2021年2月 3日 (水曜日)

山本剛トリオ『Speak Low』

今年は和ジャズをしっかりと聴き直そうと思っている。もともと和ジャズは1960年代から充実していて、数々の好盤がリリースされている。が、CDの時代になって、なかなかリイシューが進まず、21世紀に入って10年ほど経って、やっと主要なアルバムはリイシューされたようである。

おおよそ、日本発のジャズ・レーベルの企画盤は、その企画意図がゆえに聴きどころは少ない。但し、トリオ・レコード、TBMレーベル、最近では、ヴィーナス・レコードについては、時々、駄盤はあるが、基本的には水準以上の好盤をリリースしていて、地雷を踏まない限り、間違いは無い(それでも、地雷を踏まない程度の知識と経験は必要にはなるのだが)。

山本剛トリオ『Speak Low』(写真左)。1999年8月8日の録音。ヴィーナス・レコードのからのリリース。ちなみにパーソネルは、山本剛 (p), 岡田勉 (b), 植松良高 (ds)。1970年代、耽美的でモーダルで硬派なジャズ・ピアノで好盤を連発していた「山本剛」のトリオ盤になる。
 
 
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ヴィーナス・レコードからのリリースなので、耽美的な面をクローズアップした、勝手にレコード会社が想定する様な、日本人好みの「絵に描いた様なハードバップ」なピアノ・トリオ演奏が展開されるのかな、とあんまり期待せずに聴いたのだが、これがそうではないからジャズは面白い。

1970年代の山本剛のピアノそのままに、若かりし頃の尖ったところを押さえ、聴き易い展開に置き換えた、なかなか聴き応えのあるピアノ・トリオ盤に仕上がっているのだ。往年の流麗で端正なピアノ・タッチにスインギーな要素が強調されているところが「ミソ」。バックのリズム隊、岡田のベース、植松のドラムも、日本人好みの音に拘ること無く、自然にスインギーで判り易いリズム&ビートを供給している。

年季が入った「熟成」とでも形容できそうな、日本人らしい、ファンクネス希薄だがスインギーでそこはかとなくグルーヴ感漂う、意外と硬派な内容。言い方は良く無いが「ヴィーナス・レコード」らしからぬ、硬派でコンテンポラリーな純ジャズ志向のピアノ・トリオ盤に仕上がっていて感心した。好盤です。
 
 
 

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2021年1月15日 (金曜日)

「荒武裕一朗」のピアノを知る

日本のジャズは未だにそのレベルは高い。1960年代から米国における最新のスタイルを取り込み続け、自分のものにしつつ、日本人としてのオリジナリティーを付加する。そんなレベル向上の努力を絶え間なく進めて来た。21世紀になっても、日本のジャズのレベルは高い。有望な新人も一定数出てくる。皆、生活出来ているんだろうかと心配になるくらいだ。

荒武裕一朗『Constant as The Northern Star』(写真左)。2020年03月のリリース。荒武裕一朗のピアノ・トリオ最新作。ちなみにパーソネルは、荒武裕一朗(p), 三嶋大輝 (b). 今泉総之輔 (ds) のピアノ・トリオがメインで、ゲストに 山田丈造 (tp) が参加している。「ミミズク」(小さいが耳がある)のアップのイラストが凄く趣味良く印象的。

資料にはキャッチ・フレーズとして「ホール録音でのマイク1本でごまかし無しの意欲作」とある。確かに音が良い。楽器の響きがシンプルで、エコーに濁りが無い。そして、何より、楽器の「定位」が良い。ジャズの演奏をバシッと録っている、って感じが凄く良い。この音の良さだけでも、この盤は「買い」である。
 
 
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冒頭の「Time Remembered」で、ピアノは「エヴァンス派」と聴いた。エヴァンスよりバップ度は控えめ。硬派で耽美的な響きはエヴァンスを踏襲。ファンクネスは希薄。スイング感は適度。聴いていて「ああ、日本人のピアノやなあ」と何故か感心する。端正で適度な硬さのタッチは実に良い感じである。僕は「荒武裕一朗」のピアノを知らない。でも、この1曲で「お気に入り」になった。

選曲を見渡すと、スタンダード曲とポップス曲のカヴァーと自作曲、よいバランスで並んでいる。ポップスのカヴァーに興味がいく。特にお勧めなのが、2曲目「Knocks Me Off My Feet」。邦題「孤独という名の恋人」。スティーヴィー・ワンダーの傑作『Songs in the Key of Life』のLP時代、Side Bの2曲目。これが実に良いアレンジで「ジャズ化」されている。メロディーをなぞるだけでない、しっかりアドリブ展開も織り交ぜた演奏は実に「良い」。

自作曲「閉伊川」も流麗で印象的なフレーズ満載で良い出来。スタンダード曲はどれも堅実、流麗なタッチと心地良いアレンジでジックリと聴かせてくれる。そうそう、ゲストの山田丈造のトランペットも良い感じ。ブリリアントで切れ味の良いトランペットが印象的。「良いジャケットに外れ無し」。この盤、良いですよ。我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』の最近のお気に入り盤になってます。
 
 
 

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2021年1月14日 (木曜日)

聴き心地優先のスインギーな盤

1970年代〜1980年代前半に活動し、様々な成果を挙げた和ジャズの老舗レーベル、トリオ・レコード。時代の最先端のメインストリーム・ジャズをベースに、日本人ジャズマンのリーダー作や、米国ジャズの玄人好みのジャズマンのリーダー作を多数リリースして、硬派な和製ジャズ・レーベルとして一世を風靡した。が、そんな尖った硬派な盤の中に、ジャズを音楽として、楽しんで聴くのに相応しい、聴き心地優先のスインギーな盤も存在した。この辺りが、トリオ・レコードの懐の深いところだと感心している。

増田一郎クインテット『頬に頬よせて 〜アービング・バーリン・ソング・ブック』(写真左)。1978年の作品。トリオ・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、増田一郎 (vib), 潮先郁男 (g), 根本慶子 (p), 小林陽一 (b), 猪俣猛 (ds)。リーダーの増田一郎は、日本ジャズにおけるヴァイブの名手。また敏腕プロデューサーとしても活躍した。

アーヴィング・バーリン(1888年5月11日~1989年9月22日)は、帝政ロシア(現・ベラルーシ)生まれのアメリカの作曲家。「ホワイト・クリスマス」に代表される、G.ガーシュインをして「アメリカのシューベルト」と言わしめた美しいメロディを持った楽曲が印象的。この盤は、そんなアーヴィング・バーリンの楽曲を取り上げた、ユニークな企画盤になる。
 
 
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ヴァイブの名手、増田一郎によるアメリカン・ソングブック三部作の1枚。まず、この「アーヴィング・バーリン」に着目したところに、リーダー増田のセンスの良さを感じる。バーリンの楽曲はいかにも米国ポップスらしい、美しくシンプルなメロディーがてんこ盛りで、実に判りやすい。このシンプルで判り易い楽曲って、意外とジャズにアレンジし難いものだ。

が、どの曲もアレンジがとても行き届いているように感じた。演奏の基本は、ハードバップの手前の「スウィング」と言って良いかと思う。左右にユッタリと揺れるスインギーな4ビートに乗った、ほどよくアレンジされたバーリンの楽曲の数々。ハードバップ以降のスリリングでテクニカルな側面は無いが、聴いてほのぼのする、聴いてしみじみする様なモダン・ジャズの響きが心地良い。

アーヴィング・バーリンの楽曲の持つ美しいメロディーは、耽美的なヴァイブの音に実に映える。潮先郁男のギターと根本慶子のピアノが美しいフレーズでバッキングしていく。ジャズ史に残る様なアーティスティックな無い様では無いが、ジャズを音楽として、楽しんで聴くのに相応しい好盤だと思う。時には、こういう聴き心地の良いモダン・ジャズがあっても良い。
 
 
 

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2021年1月10日 (日曜日)

内容の濃いアートな和ジャズ

和ジャズの聴き直しを進めている。特に1970年代、トリオ・レコードからのリリース盤を聴き直している訳だが、内容の濃いものが多い。1970年代と言えば、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズが全盛、人気を博していたという思い出があるが、我が国ではその大ブームの脇で、メインストリームな純ジャズもコアなファンの間では人気があったようだ。

日野元彦『FLASH(フラッシュ)』(写真)。1977年5月22日、東京は「花宝スタジオ」での録音。トリオ・レコードからのリリースになる。ちなみにパーソネルは、佐藤允彦 (p), 井野信義 (b), 日野元彦 (ds) 。ドラムスの日野元彦をリーダーとした、シンプルなピアノ・トリオ編成。

パーソネルを見ると、ピアノ担当は佐藤允彦。かなり前衛的な、若しくは先進的な演奏が繰り広げられるのかな、と想像する。当時、佐藤允彦のピアノといえば「前衛的」が定番だからなあ。

で、冒頭の「Overhang Blues」。確かにブルースではあるが「超高速ブルース」。しかもファンクネスは皆無。鋭角に切れ味良くバリバリとモーダルなフレーズを弾きまくるピアノ。それに呼応するように、モーダルに前衛的に、掻きむしる様にまとわりつくアグレッシヴなベース。
 
 
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3曲目の「My Foverite Thing」や続く「ST. Thomas」だって、決して従来の聴き易いスタンダードな演奏では全く無い。実に尖った前衛的一歩手前の自由度の高い先進的なモード・ジャズにアレンジされている。これが「良い」。ストイックなモード・ジャズといった風情で、スタンダード曲的な甘さは全く無い。ただただひたすらストイックにモード・ジャズが展開する。

このピアノとベース、アグレッシブでストイックな2人の演奏をガッチリと受け止め、演奏全体の雰囲気をコントロールする「トコさん(日野元彦の愛称)」のドラミングがまた見事。モード・ジャズをリードするドラミングってこうやるんだぜ、なんて感じの、2人のアグレッシヴな演奏にもビクともしない、硬軟自在、変幻自在、緩急自在のドラミングが凄い。

演奏全体にテンション漲り、先進的で自由度の高い、ちょっと前衛的でモーダルな演奏。テクニック的にもレベルは高く、速い演奏でも変化の激しい演奏でも破綻は全く無い。当時の日本のジャズの充実度が追体験できる、濃い内容のコンテンポラリーな純ジャズ盤である。

寛いで楽しむ類の演奏では全く無い。が、アーティスティックなジャズとして、ジックリ腰を据えて鑑賞するに値する演奏であることは確か。好盤です。
 
 
 

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2021年1月 9日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・196

今年はちょっと「和ジャズ」をしっかり聴こうと思って、トリオ・レコードのアルバムを聴き始めたら、意外とまだ未知の優れたジャズマンのリーダー作に出会ったりするので楽しい。特に日本のジャズ・レーベルが元気だった1970年代、我が国にいかに優れたジャズマンが多くいたかを改めて再認識する。

福居良『Scenery(シーナリィ)』(写真)。1976年12月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Ryo Fukui (p), Satoshi Denpo (b), Yoshinori Fukui (ds)。福居良の1976年トリオ・レコードに残したデビューアルバムになる。力強いスイング感、明かなバップ・スタイルのピアノと美しい旋律を伴った魅力的なオリジナル曲が個性。

福居良は、1948年北海道生まれ。18歳でアコーディオン、22歳、独学でピアノを始める。東京に出て研鑽を積み、27歳で札幌市に戻った後、自分のトリオを結成し、このデビュー盤を録音している。1995年6月に札幌市すすきのでジャズクラブ「スローボート(Slow Boat)」を開店。同店は北海道の重要なジャズ拠点ともなった。生涯を通じて、リーダー作は少なく5枚ほど。2016年3月、悪性リンパ腫により68歳で逝去している。
 
 
Scenery_ryo_fukui  
 
 
資料には「バリー・ハリスを師と仰ぎ長年にわたって交流を重ねた」とあり、このデビュー盤を聴くにつけ「さもありなん」と強く思う。そう、福居良のビ・バップなピアノタッチって、どっかで聴いたことがあるなあ、と思っていたんだが、そう、バリーハリスに良く似ているのだ。似ているが決してコピーでは無い。バリー・ハリスのタッチよりも鋭角で跳ねるような、加えて、重さを感じない均整の取れた福居のタッチは独特。

冒頭は「It Could Happen To You」、ダイナミックに、スケール大きくスウィングするところがユニーク。ファンクネスが希薄で、明らかにこのピアノは「米国のものでは無い」ことが判る。タッチは端正でフレーズは均整が取れている。和ジャズの成せる技である。ハッピーで明るいアレンジの3曲目「Early Summer」、ネーチャーでミッドナイトな雰囲気のラスト曲「Scenery」も、福居良のピアノタッチ際立つ素敵な演奏。

1970年代の和ジャズの世界で、こんな素晴らしいピアノ・トリオ盤があったなんて知らなかった。当時、ジャズ雑誌では、和ジャズについては、レコード会社推しの一部の人気ジャズマン以外はあまり採り上げられず、福居良については、僕は札幌のジャズクラブ「スローボート」のオーナーとして知った位だ。今回、初めて福居良のピアノに触れた。このトリオ盤、暫く、我がヴァーチャル音楽喫茶『松和』のヘビロテ盤となりそうだ。
 
 
 

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2021年1月 6日 (水曜日)

トロンボーンの和ジャズ好盤

今年は「和ジャズ」をしっかり聴き直そうか、と思っている。この2〜3年で、優れたジャズ盤を供給していた和ジャズのジャズ・レーベルの再発も進んで、聴き直す環境がほぼ整ったように感じている。例えば「トリオ・レコード」「TBMレーベル」「EWレーベル」などがそれに当たるかと思う。

福村 博『Live -First Flight-』(写真左)。1973年8月27日、日本都市センター・ホールでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、福村博, 向井滋春 (tb), 田村博 (p), 岡田勉 (b), 守新治 (ds)。トロンボーン2本がフロントの変則クインテット編成。こういう変則な編成は、意外と「和ジャズ」の得意とするところ。

千代田区平河町にあった、懐かしの「都市センターホール」でのライヴ録音。時は1973年、クロスオーバー・ジャズが台頭してきてはいたが、我が国ではまだまだ先進的なメインストリーム・ジャズがメイン。そんな環境の中、なかなか先進的でチャレンジブルな変則クインテットの演奏である。フロント管がトロンボーン2本。速いフレーズなど、大丈夫なのかと心配になる。
 
 
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が、このライヴ盤を聴けば、それが杞憂なのが良く判る。福村と向井のトロンボーンはテクニック優秀。速いフレーズも難なくこなしつつ、ゆっくりめの演奏も、伸びの良いトロンボーンの音が心地良く響く。適度に緊張感を保った、リラックス出来る吹奏は見事。そして、アレンジも行き届いていて、トロンボーン2本のユニゾン&ハーモニーが、ブルージーでファンキーでとても良い。

冒頭「Waltz for M」はゆったりとしたテンポの、トロンボーンならではの暖かな演奏。続く「Nancy」は印象的なバラード演奏。続く3曲目は「The Shadow of Your Smile(いそしぎ)」。しっとりとしたテーマから、ちょっとアブストラクトにエモーショナルに展開するトロンボーンは実にアーティスティック。そして、ラストの「Mother Some Place」は、ブラジリアン・フレーヴァーが横溢する活力あるブロウ。

バックを務める「田村-岡田-守」のリズム・セクションも目立たないが、味のある、かなり絶妙なサポートを供給している。トロンボーンの絶妙のアンサンブルとソロ・パフォーマンスがとにかく見事。トロンボーンで、これだけ躍動感溢れる活力あるパフォーマンスが展開されるなんて、このライヴ盤を初めて聴いた時「唖然とした」。ジャズ・トロンボーンの好盤です。
 
 
 

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2020年10月27日 (火曜日)

土岐のアルト・サックス絶好調

日本人によるジャズ(ここでは「和ジャズ」と呼ぶ)はレベルが高い。しかも歴史がある。戦後まもなく、1940年代後半からジャズが演奏され始め、1950年代には、ビ・バップをお手本としたジ日本人ャズ・ミュージシャンが出現する。今も第一線で活躍している秋吉敏子、渡辺貞夫などがそのメンバーである。

1960年代には、日本のレコード会社が日本ジャズ・ミュージシャンのリーダー作をリリースするようになり、1970年代後半には、フュージョンの大ブームに乗って、カシオペアやT-スクエアといった優れたグループが活動を始めた。1990年代の終わりから、女性中心に優れたジャズ・ミュージシャンが多数出現、以降、現在まで、和ジャズは高いレベルを維持している。

土岐英史『The Guitar Man』(写真左)。2020年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、土岐英史 (as), 竹田一彦 (g), 宮川 純 (org), 奥平真吾 (ds)。土岐のアルト・サックスと竹田のギターがフロントの、渋い渋いオルガン・カルテットである。オルガンがベースを兼ねるので、ベーシストはいない。最近、アルト・サックス奏者、土岐の活動が活発である。
 
 
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最近、和ジャズのアルバムと、ちょっと御無沙汰であった。御無沙汰している間に、好盤が山積みに。これはいかん、ということで、しばらく和ジャズがメインでジャズを聴き始めた。その聴き始めに出会った盤がこの『The Guitar Man』。日本アルト・サックス奏者のレジェンド、土岐が、これまた、日本のジャズ・ギタリストのレジェンド、竹田と組んだ好盤である。竹田一彦については、今年84歳である(!)。

宮川のオルガンの存在が、このカルテットをとってもジャジーな雰囲気に仕立てている。もともとこの盤、ブルース&バラード集なので、オルガンの音が実にジャジーに響く。但し、日本のジャズ・ミュージシャンが弾くオルガン、やはりファンクネスはかなり控えめ。しかし、ジャジーな雰囲気は濃厚。耳にも穏やかで、土岐のアルト・サックス、竹田のギターのフレーズがグッと浮き出てくる様な感じは、オルガン・ジャズならではの感覚だろう。

土岐のアルト・サックスは絶好調、竹田のギターは耽美的で、どこまでもジャジー。決して、米国ジャズっぽく無い。ファンクネスかなり控えめなパフォーマンスは「和ジャズ」ならでは。演奏レベルはとても高い。加えて、土岐と竹田の「歌心」がとてもキャッチャーで、聴いていて、しみじみ心に染み渡る。和ジャズでは珍しいオルガン・ジャズ。良い雰囲気のハードバップ・ライクな演奏で、知らず知らずのうちに、ヘビーローテーション化している。
  
 
 

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2020年10月19日 (月曜日)

TZB結成20周年記念ライブ盤

「結成20周年記念ライブ」の文字を見て、へ〜っ、東京ザヴィヌルバッハも結成20周年になるのか、と感慨深い思いがした。東京ザヴィヌルバッハは、キーボード奏者&コンポーザーの坪口昌恭のリーダーユニット。坪口=TZBO の頭文字に東京発、ジョーザヴィヌル、スイッチトオンバッハの意を込めて命名された、とのこと。ユニークである。

Tokyo Zawinul Bach・Reunion『20th Anniversary Live』(写真左)。2019年9月、東京・代官山の「晴れたら空に豆まいて」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、坪口昌恭 (key), 菊地成孔 (sax, rap), 五十嵐一生 (tp), 織原良次 (b), 守真人, 石若駿 (ds), 河波浩平 (vo)。いやはや、東京ザヴィヌルバッハの「オールスター・キャスト」である。

今回「リユニオン」と称し、盟友・菊地成孔と、初期に在籍した五十嵐一生が、2010年代以降、バンド編成に生まれ変わった「東京ザヴィヌルバッハ」に復帰、代表曲の数々を再演したライヴ盤。結成当初は、動変奏シーケンサーM を駆使したマン× マシーン・ランダム・コラージュ感で近未来ジャズのイメージだったが、2012年以降は若手メンバーを採用し、人系バンド編成に変更、ダイナミックなサウンド志向に変わった。
 
 
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このライブ盤は、2012年以降のバンド志向を踏襲したもの。菊地- 五十嵐- 坪口という強烈な個性のフロント・トライアングルが凄まじいインタープレイを展開する。エレクトロ・ジャズユニットの面目躍如的なスリリングな展開は、現代最高峰の「エレ・ジャズ」の1つと言って良い。特にエレ・ジャズ者には堪らんですな、この演奏。織原良次 (b), 守真人, 石若駿 (ds)のドラム隊も素晴らしい。

特にシンセの使い方が絶妙。日本発のエレ・ジャズとして最高峰のものじゃないかと思う。この音世界って、ウェザー・リポートや、チック・コリア・エレクトリック・バンドに比肩するじゃないかと思うのだ。和ジャズらしい、乾いたファンクネス、端正で整った切れ味の良いパフォーマンス。キャッチャーなメロディーと毒のあるメロディーの融合。思わずウットリと聴き込む。

最後の曲「Drive Inn High」は菊地のラップで、9.11をテーマにしたワードが語られ、メンバー紹介然としたソロまわしでエンディング。このエレ・ジャズのラップが「今様」で良い感じ。ジャズとラップは合いそうで合わないと思っているのだが、この曲はなんとか健闘している。現代の、我が国の「今」のエレ・ジャズ。かなり充実した内容。好ライヴ盤です。
 
 
 

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2020年10月14日 (水曜日)

TRI4THのメジャー3作目です

TRI4TH(トライフォース)は、日本の5人組ジャズバンド。ダイナミックなフュージョン系エレ・ジャズをメインとする。結成されたのが、2006年なので、今年で結成12年目になる。もう12年になるのか。日本のフュージョン・バンドと言えば「Casiopea」と「T-Square」の2バンドが大勢を占め、後が続かない状態だった。

が、この「TRI4TH」が出てきて、やっと次世代の日本のフュージョン・バンドが出てきたなあ、と嬉しくなったのを昨日のように覚えている。今では、2004年にバンド名を、固定しアルバムをリリースするなど定期的な活動を開始した「TRIX(トリックス)」とこの「TRI4TH(トライフォース)」が、日本のフュージョン・バンドの「次世代」を担っている。どっちも個人的に「お気に入り」なバンドである。

TRI4TH『Turn On The Light』(写真左)。今年10月のリリース。出来たてホヤホヤである。改めて、ちなみにパーソネルは、伊藤隆郎 (ds), 竹内大輔 (p), 藤田淳之介 (sax), 関谷友貴 (b), 織田祐亮 (tp)。メジャーでの3rd.盤になる。音的には「TRI4TH」のバンドとしての「音世界」がしっかりと確立された印象を受ける。オリジナリティーもあるし、フュージョン・ジャズとしての汎用性もあるし、「TRI4TH」としてのバンドサウンドがしっかりと固まった印象を受ける好盤である。
 
 
Turn-on-the-light-tri4th  
 
 
冒頭の「Move On」を聴けば、「TRI4TH」やな〜、と思わずニヤリとする。こういうダイナミックなフュージョン・ジャズ、大好きです。続く2曲目の「For The Loser」は、Kemuri Hornsとのコラボ。ホーンのアンサンブルが「TRI4TH」のダイナミズムと相まって、極上ダンサフルな「スカ」サウンドが心地良い。そして、3曲目の「The Light」至っては、SANABAGUN.のリベラルa.k.a岩間俊樹をフィーチャーし、フュージョン・ジャズとラップのコラボを実現。

冒頭の3曲でかなり「かまされる」のだが、4曲目の「Bring it on」以降は、充実した「TRI4TH」サウンドが展開される。面白いものとしては、6曲目の「Moanin'」。Art Blakey and the Jazz Messengersの名曲なんだが、最初はこのジャズ・メッセンジャースと同じ雰囲気、いわゆるファンキー・ジャズな演奏が繰り広げられ「あれれっ」と思うのだが、途中から、「TRI4TH」サウンドにアレンジされた「Moanin'」が展開される。ホッとするやら、ハッとするやら(笑)。

メジャー3作目ということで、ある意味、今作は3部作的な集大成な、これぞ「TRI4TH」的な内容になっている。現代の先端をいくフュージョン・ジャズな音作りは実に魅力的。テクニックも非常に高度で、一糸乱れぬアンサンブルは疾走感抜群。ボンヤリした頭の中を覚醒させるのに最適な「ながら聴き」ジャズ盤でもあります。ジックリ聴くも良し、ながら聴きで覚醒するも良し。とにかく格好良い、現代フュージョン・ジャズの好盤です。
 
 
 

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2020年10月13日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・86

この2〜3年になるかなあ、リアルタイムで聴いてきたジャズマンの逝去が相次ぐようになった。若い頃は自分よりも相当、歳の離れたレジェンド級のジャズマンが逝去していたので「ああ、ビル・エヴァンスが逝っちゃった」とか「ああ、マイルスが逝っちゃった」と途方に暮れていただけだったが、最近では、米国でも我が国でも、自分より5〜10歳程度しか離れていない、年上のジャズマンがどんどん鬼籍に入るのだから穏やかで無い。

僕の日本人ピアニストのお気に入りとして、佐山雅弘がいた。「いた」というのは、2018年11月14日、鬼籍に入ってしまったのだ。享年64歳。今の時代からすると早過ぎる逝去であった。ジャズマンとして64歳なんて、ベテランど真ん中、といった感じで、これからレジェンドの域に向かって深化していく年頃。ほんと早過ぎた。逝去の報に接した時には唖然としたのを覚えている。

M's『Standard Mind』(写真左)。「M's」は「マサちゃんズ」と読む。「M's」のサード・アルバム。2005年のリリース。ちなみにパーソネルは、佐山雅弘 (p), 小井政都志 (b), 大坂昌彦 (ds) 。ピアノ・トリオ編成。トリオを構成するメンバーの名前がそれぞれ「マサ」で始まるので「マサちゃんズ」である(笑)。M’s(マサチャンズ)feat.佐山雅弘 と表記される場合が多いみたい。
 
 
Standard-mind  
 
 
キャッチコピーの触れ込みは「佐山雅弘、小井政都志、大坂昌彦による新世代スーパー・ジャズ・トリオ」。佐山雅弘については、PONTA BOXのメンバー&ピアニストとして知った。どっぷり「純ジャズ」しない、クールでファンクネス希薄、ドライブ感溢れ、切れ味良く明快。和ジャズらしいピアノを弾く佐山は初めて聴いた瞬間から、お気に入りになった。

この盤ではタイトル通り、日本を代表するジャズマン3人が、ライヴ・ツアーでの演奏曲の中からリクエストの多かったスタンダード曲を中心に収録している。どの曲も結構「ど」のつくスタンダード曲なんだけど、今までに聴いたことのないアレンジ、そして、アドリブ・フレーズを駆使してので、マンネリに聴こえない。なかなかクールで聴き応えのある内容で、スタンダード曲のオンパレードなんだが、不思議と飽きが来ない。

僕は筋金入りの「チック者」なので「スペイン」の演奏がとりわけ印象深かったです。この盤がリリースされたのが、2005年。佐山雅弘がまだ51歳。まだまだベテランとは言え、ジャズ界ではまだまだ若い年頃で、そのピアノの弾きっぷりは爽快そのもの。リズム隊の小井政都志、大坂昌彦も素晴らしいサポート。なかなかのピアノ・トリオ盤。謹んで「ピアノ・トリオの代表的名盤」の一枚に加えさせていただきます。
 
 
 

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