2020年9月16日 (水曜日)

内容良好な「With Strings」盤

ジャズ、特にビッグバンド系のジャズは「アレンジ」がとても大切な要素であると思っている。ソロイストの力量・技術も絶対要件だとは思うが、そのソロイストのアドリブを引き立てるのが、バンド全体のアンサンブルだろうから、その「アレンジ」はとても重要な要素となる、と僕は感じている。

『Supersax Plays Bird With Strings』(写真)。1975年の作品。ちなみにパーソネルは、Supersaxとして、Jay Migliori, Warne Marsh (ts), Joe Lopez, Med Flory (as), Jack Nimitz (bs), Frank Rosolino (tb), Conte Candoli (tp), Buddy Clark (b), Jake Hanna (ds), Lou Levy (p)。ここに上質のストリングスが入る。

スーパーサックスとして、デビュー盤の『Supersax Plays Bird』、第2作目の『Salt Peanuts : Supersax Plays Bird Vol. 2』に続く3枚目のアルバムになる。スーパーサックスの「With Strings」なので、チャーリー・パーカーの大名盤『Charlie Parker With Strings』全曲のスーパーサックスの演奏に置き換えるのか、と思った。
 
 
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が、チャーリー・パーカーの名盤「ウィズ・ストリングス」からは「April in Paris」「I Didn't Know What Time It Was」「If I Should Lose You」の3曲。他はパーカーが残した名演の中から「With Strings」に向いた演奏をピックアップして、「With Strings」アレンジしている。「Kim」がアレンジされているのが、個人的には目を引く。

この盤もアレンジが良い。スーパーサックスとしてのアレンジも良好、ストリングス・アレンジも現代的で良い雰囲気。パーカーの名盤「ウィズ・ストリングス」は、パーカーの演奏は凄いのだが、ストリングスのアレンジが如何せん古すぎる。このストリングスのアレンジが古すぎて、パーカーの素晴らしいフレーズがちょっと色褪せるのだが、このスーパーサックスのストリングス・アレンジは良好で、パーカーのアドリブ・フレーズが心ゆくまで楽しめる。

出来たら、パーカーの名盤「ウィズ・ストリングス」の全曲をアレンジして再演して欲しかったなあ、と思わせてくれるほど、この「With Strings」盤は良く出来てます。「With Strings」盤って、イージーリスニング風であまり好きでは無いのだが、この盤は別格。やはりアレンジとソロ・パフォーマンスが優れていることが、純ジャズ盤として成立する絶対条件ですね。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 
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2020年9月13日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・187

先日、World Saxophone Quartet(WSQ)のアルバムをご紹介した。バリトン・サックス1本、アルト・サックス2本、テナー・サックス1本、サックス計4本のみの「四重奏」バンド。ジャズの世界では実にユニークな存在なんだが、他にも同じコンセプトのバンドがあったぞ、と思いを巡らせた。それも、遠い遠い昔、ジャズを聴き始め、初めて購入したジャズ盤紹介本にあって、強く興味を持ったバンドだった。

そうそう、そのバンドとは「Supersax(スーパーサックス)」。チャーリー・パーカーの不朽の名アドリブを、5人のサックス奏者がそっくりそのままハーモナイズして甦らせる驚異のグループである。アルトとテナーが2人ずつ、さらにバリトン1人という、ドライブ感抜群、迫力満点な分厚いサックス・アンサンブルで、パーカーのアドリブ・フレーズの魅力を余すところなく伝えてくれるのだ。

『Supersax Plays Bird』(写真左)。1973年の作品。ちなみにパーソネルは、Jay Migliori, Warne Marsh (ts), Joe Lopes, Med Flory (as), Jack Nimitz (bs), Buddy Clark (b), Jake Hanna (ds), Ronnell Bright (p), Charley Loper, Ernie Tack, Mike Barone (tb), Conti Candoli, Larry McGuire, Ralph Osborn, Ray Triscari (tp)。アルトとテナーが2人ずつ、さらにバリトン1人、ブラスは、トロンボーンが3 人、トランペットが3人という布陣。そこに、ピアノ・トリオのリズム・セクションがバックに控えている。
 
 
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Capitolレコードからのリリースなので、米国西海岸ジャズの範疇でのバンド・サウンドになる。こういう企画バンドについては、絶対に「アレンジ」が鍵を握る。このSupersaxのデビュー盤については、それはそれは見事なアレンジで、パーカーのアドリブを、ドライブ感抜群、迫力満点なアンサンブルに仕立て上げている。

こうやって、ブラスの分厚い、疾走感溢れるアンサンブルに置き換えると、ビ・バップ時代のアドリブ・フレーズって、実に魅力的かつアーティスティックなものだったことが良く判る。この様なフレーズを「即興演奏」で吹き上げてしまうのだから、そのアドリブの主、チャーリー・パーカーもとてつもなく凄い。そんなビ・バップの凄さを、自分がジャズ者初心者駆け出しの頃、このSupersaxの演奏で理解した思い出がある。

硬派なジャズ者ベテランの方々の中には「パーカーを冒涜している」との意見もある様なのだが、この優れたアレンジ、一糸乱れぬアンサンブル、そして、そこからダイレクトに伝わるパーカーのアドリブの凄さを思うと、逆にパーカーを真剣に「トリビュート」し、尊敬の念を持って演奏しているように感じるのだ。とにかくこのブラス・アンサンブルは凄い。パーカーのアドリブを知らなくても良い。是非、一聴をお勧めする。
 
 
 
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2020年9月11日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・134

定期的に音源ライブラリの整理をしているのだが、さすがにCDにして数千枚のアルバム音源をひとつひとつ見直していると、「こんなアルバム持ってたんや」とか「このアルバム、暫く聴いてないなあ」とか「このアルバムについては、ブログで紹介してないなあ」というアルバムが必ず出てくる。この盤のそんなアルバムのひとつ 。

World Saxophone Quartet『Plays Duke Ellington』(写真左)。1986年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Hamiet Bluiett (bs), Julius Hemphill (as), Oliver Lake (as), David Murray (ts)。バリトン・サックス1本、アルト・サックス2本、テナー・サックス1本、サックス計4本のみの「四重奏」バンド。ジャズの世界では実にユニークな存在。

World Saxophone Quartetは1977年に結成された。1989年、アルトのJulius Hemphillが病でバンドを離れ、その間、数人の助っ人がHemphillの穴を埋めて復帰を待ったが、1995年4月に他界。その後はゲストを迎えて、基本的にはホーン・カルテットでの活動を継続。が、バリサク担当のHamiet Bluiettが、2018年10月に亡くなり、その活動は停止状態になっている。
 
 
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とにかくユニークな演奏である。バリトン・サックス1本、アルト・サックス2本、テナー・サックス1本の特性を活かしたアレンジが抜群である。もちろん、それぞれのサックス奏者の力量も優れていることが前提である。この盤はタイトルから判る様に、デューク・エリントンの楽曲集なのだが、どの曲も本当に見事にアレンジされている。

躍動感溢れ、ベースラインも明確、リズム&ビートもしっかりと供給され、そんなサックスのリズム隊をバックに、それぞれのサックスが魅力的なアドリブ・フレーズを吹き上げる。アレンジが優秀なのと、サックス奏者それぞれの演奏テクニックが卓越しているので、ダレたところが全く無い。全編、飽きずにじっくりと4本のサックスのアンサンブルを楽しむ事が出来る。

World Saxophone Quartetとしては、20枚超のアルバムをリリースしているが、この『Plays Duke Ellington』は入門盤として最適な内容。まず、この盤で、サックス4本のみの「四重奏」をじっくりと楽しんだ後、他の盤へと進むことをお勧めする。とにかく、アレンジが優秀、演奏テクニックも優秀。聴けば聴くほどに、新しいアレンジの妙に気付く。繰り返しの鑑賞に耐える「隠れ好盤」である。
 
 
 




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2020年8月17日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・183

このブログを始めたのが、2006年4月なので、運用を始めて、はや丸14年になる。ほぼ毎日の更新なので、のべ約4,800枚程度のアルバムをご紹介してきたことになる。その中でジャズ盤については、のべ約4,500枚程度をご紹介したことになる。しかも、基本的には同じアルバムを複数回に渡ってご紹介するのは、そんなに無いので、こうやって見てみると大変な数である。

それでも、ジャズ盤の好盤でご紹介が漏れている盤もまだまだ沢山ある。そもそもジャズ盤って、メジャー・デビューしたジャズマンのアルバムは、その内容レベルは基本的に高い。よって、毎月、世界レベルでメジャー・デビューしたジャズマンのアルバムって、数十枚は下らないだろうから、毎月毎月、数十枚の好盤が世界でリリースされていることになる。

年間に約500枚程度の好盤がリリースされていることになるのだから、毎日、好盤ご紹介のブログ記事を書いたからって、ネタが尽きることが無いし、そのリリース数には追いつかない。

Gerry Mulligan『Night Lights』(写真左)。1963年、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs, p), Art Farmer (flh), Bob Brookmeyer (valve-tb), Jim Hall (g), Bill Crow (b), Dave Bailey (ds)。バリトン・サックスの名手であり、作編曲家としても活躍したジェリー・マリガンのリーダー作。知る人ぞ知る「大人のジャズ」の好盤である。
 
 
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ジェリー・マリガンは基本的には米国西海岸ジャズの範疇。トロンボーンのブルックマイヤーも同様で、この盤には西海岸ジャズの良い個性である「ほどよくアレンジされた、洒脱で小粋な、聴かせるジャズ」が満載。じっくり聴くも良し、何かをしながら聴くも良し、米国西海岸ジャズ志向の耳当たりの良い、それでいてテクニックに優れた上質のジャズがこの盤に溢れている。

タイトル通り、都会の夜の光を感じる、アーバンな雰囲気がとても素敵で落ち着いた「大人のジャズ」。冒頭のタイトル曲「Night Lights」がとても素敵だ。マリガンの弾くピアノの単音が静寂感を増幅する。録音年は1963年、ボサノバの人気曲「Morning Of The Carnival From 'Black Orpheus'(カーニバルの朝)」も、クールで小粋なアレンジが施されて好演。

そうそう、故・油井正一の「アスペクト・イン・ジャズ」のテーマ曲であった「Prelude In E Minor」もこの盤に入っている。この曲を聴いていると、故・油井正一さんの語る声が聞こえてきそうだ。

この盤はアルバム全体の演奏クオリティが高く、タイトルの「Night Lights」をテーマにした統一感が半端ない。マリガンの作曲家として、編曲家としての代表盤でしょう。深夜に近い「夜」に耳を傾けるのにピッタリの好盤。お勧めです。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・『Your World and My World』 1981

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  ・『Music From Big Pink』

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  ・太田裕美『Feelin’ Summer』



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2020年5月 6日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・168

コロナウイルスに関する緊急事態宣言が発効されて以来、ステイホームの日々が続いている。週2回の食料の買い出し、一日一回の人通りを避けての散歩以外、ステイホームの毎日である。ステイホームを始めてから、振り返って見ると、ジャズ盤を聴く機会より、ジャズ盤を探索する機会が増えた。そして、「こんな盤、あったんや」という盤を見つけたりしている。

この盤はつい数年前まで、その存在すら知らなかった。もともと、オールドスタイルもテナーマンと、バリトン・サックス(略してバリサク)の名手との「ミーツもの」である。どちらのジャズマンに対しても、強い興味を持っていなかったこともある。ジャズ盤紹介本や幻の名盤本にも、まず、この盤の名前が挙がっていたのを、見たことがなかった。か、見過ごしていたのかも知れない。

『Gerry Mulligan Meets Ben Webster』(写真)。1959年11月3日と12月2日の録音。「ミーツもの」お得意のVerveレーベルからのリリースになる。ちなみにパーソネルは、Ben Webster (ts), Gerry Mulligan (bs), Jimmy Rowles (p), Leroy Vinnegar (b), Mel Lewis (ds)。米国西海岸ジャズのリズム・セクションをバックに、オールドスタイルのテナーマン、ウェブスターとバリサクの名手マリガンの2管フロント。
 

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選曲はオールドスタイルのウェブスターに合わせたのか、バラード曲中心、ミッド〜スローテンポな曲がメインの選曲。これがまあ、オールドスタイルのテナーの音とバリサク特有の重低音に「ジャスト・フィット」なのだ。オールドスタイルのテナーの中低音とバリサクの重低音のユニゾン&ハーモニーの心地良い響き。思いっ切りジャジーでファンキーでムード満点。

二人の息の合った絶妙なバラード、冒頭の「Chelsea Bridge」が素晴らしい出来。テーマ部のユニゾン&ハーモニー、そして、悠然とした、硬派ではあるが、限りなくジェントルなアドリブ展開の吹き回し。惚れ惚れする。以下「Tell Me When」「In A Mellow Tone」「"What Is This Thing Called Love」など、アレンジも良好で、スイングな吹き回しが素敵な、極上のハードバップを聴くことが出来る。

バックのリズム・セクションも絶妙のパフォーマンスを聴かせてくれる。歴代の女性ジャズボーカリストの伴奏を務めたロウルズのピアノが、とりわけ素晴らしい。堅実ベースラインのビネガー、堅実ドラムのルイスのリズム隊も硬軟自在なリズム&ビートを供給し、フロント2管のブロウを惹き立たせている。こんなに素晴らしい内容の盤が、ジャズ盤紹介本に挙がらないなんて。ここに、我がジャズ喫茶の「ジャズ喫茶で流したい」盤にエントリーさせていただきます。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.29更新。

  ・『Christopher Cross』 1979

 ★ まだまだロックキッズ       2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年2月26日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・74

つい最近、僕はこの2管フロントのアルバムの存在を知った。知った瞬間「こんな組合せってアリなの」と嬉しくなった。片方のフロントが「ジョニー・ホッジス」。デューク・エリントン楽団における看板アルト・サックス奏者である。1951年から55年まで楽団を離れたが、その4年間以外、1928年から逝去する1970年まで、38年間、デューク・エリントン楽団に、花形ソロイストとして在籍した。

もう片方のフロントが「ジェリー・マリガン」。バリトン・サックス奏者のレジェンドである。1952年から1956年の間、カリフォルニア州に移り、米国西海岸ジャズの仕掛人の一人となった。特に「ピアノレス・カルテット」の組成は画期的な出来事。モダン・ジャズ黎明期からクール・ジャズ、ウェストコースト・ジャズを牽引した「プロデューサー」的存在であった。

『Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges』(写真)。1959年11月17日、Los Angelesでの録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Johnny Hodges (as), Claude Williamson (p), Buddy Clark (b), Mel Lewis (ds)。当時の米国西海岸ジャズの名うての人気ジャズメンを集めて、ジョニー・ホッジスを客演に迎えた、2管フロントのクインテット編成。
 
 
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音の作りは、パーソネルからも判る様に明らかに「米国西海岸ジャズ」である。しっかりとアレンジされた、破綻の無い整然とした「聴かせる」ジャズ。そんな音の作りの中で、フロントの2人、ホッジスのアルト・サックスと、マリガンのバリトン・サックスのユニゾン&ハーモニーが実に映える。美しい音色とフレーズを誇るホッジスのアルト・サックスと、魅力的な低音と粋な吹き回しで耳を奪うマリガンのバリトン・サックスとの「クールな対話」が一番の聴きどころ。

とりわけ、ホッジスのアルト・サックスが良い。ビブラートを効かせた美しい音色。長く伸びるトーン。官能的ですらある、渋く輝く様なブラスの響き。この美しいアルト・サックスのトーンが、いわゆる「聴かせる」ジャズである、米国西海岸ジャズのアレンジ、展開にバッチリ合うのだ。ほどよくアレンジされたバックの演奏とホッジスのアルト・サックスの相性は抜群である。

サックスの名手が二人寄れば、ライバル心が芽生えるが故に意外とまとまらないのでは、と危惧するが、この盤ではマリガンのホッジスに対するリスペクトの念がライバル心に勝っているようで、ホッジスとマリガンの2管のユニゾン&ハーモニーは全く破綻が無く、とても美しくとてもエモーショナルに響く。この盤の演奏を聴きながら、ジャズ喫茶の昼下がりの光景が頭に浮かんだ。そう、この盤の小粋で心地良い雰囲気、ジャズ喫茶の昼下がりにピッタリなのだ。
 
 
 
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2019年12月18日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・156

いや〜良い盤を見つけた。ロニー・キューバーの新作である。ロニー・キューバーはバリトン・サックス(以降「バリサク」)奏者。僕はこのバリサクの音が大好きで、バリサクのアルバムを見つけたら必ず聴く様にしている。特に、バリサク奏者の中でも、このロニー・キューバーは昔からお気に入りのバリサク奏者である。彼のリーダー作は見つけたら、即ゲットである。

Ronnie Cuber『Four』(写真左)。今年の最新作である。ちなみにパーソネルは、Ronnie Cuber (bs), Ed Cherry (g), Brian Charette (org), Adam Nussbaum (ds)。SteepleChase Recordsからのリリース。SteepleChaseが未だに元気に活動しているのが実に嬉しい。パーソネルを見渡しても知らない顔ばかり。どんな音が出てくるのか、ワクワクである。

ロニー・キューバーは1941年12月生まれなので、今年で78歳。ジャズの世界でも、もはや「レジェンド」「仙人」の域である。この新作では年齢の割にバリサクを吹き切っている。バリサクは一番低音を担当するサックスで、とにかくでかい。当然、重たいし、肺活量もかなり必要。曲によってはちょっとヨレっているところもあるが、これはご愛嬌。
 
 
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ロニー・キューバーのバリサクの吹きっぷりは「ストレート」がメイン。重低音が出せるので、この部分でブリブリブリとビブラートをかましたり、ブリッと捻れた音を出したりしがちなのだが、ロニーのバリサクはそのパフォーマンスは必要最低限に留めている。コルトレーンの吹きっぷりの様な「ストレート」な音出しなので、ロニーのバリサクはとてもモダンな香りがする。

バックのギター、オルガン、ドラムも好印象。特に、ブライアン・チャレットのオルガンが良い。職人芸的に地味に小粋なテクニックを偲ばせて、とてもファンキーにそして、ジャジーにロニーのバリサクを際立たせる。味のあるオルガンとはこのこと。エド・チェリーのギターも好演。バリサク、オルガンとコッテコテにもっこりファンキーなフロントの音を、シャープで切れ味の良いエレギがグッと引き締めている。

昔ながらのスタンダート曲、ミュージシャンズ・チューンズな曲、いわゆるハードバップ期からファンキー・ジャズ期に皆が得意としたスタンダード曲をメインにバリサクを吹きまくるロニー・キューバーは実に楽しそう。僕がロニー・キューバーを知ったのは、1987年の『The Gadd Gang』での好演だった。あれから32年。未だ、ロニー・キューバーのバリサクは僕のお気に入りである。
 
 
 
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2019年11月 3日 (日曜日)

秋は「米国西海岸ジャズ」が良い

秋には「米国西海岸ジャズ」が映える。アレンジ良好、テクニック良好、クールで「聴かれる」ことに重きを置いた「ポップなジャズ」。それが「米国西海岸ジャズ」。我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、ジャズを聴くのに最適なシーズンである秋に、毎年「米国西海岸ジャズ」祭がいきなり始まる。今年も先日から「米国西海岸ジャズ」祭が始まっている。

1980年代まで、我が国は、どちらかと言えば「米国東海岸ジャズ」偏重だったので、「米国西海岸ジャズ」は見向きもされない時期が続いた。が、「スイング・ジャーナル・プレゼンツ/ザ・ウエスト・コースト・ジャズ」が1991年にリリースされ、スイング・ジャーナルで特集記事が組まれたことを切っ掛けに、再び市民権を得て現代に至っている。

米国西海岸ジャズを語る上で、このジェリー・マリガンの名前は外せない。ファンクネス控えめ、ほど良くアレンジされた端正でクールな響きのジャズ。白人メインのジャズの音の基本。そして、味のある、クールなバリサク。マリガンのリーダー作はどこから聴いても「米国西海岸ジャズ」。確かに、ジャズ盤紹介本でもジャズ雑誌でも、「米国西海岸ジャズ」の紹介の中で、マリガンのこの盤は絶対といって良いほど顔を出す。
 
 
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『Gerry Mulligan Quartet Vol.1』(写真左)。1952年8月と10月の録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Chet Baker (tp), Jimmy Rowles (p), Joe Mondragon, Carson Smith, Bob Whitlock (b), Larry Bunker, Chico Hamilton (ds)。メンバーを見渡すと、米国西海岸ジャズを代表するジャズマンばかりがズラッと並ぶ。基本はピアノレスのカルテット編成。

この盤に詰まっている音は「アレンジ良好、テクニック良好、クールで「聴かれる」ことに重きを置いたポップなジャズ」。米国西海岸ジャズの特徴そのものである。録音時期は1952年。この盤以前に「米国西海岸ジャズ」の特徴を色濃く反映したアルバムは基本的に無いので、この盤が米国西海岸ジャズの萌芽、米国西海岸ジャズの発祥とされる。確かに、この盤の内容は米国西海岸ジャズの特徴そのものをしっかりと音にしている。

マリガンのバリサクとチェットのトランペットの音が実にクールに響く。決して熱くならない。熱くなっても「クールに熱く」。演奏テクニックが優秀なので、演奏展開に破綻は無い。聴く者にとって決して耳触りにならない、整然とした破綻の無い演奏。アレンジが優秀で、その優秀なアレンジが故に、演奏全体が良い意味で「抑制」されている。確かに当時の「米国東海岸ジャズ」とは対照的なジャズ。しかし、これも立派なジャズである。
 
 
 
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2019年6月23日 (日曜日)

ボーンとバリサクの低音の魅力

未だに、九州北部、中四国、そして近畿地方は梅雨入りしていないが、ここ千葉県北西部地方では昨日から今日にかけて、梅雨らしいドンヨリとした曇り空とイライラするほどの湿気。時に雨が降り、ドンヨリとした曇り空が戻ってくる。もともと子供の頃から、梅雨は大嫌い。早く梅雨が明けないかなあ。

梅雨時には、ゆったりとした気分で聴けるジャズ盤を選択することが多くなる。今日の選盤は、Curtis Fuller『Bone & Bari』(写真左)。1957年8月の録音。ブルーノート・レーベルの1572番。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb), Tate Houston (bs), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。パーソネルを確認するだけで出てくる音に期待感が高まる。
 
タイトルの「Bone」は、Trombone(ボーン)の「Bone」、「Bari」は、Baritone Sax(バリサク)の「Bari」。タイトル通り、この盤は、テート・ヒューストンのバリサクとカーティス・フラーのボーンの2管フロントが特徴。どちらも低音が魅力の楽器なのだが、このボーンとバリサクが奏でる「低音の魅力」がこの盤の最大の魅力である。
 
 
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1曲目「Algonquin」や3曲目「Bone and Bari」の元気な演奏では、トロンボーンとバリサク、どちらの低音も切れ味良く、フレーズも流麗なので、低音のユニゾン&ハーモニーながら、重たさは全く感じ無い。逆に清々しさ感じるほどだ。5曲目「Again」は、トロンボーンとバリサクのホンワカほのぼのとした低音の相乗効果が醸し出すメロウな雰囲気が実に良い。
 
バックのリズム・セクションの存在も隅に置けない。ピアノにソニー・クラーク。コロコロ転がる様な聴き心地の良いマイナーなフレーズの陰に、そこはかとなく漂うファンキー&ブルージーな感覚。このソニー・クラークのピアノのバッキングが、この盤の全体的なトーンを「ファンキーでブルージーなもの」にしている。ベースにチェンバース、ドラムにテイラーが控え、鉄壁のリズム・セクションである。 
 
これだけ魅力的な内容を備えているのにもかかわらず、人気はイマイチで、知る人ぞ知る隠れ好盤の評価に甘んじている。どうも、ブルーノート・レーベルの標準からは外れる、ちょっとアンニュイなアルバム・ジャケットがちょっと人気の足を引っ張っているのかもしれないなあ。最後に、1957年のフラーは「よく鳴る」。この盤でもフラーのトロンボーンはとても好調に「よく鳴って」いる。
 
 
 
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2019年1月18日 (金曜日)

西海岸のビッグバンドな好盤

米国西海岸ジャズの特徴のひとつは「優れたアレンジ」。ジャズを鑑賞音楽として捉えて、勢い任せの一過性の即興演奏では無く、しっかりとアレンジを施して、良質の鑑賞音楽としてのジャズを世に供給する。これが、1950年代、米国西海岸ジャズの大きな特徴である。事実、優れたアレンジが施された好盤が米国西海岸ジャズには沢山ある。

『Theme Music from "The James Dean Story"』(写真)。「Featuring Chet Baker & Bud Shank」がサブ・タイトルに付く。1956年11月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp), Bud Shank (as, fl), Don Fagerquist, Ray Linn (tp), Milt Bernhart (tb), Charlie Mariano, Richie Steward (as), Bill Holman, Richie Kamuca (ts), Pepper Adams (bs), Claude Williamson (p), Monty Budwig (b), Mel Lewis (ds), Mike Pacheco (bongos)。

チェットのトランペットとシャンクのアルトの2管をメインに、トランペットとテナーとアルトが2本ずつ、トロンボーン、バリサクが1本ずつ。バックにピアノ・トリオがリズムセクションに就く。総勢13名の小ぶりなビッグ・バンド構成。この13名が、米国西海岸ジャズの最大の特徴の1つである優れたアレンジを施して、ディーンの伝記映画に使用された音楽をお洒落なジャズに仕立て上げたもの。
 

Theme_music_from_the_james_dean_sto  

 
まず、フィーチャリングされている、チェットのトランペットとシャンクのアルト・サックスがさすがに素晴らしい。優れたアレンジに乗って、流麗かつ力感溢れるクリアな音で即興演奏を繰り広げている。とにかく上手い。結構、難しいアドリブ展開をしているんだが、事も無げに流麗に吹き上げていくので聴き易いことこの上無い。良い意味で、耳に優しい、耳当たりの良いジャズである。

バックに耳を向けると、クロード・ウィリアムソンの哀愁感漂うピアノが印象的。ジェームス・ディーンは1955年9月30日に亡くなっているので、この盤の録音時には、まだまだディーンに対する追悼の意が強くあったと思うが、この盤でのウィリアムソンのピアノには哀愁が強く漂う。これが意外とジャジーで良い雰囲気なのだ。

そして、バックの管のアンサンブルの中で、突出した音を奏でるペッパー・アダムスのバリサク。このブリッゴリッとしたバリサクの音は、流麗なチェットのトランペットとシャンクのアルトとは全く正反対の音で、この音の対比が優れたアレンジと合わせて相乗効果を生んで、演奏全体のジャズ感を増幅している。優れたアレンジと合わせて、米国西海岸ジャズでのビッグバンドの好盤としてお勧めの一枚です。

 
 
東日本大震災から7年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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