2021年2月25日 (木曜日)

ゴスペルな響きが素敵なデュオ

アーチー・シェップ(Archie Shepp)が元気である。シェップは1937年5月生まれ。今年で84歳。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者である。第一線に躍り出たのが1960年代後半だから、かれこれ60年、ジャズ界の第一線を走ってきたことになる。これだけ息の長いジャズメンはもう数えるほどしかいない。貴重な存在である。

ジェイソン・モラン(Jason Moran)は注目株。モランは1975年1月生まれ。今年で46歳。油の乗りきった中堅ピアニスト。1999年が初リーダー作なので24歳でメジャー・デビュー。一年に1作のペースで着実にリーダー作をリリースしている。特に最近、2015年辺りから馬力がかかってきた感がある。これからが実に楽しみな存在である。

Archie Shepp & Jason Moran『Let My People Go』(写真左)。2021年2月のリリース。リリースほやほや。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts,ss,vo), Jason Moran (p)。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者、アーチー・シェップと、油の乗りきった中堅ピアニスト、ジェイソン・モランとのデュオ盤である。シェップがボーカルを担当しているところが珍しい。
 
 
Let-my-people-go  
 
 
サックスとピアノのデュオは良くあるパターン。しかし、このデュオはその「響き」が個性的。シェップはフロリダ州フォートローダーデール生まれ。モランはテキサス州ヒューストン生まれ。どちらも「ブルースとゴスペル」米国南部出身。そう、このデュオの音の響きが、どこか「ゴスペルな雰囲気」。スピリチュアルなフレーズが、その「ゴスペルな雰囲気」に拍車をかける。

シェップのサックスがとてもスピリチュアル。シェップはもともとはコルトレーンの忠実なフォロワー。しかし、1970年代にはフリーからブラック・ファンクに走り、いち早くコルトレーンの影響下から脱している。1980年代以降は、オーソドックスなブロウをベースに「クールでスピリチュアル」な表現をメインとしている。この盤ではボーカルも担当しており、このボーカルはこれまた「スピリチュアル」。

ジェイソンのピアノがそんなシェップに呼応し、スピリチュアルなフレーズを連発しつつ、シェップのサックスを鼓舞する。そして、シェップがボーカルを担当すると、それはそれはリリカルで耽美的な、しっとりとした伴奏で応える。いやはや、素晴らしいデュオである。アフリカン・アメリカンの音の郷愁を聴く様な、素敵なスピリチュアル・デュオである。
 
 
 

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2021年2月23日 (火曜日)

素敵な欧州ジャズの「デュオ盤」

ジャズは全世界において「深化」している。もう新しいジャズの奏法や表現方法は現れ出でないだろう。しかし、今までに出現したジャズの奏法や表現方法は、様々なジャズマンのチャレンジによって、洗練され、再体系立てされ、再構成され、新たな解釈が付加されている。つまり「深化」しているのだ。

Enrico Pieranunzi & Bert Joris『Afterglow』(写真左)。今年2021年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Pieranunzi (p), Bert Joris (tp)。ピアノとトランペットのデュオ盤。リズム&ビートは一手にピアノが担い、フレーズはピアノとトランペットでのインタープレイ。

イタリアが生んだ現代最高のジャズ・ピアニストの一人、エンリコ・ピエラヌンツィ。そして、ベルギーの名ジャズ・トランペッター、バート・ヨリスとのデュオ盤である。ピアノとトランペットのデュオは珍しい。ピアノが伴奏に徹し、トランペットが旋律を吹きまくるのは全く面白く無い。当然、この名手の2人はそんな俗手には陥らない。
 
 
Afterglow
 
 
ピエラヌンツィのピアノは耽美的でリリカルでメロディアス。そこに、ヨリスのふくよかで柔らかい、それでいて芯のしっかり通ったトランペットが絡む。ピエラヌンツィのピアノの左手が、しっかりとリズム&ビートを刻み、キープする。そして、右手でヨリスのトランペットを迎え撃つ。極上のデュオの響き。極上のユニゾン&ハーモニー。

デュオ演奏の全体に漂うリズム&ビートにファンクネスは無い。リリカルでダイナミズム溢れる透明度の高いリズム&ビート。まさに「欧州ジャズ」を強く想起するリズム&ビートである。こんなデュオ演奏を初めて聴いた気がする。ありそうで無い、ピアノとトランペットのデュオ。

タイトルの「Afterglow」は、夕映えや残光を意味する言葉。このデュオ盤には、そんなタイトルそのものの雰囲気が蔓延している。素敵な響きに満ちた好盤です。最近、ジャズでは「デュオ」が流行っているような雰囲気がある。もっとユニークなジャズ演奏が今後も出てくるのではないか、と思わず期待してしまう。
 
 
 

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2021年2月19日 (金曜日)

朗々なベネットに歌伴エヴァンス

ボーカルものを聴き進めている。前にも書いたが、ジャズ・ボーカルについては、伝統的スタイルの「こぶし」やヴィブラートを効かした唄い方にどうしても馴染めなくて、ジャズ初心者の頃から常に後回しにしてきた。が、聴かず嫌いは良く無い。21世紀に入ってから、有名盤については努めて聴く様にしている。

『The Tony Bennett / Bill Evans Album』(写真左)。1975年6月10−13日の録音。ちなみにパーソネルは、Tony Bennett (vo), Bill Evans (p)。男性ジャズ・ボーカリストの代表格の1人、トニー・ベネットと、ジャズ・ピアニストのレジェンド、ビル・エヴァンスとのデュオ盤である。

トニー・ベネットは男性ジャズヴォーカリスト界を代表する存在で, 「I Left My Heart in San Francisco」などの世界的なヒットで知られている。ビル・エヴァンスは、ジャズ・ピアノのスタイリスト。トリオのインタープレイの祖であり、モーダルなバップ・ピアノの基本である。

ベネットのボーカルは「朗々」と唄い上げるもの。フェイクもギミックも無い。男性らしい声でストレートに朗々と唄う。こういうボーカリストの伴奏は難しい。朗々と唄うものを邪魔してはいけないし、かといって、キーになる音やビートは唄い手にしっかり伝えないといけない。目立たずに、でも存在感は必要。
 
 
The-tony-bennett-bill-evans-album
 
 
しかし、そこは「伴奏上手」のエヴァンス。心得たものである。エヴァンスは、ピアノ・トリオでの弾き回しは、明快なタッチで明らかにバップな弾きっぷり。フレーズはしっかり浮かび上がるし、ビートはしっかり前面にでる。しかし、歌伴に回ると、エヴァンスの弾き回しは明らかに変わる。

ボーカルを決して邪魔せず、それでいて、唄い手が唄い易い様に、キーになるフレーズやビートを明確に伝える。変にモードに傾かず、しっかりとコードとビートを供給する。これがこの盤での聴きどころになる。実に上手い「歌伴」だ。

デュオの中では、ベネットが朗々と唄い上げるタイプのボーカリストなのでリードする方に回るし、エヴァンスは当然、フォローする方に回る。リードする方とフォローする方、主従の関係が時々交代すれば、何か「化学反応」でも起こる可能性もあるのだが、このベネットとエヴァンスのデュオではそれは無い。だからそれを期待するのは「筋違い」だろう。

この盤、気持ち良い伴奏を得て、朗々と気持ち良く唄うベネットと、そんな気持ちの良い伴奏を供給する、伴奏上手のエヴァンス、その両方をそれぞれ確認し楽しむ盤だと思う。
 
 
 

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2021年1月31日 (日曜日)

素晴らしいデュオ演奏の一枚

Lee Konitz(リー・コニッツ)。1927年10月13日、米国シカゴ生まれ。April 15, 2020年4月15日、米国NYにて逝去。享年92歳。コロナ感染が起因の合併症での逝去であった。今回のコロナ禍では幾人からレジェンド級のジャズマンが犠牲になっているが、コニッツもその1人になってしまった。92歳当時、まだまだ現役で活躍していただけに実に残念なことであった。

Lee Konitz & Hein Van De Geyn『Meeting Again』(写真左)。2006年4月8日、仏アウステルリッツの「Beauforthuis」でのライヴ録音。オランダの名門タイムレス・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Lee Konita (as), Hein Van de Geyn (b) のデュオ。リー・コニッツが78歳の時のパフォーマンスになる。

1950年代前半、トリスターノ派のクール・ジャズの主要メンバーの1人として名乗りを上げ、以来、切れ味の良い抑制されたエモーショナルなブロウで思索的なフレーズを聴かせてくれたリー・コニッツが、オランダのベーシスト、ハイン・ヴァン・デ・ゲインと、徹底的にクールにブロウしたデュオ・パフォーマンスの記録である。
 
 
Meeting-again
    
 
全11曲であるが、その全てが有名スタンダード曲。これだと「今まで何処かで聴いたことがある」イメージが強く出て、俗っぽくて飽きの来る演奏になるような危惧があるのだが、どうして、コニッツはそうはならない。創造力豊かに、今までに聴いたことが無いイメージで、クールにモーダルなインプロビゼーションを繰り広げるのだから、もはや「脱帽」である。

ベーシストは「ハイン・ヴァン・デ・ゲイン」。1956年7月生まれのオランダ出身のベーシストである。録音当時は49歳。1980年から82年まで米国で活動、1983年にオランダに戻って、以降、欧州での人気ベーシストとして活躍している。が、僕はこの盤まで、このベーシストのことは知らなかった。派手さはないが,コニッツのアルトに絡んでいく美しいメロディーを持ったラインは魅力的で、低音の締まった質感も良い感じ。

コニッツはこの優秀なベーシストを得て、全11曲、1時間に渡るデュオ・パフォーマンスを一気に吹き切っていく。アルト・サックスとベースのダイアローグも好調、全編に渡り、程良いテンションを維持しつつ、時に濃密に絡み合い、時に間を活かしたクールな展開でじっくり聴かせてくれる。素晴らしいデュオ・パフォーマンスの一枚である。
 
 
 
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2020年10月20日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・191

「彼のピアノ」のスタイルは「ありそうでない」スタイル。部分部分を聴くと、過去の誰かのスタイルと同じじゃないか、と思うんだが、良く聴くと、どれも過去のスタイルとはちょっと違う。そういう「過去のスタイルとはちょっと違った」スタイルをいくつか散りばめて、プレイ全体で、伝統に根ざした新しい響きのスタイルを獲得している。つまりは、新伝承派のモットーを地で行っているということ。

「彼のベース」の演奏テクニックは群を抜いている。特に、ピチカート奏法における、旋律を奏でるギター・ライクなインプロビゼーションは傑出したもの。クラシックの素養が垣間見えるベースは、ピッチがしっかりと合っていて、彼のソロの旋律弾きは聴いていて気持ちが良い。「旋律弾き」は、まるでギターである。これがあの図体のでかいアコベを使っての技とは思えない、驚愕のテクニックである。

Mulgrew Miller & Niels-Henning Ørsted Pedersen『The Duo Duke Ellington 100』(写真左)。January 15, 1999年1月15日、Copenhagenでの録音。ちなみにパーソネルは、Mulgrew Miller (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b)。
1999年、デンマークのオーディオ・ブランド、バング&オルフセン(B&O)が、デューク・エリントンの生誕100周年とエリントンとベース奏者ジミー・ブラントンのパートナーシップを祝して企画したトリビュート盤である。
 
 
The-duo-duke-ellington-100  
 
 
先の「彼のピアノ」とは、Mulgrew Miller(マルグリュー・ミラー)、「彼のベース」とは、Niels-Henning Ørsted Pedersen(ニールス=ヘニング・エルステッド・ペデルセン)のことである。ミラーは、2013年5月(享年57歳)、ペデルセンは2005年4月(享年58歳)鬼籍に入っている。デュオを構成する2人は共に故人となる。どちらも50歳台後半、早過ぎる逝去であった。

デューク・エリントンの曲をデュオでやる。エリントンの曲って、かなりの数のカヴァーがあるので、どこかで聴いたことがあるような、ちょっと手垢が付いた様な雰囲気がするものなんだが、このデュオに限ってはそうならない。まず、アレンジがユニーク。こうきたか、と思わせる、意外性のある、ユニークで小粋なアレンジが施されていて新鮮。これって、2人ともかなり高度なテクニックと歌心あってのこと。

ミラーのピアノもペデルセンのベースも唯一無二な個性なので、聴いていて実に楽しく、実に興味深い。ミラーの変幻自在、硬軟自在、緩急自在な、とても柔軟性と適応力のあるピアノと、どっしりとした重低音フレーズで旋律の底をしっかりと支え、デュオの相手を鼓舞するベース。有名なエリントン曲が続くのだが、とても耳新しく響くデュオ盤。こんな優秀な音源が、約20年の時を経てリリースされたことに「拍手喝采」である。
 
 
 

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2020年10月 9日 (金曜日)

バルネ・ウィランを見直した。

Barney Wilen(バルネ・ウィラン)。仏の伝説的サックス奏者である。50年代中盤に、バド・パウエルやマイルス・デイヴィス、J.J.ジョンソンらと共演したことでも有名。1957年には、自らのクィンテットで『Barney Wilen Quintet』を発表。仏のサックス奏者でありながら、こってこて「ビ・バップ」な吹きっぷりは見事。が、以降、ロック色の強い『Dear Prof.Leary』(1968年)を発表したり、1970年代には映画音楽や民族音楽に携わるなど、幅広いというか迷走気味の音楽活動を展開。

そして、1990年代に入って、原点回帰した「ビ・バップ」なブロウのリーダー作をヴィーナス・レコードから数作リリース。そして、1996年5月、鬼籍に入っている。キャリア途中、映画音楽や民族音楽に手を出したり、晩年はヴィーナス・レコードで、バップなブロウの要求に迎合したりで、自分としてはあまり信頼できるサックス奏者ではなかった。とにかく訳が判らん。ビ・バップなブロウも硬質でファンクネス皆無、歌心が希薄なテクニカルなブロウが、どうにも苦手だった。

Barney Wilen『Montréal Duets』(写真左)。1993年7月4日、International de Jazz de Montreal での録音。今年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、Barney Wilen (ts, ss), Alain Jean-Marie (p)。サックス奏者 バルネ・ウィラン & ピアノ奏者 アラン・ジャン・マリー のデュオ。カナダ・モントリオールのジャズフェスでのライヴ録音。
 
 
Montreal-duets  
 
 
改めて、1937年、仏ニース生まれのサックス奏者 バルネ・ウィラン。そして、1945年、仏ポワンタピートル(グアドループ、小アンティル諸島)生まれのピアニスト、アラン・ジャン・マリーのデュオである。苦手なサックス奏者、バルネ・ウィランのライヴ音源なので、あんまり期待せずに聴き始めたら、あら不思議。角の取れた芯のあるテナーの音色、流麗でメロディアスな運指、歌心溢れるフレーズの展開。今まで聴いてきたウィランとは全く異なるサックスがこのライヴ盤に記されている。

ピアノを担当するアラン・ジャン・マリーも実にツボを押さえた伴奏を展開する。僕はこのピアニストは全く知らない。でも、このピアニストは及第点。どこかが突出した強烈な個性は無いし、テクニック的にも突出したところは無いが、デュオのパートナーとして、その役割をよく心得た「伴奏上手」なピアノはなかなかの聴きもの。破綻無く穏やかに堅実にウィランのサックスをサポートする。良い伴奏ピアノ。

このライブ盤、ライブ2セットをCD2枚組、全演奏時間 2時間30分弱の長尺で、演奏曲が2枚のCDで重複したりしているんですが、しかもデュオという演奏形態でシンプルの極みなんですが、全く飽きが来ません。とにかく、このライブ盤でのバルネ・ウィランのサックスは素晴らしい。思わず、バルネ・ウィランを見直しました。晩年のバルネ・ウィランを聴き直してみようか、と思っています。
 
 
 

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2020年9月29日 (火曜日)

コリエルとカーンのデュオ盤

フュージョン・ジャズの時代って、あるところからは評判が悪い。あれは時代の徒花、ジャズ者もジャズ喫茶も「どうかしていた」なんて自己批判めいた記事を目にしたことがあるが、フュージョン・ジャズって、そんなに酷いものでは無い。あれだけ大ブレイクした訳で、当時のジャズ者の方々の耳って、確かなものだったろうから、音楽的にも優れたものが多く、演奏テクニックも優秀なものが多いのは当然。

とにかく、当時、大ブレイクしたフュージョン・ジャズ。アルバムを出せばバンバン売れるわけで、レコード会社はそれぞれ、こぞって、フュージョン・ジャズのアルバムをバンバンにリリースした。バンバンとリリースするからには、アルバムをバンバンと制作せねばならない。当時、アルバムを制作する意図で、様々な企画盤が録音〜リリースされた。

Larry Coryell & Steve Khan『Two for the Road』(写真左)。1977年のリリース。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell, Steve Khan (g) のみ。コリエルとカーンのギター・デュオ盤である。60年代後半から、ジャズ・ロック〜クロスオーバーの寵児的ギタリストとして活躍していたラリー・コリエルと、70年代後半にボブ・ジェームスの見出されて、フュージョンの人気ギタリストとなった、スティーヴ・カーンとのコラボ盤。
 
 
Two-for-the-road  
 
 
冒頭のチック・コリアの名曲「スペイン」から始まる。コリエルもカーンも全編アコースティック・ギター(略して「アコギ」)でガンガンに弾きまくる。弦はスチールなので、その音色は切れ味良く疾走感抜群。そして、コリエルは、ジャズ・ロックなギター・フレーズで終始攻めまくり、カーンは硬派なジャズ寄りのフュージョン・ギターで迎え撃つ。

全く音色とアプローチの異なるアコギなんだが、それはそれは素晴らしいデュオ演奏が繰り広げられている。二人の共通点は「ロックなテイスト」がギター・フレーズに見え隠れするところ。この「ロックなテイスト」の部分で、この個性的な2人のギターは、絶妙にシンクロする。この絶妙なシンクロが実に心地良い。このシンクロをベースに奏でられる「ユニゾン&ハーモニー」は聴きものである。

このデュオ企画、コリエル宅で行われた1回のリハーサルがもとになったらしい。よほど相性が良かったのか、それが切っ掛けでツアーに出るんやから、思い切りが良いというか、向こう見ずというか(笑)。それでも、これだけ内容のあるアルバムが出来るのだから、二人のギタリストとしての力量たるや素晴らしい。フュージョン全盛時代らしい企画盤。懐かしい響き。それでも今の耳にも十分に耐える。好盤です。
 
 
 

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2020年9月23日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・135

台風が来るぞ来るぞ、というので、朝からベランダの植木などを台風対策で寄せたりして、一汗かいた。で、天気予報を見たら、一応、直撃〜上陸は避けられる予報に大きく変化。一汗かいたのが、どうも無駄になるようだ。まあ、それそれで良いことだが・・・。

さて、一昨日、ピーターソン=ブラウン=シグペンの、いわゆるピーターソンの「The Trio」の旗揚げ盤のご紹介したのだが、今日は、オスカー・ピーターソンの「変わり種」盤についてご紹介したい。

『Oscar Peterson and Roy Eldridge』(写真)。1974年12月8日の録音。ちなみにパーソネルは、Roy Eldridge (tp), Oscar Peterson (p)。Pabloレーベルからのリリース。Pabloレーベルは、当時(1970年代)、レジェンド〜ベテラン級のリーダー作やジャム・セッション盤をリリースして、純ジャズ者の方々からは、結構、御用達だったレーベルである。たまに「凡盤」があるのはご愛嬌。

しかし、このデュオ盤、つい最近まで、その存在を知らなかった。Pabloレーベルのアルバムは、なかなかリイシューされない盤が結構ある。やっと、このところ、音楽のダウンロード・サイトが、ジャズ盤についても結構音源を集めていて、Pabloレーベルの音源も知らないうちにアップされつつあるみたいなのだ。
 
 
Oscar-peterson-and-roy-eldridge
 
 
デュオの片割れ、ロイ・エルドリッジは、スイング時代から活躍する、レジェンド級の大ベテラン。愛称「リトル・ジャズ」。ビバップの先駆者でもある。そんなレジェンド級のトランペッター、1970年に脳卒中で後遺症を負った。が、奇跡的に復帰を果たし、このデュオ盤ではしっかりとしたトランペットを聴かせている。

さて、もう一人のデュオの片割れ、オスカー・ピーターソンはピアノのヴァーチュオーゾ。ダイナミックかつスインギーな弾き回しは見事。そんなピーターソン、絶対にピアノしか弾かない、と思っていたら、この盤ではなんとハモンド・オルガンも弾いている。

オルガンもピアノも鍵盤楽器ではあるが、オルガンはオルガンなりの弾き方のノウハウがあって、ピアノが弾けるからといって、オルガンも同じ様に弾けるとは限らない。が、ピーターソンは、ピアノと同じレベルで、かなり優秀なオルガンを弾きこなしている。これにはビックリした。

ピアノ+オルガンとトランペットのデュオ、という組合せも珍しい。それでも、ピーターソンの奏でるリズム&ビートに乗って、エルトリッジが気持ちよさそうに、小粋なトランペットを吹き進めて行く。録音当時、エルトリッジは63歳、ピーターソンは49歳。レジェンド〜ベテラン級の優れた二人が気持ちよさそうに奏でるデュオ演奏。これはもはや、スイングでもハードバップでもない。ただただ「ジャズ」である。
 
 
 
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2020年9月20日 (日曜日)

バートンとブレイのデュオ盤です

面白いアルバムを再発掘した。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートン(写真右)のリーダー作を整理していたら、こんなデュオ盤が出てきた。ゲイリー・バートンとピアノ奏者とのデュオと言えば、相当に有名なのが、チック・コリアとのデュオ。コリア&バートンのデュオ盤には外れが無い。素晴らしい内容ばかりのデュオ盤の嵐なのだが、このデュオ盤の相手はチックでは無い。

Gary Burton『Right Time Right Place』(写真左)。1990年3月29日、Copenhagenの Denmarks Radio「Studio 3」での録音。ちなみにパーソネルは、Gary Burton (vib), Paul Bley (p)。ヴァイブのヴァーチュオーゾ、ゲイリー・バートンとピアノの哲学者(と僕が勝手に付けた)ポール・ブレイとのデュオ盤である。

両名ともECMレーベルに在籍していたり、バートンは、比較的頻繁にカーラ・ブレイの作品を演奏しており、ポール・ブレイはカーラの夫という間柄でもある。この二人、以前にもデュオ盤を録音してそうなものだが、この盤が初めて。恐らく、ゲイリー・バートンとのデュオをやるピアニストとしては、チック・コリア、という強烈な先入観があったからでは、と思っている。
 
 
Right-time-right-place  
 
 
という背景もあって、この盤を聴いていると、どうしても「チック&バートン」とのデュオと比較してしまう。が、比較は意味が無いことが直ぐに判る。さすがはゲイリー・バートン、ポール・ブレイに対しては、ポール・ブレイのピアノの個性と音色に応じたヴァイブを繰り出している。チックの時とは全く異なるヴァイブの音色。デュオ演奏の醍醐味である。

面白いのはピアノ側(ブレイもチックも)は、その個性とスタイルをほとんど変えていない、ということ。バートンのヴァイブがデュオ相手のピアノの個性と音色に応じて、その個性と音色にあったヴァイブを奏でる、という展開。それでいて、バートンのヴァイブの個性と音色は全く損なわれておらず、しっかりとバートンのヴァイブの個性と音色が全面に押し出されているところが、これまた凄い。

穏やかで透明感のあるデュオ演奏が繰り広げられているが、その演奏のテンションは高く、相互のインタープレイは丁々発止として見事な反応。ライナーノーツには、欧州で偶然顔を合わせたので、せっかくだから急遽録音したそうだが、それで、この高度な内容、見事なパフォーマンス。いやはや、レジェンド級のジャズマンはやることが違う。次元が違う。
 
 
 

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2020年9月 4日 (金曜日)

フリゼールの初リーダー作である

つい先日、4日前だったか、今週の月曜日、ビル・フリゼール(Bill Frisell)の新盤をご紹介した。で、そう言えば、ビル・フリゼールのリーダー作って、ちゃんとまとめて聴いた事があったっけ、と思い立った。気になったり、目に付いたりしたリーダー作は聴いてはいるが、初リーダー作から、体系立って聴いていないことに気がついた。

Bill Frisell『In Line』(写真)。1982年8月、ノルウェーはオスロ、Talent Studioでの録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Arild Andersen (b)。録音当時31歳、まだまだ若手ジャズ・ギタリストだった、ビル・フリゼールの初リーダー作。演奏内容としては、フリゼールのソロか、ベースとのデュオ。

フリゼールについて、初リーダー作から、体系立って聴くことにした。この盤はフリゼールの記念すべき初リーダー作。初リーダー作から「ソロ&デュオ」で攻めるとは、やっぱりどこか変わっている。というか、この盤を聴けば判るのだが、このフリゼールのギターについては、サスティンを効かせた、静かでしっとりした「揺らぎ+捻れ」のギターである。
 
 
In-line
 
 
加えて、ギターは一本ではない、複数のギターが幾層にも重なった多重録音のユニゾン&ハーモニー。このギター、どう聴いたって、従来のジャズ・ギターではない。そして、演奏の基本は「無調の即興演奏」。即興演奏という切り口でジャズと言えばジャズ。さすがECMレーベル。現代音楽風のニュー・ジャズとして、しっかりとECMレーベルの音としてまとめている。

素朴でシンプルなメロディーは、どこか米国のルーツ・ミュージックの雰囲気が漂う。カントリー風、そして、どこか米国の自然を感じさせてくれるネイチャーな響き。サスティンを効かせたエレギの音はどこか「パット・メセニー」を感じさせるが、パットはリズム&ビートをしっかりと踏まえるが、フリゼールは基本は「無調」。

しかし、フリーに染まることはない。時にフリーなフレーズも見え隠れするが、無調のメロディアスなフレーズがフリゼールの個性。穏やかで幽玄な音世界だが、フリゼールのギターの音には「芯」がしっかりあって、無調のフレーズがしっかりと浮かび上がる。淡々と滑らかなフレーズの塊の様なアルバムだが、フリゼールのギターの個性はしっかりと留めている。
 
 
 

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