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2017年7月27日 (木曜日)

ジョアンの個性を思い出した。

ジャズ・ピアニストの個性はバリエーションに富んでいる。「〜派」などと呼ばれるスタイルや個性の系列はあるけども、まず同じ個性は無い。個性は個性なので、僕はこのピアニストのそれぞれの個性を取り上げて、優劣を論じるのは好きでは無い。

個性に優劣は無い。また、自分のお気に入りの系列のピアニストだけを良しとして、その他は駄目出しするような、偏った贔屓を押し出すのも好きでは無い。出来るだけ多くのジャズ・ピアニストを聴いて、その無限に拡がる個性を愛でたい、と思うばかりである。と思いながら、この人のリーダー作についてはあまり聴いたことが無いことに気がついた。

Joanne Brackeen(ジョアン・ブラッキーン)である。米国出身。「ジャズ・ピアノのピカソ」と呼ばれ、ビー・バップからラテン、アバンギャルドなど、あらゆるジャンルに適応した、バリエーション豊かなピアノが個性。一風、チック・コリアの通じるところがあると僕は睨んでいる。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの「唯一の女性メンバー」としても有名。

実はこのリーダー作を聴いて、彼女の名前を思い出したのだ。Joanne Brackeen & Clint Houston『New True Illusion』(写真左)。1976年7月の録音。Joanne Brackeen (p), Clint Houston (b) のデュオ・パフォーマンス。むっちゃ乱暴で地味なジャケットなので、これがブレーキになって触手が伸びなかった。
 

New_true_illusion

 
が、今回、冒頭のチック作の「Steps - What Was」に強く惹かれた。ということで思わずゲット。そして、このデュオ盤で、ジョアンのピアノの個性をはっきりと思い出した。男勝りの豪快で力強いタッチ。切れ味良く極めて豪快。理論より感性で紡ぎ出す、捻れたリズムとメロディー&コード。

テクニック確かで骨太のクリント・ヒューストンのベースと組んず解れつ、ガップリと組んで、スリリングな展開を聴かせてくれる。ゴンゴンいう左手と、右手から出てくる出てくるシーツ・オブ・サウンド。マッコイ・タイナーか、とも思うが、それでいて流麗でスケールの大きなメロディアスな弾き回し。これはチック・コリア風。

しかし、である。そこに前衛音楽風のフリーでアブストラクトなフレーズが出てきたり、クラシック・ピアノの様な端正な弾きっぷりが顔を出したり。やはり、この人のピアノも唯一無二の個性の塊であり、ジャズ・ピアニストとして「一国一城の主」である。

そう言えば、暫く、ジョアンのピアノを聴くことが無かった。とにかく、豪快で力強い。それでいて流麗。このデュオ盤を聴いて、ジョアンのピアノをもっともっと聴きたいと思った。 

 
 

東日本大震災から6年4ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年6月10日 (土曜日)

夜の静寂にクールなジャズ・3

梅雨に入った途端、ピーカンの我が千葉県北西部地方である。明らかに季節は「夏」である。気温もほぼ真夏日状態で「暑い」。まだ結構、風があるので湿気を感じることが少なく、まだエアコンのお世話にはなっていない。窓全開で爽やかな室内である。毎年毎年そうなんだが、夏になってくると、激しい演奏のジャズは避ける傾向にある。

若い時は、逆に暑い夏に熱い演奏を汗をダラダラ流しつつ煙草を吹かしながら格好付けて聴いていた。が、歳を取るにつれ、これは「ダサい」と思うようになった。暑い夏には「涼しげなクールなジャズ」が良い。というか歳を取るにつれ、暑い夏に熱い演奏を聴く体力が無くなった、といった方が良いかな(笑)。

「涼しげなクールなジャズ」といえば、パッと浮かぶのが「デュオ」。ジャズには「デュオ」の好盤が多々ある。即興を旨とするジャズ、ジャズメン2人が対峙して、丁々発止と即興の妙を繰り広げる。デュオにはジャズの本質を貫き通して、インプロビゼーションの世界を紡ぎ上げるに好都合なシチュエーションがあるのだ。
 

Lee_konitz_duets  

 
Lee Konitz『Duets』(写真左)。1968年9月の録音。アルトのリー・コニッツ(写真右)が様々な楽器とデュエットするという野心的な企画盤。前に一度、当ブログでご紹介したことがあるかなあ。好きなんですよ、このアルバム。理知的でクールなバップ・マナーで、知的にホットにデュオ演奏を展開している。コード楽器によるソロ空間の制約を嫌ったコニッツが、更なる音の空間を求めて企画した「デュオ」フォーマット集である。

マーシャル・ブラウン(tb)、ジョー・ヘンダーソン(ts)、ジム・ホール(g)、レイ・ナンス(vn)、エディ・ゴメス(b)たちと、次々と相手を変えながらの魅力的なデュオ演奏がてんこ盛りである。どのデュオ演奏もレベルが高い。実験臭いなどと揶揄されることもあるが、聴いていて、どの演奏もそれぞれのジャズメンの個性を発揮して伸び伸び演奏している印象。スイング感も程良く、良い意味で「頭を使いながら」の演奏はクール。

リーダーのコニッツの企画コンセプト「コード楽器によるソロ空間の制約を嫌い、更なる音の空間を求めながら、即興演奏を展開する」がしっかりしているからこそのこの企画盤の成果なのだろう。熱いエモーショナルな演奏ばかりがジャズでは無い。最後の「Alphanumeric」のみ全員で演奏している趣向も企画盤ならではの面白い「仕掛け」。好盤です。

 
 

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2017年5月31日 (水曜日)

夜の静寂にクールなジャズ・2

ジャズに定型の編成は無い。ソロからデュオからテンテットまで、1人から10人、それ以上はスモールバンドからビッグバンド。そんな中、組合せと相性の妙、音の違いと個性をダイレクトに感じることが出来る編成が「デュオ」だと思っている。「デュオ」は2人構成。演奏ユニットとしては最小の人数構成になる。

デュオには様々な楽器の組合せがある。特にジャズは「定石」というものが無く、デュオの楽器の組合せには、ほぼ世の中の西洋楽器と呼ばれるもの全てが採用されているのではないか。いろいろ、デュオ盤を探索し聴き進めて行くと、時に「こんな楽器の組合せがあるんや」と感心するものに出会うことがある。

Ron Carter & Richard Galliano『An Evening With』(写真左)。バンドネオンの巨星とジャズ・ベースのレジェンドのデュオ。バンドネオンは、主にタンゴで用いられる楽器。形状はアコーディオンに似ているが、鍵盤はピアノのような形ではなく、ボタン型で、これが蛇腹を挟んで両側についている。実に変わった楽器である。
 

An_evening_with

 
このバンドネオンの第一人者が「リシャール・ガリアーノ」。ジャズやクラシック系ミュージシャンとの交流も多く、今回はバンドネオンでジャズに参戦である。そして、選んだ編成が「デュオ」。パートナーとして選んだ楽器は「ベース」。存命のジャズ・ベースのレジェンドの中でのファースト・コールは「ロン・カーター」。

バンドネオンとベースの組合せでジャズの「デュオ」をやる。どうなるのか、まずは不安が先に立つ。バンドネオンはバンドネオン、ベースはベース、音はそれぞれ我を張って、演奏自体はバラバラになりはしないか。しかし、この盤を聴き始めると、それは全くの杞憂に終わる。ベースにビートを委ね、バンドネオンの音がしみじみ。流麗かつダイナミック、印象的なユニゾン&ハーモニー。

特筆すべきは、ガリアーノの「ジャズ感覚」。タンゴのイメージが強いバンドネオンの音色で完璧なジャズのアドリブ・フレーズを弾きまくるのだ。これは聴いていて圧巻。その後ろに「バッキングの達人」ロン・カーターが控えて、演奏の底とビートをガッチリと支える。この異色の組合せは「大成功」。お互いを惹き立て、お互いを補い合う。素晴らしいデュオ演奏である。

 
 

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2017年5月13日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・81

ジャズは昔から「異種格闘技」が得意である。ラテン音楽のリズムやフレーズを取り込んだり、ボサノバやサンバのリズムやフレーズを取り込んだり、果てはロックの要素を取り込み、R&Bと融合し、最終的には「クロスオーバー・ジャズ」や「フュージョン・ジャズ」というジャンルを確立したり、極言すると「ジャズは融合の音楽」である。

21世紀に入ると、この「融合」はバリエーションを広げ続け、こんな楽器とコラボしてジャズやんの、なんて組合せもある。例えば、2007年リリースのデュオ作品『The Enchantment』は、ピアノのレジェンド、チック・コリアのバンジョーのベラ・フレックとのデュオ作品。バンジョーですよ、カントリー&ウエスタンの花形楽器のバンジョーとピアノで即興演奏をする。この組合せにはビックリした。

ビックリしていたら、今回、こんなデュオが出てきた。ブルーグラス界(いわゆるカントリー&ウエスタンですね)を代表するChris Thileと、ジャズ・ピアニスの重鎮 Brad Mehldauの組合せ。パーソネルは、Chris Thile (mandolin, vo) & Brad Mehldau (p, vo)。クリス・シーリはマンドリンを弾き、ボーカルを担当する。そして、ブラッド・メルドーはピアノを弾き、ボーカルも担当している。
 

Chris_thile_brad_mehldau1

 
そのアルバムとは『Chris Thile & Brad Mehldau』(写真左)。今年の1月のリリース。ブルーグラスのマンドリンの弾き語りをどうやってジャズ・ベースのピアノとデュオ演奏するのか、と首を捻るのであるが、聴いてみると、クリス・シーリのマンドリンがしっかりとジャズのビートに適応して、ブルーグラス側がジャズに歩み寄っている風情。としつつ、ブラッド・メルドーはマンドリンの繊細な響きに寄り添うように、優しくインプロビゼーションする。

ボーカル曲も多く収録されており、純粋なジャズというよりはカントリー、ブルーグラス系も混ざったようなポップスの様な風情ですが、底に流れるリズム&ビートとコード進行がジャズの雰囲気をしっかりと残していて、良い感じのフュージョン・ジャズに仕上がっています。純ジャズのデュオではありませんが、融合の音楽としてのジャズの面目躍如的な内容です。

ジャズの「異種格闘技」としての成功例でしょう。さすが伴奏上手なブラッド・メルドー、マンデリンの繊細な音によく対応しています。美しい旋律、ビート感を強調したリズムの採用、そして、親しみのある旋律を持つ楽曲の選曲。聴いて楽しいポップなフュージョン・デュオ盤に仕上がっています。

 
 

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2016年11月23日 (水曜日)

チックとハービーの連弾ライブ盤

最近、久し振りにこの連弾ライブのアルバムを聴いた。この連弾ライブのアルバムは同じツアーの音源から編集されたLP2枚組の2種類しか無い。その二人とは「Herbie Hancock & Chick Corea」。1978年2月、この2人は唐突に連弾ライブのツアーを敢行した。

1978年2月の頃は、ハービーのあの大人気となった「V.S.O.P.」での活動が一段落した頃。ジャズ界では「フュージョン・ジャズ」の人気がピークの頃。しかしながら、この大人気となった「V.S.O.P.」のお陰で、にわかに「アコースティック・ジャズ」が再び脚光を浴び始めた。その時流に乗った連弾ツアーだったのだろう。

日本でもこの連弾ツアーの様子はジャズ雑誌を通じて速報され、「当代二大人気ピアニストによる世紀の競演」などと大いに煽られ、この様子を捉えたライブ盤が出るとなった時には、レコード屋で予約を入れたほどである。僕は当時、ピッカピカのジャズ者1年生。この人気ピアニスト二人の連弾ライブは「取っ付き易かった」。

まずは『An Evening With Herbie Hancock & Chick Corea In Concert』(写真左)。1978年11月のリリース。当時、ハービーが所属していた大手レコード会社Columbiaからのリリースであった。LP2枚組のボリュームで、ジャケットも大手レコード会社ならではの整然としたもの。

こちらの連弾ライブは一言で言うと「バランスが良い」。ステレオで聴くと、左チャンネルがはービー、右チャンネルがチックである。Columbiaからのリリースなので、ハービーが前面に出た演奏を選んで選曲している様だが、ハービーばかりが目立ってはいない。バランス良く、ハービーとチック、半々に目立っている。

選曲も冒頭からの2曲「Someday My Prince Will Come」と「Liza (All the Clouds'll Roll Away)」という馴染みのあるスタンダード曲が収録されているので親しみ易い。さすが、大手のレコード会社Columbiaからのリリース。とにかくバランスが良い。よって、この2枚組LP、売れましたね〜。
 

Chickharbie_duo_live

 
もう一方は『CoreaHancock:An Evening With Chick Corea & Herbie Hancock』(写真右)。こちらは1979年のリリース。当時、チックが所属していたレコード会社Polydorからのリリース。タイトルをよく見ると、チックの名前がハービーの名前の前にある。ちなみに先のColumbia盤は、ハービーの名前がチックの名前の前にある。意外とどちらが前でどちらが後か、しっかり意識している。

加えて、こちらはColumbia盤に遅れて1979年のリリース。Columbia盤の人気に驚き、慌てて追いリリースした様でもあるLP2枚組。音源は1978年2月のライブでの公演ツアーでのものなのだが、当然、Columbia盤とは異なった日時での演奏である。後発リリースである。そりゃ〜当たり前やな。

こちらはPolydorレコードの意向なのか、チックが前面に出ている。明らかにチックが目立っている。選曲からしてそうだ。パルトークの「Mikrokosmos For Two Pnos, Four Hands': Ostinato」が収録さている。これはピアノのテクニックの優劣がモロに出る難度の高い楽曲である。この難曲を当時の若きチックはバンバン弾きまくる。相対するハービーもテクニシャンではあるが、この選曲は明らかに「チック持ち」である。

ラストの2曲、ハービーの「Maiden Voyage」、チックの「La Fiesta」の収録はColumbia盤と同じではあるが、演奏内容は全く異なる。こちらのPolydor盤では、明らかにチックが弾けている。ハービーも負けじと応戦しているが、このチックの弾け方には「お手上げ」の様子。

このPolydor盤は、明らかにチックを「贔屓」にした編集である。先のColumbia盤ではチックとハービーは拮抗していたから、やはり、この連弾ライブ、チックに有利、ハービーに不利だった感じがする。それ故なのか、この二人の連弾ライブは再結成されることは無かった。まあ、これだけ有名で優れたピアニストの二人である。再び、連弾ライブをする意義・意味・動機が無いんでしょうね。

 
 

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2016年11月19日 (土曜日)

人生の黄昏をジャズで表現する

現代のジャズは、様々なジャンルの楽曲を選択しジャズ化する。ミュージカルや映画の主題歌や挿入歌、これは、ジャズ・スタンダード曲として定着している。60年代以降はポップスやロックの楽曲を取り込み、70年代以降はワールドミュージック系の楽曲をも取り込む。まあ、現代ではジャズ化の対象は「何でもあり」の感がある。

このアルバムは、黒人霊歌や賛美歌、トラディショナルなどを中心とした選曲で構成されている。米国ルーツ・ミュージックがベースのこの構成は、ジャズの世界では「ありそうで無い」。

Charlie Haden & Hank Jones『Come Sunday』(写真左)。2010年2月の録音。録音時、ピアノのハンク・ジョーンズは91歳、ベースのチャーリー・ヘイデンは72歳。ちなみに、ハンク・ジョーンズがこの世を去るわずか3ヶ月前の録音になる。

ジャズ盤としては珍しく、明確な4ビートの演奏は少ししかない。しかし、淡々としたピアノとベースの語り合いの中で、ゆったりとしたジャジーなビートは漂っている訳で、そこは大ベテランの二人、一筋縄ではいかない。若くて硬派なジャズ者の方々からすると、あんまりにノンビリしていて「これはジャズじゃない」と言いそう。
 

Come_sunday

 
このデュオ、枯れ具合が抜群。淡々とした滋味深いタッチで、黒人霊歌や賛美歌、トラディショナルなどの米国ルーツ・ミュージックを弾き紡いでいくハンクのピアノは実に味わい深い。そのピアノに呼応するするようにな訥々としたベース。ベースの哲人、チャーリー・ヘイデンの面目躍如です。

しかし、ただ枯れている訳ではありません。ピアノにもベースにも音の中にしっかりとした芯がある。素朴な旋律の連続である黒人霊歌や賛美歌、トラディショナルなどの米国ルーツ・ミュージックが、何故かふくよかに豊かにゴージャスに響く。ジャズのアレンジの成せる技。二人の匠の成せる技。敬虔な想いに包まれます。

丁々発止の4ビートジャズを想定すると相当にフラストレーションが溜まると思いますが、この滋味深い枯れた味わいのデュオ演奏はなかなかに聴きどころ満載。人生の黄昏を音でジャズで表した様な演奏。こういう表現が出来る音楽って本当に素晴らしい。

 
 

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2016年4月15日 (金曜日)

ながら聴きのジャズも良い・2

ジャズ・ギタリストとして日本のジャズ界、ギター界をリードしてきた渡辺香津美。その渡辺香津美のギター生活45周年メモリアルのアルバムがリリースされた。2年ぶりの新盤ということになる。

その新盤とは、渡辺香津美『Guitar Is Beautiful KW45』(写真左)。45周年メモリアルな企画盤。渡辺香津美と繋がりの深い、盟友の様なギタリスト、そして、これからのジャズ・ギターを担うであろう次世代の職人ギタリストから相棒を選択した、「デュオ」を基本としたアルバムである。

その盟友の様なギタリスト、次世代の職人ギタリストとは、リー・リトナー、マイク・スターン、Char、押尾コータロー、SUGIZO、伊藤ゴロー、生形真一(Nothing's Carved In Stone)、三浦拓也(DEPAPEPE)、沖仁、高田漣、井上銘。ほっほ〜。純ジャズに留まらない、フュージョンでコンテンポラリーな、はたまたロックなギタリストまで幅広に選択している。

デュオを基本に演奏される曲はどれもが「どこかで聴いた音」。45年間のジャズ・ギターの奏法のバリエーションのほぼ全てを網羅して、全編に渡って弾きまくっている。ジャズ・ギタリスト七変化である。この企画盤には、これまでのジャズ・ギターの要素がギッシリと詰まっている。
 

Guitar_is_beautiful_kw45_1

 
そういう意味では、このアルバムに対峙してグッと身を乗り出して聴き込むタイプの内容では無い。どこかで聴いた音のショーケースみたいな作りなので、何回か聴いたら容易に出てくる音が予測出来る様になって「飽きる」。「飽きる」んだが、その演奏の内容自体は非常にレベルが高く、充実しているので、聴き応えはある。

そう、このギター・デュオが基本のアルバムは、聴き込むよりは「聴き流す」のに適したアルバムだということが言える。確かに、このアルバム、BGMとして聴き流す感じでいると実に耳当たりが良く、聴き心地が良い。やはり、優れた演奏、優れた内容、優れた録音という3拍子が揃ったアルバムというのは、どんな内容の音でも「耳当たりが良い」のだ。

グッと身を乗り出して聴き込むと「飽きる」。だからBGM風に聴き流す。その「聴き流し」に適した盤だからこそ、聴き流す分には決して「飽きることは無い」。そういうジャズ盤ってあるよね。

ジャズ喫茶の朝に、昼下がりにピッタリの音世界だと思います。ギター・デュオが基本の企画盤ですが、ところどころパーカッションが入ります。これが実に趣味が良い。ミノ・シネルだそうで、この趣味の良いパーカッションも聴きものです。そして、このアルバムのキャッチコピーが「全てのギターに指先から愛を込めて」。お後がよろしいようで(笑)。

 
 

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2016年4月 7日 (木曜日)

昼下がりSP・デュオ盤特集・10

なかなか、一気に温かくならない。しかも、スカッと晴れない。今日などは晴れないどころか、朝から雨。午後は台風の様な強い南風が吹き荒れて、どうにも天候に恵まれない今年の春の千葉県北西部地方。

しかし、そんな南風の強い、春雨の降る午後の昼下がり、風の音を聴きながら、静かな部屋の中で寛いでジャズを聴く。そんなシチュエーションにピッタリなジャズ盤を選ぶ。

小曽根真 & Gary Burton『Time Thread』(写真左)。2013年3月の録音。ピアノの小曽根、ヴァイブのバートン。師弟関係の二人の「究極のデュオ」である。この盤で、小曽根真 & Gary Burtonのデュオ盤は3枚目になる。

聴いて思う。やっぱりゲイリー・バートンのヴァイブは良いなあ。昔は、ジャズ・ヴァイブと言えば、ミルト・ジャクソン。というか、ミルト・ジャクソンしかいなかった。1960年年代の終わり、ゲイリー・バートンが登場。しかし、彼が演奏するジャズは「ジャズ・ロック」。日本では「際ものヴァイブ奏者」と看做された。

1970年代は、ECMレーベル中心にコンテンポラリーな純ジャズに落ち着き、チック・コリアと出会う。そして、このチック・コリアとのデュオが大当たり。現在まで、計7作のデュオ盤をリリースしている。
 

Time_thread1

 
小曽根真のピアノのアイドルの一人がチック・コリア。このバートンとの『Time Thread』を聴いて、なるほどなあ、と思ってしまう。小曽根のピアノのフレーズって、どことなくチック・コリアの雰囲気が漂うのだ。といって、そっくりでは無い。チックのタッチよりはエッジが柔らかく丸い。チックの様な現代音楽チックな鋭角に切り立ったフレーズは無い。逆に親しみ易い滑らかなフレーズが実に優しい。

それでも、バートンのヴァイブとのデュオとなると、やっぱり「チック・コリア&ゲイリー・バートン」を彷彿とさせる。まあ、これは仕方ないか。似通ってはいるものの、しっかりと「小曽根真&ゲイリー・バートン」としての個性的な響きもあるので、これはこれで楽しめる。

解説を紐解けば「『Time Thread』の曲は、全て小曽根の手によるもので、師であるゲイリー・バートンとの思い出の中から、幾つかのシーンを切り取った、いわば「標題音楽」となっている」とのこと。ふ〜ん、そうなんだ。聴いていても、そういう難しいことを感じることは無い。作曲時のモチーフになった、ということだろう。

デュオ演奏について、バートンはこう語っているそうだ。「グループで演奏するということは、いわば座談会のパネラーになるようなもの。それがデュオの場合、まさにふたりだけの対談になる。音楽に置き換えると、ギミックなしの真剣勝負であり、私には最もエキサイトするセッティングであり続けている」。なるほど。

 
 

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2016年1月21日 (木曜日)

『ジム・ホールの想い出』に感服

ベーシストがリーダーのアルバムが面白くて、まだまだその聴き直しは続くぞ〜。今日もロン・カーターのアルバムをチョイス。初めて聴いた時、思わず「これは良いアルバムではないか」と、ただただ感心した。

Ron Carter『In Memory of Jim featuring Larry Coryell and Peter Bernstein』(写真左)。2014年1月20日、ブルーノート東京にてライヴ録音。2013年12月に他界したジャズ・ギター界の巨匠、ジム・ホールに捧げたライブ演奏を収録した盤。

改めて、パーソネルは、Ron Carter (b), Larry Coryell, Peter Bernstein (g)。ベースと「2本のギター」とのデュオ演奏。これがまあ、聴けば判るんだが大正解な編成。ギターを2本重ねることで、ジャズ・ギターの音の細さを補って、かつ旋律をクッキリと浮かび上がらせる。

ロンとジムは何枚かの競演アルバムを残している。テクニックを駆使しつつ、歌心溢れるアドリブ・フレーズを繰り出しながら、素晴らしいデュオ・パフォーマンスを展開する。そんな競演ではあるが、僕にはどうしても気になることがあった。

どう聴いてもジムのギターの音が細いのだ。シングルトーン中心のアドリブ演奏なので、それはそれで仕方が無いのだが、相手は太っとい弦のベースである。比べれば、音の細さがどうしても気になる。

で、今回のロンのアルバムでは、その音の細い傾向のギターを2本重ねることによって、その弱点を完全に克服。加えて、ロンのベースとギターのデュオ演奏という、ロンとジムのデュオ競演の雰囲気をしっかりと再現しているのだ。旋律がクッキリと浮かび上がる。ユニゾン&ハーモニーが様々なバリエーションで豊かに響く。
 

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演奏全体の雰囲気は、典雅で濃密、そして柔軟。特に、ギターのラリー・コリエルの参入が意外だった。コリエルと言えば、クロスオーバーからフュージョン系のギタリストのイメージが強い。そんなコリエルがメインストリームなジャズ・ギターをやるのだ。どうなるんや。どきどきする。

これがまあ、このアルバムの一番のサプライズで、そんなコリエルのギターに「ジムが降臨している」。ジムのギターの雰囲気が、このコリエルのギターに宿っているのだ。これにはビックリした。コリエルのギターの奥の深さと引き出しの多さ、そして、テクニックの高さにおもわず脱帽である。

もう一人のギタリスト、ピーター・バーンスタインのギターは「安心、安全、安定」の安全運転ギタリスト。ジム・ホールの直弟子だとのことで、その演奏も、直系の端整さが聴いて取れます。メインストリーム・ジャズ・ギターの「ど真ん中」。

ジャズ演奏の中での理想的なベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックを、グループ・サウンズを通じて演出する。そんな、ジャズ演奏におけるベースの役割の明確化と理想的なベースの演奏モデルの提示。そういうリーダーを張るベーシストの王道をしっかりと押さえたロンのベースのパフォーマンスはさすがです。

ジャケットもお洒落。編成とアレンジの勝利。『ジム・ホールの想い出』。初めて聴いた時、思わず「これは良いアルバムではないか」と、ただただ感心した。

 
 

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2015年12月 9日 (水曜日)

昼下がりSP・デュオ盤特集・9

Richard Beirach & David Liebman『Omerta』(写真左)。デュオである。Richard Beirach (p), David Liebman (ts, ss,fl)。当時、まだまだ若手の部類の二人。多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマン。この二人がデュオったらどうなるのか、そんなワクワク感の高い二人のデュオ盤である。

1978年6月、日本は東京の「Onkyo House」での録音。 TRIOレコードからのリリース。時は1978年。ジャズ界はフュージョン・ジャズのブーム真っ只中。純ジャズなど、大半のジャズ者の方々は見向きもしない。純ジャズなど「過去のもの」とバッサリ切り捨ててしまう評論家もいた。そんな時代である。

そんな時代に、多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックスが身上のリーブマンの二人を招聘して、純ジャズなデュオを演奏させ、録音して、アルバム化してリリースする。TRIOレコードって、なんて豪気なレーベルだろう。この素晴らしいデュオ盤が、純日本のレーベルからリリースされたことは誇って良いと思う。

さて、このデュオ盤であるが、素晴らしい内容である。ピアノのバイラーク、サックスのリーブマン、二人の息はピッタリ。二人とも多弁なミュージシャンではあるが、デュオ演奏が故、相手の音をしっかり聴く必要がある。よって、この多弁な二人が、ちょっと寡黙になって、結果、良い塩梅の口数になっているのだ。これは「瓢箪から駒」である。

多弁過ぎるほど音符だらけで疾走するバイラークのピアノが、良い塩梅に「間」と「ゆったりとしたスピード」なピアノになって、実に味わい深い、滋味溢れるピアノに変身している。見事である。こんなに安定した着実で地に足の着いたタッチで弾くバイラークを僕は他に知らない。
 

Omerta

 
多弁でモーダルなリーブマンのサックスが、「間」と「余裕ある展開」を獲得することによって、リーブマン独特のアドリブ・フレーズの個性をしっかりと確実に理解することが出来る様になり、実に味わい深い、滋味溢れるサックス&フルートに変身している。これだけリーブマンのフレーズをしっかりと体感できる演奏はなかなか他に無い。

そんな二人のデュオ盤である。デュオという演奏のフォーマットの妙を存分に味わえる。デュオ演奏が故、相手の音をしっかりと聴きながらの「対話」である。ちょっと「間」を外したり、コード進行に変化を付けたり、スタンダード曲のメロディーに捻りを加えたりと、なかなか丁々発止としたやりとりが実に魅力的です。

多弁で耽美的なピアノのバイラーク、判り易い口語体の様なモーダル・サックス。バイラークとリーブマン、お互い意気投合し、長年デュオ演奏を続ける仲でありつつ、丁々発止とした熱いやりとりも出来る、理想的なデュオ・パートナーなんだなあ、と改めて感心します。

浜辺で遊ぶ裸の子供二人の写真のアルバム・ジャケット。この子供二人が、このアルバムでの無垢で純粋なデュオ演奏を展開するバイラークとリーブマンの二人を表現している様で秀逸。良いアルバムです。

 
 

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