2020年10月26日 (月曜日)

ジョンスコの4ビート・ジャズ

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降、略して「ジョンスコ」)という、ほぼレジェンド級のギタリストって、フュージョン・テイストのコンテンポラリーなジャズから入って、ジャズ・ファンク、そして、ワールド・ミュージック志向なニュー・ジャズをやったり、個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」を駆使して、新しいジャズ・ギターのイメージを拡げてきた。

ニュー・ジャズ志向の演奏も多々あるにも関わらず、今までに渡り歩いたジャズ・レーベルは、Enja(エンヤ)、Blue Note、Verve(ヴァーヴ)、EmArcy(エマーシー)などで、ECMレーベルでの録音が、2006年リリース(録音は2004年)の『Saudades』が初めてだったのは意外だった。そして、ニュー・ジャズの老舗レーベルで録音した盤が、意外や「メインストリーム志向」なアルバムだったとは驚いた。

John Scofield『Swallow Tales』(写真左)。Recorded March 2019年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Bill Stewart (ds), Steve Swallow (b)。キーボードレスのギター・トリオ編成。ドラムとベースのリズム隊は、レジェンド級の思索的なベーシスト、スワローと、変幻自在で柔軟なドラミングが身上のスチュワート。
 
 
Swallow-tales  
  
 
この盤のジョンスコは「メインストリーム志向」。パッキパキ硬派で4ビートが中心の「メインストリーム・ジャズ」を展開する。この盤でのジョンスコは不必要に「捻れない」。フレーズを伸ばすときに軽く捻るが、ジャズ・ファンクをやる時の様に大胆に捻れることは無い。エッジの丸い、芯の太いエレギの音色がフレーズの伸びの最後に捻れる。聴けば、やはり個性的な、唯一無二なギターである。

ニュー・ジャズっぽい、硬質で欧州的なベースを弾きまくるスワローが、意外とジョンスコとマッチするのだから、ジャズって面白い。そして、ジョンスコが4ビートなジャズをやる時、欠かさない存在になりつつある、ビル・スチュワートの4ビート・ドラミングも聴きもの。ポリリズミックな適度な手数のドラミングは新鮮な響きが満載だ。

アルバム全体の雰囲気が、ニュージャズ志向のECMレーベルぽくない音作りが意外に新鮮に響く。ジョンスコのエレギの志向に揺らぎが無いのがポイントで、その志向に応じて叩きまくスチュワートのドラミングもECMレーベルらしくなくて新鮮。そんなECMレーベルらしくないところに、ECMレーベルらしいスワローのベースが聴こえると何故かホッとするから不思議。実に聴き応えのあるECMレーベルの4ビート・ジャズである。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 
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  ・『Middle Man』 1980
 
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  ・The Band の「最高傑作」盤
 
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  ・僕達はタツローの源へ遡った


 
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2020年9月14日 (月曜日)

二人の「捻れギタリスト」である

最近、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、ビル・フリゼールが「トレンド入り」している。ビル・フリゼールとは、ジャズとしてノーマルなフレーズが出てこない、圧倒的に個性的な「捻れた」ギターが飛び出してくる、良い意味で「変態ギタリスト」と呼んで良い。1951年生まれだから、今年で69歳。どうしてこんなに「捻れた」のか判らないが、とにかく捻れて浮遊するギター。

Marc Johnson's Bass Desires『Bass Desires』(写真左)。1985年5月、NYのThe Power Stationでの録音。ECMの1299番。ちなみにパーソネルは、Marc Johnson (b), John Scofield (g), Bill Frisell (g, g-syn), Peter Erskine (ds)。ベースがリーダー、ギター2本、キーボードレスの変則ギター・トリオ編成である。

僕はこの盤で、ビル・フリゼールと出会った。2本のギターのうち、捻れまくってはいるが、オーソドックスにブルージな雰囲気を振り撒く方が「ジョンスコ(John Scofield)」なのは判った。が、もう1本のギター、浮遊感を全面に押し出しつつ、捻れまくるわ、飛びまくるわ、この変態ギターは誰だ、と思って、パーソネルを見たら「ビル・フリゼール」だった。
 
 
Bass-desires_20200914200801   
 
 
改めて、このマーク・ジョンソンのリーダー作を聴き直してみると、なかなか「エグい」内容に改めてビックリする。とにかく尖っている。尖りまくって、アブストラクト寸前、純ジャズの範疇に留まって、自由度の高い、思いっ切りモーダルな演奏を繰り広げている。とにかく、マーク・ジョンソン=ピーター・アースキンのリズム隊が凄まじい。硬派でアグレッシヴ、力感と柔軟性を併せ持つ、素晴らしいリズム&ビートを供給する。

そんなリズム&ビートをバックに、二人の捻れギタリストが乱舞する。特にフリゼールが、ギター・シンセサイザーまで担ぎ出しての大活躍。冒頭の「Samurai Hee-How」を聴くと、二人の捻れギタリストの個性がとても良く判る。同じ捻れギタリストでも、フリゼールは浮遊感溢れる捻れギターで好き放題に弾きまくり、ジョンスコは堅実に捻れたギターでサポートに回る。二人の捻れギターがアウトドライブせずに自由度の高いアドリブを弾きまくれるのは、ジョンスコの堅実なサポートがあってこそ、である。

とびきり浮遊感溢れる、自由度の高いモード・ジャズ。2曲目のコルトレーンの大名盤『至上の愛』からの「Resolution」でのパフォーマンスは、高テンションで凄まじいばかりのインプロビゼーションを展開していて、思わずスピーカーの前に釘付けになる。今の耳で聴いても「斬新」の一言。さすがはECMレーベル。凄い音源を残している。
  
  
   

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  ・僕達は「タツロー」を発見した
 
 
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2020年8月27日 (木曜日)

現代のジャズ・ファンクなギター

僕がジャズを聴き始めて、ジャズ・ギターは一番後回しにした楽器である。ジャズをかれこれ聴き始めて40年余になるが、ジャズ・ギターについて本腰を入れて、アルバム・コレクションを始めたのが21世紀に入ってからである。しかも、現代の、その時点での第一線で活躍していたギタリストをメインにコレクションを始めたので、ちょっと偏りがある。

そんな中で、最初にお気に入りのギタリストになったのが、パット・メセニー、ジョン・スコフィールド、アラン・ホールスワーズの3人。正統なモダン・ジャズの歴史に沿ったセレクションでは無かった。1950年代から1960年代のいわゆるハードバップ系のギタリストについては、どうも皆、同じに聴こえてしまう(今は違うけど)。ジャズ・ギターについては、とにかく個性的な音が欲しかったので、パット・ジョンスコ・アランの3人になったのだろう。

John Scofield『Bump』(写真左)。2000年のリリース(1999年の秋の録音)。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Mark De Gli Antoni (key), Chris Wood, David Livolsi, Tony Scherr (b), Eric Kalb, Kenny Wollesen (ds), Johnny Almendra, Johnny Durkin (perc)。ジョンスコの元にジャムバンド・シーンを代表するバンドからツワモノどもが集結している。
 
 
Bump
 
 
捻れまくった、変幻自在のオーバードライヴしたジョンスコのエレギが無茶苦茶に格好良い。ウネウネうねりまくり、ウワーンと拡がり、キュキューと捻れて伸びる「変態ギター」。ビートは重いファンク・ビート。現代の、21世紀のジャズ・ファンクがこの盤に詰まっている。冒頭の「Three Sisters」のギターのフレーズをちょっと聴くだけで「ジョンスコ」と判る、むっちゃ個性的なギターである。

メデスキ・マーティン&ウッド、ソウル・コフィング、ディープ・バナナ・ブラックアウト、セックス・モブといった、ロック~ファンク系・オルタナ~アンダーグラウンド系のジャム・バンドのメンバーを集めてセッションを繰り広げた「ジョンスコの考えるジャムバンド・ミュージック」。ジョンスコは当時49歳。年齢的にベテランの域に入ってはいたが、この新しい音へのチャレンジ精神は素晴らしいの一言。

とにかく、ジョンスコのギターが「捻れに捻れまくって」います。それも素敵に爽やかに心地良く「捻れる」。それがジョンスコの個性。「捻れて」はいるものの、フレーズの作り、フレーズのビートはジャズの域にしっかり留まっていて、捻れフレーズの底にスイング感が見え隠れするところが「ニクい」。この盤のジョンスコ、大のお気に入りです。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・『Your World and My World』 1981

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・『Music From Big Pink』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・太田裕美『Feelin’ Summer』



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2018年10月13日 (土曜日)

円熟の「ジャムバンド仕様」盤

今日は最近リリースされた新盤から。現代のメンストリーム・ジャズのエレギについては、メセニー、スコフィールド、フリゼールの3人がお気に入り。21世紀に入っても、まだまだ若手のエレギ使いが出てきているが、当然、まだ先の3人の域には達していない。よくよく振り返れば、メセニー、スコフィールドは1970年代後半から、フリゼールは1990年代半ばから聴いている。思えば長い付き合いである。

John Scofield『Combo 66』(写真左)。先月の末、その「エレギ3人衆」の中の一人、ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)が新盤をリリースした。2018年4月9日の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Gerald Clayton (p), Vicente Archer (b), Bill Stewart (ds)。スコフィールドをフロントに据えたカルテット構成。ジャケットも渋い。

2016年の『Past Present』、2017年の『Country For Old Men』で2年連続ベスト・ジャズ・アルバムをグラミー賞で獲得していて、現在、ジョンスコは絶好調である。デビュー当時から、メンストリーム・ジャズ、ジャズ・ファンク、ジャムバンド、この3つの演奏トレンドを行ったり来たりして、数々の好盤を送り出してきた。今回の新盤は「ジャムバンド」が音の傾向。
 

Combo_66  

 
ジョンスコのエレギは個性が強い。太くて丸いが音のエッジは立っていて、繰り出すフレーズは全て「捻れて」いる。この「捻れが一番の「個性」。あまりに個性が強いので、普通にアルバムを作ったのでは、聴く側は2〜3作で「飽きる」。そこで考えたのが、メンストリーム・ジャズ、ジャズ・ファンク、ジャムバンド、この3つの演奏トレンドを行ったり来たりしながら、企画盤を出したり、セッション盤を出したりして、その「飽き」を避ける工夫。

今回は「ジャムバンド」。全曲ジョンスコのオリジナル曲で占められているが、どれも「ジャムバンド」の演奏対象としては良い曲ばかりで、聴いていて、結構、爽やかな気分になれる。カルテットとしての演奏のレベルが高く、かつ流麗。バックのリズム・セクションも内容充実。ジョンスコの「捻れ」エレギの個性が浮かび上がる様な、硬軟自在、変幻自在なリズム・セクションは聴き応えが十分。

ジョンスコは1951年生まれなので、今年で67歳。もう大ベテラン、レジェンドの域に達しつつある。しかし、奏でる音はまだまだ「一線級」。捻れのフレーズに磨きがかかり、聴き心地がとても良い。演奏トレンドを変えながら、自らもマンネリを避け、聴き手の「飽き」を避ける。そうしながら、ジョンスコは好盤をリリースし続ける。円熟の境地である。

 
 

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2018年9月 1日 (土曜日)

適用性の高さこそが最大の個性

何もジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集のアルバム紹介に挙がる盤ばかりが「好盤」では無い。最近ではジャズに関する単行本が結構、出版されるようになったので、この単行本からも「好盤」の情報を得ることが出来るようになった。しかし、最終的には、自分の目と手でアルバムを探索し、自分の耳で聴いて、自分なりの「好盤」を探し出す。これが、ジャズ盤コレクターの醍醐味である。

この盤は、ジャズ・ベーシストのリーダー作を物色していた時、ジョン・パティトゥッチ(John Patitucci)の名に出くわし、このベーシストのリーダー作を聴き進めていって、出会った盤である。John Patitucci『Sketchbook』(写真左)。凄腕ベーシスト、パティトゥッチ、この盤では、エレクトリック・ベースによるプレイがメイン。超絶技巧を活かしたギター・ライクな多弦ベースによるプレイがソロが魅力的。

1990年のリリース。時代は純ジャズ復古の後、メインストリームな純ジャズと、フュージョン〜スムース・ジャズがバランス良く存在していた時代。ちなみにパーソネルは、John Patitucci (b), Michael Brecker (ts), John Scofield (g), Peter Erskine (ds), Vinnie Caliuta (ds), Terri Lyne Carrington (ds), Alex Acuna (per), John Beasley (p), David Witham (synth), Jon Crosse (ss), Dori Caymmi (vo), Ricardo Silveira (g), Paulinho Da Costa (per), Judd Miller (synth)。

 

John_patitucci_sketchbook  

 

フュージョン・ジャズ系の強者どもを集めた力作。個人的にはまだまだやりたいジャズのイメージが沢山あったみたいで、この盤について、かなりバリエーションに富んだ内容になっている。明確なフュージョン・ジャズあり、コンテンポラリーな純ジャズ風の演奏あり、といろいろやっているのだが、パティトゥッチのエレクトリック・ベースの個性は、どんな内容のジャズにおいても一貫しているので、アルバム全体の統一感は損なわれていない。

彼のエレベはこの盤で聴くと、ほぼ完成の域に達した、といって良いだろう。彼の超絶技巧を活かしたギター・ライクな多弦ベースによるプレイがアルバム全体でフィーチャーされていて、彼のベーシストとしての力量が良く判る内容になっている。あれもできる、これもできる、で器用貧乏とか、八方美人的とか、一貫性が無いとか揶揄されるが、僕はそうは思わない。その多様性、適用性の高さこそが、パティトゥッチのベースの最大の個性だろう。

これだけ適用力の高いベーシストであれば、フロントを張る楽器も活き活きとしたパフォーマンスを発揮する。この盤でも、テナーのマイケル・ブレッカー、エレギのジョン・スコフィールドが胸のすくような快演を展開している。そうそう、ビニー・カリウタのドラムもパティトゥッチのベースに触発されて躍動感抜群。演奏のリズム&ビートを支える役割のベース。演奏全体の出来不出来は、このベースに依るところが結構あるんだろう。そういう意味で、この盤はベーシストのリーダー作として優れた内容の好盤と言える。

 
 

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2017年9月20日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・59

Gary Burton=ゲイリー・バートンは、ヴィブラフォン奏者。1960年代後半、若かりし頃は、ヴァイブ引っさげ、尖ったジャズロックをガンガンやって、時々、アバンギャルドな雰囲気の硬派なジャズをやったり、とにかく尖ったヴァイブ奏者だった。1970年代は、ピアノのチック・コリアと組んで、ピアノとヴァイブのデュオ演奏で一世を風靡した。

が、バークリー音楽院で教鞭を執る立場にあったこと、かつ、1980年代になって、人間的に充実した落ち着きを身につけたのか、リーダーとしてバンド全体を上手くまとめながら、純ジャズ復古の波にも上手く乗りつつ、内容充実のメインストリームな純ジャズ盤をコンスタントにリリースするようになる。

僕はこのバートンのジャズメンとしての変遷をリアルタイムで体験してきて、コンテンポラリーな純ジャズの担い手として、バンドを通じて有望な若手を発掘するバンドリーダーとして活躍するバートンを頼もしく思ってきた。若い才能の発掘者として、コンテンポラリーな純ジャズの担い手として、もっとバートンは評価されて然るべきだと思っている。
 

Gary_burton_depature

 
Gary Burton & Friends『Departure』(写真左)。1996年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), John Scofield (g), John Patitucci (b), Fred Hersch (p), Peter Erskine (ds)。フレッド・ハーシュのピアノ・トリオをリズムセクションに、バートンのヴァイブとジョンスコのギターがフロントを張るクインテット構成。

とっても魅力的な、リラックスしたセッションが繰り広げられる。そんな中で、ジョンスコのギターが冴えまくっている。彼は特に、こういうスタンダードで純ジャズなセッションで、その実力を遺憾なく発揮するタイプなのだが、このバートンのリーダー作でも、そんなジョンスコがガンガンに弾きまくっている。

パティトゥッチのベースとアースキンのドラムが供給するリズム&ビートは安定の極み。ハーシュのピアノはリリカルで耽美的なフレーズを醸し出す。意外とこのリズム・セクションの今までに無い独特の個性が、このスタンダードなアルバムを惹き立てている様です。これもバートンのリーダーシップの成せる技。素敵なジャケット共々、お勧めの好盤です。

 
 

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2017年8月24日 (木曜日)

現在のジャズの「深化」を感じる

ジャズって確実に「深化」しているなあ、って感じることが多い。1950年代から1960年代、ハードバップからモード・ジャズとメインストリーム・ジャズは変遷していったが、このハードバップにしても、モード・ジャズにしても、21世紀の現在でも演奏されるジャズ・フォーマットである。

といって、1950年代から1960年代の演奏をそのまま「なぞっている」のでは無い。演奏のレベルは高くなっているし、演奏の展開にも様々な工夫が聴かれる。演奏の響きも明らかに純度が高くなっているし、アレンジの工夫も難度が高いが、とても考えられた音作りがなされている。つまり、ジャズは「深化」しているのだ。

Jack DeJohnette, Larry Grenadier, John Medeski & John Scofield『Hudson』(写真左)。今月の新盤なのだが、僕はこの新盤を聴いて、その「ジャズの深化」を強く感じた。参加メンバーが並列の関係で構成されたテンポラリー・バンドなので、パーソネルに連なる4人の名前がズラリと並ぶ。改めて、パーソネルは、Jack DeJohnette (ds), Larry Grenadier (b), John Medeski (key), John Scofield (g)。
 

Hudson

 
デジョネットは1942年生まれなので、今年で75歳。ジョンスコは1951年生まれなので、今年で66歳。グレナディアは1966年生まれなので、今年で51歳。メデスキは1965年生まれなので、今年で52歳。大レジェンドのデジョネット、中レジェンドのジョンスコ、そして、中堅ベテランの2人がガッチリ組んだ、明らかに硬派な「コンテンポラリーな純ジャズ」である。

とりわけ、ジョンスコが凄い。弾きまくっている。デジョネットが心なしか、大人しいというか落ち着いたドラミングで終始している分、ジョンスコの弾け方が印象深い。メデスキのプログレッシブなオルガンも効いている。グレナディアが全体のビートをガッチリと押さえている。聴き始めると知らない間に一気に聴き切ってしまうほどの充実度。

Bob Dylan「Lay Lady Lay」「A Hard Rain's A-Gonna Fall」、The Band「Up on Cripple Creek」、Jimi Hendrix「Wait Until Tomorrow」、Joni Mitchell「Woodstock」のカバーが目を惹く。70年代ロック者からすると感動のカバー。出来も良い。他のメンバーの自作曲もなかなか。現在のジャズの「深化」がガッツリと感じられる好盤である。

 
 

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2017年3月 5日 (日曜日)

ジョンスコ流のニューオリンズ盤

米国って、なんやかんや言って、自分達のルーツ・ミュージックが好きなんだよな〜、と時々思う。英国だってそうだ。なんやかんや言って、自分達のルーツ・ミュージックが好きだ。ロックだってジャズだって、この「ルーツ・ミュージック」の適切な要素を織り込むと、そのアルバムって大体がヒットする。

このアルバムだって、あからさまに米国のルーツ・ミュージックの要素をふんだんに織り込んで、ヴォーカルを入れてのニューオリンズ/R&B寄りサウンドで、米国ジャズ・シーンでは結構売れたらしい。米国では、ゴスペル、R&B、カントリー&ウエスタン、トラッド・フォークの要素を盛り込んだジャズは鉄板らしい。

John Scofield『Piety Street』(写真左)。2009年のリリース。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Jon Cleary (vo, org, p), George Porter, Jr. (b), Ricky Fataar (ds), Shannon Powell (ds, per), John Boutte (vo)。このアルバムは、そんな米国ルーツ・ミュージックの中の「ゴスペル、R&B」の要素をふんだんに盛り込んだもの。
 

Piety_street

 
一言で言うと「ジョン・スコフィールド(ジョンスコ)流ニューオリンズ・アルバム」である。この盤でのジョンスコのエレギは、相変わらず捻れてはいるが、ソウルフルかつブルージーな正統派なエレギである。捻れを押さえて「ゴスペル、R&B」の要素がそこはかとなく浮き出る様に弾き回している。とにかく上手い。

基本的にジャズの演奏って、オルガンの音色とブルージーなちょっとハスキーな声のボーカルが入ると、演奏の雰囲気がグッと「ゴスペル、若しくはR&B」風な音世界にガラッと変わる。いわゆる「こってこてファンキー」な演奏になるのだ。実は僕はこの「こってこてファンキー」な演奏に「からきし弱い」。

アルバム・ジャケットもゴスペル風で、ジャケットだけ見れば、ジャズのアルバムだとは思わないですよね。ジョンスコのキャリアの中では異色のアルバムの位置づけではありますが、内容は充実しています。コンテンポラリーなフュージョン・ジャズの好盤として、特に、米国ルーツ・ミュージック好きのジャズ者の皆さんにお勧めです。

 
 

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2017年2月 4日 (土曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・48

冬にジャズ・ギターが良く似合う。気温が上がらない寒い寒い昼下がり。空は鉛色、北風が吹き付ける昼下がり。そういう季節は、暖かい部屋の中で珈琲をすすりながら、ジャズを聴くのが一番。それもギター、それもアコースティック・ギター(略してアコギ)。

一昨日、そんなフレーズを書いた。アコギの音色はストイックで透明度が高い。冬の「身が切られるような寒さ」に通じる音の切れ味の良さ。冬にジャズ・アコギは良く似合う。ということで、冬にピッタリのジャズ・アコギの好盤をもう一枚。

John Scofield『Quiet』(写真左)。1996年のリリース。捻れエレギのジョン・スコフィールド(略してジョンスコ)。素敵に捻れたエレギを弾く、現代ジャズ・ギターの代表格の一人。1951年生まれなので65歳になる。もう大ベテランの域に達している。そんなジョンスコが45歳の時に録音した、ジョンスコがアコギを弾いたアルバムである。

ジョンスコのエレギは「捻れ」のフレーズが個性。マイルス・デイヴィスのバンドにも招聘された、とっても素敵に「捻れた」エレギの使い手である。そんなジョンスコである。さぞかし「捻れたアコギ」のプレイを聴かせてくれるのだろう、と期待するのだが、そもそも「捻れたアコギ」ってどんな音なんだ(笑)。
 

Quiet_john_scofield

 
最初の一曲目「After The Fact」のジョンスコのアコギを聴けば、そんな期待は良い意味で裏切られる。ジョンスコのアコギは、徹頭徹尾、真っ当な正統派、オーソドックスなジャズ・アコギのプレイである。しかも上手い。

「エレギとアコギは違う」とギタリスト達は口を揃えて言う。僕もちょっとだけギターを弾けるので、ギタリストらの意見は理解出来る。エレギの使い手は必ずしもアコギの使い手にはあらず、ということなんだろうが、一昨日ご紹介したディ・メオラや、今日のジョンスコはその法則には当てはまらない。

アドリブ・フレーズは流麗ではあるが悠然。コマーシャルな雰囲気は一切無い。ここまで凜としてストイックなアコギのプレイは、実にアーティスティック。使っているアコギはナイロン弦。このナイロン弦のアコギはジャズ・ギターとしてのもの。決して、クラシックギターのそれでは無い。このアルバムを聴く限り、ジャズとしてジョンスコのアコギは、なかなかに健闘していると感じる。

フレンチホルン、バス・クラリネットなどを加えた異色なホーン編成のバッキングを聴いていると、思わず「ギル・エバンス楽団」を思い出してしまいます。よい雰囲気のバッキングを得て、ジョンスコのアコギは誠実に内省的に、リリカルで印象的なフレーズを紡ぎ上げていきます。

 
 

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2016年11月20日 (日曜日)

ジョンスコの「C&Wのジャズ化」

ジャズ化の対象というものは、現代では「何でもあり」である。1950年代、ハードバップの時代は、ミュージカルや映画の主題歌や挿入歌をジャズの「スタンダード曲」としてジャズ化した。これは現代でも継続されている。が、最近ではワールドミュージック系の曲やR&Bの名曲まで、なんでもジャズ化する。

ジャズは懐が深いのお〜、と感心しているところへ、このアルバムがリリースされた。John Scofield『Country for Old Men』(写真左)。ジャズ界の「捻れエレギの達人」ジョン・スコフィールド(長いので以下「ジョンスコ」と略)が、カントリー・ミュージックのジャズ化を目論んだアルバムである。

カントリー&ウエスタン(C&W)と言えば、米国ルーツ・ミュージックのメイン・ジャンルの一つ。僕達の子供の頃は、カントリー&ウエスタンと言えば「米国」。カントリー&ウエスタンの音楽がラジオから流れて来たら、遠く見たことも無い憧れの地「米国」を感じたもんだ。

そんなカントリー&ウエスタンをジャズ・アレンジするというこのアルバム、しかも、メインの楽器がエレギである。加えて弾き手が「捻れエレギの達人」ジョンスコ。どうなるんだ、このアルバム。

冒頭の「Mr Fool」を聴く。ジャズのアレンジはされているもののカントリー・ミュージックの雰囲気は色濃く残っている。やっぱり、カントリー・ミュージックのジャズ化は難しいのか、とも思うが、どうして、ジャズはもともと懐が深い。そもそもジャズ化されない音楽ジャンルは無い、と僕は思うのだ。
 

Country_for_old_men

 
2曲目の「I'm So Lonesome I Could Cry」で、アップテンポの4ビートなアレンジで「おお、これはジャズであるな」と感心する。カントリー・ミュージックの持つ郷愁を誘う旋律に、上手くアップテンポのジャジーなアレンジを施して、しっかりジャズ化している。これぞ、アレンジの才の成せる技である。

このアルバム、聴き進めて行くと判るのだが、ジャズのアレンジはされているもののカントリー・ミュージックの雰囲気は色濃く残っているものと、しっかりと4ビートのアレンジを施して明確にジャズ化しているものと上手く組み合わせて収録している。カントリー・ミュージックの雰囲気もしっかり楽しめるし、ジャズの雰囲気も楽しめる。これはプロデュース力の成せる技かな。

意外とジャズの世界で、ジャズ化の対象にカントリー・ミュージックを採り上げることはあまり無いのだが、このジョンスコの新盤には感心した。アレンジの才の成せる技。最後にパーソネルは、John Scofield (g), Larry Goldings (p, org), Steve Swallow (b), Bill Stewart (ds)。2016年4月の録音である。

米国ルーツ・ミュージックが大好きな僕にとっては「即ヘビロテ」。コッテコテのカントリー&ウエスタンはちょっと「ひく」が、このジャズ化は良い。

 
 

震災から5年8ヶ月。決して忘れない。まだ5年8ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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