2022年1月20日 (木曜日)

ポップなウィントン・ケリー盤

ウィントン・ケリーのピアノは、健康優良児的なファンキーで明るいタッチ。しかし、その奥に見え隠れするブルージーな哀愁感が堪らない。転がる様に軽く飛び跳ねるように軽快なフレーズの中に、そこはかとなく漂う粘り。ケリーのピアノは、実に親しみ易いもので、聴いていて楽しく、リラックス度満点のピアノである。

Wynton Kelly『It's All Right!』(写真左)。1964年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wynton Kelly (p), Kenny Burrell (g), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds), Candido Camero (conga)。6曲目の「The Fall of Love」には、The Tommy Rey Caribe Steel Bandという、スティール・パン&マラカス軍団が加わっている様だ。

この盤は、Verveレコードからのリリース。Verveレコードは当時、大衆向け音楽の大手レーベル。ジャズについても、大衆向けのファンキー・ジャズやソウル・ジャズを量産していた。このケリーの『It's All Right!』は、そんなVerveのジャズ大衆路線の一環。プロデューサーは、後の「フュージョンの仕掛け人」、クリード・テイラー。
 
Its-all-right_wynton-kelly

 
アルバム全体の印象は、聴いて楽しい、アーバンでダンサフルな「ソウル・ジャズ&ラテン・ジャズ」。垢抜けたソウル・ジャズ、そして、当時流行のラテン・ジャズ。Verveのジャズ大衆路線の面目躍如。ケリーの親しみ易い、聴いて楽しいピアノが、この「大衆向けのジャズ」にピッタリ。

キャンディドのコンガが効いている。ゲスト参加のスティール・パン&マラカスが効いている。特に、ラテン・ジャズ志向の演奏については両者、効きまくっている。ポップでダンサフルな雰囲気を撒き散らしている。そして、ケニー・バレルの漆黒アーバン・ギターもバッチリ効いている。アーバンで夜のジャズな雰囲気を思いっ切り増幅する。

ジャケットも、独特な「American cartoon(米国漫画)」風のユニークなジャケットで、とてもジャズのアルバムとは思えない。さすがは、Verveレコードである。ともあれ、お気楽なポップ志向のジャズ盤っぽいが、ケリーのピアノ、バレルのギター、それぞれの個性を最大限発揮していて申し分無い。気楽に聴き流して楽しいケリー盤である。
 
 
 
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2021年12月20日 (月曜日)

冬のボサ・ノヴァ・ジャズ・4

この盤の音世界は。ボサ・ノヴァ・ジャズに括るには憚れる。ボサ・ノヴァやサンバなど、ブラジル音楽の要素は色濃いが、ラテン音楽、ゴスペルなどの教会音楽からの影響が強く感じられ、果てはロックや米国ポップス、ソウルの要素も偲ばせている。リズム&ビートは疾走感溢れる軽快で爽快なもの。そして、フレーズはネーチャーでフォーキーな、自然な景観や雰囲気を感じさせる、美しく郷愁溢れるもの。

Milton Nascimento『Milton』(写真)。1976年の作品。米国L.A.での録音。ちなみにパーソネルは、Milton Nascimento (g, vo, arr), Toninho Horta (el-g), Wayne Shorter (ss, ts), Raul De Souza (tb), Herbie Hancock (p), Hugo Fattoruso (p, el-org), Novelli (b), Roberto Silva (ds, perc), Laudir De Oliveira (perc)。

ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)は、1942年10月、ブラジル、リオ・デ・ジャネイロの生まれ。「ブラジルの声、ブラジルの心」の異名を持つMPB(Música Popular Brasileir)=「ブラジルのポピュラー音楽の総称」の代表的ソングライター。そんなミルトンの通算4作目、ミルトン・ナシメントが米国に渡って、ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックをゲストに迎えて録音、1976年にリリースした名盤である。
 

Milton-1976

 
この盤は、冒頭からラテンチックでブラジリアン、ワールド・ミュージック志向の「融合」音楽が展開される。そして、賛美歌の様な「祈るような」スキャット、自然の風を感じさせるパーカッション&ピアノの響き。様々な音楽ジャンルの要素が、MPBの名の下に「融合」された、上質の「フュージョン・ミュージック」。

演奏の展開は「即興性」が前提、リズム&ビートはジャジー。そういう意味で、この音世界は、コンテンポラリーな、ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズとして良いかと思う。ショーターのソプラノ・サックス、ハンコックのピアノが要所要所で良い音を出していて流石だ。この2人の参加が、ミルトンの音世界にジャジーな要素を色濃く反映させている。

そんな、1970年代ジャズ~フュージョン的要素が濃厚な音世界ながら、ブラジリアンな音の要素はしっかり前面に出ていて、ブラジルの大地に吹く風を思い起こさせるような、ネーチャーでフォーキーな音世界に思わず引き込まれる。MPBをベースとした、フュージョン・ジャズのアーティスティックな傑作。優れたフュージョン・ジャズは、何も米国だけのものでは無い。
 
 
 

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2021年12月16日 (木曜日)

冬のボサ・ノヴァ・ジャズ・3

今年の暮れは「冬のボサ・ノヴァ・ジャズ」に触手が伸びる。「夏はボサ・ノヴァ・ジャズで爽やかに」というのが定番なのだが、寒い冬、暖かい部屋の中でリラックスして聴く「冬のボサ・ノヴァ・ジャズ」も意外と良い雰囲気。ほんわかウォームなボサ・ノヴァ系のヴォーカルが、冬の寒い雰囲気の中で心地良く響くから面白い。

Tania Maria『Brazil With My Soul』(写真左)。1978年の作品。ちなみにパーソネルは、Tania Maria (vo, p), Alain Hatot (ts, fl), Alfred Housepian (tp, flh), Zezito, J.F. Jenny-Clark (b), Hubert Varron (cello), Aldo Romano (ds), L.C. Fuina (ds, perc), Clovis Lobâo (perc)。

Tania Maria(タニア・マリア)は、ブラジル出身の女性ボーカリスト&ピアニスト。1948年生まれなので、今年で73歳。この『Brazil With My Soul』を録音した時点では30歳。若さ溢れる、バリバリのパフォーマンスが見事。彼女のキャッチフレーズは「パッション溢れるピアノ・タッチと流麗で爽やかなボーカル&スキャット」。
 

Brazil-with-my-soul

 
彼女の音志向は「ブラジル音楽、ジャズ・フュージョン、クラシックを鮮やかに融合した音作り」で一貫している。ボサ・ノヴァやサンバを基調としているが、リズム&ビートはジャジーであり、ボサ・ノヴァ・ジャズの特徴である「爽やかで、ほんわかウォームな、リズミカルではあるが、どこかアンニュイが漂う」ところが意外と希薄。エネルギッシュでダンサブルな面が前面に出ているところが個性。

この盤には、ジャズを基調として、ボサ・ノヴァ、サンバ、というブラジル音楽の要素はふんだんに入っているが、アフロラテン、ポップス、ソウルな音楽の要素もしっかり反映されていて、1978年の作品である様に、この盤の音の雰囲気は、明らかに「ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズ」。しかも、タニアの優れたボーカルが入った、フュージョンに珍しい「フュージョン・ボーカル盤」である。

良い雰囲気のフュージョン・ジャズ。チック・コリアやフローラ・プリムのフュージョン盤に通じる、ラテン系の音世界を色濃く反映した「融合(フュージョン)」の音楽は、聴いていて爽快、ユートピア志向に通じる、凛としたロマンティシズムも良い方向に作用している。「ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズ」の名盤の1枚。
 
 
 
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2021年11月27日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・223

欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫である「SteepleChase」。硬派で素姓確かなメインストリームな純ジャズのアルバムを多数リリースしているが、独自の感覚で、レーベル独特のジャズマンをチョイスした、ユニークなジャズ盤もリリースしていて、これが意外に興味深い内容なのだ。

Hilton Ruiz『Piano Man』(写真左)。1975年7月10日、NYでの録音。SteepleChaseレーベルのSCS 1036番。ちなみにパーソネルは、Hilton Ruiz (p), Buster Williams (b), Billy Higgins (ds)。プエルトリコ系米国人ピアニスト、ヒルトン・ルイスのトリオ盤。ルイスは1952年生まれなので、この盤の録音時は23歳。ルイスの初リーダー作である。

ヒルトン・ルイスというピアニストには全く馴染みが無かった。彼の経歴を紐解いてみると、幼い頃はクラシック・ピアノ、高校時代にジャズ・ピアノに転身し(メアリー・ルー・ウィリアムスに師事している)、1973年、ローランド・カークのサイドマンとして頭角を現し、フランク・フォスター、ジャキー・マクリーンを始めとした、ジャズのトップ・ミュージシャン達のサイドマンを経験している。

スティープルチェイス・レーベルからは、この初リーダー作の「Piano Man」を始め、「Excition」「New York Hilton」「Steppin' Into Beauty」の4枚を、集中して1977年に録音している。生涯を通じては、約20枚程度のリーダー作を世に送り出しているようだ。
 

Piano-man-hilton-ruiz

 
基本的には、アフロキューバン・ジャズの系列のピアノなので、オーセンティックな純ジャズもやるが、個性が最大限に活かされるのは、ラテン・ジャズなナンバーだろう。このアルバム冒頭のルイす作「One for Hakim」を聴けば、それが良く判る。左手の和音の響きが明らかに「ラテン」で、よく回る右手のシングルトーンがこれまた「ラテン」。リズム&ビートもやはり「ラテン」。

オーセンティックな純ジャズもやる、という面は、2曲目のデューク・ジョーダン作の「Misty Thursday」を聴けば明らか。スローなバラードチックな佳曲であるが、「ラテン」など何処へやら、リリカルで耽美的、ファンクネス皆無な欧州的ジャズ・ピアノの音と正統な純ジャズの切り口で、切々と弾き進められる。ここで、特徴的なのは、ルイスのピアノのテクニック。確かで確実な指捌きは素晴らしい。

バックのリズム隊に、バスター・ウィリアムスのベースとビリー・ヒギンスのドラムを配しているところも、この盤の内容をグッと引き締めている。ラテンなジャズにしろ、オーセンティックなジャズにしろ、この2人のリズム隊が堅実にガッチリとリズム&ビートを固めている。

ラテンあり、オーセンティックあり、内容は多様性に富んでいる。いかにも、1970年代の純ジャズらしい、欧州ジャズらしいピアノ・トリオ盤である。
 
 
 
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2021年4月20日 (火曜日)

パーカーの非凡な才能・その6

昨日、9日ぶりにブログを再開した訳ですが、チャーリー・パーカーの入門盤に最適なヴァーヴ・レーベルからリリースされた「The Genius Of Charlie Parker」シリーズのご紹介記事が途中で途絶えていたので、あと2枚なんですが、再開させて頂こうかと。

『The Genius Of Charlie Parker #6 : Fiesta』(写真左)。1948〜1952年の間のセッションの寄せ集め。パーソネルは「Charlie Parker And His Orchestra」で、Charlie Parker (as), , Benny Harris (tp), Walter Bishop, Jr. (p), Teddy Kotick (b), Roy Haynes (ds), Max Roach (ds), Jose Mangual (bongos), Luis Miranda (conga)。

チャーリー・パーカーと言えば「ビ・バップ」の祖の一人。「ビ・バップ」の演奏スタイルは後に続く、ジャズ史上最大の演奏スタイル「ハード・バップ」の礎でもある。やはり「ハード・バップ」以降のジャズを聴く場合、たまには「ビ・バップ」の演奏にも耳を傾け、現代ジャズの「礎」の演奏の雰囲気を感じることは大切だと思っています。

ただし、チャーリー・パーカー=「ビ・バップ」といえば、激しいアドリブ合戦や超絶技巧な高速フレーズの連発で、ちょっとジャズ初心者の方は敷居が高く、苦手やなあと感じてしまう気がします。

ジャズ盤の入門盤紹介の記事を見て、『オン・ダイアル』や『オン・サヴォイ』なんてアルバムを入手して聴いた時には、何が何だか判らず、ただ激しく、やかましく、うるさいだけで、きっと、パーカーやビ・バップが嫌いになってしまう危険性大です。
 

Fiesta-charlie-parker

 
盤によっては、別テイク(本収録されたテイクと内容に遜色ない出来だが、アルバムの収録時間の制約上、やむなく不採用となったテイク)やアウトテイク(演奏は完結したが不採用となったテイク)、失敗テイク(何らかのトラブルが生じて完結しなかったテイク)が入り混じって収録されて、何が何だか判らなくなります。

やはり、聴き易く馴染み易いセッションで固めたアルバムが良いと思う訳で、そう言う意味では、このパーカーの『The Genius Of Charlie Parker #6 : Fiesta』はなかなか良い感じの盤かと思っています。

この盤は、チャーリー・パーカーが吹き込んだ唯一のラテン・ジャズ盤。通常のコンボに2名のラテン・パーカッション(コンガ&ボンゴ)を加えた編成で、めくるめくラテン・ジャズの祭典(Fiesta)。エネルギッシュなパーカーのアルト・サックス。

1948〜1952年の間のセッションなんですが、既にジャズとラテン音楽は融合していたんですね。アレンジも良好、しっかりとラテン音楽の要素がジャズに融合していて、取って付けたような違和感は全くありません。演奏する方も手慣れた感が感じられて、皆、エネルギッシュに吹き上げ、叩きまくる。

特にパーカーの「ビ・バップ」マナーの、エネルギッシュでテクニカルなアルト・サックスが、ラテン音楽の旋律を吹き上げるのにピッタリ。ポップで聴き易い「ビ・バップ」マナーのアルバムに仕上がっていて素晴らしい出来です。ポップで聴き易い内容なので「ながら聴き」なジャズにも最適かと。好盤です。
 
 
 

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  ・Journey『Infinity』1978

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  ・Yes Songs Side C & Side D
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2021年1月11日 (月曜日)

サブーの「リズム&ビート」盤

当ヴァーチャル音楽喫茶『松和』の「今日のラスト」(Twitter)で、初心にかえってブルーノート1500番台の聴き直しをしている。1月10日現在で「1572番」まで聴き直してきた。1500番台はビ・バップからハードバップ時代の著名なジャズマンの若き姿を記録していて、その内容の良さ、録音の良さ、ジャケットデザインの良さ、と揃いも揃った3拍子で、モダン・ジャズを聴く上で、絶対に外せないシリーズになっている。

ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの趣味趣向が思いっ切り反映された音作りで、リハーサルにもギャラを払って、そのパフォーマンスの出来を向上させる対応も素晴らしく、レーベルとしての「音の統一感と完成度」はピカイチである。ライオンは「ジャズの本質(ルーツ)」にも着目していたフシがあり、ジャズの基本のひとつ「リズム&ビート」に特化した「ライオンの狂気」と評される企画盤を幾枚かリリースしている。

Sabu『Palo Congo』(写真)。BNの1561番。April 27, 1957年4月27日の録音。ちなみにパーソネルは、Louis "Sabú" Martínez (congas, bongos, vo), Arsenio Rodríguez (congas, tres, vo), Raúl "Caesar" Travieso (congas, vo), Israel Moisés "Quique" Travieso (congas), Ray "Mosquito" Romero (congas), Evaristo Baró (b), Willie Capó (vo), Sarah Baró (vo)。コンガ・ボンゴ奏者が5人、ベースが1人、ボーカル専任が2人。打楽器とベースとボーカルのみの編成。
 
 
Palo-congo  
 
 
アフリカン・ネイティヴのリズム&ビートとラテンのリズム&ビートの融合。モダン・ジャズの基本の1つが「リズム&ビート」。ハードバップ時代には、このリズム&ビートがアフリカン・ネイティヴなものをベースに、ラテンやカリビアンなリズムと融合している。それをいち早く、ライオンは記録しているのだ。しかし「リズム&ビート」に特化したアルバムを作るとは、ライオンの矜持には凄まじいものがある。

これ、当時としても売れないでしょう。それでもこの「記録」をレコードにして残そうとする。確かに「ライオンの狂気」とは言い得て妙。しかし、こういう企画盤をリリースするところに、ブルーノート・レーベルの先進性があり、このレーベルを特別なものにしているのだ。冒頭の「El cumbanchero」を聴けば良く判る。ラテンのリズム、キューバン・ミュージックのエッセンスが実に良く捉えられている。決してトレンドを追っただけの録音では無い。音の本質を突いた優れた録音である。

この盤、リーダーはサブー・マルチネスであるが、キューバン・ミュージックの至宝、アルセニオ・ロドリゲスのアルバムでもあるあろう。ラテンのリズム&ビートとキューバン・ミュージックの「ジャズとの融合」の旬を捉えた、パーカッションがメインの録音。独創的であり先進的でもある。他のレーベルには無い、ブルーノートの「アーティスティック」な側面を垣間見る様な好盤である。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて        【更新しました】 2020.10.07 更新。

  ・『Middle Man』 1980

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  ・ジョン・レノンの40回目の命日

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  ・僕達はタツローの源へ遡った

 

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2020年8月18日 (火曜日)

スピリチュアルなラテン・ジャズ

音楽のサブスク・サイトが充実してきて、ジャズ盤のリイシューについても、CDと同時にサブスク・サイトにアップされる様になった。これはとても喜ばしいことで、お目当てのリイシュー情報が入ってきても、CDショップに走ることもなく、オンラインショップで購入して、宅配便で受け取る手間も無い。お目当てを見つけたら、即ゲットし即聴けるのだから、便利な世の中になったものだ。

Hugo Heredia『Mananita Pampera(マナニタ・パンペラ)』(写真左)。1976年10月、西ドイツはルートヴィヒスブルクでの録音。ちなみにパーソネルは、Hugo Heredia (sax, fl, per, Written-By), Horace Parlan (p), Peter Frei (b), Ivanir Mandrake Do Nascimento (congas, perc), Peter Schmidlin (ds, perc)。

フランスのレーベル「コートダジュール」から1976年にリリースされた、アルゼンチン出身のマルチリード奏者、ヒューゴ・ヘレディアのリーダ作品のリイシューになる。僕はこの盤を知らない。しかし、このジャケットを見れば、これは「ええんちゃうか」と思う(笑)。恐らく瓶ビールであろう、栓を歯で抜こうとしている「こってこてファンキー」なジャケット。このジャケットだけで「グルーヴ感」が伝わってくるようだ。
 
 
Mananita-pampera  
 
 
パーカッション担当が3人もいる、タフで生々しいパーカッシブなリズムが心地良い刺激のラテン・ジャズである。激情溢れるサックスのソロは実に「スピリチュアル」。フュージョン・ジャズの時代に、こってこてファンキーでグルーヴィーな「スピリチュアル・ラテン・ジャズ」の音世界。徹頭徹尾「ノリノリ」である。

癖の強い、ファンキーでアーシー、そして、アフロキューバンなモダン・ピアニスト「ホレス・パーラン」が参加して、こってこてグルーヴ感溢れるピアノ・パフォーマンスを繰り広げる。そして、ブラジルの名パーカッション奏者マンドレイクが、生粋ラテンなリズム&ビートを叩きだしている。そんなリズム隊をバックに、南米出身のヒューゴ・ヘレディアのサックスがフルートが乱舞する。

ラテン・グルーヴの洪水。この「スピリチュアル・ラテン・ジャズ」の音世界、強烈です。思わず腰が動き、思わず足でリズムを取り出す。こんなに強烈なグルーヴ感を湛えたラテン・ジャズ盤を僕は他に知らない。唯一無二の「ワールド・ミュージック系」のフュージョン・ジャズとも解釈できるかと思います。レア・グルーヴの好盤です。
 
 
 

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  ・『Your World and My World』 1981

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  ・『Music From Big Pink』

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  ・太田裕美『Feelin’ Summer』



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2020年8月 9日 (日曜日)

酷暑の夏に「ライトなジャズ」

遅い梅雨明け以降、かなり暑い日が続いている。朝から陽の当たる場所は既に30度越えの真夏日。湿度も高くて蒸し蒸しして、もう朝9時くらいにはエアコンのお世話になっている。今年は久し振りの冷夏かも、なんて予報もあったがとんでもない。今年の暑さ、去年一昨年より厳しい様な気がする。

これだけ蒸し暑いと、まずエアコンの無い部屋で音楽を聴くなんてとんでもない。聴くとしたって耳当たりの良い、刺激の少ないソフト・ロックやAORがせいぜい。エアコンを入れて、外の喧噪をシャットダウンして、やっとこさ、ジャズを聴こう、と思い立つ。それでも、ハードで硬派な純ジャズは辛い。ましてやフリー・ジャズなど論外。耳当たりの良い、イージーリスニング志向のジャズやボサノバ・ジャズに手が伸びる。

Cal Tjader『Sounds Out Burt Bacharach』(写真左)。1968年の録音。ちなみにパーソネルは、Cal Tjader (vib), Mike Melvoin (org), Marvin Stamm (flh), Garnett Brown (tb), Harvey Newmark (el-b), James Helms (g), Jim Keltner (ds), George Berg, Joseph Grinaldi (Bassoon), Ray Alonge (French Horn), Lew Del Gatto (Oboe), George Marge, Jerome Richardson, Jerry Dodgion, Walter Kane (reeds), Albert Wagner, Henri Aubert (vln)。
 
 
Sounds-out-burt-bacharach  
 
 
ジャズ・オーケストラをバックに従え、キーボードはピアノではなくオルガンを採用、ギターも入れて、ベースはエレベ。パーソネルを見るだけで、これは1960年代後半のイージーリスニング志向のライト・ジャズでは無いかと思う。聴けばズバリ。しかし、演奏されるそれぞれの曲がこれまた良い曲ばかりで、それもそのはず、この盤、タイトルからも判る様に、カル・ジェイダーによるバカラック作品のカヴァー集である。

カル・ジェイダーは、米国西海岸はサンフランシスコ出身の彼は、クール聴かせる西海岸ジャズにラテンのリズムを融合させ、ポップでソウルなジャズを展開、この盤についても、どこかラテン風のフレーズが見え隠れしつつ、そこはかとなくソウルフルでファンキーなライト・ジャズである。プロデューサーはGary McFarland。アレンジはマクファーランド含め3名が分担して担当しているが、どの曲のアレンジも優秀。聴いていて爽やかである。

バカラック作品のカヴァー集なので、楽曲自体がしっかりしている分、優れたアレンジと相まって、クールで上質なイージーリスニング志向のライトなジャズに仕上がっている。とにかく肩肘張らずに心地良く聴きながせるのが良い。この季節にピッタリの企画盤です。
 
 
 

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  ・『Your World and My World』 1981

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2020年6月25日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・130

たまたま、ネットを徘徊していて見つけた「今までに聴いたことが無いアルバム」が、意外と好盤だった時は、なんだか幸せな気分になる。ジャズを聴き始めて、早40年余。それでも、未だに「今までに聴いたことが無いアルバム」に出会うことがある。ジャズ盤の蒐集については、ほとんど「底なし沼」のようなものである。

この盤もそんな盤で、音楽のサブスク・サイトをふらふらしていて、梅雨だなあ、サンバかボサノバを聴いて、スカッとしたいなあ、と思った瞬間、この盤のタイトルが目に飛び込んできた。そうか、サンバだ、サンバが良い。と思いつつ、この盤のタイトルの「ARS 001」の部分がちょっとチャラいかなあ、感じながら「ゲット」。

Allen Houser Sextet『No Samba ARS 001』(写真左)。1973年の作品。トランペッターの「アレン・ハウザー」の初リーダー作になる。ちなみにパーソネルは、Allen Houser (tp), Buck Hill (ts), Vince Genova (p), Steve Novosel (el-b, ac-b), Terry Plumeri (ac-b), Mike Smith (ds)。さすがに、1970年代に入っての「メインストリーム・ジャズ」。パーソネルを見渡しても、知っている名前がほぼ無い。
 
 
No-samba  
 
 
この盤、紙ジャケCDの「帯紙」のキャッチフレーズを見ると、どうもこの盤、当時、我が国のジャズ喫茶で人気のアルバムだった様である。ハウザーは、60年代には主にラテン・バンドで活動していた、という経歴の持ち主。たしかにハウザーの出すフレーズのそこかしこに、ラテンチックな哀愁が漂っている。これが「堪らない」。ラテン音楽の要素がそこはかとなく漂うパフォーマンスは聴いていて楽しい。

基本的には普通のハードバップな演奏なのだが、ベーシストが二人いる。一人が弓弾きに専念しているみたいで、これがアルバム全体に不思議な雰囲気を漂わせている。が、基本はラテン、なので、意外と気にならない。1973年という、メインストリーム・ジャズとしては受難の時代。アルバムのプロデュースも、ちょっと「奇天烈」な面があったのかもしれない。

ハウザーが全編、「オーソドックスでハードバップな」トランペットで押しているところが好感ポイント。シュッとしたフレーズと、どこか哀愁感漂う音色が良い。ほとんど無名に近いハウザーではあるが、こうやって21世紀になっても再発され「愛聴される盤」をものにした。ジャズの歴史に残る好盤、という類では無いが、メインストリームなジャズを楽しむ、という面では、この盤は好適である。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.12更新。

  ・『Bobby Caldwell』 1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.12更新。

  ・Led Zeppelin Ⅲ (1970)

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.12更新。

  ・太田裕美『心が風邪をひいた日』
 

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2020年4月 4日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・164

ジャズは全世界に広がっている。ジャズを聴き始めた40年ほど前は、ジャズは米国の音楽だと思っていた。1990年代に入った頃だろうか。欧州ジャズの情報が徐々に我々一般のジャズ者にも届き始め、21世紀になって、インターネットが身近な物になって、欧州ジャズの情報は一気に増えた。そして感心したのは、ジャズは世界の国々にある、ということ。クラシック音楽の文化のある国にはまずジャズもある、と睨んでいる。

Marco Di Marco Chris Woods Sextet『Together In Paris』。1974年11月7日、パリでの録音。ちなみにパーソネルは、Marco Di Marco (el-p, ac-p), Chris Woods (as, fl), Jacky Samon (b), Keno Speller (bongos), Yaffa Seydou (congas), Charles Saudrais (ds)。マルコ・ディ・マルコはイタリアのピアニスト。クリス・ウッドは米国のサックス奏者。この二人が双頭リーダーのセクステット盤。

メインストリーム・ジャズにとって受難の年代であった1970年代。そんな受難の年代でも、メインストリーム・ジャズは綿々と好盤を創り出していた。この盤も、クロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズとは一線画する、1960年代を彷彿とさせる、ダンサフルなボサノバ・ジャズである。電子キーボード(フェンダー・ローズ)は使用しているが、小粋で趣味の良いジャジーなフレーズを連発しているので良し、である。
 
 
Together-in-paris   
 
 
僕はこの盤をジャズ盤紹介本で初めて知ったので、この伊のマルコ・ディ・マルコと米のクリス・ウッドの二人がどういう経緯で出会って、この盤を録音したのかは知らない。マルコ・ジ・マルコのパリ録音三部作の中の一枚とのこと。しかし、この盤の内容が素晴らしい。それぞれのミュージシャンがその実力を遺憾なく発揮して、イタリアのスインギーでダンサフルなモード・ジャズを展開している。

冒頭の「Bossa With Regards」が素晴らしい。欧州ジャズらしい、ファンクネス皆無で端正なモード・ジャズから入って、途中、ボサノバ・ジャズへ展開するところは「聴きどころ」。当時、ジョルジュ・アルヴァニタス・トリオのリズム隊を形成するジャッキー・サムソン、シャルル・ソードレのボンゴ、コンガ、ドラムのリズム&ビートがラテン・フレーヴァーを撒き散らす。

続く「Portrait for a Golden Angel」は哀愁感たっぷりのウッドのフルートが沁みる。そしてラストのタイトル曲「Together In Paris」は、モーダルなジャズの名演だろう。ラテン・チックなリズム&ビートが、シリアスなモード・ジャズに、ポップな明るさを添えている。見事である。スピリチュアルな要素も見え隠れして、当時のメインストリーム・ジャズの好要素を集約した「総合力満点」の好盤だと思う。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.29
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ ELP「恐怖の頭脳改革」である

【更新しました】2020.04.01
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップのセカンド盤の個性

 

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