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2017年12月 5日 (火曜日)

ECMレーベルらしい音・6

西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」が独特の個性で、ECMレーベルにしかない音世界というものが存在する。

例えば、Ralph Towner with Glen Moore『Trios Solos』(写真左)。1972年11月の録音。ECM1025番。ちなみにパーソネルは、Ralph Towner (g, p), Glen Moore (b), Paul McCandless (oboe), Collin Walcott (tabla)。タウナーとムーアの共同名義のアルバムですが、このメンバー構成は、当時の「Oregon」オリジナル・メンバーですね。

恐らく契約の関係で、ECMレーベルから「Oregon」名義でアルバムをリリース出来なかったのでは無いかと推察しています。しかも演奏フォーマットは、トリオとソロの2種類。4人合わせての演奏は無いんですよね。しかし、この盤で奏でられている音世界は、まさしく「Oregon」そのものです。
 

Trios_solos

 
この音世界がECMレーベル独特の「美意識」と呼べるもので、とりわけ、ラルフ・タウナー(写真右)の美しいメロディーと繊細かつ力強いタッチのギターが素晴らしい。ECMレーベルの「美意識」を12弦ギターで紡ぎ上げていきます。この12弦ギターのパフォーマンスが圧倒的。4曲目「1×12」、7〜9曲目の「Suite: 3×12」の12弦ギター1本だけの演奏は凄いテンションで凄まじいばかり。 

音の洪水である。しかしながら、怜悧な音の洪水で姦しさは全く無く、静謐感をしっかりと留めているところが印象的。ニューヨークでの録音であるが、リミックスを施して完全にECMレーベルの音世界に仕立て上げている。これが不思議。ECMレーベルの音のマジックである。独特なエコーを伴って、その音空間は広め、楽器毎の分離は良好、定位感は抜群。ECMレーベルらしい音の「美意識」がここにある。

ファンクネスは皆無。透明感と静謐感がメイン、かつ自由度の限りなく高い「ニューエイジ・ジャズ」。初期ECMレーベルでのタウナーのリーダー作の「Diary」や「Solo Concert」などと並んで、珠玉の逸盤です。ほんと、ECMレーベルらしい音がぎっしりと詰まっています。聴き応え満点です。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月28日 (火曜日)

ECMレーベルらしい音・5

そのレーベルの名は「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

Jan Garbarek『Sart』(写真)。1971年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, bs, fl), Bobo Stenson (p, el-p), Terje Rypdal (g), Arild Andersen (b), Jon Christensen (per)。北欧中心の欧州ジャズ軍団の面々である。そして、担当楽器にドラムが無い。そう「ドラムが無い」ところがミソ。

この盤は典型的なECMの音作りをしている。欧州ジャズにおける「フリー・ジャズ」もしくは「アブストラクト・ジャズ」は、こういう音世界を言う。ジャズの本場、米国で展開された、必要最低限のルールの下、心のおもむくままに、熱気溢れる咆哮の様なスピリチュアルなブロウでは無い。
 

Jan_garbarek_sart

 
ファンクネスと熱気は皆無。怜悧で透明度が高く、静謐で音数を厳選しつつ間を活かした、まるで現代音楽の様な自由度の限りなく高いパフォーマンス。ヤン・ガルバレクのテナーが怜悧で熱い。切れ味良く端正に響き、格調高くアブストラクトに崩れる。ECM独特のエコーと相まって、本当に良い音を出している。

リピダルのギター・エフェクトについてはさすがに古さを感じるが、気にするほどのことでは無い。逆に「時代の音」として楽しめるので、さほど気にならない。ステンソンのピアノがなかなか隅に置けない。ステンソンのピアノが、この欧州スタイルのフリー・ジャズの音世界の中で、とってもよいアクセントになっている。

ECMレーベルにあって、他のレーベルに無い音世界が、この「ファンクネスと熱気は皆無。怜悧で透明度が高く、静謐で音数を厳選しつつ間を活かした、まるで現代音楽の様な自由度の限りなく高いパフォーマンス」。このECM独特の音世界を受け入れてこそ、ECMレーベルの「ECMの考える欧州ジャズ」を身近にすることが出来る。

 
 

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2017年8月23日 (水曜日)

Miles Reimaginedな好盤・2

マイルスの成果を振り返り再評価するジャズ本に『MILES : Reimagined 2010年代のマイルス・デイヴィス・ガイド』がある。このジャズ本って、今の時代を前提に、マイルスの音世界のフォロワーについて検討・検証しているところが実に参考になる。昔の盤のみならず、最近リリースされた盤にもスポットを当てているので、実に有り難い。

そんな「Miles Reimagined」なジャズ本で興味を持った盤の一つが、Perigeo『Abbiamo tutti un blues da piangere』(写真左)。この盤は1973年のリリース。イタリアのバンド、Perigeo=ペリジェオと読む。当時、ジャズ畑で活動していたメンバー達によって、1971年にローマで結成されたグループである。邦題は「感涙のブルース」だったらしい。酷いなあ。

聴いてみると実に面白い音世界である。マイルスのフォロワーというか、エレ・マイルスの影響をモロに受けている部分が聴いてとれる。というか、ブルージーなジャズ・ロックぽいフュージョン・プログレという雰囲気。リターン・トゥ・フォーエヴァーやマハヴィシュヌ・オーケストラをロック寄りにして俗っぽくしたフレーズが出てくる出てくる。
 

Abbiamo_tutti_un_blues_da_piangere

 
はたまた、中期ソフト・マシーンのシンプルではあるが、イマージネーション豊かなハイテクな演奏が出てきたり、どっしりとした重量感を感じさせながらの鬼気迫るスリリングな、ちょっとフリーキーな展開には、そこはかとなく「キング・クリムゾン」の様なイメージが漂ったりする。マイナー調のインプロで盛り上がる様は、ジャズロックというよりは「プログレ」。

プログレッシブ・ロックっぽいジャズ・ロック。リフと即興が印象的なハイテクかつ叙情的なエレジャズ。バンド全体の演奏力は高く、アルバム一枚を一気に聴き切ってしまう。アバンギャルドな展開も散りばめられていて、そういう面ではロックでは無く「ジャズ」寄り。こんな面白いエレ・ジャズロックな盤が、1973年にイタリアで生まれていたなんて、僕は知らなかった。

アルバム・ジャケットもプログレ風で秀逸。ジャケットだけみれば「プログレ」、出てくる音は「ジャズ・ロック」という落差が面白い。さすがはイタリア、欧州のジャズ〜ロックの音世界である。ジャズとロックの境界が実に曖昧。そんな「曖昧」ならではの音の成果。ロックでは「プログレ者」の方々、ジャズでは「エレジャズ者」の方々にお勧めの一枚です。

 
 

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2017年8月 8日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・110

欧州の国々を旅行すると良く判るんだが、どの国にもジャズがある。その国独特のジャズが存在していて、ジャズのライブ・スポットもあるし、レストランなんかで、BGMでジャズが流れていたりする。もともと米国発祥のジャズが、この大西洋を渡った欧州で脈々とその歴史を継いでいるのだ。

今日は「フレンチ・ジャズ」。芸術の都「パリ」が控えるフランス。新しいアートについては、敏感に反応し、良いものについては、臆すること無く、積極的に取り込む。諸手を挙げて評価する。そんなフランスである。1940年代のビ・バップから1950年代のハードバップに敏感に反応し、米国から渡り住んできた、多くのジャズメンを暖かく迎えた。そんなフランスのジャズである。

Georges Arvanitas『Bird of Paradise』(写真左)。1988年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Georges Arvanitas (p), Jacky Samson (b), Charles Saundrais (ds)。ピアノ・トリオである。トリオのメンバーはオール・フランス。出てくる音は確かに「フランスやな〜」って感じの音だから、ジャズって面白い。
 

Georges_arvanitas_bird_of_paradise

 
感性のピアノ・トリオである。決して、理詰めでは無い。感覚最優先の力強いネオ・ハードバップな音作り。アレンジは最低限に留め、三者対等のインプロビゼーションを感性のおもむくまま、ちょっとラフなアンサンブルとアドリブ展開。ゆるゆるだけど決めるところはバシッと決める。品良く跳ねるようなオフビートを感じて、僕はこのトリオ演奏を「シャンパン・トリオ」と呼ぶ(笑)。

全16曲が収録されているが、6曲がアルヴァニタスのピアノ・ソロ。このソロがこれまた味わい深い。米国でもなければ、欧州の他の国のジャズ・ピアノの雰囲気とも全く違う雰囲気の、このフランス独特の(と言って良いだろう)ジャズ・ピアノの響きとフレーズ。力強いがどこかラフな雰囲気が漂いつつ、感性のおもむくまま、決めるところは決める。

ジョルジュ・アルヴァニタス (Georges Arvanitas)は、1931年6月生まれ。惜しくも2005年9月に逝去。享年74歳。フランスはマルセイユ生まれのジャズ・ピアノ奏者である。当初はクラシックのピアニストとして訓練を受けただけある、確かなテクニックに裏打ちされたバップなピアノは実に魅力的。もっともっと彼のピアノが聴きたい。そんな気持ちで一杯になりました。

 
 

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2017年3月15日 (水曜日)

イタリアン・ジャズは魅力的だ

イタリアン・ジャズは実に魅力的だ。最近、イタリアン・ジャズの好盤を定期的に聴くように心がけているのだが、聴けば聴くほど、どんどんその魅力に惹き込まれていく。日本では最近まで情報が少なかっただけに、聴けば聴くほど、そのイタリアン・ジャズの深い森の中に、どんどん惹き込まれていくかのようだ。

このライブ盤だって、相当に魅力的だ。Enrico Intra & Franco Ambrosetti『Live In Milan 〜 Duo, Trio, Quartet』(写真左)。2009年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp), Enrico Intra (p), Lucio Terzano (b), Tony Arco (ds)。う〜ん、ほとんど知らん顔ばかり。

さて、Enrico Intra(エンリーコ・イントラ)とは、ネットの情報を紐解くと「欧州の歴史ある音楽をベースに、米ジャズの語法に頼ることなく早くも50年代に独自の『イタリアン・モード』を確立した巨匠」とある。ピアニストである。明らかに欧州的なピアノを弾くが、確かに米国ジャズっぽくない、欧州的ではあるが、ある種、独特の響きとフレーズが個性。

かたや、Franco Ambrosetti(フランコ・アンブロゼッティ)とは、やはりネットの情報を読むと「スイス出身で欧州を代表するトランペットの巨匠」とある。マイルス・デイヴィスをしてその「黒さ」を認めさせた、とあるが、確かにこの人のトランペットは欧州らしからぬファンクネスを感じるから不思議な存在だ。
 

Live_in_milan_duotrioquartet

 
この二人が対等に「双頭リーダー」となって、イントラのレギュラー・トリオにアンブロゼッティが加わる形で、サブタイトルにもあるように「デュオ、トリオ、カルテット」の3種の演奏形態で、こってこてメインストリームなジャズを展開する。明かに米国ジャズとは異なる、欧州的なメインストリーム・ジャズ。

透明度の高い音の響き、流麗で印象的なアドリブ・フレーズ。決して俗っぽくは無い。どこかしっかりアートな側面を宿したアレンジ。バックのリズム・セクションにファンクネスはほとんど感じない。それでいて、先にも書いたが、アンブロゼッティのトランペットが意外と「黒い」。これが実に個性的で面白い。このトランペットのみにファンクネスが宿っている。

加えて、このライブ盤、音が良い。というか、響きが実に印象的。なぜかなあ、と思って解説を見ると、ミラノ市内の歴史的建造物である「la Sala Certificati del Comune di Milano」という、大理石が使われた優雅なホールにてのライヴ・レコーディングだそうだ。なるほど、だから独特な響きがするのか。思わず惹き込まれそうになる、透明度が高く、豊かで混じりけのない響き。

冒頭の、Enrico Intra & Franco Ambrosettiのデュオ演奏「Take The "A" Train」を聴けば、欧州的ではあるが、ある種、独特の響きとフレーズがいかに個性的なのかが判っていただけるかと思う。半世紀に渡って二人の巨匠が眺めてきた「欧州的ヴィジョン」。それをしっかり体感できる、とても内容のある好盤です。

 
 

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