーなリズム&ビートが無ければ、ビッグバンド編成で奏でる、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」である。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp, flh), Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (p), Freddie Roach (org), Grant Green (g), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds) のセプテットに、Joe Ferrante, Jimmy Owens, Ernie Royal, Clark Terry, Snooky Young (tp), Jimmy Cleveland, Henry Coker, J.J. Johnson, Benny Powell (tb), Jim Buffington, Bob Northern (french horn), Don Butterfield (tuba) の管セクションが付いたビッグバンド編成。
 

Donald-byrdim-tryin-to-get-home

 
冒頭の「Brother Isaac」でぶっ飛ぶ。男女コーラスの軽妙な(奇妙な?)スキャットと、ソウルフルな響きが怪しいビッグバンドが高揚しながらスイングする、摩訶不思議なソウル・ジャズ。というか、ゴスペル・コーラスを彷彿とさせる、ジャジーな教会音楽風で、さすがに、この演奏をコンテンポラリーな純ジャズとして聴くには無理がある。僕は、ジャズと教会音楽との融合がメインの、過度にソウルフルなジャズ・ファンクとして捉えている。

しかし、演奏の中核となるのは、リーダーのバード以下のセプテットの面々で、それぞれのソロ演奏は、当時のジャズの最新の演奏志向や奏法を捉えて、意外と尖った演奏をしている。2曲目「Noah」では、バードはファンキーなモーダル・フレーズでソロを展開し、ハンコックはモーダルなハーモニーでバッキングする。ソウル・ジャズな雰囲気の演奏の中で、モーダルな響きが飛び交う様はシュールですらある。この辺りはジャズと教会音楽との融合の中での「実験ジャズ」的な響きである。

サブタイトルが「Brass With Voices」。その通り、ブラスの響きとスキャット&コーラスを効果的にアレンジに反映した、教会音楽志向のソウル・ジャズがこの盤の中に充満している。内容的にあまりに尖っていて一般受けはしないだろう。しかし、内容的には実にアーティステックなチャレンジであり、こういった一般受けしそうもない尖った内容の「融合」ジャズをしっかりとアルバム化してリリースする、当時のブルーノートは、単純に凄いと思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
  

2023年7月21日 (金曜日)

グリーンとヤングとエルヴィンと

ブルーノートの4100番台の後半のアルバムの中で、このブログに記事として上げていないアルバムをメインに聴き直して、せっせと記事にしている。4100番台は、メインストリーム志向の純ジャズの範疇の中で、1960年代前半の「ジャズの多様化」の時代を確実に捉えて、当時のジャズのバリエーションを漏らさず網羅したアルバムを漏らさずリリースしている。

4100番台を通して聴けば、当時の成熟したジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」の全てが追体験できる。これは素晴らしいことである。そして、この4100番台で記録された、ジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」が、1980年代中盤以降の「純ジャズ復古」のベースとなっていて、現代のジャズに繋がっている。

Grant Green『Talkin' About!』(写真左)。1964年9月11日の録音。ブルーノートの4183番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、プログレッシヴなモーダル・オルガニストのラリー・ヤング、そして、ポリリズムの塊ドラマーのエルヴィン・ジョーンズのトリオ編成。

この盤は、思いっ切り聴き応えがある。まず、リズム隊が、オルガンでモード・ジャズを演奏する、先進的で進歩的なオルガンと、ポリリズミックで自由度の高い革新的なドラムで構成されている。このリズム隊の叩き出すリズム&ビートは、従来のハードバップには無い、最先端のもの。
 

Grant-greentalkin-about

 
この最先端のリズム&ビートをバックに、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンが先鋭的なフレーズを弾きまくる。演奏の基本は「ファンキー&ソウル」なジャズなんだが、演奏全体の雰囲気は先進的、先鋭的、進歩的な、実に硬派で、とてもストイックな演奏になっている。そして、アドリブの弾き回しは何時になく「熱い」。

が、グリーンのギターにも増して、ラリー・ヤングのオルガンが凄い。「ファンキー&ソウル」なグリーンを向こうに回して、プログレッシヴでストイックな「モーダルな雰囲気のオルガン」を弾きまくる。モーダルな雰囲気の中で、ファンキー&ソウルなフレーズを織り込んでくる。責めに攻めるヤングのオルガン。グリーンもこの先鋭的なオルガンをしかと受け止めて、熱くて硬派なソウルフル・フレーズを弾きまくる。

そして、そんな二人をしっかりと支え、しっかりと鼓舞しつつ、演奏全体のリズム&ビートをコントロールするのが、エルヴィンのドラミング。グリーンのギターとヤングのオルガンを前面に押し出し、引き立たせるエルヴィンのドラミングは相変わらず見事。このエルヴィンのポリリズミックで切れ味の良いドラミングがアルバム全体の雰囲気をビシッと締めている。

このブルーノートの4183番、ジャズ盤紹介本や雑誌記事に上がることが殆ど無い、地味な存在に甘んじている作品だが、どうして、この盤、グリーンの代表作の1枚だと思うし、1960年代半ばの「ジャズ多様化の時代」のクリエイティブで熱い、当時のジャズの「深化」をタイムリーに記録した名盤だと思う。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2023年7月19日 (水曜日)

スマートなオルガン・ジャズ。

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。1500番台から、4000番台、4100番台、4200番台と、カタログを見渡せば、要所要所のオルガン・ジャズ盤が存在する。しかも、ジャズ・オルガニストのメンバーが豊富。ジミー・スミスばかりがクローズアップされるが、他にパットン、フェイス、ローチ、マクグリフ、スミス、ウィルソンなど、オルガニストを多く抱えている。

"Big" John Patton『The Way I Feel』(写真左)。1964年6月19日の録音。ブルーノートの4174番。ちなみにパーソネルは、"Big" John Patton (org), Richard Williams (tp), Fred Jackson (ts, bs), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンのリーダー作第3弾。

1960年代、ブルーノートのハウス・オルガニストとして多くのソウル・ジャズ盤に参加したジョン・パットン。このリーダー作第3弾では、初リーダー作以来のフレッド・ジャクソン、初リーダー作からずっとのグラント・グリーンの参加で、この盤も、おおよそ「ソウル・ジャズ」志向であることが判る。 
 

Big-john-pattonthe-way-i-feel

 
全体を見渡すと、とても聴き易いファンキー&ソウル・ジャズ。全曲がパットンの自作曲で占められている。弾き易かったのだろうか。前2作に比べて、スイング感とファンクネスは軽め、どこか洗練されたスマートな弾き回しと、ポップで親しみ易いフレーズがこの番の特徴。各曲、突出した個性は無いが、一様にポップで親しみのあるファンキー&ソウル・ジャズが展開される。

冒頭の「The Rock」のソウルフルでエモーショナルで雰囲気に思わずグッとくる。ウィリアムス~パットン~ジャクソンが繰り出す、ファンキー&ソウルなソロがたまらなくエモい。ホーン2本を抜いて、オルガン、ギター、ドラムのトリオで演奏した4曲目「Davene」がスマートで「粋」。ファンクネスを湛え、ライトでソウルフルなフレーズをオルガンとギターが繰り出す。

有名なスタンダード曲が無いので、どこか掴みどころの無い、ちょっと地味な印象の盤という向きもあるが、その分、明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンの持つ、本来の個性を堪能することが出来る好盤だと思う。ゆったりとしたファンキーでソウルフルな雰囲気が堪らない。良い雰囲気のオルガン・ジャズ。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新

    ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から12年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

AOR Bethlehemレーベル Blue Note 85100 シリーズ Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMレーベル Electric Birdレーベル Enjaレーベル jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル rock Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アンドリュー・ヒル アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・クルー アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イタリアン・プログレ インパルス!レコード イーグルス ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウディ・ショウ ウラ名盤 エスビョルン・スヴェンソン エディ・ハリス エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルトン・ジョン エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリフォード・ブラウン クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド=メル楽団 サム・リヴァース サンタナ ザ・クルセイダーズ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シャイ・マエストロ ジェフ・テイン・ワッツ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルトサックス ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナーサックス ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・レイジ ジョシュア・レッドマン ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デオダート デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マシューズ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック ハーブ・エリス バディ・リッチ バド・パウエル バリトン・サックス バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・チャイルズ ビリー・テイラー ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フリー フリー・ジャズ フレディ・ローチ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザース プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボブ・ジェームス ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス・デイヴィス マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・ジャズ・4 マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ユッコ・ミラー ラテン・ジャズ ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 吉田拓郎 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 日野皓正 書籍・雑誌 本多俊之 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年9月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリー