2023年11月 4日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・267

イタリアン・ジャズの至宝であり重鎮であるピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィ(以下、エンリコと略)。1949年12月生まれだから、今年で74歳になる。大ベテランの域であり、今までの実績から「生けるレジェンド」的存在。ビル・エヴァンスのバップでリリカルで耽美的なピアノを欧州仕様にした様な、正統派かつ硬派なモダン・ジャズ・ピアニストである。

Enrico Pieranunzi Latin Jazz Quintet『Live At Birdland』(写真左)。2008年11月1日、NYのバードランドでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Diego Urcola (tp), Yosvany Terry (as, ss, per), John Patitucci (b, elb), Antonio Sanchez (ds)。録音当時、2008年のエンリコ・ピエラヌンツィのニュー・プロジェクトのライヴ録音。

エンリコがラテン・ジャズに寄り道したかの様なバンド名。しかも、バードランドでのライヴ・パフォーマンスの記録。おおよそ、こってこてなラテン・ジャズが展開される、いわゆる「楽しくコマーシャルで娯楽志向」なライヴ盤だと思って、あまり聴く気が起きなかった。

が、リズム隊を見ると、硬派で正統派な現代の純ジャズ志向のベーシストのジョン・パティトゥッチ。そして、これまた、硬派で正統派な現代の純ジャズ志向のドラマーのアントニオ・サンチェスが名を連ねている。これは意外と、現代の硬派でメインストリーム志向の純ジャズではなかろうか、と思わす拝聴である。

冒頭「Talk Introduction」から「Danza 2」「Choro Del Infinito Hombre」と続く演奏を聴いて、まず「これのどこがラテン・ジャズ」なんや、と首をかしげる。というか、「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」が展開されるのだ。
 

Enrico-pieranunzi-latin-jazz-quintetlive

 
ラテンの雰囲気は、ところどころのキーの進行に見え隠れするが、全く「ラテン・ジャズ」色は前に出てこない。ネオ・ハードバップ〜ネオ・モードなアコースティック・ジャズが展開される。

特に前半は、トランペットのディエゴ・ウルコラ(アルゼンチン出身)と、サックスのヨスヴァニー・テリー(キューバ出身)のパフォーマンスが見事。この二人のフロント2管の大活躍で、前半はエンリコのピアノはあまり目立たない。

ありゃ〜?、と思って聴き進めると、明確にラテン・フレイバーの演奏が出てきたりし出して、エンリコのピアノがグイグイ前面に出てくる様になる。明らかにラテンなフレーズが出てきても「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」な雰囲気は変わらない。ネオ・ハードバップ〜ネオ・モードな展開の中で、乾いた「ラテンなフレーズ」が見え隠れする。

不思議な雰囲気のライヴ盤。ラテン・ジャズ基調でありながら、俗っぽくて判り易い、こってこてなラテン・フレーヴァーは皆無。演奏全体の雰囲気は「非常に正統派で硬派、ストイックで真摯な欧州の純ジャズ」。そんな雰囲気の中で、ストイックなラテン・フレーズが展開される。欧州ジャズが考えるラテン・ジャズ、とでも形容したら良いだろうか。

バンド名に惑わされてはいけない。「ラテン」が付いているからといって、いわゆる「楽しくコマーシャルで娯楽志向」の、こってこてなラテン・ジャズが展開される訳ではない。そんな要素は皆無。現代のネオ・ハードバップ〜ネオ・モードなアコースティック・ジャズの好盤として聴かれるのが良いだろう。充実した内容の好盤である。
 
 

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2023年10月 5日 (木曜日)

典型的な欧州ジャズ・テイスト

Enrico Pieranunzi(エンリコ・ピエラヌンツィ、以降「エンリコ」と略)。1949年生まれのイタリアのジャズ・ピアニスト。今年74歳。イタリアン・ジャズの至宝。現在の欧州ジャズ・シーンにおける、モダンでコンテンポラリーなエバンス派の代表格。耽美的にテクニカルに良く鳴る右手と、絶妙な間を持って右手の旋律を支える左手のブロックコードが繰り出すが個性。

1975年の初リーダー作以来、クラシック音楽の響きとマナーを踏襲した、典型的な欧州ジャズ・テイストのピアノが特徴。テクニックは優秀、耽美的なフレーズから、バップなフレーズまで、その表現力は幅広く、奥が深い。

ここ2〜3年ほどだろうか、エンリコのリーダー作を数多く目にする。もともと多作のエンリコだが、特に最近は目立つ。こんなにリーダー作がリリースされるというのは、それだけ需要があるということなのだろう。確かに、エンリコのピアノ、今では欧州ジャズ・ピアノの重鎮的位置づけだし、欧州ジャズ・ピアノのジャンルを代表する、レジェンド級のピアニストである。

Enrico Pieranunzi & Jasper Somsen『Voyage in Time』(写真左)。2022年、オランダChallengeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Jasper Somsen (b)。最近のトリオ作で、抜群の相性の良さを聴かせてくれていた、ピアノのエンリコ・ピエラヌンツィと、ベースのイェスパー・サムセンのデュオ盤である。
 

Enrico-pieranunzi-jasper-somsenvoyage-in

 
耽美的でリリカル、タッチは明確で弾き回しは流麗、そんな欧州ジャズならでは響きとフレーズが芳しいエンリコのピアノ。確かな技巧とピッチ、硬質でソリッドな弦の響き、歌心豊かなアドリブ・フレーズが芳しいサムセンのベース。この二人のデュオ演奏、インタープレイの展開は素晴らしいの一言。響きとフレーズは、明確に「欧州ジャズ」。

タイトルを見れば、「パヴァーヌ」「メヌエット」「サラバンド」など古典クラシック音楽を連想させる。それもそのはず。収録された楽曲は、バロック時代の典型的な舞踊組曲にインスパイアされた楽曲とのこと。

そのフレーズ、その音の重なり、そのフレーズの個性、確かに、バロック音楽であり、そんなバロック音楽のエッセンスを、モダン・ジャズに取り込んだ、いかにも「欧州ジャズ」らしい音世界が実に印象的。

この「バロック音楽のエッセンスを取り込んだジャズ」の中で、確かな技巧とピッチ、硬質でソリッドな弦の響き、歌心豊かなアドリブ・フレーズが芳しいサムセンのベースが重要な役割を担っている。サムセンの正確なベースラインが、バロック・ライクなフレーズを弾き進めていく。これが実に良い。そこに、エンリコの耽美的でリリカル、タッチが明確で技巧確かなピアノが寄り添う。

欧州ジャズって良いなあ、と改めて感じさせてくれる、素晴らしいデュオ演奏。イタリアのピアニストとオランダのベーシストが邂逅したデュオ演奏は、欧州ジャズを色濃く感じさせてくれる。近年のピアノ&ベースのデュオ演奏の傑作の1枚だろう。
 
 

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2023年4月14日 (金曜日)

ステファノ・バターリアを知る

春の陽気には、ECMレーベルの音が良く似合う。欧州ジャズ独特の黄昏時の様な、クールな「寂寞感」。ECMの音にはその欧州ジャズ独特の「寂寞感」が、独特のエコーを纏って、しっかりと「ある」。特にマイナー調なフレーズでは、その「寂寞感」は増幅される。その増幅された「寂寞感」は、静的なスピリチュアル・ジャズとして、ECMの音に反映される。

Stefano Battaglia Trio『In The Morning - Music of Alec Wilder』(写真左)。2014年4月, 伊トリノでの録音。ECMの2429番。ちなみにパーソネルは、Stefano Battaglia (p), Salvatore Maiore (b), Roberto Dani (ds)。イタリア出身のピアニスト、ステファノ・バターリアがリーダーのピアノ・トリオ編成。

ステファノ・バターリアはイタリアのジャズ・ピアニスト。1965年、イタリアのミラノの生まれ。今年で58歳になるベテランの域に入った、実績のあるジャズ・ピアニストである。初リーダー作は1987年。2003年からECMレーベルをメインに活動している。

ベースのサルヴァトーレ・マイオーレは、イタリアのサルデーニャ州出身、1965年生まれ。ドラムのロベルト・ダニは、イタリアのヴィチェンツァ出身、1969年生まれ。

このステファノ・バターリアのトリオは全員イタリア出身。純イタリアのピアノ・トリオである。純イタリアのピアノ・トリオが、イタリアのジャズ・レーベルでは無く、ECMレーベルに録音を残す。ジャズのボーダーレス化をここでも感じる。
 

Stefano-battaglia-trioin-the-morning-mus

 
この盤のタイトルには副題で「Music of Alec Wilder」とある。そう、この盤は米国の作曲家アレック・ワイルダー(Alec Wilder、1907-1980)のトリビュート盤である。このワイルダーは、米国のポップス曲、クラシックの室内楽やオペラ等の作曲家とのこと。実は僕は知らなかった。それでも、聴いてみると印象的なフレーズがてんこ盛りで、パターリアがアルバムの企画対象として採用した訳が良く判る。

イタリア・ジャズのピアノは、結構、ジャズとして伝統的な音作りがメインで、欧州ジャズの中でも、耽美的ではあるが、意外と骨太で粘りがある。が、バターリアのピアノはその傾向が無い。透明度が高く、スッキリとした音で耽美的、かつリリカル。どこか、キース・ジャレットを想起するが、キースほど難解では無い。スッキリ判り易い、耽美的で透明度の高いモーダルなフレーズが、パターリアのピアノの個性である。

そんなパターリアのピアノが「ECMレーベルの音の個性」にジャストフィットしているのが、とても良く判る。耽美的で透明度の高い、静的スピリチュアルなピアノ。テクニックは抜群で、様々な即興演奏のパターンを披露し、ニュー・ジャズ志向のモーダルな演奏を展開する。ゆったりとしたビートに乗って、音が漂う、印象的な「浮遊感」。そして、魅力的な「音の間」。バリエーション豊かな、静的スピリチュアルな即興演奏。

マイオーレのベース、ダニのドラムも、パターリアのピアノの音の個性にしっかり追従し、パターリアのピアノを引き立て、音の個性を増幅する。この硬軟自在、緩急自在、変幻自在のリズム隊、その能力はかなり高い。

ECMレーベルでのピアノ・トリオ盤と言えば、キースの「スタンダーズ・トリオ」が直ぐに浮かんで、その後が続かないのだが、このパターリア・トリオの音は、キースの「スタンダーズ・トリオ」に匹敵する、内容の濃い音だと思う。静的スピリチュアルでモーダルな音が実に芳しい。
 
 
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2023年4月 2日 (日曜日)

ラヴァとピエラヌンツィのデュオ

21世紀になって、本格的に聴き始めたのだが、イタリア・ジャズは隅に置けない。欧州ジャズの雰囲気をしっかりと受け継いだ、メインストリーム系の純ジャズがメイン。硬派で骨のあるストイックな純ジャズ志向の演奏が主流で、イタリア・ジャズの範疇でのエレ・ジャズやフリー・ジャズを僕は聴いたことが無い。

Enrico Pieranunzi & Enrico Rava『Nausicaa』(写真左)。1993年3月29, 30日の録音。Enrico Rava (tp), Enrico Pieranunzi (p)。イタリア・ジャズの大御所、トランペットのエンリコ・ラヴァ、ピアノのエンリコ・ピエラヌンツィ、2人のデュオ演奏。ラヴァが54歳、ピエラヌンツィが44歳の時の録音。

トランペットのエンリコ・ラヴァは、リーダー作のカタログを見ていると、デュオ演奏が好きみたい。特にピアノとのデュオが結構ある。この盤は、イタリア・ジャズの大御所同士、ラヴァがベテランの域に入った時期、ピエラヌンツィがバリバリ中堅ど真ん中のデュオになる。どちらも油の乗りきった実績抜群のジャズマン。内容の濃いデュオ演奏を繰り広げる。
 

Enrico-pieranunzi-enrico-ravanausicaa

 
トランペットとピアノのデュオなので、ピアノが単体でリズム・セクションの機能とフロント楽器の機能の2つを果たすことが出来るので、どうしても、トランペットがフロント一辺倒、ピアノが伴奏がメインで、時々フロントのソロという役割分担になる。よって、トランペットのラヴァが目立ってはいるが、ピエラヌンツィも伴奏にソロに大活躍。

ピエラヌンツィの優れたピアノ伴奏があってこその、ラヴァの自由奔放なトランペット・ソロ。ラヴァのアドリブ・フレーズをよく聴いて、クイックに反応するピエラヌンツィのピアノ伴奏は見事。モーダルなトーンのフレーズで伴奏に回ったラヴァのトランペットのテクニックも見事。音も重ならず、リズム&ビートがぶつかることも無い。粛々とデュオ演奏を重ねているが、これは双方のテクニックのレベルが高く無ければ実現しない。

こういう雰囲気のデュオ演奏は、米国ジャズにはなかなか無い類のもので、ラヴァとピエラヌンツィ、双方のフレーズに仄かに哀愁感、寂寞感が漂うトーンがクールで、音もクッキリ明確で切れ味が良い。いかにも欧州ジャズらしい。イタリア・ジャズというよりは、欧州ジャズ共通の雰囲気を色濃く湛えた、じっくり聴いて感じ入る、極上のデュオ演奏がこの盤に詰まっている。
 
 

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2023年3月 5日 (日曜日)

ラヴァとハーシュのデュオ新盤

イタリア・ジャズも隆盛を維持して久しい。レジェンド級のベテランから、若手新人まで、コンスタントに好盤をリリースし続けている。聴き比べると意外と良く判るが、イタリア・ジャズにはイタリア・ジャズなりの独特の雰囲気があって「統一感」がある。マイナー調でクラシック風のモーダルなフレーズが個性的。

Enrico Rava & Fred Hersch『The Song Is You』(写真左)。2021年11月、スイスのルガーノでの録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (flgh), Fred Hersch (p)。イタリア・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァと、リリカルで耽美的なピアノ詩人のフレッド・ハーシュ、2人のみの「デュオ演奏」。

エンリコ・ラヴァはイタリア・ジャズの至宝。1972年に初リーダー作をリリース、今年84歳、レジェンド級の大ベテランである。1975年にECMでの初リーダー作をリリース、1986年の『Volver』で一旦ECMを離れるが、2003年、『Easy Living』でECMにカムバック。以降、2〜3年に1枚のペースで、ECMからリーダー作をリリースしている。

ラヴァは、ピアニストとのデュオがお気に入りらしく、5〜6人の第一線級のジャズ・ピアニストとのデュオ・アルバムを録音している。ラヴァのトランペットは、イタリア・ジャズらしく、哀愁感漂うマイナー調をメインに、流麗でブリリアントで、端正なクラシック風のモーダルなフレーズが身上。

心ゆくまでトランペットを吹き上げるには、ベースやドラムのいないピアノとのデュオが一番なんだろう。ピアノは打楽器の要素も備えていて、リズム&ビートとベースラインはピアノ一台でまかおうと思えば、まかなえるのだ。今回は、ハーシュのリリカルで耽美的なピアノに合わせたのか、ラヴァは、音の丸い、柔らかで暖かな音色のフリューゲルホーンを吹いている。
 

Enrico-rava-fred-herschthe-song-is-you1  

 
フレッド・ハーシュは、米国オハイオ州シンシナティ生まれ。今年55歳の中堅ピアニスト。初リーダー作が1985年。結構な枚数のリーダー作をリリースしているが、所属レーベルは定着せず、マイナーレーベルからのリリースがほとんど。

また、1984年にHIVウイルスに感染、2008年にはウイルスが脳に転移し2ヶ月間の昏睡状態に陥っている。そんな大病の影響もあって、我が国には、ハーシュの情報はほとんど入って来なかった。

1990年代の終わりに、Palmettoレーベルにほぼ定着したが、それでも我が国で、ハーシュの名前が流通しだしたのは、つい最近のこと。今回、このラヴァとのデュオで、ECMレーベルでの初録音になる。

ハーシュのピアノは耽美的でリリカル。米国のピアニストでありながら、ファンクネスは限りなく希薄。どちらかといえば、欧州ジャズのピアノに近い響きを有していて、そういう点でも、今回のECMでの録音は、ハーシュのピアノの個性にピッタリである。

さて、アルバムの内容であるが、2人のオリジナル曲も良いが、やはり、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジェローム・カーン&オスカー・ハマースタインII世、そして、セロニアス・モンクのスタンダード曲でのデュオ演奏が白眉。ECMレーベルの音作りに即した「リリカルで耽美的、透明度が高く、端正でスピリチュアルな」ニュー・ジャズ志向のデュオ演奏が素晴らしい。

ラヴァのリリカルで耽美的で流麗なニュー・ジャズ志向のフリューゲルホーンは意外に珍しいのでは無いか。でも、とても良い。どの曲でも、ラヴァのフリューゲルホーンは朗々と暖かく、ブリリアントに柔軟に鳴り響く。そして、ハーシュのピアノは、ラストの「Round Midnight」のソロ演奏に収束される。独り対位法をちりばめながら、鍵盤をフル活用して、ダイナミックに、モンクの名曲を弾き上げる。

近年で白眉の出来のフリューゲルホーンとピアノの「デュオ演奏」。即興演奏の妙もふんだんに聴くことが出来て、音の展開の美しいことこの上無い。良いアルバムです。
 
 

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2022年10月15日 (土曜日)

ピエラヌンツィのクインテット盤

最近、やたら、エンリコ・ピエラヌンツィ(Enrico Pieranunzi)のリーダー作が目に付く。コロナ禍にも負けず、ピエラヌンツィの活動は充実しているのだろう。加えて、ピエラヌンツィは現代ジャズ・ピアノ、特に欧州ジャズ、伊ジャズにおけるピアニストの第一人者の1人として、その実力がジャズ界で認められているからだろう、と思っている。

Enrico Pieranunzi Quintet『The Extra Something』(写真左)。2016年1月13, 14日、NYの「The Village Vanguard」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Diego Urcola (tp, tb), Seamus Blake (ts), Ben Street (b), Adam Cruz (ds)。トランペット or トロンボーンとテナー・サックスのフロント2管のクインテット編成。

ピエラヌンツィは、フロント楽器としてのピアノのテクニックも素晴らしいが、カルテットやクインテット編成の中で、リズム・セクションに回った時の伴奏楽器としてのピアノのテクニックも卓越したものがある。このライヴでは、現代のネオ・モードな演奏がメインで、限りなく自由度を追求した、柔軟で硬派なモード・ジャズが展開されている。
 

Enrico-pieranunzi-quintetthe-extra-somet

 
モードをやらせてもピエラヌンツィのピアノは素晴らしいのだが、このライヴ盤では、バリバリにアグレッシヴに弾きまくっていて、とにかく爽快である。弾きまくるのだが、フロントを差し置いて、独りよがりにバリバリ弾くのでは無い、フロント楽器のフレーズを引き立て鼓舞する、実に小粋な弾き回しをしているのには感心する。とにかく、モーダルなピアノを弾かせたら上手い。

ピエラヌンツィ以外の4人のメンバーも、NYジャズの精鋭達で、ピエラヌンツィのピアノに鼓舞されて、新鮮なネオ・,モードなフレーズをバンバン吹きまくる。しっかりとパフォーマンスの必要最低限の規律を守りつつ、限りなく自由にクリエイティヴにアドリブ展開する様は迫力満点。即興演奏を旨とするジャズの良いところが、このライヴ盤に満載。

そして、このライヴ盤、音が良い。とっても良いライヴ録音で、まるで、ヴィレッジ・ヴァンガードの最前列に陣取って、聴いているような、目の前で楽器が鳴っている様な、生々しい音が魅力的。ピエラヌンツィのクインテット盤、トリオ盤とはまた違ったピエラヌンツィのピアノの魅力が満載で、聴いていて飽きることが無い。
 
 

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2022年9月 7日 (水曜日)

ピエラヌンツィ・トリオの新盤

最近、米国ジャズと欧州ジャズ、半々で聴いている。意識している訳ではないが、ここ4〜5年の傾向として、欧州ジャズ&イスラエル・ジャズに内容充実の優秀盤が結構リリースされている。

新盤については、月によっては、確実に米国ジャズを凌駕する月もあって、もはや、欧州ジャズ&イスラエル・ジャズは、米国ジャズの傍らで気分転換に聴く対象では無くなった印象がある。

Enrico Pieranunzi Trio『Something Tomorrow』(写真左)。2021年9月5ー6日、コペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Thomas Fonnesaek (b), André Ceccarelli (ds)。

伊ジャズの至宝級ピアニスト、エンリコ・ピエラヌンツィがリーダーで、伝説のフランス人ドラマー、アンドレ・チェッカレリと、デンマーク人コントラバス奏者、トマス・フォネスベクとガッチリ組んだピアノ・トリオ盤。

改めて、Enrico Pieranunzi (エンリコ・ピエラヌンツィ)である。1949年12月、イタリアはローマ生まれなので、今年の12月で73歳になる。もう、ジャズ界の中でも、大ベテラン、レジェンドの類である。

彼のピアノは流麗かつ端正。音の重ね方、組合せ方を聴けば、ビル・エバンスに大きく影響を受けた、所謂「エバンス派」であることは間違い無いが、本家より、ダイナミックでタッチが強い。加えて、硬質なタッチと正確無比な高速フレーズと洗練されたクリスタルなファンキーっぽさが彼ならではの個性。
 

Enrico-pieranunzi-triosomething-tomorrow

 
収録曲を見渡すと、全10曲のうち、ピエラヌンツィのオリジナルが8曲、そして、フォネスベックの作曲が1曲、さらに、クルト・ヴァイル&アイル・ガーシュインの作曲が1曲。しかし、どの曲も、ピエラヌンツィの叙情的な側面を的確に捉えた曲調で、アルバム全体の統一感は半端ない。

そして、今回、自分として、ピエラヌンツィのオリジナル曲がなぜ好きなのか、が良く判った。僕が大好きで何でも通しの「ベースやコードが変わる」いわゆる、頻繁なチェンジ・オブ・ペースと転調がてんこ盛りなのだ。なるほど、この盤を聴いていて、ふとそう感じた。

この盤、目新しさは無いが、成熟したピエラヌンツィのピアノを聴くことが出来る。欧州ジャズ的な、耽美的でリリカルでクリスタルな音世界の中で、クリスタルなファンキーっぽさを漂わせながら、切れ味良く流麗なバップ・ピアノを弾き回し、硬派なメインストリーム・ジャズを展開する。胸が空くような、正確無比な高速フレーズが爽快である。

バックのリズム隊、ベースのトマス・フォネスベク、ドラムのアンドレ・チェッカレリは、現時点で、ピエラヌンツィの最高のパートナーであることがこの盤を聴いていて良く判る。ピエラヌンツィのピアノをを引き立て、鼓舞しつつ、3者対等で創造力豊かなインタープレイを繰り広げている。

最近の欧州ジャズは隅に置けない。21世紀になって、ネットで欧州ジャズの情報が潤沢に入って来る様になって20年余。欧州ジャズは、伊ジャズは、米国ジャズと肩を並べるほどに深化したんやなあ、と感慨深いものがある、今回のピエラヌンツィの新盤である。
 
 

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2022年5月23日 (月曜日)

硬派な「映画音楽カヴァー集」

21世紀に入ってから、ジャズマンの「多国籍化」が進んでいるが、1970年代から80年代にかけて、欧州ジャズの台頭というトレンドがあった。もともと北欧では1960年代からジャズが浸透していたが、特に、1970年代から80年代にかけての欧州ジャズの台頭については、国で言うと「イタリア、フランス、ドイツ」だろう。特に、イタリア・ジャズの台頭は目を見張るものがあった。

Franco Ambrosetti『Movies』(写真左)。1986年の録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp, flh), John Scofield (g), Geri Allen (p, key), Michael Formanek (b), Daniel Humair (ds), Jerry Gonzalez (perc)。タイトル通り、イタリアのレジェンド・トランぺッター、フランコ・アンブロゼッティによる映画音楽作品集。

Franco Ambrosetti(フランコ・アンブロゼッティ)は、イタリア系スイス人。スイスのルガーノ(イタリア語圏)の生まれ。1941年生まれ。今年で81歳のレジェンド。1960年代以降は主にイタリアを中心に活動している。この『Movies』の録音当時は45歳、バリバリの中堅トランペッターである。

1950年代以降の映画音楽を中心に選曲されている様で、ジャズの中でも「ジャズ化」が極めて珍しい「The Magnificent Seven / 荒野の7人」や、ビートルズ映画の「Yellow Submarine」など、異色の映画音楽カヴァーである。「Yellow Submarine」など、フリーに傾いたり、限りなく自由度の高いモーダルな演奏に傾いたり、当時、ジャズの先端を行く「新伝承派」の音が色濃く反映されている。
 

Franco-ambrosettimovies

 
スタンダード化されている「Summertime」はリリカルでストレート・アヘッドな切れ味の良い演奏。「Chan’s Song」や「 Good Morning Heartache」などのバラード演奏は歌心溢れる耽美的なブロウ。

このアルバムには、個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」ジョン・スコが参加していて,アンブロゼッティのストレートなトランペットとの絡みとユニゾン&ハーモニーがとても官能的。

NYの選りすぐりの中堅で固めたバック・メンバーとのインタープレイは実にスリリング。映画音楽作品集だからといって、安直な「イージーリスニング・ジャズ」にならないどころか、思いっ切りストレート・アヘッドな演奏は素晴らしいの一言。

この映画音楽作品集は、かなり硬派な、当時としても、新しい印象のハードバップな演奏になっていて、聴き応え十分。ジョン・スコを始めとするバックを支えるメンバーの好演も、アンブロゼッティの充実したインプロビゼーションに大きく貢献していて立派だ。

この盤、タイトルと収録曲の曲名を見て、イージーリスニング・ジャズな映画音楽のカヴァー集と思うなかれ。2曲目の「Summertime」辺りで、もう一度、頭に戻って聴き直すこと必至です。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2021年11月29日 (月曜日)

ヴィーナスの硬派な純ジャズ・4

ヴィーナス・レコードのジャズ盤、というだけで、眉をひそめるベテラン・ジャズ者の方々がいたりするんだが、ヴィーナス・レコードには、本来の硬派なジャズ・レーベルの志向もしっかりとあって、1980年代以降に活躍した、欧州ジャズの優れたジャズマンを我が国に紹介してくれた、という功績もある。揶揄される「コマーシャル先行、懐メロ志向のアルバム作り」な面もあるにはあるが、それはカタログ全体のごく一部だろう。

Stefano Bollani Trio『Falando De Amor』(写真左)。邦題『愛の語らい』。ほぼ直訳である(笑)。2003年2月、イタリア・ローマの「Studio Elettra」での録音。ちなみにパーソネルは、Stefano Bollani (p), Ares Tavolazzi (b), Walter Paoli (ds)。純イタリアのピアノ・トリオ編成。イタリア・ジャズの力量を直に感じられる好盤である。

改めて、この盤は、イタリアのジャズ・ピアニスト、ステファノ・ボラーニによる「アントニオ・カルロス・ジョビン曲集」である。しかし、この盤、通常の「聴き心地良く、ポップでお洒落」なボサノヴァ・ジャズの雰囲気では無い。安易にピアノ・トリオのポップで聴き易い「ジョビン集」という先入観で聴き出すと椅子から転げ落ちるかもしれない。
 

Falando-de-amor_1

 
「アントニオ・カルロス・ジョビン曲集」でありながら、ボサノヴァの名曲を、バリバリ硬派なメインストリーム志向の純ジャズで解釈している、ある意味「痛快」な「ジョビン集」である。タッチは力強く、アドリブ・フレーズはストイックなまでに硬質、曲のテンポも速いものが多く、ほぼバップ志向なピアノである。が、そこはかとなく、ロマンティシズム漂うところが、いかにも欧州的、イタリア・ジャズらしいところ。

耽美的でリリカルではあるが「バップな」ピアノなところは、ビル・エヴァンスに通じるところはあるが、エヴァンスのフレーズの「エッジは骨太」だが、ボラーニのフレーズの「エッジは立っている」。ここが違う。ヴィーナス・レコードの独特のエコーと相まって、決して安易に甘きに流れない、とても欧州っぽいピアノの弾き回しがこの盤の大きな個性だと思う。

トリオのインタープレイも全編を通じて緩んだところは無く、この純イタリア・トリオの演奏力の高さが窺い知れる。ジョビンの名曲の数々をストレート・アヘッドなピアノ・トリオ演奏に変身させた「アレンジ」についてもかなり優れたものがある。スイング感も快適、こんな「ジョビン集」、聴いたのは初めて。やはり、ヴィーナス・レコードは隅に置けない。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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2021年6月 3日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・206

ジャズは米国だけのものでは無い。欧州においては、1950年代半ばには、独特の響きと雰囲気を持った「北欧ジャズ」が、同時期に英国ジャズも出現していた。あと有名なエリアとしては、フランス、ドイツ、イタリアが挙げられる。イタリア・ジャズについては、第二次世界大戦にて降伏した後、イタリア国内に米国文化が流入、その中にジャズがあった。1950年代には音楽文化の1ジャンルとして定着し、1960年代に最初の絶頂を迎えている。

21世紀に入ってから、ネットでジャズの情報の流通速度が格段に速くなったこともあって、欧州各国で「純ジャズ復古」の動きが拡散し、特にイタリアではその傾向が強く、加えて、若い才能あるジャズマンが多く輩出されたこともあって、新旧のジャズマン入り交じった、イタリアならではの「ネオ・ハードバップ」の好盤が多くリリースされている。

Enrico Rava & Stefano Bollani『Third Man』(写真左)。2006年11月の録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Stefano Bollani (p)。イタリアを代表する大御所トランペッター、エンリコ・ラヴァと、精鋭ピアニストのテファノ・ボラーニの2人によるデュオ作品。まず、ピアノとトランペットのデュオという演奏形態からして「珍しい」。選曲がユニークで、有名なジャズ・スタンダード曲は見当たらない。
 

The-third-man
 

ブルーノ・マルティーノ、ジョビン、モアシル・サントスなどをチョイスしているところが「曲者」っぽくって好感が持てる。ちょっと古い録音になるが、当時のイタリア・ジャズのレベルの高さを体感出来る素晴らしい内容。イメージ的には、ピアノは旋律のみならず、打楽器とベースも兼ねることが出来るオールマイティーな楽器なので、ピアノをリズム隊に見立てた「トランペット主体のワンホーン」風かと思ったら「違った」。

ラヴァのトランペット、ボラーニのピアノ、双方、秘術を尽くした、パッキパキにテンション張った、凄まじいほどの即興性溢れるインタープレイの応酬。まず、ボラーニのピアノの弾きっぷりが見事。旋律とリズム&ビートの両方の役割を、いともたやすそうに縦横無尽、変幻自在に繰り出している。そして、その両方の役割毎に、ラヴァのトランペットがこれまた縦横無尽、変幻自在にレスポンスする。

収録曲全12曲、ダレたところは皆無、飽きることは無い。ECMからのリリースなので「ニュー・ジャズ」な雰囲気なのかと思ったら「違った」。あくまで「現代のネオ・ハードバップ」なデュオ・パフォーマンスである。総帥プロデューサーのマンフレート・アイヒャー、誠に「懐が深い」。
 
 
 

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  ・Journey『Infinity』1978

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  ・Yes Songs Side C & Side D
      ・Yes Songs Side E & Side F

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  ・浪花ロック『ぼちぼちいこか』
 
 
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