2023年8月26日 (土曜日)

もう1つのコンガ入りガーランド

プレスティッジ・レーベルって、アルバムの編集方針も理解出来ないところが多々あるのだが、録音方針も良く判らないところがある。例えば、このレッド・ガーランド・トリオにバレットのコンガの入ったセッションは3つある。 

1つは 1958年4月11日の『Manteca』セッションの全6曲。全てコンガ入りで全曲タイムリーにアルバム化。2つ目は 1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッション。全12曲あったがコンガ入りは7曲。しかし、録音当時は全てアルバム化されず、1963年に何と、コンガ抜きのトリオのみの4曲だけがアルバム化。コンガ入り7曲は全てお蔵入り。

3つ目は 1958年8月22日の『Rojo』セッション。全6曲中、コンガ入りは4曲。しかし、これらも録音当時は全てアルバム化されず。こちらは1961年にアルバム化されている。今日はこの『Rojo』 を取り上げる。

Red Garland『Rojo』(写真左)。1958年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), George Joyner (b), Charlie Persip (ds), Ray Barretto (congas)。録音当時は「何故かお蔵入り」盤。リリースは1961年の初夏の頃。3年弱、倉庫に眠っていた音源になる。

バレットのコンガ入りは4曲。トリオのみの演奏は2曲。しかし、アルバムをずっと通して聴いていると、曲が進むにつれ、コンガの有無が判らなくなる。コンガがハードバップなトリオ演奏にしっかり溶け込んで、ラテンな雰囲気が薄れている。

それでも、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートが、トリオ演奏に良い雰囲気を加味している。トリオのみの演奏よりも、リズム&ビートがクッキリ浮き出て、メリハリの効いた演奏に仕上がっている。
 

Red-garlandrojo

 
コンガ入りのトリオ演奏の最初は1958年4月11日の『Manteca』セッション。この時のコンガの役割は、ガーランド・トリオの演奏にラテン・ジャズの風味を加味すること。そして、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすること。これがピッタリ当たって、『Manteca』は充実した内容の盤に仕上がった。

この『Rojo』では、ラテン・ジャズの風味を加味することよりも、コンガの音をハードバップなジャズ演奏に適応させて、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすることに主眼が置かれている様な感じがする。そういう点で、この『Rojo』セッションは充実した内容だと思うのだが、録音当時はお蔵入り音源。1961年にアルバム化されただけ、良かったと思うくらいの内容の充実度だと僕は思う。

それを思うと、1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッションのコンガ入りは7曲はアルバム化されず、1977年に未発表音源集『Rediscovered Masters』の中でリリースされただけ。今ではストリーミングで聴くことは出来るが、正式なアルバム化はされなかったのは残念である。

しかし、プレスティッジ・レーベルって、どうして、1958年だけ、コンガ入りのガーランド・トリオのセッションを4月、6月、8月の短期間に3セッションも持ったのか。タイムリーにアルバム化したのは4月のセッションのみ。しかも、6月のセッションのコンガ入り7曲は未発表音源集でリリースされただけ。どうも、この辺りのプレスティッジの録音方針が理解出来ないなあ。

ガーランド・トリオのコンガ入り企画盤は、ガーランド・トリオの演奏の「金太郎飴」感を緩和させる効果があって、良い内容だと思っている。『Manteca』と『Rojo』の2枚が正式盤としてリリースされたことは幸運だった。いつもとは違う、コンガでビートが強化されたガーランド・トリオの演奏が新鮮に響く。
 
 

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2023年8月25日 (金曜日)

『Manteca』は名盤だと思う

ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技のレッド・ガーランド。ガーランドは、何故か、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げるプレスティッジ・レーベルから多くのリーダー作をリリースしている。プレスティッジのハウス・ピアニストとしても良い位である。

しかし、ガーランドの場合、セッションの寄せ集めアルバムがお得意のプレスティッジのリーダー作の中で、プレスティッジには珍しい、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」である。これ、ガーランドならではの「傾向」だと思うのだが、この「傾向」を指摘するジャズ者の方には今まで出会ったことが無い。そういう「傾向」が明らかにあると思うんだがなあ。

Red Garland『Manteca』(写真左)。1958年4月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds), Ray Barretto (congas)。1958年4月11日のセッション、全6曲を全てチョイスした盤。ガーランドの「定番トリオ」にレイ・バレットのコンガを入れたカルテット編成の「企画盤」。

同一セッションの中から編集されたリーダー作であり、企画盤である。ガーランドは「企画盤」に強い。この盤は、バレットのコンガ入りで、ラテン色強めのアルバム。コンガの心地良い低音弾けるビートがラテン・ジャズの雰囲気を掻き立てて、ガーランドのブロックコードが、ラテン・ビートに乗って、切れ味良く弾むようにビートを刻む。テクニックに優れるガーランド、ラテン・ビートも「お手のもの」である。
 

Red-garlandmanteca

 
冒頭のディジー・ガレスピー作の「Manteca」が良い。このアフロ・ジャズの名曲に、バレットのコンガとガーランドのラテン・ビートなブロックコードが絡まって、爽やかで乾いた聴き心地の良いラテン・ジャズの雰囲気を添加している。ネチっこく俗っぽいラテン・ジャズに陥らないところが、ガーランド・トリオの真骨頂。

そして、このチェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番トリオ」が真価を発揮するのが、ラストのコンガ抜きのトリオ演奏「Portrait of Jenny」。CDリイシュー時のボートラになるが、これが絶品。お得意のスロー・テンポのバラードだが、柔和な雰囲気、心地良いスイング感、玉を転がすようなタッチ、流れる様なフレージング、そして、味のある品の良いリズム&ビート。ガーランドの「定番トリオ」の名演のひとつである。

この『Manteca』というアルバム、コンガ入りの企画盤のイメージがつきまとって、しばらくの間、敬遠していたのだが、聴いてみて「あらビックリ」。コンガがビートの良いアクセントになっていて、ガーランド・トリオとして新しい響きを湛えているところが「高評価」。ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』に匹敵する名盤だと思うのだが如何だろう。

でもなあ、我が国のベテランのジャズ者の方々は「コンガ嫌い」だし、このシンプル過ぎるジャケだとちょっと無理かなあ。でも、演奏内容は絶対、ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』と比肩する出来だと思います。コンガとシンプルなジャケに怯まず「聴くべし」です。
 
 

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2023年8月23日 (水曜日)

ブロック・コードの凄さを愛でる

プレスティッジ・レーベルは、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げる、という、とんでもないアルバム編集方針を持ったジャズ・レーベル。セッションの寄せ集めアルバムはかなりの数に上る。

アルバムを聴き進めて行くと、突如、演奏編成が変わったり、演奏の雰囲気が変わったりするので、セッションの寄せ集めと直ぐに分かるものも多い。ジャズマンの演奏能力やジャズマンの演奏志向は刻々の変化するので、出来れば同一セッションの中で演奏曲をセレクトして欲しい。

Red Garland『It's a Blue World』(写真左)。1958年2月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。いわゆる「1950年代ガーランドの黄金のトリオ」の演奏。しかし、この1958年2月7日のセッションは当時、お蔵入りになって、正式リリースされたのは1970年になってから。

当時、お蔵入りになった音源だが、この盤は1958年2月7日のセッションの音源だけで編集されていて、アルバム全体の雰囲気は統一感があって聴いていてシックリくる。
 

Red-garlandits-a-blue-world

 
1958年2月7日のトリオでの録音は全6曲。1曲は失敗演奏だったので、この盤は1958年2月7日のセッションで正式に録音された音源の全て、全5曲をアルバム化している。

タイトル通り、収録された演奏は「ブルーな雰囲気を湛えたスタンダード曲」で占められ、3曲目の「Carzy Rhythm」(アルバム『Dig It』に収録されていた曲と同一)を除いて、全曲スローバラードで統一されている。実に滋味溢れる、落ち着いた雰囲気のトリオ演奏。

特に、ガーランドのブロック・コードを聴くには最適な盤で、高速ブロック・コードの「Crazy Rhythm」にまず「仰け反る」。1曲目「This Can't Be Love」、5曲目の「It's A Blue World」でのシングル・トーンとブロック・コードの弾き回しは見事。2曲目「Since I Fell For You」、4曲目「Teach Me Tonight」のどっぷりブルージーなブロック・コードが印象的。収録されたどの曲もブロック・コードの妙がしっかり聴ける。

ガーランドの場合、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」。そして、この『It's a Blue World』はガーランドのブロック・コードを愛でるのに最適な盤。この盤を聴けば、ガーランドのブロック・コードの凄さが追体験できる。ブロック・コードのバイブル的優秀盤である。
 
 

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2023年8月22日 (火曜日)

レッド・ガーランドは伴奏上手

レッド・ガーランドは伴奏上手。マイルスが自らのバンドに引き入れる為、白羽の矢を立てたくらいの伴奏の腕の持ち主である。様々なフレーズのバリエーションは豊か、リズム&ビートへの適応力は人一倍優れていて、右手のシングルトーンは、フロント楽器とぶつかることは無く、フロント楽器を邪魔することは皆無。

Red Garland『High Pressure』(写真左)。1957年11月15日(「Undecided」「What Is There to Say?」)、12月13日(「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」)の2セッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。

ちなみに11月15日のセッションは10曲。このアルバムにチョイスされたのは「Undecided」「What Is There to Say?」の2曲のみ。他の8曲は他の2枚のアルバムに収録。12月13日のセッションは全5曲。このアルバムにチョイスされたのは「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」の3曲。残りの2曲は別のアルバムに収録。

プレスティッジって、どうして同一日セッションの演奏を1つに集めてアルバム化しなかったのか、理解に苦しむ。複数枚のアルバムを聴かないと、そのセッションの全貌が捉えられないのは、ジャズ盤鑑賞上、面倒くさい。
 

Red-garlandhigh-pressure

 
閑話休題。この『High Pressure』は、フロント2管のクインテット編成。フロント2管は、コルトレーンのテナーとバードのトランペットが務めている。といって、この盤はガーランドのリーダー作。よって、ガーランドのフロント2管に対する「伴奏上手」な面を愛でるのが筋。決して、コルトレーンやバードのパフォーマンスを追いかける類のものでは無い。

ガーランドはフロント管の個性によって、弾き方・アプローチを微妙に変える。コルトレーンは音が太くてストレートでテクニカル。ガーランドはブロックコード優先で、フレーズの全てをコルトレーンに任せて、リズム&ビートの供給のみに集中する。バードのトランペットは明確でリリカル。ガーランドは、右手のシングルトーン、左手のブロックコードの小粋に駆使して、バードのトランペットにしっかりと寄り添っている。

コルトレーン、バードも好調だが、このフロント2管の好調を引き出しているのは、ガーランドの伴奏だろう。ガーランドの伴奏を聴いていると、フロント管が気持ち良く心地良くアドリブ・ソロを展開する理由が良く判る。ガーランドの伴奏は、フロント管の実力を引き出す能力に長けているようで、ガーランドが伴奏に座るとき、コルトレーンのアドリブ・ソロは更に輝きを増すようだ。ドナルド・バードも同様。

この盤を聴くと、ガーランドって「伴奏上手」やなあ、とほとほと感心する。
 
 

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2023年8月 6日 (日曜日)

ガーランドの面倒くさい編集盤

レッド・ガーランドは、1950年代、その人気は結構高かったと見えて、プレスティッジ・レーベルから相当数のリーダー作がリリースされている。しかも、1セッションでLPに収録出来ない位の曲数を録音しているので、当然、未収録の曲が出る。

それを寄せ集めて、リーダー作を編集してリリースする。これが実に扱いに困る。演奏傾向の違うものが混在していたりで、録音年月日を確認して、もともと、どのセッションに入っていたのかを突き止めて評価する必要が出てくる。

The Red Garland Quintet『Dig It!』(写真左)。1957年3月と12月、1958年2月の3つのセッションからの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts, tracks 1, 3, 4), Donald Byrd (tp, tracks 1, 4), George Joyner (b, tracks 1, 3, 4), Paul Chambers (b, tracks 2), Art Taylor (ds)。

1曲目「Billie's Bounce」と4曲目「Lazy Mae」が、1957年12月13日の録音。2曲目「Crazy Rhythm」が、1958年2月7日の録音。3曲目「CTA」が、1957年3月22日の録音。未発表音源としてはここまで。3曲目の「CTA」は、Art Taylor『Taylor's Wailers』に既に収録された演奏をそのままこちらに持って来ている。プレスティッジお得意の寄せ集めとはいえ、つきつめると、かなり「面倒くさい」。

この盤のサブタイトルが「with John Coltrane」。収録曲4曲全てにコルトレーンが頑張っているのかと言えば、そうでは無くて、2曲目の「Crazy Rhythm」にはコルトレーンはいない。3曲目の「CTA」にはコルトレーンはいるが、これはアート・テイラーのリーダー作からの「借り物」なので、純粋には4曲中、2曲しかコルトレーンはいない。これで、The Red Garland Quintetの演奏としてまとめて、しかもご丁寧にサブタイトルに「with John Coltrane」を付けるから、ますます判らない内容になる(笑)。

もともと、1957年12月13日の録音は「The Red Garland Quintet With John Coltrane And Donald Byrd」として録音。全5曲を録音しているが、そのうちの2曲をこの『Dig It!』へ収録、「Solitude」のみThe Red Garland Quintet With John Coltrane『High Pressure』へ切り売り。残りの2曲は未発表音源のまま。ベーシストはジョージ・ジョイナー。

1958年2月7日の録音は、そもそも「The Red Garland Trio」として録音しており、コルトレーンはいない。純粋なガーランド・トリオの録音。よってベーシストは、この録音だけポール・チェンバース。
 

The-red-garland-quintetdig-it

 
1957年3月22日の録音は、もともと「Art Taylor's All Stars」として録音されており、このセッションのリーダーはアート・テイラーであり、ガーランドでは無い。しかし、録音記録を見てみると、同一日に「The Red Garland Trio」の録音が8曲あって、主に『Red Garland's Piano』の為のトリオ演奏だった。

が、その後、何故かコルトレーンが参加して、この「CTA」だけを録音しているみたいなのだ。そして何故か、この曲だけ『Taylor's Wailers』に唐突に収録されている。『Taylor's Wailers』が1957年のリリース。今回ご紹介の『DIg It!』は1962年のリリースなので、この曲だけコルトレーンが入っているので、コルトレーン人気に便乗して、ガーランドのリーダー作の中に混ぜ込んだみたいなのだ。

とにかく、サブタイトルに「with John Coltrane」が付いているので、あの伝説のガーランド・トリオ、ガーランド・チェンバース、テイラーをバックに、コルトレーンが吹きまくった盤かと思うのだが、中身はそうではない。そもそもタイトルに「Quintet(5人編成)」とあるので、フロント管として、コルトレーンともう1人の誰かがいるわけで、それはトランペットのドナルド・バード。

しかも、3曲目の「CTA」は「Quintet(5人編成)」の演奏では無く、コルトレーンのワンホーン参加の「Quartet(4人編成)」で、バックはガーランド・チェンバース、テイラーだが、リーダーはテイラー。しかも、テイラーのリーダー作『Taylor's Wailers』に収録済みの曲を、この『Dig It!』に再掲、使い回しをしている。

タイトルに偽りあり。いかにもプレスティッジ・レーベルらしい仕業なのだが、それぞれの曲の演奏自体は申し分無い。が、この盤をガーランドのリーダー作として捉えるには無理がある。聴いてみると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なる。セッションの中の同一録音曲とは思えないのだが、この収録曲毎の収録年月日を追ってみて、その理由が判った。

ジャズのアルバムは録音年月日が重要な要素として扱われるが、ジャズは即興演奏がメインであるが故、セッション毎にアレンジやニュアンス、響き、そして、その時点でのテクニックや志向が異なってくる。

そういう意味でジャズの録音を評価する上で、録音年月日が重要なのだが、このガーランドの『Dig It!』を聴いていると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なっていて、その重要性が良く理解出来る。これはプレスティッジ・レーベルの「セッション切り売り」の功績だろう。
 
 

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2023年7月23日 (日曜日)

レッド・ガーランドの「再訪」

レッド・ガーランドは、ハードバップ時代、人気絶大のジャズ・ピアニストだった。1956年の初デビュー作『A Garland of Red』から、1962年、一時活動を中断する直前の『When There Are Grey Skies』まで、30枚ものリーダー作をリリースしている。

右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コード。シンプルな奏法だが、ガーランドの手にかかると、とても芳醇でハードバップなジャズ・ピアノになるから不思議。当時の人気のほども理解出来る。

しかし、ガーランドのリーダー作は「プレスティッジ・レーベル」に集中する。プレスティッジ・レーベルの出すアルバムの最大の特徴は、セッションの単位を無視して、幾つかのセッションの「あちらこちら」から曲を寄せ集めてアルバム化する「寄せ集め盤」が多いということ。ガーランドのアルバムにもそんな「寄せ集め盤」が多々あって、どの時点でのガーランドの演奏なのか、ちゃんと理解して聴かないと、曲毎に異なるニュアンスの違いが理解出来ない。

『Red Garland Revisited!』(写真左)。1957年5月24日の録音。プレスティッジの PR 7658番。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Kenny Burrell (g, tracks 3, 7), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。基本は、リーダーのガーランドのピアノ、チェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番のトリオ」演奏。そのトリオ演奏に2曲だけ、バレルの漆黒アーバンなファンキー・ギターが入る。

この盤はプレスティッジには珍しく、単一セッションの録音でアルバムがまとめられている。が、この盤、録音当時はリリースされずにお蔵入り。12年を経て、1969年にリリースされている。
 

Red-garland-revisited

 
プレスティッジの総帥プロデューサー、ボブ・ワインストックについては、この辺の感覚が僕には理解出来ない。聴くと判るが、内容的に全く問題が無い、どころか、ガーランドのピアノも好調、バレルの参加も効果的、という感じなのだが、どうして12年もの間、倉庫に眠っていたのか。

タイトルに「Revisited!(再訪)」とあるのだが、何故「再訪」だったのか、その理由は定かでは無い。恐らく、前述の様に12年もの間、お蔵入りしていて、1969年にようやくリリースしたので「再訪」としたのかもしれない。全く、罪作りなプレスティッジである。

さて、その内容であるが、名盤『Groovy』を録音した時と同時期の演奏なので悪かろう筈が無い。ガーランド、チェンバース、テイラーのトリオは絶好調。2曲に加わるバレルも良い味を出している。

テンポのいい曲とスロー・バラードがバランスよく配置されていて、バレルの入るカルテットの演奏も、バレルがホーンの代わりをしていて、良い耳直し的な演奏になっている。チェンバースが弾くベース・ラインがメロディアスで素晴らしく、テイラーのドラミングは柔軟で小粋。

テンポの良い曲での、ガーランドの右手、転がる様に流麗なシングル・トーンが走る様には、思わず体がスインギーに動く。スロー・バラードでは、ガーランドの左手、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コードが小気味良く、思わずじっくりと聴き入ってしまう。

ギター入りのカルテット演奏も良いアクセントになっていて、ガーランドのトリオ演奏としても非常に良好。この音源がセッションごとお蔵入りになっていた理由が判らない(笑)。ピアノ・トリオとしても絶妙な好盤だと思う。
 
 

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2023年7月22日 (土曜日)

ブルース基調のガーランドが素敵

ブログでは暫く御無沙汰だったが、レッド・ガーランドは、僕のお気に入りのピアニストの1人である。右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、合いの手の様に絶妙のタイミングで入ってくる左手のブロック・コード。聴けば直ぐに判るほどの個性。「金太郎飴」とか、揶揄されることもあるが、どうして、こんなに個性的なジャズ・ピアノ、ガーランドの他にはいないのだから、唯一無二のスタイリストとして評価するべきだろう。

Red Garland『The P.C. Blues』(写真左)。1956年5月11日、1957年3月22日と8月9日の3つのセッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds, track 1), Art Taylor (ds, tracks 2-5) 。このアルバムは、録音から13年後の1970年になってようやくリリースされた、それまでのアルバムに収録されなかった「未収録音音源」を基にした編集盤。

プレスティッジ・レーベルお得意のセッション寄せ集め盤なんだが、これが意外と複雑怪奇。1曲目が1956年5月11日、Miles Davis『Workin' with the Miles Davis Quintet』に収録された演奏をそのまま再収録。2,4,5曲目が1957年8月9日、名盤『Groovy』セッションの未収録音源。3曲目が1957年3月22日の『Red Garland's Piano』セッションの未収録音源。
 

Red-garlandthe-pc-blues

 
タイトル通り、ブルース基調の演奏を集めた編集盤。未収録音源の寄せ集めっぽいイメージだが、収録された未発表音源の内容は良い。寄せ集め盤とは言え「捨て曲」は無し。いかに『Groovy』セッションと『Red Garland's Piano』セッションが優れていたかが良く判る。ガーランドのピアノは絶好調。しかも、お得意の「ブルース基調」の演奏なので、右手のシングル・トーン、左手のブロック・コードは映えに映える。

そして、そんなガーランドのバックに就くリズム隊、ポール・チェンバースのベースとアート・テイラーのドラムが、良く聴けば、ハードバップの演奏の中でも、先進的なリズム&ビートを捻り出していて、ガーランドのピアノを引き立て、ピアノ・トリオの演奏に「粋」でアーティスティックな響きを醸し出している。ガーランドのピアノ・トリオがマンネリしないのは、この2人のリズム隊が故である。

プレスティッジ・レーベルお得意の「セッション寄せ集め盤」で、しかも、直近の録音から10年以上経ってのリリースなんだが、内容はとても良い。ブルース基調な演奏が得意なガーランドのピアノの特質がしっかりと押さえられている。きっと、プレしティッジのプロデューサー、ボブ ワインストックはガーランドのピアノが好きだったんやないかなあ。この盤の選曲、ガーランドの個性と特質をしっかり理解していないと、こんなに上手い選曲にはならないだろう。良いピアノ・トリオ盤です。
 
 

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2023年7月12日 (水曜日)

ウェスの「フロント1本の名盤」

1960年代以前、ハードバップ期からジャズの多様化の時代、僕のお気に入りのジャズ・ギタリストは、ウェス・モンゴメリー、ケニー・バレル、グラント・グリーンの3人。ジャズを本格的に聴き始めて、一番後回しになった楽器が「ジャズ・ギター」。やっと、最近、この3人のリーダー作をカタログ順に聴き直していて、順次、記事をアップしている。

『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』(写真左)。1960年1月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Tommy Flanagan (p), Percy Heath (b), Albert Heath (ds)。ウェス・モンゴメリーのギターがフロントのカルテット編成。意外と珍しい、いわゆる「ワン・ギター・カルテット」である。

ギターは旋律を弾く場合、1本の弦をつま弾くので音が細い。ギターは弦が6本あって、ストローク奏法で、6本全部を使うと大きな音になるが、その場合は「リズム楽器」になって、旋律は弾けない。つまり、ギターは単独ではフロント楽器に向かないので、大体はサックスがフロントの相棒に着くケースが多い。

しかし、ウェスは違う。必殺の「オクターヴ奏法」を持っているので、2本の弦で旋律を奏でると、意外と旋律がハッキリする。しかも、ウェスの「オクターヴ奏法」はある程度の高速弾きもいけるとあって、ウェスのギターについては、ギター・アンプの性能と合わせて、オクターヴ奏法を駆使して、ギター1本でフロントを担うことが出来る。
 

The-incredible-jazz-guitar-of-wes-montgo

 
このウェスのリーダー作は、ウェスの「ワン・ギター・カルテット」でウェスのギターが堪能出来る、ということで「名盤」とされる。確かにそうなんだが、オクターヴ奏法で音が太くなるとは言っても、ギターの音色のバリエーションは単調なので、やはり「飽き」がくるのは否めない。

その「飽き」を回避する為に、フロント楽器の相棒が旋律を奏でる時にバックに回って「ストローク奏法」の秒を披露するのだが、この盤にはフロント楽器の相棒の「管」が無い。しかし、この盤では、そんな「管」が無くても困らない。優れた旋律を奏でてくれるフラナガンのピアノがある。

フラナガンが流麗な旋律を奏でる時、ウェスはストロークでバックに回り、ヒース兄弟と組んで、ギター入りのリズム・セクションとして、フラナガンのサポートに徹する。フラナガンのサポートに回った「伴奏のウェス」もこの盤の聴きどころ。ウェスのソロの弾きっぷりばかりがもてはやされるが、ウェスは伴奏に回っても「一流」なのだ。

収録された全8曲のうち、ウェスの自作は3曲、スタンダード曲が5曲。ウェスの自作曲でのパフォーマンスの素晴らしさは当たり前といえば当たり前なのだが、5曲のスタンダード曲でのウェスのパフォーマンスが凄い。鬼気迫るアドリブ・パフォーマンスでガンガンに攻めに攻めている。こんな弾きまくりのウェスは他のリーダー作ではなかなか聴けない。そういう面でも、この盤は「ウェスの名盤」なのかもしれない。
 
 

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2023年7月 5日 (水曜日)

マクリーン初期の名盤の1枚

ハードバップ期のマクリーンは、歌心満点の「唄う」アルト・サックスが素晴らしい。デビュー時には完成され、個性が確立されたプレイだったが、それに磨きをかけたのが、プレスティッジ時代のリーダー作の数々。

パッと集めてパッと録る、リハーサル無しのぶっつけ勝負録音が特徴のプレスティッジの中で、マクリーンはレギュラー・バンドをベースに、良く鍛錬されたパフォーマンスを聴かせてくれる。真摯なジャズマン、マクリーンの真骨頂。

Jackie Mclean『McLean's Scene』(写真左)。1956年12月、1957年2月の2セッション。ちなみにパーソネルは、1956年12月のセッション(Tracks 1, 3, 4)は、Jackie McLean (as), Bill Hardman (tp), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。1957年2月のセッション(Tracks 2, 5, 6)は、Jackie McLean (as), Mal Waldron (p), Arthur Phipps (b), Art Taylor (ds)。

1956年12月のセッション(Tracks 1, 3, 4)は、マクリーンとハードマンの2管フロントのクインテット編成。1957年2月のセッション(Tracks 2, 5, 6)は、マクリーンが1管フロントのワンホーン・カルテット。1956年12月のセッションは、意外とハードマンが絶好調。1957年2月のセッションのマクリーンのワンホーン・カルテットの演奏が、好調マクリーンの個性と特徴を捉えていて良い内容。
 

Jackie-mcleanmcleans-scene

 
特に、スタンダード曲の吹奏が良い。ミディアム・テンポで演奏される冒頭1曲目の「Gone With The Wind(風と共に去りぬ)」は、ガーランドのピアノに導かれて(ワン・フレーズ聴いて直ぐに判る)、ハードマンのトランペットが好調。マクリーンは、曲の良さに依存せず、自らの個性を活かすような、少し癖の強いフレーズでガンガン攻めている。こういうマクリーンが僕は好きだ。

ゆったりと演奏される3曲目のスタンダード曲「Mean To Me」は、マクリーンとハードマンのアンサンブルが良い雰囲気。こういうゆったりとしたスタンダード曲を伴奏させると、ガーランドは無敵。とても趣味の良いピアノで、マクリーンとハードマンを盛り立てている。

2曲目の「Our Love Is Here To Stay」は、マクリーンがワンホーンの軽快な演奏で、マクリーンがのびのびと聴き応えのあるアドリブ・フレーズを吹き回している。バラード曲、5曲目の「Old Folks」では、マクリーンは彼独特の特徴ある個性的なフレーズで、マクリーンならではのフレーズ展開をじっくりと聴かせてくれる。

プレスティッジ時代のマクリーン初期の傑作として『4, 5 and 6』のタイトルがよく挙がるが、この『McLean's Scene』は、その『4, 5 and 6』と比較して勝るとも劣らない、マクリーン初期の名盤だと思う。プレスティッジ時代のマクリーン初期の名盤として、この2枚は外せないですね。
 
 

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2023年7月 3日 (月曜日)

マクリーンの個性は変わらない

ジャキー・マクリーンのプレスティッジ盤には外れが無い。いきなり集まっていきなり本番の「行き当たりばったりのジャム・セッション風のやっつけ録音」そして「録音日、録音セッションの塊を無視した、感覚で切り貼りしたアルバム編集」が個性のジャズ・レーベルのプレスティッジの録音ながら、マクリーンの録音はどれもしっかりした内容で、ハードバップな好盤として聴き応えがある。

Jackie McLean『Jackie McLean & Co』(写真左)。1957年2月8日の録音。プレスティッジのPRLP 7087番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Bill Hardman (tp), Ray Draper (tuba, #1-3), Mal Waldron (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。プレスティッジの録音では意外と珍しい、単一日、単一セッションを1枚のアルバムに収録したアルバム。

この頃のマクリーンは、バンドのメンバーを基本的に固定していた様で、リーダー作に臨む時は、必ず、この固定メンバーのバンドを引き連れて録音に臨んでいた様で、演奏の内容もしっかりリハーサルされた様な、端正でしっかりアレンジされたもので固められている。この辺が「マクリーンのプレスティッジ盤には外れが無い」と言われる所以だろう。

この盤でも、マクリーンの吹奏の素晴らしさは変わらない。ところどころ、ちょっとピッチがずれた、ハードバップな吹奏が爽快。アドリブ・フレーズは切れ味良く流麗で、いかにもジャジーな響きの吹き回しがとても良い。
 

Jackie-mcleanjackie-mclean-co

 
ウォルドロン・ワトキンス・テイラーの「燻し銀」リズム・セクションとの相性が良く、マクリーンのちょっと個性的な吹き回しにジャストフィットしている様子が良く判る。

そして、この盤の面白いところは、1曲目から3曲目に参加しているチューバの存在。レイ・ドレーパーのチューバなんだが、チューバでジャズが出来るとは、ジャズのアドリブ・フレーズの吹奏が出来るとは思ってなかったので、初めて聴いた時にはビックリした。

さすがに速いフレーズの吹き回しは苦手みたいだが、ミッドからスローなテンポのフレーズの吹き回しについては、意外と雰囲気があって良い感じ。それでも、アルバム全体に判って聴くにはちょっと辛くて、この盤の様に3曲程度くらい、音の彩りを添える、という観点でのチューバの採用には納得出来る。しかし、チューバでこれだけ旋律を吹けるとは。実にユニークな存在である。

ハードマンのトランペットは相変わらず、端正でブリリアントな、教科書的なジャズ・トランペットを吹き上げていて良い感じ。マクリーンとのフロント2管のユニゾン&ハーモニーも熟れたもので、ハードバップな雰囲気を更に高めている。

ハードバップな雰囲気をしっかり湛えた、マクリーンの好盤です。チューバの存在も、音の彩りとして捉えれば意外と楽しめます。こういうアレンジやアンサンブルの工夫も、ハードバップ期には盛んに行われていたんでしょうね。
 
 

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