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2017年6月21日 (水曜日)

『Birds of Passage』が素敵だ

いや〜大荒れの一日でしたねえ、我が千葉県北西部地方。外出も叶わぬ大荒れの日、部屋の中で聴くのはジャズ。さて、今日は、ナベサダさん(渡辺貞夫)のアルバムの聴き直しをもう一枚。僕はこのアルバムを聴いた時、これは「スムース・ジャズ」でも「フュージョン・ジャズ」でもない、これは、硬派なコンテンポラリーな純ジャズだ、と思った。

渡辺貞夫『Birds of Passage』(写真左)。1987年の作品。発売当時のキャッチフレーズが「追い求めた"渡辺貞夫の音楽"を遂に完成! そして数々の旅の想いがこのアルバムに・・・。"旅"がテーマとなった曲を再演奏した1枚」。なるほど、このキャッチフレーズの言うとおりである。いいキャッチフレーズやなあ。

この頃のナベサダさんは、米国でスムース・ジャズの先駆けとして成功を収め、ナベサダさんの音楽と言えば「スムース・ジャズ」だった。が、この盤は違う。前奏をパッと聴いた雰囲気は電気楽器を上手く活用したフュージョン・ジャズかスムース・ジャズか、と思うんだが、ナベサダさんのアルトが出てくると、雰囲気はガラッと変わる。ほんと、ガラッと変わるのだ。
 

Birds_of_passage

 
テクニック優秀、歌心溢れ、力強いアルトの旋律。この力強さと音の「伸び」が素晴らしい。そこにテクニック&疾走感溢れるアドリブ・フレーズが展開される。甘さは一切排除され、ファンクネスは皆無、切れ味良い爽快感と歌心溢れるフレーズは「コンテンポラリーな純ジャズ」である。説得力抜群で聴き応え満点である。

『California Shower』以降「ナベサダはフュージョンに魂を売った」などと揶揄されることもあったが、ナベサダさんの「スムース・ジャズ」や「フュージョン・ジャズ」は超一級品。揶揄されるレベルでは無い。しかも、このアルバムに至っては、まず「スムース・ジャズ」や「フュージョン・ジャズ」の類では無い。「コンテンポラリーな純ジャズ」である。真摯で意欲的な「新しい響きのジャズ」がこの盤に詰まってから素敵だ。

バックを固めるフュージョン・ジャズ時代からの強者共の好演も良い。特にドラムのビニー・カリウタは凄い。"旅"がテーマとなった曲の再演盤という色合いが濃いが、収められている演奏を聴けば単なる再演でないことが痛いほど判る。新しい響き、新しい展開を伴ったコンテンポラリーな純ジャズ」が、新しい雰囲気の新しい「純ジャズ」の形がここにある。

 
 

東日本大震災から6年3ヶ月。決して忘れない。まだ6年3ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年6月18日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・107

2日ほど、栃木路に逗留していた。このところ、梅雨入りしたとは言え、全くその気配は無く、とにかく暑い夏の様な気候があるだけ。ただ、カラッとした暑さなので強烈な不快感は無い。と、今日は打って変わって朝から肌寒い。昼には千葉県北西部地方に帰ってきたが、昼過ぎからは雨。

雨の日は部屋の中でノンビリしながらのジャズが良い。Gary Bartz『Shadows』(写真左)。1991年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Gary Bartz (as, ss), Willie Williams (ts), Benny Green (p), Christian McBride (b), Victor Lewis (ds)。絶対、良い音するぞ、って感じのワクワクするような面子である。

リーダーのゲイリー・バーツと言えば、スピリチュアル・ファンク・ ジャズというべき世界を探求したサックス奏者。担当楽器はアルトとソプラノのサックス。しかし、ここで演奏されているのは正統な「ネオ・ハードバップ」。そう、バックのリズム・セクション、ピアノのグリーン、ベースのマクブライド、ドラムのルイス。この3人のリズム&ビートが、正統かつ最先端の「ネオ・ハードバップ」なのだ。
 

Gary_bartz_shadows

 
アブストラクトでフリーなフレーズに行きそうで行かない、ググッと正統な「ネオ・ハードバップ」に踏みとどまった様な、雰囲気はスピリチュアルではあるが、基本はバップなアルト&ソプラノ・サックスの音がとても素敵である。とにかく、むっちゃ魅力的に担当楽器を吹き輝かせるバーツはとても格好良い。

相対するテナーのウイリー・ウイリアムスのテナーも負けていない。とにかく良い音をさせて、ネオ・ハードバップなフレーズをクールにグイグイと吹き上げていく。バーツ共々、ほんと良い音させている。この盤はこの二人のサックスのサックスらしい「ネオ・ハードバップ」な音色を愛でる盤である。

バックのグリーン、マクブライド、ルイスのリズム・セクションも超強力。これだけ重力級の「ネオ・ハードバップ」なリズム・セクションの音を聴くことはそうそうに無い。ゴリゴリ、バリバリな超弩級の低音を響かせながら、フロントの二人を鼓舞し支えていく。この盤に詰まっている「ネオ・ハードバップ」の音はとても美しい。心がわくわくする。

 
 

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2017年4月28日 (金曜日)

ジャケットに惚れて入手した盤

実はこの盤はジャケットに惚れて入手した。イラストっぽいジャズメン達も良し、タイポグラフィーも良し。とにかくデザインが良い。とてもジャズっぽい。見た瞬間に「これは」と思った。ジャズ盤のジャケットって、こんなデザイン的に優れたものが多い。

ジャケットのデザインが優れたジャズ盤の内容に外れは無い。この盤もその格言に外れることは無い。1996年当時の優れた内容のネオ・ハードバップ。パーソネルを見渡すと、オールスター・ジャムセッションか、と思うんだが、どうして、しっかりとアレンジされた、一期一会のまさにジャズらしい演奏がぎっしりと詰まっている。これには感心した。

そのジャズ盤とは、Jerry Bergonzi & Bobby Watson『Together Again For The First Time』(写真左)。1996年の作品。ちなみにパーソネルは、Jerry Bergonzi (ts), Bobby Watson (as/ss), Kenny Barron (p), David Finck (b on 1-4,6,9), Curtis Lundy (b on 5,7,8), Victor Lewis (ds)。

バーガンジィーのテナー、ワトソンのアルト&ソプラノの2管フロントのクインテット構成。全編に渡って、バーガンジィーのテナーとワトソンのアルト&ソプラノの2管による応酬は聴き応え十分。破綻無く、とても端正で流麗。アドリブフレーズは歌心満載で聴いていてウキウキする。
 

Together_again_for_the_first_time1

 
そうそう、ジェリー・バーガンジーとは、いわゆるボストン派テナー・サックスの重鎮。圧倒的なテクニックと鮮やかなアドリブ・フレーズが個性。1947年生まれなので、今年で70歳になる。この盤の録音時は49歳。ベテランの域に達しつつある充実の頃。

バックのリズム・セクションも良い。ピアノがケニー・バロン、これがまあ、端正で堅実なバッキングを繰り広げている。この盤の安定はバロンのピアノによるところが大きいのでは。そして、ビクター・ルイスのドラミングが素敵だ。凄くハードバップしている。この盤の爽快感とスピード感はルイスのドラミングによるところが大きい。

1996年の時代に、これだけ内容のあるネオ・ハードバップな演奏が繰り広げられていたとは改めて感心した。ジャズって確実に進化していたんですね。しっかりとアレンジされた、一期一会のまさにジャズらしい演奏は、その爽快感とスピード感がゆえ、1950年代のハードバップには無いものです。1996年の時代だからこそ為し得た、ジャズの成果だと感じます。

ジャケットに惚れて入手して、その盤聴いて感心する。ジャズ盤をずっとコレクションして聴き続けてきて、なんだか幸せだなあ、と思う瞬間です。

 
 

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2017年4月27日 (木曜日)

ながら聴きのジャズも良い・19

ジャズの企画盤でよく採用されるのが「ミュージカルもの」。ジャズはミュージカルで流れる楽曲を、まとめてジャズ化する企画が多い。そんな「ミュージカルもの」の中でも、採用される機会が圧倒的に多いのが「My Fair Lady」と「West Side Story」。

どちらもミュージカルも収録された楽曲がとても美しくとても楽しい。名曲がてんこ盛りって感じで、丸ごとジャズ化したくなる。特に「West Side Story」は、レナード・バーンスタインが音楽を担当しているので、もともとジャズの要素を織り込んできてるので、圧倒的にジャズ化し易い。

アルト・サックスの使い手に「Richie Cole(リッチー・コール)」がいる。1948年生まれ。今年で69歳になる。もう大ベテラン。このリッチー・コールって、1970年代終盤に突如現れ出でて、老舗ジャズ雑誌で採り上げられて、褒めあげられたり貶されたり。ジャズ雑誌の一人芝居によって、時代の寵児となった「リッチー・コール」という印象がある。

テクニックに優れる速弾きが「軽薄」とされ、明朗な音色で吹き上げる様を捉えて「単調」と揶揄され、ビ・バップものをやればパーカーの物真似といじられ、バラードをやれば「深みがない」と切り捨てられる。とにかく散々な扱いだった。けど、僕は当時、ジャズ者初心者でしたが、このリッチー・コールのアルト、判り易くて好きでした。
 

West_side_story_richie_cole

 
Richie Cole『West Side Story』(写真左)。1996年3月の録音。ヴィーナス・レコードからのリリース。しかし、なかなか目の付け所の良い企画盤だ。明朗な音色でハイテクニックでアルト・サックスを吹き上げるリッチ・コールが「ウエストサイド物語」をやる。これってなかなか良い企画じゃないのか。

アルバムを聴けば、その意を強くする。リッチー・コールのアルト・サックスは明朗で切れ味抜群。ウエストサイド物語に収録された様々な魅力的な楽曲をしっかりとジャズ化し、しっかりとジャズとして吹き上げていく。とにかく判り易い。よって聴いていてとっても楽しい。明るくて楽しいのだから、もう「無敵」である。

バックのジャズメン達も好演している。アレンジも良好。そう言えば、この盤でのリッチー・コールのアルト・サックスのプレイはオーソドックスでハイテクニックで明朗なもの。良い感じのアルト・サックスである。でも、これって、1970年代終盤当時のリッチー・コールの音と変わらないと思うのだが。 

我が国ではあまり話題にならない、というか全く話題にならない、リッチー・コールの『ウエストサイド物語』ですが、どうして、かなり良い内容ですよ。判り易くて聴き易い。この『ウエストサイド物語』、そう言えば、ジャズ喫茶での流し聴きに最適ですね。そう言えば、我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「ながら聴き盤」としてヘビロテでした(笑)。

 
 

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2017年4月20日 (木曜日)

80年代サンボーンの代表盤

フュージョン・ジャズの雄、アルト・サックスの代表格、デイヴィッド・サンボーンの聴き直しを続けている。前回は1988年の『Close-Up』をご紹介したのだが、順番として、このアルバムを忘れていた。面目ない。

David Sanborn『A Change of Heart』(写真左)。1987年の作品。ど派手なジャケットに度肝を抜かれる。サンボーンの素晴らしさを知らない人は、このジャケット、手にするにはかなりの勇気がいる。もうちょっと何とかならなかったのかなあ。さすがに1980年代、バブリーな時代のデザイン感覚を再認識する。

しかし、内容的には、良きにつけ悪きにつけ、1980年代のサンボーンを代表する内容に仕上がっているのではなかろうか。全編に渡って、マーカス・ミラーの硬質に弾けるエレベとハイラム・ブロックのねちっこいエレギをバックに、それはそれは気持ち良さそうにアルトを吹き上げるデヴィット・サンボーン。
 

A_change_of_heart

 
この盤、サンボーンのアルトがとっても良い音で鳴っている。ど派手なアレンジ。メタリックな輝きに満ちたブロウ。もともとサンボーンは懐の深いミュージシャンではあるんだが、この盤の内容を見渡すと、ダンスナンバーあり、ハードナンバーあり、泣きのバラードあり、とバラエティーに富んだ内容がとても楽しい。

しかし、そんなバラエティーに富んだ演奏内容なんだけど、サンボーンのソウル&ファンキーでメタリックな輝きに満ちたブロウは終始一貫している。これが素晴らしい。1980年代のサンボーンをアルトの「これ一枚」を選べと言われたら、この『A Change of Heart』を挙げるかな。それほど、この盤でのサンボーンのアルトは輝きに満ちている。

1980年代の音なので、はしたないほどにデジタルっぽい音だし、リズムは明らかに打ち込み中心で人工的。こういう面では1980年代のサンボーン盤はあまり好んで聴くことは少ないのだが、この盤については、1980年代のサンボーンのアルトを確認したい時、必ず手にする盤ではあります。サンボーン者にとっては好盤です。

 
 

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2017年3月24日 (金曜日)

キャンディドらしい音・5

キャンディド・レーベルには「よくぞ録音してくれた」的なマニア盤も存在する。何故かなかなか録音の機会に恵まれない優秀なジャズメンや、そもそも録音の機会が少ないユニークなジャズメンにスポットを当てて、しっかりと録音している。プロデューサーのナット・ヘントフの功績であろう。

例えばこのアルバム、『The Toshiko-Mariano Quartet』(写真左)。1960年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Toshiko Akiyoshi (p), Charlie Mariano (as), Eddie Marshall (ds), Gene Cherico (b)。我らが日本人ピアニスト穐吉敏子と、当時、夫婦の間柄であった、アルトサックス奏者チャーリー・マリアーノとの共同リーダー作である。

内容的には新しい響きを宿しているハードバップである。マリアーノのアルトは硬質でテクニカル。フレーズは幾何学的でクール。モードでは無いのだが、響き的にはモーダルな雰囲気が漂っている。これが意外に新しい。ユニーク。ジャズ・アルトと言えばパーカーが絶対だが、このマリアーノのアルトは、パーカーの影響下から少し距離を置いている。
 

Toshikomariano_quartet

 
穐吉敏子のピアノも新しい響きを宿していて聴き応えがある。もともと穐吉のピアノは、筋金入りのビ・バップなピアノ。明らかにパウエル派のバップ・ピアノなんだが、この盤での穐吉のピアノは、そんなバップ・ピアノな雰囲気に加えて、モーダルなフレーズが見え隠れする。加えて、テクニックが凄い。高速なアドリブ・フレーズが凄い。

5曲目の「Long Yellow Road」が特に素晴らしい。そこはかと漂う愁い。音の「間」とマイナーな余韻。激しさと静謐さが入り交じり、何処か狂おしさもある、何処か侘しさもある。演奏全体を覆う「侘び寂び」、アドリブ・フレーズに忍ぶ「いとおかし」の空気。これぞ「日本人の創るジャズ」の好例。

これだけ、内容的に優れた演奏を繰り広げる「Toshiko-Mariano Quartet」ではあるが、あまり録音の機会は多く無かった。そういう面では、このキャンディド・レーベルでの録音は貴重なものであることは疑いない。キャンディドらしく、録音も良好。もっともっと聴かれても良い好盤だと思います。

 
 

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2017年2月19日 (日曜日)

ECMレーベルらしい音・2

ECMレーベル。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」が個性。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音が特徴。いつの時代にも、明らかに米国のジャズとは異なる、常にコンテンポラリーな純ジャズを提供してくれる。

そんなECMレーベルの「らしい」音を体験するには、やはり最初のシリーズ、ECM1000番台のアルバムを聴き進めるのが一番手っ取り早い。ということで、このところ、ECM1000番台の聴き直しを進めている。

Robin Kenyatta『Girl from Martinique』(写真左)。ECM1008番。1970年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Robin Kenyatta (fl, as, per), Wolfgang Dauner (p), Arild Andersen (b), Fred Braceful (ds)。プロデュースはManfred Eicher。

このアルバム、CD時代になって、なかなかリイシューされなかった。最近は音楽サイトからダウンロードできるので、やっとこのアルバムの音源にも触れやすくなった。喜ばしいことである。プロデュースはアイヒャーなので、純正ECMのアルバムと言える。
 

Girl_from_martinique

 
自由度の高い、半フリーな内容ではあるが、モーダルな純ジャズな演奏の部分もあって、今の耳には、あまりフリー・ジャズなアルバムには聴こえない。自由度の高いコンテンポラリーな純ジャズといった内容で、意外と聴き応えがある。

ケニヤッタのフルートとアルトは、雰囲気的に「エリック・ドルフィー」に近いものがある。浮遊する部分有り、ビートにしっかり乗った部分有りで、当時のコンテンポラリーな純ジャズの最先端をいく雰囲気。聴いていて懐かしい思いを感じたり、意外と今の耳にも耐える演奏に感心したり。

この「あまりフリー・ジャズなアルバムには聴こえない、自由度の高いコンテンポラリーな純ジャズといった内容」が、ECMレーベルらしい音のメインのひとつになっていく。硬派で尖った内容ではあるが聴き易い。後年のECMレーベルの人気盤に共通する音である。

録音もトン・スタジオでの録音で、限りなく静謐で豊かなエコーがかかった、独特の音で録音されていて、じっくり聴いていると、やはり「これはECMやなあ」なんて呟いて感心したりする。ジャケットはイマイチですが、意外と聴き応えのあるECM初期の一枚です。

 
 

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2017年2月16日 (木曜日)

日本人好みのジャズのレーベル

日本人好みのジャズというものがある。スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。そして、ウッドベースがブンブン唸り、ドラムが小粋にリズム&ビートを刻む。ピアノは限りなく印象的なエコーがかかって豊かに響く。そして、テクニックに優れていなければならない。曲はスタンダードがメイン。そんなジャズが日本人は好き、という通説がある。

僕は全くそういう傾向は無いんだけれど、やっぱり、日本人好みのジャズって、そういう印象になるのかな。そんな日本人好みのジャズの雰囲気を一手に引き受けている日本発のジャズ・レーベルがある。Venus Records(ヴィーナス・レコード)である。演出過剰なほどに、スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。録音は優秀、演奏のテクニックも優秀。音の傾向は「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」。

Aaron Heick and Romantic Jazz Trio『Europe(哀愁のヨーロッパ)』(写真左)。この盤は、そんなヴィーナス・レコードの音を代表する音がてんこ盛り。宣伝キャッチには「現代人に究極のセクシャル・ヒーリングの癒しを与えてくれる必聴のアルバム」とある。セクシーで耽美的な音作り、スムース・ジャズ志向の癒やしの響き。
 

Aaron_heick_europe1

 
タイトル曲である冒頭の「Europe」からして、明確にヴィーナス・レコード志向の音。この曲、サンタナの1976年の名バラード曲。ヴィーナス・レコードの盤って、こういう日本人のおじさま好みの曲が必ず一曲は入っている。1970年代ロックのバラード曲で、日本で売れに売れたサンタナの名曲。アレンジはまずまず。思わず懐かしさがこみ上げる。

他の楽曲も「スタンダード曲」が中心で、どの演奏もスインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。果たして、この演奏がリーダーを始めとするジャズメン達の本意なのか、と思ってしまうが、兎にも角にも、オーバープロデュース気味の、明らかに「作られた」ジャズの音である。つまりは「日本人好みのジャズ」を増幅した様な音作りである。

ここまで増幅した音作りになれば、極端に「賛否両論」になる。好きな人もいれば、大嫌いという人もいる。それでも、このヴィーナス・レコードの音は、「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」と解釈すれば合点がいき、納得感も増す。そういう観点で聴き耳を立てれば、ヴィーナス・レコードの諸作も意外と、ジャズとして「アリ」ということになる。

 
 

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2017年1月 6日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・74

ジャズのアルバムの世界を彷徨っていると「あれ、これは何だ」と叫んでしまう様なアルバムにヒョコッと出会うことがある。このアルバムもそんなアルバム。見た時、思わず「おおっ」と叫んでしまった。

Delta Saxophone Quartet『Crimson ! 』(写真左)。これだけ見れば、なんのアルバムか、判らないよな。でも「Crimson」という文字を見て、プログレバンドの「キング・クリムゾン」を想起した僕はちょっと「プログレ」ヺタクなんだろうか(笑)。

まさかねえ、と思いながら、収録曲を見れば「おおっ」。やっぱり、これ、キング・クリムゾンの楽曲のカヴァー盤なのだ。うわ〜、こんなアルバムあったんや〜。いやいや、プログレッシブ・ロックの雄、現役のレジェンド「キング・クリムゾン」の楽曲が、ジャズにアレンジされ、カヴァーされる時代になったんですね。

Delta Saxophone Quartetとは。サックス奏者4人を中心に1984年に結成。4人のメンバー構成は、 Graeme Blevins (soprano sax), Pete Whyman (alto sax), Tim Holmes (tenor sax), Chris Caldwell (baritone sax)。今回のアルバムは、このサックス4人組に、Gwilym Simcock (piano)が加わる。

しかし、キング・クリムゾンの楽曲がジャズでカヴァーされるとは思わなかった。しかし、収録曲を見渡せば、キング・クリムゾンの楽曲の中でも、ジャズのアレンジにフィットする楽曲をしっかりと選んでいることが判る。そんな収録曲は以下の通り。
 

Crimson

 
 
1. A Kind of Red (Gwilym Simcock)
2. VROOOM/Coda: Marine 475 from THRAK
3. The Night Watch from Starless And Bible Black,
4. Dinosaur from THRAK
5. Two Hands from Beat
6. The Great Deceiver from Starless And Bible Black

 
1曲目の「A Kind of Red」だけが、Gwilym Simcockの自作曲。その他はキング・クリムゾンのオリジナル。1995年の「THRAK」から2曲、1974年の「Starless And Bible Black」から2曲。1982年の「Beat」から1曲。実に良い曲を選んでいる。かつ、確かにジャズにアレンジし易い曲ばかりだ。

特に僕は、3曲目の「The Night Watch」が一番だ。というか、キング・クリムゾンのオリジナルの「The Night Watch」が大好きなので、もうこのジャズ・アレンジのこの曲が、もう良くて良くて(笑)。他の曲も良い塩梅。サックス4本のアンサンブルで、キング・クリムゾンの楽曲をジャズにアレンジして演奏する。これが全く良くて良くて(笑)。

演奏のスタイルが、所謂21世紀のニュー・ジャズ風だからこそ、キング・クリムゾンの楽曲がフィットする。フリーよりの演奏から、モーダルな演奏まで、ジャズの先端をいく演奏内容がとても格好良い。それにしても、この盤には参った。キング・クリムゾンの楽曲のカヴァー盤。いや〜まさに「こんなアルバムあったんや〜」。

 
 

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2017年1月 4日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・97

2017年になりました。明けましておめでとうございます。今年もバーチャル音楽喫茶『松和』をよろしくお願いします。

今回は初めて、年末から年始にかけてブログをお休みしました。年末は30日から年始は3日まで、生産的なことは何もせず、ノンビリと過ごしました。音楽もあんまりガツガツ聴くことをせず、聴きたいなあ、と思ったアルバムを幾つか、ノンビリ聴いただけ。

そんな中に、久し振りに聴いたアルバムがあった。これが聴く度に「ジャズ」を強烈に感じるアルバムで、時ある毎に聴いていた時期があった。スイング感、アドリブの流麗さ、ブロウの迫力、ブラスの響き、ユニゾン&ハーモニー、どれをとっても「ジャズやな〜」と強烈に感じることが出来るアルバムである。

Duke Ellington & Johnny Hodges『Back To Back (Duke Ellington And Johnny Hodges Play The Blues)』 (写真左)。

あのデューク・エリントン楽団の総帥とその主要メンバーで「モダン・ジャズ」を演る、「ハードバップ」を演る、という小粋な企画盤である。1959年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Duke Ellington (p), Johnny Hodges (as), Harry "Sweets" Edison (tp), Les Spann (g), Al Hall (b, tracks 1 and 4), Sam Jones (b, tracks 2, 3, 5, 6, 7), Jo Jones (ds)。
 

Back_to_back

 
冒頭の「Wabash Blues」を聴くだけで、思いっきりジャズを感じることが出来る。特に、ジョニー・ホッジスのアルトの吹き上げの音がたまらない。この音が「モダン・ジャズ」である。そして、ハリー・エディソンのトランペット。このトランペットの音も良い。バイタルでブラスの響きが芳しいトランペット。「ああ、ジャズやなあ」としみじみ思ってしまう。

デューク・エリントンのピアノも良い。ガーンゴーンと出しゃばることが決して無い、趣味の良い小粋なバッキング。右手のパランポロンと単音の響きが美しい。そこに、寄り添うようにポーンと入ってくる左手。この音を聴けば、これってデュークか、と何と無く判る、それほど個性的なピアノ。さすがである。

フロントを鼓舞し支える、モダンなリズム&ビートを供給するジョー・ジョーンズのドラムも聴き物だ。そうそう、アル・ホールとサム・ジョーンズで分担するベースも堅実。そして、このアルバムにリズムの彩りを添えてくれるのが、レス・スパンのギター。スバンのリズム・ギターが、このアルバムのリズム&ビートを色彩豊かにしている。

ジャズの雰囲気、ジャズの楽しさ、ジャズの魅力をストレートに伝えてくれる好盤である。アルバム全体に蔓延するブルースの響き。聴いていて気持ち良く心地良い。こういうアルバムから新年をスタートする。粋である。

 
 

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