2020年3月 7日 (土曜日)

【追悼】マッコイ・タイナー逝去

ジャズ・ピアニストのレジェンドの一人、マッコイ・タイナーが逝去した。2020年3月6日、享年81歳。1938年、米国東部のフィラデルフィア生まれ。13歳からピアノを習い始め、20歳代初め、ゴルソンとファーマー率いるジャズテットでキャリアを開始。21歳の時、コルトレーンのバンドメンバーとして加わり、コルトレーン+タイナー+ギャリソン+エルヴィンで構成されたカルテットは「黄金のカルテット」と呼ばれ、1960年代のジャズシーンを牽引した。

1965年12月のコルトレーンの下を辞して独立。1970年代には、1967年に逝去したコルトレーンのスタイルを継承し、モード・ジャズ+シーツ・オブ・サウンドとマッコイ・タイナー独特の奏法「ハンマー奏法」で一斉を風靡した。以降、その延長線上で安定した活動を継続、逝去するまで、ジャズ・ピアニストのレジェンド的存在として在り続けた。

McCoy Tyner『Echoes of a Friend』(写真左)。1972年11月11日、東京はVictor Studioでの録音。パーソネルは、McCoy Tyner (solo-piano)。そう、マッコイ・タイナー単独のソロピアノ盤になる。マッコイ・タイナーのピアノを体験し理解するには絶好のソロピアノ盤で、この盤には、マッコイ・タイナーのピアノのスタイル、テクニック、展開の全てが詰まっている。
 
 
Echoes-of-a-friend  
 
 
タイトルの「Friend」は、タイナーが多大な影響を受け敬愛する、元リーダーの「ジョン・コルトレーン」を指す。「友人のこだま」、長年コルトレーンと共に演奏をしてきたタイナーのコルトレーン へのトリビュート・アルバムである。選曲もコルトレーンゆかりの曲がメイン。後半の2曲はタイナーのオリジナル曲だが、曲想・曲調はコルトレーン・ミュージックを踏襲している。

タイナーの個性である「ハンマー奏法」で雄壮にダイナミックに展開し、コルトレーンから受け継いだ「精神性」、いわゆるスピリチュアルな表現を「叩き出す」が如く繰り広げる。但し、この「コルトレーンに捧げられた」盤の中で、ラストの「Folks」だけは意図が異なる。この曲はタイナーの師匠でトランペッターのカルヴィン・マッセイに捧げられたもの。ややこしい。

このソロピアノ盤は、コルトレーンのスタイルから派生したタイナーのスタイルの完成を再確認することが出来、この確立したタイナーのスタイルを以て、コルトレーンへのトリビュートを表現したもの。大いに影響を受けた元リーダーへの敬意を表現するのにこれ以上のものは無い。1973年のジャズディスク大賞金賞受賞アルバム。しかし、このアルバム、早くこのブログでご紹介したと思っていたら、なんと、マッコイ・タイナーの追悼になってしまった。無念である。合掌。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.02
  まだまだロックキッズ ・・・・ クールで大人な『トリロジー』

【更新しました】2020.03.01
  青春のかけら達 ・・・・ 荒井由実『MISSLIM (ミスリム)』 

 

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東日本大震災から8年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年2月10日 (月曜日)

ECM流フュージョン・ジャズ

先週の後半から、いきなり冷え込んだ。というか、凄く寒い。今年の冬は暖冬傾向だっただけに、この寒さは体に悪い。と思っていたら、いきなり体調を崩した。7年前に大病をして大手術の末、生還した訳だが、その時の後遺症が久々に出た。今日になってやっと回復した。それでもまだ寒い。これだけ寒い時のジャズは「ECMレコード」盤と決めている。

西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。凛とした無調のフレーズ。いわゆる「ニュー・ジャズ」である。ファンクネスは皆無、即興演奏という面が、ECMレコードのアルバムを「ジャズ」というジャンルに留めている。ECMの音のモットーは「the most beautiful sound next to silence」=「沈黙に次いで最も美しい音」。

Collin Walcott『Grazing Dreams』(写真左)。1977年2月、ノルウェーはオスロのTalent Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Collin Walcott (sitar, tabla), Don Cherry (tp, wood-fl, doussn' gouni), John Abercrombie (g, el-mandolin), Palle Danielsson (b), Dom Um Romão (perc, tambourine, berimbau)。
 
 
Grazing-dreams-1  
 
 
リーダーのコリン・ウォルコットは「シタール、タブラ」奏者。シタールはインドの伝統弦楽器、タブラはインドの伝統打楽器。これがリーダーの楽器である。それでジャズをやるのだ。いや〜ビックリである。ニュー・ジャズの旗手、ECMレコードの面目躍如。そして、周りを固めるのが、フリージャズ・トランペッターのドン・チェリー、捻れエレギのジョンアバ、北欧のベースの雄ダニエルソン、そして、ドラムは、ブラジルのドラマー、ドン・ウン・ホマォン。

インドど真ん中のウォルコット、東洋志向に転身しつつあったドン・チェリー、バリバリの西欧志向のアバークロンビーが絡み合う、無国籍の幻想的な浮遊感溢れるフレーズ。ホマォンのドラムとダニエルソンのベースがしっかりビートを刻む中、ウォルコットのシタールとタブラが独特の、唯一無二な音空間を創り出している。東洋志向に傾くフレーズをジョンアバの西洋志向のエレギが中和する。

いわゆる「異種格闘技」的ジャズ・セッション。ECM流の「フュージョン・ジャズ」。欧州ジャズのフュージョン(融合)の音世界。摩訶不思議な即興演奏。ECMレコードならでは、というか、ECMレコードでしか為し得ない「ニュー・ジャズ」。実験色が強い内容であるが、しっかりジャズしているから素晴らしい。
 
 
 
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2020年2月 2日 (日曜日)

水墨画を見るような素敵なデュオ

以前に比べて、最近、ジャズの演奏フォーマットで「デュオ」が多くなったように感じる。デュオは楽器の組合せをよくよく考えなければならないこと、そして、デュオの演奏については、双方の演奏のテクニックが高くなければならないこと、そして、一番大切なのは、デュオのパートナーである演奏相手との相性である。

この3つの要素を充足するには、ジャズの充実度合いが鍵になる。1980年代に純ジャズ復古がなり、フュージョン〜スムース・ジャズの成熟度合いが高まり、21世紀に入って、ネオ・ハードバップが定着し、クールで耽美的な、新しいスピリチュアル・ジャズが現れ出でた。21世紀に入ってからのジャズの充実度合いは順調に高まっている。

Bill Frisell & Thomas Morgan『Epistrophy』(写真左)。ECM 2626番。2016年3月、NYヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音。改めてパーソネルは、 Bill Frisell (g), Thomas Morgan (b)。ビル・フリゼールは1951年生まれ。今年69歳の「変則ねじれギターのレジェンド」。トーマス・モーガンは1981年生まれ。今年39歳の中堅ペーシスト。菊地雅章との共演で僕はこのベーシストの名前を知った。
 
 
Epistrophy  
 
 
世代が異なりながらも(実際30歳の年齢差がある)、双方、盟友と任じている、ビル・フリゼールとトーマス・モーガン。ジャズの「音の志向」が合っていないとデュオ演奏は成立しない。この30歳という年齢差で「音の志向」が合うのか、という不安を感じるこの二人であるが、フリゼールが以前より、尖った自由度の高い、新しい響きのモード・ジャズを志向してきたので問題無い。

淡々としているが、音に深みと味わいがある。水墨画を見るような演奏。調性のフレーズと無調のフレーズが、有機的に結合し、硬軟自在、緩急自在のデュオ演奏が繰り広げられる。演奏のイメージが多岐に広がるので飽きがくることは無い。モーガンのスピリチュアルなベースに鼓舞されて、フリゼール独特の耽美的なモーダルな自由度の高いフレーズが美しく乱舞する。

2人の愛する米国ネイティヴな歌集「All in Fun」「Red River Valley」「ラストダンスは私に」、モンクの「Epistrophy」「Pannonica」など、癖のある選曲は実にユニーク。そして、ジョン・バリーの「ジェームズ・ボンドは二度死ぬ(ou Only Live Twice)」には思わず口元が緩む。カラフルなジャケットが、アルバムの音楽を的確にイメージしている。好盤です。
 
 
 
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2020年1月31日 (金曜日)

ディー・ディーのソウルフルな好盤

僕はジャズ・ボーカルに疎い。ジャズを聴き始めた時、ジャズはインストルメンタルに限ると思った。なぜなら、男性ボーカルにせよ、女性ボーカルにせよ、70年代ロック&ポップスにも、優れたボーカリストが多々存在していた。何も、ジャズでボーカルを聴かなくても、70年代ロック&ポップスの世界のボーカルで、十分に満足出来る。よって、20世紀中は、ジャズ・ボーカルはほとんど聴かなかった。

ジャズ・ボーカルを聴き始めたのは、21世紀に入ってからである。それも、正統なオーソドックスなジャズ・ボーカルは基本的に苦手で、フュージョン・ジャズ系のボーカル、特にジャズとR&Bとか、ジャズとボサノバとかの融合(フュージョン)の範疇でのボーカル盤がお気に入りになった。硬派なジャズ・ボーカル者の方々からすると、完全に「異端」な聴き方である。申し訳ない。

『Dee Dee Bridgewater (1976 album)』(写真左)。1976年の作品。米国はメンフィス出身のコンテンポラリーな女性ジャズ・ボーカリストである、Dee Dee Bridgewater(ディー・ディー・ブリッジウォーター、以降「ディーディー」)の2nd.盤。バックバンドには、フュージョン・ジャズ畑の名うての猛者どもが、ずらりと控えている。そう、この女性ボーカル盤、僕の大好きな「フュージョン・ジャズ系のボーカル」である。
 
 
Dee-dee-bridgewater-1976
 
 
冒頭から躍動感溢れるディスコ系のリズムに乗った「My Prayer」で一発、かまされます。3曲目の「It Ain't Easy」アラン・トゥーサンの作品。Muscle Shoals Sound Studios(アラバマ州)での録音で、米国南部の雰囲気がプンプン漂います。7曲目の「Every Man Wants Another Man's Woman」も南部録音で、アーシーな雰囲気濃厚。この南部録音の曲でのディーディーの歌唱は実にソウルフル。

一方、L.A.録音の曲も聴きどころ満載で、フュージョン・ジャズ畑の名うての猛者ども、セッション・ギタリストでも超一流のワー・ワー・ワトソン、レイ・パーカーJr、デビッド・T・ウォーカーが大活躍。西海岸フュージョン・ジャズの洒脱で小粋で適度にラフな雰囲気が堪らない。当時流行のAOR風のソウルフルなディーディーの歌唱が格好良い。

実は、この盤、ジャズを聴き始めた頃、1980年に聴いている。その頃から、この盤の持つ「フュージョン・ジャズ系のボーカル」の雰囲気がお気に入り。ジャンルレスな、ジャジーでソウルフルな正統派ボーカル。彼女のボーカルは、説得力があって心に響く様な、今で言う「スピリチュアル・ジャズ」な要素が魅力。この盤でのディーディーは、「フュージョン・ジャズ系のボーカル」の中でも、ジャズとR&Bの融合の範疇のボーカルで、僕にとっては殊の外、お気に入りである。
 
 
 
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2020年1月27日 (月曜日)

新しいヴァイブ奏者の出現である

ジャズのヴァイブ(ヴィブラフォン)は絶滅種だと思っていた。ミルト・ジャクソンから始まり、ゲイリー・バートンとボビー・ハッチャーソンが継ぎ、ロイ・エアーズ、マイク・マイニエリが出現し、もうこれで終わりだ、と思っていた。我が国では、平岡精二、増田一郎が有名だが、新しい有望なヴァイブ奏者は現れ出でてはいない。

まあ、マイナーで扱いづらい楽器ではあるからね〜、と思っていたら、なんと、新しい有望なヴァイブ奏者が現れ出でたのである。ジョエル・ロス(Joel Ross)。名門ブルーノート・レコードからデビューした若き天才ヴィブラフォン奏者。シカゴ生まれ、現在はNYブルックリンをベースに活動。トレードマークのドレッドヘアー、スタイリッシュなファッション。現代の若きジャズマン。

Joel Ross『Kingmaker』(写真左)。ジョエル・ロスのデビュー・アルバム。2019年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joel Ross (vib), Immanuel Wilkins (as), Benjamin Tiberio (b), Jeremy Dutton (ds), Jeremy Corren (p)。ヴィブラフォンとアルト・サックス、対照的な音色のフロント2楽器のクインテット構成。ジョエル・ロスをはじめ、このクインテットのメンバーについては全く知らない。
 
 
Kingmaker-joel-ross  
 
 
全員、初めて出会ったメンバーである。まず、ジョエル・ロスのヴァイヴが個性的。今までの歴代のヴァイブ奏者の良いところを全て融合した、新しいヴァイブの響きとフレーズ。奇をてらったり、アブストラクトに走ったりすることは全く無い。メインストリームなジャズを引き継いだ、明確にジャジーな響き。切れ味良く明快で、ポジティブな響きを伴った、硬質で柔軟でしなやかなヴァイブの響き。

展開するフレーズはモーダルなもの。新主流派のモーダルな雰囲気に、現代のクールなスピリチュアル・ジャズの雰囲気を融合した、新しい雰囲気のネオ・ハードバップな演奏の数々。音の太くてダイナミックなアルト・サックスが絡むことで、ジョエル・ロスのヴァイブの特質が、更に明確に浮かび上がる。Gretchen Parlat (vo) の参加も、スピリチュアルな側面を増幅する役割を果たしていて効果的。

正統なメインストリーム・ジャズ。スピーカーの前に座って、じっくりと耳を傾けるべき、新しいヴァイブの演奏。選曲については、12曲中11曲はロスのオリジナルで構成されている。テクニックは確か、歌心も満載。ヴァイブの良いところを全て引きだした様な演奏が素晴らしい。今から次作が楽しみになる、充実した内容のデビュー盤。繰り返し、じっくり聴き込みたいアルバムです。
 
 
 
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2020年1月23日 (木曜日)

やっと日本人男子が出てきた。

気がつけば、ジャズライフ・ディスク・グランプリ「2019年度ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」が発表されている。ジャズライフ執筆陣による年間ベスト・アルバムの各々のランキングも併せて発表されており、ジャズ盤蒐集〜鑑賞の「ここ一年間の振り返り」に格好の記事である。

紹介されているアルバムそれぞれを見れば、意外と我がブログに何らかの形でご紹介しているものが結構あって、まずまず「良い耳」をしていたということで、我が耳にちょっとホッとした。そして、今回のグランプリでは、日本人男子の台頭があって、やっと日本人男子の若手ジャズマンが出てきたか、と嬉しく思う。ここ10年〜15年は、日本人女子の独壇場だったからなあ。

『THINKKAISM』(写真左)。2019年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、松丸契 (as, ss), 金澤英明 (b), 石井彰 (p), 石若駿 (ds), 高橋直希 (ds)。タイトルの「THINKKAISM」はグループ名でもある。アルト・サックス奏者の松丸契(まつまる・けい)がリーダー。パーソネルを見渡すとドラマーが二人居るが、ここでは「ツイン・ドラムス」である。思わず「楽しみ」である。
 
 
Thinkkaism-1
 
 
このリーダーのアルト・サックス奏者、相当に「尖っている」。フリーなブロウ・スタイルではあるが、ルールの中で最大の自由度を醸し出すブロウで、演奏の雰囲気は「スピリチュアル・ジャズ」。日本人ジャズらしく、ファンクネスが乾いて希薄なので、メカニカルでクールなスピリチュアル・ジャズが成立している。独特の「スピリチュアル・ジャズ」な雰囲気で、深化した響き満載である。

トリオ・ユニット「BOYS」として自由度の高いインプロビゼーションが身上の金澤英明・石井彰・石若駿のリズム・セクションをメインに、現役高校生・高橋直希がドラマーとして参加し、ツイン・ドラムスを実現。ピアノは自由度高く乱舞し、アコベはブンブン唸り、ツイン・ドラムスは迫力と切れ味満点。リズム・セクション単体でも独特な「自由感」が良い感じである。

そこに独特な様々な切り口から、スピリチュアルなアルト・サックスが絡んで乱入して、最低限の秩序の中で、自由にフリーに、タメながら、スピリチュアルに吹きまくる。1995年千葉県生まれ、パプアニューギニア育ち、バークリー首席卒業という異色の経歴をもつサックス奏者・松丸契。既に次のリーダー盤が楽しみである。
 
 
 
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2019年12月27日 (金曜日)

ユニークなピアノレス・トリオ

シリアスに聴き込む様なメインストリーム・ジャズについては、毎年、コンスタントにリリースされし続けていて、喜ばしい限りである。今年も様々なフォーマットで、様々なメンバー構成で「聴き込むメインストリーム・ジャズ」な盤がリリースされた。そして、年の暮れである。この年の暮れに良い盤に巡り会った。

Zakir Hussain & Chris Potter Dave Holland『Good Hope』(写真左)。2018年9月21ー22日、NYのSear Sound, NYCでの録音。ちなみにパーソネルは、Dave Holland (b), Zakir Hussain(tabla), Chris Potter (sax)。当初は地味なジャケットなので触手が伸びなかったのだが、レジェンド級のベーシスト、デイヴ・ホランドのリーダー作と言うことで、気を取り直してゲットした。

クリス・ポッターがサックス1本でフロントに立つトリオ構成。見渡したらピアノが無い。そして、ドラムも無い。ドラムの代わりに「タブラ」が入っている。「タブラ」とは、北インドの太鼓の一種。指を駆使し複雑で多彩な表現が可能な打楽器で、叩くの当然、ピューンと引っ張った様な音も出せるのがユニーク。この「タブラ」をドラムの代わりに採用している。
 
  
Good-hope-1  
  
 
この「タブラ」の採用が大正解なのだ。ベーシストがリーダーの盤にはドラムはちょっと邪魔。ベーシストのソロ・パートのバックでドンスカやられたら、大人しくシンバルでリズムを刻まれても、ベース・ソロの微妙なニュアンスがかき消されてしまう。コンガやボンゴでも、音がまずまず大きい打楽器なので同様の傾向になる。しかし「タブラ」は違う。音の芯はあるが音量は大きくない、というか調整が可能。

この「タブラ」のお陰で、ホランドのベース・ソロがしっかりと聴くことが出来る。しかも、タブラのエキゾティックな音が、このメインストリームなジャズにアフリカン・ネイティヴな独特の雰囲気を与えていて、今までに聴いた事の無いユニークなアドリブ展開に仕上がっている。ポッターのサックスも申し分無い。ポッターのバックでの「タブラ」は躍動感溢れ、フロントを鼓舞する勇猛な打楽器に変身している。

「タブラ」って、太鼓の張力を変えることで音程を上下させることができるので、そのソロは旋律楽器のソロに近い表現も出来るので、トリオ演奏全体の音の変化のバリエーションが豊か。基本的には静的でクールで温和なトリオ演奏。そこに「タブラ」がクールでユニークなビートを供給。ここに今までに無い、ユニークなピアノレス・トリオの演奏がある。好盤です。
 
 
 
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2019年12月13日 (金曜日)

アジマスは英国のジャズ・トリオ

久々にECMレコードの聴き直しシリーズ。やっと1977年辺りまで来ている。この頃が、ECMレコードの最初の「充実期」で、ニュー・ジャズをメインに、キラ星の如く、好盤、佳作が目白押し。ECMレコードの音が、欧州ジャズのイメージをバッチリと固めた頃である。でも、我が国ではECMレコードのアルバムは、有名盤以外は入手し難かったなあ。

『Azimuth』(写真左)。1977年3月の録音。ECM 1099番。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p,syn), Norma Winstone (vo), Kenny Wheeler (tp, flh)。メンバー3人ともイングランドの出身。珍しい「純英国」なメンバー構成。収録された全ての曲は「John Taylor & Norma Winstone」による。

さて改めて、アジマス(Azimuth)は、英国のジャズ・トリオ。トランペット奏者のケニー・ホイーラー、ボーカリストのノーマ・ウィンストン、ウィンストンの夫でピアニストのジョン・テイラーというトリオ構成。僕はこの「アジマス」については、存在は知っていたが、なんだかパチモンみたいな響きのバンド名なので、どうにも手を出さずにいた。
 
 
Azimuth-azimuth
 
 
しかし、アルバムと言うもの、まずは聴いてみるもので、このアジマスの奏でる音は、明らかにECMレコードがプッシュする「ニュー・ジャズ」である。クールなホイーラーのトランペットとテイラーのピアノ、そして、そこに流れるウィンストンの「女性スキャット」は、現代の「クールなスピリチュアル・ジャズ」に直結するもの。静的なエモーショナルは「ニュー・ジャズ」に相応しい。

そして、トランペットのケニー・ホイーラーが実に良い。クールでエモーショナルな、加えて耽美的で伸びの良いトランペットは実に聴き応えがある。このアジマスでのホイーラーのトランペットって、彼のベスト・プレイの1つに数えられても良い物だと思う。テクニックも確か、フレーズは流麗。明らかにこのトランペットは欧州ジャズのトランペットである。

実にECMレコードらしい「ニュー・ジャズ」なアルバムである。基本はモードだと思うんだが、飽きが来たり、ダレたところが無く、適度なテンションをずっと維持しつつ、音の広がりが芳しいニュー・ジャズな演奏に思わず聴き惚れる。こんなに優れたアルバムがなかなか、我が国では入手するのが難しかった。今の時代に感謝、である。
 
 
 
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2019年12月12日 (木曜日)

静的でエモーショナルなロイド

21世紀に入って、チャールズ・ロイドを再発見した。が、リリースはECMレーベル。どうも、チャールズ・ロイドとECMレーベルとが結びつかなくて、ECMレーベルにロイドの名前を発見した時は、僕は同姓同名の別人かと思った。しかし、ファースト・ネームの「Charles」は同名はありそうだが、「Lloyd」はどう考えても同姓は無いよな〜、ということで、やはり、ロイドの再発見である。

そして、やっとつい最近、再発見後のロイドの聴き直しを始めた。どうにも印象が曖昧になって、ECMレーベルのロイドの音世界がイメージ出来なくなっていた。メジャー・デビュー当時、1960年代後半のロイドは「コルトレーンのええとこ取り」。そのイメージが強くて、ECMレーベルでの「耽美的で静的でスピリチュアルな」ブロウがどうにも据わりが悪い。

Charles Lloyd『Notes from Big Sur』(写真左)。1991年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Ralph Peterson (ds)。ピアノのステンソンとベースのヨルミンはスウェーデン出身で、ドラムのピーターソンは米国出身。ロイドは米国出身なので、スウェーデンと米国の混成カルテットということになる。
 
 
Notes-from-big-sur-1
 
 
この盤に詰まっている音は「静的でエモーショナルな」音世界。全編、ロイドの淡々とクールで耽美的な、流麗でスピリチュアルなブロウが印象的。決して、ホットにエモーショナルになることは無い。当然、変にフリーに傾くことは無い。演奏のベースはモード。モード奏法の良さを最大限に活かして、悠然とした、耽美的で伸びの良いフレーズが心地良い。

バックのリズム・セクションも好調。ピアノのステンソンとベースのヨルミンがスウェーデン出身なので、出てくる音は明らかに北欧ジャズ。しかし、ドラムのピーターソンのドラムの音は米国東海岸ジャズ。当時の若きピーターソンのドラミングが北欧ジャズへの傾倒を緩和させていて、意外と国籍不明なリズム&ビートに落ち着いている。これがまた面白い。

水墨画の様なテナーの音が、時には幽玄に変化し、時には霧のように漂っていく。1960年代後半のロイドの「コルトレーンのええとこ取り」とは全く異なる、唯一無二なロイドの個性。これがロイドのテナーの本質なのか、と思わず感心する。こんなロイドの本質的な個性を引き出したECMレーベルは凄い。マンフレート・アイヒャー恐るべし、である。
 
 
 
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2019年12月 3日 (火曜日)

ジャス喫茶で流したい・156

こういうジャズ盤に出会うと思わず頬が緩む。というか、緩みっぱなしになる。テナー・サックス+オルガン+ドラムスの「オルガン・トリオ」。ジャズにオルガンは良く似合う。古くは1950年代のハードバップの時代から、オルガン・ジャズは人気である。そんなオルガン・ジャズが、現代の、21世紀の今でも「ある」のだ。嬉しいではないか。

James Carter Organ Trio『Live From Newport Jazz』(写真左)。2018年 Newport Jazz festivalでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、James Carter (ts), Alwx White (ds), Gerard Gibbs (org)。実は、僕はリーダーの「James Carter(ジェームス・カーター)」を良く知らない。

ジェームス・カーターとは誰か。ジェームス・カーターは、1969年1月3日生まれ。今年でちょうど50歳。ジャズの世界では中堅からベテランに差し掛かる年齢。出身が「ジャズメンの古都」デトロイトというのが良い。若かりし頃は、ジョシュア・レッドマンの好敵手として注目を集めた強烈な個性をもつテナーマンである。
 
 
Live-from-newport-jazz  
 
 
さて、このライブ盤は、ジャンゴ・ラインハルトによって作曲された、または彼に関連した6つの楽曲を収録。そういう意味で、演奏自体が浮ついていなくて、実に渋く実に粋である。カーターのテーマ部は堅実で正統派、アドリブ部は野性味溢れるアブストラクトでフリーな展開。これが実に心地良い。いずれの楽曲もスピリチュアルでエモーショナルで、「ハートに染み入る」演奏である。

オルガンが効いている。オルガンの音は嫌が応にも演奏全体をジャジーな雰囲気で染め尽くす。そこにソウルフルなドラミングがフロントのテナーを鼓舞し煽る。カーターのテナーは自由奔放に激情豊かに、思いっ切りテナーを吹き上げる。そして、それが耳に付かない。流麗でキャッチャーで「フリーなアドリブ展開」。そして、オルガンがジャズのグルーヴの大本をしっかり押さえる。

カーターいわく「オルガン・サウンドはアフリカ系アメリカ人のルーツの一端を担っている。これらはスピリチュアル・ジャズからソウル、ネオ・ソウルへと繋がり、ジャズの魂を表現する不可欠な要素になっている」。なるほど、そんな理屈をこのライブ盤ではしっかりと音で、立派に表現している。このライブ盤、掘り出し物です。
 
 
 
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