2023年2月28日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・23

 エリック・ドルフィーは、お気に入りのアルト・サックス奏者。ジャズを聴き始めた頃、ドルフィーに出会って、これが即興演奏の極致か、とぶっ飛んで以来、ずっとドルフィーは聴き続けている。

twitter で「朝一番のジャズ盤」や「昼下がりのジャズ盤」、そして、寝る前の「今日のラストのジャズ盤」のご紹介のツイートをしているのだが、ここにはドルフィーなど、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を踏まえながら、アブストラクトにフリーに、限りなく自由度の高いジャズは登場させていない。刺激が強すぎる、というのが理由。

よって、ドルフィーは、個人的に、バーチャル音楽喫茶『松和』で聴いているのだが、ドルフィーはどのリーダー作を聴いても「駄盤」が無い。どのブロウの平均点以上の優秀なパフォーマンスばかりなので、ドルフィーを感じる上で、アルバムを選ぶ必要は無い。その中でも、敢えてどれが良いのか、と問われれば、僕はこのアルバム2枚を推すことにしている。

Eric Dolphy『At The Five Spot, Vol.1 & Vol.2』(写真左)。1961年7月16日、NYの「Five Spot」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Booker Little (tp), Mal Waldron (p), Richard Davis (b), Ed Blackwell (ds)。エリック・ドルフィーのアルト・サックスと、ブッカー・リトルのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

このパーソネルのメンバーを今から振り返れば、力量十分、テクニック十分の中堅ジャズマンの中でも「曲者」揃い。出てくる音は、当然「曲者」で、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を踏まえながら、アブストラクトにフリーに、限りなく自由度の高いジャズが展開される。恐らく、当時、最高レベルの「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」だと思う。
 

Eric-dolphyat-the-five-spot-vol1-vol

 
まず、Vol.1、1曲目の「Fire Waltz」での、冒頭のドルフィーのアルト・サックスの捻れフレーズを聴くだけで、このライヴ盤は「穏やかではない」ことを感じる。捻れてブッ飛んで疾走するドルフィーのアルト。そこに、負けずに捻れてブッ飛んで疾走するブッカー・リトルのトランペットが絡んでくる。限りなく自由に、従来の穏やかなフレーズを踏襲すること皆無の、鋭角にスクエアにスイングする唯一無二なアドリブ・フレーズ。

Vol.1では、スリリングでハイ・テンションな「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」が、これでもか、と言わんばかりに展開する。ジャズとしての「即興演奏」の極致がここにある。

Vol.2は、やや穏やかで懐深い「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」が繰り広げられる。オリジナルLPでは、「Aggression」と「Like Someone in Love」の2曲のみ。ほとんどが「即興演奏の嵐」なんですが、やはり、ドルフィーは尋常では無い。特に、バスクラの「異次元さ」が極めつきで、もうこれは癖になる(笑)。ブッカー・リトルのトランペットも熱くて良いんですが、ドルフィーの「変態度合い」が凄くて、これはまあ(笑)。

Vol.2を聴いていて、ドルフィー&リトルのフロント2管は唯一無二で凄いなあ、と改めて感動。「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」がどんどん自由度高く、自由度高くなって、アブストラクトにフリーに展開しそうになるのだが、決して、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を逸脱することは無い。このジャズの伝統的な展開にグッと踏みとどまって演奏するところが良い。何度聴いてもグッとくる。

このEric Dolphy『At The Five Spot, Vol.1 & Vol.2』を聴くと、ジャズとしての「即興演奏」というものが良く判る。ジャズの一番の特徴は「即興演奏」というが、このライヴ盤でのドルフィー&リトルのフロント2管のパフォーマンスは、その「即興演奏」の好例だろう。このライヴ盤を聴く度に、ジャズって凄いなあ、と思うのだ。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年1月26日 (木曜日)

MJQの発祥が確認出来る盤

モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)は、僕の大好きなジャズ・ユニット。ジャズを本格的に聴き始めた時、最初に手に取ったジャズ盤が、MJQの『Django』。アーティステックで品の良い、クラシックに比肩するほどの高度な音楽性。室内楽的で緻密精巧なアレンジと、ジャズ特有のインプロビゼーションの融合。クールでアーティスティックなジャズの最高峰。

『Modern Jazz Quartet, Milt Jackson Quintet』(写真左)。1952年12月22日と1954年6月16日の録音。Prestigeの7059番。ちなみにパーソネルは、1952年12月22日録音分:Milt Jackson (vib), John Lewis (p), Percy Heath (b), Kenny Clarke (ds)。1954年6月16日録音分:1952年のピアノが、Horace Silver (p) に代わり、Henry Boozier (tp)が加わる。

1曲目から4曲目、1952年の録音が「モダン・ジャズ・カルテット」発祥の記録。ドラムはまだ、コニー・ケイでは無い。オリジナル・メンバーのケニー・クラークが担当している。ベースはオリジナル・メンバーのパーシー・ヒースが既に担当している。当然、フロントを担う2人、ピアノのジョン・ルイスとヴァイブのミルト・ジャクソンも揃い踏み。
 

Modern-jazz-quartet-milt-jackson-quintet

 
1954年の録音は、ピアノがホレス・シルヴァーで、基本はミルト・ジャクソンがリーダーのクインテット。同じ「MJQ」だが、クインテット編成だし、こってこてファンキーな演奏で固められている「モダン・ジャズ・カルテット」とは全く関連が無く、音の志向も異なる。「MJQ」つながりでカップリングしただけみたいで、やっつけレーベル、プレスティッジの成せる技。駄洒落が過ぎる。

ここでは、1952年の録音に絞って語りたいのだが、この1952年の時点で、MJQの音の個性は見事に完成されている。ミルト・ジャクソンのファンキーで流麗なヴァイヴ。クールで間を活かしたシンプルなルイスのピアノ。この二人の対比と融合。ミルトの自由なアドリブとルイスのアレンジの規律。そんなMJQの音の個性がこの4曲にしっかりと表現されている。

2曲目の「La Ronde」は、ジョン・ルイスの趣味がだだ漏れのバロックの様式美を取り入れた秀曲だが、端正にコントロールされたルイスのピアノのバッキングに乗って、流麗にドライブのかかった、ファンキーなミルトのヴァイブが素晴らしい。この音世界が「MJQ」の個性だろう。この1曲だけを聴いても、この1952年の録音に、既に「MJQ」は成立していることを実感する。
 
 

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2023年1月17日 (火曜日)

ジャズ・フルートのレジェンド

ヒューバート・ロウズのジャズ・フルートを聴いていて、他のジャズ・フルート奏者について、気になるようになった。もともと、ジャズ・フルート奏者は数が少ない。

サックス奏者のサブ楽器としてのフルートはまずまず思い当たるのだが、ジャズ・フルートがメインのジャズマンといえば、本当に数が少ない。今までの記憶の中で、思い当たったのが、ロウズに加えて、ブランク・ウエス、ハービー・マン。これ位やなあ〜。

そこで、フランク・ウエス(Frank Wess)である。1922年1月4日生まれ。米国カンサスシティーの出身。2013年10月、91歳で鬼籍に入っている。もともとは、カウント・ベイシー楽団のメンバーである。ジャズでは稀少なフルート奏者であり、1959年から1964年まで、ダウンビート誌の評論家投票で一位を獲得している。いわゆる「ジャズ・フルートのバーチュオーゾ」である。

The Frank Wess Quartet『Moodsville Volume 8: But Beautiful』(写真左)。1960年5月9日、 Van Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Frank Wess (fl, ts), Tommy Flanagan (p), Eddie Jones (b), Bobby Donaldson (ds)。ベースのエディー・ジョーンズとドラムのボビー・ドナルドソンは「カウント・ベイシー楽団」つながり。ウエス=ジョーンズ=ドナルドソンの「カウント・ベイシー」とながりに、何故かピアノはフラナガン。
 

The-frank-wess-quartetmoodsville-volume-

 
「Moodsville」は、Prestige傘下の傍系レーベルで、スタンダード曲のバラード演奏中心で雰囲気が良いアルバムを制作していて、このThe Frank Wess Quartet盤も、小粋でムーディーな名演がてんこ盛り。

このこのThe Frank Wess Quartet盤は、スローからミディアムテンポの心地よいスタンダード集(1曲だけウエスの自作曲があるが)。リーダーのウェスは、曲によりフルートとテナー・サックスを使い分けていて、特にフルートが熱演につぐ熱演。当時、ジャズ・フルートの第一人者だったことが良く判る。フルートの音は、音が丸くて線が細い印象があるのだが、ウエスのフルートは意外と力強く音が太め。テクニックは優秀で吹き回しは流麗。

そして、この盤、バックのリズム・セクションが良い。特に、ピアノのフラナガンが絶品。端正で歯切れの良いバップなピアノで格調高く、センス良く、ウエスのフルートをサポートする。特にスローバラードの伴奏は絶品で「But Beautiful」のイントロ、アドリブ・ソロは典雅で見事。バックに回って、バッキングの上手さを最大限発揮する「名盤請負人」の面目躍如である。

ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のジャズ盤紹介記事に、まず、タイトルが上がることが無い盤ですが、これがまあ、なんと「小粋な隠れ名盤」。Van Gelder Studioでの録音で音も良い。実に聴き応えのあるハードバップ盤です。
 
 

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2022年10月31日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・254

ジャズの裾野は広い。一昨日、ご紹介した様な、最新のジャズ・エレクトロニカもあれば、ハードバップ時代の隠れ名盤もある。どちらも、聴いて楽しい「ジャズ」であり、どちらも、個人的嗜好においては好き嫌いはあるだろうが、客観的に見て、優劣を付けることの出来ない。歴史上、どちらも内容の優れた「ジャズ」である。

Eddie "Lockjaw" Davis & Johnny Griffin『The Tenor Scene』(写真左)。1961年1月6日、NYのミントンズ・プレイハウスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Eddie "Lockjaw" Davis (ts), Johnny Griffin (ts), Junior Mance (p), Larry Gales (b), Ben Riley (ds)。

豪快なテキサス・テナーのスタイリストの一人、エディー・ロックジョー・デイヴィスと、テナー・リトル・ジャイアント、ジョニー・グリフィンとの2管フロントのクインテット編成。

このライヴ盤、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の推薦盤に、そのタイトルが挙がることが無いのだが、聴けば、何と実にハードバップらしい、ハードバップの良いところ満載の隠れ好盤である。1961年のライヴ録音なんだが、内容的には、完璧なまでのハードバップな演奏が展開されていて、聴いていて、バリバリにジャズを実感出来て、とても楽しい。
 

Eddie-22lockjaw22-davis-johnny-griffinth

 
テキサス・テナー・スタイルのロックジョー、リトル・ジャイアントと呼ばれたグリフィン、二人の豪快なテナーがなんとも素敵な響き。そして、この豪快な二人のテナーの「ユニゾン&ハーモニー」そして「テナー・バトル」が凄く良い雰囲気。

これぞ、ハードバップ時代のテナー、って感じの、豪快で迫力抜群、大らかでテクニカル、歌心溢れエモーショナル豊かなテナー。良い。難しい理屈抜きに直感的に「良い」。

バックのリズム・セクションも好調で良い感じ。特に、ピアノのジュニア・マンスが、躍動的でファンキーなピアノをガンガンに弾きまくっている。さすがライヴやなあ。マンスがこれだけバリバリ弾きまくるとは思わなかった。このマンスのピアノに煽られて、鼓舞されて、ロックジョーとグリフィンがテナーを更に吹きまくる。熱気溢れるライヴである。

このライヴ盤、ジャズを聴き始めて、20年目に出会った。ジャズの裾野は広い。長くジャズ盤を探索し、聴けば聴くほど、小粋な盤、隠れ好盤に出会う。そして、それが30年になり、40年になり、ジャズ盤の探索は終わりが無い。全く、ジャズの裾野は広い。いつまた、小粋な盤、隠れ好盤に出会うか判らない。よって、ジャズ盤の探索は止められない。
 
 

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2022年8月29日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・248

「小粋なジャズ」盤を探索していたら、アーネット・コブ(Arnett Cobb)の名にぶち当たった。久しく、このテナーマンの名前を忘れていた。コブは1918年8月生まれ、米国テキサス州出身のテナーマン。1989年3月、70歳で鬼籍に入っている。ファンキーで渋い、スイング・スタイルがメインの、歌心溢れるモダンなテナーを吹くところが個性。その存在は地味ではあるが、聴けば「ファンネス溢れる、スインギーで小粋な」優れたテナーであることがよく判る。

Arnett Cobb『Smooth Sailing』(写真左)。February 27, 1959年2月27日、Hackensack, NJの「Van Gelder Studio」での録音。プレスティッジ・レーベルからのリリースで、PRLP 7184番。ちなみにパーソネルは、Arnett Cobb (ts), Buster Cooper (tb), Austin Mitchell (org), George Duvivier (b), Osie Johnson (ds)。

リーダーのコブのテナーとクーパーのトロンボーンがフロント2管、ピアノの代わりにオルガンを採用、ここではオルガンがベースも兼ねず、オルガン+ベース+ドラムがリズム・セクションのクインテット編成になる。テナーのフロント管のパートナーがトロンボーン、そして、リズム・セクションには、ピアノの代わりにオルガンが入るという、こってこてファンクネス滴るクインテット編成になっている。
 

Arnett-cobbsmooth-sailing

 
フロント管にトロンボーン、ピアノの代わりにオルガン、なので、こってこてファンキーなジャズが展開されることが想像に難くない訳だが、この盤はその期待通り、こってこてファンキーな、少しスイングが入った、オールドスタイルなハードバップが展開されている。情感溢れるスインギーでグルーヴィーなコブのテナーのフレーズが絶品である。

特にバラードやスロー&ミッドテンポなブルースのコブのテナーの吹き回しが実に「小粋」。特に突出したテクニックがある訳では無く、速吹きやフリーキーな、当時流行の吹き回しについては「まったく無縁」。悠然と朗々と、スインギーでグルーヴィーなテナーを吹いていくコブは魅力満点。ああ、これがジャズなんやな〜、なんて、しみじみ思ってしまうブルージーでジャジーなフレーズにドップリ填まってしまう。

ファンキーでスインギーでオールドスタイルなテナーにはオルガンが良く似合う。この盤、このオルガンが入っているところが「ミソ」で、独特のファンクネスとグルーヴ感を醸し出している。何故か程良く抑制されたテナーとトロンボーンに、オルガンの音色がよく合う。プレスティッジには珍しく、丁寧な仕上がりになっていて、聴き応えがある。録音もヴァンゲルダー印でグッド。隠れ名盤です。
 
 

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2022年6月15日 (水曜日)

レアで幻のアルト・サックス奏者

長年、Twitterを利用している。自らも定期的にツイートしているが、他のジャズ者の皆さんのツイートの中に、小粋なジャズ盤の紹介ツイートがあって、いつも楽しく拝見している。これは、という小粋なジャズ盤のご紹介があった時などは、いそいそと該当盤を探し当てて、早速聴いている。一度も聴いたことの無い初見の盤もあるし、昔、聴いたことがあるが、しばらく御無沙汰だった盤もある。

『Jenkins, Jordan and Timmons』(写真左)。1957年7月26日の録音。プレスティッジ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Jenkins (as), Clifford Jordan (ts), Bobby Timmons (p), Wilbur Ware (b), Dannie Richmond (ds)。ハードバップ全盛期、デビューわずか1年で消えた、幻のアルト・サックス奏者、ジェンキンスが、テナーのジョーダン、ピアノのティモンズとの共同リーダーで、クリフォード・ジョーダンのテナー・サックスと2管フロントを構えたクインテット編成。

ジョン・ジェンキンスは、幻のアルト・サックス奏者。リーダー作をブルーノートからもリリースしているので、アルト・サックスの腕前は確かなもの。癖の無いストレートで、少しファンクネスのかかったアルト・サックスが個性。しかし、1957年に録音活動を集中して行った後、デビューわずか1年でその活動は途絶え、唯一、逝去直前、1990年にクリフォード・ジョーダンのビッグバンドに参加したが、1962年以降は完全に引退状態。
 

Jenkins-jordan-and-timmons

 
そんなジョン・ジェンキンスの数少ないリーダー作(共同リーダー作ではあるが)の一枚がこの『Jenkins, Jordan and Timmons』。リズム隊が一流どころで固めているので、安定したハードバップな演奏を聴くことが出来る。ジェンキンスのアルト・サックスは、少しファンクネスのかかった、癖の無いストレートで明るいものなので、クリフォード・ジョーダンの無骨でブラック・ファンクなテナーとのバランスが良く、フロント2管の演奏はなかなかの出来。

リズム隊の要、ピアノのティモンズは「ファンキー・ピアノ」の代表格の一人だが、この盤では、こってこてファンキーなピアノをグッと押さえて、アーバンで小粋なバッキングに注力している。ベースのウエアはちょっと捻りの効いたベースで、当時のハードバップな演奏にちょっとした「新しい響き」を与え、リッチモンドのドラミングは堅実そのもの。1957年のハードバップな演奏としては水準以上のレベルで、こってこてハードバップな演奏をしっかりと楽しめる。

プレスティッジ・レーベルからのリリースなので、ジャケットはほとんど「やっつけ」。それでも、今の目で見れば、ちょっと味のあるデザインかな、とも思う(笑)。録音とマスタリングは、かの「ルディ・ヴァン・ゲルダー」が担当しているので、音はまずまず良い。歴史に残る名盤というものではありませんが、ハードバップな演奏を楽しく聴くことの出来る「隠れ好盤」として、良い感じのアルバムでした。
 
 

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2022年5月11日 (水曜日)

「変わらない」という素敵な個性

Dexter Gordon(デクスター・ゴードン、愛称「デックス」)は、生涯、そのテナー・サックスのスタイル、奏法を変えなかった。そのスタイルを変えない、というところが最高の個性で、デックスのテナーは、どのリーダー作でも「大らかで誠実でどこか哀愁感漂う」テナーは変わらなかった。実に素敵な個性である。

Dexter Gordon『The Tower of Power!』(写真左)。1969年4月2日&4日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), James Moody (ts,track 1 only), Barry Harris (p), Buster Williams (b), Albert "Tootie" Heath (ds)。冒頭の「Montmartre」のみ、デックスとムーディーのダブル・テナー、他は、デックス1管フロントの「ワンホーン・カルテット」編成。

この録音時期には、デックスは欧州(主にパリとコペンハーゲン)に移り住んでいる(1976年には米国に戻っているが)。米国でのレーベル契約を、BlueNoteからPrestigeに切り替えていたため、この盤は、プレスティッジ・レーベルでの録音になっている。プレスティッジでの録音と聞くと、お得意の「ジャムセッション一発録り」を想起して、内容について不安になるが、この盤は大丈夫だ。
 

Dexter-gordonthe-tower-of-power

 
ピアノはバリー・ハリス、ベースはバスター・ウィリアムス、ドラムスはアルバート・ヒース。バックのリズム・セクションも純ジャズの人気が落ちてきた当時としてはかなり充実していて、デックスの好調さと併せて、実に気持ちの良いハードバップな演奏が繰り広げられている。

1曲だけだが、ジェームス・ムーディーとの2テナーでの演奏も良い雰囲気。ムーディーも男性的でよく歌うテナーが持ち味で、デックスとバトるかな、と思っていたら、実に相性の良いデュエットといった趣で、これがムーディーで聴き応え十分。ラストの「Those Were the Days」は「悲しき天使」の邦題で知られる当時のヒット曲。哀愁感溢れる美しいフレーズをデックスが情感豊かに吹き上げて、実に印象的。さすがデックスである。

「Stanley the Steamer」は、デックスの古いオリジナル曲だが、こういったシンプルなブルースを「大らかで誠実でどこか哀愁感漂う」テナーで吹き上げていくところなど、やはりさすがデックスである。この盤、デックスのリーダー作の中でも、あまり話題に上らない「地味盤」だが、出会ったら絶対に聴くべし、である。往年の良質なハードバップが、デックスのテナーがこの盤に詰まっている。
 
 

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2022年2月25日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・229

最近、ジャキー・マクリーン(Jackie Mclean)のリーダー作を聴き直しているのだが、マクリーンのリーダー作の一覧を見直してみると、今まで聴いたことが無かったリーダー作もちょっとあることが判った。

あれぇ〜、おかしいなあ、と思うのだが、何故か聴いたことが無かった盤がある。恐らく、パーソネルを事前に見て、後にしよう、と思ったか、ジャケットを見て、これはあかんやろ、と思ったかのどちらかが理由だったんだろう。

Jackie Mclean『Lights Out!』(写真)。1956年1月27日の録音。PrestigeレーベルのPRLP 7035番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Elmo Hope (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。 録音当時は、ハードバップ全盛期。録音メンバーも、ハードバップ黄金時代を彩った、一流どころで占められている。

リーダーのマクリーンのアルト・サックスと、ドナルド・バードのトランペットがフロント2管のクインテット編成。ピアノに早逝の天才バップ・ピアニスト、エルモ・ホープ、そして、これまた、早逝の天才ベーシスト、ダグ・ワトキンスと、伝説の職人ドラマー、アート・テイラーがリズム・セクションで、フロント2管を盛り立てる。
 

Lights-out

 
冒頭のタイトル曲、マクリーン作の「Lights Out」が良い演奏だ。いかにもハードバップらしい長尺の演奏で、13分の演奏時間の中で、参加メンバーそれぞれが、しっかりとアドリブ・パフォーマンスを聴かせてくれる。これがまあ、内容が濃く、マクリーンのアルト・サックスは、この時点で既に歌心溢れるブロウを備えており、バードのトランペットはジャジーでブリリアント。とにかく、フロント2管のパフォーマンスが実に見事に「ハードバップ」している。

ピアノを担当するエルモ・ホープのバッキングが見事。もともとビ・バップなピアニストなので、ハードバップとしてはどうかしら、と思っていたが、この盤のバッキングを聴いて考え方を変えた。切れ味の良い、エッジの少し立ったピアノのバッキングは「爽やか」な雰囲気。フロントのブロウのフレーズの合間合間を埋めて、フロントを鼓舞しつつ、しっかりとリズム&ビートのキープに努めるとこなどは「職人芸」である。早逝が惜しまれるピアニストであった。

ダグ・ワトキンスのベースは骨太でブンブン唸るウォーキング・ベースが凄く魅力的。アート・テイラーのドラミングは硬軟自在、演奏の「質」に合わせて、変幻自在に叩き分けるテイラーはこれまた見事な「職人芸」。

聴き終えて、この盤、実にハードバップらしい好盤ではないか、というのが僕の感想。なんで最近まで聴かなかったのか。恐らく、このジャケットが悪いのだと思う。プレスティッジお得意の「どーでもよいジャケ」(写真左)が、この盤をブート盤に見せたのかも。このジャケじゃあなあ、触手が伸びないよな。 
 
 
 
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2021年11月18日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・10

ジャズ名盤とは何か。僕が思うに、その盤を聴くことで、ジャズの歴史を感じることが出来、ジャズの個性を感じることが出来る。そして、そのリーダーの個性が手に取るように理解出来、サイドマンの演奏が優秀。加えて、ジャケット・デザインが秀逸であること。いわゆる「ジャズが音楽の総合芸術であること」を実感できる盤が「ジャズ名盤」だと思うのだ。

Sonny Rollins『Saxophone Colossus』(写真左)。1956年6月22日、Prestigeレーベルからのリリースだが、この盤はブルーノートと同じ「Van Gelder Studio」での録音になる。ちなみにパーソネルは、Sonny Rollins (ts), Tommy Flanagan (p), Doug Watkins (b), Max Roach (ds)。リーダーのソニー・ロリンズのテナー・サックス1管がフロントの「ワン・ホーン・カルテット」編成である。

まず、ジャケットを見て欲しい。青のモノトーンをバックに、テナー・サックスを吹くソニー・ロリンズの上半身のシルエット。そして、ジャケットの下に小粋なタイポグラフィー。ジャズのジャケットやなあ〜、と感心するし、盤の中の音が漏れ聴こえて来る様な秀逸なデザイン。良く見れば、凄くシンプルな、1つ間違えば陳腐に落ちるデザインなんですけどね〜。特にLPサイズは「映える」。やはり、名盤には優秀なジャケットが良く似合う。
 

Saxophone-colossus

 
内容的には申し分無い、非の打ち所の無いハードバップな演奏が詰まっている。出だしが、マックス・ローチのドラムソロ。大先輩にトップバッターをお願いするリーダー・ロリンズの謙譲心。それはともかく、全編に渡って、リーダー・ロリンズのテナーの、イマージネーション溢れるパフォーマンスが群を抜いている。ダンディズム溢れる大らかで創造的なアドリブは聴き応え満点。

サイドマンでは、フラナガンのピアノが素晴らしい。もともとはバップなピアノをバリバリ弾くタイプのピアニストなんだが、ロリンズのテナーの個性を十分に理解して、歌伴の如く、小粋で味のあるバッキングに徹しているところニクい。全編に渡って、ロリンズの「歌伴」に徹したフラナガンのピアノが聴き終えた後、ロリンズのテナーの次に印象にしっかり残っている。

そして、ラストの「Blue 7」に、ジャズのアーティスティックな面を垣間見る。ブルーな雰囲気を持つ、モダンでクールなブルース。ファンクネスは抑制され、観念的、かつ哲学的な響きが不思議な感覚。結構複雑な展開の楽曲だが、それぞれの楽器の即興演奏は見事。即興演奏であるが故、演奏上の小さなハプニングが記録されているが、それまでもがこの演奏の良いスパイスに響くから面白い。このラストの1曲が実にジャズらしいのだ。|
 
 
 
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2021年11月 2日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・9

マイルス・デイヴィスは僕のジャズの「最大のアイドル」である。マイルスの足跡、イコール、ビ・バップ以降のジャズの歴史でもある。ジャズの演奏スタイルについては、揺るぎない「信念」があった。フリー、スピリチュアル、フュージョンには絶対に手を出さない。マイルスはアコースティックであれ、エレクトリックであれ、いつの時代も、メインストリームな純ジャズだけを追求していた。

Miles Davis Quintet『The Legendary Prestige Quintet Sessions』(写真左)。1955年11月16日(The New Miles Davis Quintet)と1956年5月11日、10月26日(マラソン・セッション)の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane(ts), Red Garland (p), Paul Chambers(b), Philly Joe Jones(ds) 。

マイルス・デイヴィス・クインテットのマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』と、デビュー盤『The New Miles Davis Quintet』のプレスティッジ・レーベルに残したスタジオ録音の音源を録音順に並べたもの(と思われる)と、NYのBasin Streetでのライヴ音源(1955年10月18日)と フィラデルフィアのライヴ音源(1956年12月8日)を収録。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源が録音順に並んでいる(と思われる)のが、この企画ボックス盤の良いところ。マラソン・セッションの録音の流れとスタジオの雰囲気が追体験出来るようだ。4部作は、プレスティッジお得意の仕業、アルバム毎の収録曲については、曲と演奏の雰囲気だけで、てんでバラバラにLPに詰め込んでいる。アルバムとしては良いのだろうが、録音時期がバラバラなのはちょっと違和感が残る。
 

The-legendary-prestige-quintet-sessions_

 
さて、このマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源は、CBSからリリースされた『'Round About Midnight』と併せて、「マイルスの考えるハードバップ」の完成形である。全てが一発録り、アレンジは既に用意されていたようで、それまでに、ライブ・セッションで演奏し尽くしていた曲ばかりなのだろう。

今の耳で聴いても、相当にレベルの高い演奏である。即興演奏を旨とするジャズとしては、この一発録りが最良。マイルスはそれを十分に理解して、このマラソン・セッションを敢行したと思われる。細かいことは割愛するが、一言で言うと「非の打ち所」の無い、珠玉のハードバップな演奏である。これぞジャズ、という演奏の数々。素晴らしい。

1955年10月から1956年12月に渡って、録音順に並んだ音源集なので、振り返ってみるとたった1年2ヶ月の短期間だが、マイルス・デイヴィス・クインテットのバンドとしての成熟度合いと、コルトレーンの成長度合いが良く判る。

バンド・サウンドとしてはもともとレベルの高いところからスタートしているが、段階的に深化、成熟していくのが良く判る。コルトレーンについては、たった1年2ヶ月であるが、最初と最後では全く別人といって良いほどの「ジャイアント・ステップ」である。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』をアルバム毎に分けて聴くも良し、録音順に追体験風に聴くも良し、これら「マイルスの考えるハードバップ」の完成形は、ジャズとして「欠くべからざる」音源である。ジャズ者としては、絶対に聴いておかなければならない音源である。
 
 
 
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