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2018年10月17日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・104

ジャズを聴き初めて40年。年齢的に年寄りのジャズ者なので、古典的なクラシック・ジャズばかりを聴いているのではないか、と思われてる節がある。確かに古典的なクラシック・ジャズをジャズメン毎に聴き返すことはよくある。しかし、ジャズは常に深化している。やはり、その時代、その年にリリースされた「新しいジャズの音」に耳を傾ける機会も結構多い。

Tony Allen & Jeff Mills『Tomorrow Comes the Harvest』(写真左)。今年9月末のリリース。つい半月ほど前である。双頭リーダー二人の名前を見て「これはなんだ」。ということで、即拝聴。「アフロ・ビートの父」と呼ばれるトニー・アレンとテクノ・パイオニア、ジェフ・ミルズが組んだ、現代のフュージョン・ジャズ盤である。

アフロビートの巨星とテクノの巨匠が出会って、協働で創り出したビート・ジャズ。アルバムのセールス・コピーは「アフロ・スピリチュアリズムの衝撃」。確かに。生ドラムとドラムマシンの競演が、変幻自在、縦横無尽なサイケデリックなビートを紡ぎ出す。スピリチュアルなエレクトロニック・ミュージックとアフロビート・ジャズの融合。
 

Tomorrow_comes_the_harvest

 
トニー・アレンはナイジェリア出身のドラマー。1940年生まれなので、今年で78歳。「アフロ・ビートの父」としてレジェンド級の存在である。意外と日本では名前が通っていない。日本では「俗っぽい」として敬遠された「アフロ・ジャズ」がメインのドラマーなので、ジャズ雑誌などではあまり採り上げられなかったのだろう。僕も5年ほど前に初めて彼の名前を知った。

このアレンのドラミングが確かにアフロビートそのものなのだ。「アレンなくしてアフロビートは存在しない」という言葉があるが、アレンのドラミングを聴くと直ぐに納得である。そこに、デトロイト・テクノの第一人者、ジェフ・ミルズがデジタルに絡むのだ。誰の発想だったのだろう。これが実に面白い。今までに無いビートの響き。血の通ったロボットの様な音世界。思わず惹き込まれる。

デジタルとアナログ、ジャズとエレクトロ、アフリカとアメリカが融合して、この浮遊感と存在感溢れる、不思議なビート・ジャズを生み出した。今までに聴いたことの無い「リズム&ビート」、そして「リズムによるアドリブ・フレーズ」。デジタルとアナログを融合させたリズム&ビートによる現代のサイケデリック・ジャズ。これは面白い。新たな音。だからジャズは面白い。

 
 

東日本大震災から7年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年8月24日 (金曜日)

新しい音的要素の「異種格闘技」

この5年くらい前からだろうか。少なくとも、感覚的には、2010年代に入ってから、その傾向は顕著になったと感じている。いわゆる「21世紀のニュー・ジャズ」のムーブメントである。ジャズはもともと「異種格闘技」が得意な音楽ジャンル。他の音楽ジャンルの音を取り込むのが得意。

この2010年代に入ってから、ボイスやスピリチュアル、ノイズやラップを取り込んで、新しい響きを獲得した「21世紀のニュー・ジャズ」がトレンドになりつつある。1980年代後半からの「純ジャズ復古」の様に、過去のジャズの演奏スタイルの焼き直しというか、深化を旨とした動きとは異なり、もともとジャズの特質である「異種格闘技」な面を見直した、新たな「融合」を旨とした演奏トレンドである。

Donny McCaslin『Fast Future』(写真左)。2015年のリリースであるが、この盤も、そんな「異種格闘技」な面を見直した、新たな「融合」を旨とした演奏トレンドをベースとしている佳作である。ちなみにパーソネルは、Donny McCaslin (ts), Jason Lindner (el-p, ac-p, syn) Tim Lefebvre (el-b), Mark Guiliana (ds), David Binney (vo, syn), Nina Geiger (vo), Nate Wood (g), Jana Dagdagan (spoken word) 。 
 

Fast_future_1

 
ボーカルと朗読。ボーカルについては、激情的では無い、温和で穏やかなスピリチュアルな要素を表現する為に存在し、spoken word=朗読 が、ジャズにとっては「新しい響き」。リズム&ビートは、全く「従来のジャズ」っぽくない。まず、スインギーな4ビート、若しくは8ビートが存在しない。スイングせず、ファンクネスは希薄な、新しいジャズのリズム&ビート。20世紀の時代の様に「欧州ジャズ」専門では無い、ファンクネスが希薄な、パルシヴな4ビート&8ビート。

アドリブ・フレーズの基本は、力感溢れる漂う様な広がる様なモード演奏。演奏全体の雰囲気は明らかにジャズであるが、フレーズの特徴は「明るくポップ」。リズム&ビートは「従来のジャズ」っぽくないが、限りなく「多彩」。リズム&ビートに関しても「異種格闘技」。他の音楽ジャンルのビートを上手く取り入れて、ジャジーなビートに融合させている。

新しい音的要素の「異種格闘技」とリズム&ビートの「異種格闘技」。21世紀のニュー・ジャズは、新たな「異種格闘技」的な、他の音楽ジャンルからの「新たな音の要素の融合」が基本。ダニー・マッキャスリンのテナーも良い音してるし、ティム・ルフェーヴルのエレベも新時代のエレベの音。ジェイソン・リンドナーのピアノ&シンセが要所要所で効いていて、「21世紀のニュー・ジャズ」の音は心地良い。

 
 

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2018年8月 7日 (火曜日)

ジャズ・トレンドの分水嶺

1980年代のハードバップ回帰、いわゆる「ネオ・ハードバップ」のムーヴメントを捉えて、帝王マイルスは「昔のジャズを焼き直して、何が面白いのか」とバッサリ切り捨てたのを覚えている。「過去の音楽を再びやるなんて、俺には考えられない。常に自分がクールと思う新しい音を追求する」。この革新性こそ、ジャズなんだな、と心底感心したことを覚えている(俺の音をジャズと呼ぶな、と帝王に怒られそうだが・笑)。

確かに、1980年代の「純ジャズ復古」のムーブメント以来、過去の音のトレンドの焼き直し、深化はあったが、新しいクールな何か、がジャズに現れ出でたか、と問えば、答えは「ノー」。もはや、ジャズは深化はするが進化はしない、のでは無いかと思っていたら、この5年ほど前から、そんな「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンを中心とするムーブメントである。ジャズがメインなんだが、R&B、ロック、ヒップホップ、レゲエ、ブルースまで様々なジャンルを融合、ボイスやノイズを新しいソロ楽器の様に扱い、ボーカルに意味を持たせて「スピリチュアル」な響きを前面に押し出す。そして、一番特徴的なのは「リズム&ビート」の扱い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。
 

Keyon_harrold_the_mugician  

 
これを僕は「リズム&ビートのモード化」と呼んでいるが、拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。その上に、緩やかで音を選び間を活かした、落ち着いたアドリブ・フレーズが展開される。今までのモダン・ジャズの「正反対」なアプローチの数々。2010年を越えて、やっと「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

Keyon Harrold『The Mugician』(写真左)。2017年10月のリリース。新世代のジャズ・トランペッター、キーヨン・ハロルドの最新アルバム。いや〜、クールである。まさに、「新しいクールな何か」がこのアルバムに詰まっている。ジャズがベースではあるが、リズム&ビートがジャズでは全く無い。全く新しいクールなリズム&ビート。全く新しい響きのモーダルなトランペット。

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。従来のモダン・ジャズと、これからの「ネオ・モダン・ジャズ」。意外と2010年辺りが、ジャズのトレンドの分水嶺になっていくのかも知れない。

 
 

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2018年7月13日 (金曜日)

ローチのリーダー作も良いなあ

ドラマーがリーダーのアルバムって、内容の優れたものが多い。まとめ役が合っているのか、ドラムのリズム&ビートで演奏全体をコントロールしたり鼓舞したり出来るからなのか、不思議とカッチリと内容が整った内容のものが多い。として、昨日より、ドラマーがリーダーのジャズ盤を物色している。

このドラマーがリーダーのアルバムにも駄盤が無い。ビ・バップな伝説のドラマー、マックス・ローチである。ローチは人種差別反対の運動家でもあるわけで、「闘士」というのががローチの本性。ローチは、ジャズで人種差別反対の思想的な演奏をガンガンやっていた。いわゆる、メッセージ性のあるスピリチュアルなジャズである。

ローチのリーダー作はそういう意味で「尖っている」ものがほとんど。演奏も激情的なものが多い。しかし、1960年代に入って、インパルス・レーベルでのリーダー作辺りから、整った、安定感のあるアルバムをリリースする様になった。合わせて、演奏を通じてのメッセージが判り易く、伝わり易くなっている。
 

Percussion_bitter_sweet_1

 
Max Roach『Percussion Bitter Sweet』(写真左)。1961年8月の録音。ちなみにパーソネルは、    Booker Little (tp), Julian Priester (tb), Eric Dolphy (as, fl, b-cl), Clifford Jordan (ts), Mal Waldron (p), Art Davis (b), Max Roach (ds, perc), Carlos "Patato" Valdés (congas), Eugenio "Totico" Arango (cowbell), Abbey Lincoln (vo)。

このアルバムは、インパルス・レーベルからのリリース。ローチは目立ちたがり屋で主張する性格。ドラムも結構、フロントの演奏を凌駕するというか、邪魔をするドラミングもあったが、この盤辺りから、しっかりとバックに座って、バンド全体の演奏をコントロールするドラミングに変わってきている。それでも、ドラム・ソロは長い。でも、テクニックがとびきり優秀なので、聴き飽きることは全く無い。

サイドメンの演奏もそれぞれ秀逸で、アビー・リンカーンのボーカルも申し分無い。ジャズ盤紹介本にはまず挙がることの無いアルバムではあるが、聴いてみると、意外と優れた内容の平易なスピリチュアル・ジャズであることにちょっとビックリする。アフロ・キューバンな冒頭の「Garvey's Ghost」から、全体的にアフロ色が濃い。アフロ・アメリカンな演奏内容はとても魅力的である。

 
 

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2018年7月 6日 (金曜日)

カマシの『Heaven and Earth』

「スピリチュアル・ジャズ」と聞いて連想するのは、感情のおもむくままに楽器を吹き鳴らし、精神性の部分を強調したフリー・ジャズのバリエーション、ということ。その激しいアブストラクトな吹奏は、時に「馬の嘶き」にも匹敵し、音楽鑑賞という行為の中では、かなりの苦行を強いられる。つまり、一般的には敬遠されがちなジャンルではあった。

が、最近、その「スピリチュアル・ジャズ」の様相が変わってきている。穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、ゴスペルチックなコーラスなどを導入して、音の響きとフレーズから「スピリチュアル」な面を増幅させ、聴く者に訴求する、という、新しいスタイルの「スピリチュアル・ジャズ」が現れ出でている様に感じている。

Kamasi Washington『Heaven and Earth』(写真左)。その代表的存在が「Kamasi Washington(カマシ・ワシントン)」。そのカマシが実に魅力的な新盤をリリースした。「Earth」盤と「Heaven」盤のCD2枚組の大作である。曲名を眺めていると、宗教的な雰囲気が漂うが、アルバムを聴いてみると、意外とそうでも無い。しかし、内容的には、ニュータイプの「スピリチュアル・ジャズ」である。
 

Heaven_and_earth   

 
音楽的にはクワイアも入っているのだが、さり気なくポップにアレンジされていて、宗教的な雰囲気に傾くことは無い。コルトレーンの様に「真理を探究する」という生真面目さは無いし、哲学的な雰囲気はあっても、宗教的な信念のため、真理に到達するためにジャズをやっている、という堅苦しさは全く無い。よって、1960年代後半の「スピリチュアル・ジャズ」の様に、閉塞感が漂うことも無い。

様々な音楽的要素がごった煮に入っている。ジャズの過去のスタイルがさり気なく総動員されていて、バップあり、モードあり、フリーあり、クロスーバーあり、フュージョンあり、と「ジャズのスタイルの万華鏡」の様で、聴いていてとても楽しい。ラップやユーロ・ビート、ノイズ・ミュージックの要素も散りばめられていて、加えて「台詞」の独白もあったりして、これぞ、他の音楽ジャンルとの融合を得意とする「ジャズの究極の姿」って感じが新しい。

誰かが、現代の「ビッチェズ・ブリュー」だ、って言ってたなあ。それは言い過ぎだとは思うが、それに匹敵する位のインパクトのある内容だとは思う。ロバート・グラスパーとはまた違った新世代ジャズへのアプローチ。1960年代後半の「スピリチュアル・ジャズ」が、21世紀も20年程度入ったところで、再構成されるとは思わなかった。音の要素それぞれには目新しさは無いが、音の様々な要素が融合した姿はやはり「新しい」。今後の展開が楽しみである。

 
 

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2018年6月15日 (金曜日)

ECMでの「ジャズ・ファンク」

1970年代のECMレーベルのアルバムはどれを取っても「ECMの音」が詰まっていて面白い。欧州の香りのする、透明度の高い、エッジの立った音で、限りなく自由度の高いモーダルな演奏、限りなくフリーに近いニュー・ジャズな演奏。ファンクネスは限りなく抑制され、ファンクネスが漂っても限りなく乾いている。明らかに、米国ジャズに相対する「欧州のジャズ」の音世界。

Bennie Maupin『The Jewel In the Lotus』(写真左)。1974年の作品。ECMの1043番。ちなみにパーソネルは、Bennie Maupin (sax, fl, b-cl, vo, glockenspiel), Herbie Hancock (key, p), Buster Williams (b), Billy Hart, Freddie Waits (ds, marimba), Bill Summers (perc), Charles Sullivan (tp)。ダブル・ドラムのセプテット構成。

ジャケットが酷い。ECMらしからぬ酷さ。蓮の花の真ん中にモウピンの横顔。誰のデザインなのか。しかし、このジャケットのイメージを見れば、スピリチュアル・ジャズな内容なのか、と想像する。とくれば、自由度の高いブロウがメインのコッテコテのフリー・ジャズなのか、と思う。ECMだからこそ、それがあり得る。心してCDプレイヤーのスタートボタンを押す。
 

The_jewel_in_the_lotus  

 
フリー・ジャズな演奏がくるか、と身構えていたら肩すかしを食らう。淡いファンク的なビートの上での浮遊感溢れる「印象派の絵画の様な」演奏。ファンク的なビートでも乾いているから、粘ることは無い。爽やかなファンク。ひたすら浮遊する感じのフレーズが続いて「水彩画を見るが如く」である。フロントのモウピンのテナーが印象的なソロを吹きまくることも無い。 

ふとパーソネルを見れば、ハービー・ハンコックが参加している。ECMにハービー、違和感満載である(笑)。そう、この水彩画を見るが如くの管楽器とキーボードの音の重なりは、ハービーの「Speak Like a Child」であり、淡いファンク的なビートの上での浮遊感は「Mwandishiバンド」。欧州の、ECMレーベルでの「ジャズ・ファンク」である。

熱い混沌としたフリー・ジャズでは無い。自由度は限りなく高いが、しっかりと規律を持った、ジャズ・ファンク志向のニュー・ジャズ。浮遊感溢れるリードとブラスとのユニゾン、宝石のように美しく散らばる珠玉のピアノ、そして、メンバー全員による荘厳なアンサンブル。何となく最初は面食らうが、聴き進めるにつれ、とても美しいニュー・ジャズなフレーズに耳を奪われる。不思議な魅力を持った「異色のECM盤」である。

 
 

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2018年5月 5日 (土曜日)

名付けて「ネイチャー・ジャズ」

お久しぶりです。昨日、松和のマスター、南半球はオセアニア、ニュージーランドから帰還しました。17年振りのオセアニア訪問。北島、南島共に豊かな自然の風景が見事。特に南島。氷河が創り出した圏谷、峡湾。このカール、フィヨルドについては日本ではほとんど見られない景観。あってもスケールが桁違い。圧倒的な自然の景観に心の底から癒されました。

さて、ジャズの話。「自然」つながり。1970年代に発生した「ニュー・ジャズ」の範疇の中で、スイング感や4ビート感を強調しない、印象的なフレーズやリズムをメインに、自然の景観や雰囲気を想起させるパフォーマンスが存在します。僕はこういうジャズを勝手に「ネイチャー・ジャズ」と呼んで、ジャズを聴き初めて40年。意外と好んで聴いています。

癒されるんですよね〜。例えば、1970年代〜80年代のパット・メセニー・グループ(PMG)、オレゴンなどが代表的な存在としてあげられます。ニュージーランドで圧倒的な自然の景観に心の底から癒されたこともあり、ちょっとばかし、この「ネイチャー・ジャズ」の好盤を挙げてみたいと思います。
 

Spiritual_nature

 
まずは、我が国のジャズから。我が国のジャズが誇る精鋭ジャズマンが一堂に会して創作した「ネイチャー・ジャズ」の好盤がこれ。富樫雅彦『Spiritual Nature』(写真左)。1975年4月の録音。ちなみにパーソネルは、富樫雅彦 (per,celesta), 渡辺貞夫 (fl,ss,as), 鈴木重雄 (fl,ss), 中川昌三 (fl,bfl), 佐藤允彦 (p,marimba,Glockenspiel), 翠川敬基 (b, cello), 池田芳夫 (b), 中山正治 (per), 豊住芳三郎 (per), 田中昇 (per)。

日本の前衛ジャズ界の先駆者的存在であるジャズ・パーカッション奏者、富樫雅彦のスピリチュアル・ジャズの好盤。アルバム・ジャケットのイメージがそのままの自由度の高い、限りなくフリーなジャズ。当時の日本ジャズの精鋭、現在でのレジェンドの面々が、それぞれの力量を遺憾なく発揮したスピリチュアル・ジャズ。耳に馴染まない、楽器の嘶きやエモーショナルな表現とは全く無縁な「ネイチャー・ジャズ」の世界。

ジャズ評論的には「日本のフリージャズとしては歴史に残るアルバム」だが、音の雰囲気は、オレゴンの音世界に比肩する「ネイチャー・ジャズ」。特にリーダーの富樫雅彦のパーカッションの表現の豊かさは特筆に値する。全体を覆うサウンドの「湿潤」な印象、森林から発生する朝霧のような肌触りの音。日常の音や自然の音を散りばめた様な演奏で日本の風景を見せてくれる様な、侘び寂びのあるパフォーマンスに心から癒される。

 
 

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2018年4月16日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・118

ジャズをずっと聴き続けてきて、時折「これは何だ」と感嘆の声を上げるアルバムに出会うことがある。今から10年ほど前だろうか。フリージャズを聴くコツみたいなものが判る様になって、フリージャズを定期的に聴き、馴れ親しみ始めた頃である。まず、AEC(Art Ensemble of Chicago)に出会う。

そして、そのAECを生んだAACM(The Association for the Advancement of Creative Musicians)を知ることになる。そのAACMの発足メンバーの一人にして初代会長を務めた「ムハル・リチャード・エイブラムス(Muhal Richard Abrams」の名に出会い、その人はジャズ・ピアニストでもあることを知る。

ムハルは1930年生まれ。生きておれば今年88歳。惜しくも昨年10月に逝去している。ビ・バップからハードバップ時代に若き日を過ごした筈なんだが、彼の得意ジャンルは「フリー・ジャズ」。しかし、ムハルのピアノは、安易にフリーに流れることなく、クールな構築美を漂わしつつ、モダン・ジャズ基調なオーソドックスなタッチが個性。
 

Sightsong

 
Muhal Richard Abrams & Malachi Favors『Sightsong』(写真左)。1975年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Muhal Richard Abrams (p,syn), Malachi Favors (b)。デュオ演奏ではあるが、ベースのマラカイ・フェイヴァースも素晴らしいプレイを聴かせてくれるが、この盤はリーダーのムハル・リチャード・エイブラムスのピアノの印象がとても強い。

最終曲「Unitry(dedicated to the Aacm)」、サブタイトルが「AACMに捧ぐ」のこの曲のみが、いかにも1970年代フリージャズといった風情のアブストラクトな演奏。他の曲は、クールな構築美を漂わせたオーソドックスなタッチのピアノがメイン。そのオーソドックスなタッチのピアノが、時にモンクの様に「飛んだり跳ねたり」するフレーズを叩き出したりする。これが面白い。

普通のオーソドックで端正なジャズ・ピアノでは無い。時にモンクの様に、時にマルの様に、飛んだり跳ねたり、叩き続けたりするが、決してフリー・ジャズに流れない。これだけ自由度の高い、オーソドックスなジャズ・ピアノの演奏はなかなか他に無い。こういうピアノ盤が1970年代半ばに録音されていたことにちょっと驚く。メインストリームなジャズはいつの時代にも「生きていた」のだ。

 
 

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2018年3月 9日 (金曜日)

ウルマーのジャズ・ファンク盤

1970年代後半、僕がジャズを聴き始めた頃は、ジャズの世界は「フュージョン・ブーム」真っ只中。FMのジャズの番組も、かかる演奏は基本的にクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズがメインだった。深夜帯の僅かな番組だけが、純ジャズをかけていたなあ。これがまた、聴く耳にグッとくるんだよなあ。懐かしいなあ。

当時、貧乏学生にとって、FMは貴重な音源で、夜な夜なエアチェックしていて、翌日、小型のカセットテレコをカバンに入れて、小さなヘッドフォンで聴いて歩いていた。そう、まだ「ウォークマン」が出現する前の時代のことである(笑)。そんなFMエアチェック時代の1980年に入ってからのこと。突如、ステレオを通じて、ヘッドフォンに思いっきりジャズ・ファンクなエレ・ジャズが耳に飛び込んで来た。

James Blood Ulmer『Are You Glad to Be In America?』(写真)である。1980年のリリース。オーネット・コールマンのバック・バンド出身の ギタリストで「ハーモロディック理論」に影響されたジャズ・ファンク。ジャズ界のジミヘンと言われるJames Blood Ulmer=ジェームス・ブラッド・ウルマーのジャズ・ファンク盤。
 

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それはそれは凄まじいギターである。ハードではあるが、しっかりとファンクネスがドップリ染み込んでいて、リズム&ビートが効きまくっていて、グルーヴ感が半端無い。 オーネット・コールマンのバック・バンド出身のギタリストではあるが、音の雰囲気は、これって「エレクトリック・マイルス」である。エレクトリック・マイルスから、おどろおどろしい、ダークなファンクネスを差し引いて、あっけらかんとしたファンクネスを残したような音世界。

この「脳天気」なエレ・ジャズなところが、ジェームス・ブラッド・ウルマーの真骨頂。誰かが表現した「鉈で薪をガシガシ割っていくような」エレギは爽快感満点。混沌としたエレ・ジャズだけど、ビートがしっかりしているので、破綻したり拠れたりすることは無い。整然とキッチリとグルーヴする。躍動感溢れ、耳に心地良い。これもジャズ、である。

ウルマーのウネウネしたギターに、アリのブリブリなベース、さらにマレイの官能的なホーンが絡んで来て、呪術的なダブル・ドラムが乱入し渾然一体となり、1980年の頃は、これってフリー・ジャズなのかなんなのか、何となく隔靴掻痒な感があったのですが、これはもう、現代でいう、躍動感溢れスリリングな「スピリチュアル・ジャズ」です。 いや〜、今の耳にも爽快に響きます。

 
 

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2017年12月 6日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・114

ファンキー・ジャズにおいて、米国ルーツ・ミュージックの中で切っても切れない音楽要素が「ゴスペル」。米国の黒人教会で歌われている歌唱。誰か一人が歌い出し、皆が総立ちになり、手を叩いたりステップを踏んだりしながら、声を張り上げて全身全霊で歌う様は、生で聞けば圧巻。

この「ゴスペル」の歌唱の中で「コール・アンド・レスポンス」や「コーラスの独特な響き」「躍動するビート感覚」をジャズに織り込むと、不思議とあらまあ、ファンキー・ジャズになるのである。もともと「ゴスペル」の音世界は「ファンクネスがこってこて」なので、この「こってこてなファンクネス」の存在がファンキー・ジャズに不可欠な要素なのだ。

このゴスペルの要素を大々的に導入して、ジャズ・ピアノソロとして1枚のアルバムに仕立て上げた盤が、Cyrus Chestnut『Spirit』(写真左)。ピアノ・トリオでの演奏活動を中心に行なっているチェスナットが、珍しくソロ・ピアノを選択したアルバムです。タイトル通り、この盤ではスピリチュアル〜ゴスペル系の曲を集めたもの。
 

Cyrus_chestnut_spirit  

 
トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイとは異なった、ゆったりしたテンポで、ゴスペル独特のファンクネス溢れる、黒く美しい旋律をシンプルに弾き進めるチェスナットは意外と魅力的です。恐らく、ゴスペルって、チェスナットのルーツ音楽の1つなんでしょうね。実にエモーショナルに、実に厳かに、ゴスペルちっくな曲をソロ・ピアノで弾き進めていきます。

ソロ・ピアノであるが故の静的な厳かな響きと旋律。静謐なスピリチュアル・ジャズ。9曲目のサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のカバーが目を惹きますが、他の曲はゴスペルや賛美歌のオーソドックスな名曲みたいで、ほんと、米国ルーツ・ミュージック好きの私にとっては、もう耳が惚れ惚れしてしまう、印象的なソロ・ピアノ集です。

トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイが身上のチェスナットが、これだけ陰影豊か、硬軟自在、緩急自在にソロ・ピアノを弾き進めるとは思いませんでした。チェスナットのポテンシャル、恐るべしです。こってこてファンキーなゴスペルの要素がてんこ盛りのこの盤、ファンキー・ジャズの最右翼に位置する好盤だと思います。

 
 

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