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2018年6月 7日 (木曜日)

ハッチャーソン・お蔵入りの2枚

米国のブルーノート・レーベルは、録音した音源をアルバム化せずに「お蔵入り」することが時々ある不思議なレーベルである。また、その「お蔵入り」した音源が後にアルバム化されるのだが、これがまた、一級品の内容なのだ。しかし、録音当時、何か理由があったんだろう。「お蔵入り」するにはするだけの理由がある。

Bobby Hutcherson『Oblique』(写真左)。1967年7月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Herbie Hancock (p), Albert Stinson (b), Joe Chambers (ds)。ベーシストが異なるだけで、このパーソネルの構成はハッチャーソンのリーダー作の2枚前の『Happenings』と同じ。

この盤は、1980年、我が国でリリースされた。13年間、倉庫に眠っていたことになる。聴いてみて真っ先に思うのは、ハッチャーソンのリーダー作の2枚前『Happenings』と同じ雰囲気ということ。基本はモード・ジャズ。硬派で正統派なモード・ジャズ。テクニック優秀、テンションほどよく、ストイックな展開で、ラストに進むに従って、フリー・ジャズへの傾倒が認められる。

しかし、僕は、ハービーの「処女航海」が収録されている有名盤『Happenings』よりも、こちらの『Oblique』の方が好きだ。モード・ジャズの演奏が、『Oblique』の方がポップで聴き易い。難度が高くない、とっつき易い曲が多い。ただ、ラストに進むに従って、フリー・ジャズっぽくなっていくところは同じで、僕にとっては、この辺が減点ポイントなんですね。
 

Obliquepatterns

 
Bobby Hutcherson『Patterns』(写真右)。1968年3月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), James Spaulding (as, fl), Stanley Cowell (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds)。アルトが入ったクインテットになる。ピアノには、スタンリー・カウエルが座り、明らかに、当時、純ジャズの先端をいく、モーダルなジャズ一辺倒である。

この盤も、1980年、LT 1044として、ブルーノートLAからリリースされた。こちらは12年間、倉庫に眠っていたことになる。この盤では、不思議とフリーへの傾倒はみられない。徹頭徹尾、硬派で正統派なモード・ジャズに終始している。これが、この盤の好ポイントの理由。モード・ジャズのハッチャーソンとしては、この盤が一番充実して内容が濃い。

ハッチャーソンのモード・ジャズの力量については、これら2枚の、録音当時、発売が見送られたアルバムをを聴くことによって、十分に確認出来る。ハッチャーソンのモード・ジャズへの適応力は相当に高い。しかし、この2枚のアルバムが、録音当時、全くリリースされずに倉庫に眠っていたとは、ブルーノート・レーベルって、理解に苦しむところがある。

しかし、この2枚の未発表音源はモード・ジャズとして充実の演奏となるのだが、恐らく、録音当時は、モード・ジャズをやるハッチャーソンは、意外と大衆受けしなかったのではないか、と睨んでいる。そういうことから、モード・ジャズばりばりのハッチャーソンはリリースが控えられた。そう、先ずはアルバムが売れないとレーベルの運営は立ち行かない。「お蔵入り」するにはするだけの理由があるのだろう。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年6月 5日 (火曜日)

スイングしつつ+モーダルに展開

ボビー・ハッチャーソンは鬼籍に入り、ゲイリー・バートンは現役を引退した。大御所ミルト・ジャクソンはとうの昔に他界している。この2018年になって、ジャズ・ヴァイブの担い手は、ほとんど「絶滅危惧種」な存在になってしまった。もともと、担い手の数が少ない楽器である。もう新しいジャズ・ヴァイブ奏者は現れ出でないのだろうか。

このところ、ボビー・ハッチャーソンを聴き直している。1941年生まれ。2016年8月15日、75歳にて逝去。1965年『Dialogue』で初リーダー作。1965年と言えば、ジャズは多様化の時代。先進的な面では、モード・ジャズが定着し、フリー・ジャズが台頭し始めた時代。大衆的な面では、ファンキー・ジャズから、ソウル・ジャズ、ジャズ・ファンクと裾野が広がった時代。

そんな時代の中、ちょっと遅めにデビューしたハッチャーソン。ハードバップは過去のものとして手に付けず、モード・ジャズから、フリー・ジャズをメインにしたリーダー作をリリースする。確かに、ハードバップ時代には、ミルト・ジャクソンがいる。二番煎じとの評価は避けたかった。しかし、モードやフリーど真ん中な演奏は、どうもハッチャーソンのバイブにはちょっとフィットしなかったのではないか、と感じている。
 

Stickup

 
Bobby Hutcherson『Stick-Up!』(写真左)。1966年7月の録音。BNの4244番。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Joe Henderson (ts), McCoy Tyner (p), Herbie Lewis (b), Billy Higgins (ds)。ハッチャーソン、デビュー以来、4枚目のリーダー作。パーソネルを見渡して、モード・ジャズ系の演奏かな、と想像する。また、ジャケットが質実剛健。ハードバップ時代のブルーノートのアルバム・ジャケットを彷彿とさせる、硬派なハードバップ系ジャケット。

この盤、ハードバップ寄りのモード・ジャズがてんこ盛り。フリーな雰囲気は全面的に排除し、最先端の限りなく自由度の高いモード・ジャズには至らない。リズム&ビートは明らかにハードバップ、アドリブの展開はモード。良い感じのハイブリッドな演奏で、とにかく、ハッチャーソンのヴァイブが活き活きしている。どうも、ハッチャーソンには、あまりにアーティスティックなジャズは似合わないようだ。

英文解説に「ハッチャーソンのブルーノート作品中、最もハードにスイングしている」と書かれている通り、ハードバップな感じにスイングしつつ、出てくる展開はモード。これがハッチャーソンのヴァイブにピッタリと填まっている。「ハッチャーソンは暗くて、アカデミックだから嫌い」とは言わせない。そんな格好良くスイングしつつ、モーダルに展開するハッチャーソンの演奏は聴いていて、とても楽しい。

 
 

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2018年6月 1日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・98

最近、ネットの音楽ダウンロード・サイトを徘徊していて、今まで気がつかなかった、ハードバップの好盤に出くわすことがある。最初、ジャケットを見て「見たこと無いなあ」と思うんだが、なんだか良さげなジャケットの面構えに、ちょっと聴いてみるか、となる。そして、聴いてみると「あらビックリ」。なんやこれ、となって、思わず、パーソネルを確かめて叫ぶ。「こんなアルバムあったんや」。

Timeless All Stars『Timeless Heart』(写真左)。1983年4月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Cedar Walton (p), Buster Williams (b), Billy Higgins (ds), Harold Land (ts), Curtis Fuller (tb), Bobby Hutcherson (vib)。僕は最近まで、この盤の存在を知らなかった。「All Stars」の看板に偽り無し。パーソネルを見渡せば、なんと錚々たるメンバーでは無いか。

パーソネルを見ずに、いきなり聴き始めると直ぐに思う。なんとお洒落な、なんと粋なリズム・セクションなのであろう。洒脱なピアノ、堅牢なベース、端正なドラム。うむむ、この盤、只者では無い、と思い始める。そして、滑り込む様にヴァイブの音が入ってくる。おお、これは端正な流麗なヴァイブの音。誰だろう、と思う。そして、小粋なテナーが響き渡り、そして、バリバリとトロンボーンの魅惑的な音。これまた、誰だろう、と思う。
 

Timeless_heart  

 
パーソネルを確かめて、なるほどうむむ、となる。ピアノにウォルトン、ベースにウィリアムス、ドラムにヒギンス。ハードバップ後期の名うての名手達。このリズム・セクション、お洒落で粋な筈である。そして、テナーにはランド、トロンボーンにはフラー。西海岸のテナーの名手に、ハードバップ・トロンボーンの代表格。良い音する筈だ。

そして、一番感心したのが、ヴァイブの音なんだが、これはボビー・ハッチャーソンであった。そりゃ〜上手い筈だ。ハードバップなヴァイブであるが、時々、モーダルな展開もあるし、ちょっとアブストラクトな自由度の高さを追求したブレイクな展開もある。聴いていて只者では無い、とは思ったが、ハッチャーソンのヴァイブであったか。

録音時期は1983年。フュージョン・ブーム後期でありながら、こんなに素敵なネオ・ハードバップの走りの魅力的な演奏が残されていたなんて、ちょっとビックリであった。上質のハードバップな演奏がこの盤に詰まっている。しかしながら、我が国ではあまり知られていないみたい。勿体ないなあ、と思う。
 
 
 
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2018年4月22日 (日曜日)

ハッチャーソンのデビュー盤

ジャズは様々な楽器を受け入れる。クラシック音楽で使用している楽器はほとんど受け入れているし、アコーディオンや尺八など、特定の国でしか使用されない楽器をも受け入れる。この楽器、ヴィブラフォン(略してヴァイブ)も少数派ではあるが、ジャズで使用される楽器として歴史も古い。と言いつつ、ジャズ・ヴァイブ奏者って、かなり数が少ないぞ、と思い直す。

スイング時代はライオネル・ハンプトン、ハードバップ期はミルト・ジャクソン、渋くマイナーなところでエディ・コスタ、ヴィクター・フェルドマンくらいか。その後、新主流派〜ニュー・ジャズと呼ばれる時代では、ボビー・ハッチャーソン、そして、ゲイリー・バートンくらいしか思い浮かばない。

恐らくは、あまりに「ミルト・ジャクソン」の存在が大きく、かつメジャーで、ヴァイブがジャズの中でメジャーな存在であるような印象があるが、意外とその数は少ないのだ。しかも、先に挙げたジャズ・ヴァイブ奏者は全員が逝去している。現存するジャズ・ヴァイブ奏者はメジャーな存在はほとんどいない、つまりヴァイブは、ジャズ界の「絶滅危惧種」的楽器ではあるのだ。さて、そんな中、ボビー・ハッチャーソンの聴き直しを進めている。
 

The_kicker  

 
ハードバップ全盛以降の1963年がリーダー作デビューなので、ハッチャーソンのヴァイブはハードバップなヴァイブでは無い。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派」のヴァイブである。そんなハッチャーソンのデビュー盤が、Bobby Hutcherson『The Kicker』(写真左)。1963年12月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Joe Henderson (ts), Duke Pearson (p), Grant Green (g,#4-6), Bob Cranshaw (b), Al Harewood (ds)。

しかし、発売は限定盤にて1999年。つまり、ハッチャーソンのデビュー盤は当時、お蔵入りだったのだ。お蔵入り盤と言いつつ、何が良く無いのか判らないが、新主流派のヴァイブの萌芽がしっかり捉えられている。但し、回りをガッチリと優れものの中堅ジャズメンで固められたのがマイナスに作用したのか、ハッチャーソンは小さくまとまってしまった印象はある。前へ出てこない、というか目立たない(笑)。

初リーダー盤としては、この「目立たない」ところが致命的でお蔵入りになったのでは、と睨んでいる。それでも、ハッチャーソンのプレイを注意深く聴くと、紛れもない「新主流派」のヴァイブであることが判る。ハッチャーソンを理解する上ではマストアイテム。

 
 

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2018年2月 1日 (木曜日)

安心安定なオルガン・ジャズ

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。知る人ぞ知る話なんだが、内容的に優れた盤が多く存在する。さすがはブルーノートで、こってこてファンキーなノリノリ・ジャズだけでは終わらない。どこか、インテリジェンス漂う、アーティスティックな部分がある。これによって、アルバム全体が引き締まり、飽きることが無い。これが良い。

そんなブルーノートのオルガン・ジャズの一枚がこれ。 Big John Patton『Let 'Em Roll』(写真左)。1965年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Bobby Hutcherson (vib), Grant Green (g), Otis Finch (ds)。まだまだ、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンが関与している。アルバム全体がカッチリまとまっている。

ジョン・パットンのオルガンは「明らかにファンキーなハモンド・オルガン」な音。太くて丸く、くすんで伸びのある音色。ファンキーでソウルフルであるが、どこか抑制されていて、どこか品の良いところがある、整ったフレーズ。とっても適度でファンキーなオルガンである。破綻が無く、荒れたところが無いところが、実にブルーノートらしい。
 

Let_em_roll

 
そんなジョン・パットンのオルガンに、これまた、こってこてジャジーでファンキーなグラント・グリーンのギターが絡む。太いソリッドなシングル・トーンがオルガンのトーンに良く合う。ユニゾン&ハーモニーが実にファンキーで躍動的。太くて躍動感溢れるグラント・グリーンのギターは、オルガン・ジャズに良く似合う。ファンクネスが増幅される。

そして、この盤において「インテリジェンス漂う、アーティスティックな部分」の担い手は、ヴァイブのボビー・ハッチャーソン。ハッチャーソンのヴァイブは思索的で知的。オルガンやギターのホットな躍動感の中に、スッと切れ込むヴァイブのクールな躍動感が実にアーティスティック。ハッチャーソンのヴァイブが、アルバムに詰まったホットなファンクネスをクールダウンさせ、芳しいインテリジェンスを漂わせる。

徹底したオフビートのフィンチのドラムもこの盤の雰囲気にピッタリ。無理に煽ることなく、堅実に的確にビートを供給する。赤が基調のとってもファンキーなジャケット・デザインもこの盤の「ウリ」。破綻なく、適度なファンネスを漂わせ、どこか、インテリジェンス漂う、アーティスティックなオルガン・ジャズ。安心安定の一枚です。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年8月17日 (水曜日)

新主流派のジャズ・ヴァイブ

ジャズ・ヴァイブ奏者のボビー・ハッチャーソン(Bobby Hutcherson)が亡くなった。8月15日のことである。享年75歳。

僕はヴァイブの音が好きだ。流麗で豊かで伸びのある響き、転がる様な疾走溢れる音。そんな楽器でジャズをやる。これがまた良い。ジャズの持つファンクネスにヴァイブという楽器がしっかりとフィットするのだ。マイナーな音の響きがジャジーな音階、マイナーな音階にフィットする。

ジャズ・ヴァイブと言えば「ミルト・ジャクソン」である。ミルトのジャズ・ヴァイブは絶対である。当然、僕もミルトのヴァイブのアルバムは良く聴いた。そして、ミルトを聴き続けて、5年ほど経ってからかなあ、ボビー・ハッチャーソンに出会った。

ハードバップ全盛以降の1963年がリーダー作デビューなので、ハッチャーソンのヴァイブはハードバップなヴァイブでは無い。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派」のヴァイブである。モーダルであり、フリーであり、アーティステックである。

そんなハッチャーソンのヴァイブの音の個性を感じるには、このアルバムが最適だろう。2枚目のリーダー作(当時では初リーダー作)になる、Bobby Hutcherson『Dialogue』(写真左)。1965年4月の録音。ブルーノートの4198番。
 

Dialogue

 
ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Sam Rivers (ts, ss, b-cl, fl), Freddie Hubbard (tp), Andrew Hill (p), Richard Davis (b), Joe Chambers (ds)。このパーソネルを見れば、このアルバムから出てくる音が容易に想像出来る。演奏に参加した面々は皆が「新主流派」。

冒頭の「If Ever I Would Leave You」を聴けば良く判る。ハードバップな雰囲気は微塵も無い。モーダルで限りなくフリーな演奏。現代音楽に通じる硬質でクリスタルな響き。そんな演奏の核はもちろん「ハッチャーソンのヴァイブ」。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派のジャズ・ヴァイブ」である。

さすがはブルーノートだと思う。ハッチャーソンの新主流派ヴァイブに合ったメンバーをしっかりと集め、おそらくはブルーノートらしく、リハーサルをしっかり積んでの録音だと思う。しかも、メンバーの志向を理解して、リーダーの表現したい音をしっかりとサポートする。やはり、アルフレッド・ライオンのプロデュース力は凄い。

ハッチャーソンは意外と硬派なミュージシャンで、この「新主流派のジャズ・ヴァイブ」のスタイルを生涯貫き通した。ミルト・ジャクソンが「ジャズ・ヴァイブの王様」であるなら、ハッチャーソンは「ジャズ・ヴァイブの騎士」だろう。そんなハッチャーソンも今はもうこの世にいない。ご冥福をお祈りしたい。

 
 

震災から5年5ヶ月。決して忘れない。まだ5年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2015年3月28日 (土曜日)

ハッチャーソンのヴァイブ

1960年代、理知的でクールなスタンダード・ジャズの演奏スタイルを得意とする若手ミュージシャンの集団が出現した。「新主流派」と名付けられた集団である。

1960年代半ばがピーク。理知的でクールで、素晴らしいテクニックに裏打ちされた鋭いタッチ、切り込むような音。それでいて、ジャズの基本を忠実に保持して、決して破綻しないクールな演奏。そして、流行の新しい奏法もその中にどんどん取り込む貪欲さ。今のジャズ・シーンでもそのフォロワーは後を絶たない。絶大な人気を持つ演奏スタイルである。

時代を少しさかのぼる。ジャズの歴史上、1950年代、ミルト・ジャクソンがモダン・バイブの奏法を確立〜飛躍させたわけだが、そのミルトが偉大であった分、ミルトに続く、リーダー格のバイブ奏者がなかなか現れない。やっと、1960年代に入って、ボビー・ハッチャーソンが頭角を現したのである。

ボビー・ハッチャーソンは考える。ミルトと同じことをやっていては、いつまでもミルトと比較されてしまう。さてどうしようか、ということで、彼はミルトとは異なる表現テクニックでその地位を築いていったのである。

当時、「新主流派」と呼ばれる、若手中心のジャズの伝統的奏法に則りながらも前衛性を重視し、理知的な演奏をする集団があったのだが、その「新主流派」のイディオムに則ったジャズ・バイブに邁進したのであった。
 

Happenings

 
ハッチャーソン自身のご紹介はこれくらいにして、彼の特徴・個性が良く判るリーダー作を聴いてみよう。Bobby Hutcherson『Happenings』(写真左)。ブルーノートの4231番。1966年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Herbie Hancock (p), Bob Cranshaw (b), Joe Chambers (ds)。

冒頭の「Aquarian Moon」から、いかにも新主流派らしい、ハードバップな展開の中に新しい響きを感じるリズム・セクションの演奏。そんなリズム・セクションの演奏にハッチャーソンのバイブが絡む。すると、ピーンと張った緊張感とクリスタルな透明感溢れる響きが演奏全体に漲る。しかし、演奏の雰囲気はホットだ。

そんな新しい響きを湛えた名演が4曲目の「Maiden Voyage」。邦題「処女航海」。このアルバムでもピアノを担当しているハービー・ハンコックの名曲である。

ハービー自身のバージョンが暖かな海を悠々と堂々と航海に乗り出す雰囲気だとすると、このハッチャーソンのバージョンは、氷山が遠くに見えるような厳冬の海を凛とした雰囲気で、緊張感をもって航海する雰囲気。ピンと張った緊張感と全体を覆う透明感はとにかく「素晴らしい」の一言。

そして、極めつけは、ラストの「The Omen」。アブストラクトな演奏で、演奏形式はフリー・ジャズですが、その雰囲気は「氷の音楽」。流氷が奏でる音楽の様な、素晴らしく透明感をもったフリーなジャズ演奏です。

 
 

震災から4年。決して忘れない。まだ4年。常に関与し続ける。決して忘れない。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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