2023年9月10日 (日曜日)

コルトレーンとドルフィーと....

ジョン・コルトレーンとエリック・ドルフィー。この2人、どうにも「曰く言い難し」の間柄だと感じているのだが、このコルトレーンとドルフィーの共演ライヴというのは、今では「伝説」になっている。

かの有名な、1961年11月のヴィレッジ・ヴァンガードでの共演時のライブ録音が中心になるのだが、共演時のリアルタイムでリリースされた、コルトレーン名義のドルフィーとの共演ライヴの音源は、全てが「コルトレーンはまずまず、ドルフィーは目立たない」ものばかりだった。

21世紀直前まで「やっぱりコルトレーンは凄い、ドルフィーはコルトレーンの前で萎縮して、それほどでも無い」というのが定説だったのだが、1997年、コルトレーン没後30年を記念してリリースされた『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』で、1961年11月のヴィレッジ・ヴァンガードでの共演の全貌が明らかになる。

実は、共演のエリック・ドルフィーが素晴らしい出来で、コルトレーンはドルフィーに当てられてかどうかは判らないが、あまり良いパフォーマンスを残していない、ということが判っている。

が、コルトレーン信奉者は我が国にも沢山いて、そんなコルトレーン信奉者を中心に「1961年11月のヴィレッジ・ヴァンガードでの不調はたまたまで、それを記録されたコルトレーンはついてなかった、なんていう見方もあるのだから、コルトレーンの人気って凄いものがある。

『Evenings At The Village Gate: John Coltrane with Eric Dolphy』(写真左)。1961年8月、NYのライヴハウス、ヴィレッジゲイトでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ss,ts), Eric Dolphy (b-cl, as, fl), McCoy Tyner (p), Reggie Workman (b), Art Davis (b), Elvin Jones (ds)。コルトレーンのテナーorソプラノ、ドルフィーのバスクラ orアルト or フルートがフロント2管、タイナーのピアノ、エルヴィンのドラム、そして、ワークマンとデイヴィスのダブル・ベースの変則セクステット編成。

1961年11月のヴィレッジ・ヴァンガードでの共演時のライヴ録音が、コルトレーンとドルフィーの共演の「伝説」だった訳だが、今回の未発表ライヴ音源の登場で、伝説のヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ録音より3ヶ月前、1961年8月のヴレッジゲイトでの共演時のライヴ音源がその「伝説」に加わった。
 

Evenings-at-the-village-gate-john-coltra

 
資料によると「このライヴ音源は、1961年当時、新しい音響システムのテストの一環としてエンジニアのリッチ・アルダーソンによって録音。その後、テープが行方不明になっていたが、近年、ニューヨーク公共図書館にて発見されたもの」とのこと。いや〜、こういう音源がまだまだ残ってるんですね。しかも、内容が抜群の良いし、音も問題無いレベル。素晴らしい発掘ライヴ音源です。

収録曲は「My Favorite Things」「When Lights Are Low」「Impressions」「Greensleeves」「Africa」の5曲。全編1時間20分の圧倒的名演の数々。全ての曲において、コルトレーンは豪快に吹きまくっている。しかし、ドルフィーはそんなコルトレーンを置き去りにして、別次元での即興演奏を展開する。

コルトレーンは明らかに、11月のヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴより吹けていて、コルトレーンもドルフィーも、モーダルな即興演奏の究極を追求しているが、ドルフィーだけが、その特異性、特殊性において、突出している。コルトレーンは、ドルフィーの前では「トラディショナル」。従来のモーダルな演奏の枠の中で即興性を追求している様に感じる。

バックのリズム隊、タイナーのピアノは「いつも通り」の安定度の高い平常運転。エルヴィンはコルトレーンにもドルフィーにも平等に強烈なビートであおり立てる。そして、ワークマンとディヴィスのダブル・ベースは超弩級の重低音ベースで、激烈なフロント2管のインプロの「底」を支える。

このヴィレッジゲイトの発掘ライヴ音源の登場で、ドルフィーのパフォーマンスが「異次元」の輝きを見せていたことを再認識した。コルトレーン名義のドルフィーとの共演盤を聴くと「コルトレーンの前ではドルフィーのパフォーマンスはイマイチやな」と思ってきたが、『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』と『Evenings At The Village Gate: John Coltrane with Eric Dolphy』を聴き通して、ドルフィーのパフォーマンスの方が圧倒的で創造性に優れていることが良く判った。

コルトレーンとドルフィー。コルトレーンが劣っているのではない。コルトレーンはコルトレーンで素晴らしい、他のサックス奏者を寄せ付けない即興性と創造性に溢れていると思う。しかし、ドルフィーは全く別の次元にいる。従来のジャズの即興性、創造性を凌駕して、ドルフィー独自の唯一無二の即興性&創造性を獲得している。全く以て、ドルフィーの早逝が惜しまれる。

しかし、この2つの未発表ライヴ音源『The Complete 1961 Village Vanguard Recordings』と『Evenings At The Village Gate: John Coltrane with Eric Dolphy』が発掘リリースされて良かった。ドルフィーの「真の姿」が確認出来て良かった。
 
 

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2023年2月28日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・23

 エリック・ドルフィーは、お気に入りのアルト・サックス奏者。ジャズを聴き始めた頃、ドルフィーに出会って、これが即興演奏の極致か、とぶっ飛んで以来、ずっとドルフィーは聴き続けている。

twitter で「朝一番のジャズ盤」や「昼下がりのジャズ盤」、そして、寝る前の「今日のラストのジャズ盤」のご紹介のツイートをしているのだが、ここにはドルフィーなど、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を踏まえながら、アブストラクトにフリーに、限りなく自由度の高いジャズは登場させていない。刺激が強すぎる、というのが理由。

よって、ドルフィーは、個人的に、バーチャル音楽喫茶『松和』で聴いているのだが、ドルフィーはどのリーダー作を聴いても「駄盤」が無い。どのブロウの平均点以上の優秀なパフォーマンスばかりなので、ドルフィーを感じる上で、アルバムを選ぶ必要は無い。その中でも、敢えてどれが良いのか、と問われれば、僕はこのアルバム2枚を推すことにしている。

Eric Dolphy『At The Five Spot, Vol.1 & Vol.2』(写真左)。1961年7月16日、NYの「Five Spot」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Booker Little (tp), Mal Waldron (p), Richard Davis (b), Ed Blackwell (ds)。エリック・ドルフィーのアルト・サックスと、ブッカー・リトルのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

このパーソネルのメンバーを今から振り返れば、力量十分、テクニック十分の中堅ジャズマンの中でも「曲者」揃い。出てくる音は、当然「曲者」で、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を踏まえながら、アブストラクトにフリーに、限りなく自由度の高いジャズが展開される。恐らく、当時、最高レベルの「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」だと思う。
 

Eric-dolphyat-the-five-spot-vol1-vol

 
まず、Vol.1、1曲目の「Fire Waltz」での、冒頭のドルフィーのアルト・サックスの捻れフレーズを聴くだけで、このライヴ盤は「穏やかではない」ことを感じる。捻れてブッ飛んで疾走するドルフィーのアルト。そこに、負けずに捻れてブッ飛んで疾走するブッカー・リトルのトランペットが絡んでくる。限りなく自由に、従来の穏やかなフレーズを踏襲すること皆無の、鋭角にスクエアにスイングする唯一無二なアドリブ・フレーズ。

Vol.1では、スリリングでハイ・テンションな「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」が、これでもか、と言わんばかりに展開する。ジャズとしての「即興演奏」の極致がここにある。

Vol.2は、やや穏やかで懐深い「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」が繰り広げられる。オリジナルLPでは、「Aggression」と「Like Someone in Love」の2曲のみ。ほとんどが「即興演奏の嵐」なんですが、やはり、ドルフィーは尋常では無い。特に、バスクラの「異次元さ」が極めつきで、もうこれは癖になる(笑)。ブッカー・リトルのトランペットも熱くて良いんですが、ドルフィーの「変態度合い」が凄くて、これはまあ(笑)。

Vol.2を聴いていて、ドルフィー&リトルのフロント2管は唯一無二で凄いなあ、と改めて感動。「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」がどんどん自由度高く、自由度高くなって、アブストラクトにフリーに展開しそうになるのだが、決して、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を逸脱することは無い。このジャズの伝統的な展開にグッと踏みとどまって演奏するところが良い。何度聴いてもグッとくる。

このEric Dolphy『At The Five Spot, Vol.1 & Vol.2』を聴くと、ジャズとしての「即興演奏」というものが良く判る。ジャズの一番の特徴は「即興演奏」というが、このライヴ盤でのドルフィー&リトルのフロント2管のパフォーマンスは、その「即興演奏」の好例だろう。このライヴ盤を聴く度に、ジャズって凄いなあ、と思うのだ。
 
 

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2022年6月28日 (火曜日)

猛暑の日々にラテン・ジャズ

先日、梅雨が明けた関東地方。梅雨明けしたら、しばらく暑い日が続くと言うが、それにしても暑い。暑過ぎる。連日の真夏日。朝からエアコンが無ければ、家の中でも過ごせない。これだけ暑いと思考も鈍る。もはや難しいジャズは聴きたくない。聴いて良く判る、聴いて楽しいジャズが良い。

『The Latin Jazz Quintet』(写真)。1960~61年、NYにて録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (fl, b-cl, sax), Felipe Diaz (vib), Bobby Rodriges (b), Artur Jenkins (p), Tommy Lopez (congas), Luis Ramirez (timbales)。こってこてポップなラテン・ジャズ。しかし、フロント管に、エリック・ドルフィーが参加している異色盤である。

パーソネルを見て「なんなんだ、この盤」と思った。ドルフィー以外、ほとんど知らないメンバーばかり。タイトルから「ラテン・ジャズ」をやっている盤。しかも、ドルフィーがラテン・ジャズをやる、とな? これは途方も無い「駄盤」か、意外と面白い「異色盤」かのどちらかだ。しかし、この最近の酷暑で、難しいジャズは嫌だ。ということで、この不思議なラテン・ジャズ盤を聴くことにした。
 

The-latin-jazz-quintet_1

 
ドルフィーは独特に捻れたサックスを封印して、メンバーの一員として、調和の取れたパフォーマンス。しかし、サックスの基本が相当しっかりしているのだろう、良い音出している。フルートもバスクラも良い音出している。ラテン・ジャズの独特の旋律を、とても良い音で、とても良いブロウで吹き上げている。ドルフィーの全く違った、しかし別の優れた側面を聴いた様な気がして、不思議な高揚感にかられる。

収録曲が面白い。ラテン・ジャズの演奏でありながら、収録曲はジャズ・スタンダード曲がメイン。ラテン・ジャズの企画盤なので、ラテン・ミュージックのヒット曲などを選曲するのが常套手段だが、この盤は違う。ラテン・ジャズの企画盤なのに、収録された演奏は、ジャズ・スタンダードをラテン・ジャズ風にアレンジしたものばかり。これが聴いていて面白い。難しいことを考えること無く、ラテン・ジャズ風にアレンジするとこうなるのか、とあっけらかんと感心するばかりである。

全体の雰囲気は「ラウンジ・サウンド」風なんだが、演奏の基本がしっかりしているので、意外と聴き応えのある「ラテン・ジャズ」に仕上がっているのだから面白い。猛暑の日々に、肩肘張らずにリラックスして楽しんで聴けるジャズ。こういうジャズもたまには良い。
 
 

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  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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2021年8月 1日 (日曜日)

ミンガス・バンドを聴き直す。

Charlis Mingus(チャールズ・ミンガス)の創り出す音が好きだ。もともとは骨太でソリッドなレジェンド級のベーシスト。加えて、コンポーザーでもあり、バンドのリーダーでもある。ミンガスの創り出す音は「ミンガス・ミュージック」と名付けられ、ハードバップが基調であるが、ビッグバンド志向の分厚いバンド・サウンドと自由度の高いアドリブ展開が特徴。

特に、ユニゾン&ハーモニーの音の重ね方とベース・ラインに独特のものがあって、どのアルバムもしばらく聴いていると「あ〜、これはミンガスやな」と判るくらいの強烈な個性である。ミンガスのベースの音は、これまた独特の響きがあって、演奏の中のベースの音を聴くだけで、「このベースってミンガスやな」と判るくらいである。

Charlis Mingus『Mingus In Europe, Vol.1』(写真)。1964年4月26日、西ドイツ(当時)でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Mingus (b), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p), Dannie Richmond (ds)。エリック・ドルフィーとクリフォード・ジョーダンが2管フロントのクインテット編成。
 

Mingus-in-europe-vol

 
リズム・セクションは、ミンガスのベースに、バイヤードのピアノ、リッチモンドのドラムで、このリズム・セクションをとってみても、強力かつ唯一無二。そこに、フロント2管、アルトの早逝の鬼才、ドルフィーに、骨太なモーダル・テナーのジョーダンが絡む。振り返って見れば、素晴らしくユニークで強力なクインテットだったことが良く判る。

この盤のライヴ演奏については「とにかく聴いて欲しい」の一言。ミンガス率いる強力リズム隊の強烈なリズム&ビートに乗って、鬼才ドルフィーのアルトが嘶き、フルートが空を舞い、バスクラがファンキーでアーバンな妖しい低音を振り撒く。ジョーダンのテナーが疾走し、モーダルなフレーズを叩き出す。とにかく、バンド全体の疾走感と自由度が半端ない。

ミンガス・バンドはどの時代のアルバムを聴いても、ミンガス・ミュージック独特の音が必ず存在し、ミンガス独特のベースラインが存在していて、その唯一無二な個性は填まったら「とことん癖になる」。特に、ミンガス・バンド在籍時のドルフィーはユニークで素晴らしいの一言。久し振りにミンガス・ミュージックの一端に触れた訳だが、久し振りに、とことん、ミンガス・ミュージックを聴き込みたいと思い始めた。
 
 
 
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  ・イエスの原点となるアルバム

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  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
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2021年2月26日 (金曜日)

ブレーメンのミンガス 1964年

ハードバップからモード・ジャズ、硬派な純ジャズ路線が魅力の「ミンガス・ミュージック」。ジャズ・ベーシストのレジェンド、チャールズ・ミンガス(Charles Mingus)率いるバンドが奏でる純ジャズは、どこまでも「ストレート・アヘッド」。1950年代からミンガスが亡くなる1970年代終盤まで、ミンガス・バンドの奏でるジャズは「ストレート・アヘッド」。

『Charles Mingus @ Bremen 1964 & 1975』(写真左)。チャールズ・ミンガス 1964年と1975年のブレーメン公演のライヴ音源。CD4枚組でのリリース。

CD1とCD2が「1964年4月16日、Sendesaal Radio Bremen’s Studio」での音源。CD3とCD4が「1975年7月9日 Post-Aula Auditorium Recorded by Radio Bremen」の音源。オリジナル・テープからリマスタリングした初の公式リリースである。

今日は、CD1とCD2、1964年4月16日の録音分について語りたい。ちなみにパーソネルは、Johnny Coles (tp). Eric Dolphy (as, fl, b-cl), Clifford Jordan (ts), Jaki Byard (p), Charles Mingus (b), Dannie Richmond (ds)。ミンガスとドルフィーとの最後の共演となった1964年の欧州ツアーでの一コマ。このツアーを終えて欧州に留まったドルフィーは、そのわずか 2ヶ月後に糖尿病の悪化で急逝してしまった。
 
 
Charles-mingus-bremen-1964
 
 
この音源は凄い。当時のミンガス・バンドの最高の演奏が詰まっている。特にエリック・ドルフィーが飛び抜けて凄いパフォーマンスを繰り広げている。一聴してすぐに判る、ドルフィー独特の「不思議に捻れた」フレーズ、エモーショナルでスピリチュアルな、それでいて耳につかない情感溢れるブロウ、エネルギッシュで爽快感溢れるアドリブ展開。この盤のドルフィーは絶好調。

もちろんミンガスのうねる様な、鋼の様な、重低音ベースも素晴らしい。取り分け、ソロをとる時の、ダンディズム溢れる、硬派で無頼漢な超弩級の重低音ベースはミンガスならではのもの。これだけ太くて重い重低音ベースはミンガスのものが一番だろう。それでいて、耳につかず、しっかりとフロントのブロウを支え鼓舞するのだから凄い。

ドルフィーの熱演とミンガスの鼓舞に応える様に、コールズのトランペット、ジョーダンのテナーも好演につぐ好演。ドルフィートのフロント3管はど迫力のユニゾン&ハーモニー。そして、リズム隊のバイアードのピアノ、リッチモンドのドラムもミンガス・ミュージックのリズム&ビートを適切に叩き出す。

今の耳で聴いても、この1964年のミンガス・セクステットは凄い。マイルスの1960年代黄金のクインテットに比肩するパフォーマンスだと思う。何故か我が国では人気が低いミンガスだが、そのパフォーマンスに「凡盤・捨て盤」はない。今回の公式リリース盤も素晴らしい内容。4枚組のちょっと重めのボリュームだが、聴き始めたら、あっと言う間の3時間弱、一気に聴き切ってしまう。好盤です。
 
 

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  ・『TOTO』(宇宙の騎士) 1977

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  ・Yes Songs Side A & Side B

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2021.02.09 更新。

  ・そしてタツローはメジャーになる
 
  
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2020年4月19日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・166

「サックス好盤」の聴き直しをしている。40年以上もジャズを聴き続けていて、最近「名盤・名演」盤の類をあまり聴く機会が無いことに気がついた。それだけ、ジャズの新盤や発掘盤が沢山リリースされているということで目出度い限りだが、もともとこのバーチャル音楽喫茶『松和』は、ジャズ者初心者向けのアルバムをご紹介するのがメインなので、自分の「ジャズ者初心者時代」の感覚は今でも維持していたい。

ということで、「名盤・名演」のジャズ盤紹介本の情報を基に、自分の感覚で100枚ほど選んで聴き直しをしているのだが、これがまた楽しい。ただ「名盤」という言葉はあまり好きじゃ無いので、「好盤」に置き換えて楽しんでいる。そんな100枚の中で、まだ、このブログでご紹介していない盤が結構あるのに気がついた。これはいかんなあ、ということで、少しずつ、原稿をしたためている。

Eric Dolphy『Last Date』(写真)。 June 2, 1964年6月2日、オランダのHilversumでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (b-cl, fl, as), Misha Mengelberg (p), Jacques Schols (b), Han Bennink (ds)。ドルフィー以外、バックのリズム・セクションは地元オランダのミュージシャン。この録音の後、6月29日に西ベルリンにおいて客死しているので(享年36歳)、実質、この盤がドルフィーのラスト・レコーディングになる。
 
 
Last-date  
 
 
冒頭の「Epistrophy」からドルフィーは快調に飛ばす。伴奏のバス・クラリネットのソロだけで鳥肌モノだ。その「癖の強い」フレージングにゾクゾクする。アドリブ展開に至っては、ドルフィー独特の、ドルフィーにしか吹けない「アブストラクトでエモーショナルでとディショナル」なフレーズをバンバン吹き上げていく。そんなドルフィーのブロウとセロニアス・モンク作の楽曲との相乗効果が凄い。これは明らかに良質のジャズである。

「You don't know what love is」でのドルフィーのフルートにも感動する。このフルート、生前、最も評判が悪かったらしいがとんでもない。その音色、音程の取り方、即興の展開など、ドルフィーのフルート演奏のベストテイクだと思うし、このフルートも鳥肌モノだ。アルト・サックスを吹かせても凄い。ラストの「Miss Ann」など、縦横無尽にアブストラクトに跳ねまくるが、しっかりとトラディショナルに留まるアドリブ・ソロなど、思わず「凄いな〜」と呟いてしまう。

バックのオランダのリズム隊も大健闘。ドルフィーの独特の個性と展開をしっかり踏まえて、精一杯、ドルフィーの縦横無尽な展開に対応する様、努力している様子が良く判る。少なくとも、ドルフィーのソロを阻害していないし、邪魔にはなっていない。このオランダのリズム隊の大健闘が、このライヴ盤を好盤のレベルに押し上げていて、ラスト・レコーディングに相応しい内容になっている。 
 
 
 

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 ★ 青春のかけら達  2020.04.01更新。

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2019年6月10日 (月曜日)

モード・ジャズが好きである。

ジャズの奏法の中で、言葉で説明すると何が何だか判らない奏法なんだが、音を聴くと「たちどころに判る」不思議な奏法。モード・ジャズが好きである。言葉で書くと「コード進行よりもモード(旋法)を用いて演奏されるジャズ。」(Wikipediaより)。モード・ジャズではコード進行は単純化し、音階(モード)の中でアドリブを展開し、フレーズの変化を作り出す。
 
やっぱり文字にするとよく判らないなあ。ということで、モード・ジャズということになると、まず、かける盤が、George Russell『Ezz-Thetics(エズセティックス)』(写真左)。1961年5月の録音。ちなみにパーソネルは、George Russell (p, arr), Don Ellis (tp), Dave Baker (tb), Eric Dolphy (as, b-cl), Steve Swallow (b). Joe Hunt (ds)。フリー志向強めなモード・ジャズ。
 
冒頭のタイトル曲「Ezz-Thetics」がモード・ジャズ。出だしはトロンボーンのデイブ・ベイカー、トランペットのドン・エリスと続いて、エリック・ドルフィーのアルト・サックスが出てくると「これがモード・ジャズなんだ」と確信する。モード・ジャズの場合、アドリブの演奏時間は長くなるが、その柔軟性、その意外性、強烈なドライブ感は抜きん出る。これこそがモード・ジャズの醍醐味。
 
 
Ezzthetics-george-russell  
 
 
2曲目の「Nardis」は、スローテンポなアレンジが施されているが、この曲の持つエキゾチックさが増幅され、モーダルなアドリブがより一層際立つのだ。ドン・エリスのトランペットが良い雰囲気を出している。そうそうラストの「'Round Midnight」でのドルフィーが凄い。「炸裂」の単語がピッタリのモーダルなアドリブ。逆にモードじゃないと、こんなに自由度の高い、意外性の高いアドリブは出来ないだろう。
 
若きマイルス・デイヴィスとのやり取りの中にあった「全てのサウンドのChangeを知りたい」という言葉も切っ掛けになり、ジョージ・ラッセルにより考案されたリディアン・クロマティック・コンセプト(Wikipediaより)。そして、これを切っ掛けとしてモード・ジャズが生まれる。とにかくモード・ジャズは面白い。ただ弾き手をシビアに選ぶ奏法である。しかし、そこがまた面白い。
 
「リディアン・クロマティック・コンセプトを考案した」なんて小難しそうなので、敬遠されるのかなあ。意外と我が国では知られていないのだが、このジョージ・ラッセルの『Ezz-Thetics』は、マイルス・デイヴィスの『Kind of Blue』と双璧をなすモード・ジャズの教科書の様なアルバムです。とにかく、ドルフィーが凄い。完璧にモード奏法をマスターしてます。
 
 
 
東日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2018年2月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・116

Impulse!レーベルって、コマーシャルなアルバムが殆ど無い。どちらかと言えば、硬派なところがあって、メインストリームど真ん中なジャズ盤を結構リリースしている。コルトレーンの後期〜逝去するまで、そして、コルトレーンの影響を受けたフリー・ジャズのアルバムが有名だが、それは、Impulse!レーベルを部分的にしか見ていないことになる。

Oliver Nelson『The Blues and the Abstract Truth』(写真)。邦題『ブルースの真実』。1961年2月23日の録音。ちなみにパーソネルは、Oliver Nelson (as, ts), Eric Dolphy (fl, as), George Barrow (bs), Freddie Hubbard (tp), Bill Evans (p), Paul Chambers (b), Roy Haynes (ds)。凄いメンバーで固めた七重奏団である。

このアルバム、それまでのジャズの歴史を総括して、1961年時点でのジャズの一番良いところを取り出して、アルバムに仕立て上げた様な、非常にメインストリーム・ジャズした好盤である。基本はハードバップ。時々、アブストラクトに傾きかけたりするが、そこはグッとこらえて、非常に洗練された、自由度の高い「ハードバップ」な演奏が繰り広げられている。
 

The_blues_and_the_abstract_truth  

 
パーソネルを見渡せば、モード・ジャズの申し子的ジャズメン、例えば、ドルフィーとかハバードが名を連ねているが、この盤では決して、アブストラクト&フリーに走ることは無い。自らの技倆の最大限を尽くして、ユニゾン&ハーモニーを、アドリブ・フレーズを紡ぎ上げていく。どの演奏も上質のハードバップが繰り広げられていて、思わず惹き込まれる。

この盤のハードバップは、音の「質」がちょっと違う。理路整然としていて、アーティスティックな雰囲気漂うもの。これは、リーダーのオリヴァー・ネルソンのアレンジによるもの。タイトル通り、ブルースのムードや構造を探求してはいるが、ブルースにおけるハーモニーのシンプルさ・繊細さにフォーカスを当てていて、単純なブルース集になっていないところが実に「アーティスティック」である。

ソロを取らない、ジョージ・バローのバリサクが演奏全体の雰囲気の鍵を握る。Rudy Van Gelderの録音も良く、インパルスらしい太く芯の入った切れ味の良い音が、この優れたアレンジによるブルースな演奏をさらに惹き立てる。優れたアレンジによるメインストリーム・ジャズの好例である。

 
 

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2015年6月 9日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・44

春から夏へ。陽気が良くなるにつれ、ハードで硬派なジャズが恋しくなる。この傾向って僕だけかなあ。ハードで硬派なジャズ、そして、アブストラクトなジャズとなると「エリック・ドルフィー」が聴きたくなる。

エリック・ドルフィーは大好きなジャズメンの一人。なぜかジャズ者新人駆け出しの頃からのお気に入り。あの好意的に捻れた、突拍子も無いフレーズに溢れたドルフィーのアルトとフルートは、何処から聴いても堪らない魅力に溢れている。少なくとも、僕にとっては・・・。

さて、今日はそのエリック・ドルフィーのリーダー作では無いのだが、ドルフィーの参加した異色作をご紹介したい。そのアルバムとは、Ken McIntyre with Eric Dolphy『Looking Ahead』(写真左)。1960年6月の録音。

ちなみにパーソネルは、Ken McIntyre (as, fl), Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Walter Bishop Jr. (p), Sam Jones (b), Art Taylor (ds)。前衛的なフロントの二人に、旧来からのリズム・セクションという不思議な組合せ。これでは「組合せの妙」は望めないのでは、と危惧する。

エリック・ドルフィーについては、その強すぎる個性がゆえに、彼のフォロワーについては現れ出でることは無かった。まあ、いったいどうやってイメージし、どうやって出すんだ、と深く考え込んでしまうような、好意的に捻れた、突拍子も無いフレーズである。この突拍子も無い個性をフォローしろ、っていうほうが無理難題というもんだ。
 

Mcintyre_looking_ahead

 
しかし、このアルバムを聴くと、このアルバムのリーダーであるケン・マッキンタイア(Ken McIntyre)はドルフィーのフォロワーだったのでは無いか、と思ってしまう。それほどまでに、マッキンタイアのアルトとフルートはドルフィーをよくフォローしている。

このアルバムでの、マッキンタイアとドルフィーのユニゾン&ハーモニーを聴いていると、ほとんど兄弟の様な似通いようである。良く聴くと、ドルフィーよりもマッキンタイアの方が単純で明るい捻れ方をしている。フレーズの跳ね方もマッキンタイアの方が常識的ではある。それでも、マッキンタイアのブロウは他のアルト奏者とは一線を画する。

ドルフィーを判り易く単純にして、マイナーに捻れるフレーズをメジャーに捻り直した様なフレーズがこのアルバムのマッキンタイアの特徴である。ドルフィーも、このマッキンタイアの個性を十分に理解して、マッキンタイアの個性を優先している。この辺がドルフィーの素晴らしいところ。アルバム全体を無意識にプロデュースしている。

ドルフィー者にとって、このアルバムは実に興味深い内容です。ドルフィーにはフォロワーがいないと思っていたところに、このマッキンタイアを聴いて、なんや、ここにフォロワーがいたやないか、と思わずビックリしてしまうような、とても異色なアルバムです。

まず、ケン・マッキンタイアという名前が珍しいのですが、ドルフィーの参加するアルバムとして興味本位で聴いて、その内容に「あらビックリ」(笑)。思わず心から「こんなアルバムあったんや」と叫びたくなるような、個性溢れるアルバムです。

 
 

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2015年5月11日 (月曜日)

「正装」のエリック・ドルフィー

いつも感心することなんだが、ブルーノートというレーベルは素晴らしい。1950年代から1960年代にかけて、これはというジャズメンについて、必ず1枚はリーダー作をリリースしている。

しかも、総帥のアルフレッド・ライオンは、駆け出しの時代のジャズメンの演奏を自らの耳で演奏を聴き、しっかりとその才能に着目して、リーダー作のレコーディングを勧めているのだ。

このアプローチに感じ入ることが無いジャズメンなんていない。皆、感じ入って、才能のある若手が気合いを入れて、レコーデディングに赴くのだ。しかも、ブルーノートはリハーサルにまでギャラを払う。しかも、満足いくまでリハーサルをすることができる。その内容は悪かろう筈が無い。

エリック・ドルフィーについても、唯一枚、ブルーノートにリーダー作を残している。これがまだ素晴らしい内容なのだ。そのアルバムとは、Eric Dolphy『Out to Lunch!』(写真左)。1964年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (b-cl, fl, as), Freddie Hubbard (tp), Bobby Hutcherson (vib), Richard Davis (b), Tony Williams (ds)。皆、当時、尖ったジャズメンばかりである。

このブルーノートのエリック・ドルフィーが実に良いのだ。さすがにブルーノートでのリーダー作である。リハーサルを十分に積んだことが容易に想像できる、非常に整った内容である。まず、素晴らしいのがサイドメンの面々。ドルフィーの個性的なフレーズの展開をリハーサル中にしっかりと読んで、本番で、ドルフィーに追従し、ドルフィーに比肩する自由度の高いアドリブ・フレーズを連発する。

とりわけ、ハッチャーソンのヴァイブが素晴らしい。ハッチャーソンのヴァイブは意外とアバンギャルドである。ドルフィーの個性的な展開の癖を良く読んで、ドルフィーのフレーズに追従するヴァイブを展開する。打楽器に近い旋律楽器が特徴である、ヴァイヴの面目躍如である。運指がベースの楽器には無い、意外な音飛びにハッとする。
 

Out_to_lunch

 
ベースのリチャード・デイヴィスも、ドルフィーのブクブク・フレーズに追従するような、おどろおどろしいベースが実に良い。ドルフィーの個性を良く掴んだベース・ラインにワクワクする。

トニー・ウィリアムスのドラムは言うまでも無い。ドルフィーの個性的なフレーズに絶対に合う。このトニーのドラミングが凄い。ドルフィーの個性を十分に読み取って、ドルフィーのフレーズに呼応するようなドラミングを繰り広げる。これって凄い。

惜しいのは、ハバードのトランペット。素晴らしいテクニックの持ち主なので、ドルフィーの個性を読み取って、どんなフレーズを展開するかと思いきや、意外と普通のフレーズを展開していて平凡。ドルフィーのフレーズをこんな感じかなあ、って適当に見切って、吹きやすいフレーズをパラパラって感じで、どうにも感心できない。

ドルフィーは絶好調。さすがブルーノートでの録音である。良い意味で、端正な佇まいのドルフィーのフレーズが聴ける。各収録曲にドルフィーの個性的なフレーズが散りばめられており、ドルフィーの個性のショーケースの様なアルバムに仕上がっていて立派だ。ドルフィーの個性が整った形で聴き込める、アーティスティックな好盤である。

このブルーノートの『Out to Lunch!』は正装のドルフィーが聴ける。しかも、このアルバムのジャケットが秀逸。ドルフィーの音世界の特徴を良く捉えた、秀逸なジャケット・デザインである。ジャケットから内容まで、実に良く出来た「ブルーノートのドルフィー」である。

 
 

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