2020年9月20日 (日曜日)

バートンとブレイのデュオ盤です

面白いアルバムを再発掘した。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートン(写真右)のリーダー作を整理していたら、こんなデュオ盤が出てきた。ゲイリー・バートンとピアノ奏者とのデュオと言えば、相当に有名なのが、チック・コリアとのデュオ。コリア&バートンのデュオ盤には外れが無い。素晴らしい内容ばかりのデュオ盤の嵐なのだが、このデュオ盤の相手はチックでは無い。

Gary Burton『Right Time Right Place』(写真左)。1990年3月29日、Copenhagenの Denmarks Radio「Studio 3」での録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Paul Bley (p)。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートンとピアノの哲学者(と僕が勝手に付けた)ポール・ブレイとのデュオ盤である。

両名ともECMレーベルに在籍していたり、バートンは、比較的頻繁にカーラ・ブレイの作品を演奏しており、ポール・ブレイはカーラの夫という間柄でもある。この二人、以前にもデュオ盤を録音してそうなものだが、この盤が初めて。恐らく、ゲイリー・バートンとのデュオをやるピアニストとしては、チック・コリア、という強烈な先入観があったからでは、と思っている。
 
 
Right-time-right-place  
 
 
という背景もあって、この盤を聴いていると、どうしても「チック&バートン」とのデュオと比較してしまう。が、比較は意味が無いことが直ぐに判る。さすがはゲイリー・バートン、ポール・ブレイに対しては、ポール・ブレイのピアノの個性と音色に応じたヴァイブを繰り出している。チックの時とは全く異なるヴァイブの音色。デュオ演奏の醍醐味である。

面白いのはピアノ側(ブレイもチックも)は、その個性とスタイルをほとんど変えていない、ということ。バートンのヴァイブがデュオ相手のピアノの個性と音色に応じて、その個性と音色にあったヴァイブを奏でる、という展開。それでいて、バートンのヴァイブの個性と音色は全く損なわれておらず、しっかりとバートンのヴァイブの個性と音色が全面に押し出されているところが、これまた凄い。

穏やかで透明感のあるデュオ演奏が繰り広げられているが、その演奏のテンションは高く、相互のインタープレイは丁々発止として見事な反応。ライナーノーツには、欧州で偶然顔を合わせたので、せっかくだから急遽録音したそうだが、それで、この高度な内容、見事なパフォーマンス。いやはや、レジェンド級のジャズマンはやることが違う。次元が違う。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 

  ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.09.02 更新。
 
  ・『Restless Nights』 1979
 
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  ・『The Best of The Band』

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  ・僕達は「タツロー」を発見した
 
 
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2020年9月 4日 (金曜日)

フリゼールの初リーダー作である

つい先日、4日前だったか、今週の月曜日、ビル・フリゼール(Bill Frisell)の新盤をご紹介した。で、そう言えば、ビル・フリゼールのリーダー作って、ちゃんとまとめて聴いた事があったっけ、と思い立った。気になったり、目に付いたりしたリーダー作は聴いてはいるが、初リーダー作から、体系立って聴いていないことに気がついた。

Bill Frisell『In Line』(写真)。1982年8月、ノルウェーはオスロ、Talent Studioでの録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Arild Andersen (b)。録音当時31歳、まだまだ若手ジャズ・ギタリストだった、ビル・フリゼールの初リーダー作。演奏内容としては、フリゼールのソロか、ベースとのデュオ。

フリゼールについて、初リーダー作から、体系立って聴くことにした。この盤はフリゼールの記念すべき初リーダー作。初リーダー作から「ソロ&デュオ」で攻めるとは、やっぱりどこか変わっている。というか、この盤を聴けば判るのだが、このフリゼールのギターについては、サスティンを効かせた、静かでしっとりした「揺らぎ+捻れ」のギターである。
 
 
In-line
 
 
加えて、ギターは一本ではない、複数のギターが幾層にも重なった多重録音のユニゾン&ハーモニー。このギター、どう聴いたって、従来のジャズ・ギターではない。そして、演奏の基本は「無調の即興演奏」。即興演奏という切り口でジャズと言えばジャズ。さすがECMレーベル。現代音楽風のニュー・ジャズとして、しっかりとECMレーベルの音としてまとめている。

素朴でシンプルなメロディーは、どこか米国のルーツ・ミュージックの雰囲気が漂う。カントリー風、そして、どこか米国の自然を感じさせてくれるネイチャーな響き。サスティンを効かせたエレギの音はどこか「パット・メセニー」を感じさせるが、パットはリズム&ビートをしっかりと踏まえるが、フリゼールは基本は「無調」。

しかし、フリーに染まることはない。時にフリーなフレーズも見え隠れするが、無調のメロディアスなフレーズがフリゼールの個性。穏やかで幽玄な音世界だが、フリゼールのギターの音には「芯」がしっかりあって、無調のフレーズがしっかりと浮かび上がる。淡々と滑らかなフレーズの塊の様なアルバムだが、フリゼールのギターの個性はしっかりと留めている。
 
 
 

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2020年8月19日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・184

ライブラリを眺めていて、久し振りにこのピアニストの名前に出くわした。Denny Zeitlin(デニー・ザイトリン)。「医師とジャズピアニスト」という二足の草鞋を履く異色の人物。医師は医師でも精神科医。これは異色も異色、大異色である。

ザイトリンは1938年の生まれ。今年で82歳になる。もう大ベテランというか、レジェンドの域である。本業である精神科医の仕事をこなす傍ら、プロのピアニストとしての活動も続けてきたザイトリン。しかも双方の仕事において、それぞれ一流の域に達していたと言うのだから凄い。

Denny Zeitlin & Charlie Haden『Time Remembers One Time Once』(写真)。1981年7月、サンフランシスコのライブハウス「Keystone Korner」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Denny Zeitlin (p), Charlie Haden (b)。

ジャケットを見ながら、どこのレーベルからのリリースかしら、と思って調べてみたら、なんとECMレーベルからのリリースである。もちろん、プロデューサーは Manfred Eicher(マンフレッド・アイヒヤー)。

ザイトリンがECMレーベルからアルバムをリリースしていたことは全く知らなかった。実はこのライヴ盤を聴く前、どのレーベルからのリリースか全く知らず、ジャケットを見ても判らず、ザイトリンのピアノの音を聴いていて、なんだかECMレーベルっぽい音やなあ、とボンヤリ思っていた次第。ピアノにかかっているエコーがECMらしいのだ。ザイトリンのピアノをグッと引き立てている。
 
  
Time-remembers-one-time-once  
 
 
ザイトリンのピアノは耽美的でリリカル。タッチは硬質で明確、フレーズはちょっとクラシックっぽい。ファンクネスは皆無、どちらかと言えば、欧州的なピアノである。ビル・エヴァンスを欧州風にした様な感じ、とでも形容したら良いか。流麗でエッジの効いた聴き味満点のジャズ・ピアノである。

そんなザイトリンのピアノに絡むヘイデンのベース。このヘイデンのベースが素晴らしい。ソロでも唄うが如く、流麗で力強い骨太のベースが鳴り響くのだが、そんなヘイデンのベースがザイトリンのピアノに絡むと、これまた素晴らしい、硬軟自在、濃淡自在、緩急自在のインタープレイが展開される。

ヘイデンのベースはどちらかと言えば、前に前に出る、主張するベースなのに、決して、ザイトリンのピアノの邪魔にならない。どころか、ピアノのフレーズの良さを増幅している。ザイトリンの紡ぎ出すフレーズを明確に浮き立たせている様だ。デュオの達人、チャーリー・ヘイデンの面目躍如。

ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で採り上げられたことは滅多に無いデュオ盤ですが、これがまあ、素晴らしい内容です。ザイトリンとヘイデン、相性バッチリです。そんなザイトリンとヘイデンの「一期一会」なデュオ演奏。ECMレーベルからのリリースということもあって、とても硬派な、そして欧州的な純ジャズ盤に仕上がっています。お勧めの好盤です。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・『Your World and My World』 1981

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・『Music From Big Pink』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.08.04 更新。

  ・太田裕美『Feelin’ Summer』



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2020年7月12日 (日曜日)

昼下がりSP・デュオ盤特集・11

ここ千葉県北西部地方、朝から久し振りに晴れ間が覗いた。しかし、かなり蒸し暑い。朝からエアコンのお世話になる。夕方3時過ぎまで陽が出たり曇ったり。今日は雨は来ないな、と油断していたら一気ににわか雨。小一時間で上がったが、涼しくはならない。これだけ湿度が高くて不快指数が高いと、熱気溢れるジャズや大人数の大音響のジャズを聴くのが辛くなってくる。そうなれば「デュオ盤」。久々に「昼下がりSP・デュオ盤特集」である。
 
Charlie Haden & Christian Escoudé『Gitane』(写真)。邦題『ジタンの薫り』。1978年9月22日の録音。Charlie Haden (b) と Christian Escoudé (g) のデュオ盤。ジタンとは「スペインのジプシー女」の意。仏のゴロワーズと人気を二分する煙草のブランドでもある。パッケージには扇を持ったジプシー女性のシルエットが描かれる。懐かしいイメージである。

チャーリー・ヘイデンは「ジャズ・ベースの哲人」。思索に富んだ、骨太で高テクニックなベースが身上。クリスチャン・エスクードは、仏のジプシー・ジャズ・ギタリスト。1947年生まれでまだ存命である。エスクードは、ジャンゴ・ラインハルトの後継者とも言われたギタリスト。そんな二人が、フュージョン・ジャズ全盛期に録音した、とてもクールでとても渋い内容のデュオ・パフォーマンスである。
 
 
Gitane-charlie-haden  
 
 
1曲目の「Django」は、MJQのリーダー、ジョン・ルイス作。4曲目のタイトル曲「Gitane」はチャーリー・ヘイデンの作。そして、ラストの「Improvisation」はクリスチャン・エスクード作。それ以外の4曲は、ジプシー・ジャズ・ギタリストの祖、ジャンゴ・ラインハルトの作品になる。選曲は、ギタリストのクリスチャン・エスクード寄りの選曲になっている。当然、エスクードのギターについては申し分の無い内容である。
 
が、しかし、である。このデュオ盤、チャーリー・ヘイデンのベース・プレイが抜きんでている。エスクードのギターは素晴らしいのだが、そのエスクードのギターが霞むくらいのヘイデンのダイナミックで骨太なベースが全編に渡って鳴り響いている。エスクードは10歳年上の「ベースの哲人」に遠慮したのかな。とにかく、ヘイデンのベースがエグいくらいに重低音を練り響かせて、唄うように語るように鳴り響く。 
 
ジャケットがなんだかお洒落なフュージョン・チックなものなので、見た目にはその内容が誤解されそうなのが玉に瑕。海外盤のジャケットはエスクードとのデュオ盤にも関わらず、哲人ヘイデンのどアップのジャケットが、これはこれで「ひく」(笑)。ジャケットに恵まれないデュオ盤ではあるが、内容は素晴らしい。ジャズ喫茶の静かな昼下がりに、じっくりと耳を傾けたい好デュオ盤。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・『You’re Only Lonely』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年2月 2日 (日曜日)

水墨画を見るような素敵なデュオ

以前に比べて、最近、ジャズの演奏フォーマットで「デュオ」が多くなったように感じる。デュオは楽器の組合せをよくよく考えなければならないこと、そして、デュオの演奏については、双方の演奏のテクニックが高くなければならないこと、そして、一番大切なのは、デュオのパートナーである演奏相手との相性である。

この3つの要素を充足するには、ジャズの充実度合いが鍵になる。1980年代に純ジャズ復古がなり、フュージョン〜スムース・ジャズの成熟度合いが高まり、21世紀に入って、ネオ・ハードバップが定着し、クールで耽美的な、新しいスピリチュアル・ジャズが現れ出でた。21世紀に入ってからのジャズの充実度合いは順調に高まっている。

Bill Frisell & Thomas Morgan『Epistrophy』(写真左)。ECM 2626番。2016年3月、NYヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音。改めてパーソネルは、 Bill Frisell (g), Thomas Morgan (b)。ビル・フリゼールは1951年生まれ。今年69歳の「変則ねじれギターのレジェンド」。トーマス・モーガンは1981年生まれ。今年39歳の中堅ペーシスト。菊地雅章との共演で僕はこのベーシストの名前を知った。
 
 
Epistrophy  
 
 
世代が異なりながらも(実際30歳の年齢差がある)、双方、盟友と任じている、ビル・フリゼールとトーマス・モーガン。ジャズの「音の志向」が合っていないとデュオ演奏は成立しない。この30歳という年齢差で「音の志向」が合うのか、という不安を感じるこの二人であるが、フリゼールが以前より、尖った自由度の高い、新しい響きのモード・ジャズを志向してきたので問題無い。

淡々としているが、音に深みと味わいがある。水墨画を見るような演奏。調性のフレーズと無調のフレーズが、有機的に結合し、硬軟自在、緩急自在のデュオ演奏が繰り広げられる。演奏のイメージが多岐に広がるので飽きがくることは無い。モーガンのスピリチュアルなベースに鼓舞されて、フリゼール独特の耽美的なモーダルな自由度の高いフレーズが美しく乱舞する。

2人の愛する米国ネイティヴな歌集「All in Fun」「Red River Valley」「ラストダンスは私に」、モンクの「Epistrophy」「Pannonica」など、癖のある選曲は実にユニーク。そして、ジョン・バリーの「ジェームズ・ボンドは二度死ぬ(ou Only Live Twice)」には思わず口元が緩む。カラフルなジャケットが、アルバムの音楽を的確にイメージしている。好盤です。
 
 
 
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2019年8月25日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・119

ジャズ者ベテランの方々の中でも、ジョー・オーバとニー(Joe Albany)というピアニストの名前を知る方は少ない。ジョー・オーバニーとは「パウエルに次ぐ名ピアニスト」とパーカーに言わしめた、将来を嘱望されたバップ・ピアニスト。しかし、ジャズメンの性なのか、例によって1950年〜60年代、重度のヤク中&アル中で刑務所や療養所を行ったり来たり。大した成果も残さず、忘れ去られた存在に・・・。
 
1970年代になって、ようやく更正してカムバック。精力的に録音するようになったが、Steeplechaseレーベルという欧州のジャズ・レーベルやマイナーなレーベルからのリリースがほとんどだったので、あまり、我が国では知られることは無かった。しかし、このSteeplechaseレーベルからリリースされた2枚のアルバムは、オーバーニーの個性を確認するのに欠かせないアルバムです。
 
Joe Albany & Niels-Henning Ørsted Pedersen『Two's Company』(写真左)。1974年2月17日の録音。スティープルチェイスのSCS1019番。デュオ編成の録音なので、パーソネルは、Joe Albany (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。北欧の伝説のベーシスト、ペデルセンとのデュオ。雄弁なバップ・ピアニスト、オーバニーとの相性は、と興味津々。
 
 
Twos-company
 
 
チャーリー・パーカーとの共演歴もある、ビ・バップ時代から活動する白人ピアニスト、オーバニーと、欧州ジャズを代表するベーシスト、ペデルソンとのデュオ。こういうセッションをマッチ・メイクするスティープルチェイス、さすが「欧州のブルーノート」と呼ばれる所以である。いい意味でのカドが取れた、往年のスター・プレイヤー達をピックアップした録音を数多く手掛けているが、この盤もその一枚。
 
オーバニーのピアノの個性が良い形で記録されている。ちょっと前懸かりのバップ・ピアノ。フレーズの典雅さ、フレーズの音の響きの良さ、硬質なタッチでの端正な弾き回し。そして、どこかテンションの高い部分が妙に耳に残る。アドリブ・フレーズの底に潜んでいる「研ぎ澄まされたような狂気」。決して気楽に聴くことは出来ないが、聴けばしっかりと集中して最後まで聴くことの出来る充実した内容。
 
ペデルセンのベースは当然「素晴らしい」の一言。正確なピッチと躍動感溢れるリズム&ビートで、デュオの相棒、オーバニーのピアノを支え、鼓舞する。ペデルセンの伴奏は決して前に出ず、しっかりとバックで相棒を支える、という、実に品の良い、小粋な伴奏が特徴。多弁なオーバニーのフレーズに被ること無く、しっかりと演奏のベースをリードしていく。デュオ好盤、ご一聴をお勧め、です。
 
 
 
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2019年8月24日 (土曜日)

印象的なデュオ演奏が良い。

スティープルチェイス・レーベルは「欧州のブルーノート・レーベル」と呼ばれる。カタログを見れば、その喩えが良く判る。まず、ビ・バップ時代やハードバップ時代から活躍しているジャズメンの録音が沢山ある。決してトレンドに流されない。1970年代からの活動ではあるが、クロスオーバー〜フュージョンには一切手を出さない。

あるのは純ジャズばかり。誠に硬派なジャズ・レーベルである。純ジャズを専門に、編成はソロからデュオ、トリオ、カルテット、クインテットが殆どで、小規模構成のジャズがメインである。ビッグバンドなど大編成のジャズは無い。恐らく、予算の問題があったのではないか、と思っている。しかし、この小規模編成のそれぞれの演奏が実に見事に録音されている。

Lee Konitz & Red Mitchell『I Concentrate On You』(写真)。SteeplechaseのSCS1018番。1974年7月30日、デンマークはコペンハーゲンの録音拠点「Rosenberg Studio」での録音。 ちなみにパーソネルは、この盤はデュオ演奏なので、Lee Konitz (as), Red Mitchell (b, p)の2人。コニッツは録音時は44歳。ミッチェルは47歳。油ののった中堅である。
 

I-concentrate-on-you

 
ビ・バップ時代のクール派でならしたリー・、コニッツがデュオ演奏にチャレンジしているところがミソ。コニッツは、1950年代、クール派のアルト・サックス奏者である。どれだけクールなブロウを聴かせてくれるのかと思いきや、結構ホットに吹いている。ハードバップ風のメリハリのある「味のあるブロウ」で、淡々と数々のスタンダード曲を吹き上げていく。
 
そして、この盤を聴いて、ちょっとビックリするのが、レッド・ミッチェルのベース。デュオなので、淡々とアルト・サックスのバックに回って、ウォーキング・ベースを弾き続けるのかな、と思ったら「とんでもない」。非常にイマージネーション豊かに唄うが如く、旋律に抑揚、緩急を効果的に付けつつ、コニッツのアルトに「リズム&ビート」を供給する。
 
大向こう張った、大仕掛けの吹き回しは全く無いが、淡々と適度にテンションを張りつつ、印象的なデュオ演奏を繰り広げる。このデュオ盤、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されているのを見たことが無い。しかし、とても良い内容のデュオである。コニッツのアルトの個性、ミッチェルのベースの個性、それぞれ良く表現されていて、意外とこの盤「買い」である。スティープルチェイス・レーベル侮り難し、である。
 
 
 
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2019年6月 9日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・149

こういうジャズというのが「粋な」ジャズというのだろう。こういうジャズというのが「味のある」ジャズというのだろう。まず、ジャズ盤紹介本などにその名前が挙がることは無い。よって、知る人ぞ知る、存在である。よって、ジャズ喫茶でもほとんどかかることは無い。

しかし、このジャズ盤に詰まっている音は「滋味溢れる」ジャズである。Al Cohn & Jimmy Rowles『Heavy Love』(写真左)。1977 年3月15日の録音。パーソネルは、Al Cohn (ts), Jimmy Rowles (p)。テナーとピアノのデュオである。録音年は1977年。ジャズはフュージョン・ジャズの大流行の時代。そんな時代に純ジャズ、しかも地味なデュオである。
 
だが、冒頭の「Them There Eyes」を聴くと、そんな印象はどっかへ吹っ飛ぶ。この盤に、このデュオに詰まっているのは、正統なモダン・ジャズであり、良質な全くジャズらしい即興演奏の連続である。ある時は寄り沿い、ある時は対峙し、ある時は前へ出て、ある時は後ろに回ってパートナーのソロを盛り立てる。絶妙なデュオ・パフォーマンス。
 
 
Heavy-love-al-jimmy
 
 
アル・コーンは長年ズート・シムズとコンビを組む仲。アル・コーンはズート・シムズに比べると地味で個性が弱い印象だったが、1970年代に入ると、一皮剝けた様に円熟味が加わり、歌心溢れる余裕あるプレイを繰り広げるようになる。そんなアル・コーンがこのデュオ盤に捉えられている。存分にスイングしており、この盤でのブロウはテクニック的にもかなり優秀。
 
片や、ピアノのジミー・ロウルズは我が国ではかなりマイナーな存在。「ジミー・ロウルズって誰?」ていう感じなんですが、そのプレイを聴けば、只者では無いことが直ぐに判ります。1918年生まれなので、この盤を録音した時は69歳。そんな年齢を全く感じさせない、味のある芯の入った温和なピアノを聴かせてくれます。いわゆる「伴奏上手」なピアノです。
 
ジャケットがこれまた良い。味があるモノトーンなジャケット。このデュオの温和で円熟味溢れる、それでいてしっかり芯の入った「粋」なデュオ演奏がきこえて来そうな、味のあるジャケット。Xanaduレーベルの面目躍如。こういうデュオ盤が1977年に録音されていた。そういう事実を知る日本人ジャズ者が少ないのは残念なこと。是非、ご一聴を。
 
 
 
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2018年10月30日 (火曜日)

再掲『ジム・ホールの想い出 』

ベーシストのリーダー作は、なかなかに聴き応えがあるものが多い。ベースのテクニックをメインにした盤は当たり前なんだが、ベースという楽器のポジションを活かした「グループ・サウンド」をプロデュースしコントロールした盤が良い。リーダーであるベーシストの音楽性がとりわけ良く判る。特にライヴ盤では、リーダーのベーシストのテクニックと音楽性の両方が良く判る盤が多く、ベーシストのリーダー作はライヴ盤だったら、迷わず入手することにしています。

Ron Carter『In Memory of Jim』(写真左)。2014年1月20日、ブルーノート東京にてのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Ron Carter (b), Larry Coryell & Peter Bernstein (g)。なかなか良い音で録れております。リーダーがベーシストのロン、パートナーのギタリストがコリエルとバーンスタイン。名前を見ただけで思わず触手が伸びる。ジャケット・デザインもなかなかグッドで、中の音が期待出来ます。

ちなみに「Jim」とは「Jim Hall(ジム・ホール)」のこと。プログレッシヴなレジェンド・ギタリストで、2013年12月に急逝。この盤は追悼盤の位置づけになります。ちなみに邦題は『ジム・ホールの想い出 』。ジム・ホールとロン・カーターは何枚か、デュオでの共演盤があって、そのデュオ演奏を聴けば判るのですが、相性は良く、どのデュオ盤も良い内容です。
 

Ron_in_memory_of_jim  

 
このトリビュート盤では、ジム・ホールの代わりを、ラリー・コリエルとピーター・バーンスタインが務めています。代わる代わる弾くのでは無く、ロンのベースに2ギターでのトリオ編成の演奏になっていて、意外とユニークで聴き応えがあります。「アローン・トゥゲザー」「セント・トーマス」など、ジムとのデュエットのレパートリーだった有名スタンダードを中心に演奏されていて、聴いていてとても楽しい内容。

実はこの盤、しばらく聴くのを躊躇っていました。それというのも、この盤のロンのベースはピッチが合っているか、そして、アコベの音をアタッチメントで増幅していないか、その2点が心配で、なかなか聴く勇気が出ませんでした。が、それは杞憂に終わったようで、ロンのベースのピッチは意外と合っていて聴ける。そして、アコベの音は電気的に増幅されておらず、アコベの生々しい骨太な響きが心地良い。

このライヴ盤、ロンのベースは「当たり」です。ギタリストのコリエルとバースタインとの相性も良いようで、かなり内容の濃い、適度なテンションの中、丁々発止とインプロビゼーションが展開されます。ロンはデュオが得意。ロンのベースはギターに上手く絡みます。それでいて、リーダーとして、アコベ演奏の主張はしっかりと前面に押し出す。ロンのベースの良い面がしっかり出た好盤です。

 
 

東日本大震災から7年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年10月16日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・131

最近、ジャズの新盤を聴いていると、意外とソロやデュオという少人数編成の演奏が、以前より目立つようになったと感じている。ジャズの少人数編成って、結構、テクニックを要するフォーマットで、演奏する方は結構大変ではないのかなあ。特にデュオは組む相手との相性の問題もあったり、楽器同士がぶつかり合ったりで、これまた意外と難しい。

Houston person & Ron Carter『Remember Love』(写真左)。2018年3月27日の録音。ベテランのテナー・サックス奏者のヒューストン・パーソンと、ジャズ・ベースのレジェンド、ロン・カーターのデュオ盤。久し振りに「聴いてみてビックリ」。これがまあ、素晴らしい内容のデュオ盤なのだ。

ヒューストン・パーソンは1934年生まれ。今年で84歳。しかし、このデュオ盤のテナーの音を聴けば、84歳の音とは思えない、溌剌していて、しっかりと重心が低く力強いブロウは聴き応え満点。ロン・カーターは1937年生まれ。今年で81歳。実はこのロンのベースの音に一番驚いた。今までのロンのベース音とは全く違う。
 

Remember_love_1

 
まず、ベースのピッチが合っている。実はロンのベースって、ピッチが合っていないことが多く、聴いていて気持ち悪くなることもしばしば。最初は恐る恐る聴いたのだが、この新盤ではこれがバッチリ合っている。力強く、速いフレーズも容易く弾きこなす。切れ味良く、鋼のソリッド感がダイレクトに感じる素晴らしいベース。これがロンとは、最初はにわかに信じ難かった。

そこに、ヒューストンの大らかで緻密で歌心のあるブロウが乗っかるのだ。素晴らしく心地良いデュオ演奏。本作はおなじみのスタンダード曲にそれぞれのオリジナル曲が1曲づつ収録されている。が、やはりスタンダード曲が良い。この途方も無い、素晴らしい内容のデュオ演奏に乗って、スタンダード曲がとても魅力的に聴こえる。

加えて、この盤、音が抜群に良い。調べてみたら、この新盤は、ルディ・ヴァン・ゲルダーの傍らで長年アシスタント・エンジニアを努めていたモーリン・シックラーが担当しているそうだ。この生々しく自然な音の響きは明らかにヴァン・ゲルダー・スタジオの音。高い天井の自然なリバーブが、デュオ演奏というシンプルな少人数編成の音をさらに魅力的なものにしている。ジャズ喫茶で流したい「格好の好盤」。

 
 

東日本大震災から7年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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