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2018年9月18日 (火曜日)

唄う様なアルト・サックスを堪能

昨日から、Grover Washington, Jr.(グローバー・ワシントン・ジュニア、略して「ワシントン・ジュニア」)がブームである。昔から、彼独特のアルト・サックスのトーンと手数に走らない落ち着いたフレーズが好みで、もう一人のフュージョン・アルトの雄、デイヴィッド・サンボーンと併せて、僕にとっては「双璧の二人」である。

今日、聞いた「ワシントン・ジュニア」は、Grover Washington, Jr.『Strawberry Moon』(写真左)。1987年のリリース。B.B.キングがギターとボーカルで客演していたり、マーカス・ミラーが「Summer Nights」という曲をプロデュースしていたり、オルガンの雄、ジョーイ・デフランセスコがキーボードで参加していたり、今の目でパーソネルを見渡せば、意外に話題に事欠かないアルバムである。

1987年といえば、アルバムの録音環境は1970年代と大きく変わり、デジタル録音が主流となって、ほぼ定着した時期である。長年アナログ録音に慣れ親しんだジャズメンにとっては、このデジタル録音環境は難物で、音がペラペラになったり、音のエッジがケバケバになったり、中間音域が飛んで、とんでもないドンシャリになったりで大わらわ。しかし、この盤の音はデジタル臭がほとんどしない。良い録音である。
 

Strawberry_moon  

 
さて、この盤の音の傾向は一言で言うと「スムース・ジャズへの移行中」。アレンジは明らかにスムース・ジャズ基調なんだが、演奏はまだまだフュージョン風の音がメインで、フュージョン・ジャズをリアルタイムで聴いてきた僕にとっては違和感がほとんど無い。リズムも打ち込み風では無く、ちょっぴりアナルグ風の音がそこはかとなく伝わってきた、聴いていて「良い感じやなあ」と思わず呟いてしまうほど。

この頃のワシントン・ジュニアは『クワイエットストーム』+『ソウルジャズ』といった音作りで、この『ソウルジャズ』の雰囲気の部分が僕は好きだ。そんな『ソウルジャズ』な雰囲気を、テクニックに頼らず速い節回しも全くせず、手数に走らない落ち着いたフレーズでしっとりと吹き上げていく様はとても聴き応えがある。

タイトルが『Strawberry Moon』、もともとは「夕陽のよう赤みがかった満月、毎年6月の満月」のことですが、日本語に直訳すると「いちごの月」となんとなく甘ったるい感じがするんで、どうにも誤解されがちな盤ですが、内容的には、スムースな傾向が仄かに香るシッカリしたフュージョン・ジャズです。唄う様なアルト・サックスをご堪能あれ。

 
 

東日本大震災から7年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年9月17日 (月曜日)

ワシントン・ジュニア晩年の好盤

やっと涼しくなった千葉県北西部地方。今日はちょっと暑くて、真夏日になったみたいだが、朝と夜は、これは涼しくなったなあ、と感じるくらい涼しくなった。気温的にはまだ夏の終わりくらいで、9月中旬の気温としては高いんだが、今年の夏の暑さは半端なかったので、最高気温が30度を下回ったら「涼しくなったなあ」と感じてしまう。今年の酷暑に洗脳されたなあ(笑)。

涼しくなってきたので、やっとストレス無く、ジャズが聴ける様になったのは喜ばしいことである。特に、ビートの効いたクロスオーバー&フュージョン・ジャズが抵抗なく聴ける様になった。ということで、このところ、クロスオーバー&フュージョン・ジャズの隠れ好盤や有名レーベルのアルバムを聴き漁っている。

Grover Washington,Jr.『Soulful Strut』(写真左)。1996年のリリース。グローヴァー・ワシントン・ジュニアの晩年の好盤である。ワシントン・ジュニアは1999年に逝去してしまったので、この盤はその逝去3年前のリーダー盤になる。ワシントン・ジュニアは、フュージョン・ジャズのアルトの名手の一人。代表盤として『Winelight』がある。
 

Soulful_strut  

 
さて、この『Soulful Strut』という盤、1996年のリリースなので、一派一絡げに「スムース・ジャズ」の括りに含まれることが多いのだが、この盤、スムース・ジャズと言うが、テイストはフュージョン・ジャズ。リズム&ビートが確実にフュージョンしていて、決して「ムード優先」の音作りには走っていない。あくまで高テクニックを前提とした演奏がメイン、演奏の底にしっかりとジャズが潜んでいる。

ワシントン・ジュニアは「Just the Two of Us」(邦題:『クリスタルの恋人たち』)の大ヒットで、ムーディーなフュージョン・ジャズ、スムース・ジャズの先駆というイメージを植え付けられて損をしているが、彼のサックスは決してムーディー優先では無い。ジャジーでファンキーでアタックの効いた、結構、硬派なアルトを吹き鳴らしている。

そんな硬派なアルトが耳につかないのは、彼独特のアルト・サックスのトーンと手数に走らない落ち着いたフレーズが故。特に、テクニックはかなり高いものがあるのに、それに頼らず、印象的なフレーズを落ちついて吹き上げるところが実に心地良い。この盤はそんなワシントン・ジュニアのアルトを十分に堪能出来る。ジャケットも往年のフュージョン全盛期を想起させるイメージで、思わず頬が緩む。好盤です。

 
 

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2018年9月 4日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・128

現代の日本ジャズは完全な「女性上位」。女子ジャズ・ミュージシャンがどんどんデビューし、しかも、その力量は確かなもの。加えて、美形が多く、魅力的な女性ばかり。日本男子はどうしたのか、と思うのだが、如何せん少数派。一昔前は女性ジャズ・ミュージシャンはピアノが多かったのだが、今では様々な楽器に広がっている。

寺島さんのジャズ本を読んでいて、纐纈歩美(こうけつあゆみ)は良いぞ、良いぞ、とあっちこっちで書いていて、そんなに良いのか、と思いながら聴いたアルバムが『Daybreak』(ここをクリック)。彼女のセカンド盤である。この盤で、纐纈歩美のアルトは、ナベサダさんのフォロワーだと僕は解釈した。が、寺島さんは違う、と書く。正統なメインストリームなアルトだと書く。

で、それはどのアルバムを聴いてそう思ったのか、と調べてみたら、このアルバムだと見定めた。纐纈歩美『Struttin'』(写真左)。彼女のデビュー盤である。デビュー盤だったので軽く見ていた。セカンド盤がかなり良い出来だったので、彼女のポテンシャルを確認出来て、それで満足してしまったこともある。このデビュー盤には思いが及ばなかった。
 

Ayumi_kohketsu_struttin  

 
で、この『Struttin'』、纐纈(こうけつ)のアルト・サックスが躍動感溢れて、ブリリアントに響き渡る。運指のテクニックも申し分無く、ストレート・アヘッドなアルト・サックスが全編に渡って響き渡る。いや〜、これにはビックリした。とにかく、良い音してるんですよ、纐纈のアルト・サックスが。全編に渡って、とても気持ち良く聴き通すことが出来ます。

この盤のパーソネルは、纐纈歩美 (as), 納谷嘉彦 (p), 俵山昌之 (b), マーク・テイラー (ds)。納屋+俵山+テイラーのリズム・セクションも良好。しっかりと純ジャズ風のリズム&ビートを供給しています。速いテンポの曲もバラードも聴き応えのあるアレンジと演奏で、聴く我々を飽きさせません。アルトの雰囲気的には、誰かに似ているなあ、と思って聴いていたのですが、そうそう「アート・ペッパー」風ですね。テクニックと歌心、ペッパーのブロウを想起しました。

若手、新人、女性ジャズ・ミュージシャンという「色眼鏡」を取り去って、このアルバムだけ、ジャズ喫茶で流したら、結構な数のジャズ者の方々がジャケットを見に来るんじゃないですかね。それほど、この盤はコンテンポラリーな純ジャズとしてなかなかの好盤だと思います。決して、コマーシャルに留まらない、志の高いデビュー盤です。

 
 

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2018年8月25日 (土曜日)

硬派なワシントン・ジュニア盤

今年の夏は蒸し暑さ半端ない。もうバテバテである。こんな酷暑、あったかなあ、と思うんだが、しっかり振り返ると、僕達の大学時代にも相当暑い夏があったような記憶がある。ちょうどジャズを聴き始めて、2〜3年目。昔々、フュージョン・ジャズ全盛時代の夏に、酷暑に耐えながら聴き親しんだアルバムを幾枚か、聴き直してみた。

Grover Washington, Jr.『Skylarkin'』(写真左)。1980年のリリース。ちなみにメインのメンバーは、Grover Washington Jr. (sax, fl, syn), Richard Tee (ac-p, el-p), Eric Gale (g), Marcus Miller (b), Idris Muhammad (ds), Ralph MacDonald (perc)。ベースに若き日のマーカス・ミラーが入っている。ドラムのムハマドと合わせて、独特のリズム&ビートを供給しているところが面白い。

この『Skylarkin'』は人気盤『Winelight』前の盤で、ワシントン・ジュニアの盤の中では地味な存在なのだが、『Winelight』を遙かに凌ぐ、グルーヴ度は満点な盤である。この独特のグルーヴ感は、リチャード・ティーのピアノ、マーカス・ミラーのベース、イドリス・ムハマドのドラム、ラルフ・マクドナルドのパーカッションという、結構ユニークな組合せのリズム・セクションに依るところが大きい。
 

Skylarkin  

 
ワシントン・ジュニアお得意のソフト&メロウな雰囲気のサックス・プレイの中に、ビターでハードなブロウもあって、意外と内容的に硬派なフュージョン盤に仕上がっている。ソフト&メロウなムードに流されない、メインストリーム・ジャズの雰囲気を残した、硬派なジャズの雰囲気が見え隠れするところが僕は気に入っている。聴いていても、なんだか背筋がピンと伸びる感じ。

リズム&ビートも実に個性的。少なくとも、ソフト&メロウの基調とする「甘い」リズム&ビートでは無い。若き日のマーカスの元気溢れるチョッパー、ラルフの躍動感溢れるカウベル。ファンクネス濃厚なティーのエレピ。そこに、ムハマドのアーシーなドラムが絡んで、通常のフュージョン・ジャズとはちょっと異なる、独特のグルーヴ感を持ったリズム&ビートが聴きもの。エリック・ゲイルのギターも良いアクセントとなっています。

この盤、コンテンポラリーな純ジャズな雰囲気を持った、硬派なフュージョン盤として、聴き応えのあるものです。水彩画の様なジャケットが、どうしても甘々なソフト&メロウなフュージョン盤というイメージを醸し出していて、ちょっと損をしている盤ですが、このジャケット・デザインに騙されることなかれ。ワシントン・ジュニアのリーダー作と聞いて、甘々なソフト&メロウなフュージョンを想起して敬遠するには勿体無い、隠れ好盤だと思います。

 
 

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2018年7月25日 (水曜日)

猛暑には「端正なハードバップ」

湿度が高いのは相変わらずだが、今日はちょっとだけ涼しくなったようだ。太平洋上の発生した台風の影響なのか、東風が吹き抜けるようになった。ここ千葉県北西部地方は、この季節、東風が吹くと涼しくなる。しかし、グッと涼しくはならない。今年の暑さは「半端ない」ので、恐らく、広範囲に空気が暖まっているようだ。

これだけ湿度が高くて暑い夏になると、ジャズを聴くのも辛くなってくる。いきおいアルバムを選ぶことになるのだが、意外とオーソドックスな、趣味が良く聴き易いハードバップ盤が良い塩梅だということに気がついた。そもそも、涼を呼ぶジャズなんて有るわけが無い。基本的にジャズはリズム&ビートが命なので、どうしても熱気をはらむ様になる。

『Art Farmer Quintet Featuring Gigi Gryce』(写真左)。PRLP 7017番。1955年10月21日の録音。ハードバップ期のど真ん中。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Gigi Gryce (as), Duke Jordan (p), Addison Farmer (b), Philly Joe Jones (ds)。魅力的なパーソネル。クインテット構成である。これがまあ、絵に描いた様なハードバップな演奏で、フロントの2管、アート・ファーマーのトランペット、ジジ・グライスのアルト・サックスのユニゾン&ハーモニーが、ほんと、典型的なハードバップの響きなのだ。
 

Art_farmer_quintet_featuring_gigi_g  

 
切れ味良く、音のエッジがちょっと丸まったファーマーのトランペットが実に耳当たりが良い。グライスのアルトは吹き過ぎず、適度にウォームで、これまた実に耳当たりが良い。このフロント2管の音が実に耳に優しく、感性に適度な刺激を与えてくれる。バックのリズム・セクションも良い音を出している。ブルージーな哀愁のピアニスト、デューク・ジョーダンが良い音を出している。

適度にブルージーでアーバンなピアノは、どこか清々しさを感じる。スッキリしたタッチの良い音で、破綻の無いバッキングは聴いていてスッとする。ダイナミックでメリハリの良いドラミングは、フィリージョー。適度に「ビート」という刺激を供給してくれる。鮮度の良いドラミング。そして、ベースのアディソン・ファーマーは、リーダーのトランペッター、アート・ファーマーの双子の兄弟。堅実なベースは演奏の屋台骨を支える。安心感を感じる安定のベースライン。

典型的なハードバップな演奏、しかも、破綻無く端正な展開は、苛つくことの無い、安定の音世界を供給してくれる。端正でメリハリの効いたハードバップな演奏はどこか涼を感じ、一時、今年の猛暑を忘れさせてくれる。やはり、猛暑にはオーソドックスな、趣味が良く聴き易いハードバップ盤が良い。ちなみに、アディソンは、この盤の録音の8年後、1963年2月、SADS(突然不整脈死症候群)にて逝去。享年34歳であった。

 
 

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2018年6月27日 (水曜日)

明かにクロスオーバー・ジャズ

1970年代後半から80年代前半、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズについては「キワモノ」扱いであったが故、情報不足からリリースされた重要作を見過ごし、正しく評価出来なかった時代が続いた。というか、レコード会社が売れそうな盤はリリースするが、そうでもなさそうな盤は無視。それも個人的な感覚で「売れる、売れない」を判断していたのだから困る。

Tom Scott & L.A.Express『Tom Cat』(写真左)。1975年のリリース。ちなみにパーソネルは、Tom Scott (sax), Robben Ford (g), Max Bennett (b), John Guerin (ds), Larry Nash (key)。このグループの存在は知っていたが、このアルバムを手にして、音を聴くことが出来たのは、21世紀に入ってからだ。AmazonとかHMVで外盤がネットで容易に入手出来る様になってからである。

トム・スコットのサックスはスムース・ジャズとして聴いたのが始めて。このL.A.Express名義で、クロスオーバー・ジャズど真ん中の、エモーショナルでハイテンションなサックスを吹いていたなんて知らなかった。このL.A.Expressでのトム・スコットのサックスは凄い。テクニック優秀、エモーショナルではあるが破綻することは無い。活き活きとポジティヴに明るいサックスを吹きまくる。
 

Tom_cat  

 
ベースのマックス・ベネットは、ノリノリのファンキー・ジャズ。こってこてファンキーではあるが、決して下品にはならない。典雅に小粋にファンクネスを振り撒きながら、堅実なベースラインを刻んでいく。そこに、疾走感溢れる、端正でノリの良い、ョン・ゲランのドラムがビートの底を支える。鉄壁のクロスオーバーなリズム・セクション。

ラリー・ナッシュのキーボードがお洒落だ。特にアープ・シンセの使い方が小粋で格好良い。純ジャズでは無い、と言ってロックでも無い。ジャジーなノリではあるが、ロックの様に明朗なシンセのフレーズが今の耳にも新しい。そして、ロベン・フォードのギターが明らかに「クロスオーバー」。ノリの良い、ロックの様であるが、フレーズの底は明らかにジャジー。8ビートではあるが、きめ細かくスインギー。

それぞれの楽器が明らかに「クロスオーバー・ジャズ」していて、ノリはジャジー。後のフュージョン・ジャズとはちょっと違う、明かにクロスオーバー・ジャズな演奏に、何度聴いてワクワクする。疾走感溢れる、明朗ファンキーなクロスオーバー・ジャズは他にありそうで無い。さすが米国西海岸。クロスオーバー・ジャズをしても、明らかに「西海岸」の音が眩しい。

 
 

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2018年2月22日 (木曜日)

奥の深いレーベル「Impulse!」

「Impulse!レーベル」で何を連想する? と問われれば、やはり、中期〜後期〜逝去までのコルトレーンと、そのコルトレーンに影響を受けたフリー・ジャズのアルバムが真っ先に浮かぶ。いわゆる、当時として先進的で硬派なジャズをリリースしていたレーベルというイメージがある。が、カタログを見渡すと、そうでは無いことが良く判る。

結構、オールド・スタイルな純ジャズのアルバムをリリースしている。例えば、このアルバムなんかは、ちょうどその良い例かと思う。Benny Carter and His Orchestra『Further Definitions』(写真左)。1961年のリリース。ちなみにパーソネルは、Benny Carter (as), Phil Woods (as), Coleman Hawkins (ts), Charlie Rouse (ts), John Collins (g), Dick Katz (p), Jimmy Garrison (b), Jo Jones (ds)。

アルト2本、テナー2本の4管フロントに、ギター+ピアノ+ベース+ドラムのリズム・セクション、計8人の八重奏団構成。冒頭の「Honeysuckle Rose」を聴けば良く判るが、スイング時代の雰囲気がプンプンする、ビッグバンド・アレンジ。それをバックにベニー・カーターのアルトが気持ち良くアドリブ・フレーズを吹き上げる。
 

Further_defenitions_1

 
カーターは、さすが、スイング時代から第一線で活躍しているアルト奏者である。流麗、そして、エモーショナル、とってもアルトがよく鳴るブロウである。決して、先進的なアルトでは無い。逆に安定・安心のアルトである。純ジャズのアルト・サックスって、まずは、この基本に忠実な、堅実確実なアルトであるべきで、この盤のカーターはそのお手本。

1961年の作品でありながら、ハードバップでは無い。スイング時代のビッグバンドな音。それでも、さすがは「Impulse!レーベル」、快適なエコー、厚みと奥行きのある切れ味の良い録音で、とにかく音が良い。この音を聴けば、このビッグバンドな音は、決して1940年代の音では無い、1961年の新しい音だと感じる。

「Impulse!レーベル」って、こういうオールド・スタイルな純ジャズなアルバムもあるんですね。この盤のプロデュースは「ボブ・シール(Bob Thiele)」なので、恐らく、シールが仕掛け人なのかもしれない。ちょっと調べてみる必要がありそうですね。こうやって振り返って聴き返してみると、「Impulse!レーベル」って、奥の深いレーベルです。

 
 

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2018年2月15日 (木曜日)

SteepleChaseの成せる技

SteepleChaseレーベルとは。マイルス・コレクターとして有名なデンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベル。1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。このレーベルは欧州のレーベルとしては、比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。

さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫である。このSteepleChaseレーベルのアルバムを、ある程度、カタログ番号順に確保できたので、順番に聴き始めている。デンマークのコペンハーゲンにある、ライブハウス・モンマルトルをホームグラウンドにしたライブ音源が貴重。1970年代の欧州ハードバップの状況がとても良く判る。

Jackie Mclean『A Ghetto Lullaby』(写真左)。1973年7月18〜19日、デンマークはコペンハーゲン、ライブハウス・モンマルトルでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Kenny Drew (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Alex Riel (ds)。マクリーンのアルト一本、ワンホーン・カルテット編成である。
 

A_ghetto_lullaby_1  

 
SteepleChaseレーベルのライブ録音は、モンマルトルでの一発録りがほとんどで、このモンマルトル、音的にデッドで意外に音が良い。素直でナチュラルな音という感じ。音の分離が良く、ジャズの様な小編成の楽器演奏に向いている。そして、この一発録りのライブ音源をほとんど加工すること無く、アルバムにしているようで、これがとても良い。所謂、当時のライブ演奏そのままをアルバムにしている感じなのだ。

このマクリーンのライブ盤も、ライブ録音そのままの感じで、何の細工も加工も無い感じ、これが良い。1970年代、ジャズはクロスオーバー〜フュージョンの時代で、米国本国では純ジャズが角に追いやられている感じだったが、欧州では、純ジャズがメインだった、そんな当時の状況が、このマクリーンの熱いブロウを聴いていて良く判る。

ドリューのピアノはエモーショナルで典雅、ペデルセンのベースは骨太で躍動感抜群。リールのドラムは堅実。そんなリズム・セクションをバックに、マクリーンは自由度の高いブロウを思う存分繰り広げている。モンマルトルの聴衆の雰囲気も上々。何の装飾も無いライブ盤なんだが、結構、聴き応えのあるところが、さすがは、SteepleChaseレーベルの成せる技である。

 
 

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2018年1月22日 (月曜日)

「温故知新」なビ・バップ

雑誌「ジャズライフ」のディスク・グランプリ、「2017年度ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」が発表された。この「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」って実に重宝で、これが前年のジャズを振り返る良いチャンスで、毎年毎年、雑誌に挙がっているアルバムを順番に聴き直すのだ。これで、前年のジャズのトレンドがまとめて体感出来る。

渡辺貞夫『Re-Bop』(写真左)。昨年2017年のリリース。ナベサダさんが、自身のルーツであるビ・バップをテーマにした、5年ぶりの純ジャズ盤。ちなみにパーソネルは、Sadao Watanabe (as), Cyrus Chestnut (p), Christopher Thomas (b), Brian Blade (ds)。う〜ん、むっちゃ魅力的な、むっちゃ説得力のある人選である。

この盤を聴いてみると良く判るんだが、ナベサダさんのこの盤、メインストリームな純ジャズな内容なんだけど、リズム・セクションの演奏が、とっても「最新式」なのだ。特に、ドラムに、ブライアン・ブレイドを採用しているところが「ニクい」。唄うが如く、ブレイドのビートが明らかに「最新式」なのだ。そこに、安定安心のクリストファー・トーマスのベースが追従する。
 

Rebop

 
この「最新式」のリズム&ビートをバックに、ナベサダさんが「ビ・バップ」なアルトをガンガンに吹き上げていくのだ。最新式の純ジャズのビートに乗った「ビ・バップ」。聴いていて「温故知新」という故事成語を思い出した。正に「故きを温ねて、新しきを知る」演奏内容に感心することしきり。ナベサダさんは、決して「懐古趣味」には走らない。ナベサダさんのアドリブ・フレーズは「新しい」響きに満ちている。

そして、このナベサダさんの「温故知新」なビ・バップに、しっかりと寄り添うように、現代の「ビ・バップ」フレーズを繰り出すサイラス・チェスナットのピアノが、これまた「ニクい」。このチェスナットのピアノも「古くない」。ビ・バップしているんだが「古くない」。このチェスナットの「温故知新」なビ・バップ・ピアノも聴きものだ。ナベサダさんの伴奏に回ったチェスナットのピアノは絶品である。

この盤の触れ込みであった「自身のルーツであるビ・バップをテーマにした純ジャズ盤」を初めて目にした時、いよいよ昔の「ビ・バップ」の音世界の再現に行き着くのか、と感じたのだが、申し訳ありませんでした。昔の「ビ・バップ」の音世界の再現など、とんでもない。旧来のビ・バップの焼き直しでは無い、正に現代の最新式のビ・バップがここにある。聴き応えのある好盤です。

 
 

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2017年11月26日 (日曜日)

「ハッピーな演奏」が実に良い

ジャズはコンスタントに新作をリリースし続けている。我が国では、ジャズはマイナーな音楽ジャンルと言われて久しい。しかも難解な音楽で苦手だ、聴く気にならない、という人が多い。それなのに我が国でも、なぜ一定数、毎月毎月、コンスタントに新作がリリースされ続けているのか。不思議と言えば不思議である。

ジャズは年齢がいけばいくほど、奥が深く渋みが出て、味わいの深いものになる。これは演奏する方も聴く方も同じで、ジャズにおいては、ベテランの役割は重要である。60歳以上のベテランの新作も、かなりの割合でリリースされ続けている。これは実に喜ばしいことである。ベテランのプレイは滋味に富んでいる。聴き心地が良く、聴き応えがあるものが大多数である。

Vincent Herring『Hard Times』(写真左)。先月の下旬のリリース。ちなみにパーソネルは、Vincent Herring (as, ss), Cyrus Chestnut (p, fender rhodes), Yasushi Nakamura (b), Carl Allen (ds)。special guests : Nicolas Bearde (vo), Russell Malone (g), Steve Turre (tb), Brad Mason (tp), Sam Dillon (ts)。サイラス・チェスナットのピアノをベースにしたリズム・セクションに、ヴィンセント・ハーリングのサックスのワンホーン・カルテットがメイン。
 

Vincent_herring_hard_times

 
現代ジャズ・アルトのレジェンド、ハーリングが溌剌としたプレイを繰り広げている。バックは、長年の盟友、チェスナットのピアノ・トリオ。これがまた、実に具合が良い。極上のハードバップ演奏が実に心地良い。この盤の演奏を聴いていると、難しい理屈などいらないよ、と言われているみたいな「ハッピーな演奏」が実に良い。

「音楽は常に私にとってポジティブなものでした。音楽によって私はいつも気分を持ち直すことができたのです」とはハーリングの弁。よって「少なくとも1時間くらいは、現代生活の混乱を和らげられるような作品にしたい、と願って制作」された、とのこと。良い話である。確かに、この作品は「ハッピーな内容」で埋め尽くされている。

聴いていて、心から「ジャズって良いなあ」と思える、素敵な盤である。ネオ・ハードバップの良いところがギッシリと詰まっている。こういう盤が、今、この時代にリリースされることを頼もしく思う。ジャズを聴いてきてよかったなあ、と思える瞬間である。

 
 

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