2020年11月28日 (土曜日)

シェップが「バラード曲」を吹く

ヴィーナス・レコードは日本発のジャズ・レーベル。「昔の名前で出ています」的な、昔、第一線で活躍していたジャズ・ミュージシャンを再発見して、スタンダード曲をメインに演奏させるという、「従来の日本人好みの純ジャズ」的なアルバム作りをするレーベル。こんなミュージシャンにスタンダード曲をやらせるのか、なんていう「違和感満載」なプロデュースが賛否両論を巻き起こしている。

Archie Shepp Quartet『True Ballads』(写真左)。1996年12月7日、NYの「Clinton Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts), John Hicks (p), George Mraz (b), Idris Muhammad (ds)。リーダーのアーチー・シェップのみならず、バックのリズム・セクションも、ベースのムラーツを除いて、その名を確認すると「昔の名前で出ています」的な、昔、第一線で活躍していたジャズ・ミュージシャンの再発見である。

スピリチュアル・ジャズ、そして、ジャズ・ファンクがメインのシェップに、スタンダード曲をやらせるのもどうかと思うが、加えて、バラード曲をやらせるなんて、かなり「違和感満載」なプロデュースである。しかも、ギャラが良いのか、シェップ自身がそんなオファーを受けて、スタンダード&バラード曲を神妙に吹き上げるのだから、これはこれで「違和感満載」(笑)。
 
 
True-ballads-archie-shepp  
 
 
収録曲を見渡しても、バリバリというか、まあ、「ど」の付く位のスタンダードなバラード曲がズラリ、である。そんなバラード曲を情感タップリに吹き上げていくシェップ。シェップの昔を知る我々としては「違和感満載」である(笑)。しかし、その演奏内容は素晴らしいもの。シェップって、実はメインストリーム志向のハードバップが一番合っていたりして。それほどまでの、極上のバラード、極上のテナー・サックスである。

1. The Thrill Is Gone ( R. Henderson )
2. The Shadow Of Your Smile ( J. Mandel )
3. Everything Must Change ( B. Ighner )
4. Here's That Rainy Day ( J. Van. Heusen )
5. La Rosita ( P. Dupont )
6. Nature Boy ( E. Ahbez )
7. Yesterdays ( J. Kern )
8. Violets For Your Furs ( M. Dennis )

バックのリズム・セクションも大健闘。ベースのムラーツだけは、当時、現役バリバリな存在だったので心配は無い。ピアノのヒックスなんて大丈夫か、と思ったりもしたが、神妙にリリカルで明確なタッチを駆使して、シェップのバラード・テナーをしっかりとサポートしていて立派。ドラムのムハンマドも堅実なドラミングで「まだまだやれるやん」。ヴィーナスお得意の「意外性と違和感満載」な好盤の一枚である。
 
 
 

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2020年11月27日 (金曜日)

久し振りにフライド・プライド

Fried Pride(フライド・プライド)は日本のジャズ・デュオ ユニット。ギターとボーカルの2人組。類まれな歌唱力を持つボーカリストShihoと超絶技巧のギタリスト横田明紀男の2人からなるジャズユニット。日本のみならず、世界的に見て、ジャズの世界で「ギターとボーカル」のパーマネント・ユニットはとても珍しい存在だった。

以前、デビュー作を聴いて、これがまあ、唖然とするくらい凄いギターとボーカルで、こいつは凄いユニットがデビューしたもんだ、と思った。しかし、2012年に横田明紀男が脳梗塞にて入院、その後回復したが、2016年12月23日をもって活動終了。活動期間は15年。アルバムは12枚をリリース。どれもが、「ギターとボーカル」のユニットの特性を最大限に活かした、ユニークな内容のものばかり。愛聴してましたねえ。

Fried Pride『Musicream』(写真左)。タイトルは「ミュージックリーム」と読む。フライド・プライドの6thアルバム。2006年6月のリリース。改めて、ちなみにパーソネルは、Shiho (vo), 横田明紀男 (g)。タイトル「Musicream」は「最上級の」という意味である「Cream」と「Music」の合体造語。つまりフライド・プライドによる「最上級な音楽」を意味する、とのこと。
 
 
Musicream-fried-pride  
 
 
日本語ボーカルが秀逸である。言っておくが、ボーカルのShihoは日本人。しかし、以前、デビュー・アルバムを聴いたときは、Shihoは絶対にハーフかクォーターで、英語圏で長年生活してきたネイティヴだと思ったくらい、英語でのボーカルが上手い。が、この盤では、フライド・プライド始まって以来であると思われる、日本語ボーカルが興味深い。日本語での「コンテンポラリー・ジャズ・ボーカル」が見事。

例えば、2曲目「リバーサイド・ホテル」(井上陽水)、3曲目「接吻 KISS」(Original Love)、7曲目「Midas Touch」(山下達郎)、8曲目「永遠に」(The Gospellers)など、Jポップの名曲を日本語ボーカルでカヴァーしていくのであるが、これがかなり良くできていて感心する。

日本語ボーカルでのカヴァーだと、どうしても歌謡曲的な雰囲気が漂って「いけない」のではないか、と思ったが、テンション溢れ切れ味の良いギター・アレンジと、ジャジーで情感豊かなボーカルで、これは「かなりイケる」。特に、井上陽水の「リバーサイド・ホテル」には参りました。久し振りに聴き返したのだが、やはり「フライド・プライド、侮り難し」である。
 
 
 

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2020年11月21日 (土曜日)

独特のファンキーなメロウ感

Bobbi Humphre(ボビー・ハンフリー)は1950年生まれの女性ジャズ・フルート奏者。ディジー・ガレスピーに見初められ、1971年6月にニューヨークへ移住し、ブルーノート・レーベルとの契約を得る。ブルーノートではBN-LAシリーズの人気ジャズ奏者となり、リーダー作『Satin Doll』(1974年)はスマッシュ・ヒットした。R&B志向のクロスオーバー・ジャズで、ファンク色が強いが、女性ジャズ奏者らしく、彼女のファンクネスはギトギトしておらず、爽やかである。

Bobbi Humphrey『Fancy Dancer』(写真)。1975年8月、ハリウッドのSound Factoryでの録音。主だったパーソネルは、Bobbi Humphrey (fl, vo), Oscar Brashear (tp), Fonce Mizell (tp, clavinet, solina, vo), Julian Priester (tb), Tyree Glenn Jr. (ts), Dorothy Ashby (harp), Roger Glenn (vib, marimba), Chuck Davis, Skip Scarborough, Jerry Peters, Larry Mizell (key), Craig McMullen, John Rowin (g), Chuck Rainey (el-b), Harvey Mason (ds) 等々。

メンバーを厳選して、しっかりリハを積んで、プロデューサーの納得いくまで録音する、という1950年代〜60年代のブルーノートとは打って変わって、レコーディングのオートメーション化が垣間見える。パーソネルを見渡しても、ピンと来るメンバーはほとんどいない。しかし、この盤全体のグルーヴ感は半端ないんだが、リズム隊を見たら、なんとベースがチャック・レイニー、ドラムがハーヴィー・メイソンでした。納得。
 
 
Fancy-dancer-bobbi-humphre
 
 
この盤の「キモ」は、爽やかなファンクネスと、趣味の良くうねるグルーヴ感。ハンフリーの吹く、爽やかファンキーなフルートと、レイニー=メイソンのグルーヴ感溢れまくりのリズム隊の成せる技である。独特のファンキー・メロウな雰囲気はハンフリーならでは、のものであり、彼女ならではのジャズ・ファンクは聴いていて心地の良いもの。

この独特のファンキーなメロウ感は、後のフュージョン・ジャズに直結するもので、そういう意味でこの盤は時代のトレンドを先取りしていたものと言えよう。この盤に漂う、ライトで爽やかな「漆黒アーバン」な雰囲気は、当時、流行していたAORの方に直結する感じの、もの。ところどころ、アブストラクトな展開やスペーシーな音の空間が感じられて、当時の独特の空気感がユニーク。

さすがBN-LAシリーズの好盤という印象を強く持たせてくれる好盤です。コーラスやボーカルも多用されているところが日本のジャズ者気質に合わないところがあるのか、この盤のみならず、BN-LAシリーズは、我が母国、日本ではあまり採り上げられることはありません。が、1970年代のブルーノートのジャズ・ファンクは何れも「一目置かれる」存在で、クロスオーバー・ジャズというだけで敬遠するにはあまりに勿体ない。
 
 
 
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2020年11月15日 (日曜日)

ジャム・セッションのスミス盤

ブルーノート・レーベルの看板ジャズマンの1人、オルガニストのジミー・スミス(Jimmy Smith)。ブルーノートの1500番台においては、なんと「13枚」ものリーダー作をリリースしている。全体の13%。ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンのジミー・スミスjへの入れ込みよう、凄いですね。

確かに凄いオルガニストのジミー・スミス。当時、圧倒的な超絶技巧でジャズ界の話題を独占、彼のリーダー作の多くはトリオの演奏で占められており、オルガン・ギター・ドラムと言うトリオ・フォーマットがここで完成され、他の追従を許さない、独特なオルガン・ジャズを確立したと言える。

そんなジミー・スミスであるが、トリオ演奏の傍らで、ブルーノート・レーベルのオールスター・メンバーによるジャム・セッション作品も残している。ジミー・スミスのオルガンは、右手の旋律フレーズが流麗ではあるが、ダイナミックで攻撃的で押しが強い。トリオ作ではその強烈なオルガンが前面に押し出されてくるので、聴いていてちょっと疲れることがある。それを緩和してくれるのが、このオールスター・メンバーによるジャム・セッション作品。
  
 
A-date-with-jimmy-smith  
 
 
『A Date with Jimmy Smith Vol.1, Vol.2』(写真)。1957年11月11〜13日、NYのManhattan Towersでの録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Donald Byrd (tp), Lou Donaldson (as), Hank Mobley (ts), Eddie McFadden (g), Art Blakey (ds), Donald Bailey (ds)。スタジオ録音。錚々たるメンバーでのジャム・セッション。ドラムだけ、ブレイキーとベイリーが分担している。

ソロ楽器としてフロント3管+ギターがいるので、スミスのオルガンはトリオ演奏より上品で温和。攻撃的なフレーズの連続を封印して、他のフロント楽器のフレーズの雰囲気を踏襲して、スミスの個性はしっかりと出ているが、とても聴き易いジャズ・オルガンを弾いているところがこの2枚の盤の特色。とてもリラックスして楽しげにオルガンを弾くスミスが目に浮かぶようだ。

バード、モブレー、ドナルドソン、ブレイキー等、当時のブルーノート・レーベルを代表するメンバーが大集合、それぞれが入魂のプレイを繰り広げている。特にドナルド・バードのトランペットがブリリアントに鳴り響き、マクファーデンのギターも味わい深く小粋。スミスとドナルドソンの魅力的なデュオ演奏も良い感じ。リラックスして聴けるジミー・スミス盤としてお勧めの好盤2枚です。
 
 
 

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2020年11月 9日 (月曜日)

ケニー・ドーハムにしみじみする

晩秋である。最低気温も10度を切って、季節は冬への歩みを始めた様だ。部屋から眺める空も陽射しも弱くなって、なんだかしみじみする。こういう時はジャズが良いが、ハードなイメージのジャズは駄目だ。芯がしっかりしていて、それでいて癒されるような、歌心のあるジャズ盤が良い。良い塩梅で「しみじみ」したいのだ。

そんな盤あったかなあ、と思いながら、アルバム棚を見渡す。すると、おお、あったではないか。トランペットのケニー・ドーハムである。彼のトランペットは中音域を多用しながら、芯がしっかりしているが、まろやかな歌心あるトランペットが特徴。テクニックは基本的に優秀。好不調の波が少ない、安定した吹き回しが良い。

Kenny Dorham『Showboat』(写真左)。1960年12月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jimmy Heath (ts), Kenny Drew (p), Jimmy Garrison (b), Art Taylor (ds)。ジャケットを見れば「ピン」と来る、タイム・レーベルからのリリース。リーダーのケニー・ドーハムのトランペットと、渋い玄人好みのジミー・ヒースのテナー・サックスの2管フロントのクインテット編成である。
 
 
Showboat-kenny-dorham  
 
 
この盤は「企画盤」で、タイトル通り、Oscar Hammerstein II(オスカー・ハマースタイン2世)の作詞、Jerome Kern(ジェローム・カーン)の作曲の『ショウボート』というミュージカルの挿入曲集になる。「スタンダード曲作りの名コンビ」によるミュージカル曲である。どの曲も素敵なメロディーを湛えた好曲ばかり。

こういう歌モノを吹かせたら、ケニー・ドーハムって結構イケる。まろやかな彼のトランペットが申し分の無いアルバムである。加えて、一聴すると「ロリンズみたいな音がするんだが、吹き回し自体はモブレーみたいな」渋い落ち着いたテナーで、誰だこれ、って思って、パーソネルをみたら、ジミー・ヒースでした。バックのリズム隊も好演で、ギャリソンなぞ、ベースをブンブン、魅力的に唸らせてます。

歌モノ中心の選曲ですが、決して甘く流れることなく、ドーハムのトランペットもヒースのテナーも、しっかりメリハリが効いていて飽きることが無い。バックのリズム・セクションも良好。決して、歴史に残る様な、ジャズ盤の入門書に必ず出てくる様な有名盤ではないが、リラックスして長きに渡って聴き続けることの出来る「愛聴盤」の類。これ、なかなか良いアルバムですよ。
 
 
 

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2020年10月29日 (木曜日)

コーズの10年振りのオリジナル盤

ジャズを聴き始めて40年以上になるが、クロスオーバー&フュージョン・ジャズや、スムース・ジャズを蔑視することは無い。逆に積極的に聴くほうで、特にクロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、CD盤について、結構、充実したコレクションとなっている。同じ「ジャズ」の範疇の音楽なのに、どうして蔑視されるのか、いろいろ理由を聞かされても、その辺が良く判らない。

Dave Koz『A New Day』(写真左)。2020年10月のリリース。David Sanborn、Bob James、Brian McKnight、Paul Jackson Jr.、Meshell Ndegeocelloなど豪華なゲスト陣が目を引く。オリジナル・リーダー作のリリースが10年振りとなるデイヴ・コーズの新譜である。スムース・ジャズの代表格のコーズのリーダー作が10年振りとは意外である。

さて、リーダーのコーズのアルトは、素直にスッと伸びた、耳当たりの良い響きが個性のアルト・サックス。一聴すると、デイヴィッド・サンボーンか、と思うが、その音の「スッと伸びる」伸び具合がサンボーンよりシンプル。捻りや小節が無いシンプルさがコーズの個性。耳当たりは良いが、音の芯はしっかり太く、アルト・サックスの真鍮の響きがとてもブリリアント。とても「良い音」で鳴る。
 
 
A-new-day
 
 
そんなコーズのアルト・サックスが、とても良い音で鳴っている。フレーズは常に流麗かつ典雅。スムース・ジャズのお手本の様な音がこの盤にギッシリ詰まっている。といって、決して「甘くない」。とても切れ味の良い、音の芯の太いブリリアントな音色は正統派。スムース・ジャズのアルト・サックスなので、イージーリスニングじゃないの、とすると「怪我をする」。

レノン=マッカートニーの「Yesterday」のカヴァー以外、全てオリジナル曲で固めているが、どの曲も良い出来で、アレンジも良好。特に「Yesterday」のアレンジは秀逸。このスイートな歌を、そこはかとなくリズム&ビートを効かせた、凛としたジャズのフレーズとして聴かせてくれる。マット・キューソン(Matt Cusson)のアレンジ力の勝利である。

コーズのバックを支える演奏もとても充実している。緩さ甘さは全く無い。見れば、フュージョン&スムース・ジャズを代表する超一流のメンバーが大集結。演奏のレベルの高く、とにかく、皆、楽器が良い音出している。非常に質の高い「ジャズ」がこの盤に詰まっている。このようにレベルの高いスムース・ジャズを「聴かず嫌い」で遠ざけるのは勿体ない、と思うのだが。とにかく、この盤、好盤です。
 
 
 

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2020年10月23日 (金曜日)

エディ・ヘンダーソンの好盤です

ジャズ・ミュージシャンは「寿命が長い」。歌舞伎の世界では「40歳、50歳はハナタレ小僧」と言われるらしいが、ジャズの世界でも同様なことが言える。20歳代は子供、30〜40歳代は若手、50〜60歳代になってベテランとなり、70歳を越えてレジェンド、がジャズ界での捉え方ではないかと思う。特に近年、レジェンド級のジャズマンの活躍が目立つ。なかなかの好内容のアルバムを連発しているのだから恐れ入る。

Eddie Henderson『Shuffle and Deal』(写真左)。2019年12月5日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Eddie Henderson (tp,flh), Donald Harrison (as), Kenny Barron (p), Gerald Cannon (b), Mike Clark (ds)。充実の布陣、ヘンダーソンのトランペット、ハリソンのアルト・サックスがフロント2管のクインテット編成である。

エディ・ヘンダーソンは1940年生まれ。今年で80歳になる「レジェンド」である。個人的には暫く忘れていたトランペッターだったが、Smoke Sessionsレーベルからの好盤を聴くにつけ、注目のレジェンド級トランペッターとして注目する存在となった。しかし、ヘンダーソンって、1970年代はクロスオーバーなエレジャズをやったり、ちょっとポップなトランペッターという印象があったのだが、現在の地に足の着いた純ジャズ志向はちょっと驚きである。
 
 
Shuffle-and-deal
 
 
エディ・ヘンダーソンのトランペットは「軽快」。そして、ライトで滑らかな旋律が個性。音色的にはマイルスに似ている、というか、マイルスの忠実なフォロワー。逆に、凄いテクニック、エモーショナルなハイトーンなどという派手さが無いというところが弱点と言えば弱点。強烈な印象が残らないところが玉に瑕と言えば玉に瑕。しかし、この盤では、プロデュースの勝利だろう、それが良い方向に作用している。

選曲が良い。結構、渋いスタンダード曲を選曲していて、ヘンダーソンの軽快なトランペットが映える。「虹のかなたに」「春の如く」「ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド」「スマイル」などお馴染みのナンバーが、軽快でポップなアレンジでとても楽しく聴き流せる。演奏自体は難しいことは全く無し。ミッドテンポの穏やかでライトでポップな純ジャズのオンパレード。

ジャズの先端を行く演奏では全く無い。といって、イージーリスニングなジャズでも無い。実にバランスの良い洗練された、良い意味で「平易な」演奏。聴き易いが、決してイージーでは無い。良い意味で「ながら聴き」に最適。そして、ラストのケニー・バロンとのデュエットで演奏される「Smile」でしみじみするのだ。
 
 
 

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2020年10月22日 (木曜日)

モントルーのロニー・フォスター

ブルーノートのBN-LAシリーズは、ほぼ1970年代を網羅しているシリーズではあるが、ブルーノート・クラッシクのメインである、1500番台や4000〜4300番台のシリーズに比べると、注目度は格段に落ちる。メインストリーム志向の演奏は無いし、4ビートの純ジャズなんて欠片も無い。当時、流行のクロスオーバー・ジャズがメインなので、まあ仕方ないかな、とも思う。

しかし、腐ってもブルーノート・レーベル、クロスオーバー・ジャズ志向のアルバムがメインであるが、これが意外と内容のある、というか、クロスオーバー・ジャズの本質を突いた、クロスオーバー・ジャズのお手本の様なアルバムが多数存在する。クロスオーバー・ジャズ好きにとっては堪らない訳で、クロスオーバー者にとっては必須のシリーズである。

Ronnie Foster『Cookin' With Blue Note At Montreux』(写真左)。1973年7月5日、スイス、モントルー・ジャズフェスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ronnie Foster (org), Gregory Miller (g), Marvin Chappell (ds)。ソウル・ジャズ&ジャズ・ファンク系のオルガニスト、ロニー・フォスターのオルガン・トリオ。
 
 
Cookin-with-blue-note-at-montreux  
 
 
アシッド・ジャズの出現後、熱狂的な支持を得ている、ロニー・フォスターの「ライヴ・アット・モントルー」である。ユルユルのグルーヴ感満載、重心は低いが浮遊感のあるオフビートに乗って、フォスターのエレピ(フェンダー・ローズだと思う)が、これまた心地良い「ユルユル度」を醸しながら、グルーヴィーなフレーズを紡いでいく。

演奏はクロスオーバー・ジャズ志向。1973年の録音なので、流行ど真ん中なんだが、演奏のレベルは高い。フォスターの硬質でくすんだ響きのエレピのソロが心地良く、聴き続けていると、何だか心地良くなってくる。ミラーのエレギも切れ味良く、グルーヴ感溢れるフレーズを弾きまくり、チャペルのドラムが、これまたグルーヴ感溢れるリズム&ビートを叩き出す。

イージーにポップ化せず、イージーのロック化せず、正統派なクロスオーバー・ジャズに仕上がっているところが「腐ってもブルーノート・レーベル」。ライヴ全体に漂う「グルーヴ感」が心地良い。ユルユルのクロスオーバー・ジャズだが、意外と内容は「濃い」。ジャケットもブルーノート・レーベルらしからぬ、イージーなデザイン・センスだが、このライヴ盤、意外と好盤です。
 
 
 

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2020年10月14日 (水曜日)

TRI4THのメジャー3作目です

TRI4TH(トライフォース)は、日本の5人組ジャズバンド。ダイナミックなフュージョン系エレ・ジャズをメインとする。結成されたのが、2006年なので、今年で結成12年目になる。もう12年になるのか。日本のフュージョン・バンドと言えば「Casiopea」と「T-Square」の2バンドが大勢を占め、後が続かない状態だった。

が、この「TRI4TH」が出てきて、やっと次世代の日本のフュージョン・バンドが出てきたなあ、と嬉しくなったのを昨日のように覚えている。今では、2004年にバンド名を、固定しアルバムをリリースするなど定期的な活動を開始した「TRIX(トリックス)」とこの「TRI4TH(トライフォース)」が、日本のフュージョン・バンドの「次世代」を担っている。どっちも個人的に「お気に入り」なバンドである。

TRI4TH『Turn On The Light』(写真左)。今年10月のリリース。出来たてホヤホヤである。改めて、ちなみにパーソネルは、伊藤隆郎 (ds), 竹内大輔 (p), 藤田淳之介 (sax), 関谷友貴 (b), 織田祐亮 (tp)。メジャーでの3rd.盤になる。音的には「TRI4TH」のバンドとしての「音世界」がしっかりと確立された印象を受ける。オリジナリティーもあるし、フュージョン・ジャズとしての汎用性もあるし、「TRI4TH」としてのバンドサウンドがしっかりと固まった印象を受ける好盤である。
 
 
Turn-on-the-light-tri4th  
 
 
冒頭の「Move On」を聴けば、「TRI4TH」やな〜、と思わずニヤリとする。こういうダイナミックなフュージョン・ジャズ、大好きです。続く2曲目の「For The Loser」は、Kemuri Hornsとのコラボ。ホーンのアンサンブルが「TRI4TH」のダイナミズムと相まって、極上ダンサフルな「スカ」サウンドが心地良い。そして、3曲目の「The Light」至っては、SANABAGUN.のリベラルa.k.a岩間俊樹をフィーチャーし、フュージョン・ジャズとラップのコラボを実現。

冒頭の3曲でかなり「かまされる」のだが、4曲目の「Bring it on」以降は、充実した「TRI4TH」サウンドが展開される。面白いものとしては、6曲目の「Moanin'」。Art Blakey and the Jazz Messengersの名曲なんだが、最初はこのジャズ・メッセンジャースと同じ雰囲気、いわゆるファンキー・ジャズな演奏が繰り広げられ「あれれっ」と思うのだが、途中から、「TRI4TH」サウンドにアレンジされた「Moanin'」が展開される。ホッとするやら、ハッとするやら(笑)。

メジャー3作目ということで、ある意味、今作は3部作的な集大成な、これぞ「TRI4TH」的な内容になっている。現代の先端をいくフュージョン・ジャズな音作りは実に魅力的。テクニックも非常に高度で、一糸乱れぬアンサンブルは疾走感抜群。ボンヤリした頭の中を覚醒させるのに最適な「ながら聴き」ジャズ盤でもあります。ジックリ聴くも良し、ながら聴きで覚醒するも良し。とにかく格好良い、現代フュージョン・ジャズの好盤です。
 
 
 

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2020年9月28日 (月曜日)

フュージョンの先駆け的な盤

いきなり涼しくなり、いきなり爽やかな好天。すっかり秋らしい陽気になった。酷暑の折は、流石にハードな純ジャズやフリー・ジャズは、熱中症になりそうで、どうしても聴くことが出来ない。これだけ爽やかな陽気になれば、ジャズもいろいろ幅広いジャンルのアルバムが聴けるようになる。爽やかなフュージョン・ジャズだって、気持ち良く聴ける。

John Klemmer『Touch』(写真左)。1975年の作品。ちなみにパーソネルは、John Klemmer (ts, el-p, fl), Larry Charlton (ac-g), Mitch Holder (ac-g, el-g), Chuck Domanico, Chuck Rainey (el-b), Dave Grusin, Doerge Guke (el-p [Fender Rhodes]), John Guerin (ds), Emil Richards, Joe Porcaro (perc), David Batteau (vo)。フュージョン・ジャズの先駆的内容のアルバムである。

パーソネルを見渡せば、バックを担うメンバーが、フュージョン・ジャズの担い手となるジャズマンばかりが並ぶ。後の有名どころでは、アコギのラリー・カールトン、エレベのチャック・レイニー、エレピのデイブ・グルージンとジョージ・デューク、ドラム・パーカッションのジョン・ゲリンとジョー・ポーカロ 等々。このバックのメンバーを見渡すだけで、この盤はフュージョンっぽい音が出てくるのでは、と予想してしまう。
 
 
Touch-john-klemmer  
 
 
フェンダー・ローズの音が聴いている。アコギの音も効果的。アルバム全体を覆う雰囲気は「ソフト&メロウ」。リズム隊もシャープで小粋な8ビートを叩き出している。そこに、リーダーのジョン・クレマーのテナーがスッと入ってくる。これまた「ソフト&メロウ」なテナーの響き。この盤に詰まっている音世界は、明らかに「フュージョン・ジャズ」。

しかし、効果的にエコーがかかった独特のテナーの音色は、ソフト&メロウで聴き心地が良いばかりでは無い。クレマーのテナーは骨太で芯がしっかり入った、メンストリーム志向のテナー・サックス。音の流麗さだけを追求しない、しっかりとしたジャズ・テナーの音に思わず耳を奪われる。空間、音の隙間を上手に活用したテナーのフレーズは聴き心地満点。

我が国では、この「ジョン・クレマー」の知名度は低い。僕もジャズを聴き始めた頃、大学近くの「秘密の喫茶店」でこの盤を紹介されていなければ、ジョン・クレマーの名前を知ることは無かったかもしれない。メランコリックなムードの中に、力強いテナーのソロ。この盤のリリースは1975年。明らかにフュージョンの先駆的内容。それでいて、主役のテナーは骨太でメインストリーム志向。名実ともに「隠れ好盤」の一枚である。
 
 
 

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