2023年3月25日 (土曜日)

西海岸ジャズでホッと一息です

このところ、天気が良くない。加えて、今日などは「寒い」。先週から3月としては暖かすぎる陽気が続いていたが、今日の、ここ千葉県北西部地方の最高気温は「冬」。昨日の最高気温から10℃以上下がったのだからたまらない。外は雨が降り続いているし、こういう鬱陶しい天気の日には、カラッとクールなウエストコースト・ジャズが良い。

Tricky Lofton & Carmell Jones With The Arrangements of Gerald Wilson『Brass Bag』(写真)。1962年、Hollywoodでの録音。ちなみにパーソネルは、Carmell Jones (tp), Lawrence 'Tricky' Lofton, Bob Edmondson, Wayne Henderson, Frank Strong, Lou Blackburn (tb), Wilbur Brown (ts), Bobby Hutcherson (vib), Frank Strazzeri (p), Leroy Vinnegar (b), Ron Jefferson (ds), Gerald Wilson (arr)。

ということで、ウエストコースト・ジャズの「小粋なアルバム」を物色する。それも、ゆったり「ながら」で聴ける感じの盤が良い。そこで選盤したのがこの盤。西海岸ジャズのレジェンド中のレジェンド、名トランペッター&アレンジャーのジェラルド・ウィルソンがアレンジを手掛けた、ウエストコースト・ジャズらしい「聴かせるジャズ」。

5本のトロンボーン・アンサンブルが、この盤のアレンジの「ミソ」。ビッグバンド・ライクな厚みのあるユニゾン&ハーモニーを5本のトロンボーンで表現するという荒技。これぞ「アレンジの妙」。とっても良い「ジャジーな雰囲気」を醸し出している。
 

Tricky-lofton-carmell-jonesbrass-bag

 
この5トロンボーン・アンサンブルに、フランク・ストラゼリのピアノ、リロイ・ヴィネガーのベース、ロン・ジェファーソンのドラムの「西海岸らしい」リズム・セクションが絡んで、とってもジャズっぽく厚みのある、お洒落で小粋なバッキングが成立している。

この小粋なバッキングを背に、カーメル・ジョーンズのトランペット、ウィルバー・ブラウンのテナー・サックス、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブがフロントを張って、流麗で小粋で歌心溢れるソロを披露する。これが実に良い。やっぱ、ウィルソンのアレンジが効いているんやろな。聴いていて「ジャズってええな〜」って、リラックスして気持ち良く、出てくる音に身を委ねることが出来る。

特に、カーメル・ジョーンズのトランペットが心地良い響き。「Canadian Sunset」では、思わずウットリと聴き惚れてしまうくらい。タイトル曲の「Brass Bag」での溌剌としたホットなブロウも良い。ブリリアントで滑らかでスッと音が伸びて、運指は流れる様に、フレーズは唄うが如く、カーメル・ジョーンズのトランペットは魅力的。ウィルソンのアレンジがメインの盤なんで、カーメル・ジョーンズの出番がちょっと少ないのが「玉に瑕」かな。

実にウエストコースト・ジャズらしい、優れたアレンジの下、名うての名手達がフロントを張って、印象的なソロを展開する。いわゆる「小粋で聴かせるジャズ」がこの盤にてんこ盛り。この盤を聴いていると、知らず知らずのうちにリラックス出来て、聴き終えた後、必ず「やっぱウエストコースト・ジャズもええなあ」と独り言を呟く。そんな好盤です。
 
 

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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年3月19日 (日曜日)

小粋なジャズの相性抜群なコンビ

小粋なジャズ盤を探索して聴き漁っているうちに、小粋なジャズ盤に必須の「小粋な演奏」を量産出来る「相性抜群のコンビ」というものが存在するんじゃないか、と思い始めた。オスカー・ピーターソンとハーブ・エリスとか、ビル・エヴァンスとジム・ホールとか、この二人をコンビを組んで演奏すれば、絶対に「小粋なジャズ」が出来上がる。そんな「相性抜群なコンビ」というものがどうもあるみたいなのだ。

『Teddy Wilson Meets Eiji Kitamura』(写真左)。1970年、テディ・ウィルソンが来日時に北村英治とレコーディングしたセッションをLP化したもの。ちなみにパーソネルは、北村英治 (cl), Teddy Wilson (p), 原田政長 (b), Buffalo Bill Robinson (ds), 増田一郎 (vib)。第5回(1971年度)ジャズ・ディスク大賞(スイング・ジャーナル誌主催)最優秀録音賞を受賞した優秀盤である。

ウィルソンと北村が「相性抜群なコンビ」によってつくりあげたスタンダード集。『After You've Gone』(写真右)というタイトルで再発されているものもあるみたいだが、どちらの盤も聴いてみたが違いは無い。冒頭の「On The Sunny Side Of The Street」から抜群に良い雰囲気。リラックスして、穏やかだが力強い。ゆったりとしたスイング感。ゆったりとしたテンポに漂うファンキーなグルーヴ感。
 

Teddy-wilson-meets-eiji-kitamura

 
この盤に漂う抜群のスイング感とグルーヴ感は、北村のクラリネットのウィルソンのピアノによる「賜物」。北村のクラリネットは穏やかだが力強くスインギー。そのバックでリズム・セクションとして北村のクラリネットをサポートし鼓舞するウィルソンのピアノがファンキーでグルーヴィーでスインギー。この二人の相乗効果で、この素晴らしくスインギーで小粋なスタンダード集が出来上がっている。

北村のクラリネットは「スイング・ジャズ」志向。ウィルソンのピアノは「スイングからハードバップ直前の中間派」志向。どちらもハードバップ志向のジャズとは雰囲気が違うが、モダンなジャズには変わりが無い。スタンダード曲の解釈とアドリブ部の展開について、北村とウィルソン双方の嗜好がバッチリ合っているみたいで、二人のユニゾン&ハーモニー、そして、インタープレイに淀みが無い。

こんな「中間派」の小粋なジャズって、聴いていて、ほのぼのして、リラックス出来て、しみじみする。そして、ずっと演奏を聴き進めて行くと、このクインテットの演奏って、それぞれの楽器のテクニックと歌心が抜群で、凄く聴き応えがあるのが判ってくる。こういう「小粋なジャズ」って捨てがたい魅力満載。今でも、たまに引っ張り出しては聴く好盤です。
 
 

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2023年3月 7日 (火曜日)

時には「古き良きジャズの音」

ゴリゴリのモード・ジャズや静的スピリチュアルなニュー・ジャズなど、バリバリ硬派なメインストリーム志向の純ジャズ盤を聴き続けていると、演奏のテンションが基本的に高いが故、時々、息抜きをしたくなる。

息抜きをしたくなると、スイング時代からのジャズ演奏の雰囲気を継承した、ビ・バップでもなく、硬派でストイックなハードバップでもない、純粋に「古き良きジャズの音」をキープした中間派ジャズが聴きたくなる。

Pee Wee Russell & Buck Clayton『Swingville Volume 8/ Swingin'』(写真左)。1960年3月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Pee Wee Russell (cl), Buck Clayton (tp), Tommy Flanagan (p), Wendell Marshall (b), Osie Johnson (ds)。プレスティッジの傍系レーベル、Swingvilleからのリリース。

Swingvilleは「トラッド・ジャズ」のレーベル。ディキシーやスイングジャズの名手たち、エリントンやベイシーのバンドでスターだった人たちの演奏を聴くことが出来る、「古き良きジャズの音」をキープした盤をリリースしていたレーベルである。

リーダーの1人、Pee Wee Russell(ピー・ウィー・ラッセル)は、1906年生まれ、米国ミズーリ州出身の、ディキシーランド・ジャズからスイング・ジャズ、後に「中間派」ジャズの代表的クラリネット奏者。
 

Pee-wee-russell-buck-claytonswingville-v

 
さて、アルバムの内容に戻る。ピー・ウィー・ラッセルのクラリネットと、バック・クレイトンのトランペットがフロント2管のクインテット編成なんだが、メンバーは基本的に中間派ジャズのジャズマンが集結している。が、1人だけ、あの「名盤請負人」と名を馳せたトミー・フラガナンがピアノを担当している。

演奏の雰囲気は、一言で言うと「心地良く寛いだ雰囲気のモダン・スイング」。ラッセルのクラリネットの、流麗で小粋でこぶしの利いたフレーズがホンワカ心地良く、クレイトンの張りのあるブリリアントなトランペットが心地良く響く。典型的な「中間派」ジャズな演奏で、特にスイング・ジャズ風の音作りが実に「ジャズらしい」。

そして、この「中間派」ジャズの演奏の中で、フラナガンのピアノが「キラリ」と光るフレーズを連発する。このフラナガンのピアノの存在が、この「中間派」ジャズにモダンな響きを宿らせて、このオールド・スタイルな、ノスタルジックな「中間派」ジャズの演奏を、意外と新しいイメージで聴かせている。「名盤請負人」フラナガン、侮りが足し、である。

こういう、ジャズらしいジャズ盤、というのも時には良い。息抜きをしたくなった時、難しいことは考えずに「古き良きジャズの音」に身を委ねる。至福の時である。
 
 

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2023年2月27日 (月曜日)

エリスとパスの爽快弾きまくり

コンコード・レコードは、1972年にカール・ジェファーソンによって設立されたジャズのレーベル。米国西海岸のビバリーヒルズに本拠を置く。

1970年代、クロスオーバーからフュージョンが台頭する中、従来のメインストリーム系ジャズに留まった中堅〜ベテランのジャズマンを中心にピックアップして、玄人好みの純ジャズな内容のアルバムをリリースしていたのが「コンコード・レコード」。

我が国では、日本のレコード会社との契約が上手くいかなったのか、日本盤として、コンコード・レコードのアルバムがリリースされた枚数はかなり少なかった思い出がある。今では、幾度か、有名盤がCDリイシューされ、音楽のサブスク・サイトにも、まずまずの数のアルバムがアップされているので、コンコード・レコードのジャズ盤を聴く機会が多くなった。喜ばしいことである。

Herb Ellis & Joe Pass『Seven, Come Eleven』(写真)。1973年7月29日の録音。コンコード・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis (g), Joe Pass (g), Ray Brown (b), Jake Hanna (ds)。ジャズ・ギタリストのバーチュオーゾ、ハーブ・エリスとジョー・パスの2人がフロントを務める変則カルテット編成。カルフォルニアの「Concord Boulevard Park」でのライヴ録音。
 

Herb-ellis-joe-passseven-come-eleven

 
1973年で、この硬派なハードバップ。エリスとパスのギターのユニゾン&ハーモニーが切れ味良く、2人の秘術を尽くした、熱気溢れるアドリブ合戦が聴き応え満点。特に、アドリブ合戦の展開では、2人のギタリストが、フロントの役割とバックの役割を交代しながら、速いテンポのアドリブが展開されるところが実にスリリング。

歌心も満点で、熱気溢れる弾きまくりながら、聴いていて爽快。演奏される曲は、ラストの「Concord Blues」以外、渋いスタンダード曲。そんな渋いスタンダード曲を、切れ味の良い、やや速いテンポのアレンジで、バーチュオーゾの2人は、秘術を尽くしてギターを弾きまくる。

丁々発止と技を繰り出してギターのアドリブ合戦を展開するバックで、レイ・ブラウンの重低音ベースが、ブンブンと胴鳴りの唸りを響かせて、しっかりとリズム&ビートをキープする。ジェイク・ハナのドラミングは堅実で、リズム&キープを冷静にコントロールする。

このジャズ・ギターのバーチュオーゾの2人の弾きまくり、バックのリズム隊の熱いサポートの演奏をライヴで聴く聴衆の盛り上がりも凄い。熱気ムンムン、気合い十分、1973年という時期で、この純ジャズの演奏がこれだけ聴衆に受けている。つまりは、何時の時代も「良いものは良い」ということだろう。
 
 

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2023年2月 2日 (木曜日)

欧州風味のスムース・ファンク

ブログを再開しました。よろしくお願いします。

さて、Jazz Lifeの「2022年度 Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を読んでいて、キャンディ・ダルファー(Candy Dulfer)のアルバムが紹介されていて、おお、未だ第一線で活躍しているのか、と頼もしく思えた。

意外と、僕はこのブログでキャンディ・ダルファーのアルバムについて語っていない。彼女の音楽性は、基本的に「ジャズ・ファンク」で、オランダはアムステルダムの出身なので、貴重な「欧州のジャズ・ファンク」の担い手なのだ。アルバムは出る度に聴いているんだが、どうもブログの記事にする機会が無かった。

Candy Dulfer『We Never Stop』(写真左)。2022年10月のリリース。パーソネルは曲毎にメンバー編成を変えているので、かなり多数のミュージシャンが参加しているので、詳細は割愛する。

キャンディ・ダルファーはサックス奏者。4歳の時、ジャズのヘビー級サックス奏者、ソニー・ロリンズを見てサックス奏者を志し、父のサックス奏者、ハンスの支援の下、研鑽に励み、12歳の頃には、他に尊敬できる女性サックス奏者が殆どいなかった環境の中で、次の世代のミュージシャンにとって、目標となる女性サックス奏者になりたい、と思っていたそうである。
 

Candy-dulferwe-never-stop

 
さて、このキャンディの新盤であるが、初期の頃のあっけらかんとした「ジャズ・ファンク」に立ち戻って、シンプルに聴いて楽しい「スムース・ファンク」なアルバムに仕上がっていて見事である。

このキャンディの「スムース・ファンク」、1970年代後半から80年代前半にかけても、フュージョン・ブームの中での、ジョージ・デュークやラムゼイ・ルイス等の類なんですが、当時の米国系のフュージョン・ファンクから、濃厚なファンクネスを軽くして、欧州ジャズらしい、音のシャープさと精巧さを加味した、キャンディ独特の「欧州のジャズ・ファンク」を成立させているところが素晴らしいですね。

マーカス・ミラー等、大物アーティスト、シンガーのドゥランド・ベルナール、トランペット奏者フィリップ・ラシータ、若干11歳の若き才能、ベーシストのアロン・ホデック等、バラエティ豊かなゲスト・ミュージシャンを迎えた華やかな内容。それでいて、シンプルに聴いて楽しい「スムース・ファンク」になっている、良い感じのアルバムです。

良い出来の「スムース・ファンク」なアルバムです。他のアルバムも遡って聴き直して、感想を記事にしてアップしたい。そんな気持ちがフツフツと湧き上がってきた。
 
 

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2023年1月25日 (水曜日)

フルート主役のジャズ・ファンク

ジャズ・ファンクにジャズ・フルートをマッチさせた、ジャズ・フルートのレジェンドの一人「Hubert Laws(ヒューバート・ロウズ)」。その最初のアルバムと思われる『Romeo & Juliet』以降、フュージョン・ジャズ全盛期、1970年代後半から1980年代円半、ロウズは「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」志向をメインとする。

Hubert Laws『Family』(写真)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、Hubert Laws (fl, piccolo), Nathan East (b), Leon Ndugu Chancler (ds), Chick Corea, Bobby Lyle (key), Earl Klugh (g), David T. Walker (g) Debra Laws (vo) 等、そこにストリングスがバックに入る。ロウズの「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」の代表盤。

内容的には、ライトでアーバンな雰囲気の「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」。演奏全体に漂うファンクネスとグルーヴ感が半端ない。とにかく聴いていて自然と足が動き、腰が動く(笑)。そんなグルーヴィーなフュージョン・ジャズ満載で、これまでカヴァーからサンプリング・ネタに至るまで幅広い世代に支持され、特に、フリーソウル、ヒップ・ホップ方面から再評価の高い1枚である。

冒頭はクラシック曲のカヴァー「Ravel's Bolero」から始まるので「あれ〜っ」と思うのですが、この「ラベルのボレロ」も意外とファンキーでライトなグルーヴ感が漂う「ジャズ・ファンク仕様」。クラシックにも精通するロウズならではの選曲であり演奏であるかも、と意外と納得して次の曲にいく。
 

Hubert-lawsfamily

 
次曲「What a Night」から「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」に突入。この曲はサンプリング・ソースとしても人気のソフト&メロウなフュージョン・ジャズ。ミディアム・テンポの曲調にロウズのフルートが心地良く吹き進む。続いて「Wildfire」は、ファンキーなブラジリアン・フュージョン。疾走感が半端ない。ネイザン・イーストのベース・ラインが決まっている。

そして、極めつけは、やはり、タイトル曲の「Family」。ロウズの妹、デボラ・ロウズの魅力的なヴォーカルをフューチャーした、アーバンな雰囲気溢れる、ソフト&メロウなディスコ・フュージョン。フリーソウル・クラシックとしても人気の楽曲で、カヴァーやサンプリング・ソースの扱い多数。

あと「Memory of Minnie (Riperton) 」は、ゲスト参加のチック・コリアのピアノ・ソロが秀逸。そして、ラストの「Say You're Mine」は、バラードと思わせておいて、一気にファンキー・モードへ突入する、こってこての「ジャズ・ファンク曲」。

この盤、ジャケットが赤ん坊の写真をあしらったものなので、家庭で流せる優しいイージーリスニング・ジャズな盤なのか、という印象を持つんですが、とんでもない(笑)。中身は、アーバンで、むっちゃファンキーでグルーヴ感溢れる「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」が満載。ジャケットに惑わされずに、フルートがメインのジャズ・ファンクを堪能して下さい。
 
 

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2023年1月 9日 (月曜日)

耳に優しいマイナーなトリオ盤

チックとブラックストンの「サークル」のアルバムを全部聴き直していて、さすがに耳がちょっと疲れた。耳に優しいピアノ・トリオなんぞが聴きたいなあ、という気分になって、ちょっとネットを彷徨ってみた。そうしたら、実に渋いレトロなジャケットが目に入った。あれっ、このジャケ、見たことある、と思わず、久し振りに聴き始めた。

Graham Forbes『The Martini Set』(写真)。1960年の作品。ちなみにパーソネルは。Graham Forbes (p), Bill Halfacre (b), Buddy Jett (ds)。グラハム・フォーブスは、スイング・スタイルのピアニスト。1930年代から、ウッディー・ハーマンなどの有名バンドを渡り歩き、戦後、フランク・シナトラにも重用されたピアニスト。様々なビッグバンドや歌伴をこなしたオール・ラウンダーなピアニストである。しかし、このフォーブス、今では無名、知る人ぞ知るマイナーなピアニストである。

そんなオール・ラウンダーな力量を遺憾なく発揮した、実にお洒落で小粋なピアノ・トリオ演奏である。トリオ演奏の全体の雰囲気は「ラウンジ・ジャズ」。1960年の作品とは言いながら、ハードバップにも、ファンキー・ジャズにも、当然、モードにも全く無縁。フォーブスのピアノのスタイルは「スイングから中間派」。
 

Graham-forbesthe-martini-set

 
しかし、全くラウンジ・ジャズな演奏だが、フォーブスのピアノはさすが実力派。ラウンジ・ジャズな演奏だが、決して、イージーリスニングな雰囲気にはならない。ピアノにしっかりと芯が通っていて、右手のフレーズの小洒落たドライブ感は見事。左手のブロック・コードは趣味良くリズミカル。いわゆる「職人肌な、聴かせるピアノ」である。聴き応えがある。

スイングからバラード、なんでも弾き回す。身を入れた聴く類のピアノでは無いが、聴き心地が良いので、リラックスして聴き流すには最適なピアノ。歴史を揺るがすようなプレイでもなければ、当時のジャズのトレンドとはかけ離れた「スイングから中間派」なピアノなんだが、さすが職人肌な器用で卒のないピアノなので、不思議と最後まで聴き通してしまう。

まあ、フォーブス唯一のリーダー作&トリオ盤でレコード自体は珍しい「コレクターズ・アイテム」。辛口の硬派なジャズ・ピアノ者の方々からすると、とるに足らない、時代遅れのラウンジ・ピアノかも知れない。でも、何故か心地良いピアノ・トリオなんですよね、これが。僕にとっては、シビアなジャズを聴き続けた後、ちょっとした耳休めに最適なジャズ盤の1枚なんですよね〜。
 
 

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2023年1月 5日 (木曜日)

素敵なエレ・ジャズ・ファンク

ジャズといっても、なにも1950年代から60年代にかけての「ハード・バップ」が全てでは無い。ハード・バップは現代モダン・ジャズの源と言っても良いが全てでは無い。ハード・バップから、モード、ファンキー、ソウル、フリー、スピリチュアル、そして、電気楽器を活用したクロスオーバー、フュージョンなど、様々なバリエーションのジャズが派生している。

ジャズの好盤と言っても、なにもジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の名盤紹介にタイトルが上がるアルバムだけが好盤では無い。確かに、ジャズ盤紹介本や雑誌の名盤紹介に上がるジャズ盤は基本的に間違いが無い。

しかし、それらが全てでは無い。最近ではネットでのジャズ関連のブログやtwitterのツイートに上がるジャズ盤にも好盤、名盤の類がごまんとある。

ジャズに使用する楽器だって、なにもアコースティックな楽器だけが良い訳では無い。エレクトリックな楽器だって、良好なジャズは演奏出来る。以前は硬派なジャズ者の方々が「アコ楽器が全て、エレ楽器なんて認めない」なんて言いまくるもんだから、素直なジャズ者初心者の方々は、アコ楽器のみのジャズ盤を聴き漁る傾向にあるが、ジャズという音楽ジャンルは、楽器についても懐が深い。ジャズは基本的に楽器を選ばない。
 
Gene Harris『Nexus』(写真左)。1975年5月〜6月の録音。ブルーノート・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (key), Al Aarons (tp), George Bohanon (tb), Mike Altschul, Fred Jackson, Jr. (reeds), Lee Ritenour (g), John Rowin (g, el-b), Chuck Rainey (el-b), Kenneth Rice (ds), Ronaldo N. Jackson, Gerald Steinholtz (perc)。
 

Gene-harrisnexus

 
いわゆる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。エレピ、シンセ大活躍。ゴスペルを基本に、ソウル、ソフト&メロウ、コズミックな音要素がごった煮の、こってこてドープなエレ・ジャズ。ファンクネスだだ漏れ、それでいて俗っぽくなく、ちょっと品が良くてスマートでアーバン。

ゴスペルの要素が強く出て、パーカッションがファンクネスを掻き立て、コズミックな音要素が面白い「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。R&Bなコーラスが魂を揺さぶり、ソフト&メロウな音世界が心を和ませる「エレクトリック・ソウル・ジャズ」。

1950年代から60年代前半は、ブルーノートのお抱えジャズ・トリオ「スリー・サウンズ」で、正統派ファンキー・ジャズなピアノで有名になったジーン・ハリス。1970年代は、様々なエレクトリック・キーボードを趣味良く駆使し、正統派なモダン・ジャズ・ピアノのリリカルな響きを覗かせつつ、フュージョン・ジャズの音要素と上手く同化しながらの「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」が見事。

確かに、この盤でのジーン・ハリスのキーボードの使い方は趣味が良く、センスがある。当時のキーボード使いの中でもトップレベルの使いこなし。これが我が国では殆ど注目されず、殆どスルーされていた訳だから、当時の我が国の「ハードバップ偏重、アコ楽器偏重」も度が過ぎていたんやなあ、と妙に感心する。

今の耳で聴けば、とても内容の濃い、上質の「エレクトリック・ソウル・ジャズ」から「エレクトリック・ジャズ・ファンク」。これも素敵なジャズである。
 
 

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2022年12月29日 (木曜日)

ジャズって判り易いのが一番

僕がまだジャズ者初心者だった頃、FMラジオは貴重な音源だった。当時、ジャズがメインのFM番組は結構沢山あって、リアルタイムで聞くか、リアルタイムで聞けない時は、タイマー起動でカセットデッキに録音しておいて、家に帰ってきてから、ずっと聞いていた記憶がある。

FM番組でそのジャズLP盤の一部を聴いて、その内容が気に入って、次の日にレコード屋に走ってゲットしたアルバムも結構あった様な気がする。一生懸命、ジャズ入門本やジャズ雑誌を読んだりしているのだが、それでも知らない名前のジャズマンが出てきたら、しっかりメモって、ジャズ人名辞典を引いたりして勉強していたなあ。当時はネットが無かったから、書籍とラジオだけが貴重な情報源だった。

Teddy & Eiji『Live Session』(写真)。1971年7月、東京ヤマハ・ホールとイイノ・ホールでのライヴ音源。トリオ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、テディ・ウィルソン "Teddy Wilson" (p), 北村英治 (cl), 尾田悟 (ts), 薗田憲一 (tb), 光井章夫 (tp), 増田一郎 (vib), 池沢行生 (b), 須永ひろし (ds)。テディのピアノ・トリオを中心に、日本を代表するスイング系の名手が勢揃い。内容的には「スイング・ジャズ」が基本。
 

Teddy-eijilive-session

 
この盤の一部をNHKーFMで聴いて、どの曲に感動したかは覚えていないのだが、テディのスインギーでジャジーなピアノと北村英治の小粋で流麗なクラリネット、横揺れにスイングするリズム隊が凄く印象的に耳に残って、演奏の展開もとても判り易く、これはアルバム全体が聴きたい、と翌日、LPをゲットした思い出の盤である。

今の耳で聴き直してみても、テディのピアノはやっぱり良いし、北村のクラリネットは絶品。バックに控える日本を代表するスイング系の名手達のパフォーマンスも端正で流麗で見事。スイングが基調の演奏なんだが、今の耳にも古さは全く感じさせない、鮮度の高い横揺れスイングの上質のモダン・ジャズがこの盤に詰まっている。

こういう演奏を聴くと、やっぱり、ジャズって判り易いのが一番やな、と思ってしまう。加えて、演奏するジャズマンの演奏テクニックが高ければ高いほど、その演奏は判り易くなるのだから、やっぱりジャズって面白い。この盤の「セント・ジェームス病院」を聴いていて、そんなことを強く思った次第。
 
 

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2022年12月23日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・18

ジャズを本格的に聴き始めた頃、この盤の存在が不思議だった。ジャズの評論からすると、概ね、ディブ・ブルーベックというピアニストは「イモ」なピアニストという評価だった。やれスイングしないだの、やれ歌心が無いだの、そして、酷いなあと思ったのは「下手くそ」や「イモ」という評価。ジャズ者初心者として、これは下品やなあ、と思いつつ、ブルーベックの諸作については、なかなか手が伸びなかった。

しかし、である。ジャズ初心者向けのジャズ盤紹介には、必ずと言って良いほど、この盤のタイトルが上がる。ハワイ出身の S・ニール・フジタがデザインを手掛けた、前衛的な模様の絵をあしらったジャケットが印象的で、ジャズ初心者向けのジャズ盤ならば、とジャズを聴き初めて2年目位にゲットしている。

Dave Brubeck Quartet『Time Out』(写真左)。1959年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Desmond (as) Dave Brubeck (p) Gene Wright (b) Joe Morello (ds)。変則拍子ジャズの定盤中の定盤。ジャズで定番のビート、4ビートと2ビート以外を「Time Out(変拍子)」と呼んでいる訳だが、この盤は、その「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」である。

1曲目の「Blue Rondo A La Turk(トルコ風ブルーロンド)」は「9分の8拍子」。スイングしないピアノとして、一部で忌み嫌われるブルーベックのピアノが印象的な旋律を奏でる。2+2+2+3拍子という刻み。これでは横揺れのスイングは出来ない。ちなみに、ブルーベック・カルテットでは、ブルーベック十八番の「スクエアなスイング」で、この「9分の8拍子の曲」をノリの良い演奏に仕上げている。
 

Time_out_1

 
3曲目のタイトル曲が、かの有名な「Take Five」。「5分の4拍子」の変拍子ジャズで、3+2拍子という刻み。これも横揺れスイングは無理。この「5分の4拍子」の曲も、ブルーベック・カルテットは「スクエアなスイング」で乗り切っている。ジョー・モレロのドラミングの巧みさ。それを支えるブルーベックのピアノのコンピング。

「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」とは良く言ったもので、前述の1曲目が「9分の8拍子」、3曲目が「5分の4拍子」で完璧な変拍子。他の曲は「3分の4拍子」や「12分の8拍子」といった「3拍子」が主体の曲。5曲目の「Kathy's Waltz」は、6分の8拍子をインテンポで4分の4拍子に強引に被せている様で、これもある意味「変拍子」。

但し、「変拍子の演奏ばかりを集めたアルバム」だと難解になりがちなんだが、ブルーベック・カルテットはそうならない。ブルーベック・カルテットの演奏はどのアルバムも、どの演奏も「判り易い」。この「判り易さ」がブルーベック・カルテットの特徴であり、最大の長所。この『Time Out』がジャズ初心者向けのジャズ盤紹介に上がるのも、この「判り易さ」があるからだろう。

まず優れたアレンジがベースにあって、カルテットのメンバーの演奏能力とテクニックが高いこと。そこに、ブルーベックの理知的でスクエアなノリのピアノが演奏全体を統率し、ウォームで丸く力強いデスモントのアルト・サックスがフロントを担い、破綻の無い抑制の効いた、クールなインプロを展開する。これが「判り易さ」に繋がっている。ジャズにとって「判り易さ」は大切な要素。

しかし、「判り易い」からと言って、この変則拍子の「Take Five」が、1987年、アリナミンVのCMのバックで流れた時には驚きました。「ジャズはお洒落」なんていう、バブル期の産物なんでしょうが、よくこんな変則拍子のジャズ曲をCMに採用したもんです。今でも感心します。
 
 

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