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2018年4月 3日 (火曜日)

ネオ・ハードバップの良い一例

ハードバップが流行したのは1950年代。1960年代前半には、ハードバップが分岐して、アーティスティックなモード奏法や、ポップなファンキー・ジャズやソウル・ジャズに発展。その後、一旦は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズに席巻されたが、1980年代後半、純ジャズ復古の大号令と共に、ハードバップが復権。

1980年代後半、マイルスは、若手ミュージシャンの一部が「ハードバップ」の焼き直しに熱中する様を見て、「昔、自分たちがやり尽くしたハードバップを焼き直して何が面白いのか」とその保守性を揶揄した。確かに純ジャズ復古の初期の頃は、ハードバップのコピー、焼き直しな演奏が多く、今の耳で聴けば、確かに保守的やなあ、と感じるものが多かった。

しかし、21世紀に入って、純ジャズ復古でハードバップを知った世代が、若手ジャズメンとして活躍する環境になって、その「ハードバップ」は深化する様になった。アプローチや展開、アレンジ、奏法などに工夫を施し、ハードバップではあるが、新しい「何か」を宿した「ネオ・ハードバップ」な演奏がコンスタントにリリースされる様になった。
 

Walk_the_walk  

 
Eric Siereveld's Organic Quintet『Walk the Walk』(写真左)。2018年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Eric Siereveld (tp), Tony Barba (ts), Jonathan Kreisberg (g), Steve Snyder (hammond b3 organ), Mitch Shiner (ds)。 アルバム・タイトルを見ると、ギターのJonathan Kreisbergをフィーチャーしている。冒頭の「The Last Innovator」から、立派な内容のハードバップな演奏である。

リーダーのトランペッター Eric Siereveldは端正で明朗なブロウで魅了する。本当に素敵に鳴るトランペットだ。演奏のスタイルは明らかに「ハードバップ」。しかし、1950年代のハードバップでは無い。明らかに深化した「ハードバップ」な響きに耳を奪われる。効果的に織り込まれる Jonathan KreisbergのギターとSteve Snyder のオルガン。

ギターとオルガンが織り込まれたからといって、演奏の雰囲気は決して「ファンキー・ジャズ」にならないところが、この盤の演奏の理知的なところ。そんな理知的なハードバップは、21世紀の新しいジャズの響きに満ちている。対峙して聴き込むも良し、何かしながらの「ながら聴き」にも良し。この盤の演奏こそが「ネオ・ハードバップ」の良い一例だろう。

 
 

東日本大震災から7年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年2月27日 (火曜日)

ながら聴きのジャズも良い・30

元来、勉強したり、仕事をしたりする時、音楽が無いと駄目なタイプである。いわゆる「ながら族」である。中学時代から、勉強に音楽とラジオ放送は欠かせない。夜、晩ご飯を食べたら、カセットテレコで音楽を聴きながら勉強。夜11時からは深夜放送タイムに突入。ず〜っと「ながら勉強」。これは大学卒業まで続く。筋金入りの「ながら族」である。

さすがに社会人になって、会社で仕事をする時は音楽は「御法度」。しかし、頭の中では音楽が流れており、ノってくると鼻歌を歌いながら仕事をして、よく上司から怒られた(笑)。で、「ながら聴き」にはジャズが良い。それも端正な純ジャズか、端正なフュージョンが良い。途中、ブレイクしたりフリーに走ったりするやつは駄目だ。気が散る。かっちり端正なやつが良い。

Jim Rotondi『The Move』(写真左)。2009年11月10日の録音。パーソネルは、Jim Rotondi (tp, flh), Ralph Bowen (ts), Mike DeRubbo (as), David Hazeltine (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。なんだか「One For All」に似てるなあ、と思ったら、パーソネルを見たら、Jim Rotondi, David Hazeltine, Joe Farnsworth の3人が「One For All」出身でした。
 

The_move_1

 
実に清々しいほどに端正な純ジャズである。兎にも角にも破綻が全く無い。楽器も素敵に良く鳴っている。特に、リーダーのジム・ロトンディのトランペットが凄く良い音で鳴っている。芳しきブラスの響き。スッと伸びたハイトーン。聴いていて凄く気持ちが良くなる、端正で堅実で素直な伸びのあるハードバップである。リズム・セクションもクールで躍動感溢れる極上なもの。

9曲中5曲がメンバーのオリジナルもなかなか良い出来だが、残り4曲のスタンダード曲及びジャズメン・オリジナル曲の出来が更に良い。アレンジも洗練されていて、淀みの無い流麗なハードバップ。しかし、1950年代のハードバップでは無い。洗練され深化した現代のハードバップである。ビートもしっかりと効いていて、聴いていて、とてもとても心地良い。

午前中から午後、日の高い間の「ながら聴き」のジャズはトランペットがメインのハードバップが良い。サックスであればアルト・サックスだ。夕暮れ時から夜にかけては、やっぱりムーディーなテナー・サックスがメインのハードバップが良い。「ながら聴き」にはジャズが良い。それも端正なハードバップが良い。ジム・ロトンディの『ザ・ムーヴ』。ながら聴きに最適な好盤である。

 
 

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2017年10月 4日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・90

涼しくなった。というか今日は夕方から少し寒い。一気に季節が動いたようで、もう晩秋の様な雰囲気である。この極端に涼しくなるのも、あと2日くらいだそうなので、まあええか、という感じである。まあ、ここまで涼しくなると、トランペット盤も抵抗なく聴けるようになる。暑いと、特に蒸し暑いと、どうにもトランペット盤は敬遠してしまいがちである。

ということで選んだ盤が、Kenny Dorham『Short Story』(写真左)。1963年12月19日、コペンハーゲンのMontmatre Jazzhusでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Tete Montoliu (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Alex Riel (ds),  Allan Botschinsky (flh)。スティープルチェイス・レーベルからのリリースである。

まず、パーソネルを見れば触手が伸びる。「北欧のジャズの殿堂」、コペンハーゲンの老舗ジャズハウス「カフェ・モンマルトル」を支えた守護神の一人、ドラマーのアレックス・リエル、北欧ベースの巨人ペデルセン、そして、スペインの哀愁のピアニストであるテテ・モントリュー。そこに、ハードバップな哀愁トランペッターのケニー・ドーハムがリーダーとして、フロントに座るのだ。
 

Short_story

 
そして、CDプレイヤーのスタートボタンを押すと、絶好調に吹きまくるドーハムにちょっとビックリする。もともと、ドーハムは好不調の波があるトランペッター。哀愁のトランペッターなどと喩えられることがあるが、単に不調で覇気が無かっただけ、という盤も時にはある。しかし、乗った時のドーハムは「ブリリアント」。トランペットの真鍮をブルブル震わせるが如く、ポジティブに吹き上げる。

そんな好調時のドーハムがこのライブ盤に「いる」。この盤、全編で50分程度なので、もしかしたら、1963年12月19日のカフェ・モンマルトルでのドーハムのパフォーマンスは全てが絶好調ではなかったかもしれない。それでも、この全編50分のアルバムに編集し収録されたドーハムのパフォーマンスは見事だ。当時、ドーハムは39歳。中堅のジャズメンで、一番、溌剌としていた頃だったのかもしれない。

ジャケットがあまりにシンプル過ぎて、かなり損をしているライブ盤だと思いますが、手に入れて損の無い、ジャズ・トランペットを十分に楽しめる「隠れ好盤」だと思います。何も『Quiet Kenny(静かなるケニー)』だけがドーハムの代表盤ではありません。哀愁のトランペッターと形容するよりは、バップでブリリアントなトランペッターと形容する方が、ドーハムの本質を突いているかもしれません。

 
 

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2017年9月 7日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・113

ジャズを聴き始めてから、かれこれ40年になる。もうそんなになるのか。所有するCDも相当数に登り、もうデータベースにしておかないと所有しているのかいないのか、聴いたことがあるのか無いのか、判らなくなっている。それでも、ジャズは飽きない。飽きないどころか、どんどん深みにはまっていっている。

そんなジャズ大好き人間の僕が、この盤は聴いたことも見たことも無かった。つい先日、ネットを徘徊していて、誰かのブログにぶち当たって、見慣れないジャケット写真が目に入って、その紹介文を読んでみたら「え〜、この盤、知らんなあ」。しかし、である。この盤のジャケットの写真、これが凄く魅力的。「良い音出してるよ〜」って語りかけてくる様なジャケット。「ジャズ喫茶で流したい」ネタな盤である。

Count Basie and Dizzy Gillespie『The Gifted Ones』(写真)。1977年の録音。ちなみにパーソネルは、Count Basie (p), Dizzy Gillespie (tp), Joe Pass (g), Ray Brown (b), Mickey Roker (ds)。ガレスピーのトランペットのフロント1管。ギター+ピアノ、そしてベース+ドラムのリズム・セクション。
 

The_gifted_ones

 
いや〜、むっちゃ趣味の良いハードバップ。まず、カウント・ベイシーのピアノが絶品。音数少なく、ポロンポロンと絶妙の間とテンポの無茶苦茶に個性的なピアノ。シンプルそして侘び寂び。そんなむっちゃ粋な静かなピアノ。そこにガレスピーのバップなトランペットが鳴り響く。トランペットの音にベイシーのピアノはかき消されるのか、と思いきや、その存在感たるや驚きの「静謐なピアノ」である。

ガレスピーのトランペットも凄く良い。エモーショナルなブロウもあれば、流麗で語りかける様な優しいブロウもある。あのビ・バップなトランペット一辺倒のガレスピーが、これだけ変幻自在、硬軟自在なブログを繰り広げるとは思わなかった。メリハリ効いたガレスピーのトランペットと音数少なく、ポロンポロンと絶妙の間とテンポのベイシーのピアノ。素晴らしい対比。

パスのギター、ブラウンのベース、ロッカーのドラム、職人気質のリズム・セクションが、そんな主役の二人、ガレスピーとベイシーをしっかりとサポートする。いや〜、これぞジャズって感じの演奏に思わず聴き惚れる。しかし、こんな盤があったなんて。パブロ・レーベルからのリリースなのでメジャーな盤の類。日本で何故ジャズ雑誌なので、絶賛&紹介されなかったのか、が不思議な、思い切り充実の内容。好盤です。
 
 
 

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2017年7月13日 (木曜日)

CTIレーベルの純ジャズ盤

CTIレーベルって、1960年代の終わりから1980年代前半まで、初期はイージーリスニング・ジャズから始まって、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズまでがメインの老舗レーベルなんだが、そんな中に、上質な「メインストリーム・ジャズ」が混じっているのだから不思議。そして、これがまた、内容的に素晴らしいものなのだから隅に置けない。

Gerry Mulligan & Chet Baker『Carnegie Hall Concert』(写真左)。1974年11月24日、ニューヨークのカーネギー・ホールでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Chet Baker (tp), Ed Byrne (tb), Bob James (p, el-p), Dave Samuels (vib, per), John Scofield (g), Ron Carter (b), Harvey Mason (ds)。

このライブ盤、パーソネルは見渡せば、なかなかユニークな人選に思わずニヤリ。バリサクのマリガンとペットのチェットはハードバップ時代からの純ジャズ出身のベテラン。そこに、フュージョン・ジャズの仕掛け人、ボブ・ジェームスがキーボードを担当する。そして、若き日の捻れギタリスト、ジョンスコがいる。R&Bっぽいドラミングが小粋なメイソン、どう弾いても純ジャズの雰囲気を抜け出ないロンのベース。
 

Gerry_mulligan_chet_baker_carnegie_

 
この新旧ジャズメン入り乱れた、純ジャズ志向とフュージョン志向が入り乱れたパーソネルで、メインストリーム・ジャズをやるんだから堪らない。音世界は、いわゆる「1970年代のメインストリーム・ジャズ」。アコ楽器とエレ楽器を上手くブレンドし、それぞれの音の良さをしっかりとアピールする。これって、アレンジが良いからですよね。さりげないアレンジが実に見事。

CTIレーベルって不思議なレーベルで、確かにカタログを見渡すと、上質な「メインストリーム・ジャズ」盤がそこかしこに転がっていて、いずれも内容がとても良い。しかも、新旧ジャズメンが入り乱れた、ジャズメンの組合せの妙が絶妙なのだ。この組合せでこの音かあ、と聴いて感心する盤が多々あるから素晴らしい。

このライブ盤、まず、ハードバップ時代からの純ジャズ出身のベテランの二人、マリガンとチェットがとても元気。それでいて、吹き回す音の雰囲気は1970年代の音をしているから、この二人の力量たるや素晴らしいものがある。決して古くならない。その時代時代のトレンドにしっかりと追従する。よくよく考えれば、このライブ盤自体がそうである。

 
 

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2017年6月 1日 (木曜日)

トランペットの隠れ名盤・6

ピアノ・トリオのブームが、昨日辺りから「トランペット・ジャズ」に移りつつある。朝夕涼しい陽気がそうさせるのだろうか。流麗でストレートに鳴るトランペットが聴きたくなる。そうすると、やはりテクニックに優れた、肺活量豊かなトランペッターのアルバムを漁ることになる。

テクニックに優れた肺活量豊かなトランペッター、とすると、まずは「フレディ・ハバード」の名が浮かぶ。でもなあ、ハバードって、テクニックが優れる余り、そのテクニックをこれでもか、とひけらかす傾向が強くて、そのハイレベルのテクニックが耳に付くのだ。加えて「目立ちたがり」。共演者がいると、そっちのけで「俺が俺が」と前へ出る。これが耳に付く。

このアルバムも最初見た時、ハバードの名前があったので聴かずにパス。しかも共演者がいる。それもトランペッター、ハバードに良く似たタイプのウディ・ショウ。これ、絶対にハバード、テクニックをひけらかすぞ、絶対に前へ出るぞ、で聴かずにパス。しかし、つい最近、ちょっと怖い物見たさに「聴いてみようかな」と(笑)

Freddie Hubbard & Woody Shaw『Double Take』(写真左)。邦題「トランペット伝説」。1985年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), Woody Shaw (tp), Kenny Garrett (as, fl), Mulgrew Miller (p), Cecil McBee (b), Carl Allen (ds)。同じフロントにケニー・ギャレットのアルト。バックのリズム・セクションが、当時の新進気鋭の若手で固められている。
 

Double_take1

 
聴いてみて「あれれ」と思う。良い方向に「あれれ」なんだが、ハバードがあまり目立たない。テクニックよろしく、前へ前へ出ようとしているようなんだが、そうならない。恐らく、ウディ・ショウの存在がそうさせるのだろう。ハバードと同じくらいにテクニック優秀、そして、共演者との協働を良しとし、前へ前へと出ない「奥ゆかしさ」。このショウの存在が、いつものハバードにブレーキをかけているみたいなのだ。

実は、テクニックをひけらかすこと無く、目立ちたがりを控えたハバードのトランペットは、とても素晴らしい。しかし、ハバードの性格上、そんな状態のアルバムって、なかなかお耳にかかれないのだが、この『Double Take』というショウとの共演盤でのハバードが、そんな「素晴らしい」ハバードなのだ。聴き応えありまっせ。

ハバードに相対するショウのトランペットも味わい深い。テクニック優秀、ストレートでふくよかなブラスの響き、流麗かつ爽快なアドリブ・フレーズ。トランペットがよく鳴っている。ショウは1989年、44歳で亡くなっているので、この盤の時点では40歳になったところ。40歳を迎えたショウのプレイは余裕が出来て、ほど良く流麗なプレイは、かえって「凄みを感じさせる」もの。惜しいトランペッターを亡くしたものだ、と改めて淋しくなる。

「素晴らしい」ハバードと「凄みを感じさせる」ショウのトランペットの共演。アルトのギャレットも負けずに出来が良く、バックのリズム・セクションがこれまた優れていて立派。録音年が1985年。純ジャズ復古前夜の頃。さすが復活したレーベル、ブルーノートの「マジック」である。

 
 

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2017年5月29日 (月曜日)

トランペットの隠れ名盤・5

我が千葉県北西部地方では、朝夕、初夏の清々しい日々が続いている。朝は海風、夜は山風と、この季節はメリハリの効いた風が吹く。気温は22〜3度程度。風力2程度の風が心地良い。今の季節が一年の中で一番良いなあ。日も長いしね。

こういう季節は、ジャズを聴くのに打って付け。空気も清々しいし、暑くも無く寒くも無く、気持ちの良い雰囲気の中で聴くジャズは格別のものがある。こういう清々しい日には、トランペットが主役のジャズが良く似合う。と言うことで、トランペットが主役のちょっとマニアックな盤を探す。

Johnny Coles『New Morning』(写真左)。1982年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Coles (flh), Reggie Johnson (b), Billy Hart (ds), Horace Parlan (p)。このパーソネルを見るだけで、この盤は期待出来る。1982年辺りは、フュージョン・ジャズが下降線を辿りだし、ジャズの流行にポッカリと穴が空いたような時期。
 

New_morning1

 
そんな時期にこの渋い内容のハードバップ盤である。まず、リーダーのジョニー・コールズのフリューゲル・ホーンの音が実に良い。本当によく鳴るフリューゲル・ホーン。真鍮をブリブリ響かせながら、す〜っと音が伸びていく。アドリブ部では流麗なフレーズに思わず耳を峙たせる。ジョニー・コールズって、こんなに魅惑的な音を出すトランペッターだったっけ、と嬉しい思案投げ首状態になる。

ジョニー・コールズと言えば『Little Johnny C』という好盤があるが(2014年1月16日のブログ・左をクリック)、柔軟でありながら輪郭がはっきりした、しっかりと音の出る、しなやかな鋼の様なコールズの個性的なブロウについては、この『New Morning』の方が一枚上を行くのではないか。それほど、この盤でのコールズのブロウは魅力的だ。

バックのリズム・セクションも堅実でホットな演奏で、コールズのブロウを盛り立て、そして支える。1980年代前半、ネオ・ハードバップの走り。ジャケット・デザインも魅力的。こういう魅力的なジャケットは内容を裏切らない。渋い、そして聴き応えのある「トランペットの隠れ名盤」の一枚として愛聴しています。

 
 

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2014年1月17日 (金曜日)

トランペットの隠れ名盤・4

真冬には、暖かい部屋で、小粋なトランペットのアルバムをボーッと聴くのがお気に入りなのだが、長年、このアルバムにも結構お世話になっている。Tony Fruscella『Tony Fruscella』(写真左)。 邦題『トランペットの詩人』。なんか変な据わりの悪い邦題だが、センスが無いのだから仕方が無い。

1955年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Fruscella (tp), Chauncey Weisch (tb), Allen Eager (ts), Danny Bank (bs), Bill Triglia (p), Bill Keck (b), Bill Bradley Jr. (ds)。う〜ん、どのジャズメンもメジャーでは無いなあ。

さて、この『Tony Fruscella』、知る人ぞ知るトニー・フラッセラの数少ないリーダーアルバムなのだが、邦題はなぜか『トランペットの詩人』なる、判ったような判らんような邦題がついており、トランペッターのトニー・フラッセラ自体がマイナーな存在であることも併せて、なんとなく怪しげなアルバムではある。

トニー・フラッセラは、1927年2月にNYで生まれています。このアルバムを録音したのは、28歳の頃になりますね。しかし、フルッセラは麻薬禍によって、このアルバムの録音後は目立つこと無く、1969年8月に42歳で亡くなりました。このアルバムは、フルッセラの初リーダー作であり、唯一のリーダー作でもあります。

僕は、紙ジャケ仕様+リマスターで初リイシューされた時に、即座に買い込みました。邦題になんとなく怪しげさを感じていたのに、まあ、節操のないことなのだが、LP時代は幻の名盤で勇名を馳せており、とにかく、全く聴いたことがないのだから仕方がない。ジャズ評論家の中でも、このアルバムをやたら激賞する人達がいる位なので、あんまり過度な期待をせずにCDトレイにのせてみた。

1曲目の「I'll Be Seing You」で、鼻歌で軽く歌い流すようなフラッセラのペットに心を奪われる。トランペットのテクニック的には中庸なのだが、歌心があるというのか、中音域の音の出し方が特徴的で、とにかく、リラックスして聴くことの出来るトランペットであることは事実。
 

Tony_fruscella_1

 
2曲目の「Muy」はちょっとアップテンポの曲になるが、フラッセラはアップテンポの曲でも破綻することなく、さらっと小粋に流してみせる。バックのリズムセクションも、堅実かつリラックスしたバッキングで、フラッセラのペットをもり立てている様も好ましい。

以降の曲もフラッセラは、儚なそうな音色ながら、しっかりとした音程で小唄を鼻歌交じりで歌うように、実にリラックスした、それでいて、そこはかとなく明るい、それでいて、なにか空虚な空しさのような気怠さも漂よわせながら、フラッセラは歌い続ける。

トニー・フラッセラのトランペットは、ジャズの歴史を変えたり、ジャズの歴史の1ページを飾るような名盤を輩出した訳ではないが、東京の下町の職人さんの様に、粋で鯔背な雰囲気を持った、十二分に個性的で中音域の特徴的な音色は、人知れず密かに愛すべきトランペッターであるといえる。

とはいえ、一部のジャズ評論家の方々が、トランペット・ジャズの傑作、などと大絶賛する向きもありますが、それはちょっと大袈裟な表現だと思います。ジャズ盤選定時に、雑誌やネットの評論や評価がかなりのウエイトを占める、ジャズを聴き始めた頃のジャズ者の方々に対しては、ちょっと無責任な評価だと思います。

このアルバムは、ジャズ者初心者の方々向けというよりは、ジャズ・トランペットの達人、マイルスやクリフォード、モーガン、ハバード、ウィントンなどをまずまず体験して、ジャズ・トランペットのスタイルや演奏レベルを理解した上で聴いて欲しい、ジャズ者中堅からベテランの方々向けのアルバムです。

でないと、このトニー・フラッセラのトランペットの良さが客観的に理解出来ないと思うからです。ジャズのアルバムには、時々、聴く順番みたいなものが出てきて、順番を間違うと思わぬ遠回りをしたりします。僕も以前、経験したことがあります。ご注意ご注意です(笑)。
 
 
 

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2014年1月16日 (木曜日)

トランペットの隠れ名盤・3

ブルーノート・レーベルのアルバムの中で、そのブルーノート・レーベルの雰囲気とハードバップの雰囲気を十分に反映した、トランペットが主役のアルバムがある。そのトランペッターの名前を「Johnny Coles(ジョニー・コールズ)」、そのアルバムのタイトルは『Little Johnny C』(写真左)。

このアルバムは、1963年7月18日、8月9日の録音。ブルーノートの4144番。ハードバップ期から新主流派の時代への過渡期。フリー・ジャズやファンキー・ジャズなど、ジャズの多様化が進んだ時代の録音である。

ちなみにパーソネルは、Johnny Coles (tp), Leo Wright (as,fl), Joe Henderson (ts), Duke Pearson (p), Bob Cranshaw (b), Pete La Roca (tracks 4-6), Walter Perkins (tracks 1-3) (ds)。いやいや〜、ブルーノート御用達のジャズメンがズラリである。

このアルバムのリーダー、ジョニー・コールズは、R&B出身のトランペッターである。ジャズ・トランペッターとしては異色。中大型のバンドでセッションを中心に活躍したイメージがあって、地味と言えば地味。ジャズ入門本などでは、このジョニー・コールズの名前を見ることはありません。1923年生まれなので、この『Little Johnny C』を録音した時は、コールズは40歳。

この、まだまだ無名に近かったコールズにリーダーアルバム録音のチャンスを与え、その柔軟でありながら輪郭がはっきりした、そしてしっかりと音の出る、しなやかな鋼の様なコールズの個性的なトランペットをしっかりと記録したというところは、実に、ジャズの老舗レーベル「ブルーノート」らしいところ。

しかも、アルバムの内容に耳を向けると、冒頭の曲からミディアムテンポのリズムに乗った、管楽器のユニゾンが、いかにも「ブルーノート」。そう、このアルバム、コールズのペットの音からして、また、アルバムの個々の曲の音作りからして「これがブルーノートだ!」ってな感じのアルバムなのだ。
 

Little_johnny_c

 
薄暗い狭いライブスポット、飛び散る汗と煙の中、バーボン片手に熱気溢れるジャズに耳を傾ける、な〜んて感じがピッタリの音。このアルバムの演奏形態はセクステット(6人構成)で、ハード・バッピッシュなものからモードまで、ヴァライティに富んだ演奏を繰り広げる。

とりわけ、このセクステットの中で、テナーのジョー・ヘンダーソンの演奏は特徴的。録音当時、一世を風靡しつつあった「モード奏法」バリバリのテナーを聴かせていて面白い。また、マイナーな存在になるが、アルトのレオ・ライトも「モード奏法とコード奏法の間」って感じのユニークな音。

ピアノのデューク・ピアソンは「ブルノートの仕掛け人」よろしく、いかにもブルーノートのハウス・ピアニスト的雰囲気をプンプンさせつつ、ベースのボブ・クランショウとドラムスのピート・ラロカとウォルター・パーキンスは、職人芸的な手堅いバッキングでしっかりと底辺を支える。

モードあり、コードあり、ハード・バップあり、はたまた、ファンキー・ジャズありの、ちょっと「ゴッタ煮」的雰囲気の演奏ではあるが、当のコールズはそんなことお構いなく、ちょっと丸くてちょっと柔らかで、それでいて、鋼のように力強いペットを朗々と吹き上げていく。

ジョニー・コールズ。ジャズの歴史の中では、有名なジャズ・ジャイアントの類ではないのですが、この『Little Johnny C』ってアルバム、ちょっと格好いいジャケット・デザインと併せて、凄くジャズジャズしていて、ハッピーです。

 
 

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2014年1月15日 (水曜日)

トランペットの隠れ名盤・2

トランペットはジャズの花形楽器のひとつ。メジャーな存在だけでは無い。ジャズ盤紹介本にはほとんど名を連ねたことの無いトランペッターでも、メジャーな存在では無くても小粋で鯔背で格好良い、とても素敵なトランペッターも沢山いる。つまり、トランペットの隠れ名盤も沢山あるということ。

Jack Sheldon『Quartet and Quintet』(写真左)。1954年8月22日&9月4日、1955年4月4日&11月18日の4つのセッションから成る。ちなみにパーソネルは、Jack Sheldon (tp), Joe Maini (as), Bob Whitlock, Leroy Vinnegar, Ralph Pena (b), Gene Gammage, Lawrence Marable (ds), Kenny Drew, Walter Norris (p), Zoot Sims (ts)。

ジャズの世界では、時代はハードバップの時代。ハードバップの演奏マナーを取り入れつつ、西海岸ならではの明るい演奏。マイナー調の曲もなんのその、ドラムもピアノもトランペットもサックスも、演奏の底には、カルフォルニアの明るい雰囲気が見え隠れしていて、ちょっとニンマリ。

そんな全体的雰囲気の中、Jack Sheldon(ジャック・シェルドン)は、朗々とそのトランペットを鳴り響かせる。彼のトランペットは、西海岸ならではの、スマートな美しさとスイングする楽しさが溢れんばかりである。

西海岸のモダン・ジャズといえば、日本では東海岸に押されてマイナーな扱いにはなっているものの、東海岸には無い、洒落たアレンジと全体にバランスのとれたアンサンブル、白人中心のスマートなセンスがウリで、「オシャレに小粋に聴くジャズ」としては、東海岸に勝る演奏が多くある。
 

Jack_sheldon_quartet_quintet

 
ただ、日本のジャズ・シーンにとっては無名に近いミュージシャンが多く、日本の中では、なかなか認知されなかった歴史がある。西海岸のモダン・ジャズを語ると、東海岸に比べると取るに足らない、白人中心の「ダンス中心の聴きやすい軽音楽的なジャズ」と決めつけらることがたまにありますが、気にしないのが賢明。西海岸ジャズは西海岸ジャズで優れたものが多々ある。

今回、ご紹介している「ジャック・シェルドン」などが良い例で、トランペットのテクニックについても、演奏の全体のレベルについても、曲のアレンジについても、インプロビゼーションのテンションや着想についても、東海岸ジャズと比べて全く遜色が無い。

曲毎のアレンジやアンサンブルは、東海岸ジャズに無いスマートさや洒落っ気があります。「オシャレに小粋に聴くジャズ」としては、西海岸ジャズはなかなかに優れている。東海岸ジャズ偏重な聴き方が、如何に偏っているかが良く判りますね。

このアルバムについては、全体的に短い曲が多いのですが、リーダーのジャック・シェルドンのトランペットについては、ふんだんに聴くことができ、西海岸のモダン・ジャズの雰囲気を、大いに感じることができて秀逸。

サイドメンについても、西海岸ジャズを代表するミュージシャンで固められているが、とりわけ、ピアノのウォルター・ノリスは、僕にとっては新しい発見。しっかりとしたタッチと洒落たセンス、落ち着いた語り口の陰に、仄かな西海岸ならではの陰りを香らせつつ、基本的なトーンは「あっけらかん」とした明るい演奏。こんなピアニストがいたのですね。

僕たちは、西海岸ジャズ、いわゆる「ウエスト・コースト・ジャズ」を、もっともっと体験する必要がありそうだ。

 
 

大震災から2年10ヶ月。決して忘れない。まだ2年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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