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2017年7月23日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・23

今日は一日中曇り空。こういう日は気温が30度程度に抑えられて、猛暑日になることは無い。風も適度に吹いて、今日は午前中はエアコン要らず。しかし、午後からは気温は30度程度で昨日よりは遙かに過ごしやすいのだが湿度が高い。湿度の高さは苦手で、遂に夕方、エアコンに手を出した。もう高い湿度にへとへとである(笑)。

エアコンを入れたことによって、湿度がグッと下がる。ちょっと爽やかさが帰って来たので、なんか爽快感溢れるフュージョン・ジャズは無いのか、と物色する。すると、トランペット片手に、波打ち際で波を蹴って戯れるおっちゃんのジャケットが目にとまる。なんか波打ち際で涼しげではないか(笑)。

Rick Braun『Around The Horn』(写真左)。今年2月の新作になる。Rick Braun(リック・ブラウン)は、1955年生まれの米国のトランペット奏者である。活躍の中心は「スムース・ジャズ」。今年62歳の大ベテラン。スムース・ジャズが主戦場であるが故、我が国では全く無名に近い。
 

Around_the_horn

 
でも、聴けば判るんだが、ちょっとハープ・アルパートを想起させる様な、ブリリアントで躍動感溢れる、ストレートで判り易いトラペットを吹く。いわゆる「スムース・ジャズ向け」のトランペットで、聴いていると、耳の中が爽快感で満たされていくのが良く判る。この説得力のあるトランペットの音を聴けば、米国スムース・ジャズのビック・ネームの一人ということが心底納得できる。

加えて、このアルバムは全編に渡ってアレンジが秀逸で、アーバンなムードで落ち着いた雰囲気の、大人のコンテンポラリーなジャズを聴かせてくれる。とりわけ、カヴァー曲の3曲、4曲目の「We Don’t Talk Anymore」はチャーリー・プース、6曲目「In Common」はアリシア・キーズ、10曲目の「Yellow」はコールドプレイと、最近の新進のポップ・アーティストの秀曲を選曲しているセンスは隅に置けない。

アーバンなムードで落ち着いた雰囲気が魅力の好盤のジャケットが、トランペット片手に、波打ち際で波を蹴って戯れるおっちゃんのジャケットなのか理解に苦しむが、最近の米国ジャズ界の出来事なので、特に驚くことも無い。まずはこのジャケットの先入観を断ち切って、この盤に詰まっている上質なスムース・ジャズなトランペットに耳を傾けて欲しい。ながら聴きに最適。良い音出してます。

 
 

東日本大震災から6年4ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年6月15日 (木曜日)

ながら聴きのジャズも良い・22

トランペットを吹くボーカリスト。ぱっと浮かぶのは、サッチモ、そして、チェット・ベーカー。日本では、う〜ん、いたぞいたぞ。そう「TOKU」である。キャッチフレーズが「日本で唯一のボーカル&フリューゲルホルンプレイヤー」。確かに、トランペットを吹くボーカリスト。日本にはそうそういない。

ジャケットが良い。モダンアートっぽい、原色を活かしたジャケット。こういうの僕は大好き。思わず、これは「ジャケ買い」レベル。きっと音は良いに違いない。で、どんな音になっているのか。

そのアルバムとは、TOKU『Shake』(写真左)。今年のこの6月7日のリリース。聴いて楽しいコンテンポラリー・ジャズの饗宴。ゲストとの共演が基本。このゲスト陣が大変豪華。名前を挙げると、SUGIZO、Yasei Collective、AISHA、ZEEBRA、DABO、シシド・カフカ、ゴスペラーズ、多和田えみ、大黒摩季、NAOTO等々。

収録されている曲もとってもコンテンポラリー。僕達の世代が泣いて喜ぶカバー曲の数々。デヴィッド・ボウイの「Space Oddity」以下、ローリング・ストーンズやプリンス、ドナルド・フェイゲンやレナード・コーエンといったロック・レジェンドの名曲がズラリと並ぶ。これらをアーバンなコンテンポラリー・ジャズな雰囲気に仕立て上げる。
 

Toku_shake

 
どこかで聴いたことある雰囲気やなあ、と思っていたらピンと来た。1970年代後半のエレ・ハンコックである。クインシー・ジョーンズに憧れて追求した、ファンクネス溢れるR&Bとの融合が芳しいエレ・ハンコックのボーカル曲の世界。TOKUのダンディズム溢れる、力感豊かな、しなやかなボーカルに、日本人独特の乾いたファンクネスがそこはかとなく漂う。

現代のフュージョン・ジャズである。R&B、ブラコン、ハウス、ユーロ、もちろんジャズの要素も色濃く反映して、ライトでアーバンな新しい雰囲気のフュージョン・ジャズがこのアルバムに展開されている。パッと聴けばジャズじゃない。じっくり聴き進めれば、確かにフュージョン・ジャズである。まあ難しいことは言いっこなし。聴いて「ええ感じ」やったらOK。

TOKUのフリューゲルホルンも良い。演奏の中で、ここぞというところで、ブワーっと入ってくる。決して刺激的ではない。フリューゲルホルンの柔らかくて丸い音の特性を活かした優しい音。このフリューゲルホルンが独特の雰囲気を醸し出す。明らかにTOKUの個性である。

良い雰囲気の現代のフュージョン・ジャズ。純ジャズな雰囲気とはほど遠いが、フュージョン・ジャズとして聴くと、とても良い内容だ。演奏のレベルも高く、ボーカルもゲスト含めて個性的で聴き応えがあって良い感じ。何度か聴き直しているうちに、ながら聴きに最適なことに気がつきました。

 
 

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2017年5月25日 (木曜日)

ながら聴きのジャズも良い・21

朝から天気の悪い日。朝からポツポツ景気の悪い、弱い雨が降ってきて、梅雨の季節がもうすぐそこまで来ている気配が濃厚。まだまだ、ピアノ・トリオを欲する日が続く。今日は、デトロイトが生んだジャズ・レジェンドの一人、ローランド・ハナのトリオ作を選択。

ローランド・ハナ(Sir Roland Hanna)は1932年生まれだから、生きていれば85歳。2002年に惜しくも逝去している。享年70歳。ハナのリーダー作って、実は僕にとってはあまり強い印象が無くて、今まで、しっかり聴き込んだアルバムは10枚に満たない。よって、ハナって寡作なんやなあ、なんて誤解していたんだが、ディスコグラフィーを見るとかなりの多作。

恐らく、復刻される機会が少ないピアニストなんだと思う。彼はクラシック界の一流ピアニストにも匹敵する演奏技術の持ち主。いわゆる、昔のジャズ・ピアニストによくある、テクニック的にはやや難があるが、その強烈な癖のある響きや手癖が良い、っていう感じでは無い。つまり強烈な個性で印象に残るタイプでは無く、テクニック・歌心・スイング感など、総合力で聴かせるタイプのピアニストである。
 

The_piano_of_roland_hanna_easy_to_l

 
そんなハナの特徴がよく理解できるリーダー盤が『The Piano of Roland Hanna : Easy to Love』(写真左)。1959年9月25日録音。ちなみにパーソネルは、Roland Hanna (p), Ben Tucker (b), Roy Burnes (ds)。良い意味で「地味」で「渋い」メンバーが集結したピアノ・トリオ。

ハナのピアノは総合力で勝負するタイプ。卓抜したテクニックと強烈なスイング感、流麗で耳当たりの良いアドリブ・フレーズ。良く回る指と力強くダイナミックなタッチで、ガンガン弾きまくる。基本的には、ビ・バップなスタイル。モードなんて何処吹く風(笑)。バップなピアノを引っさげて、総合力で勝負する「端正で堅実なピアニスト」の面目躍如。

タッチが明確でスイング感が抜群なので「ながら聴き」に最適なピアノ・トリオ盤で、学生時代から結構「ながら聴き」の音源として重宝させていただいています。テクニック優秀なので、聴き心地、耳当たりが良い。これが「ながら聴き」にピッタリ。何気に、バックのベースとドラムも活躍していて、隅に置けないピアノ・トリオの好盤です。

 
 

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2017年5月18日 (木曜日)

ながら聴きのジャズも良い・20

しばらく、サックスやトランペットがフロントのカルテットやクインテットなジャズを聴き続けてきたような気がした。ちょっと耳が疲れてきたとでも言うのでしょうか。そろそろ、サックスやトランペットをお休みして、一番大好きなピアノ・トリオの盤を聴きたくなった。

といっても、このところ、なんだか心身共に疲れ気味なので、ハードなピアノ・トリオよりは、マイルドで優しいピアノ・トリオが聴きたい。が、あまりにマイルドでイージー・リスニング的なカクテル・ピアノっぽいのは逆に「イライラ」するから敬遠したい。適度に芯があって、硬派ではあるがマイルドで優しいピアノ。ということで、選んだ盤がこれ。

Eddie Higgins『Portrait In Black and White』(写真左)。1996年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Higgins (p), Don Wilner (b), James Martin (ds)。

Eddie Higgins(エディ・ヒギンス)といえば、ヴィーナス・レコードのハウス・ピアニスト。マイルドで優しい雰囲気のピアノ・トリオ盤を多数リリースしている。中にはあまりにマイルドすぎて、イージー・リスニング的なカクテル・ピアノ風になってしまっている盤もある。しかし、エディ・ヒギンスのピアノって、意外と硬派でバップなピアノなんですね。

しかしながら、ヒギンスのピアノには突出した個性が見当たらない。つまり一聴して「ああ、これは誰それのピアノだ」と判る位の個性や特徴が希薄。流麗かつ耳当たりの良いアドリブ・フレーズなので、どうしても、イージー・リスニング的なカクテル・ピアノ風に解されることが多い。でも、まともにアルバムを聴くと判るのだが、ヒギンスのピアノは硬派でバップだ。
 

Portrait_in_black_and_white_1

 
1932年生まれなので、ハードバップ時代は新進気鋭の若手、1960年代から70年代は中堅のピアニストだったはずだが、1958年の初リーダー作から、この『Portrait In Black and White』が録音されて1996年まで38年の間に、わずか12枚のリーダー作を数えるだけなのだ。如何に地味なピアノ・スタイルの持ち主なのかが理解出来る。

この『Portrait In Black and White』辺りの盤が、そんな硬派でバップなヒギンスのピアノを感じることができる好盤だと思う。聴けば判るのだが、確かに突出した個性は無い。しかし、演奏全体の雰囲気より、総合力で勝負できるピアニストであることは確かである。どこがどうってことは無いんだが、トータルで、随所随所に聴きどころが散りばめられた、破綻の無い素性の良い流麗なピアノである。

そうなれば、演奏する曲の選曲も重要な要素になってくる。そういう面では、ヴィーナス・レコードと組んだのは大正解だった。日本人のジャズ者にターゲットを絞った選曲と音作りは大正解だった。その最初の成果がこの『Portrait In Black and White』である。この盤には、ヒギンスのピアノの個性、いわゆる総合力で勝負するジャズ・ピアノという個性が十分に理解出来る。

アルバム・ジャケットも後のヴィーナス盤の様な「エロエロ」したところは無く、なかなか雰囲気のあるジャケットで良し。エディ・ヒギンスって、イージー・リスニング的なカクテル・ピアノでしょ、と敬遠する向きには、是非とも聴いて貰いたい。意外と良いですよ。

 
 

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2017年5月 7日 (日曜日)

本日よりブログ再開しました。

ゴールデン・ウィークの間、欧州のとある国に高飛びしていました。

旅行の間は基本的にジャズに触れることはありません。往き帰りの長時間のフライト時、iPodを駆使してジャズを聴きまくって時間を潰した時代もありましたが、最近、海外の航空会社の旅客機も充実しつつあり、日本人向けの映画も何本か用意されていて、今回は専ら映画三昧。

1週間ちょっとジャズから離れていたことになります。で、日本に戻ってきて、やっぱりジャズが聴きたい、ということになるんですが、いきなりヘビーなジャズは耳にもたれるので、まずはライトで軽快なジャズから耳慣らしです。

The Eddie Costa Quartet『Guys and Dolls Like Vibes』(写真左)。1958年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Costa (vib), Bill Evans (p), Wendell Marshall (b), Paul Motian (ds)。

白人バイブ奏者のエディ・コスタが1958年1月、ビル・エバンス、ポール・モチアンを迎えてCoralレーベルに録音したブロードウェイのミュージカル「ガイズ・アンド・ドールズ」の作品集。
 

Guys_and_dolls_like_vibes

 
ちなみに、エディ・コスタのヴァイブは白人らしい、粘りの無いシンプルな響きが個性。ながら聴きがしたくて、ライトな気分のジャズが欲しいなあ、という時に、ちょくちょく選盤する、好みのヴァイブ奏者です。1930年生まれ、1962年7月下旬にニューヨーク州のウェストサイド・ハイウェイにおいて自動車事故の為、31歳で夭折。早逝の為、リーダー作の数は少ないのですが、どれも内容が整っている好盤揃いです。

さて、この『Guys and Dolls Like Vibes』については、そのエディ・コスタのシンプルなヴァイブが心ゆくまで楽しめます。ミュージカルの挿入曲をベースにしているので、それぞれの楽曲の基本部分が整っていて、気持ち良く聴くことができます。コスタの単音がベースのシンプルなヴァイブが爽快です。

加えて、様々な方々が語っているように、ビル・エバンスのピアノも聴き応えがあります。さすがに「伴奏の名人」、エディ・コスタのヴァイブに合わせた、粘りの無いシンプルなアドリブ・ラインをメインに、バップ・ピアノっぽく弾き進めていくエバンス。職人ですね〜。エディ・コスタのヴァイブにぴったりと寄り添うようなエバンスのピアノ。良い感じです。

ウェンデル・マーシャルのベース、ポール・モチアンのドラムも目立たないですが、キッチリと決まっていて、良い仕事してます。肩肘張らず、ゆったりとした気分で「ながら聴き」に適した盤です。帰国後の耳慣らしがこれで完了。やっぱりジャズって良いですね。

 
 

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2017年4月27日 (木曜日)

ながら聴きのジャズも良い・19

ジャズの企画盤でよく採用されるのが「ミュージカルもの」。ジャズはミュージカルで流れる楽曲を、まとめてジャズ化する企画が多い。そんな「ミュージカルもの」の中でも、採用される機会が圧倒的に多いのが「My Fair Lady」と「West Side Story」。

どちらもミュージカルも収録された楽曲がとても美しくとても楽しい。名曲がてんこ盛りって感じで、丸ごとジャズ化したくなる。特に「West Side Story」は、レナード・バーンスタインが音楽を担当しているので、もともとジャズの要素を織り込んできてるので、圧倒的にジャズ化し易い。

アルト・サックスの使い手に「Richie Cole(リッチー・コール)」がいる。1948年生まれ。今年で69歳になる。もう大ベテラン。このリッチー・コールって、1970年代終盤に突如現れ出でて、老舗ジャズ雑誌で採り上げられて、褒めあげられたり貶されたり。ジャズ雑誌の一人芝居によって、時代の寵児となった「リッチー・コール」という印象がある。

テクニックに優れる速弾きが「軽薄」とされ、明朗な音色で吹き上げる様を捉えて「単調」と揶揄され、ビ・バップものをやればパーカーの物真似といじられ、バラードをやれば「深みがない」と切り捨てられる。とにかく散々な扱いだった。けど、僕は当時、ジャズ者初心者でしたが、このリッチー・コールのアルト、判り易くて好きでした。
 

West_side_story_richie_cole

 
Richie Cole『West Side Story』(写真左)。1996年3月の録音。ヴィーナス・レコードからのリリース。しかし、なかなか目の付け所の良い企画盤だ。明朗な音色でハイテクニックでアルト・サックスを吹き上げるリッチ・コールが「ウエストサイド物語」をやる。これってなかなか良い企画じゃないのか。

アルバムを聴けば、その意を強くする。リッチー・コールのアルト・サックスは明朗で切れ味抜群。ウエストサイド物語に収録された様々な魅力的な楽曲をしっかりとジャズ化し、しっかりとジャズとして吹き上げていく。とにかく判り易い。よって聴いていてとっても楽しい。明るくて楽しいのだから、もう「無敵」である。

バックのジャズメン達も好演している。アレンジも良好。そう言えば、この盤でのリッチー・コールのアルト・サックスのプレイはオーソドックスでハイテクニックで明朗なもの。良い感じのアルト・サックスである。でも、これって、1970年代終盤当時のリッチー・コールの音と変わらないと思うのだが。 

我が国ではあまり話題にならない、というか全く話題にならない、リッチー・コールの『ウエストサイド物語』ですが、どうして、かなり良い内容ですよ。判り易くて聴き易い。この『ウエストサイド物語』、そう言えば、ジャズ喫茶での流し聴きに最適ですね。そう言えば、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「ながら聴き盤」としてヘビロテでした(笑)。

 
 

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2017年4月21日 (金曜日)

ながら聴きのジャズも良い・18

やっと4月の中旬らしい気候に落ち着いた感がある。寒くも無く暑くも無い。ちょうど良い塩梅の気候。何かしながらの音楽。ながら聴きに良い季節である。この季節、僕は本を読みながらのジャズの「ながら聴き」が好み。ちょっとだけ窓を開けて、微かな春風の流を感じながらの「ながら聴き」。

僕は「ながら聴き」のジャズについては、フュージョン・ジャズのアルバムを選盤することが多い。爽やかでシンプルで明るいフュージョン・ジャズが「ながら聴き」にピッタリ。そんな盤ってあるのか。あるんですよね、これが(笑)。落ち着いた大人のフュージョン・ジャズが良いですね。あまり「はっちゃき」なのは耳についていけない。

Jim Beard『Song of the Sun』(写真左)。1990年の作品。新生CTIレーベルからのリリース。リーダーのジム・ビアードは、1980年代後半〜1990年代のN.Y.ジャズ・シーンで最も注目すべきキーボード奏者の一人。基本はジャズ。ジャズに軸足を置きながらのモーダルなキーボード・プレイが特徴。
 

Song_of_the_sun1

 
アルバムを聴き通すとこのアルバムの雰囲気に思わず「ニヤリ」とする。1970年代から1980年代を駆け抜けた伝説のフュージョン・バンド「ウェザー・リポート」の後期の音をスッキリとシンプルにした、判り易い「ウェザー・リポート」といった雰囲気。とりわけ、ビアードのキーボード・プレイは秀逸で、バラエティーに富んでいて、とても楽しめる。

パーソネルを見渡すと、うへへ〜と思わず笑みが漏れる。サックスにMichael Brecker、Bob Mintzer、Wayne Shorter、Lenny Pickettを使い分ける。ベースはVictor Bailey、Anthony Jackson、Batundi Panoを使い分け。ドラムにDennis Chambersの名前が見える。ハーモニカにはToots Thielemans。これって、フュージョン全盛時代の主要ジャズメンばかりである。

アルバムに収録された演奏は、ビアードの優れた編曲で整えられたシンプルで破綻の無いもの。あまりに整然としていて、ファンクネスに欠けるところがちょっと惜しい。それでも、アルバム全体の音世界は、小粋で成熟した上質のフュージョン・ジャズ。時は1990年、遅れてきたフュージョン・ジャズの好盤としてお勧め。特に「ながら聴き」にピッタリである。

 
 

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2017年2月12日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・17

あっけらんかんとしたスムース・ジャズ。それでいて、基本的なテクニックはしっかり押さえていて、明らかに「イージーリスニング」とは一線を画する。しかし、その端麗な容姿から「際物」扱いされることもしばしば。

でも、それは失礼だろう。自ら楽器を演奏する経験があるのなら、そういう的外れな「揶揄」は出来ない。そう、彼女のサックスのテクニックは確かなものであり、演奏される内容はしっかりとした「スムース・ジャズ」である。端麗な容姿とは切り離して楽しみたい。

小林香織『MELODY』(写真左)。2016年の作品。デビュー盤から一貫して、あっけらかんとしたスムース・ジャズである。テクニック的にも速いパッセージを吹きまくることは無い。いわゆるハード・バッパーな吹き回しは全く無い。その曲が持つメロディを判り易く吹き、判り易くアドリブ展開する。

収録された曲を見渡せば、この盤が「洋楽カヴァー・アルバム」であることに気付く。どういう基準で選曲したのかは不明だけれど、なかなか粋な選曲に思わずニンマリする。
 

Kaori_kobayashi_melody

 
エリック・クラプトンの「Tears In Heaven」、ボズ・スギャッグスの「We’re All Alone」、シカゴの「Saturday In The Park」など、70年代ロックのマニアの我々の心を擽る選曲から、テイラー・スイフトのヒット曲「Shake It Off」、ホール&オーツ「I Can’t Go For That」など、ちょっと小粋な選曲に目を惹かれる。

小林香織のサックスは「音が良い」。ブラスが良く鳴っていると形容したら良いのか、とにかく、サックスが良い音で鳴っている。この盤はサックスの音がとても良く録れている。バックの演奏も解像度良く、躍動感良く録れている。難しいことは全くやっていないが、演奏される音世界が耳に心地良い。

クレジットを見れば、あの「さかなクン」がバリサクで参加している。1曲目の「Shake It Off」なんだけど、これがまずまず良い雰囲気。小林との掛け合いでソロがなかなか良い。これは話題の1曲ですね。

難しいこと言わずに、雰囲気で聴く「スムース・ジャズ」盤です。カヴァーされた洋楽曲の旋律がキャッチャーなものばかりなので、聴き心地が良い。ながら聴きに良い雰囲気のアルバムです。

 
 

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2017年2月 3日 (金曜日)

ながら聴きのジャズも良い・16

ジャズ・トラペッターって、何故か「ラテン・ジャズ」をやりたがる。常にではないのだが、ジャズ・トランペッターとして、第一線で活躍している間、どこかで必ず「ラテン・ジャズ」をやる。トランペットという楽器が「ラテン音楽」にフィットする、という感覚があるんだろう。

ジャズ・トランペッターで「ラテン・ジャズ」をやりたがる代表格が「ディジー・ガレスピー」。お祭り男と呼ばれるほど、ライブでその真価を発揮する。そして、ライブでよくやる演奏が「ラテン・ジャズ」。ハイノートをバッチリ決めながら、ラテンのリズムに乗って、バリバリに吹きまくる。ラテン・ジャズはダンサフル。

逆に僕はこのトランペッターがラテン・ジャズに手を染めるとは思わなかった。そのトランペッターとは「Brian Lynch(ブライアン・リンチ)」。1956年イリノイ州生まれ。今年で61歳になる。現在ニューヨークで活躍するジャズ・トランペット奏者。端正で流麗でメロディックなアドリブ・ソロが個性。音はふくよかで切れ味が良い。非常にアーティスティックなトランペットを吹く。

Brian Lynch『Madera Latino : A Latin Jazz Interpretation on the Music of Woody Shaw』(写真左)。そんなリンチが「ラテン・ジャズ」に手を染める。昨年のリリースになる。ウディ・ショウの音楽のラテン・ジャズ的解釈、とでも訳せば良いか。リズムと旋律は「ラテン音楽」。演奏スタイルは正統派、メインストリーム路線のモーダルな演奏。
 

Madera_latino

 
とってもアーティスティックな香りのする「ラテン・ジャズ」。ラテン・ジャズと聞くと、思わず「俗っぽい」コッテコテなラテンチックなリズムと旋律を思い浮かべる。聴いていて、ちょっと気恥ずかしくなる、あからさまにラテンチックな旋律とリズム。しかし、このブライアン・リンチのラテン・ジャズは違う。とってもアーティスティックな、とってもメインストリーム・ジャズな響きと旋律が特徴。

全11曲、トータル1時間50分と、結構なボリュームのアルバムなんだが、聴いていて意外と疲れないし飽きない。このアーティスティックな雰囲気を宿した、ということろが、聴き疲れと聴き飽きを防止している。しかし、これだけ生真面目にアーティスティックな側面を追求したラテン・ジャズを僕は他に知らない。

基本はラテン・ジャズなので、演奏される旋律は「馴染みやすく躍動感のある明るい雰囲気」。聴いていてしっかりとメロディ・ラインは追えるし、リズミカルなリズム&ビートは、しっかりと心にポジティブに響く。

意外と「ながら聴き」に適した「ラテン・ジャズ」である。しかし、結構、難しい高度なこと、やってるんですけどね。そう思わせないところが、リンチのトランペットの優れたところである。「ながら聴き」のヘビロテ盤。異色と言えば異色の盤ではあるが、意外とメインストリームな演奏がこれまた「好感触」。好盤です。

 
 

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2017年1月23日 (月曜日)

ながら聴きのジャズも良い・15

植田典子とは誰か。ネットのレビューからの転載になるが「1997年バークリー音楽大学卒業、1998年よりニューヨークを拠点に活動するジャズ・ベーシスト。現代のNYのファースト・コール・ベーシストの一人」とある。ふ〜ん、知らなかった。

しかし、この盤の音を聴くと合点がいく。むっちゃ魅力的な音が鳴り響くアコベである。ブンブンブンと胴と弦が唸りを上げる。それも、実に上品なベース音である。ネットのレビューには「哀愁とガッツ」とある。なるほど、女性ベーシストならではの音の響きが実に「典雅」。

植田典子トリオ『Debut』(写真左)。2015年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、植田典子 (b), テッド・ローゼンタール(p), クインシー・デイヴィス (ds)。正統なピアノ・トリオである。ジャケットもなかなか良い感じのデザインで、これまた正統なジャズ盤のイメージである。
 

Debut

 
これだけベースが正統な純ジャズ基調なのである。当然、ローゼンタールのピアノも、クインシー・デイヴィスのドラムも正統な純ジャズ路線ど真ん中である。現代のネオ・ハードバップな音世界を踏襲しながら、モードありコードあり、メインの旋律はあくまで「哀愁感溢れるマイナーな響き」。

このトリオの音は圧倒的に「絵に描いた様な純ジャズなピアノ・トリオ」。はたまた、このアルバムは「現代の純ジャズの教科書」の様なアルバムである。ピアノ・トリオの美味しいところが、アルバム一杯にガッツリと盛り込まれている。現代のジャズ・ピアノ・トリオとはこれ、と差し出したくなるような演奏内容である。

良いアルバムです。これだけ「現代の純ジャズの教科書」な内容だと、スピーカーに対峙して聴き込むというよりは、静かな部屋の中で、本でも読みながらの「ながら聴き」に最適なアルバムだと思います。ピアノ・トリオの音の響きがとっても素敵なアルバムです。

 
 

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