2020年11月29日 (日曜日)

ECMらしいエレ・ジャズです

ECMレーベルは欧州ジャズの老舗レーベル。ECMは「Edition of Contemporary Music」の略。創立者はマンフレート・アイヒャー。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」=アイヒャー自らの監修・判断による「美意識」を、限りなく静謐で豊かな「ECMエコー」を伴って表現した「ECM独特の音世界」。

Michael Naura『Vanessa』(写真左)。ECMの1053番。 ちなみにパーソネルは、Michael Naura (el-p), Klaus Thunemann (bsn), Wolfgang Schlüter (vib, mar, per), Eberhard Weber(b), Joe Nay(ds)。バズーンあり、ヴァイブありのおおよそ従来の純ジャズとは思えないパーソネルが、いかにもECMレーベルらしい。

この盤、パーソネルがここまで「ECMらしい」と、当然、音自体がとても「ECMらしい」はず。ECMレーベルでしか聴けない、即興演奏を拠り所にした「ニュー・ジャズ」の音が詰まっている。リズム&ビートに「4ビート」は無いし、スインギーな感覚は全く無い。それだけだと「ジャズ」にならないのだが、即興演奏のアプローチがまさに「ジャズ」らしい。
 
 
Vanessa  
 
 
均等に刻まれた8ビートなフレーズであったり、無調なフレーズだったり。現代音楽に近い、はたまた、初期のエレ・マイルスに近い、とてもECMらしいエレ・ジャズである。そして、限りなく静謐で豊かな「ECMエコー」がかかった音が、これまた「ECMらしい」。演奏内容は8ビートのエレ・ジャズだったり、フリーなジャズだったり。ECMお得意のニュー・ジャズな演奏が心地良い。

Michael Naura(ミハエル・ナウラ)は、リトアニア出身のピアニスト。この盤では彼独特のエレピの弾きっぷりがとても効果的。新しいジャズ、という感覚を上手く増幅させている。クラウス・トゥネマンのバズーンがとてもユニークな音色で独特の響きを漂わせ、ヴォルフガング・シュリュターのヴァイブは、硬質でクリスタルな音色で、切れ味の良い澄んだフレーズを供給する。

リズム隊については、エバーハルト・ウェーバーのベースが良く効いているし、ジョー・ネイのドラムは硬軟自在、緩急自在。ナウラのエレピの音をしっかりとサポートし、その魅力を増幅させているところは見事。ジャケット・デザインも含めて、この盤はその内容、音についても、とても「ECMらしい」。この盤については、ECMレーベルでした制作できないものだろう。「らしい」好盤である。
 
 
 

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2020年11月 3日 (火曜日)

テリエ・リピダルの陰謀・謀略

Terje Rypdal(テリエ・リピダル)。ノルウェー出身、ECMレーベルの看板ギタリスト。彼のキャリアにおいて、2〜3枚の例外はあるが、リーダー作については、ほぼECMレーベルからのリリースになる。リピダルは1947年生まれ。今年で73歳。初リーダー作が1968年なので、ジャズ・ギタリストとしてのメジャーなキャリアとしては52年。半世紀以上に渡って活躍する「レジェンド級」のギタリストである。

リピダルのギターについては、恐らく1〜2分聴き続けたら絶対にリピダルだと判るくらい、とても個性的な音である。幽玄で浮遊感のあるフレーズを多用した「ニュー・ジャズ」志向の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう面では欧州ジャズ独特といえる。ジャズ・ギターというよりは、ロック・ギターと言った方が良いか、プログレ・ギタリスト的な音を出す。

浮遊感のある、ビートに乗らない、ロングトーンでフリーな独特とフレーズ。ジャズなのか、ロックなのか、どちらかにしろ、と詰問されたら、やはり「ジャズ」と答えてしまう。そんな不思議な音を持ったギタリスト。そして、リピダルは、半世紀を越えるメジャーなキャリアの中で「決してブレない」。ECMレーベルでのメジャー・デビュー盤『Terje Rypdal』の音が、マンネリに陥らず、ずっと今まで続いている。これって意外と凄いことだと思っている。
 
 
Conspiracy-terje-rypdal
 
 
Terje Rypdal『Conspiracy』(写真左)。2019年2月、ノルウェーはオスロのRainbow Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g), Ståle Storløkken (key), Endre Hareide Hallre (b), Pål Thowsen (ds, perc)。プロデューサーは当然、マンフレッド・アイヒャー。ノルウェー出身のメンバーで固めた、リピダルの約20年ぶりのスタジオ録音作品になる。

このリピダルの新作は、リピダルのリピダルらしい個性満載。往年のメジャー・デビュー当時の、幽玄で浮遊感溢れるサステインの効いたエレクトリック・ギターが再現されている。しかし、フレーズの作りが現代的で、その音はノスタルジックでは無い、現代の新しい響きのするもの。キーボードの参加が目新しく、ハモンド・オルガンの音がリピダルのエレギに溶け込み、創造的で耽美的なユニゾン&ハーモニーを奏でる様は今までにリピダルには無い要素。

アルバム・タイトルの「Conspiracy」は「陰謀・謀略」の意。この盤を聴くと、リピダルはまだまだ深化している。この個性は全くブレていないが、この盤で聴かれる音はノスタルジーとは全く無縁。初期のリピダルの個性を現代のニュー・ジャズの要素と合わせてリコンパイルし、新しいリピダルの音世界を創造しようとしている様に感じる。それが「陰謀・謀略」であるなら、聴き手の我々としては全くウエルカムである。
 
 
 

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2020年10月16日 (金曜日)

リーブマンの考えるエレ・ジャズ

ECMレーベルは欧州ジャズ・レーベルの老舗。スインギーな4ビート・ジャズには目もくれず、「ニュー・ジャズ」と言われる、即興演奏をメインとした新しい表現のジャズ、例えば、モーダルでファンクネスレスの即興ジャズや、モーダルなエレ・ジャズ、それからフリー・ジャズ。クラシック風の演奏でも即興演奏であれば、ECMはニュー・ジャズの範疇として扱った。このスタンスは今でも変わっていない。

Dave Liebman『Lookout Farm』(写真)。ECMの1039番。1973年10月10ー11日の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Liebman (ss, ts, alto-fl), John Abercrombie (g), Richard Beirach (p, el-p), Frank Tusa (b, el-b), Jeff Williams (ds), Armen Halburian (perc), Don Alias (conga, bongos), Badal Roy (tabla), Steve Sattan (cowbell, tambourine), Eleana Sternberg (vo)。

Dave Liebman(デイヴ・リーブマン)は、米国のサックス奏者。1946年生まれ。未だ現役、頼もしい限りである。ニュー・ジャズ志向のサックス奏者で、1970年代初期、NYのロフト・ジャズ・シーンで活躍、マイルス・ディヴィスのグループには1970年から1974年まで在籍した。このECM盤は、まだマイルスのグループに在籍していた時の録音である。
 
 
Lookout-farm  
 
 
この盤の内容はECMレーベルの音とは少し異なる「エレ・ジャズ」。雰囲気はまさに、当時のマイルスのエレ・ジャズの音世界なのだが、ファンクネスは皆無。マイルスのエレ・ジャズから、ファンクネスを抜き取って、モーダルな演奏要素を前面に押し出した様な音作り。いわゆる、リーブマンがマイルスのエレ・ジャズを解釈した「リーブマンの考えるエレ・ジャズ」がこの盤に詰まっている。

共演メンバーは、ECMレーベルが抱える、当時の「欧州のニュー・ジャズ」のメンバーが中心。特に、アバークロンビーのアコギとバイラークのエレピが良い音を出している。この2人の音がいかにも「ECMのニュー・ジャズ」らしい音を出していて、この盤の「音世界の志向」を決定付けている様に感じる。フランク・トゥサの弾く「うねる重低音ベース」が欧州的なグルーヴ感を増幅する。

リズム隊が強烈で、コンガ、ボンゴ、そして、タブラ、カウベル、タンバリンを活用して、まるでマイルスの「ビッチェズ・ブリュー」のリズム&ビートから、ファンクネスを差し引いたものが、この盤で表現されているかのようだ。聴けば「リズム&ビートの効いたエレジャズ」というECMらしくない内容ではあるが、ECMでないと出し得ない、デイブ・リーブマンがECMレーベルで表現した「リーブマンの考えるエレ・ジャズ」。一聴に値する内容である。
 
 
 

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2020年9月 1日 (火曜日)

魅力的な新主流派カウエルです

ブルーノート・レーベルやECMレーベルなど、ジャズの老舗レーベルのカタログの中には、そのレーベル「ならでは」のミュージシャンが、アルバムが存在する。特に、ECMレーベルには、その「ならでは」のミュージシャンの存在がユニーク。どう考えたって、他のレーベルでは絶対に制作しないであろうアルバムを何気なく制作する。ECMレーベルには、独特の「音のポリシー」が存在する。

Stanley Cowell『Illusion Suite』(写真左)。1972年11月、NYのSound Ideas Studioでの録音。ECM 1026番。ちなみにパーソネルは、Stanley Cowell (p, rodes), Stanley Clarke (b), Jimmy Hopps (ds)。ピアノ・トリオの編成。ECMレーベルでは意外と珍しい「NY録音」。演奏するトリオの3人が皆、米国出身でNYを中心に活動していたからか、と思われる。

スタンリー・カウエル自身、3枚目のリーダー作になる。邦題は「幻想組曲」。基本的にカウエルのピアノは「新主流派」に分類される。が、そのピアノはこってこての「モード奏法」では無く、モードもあれば、スピリチュアルもあり、フリーもあれば、現代音楽の様なニュー・ジャズな要素もあり、意外と多様性が個性の「新主流派」である。
 
 
Illusion-suite  
 
 
カウエルのピアノと電子ピアノ(多分、フェンダー・ローズと思われる)は、理知的で流麗で端正、かつ躍動感溢れるもの。クリアで知的なフレーズが印象的で、米国風では無い、どこか理屈で積み上げた様な欧州風なモード演奏が面白い。恐らく、ECMの総帥、アイヒヤーはその「欧州風」な音に着目したのではないか。カウエルのピアノは明らかにECM向きなのだ。

そして、チック・コリアの盟友ベーシスト、スタンリー・クラーク(略称スタン)のベースも聴きもの。ここではアコベを使っているが、このアコベのプレイが凄い。骨太でソリッドで切れ味の良い、ド迫力の重低音でブンブン唸るが、しっかりとメロディアスなベース音。しかも、テクニックは最高。スタンがこんな凄いアコベを弾くなんて。第一期RTFのスタン再来。いやほんと、凄いアコベである。

1980年代以降は教育者としての活動がメイン、リーダー作はほぼスティープルチェイス・レーベルからのリリースに留まったが、1970年代のカウエルのピアノは実に個性的。フュージョン・ジャズ全盛時に、知的なモード・ジャズ。実にクールなピアノで、ちょっとマニアックな存在ではあったが、一度聴けば「その虜になる」。そんな魅力的な新主流派カウエルである。
 
 
 

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2020年8月25日 (火曜日)

現代音楽テイストなECMジャズ

そのレーベルの名は「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」。

Tom van der Geld & Children At Play『Patience』(写真左)。1977年5月の Tonstudioでの録音。ECMの1113番。ちなみにパーソネルは、Tom Van Der Geld (vib, perc), Roger Jannotta (fl, oboe, b-cl, ss, bs), Bill Elgart (ds, perc), Kent Carter (b)。ボストン出身のジャズ・ヴィブラフォン奏者Tom Van Der Geldの初リーダー作。

この盤に詰まっている音は、実にECMレーベルらしい。聴けば即興演奏なのは判る。ヴァイヴと管だけが目立つようだが、パーカッションとベースもしっかり参入した高度なインタープレイが素晴らしい。しかし、スインギーなリズム&ビートは存在しない。時々スインギーなビートも供給されるが、基本的には現代音楽風の打楽器の無調のパフォーマンス。これがジャズか、と問われれば、狭義の意味では「ジャズでは無い」。
 
 
Patience  
 
 
しかし、即興演奏という切り口とリズム&ビートの存在、使用楽器の類似性を勘案すると、これは「ジャズである」。この現代音楽のテイストがしっかり入った即興演奏は、その録音の個性と独特の深いエコーと相まって、これが「ECMの考える欧州ジャズ」の好例と言える。この盤の音世界は他のレーベルでは大凡聴けることは無い。ECMレーベルだからこそ「ジャズ」として成立するのだ。ECMの総帥、アイヒャーのプロデュースの成せる技だろう。

この盤でのECMレーベルならではの「ニュー・ジャズ」の音世界。高度なテクニックに裏打ちされた、レベルの高いインタープレイが展開される。時に幽玄に、時にアブストラクトに、時にクールに、とても自由度の高い、スピリチュアルなジャズが展開される。しかも、音の響きが、音のアンサンブルが印象的で、即興演奏のメロディーを楽しむ事が出来る。

これも「ジャズ」。別に絶対に体験することが必要とは言わないが、これも「ジャズ」。朝の喧噪が落ち着いた午前中の一時、昼食が終わって一息ついた午後の一時。人気の少ないジャズ喫茶で流すと、なんとも言えず、味わい深い音世界が耳に広がります。録音も素晴らしい。エンジニアはECMに数多くの名録音を残している「Martin Weiland」である。
 
 
 

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2020年8月21日 (金曜日)

ノルウェーからクールなトリオ盤

とにかく暑い。酷暑である。エアコンを入れた家の中でも何だか暑い。昼間に外へ出たら湿気で「むっ」とする。そして、途端におでこに汗が噴き出てくる。陽向にいるとジリジリと太陽が肌を突き刺す。グリルで焼かれる魚って、こんな気分なんだろう。とにかく暑い。あまりに暑いので、涼しさを感じさせてくれる様なジャズを聴こうと思い立つ。

涼しさを感じさせてくれる、いわゆる耽美的でクールなジャズと言えば「欧州ジャズ」だろう。北欧ジャズ系か、ECMレーベルの音系がクールで透明感があって涼しげで良い。いろいろとアルバムの1曲目を聴きながら選盤を進める。5枚目くらいで、ふとこの盤の音が気になった。

ECMレーベル系のクールで耽美的でエコーがかかった音世界ではあるが、ECMレーベルの音では無い。ECMレーベルの盤よりエコーは浅め、そして、選曲がECMレーベルらしくない。それでもピアノなど楽器の響きはECMレーベルっぽい。この盤の素性が知りたくなった。今回の「酷暑対策」の欧州ジャズ盤はこの盤に決定。

Olga Konkova, Carl Morten Iversen & Audun Kleive『Going with the Flow』(写真左)。1996年8月26, 27日、ノルウェーはオスロの Rainbow Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Olga Konkova (p), Carl Morten Iversen (b), Audun Kleive (ds)。ロシア生まれの才媛、オルガ・コンコヴァ(写真右)がピアノを担当したトリオ盤である。
 
 
Going-with-the-flow  
 
 
先に述べた、この盤の1曲目を聴いた時の感想は「当たらずといえども遠からず」。ECMレーベルっぽい音は、オスロの Rainbow Studioでの録音だからだろう。ECMレーベルもよくこのスタジオを使う。

そして、この盤はノルウェーのレーベル「Curling Legs」からのリリース。あのECMレーベルらしい「深いエコー」が浅めなのが、これで納得。そう言えばジャケット・デザインもECMレーベルのデザイン志向とは異なる。

1969年、ロシア生まれの才媛オルガ・コンコヴァ28歳の作品。耽美的でクールなピアノであるが、タッチはエッジは丸いが硬質。ミッドテンポの透明感溢れる弾き回しは確かに「ECMレーベル風」。ノルウェー出身、ベースのイヴェルセンの重低音ベースがグイグイ迫る。ドラムのクレイヴは、切れ味良く柔軟かつ堅実なリズム&ビートを供給する。こちらもノルウェー出身。

選曲は親しみ易いものが多く、レノン=マッカートニーの「Michelle」のカヴァーはアレンジも新鮮で聴き応え十分。スタンダード曲の「Yesterdays」はしみじみ、エヴァンスの十八番「Nardis」は明確なタッチで、硬質なクリスタル感溢れる弾き回しに思わず耳をそばだてる。そして、楽器の音にかかるエコーが実に心地良い。聴き味爽やかでクールな、「北欧ジャズ」志向満点のピアノ・トリオ盤である。
 
 
 

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2020年8月16日 (日曜日)

「避暑」にピッタリの好盤です

今年も、はや「お盆」である。今日は京都で言うと「送り火」の日。お盆休みも終わって、8月も後半である。今年は酷暑。それでも、このところ、風が吹くようになってきた千葉県北西部地方。風が吹けば部屋の中もちょっと涼しくなって、午前中はエアコン要らずになる。

さて、酷暑が続くと、日頃聴くジャズについても、清涼感溢れるジャズばかりを選ぶ様になった。清涼感溢れるメインストリーム系のジャズと言われれば、僕は「北欧ジャズ」に走る。

北欧ジャズの特徴は「透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味」。酷暑の夏の「避暑」にピッタリである。

Esbjörn Svensson Trio『Good Morning Susie Soho』(写真左)。2000年のリリース。ちなみにパーソネルは、Esbjörn Svensson (key), Dan Berglund (b-g, b), Magnus Öström (ds, gopichard, perc, tabla)。北欧ジャズの有名トリオ、Esbjörn Svensson Trio=略して「EST」の好盤である。
 
 
Good-morning-susie-soho
 
 
北欧のジャズ・ピアノは決まって「耽美的でリリカル」。しかし、スベンソンのピアノは、その「耽美的でリリカル」な共通の個性に加えて、まるでロックの様なリフが続き、独特のグルーヴ感を醸し出す。

米国東海岸ジャズのファンキーなグルーヴ感とは全く異なる、この北欧ジャズ独特の「耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味」をベースとしたグルーヴ感は癖になる。

そして、この北欧トリオの演奏の、ピアノ=ベース=ドラムが三位一体となったインタープレイが素晴らしい。北欧ジャズのピアノ・トリオ独特の、クールに静的に耽美的に絡む、三位一体のインタープレイ。そのインタープレイの「透明度の高い、エッジの効いた音の響き」に深いエコーがかかる。清涼感抜群である。

表現力が多彩で、北欧ジャズの中でも「独特の個性を持つ」ピアノ・トリオ。それが「EST」。そんなESTの密かに尖った、北欧ジャズの中でも「一歩先を行く」音が、この盤に詰まっている。とにかく北欧ジャズの中でも「ユニーク」な存在。クールで清涼感溢れる耽美的な音世界は「凛」としていて聴き応えがある。「避暑」にピッタリの好盤ですね。
 
 
 

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2020年8月14日 (金曜日)

北欧の「ネオ・ハードバップ」盤

欧州ジャズが気に入っている。欧州ジャズについては、僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、我が国ではフュージョン・ジャズが大流行していた訳だが、その裏でメインストリーム・ジャズについては、エリア的広がりが出てきた。いわゆる「欧州ジャズ」のアルバムが我が国でも流通するようになった。代表的なレーベルとしては、ECM、SteepleChase そして、Enjaである。

以降、欧州ジャズのアルバムは定期的に我が国でもコンスタントに流通するようになり、特にインターネットの時代に入ってからは、欧州ジャズの情報がかなり速く入って来る様になり、ネットでの音楽のダウンロード・サイトが開設されて以降は、ダイレクトに欧州ジャズの音源が入手出来る様になった。インターネットのお陰で、ジャズについては、グローバル・サイズで体験できる様になった。

Jesper Thilo『Swing is the Thing』(写真左)。2019年10月23日-25日、コペンハーゲンの「ザ・ヴィレッジ」での録音。ちなみにパーソネルは、Jesper Thilo (ts), Søren Kristiansen (p), Daniel Franck (b), Frands Rifbjerg (ds)。デンマーク・ジャズ界の巨人、テナーマンの Jesper Thilo (イェスパー・シロ)がリーダーの好盤。約10年ぶりとなる新録音となる。
 
 
Swing-is-the-thing  
 
 
解説によると「スタジオ録音ではあるが、編集や修正なしのライヴ的録音」とのこと。確かにライブ感溢れる演奏で、とりわけ、リーダーのイェスパー・シロののテナー・サックスが凄く良い音を出している。端正で骨太、躍動感溢れスケールの大きい、スインギーなテナー・サックス。本場米国ジャズでも十分に通用するどころか、イェスパー・シロに匹敵するテナーマンはなかなかいない。

選曲も実にふるっていて、ディジー・ガレスピー、ジョージ・ガーシュウィン、オスカー・ペティフォード、ヴァーノン・デューク、ジョン・クレナー、アール・ハインズらのスタンダード・ナンバーを披露していて、このスタンダード曲の演奏が実に味わい深い。北欧ジャズらしからぬ、ストレートアヘッドでハードバップな演奏が繰り広げられている。

ピアノのクリスチャンセンはデンマーク、ベースのフランクはスウェーデン、リフビャフはデンマーク。デンマーク出身3人+スウェーデン出身1人の北欧ジャズのワンホーン・カルテット。北欧ジャズと聞くと、ECMレーベルの影響からか、耽美的で静的なジャズを想起するが、この盤はちょっと違う。クールで躍動感溢れる「ハードバップ」な雰囲気。北欧の「ネオ・ハードバップ」盤。好盤です。
 
 
 

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2020年8月 1日 (土曜日)

不思議と紹介本でよく挙がる盤

ミシェル・サルダビー(Michel Sardaby)。我が国では、ジャズ・ピアノ盤の紹介本には必ず出てくる『Night Cap』というピアノ・トリオ盤だけで、意外と有名な存在である。恐らく、当時のジャズ評論家の方か、ジャズ喫茶のマスターが見つけて、欧州のピアノ・トリオ盤の隠れ好盤としてもてはやした結果だと思っている。サルダビーはもともと「寡作の人」で、50年余のキャリアの中で、15枚程度のリーダー作しかリリースしていない。

このサルダビーのというピアニスト、その個性について、意外としっかりと表現しているものが無くて、3日前の当ブログにも書いたソロ・ピアノ盤を含めて、5〜6枚の彼のリーダー作を一気に聴き通してみた。その結果、このサルダビーというピアニスト、ちょっとクラシックの要素も入った、端正で堅実な「正統ジャズ・ピアノ」。タッチは歯切れが良く、アドリブ・フレーズは流麗。ジャジーな雰囲気はしっかり保持している。つまりは「総合力で勝負」する類のピアニストである。

Michel Sardaby『Night Cap』(写真左)。1970年10月30日、パリでの録音。ちなみにパーソネルは、Michel Sardaby (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。ピアノのサルダビーがリーダーの「トリオ編成」盤である。どういった経緯でそうなったか不思議だが、バックのリズム隊は、当時、モダン・ジャズ・カルテットのパーシー・ヒースとコニー・ケイが担当している。
 
 
Night-cap  
 
 
そのサルダビーを我が国で有名にしたピアノ・トリオ盤である。もともと彼が「マルティニーク島フォールドフランスで生まれ」というちょっと変わった出身であること、そして、このトリオ盤の出だしの「Traveling On」のピアノが、どこかエスニック風で、なんとなく中東や東欧をイメージするマイナーなフレーズを多用しているので、なんとなく怪しげな、胡散臭い印象を残すのだろう。ただ、残りの演奏含め、全編を聴き通して、サルダビーのピアノは決して怪しげでも無ければ、胡散臭さも無い。

ただ印象に残るほどの強烈な個性や弾き回しは無いので、中くらいかそのちょっと上くらいの「総合力で勝負する」ピアニストなんだな、と思ってしまう。ただし、バックのリズム隊、パーシー・ヒースのベース、コニー・ケイのドラムのパフォーマンスがなかなかに優れていて、このリズム隊含めたピアノ・トリオ全体としての演奏はなかなかのものである。確かに、この盤での3者一体となったインタープレイは「聴きもの」である。
 
今ではこの盤レベルの欧州ジャズのピアノ・トリオ盤については色々あるが、インターネットが普及する前は、特に欧州のジャズ盤については情報不足で、こういった「口コミ」による情報が貴重だったのだろう。サルダビーの個性については明確な「掴みどころ」はないが、フランス発のピアノ・トリオ盤として、欧州ジャズのピアノ・トリオ盤として、その雰囲気を楽しめる盤ではある。悪くは無い。好盤である。
 
 
 

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  ・『Black Rose』 1976

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  ・Led Zeppelinの「西部開拓史」

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  ・太田裕美『十二月の旅人』


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2020年6月29日 (月曜日)

躍動的な北欧ジャズ・ピアノ

今年の夏は「とても梅雨らしい」。雨が降れば降ったで思い切り降るし、晴れ間が出たら出たで思い切り蒸し暑い。この蒸し暑さが我慢ならない訳で、ジャズを聴く分にも、この蒸し暑さではまともに聴く気にならない。それでもジャズは聴きたい訳で、この蒸し暑さの中でも、ある程度、気持ち良く聴けるジャズは何か、と考える。

Jan Lundgren Trio『For Listeners Only』(写真左)。2000年12月11ー13日、コペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Jan Lundgren (p), Mattias Svensson (b), Rasmus Kihlberg (ds)。リーダーのヤン・ラングレンはスウェーデンのピアニスト。 マティアス・スベンソンは同じく、スウェーデンのベーシスト。ラスムス・キルベリはやはり同じく、スウェーデンのドラマー。そう、このトリオは純スウェーデン出身のピアノ・トリオである。
 
北欧ジャズは耽美的で透明度が高く、テクニックは高度、歌心が豊かで流麗、静謐でクールな音世界が特徴。1950年代から北欧ジャズは発展してきたが、北欧ジャズの凄いところは、この「北欧ジャズならではの特徴」が1950年代に出現して以降、現代まで、ずっと継続され、年を経る毎に「進化」し「深化」していること。
 
 
For-listeners-only  
 
 
やはり梅雨の蒸し暑い中、北欧ジャズとボサノバ・ジャズだけが気持ち良く聴けるジャズかな。このヤン・ラングレンのトリオは北欧ジャズの特徴をしっかりと引き継いでいて、申し分ない展開である。しかしながら、このトリオ演奏が個性的なところがとても健康的な「躍動感」と「メジャーな響き」。
 
北欧ジャズの特徴として「静謐なバラード」や「ヒーリング音楽の様な怜悧な響き」があるのだが、このトリオ演奏には、その代わりに、北欧ジャズらしからぬ躍動感がある。リズム&ビートが明確で、アドリブ・フレーズに「暖かい響き」が満ちている。「夏の北欧のジャズ」という雰囲気が、実に耳に心地良く響く。
 
こってこての北欧ジャズで固めるのでは無く、米国のコンテンポラリーな純ジャズの雰囲気やスムース・ジャズの雰囲気も取り込んで、北欧ジャズをベースにしながら、インターナショナルな雰囲気の「ネオ・ハードバップ」なピアノ・トリオ演奏に仕立て上げている。リリース当時、人気盤であったことも頷ける。肩肘はらずに、リラックスして気持ち良く聴けるピアノ・トリオである。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

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  ・『You’re Only Lonely』 1979

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