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2019年2月17日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・35

1970年代後半から1980年代前半までが「フュージョン・ジャズ」の時代。当時、我が国では猫も杓子もフュージョン・ジャズで、ハードバップなどの純ジャズについては「時代の遺物」扱いされていた。しかし、である。1980年代半ば、純ジャズ復古のムーブメントが起こって、純ジャズが復権したら、とたんに今度はフュージョン・ジャズが「異端」扱いである。

日本のジャズのトレンドって、当時のジャズ雑誌、評論家が牽引するのだが、基本的に無節操なところがある。現在に至っては、フュージョン・ジャズはそもそもジャズじゃない、などと言い出す始末。ジャズは懐の深い音楽ジャンルなので、フュージョン・ジャズもジャズの範疇に入れても差し支えない。フュージョン・ジャズだって良いところは沢山あるし、聴き応えのある好盤も多い。

Jazz Funk Soul『Life and Times』(写真左)。今年1月のリリース。Jazz Funk Soulは、Jeff Lorber (key, arr), Everette Harp (sax), Chuck Loeb (g) の3人で結成された、コンテンポラリーなフュジョン・ジャズ・バンド。 リーダーのジェフ・ローバーは、フュージョン〜スムース・ジャズ畑の優れたキーボード奏者兼アレンジャー。その個性は、ボブ・ジェームスに比肩すると僕は思っているが、ジェフ・ローバーって我が国では全くもって名が通っていない。
 

Life_and_times  

 
ジェフ・ローバーは、米国のフュージョン〜スムース・ジャズの世界では有名な存在で、リーダー作も相当数リリースしている。が、我が国では人気は無い。でも、聴いてみたら判るが、彼のキーボード・ワークとアレンジはかなりレベルが高く、内容が濃い。なぜ、この人は人気が無いのか、不思議でならない。今回の『Life and Times』でも、ローバーのキーボードは冴えに冴えまくっている。スムース志向ではあるが、結構、骨太で硬派なキーボードである。

ギターのチャック・ローブは「フォープレイ」での活躍でも判る様に、実にファンキーでスムースなエレギを弾く。爽快感とアーバン感どっぷりで、硬派に骨太にファンキーなフレーズを弾きまくる。そして、エヴァレット・ハープは芯があって雰囲気満点。力感溢れるファンキーなフレーズを軽々と吹く。僕は彼の名前を知らなかったが、この盤で聴く限り、なかなかの実力者と見た。

良質のフュージョン・ジャズ盤です。グループ名のとおり「ジャズ+ファンク+ソウル」な音世界が全く以て「フュージョン・ジャズ」していて、聴いていて心地良い。僕はこの盤、最近の「ながら聴きのヘビロテ盤」として、お世話になっています。こういう優れた内容の盤を聴くと、フュージョン・ジャズもまだまだ深化しているな、と感じます。

 
 
東日本大震災から7年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2019年2月16日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・140

このピアニストも「レジェンド」である。1941年10月生まれ、キューバ出身のジャズ・ピアニスト。「神の手」といわれる超絶技巧なテクニック。カリビアンの血が成せる躍動感あるリズム。キューバ出身だからといって、躍動感溢れる下世話なリズム&フレーズばかりでは無い。クラシックの要素も取り込んだ繊細かつ情熱的なメロディーがアースティックな雰囲気を醸し出す。なかなかに隅に置けないジャズ・ピアノ。

そのレジェンド級のピアニストとは「Chucho Valdés(チューチョ・ヴァルデス)」。アフロ・キューバンなフュージョン・バンド「イラケレ」のリーダーでもある。先に書いた様にテクニック申し分なく、カリビアンの血が成せる躍動的なリズム、明るく明快な激しいタッチと繊細なフレーズが個性的なジャズ・ピアノなんだが、我が国では実に人気が無い。その名もマイナー。ジャズ・ピアニストの一覧に載っていなかったりする。

Chucho Valdés『Jazz Batá 2』(写真左)。2018年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chucho Valdés (p), Yelsy Heredia (b), Dreiser Durruthy Bombalé (batás, vo), Yaroldy Abreu Robles (per)。解説を読むと「今作は1972年リリースのチューチョの小グループでのリーダー作『Jazz Batá』のコンセプトを再確認、新たに練り直し作品にしたもの」だそうだ。まず、僕はこの『Jazz Batá』を知らない。よって、この盤を純粋にジャズ・ピアノの好盤として聴いてみたい。
 

Jazz_bata_2  

 
ちょっと不思議な響きの打楽器の音が聴こえる。バタドラムというキューバの両面太鼓、これをリズム&ビートの基としている。パーソネルを見渡すと、確かにドラマーの名前が無い。このバタドラムのビートが独特のリズムのうねりを生み出している。この独特のリズム&ビートをバックに、ヴァルデスの超絶技巧かつパーカッシヴなピアノが絡む。米国ジャズには無い、ラテンな躍動感。

しかし、ヴァルデスのピアノはラテンな躍動感に留まらない。フリー・インプロな要素あり、モーダルなコンテンポラリー・サウンドに展開したり、ポリリズミックな連打が出てきたと思ったら、ゆったりとリラックスしたラテン調になったりと、実に多彩でアーティスティックである。ヴァルデスのピアノが、これだけ伝統的でメインストリームなジャズ・ピアノ志向だとは思ってもみなかった。少なからず感動した。

キューバ出身でありながら、ゴスペル調、マンボ調、サルサ調にも展開するところは、まさに「ジャズは融合の音楽である」ということを思い出させてくれる。アフロ・キューバンなピアノ・ジャズだからといって、俗っぽいなんてことは全く無い。逆にアーティスティックですらある。21世紀に入ってから、僕はヴァルデスのピアノに出会ったが、これは幸せなことであった。今回の新盤を聴いて、その意を改めて強くした。好盤である。

 
 
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2019年2月13日 (水曜日)

「即興」の音楽の面白さの1つ

クラシックは「再生」の音楽だという。譜面があって、そこに音符が書かれていて、弾くスピードは指定され、フレーズ毎の音の強弱、弾くタッチの種類まで、克明に指定されている。ピアニストはその譜面を理解し、その譜面通りに弾こうとする。譜面通り弾くことこそが作曲者の意図するピアノ曲だ、ということ。譜面通り弾くことが基本。よって「再生」の音楽である。

ジャズは「即興」の音楽。譜面は基本的に無い。あってもテーマ部のアンサンブルの楽譜のみ。アドリブ部の譜面は基本的に無い。弾くスピード。フレーズ毎の音の強弱、弾くタッチの種類などはいずれも全く指定されていない。その曲をピアノで表現するイメージは、ピアニストの感性とテクニックに委ねられる。その曲を弾く、その時その時でイメージが変わる。よって「即興」の音楽である。

よって、ジャズの世界では「再生」というキーワードは基本的に無い。例えば、ジャズピアニストの数だけ、その曲を弾く、タッチやイメージ、解釈が存在するのだ。クラシック・ピアノの場合、その曲を弾くイメージは基本的にどのピアニストも同じ。同じイメージの中でピアニスト毎の解釈があって、微妙なニュアンスのレベルなんだが、しっかりと個性が発揮される。
 

Ray_bryant_1956  

 
このところ、オスカー・ピーターソンのピアノ・トリオの聴き直しているのだが、その合間に別のピアニストのトリオを聴く。こんなに違うんだ、と改めてビックリする。今日、ピーターソンの合間に聴いたピアノ・トリオ盤が『Ray Bryant Trio(1956年)』(写真左)。パーソナルは、Ray Bryant (p), Wyatt Ruther (b), Kenny Clarke (ds, tracks 2, 4, 8 & 9), Osie Johnson (ds, tracks 3, 10 & 12), Jo Jones (ds, tracks 1, 5–7 & 11), Candido (perc, tracks 1 & 7) 。2トラックだけパーカッションが入るが、基本はピアノ・トリオ。

このトリオ盤は、レイ・ブライアントのピアノをとことん愛でる盤。ファンクネスがほど好く漂い、右手のタッチは明快でよく回る。左手は低音がゴーンと伸びる様に響いて、粘りがあってリズミカル。両手で奏でるユニゾン&ハーモニーはゴスペル風な哀愁を仄かに帯びた響きが漂う。特に彼の個性はラテン風の曲やブルース曲で発揮される。これがたまらない。

オスカー・ピーターソンとレイ・ブライアント。同じ曲を弾く二人のジャズ・ピアニスト。ピアノ・トリオとしての演奏の展開は同じハードバップで同じ曲を演奏しているのに、そのイメージ、弾くスピード。フレーズ毎の音の強弱、弾くタッチの種類など、全く異なる。それでも、ピアノ・トリオとしての演奏の展開は同じハードバップ。これがジャズの面白さの1つであり、即興音楽の面白さなのだ。

 
 
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2019年2月11日 (月曜日)

メルドーのピアノ・トリオの深化

近代のジャズ・ピアノが確立されて、もう60年以上が経ったことになる。ピアノ・トリオとしては、バド・パウエルがその基本スタイルを確立して、インタープレイがメインの現代ピアノ・トリオの始祖はビル・エヴァンス、そして孤高の人、オスカー・ピーターソン。それから、モードの時代以降は、ハービー・ハンコック、チック・コリア、キース・ジャレットがジャズ界を席巻し、それから、である。

1980年代後半からの純ジャズ復古以来、目立ったリーダー役のピアニストが不在だった。が、2000年代になって、ジャズ・ピアノの指針のひとつとなったピアニストが「ブラッド・メルドー(Brad Mehldau)」。僕もこのメルドーのピアノは好きで、彼の初期の頃のリーダー作「The Art of the Trio」シリーズは今でも聴き直している位だ。

Brad Mehldau Trio『Seymour Reads the Constitution!』(写真左)。2018年のリリース。ちなみにパーソネルは、Brad Mehldau (p), Larry Grenadier (b), Jeff Ballard (ds)。メルドーの鉄壁のトリオである。全8曲中、3曲はメルドーのオリジナル、ポップ&ロック系の曲のカヴァーについては、ポール・マッカートニーの「Great Day」、ブライアン・ウィルソンの「Friends」をカヴァーしている。
 

Seymour_reads_the_constitution  

 
メルドーのピアノは相変わらず個性的で素敵だ。力感溢れる耽美的な右手、コードの呪縛を逃れ、自由にベースラインを動き回る左手。メルドーのピアノは、21世紀に入ってからのジャズ・ピアノの指針の1つであったことは確か。この最新作でもメルドーのピアノは「安定」の一言。メルドー独特のフレーズもそこかしこでキメまくっていて、安定の「聴き応え」である。

メルドーの鉄壁のトリオを聴いていて、何時もながら、ラリー・グレナディアのベースとジェフ・バラードのリズム・セクションに耳を奪われる。この柔軟自在、硬軟自在のリズム&ビートはなかなか無い。メルドーが奏でる様々なフレーズに、クイックに柔軟に追従し、堅実なサポートを供給する。このリズム・セクションあってのメルドーの個性的なピアノがある、と言っても良いだろう。

このメルドーの新作には「変革」や「進化」は無い。しかし、確実にメルドーのピアノ・トリオの「深化」が聴いてとれる。テクニック的にもアドリブ展開のイマージネーションについても充実度は高く、ピアノ・トリオとして「高水準」を維持しているのは立派だと思う。ピアノ・トリオ者にとっては避けられないメルドーの新作である。

 
 
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2019年2月 8日 (金曜日)

ジャズ・ピアノの父のトリオ盤

このピアノ・トリオ盤、ジャズ喫茶で初めて聴かせて貰ったのって、何時だったかなあ。ジャズを聴き始めて15年経った位の頃だったか、神保町の「響」だったような思い出がある。この盤、廃盤になって久しく、当時はまだLPの中古屋って、あんまり無かったから、この盤を入手したくても、まず店先で見たことが無い。で、ジャズ喫茶に行って、リクエストと相成った訳である。

Earl Hines『Fatha』(写真左)。1965年、Columbiaレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Earl Hines (p, vo), Ahmed Abdul-Malik (b), Oliver Jackson (ds)。ピアノ・トリオ構成。このリーダー作がリリースされた年で62歳。ジャズメンとして油の乗り切った年齢。聴けば判るが、リーダーのアール・ハインズのピアノのスタイルは、当時のメインのスタイルであった「ハードバップ」では無い。それでも、とても渋くて格好良いモダンなピアノに耳を奪われる。

冒頭の「Frankie And Johnnie」を聴いていると、右手はハードバップなんだが、左手がハードバップでは無い。左手が聴いていると「これはスイングかブギウギではないのか」と思う。2曲目の「The Girl From Ipanema」は当時流行のボサノバの名曲。これは当時の流行曲なので、ハードバップっぽく弾いている。でも3曲目の「Believe It Beloved」で、やっぱり「これはスイングの左手や」と確信する。
 

Fatha_earl_hains  

 
Earl Hines(アール・ハインズ)。ハインズはジャズピアノの開発途上で最も影響力のある人物の一人だったとされる(Wikipediaより)。よって、ハインズは「ジャズ・ピアノの父」と呼ばれる。ホーンライクな力強い右手のシングル・トーン、複雑でより開放されたリズムを取り入れた躍動感溢れる左手のベース・パート。このハインズのピアノの奏法が、スイング期に一世風靡した。

そんな「ジャズ・ピアノの父」のトランペット・スタイルと称される奏法がこのアルバムで堪能出来る。渋い渋い硬派な「モダン・ピアノ」である。「St. James Infirmary Blues」と「Trav'lin All Alone」の2曲では渋くて素敵なボーカルも披露している。まるで、ルイ・アームストロング(愛称サッチモ)の様だ。と思ったら、ハインズとサッチモって「スイング期の盟友」なんですね。楽器を弾いて唄も唄う。スイング期のジャズメンの嗜みです。

ハインズは1903年生まれ。同じ頃に生まれたジャズメンを調べてみたら、ジェリー・ロール・モートン1890年、デューク・エリントン1899年、ルイ・アームストロング1901年、カウント・ベイシー1904年、ファッツ・ウォーラー1904年。これらのメンバー達と一緒に、同じジャズの時代を生きていた。確かに「ジャズ・ピアノの父」である。

 
 
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2019年2月 1日 (金曜日)

若手日本人男子がやっと出てきた

日本人ジャズの中で若手男子の影が薄い、というのがここ10年来の僕の悩み。若手女性はどんどん有望株が出てきて、なかなかの内容のリーダー作が沢山リリースされた。しかし、である。若手男子は下火で、ここ10年の若手男子のニュースターについては、あまり具体的な名が浮かばない。しかし、最近、やっと頭角を現す若手男子のジャズメンが出てきた。

今回、ジャズ雑誌「ジャズライフ」の2018年度「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」で紹介されたアルバムを聴き進めているんだが、この人の名前は実は初めて知った。「曽根 麻央」である。曽根は1991年生まれ。ネットで彼のバイオグラフィーを読むと「幼少期よりピアノを始め、ルイ・アームストロングに憧れ8歳でトランペットを手にし、9歳で音楽活動をスタートさせる」とある。

16歳でタイガー大越と出会って渡米を志す。18歳でバークリー音楽大学へ、2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席で卒業。おお、エリートやん。2018年メジャー・デビュー。う〜ん、経歴は素晴らしいなあ。今年で28歳になる。若手バリバリのニュースターである。で、今回、この曽根のリーダー作を初めて聴いた訳である。

で、このアルバムに詰まっている音を聴いて、僕はほとほと感心した。やっと、日本人男子若手も出てきたなあ。この盤の音は、これまでの様な「米国ジャズの背中を追ったもの」では全く無い。東欧、イスラエルから中近東、東南アジア、そしてアフリカ、そして沖縄、ラテン。多国籍な音が融合した、エスニックな雰囲気が濃厚な純ジャズである。
 

Infinite_creature  

 
曽根 麻央『Infinite Creature』(写真左)。セルフ・プロデュースによる2枚組デビューアルバムである。ちなみにパーソネル、Ⅰ枚目はAcoustic Bandで、曽根麻央 (tp, p, per, voice) , 伊藤勇司 (b),  中道みさき (ds), 山田拓斗 (vln, mandolin), 西方正輝 (cello)。2枚目はElectric Bandで、曽根麻央 (tp, flh, p, syn, per, voice), 井上銘 (el-g),  山本連(el-b), 木村紘(ds)。 純日本人メンバーで固められている。

アコースティック・バンドは、不思議な浮遊感と流麗感漂うモーダルな展開がエキゾチックな雰囲気を漂わせる。当然、ファンクネスは希薄。日本人ジャズの特性がダイレクトに反映されている。オリジナリティー溢れ、良い雰囲気、良い響き。静と動、そして緩急ついた展開がスリリング。

エレクトリック・バンドは、1980年代エレ・マイルスを現代に持って来て、洗練してファンクネスを差し引いた感じ。ハードなドラミングに和なテーマ。スタンダードナンバーである「I Fall In Love Too Easily」はエレ・マイルスの傑作『アガルタ』収録の「麗しのマイシャ」を想起させるアレンジ。良い。とても良い。「Japanama」は「Japan」と「Panama」を組み合わせた造語で、音のイメージも同様。面白い。

メジャー・デビュー盤が2枚組。聴く前はちょっと重いんじゃないかなあ、飽きるんじゃないかなあ、なんて危惧していましたが、何てことは無い。一気に聴き切ってしまいました。少し硬さは残りますが、そこはまだまだ若い、ご愛嬌です。逆に初々しくて良い。ジャケットもピアノとトランペットの二刀流をイメージしていて「格好良い」。日本人男子もここまでやる。好盤です。

 
 

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2019年1月22日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・108

今日は「ジャズの日」。JAZZの「JA」が「January(1月)」の先頭2文字であり「ZZ」が「22」に似ていることから、1月22日は「ジャズの日」。東京都内の老舗ジャズクラブ「バードランド」「サテンドール」「オールオブミークラブ」のオーナーらによって立ち上げられた「JAZZ DAY実行委員会」が制定した記念日だそうです。

そんな「ジャズの日」の話題。ジャズ喫茶で流すと面白い盤って、結構あるんですよね。ジャズ喫茶で流すと、ジャズ喫茶が色めくというか、ざわつくというか「何だ何だ、この盤は何なんだ」とお客の皆さんが色めく盤。お客のリクエストに応えるのもいいんですが、たまにこういう「お客が色めく盤」を投下するのも、ジャズ喫茶の面白さ。

この盤をかけると、決まってお客が色めく気がするんですよね。僕もこの盤を聴いた時は色めきました。冒頭の曲を聴きながら、まず感じたのが「この盤の演奏ってハードバップ。音のちょっと古い感じから1950年代前半から中盤の音かな」。そして、イントロからのピアノの音を聴いて、これは大好きなピアニストのひとり「ホレス・シルバー」。ここまでは判る。
 

Silvers_blue  

 
トランペットはテクニック確かでブリリアント、溌剌とした健康的な音色。テナーもちょっと大人しめだが、力強さがあって滑らかな音。1950年代前半から半ばのピアノがシルバーなら「6 Pieces of Silver」を思い浮かべて、トランペットはドナルド・バード、テナーはハンク・モブレーと当たりを付ける。しかし、である。1950年代前半から中盤のシルバーのリーダー作にこんな演奏曲あったっけ。

「何だ何だ、この盤は何なんだ」となる(笑)。Horace Silver『Silver's Blue』(写真)。「この盤」の正体である。1956年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (pi), Donald Byrd (tp, tracks 1, 4, 6 & 7), Joe Gordon (tp, tracks 2, 3 & 5), Hank Mobley (ts), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds, tracks 1, 4, 6 & 7), Kenny Clarke (ds, tracks 2, 3 & 5)。

トランペットとドラムが二人ずついる。これが聴いていて実に紛らわしい(笑)。盤全般に渡って、発展途上ではあるが良質のハードバップがここにあります。この盤、シルバーのピアノの個性が音の基本。ファンキーでブルージーなピアノは聴いていて「ああ、シルバーやなあ」と思わず、溜息が出ます。ノリが良くグルービーなタッチは「やっぱ良いですねえ」。
 
 
 
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2019年1月20日 (日曜日)

ドイツ・ジャズの歴史的な好盤

欧州ジャズは奥が深い。欧州ではジャズが意外と盛んである。それぞれの国毎に、それぞれ個性を持ったジャズが存在するので、欧州ジャズはバリエーションが豊か。しかし、そんなバリエーション豊かな欧州ジャズについては、その情報はなかなか我が国には届かなかった。欧州ジャズの情報が何とか我が国に届くようになったのは、ネットの普及の影響が大きくて、21世紀になってからでは無いか。

CDレーベルとしては「澤野工房」の存在が挙げられる。「澤野工房」とは、通天閣のお膝元の大阪、新世界から、数多くのジャズ作品を世に送り出している小さなジャズ・レーベル。ヨーロピアンジャズの名盤復刻にも力を注いでいて、内容の優れた隠れ好盤を多数発掘〜リイシューしている。この盤も「澤野工房」のカタログを眺めていて、ピックアップした。

Michael Naura Quintet『European Jazz Sounds』(写真)。Michael Naura=カタカナ表記で「ミハエル・ナウラ」ミハエルのファースト・アルバム。ちなみにパーソネルは、Michael Naura (p), Peter Reinke (as), Wolfgang Schluter (vib), Wolfgang Luschert (b), Joe Nay (ds)。ドイツのジャズ・シーンの革新の先駆けとして、歴史的にも重要な作品。
 

European_jazz_sounds  

 
ミハエル・ナウラはロシア生まれのベルリン育ち。ベルリン大学では政治ジャーナリズム,哲学を学ぶ傍ら,ジャズのクラブなどで活躍、60年代に入り、1963年に本作をリリースしています。本作以外には70年代にはECMから数枚アルバムを出しています。ドイツのジャズの牽引者の一人として活躍したピアニストです。

メタリックで疾走感の豊かなアルト・サックスに、硬質で瑞々しい響きのビブラフォンの音色が絶妙に絡む熱いハード・バップ演奏が魅力。欧州ジャズならではの、非常に繊細でクールな響きを湛えた「熱い」演奏。ファンクネスは皆無、切れ味良い硬質なリズム&ビートが印象的な、典型的な欧州のハードバップ。

とても良い、先進的な内容のハードバップ。録音も良く、切れ味良く、緩急自在、変幻自在なモーダルな演奏は、現代の「ネオ・ハードバップ」にも通じる内容で、現代のジャズ者の耳にも古く響くことはないでしょう。 当時の欧州ジャズのレベルの高さを感じさせてくれる佳作。ジャズ者万民に向けて、一度は聴いていただきたい好盤です。
 
 
 
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2019年1月14日 (月曜日)

チック者に納得のライブ盤です

我らがチック・コリア。2013年9月と2010年の東京から、2012年秋から冬にかけての欧州ツアーから、それぞれライブ音源をセレクトした結果、CD3枚組になってしまったという、かなりボリューミーなライブ盤をリリースした。Chick Corea『Trilogy』(左をクリック)である。全く濃い内容のピアノ・トリオ盤でライブ感も心地良く、とても良い内容だった。

当時73歳のチックがこれだけのピアノ・トリオ盤をリリースした訳だが、昨年12月、またまた、チック・マクブライド・ブレイドの強力トリオのライブ盤がリリースされた。Chick Corea『Trilogy 2』(写真左)である。パーソネルは当然、Chick Corea (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)。今回はCD2枚組。

チックは現在77歳。CD2枚組のライブ盤を出すとは、まだまだ若い。で、『Trilogy 2』の収録曲を見てみると、2016年のツアーのライブが半分、あと半分は前作と同じ2010年や2012年の収録もあったりして、全てが『Trilogy』以降の録音という訳では無い。しかし、全編聴き終えてみて、先ずチック御大が、チック者である我々を納得させてくれるプレイを展開しているので、録音年のことなどどうでもよくなる。
 

Trilogy_2

 
収録された曲がとても魅力的だ。チックの名曲「500 Miles High」「La Fiesta」「Now He Sings, Now He Sobs」にはもう惚れ惚れするしかない。面白いところでは、マイルスの「All Blues」や、ドーハムの「Lotus Blossom」、スティーヴィー・ワンダーの「Pastime Paradise」をチョイスしているところ。チックの旺盛なチャレンジ精神をビンビンに感じる。

そして、このトリオのポテンシャルを実感出来るのが、セロニアス・モンク作の「Crepuscule with Nellie」「Work」の2曲。このモンクらしい曲を、創造性豊かに、即興演奏の粋を尽くして、イマージネーション豊かに演奏している。特に、2016年の演奏は秀逸。フル・アコースティックで伝統的なピアノ・トリオ演奏でありながら、時代の最先端を行く、コンテンポラリーなピアノ・トリオがここにある。

チック・コリアの最新盤。チック・マクブライド・ブレイドの強力トリオのライブ盤。これがまあ、素晴らしい内容で、チックはまだまだ衰えていない。マクブライドのベース、ブレイドのドラムも超一級品。懐古趣味の微塵も無い、現代のピアノ・トリオの最強盤。CD2枚組のボリュームですが、聴き始めたらあっという間です。優れたライブ盤として、ジャズ者万民にお勧め。

 
 
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2019年1月 3日 (木曜日)

「自由への讃歌」の秀逸カヴァー

「初ジャズ」は、それなりに相応しい楽曲が入っている盤が良い。昨日ご紹介した「お琴」入りジャズはちょっと「出来レース」っぽい感じで、小っ恥ずかしい感じがするのだが、毎年、この楽曲が入っている盤は絶対に正月にかける、という盤がある。華やかというか、心にグッとくるというか、印象的な楽曲が入った盤をよく選ぶ。

その楽曲のひとつが「Hymn to Freedom」。邦題「自由への讃歌」。1962年、オスカー・ピーターソンが発表した曲。黒人たちの人権を訴える公民権運動の真っ只中、その応援歌として作られた。アルバム『Night Train』のラストに入っている。これが絶品で、ゴスペル調のファンキーで印象的な曲だ。「When every heart joins every heart And together yearns for liberty ....」から始まる歌詞も付けられて、ゴスペル・コーラスの名曲としても知られている。

昨年までは、このピーターソンのアルバム『Night Train』をかけていた訳であるが、昨年、この「Hymn to Freedom」(自由への讃歌)」のカヴァーバージョンの収録されているアルバムに気がついて、最近はこの盤の「Hymn to Freedom」(自由への讃歌)」もよく聴く様になった。ピーターソンのオリジナル演奏よりも、R&B色が濃く、ジャズ・ファンクなアレンジが実に素敵である。
 

Yesterdaytoday_tomorrow  

 
その盤とは、Gene Harris『Yesterday, Today & Tomorrow』(写真左)。1973年6月の録音。ちなみに、Gene Harris (p), Johnny Hatton (b), Carl Burnett (ds, perc)。ジーン・ハリスのピアノをメインにしたトリオ「スリー・サウンズ」のアルバムである。1973年の録音なので、トリオ演奏のアレンジはファンキー・ジャズというよりは、よりR&B調の強い「ジャズ・ファンク」な演奏に仕上がっている。

このジャズ・ファンクなアレンジに、この「Hymn to Freedom」(自由への讃歌)」という曲がとてもよく映える。聴いていて心地良く、かつ心にメインの旋律がアドリブの旋律が心に響く。曲の特性を前面に押し出した、ファンクネスが濃く漂うが決してくどくなく、耳に心地良く響く。こんなカヴァー演奏があったなんて、昨年、発見した時はビックリした。

冒頭の曲が、これも僕の大好きなスタンダード曲「On Green Dolphin Street」だったり、ジョージ・ハリソンの名曲「Something」のカヴァーもあったりで、収録された楽曲のどれもが、心地良いジャズ・ファンクなアレンジが施されており、なかなか聴いていて楽しい。新年に相応しい好盤だと思います。

 

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