2023年3月 5日 (日曜日)

ラヴァとハーシュのデュオ新盤

イタリア・ジャズも隆盛を維持して久しい。レジェンド級のベテランから、若手新人まで、コンスタントに好盤をリリースし続けている。聴き比べると意外と良く判るが、イタリア・ジャズにはイタリア・ジャズなりの独特の雰囲気があって「統一感」がある。マイナー調でクラシック風のモーダルなフレーズが個性的。

Enrico Rava & Fred Hersch『The Song Is You』(写真左)。2021年11月、スイスのルガーノでの録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (flgh), Fred Hersch (p)。イタリア・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァと、リリカルで耽美的なピアノ詩人のフレッド・ハーシュ、2人のみの「デュオ演奏」。

エンリコ・ラヴァはイタリア・ジャズの至宝。1972年に初リーダー作をリリース、今年84歳、レジェンド級の大ベテランである。1975年にECMでの初リーダー作をリリース、1986年の『Volver』で一旦ECMを離れるが、2003年、『Easy Living』でECMにカムバック。以降、2〜3年に1枚のペースで、ECMからリーダー作をリリースしている。

ラヴァは、ピアニストとのデュオがお気に入りらしく、5〜6人の第一線級のジャズ・ピアニストとのデュオ・アルバムを録音している。ラヴァのトランペットは、イタリア・ジャズらしく、哀愁感漂うマイナー調をメインに、流麗でブリリアントで、端正なクラシック風のモーダルなフレーズが身上。

心ゆくまでトランペットを吹き上げるには、ベースやドラムのいないピアノとのデュオが一番なんだろう。ピアノは打楽器の要素も備えていて、リズム&ビートとベースラインはピアノ一台でまかおうと思えば、まかなえるのだ。今回は、ハーシュのリリカルで耽美的なピアノに合わせたのか、ラヴァは、音の丸い、柔らかで暖かな音色のフリューゲルホーンを吹いている。
 

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フレッド・ハーシュは、米国オハイオ州シンシナティ生まれ。今年55歳の中堅ピアニスト。初リーダー作が1985年。結構な枚数のリーダー作をリリースしているが、所属レーベルは定着せず、マイナーレーベルからのリリースがほとんど。

また、1984年にHIVウイルスに感染、2008年にはウイルスが脳に転移し2ヶ月間の昏睡状態に陥っている。そんな大病の影響もあって、我が国には、ハーシュの情報はほとんど入って来なかった。

1990年代の終わりに、Palmettoレーベルにほぼ定着したが、それでも我が国で、ハーシュの名前が流通しだしたのは、つい最近のこと。今回、このラヴァとのデュオで、ECMレーベルでの初録音になる。

ハーシュのピアノは耽美的でリリカル。米国のピアニストでありながら、ファンクネスは限りなく希薄。どちらかといえば、欧州ジャズのピアノに近い響きを有していて、そういう点でも、今回のECMでの録音は、ハーシュのピアノの個性にピッタリである。

さて、アルバムの内容であるが、2人のオリジナル曲も良いが、やはり、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジェローム・カーン&オスカー・ハマースタインII世、そして、セロニアス・モンクのスタンダード曲でのデュオ演奏が白眉。ECMレーベルの音作りに即した「リリカルで耽美的、透明度が高く、端正でスピリチュアルな」ニュー・ジャズ志向のデュオ演奏が素晴らしい。

ラヴァのリリカルで耽美的で流麗なニュー・ジャズ志向のフリューゲルホーンは意外に珍しいのでは無いか。でも、とても良い。どの曲でも、ラヴァのフリューゲルホーンは朗々と暖かく、ブリリアントに柔軟に鳴り響く。そして、ハーシュのピアノは、ラストの「Round Midnight」のソロ演奏に収束される。独り対位法をちりばめながら、鍵盤をフル活用して、ダイナミックに、モンクの名曲を弾き上げる。

近年で白眉の出来のフリューゲルホーンとピアノの「デュオ演奏」。即興演奏の妙もふんだんに聴くことが出来て、音の展開の美しいことこの上無い。良いアルバムです。
 
 

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2022年10月15日 (土曜日)

ピエラヌンツィのクインテット盤

最近、やたら、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)のリーダー作が目に付く。コロナ禍にも負けず、ピエラヌンツィの活動は充実しているのだろう。加えて、ピエラヌンツィは現代ジャズ・ピアノ、特に欧州ジャズ、伊ジャズにおけるピアニストの第一人者の1人として、その実力がジャズ界で認められているからだろう、と思っている。

Enrico Pieranunzi Quintet『The Extra Something』(写真左)。2016年1月13, 14日、NYの「The Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Diego Urcola (tp, tb), Seamus Blake (ts), Ben Street (b), Adam Cruz (ds)。トランペット or トロンボーンとテナー・サックスのフロント2管のクインテット編成。

ピエラヌンツィは、フロント楽器としてのピアノのテクニックも素晴らしいが、カルテットやクインテット編成の中で、リズム・セクションに回った時の伴奏楽器としてのピアノのテクニックも卓越したものがある。このライヴでは、現代のネオ・モードな演奏がメインで、限りなく自由度を追求した、柔軟で硬派なモード・ジャズが展開されている。
 

Enrico-pieranunzi-quintetthe-extra-somet

 
モードをやらせてもピエラヌンツィのピアノは素晴らしいのだが、このライヴ盤では、バリバリにアグレッシヴに弾きまくっていて、とにかく爽快である。弾きまくるのだが、フロントを差し置いて、独りよがりにバリバリ弾くのでは無い、フロント楽器のフレーズを引き立て鼓舞する、実に小粋な弾き回しをしているのには感心する。とにかく、モーダルなピアノを弾かせたら上手い。

ピエラヌンツィ以外の4人のメンバーも、NYジャズの精鋭達で、ピエラヌンツィのピアノに鼓舞されて、新鮮なネオ・,モードなフレーズをバンバン吹きまくる。しっかりとパフォーマンスの必要最低限の規律を守りつつ、限りなく自由にクリエイティヴにアドリブ展開する様は迫力満点。即興演奏を旨とするジャズの良いところが、このライヴ盤に満載。

そして、このライヴ盤、音が良い。とっても良いライヴ録音で、まるで、ヴィレッジ・ヴァンガードの最前列に陣取って、聴いているような、目の前で楽器が鳴っている様な、生々しい音が魅力的。ピエラヌンツィのクインテット盤、トリオ盤とはまた違ったピエラヌンツィのピアノの魅力が満載で、聴いていて飽きることが無い。
 
 

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2022年9月 7日 (水曜日)

ピエラヌンツィ・トリオの新盤

最近、米国ジャズと欧州ジャズ、半々で聴いている。意識している訳ではないが、ここ4〜5年の傾向として、欧州ジャズ&イスラエル・ジャズに内容充実の優秀盤が結構リリースされている。

新盤については、月によっては、確実に米国ジャズを凌駕する月もあって、もはや、欧州ジャズ&イスラエル・ジャズは、米国ジャズの傍らで気分転換に聴く対象では無くなった印象がある。

Enrico Pieranunzi Trio『Something Tomorrow』(写真左)。2021年9月5ー6日、コペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Thomas Fonnesaek (b), André Ceccarelli (ds)。

伊ジャズの至宝級ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィがリーダーで、伝説のフランス人ドラマー、アンドレ・チェッカレリと、デンマーク人コントラバス奏者、トマス・フォネスベクとガッチリ組んだピアノ・トリオ盤。

改めて、Enrico Pieranunzi (エンリコ・ピエラヌンツィ)である。1949年12月、イタリアはローマ生まれなので、今年の12月で73歳になる。もう、ジャズ界の中でも、大ベテラン、レジェンドの類である。

彼のピアノは流麗かつ端正。音の重ね方、組合せ方を聴けば、ビル・エバンスに大きく影響を受けた、所謂「エバンス派」であることは間違い無いが、本家より、ダイナミックでタッチが強い。加えて、硬質なタッチと正確無比な高速フレーズと洗練されたクリスタルなファンキーっぽさが彼ならではの個性。
 

Enrico-pieranunzi-triosomething-tomorrow

 
収録曲を見渡すと、全10曲のうち、ピエラヌンツィのオリジナルが8曲、そして、フォネスベックの作曲が1曲、さらに、クルト・ヴァイル&アイル・ガーシュインの作曲が1曲。しかし、どの曲も、ピエラヌンツィの叙情的な側面を的確に捉えた曲調で、アルバム全体の統一感は半端ない。

そして、今回、自分として、ピエラヌンツィのオリジナル曲がなぜ好きなのか、が良く判った。僕が大好きで何でも通しの「ベースやコードが変わる」いわゆる、頻繁なチェンジ・オブ・ペースと転調がてんこ盛りなのだ。なるほど、この盤を聴いていて、ふとそう感じた。

この盤、目新しさは無いが、成熟したピエラヌンツィのピアノを聴くことが出来る。欧州ジャズ的な、耽美的でリリカルでクリスタルな音世界の中で、クリスタルなファンキーっぽさを漂わせながら、切れ味良く流麗なバップ・ピアノを弾き回し、硬派なメインストリーム・ジャズを展開する。胸が空くような、正確無比な高速フレーズが爽快である。

バックのリズム隊、ベースのトマス・フォネスベク、ドラムのアンドレ・チェッカレリは、現時点で、ピエラヌンツィの最高のパートナーであることがこの盤を聴いていて良く判る。ピエラヌンツィのピアノをを引き立て、鼓舞しつつ、3者対等で創造力豊かなインタープレイを繰り広げている。

最近の欧州ジャズは隅に置けない。21世紀になって、ネットで欧州ジャズの情報が潤沢に入って来る様になって20年余。欧州ジャズは、伊ジャズは、米国ジャズと肩を並べるほどに深化したんやなあ、と感慨深いものがある、今回のピエラヌンツィの新盤である。
 
 

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2022年5月23日 (月曜日)

硬派な「映画音楽カヴァー集」

21世紀に入ってから、ジャズマンの「多国籍化」が進んでいるが、1970年代から80年代にかけて、欧州ジャズの台頭というトレンドがあった。もともと北欧では1960年代からジャズが浸透していたが、特に、1970年代から80年代にかけての欧州ジャズの台頭については、国で言うと「イタリア、フランス、ドイツ」だろう。特に、イタリア・ジャズの台頭は目を見張るものがあった。

Franco Ambrosetti『Movies』(写真左)。1986年の録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp, flh), John Scofield (g), Geri Allen (p, key), Michael Formanek (b), Daniel Humair (ds), Jerry Gonzalez (perc)。タイトル通り、イタリアのレジェンド・トランぺッター、フランコ・アンブロゼッティによる映画音楽作品集。

Franco Ambrosetti(フランコ・アンブロゼッティ)は、イタリア系スイス人。スイスのルガーノ(イタリア語圏)の生まれ。1941年生まれ。今年で81歳のレジェンド。1960年代以降は主にイタリアを中心に活動している。この『Movies』の録音当時は45歳、バリバリの中堅トランペッターである。

1950年代以降の映画音楽を中心に選曲されている様で、ジャズの中でも「ジャズ化」が極めて珍しい「The Magnificent Seven / 荒野の7人」や、ビートルズ映画の「Yellow Submarine」など、異色の映画音楽カヴァーである。「Yellow Submarine」など、フリーに傾いたり、限りなく自由度の高いモーダルな演奏に傾いたり、当時、ジャズの先端を行く「新伝承派」の音が色濃く反映されている。
 

Franco-ambrosettimovies

 
スタンダード化されている「Summertime」はリリカルでストレート・アヘッドな切れ味の良い演奏。「Chan’s Song」や「 Good Morning Heartache」などのバラード演奏は歌心溢れる耽美的なブロウ。

このアルバムには、個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」ジョン・スコが参加していて,アンブロゼッティのストレートなトランペットとの絡みとユニゾン&ハーモニーがとても官能的。

NYの選りすぐりの中堅で固めたバック・メンバーとのインタープレイは実にスリリング。映画音楽作品集だからといって、安直な「イージーリスニング・ジャズ」にならないどころか、思いっ切りストレート・アヘッドな演奏は素晴らしいの一言。

この映画音楽作品集は、かなり硬派な、当時としても、新しい印象のハードバップな演奏になっていて、聴き応え十分。ジョン・スコを始めとするバックを支えるメンバーの好演も、アンブロゼッティの充実したインプロビゼーションに大きく貢献していて立派だ。

この盤、タイトルと収録曲の曲名を見て、イージーリスニング・ジャズな映画音楽のカヴァー集と思うなかれ。2曲目の「Summertime」辺りで、もう一度、頭に戻って聴き直すこと必至です。
 
 

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2021年11月29日 (月曜日)

ヴィーナスの硬派な純ジャズ・4

ヴィーナス・レコードのジャズ盤、というだけで、眉をひそめるベテラン・ジャズ者の方々がいたりするんだが、ヴィーナス・レコードには、本来の硬派なジャズ・レーベルの志向もしっかりとあって、1980年代以降に活躍した、欧州ジャズの優れたジャズマンを我が国に紹介してくれた、という功績もある。揶揄される「コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバム作り」な面もあるにはあるが、それはカタログ全体のごく一部だろう。

Stefano Bollani Trio『Falando De Amor』(写真左)。邦題『愛の語らい』。ほぼ直訳である(笑)。2003年2月、イタリア・ローマの「Studio Elettra」での録音。ちなみにパーソネルは、Stefano Bollani (p), Ares Tavolazzi (b), Walter Paoli (ds)。純イタリアのピアノ・トリオ編成。イタリア・ジャズの力量を直に感じられる好盤である。

改めて、この盤は、イタリアのジャズ・ピアニスト、ステファノ・ボラーニによる「アントニオ・カルロス・ジョビン曲集」である。しかし、この盤、通常の「聴き心地良く、ポップでお洒落」なボサノヴァ・ジャズの雰囲気では無い。安易にピアノ・トリオのポップで聴き易い「ジョビン集」という先入観で聴き出すと椅子から転げ落ちるかもしれない。
 

Falando-de-amor_1

 
「アントニオ・カルロス・ジョビン曲集」でありながら、ボサノヴァの名曲を、バリバリ硬派なメインストリーム志向の純ジャズで解釈している、ある意味「痛快」な「ジョビン集」である。タッチは力強く、アドリブ・フレーズはストイックなまでに硬質、曲のテンポも速いものが多く、ほぼバップ志向なピアノである。が、そこはかとなく、ロマンティシズム漂うところが、いかにも欧州的、イタリア・ジャズらしいところ。

耽美的でリリカルではあるが「バップな」ピアノなところは、ビル・エヴァンスに通じるところはあるが、エヴァンスのフレーズの「エッジは骨太」だが、ボラーニのフレーズの「エッジは立っている」。ここが違う。ヴィーナス・レコードの独特のエコーと相まって、決して安易に甘きに流れない、とても欧州っぽいピアノの弾き回しがこの盤の大きな個性だと思う。

トリオのインタープレイも全編を通じて緩んだところは無く、この純イタリア・トリオの演奏力の高さが窺い知れる。ジョビンの名曲の数々をストレート・アヘッドなピアノ・トリオ演奏に変身させた「アレンジ」についてもかなり優れたものがある。スイング感も快適、こんな「ジョビン集」、聴いたのは初めて。やはり、ヴィーナス・レコードは隅に置けない。
 
 
 
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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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2021年6月 3日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・206

ジャズは米国だけのものでは無い。欧州においては、1950年代半ばには、独特の響きと雰囲気を持った「北欧ジャズ」が、同時期に英国ジャズも出現していた。あと有名なエリアとしては、フランス、ドイツ、イタリアが挙げられる。イタリア・ジャズについては、第二次世界大戦にて降伏した後、イタリア国内に米国文化が流入、その中にジャズがあった。1950年代には音楽文化の1ジャンルとして定着し、1960年代に最初の絶頂を迎えている。

21世紀に入ってから、ネットでジャズの情報の流通速度が格段に速くなったこともあって、欧州各国で「純ジャズ復古」の動きが拡散し、特にイタリアではその傾向が強く、加えて、若い才能あるジャズマンが多く輩出されたこともあって、新旧のジャズマン入り交じった、イタリアならではの「ネオ・ハードバップ」の好盤が多くリリースされている。

Enrico Rava & Stefano Bollani『Third Man』(写真左)。2006年11月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Stefano Bollani (p)。イタリアを代表する大御所トランペッター、エンリコ・ラヴァと、精鋭ピアニストのテファノ・ボラーニの2人によるデュオ作品。まず、ピアノとトランペットのデュオという演奏形態からして「珍しい」。選曲がユニークで、有名なジャズ・スタンダード曲は見当たらない。
 

The-third-man
 

ブルーノ・マルティーノ、ジョビン、モアシル・サントスなどをチョイスしているところが「曲者」っぽくって好感が持てる。ちょっと古い録音になるが、当時のイタリア・ジャズのレベルの高さを体感出来る素晴らしい内容。イメージ的には、ピアノは旋律のみならず、打楽器とベースも兼ねることが出来るオールマイティーな楽器なので、ピアノをリズム隊に見立てた「トランペット主体のワンホーン」風かと思ったら「違った」。

ラヴァのトランペット、ボラーニのピアノ、双方、秘術を尽くした、パッキパキにテンション張った、凄まじいほどの即興性溢れるインタープレイの応酬。まず、ボラーニのピアノの弾きっぷりが見事。旋律とリズム&ビートの両方の役割を、いともたやすそうに縦横無尽、変幻自在に繰り出している。そして、その両方の役割毎に、ラヴァのトランペットがこれまた縦横無尽、変幻自在にレスポンスする。

収録曲全12曲、ダレたところは皆無、飽きることは無い。ECMからのリリースなので「ニュー・ジャズ」な雰囲気なのかと思ったら「違った」。あくまで「現代のネオ・ハードバップ」なデュオ・パフォーマンスである。総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャー、誠に「懐が深い」。
 
 
 

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  ・浪花ロック『ぼちぼちいこか』
 
 
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2021年2月23日 (火曜日)

素敵な欧州ジャズの「デュオ盤」

ジャズは全世界において「深化」している。もう新しいジャズの奏法や表現方法は現れ出でないだろう。しかし、今までに出現したジャズの奏法や表現方法は、様々なジャズマンのチャレンジによって、洗練され、再体系立てされ、再構成され、新たな解釈が付加されている。つまり「深化」しているのだ。

Enrico Pieranunzi & Bert Joris『Afterglow』(写真左)。今年2021年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Bert Joris (tp)。ピアノとトランペットのデュオ盤。リズム&ビートは一手にピアノが担い、フレーズはピアノとトランペットでのインタープレイ。

イタリアが生んだ現代最高のジャズ・ピアニストの一人、エンリコ・ピエラヌンツィ。そして、ベルギーの名ジャズ・トランペッター、バート・ヨリスとのデュオ盤である。ピアノとトランペットのデュオは珍しい。ピアノが伴奏に徹し、トランペットが旋律を吹きまくるのは全く面白く無い。当然、この名手の2人はそんな俗手には陥らない。
 
 
Afterglow
 
 
ピエラヌンツィのピアノは耽美的でリリカルでメロディアス。そこに、ヨリスのふくよかで柔らかい、それでいて芯のしっかり通ったトランペットが絡む。ピエラヌンツィのピアノの左手が、しっかりとリズム&ビートを刻み、キープする。そして、右手でヨリスのトランペットを迎え撃つ。極上のデュオの響き。極上のユニゾン&ハーモニー。

デュオ演奏の全体に漂うリズム&ビートにファンクネスは無い。リリカルでダイナミズム溢れる透明度の高いリズム&ビート。まさに「欧州ジャズ」を強く想起するリズム&ビートである。こんなデュオ演奏を初めて聴いた気がする。ありそうで無い、ピアノとトランペットのデュオ。

タイトルの「Afterglow」は、夕映えや残光を意味する言葉。このデュオ盤には、そんなタイトルそのものの雰囲気が蔓延している。素敵な響きに満ちた好盤です。最近、ジャズでは「デュオ」が流行っているような雰囲気がある。もっとユニークなジャズ演奏が今後も出てくるのではないか、と思わず期待してしまう。
 
 
 

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  ・Yes Songs Side A & Side B
 
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  ・そしてタツローはメジャーになる
 
 
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2021年2月10日 (水曜日)

ロック・オペラの優秀カヴァー盤

ジャズは世界的な音楽ジャンルである。米国だけでなく、欧州にもジャズはある。欧州ジャズと一言で片付けがちであるが、欧州については、ほぼ各国にジャズが根付いている。歴史についてもかなり古く、1950年代には欧州にはジャズが根付いて、欧州ならではのジャズが演奏され、アルバムが録音されていた。

そんな中でも、欧州のジャズ先進国としてあげられるのが、北欧諸国(ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマーク)、英国、フランス、イタリア、ドイツ、オランダ。我が国で1970年代から親しみがあるのが、北欧諸国とイタリアのジャズ。特にイタリア・ジャズはかなり高いレベルのジャズが演奏されている。

Stefano Bollani『Piano Variations on Jesus Christ Superstar』(写真左)。2019年10月の録音。イタリア・ジャズが生んだ人気ジャズ・ピアニスト、ステファノ・ボラーニのソロ・ピアノ集である。17曲目「Superstar」のみ、Voiceが入る(Voice担当は、Stefano Bollani, Frida Bollani, Manuela Bollani and Valentina Cenni)。
 
 
Piano-variations-on-jesus-christ-superst  
 
 
タイトルを見てもしやと思い、17曲目の「Superstar」を真っ先に聴いて確信した。この盤、ロック・オペラの名作 「Jesus Christ Superstar」の名曲を題材に、ステファノ・ボラーニがソロ・ピアノ用にアレンジして、アルバム化したもの。いやはや懐かしい。「Jesus Christ Superstar」と言えば、1971年初演のロック・オペラ。1973年に映画化されてヒットした。

ボラーニのソロ・ピアノなのだが、これが素晴らしい。クラシック・ピアノに比肩する高テクニック。タッチが明確で流麗。弾き回すフレーズがキラキラしている。もともとがロック・オペラの曲がジャズのビートで演奏されるので、躍動感が溢れる。ダイナミックで説得力のあるフレーズの連続。しかし、ジャジーなビートだがファンクネスは皆無。

実は企画が企画なので、最初は半信半疑で聴き始めたのだが、一気に引き込まれてしまった。イタリア・ジャズの実力の一端が計り知れる、素晴らしいソロ・ピアノ集。収録された曲も原作にほぼ忠実。故に、ボラーニのアレンジの優秀性が引き立っている。欧州ジャズらしい、イタリア・ジャズらしい、ファンクネス皆無、ダイナミックではあるが、耽美的で流麗なピアノ・パフォーマンスが本当に素晴らしい。
 
 
 
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  ・『TOTO』(宇宙の騎士) 1977

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  ・そしてタツローはメジャーになる

 

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2020年10月 1日 (木曜日)

「攻めに攻める」ピエラヌンツィ

Enrico Pieranunzi(エンリコ・ピエラヌンツィ)は、イタリアを代表するピアニスト。1949年生まれなので、今年で71歳。レジェンド級のピアニストである。 僕はこの「エンリコ」をECMレーベルに残したリーダー作で、その名とピアノを知った。タッチの切れ味が良い、耽美的で流麗な響き。チックのピアノに、キースのクラシック志向な音を混ぜて「2」で割った様な音。

エンリコは基本的に「トリオ編成」をメインに活動している。ベースのマーク・ジョンソンやスコット・コリーなど、優れたベーシストとの好盤が印象に残っている。そういう意味で、エンリコの「トリオ編成」は、ベーシストが鍵を握る、という傾向があるのかもしれない。エンリコのトリオ編成を見極めるには、まず「ベーシスト」を見極めろ、ということか。

Enrico Pieranunzi『New Visions』(写真左)。2019年3月10日、Copenhagenでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Thomas Fonnesbæk (b), Ulysses Owens Jr. (ds)。エンリコは今年71歳。ベースのトーマス・フォネスベックが1977年生まれなので、今年で43歳。ドラムのユリシス・オーエンス・ジュニアが1982年生まれなので、今年で38歳。エンリコが「息子」世代と組んだ、スリリングなトリオ演奏である。
 
 
New-visions
 
 
 
冒頭「Free Visions 1」のピアノのフレーズを聴くだけで「ああ、これはエンリコかな」と感じるくらい、個性的な音である。ちょっと聴いただけでは「チックか」と思うところがある。フレーズにイタリア音楽らしい、ちょっとラテンなマイナー調が入るので、チックと間違えやすい。アドリブ・フレーズに入って鋭角に攻めずに、流麗に攻めるところがエンリコらしさ。

フォネスベックがグイグイとトリオ演奏を引っ張っている。耽美的なエンリコのピアノに対して、硬派でダンディズム溢れるアコベが好対照で良い響き。オーエンス・ジュニアのドラムも隅に置けない。好対照なエンリコのピアノとフォネスベックのベースのどちらに偏ることなく、しっかりと間を取って寄り添うようなドラミングは「天晴れ」。

今年71歳のエンリコであるが、この盤でも感じる様に「攻めに攻めている」。選曲もトリオ・メンバーのオリジナルをメインに固め、ネオ・ハードバップをリードする「モーダル」な展開、そして、フリーにスピリチュアルに傾いた演奏など、現代のメインストリーム・ジャズのど真ん中を行くトリオ演奏は見事である。昨年のリリースになるが、見落としていた。やっとリカバリー出来て、気分は上々である。
 
 
 

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2020年5月16日 (土曜日)

ECMらしい現代のニュージャズ

一昨日、昨日と書庫の大掃除を断行し、書庫のステレオが復活。本を読みながらのジャズ鑑賞が再び可能となり、ご満悦の週末である。今日は朝の10時頃から日中、雨の一日。外出することもなく、ステイホームを継続。静かな雨の週末の午後、久し振りのECMレーベルのアルバムが聴きたくなった。

ECMレーベルは、総帥マンフレート・アイヒャーの自らの監修・判断による強烈な「美意識」のもと、ECM独特のニュー・ジャズを展開する。そして、ECM独特の限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。一聴すればすぐに「ECM」と判るほどの個性的な演奏と録音。僕はこのECMの音が大好きで、今でも時々、禁断症状を発症しては、暫くECMの日々が続くことになる。

Enrico Rava & Joe Lovano『Roma』(写真左)。昨年9月のリリース。ECMの2654番。2018年11月10日、イタリア、ローマのAuditorium Parco Della Musica でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (flh), Joe Lovano(ts, tarogato), Giovanni Guidi (p), Dezron Douglas(b), Gerald Cleaver(ds)。

エンリコ・ラヴァのフリューゲルホーン、ジョー・ロヴァーノのテナー・サックスのフロント2管のクインテット編成。ラヴァのトランペットは、マイルス、ファーマー、ガレスピー、そして、ドン・チェリーとバリエーション豊か。ロヴァーノがハンガリーの民族楽器「tarogato」を駆使しているのが珍しい。
 
 
Roma  
 
 
今日選んだECM盤はこれ。宣伝のキャッチを借りると「イタリアのジャズの重鎮、トランぺッター、エンリコ・ラヴァとシチリアに先祖を持つアメリカ人ヴェテラン・テナー・サックス奏者、ジョー・ロヴァーノとの邂逅と捉えたローマでのライブ録音」。とまあ、そんな感じなんだが、さすがECM、冒頭からECMの音世界がブワーっと広がっていて、思わず引き込まれる。

ラヴァのトランペットとロヴァーノのテナー・サックスが実に良い音で鳴っている。ほとんどデュオ演奏に近い、適度な緊張感漲る丁々発止のインタープレイ。リラックスして、ゆったりとした大らかなブロウ。ラヴァもロヴァーノも好調。お互いの音をしっかり踏まえながら、ニュージャズっぽい、リリカルで切れ味の良いアドリブ・フレーズを連発している。

叙情的なピアニストのグイディ、ダイナミックなドラマーのクリーヴァー、ベースの名手ダグラスのリズム・セクションも絶好調。ラヴァとロバーニのフロント2管の音の雰囲気を踏まえ盛り立て、印象的なサポートを繰り広げる。とても柔軟性が高く、反応が素早い素敵なリズム・セクションである。

ネットを見渡すと、あまりこの盤に具体的に触れた形跡は希薄なんですが、現代ニュージャズの好盤です。ECM独特の音世界をしっかりと踏襲して、その音世界の中で、フロント2管、それぞれが自らの個性を発揮する。実にアーティステックな内容です。ジャズ喫茶の昼下がりの雰囲気にピッタリの音です。
 
 
 

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  ・『Another Page』 1983

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  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
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