2020年1月26日 (日曜日)

新しい日本人のジャズ・ピアノ

ジャズライフ・ディスク・グランプリ「2019年度ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」の記事を読んでいて、やっと「日本人男子」の若手ジャズ奏者が台頭してきた、と書いた。ほんと、やっとである。この10〜15年ほど、日本人の有望な若手ジャズ奏者といば、日本女子の独壇場だった。それでも昨年度は2〜3名ほどなので、活躍する日本人ジャズ奏者としては、まだまだ「女性上位」は揺るがない。

渡辺翔太『Folky Talkie』(写真左)。昨年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、渡辺翔太 (p, rhodes, Wurlitzer), 若井俊也 (ac-b, melodica), 石若駿 (ds, glocken), 吉田沙良 (vo)。女性ボーカル入りのピアノ・トリオ。リーダーの渡辺のキーボードは、アコースティックとエレクトリックの両刀使い。ベースはアコースティック一本と頼もしい。鉄琴のような音がするぞ、と思ったら「グロッケン」。

使用楽器を見渡して、また、女性ボーカルが全10曲中5曲ということからしても、演奏の内容は「現代のコンテンポラリーな純ジャズ」。基本は純ジャズなんだけど、どこかポップなイメージとイージーリスニングな雰囲気が見え隠れする。基本的に気楽に「聴いてもらえる」ジャズを狙っているように感じる。女性ボーカル入りの楽曲の存在が、昔のフュージョン・ジャズの雰囲気を醸し出す。
 
 
Folky-talkie  
  
 
さて、渡辺本人のピアノ、キーボードは、男性のピアノなので、さぞかしマッコイ・タイナーの様に「ガーンゴーン」と強いタッチで弾きまくるハンマー奏法か、高テクニックをベースに、オスカー・ピーターソンの様に高速フレーズを弾き回すのか、と思いきや、そうはならない。繊細にして流麗なピアノタッチ、印象的な透明度の高いフレーズ。そう、キース・ジャレットをポップにライトにした様なピアノ。聴き味はマイルドで耳に心地良い。

吉田沙良のボーカルは全くジャズらしくない。どちらかと言えばポップスなボーカルで、ジャズらしい癖は全く無い。これが不思議な雰囲気を醸し出す。そして、この盤をじっくり聴いていて思うのは、若井のベース、石若のドラムの「リズム隊」の素性の良さ。決して、どっぷりジャズに傾かず、ジャズとポップスの中間をいく様な、ファンクネス皆無な乾いたオフビート。このリズム隊のパフォーマンスも聴きもののひとつ。

日本人のジャズ・ピアノとして、新しい響きが魅力です。1988年2月生まれ、今年で32歳のまだまだ若手のピアニスト、渡辺翔太。キースの様なリリカルで透明度の高いアドリブ・フレーズ。日本人の女性ジャズ・ピアニストより、繊細にして流麗なピアノタッチ。それでいて、ポップでライトなピアノは意外と個性的。次作以降、どの路線で攻めていくのか、楽しみである。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年1月18日 (土曜日)

エリック初のストリングス作品

ジャズのアルバムを見ていると、レジェンド級、また有名になった一流ジャズマンのリーダー作の中には、必ずと言って良いほど、『ウィズ・ストリングス』盤がある。どうもこの『ウィズ・ストリングス』盤をリーダー作としてリリースする、ということが、一流ジャズマンの証であるらしい。言われてみれば確かにそうだ。

つまり、ジャズマンとして一流と目されると『ウィズ・ストリングス』盤をリーダー作としてリリースする企画がレコード会社から提案されるのだろう。特に米国では『ウィズ・ストリングス』盤の需要が結構あるみたいで、ジャズばかりでなく、ポップスの世界でも『ウィズ・ストリングス』盤が制作されるくらいである。

『Eric Alexander with Strings』(写真左)。昨年12月のリリース。録音は、2012年8月 & 2013年3月。ちなみにパーソネルは、Eric Alexander (ts), David Hazeltine (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds), Featuring a string orchestra of 9 violins, 2 violas and 2 cellos with flute and French horn, Dave Rivello (cond, arr)。
 
 
Eric-alexander-strings  
 
 
アルバムの日本語キャッチが「エリック・アレキサンダーの長年の夢であったストリングス・アルバムが登場」。なるほど、やはり現代においても、ジャズマンの憧れなんですね、『ウィズ・ストリングス』盤って。そして、エリック・アレキサンダーも一流ジャズマンとして認められた、ということ。

バラード演奏に定評のあるエリックがストリングスをバックに朗々とテナーを吹き上げていく。聴き応えバッチリ、聴き込みにも聴き流しにも最適。確かにエリックのテナーは上手い。流麗で力強く大胆にて繊細。日本ではレコード会社主導で人気が出たエレックだが、米国でもその実力はしっかり認められ、人気テナーマンの一人ということが確認出来て、なんだかホッとした次第。

リズムセクションには「One For All」のグループでも長年演奏している、ヘイゼルタイン=ウエバー=ファンズワースが担当。エリックと息の合ったパフォーマンスを聴かせてくれる。最後にアレンジもかなり優秀。アレンジャーのリベロいわく「曲の美しさをストレートに吸収し、常にメロディを最優先に考えた」とのこと。納得である。
 
 
 
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2020年1月 9日 (木曜日)

村田中のセカンド・アルバムです

日本人ジャズは独自の深化をしている。米国のジャズのトレンドを取り込んで、日本人流にアレンジして再構築する。もともと日本人は「加工民族」と呼ばれる位で、ジャズについても、日本人ジャズは「加工」が得意で、本家本元のトレンドよりも付加価値的な個性の付いた、新しい響きを加えたものに仕上げるのだ。
 
村田中『SCHOOL OF JAZZ』(写真左)。2019年8月のリリース。村田中(むらたなか)とは、トランペット・フリューゲルホルン奏者の村田千紘とピアノ奏者の田中菜緒子のデュオ。ゲストとして、駒野逸美 (tb), 高橋陸 (b), 小松伸之 (ds) を迎えて、音のメリハリを付けている。ちなみに録音は、2019年4月8〜9日、東京キング関口台スタジオでの録音。

改めて、村田中。ジャズ界の美人デュオとして話題になったが、その実力は十分なもの。楽器のテクニックの基本部分は申し分無く、しっかりとした楽器演奏を聴かせてくれる。基本的にイメージ優先ではない、実力が伴ったジャズ界の「美人デュオ」である。決して、色眼鏡で見てはいけない。逆に、この盤のジャケットのピンク色に眉をひそめて、この盤を遠ざけるのも良く無い。
 
 
School-of-jazz-muratanaka  
 
 
聴けばわかるのだが、全編、上質のフュージョン・ジャズ。特に、村田のフリューゲルホーンは、フュージョン全盛時のフレディー・ハバードや日野皓正のミッドテンポの演奏を彷彿とさせるもの。村田は決して速い吹き回しをしない。決して無理をせず、ミッドテンポからスローテンポの吹き回しで、雰囲気最優先の音作りをしている。田中のピアノも同様な傾向で、この盤ではそれが成功している。
 
3曲目のスティーヴィー・ワンダー作の「Overjoyed」、5曲目のスダンタードの名曲「As Time Goes By」などで、ミッドテンポで上質な、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの雰囲気を感じることができる。よく伸びるフリューゲルホーン、モーダルにフロントをサポートする、コンテンポラリーなピアノ。1980年前後のフュージョン・ジャズ全盛期のソフト&メロウなフュージョンを焼き直して、現代のジャズとして再生している。
 
僕は特に3曲目のスティーヴィー・ワンダー作の「Overjoyed」がお気に入りで、このアプローチ、この雰囲気を前面に押し出して、1970〜80年代のポップス、ロックの名曲をカヴァーして欲しいなあ、と思っている。ピンクが基調のジャケット、ジャケ写の赤のジャージに惑わされてはならない。この盤に詰まっている音は「硬派で実直でコンテンポラリーな」、現代のフュージョン・ジャズである。
 
 
 
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2019年12月19日 (木曜日)

ブラウニーのメモリアル盤である

暫く、クリフォード・ブラウンを聴いていないことに気がついた。クリフォード・ブラウン、愛称「ブラウニー」。ブラウニーのリーダー作は若い頃にかなり聴き込んだ。その反動だとは思うのだが、ここ10年ほど、ブラウニーのトランペットをほとんど聴いていない。しかし、ブラウニーのトランペットはジャズ・トランペットの基準である。やはり、たまにはここに戻らないとなあ、ということで盤を漁る。

Clifford Brown『Clifford Brown Memorial』(写真左)。Prestigeからのリリース。PRLP 7055。1953年6月11日にてNYでの録音、同年9月15日にてStockholmでの録音。ちなみにパーソネルは、NYでの録音は、Clifford Brown (tp), Benny Golson (ts), Idrees Sulieman (tp), Gigi Gryce (as), Herb Mullins (tb), Oscar Estell (bs), Tadd Dameron (p), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds)。Stockholmでの録音は、Clifford Brown (tp), Art Farmer (tp), Arne Domnerus (as), Lars Gullin (bs), Åke Persson (tb), Bengt Hallberg (p), Gunnar Johnson (b), Jack Noren (ds)。

ブラウニーは自動車事故で1956年6月26日に急逝している。ブラウニー急逝の当時、ブラウニー追悼盤、いわゆる「メモリアル・アルバム」が急造された。ブラウニーは人気トランペッターであったが故、様々なレーベルから、ブラウニーの「メモリアル・アルバム」がリリースされている。この盤もその例に漏れず、で、プレスティッジ・レーベルが何とかブラウニーの追悼盤をだしたいなあ、と思っていて、この音源を発掘したんだと思っている。
 
 
Clifford-brown-memorial-prestige  
 
 
追悼盤というには、あまりに唐突な録音年月日と録音場所である。ただし、聴いてみれば判るんだが、演奏されているハードバップについて、アレンジが良いのだ。いわゆる「聴かれること」を意識している録音で、調べてみたら、それもそのはず、Stockholmでの録音は「Quincy Jones」の監修、NYでの録音は「Ira Gitler」の監修。なるほど、やっつけ感皆無の、しっかり準備され仕込まれた録音という雰囲気が良い。

ブラウニーのトランペットはほぼ申し分無い。Stockholmでの録音はアート・ファーマーと組んだ地元のミュージシャンとの録音とNYでの録音はタッド・ダメロン・オーケストラ在籍時での録音なのだが、ブラウニーは録音を楽しむ様に、音数もいつもとは控えめに吹いている。が、それが良いのだ。バリバリに吹きまくらずに、音数を選んで旋律に忠実に余裕を持って吹く。ブラウニーのトランペットが説得力を持って耳に入ってくる。

この盤の良さは、ブラウニーのトランペットの良さを、判り易く温和な演奏の中で楽しめるところ。メモリアル・アルバムというには、どこか説得力に欠ける演奏内容ではあるが、ブラウニーのトランペットを愛でるには実に良い感じな盤なのだ。久し振りに聴いたのだが、気軽にブラウニーを楽しめる盤として、これから聴き続けるだろうなあ、と嬉しい予感のする盤である。
 
 
 
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2019年12月10日 (火曜日)

ロングマイヤーはギタリスト

純ジャズをずっと聴いていると、無性にフュージョン・ジャズを聴きたくなる瞬間がある。もともと、フュージョン・ジャズの全盛時代にジャズを聴き始めた世代である。フュージョン・ジャズについては全く抵抗感が無く、むしろ親近感がある。実はフュージョン・ジャズも好きなジャンルのひとつで、かなりのコレクションとなっている。

フュージョン・ジャズが聴きたい、となれば、まずはCTIレコード辺りから物色することになる。そして、ボブ・ジェームス一派に行き着き、気がつけば、タッパンジー・レコードのアルバムを聴いていたりする。タッパンジー・レコードは、フュージョン・ジャズの中核ミュージシャンの一人、ボブ・ジェームスが立ち上げたレーベル。

タッパンジー・レコードは、総帥のボブ・ジェームスを始め、ウィルバート・ロングマイヤー、リチャード・ティー、カーク・ウェイラム、フィル・ペリーらを専属に迎えて立ち上げ、様々なジャズメンの様々な好盤をリリースしている。音的には、ボブ・ジェームスのプロデュース&アレンジの影響が大きく、どのアルバムにも、ボブ・ジェームスの手癖、痕跡が明確に残っている。
 
 
Sunny-side-up-1  
 
 
Wilbert Longmire『Sunny Side Up』(写真左)。1978年2月、NYでの録音。主だったパーソネルは、Dave Sanborn (as), Richard Tee (p), Bob James (el-p, arr, cond), Wilbert Longmire (g), Gary King (b), Harvey Mason (d, el-d), Sue Evans (perc) など。フュージョン。ジャズの中核メンバーが大集合である。

リーダーのロングマイヤーはギタリスト。温和で穏やかで流麗なエレギの響きが個性。耳に刺激的に響くことは全く無い。耳に優しいマイルドな音。そんなジェントルなエレギが、アーバンでライトなフレーズを紡ぎ上げていく。曲によっては物足りない雰囲気も漂うこともあるが、バックのテクニック溢れる演奏とボブ・ジェームスの個性的なアレンジが強烈にフォローする。

ロングマイヤーのギターを聴きながら、バックのフュージョンの手練たちの演奏も楽しむという、一石二鳥な聴き方をするフュージョン盤である。演奏の雰囲気は流麗でウォームな演奏が多く、「ながら聴き」にも最適な音世界である。実際、僕はこの盤をリリースされた当時から「ながら聴き」をメインに聴き続けている。
 
 
 
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2019年12月 4日 (水曜日)

西海岸独特のピアノ・トリオ盤

Mode Labelの「西海岸の肖像画ジャケット」のシリーズ、ちょっと古風な肖像画の様な、やけにリアルな顔がアップのジャケットのシリーズの3作目になる。この人の名前は西海岸ジャズの名作『踊り子』『お風呂』の紙ジャケで、優秀なアレンジャーとして知った。米国西海岸ジャズにおけるアレンジャーの第一人者。そう「マーティ・ペイチ」。

マーティ・ペイチは、1925年1月23日米国オークランド生まれ。最初はジャズ・ピアニスト。M.C.テデスコに楽理を学び、アレンジャーとしても注目を浴び、ピアニストよりも、アレンジャーとしての活動が中心となっていった、米国西海岸ジャズらしい、変わり種のジャズマンである。

『Marty Paich Trio』(写真左)。1957年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Marty Paich (p), Red Mitchell (b), Mel Lewis (ds)。西海岸ジャズのファースト・コールなベーシスト、レッド・ミッチェルと、小粋かつ堅実なドラミングが身上のメル・ルイスを擁した堂々のピアノ・トリオ編成。
 
 
Marty-paich-trio-1  
 
 
マーティ・ペイチの、アレンジャーでは無い、ピアニストの側面にスポットライトを当てた、ピアニスト=ペイチの素敵な「ピアノ・トリオ」盤である。冒頭の「I Hadn't Anyone 'Til You」の愛らしいイントロのピアノの響きを聴くだけで、ペイチの、その趣味の良く愛らしい小粋なピアノが良く判る。

米国西海岸ジャズらしく「聴かせる、聴いて貰う」ジャズ・ピアノである。聴き耳を立てたくなる、じっくり聴き味わいたくなる演奏である。決して叩かない、決して高速フレーズは弾かない。聴き易く聴き応えのある「ミッド・テンポ」な演奏が心地良い。淡々とシンプルに流麗に弾き進めているが、以外と複雑なフレーズを織り込んでいる。テクニック度は高い。

収録されたどの曲もアレンジ良好。さすがアレンジの才人。とても趣味の良いピアノ・トリオ盤で、こんなピアノ・トリオ盤は東海岸ではちょっと見当たらない。西海岸ならではのピアノ・トリオ盤と言えるでしょう。ペイチのピアニストとしての力量を再認識出来る好盤です。ピアノ・トリオ者の方々に特にお勧め。
 
 
 
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2019年11月30日 (土曜日)

1970年代ロックのカヴァー集

以前にリリースされた既出のアルバムを色々と漁っては聴き直していたので、そんなに前作と間が空いたのか、とビックリした。スパイロ・ジャイラの新作は約6年振りのリリース。スパイロ・ジャイラは1974年の結成だから、結成以来、既に40年以上が経過している、フュージョン&スムース・ジャズのグループの老舗中の老舗である。

Spyro Gyra『Vinyl Tap』(写真左)。2019年10月のリリース。メンバーは、90年代前半から続く浮動の4人、Jay Beckenstein (sax), Tom Schuman (key), Julio Fernández (g), Scott Ambush (b) と、新加入のドラム奏者 Lionel Cordew。前任のドラム奏者 Lee Pearson は前作1作のみで交代となったようだ。

出てくる音は、確実に「スパイロ・ジャイラ」の音。冒頭の曲「Secret Agent Mash」の演奏をちょっと聴いただけで、それと判る個性。で、この冒頭の「Secret Agent Mash」って、どこかで聴いたことがある。というか、よく聴いた。ロリンズの演奏だ。そう「アルフィーのテーマ」。そして、2曲目以降、どの曲も「あれっ、どっかで聴いたことがあるぞ」という曲ばかりなのだ。聴き進めるにつれ、思わず頬が緩み、ニコニコしてくる。

この盤の収録曲を列挙すると以下の様になる。1曲目のジョニー・リバースの「Secret Agent Mashと8曲目のオリヴァー・ネルソンの「Stolen Moments」のジャズの有名曲以外、1970年代のロック、ソウルの名曲のカヴァー演奏がズラリである。1970年代ロック&ポップスも得意ジャンルとする私としては嬉しいことこの上無し、である。
 
 
Vinyl-tap  
 
 
1. Secret Agent Mash(Johnny Rivers)
2. Sunshine Of Your Love(Cream)
3. Can’t Find My Way Home(Blind Faith/Steve Winwood)
4. What A Fool Believes(The Doobie Brothers)
5. The Cisco Kid(War)
6. You’ve Got To Hide Your Love Away(The Beatles)
7. Tempted(Squeeze)
8. Stolen Moments(Oliver Nelson)
9. Carry On(CSN&Y)

カヴァーされた曲はどれもが名曲揃い。それが故にメイン・フレーズが印象的かつ個性的なものが多く、安易にカヴァーすると、趣味の悪い「軽音楽」っぽくなるのだが、スパイロの場合はそうはならない。それぞれ、メイン・フレーズはなぞらえるだけで、ドンドンとアドリブ部に入って、ジャズっぽいインタープレイを展開する。このアドリブ部をだけ聴くと、何の曲だかまるで分からない。

このアレンジが良い。名曲の持つ魅力的なメイン・フレーズに頼らないところがジャズっぽい。実は今回のスパイロの新作、往年のロックやポップス、ジャズ、ソウルのカヴァー集という触れ込みで、ちょっと不安だったのだが、そんな不安はこの新作を一度聴くだけで全面的に払拭された。スパイロ・ジャイロって、未だに隅に置けんなあ。
 
 
 
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2019年11月16日 (土曜日)

スピード感溢れるビッグバンド

大編成のビッグバンド・ジャズ。ジャズの人気が落ちていく中、ジャズの演奏家自体の絶対数が減少するので、21世紀になったら、ビッグバンド・ジャズは「絶滅危惧種」化しているのでは、と危惧していたが、これは杞憂であった。21世紀に入っても、ビッグバンド・ジャズはしっかりとジャズに根付いている。

Jazz at Lincoln Center Orchestraや、Jazz Orchestra of the Concertgebouwなど、パーマネントな活動を維持しているビッグバンドもあり、意外とビッグバンド・ジャズは人気があるのでは、と睨んでいる。例えば、このビッグバンドも、人気上昇のお陰で実際のビッグバンドが編成された、面白い例である。

Battle Jazz Big Band『4th』(写真左)。2009年7月のリリース。コンマスの吉田治 (as) をはじめとして、純国産のビッグバンドである。リード・トランペットは佐久間勲、則竹裕之 (ds)が正式参加など、腕に覚えのある国内のジャズメンが集結。それぞれの曲のアレンジが優秀で、ダレたところが一切無い。このスタジオ録音2枚目も充実したビッグバンド演奏がぎっしり詰まっている。
 
 
4th-battle-jazz-bigband  
 
 
もともとこの「Battle Jazz Big Band」シリーズって、高速なジャズばかりを集めたコンピCDとして始まった「Battle Jazzシリーズ」が、その人気の高さによって、急遽、オリジナルのビッグバンドを編成し、実際のオリジナルな演奏を撮り下ろして収録を始めたもの。この盤は『4th』=4枚目、だが、実際のオリジナル演奏を収録したアルバムとしては『3rd』以来、2枚目の録音盤になる。

ノリも良く、グルーヴ感も良好、アルバムを聴き終えると、スカッと抜群の爽快感。景気の良いオープニングのバディリッチ作の「Good News」、常識破りのアレンジ、全編トロンボーン・セクションをフューチャーした3曲目「Donna Lee」、手に汗握る、超絶技巧かつ疾走感抜群のラストの「Magic Flea」まで、思う存分、切れ味の良いビッグバンド・ジャズを堪能出来る。

プロのテクニック+学バンのノリ+超カッコいい曲=BATTLE JAZZ BIG BAND、がコンセプトで、高速でスピード感溢れる、格好良く思いっ切り心地良くスイングする演奏は聴き応え充分。一糸乱れぬアンサンブルとダイナミズムは世界の他の優秀なビッグバンドと比肩するもの。久し振りの聴いた『4th』だが、やっぱり良い。これは大変、他のアルバムも聴き直さないとなあ。
 
 
 
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2019年11月14日 (木曜日)

どこを切っても「ベノワ節」です

ジャケットの写真を見て、この人、幾つになったのかな、とまず思った。デヴィッド・ベノワ(David Benoit)。1953年生まれなので、今年で66歳。そうか66歳か。ちょっと歳を取り過ぎている雰囲気が気になる。ここは現在の「姿形」の写真を使わなかった方が良かったのでは、と下世話に思う。

『David Benoit and Friends』(写真左)。今年8月のリリース。デイヴィッド・ベノワが豪華ゲストを迎えたスムース・ジャズ盤である。パーソネルを見渡すと、 Dave Koz, Marc Antoine, Rick Braun, Vincent Ingala, Lindsey Webster 等々、スムース・ジャズの「手練れ達」がずらりと名を並べる。

ここまで優秀なメンバーを集めると、演奏のテクニックと表現力については申し分無い。あとはリーダーの統率力と演奏のアレンジである。まあ、この優秀なメンバーを生かすも殺すも「統率力とアレンジ」次第ということだが、ベノワ翁については全く問題無い。この盤の冒頭の「Ballad Of Jane Hawk」を聴くだけで直ぐ判る。
 
 
David-benoit-and-friends-1  
 
 
この盤、徹頭徹尾、どこを切っても「ベノワ節」満載。ちょっと懐かしさを感じる、フォーキーでネーチャーで印象的なフレーズの数々。シュッとした透明度の高い「深めのエコー」。歩くテンポがメインの「ベノワ・ビート」。演奏全体の雰囲気は明快に「スムース・ジャズ」。クロスオーバーでもフュージョンでも無い。このベノワの音世界こそ「スムース・ジャズ」である。

ベノワのキーボードは完璧に「スムース・ジャズ」の響き。そんなベノワのキーボードにディヴ・コーズのサックスが映える。リンジー・ウェブスターの艷やかなヴォーカルがもそこはかと無くファンキーでビューティフル。マーク・アントワンの「スムースな」アコギが実にムーディー。そこに少し聴くだけで判る、ベノワ独特のアレンジ。

 
ラストのコールドプレイの「Viva La Vida」が絶品。ベノワのアルバムを聴いていると「スムース・ジャズ」もええなあ、と思う。ベノワのスムース・ジャズは「硬派で骨太」。軟弱なところ、聴き手に迎合するところは全く無い。ベノワのスムース・ジャズは「プロの技」。聴き応え十分。我が国で人気がイマイチなのが不思議なくらいである。
 
 
 
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2019年10月20日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・121

硬派なモード・ジャズや限りなくフリーに近いスピリチュアル・ジャズなど、集中して聴く必要のある「アート」としてのジャズも良いが、聴き流しが出来る、寛いで聴くことが出来る「エンタテインメント」としてのジャズも楽しい。もともとジャズって、ダンス音楽からスタートしているし、米国のポップス音楽の主流だった時代もあるのだ。

歴代のジャズ・レジェンドと呼ばれるジャズマンも、硬派でアートな盤をリリースする一方、聴いて楽しい、寛いで聴ける、エンタテインメントな企画盤を録音してたりする。何もエンタテインメントな企画盤を出すジャズマンが軟派なのでは無い。リスナーの要請として、エンタテインメントな企画盤も必要とされているのだ。決して、頭っから否定してはいけない。

George Shearing Quintet『Latin Escapade』(写真左)。1957年12月のリリース。ジョージ・シアリング(George Shearing)と言えば、イギリス生まれのジャズピアニスト。米国に渡ってクール・ジャズの第一人者として活動し、1950年代の米国東海岸のハードバップの流とは距離を置いた「洒落たアンサンブルとクールなサウンド」で人気を博した。
 
 
Latin-escapade-george-shering   
 
 
そんなクールなシアリングが、ラテン・ジャズに手を染めたアルバムがこの『Latin Escapade』。ジャケットもジャズらしくなく、ラテン系の妙齢の美女の写真をあしらったもの。これだけ見たら、ジャズのアルバムだとは思わないよな。ラテン音楽のムード曲集って感じ。しかし、そこはジョージ・シアリング。クールなアレンジで、モダンなラテン・ジャズに仕上げている。

もともと端正で流麗なフレーズが身上のシアリングのピアノ。それをラテン・ミュージックに応用するのだから、ちょっと俗っぽいラテン音楽が洒落た端正なジャズに変身している。ラテン音楽がもともと持っている「猥雑な」フレーズはそのままだが、アレンジがクールで耳に付かない。リズム&ビートもラテン・チックだが、しっかりジャジーな雰囲気を織り交ぜている。

クールで洗練されたムーディーなジャズに仕上がっているのだから、シアリングのアレンジ能力とピアノの表現力は抜きんでたものがある。ラテン・ジャズかあ、と最初は思うのだが、意外と聴いていて「楽しめる」。気軽に聴いて、気軽に楽しめる。こういうジャズ盤があっても良いなあ、と思うようになった。リラックスして「ながら聴き」。意外と至福の時です。
 
 
 
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