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2018年8月17日 (金曜日)

テテ・モントリューの初期の傑作

ジャズの聴き始めて40年。それでもまだまだ、聴き込んでいないジャズメンはいる。たまたま聴く機会に恵まれなかったケースがある。リーダー作がなかなか再発されなかったり、CD化されなかったりで、そもそもアルバムが流通していないケース。このピアニストは、リーダー作がなかなか再発されなかったことで、計画的に聴き直しを進めことが出来なかった。

このピアニストのアルバムもそんな中のひとつ。まず、リーダー作が流通してない。まとめて聴き直したいなあ、と長年思ってきてが、なかなかそうはならない。これはもう駄目かなあ、と半ば諦めかけていたら、ダウンロード・サイトで、この人のリーダー作を相当数、見ることが出来る様になった。喜ばしいことである。

Tete Montoliu『Piano for Nuria』(写真左)。1968年の録音。ちなみにパーソネルは、Peter Trunk (b), Albert Heath (ds), Tete Montoliu (p)。スペインが輩出した盲目の天才ピアニスト、テテ・モントリューのMPS盤。ほぼ、デビュー盤に近い。いわゆる「メジャー・デビュー」盤である。
 

Piano_for_nuria

 
テテのピアノは一聴すると、セロニアス・モンクに似ていると感じる。しかし、モンクに比べて、音の飛び方がノーマルで、安定したスイング感がある。タッチは太い。高速な手捌きは無いが、堅実な手捌きで安定感が抜群。テテは1933年生まれだから、この盤を録音した時は35歳。若手から中堅に差し掛かる、ピアニストとして充実した時期。さすが堅実で安定感のあるピアノである。

本作ではスタンダード・ナンバーを弾きまくっていて、テテのピアノの特徴が良く判るのも、この盤の良さである。スタンダード・ナンバーを弾くにつけ、テテはスインガーなピアノではなく、モードな香りが漂う、当時としてモダンな、新しい響きがメインのピアノであることが良く判る。

モンクっぽくてモンクでは無い。独特の音の飛び方をするアドリブ・フレーズも含めて、テテのピアノの個性が満載である。そういう意味で、この盤はテテの初期の傑作の一枚でしょう。ジャケットは地味ですが、ジャズ・ピアノ好きなジャズ者の方々については、避けて通れない、聴き体験必須のピアノ・トリオ盤です。

 
 

東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年8月 4日 (土曜日)

意外と無名な盤だけど好盤です

今年の夏は酷暑である。とにかく蒸し暑い。通勤の往き帰り、特に最寄りの駅から自宅までの徒歩が辛い。加えて、最寄りの駅から会社までの徒歩が辛い。汗だくだくになる。家に帰り着いて、就寝前のひととき、エアコンの効いた涼しい部屋の中で、ゆったりとした気分で聴くECMレーベルの諸作は格別なものがある。

極力、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音をベースにした、欧州ジャズのお手本の様なECMレーベルの諸作。酷暑の夏、エアコンの効いた部屋の中で聴くECMレーベルのアルバムは、非常に心地良い。確かに、夏の夜はECMレーベルのアルバムを選ぶことが多い。

Jan Garbarek-Bobo Stenson Quartet『Witch-Tai-To』(写真左)。1973年11月27日の録音。ECM 1041番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, ss), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。ECMレーベルのお抱えリズム・セクション、ボボ・ステンソン・トリオをバックに、これもECMレーベルの看板サックス奏者、ヤン・ガルバレク、フロント1管のカルテット構成。
 

Witchitaito

 
ヤン・ガルバレクの透明度溢れる、クリスタルで硬質な、切れ味の良く伸びの良いサックスが素晴らしい。ガルバレクのサックスの音が鳴り響くだけで、その音世界は「ECMレーベルの音世界」に染まる。ガルバレクのサックスは硬軟自在、伸びの良い柔軟なフレーズを繰り出していく。特にその「飛翔感」は彼独特の個性。これが非常に涼しげで「清涼感」抜群。

バックのボボ・ステンセンのピアノ、パレ・ダニエルソンのベース、ヤン・クリステンセンのドラム、このECMお抱えのリズム・セクションの音も実に印象的。ガルバレクと同様に、透明度溢れる、リリカルで硬質なステンセンのピアノ。これがガルバレクのサックスと実に相性が良い。絵に描いた様なECMレーベルの音。清涼感抜群、間の静謐感を活かした、独特のアドリブ・フレーズ。

ダニエルソンのベースは重量感溢れ、弦の響きが心地良い。クリステンセンのドラムは堅実かつ多彩。正確でタイトなリズム&ビートを叩き出す。このECMお抱えのカルテットの繰り出すフレーズのインスピレーションとバリエーションは特筆もの。ファンクネス皆無な、間を活かしたオフビート。欧州ジャズの典型的な音世界がこのアルバムに詰まっている。意外と無名なアルバムだが好盤である。

 
 

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2018年8月 2日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・126

ジョージ・ウォーリントン(George Wallington)は、1924年10月27日、シチリア島パレルモ生まれ。1993年に68歳で鬼籍に入っている。1940年代前半から1950年代にかけて、ジャズ・ピアニストとして活躍。1960年に家業を継ぐためジャズ界から引退。1980年半ばに一時期復帰したが、活躍のメインは1950年代。当然リーダ作は少なく十数枚に留まる。サイドマンとしても10枚程度。

しかし、このピアニスト、リーダー作数枚で、ジャズ史に名前を残している。その一枚が、George Wallington『Jazz for the Carriage Trade』(写真左)。1956年1月20日の録音。プレスティッジのPRLP 7032番。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Phil Woods (as), George Wallington(p), Teddy Kotick(b), Bill Bradley as Arthur Taylor (ds)。ハードバップ中期、フロント2管のクインテット構成。

この盤が、聴けば判るのだが、プレスティッジ・レーベルでの録音らしからぬ、演奏全体が端正で活力漲り、流麗かつダイナミック。ブルーノート・レーベルの様に、リハーサルにもギャラを払って、幾度もリハーサルを重ねて、この盤の録音本番に至ったのでは、と思う位に、素晴らしい演奏の数々。これだけ楽器がしっかり鳴って、テクニック優秀、歌心満点なアルバムって、プレスティッジ・レーベルにはなかなか無い。
 

Jazz_for_the_carriage_trade_1  

 
冒頭の「Our Delight」を聴けば、フロントの2管、トランペットとアルト・サックスが絶好調なのが判る。これだけ力強く、良く鳴るトランペットって誰なんだ、と思って首を捻りながらパーソネルを見て「えっ、これがドナルド・バードなん」とちょっとビックリ。そして、流麗で唄うが如く、歌心満点なアルト・サックス。これ誰なんや、とパーソネルを見れば「フィル・ウッズかあ」と思わず感嘆の声を上げる。

リーダーのウォーリントンのピアノは知的なバップ・ピアノ。洗練されたフレーズでフロントの2管を温和に支える。決して、大立ち回りはしない。決して前へは出ない。堅実なベースとドラムと相まって、とても趣味の良いバッキングを実現している。これが見事。こんなに知的で粋なリズム・セクションを得て、フロントの2管は唄うが如く語るが如く、雄弁にポジティブに端正で堅実なアドリブ・フレーズを展開する。

ジャケットはちょっとレトロ調だが、これはこれで実に味がある。このジャケット・デザインも、やっつけデザインが得意な(笑)プレスティッジ・レーベルらしからぬ優れたもの。典型的なハードバップのお手本の様な純ジャズが展開されていて、実に聴き応えがある。プレスティッジ・レーベルらしからぬ、端正でまとまった、ダイナミックかつ繊細なハードバップ。全編に渡って聴き所満載です。

 
 

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2018年7月26日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・125

いきなり涼しくなった千葉県北西部地方。この夜、外の気温は25度。窓を開けっ放しにした室内は27度、湿度50%。全くのエアコン要らずである。酷暑の西日本の皆さんには申し訳ないが、猛暑について一息ついた今日一日である。半袖で過ごしやすい気温。ジャズも聴きやすさが増して、今日は大好きなピアノ・トリオ盤に触手が伸びる。

Richard Wyands『Then, Here and Now』(写真左)。1978年10月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Richard Wyands (p), Lisle Atkinson (b), David Lee (ds)。リチャード・ワイアンズはジャズ・ピアニスト。1928年、カリフォルニア州オークランド生まれ。今年で90歳。あまり有名なピアニストでは無くて、僕もつい最近、意識し出したくらい。

このトリオ盤、ワイアンズ、50歳での記念すべきリーダー1作目。1978年のリリースなので、ジャズ界は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズが大盛況な時代。そんな中での純ジャズなピアノ・トリオ盤である。注目される筈が無い。しかし、ジャケットが良い。なんか雰囲気のあるジャケット写真。ワイアンズの横顔。実は僕はこの盤を「ジャケ買い」「ジャケ聴き」して、大当たりだった。
 

Then_here_and_now  

 
とても良く鳴り、良く唄うピアノであり、爽快度満点、ポジティブなフレーズのてんこ盛り。テクニックも上々、ビ・バップなマナーではあるが俗っぽくなく、アートに傾きも過ぎず、ちょっとポップでサラッとしていて、メリハリの効いた聴き易いピアノである。ピアノの響きがとても素敵。トリオ演奏のアレンジはあっさりしていて、変にこねくり回したり、複雑にしない、シンプルな展開は飽きが来ない。

冒頭の「Yes It Is」を聴けば、背筋が伸びて、不意に目が覚めたような感覚に襲われ、気がついたら思わず、ジャケットを見にカウンターに走る、そんな気持ちの良いパフォーマンスである。7曲目の「Blue Rose」、デューク・エリントンの佳曲で、ちょっとアップテンポな弾き回しで、とても粋で洒落たハードバップ・ピアノ。見事です。

バックのアトキンスのベースも低音を響かせつつ、演奏の底をガッチリ支えるベースラインがとても魅力的。リーのドラミングも雄弁で疾走感溢れ、ところどころで職人芸を披露しつつ、堅実にリズム&ビートを供給する。これまた素晴らしい。こんなピアノ・トリオ盤があったなんて、ジャケ買い、ジャケ聴きの言い伝えに感謝です。今、眺めてみても、良いジャケットですね〜。

 
 

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2018年7月18日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・72

このところ、ジャズ・ドラマーのリーダー作を聴き進めている。ジャズのリーダー作は、どれもがバランスが良い。ドラマーがリーダーなので、ドラムが全面的に押し出てきて、圧倒的にドラムが目立つアルバムをイメージするのだが、どうして、基本的にそういうドラマーのリーダー作はほとんど無い(たまにあるけど・笑)。

そんなジャズ・ドラマーがリーダーのアルバムを物色していて、この盤の存在を思い出した。Jeff "Tain" Watts『Megawatts』(写真左)。1991年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Fambrough (b), Kenny Kirkland (p), Jeff "Tain" Watts (ds)。1960年1月生まれ、今年58歳のジェフ・ティン・ワッツのピアノ・トリオ盤である。

この盤では、リーダーのジェフ・ワッツの多彩でネオ・ハードバップなドラミングを心ゆくまで楽しめる盤なのだが、もう1つ、大きな「お目当て」がある。ピアノの「ケニー・カークランド」である。1980年代後半、純ジャズ復古のムーブメントの中で、ウィントン・マルサリスをメインとする「ネオ・ハードバップ」を主に演奏する新主流派のピアニストとして活躍したが、惜しくも、1998年、43歳で没した、伝説のピアニストである。
 

Megawatts_1  

 
僕はこのピアニストのタッチとアドリブ展開が大好きで、そもそもリーダー作は1作のみなので、カークランドがサイドメンのアルバムは見つける度にゲットしている。といっても、ウィントン&ブランフォード・マルサリスとの共演と、スティングの諸作への参加が主なアルバムで、本格的に活動したのが、約10年ほどなので、彼の演奏に触れることの出来るアルバムはそう多くない。

カークランドのピアノは、ネオ・ハードバップならぬ「ネオ・ビ・バップ」的な節回しとアドリブ展開を個性とするピアノで、一聴するとハービー・ハンコックのフォロワーかとも思うが、タッチの力強さ、アドリブ展開の幅広さ、モーダルな展開のナチュラルさ、それぞれがカークランドならではの個性として成立している。爽快かつ繊細、純ジャズ復古以降のビル・エヴァンスの様な温故知新なネオ・ビ・バップなジャズ・ピアノ。

オリジナル曲もスタンダード曲も、ジェフ・ワッツのドラムに堅実にサポートされた、カークランドのピアノが聴きもの。ジェフ・ワッツのドラミングは、ネオ・ハードバップに特化した「トニー・ウィリアムス」の様な響きが今の耳にも新しい。兎にも角にも、早逝が惜しまれるピアニストであった。ジェフ・ワッツのネオ・ハードバップなドラミングと同時に、カークランドのネオ・ビ・バップなピアノを愛でることが出来る稀少盤である。好盤です。

 
 

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2018年7月16日 (月曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・71

暑い。猛暑日が続く。夜は熱帯夜が続く。今年の夏はとびきり暑い。この蒸し暑さというのは音楽鑑賞には大敵で、エアコンの入っていない部屋でのアルバム鑑賞は不可能である。まず、集中して聴けない。加えて、暑い時に聴くジャズはシンプルなものが良い。そういう意味で、夏は「ピアノ・トリオ」盤を選盤する機会が増える。

Don Friedman『Circle Waltz』(写真左)。1962年5月14日の録音。ちなみにパーソネルは、Don Friedman (p), Chuck Israels (b), Pete LaRoca (ds)。ドン・フリードマンの2枚目のリーダー作。タッチとフレーズの雰囲気が、ジャズ・ピアノのレジェンド「ビル・エヴァンス」に似ている、という評価で、エヴァンスの完璧なフォロワーと言われる。

しかし、聴いて見て思うんだが、リリカルなタッチは、流麗なフレーズは、確かにエヴァンスに似てはいるが、アドリブ・フレーズのイメージはエヴァンスとは異なる。エヴァンスの基本はバップ・ピアノ。バップ・ピアノのイメージからモーダルなフレーズに展開し、間を活かしたクールなアドリブが絶対的個性。
 

Circle_waltz

 
フリードマンのピアノは、タッチこそエヴァンスのリリカルなタッチに似てはいるが、基本部分で、バップ・ピアノのイメージはあまり無い。流麗なフレーズではあるが、バップ・ピアノのそれでは無い感じ。どちらかと言えば、クラシックな雰囲気の漂うフレーズの展開であり、アドリブの組み立ては「幾何学的」であり、そういう意味で、ジャケット・デザインの雰囲気が、フリードマンのピアノにピッタリ合っている。

ベースがチャック・イスラエルなので、ビル・エヴァンスとの関連性を取り立たされるが、ドラムがピート・ラロカである方が、重要なポイントだと思っている。ラロカのドラミングは、ビ・バップでも無ければ、ハードバップどっぷりでも無い。「モーダル」なドラミングとでも形容したら良いだろうか。このラロカのドラミングが、このアルバムのトリオ演奏の雰囲気を決定付けている。

ハードバップから、モードをメインとした新主流派への掛け渡し的なピアノ・トリオの音。フリードマンのピアノとイスラエルのベースが、ハードバップと新主流派、良い意味で「どっち付かず」のイメージで、そこにラロカの明らかに新主流派なドラミングが入ることによって、モーダルな新しい響きを獲得しているところが面白い。意外と他に無い、個性的な響きを宿したピアノ・トリオ盤である。

 
 

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2018年7月11日 (水曜日)

熱い夏にラテンジャズが良い

熱いコッテコテファンキーなジャズは、この蒸し暑い夏にはちょっと辛い。それでも、耳に優しい、緩やかなジャズは、それはそれで、聴いていてパンチが感じられなくて物足りない。そんなこんなで、ジャズを聴き初めて3年目の夏。夏はラテン、夏はラテンジャズ、と決め込んで、それ以来、ちょこちょことラテンジャズのアルバムを集めては聴いている。

Chucho Valdés『Live at the Village Vanguard』(写真左)。1999年4月9〜10日、NYは、ヴィレッジヴァンガードでのライブ録音。キューバが誇る超絶ピアニスト、チューチョ・ヴァルデスのライブ盤である。2001年には、グラミー賞の最優秀ラテンジャズ・アルバム賞を受賞している。

「Ladies & Gentleman!お気を付けください、カリブから台風が近づいております!」というアナウンスで始まる。実に粋である。始まった演奏は、ぶっ飛びそうな、爽快感溢れるラテンジャズ。ダイナミズムあり、メロディアスなフレーズあり、ノリの良いタッチの明確なバルデスのピアノが脳髄にビンビン響く。これが意外と爽快。バルデスのピアノは、タッチに濁りが無く、テクニックが明確なのだ。
 

Chucho_valdes_live_at_the_village_v  

 
チューチョ・ヴァルデスは、1941年10月9日、キューバは南ハバナのキビカン生まれなので、このライブ盤録音時は58歳。ジャズ・ピアニストとして、成熟したベテランの域に達した時期で、そのプレイについて、ダイナミックで思いきりメリハリが効いているのだが、どこか「良質な余裕」が感じられるのだ。その余裕が良い感じに響いていて、結構、アクティブなラテンジャズなんだが、不思議と聴き疲れしない。

4曲目の大スタンダード曲「My Funny Valentine」と5曲目の「To Bud Powell」を聴くと、このライブ盤の演奏の面白さが感じられる。キューバン・フレーバーのラテンジャズでアレンジされた「マイ・ファニー・バレンタイン」は、こってこてにファンキー。こんなに徹底的にファンクネスを注入された「マイ・ファニー・バレンタイン」は聴いたことが無い。

「To Bud Powell」は、ラテンジャズ仕様の「ビ・バップ」。ヴァルデスの思いっきりラテン・フレーバーなピアノが、高テクニックな弾きまくり「ビ・バップ」をやっている。今までに聴いたことの無い音世界。まるで、キューバで聴く「ビ・バップ」ってこんなんなんだろうな〜、なんて変な感心の仕方をしてしまう。とにかく、気持ち良く思い切り良くノリノリな演奏。爽快感の嵐。熱い夏に逆療法的な乾いた熱気溢れるライブ盤である。

 
 

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2018年7月10日 (火曜日)

僕の中では「夏の純ジャズ」

夏は暑いので、純ジャズは聴かない、なんて書いたが、実は、ある種類の純ジャズは聴くのだ。熱いシリアスなファンクネス満載の純ジャズは駄目だ。いわゆるオフビート強烈なビ・バップやハード・バップは暑さが増幅されるので、全くといっていいほど、触手が伸びない。しかし、ファンクネスが少なめの、軽快な純ジャズ、若しくは、切れ味の良い純ジャズはOK。

Michel Legrand『Le Jazz Grand』(写真)。フランスの作曲家、ピアニスト、映画監督、俳優であるミシェル・ルグランの純ジャズ盤である。1978年3月の録音。米国や日本では、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズ全盛期。そんな最中に、こんなに切れ味の良い、誠実な純ジャズ盤が、フランス人のピアニストによって、しかもニューヨークで録音されていたなんて、その背景に気がついた時はちょっとビックリした。

冒頭の組曲「Southern Routes」は渾身のジャズ・オーケストラの傑作である。1曲目の「North」では、Jon Faddisのトランペットが、2曲目の「West」では、Phil Woodsのアルトが、3曲目の「East」では、Gerry Mulliganのバリサクが、4曲目の「South」では、全員総出のパフォーマンスがフィーチャーされている。中身は、実に切れ味の良い、ファンクネス希薄な、端正ではあるが、どこかラフさが漂う「フレンチ・ジャズ」の個性満載の純ジャズ。
 

Le_jazz_grand  

 
このアルバム、LP時代のA面の4曲はビックバンド仕様、B面の4曲はスモールバンド仕様。しかし、アンサンブルやユニゾン&ハーモニーに焦点を当てるのでは無く、吹奏楽器がメインのソロ楽器、トランペットとサックスをフューチャーした演奏が主体の「編曲」に焦点を当てたアルバムである。これがとてもユニーク。基本的には演奏全体が理路整然としている。聴いていて苛つくことは無く、スッキリとした味わいは「夏向け」。

そして、アドリブ部でのソロ楽器のパフォーマンスについて、非常に切れ味が良い。切れ味に焦点を絞っているといっても良いほど。いわゆる「攻めのプロデュース」である。このそれぞれの楽器の切れ味が、この盤ではとっても良い。この切れ味の良さは「爽快感」を想起し、増幅してくれる。この高い爽快感はやはり「夏向け」である。

リーダーがフランス人だからなのか、アルバム全体のトーンは欧州的で、そこはかとなくクラシックの香りがする。そこにどこかラフな部分が見え隠れするインプロビゼーションが、聴く耳に過度な緊張を強いられずに良い感じだ。収録されたどの曲も旋律が粋。特に5曲目の「La Pasionaria」が実に小粋で格好良い。フランス人ジャズメン、ルグランの面目躍如。小粋な純ジャズ。なぜか、僕の中では「夏の純ジャズ」。
 
 
 

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2018年7月 8日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・124

ジャズのミュージシャンは息が長い。年齢を重ねる毎に、人生経験や演奏経験がノウハウと共に蓄積していって、演奏に深みや余裕が出てくる。これがまた味わい深くて良い。演奏テクニックというのは、年齢を重ねて行っても、そう大きく衰えることが無いらしく、ジャズの大ベテラン・ミュージシャンはそれぞれ、結構なテクニックを保持しているから凄い。

David Matthews, Eddie Gomez & Steve Gadd『Sir,』(写真左)。今年の6月のリリース。パーソネルを整理すると、David Matthews (p), Eddie Gomez (b), Steve Gadd (ds)。ピアノ・トリオである。ピアノのマシューズは、1942年3月生まれなので、今年76歳。ベースのゴメスは、1944年10月生まれなので、今年74歳。ドラムのガッドは、1945年4月生まれなので、今年73歳。

3人とも既に70歳超えの大ベテランであり、それぞれがジャズの歴史に名を残している、ジャズ・ミュージシャンのレジェンド格の3人である。マシューズは1970年代フュージョン・ジャズ全盛の頃は、アレンジャーとして名を馳せたが、ピアニストとしての腕前も相当なものがある。これまでに幾枚かリーダーとしてトリオ作をリリースしている。
 

Sir

 
マシューズのピアノは独特である。独特の「間」を活かし、左手が大活躍する、とても個性的なピアノである。マンハッタン・ジャズ・クインテットの諸作は大のお気に入りなんだが、マシューズのピアノの個性がとにかく気になって仕方が無い。何時の頃か、雑誌の記事を読んで、マシューズは小児麻痺のため、右手がほとんど使えないことを知った。そんなハンディを克服し、逆に個性として活かした彼のピアノは実に魅力的だ。

アルバムの内容としては、スタンダードなビバップ・ナンバーに加え、マシューズの書き下ろしオリジナル曲も3曲を収録。3者対等のインタープレイを前提とした丁々発止とした演奏ではなく、落ち着いてリラックスした、悠然とした演奏が堪りません。マシューズのピアノの個性を第一とした、ベースとドラムのサポートも見事。というか、しっかりピアノをサポートしつつ、ベースもドラムも至高の技を繰り出しています。

それでも演奏全体の印象は、技巧的というよりも雰囲気重視。一聴するだけだと、えらくシンプルでイージーリスニングの様なピアノ・トリオやなあ、と思ってしまうんですが、繰り返し聴けば聴くほど、味わい深く、聴きどころがどんどん多くなっていく。そんな「スルメ」の様な味わいのピアノ・トリオ盤です。ジャズ者全ての方々にお勧め。

 
 

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2018年6月22日 (金曜日)

ドミンゲスのタッチが美しい

最近、ピアノ・トリオの演奏を多く聴いている。リズム&ビートの効いた演奏や、ポジティヴでバイタルなソロ・パフォーマンスを聴き続けていると、ちょっと耳が疲れてくる時がある。そういう時には、全く違うジャンルの音、70年代ロックの演奏に走ったり、ジャズに留まるなら、ソロ・パフォーマンスのアルバムに切り替えたりする。

今回はジャズに留まって、ピアノのソロ盤を選択。Chano Dominguez『Over The Rainbow』(写真左)。2012年2月24日バルセロナでのライヴ及び、コンサート前の演奏を音源化。昨年2月のリリース。スペイン、アンダルシアが生んだ屈指のピアニスト、チャノ・ドミンゲスのソロ作。スパニッシュ風味漂う、堅実タッチの素晴らしいソロ・パフォーマンス。

フラメンコと即興音楽としてのジャズとの融合を試み、一つのスタイルを確立したピアニストであるチャノ・ドミンゲス。一風、チック・コリアの個性に似たところがあるが、チックの個性から前衛性と硬質で鋭角なフレーズを差し引いて、スパニッシュ・ミュージックの持つ哀愁感とマイナーな響きを増幅したドミンゲスのピアノ。
 

Chano_dominguez_over_the_rainbow  

 
ジョン・ルイス作の「Django」から始まる。曲の哀愁感がドミンゲスのタッチとマッチする。セロニアス・モンクの作なる「Evidence」と「Monk’s Dream」については、ドミンゲスのテクニックに優れた面が浮かび上がる。南米の作家の手になる「Gracias a la Vita」と「Los Ejes de mi Carreta」。そして、米国スタンダードの「Over the Rainbow」。選曲にも、十分な配慮が感じられる。

南米のパッションと哀愁感、スタンダード曲の持つメロディの美しさ、モンクの楽曲の最大の特徴であるスクエアなノリと意外性のある即興的展開。収録された、それぞれの曲が持つ異なる個性を活かしつつ、ドミンゲスのピアノの個性で一本、筋を通していく。統一感のある美しい演奏の数々。スパニッシュ風味漂う、堅実タッチの素晴らしいソロ。

落ち着いた堅実なフレーズ、パーカッシヴではあるが耽美的なドミンゲスのタッチが美しい。聴いていて、心が落ち着き、清々しさが感じられる音。リズム&ビートの効いた演奏や、ポジティヴでバイタルなソロ・パフォーマンスを聴き続けた後、耳休めに最適な、珠玉のソロ・パフォーマンス。何度聴いても良い、聴く度に新しい発見があるソロ・ピアノの好盤です。

 
 

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