2020年11月25日 (水曜日)

ショウは単純に「格好良い」

ウッディ・ショウのトランペットが良い。この2〜3ヶ月前からショウのリーダー作を聴き直しているんだが、やっぱり、ショウのトランペットは良い。歴代のジャズ・トランペッターの序列にしっかり入るべきトランペッターなのだが、何故か我が国では人気が無い。というか、評論家やジャズ雑誌からの人気が無い、と言った方が良いかな。一般のジャズ者の方々の中には「ショウ者」が結構いる、のが最近判ってきた。

Woody Shaw Quintet『At Onkel PÖ's Carnegie Hall Hamburg, 1979』(写真左)。1979年7月7日、独ハンブルグのOnkel Po's Carnegie Hall でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Carter Jefferson (ss, ts), Onaje Allan Gumbs (p), Stafford James (b), Victor Lewis (ds)。フロント2管のクインテット構成。

1979年夏に行ったヨーロッパ・ツアー中、7月にハンブルクのクラブ「Onkel Pö’s Carnegie Hall」で演奏した模様を収めたCD2枚組。一部に音の乱れはあるものの、発掘音源にしては全体的に音は良い。ヴァイタルで、切れ味良く、ブリリアントなショウのトランペットが心ゆくまで楽しめる貴重なライヴ盤。とにかく、全編に渡って、ショウのトランペットがキレッキレである。
 
 
At-onkel-pos-carnegie-hall  
 
 
ライヴ録音なので、ショウのトランペットの個性がとても良く判るのだが、当時、我が国のジャズ雑誌とかで評論家の方々から言われていた「フレディ・ハバードと似ている」については、全くそうでは無いことが、このライヴ盤を聴いて良く判る。ハバードよりヴァイタルでタフで、メインストリーム志向。アドリブ・フレーズのモーダル度とバリエーションはショウに軍配が上がる。そして、ショウのトランペットは単純に「格好良い」。

サイドマンの面々も良い。1977年にショウのグループへ加わったサックスのジェファーソンは充実のサックスを聴かせてくれる。ショウとの相性はバッチリだ。1976年春からショウと行動を共にしているベース奏者ジェームスは堅実なベース・ラインでフロントのパフォーマンスをしっかりと支えている。ピアニストのガムズも一生懸命で大健闘、ドラムのルイスが、ライヴが故、拡散気味のバンド全体のビートをしっかりと押さえ込んでいる。

1979年のライヴなので、時代はフュージョン・ジャズの流行のピーク。そんな時代にこんなバリバリ、メインストリーム志向の純ジャズなトランペットはウケなかったのだろうか。お蔵入りする内容では無いライヴ音源で、今回のリリースについては「拍手喝采」。ショウのトランペットの優れた個性を再認識できる内容で、ショウ者のみならず、ジャズ・トランペットのファンの方々には必聴盤でしょう。好盤です。
 
 
 

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2020年10月 3日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・189

ジャズ盤には「知る人ぞ知る」盤が結構ある。そんな盤って、まずジャズ盤紹介本にその名は挙がらないし、ジャズ雑誌の特集にもまずその名は挙がらない。昔であれば、ジャズ喫茶のマスターが知っていて、リクエストの合間にかけてくれて、硬派なジャズ者の方々が「なんだこの盤」と色めき立って、思わずジャケットを確認しにいく様な盤。

Ted Curson『Plenty of Horn』。1961年4月11日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Ted Curson (tp), Eric Dolphy (fl), Bill Barron (ts), Kenny Drew (p), Jimmy Garrison (b), Pete La Roca, Dannie Richmond, Roy Haynes (ds) 。リーダーのテッド・カーソンのトランペットと、エリック・ドルフィーのフルート、もしくは、ビル・バロンのテナー・サックスのフロント2管のクインテット編成。ドラムについては3人のドラマーが分担している。

まず、テッド・カーソンというトランペッター自体が「知る人ぞ知る」存在である。カーソンは、1935年、米国フィラデルフィア生まれ。2012年に鬼籍に入っている。享年77歳。1956年、マイルスの勧めでにNYへ移り、頭角を現す。僕にとっては、チャールズ・ミンガスとの共演が一番印象に残っている。硬軟自在で縦横無尽、表現力豊かなトランペットが個性、そのトーンも美しい、知る人ぞ知る、玄人好みのトランペッターである。
 
 
Plenty-of-horn  
 
 
そんなテッド・カーソンの初リーダー作がこの『Plenty of Horn』。カーソンのトランペットは「ポスト・バップ」。モードをベースにした、自由度が高く、独創的で印象深いアドリブ展開は実にアーティスティック。聴き手に迎合する「甘さ」は全く無い。とてもシビアで思索的、力強く柔軟なトラペットのフレーズに思わず聴き惚れる。

カーソンって、クラシックのトランぺッターになりたかったらしく、確かにカーソンのフレーズって、切れ味の良いブルース調の中に、クラシックの整然とした洗練された要素が見え隠れして、力強くはあるが流麗なのが特徴。そこに強烈個性ドルフィーのフルートが絡んだり(「The Things We Did Last Summer」と「Bali Ha'i」に2曲のみ)、創造的でエネルギッシュなバロンのテナーが絡んだりで、明らかに「ポスト・バップ」な演奏が繰り広げられて、思わず身を乗り出して聴き込んでしまう。

かつては「幻の名盤」として有名な盤だったが、今では音楽のサブスクサイトでも音源がアップされていて、気軽に聴くことが出来る。良い時代になったもんだ。ジャケットもシンプルだけど、実にジャズらしいジャケット。「ジャケ買い」にも十分に応えてくれる「隠れ好盤」である。
 
 
 

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2020年9月12日 (土曜日)

ハーグローヴの初リーダー作

朝から雨が降ったり止んだりで天気は悪いが、グッと涼しくなった。今日は最高気温が26度と一気に30度を下回った。そりゃ〜涼しいよな。これだけ涼しくなると、ジャズも色々な種類の、色々なジャズマンのアルバムを聴くことが出来る。あまりに暑いと、まずジッとして、スピーカーの前で聴き耳を立てるのもしんどいし、激しい展開の曲はどうしても敬遠したくなる。

Roy Hargrove『Diamond In the Rough』(写真左)。1989年12月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Roy Hargrove (tp), Ralph Moore (ts), Antonio Hart (as), Geoffrey Keezer, John Hicks (p), Al Foster, Ralph Peterson Jr. (ds), Charles Fambrough, Scott Colley (b)。新伝承派、ネオ・ハードバップでの「ファーストコール」トランペッターの一人、ロイ・ハーグローヴの初リーダー作である。

ネオ・ハードバップを代表するトランペッター、ロイ・ハーグローヴ。この初リーダー作を聴くと、それはそれは素晴らしいトランペットを吹いている。テクニックは申し分無く、歌心も満点。録音当時、弱冠20歳。このトランペットが二十歳そこそこの青年のプレイなのか。これって、歴史を振り返ってみて、クリフォード・ブラウンやリー・モーガン、ウィントン・マルサリスに匹敵する天才トランペッターである。
 
 
Diamond-in-the-rough
 
 
涼しくなると、こういう好盤としっかり向き合いたくなる。とにかく、ハーグローヴのトランペットが素晴らしい。収録曲についても、手垢の付いたような、どスタンダード曲の「Ruby My Dear」や「Whisper Not」も、しっかりと新しいアレンジで、新しいアドリブ・イメージを展開して、新鮮な雰囲気で聴かせてくれる。この力量たるや、とても20歳とは思えない。

バックをサポートするメンバーも好演につぐ好演。ベテランのサポートも借りつつ、新伝承派の若手メンバーが溌剌としたサポートを展開していて、とても清々しい。聴いていて気持ちの良い、聴き終えた後にスカッとする感じ。良い演奏だ。特に、ピアノのジェフ・キーザーが大活躍。モーダルなピアノでの効果的なバッキングもさることながら、作曲面でもなかなかの自作曲を3曲も提供している。

これだけの実力を持ったトランペッターであったにも関わらず、我が国での人気はイマイチだった記憶がある。しかし、である。ロイ・ハーグローヴのトランペットは凄い。ジャズ・トランペットの歴史上、屈指の存在で、再評価をするべきジャズマンの一人である、と僕は思う。そんなハーグローヴであるが、後年、腎不全に苦しみ、最後の14年間、透析を受けていたが、2018年11月2日、腎臓病によって引き起こされた心停止のために逝去した。まだ一昨年の出来事である。
 
 
 

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2020年8月30日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・186

ハードバップの流行時期は諸説あるが、1950年代〜1960年代前半と僕は思っている。それではそれ以降、ハードバップは演奏されなくなったのか、と問われれば、答えは「否」で、1970年代〜1980年代前半のフュージョン流行期にも、ハードバップは演奏されていた。それだけ需要があったということで、ジャズという音楽ジャンルの裾野は意外と広い。

ハードバップの流行期に活躍したジャズマンの中には、以降、1970年代〜1980年代前半のフュージョン流行期を乗り切り、1980年代後半以降の「純ジャズ復古ムーブメント」のモード・ジャズ偏重をものともせず、中には米国を離れて欧州にその活躍の場を求めた者もいるが、1950年代に流行したハードバップを頑なに守り続け、演奏し続けた強者ジャズマンは多数いる。

Art Farmer『Soul Eyes』(写真左)。1991年5月、福岡ブルーノートでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flumpet), Geoff Keezer (p), Kenny Davis (b), Lewis Nash (ds)。ハードバップ時代から第一線で活躍してきた、トランペット&フリューゲルホーン奏者、アート・ファーマーがワンホーンのカルテット盤である。
 
 
Soul-eyes-art-farmer
 
 
このライブ盤では、ファーマーは「flumpet(フランペット)」という、トランペットとフリューゲルホルンの構造と音色を併せ持つハイブリッド型金管楽器を吹いている。この楽器、とても珍しく、トランペットとフリューゲルホーンの名手であるアート・ファーマーの為に考案されたらしい。このフランペットを演奏するトランペット奏者は少ない。まず、ジャズ界ではファーマーのみである(私の知る限りであるが)。

録音当時、63歳のファーマーであるが、この不思議な楽器「フランペット」をバリバリに吹きまくっている。その吹きっぷりは、暖かい音色と鋭いアタック、厚くて豊かな、そして柔らかで丸い音質。フランペットの導入が成功している。このライブ盤でのファーマーのダンディズム溢れる、力強い、ハードバップな吹きっぷりは特筆に値する。

当時、若手有望株なピアニストであったジェフ・キーザーも頑張っています。ガンガンにハードバップなフレーズを弾きまくります。そして、バックで容赦なくファーマーをキーザーを鼓舞するルイス・ナッシュのドラム。これまた見事なバップ・ドラム。1991年という、メインストリーム・ジャズとして微妙な時期のライブ録音ですが、素晴らしいハードバップなパフォーマンスに圧倒されます。好盤です。
 
 
 

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2020年8月24日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・185

ケニー・ドーハムのトランペットの特徴は「ヘタウマ」。誤解しないで欲しいが「下手」と言っている訳では無い。音色は明朗で滑らか。テクニックもまずまず確か。しかし、そのフレーズはちょっと危うい。滑らかにアドリブ・フレーズを吹き進めていくのだが、ところどころで音の端々で「よれる」もしくは「ふらつく」。

しかし、ドーハムのパフォーマンスは「良い」と「普通」が混在するので、「良い」方向に振れると、それはそれは素晴らしいトランペットを吹いたりするから困る。つまり、ドーハムのリーダー作は全部聴いてこそ、ドーハムのトランペッターとしての個性と力量が理解出来る、ということ。「普通」のリーダー作に出会っても諦めず、どんどん他のリーダー作を聴き漁ることが肝要である。

Kenny Dorham『Whistle Stop』(写真左)。1961年1月15日の録音。ブルーノートの4063番。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Hank Mobley (ts), Kenny Drew (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。「良い」と「普通」のパフォーマンスがリーダー作毎に混在するドーハムとモブレーのフロント2管。聴く前にパーソネルだけ見て、ちょっと不安になる。

ハードバップが成熟仕切った時代の録音。我が国では、ジャズ盤紹介本でこの盤の名前が挙がることはまず無い。ドーハムの紹介の中でも、ドーハムの代表的好盤として紹介されることはまず無い。
 
 
Whistle-stop
 
 
が、である。まず、このジャケットを見て欲しい。なんか「好盤っぽい」面構えをしている。ブルーノート・レーベルはもともとジャケット・デザインは優秀だが、そんな中でもこのジャケットは良い。ということで聴いてみて「あらビックリ」。成熟したハードバップな演奏がギッシリ。演奏内容、演奏テクニック、どれをとっても「素晴らしい」の一言。

まず、リーダーのドーハムのトランペットが素晴らしい。がっしりと気合いの入った、ブリリアントで骨太なトランペットを吹きまくる。決して「ブレない」ドーハムのトランペット。ちょっと優しくラウンドした音のエッジと流麗なフレーズの吹き回しが、ドーハムらしい。

が、何と言っても、この番の最大の「サプライズ」は、ハンク・モブレーのテナーサックス。堂々として力感溢れる骨太なサックスをガンガンに聴かせてくれるのだ。あの気分屋の「迷える」モブレーがである。「ブレない」ドーハムと「迷わない」モブレーのフロント2管が相当な迫力を持って、我々の耳に迫ってくる。

そして、当時、過小評価されていたピアニストのケニー・ドリューが、黒くてブルージーな弾き回しで我々の耳を驚かせる。ベースの名手「ポールチェン」とドラムの「フィリージョー」とのリズム隊が実に良い「フロント2管のサポート」をしている。

堂々とブレないドーハムのトランペットが最大の魅力。もっともっと評価されていいアルバムだとしみじみ思う。
 
 
 

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2020年8月12日 (水曜日)

「ジャケ買い」の一枚に出会う

ジャケ買いの一枚である。ジャケ買いとは「その盤のジャケットのデザインが優秀で、その盤の中身を知らなくても、思わず衝動買いしてしまうこと」なんだけど、ジャズ盤の場合、そのジャケ買いが往々にあるから面白い。ジャズの場合、ジャケットのデザインが優秀な盤にハズレは無い、というジンクスがあるので、「ジャケ買い」って意外と知らなかった好盤に当たる確率が高いから、止めるに止められない(笑)。

Farnell Newton Quartet『Rippin’& Runnin』(写真左)。2020年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Farnell Newton (tp), Brandon Wright (ts), Brian Charette (org), Rudy Royston (ds)。トランペッター、ファーネル・ニュートンのリーダー作である。が、僕はこの「ファーネル・ニュートン」を知らなかった。この盤、完全に「ジャケ買い」である。

ネットで調べてみる。Farnell Newton=ファーネル・ニュートンはウディ ・ショウを敬愛するマイアミ出身の中堅実力派トランペッター、とある。1977年3月の生まれ。今年で43歳になる中堅ジャズマンである。リーダー作は数枚程度。我が国ではあまり知られていない(と思う)。この盤を聴いてみると、骨太なトーンで切れ味鋭く、ストレートでパワフルな吹きっぷりは、ファーネル・ニュートンがなかなかの実力者であることを教えてくれる。
 
 
Rippin-and-runnin  
 
 
全8曲中、ニュートン自作曲が4曲、残りの4曲はスタンダード曲だが、知る人ぞ知るマイナーでマニアックなスタンダード曲を選曲しているところも隅に置けない。自作曲の出来もまずまず良好。選曲が良い分、盤全体の演奏レベルはとても高く、聴き応えのあるものになっている。良曲が良演を引き出している、と言える。いずれの曲も、実に良い感じのストレート・アヘッドで骨太な「ネオ・ハードバップ」演奏。

テナーのブライドン・ライトと2管フロントがとにかく良い。そして、ジャズ ・オルガンの名手(らしい)ブライアン ・シャレットのオルガンがとても良い味を出している。シャレットって米国では人気の実力オルガニストらしく、確かにその弾きっぷりたるや見事。スマートで適度に粘り捻れるが、オーバーアクションに陥ることは無い、実に品の良い、それでいて力感溢れるオルガン。目から鱗である、いや、耳から鱗か(笑)。

骨太なトーンで切れ味鋭く、ストレートでパワフルなニュートンのトランペットとブルージーでグルーヴィーなジャレットのオルガンとのユニゾン&ハーモニーも魅力。どっぷりとジャジーな雰囲気に浸れる好演の数々。加えて、そんな優れたパフォーマンスを想起させる、優れたアルバム・ジャケット。とても良いジャズ盤に巡り会った気がする。暫くヘビロテ状態である。
 
 
 

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2020年7月20日 (月曜日)

ゴードンのもう一枚のリーダー盤

昨日のブログで「リーダー作はこの盤と『Lookin' Good!』の2枚しか残っていないが、どちらも「隠れ好盤」レベルの内容の良い盤。この盤でゴードンのトランペットが気になったら、もう一枚の『Lookin' Good!』も聴いて頂きたい」と書いた手前、今日はそのジョー・ゴードンのリーダー盤第2作目『Lookin' Good!』について触れておきたい。

Joe Gordon『Lookin' Good!』(写真左)。1961年7月、西海岸のLos Angeles での録音。ちなみにパーソネルは、Joe Gordon (tp), Jimmy Woods (as), Dick Whittington (p), Jimmy Bond (b), Milt Turner (ds)。幻のトランペッター、ジョー・ゴードンが西海岸に渡った後に、西海岸のメンバーと録音したリーダー作第2弾で最終作である。この後、1963年11月、リーダーのゴードンは家の火災により、不慮の死を遂げる。

1960年代に入ってからの米国西海岸ジャズ・シーンについては不勉強で、主だった若手〜中堅のジャズメンについて良く判らない。このゴードンのリーダー作第2弾についても、トランペットでリーダーのジョー・ゴードン以外、他のメンバーについてはよく知らない名前ばかり。聴く前は「大丈夫なんか」と心配になるが、聴いてみると、あら「なかなか良いやん」。1961年という時代を踏まえて、演奏の内容はモード・ジャズが主。
 
 
Looking-good  
 
 
ジャズの最大の特徴である「即興演奏」の自由度を大きく広げる為に採用された「モード・ジャズ」。この盤では、さすが西海岸ジャズとでも言おうか、かっちりとまとまった、端正で素直なモード・ジャズが展開されている。頭で理解して理屈で音にした様な端正さ。変幻自在、縦横無尽といった、マイルスを中心とした、非常に自由度と即興性の高いモード・ジャズと比べると、この「こじんまり」したところに、ちょっと物足りなさを感じる。

それでも、内容的にはなかなか健闘していて、当時の米国西海岸ジャズの状況を体感する上では貴重な録音であることは確か。リーダーのゴードンのトランペットは安定した吹きっぷりで、バンド・サウンド全体を牽引している。その端正で溌剌とした吹きっぷりは、同じフロント管、ジミー・ウッズのアルト・サックスの聴き応えのあるパフォーマンスを引き出している。この盤のフロント2管は好調。ユニゾン&ハーモニーもバッチリ決まって聴き応え充分。

知る人ぞ知る、玄人好みのトランペッター、ジョー・ゴードン。他には、ジョニー・コールズとかブルー・ミッチェル、リチャード・ウィリアムスあたりが、ゴードンと同じポジションにいるトランペッターかと思う。いずれもテクニックに優れ、端正で歌心溢れる吹きっぷりで、味のあるパフォーマンスを残してくれている。ビッグ・ネームのパフォーマンスも当然良いが、時には、この「知る人ぞ知る、玄人好みのトランペッター」にも耳を傾けて欲しい、と思っている。
 
 
 

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2020年7月19日 (日曜日)

知る人ぞ知るトランペッター

ジャズ・トランペットについては、まず4大トランペッター、マイルス・ディヴィス、クリフォード・ブラウン、リー・モーガン、ディジー・ガレスピー、この4人のネーム・ヴァリューが大き過ぎて、この4人で終わりって感じになるが、まだまだ優秀なジャズ・トラペッターは多くいる。ジャズ盤紹介本には滅多に挙がらない、知る人ぞ知る、玄人好みのマイナーなトランペッターも沢山いる。

『Introducing Joe Gordon』(写真左)。1954年9月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Gordon (tp), Charlie Rouse (ts), Junior Mance (p), Jimmy Schenck (b), Art Blakey (ds)。リーダーのトランペッター、ジョン・ゴードンは1928年生まれ。1963年に35歳で早逝した「幻のトランペッター」である。そんなジョー・ゴードンの初リーダー盤がこの盤になる。
 
ゴードンは米国西海岸に渡って活躍しながらも不運な最期を遂げた訳だが、この初リーダー盤は西海岸に渡る前、東海岸で録音したもの。共演者がなかなか渋くて、ドラムにアート・ブレイキー、ピアノにジュニア・マンス、フロント管のパートナーにテナーのチャーリー・ラウズ、と玄人好みの「職人ジャズマン」が控える。ベースのジミー・シェンクだけほぼ無名。この共演者を見ただけでも、この盤は充分に期待できる。
 
 
Introducing-joe-gordon
 
 
ゴードンのトランペットの音が良い。楽器が良く鳴っている。ブルブルとブラスが震える様なブリリアントな音。覇気があって気持ち良く伸びるトーン。速いフレーズの指捌きの確かさ。どれをとっても一流レベルのトランペッターである。テンポの速い曲では火の出る様な、勢いのある吹きっぷり、スローなバラードチックな曲ではほど良く抑制された、爽快感溢れる大らかな吹き回し。一言でいうと「上手い」。トランペットがトランペットとしてしっかりと鳴っている。
 
バックのメンバーの演奏も覇気溢れる、躍動感溢れるもので、ピアノのジュニア・マンスは安定感のあるバップ・ピアノを披露し、テナーのチャーリー・ラウズのテナーはしっかりとリーダーのゴードンのトランペットの魅力をさらに引き出す様なユニゾン&ハーモニーを繰り出す。ブレイキーのドラムは言わずもがなの素晴らしいドラミングで、バンド全体のリズム&ビートをコントロールし、フロントのゴードンのトランペットとラウズのテナーを鼓舞しまくる。
 
収録曲全8曲中、2曲のみクインシー・ジョーンズの曲で、残りの6曲はジョー・ゴードンの作。どのゴードンの自作曲もなかなかの内容で作曲の才もある優秀なジャズマンであったとこが良く判る。リーダー作はこの盤と『Lookin' Good!』(1961年)の2枚しか残っていないが、どちらも「隠れ好盤」レベルの内容の良い盤。この盤でゴードンのトランペットが気になったら、もう一枚の『Lookin' Good!』も聴いていただきたい。良いバップ系トランペットです。
 
 
 

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2020年7月10日 (金曜日)

ウィルバー・ハーデン知ってる?

今日も雨模様の空。各地で大雨による被害が続出している。心配である。ここ千葉県北西部地方は雨に関してはまだそんなに激しく降ってはいない。しかし、蒸し暑い。曇り空が続いているので、気温は30度手前で止まるのだが、湿度はMax。これだけ湿度が高いとちょっと動くだけで汗がジンワリ滲み出て、実に不快である。

Wilbur Harden『The King and I』(写真左)。1958年9月、NYのVan Gelder Studioでの録音。サヴォイ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wilbur Harden (flh), Tommy Flanagan (p), George Duvivier (b), G. T. Hogan (ds)。リーダーのウィルバー・ハーデンのフリューゲルホーン1管のワンホーン・カルテットである。名盤請負ピアニスト、トミフラが参加。ベースにデュビビエ、ドラムにホーガンと渋いリズム隊。

リーダーのウィルバー・ハーデンは、1924年12月、アラバマ州生まれのジャズ・トランペット、フリューゲルホルン奏者。1969年に45歳で鬼籍に入っている。1958年後半に深刻な病気にかかったらしく、リーダー作は、1958年の元気な頃に出した4枚のみ。サイドマンとしても1957〜58年に集中しており、寡作のトランペッターである。
 
 
The-king-and-i
 
 
ハーデンのトランペットは聴き心地がとても良い。愛らしくてウォームな音色。決して派手派手しい立ち回りはしない。流麗というよりは「朗々」の方が言い得て妙。そんな「暖かで澄んでいて朗々とした」、この盤ではフリューゲルホーンで、有名ミュージカルの「王様と私」の、魅力的な楽曲の数々を吹き上げていく。楽曲の可憐な旋律と相まって、とても耳に心地良いハーデンのフリューゲルホーンである。

伴奏を務める、トミー・フラガナンこと「トミフラ」。名盤請負人と呼ばれるが、確かに、リーダー作のリーダーの楽器の音と個性に合わせた、個性が引き立つような弾き回しは「素晴らしい」の一言。本来は「バップ」なピアニストなんだが、ここでは、ハーデンのフリューゲルホーンの雰囲気にあった、可憐でウォームな、それでいて、そこはかとなくビートを効かせた弾き回しを披露している。このトミフラのピアノの弾き回し、聴きものである。

ホーガンの可憐で気品溢れるドラミング。デュビビエのベースが演奏の「底」そしっかりと押さえていて見事。ホーガンの愛らしくてウォームなフリューゲルホーンも良し。トミフラ率いるリズム・セクションも良し。アルバム全体、沁みる演奏のオンパレード。この盤によって、寡作の「ウィルバー・ハーデン」の名前が印象に残る。ハーデンにとって、この盤があって良かった。
 
 
 

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  ・『You’re Only Lonely』 1979

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  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

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  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年6月25日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・130

たまたま、ネットを徘徊していて見つけた「今までに聴いたことが無いアルバム」が、意外と好盤だった時は、なんだか幸せな気分になる。ジャズを聴き始めて、早40年余。それでも、未だに「今までに聴いたことが無いアルバム」に出会うことがある。ジャズ盤の蒐集については、ほとんど「底なし沼」のようなものである。

この盤もそんな盤で、音楽のサブスク・サイトをふらふらしていて、梅雨だなあ、サンバかボサノバを聴いて、スカッとしたいなあ、と思った瞬間、この盤のタイトルが目に飛び込んできた。そうか、サンバだ、サンバが良い。と思いつつ、この盤のタイトルの「ARS 001」の部分がちょっとチャラいかなあ、感じながら「ゲット」。

Allen Houser Sextet『No Samba ARS 001』(写真左)。1973年の作品。トランペッターの「アレン・ハウザー」の初リーダー作になる。ちなみにパーソネルは、Allen Houser (tp), Buck Hill (ts), Vince Genova (p), Steve Novosel (el-b, ac-b), Terry Plumeri (ac-b), Mike Smith (ds)。さすがに、1970年代に入っての「メインストリーム・ジャズ」。パーソネルを見渡しても、知っている名前がほぼ無い。
 
 
No-samba  
 
 
この盤、紙ジャケCDの「帯紙」のキャッチフレーズを見ると、どうもこの盤、当時、我が国のジャズ喫茶で人気のアルバムだった様である。ハウザーは、60年代には主にラテン・バンドで活動していた、という経歴の持ち主。たしかにハウザーの出すフレーズのそこかしこに、ラテンチックな哀愁が漂っている。これが「堪らない」。ラテン音楽の要素がそこはかとなく漂うパフォーマンスは聴いていて楽しい。

基本的には普通のハードバップな演奏なのだが、ベーシストが二人いる。一人が弓弾きに専念しているみたいで、これがアルバム全体に不思議な雰囲気を漂わせている。が、基本はラテン、なので、意外と気にならない。1973年という、メインストリーム・ジャズとしては受難の時代。アルバムのプロデュースも、ちょっと「奇天烈」な面があったのかもしれない。

ハウザーが全編、「オーソドックスでハードバップな」トランペットで押しているところが好感ポイント。シュッとしたフレーズと、どこか哀愁感漂う音色が良い。ほとんど無名に近いハウザーではあるが、こうやって21世紀になっても再発され「愛聴される盤」をものにした。ジャズの歴史に残る好盤、という類では無いが、メインストリームなジャズを楽しむ、という面では、この盤は好適である。
 
 
 

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