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2019年4月22日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・36

ブルーノート・レーベルの4300番台を順番に聴き直し始めた。4300番台は1968年の録音から始まる。ジャズ界はコルトレーンが他界し、混沌とした時期。エモーショナルなフリー・ジャズが幅を利かし、エレクトリック・ジャズが台頭し始める。ロックやポップスが台頭し、売らんが為の豊作として、イージーリスニング・ジャズなどが企てられた。
 
『Introducing Kenny Cox and the Contemporary Jazz Quintet』(写真左)。そんな時期にこのアルバム、ブルーノートの4302番。コンテンポラリーなジャズ・クインテットとタイトルにあるので、意外と先進的な、ニュー・ジャズ志向の演奏と想像する。1968年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Cox (p), Charles Moore (tp), Leon Henderson (ts), Ron Brooks (b), Danny Spencer (ds)。
 
ケニー・コックス(Kenny Cox)とはどんなピアニストか。1940年11月生まれ、米国デトロイト出身。2008年逝去。1960年代後半に、デトロイトで自分のクインテットを作り、ブルーノート・レーベルにこの盤含め、2枚のアルバムを録音しています。リーダー作はこの2枚。サイドマンとして、3〜4枚のアルバムに参加しただけ。
 
 
Introducing-kenny-cox  
 
 
白人ピアニストのケニー・コックス率いるクインテットの演奏を聴けば「ん〜?」。思わず、録音年を再確認。1968年だよな。この盤に詰まっている音は、1950年代後半のハードバップど真ん中な演奏と1960年代前半のモーダルなハードバップ演奏。どう聴いても、1960年代終盤のトレンドを捉えたジャズとは全く言えない。メンバーはほとんど無名。しかし、出てくる音は素性が確かなもの。
 
しかし、当時のブルーノート・レーベル、何を思ってこの盤をリリースしたのかなあ。明らかに時代遅れである。モーダルなハードバップは先進的とは言え、温和で流麗で判り易い演奏。尖ったり捻れたりしたところは全く無い、とにかく理路整然とした由緒正しきハードバップな演奏で、内容的には真摯ではあるが、ちょっと物足りない雰囲気が濃厚に漂う。ジャケ写も明らかにファッション的に時代遅れの服装。でもロゴタイプはちょっとサイケデリックがかっていて、このアンバランスなデザインについても、これがブルーノート盤なのか、とちょっと戸惑います。
 
素性確かなハードバップ演奏には好感が持てます。あまり対峙する思いで聴き込むこと無く、何気なくさり気なく、じゃず喫茶の昼下がりに流すというシチュエーションに良く合った、ながら聴きに最適なモード・ジャズな演奏だと思います。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年4月17日 (水曜日)

ルーさん・ウィズ・ストリングス

このジャケットも「もはやジャズでは無い」感じがして、初めて見た時は正直「ひいた」。ジャケットを見た時点では、この盤、初めて見た時点では、ブルーノート・レーベルからのリリースとは思わないだろう。しかも、ブルーノート・レーベル専属のベテランが吹いているのだから、2度ビックリ。
 
Lou Donaldson『Sophisticated Lou』(写真左)。1972年12月の録音。BN-LA024-F。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Eugene Bianco (harp), Joe Venuto (vib), Derek Smith (p,el-p), Jay Berliner (g, 12-string g), Richard Davis (b), Grady Tate (ds), Omar Clay (perc) をメインに、ストリングスがオーバーダビングされている。
 
ルー・ドナルドソン(以降、ルーさんと呼ぶ)は、1926年生まれ。この盤を録音した時点で46歳。既にベテランである。ビ・バップ時代から活躍しており、基本的にブルーノート・レーベルからのリーダー作が多い。ブルーノート・レーベルのお抱えアルト・サックス奏者と言っても良いだろう。そんなルーさんのリーダー作である『Sophisticated Lou』。
 
 
Sophisticated-lou-donaldson_5
 
 
ストリングスをオーバーダビングしているところから、音の雰囲気は「ルー・ドナルドソン・ウィズ・ストリングス」という趣き。ブルーノート・レーベルの製作盤なので、音の作りはしっかりしている。よって、ストリングスの甘きに流された凡盤にはなっていないところが流石である。イージーリスニング・ジャズとして踏みとどまっている。
 
ストリングスのアレンジは1970年代前半の古いイメージのものなので、ストリングスだけ聴くと「ああ、これはイージーリスニング・ミュージックになってしまっているかなあ」と不安になるのだが、ルーさんのアルト・サックスが出てくると、そんな不安は一掃される。ストリングスの存在など全く感じさせず、ルーさんはいつもの「バップなアルト」を吹き上げていく。
 
このルーさんの潔い「バップなアルト」が、この盤をイージーリスニング・ジャズとして踏みとどまらせているのだ。硬派な純ジャズでは無いので、ベテラン・ジャズ者の方々からは眉をひそめられそうな内容ではあるが、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの先駆けとして聴けば、あまり違和感は無い。BN-LA シリーズの盤らしい内容である。
 
 
 
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2019年2月19日 (火曜日)

ライトポップなフュージョンです

こういうジャズもたまには良いなあ、と思う。というか、これってジャズか、とも思うんだが、フュージョン・ジャズを正と捉えて早幾年、この新盤に詰まっている音、ぎりフュージョン・ジャズと解釈して良いのかな。まあ、こういうコンテンポラリーなフュージョン・ジャズが我が国から出てきたとは、なんか嬉しくなるやら、ホッとするやら。

三角関係 feat.三浦拓也『素敵関係』(写真左)。今月のリリース。ちなみにパーソネルは、山崎 千裕 (tp, fih), 園田 涼 (p, key), 三浦 拓也 (g)。なぜ「feat.」が付いているのか判らぬが、3人トリオの「三角関係」ということ。当然、バックにサポート・メンバーが入っていて、主だったところは、紺野 光広 (el-b), 村石 雅行 (ds), 前田 仁, 山下 智 (perc)。

ポップで明るい、聴き易くて耳当たりの良いフュージョン・ジャズがメイン。それでいて、ソフト&メロウには流れず、意外とビートの効いた、爽快感溢れるところが「ニクい」。音的にも、しっかりエッジが立っていて、音像は明確で曖昧なところは無い。かなりしっかりと作り込まれたフュージョン・ジャズである、ということが良く判る。
 

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山崎 千裕(やまざき ちひろ)は中堅トランペッター。東京芸大卒。2010年、自身のバンド山崎千裕+ROUTE14bandを立ち上げ、本格デビュー。女性トランペッターではあるが、音はしっかりしている。音の大きさについては割り引いても、無理をしない演奏テクニックとふらつきの無いブロウは聴き易く、好感が持てる。この盤では、ブリリアントさが加わって、シンプルに「良い音している」。

園田 涼のピアノは堅実でキラキラしている。純ジャズなピアノとしては、ちょっと深みに欠けるか、と思うが、フュージョン・ジャズとしては、切れ味も良く、タッチもキビキビしていて及第点。三浦 拓也のギターも良い感じ。フュージョン・ギターって音で爽快感抜群。弾きっぷりも意外と骨太で、ソロにリズムに大活躍です。

ジャケットがキャピキャピしていて、ちょっと気恥ずかしいのですが、アルバムの中に詰まっている「インストポップなフュージョン・ジャズ」な音世界とイメージが合致していて、まあここは「我慢」(笑)。演奏もレベルが高くて、聴き心地も良い。ながら聴きに最適なライト・ポップなフュージョン・ジャズ盤です。次作では本格的な「コンテンポラリーな純ジャズ」に挑戦して欲しいですね。期待してます。

 
 
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2019年2月17日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・35

1970年代後半から1980年代前半までが「フュージョン・ジャズ」の時代。当時、我が国では猫も杓子もフュージョン・ジャズで、ハードバップなどの純ジャズについては「時代の遺物」扱いされていた。しかし、である。1980年代半ば、純ジャズ復古のムーブメントが起こって、純ジャズが復権したら、とたんに今度はフュージョン・ジャズが「異端」扱いである。

日本のジャズのトレンドって、当時のジャズ雑誌、評論家が牽引するのだが、基本的に無節操なところがある。現在に至っては、フュージョン・ジャズはそもそもジャズじゃない、などと言い出す始末。ジャズは懐の深い音楽ジャンルなので、フュージョン・ジャズもジャズの範疇に入れても差し支えない。フュージョン・ジャズだって良いところは沢山あるし、聴き応えのある好盤も多い。

Jazz Funk Soul『Life and Times』(写真左)。今年1月のリリース。Jazz Funk Soulは、Jeff Lorber (key, arr), Everette Harp (sax), Chuck Loeb (g) の3人で結成された、コンテンポラリーなフュジョン・ジャズ・バンド。一昨年の7月、ギターのChuck Loebが急逝して、今回の新盤では、Paul Jackson Jr. (g) が代わって参入している。
 

Life_and_times  

 
リーダーのジェフ・ローバーは、フュージョン〜スムース・ジャズ畑の優れたキーボード奏者兼アレンジャー。その個性は、ボブ・ジェームスに比肩すると僕は思っているが、ジェフ・ローバーって我が国では全くもって名が通っていない。ジェフ・ローバーは、米国のフュージョン〜スムース・ジャズの世界では有名な存在で、リーダー作も相当数リリースしている。が、我が国では人気は無い。

でも、聴いてみたら判るが、彼のキーボード・ワークとアレンジはかなりレベルが高く、内容が濃い。なぜ、この人は人気が無いのか、不思議でならない。今回の『Life and Times』でも、ローバーのキーボードは冴えに冴えまくっている。スムース志向ではあるが、結構、骨太で硬派なキーボードである。

オリジナル・メンバーだった故チャック・ローブは「フォープレイ」のメンバーとして我が国でも名が通っていたが、今回、代わって参入したポール・ジャクソンは知る人ぞ知る、マニア御用達なフュージョン・ギタリスト。どうだろう、と思ったが、ファンキーで硬質、とても強いピッキングが個性。それでいて、ソフト&メロウに響くフレーズは「癖になる」。意外といけます。ポール・ジャクソンに再注目ですね。

良質のフュージョン・ジャズ盤です。グループ名のとおり「ジャズ+ファンク+ソウル」な音世界が全く以て「フュージョン・ジャズ」していて、聴いていて心地良い。僕はこの盤、最近の「ながら聴きのヘビロテ盤」として、お世話になっています。こういう優れた内容の盤を聴くと、フュージョン・ジャズもまだまだ深化しているな、と感じます。

 
 
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2018年11月12日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・34

1930年代から1940年代初めにかけて大流行した「スイング・ジャズ」という演奏スタイルがある。スイング・ジャズは、スウィングのリズムを含んだ軽快なダンス・ミュージックで、ジャズの根幹である「即興演奏」よりも、アレンジがメインのアンサンブルが重視された。グレン・ミラー楽団やベニー・グッドマン楽団が代表的存在。

1930年代から1940年代初めにかけて大流行した、というからには、スイング・ジャズは現代では演奏されないのか、と問えば、実はそうでもなく、細々とスイング・ジャズは生息している。それぞれの時代で、必ず幾つかのスイング・ジャズをやるバンドが存在している。現代の成熟した楽器、成熟した録音技術を駆使して演奏されるスイング・ジャズは新しい響きを宿していて、意外と聴き応えがある。

でも、僕は「スイング・ジャズ」については、そのアルバムに対峙するような形で、集中して音を鑑賞することは無い。スイング・ジャズはあくまでダンス・ミュージックである、という頭があるので、僕は「スイング・ジャズ」のアルバムについては、ながら聴きをする。アレンジ優秀、アンサンブルの精度が高い、ビートの効いたダンス・ミュージックなので、何かをしながら、の鑑賞に実にフィットする。
 

A_swingin_affair  

 
Danny Moss & Buddha's Gamblers『A Swingin' Affair』(写真左)。2016年7月のリリース。1960年代のイギリスで巻き起こったニューオーリンズ〜スウィング・ジャズ・ブームで脚光を浴びたのがサックス奏者ダニー・モス(Danny Moss・写真右)。そのダニー・モスが、トラッドな「スイング・ジャズ」と、現代の「モダン・ジャズ」の要素をバランス良くブレンドした、明るく、聴いて楽しいトラッドな雰囲気濃厚なジャズ盤をリリースした。

現代の「スイング・ジャズ」という佇まいが実に良い。ブッダズ・ギャンブラーズ(Buddha's Gamblers)は、人気スイング・バンド。明るく楽しいスイング・ジャズ・バンドの演奏をバックに、ダニー・モスがスイング・ジャズなスタイルのテナーを吹きまくる。演奏自体はしっかりアレンジされ、リハーサルされたものだということは雰囲気で判る。それでも、この盤に詰まっている演奏は「ジャズ」。

とにかく聴いていてハッピーな気分になる。ビートがしっかり効いているので、聴いていて耳に心地良い。これが「ながら聴き」にジャスト・フィットするのだ。破綻の無い、整然と小粋に鳴り響くアンサンブル。聴き心地が実に良い。流れる様なスイング感に「ながら」の作業が一層はかどる。現代の「スイング・ジャズ」。この盤は隅に置けない。

 
 

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2018年7月22日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・33

ジャズのアルバムについては、毎月、コンスタントに新盤がリリースされている。そんな中で、ジャズ・スタンダード曲だけを演奏する企画盤は、基本的に「志が低い」とされる。特に、有名な「どスタンダード」と言われる曲ばかりを演奏するジャズメンのアルバムは、ジャズ者中堅〜ベテラン筋から、基本的に敬遠される傾向にある。

余りに皆が知っている「どスタンダード曲」で固めた曲は、いかにもジャズ者初心者若しくは、ジャズについては全く素人向けのアルバムに感じてしまい、ジャズをある程度聴き込んで来た、ジャズ者中堅〜ベテランの方々については「今更、こんな初心者向けのアルバムなんて聴けるかい」ってな感じで、聴かず嫌い風に敬遠してしまうのだ。

New York Standards Quartet『Sleight of Hand』(写真左)。2017年5月のリリース。New York Standards Quartet(以降、略して「NYSQ」)のサード盤。ちなみにパーソネルは、Tim Armacost (ts, ss), David Berkman (p), Daiki Yasukagawa (b), Gene Jackson (ds)。サックスがフロントのオーソドックスなカルテット構成。
 

Nysq_sleight_of_hand  

 
NYJQはグループ名の通り、ジャズ・スタンダード曲を演奏する「企画型のカルテット」。このカルテットがガンガンにジャズ・スタンダード曲を次々と演奏しまくるのだから、聴く前から思わず敬遠気味になってしまう。しかし、ジャズ・スタンダード曲ばかりを弾きまくる企画型グループの先駆としては、キース・ジャレットの「スタンダーズ・トリオ」があって、これが我が国でも絶賛され続けているのだから、NYJQを無視する訳にはいかないなあ、と思うのだ。

端正なアレンジと演奏が良い感じ。昔の企画型スタンダード演奏グループは幾つかに聴かれた「カクテル風ジャズ」に陥らず、しっかりとメインストリーム・ジャズしつつ、ジャズ・スタンダード曲の原曲を、キースの様に思い切りデフォルメすること無く、原曲のイメージをしっかりと残しながら、今のジャズのネオ・ハードバップ風のアプローチや響きを織り込む展開は意外と聴き応えがある。

日本人ベーシスト、安ヵ川大樹も良い音だしている。メンバーそれぞれ、良い音を出していて、この盤、メインストリームな純ジャズとして、ネオ・ハードバップな好盤として、十分に鑑賞に耐える。どこかで聴いたことのあるフレーズ満載の「どスタンダード曲」がメインなので、「ながら聴き」に最適。今年の酷暑に、エアコンの効いた部屋の中での「ながら聴き」が、意外と涼を呼んで良い感じである。

 
 
 
 

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2018年4月21日 (土曜日)

ながら聴きのジャズも良い・32

このところ、なんとなく朝夕、ヒンヤリとするなあ、と思っていたら、いきなり25度超えの夏日である。まだ4月の半ば過ぎだというのに夏日とは何事か。それでも、朝はまとまった風が吹いて、ウィンドブレーカーは必要だったので、昼前からの温度の上昇は体にこたえる。案の定、午後からダウン。しばらく伏せっていた。

これだけ、いきなり気温が上がると、音楽鑑賞どころでは無くなる。とにかく、この不意打ち的な気温の上昇で気が散って仕方が無い。難解な純ジャズはどうにもいけない。こういう時は、爽快で明快なフュージョン・ジャズが良い。単純に、難しいことを考えずに、音の躍動感、音の流麗さ、音のメリハリを気軽に楽しむ。フュージョン・ジャズはそういう切り口に良く合う。

Yellowjackets『The Spin』(写真)。1989年のリリース。ちなみにパーソネルは、Russell Ferrante (key), Jimmy Haslip (b), Marc Russo (sax), Will Kennedy (ds, perc)。あれ、ギターがいない。もともと、ロベン・フォードのギターとラッセル・フェランテのキーボードの2フロントがウリのバンドだったはずなんだが。
 

The_spin

 
この時代のイエロージャケッツは、キーボードが中心のバンドに変身している。しかも、このアルバムでは、ドラマーが交代したことによって、バンドの音がしなやか、かつジャジーになり、良好なフュージョン・サウンドに立ち返っているのだ。加えて、バンドの音がしなやかになることによって、打ち込みのリズム&ビートも耳につかなくなったのだがら面白い。

ジャジーになったとは言え、サウンドはメインストリームなエレ・ジャズなサウンド。ラッセル・フェランテのキーボードが後ろにドッカリと控えてつつ、マーク・ルッソのサックスやジミー・ハスリップのベースが目だっているところは、ウェザー・リポート後期のサウンドを彷彿とさせる。疾走感溢れ、爽快で明快なフュージョン・サウンドである。

他のバンド共々、1980年代のデジタルの波に翻弄されたイエロージャケッツではあったが、ジャジーなドラマーを据えることで、良い方向でデジタル録音、デジタル楽器の「難点」をクリアした。その最初の成果がこの『The Spin』である。爽快で明快、かつ流麗なフュージョン・ジャズな大人ので、ながら聴きに最適です。実際、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、お勧めの「ながら聴き」盤の一枚です。

 
 

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2018年4月 3日 (火曜日)

ネオ・ハードバップの良い一例

ハードバップが流行したのは1950年代。1960年代前半には、ハードバップが分岐して、アーティスティックなモード奏法や、ポップなファンキー・ジャズやソウル・ジャズに発展。その後、一旦は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズに席巻されたが、1980年代後半、純ジャズ復古の大号令と共に、ハードバップが復権。

1980年代後半、マイルスは、若手ミュージシャンの一部が「ハードバップ」の焼き直しに熱中する様を見て、「昔、自分たちがやり尽くしたハードバップを焼き直して何が面白いのか」とその保守性を揶揄した。確かに純ジャズ復古の初期の頃は、ハードバップのコピー、焼き直しな演奏が多く、今の耳で聴けば、確かに保守的やなあ、と感じるものが多かった。

しかし、21世紀に入って、純ジャズ復古でハードバップを知った世代が、若手ジャズメンとして活躍する環境になって、その「ハードバップ」は深化する様になった。アプローチや展開、アレンジ、奏法などに工夫を施し、ハードバップではあるが、新しい「何か」を宿した「ネオ・ハードバップ」な演奏がコンスタントにリリースされる様になった。
 

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Eric Siereveld's Organic Quintet『Walk the Walk』(写真左)。2018年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Eric Siereveld (tp), Tony Barba (ts), Jonathan Kreisberg (g), Steve Snyder (hammond b3 organ), Mitch Shiner (ds)。 アルバム・タイトルを見ると、ギターのJonathan Kreisbergをフィーチャーしている。冒頭の「The Last Innovator」から、立派な内容のハードバップな演奏である。

リーダーのトランペッター Eric Siereveldは端正で明朗なブロウで魅了する。本当に素敵に鳴るトランペットだ。演奏のスタイルは明らかに「ハードバップ」。しかし、1950年代のハードバップでは無い。明らかに深化した「ハードバップ」な響きに耳を奪われる。効果的に織り込まれる Jonathan KreisbergのギターとSteve Snyder のオルガン。

ギターとオルガンが織り込まれたからといって、演奏の雰囲気は決して「ファンキー・ジャズ」にならないところが、この盤の演奏の理知的なところ。そんな理知的なハードバップは、21世紀の新しいジャズの響きに満ちている。対峙して聴き込むも良し、何かしながらの「ながら聴き」にも良し。この盤の演奏こそが「ネオ・ハードバップ」の良い一例だろう。

 
 

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2018年3月28日 (水曜日)

山崎千裕のソロ・セカンド盤

ここ2〜3年の、最近の日本のジャズを聴いている。ジャズって、マイナーな音楽ジャンルだと思っているので、毎月毎月、日本のジャズの世界で、新人が出てくるのにはちょっと当惑する。その新人ジャズメンが食べていけるだけの需要が、今の日本にあるのか、と思わず心配になる。CDの売上やライブの売上、そんなにあるのかなあ。

加えて、このマイナーな音楽ジャンルで、かつ、ほとんどが男性で占められるマニアな音楽ジャンルなのに、数年に一人は「かわい子ちゃん」なミュージシャンがデビューする。これがとっても不思議で、男性で占められるマニアな世界だから、アイドルっぽい女性ジャズ・ミュージシャンはウケる、とレコード会社は考えているのだろうか。

山崎千裕『Sweet thing』(写真左)。2017年の作品になる。アルバム・ジャケットを見てみるとお判りの様に、ピンク地の背景をバックに、これは完全にアイドル路線まっしぐら、である(笑)。これは硬派なジャズ者に方々、特に年配の方々がCDショップで直接購入するにはハードルが高い。僕もそうで、ダウンロードサイトがあって良かったなあ、とつくづく思ったものである(笑)。
 

Sweet_thing  

 
この盤は、山崎千裕のソロセカンドアルバムになる。山崎千裕はトランペッター。東京芸大卒。2010年、自身のバンド山崎千裕+ROUTE14bandを立ち上げ、本格デビュー。女性トランペッターではあるが、音はしっかりしている。当然、音の大きさについては割り引いても、無理をしない演奏テクニックとふらつきの無いブロウは聴き易く、好感が持てる。ん〜、なかなかやるやん、って感じかな。

スタンダード曲を持って来て、従来のモードやコードの純ジャズをやって、ハードバップって良いですね、なんて演奏をせず、自作曲を中心に、演奏全体のアレンジも、ありきたりのハードバップ基調ではない、どちらかといえば、パット・メセニーなどの、ファンクネス皆無のフォーキーでネーチャーな、米国ルーツ・ミュージック的な雰囲気。これが今までにありそうで無い、なかなかユニークなもの。

演奏全体のアレンジと雰囲気が今までに無い、個性豊かなもので、それが故に、インストものが実に聴きやすく印象的に響く。爽快感と暖かみのある音作りは聴き心地が良く、意外と飽きずに全編を聴き通してしまう。春のジャズ喫茶の昼下がりにさりげなく流す、なんてシチュエーションが思い浮かぶ様な、ながら聴きに好適な盤である。

 
 

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2018年3月27日 (火曜日)

ながら聴きのジャズも良い・31

最近の日本ジャズのトレンドのひとつが「クラブ・ジャズ」。いわゆる「クールに踊れるジャズ」、クールに踊れることを前提に創作されたジャズである。ネットで上げられていた「クラブ・ジャズ」の解釈が秀逸なので、ここで引用させていただくと、踊らせること、クラブでDJによってプレイされることを目的として作られた「ダンスミュージック」とある。とても判り易い解釈だ。

H ZETTRIO『Mysterious Superheroes』(写真左)。今年の3月のリリース。リリースしたてのホヤホヤ、H ZETTORIOの通算4枚目のオリジナル・アルバムである。H ZETTRIO=エイチゼットリオ、と読む。純日本のジャズ・ピアノ・トリオ。メンバー3名は、鼻を青・赤・銀に着色。ちなみにパーソネルは、H ZETT M (p), H ZETT NIRE (b), H ZETT KOU (ds)。リアルな姓名は伏せられている。

H ZETTRIOは「大人も子どもも“笑って踊れる”」をテーマに掲げるピアノトリオ・バンドである。この最新盤でもそのポリシーが踏襲されている。とにかくトリオのメンバーそれぞれのテクニックが秀逸。「笑って踊れる」部分をファンキーなリズム&ビートに頼ったりはしない。H ZETTRIOの演奏は「笑って踊れる」をテーマにしながら、ファンクネスは全く皆無。疾走感溢れる、パルシヴなオフビートがダンサフルを引き出す。
 

Mysterious_superheroe  

 
演奏の雰囲気はポップでジャジー。ダンサフルで明朗なサウンド・トーン。シンプルで判り易い。リズム&ビートも判り易いし、メロディー・ラインも判り易い。判り易いということは「ノリ易い」。さらに、メロディー・ラインはポジティヴ。ポジティヴだからこそ「笑って踊れる」。とても良く練られた演奏コンセプトである。

アルバムに収録されている楽曲は、それぞれ、ちょっと「ミステリアス」な雰囲気が加味されていることが、この盤の「ミソ」。一曲一曲、対峙して聴き込むのでは無く、そのシンプルでノリの良い、ハイテクニックでポジティヴな演奏は「ながら聴き」に最適。「大人も子どもも“笑って踊れる”」演奏は「ながら聴き」にも向く。

先週の週末から、いきなり暖かくなった。すっかり春である。春の暖かな晴れた午後。ゆったりホッコリのんびり。こういう時間は聴き流しのジャズが良い。あまり、ガッチガチに相対する様な、聴き込む様なジャズは疲れる。ゆったりと気持ちを休ませるには「聴き流し」のジャズが良い。今の僕にとっては、H ZETTRIO『Mysterious Superheroes』は、ゆったり「聴き流しのジャズ」。

 
 

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