2019年1月 4日 (金曜日)

これは良いよ「ウラ名盤」・1

年末、本棚を大掃除をしていて、あるジャズ盤紹介本を久し振りに見つけた。スイングジャーナル・1989年5月臨時増刊「新説 ジャズ名盤・ウラ名盤」である。発刊当時は、LPからCDへの移行期。ジャズ名盤は何とかLPで蒐集できるんだが、ウラ名盤がどうにもならない。まず、LPの新盤では絶対に無い。といって中古のLPも見当たらないか、あっても高額。この「ウラ名盤」については蒐集できるかい、とサジを投げた。

で、今回、改めて読んでみると、この「ウラ名盤」、何とかなるんとちゃうかいな、と思いながら、ネットのダウンロードサイトをうろうろ探し回ると、ありますあります。意外とこれがあるんですよ。この「ウラ名盤」って、長年「ジャズ者」をやっている輩からすると、なかなかのグッド・チョイスで、結構、聴き応えのある盤ばかりなんですよ。

ということで、新春を迎えて、しばらく、この「ウラ名盤」を聴きまくってみようと思います。ということで第一弾は『Max Roach + 4 At Newport』(写真)。1958年7月6日、 Newport Jazz Festivalでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Max Roach (ds), Booker Little (tp), George Coleman (ts), Ray Draper (tuba), Art Davis (b)。レイ・ドレイパーのチューバが珍しい。 
 

Max_roach4_at_newport  

 
が、このレイ・ドレイパーのチューバの存在がちょっとした混乱を招く。もともと速いフレーズを吹くのが苦手なチューバである。ビ・バップ譲りの速いユニゾン&ハーモニーになると、フロントの音がバラバラになって、思わず椅子から落ちそうになる。冒頭の3曲ほどはヨタヨタしたユニゾン&ハーモニーに思わず「酔いそうになる」。が、4曲目の「Minor Mode」から5曲目「Tune-Up」にかけて、トランペットとテナーにエンジンがかかってくる。

特に、トランペットが大変身。チューバに合わせてよたっていたのが、思い切って自分のプレイに徹することに決めたのか、素晴らしい高速フレーズを吹き始める。流麗かつブリリアント、躍動感抜群で切れ味抜群。そして、ラストの「Love for Sale」では、明快に素晴らしい、歌心溢れる高速フレーズをバッチリと決める。このトランペットは誰だ。誰あろう「Booker Little(ブッカー・リトル)」であった。

加えて、テナーのコールマンも健闘しているので、しっかりと耳を傾けたい。ドレイパーのチューバの存在が問題なのでは無い。リトルのトランペット、コールマンのテナー、二人のテクニシャンとブッキングしてフロントを張らせた方が問題だろう。この『Max Roach + 4 At Newport』はローチの職人芸的ドラミングとリトルの天才的なトランペットを愛でる為のライブ盤と言える。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年12月10日 (土曜日)

ブッカー・リトルのラスト盤

今、聴き直しを進めているトランペッターが、ブッカー・リトル(Booker Little)である。1938年生まれの1961年没。なんと23歳にて早逝。1958年の初リーダー作、1961年没だから、活躍したのはたった3年。それでも、彼のトランペットのスタイルはジャズの歴史上で重要。

Booker Little『Booker Little And Friend』(写真左)。1961年の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little (tp), Julian Priester (tb), George Coleman (ts), Don Friedman (p), Reggie Workman (b), Pete LaRoca (ds)。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ジャケット・デザインもなかなかジャジーで良い感じだ。

ブッカー・リトルの死の数週間前にレコーディングされたもの。パーソネルを見渡せば、何と無く想像できるのだが、かなり新しい感覚のハードバップである。1961年なので、まだバリバリ「モード・ジャズ」まではいかない。が、明らかに、ハードバップの成熟型、というか、そのすぐ先に「モード・ジャズ」を見据えた、当時としては最先端の自由度の高いハードバップであろう。
 

Booker_little_and_friend

 
アルバム全体の完成度も高い。アレンジも良く考えられたものであり、それぞれの新進気鋭のサイドメンの演奏力も高い。そんな中、やはり、リーダーのブッカー・リトルのトランペットが突出している。また、6曲を占めるブッカー・リトルのオリジナル曲の出来もかなり良い。インテリジェンス溢れるリトルの楽曲はハードバップの枠を超えている。

このアルバムのレコーディングの後、1961年10月、わずか23歳で尿毒症により帰らぬ人となった。このアルバムの完成度、このアルバムでのブッカー・リトルのブロウと感じてみて、もし、ブッカー・リトルが生きていたら、このアルバム以降、どんなアルバムを創り出していったのか、を想像すると、この余りに早すぎる死は実に惜しい。

「クリフォード・ブラウン」のスタイルをベースに、バランスの取れた、柔和で少しエッジの丸いフレージング。ブッカー・リトルのプレイ・スタイルは、このアルバムで完成されている。この時点で23歳であったというのが、信じられないほどの完成度である。だからこそ、彼の早逝には「無念」の想いがする。聴いてその完成度に感嘆し、やがて悲しき好盤である。

 
 

震災から5年9ヶ月。決して忘れない。まだ5年9ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年12月 7日 (水曜日)

ブッカー・リトルを再び体感する

最近、トランペットのジャズ盤を聴き直している。と言って、マイルスなどの超有名どころというよりは、ちょっとマニアックな、中堅どころのトランペッターのリーダー作を漁って、聴き直している。

漁っていて、実はこのトランペッターのリーダー作を久しく聴いていないことが判明した。ブッカー・リトル(Booker Little)である。1938年生まれの1961年没。なんと23歳にて早逝。1958年の初リーダー作、1961年没だから、活躍したのはたった3年。それでも、彼のトランペットのスタイルはジャズの歴史上で重要。

ブッカー・リトルのスタイルは、明らかに「クリフォード・ブラウン」をルーツにしている。「クリフォード・ブラウン」のスタイルをベースに、バランスの取れた柔和なフレージングが特徴。流麗なテクニックではあるが、それをひけらかすことは無い。円熟したアドリブ・フレーズが新しい感覚。

そんなブッカー・リトルのトランペットの特徴が良く判るアルバムがこれ。『Booker Little 4 & Max Roach』(写真左)。ブッカー・リトルの初リーダー作になる。1958年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little (tp), George Coleman (ts), Tommy Flanagan (p), Art Davis (b), Max Roach (ds)。

簡単に言えば「ブッカー・リトル5重奏団」なんだが、自己顕示欲の強い目立ちたがり屋のマックス・ローチが、自分の名前をタイトルに出すことを強要したのだろうか、ちょっと変ちくりんなアルバム・タイトルである。ただし、マックス・ローチは、ブッカー・リトルのスタイルのルーツ「クリフォード・ブラウン」と双頭バンドを組んでいたドラマーである。
 

Booker_little_4_max_roach

 
ブッカー・リトルとしては初リーダー作では、ドラマーにそんな「マックス・ローチ」を採用したかったのだろうか。確かに、このアルバムでのローチのドラミングは効果的。リトルのトランペットを上手く鼓舞している。しかも、いつものように前面にしゃしゃり出てこない。これが不思議なんだが、クリフォード・ブラウンのバックで叩いている時のローチである。

恐らく、リトルのトランペットにクリフォードの面影を感じたんだろうなあ。確かに、この初リーダー作でのリトルのトランペットは、ウッカリ聴いていると、クリフォード・ブラウンか、と聴き間違いてしまいそうになるほど、その雰囲気は似ている、が、柔和で少しエッジの丸いトランペットのフレージングがリトルの個性。かつ音の芯が太い。

溌剌と吹きまくるブッカー・リトルが眩しい。初リーダー作なのでトラペットの音は若い。加えて「クリフォード・ブラウン」の陰をしっかりと背負っている。リトルの個性がまだ前面に出たブロウにはなっていないが、それでも、そこかしこにリトルの個性のフラグメンツを聴き取ることが出来る。

初リーダー作なんで、初々しい雰囲気が微笑ましい、温和しめの演奏で、ちょっと地味な印象のアルバムですが、リトルの個性を理解するには避けて通れない盤です。他のサイドメンにも恵まれ、初リーダー作としては及第点の好盤です。

 
 

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2016年4月 8日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・78

ジャズ本になかなか挙がることの無い、もとよりジャズ入門盤になど絶対に選択されない、よってジャケットだって見たことが無い。それでも内容優秀なジャズのアルバムって実は沢山ある。そんな所謂「隠れ好盤」を見出すこと、これがジャズ盤コレクションの醍醐味のひとつである。

最近、そんな盤に出会った。『Young Men from Memphis - Down Home Reunion』(写真左)。誰がリーダーという訳では無い、ジャム・セッションを捉えたアルバムである。1959年4月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little, Louis Smith (tp), Frank Strozier (as), George Coleman (ts), Phineas Newborn Jr. (p), Calvin Newborn (g), George Joyner (b), Charles Crosby (ds)。

アメリカ合衆国のテネシー州西端、ミシシッピー川に面する都市メンフィス。この街はブルースの発祥地としても有名な土地です。んなメンフィス出身のアーティストをフィーチャーしたジャム・セッションなアルバムです。

まず、パーソネルを眺めると、この盤が「只者で無い」ことが判ります。早逝のトランペットの天才、ブッカー・リトル(写真右)。小粋なハードバップなトランペッター、ルイ・スミス。モーダルなテナーの先駆者、ジョージ・コールマン。疾走する天才ピアニスト、フィニアス・ニューボーンJr.。この辺の名前をみると、どんな演奏が展開されているのか、ワクワクします。
 

Down_home_reunion

 
冒頭の「Things Ain’t What They Used to Be」を聴くと、そのプレイの先進性が良く判ります。1959年なので、典型的な絵に描いた様な、優等生的なハードバップな演奏が繰り広げられているのではないか、と予想したのですが、前奏のテナーとトラペットのユニゾンの響きを聴いたら、これはまあ、只者ではないぞ、と身構えて(笑)。

ついつい座り直して、集中してその音に耳を傾けてしまいます。端正なハードバップなんてもんじゃない。これはもうフリー一歩手前の自由度の高いハードバップ。しかもそのフレーズはゴツゴツしていて骨太。そして、ところどころでモードな展開が今の耳にも新しい響きを持って展開される。

冒頭の1曲目のみならず、収録された全4曲とも「只者ではない」演奏で、当時としては突出して新しい、今の耳にも新鮮な響きがこのアルバムの中にギッシリと詰まっています。ジャム・セッションな演奏とは言え、息の合ったユニゾン&ハーモニーは聴いていて楽しく、アドリブのフレーズはどれもが新鮮な響きに溢れていて、全く時代を感じさせない。

良いアルバムです。出身地が同じというのも「好要素」になっているみたいで微笑ましいですね。ジャズ本やネットで採り上げられることが全く少ないアルバムなんですが、このアルバムは、ジャズを聴くことに慣れ、ジャズの好みがはっきりした中級以上のジャズ者の方々にお勧め。「目から鱗」の好盤です。

 
 

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2015年5月 9日 (土曜日)

公民権運動に呼応したアルバム

最近、ナチス・ドイツのユダヤ人排斥の歴史にダイレクトに触れる機会があって、その時、併せて、米国の黒人差別の問題についても考えさせられた。

ジャズはこの黒人差別の問題にダイレクトに関係した時代があり、米国での「公民権運動」に呼応して、黒人問題に言及したアルバムを曲を世に問うた。1960年代全般にかけて、もう少し具体的に書くと、キング牧師の「公民権運動」に併せて盛り上がり、キング牧師の暗殺以降、それぞれが身の危険を感じて衰退した。

そんなジャズメンの中で、急進派として、「公民権運動」に呼応した、様々な黒人差別への反対運動を繰り広げたのが、レジェンドとなった伝説のドラマー、マックス・ローチ(Max Roach)。彼は黒人差別への反対運動の一環で、黒人問題に言及したアルバムをリリースしている。

そんなアルバムの中でいの一番に紹介したいのが、Max Roach『Max Roach's Freedom Now Suite - We Insist!』(写真左)である。1960年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little (tp) Julian Priester (tb) Walter Benton (ts) Coleman Hawkins (ts) James Schenck (b) Max Roach (ds) Abbey Lincoln (vo)。パーソネル的には新旧入り乱れてのメンバー構成である。

まずは改めてマックス・ローチの経歴をご紹介すると、1924年米国ノースカロライナ州に生まれる。1943年 にコールマン・ホーキンスのグループで活躍。以降、ビ・バップ時代より、チャーリー・パーカー、バド・パウエル、クリフォード・ブラウンなどと活動した。
 

We_insist

 
1950年代半ばになると、チャーリー・パーカーやクリフォード・ブラウンなどの相棒が次々と他界。ドラッグやアルコールに溺れるようになるが、最初の妻アビー・リンカーンさんの手助けを得て復活。 1960年代、フリー・ジャズの流れの中で、黒人問題を軸にしたアルバムなどを発表した。

この黒人問題を軸にしたアルバムの中で、当時の嫁はんだったアビー・リンカーンと発表した名盤が『We IInsiist!』である。当時、米国での「公民権運動」を勇気付けた傑作。「シット・イン」を 模したアルバム・ジャケットは迫力がある。

僕は学生時代、このアルバムを初めて聴いた時は「おったまげた」。なんという迫力、なんという主張。これが鑑賞用音楽かといえば、正直、疑問を感じるが、これはこれで、当時、ジャズの使命であり、ジャズの果たすべき役割であった。

このアルバム、演奏内容はテクニック溢れる素晴らしい演奏なのですが、悲鳴のようなアビー・リンカーンのボーカルとか、フリー・ジャズ的要素が強く、音楽による思想の具現化として、アフロニズムを強調した作品や抽象的な作品が多いことから、ジャズ初心者の方には、ちと辛いかと。聴くときには心して聴いてくださいね(笑)。

加えて、ステレオにて大音量で聴く時もご注意を。昨今の物騒な世の中、アビー・リンカーンの悲鳴の様な叫びの部分、大音量だと、近所から警察に通報されてパトカーが飛んでくるかもしれません(笑)。

 
 

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2015年4月24日 (金曜日)

『Memorial Album』は外せない

Eric Dorphy & Booker Littleの歴史的なクインテットが、ファイブスポットで残した記録としては『At the Five Spot』のVol.1とVol.2が有名ですが、もう一枚、このアルバムもなかなかの内容です。

そのアルバムとは、Eric Dorphy『Memorial Album : Recorded Live At The Five Spot』(写真左)。伝説的なファイブ・スポットのライブ盤の三作目。Vol.3 というタイトルでは無いところが面白い。このライブ盤がリリースされたのは、主役のドルフィーが亡くなった後だったので、この『Memorial Album』というタイトル。

パーソネルは、当然、Vol.1 & Vol.2 と同じく、Eric Dolphy (fl, bc, as)、Booker Little (tp), Mal Waldron (p), Richard Davis (b), Eddie Blackwell(ds)というのがメンバーで、1961年7月16日、ニューヨークのライブスポット「Five Spot」の録音。ドルフィーとリトルは、相変わらず、アブストラクトでアバンギャルド。限りなくフリーに近い、自由度の高いブロウを繰り広げている。

そして、このアルバムで目立っているのが、エド・ブラックウェル(Eddie Blackwell)のドラム。バッシャンバッシャンと浮いたような、腰の高いドラミングが、アブストラクトでアバンギャルドなドルフィーとリトルを煽りまくる。珍しく、長編のドラム・ソロも良い感じだ。
 

Eric_dolphy_memorial_album

 
収録曲は、LP時代のA面、収録時間16分30秒の「Number Eight」と、LP時代のB面、収録時間14分39秒の「Booker's Waltz」の長編2曲。
 
どちらも甲乙付けがたい内容。スリル満点の疾走感。どこへどう展開するか判らない、限りなくフリーで自由度の高いアドリブ・フレーズ。この自由度の高い演奏は何度聴いても良い。

『At the Five Spot』のVol.1とVol.2と、加えて『Memorial Album』で、この1961年7月16日のニューヨークのライブスポット「Five Spot」のEric Dorphy & Booker Littleの歴史的なクインテットを堪能できる。Vol.1だけでは物足りない。Vol.2を加えても物足らない。

この『Memorial Album』と併せて、やっとこのEric Dorphy & Booker Littleの歴史的なクインテットの全貌、クインテットの創造力・構築力・自由度を確認することが出来る。う〜ん、やっぱりこの3枚があって、Eric Dorphy & Booker Littleの歴史的なクインテットがある。長年、愛聴の3枚です。

 
 

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2015年4月22日 (水曜日)

Vol.1よりアバンギャルド度が高い

当時、このドルフィー=リトルの演奏は、ちょっと前衛的が過ぎる、と思われていたんだろう。このライブ盤を聴いて思う。昨日、ご紹介した前作より、かなりアグレッシブでプログレッシブな内容に感じ入る。

そのライブ盤とは、Eric Dolphy『At The Five Spot, Vol. 2』(写真左)。録音日はVol.1と同様、1961年7月16日。ニューヨークのライブスポット「ファイブ・スポット」でのライブ録音。ちなみにパーソネルも同様。Eric Dolphy (b-cl, fl), Booker Little (tp), Mal Waldron (p), Richard Davis (b), Ed Blackwell (ds)。

このVol.2でのドルフィーは、バスクラとフルートのみで吹きまくっている。アバンギャルド度では圧倒的にVol.1を上回る。そして、バスクラの演奏の可能性という点では、恐らく、このドルフィーのバスクラ演奏が最高水準であろうと思われる。それほどまで、ドルフィーはバスクラという楽器を理解している。

フルートについては、アブストラクトでエモーショナルなフルートという範疇で、このドルフィーのフルートは最高水準を誇る。バンバンにアバンギャルドに吹きまくっているにも拘わらず、音は割れず、音は破綻せずに、流麗にアドリブ・フレーズを聴かせてくれる。素晴らしいテクニック。捻れまくる運指。

そして、このライブ盤でのブッカー・リトルが、これまた良い。この盤でのリトルを聴くと、限りなくフリーに近い、自由度の高いブロウを繰り広げてはいるが、マイルスのモードをベースとした自由度の高いブロウとは一線を画していることが良く判る。あくまで、リトルの自由度は、ドルフィーの様にトランペットを吹く、という、ドルフィーをベースとした自由度の高いブロウなのだ。
 

At_the_five_spot_vol2

 
このVol.2でのリトルは素晴らしい。Vol.1では、当然ではあるが、リーダーのドルフィーが目立ちに目立っている。が、Vol.2になると、ドルフィーのバスクラ、フルートと同程度に、リトルのトランペットが目立っている。リトルのトランペットを愛でる上で、申し分の無いライブ盤である。

パルシブなウォルドロンのピアノも、ユニークな自由度を誇る。他のピアノには絶対に無い自由度の高い弾き回し。ウォルドロンのピアノも、やはり、ドルフィーの様にピアノを弾く、という、ドルフィーをベースとした自由度の高い弾き回しなのだ。

ライブ演奏の雰囲気は、限りなくフリーに近い、自由度の高い演奏ではあるが、演奏のベースは「純ジャズなバップ」。フリージャズトは解釈、アプローチ共に全く異なる。この雰囲気は、モーダルなアコ・マイルス、限りなくフリーだが伝統的な香りのするオーネット・コールマンの雰囲気に近い。

良いライブ盤です。ジャケットもVol.1とのシリーズ感が溢れていてグッド。収録曲は「Aggression」と「Like Someone in Love」の長尺物の2曲のみですが、長時間のライブ演奏にも拘わらず、全く飽きません。

但し、このアルバム、内容的には、限りなくフリーに近い、自由度の高いジャズがてんこ盛りなので、決して初心者向きではありません。取り扱い注意なライブ盤です。

 
 

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2015年4月21日 (火曜日)

ドルフィー=リトルが素晴らしい

ジャズはやはりライブが一番楽しいだろう。生演奏のハイレベルなジャズは、何時聴いても良いし、ズッと聴いていても飽きない。ただ、日本ではなかなか適当な場所にあるライブ・スポットが少ないので、ジャズの生演奏に触れる機会はそう多くは無い。

ライブスポットの生演奏が叶わないのであれば、次はライブ音源をアルバムにしたライブ盤だろう。ジャズのライブ盤は楽しいものが多い。何故かジャズのライブ盤については、録音の優秀なものが多い。恐らく、録音技術者たちにとって、ジャズの録音にはファイトが湧くんだろう。それだけジャズのライブ録音は技術と経験が必要なのだ。

そんなジャズのライブ盤の中で、特に好きなライブ盤が、 Eric Dolphy『At The Five Spot Vol.1』(写真左)。1961年7月11日、ニューヨークの有名ライブスポット「ファイブ・スポット」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Booker Little (tp), Mal Waldron (p), Richard Davis (b), Ed Blackwell (ds)。

このライブ盤には、限りなくフリーに近い、自由度の高いジャズの成功例が詰まっている。マイルスは、モードという調性を前提に、限りなくフリーに近い、自由度の高いジャズを創り上げた。伝統のジャズを踏襲しつつ、アートとして時代の音楽の最先端にまで昇華したジャズ。

この『At The Five Spot Vol.1』でのドルフィー達は、この調性を超えて、ある一定の決め事の下で、自由に吹きまくり、限りなくフリーに近い、自由度の高いジャズを展開しつつ、伝統のジャズの枠組みを維持するという、相当に高テクニックでクールなジャズを現出している。
 

Eric_dolphy_at_five_spot

 
今の耳で聴くと、マイルスのモードを活用した、限りなくフリーに近い、自由度の高いジャズと、オーネット・コールマンの一定の決め事の中で、自由に吹きまくるフリージャズを足して2で割った様な、限りなくフリーに近い、自由度の高いジャズ。自由度は高く、フレーズは異次元の運指だが、伝統のジャズの枠組みからは外れないという、実にクールなジャズ演奏である。

とにかく、ドルフィーが凄い。異質と言っても良い。どうやって思いつくのか判らない、思いっきり捻れた、グネグネなアドリブ・フレーズ。これをアルトで吹きまくるのだから爽快。バスクラのおどろおどろしい雰囲気の低音の響きと自由度の高い節回しも、すっごく印象的。この伝統のジャズの枠組みを保持しつつのフリーなブロウはドルフィーにしか吹けない。

そして、この宇宙人的なフレーズを連発するドルフィーに相対するブッカー・リトルのトランペットも秀逸。ドルフィーの思いっきり捻れた、グネグネなアドリブ・フレーズに対抗するように吹きまくる、意外と端正なリトルのトランペット。この適度に崩れつながらの端正さがドルフィーとの相性抜群。早逝が惜しまれる。

バックのリズム・セクション、マルのピアノ、デイヴィスのベース、エドのドラムも凄い。ドルフィーとリトルに煽られて(逆じゃ無いのか)、どんどん捻れて、限りなくフリーに近い、自由度の高いリズム・セクションに変貌していく。面白いのは、パルシブなピアノのマルが、捻れながらメロディアスに、限りなくフリーに近い、自由の高いフレーズを連発してところ。

この『At The Five Spot Vol.1』の持つライブ感・臨場感は素晴らしいものがある。ジャズ者には必須のアイテム。但し、このアルバム、内容的には、限りなくフリーに近い、自由度の高いジャズがてんこ盛りなので、決して初心者向きでは無い。初心者に勧めて良いとは思えないのに、初心者向けジャズ盤紹介本でよく取り上げられるのが不思議である。

 
 

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2015年3月24日 (火曜日)

ブッカー・リトルとの初邂逅

昨日、早逝の天才トランペッター、ブッカー・リトルについて語った訳だが、リトルのリーダー作も良いが、早逝の限りなくフリーで個性的なアルト奏者、エリック・ドルフィーとのコラボの方が僕には気になる。ということで、今日はこの盤をご紹介。

LP時代には「盟友ブッカー・リトルとの初邂逅」なんて文字が帯に踊っていたりした盤である。Eric Dolphy『Far Cry』(写真左)。1960年12月21日の録音。この盤が正真正銘、エリック・ドルフィーとブッカー・リトルとの出会いである。

ちなみにパーソネルは、Booker Little (tp), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Jaki Byard (p), Ron Carter (b), Roy Haynes (ds)。今の目から見れば、素晴らしい人選である。限りなく最先端でフリーな演奏をいともたやすく実現してしまう優れもの達の面々でパーソネルが構成されている。

冒頭の「Ode To Charlie Parker」から、エリック・ドルフィーの摩訶不思議な、捻れた様にスクエアにスイングするフルートが全開。そんなエリック・ドルフィーのフルートに絡むように、モーダルに吹き進めていくブッカー・リトルのトラペット。決して、奇をてらったフレーズは無いのだが、ドルフィーのフルートに絡みつくリトルのトランペットは実に妖艶である。

2曲目の「Mrs. Parker of K.C.」のリトルのトランペットはオーソドックスに溌剌としていて、思わずハッと聴き惚れる。そんなリトルのトランペットが、ドルフィーの一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーを展開する。リトルのペットにドルフィーのアルト。相性抜群の二人である。
 

Far_cry

 
このドルフィーとリトルの双頭フロントは、自由度溢れるモーダルなフレーズを連発しながらも、決して小難しくない、逆に判り易いインプロビゼーションを展開する。このインプロビゼーションが絶品なのだ。

リトルのトランペットは正統派なもので、決して奇をてらったものでは無い。逆に、ドルフィーのアルトやバスクラは明らかに捻れた様にスクエアにスイングし、摩訶不思議なフレーズを繰り出す。そんな正反対の性質をした二人がコラボすると、相性バッチリ、一糸乱れぬユニゾン&ハーモニーを繰り出し、限りなくフリーでモーダルな、尖った純ジャズを展開する。

このドルフィーの『Far Cry』は、そんなブッカー・リトルとエリック・ドルフィーの出会いのアルバムである。以降、この二人は双子の兄弟の様に共演を続け、共にセッションに参加する。その双子の兄弟の様な関係は、ブッカー・リトルが、1961年10月5日、ニューヨークで急逝するまで続くのだ。

そして、ドルフィーは、リトルが逝去した3年後、1964年6月29日にベルリンで客死する。リトルは享年23歳、ドルフィーは享年36歳。早逝の二人であった。

この二人が早逝すること無く、今の時代を生きていたとしたら、リトルは77歳、ドルフィーは87歳。ちょっと現役では厳しい年齢やなあ。でも、二人があと20〜30年ほど長生きだったら、恐らく、ジャズ界のトレンドは大きく変わっていただろう。そんな確信に満ちた「強い想い」を持たせてくれる、そんなリトルとドルフィーのコラボである。

 
 

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2015年3月23日 (月曜日)

似て非なるリトルとブラウニー

「ブラスの響き」という比喩がある。ブラス=真鍮、真鍮がブルブル震える様な、ブリリアントな音色。トランペットが朗々と鳴る、というのはどんな音なのか、それに応えてくれるのが、ブッカー・リトル(Booker Little)である。

ブッカー・リトルは1938年生まれ。今も生きていれば77歳の喜寿。しかし、リトルは1961年、満23歳で急逝した。初リーダー作が、1958年の『Booker Little 4 + Max Roach』なので、本格的に活動したのは、たった3年。残されたリーダー作はたったの4枚。しかし、エリック・ドルフィーとの伝説のファイブスポット3部作がある。

これだけ数少ないリトルの成果なのだが、このリトルのトランペットの音が素晴らしい。いわゆる「ブラスの響き」なのだ。僕は、このリトルの吹くトランペットを聴いて、ブリリアントな音色で朗々となるトランペットというものを理解した。とにかく、朗々と大らかに真鍮ブルブルと鳴るトランペット。音も大きくて明るい。

そんなブッカー・リトルのトランペットを心ゆくまで楽しむことが出来る盤が『Booker Little』(写真左)である。Timeレーベルからのリリース。1960年4月の録音。CDの時代になってから、ボートラがてんこ盛りに入っていて、どこまでがオリジナルの『Booker Little』なのかが判らなくなっている(笑)。LP時代のオリジナルな収録曲は以下の通り。
 

1. Opening Statement
2. Minor Sweet
3. Bee Tee's Minor Plea
4. Life's A Little Blue
5. The Grand Valse
6. Who Can I Turn To
 

Booker_little_album

 
ちなみにオリジナルのパーソネルは、Scott LaFaro (b), Roy Haynes (ds), Tommy Flanagan (p,tracks:1,2,5,6), Wynton Kelly (p,tracks:3,4), Booker Little (tp)。 ビル・エバンスとのトリオで有名な伝説のベーシスト、スコット・ラファロの参加がよく取り沙汰されるが、ブンブン低音を響かせるベースは魅力的だが、このアルバムではそこまで。とりわけ、ベーシストだけを語る盤では無い。

やはり、このアルバムの主役はリーダーのブッカー・リトル。どの曲でも、リトルのペットは朗々と鳴る。早逝の天才トランペッター、クリフォード・ブラウン(ブラウニー)の後継者、ブラウニーのフォロワー的な評価をする人もいるが、僕はそうは思わない。

ブラウニーのペットは教科書的な、端正でテクニック溢れる破綻無く、大きな音でポジティブな音。大胆な音からセンシティブな音まで幅広い。リトルのペットは、とにかく朗々とブリリアントになる。真鍮がブルブル震えるが如く、大きな音で雄々しく鳴る。あくまで豪快に鳴る。ブラウニーのペットとリトルのペットとは似て非なるものだと感じている。

このアルバムはこのアルバムがあってこそ、他のリトルを愛でることが出来る、リトルのトランペットを感じ、リトルのトランペットを理解するアルバム。アレンジも意外と平凡、バッキングを担うピアノ・トリオも平均点な出来。フロントのリトルのトランペットだけが前にでる、リトルのトランペットだけを愛でるアルバム。よくよく聴けば、不思議なアルバムである。

 
 

震災から4年。決して忘れない。まだ4年。常に関与し続ける。決して忘れない。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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