2020年1月27日 (月曜日)

新しいヴァイブ奏者の出現である

ジャズのヴァイブ(ヴィブラフォン)は絶滅種だと思っていた。ミルト・ジャクソンから始まり、ゲイリー・バートンとボビー・ハッチャーソンが継ぎ、ロイ・エアーズ、マイク・マイニエリが出現し、もうこれで終わりだ、と思っていた。我が国では、平岡精二、増田一郎が有名だが、新しい有望なヴァイブ奏者は現れ出でてはいない。

まあ、マイナーで扱いづらい楽器ではあるからね〜、と思っていたら、なんと、新しい有望なヴァイブ奏者が現れ出でたのである。ジョエル・ロス(Joel Ross)。名門ブルーノート・レコードからデビューした若き天才ヴィブラフォン奏者。シカゴ生まれ、現在はNYブルックリンをベースに活動。トレードマークのドレッドヘアー、スタイリッシュなファッション。現代の若きジャズマン。

Joel Ross『Kingmaker』(写真左)。ジョエル・ロスのデビュー・アルバム。2019年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joel Ross (vib), Immanuel Wilkins (as), Benjamin Tiberio (b), Jeremy Dutton (ds), Jeremy Corren (p)。ヴィブラフォンとアルト・サックス、対照的な音色のフロント2楽器のクインテット構成。ジョエル・ロスをはじめ、このクインテットのメンバーについては全く知らない。
 
 
Kingmaker-joel-ross  
 
 
全員、初めて出会ったメンバーである。まず、ジョエル・ロスのヴァイヴが個性的。今までの歴代のヴァイブ奏者の良いところを全て融合した、新しいヴァイブの響きとフレーズ。奇をてらったり、アブストラクトに走ったりすることは全く無い。メインストリームなジャズを引き継いだ、明確にジャジーな響き。切れ味良く明快で、ポジティブな響きを伴った、硬質で柔軟でしなやかなヴァイブの響き。

展開するフレーズはモーダルなもの。新主流派のモーダルな雰囲気に、現代のクールなスピリチュアル・ジャズの雰囲気を融合した、新しい雰囲気のネオ・ハードバップな演奏の数々。音の太くてダイナミックなアルト・サックスが絡むことで、ジョエル・ロスのヴァイブの特質が、更に明確に浮かび上がる。Gretchen Parlat (vo) の参加も、スピリチュアルな側面を増幅する役割を果たしていて効果的。

正統なメインストリーム・ジャズ。スピーカーの前に座って、じっくりと耳を傾けるべき、新しいヴァイブの演奏。選曲については、12曲中11曲はロスのオリジナルで構成されている。テクニックは確か、歌心も満載。ヴァイブの良いところを全て引きだした様な演奏が素晴らしい。今から次作が楽しみになる、充実した内容のデビュー盤。繰り返し、じっくり聴き込みたいアルバムです。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年1月23日 (木曜日)

やっと日本人男子が出てきた。

気がつけば、ジャズライフ・ディスク・グランプリ「2019年度ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」が発表されている。ジャズライフ執筆陣による年間ベスト・アルバムの各々のランキングも併せて発表されており、ジャズ盤蒐集〜鑑賞の「ここ一年間の振り返り」に格好の記事である。

紹介されているアルバムそれぞれを見れば、意外と我がブログに何らかの形でご紹介しているものが結構あって、まずまず「良い耳」をしていたということで、我が耳にちょっとホッとした。そして、今回のグランプリでは、日本人男子の台頭があって、やっと日本人男子の若手ジャズマンが出てきたか、と嬉しく思う。ここ10年〜15年は、日本人女子の独壇場だったからなあ。

『THINKKAISM』(写真左)。2019年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、松丸契 (as, ss), 金澤英明 (b), 石井彰 (p), 石若駿 (ds), 高橋直希 (ds)。タイトルの「THINKKAISM」はグループ名でもある。アルト・サックス奏者の松丸契(まつまる・けい)がリーダー。パーソネルを見渡すとドラマーが二人居るが、ここでは「ツイン・ドラムス」である。思わず「楽しみ」である。
 
 
Thinkkaism-1
 
 
このリーダーのアルト・サックス奏者、相当に「尖っている」。フリーなブロウ・スタイルではあるが、ルールの中で最大の自由度を醸し出すブロウで、演奏の雰囲気は「スピリチュアル・ジャズ」。日本人ジャズらしく、ファンクネスが乾いて希薄なので、メカニカルでクールなスピリチュアル・ジャズが成立している。独特の「スピリチュアル・ジャズ」な雰囲気で、深化した響き満載である。

トリオ・ユニット「BOYS」として自由度の高いインプロビゼーションが身上の金澤英明・石井彰・石若駿のリズム・セクションをメインに、現役高校生・高橋直希がドラマーとして参加し、ツイン・ドラムスを実現。ピアノは自由度高く乱舞し、アコベはブンブン唸り、ツイン・ドラムスは迫力と切れ味満点。リズム・セクション単体でも独特な「自由感」が良い感じである。

そこに独特な様々な切り口から、スピリチュアルなアルト・サックスが絡んで乱入して、最低限の秩序の中で、自由にフリーに、タメながら、スピリチュアルに吹きまくる。1995年千葉県生まれ、パプアニューギニア育ち、バークリー首席卒業という異色の経歴をもつサックス奏者・松丸契。既に次のリーダー盤が楽しみである。
 
 
 
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2019年12月27日 (金曜日)

ユニークなピアノレス・トリオ

シリアスに聴き込む様なメインストリーム・ジャズについては、毎年、コンスタントにリリースされし続けていて、喜ばしい限りである。今年も様々なフォーマットで、様々なメンバー構成で「聴き込むメインストリーム・ジャズ」な盤がリリースされた。そして、年の暮れである。この年の暮れに良い盤に巡り会った。

Zakir Hussain & Chris Potter Dave Holland『Good Hope』(写真左)。2018年9月21ー22日、NYのSear Sound, NYCでの録音。ちなみにパーソネルは、Dave Holland (b), Zakir Hussain(tabla), Chris Potter (sax)。当初は地味なジャケットなので触手が伸びなかったのだが、レジェンド級のベーシスト、デイヴ・ホランドのリーダー作と言うことで、気を取り直してゲットした。

クリス・ポッターがサックス1本でフロントに立つトリオ構成。見渡したらピアノが無い。そして、ドラムも無い。ドラムの代わりに「タブラ」が入っている。「タブラ」とは、北インドの太鼓の一種。指を駆使し複雑で多彩な表現が可能な打楽器で、叩くの当然、ピューンと引っ張った様な音も出せるのがユニーク。この「タブラ」をドラムの代わりに採用している。
 
  
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この「タブラ」の採用が大正解なのだ。ベーシストがリーダーの盤にはドラムはちょっと邪魔。ベーシストのソロ・パートのバックでドンスカやられたら、大人しくシンバルでリズムを刻まれても、ベース・ソロの微妙なニュアンスがかき消されてしまう。コンガやボンゴでも、音がまずまず大きい打楽器なので同様の傾向になる。しかし「タブラ」は違う。音の芯はあるが音量は大きくない、というか調整が可能。

この「タブラ」のお陰で、ホランドのベース・ソロがしっかりと聴くことが出来る。しかも、タブラのエキゾティックな音が、このメインストリームなジャズにアフリカン・ネイティヴな独特の雰囲気を与えていて、今までに聴いた事の無いユニークなアドリブ展開に仕上がっている。ポッターのサックスも申し分無い。ポッターのバックでの「タブラ」は躍動感溢れ、フロントを鼓舞する勇猛な打楽器に変身している。

「タブラ」って、太鼓の張力を変えることで音程を上下させることができるので、そのソロは旋律楽器のソロに近い表現も出来るので、トリオ演奏全体の音の変化のバリエーションが豊か。基本的には静的でクールで温和なトリオ演奏。そこに「タブラ」がクールでユニークなビートを供給。ここに今までに無い、ユニークなピアノレス・トリオの演奏がある。好盤です。
 
 
 
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2019年12月13日 (金曜日)

アジマスは英国のジャズ・トリオ

久々にECMレコードの聴き直しシリーズ。やっと1977年辺りまで来ている。この頃が、ECMレコードの最初の「充実期」で、ニュー・ジャズをメインに、キラ星の如く、好盤、佳作が目白押し。ECMレコードの音が、欧州ジャズのイメージをバッチリと固めた頃である。でも、我が国ではECMレコードのアルバムは、有名盤以外は入手し難かったなあ。

『Azimuth』(写真左)。1977年3月の録音。ECM 1099番。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p,syn), Norma Winstone (vo), Kenny Wheeler (tp, flh)。メンバー3人ともイングランドの出身。珍しい「純英国」なメンバー構成。収録された全ての曲は「John Taylor & Norma Winstone」による。

さて改めて、アジマス(Azimuth)は、英国のジャズ・トリオ。トランペット奏者のケニー・ホイーラー、ボーカリストのノーマ・ウィンストン、ウィンストンの夫でピアニストのジョン・テイラーというトリオ構成。僕はこの「アジマス」については、存在は知っていたが、なんだかパチモンみたいな響きのバンド名なので、どうにも手を出さずにいた。
 
 
Azimuth-azimuth
 
 
しかし、アルバムと言うもの、まずは聴いてみるもので、このアジマスの奏でる音は、明らかにECMレコードがプッシュする「ニュー・ジャズ」である。クールなホイーラーのトランペットとテイラーのピアノ、そして、そこに流れるウィンストンの「女性スキャット」は、現代の「クールなスピリチュアル・ジャズ」に直結するもの。静的なエモーショナルは「ニュー・ジャズ」に相応しい。

そして、トランペットのケニー・ホイーラーが実に良い。クールでエモーショナルな、加えて耽美的で伸びの良いトランペットは実に聴き応えがある。このアジマスでのホイーラーのトランペットって、彼のベスト・プレイの1つに数えられても良い物だと思う。テクニックも確か、フレーズは流麗。明らかにこのトランペットは欧州ジャズのトランペットである。

実にECMレコードらしい「ニュー・ジャズ」なアルバムである。基本はモードだと思うんだが、飽きが来たり、ダレたところが無く、適度なテンションをずっと維持しつつ、音の広がりが芳しいニュー・ジャズな演奏に思わず聴き惚れる。こんなに優れたアルバムがなかなか、我が国では入手するのが難しかった。今の時代に感謝、である。
 
 
 
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2019年12月12日 (木曜日)

静的でエモーショナルなロイド

21世紀に入って、チャールズ・ロイドを再発見した。が、リリースはECMレーベル。どうも、チャールズ・ロイドとECMレーベルとが結びつかなくて、ECMレーベルにロイドの名前を発見した時は、僕は同姓同名の別人かと思った。しかし、ファースト・ネームの「Charles」は同名はありそうだが、「Lloyd」はどう考えても同姓は無いよな〜、ということで、やはり、ロイドの再発見である。

そして、やっとつい最近、再発見後のロイドの聴き直しを始めた。どうにも印象が曖昧になって、ECMレーベルのロイドの音世界がイメージ出来なくなっていた。メジャー・デビュー当時、1960年代後半のロイドは「コルトレーンのええとこ取り」。そのイメージが強くて、ECMレーベルでの「耽美的で静的でスピリチュアルな」ブロウがどうにも据わりが悪い。

Charles Lloyd『Notes from Big Sur』(写真左)。1991年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Ralph Peterson (ds)。ピアノのステンソンとベースのヨルミンはスウェーデン出身で、ドラムのピーターソンは米国出身。ロイドは米国出身なので、スウェーデンと米国の混成カルテットということになる。
 
 
Notes-from-big-sur-1
 
 
この盤に詰まっている音は「静的でエモーショナルな」音世界。全編、ロイドの淡々とクールで耽美的な、流麗でスピリチュアルなブロウが印象的。決して、ホットにエモーショナルになることは無い。当然、変にフリーに傾くことは無い。演奏のベースはモード。モード奏法の良さを最大限に活かして、悠然とした、耽美的で伸びの良いフレーズが心地良い。

バックのリズム・セクションも好調。ピアノのステンソンとベースのヨルミンがスウェーデン出身なので、出てくる音は明らかに北欧ジャズ。しかし、ドラムのピーターソンのドラムの音は米国東海岸ジャズ。当時の若きピーターソンのドラミングが北欧ジャズへの傾倒を緩和させていて、意外と国籍不明なリズム&ビートに落ち着いている。これがまた面白い。

水墨画の様なテナーの音が、時には幽玄に変化し、時には霧のように漂っていく。1960年代後半のロイドの「コルトレーンのええとこ取り」とは全く異なる、唯一無二なロイドの個性。これがロイドのテナーの本質なのか、と思わず感心する。こんなロイドの本質的な個性を引き出したECMレーベルは凄い。マンフレート・アイヒャー恐るべし、である。
 
 
 
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2019年12月 3日 (火曜日)

ジャス喫茶で流したい・156

こういうジャズ盤に出会うと思わず頬が緩む。というか、緩みっぱなしになる。テナー・サックス+オルガン+ドラムスの「オルガン・トリオ」。ジャズにオルガンは良く似合う。古くは1950年代のハードバップの時代から、オルガン・ジャズは人気である。そんなオルガン・ジャズが、現代の、21世紀の今でも「ある」のだ。嬉しいではないか。

James Carter Organ Trio『Live From Newport Jazz』(写真左)。2018年 Newport Jazz festivalでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、James Carter (ts), Alwx White (ds), Gerard Gibbs (org)。実は、僕はリーダーの「James Carter(ジェームス・カーター)」を良く知らない。

ジェームス・カーターとは誰か。ジェームス・カーターは、1969年1月3日生まれ。今年でちょうど50歳。ジャズの世界では中堅からベテランに差し掛かる年齢。出身が「ジャズメンの古都」デトロイトというのが良い。若かりし頃は、ジョシュア・レッドマンの好敵手として注目を集めた強烈な個性をもつテナーマンである。
 
 
Live-from-newport-jazz  
 
 
さて、このライブ盤は、ジャンゴ・ラインハルトによって作曲された、または彼に関連した6つの楽曲を収録。そういう意味で、演奏自体が浮ついていなくて、実に渋く実に粋である。カーターのテーマ部は堅実で正統派、アドリブ部は野性味溢れるアブストラクトでフリーな展開。これが実に心地良い。いずれの楽曲もスピリチュアルでエモーショナルで、「ハートに染み入る」演奏である。

オルガンが効いている。オルガンの音は嫌が応にも演奏全体をジャジーな雰囲気で染め尽くす。そこにソウルフルなドラミングがフロントのテナーを鼓舞し煽る。カーターのテナーは自由奔放に激情豊かに、思いっ切りテナーを吹き上げる。そして、それが耳に付かない。流麗でキャッチャーで「フリーなアドリブ展開」。そして、オルガンがジャズのグルーヴの大本をしっかり押さえる。

カーターいわく「オルガン・サウンドはアフリカ系アメリカ人のルーツの一端を担っている。これらはスピリチュアル・ジャズからソウル、ネオ・ソウルへと繋がり、ジャズの魂を表現する不可欠な要素になっている」。なるほど、そんな理屈をこのライブ盤ではしっかりと音で、立派に表現している。このライブ盤、掘り出し物です。
 
 
 
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年11月 1日 (金曜日)

サム・リヴァースの初リーダー作

昨日、デイビット・サンチェスのサックスを聴いていて、突如として「サム・リヴァース(Sam Rivers)」を聴きたくなった。サム・リヴァースのサックスを初めて聴いたのは、マイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』。1964年のライブ録音であるが、黄金のクインテットにまだウェイン・ショーターが参加していない時期。そこにサックスとして参加したのが「サム・リヴァース」。

このマイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』でのリヴァースのサックスを聴くと、ショーターのサックスよりも、凛としてシュッとしたサックス。ショーターのサックスはちょっとウネウネしているところがある。意外とリヴァースの方がマイルス・クインテットに合ったりして、と思っていたら、どうもマイルスも留まるようオファーしたらしい。それをリヴァースは断った。

Sam Rivers『Fuchsia Swing Song』(写真左)。1964年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (ts), Jaki Byard (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。先ほどのマイルスの『ライヴ・イン・トーキョー』の5ヶ月後の録音。リズム・セクションのうち、ベースとドラムは、マイルス・クインテットと同じメンバー。ピアノだけはハービー・ハンコックでは無い、当時、新進気鋭のジャキ・バイヤード。
 
 
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このブルーノート・レーベルの4184番は、サム・リヴァースの初リーダー作。リヴァースのテナーが実に魅力的。端正でスッと伸びのある、切れ味の良いテナー。モーダルなフレーズで、限りなく自由なフレーズを吹き上げていくが、決して絶対にフリーに傾かない。どこか節度のある、どこか理知的な響きの宿ったフレーズ。モードのフレーズなので難解そうだが、意外とシンプル。適度な隙間があって聴き易い。

バックのリズム・セクションでは、ピアノのバイヤードが個性的。ハンコックのモーダルなピアノより、フレーズの輪郭がクッキリしていて、適度にエッジが立っている。速いフレーズではスピード感が豊かで、モーダルなフレーズは幾何学的な展開がユニーク。もちろん、ベースのロン、ドラムのトニーは当然、素晴らしいパフォーマンスを聴かせてくれる。

ブルーノートの「新主流派のモーダルなテナー」のアルバムの中でも屈指の出来だと思います。変に急いでフリーに走らず、限りなく自由度の高いモーダルな吹きっぷりに、リヴァースの「受け狙い」では無い、我が道を往く「矜持」を感じます。本能、直感で勝負しない、理論派テナーマンの面目躍如です。僕はそんなリヴァースのテナーが「隅に置けない」。
 
 
 
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年10月29日 (火曜日)

ザヴィヌルのトリビュート盤

最近の新盤を眺めていて、トリビュート盤が結構出ているのに気がついた。その中でもこのトリビュート盤を見つけた時は思わず「おおっ」と思った。ウェザー・リポートやザヴィヌル・シンジゲートでの活動、マイルス・デイヴィス『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチズ・ブリュー』といった作品に参加〜貢献、エレクトリック・ジャズのキーボード奏者でありレジェンドである「ジョー・ザヴィヌル」のトリビュート作である。

Scott Kinsey『We Speak Luniwaz : The Music of Joe Zawinul』(写真左)。今年10月25日のリリース。冒頭の「The Harvest」のキーボード・ワークを聴くだけで、「ザヴィヌル者(ザヴィヌルのファン)」であれば思わず「むふふふ」と思う。ザヴィヌルのキーボード・ワークを忠実に再現しているのだ。音色、音の重ね方、フレーズ展開の手癖。どれをとっても「お見事」なのだ。

このザヴィヌルのトリビュート盤、長年ザヴィヌルとスタジオで同じ時間を過ごした愛弟子スコット・キンゼイのリーダー作。そりゃ〜、ザヴィヌルのキーボード・ワークの再現性の正確さ、当たり前か〜、と思わず感心する。音のエッジのラウンドさ、重ねた音のくすんだ感、そして、独特の乾いた無機質でオフビートなグルーヴ感。聴いていて、とにかくワクワクする。
 
 
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選曲もなかなか良く練られたもので、ザヴィヌルのキーボード・ワークの個性がハッキリ出るザヴィヌルの自作曲を厳選している。「Cucumber Slumber」や「Black Market」「Fast City」「Port Of Entry」など、何度聴いても痺れまくるザヴィヌルの自作曲ばかり。ただし、ザヴィヌルの音世界を再現するばかりではない。インド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジし、ザヴィヌル曲に新しい魅力を与えている。

もともとザヴィヌルのキーボード・ワークは無国籍で辺境的な響きを宿したもので、従来のジャズ、いわゆるアフリカン・アメリカンのネイティヴな響きとは一線を画するもの。この個性をインド、エスニック、エレクトロニック・ミュージックなどでアレンジすることで、現代のジャズのトレンドのひとつである「クールでスピリチュアルな」エレ・ジャズを現出している。

ジャコ・パストリアスの再来とも称されるアドリアン・フェロウ、イエロージャケッツのオリジナルメンバーであったジミー・ハスリップ、ウエザー・リポートのオリジナルメンバーのロバート・トーマス・ジュニアなども参加していて、ザヴィヌルのトリビュート作としての「再現性」や「既聴感」に貢献している。とにかく、このトリビュート盤、ザヴィヌル者、WR(ウエザー・リポート)者にとっては必聴アイテムである。
 
 
 
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2019年10月25日 (金曜日)

70年代タイナーの魅力的な音世界

1970年代のマッコイ・タイナーは、コルトレーン・ジャズの継承者としての演奏がメインだった。どの辺りのコルトレーン・ジャズか、というと、インパルス・レコードに移籍した時点の、自由度の高い「モード・ジャズ」なコルトレーン・ジャズがベース。加えて、コルトレーンが演奏していた自由度の高い「モード・ジャズ」より、シンプルで判り易い。

演奏の形態としてはコルトレーンの『アフリカ/ブラス』のビッグバンド編成の音作りを踏襲している。音の響きは、アフリカン・ネイティヴなルーツ・ミュージック。特にサックスについては、コルトレーンのフォロワーの優秀どころをどしどし採用しては、タイナーのリーダー盤でデビューさせている。そして、自らは、例の「ガーン、ゴーン」といったハンマー奏法に磨きをかけている。

McCoy Tyner『Focal Point』(写真)。1976年8月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p, dulcimer), Joe Ford (as, ss, fl), Gary Bartz (as, ss, cl), Ron Bridgewater (ts, ss), Charles Fambrough (b), Eric Gravatt (ds), Guilherme Franco (perc, conga, tabla)。3サックス+ピアノ・トリオ+パーカッションの7人編成、セプテットである。
 
 
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冒頭の「Mes Trois Fils」から、モーダルなスピリチュアル・ジャズ全開である。フロントのサックス3管の音が分厚い。タイナーのハンマー打法なピアノも音も分厚く、セプテットではあるが、工夫されたアレンジも相まって、演奏全体の音の厚さはビッグバンド級。コルトレーン・ライクなスピリチュアルなモード・ジャズが万華鏡の様に、様々なニュアンスを持って展開される。

1970年代のマッコイ・タイナーの音楽には欠かせない「ソプラノ・サックス、フルート、コンガ」が大活躍。そこにクッキリと浮かぶ、マッコイのメリハリが効いたエネルギッシュなピアノ。特に打楽器隊が「ミソ」。エリック・グラヴァットの豪快に冴えわたるドラム、ギレルミ・フランコは、軽快なリズムに乗ったコンガ。特に、この「コンガ」の音が印象的。アフリカン・ネイティヴな響きが心地良い。

この盤、コンセプトの良く判らない、ボンヤリした地味なジャケットで損をしている。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌では、まず採り上げられない盤ではあるなあ。でも聴くと判るのだが、ダイナミックで破綻無く、内容的にカッチリまとまった、1970年代マッコイ・タイナーの好盤だと思います。ジャケットに怯まずに手に取って一度は聴いて頂きたい、1970年代タイナーの魅力的な音世界です。
 
 
 
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2019年10月17日 (木曜日)

繊細で印象的でスピリチュアル

このアルバムを聴く度に「これってジャズなんだろうか」と心から思う。リズム&ビートは無い。様々な音の洪水。パーッカッシヴな音、水の流れるような音、印象的でスピリチュアルなギターの響き。語りかける様なピアノの音。音の全てが即興演奏。

即興演奏をメインとしているので、ジャズと言えばジャズだが、音の響きとしては「現代音楽」の響きが蔓延していて、聴いていて「ジャズなのか」と思ってしまう。自然の音が蔓延する。ビート感は一切無い。心に響く様なパーカッションの音。この盤は「静的で繊細な」スピリチュアル・ジャズ。

Egberto Gismonti『Dança Das Cabeças』(写真)。邦題「輝く水」。ブラジルを代表するマルチ・インストゥルメンタリスト、エグベルト・ジスモンチの1976年録音のECMデビュー作。ちなみにパーソネルは、Egberto Gismonti (8-string g, p, wood fl, vo), Naná Vasconcelos (perc, berimbau, corpo, vo)。ジスモンチとヴァスコンセロスの即興演奏、そして多重録音。
 
 
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ナナ・ヴァスコンセロスが「納得の参加」。繊細で印象的でスピリチュアルなパーカッションの音は、ナナ・ヴァスコンセロスの仕業。納得である。ジスモンチは、ギターとピアノ、フルートを担当する。これまた、繊細で印象的でスピリチュアルな音の響き。そうか、この盤の音は、静的で繊細なスピリチュアルな音なのだ。

即興演奏がLPの片面、約25分続く。ビートの無い、繊細で静的で印象的でスピリチュアルな音の世界。飽きるかなと思いきや、決して飽きない。25分、一気に聴き切ってしまう。繊細で静的な音の中に、仄かに漂う歌心。この歌心が漂う繊細で静的なフレーズが聴く者を決して飽きさせない。

欧州のニュー・ジャズの老舗、ECMレーベルからのリリースなので「ジャズ」と決めつけるのは野暮ってもんだ。しかし、この盤の繊細で静的なパーカッションは、ニュー・ジャズ的なビートを仄かに感じさせてくれる。全編、即興演奏。仄かに漂うビート。基本、この盤に詰まっている音は「ニュー・ジャズ」な音と解釈して良いだろう。30年以上聴き続けていますが、決して飽きません。好盤です。
 
 
 
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