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2017年7月20日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・84

ジャズはビートルズをカヴァーするのが好きである。ジャズの世界では、ビートルズの楽曲のカヴァー盤が大量に存在する。ビートルズの楽曲をカヴァーするだけで「売れる」と思ったんだろうなあ。実に安直なアプローチ(笑)。結局、今の耳で振り返って、アレンジと演奏のレベルが高かったものだけが残った。まあ、カヴァー盤なんてそんなもんである。

Bill Frisell『All We Are Saying...』(写真左)。2011年6〜7月の録音。捻れギタリストの最右翼、ジャズというジャンルを超えた、聴いたことも無い不思議な怪しげな捻れフレーズを連発する「変体ギタリスト」、ビル・フリゼールのアルバムである。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Greg Leisz (g), Jenny Scheinman (vln), Tony Scherr (b), Kenny Wollesen (ds)。フリーゼル以外、知らない人ばかり(笑)。

ジャケットを見れば「おやっ」と思う。このイラストって「ジョン・レノン」じゃないのか。で、収録された曲名を見渡すと、おお、なんと、このアルバム、ジョン・レノンの楽曲のカヴァー盤ではないか。ジャズの世界では、ビートルズのカヴァー盤って山ほどアルのだが、アフター・ビートルズ、いわゆるビートルズ・メンバーのソロ時代の楽曲のカヴァー盤ってあまり無い。
 

All_we_are_saying

 
ジョンの楽曲の特徴と個性を良く理解した、とっても良い選曲ですよね。「You've Got Hide Your Love Away」「Hold On」「Julia」「Mother」は、ジャズでカヴァーがあまりされていない曲だと思うんだが、これがまあ、優れたアレンジで、きっちり、コンテンポラリーなジャズの演奏に仕上がっている。やっぱり、カヴァー盤って、アレンジが大事だよね。

こうやって、ジョンの楽曲のジャズ・カヴァーの演奏を聴いていると、ジョンの楽曲の旋律って、ジャズに向いているなあ、と思う。ジャズをやる方として、アドリブへの展開が面白くなるようなコード進行をしている、ということ。フリゼール、目の付けどころが違う。そう言えば、ジョンと並んで、ジョージの楽曲もジャズでカヴァーされることがある。やっぱり、ジョージの楽曲の旋律もジャズに向いているんだよね。

フリゼールのギター、思い切り捻れた「変体ギター」なので、ジョンの楽曲をどれだけ捻ってくるのか、と最初は構えて聴き始めるのだが、以外と素直なトーンで弾き進めているところが印象的。米国ルーツ・ジャズな雰囲気がとっても素朴で良い。楽曲も持つ特徴的なフレーズはしっかりシンプルに弾き進め、アドリブで捻れに捻る。メリハリの効いた展開で、ジョンの楽曲のカヴァー盤としては秀逸な出来です。

 
 

東日本大震災から6年4ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年11月27日 (日曜日)

ビートルズのカヴァー集・3

1962年10月のデビューから、一気に世界最高のロックバンドにまでのし上がったビートルズ。その人気は凄まじく、ジャズの世界でも、ボサノバ・ジャズの流行の後、1960年代半ばからビートルズの解散する1970年くらいまで、猫も杓子もビートルズのカヴァー曲を、という時代があった。

例えば、ジャズ・ビッグバンドの老舗中の老舗のこのバンドですら、ビートルズ曲のカヴァーに手を染め、ビートルズ曲のカヴァー盤までリリースしている。Count Basie『Basie's Beatle Bag』(写真左)。1966年のリリース。1964年がビートルズの初の北米上陸だったから、全米では人気絶頂の時期でのリリースになる。

いやはや、あのジャズ・ビッグバンドの老舗カウント・ベイシー楽団である。あのカウント・ベイシー楽団までもが、ビートルズのカヴァー集を出すのか、とこのアルバムの存在を知った時には、改めて、当時のビートルズの人気の凄さを再認識したものだ。

ただ、このアルバムを聴いていて、ジャズ・ビッグバンドの老舗カウント・ベイシー楽団としての矜持をほのかに感じるのは、このカヴァー集のアレンジは、そんなに趣向を凝らした、優れたものでは無いということ。恐らく、このアルバム、レコード会社からの強い要請があって、あんまり乗り気のしないまま、制作されたのでは無いか、と想像している。
 

Basies_beatle_bag

 
選曲も、とにかくビートルズのヒット曲ばかりがズラリと並ぶ。ビートルズの楽曲はコードのチョイス〜進行がかなりユニークなものが多く、ジャズとしてアレンジして良い曲と、ジャズとしてアレンジすると魅力が半減する曲とが混交している。ヒット曲だからといって、全てがジャズ化に向いているか、というとそうでは無い。

そういう意味でカヴァーする楽曲の選定からアレンジまで、あんまり「力」が入っていないように感じるカヴァー盤ではある。がしかし、じゃあ、これが全くの平凡盤かというとそうでないところに、これまた、老舗カウント・ベイシー楽団としての矜持をほのかに感じるのだ。

アレンジは平凡なんだが、それぞれの楽曲でのアドリブ・ソロはなかなか気合いが入っている。先にも書いたが、ビートルズの楽曲はコードのチョイス〜進行がかなりユニークで、このジャズには全く無いであろう、ユニークなコード進行をベースにアドリブ・ソロに突入すると、結構、テクニックと経験がものを言う。そこが恐らくジャズメンのプロ意識とプライドを擽るのではないだろうか。

アルバム・ジャケットもジャズ・ビッグバンドらしからぬもの。楽団の総帥、カウント・ベイシー翁を囲む子供たち。このデザインがなぜ、ビートルズの楽曲のカヴァー集のデザインなのか、甚だ疑問である。何か当時の狼狽・困惑を良く表していると思って、思わず苦笑してしまう(笑)。

 
 

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2016年11月21日 (月曜日)

ながら聴きにビートル・ジャズ

ビートルズのアルバムがCDで正式にリイシューされたのが1986年。それでもジャズではビートルズのカバーはなかなか再来しなかった。1960年代から1970年代前半にかけて、その世界的ブームに乗って、ジャズ界ではビートルズの楽曲のカバーが乱造された。玉石混交としたカバーの出来に一喜一憂したもんだが、1980年代以降、とんと御無沙汰であった。

それから、30年余りが経って、再び、ジャズ界でビートルズの楽曲がカバーされ出した切っ掛けは、このアルバムでは無かったかと思う。Beatlejazz『Another Bite of the Apple』(写真左)。1998年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Dave Kikoski (p), Charles Fambrough (b), Brian Melvin (ds)。聴けば判るのだが、正統派のジャズ・ピアノ・トリオである。「捻り」は全く無い。

Beatlejazzは、ビートルズのカバーアルバムを何枚かシリーズでリリースしている(3枚だったかな)。その中で、僕はこの『Another Bite of the Apple』が一番のお気に入り。選曲が適度に良く、アレンジもバッチリ決まっている。しかも、シンプルにビートルズの楽曲の持つ旋律の良さを感じることが出来るピアノ・トリオのフォーマット。この盤が一番聴いていて落ち着く。
 

Another_bite_of_the_apple

 
アレンジが優れている。ビートルズの楽曲と直ぐ判るように原曲の旋律をしっかりと踏襲しているのだが、アドリブに入ると、ビートルズの楽曲の持つユニークなコード進行を借りつつ、ジャズとしてなかなかの内容のアドリブ・フレーズを展開する。ジャズ者初心者でもビートルズの楽曲のカバーと判り、アドリブ部ではジャズ者ベテランがその展開に耳をそばだてる。そんな初心者の耳にも、ベテランの耳にもしっかりと応える内容が良い。

アレンジの勝利である。「Let It Be」のアレンジが格好良い。この「Let It Be」は様々なジャズメンがカバーしているが、このBeatlejazzのアレンジがかなり格好良い。もしかしたら、一番、格好良いかも。「Magical Mystery Tour」のアレンジがこれまたユニークで良い。この楽曲がジャズにアレンジ出来るとは思わなかった。しかも実にクールにアレンジされている。

Beatlejazz『Another Bite of the Apple』。2001年、このカヴァー盤が出た時はその内容に思わず唸った。あれから15年。ビートルズのピアノ・トリオ・カヴァー盤として定盤化。今でも時々、ひきずり出して来ては「ながら聴き」してます。とにかくアレンジが秀逸。参考になります。

 
 

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2016年9月 5日 (月曜日)

ビートルズのカヴァー集・2

ジャズにおける、ビートルズの楽曲のカヴァーには、どうも「コツ」みたいなものがあるように感じる。ビートルズの楽曲のカヴァーについては、やはり「アレンジ」が大切。どんなジャズのスタイルのアレンジに合わせるか、によって、楽曲のチョイスが変わる。

そう、アレンジの傾向に合わせた、ジャズの演奏トレンドの傾向に合わせた「ビートルズの楽曲の選択」が大切なように感じる。「ビートルズの楽曲」の中でカヴァーしたい曲について、単に自分の好みの曲を選ぶと、意外とジャズにアレンジし難かったりする。

特に、ビートルズの楽曲はその傾向が強い。ジャズにアレンジし易い曲と全くし難い曲と大きく二分される様な気がしている。もともとビートルズの楽曲はコード進行とリズム&ビートに強烈な個性があるので、ジャズに合う合わないの傾向が極端なのも何となく納得出来る。

さて、このアルバムを聴くと、そういう傾向が何と無く判る様な気がする。Tok Tok Tok『Revolution 69』(写真左)。2010年のリリース。「Tok Tok Tok」とは、1998 年にヴォーカリストのTokunbo Akinro を中心に結成されたドイツのアコースティック・ソウル・ジャズ・ユニット。
 

Toktoktok_revolution_69

 
現代のジャズの最新トレンドを踏襲した、新しい感覚のジャズ・バンドである。フロントはボーカルがメイン。バックのジャズの感覚は、ユーロビートやハウス・ミュージック、ヒップ・ホップのリズム&ビートを取り込んだ、コンテンポラリーな感覚のエレクトリック・ジャズ。

そういう傾向のジャズのスタイル、トレンドを踏襲したアレンジに合う「ビートルズの楽曲」は何か。このアルバムに収録された「ビートルズの楽曲」を見渡せば、そんな問いにバッチリと答えた楽曲の選択に思わず「納得」である。

ユーロビートやハウス・ミュージック、ヒップ・ホップのリズム&ビートを取り込んだ、コンテンポラリーな感覚のエレクトリック・ジャズに乗って、魅力的なボーカルで唄い上げられていくビートルズの楽曲の数々。新しい感覚の、現代の感覚のジャズに乗って、アンニュイで脱力系、ほどよく緊張感が漂うユルユルでスッと筋が通った、ほんのりと「スピリチュアル」な演奏、そしてボーカル。

なかなか良い感じのビートルズのカヴァー盤です。現在、CDとしては入手が難しい様ですが、Apple Musicなどダウンロードサイトからは入手可能なので、特に、若いジャズ者の方々に是非とも聴いて欲しい、新しい感覚の「ビートルズの楽曲のカヴァー集」です。

 
 

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2016年9月 4日 (日曜日)

ビートルズのカヴァー集・1

ジャズの世界でも、ビートルズの楽曲のカヴァーは数知れず。特に、ビートルズの活動全盛期、1963年〜1970年辺りにかけて、ジャズの世界でのビートルズの楽曲のカヴァーは相当数になる。単発のカヴァー演奏だけではなく、アルバム全体がビートルズの楽曲のカヴァーという企画盤も相当数リリースされた。

しかしながら、ビートルズの楽曲はコード進行とリズム&ビートが特異。ジャズ曲としてカヴァーされる、いわゆるスタンダード曲と比べると似ても似つかぬコード進行を持つ楽曲が多い。しかも、リズム&ビートについては、基本的にブルースを基調としていないので、ジャズのリズム&ビートとは全く異なる。

つまりは、ビートルズの楽曲というのは、ジャズとしてカヴァーし難いのでは、と長年感じている。ジャズの世界でも、数多くビートルズのカヴァーが溢れてはいるが、以外とその内容が優れているものは多く無い。アレンジがその成否を握るのだが、そのアレンジに難点のあるカヴァー演奏が多い。名うてのジャズ・ミュージシャン達も、ビートルズの楽曲のカヴァーには結構苦戦している。

当然、そんな中、これは良いなあ、と思えるカヴァー盤、カヴァー演奏もある。そんな、ジャズとして難物なビートルズの楽曲のカヴァーについて、これは良いなあ、と思えるカヴァー盤をちょっとご紹介していきたいと思い立った。

まずはこれ。Sarah Vaughan『Songs of the Beatles』(写真左)。1981年の作品。パーソネルを見渡すと、思わず「おおっ」と思う。ギターに Lee Ritenour、ハーモニカに Toots Thielemans、そして、要のドラムに Jeff Porcaro。特に、ドラムの Jeff Porcaro の名前にビックリ。あの〜、これって、基本的にジャズのビートルズ・カヴァー集だと思うんですが(笑)。
 

Song_of_the_beatles

 
これがバッチリ当たっている。ビートルズの楽曲はリズム&ビートが特異、の部分を、ロック畑のポーカロを採用することでクリアしている。リズム&ビートにおいて、純ジャズ臭さが全く無い。といって、ビートの基本はジャズ。このビートルズ・カヴァー集でのポーカロのドラミングは「聞き物」である。

この難点の一つ「ビートルズの楽曲はリズム&ビートが特異」がクリア出来れば、後はコード進行をどう料理するか、だけになるので、実に気が楽になる。その料理(アレンジ)を担うのが、西海岸ジャズのアレンジ職人のMarty Paich, と フュージョン・ロックの雄TotoのDavid Paich。

特に、TotoのDavid Paichの採用が効いている。コード進行の処理に無理が無い。無理矢理、ジャズのコード進行に変換していないところが、このビートルズ・カヴァー集の違和感の無い「聴き易さ」に直結している。逆に、ホンノリとジャズのコード進行のイメージも見え隠れするので、ジャズとして聴いても意外と違和感が無い。

録音当時57歳。サラ・ボーンの歌唱については申し分無い。シンセサイザーの使い方など、時代を感じさせるところもあるが、アルバム全体の雰囲気として、明るくて爽快、聴いていてとてもリズミックで楽しい、ビートルズのカヴァー集になっている。

ジャケットの雰囲気は古色蒼然としていて、凡百なビートルズの楽曲のカヴァー集か、と敬遠したくなるが、どうして、このカヴァー盤、なかなかの内容なので、是非とも一度、手にして聴いていただきたいですね。

 
 

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