2023年9月23日 (土曜日)

ジョンスコ・ジャズの原点回帰

ジョンスコは自らの音作りについて、幾つかのスタイルの変換を経験している。スタイルの変換とはいっても、ジョンスコのギターの個性はそのままで、演奏の音志向を変換する方式なので、全く違和感の無いスタイルの変換ではある。

最初は「メンストリーム志向のエレ・ジャズ」から入って「ジョンスコ流ジャズ・ロック」、そして、1980年代前半〜中盤は「ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンク」にスタイルを変化させている。今日はその次のスタイルの変換のお話。

John Scofield『Flat Out』(写真左)。1988年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Don Grolnick (Hammond B-3 org), Anthony Cox (b), Johnny Vidacovich (ds, exc. 3,7,9), Terri Lyne Carrington (ds, track3,7,9)。この盤ではハモンド・オルガンを導入。ベテラン、ドン・グロルニックが担当。これは、ファンクネス増強を担うのか、と思わず身構える。

が、聴けば、その予想については完全に「肩すかし」。『Electric Outlet』から始まり、『Blue Matter』『Pick Hits Live』『Loud Jazz』の3枚の「ジョンスコ・ファンク全盛期」にて、ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンクを確立。さて、次はどうするのかな、と思ったら、エレギのボリュームを上げ、音色の出し方を工夫して、それまでのエレギのファンク度合いを2倍にも3倍にも引き上げたジョンスコの「ファンキー捻れギター」そのままに、ジャズの原点回帰にチャレンジ。
 

John-scofieldflat-out

 
ファンクネスはそのままだが、ファンク度は後退、アコースティック路線へと大きく変換。冒頭3曲はスタンダード曲を演奏。これも新鮮。それまではオリジナル曲がメイン、スタンダード曲はほとんど採用しなかったので、この冒頭スタンダード曲の「3連発」にはビックリした。

確実に、メインストリームな純ジャズ志向に戻りつつある雰囲気濃厚。1988年2月のジョンのコメントに「ファンク路線もそろそろ満足のいくところまできた。この次は、もう少しアコースティックなムードのジャズをプレイしたいと思っている」と発言している。その発言そのものズバリのリーダー作がこの『Flat Out』ということになる。いわゆる「ジョンスコ・ジャズ」の原点回帰である。

大きく分けて、ニューオリンズ・ジャズ志向とストレート・アヘッドな純ジャズ志向で固められた本作。ただし、ジョンスコのギター、ジョンスコの「ファンキー捻れギター」はそのままなのが「安定度抜群」。あくまで、演奏の志向を転換しただけで、ジャズ・ギターのテイストまでは絶対に変えない、というジョンスコの矜持を強烈に感じる。

実際にこの次のリーダー作『Time on My Hands』では、ストイックで硬派なメインストリームな純ジャズ志向で固めた音世界を展開することになる。そういう意味では、この『Flat Out』では、ジョンスコの「3つ目の転換点」を記録したエポック・メイキングなリーダー作、という位置づけになる。
 
 

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2023年9月17日 (日曜日)

ジョンスコのエレ・ファンク。

マイルスの下で活躍するにつれ、エレ・マイルスの洗礼を思いっ切り受けて、ジョン・スコフィールド(以降、略して「ジョンスコ」)の音志向はジャズ・ファンクへ傾倒する。

ただし、マイルスのエレ・ファンクを、そのまま真似するとマイルス御大に怒られること必至。ジョンスコは、マイルスのエレ・ファンクをベースに、ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンクを追求することになる。

マイルスの楽器はトランペット。マイルスのエレ・ファンクの肝はベースとドラム。ベースとドラムが重量級のファンク・ビートを醸し出して、その上にマイルスのトランペットが飛翔する。トランペットの音は基本的に切れ味良く大きい。ブリリアントでメリハリがある音で、トランペットの音は、ベースとドラムが重量級のファンク・ビートに負けない。

ジョンスコの楽器はエレギ。ギターの音は基本的に弦を弾いて出すので、トランペットに比べて音が細い。マイルスのエレ・ファンクの肝だったベースとドラムをそのまま活かすと、主役のエレギの音が負けてしまう。重量級のベースとドラムの音が目立ってしまう。

ジョンスコのエレ・ファンクへのチャレンジの証し、『Electric Outlet』と『Still Warm』『Blue Matter』の3枚で、どうも、ベースとドラムの重量級のファンク・ビートを活かす方向は、エレギが主役のジョンスコのエレ・ファンクには無理があることが判った。

John Scofield『Loud Jazz』(写真左)。1987年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Robert Aries (key), George Duke (key), Gary Grainger (b), Dennis Chambers (ds), Don Alias (perc)。
 

John-scofieldloud-jazz

 
タイトルは直訳すると「騒々しいジャズ」なんだが、この盤、フュージョン&スムース志向のエレ・ファンクが特徴の盤である。決して「騒々しい」ジャズでは無い。

『Blue Matter』で目立ちに目立ったデニチェンのドラムとグレンジャーのベースが、温和に後ろに下がって、スムースなファンク・ビートを醸し出す。そして、ジョンスコのエレ・ファンクの肝となったのは、ジョンスコ自身のエレギ。ジョンスコ自身のエレギのボリュームを上げ、音色の出し方を工夫して、それまでのエレギのファンク度合いを2倍にも3倍にも引き上げた。

不思議に「ねじれた」というか、ちょっと外れた、というか、とにかく一聴するだけで「ジョンスコ」と判る、とても個性的なエレギに、スムースなファンクネスを纏わせて、ジョンスコのエレ・ファンクを確立させている。

ジョンスコのエレ・ファンクのファンクネスは、ジョンスコのエレギが醸し出し、バックのリズム隊がそのファンクネスを支え、演奏全体に振り撒く。エレギがメインの、エレギがフロントに据わった、フュージョンでスムースなエレ・ファンクが爽やかである。

この盤にて、マイルスのエレ・ファンクをベースに、ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンクを確立する。ジョンスコのエレ・ファンクのファンクネスは、ジョンスコ自身のエレギが醸し出す。リズム隊はそれを支え、演奏全体に伝播する。これがジョンスコのエレ・ファンクの基本。そして、その底には、マイルスのエレ・ファンクのエッセンスが流れている。
 
 

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2023年9月 9日 (土曜日)

ジョンスコのエレ・ジャズの発展

心地良く捻れた、プログレッシヴなジャズ・ギタリスト、ジョン・スコフィールド(以降、ジョンスコと略)。1982年にマイルス・デイヴィスのバンドに参加。3年の在籍の間に『Star People』『Decoy』『You're Under Arrest』という、1980年代マイルスの傑作盤のパーソネルに名を連ねた。

このマイルス・バンドへの参加が切っ掛けで、ジョンスコのエレ・ジャズは「ファンク色」が強くなった。軽めの切れ味の良いファンクネス。エレギのエフェクトのかけ方も工夫が凝らされていて、この「ファンク色」を効果的に醸し出すエフェクトが大活躍。このエフェクトと従来からの「心地良く捻れたエレギ」のフレーズとが相まって、ジョンスコならでは、のファンク色が成立している。

John Scofield『Blue Matter』(写真左)。1986年9月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Mitchel Forman (key), Hiram Bullock (el-g), Gary Grainger (b), Dennis Chambers (ds), Don Alias (perc)。

マイルス・バンドの経験から、ジャズ・ファンクの肝は「ドラムとベースにある」と確信したのか、この盤では、当時、若手ドラマーの最精鋭、デニス・チェンバース(略してデニチェン)を、チョッパー・ベースの雄、ベースのゲイリー・グレンジャーを招聘している。
 

John-scofieldblue-matter

 
まず、このデニチェンの「ファンク」なドラミングがバッシバッシ効いている。ジョンスコの心地良く捻れた、プログレッシヴなエレギとタイマンが張れるほど、デニチェンのオフビートの重量級ドラミングが効きに効いて、この『Blue Matter』は、ジョンスコのエレ・ジャズの中でも、一番「ファンク色」が濃厚なアルバムに仕上がっている。

加えて、ゲイリー・グレンジャーのチョッパー・ベースが大暴れする曲では、デニチェンのドラムで色濃くなった「ファンク色」が、さらに濃厚に、1980年代当時の「デジタルチックなエレ・ファンク」の音志向が強烈に響いてくる。

このデニチェンのドラムとグレンジャーのエレベが、この盤での「ジョンスコのエレ・ジャズ」の音世界を創出している。が、このリズム隊が余りに強烈過ぎて、ジョンスコのエレ・ジャズの肝である「ファンク色」が、どこかよそ行き、他人行儀に聴こえてしまうのが、この盤の「玉に瑕」なところ。

この『Blue Matter』、ジョンスコのエレ・ジャズの中でも、一番「ファンク色」が濃厚なアルバムに仕上がっているが、ジョンスコのエレ・ジャズの最終形では無い。発展途上、最高に「ファンク色」が濃くなったところで、ジョンスコは、ジョンスコ志向のエレジャズを確立すべく、調整に入る。その成果は次作『Loud Jazz』にある、と僕は睨んでいる。
 
 

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2023年9月 6日 (水曜日)

ジョンスコのエレ・ジャズの基礎

心地良く捻れた、プログレッシヴなジャズ・ギタリスト、ジョン・スコフィールド(以降、ジョンスコと略)。そんなジョンスコの1980年代のリーダー作の落ち穂拾い。当ブログで、まだ記事化されていないリーダー作を順に聴き直している。すると、1980年代って、ジョンスコにとって、エポックメイキングな年代だったことが良く判る。

1980年代は、1982年にマイルス・デイヴィスのバンドに参加。3年の在籍の間に『Star People』『Decoy』『You're Under Arrest』という、1980年代マイルスの傑作盤のパーソネルに名を連ねた。この途方も無い「マイルス体験」が、ジョンスコの個性に、更なる魅力的な個性を積み重ねることになる。

John Scofield『Electric Outlet』(写真左)。1984年4〜5月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g, b), Ray Anderson (tb), David Sanborn (sax), Pete Levin (key), Steve Jordan (ds)。エレ・ジャズにトロンボーンの参加がユニークな、クインテット(5人)編成。良く見ると、ジョンスコがベースを兼任、ジョンスコ自身による「打ち込み」である。

聴けば直ぐに判るが、マイルスのエレ・バンドに参加した影響がモロに出ているのが微笑ましい。心地良く捻れた、プログレッシヴなエレギのジョンスコ、1980年代はどの方向に、自らの音の志向を持って行くのか、興味津々だったが、ちょうど良いタイミングで、マイルス・バンドに参加したようで、マイルスからの影響がとても良い方向に反映されている。
 

John-scofieldelectric-outlet

 
まずは「ファンク色」が強くなった。軽めの切れ味の良いファンクネス。エレギのエフェクトのかけ方も工夫が凝らされていて、この「ファンク色」を効果的に醸し出すエフェクトが大活躍。このエフェクトと従来からの「心地良く捻れたエレギ」のフレーズとが相まって、ジョンスコならでは、のファンク色が成立している。

続いて「強力なグルーヴ感」の醸成。ベースがジョンスコの打ち込みにも関わらず、コンピューター&デジタル臭が希薄で、強烈なグルーヴ感が生み出されているのにはビックリ。エレ・マイルスの強烈なグルーヴ感の応用とでも表現出来る、マイルスほど重力級では無いが、ソリッドでうねるようなグルーヴ感を生み出すことに成功している。

そして、マイルスの曲の作り方&組立て方の応用がみられること。絶対的にジャズをベースにしつつ、ブルースあり、ロックあり、クロスオーバーあり、ソウルあり、バラードあり、シャッフルありの、他のジャンルの音楽志向を取り込み、ジャズ化するという、ジャズの得意とする「融合音楽」をエレ・ジャズの中で実現する。これはマイルスの薫陶の中で育まれたものだろう。

このリーダー作で、ジョンスコは、ジョンスコ独自のエレ・ジャズの基礎を確立している様に感じる。エレ・マイルスのサウンド志向は、ジョンスコの「心地良く捻れたプログレッシヴなジャズ・エレギ」という個性を、更に魅力的に発展させる作用があった。そして、ジョンスコはそのエレ・マイルスのサウンド志向をジョンスコ仕様としてコンパイルし、その最初の成果がこの『Electric Outlet』。ジョンスコの捻れギターが心地良く聴ける、ジョンスコの80年代の傑作の1枚。
 
 

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2023年6月 6日 (火曜日)

メインストリームなジョンスコ

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降「ジョンスコ」と略)は、1970年代後半から1980年代初頭にかけては、エンヤ・レコードとアリスタ・レコードの2つのレーベルを股にかけて、単独リーダー作をリリースしている。大雑把に言えば、エンヤは「メインストリーム志向」、アリスタは「ジャズ・ロック志向」のアルバム作り。1980年代以降は「メインストリーム志向」に軸足を置いていく。

John Scofield『Out Like A Light』(写真)。1981年12月14日、ドイツ、ミュンヘンのクラブ・ハーモニーでのライヴ録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Steve Swallow (b), Adam Nussbaum (ds)。スティーヴ・スワローのベース、アダム・ナスバウムのドラムとのギター・トリオをフィーチャーした3枚のアルバムのうちの最後の1枚。

1981年12月12〜14日の3日間、ジョンスコは、独ミュンヘンの「クラブ・ハーモニー」でライヴを行う。その中から12日と13日がアルバム『Shinola』になり、14日のライヴから5曲をセレクトしたのが本作になる。いわゆる前作『Shinola』の続編的位置づけのアルバムになる。

当然、ジョンスコの印象は『Shinola』と同じ感じになる。ジョンスコのエレギは、従来のジャズ・ギターとは全く異なる音色とフレーズ。心地良く「捻れた」ジャズ・ギター。時には「変態ギター」と崇め奉られる、ワン・アンド・オンリーな音とフレーズ。そして、しっかりとジャズを踏まえた「ヘビメタ」エレギ。おおよそ、ジャズ・ギターらしくない、といって、ロック・ギターのコピーではない、ジョンスコ独特のエレギがこのライヴ盤で堪能出来る。
 

John-scofieldout-like-a-light

 
加えて、スワローのエレベとの相性も抜群。ジャズ・ギターらしくないジョンスコのギターを、ロック志向、クロスオーバー志向に傾ける事無く、しっかりとメインストリームな純ジャズ志向に留めているのは、スワローのエレベのフレーズ。自由度の高いモーダルで変幻自在なスワローのエレベは、しっかりと硬派にメインストリーム志向している。そのエレベに絡んで、ジョンスコのエレギが飛翔する。

ナスバウムのドラミングも見事。心地良く「捻れた」、自由度の高いモーダルなエレギとエレベのリズム&ビートをしっかりと支えているのはナスバウムのドラミング。良い意味で変態チックなエレベとエレギの邪魔にならず、しっかりとタイムリーに「リズム&ビート」をキープしサポートしているのはナスバウムのドラミングだと感じる。

このライヴ盤を録音した翌年、ジョンスコは、マイルスの下へ馳せ参じることになる。アルバム『スター・ピープル』(1983年), 『デコイ』(1984年), 『ユア・アンダー・アレスト』(1985年) に参加、マイルス・デイヴィス・グループのメンバーとして、1985年夏のツアーまで同行する。このライヴ盤のジョンスコを聴けば、マイルスがジョンスコのギターを重用したのが良く判る。

加えて、ジョンスコは、このライヴ盤をもって、Enjaレーベルからも離れることになる。マイルスの下で、マイルス流のエレ・ジャズ・ファンクに触れ、ジョンスコ流のファンクネスを身につけていく。ジョンスコのデビュー以来の初期の時代は、このライヴ盤がひとつの節目となって、次の時代へと移行する。
 
 

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2023年6月 2日 (金曜日)

ジャズ・ロック、時々純ジャズ

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降「ジョンスコ」と略)の1970年代〜80年代のリーダー作の落ち穂拾い。1970年代後半から1980年代初頭にかけては、エンヤ・レコードとアリスタ・レコードの2つのレーベルを股にかけて、単独リーダー作をリリースしている。大雑把に言えば、エンヤは「メインストリーム志向」、アリスタは「ジャズ・ロック志向」のアルバム作りになっている。

John Scofield『Bar Talk』(写真左)。 1980年8月の録音。アリスタ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Steve Swallow (b), Adam Nussbaum (ds)。前作『Who's Who?』から、キーボード、パーカッション、管楽器も抜いて、とってもシンプルなギター・トリオな編成。

アリスタ・レコードからのリリースなので、ジャズ・ロック志向の演奏を踏襲しているが、シンプルなギター・トリオになった分、演奏の硬派度合いが増している。ただ、ジョンスコの紡ぎ出すフレーズは、シュッとしたデコボコ流麗、ちょっと捻れたフレーズで、1980年代半ば以降のジャズ・ファンクな雰囲気や、相当に捻れた良い意味での「変態捻れフレーズ」は全く無い。
 

John-scofieldbar-talk

 
まだまだ、フュージョン、若しくは、ジャズ・ロック志向のジョンスコではあるが、どこか硬派な「メインストリーム志向」の雰囲気、響きが見え隠れする。どうしてかなあ、とジックリ聴き耳を立ててみたら、スワローのベース・ラインが、意外と「尖っている」。ナスバウムのドラミングも、どちらかと言えば「コンテンポラリーな純ジャズ」な叩きっぷり。

このリズム隊の叩き出す雰囲気、フレーズが、ジャズ・ロック志向のジョンスコのエレギに「メインストリーム志向」の響きを醸し出させているのだ。なるほど、と思う。アリスタ・レコード配下でのリーダー作において、スワローのベース、ナスバウムのドラムを採用したこと自体がユニークといえばユニーク。ジョンスコのセルフ・プロデュースの度合いが高かったのかなあ。とにかく、アリスタに、スティーヴ・スワロー、そして、アダム・ナスバウムは似合わない(笑)。

演奏全体の雰囲気は、一応、アリスタ配下、ジャズ・ロック志向が基本ですが、ところどころ、本来はエンヤでやっている「メインストリーム志向」の雰囲気、響きが見え隠れするところがこのアルバムの聴きどころかと思う。そういう意味では、前作の『Who's Who?』が異色盤だったのかも。とにかく、この『Bar Talk』、ジョンスコにとって、ちょっとユニークな内容のリーダー作に仕上がっています。
 
 

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2023年6月 1日 (木曜日)

「ジャズ・ロック」なジョンスコ

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降「ジョンスコ」と略)の1970年代〜80年代のリーダー作の落ち穂拾い。初リーダー作の『John Scofield Live』(1977年11月録音, Enja)から『Flat Out』(1988年12月録音, Gramavision)まで、15枚のリーダー作の中で、6枚が当ブログで記事として扱っていない。これを順番に聞き直して、記事をアップしていこうと目論んでいる。

John Scofield『Who's Who?』(写真左)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Kenny Kirkland (key), Anthony Jackson (b), Steve Jordan (ds), Sammy Figueroa (perc)。3曲目「The Beatles」と6曲目「How the West Was Won」のみ、Dave Liebman (sax) 加わり、Eddie Gomez(b), Billy Hart (ds) にベースとドラムが代わっている。

ジョンスコのリーダー作の4作目。エレギの、ちょっと変態的な捻れ具合、独特にデコボコ流麗に流れるフレーズ、ジョンスコのエレギの個性はこの盤に満載。ジョンスコのエレギの音色、フレーズ作りの個性は完全に確立されている。冒頭の「Looks Like Meringue」のエレギのフレーズを聴けば、直ぐに「ジョンスコや!」と判るくらいに、ハッキリした個性。
 

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この『Who's Who?』は、米国西海岸のアリスタ・レコードからのリリース。演奏全体の雰囲気は明らかにフュージョン・ジャズ寄り。と言っても、硬派なメインストリーム系のクロスオーバー・ジャズな雰囲気を色濃く残していて、フレーズがデコボコ流麗、捻れてはいるが、爽快感と疾走感が全面に押し出され、ジャズ・ファンクな味付けも見え隠れし始めて、メインストリーム志向のジャズロックといった雰囲気が意外と好感度大。

バックのリズム隊も良いサポートを醸し出していて、ベースのアンソニー・ジャクソンとドラムのスティーブ・ジョーダンのコンビネーションはとてもカッチリ整っていてきめ細やか、ジョンスコのブルージー&レイジーで豪胆なエレギのフレーズの弾き回しをがっちりサポートしている。タイトル曲の5曲目「Who's Who?」を聴けばそれが良く判る。

1980年代のジャズ・ファンクな音志向は、まだ始まったばっかりの、どちらかと言えば、シュッとしたデコボコ流麗、捻れたフレーズを弾きまくったフュージョン・ギターといった風情だが、メインストリーム志向の硬派な弾き回しは随所に聴くことが出来るところは、さすがジョンスコといったところ。まだ4作目のジョンスコのリーダー作。最終的な音の志向を目指して発展途上な音作りですが、これはこれで魅力的に響いていて良好。好盤です。
 
 

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2022年7月 5日 (火曜日)

ジョン・スコフィールドの凄み

ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)のギターがお気に入りである。初めて、ジョンスコを聴いたのが1979年。確か『John Scofield Live』だった。独特の捻れたエレギの音。間と音の伸びを活かした、音のスペースが絶妙なアドリブ展開。1回聴いただけで、ぞっこん、である。

当時のジャズ・ギターの世界の中でも、ジョンスコは、ジョン・アバークロンビーと双璧の「尖ってプログレッシヴ」なジャズ・ギタリストだった。

『John Scofield』(写真左)。2021年8月、ニューヨーク、カトナ、トップ・ストーリー・スタジオにての録音。キャリア初となるソロ・アルバムになる。ECMレーベルからのリリース。ECMレーベルからのリリースは、2020年の『スワロウ・テイルズ』に続き、本作が2枚目。

このジョンスコのソロ・パフォーマンス。独特の雰囲気が漂う、唯一無二な内容。リズム&ビートは、ジョンスコ好みのコードとリズムをループ・マシンに入れて、それを使用したもののみ。即興パフォーマンスのフレーズの流れの中に、ジョンスコ独特のグルーヴが存在する。

ジョンスコの強烈に個性的なエレギの音が、延々と流れる様に、浮遊する様に広がっていく。それでいて、決してマンネリに陥らない。常に新しいフレーズ、新しい響き、新しい音色が湧き出てきて、聴いていて、とても楽しめる。
 

John-scofield-solo-2022

 
この新盤に関するインタビューの中で、ジョンスコの印象的な言葉がある。「家で一人で演奏することで身についた繊細さがあると思う」。コロナ禍の影響が窺える。その中で「バンド演奏がなくなってしまって、弦楽器の美しさをピンポイントで表現するような、より繊細なアプローチに取って代わった」とある。

そのジョンスコの言葉通りのこの新盤の音世界。ジョンスコのエレギの個性はそのままに、とても繊細にフレーズを紡ぎ、とても繊細にピッキングの表情を変えていく。このテクニックの高さも特筆すべきもの。そして、捻れた独特のフレーズの中に、濃厚に横たわる歌心。

特に、この盤では、ジャズ・スタンダード曲が秀逸。数々のスタンダード曲を独自の解釈で演奏していて、これがどの曲も素晴らしい出来なのだ。「My Old Flame」では、ループ・マシンを止めて、ジョンスコのギターだけが鳴り響く。これが、また良い。それだけでは無い。ジョンスコ自身の作曲した楽曲も良好。ジョンスコのギターの個性と独自の解釈が冴えに冴える。

ジャズとは即興の音楽である。そんな言葉をこのジョンスコの新盤を聴いて、再認識する。ジョンスコはループ・マシーンと対話しながら「即興演奏の妙」を綿々と弾き進めていく。そして、その即興演奏のフレーズが常に新しい想像力に満ちている。ジョンスコのジャズ・ギタリストとして凄みを感じる。そんな新盤である。
 
 

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2020年10月26日 (月曜日)

ジョンスコの4ビート・ジャズ

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降、略して「ジョンスコ」)という、ほぼレジェンド級のギタリストって、フュージョン・テイストのコンテンポラリーなジャズから入って、ジャズ・ファンク、そして、ワールド・ミュージック志向なニュー・ジャズをやったり、個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」を駆使して、新しいジャズ・ギターのイメージを拡げてきた。

ニュー・ジャズ志向の演奏も多々あるにも関わらず、今までに渡り歩いたジャズ・レーベルは、Enja(エンヤ)、Blue Note、Verve(ヴァーヴ)、EmArcy(エマーシー)などで、ECMレーベルでの録音が、2006年リリース(録音は2004年)の『Saudades』が初めてだったのは意外だった。そして、ニュー・ジャズの老舗レーベルで録音した盤が、意外や「メインストリーム志向」なアルバムだったとは驚いた。

John Scofield『Swallow Tales』(写真左)。Recorded March 2019年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Bill Stewart (ds), Steve Swallow (b)。キーボードレスのギター・トリオ編成。ドラムとベースのリズム隊は、レジェンド級の思索的なベーシスト、スワローと、変幻自在で柔軟なドラミングが身上のスチュワート。
 
 
Swallow-tales  
  
 
この盤のジョンスコは「メインストリーム志向」。パッキパキ硬派で4ビートが中心の「メインストリーム・ジャズ」を展開する。この盤でのジョンスコは不必要に「捻れない」。フレーズを伸ばすときに軽く捻るが、ジャズ・ファンクをやる時の様に大胆に捻れることは無い。エッジの丸い、芯の太いエレギの音色がフレーズの伸びの最後に捻れる。聴けば、やはり個性的な、唯一無二なギターである。

ニュー・ジャズっぽい、硬質で欧州的なベースを弾きまくるスワローが、意外とジョンスコとマッチするのだから、ジャズって面白い。そして、ジョンスコが4ビートなジャズをやる時、欠かさない存在になりつつある、ビル・スチュワートの4ビート・ドラミングも聴きもの。ポリリズミックな適度な手数のドラミングは新鮮な響きが満載だ。

アルバム全体の雰囲気が、ニュージャズ志向のECMレーベルぽくない音作りが意外に新鮮に響く。ジョンスコのエレギの志向に揺らぎが無いのがポイントで、その志向に応じて叩きまくスチュワートのドラミングもECMレーベルらしくなくて新鮮。そんなECMレーベルらしくないところに、ECMレーベルらしいスワローのベースが聴こえると何故かホッとするから不思議。実に聴き応えのあるECMレーベルの4ビート・ジャズである。
 
 
 

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2020年9月14日 (月曜日)

二人の「捻れギタリスト」である

最近、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、ビル・フリゼールが「トレンド入り」している。ビル・フリゼールとは、ジャズとしてノーマルなフレーズが出てこない、圧倒的に個性的な「捻れた」ギターが飛び出してくる、良い意味で「変態ギタリスト」と呼んで良い。1951年生まれだから、今年で69歳。どうしてこんなに「捻れた」のか判らないが、とにかく捻れて浮遊するギター。

Marc Johnson's Bass Desires『Bass Desires』(写真左)。1985年5月、NYのThe Power Stationでの録音。ECMの1299番。ちなみにパーソネルは、Marc Johnson (b), John Scofield (g), Bill Frisell (g, g-syn), Peter Erskine (ds)。ベースがリーダー、ギター2本、キーボードレスの変則ギター・トリオ編成である。

僕はこの盤で、ビル・フリゼールと出会った。2本のギターのうち、捻れまくってはいるが、オーソドックスにブルージな雰囲気を振り撒く方が「ジョンスコ(John Scofield)」なのは判った。が、もう1本のギター、浮遊感を全面に押し出しつつ、捻れまくるわ、飛びまくるわ、この変態ギターは誰だ、と思って、パーソネルを見たら「ビル・フリゼール」だった。
 
 
Bass-desires_20200914200801   
 
 
改めて、このマーク・ジョンソンのリーダー作を聴き直してみると、なかなか「エグい」内容に改めてビックリする。とにかく尖っている。尖りまくって、アブストラクト寸前、純ジャズの範疇に留まって、自由度の高い、思いっ切りモーダルな演奏を繰り広げている。とにかく、マーク・ジョンソン=ピーター・アースキンのリズム隊が凄まじい。硬派でアグレッシヴ、力感と柔軟性を併せ持つ、素晴らしいリズム&ビートを供給する。

そんなリズム&ビートをバックに、二人の捻れギタリストが乱舞する。特にフリゼールが、ギター・シンセサイザーまで担ぎ出しての大活躍。冒頭の「Samurai Hee-How」を聴くと、二人の捻れギタリストの個性がとても良く判る。同じ捻れギタリストでも、フリゼールは浮遊感溢れる捻れギターで好き放題に弾きまくり、ジョンスコは堅実に捻れたギターでサポートに回る。二人の捻れギターがアウトドライブせずに自由度の高いアドリブを弾きまくれるのは、ジョンスコの堅実なサポートがあってこそ、である。

とびきり浮遊感溢れる、自由度の高いモード・ジャズ。2曲目のコルトレーンの大名盤『至上の愛』からの「Resolution」でのパフォーマンスは、高テンションで凄まじいばかりのインプロビゼーションを展開していて、思わずスピーカーの前に釘付けになる。今の耳で聴いても「斬新」の一言。さすがはECMレーベル。凄い音源を残している。
  
  
   

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