2022年12月 2日 (金曜日)

企画盤「危険な関係のブルース」

レジェンド級の「哀愁のピアニスト」、デューク・ジョーダン。ピアニストの腕前もさることながら、作曲家としての才能が素晴らしい。とにかく、書く曲書く曲、良い曲ばかり。特に、ブルース調の曲、マイナー超の曲が素晴らしい。「哀愁のピアニスト」の面目躍如である。

ジョーダン作曲の曲の中で一番有名なのが「NoProbrem(危険な関係のブルース)」。この曲は、元々は、1959年のフランス映画「危険な関係(Les Liaisons Dangereuses)」の為に書き下ろされたもの。

しかし、このサウンドトラックには、作曲者については「J. Marray」という名前が記載されており、本来の作曲者であるデューク・ジョーダンには著作権料が一切入って来なかった。全く以て酷い話である。

これを見かねたチャリー・パーカー未亡人のドリス・パーカーが、経済的支援を含め、デューク・ジョーダンの為に、1962年に録音した企画盤がある。

Duke Jordan『Les Liaisons Dangereuses』(写真左)。1962年1月12日、NYでの録音。パーソネルは、Duke Jordan (p), Eddie Khan (b), Art Taylor (ds), Sonny Cohn (tp #1,3-7), Charlie Rouse (ts #1,3-7)。ちなみに収録曲は以下の通り。

side 1 (A)
01. No Problem #1 (Duke Jordan) 8:50
02. No Problem #2 (Duke Jordan) 4:15
03. No Problem #3 (Duke Jordan) 6:21

side 2 (B)
04. Jazz Vendor (Duke Jordan) 4:52
05. Subway Inn (Duke Jordan) 4:04
06. The Feeling Of Love #1 (Duke Jordan) 7:14
07. The Feeling Of Love #2 (Duke Jordan) 3:18
 

Duke-jordanles-liaisons-dangereuses

 
この曰く付きの名曲「No Problem」が3バージョン連続して収録されている。ジャズ・メッセンジャーズのような熱いハードバップな演奏の「No Problem #1」。ちょっぴりラテン志向が見え隠れする、アップテンポのピアノ・トリオ演奏の「No Problem #2」。ユッタリとしたテンポで、印象的にメリハリを付けて演奏される「No Problem #3」。

名曲というのは、どんなアレンジにも十分耐える。この「No Probrem」の3連発は、アレンジを変えているだけだが、冗長なところは全く無く、飽きることが無い。

後半(LP盤だとB面に相当する)は、トランペットとテナー・サックスがフロント2管、クインテット演奏の佳曲が並ぶ。どの曲も良い感じの曲ばかり。ジャズの名作曲家、デューク・ジョーダンの面目躍如的な演奏。

但し、この盤で誤解されやすいのは、デューク・ジョーダンは、この「No Problem」1曲だけの「一発屋」の様に感じるところ。何も、デューク・ジョーダン作の佳曲は「No Problem」だけでは無い。彼の書く曲はどれもが「佳曲」。

そういう意味で、この企画盤、デューク・ジョーダンの代表作として、よくジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されているが、とんでもないことである。

この盤は、真の作曲家に著作権を認めない、という酷い仕打ちに怒ったドリス・パーカー(Doris Parker)が、デューク・ジョーダンの名誉回復のために録音した企画盤であり、デューク・ジョーダンの優れたリーダー作は他に沢山ある。

この企画盤は、デューク・ジョーダンのリーダー作をある程度、聴き込んで、彼のピアノの個性、優れた作曲能力を踏まえた上で、気分転換的に聴く盤だろう。これを代表作とするなんて、何て乱暴な事をするのか、未だに理解に苦しむ。
 
 

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2022年12月 1日 (木曜日)

ジョーダンとファーマーの共演盤

デューク・ジョーダン(Duke Jordan)。欧州に渡った後、1970年代に、スティープルチェイス・レーベルに残したリーダー作は良好盤ばかりで駄盤が無い。スティープル・チェイスの総帥ディレクター、ニルス・ウィンターがデューク・ジョーダンの才能を高く評価していたこと、そして、なにより、双方の相性が相当良かったのだろう。

Duke Jordan『Duke's Artistry』(写真)。1978年6月30日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Art Farmer (flh), David Friesen (b), Philly Joe Jones (ds)。フロント管にアート・ファーマーのフリューゲルホーン1管のカルテット編成。ファーマーのフリューゲルホーンが優しく唄い上げ、ジョーダンのピアノのバッキングの巧みさ、そして、ジョーダンの書く曲の良さが、とても良く判る盤である。

全曲デュークによりオリジナル曲で占められており、これがまた、どの曲も出来が良い。作曲家としてのデューク・ジョーダンの才能を改めて認識出来る内容。この良き曲に恵まれて、ファーマーの暖かくて丸みのある、それでいて、相当にテクニカルで力感溢れるフリューゲルホーンが映えに映える。
 

Duke-jordandukes-artistry

 
デューク・ジョーダンのピアノ、デイヴィット・フリーゼンのベース、フィリー・ジョーのドラムによるトリオのバッキングがこれまた見事。特に、ジョーダンの伴奏上手なピアノには感心する。フリーゼンのベースは厚みのある骨太な音で堅実、そして、フィリージョーは意外と整ったバップ・ドラミングで、リズム&ビートを供給する。

ジョーダンの曲はどれもが「ユッタリ&シットリ」していて、どの曲も良好。5曲目の「Lady Dingbat」はバラード曲。ジョーダンのバラード曲は絶品。ジョーダンのピアノがイントロから映えに映える。ファーマーの丸いフリューゲルホーンによるアドリブ展開も優しくて良し。そうそう、ブルース曲も良いですね。ラストの「Dodge City Roots」など、小粋で格好良くて、気品溢れる展開が聴き応え十分。

この盤、裏面の解説を紐解くと、ファーマーが当日夕刻のフライトで移動するという、相当タイトなスケジュールの中の録音だった様です。そんな中、リーダーのデューク・ジョーダンの周到な準備によって、メンバー集まり次第、即、録音に臨むことが出来、1曲当たり多くても2テイク、トータルで2時間で録音を完了したとのこと。そんなタイトな録音環境を全く感じさせ無い、とても充実した内容のアルバムです。
 
 

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2022年11月28日 (月曜日)

ジョーダン・トリオのお蔵入り盤

冬を感じる頃になると、決まって聴きたくなるピアニストがいる。デューク・ジョーダン(Duke Jordan)。恐らく、ジョーダンの代表盤の1枚『Flight to Denmark』のジャケットのイメージがそうさせると思うんだが、確かに、ジョーダンのピアノって、秋の終わりから冬にかけて聴くと沁みる印象が強い。

Duke Jordan Trio『Truth』(写真左)。1975年3月2日、コペンハーゲンでの録音。SteepleChaseレーベルの SCS 1175番。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Mads Vinding (b), Ed Thigpen (ds)。録音当時はお蔵入りの音源で、リリースは1983年。ジョーダンお得意のトリオ編成。ベースにヴィンディング、ドラムにシグペン。かの名盤『Flight to Denmark』と同じトリオ編成で、約1年半後の録音。

その内容は十分に期待出来るレベルだと思うのだが、録音当時は何故かお蔵入り。1983年にやっとリリースされている。スティープルチェイスの総帥ディレクター、ニルス・ウィンターが、既リリースの『Flight to Denmark』『Two Loves』と同じメンバー、同じ曲想のアルバムが続くのは好ましくないと判断したのだろうか。

内容的に素晴らしいピアノ・トリオである。確かに、先行の『Flight to Denmark』『Two Loves』と雰囲気・演奏の志向は同じなのだが、デューク・ジョーダンのピアノの個性がより判り易くなっている様に感じる。
 

Duke-jordan-triotruth
 

ジョーダンは、レジェンド級のバップ・ピアニストで、ピアノ腕前もさることながら、彼の書く曲は佳曲ばかり。特にブルースについては、魅力的な曲ばかり。この盤でも、冒頭の「Layout Blues」など絶品である。

ジャズの自作曲には、作曲を担当するジャズマンの楽器の個性がダイレクトに伝わるものが多い。恐らく、この盤に収録された曲全てが、ジョーダンのオリジナルだということもあるだろう。ジョーダンの自作曲もそうで、ジョーダンのピアノの個性がより判り易くなっている。

ジョーダンの個性の1つが、左手のリズム&ビートが「オン・ビート」であること。普通は「オフ・ビート」なんだが、ジョーダンのビートは「オン・ビート」。これが、ジョーダン独特のフレーズの「ノリ」を生んでいる。そして、その独特の「ノリ」が、バックのベース&ドラムのリズム&ビートに埋もれる事無く、逆に全面に浮き出てくる効果を醸し出している。

ジョーダンの代表盤に上がらない、地味なジョーダンのトリオ盤であるが、その内容は先行の『Flight to Denmark』『Two Loves』と引けを取らない。逆に、先行の『Flight to Denmark』『Two Loves』と併せて、3部作として一気に聴き通した方が、ジョーダンのピアノの個性が良く理解出来て良い様な気がする。
 
 

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2022年3月24日 (木曜日)

ジョーダンの曲の良さを愛でる

ハードバップ時代、ジャズ曲の作曲の名手というのが幾人かいる。デューク・ジョーダンなどは、そんな名手の1人。「Jordu」「No Problem(危険な関係のブルース)」など、完全にスタンダード曲化した名曲は数知れず。どっぷりマイナーで哀愁滲む泣き節フレーズがてんこ盛りのジョーダンの自作曲の数々は、とにかく「ジャズらしい」のだ。

Duke Jordan『Duke's Delight』(写真)。1975年11月18日、NYの「C. I. Recording Studios」での録音。スティープルチェイス・レーベルの1046番。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Richard Williams (tp), Charlie Rouse (ts), Sam Jones (b), Al Foster (ds)。リチャード・ウィリアムスのトランペットと、チャーリー・ラウズのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

2曲目の「(In My) Solitude」のみ、スタンダード曲であり、ジョーダンのピアノのソロ演奏。その他全て、デューク・ジョーダンの作曲。このジョーダンの自作曲の出来が非常に良い。同じ編成の名盤、ブルーノートの『Flight to Jordan』もそうだったが、ジョーダンの手になる曲は、どれもが内容があって素晴らしい。マイナー調で攻めまくり、哀愁感だだ漏れ、それでいて、フレーズは凛としていてキャッチャー。思わず引き込まれてしまうほどのブルージーでジャジーな旋律。
 

Dukes-delight_duke-jordan

 
そう、ジョーダンの書く曲はどれもが「ジャズらしい」のだ。これぞ「ジャズ曲」という雰囲気が濃厚に漂う、ジョーダンの自作曲。ジョーダンのリーダー作には、ジョーダンの書く曲が一番フィットする。当然、ジョーダンのピアノは、ジョーダン曲にピッタリとマッチする(当たり前か)。ジョーダンの端正で骨太なタッチに、ジョーダン作の凛としてキャッチャーな楽曲が良く似合う。

ジョーダン作の曲のフレーズが美しいので、恐らく、それを吹いたらきっと楽しいんだろう。リチャード・ウィリアムスのトランペットと、チャーリー・ラウズのテナー・サックスのフロント2管は活き活きとして、実に楽しそうに吹きまくっている。特に「隠れ名手」のリチャード・ウィリアムスのトランペットが、流麗かつ凛とした音色で活き活きと吹きまくっているのが印象的。

そうそう、渋う渋いテナー・マンのチャーリー・ラウズも何時になく楽しげにサックスを吹き上げてます。サム・ジョーンズも何時になくモダンなベースをブンブン弾きまくってるし、アル・フォスターのドラムもジャジーの極み。そう、このアルバム、ジョーダンの自作曲を渋い渋いパーソネルでの演奏によって思いっ切り引き立たせ、ジョーダン作曲の曲の良さを思いっ切り愛でまくることが出来る、そんなアルバムです。
 
 

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2021年6月22日 (火曜日)

デューク・ジョーダンを愛でる

こういう録音をちゃんと残しているから、ブルーノート・レーベルは、ジャズの老舗レーベルとして、常に一目置かれるし、リスペクトの対象にもなるのだなあ、と改めて感心する。

この盤のリーダーは当時、優れたジャズ・ピアニストでありコンポーザーでもあった。しかし、如何せん人気が出ない。当然、リーダー作は売れない。一時、タクシー・ドライバーに転じて、糊口を凌いだ時期もあった。しかし、最終的にジャズ・ピアノのレジェンドの一人として名を残している。

Duke Jordan『Flight to Jordan』(写真左)。1960年8月4日の録音。ブルーノートの4046番。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Dizzy Reece (tp), Stanley Turrentine (ts), Reggie Workman (b), Art Taylor (ds)。ディジー・リースのトランペットとスタンリー・タレンタインのテナー・サックスの2管がフロントのクインテット編成。

デューク・ジョーダンはビ・バップ時代から活躍していたジャズ・ピアニスト。マイナーな響きが癖になる、ブルージーでクールなファンクネスを漂わせたピアノが個性。タッチは端正で破綻は無い。作曲やアレンジの才にも優れ、特にフロントに管を配したアレンジは秀逸なものが多い。コンポーザーとしての代表曲は「No Problem(邦題:危険な関係のブルース)」。
 

Flight-to-jordan-1

 
この唯一のブルーノートでのリーダー作である『Flight to Jordan』は、そんなジョーダンのピアノの個性と作曲&アレンジの才の両方をしっかり体感し確認出来る好盤である。さすが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンのアルバム作りのセンスの良さが光っている。

ジョーダンの伴奏上手なピアノを引き立て、ジョーダンの書く曲の良さを伝えてくれる、フロントのディジー・リースのトランペットとスタンリー・タレンタインのテナー・サックスの2管の存在。取り立ててジャズとして先進的な内容では無い、しかし、極上のハードバップな演奏がこの盤に詰まっている。ハードバップの良いところがてんこ盛り。

この盤がリリース当時、売れなかったのも意外だし、ジョーダン自身が売れなかったのも意外である。音楽なんてそんなものかもしれないが、売れていないがジャズマンとして優れたテクニックを持ち、コンポーザーとしての優れた才能を持ったジャズマンの波fーマンスを、こうやって、しっかりと記録に残すジャズ・レーベルって、やっぱり凄いなあと思うのだ。

ジャケット・デザインも秀逸。1960年という時期に、ジョーダンのピアノの個性と作曲&アレンジの才の両方をしっかり体感し確認出来る盤を記録として残したこと、ブルーノートらしい素晴らしい仕事だったと思います。
 
 
 

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  ・イエスの原点となるアルバム

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  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
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2021年1月26日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・87

Duke Jordan(デューク・ジョーダン)を聴き直している。今から40年ほど前、『Flight to Denmark』を聴いて以来、大好きなジャズ・ピアニストの1人である。故に、ジョーダンのリーダー作は結構、聴いてきたのだが、どうもデューク・ジョーダンの話題をこのブログに記事として載せていなかった様だ。これを機会に、順にジョーダンの好盤の記事をアップしていきたい。

ジョーダンのピアノは明らかに「哀愁」が漂う。ジャズってマイナーキーが多用されるのだから、誰が弾いたって「哀愁」が漂うでしょうが、と思われるのだが、これが違う。ジョーダンのピアノだけが突出して「哀愁」が漂うのだ。メジャー調の曲だって、ちょっとアップテンポの曲だって、なぜかそこはかとなく「哀愁」が漂うのだ。これが不思議。

Duke Jordan『Two Loves』(写真左)。1973年11月25日と12月2日、デンマーク、コペンハーゲンの「Sound Track」での録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p) Mads Vinding (b) Ed Thigpen (ds)。あのピアノ・トリオ好盤『Flight to Denmark』と同じ日に録音されたもの。LP時代は全9曲、CDになって、ボートラが4曲追加されている。
 
 
Two-loves
 
 
ピアノ・トリオ好盤『Flight to Denmark』と同じ日に録音されたものとは言いながら、『Flight to Denmark』が、どっぷりブルージーで「哀愁」漂うバップなピアニストが北欧ジャズとの融合を果たした、耽美的で儚さ漂う「北欧のバップ」風だったのに対して、このアルバムは、元来のジョーダンの個性である「正統派バップ」風のアルバムになっている。

『Flight to Denmark』と比して、タッチがより明確で、演奏のテンポがアップしているので、演奏全体の雰囲気は明るくて、そこはかとなく「陽気」。タッチは変わらずリリカル。決してテクニックに走らず、ミッドテンポの判り易いアドリブ・フレーズは「流麗」そのもの、凄みすら感じさせる。でも、このアルバムでも全編に渡って、ジョーダンのピアノには「哀愁」がしっとりと漂っている。これが良い。

同じセッションの中で、『Flight to Denmark』風と『Two Loves』風に弾き分けるテクニックは凄いなあ、と改めて感じ入ってしまう。数少ない選ばれた音で、美しく哀愁感漂う旋律を紡ぎ出すパフォーマンスは、デューク・ジョーダンの真骨頂。『Flight to Denmark』を「ピアノ・トリオの代表的名盤」とするなら、この盤も「ピアノ・トリオの代表的名盤」でしょう。
 
 
 

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2021年1月25日 (月曜日)

亡きジョーダンのほろ酔いライヴ

もう14年になるのか。玄人好み、通好みの職人ピアニストのデューク・ジョーダンが亡くなったのは、2006年8月。大好きなピアニストだったので、訃報に接してから2日間ほど、耳を傾けるジャズ盤は全てデューク・ジョーダン。じっくりと『Flight to Denmark』『Two Loves』『Flight to Jordan』に耳を傾け、玄人好み通好みの職人ピアニストのデューク・ジョーダンの訃報を悼んだ。

Duke Jordan『Tivoli One』(写真左)と『Tivoli Two』(写真左)。1978年12月16-17日、デンマークのコペンハーゲン 「Tivolis Koncertsal」での録音。リリースは1984年。スティープルチェイス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Wilbur Little (b), Dannie Richmond (ds)。

この2枚のライヴ盤は、コペンハーゲンのチボリ・ガーデンで収録されたもの。スタジオ録音のジョーダンも良いが、1940年代、チャーリー・パーカーのバックでピアノを弾いていたという「バップ・ピアニスト」としてのジョーダンを感じるには、ライヴ盤が良い。恐らくライヴになると、昔取った杵柄というか「バップの血」が騒ぐのだろう、ジョーダンのピアノにドライブがかかる。
 
 
Tivoli-one-two  
 
 
しかも、彼は酒に目が無い。当然、ライブでは、酒をちょっとひっかけて、直接に観客の熱気を感じてのライブである。とにかく、思うがままにバリバリ弾きまくっているジョーダンはご機嫌だ。ドラムのダニー・リッチモンドも恐らく、酒が入っているのだろう、これまた思うがままにドラムを叩きまくる。一部、ウルサイくらいだ。でも、ジョーダンのピアノをうまく煽っていて、ライヴが故、「これはこれでアリ」というか許せる範囲。

『Tivoli One』のラストの「Jordu」。これ、ジョーダン作曲の哀愁溢れる名曲。このライヴ盤でも取り上げられているので「さぞかし名演か」と思いきや、これがボロボロ(笑)。恐らく、ジョーダンとリッチモンド、かなり酔いが回ったんだろうな。1分53秒で演奏は終わる。でも、この1曲の破綻気味の演奏が、ジョーダンのこのライブ盤の「良い雰囲気」を上手く伝えてくれている。

ベースのウィルバー・リトルは好演。ウィルバー・リトルのベースが冷静沈着で、この冷静沈着なベースがあってこそ、このライブ盤は辛うじて品格を保っていると言っても良い(笑)。きっと、酔いが回る前の、ほろ酔い加減のジョーダンって「無敵」だったんだろうな。この『Tivoli One』と『Tivoli Two』に、そんなほろ酔い加減の「好調なジョーダンのパフォーマンス」がギッシリ詰まっている。生で聴きたかったなあ。
 
 
 

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2015年7月30日 (木曜日)

歳を重ねて感じ方も変わる。

最近、こんなシンプルで味わいのあるアルバムを聴くと思わずニンマリする。過度なアレンジなど無縁、シンプルなトリオ演奏とカルテットの演奏のハイブリッド。

若い頃はとにかく物足りなさを強く感じたアルバムだった。トリオ演奏はもっと聴きたいなあ、と不満たらたらだったし、カルテットの演奏については、もっとアレンジしてもっと捻ってくれれば良いのに、と不満たらたらだった。

しかし、時が経って歳を重ね、40歳を過ぎるころから、このアルバムを聴くのが楽しくなった。トリオ演奏もほどほどで腹八分目、もっと聴きたければ、また聴けば良いし、カルテットのアレンジはシンプルで楽器の個性が良く判って良い、と思うようになった。

歳を重ねれば重ねただけ、聴き方も変わるし感じ方も変わる。歳を重ねるということは、聴き方も感じ方も余裕のある、良い方向に変わっていく。当然、このリーダーのピアニストの「哀愁」をジックリと味わえる様になる。

そのアルバムとは、Duke Jorran『Trio and Quintet』(写真左)。僕が愛して止まない「哀愁のピアニスト」の代表的存在、デューク・ジョーダンの佳作である。1955年10月と11月の録音。ハードバップが台頭してきた時代、ニューヨークでの録音である。

ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Eddie Bert (tb), Cecil Payne (bs), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。LP時代の編成は、A面がアート・ブレイキー、パーシー・ヒースのトリオ演奏、B面がトロンボーンにバリトン・サックスを加えたクインテット演奏となっている。
 

Duke_jordan_trio_quintet

 
とにかくシンプルな演奏が魅力の盤である。米国東海岸では商業的に全く振るわなかったジョーダンが、シグナルというマイナー・レーベルに吹き込んだもの。1955年だからまだモノラル録音である。

実はこのモノラル録音の音が味わい深い。ジャズの響きを、ハードバップの響きを強く感じさせてくれる、なかなかの録音。そんな録音に、シンプルな演奏でジャズ・スタンダードが、ピアノ・トリオで演奏される。実に味わい深い。シンプルな演奏だけに、ジョーダンの「哀愁のピアノ」が明快に判る。

昔から不思議なのだが、ジョーダンのピアノは明らかに「哀愁」が漂う。ジャズってマイナーキーが多用されるのだから、誰が弾いたって「哀愁」が漂うでしょうが、と思われるでしょうが、これが違う。

ジョーダンのピアノだけが突出して「哀愁」が漂うのだ。メジャー調の曲だって、ちょっとアップテンポの曲だって、なぜかそこはかとなく「哀愁」が漂うのだ。これが不思議。でも、このアルバムでも全編に渡って、ジョーダンのピアノには「哀愁」がしっとりと漂っている。

クインテットの演奏では、ジョーダンの書いた自作曲が良い。ジョーダンの作曲の才能を十分に担当できる。バリトン・サックスとトロンボーンを加えてクインテットを構成するプロデュースのセンスとアレンジの才に、これまた感じ入ってしまう。 

良いアルバムです。若い時は「地味だ」と敬遠していたアルバムなんですが、今の耳で聴くと、シンプルでクールな演奏がたまらない。歳を重ねれば重ねただけ、聴き方も変わるし感じ方も変わる。そんなことを改めて感じさせてくれる好盤です。
 
 
 
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2011年2月12日 (土曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・18

今年の冬、やっとまとまって雪が降った。屋根の上にはうっすら雪が残っている。畑の雪は溶け始めている。道には雪は無し。なんとか、雪の影響は少なかった我が千葉県北西部地方。
 
以前より、雪が降れば、必ず持ち出すピアノ・トリオ盤がある。Duke Jordan(デューク・ジョーダン)の『Flight To Denmark』(写真左)。なぜ雪が降れば必ず持ち出すのか。それはジャケットを見て頂ければ判ります。
 
デューク・ジョーダンはバップ・ピアニスト。ビ・バップの創始者の一人、伝説のアルト奏者チャーリー・パーカーとの共演でも知られる。1922年4月生まれ。2006年8月没。途中演奏活動を中断しているが、彼がジャズ・ピアニストとして活躍していた時のスタイルは、徹頭徹尾「バップ・ピアニスト」。人気に迎合したファンキーや、ジャズの先端スタイルであるモードとは全く無縁で、1960年代までは、全く人気が出ませんでした。
 
しかし、何が幸いするのか人生って判らんなあ、とつくづく思うのは、いきなり、1970年代に入って、欧州で、ハードバップがリバイバルします。なんと、ジョーダンは、その欧州のハードバップ回帰のブームに乗って、デンマークのSteepleChaseレーベルから、リーダー・アルバムを発表するるようになりました。これが「大当たり」。
 
そんな波に乗ってリリースされた、ピアノ・トリオの優秀盤がこの『Flight To Denmark』。1973年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p) Mads Vinding (b) Ed Thigpen (ds)。いや〜、北欧のジャズ・レーベルSteepleChaseらしい、実に優れた内容のピアノ・トリオ盤です。LP時代の初出の時の収録曲は以下の通り。
 
A面
1. No Problem (危険な関係のブルース)
2. Here's That Rainy Day
3. Everything Happens to Me
4. Glad I Met Pat
B面
1. How Deep Is the Ocean?
2. On Green Dolphin Street
3. If I Did - Would You?
4. Flight to Denmark
 
 
Flight_to_denmark
 
 
自作の「No Problem」や「Flight To Denmark」と、その他、なかなか渋い選曲のスタンダード曲を織り交ぜて、実に魅力的な収録曲のラインナップを形成しています。僕にとっては、スタンダード曲の中での大のお気に入り「On Green Dolphin Street」が入ったB面がヘビーローテーションでした。
 
デューク・ジョーダンのピアノは、バップ・ピアニストのマナーを基本にしつつ、端正でブルージー、タッチは硬質で派手目でありながら、ちょっと「くぐもった」音色が特徴的で、そこはかと無く漂うマイナー調の翳りが個性。一言で形容するのは、なかなか難しい個性だが、一聴するだけでなんとなく判る、不思議な個性のピアニストである。
 
この『Flight To Denmark』が、ピアノ・トリオの代表的名盤として挙げられる要素のひとつに、リズム・セクションの存在が挙げられる。マッツ・ヴィンディングのベースとエド・シグペンのドラミング。どちらも、淡々とした枯れた味わいの、それでいてメリハリのバッチリ効いたリズム&ビートが素晴らしい。北欧のハードバップを踏襲したリズム&ビートとでも形容したら良いだろうか。米国では絶対に表現出来ない、欧州独特のリズム&ビートが、このアルバムの根底にしっかりとある。
 
この欧州独特のリズム&ビートが、デューク・ジョーダンの、硬質で派手目でありながら端正でブルージーなタッチと相性抜群なのだ。このアルバムを聴いて思うのは、ピアノ・トリオって、ピアノとリズム・セクションとの相性が成否の鍵をかなりの面で握るんやなあ、ということ。ピアニストだけの実力で、優れたピアノ・トリオ盤は成立しない。

アルバム全体に漂うマイナー調な寂寞感が実に心に染みる、演奏テクニックやアレンジなど、演奏内容的にも優れたアルバムです。1970年代の欧州でのハードバップのリバイバル・ブームが良い方向に作用した、北欧の環境ならではのピアノ・トリオ盤です。当時の北欧でしか為し得なかった、独特の雰囲気のハードバップなピアノ・トリオ盤がここにあります。
 
ジャズ者初心者の方々からジャズ者ベテランの方々まで、幅広くお勧めすることができる「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚です。
 
 
 
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