ジョンスコ・ジャズの原点回帰
ジョンスコは自らの音作りについて、幾つかのスタイルの変換を経験している。スタイルの変換とはいっても、ジョンスコのギターの個性はそのままで、演奏の音志向を変換する方式なので、全く違和感の無いスタイルの変換ではある。
最初は「メンストリーム志向のエレ・ジャズ」から入って「ジョンスコ流ジャズ・ロック」、そして、1980年代前半〜中盤は「ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンク」にスタイルを変化させている。今日はその次のスタイルの変換のお話。
John Scofield『Flat Out』(写真左)。1988年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Don Grolnick (Hammond B-3 org), Anthony Cox (b), Johnny Vidacovich (ds, exc. 3,7,9), Terri Lyne Carrington (ds, track3,7,9)。この盤ではハモンド・オルガンを導入。ベテラン、ドン・グロルニックが担当。これは、ファンクネス増強を担うのか、と思わず身構える。
が、聴けば、その予想については完全に「肩すかし」。『Electric Outlet』から始まり、『Blue Matter』『Pick Hits Live』『Loud Jazz』の3枚の「ジョンスコ・ファンク全盛期」にて、ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンクを確立。さて、次はどうするのかな、と思ったら、エレギのボリュームを上げ、音色の出し方を工夫して、それまでのエレギのファンク度合いを2倍にも3倍にも引き上げたジョンスコの「ファンキー捻れギター」そのままに、ジャズの原点回帰にチャレンジ。
ファンクネスはそのままだが、ファンク度は後退、アコースティック路線へと大きく変換。冒頭3曲はスタンダード曲を演奏。これも新鮮。それまではオリジナル曲がメイン、スタンダード曲はほとんど採用しなかったので、この冒頭スタンダード曲の「3連発」にはビックリした。
確実に、メインストリームな純ジャズ志向に戻りつつある雰囲気濃厚。1988年2月のジョンのコメントに「ファンク路線もそろそろ満足のいくところまできた。この次は、もう少しアコースティックなムードのジャズをプレイしたいと思っている」と発言している。その発言そのものズバリのリーダー作がこの『Flat Out』ということになる。いわゆる「ジョンスコ・ジャズ」の原点回帰である。
大きく分けて、ニューオリンズ・ジャズ志向とストレート・アヘッドな純ジャズ志向で固められた本作。ただし、ジョンスコのギター、ジョンスコの「ファンキー捻れギター」はそのままなのが「安定度抜群」。あくまで、演奏の志向を転換しただけで、ジャズ・ギターのテイストまでは絶対に変えない、というジョンスコの矜持を強烈に感じる。
実際にこの次のリーダー作『Time on My Hands』では、ストイックで硬派なメインストリームな純ジャズ志向で固めた音世界を展開することになる。そういう意味では、この『Flat Out』では、ジョンスコの「3つ目の転換点」を記録したエポック・メイキングなリーダー作、という位置づけになる。
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