2022年11月10日 (木曜日)

ランディの素晴らしいライヴ音源

2022年11月5日のブログ「マイケルの素晴らしいライヴ音源」でご紹介した、弟マイケル・ブレッカーのライヴ音源と同一日、同じジャズフェスでの兄貴のランディ・ブレッカーのライブ音源がある。同一日なので、一日で、ブレッカー兄弟それぞれのバンドのライヴが聴けた訳か。ええなあ。

Randy Brecker『Live at Fabrik Hamburg 1987』(写真)。1987年10月18日、The Jazzfestival Hamburgでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Randy Brecker (tp), Bob Berg (sax), Dieter Ilg (b), David Kikoski (p), Joey Baron (ds)。ハンブルグ・ジャズフェスにて、ランディ・ブレッカーバンドを率いて演奏した折の未発表ライヴ音源。

演奏にクインテットを選んだのは、ホレス・シルヴァーを意識した、とのこと。確かに、ネオ・ファンキー・ジャズと呼んで良い位に、とても洗練された、とてもお洒落でテクニカルなファンキー・ジャズが展開されている。どこか、当時のエレ・マイルスのジャズ・ファンクを判り易い演奏にリコンパイルし、ポップに味付けした様な、エレ・マイルスにインスパイアされた印象を持つのは僕だけかなあ。
 

Randy-breckerlive-at-fabrik-hamburg-1987

 
ただし、ランディはトランペッター。エレ・マイルスの影響をそのまま出したら、マイルスの物真似に聴かれると困る。そこで、一捻りして、ファンクネスの表現の部分はシルヴァーのファンクネス表現をリニューアルし、新しいファンキー・ジャズの雰囲気に乗って、マイルスを口語体に直した様な、判り易いポップなフレーズを吹きまくる。これは良い。これは聴かせるファンキー・ジャズだ。

メンバーも厳選されている。特に、サックスは、エレ・マイルスを経験しているボブ・バーグが担当していて、ストレートでファンキーなサックスを吹きまくっている。キコスキーのピアノはファンキーな弾きこなしで切れ味抜群。ブレイキー、ミンガス、シルバー、モンクら、ジャズのレジェンドへの敬意に満ちた、ストレート・アヘッドな、軽快なファクネス溢れる展開は効き応え抜群。

ランディ・バンド、マイケル・バンド、メンバーも音志向も異なるんですが、演奏の音の「底」はしっかり繋がっているなあ、と改めて感心。特に、ストレート・アヘッドなランディのトランペットが秀逸。確かに、ランディのトランペットは純ジャズの系譜でも一流でした。今回のライヴ盤を聴いて再認識しました。
 
 

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2022年10月24日 (月曜日)

ミッチェルの「お蔵入り」盤です

ファンキーで流麗で明快なトランペッターのブルー・ミッチェル。彼って、ブルーノート・レーベル専属になって初めてのリーダー作が「お蔵入り」になった、気の毒なトランペッターでもある。その「お蔵入り」のジャケットも、ブルーノートのジャケットの平均レベルからすると、明らかに「イケてない」ジャケットで、とにかく気の毒の極みである。

Blue Mitchell『Step Lightly』(写真)。1963年8月の録音。ブルーノートの4142番。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Leo Wright (as), Joe Henderson (ts), Herbie Hancock (p), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。リーダーのブルー・ミッチェルのトランペット、レオ・ライトのアルト、ジョー・ヘンダーソンのテナーがフロント3管、ハンコックをピアノに据えたリズム・セクションのセクステット編成。

リーダーのミッチェルとベースのテイラー、ドラムのブルックスが、元祖ファンキー・ジャズのホレス・シルヴァー・クインテットの出身。残りの他の3人がどちらかと言えば、モーダルなジャズの推進者で、ファンキー・ジャズとモード・ジャズの混成部隊での演奏になる。恐らく、レーベル側は、ファンキーとモードの「化学反応」を期待したんだろう。が、この盤では、ファンキーとモードが分離している様に聴こえる。
 

Blue-mitchellstep-lightly

 
とにかく、全編、ヘンダーソンのモードに捻れたフレーズが目立つ。そして、ハンコックのピアノとライトのアルトがそれに引き摺られるように、モーダルな音志向に傾いていく。リーダーのミッチェルとベースのテイラー、ドラムのブルックスは、完璧にファンキー・ジャズな音志向でバリバリやりまくるので、ファンキー・ジャズが前面に出れば出るほど、ヘンダーソン、ハンコック、ライトのモードなフレーズが目立ってしまう。

ボーッと聴いていると、ヘンダーソンのリーダー作なのか、と誤解してしまうくらいに、ヘンダーソンのテナーが目立ちに目立つので、ブルー・ミッチェルのファンキーで流麗で明快なトランペットの影が薄くなってしまう。ハンコックもハンコックで、こってこてファンキーなフレーズも弾けるだろうに、ヘンダーソンに合わせがちになるって、ちょっとこれは確かに、僕がプロデューサーでも、この盤は「お蔵入り」にしたくなるなぁ。

ミッチェルのトランペットは好調で申し分無いのに勿体ない録音である。このミッチェルの「ブルーノートでの初リーダー作」は、見事にブルーノートお得意の、カタログ番号もジャケットも確定しているのに「お蔵入り」、になってしまい、初めて世に出たのは、1980年になってからである。ただ、この盤は、聴いていて、当時「お蔵入り」になったのが何となく判る盤ではある。まあ、ヘンダーソンにファンキーなテナーを吹かせる、というのは無謀なんだろうな。とにかく、気の毒な「幻のブルーノートでの初リーダー作」である。
 
 

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2022年10月23日 (日曜日)

聴いて楽しく、体が揺れる盤

ブルーノート・レーベル時代のブルー・ミッチェルのリーダー作って、ファンキー・ジャズというよりは、その先、ジャズロックやソウル・ジャズを志向していたと思うのだ。聴いて楽しい、聴いて踊れるジャズ。そんなエンタテイメント志向のジャズを目指していたように思うし、それをしっかり実現していた。

Blue Mitchell『Down with It!』(写真左)。1965年7月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Chick Corea (p), Gene Taylor (b), Al Foster (ds)。昨日ご紹介した前リーダー作『The Thing to Do』と同じメンバーでの演奏。前作が1964年7月の録音だから、約1年後の同一メンバーでの録音になる。

いきなり、ジャズロック風の「Fungii Mama」で幕を開ける。これが、演奏自体のかなり充実していて、曲の良さもあって、聴き応えのある演奏になっている。この1曲だけでも、この盤は「買い」だと思わせるくらいの、典型的なジャズロック。

うへ〜と思っていたら、2曲目は、ちょっとモーダルなファンキー・ジャズ「Mona's Mood」になって、グッとクールでアーバンな雰囲気にガラッと変わる。でも、演奏の底に濃厚に漂っているのは、軽快でカラッとした「ファンクネス」。ミッチェル&クックのフロント2管のファンキーなユニゾン&ハーモニーが、そのファンクネスを更に深める。
 

Blue-mitchelldown-with-it_1
 

3曲目は素敵なモーダルなバラード「Alone, Alone and Alone」。我が国のトランペットの第一人者、日野皓正作の名バラードである。間と音の拡がりを活かした、いかにも「和ジャズ」風なモーダルなバラード。ミッチェルのトランペットに哀愁感が漂い、ブリリアントで柔和な吹き上げと共に、映えに映える。

4曲目「March On Selma」以降は、ミッドテンポの落ち着いた雰囲気の、クールでアーバンなファンキー・ジャズ〜ジャズロックな曲が続いて、来ていて、思わず体が揺れるし、無意識に足でリズムを取っていたりする。

このバンド・メンバーの、特にリズム・セクションのノリが凄く良い。チックのファンキーな躍動感溢れるピアノも良いし、とりわけ、アル・フォスターのドラミングがジャズロックにばっちりフィットしている。ジーン・テイラーのファンキー・ベースが、このバンドの演奏の「底」をガッチリと押さえている。

名盤という類の盤では無いが、聴いて楽しい、聴いて体が揺れる、クールでアーバンなファンキー・ジャズ〜ジャズロック盤である。楽しむジャズとして良い雰囲気をしていて、聴き込んで、1965年のジャズの流行スタイルがとても良く判る。好盤である。
 
 

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2022年10月22日 (土曜日)

ミッチェルの初ブルーノート盤

ブルー・ミッチェルのリーダー作は、ポップでキャッチャーな、明るく乗りの良いファンキー・ジャズ〜ジャズ・ファンクがメイン。特に、ブルーノート・レーベルに残したリーダー作に、その良いところが余すこと無く記録されている。ファンキーで円やかで流麗なトランペッターの個性をしっかり着目し、録音に残しているところは、さすが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンである。

Blue Mitchell『The Thing to Do』(写真左)。1964年7月30日の録音。ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Chick Corea (p), Gene Taylor (b), Al Foster (ds)。録音日で見ると『Step Lightly』が初ブルーノート盤に見えるが、実はこの『Step Lightly』は当時、お蔵入り。発売されたのが1980年になってから。今回ご紹介する『The Thing to Do』は1965年の発売なので、当時の初ブルーノート盤になる。

リーダーのブルー・ミッチェルのトランペットと、ジュニア・クックのテナーの2管フロント。当時のホレス・シルヴァー・クインテットのフロント管の2人である。アルバム全体の雰囲気は、ソウル・ジャズの一歩手前、成熟したノリノリなファンキー・ジャズである。

バックのリズム・セクションの人選が面白い。ピアノに若き日のチック・コリア。モンゴ・サンタマリアのバンドで頭角を現し始めた頃のチックをいち早く、ブルーノートは採用している。さすがである。ブルー・ミッチェルの下で、ファンキーなピアノを弾くチックは堂々としたもの。ファンキーなフレーズを難なくこなしている。チックはファンキーなピアノも上手い。この盤で再認識である。

ベースが、これまた当時のホレス・シルヴァー・クインテットのベーシストであった、ジーン・テイラー。ミッチェル&クックのフロント2管との呼吸はピッタリ、ファンキーなベースラインをブンブンに弾き進めている。
 

Blue-mitchellthe-thing-to-do

 
そして、一番ユニークなのが、ドラムのアル・フォスター。エレ・マイルスのドラマーとして有名だったアルだが、ファンキーなドラムを叩かせたら上手いのだ。マイルスの下で、エレ・ファンクなビートを刻んでいたアルだが、ファンクネス濃厚なドラミングはお手のものだった、ということがこの盤を聴けば良く判る。しかし、アルフレッド・ライオンって、よくアル・フォスターをブルー・ミッチェルのリーダ作に持って来たもんだ。その豪腕、恐るべしである。

いきなり、カリプソ調の明るく楽しい曲「Fungii Mama」から始まる。これが、あっけらかんとしていて明るくて、リズミカルな演奏。体が自然に動き、足でリズムを取り始める。特に、チックを始めとするリズム・セクションの躍動感が心地良い。

続くファンキーで小粋でスローな「Mona's Mood」も良い雰囲気。イントロのミッチェル&クックのフロント2管のユニゾン&ハーモニーなんて「ファンキー・ジャズ」そのもの。スローでファンクネス濃厚に漂う雰囲気の中、流麗で明快なミッチェルのトランペットが伸びの良いフレーズを吹き上げていく。

3曲目の「The Thing to Do」は、ハードボイルドなジャズロック風、4曲目の「Step Lightly」は、スローで硬派なファンキー・ジャズ。そして、ラストの「Chick's Tune」は、ファンクネス濃厚だが、切れ味の良いモード・ジャズ。ファンキー・ジャズの担い手、ホレス・シルヴァー・クインテット出身の3人を含め、メンバー全員、魅力的な、ファンキーでモーダルなフレーズを連発している。覇気溢れる、爽快溢れるモード・ジャズである。

ハードバップ全盛期に、内容の濃い、成熟したファンキー・ジャズ盤。リーダーのブルー・ミッチェルも、実に楽しそうにトランペットを吹きまくっていて、聴いていて気持ちが良い。若き日のチック・コリアがピアニストとして、参加しているのも見逃せない。とにかく、聴いていてとても楽しいアルバムである。
 
 

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2022年10月21日 (金曜日)

ミッチェルの成熟ファンキー盤

ジャズの世界では、歴史に名を残すイノベーターばかりで無く、歴史を変えたり、新しい演奏トレンドを生み出すことは無いが、その個性と演奏スタイルから、人気ジャズマンとして名を残しているジャズマンが沢山いる。

トランペッターでは、僕は真っ先に「ブルー・ミッチェル(Blue Mitchell)」の名前が浮かぶ。彼は、ジャズにおいて、イノベーターでも無ければ、キーマンでも無い。ファンキーで円やかで流麗なトランペッターという個性で、ジャズの歴史上に名を残している。

Blue Mitchell『Out of the Blue』(写真左)。1959年1月5日の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、ちなみにパーソネルは、Blue Mitchell (tp), Benny Golson (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b, tracks 2 & 5,6), Sam Jones (b, tracks 1,3 & 4), Art Blakey (ds)。今回はややこしいので、CDリイシュー時のボートラ(7曲目)はオミットしてコメントしている。
 

Blue-mitchellout-of-the-blue

 
ブルー・ミッチェルの2枚目のリーダー作になる。テナーにベニー・ゴルソンが、ドラムにアート・ブレイキーが、ピアノにウィントン・ケリーがいる。これだけでも、ファンキー・ジャズが基本の演奏になっているのかな、と想像出来る。フロントの相棒とリズム隊がファンキー・ジャズの担い手達なのだから、ミッチェルもさぞ、吹きやすかったと思われる。

ライトで流麗なファンキー・ジャズが全編に流れる。ブリリアントにファンキーに流麗に、ミッチェルのトランペットが映えに映える。フロントのゴルソンのテナーも何時になく好調に飛ばしているし、リズム隊も絶好調。ケリーも健康優良児的なファンキー・ピアノを弾きまくっていて清々しい。

ネジのアップのジャケットは「?」で、僕は最初、この盤は、プレスティッジ・レーベルの盤かと思った(笑)。リヴァーサイド・レーベルのジャケって、まあまあのものが多いのだが、このジャケは「?」。それでも、内容的には優れていて、メンバー全員が好調の「成熟したファンキー・ジャズ」がこの盤に詰まっている。
 
 

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2022年9月22日 (木曜日)

宗教的な(religious)ジャズ

Mary Lou Williams(メアリー・ルー・ウィリアムス)。米国や欧州では、他のレジェンド級のジャズメンへの楽曲提供やアレンジャーとしての協力、そして、何より、ジャズ・ピアノの代表的奏者の1人として知られる「一流ピアニスト」でありながら、我が国では「さっぱり」というジャズ・ミュージシャンの1人だろう。

僕がジャズを本格的に聴き始めた40数年前、ジャズ盤紹介本には彼女の名前は無かった。僕が彼女の名前を知ったのは、ネットの時代が本格的になった21世紀に入ってからである。

濃厚なグルーヴ感とゴスペル感、どこか敬虔な雰囲気漂うフレーズ。いわゆる「宗教的な(religious)ジャズ」の先駆けであり、ジャズ・ミサの先駆けなんだが、この辺りが我が国のジャズ評論家、ベテランジャズ者の方々に敬遠されたのかもしれない。でもなあ、コルトレーンをはじめとするスピリチュアルなジャズって、どれもが「宗教性」濃厚なんだけどなあ。コルトレーンの『至上の愛』が大絶賛で、メアリー・ルー・ウィリアムスが「さっぱり」な理由が未だに判らない。

しかし、僕は好きである。アメリカン・アフリカンのブラック・テイスト濃厚な「宗教的な(religious)ジャズ」の響きがとても良い。ソウルフルでファンキーなフレーズは、クワイヤーで唄えそうなゴスペルチックな雰囲気。しかも、ピアニストとして、確かなテクニックと端正な弾き回し。硬派なモダンジャズ・ピアノとしても優れた味わい。
 

Mary-lou-williamszoning

 
Mary Lou Williams『Zoning』(写真)。1974年1月~3月の録音。Mary Lou Williams (p, arr), Zita Carno (p), Bob Cranshaw, Milton Suggs (b), Mickey Roker (ds), Tony Waters (congas)。シンプルだが、グルーヴ感濃厚。不思議に少し捻れたソウルフルなフレーズで、スピリチュアル感を増幅させた「宗教的な(religious)ジャズ」盤である。

彼女は1910年生まれ。早熟の天才としてその名を轟かせ、スイング時代からの著名なレジェンド・ジャズメンとの交流がてんこ盛り。そんな様々なジャズマンとの交流が彼女の豊かな感性を育んでいる。そんな豊かな感性を活かした、ソウルフルでファンクネス漂う、切れ味の良いフレーズがこの盤に溢れている。

ピアノ、エレキベース、ドラム+パーカッションという、変則ピアノ・トリオなんだが、エレキの音とパーカッションの音とロッカーのちょっと捻れたドラミングが、これまたスピリチュアル感の増幅に貢献していて、「宗教的な(religious)ジャズ」テイストがコッテリと漂って来る。これが良い。

通常のモーダルなジャズとは、かなり異なる、敬虔さすら感じる音の響きが「宗教的な(religious)ジャズ」の真骨頂。ゴスペルチックな音の重ね方も良い。メアリー・ルー・ウィリアムスの個性全開の優秀盤である。
 
 

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2022年9月18日 (日曜日)

ジョン・パットンの初リーダー作

ビッグ・ジョン・パットン(Big John Patton)こと、ジョン・パットン(John Patton)。1935年、米国カンサスシティ生まれ。ハードバップ、および、ソウル・ジャズで活躍したオルガニスト。基本的に、1960年代、ブルーノートのハウス・オルガニスト的存在だった。リーダー作も多く、他のセッションにも結構な数、参加している。

ジョン・パットンのオルガンは、エモーショナルだが、癖が無く、シンプル&ストレート。1950年代のブルーノートのハウス・オルガニストは、かのジミー・スミスであったが、ジミー・スミスのオルガンは、とにかく個性的。レスリー・スピーカーを駆使して、音を増幅して、ダイナミック、かつ、大仰な表現でオフェンシブにガンガン弾くんだが、ジョン・パットンのオルガンはその「逆」と考えて良いだろう。

Big John Patton『Along Came John』(写真左)。1963年4月5日の録音。ブルーノートの4130番。ちなみにパーソネルは、John Patton (org), Fred Jackson, Harold Vick (ts), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。一昨日ご紹介したお蔵入り盤『Blue John』より前の録音。ジョン・パットンの初リーダー作である。

収録曲を見渡すと、全6曲中、スタンダード曲は「I'll Never Be Free」の1曲のみ。3曲が、ドラムのベン・ディクソンの作、残りの2曲がパットン作。ジョン・パットンのオルガンの個性が判り易くなる様に、バンド・メンバーの曲でほとんどを占めている。
 

Big-john-pattonalong-came-john

 
これが大正解で、有名スタンダード曲をオルガンでやると、どこか、イージー・リスニング風に聴こえる時がある。特に、パットンのオルガンの様な、癖が無く、シンプル&ストレートなオルガンは誤解される危険性がある。

バンド・メンバーの自作曲をメインに、気心しれたメンバーで、リラックスして楽しげに、パットンはオルガンを弾き進めている。癖が無く、シンプル&ストレートなオルガンだが、エモーショナルな表現に長けていて、決して単調にはならない。ファンクネスも適量で、オーバー・ファンクな表現に偏ることも無い。実に趣味の良い、小粋なオルガンである。

ギターにグラント・グリーン、ドラムにベン・ディクソン、気心知れた仲間の様なメンバーがパットンのオルガンにピッタリ合ったパフォーマンスを供給する。フレッド・ジャクソンとハロルド・ヴィックという、ちょっと癖のあるテナー奏者が個性的なブロウを披露していて、パットンの癖が無く、シンプル&ストレートなオルガンとの対比が面白い効果を出している。

アルバム全体の印象は「真摯で硬派な」オルガン・ジャズ。オルガン・ジャズが陥り易い、イージーリスニング・ジャズ風な演奏を極力避けているような、エンターテイメント性を排除したファンキー・ジャズといった面持ちは、ジョン・パットンは硬派で実直な、純ジャズ志向のオルガニストであることを感じさせてくれる。
 
 

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2022年9月16日 (金曜日)

ジョン・パットンのお蔵入り盤

最近、やっと、オルガン・ジャズ盤については、「聴き直し」のフェーズに入っている。そもそも、アルバムというのは期間をおいて、複数回、聴くのが、僕自身の「習わし」。短期間に集中して聴くと、その時の「ジャズ耳」の感覚だけで判断するので、ちょっと偏った印象になる。自らの「ジャズ耳」も年齢と共に成熟していくので、10年位おいて、再度、聴き込むのが、良い塩梅だと思っている。

Big John Patton『Blue John』(写真左)。1963年7月11日と8月2日の録音。ブルーノートの 4143番。ちなみにパーソネルは、John Patton (org), Tommy Turrentine (tp), George Braith (ss, stritch), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。カタログ番号まで割り振りされながら、録音当時はリリースされず、1986年になって、やっと日の目をみている。ブルーノートお得意の、なぜか「お蔵入り」盤である。

ジョン・パットンのオルガンは、ストレートな音でシンプルな弾き回し。ジミー・スミスの様に、ダイナミックに派手派手しく、どファンキーに弾くオルガンとは「正反対」の音。但し、オルガン独特の音が、嫌が応にもファンクネスを振り撒き、ストレートな音はアドリブ・フレーズの弾き回しがクッキリと浮き出る感じで、聴いていて何だか「スッとする」。
 

Big-john-pattonblue-john

 
そんなジョン・パットンのオルガンがバックに回ると、これがまた、ファンキーで伴奏上手なオルガンに早変わり。そんな伴奏上手なオルガンをバックに、ちょっと捻れて癖のあるジョージ・ブライスのサックスが、とても良い感じで吹き進めていく。そして、ファンクネスだだ漏れのシングルトーンなグリーンのギターが、演奏全体のファンクネスを増幅する。ディクソンのドラムは、そんなフロントの曲者達に、正確なリズム&ビートを供給して盛り立てる。

ジョン・パットンとオルガンとグラント・グリーンのギターが、ちょっと薄めの「こってこてなファンクネス」を供給しているのと、あまりに個性的なブライスのサックスがあるので、イージーリズニング・ジャズ風にはならないが、アルバム全体の印象は「ポップ」。このポップな軽さが、ちょっとブルーノートには合わなかったかなあ、とも思う。

演奏の内容は決して悪く無い。ブライスのサックスの好き嫌いはあると思うが、グラント・グリーンのギターが、ブライスの破天荒な音を、しっかりと「締めて」いるので、あまりブライスの個性的過ぎるサックスは耳に付かない。それでも、当時のブルーノートの総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、この盤を「お蔵入り」にした。あの世に行って、ライオンに会えたら、その理由をしっかり訊いてみたい。
 
 

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2022年8月29日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・248

「小粋なジャズ」盤を探索していたら、アーネット・コブ(Arnett Cobb)の名にぶち当たった。久しく、このテナーマンの名前を忘れていた。コブは1918年8月生まれ、米国テキサス州出身のテナーマン。1989年3月、70歳で鬼籍に入っている。ファンキーで渋い、スイング・スタイルがメインの、歌心溢れるモダンなテナーを吹くところが個性。その存在は地味ではあるが、聴けば「ファンネス溢れる、スインギーで小粋な」優れたテナーであることがよく判る。

Arnett Cobb『Smooth Sailing』(写真左)。February 27, 1959年2月27日、Hackensack, NJの「Van Gelder Studio」での録音。プレスティッジ・レーベルからのリリースで、PRLP 7184番。ちなみにパーソネルは、Arnett Cobb (ts), Buster Cooper (tb), Austin Mitchell (org), George Duvivier (b), Osie Johnson (ds)。

リーダーのコブのテナーとクーパーのトロンボーンがフロント2管、ピアノの代わりにオルガンを採用、ここではオルガンがベースも兼ねず、オルガン+ベース+ドラムがリズム・セクションのクインテット編成になる。テナーのフロント管のパートナーがトロンボーン、そして、リズム・セクションには、ピアノの代わりにオルガンが入るという、こってこてファンクネス滴るクインテット編成になっている。
 

Arnett-cobbsmooth-sailing

 
フロント管にトロンボーン、ピアノの代わりにオルガン、なので、こってこてファンキーなジャズが展開されることが想像に難くない訳だが、この盤はその期待通り、こってこてファンキーな、少しスイングが入った、オールドスタイルなハードバップが展開されている。情感溢れるスインギーでグルーヴィーなコブのテナーのフレーズが絶品である。

特にバラードやスロー&ミッドテンポなブルースのコブのテナーの吹き回しが実に「小粋」。特に突出したテクニックがある訳では無く、速吹きやフリーキーな、当時流行の吹き回しについては「まったく無縁」。悠然と朗々と、スインギーでグルーヴィーなテナーを吹いていくコブは魅力満点。ああ、これがジャズなんやな〜、なんて、しみじみ思ってしまうブルージーでジャジーなフレーズにドップリ填まってしまう。

ファンキーでスインギーでオールドスタイルなテナーにはオルガンが良く似合う。この盤、このオルガンが入っているところが「ミソ」で、独特のファンクネスとグルーヴ感を醸し出している。何故か程良く抑制されたテナーとトロンボーンに、オルガンの音色がよく合う。プレスティッジには珍しく、丁寧な仕上がりになっていて、聴き応えがある。録音もヴァンゲルダー印でグッド。隠れ名盤です。
 
 

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2022年8月22日 (月曜日)

ブルーノートのポップなジャズ

それまでのブルーノート・レーベルに無い「ポップ&イージーリスニング志向」。1960年代後半、この「ポップ&イージーリスニング志向」な盤は売れ筋ではあるので、今までのブルーノートに無い「大衆迎合」志向の盤を、敢えて,ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンは制作したのだと思う。そんなライオンの想いに対して、ピアソンはその優れたアレンジ・テクニックでバッチリ応えている。

Duke Pearson『Sweet Honey Bee』(写真左)。1966年12月7日の録音。ブルーノートの4252番。ちなみにパーソネルは、Duke Pearson (p), Joe Henderson (ts), Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (fl, as), Ron Carter (b), Mickey Roker (ds)。ヘンダーソンのテナー、ハバードのトランペット、スポルディングのフルート&アルト・サックスがフロント3管のセクステット編成。

とてもポップなファンキー・ジャズ仕立ての「イージーリスニング・ジャズ」な盤である。冒頭の「Sweet Honey Bee」の出だしを聴いていると、思わず、クリード・テイラーのCTIフュージョンかと思ってしまうほどのポップ&イージーリスニング志向。

出てくるフロント楽器が、スポルディングのフルートなので、これはCTIサウンドでは無いと思う。それにしても、見事なまでの「ポップ&イージーリスニング志向」のピアソンのアレンジであり、それにバッチリ乗ったスポルディングのフルートは「ソフト&メロウ」そのもので、既に「フュージョン・ジャズ」な雰囲気を先取りしている。
 

Sweet-honey-bee

 
そんなピアソンのアレンジに、フロント3管はこれまたバッチリ応える。バカテク&吹きまくりのハバードが抑制されたトランペットで、ポップでメロディアスなフレーズを吹き上げる。もともとテクニックが相当に高いレベルにあるハバードである。キャッチャーで耽美的なメロディーを流麗に吹き上げ、ファンキーなフレーズは、モーダルに流れる様に吹き進める。

モード・テナーの申し子の様なヘンダーソンが、これまた、ポップでメロディアスなフレーズをばりばりモーダルなテナーで吹き上げていく。しかし、これが程良く抑制され、ウォームな音色で吹き上げるので、モード・ジャズにつきものの「難解さ」が皆無。判り易く、ラウンドなトーンで、モーダルなフレーズをイージーリスニング風に聴かせてくれる。

ポップ&イージーリスニング志向な演奏の中に「Big Bertha」の様な、硬派でストレートアヘッドなファンキー・ジャズがちゃっかり挿入されていて、ポップ&イージーリスニング志向な演奏になれ始めた耳に「ガツン」と渇が入る。硬派でストレートアヘッドなファンキー・ジャズだが、それぞれの演奏は、程良く抑制され、端正なパフォーマンスになっているので、とても整ったお洒落でアーバンなファンキー・ジャズになっていて、これはこれで聴き味抜群。この辺に、往年のブルーノートの矜持を感じる。

イージー・リスニング志向のジャズ盤ではあるが、フュージョンを先取りした「ソフト&メロウ」な演奏あり、程良く抑制された、硬派でストレートアヘッドなファンキー・ジャズな演奏あり、それぞれのソロ・パフォーマンスも、易きに流れず、しっかりと個性溢れる、バップなフレーズ、モーダルなフレーズを演奏しまくっているのだから、意外と「痛快」なアルバムである。
 
 

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