2024年2月28日 (水曜日)

染みる『In The Wee Small Hours』

子供の頃、小学校5年生の頃だったと記憶している。親父のAMラジオをくすねて、寝床に入ってイヤホンで聴くようになった。夜の10時頃、NHK第一だったと思うが、アメリカン・ポップスを聴かせる番組があった。その番組の中で、時々、ジャズ・ボーカル曲がかかる。

大人の雰囲気で演奏はしっとり落ち着いている。英語で歌われているので、何を歌っているのか、基本的に判らない。8ビートのポップスやロック曲と比べて、基本的に地味で、時々、「こぶし」を効かしたり、フェイクを入れたり、癖のある歌い方がどうにもいけない。そんな中で、この男性ボーカルだけ、何故か気に入った。フランク・シナトラである。

Frank Sinatra『In The Wee Small Hours』(写真)。1954年3月、1955年2, 3月の3セッションからの収録。1955年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、Frank Sinatra (vo), Nelson Riddle (arr, cond), バックにジャズ・オーケストラが付く。

フランク・シナトラは、ポピュラー・ヴォーカルの帝王として、20世紀の音楽界に君臨、ジャズ・ボーカルとしても数々の実績を残した、歴代最高の男性ボーカリストである。

アルバムの収録曲は、内省、憂鬱、失恋、失敗した関係、うつ病、ナイトライフなどのテーマを扱う、失われた愛に関する「不安に満ちた」バラード曲で統一されている。歌い上げるのに、かなり難度の高いボーカル曲ばかりだが、そこはさすが「ソフト・バラードの名手」「ザ・ヴォイス」と呼ばれたシナトラ、ゆったりとしたテンポで、じっくりと魅惑的なテナー・ヴォイスで、囁く様に、語りかける様に唄い上げていく。
 

Frank-sinatrain-the-wee-small-hours

 
「オレはあの頃、シナトラやナット・キング・コールやオーソン・ウェルズの節回しまで聴いて、フレージングについてはずいぶんと勉強した。連中は、楽節とか文節とか句を声で言い回す真の達人だった」(『マイルス・デイビス自叙伝』より引用)

マイルスさえもが指摘する様に、シナトラは「楽節とか文節とか句を声で言い回す真の達人」で、シナトラの歌唱を聴いていると、ボーカルとは「歌」ではなく「楽器」の一つなのか、と唸ってしまう。深夜の寂寞感や失恋の悲しみ、真夜中から夜明けの間の真っ暗な「闇」の雰囲気を、メランコリックにムーディーに唄い上げている。思わず、じっくりと聴き入ってしまうほどの説得力と訴求力。

冒頭のタイトル曲「In The Wee Small Hours」がとりわけ良い。この1曲でこの企画盤の全てを表現している。英語で歌われているので、何を歌っているのか、基本的に判らない、と思うのだが、これだけの歌唱をぶつけられると、歌詞の和訳に手をつけたくなる。ボブ・ヒリアード作詞の歌詞が良い。そして、その歌詞に曲を付けたデイビッド・マンの旋律が染みる。

最初のコンセプト・アルバムの1つと評価されている企画盤であるが、このアルバムは商業的に成功を収め、米国ビルボード200チャートで最高2位を記録、18週間チャートに留まり、 シナトラの最高チャート・アルバムとなった。ジャケも良い。シナトラに古めかしい街灯のある風景が良く似合う。ジャケ良し、内容良し、実績良し、のジャズ・ボーカルの傑作の一枚である。
 
 

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2024年2月26日 (月曜日)

「ファーマーの音色」だけを聴く盤

ジャズの演奏の世界って、アレンジが重要なんだなあ、と思う時がある。アレンジの良し悪しで、リーダーの担当する楽器や、フロント管の旋律やアドリブがくっきり前面に明確に聴こえたり、聴こえなかったり。聴いていて、演奏全体が聴き心地良かったり、悪かったり。アルバム全体を聴き通していて、集中して最後まで聴けたり、途中で飽きがきたり。意外とジャズには「アレンジの重要性」が必須要素としてある、と僕は睨んでいる。

Art Farmer with The Quincy Jones Orchestra 『Last Night When We Were Young』(写真左)。1957年3月28日、4月24 & 29日の録音。ちなみにパーソネルは、メインセットに、Art Farmer (tp), Hank Jones (p), Tommy Kay (g, on March 28, tracks 2, 4, 8), Barry Galbraith (g, on April 24 & 29), Addison Farmer (b), Osie Johnson (ds, on March 28, tracks 2, 4, 8), Sol Gubin (ds, on April 24 & 29), Quincy Jones (arr, cond)。ここに、それぞれの録音日で、それぞれのオーケストラ・メンバーが加わる。

当時の人気アレンジャー、クインシー・ジョーンズ(以降、愛称「Q」)のジャズオケ・アレンジに乗って、アート・ファーマーが心ゆくまでトランペットを吹き上げる、イージーリスニング志向のビッグバンド・ジャズの企画盤。ABC-Paramountレコードからのリリース。さすがに大手レコード会社、ジャズ・ファンのみならず、一般の音楽ファンにも訴求する、聴き心地の良い、それでいて、内容的にしっかりしたイージーリスニング志向のジャズに仕上がっている。
 

Art-farmer-with-the-quincy-jones-orchest

 
冒頭の「Two Sleepy People」の演奏内容が、この企画盤の雰囲気を決定づけている。Qのムーディーで新鮮な響きでアレンジされたジャズオケの伴奏に乗って、ファーマーのトランペットが唄うように囁くように流れてくる。かなりムーディーな雰囲気だが、決して俗っぽくない。さすが、Qのアレンジである。特に尖ったところがない、流麗でムーディーなアレンジだが、底にしっかりジャズがある。

優れたアレンジの下で、ファーマーのトランペットが映えに映える。「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」ファーマーのトランペットの音色が映えに映える。ファーマーのトランペットの個性が、とても良い響きで、いい感じ流れて来る。これが全編に渡って展開される。これが実に良い。

この企画盤は、Qのアレンジの優秀性と、この優れたQのアレンジに乗った、ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良い」ファーマーのトランペットの音色だけを愛でる盤。バリバリ尖ったアドリブよろしくインタープレイを展開するハードバップも良いが、こういう内容の伴った、聴き心地の良いイージーリスニング志向のジャズも良い。特に、ながら聴きのジャズに最適。これも「良い音楽」、これも「良きジャズ」である。
 
 

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2024年1月 8日 (月曜日)

ブラス輝く『ブラス・シャウト』

10歳代後半以降、マイルス・ディヴィスが大のお気に入りゆえ、ジャズ・トランペットについては、かなり昔から聴き親しんでいる。

トランペットという楽器の性格上、サックスの様に激情にまかせて、長々とフリーキーに吹き続けることが不得手。肉声よりもキーが高音なので、大きな音はかなり耳障りにもなる。

よって、ジャズ・トランペッターは正統派、純ジャズ志向が大多数。それでいて、音色や吹き方、表現がそれぞれ個性があって、様々なジャズ・トランペットが楽しめる。

Art Farmer『Brass Shout』(写真左)。1959年5月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer, Lee Morgan, Ernie Royal (tp), Julius Watkins (French horn), Jimmy Cleveland, Curtis Fuller (tb), James Haughton (b-horn), Don Butterfield (tuba), Percy Heath (b), Philly Joe Jones (ds), Benny Golson (arr, cond)。

ウォームで端正、唄うがごとく流麗なフレーズが個性のトランペッター、アート・ファーマーのリーダー作。ファーマーを含めトランペットが3本、フレンチ・ホルンが1本、バリトン・ホルンが1本、トロンボーンが2本、チューバが1本の計8本のブラスに、ピアノレス、ベースとドラムが加わった11人編成。アレンジ&指揮は、テナー奏者のベニー・ゴルソン。
 

Art-farmerbrass-shout

 
サックスとピアノがいない、ブラスがメインのフロント、リズム隊はベースとドラムのみ。なかなか面白い編成だが、アレンジャーが「ゴルソン・ハーモニー」の主、ベニー・ゴルソンが担当している。なるほど、ゴルソン・ハーモニーはブラス・セクションのユニゾン&ハーモニーが一番映えるので、この変則編成には合点がいく。

しかも有名ジャズマンがずらり顔を揃えて、この11人編成のアンサンブルに不足は無い。そんな豪華なバックを従えて、ファーマーだけが、ウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペット・ソロを吹き上げる。

ゴルソン・ハーモニーは、分かり易い、シンプルな、美しいフレーズに一番映える。そういうこともあるのだろう、収録された曲は、有名スタンダード曲ばかり。「Nica's Dream」「Autumn Leaves」「Moanin'」「April In Paris」「Five Spot After Dark」「Stella By Starlight」「Minor Vamp」の6曲。

聴き心地に重点を置いているのか、どの曲もちょっと軽めのアレンジが施されていて、軽快で明るい雰囲気で統一されている。そこに、ゴルソン・ハーモニーでメイン・テーマを印象的に浮き出していてメリハリが効いている。そして、アドリブ・フレーズをウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペットで吹きまくる。

なんだか訳の判らない女性の横顔のオブジェのジャケには「?」ですが、ゴルソンの良く考えた小粋なアレンジと、ファーマーのウォームで端正、唄うがごとく流麗なトランペットの相乗効果がとことん楽しめるスタンダード曲集です。ながら聴きにもいい感じの聴き心地の良い好盤。
 
 

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2024年1月 7日 (日曜日)

ケニーGの新盤『イノセンス』

ジャズは「純ジャズ」ばかりでは無い。「純ジャズ」に8ビートを導入、ロックの要素を融合したクロスオーバー・ジャズ、そこから、ソフト&メロウ、そして、アーバンな要素を加えて一世を風靡したフュージョン・ジャズ。そして、フュージョン・ジャズの流麗さ、聴き心地の良さを強調したスムース・ジャズ。

ジャズ盤を聴いて楽しむのは、基本、純ジャズがメインなんだが、ここバーチャル音楽喫茶『松和』は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズもバッチリ守備範囲で、その延長線上にあるスムース・ジャズも嗜む。純ジャズを聴いて疲れたら、もしくは、何かの作業のバックに流れる「ながら聴きジャズ」は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズ、そして、スムース・ジャズになる。

Kenny G『Innocence』(写真)。2023年12月のリリース。ケニーGの通算20枚目になるスタジオ盤は、「エーデルワイス」「虹の彼方に」「ロック・ア・バイ・ベイビー」など、「子守唄」をテーマにした企画盤。アルバム全体の雰囲気は、絵に描いた様な「スムース・ジャズ」。さすが、現代のスムース・ジャズの第一人者の音世界である。
 

Kenny-ginnocence

 
ケニーGのアルバムを聴いて、常に思うのは「ソプラノ・サックスがいい音出しているなあ」と言うこと。しかも、ケニーGにしか出せない独特の音色。ブリリアントでブラスの輝く様な響きが豊か、音が適度に大きくスッと伸びる。そんなケニーG独特の音色で「子守唄」を唄い上げていく。めっちゃ聴き味の良い、流麗なソプラノ・サックスの音世界。

ケニーGはソプラノ・サックスの名手。スムース・ジャズの範疇でありながら、スピーカーに対峙して、じっくりとその音を味わえる質の高さ。もちろん、上質のイージーリスニングとして、「ながら聴きジャズ」に最高に適した、耳障りでは全くない、ながらを邪魔することなく、スッと耳に入ってくる心地良さ。

スムース・ジャズの範疇の究極の「イージーリスニング」。現代のイージーリスニング・ジャズの優秀盤と評価して良いと思う。即興の妙とは無縁だが、1960年代からある「イージーリスニング・ジャズ」の現代版。純ジャズの合間の「耳休め」に、何かしながらの「ながら聴き」に最適の、ケニーGの上質のスムース・ジャズです。
 
 

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2023年12月21日 (木曜日)

エディ・ハリス最後の大衆ジャズ

エディ・ハリスのテナーは、先日ご紹介した『Mean Greens』で、圧倒的熱量とエモーショナルなファンクネスを撒き散らしたソウルフルなテナーを引っさげ、ソウルフルでグルーヴィーなエレ・ジャズへ転身した訳だが、デビュー当時は「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」だった。

Eddie Harris『Cool Sax From Hollywood To Broadway』(写真左)。1964年9月、NYでの録音。コロンビア・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Eddie Harris (ts), Kenny Burrell (g), Cedar Walton (p), Bob Cranshaw (b), Billy Brooks (ds)。

リーダーのエディ・ハリスのテナー・サックスと、ケニー・バレルのギターがフロントのクインテット編成。バックのリズム隊は、シダー・ウォルトン率いるトリオ。充実のパーソネルである。

デビュー盤『Exodus To Jazz』に収録された「Exodus」がヒットしたことで、エディ・ハリスのリーダー作は「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」で統一される。いわゆる「大衆ジャズ」「大衆迎合ジャズ」である。ただ、内容が良いので、僕はこれは「アリ」だと感じて、「ながら聴き」盤として聴いている。

そんな中で、この『Cool Sax From Hollywood To Broadway』は、デビュー盤から数えて、11枚目のリーダー作。デビュー盤が1961年、この11枚目のリーダー作が1964年。3年間で11枚のリーダー作を量産している。いかに人気があったかが窺える。

ミュージカル曲や映画音楽のカヴァーが主のアルバム。この盤で「スムージーでイージーリスニング・ジャズ志向のファンキー・ジャズ」路線も11枚目。
 

Eddie-harriscool-sax-from-hollywood-to-b

 
聴く側からすると、完全に飽きがきており、かつ、演奏する側もアレンジについては「手練れた」感があって、ちょっとマンネリな雰囲気が漂う。しかし、原曲の良さが上回っていて、日米の評論で「ケチョンケチョン」なのだが、聴いてみるとそんなに内容の無いアルバムでは無い、と思う。

エディ・ハリスのテナーはスムーズでファンキー。バレルのギターがファンキーで流麗。この名手二人のフロントがミュージカル曲や映画音楽の印象的なフレーズを基に、小粋なパフォーマンスを繰り広げる。バックのリズム・セクションも、名手ウォルトンのピアノが洒脱、クランショウのベースがビートをしっかり抑えていて好サポート。

充実したメンバーで、スムージーでイージーリスニングなジャズをやるのだ。もちろん、聴き心地は抜群。まあ、それが硬派なジャズ者の方々からすれば「商業主義」に流れて許せないのでしょうけど(笑)。

大手のコロンビア・レコードに移籍したので、どうしても「大衆迎合的なイージーリスニング・ジャズ」を求められてしまうので、この盤の内容がスムージーでイージーリスニングになってしまうのは仕方がない。

でも、そんなに悪くは無い。パーソネルが充実しているだけに、硬派なジャズを聴いた合間に聴く「ながら聴き」のジャズ盤としては良好な内容だと思います。とにかリラックスして、難しいこと考えること無く聴ける。

なお、エディ・ハリスは、次作『The In Sound』で、ジャズの志向を方向性をガラリと変え始める。その第一歩が名曲「Freedom Jazz Dance」。この曲がエディ・ハリスの大きな転換点となる。
 
 

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2023年11月22日 (水曜日)

ユッコ・ミラー『Ambivalent』

ユッコ・ミラー。我が国の若手女子の実力派サックス奏者。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る。

そんなユッコ・ミラーのサックスがお気に入りである。特に、ながら聴きのフュージョン系ジャズとしていい感じ。ユッコ・ミラー自身のアルト・サックスの音がとても良い。アクがなく、すっと素直に伸びで、変に捻ることなく、ストレートにフレーズを紡ぐ。音は明るく軽くブリリアント。テクニックは確か。印象にしっかり残るが、決して耳障りではない。

ユッコ・ミラー『Ambivalent』(写真)。2023年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as, vo, bs), 曽根麻央 (p, key, tp), 馬場桜佑 (tb)、中村裕希 (b)、山内陽一朗 (ds)。ユッコ・ミラーの6枚目のリーダー作になる。収録曲を見渡すと、まず、チャレンジングなカバー曲が目を引く。

4曲目の「KICK BACK」は、米津玄師の手になるアニメのテーマ曲。バリバリ、シャウト系ハードロックっぽいボーカル曲なんだが、この原曲の持つ雰囲気を上手くアルト・サックスで再現している。トロンボーンとトランペットとサックスというブラス・セクションが大活躍。曲の旋律をなぞるだけではない、原曲のコード進行を拝借して、正統派ジャズのごとく、しっかりとしたアドリブを展開する。

もう一曲は、7曲目の「可愛くてごめん」。日本のクリエイターユニット・HoneyWorksの楽曲。TVアニメ『ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜』のキャラクターソング。これまた、今年大流行りのJ-Pop曲を曲想に合った「可愛らしい」アレンジでガンガン、ジャズしている。しかも、アドリブ部は「可愛くない」アレンジ(笑)。うむむ、ユッコ・ミラー恐るべし、である。
 

Ambivalent

 
正統派フュージョン・ジャズの楽曲っぽい、5曲目の「Morning Breeze」 は、MBSお天気部秋のテーマ曲。そして、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズにおける代表的名曲、グローヴァー・ワシントン・ジュニア & ビル・ウィザースの「Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)」をカヴァっている。これがまた、コッテコテのソフト&メロウなアレンジで「攻めに攻める」。

ユッコ・ミラーの素晴らしいところは、この様な、フュージョン・ジャズ全盛期の名曲や、J-Pop系のアニメ関連の主題歌やキャラクターソングといった「チャレンジングなカバー曲」を、ラウンジ・ジャズっぽく、楽曲の持つ有名な旋律をなぞるだけでなく、それぞれの曲が持つコード進行を拝借して、しっかりと即興演奏っぽく、正統派ジャズっぽいアドリブを展開するところ。

そういう「意欲的」なところが全面に押し出されているからこそ、ユッコ・ミラーのアルバムは決して「ラウンジ・ジャズ」にはならない。どころか、バックの優秀なリズム隊の、切れ味の良い、躍動感あふれるリズム&ビートを得て、高度な内容の「現代のフュージョン・ジャズ」を展開している。そう、聴き手やレコード会社に迎合することなく、しっかり「ジャズ」しているところが凄い。

ユッコ・ミラーが、雑誌インタビューで「すごく幅広いし、それが面白いし、まったく飽きないアルバムになりました」と語っているが、全くその通りだと思う。ユッコ・ミラーの自作曲も内容充実。

チャレンジングなカバー曲と相まって、とてもバラエティーに富んだ、表情豊かな、実に人間っぽいアルバムに仕上がっている。アルバム・タイトルの「Ambivalent」は言い得て妙。ながら聴きに最適な「爽やかな」内容の好盤です。
 
 

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2023年11月21日 (火曜日)

小沼ようすけ『Jam Ka』再聴

「オーガニック・ジャズ」という用語を目にすることが多くなってきた様な気がする今日この頃。「オーガニック」と言えば、すなわち有機栽培や添加物無しの食品のことを指すものと思ってきたが、最近、音楽の世界で「オーガニック・ジャズ」なんて感じで使われ出している。

どうも、音楽の世界における「オーガニック」とは、「コンピューター・プログラミングではなく人力の演奏の重視」、「アコースティック楽器をメインに使うこと」、「デジタルな音加工を極力避けること」。つまり、オーガニック・ジャズとは、生楽器がメインで、人力の演奏で、音の加工や多重録音などを排除したジャズを指すのだろう。

小沼ようすけ『Jam Ka(ジャム・カ)』(写真左)。2010年の作品。ちなみにパーソネルは、小沼ようすけ (el-g、ac-g), Reggie Washington (el-b、ac-b), Milan Milanovic (p, Rhodes, Wurlitzer), Olivier Juste (Ka)、Arnaud Dolmen (Ka)、Stephanie Mckay, Joe Powers (hca)。

演奏全体の雰囲気はスムース・ジャズに近い。分かりやすく、聴いていて心地の良いアレンジ。人力の演奏オンリー、生楽器がメイン、音の加工は一切無しのシンプルな演奏。こういうジャズ演奏のイメージを「オーガニック・ジャズ」というのだろう。つまりは「オーガニック・スムース・ジャズ」。
 

Jam-ka

 
とにかく聴いていて心地良い。リズム&ビートが耳慣れない、それでいて魅惑的な、ワールド・ミュージック系ジャズが好きなじジャズ者にはたまらない響き。それは耳慣れない打楽器のリズム&ビートが醸し出す響き。

カリブ海の島・グアドループの伝統的な太鼓、カ(ka)から生み出されるグォッカのリズム&ビートが耳に新しい。ワールド・ミュージック系のスムース・ジャズといった雰囲気がぷんぷんする。カリビアンなフレーズ、音の響きが心地よく、このアルバムの演奏から想起する風景は「海と海岸」。それも、その「海」はカリブ海。

カルテット編成にカリブの民族楽器「カ(ka)」が加わって、常夏の海に面したカントリーで流れているにピッタリな、カリビアンな雰囲気。そこに、小沼のリラックス感満載な、オーガニックなギターの音が入ってきて、これがまた、クールでスマートなグルーヴを醸し出して、心地よいことこの上ない。

「海と海岸=カリブ海」を想起するカリビアンなスムース・ジャズ。ハーモニカの奏でるフレーズがこれまた「ワールド・ミュージック」風の音世界を増幅する。日本人がメインのワールド・ミュージック系の「オーガニック・スムース・ジャズ」。録音も良く、アルバムの完成度は高い。現代の「和スムース・ジャズ」の佳作。
 
 

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2023年10月29日 (日曜日)

久々のマンジョーネ『虹への旅』

「哀しみのベラヴィア」や「サンチェスの子供たち」、そして「フィルソー・グッド」など、フュージョン・ジャズにおけるヒット曲を持つチャック・マンジョーネ。1970年代後半から1980年代前半、フュージョン・ジャズのブームをリアルタイムで体験したフュージョン者の方々であれば知らない人はいないはず。

トランペット&フリューゲルホーンの両刀使いではあるが、印象的なのはフリューゲルホーンの方だろう。柔らかだが芯があって伸びが良く、ミッドテンポに乗って、中低音域から高低音域の真ん中レベルの音程で、朗々とゆたっりとフレーズを吹き上げていく様は、マンジョーネ独特なもの。

Chuck Mangione『Journey To A Rainbow』(写真)。1983年の作品。邦題『虹への旅』。ちなみにパーソネルは、Chuck Mangione (flh, el-p, syn), Chris Vadala (fl, sax), Peter Harris (g), Gordon Johnson (el-b), Everett Silver (ds)。マンジョーネ以外、知らない名前ばかり。スタジオ・ミュージシャンで固めたのか、の5人編成。 
 
この盤を聴いてつくづく思うのは、マンジョーネのフリューゲルホーンの音が、すごく聴き心地が良くて印象的だなあ、ってこと。まず、マンジョーネのフリューゲルホーンは「音が魅力的」。

朗々とゆったりと鳴って、音のエッジが丸くて暖かい。音がス〜っと伸びていく。そして何より音に翳りがなく明るい。それじゃあ、イージーリスニングでしょ、と思われるのだが、それがそうではなくて、どこかジャジーな響きがして、決して、イージーリスニングでは無いのだから不思議。
 

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この人のフリューゲルホーンは、高速な吹き回しやハイノートは無く(元々、フリューゲルホーンは苦手)、テクニック的にアピールするところはほぼ無い。演奏曲もミッドテンポの曲が多く、マンジョーネのフリューゲルホーンは、中低音域から高低音域の真ん中レベルの音程をキープして、ゆったり朗々と吹き上げていく。

おそらく、演奏する曲自体が、そんなマンジョーネのフリューテルホーンの特性を活かした楽曲でありアレンジなんだろう。マンジョーネのフュージョン盤が、どの盤もすごく聴き心地が良くて印象的なのは、マンジョーネのフリューゲルホーンの個性とそれを活かす楽曲とアレンジがバッチリ合っているからなんだろう。決して「無理をしていない」のだ。加えて、アレンジに様々な工夫が凝らされていて、アルバムを通して飽きることが無い。

この『Journey To A Rainbow』も同様の内容の、マンジョーネ節満載の好盤である。まず冒頭のタイトル曲が良い感じ。親しみやすく美しいフレーズ、いわゆる「マンジョーネ節」が良い。そして、興味深いのは、4曲目「Buttercorn Lady」。かつて、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍中の1966年にチャックが作曲した楽曲。

そう、マンジョーネって、元は純ジャズの出身。将来有望な若手ジャズマンの登竜門的存在であった、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに在籍していたのだから、基本的には、素性はまともなトランペット&フリューゲルホーン奏者である。

決して、ゲテモノでもなければ、ラッキーな「一発屋」でもない。マンジョーネは、素性確かなフュージョン・フリューゲルホーンのスタイリストである。これだけ朗々と印象的なフレーズを吹き上げるフリューゲルホーンは、彼をおいて他にない。だからこそ、今の時代にも、マンジョーネのリーダー作は好盤として聴き親しむことが出来るのだ。
 
 

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2023年10月25日 (水曜日)

「たをやめオルケスタ」の最新盤

ビッグバンドには、そのバンド毎に「志向」がある。とにかく、アーティステックにストイックにビッグバンドの「芸術性を追求するバンド」。エリントンやベイシーなどのレジェンドなビッグバンドの音を「研究〜現代で再現しようとするバンド」。元々はダンス・ミュージックなのだからと、多人数のアンサンブルやユニゾン&ハーモニーを楽しみ、ソロ演奏を楽しむ「エンタテイメント性を追求するバンド」などなど。

ビッグバンドの音は追求すればするだけ面白いのだが、多人数がゆえ、バンド全体の運営が厳しい。世界的に見ても、テンポラリーにビッグバンドを編成し、演奏することはままあっても、恒常的にバンド活動を維持し、コンスタントにアルバムをリリースしているビッグバンドは数少ない。我が国においては、宮間利之ニューハード、東京キューバンボーイズ、ちょっとジャズから外れるが、東京スカパラダイスオーケストラ。メジャーなところでこれくらいしか、名前が浮かばない。

たをやめオルケスタ『祝宴フィフティーン』(写真左)。2023年9月のリリース。 活動15周年を迎える女性16名のビッグバンドの最新フル・アルバム。2021年にリリースされた二枚の7inchに納められた楽曲を含む計11曲を収録。

「たをやめオルケスタ」とは、女性のみで構成されるトロピカル楽団として、岡村トモ子 (as, fl) を中心として2008年に結成。「たおやめ」は「手弱女」と書くのだが、どうして、迫力のあるブロウ、力感溢れるアンサンブル、ドライブ感豊かなユニゾン&ハーモニー、手に汗握るインタープレイと、その音だけ聴けば、女性のみで構成されるビッグバンドとは思えない。
 

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収録された楽曲を見渡すと「Take the A train」「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」などの有名ジャズ・スタンダード曲や、ラテン・ジャズやカリプソ、アフター・ビートルズ、アメリカン・ポップス、はたまたヒップホップなどの楽曲をカヴァーしていて楽しい。そして、このバラエティーに富んだ楽曲を、工夫とアイデアに富んだアレンジで、とっても楽しいビッグバンド曲に変身させている。

じっくり聴いてみて、とにかく演奏テクニックが確か。とにかく上手い。揺らぎもなければ、ふらつきもない。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー、ズレのないバッチリ合ったアンサンブル。音の迫力、音の厚み、音の輝き、どれをとってもビッグバンドとして一級品。ソロイストのパフォーマンスも及第点(ちょっと安全運転風。ライヴだと違うのかな)。

そして、このビッグバンドの一番は「聴いていて楽しい」こと。適度なスイング感、アクセント確かダンサフルなオフビート、そして、流麗で明るいフレーズ。そんなビッグバンドが、デューク・エリントンの「Take the A train」や、ジョージ・ハリソンの「I've Got My Mind Set On You」、カーペンターズの「Close to You」なんかをブイブイやるのだ。聴いていて楽しいことこの上ない。たをやめオルケスタって「エンタテイメント性を追求するバンド」の優れものである。

たをやめオルケスタ。バンド名だけは知っていたが、こんなに素晴らしいビッグバンドだとは知らなかった。スミマセン(笑)。結成以来15年というが、その間、たをやめオルケスタの音源に全く出会えなかったのだから、こういうこともあるもんだなあ、と(笑)。今回、やっと、たをやめオルケスタの音源に出会えた。聴いて思う。良いビッグバンドに出会えたと....。
 
 

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2023年10月24日 (火曜日)

ゴーゴー・ペンギンの進化の途中

「踊れるジャズ」として、従来のピアノ・トリオの特徴であった「三者三様の自由度のあるインタープレイ」は排除。クラシック的な印象的なピアノにアグレッシブなベースとドラム。

演奏の中に感じ取れる「音的要素」は、クラシック、エレクトロニカ、ロック、ジャズと幅広。マイルスの開拓した「エレ・ジャズ」に、エレクトロニカを融合し、ファンクネスを引いた様な音。疾走感、爽快感は抜群。聴いていて「スカッ」とする。

英国マンチェスター出身のアコースティック・エレクトロニカ・トリオである「GoGo Penguin(ゴーゴー・ペンギン)」の音世界。オリジナル・メンバーは、ピアノのクリス・アイリングワースとドラムスのロブ・ターナー。2013年初旬にベーシスト、ニック・ブラッカが加わる。そして、ドラムがジョン・スコットに交代。所属レーベルも移籍し、心機一転、久々にフル・アルバムをリリースした。

GoGo Penguin『Everything Is Going To Be Ok』(写真左)。2022年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Chris Illingworth (p), Nick Blackas (b) Jon Scott (ds)。アコースティック・ピアノにベース、ドラムの伝統的なピアノ・トリオ編成と思いきや、音の志向としては「エレクトリック・ジャズ」。英国出身のバンドゆえ、音の響きは「欧州的」。
 

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いかにも欧州的な、いかにも英国的な、洗練されたエレ・ジャズである。欧州的な響きとしては、どこか北欧ジャズの響きを宿していて、クラシック的な響きのする、印象的にエコーのかかったアコピとシンセ。ファンクネスは皆無。軽くエコーのかかった粘りのあるビート。どこか黄昏時の黄金色の輝きを見るような寂寞感漂うフレーズ。ゴーゴー・ペンギンの音はどこまでも「欧州的」であり「英国的」。

これまでのゴーゴー・ペンギンのアルバムよりも、ジャケットのイメージ通り、スカッと抜けた爽快感がより強くなり、音の質感がどこか「明るく抜けている」質感がメインになっている。温かみと明るさが増して、躍動感と疾走感が全面に押し出されている。

初期の頃のゴーゴー・ペンギンの音世界は着実に、ポジティヴな方向に変化している。そして、テクニック最優先の演奏構成から、バンド全体のグルーヴとビートを重視する演奏構成に変化しており、その分、シンプル感がアルバム全体を覆う。

スインギーな純ジャズ・トリオとは全く異なる、現代の「ダンス・ミュージック」的な、新しいイメージの「ピアノ・トリオ」。しんせを追加して正解。シンセのようなディストーションのかかったニックのベースと相まって、エレ・ジャズ感は増幅している。そこに「人力」の切れ味の良い、ウォームなビートを供給するスコットのドラムが絡む。

他のピアノ・トリオには無い響き。フュージョンでもなく、スムースでも無い。少なくとも、現代の踊れるエレ・ジャズ。この盤は、そんな「現代の踊れるエレ・ジャズ」の進化の途中を捉えた、ドキュメンタリーの様なアルバムである。次作がとても楽しみだ。
 
 

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