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2018年8月 2日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・126

ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)は、1924年10月27日、シチリア島パレルモ生まれ。1993年に68歳で鬼籍に入っている。1940年代前半から1950年代にかけて、ジャズ・ピアニストとして活躍。1960年に家業を継ぐためジャズ界から引退。1980年半ばに一時期復帰したが、活躍のメインは1950年代。当然リーダ作は少なく十数枚に留まる。サイドマンとしても10枚程度。

しかし、このピアニスト、リーダー作数枚で、ジャズ史に名前を残している。その一枚が、George Wallington『Jazz for the Carriage Trade』(写真左)。1956年1月20日の録音。プレスティッジのPRLP 7032番。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Phil Woods (as), George Wallington(p), Teddy Kotick(b), Bill Bradley as Arthur Taylor (ds)。ハードバップ中期、フロント2管のクインテット構成。

この盤が、聴けば判るのだが、プレスティッジ・レーベルでの録音らしからぬ、演奏全体が端正で活力漲り、流麗かつダイナミック。ブルーノート・レーベルの様に、リハーサルにもギャラを払って、幾度もリハーサルを重ねて、この盤の録音本番に至ったのでは、と思う位に、素晴らしい演奏の数々。これだけ楽器がしっかり鳴って、テクニック優秀、歌心満点なアルバムって、プレスティッジ・レーベルにはなかなか無い。
 

Jazz_for_the_carriage_trade_1  

 
冒頭の「Our Delight」を聴けば、フロントの2管、トランペットとアルト・サックスが絶好調なのが判る。これだけ力強く、良く鳴るトランペットって誰なんだ、と思って首を捻りながらパーソネルを見て「えっ、これがドナルド・バードなん」とちょっとビックリ。そして、流麗で唄うが如く、歌心満点なアルト・サックス。これ誰なんや、とパーソネルを見れば「フィル・ウッズかあ」と思わず感嘆の声を上げる。

リーダーのウォーリントンのピアノは知的なバップ・ピアノ。洗練されたフレーズでフロントの2管を温和に支える。決して、大立ち回りはしない。決して前へは出ない。堅実なベースとドラムと相まって、とても趣味の良いバッキングを実現している。これが見事。こんなに知的で粋なリズム・セクションを得て、フロントの2管は唄うが如く語るが如く、雄弁にポジティブに端正で堅実なアドリブ・フレーズを展開する。

ジャケットはちょっとレトロ調だが、これはこれで実に味がある。このジャケット・デザインも、やっつけデザインが得意な(笑)プレスティッジ・レーベルらしからぬ優れたもの。典型的なハードバップのお手本の様な純ジャズが展開されていて、実に聴き応えがある。プレスティッジ・レーベルらしからぬ、端正でまとまった、ダイナミックかつ繊細なハードバップ。全編に渡って聴き所満載です。

 
 

東日本大震災から7年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年7月25日 (水曜日)

猛暑には「端正なハードバップ」

湿度が高いのは相変わらずだが、今日はちょっとだけ涼しくなったようだ。太平洋上の発生した台風の影響なのか、東風が吹き抜けるようになった。ここ千葉県北西部地方は、この季節、東風が吹くと涼しくなる。しかし、グッと涼しくはならない。今年の暑さは「半端ない」ので、恐らく、広範囲に空気が暖まっているようだ。

これだけ湿度が高くて暑い夏になると、ジャズを聴くのも辛くなってくる。いきおいアルバムを選ぶことになるのだが、意外とオーソドックスな、趣味が良く聴き易いハードバップ盤が良い塩梅だということに気がついた。そもそも、涼を呼ぶジャズなんて有るわけが無い。基本的にジャズはリズム&ビートが命なので、どうしても熱気をはらむ様になる。

『Art Farmer Quintet Featuring Gigi Gryce』(写真左)。PRLP 7017番。1955年10月21日の録音。ハードバップ期のど真ん中。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Gigi Gryce (as), Duke Jordan (p), Addison Farmer (b), Philly Joe Jones (ds)。魅力的なパーソネル。クインテット構成である。これがまあ、絵に描いた様なハードバップな演奏で、フロントの2管、アート・ファーマーのトランペット、ジジ・グライスのアルト・サックスのユニゾン&ハーモニーが、ほんと、典型的なハードバップの響きなのだ。
 

Art_farmer_quintet_featuring_gigi_g  

 
切れ味良く、音のエッジがちょっと丸まったファーマーのトランペットが実に耳当たりが良い。グライスのアルトは吹き過ぎず、適度にウォームで、これまた実に耳当たりが良い。このフロント2管の音が実に耳に優しく、感性に適度な刺激を与えてくれる。バックのリズム・セクションも良い音を出している。ブルージーな哀愁のピアニスト、デューク・ジョーダンが良い音を出している。

適度にブルージーでアーバンなピアノは、どこか清々しさを感じる。スッキリしたタッチの良い音で、破綻の無いバッキングは聴いていてスッとする。ダイナミックでメリハリの良いドラミングは、フィリージョー。適度に「ビート」という刺激を供給してくれる。鮮度の良いドラミング。そして、ベースのアディソン・ファーマーは、リーダーのトランペッター、アート・ファーマーの双子の兄弟。堅実なベースは演奏の屋台骨を支える。安心感を感じる安定のベースライン。

典型的なハードバップな演奏、しかも、破綻無く端正な展開は、苛つくことの無い、安定の音世界を供給してくれる。端正でメリハリの効いたハードバップな演奏はどこか涼を感じ、一時、今年の猛暑を忘れさせてくれる。やはり、猛暑にはオーソドックスな、趣味が良く聴き易いハードバップ盤が良い。ちなみに、アディソンは、この盤の録音の8年後、1963年2月、SADS(突然不整脈死症候群)にて逝去。享年34歳であった。

 
 

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2018年7月23日 (月曜日)

酷暑の夏に「クール・ジャズ」

日頃、ジャズ盤の鑑賞に活用しているiTunesのデータベースが壊れて、ジャズ・レーベルのインデックスが半分以上、使いものにならなくなった。かれこれ約1年になるが、やっと「プレスティッジ・レーベル」のデータベースが復活した。やっとこさ、プレスティッジ・レーベルのアルバムについての聴き直しを再開である。

この1週間ほど、かなりの暑さの千葉県北西部地方。特に今日は超弩級の暑さである。もうぬるま湯の中を歩いているような状況。3分も歩けば、汗がドッと噴き出てくる。この今年の暑さは「半端無い」。これだけ暑いと、熱気溢れる、激しいブロウがメインのジャズは絶対駄目だ。熱中症になる。といって、ハードなフュージョン・ジャズも以ての外。

暑さ対策としてのジャズ。意外とオーソドックスな純ジャズで、適度にアレンジされ、演奏自体はシンプルなものが良い。そもそも「涼を感じるジャズ」なんて有る訳が無い。もともとジャズは熱い音楽だ。ダイナミックなアドリブ展開、躍動感溢れるビート。どうしても「熱くなる」。どうしても「熱くなる」なら、スッキリとシンプルで音が爽やかに聴こえるジャズが良い。
 

Mulligan_plays_mulligan

 
Gerry Mulligan『Mulligan Plays Mulligan』(写真左)。1951年8月27日、NYでの録音。PRLP7006番。米国西海岸ジャズのリーダー格として、バリトン・サックス奏者としてジャズ史に名を刻んだ「ジェリー・マリガン」の、10人編成小型オーケストラによるオリジナル作品集。米国西海岸ジャズらしい、お洒落にアレンジされた、クールでアーバンな純ジャズが展開されている。

ちなみにパーソネルは、Jerry Lloyd, Nick Travis (tp), Ollie Wilson (tb), Allen Eager (ts), Gerry Mulligan, Max McElroy (bs), George Wallington (p), Phil Leshin (b), Walter Bolden (ds), Gail Madden (maracas)。2曲にマラカスが入っているのが面白い。アレンジが得意とされるが、この盤では、マリガン自身、バリサクを豪快に吹きまくっている。

バリサク好きには堪らない、クールでアーバンな、抑制されたバリサクの響き。時には雄々しく時には優しく、変幻自在のバリサクがとても魅力的である。吹き過ぎない、ほどよく抑制されたホーン・アンサンブルも見事。よくまあ、こんなに上質な米国西海岸ジャズの音が、東海岸の「やっつけレーベル」プレスティッジに残されたもんだと感心することしきり。酷暑の夏に最適な「クール・ジャズ」である。
 
 
 

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2018年7月12日 (木曜日)

ドラマーのリーダー盤の好内容

ドラマーがリーダーのアルバムって、内容の優れたものが多い。まとめ役が合っているのか、ドラムのリズム&ビートで演奏全体をコントロールしたり鼓舞したり出来るからなのか、不思議とカッチリと内容が整った内容のものが多い。
 
特に、ハードバップ全盛時代のファーストコール・ドラマー、アート・テイラーのリーダー作には駄盤が無い。特に、今日、ご紹介するリーダー作2枚は、なかなか内容の整った、絵に描いた様なハードバップ演奏がギッシリと詰まっている。
 
Art Taylor『A.T.'s Delight』(写真左)。1960年8月6日の録音。ブルーノートの4047番。ちなみにパーソネルは、Art Taylor (ds), Dave Burns (tp), Stanley Turrentine (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Carlos "Patato" Valdes (conga)。
 
パーソネルを見渡せば、メンバーを厳選した、用意周到に準備された、ドラマーのリーダー作であることが感じ取れる。内容は、ブルーノートらしい、しっかりとアレンジされ、しっかりとリハーサルを積んだ、端正に整った、模範のようなハードバップが展開される。
 
特に、サックスのタレンタインが絶好調。他のメンバーも活き活きとプレイしている。とても良く出来た、上質のハードバップ。リーダーのテイラーのドラミングも冴え渡る。長めのドラムソロを聴き応え十分。

 

Art_tatlor_album  

 
そして、Art Taylor『Taylor's Wailers』(写真右)。1957年2月25日と3月22日(Track2 only)の録音。こちらは、プレスティッジの7117番。ちなみにパーソネルは、Tracks 1, 3-6が、Art Taylor (ds), Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Charlie Rouse (ts), Ray Bryant (p), Wendell Marshall (b)。
 
Track 2だけが、Art Taylor (ds), John Coltrane (ts), Red Garland (p). Paul Chambers (b)。このTrack 2だけが「異質」の雰囲気。何故、2曲目だけ、’コルトレーンのテナーがフロントのカルテット構成の演奏が混ざっているのか判らないが、プレスティッジらしい、直感、寄せ集め、帳尻合わせ編集である。
 
1957年2月25日の演奏がメインだが、この演奏を聴いてみても、時間の空いたジャズメンがガヤガヤ集まって録音した、ジャム・セッションな雰囲気濃厚である。恐らく、リーダーは話し合いで決めたのではないだろうか。演奏の雰囲気は「やっつけ感」満載。
 
それでも、演奏内容の充実度が高いのが、プレスティッジ盤の不思議なところ。駄盤もあるにはあるが、意外とジャム・セッション的録音には優れた内容のものが多い。
 
ジャム・セッションの要はやはりテイラーのドラミング。「やっつけ感」満載の演奏をしっかりとコントロールし、まとめ上げている。この盤でも長めのドラムソロを披露しているが、これまた聴き応え十分。

 
 

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2017年7月21日 (金曜日)

プレスティッジには気を付けろ

プレスティッジ・レーベルほど、いい加減なジャズ・レーベルはないのではないか。手当たり次第、暇なジャズメンに声をかけて、スタジオで繰り広げるジャム・セッション。リハーサル無しの一発勝負の録音。録音時期の整合性を無視したフィーリングだけを頼りにした「寄せ集め的なアルバム編集」。しかも、LPを大量生産する為に、LP両面合わせて、収録時間が30〜40分までの短いトータル時間。

Miles Davis & Lee Konitz『Conception』(写真左)。PRLPの7013番。この盤ほど、プレスティッジ・レーベルらしい盤は無いのではないか。やっつけの一発勝負の録音、フィーリングだけの録音時期の整合性を無視した「寄せ集めなアルバム編集」。この盤はそういう意味では「凄い内容」である(笑)。

まず、このアルバムのリーダーがあのマイルス・デイヴィスとリー・コニッツである。クール・ジャズの双璧、マイルスとコニッツ。この二人がガップリ組んでセッションを繰り広げる、そんな期待を十分に持たせてくれる、そんな二人の名前が並んでいるのだ。で、聴き始めると激しい違和感に襲われる。

冒頭から「Odjenar」「Hibeck」「Yesterdays」「Ezz-Thetic」までは、マイルス・デイヴィスとリー・コニッツとがガップリ組んだセッションが繰り広げられる。だけど、5曲目からの「Indian Summer」「Duet for Saxophone and Guitar」になると、あれれ、という感じになる。コニッツのアルトとバウアーのギターのデュオ。あれれ、マイルスは何処へ行った(笑)。
 

Miles_konitz_conception  

 
しかも、だ。7曲目のタイトル曲「Conception」と続く「My Old Flame」、マイルスはいるんですが、コニッツ、どこにもいないんですが(笑)。しかも特徴のあるテナーって誰だっけ、どっかで聴いたことあるなあと思ったら、ロリンズやないですか。でも、コニッツ、アルトのコニッツ、どこに行ったんですか。

しかも、だ。続く9曲目の「Intoit」そして「Prezervation」に至っては、なんとマイルスもコニッツもいなくなる(笑)。テナーはスタン・ゲッツ、バックのリズム・セクションは西海岸中心。もはや音の雰囲気が全く異なっている。凄い凄いぞ、プレスティッジ・レーベル。

そして、ラスト前の「I May Be Wrong」からラストの「So What」は、西海岸中心のスモール・コンボな演奏。もはや、マイルスとコニッツの影なんぞ全く無い。ラストに至っては、そもそも最初の頃は何を聴いていたんだっけ、という感じに襲われる。最初の4曲だけが、アルバムの額面通り。5曲目以降は、完全な寄せ集め。どう思うと、こういう究極いい加減なアルバム編集になるのか、不思議である。

プレスティッジ・レーベルには気を付けろ。時々、こういうアルバムが混じっている。リーダー名やタイトルに惑わされることなかれ。プレスティッジ・レーベルを聴き進めるには、カタログを手にして、どういうアルバムなのか、事前調査が必須だろう。でないと、時々、とんでもない「駄盤」を掴まされることになる。でも、それがまた楽しいんだけど、プレスティッジ・レーベルって(笑)。

 
 

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2017年7月19日 (水曜日)

The New Miles Davis Quintet

Prestigeレーベルの7000番台を順番に聴き直していると、いろいろ面白い事に気がついたり、新しい発見があったりで、とにかく楽しい。とにかく手当たり次第、リハーサルも無しの一発録り。録音時期という統一感を無視した、感覚だけのアルバム編集が、他のレーベルに比べて多く、「やっつけのプレスティッジ」と僕は呼んでいる。

しかし手当たり次第、一発録りでガンガン録音して、適当に編集して適当なジャケットでどんどんリリースするので、アルバムの数としてもまとまったボリュームがある。リハーサル無しの一発録りがほとんどなので、アルバムの出来は玉石混交としている。しかしながら、音源が豊富な故に、その時代の演奏のトレンドやジャズメン毎の個性が意外と良く判って面白い。

例えば『The New Miles Davis Quintet』(写真)。PRLP7014番。Prestigeレーベル初期のシリーズ。1955年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。タイトル通り、マイルス・デイヴィスの新しいクインテットの旗揚げ盤である。

この盤単体で聴くと良く判らないんだが、他の同時期、1950年代前半から中盤にかけて録音されたアルバムと聴き比べると、このマイルスのクインテットの演奏が、如何に新しい雰囲気を醸し出していたかが良く判る。アレンジも新しい、イントロの入り方も新しい。アドリブの展開の仕方も新しい。今の耳で聴いても新しいと感じるのだ。リリース当時は逆に違和感を感じた評論家も多かったのではないか、と推察する。
 

The_new_miles_davis_quintet

 
この盤でのコルトレーンは評論家筋から「いもテナー」とバッサリ切り捨てられているのだが、新しい雰囲気、新しい音色、新しいアプローチは十分に感じることが出来る。テクニック的には確かにイマイチなんだが、それまでにない、新しい雰囲気が十分に漂っている。これも今の耳から振り返るから、その「新しい雰囲気」が判るのだが、リリース当時は判らなかっただろうなあ。

ピアノのガーランドは明らかに「発展途上」。まだ、マイルスの薫陶を受けたスタイルに確信を持てていない。しかし、ベースのポール・チェンバースとドラムのフィリー・ジョーは既に「出来上がっている」。完成されたベースとドラム。素晴らしい演奏が繰り広げられている。後はテナーの正調とピアノの確信を待つのみ、のマイルス・クインテットである。

マイルスは、といえば、そりゃ〜勿論、素晴らしいに決まってるでしょう。ただ、このアルバムでは、自らの新しいクインテットへの教育と鍛錬に注力している様で、マイルスのプレイに「新しさ」は無い。しかし、若い溌剌として「成熟」は十分に感じられて、さすがマイルス、と感心してしまう。

しかしなあ、ジャケットがなあ。これは全く以てPrestigeレーベルの仕業である。なんて酷いジャケットなんだ。色は緑と青の2色ある。緑の方がオリジナルだそう。しかし、どうしてこんな酷いデザインになるんだ。タイポグラフィーも劣悪。まあ、Prestigeレーベルは、ジャケット・デザインなんて興味の範疇外だからなあ。しかし、この盤のマイルス・クインテット、聴いていると意外な発見があって意外と面白い。

 
 

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2016年10月28日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・93

ジャズ者を40年以上やっているのだが、ジャズ者になった時から、マイルス・デイヴィスが大好きである。とにかく、ジャズ者になってから、ずっと機会があるごとにマイルスを聴いてきた様な気がする。もはやマイルス無しでは、ジャズ者としての生活は語れない状態であり、暫くマイルスを聴かないと「マイルス禁断症状」が出てくる(笑)。

で、最近、マイルスと御無沙汰で、ちゃっかり「マイルス禁断症状」が出てきたので、慌ててマイルス盤を選盤する。若き日のマイルスを選盤。珍しいマイルスのワンホーン盤である。

Miles Davis『The Musings of Miles』(写真左)。プレスティッジの7007番。1955年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), Red Garland (p), Oscar Pettiford (b), Philly Joe Jones (ds)。

1950年代マイルスの黄金のクインテットのメンバー、ピアノのガーランドとドラムのフィリージョーの名が見える。実はまだこのアルバムの録音時点では、あの伝説の1950年代マイルスの黄金のクインテットのメンバーとして、マイルスと長くやっていく事をまだ知らない。しかし、この二人とマイルスとの相性は既に抜群。

不思議なことに、マイルスについては、マイルスのトランペット、ワンホーンのアルバムが少ない。というか、ほとんど無い。というか、この『The Musings of Miles』のみではないか、と思う。実際、マイルスが公式に録音したリーダーアルバムの中では、唯一のワンホーンカルテット作品。
 

The_musings_of_miles

 
で、これが「良い」。マイルスはワンホーンの時にはワンホーンとして、マイルスのトランペットが一番クールで、一番格好良く聴こえる様に吹く。そして、アレンジも同様。マイルスのトランペットが一番クールで、一番格好良く聴こえる様なアレンジが施されている。

加えて、ワンホーンならではの「効果的なアドリブ・フレーズ」「印象的なアドリブ・フレーズ」が満載。もうマイルスだけが目立ってしまう、マイルスだけが印象に残るイメージ。さすが「我らがマイルス」である。素晴らしい、実に素晴らしい。

なぜか世間では評価が低いアルバムである。が、マイルス者からすると、結構、このアルバム、ポイントが高いのではないか。マイルスとして珍しいワンホーン盤で、マイルスの個性、マイルスの演奏の意図が手に取るように判る。マイルスの考え方が結構読み取れる。そんな「マイルス者にとってマストアイテム」な盤である。

上品で豊かで心地良い音色。ひたすらスイングし、ひたすら唄う様にアドリブ・フレーズを紡ぎ上げていく。マイルスのトランペットのベーシックな姿。マイルスの個性の判り易いサンプル。このマイルスの唯一のワンホーンは「マイルス者の我々にとって宝のアルバム」。

 
 

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2016年10月23日 (日曜日)

ミルトのプレスティッジ好盤

プレスティッジ・レーベルの聴き直しを始めた。プレスティッジ・レーベルとは、1949年にプロデューサーのボブ・ウェインストック(Bob Weinstock)によって設立されたアメリカ合衆国のジャズ・レコード会社。ブルーノート、リヴァーサイドと並んでモダン・ジャズ3大レーベルの一つである。

レーベルのオーナのボブ・ウェインストックはジャズをビジネスとしか捉えておらず、ブルーノートやリヴァーサイドの様な、アルバム制作に関してのポリシーが希薄。従って、アルバムの出来不出来は、録音時のジャズメンの志や調子に大きく左右され、内容的に素晴らしい好盤もあるが、とんでもない駄作も存在する。その辺りが聴き直しをする上でスリリングではある(笑)。

プレスティッジは、7000番台から7800番台までが主要なアルバム。多作ではある。とりあえず、まずは7000番台である。1954年〜1957年の録音が中心。ハードバップ初期からハードバップが隆盛を極めるまでの過程が聴ける。

今日の選盤は『Milt Jackson Quartet』(写真左)。PRLP7003番になる。1955年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Milt Jackson (vib), Horace Silver (p), Percy Heath (b), Connie Kay (ds)。プレスティッジにしては珍しく、単一日のセッションのみで構成されている。
 

Milt_jackson_quartet_7003

 
単一日のセッション、固定されたカルテットメンバーのみの演奏で構成されているので、アルバム全体の音に統一感があって、アルバム全体の品位を高めている。1955年の録音。ミルト・ジャクソンが、モダン・ジャズ・カルテットの一員として本格的に活動する前の録音であり、ミルト・ジャクソンのヴァイブの本質と個性が良く判る内容になっている。

思いっきりファンキーなピアニスト、ホレス・シルバーがピアノを担当しているのが理由なのか、ミルト・ジャクソンのヴァイブは、ファンクネスを押さえた、適度に洗練された、透明度の高い音になっているのが面白い。ミルトはソロになるとファンクネスを放出するなんて言われることがあるが、それは時と場合によるのだろう。

総収録時間が30分ちょっとと収録時間が短いのが玉に瑕ではあるが、この盤には、若き日のミルト・ジャクソンの清々しく爽快なヴァイブが詰まっている。ミルトのヴァイブの個性を確かめ、楽しむには格好のアルバムである。

なんともチープなアルバム・ジャケットがこのアルバムの印象を平凡なものにしている。プレスティッジ・レーベルによくありがちな、やっつけ仕事なジャケット。いわゆる「ジャケ買い」が通用しないプレスティッジ・レーベルである。

 
 

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2016年9月21日 (水曜日)

プレスティッジに何故かゲッツ

プレスティッジ・レーベルの最初のPRLP7000番台の最初が「ビリー・テイラー」。地味である。そして、2名目が「スタン・ゲッツ」。米国東海岸がメインのジャズ・レーベルのプレスティッジが、米国西海岸のテナーの雄「スタン・ゲッツ」である。方針も矜持もあったもんじゃない(笑)。

プレスティッジの総帥ボブ・ワインストックについては、恐らく、アルバムを売ろう、という意気込みは希薄だったのではないか、と推察する。ただただ、ジャズメンを集めていきなり録音して、アルバムにしてリリースする。この録音してリリースする、というところだけが、ボブ・ワインストックの楽しみだったのではないだろうか。

さて、このプレスティッジPRLP7002番が『Stan Getz Quartets』(写真左)。録音時期は、1949年6月、1950年1月、1950年4月の3つに分かれる。この3つのセッションの記録を、曲の雰囲気毎にLPの再生の流れに合わせて散りばめつつ、一連の流れのあるアルバムとして成立させている。

録音時期が3種に分かれるとはいえ、スタン・ゲッツのテナーの雰囲気はほとんど変わらない。これが凄い。さすがにジャズ・テナーの有名スタイリストの一人である。冒頭の「There's a Small Hotel」からラストの「Wrap Your Troubles in Dreams」まで、どの演奏でもテナーの音は、絶対に「スタン・ゲッツ」の音である。
 

Stan_getz_quartet

 
僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半の時代では、スタン・ゲッツの代表作と言えば、このプレスティッジPRLP7002番の『Stan Getz Quartets』。スタン・ゲッツがジャズの表舞台に現れ出でたのは1950年代後半。それから25年、四半期程度しか経っていない時代では、確かにこの1950年辺りの録音の当盤がイチ押しかもしれない。

しかし、スタン・ゲッツの場合、1980年代から逝去する1991年の間にも、彼の個性をとことん堪能出来る好盤が結構あるので、スタン・ゲッツといえば『Stan Getz Quartets』という、1970年代の図式は当たらない。

確かに、この『Stan Getz Quartets』については、スタン・ゲッツのテナーの個性は十分に認識できるが、インプロビゼーションの質としては「最高のもの」とは言い難いと感じる。良いんだけど、スタン・ゲッツの代表作とするにはちょっと無理がある。恐らく、それはバックのサポートメンバーの質にも連動する。つまり、ゲッツは良い、でも演奏全体を通しては「ちょっとなあ」という感じ。

スタン・ゲッツのテナーの個性を知るには、もっと内容充実の盤がゴロゴロしている。何もボサノバ・ジャズだけがスタン・ゲッツの得意とするところでは無い。この『Stan Getz Quartets』は希有なインプロバイザーの記録である。

意外と若かりしゲッツは硬派でワイルドであることが良く判る。希有なジャズ・インプロバイザーの面目躍如。そんなプレスティッジPRLP7002番『Stan Getz Quartets』である。

 
 

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2016年9月20日 (火曜日)

Prestige7000番台・最初の盤

ここ2年の間に少しずつ準備を進めてきたが、やっと、Prestigeレーベルの聴き直しの体制が整った。まずは、PRLP7000番台を順番に聴いて行きたい。ジャズの歴史を聴き直す風で実に楽しそうだ。

さて、blueNoteレーベルの1500番台の最初は「マイルス・デイヴィス」だった。さすがである。BlueNoteは「ジャズを良く知るレーベル」である、という矜持を感じる。ブルーノートは「正統なジャズ・レーベル」である、という強い主張を感じる。

で、Prestigeレーベルについてはどうかと言えば、PRLP7001番は誰か、と調べてみたら、なんと「Billy Taylor(ビリー・テイラー)」であった。なんとマイナーな。Prestigeらしいと言えば、Prestigeらしいんですけどね。ちょっと地味すぎるし、ブルーノートの様な「矜持」を全く感じない(笑)。

ビリー・テイラーというピアニストは、ジャズ者中堅どころ以降なら、名前ぐらいは聞いたことがあるはずである。しかし、実際の演奏は聴いたことがない、というジャズ者の方々が多いのではないか。ジャズ盤紹介本などでも、ビリー・テイラーのアルバムを扱うものは殆ど無い。特に日本では、ビリー・テイラーはマイナーな存在である。

米国でも「過小評価されている最たるジャズメンの一人」などという、本人としてはあまり有り難くない評価を頂戴している。それでも、リーダー作は結構な数を出している。これがちょっと不思議なジャズ・ピアニストである。

さて、PRLP7001盤は、Billy Taylor『A Touch Of Taylor』(写真左)になる。1955年4月の録音。録音はRudy Van Gelder。ちなみにパーソネルは、Billy Taylor (p), Earl May (b), Percy Brice (ds)。 ベースもドラムも誰か判らない。主役のビリー・テイラーのみならず、他のメンバーも地味一色のピアノ・トリオ。
 

A_touch_of_taylor

 
ビリー・テイラーは、ディジー・ガレスピーやリー・コーニッツのグループで活躍、DJやテレビ番組の司会にも活躍、ジャズ・ピアノのみならず、多彩な活躍をした知性派ピアニスト。高等教育を受け、ダウンビート誌に寄稿したり、ロングアイランド大学で教鞭をとったり、エール大学のデューク・エリントン特別研究員でもあったり。アメリカ国内では、「Dr. Taylor(テイラー博士)」と呼ばれている。

そんな「Dr. Taylor」がリーダーのピアノ・トリオであるが、これがまた内容的に地味。左手のブロックコード、右手のシングルトーンとくれば、レッド・ガーランドの流れかと思いきや、ガーランドに比べて、右手のシングルトーンのアドリブ展開が、常識的というか捻りの無い素直なもの。左手のブロック・コードも常識的といえば常識的。

教科書的な端正さが特徴で、演奏のテンポもゆったりとしたミッド・テンポなものが大多数。どの演奏もアドリブ展開に捻りや捻れなどの強烈な個性が無いので、素直に聴けるが引っ掛かるものが無くて飽きると言えば飽きる。ちょっと速いテンポのちょっとアグレッシブな演奏もあるが、アルバムの後半の2曲適度。

テクニックはあるし、上品で端正なピアノではある。でも、何というのか、穏やかというか温厚というか、ゆったりホッコリとはしているが、尖った個性に乏しいピアノ・トリオ演奏である。なんか一味足りない、とでも形容したら良いんでしょうか、聴き終えた後、なんか「少し残念な」気持ちが残る演奏です。

軽やかで端正なピアノ・タッチが良い感じなんですが、やはりリズム・セクション含めたメリハリとダイナミックな展開が不足しているところが課題な盤だと感じます。悪くはないんですけどね〜、何か大切なものが足りない、そんな気持ちが残念な、PRLP7000番台最初の一枚です。

 
 

震災から5年6ヶ月。決して忘れない。まだ5年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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