2023年9月25日 (月曜日)

日本人によるディキシーランド

我が国のジャズ・ピアノの雄、小曽根 真(おぞね まこと)。1984年に初リーダー作『OZONE』で、メジャー・デビューして以来、はや39年。小曽根は1961年生まれなので、今年で62歳になる。もうベテランの域。つい最近デビューして、活躍してんな〜、なんて思いつつ、リーダー作は目についたら、まめに聴いていたのだが、もう62歳になるんやね〜。

小曽根 真『Park Street Kids』(写真左)。2022年の作品。渋谷 BODY & SOULでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、小曽根 真 (p), 中川 喜弘 (tp, vo), 中川 英二郎 (tb, vo), 中村 健吾 (b), 高橋 信之介 (ds) のクインテット編成に、スペシャル・ゲストとして、北村 英治 (cl) が参加している。

冒頭「MississippiRag」から、ディキシーランド・ジャズ志向の演奏全開。ジャケを見て、北村英治のクラリネットがフィーチャリングされているので、スイング・ジャズかと思って身構えて聴き始めたら、ディキシーランド・ジャズがボワッと出てきたので、思わず仰け反る(笑)。現代の硬派なメインストリーム志向の純ジャズのテイストで、ディキシーランド・ジャズをやる。ウィントン・マルサリスが聴いたら、怒ってくるかも(笑)。
 

Park-street-kids

 
端正で切れ味良く、重心が低くファンクネス控えめの「日本人の、日本人による、日本人のための」ディキシーランド・ジャズが展開されていて、聴き応えは抜群に良い。ストライドやブギウギのフレーズも織り交ぜながら、骨太で硬質タッチで流麗な小曽根のピアノが良い味を出している。単純に聴いていて、とても楽しいオールド・スタイルのピアノ。ラグタイムも良い味を出している。小曽根のピアノ・テクニック恐るべしである。

そんな「日本人の、日本人による、日本人のための」ディキシーランド・ジャズの中に、北村英治の小粋で流麗、真摯で明るいクラリネットが飛翔する。北村英治って、1929年(昭和4年)生まれなので、今年で94歳。この盤での北村のクラリネットの力感と流麗な運指を聴いていると、とても93歳(録音当時)とは思えない。まだまだ現役、まだまだ第一線のクラリネットが、実に良い雰囲気で鳴り響く。

今のジャズ、今の音で表現した「日本人の、日本人による、日本人のための」ディキシーランド・ジャズ。聴いていて、なんだかリラックス出来て、何となく幸せな気分に浸りながら、ゆったりとディキシーランド・ジャズに身を委ねことが出来る。テンションの高い純ジャズとは正反対の音作り。でも、これはこれで良い雰囲気。これはこれで「良いジャズ」である。
 
 

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2023年9月24日 (日曜日)

タイナーのモード・ジャズの帰還

マッコイ・タイナーが、1970年代を駆け抜けたマイルストーン・レコードから、コロンビア・レコードに移籍した訳だが、このコロンビアでリリースした2枚のアルバム『The Legend Of The Hour』(1981年録音)、『Looking Out』(1982年録音)は酷い内容のアルバムだった。

『The Legend Of The Hour』は、何故かラテン・ジャズをベースにした中途半端なフュージョン志向のアルバム。硬派でモーダルなメインストリーム志向のタイナーの面影すら無い。何を求めているのか、何を訴求しているのか全く判らないアルバムになっている。初めて聴いた時、この盤がタイナーのリーダー作とは直ぐに信じられなかった。それほど、酷い内容の落ち込みようであった。

『Looking Out』は、さらに迷走を深め、ヴォーカルをフィーチャー。共演メンバーも、カルロス・サンタナ、スタンリー・クラーク等、完全にフュージョン・ジャズ志向のメンバーで固めて、タイナー自身もシンセサイザーを弾いたりする迷走ぶり。この盤については、前作の迷走ぶりに拍車をかけた、何を狙って、何を表現したかったのかが、全く理解出来ない内容であった。

Mccoy Tyner『Dimensions』(写真)。1983年10月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p, syn), Gary Bartz (as), John Blake (vln), John Lee (b), Wilby Fletcher (ds)。迷走に迷走を重ねたコロンビア・レコードを早々に去り、この盤は、Elektra/Musicianからのリリースになる。メンバー的には、ゲイリー・バーツ以外、知らない名前ばかりが並ぶ。ふと、不安になる。
 

Mccoy-tynerdimensions

 
冒頭の「One For Dea」を聴いて、ホッとする。1970年代のタイナー節、タイナーの音世界が戻って来ている。「ワールド・ミュージックと融合した」タイナーのモード・ジャズが戻って来た。見れば、唯一、タイナーの作曲。タイナーからすれば「戻って来たぞ」と宣言したかったのだろう。この曲の音志向は、絶対に1970年代のタイナーである。

2曲目以降はタイナー作の曲は無いが、ヴァイオリンを入れたり、2曲目「Prelude to A Kiss」はピアノ・ソロ、4曲目「Just In Time」はピアノ・トリオと演奏の編成に変化を持たせていて、どの演奏編成にしても、タイナーのモーダルでパーカッシヴなピアノの個性が引き立つようにアレンジされている。いやはや、タイナーのピアノが、タイナーの音世界が戻って来た良かったなあ、とこの盤を聴いて、つくづく思った。

ちなみに、ジャケット裏面には、各曲の紹介をタイナー自身が書いている力の入れよう。しかも、最後に「I wish you many hours of good listening(何時間も楽しくお聴きいただければ幸いです)」と記して結びとしている。

「タイナー・リターンズ」。タイナーの帰還。本作は当時として、タイナーの自信作だったのだろう。ジャケットは平凡だが、確かに内容の濃いリーダー作。ジャケットは気にせず、一度は手に取って聴いて欲しい佳作である。
 
 

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2023年9月22日 (金曜日)

ザイトリンのソロ・ピアノ集

この3日間、中京地区に逗留していた訳だが、往き帰りの新幹線の中は、またとない「ジャズ盤傾聴」の機会。意外と新幹線の車内は静かで、ジャズ盤がしっかり聴き込むことが出来る。今回もソロピアノを中心に聴き込んだのだが、これがまたなかなか内容のある盤ばかりでご満悦である。

デニー・ザイトリン(Denny Zeitlin)は、「医師とジャズ・ピアニスト」という二足の草鞋を履く異色の人物。しかも、医師は医師でも精神科医。本業である精神科医の仕事をこなす傍ら、プロのピアニストとしての活動も続けてきた「異色中の異色なジャズ・ピアニスト」である。

Denny Zeitlin『Crazy Rhythms・Exploring George Gershwin』(写真左)。2018年12月7日「Piedmont Piano Company, Oakland」での録音。ちなみにパーソネルは、Denny Zeitlin (p) のみ。「異色中の異色なジャズ・ピアニスト」であるデニー・ザイトリンのソロ・ピアノのライヴ録音。現時点でのザイトリンの最新作になる。

ザイトリンは、この2018年に開かれたコンサートでアメリカの偉大な作曲家「ジョージ・ガーシュイン」のトリビュートとして、このソロ・ピアノのライヴ盤を録音している。が、このソロ・ピアノのパフォーマンス、ザイトリンのピアノの個性が手に取るように判るパフォーマンスがしっかり記録されていて、ザイトリンの個性を確認するのに最適なライヴ盤になっている。
 

Denny-zeitlincrazy-rhythmsexploring-geor

 
前のブログで「ザイトリンのピアノは、ビル・エヴァンスのピアノから、翳りを除いて硬質で明快なタッチに置き換えた様な、明るい弾き回し。しかし、音の重ね方やヴォイシングはエヴァンスより複雑で個性的」と書いたが、このザイトリンのピアノの特徴が、このソロ・ピアノのライブ盤でとても良く判るのだ。

冒頭の「Summertime」。この手垢の付いた「超スタンダード」な楽曲なのだが、冒頭の弾き回しを聴いていると「あれ、ビル・エヴァンスかな」と思うんだが、聴き進めると、まず音の重ね方が違う。エヴァンスよりも複雑で陰影が濃い。そして、タッチが違う。ザイトリンの方が硬質で調高速な弾き回しに破綻が無い。そもそも、ビル・エヴァンスは、こんな超高速な弾き回しはしない。そして、ヴォイシングが違う。そもそも音の選び方が、聴いて直ぐ判るくらいに違う。

加えて、アレンジが秀逸。演奏されるどの曲もひと味もふた味も違うアレンジが施されているのだが、特に「The Man I Love」など、今までの「The Man I Love」のアレンジはしっとりとしたバラード調のものばかりだったが、ザイトリンのアレンジは、アグレッシブでスクエア。まるで流麗な「モンク」が弾き進めている様な音作り。この辺が、ザイトリンのアレンジの個性的なところである。

全編聴き通すと、確かに「エヴァンス派」と呼べなくはないのだが、弾き回しのニュアンスが似通っているだけで、後は皆、違う個性なのだから、ザイトリン独特の個性として認めても良いのでは無いか、と思う。それほど、このライヴ盤ではザイトリンの個性が際立っている。
 
 

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2023年9月19日 (火曜日)

デニー・ザイトリンの2nd.盤。

我が国では、余り人気が無いのだが、好きな人はトコトン好きな、いわゆる「マニア好み」「玄人好み」のピアニストが幾人かいる。そんなピアニストの1人が「デニー・ザイトリン(Denny Zeitlin)」。

僕はこの「デニー・ザイトリン」のピアノがお気に入りで、時々、思い出しては聴いている。聴くと「やっぱりええなあ、ザイトリンのピアノ」となる訳で、今でも、ザイトリンのリーダー作が出る度に、ダウンロードしては聴いている。

Denny Zeitlin『Carnival』(写真左)。1964年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Denny Zeitlin (p), Charlie Haden (b),  Jerry Granelli (ds)。ビル・エヴァンスやセロニアス・モンクからも絶賛されたという、隠れた名ピアニスト、デニー・ザイトリンのセカンド盤である。

ザイトリンのピアノは、ビル・エヴァンスのピアノから、翳りを除いて硬質で明快なタッチに置き換えた様な、明るい弾き回し。しかし、音の重ね方やヴォイシングはエヴァンスより複雑で個性的。ザイトリンのピアノは一言で「エヴァンス派」で片付けられていたが、聴けば直ぐ判るのだが、エヴァンスのピアノとは個性の部分で根本的に違う。
 

Denny-zeitlincarnival

 
ピアノの基本はモード。ハードバップな弾き回しにも長けており、とても素姓の良いジャズ・ピアノである。アップテンポの曲は迫力満点の弾き回し。バラードはエヴァンスに習っているが、先にも書いたが、音の重ね方やヴォイシングが全く異なる。スタンダード曲については、その解釈がユニークで、アレンジが個性的。

デビュー盤では「適度に端正で、適度にアブストラクトで、適度にモーダルなピアノ」だったが、それを少し修正して、聴き易さを優先している。逆にそれが功を奏して、このセカンド盤はリラックスして楽しく聴ける内容になっている。それでいて、要所要所でザイトリンの個性はシッカリ「爪痕を残している」のだから、それはそれで立派ある。

ザイトリンは1938年生まれ。今年で85歳。まだまだ現役で、最近、またまたリーダー作をリリースしたと聞く。このセカンド盤は、ザイトリンが26歳の時の録音。若さに溢れるキラキラ明るい、それでいてどこか複雑な、個性的なピアノが聴ける。良いピアノ・トリオ盤です。
 
 

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2023年9月16日 (土曜日)

1980年代タイナーのジャズオケ

1980年代のマッコイ・タイナーの聴き直しに突入。1970年代はほぼマイルストーン・レーベル一本槍で、タイナー・ミュージックの確立期の記録が追体験出来る。1980年代はマイルストーン・レーベルを離れ、複数のレーベルを渡り歩く、タイナー・ミュージックの「成熟と過渡期」の時代。そんな1980年代のタイナーにも魅力満載。

McCoy Tyner『13th House』(写真)。1980年10月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p, arr), Oscar Brashear (tp), Kamau Muata Adilifu (flh), Slide Hampton (tb, arr), Gregory Williams (french horn), Bob Stewart –(tuba), Hubert Laws (piccolo, fl), Joe Ford (as, ss, fl), Ricky Ford (ts, ss), Frank Foster (ts, ss, cl, arr), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds), Airto Moreira, Dom Um Romao (perc), Jimmy Heath (arr)。

タイナーのマイルストーン・レーベルの最終作。1972年のタイナー流モード・ジャズの名盤『Sahara』から始まり、毎年1〜2作のペースでリーダー作を発表、この『13th House』で、タイナーの「黄金期」であるマイルストーン時代は一旦の終結を迎える。マイルストーン時代は、タイナーがタイナー流のモード・ジャズを確立し、コルトレーンの「アフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏を継承した時代である。

当盤『13th House』は、大編成ジャズ・オーケストラにおけるタイナー・ミュージックの完成形。タイナーの大編成ジャズ・オーケストラなリーダー作は、以前に『Song Of the New World』(1973年)、『Fly With The Wind』(1976年)の2枚がある。いずれも、ジャズ・オーケストラにおけるタイナー・ミュージックの名盤であるが、内容の充実度からすると、今回の『13th House』が頭1つ抜きんでている。
 

Mccoy-tyner13th-house

 
今回はアレンジがとても優れている。資料を紐解くと、スライド・ハンプトン(3曲目「Search For Peace」)、ジミー・ヒース(2曲目「13th House」)、フランク・フォスター(5曲目「.Leo Rising」)の3人が1曲づつ担当、残りの1曲目「Short Suite」と4曲目「Love Samba」の2曲を、リーダーのマッコイ・タイナーが担当。

タイナーのアレンジも良いが、他の3人の「タイナーのアフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏を想定したアレンジが、それぞれ個性があって、全く飽きの来ない展開になっているところが良い。

そして、ジャズオケの肝になるリズム・セクションについては、リーダーのタイナーがピアノ、そして、ベースにロン、ドラムがデジョネットと、振り返れば、ビックリする様なレジェンド級のメンバーによる、重厚で柔軟度の高いリズム・セクションで、ジャズ・オケのフロント楽器に全く負けない、逆に、フロント楽器全体を鼓舞しコントロールするリズム・セクションで、このリズム・セクションの存在がとても効いている。

この『13th House』は、タイナーの「アフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏のアルバムの中で一番、内容の充実度が高い。タイナーのピアノの充実度も最高レベルに近い。

我が国のジャズ盤紹介本や雑誌の名盤紹介には、タイナーの「アフリカン・ネイティヴな音志向」を前提としたモーダルなジャズオケ演奏のアルバムについては、何故か『Fly With The Wind』ばかりが、ほんの時々『Song Of the New World』が紹介されるが、このこの『13th House』の紹介記事については、ほとんど見たことが無い。タイトルが良く無いのか、ジャケが良く無いのか、それでも内容は、前の2枚『Fly With The Wind』と『Song Of the New World』を凌駕する優れもの。

紹介記事が僅少なのに怯まず、一度は聴いて欲しい優秀作。特に、マッコイ・タイナーのファンには絶対お勧めです。
 
 

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2023年9月12日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・99

ジュニア・マンスのピアノはファンキーでソウルフル、端正で明確なタッチが身上。ドライブ感溢れるグルーヴィーな、爽快感溢れる弾きっぷりは爽快感抜群。ビ・バップなピアノを洗練して、ハードバップに乗せたイメージで、高速弾きの曲についても、フレーズが洗練されているので、耳に付かないのが特徴。

Junior Mance『Happy Time』(写真左)。1962年6月20日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Ron Carter (b), Mickey Roker (ds)。リヴァーサイドの傍系レーベル「Jazzland」からのリリース。ベースにレジェンド、ロン・カーター、ドラムにモーダルなドラマー、ミッキー・ローカー。

伸びるトーンと強靱なビート。当時、最先端をいくモーダルなリズム隊をバックにマンスが弾きまくる。といっても、マンスがモーダルなピアノを弾く訳では無い。バックのリズム隊のロンもローカーも、リズム&ビートの基本はハードバップ。逆に、1963年の録音年で、ロンとローカーがハードバップ志向のリズム&ビートを供給している様は珍しいと言えば珍しい。
 

Junior-mancehappy-time

 
端正で明確なタッチ、ドライブ感溢れる、グルーヴィーで爽快感溢れる弾きっぷりのマンスのピアノを引き立てる様な、伸びるトーンと強靱なビートを供給するこのリズム隊は素晴らしい。こんな素晴らしいリズム隊に恵まれて、マンスは当時としての「ベスト・パフォーマンス」を繰り広げる。

収録されたどの演奏も、マンスのパフォーマンスの良いところが前面に押し出されていて良い出来。乾いたブルース・フィーリングを湛えた、遅れてきたハードバップ・ピアノ・トリオの名盤といった面持ちで、聴いていてとても心地良く、マンスらしい愛嬌や軽妙さが見え隠れして、聴いていてとても楽しい。

マンスの代表的名盤の1枚として良い、優れた内容。ジャケットもシンプルで良好。それでも、マンスの人気については、我が国ではイマイチなのが残念。何がいけないのか、良く判らないが、少なくとも、初リーダー作『Junior』がマンスの最高作と評価している間はどうしようも無いかな。僕は思う。この『Happy Time』の内容は明らかに『Junior』の上を行く。
 
 

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2023年8月31日 (木曜日)

マンスの真の個性が満載な盤

ジュニア・マンスのピアノの真の個性とは何か、を追求している。初リーダー作『Junior』を聴き込み、そしてリーダー作2作目『The Soulful Piano of Junior Mance』を聴き込む。

『Junior』は大衆受けする売れる内容。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏。『The Soulful Piano of Junior Mance』は、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。さて、どちらがマンスのピアノの本質か。

Junior Mance『Big Chief!』(写真左)。1961年8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Jimmy Rowser (b), Paul Gussman (ds)。マンスの3枚目のリーダー作。お得意のトリオ作。

アタックの強い切れ味の良いタッチ。右手は多弁。しかし、五月蠅くは無い。「饒舌」一歩手前。ほど良い「多弁さ」。流麗で端正、破綻が無い。ファンクネスは軽め、爽やかでライトなブルージー感が個性。そんなマンスのピアノが溢れんばかりの3枚目のリーダー作である。

冒頭のタイトル曲「Big Chief!」はゴスペル風のブルースだが、決して、ファンクネス&ソウルはコッテコテでは無い。ピアノとベースのコール&レンポンスも印象的だが、決して、コッテコテのファンキー・ジャズにはならない。スッキリ爽やか、軽やかで端正なファンクネス&ソウル。
 

Junior-mancebig-chief

 
多弁な展開は意外と耳に付かない。タッチが明確なんだが硬質では無い。音のエッジが少しラウンドしている様な明確なタッチ。特に速いフレーズを弾き回す時、この個性が良い方向に作用している。この多弁な展開の弾き回しの個性はマンスならでは、だと思う。

逆にミッドテンポの曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。ミッドテンポの曲は、多弁なフレーズがちょうどフィットしていて、多弁なフレーズのエッジがほど良くラウンドしているので、多弁が多弁と感じ無い。

バラード曲の弾き回しもマンスならでは、の個性が光る。バラード演奏もバラードとしては少し多弁かもしれないが、ファンクネス&ソウルが爽やかな分、耳には爽やかさが残って、多弁でもフレーズが「もたれない」。

3枚目のリーダー作『Big Chief!』を聴き込んで、マンスの初リーダー作で代表作とされる『Junior』(Verve)は、マンスの本質を抑えて、イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易いピアノ・トリオとしてまとめた異色作だったことが良く判る。『Big Chief!』にはマンスの真の個性が満載。マンスの真の個性を感じるには、まずは『Big Chief!』。
 
 

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2023年8月29日 (火曜日)

ジュニア・マンスの「良き個性」

ジュニア・マンス(Junior Mance)。1928年生まれ。2021年1月、92歳で逝去。活動期間は1959年の初リーダー作から、2015年の遺作まで、50年以上のキャリアを誇る。ファンキーでソウルフル、端正で明確なタッチのピアノが身上。ドライブ感溢れるグルーヴィーな、爽快感溢れる弾きっぷりは、僕のお気に入りのピアニストの1人でる。

『The Soulful Piano of Junior Mance』(写真左)。1960年10月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Junior Mance (p), Ben Tucker (b), Bobby Thomas (ds)。リヴァーサイド・レーベルの傍系「Jazzland」からのリリース。ジュニア・マンスの2枚目のリーダー作である。

いきなり、大手ジャズ・レーベルのヴァーヴからリーダー作『Junior』をリリースしたマンス。大手レーベルのヴァーヴである。大衆受けする売れる内容のピアノ・トリオ演奏をプロデュースする。イージーリスニング・ジャズ一歩手前の、聴き易い、典型的なピアノ・トリオ演奏でまとめた。ピアノ・トリオ盤としては聴き易い、モダン・ジャズらしい内容だったが、マンスのピアノの個性を前面に押し出したものでは無かった。
 

The-soulful-piano-of-junior-mance

 
2枚目のリーダー作である当盤は、名プロデューサー、オリン・キープニュースのいるリヴァーサイドからのリリース。アルバム全体の内容は明確に「ファンキー・ジャズ」。それも、すっきり爽やか、端正で明確な「ファンキー・ジャズ」。リヴァーサイドに移って良かったなあ、という内容。端正で明確なタッチ、コッテコテなファンクネスは無くて、スッキリ爽やかなグルーヴ感。これが、マンスのピアノの個性なんだろう。

汗の飛び散る様なメリハリの効いたファンキー・ジャズでは無い。どこか気怠い雰囲気を漂わせた、落ち着いた端正で明確なファンキー・ジャズ。いわゆる「ブルージー」なのだ。その「ブルージー」な感覚を、この盤のタイトルは「ソウルフル」と形容しているみたい。ハードバップな弾き回しを踏襲しているので、基本的に右手は「多弁」。それでも、五月蠅くは無い。どこか端正で落ち着いているので、多弁が耳につくことは無い。どちらかといえば「心地良い」。

実に趣味の良いファンキー・ジャズなピアノである。小気味良いスイング感も特筆すべき個性だろう。メリハリ効いた、大向こうを張ったコッテコテなファンキー・ジャズなピアノも良いが、マンスの様な、落ち着いた端正で明確なファンキー・ジャズなピアノも良い。デューク・エリントンの言う「良い音楽」について、1つの個性、1つのスタイルに絞る必要はないだろう。良いものは良い、悪いものは悪い。僕はこのマンスのピアノが好きだ。
 
 

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2023年8月28日 (月曜日)

The 3 Soundsのお蔵入り優秀盤

スリー・サウンズ(The 3 Sounds)は、ブルーノート・レーベル唯一のお抱えピアノ・トリオ。メンバーもブルーノートが選んで、ブルーノートがデビューさせている。スリー・サウンズのアルバムはその活動期間中のリリースとして30枚を超えるが、途中、ヴァーヴやマーキュリー・レコードやその傍系のライムライトからもアルバムを7〜8枚ほどリリースしたが、ブルーノートからのリリースが主。

ただし、スリー・サウンズの音作りは、リーダーのピアノのジーン・ハリスに委ねられていて、軽妙でハイ・テックニックなトリオ演奏をベースに、聴いて楽しいシンプルで判り易い音作り、ドライブ感溢れる、硬派で端正でファンキーなサウンドは、このジーン・ハリスによって育まれたもの。

The 3 Sounds『Out Of This World』(写真左)。1962年2月4日、3月7ー8日の録音。ブルーノートの4197番。ちなみにパーソネルは、Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。ちなみにこの盤はブルーノートお得意の「何故かお蔵入り」盤。録音当時はリリース見送り、4年後の1966年になってようやく陽の目を見ている。
 

The-3-soundsout-of-this-world  

 
1962年の『Hey There』の後、何故かお蔵入りが続いた音源の中のひとつで、契約上の何かがあったかで、4年間、倉庫に眠っていた音源。聴けば判るが、聴いて楽しい、シンプルで判り易い、ドライブ感溢れ、硬派で端正でファンキーなスリー・サウンドの個性がこの盤に充満している。この音源の前後のセッションの演奏内容と比べて遜色が無いどころか、切れ味とアーティステックな雰囲気という点では、この周りのスリー・サウンドの中で、一二を争うほどの優れた内容である。

カクテル・ピアノ、ラウンジ・ピアノの類の演奏だが、決して、イージーリスニング志向では無い。かなり硬派でダイナミズム溢れるアーバンなアレンジが施されていて、決して「ながら聴き」に向いたトリオ演奏ではない。基本はファンキー・ジャズだが、アレンジがストイックでハイテクニック前提でアーティステック。意外と尖った内容に思わず耳を奪われる。

何があったか知らぬが、この盤の音源は「何故かお蔵入り」盤として扱われる様な無い様ではない。スリー・サウンズの成熟した完成形の様な音作りと展開が素晴らしい。アレンジが優秀で、ジャズ・スタンダード曲も新しい響きを宿していて新鮮に感じる。シンプキンスとダウディのリズム隊も堅実な素晴らしいリズム&ビートを供給していて立派。スリー・サウンズの優秀盤として、もう少し再評価されても良い盤かと思う。
 
 

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2023年8月26日 (土曜日)

もう1つのコンガ入りガーランド

プレスティッジ・レーベルって、アルバムの編集方針も理解出来ないところが多々あるのだが、録音方針も良く判らないところがある。例えば、このレッド・ガーランド・トリオにバレットのコンガの入ったセッションは3つある。 

1つは 1958年4月11日の『Manteca』セッションの全6曲。全てコンガ入りで全曲タイムリーにアルバム化。2つ目は 1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッション。全12曲あったがコンガ入りは7曲。しかし、録音当時は全てアルバム化されず、1963年に何と、コンガ抜きのトリオのみの4曲だけがアルバム化。コンガ入り7曲は全てお蔵入り。

3つ目は 1958年8月22日の『Rojo』セッション。全6曲中、コンガ入りは4曲。しかし、これらも録音当時は全てアルバム化されず。こちらは1961年にアルバム化されている。今日はこの『Rojo』 を取り上げる。

Red Garland『Rojo』(写真左)。1958年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), George Joyner (b), Charlie Persip (ds), Ray Barretto (congas)。録音当時は「何故かお蔵入り」盤。リリースは1961年の初夏の頃。3年弱、倉庫に眠っていた音源になる。

バレットのコンガ入りは4曲。トリオのみの演奏は2曲。しかし、アルバムをずっと通して聴いていると、曲が進むにつれ、コンガの有無が判らなくなる。コンガがハードバップなトリオ演奏にしっかり溶け込んで、ラテンな雰囲気が薄れている。

それでも、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートが、トリオ演奏に良い雰囲気を加味している。トリオのみの演奏よりも、リズム&ビートがクッキリ浮き出て、メリハリの効いた演奏に仕上がっている。
 

Red-garlandrojo

 
コンガ入りのトリオ演奏の最初は1958年4月11日の『Manteca』セッション。この時のコンガの役割は、ガーランド・トリオの演奏にラテン・ジャズの風味を加味すること。そして、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすること。これがピッタリ当たって、『Manteca』は充実した内容の盤に仕上がった。

この『Rojo』では、ラテン・ジャズの風味を加味することよりも、コンガの音をハードバップなジャズ演奏に適応させて、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすることに主眼が置かれている様な感じがする。そういう点で、この『Rojo』セッションは充実した内容だと思うのだが、録音当時はお蔵入り音源。1961年にアルバム化されただけ、良かったと思うくらいの内容の充実度だと僕は思う。

それを思うと、1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッションのコンガ入りは7曲はアルバム化されず、1977年に未発表音源集『Rediscovered Masters』の中でリリースされただけ。今ではストリーミングで聴くことは出来るが、正式なアルバム化はされなかったのは残念である。

しかし、プレスティッジ・レーベルって、どうして、1958年だけ、コンガ入りのガーランド・トリオのセッションを4月、6月、8月の短期間に3セッションも持ったのか。タイムリーにアルバム化したのは4月のセッションのみ。しかも、6月のセッションのコンガ入り7曲は未発表音源集でリリースされただけ。どうも、この辺りのプレスティッジの録音方針が理解出来ないなあ。

ガーランド・トリオのコンガ入り企画盤は、ガーランド・トリオの演奏の「金太郎飴」感を緩和させる効果があって、良い内容だと思っている。『Manteca』と『Rojo』の2枚が正式盤としてリリースされたことは幸運だった。いつもとは違う、コンガでビートが強化されたガーランド・トリオの演奏が新鮮に響く。
 
 

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