2024年10月 2日 (水曜日)

向谷ならではのフュージョン盤

我が国を代表するクロスオーバー&フュージョン・バンドである「カシオペア」。結成時から1989年までの野呂一生・櫻井哲夫・向谷実・神保彰によるメンバーでの活動の第1期の中、常にカシオペアはグループとしての活動を優先した為、1985年〜1986年、当初から期間を厳格に定めてソロ活動を展開したが、そのソロ活動も各自のソロアルバムを制作するだけに留めている。

向谷実『Welcome To Minoru's Land』(写真左)。1985年の録音、1986年のリリース。ちなみにパーソネルは、向井実がただ一人。向谷が、YAMAHA KX88, YAMAHA DX7, TX816×2, RX11, QX1, グランド・ピアノ, ROLAND TR-707, SBX-80, KORG SUPER PERCUSSION,MINI MOOG,EMULATOR II などを担当し、一人多重録音で制作した、向谷のソロ・アルバム第一弾。

当時最新のシーケンサーとリズムマシンを組み合わせての一人多重録音のアルバム。これをクロスオーバー&フュージョン・ジャズの範疇の音楽と認識した良いか、という議論があったが、採用されたリズム&ビートは、打ち込みであれ、ジャズを基本としたものなので、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの範疇として、僕は取り扱っている。
 

Welcome-to-minorus-land

 
ややもすれば、カシオペア・サウンドの中で埋もれがちだった、向谷の持つ音楽性とキーボード・テクニックの高さ、そして、シンセサイザー及びシーケンサー、リズムマシンに対する理解度と応用力の高さが、音となって示された、ユニークなソロ・アルバム。当時の電気楽器は、デジタルに対応したばかりで音が薄く、無機質な音質傾向にあったが、その弱点を克服する多重録音のテクニックと、木琴やピアニカ等の楽器を活用し、アナログ的な温かみを感じさせる工夫は見事である。

カシオペアの音世界の雰囲気を漂わせつつ、カシオペア・サウンドよりもポップでシンプルで柔軟な音とフレーズで、向谷独自のサウンドを展開している。2曲目の「ASIA」では、東南アジアをメインとした各国の音をサンプリングして、多重録音で音のコラージュを聴かせてくれる。3曲目の「Take The SL Train」は、鉄道ファンである向谷の面目躍如的な名演で、SLの音をサンプリングして、走行時のレールのつなぎ目音をリズムの基本にした音作りには思わず「ニンマリ」。

サンバ・フュージョンの「Road Rhythm」、アンビエントな「Kakei」、向谷と二人の子供達の会話を交えた、ほんわかアットホームでポップなフュージョン曲「Family Land」。一人多重録音で、ポップでシンプルで柔軟な向谷独自のサウンドに彩られた演奏が聴いていて、とても楽しい。向谷ならではのユニークなクロスオーバー&フュージョンの好盤だと思います。
 
 

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2024年9月23日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・31

ジャズの「奏法&演奏トレンド」の中で、よく出てくるものが「モード・ジャズ」。モード奏法をメインに展開するジャズのことだが、ジャズを聴き始めて、ジャズの勉強を始めて、まず、ぶち当たるのが「モード奏法」。

モード・ジャズとは「コード進行よりもモード (旋法)を用いて演奏される」ジャズ。1950年代後半以降、従来の和声(コード)に基づく即興演奏を、より自由に発展させるために編み出された奏法。ジャズの奏法の中で、言葉で説明すると何が何だか判らない奏法なんだが、音を聴くと「たちどころに判る」不思議な奏法である。

僕は、このモード奏法を、マイルスの『マイルストーン』と、ハンコックの『処女航海』で体感した。コードに合わせてアドリブを展開するハードバップの響きでは無い、基音をベースとしてアドリブを展開する、新しい響きのモード・ジャズが、この2枚のアルバムに詰まっていた。そして、マイルスの『カインド・オブ・ブルー』を聴いて、その盤に詰まっている「モード奏法」の凄さを理解した。

Herbie Hancock『Maiden Voyage』(写真左)。1965年3月15日の録音。ブルーノートの4195番。ちなみにパーソネルは、Herbie Hancock (p), Freddie Hubbard (tp), George Coleman (ts), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。邦題『処女航海』。マイルス・スクールで、直接、帝王マイルスの薫陶を受けた(ハバードは除く)若き精鋭達で構成されたクインテットの名演集。

この盤の演奏は、若き精鋭たちの「モード・ジャズ」の記録である。全ての曲がモード奏法で展開される。ハードバップの演奏とは全く雰囲気、響き、フレーズが全く異なる「モード奏法」が、聴いていてとてもよく判る。
 

Herbie-hancockmaiden-voyage

 
この盤はブルーノート・レーベルで製作されリリースされているが、当時のブルーノートは、リハーサルにまでギャラを払うことで有名で、演奏者達は何の拘りも無く、しっかりとリハーサルを積む。なんせギャラが出るのだ。

しかし、演奏者達は一流のジャズマン達で、リハーサルをしっかり積めば、本番の演奏の内容・精度は非常に高いものになる。恐らく、それが、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの狙いだったのだろう。

この『処女航海』というアルバムも、しっかりリハを積んだと感じる、内容・精度ともに非常に高いパフォーマンスが展開される。しかも、この盤の演奏は「モード」を基調としている。モードを基調として演奏について、しっかりリハを積んで本番に望んでいる。結果、この盤での「モード奏法」は、モード奏法の最高のサンプルの一つであり、モード奏法を体感するのに最適なアルバムとなっている。

モード奏法は、その奏法に関する手法は多種多様。バンド全体で統一感のあるモード奏法を展開するには、「モード奏法の基本的考え方」をメンバーで共有する必要がある。ブルーノートは、リハにギャラを払うくらいにリハの重要性を認識していて、特にモードの演奏に必要な「モード奏法の基本的考え方」のメンバー間共有を、このリハの中でしっかりさせていたと睨んでいる。

なぜなら、1960年代のモード・ジャズといえば、まずはブルーノートを聴け、と言われるくらい、ブルーノートの4000番台から4200番台には、モード・ジャズの優れたアルバムが沢山あるのだ。

この『処女航海』は、「ハンコックの考えるモード・ジャズ」に則ったモード・ジャズが展開されており、それが実に優れた内容となって、この『処女航海』はジャズ名盤として、21世紀に入っても語り継がれているのだ。
 
 

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2024年9月21日 (土曜日)

グラスパーの ”Code Derivation”

ロバート・グラスパー(Robert Glasper)は、米国ヒューストン出身のアメリカ人のジャズ・ピアニスト。1978年4月5日生まれだから、今年で46歳。ジャズ界の中では中堅も中堅。一番脂が乗った、一番充実した年頃である。

僕はこのグラスパーについては、2012年の第55回グラミー賞で最優秀R&Bアルバム賞を受賞したアルバム『ブラック・レディオ』で出会っている。内容的には明らかに21世紀の「ニュー・ジャズ」。

ジャズをベースに、R&B、ヒップホップ、ラップ、ネオソウル、ゴスペル、ブルースなど、米国ルーツ・ミュージックから、ストリート・ミュージックまでの音楽要素を融合した、独自の「グラスパー・サウンド」を確立している。

Robert Glasper『Code Derivation』(写真左)。2024年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、以下の通り。

ジャズ・サイドとして、Robert Glasper (p, key), Walter Smith III, Marcus Strickland (sax), Keyon Harrold (tp), Mike Moreno (g), Vicente Archer (b), Kendrick Scott (ds)。

ラップ、ヒップホップとサンプリング・サイドとして、Jamari (rap), MMYYKK (rap), Oswin Benjamin (rap), Taylor McFerrin (vo, prod), Hi-Tek (prod), Black Milk (prod), Kareem Riggins (prod), Riley Glasper (prod)。

宣伝のキャッチを見ると「ジャズとヒップホップの違いと両者に共通する遺伝子にフォーカスしたアルバム」とある。
 

Robert-glaspercode-derivation

 
グラスパー曰く「ジャズは文字どおり、ヒップホップの原点なんだ。だから“Derivation(起源)”という言葉をアルバム・タイトルに使った。俺はこの2つのジャンルの巨匠たちとプレイしてきた。だから、自分のバンドで、友人たちと書いたジャズの曲を、友人であるドープなプロデューサーたちにサンプリングしてもらうというプロジェクトをやりたかったんだ」。

そんな理屈はともかく、このアルバムの基本は明確に「ジャズ」。現代のエレクトリックで静的で「スピリチュアル」なジャズの「縦横に広がる音世界」をバックに、モーダルなフレーズが展開され、ヒップホップをメインとした音要素とボーカルが有機的に融合した「グラスパー・サウンド」が展開されている。

現代の最先端を行くリズム&ビートを伴いつつ、サックス、トランペットの奏でるフレーズは、どこか懐かしい、1960年代のモーダルな響き、クロスオーバー・ジャズな、少しサイケでスピリチュアルな響き。サンプリングを駆使した音作りらしいが違和感は全く無い。しっかりとした、現代のコンテンポラリーな「ニュー・ジャズ」が展開されている様で、しっかりとした聴き応えを感じる。

クールでスピリチュアルなリズム&ビートが良い。とても充実している。やはり、ジャズの命は「リズム&ビート」。この「グラスパー・サウンド」独特のリズム&ビートが、この盤の音世界の「キモ」。

各楽器の響きとフレーズは明らかに「ジャズ」。そこにラップやヒップホップが絡むのだが、これがまあ「違和感ゼロ」。グラスパーの言う「ジャズは文字どおり、ヒップホップの原点」という意味が、このアルバムの演奏の数々を聴いて、実に良く理解できる。

実験的な側面を持つ企画盤であるが、そんな「実験臭さ」は全く感じない。僕は、このアルバムを、21世紀の、現代のコンテンポラリーなニュー・ジャズと聴いた。ジャズの最大の特質である「融合」を最大限に生かして、新しい「融合ジャズ」の音世界を聴かせてくれる。
 
 

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2024年9月17日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・29

ジャズを聴き始めの「ジャズ者初心者」の方々向けに、様々な入門盤紹介本や、初心者向けのジャズ盤紹介本が刊行されている。どれもがほぼ同じアルバムを言葉を変えて紹介しているので、どの紹介本を買ってもあまり変わりがない。

これって、差し障りのない、全方向のオールマイティーな盤を選択している訳で、ジャズを聴いてみたい、聴いてみようという向きには「隔靴掻痒」の感は否めない。

Oscar Peterson『We Get Requests』(写真左)。1964年10月19日、11月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Oscar Peterson (p), Ray Brown (b), Ed Thigpen (ds)。邦題『プリーズ・リクエスト』。ピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」の名盤であり、長年所属したヴァーヴ・レコードでの最終作である。

あまりにテクニックが優秀で破綻がなく、テクニックをひけらかすことも無い。ドライブ感が相当に高く、スイング感が半端ない。歌心も趣味が良く、耽美的でリリカルなもの、バップばりばりの疾走感のあるもの、何でも弾きこなす才能の高さは唯一無二。

このジャズ・ピアニストとして「優等生」なピーターソンについて、20世紀の我が国のジャズ評論家筋では評判が良くない。どころか「スイングの権化」と揶揄する評論家が出てくる始末。この我が国での偏った評価が、ジャズ者の「聴くべきピアニスト」から除外されるケースを引き起こしているから厄介である。
 

Oscar-petersonwe-get-requests  

 
ただし、この『プリーズ・リクエスト』を聴けば、それが偏った評価であることに気が付く。この盤でのピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」は、ピアノ・トリオの最高峰の一つであり、ピアノ・トリオの目標となる優れたユニットである。

収録された全10曲中、ピーターソンのオリジナルは10曲目の「Goodbye J.D.」だけ。残りの9曲はジャズ・スタンダード曲。このジャズ・スタンダード曲が聴きもので、アレンジが絶妙。そのアレンジも、そんじょそこらのものでは無く、このピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」だけが完璧に演奏出来る、かなり高度なアレンジである。

ジャズ・ピアノ・トリオが、メンバーを厳選して相性が合えば、相当な表現力と訴求力を発揮することが出来ることを、このピーターソンの「黄金の“ザ・トリオ”」の演奏が証明している。

優れた演奏とは、一聴すると「シンプル、単純」に聴こえて、ジャズ者初心者ほど「誰でも演奏できるレベルで聴く価値なし」と思ってしまうのだが、それは間違い。テクニックが優秀な演奏ほど、優れたアレンジに出会うと、耳当たりの爽快な、スイング感&ドライブ感抜群の「聴きやすい」演奏に昇華する。

その耳当たりの爽快な、スイング感&ドライブ感抜群の「聴きやすい」演奏こそが、ジャズを聴き始めの「ジャズ者初心者」の方々にピッタリの入門盤なのだ。この『プリーズ・リクエスト』は、ジャズ者初心者向けのジャズ・ピアノ・トリオ入門盤の最初の一枚、と僕は評価している。
 
 

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2024年9月11日 (水曜日)

チック&オリジンの ”Change”

確かに、チックって、いつも、質の良い「ジャズの新しい何か」を提示してくれるのだが、世の中に受けないと思ったら、一旦、さっさと撤収することが多いので、このチックの提示する「ジャズの新しい何か」に違和感を感じた方々は、やっぱりチックもそう思って引っ込めた、と勘違いしているきらいがある。

Chick Corea & Origin『Change』(写真左)。1999年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, marimba), Bob Sheppard (b-cl, fl, bs, as, ss, ts), Steve Wilson (cl, fl, as, ss), Steve Davis (tb), Avishai Cohen (b), Jeff Ballard (ds), チック・コリア&オリジンとしては初のスタジオ録音。

リード楽器 x2+トロボーンのフロント3管のセクステット編成。まるで、1960年代のジャズ・メッセンジャーズの様な編成である。しかし、出てくる音は全く異なる。今回、改めて聴いてみて、21世紀に入って、その演奏トレンドが顕著となる「ネオ・ハードバップ」の走りの様な内容に、ちょっとビックリ。

モード&コードのごった煮な展開は1960年代と同じだが、限りなくフリーに展開しているところが耳に新しい。それも、激情に任せた、本能に赴くままの展開ではなくて、あくまで理知的に、あくまでクールに、限りなくフリー&スピリチュアルに展開しているところが新鮮。
 

Chick-corea-originchange

 
モードな展開も、コードな展開も理知的でクール。出てくるフレーズはファンクレス。欧州の純ジャズ的な透明度の高い、理路整然としたクールな展開。米国出身のジャズマンが中心のセクステットで、欧州の純ジャズ的な展開をする。この辺りは、21世紀に入って、ECMレーベルが標榜した「メインストリーム・ジャズのボーダーレス化」に通じるものがある。

米国ジャズの面々が欧州な純ジャズをやるのだから、この盤がリリースされた当時は、皆、違和感を感じたのだろうな。故に、このチック・コリア&オリジンは全く話題にならなかったどころか、チックはもう終わった、なんて揶揄されたものだ(笑)。

このチックがオリジンで提示した「ジャズの新しい何か」は、最終的に、トリオ演奏に焼き直されて、2006年の『Super Trio』で再提示され、今度は世の中から受けに受け、評価されるのだから、面白いといえば面白いし、当時、チックはもう終わった、なんて揶揄した方々については、意外と無責任やなあ、とも思ったりする。

チックのピアノのフレーズはどこから切っても「チック流」の響きが満載だし、リズム隊としては、ジェフ・バラードの変幻自在、硬軟自在なドラミングは、後の「ネオ・ハードバップ」の響きが満載。オリジンとしての個性的なグループサウンズの響きはしっかりとキープされていて、スタジオ盤として、良好な出来だと思う。
 
 

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2024年9月10日 (火曜日)

良い, Senri Oe『Class of ’88』

大江 千里(おおえ せんり、英語: Senri Oe)、1960年9月生まれ。今年で64歳。1983年に、シンガーソングライターとしてプロ・デビュー。「十人十色」「格好悪いふられ方」「Rain」「ありがとう」などのシングルがヒット。Jポップの世界でメジャーな存在となる。

が、2008年ジャズピアニストを目指し渡米、NYのTHE NEW SCHOOL FOR JAZZ AND CONTEMPORARY MUSICに入学。2012年、1stアルバム「Boys Mature Slow」でジャズ・ピアニストとして本格デビューを果たしている。以降、6枚のオリジナルジャズアルバムをリリース。そして、昨年の5月、大江千里デビュー40周年記念アルバムをリリース。

Senri Oe『Class of '88』(写真左)。2023年5月のリリース。NYブルックリンの「The Bunker Studio」での録音。Senri Oe "大江千里" (p), Matt Clohesy (b)、Ross Pederson (ds)。

ピアノの大江千里をリーダーにした、ピアノ・トリオ編成の、デビュー40周年記念アルバムである。ジャケ担当は江口寿史。素晴らしいジャケ・イラスト。この大江千里のアルバムの内容に直結している様なイメージで秀逸。

宣伝文句には「Jポップ時代の名曲のセルフカバーと新曲が収録された作品」とあるが、それがこのトリオ盤の評価には直結しないだろう。「Jポップ時代の名曲のセルフカバー」が、当アルバムの「売り」なんだろうが、このアルバムをしっかり聴けば良く判るが、「Jポップ時代の名曲のセルフカバー」など、あまり関係がないことに気が付く。
 

Senri-oeclass-of-88  

 
収録されたどの曲も、印象的なフレーズを伴った、流麗な曲ばかり。どれが「Jポップ時代の名曲のセルフカバー」で、どれが自作曲なのか、ほとんど関係が無い。とにかく「良い曲」がズラリと並んでいる。

そんな「良い曲」を「良いアレンジ」で料理して、ピアノ・トリオ演奏で聴かせる。ジャズ・ピアニスト大江千里の面目躍如な想像の成果。「Jポップ時代の名曲」は、ピアノ・トリオ演奏の素材でしかない。

ミッドテンポがメインの、耽美的でリリカルでスピリチュアルなフレーズ。温和で温厚で耽美的なスピリチュアルな響きが印象的。これが、大江千里のピアノの個性と理解する。今までのジャズ・ピアノの歴史の中に無かった、「温和で温厚で穏やか」な、耽美的スピリチュアル・ジャズな響き。大江千里のピアノは、どれもが普遍的に「温和で温厚で穏やか」。これが意外と癖になる。

この盤の大江千里のジャズ・ピアノを聴けば、彼が「彼なりの個性」と「彼ならではの響き」を獲得していることに気づく。この盤には、Jポップ時代のシンガーソングライターの大江千里は全く存在しない。存在しているのは、努力の結果、自分なりの個性と響きを獲得した、ジャズ・ピアニストの大江千里。

この盤は、デビュー40周年記念アルバムとはいえ、現時点での、リアルタイムでの「ジャズ・ピアニストの大江千里」を愛でる盤である。
 
 

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2024年9月 6日 (金曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・27

この盤は、僕がジャズ者初心者の頃、よく聴いた。確か、当時、大手レコード屋が、ジャズ者初心者向けにアルバム紹介の冊子を配っていて、それをもらって、片っ端から「購入しては聴く」を繰り返していた。全40枚あったと思う。

そんな中に、このアルバムはあった。ジャケは「秋の公園のベンチで日向ぼっこをして寛ぐ老人の男性」の写真をあしらっていて、ちょっと違和感があったが、思い切って購入したのを覚えている。

Horace Silver『Song for My Father』(写真左)。1963年10月31日、1964年10月26日 の2回のセッションの寄せ集め。ここでは、CDリイシュー時のボートラの扱いは割愛する。ちなみにパーソネルは、当然、以下のの2つの編成に分かれる。

1963年10月31日の録音(#3, 6)が、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。1964年10月26日(#1. 2. 4. 5)の録音が、Horace Silver (p), Carmell Jones (tp), Joe Henderson (ts), Teddy Smith (b), Roger Humphries (ds)。

この盤の大ヒット・チューン、冒頭のタイトル曲「Song for My Father」は、1964年10月26日のパーソネルでの演奏。併せて、2曲目「The Natives Are Restless Tonight」、4曲目「Que Pasa」、5曲目「Que Pasa」も同じパーソネルでの演奏。カーメル・ジョーンズのトランペットが効いている。ねじれたモーダルな演奏に走らない、ストレートアヘッドなファンキー・テナーを聴かせるヘンダーソンも聴き逃せない。
 

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一方、3曲目「Calcutta Cutie」と5曲目は「Lonely Woman」は、1963年10月31日の録音で、パーソネルは、お馴染みの、ミッチェルのトランペット、クックのテナーがフロントの、伝説のシルバー・クインテット。手慣れた、聴き慣れた、シルバー流ファンキー・ジャズな音世界が広がる。

どちらのセッションの演奏も、どこか理知的な雰囲気が漂う、シルバー流のファンキー・ジャズなんだが、ファンキー度合いは、1964年のセッションの方が濃い。併せて、1964年のセッションは、ポップでメジャーな雰囲気で開放感がある。同じクインテットの演奏でも、1964年のセッションの演奏では、いわゆる「イメチェン」に成功している。

冒頭の「Song for My Father」が、かなりポップでコマーシャルなファンキー・ジャズなんだが、2曲目以降は、ジャズ者初心者が聴いても判り易い、理知的なシルバー流のファンキー・ジャズが続くので、アルバム全体に統一感もあって、よくまとまったシルバーのリーダー作だと思う。やはり、この盤は、ジャズ者初心者にピッタリのファンキー・ジャズ盤だと言える。

ちなみに、本作のタイトル曲「Song For My Father」はホレス・シルバーが自分の父親に捧げたもの。この盤のジャケ写の「帽子を被った葉巻のおじいさん」が実はホレス・シルヴァーの父君そのものである。

ブルーノート・レーベルって、モダン・ジャズの硬派でならしたレーベルなんだが、こういうジャケ写での「粋な計らい」をする、お茶目なレーベルでもある。
 
 

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2024年8月27日 (火曜日)

松岡 直也 ”Long for The East”

松岡 直也は、我が国におけるラテン・ジャズの第一人者。フュージョン・ブームの折には「ラテン・フュージョン」で一世を風靡した。聴けば直ぐに「松岡 直也のラテン・ジャズ」と判るくらい、松岡の個性溢れるアレンジが秀逸。コンテンポラリーな純ジャズ志向、フュージョン・ジャズ志向の「両刀使い」で、我々の耳を楽しませてくれた。惜しくも、2014年4月29日に76歳で逝去している。

松岡 直也『Long for The East』(写真)。1984年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、松岡 直也 (p, syn), 津垣 博通 (key), 和田アキラ (g), 高橋ゲタ夫 (b), 広瀬 徳志 (ds), ウィリー長崎, カルロス菅野 (perc), 久保田 利伸, 楠瀬 誠志郎 (vo)。和ラテン・ジャズの第一人者、松岡 直也の個人名義アルバムの16枚目。

アルバムの冒頭「The Latin Man」は、ボーカル入りラテン・フュージョン。ボーカルが入って、いよいよ、和フュージョンも、米国フュージョンの如く、俗っぽいポップス・ミュージック化するのか、と暗然たる思いで聴き始めたら、なかなかにスケールの広い、日本人離れしたブラコンっぽい歌唱に耳を奪われる。なんと、このボーカル、ソロ・デビュー前の「久保田利伸」とのこと。コーラスには楠瀬 誠志郎が参加して、これまた良い味を出している。
 

Long-for-the-east

 
松岡のピアノ、シンセが大活躍。ラテンのフレーズを散りばめたアドリブ・フレーズは見事。シンセの使い方はセンスがよくて、陳腐な音色になっていないところが、これまた見事。ピアノやシンセの音色を「映えさせる」アレンジが、これまた見事。フュージョンにおけるラテン・ジャズというと、ちょっと陳腐で俗っぽい内容に陥りそうなんですが、そうはならず、小粋で躍動感&爽快感溢れる、クールでスマートな「ラテン・フュージョン」となっているところが秀逸。

サイドマンでは、土方のギターが素晴らしいパフォーマンスを披露している。千変万化な「芳醇で切れ味の良い」音色。クールでスマートな「ジャズロック志向」フレーズ展開。聴く者を圧倒する「高テクニック」。松岡のピアノ&シンセと絡むh土方のギターは、とってもスリリング。5曲目「The End Of The Way」に参加している、当時、プリズムから復帰した和田のギターも印象的。

アルバム全体を覆う、メランコリックで叙情的な響きが印象的。アレンジが優秀なので、インスト曲に飽きがこない、リピートに耐える演奏の数々。アルバム全体にラテン・テイストで統一感を醸し出し、リズム&ビートは「ジャズ・ロック」。僕はこのアルバムについては、松岡直也の名盤の一枚、と評価している。ジャケも秀逸。
 
 

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2024年8月26日 (月曜日)

今田 勝 ”アンダルシアの風”

台風10号の予報が「迷走」している。当初予報よりもどんどん西に西に進路予想がずれていく。テレビのワイドショーの天気予報のコーナーの気象予報士は概ね、変な解説に終始している。もはや、テレビの情報を鵜呑みできる状況では無い。

台風10号はどんどん西に逸れていくが、関東地方は当初予報は「曇り」だったのが、連日、ギラギラの真夏の太陽が照りつけ、猛暑日が続いている。「命を守る為の引き篭もり」も、もう一ヶ月を過ぎた。気がつけば、8月の最終週。来月からは9月である。

そろそろ「夏はボサノバ」でもないだろう。とはいえ、この酷暑な日々の連続では「熱いジャズ」は辛い。フリーなどはもってのほか。ということで、爽やか系のフュージョン・ジャズ盤を聴くことにした。和洋のフュージョン・ジャズ盤の優れどころを選盤する。

今田勝『アンダルシアの風』(写真左)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、今田 勝 (ac-p, el-p), 古野 光昭 (b), 守 新治 (ds), 今村 裕司 (perc), 渡辺 香津美 (g)。今田勝のトリオ(今田・吉野・守)にふたりのゲストが参加。全6曲の全てが、スパニッシュ・ジャズ&サンバ・ジャズ志向。

今田のトリオの演奏は、スパニッシュ&サンバなフレーズとリズム&ビートですっ飛ばすが、安易に当時流行のソフト&メロウに走らず、「スパニッシュとサンバとジャズの融合」レベルのクロスオーバー・ジャズな雰囲気が先行していて、甘々のイージーリスニングに陥っていないのは立派。
 

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音の雰囲気はスパニッシュ。ラテン・ジャズと言えなくは無いが、1960年代に流行った、コッテコテ妖艶なラテン・ジャズではない。当時のコンテンポラリーな純ジャズ的演奏展開は意外と聴き応えがある。

今田のアコースティック・ピアノがメインの弾きっぷりが良い。こういうスパニッシュ&ラテンなフレーズを速弾きするには、アコースティック・ピアノより、エレクトリック・ピアノをメインに選んでしまいそうなんだが、今田はあくまで、アコースティック・ピアノがメインで弾く。

エレクトリック・ピアノも弾くには弾くんだが、音的には、アコースティック・ピアノの音志向を逸脱しないレベルのエレピの音質に留めている。当然、シンセには手を染めていない。この辺りに、和の純ジャズ出身の今田の矜持を感じる。

ゲストで入っている渡辺香津美のエレギはさすが。今田の示す音志向に合致した、クロスオーバーで、メインストリーム志向の8ビートなエレギのフレーズを連発する。今村裕司のパーカッションの参加も効果的。躍動感と清涼感溢れるパーカッションは、今田のスパニッシュ&ラテン志向の音を、よりスパニッシュ&ラテンな雰囲気を増強している。

ちょっと長いが一言で言うと「清々しい躍動感と爽快感がメインの、クロスオーバーな、スパニッシュ&サンバ・ジャズ志向のコンテンポラリーな純ジャズ」と表現したら良いだろうか。我が国のクロスオーバー・ジャズの好盤の一枚です。
 
 

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2024年8月25日 (日曜日)

夏はボサノバ・ジャズ・その38

しかし、お盆も過ぎて、もうあと1週間で8月もおわるというのに「暑い」。暑い、というより酷暑である。「命が危険な暑さ」が午前中からで、もう朝9時には「命を守る引き篭もり」をせざるを得ない。日差しは強烈で、外に出て日に当たろうものなら、数十秒で露出している皮膚が「ジリジリ」してくる。

「命を守る引き篭もり」が7月の終わりから続いているのだが、引き篭もりの間は、ジャズを聴くか、ブログを整理するか、読書をするか、のいずれか。もちろん、家事はしっかりやっている。

ジャズはエアコンが効いた静かな部屋の中なので、色々な種類のジャズが聴ける。それでも、ハードな内容のジャズを聴いて耳がちょっと疲れた時は、感覚のリフレッシュを兼ねて、夏は「ボサノバ・ジャズ」をかける。

Sérgio Mendes and Brasil '66『Equinox』(写真)。1966年11月8日、1967年2月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Sérgio Mendes (p, org, vo), John Pisano (g), Bob Matthews (b, sitar, vo, Tracks 2–10), William Plummer (b, sitar, vo, Track 1), José Soares (perc, vo), João Palma (ds), Lani Hall, Janis Hansen (vo)。

セルジオ・メンデスとブラジル'66の2枚目のアルバムで、1967年4月にリリースされている。ボーカリストにはラニ・ホールとジャニス・ハンセンが参加している。リーダーのセルジオ・メンデスはピアノと、意外とプログレッシブなオルガンを弾いている。
 

Sergio-mendesandbrasil-66equinox

 
内容的には「ボサノバ&サンバ・ジャズ」で、ボサノバ&サンバのリズム&ビートが優しく心地良い。1966年から1967年の録音なので、ソフトロックっぽい要素も入っていて、出てくる音は意外と新しい感覚に溢れている。全10曲中ブラジル人アーティストの作品が7曲、スタンダード・ナンバーが3曲と「ボサノバ&サンバ」色が濃い。

とにかく、従来からの手垢の付いた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の音ではない。それがこの盤の最大の個性。ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」なので、音志向の基本は「ボサノバ&サンバ」。やはり、優れた「ボサノバ&サンバ・ジャズ」は、アレンジが命であることを再認識する。

そして、女性ボーカルが印象的。「ボサノバ&サンバ・ジャズ」には、女性ボーカルがよく似合う。全編に渡って、女性ボーカルが効果的に入っていて、ちょっとコケティッシュに、ちょっとアンニュイに、気怠く唄う女性ボーカル。「ボサノバ&サンバ」の雰囲気を増強する。

当時のポピュラー作品のカヴァーでお茶を濁して、セールスを追求するのでは無く、ジョビンやジルベルトを始めとした、ブラジル人アーティストの作品で固めた、ブラジル側からの「ボサノバ&サンバ・ジャズ」の好盤です。
 
 

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