2021年2月23日 (火曜日)

素敵な欧州ジャズの「デュオ盤」

ジャズは全世界において「深化」している。もう新しいジャズの奏法や表現方法は現れ出でないだろう。しかし、今までに出現したジャズの奏法や表現方法は、様々なジャズマンのチャレンジによって、洗練され、再体系立てされ、再構成され、新たな解釈が付加されている。つまり「深化」しているのだ。

Enrico Pieranunzi & Bert Joris『Afterglow』(写真左)。今年2021年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Bert Joris (tp)。ピアノとトランペットのデュオ盤。リズム&ビートは一手にピアノが担い、フレーズはピアノとトランペットでのインタープレイ。

イタリアが生んだ現代最高のジャズ・ピアニストの一人、エンリコ・ピエラヌンツィ。そして、ベルギーの名ジャズ・トランペッター、バート・ヨリスとのデュオ盤である。ピアノとトランペットのデュオは珍しい。ピアノが伴奏に徹し、トランペットが旋律を吹きまくるのは全く面白く無い。当然、この名手の2人はそんな俗手には陥らない。
 
 
Afterglow
 
 
ピエラヌンツィのピアノは耽美的でリリカルでメロディアス。そこに、ヨリスのふくよかで柔らかい、それでいて芯のしっかり通ったトランペットが絡む。ピエラヌンツィのピアノの左手が、しっかりとリズム&ビートを刻み、キープする。そして、右手でヨリスのトランペットを迎え撃つ。極上のデュオの響き。極上のユニゾン&ハーモニー。

デュオ演奏の全体に漂うリズム&ビートにファンクネスは無い。リリカルでダイナミズム溢れる透明度の高いリズム&ビート。まさに「欧州ジャズ」を強く想起するリズム&ビートである。こんなデュオ演奏を初めて聴いた気がする。ありそうで無い、ピアノとトランペットのデュオ。

タイトルの「Afterglow」は、夕映えや残光を意味する言葉。このデュオ盤には、そんなタイトルそのものの雰囲気が蔓延している。素敵な響きに満ちた好盤です。最近、ジャズでは「デュオ」が流行っているような雰囲気がある。もっとユニークなジャズ演奏が今後も出てくるのではないか、と思わず期待してしまう。
 
 
 

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2021年2月10日 (水曜日)

ロック・オペラの優秀カヴァー盤

ジャズは世界的な音楽ジャンルである。米国だけでなく、欧州にもジャズはある。欧州ジャズと一言で片付けがちであるが、欧州については、ほぼ各国にジャズが根付いている。歴史についてもかなり古く、1950年代には欧州にはジャズが根付いて、欧州ならではのジャズが演奏され、アルバムが録音されていた。

そんな中でも、欧州のジャズ先進国としてあげられるのが、北欧諸国(ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマーク)、英国、フランス、イタリア、ドイツ、オランダ。我が国で1970年代から親しみがあるのが、北欧諸国とイタリアのジャズ。特にイタリア・ジャズはかなり高いレベルのジャズが演奏されている。

Stefano Bollani『Piano Variations on Jesus Christ Superstar』(写真左)。2019年10月の録音。イタリア・ジャズが生んだ人気ジャズ・ピアニスト、ステファノ・ボラーニのソロ・ピアノ集である。17曲目「Superstar」のみ、Voiceが入る(Voice担当は、Stefano Bollani, Frida Bollani, Manuela Bollani and Valentina Cenni)。
 
 
Piano-variations-on-jesus-christ-superst  
 
 
タイトルを見てもしやと思い、17曲目の「Superstar」を真っ先に聴いて確信した。この盤、ロック・オペラの名作 「Jesus Christ Superstar」の名曲を題材に、ステファノ・ボラーニがソロ・ピアノ用にアレンジして、アルバム化したもの。いやはや懐かしい。「Jesus Christ Superstar」と言えば、1971年初演のロック・オペラ。1973年に映画化されてヒットした。

ボラーニのソロ・ピアノなのだが、これが素晴らしい。クラシック・ピアノに比肩する高テクニック。タッチが明確で流麗。弾き回すフレーズがキラキラしている。もともとがロック・オペラの曲がジャズのビートで演奏されるので、躍動感が溢れる。ダイナミックで説得力のあるフレーズの連続。しかし、ジャジーなビートだがファンクネスは皆無。

実は企画が企画なので、最初は半信半疑で聴き始めたのだが、一気に引き込まれてしまった。イタリア・ジャズの実力の一端が計り知れる、素晴らしいソロ・ピアノ集。収録された曲も原作にほぼ忠実。故に、ボラーニのアレンジの優秀性が引き立っている。欧州ジャズらしい、イタリア・ジャズらしい、ファンクネス皆無、ダイナミックではあるが、耽美的で流麗なピアノ・パフォーマンスが本当に素晴らしい。
 
 
 
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2020年10月 1日 (木曜日)

「攻めに攻める」ピエラヌンツィ

Enrico Pieranunzi(エンリコ・ピエラヌンツィ)は、イタリアを代表するピアニスト。1949年生まれなので、今年で71歳。レジェンド級のピアニストである。 僕はこの「エンリコ」をECMレーベルに残したリーダー作で、その名とピアノを知った。タッチの切れ味が良い、耽美的で流麗な響き。チックのピアノに、キースのクラシック志向な音を混ぜて「2」で割った様な音。

エンリコは基本的に「トリオ編成」をメインに活動している。ベースのマーク・ジョンソンやスコット・コリーなど、優れたベーシストとの好盤が印象に残っている。そういう意味で、エンリコの「トリオ編成」は、ベーシストが鍵を握る、という傾向があるのかもしれない。エンリコのトリオ編成を見極めるには、まず「ベーシスト」を見極めろ、ということか。

Enrico Pieranunzi『New Visions』(写真左)。2019年3月10日、Copenhagenでの録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Thomas Fonnesbæk (b), Ulysses Owens Jr. (ds)。エンリコは今年71歳。ベースのトーマス・フォネスベックが1977年生まれなので、今年で43歳。ドラムのユリシス・オーエンス・ジュニアが1982年生まれなので、今年で38歳。エンリコが「息子」世代と組んだ、スリリングなトリオ演奏である。
 
 
New-visions
 
 
 
冒頭「Free Visions 1」のピアノのフレーズを聴くだけで「ああ、これはエンリコかな」と感じるくらい、個性的な音である。ちょっと聴いただけでは「チックか」と思うところがある。フレーズにイタリア音楽らしい、ちょっとラテンなマイナー調が入るので、チックと間違えやすい。アドリブ・フレーズに入って鋭角に攻めずに、流麗に攻めるところがエンリコらしさ。

フォネスベックがグイグイとトリオ演奏を引っ張っている。耽美的なエンリコのピアノに対して、硬派でダンディズム溢れるアコベが好対照で良い響き。オーエンス・ジュニアのドラムも隅に置けない。好対照なエンリコのピアノとフォネスベックのベースのどちらに偏ることなく、しっかりと間を取って寄り添うようなドラミングは「天晴れ」。

今年71歳のエンリコであるが、この盤でも感じる様に「攻めに攻めている」。選曲もトリオ・メンバーのオリジナルをメインに固め、ネオ・ハードバップをリードする「モーダル」な展開、そして、フリーにスピリチュアルに傾いた演奏など、現代のメインストリーム・ジャズのど真ん中を行くトリオ演奏は見事である。昨年のリリースになるが、見落としていた。やっとリカバリー出来て、気分は上々である。
 
 
 

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2020年5月16日 (土曜日)

ECMらしい現代のニュージャズ

一昨日、昨日と書庫の大掃除を断行し、書庫のステレオが復活。本を読みながらのジャズ鑑賞が再び可能となり、ご満悦の週末である。今日は朝の10時頃から日中、雨の一日。外出することもなく、ステイホームを継続。静かな雨の週末の午後、久し振りのECMレーベルのアルバムが聴きたくなった。

ECMレーベルは、総帥マンフレート・アイヒャーの自らの監修・判断による強烈な「美意識」のもと、ECM独特のニュー・ジャズを展開する。そして、ECM独特の限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。一聴すればすぐに「ECM」と判るほどの個性的な演奏と録音。僕はこのECMの音が大好きで、今でも時々、禁断症状を発症しては、暫くECMの日々が続くことになる。

Enrico Rava & Joe Lovano『Roma』(写真左)。昨年9月のリリース。ECMの2654番。2018年11月10日、イタリア、ローマのAuditorium Parco Della Musica でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (flh), Joe Lovano(ts, tarogato), Giovanni Guidi (p), Dezron Douglas(b), Gerald Cleaver(ds)。

エンリコ・ラヴァのフリューゲルホーン、ジョー・ロヴァーノのテナー・サックスのフロント2管のクインテット編成。ラヴァのトランペットは、マイルス、ファーマー、ガレスピー、そして、ドン・チェリーとバリエーション豊か。ロヴァーノがハンガリーの民族楽器「tarogato」を駆使しているのが珍しい。
 
 
Roma  
 
 
今日選んだECM盤はこれ。宣伝のキャッチを借りると「イタリアのジャズの重鎮、トランぺッター、エンリコ・ラヴァとシチリアに先祖を持つアメリカ人ヴェテラン・テナー・サックス奏者、ジョー・ロヴァーノとの邂逅と捉えたローマでのライブ録音」。とまあ、そんな感じなんだが、さすがECM、冒頭からECMの音世界がブワーっと広がっていて、思わず引き込まれる。

ラヴァのトランペットとロヴァーノのテナー・サックスが実に良い音で鳴っている。ほとんどデュオ演奏に近い、適度な緊張感漲る丁々発止のインタープレイ。リラックスして、ゆったりとした大らかなブロウ。ラヴァもロヴァーノも好調。お互いの音をしっかり踏まえながら、ニュージャズっぽい、リリカルで切れ味の良いアドリブ・フレーズを連発している。

叙情的なピアニストのグイディ、ダイナミックなドラマーのクリーヴァー、ベースの名手ダグラスのリズム・セクションも絶好調。ラヴァとロバーニのフロント2管の音の雰囲気を踏まえ盛り立て、印象的なサポートを繰り広げる。とても柔軟性が高く、反応が素早い素敵なリズム・セクションである。

ネットを見渡すと、あまりこの盤に具体的に触れた形跡は希薄なんですが、現代ニュージャズの好盤です。ECM独特の音世界をしっかりと踏襲して、その音世界の中で、フロント2管、それぞれが自らの個性を発揮する。実にアーティステックな内容です。ジャズ喫茶の昼下がりの雰囲気にピッタリの音です。
 
 
 

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  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

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  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年5月11日 (月曜日)

温故知新な現代ジャズです。

溜まりに溜まったジャズの新盤の整理をしている。整理するにしても、先ずは自分の耳で聴いてみないことには整理出来ない。まず聴くべし、聴くべしである。そういう点では、今回のコロナウィルスの緊急事態宣言については、ジャズの新盤を集中して聴く時間が取れたので、ステイホームを有効に活用していると言えるかな。

新盤を聴き進めていると、これは、という好盤にいきなり出会ったりする。しかも、その好盤のリーダーの名前を見ると、決まって知らない名前だったりする。それでは困る。よって、ググって「これはいったい誰なんだ」と調べに走る。そういう時、言語は何でも良い。情報があれば良い。無いと困る。好盤なのに評価が出来ない状況に陥る。ネット時代の音源過多の弊害でもある。

Emanuele Cisi『No Eyes : Looking at Lester Young』(写真左)。2018年6月、Warner Music Italy からのリリース。リーダーは、テナー’サックス奏者の Emanuele Cisi=「エマヌエーレ・チーズィ」。ちなみにパーソネルは、Emanuele Cisi (ts), Dino Rubino (p, flh on 5,11), Rosario Bonaccorso (b), Greg Hutchinson (ds), Roberta Gambarini (vo on 1,2,4,6,8)。
 
 
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エマヌエーレ・チーズィは、イタリアの実力派テナー・サックス奏者。1964年生まれ。今年で56歳になる。イタリアのトリノ出身。1994年に初リーダー作をリリース。1999年以降は、主にフランスに拠点に移して活動している、とのこと。イタリアン・ジャズについては10年以上、折につけ耳にしていたが、チーズィの名前は知らなかった。が、この敬愛するレスター・ヤングに捧げたオマージュ作品を聴けば、チーズィの実力の高さが良く判る。

レスターに捧げたチーズィのオリジナル曲に加え、「Jumpin' At The Woodside」や「These Foolish Things」等のレスターの愛奏曲を選曲。そして、面白いのは、レスターの様なオールド・スタイルで吹けば面白いであろう、ショーター作の「Lester Left Town」や、ミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」を演奏しているところ。これらの曲を、オールド・スタイルを基本としたテナーで吹き進めている。が、出てくるフレーズは、現代ジャズの先端を行く、ネオ・ハードバップでモーダルな自由度の高いもの。このギャップが面白い。

ゲストで参加しているロベルタ・ガンバリーニのボーカルも味があって、「レトロなモダンジャズ」風で良い感じ。オールド・スタイルを基本に「古き良き時代のスインギーなバップ」をやりながら、出てくるフレーズは「現代のネオ・ハードバップ」。まさに「温故知新」な内容の現代ジャズである。盤全体の雰囲気はムーディーで落ち着きのあるもの。ジャズ者の方々全てにお勧めの好盤です。
 
 
 

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  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

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  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月 4日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・164

ジャズは全世界に広がっている。ジャズを聴き始めた40年ほど前は、ジャズは米国の音楽だと思っていた。1990年代に入った頃だろうか。欧州ジャズの情報が徐々に我々一般のジャズ者にも届き始め、21世紀になって、インターネットが身近な物になって、欧州ジャズの情報は一気に増えた。そして感心したのは、ジャズは世界の国々にある、ということ。クラシック音楽の文化のある国にはまずジャズもある、と睨んでいる。

Marco Di Marco Chris Woods Sextet『Together In Paris』。1974年11月7日、パリでの録音。ちなみにパーソネルは、Marco Di Marco (el-p, ac-p), Chris Woods (as, fl), Jacky Samon (b), Keno Speller (bongos), Yaffa Seydou (congas), Charles Saudrais (ds)。マルコ・ディ・マルコはイタリアのピアニスト。クリス・ウッドは米国のサックス奏者。この二人が双頭リーダーのセクステット盤。

メインストリーム・ジャズにとって受難の年代であった1970年代。そんな受難の年代でも、メインストリーム・ジャズは綿々と好盤を創り出していた。この盤も、クロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズとは一線画する、1960年代を彷彿とさせる、ダンサフルなボサノバ・ジャズである。電子キーボード(フェンダー・ローズ)は使用しているが、小粋で趣味の良いジャジーなフレーズを連発しているので良し、である。
 
 
Together-in-paris   
 
 
僕はこの盤をジャズ盤紹介本で初めて知ったので、この伊のマルコ・ディ・マルコと米のクリス・ウッドの二人がどういう経緯で出会って、この盤を録音したのかは知らない。マルコ・ジ・マルコのパリ録音三部作の中の一枚とのこと。しかし、この盤の内容が素晴らしい。それぞれのミュージシャンがその実力を遺憾なく発揮して、イタリアのスインギーでダンサフルなモード・ジャズを展開している。

冒頭の「Bossa With Regards」が素晴らしい。欧州ジャズらしい、ファンクネス皆無で端正なモード・ジャズから入って、途中、ボサノバ・ジャズへ展開するところは「聴きどころ」。当時、ジョルジュ・アルヴァニタス・トリオのリズム隊を形成するジャッキー・サムソン、シャルル・ソードレのボンゴ、コンガ、ドラムのリズム&ビートがラテン・フレーヴァーを撒き散らす。

続く「Portrait for a Golden Angel」は哀愁感たっぷりのウッドのフルートが沁みる。そしてラストのタイトル曲「Together In Paris」は、モーダルなジャズの名演だろう。ラテン・チックなリズム&ビートが、シリアスなモード・ジャズに、ポップな明るさを添えている。見事である。スピリチュアルな要素も見え隠れして、当時のメインストリーム・ジャズの好要素を集約した「総合力満点」の好盤だと思う。
 
 
 

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【更新しました】2020.03.29
  ★ まだまだロックキッズ ・・・・ ELP「恐怖の頭脳改革」である

【更新しました】2020.04.01
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップのセカンド盤の個性

 

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2020年2月25日 (火曜日)

安定安心の耽美的ピアノ・トリオ

いつの頃からだろう。欧州ジャズの中核国に「イタリア」が参入したのは。21世紀になって、インターネットが発達し、欧州ジャズの情報が潤沢に入ってくるようになったのだが、イタリアン・ジャズが結構、活況になっている情報に接して、「あら〜、イタリアかあ」と戸惑ったのを覚えている。しかし、ECMレーベルを見渡せば、1970年代後半に、エンリコ・ラヴァの名前があるので、イタリアン・ジャズはかなり古くからあったということである。

Michele di Toro Trio『Play』(写真左)。2014年1月30、31日、イタリアでの録音。ちなみにパーソネルは、Michele Di Toro (p), Yuri Goloubev (b), Marco Zanoli (ds) 。マーシャル・ソラール賞やフリードリッヒ・グルダ賞に輝いた、イタリアの中堅ピアニスト、ミケーレ・ディ・トロのピアノ・トリオ盤である。1974年生まれなので、録音時は40歳。ジャズマンとして中堅に差し掛かった、充実のパフォーマンスが素晴らしい。

リリカルで耽美的なピアノ。タッチは明確だが、バップなピアノの流儀とはちょっと響きが異なる。ガーン、ゴーンとしっかりとしたタッチで弾き回すというよりは、クラシック・ピアノの様に、切れ味の良い流麗なタッチで響きを優先に弾き回す感じ、とでも形容したら良いだろうか。米国のリリカルで耽美的なピアノとは異なる、欧州的というか、イタリア的というか、独特の個性を持ったピアノの響き&調べである。
 
 
Play  
 
 
これがこの盤の最大の聴きもので、全編に渡って、ミケーレ・ディ・トロのジャズ・ピアノがとても印象的に響く。テクニックについても相当に高度で、クラシック・ピアノと比べても引けを取らない素晴らしさ。音の純度が高く、高テクニックで弾き回す分、流麗という形容がピッタリの流れる様なアドリブ・フレーズ印象的。聴き始めは「リリカルで耽美的な欧州ジャズ・ピアノかあ」と「飽き」を危惧するのだが、テンションが適度に保持されていて、決して飽きが来ない。最後まで一気に聴き切ってしまう。

加えて、ユーリ・ゴルベフのアコースティック・ベース(略して「アコベ」)が印象的だ。冒頭「Lutetia」の出だしから、トロのピアノに寄り添い、絡むように弾き進めるゴルベフのアコベは「柔軟」かつ「鋼の様なしなやか」。この鋼の様なしなやかさが実にシャープで、トロの切れ味の良い流麗なタッチとの相性が抜群である。マルコ・ザノリのドラムは地味ではあるが堅実。出るとこはしっかり出てきて、確実なリズム&ビートを供給している。

3者の豊かなイマジネーションと自由度の高いインタープレイが素晴らしい。息もピッタリ合っていて、あうんの呼吸で硬軟自在、変幻自在なアドリブ・フレーズを繰り出していく。速いテンポの演奏も「かかる」こと無く、安定した速攻フレーズを供給。バラード風のスローな展開は耽美的に溺れることなく、凛とした切れ味の良い印象的なフレーズを繰り出して、甘きに流れることは無い。一言で言うと「安定安心の耽美的ピアノ・トリオ」。好盤です。
 
 
 
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2020年2月22日 (土曜日)

ながら聴きのジャズも良い・38

ジャズは「お洒落な音楽」とされることがある。私の経験では、今までジャズを聴くのが好きだ、とすると「ジャズは難しい音楽」と言われることがあっても、「お洒落な音楽」と言われると、なんだか違和感がある。お洒落なカフェやレストラン、雑貨店などは積極的にジャズを流しているんで、そういう点から、「お洒落な音楽」とされるのだろう。
 
では、何故「お洒落なカフェやレストラン、雑貨店では積極的にジャズを流す」のか。私もこのブログで「ながら聴きのジャズも良い」というカテゴリーを設定している位なので、ジャズの演奏の中に「ながら聴きするに心地良い」ものがある。どんなジャズでも「お洒落に聴き流せる」かといえばそうでは無い。ジャズには「主張する」ものと「主張しすぎない」ものとがある。
 
「主張する」ジャズは、演奏するジャズマンのテクニックや演奏方法、演奏スタイルに重きを置いて、それをメインに聴いて貰おうとするもので、「主張しすぎない」ジャズは、アレンジや演奏コンセプトに重きを置いて、演奏する音楽そのものを聴かせる、聴いて貰おうとするもので、双方、演奏する狙いが異なる。「ながら聴きするに心地良い」ジャズは、この「主張しすぎない」ジャズなのだろう。
 
ヴィーナス・レコードというジャズ・レーベルがある。1992年、ジャズ混迷期に立ち上げられたレーベルなのだが、このレーベルのコンセプトが実にはっきりしている。「聴き心地」に重きを置いて、音の艶や甘さを強調し、耳に心地良いビート音を推しだし、独特のエコーをかける。
 
 
Love-is-a-manysplendored-thing-1
 
 
いわゆる「聴く為のジャズ」を徹底的に追求したレーベルだと感じている。ジャケットは、美しい女性をジャケットに配する点で統一されているが、一方で「ジャケットがエロすぎる」というマイナス評価もある(笑)。
 
Roma Trio『Love Is A Many-Splendored Thing』(写真左)。邦題『慕情』。ちなみにパーソネルは、Luca Mannutza (p), Gianluca Renzi (b), Nicola Angelucci (ds)。2006年7月2 & 3日、イタリアでの録音。とても心地良いピアノ・トリオの演奏で、その録音はいかにも「ヴィーナス・レコード」の音である。演奏内容自体も立派なもので、現代の新しいピアノ・トリオの音がする。
 
メロディックに展開するアドリブが魅力。クラシカルな技法もさりげなく取り込んで、耳に付くことも無く、逆に「アレンジの妙」として良い効果を上げている。もちろん、ジャズとして、その基本であるグルーブ感やジャジーな雰囲気はしっかり維持されている。いわゆる「主張しすぎない」ジャズであり、「演奏する音楽そのものを聴かせる、聴いて貰おうとする」ジャズである。
 
「ジャケットがエロすぎる」ヴィーナス・レコードであるが、私は、純ジャズとして聴き応えがあればあるほど、ジャケットの「エロ度」は下がる、と睨んでいる。このRoma Trio盤のジャケットもちょっとお洒落が過ぎる感があるが「エロ度」は低い。純ジャズとしての「聴き応え」度は高い。
 
 
 
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2019年10月23日 (水曜日)

いい音している伊ジャズの新盤

こういうコンテンポラリーな純ジャズなアルバムを「発見」すると嬉しくなる。リーダーの名前を見ても、どんな誰なのだか、さっぱり判らない。それでも、アルバムに詰まっている音はとても素敵なジャズで、音は明らかに「今」風。洗練されたリズム&ビートと新しい響きのモーダルなフレーズ。

Enrico Le Noci『Social Music』(写真左)。2019年7月のリリース。Enrico Le Noci (g), Gadi Lehavi (p), Giulio Scianatico (b), Andrea Niccolai (ds), Felix Rossy (tp)。2019年1月、A.MA Records Studioでの録音。ギターとトランペットがフロントで、バックにピアノ・トリオが陣取る、ちょっと変わった構成のクインテット。

Enrico Le Nociは、1996年、イタリアのマルティナ・フランカ生まれ。14歳でギターを始め、Liceo Musicale Architaでクラシックギターを学び、優秀な成績で卒業。その間に彼は、サルバトーレ・ルッソとモダン・ジャズ・ギターの勉強を始め、それが彼をジャズへと導いた。
 
 
Social-music-enrico  
 
 
2014年には、彼は米国テキサス州オースティンで過ごし、デューク・エリントン ジャズフェス・オブ・ニューオーリンズなど、アメリカの多くのフェスティバルに参加。その後、イタリアに戻り、様々なミュージシャンとセッションを重ね、オランダに留学し、ハーグ王立音楽院のジャズギター学士号を取得。彼は現在、様々なバンドのサイドマンとして活躍している、とのこと。

さて、このアルバムであるが、コンテンポラリーでモーダルなジャズがメイン。比較的センスの良いクールな曲や明るく判り易いオープンな感じの曲もあって、3曲でトランペットが入る。ギターとトランペットのユニゾン&ハーモニーというのがユニーク。このエンリコ・レ・ノキのギターとフェリック・ロッシーのトランペットのユニゾン&ハーモニーが絶妙。このコンテンポラリーな響きが実に個性的。

バックのピアノ・トリオのリズム・セクションも実に良い音を出している。典型的なアコースティックなピアノ・トリオの音が実に生々しく、とても躍動感溢れる演奏になっていて、聴き応えがある。イタリアのジャズであるが、実にレベルが高い。しかも新しい響きに満ちていて、実に立派な内容だ。
 
 
 
東日本大震災から8年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年7月 9日 (火曜日)

ビリー・ジョエルのカヴァー盤

最近、ジャズの新盤のタイトルを見ていると、何だか「トリビュート」ものが多い様な気がする。僕だけかなあ。様々なトリビュート盤が毎月、コンスタントに1〜2枚はリリースされている。旧来のスタンダード曲からの脱皮を図った「新スタンダード曲」の発掘というチャレンジが流行った時期があったが、そんな時期よりも、今の「トリビュート」ものを聴いた方が、「新スタンダード曲」について、新しい発見が多くある。
 
今回、感心したのは、Massimo Farao Trio『Scenes from an Italian Restaurant(Tribute to Billy Joel in Jazz)』(写真左)。2017年のリリース。手元に情報が不足しているので、パーソネルの詳細が判らぬが、2017年のマッシモ・ファラオ・トリオなので、Massimo Farao (p), Nicola Barbon (b), Roberto "Bobo" Facchinetti (ds) だと思われる。

イタリアの人気の巨漢ピアニスト、マッシモ・ファラオはカヴァーが好きみたいで、様々なロック曲やR&B曲のカヴァー&ジャズ化をしているようだ。この盤はタイトル通り、1970年代から80年代を代表する米国のSSW(Singer Song Writer)、「ピアノ・マン」= ビリー・ジョエルのトリビュート盤である。収録曲を並べてみると以下の通り。括弧の中は収録されたビリー・ジョエルのアルバム名。
 
 
Scenes-from-an-italian-restaurant
 
 
1. Scenes from an Italian Restaurant(The Stranger)
2. Just the Way You Are(The Stranger)
3. Piano Man(Piano Man)
4. The Stranger(The Stranger)
5. Only the Good Die Young(The Stranger)
6. 52nd Street(52nd Street)
7. Vienna(The Stranger)
8. She's Always a Woman(The Stranger)
9. Rosalinda's Eyes(52nd Street)
10. Until the Night(52nd Street)

 
『Piano Man』から1曲、『The Stranger』から6曲、『52nd Street』から3曲が選曲されている。で、どれもがマッシモ・ファラオ・トリオによって、しっかりとジャズ化されているのには感心した。つまりはビリー・ジョエルの曲は「新スタンダード曲」化について、高いポテンシャルを有しているということである。マッシモのアレンジはちょっと短めで物足りない部分もあるが、アドリブの展開などは、しっかりとネオ・ハードバップしていて、聴き応えがある。
 
特に「Scenes from an Italian Restaurant」「Just the Way You Are」「Only the Good Die Young」「Until the Night」などはしっかりとジャズ化されていて、このまま「新スタンダード化」しても良いと思われるほど。このマッシモ・ファラオの「ビリー・ジョエルのトリビュート盤」、新スタンダード化の可能性がまだまだ残されていることを教えてくれた。全編32分とちょっと短めだが、聴き応えは十分にあります。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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