2020年11月 3日 (火曜日)

テリエ・リピダルの陰謀・謀略

Terje Rypdal(テリエ・リピダル)。ノルウェー出身、ECMレーベルの看板ギタリスト。彼のキャリアにおいて、2〜3枚の例外はあるが、リーダー作については、ほぼECMレーベルからのリリースになる。リピダルは1947年生まれ。今年で73歳。初リーダー作が1968年なので、ジャズ・ギタリストとしてのメジャーなキャリアとしては52年。半世紀以上に渡って活躍する「レジェンド級」のギタリストである。

リピダルのギターについては、恐らく1〜2分聴き続けたら絶対にリピダルだと判るくらい、とても個性的な音である。幽玄で浮遊感のあるフレーズを多用した「ニュー・ジャズ」志向の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう面では欧州ジャズ独特といえる。ジャズ・ギターというよりは、ロック・ギターと言った方が良いか、プログレ・ギタリスト的な音を出す。

浮遊感のある、ビートに乗らない、ロングトーンでフリーな独特とフレーズ。ジャズなのか、ロックなのか、どちらかにしろ、と詰問されたら、やはり「ジャズ」と答えてしまう。そんな不思議な音を持ったギタリスト。そして、リピダルは、半世紀を越えるメジャーなキャリアの中で「決してブレない」。ECMレーベルでのメジャー・デビュー盤『Terje Rypdal』の音が、マンネリに陥らず、ずっと今まで続いている。これって意外と凄いことだと思っている。
 
 
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Terje Rypdal『Conspiracy』(写真左)。2019年2月、ノルウェーはオスロのRainbow Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g), Ståle Storløkken (key), Endre Hareide Hallre (b), Pål Thowsen (ds, perc)。プロデューサーは当然、マンフレッド・アイヒャー。ノルウェー出身のメンバーで固めた、リピダルの約20年ぶりのスタジオ録音作品になる。

このリピダルの新作は、リピダルのリピダルらしい個性満載。往年のメジャー・デビュー当時の、幽玄で浮遊感溢れるサステインの効いたエレクトリック・ギターが再現されている。しかし、フレーズの作りが現代的で、その音はノスタルジックでは無い、現代の新しい響きのするもの。キーボードの参加が目新しく、ハモンド・オルガンの音がリピダルのエレギに溶け込み、創造的で耽美的なユニゾン&ハーモニーを奏でる様は今までにリピダルには無い要素。

アルバム・タイトルの「Conspiracy」は「陰謀・謀略」の意。この盤を聴くと、リピダルはまだまだ深化している。この個性は全くブレていないが、この盤で聴かれる音はノスタルジーとは全く無縁。初期のリピダルの個性を現代のニュー・ジャズの要素と合わせてリコンパイルし、新しいリピダルの音世界を創造しようとしている様に感じる。それが「陰謀・謀略」であるなら、聴き手の我々としては全くウエルカムである。
 
 
 

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2020年8月21日 (金曜日)

ノルウェーからクールなトリオ盤

とにかく暑い。酷暑である。エアコンを入れた家の中でも何だか暑い。昼間に外へ出たら湿気で「むっ」とする。そして、途端におでこに汗が噴き出てくる。陽向にいるとジリジリと太陽が肌を突き刺す。グリルで焼かれる魚って、こんな気分なんだろう。とにかく暑い。あまりに暑いので、涼しさを感じさせてくれる様なジャズを聴こうと思い立つ。

涼しさを感じさせてくれる、いわゆる耽美的でクールなジャズと言えば「欧州ジャズ」だろう。北欧ジャズ系か、ECMレーベルの音系がクールで透明感があって涼しげで良い。いろいろとアルバムの1曲目を聴きながら選盤を進める。5枚目くらいで、ふとこの盤の音が気になった。

ECMレーベル系のクールで耽美的でエコーがかかった音世界ではあるが、ECMレーベルの音では無い。ECMレーベルの盤よりエコーは浅め、そして、選曲がECMレーベルらしくない。それでもピアノなど楽器の響きはECMレーベルっぽい。この盤の素性が知りたくなった。今回の「酷暑対策」の欧州ジャズ盤はこの盤に決定。

Olga Konkova, Carl Morten Iversen & Audun Kleive『Going with the Flow』(写真左)。1996年8月26, 27日、ノルウェーはオスロの Rainbow Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Olga Konkova (p), Carl Morten Iversen (b), Audun Kleive (ds)。ロシア生まれの才媛、オルガ・コンコヴァ(写真右)がピアノを担当したトリオ盤である。
 
 
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先に述べた、この盤の1曲目を聴いた時の感想は「当たらずといえども遠からず」。ECMレーベルっぽい音は、オスロの Rainbow Studioでの録音だからだろう。ECMレーベルもよくこのスタジオを使う。

そして、この盤はノルウェーのレーベル「Curling Legs」からのリリース。あのECMレーベルらしい「深いエコー」が浅めなのが、これで納得。そう言えばジャケット・デザインもECMレーベルのデザイン志向とは異なる。

1969年、ロシア生まれの才媛オルガ・コンコヴァ28歳の作品。耽美的でクールなピアノであるが、タッチはエッジは丸いが硬質。ミッドテンポの透明感溢れる弾き回しは確かに「ECMレーベル風」。ノルウェー出身、ベースのイヴェルセンの重低音ベースがグイグイ迫る。ドラムのクレイヴは、切れ味良く柔軟かつ堅実なリズム&ビートを供給する。こちらもノルウェー出身。

選曲は親しみ易いものが多く、レノン=マッカートニーの「Michelle」のカヴァーはアレンジも新鮮で聴き応え十分。スタンダード曲の「Yesterdays」はしみじみ、エヴァンスの十八番「Nardis」は明確なタッチで、硬質なクリスタル感溢れる弾き回しに思わず耳をそばだてる。そして、楽器の音にかかるエコーが実に心地良い。聴き味爽やかでクールな、「北欧ジャズ」志向満点のピアノ・トリオ盤である。
 
 
 

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2020年8月16日 (日曜日)

「避暑」にピッタリの好盤です

今年も、はや「お盆」である。今日は京都で言うと「送り火」の日。お盆休みも終わって、8月も後半である。今年は酷暑。それでも、このところ、風が吹くようになってきた千葉県北西部地方。風が吹けば部屋の中もちょっと涼しくなって、午前中はエアコン要らずになる。

さて、酷暑が続くと、日頃聴くジャズについても、清涼感溢れるジャズばかりを選ぶ様になった。清涼感溢れるメインストリーム系のジャズと言われれば、僕は「北欧ジャズ」に走る。

北欧ジャズの特徴は「透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味」。酷暑の夏の「避暑」にピッタリである。

Esbjörn Svensson Trio『Good Morning Susie Soho』(写真左)。2000年のリリース。ちなみにパーソネルは、Esbjörn Svensson (key), Dan Berglund (b-g, b), Magnus Öström (ds, gopichard, perc, tabla)。北欧ジャズの有名トリオ、Esbjörn Svensson Trio=略して「EST」の好盤である。
 
 
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北欧のジャズ・ピアノは決まって「耽美的でリリカル」。しかし、スベンソンのピアノは、その「耽美的でリリカル」な共通の個性に加えて、まるでロックの様なリフが続き、独特のグルーヴ感を醸し出す。

米国東海岸ジャズのファンキーなグルーヴ感とは全く異なる、この北欧ジャズ独特の「耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味」をベースとしたグルーヴ感は癖になる。

そして、この北欧トリオの演奏の、ピアノ=ベース=ドラムが三位一体となったインタープレイが素晴らしい。北欧ジャズのピアノ・トリオ独特の、クールに静的に耽美的に絡む、三位一体のインタープレイ。そのインタープレイの「透明度の高い、エッジの効いた音の響き」に深いエコーがかかる。清涼感抜群である。

表現力が多彩で、北欧ジャズの中でも「独特の個性を持つ」ピアノ・トリオ。それが「EST」。そんなESTの密かに尖った、北欧ジャズの中でも「一歩先を行く」音が、この盤に詰まっている。とにかく北欧ジャズの中でも「ユニーク」な存在。クールで清涼感溢れる耽美的な音世界は「凛」としていて聴き応えがある。「避暑」にピッタリの好盤ですね。
 
 
 

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2020年8月14日 (金曜日)

北欧の「ネオ・ハードバップ」盤

欧州ジャズが気に入っている。欧州ジャズについては、僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、我が国ではフュージョン・ジャズが大流行していた訳だが、その裏でメインストリーム・ジャズについては、エリア的広がりが出てきた。いわゆる「欧州ジャズ」のアルバムが我が国でも流通するようになった。代表的なレーベルとしては、ECM、SteepleChase そして、Enjaである。

以降、欧州ジャズのアルバムは定期的に我が国でもコンスタントに流通するようになり、特にインターネットの時代に入ってからは、欧州ジャズの情報がかなり速く入って来る様になり、ネットでの音楽のダウンロード・サイトが開設されて以降は、ダイレクトに欧州ジャズの音源が入手出来る様になった。インターネットのお陰で、ジャズについては、グローバル・サイズで体験できる様になった。

Jesper Thilo『Swing is the Thing』(写真左)。2019年10月23日-25日、コペンハーゲンの「ザ・ヴィレッジ」での録音。ちなみにパーソネルは、Jesper Thilo (ts), Søren Kristiansen (p), Daniel Franck (b), Frands Rifbjerg (ds)。デンマーク・ジャズ界の巨人、テナーマンの Jesper Thilo (イェスパー・シロ)がリーダーの好盤。約10年ぶりとなる新録音となる。
 
 
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解説によると「スタジオ録音ではあるが、編集や修正なしのライヴ的録音」とのこと。確かにライブ感溢れる演奏で、とりわけ、リーダーのイェスパー・シロののテナー・サックスが凄く良い音を出している。端正で骨太、躍動感溢れスケールの大きい、スインギーなテナー・サックス。本場米国ジャズでも十分に通用するどころか、イェスパー・シロに匹敵するテナーマンはなかなかいない。

選曲も実にふるっていて、ディジー・ガレスピー、ジョージ・ガーシュウィン、オスカー・ペティフォード、ヴァーノン・デューク、ジョン・クレナー、アール・ハインズらのスタンダード・ナンバーを披露していて、このスタンダード曲の演奏が実に味わい深い。北欧ジャズらしからぬ、ストレートアヘッドでハードバップな演奏が繰り広げられている。

ピアノのクリスチャンセンはデンマーク、ベースのフランクはスウェーデン、リフビャフはデンマーク。デンマーク出身3人+スウェーデン出身1人の北欧ジャズのワンホーン・カルテット。北欧ジャズと聞くと、ECMレーベルの影響からか、耽美的で静的なジャズを想起するが、この盤はちょっと違う。クールで躍動感溢れる「ハードバップ」な雰囲気。北欧の「ネオ・ハードバップ」盤。好盤です。
 
 
 

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2020年6月29日 (月曜日)

躍動的な北欧ジャズ・ピアノ

今年の夏は「とても梅雨らしい」。雨が降れば降ったで思い切り降るし、晴れ間が出たら出たで思い切り蒸し暑い。この蒸し暑さが我慢ならない訳で、ジャズを聴く分にも、この蒸し暑さではまともに聴く気にならない。それでもジャズは聴きたい訳で、この蒸し暑さの中でも、ある程度、気持ち良く聴けるジャズは何か、と考える。

Jan Lundgren Trio『For Listeners Only』(写真左)。2000年12月11ー13日、コペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Jan Lundgren (p), Mattias Svensson (b), Rasmus Kihlberg (ds)。リーダーのヤン・ラングレンはスウェーデンのピアニスト。 マティアス・スベンソンは同じく、スウェーデンのベーシスト。ラスムス・キルベリはやはり同じく、スウェーデンのドラマー。そう、このトリオは純スウェーデン出身のピアノ・トリオである。
 
北欧ジャズは耽美的で透明度が高く、テクニックは高度、歌心が豊かで流麗、静謐でクールな音世界が特徴。1950年代から北欧ジャズは発展してきたが、北欧ジャズの凄いところは、この「北欧ジャズならではの特徴」が1950年代に出現して以降、現代まで、ずっと継続され、年を経る毎に「進化」し「深化」していること。
 
 
For-listeners-only  
 
 
やはり梅雨の蒸し暑い中、北欧ジャズとボサノバ・ジャズだけが気持ち良く聴けるジャズかな。このヤン・ラングレンのトリオは北欧ジャズの特徴をしっかりと引き継いでいて、申し分ない展開である。しかしながら、このトリオ演奏が個性的なところがとても健康的な「躍動感」と「メジャーな響き」。
 
北欧ジャズの特徴として「静謐なバラード」や「ヒーリング音楽の様な怜悧な響き」があるのだが、このトリオ演奏には、その代わりに、北欧ジャズらしからぬ躍動感がある。リズム&ビートが明確で、アドリブ・フレーズに「暖かい響き」が満ちている。「夏の北欧のジャズ」という雰囲気が、実に耳に心地良く響く。
 
こってこての北欧ジャズで固めるのでは無く、米国のコンテンポラリーな純ジャズの雰囲気やスムース・ジャズの雰囲気も取り込んで、北欧ジャズをベースにしながら、インターナショナルな雰囲気の「ネオ・ハードバップ」なピアノ・トリオ演奏に仕立て上げている。リリース当時、人気盤であったことも頷ける。肩肘はらずに、リラックスして気持ち良く聴けるピアノ・トリオである。
 
 
 

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  ・『You’re Only Lonely』 1979

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  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

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  ・太田裕美『手作りの画集』

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2019年12月 1日 (日曜日)

1990年代以降のロイドを聴く

チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)。1960年代後半、突如、現れ出で、ジョン・コルトレーンの聴き易い部分をカヴァーして人気を博した。特に、コルトレーンのフリーキーな部分は「人種差別に抗議する怒り」として捉えられ、この「コルトレーンのフリーキーな演奏」を聴きやすくしたところが、フラワー・ムーヴメメント、ヒッピー・ムーヴメントの中でウケにウケた。

しかし、このコルトレーンの聴き易い、ええトコ取りをしたアプローチが胡散臭い。加えて、ロイド人気の半分以上は、バックのリズム・セクションの人気だった。このバックのリズム・セクションが、キース・ジャレットのピアノ、セシル・マクビーのベース、ジャック・デジョネットのドラムで、当時、それはもう新しい響きのモーダルなジャズで素晴らしいもの。このトリオの人気が意外と大きかった。

1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズの波が押し寄せ、商業ロックが台頭し、メインストリーム・ジャズの人気が衰退していった。合わせてロイドの人気は下降し、遂には忘れられた人となった。1980年代は完全にロイドの名前は無かった。が、つい最近、といっても5年ほど前だが、ECMレーベルからリーダー作を出しているロイドに気がついた。調べれば、1989年から、ECMレーベルの下で、ロイドはリーダー作を連発していた。
 
 
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Charles Lloyd『Fish Out of Water』(写真左)。1989年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。バックのリズム・セクションは、スウェーデン出身2人、ノルウェー出身1人。チャールズ・ロイドのテナー&フルートのワンホーン・カルテット。リリースは、欧州ジャズの老舗レーベルのECM。

アルバムに詰まっている演奏の雰囲気は「欧州の純ジャズ」。バックのリズム・セクションが北欧メインなので、音の響きは北欧ジャズ。ロイドのテナーは北欧ジャズのスタンダードである「クリスタルな切れの良い」音よりも暖かでエッジが丸い。米国ジャズってほどでは無いのだが、クールな熱気をはらんだテナーは意外と個性的である。欧州のテナーマンには無い独特の個性。

1989年にロイドはこんなに魅力的なワンホーン・カルテット盤を出していたんですね。全く知らなかった。1960年代の胡散臭さ漂うリーダー作ばかりが我が国ではジャズ雑誌に載ってきたので、ロイドの1990年代の活躍は全く意識していなかった。全く以て不明を恥じるばかりである。そして、今、1990年代以降のロイドのリーダー作を聴き進めている。これが意外と楽しいのだ。
 
 
 
東日本大震災から8年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年7月12日 (金曜日)

この盤に詰まった「北欧の音」

正統なネオ・ハードバップやモード・ジャズを聴き続けていると、ふとECMレーベルの「ニュー・ジャズ」が聴きたくなる。もともと、19歳の頃、ジャズを本格的に聴いていこう、と決めた切っ掛けの1つが「ECMレーベルのアルバム」。それが原因なのか、ECMレーベルの音が無性に聴きたくなることがある。

Edward Vesala『Satu』(写真左)。1976年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Edward Vesala (ds), Tomasz Stańko (tp), Juhani Aaltonen (ss, ts, fl), Tomasz Szukalski (ss, ts), Knut Riisnæs (fl, ts), Palle Mikkelborg (flh, tp), Torbjørn Sunde (tb), Rolf Malm (b-cl), Terje Rypdal (g), Palle Danielsson (b)。総勢10名。いずれもECMレーベル御用達のジャズ・ミュージシャン達である。エンジニアはJan Erik Kongshaug。

リーダーはフィンランドのドラマー「エドワード・ヴェサラ」。この盤に詰まっている音は「北欧の音」。北欧の凛とした大地をイメージするような音世界。明らかに米国のジャズとは違う。ファンクネスは皆無、明確なオフビートも無い。緩急自在、変幻自在、無調のモード・ジャズ、そしてフリー・ジャズ。
 
 
Satu
 
 
リーダーだから当たり前と言えば当たり前なんだが、ヴェサラのドラムが良い。スケールが大きく、明確で力感のあるドラミング。ドラムの音が美しい。ドラムの表現力がダイナミックかつ繊細、そしてバリエーション豊か。連続して叩き出される緩急自在、変幻自在のドラミングは典雅ですらある。

そんなヴェサラの緩急自在でスリリングなドラムに、幽玄かつ伸びのあるエレギが絡み(これは聴けばリピダルだと直ぐに判る)、幻想的で感応的なフルートが絡む。ソリッドで堅実なベースが演奏の底をガッチリ支える。実にファンタスチックで柔軟なスピリチュアル・ジャズ。

大編成ならではの分厚い音ではあるが、耳に感じるのはクールな躍動感。民族音楽的なメロディや牧歌的な雰囲気も見え隠れして「北欧感」抜群。大音量でブワーッといくことは全く無く、繊細な音やきめ細かい音、印象的な音、官能的な音を絡ませ、組み合わせ、混ぜ合わせることで、独特の音世界を現出しています。好盤です。
 
 
 
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2019年6月 7日 (金曜日)

北欧ジャズの端正で硬質なバップ

昨日、北欧ジャズについて「透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味。北欧ジャズは世の中に現れ出でてより、現代まで、この音の傾向をしっかりと引継ぎ、維持している。」と書いた。とは言え、北欧にジャズが根付いた時代、最初からいきなり、耽美的で凛とした音世界が存在した訳では無い。

Bent Axen『Axen』(写真左)。録音時期は、Tracks A1 to A4が1959年12月29日の録音。Tracks A5, B1 to B5が1961年1月17日の録音。パーソネルは、Bent Axen (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b, tracks: A5, B1 to B5), Ole Laumann (b, tracks: A1 to A4), Finn Frederiksen (ds), Bent Jædig (ts, tracks: A1 to A4), Allan Botschinsky (tp, tracks: A1 to A4)。
 
デンマークのジャズ・レーベル「SteepleChase」からのリリース。サブタイトルが「Bent Axen Trio, Quintet & Sextet」。3種類の編成で聴かせてくれるのは「北欧のハードバップ」。どの曲を聴いても「バップ」だらけ。しかし、米国のバップのコピーでは無い。ファンクネス皆無、飛び散る汗と煙は全く見えず、クールに燃える、端正で硬質なハードバップ。決して乱れることは無く、決して暴走することは無い。
 
 
Axen-bent-axen
 
 
リーダーのベント・アクセンのピアノは耽美的なバップ・ピアノ。どこかビル・エヴァンスの響きがする。端正に硬質に透明度を上げたビル・エヴァンス。特にトリオの演奏にその傾向が顕著。いわゆる「北欧ピアノ・トリオ」の原型がここにある気がした。ストイックにバップ・ピアノを追求する修道僧のような演奏。クールだが熱く濃厚な節回しが魅力。

それぞれのサイドマンの演奏を聴いていると、米国のハードバップを良く研究し、確実に自らのものに昇華しているなあ、と感じる。特にリズムセクションにその傾向が顕著。ベースはチェンバースの様であり、レイ・ブラウンの様でもあり。ドラムはブレイキーの様でもあり、フィリージョーの様でもあり。でも、コピーするのでは無く、そのエッセンスを取り込んで、欧州ジャズっぽい音に昇華している。
 
北欧ジャズも、先ずはモダン・ジャズの基本である「ハードバップ」をしっかり押さえていた。その記録がこのベント・アクセンのリーダー作『Axen』である。さすが「SteepleChaseレーベル」である。実に素敵な北欧ジャズの記録を残しておいてくれた。北欧ジャズの「端正で硬質なバップ」演奏である。
 
 
 
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2019年6月 6日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・148

北欧ジャズについては、僕はECMレーベルを通して体験した。透明度の高い、エッジの効いた音の響き。深いエコー。ミッドテンポがメインの落ち着いたアドリブ展開。耽美的であるが甘さに流されない。凛とした音の美しさと切れ味。北欧ジャズは世の中に現れ出でてより、現代まで、この音の傾向をしっかりと引継ぎ、維持している。
 
20年前辺りまでは、なかなか欧州のジャズCDが日本にまで流れてくることが少なく、ECMレーベル以外から北欧ジャズのアルバムを聴くことは難しかったが、ネットショッピングやストリーミング配信の発達によって、様々なレーベルの北欧ジャズの好盤が入手可能になった。有り難いことである。

Thomas Clausen『Psalm』(写真左)。1994年6月、デンマークはコペンハーゲンでの録音。ちなみにパーソネルは、Thomas Clausen (p), Mads Vinding (b), Alex Riel (ds)。ビル・エヴァンスからの影響を強く感じる耽美的でリリカルなクローセンのピアノ。そこに強靱でしなやかなヴィンディングのアコベが絡み、柔軟度の高い堅実堅牢なリールのドラミングが演奏全体をグッと引き締める。典型的な北欧ピアノ・トリオな音世界。
 
 
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Storyville Recordsからのリリース。Storyville Recordsは、ジャズの熱烈なファン、Karl Emil Knudsen(カール・エミール・クヌセン) が、1952年、コペンハーゲンにて創立した欧州最古のインディペンデント・ジャズレーベルである。こういう北欧ジャズ盤が入手出来る様になったことは実に喜ばしいこと。
 
冒頭の「Salme」の出だしの透明度の高い、深いエコーを伴ったクローセンのピアノと、これまた切れ味抜群で印象的なエコーを伴ったリールのシンバル音を聴くだけで、「これは北欧ジャズやな」とはっきり判る。それだけ、この北欧ピアノ・トリオ盤、始まりから最後まで、どこから聴いても典型的な「北欧ジャズ」の音が詰まっている。
 
モーダルな展開がメインで、限りなく自由度が高く、躍動感が抜群。ファンクネスは皆無、スイング感も希薄なんだが、しっかりと4ビートも見え隠れして、ハードバップとは全く異なるアプローチなんだが、これもジャズである。いわゆる「欧州のニュー・ジャズ」。米国発祥のジャズとは全く個性が異なる北欧ジャズ。聴けば聴くほどその奥深さは「底無し」である。
 
 
 
日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年4月 5日 (金曜日)

ボボ・ステンソンの新トリオ盤

ECMレーベルには、素敵な内容のピアノ・トリオ盤が多く存在する。恐らく、ECMレーベルの、西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置き、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音がジャズ・ピアノにフィットするんだろう。特に、ファンクネス希薄な欧州のニュー・ジャズ系のピアノがとりわけフィットする。
 
ECMレーベルの「お抱えピアニスト」の一人に、Bobo Stenson(ボボ・ステンソン)がいる。ステンソンは、1944年、スウェーデン出身。10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねていたそう。1970年代には盟友ヤン・ガルバレクと共に活動を開始し、ECMレーベル中心に好盤をリリース。現在では、ベースのアンデルス・ヨルミンとドラムのヨン・フェルトとトリオで活動を続けている。
 
そんなステンソンの最近の好盤の一枚がこれ。Bobo Stenson Trio『Contra la Indecisión』(写真左)。2017年5月の録音。ちなみにパーソネルは、 Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Jon Fält (ds)。現在、好調に好盤をリリースしているトリオでの新盤である。選曲がふるっている。バルトーク、サティが採用され、キューバのシルヴィオ・ロドリゲスの哀愁溢れるアフロ・キューバンな佳曲が彩りを添えている。
 
 
Contra-la-indecision-bobo  
 
 
ボボ・ステンソンのピアノがとても美しい。キースのピアノから尖ったところ、アブストラクトなところをそぎ落として、しっかりした明確なタッチでの、硬派で耽美的なフレーズが特徴。ピアノの音のエッジが適度に丸く、耳に優しく馴染む。流麗で耽美的なフレーズを駆使する曲では、限りなく美しく、暖かくてクールなピアノが響き渡る。ヨルミンのベースは唄うが如く、ベースラインを抑え、フェルトのドラムは自由自在にリズム&ビートを紡ぎ出す。
 
フリーな演奏では切れ味の良い、煌めきの様なフレーズが続くが、どこか優しく丸い。それはピアノだけでは無い。ヨルミンのベースも自由度高く、弾ける様なうねるようなフレーズを連発するが、どこか優しくしなやか。フェルトのドラムはポリリズミックで閃き抜群。様々な表情のフレーズを繰り出し、素晴らしく高度なテクニックで最上の表現力を発揮する。意外とこのフリーな演奏の部分が聴きものだったりする。
 
このトリオの演奏には北欧の自然をイメージする、クリアでクールでアーシーな音がぎっしりと詰まっている。紡ぎ出すフレーズも現代音楽っぽい幾何学的で耽美的で印象的なフレーズがてんこ盛り。北欧では、キース・ジャレットと双璧をなすジャズ・ピアノのレジェンドとして評価されているそうだが、それも納得できるこの新盤の内容。ECM好きには堪らない好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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