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2012年7月 1日 (日曜日)

これぞ「真の天才の成せる技」

1976年の秋、R&B系のアルバムで、とてつもないアルバムがリリースされた。ボリュームは「LP2枚組+EP1枚」という超弩級のボリューム。Stevie Wonder『Songs In The Key Of Life』(写真)である。

1972年『Talking Book』、1973年『Innervisions』、1974年『Fulfillingness' First Finale』の怒濤の3部作は凄かった。とてつもないソロ・アルバムがぞろりと3枚並ぶ。いずれも甲乙付け難い名盤である。スティーヴィー・ワンダーは天才だと確信した。

しかし、1976年秋、衝撃が走った。『Songs In The Key Of Life(キー・オブ・ライフ)』のリリースである。これには心底驚いた。天才の成せる技の出現にリアルタイムで立ち会った、そんな神々しい雰囲気があった。

当時、新しいアルバムの音源はFM放送で、アルバムの幾つかの曲をチョイスしてオンエアしていた。これが当時、高校3年生、貧乏高校生だった僕の、必須の「無料」の音源だった。
 
この『キー・オブ・ライフ』の冒頭の「Love's in need of love today(ある愛の伝説)」が流れた時、僕はその前奏の音を聴いて「ひっくり返った」。通常の名曲などという次元を超えた、奇跡の様な音世界である。

FM番組雑誌を舐めるように見渡して、『キー・オブ・ライフ』からの選曲を、片っ端からチェックしてエアチェックしまくった。「Sir Duke(愛するデューク)」、「Isn't She Lovely(可愛いアイシャ)」、「As(永遠の誓い)」、「Saturn(土星)」、そして「Ebony Eyes(エボニー・アイズ)」。それぞれの曲をFMで初めて聴く度に「ひっくり返った」。 通常の名曲などという次元を超えた、奇跡の様な曲である。
 

Songs_in_the_key_of_life

 
FM番組を舐めるようにチェックして、漏れなくエアチェックしても、このアルバムの3分の1の曲の音源がゲット出来ない。しかし、このアルバムは「LP2枚組+EP1枚」の超弩級のボリューム。
 
なんてことしてくれたんだスティービー。高校生時代の1ヶ月の小遣いが3000円程度。この「LP2枚組+EP1枚」のアルバムは、確か5000円くらいしたと記憶している。どう考えても買えへんやん(泣)。でも、ここまで来たら、絶対にこのアルバムの全曲21曲の全てが聴きたい。

結果として、1976年の秋の発売だったが、アルバムの入手は1977年の1月まで待つことになった。つまりはお年玉をあてにしてゲットしようという魂胆。お年玉を注ぎ込んで、やっとのことで入手した「LP2枚組+EP1枚」の『Songs In The Key Of Life』。まずは、聴き込む為にカセットにダビング。EP1枚に収録された4曲には閉口したが、なんとかカセットに収まった。それから暫くは『Songs In The Key Of Life』三昧の毎日。至福の時であった。

真の天才の成せる技とは、このことを言うのだろう。「LP2枚組+EP1枚」に収録された全21曲、捨て曲は全く無し。どれもが名曲と呼ぶに相応しい内容。同一コンセプトの曲は無く、曲のコンセプトについてはバラエティに富んでいるが、アルバム全体の統一感は抜群。21曲を収録した超弩級のボリュームでありながら、全曲通して聴いても、長いなあとも思わないし、聴き疲れない。

1970年代のスティーヴィー・ワンダーの最高傑作は、と問われれば、僕は、絶対のこのアルバム『Songs In The Key Of Life』を推します。感じるままに、気負い無く、自然と湧き出る音世界を粛々と記録した。そんな真の天才の成せる技がこのアルバムにギッシリと詰まっています。

 
 

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2012年6月27日 (水曜日)

スティービーは天才である・・・

このアルバムを聴いた時、この人は天才だと思った。当時のジャンルのネーミングは「ソウル・ミュージック」。その後、R&Bとも呼ばれたジャンル。僕が中学生の頃は「モータウン・ミュージック」とも呼ばれた。

その頃の「ソウル・ミュージック」は一発狙い。シングル・ヒット狙いとして、良く出来た、キャッチャーなフレーズを散りばめた、ダンサフルでファンキーな音世界。LPアルバムとして、曲を揃えて世に問うなんてことは無かった。

しかし、Stevie Wonder(スティーヴィー・ワンダー)は違った。このアルバムを聴いた時、僕は「この人は天才だ」と思った。そのアルバムとは『Innervisions』(写真左)。1973年のリリース。スティービーのなんと、16作目のオリジナル・アルバム。ジャケットデザインと共に、その内容も含めて、申し分の無いアルバム。

捨て曲無し。アルバム全体の雰囲気を統一して、コンセプト・アルバムとしても評価出来る、当時として先進的な内容。ほとんどの楽器をスティーヴィー自身が演奏。ヒット曲狙いの「ソウル・ミュージック」が、ここまでアーティスティックな表現を実現出来るとは・・・。ほとほと感心したことを、昨日のことの様に覚えている。1976年、高校3年の春のことである。
 
Innervisions
 
アフリカン・アメリカンの音楽のルーツをしっかり押さえた、アーシーでファンキーな音世界。ソウルあり、ブラコンあり、ファンキーあり、そして、ゴスペルあり。そこに、歌詞をのせて唄うスティービーは、徹頭徹尾、何から何まで「神々しい」。

スティービーについては、その歌唱は言うまでも無いが、キーボードの使い方、特に、シンセサイザーの使い方が素晴らしい。マルチ楽器奏者の側面を、このアルバムでは前面に押し出してはいるが、スティービーの一番優れた才能を見せてくれる楽器は「キーボード」。
 
とりわけ、シンセの使い方は唯一無二。スティービーにしか出せない、個性的な音が、このアルバムの中で、しばしば聴くことができる。

スティーヴィーは1973年当時、弱冠23歳。若き天才である。曲作りもボーカルもキーボードもその他の楽器も、その才能は素晴らしいが、僕は、この人のアレンジの才能に「ひれ伏す」。一点の曇りも無い「完璧なアレンジ」。この『Innervisions』でのアレンジは完璧。天才の成せる技である。

 
 

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2012年4月14日 (土曜日)

Stevie Wonderの「最初の成果」

僕がそれまで持っていたR&Bのイメージを根底から覆したアルバムがある。Stevie Wonderの『Talking Book』(写真左)である。1972年のリリース。『Innervisions』『Fulfillingness' First Finale』を含めて「黄金の3部作」と称えられる傑作の一枚である。

この『Talking Book』を初めて聴いたのは、確か、高校2年生の秋、R&B好きな友人宅でのことである。スティーヴィー・ワンダーという名前は知っていた。が、まとまってアルバムを聴くなんてことは無かった。なので、R&B好きの友人から、Stevie Wonderのアルバムを聴くか、と言われた時は、二つ返事で「もちろん」。友人がLPに針を落として、ステレオでかけてくれる瞬間、ドキドキした。

そして、スピーカーから出てきた音を聴いて、「これがR&Bの音か?」と、びっくりした。それまでの、僕のR&Bの音の印象と言えば、黒くて粘りがあって、俗っぽくて、ファンキーな香りがプンプンする、そんな黒人の流行歌的なイメージを持っていた。しかも、コンセプト・アルバム的なイメージは全く無く、一発勝負のシングル・レコード的なイメージの方が強かった。

そんな印象、イメージの中での、Stevie Wonderの『Talking Book』体験である。たまげた。まず、収録されている全ての曲が「クール」。俗っぽいイメージなど全く無く、実にアーティスティックなイメージの方が強い。そして、アレンジがスマート。女性コーラスの使い方、シンセの使い方、エレピの使い方等、どれをとっても凄くスマートでクレバー。

しかも、作曲のイメージ、アレンジのトーンについて、絶対的な統一感があり、このアルバムについては、コンセプト・アルバム的なイメージが強い。アルバム全体での統一感が確立されていて、R&B系のアルバムとしては秀逸な出来である。全く、曲の寄せ集め感が無いところが凄い、と思った。繰り返し聴いても飽きが来ない。曲の並べ方、アレンジのバリエーションなど、アルバム・コンセプトがしっかりしていて、良く考え抜かれている。
 

Stevie_talking_book

 
収録されている曲はいずれの曲も優れたものばかりであるが、そんな曲の中でも、シングル・ヒットした「Superstition」と「You Are the Sunshine of My Life」の出来が、とりわけ抜きんでている。どちらの曲も、スティーヴィー・ワンダーのエレピやシンセという電気鍵盤楽器の使い方、音の出し方が秀逸。ボーカルの素晴らしさはさることながら、キーボードの素晴らしさが抜きん出て光る素晴らしさである。

ちなみに、「Lookin' For Another Pure Love」という曲では、Jeff Beck がエレギで参加している。乾いたファンク・ギターという雰囲気で、素晴らしいバッキングとソロを披露している。この「Lookin' For Another Pure Love」を切っ掛けにした、スティーヴィー・ワンダーの「なんだかなあ」とちょっと呆れるエピソードがある。

「Lookin' For Another Pure Love」でのギターの参加について、スティーヴィー・ワンダーが大変感激し、そのお礼に自作曲であった「Superstition」をジェフ・ベックに贈ることになった。と、ここまでであれば「良い話」なんだが、事もあろうにスティービーはジェフよりも先に「Superstition」をレコーディングし、さっさと発表してしまった。しかもこの曲は大ヒット。これには、さすがのジェフも激怒したと言われている。

しかも、この後が更に「なんだかなあ」な話なんだが、その埋め合わせということで、急遽、スティービーは「哀しみの恋人達」という曲をジェフにレゼントしたらしいのだが、これまた、シリータの方が先にレコーディングしてたことが判明。この「なんだかなあ」の話を聞く度に、聖人の様な扱いを受けているスティービーではあるが、意外と人間的には「とっぽい」ところがある、意外と俗っぽい人なんだなあ、と感じて、ガッカリもするが、ちょっとホッとしたりもする(笑)。

まあ、人間的な性格と音楽的な才能とは正比例しないので、前述の話は「ちょっとしたエピソード」として留め置くとして、Stevie Wonderの『Talking Book』は、スティービーの才能と個性が花開いた「最初の成果」として位置付けられる傑作である。

Stevie Wonder『Talking Book』と言えば、個人的には、やはり「You Are The Sunshine Of My Life」。昔から、この曲は震えがくるくらいに大好きな曲。しかも、今の季節である「春」に聴くこの曲は絶品。特に、スティービーのエレピの揺れるような音の響きが心地良い。 

 
 

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