2023年8月17日 (木曜日)

力強くも優しいオルガン・ジャズ

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。もともと、マイルスの紹介で、オルガンの神様「ジミー・スミス」をデビューさせ、ドル箱人気オルガニストに育て上げた実績があるブルーノートである。オルガン・ジャズには他のどのレーベルよりも造詣が深い。ニッチなジャズ・オルガンではあるが、ブルーノートのカタログには、多くのオルガニストのリーダー作が散見される。

オルガンジャズの神様、ジミー・スミス。デビュー当時は「思いっきり尖ったアグレッシブな、実に攻撃的な」オルガン。半ば辺りで、圧倒的テクニックはそのままに、力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」ジャズ路線に舵を切る。そして、1962年、大手レーベルのヴァーヴ・レコードへ移籍する。

Jimmy Smith『Softly As A Summer Breeze』(写真左)。1958年2月26日の録音。ブルーノートの4200番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell (g, tracks 1–4), Eddie McFadden (g, tracks 5-6), Philly Joe Jones (ds, tracks 1–4), Donald Bailey (ds, tracks 5-6)。基本は、スミスのオルガンに、ギター、ドラムというオルガン・トリオ編成。

オリジナル盤は全6曲。1998年のCDリイシュー時に、1958年10月14日録音の4曲が追加されているが、オルガン・ジャズでありながら、何故か男性ボーカルが入っている、ちょっと違和感のある音源なので、ここでは割愛させていただく。以下、この盤の感想については、オリジナルの6曲で語りたいと思う。
 

Jimmy-smithsoftly-as-a-summer-breeze

 
この盤はブルーノート・レーベルお得意の「理由が良く判らないが、何故かお蔵入り」な盤の1枚。リリースは1965年だが、この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」音源では無い。1958年の録音で、『The Sermon』と『Home Cookin'』の間に入る録音になる。ブルージーでアーバンな雰囲気のもと、聴かせるオルガン・ジャズに落ち着いた頃の音源である。

雰囲気的には『Home Cookin'』の流れ。気負いの無い、リラックスしたジミー・スミスのオルガンがとてもジャジー。ファンクネスもコッテリ効いていて、まさに「大人のジャズ」。ミッドナイトでアーバンな雰囲気を増幅するのは、ケニー・バレルとエディ・マクファデンのギター。落ち着いたスミスのオルガンとアーバンなバレルとマクファデンのギターが絡んで、ブルージーな雰囲気が蔓延する。

ドラムがフィリー・ジョーなのが珍しい。フィリー・ジョーのひかえめハードボイルドなバップ・ドラム。ジミー・スミスと言えば、ドラムは「ドナルド・ベイリー」なので、このフィリージョーのドラムは異色。ベイリーとは明らかに違う。それでも、さすがは名手フィリージョー、ブラシによるシンバル・ワークなど、ドラムの達人らしい技を披露しつつ、フロントのスミスのオルガンを引き立てる。

当時、1958年に録音されて8年間眠っていて、1965年になって発表された未発表音源。フィリー・ジョーとの共演が4曲しか無かったので、やむなくお蔵入りになったのかもしれない。力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる「ポップで聴き易い」内容が素敵なオルガン・ジャズ盤です。
 
 

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2023年8月16日 (水曜日)

軽快で聴き易いオルガン・ジャズ

4100番台はもう15年程前に「聴く」ことについて、つまりアルバムの蒐集についてはコンプリートしているのだが、当ブログでの「感想記事」についてはコンプリートしていない。現在、せっせと「記事」の落ち穂拾いをしているのだが、ブルーノートの4100番台の「記事」の落ち穂拾いも「あと8枚」。あと8枚で、当ブログの「記事化」のコンプリートである。

Big John Patton『Oh Baby!』(写真左)。1965年3月8日の録音。ブルーノートの4192番。ちなみにパーソネルは、Big John Patton (org), Blue Mitchell (tp), Harold Vick (ts), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。オルガンのジョン・パットンがリーダー、ミッチェルのトランペット、ヴィックのテナーがフロント2管、グリーンのギター、そして、ディクソンのドラム。パットンがオルガンでベースの役割も兼ねるので、ベースレスのクインテット編成。

ビッグ・ジョン・パットンの4枚目のリーダー作になる。ジョン・パットンはデビュー盤以来、1960年代はブルーノートのハウス・オルガニストの位置づけ。リーダー作は全てブルーノートから、サイドマンとしては、アルト・サックスのルー・ドナルドソン、ギターのグラント・グリーンに絞って参加している。
 

Big-john-pattonoh-baby

 
ジョン・パットンのオルガンは、従来のファンクネスだだ漏れのネチっこいオルガンでは無く、軽快でテクニカル。この盤では、パットン・グリーン・ディクソンのオルガン・リズム隊が、軽快なファンクネスとソウルフルが疾走するかの如く、
ライトで乾いたグルーヴ感を醸し出していて、このジャズの多様化の時代、聴き易いソウルフルなオルガン・ジャズのお手本の様な内容。いわゆる「ながら」の如く、気楽に聴かせるオルガン・ジャズなのだ。

そこに、演奏の旋律をハッキリくっきりする様、ブルージー&ファンキーなトランペットのミッチェルと、ジャズとR&Bを股にかけるソウルフルなテナーのヴィックが効果的に吹きまくる。アドリブ展開もこのフロント2管が良いアクセントとなって、全編通して、オルガン・ジャズとしてマンネリに陥ることは無い。あっという間に聴き切ってしまう。

グリーンのギターのバッキングは絶妙。ディクソンのドラミングは軽快でファンキー。ちなみに、パットンのオルガンに派手な仰々しさが無いのは、レスリー・スピーカーを使用していないからだろう。このライトで乾いたグルーヴ感満載のオルガンがパットンの身上。オルガン特有の「コッテコテ」な雰囲気は皆無。ジャズロック志向でまとめられた好盤です。
 
 

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2023年8月15日 (火曜日)

フレディ・ローチの「教会音楽」

ブルーノートの4100番台は、ハードバップが成熟した後の「ジャズの多様化の時代」を反映したラインナップが素晴らしい訳だが、4100番台の終わり頃には、「正」の多様化であるファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなどがあれば、多様化の度が過ぎて、モダン・ジャズの範疇を飛び出た不思議な内容のアルバムも出現している。

Freddie Roach『All That's Good』(写真左)。1964年10月16日の録音。ブルーノートの4190番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Conrad Lester (ts), Calvin Newborn (g), Clarence Johnston (ds), Marvin Robinson, Phyllis Smith, Willie Tate (vo)。

フレディ・ローチのオルガンは端正で堅実。「ハモンド・オルガン」らしい、くすんだ伸びのある音は、とてもファンキー。ブルノートで初リーダー作『Down to Earth』を録音して以降、『Mo' Greens Please』『Good Move!』と、その端正で堅実でファンキーなオルガンで、変な癖が無く、端正で堅実でファンキーで「聴き易いオルガン・ジャズ」盤のリリースを重ねてきた。

が、4枚目のリーダー作『Brown Sugar』から、その演奏の志向が大きく変化した。モーダルなソウル・ジャズを志向し始めた。モーダルでクールな雰囲気漂う、乾いたファンクネスを湛えた、ご機嫌でユニークなソウル・ジャズが展開し始めた。

そして、ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』に参加。ここで、バードの「ホーリーでゴスペルチックな教会音楽志向のソウル・ジャズ」の感化された様で、この『All That's Good』は、そのバードの教会音楽志向のソウル・ジャズの流れを踏襲している様に感じる。
 

Freddie-roach_all-thats-good

 
この盤は、ジャケに写る様な女声コーラス隊が加わった、怪しげなゴスペル調の楽曲が目立つコンセプチュアルな内容のアルバム。この女性コーラス隊のゴズペル調のコーラスが正統なゴスペル風な歌声では無く、バンシー(banshee)=家族に死人が出ることを泣いて予告する女の精霊の様な、軽妙で浮遊する様な歌声なところが、少し不気味でもあり、そこはかとなく「違和感」を感じるところ。これは、バードの『I'm Tryin' To Get Home』に酷似している。

この女性ボーカルの歌声が気に入るか否かで、この盤の評価は変わるだろう。ジャジーではあるが、この盤の内容はモダン・ジャズの範疇をはみ出して、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」な内容である。

ドナルド・バードの『I'm Tryin' To Get Home』は、ビッグバンドのアレンジで、辛うじてモダン・ジャズの範疇に軸足を留めたが、このローチの『All That's Good』は、バックの演奏メンバーの顔ぶれも含めて、明らかにモダン・ジャズの範疇を飛び出している。この盤をジャズ盤としてリリースしたのは、ブルーノート・レーベルならではの仕業だろう。他のレーベルではちょっと難しかったのではないか、と思ってしまう。

ちなみにジャケに写る女性6人は、「Grandassa Models」と呼ばれる、1960年代から1970年台にかけて、NYのハーレムで開催されたアフリカ系アメリカ人女性の美を競うコンテストに参加した面々の中から選抜された6人らしい。

もしかしたら、このアルバム、そんなアフリカ系アメリカ人女性モデルの人気とタイアップした「教会音楽志向のソウル・ジャズ」だったのかもしれない。それならば合点がいく。いわゆる「一過性の流行音楽」。確かにこの後、このゴスペルチックな女性ボーカルを活かしたソウル・ジャズのフォロワーは現れ出でてはいない。
 
 

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2023年8月 8日 (火曜日)

オルガンのコルトレーンの出現

ブルーノート・レーベルは「オルガン・ジャズ」が得意。ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスを見出して(マイルスから紹介されたみたい)、リーダー作を録音させ、オルガン・ジャズの人気者に仕立て上げたのが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオン。

つまり、ライオンがジャズ・オルガンについて造詣が深かったが故、ブルーノートは、ジミー・スミスの後に出てくる有望なオルガニスト達をキャッチしてはリーダー作を録音させた訳で、1950年代から1960年代のジャズ・オルガンの歴史については、ブルーノートのカタログを押さえておけば良いくらいなのだ。

Larry Young『Into Somethin'』(写真左)。1964年11月12日の録音。ブルーノートの4187番。ちなみにパーソネルは、Larry Young (org), Sam Rivers (ts, #1-4), Grant Green (g), Elvin Jones (ds)。「オルガンのコルトレーン」の異名をとるラリー・ヤングのブルーノートでのデビュー盤。

ラリー・ヤングはブルーノートでリーダー作を出す前、3枚ほど、他のレーベルからリーダー作をリリースしているが、ヤングのオルガンの個性がハッキリと記録されているのは、この盤以降のブルーノート盤だろう。加えて、サイドマンも厳選されていて、このブルーノートでのデビュー盤には、ヤングのオルガンの個性が溢れている。

オルガンによるモーダルなフレーズ、オルガンによる「シーツ・オブ・サウンド」、オルガンによるエモーショナルな展開、確かに「オルガンのコルトレーン」と呼ばれるのが、実に良く判る。この盤を聴けば直ぐに判るのだが、ヤングのオルガンは、既にジミー・スミスのオルガンとは全く異なる。つまり、ジミー・スミスの影響下に無い、当時として「新しいオルガンの響き」なのだ。
 

Larry-younginto-somethin

 
新主流派の時代を感じさせるモードなオルガン&演奏。フロントのパートナーの1人として、グラント・グリーンがいるのだが、パッキパキ硬質でファンクネスだだ漏れのシングルトーンのグリーンが、モーダルなジャズに何故いるのか、と思われる方がいると思うが、実はグラント・グリーンは、モード・ジャズも「いける」。

例えば『Idle Moments』で「Jean de Fleur」という完璧モーダルな秀曲を書いているし、本作2曲目の「Plaza De Toros」はモーダルな曲だが、これはグラント・グリーンによる作曲。

テナーのサム・リヴァース、ドラムのエルヴィン・ジョーンズは言わずもがな。このテナーとドラムは「モード・ジャズの申し子」的存在で「安心」。

それまでの「ファンクネス濃厚でソウルフルなオルガン」では無く、「モーダルでストイックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」は実にユニーク。「ファンクネス濃厚でソウルフルなオルガン」は、ジミー・スミスによって、深化の余地が無い位に完成されている。現代のジャズ・オルガンは、この「モーダルでアーティスティックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」を深化させているケースが大多数。

そういう意味でも、このラリー・ヤングの「モーダルでストイックでどこか欧州ジャズ的なオルガン」の出現は、オルガン・ジャズにとって重要な出来事だった。オルガンという楽器の可能性を広げ、深化の方向性を提示した。もっと評価されても良い、ラリー・ヤングのジャズ・オルガンの存在意義だろう。
 
 

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2023年7月19日 (水曜日)

スマートなオルガン・ジャズ。

ブルーノート・レーベルは、オルガン・ジャズの宝庫である。1500番台から、4000番台、4100番台、4200番台と、カタログを見渡せば、要所要所のオルガン・ジャズ盤が存在する。しかも、ジャズ・オルガニストのメンバーが豊富。ジミー・スミスばかりがクローズアップされるが、他にパットン、フェイス、ローチ、マクグリフ、スミス、ウィルソンなど、オルガニストを多く抱えている。

"Big" John Patton『The Way I Feel』(写真左)。1964年6月19日の録音。ブルーノートの4174番。ちなみにパーソネルは、"Big" John Patton (org), Richard Williams (tp), Fred Jackson (ts, bs), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンのリーダー作第3弾。

1960年代、ブルーノートのハウス・オルガニストとして多くのソウル・ジャズ盤に参加したジョン・パットン。このリーダー作第3弾では、初リーダー作以来のフレッド・ジャクソン、初リーダー作からずっとのグラント・グリーンの参加で、この盤も、おおよそ「ソウル・ジャズ」志向であることが判る。 
 

Big-john-pattonthe-way-i-feel

 
全体を見渡すと、とても聴き易いファンキー&ソウル・ジャズ。全曲がパットンの自作曲で占められている。弾き易かったのだろうか。前2作に比べて、スイング感とファンクネスは軽め、どこか洗練されたスマートな弾き回しと、ポップで親しみ易いフレーズがこの番の特徴。各曲、突出した個性は無いが、一様にポップで親しみのあるファンキー&ソウル・ジャズが展開される。

冒頭の「The Rock」のソウルフルでエモーショナルで雰囲気に思わずグッとくる。ウィリアムス~パットン~ジャクソンが繰り出す、ファンキー&ソウルなソロがたまらなくエモい。ホーン2本を抜いて、オルガン、ギター、ドラムのトリオで演奏した4曲目「Davene」がスマートで「粋」。ファンクネスを湛え、ライトでソウルフルなフレーズをオルガンとギターが繰り出す。

有名なスタンダード曲が無いので、どこか掴みどころの無い、ちょっと地味な印象の盤という向きもあるが、その分、明らかにファンキーなハモンド・オルガン奏者、ジョン・パットンの持つ、本来の個性を堪能することが出来る好盤だと思う。ゆったりとしたファンキーでソウルフルな雰囲気が堪らない。良い雰囲気のオルガン・ジャズ。
 
 

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2023年6月28日 (水曜日)

モーダルなソウル・ジャズです。

ブルーノート・レーベルの4100番台は、成熟したファンキー・ジャズ、そこから派生したソウル・ジャズの好盤が結構存在している。しかし、そこはブルーノート、易きに流れた、売らんが為の内容のアルバムは一切無い。少なくとも、過去を振り返った、過去の成果をなぞったものは無い。その時代の先端を行く、内容の濃いものばかりである。

Freddie Roach『Brown Sugar』(写真左)。1964年3月19日の録音。ブルーノートの4168番。ちなみにパーソネルは、Freddie Roach (org), Joe Henderson (ts), Eddie Wright (g), Clarence Johnston (ds)。ウネウネなモード・テナーのジョー・ヘンダーソンの1管フロント、ギター入りのオルガン・トリオがリズム・セクションを務める。

当時、ブルーノートほぼ専属のオルガニスト、フレディ・ローチのソウルフルな1枚。しかし、ただの聴き応えの良いソウル・ジャズでは無い。フロント1管に、モード・テナーの使い手の1人、ジョーヘンがいる。グルーヴ感満載のローチのオルガンと、ウネウネモードのジョーヘンのテナー。不思議な響きのするソウル・ジャズである。

グルーヴ感溢れるファンクネス度の高いオルガン・ジャズなんだが、どこかクールな雰囲気が漂う。とてもクールでスマートなソウル・ジャズ。ジョーヘンのウネウネモードのテナーが、その雰囲気を醸し出している。

そして、グルーヴ感溢れ、ファンクネス濃厚、ソウルフルなローチのオルガンが、モーダルな響きを漂わせたジョーヘンのテナーに歩み寄る。逆に、ジョーヘンは、モーダルだがソウルフルなフレーズで、ローチのオルガンに歩み寄る。
 

Freddie-roachbrown-sugar

 
この盤の中に、モーダルなクールな雰囲気漂うソウル・ジャズが詰まっている。ユニーク極まりない響き。そして、そのクールさを最大限に活かして、ソウルフルなイージーリスニング・ジャズまでもが展開される。

ファンクネス滴り落ちるソウルフルなジャズ・オルガン。売れ筋のこってこてファンキーなオルガン・ジャズになるのが本筋なんだが、ブルーノートではそうはならない。

モーダルなテナーをフロント1管に据え、ギターを入れて、リズム&ビートを強化。ここに、モーダルでクールな雰囲気漂う、乾いたファンクネスを湛えた、ご機嫌でユニークなソウル・ジャズが展開されている。

ブルーノートならではのソウル・ジャズ。しかし、ファンクネス滴り落ちるソウルフルなジャズ・オルガンに、こってこてモーダルでウネウネなテナーを引き合わせるなんて、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンって凄いことを発想したもんだ、と単純に感心する。

ジャケはブルーノートらしからぬ、俗っぽくてコテコテなデザイン。これだと、こってこてファンクネスなオルガン・ジャズを想起するが、そうはならないところが、この盤のユニークなところ。中身は、意外と硬派な「モーダルなクールな雰囲気漂うソウル・ジャズ」が詰まっている。
 
 

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2023年6月19日 (月曜日)

ソウル・ジャズなオルガン盤

ジミー・スミス(Jimmy Smith)は、1950年代から1960年代の初めまで、ブルーノート・レーベルの「ドル箱」ジャズマンだった。ジミー・スミスは、ジャズ・オルガンの祖。ジャズ・オルガンの歴史は、ジミー・スミスの出現から始まったと言って良いかと思う。

ジミー・スミスの伝説は、マイルスがブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンに紹介したところから始まる。ライオンはスミスのオルガンに惚れ込み、1956年から1962年の6年間に、なんと20枚以上のリーダー作をリリースしている。年に3枚以上のペースでのリリースで、これはこれで驚きだが、セールス的にも十分な実績を残したというのだから、これもこれで驚きである。

1962年、スミスは破格の好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が見出し育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくのは面白く無いはずだが、なんと、ライオンは一切止めること無く揶揄すること無く、喜んで送り出した。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音をストックとして残していった。

Jimmy Smith『Prayer Meetin'』(写真左)。1963年2月8日の録音。ブルーノートの4164番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds)。スミスのそんな「鶴の恩返し」的レコーディング・ストックの1枚。相性の良いフロント管、スタンリー・タレンタインのテナー・サックスとの共演盤である。
 

Jimmy-smithprayer-meetin

 
1950年代のデビューから暫くは、硬派でバップな、そして、ハイ・テクニックなオルガンでブイブイ言わせていたのだが、1960年の『Crazy! Baby』あたりから、歌心と味のある「聴かせる」オルガンへシフト。さらに人気が高まり、1961年『Midnight Special』の大ヒットを生む。

そして、この『Prayer Meetin'』は、その『Midnight Special』の雰囲気を踏襲する、「聴かせる」ソウルフルなオルガン・ジャズで統一されている。

もともとテクニック抜群、流麗でバップなフレーズを紡ぎ出すのが得意なオルガニストである。そこに歌心が加われば、無敵である。そんな「じっくり聴かせる」歌心溢れるオルガンがギッシリ詰まっている。

そして、その歌心溢れるスミスのオルガンをがっちりサポートし、がっちりと引き立てているのが、タレンタインのテナー・サックス。スミスがポップなオルガンを弾けば、硬派な男気溢れる漆黒テナーをタレンタインが吹き、スミスが硬派でストイックなフレーズを弾けば、タレンタインはポップで悠然としたフレーズで応える。この2人のアンサンブルとインタープレイが良い感じ。相性が良いんでしょうね。

1960年代前半、ジャズの「多様化」の時代のニーズに合わせた様な、ちょっとポップで歌心溢れる「聴かせる」ソウル・ジャズがこの盤に詰まっています。ジャズの即興の妙など、刺激的な要素は希薄ですが、とにかく聴いていて心地良く、聴いていて楽しい。聴いて楽しい、リラックスして聴き込める、極上のソウル・ジャズなオルガン盤です。
 
 

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2023年5月10日 (水曜日)

最後のブルーノートのスミス盤

ジャズ・オルガンと言えば、まずは「ジミー・スミス(Jimmy Smith)」である。オルガンをジャズのメイン楽器として定着させ、ジャズ・オルガンの音色・奏法・テクニックの基準・標準を確立させたレジェンド・ジャズマン。ジャズ・オルガンの開祖は、このジミー・スミスであり、ジャズ・オルガンの「最初の基準」である。

ジミー・スミスは、マイルスに紹介され、ブルーノートの総帥ディレクター、アルフレッド・ライオンに見出され、ブルーノートからアルバム・デビューしている。1956年の初リーダー作以来、ブルーノート一本槍。

1962年、さらなる好条件を提示した大手レーベル・ヴァーヴに移籍する。自分が育てたジャズマンが条件の良い大手レーベルに移籍していくことを、ライオンは一切止めることは無く、喜んで送り出したくらいだそう。スミスはその恩義を忘れず、かなりの数の優れた内容の録音を残していった。

Jimmy Smith『Rockin' the Boat』(写真左)。1963年2月7日の録音。ブルーノートの4141番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Lou Donaldson (as), Quentin Warren (g), Donald Bailey (ds), "Big" John Patton (tambourine, tracks 2, 3 & 6)。録音日から見て、この盤は、大手レーベル・ヴァーヴに移籍する直前、ブルーノート契約配下での「最後の録音」の1つになる。

 
Jimmy-smithrockin-the-boat

 
寛いだファンキーなオルガン・ジャズ。ギターのクエンティン・ウォーレン、ドラムのドナルド・ベイリーは、昔から馴染みのリズム隊。このトリオ演奏だと「またか」的な、ちょっと飽きだぞ、という印象になるが、この盤はそうはならない。ゲスト参加的位置づけのフロント1管、ルーさんのアルト・サックスが良いアクセントになっている。

ルーさんのアルト・サックスは、ファンキーで「ネアカ」でブリリアントで溌剌とした音色なので、ジミー・スミスのオルガンの音に負けることは無い。ジミー・スミスは、フロント管がいる場合、フロント管を鼓舞しサポートする役回りに積極的に対応するので、フロント管不在の時の弾きすぎる、攻撃的なオルガンは程良く押さえられて、とっても趣味の良い、リラックスして楽しげにオルガンを弾くジミー・スミスが聴ける。

ゴスペル、C&W、R&B、ブルース、ソウル、カリプソの要素を取り込んだ、ファンキーなオルガン・ジャズが聴いていて楽しい。時代は「ジャズ多様化の時代」。ジミー・スミスとアルフレッド・ライオンは、この盤では「娯楽音楽としてのファンキー・ジャズ」を追求し、ものにしている。

どう転んでも「売れる」盤としたかったのではないか、と睨んでいる。この時期、一連のブルーノートでの録音を残して、ジミー・スミスはヴァーヴに移籍する。この盤に収録された音源は、ジミー・スミスのブルーノートに対する「感謝の置き土産」である。 
 
 

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2023年4月19日 (水曜日)

聴き直して「良いものは良い」

21世紀に入って、ジャズはまだまだ「深化」を続けている。20世紀、特に1950〜60年代の様に、ジャズの新しい演奏トレンド、例えば、モードやフリー、スピリチュアルなどの様な革新的な内容の演奏トレンドはもはや現れないとは思うが、これまでのジャズ演奏を彩った演奏トレンドを「深めていく」動きは衰えていない。

Bernstein, Goldings, Stewart『Perpetual Pendulum』(写真左)。2021年7月15ー16日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Larry Goldings (org), Peter Bernstein (g), Bill Stewart (ds)。ラリー・ゴールディングスのオルガン、ピーター・バーンスタインのギター、ビル・スチュワートのドラムで編成されたオルガン・ジャズ・トリオ。ジャケットを見ればすぐ判る「Smoke Sessions Records」からのリリース。改めての聴き直しである。

1980年代後半から、長年、セッションを重ねてきた3人のトリオ演奏。硬軟自在、緩急自在、変幻自在なスチュワートのドラミングが「肝」。そんな切れ味の良いドラミングに鼓舞されて、ゴールディングスがオルガンを、バーンスタインがギターを弾きまくる。魅力的なオルガンとギターのユニゾン&ハーモニー、そしてチェイス。曲毎に展開されるアドリブ合戦も聴いていて楽しいことこの上無い。
 

Perpetualpendulum_2  

 
演奏曲は全11曲。メンバーそれぞれの自作曲とスタンダード曲が上手く織り込まれていて、良い感じのアルバムに仕上がっている。それぞれのオリジナル曲の演奏も良い出来だが、とりわけ、スタンダード曲の解釈と演奏が白眉で、過去の演奏のコピーや焼き直しに陥っていないのには感心する。オルガン・ギター・ドラムのトリオ演奏は過去にごまんとあるんだが、この3人のスタンダード曲の解釈は新しい。

「Come Rain or Come Shine」は、オルガンの音色とギターの音色の特質を活かしたソロの受け渡しがユニーク。エリントンの「Reflections in D」は典雅なフレーズ、ロマン溢れる雰囲気が秀逸。バーンスタインの曲「Little Green Men」は劇的に突っ走る。タイトル曲「Perpetual Pendulum」は小粋な味のある演奏。いずれも、モーダルで理知的、それでいて、スインギーでブルージーな展開には感心させられる。

以前から「ごまんとある」オルガン・ジャズ・トリオだが、このバースタイン、ゴールディングス、スチュワートのトリオは、過去の音楽成果を焼き直したり、真似したりはしていない。紡ぎ出すフレーズの響きも新しいし、スタンダード曲の解釈も3人の個性を最大限に活かしたもので、他には無い響きがある。ネオ・ハードバップと一括りされそうな演奏であるが、実は内容的には「温故知新」。この現代ジャズにおける中核の3人、全く隅に置けない。
 
 

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2023年4月 8日 (土曜日)

味のあるスコットのオルガン

ブルーノート・レーベルは、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの卓越した本質を見抜く感性のもと、当時からオルガン・ジャズに長けていた。オルガンの醸し出すファンクネスとグルーヴが聴き手にしっかりと訴求する、ということを見抜き、1950年代、1500番台のジミー・スミスの重用から、オルガン・ジャズをしっかりと録音してきた。

Stanley Turrentine『Never Let Me Go』(写真左)。1963年1月28日と2月13日の録音。ブルーノートの4129番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Shirley Scott (org), Major Holley (b, tracks 1-5 & 7), Sam Jones (b, tracks 6 & 8), Al Harewood (ds, tracks 1-5 & 7), Clarence Johnston (ds, tracks 6 & 8), Ray Baretto (congas)。

スタンリー・タレンタインの単独名義のリーダー作だが、当時、夫婦だったスタンリー・タレンタインとシャーリー・スコットの共演盤になる。2つのセッションからの選曲で、ベースとドラムが、それぞれのセッションで異なるジャズマンが担当しているが、音の大勢に影響は無い。逆に、レイ・バレットのコンガの参加が、タレンタインとスコットの持つファンクネスを増幅していて、実に効果的。

音の傾向としては、タレンタインお得意の「どっぷりソウルフルで骨太なファンキー・ジャズ」では無く、スコットの「明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」な雰囲気が強い。夫婦の共演だが、どちらかと言えば、細君のシャーリー・スコットのオルガンの個性を活かす方向のアレンジで、この盤はまとめられている。夫君のタレンタインが細君のスコットの音の個性に寄り添う恰好になっている。
 

Stanley-turrentinenever-let-me-go

 
つまり、この盤では、明るくポップで軽快なタレンタインのテナー・サックスが聴ける訳で、太くて低音をブライアントに響かせるソウルフルなテナーが、明るくポップで軽快なオルガンの醸し出すリズム&ビートに乗って唄うのだ。意外とキュートでライトなテナーを吹くタレンタイン。やはり一流のテナーマン、演奏テクニックの引き出しの多さに感心する。

シャーリー・スコットのオルガンは、フット・ペダルでベースラインを代替することはしないので、この盤のセッションではベーシストが必ず入っている。やはり、低音のリズム&ビートを司る専門のベースが入っている分、演奏全体のベースラインが多彩で、なかなか内容の濃い、テクニックの高いファンキー・ジャズに仕上がっている。「明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」だが、しっかりと音と対峙する鑑賞に耐える内容なのには感心する。

軽快に飛ばすスタンダード曲の「Without A Song」、歌心溢れるタレンタインのテナーとグルーブ感溢れるスコットのオルガンが出色の出来の、ミュージカル「ジプシー」の挿入曲の「You'll Never Get Away From Me」、スコット作のタイトル曲も良い出来。収録された全ての曲が明るくポップで軽快なファンキー・ジャズ」としてまとめられていて、アルバム全体の統一感も良好。

スタンリー・タレンタインの単独名義のリーダー作だが、シャーリー・スコットのオルガンの個性、「明るくポップで軽快なファンキー」な個性がしっかり記録された好盤。当時、夫君だったタレンタインも、そんなスコットの個性を引き立たせる側に回っていて好演。なかなか味わい深い「オルガン・ジャズ」盤です。
 
 

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