2023年3月13日 (月曜日)

北欧ジャズ・ピアノの風が吹く

ラーズ・ヤンソンは、1951年、スウェーデン生まれ。1975年にアリルド・アンドレセンのグループに加わり、プロとしての活動がスタート。自己のトリオを結成した1979年以後は、北欧ジャズの第一線で活躍している。北欧ジャズの担い手としては「古参」の存在。1980年代に、優れた内容のリーダー作を連発し、国際的に、北欧ジャズの担い手なる一流ジャズ・ピアニストとして認知された。

Lars Jansson Trio『Invisible Friends』(写真左)。1995年1月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Lars Jansson (p), Lars Danielsson (b), Anders Kjellberg (ds)。全曲オリジナルで固められた、北欧ジャズらしい、風が吹くように爽やかで、美しく親しみ易いメロディー満載のピアノ・トリオ盤。

面白いのは、何かと「キース・ジャレット」と比較されるヤンソンのピアノだが、この盤の前半では「ビル・エヴァンス」の影響が感じられるフレーズと響きが満載。しかし、ビル・エヴァンスのコピーでは無く、フレーズの弾き回しと「間」の取り方が似ているが、和音の重ね方はヤンソンのオリジナル。響きは深く透明度の高いエコーがかかった北欧ジャズらしい響き。北欧ジャズらしく、ヤンソンの解釈する「ビル・エヴァンス」といった風のピアノがユニーク。
 

Lars-jansson-trioinvisible-friends

 
後半は、いつも通りの北欧ジャズらしい、美しく親しみ易い「ヤンソン節」満載の、耽美的でリリカル、深遠でメロディアスなピアノの弾き回しが堪能できる。しっかり聴くと「キース・ジャレット」のヨーロピアン・カルテットのピアノとは、やっぱり違ってて、ヤンソンのピアノは、キースと比べて、表現がシンプルでトーンが暖かく、フレーズは判り易く親しみ易い。この盤の後半部分の音を聴いていても、ヤンソンのピアノは、キースのピアノとは「似て非なるもの」だと感じる。

バックのリズム隊もいかにも北欧ジャズらしい音で、演奏全体のリズム&ビートをしっかり支え、牽引している。ダニエルソンのベースは、しなやかな鋼の様なシャープな弦鳴りで、エモーショナルに堅実に、ベースラインを供給する。シェルベリドラムも柔軟なスティック捌きで、硬軟自在、緩急自在、フロントのフレーズに的確に反応するドラミングは相変わらず見事だ。

前作の初リーダー作であったトリオ盤から、4年を経てのリーダー作第2弾であるが、出てくる音世界にブレは無い。冒頭の「Invisible Friends」から、ラストの「Under The Bodhi Tree」まで、北欧ジャズのピアノ・トリオの音が満載。これだけ、耽美的でリリカルな音世界なのに、スピリチュアルな世界に入り込まず、美しく親しみ易いニュー・ジャズなトリオ演奏を展開するところが、ラーズ・ヤンソン・トリオの真骨頂。北欧ジャズの好盤の1枚です。
 
 

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年3月 6日 (月曜日)

ラーズ・ヤンソンの初期の名盤

北欧ジャズは好きなのだが、このところちょっと北欧ジャズを聴くのが途絶えていた。しかし、最近、Helge Lien Trio『Revisited』を聴いて、北欧ジャズ禁断症状が出てきた(笑)。今、北欧ジャズの好盤をチョイスしている最中。今年は「北欧ジャズ・イヤー」にしようかと企てている。

Lars Jansson Trio『The Window Towards Being』(写真)。1991年2月、オスロのレインボー・スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Lars Jansson (p), Lars Danielsson (b), Anders Kjellberg (ds), Guest: Brynjar Hoff (oboe on 5,12,13)。リーダーのラーシュ・ヤンソンのピアノ・トリオに、ゲストで3曲に、ブリニャル・ホフのオーボエが入っている。

ラーズ・ヤンソンは、1951年、スウェーデン生まれ。1975年にアリルド・アンドレセンのグループに加わり、プロとしての活動がスタート。自己のトリオを結成した1979年以後は、北欧ジャズの第一線で活躍している。

初リーダー作は1984年。1991年、今回ご紹介している『The Window Towards Being』でメジャーな存在になって、ECMレーベルを通じてだけの北欧ジャズの情報が、我々ジャズ者の間にも、ダイレクトに流布し出した切っ掛けにもなった。

ラーズ・ヤンソンのピアノは、明らかに北欧ジャズのピアノである。流麗でリリカル、透明度が高く耽美的。唄う様に印象的に流れるフレーズ、そして、漂うが如く広がるが如く、幽玄に広がる音の響き。
 

Lars-jansson-triothe-window-towards-bein

 
即興演奏がメインのジャズではあるが、米国の粘りのオフビートがメインのスインギーな4ビート・ジャズとは全く異なる、ファンクネス皆無、黒さは微塵も無く、どちらかと言えば、クラシックに通じる音の流れと響き。しばらく聴き耳を立てれば直ぐに「北欧ジャズ」と判る独特の個性。

ヤース・ダニエルソンのベースも良い。北欧ジャズのベーシストは誰もが「素姓が良い」。ピッチはキッチリ合っているし、ウッドベースの「鳴り」も鋼性豊かでしなりがある。

テクニックは優秀、フロントの即興演奏に応じたベースラインの出し方は正確かつ端正。ラーズ・ヤンソンの北欧ジャズ・ピアノをしっかりサポートし、鼓舞している。

それから、これまたスウェーデン出身のアンダーシュ・シェルベリのドラミングも優秀。柔軟なスティック捌きで、硬軟自在、緩急自在、フロントのフレーズに的確に反応し、フロントの欲しいリズム&ビートをタイムリーに供給するドラミングは見事だ。米国ジャズには無い、テクニカルでアーティスティックなドラミングは、北欧ジャズの特徴のひとつでもある。

ジャケットデザインもアーティスティックで優秀。いかにも「北欧」らしいアートで、これも北欧ジャズの個性のひとつ。1曲目「More Human」の美しさは筆舌に尽くしがたい。この1曲の「個性と特徴」に代表される様に、北欧ジャズは唯一無二の個性を持った、ジャズのメジャーなジャンルのひとつに進化した。北欧ジャズは追求するに値するジャズのジャンルである。
 
 

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2023年2月26日 (日曜日)

北欧ジャズの好トリオ盤です

北欧ジャズが好きだ。1970年代後半、本格的にジャズを聴き始めた頃、友人からECMレーベルのアルバムを紹介されて、その耽美的でリリカルで流麗なフレーズと余裕のある大らかで包容力のあるリズム&ビートに驚いた記憶がある。それまで「ジャズ」と思って聴いていた米国ジャズと全く異なる雰囲気。これが欧州ジャズか、とひどく感心した。

Helge Lien Trio『Revisited』(写真左)。2020年3月31日、10月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Helge Lien (p), Johannes Eick (b), Knut Aalefjaer (ds)。ノルウェーのヘルゲ・リエン (p) がリーダーのピアノ・トリオの、2019年の『10』以来となる最新作。演奏曲は、過去に演奏したもののセルフ・カヴァーである。

一聴して「これは北欧ジャズやな」と思うくらいの、北欧ジャズの特徴溢れるピアノ・トリオ演奏。北欧ジャズの雰囲気をグローバル・サイズで知らしめたのは、キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットの功績が大きいと思うが、確かに、キースのピアノで聴いたことのある雰囲気、フレーズが出てくる。が、基本的に「タッチと手癖」が異なるので、キースの物真似とは感じ無い。逆に「北欧ジャズ」の典型的な演奏が出てきたぞ、と嬉しくなる。
 

Helge-lien-triorevisited

 
オール・ノルウェーのメンバー構成。ゆったりとした、少しほのぼのとした、仄かに明るく、耽美的でリリカルで流麗な音世界。硬質ながら、ややエッジの丸いリエンのピアノ、程良く絡むエイクのベース、多彩で柔軟度の高いオーレフィアールのドラム。透明度の高い楽器の響き。印象的なエコー。

リエンのピアノが個性的で良い。クールで冷たい熱気が伝わってくるのだが、どこかほのぼのと暖かい響きがする。雰囲気的には「北欧の夏」の様な、明るく暖かなピアノの響き。テクニックに優れ、速い弾き回しには淀みは無い。でも、そのテクニックをひけらかすことは無い。北欧ジャズらしい、耽美的でリリカルで流麗なフレーズを、余裕を持った、ゆったりとした雰囲気で、しっかりと聴かせてくれる。このリエンのピアノは「癖になる」。

4ビートのスイングでなければ、ファンクネスは皆無、ジャム・セッション風のバトルも無い。それでも「ジャズ」である。冷たい熱気溢れる、クールでスタイリッシュな展開。硬軟自在、緩急自在の柔軟度の高い、即興性溢れるアドリブ。エコーのかかった独特の透明度の高い響きは「北欧ジャズ」の最大の個性。そんな「北欧ジャズ」の雰囲気満載の好トリオ盤である。
 
 

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2022年7月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・244

マンフレート・アイヒャーによって、1969年に設立された欧州のジャズ・レーベル「ECM(Edition of Contemporary Music)」。ECMレーベルは、ジャズについては「典型的な欧州ジャズ」を旨とする。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。

21世紀に入ってもなお、ECMレーベルは活発な活動を継続している。1969年の設立以降、停滞、中断の期間が全く無いのが凄い。21世紀に入ってからは、欧州各国の欧州ジャズの優れた才能に着目してリーダー作を制作させていて、ECMレーベルは名実共に「欧州ジャズを代表しリードする老舗のジャズ・レーベル」となっている。

Mathias Eick『Skala』(写真左)。2009年12月〜2010年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Mathias Eick (tp), Andreas Ulvo (p), Audun Erlien (el-b), Torstein Lofthus (ds), Gard Nilssen (ds), Morten Qvenild (key), Tore Brunborg (ts), Sidsel Walstad (harp)。リーダーのマティアス・アイクはノルウェー出身のトランペッター。パーソネルを見渡せば、ノルウェー出身のミュージシャンで固めた「純ノルウェー」ジャズである。
 

Mathias-eickskala

 
アイクは1979年生まれなので、今年で43歳。バリバリ中堅のジャズマン。北欧ジャズらしい、耽美的でリリカル、明瞭で流麗、哀愁感溢れるトランペットを聴かせてくれる。ECM独特の深いエコーに乗って、浮遊感溢れる、墨絵の様な複雑な拡がりのあるトランペットはアイクならでは。加えて、今回のリーダー作は全曲自身のオリジナルで構成されていて意欲的。

北欧ジャズらしい響きと旋律の中で、従来の純ジャズでも無く、クロスオーバー&フュージョンなジャズでも無い、新しい感覚の「21世紀のニュー・ジャズ」。奏でられるメロディーが実に聴き易く、ユッタリとしていて、それでいて、即興演奏の妙がそこかしこに散りばめられている。即興演奏に軸足をしっかり置いている以上、この演奏内容はしっかりと「ジャズ」であると思う。

北欧ジャズの、ノルウェー・ジャズの「今」を聴く想いの、21世紀のノルウェー・ジャズの「創造力の充実」と「即興演奏力の高さ」をビンビンに感じる優秀作。何となく「ジャズ・ロック」な雰囲気も漂う、どこか、北欧の「ウエザー・リポート」、若しくは、北欧の「パット・メセニー・グループ」の様な、良い意味で、コンテンポラリーなジャズ・ロックな雰囲気も僕は好きだ。
 
 

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2022年6月 9日 (木曜日)

北欧のピアノ・トリオの「今」

「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

21世紀に入っても、ECMレーベルの活動は衰えることは無い。北欧系、東欧系、イスラエル系の有望なジャズマンを積極的に発掘し、ECMらしいニュー・ジャズをリリースし続けている。マンフレート・アイヒャーは今年で79歳。ECMの総帥プロデューサーとしてまだまだ盛んである。

Tord Gustavsen Trio『Opening』(写真左)。2021年10月、スイスにての録音。ちなみにパーソネルは、Tord Gustavsen (p, electronics), Steinar Raknes (b, electronics), Jarle Vespestad (ds)。リーダーのピアニスト、トルド・グスタフセンは、ノルウェー出身のジャズ・ピアニスト。ECMからのトリオ作品としては5作目になる。
 

Tord-gustavsen-trioopening

 
墨絵の様な、漂うが如き、芯の入った音の広がり。ゆったりとした展開のインタープレイ。そこに、ECMレーベル独特の「限りなく静謐で豊かなエコー」がかかる。静謐かつ深遠にて耽美的な、そして、どこか一筋の光が差し込んで来る様な音世界。マイナーな和音の重ね方が「北欧ジャズ風」。北欧ジャズ独特の「不思議な開放感」が心地良く耳に響く。

グスタフセンの内省的で耽美的なピアノが映える。広がりと間に重きを置いた、ゆったりとした弾きっぷりだが、しっかりとしたタッチで音を重ねる。ノルウェーの実力派ベーシスト、スタイナー・ラクネスが、変幻自在なベースで、演奏のベースラインを際立たせる。同じくノルウェー出身のヤール・ヴェスペスタの繊細なスティック捌きと硬軟自在なブラシワークが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支える。

叙情的でリリカルな旋律が淀みなく淡々と流れて行く、スイング・ジャズの対極にある演奏。時に出てくるマイナー調のゴスペルっぽい響きは北欧ジャズ独特の響き。この盤は、現代の北欧ジャズの「今」を、ECMレーベルのピアノ・トリオの「今」をじっくりと聴かせてくれる。
 
 

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2022年4月19日 (火曜日)

ECM盤を出した3人目の日本人

雑誌Jazz Lifeの「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を眺めていて、日本人女性がリーダーの盤を見つけた。しかも、 ECMレーベルからのリリースとある。え〜っ、ECMレーベルが日本人ジャズ・ミュージシャンをピックアップして、リーダー作を作らせたのか? 慌てて、ECMレーベルのカタログを見直してみたら、やっぱり「ありました」。

Ayumi Tanaka Trio『Subaqueous Silence』(写真左)。2019年6月、ノルウェーのオスロ「Nasjonal Jazzscene Victoria」での録音。リーダーは日本人の「田中鮎美」。邦題は「スベイクエアス・サイレンス − 水響く −」。

ちなみにパーソネルは、Ayumi Tanaka (p), Christian Meaas Svendsen (b), Per Oddvar Johansen (ds)。ノルウェーの優秀なリズム隊をバックに従えた、日本人女性ジャズ・ピアニストがリーダーの「ピアノ・トリオ」編成。

田中鮎美は、現在ノルウェー在住の日本人ピアニスト&作曲家。2011年にオスロに渡り、ノルウェー国立音楽院のジャズ・即興音楽科に入学、故ミシャ・アルペリンに師事。そして、2013年、ノルウェーの若手有望ベーシスト、Christian Meaas Svendsen、同じくノルウェーの中堅人気ドラマー、Per Oddvar Johansenに出会い、田中鮎美トリオを結成、2016年にアルバム『Memento』にてデビュー。本作はそれ以来5年ぶりとなる2枚目のリーダー作。
 

Subaqueous-silence_ayumi-tanaka

 
テンション張った、即興演奏がメインの演奏になる。静的なリズム&ビートを底に忍ばせながら、ハードバップやモーダルな演奏とは全く正反対の、現代クラシックの室内楽アンサンブルの様な、ピアノ、ベース、ドラム、それぞれが対等の立場に立った、フリーなインタープレイ。

ピアノ、ベース、ドラム、それぞれの音数は少ない。最小限の音で表現される音の浮遊感、音の響きの広がり、音と音との「間」を活かした即興演奏。決して無手勝流の、激情にまかせたフリーなインプロビゼーションとは異なる、透明度高く、音の広がりと浮遊感をメインとした、静的なフリーなインプロビゼーション。

まるで、日本の「水墨画」を見る様な音世界である。音と音との「間」を活かしたインタープレイは、「静寂」「侘び」「寂び」な音の響きを紡ぎ上げている。

今までにも、日本人による同様な音の浮遊感、音の響きの広がり、音と音との「間」を活かした即興演奏はあるにはあったが、今回の田中鮎美トリオによる「表現」は次元が違う。かなり高度なレベルの、実にアーティステックな「静的でフリーなインプロビゼーション」である。

ピアニストの菊地雅章、ドラマーの福盛進也に次いで、日本人でECMからリーダー作を発表する3人目となった「田中鮎美」。ECMレーベルの音作りのコンセプトである『沈黙の次に美しい音』 ”The Most Beautiful Sound Next To Silence” を具現化した、注目に値するアルバム『Subaqueous Silence』。リーダーの田中鮎美には、この盤だけの単発に終わること無く、定期的にリーダー作をリリースし続けて行くことを望みたい。
 
 

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2021年11月20日 (土曜日)

丁抹のクロスオーバー・ジャズ

さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫である「SteepleChase」。このレーベル、当初は、米国から欧州に移住してきた、ハードバッパーな一流ジャズマンを中心に、1970年代の上質なハードバップを録音してきたのだが、しばらくして自信を付けたのか、独自の感覚で、レーベル独特のジャズマンをチョイスしてリーダー作を制作させている。

Coronarias Dans『Visitor』(写真左)。1973年7月と11月、コペンハーゲンの「Rosenberg Studio」での録音。Steeplechaseレーベルの SCS1032番。ちなみにパーソネルは、Peter Friis Nielsen (b), Ole Streenberg (ds), Claus Bøhling (g), Kenneth Knudsen (key)。Coronarias Dans(コロナリアス・ダン)とはグループ名である。

コロナリアス・ダンは、デンマークのジャズロック&クロスオーバー・ジャズのバンド。1969年のバンド設立で、もともとは、サイケデリック・ロックに近い音だったらしい。アルバムのリリースは、デビュー盤の『Breathe』と、今回ご紹介する『Visitor』の2枚のみ。音的には、ジャズロックというよりは、創造性を優先するアグレッシヴなアプローチが散見される、クロスオーバー・ジャズに近いテイストである。 
 

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冒頭の「Se Det」を聴けば、それが良く判る。フェンダー・ローズの使い方は、チックやキースの如く。但し、リズム&ビートにファンクネスは希薄。なるほど、デンマーク出身のバンドの音である。エレベのウォーキング・ベースがとってもスインギー。このバンドの音が「ジャズ」に立脚していることが理解出来る。

2曲目の「Morning」は、浮遊感漂う幽玄なエレピの音と、自由度の高いドラムの疾走。そこに切り裂くように入る、エフェクトをかけたエレピとエレギの旋律、おどろおどろしいベースの音の動き。これはエレクトリックなフリー・ジャズだ。印象的なベース・ソロあり、4曲目「Don't Know」では、攻撃的でクロスオーバーなエレギのソロが迫力をもって迫ってくる。

キーボードの音はチックの様であり、ザヴィヌルの様な響きもあり、エレギの音はマクラフリンの様でもあり、コリエルの様でもあり。先行するエレ・ジャズ、クロスオーバー・ジャズの要素をしっかり踏まえて、独自の音を創り出しつつあった、デンマーク発のジャズロック&クロスオーバー・ジャズがこの盤に詰まっている。個性的であるが故に、この盤でリリースが途絶えたのが残念である。
 
 
 
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【New】 2021.08.11 更新。

  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

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  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

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  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

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2021年11月 1日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・222

デクスター・ゴードン(Dexter Gordon、愛称「デックス」)は、ジャズ・サックスのレジェンド中のレジェンド。1923年生まれ、1990年、67歳で鬼籍に入っている。1940年代のビ・バップ時代から第一線で活躍、しかしながら、1950年代は麻薬禍のため活動が低迷、1960年代初頭にブルーノートに複数の秀作を残した後、1976年にかけて渡欧し、フランスやデンマークを拠点に活動。1976年以降は米国に戻りカムバックしたが、活動はフェードアウト。

デックスのサックスは「骨太で大らかで、ダンディズム溢れる、悠然とした」サックス。基本はビ・バップ。フリーやスピリチュアルな奏法には目もくれず、ハードバップなブロウを維持し続けた。高速な弾き回しはしないが、テクニックは優秀。加えて、アドリブ・フレーズは歌心満点。鼻歌を唄うが如く、時折、有名曲の引用なども交えて、聴き応えのある吹き回しが素晴らしい。

Dexter Gordon & Orchestra『More Than You Know』。1975年2月, 3月、コペンハーゲンでの録音。スティープルチェイス・レーベルのSCS 1030番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts, ss, vo), Thomas Clausen (ac-pi, el-p), Kenneth Knudsen (syn), Ole Molin (g), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Alex Riel, Ed Thigpen (ds), Palle Mikkelborg (arr, cond) with Stirings。

デックスの「ウィズ・ストリングス」盤になる。「ウィズ・ストリングス」盤と言えば、ちょっと甘いストリングスをバックに、流麗なフレーズを吹き上げながら、ちょっとイージーリスニング風の内容を想起する。この盤についても、聴く前は「へー、デックスも甘々なウィズ・ストリング盤を出してたんや」と思って、暫く敬遠していた。
 

More-than-you-know

 
が、聴いてみて「あらビックリ」である。デンマークのジャズ・トランペッター兼作曲家、パレ・ミッケルボルグによるによるストリングスの作編曲が、かなりプログレッシヴな内容。このミッケルボルグの作編曲によるストリングスは、スケールが大きく、独特の美しい響きを湛え、それでいて、要所要所でどこか現代音楽や現代クラシック音楽を想起するフレーズが散りばめられている。

デックスは、この現代的でプログレッシヴなストリングスに呼応して、時に豪快に、時に繊細に、情感豊かで歌心溢れるフレーズを吹き分けている。この「吹き分け」が素晴らしくて、ハードバップらしくコードに忠実なブロウもあれば、モーダルなブロウもある。ゆったりと静的なスピリチュアルなフレーズもあれば、ちょっとアブストラクトなフレーズも吹き上げる。

デックスの「骨太で大らかで、ダンディズム溢れる、悠然とした」サックスと、デックスの持つサックス表現&テクニックの優秀さを実感出来る、素晴らしい内容の「ウィズ・ストリングス」盤である。デックスのサックスの全ての表現がこの盤に詰まっている、と言っても良いか、と思う。デックスが、これだけ先進的に現代的にサックスを吹きまくるとは、聴き終えた後、思わず「スタンディング・オベーション」である。

さすが、北欧の「ブルーノート」と称されるスティープルチェイス・レーベル。この盤では、デックスのサックス奏者としての能力の全てを引き出している。そんな要求に臆すること無く、何事も無かったかの様に、自然体で最高のサックスを吹き上げるデックスは、とても格好良い。脱帽である。
 
 
 
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2021年9月 9日 (木曜日)

ラングレンの「欧州紀行」盤

北欧ジャズは耽美的で透明度が高く、テクニックは高度、歌心が豊かで流麗、静謐でクールな音世界が特徴。1950年代から北欧ジャズは発展してきたが、北欧ジャズの凄いところは、この「北欧ジャズならではの特徴」が1950年代に出現して以降、現代まで、ずっと継続され、年を経る毎に「進化」し「深化」していること。特に、ピアノ・トリオにその傾向が顕著である。

Jan Lundgren Trio『European Standards』(写真左)。2008年10月2-7日録音。ちなみにパーソネルは、Jan Lundgren (p, fender rhodes), Mattias Svensson (b), Zoltan Csorsz Jr. (ds, per)。パーソネルを構成する3人は皆、スウェーデン出身。スウェーデン純血のピアノ・トリオ演奏である。

収録曲のタイトルを見れば、ミシェル・ルグランの「風のささやき」、フランシス・レイの「男と女」、レノン&マッカートニーの「ヒア・ゼア・アンド・エブリウェア」そしてハンガリー、スイス、イタリア、スペイン、ポーランドの民謡、フォーク・ソングがズラリと並ぶ。タイトル通り、当盤のテーマは音楽で綴る欧州紀行。
 

European-standards

 
ヤン・ラングレンのピアノは北欧ジャズの特徴をしっかりと引き継いでいて、実に印象的。耽美的で透明度が高いピアノの響き。テクニックは申し分無い。ラングレンのピアノの個性は「トーン」。ピアノのトーンが明るくポジティヴ。北欧ジャズによくある「黄昏時のくすんだ夕陽の輝き」の様なトーンでは無く、「明確に明るい優しい陽射し」の様なトーン。

このトーンがこの盤の「音楽で綴る欧州紀行」の旋律をクッキリ浮き立たせている。この盤では、ラングレンはフェンダー・ローズも弾いている。これがこれまた良い雰囲気。曲によってローズを弾いているのだが、ウォームでクールでバッチリ決まっている。

加えて、このトリオのリズム隊が、意外と北欧ジャズらしくない、躍動感溢れ、メリハリ効いてリズミカル。このポジティヴなリズム隊のサポートを受けて、この盤のトリオ演奏が、健康的な「躍動感」と「メジャー・トーンな響き」に満ちあふれているところが、この盤のトリオ演奏の特徴である。

選曲良し、演奏良し。ヤン・ラングレンのピアノ・トリオは企画ものが多いが、この「音楽で綴るヨーロッパ紀行」企画、じっくり聴くも良し、ながらで聴き流すも良し、なかなかの秀作である。
 
 
 
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2020年11月 3日 (火曜日)

テリエ・リピダルの陰謀・謀略

Terje Rypdal(テリエ・リピダル)。ノルウェー出身、ECMレーベルの看板ギタリスト。彼のキャリアにおいて、2〜3枚の例外はあるが、リーダー作については、ほぼECMレーベルからのリリースになる。リピダルは1947年生まれ。今年で73歳。初リーダー作が1968年なので、ジャズ・ギタリストとしてのメジャーなキャリアとしては52年。半世紀以上に渡って活躍する「レジェンド級」のギタリストである。

リピダルのギターについては、恐らく1〜2分聴き続けたら絶対にリピダルだと判るくらい、とても個性的な音である。幽玄で浮遊感のあるフレーズを多用した「ニュー・ジャズ」志向の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう面では欧州ジャズ独特といえる。ジャズ・ギターというよりは、ロック・ギターと言った方が良いか、プログレ・ギタリスト的な音を出す。

浮遊感のある、ビートに乗らない、ロングトーンでフリーな独特とフレーズ。ジャズなのか、ロックなのか、どちらかにしろ、と詰問されたら、やはり「ジャズ」と答えてしまう。そんな不思議な音を持ったギタリスト。そして、リピダルは、半世紀を越えるメジャーなキャリアの中で「決してブレない」。ECMレーベルでのメジャー・デビュー盤『Terje Rypdal』の音が、マンネリに陥らず、ずっと今まで続いている。これって意外と凄いことだと思っている。
 
 
Conspiracy-terje-rypdal
 
 
Terje Rypdal『Conspiracy』(写真左)。2019年2月、ノルウェーはオスロのRainbow Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g), Ståle Storløkken (key), Endre Hareide Hallre (b), Pål Thowsen (ds, perc)。プロデューサーは当然、マンフレッド・アイヒャー。ノルウェー出身のメンバーで固めた、リピダルの約20年ぶりのスタジオ録音作品になる。

このリピダルの新作は、リピダルのリピダルらしい個性満載。往年のメジャー・デビュー当時の、幽玄で浮遊感溢れるサステインの効いたエレクトリック・ギターが再現されている。しかし、フレーズの作りが現代的で、その音はノスタルジックでは無い、現代の新しい響きのするもの。キーボードの参加が目新しく、ハモンド・オルガンの音がリピダルのエレギに溶け込み、創造的で耽美的なユニゾン&ハーモニーを奏でる様は今までにリピダルには無い要素。

アルバム・タイトルの「Conspiracy」は「陰謀・謀略」の意。この盤を聴くと、リピダルはまだまだ深化している。この個性は全くブレていないが、この盤で聴かれる音はノスタルジーとは全く無縁。初期のリピダルの個性を現代のニュー・ジャズの要素と合わせてリコンパイルし、新しいリピダルの音世界を創造しようとしている様に感じる。それが「陰謀・謀略」であるなら、聴き手の我々としては全くウエルカムである。
 
 
 

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