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2017年7月16日 (日曜日)

晩年ゲッツの優れたライブ盤

晩年のスタン・ゲッツは、メインストリーム・ジャズに回帰して、ストレート・アヘッドなジャズを吹きまくっていた記憶がある。1960年代前半、ボサノバ・ジャズのブームに乗って、ボサノバ・ジャズと言えば「スタン・ゲッツ」という定番図式が出来上がっていたが、1980年代半ば頃から、純ジャズ復古のムーブメントが押し寄せた頃、ゲッツはメインストリーム・ジャズに回帰した。

そういう意味では「機を見て敏なる」ところがゲッツの特徴だろう。ただ、メインストリーム・ジャズに回帰してことは、ゲッツにとって喜ばしいことで、もともとゲッツのテナーはストレートアヘッドなもので、決してボサノバ・ジャズなど、クロスオーバー志向の柔軟性のあるテナーでは無い。たまたま、ゲッツのテナーの個性がボサノバの雰囲気にピッタリ合っただけのことだ。

Stan Getz『Anniversary!』(写真左)を聴けば、ストレートアヘッドなジャズに回帰したゲッツのテナーのプレイが如何に優れているかが良く判る。1987年7月6日、デンマークはコペンハーゲンの「モンマルトル」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Kenny Barron (p), Rufus Reid (b). Victor Lewis (ds)。
 

Anniversary

 
パーソネルを見れば、当時、中堅の優れどころをリズム・セクションとして迎え入れている。晩年の無二のパートナーであったピアノのケニー・バロン。バロンの総合力勝負のピアノとゲッツの正統派テナーとの相性は抜群。ルーファス・リードとビクター・ルイスのリズム隊は安定感抜群。ゲッツのテナーをしっかりと支える。

やっぱりゲッツのテナーはメインストリーム・ジャズが良く似合う。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも悠然と朗々と吹き上げるところが、ジャズ・テナーのレジェンドである所以だろう。排気量の大きいスポーツカーがゆったりとしたスピートで悠然と走って行く様な雰囲気。ゲッツのテナーには「抑制の美」が溢れている。

邦題が「ステラ・バイ・スターライト」。「ど・スタンダード曲」をタイトルにしていて、ジャズ者初心者向けのスタンダード大会な企画ライブ盤な印象がする。しかも女性の横顔をあしらった、ちょっと「胡散臭い」ジャケットと相まって、ジャズ者ベテランの方々を中心に敬遠される向きのあるライブ盤ですが、どうして意外と硬派で芯のある純ジャズ・ライブ盤な内容で、意外と好盤です。

 
 

東日本大震災から6年4ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年9月21日 (水曜日)

プレスティッジに何故かゲッツ

プレスティッジ・レーベルの最初のPRLP7000番台の最初が「ビリー・テイラー」。地味である。そして、2名目が「スタン・ゲッツ」。米国東海岸がメインのジャズ・レーベルのプレスティッジが、米国西海岸のテナーの雄「スタン・ゲッツ」である。方針も矜持もあったもんじゃない(笑)。

プレスティッジの総帥ボブ・ワインストックについては、恐らく、アルバムを売ろう、という意気込みは希薄だったのではないか、と推察する。ただただ、ジャズメンを集めていきなり録音して、アルバムにしてリリースする。この録音してリリースする、というところだけが、ボブ・ワインストックの楽しみだったのではないだろうか。

さて、このプレスティッジPRLP7002番が『Stan Getz Quartets』(写真左)。録音時期は、1949年6月、1950年1月、1950年4月の3つに分かれる。この3つのセッションの記録を、曲の雰囲気毎にLPの再生の流れに合わせて散りばめつつ、一連の流れのあるアルバムとして成立させている。

録音時期が3種に分かれるとはいえ、スタン・ゲッツのテナーの雰囲気はほとんど変わらない。これが凄い。さすがにジャズ・テナーの有名スタイリストの一人である。冒頭の「There's a Small Hotel」からラストの「Wrap Your Troubles in Dreams」まで、どの演奏でもテナーの音は、絶対に「スタン・ゲッツ」の音である。
 

Stan_getz_quartet

 
僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半の時代では、スタン・ゲッツの代表作と言えば、このプレスティッジPRLP7002番の『Stan Getz Quartets』。スタン・ゲッツがジャズの表舞台に現れ出でたのは1950年代後半。それから25年、四半期程度しか経っていない時代では、確かにこの1950年辺りの録音の当盤がイチ押しかもしれない。

しかし、スタン・ゲッツの場合、1980年代から逝去する1991年の間にも、彼の個性をとことん堪能出来る好盤が結構あるので、スタン・ゲッツといえば『Stan Getz Quartets』という、1970年代の図式は当たらない。

確かに、この『Stan Getz Quartets』については、スタン・ゲッツのテナーの個性は十分に認識できるが、インプロビゼーションの質としては「最高のもの」とは言い難いと感じる。良いんだけど、スタン・ゲッツの代表作とするにはちょっと無理がある。恐らく、それはバックのサポートメンバーの質にも連動する。つまり、ゲッツは良い、でも演奏全体を通しては「ちょっとなあ」という感じ。

スタン・ゲッツのテナーの個性を知るには、もっと内容充実の盤がゴロゴロしている。何もボサノバ・ジャズだけがスタン・ゲッツの得意とするところでは無い。この『Stan Getz Quartets』は希有なインプロバイザーの記録である。

意外と若かりしゲッツは硬派でワイルドであることが良く判る。希有なジャズ・インプロバイザーの面目躍如。そんなプレスティッジPRLP7002番『Stan Getz Quartets』である。

 
 

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2016年8月 1日 (月曜日)

ビッグバンド・ジャズは楽し・39

スタン・ゲッツは「ラッキー・マン」であった。1961年、当時注目されていたブラジル音楽のボサノバを採り入れたアルバム『ジャズ・サンバ』をチャーリー・バードと共に録音。それによってジャズ界におけるボサノバ奏者の第一人者となる。1963年には『ゲッツ/ジルベルト』を録音し、グラミー賞4部門を独占。

スタン・ゲッツ=ボサノバ・ジャズという図式が出来上がった。ここまで来ると、ゲッツは商売人である。そこで、ゲッツは大量にボサノバ・ジャズのアルバムを量産する。まるで「ボサノバの商人」である。ボサノバの第一人者達とのコラボを繰り広げ、様々なフォーマットでボサノバ・ジャズを録音する。

Stan Getz『Big Band Bossa Nova』(写真左)。1962年8月の録音。ボサノバ・ジャズの雄、スタン・ゲッツがジャズ・ビッグバンドをバックに吹き込んだアルバムである。Gary McFarland(ゲイリー・マクファーランド)のアレンジでのビッグバンド。ビッグバンドをバックにしたボサノバ・ジャズで「もう一発当てよう」という、ゲッツとレコード会社の魂胆がみえみえである(笑)。
 

Big_band_bossa_nova1  

 
バックのビッグバンドが良い音を出している。ギターの名手ジム・ホールが参加しているが、このアルバムでは、全編ガットギターで主にコード弾きに徹していて、前面に出て目立つことは無い。が、しっかりとボサノバのリズムを小気味良く刻んでいる。ボサノバのギターのコード弾きというより、ジャズのギターのコード弾きでボサノバの雰囲気を出す、という感じが実に印象的。

そこにスタン・ゲッツのテナーが入ってくる。スタン・ゲッツのボサノバ・テナーは相変わらずで、マンネリ感が漂う感じが否めなくも無い。スタン・ゲッツのボサノバ・テナーを聴くというよりは、マクファーランドの優れたビッグバンドがボサノバ・ジャズを演奏する中に、スタン・ゲッツのテナーが客演する、と形容した方がピッタリする内容だと僕は思う。

それほど、このアルバムでのビッグバンドは良く鳴っている。マクファーランドのアレンジが良いのだろう。ボサノバ・ジャズを題材にしたビッグバンド・ジャズの好例ではないだろうか。

 
 

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2016年2月26日 (金曜日)

単純に「ジャズってええなあ」

こういうジャズを聴くと、単純に「ジャズってええなあ」と思う。雰囲気が良い。ほのぼのとした4ビート。ほどよく趣味良くアレンジされたユニゾン&ハーモニー。米国西海岸ジャズは聴き心地が良い。

Stan Getz『West Coast Jazz』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。米国西海岸ジャズのメイン・ジャズメンがズラリと名を連ねる。

リーダーはスタン・ゲッツ。テナーマンである。ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ。流れる様な典雅で爽やかなフレーズ。1950年代のゲッツのテナーは聴き心地が良い。1960年代にはボサノバ・ブームに乗って、大人気テナーマンとなって引っ張りだこ。

1970年代は改めて純ジャズに回帰するが、ゲッツの従来のスタイルが再評価されるのは、1980年代の純ジャズ復古の時代になってから。純ジャズ復古の波に乗って、スタン・ゲッツ再評価と相成ったが、ゲッツのブロウは意外と力強く、テクニック溢れるものになっていく。1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」に戻ることは無かった。そして、そうこうしているうちに、肝臓癌にて1991年、鬼籍に入ってしまう。
 

West_coast_jazz

 
1980年代から1991年、鬼籍に入るまでの、ストレート・アヘッドなゲッツのテナーも良いが、僕は、1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」なゲッツが大好きだ。当然、ボサノバにも染まっていない。純粋に、1950年代米国西海岸ジャズの雰囲気が凄く良い。

さて、このStan Getz『West Coast Jazz』を聴けば、ゲッツのテナーの全てが判る。フレーズ、アドリブ、どれをとっても天才的で、ゲッツは希有の「天才的インプロヴァイザー」ということがとても良く判る。収録曲もスタンダード曲が中心で、このスタンダード曲をベースに、様々なニュアンスのアドリブ・ラインが繰り出てくるところなんざあ、ほんと天才的です。

力まずにサラリと速く、魅力的なフレーズを吹くゲッツ。コンテ・カンドリのクールなトランペットは、ゲッツのテナーとの相性が抜群。ルー・レヴィの明るく歯切れの良い、雰囲気のあるピアノ。リロイ・ヴィネガーの太くて軽妙なベース。そして、リラックスしたクールなドラミングが見事なシェリー・マン。これぞ「米国西海岸ジャズ」な演奏です。

思わず聴き惚れてしまう。朝一番に聴くジャズにも良し。昼下がりのジャズ喫茶でほのぼのと聴くも良し。ほんと、良い雰囲気の「メインストリームなジャズ」。米国西海岸ジャズの個性である「アレンジの威力」はそこそこに、ゲッツのアドリブの実力と魅力が再認識できる盤。好盤です。

 
 

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2015年8月 9日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その19

今年の夏は相当な「酷暑」である。我が千葉県北西部地方は、小笠原地方を直撃している台風のお陰(?)で、昨日より、涼しい風が吹き始め、昨日、今日と室温は30度を超えることは無かった。通常の夏の状態にまで気温は下がった感がある。でも、西日本は酷暑が継続しているので、ほんと「これはたまらん」という感じの暑さなのだ。

さて、これだけ酷暑が続くと、通常のジャズを聴くどころでは無い。というか、音楽を聴くどころでは無い今年の酷暑ではあるが、今年もこの季節にやります。「夏はボサノバ・ジャズ」特集。今日から暫くは、「夏はボサノバ・ジャズ」特集で避暑に努めます(^_^)v。

今日のアルバムは、Astrud Gilberto & Stan Getz『Gets Au Go Go』(写真左)。1964年5月は「Cafe Au Go Go」での、1964年10月は「Carnegie Hall」でのライブ録音。ボサノバ路線で当時ブレークしたゲッツと、人気抜群の女性歌手アストラッド・ジルベルトをメインに据えた企画盤。

ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Astrud Gilberto (vo), Kenny Burrell (g), Gene Cherico, Chuck Israels (b), Gary Burton (vib), Joe Hunt, Helcio Milito (ds)。なかなかのメンバーを揃えている。

リーダーのスタン・ゲッツが、ボサノバ・ジャズを始めたのは『Jazz Samba』で1962年のこと。1963年には『Getz/Gilberto』で大ブレイク。その大ヒットを受けての、このライブ盤『Gets Au Go Go』である。聴衆の反応を聴いてみても、結構、盛り上がっている。当時、ニューヨークでのボサノバ・ジャズの流行度合いを耳で感じることが出来る。
 

Getz_au_go_go

 
当時、スタン・ゲッツは、このボサノバ・ジャズに商売的に相当入れ込んでいたらしく、ボサノバ・ジャズに関しては、えげつないくらいに商魂たくましかったらしい。このアルバムを聴いていても、スタン・ゲッツのテナーの音だけ、録音レベルが高い。他の楽器は良く聴かないと聴こえない位、ゲッツのテナーだけが目立っている。

ゲーリー・バートン(ヴァイブ)、チャック・イスラエル(ベース)、ケニー・バレル(ギター)などなど、豪華なバックなんだが、あまりにゲッツのテナーだけが目立って、録音バランスが悪いのがこのアルバムの玉に瑕なところである。

ジャズ者の皆さんが指摘しているが、確かにアストラッドの唄は上手くない。でも、ボサノバという切り口で聴くと、この気怠くアンニュイな雰囲気濃厚のボーカルは実に雰囲気がある。唄のテクニックとしては上手くないところが、ボサノバという切り口では乾いた色気の「揺らぎ」というプラスの効果に跳ねるのだから面白い。

あまりにゲッツが目立つ音作りの為、演奏全体のバランスが悪く、きめ細かさに欠け、アルバム全体の印象は「かなり大雑把」。好盤・名盤の類には及ばないが、当時のボサノバ・ジャズの流行度合いを耳で直接感じることが出来るところは、このアルバムの存在意義のあるところだろう。

ボサノバ路線で当時ブレークしたゲッツと、人気抜群の女性歌手アストラッド・ジルベルトで、「一発」をレコード会社が狙って発売した一枚で、当時は売れに売れたと思う。が、今から振り返ると、この「大雑把な出来」がマイナス評価。でも、ボサノバ・ジャズの個性と雰囲気はしっかりと押さえられていて、たまに聴き流すには丁度良い塩梅の「ボサノバ・ジャズ盤」ではある。

 
 

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2014年3月19日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・15

このアルバムは絶対に昼下がり向きだ。しかも、これからやってくる春爛漫な季節の昼下がりにピッタリだ。響きが美しく、ほのぼのとした、長閑ではあるが、しっかりとクールに「アート」している。聴いていて楽しく、そして、どこか物悲しさが底にある。でも、決して悲しくない。逆に、ポジティブですらある。

そのアルバムとは、Stan Getz & Kenny Barron『People Time : The Complete Recording』(写真左)。1991年3月、コペンハ〜ゲンにあるCafe Montmartreで録音されたライブ音源。テナーサックスのスタン・ゲッツとピアノのケニー・バロンとのデュオ。そのライブ音源のコンプリートBox盤。CD7枚組になる。

当初は、CD2枚組でリリースされた(写真右)。ジャズのCD2枚組にしては、ちょっと値が張るものだったので、入手に走るのは控えていた。そこにコンプリートBox盤が出るとの報。待っていて良かった。内容的には圧倒的にコンプリートBox盤の方が良い。

さて、このコンプリートBox盤、テナーのスタン・ゲッツの遺作になる。そのライブ録音の3ヶ月後、スタン・ゲッツは鬼籍に入る。1987年に肝臓癌で余命1年という告知を受けたスタン・ゲッツ。あらゆる癌治療を受け、なんとか命を保ちつつ、演奏活動を続けていく。そして、1991年3月。この素晴らしいライブ音源を残すに至る。

本当に癌に冒されているのか、と疑いたくなるような、力強く、情緒豊かで、伸びのあるブロウ。溢れんばかりのインスピレーションが素晴らしいアドリブ・フレーズの数々。唄う様な流麗な展開。このコンプリートBox盤でのブロウは、スタン・ゲッツのベスト・プレイだと断言したい。

CD7枚組の超弩級のボリュームだが、捨て曲は全く無い。どの演奏も素晴らしいものばかり。これって凄いことだ。1991年3月3日から6日までの、4日間のライブだったんだが、どの日のライブもその内容は素晴らしい。
 

People_time

 
1991年3月3日の1st セットと2ndセット、3月4日の1stセットと2ndセット、3月5日の1stセットと2ndセット、3月6日の7枚。どこから聴いても、素晴らしいゲッツとバロンのデュオが堪能出来る。当初、CD7枚組のボリュームって、ちょっとしんどいかな、と思ったがとんでも無かった。どのCDから聴いても十分にその演奏内容が堪能出来る、実に充実したCD7枚組である。

テナーとピアノのデュオなので、たった2台の楽器のみの演奏である。たった2台の楽器なので、その表現のバリエーションに限りがあって、演奏を聴き進めていくうちに、飽きが来るのでは無いか、と危惧するが、それはまさに杞憂に過ぎないことが直ぐに判る。

それほどまでに、テナーのゲッツとピアノのバロンの演奏表現がバリエーション豊か。硬軟自在、縦横無尽、変幻自在、音の濃淡が豊かで、間を活かしたタイム感覚豊かな展開。これがデュオの演奏なのか、と驚愕してしまうほどの音の豊かさ、演奏の幅の広さ。

演奏される曲もジャズ・スタンダード曲ばかりで、ゲッツのテナーのインプロビゼーションの煌めきと、バロンのピアノの伴奏の妙が、そんな二人のデュオなれではの個性が、しっかりと理解出来る。いやほんと、このスタンダード曲の選曲も実に良い。奇跡の様なライブ音源である。

響きが美しく、ほのぼのとした、長閑ではあるが、しっかりとクールに「アート」している。聴いていて楽しく、そして、どこか物悲しさが底にある。でも、決して悲しくない。逆に、ポジティブですらあるスタン・ゲッツの遺作。

このライブ音源が残って良かった。このライブ音源を聴く度に、僕達はスタン・ゲッツを追体験し、スタン・ゲッツを決して忘れない。これからやってくる春爛漫な季節の昼下がりに、しっかりとスタン・ゲッツを偲ぶのだ。さあ、Stan Getz & Kenny Barron『People Time』のヘビロテの季節がやって来た。

 
 

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2014年1月26日 (日曜日)

ローリンド・アルメイダを愛でる

意外と真冬の季節のボサノバ・ジャズも「オツ」なもの。暖かくした部屋の中で、バーボン片手に聴くボサノバ・ジャズはなかなかの雰囲気。ボサノバの軽快なリズムが、聴き手の心を暖かく包んでくれるようです。

ボサノバ・ジャズのアルバムの中でも、確かに、冬に良くかけるアルバムが何枚かある。特に、米国西海岸テナーの雄、スタン・ゲッツのテナーの音色は、僕にとっては、どうも「冬」の季節に合うらしく、この真冬の季節には、スタン・ゲッツのボサノバ・ジャズ系のアルバムをかける傾向にある。

そんな、冬にかけるスタン・ゲッツがらみのボサノバ・ジャズ系のアルバムの一枚が『Stan Getz with Guest Artist Laurindo Almeida』(写真左)。1963年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Laurindo Almeida (g), George Duvivier (b), José Paulo, Luiz Parga (per), Dave Bailey, Edison Machado, Jose Soorez (ds), Steve Kuhn (p/#6)。

ローリンド・アルメイダ(Laurindo Almeida)は、1917年生まれのブラジルのギタリスト。惜しくも1995年7月逝去しました。アルメイダは、生粋のボサノバ系ギタリストというよりは、ボサノバ・ジャズ系のギタリストという印象が強いですね。キャリアとしては、スタン・ケントン楽団への参加から、1970年代の米国西海岸のジャズ・ユニット「LA4」での活躍が記憶に残っている。テクニックはかなり高く、聴いていて爽快かつ深みのあるギターです。
 

Getz_almeida

 
さて、確かに、このアルバムは、ボサノバ・ジャズ系のアルバムなのに、夏にはあまりかけませんね〜。何故だろう(笑)。ゲッツのテナーの音色が意外と冬の季節に合うということと、ローリンド・アルメイダのギターの音色が暖かくて、蒸し暑い夏の最中に聴くよりは、寒い冬の季節の暖かい部屋の中で、ゆったりと聴く方がしっくりくるからでしょうか。

アルバム全体の印象は、一言で言うと「非常に出来が良いボサノバ・ジャズ」です。ボサノバ系のギタリストと、スタン・ゲッツのテナーとのコンビネーションとしては、かの有名な名盤『ゲッツ/ジルベルト』に匹敵する、レベルの高い、内容の濃いものです。

ローリンド・アルメイダのギターは、ラテン・ギターの中にボサノバがある、って感じで、ボサノバ・ギター一辺倒というより、ラテン・ギターという広い範疇で、バリエーションのある響きを聴かせてくれる。このアルメイダのギターの「バリエーションのある響き」が、ボサノバ・ジャズ一色のアルバムとはちょっと異なる、このアルバムに独特の雰囲気を醸し出している。

非常に出来が良いボサノバ・ジャズ盤であり、ボサノバ・ジャズの仕掛け人・クリード・テイラーのプロデュースで、メジャー・レーベルのヴァーヴからリリースされた盤でありながら、ボサノバ・ジャズ盤の紹介レビューに、このアルバムの名前が挙がらないのは、全くもって不思議です。ボサノバ・ジャズ盤としてお勧めのアルバムです。一聴あれ。

 
 

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2011年9月17日 (土曜日)

芸術的で美しいテナーの最高峰

希有の天才テナー奏者、Stan Getz(スタン・ゲッツ)の遺作『People Time』の完全版。正式なタイトルは、Stan Getz & Kenny Barron 『People Time - The Complete Recordings』(写真左)。1991年3月3日から6日。デンマークはコペンハーゲンの「Jazzhus Montmartre」でのライブ録音。

以前は、この『People Time』はCD2枚組。コペンハーゲンの「Jazzhus Montmartre」のライブ録音からピックアップされたものだった。ちなみに、この『People Time』は、スタン・ゲッツの生涯の最高傑作。このCD2枚組でも、スタン・ゲッツのテナー・ブロウの凄さが体験できた。

しかし、今回、このCD7枚組のボックス盤にて、1991年3月3日から6日。デンマークはコペンハーゲンの「Jazzhus Montmartre」でのライブ録音のほぼ全てを体験できることとなった。

ジャズは即興演奏が基本の演奏形態が故、演奏それぞれに「当たり外れ」が発生する。特にライブではそうだ。

通常、ライブ・アルバムの収録曲については、できる限り、ライブ演奏の全てについて録音テープを回しておき、後で聴き直しながら、その「当たり外れ」を判定して、「当たり」のライブ演奏をチョイスして、ライブアルバム化する。
 

People_time

 
つまりは、ライブ録音のマスターテープには、「当たり」と「外れ」の演奏がごった煮で入っていて、マスターテープの全てをアルバム化することは、そのミュージシャンを深く知る上での「資料」としての価値はあるが、演奏の「外れ」の部分は敢えて通常のジャズ者の方々には不要のもの、という考え方が通例。

しかし、このPeople Time - The Complete Recordings』には「外れ」の演奏が無い。どれもが最高の演奏がズラリと並んでいる。このライブ盤については、どの演奏がそれぞれ、どうこうと言うのは、激しく野暮な行為に値する。どれもが素晴らしい演奏なのだ。これは奇跡に近い、ジャズ界の中でも希なこと。

このスタン・ゲッツの遺作となったライブ盤は、スタン・ゲッツのテナー奏者としての大変優れた能力を再認識すると共に、伴奏者である、ピアノのケニー・バロンの決定的名演を捉えたライブ盤だと言える。

もっと言ってしまうと、ジャズという即興演奏が基本の演奏形態において、テナー・サックスとピアノの、それぞれの演奏の美しさと高いアーティスティック性を捉えた、素晴らしい内容のライブ盤である。少なくとも、テナーとピアノのデュオという演奏フォーマットにおいては、この『People Time - The Complete Recordings』の内容を超えるデュオ演奏は、暫く無いだろう。

このCD7枚組のボックス盤は、全てのジャズ者の方々に、一度は聴いていただきたい内容です。ジャズの美しさ、ジャズの高い芸術性がギッシリと詰まっています。聴けば判る。ジャズ・テナーがこんなにも美しく優しい音色を出し続けるパフォーマンスの記録。素晴らしいライブ盤です。

 

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2011年8月22日 (月曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その4

今日は、Stan Getz & Joao Gilbertoの『Getz & Gilberto, #2』(写真左)。タイトルからして、『Getz & Gilberto』(2008年7月5日のブログ参照・左をクリック)の続編か、アウトテイク集かと思いきや、ジャケットをよく見ると「RECORDED LIVE AT CARNEGIE HALL」とある。

そう、1964年10月9日カーネギーホールでのライブ盤です。ボサノバ・ジャズで大ブレイクした、テナー奏者スタン・ゲッツのピアノレス・カルテットと、ジョアン・ジルベルトとアストラッド・ジルベルトとの共演の2本立て。

ちなみにパーソネルは、スタン・ゲッツのピアノレス・カルテット = Stan Getz (ts) Gary Burton (vib) Gene Cherico (b) Joe Hunt (ds)。ジョアン・ジルベルトとの共演 = Stan Getz (ts) Gary Burton (vib) Joao Gilberto (g, vo) Gene Cherico (b) Joe Hunt (ds) Astrud Gilberto (vo)。

ピアノレス・カルテットとボサノバ・ジャズのカップリングなんで、安易な企画ライブ盤かと思いきや、どちらの演奏もなかなかの内容で聴かせてくれます。意外と、おまけの様なスタン・ゲッツのピアノレス・カルテットの演奏が、実に純ジャズしていて、良い内容です。

特に、硬質なクリスタルな音色で、印象的な和音が特徴のヴァイブはどっかで聴いたことが、と思ってパーソネルを見たら、若き日のゲイリー・バートンでした。納得。

主役のテナー、スタン・ゲッツも充実した演奏を繰り広げていて、ボサノバを題材としていない、ジャズ・スタンダード曲中心の演奏なんですが、その囁くような掠れるような音色は、なんだか、意識せずに聴いていると、ボサノバ・ジャズのような響きに聴こえて、純ジャズの結構ハードな内容ながら、耳に心地良いのが面白い。
 
Getz_gilberto_2
 
5曲目「Samba Da Minha Terra」より、ボサノバ・ジャズのコーナーとなり、ジョアン・ジルベルトとアストラッド・ジルベルトが順番にフィーチャーされます。この頃は二人は夫婦だったんですよね。曲の合間のジョアンのMCのなかなか真摯で好感が持てます。特に、当時の細君のアストラッドが出てきてからのジョアンのMCは、ちょっと照れが入って微笑ましいです。

というのも、このライブ盤、曲間のMCもしっかりと収録していて、ライブ感抜群です。良いステレオ装置で、音量を上げて聴いていると、1964年10月9日のカーネギーホールのライブに立ち会っているような錯覚に陥ります。ジャズのライブ盤で、ここまで曲の間のMCを収録しているライブ盤は珍しいのですが、当時のライブの良い雰囲気が伝わってきます。

さすが、スタン・ゲッツとジョアン・ジルベルトとの共演の演奏は秀逸です。ライブ音源だけに、躍動感と緊張感が心地良い。ゲッツもジョアンも、アドリブの展開には、一発勝負的な気合いと意気込みがひしひしと感じられます。良い演奏です。

そして、アストラッド・ジルベルトのヘタウマでアンニュイな歌声が堪らない。決して、歌い手としてテクニックがあるとは思えない、アストラッドの歌ですが、その「揺らぎ」が良いんですね。乾いたセクシーさとでも言ったら良いのか、ボサノバの歌い手として、素晴らしい資質だと思います。

アルバム・タイトルに「#2」とあるので、二番煎じというか、安易な続編かと思って、タイトルを見ただけでは、ちょっと興ざめしてしまいそうな感じですが、どうして、その内容はなかなかのものがあります。カーネギー・ホールでのライブ盤。当時流行のボサノバ・ジャズと硬派な純ジャズを収録。いづれも夏の終わりにピッタリの、優しい雰囲気に惚れ惚れです。
 
 

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2010年7月30日 (金曜日)

「一旦、お蔵入り」は納得ですね

Verve時代のビル・エバンスは、なんだか不思議なアルバムが幾つかある。6月16日のブログ(左をクリック)でご紹介した『Gary Mcfarland Orchestra With Special guest Soloist Bill Evans』も、その「なんだか不思議な」アルバムの一枚。なんで、これがビル・エバンスでやらなきゃならんのか、僕は、プロデューサーのクリード・テイラーの見識をずっと疑っている(笑)。

このアルバムもそう。『Stan Getz And Bill Evans』(写真左)。どうやって考えたら、この組合せになるのか、良く判らん。そもそも、スタン・ゲッツは唯我独尊、我が道を行く、代表的な「ワンマンなタイプ」。絶対に自分中心に演奏が行われないと駄目だし、絶対に自分中心の演奏に、力ずくで持って行く。

逆に、ビル・エバンスは、伴奏に回ったら、完全に自分の個性を封印して、フロントのミュージシャンの個性や特質を浮き彫りにするような、引き立てるような伴奏をする、滅私奉公、自己犠牲型のピアニスト。自己中心型のゲッツと自己犠牲型のエバンス。共演したって、上手くいくわけがない。

この『Stan Getz And Bill Evans』だって、ビル・エバンスが主役のレコーディングにも拘わらず、タイトルは双頭リーダー風(ゲッツの名前が前に来とるやん)。内容だって、一聴すると、スタン・ゲッツのリーダー作かと錯覚する位、ゲッツが目立ちまくっている。

当時、ボサノバ・ブームにいち早く乗って、爽やかにライトに、そして、ふくよかで優しいブロウで一世を風靡したゲッツ。でも、このアルバムでのゲッツは全然違う。「ボサノバのゲッツ」なんて何処吹く風。ややもすれば、バップ時代のブロウよりも力強く、ガンガンに吹きまくる。

エバンスは、リーダーとして、ゲッツのワイルドな部分とボサノバ・タッチのふくよかで優しい部分の両面を活かそうと「伴奏のエバンス」よろしく、なかなかのバッキングを供給しているが、ゲッツは決して、エバンスの意図を汲むことなく、ガンガンに吹きまくる。このアルバムは、ボサノバ・ジャズ全盛時代の真っ只中、1964年の録音であるが、ゲッツは全く、ボサノバ向けのブロウはしない。
 

Getz_evans

 
ここで、面白いのは、当のリーダーのビル・エバンス。ゲッツの傍若無人な振る舞いに対して、気に懸けることなく、ゲッツのワイルドな部分とボサノバ向けの、ふくよかで優しい部分の両面を活かそうとする伴奏を徹底的に継続する。決して、ゲッツの力強く覇気溢れすぎるブロウに合わせようとはしない。徹頭徹尾、エバンスのイメージを優先して、エバンスのイメージのみで「伴奏のエバンス」を貫き通す。

よって、このアルバムについては、ゲッツはゲッツとして、エバンスはエバンスとして、それぞれ個々に聴くと、ゲッツは、この1964年、ボサノバ全盛時代に、これだけ覇気のある、ガッツ溢れるバップ的ブロウを展開していることは十分に評価できる。聴き応え十分である。

エバンスはエバンスとして、さすが「伴奏のエバンス」というバッキングを繰り広げている。陰影、濃淡、硬軟、遅速、とにかく柔軟かつダイナミックに、エバンスの設定した「仮想ゲッツ」に対して、素晴らしい「伴奏ピアノ」は、これはこれで評価できる。

でも、アルバム全体を通して聴くと、ゲッツとエバンスの演奏はバラバラ。というか「平行線」。どちらも自分の想いだけを優先して、自分の個性だけで演奏を続ける。相手の演奏なんて聴いちゃいない(笑)。ゲッツもエバンスも「我が道を行く」である。

ちなみに、残りのメンバーは、Richard Davis (b), 曲によってRon Carter (b),  Elvin Jones (ds)。このベースとドラムのメンバーを見ても、どう考えたって、ゲッツにも合わないし、エバンスにも合わない。特に、エルビンはあかんやろ〜。つまりは、この『Stan Getz And Bill Evans』は、個々の参加メンバーの演奏は、それ単体としてはまずまずの内容ではあるが、演奏全体、グループ・サウンズとして聴くと「なんだかなあ」という、戸惑うばかりの内容である。

ちなみに、このアルバム、録音当時は、ゲッツ、エバンス双方に、その内容が気に入らず、お蔵になった。納得の判断である。じゃあ、なんでこのアルバムが世に出回っているのか。実は、1973年になって、ミュージシャン本人達の了解を得ずに、Verveが勝手に発売したからである。ほんまにVerveって何を考えているか、よう判らんレーベルですね。そういう意味でも、この『Stan Getz And Bill Evans』は、ゲッツ、エバンス双方にとっては認知されない、実に気の毒な境遇のアルバムである。 
 
 
 
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