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2017年7月27日 (木曜日)

ジョアンの個性を思い出した。

ジャズ・ピアニストの個性はバリエーションに富んでいる。「〜派」などと呼ばれるスタイルや個性の系列はあるけども、まず同じ個性は無い。個性は個性なので、僕はこのピアニストのそれぞれの個性を取り上げて、優劣を論じるのは好きでは無い。

個性に優劣は無い。また、自分のお気に入りの系列のピアニストだけを良しとして、その他は駄目出しするような、偏った贔屓を押し出すのも好きでは無い。出来るだけ多くのジャズ・ピアニストを聴いて、その無限に拡がる個性を愛でたい、と思うばかりである。と思いながら、この人のリーダー作についてはあまり聴いたことが無いことに気がついた。

Joanne Brackeen(ジョアン・ブラッキーン)である。米国出身。「ジャズ・ピアノのピカソ」と呼ばれ、ビー・バップからラテン、アバンギャルドなど、あらゆるジャンルに適応した、バリエーション豊かなピアノが個性。一風、チック・コリアの通じるところがあると僕は睨んでいる。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「唯一の女性メンバー」としても有名。

実はこのリーダー作を聴いて、彼女の名前を思い出したのだ。Joanne Brackeen & Clint Houston『New True Illusion』(写真左)。1976年7月の録音。Joanne Brackeen (p), Clint Houston (b) のデュオ・パフォーマンス。むっちゃ乱暴で地味なジャケットなので、これがブレーキになって触手が伸びなかった。
 

New_true_illusion

 
が、今回、冒頭のチック作の「Steps - What Was」に強く惹かれた。ということで思わずゲット。そして、このデュオ盤で、ジョアンのピアノの個性をはっきりと思い出した。男勝りの豪快で力強いタッチ。切れ味良く極めて豪快。理論より感性で紡ぎ出す、捻れたリズムとメロディー&コード。

テクニック確かで骨太のクリント・ヒューストンのベースと組んず解れつ、ガップリと組んで、スリリングな展開を聴かせてくれる。ゴンゴンいう左手と、右手から出てくる出てくるシーツ・オブ・サウンド。マッコイ・タイナーか、とも思うが、それでいて流麗でスケールの大きなメロディアスな弾き回し。これはチック・コリア風。

しかし、である。そこに前衛音楽風のフリーでアブストラクトなフレーズが出てきたり、クラシック・ピアノの様な端正な弾きっぷりが顔を出したり。やはり、この人のピアノも唯一無二の個性の塊であり、ジャズ・ピアニストとして「一国一城の主」である。

そう言えば、暫く、ジョアンのピアノを聴くことが無かった。とにかく、豪快で力強い。それでいて流麗。このデュオ盤を聴いて、ジョアンのピアノをもっともっと聴きたいと思った。 

 
 

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2017年6月10日 (土曜日)

夜の静寂にクールなジャズ・3

梅雨に入った途端、ピーカンの我が千葉県北西部地方である。明らかに季節は「夏」である。気温もほぼ真夏日状態で「暑い」。まだ結構、風があるので湿気を感じることが少なく、まだエアコンのお世話にはなっていない。窓全開で爽やかな室内である。毎年毎年そうなんだが、夏になってくると、激しい演奏のジャズは避ける傾向にある。

若い時は、逆に暑い夏に熱い演奏を汗をダラダラ流しつつ煙草を吹かしながら格好付けて聴いていた。が、歳を取るにつれ、これは「ダサい」と思うようになった。暑い夏には「涼しげなクールなジャズ」が良い。というか歳を取るにつれ、暑い夏に熱い演奏を聴く体力が無くなった、といった方が良いかな(笑)。

「涼しげなクールなジャズ」といえば、パッと浮かぶのが「デュオ」。ジャズには「デュオ」の好盤が多々ある。即興を旨とするジャズ、ジャズメン2人が対峙して、丁々発止と即興の妙を繰り広げる。デュオにはジャズの本質を貫き通して、インプロビゼーションの世界を紡ぎ上げるに好都合なシチュエーションがあるのだ。
 

Lee_konitz_duets  

 
Lee Konitz『Duets』(写真左)。1968年9月の録音。アルトのリー・コニッツ(写真右)が様々な楽器とデュエットするという野心的な企画盤。前に一度、当ブログでご紹介したことがあるかなあ。好きなんですよ、このアルバム。理知的でクールなバップ・マナーで、知的にホットにデュオ演奏を展開している。コード楽器によるソロ空間の制約を嫌ったコニッツが、更なる音の空間を求めて企画した「デュオ」フォーマット集である。

マーシャル・ブラウン(tb)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ジム・ホール(g)、レイ・ナンス(vn)、エディ・ゴメス(b)たちと、次々と相手を変えながらの魅力的なデュオ演奏がてんこ盛りである。どのデュオ演奏もレベルが高い。実験臭いなどと揶揄されることもあるが、聴いていて、どの演奏もそれぞれのジャズメンの個性を発揮して伸び伸び演奏している印象。スイング感も程良く、良い意味で「頭を使いながら」の演奏はクール。

リーダーのコニッツの企画コンセプト「コード楽器によるソロ空間の制約を嫌い、更なる音の空間を求めながら、即興演奏を展開する」がしっかりしているからこそのこの企画盤の成果なのだろう。熱いエモーショナルな演奏ばかりがジャズでは無い。最後の「Alphanumeric」のみ全員で演奏している趣向も企画盤ならではの面白い「仕掛け」。好盤です。

 
 

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2017年5月31日 (水曜日)

夜の静寂にクールなジャズ・2

ジャズに定型の編成は無い。ソロからデュオからテンテットまで、1人から10人、それ以上はスモールバンドからビッグバンド。そんな中、組合せと相性の妙、音の違いと個性をダイレクトに感じることが出来る編成が「デュオ」だと思っている。「デュオ」は2人構成。演奏ユニットとしては最小の人数構成になる。

デュオには様々な楽器の組合せがある。特にジャズは「定石」というものが無く、デュオの楽器の組合せには、ほぼ世の中の西洋楽器と呼ばれるもの全てが採用されているのではないか。いろいろ、デュオ盤を探索し聴き進めて行くと、時に「こんな楽器の組合せがあるんや」と感心するものに出会うことがある。

Ron Carter & Richard Galliano『An Evening With』(写真左)。バンドネオンの巨星とジャズ・ベースのレジェンドのデュオ。バンドネオンは、主にタンゴで用いられる楽器。形状はアコーディオンに似ているが、鍵盤はピアノのような形ではなく、ボタン型で、これが蛇腹を挟んで両側についている。実に変わった楽器である。
 

An_evening_with

 
このバンドネオンの第一人者が「リシャール・ガリアーノ」。ジャズやクラシック系ミュージシャンとの交流も多く、今回はバンドネオンでジャズに参戦である。そして、選んだ編成が「デュオ」。パートナーとして選んだ楽器は「ベース」。存命のジャズ・ベースのレジェンドの中でのファースト・コールは「ロン・カーター」。

バンドネオンとベースの組合せでジャズの「デュオ」をやる。どうなるのか、まずは不安が先に立つ。バンドネオンはバンドネオン、ベースはベース、音はそれぞれ我を張って、演奏自体はバラバラになりはしないか。しかし、この盤を聴き始めると、それは全くの杞憂に終わる。ベースにビートを委ね、バンドネオンの音がしみじみ。流麗かつダイナミック、印象的なユニゾン&ハーモニー。

特筆すべきは、ガリアーノの「ジャズ感覚」。タンゴのイメージが強いバンドネオンの音色で完璧なジャズのアドリブ・フレーズを弾きまくるのだ。これは聴いていて圧巻。その後ろに「バッキングの達人」ロン・カーターが控えて、演奏の底とビートをガッチリと支える。この異色の組合せは「大成功」。お互いを惹き立て、お互いを補い合う。素晴らしいデュオ演奏である。

 
 

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2017年5月17日 (水曜日)

夜の静寂にクールなジャズ・1

ジャズには、汗が飛び散らんばかりに熱気を帯びて吹きまくる演奏もあれば、その反対に、グッとムーディーにそしてアーバンなムードを湛えたクールな演奏もある。夜、寝る前の一時、夜の静寂の中、耳を傾けるジャズは後者の「クールな演奏」のジャズが良い。心からリラックス出来て、寝付きが良くなる。

Charlie Haden『Nocturne』(写真左)。2000年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Haden (b), Gonzalo Rubalcaba (p), Ignacio Berroa (ds) のピアノ・トリオを中心に、Joe LovanoとDavid SanchezのサックスとFederico Britos Ruizのバイオリンが客演し、加えて、2曲目の「Noche de Ronda (Night of Wandering)」にのみ、Pat Methenyのアコギが単独で参加する。

アルバム・タイトルの「Nocturne」とは「夜想曲」のこと。「夜想曲」とは「夜の情緒を表現しようとする曲」のこと。そんな「夜想曲」な曲想、曲調の曲をズラリ11曲、収録している。落ち着いたリズム&ビートに乗って、趣味良くムーディーにアーバンな雰囲気を醸し出しつつ、限りなくクールな演奏を繰り広げる。

「夜想曲」の演奏の底をしっかりと支えて、曲全体のとりまとめをするのは、リーダーであるベースの哲人、チャーリー・ヘイデン。骨太でゴリッとした安定のベースはヘイデンならではのもの。このアルバムでは、ヘイデンのベースがとっても良い音で録れてます。聴いていて惚れ惚れしますね〜。ジャズ・ベース、ここに極まれり、です。
 

Nocturne_1

 
そして、このアルバムの最大のハイライトは、ゴンサロ・ルバルカバのピアノ。ラテンチックな躍動感溢れるピアノが得意なゴンサロなんですが、このアルバムでは、実にリリカルな、それでいて音の芯が太く、音のエッジが程良くラウンドしている、どっしりとした重心の低いピアノで聴かせてくれる。全編に渡って、ゴンサロのピアノ、聴きものです。

イグナシオ・ベローアというパーカッショニストも実に良い。ゴンサロと同じキューバ出身とのこと、実にムーディーなパーカッションである。パットのアコギもむっちゃ雰囲気あるし、フェデリコ・ブリトス・ルイスのバイオリンもクールでムーディー。そうそう、ジョー・ロヴァーノとダヴィッド・サンチェスのテナーも凄く良い。

アルバム・タイトルが、ほんとにシックリ来る演奏です。こういうグッとムーディーにそしてアーバンなムードを湛えたクールな演奏ができるのもジャズなんですね。そんな演奏をガッチリとサポートし、まとめ上げているのが、チャーリー・ヘイデンのベース。

夜の静寂にピッタリのジャズです。ベースの哲人が、ピアノにゴンサロ、ドラムにベローアを従え、テナーやギター等を客演に「夜想曲」を奏でる。秀作です。

 
 

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