2022年10月 3日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・252

ジャズは、大衆音楽の側面と芸術音楽の側面、2つの側面を持つ。ポップス同様、大衆向けの音楽として、キャッチャーで判り易い、耳当たりの良い演奏と、しっかりとした音楽理論の下、確かなテクニックと理論的な演奏手法を基に、芸術性を前面に押し出した演奏、2つの側面を持つ、ユニークな音楽ジャンルである。

John Lewis『Private Concert』(写真左)。1990年9月10〜12日、NYでの録音。仏PolyGramレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Lewis (p) 1人。Modern Jazz Quartet(MJQ)のリーダー&ピアニストのジョン・ルイスのピアノ・ソロである。

ジョン・ルイスは、一流のジャズ・ピアニストであり、クラシックの様々な音楽理論にも精通した、アーティステックな音楽家である。Modern Jazz Quartetでは、弦楽四重奏的な演奏手法を取り込み、対位法を用いた楽曲を作曲&演奏したり、バッハのジャズ化にチャレンジしたり。ジョン・ルイスは、芸術性を前面に押し出したジャズ・ミュージシャンの代表格であった。

で、このソロ・ピアノであるが、冒頭の「Saint-Germain-Des-Prés」を聴いて、ジャズの「クラシックに匹敵する芸術性」を改めて認識した。流麗で軽やかでアーティスティック。小粋なフレーズがどんどん湧いて出てきて、思わず、じっくりと聴き耳を立ててしまう。まるで、クラシックの様なピアノ演奏だが、出てくるフレーズはしっかりとジャズしている。
 

John-lewisprivate-concert

 
「Saint-Germain-Des-Prés」=サンジェルマン・デ・プレはパリ6区に位置する「知性と文化を代弁する」エリア。いわゆる「アーティスティック」な街。その街の名を曲名にした冒頭の魅力的な1曲が、このソロ・ピアノ盤の音志向を決定付けている。つまり、確かなテクニックと理論的な演奏手法を基に、芸術性を前面に押し出した演奏が詰まっている。

同様に、パリを題材にしたジョン・ルイスの自作曲が全部で4曲。どれもが、流麗で軽やかでアーティスティック。小粋なフレーズが印象的な楽曲ばかりで、ちょっと洒落ている雰囲気が実に良い。

アーティスティックな面を押し出しているからといって、堅苦しくは全く無い。バッハの曲も2曲「The Opening Bid」「Down Two Spades」でカヴァーされているが、しっかりとジャズ化していて、和音の重ね方もビートも「ジャズ」である。

スタンダード曲の「Don't Blame Me」と「'Round Midnight」は、大衆ジャズっぽくアレンジせず、あくまでアーティスティックに格調高くアレンジされている。それでも、底のビートはジャズなんだから、ジョン・ルイスの演奏能力の高さは定評通り。そこはかとなくファンクネスも漂う弾きっぷりは、確かに芸術的である。

この盤、たまたまネットを徘徊していてピックアップ出来たのだが、こんなジョン・ルイスのソロ・ピアノ盤が、1990年にリリースされていたとは知らなかった。しかし、たまたまピックアップ出来て良かった。ジョン・ルイスのアーティスティックな側面を強烈に感じる盤はそうそう無い。ジョン・ルイスのピアノを感じるに最適のソロ・ライヴ盤だと思う。
 
 

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2022年9月15日 (木曜日)

独の女性ジャズ・オルガニスト

オルガン・ジャズが好きである。もともと、幼稚園の頃から、オルガンか、ピアノか、で悩んだクチである。とにかく、オルガンの音自体が好き。そして、その音で、オフビートでジャジーなフレーズを弾きまくられると、もう「堪らない」。

が、オルガン・ジャズの担い手となると奥が深い。そもそも、我が国では、1960年代から70年代、オルガン・ジャズは「俗っぽさの極み」として軽視されていた。よって、オルガン・ジャズ盤の情報が無い。アルバムも人気が無いので、レコード屋には無い。オルガン・ジャズの情報が入手出来る様になったのは、1990年代、ファンキー・ジャズが再評価されて、こってこてファンキーなジャズが市民権を得てからである。

『Barbara Dennerlein Plays Classics』(写真左)。1988年11月28, 29日の録音。ちなみにパーソネルは、Barbara Dennerlein (org,footbass), Christoph Widmoser (g), Andreas Witte (ds)。独の女性オルガニスト、バーバラ・ディナーリンのジャズ・スタンダード集。オルガンがベースを兼ねる、ベースレスのギター入りトリオ。
 

Barbara-dennerlein-plays-classics_1

 
シンプルな編成だが、オルガンの音に厚みがあるので、意外と充実したアンサンブルが見事。ディナーリンは、硬派でプログレッシブな弾き回しが個性の、ドイツでは人気のオルガニスト。ファンクネスは希薄だが、オフビートを強調した弾き回しはとてもジャジー。欧州ジャズ的なオルガンだなあ、と痛く感心する音である。

そんなプログレッシヴ&ジャジーなオルガンで、ジャズ・スタンダード曲をバシバシ弾いて行くのだから堪らない。よくよく聴いていると、オルガンの音が「映える」スタンダード曲を選曲していることに気付く。「Georgia On My Mind」「Satin Doll」「Take the a Train」など、それまでの著名なオルガニストが演奏してきた「オルガン・ジャズ曲」だが、ディナーリンは、プログレッシヴな「尖った」フレーズを連発して、有名スタンダード曲を新鮮な印象で聴かせてくれる。

ストイックで、しっかりとエッジが立っていて、音の粒立ちは良く、切れ味良く爽快感のあるオルガンは、米国ジャズには無い音で、実に欧州らしいジャズ・オルガンである。スタンダード曲が、これだけスッキリ爽快に聴けるオルガンは、結構、病みつきになる。バーバラ・ディナーリン、我が国では全く無名に近いオルガニストであるが、このジャズ・オルガンの素姓は確かである。
 
 

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2022年9月 9日 (金曜日)

久し振りにフリー・ジャズです

やっと涼しくなってきた。最高気温が30度を切る日が2日続いて、夜になると涼しい北風が吹き込んでくる。日中はまだまだ湿度が高く、蒸し暑い体感はあるんだが、夜になると、いつの間にか、虫の鳴く声が聞こえてきて、いよいよ秋かな、という感じがする。「暑さ寒さも彼岸まで」というが、あと2週間ほどは、もう少しだけ、この日中の蒸し暑さを我慢する必要があるのかな。

Paul Bley, Evan Parker & Barre Phillips『Time Will Tell』(写真)。1994年1月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Evan Parker (ts, ss), Barre Phillips (b)。ドラムレス、ピアノ、テナー、ベースの3者のフリー・インプロビゼーション。メンバー3人の名前が並列で並んでいるが、実質のリーダーは筆頭のボール・ブレイだろう。

涼しくなってきたので、久し振りにフリー・ジャズを聴く。酷暑の夏にはフリー・ジャズは無理だ。集中して聴いていると体温が上がって、汗がダラダラ流れてくる。涼しくなると、十分にスピーカーから出てくる音に集中することが出来る。フリー・ジャズの面白さは、集中して聴き耳を立てないと気がつかない。フリー・ジャズは「ながら」では無理がある。  
 

Paul-bleytime-will-tell

 
限りなく自由度を前面に押し出した、3者のインタープレイ。音はリリカルで耽美的。フレーズは緩やかなものが主で、ECM独特の深いエコーと相まって、漂うが如く、流れるが如く、広がるが如く、フリー・インプロビゼーションが展開される。透明度が高く、音数の少ない、音の「間」を十分に活かした演奏がメインで、当然、ファンクネスは皆無である。いわゆる「欧州ジャズ」のフリー・ジャズ。

ポール・ブレイのピアノが、この幽玄で墨絵の様なフリー・インプロビゼーションをリードしているようだ。演奏全体の雰囲気に、ブレイの美意識、ブレイの個性が色濃く反映されているように聴こえる。演奏のビートは、フィリップスのベースが担っている。このフィリップスのベースが、硬軟自在、変幻自在、緩急自在にビートをコントロールしていて見事。テナーのパーカーは、ブレイの美意識を十分理解して、ブレイのピアノにソッと寄り添う。

耽美的でリリカル、幽玄で音の「間」を活かした、透明度の高い、緩やかなパフォーマンスが主だが、中に、ちょっと明るい、ビートの効いたフリー・インプロビゼーションもあって、内容的にメリハリが効いていて、長尺のフリー・ジャズ盤だが、飽きは来ない。さすが、ECMレーベル、とても内容の濃い、聴き応えのあるフリー・ジャズをリリースして立派である。
 
 

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2022年9月 7日 (水曜日)

ピエラヌンツィ・トリオの新盤

最近、米国ジャズと欧州ジャズ、半々で聴いている。意識している訳ではないが、ここ4〜5年の傾向として、欧州ジャズ&イスラエル・ジャズに内容充実の優秀盤が結構リリースされている。

新盤については、月によっては、確実に米国ジャズを凌駕する月もあって、もはや、欧州ジャズ&イスラエル・ジャズは、米国ジャズの傍らで気分転換に聴く対象では無くなった印象がある。

Enrico Pieranunzi Trio『Something Tomorrow』(写真左)。2021年9月5ー6日、コペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Thomas Fonnesaek (b), André Ceccarelli (ds)。

伊ジャズの至宝級ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィがリーダーで、伝説のフランス人ドラマー、アンドレ・チェッカレリと、デンマーク人コントラバス奏者、トマス・フォネスベクとガッチリ組んだピアノ・トリオ盤。

改めて、Enrico Pieranunzi (エンリコ・ピエラヌンツィ)である。1949年12月、イタリアはローマ生まれなので、今年の12月で73歳になる。もう、ジャズ界の中でも、大ベテラン、レジェンドの類である。

彼のピアノは流麗かつ端正。音の重ね方、組合せ方を聴けば、ビル・エバンスに大きく影響を受けた、所謂「エバンス派」であることは間違い無いが、本家より、ダイナミックでタッチが強い。加えて、硬質なタッチと正確無比な高速フレーズと洗練されたクリスタルなファンキーっぽさが彼ならではの個性。
 

Enrico-pieranunzi-triosomething-tomorrow

 
収録曲を見渡すと、全10曲のうち、ピエラヌンツィのオリジナルが8曲、そして、フォネスベックの作曲が1曲、さらに、クルト・ヴァイル&アイル・ガーシュインの作曲が1曲。しかし、どの曲も、ピエラヌンツィの叙情的な側面を的確に捉えた曲調で、アルバム全体の統一感は半端ない。

そして、今回、自分として、ピエラヌンツィのオリジナル曲がなぜ好きなのか、が良く判った。僕が大好きで何でも通しの「ベースやコードが変わる」いわゆる、頻繁なチェンジ・オブ・ペースと転調がてんこ盛りなのだ。なるほど、この盤を聴いていて、ふとそう感じた。

この盤、目新しさは無いが、成熟したピエラヌンツィのピアノを聴くことが出来る。欧州ジャズ的な、耽美的でリリカルでクリスタルな音世界の中で、クリスタルなファンキーっぽさを漂わせながら、切れ味良く流麗なバップ・ピアノを弾き回し、硬派なメインストリーム・ジャズを展開する。胸が空くような、正確無比な高速フレーズが爽快である。

バックのリズム隊、ベースのトマス・フォネスベク、ドラムのアンドレ・チェッカレリは、現時点で、ピエラヌンツィの最高のパートナーであることがこの盤を聴いていて良く判る。ピエラヌンツィのピアノをを引き立て、鼓舞しつつ、3者対等で創造力豊かなインタープレイを繰り広げている。

最近の欧州ジャズは隅に置けない。21世紀になって、ネットで欧州ジャズの情報が潤沢に入って来る様になって20年余。欧州ジャズは、伊ジャズは、米国ジャズと肩を並べるほどに深化したんやなあ、と感慨深いものがある、今回のピエラヌンツィの新盤である。
 
 

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2022年9月 6日 (火曜日)

スイス発の「小粋なジャズ」盤

小粋なジャズ盤を探し始めて久しい。が、ジャズ盤の音を初めて耳にして以来、約50年が経過したが、未だに「この盤は聴いたことがない」という、自分にとっての「初出盤」に出会うことがある。特に、我が国では、米国ジャズほどは人気が無く、流通することが少なかった欧州盤は特にその傾向が強い。

Boillat Thérace Quintet『My Greatest Love』(写真)。1975年、スイスでのリリース。ちなみにパーソネルは、Jean-François Boillat (ac-p, el-p [Rhodes] ), Rogelio Garcia (ts, perc), Raymond Therace (ts, as,fl), Roger Vaucher (el-b), Eric Wespi (ds), guest : Benny Bailey (tp, flh)。スイスのワラ・テラセ・クインテットの1970年代レア盤のリイシューとのこと。

スイスですよ、スイス発の純ジャズ盤。1975年と言えば、我が国では米国ジャズがメインで、欧州ジャズはECMレーベルの情報がジャズ雑誌経由で流れてくる程度。欧州ジャズ盤はレコード屋ではまずお目にかかれなかった時代。そんな時代に「スイス・ジャズ」盤である。聴いたことが無いのも無理は無い、と思いつつ、2022年の今、何故にして、この1975年リリースのスイス盤がリイシューされたのか、理解に苦しむ。

しかも、このジャケット・デザインである。最初は見た時は「お洒落な聴き心地の良いジャズのコンピ盤」かと思った。しかし、ジャズ盤というのは「聴いてみるもの」である。
 

Boillat-thrace-quintetmy-greatest-love

 
冒頭の「Prompt」の洒落たフェンダー・ローズの音、軽めだがソウルフルで歌心溢れるサックス&トランペット。端正でソフト&メロウな、エレクトリック・ビートを刻むリズム隊。一聴すると、フュージョン・ジャズかな、と思うのだが、リズム&ビート含めて、しっかりと「純ジャズ」している。

選曲も1975年リリースらしく、フレディ・ハバードの「ジブラルタル」、ケニー・ドーハムの「ブルーボッサ」が入っていて、この演奏が、これまた「小粋」なのだ。クインシー・ジョーンズ・オーケストラやディジー・ガレスピー楽団に参加した、いぶし銀トランぺッター、ベニー・ベイリーがゲスト参加していて、これがまた、雰囲気の良い、リリカルで耽美的でスムースなトランペット&フリューゲルホーンを聴かせてくれる。

ガリガリ硬派の純ジャズ志向の欧州ジャズでは無く、どこかポップでライトで明るいエレ・ジャズ。それでいて、しっかりと「純ジャズ」しているから隅に置けない。リラックスして気楽に聴ける「小粋なジャズ」盤。これが、1975年のスイスでリリースされたというから驚きである。

でもなあ、このジャケットは無いよなあ。ほんと、最初見た時は「お洒落な聴き心地の良いジャズのコンピ盤」かと思いましたよ。
 
 

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2022年9月 5日 (月曜日)

ECMだがジャジーなジョンアバ

ECMレーベルのモットーが「音作りのコンセプトは「The Most Beautiful Sound Next To Silence」(沈黙の次に美しい音)。わずかにリバーブのかかった深いエコーの音作り」。ジャズのフォーマットを踏襲しつつ、現代音楽的な内容を持つ、クリスタルな透明感、切れ味の良い、適度に自由なインプロビゼーション中心の佳作が多くリリースされている。

そんなECMレーベルを代表するギタリストとして、ジョン・アバークロンビー(愛称:ジョンアバ)がいる。ジョンアバは、自身のリーダー作の8割をECMレーベルに残している。ジョンアバの考えるジャズの音とECMの総帥プロデューサー、マンフレット・アイヒャーの求める音とがバッチリ合っていたんだろう。それほど、ジョンアバのギターは「ECMらしい」ギターである。

John Abercrombie『Arcade』(写真左)。ECMの1133番。 1978年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (g, el-mandolin), Richie Beirach (p), George Mraz (b), Peter Donald (ds)。リーダーのジョンアバのギターがフロントのカルテット編成。ECMではピアノレスの変則な編成がよくあるが、この盤は、リッチー・バイラークのピアノがしっかりと入っている。 
 

John-abercrombiearcade

 
ジャケットは中身の音を表す、というが、この盤はまさにそれ。透明感と浮遊感、静謐感と適度なテンション、漂う様な緩やかなビートに乗った、自由度の高いインタープレイ。とりわけ、ジョンアバの気持ち良く適度に捻れた、サスティーンが効いたロングトーンなフレーズが前面に出て、とても印象的に響き渡る。そして、バイラークのピアノ率いるリズム・セクションもそんなジョンアバを、硬軟自在、緩急自在なリズム&ビートでガッチリとサポートする。

この時点でのピアノのリッチー・バイラークは、まだ耽美的で透明感溢れるピアノを弾いていて、ジョンアバのギターにぴったりと寄り添う。ジョージ・ムラーツのベースも、淀みやブレの全く無い、強靱で柔軟なベースラインをバンド全体に供給する。このすこぶる安定したムラーツのベースが、この番の透明感と静謐感が溢れる、漂う様なビートをしっかりと支えている。

リバーブに包まれた静謐感と浮遊感が印象的な欧州ジャズ。ECMレーベルならではの「即興演奏を旨とするニュー・ジャズ」が、この盤に溢れている。ニュー・ジャズとは言え、ジョンアバのパフォーマンスは、ビートに乗り、即興もモーダルな展開がメインで、しっかりとジャズしている。この「ECMの看板ギタリストの1人でありながら、しっかりとジャズしている」ところが、僕がいつもジョンアバを聴いて、感じ入るところである。ジョンアバは「ジャズ」である。
 
 

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2022年9月 2日 (金曜日)

ジョンアバの個性が良く判る盤

ジョン・アバークロンビー(John Abercrombie)。出身地は米国ニューヨーク州ポートチェスター。ジャズ・ギタリストで、1944年12月生まれ。ジョン・アバークロンビー、長い名前である。僕は以前から「ジョンアバ」と呼んでいる。ウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギターを弾くんだが、ジョンアバは、欧州ジャズっぽく、音が濡れている。

John Abercrombie『Characters』(写真)。1977年11月の録音。ECMの 1117番。パーソネルは、John Abercrombie (el-g, ac-gu, el-mandolin)。ジョン・アバークロンビーの、多重録音によるソロ・パフォーマンスの記録。使用楽器は、エレギ、アコギ、エレ・マンドリンとなっている。

この番はなかなか耳にするころが無かった盤。そもそも、日本のレコード会社が扱ってくれない。ECMレーベルの盤でも、人気盤は繰り返しリイシューされるのだが、人気の薄い、マニアックな盤については全くの「無視」。僕がこの盤を初めて耳にしたのは、21世紀に入って、ネット経由でECMの外盤CDが入手し易くなってからである。
 

John-abercrombiecharacters

 
ジョンアバのソロ盤なので、ジョンアバのギターの個性が良く判る。ただ、ソロ・パフォーマンスなので、リズム隊に身を任せ、触発され、自由に弾きまくる「ウネウネした、気持ち良く適度に捻れたギター」は封印している。このソロ盤では、素姓確かな、テクニック優秀、歌心溢れるフレーズ満載の「原点回帰な正統派のニュー・ジャズ志向のギター」を聴くことが出来る。

気持ち良くスルスルとギターを弾き回しているが、良く聴くと結構ハイ・テクニックなことをやっている。多彩な音の響きは、まさに「音の魔術師」。穏やかなトーンで、繊細なタッチのエレギ、さざ波の様に音が押し寄せるアコギ、エスニックに不思議な響きのマンドリン。ロングサスティーンによる独特の浮遊感溢れる、伸びのあるエレギの響きは、いかにも「ECMサウンド」。

ジョンアバの正統派ジャズ・ギタリストの一端を垣間見る様な、聴き応えのあるソロ盤である。ギターのソロがずっと続くので、しっかりと腰を据えて、スピーカーに対峙して、一気に聴き込む事が必要になるが、多彩な音を繰り出す「音の魔術師」ジョンアバである、意外と飽きずに聴き通すことが出来る。聴き終えて、ジョンアバは意外と伝統的なスタイルを重んじる、正統派なギタリストなんだなあ、と改めて思うのだ。
 
 

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2022年8月31日 (水曜日)

ピム・ヤコブスの「この一枚」

「小粋なジャズ」を求めて、ピアノ・トリオをネットで漁っていたら、懐かしいピアノ・トリオ盤に遭遇した。ちょうど、僕がジャズを本格的に聴き始め13年目。ジャズの良し悪しや特徴が自力で理解出来る様になった頃、とあるレコード屋で、このピアノ・トリオ盤を発見した。確か、Philips原盤の日本フォノグラムから発売された日本盤だったと記憶する。ちょっと試聴させて貰って、即ゲットでだった。

Pim Jacobs『Come Fly With Me』(写真左)。1982年の録音。ちなみにパーソネルは、Pim Jacobs (p), Ruud Jacobs (b), Peter Ypma (ds)。オランダの有名ジャズ・ピアニスト、ピム・ヤコブスがリーダーのピアノ・トリオ編成。ちなみに、ベースのルード・ヤコブスは、ピム・ヤコブスの弟。ドラムのピーター・イプマもオランダ出身のジャズ・ドラマー。オール・オランダのピアノ・トリオである。

ピム・ヤコブスは、1934年10月、オランダのヒルフェルスム生まれ。1996年7月に、61歳で鬼籍に入っている。オランダでは有名なジャズ・ピアニストで、傍らで、ラジオおよびテレビ番組のプロデューサーとして働いたり、音楽番組の司会を務めたりしている。ネットで経歴を振り返ってみて、リーダー作は多く無い。サイドマンとしてのレコーディング参加もさほど多く無い。
 

Pim-jacobscome-fly-with-me

 
しかし、このピアノ・トリオ盤『Come Fly With Me』は、突出して、その出来が素晴らしい。まず、ピム・ヤコブスのピアノが良い。端正でテクニック優秀、歯切れが良くて、メリハリがキッチリ効いた、優等生的なハードバップなピアノである。フレーズもハードバップ時代のコードに沿った、判り易いフレーズをメインにしていて、とにかく、聴き易く判り易い。

オランダのジャズ・ピアノなので、当然、ファンクネスは皆無。しかし、そこが欧州ジャズらしくて良い。変に粘ったり、アーシーになったりしない、端正で歯切れの良い、どこかクラシック・ピアノの雰囲気を想起させる弾き回しは健康的。ベースとドラムのリズム隊は、決して前に出ず、ピム・ヤコブスのピアノを支え、引き立てる役に徹していて清々しい。

ピアノ・トリオ演奏の教科書の様なパフォーマンスがこの盤にギッシリ詰まっている。選曲もスタンダード曲がメインで、とにかく聴き易い。それでいて、ジャジーでブルージーな「ツボ」はしっかり押さえていて、スインギーな弾き回しと合わせて、しっかり、純ジャズしているところがこのトリオ盤の「肝」。難しいこと考えずに、歯切れ良くスインギーなピアノ・トリオを楽しむのに最適な盤。ピム・ヤコブスは、この一枚のトリオ盤の存在だけで、僕の記憶の中にその名を留めている。
 
 

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2022年8月25日 (木曜日)

1966年のバルカン・ジャズ

欧州ジャズは欧州ジャズで独自の進化、深化を続けている。ファンクネス濃厚、ばりばりスインギーで、ブルージーな米国ジャズの熱烈なファンからは、欧州ジャズは疎まれる傾向にあるが、欧州ジャズは欧州ジャズで立派な「ジャズ」である。北欧ジャズから始まって、英、仏、独、蘭などを中心に、欧州各国に、それぞれの国の個性を反映したジャズが根付いている。

特にベルリンの壁崩壊後は、東欧諸国のジャズの情報が入る様になり、特にネットの時代に入ってからは、東欧諸国のジャズもアルバムの聴き易くなった。今では、この東欧ジャズが、欧州ジャズの「主要なサブジャンル」の1つとなって、堅実にジャズを深化させている。東欧ジャズはそれぞれの国の民俗音楽などの個性がダイレクトに反映されているものが多く、聴いていてとても楽しい。

Dusko Gojkovic『Belgrade Blues』(写真)。1966年5月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Dusko Gojkovic (tp,flh), Sal Nistico (ts), Carl Fontana (tb), Nat Pierce (p), Mike Moore (b), Ronnie Zito (ds)。米国のジャズマン、カール・フォンタナとサル・ニスティコが、リーダーのゴイコヴィッチと3管フロントを組んだ、セクステット編成。

ベオグラードで開催されたフェスティバルに参加したウディ・ハーマン楽団、そのウディ・ハーマン楽団の腕利きメンバーが、ゴイコヴィッチのレコーディングに協力したらしい。その腕利きメンバーが、カール・フォンタナであり、サル・ニスティコである。そして、リズム・セクションも、と調べて見たら、やはり楽団メンバーであった。
 

Dusko-gojkovicbelgrade-blues

 
数時間で録音は完了したとのことだが、そんな即席なセクステットの演奏とは思えない、しっかりとアレンジされた、端正でジャジーでスインギーな演奏に仕上がっている。ほんと、皆、良い音だしているのだが、面白いのは、米国ジャズの特徴がこの盤にはほとんど感じられない。音の雰囲気は欧州ジャズであり、旧ユーゴスラヴィアのバルカン・ジャズである。一流ジャズマンの表現力というのは、我々が想像しているよりも凄いのだ。

さすが周りを米国ジャズの一流どころで固めているので、ゴイコヴィッチのトランペットの「ノリ」と「張り」が違う。明朗に躍動的にスイングするゴイコヴィッチのトランペットは聴きものだ。当然、出てくるフレーズのここかしこに「バルカン」な雰囲気が散りばめられていて、米国ジャズとは違う、バルカン・ジャズの雰囲気が耳に新しく響く。

この盤、もともとは10インチ盤でリリースされたもので、オリジナルはジャズLP最難関といわれる超レア盤らしい。ゴイコヴィッチが、1961年に吹き込んだ初リーダー作『The International Jazz Octet』と1966年に吹き込んだ『Belgrade Blues』、この2枚の10インチ盤をカップリングにして、1973年、12インチ盤でリイシューされている。僕が聴いた盤は、この12インチ盤を紙ジャケットで完全復刻したCDである。

盤のタイトルが『ベオグラード・ブルース』。1966年にして、このタイトルで旧ユーゴスラヴィアで録音され、リリースされている。まだ「鉄のカーテン」が存在した時代。それだけ、東欧でもジャズのマーケットがしっかりと存在していたことが想像出来る。
 
 

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2022年8月16日 (火曜日)

硬派な欧州のモード・ジャズ

ダスコ・ゴイコヴィッチ(Dusko Goykovich)は1931年生まれ、旧ユーゴスラビア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)出身のトランペット、フリューゲルホーン奏者。「バルカン〜ヨーロッパ的哀愁に満ちたフレーズ」と「テクニック優秀+力強く高速なフレーズ」とが融合した、東欧出身でありながら、正統なバップ・トランペットの名手である。

僕はこのゴイコヴィッチには、今を去ること40年ほど前、ジャズを聴き始めた頃に出会っている。大学近くの「秘密の喫茶店」だった。この喫茶店、不思議な喫茶店で、1980年前後で、スティープルチェイス・レーベルやエンヤ・レーベルのLPが結構あって、まだジャズ者初心者ワッペンほやほやの僕に、欧州ジャズの名盤を積極的に聴かせてくれた。感謝である。

Dusko Goykovich『It's About Blues Time』(写真)。1971年11月8日、スペイン・バルセロナでの録音。エンヤ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Dusko Goykovich (tp), Ferdinand Powell (ts), Tete Montoliu (p), Robert Langereis (b), Joe Nay (ds)。リーダーのゴイコヴィッチのトランペット、ポヴェルのテナーがフロント2管のクインテット編成。

このクインテット、トランペットのゴイコヴィッチが旧ユーゴスラビア、テナーのポヴェルがオランダ、ピアノのモントリューがスペイン・カタルーニャ出身、ベースのラングレイスはオランダ出身、ドラムのネイはドイツ出身。オール欧州のクインテットである。

で、この完璧なオール欧州のクインテットが、バリバリ硬派なメンストリーム志向の純ジャズをやるのだから、ビックリである。この盤を初めて聴いたのは、1990年代だが、最初は「内容のある硬派なモード・ジャズやなあ」と思ったが、ファンクネスが皆無なのが気になった。
 

Dusko-goykovichits-about-blues-time

 
日本のジャズでも乾いたファンクネスは仄かに漂うのだが、と思って、レーベルを見たら「Enja」とある。この硬派なモード・ジャズが欧州ジャズ出身なのか、と驚いた。録音当時の欧州ジャズのレベルの高さを再認識した。名盤『アフター・アワーズ』(2021年1月3日のブログ参照)と同じ1971年にスペインで録音された姉妹盤的な内容である。納得である。

本場米国のモード・ジャズよりも端正で硬質。恐らく、クラシック音楽や現代音楽の影響が、米国よりも欧州の方が強いのだろう。それもそのはずで、かなりの確率で、欧州のジャズマンは、何らかの形でクラシック音楽に関わっている。欧州のジャズマンは、基本的に演奏テクニックが半端ないのだ。

ゴイコヴィッチのトランペットがバルカン〜ヨーロッパ的哀愁に満ちたフレーズをモーダルに吹きまくる。「Old Folks」のミュート・プレイも絶品。「Bosna Calling」はエキゾチックなバルカン的哀愁なフレーズが個性的。バップ・ナンバー「The End Of Love」でのハードバッパーな吹きっぷり。

テテ・モントリューのピアノが、様々なバリエーションのモーダルなフレーズを叩き出す。このテテのパフォーマンスが見事。チック、若しくはキースに匹敵するモードなフレーズの弾き回しの多彩さに驚き、その確かさに感心する。凄いピアニストが欧州のスペインにいる。欧州ジャズの奥の深さを感じて、1990年代以降、僕は欧州ジャズにもどっぷり填まっていく。

ファンクネス皆無の硬派な欧州のモード・ジャズ。どの演奏もモーダルでスインギー。そんな欧州ジャズの優れた演奏が、このゴイコヴィッチのリーダー作にてんこ盛り。これが、1971年の演奏である。当時の欧州ジャズのレベルの高さとモダン・ジャズに対する人気の高さを改めて再認識する。
 
 

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