2023年2月10日 (金曜日)

ベツレヘムのブレイキー好盤

ベツレヘム・レーベルのアルバムを聴き直している。ベツレヘムにはボーカルのアルバムが多いのだが、ハードバップ系のアルバムにも優れた内容のアルバムが多くある。ベツレヘムのアルバムについては、あまりジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集記事に上がることが無いので、いわゆる「隠れ名盤」化しているものがほとんど。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Hard Drive』(写真左)。1957年10月 9,11日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Bill Hardman (tp), Johnny Griffin (ts), Junior Mance (p), Sam Dockery (p, track 3のみ), Spanky DeBrest (b)。

1950年代のジャズ・メッセンジャーズの「停滞の時代」のアルバムである。翌年、ブルーノート・レーベルに移って、大名盤『Moanin'』で再起〜躍進を遂げるわけだが、それまでは、ホレス・シルバーと袂を分かって以降、既存のジャズマンでメンバーを編成し、メンバーも流動的で、決定打に欠ける時代が続いた。

しかし、内容的にはそんなに悪い訳では無かった。既存のジャズマンのチョイスがまずまずで、ハードバップとして、意外と整った内容のアルバムを量産している。ただ、何かが足りない。決定打に欠ける。そんな「停滞の時代」だった。
 

Art-blakey-the-jazz-messengershard-drive

 
この『Hard Drive』もそんなアルバムの1枚。内容的には意外と充実している。まず、テナーのグリフィンが良い。バリバリ吹きまくっている。全編に渡って溌剌としたグリフィンが実に良い。トランペットのハードマンも健闘はしている。グリフィンに煽られているが、何とか、バリバリ吹きまくっている。

ジュニア・マンスがピアノを担当している。ファンキー・ピアノのマンスのドライブ感溢れる弾き回しが、この盤の「ハードバップらしさ」を増幅している。ファンクネスを湛えつつ跳ねるようなタッチでバリバリ弾きまくる。マンスのピアノが意外と良い雰囲気を醸し出している。

当然、ブレイキー御大もバッシバッシ叩きまくる。ブレイキー独特のアクセントで叩きまくるファンキー・ドラム。ただ、代名詞の「ナイアガラ・ロール」や、カカカカカッという個性的なリムショットは、まだ表舞台に出てきていない。そんなところが「何かが足りない」と感じる所以だろう。

2曲目の「Right Down Front」などは、ゴスペル風のファンキー・チューンで、翌年以降、流行となる「ファンキー・ジャズ」の先駆け的な演奏が素敵だ。他のハードバップ・チューンも粒が揃っていて、なかなかのもの。だけど、どこか、決定打に欠ける雰囲気が漂う。それでも、内容的には「ハードバップな優秀盤」で、これはこれで聴き応えは十分ある。ベツレヘムのジャズ・メッセンジャーズは聴く価値あり、だ。
 
 

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2023年1月12日 (木曜日)

明るくライトなメッセンジャーズ

昨日「柔道着のブレイキー(Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』)」について語ったついでに、Art Blakey and The Jazz Messengers(ジャズ・メッセンジャーズ)盤の落ち穂拾いを再開。

ブレイキーはジャズ・メッセンジャーズも含めて、とにかく多作のジャズ・レジェンド。しかも、凡作駄作の類は殆ど無い。全てのリーダー作を聴いて、その感想を記事にするにはかなりの労力と時間がかかる。故に、まだまだ全てのリーダー作を網羅するには至っていない。

ブレイキーは、ブルーノート・レーベルのお抱えドラマー的ポジションにいたので、ブルーノートにリーダー作が集中している。が、他のジャズ・レーベル、それも傍系のマイナーなレーベルにもリーダー作を残していたりして、全リーダー作の音源を押さえるのに骨が折れる。

Art Blakey and The Jazz Messengers『Soul Finger』(写真左)。1965年5月12, 13日、NYでの録音。Limelightレーベル(Mercury Records傘下の傍系レーベル)からのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard, Lee Morgan (tp), Gary Bartz (as), Lucky Thompson (ss), John Hicks (p), Victor Sproles (b)。いやはや、曲者揃いのパーソネル。

パーソネルだけ見ると、どんな音が出てくるのか、想像するのが困難。まず、トランペットが2本、それも、ハバードとモーガンである。前へ出すぎるハバードに頭にきて喧嘩しないのだろうか、心配になる(笑)。
 

Soul-finger

 
ベテランの曲者リード奏者トンプソンがソプラノを吹き、新進気鋭のゲイリー・バーツがアルト・サックスを吹く。新旧まぜこぜになって、ユニゾン&ハーモニーは大丈夫なんだろうか。ベースのスプロールズは1950年代半ばから1960年代まで活動したマイナーなベーシスト。リズム・セクションは大丈夫なのか。

で、出てくる音を聴くと、この盤も例の「柔道着のブレイキー(Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』」と同傾向の音の志向で、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音の雰囲気を踏襲した、ファンキーで小粋で、この盤ではとてもリラックスした展開が印象的。全体的な音のトーンは「明るくライトでポップ」。

ソフト&メロウなユニゾン&ハーモニー、流麗で優しいアドリブ展開。曲者揃いのパーソネルなのに、これだけソフト&メロウなファンキー・ジャズに仕上がってのが不思議。さすが、ブレイキー御大のリーダーシップの成せる技だろう。曲者揃いのパーソネルでありながら、キッチリと「ジャズ・メッセンジャーズの音」に仕上げている。

バンド演奏全体で、リフ、ユニゾン&ハーモニーをビシッと決めて、ブレイキーならではのドラム・ロールが、ソフト&メロウなファンキー・ジャズをビシッと締める。参加メンバーが大きく代わっても、ジャズ・メッセンジャーズの音志向は変わらない。
 
 

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2023年1月11日 (水曜日)

柔道着を着たブレイキー御大

ブルーノート・レーベルやECMレーベル、スティープルチェイス・レーベルのお陰か、ジャズ盤のジャケット・デザインは優れている、とされる向きがある。が、よくよく見直してみると、優れたデザインが約半分、残りの半分の3割がどっちつかずの平凡なデザイン、そして、後の2割はどうしてこうなるのか理解に苦しむ、どうみても「トホホ」なデザインである。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』(写真左)。1963年の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard, Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Charles Davis (bs), Wayne Shorter (ts), James Spaulding (as), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Julius Watkins (French horn), Bill Barber (tuba)。フロント6管+リズム・セクションの9人編成(ノネット)がメイン。

パーソネルを見渡すと、この11人編成の大所帯が面白い楽器構成になっている。フロント管がトランペット2本、トロンボーン1本、バリトン、テナー、アルトのサックスで計3本、ジャズ・メッセンジャーズとしては珍しいのだが、ここにフレンチホルンとチューバが加わる。誰のアイデアだったのだろうか。

リズム・セクションは、ブレイキー御大のドラムに、ピアノ、ベースのオーソドックスなもの。アレンジに、テナーのショーター、トロンボーンのフラー、ピアノのウォルトンの3人がそれぞれ分担して腕を振るっている。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersgolden-boy

 
ブロードウェイのミュージカル『Golden Boy』での楽曲を元に、Colpixというレーベルからリリースされた企画盤。ミュージカルからの楽曲のジャズ化なので、曲の粒は揃っていてアルバム全体の構成は充実している。フロント6管+リズム・セクションの9人編成+リズム・セクションにフレンチ・ホルン、チューバが加わるので、しっかりとしたアレンジが施されている様子が良く判る。

フロント管のユニゾン&ハーモニーは、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音の雰囲気を踏襲した、ファンキーで小粋で迫力と覇気溢れるもの。3管フロントにトランペット、アルト・サックス、バリトン・サックスをそれぞれ1本、さらにフレンチ・ホルンとチューバを加えているので、音の彩りが華やかになり、迫力と音圧が増していて、豊かで豪華な音作りが良い感じ。

加えて、ハバード、モーガン、フラー、スポルディングのソロイストのパフォーマンスが好調で聴き応えがある。リズム・セクションも優れたバッキングでフロント管を支えている。我が国では馴染みのないミュージカルからの楽曲のジャズ化なので、馴染みが全く無いが、アルバム全体、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音志向をしっかり引き継いでいて、内容的に充実している。

ただし、である。このジャケットはなあ(笑)。柔道着を着こなしたブレイキー御大が腕組みをして仁王立ちのアップ。これだけ見たら、このアルバム、ジャズのアルバムとは思わないでしょうねえ(笑)。でも内容は良い感じのファンキー・ジャズであり、当時充実の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音が堪らない好盤。このジャケに怯むこと無く聴いて欲しい好盤です。
 
 

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2023年1月 5日 (木曜日)

素敵なエレ・ジャズ・ファンク

ジャズといっても、なにも1950年代から60年代にかけての「ハード・バップ」が全てでは無い。ハード・バップは現代モダン・ジャズの源と言っても良いが全てでは無い。ハード・バップから、モード、ファンキー、ソウル、フリー、スピリチュアル、そして、電気楽器を活用したクロスオーバー、フュージョンなど、様々なバリエーションのジャズが派生している。

ジャズの好盤と言っても、なにもジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の名盤紹介にタイトルが上がるアルバムだけが好盤では無い。確かに、ジャズ盤紹介本や雑誌の名盤紹介に上がるジャズ盤は基本的に間違いが無い。

しかし、それらが全てでは無い。最近ではネットでのジャズ関連のブログやtwitterのツイートに上がるジャズ盤にも好盤、名盤の類がごまんとある。

ジャズに使用する楽器だって、なにもアコースティックな楽器だけが良い訳では無い。エレクトリックな楽器だって、良好なジャズは演奏出来る。以前は硬派なジャズ者の方々が「アコ楽器が全て、エレ楽器なんて認めない」なんて言いまくるもんだから、素直なジャズ者初心者の方々は、アコ楽器のみのジャズ盤を聴き漁る傾向にあるが、ジャズという音楽ジャンルは、楽器についても懐が深い。ジャズは基本的に楽器を選ばない。
 
Gene Harris『Nexus』(写真左)。1975年5月〜6月の録音。ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (key), Al Aarons (tp), George Bohanon (tb), Mike Altschul, Fred Jackson, Jr. (reeds), Lee Ritenour (g), John Rowin (g, el-b), Chuck Rainey (el-b), Kenneth Rice (ds), Ronaldo N. Jackson, Gerald Steinholtz (perc)。
 

Gene-harrisnexus

 
いわゆる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。エレピ、シンセ大活躍。ゴスペルを基本に、ソウル、ソフト&メロウ、コズミックな音要素がごった煮の、こってこてドープなエレ・ジャズ。ファンクネスだだ漏れ、それでいて俗っぽくなく、ちょっと品が良くてスマートでアーバン。

ゴスペルの要素が強く出て、パーカッションがファンクネスを掻き立て、コズミックな音要素が面白い「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。R&Bなコーラスが魂を揺さぶり、ソフト&メロウな音世界が心を和ませる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」。

1950年代から60年代前半は、ブルーノートのお抱えジャズ・トリオ「スリー・サウンズ」で、正統派ファンキー・ジャズなピアノで有名になったジーン・ハリス。1970年代は、様々なエレクトリック・キーボードを趣味良く駆使し、正統派なモダン・ジャズ・ピアノのリリカルな響きを覗かせつつ、フュージョン・ジャズの音要素と上手く同化しながらの「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」が見事。

確かに、この盤でのジーン・ハリスのキーボードの使い方は趣味が良く、センスがある。当時のキーボード使いの中でもトップレベルの使いこなし。これが我が国では殆ど注目されず、殆どスルーされていた訳だから、当時の我が国の「ハードバップ偏重、アコ楽器偏重」も度が過ぎていたんやなあ、と妙に感心する。

今の耳で聴けば、とても内容の濃い、上質の「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。これも素敵なジャズである。
 
 

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2022年11月10日 (木曜日)

ランディの素晴らしいライヴ音源

2022年11月5日のブログ「マイケルの素晴らしいライヴ音源」でご紹介した、弟マイケル・ブレッカーのライヴ音源と同一日、同じジャズフェスでの兄貴のランディ・ブレッカーのライブ音源がある。同一日なので、一日で、ブレッカー兄弟それぞれのバンドのライヴが聴けた訳か。ええなあ。

Randy Brecker『Live at Fabrik Hamburg 1987』(写真)。1987年10月18日、The Jazzfestival Hamburgでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Randy Brecker (tp), Bob Berg (sax), Dieter Ilg (b), David Kikoski (p), Joey Baron (ds)。ハンブルグ・ジャズフェスにて、ランディ・ブレッカーバンドを率いて演奏した折の未発表ライヴ音源。

演奏にクインテットを選んだのは、ホレス・シルヴァーを意識した、とのこと。確かに、ネオ・ファンキー・ジャズと呼んで良い位に、とても洗練された、とてもお洒落でテクニカルなファンキー・ジャズが展開されている。どこか、当時のエレ・マイルスのジャズ・ファンクを判り易い演奏にリコンパイルし、ポップに味付けした様な、エレ・マイルスにインスパイアされた印象を持つのは僕だけかなあ。
 

Randy-breckerlive-at-fabrik-hamburg-1987

 
ただし、ランディはトランペッター。エレ・マイルスの影響をそのまま出したら、マイルスの物真似に聴かれると困る。そこで、一捻りして、ファンクネスの表現の部分はシルヴァーのファンクネス表現をリニューアルし、新しいファンキー・ジャズの雰囲気に乗って、マイルスを口語体に直した様な、判り易いポップなフレーズを吹きまくる。これは良い。これは聴かせるファンキー・ジャズだ。

メンバーも厳選されている。特に、サックスは、エレ・マイルスを経験しているボブ・バーグが担当していて、ストレートでファンキーなサックスを吹きまくっている。キコスキーのピアノはファンキーな弾きこなしで切れ味抜群。ブレイキー、ミンガス、シルバー、モンクら、ジャズのレジェンドへの敬意に満ちた、ストレート・アヘッドな、軽快なファクネス溢れる展開は効き応え抜群。

ランディ・バンド、マイケル・バンド、メンバーも音志向も異なるんですが、演奏の音の「底」はしっかり繋がっているなあ、と改めて感心。特に、ストレート・アヘッドなランディのトランペットが秀逸。確かに、ランディのトランペットは純ジャズの系譜でも一流でした。今回のライヴ盤を聴いて再認識しました。
 
 

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2022年10月24日 (月曜日)

ミッチェルの「お蔵入り」盤です

ファンキーで流麗で明快なトランペッターのブルー・ミッチェル。彼って、ブルーノート・レーベル専属になって初めてのリーダー作が「お蔵入り」になった、気の毒なトランペッターでもある。その「お蔵入り」のジャケットも、ブルーノートのジャケットの平均レベルからすると、明らかに「イケてない」ジャケットで、とにかく気の毒の極みである。

Blue Mitchell『Step Lightly』(写真)。1963年8月の録音。ブルーノートの4142番。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Leo Wright (as), Joe Henderson (ts), Herbie Hancock (p), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。リーダーのブルー・ミッチェルのトランペット、レオ・ライトのアルト、ジョー・ヘンダーソンのテナーがフロント3管、ハンコックをピアノに据えたリズム・セクションのセクステット編成。

リーダーのミッチェルとベースのテイラー、ドラムのブルックスが、元祖ファンキー・ジャズのホレス・シルヴァー・クインテットの出身。残りの他の3人がどちらかと言えば、モーダルなジャズの推進者で、ファンキー・ジャズとモード・ジャズの混成部隊での演奏になる。恐らく、レーベル側は、ファンキーとモードの「化学反応」を期待したんだろう。が、この盤では、ファンキーとモードが分離している様に聴こえる。
 

Blue-mitchellstep-lightly

 
とにかく、全編、ヘンダーソンのモードに捻れたフレーズが目立つ。そして、ハンコックのピアノとライトのアルトがそれに引き摺られるように、モーダルな音志向に傾いていく。リーダーのミッチェルとベースのテイラー、ドラムのブルックスは、完璧にファンキー・ジャズな音志向でバリバリやりまくるので、ファンキー・ジャズが前面に出れば出るほど、ヘンダーソン、ハンコック、ライトのモードなフレーズが目立ってしまう。

ボーッと聴いていると、ヘンダーソンのリーダー作なのか、と誤解してしまうくらいに、ヘンダーソンのテナーが目立ちに目立つので、ブルー・ミッチェルのファンキーで流麗で明快なトランペットの影が薄くなってしまう。ハンコックもハンコックで、こってこてファンキーなフレーズも弾けるだろうに、ヘンダーソンに合わせがちになるって、ちょっとこれは確かに、僕がプロデューサーでも、この盤は「お蔵入り」にしたくなるなぁ。

ミッチェルのトランペットは好調で申し分無いのに勿体ない録音である。このミッチェルの「ブルーノートでの初リーダー作」は、見事にブルーノートお得意の、カタログ番号もジャケットも確定しているのに「お蔵入り」、になってしまい、初めて世に出たのは、1980年になってからである。ただ、この盤は、聴いていて、当時「お蔵入り」になったのが何となく判る盤ではある。まあ、ヘンダーソンにファンキーなテナーを吹かせる、というのは無謀なんだろうな。とにかく、気の毒な「幻のブルーノートでの初リーダー作」である。
 
 

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2022年10月23日 (日曜日)

聴いて楽しく、体が揺れる盤

ブルーノート・レーベル時代のブルー・ミッチェルのリーダー作って、ファンキー・ジャズというよりは、その先、ジャズロックやソウル・ジャズを志向していたと思うのだ。聴いて楽しい、聴いて踊れるジャズ。そんなエンタテイメント志向のジャズを目指していたように思うし、それをしっかり実現していた。

Blue Mitchell『Down with It!』(写真左)。1965年7月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Chick Corea (p), Gene Taylor (b), Al Foster (ds)。昨日ご紹介した前リーダー作『The Thing to Do』と同じメンバーでの演奏。前作が1964年7月の録音だから、約1年後の同一メンバーでの録音になる。

いきなり、ジャズロック風の「Fungii Mama」で幕を開ける。これが、演奏自体のかなり充実していて、曲の良さもあって、聴き応えのある演奏になっている。この1曲だけでも、この盤は「買い」だと思わせるくらいの、典型的なジャズロック。

うへ〜と思っていたら、2曲目は、ちょっとモーダルなファンキー・ジャズ「Mona's Mood」になって、グッとクールでアーバンな雰囲気にガラッと変わる。でも、演奏の底に濃厚に漂っているのは、軽快でカラッとした「ファンクネス」。ミッチェル&クックのフロント2管のファンキーなユニゾン&ハーモニーが、そのファンクネスを更に深める。
 

Blue-mitchelldown-with-it_1
 

3曲目は素敵なモーダルなバラード「Alone, Alone and Alone」。我が国のトランペットの第一人者、日野皓正作の名バラードである。間と音の拡がりを活かした、いかにも「和ジャズ」風なモーダルなバラード。ミッチェルのトランペットに哀愁感が漂い、ブリリアントで柔和な吹き上げと共に、映えに映える。

4曲目「March On Selma」以降は、ミッドテンポの落ち着いた雰囲気の、クールでアーバンなファンキー・ジャズ〜ジャズロックな曲が続いて、来ていて、思わず体が揺れるし、無意識に足でリズムを取っていたりする。

このバンド・メンバーの、特にリズム・セクションのノリが凄く良い。チックのファンキーな躍動感溢れるピアノも良いし、とりわけ、アル・フォスターのドラミングがジャズロックにばっちりフィットしている。ジーン・テイラーのファンキー・ベースが、このバンドの演奏の「底」をガッチリと押さえている。

名盤という類の盤では無いが、聴いて楽しい、聴いて体が揺れる、クールでアーバンなファンキー・ジャズ〜ジャズロック盤である。楽しむジャズとして良い雰囲気をしていて、聴き込んで、1965年のジャズの流行スタイルがとても良く判る。好盤である。
 
 

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2022年10月22日 (土曜日)

ミッチェルの初ブルーノート盤

ブルー・ミッチェルのリーダー作は、ポップでキャッチャーな、明るく乗りの良いファンキー・ジャズ〜ジャズ・ファンクがメイン。特に、ブルーノート・レーベルに残したリーダー作に、その良いところが余すこと無く記録されている。ファンキーで円やかで流麗なトランペッターの個性をしっかり着目し、録音に残しているところは、さすが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンである。

Blue Mitchell『The Thing to Do』(写真左)。1964年7月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Chick Corea (p), Gene Taylor (b), Al Foster (ds)。録音日で見ると『Step Lightly』が初ブルーノート盤に見えるが、実はこの『Step Lightly』は当時、お蔵入り。発売されたのが1980年になってから。今回ご紹介する『The Thing to Do』は1965年の発売なので、当時の初ブルーノート盤になる。

リーダーのブルー・ミッチェルのトランペットと、ジュニア・クックのテナーの2管フロント。当時のホレス・シルヴァー・クインテットのフロント管の2人である。アルバム全体の雰囲気は、ソウル・ジャズの一歩手前、成熟したノリノリなファンキー・ジャズである。

バックのリズム・セクションの人選が面白い。ピアノに若き日のチック・コリア。モンゴ・サンタマリアのバンドで頭角を現し始めた頃のチックをいち早く、ブルーノートは採用している。さすがである。ブルー・ミッチェルの下で、ファンキーなピアノを弾くチックは堂々としたもの。ファンキーなフレーズを難なくこなしている。チックはファンキーなピアノも上手い。この盤で再認識である。

ベースが、これまた当時のホレス・シルヴァー・クインテットのベーシストであった、ジーン・テイラー。ミッチェル&クックのフロント2管との呼吸はピッタリ、ファンキーなベースラインをブンブンに弾き進めている。
 

Blue-mitchellthe-thing-to-do

 
そして、一番ユニークなのが、ドラムのアル・フォスター。エレ・マイルスのドラマーとして有名だったアルだが、ファンキーなドラムを叩かせたら上手いのだ。マイルスの下で、エレ・ファンクなビートを刻んでいたアルだが、ファンクネス濃厚なドラミングはお手のものだった、ということがこの盤を聴けば良く判る。しかし、アルフレッド・ライオンって、よくアル・フォスターをブルー・ミッチェルのリーダ作に持って来たもんだ。その豪腕、恐るべしである。

いきなり、カリプソ調の明るく楽しい曲「Fungii Mama」から始まる。これが、あっけらかんとしていて明るくて、リズミカルな演奏。体が自然に動き、足でリズムを取り始める。特に、チックを始めとするリズム・セクションの躍動感が心地良い。

続くファンキーで小粋でスローな「Mona's Mood」も良い雰囲気。イントロのミッチェル&クックのフロント2管のユニゾン&ハーモニーなんて「ファンキー・ジャズ」そのもの。スローでファンクネス濃厚に漂う雰囲気の中、流麗で明快なミッチェルのトランペットが伸びの良いフレーズを吹き上げていく。

3曲目の「The Thing to Do」は、ハードボイルドなジャズロック風、4曲目の「Step Lightly」は、スローで硬派なファンキー・ジャズ。そして、ラストの「Chick's Tune」は、ファンクネス濃厚だが、切れ味の良いモード・ジャズ。ファンキー・ジャズの担い手、ホレス・シルヴァー・クインテット出身の3人を含め、メンバー全員、魅力的な、ファンキーでモーダルなフレーズを連発している。覇気溢れる、爽快溢れるモード・ジャズである。

ハードバップ全盛期に、内容の濃い、成熟したファンキー・ジャズ盤。リーダーのブルー・ミッチェルも、実に楽しそうにトランペットを吹きまくっていて、聴いていて気持ちが良い。若き日のチック・コリアがピアニストとして、参加しているのも見逃せない。とにかく、聴いていてとても楽しいアルバムである。
 
 

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2022年10月21日 (金曜日)

ミッチェルの成熟ファンキー盤

ジャズの世界では、歴史に名を残すイノベーターばかりで無く、歴史を変えたり、新しい演奏トレンドを生み出すことは無いが、その個性と演奏スタイルから、人気ジャズマンとして名を残しているジャズマンが沢山いる。

トランペッターでは、僕は真っ先に「ブルー・ミッチェル(Blue Mitchell)」の名前が浮かぶ。彼は、ジャズにおいて、イノベーターでも無ければ、キーマンでも無い。ファンキーで円やかで流麗なトランペッターという個性で、ジャズの歴史上に名を残している。

Blue Mitchell『Out of the Blue』(写真左)。1959年1月5日の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Benny Golson (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b, tracks 2 & 5,6), Sam Jones (b, tracks 1,3 & 4), Art Blakey (ds)。今回はややこしいので、CDリイシュー時のボートラ(7曲目)はオミットしてコメントしている。
 

Blue-mitchellout-of-the-blue

 
ブルー・ミッチェルの2枚目のリーダー作になる。テナーにベニー・ゴルソンが、ドラムにアート・ブレイキーが、ピアノにウィントン・ケリーがいる。これだけでも、ファンキー・ジャズが基本の演奏になっているのかな、と想像出来る。フロントの相棒とリズム隊がファンキー・ジャズの担い手達なのだから、ミッチェルもさぞ、吹きやすかったと思われる。

ライトで流麗なファンキー・ジャズが全編に流れる。ブリリアントにファンキーに流麗に、ミッチェルのトランペットが映えに映える。フロントのゴルソンのテナーも何時になく好調に飛ばしているし、リズム隊も絶好調。ケリーも健康優良児的なファンキー・ピアノを弾きまくっていて清々しい。

ネジのアップのジャケットは「?」で、僕は最初、この盤は、プレスティッジ・レーベルの盤かと思った(笑)。リヴァーサイド・レーベルのジャケって、まあまあのものが多いのだが、このジャケは「?」。それでも、内容的には優れていて、メンバー全員が好調の「成熟したファンキー・ジャズ」がこの盤に詰まっている。
 
 

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2022年9月22日 (木曜日)

宗教的な(religious)ジャズ

Mary Lou Williams(メアリー・ルー・ウィリアムス)。米国や欧州では、他のレジェンド級のジャズメンへの楽曲提供やアレンジャーとしての協力、そして、何より、ジャズ・ピアノの代表的奏者の1人として知られる「一流ピアニスト」でありながら、我が国では「さっぱり」というジャズ・ミュージシャンの1人だろう。

僕がジャズを本格的に聴き始めた40数年前、ジャズ盤紹介本には彼女の名前は無かった。僕が彼女の名前を知ったのは、ネットの時代が本格的になった21世紀に入ってからである。

濃厚なグルーヴ感とゴスペル感、どこか敬虔な雰囲気漂うフレーズ。いわゆる「宗教的な(religious)ジャズ」の先駆けであり、ジャズ・ミサの先駆けなんだが、この辺りが我が国のジャズ評論家、ベテランジャズ者の方々に敬遠されたのかもしれない。でもなあ、コルトレーンをはじめとするスピリチュアルなジャズって、どれもが「宗教性」濃厚なんだけどなあ。コルトレーンの『至上の愛』が大絶賛で、メアリー・ルー・ウィリアムスが「さっぱり」な理由が未だに判らない。

しかし、僕は好きである。アメリカン・アフリカンのブラック・テイスト濃厚な「宗教的な(religious)ジャズ」の響きがとても良い。ソウルフルでファンキーなフレーズは、クワイヤーで唄えそうなゴスペルチックな雰囲気。しかも、ピアニストとして、確かなテクニックと端正な弾き回し。硬派なモダンジャズ・ピアノとしても優れた味わい。
 

Mary-lou-williamszoning

 
Mary Lou Williams『Zoning』(写真)。1974年1月~3月の録音。Mary Lou Williams (p, arr), Zita Carno (p), Bob Cranshaw, Milton Suggs (b), Mickey Roker (ds), Tony Waters (congas)。シンプルだが、グルーヴ感濃厚。不思議に少し捻れたソウルフルなフレーズで、スピリチュアル感を増幅させた「宗教的な(religious)ジャズ」盤である。

彼女は1910年生まれ。早熟の天才としてその名を轟かせ、スイング時代からの著名なレジェンド・ジャズメンとの交流がてんこ盛り。そんな様々なジャズマンとの交流が彼女の豊かな感性を育んでいる。そんな豊かな感性を活かした、ソウルフルでファンクネス漂う、切れ味の良いフレーズがこの盤に溢れている。

ピアノ、エレキベース、ドラム+パーカッションという、変則ピアノ・トリオなんだが、エレキの音とパーカッションの音とロッカーのちょっと捻れたドラミングが、これまたスピリチュアル感の増幅に貢献していて、「宗教的な(religious)ジャズ」テイストがコッテリと漂って来る。これが良い。

通常のモーダルなジャズとは、かなり異なる、敬虔さすら感じる音の響きが「宗教的な(religious)ジャズ」の真骨頂。ゴスペルチックな音の重ね方も良い。メアリー・ルー・ウィリアムスの個性全開の優秀盤である。
 
 

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