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2019年3月12日 (火曜日)

クールで大人のテナーが清々しい

Mark Turner『Yam Yam』を聴いて、僕はこう書いた。マーク・ターナーのテナーは「クール・テナー」。芯のある浮遊感と繊細で知的なニュアンス。ブラッド・メルドーの弁を借りると「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。

それまでのジャズ・テナーの印象である「たくましい、豪快といった男性的なイメージ」を覆す、クール・スタイルのテナーが清々しい。スムース・ジャズのテナーをメインストリーム・ジャズにそのまま持って来た様なイメージ。それでいて、芯のしっかりある音で説得力がある。ユニークなスタイルのジャズ・テナーである。僕はすっかりファンになった。

Mark Turner『In This World』(写真左)。1998年6月の録音。ターナーのメジャー・レーベル第2弾。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Brad Mehldau (ac-p, el-p), Kurt Rosenwinkel (g), Larry Grenadier (b), Brian Blade (ds), Jorge Rossy (ds)。今から見れば、なんと錚々たるメンバーではないか。現代ネオ・ハードバップの精鋭達が大集合である。
 

In_this_world_mark_turner  

 
メインは、ターナーのテナーをフロントに、メルドー=グラナディア=ブレイドのピアノ・トリオがリズム・セクションを担う。印象的で耽美的なギターはローゼンウィンケルで3曲に客演、ロッシーのドラムは2曲でブレイドとツインドラムを形成する。このワンホーン・カルテット+αの編成は、様々な曲調、曲想の演奏をいとも容易く、柔軟に展開する。素晴らしいポテンシャルである。

オーソドックスなネオ・ハードバップから、ショーターばりの捻れて思索的な展開、フリーな演奏から8ビートのジャズロック風の演奏まで、バラエティーの富んだ内容なんだが、不思議と統一感がある。その統一感を現出しているのが、マーク・ターナーのテナー。彼のクール・スタイルなテナーが一貫しているが故の「1本筋の通った統一感」が清々しい。

バックの演奏はいずれも素晴らしいが、特筆すべきはブレイドのドラミング。しっかりとバッキングに回りながら、鋭さと繊細さの相反した表現を融合した柔軟度の高いドラミングは当代随一のものだろう。クールで大人なネオ・ハードバップ。この盤、じっくり聴き進めていくと、ジワジワその良さが沁みてきます。

 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2019年3月 1日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・110

先週、ハンク・ジョーンズの『The Talented Touch』という素敵なトリオ盤をご紹介した。ハンクのピアノは端正でタッチが明確で流麗。テクニックは確かで、仄かにファンクネスが漂うフレーズ。1970年代後半、若きトニー&ロンと組んだGJTでの「マッチョ」でダイナミックなハンクも良いが、典雅で小粋なハンクは更に良い。

Hank Jones『The Trio』(写真左)。1955年8月4日の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Wendell Marshall (b), Kenny Clarke (ds)。録音はニュージャージーはハッケンサックの    Van Gelder Studio。玄人好みのレーベル、サヴォイからのリリース。どうりで音が良い訳だ。LPの初盤で聴いてみたかったなあ。

ハンクは1918年生まれ。このトリオ盤を録音した時点で37歳。それにしては「枯れた味わい」が素敵なピアノである。派手な立ち回りとは全く無縁。しっとり落ち着いた大人の雰囲気。しかし、タッチはしっかり明確。フレーズは流麗。バラードは典雅。これが37歳の、まだまだ若いピアニストが奏でる音なのか、と感心する。1970年代後半、GJTでの60歳を迎えたハンクのほうが、明らかに「やんちゃ」である。
 

Hank_jones_the_trio

 
この「若年寄」の如き、流麗で典雅なピアノをしっかり支えるバックが、これまた「玄人好み」。骨太なウォーキング・ベースが好印象のウェンデル・マーシャル。ブンブン胴鳴りするアコベは魅力満載。シンプルにビートを刻むが、フロントのピアノに合わせて陰影をつける粋なドラミングはケニー・クラーク。この二人のリズム隊はハンクのピアノにピッタリ。

そして、この盤の面白味は、スタンダード曲を弾かせたら天下一品のハンクが、自作曲をこれまた典雅に流麗に弾き回していること。1曲目の「We're All Together」続く「Odd Number」など良い出来です。スタンダード曲は相変わらず良い出来。「There's a Small Hotel」や、おなじみの「"My Funny Valentine」は絶品です。

実はこのトリオ盤、つい最近まで知りませんでした。とあるジャズ盤紹介本で知った次第。サヴォイ・レーベルからのリリースで、サヴォイらしくなくジャケットが地味なんで、紹介本で知識を付けていなかったら、店頭に並んでいても手に取らなかったでしょうね。今回はジャズ盤紹介本に感謝です。

 
 
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2019年2月26日 (火曜日)

「サラッとした耽美的な」響き

David Hazeltine(デビッド・ヘイゼルタイン)。米国ミルウォーキー出身のジャズ・ピアニスト。1958年10月生まれなので、現在60歳の還暦。大ベテランの域である。同じ世代なので親近感もある。彼と出会ったのは、ヴィーナス・レーベル盤『Alice in Wonderland』であった。バップからモードまで、幅広いスタイルに精通し、その多様性溢れるフレーズが個性。確かなタッチの響きは「硬派で耽美的」。

そんなヘイゼルタインの最新作になる。David Hazeltine『The Time is Now』(写真左)。2018年5月23日の録音 。ちなみにパーソネルは、David Hazeltine (p), Ron Carter (b), Al Foster (ds)。レジェンド級をベースとドラムに持って来て、期待以上の化学反応が起こるか、平凡な水準レベルで終わるか、真ん中の無い、思い切ったメンバーの選定である。聴き前から期待感が膨らむ。

聴いてみると、冒頭の自作のタイトル曲「The Time is Now」で既によく判るが、サラッとしたシンプルで耽美的なアレンジがこの盤の特徴。ナルシストを彷彿とさせる様な「ディープな耽美的」な表現では無く、ビ・バップに通じる様な、硬派で堅実でサラッとした耽美的な響き。テンポはミッドテンポが多くて、ゆったり落ち着いて聴くことが出来る。ファンクネスは希薄だが、タッチはハッキリとしていて躍動感がある。
 

The_time_is_now  

 
ヴィーナス・レコード時代の「ディープな耽美的な」響きではなく、「サラッとした耽美的な」響きがこのトリオ演奏の身上。アレンジもサラッとしているが、聴き応え十分に感じるのは、ヘイゼルタインのピアノのタッチが明快で、硬派で堅実で耽美的なフレーズがクッキリと浮き出てくるからだろう。3曲目の「Smoke Gets in Your Eyes」や9曲目の「In a Sentimental Mood」の様な、超有名なスタンダード曲を聴くと良く判る。

ロン・カーターのベースが良い。以前の様に前へ前へ出なくなって、楽器のピッチが合うようになって、落ち着いた良い感じになってきていたのは知っていたが、それにも増して、この盤でのロンのベースは実に雰囲気がある。ガッチリ構えて、堅実かつ自由度の高いベースでフロントを鼓舞する。アルのドラミングは相変わらず味が合って立派。伴奏上手なドラミングの好例だろう。バッキングとして実に「粋」なドラミングである。

良いピアノ・トリオ盤だと思います。途中、どっかで聴いた曲やなあ、と思っていたら、James Taylorの「Don’t Let Me Be Lonely Tonight」でした。ピアノ・ソロでカヴァっていて素敵です。現代の洗練されたネオ・ハードバップなピアノ・トリオ。そんな演奏を平均年連60歳以上のトリオが演る。ならではの円熟味と洗練さが心地良くて「粋」。ピアノ・トリオ者の皆さんにお勧めの一枚です。

 
 
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2019年2月25日 (月曜日)

アラスカを彷彿とする演奏の数々

しかし、毎月毎月、全世界でジャズの新盤がよくこれだけ出るもんだと感心する。ジャズはマイナーでオタクな音楽だ、とか、ジャズは死んだ、など、いろいろと言われてきたが、21世紀に入って、約20年経つんだが、結構な数のジャズの新盤がリリースされている。売れるのか、生業になるのか心配になる。

そんなジャズの新盤の中で、そのリーダーの素性やパーソネルの構成がよく判らなくても、触手が伸びてしまうアルバムが常にある。今回はこれ。Accidental Touristsのセカンド盤である。まず「Accidental Tourists」って何だ?、そしてアルバムタイトルが「アラスカでのセッション」。思わず触手が伸びる。ジャケットに演奏するメンバーの名前があるのに気がついて、その名前を確認してゲットした。

Accidental Tourists『The Alaska Sessions』(写真左)。今年に入ってのリリース。「Accidental Tourists」とはトリオ名。ちなみにパーソネルは、Markus Burger(p), Peter Erskine(ds), Bob Magnusson(b) のピアノ・トリオ。2018年10月の録音。リーダーのマーカス・バーガーはドイツ出身のピアニスト、ボブ・マグヌッソンは米国出身のベーシスト、そこに元ウェザー・リポートの伝説のドラマーであるピーター・アースキンが加わっている。
 

The_alaska_sessions  

 
マーカス・パーカーのピアノは明らかに「エヴァンス派」。耽美的で印象的なフレーズが美しい。エヴァンスを21世紀に連れてきて現代の響きを取り入れた感じの、欧州的響きが個性な「エヴェンスの雰囲気濃厚なピアノ」。そこに米国出身のリズム・セクションがバックを務める。乾いた、ややファンキーでアーバンなリズム&ビート。この米国リズム・セクションは、濃厚な欧州的雰囲気を良い塩梅に緩和している。

耽美的な、ビル・エヴァンス的なピアノではあるが、決してレトロでは無い。現代の新しい響きと節回しを持った、現代のピアノ・トリオである。タイトル通り、アラスカの風景をピアノの音で表現した様な、耽美的で美しい凛とした響きのピアノが良い。適度なテンションも良いスパイスとなっていて、すっきりシンプルなピアノ・トリオではあるが、意外と重量感もある「欧州的ピアノ・トリオ」な佇まいが良い。

この盤のメインとなる楽曲はマルクス・バーガーによってアラスカで書かれたものとのこと。なるほど、全編に渡って典雅で耽美的なメロディーが印象的で、アラスカの雄大な自然を彷彿とする演奏の数々が聴き応え満点です。ジャケットもそんな雰囲気を彷彿とするもので、最初に見た時は、ECMレーベルの新盤かと思いました。でも音は違います。明らかに「Accidental Tourists」の音でした。好盤です。

 
 
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2019年2月24日 (日曜日)

リピダルの一人即興+多重録音

ECMレーベルの個性的な音は、1970年代後半にジャズを聴き始めた自分の耳には衝撃だった。ジャズと言えば「米国」、それも「ハードバップ」。ECMの音は違った。クラシックの様でもあるが、演奏の基本は即興演奏。ファンクネスは皆無で透明度の高く、クリアな音だが、出てくるビートは「オフビート」。当時の言葉で言うと「ニュー・ジャズ」。

Terje Rypdal『After The Rain』(写真左)。1976年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, syn, p, ss, fl, bells, tubular bells), Inger Lise Rypdal (vo)。ECMを代表するノルウェー出身のギター奏者、テリエ・リピダルの好盤。この盤は殆どが彼のソロ。多重録音で幾つかの楽器を重ねている。ヴォイスについて、当時の奥方が担当している。

多重録音なんだが、どこか「プログレッシブ・ロック」の雰囲気がプンプンするフレーズが満載。リピダルの浮遊感溢れるエレギとキーボードとの耽美的で印象的なデュオの様な展開。決して、ハードバップなビートの効いた演奏では無い。しかし、演奏の基本は「即興演奏」で、そのリピダルの「一人即興演奏」の妙が実に印象的で、実にアーティスティック。
 

After_the_rain_1  

 
リピダルのエレギは決してストレートでは無い。浮遊感溢れる、適度に捻れたロング・サスティーン、印象的で耽美的なフレーズ、無ビートでは無いが、幻想感溢れる雰囲気が濃厚で、即興演奏をベースとしているところが、唯一この演奏をジャズとする拠りどころ。モーダルな展開とフリーな展開が融合した、独特の音世界を創作している。

冒頭の「Autumn Breeze」での奥方のコーラスも幻想的で効果的。この奥方のコーラスの存在が、このリピダルの人工的な多重録音に人間的温もりを与えていて、この多重録音も人間の成せる技なんだ、ということを再認識させてくれる。クラシックの楽曲の様に整然と統制のとれた演奏では決して無く、自由度が高く浮遊感の強い、クラシックでは絶対にあり得ない、正反対の音世界である。

これが実にジャズらしく響くのだから面白い。ECMレーベルらしい深いエコーもこの盤の演奏には、実に効果的に作用している。このリピダルの「一人即興演奏+多重録音」の音世界は、とても「ECMレーベルの音」らしい。ECMを代表するアルバムの一枚でしょう。ジャケットも実にECMレーベルらしい。良いアルバムです。中堅ジャズ者以降向け。

 
 
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2019年2月22日 (金曜日)

ハンクのピアノの個性を知る

ハンク・ジョーンズが亡くなってもう8年が経つ。端正でタッチが明確で流麗。仄かにファンクネス漂う、テクニック確かな右手としっかりと音のボトムを支える左手のブロック・コード。ソロ・パフォーマンスも優れているが、歌伴も素晴らしい。僕はジャズを聴き始めた頃の「グレート・ジャズ・トリオ」のハンクのピアノが大好きだ。

Hank Jones『The Talented Touch』(写真左)。1958年の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones (p), Barry Galbraith (g), Milt Hinton (b), Osie Johnson (ds)。ギター入りピアノ・トリオといった感じの編成。演奏されている全12曲中、ハンク自作の「Let Me Know」以外、ジャズ・スタンダード曲か、ミュージシャンズ・チューン。これが良い。ハンクのピアノの個性と特性が良く判る。

とにかくハンク・ジョーンズのピアノが素晴らしい。まずテクニックが確か。そして、タッチが明確で端正。強すぎず弱すぎず、聴いていて耳に優しく、しっかりと印象に残る「良い塩梅」のタッチ。アドリブ・フレーズはファンクネス漂いつつ流麗。とても判り易いピアノで、聴いていて「上手いな〜、粋やな〜、ええ雰囲気やな〜」と直ぐに思う。
 

The_talented_touch

 
1918年生まれなので、このアルバムを録音した1958年の時点で、ハンクは40歳。中堅どころとして心身共に充実している頃。確かに、この盤でのハンクのタッチはファンキーであるが、キラキラしていて若々しい。バラードを弾かせたら天下一品。このアルバムでもハンクのバラード演奏は典雅で印象的。甘きに流れず、それでいてロマンチシズム漂う端正な展開は思わず聴き惚れてしまう。

ハンクのテクニックが確かなのは「Don't Ever Leave Me」や「Let Me Know」のミッドテンポな演奏で良く判る。指がよく回るし、タッチがしっかりしていて、音のひとつひとつが明確。躍動感はあるし、響きはポジティヴ。ハンク・ジョーンズのピアノの素性、個性、特徴が本当に良く判る。この『The Talented Touch』、ハンク・ジョーンズのピアノを知るには、避けて通れない隠れ好盤である。

ちなみにこのハンク・ジョーンズ、バリー・ガルブレイズ、ミルト・ヒントン、オシー・ジョンソンの四人は「ザ・ニョーヨーク・リズム・セクション」と呼ばれ、1950年代、数多くのアルバムのバックでリズム&ビートを支えたリズム隊。そんなリズム隊だけで録音したアルバムがこの『The Talented Touch』。タイトルの「The Talented Touch」とは「才能のあるタッチ」の意。納得感のあるタイトルである。

 
 
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2019年2月17日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・35

1970年代後半から1980年代前半までが「フュージョン・ジャズ」の時代。当時、我が国では猫も杓子もフュージョン・ジャズで、ハードバップなどの純ジャズについては「時代の遺物」扱いされていた。しかし、である。1980年代半ば、純ジャズ復古のムーブメントが起こって、純ジャズが復権したら、とたんに今度はフュージョン・ジャズが「異端」扱いである。

日本のジャズのトレンドって、当時のジャズ雑誌、評論家が牽引するのだが、基本的に無節操なところがある。現在に至っては、フュージョン・ジャズはそもそもジャズじゃない、などと言い出す始末。ジャズは懐の深い音楽ジャンルなので、フュージョン・ジャズもジャズの範疇に入れても差し支えない。フュージョン・ジャズだって良いところは沢山あるし、聴き応えのある好盤も多い。

Jazz Funk Soul『Life and Times』(写真左)。今年1月のリリース。Jazz Funk Soulは、Jeff Lorber (key, arr), Everette Harp (sax), Chuck Loeb (g) の3人で結成された、コンテンポラリーなフュジョン・ジャズ・バンド。一昨年の7月、ギターのChuck Loebが急逝して、今回の新盤では、Paul Jackson Jr. (g) が代わって参入している。
 

Life_and_times  

 
リーダーのジェフ・ローバーは、フュージョン〜スムース・ジャズ畑の優れたキーボード奏者兼アレンジャー。その個性は、ボブ・ジェームスに比肩すると僕は思っているが、ジェフ・ローバーって我が国では全くもって名が通っていない。ジェフ・ローバーは、米国のフュージョン〜スムース・ジャズの世界では有名な存在で、リーダー作も相当数リリースしている。が、我が国では人気は無い。

でも、聴いてみたら判るが、彼のキーボード・ワークとアレンジはかなりレベルが高く、内容が濃い。なぜ、この人は人気が無いのか、不思議でならない。今回の『Life and Times』でも、ローバーのキーボードは冴えに冴えまくっている。スムース志向ではあるが、結構、骨太で硬派なキーボードである。

オリジナル・メンバーだった故チャック・ローブは「フォープレイ」のメンバーとして我が国でも名が通っていたが、今回、代わって参入したポール・ジャクソンは知る人ぞ知る、マニア御用達なフュージョン・ギタリスト。どうだろう、と思ったが、ファンキーで硬質、とても強いピッキングが個性。それでいて、ソフト&メロウに響くフレーズは「癖になる」。意外といけます。ポール・ジャクソンに再注目ですね。

良質のフュージョン・ジャズ盤です。グループ名のとおり「ジャズ+ファンク+ソウル」な音世界が全く以て「フュージョン・ジャズ」していて、聴いていて心地良い。僕はこの盤、最近の「ながら聴きのヘビロテ盤」として、お世話になっています。こういう優れた内容の盤を聴くと、フュージョン・ジャズもまだまだ深化しているな、と感じます。

 
 
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2019年2月12日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・67

先週の週末、Buddy De Franco(バディ・デ・フランコ)のリーダー作をご紹介した。クラリネットはジャズの世界では少数派で、かなり数が少ないと書いた。確かに、ジャズ・クラリネット、と言われて真っ先に浮かぶ名前が、ベニー・グッドマンとバディ・デ・フランコの二人。しかし、この人を忘れていた。Jimmy Giuffre(ジミー・ジュフリー)である。

ジミー・ジュフリーは、1921年テキサス州生まれ。2008年に鬼籍に入っている。基本的にはマルチ・リード奏者なんだが、クラリネット奏者という印象が強い。恐らく、1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルで撮影された映画『真夏の夜のジャズ(Jazz on a Summer's Day)』での印象的な演奏の映像の影響だろう。あれは格好良かった。

さて、今日の盤は『The Jimmy Giuffre Quartet in Person』(写真左)。1960年7月19日、NYの    Five Spot Caféでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Giuffre (cl, ts), Jim Hall (g), Buell Neidlinger (b), Billy Osborne (ds)。リーダーのジミー・ジュフリーはクラリネットがメインだが、テナー・サックスも担当する。
 

In_person  

 
フロントは、ジェフリーのクラリネット&テナーとジム・ホールのギターが担当する。この1管1弦のフロント楽器のユニゾン&ハーモニーが実に心地良い響き。十分に練られたアレンジが素晴らしい。演奏者同士の自由なインタープレイを取り入れた展開が、ハードバップには無い「新しい響き」を獲得している。とにかく、アドリブ部のインタープレイが見事。

クラリネットとギターの演奏の温度感は「クール」。決して熱くならないが、その節回しが「ホット」なインタープレイが印象的。ジェフリーの標榜した「ブルースを基調とした大衆的ジャズ」が、このライブ盤では判り易く提示されている。音は決して多く無い。少ない厳選された音数でブルージーな雰囲気を最大限に引き出している。素晴らしいテクニック。

ジェフリーのクラリネットはクールで理知的だが、ホールのギターも負けずにクールで理知的。それでいて、仄かにファンクネスとジャジーな雰囲気が漂い、絡みつくような自由度の高いインタープレイが爽やかに響く。ジャズ喫茶の昼下がり、じっくりとスピーカーの前に陣取って耳を傾けたい、そんなクールで理知的なジャズである。

 
 
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2019年2月 9日 (土曜日)

クラリネット・ジャズのお勧め盤

ジャズは西洋音楽で使用される楽器であれば、ほとんど誰かが使っている。クラリネットもそんな1つ。そんなに多くはないのだが、ジャズの中では現在でも楽器として使用するジャズメンは存在する。が、しかし少数派なのは否めない。決してジャズの中ではメジャーな楽器ではないなあ。ホンワカ優しい音色は魅力なんだが、この「優しい」ところが引っ掛かるのかなあ。

Buddy De Franco『Cooking The Blues』(写真左)。1955年、1956年の録音。ちなみにパーソネルは、Buddy De Franco (cl), Tal Farlow (g), Sonny Clark (p, org), Gene Wright (b), Bobby White (ds)。タル・ファーロウがギターで参加、通常はピアニストのソニー・クラークがオルガンを弾いている。

Buddy De Franco(バディ・デ・フランコ)は生粋のクラリネット奏者。ジャズでは、スイング期にはクラリネットはまずまずポピュラーな楽器だったみたいだが、ハードバップ期に入って、奏者の数はグッと減っている。そんな中、バディ・デ・フランコは、クラリネットという楽器をビ・バップに使用して活躍した。豊かな音色と叙情溢れる演奏に定評がある。
 

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この盤でのバディ・デ・フランコのクラリネットは素晴らしいの一言。柔らかではあるが、しっかりと芯のある、意外と硬派なクラリネットの音が頼もしい。クラリネットの音色は丸くて優しいので、硬派なフレーズには向かないのでは、と危惧するのだが、デ・フランコのクラリネットは意外と硬派で心配は杞憂に終わる。

クラリネットの名手といえばベニー・グッドマンと感じてしまうのだが、この盤でのバディ・デ・フランコは、グッドマンよりモダンで先進的なフレーズ聴かせてくれる。テクニックは優れたもので、特にアドリブ部でのフレーズの流麗さには耳を奪われる。ちなみに、ソニー・クラークのオルガンについては、特筆すべきものは何も無い。逆に、ピアノについては流石やなあと感心します。

演奏の内容はスイング期の王道を引き継いだオーソドックスなもの。モードなどの挑戦的な展開は皆無。逆に安心してゆったりと楽しめる「大人のジャズ」と言って良い。この盤、クラリネット・ジャズのお勧め盤です。女性がメインのジャケットも味があって良し。

 
 
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2019年2月 8日 (金曜日)

ジャズ・ピアノの父のトリオ盤

このピアノ・トリオ盤、ジャズ喫茶で初めて聴かせて貰ったのって、何時だったかなあ。ジャズを聴き始めて15年経った位の頃だったか、神保町の「響」だったような思い出がある。この盤、廃盤になって久しく、当時はまだLPの中古屋って、あんまり無かったから、この盤を入手したくても、まず店先で見たことが無い。で、ジャズ喫茶に行って、リクエストと相成った訳である。

Earl Hines『Fatha』(写真左)。1965年、Columbiaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Earl Hines (p, vo), Ahmed Abdul-Malik (b), Oliver Jackson (ds)。ピアノ・トリオ構成。このリーダー作がリリースされた年で62歳。ジャズメンとして油の乗り切った年齢。聴けば判るが、リーダーのアール・ハインズのピアノのスタイルは、当時のメインのスタイルであった「ハードバップ」では無い。それでも、とても渋くて格好良いモダンなピアノに耳を奪われる。

冒頭の「Frankie And Johnnie」を聴いていると、右手はハードバップなんだが、左手がハードバップでは無い。左手が聴いていると「これはスイングかブギウギではないのか」と思う。2曲目の「The Girl From Ipanema」は当時流行のボサノバの名曲。これは当時の流行曲なので、ハードバップっぽく弾いている。でも3曲目の「Believe It Beloved」で、やっぱり「これはスイングの左手や」と確信する。
 

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Earl Hines(アール・ハインズ)。ハインズはジャズピアノの開発途上で最も影響力のある人物の一人だったとされる(Wikipediaより)。よって、ハインズは「ジャズ・ピアノの父」と呼ばれる。ホーンライクな力強い右手のシングル・トーン、複雑でより開放されたリズムを取り入れた躍動感溢れる左手のベース・パート。このハインズのピアノの奏法が、スイング期に一世風靡した。

そんな「ジャズ・ピアノの父」のトランペット・スタイルと称される奏法がこのアルバムで堪能出来る。渋い渋い硬派な「モダン・ピアノ」である。「St. James Infirmary Blues」と「Trav'lin All Alone」の2曲では渋くて素敵なボーカルも披露している。まるで、ルイ・アームストロング(愛称サッチモ)の様だ。と思ったら、ハインズとサッチモって「スイング期の盟友」なんですね。楽器を弾いて唄も唄う。スイング期のジャズメンの嗜みです。

ハインズは1903年生まれ。同じ頃に生まれたジャズメンを調べてみたら、ジェリー・ロール・モートン1890年、デューク・エリントン1899年、ルイ・アームストロング1901年、カウント・ベイシー1904年、ファッツ・ウォーラー1904年。これらのメンバー達と一緒に、同じジャズの時代を生きていた。確かに「ジャズ・ピアノの父」である。

 
 
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