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2018年5月31日 (木曜日)

若さが故のロックとジャズの融合

アラウンド・フュージョンな盤を聴くのが好きである。例えばロックとジャズの融合とか、いわゆる異種格闘技的なものや、夢の共演的なものが聴いていて楽しい。特に1970年代、ロックとジャズは接近した。ジャズメンがロック・ミュージシャンのバックを務めたり、ロック・ギタリストがジャズをやったり、アラウンド・フュージョンな盤は、1970年代に結構、集中している。

今日は「ロックとジャズの共演」盤を。Sting『Bring On the Night』(写真)。1970年代に集中していると書いたが、この盤は1986年のリリース(笑)。すいません。スティングの1985年の複数のライブ録音から集められた、LP2枚組の豪華ライブ盤である。スティングがポリスというバンドでは出来なかったことを、このライブでは存分にやっている。

一言で言って「ロックとジャズの融合」である。このパーソネルを見れば判る。Sting (g), Kenny Kirkland (key),  Branford Marsalis (sax), Omar Hakim (ds),  Darryl Jones (b)。当時、ジャズ界の新進気鋭のテクニック卓越のジャズメンをバックに従えたロック・パフォーマンスである。とにかく、このライブ盤、演奏水準がやたらと高い。聴いていて爽快である。
 

Bring_on_the_nnight

 
冒頭のメドレー「Bring on the Night〜When the World Is Running Down You Make the Best of What's Around」を聴けば、その卓越した演奏テクニックと魅惑的なソロ・パフォーマンスの素晴らしさが良く判る。ブランフォードのサックスは限りなく官能的だし、カークランドの中盤の高速のラグタイム・プレイには唖然とする位に素晴らしい。ハキムのドラミングはジャジーで躍動的だし、ダリルのベースは骨太で強靱。

そんなバックを従えて、スティングがロックに唄い上げる。途中入るスティングのエレギも特筆もの。収録曲もふるっていて、スティング初のソロアルバム『ブルー・タートルの夢』やポリス時代の曲、シングルカットのB面や、どう考えてもこの曲をライブに選ぶか、的な地味な曲を選んでいる。これがまた良い。恐らく、バックバンドがしっかりしているが故に、これらの楽曲の真の良さが前面に押し出されてくるのだろう。

演奏はジャジーであるが、ベースはロック。とはいえ、通常のロックより、明らかにテクニックが秀でているので、インプロビゼーションの安定感が抜群。いきおい、スティングのボーカルが活きに活きる。ロックならではの熱量も高く、ジャズならではの演奏の小粋さと渋さがとにかく心地良い。若さにまかせて「やりたいことをやり切った」清々しさ漂う好ライブ盤である。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年3月22日 (火曜日)

マルサリス兄ちゃんの個性

1980年代、純ジャズ復古の中心となった「マルサリス一族」。お父ちゃんが「エリス・マルサリス」。兄ちゃんが「ブランフォード」、二番目の弟が「ウィントン」、三番目の弟が「デルフィーヨ」、末の弟が「ジェイソン」。皆、ジャズメンである。

このウィントン一族のメンバーそれぞれが奏でるジャズを聴いてきたが、真ん中の弟ウィントンが一番生真面目で遊び心が少ない様に感じる。この10年は四角四面に純ジャズを追求するあまり、ジャズの発祥と言われるニューオリンズの「デキシーランド・ジャズ」にまで遡ったりしたりで、それはそれは聴く方も大変である。

その真ん中の弟に対して、長男、兄ちゃんのブランフォード・マルサリスは「天才肌」のジャズメンである。テクニックは優秀、兄ちゃんのテナーの音、フレーズは印象的。その吹きっぷりは理詰め、理屈の類では無く、本能のおもむくままに吹きたい様に吹くと入った塩梅だ。

この世代のテナー奏者は皆こぞって「コルトレーンのフォロワー」たらんとするのだが、マルサリス兄ちゃんは違う。どちらかと言えば、ソニー・ロリンズの雰囲気が、マルサリス兄ちゃんのテナーのフレーズに漂っている。やりたいフレーズを吹き、純ジャズには過度に拘らない。今の耳にも実にユニークなテナーマンである。

そんなマルサリス兄ちゃん、ブランフォード・マルサリスの個性を感じるには、デビュー盤辺りが一番良い。ということで、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、ブランフォードの個性を感じるための盤として、この2枚をいつも紹介している。Branford Marsalis『Scenes In the City』(写真左)と『Royal Garden Blues』(写真右)の2枚である。
 

Scenes_in_the_cityroyal_garden_blue

 
デビュー盤の『Scenes In the City』では、ブランフォードの考える「コンテンポラリーな純ジャズ」の枠組みを感じることが出来る。冒頭の「No Backstage Pass」のテナーとベースとドラムというピアノレスのトリオでの即興のブルース。骨太なテナー、そして、閃き一発勝負なアドリブ。ロリンズをストイックにした様なテナーに思わず耳をそばだてる。

二曲目のタイトル曲がその「枠組み」を物語る。それは、通りを歩く男の靴音から始まり、ジャズクラブのドアを開けるところから始まる。主にナレーションとバックに流れる演奏で作られた「寸劇」の様なジャズ。ブランフォードにとっては、これもジャズなのだ。融合の音楽であるジャズ。ブランフォードはジャズに演劇をも融合する。

そして、ブランフォードのテナーの個性を思いっきり体験するには、セカンド盤の『Royal Garden Blues』が最適だろう。この盤ではとにかくブランフォードはテナーを心ゆくまで吹きまくる。ベースは3人、ドラムは4人、ピアノは4人、取っ替え引っ替え入れ替えて、曲毎の印象は目まぐるしく変わるが、ブランフォードのテナーの個性は意外と「ぶれない」。

朗々と閃き一発勝負なアドリブを吹きまくるブランフォードは、セカンド盤で既に一流のテナーマンとして、その個性を確立している。ブランフォードは、素性は確か、比類無き才能を持った、類い希なるテナーマンであった。このセカンド盤を聴けば良く判る。ワンホーンで豪快に吹きまくるブランフォードは実に魅力的だ。

今までの言動や跳んだり跳ねたりする作風で、どうも日本ではその人気はイマイチなのだが、僕はそんなブランフォードが意外と気に入っている。改めて、ブランフォードのリーダー作の聴き直しを進める所存である。

 
 

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