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2018年8月 5日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・102

まず、レオ・リチャードソン(Leo Richardson)という名を知らない。どうも英国ジャズのサックス奏者らしい。どうりで知らないはずだ。ジャケットの雰囲気を見ても、実にレトロっぽくて、リリース年が2017年。これは1970年代辺りの英国ジャズのリイシュー盤だと思った。

Leo Richardson『The Chase』(写真左)。2016年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Leo Richardson (ts), Rick Simpson (p), Mark Lewandowski (b), Ed Richardson (ds)。ラストの8曲目にのみ、 Alan Skidmore (ts) が、2曲目と4曲目にのみ、Quentin Collins (tp) が加わる。

レオ・リチャードソンは英国の若手テナーサックス奏者。これがデビューアルバムとのこと。1曲目の「Blues for Joe」を聴けばビックリする。どこから聴いても、正統なハードバップなジャズが思いっきり展開されている。しかし、録音が良い。ということで、この盤、実は最初聴いた時は、1970年代の隠れハードバップ盤だと思った。
 

Leo_richardson_the_chase

 
ストレート・アヘッドな純ジャズ一本のアルバム。テナーはテナーらしい音を出し、ピアノはモーダルに堅実なバッキングでフロントを支え、ベースはブンブン音を立て、ドラムは硬軟自在にポリリズムを叩き出す。1960年代中盤〜後半のモーダルなハードバップがこの盤に詰まっている。こんなアルバムが、新盤として2017年にリリースされた、という事実に驚く。

よくよく聴くと、アドリブ・フレーズや、バックのリズム&ビートに今風な雰囲気が漂っていて、どう考えても1960年代中盤〜後半には無かった響きがところどころに聴かれて、そこでやっとこの盤が、1970年代のハードバップ盤のリイシューで無いことに気がつく。気がついた時はビックリした。いわゆる「ネオ・ハードバップ」にまだ、これだけの「ジャズ表現の工夫の余地」が残っていたとは恐れ入った。ジャズは奥が深い。

プレイスタイルは、コンテンポラリーかつストレート・アヘッド。これが英国ジャズから生まれたことにまた驚く。英国と言えば、ジャズの正統なスタイルは「ビ・バップ」と言い切るほどの硬派なジャズ者の集まる国である。そこで生まれ出でた、この「ネオ・ハードバップ」盤。これが「格好良い」のだ。次作が楽しみ。こういう盤が新盤でリリースされるから、ジャズって奥が深くて面白い。

 
 

東日本大震災から7年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年8月 4日 (土曜日)

意外と無名な盤だけど好盤です

今年の夏は酷暑である。とにかく蒸し暑い。通勤の往き帰り、特に最寄りの駅から自宅までの徒歩が辛い。加えて、最寄りの駅から会社までの徒歩が辛い。汗だくだくになる。家に帰り着いて、就寝前のひととき、エアコンの効いた涼しい部屋の中で、ゆったりとした気分で聴くECMレーベルの諸作は格別なものがある。

極力、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音をベースにした、欧州ジャズのお手本の様なECMレーベルの諸作。酷暑の夏、エアコンの効いた部屋の中で聴くECMレーベルのアルバムは、非常に心地良い。確かに、夏の夜はECMレーベルのアルバムを選ぶことが多い。

Jan Garbarek-Bobo Stenson Quartet『Witch-Tai-To』(写真左)。1973年11月27日の録音。ECM 1041番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, ss), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。ECMレーベルのお抱えリズム・セクション、ボボ・ステンソン・トリオをバックに、これもECMレーベルの看板サックス奏者、ヤン・ガルバレク、フロント1管のカルテット構成。
 

Witchitaito

 
ヤン・ガルバレクの透明度溢れる、クリスタルで硬質な、切れ味の良く伸びの良いサックスが素晴らしい。ガルバレクのサックスの音が鳴り響くだけで、その音世界は「ECMレーベルの音世界」に染まる。ガルバレクのサックスは硬軟自在、伸びの良い柔軟なフレーズを繰り出していく。特にその「飛翔感」は彼独特の個性。これが非常に涼しげで「清涼感」抜群。

バックのボボ・ステンセンのピアノ、パレ・ダニエルソンのベース、ヤン・クリステンセンのドラム、このECMお抱えのリズム・セクションの音も実に印象的。ガルバレクと同様に、透明度溢れる、リリカルで硬質なステンセンのピアノ。これがガルバレクのサックスと実に相性が良い。絵に描いた様なECMレーベルの音。清涼感抜群、間の静謐感を活かした、独特のアドリブ・フレーズ。

ダニエルソンのベースは重量感溢れ、弦の響きが心地良い。クリステンセンのドラムは堅実かつ多彩。正確でタイトなリズム&ビートを叩き出す。このECMお抱えのカルテットの繰り出すフレーズのインスピレーションとバリエーションは特筆もの。ファンクネス皆無な、間を活かしたオフビート。欧州ジャズの典型的な音世界がこのアルバムに詰まっている。意外と無名なアルバムだが好盤である。

 
 

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2018年6月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・122

最近の新盤の傾向として、内容の素晴らしさに反比例して、これは一体なんなんだ、と呆れるくらいのチープなデザインのジャケットが多い様に感じる。確かにCDのサイズになって以来、LP時代の様にジャケット・デザインに腕を振るうことは少なくなった。が、それにしても、最近「とほほ」な内容のジャケット・デザインが多すぎる。これは実に残念なことである。

Reis Demuth Wiltgen『Once in a Blue Moon』(写真左)。今年6月のリリース。録音はECMの第3スタジオ、アルテスオーノ。ちなみにパーソネルは、Michel Reis (p), Marc Demuth (b), Paul Wiltgen (ds)。イタリアの名門CAM JAZZレーベルからのリリース。ルクセンブルク出身のピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲンのピアノ・トリオである。

この「とほほ」なジャケットからは想像出来ない、知的で透明感のある欧州ジャズなサウンドである。曲毎に、しっかりと起承転結のある、メロディアスでドラマチックな楽曲も良い内容。全13曲中9曲がレイスのオリジナル。リリカルでフォーキーな良い曲を書く。レイスのピアノはクラシックな雰囲気が底に漂いつつ、紡ぎ出されるフレーズは親しみ易くポップなイメージ。過去にありそうでない、欧州ジャズ的な唄うが如くのピアノである。
 

Once_in_a_blue_moon  

 
デムスのベースも良い音を出している。骨太でしなやかで張りのあるベース。レイスの知的で透明感のあるピアノによく絡む。絡むが決してピアノの邪魔はしない。しっかりと支え、寄り添うようなベース。決して、耳触りで無い、唄う様なベース。ジョニ・ミッチェルの名曲'「Both Sides Now」のカバーでは、このデムスのベースがフィーチャーされ、ただひたすらに、骨太でしなやかで張りのあるベースが唄う。

ウィルトゲンのドラムも特筆もの。ポリリズミックで、硬軟自在、変幻自在なドラミング。それでいて、リズム・キープ力は抜群。揺らぐことは皆無。チェンジ・オブ・ペースも的確、かつ柔軟で、レイスのピアノをしっかりと支えている。リズム&ビートをデムスのベースと的確な役割分担をしつつ、これまた唄う様なドラミングを披露する。

この「ピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲン」のピアノ・トリオは「唄うピアノ・トリオ」。3者が一体となったインタープレイはキャッチャーでインテリジェンス溢れる、唄うが如く、欧州的な響きを湛えたピアノ・トリオの音である。ドラマチックでダイナミックな展開も多々あって、全編を通じて飽きることは全く無い。好盤である。

 
 

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2018年6月19日 (火曜日)

キューン、73歳のリーダー作。

ジャズ盤リリースの情報って結構濃淡があるらしく、結構な数のリーダー作をリリースしているが、何故かしばらく御無沙汰だったジャズメンが、素敵なリーダー作をリリースしたのに急に気付いたりする。そのタイミングに出会わないと、知らずに行き過ぎてしまうこともある訳で、やはり小まめなジャズの新盤のチェックは欠かせない。

Joachim Kühn『Love & Peace』。今年リリースのヨアヒム・キューンの最新トリオ作。2017年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Joachim Kuhn (p), Chris Jennings (b), Eric Schaefer (ds)。 ヨアヒム・キューンはドイツのピアニスト。どちらかというと前衛、難解なイメージのピアノを弾きつつ、第一線を張ってきた。

しかし、僕にとっては久し振りのキューンのリーダー作である。もともと前衛〜フリーのイメージが強いので、知らず知らずのうちに敬遠していたのかなあ。今回は印象的なジャケットが目について、誰のリーダー作なのかなあ、と思って見てみたら、ヨアヒム・キューンのリーダー作だった次第。しかし、この盤、それまで尖った先鋭的なピアノを聴かせていたキューンが、この盤では、ゆったりめの耽美的な演奏をメインに弾き進めています。
 

Love_peace  

 
先鋭的な耽美かつ流麗なフレーズを繰り出す。昔の若かりし頃のキューンのピアノを知っている身にとっては、思わず面食らう。キューン曰く「新しい作品は短く簡潔な楽曲で、シンプルにメロディックなものにしたかった」。確かに、その通り。ブルージーでカントリー的な雰囲気の曲やスウィンギーでキャッチャーな曲、クラシック風味でありながらジャジーな曲など、若かりし頃のキューンには無い、ゆったりとして耽美的な演奏がメイン。

録音当時73歳のキューン。その年齢がそうさせるのかもしれない。しかし、時折見せる前衛的なフレーズやフリーキーで緩急自在なアドリブ展開は何時ものキューン。これには思わず「ニッコリ」。やはりキューンはキューンですね。前衛、難解なイメージのピアノも素敵です。長く聴き続けると疲れるけど(笑)。

やっぱりキューンは只者では無い。結構な枚数のリーダー作があるので、一度、通して聴き直す必要があるなあ、と感じました。ドイツの前衛、難解なイメージのピアニストなので、我が国ではちょっと「キワモノ」扱いされてきたみたいですが、どうして、それは意外と偏った見方なのでは、と思います。いや〜良いアルバムを聴かせてもらいました。

 
 

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2018年3月20日 (火曜日)

グレゴリー・プリヴァに出会う

冒頭の1曲目を聴いただけで、グイッと惹き込まれるジャズ盤に時々出会う。このピアノ・トリオの音を初めて聴いた時、凄く綺麗な音やな〜と感心して、聴き進めるにつけ、グイグイと惹き込まれた。流麗なピアノの音、低音豊かにタイトに響くベース、切れ味良く硬質なビートを叩き出すドラム。冒頭の「Le Bonheur」を聴いて、これはなかなか良いピアノ・トリオだと直感した。

Grégory Privat『Family Tree』(写真左)。2016年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、Grégory Privat (p), Linley Marthe (b), Tilo Bertholo (ds)。音を聴けば、ファンクネス希薄でリリカルな、欧州系ピアノ・トリオ。ベースの音はゴリゴリと正統派。ドラムは切れ味良く、硬質に響く。正統派のメインストリームなピアノ・トリオである。

リーダーのピアニストについて。Grégory Privat=グレゴリー・プリヴァ、と読むらしい。1984年、仏領マルティニーク島生まれ。マルティニークは、カリブ海に浮かぶ西インド諸島のなかのウィンドワード諸島に属する一島。つまり、プリヴァはカリビアン。しかし、彼の奏でるピアノの音は、とても「北欧的」。僕は最初、北欧ジャズのピアノ・トリオと思い込んだくらいだ。
 

Family_tree  

 
このグレゴリー・プリヴァは、フランス・ジャズの若手有望株なピアニストである。今年で34祭。ジャズの世界ではまだまだ若手。この盤では、そんな若手の溌剌とした、切れ味の良い、リリカルで流麗なピアノを聴くことが出来る。一聴すれば「北欧のジャズ・ピアノか」と思うのだが、プリヴァのピアノには、光の様にキラキラした明るさがある。そして、リズミカルなアドリブ・フレーズが特徴で、これは北欧ジャズには無い個性。

プリヴァのトリオは精緻で流麗。ラフな面が全く無いところがフランス・ジャズらしくない。この精緻で流麗なところは「北欧ジャズ」の個性。そういう意味では、このトリオ盤の演奏は新しいフランス・ジャズの成果を聴かせてくれているとも言える。8曲目の「Ladja」を聴けば、このトリオ、ダイナミズムも兼ね備えていることが良く判る。

とても魅力的なピアノ・トリオである。今までリリースされた他のアルバムも聴いてみたい。そんな気にさせるに十分な魅力的な内容である。そして、次のアルバムを早く聴きたい。そんな思いを強く持たせてくれる。どの曲の演奏を聴いても、内容のある正統派のメインストリームなピアノ・トリオ。偶然になかなかの好盤に出会ったと思わず嬉しくなった。

 
 

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2018年3月 5日 (月曜日)

ECMのジョン・アバ再び

ジョン・アバークロンビー(略して「ジョンアバ」)。その素敵に捻れたフレーズとサスティーンが効いたロングトーンが特徴で、聴けば直ぐに判る。音の雰囲気は明らかに欧州的で、ファンクネスは全く感じない。トーンは丸いが芯は硬質。速弾きで突っ走るよりは、ロングトーンを活かして、耽美的に雰囲気で聴かせる。

ジョンアバは、ECMレーベルに好盤を沢山残している。マンフレート・アイヒャーの美意識が、ジョンアバのギターのトーンにピッタリである。例えば、John Abercrombie『Gateway 2』(写真左)。ECMを代表する知性派ギタリスト、ジョン・アバークロンビーによる1978年の作品。密度の濃い交感、スリリングなバトルが堪能できるトリオ・ミュージック。

ちなみにパーソネルは、John Abercrombie (el-g, ac-g, el-mandolin), Jack DeJohnette (ds, p), Dave Holland (b)。ギター・トリオである。ドラムがデジョネット、ベースがホランド。いかにもECMらしい取り合わせ。限りなく自由度の高いフリーに近い演奏もOK、フォーキーで耽美的なメロディアスな展開もOK。非常に柔軟度の高いギター・トリオである。
 

Gateway2  

 
実は同じパーソネルで、この『Gateway 2』の全編である『Gateway』(左をクリック)を1975年3月に録音している。その前作は激しいフリー・インプロヴィゼーションを繰り広げた作品で圧巻だったが、この『Gateway 2』では、自由度の高い即興演奏を基本としながらも、幻想的、耽美的な美しさを前面に押し出したトリオ・ミュージックに仕上がっている。

よって、こちらの『Gateway 2』の方が親しみ易く、聴き易い。ジョンアバのギターもエレギとアコギを使い分けていて、欧州的な耽美的な美しい音の響きを聴かせてくれる。ジャジーなビートとは全く相容れ無いロングトーンが特徴なので、デジョネットのフリーでポリリズミックなドラミングと前衛的で良く歌うホランドのベースとの相性が良い。

この三位一体の即興演奏はエモーショナルであり、アーティスティックである。独特の深いエコーも効果的で、いかにもECMレーベルの音世界がこの盤に詰まっている。これまたECMレーベルらしい、アーティスティックなジャケットと相まって、聴いていてとても楽しい。4ビートだけがジャズでは無い。これもジャズ。いわゆる欧州ジャズである。

 
 

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2018年3月 1日 (木曜日)

ダウケレン、侮り難しである。

ジャズは「深化」している。「進化」はなかなか難しくなったが、「深化」は確実に進んでいる。今回、このアルバムを聴いて、その感覚を再確認した。Jan Van Duikeren『Jan Van Duikeren's Fingerprint』(写真左)。「ヤン・ヴァン・ダウケレンズ・フィンガープリント」と読む。2011年2月のリリース。

紹介記事を読んでみると、キャンディー・ダルファー、トレインチャ、ザ・ジャズインヴェーダーズ、ニュー・クール・コレクティヴ・ビッグバンド、ジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ、それら全てに参加するオランダ・ジャズ・シーンのファースト・コール・トランペッター「ヤン・ヴァン・ダウケレン」初のリーダー作だそうだ。

確かに「良い」。トランペットの音がとてもポジティヴに、躍動感溢れ、響きまくる。素直ではあるが、ちょっとだけ捻れた「鯔背な」トランペット。現代の「鯔背な」トランペットである。なるほど、このヤン・ヴァン・ダウケレンが、和蘭でファースト・コール・トランペッターだと言われるのが、とても良く判る。
 

Jan_van_duikerens_fingerprint

 
こんなポジティヴなトランペット、確かに欲しいし、一緒にやってみたくなるよな〜。アルバム全体の雰囲気は「現代のファンキー・ジャズ」。これまでのファンキー・フュージョンやジャズ・ファンク、ソウル・ジャズの要素を取り込みながら、全体の雰囲気は、コンテンポラリーでクールな「ファンキー・ジャズ」。

ファンキー・ジャズでありながら、ファンクネスはあっさり目。こってこてなファンクネスとは全く無縁。さすがは欧州は和蘭のジャズである。爽快感抜群、ポジティブで鯔背な「ファンキー・ジャズ」。そして、ずっとダウケレンのトランペットを聴いていて、どこか温和な雰囲気が漂っているところがユニーク。ほど良く抑制が効いている、というか、ポジティヴに「温和」なのだ。

ハードバップなジャズに定盤な雰囲気、所謂「熱気溢れ、汗が飛び散る熱いブロウ」というところが無く、力感はしっかりあるが、どこか温和なトランペットの音が実に面白い。他のトランペッターにはちょっと見当たらない「温和で鯔背な」トランペット。これが以外と癖になり、何度も繰り返し聴くハメに陥っている。ダウケレン、侮り難しである。

 
 

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2018年2月11日 (日曜日)

続・ECMに冬の季節が良く似合う

昨日「ECMに冬の季節が良く似合う」と書いた。演奏内容は、基本的に欧州的なニュー・ジャズの音世界。ECMレーベル独特の深いエコーが、冬の寒い空気にピッタリ合う。ファンクネスは皆無。ハードバップの様な熱気溢れる演奏は基本的に無い。フリーな演奏も怜悧な熱気で覆われる。ECMの音は基本的に冬に良く似合う。

そんなECMレーベルには、レーベルの音を代表する「お抱え」ミュージシャンが何人か存在する。昨日、ご紹介したテナーのヤン・ガルバレク(Jan Garbarek)などは、そんなECMレーベルの「お抱え」ミュージシャンの一人。彼の硬質で切れ味の良い、怜悧でエモーショナルなテナーは、ECM独特の深いエコーに乗って、その個性が増幅されて、確かにECMレーベルの音のイメージにピッタリである。

そんなガルバレクの個性をしっかりと捉えた初期の好盤が、Jan Garbarek『Triptykon』(写真左)。1972年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ss, ts, bs, fl), Arild Andersen (b), Edward Vesala (perc)。ピアノレスのサックス・トリオ。ガルバレクのサックスが心ゆくまで堪能できる編成である。
 

Triptykon

 
冒頭の「Rim」から「Selje」「J.E.V.」「Sang」までの4曲は、ノンストップのインタープレイ。明らかに欧州系のニュー・ジャズ的雰囲気の、適度にテンションを張った中、3者3様の自由度の高いインタープレイが展開される。ECMの独特のエコーがかかっていて、音と音との間の静謐な「間」がクッキリと浮かび上がる。故に動と静のメリハリが効いて、インタープレイの躍動感が増幅される。

6曲目の「Etu Hei!」は、ガルバレクとヴェセラのデュオ。サックスとパーカッションのデュオで、ふと「コルトレーンとラシッド・アリのデュオ」を想起する。フリーな演奏であるが、ガルバレクのアドリブ・フレーズは破綻が無く、端正である。実に欧州的なフリーの演奏。ガルバレクが「欧州のコルトレーン」と呼ばれる理由がここにあるが、コルトレーンのテナーとは全く異なる個性ではある。

そして、ラストの「Bruremarsj」は実に興味深い。まず、この曲の タイトルって何て読むんだ、なんて思うのだが、ノルウェー民謡なんだそうだ。この北欧的なフレーズを持った佳曲を題材に、ガルバレクは素朴に土臭くフォーキーに吹き上げていく。これ、なかなかの内容だと思うのだが、如何だろう。とにかく、この盤、ECMらしい好盤だと思う。今の季節にピッタリで、思わず聴き込んでしまう。

 
 

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2017年12月14日 (木曜日)

ECMレーベルらしい音・7

ECMレーベルの初期の頃のアルバムには「フリー・ジャズもの」が多い。恐らく、1970年代前半、欧州のジャズ界は「フリー・ジャズ」のブームだったんだろう。というか、欧州のジャズ者の方々は「フリー・ジャズもの」が好きだ。一定量のフリー・ジャズ者が何時の時代にも存在するみたいだ。

Jan Garbarek『Triptykon』(写真左)。1972年11月の録音。ECM1029番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ss, ts, bs, fl), Arild Andersen (b), Edward Vesala (perc)。ノルウェー出身のサックス奏者、ヤン・ガルバレクの5枚目のリーダー作。ECMレーベルでは、『Afric Pepperbird』『Sart』に続く3枚目。

ECMレーベル独特の、抑制の効いた、切れ味の良い怜悧な音世界が個性の「フリー・ジャズ」が全編に渡って展開されている。コルトレーンの様ではあるが、コルトレーンの様な「汗飛び散る様な熱気」は全く無い。この盤は「青く怜悧な熱気」に覆われている。随所にエキゾチックなルーツ音楽の要素が散りばめられていて、欧州のフリー・ジャズやなあ、と妙に感心したりする。
 

Triptykon  

 
ガルバレクのサックスはコルトレーンのマナーを踏襲しているが、演奏時のアドリブ・フレーズの展開や旋律の調子は、何となく「オーネット・コールマン」の様な雰囲気を感じる。欧州フリー・ジャズの特徴なんだが、米国フリー・ジャズのいいとこ取りをしつつ、音世界の雰囲気は明らかに「欧州」な雰囲気を前面に押し出す。このガルバレクのフリー盤も同様に傾向をしっかり踏襲している。

ラストのノルウェー民謡である「Bruremarsj」が実に良い雰囲気。典型的な欧州フリー・ジャズの展開を踏襲していて、聴いていて、とても楽しい。素朴でメロディアス、ルーツ・ミュージックな雰囲気がプンプンして、フリーなアドリブ展開も全く気にならずに、楽しんで聴ける。こういう欧州ルーツ・ミュージックをベースにしたジャズ演奏って、勿論、米国には無いもので、ECMレーベルのアルバムの良い個性でもある。

しかし、これだけ徹底したフリー・ジャズって、どれだけ、一般のジャズ者の方々に訴求するのだろう。欧州ではそれなりに市民権は得ている、とは言うが、人数はかなり絞られるのでは無いだろうか。ガルバレクのフリーなテナーはテクニックが確かなので、耳触りでは無い。ECMレーベルのフリー・ジャズを知るのに、格好の一枚である。

 
 

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2017年12月 5日 (火曜日)

ECMレーベルらしい音・6

西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」が独特の個性で、ECMレーベルにしかない音世界というものが存在する。

例えば、Ralph Towner with Glen Moore『Trios Solos』(写真左)。1972年11月の録音。ECM1025番。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (g, p), Glen Moore (b), Paul McCandless (oboe), Collin Walcott (tabla)。タウナーとムーアの共同名義のアルバムですが、このメンバー構成は、当時の「Oregon」オリジナル・メンバーですね。

恐らく契約の関係で、ECMレーベルから「Oregon」名義でアルバムをリリース出来なかったのでは無いかと推察しています。しかも演奏フォーマットは、トリオとソロの2種類。4人合わせての演奏は無いんですよね。しかし、この盤で奏でられている音世界は、まさしく「Oregon」そのものです。
 

Trios_solos

 
この音世界がECMレーベル独特の「美意識」と呼べるもので、とりわけ、ラルフ・タウナー(写真右)の美しいメロディーと繊細かつ力強いタッチのギターが素晴らしい。ECMレーベルの「美意識」を12弦ギターで紡ぎ上げていきます。この12弦ギターのパフォーマンスが圧倒的。4曲目「1×12」、7〜9曲目の「Suite: 3×12」の12弦ギター1本だけの演奏は凄いテンションで凄まじいばかり。 

音の洪水である。しかしながら、怜悧な音の洪水で姦しさは全く無く、静謐感をしっかりと留めているところが印象的。ニューヨークでの録音であるが、リミックスを施して完全にECMレーベルの音世界に仕立て上げている。これが不思議。ECMレーベルの音のマジックである。独特なエコーを伴って、その音空間は広め、楽器毎の分離は良好、定位感は抜群。ECMレーベルらしい音の「美意識」がここにある。

ファンクネスは皆無。透明感と静謐感がメイン、かつ自由度の限りなく高い「ニューエイジ・ジャズ」。初期ECMレーベルでのタウナーのリーダー作の「Diary」や「Solo Concert」などと並んで、珠玉の逸盤です。ほんと、ECMレーベルらしい音がぎっしりと詰まっています。聴き応え満点です。

 
 

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