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2019年8月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・155

Enja(エンヤ)レーベルの看板ジャズマンは数人いるが、他の老舗レーベルに所属した、エンヤ・レーベルでのみ、聴くことの出来るピアニストが「Abdullah Ibrahim」。アブドゥーラ・イブラヒムと読むが、デビューした頃から1970年代前半くらいまでは、ダラー・ブランド(Dollar Brand)という名で知られていた。
 
ピアノのタッチは重厚感溢れ、明快なタッチ。フレーズのイメージは「アフリカン・ネイティヴ」。アフリカの民俗音楽風のフレーズが最大の個性。少し聴き込めば直ぐにイブラヒムと判る、アフリカン・ネイティヴの響き。1934年生まれだから今年85歳。未だ現役、1960年代のデビュー以来、ずっと、この個性を維持し続けている。

Dollar Brand(Abdullah Ibrahim)『African Space Program』(写真)。1973年の作品。ENJA2032番。ちなみにパーソネルは、Dollar Brand (p), Cecil Bridgewater (tp), Enrico Rava (tp), Charles Sullivan (tp), Kiani Zawadi (tb), Sonny Fortune (fl,as), Carlos Ward (fl,as), Roland Alexander (harm,ts), John Stubblefield (ts), Hamiet Bluiett (bs), Cecil McBee (b), Roy Brooks (ds)。
 
 
African-space-program  
 
 
当時のフリー・ジャズ〜スピリチュアル・ジャズ系のジャズメンが中心に参加した、12人構成のオーケストラによる、アフリカン・ネイティヴなスピリチュアル・ジャズである。約20分に渡る組曲と20分を超える長大な音絵巻。ジッと聴いていると、何故か、コルトレーンの『アセンション』を思い出した。そう、この盤は、イブラヒムのアフリカン・ネイティヴな『アセンション』である。
 
フリー・ジャズの様ではあるが、必要最低限の決め事の中で奏でられる限りなく自由度の高いモード・ジャズ。フリーキーに傾いたり、アブストラクトに咆哮したりするが、基本はしっかりと調性の取れた自由度の高いメインストリーム・ジャズ。演奏の底に常に響き渡るアフリカの民俗音楽風の響き。それぞれ「個」の演奏も素晴らしいが、オーケストラ全体のアンサンブルも見事。
 
リリース当時は、ドイツのジャズ・レーベルからのリリースということで入手し難く、我が国では知られることはなかなか無かった。僕もこのアルバムを聴くことが叶ったのは、つい10年ほど前のこと。聴き始めればジャケット写真の如く、アフリカの平原のイメージが脳裏に拡がり、土着なリズム&ビートが耳の中を駆け抜ける。唯一無二なアフリカン・ネイティヴなスピリチュアル・ジャズである。
 
 
 
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年8月14日 (水曜日)

実にECMらしいエレ・ジャズ

久し振りのECMレーベル。カタログ順の聴き直しも、はや66枚目。最近はCDの外国盤も入手し易くなったし、有料ダウンロード・サイトのジャズ盤のストックも充実度を増している。特に、ECMレーベルのカタログを Apple Musicに開放してくれたのは有り難かった。ECMレーベルの総帥マンフレート・アイヒャーに敬意を表したい。

Eberhard Weber『Yellow Fields』(写真左)。ECM1066番。1975年9月の録音。 ちなみにパーソネルは、Eberhard Weber (b), Charlie Mariano (ss, shehnai, nagaswaram), Rainer Brüninghaus (p, syn), Jon Christensen (ds)。いかにもECMレーベルらしいラインナップである。ドイツ出身が2人、米国出身が1人、ノルウェー出身が1人という多国籍構成。
 
リーダーのエバーハルト・ウェーバーはベーシスト。彼のリーダー作はどれもが当時の「ニュー・ジャズ」。いかにも欧州らしい、ゆったりとした音の広がりと堅実かつ印象的なリズム&ビートをベースに、ECMレーベルらしいエレクトリック・ジャズを展開してくれる。米国のエレクトリック・ジャズの様にファンクに傾倒することも無く、激情に走ることも無い。
 
  
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淡々と穏やかで印象的なビートと透明度の高い音色で、様々な印象の音世界を創り出していく。全曲エバーハルト・ウェーバーの作曲なのも特徴。スタンダード曲などは絶対にやらない。さすがドイツ出身のジャズマンらしく、全体のサウンドは破綻が無く、まとまりがとても良い。非常にきっちりとしている。大阪弁で言うと「シュッとしている」(笑)。
 
ホーンの伸びのある音、素敵やなあ、と思って、誰かしらと名前を確かめてみたら、なんと「チャーリー・マリアーノ」。穐吉敏子さんの元夫君でもあったアルト・サックス奏者。この盤では、ソプラノ・サックスとインドのシェーナイというリード楽器、そして、ナーダスワラムという南インドの二重葦の管楽器を使用している。これが効果的。欧州らしい典雅で透明度の高いエレ・ジャズに、ワールド・ミュージック的なヒューマンな響きを添えている。
 
ウェーバーのベースも重心が低く、的確なベースラインと躍動的なビートを供給していて、実に聴き応えがある。クリステンセンのドラムは切れ味良く透明度の高いドラミング。そんなリズム隊をバックに、ブリューニングハウスのピアノとシンセが印象的に響く。そこに絡む、マリアーノの印象的なホーンの響き。実にECMレーベルらしい、実に欧州ジャズらしい「ニュー・エレジャズ」である。
 
 
 
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2019年8月10日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・118

こんなアルバムあったんや・118
 
ジャズは様々な奏法や表現方法があって、聴いていてとても楽しい。こんなんもジャズなんか、とか、これってジャズなん、っていうジャズもあって、いかにジャズって裾野の広い、表現の幅の広い音楽ジャンルだということが良く判る。しかし、どんな奏法も表現方法も、基本的に「即興演奏」がメイン。ということはジャズである。

Antonio Sanchez『Lines In the Sand』(写真左)。2018年5月の録音。現代を代表するドラマー、アントニオ・サンチェスの最新作品。レギュラー・バンドによる作品。ちなみにパーソネルは、Antonio Sanchez (ds, vo), John Escreet (p, rhodes, syn), Matt Brewer (b, el-b), Thana Alexa (vo, effects), Chase Baird( ts, EWI), Nathan Shram (viola), Elad Kabilio (cello)。

テーマは「現代アメリカに投げかける6編の楽曲」。現在のアメリカ合衆国への憂いと自らの強烈な思い。自らが筆をとったライナーノーツを読んでも、その「想い」が良く判る。このリーダーのサンチェスの「想い」を念頭に聴けば、この壮大な組曲の奏法や表現方法の意味することが理解出来る。
 
 
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メキシコからの移民者である彼の現在の米国大統領への怒りが、この壮大な組曲の中に表現されている。思わず、米国の公民権運動時代の、ベースのチャールズ・ミンガスや、ドラムのマックス・ローチ、サックスのジョン・コルトレーン等を思い出しました。ジャズは時として、政治に対する意志を表現したりする。サンチェスの今回の新盤もその流れのひとつ。

思想的な面を離れて演奏だけに着目してみると、リーダーのサンチェスは、壮大な組曲の中で、実に印象的な素晴らしいドラミングを披露しています。サンチェスの超絶技巧な意志の入ったドラミングを中心に、バンド全体に緊迫感のある空気を創り出して行く。壮大な交響曲の様な、壮大なプログレッシブ・ロックの様な先進的な演奏。

加えて、素晴らしいパフォーマンスを披露しているのが、サックスの「チェイス・ベアード」。説得力のある、骨太の重量のあるサックスが素晴らしい。ベアードは、マイケル・ブレッカーばりのEWIも操っていて、これがまた素晴らしい。この新盤、純粋にジャズとしても高く評価出来る好盤です。
 
 
 
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2019年8月 2日 (金曜日)

主役と仕掛け人が手柄の好盤

ジャズ・オルガンの第一人者と言えば「ジミー・スミス(Jimmy Smith)」。ブルーノート・レーベルの総帥、アルフレッド・ライオンに見出され、ブルーノート・レーベルで様々な好盤をリリースした。ジミー・スミスの素晴らしいところは、このブルーノート・レーベルでのリーダー作の中で「駄盤」が全く無いこと。どれもがジャズ・オルガンとして優れたアルバムばかりである。

そんなジミー・スミスが、1962年、ヴァーヴ・レーベルに移籍する。そのヴァーヴ・レーベル移籍第一弾がこのアルバムになる。Jimmy Smith『Bashin' : The Unpredictable Jimmy Smith』(写真左)。1962年3月の録音。オリバー・ネルソンのアレンジ&指揮によるビッグバンドをバックにした、豪華な内容のアルバムである。

ビッグバンドをバックにしたジャズ・オルガン。音の大きさ、迫力面でオルガンの方が圧倒的に不利なのでは、と思うのだが、ジミー・スミスの場合、そうはならない。ジミー・スミスのオルガンは迫力満点。ダイナミックな音出し、派手なアドリブ展開、攻撃的な速攻フレーズ。ビッグバンドと十分に対抗できる、ジミー・スミスのオルガンである。
 
 
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このヴァーヴ移籍第一弾のアルバム、さすがにオリバー・ネルソンのアレンジが秀逸。あくまでビッグバンドは、ジミー・スミスのオルガンの惹き立て役であり、決して前へ出ることは無い。逆に、ジミー・スミスのオルガンが前面に出て、しっかりと目立つように出来ている。そんなビッグバンドのサポートを得て、ジミー・スミスが本当に気持ちよさそうにオルガンを弾きまくる。

「Unpredictable=予測不可能な」を含むのタイトル通り、この盤でのジミー・スミスのアドリブ展開はイマージネーション豊かで、良い意味で意外性の溢れる優れたもの。もともとジミー・スミスは自己顕示欲が強く、目立ちたがり屋だったそうで、そういう面ではこのビッグバンドをバックにした「独壇場」な展開は、ジミー・スミスにとって満足いくものだったのかもしれない。

この盤のプロデューサーは、かの「クリード・テイラー」。後にヴァーヴから独立し、CTI Recordsを設立し、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの先鞭を付ける敏腕プロデューサーです。ジミー・スミスとビッグ・バンドを組合せ、オリヴァー・ネルソンをアレンジャーとした、その慧眼にはつくづく感心する。テイラー&ネルソンのお陰で、ジミー・スミスのオルガンだけがくっきり浮かび上がる。「仕掛け人」が手柄の好盤です。
 
 
 
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2019年7月18日 (木曜日)

これも「ヒーリング・ジャズ」

「聴く者に精神的に訴求する、心を揺さぶる」スピリチュアル・ジャズとは違って、聴く者を気持ち良くさせ、心地良くさせ、心を癒す「ヒーリング・ジャズ」。一昨日、そのヒーリング・ジャズの好盤、ベン・ウェンデルの『Seasons』を聴いていて、Aaron Parks (p) の名前を見つけた。そう、彼もヒーリング・ジャズなアルバムをリリースしていたなあ。

Aaron Parks『Little Big』(写真左)。2018年10月のリリース。ちなみにパーソネルは、Aaron Parks (p, key), Greg Tuohey (g), David Ginyard (b), Tommy Crane (ds)。 ジャケット・イメージからも、ホットに燃えるジャズでは無く、クールに燃えるジャズであろうと、また旧来のハードバップでは無い、新しい響きの「ニュー・ジャズ」系の盤であろうと事前に想像がつく。

出てくる音は、クールで印象的な、それでいてウォームなエレクトリック・ジャズである。何処までも穏やかでクール。しかし、バックで支えるリズム&ビートは、柔らかではあるが躍動的。聴いているととても心地良い。思わずフーッと溜息が漏れる。この盤に詰まっている音世界は、聴く者を気持ち良くさせ、心地良くさせ、心を癒す「ヒーリング・ジャズ」である。
 
 
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現代のエレクトリック・ジャズである。1970年代のECMレーベルでの「ニュー・ジャズ」に通じるコンセプト。でも、あの頃の「ニュー・ジャズ」は旧来のハードバップから脱皮して、それまでに無い、新しい響き、展開、イメージのジャズをやる。それについて「チャレンジ」するスピリットが前面に押し出ていた。少し手探りと少しの思索が見え隠れしつつ、大胆にチャレンジする。その雰囲気に我々聴き手は共感し同調した。

しかし、このアーロン・パークスの主宰する「ヒーリング・ジャズ」は確信に満ちている。確信に満ち、揺るぎの無いスタンスで展開する、現代の「ニュー・ジャズ」。従来のハードバップやフリー・ジャズのイメージの微塵も無い、クロスオーバーやフュージョン、民俗音楽や米国ルーツ音楽などを融合した、ファンクネス皆無の新しい現代ジャズの音世界。これが聴いていてとても心地良い。

ヒーリング・ジャズというコンセプトの中で、展開するエレクトリック・ジャズは癒しに満ちている。パークスのリーダー作であるが故、パークスのピアノ、キーボードがとても印象的に響く。思わず、イージーリスニングに傾くかと身構えるが、バックのリズム&ビートがしっかりジャジーな響きを宿している分、決してそうはならない。極上の「ヒーリング・ジャズ」盤である。
 
 
 
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2019年7月12日 (金曜日)

この盤に詰まった「北欧の音」

正統なネオ・ハードバップやモード・ジャズを聴き続けていると、ふとECMレーベルの「ニュー・ジャズ」が聴きたくなる。もともと、19歳の頃、ジャズを本格的に聴いていこう、と決めた切っ掛けの1つが「ECMレーベルのアルバム」。それが原因なのか、ECMレーベルの音が無性に聴きたくなることがある。

Edward Vesala『Satu』(写真左)。1976年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Edward Vesala (ds), Tomasz Stańko (tp), Juhani Aaltonen (ss, ts, fl), Tomasz Szukalski (ss, ts), Knut Riisnæs (fl, ts), Palle Mikkelborg (flh, tp), Torbjørn Sunde (tb), Rolf Malm (b-cl), Terje Rypdal (g), Palle Danielsson (b)。総勢10名。いずれもECMレーベル御用達のジャズ・ミュージシャン達である。エンジニアはJan Erik Kongshaug。

リーダーはフィンランドのドラマー「エドワード・ヴェサラ」。この盤に詰まっている音は「北欧の音」。北欧の凛とした大地をイメージするような音世界。明らかに米国のジャズとは違う。ファンクネスは皆無、明確なオフビートも無い。緩急自在、変幻自在、無調のモード・ジャズ、そしてフリー・ジャズ。
 
 
Satu
 
 
リーダーだから当たり前と言えば当たり前なんだが、ヴェサラのドラムが良い。スケールが大きく、明確で力感のあるドラミング。ドラムの音が美しい。ドラムの表現力がダイナミックかつ繊細、そしてバリエーション豊か。連続して叩き出される緩急自在、変幻自在のドラミングは典雅ですらある。

そんなヴェサラの緩急自在でスリリングなドラムに、幽玄かつ伸びのあるエレギが絡み(これは聴けばリピダルだと直ぐに判る)、幻想的で感応的なフルートが絡む。ソリッドで堅実なベースが演奏の底をガッチリ支える。実にファンタスチックで柔軟なスピリチュアル・ジャズ。

大編成ならではの分厚い音ではあるが、耳に感じるのはクールな躍動感。民族音楽的なメロディや牧歌的な雰囲気も見え隠れして「北欧感」抜群。大音量でブワーッといくことは全く無く、繊細な音やきめ細かい音、印象的な音、官能的な音を絡ませ、組み合わせ、混ぜ合わせることで、独特の音世界を現出しています。好盤です。
 
 
 
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2019年7月11日 (木曜日)

スピリチュアルな新しい響き

新しいタイプのスピリチュアル・ジャズがほぼ定着したのでは無いかと思う。激情に走らず、穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、音の響きとフレーズから「スピリチュアル」な面を増幅させ、聴く者に訴求する、という、新しいアプローチ。

僕はこの人がこの「新しいタイプのスピリチュアル・ジャズ」に手を染めるとは想像出来なかった。確かにこのピアニストの懐は深く、様々な表現の引き出しを持っている、とは思っていた。が、ここまでのアプローチをするとは思わなかった。そう言えば、メルドーって、マルチ・キーボード奏者としての才能も確かだったことを思い出した。

Brad Mehldau『Finding Gabriel』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにメインは、Brad Mehldau (ac-p, syn, key), Mark Guiliana (ds) の二人。そこに、Ambrose Akinmusire (tp), Michael Thomas (fl, as), Charles Pillow (ss, as), Sara Caswell (vln), Joel Frahm (ts), Kurt Elling (vo). Gabriel Kahane (vo), Becca Stevens (vo) などがゲスト参加。
 
 
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聖書からインスピレーションを得たというアルバムのタイトルからして「スピリチュアル・ジャズ」の香りがプンプン漂う。出てくる音は、現代のエレクトリック・ジャズ。ビートに乗った印象的なフレーズの洪水。冒頭の「The Garden」を聴いて、思わずぶっ飛ぶ。ファンクネスは皆無だが、かなりハイレベルなエレ・ジャズ。

そこに、疾走するビートに乗って、印象的な各種サックスの咆哮、フルートの響き、印象的に切れ込んでくるトランペット。ボイス、ボーカルも効果的かつ印象的な響きに貢献する。主役のメルドーはアコピは当然、OB-6 Polyphonic synthesizer、Moog Little Phatty synthesizeなど、印象的な音の出るシンセを駆使、Fender Rhodesも活用。とてもスピリチュアルで印象的なフレーズを連発する。マルチ・キーボード奏者の面目躍如。

ジュリアナのドラミングも新しい響き。マシン・ビートに血を通わせたような、人間的な温もりのある疾走感溢れるビートを叩き出し、撒き散らす。新しい響きの、新しいアプローチのエレクトリック・ジャズ。音の表現としては「新しいタイプのスピリチュアル・ジャズ」。まだ聴き始めたばかりの盤だが、これは「只者」ではない。暫く、折につけ、耳を傾けるつもり。新しいジャズのアプローチは腹に落ちるのに時間がかかる。
 
 
 
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2019年6月27日 (木曜日)

様々なブラック音楽の要素が融合

ジャズは裾野が広い。他の音楽ジャンルとの融合もし易く、逆に他の音楽ジャンルとの境界が曖昧になることも。時には「ジャズ」という音楽ジャンルに分類されていながら、どう聴いても「これってジャズと呼んで良いのか」と思うアルバムの多々存在する。しかし、しっかり聴くと、即興音楽という要素がしっかり備わっていて、つまりは「即興演奏」という要素があれば、それはジャズと呼んでよいのかと。

Archie Shepp『Attica Blues』(写真左)。1972年1月の録音。Impulse! レーベルからのリリース。リーダーのアーチー・シェップはサックス奏者。コルトレーンを敬愛し、コルトレーンを師と仰いだフリー・ジャズの雄である。そんなコッテコテのフリー・ジャズの担い手が、この盤で、コッテコテのジャズ・ファンクをやっている。
 
冒頭のタイトル曲「Attica Blues」を聴けば、それが判る。僕はこの盤を初めて聴いた時、思わず「これってジャズなんか」と仰け反ったことを覚えている。思いっきりファンキーなエレギのうねり。鳴り響くタンバリン。熱くブラックなHenry Hull(ヘンリー・ハル)のヴォーカル。そんなボーカルを煽りに煽るブラスのユニゾン&ハーモニー。うねるような粘るようなコーラスが思いっきりファンキー。
 
 
Attica-blues
 
 
しかし、リーダーのシェップのサックスが出てこない(笑)。しかし、2分割された「Steam」では、ストリングスの入った、フリーを基調としたモーダルなサックスが実に「粋」。いたずらに気持ちの赴くままサックスを吹きまくるのでは無い、抑制されグループサウンズを十分に意識したシェップのサックスは「確信的」ですらある。正統な純ジャズの最新形をここに聴くことが出来る。
 
そして面白いのは4曲目の「Invocation to Mr. Parker」。ラップの元祖といわれるLast Poets(ラスト・ポエッツ)の様でもあり、録音当時としてはかなり新しい感覚。当時はクロスオーバー・ジャズがトレンドであったが、この盤はそれを超越して、ブラック・ミュージックの様々な要素を確信的に取り込んだ、かなり尖った「ジャズ・ファンク」である。
 
ゴスペル風の音の響きあり、ジャズ・ソウルなサックスの咆哮あり、フリー・ジャズ、ファンキー・ジャズの要素はそこかしこに散りばめられ、コッテコテにファンキーなボーカルが唸りを上げる。改めて今の耳で聴き直すと、この盤は後のフュージョン・ジャズの先取り的イメージ。思いっきり尖った、様々なブラック・ミュージックの要素が融合した「フュージョン・ファンク」である。
 
 
 
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2019年6月18日 (火曜日)

最先端の現代ジャズの1つである

トランペッターは何時の時代も「イノベーター(改革者)」が多い様な気がする。代表例が「ディジー・ガレスピー」「クリフォード・ブラウン」「ウィントン・マルサリス」そして「マイルス・デイヴィス」。最近、僕はこの人のトランペットにずっと注目している。Christian Scott(クリスチャン・スコット)である。ルイジアナ出身のジャズ・トランぺッター。特に2015年の『Stretch Music』は今でも愛聴盤である。

この10年の間、最も注目すべきアーティストの一人として成長したトランぺッター、クリスチャン・スコット。マッコイ・タイナー、プリンス、マーカス・ミラー、エディー・パルミエリ、モス・デフ、トム・ヨーク、ソランジュなど、個性的な、癖のあるミュージシャンとの共演を重ねてきた。そのせいか、スコットの音世界は、どこか革新的で唯一無二。
 
黄昏時の少しくすんだ輝きの様な、抒情的な、それでいて、重心低く力感溢れる音世界。特に、インディアンの家系に生まれた自身のルーツでを取り入れたフォーキーで土着的なリズム&ビートの響きは独特の個性。従来のジャズへのリスペクトを保持しつつ、創造する音はポストロックや現代音楽のような先鋭的な音であり、ブラックミュージック特有のうねるようなグルーヴが心地良い。
 
 
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Christian Scott『Ancestral Recall』(写真左)。今年の新盤である。ちなみにパーソネルを列記すると、Christian Scott (tp, horns), Saul Williams, Mike Larry Draw (spoken word), Elena Pinderhughes (fl), Logan Richardson (sax), Chris Turner (ds) etc. いやはや、この新盤が、クリスチャン・スコットらしい、素晴らしく革新的な内容なのだ。
 
冒頭1曲目「Her Arrival」から、いきなり仰け反る様な、思わず嬉しくなる様な、フォーキーで土着的なリズム&ビートの響き。手拍子とパーカッションの力強いポリリズム。ジャズの重要な要素の1つはリズム&ビートである。その重要な要素の際先鋭な音の1つがここにある。スイングでもなければ、4ビートでも無い、8ビートでも無い。そんな先鋭的なリズム&ビートに乗って、土着的な色彩の鮮やかなフレーズが展開される。

本作は西アフリカやインド音楽の強烈なリズムのサンプリングとスタジオでのドラミングをミックスしたとのことで、「聴く」よりも「体感する」、躍動感溢れる官能的なリズム&ビートが全編に渡って流れて、そこにスコットのトランペットが切れ込み、流れ、浮遊する。ビ・バップでも無い、ハードバップでも無い、モードでも無い。でも、これは立派なジャズである。これは現代の最先端のジャズである。
 
 
 
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2019年5月16日 (木曜日)

ECMのジョージ・アダムスです

以前より、フリー・ジャズ系のテナー・マンとして、ジョージ・アダムス(George Adams)がお気に入り。手元には意外にリーダー盤の枚数がある。しっかりと聴き始めたのは21世紀に入ってから。プライベートでジャズをしっかりと聴く時間が取れ始めた頃である。特に、iPodの出現が大きい。イヤフォーンを工夫するだけで、結構、良い音で聴けたから堪らない。ジョージ・アダムスのアルバムは電車通勤の中で良く聴いたなあ。
 
George Adams『Sound Suggestions』(写真左)。1979年5月の録音。ちなみにパーソネルは、George Adams (ts, vo), Kenny Wheeler (tp), Heinz Sauer (ts), Richard Beirach (p), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds)。トランペットにホイーラーがいて、ピアノにバイラークが座る。ホランドのベースにデジョネットのドラム。これって、ECM的布陣やん、と思って見たら、確かにECMレーベルからのリリースである。
 
欧州ジャズの老舗、ECMレーベルにジョージ・アダムス。違和感満載である。アダムスは米国ジョージア州出身のジャズテナー・サックス、フルート奏者。黒光りするようなテナーの咆吼をモットーとする、いわゆる純粋米国フリー・ジャズマンである。しかし、欧州は米国よりもずっとフリー・ジャズに理解が深い。意外と填まるのでは無いか、と密かに期待する。
 
 
Sound-suggestions-george-adams  
 
 
これが見事に填まっている。純粋米国フリーなサックスが、ECMレーベルの耽美的で限りなく静謐で豊かなエコーを湛えた音世界に身を投ずるのだ。アダムスのテナーが入ってきた瞬間は水と油というか、違和感満載なんだが、演奏が進むにつれ、不思議とECMサウンドに統一されていく。アダムスがECMの音世界に合わせて吹いているのでは無い。アダムスはアダムスのままに吹いているんだが、不思議とECMサウンドに落ち着いているのだ。
 
といって、バックの他のメンバーはあくまでECM的な演奏内容。アダムスが入ってくるまでは明らかにECMの音世界。アダムスがアダムスらしく吹く、ECMのモーダルでフリーなジャズの音世界。見事である。ECMの音世界の懐の深さと柔軟性を感じる。ECMのお抱えトランペッター、ホイーラーとアダムスとの、フリーなインプロビゼーションでの相性が抜群に良い。

4曲目「Got Somethin' Good for You」はブルース曲なんですが、これがまあアダムスが唄います。ボーカル絶叫、そしてテナー吹きまくり。それでも、バックはしっかりとECMサウンドを貫き通し、ブルースを絶叫するアダムスが浮くことはなく、違和感無くECMサウンドとして、しっかり聴くことが出来るのだから不思議。ECMの総帥、アイヒャーのプロデュース力おそるべし、である。
 
 
 
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