2019年11月 5日 (火曜日)

西海岸ジャズの入門盤の一枚

米国西海岸ジャズでは、ジャズ・ギターの活躍の場が多いような気がする。西海岸ジャズは演奏全体がしっかりアレンジされていて、そのアレンジの中で洒脱でアーバンな雰囲気を創り出す際、ギターの音色が欠かせないのではないか、と睨んでいる。そんな西海岸ジャズの代表的なギタリストと言えば「バーニー・ケッセル(Barney Kessel)」。

西海岸ジャズのアルバムを聴いていて「洒脱でクールで端正」なハイテク・ギターが出てきたら、ほぼ間違い無く「バーニー・ケッセル」である。トーンも明瞭で耳当たりの良いエッジの立ち具合。ウォームではあるが、音の芯はしっかりと聴き取れる、王道を行くギターの音色。西海岸ジャズの中では、バーニー・ケッセルが「ファースト・コール」なギタリストである。

Barney Kessel『Easy Like』(写真)。1953年は11月14日と12月19日、1956年は2月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Buddy Collette, Bud Shank (as, fl), Arnold Ross, Claude Williamson (p), Harry Babasin, Red Mitchell (b), Shelly Manne (ds)。こうやって、パーソネルの顔ぶれを見ると、西海岸ジャズの名手達、大集合である。
 
 
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バーニー・ケッセルは米国西海岸ジャズを代表するギタリストの一人。洒脱でクールで端正。演奏全体がしっかりアレンジされていて気持ち良く聴けるが、決してイージーリスニングには陥らない。ケッセルはこの盤で、一躍有名になった。小粋な西海岸ジャズ・ギターというキャッチがバッチリ合う、お洒落でウォームで和みのあるギターの音。人気が出て然るべき、である。

この盤に詰まっている演奏自体が「米国西海岸ジャズ」。言い換えると「ウエストコースト・ジャズ」。ジャズ・ギターの小気味良いフレーズ、爽やかに典雅に響くフルート、お洒落にアレンジされ聴き心地抜群な、ギターとアルト・サックスとピアノのユニゾン&ハーモニー。控えめではあるがしっかりと骨太なベース。洒脱なテクニックで「聴かせてくれる」ドラム。出て来る音は明らかに「西海岸ジャズ」。

バーニー・ケッセルは1947〜1960年までの間、各ジャズ雑誌の年間最優秀ジャズ・ギタリストに幾度も選出されている。この雰囲気のギターである。人気が出るのも頷ける。そんなケッセルのリーダー作の中でも、この『Easy Like』は出色の出来。この盤は『Gerry Mulligan Quartet Vol.1』と同様、どこから聴いても「米国西海岸ジャズ」。米国西海岸ジャズの入門盤の一枚である。
 
 
 
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年11月 4日 (月曜日)

西海岸の女性ボーカルの好盤

今でもあまり知られていないが、米国西海岸ジャズのボーカルものはお洒落なものばかり。といって、我が国で有名なものは殆ど無い。ジャズ・ボーカルのレジェンド、エラとかサラとかカーメンとかとは全く異なる。ジャズ歴を十年ほど積み、更に十年ほど積み込んだ「ジャズ者」のみが理解できる、というかできそうな、お洒落でシンプルでポップな味わい。

Pinky Winters『Pinky』(写真左)。1954年の録音。彼女(ピンキー・ウィンターズ)のデビュー盤。ちなみにパーソネルは、Pinky Winters (vo), Bud Lavin (p), Jim Wolf (b), Stan Levey (ds)。シンプルに、ピアノ・トリオをバックにピンキーのボーカルのみ。ジャケットからして、あまりにシンプル過ぎて、このジャケットだけみたら、このボーカル盤は絶対に見過ごすだろう。

彼女は1931年、米国インディアナ州生まれ。ミシガンシティーでラジオやTVで活躍した後、1954年, ロスへ進出。すぐにVANTAGEレコードのボブ・アンドリュースに認められてズート・シムズと共にレコーディング。そして、このデビュー盤『Pinky』をVANTAGEレコードにて録音する。当時のリリースは10inchのLP。全8曲で24分程度の短さだが、内容が充実しているので余り気にならない。
 
 
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淡い雰囲気のアンニュイな女性ヴォーカル。おさえた低い声でささやくように情緒をこめて歌う、いわゆるクルーナーである。渋く甘くちょっぴりキュートな表情が見え隠れするところがなんとも可愛い。ネットの解説を見ていると「ホワイト・サラ。サラ・ボーンのアクを抜いてサラリと軽くしたような感じ」とありますが、けだし名言。良く判ります。

とにかく素直でスマートな味わい。スウィンギーにスローに、若々しい柔らかな躍動感とベテランの如く切々とした情感。歌に気持ちをこめて歌うタイプで、シンプルな歌唱であるにもかかわらず、聴く者の心にしみ込んでくる。クールでシンプルが故に歌唱のテクニックと想いがダイレクトに伝わってくる。米国西海岸ジャズの個性がボーカルにも反映されているんですね。

バックの伴奏もシンプルだけど味がある。アレンジが良いのだろう。この「ほどよく」アレンジされた伴奏と共に、西海岸ジャズの女性ボーカルのサンプルの様な盤。「瑞々しい若さと老成した味わい」の両方を持ったお洒落でシンプルなボーカル。こんなボーカルは米国東海岸ジャズには見当たらない。僕はこの盤、このボーカル、お気に入りです。
 
 
 
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2019年10月20日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・121

硬派なモード・ジャズや限りなくフリーに近いスピリチュアル・ジャズなど、集中して聴く必要のある「アート」としてのジャズも良いが、聴き流しが出来る、寛いで聴くことが出来る「エンタテインメント」としてのジャズも楽しい。もともとジャズって、ダンス音楽からスタートしているし、米国のポップス音楽の主流だった時代もあるのだ。

歴代のジャズ・レジェンドと呼ばれるジャズマンも、硬派でアートな盤をリリースする一方、聴いて楽しい、寛いで聴ける、エンタテインメントな企画盤を録音してたりする。何もエンタテインメントな企画盤を出すジャズマンが軟派なのでは無い。リスナーの要請として、エンタテインメントな企画盤も必要とされているのだ。決して、頭っから否定してはいけない。

George Shearing Quintet『Latin Escapade』(写真左)。1957年12月のリリース。ジョージ・シアリング(George Shearing)と言えば、イギリス生まれのジャズピアニスト。米国に渡ってクール・ジャズの第一人者として活動し、1950年代の米国東海岸のハードバップの流とは距離を置いた「洒落たアンサンブルとクールなサウンド」で人気を博した。
 
 
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そんなクールなシアリングが、ラテン・ジャズに手を染めたアルバムがこの『Latin Escapade』。ジャケットもジャズらしくなく、ラテン系の妙齢の美女の写真をあしらったもの。これだけ見たら、ジャズのアルバムだとは思わないよな。ラテン音楽のムード曲集って感じ。しかし、そこはジョージ・シアリング。クールなアレンジで、モダンなラテン・ジャズに仕上げている。

もともと端正で流麗なフレーズが身上のシアリングのピアノ。それをラテン・ミュージックに応用するのだから、ちょっと俗っぽいラテン音楽が洒落た端正なジャズに変身している。ラテン音楽がもともと持っている「猥雑な」フレーズはそのままだが、アレンジがクールで耳に付かない。リズム&ビートもラテン・チックだが、しっかりジャジーな雰囲気を織り交ぜている。

クールで洗練されたムーディーなジャズに仕上がっているのだから、シアリングのアレンジ能力とピアノの表現力は抜きんでたものがある。ラテン・ジャズかあ、と最初は思うのだが、意外と聴いていて「楽しめる」。気軽に聴いて、気軽に楽しめる。こういうジャズ盤があっても良いなあ、と思うようになった。リラックスして「ながら聴き」。意外と至福の時です。
 
 
 
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2019年10月19日 (土曜日)

今もフュージョン・ジャズは健在

1970年代後半から1980年代前半にかけて流行に流行った「フュージョン・ジャズ」。ロックなテイストとジャズのテイストを融合させて、リズム&ビートをそれ専用に整えて、流麗かつキャッチャーなフレーズをエレクトリック楽器中心に展開する。そのフュージョン・ジャズのテイストは、21世紀に入った今でも、キッチリ生きている。

Mike Stern & Jeff Lorber Fusion『Eleven』(写真左)。今年9月のリリース。マイルス門下生、コンテンポラリー・ジャズギターのレジェンド、マイク・スターン(Mike Stern)と、長年フュージョン界を活性化し続けてきた、キーボード奏者ジェフ・ローバー(Jeff Lorber)率いるジェフ・ローバー・フュージョン(Jeff Lorber Fusion)の初のコラボ盤になる。

マイク・スターンのエレギと言えば、マイルス門下生ならではの「適度に捻れたファンキー・ロックギター」なテイストなんだが、今回のジェフ・ローバー・フュージョンとのコラボでは、ジェフ・ローバー・フュージョンの雰囲気に合わせて、極めてフュージョン・ジャズ・テイストな流麗で適度に当たりの柔らかなエレギを弾いている。これが実に魅力的。
 
 
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ちょっと聴けば直ぐに判る、演奏の基本的雰囲気は「ジェフ・ローバー・フュージョン」。ジェフ・ローバー・フュージョンの手癖、フレーズの個性が散りばめられている中、マイク・スターンの流麗で適度の当たりの柔らかなエレギがスッと入っている。しかし、アドリブ部に入ると、適度にちょっと捻れ始めるのが、マイク・スターンの個性。ちょっと引っ掛かりのある、個性的なフュージョン・ジャズの音が新鮮だ。

マイク・スターンとジェフ・ローバー・フュージョンとは息がピッタリとあっていて、まるでレギュラー・グループな演奏にちょっとビックリする。個性的な捻れエレギの一人であるマイク・スターンが、ここまで、正統派な、こってこてのフュージョン・ジャズに適応するとは思わなかった。よくよく聴いていると、ジェフ・ローバーのアレンジがスターンの捻れエレギを実によく理解したものになっているのだ。

実は2人とも(スターンとローバー)今年66歳。ローバーはLA出身でポスト・フュージョンの先駆者の一人、片やスターンはNY出身で、マイルスなど、数々のエレ・ジャズのバンドへの参加を経つつ、自らのソロ盤を多数リリースしている、フュージョン・ジャズギタリストのレジェンド。出身は東と西、正反対なんだが、このコラボ盤ではその相性は抜群。今もフュージョン・ジャズは建材、ということを確信させてくれる好盤である。
 
 
 
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2019年10月17日 (木曜日)

繊細で印象的でスピリチュアル

このアルバムを聴く度に「これってジャズなんだろうか」と心から思う。リズム&ビートは無い。様々な音の洪水。パーッカッシヴな音、水の流れるような音、印象的でスピリチュアルなギターの響き。語りかける様なピアノの音。音の全てが即興演奏。

即興演奏をメインとしているので、ジャズと言えばジャズだが、音の響きとしては「現代音楽」の響きが蔓延していて、聴いていて「ジャズなのか」と思ってしまう。自然の音が蔓延する。ビート感は一切無い。心に響く様なパーカッションの音。この盤は「静的で繊細な」スピリチュアル・ジャズ。

Egberto Gismonti『Dança Das Cabeças』(写真)。邦題「輝く水」。ブラジルを代表するマルチ・インストゥルメンタリスト、エグベルト・ジスモンチの1976年録音のECMデビュー作。ちなみにパーソネルは、Egberto Gismonti (8-string g, p, wood fl, vo), Naná Vasconcelos (perc, berimbau, corpo, vo)。ジスモンチとヴァスコンセロスの即興演奏、そして多重録音。
 
 
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ナナ・ヴァスコンセロスが「納得の参加」。繊細で印象的でスピリチュアルなパーカッションの音は、ナナ・ヴァスコンセロスの仕業。納得である。ジスモンチは、ギターとピアノ、フルートを担当する。これまた、繊細で印象的でスピリチュアルな音の響き。そうか、この盤の音は、静的で繊細なスピリチュアルな音なのだ。

即興演奏がLPの片面、約25分続く。ビートの無い、繊細で静的で印象的でスピリチュアルな音の世界。飽きるかなと思いきや、決して飽きない。25分、一気に聴き切ってしまう。繊細で静的な音の中に、仄かに漂う歌心。この歌心が漂う繊細で静的なフレーズが聴く者を決して飽きさせない。

欧州のニュー・ジャズの老舗、ECMレーベルからのリリースなので「ジャズ」と決めつけるのは野暮ってもんだ。しかし、この盤の繊細で静的なパーカッションは、ニュー・ジャズ的なビートを仄かに感じさせてくれる。全編、即興演奏。仄かに漂うビート。基本、この盤に詰まっている音は「ニュー・ジャズ」な音と解釈して良いだろう。30年以上聴き続けていますが、決して飽きません。好盤です。
 
 
 
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2019年10月16日 (水曜日)

温故知新な聴き味の良い好盤

21世紀に入って19年が経った。ジャズは死ぬどころか更なる深化を遂げ、ジャズの演奏フォーマットや演奏スタイル、演奏内容の裾野は更に広がった。これもジャズなん? という内容の、尖ったニュー・ジャズな雰囲気のものもあれば、オーソドックスなモーダルなジャズもある。特に、テクニックが伴った、しっかりした内容の伝統的なモーダルなジャズは、今の耳で聴いても、なぜかホッとする。

David Kikoski『Phoenix Rising』(写真左)。今年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、Eric Alexander (ts), David Kikoski (p), Peter Washington (b), Joe Farnsworth (ds)。伝統的なテナーで名を残しつつあるエリック・アレキサンダーをフロントに据えた、ワンホーン・カルテットな編成。フロント1管なので、ユニゾン&ハーモニーに関するアレンジと配慮が不要。テナーを自由に吹きまくることが可能。

ミンガス・ビッグ・バンド等の活躍で知られるピアニスト、デヴィッド・キコスキーのHighNoteレーベルからのデビュー盤である。デヴィッド・キコスキーは、1961年米国はニュージャージ生まれのピアニスト。1980年代にはバークレー音楽院でジャズを学ぶ。いわゆる「正統な教育を受けた」ジャズ・ピアニストである。
 
 
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この新盤は、オーソドックスなモード・ジャズ。リズム&ビートも伝統的なジャジーなビート。高速4ビート若しくは8ビート。そして、キコスキーのモーダルなピアノは実に理知的で趣味が良い。アドリブ展開時に合いの手の様に入るブロックコード、優しいしなやかな「シーツ・オブ・サウンド」的なアドリブ・フレーズ。ピアノの響きと流麗で音符の多いアドリブ展開はハービー・ハンコックを彷彿とさせる。端正で明確なタッチのハービー。

エリック・アレキサンダーのテナーも伝統的。音の太さと悠然としたアドリブ展開の吹き回しは、ソニー・ロリンズを想起する。速弾きを伴ったロリンズ。歌心も充分で、特にスタンダード曲でその真価を発揮する。例えば「If I Were a Bell」や「Love for Sale」「Willow Weep for Me」など、安心安定の伝統的なブロウ。コルトレーンっぽいところもあるが、基本はロリンズ。大らかなブロウだ。

この盤、キコスキーのピアノとアレキサンダーのテナーが際立つ。全く新しくない、過去を振り返る、オーソドックスなモード・ジャズ。それでも、過去のモード・ジャズと比較すると、やはり新しい響きに満ちている。温故知新。そんな言葉がピッタリの魅力的な内容のモード・ジャズ。演奏の隅々まで配慮が行き届いたパフォーマンス。伝統的な内容ではあるが、聴き味の良い好盤である。
 
 
 
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2019年10月 3日 (木曜日)

西海岸の異色ハードバップ盤

この盤のジャケットを初めて見たとき、なかなかお洒落なジャケットやなあ、と思った。タイポグラフィーもバッチリ決まっていて、モデルの女性とのバランスも良い。しかし、モデルが女性なので、これは米国西海岸ジャズのアルバムだと当たりを付ける。しかも、である。このモデルの女性って女医さんのコスプレをしているんですよね? ジャズのアルバムで、女医さんとはこれ如何に?(笑)。
 
しかし中身は真っ当なハードバップ。しかも、米国西海岸ジャズらしからぬ、実に硬派で質実剛健な、アドリブ重視のハードバップ。どちらかと言えば、米国東海岸ジャズのハードバップに雰囲気が近い。米国西海岸ジャズの中では異色のハードバップ盤である。力強く熱いジャズ。しかし、そこはかとなく、しっかりとしたアレンジが施されている様で、東海岸ジャズに比べると、より洗練された響きが、やはり西海岸ジャズらしい。
 
Curtis Counce Group『You Get More Bounce With Curtis Counce!』(写真左)。1956年10月には2回、1957年には3回に分けられて録音されている。ちなみにパーソネルは、Curtis Counce (b), Jack Sheldon (tp), Harold Land (ts), Carl Perkins (p), Frank Butler (ds)。ベーシストのカーティス・カウンスがリーダーの、テナー&トランペットのフロント2管のオーソドックスなクインテット編成。
 
 
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カウンスのテクニック豊かなベースが演奏の要所要所で披露されており、ジャズ演奏の中での理想的なベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックを、グループ・サウンズを通じて演出されている。ジャズ演奏におけるベースの役割の明確化と理想的なベースの演奏モデルの提示。本来のベーシストがリーダーを張る、リーダー作のあるべき姿の1つであろう。
 
サイドマンも溌剌と演奏していて好感が持てる。特にテナー・サックスのハロルド・ランドが、硬派でハードなテナーを吹き上げていて立派だ。加えて、西海岸ジャズのトランペットの雄、ジャック・シェルドンのトラペットがいい音を出している。溌剌としていて、積極的で創造的。この2管フロントのパフォーマンスは、東海岸ジャズ顔負けである。
 
カール・パーキンスのピアノもなかなか小粋なバッキングをしていて、そこにフランク・バトラーの職人芸的なドラミングが、しっかりとリズム&ビートを供給する。優れたアレンジと洒落たアンサンブル、そして、クールな演奏が個性の米国西海岸ジャズ。そんな評価を覆す、このカウンスのリーダー盤。西海岸ジャズにも、こんなに熱く溌剌としたハードバップ盤がある。胸の空くような演奏の数々。好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年10月 1日 (火曜日)

ポール・ブレイの未発表ライヴ盤

キース・ジャレットが「スタンダーズ」を解散して5年になる。キースの「スタンダーズ」の様な、トリオを構成する達人3人による、切れ味良く高い透明度、そして、限りなく自由度の高いインタープレイをメインとした、ECMレコードらしい、ピアノ・トリオのアルバムが途絶えて5年になる。寂しいなあ、と思っていた矢先、こんなライブ盤がリリースされた。

Paul Bley Trio『When Will the Blues Leave』(写真左)。1960年代から親交の深い「盟友」三人による、1999年3月にスイスのルガーノ-トレヴァで録られていた未発表ライヴ音源。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Gary Peacock (b), Paul Motian (ds)。達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイ。

ピアノ・トリオの「間を活かした」インプロビゼーションに最適な、ECM独特の深く透明度の高いエコーがタップリかかって、達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイの音を増幅し、それぞれの楽器の音をクッキリと浮かび上がらせる。特に、ECMレコードの創る音は、ピアノのポール・ブレイの音にピッタリ。
 
 
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ポール・ブレイのピアノは、透明感と清涼感に溢れ、クリスタルな響きのピンとエッジの立った硬質なタッチ。切れ味良く、しっかりとピアノが鳴っているなあ、と感じる、芯のしっかり入った、明確な音の響き。ああ、このピアノはECMレコード御用達のピアノの音だし、ECMレコード向きの音の響き。叩き出されるフレーズも、どこか「キースっぽい」、クラシック・ピアノの様な独特の響きを底に宿している。

ベースのピーコックのテクニックが素晴らしい。ほとんどフリーなんだが、しっかりと伝統のジャズの雰囲気をキープしたアコベ。アドリブ・フレーズは創造性に富んで、柔軟な弾きっぷり。ピーコックしか出せない自由なベースライン。モチアンのドラムも同様に創造性に富む。リズム&ビートをしっかりとキープしながら、自由度の高いドラミングを披露してくれる。モチアン唯一六のドラミング。

ピアノでリーダーのポール・ブレイは1932年、カナダはモントリオールの生まれ、2016年、84歳で逝去。ベーシストのゲイリー・ピーコックは1935年、米国アイダホ州生まれ、まだまだ現役。ドラムのポール・モチアンは1931年、米国ペンシルヴェニア州の生まれ、2011年、80歳にて逝去。トリオの3人中、2人が鬼籍に入っている。が、この残された音源の内容は素晴らしい。久々のECMレコードらしいピアノ・トリオ盤の出現である。
 
 
 
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2019年9月29日 (日曜日)

クロスオーバーなタレンタイン

さて、久し振りにCTIレコードの聴き直し。スタンリー・タレンタインである。タレンタインのテナー・サックスは「漆黒のファンキー・テナー」。どっぷりマイナー調の、思いっ切りジャジーな、中低音中心のファンキー・テナー。1960年代はブルーノート・レーベルをメインに活動。1970年に入って、CTIレコードへ移籍。クロスオーバーな聴き易いジャズに身の置き場を変えた。

Stanley Turrentine『Sugar』(写真)。CTIの6005番。1970年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Freddie Hubbard (tp), George Benson (g), Lonnie Liston Smith (el-p), Butch Cornell (org), Ron Carter (b), Billy Kaye (ds), Richard "Pablo" Landrum (congas), Hubert Laws (fl), Hank Crawford (as), Johnny "Hammond" Smith (org), Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc)。

パーソネルを見渡すと、ブルーノート・レーベル時代のメンバーとはガラリと変わった。ハードバップ時代からファンキー・ジャズと渡り歩いてきた「手練れ」のメンバーの顔は無い。どの顔も、これからのクロスオーバー〜フュージョン・ジャズを担っていく、若手〜中堅メンバーばかり。テクニックも優秀。高度な演奏を聴き易いジャズに仕立てて、心地良い響き。
 
 
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そんな若きクロスオーバーなリズム・セクションをバックに、タレンタインが「漆黒のファンキー・テナー」を朗々と吹き上げていく。プロデューサー、Creed Taylorの手腕が存分に発揮された、CTIレコード初期の傑作盤である。とにかくアレンジが優秀。冒頭のタイトル曲「Sugar」の「どっぷりファンキー度最高」な演奏だが、クロスオーバーなアレンジによって、極上のエレジャズに仕上がっている。

3曲目の「Impressions」は、ジョン・コルトレーンのモーダルでシーツ・オブ・サウンドな、思いっ切り硬派な純ジャズ曲なんだが、パーカッションとエレピの響きを全面に押しだして、8ビートでクロスオーバーな「Impressions」に変身させている。こんなファンキーでエレクトリックな「Impressions」は聴いた事が無い。しかも、これがなかなか「イケる」のだから面白い。

しかし、タレンタインのどっぷりハードバップでファンキーな「漆黒のテナー」がここまで華麗に転身するとは、実に見事である。ジャケットがちょっとエロチックで「イージーリスニングなジャズ」を彷彿とさせて、ちょっと敬遠気味になるが、中身はなかなか硬派なクロスオーバー・ジャズ。1970年初頭なので、メインストリーム・ジャズな響きをしっかり残っていて、意外と聴きものな内容になっています。
 
 
 
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2019年9月28日 (土曜日)

ECMの「イスラエル・ジャズ」盤

欧州ジャズの老舗レーベルと言えば「ECMレーベル」。1969年にマンフレート・アイヒャーが創立。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。そんな、アイヒャー自らの監修・判断による強烈な「美意識」。僕はジャズを聴き始めた学生時代、大変にお世話になったレーベルである。

Avishai Cohen & Yonathan Avishai『Playing The Room』(写真左)。ECMより、つい先日リリースの新盤。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p)。ベーシストではない、トランペッターのアヴィシャイ・コーエンとピアニスト、ヨナタン・アヴィシャイとのデュオ盤。デュオを構成する奏法のラスト・ネームを見ると、これは「イスラエル・ジャズ」であると期待する。

ECMらしい静的でクールな、即興ベースのデュオ。限りなく静謐で豊かなエコーがそのクールさを増幅する。このジャズは「ニュー・ジャズ」と呼んで良いだろう。スイング感は皆無、ファンクネスは皆無。しかし、測距句演奏をベースとしたデュオ演奏は明らかに「ジャズ」。底を流れるリズム&ビートは堅実なオフビート。自由であるが「フリー」では無い。限りなく自由度の高い「モーダル」なデュオ演奏。
 
 
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全編に渡って、典型的な「イスラエル・ジャズ」の音が詰まっている。出てくるフレーズがちょっとユニークで、北欧的でありながら、どこかエスニックでどこか中東風な響きがする。自由度が高く、エコー豊かなアコースティックな響き。そこはかとない中近東の哀愁感を帯びたトーンが見え隠れする。今までのジャズには全く無い響き。特に、この番ではそんな「イスラエル・ジャズ」の個性をシンプルなデュオ演奏が際立たせる。

このデュオを構成する二人は同じ中学に通っていたそうだ。ティーンエイジャーの頃からテル・アヴィヴでともにジャズを探求してきて、音楽的にも30年以上ずっと長い交友関係を築いてきた、そんな濃いリレーションシップが、これだけの「あうん」の呼吸を生み出し、適度な緊張感溢れる演奏を実現し、僕達を最後まで飽きさせないのだろう。

ちなみに、このアルバムの演奏については、ほとんど一発録音だったそう。そういう面でも「イスラエル・ジャズ」のレベルは高い。最近、イスラエル・ジャズに遭遇する機会が多い。イスラエル・ジャズは、老舗本国の米国、欧州について、新たなジャズの聖地になる位の勢いでメジャーな存在になってきている。もはや、イスラエル発のジャズは無視出来ない存在になってきている。
 
 
 
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