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2017年4月20日 (木曜日)

80年代サンボーンの代表盤

フュージョン・ジャズの雄、アルト・サックスの代表格、デイヴィッド・サンボーンの聴き直しを続けている。前回は1988年の『Close-Up』をご紹介したのだが、順番として、このアルバムを忘れていた。面目ない。

David Sanborn『A Change of Heart』(写真左)。1987年の作品。ど派手なジャケットに度肝を抜かれる。サンボーンの素晴らしさを知らない人は、このジャケット、手にするにはかなりの勇気がいる。もうちょっと何とかならなかったのかなあ。さすがに1980年代、バブリーな時代のデザイン感覚を再認識する。

しかし、内容的には、良きにつけ悪きにつけ、1980年代のサンボーンを代表する内容に仕上がっているのではなかろうか。全編に渡って、マーカス・ミラーの硬質に弾けるエレベとハイラム・ブロックのねちっこいエレギをバックに、それはそれは気持ち良さそうにアルトを吹き上げるデヴィット・サンボーン。
 

A_change_of_heart

 
この盤、サンボーンのアルトがとっても良い音で鳴っている。ど派手なアレンジ。メタリックな輝きに満ちたブロウ。もともとサンボーンは懐の深いミュージシャンではあるんだが、この盤の内容を見渡すと、ダンスナンバーあり、ハードナンバーあり、泣きのバラードあり、とバラエティーに富んだ内容がとても楽しい。

しかし、そんなバラエティーに富んだ演奏内容なんだけど、サンボーンのソウル&ファンキーでメタリックな輝きに満ちたブロウは終始一貫している。これが素晴らしい。1980年代のサンボーンをアルトの「これ一枚」を選べと言われたら、この『A Change of Heart』を挙げるかな。それほど、この盤でのサンボーンのアルトは輝きに満ちている。

1980年代の音なので、はしたないほどにデジタルっぽい音だし、リズムは明らかに打ち込み中心で人工的。こういう面では1980年代のサンボーン盤はあまり好んで聴くことは少ないのだが、この盤については、1980年代のサンボーンのアルトを確認したい時、必ず手にする盤ではあります。サンボーン者にとっては好盤です。

 
 

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2017年3月24日 (金曜日)

キャンディドらしい音・5

キャンディド・レーベルには「よくぞ録音してくれた」的なマニア盤も存在する。何故かなかなか録音の機会に恵まれない優秀なジャズメンや、そもそも録音の機会が少ないユニークなジャズメンにスポットを当てて、しっかりと録音している。プロデューサーのナット・ヘントフの功績であろう。

例えばこのアルバム、『The Toshiko-Mariano Quartet』(写真左)。1960年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Toshiko Akiyoshi (p), Charlie Mariano (as), Eddie Marshall (ds), Gene Cherico (b)。我らが日本人ピアニスト穐吉敏子と、当時、夫婦の間柄であった、アルトサックス奏者チャーリー・マリアーノとの共同リーダー作である。

内容的には新しい響きを宿しているハードバップである。マリアーノのアルトは硬質でテクニカル。フレーズは幾何学的でクール。モードでは無いのだが、響き的にはモーダルな雰囲気が漂っている。これが意外に新しい。ユニーク。ジャズ・アルトと言えばパーカーが絶対だが、このマリアーノのアルトは、パーカーの影響下から少し距離を置いている。
 

Toshikomariano_quartet

 
穐吉敏子のピアノも新しい響きを宿していて聴き応えがある。もともと穐吉のピアノは、筋金入りのビ・バップなピアノ。明らかにパウエル派のバップ・ピアノなんだが、この盤での穐吉のピアノは、そんなバップ・ピアノな雰囲気に加えて、モーダルなフレーズが見え隠れする。加えて、テクニックが凄い。高速なアドリブ・フレーズが凄い。

5曲目の「Long Yellow Road」が特に素晴らしい。そこはかと漂う愁い。音の「間」とマイナーな余韻。激しさと静謐さが入り交じり、何処か狂おしさもある、何処か侘しさもある。演奏全体を覆う「侘び寂び」、アドリブ・フレーズに忍ぶ「いとおかし」の空気。これぞ「日本人の創るジャズ」の好例。

これだけ、内容的に優れた演奏を繰り広げる「Toshiko-Mariano Quartet」ではあるが、あまり録音の機会は多く無かった。そういう面では、このキャンディド・レーベルでの録音は貴重なものであることは疑いない。キャンディドらしく、録音も良好。もっともっと聴かれても良い好盤だと思います。

 
 

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2017年2月19日 (日曜日)

ECMレーベルらしい音・2

ECMレーベル。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」が個性。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音が特徴。いつの時代にも、明らかに米国のジャズとは異なる、常にコンテンポラリーな純ジャズを提供してくれる。

そんなECMレーベルの「らしい」音を体験するには、やはり最初のシリーズ、ECM1000番台のアルバムを聴き進めるのが一番手っ取り早い。ということで、このところ、ECM1000番台の聴き直しを進めている。

Robin Kenyatta『Girl from Martinique』(写真左)。ECM1008番。1970年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Robin Kenyatta (fl, as, per), Wolfgang Dauner (p), Arild Andersen (b), Fred Braceful (ds)。プロデュースはManfred Eicher。

このアルバム、CD時代になって、なかなかリイシューされなかった。最近は音楽サイトからダウンロードできるので、やっとこのアルバムの音源にも触れやすくなった。喜ばしいことである。プロデュースはアイヒャーなので、純正ECMのアルバムと言える。
 

Girl_from_martinique

 
自由度の高い、半フリーな内容ではあるが、モーダルな純ジャズな演奏の部分もあって、今の耳には、あまりフリー・ジャズなアルバムには聴こえない。自由度の高いコンテンポラリーな純ジャズといった内容で、意外と聴き応えがある。

ケニヤッタのフルートとアルトは、雰囲気的に「エリック・ドルフィー」に近いものがある。浮遊する部分有り、ビートにしっかり乗った部分有りで、当時のコンテンポラリーな純ジャズの最先端をいく雰囲気。聴いていて懐かしい思いを感じたり、意外と今の耳にも耐える演奏に感心したり。

この「あまりフリー・ジャズなアルバムには聴こえない、自由度の高いコンテンポラリーな純ジャズといった内容」が、ECMレーベルらしい音のメインのひとつになっていく。硬派で尖った内容ではあるが聴き易い。後年のECMレーベルの人気盤に共通する音である。

録音もトン・スタジオでの録音で、限りなく静謐で豊かなエコーがかかった、独特の音で録音されていて、じっくり聴いていると、やはり「これはECMやなあ」なんて呟いて感心したりする。ジャケットはイマイチですが、意外と聴き応えのあるECM初期の一枚です。

 
 

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2017年2月16日 (木曜日)

日本人好みのジャズのレーベル

日本人好みのジャズというものがある。スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。そして、ウッドベースがブンブン唸り、ドラムが小粋にリズム&ビートを刻む。ピアノは限りなく印象的なエコーがかかって豊かに響く。そして、テクニックに優れていなければならない。曲はスタンダードがメイン。そんなジャズが日本人は好き、という通説がある。

僕は全くそういう傾向は無いんだけれど、やっぱり、日本人好みのジャズって、そういう印象になるのかな。そんな日本人好みのジャズの雰囲気を一手に引き受けている日本発のジャズ・レーベルがある。Venus Records(ヴィーナス・レコード)である。演出過剰なほどに、スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。録音は優秀、演奏のテクニックも優秀。音の傾向は「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」。

Aaron Heick and Romantic Jazz Trio『Europe(哀愁のヨーロッパ)』(写真左)。この盤は、そんなヴィーナス・レコードの音を代表する音がてんこ盛り。宣伝キャッチには「現代人に究極のセクシャル・ヒーリングの癒しを与えてくれる必聴のアルバム」とある。セクシーで耽美的な音作り、スムース・ジャズ志向の癒やしの響き。
 

Aaron_heick_europe1

 
タイトル曲である冒頭の「Europe」からして、明確にヴィーナス・レコード志向の音。この曲、サンタナの1976年の名バラード曲。ヴィーナス・レコードの盤って、こういう日本人のおじさま好みの曲が必ず一曲は入っている。1970年代ロックのバラード曲で、日本で売れに売れたサンタナの名曲。アレンジはまずまず。思わず懐かしさがこみ上げる。

他の楽曲も「スタンダード曲」が中心で、どの演奏もスインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。果たして、この演奏がリーダーを始めとするジャズメン達の本意なのか、と思ってしまうが、兎にも角にも、オーバープロデュース気味の、明らかに「作られた」ジャズの音である。つまりは「日本人好みのジャズ」を増幅した様な音作りである。

ここまで増幅した音作りになれば、極端に「賛否両論」になる。好きな人もいれば、大嫌いという人もいる。それでも、このヴィーナス・レコードの音は、「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」と解釈すれば合点がいき、納得感も増す。そういう観点で聴き耳を立てれば、ヴィーナス・レコードの諸作も意外と、ジャズとして「アリ」ということになる。

 
 

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2017年1月 6日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・74

ジャズのアルバムの世界を彷徨っていると「あれ、これは何だ」と叫んでしまう様なアルバムにヒョコッと出会うことがある。このアルバムもそんなアルバム。見た時、思わず「おおっ」と叫んでしまった。

Delta Saxophone Quartet『Crimson ! 』(写真左)。これだけ見れば、なんのアルバムか、判らないよな。でも「Crimson」という文字を見て、プログレバンドの「キング・クリムゾン」を想起した僕はちょっと「プログレ」ヺタクなんだろうか(笑)。

まさかねえ、と思いながら、収録曲を見れば「おおっ」。やっぱり、これ、キング・クリムゾンの楽曲のカヴァー盤なのだ。うわ〜、こんなアルバムあったんや〜。いやいや、プログレッシブ・ロックの雄、現役のレジェンド「キング・クリムゾン」の楽曲が、ジャズにアレンジされ、カヴァーされる時代になったんですね。

Delta Saxophone Quartetとは。サックス奏者4人を中心に1984年に結成。4人のメンバー構成は、 Graeme Blevins (soprano sax), Pete Whyman (alto sax), Tim Holmes (tenor sax), Chris Caldwell (baritone sax)。今回のアルバムは、このサックス4人組に、Gwilym Simcock (piano)が加わる。

しかし、キング・クリムゾンの楽曲がジャズでカヴァーされるとは思わなかった。しかし、収録曲を見渡せば、キング・クリムゾンの楽曲の中でも、ジャズのアレンジにフィットする楽曲をしっかりと選んでいることが判る。そんな収録曲は以下の通り。
 

Crimson

 
 
1. A Kind of Red (Gwilym Simcock)
2. VROOOM/Coda: Marine 475 from THRAK
3. The Night Watch from Starless And Bible Black,
4. Dinosaur from THRAK
5. Two Hands from Beat
6. The Great Deceiver from Starless And Bible Black

 
1曲目の「A Kind of Red」だけが、Gwilym Simcockの自作曲。その他はキング・クリムゾンのオリジナル。1995年の「THRAK」から2曲、1974年の「Starless And Bible Black」から2曲。1982年の「Beat」から1曲。実に良い曲を選んでいる。かつ、確かにジャズにアレンジし易い曲ばかりだ。

特に僕は、3曲目の「The Night Watch」が一番だ。というか、キング・クリムゾンのオリジナルの「The Night Watch」が大好きなので、もうこのジャズ・アレンジのこの曲が、もう良くて良くて(笑)。他の曲も良い塩梅。サックス4本のアンサンブルで、キング・クリムゾンの楽曲をジャズにアレンジして演奏する。これが全く良くて良くて(笑)。

演奏のスタイルが、所謂21世紀のニュー・ジャズ風だからこそ、キング・クリムゾンの楽曲がフィットする。フリーよりの演奏から、モーダルな演奏まで、ジャズの先端をいく演奏内容がとても格好良い。それにしても、この盤には参った。キング・クリムゾンの楽曲のカヴァー盤。いや〜まさに「こんなアルバムあったんや〜」。

 
 

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2017年1月 4日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・97

2017年になりました。明けましておめでとうございます。今年もバーチャル音楽喫茶『松和』をよろしくお願いします。

今回は初めて、年末から年始にかけてブログをお休みしました。年末は30日から年始は3日まで、生産的なことは何もせず、ノンビリと過ごしました。音楽もあんまりガツガツ聴くことをせず、聴きたいなあ、と思ったアルバムを幾つか、ノンビリ聴いただけ。

そんな中に、久し振りに聴いたアルバムがあった。これが聴く度に「ジャズ」を強烈に感じるアルバムで、時ある毎に聴いていた時期があった。スイング感、アドリブの流麗さ、ブロウの迫力、ブラスの響き、ユニゾン&ハーモニー、どれをとっても「ジャズやな〜」と強烈に感じることが出来るアルバムである。

Duke Ellington & Johnny Hodges『Back To Back (Duke Ellington And Johnny Hodges Play The Blues)』 (写真左)。

あのデューク・エリントン楽団の総帥とその主要メンバーで「モダン・ジャズ」を演る、「ハードバップ」を演る、という小粋な企画盤である。1959年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Johnny Hodges (as), Harry "Sweets" Edison (tp), Les Spann (g), Al Hall (b, tracks 1 and 4), Sam Jones (b, tracks 2, 3, 5, 6, 7), Jo Jones (ds)。
 

Back_to_back

 
冒頭の「Wabash Blues」を聴くだけで、思いっきりジャズを感じることが出来る。特に、ジョニー・ホッジスのアルトの吹き上げの音がたまらない。この音が「モダン・ジャズ」である。そして、ハリー・エディソンのトランペット。このトランペットの音も良い。バイタルでブラスの響きが芳しいトランペット。「ああ、ジャズやなあ」としみじみ思ってしまう。

デューク・エリントンのピアノも良い。ガーンゴーンと出しゃばることが決して無い、趣味の良い小粋なバッキング。右手のパランポロンと単音の響きが美しい。そこに、寄り添うようにポーンと入ってくる左手。この音を聴けば、これってデュークか、と何と無く判る、それほど個性的なピアノ。さすがである。

フロントを鼓舞し支える、モダンなリズム&ビートを供給するジョー・ジョーンズのドラムも聴き物だ。そうそう、アル・ホールとサム・ジョーンズで分担するベースも堅実。そして、このアルバムにリズムの彩りを添えてくれるのが、レス・スパンのギター。スバンのリズム・ギターが、このアルバムのリズム&ビートを色彩豊かにしている。

ジャズの雰囲気、ジャズの楽しさ、ジャズの魅力をストレートに伝えてくれる好盤である。アルバム全体に蔓延するブルースの響き。聴いていて気持ち良く心地良い。こういうアルバムから新年をスタートする。粋である。

 
 

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2016年11月26日 (土曜日)

ながら聴きのジャズも良い・12

子供の頃から「ながら聴き」が好きだった。特に、中学時代にカセットテレコを買って貰って以来、家で勉強するにも読書をするにも、必ずBGMで音楽が流れていた。今でも「ながら聴き」が好きで、特にフュージョン・ジャズや70年代ロックが良い。

そんな「ながら聴き」、今週は久し振りにこんなアルバムを引きずり出した。Paul Desmond『Summertime』(写真左)。1969年のリリース。フュージョン・ジャズの先駆け、クロスオーバー・ジャズの老舗A&M/CTIレーベルからのリリースである。

もちろん、プロデューサーはCreed Taylor。バックを支えるミュージシャンの中には、若き日のハービー・ハンコックやヴァイブにマイク・マイニエリ、アレンジにドン・セベスキーが名を連ねている。

クリード・テイラー監修のクロスオーバー・ジャズものは「ながら聴き」によく合うものが多い。ジャズをベースに「イージーリスニング」風のアレンジを施した演奏は「聴き易さ」を優先したもの。演奏に対峙して聴き込むにはちょっと物足りない感じだが、演奏自体の内容は濃い。ジャズメンとして一流どころが演奏を担当しているので、基本的にテクニックが高く歌心もある。

そこが良い。そこが「ながら聴き」最適なのだ。チープな演奏だと「ながら」の傍ら、耳がイライラしてきて「ながら」どころでは無くなる。「ながら聴き」に必須の要素は、テクニックと歌心に裏打ちされた「高度な演奏」と「聴き易さ」なのだ。
 

Paul_desmond_summertime

 
そういう観点から聴くと、このPaul Desmond『Summertime』は「合格点」。リーダーのアルト・サックス奏者のポール・デスモンドのテクニックは高い。しかも、柔らかであるが芯に力強さを秘めた流麗なアルト・サックス。奏でる演奏内容は「イージーリスニング」風のアレンジを施したクロスオーバー・ジャズ。「聴き易さ」満点である。

さて、このアルバム、サンバあり、ビートルズのカバーあり、バリバリのジャズ・スタンダード曲あり、と収録された楽曲はごった煮なんだが、不思議な統一感で満たされてる。なんでやろ、と考えたら、ポール・デスモンドのアルトの音にあると感じた。ごった煮のそれぞれの曲の中で、デスモンドのアルト・サックスだけが一本筋が通っている。

そもそも、テクニック満点、歌心も満点、柔らかであるが芯に力強さを秘めた流麗なアルト・サックスである。このデスモンドのアルト・サックスをふんだんに愛でることがアルバムである。さすがはデスモンド、純ジャズだろうが、クロスオーバー・ジャズだろうが、イージーリスニング風のアレンジだろうが、そんなことでは「ぶれ」はしない。

そんなデスモンドのアルト・サックスの統一感が聴きもののこのアルバム。そういう意味で「ながら聴き」にも最適です。内容的にも、実に「A&M/CTIレーベル」らしい内容で、クロスオーバー・ジャズの好盤の一枚としてもお勧めです。

 
 

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2016年10月 6日 (木曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・41

日本ではこのサックス奏者は印象が薄い。印象が薄いというか、人気が低い。そのサックス奏者とは「ジジ・グライス(Gigi Gryce)」。米国では作曲家として、それなりの位置付けにあるらしいが、日本ではサッパリである。

ジジ・グライスは1925年生まれ。存命であれば91歳であるが、実は1983年、57歳で鬼籍に入っている。ジジ・グライスのジャズメンとしての活動期間は意外と短く、だいたい1953年から1965年の約10年位である。以降、経済状態や心理状態の問題から、ジャズ界から退いた状態になった。

ジジ・グライスはアルト・サックス奏者であるが、作曲家としての評価の方が高いのかもしれない。メインストリーム・ジャズの古典的スタンダード曲である「マイノリティ(Minority)」や「ソーシャル・コール(Social Call)」、「ニカズ・テンポ(Nica's Tempo)」は、ジジ・グライスの作曲である。

そのひとつをタイトルに戴いた好盤がある。Gigi Gryce『Nica's Tempo』(写真左)。1955年10月の録音。ジャケットの雰囲気を見れば直ぐに判る、Savoyレーベルからのリリース。ノネット、テンテット、もしくはカルテットの構成。ジジ・グライスは、全てのトラックでアルト・サックスを担当している。
 

Gigi_nicas_tempo

 
このジジ・グライスのアルト・サックスの音が良い。オーソドックスなスタイルのアルト・サックスの音色なんだが、これが良い。自作曲とモンクの曲でのジジ・グライスのアルト・サックスが良い雰囲気を醸し出している。とにかく、ジジ・グライスのアレンジが良好なんですね。

特に、大人数の構成、ノネットやテンテットでのジジ・グライスのアレンジは実に優秀。音の重ね方がオーソドックスで端正。明らかに「ハードバップ」って感じのする、音の重ね方と響きが独特の個性。実に端正でオーソドックスなアレンジである。

このジジ・グライスのアルバム『Nica's Tempo』には、ジジ・グライスを感じ、ジジ・グライスを理解する為のアイテムが、必要最低限のレベルでしっかりと詰まっています。ハードバップ初期の正統なジャズ。何度聴いても飽きの来ない好盤だと思います。

余談であるが、ジジ・グライスはジャズ界から身を引いた後、最晩年には公立学校で教鞭を執っている。グライスの生涯で最後の勤務先となった小学校は、その遺功を讃えて「バシール・カシム・スクール」に改名されている。ちなみに「パシール・カシム」とは、ジジ・グライスのイスラム宗での名前である。

 
 

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2016年9月30日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・40

ジャズのアルバムの中には、若い頃に一度聴いて、その時は何が何だか判らないまま終わって、暫く経ってから、もう一度聴きたいなあ、と思うアルバムがある。そして、得てしてそういうアルバムはなかなか再会出来なかったりするのだ。

僕にとって、このアルバムがそんなアルバムである。Marion Brown 『Vista』(写真左)。1975年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Marion Brown (as), Stanley Cowell, Anthony Davis (p, el-p), Bill Braynon (celeste, el-p), Reggie Workman (b), Jimmy Hopps (ds), Ed Blackwell (ds, slit drums), Jose Goico (congas, tambourine), Allen Murphy (vo, bells), Harold Budd (celeste, gong)。

アルトのマリオン・ブラウン、そして、このパーソネルを見渡すと出てくる音は、本能、感情のおもむくまま吹きまくる「フリージャズ、若しくはスピリチュアル・ジャズ」と思うのだが、これが違う。冒頭の「Maimoun」を聴けば、思いっきり肩すかしを食らう。

明らかに、本能、感情のおもむくまま吹きまくる「フリージャズ、若しくはスピリチュアル・ジャズ」では無い。正統な伝統的な純ジャズ近い、しかも、旋律が美しく聴き易い。モーダルでクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズの趣きも見え隠れする、極上の純ジャズの世界。

あのジョン・コルトレーンのフリー・ジャズの問題作『アセンション』にも参加した、コッテコテのフリー者のマリオン・ブラウンである。思いっきりフリーにスピリチュアルに吹きまくるかと思いきや、ソウルフルでメロディアス、モーダルでクロスオーバーなコンテンポラリー・ジャズをやるのだ。
 

Vista1

 
今の耳で聴くと、現代のスピリチュアル・ジャズに通じる、ソウルフルでメロディアスな響きにハッとする。美しい、切れ味良く、そして、心揺さぶられ、心和む。現代のスピリチュアル・ジャズに通じる音が、今から40年ほど前、1975年に創造されていたことに素直に感動する。

初めて聴いた時は、ジャズを聴き初めてまだ2年。なんだか中途半端な内容やな、と思った。本能、感情のおもむくまま吹きまくる「フリージャズ、若しくはスピリチュアル・ジャズ」でも無い。といって、ソウルフルでメロディアスなフュージョン・ジャズでも無い。といって、ハードバップでも無い。なんだこれ、と思った。

リズム&ビートも正統な純ジャズ風。とりわけ、リーダーのマリオン・ブラウンのアルト・サックスの音がよく鳴っていて美しい。この作品はよく「フュージョン・ジャズだ」といわれの無い評価を受けることがままあるアルバムですが、どうして、このアルバムは、今の耳で聴くと、極上の「スピリチュアル・ジャズ」である。

ジャケットも前衛美術的で印象的でスピリチュアルなもの。このジャケットにぴったりの音が、このアルバムにぎっしりと詰まっています。音楽喫茶『松和』の昼下がりにピッタリな、1970年代のメインストリーム・ジャズの好盤の一枚です。

 
 

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2016年8月 4日 (木曜日)

スッ〜とストレートなアルト

うへ〜っと驚くばかりの湿気の多さ。風はあるのだが、ちょっとでも身体を動かすと、額に汗がネチョ〜と絡みつく。なんて湿気の多さなんだ。体中が汗でコーティングされたような気色悪さ。この湿気の高さが知らず知らずのうちに体力を奪っていく。

そんな夏にはシンプルなジャズが良い。というのが、昨日のブログの展開。今日も同様の展開で突っ走る。シンプルなジャズと言えば、やっぱりワンホーンである。ここまで湿気の多い酷暑な夏の気候からすると、あまりフロントに管が複数あると、ちょっと耳にもたれる。聴き心地の良いユニゾン&ハーモニーもちょっと辛い。

ということで、やっぱり、湿度の高い、不快指数の高い夏には「ワンホーン」なジャズが良い、という結論になる。軽快でシンプルでスッ〜とストレートなワンホーン。とくれば、アルト・サックスかなあ。ちょっと高めのキーでスッと伸びたブラスな音色が清々しいアルト・サックスのワンホーン盤を探す。

軽快でシンプルでスッ〜とストレートなアルト・サックスは、と問われれば、その一人に「ソニー・スティット」が浮かぶ。スティットか、良いねえ。ということで、ソニー・スティットのアルバムの中から、今日はこの盤を選択。Sonny Stitt『Stitt Plays Bird』(写真左)。1963年1月の録音。

ちなみにパーソネルは、Sonny Stitt (as), John Lewis (p), Jim Hall (g), Richard Davis (b), Connie Kay (ds)。ソニー・スティットのアルトに加えて、フロント楽器っぽいギター、ジム・ホールが参入しているが、ホーンでは無いので、ここでは、この盤は「ワンホーン」盤として扱うこととする。
 

Stitt_plays_bird_1

 
チャーリー・パーカーの得意曲のカバー集なんですが、面白いのは、この盤のスティットの演奏を聴けば聴くほど、パーカーとの相違点をしっかりと押さえることが出来る趣向になっています。パーカーはオリジナルの楽曲の旋律を抽象的にデフォルメしてアドリブしていくが、スティットは、オリジナルの楽曲の旋律に忠実に従いつつアドリブとして崩していく。

スティットのアドリブには、オリジナルの楽曲の旋律の部分や展開が雰囲気が見え隠れするので、明らかにパーカーの劣るとされるのですが、このアルバムの演奏を聴く限り、そんなことは全くありません。アドリブを展開する時のアプローチの違いというだけで、どちらのアプローチも個性として超一流です。

ジム・ホールのギターは控えめにフロントのスティットのアルトを惹き立てる演奏を繰り広げているので、このアルバムを聴き進めて行くと、明らかにワンホーンのスティットのアルトがバッリバリに目立ってきます。端正でエモーシャル、それでいて、軽快でシンプルでスッ〜とストレートなアルト・サックス。爽快です。

ポジティブなアルト・サックス。バックのリズム・セクションの伴奏上手なところにも、ほとほと感心。爽快なスティットのアドリブ展開に清々しさを感じて、ちょっと気持ちが涼しくなります。ジャケットのイラストがちょっと不気味なんですが、ジャズ者初心者の方々も迷わず手にして良い、ジャズ者初心者向けの好盤でもあります。

 
 

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