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2016年8月17日 (水曜日)

新主流派のジャズ・ヴァイブ

ジャズ・ヴァイブ奏者のボビー・ハッチャーソン(Bobby Hutcherson)が亡くなった。8月15日のことである。享年75歳。

僕はヴァイブの音が好きだ。流麗で豊かで伸びのある響き、転がる様な疾走溢れる音。そんな楽器でジャズをやる。これがまた良い。ジャズの持つファンクネスにヴァイブという楽器がしっかりとフィットするのだ。マイナーな音の響きがジャジーな音階、マイナーな音階にフィットする。

ジャズ・ヴァイブと言えば「ミルト・ジャクソン」である。ミルトのジャズ・ヴァイブは絶対である。当然、僕もミルトのヴァイブのアルバムは良く聴いた。そして、ミルトを聴き続けて、5年ほど経ってからかなあ、ボビー・ハッチャーソンに出会った。

ハードバップ全盛以降の1963年がリーダー作デビューなので、ハッチャーソンのヴァイブはハードバップなヴァイブでは無い。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派」のヴァイブである。モーダルであり、フリーであり、アーティステックである。

そんなハッチャーソンのヴァイブの音の個性を感じるには、このアルバムが最適だろう。2枚目のリーダー作(当時では初リーダー作)になる、Bobby Hutcherson『Dialogue』(写真左)。1965年4月の録音。ブルーノートの4198番。
 

Dialogue

 
ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Sam Rivers (ts, ss, b-cl, fl), Freddie Hubbard (tp), Andrew Hill (p), Richard Davis (b), Joe Chambers (ds)。このパーソネルを見れば、このアルバムから出てくる音が容易に想像出来る。演奏に参加した面々は皆が「新主流派」。

冒頭の「If Ever I Would Leave You」を聴けば良く判る。ハードバップな雰囲気は微塵も無い。モーダルで限りなくフリーな演奏。現代音楽に通じる硬質でクリスタルな響き。そんな演奏の核はもちろん「ハッチャーソンのヴァイブ」。ハッチャーソンのヴァイブは「新主流派のジャズ・ヴァイブ」である。

さすがはブルーノートだと思う。ハッチャーソンの新主流派ヴァイブに合ったメンバーをしっかりと集め、おそらくはブルーノートらしく、リハーサルをしっかり積んでの録音だと思う。しかも、メンバーの志向を理解して、リーダーの表現したい音をしっかりとサポートする。やはり、アルフレッド・ライオンのプロデュース力は凄い。

ハッチャーソンは意外と硬派なミュージシャンで、この「新主流派のジャズ・ヴァイブ」のスタイルを生涯貫き通した。ミルト・ジャクソンが「ジャズ・ヴァイブの王様」であるなら、ハッチャーソンは「ジャズ・ヴァイブの騎士」だろう。そんなハッチャーソンも今はもうこの世にいない。ご冥福をお祈りしたい。

 
 

震災から5年5ヶ月。決して忘れない。まだ5年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2015年3月28日 (土曜日)

ハッチャーソンのヴァイブ

1960年代、理知的でクールなスタンダード・ジャズの演奏スタイルを得意とする若手ミュージシャンの集団が出現した。「新主流派」と名付けられた集団である。

1960年代半ばがピーク。理知的でクールで、素晴らしいテクニックに裏打ちされた鋭いタッチ、切り込むような音。それでいて、ジャズの基本を忠実に保持して、決して破綻しないクールな演奏。そして、流行の新しい奏法もその中にどんどん取り込む貪欲さ。今のジャズ・シーンでもそのフォロワーは後を絶たない。絶大な人気を持つ演奏スタイルである。

時代を少しさかのぼる。ジャズの歴史上、1950年代、ミルト・ジャクソンがモダン・バイブの奏法を確立〜飛躍させたわけだが、そのミルトが偉大であった分、ミルトに続く、リーダー格のバイブ奏者がなかなか現れない。やっと、1960年代に入って、ボビー・ハッチャーソンが頭角を現したのである。

ボビー・ハッチャーソンは考える。ミルトと同じことをやっていては、いつまでもミルトと比較されてしまう。さてどうしようか、ということで、彼はミルトとは異なる表現テクニックでその地位を築いていったのである。

当時、「新主流派」と呼ばれる、若手中心のジャズの伝統的奏法に則りながらも前衛性を重視し、理知的な演奏をする集団があったのだが、その「新主流派」のイディオムに則ったジャズ・バイブに邁進したのであった。
 

Happenings

 
ハッチャーソン自身のご紹介はこれくらいにして、彼の特徴・個性が良く判るリーダー作を聴いてみよう。Bobby Hutcherson『Happenings』(写真左)。ブルーノートの4231番。1966年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Bobby Hutcherson (vib), Herbie Hancock (p), Bob Cranshaw (b), Joe Chambers (ds)。

冒頭の「Aquarian Moon」から、いかにも新主流派らしい、ハードバップな展開の中に新しい響きを感じるリズム・セクションの演奏。そんなリズム・セクションの演奏にハッチャーソンのバイブが絡む。すると、ピーンと張った緊張感とクリスタルな透明感溢れる響きが演奏全体に漲る。しかし、演奏の雰囲気はホットだ。

そんな新しい響きを湛えた名演が4曲目の「Maiden Voyage」。邦題「処女航海」。このアルバムでもピアノを担当しているハービー・ハンコックの名曲である。

ハービー自身のバージョンが暖かな海を悠々と堂々と航海に乗り出す雰囲気だとすると、このハッチャーソンのバージョンは、氷山が遠くに見えるような厳冬の海を凛とした雰囲気で、緊張感をもって航海する雰囲気。ピンと張った緊張感と全体を覆う透明感はとにかく「素晴らしい」の一言。

そして、極めつけは、ラストの「The Omen」。アブストラクトな演奏で、演奏形式はフリー・ジャズですが、その雰囲気は「氷の音楽」。流氷が奏でる音楽の様な、素晴らしく透明感をもったフリーなジャズ演奏です。

 
 

震災から4年。決して忘れない。まだ4年。常に関与し続ける。決して忘れない。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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