2019年10月17日 (木曜日)

繊細で印象的でスピリチュアル

このアルバムを聴く度に「これってジャズなんだろうか」と心から思う。リズム&ビートは無い。様々な音の洪水。パーッカッシヴな音、水の流れるような音、印象的でスピリチュアルなギターの響き。語りかける様なピアノの音。音の全てが即興演奏。

即興演奏をメインとしているので、ジャズと言えばジャズだが、音の響きとしては「現代音楽」の響きが蔓延していて、聴いていて「ジャズなのか」と思ってしまう。自然の音が蔓延する。ビート感は一切無い。心に響く様なパーカッションの音。この盤は「静的で繊細な」スピリチュアル・ジャズ。

Egberto Gismonti『Dança Das Cabeças』(写真)。邦題「輝く水」。ブラジルを代表するマルチ・インストゥルメンタリスト、エグベルト・ジスモンチの1976年録音のECMデビュー作。ちなみにパーソネルは、Egberto Gismonti (8-string g, p, wood fl, vo), Naná Vasconcelos (perc, berimbau, corpo, vo)。ジスモンチとヴァスコンセロスの即興演奏、そして多重録音。
 
 
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ナナ・ヴァスコンセロスが「納得の参加」。繊細で印象的でスピリチュアルなパーカッションの音は、ナナ・ヴァスコンセロスの仕業。納得である。ジスモンチは、ギターとピアノ、フルートを担当する。これまた、繊細で印象的でスピリチュアルな音の響き。そうか、この盤の音は、静的で繊細なスピリチュアルな音なのだ。

即興演奏がLPの片面、約25分続く。ビートの無い、繊細で静的で印象的でスピリチュアルな音の世界。飽きるかなと思いきや、決して飽きない。25分、一気に聴き切ってしまう。繊細で静的な音の中に、仄かに漂う歌心。この歌心が漂う繊細で静的なフレーズが聴く者を決して飽きさせない。

欧州のニュー・ジャズの老舗、ECMレーベルからのリリースなので「ジャズ」と決めつけるのは野暮ってもんだ。しかし、この盤の繊細で静的なパーカッションは、ニュー・ジャズ的なビートを仄かに感じさせてくれる。全編、即興演奏。仄かに漂うビート。基本、この盤に詰まっている音は「ニュー・ジャズ」な音と解釈して良いだろう。30年以上聴き続けていますが、決して飽きません。好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年10月15日 (火曜日)

テテの個性が集約された好盤

スペインのカタルーニャ地方が不穏である。カタルーニャ独立派幹部に長期禁錮刑。バルセロナで抗議デモ。カタルーニャ地方の事情を察すれば納得できる出来事ではある。何とか円満に解決する方策は無いものだろうか。

スペイン、カタルーニャ地方出身のジャズマンと言えば「Tete Montoliu(テテ・モントリュー)」。盲目のピアニスト。1933年生まれ。1997年、64歳で没。生まれた時から盲目であった。テテはTHE Conservatori Superior de Musica de Barcelona音楽学校でジャズと出会う。彼のピアノ・スタイルは、特にアメリカのジャズピアニストのアート・テイタムに影響を受けている。

テテのピアノは「超絶技巧」。超光速「速弾き」。限りなく端正なフレーズの連続。破綻は全く無い。確かにアート・テイタムを彷彿とさせるが、テイタムの超絶技巧な弾きっぷりよりも、より歌心が溢れている。スペインの出身であるが、スパニッシュな要素は殆ど無い。フレーズは限りなく硬質で、あくまで「クール」。それでいてスインギー。
 
 
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Tete Montoliu『Tete!』(写真左)。1974年5月28日の録音。SteeplechaseのSCS1029番。ちなみにパーソネルは、Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert 'Tootie' Heath (ds)。この盤でのテテのパートナーは、これまた「調節技巧」ベーシスト、ペデルセン、これまた「職人芸」ドラマー、アルバート・ヒース。

胸の空くような快演の数々。冒頭の「Giant Steps」は、かのコルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」の名曲なんだが、テテはピアノで、光速「シーツ・オブ・サウンド」を弾き切ってみせる。演奏が終わって思わず「スタンディング・オベーション」。3曲目の「Body and Soul」も高速フレーズの連続。こんなに硬質でクールでスクエアにスインギーな「Body and Soul」は聴いた事が無い。

5曲目の「I Remember Clifford」は絶品。硬質でクールで端正なタッチで、情感溢れるバラード曲を弾き切ってみせる。クールでスクエアなスイング感の中に、仄かに漂う歌心と情感。これがテテの真骨頂。テテのピアノの個性が集約された名演である。

このアルバム『Tete!』は、テテの個性を体感するに最適な好盤である。「カタルーニャの秘めた激情」。
 
 
 
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2019年10月 1日 (火曜日)

ポール・ブレイの未発表ライヴ盤

キース・ジャレットが「スタンダーズ」を解散して5年になる。キースの「スタンダーズ」の様な、トリオを構成する達人3人による、切れ味良く高い透明度、そして、限りなく自由度の高いインタープレイをメインとした、ECMレコードらしい、ピアノ・トリオのアルバムが途絶えて5年になる。寂しいなあ、と思っていた矢先、こんなライブ盤がリリースされた。

Paul Bley Trio『When Will the Blues Leave』(写真左)。1960年代から親交の深い「盟友」三人による、1999年3月にスイスのルガーノ-トレヴァで録られていた未発表ライヴ音源。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Gary Peacock (b), Paul Motian (ds)。達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイ。

ピアノ・トリオの「間を活かした」インプロビゼーションに最適な、ECM独特の深く透明度の高いエコーがタップリかかって、達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイの音を増幅し、それぞれの楽器の音をクッキリと浮かび上がらせる。特に、ECMレコードの創る音は、ピアノのポール・ブレイの音にピッタリ。
 
 
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ポール・ブレイのピアノは、透明感と清涼感に溢れ、クリスタルな響きのピンとエッジの立った硬質なタッチ。切れ味良く、しっかりとピアノが鳴っているなあ、と感じる、芯のしっかり入った、明確な音の響き。ああ、このピアノはECMレコード御用達のピアノの音だし、ECMレコード向きの音の響き。叩き出されるフレーズも、どこか「キースっぽい」、クラシック・ピアノの様な独特の響きを底に宿している。

ベースのピーコックのテクニックが素晴らしい。ほとんどフリーなんだが、しっかりと伝統のジャズの雰囲気をキープしたアコベ。アドリブ・フレーズは創造性に富んで、柔軟な弾きっぷり。ピーコックしか出せない自由なベースライン。モチアンのドラムも同様に創造性に富む。リズム&ビートをしっかりとキープしながら、自由度の高いドラミングを披露してくれる。モチアン唯一六のドラミング。

ピアノでリーダーのポール・ブレイは1932年、カナダはモントリオールの生まれ、2016年、84歳で逝去。ベーシストのゲイリー・ピーコックは1935年、米国アイダホ州生まれ、まだまだ現役。ドラムのポール・モチアンは1931年、米国ペンシルヴェニア州の生まれ、2011年、80歳にて逝去。トリオの3人中、2人が鬼籍に入っている。が、この残された音源の内容は素晴らしい。久々のECMレコードらしいピアノ・トリオ盤の出現である。
 
 
 
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2019年9月28日 (土曜日)

ECMの「イスラエル・ジャズ」盤

欧州ジャズの老舗レーベルと言えば「ECMレーベル」。1969年にマンフレート・アイヒャーが創立。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」。僕はジャズを聴き始めた学生時代、大変にお世話になったレーベルである。

Avishai Cohen & Yonathan Avishai『Playing The Room』(写真左)。ECMより、つい先日リリースの新盤。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p)。ベーシストではない、トランペッターのアヴィシャイ・コーエンとピアニスト、ヨナタン・アヴィシャイとのデュオ盤。デュオを構成する奏法のラスト・ネームを見ると、これは「イスラエル・ジャズ」であると期待する。

ECMらしい静的でクールな、即興ベースのデュオ。限りなく静謐で豊かなエコーがそのクールさを増幅する。このジャズは「ニュー・ジャズ」と呼んで良いだろう。スイング感は皆無、ファンクネスは皆無。しかし、測距句演奏をベースとしたデュオ演奏は明らかに「ジャズ」。底を流れるリズム&ビートは堅実なオフビート。自由であるが「フリー」では無い。限りなく自由度の高い「モーダル」なデュオ演奏。
 
 
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全編に渡って、典型的な「イスラエル・ジャズ」の音が詰まっている。出てくるフレーズがちょっとユニークで、北欧的でありながら、どこかエスニックでどこか中東風な響きがする。自由度が高く、エコー豊かなアコースティックな響き。そこはかとない中近東の哀愁感を帯びたトーンが見え隠れする。今までのジャズには全く無い響き。特に、この番ではそんな「イスラエル・ジャズ」の個性をシンプルなデュオ演奏が際立たせる。

このデュオを構成する二人は同じ中学に通っていたそうだ。ティーンエイジャーの頃からテル・アヴィヴでともにジャズを探求してきて、音楽的にも30年以上ずっと長い交友関係を築いてきた、そんな濃いリレーションシップが、これだけの「あうん」の呼吸を生み出し、適度な緊張感溢れる演奏を実現し、僕達を最後まで飽きさせないのだろう。

ちなみに、このアルバムの演奏については、ほとんど一発録音だったそう。そういう面でも「イスラエル・ジャズ」のレベルは高い。最近、イスラエル・ジャズに遭遇する機会が多い。イスラエル・ジャズは、老舗本国の米国、欧州について、新たなジャズの聖地になる位の勢いでメジャーな存在になってきている。もはや、イスラエル発のジャズは無視出来ない存在になってきている。
 
 
 
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2019年8月19日 (月曜日)

ウォルドロンの「黒い情念」

Enja(エンヤ)・レーベルの看板ピアニストは数人いるが、僕が一番、衝撃を受けたピアニストは「マル・ウォルドロン(Mal Waldron)」。タッチは深く、それでいて流麗。右手の奏でるフレーズの基本はマイナーでブルージー。その左手は印象的な重低音のビートを叩き続ける。つけられたニックネームが「黒い情念」。右手のマイナーフレーズ+左手の重低音ビートが「黒い情念」の核。

ENJA2004番の Mal Waldron『Black Glory』(写真左)と、ENJA2002番の Mal Waldron『Plays the Blues』(写真左)。この2枚は、どちらも、1971年6月29日、ドイツはミュンヘンの「Domicile」でのライブ録音。1971年に2枚のLP盤に分けてリリースされている。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jimmy Woode (b), Pierre Favre (ds)。

ウォルドロンとウッデは米国ジャズマンの欧州移住組。ファヴレはスイス出身のドラマー。いかにも欧州レーベルらしいパーソネル。ピアノ・トリオ構成であるが、冒頭から出てくるウォルドロンの左手、そして、ウッデのアコベ。それぞれの奏でる重低音が、このピアノ・トリオは「耳当たりの良い、カクテル・ピアノなトリオ演奏」では全く無いことを予兆させる。この重低音のお陰で、聴く方にも嫌が応にも緊張感が高まる。
 
 
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ウォルドロンのピアノは、現代音楽を想起させる、ちょっと取っ付き難い、硬い頑強なピアノ。底に流れるブルージーな雰囲気が、明確に「ジャズ」を感じさせてくれる。そして、左手の重低音ビートが独特の個性。少なくとも、スタンダード曲を耳当たり良く聴かせてくれる「カクテル・ピアノなトリオ演奏」では絶対に無いことを、ウォルドロンのピアノ・タッチを聴いて確信する。
 
このウォルドロンの左手の重低音ビートとの相性抜群なのが、ウッデの思いっ切り太くてブンブン響くアコースティック・ベース。この2人の奏でる重低音が、このトリオ演奏を唯一無二のものにしている。そんな中、ドラムのピエール・ファーヴルは「健闘」している。一生懸命叩いている。決して耳障りでは無い。演奏全体の雰囲気はブルージーではあるがファンクネスは希薄。欧州ジャズらしい、切れ味と重心の低い響きに満ちたトリオ演奏である。
 
もともとEnjaレーベルを立ち上げたホルストとマティアスは、このウォルドロンのアルバムを自分達の手で作りたいと考えて、レーベルを立ち上げたとか。その念願が叶った最初の成果がこの『Black Glory』。聴けばそのホルストとマティアスの想いがよく理解出来る。このウォルドロンのピアノ・トリオは唯一無二。確かに、絶対に記録に残しておきたい、と強く思わせてくれる強烈な個性である。
 
 
 
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2019年8月15日 (木曜日)

ブラックストンの本質を聴く

SteepleChase(スティープルチェイス)レーベルは「北欧のブルーノート」と呼ばれる。カタログを眺めていると、確かに様々なキーとなるジャズマンの演奏を録音している。しかも、それぞれのアルバムで、そのジャズマンの個性が判り易くなる様な、個性が活性化される様なプロデュースを施している。当然、良い内容のアルバムが目白押しである。

Anthony Braxton『In the Tradition』(写真左)。SCS1015番。1974年5月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Anthony Braxton (as, bcl), Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Albert Heath (ds)。アルト・サックス+バスクラのフロント1管にピアノ・トリオがリズム・セクションのカルテット構成。

リーダーのブラックストンは、フリー・ジャズの猛者。フリーキーに吹き、アブストラクトに吹く。本来は自作の曲を心ゆくまで吹きまくらせたい訳だが、ここではそうはプロデュースしない。フリー・ジャズの猛者だからこそ、伝統的なスタンダード曲を吹く。まず、その企画性だけで、このアルバムは「買い」である。
 
 
In-the-tradition-vol1  
 
 
ブラックストンは必要最低限の決め事、スタンダード曲の旋律をどこかにしっかりとおる混ぜる、という決め事を守りつつ、限りなくフリーにアブストラクトの吹きまくる。これが実に味がある。スタンダードを限りなくフリーにアブストラクトに崩していくと、こういう表現になるのか、と思わず感心して聴き込んでしまった。
 
そして、リズム・セクションに意外性が溢れていて、思わず心から感心した。ピアノもベースもドラムも「純ジャズの人」である。ブラックストンとは「水と油」の様な個性の持ち主。これ、どうやってブラックストンのバックでサポートすんの、と不安に思っていたが、この盤を聴いてビックリ。一流のジャズメンって、応用力、適用力、柔軟性が非常に高いんやなあ、と改めて思い知った。
 
ブラックストンについては、この盤のブロウを聴いて、彼の能力の高さを確信した。チックとのサークルでのブロウはちょっと考え過ぎか、と思っていてたが、この盤ではブラックストンは伸び伸びとフリーを、アブストラクトを吹いている。恐らく、バックのリズム・セクションが純ジャズ出身で、フリーの猛者からすると自由度が高かったのではないか、と睨んでいる。つまりはプロデュースの勝利である。
 
 
 
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2019年7月22日 (月曜日)

ヤロン・ヘルマンのトリオ盤

この週末からとにかく湿度が高い。今日などは朝からもう霧雨が軽く振っている状態で体感湿度は100%。もともと湿度の高いのは大の苦手である。もうこの3日間、体は怠いし機嫌は麗しくなく、いろいろやる気が起きない。それでも音楽は聴くんだから、やっぱり音楽が好きなんでしょうね。なんて、つまらないことを考えたりする。この湿気、なんとかならんか(笑)。

Yaron Herman Trio『Songs of the Degrees』(写真左)。今年2月のリリースの新盤である。イスラエル出身のピアニスト、ヤロン・ヘルマンの通算8作目、ブルーノート3作目。ピアノの音が凄く美しい。タッチも硬質ではあるが耳に付かない。ちなみにパーソネルは、Yaron Herman (p), Sam Minaie (b), Ziv Ravitz (ds)。

リーダーのピアニスト、ヤロン・ヘルマンは、在フランス在住のフランス系イスラエルのジャズ・ピアニスト。1981年生まれだから、今年で38歳になる。若手から中堅に差し掛かる、テクニック的にも精神的にも充実してくる年頃。ヘルマンのピアノは、端正で耽美的で自由度が高い。キース・ジャレットやブラッド・メルドーらの流れを汲んだスタイルである。
 
 
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しかし、出てくるフレーズがちょっとユニークで、北欧的でありながら、どこかエスニックでどこか中東風な響きがする。自由度が高く、エコー豊かなアコースティック・ピアノの響きは、まるで「ECMレーベル」のようでもある。とはいえ、さすがイスラエル・ジャズ、決してコピーでは無く、今までのジャズの中でありそうで無い「個性的なピアノ」である。
 
このアルバムは「コンセプト・アルバム」。ヤロン・ヘルマンいわく、この盤って「リスナーに全11トラックを通して聴いてもらって、ヤロンのこれまでの人生を感じてほしいというオートバイオグラフィー的作品」だそうだ。まあ作者がそう言っているのだから、そうなんだろう。しかし、そんなことは関係無しに、このピアノ・トリオ盤は楽しめる。

最初、この盤を聴いた時は、ジャケット・デザインとも相まって、北欧ジャズかと思った。が、北欧ジャズは伝統的に響きの基本は同じなのだが、この盤は少し北欧ジャズの音とは違うなあ、と思いたち、エスニックでどこか中東風な響きに出会って、どこのジャズなのか、全く判らなくなった。解説を読んでみると、イスラエル出身のヤロン・ヘルマンのリーダー作の由、至極納得である。

 
 
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2019年6月 7日 (金曜日)

北欧ジャズの端正で硬質なバップ

昨日、北欧ジャズについて「透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味。北欧ジャズは世の中に現れ出でてより、現代まで、この音の傾向をしっかりと引継ぎ、維持している。」と書いた。とは言え、北欧にジャズが根付いた時代、最初からいきなり、耽美的で凛とした音世界が存在した訳では無い。

Bent Axen『Axen』(写真左)。録音時期は、Tracks A1 to A4が1959年12月29日の録音。Tracks A5, B1 to B5が1961年1月17日の録音。パーソネルは、Bent Axen (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b, tracks: A5, B1 to B5), Ole Laumann (b, tracks: A1 to A4), Finn Frederiksen (ds), Bent Jædig (ts, tracks: A1 to A4), Allan Botschinsky (tp, tracks: A1 to A4)。
 
デンマークのジャズ・レーベル「SteepleChase」からのリリース。サブタイトルが「Bent Axen Trio, Quintet & Sextet」。3種類の編成で聴かせてくれるのは「北欧のハードバップ」。どの曲を聴いても「バップ」だらけ。しかし、米国のバップのコピーでは無い。ファンクネス皆無、飛び散る汗と煙は全く見えず、クールに燃える、端正で硬質なハードバップ。決して乱れることは無く、決して暴走することは無い。
 
 
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リーダーのベント・アクセンのピアノは耽美的なバップ・ピアノ。どこかビル・エヴァンスの響きがする。端正に硬質に透明度を上げたビル・エヴァンス。特にトリオの演奏にその傾向が顕著。いわゆる「北欧ピアノ・トリオ」の原型がここにある気がした。ストイックにバップ・ピアノを追求する修道僧のような演奏。クールだが熱く濃厚な節回しが魅力。

それぞれのサイドマンの演奏を聴いていると、米国のハードバップを良く研究し、確実に自らのものに昇華しているなあ、と感じる。特にリズムセクションにその傾向が顕著。ベースはチェンバースの様であり、レイ・ブラウンの様でもあり。ドラムはブレイキーの様でもあり、フィリージョーの様でもあり。でも、コピーするのでは無く、そのエッセンスを取り込んで、欧州ジャズっぽい音に昇華している。
 
北欧ジャズも、先ずはモダン・ジャズの基本である「ハードバップ」をしっかり押さえていた。その記録がこのベント・アクセンのリーダー作『Axen』である。さすが「SteepleChaseレーベル」である。実に素敵な北欧ジャズの記録を残しておいてくれた。北欧ジャズの「端正で硬質なバップ」演奏である。
 
 
 
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2019年6月 6日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・148

北欧ジャズについては、僕はECMレーベルを通して体験した。透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味。北欧ジャズは世の中に現れ出でてより、現代まで、この音の傾向をしっかりと引継ぎ、維持している。
 
20年前辺りまでは、なかなか欧州のジャズCDが日本にまで流れてくることが少なく、ECMレーベル以外から北欧ジャズのアルバムを聴くことは難しかったが、ネットショッピングやストリーミング配信の発達によって、様々なレーベルの北欧ジャズの好盤が入手可能になった。有り難いことである。

Thomas Clausen『Psalm』(写真左)。1994年6月、デンマークはコペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Thomas Clausen (p), Mads Vinding (b), Alex Riel (ds)。ビル・エヴァンスからの影響を強く感じる耽美的でリリカルなクローセンのピアノ。そこに強靱でしなやかなヴィンディングのアコベが絡み、柔軟度の高い堅実堅牢なリールのドラミングが演奏全体をグッと引き締める。典型的な北欧ピアノ・トリオな音世界。
 
 
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Storyville Recordsからのリリース。Storyville Recordsは、ジャズの熱烈なファン、Karl Emil Knudsen(カール・エミール・クヌセン) が、1952年、コペンハーゲンにて創立した欧州最古のインディペンデント・ジャズレーベルである。こういう北欧ジャズ盤が入手出来る様になったことは実に喜ばしいこと。
 
冒頭の「Salme」の出だしの透明度の高い、深いエコーを伴ったクローセンのピアノと、これまた切れ味抜群で印象的なエコーを伴ったリールのシンバル音を聴くだけで、「これは北欧ジャズやな」とはっきり判る。それだけ、この北欧ピアノ・トリオ盤、始まりから最後まで、どこから聴いても典型的な「北欧ジャズ」の音が詰まっている。
 
モーダルな展開がメインで、限りなく自由度が高く、躍動感が抜群。ファンクネスは皆無、スイング感も希薄なんだが、しっかりと4ビートも見え隠れして、ハードバップとは全く異なるアプローチなんだが、これもジャズである。いわゆる「欧州のニュー・ジャズ」。米国発祥のジャズとは全く個性が異なる北欧ジャズ。聴けば聴くほどその奥深さは「底無し」である。
 
 
 
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2019年6月 5日 (水曜日)

耽美的で硬質で透明感溢れる音

ジャズを聴き始めた頃、ECMレーベルの存在は僕にとって福音だった。4ビートのスインギーなハードバップも良い。モーダルな自由度の高い新主流派の硬派なジャズも良い。ただ、もともとクラシック・ピアノから入ったところがあるんで、ECMレーベルの音を聴いた時、これは、と思った。肌に合うというのか、感覚に合うというのか、すっと入ってきた。
 
いわゆる「ニュー・ジャズ」な音である。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。これを初めて聴いた時、かなりビックリした。というか「ジャズって広いなあ」って思った。なんだか安心して、それ以来、ジャズが大のお気に入りである。

Art Lande『Rubisa Patrol』(写真左)。1976年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Lande (p), Mark Isham (tp, flh, ss), Bill Douglass (b, fl, b-fl), Glenn Cronkhite (ds, perc)。Art Lande(アート・ランディ)は米国出身のジャズ・ピアニストだが、音的には欧州ジャズの雰囲気が色濃い。耽美的で硬質で透明感溢れるフレーズが個性。つまりは、とてもECMらしいメンバー構成である。
 
 
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出だしの「Celestial Guests / Many Chinas」を聴けば、実にECMらしい透明感溢れるピュアーなサウンドである。ECM独特の深みのあるエコーも良い。ビル・ダグラスの官能的なフルートが印象的。そして、マーク・マーク・アイシャムの透明感溢れるブリリアントなトランペットも印象的。フロントの2人の出す音がもう完璧に「ECMレーベルらしい」音なのだ。
 
耽美的で硬質で透明感溢れるランディのピアノもエモーショナルで印象的。静かに押し寄せる様な情感溢れるピアノもあれば、ドラマティックな展開のピアノもある。それでも全てのピアノに共通するイメージは「耽美的で硬質で透明感溢れる」、いわゆるECMレーベルらしい音なのだ。
 
これほどまでにECMレーベルらしい音を押さえた盤もそうそうに無い。出だしの「Celestial Guests / Many Chinas」から、ラストの「A Monk in His Simple Room」まで、徹底的にECMレーベルの音世界が詰まっている。欧州的なフレーズから東洋的なフレーズまで、収められたフレーズもいわゆる「多国籍」で、これもECMレーベルらしい音世界と言えるでしょう。「ECMレーベルらしいアルバム」としてお勧めの一枚。
 
 
 
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