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2016年5月24日 (火曜日)

デックスの「魅力全開」な盤です

Dexter Gordon(デクスター・ゴードン、愛称デックス)のテナーは、初夏の陽気に良く似合う。テクニックに重きを置くこと無く、ミッドテンポからスローテンポで朗々と歌心溢れるフレーズを吹き上げる。決して難しく無い、爽快かつシンプルなジャズ。

特にブルーノート・レーベル時代のデックスは、どのアルバムを選択しても良い。さすがはブルーノート・レーベル。デックスの特質を十分に理解して、デックスの個性を最大限に活かしている。そして、デックスの吹きたい様に吹かせている。

しかし、ブルーノート・レーベルの凄さはそれだけでは無い。デックスのリーダー作ですら、録音当時のジャズの先端の雰囲気をしっかりと漂わせているのだ。単に聴き易く耳に馴染むだけのアルバムを録音するのでは無い。

ジャズとして、アーティスティックな面をしっかりと押さえて、時代の先端の雰囲気を醸し出した「デックス節」を聴かせてくれるのだ。デックスの能力の「伸びしろ」をしっかりと引き出している。総帥アルフレッド・ライオン恐るべしである。

そんなデックスのリーダー作の一枚がこれ。Dexter Gordon『A Swingin' Affair』(写真左)。1962年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。ブルーノートの4133番。
 

Swingin_affair

 
1962年と言えば、ハードバップの全盛期を過ぎて、ジャズの多様化が進んでいる時代。コマーシャルなファンキー・ジャズから、アーティスティックなモード・ジャズ、そして、多様化の究極形であるフリー・ジャズ。様々なスタイルのジャズが入り乱れている時代が1962年。

そんな時代の中、このデックスのアルバムもそんなジャズの多様化を十分に反映するパーソネルで録音に臨んでいる。デックスのテナーはそんなジャズのトレンドには全くお構いなしなのだが、ピアノのソニー・クラークはハードバップの代表的存在。そして、リズム・セクションを担うベースのウォーレンとドラムのヒギンスは、新しい響きを宿したハードバップなリズム&ビートを供給する。

そこにデックスが、ちょっとモーダルな雰囲気をふっと漂わせて、ミッドテンポからスローテンポで朗々と歌心溢れるフレーズを吹き上げる。これが堪らない。単なるコマーシャルでポップなジャズには無い、アーティスティックな芳しい響き。このアルバムの「良いところ」である。

デックスの自作曲もスタンダード曲もいずれも良い曲ばかり。聴き応え満点のアルバムに仕上がっています。カルテットの4人については、実に楽しげに満足げに演奏している様子が演奏から感じ取れます。ジャズの良さ、楽しさを十分に感じ取れる好盤です。デックスの魅力全開ですね。
 
 
 

震災から5年2ヶ月。決して忘れない。まだ5年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年5月18日 (水曜日)

聴いていて馴染み易く聴き易い

ジャズ者の初心者向け盤と紹介されて飛びついて、聴いてみて「あれれ」と思ってしまった盤は沢山ある。恐らく、当時の評論家筋が「ジャズを聴くんなら、これは聴いておかないと」という、大学で言う「一般教養科目」的な印象で選盤したイメージがある。ジャズ者初心者にとって、馴染み易いか聴き易いか、なんていう観点は二の次である。無責任と言えば無責任である。

僕にとっては、Dexter Gordon(デクスター・ゴードン、愛称デックス)がそういう存在だった。デックスの「初心者向け盤」を選んでは聴くんだが、どうにも最初は取っつき難かった。やはり、初心者にとって判り易いテナーは、ジョン・コルトレーンであり、ソニー・ロリンズなのだ。

例えばこの盤。Dexter Gordon『Go!』(写真左)。1962年8月の録音。ブルーノートの4112番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Sonny Clark (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。デックスのワン・ホーン・カルテットである。

デックスだけが1923年生まれで、他のメンバーよりも8〜16歳も年長である。所謂「世代が違う」。録音された年、1962年はハードバップの全盛時代が過ぎて、モード・ジャズやファンキー・ジャズなど、ジャズのスタイルの多様化が進んだ時代。新しい響きやコンセプトのアルバムがバンバン出ていた頃である。

そういう意味では、このデックスのワン・ホーン・カルテットのバックのピアノ・トリオ、所謂リズム・セクションが、ハードバップ期のそれよりも新しい響きを宿しているのは、ジャズ者初心者の僕でも良く判った。シンプルでスッとしていてモダン。小粋なファンクネスが音の底に流れ、リズム&ビートが、そこはなとなくポリリズミック。
 

Dexter_gordon_go

 
それに引き替え、デックスのテナーは「超然」としている。スタイルは独特の個性。デックスのスタイル、デックスの音である。ハードバップとかビ・バップとか、ジャズのトレンドとは全く無縁。そのブロウは大らかで豪快。ピッチは少し外れていて、上手いんだか下手なんだか判らない。でもずっと聴いていると、やはり「上手い」。

そして、デックスはテーマもアドリブも「人が唄う様に」サックスを吹く。テクニックを優先する訳でも無い。リリカルを意識して理知的に吹くのでも無い。自分の感覚そのままに「人が唄う様に」サックスを吹く。ジャズ者初心者の僕にとって、これがデックスの魅力というのが判らなかったのだから困ったものだ。

そんなデックスの魅力が理解出来る様になったのはつい10年ほど前から。この『Go!』などは愛聴盤の筆頭である。よく評論で書かれる冒頭の「Cheese Cake」であるが、やはりこの曲は良い。デックスの作曲力の優れたところをとことん実感する。曲も良いが、演奏も良い。デックスのブロウが実に魅力的である。

ジャズ者初心者向けかどうかに関わらず、聴いていて馴染み易く聴き易い、ということは、音楽にとって大切な要素である。そんな基本的なことを改めてじっくりと教えてくれる、そんなデックスの魅力盤である。今更言うのもなんなんですが、やっぱり『Go!』って好盤です。

 
 

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2015年11月27日 (金曜日)

デックスの玄人好みの好盤

僕は、ジャズ者駆け出しの頃、このアルバムが苦手だった。大らかなブロウ。少し外れたアドリブ・フレーズ。でも、その少し外れたところが「味」と感じる。でも、若い頃は、その「味」が判らんかった。

もともと、日本人というのは、子供の頃、音楽というものを大体「クラシック音楽」で体験する。音程はしっかり合っていて、ユニゾン&ハーモニーもバッチリ合っている。リズム&ビートも外れることは無い。それを音楽と経験する。その経験が「ジャズ」を理解する上で障害となる。

そのャズ者駆け出しの頃、苦手だったアルバムが、Dexter Gordon『Our Man in Paris』(写真左)。1963年5月の録音。ブルーノートの4146番。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Bud Powell (p), Pierre Michelot (b), Kenny Clarke (ds)。デックスがパリを訪れた折に、パリにいた米国ジャズメン達と現地のベーシストと邂逅したセッションを記録したもの。

パーソネルを見渡して、まず「バド・パウエル」の名を見つけてビックリする。ビ・バップの開祖の一人、モダン・ジャズ・ピアノの祖。彼はニューヨークでの暮らしを嫌い、欧州へ移り、当時パリに在住。続いて「ケニー・クラーク」の名を見つけてビックリする。著名なビ・バップ・ドラマーの一人。彼もニューヨークでの暮らしを嫌い、欧州へ移り、パリに集結。

デックスが欧州に渡り、バド・パウエルとケニー・クラークとの再会セッション。パリにおけるバド・パウエル・トリオが旧友デックスを迎えた、10数年ぶりの再会を記録したセッションという触れ込み。これだけ劇的なエピソードが揃えば、ジャズ者駆け出しであっても、ついつい手を出したくなる。
 

Our_man_in_paris

 
で、ついつい手を出して、この盤は「難物」なのに気がついて、やっても〜た、と後悔する。このアルバム、ジャズ者初心者にはちょっと難物だと感じている。少し外れたアドリブ・フレーズ。でも、その少し外れたところが「味」と感じる。が、経験不足のジャズ者初心者の頃は、この「味」を「味」と感じない。どころか、なんじゃこれ、と理解不能な状態に陥る。

演奏の全てにちょっと強めにテンションが張っていて、そのテンションに気後れする。そして、デックスの大らかで力強いブロウが来る。アドリブ・フレーズに入って、音程はちょっと外れつつ、テンポもちょっと不安定に振れまくる。クラシック音楽ではありえない「破綻」。これがジャズ者初心者の頃、大いなる誤りだと感じてしまう。まあ、仕方が無いけど。

このアルバムのデックスのブロウが「良い味だしてるなあ〜」と感じる様になったのは、ジャズを聴き始めて10年以上経ってからだったと思います。そういう意味で、この盤をジャズ者初心者向けの「ジャズ入門盤」として推薦するのは、ちょっと違うんではないかなあ、と今でも思います。

じっくり聴き込んでみると、伝説のピアニスト、バド・パウエルのピアノはまあまあ、特段にコメントする程度のものでは無し。逆に、ケニー・クラークのドラミングにビックリ。大変モダンでアグレッシブなドラミングに、思わず、ケニー・クラークを見直す。そして、やっぱりデックスのテナーは別格。これぞデックスのテナー、デックスのワン・ホーン盤。

ジャズ者中堅、ジャズを聴き初めて10年以上経って、本当にジャズが好きで、もう恐らく死ぬまでジャズを聴き続けるだろうな、と思い始めた頃に聴いて、ちょうど良い塩梅の「玄人好みの好盤」だと思います。

 
 

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2015年11月 5日 (木曜日)

超然と我が道を行くサックス

この人のテナーを聴いていると、スタイルとか流行とか、変化とか進化とか、そんなものには全く無縁、ただひたすら自分のスタイルでサックスを吹き、ただただ自分の思いつくままのフレーズを吹く。それがまあ、全くの自然体で、味のあること味のあること。

そのテナー奏者とは、デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)。愛称デックス。この人のテナーは別格。他のテナー奏者との比較ということすら超越している。なんせ、彼の「ブリッ」という一吹きで、ああこれはデックスだ、と判るくらいの強烈な個性なのだ。

そんなデックス、彼のリーダー作はどれもが優秀だが、特に「ブルーノートのデックスに外れ無し」というのが僕の感想。特に、1960年代のデックスに外れは無い。どれもが、とても優れたハードバップな演奏ばかり。どれを聴いても「ああ、これがハードバップなんやなあ」と感じ入ってしまう出来のアルバムばかりである。

そんな中、僕が愛聴する一枚がこれ。Dexter Gordon『Doin' Allright』(写真左)。1961年5月の録音。ブルーノートの4077番。ハードバップが成熟した、絵に描いた様な優れたハードバップな演奏が聴くことが出来る一枚。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Freddie Hubbard (tp), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。

う〜ん、ブルーノート・レーベルならではの渋い人選。実はこのメンバー、初共演なんですね。調べてみてビックリしました。このアルバムの演奏を聴けば判るんですが、すごく息が合っているんですよ。初共演とはなあ。さすがブルーノート、リハーサルにしっかり時間を使っていますね。
 

Doin_allright

 
特に、この Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds) のリズム・セクションが実に良い味を出している。この趣味の良いリズム・セクションが紡ぎ出すリズム&ビートに乗って、とっても気持ちよさそうに、デックスがテナーを吹き上げていく。

デックスの全くの自然体で吹くテナーの味わい。鼻歌を唄うように全く力みの無い、それでいてしっかりと芯のあるアドリブ・フレーズ。スケールの大きい、包み込むような吹き回し。決して耳につかない、適度なテンポ。時々顔を出すユーモラスな借用フレーズ。

本当に彼のブロウを聴いていると、スタイルとか流行とか、そんなものはどうでもよくなる。デックスはデックスであればよい。加えて、このアルバムのデックスのブロウはとても安定感がある。これぞハードバップ、という内容がとても愛おしい。

そうそう、忘れてはならないのが、このアルバムでのフレディ・ハバード。いつもははしゃいで、その優秀なテクニックをひけらかせて、ペラベラと雄弁に五月蠅い位に吹きまくるのだが、このアルバムのハバードはちょっと違う。なんと珍しく、控えめにそっとデックスに寄り添う様に吹いています。なんだなんだ、やれば出来るやないか。

さすがは「ブルーノートのデックスに外れ無し」。ハードバップど真ん中な一枚です。とにかくデックスのテナーが良い。ジャズ者万民にお勧めの好盤です。

 
 

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2015年10月29日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・51

ジャズのアルバムを漁り始めて、はや37年。さぞかし、聴く対象も少なくなっただろうと思いきや、登り来て未だ山麓。ジャズ盤紹介本や雑誌を読み直しては、ネットで漁る毎日だが、聴く対象はまだまだある。恐らく、この命尽きるまで、聴く対象は枯渇することは無いだろう。

例えば、こんなアルバムが、まだ聴くことも無く残っていたりするのだ。本当にジャズ盤漁りは奥が深く裾野が広い。その「こんなアルバム」とは、Booker Ervin and Dexter Gordon『Setting the Pace』(写真)。

1965年10月の録音になる。当時「西ドイツ」はミュンヘンでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Booker Ervin, Dexter Gordon (ts), Jaki Byard (p), Reggie Workman (b), Alan Dawson (ds)。デックスこと、当時、ベテランの域に達していたテナー奏者デクスター・ゴードンの参加が目を惹く。当時42歳。

ドラムのアラン・ドーソンは当時中堅のドラマー。あの天才ドラマーであるトニー・ウィリアムスの唯一の師匠ということで有名。いかにフリーに近い、自由度の高い演奏になっても揺らぐことの無い、堅実でエネルギッシュなドラミングは上質のバッキング。当時36歳。

ピアノのジャッキー・バイアードは、「ジャズ界において最も説得力に富んだ多芸多才なピアニストのひとり」と謳われる、当時遅咲きのオールラウンドなピアニスト。当時43歳。そして、ベースのレジー・ワークマンは、当時、若手の新進気鋭なベーシストの一人。そのモーダルで限りなくフリーなベース・ラインは斬新な響き。
 

Setting_the_pace

 
さて、そんな猛者揃いのメンバーで、思いっきり限りなくフリーでモーダルなハードバップを演奏しまくるのがこのライブ盤。音も良好。迫力満点。こんなライブ盤があったんやなあ、と思わず感慨に耽ったりする。

オリジナル盤では収録曲はたったの2曲。アービン作曲の「Setting the Pace」が約19分の演奏。もう1曲は、デックス作曲の「Dexter's Deck」で23分弱の演奏。とにかく、限りなくフリーでモーダルな、熱気溢れる大ブロウ大会である。

アービンは、もともとモーダルでアグレッシブで自由度の高いテナーを吹いていたので違和感は無いが、デックスがこんなにモーダルで自由度の高いブロウに追従するとは思わなかった。これだけモーダルで自由度の高いデックスは聴いたことが無かった。う〜ん、デックスは単にハードバップなテナー奏者では無かったのだ。いや〜驚いた。

さすがに、こういうモーダルでアグレッシブなブロウについては、アービンの自家薬療中のものである。かなり充実度の高いブロウを繰り広げていて聴き応え満点である。とにかくテナーが良く「鳴って」いる。

収録曲2曲とも長尺のライブ盤だが、間延びしたり、マンネリに陥ることは無い。というか、アービンとデックスのフロントのテナーのブロウが全くもって充実していて、バイアード、ドーソン、ワークマンのリズム・セクションは、当時の新主流派風の新しいモーダルなバッキングを供給する。

濃厚な内容の、思いっきり限りなくフリーでモーダルなハードバップな演奏に、一気に聴き終えたあと、精神的に心地良くヘロヘロになる、爽快感溢れるライブ盤です。思わず「こんなアルバムあったんや〜」。

 
 

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2015年10月15日 (木曜日)

「ニューヨークの秋」に惚れ惚れ

さて、今日もデスクター・ゴードン。デックスの初期のリーダー作3連発である。今日は1950年代に入る。1955年9月録音の名作、Dexter Gordon『Daddy Plays the Horn』(写真左)である。

このアルバムは、今から37年ほど前、ジャズ者初心者の頃、例の「秘密の喫茶店」で教えて貰って以来、大好きなデックスのリーダー盤である。ジャケットのイラストも秀逸。このアルバムに詰まった雰囲気を的確に表してくれている。

ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Kenny Drew (p), Leroy Vinnegar (b), Lawrence Marable (ds)。当時の米国西海岸ジャズの精鋭達をリズム・セクションに従えた、魅力的なデックスのワンホーン作である。

僕の所有しているアルバムの収録曲は以下の順番である。確か、LP時代はこの順で、CDは1〜3曲目と4〜6曲目とが3曲ずつ逆転して収録されている。こういうのって困るよな。でも、僕にとってはLP時代の以下の順番が一番フィットする。

1. Daddy Plays The Horn    
2. Confirmation    
3. Darn That Dream    
4. Number Four    
5. Autumn In New York    
6. You Can Depend On Me

 

Daddy_plays_the_horn

 
冒頭の「Daddy Plays The Horn」からデックスのワンホーン全開である。大らかで力強い、展開の裾野が広く、良い意味で茫洋なデックスのテナーが全開で吹きまくる。時々、茶目っ気たっぷりにユーモアのある引用などを織り交ぜながら、悠然と吹きまくる。 

続くビ・バップの名曲「Confirmation」も大らかなブロウそのもの。ビ・バップの名曲なんで、高速フレーズのテクニック全開のけたたましいブロウを思い浮かべるが、デックスはお構いなく悠然とこのビ・バップの名曲を吹き上げていく。

そして、絶品は「Autumn In New York」。ニューヨークの秋。この曲が入っているアルバムは「何でも通し」なくらい、僕はこの曲が大好きなんだが、このデックスのバージョンはとりわけ素晴らしい。

もともと歌モノを吹かせると右に出る者が無いくらい素晴らしいブロウを披露してくれるデックスである。この名曲を悠然と大らかに吹き上げてくれる。思わず心にジーンと響く。ストレートでシンプルなデックスのテナー。良い。実に良い。

1952年〜1960年の間の8年間、デックスは麻薬中毒でリーダー盤は2枚しか出していない。その2枚とは、一昨日ご紹介した『Dexter Blows Hot and Cool』と、この『Daddy Plays the Horn』の2枚。この2枚がとても素敵な内容で、聴けば聴くほどに惚れ惚れするのだ。

 
 

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2015年10月14日 (水曜日)

ビ・バップなデックスです。

デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)。愛称デックス。彼のリーダー作『Dexter Blows Hot and Cool』を昨日、ご紹介したのだが、このアルバムが出てきたら、この初リーダー作も出てくる(笑)。Dexter Gordon『Dexter Rides Again』(写真左)。

この『Dexter Rides Again』は、ジャズ盤の紹介本でもデクスターの代表作の一枚として度々登場する。でも、1945年から1947年の間の録音なので、明らかに音は良くない。ノイズはパチパチ入っているし、音のレンジは狭い。それでも、デックスのテナーの大らかさはバッチリ伝わってくるのだから、デックスのテナーは凄い。

1945年から1947年の間というと、ジャズの演奏のトレンドは「ビ・バップ」。この『Dexter Rides Again』もビ・バップの演奏が詰まっている。収録曲はどれもが2〜3分の演奏。その短い演奏の中に、キラッと光る様なアドリブフレーズ、オッと身を乗り出すような節回しが聴いて取れる。よくよく聴いていると、どうも数曲単位でパーソネルが変わっている様な感じがする。ということで調べてみると、
 

Tracks 1-3, December 11, 1947.
Leo Parker - baritone saxophone
Tadd Dameron - piano
Curly Russell - bass
Art Blakey - drums

Tracks 4-7, January 29, 1946.
Leonard Hawkins - trumpet
Bud Powell - piano
Curly Russell - bass
Max Roach - drums

Tracks 8-11, October 30, 1945.
Sadik Hakim - piano
Gene Ramey - bass
Ed Nicholson - drums
 
 

Dexter_rides_again

 
当然、テナーは全編に渡ってデックスなんだが、サイドメンの中では、特にピアノに注目である。冒頭から1曲目から3曲目は、タッド・ダメロン、4曲目から7曲目は、バド・パウエル。8曲目から11曲目は、サディク・ハキム。いずれも、ビ・バップを代表するピアニストがズラリ。特に、バド・パウエルのピアノが好調。

ドラムも注目に値する。1曲目から3曲目は、アート・ブレイキー、4曲目から7曲目は、マックス・ローチ。8曲目から11曲目は、エド・ニコルソン。ビ・バップにおいては、リズム&ビートの刻みが実に重要なんだが、なるほど、パーソネルを見ると、このアルバムの優秀な理由が良く判る。

デックスのテナーは大らかでストレート。決して、オールド・スタイルと呼ばれる音の出し方では無い。後続のソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンのブロウに繋がるストレートさ。加えて、ワイドな展開、余裕あるブロウ。決して、ビ・バップに染まらない、デックス独特のテナーがここにある。

ジャズ者初心者の方々は、明らかに音は良くないので、敢えてこのアルバムは聴かなくても良いかと思います。音の悪い演奏を聴くのは、初心者にとっては辛いもの。無理はしないで下さい。ジャズ者中級者以上の方々にはお勧め。一度は聴いてみる必要はあるでしょう。ビ・バップの良い演奏を聴くことが出来る好盤です。

 
 

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2015年10月13日 (火曜日)

大らかで茫洋、包むようなブロウ

昔、若い頃はこの人のブロウの、どうにもノンビリした感じがフィットしなかった。豪放磊落なロリンズ、電光石火なコルトレーンの方が判り易かった。しかし、いつの頃からか、40歳を越えた頃からだろうか。この人の大らかブロウが心地良くなってきた。

その人とは「デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)」。愛称デックス。1923年生まれ。ジャズ・テナー奏者のレジェンドの一人である。1923年生まれなので、1940年代のビ・バップから、ジャズの歴史にドップリ浸かったジャズメンなんだが、そんなジャズの歴史や演奏のトレンドなど何処吹く風、自らのスタイルを逝去するまで貫いた希有な存在である。

デックスのテナーの個性は「大らかで、茫洋としていて、包むような」ブロウ。テクニックは優秀なんだが、それを感じさせない、スケールの大きい、茫洋としたブロウは聴いていてとても心地良い。まあ、若い時は、このノンビリしたブロウにイライラしたりしたこともあったが、それは「若気の至り」というヤツである。

このアルバムを聴けば、デックスのテナーの個性が良く判る。Dexter Gordon『Dexter Blows Hot and Cool』(写真左)。1955年11月の録音。デックスのリーダー作。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Jimmy Robinson (tp), Carl Perkins (p), Leroy Vinnegar (b), Chuck Thompson (ds)。なかなか渋い顔ぶれ。

どうも、この頃のデックスはドラッグに耽溺していた様だが、そんな雰囲気は微塵も無い。全編に渡って、彼独特の「大らかで、茫洋としていて、包むような」ブロウを十二分に聴かせてくれます。力感溢れ、テクニック優秀なブロウなんですが、全体に漂う「ノンビリ」した感じが前面に出ていて、頭で考えるジャズでは無く、感覚で捉えるジャズという雰囲気がとても面白い。
 

Dexter_hot_and_cool

 
それとこのアルバムを聴いていて強く感じるのは、デックスのテナーの「歌心」。デックスは、スタンダードの旋律を唄うように吹き、それに続くアドリブ・ラインを唄うように吹く。彼のブロウは「メロディアス」。聴き心地が良いのは、彼のブロウが「メロディアス」だからである。

サイドメンでは、ピアノのカール・パーキンスが良い。哀愁溢れるパーキンスのピアノが、デックスの「大らかで、茫洋としていて、包むような」ブロウに上手くフィットしている。

アップテンポの曲もバラードな曲も、どちらも実に上手くまとめている。アレンジも優秀なんですね。1955年の作品なんで、思いっきりハードバップしていると思いきや、中身の雰囲気は明らかに「ビ・バップ」。それでも、テクニックを競うビ・バップでは無く、演奏を聴かせるビ・バップには変化していて、デックスもなかなかやるなあ、と感心する事しきり。

ジャケット写真も明らかにジャジーなもの。見ているだけでジャズを感じて、中身の音が聴こえて来そうな秀逸なジャケットも魅力ですね。確かに若いジャズ者方々にはお勧め出来ないかもしれませんが、40歳を過ぎたベテランのジャズ者の方々には一聴をお勧めします。

 
 

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2015年8月18日 (火曜日)

ジャッキーとデックスのライブ盤

1960年代後半から、ジャッキー・マクリーンはフリーキーなトーンに走った。通常のハードバップには留まらず、自己改革に走った。さすがである。で、デクスター・ゴードン(愛称はデックス)はと言えば、1960年初頭にはニューヨークのジャズ・シーンに見切りをつけて、欧州に渡った。この思い切りも天晴れである。

ジャッキー・マクリーン(愛称はジャッキー)は欧州には渡っていない。1968年、コネチカット州で教職に就く。教職に就いて音楽活動を休止するが、1970年代前半にスティープル・チェイスと契約して活動再開。スティープル・チェイスの拠点はコペンハーゲン。このコペンハーゲンのジャズ・ハウス「モンマルトル」でのライブ録音が有名になる。

Jackie McLean featuring Dexter Gordon『The Meeting』(写真左)と『The Source』(写真右)。そんなジャッキー・マクリーンとデクスター・ゴードンが共演したライブ盤である。1973年7月20日と21日。もちろん、コペンハーゲンのジャズハウス「モンマルトル」でのライブ録音である。

ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Dexter Gordon (ts), Niels Henning Orsted Pedersen (b), Alex Riel (ds), Kenny Drew (p)。当時のスティープル・チェイスの看板ジャズメンがズラリと名を連ねる。

これがまあ、素晴らしいライブ盤である。このレーベルは欧州のレーベルとしては、比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。このライブ盤2枚も基本的にハードバップ。
 

The_meeting_the_source_2  

 
ジャッキーはちょっとフリーキーなトーンに走る。しかし、デックスは全く気にしない。ジャッキーは尖ったフレーズを吹きまくって、先鋭的なハードバップを表現する。しかし、デックスは全く気にしない。デックスは欧州に来て久しい。欧州ジャズの十八番とも言える、モード系・フリー系のジャズには精通している。

ジャッキーの先鋭的なハードバップなフレーズをガッチリ受け止めて、デックスの考える「ハードバップなフレーズ」を繰り出す。
 
これがまあ、さすがはデックス。旧来のハードバップとは全く違う、ジャッキーの先鋭的でハードバップなフレーズの上を行く、モーダルでフリーキーな魅力的なアドリブ・フレーズの数々。

デックスの器の大きさと、デックスの欧州でのジャズの研鑽を垣間見るようである。ジャッキーには悪いが、このライブ盤2枚はデックスの為にある。しかし、ジャッキーも只者では無い。デックスのフレーズに触発されて、フリーキーなトーンに頼らずに、先鋭的なハードバップな革新的フレーズを連発するようになる。

熱気溢れる、凄まじいばかりのテンション溢れる、1970年前半の時代の先端を行くハードバップ。これが北欧はコペンハーゲンで連夜、演奏されていた。その事実を、この『The Meeting』と『The Source』の2枚を聴き通すことで追体験することが出来る。

 
 

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2009年4月24日 (金曜日)

こだわり無く、ノンビリ聴く

長年、ジャズを趣味にしていると、いろいろと組織だって、あるミュージシャンを集中して聴いたり、あるテーマを基に、アルバムを聴きこんだりするんだが、そんな聴き方を続けていると疲れてくる。時々は、聴きたいアルバムを抜き出して、頭の中を空っぽにして、こだわり無く、ノンビリとジャズを聴く。

今日は、Jackie McLean『The Meeting』(写真左)。アルト・サックス奏者のジャキー・マクリーンと渡欧中のテナー・サックス奏者、デクスター・ゴードンとの唯一の共演ライヴ盤。1973年7月20日、デンマークはコペンハーゲン、ジャズハウス「モンマルトル」でのライブ録音。2枚に分散収録されたアルバムの1枚目。

ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Dexter Gordon (ts), Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b), Alex Riel (ds)。う〜ん、なかなかの布陣である。

マクリーンのアルトは、一聴して直ぐに判る。丸く真っ直ぐな音なんだが、音程が少し外れて、ちょっとテンポがずれている感じが「ジャキー・マクリーン」である。クラシックの世界だと絶対に落第点だろうな。でも、ジャズの世界では、これが個性として輝くから面白い。
 

Jackie_m_the_meeting

 
どの曲もメンバーは皆、絶好調である。このアルバムの実質上のリーダーは、マクリーンであるが、実際はデクスターと双頭アルバムである。マクリーンも絶好調だが、デクスターも絶好調。ミディアム・テンポの軽快な曲、3曲目の「Rue de La Harpe」では、マクリーンのアルト・ソロから始まるが、マクリーンとデクスターが徐々に互いに触発しあって、ヒート・アップしていく様が実に良い。ジャズを感じる瞬間である。

さすが、名手マクリーンとデックス。バラードも素晴らしい。5曲目「Sunset」はバラード。始まりはマクリーンとデックスのユニゾンによるテーマ。広がりのある展開、美しいバラード演奏。歌うように、慈しむように歌い上げていく、マクリーンのアルトとデックスのテナー。

ニールス・ヘニングのベースが絶好調。超絶技巧のベースソロが堪能できる。ドリューのピアノも地味ではあるが、確実なサポート。リールのドラムスは、ちょいと叩きすぎの感があるが、フロントの二人に、これだけ煽られては、もう叩きまくるしかないよな(笑)。

ジャズの紹介本には、あまり採り上げられませんが、いいライブ・アルバムです。アーティスティックに洗練されているとは言えませんが、ジャズ独特の熱気溢れる、音の塊のような演奏は、やはり堪えられませんなあ。やっぱりジャズって良いですね〜。

こだわり無く、ノンビリ聴く。そんなジャズ鑑賞も心地良い。マクリーンの技とデックスの歌心に「舌鼓」ならぬ「耳鼓」(笑)。
 
 
 
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