2021年12月12日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・224

僕のお気に入りのサックス奏者の1人だった「ボブ・バーグ(Bob Berg)」。ボブ・バーグが急逝したのが19年前、2002年12月5日のこと。バーグはニューヨーク州イースト・ハンプトンで自宅近くを運転中に、セメント・トラックに追突されて死亡した。51歳。ジャズ・ミュージシャンとしては「これから成熟度を増していく」年齢だった。

バーグのサックスは、メインストリーム系の「実直で正統な」もので、ダイナミックな吹きっぷりが個性。特に自由度の高いモーダルな展開における高い演奏力には一目置くべき存在。全音域を駆使しつつ、歌心のあるサックスは、実にオーソドックス。そのテクニックとともに、聴き始めると、ついつい引き込まれてしまうような、不思議な魅力のあるサックスである。

Bob Berg, Randy Brecker, Dennis Chambers, Joey DeFrancesco『The JazzTimes Superband』(写真左)。January 28 & 29, 2000年1月28, 29日、NYでの録音。コンコード・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、 Bob Berg (sax), Randy Brecker (tp, Flh), Dennis Chambers (ds), Joey DeFrancesco (org), Paul Bollenback (g)。

ボブ・バーグのサックス、ランディ・ブレッカーのトランペットがフロント2管のオルガン・カルテット(ベースはオルガンが兼ねている)。ギターのポール・ボーレンバックが客演の位置づけ。リーダーは取り立てて立てずに、メンバーそれぞれが並列の立場で参加している。
 

The-jazztimes-superband

 
スタジオ録音であるが、演奏の躍動感は半端ない。参加メンバーいずれもノリにノッている。すっきり切れ味のあるファンキーな演奏で、さしずめ「現代のファンキー・ジャズ」と表現して良い趣き。ボブ・バーグのダイナミックな歌心溢れるサックスが全編に渡って効いている。

ファンキーなランディのトランペット、バーグとのサックスとの相性がバッチリで、ユニゾン&ハーモニーは心地良く、ソロでは爽やかなファンクネスを撒き散らします。そして、デフランセスコのオルガンが実に効いている。モダンなフレーズが新鮮、演奏全体のファンクネスを増強する。そんな躍動感溢れる現代のファンキー・ジャズのリズム&ビートをコントロールしているのが、デニー・チェンバースのドラミング。

「Friday Night at The Cadillac Club」など、聴いていてとても楽しい。思わず体が左右に揺れ、足でリズムを取り始める。また聴いてちょっとビックリしたのが「Oleo」。こんな高速「Oleo」って聴いたことが無い。オルガン、ギター共に協奏をしているかように、競るような早弾きに思わず唖然とする。

ボブ・バーグは、リーダー作としては十数作しか残しておらず(サイドマンとしての参加盤は結構あるみたいだが)、見つけたら躊躇わず、必ず聴くことにしている。今回のこの『The JazzTimes Superband』については、全く縁が無く、半年前にやっと手にしたアルバムになる。聴いて満足。内容の濃い、ネオ・ハードバップな好盤である。
 
 
 

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2021年11月21日 (日曜日)

ヴィーナスの硬派な純ジャズ・1

ヴィーナス・レコードは、硬派なジャズ者の方々から、どうにも評判が悪い。「昔の名前で出ています」的アプローチで、1950年代から1960年代に活躍したベテラン級のジャズマンをスカウトして、当時、絶対しかなったであろうスタンダード曲をハードバップ風に演奏させたりするから、「金の力で、ベテラン級ジャズマンにスタンダード曲を演奏させる」と硬派なジャズ者の方々はカンカン(笑)。

本当のところはそうでは無かった様ですが。それでも、確かに、このジャズマンがどうして今、スタンダード曲でハードバップをやるのか、という盤もあるにはありました。しかし、しっかりとしたコンテンポラリーな純ジャズ風の、内容の確かな盤も結構あるんですよね。そういう面については、ヴィーナス・レコードについても評価してあげないと、と思っています。

Lonnie Smith Trio『Foxy Lady - Tribute To Jimi Hendrix』(写真左)。1994年3月19日、NYの「Sound Designer Studio」での録音。ヴィーナス・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Lonnie Smith (org), John Abercrombie (e-g), Marvin "Smitty" Smith (ds)。早逝の天才ロック・ギタリスト、ジミ・ヘンドリックス(ジミヘンと略)の曲を題材にした「トリビュート盤」。
 

Foxy-lady

 
ロニー・スミス(写真右)のオルガンは「アグレッシヴでプログレッシヴ」。ファンキーでポップな「甘い」要素はほとんど無い。そんなロニーが、ロックギタリストとして最も「アグレッシヴでプログレッシヴ」なジミヘンの楽曲をカヴァーする。誰の発想なのか判りませんが、なかなかの企画だと思うんですね。しかも、相棒となるギタリストが「アグレッシヴでプログレッシヴ」なジャズ・ギタリストのアバークロンビー。ドラムが「アグレッシヴでプログレッシヴ」なドラマー、スミッティースミス。

このトリオ編成を思い立った人って凄いと思う。ジミヘンのカヴァー演奏に最適なトリオ編成。ジミヘンの楽曲が持つ「アグレッシヴでプログレッシヴ」そして「サイケデリック」な響きを上手く、ジャズ演奏の中で表現していて感心することしきり。しかも、しっかりコンテンポラリーなジャズしていて、硬派なエレ・ジャズとしても秀逸な内容。思わず、これって、ヴィーナス・レコードからのリリースなの?、とレーベルを見直してしまう。

興味深いのは、ロニー、アバークロンビー、スミッティースミスのトリオ、そして、ジミヘンのカヴァー、と、とことん「アグレッシヴでプログレッシヴ」なんだが、ヴィーナス・レコードの深いエコーの録音と耽美的な音作りが、この「尖り」を、ちょっとジェントルな「尖り」にしていて、最終的に聴き易いレベルでの「尖ったコンテンポラリーなエレ・ジャズ」に落ち着いているところ。トリオの個性とレーベルの個性のマッチング良好な佳作である。
 
 
 
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2021年11月19日 (金曜日)

今も新鮮なジャズ・オルガンの音

Baby Face Willette(ベイビー・フェイス・ウィレット、以降「ベイビー・フェイス」と略す)というオルガン奏者の存在を知ったのは、ブルーノート・レーベルのRVGリマスターの紙ジャケ・リイシューの時である。それまで、全く知らなかった。初めて知った時は「ふざけた名前やなあ」なんて思ってスルーしていた。

が、オルガン・ジャズの特集本を入手し、オルガン・ジャズを真剣に聴くようになってからは、ベイビー・フェイスの名前は、僕のお気に入りのオルガン奏者になった。ベイビー・フェイスのオルガンは「プログレッシヴでストイック」。オルガン・ジャズと言えば、こってこてのファンクネスを滴らせながら、ソウルフルな黒い音を想起するのだが、ベイビー・フェイスはそうでは無い。

Baby Face Willette『Stop and Listen』(写真左)。1961年5月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Baby Face Willette (org), Grant Green (g), Ben Dixon (ds)。ベイビー・フェイスのオルガン(ベースも兼ねる)をメインに、パッキパキなファンキー・ギタリストのグラント・グリーンと、ベイビー・フェイスと「馬が合う」ドラマー、ベン・ディクソンとのトリオ編成。
 

Stop-and-listen

 
収録曲に、ブルージーでマイナー調な有名スタンダード曲「Willow Weep for Me」と、ファンキーでゴスペルチックな、人気のミュージシャンズ・チューンである「Work Song」が入っているのだが、この2曲を聴けば、ベイビー・フェイスのオルガンが、いかに「プログレッシヴでストイック」であるかが判ると思う。

ベイビー・フェイスのオルガンの音は「シンプルでストレート」。レスリー・スピーカーなどで音を拡げたり、ノイジーにしてファンクネス度を高めることは全く無い。ベイビー・フェイスのオルガンのファンクネスは「フレーズ展開の中」でのファンクネス。ファンクネスを増幅することは無いので、オルガンの音は意外とあっさりしている。そして、アドリブ・フレーズは意外と攻撃的。改めて、クールで先進的なオルガンだったと思い知る。

21世紀に入ってからのジャズ・オルガンは「ストイックでシンプルな」オルガンがトレンドになっている。それら21世紀のジャズ・オルガンの音を聴く度に、ベイビー・フェイスを思い出す。ジャズ・オルガンの神様「ジミー・スミス」をフォローすることの無い、唯一無二なベイビー・フェイスのジャズ・オルガン。その先進性とストイック度は癖になる。今の耳で聴いても「新鮮なジャズ・オルガンの音」である。
 
 
 
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2021年11月 6日 (土曜日)

オルガン・ジャズの傑作&名盤

昨日のブログで、スタンリー・タレンタインのテナー・サックスはオルガンと相性が良い、と書いて、そう言えば、このジャズ・オルガンのレジェンドの強烈な音とアドリブ展開に負けずに、対等な立場で「タイマン」を張ったテナー・サックスって、タレンタインだったなあ、ということを思い出した。

Jimmy Smith『Midnight Special』(写真左)。1960年4月25日の録音。ブルーノートの4078番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Kenny Burrell (g), Donald Bailey (ds)。オルガンのレジェンド中のレジェンド、ジミー・スミスの大ヒット盤。テナーにタレンタイン、ギターにバレルという「漆黒ブルージー」な布陣。

この盤のジミー・スミスのオルガンは、限りなくダンディーで優しい。いつもはプログレッシヴでオフェンシヴなオルガンで、前へ前へ、前のめりに、圧倒的テクニックをもって、凄まじい迫力のアドリブ・フレーズを弾きまくるのだが、この盤は違う。圧倒的テクニックはそのままに、力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる。とても美しく流麗なフレーズ。

ジミー・スミスのオルガンは、プログレッシヴでオフェンシヴであるが故に、ファンクネスは控えめなのだが、そこに、タレンタインの「こってこてファンキー」で「ドップリ漆黒ブルージー」なテナーが溶け込む様に入ってくる。スミスの切れ味良いオルガンが浮き出てきて、タレンタインのテナーのお陰で、バックのトーンは「アーバンな真夜中なファンクネス」一色に染まる。
 

Midnight-special

 
そんなバックのトーンに、これまた「アーバンでジャジー」なバレルのギターが参入する。スミスのオルガンとはまた違った切れ味の、ギター独特のフレーズが「お洒落で小粋なファンクネス」を付加する。このバレルにギターの参入が、今までのスミス盤に無い、特別なファンクネスの要素を供給する。

そして、ドナルド・ベイリーのドラムが、これまた良い仕事をしている。スミスの長年の相棒ドラマーは、スミスのそれぞれの弾き回し毎に、最適なリズム&ビートを供給する。スミスにとって、安心&安定のドラミング。

オルガン・ジャズを代表する名盤である。オルガン・ジャズを聴きたい、と言った向きにには、まずこの盤を聴いて頂きたい。この盤でのジミー・スミスのオルガンが、ジャズ・オルガンの「第一の基準」だろう。

この盤は売れたらしい。零細企業だったブルーノートの懐を潤したと聞く。それも納得の内容。オルガン・ジャズとして充実した内容を誇り、演奏の心地良さ、聴き易さ、歌心も抜群。これは売れるよな。スミスは、この盤の後、4100番の『Plays Fats Waller』にて、ヴァーヴ・レーベルに移籍する。この盤は、ブルーノートへの「売り上げ」の置き土産となったアルバムでもある。
 
 
 
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2021年11月 5日 (金曜日)

何とも微笑ましいエピソード

当時、カラー写真のジャケットは珍しい。しかも、お洒落なスーツを身を纏い、薔薇の花束を持っている。なんだか、趣味の悪いポップスLP盤のジャケットかな、と思うんだが、タイポグラフィーはしっかり決まっている。タイポグラフィーの決まり方から、まさかこれってブルーノートのアルバムなのと思う。

写真の「主」は、ジャズを聴き始めて4〜5年も経てば、すぐに判るはず。そう「スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine )」である。しかもタイトルが「最愛の人」。は〜ぁ、何だこの盤。とパーソネルを見れば、何となく理由が判ってきた。そう、この盤、当時の新婚ホヤホヤのタレンタイン夫妻に向けての、アルフレッド・ライオンからの「結婚のお祝い」盤なのだな、きっと(笑)。

Stanley Turrentine『Dearly Beloved』。1961年6月8日の録音。ブルーノートの4081番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Shirley Scott as Little Miss Cott (org), Roy Brooks (ds)。オルガンのシャリー・スコットは、契約上の問題で「リトル・ミス・コット」とクレジットされている。
 

Dearly-beloved

 
スタンリー・タレンタインとシャーリー・スコットは1961年に結婚している。1971年に離婚するまで、魅力的な内容の共演盤を多数残しているが、この盤はその最も初期のものだろう。もともと、スタンリー・タレンタインのテナーはオルガンと相性が良いのだが、この盤を聴いて判るのは、当時の細君、シャーリー・スコットのオルガンとの相性が抜群なのだ。息もピッタリ、アドリブ・フレーズの雰囲気も同傾向。はぁ〜、ご馳走様です(笑)。

スタンリー・タレンタインのテナーは、ややもすれば「ファンクネス過多」になりがちなのだが、意外とポップなスコットのオルガンがそれを「中和」している。ストレートなスコットのオルガンの音に、タレンタインが呼応しているようにも感じる。確かにこの盤のタレンタインは意外と「明るい」。ちょっと「ハッピー・スインガー」な要素が見え隠れして、聴き易くなっている。

ちなみに、ジャケットはシャリー・スコットに花を買っている嬉しそうなスタンリー・タレンタインのポートレイトだそうだ。ブルーノート・レーベルって「粋」なことするなあ。当時のスタンリー・タレンタインは、ブルーノートのハウス・ミュージシャンの位置づけ。総帥プロデューサーのライオンからすれば「家族同然」だったのだろう。何とも微笑ましいエピソードではないか。
 
 
 
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2021年10月25日 (月曜日)

ジミー・スミスのフュージョン盤

ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミス。そのテクニックは凄まじいものがあり、ダイナミズム、ファンクネス、弾き回し、アドリブ・パフォーマンス、どれもが超一級。未だに、ジミー・スミスの全盛期のジャズ・オルガンを凌駕するオルガニストは現れ出でていない。

ジミー・スミスは、とにかく「目立ちたがり屋」。演奏を始めると、ガンガン前へ出てくる。サイドマンは完全に振り落として、それでも、ダイナミズムに物を言わせて、オルガンのスピーカーのボリューム全開、ぎゅわんぎゅわんと、天才的なアドリブ・フレーズをバンバン弾きまくる。これが「ジミー・スミス」である。逆に、これじゃないと「ジミー・スミス」じゃ無い。

Jimmy Smith『The Cat Strikes Again』(写真左)。1981年の作品。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Ray Brown (ac-b), Chuck Domonico (el-b), Grady Tate (ds), Dennis Budimir, Howard Roberts, Tim May (g), Paulinho Da Costa (perc), Gary Herbig, John Bolivar (sax, fl), Alan Kaplan (tb), Jerry Hey, Oscar Brashear (tp, flh), Ronnie Foster (p), Lalo Schifrin (arr)。

ジャズ・オルガンの神様、ジミー・スミスも、ジャズの斜陽に飲み込まれ、過去の人になりつつあった1970年代。この盤は1981年の作品。フュージョン・ジャズ全盛後期。この盤のタイトルを訳すと「猫の逆襲」。
 

The-cat-strikes-again_1

 
「猫」といえば「The Cat」。スミスの代表作とされるヴァーヴ盤「The Cat」の逆襲。そう、この盤は、こってこてメインストリームな純ジャズ・オルガンのジミー・スミスが、フュージョン・ジャズに染まって、再起をかけたアルバムである。

フュージョンに染まったとは言え、この盤のアレンジは「ラロ・シフリン」が担当していて、意外と落ち着いた、ファンキーなフュージョン・オルガン盤に仕上がっている。ソフト&メロウな要素もふんだんに詰め込み、オルガン・ジャズの特徴である「こってこてなファンクネス」も趣味良く漂っている。フュージョン盤として評価すれば、違和感の無い好盤である。

ジミー・スミスのオルガンは、全盛期の「目立ちたがり屋」返上、グループ・サウンズにしっかり馴染んで、周りの音を良く聴きながら、なかなかアーバンでファンキーなオルガンを弾き進めている。もともとテクニックは抜群に高いので、その弾きっぷりは前面に出てこなくても、しっかり浮き出ていて印象に残る。

オルガン・ジャズがファンキーだと再評価されたのは1990年代に入ってからのことで、1970年代は、オルガン・ジャズはポップで、そのファンクネスは俗っぽいと散々な扱いだった、と記憶している。そんな中で、この盤のジミー・スミスのオルガンは、ちょっと地味ではあるが、なかなかのもの。さすが、ジャズ・オルガンの神様である。
 
 
 
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2021年10月24日 (日曜日)

デフランセスコのサプライズ

昨年のコロナ禍にて、ジャズの新盤のリリースが滞った時期もあった。が、2021年も後半に入って、コロナ感染予防を踏まえた録音環境を確保して、新盤のリリースのペースが以前の状態に戻ってきている。コロナ感染予防を踏まえた録音環境として、ソロや多重録音、デュオなど、できる限りの少人数での録音が増えたような感じがしている。

Joey DeFrancesco『More Music』(写真左)。2021年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joey DeFrancesco (org, tp, ts, key, p, vo), Michael Ode (ds), Lucas Brown (g, org, key)。現代ジャズ・オルガンの名手、ジョーイ・デフランセスコの新たなリーダー作である。オルガン奏者はベースも自分で演奏するので、ベーシストはいない。

この盤を聴き進めていて、なかなか味のあるテナー・サックスが出てくる。ソニー・ロリンズの様に大らかで余裕のあるブロウ。コルトレーンの様にストレートでシンプルな吹きっぷり。チャールズ・ロイドの様に判り易いシンプルでモーダルなアドリブ・フレーズ。このテクニックに走ることの無い、味のあるテナー・サックスは誰だ、と思ってパーソネルを見たら、なんと、デフランセスコ自身が吹いているのだ。これには驚いた。
 

More-music-joey-defrancesco

 
そして、シンプルでクールな、それでいてジェントルなトランペットに気が付く。これも、なかなか味のあるトランペットで、これ誰かなあ、と思って、パーソネルを見たら、なんとこのトラペットもデフランセスコ自身が吹いているのだ。これにも驚いた。リリカルでクール、そして、ウォーム。マイルス・デイヴィスの影響を受けているらしいが、意外とオリジナリティに溢れていて立派なトランペットだ。

デフランセスコがテナー・サックス、もしくはトランペットを吹く時は、ルーカス・ブラウンがオルガン、キーボードを肩代わりしているらしい。で、これが、なかなか良い。安心してデフランセスコが管楽器を吹くことが出来ている。このマルチ・プレイヤーのルーカス・ブラウンの参加が、デフランセスコの演奏表現の幅を拡げている。この盤ではそれが成功している。

管入りのオルガン・ジャズとして、スマートな内容で聴き応えがある。あまり我が国では馴染みが薄いオルガニスト、ジョーイ・デフランセスコであるが、現代のオルガン・ジャズの担い手として、良い音を出している。この新盤では、まず、本職のオルガンの音がとっても良い。その上で、この新盤のサプライズである、デフレンセスコのテナーとトランペットが良い雰囲気を出している。シンプルでクールな、なかなかの内容の新盤である。
 
 
 
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2021年8月30日 (月曜日)

ルーさんの初オルガン・ジャズ

我が国では、僕がジャズを本格的に聴き始めた1970年代後半、オルガン入りのジャズについては、あまり評判は良くなかった。ファンクネス濃厚で、ソウルフルでポップなジャズ、というイメージから「俗っぽい」ジャズである、というレッテルを貼られて、硬派なジャズ者の方々のみならず、評論家の方々を含めて、評価は芳しく無かったと記憶している。

オルガン・ジャズが復権してきたのは、1980年代後半、レア・グルーヴのムーヴメントがジャズに押し寄せ、ソウルフルでポップなジャズ、踊れるジャズとして再評価されて以降である。また、純ジャズ復古後、新伝承派を中心とした、純ジャズ偏重、ハードバップ偏重に対する反動から、ソウルフルでポップなオルガン・ジャズが再評価された経緯もある。

Lou Donaldson『Here 'Tis』(写真左)。1961年1月23日の録音。ブルーノートの4066番。ちなみにパーソネルは、Lou Donaldson (as), Baby Face Willette (org), Grant Green (g), Dave Bailey (ds)。ビ・バップ以降、ブルーノートの看板アルト・サックス奏者として活躍してきたルー・ドナルドソン(ルーさん)の初のオルガン・ジャズである。
 

Here-tis

 
バックを固めるメンバーが良い。ファンクネス濃厚、硬派でプログレッシブなオルガンが個性のベビー・フェイス・ウィレット、パッキパキなシングルトーンが個性、ファンクネスだだ漏れギターのグラント・グリーン。地味だがスインギーでファンキーなドラマー、ディヴ・ベイリー。ここに、ルーさんの切れ味の良いファンキーで陽気なアルト・サックスがフロントを仕切る。

とってもソウルフルでポップでファンキーなオルガン・ジャズである。バックのリズム隊がむっちゃファンキーでグルーヴィーでソウルフルなので、ルーさんのアルト・サックスの本質である、とてもハッピーな吹きっぷりで、翳りや哀愁、モーダルで理知的な響きとは全く無縁な「明るくビ・バップ風のブリリアントで高速な吹き回し」がとっても引き立つのだ。

オルガン・ジャズ、ここに極まれり、という感じの優秀盤。前述の様に、我が国では以前はオルガン・ジャズは異端であり、敬遠されていたのだが、どうして、このオルガン・ジャズ盤を聴いて思うのだが、これって「ご機嫌なジャズ」ではないか。ファンキー、ポップ、そしてソウルフル。ジャズを楽しむオルガン・ジャズ。僕は好きですね〜。
 
 
 
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2021年8月25日 (水曜日)

グラント・グリーンの初リーダー作

グラント・グリーン(Grant Green)。基本的にブルーノートお抱えのギタリストで、1970年代から80年代にかけて、彼のリーダー作が入手し難かったこともあって、我が国ではマイナーな存在であった。1970年代後半、僕がジャズを本格的に聴き始めた頃、レコード屋やFM放送で、グラント・グリーンの名に触れることは全く無かった。その名を初めて知ったのは、ジャズ盤の紹介本を読んだ時だったなあ。それでも現物のLPを見ることは無かった。

でも、このギタリストの音と雰囲気が大好きなんだなあ。パッキパキ硬質なシングル・ノート奏法。シングル・ノートから滲み出るファンクネス。これが何とも、自分の心に吟線に触れるのだ。アドリブ・フレーズの弾き回しは「流麗で骨太でファンキー」。オルガンが入ると、そのブルージーさファンキーさが増幅される、ある種、不思議なシングル・ノートである。

Grant Green『Grant's First Stand』(写真左)。1961年1月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Baby Face Willette (org), Ben Dixon (ds)。グラント・グリーンの初リーダー作になる。初セッションは1960年11月であったがお蔵入りになっている(2001年に突如『First Session』としてリリースされた)。こちらはピアノ・トリオをバックにしたもの。当盤はオルガン+ドラムをバックにしたもの。
 

Grants-first-stand

 
グラント・グリーンのギターが持つ圧倒的な個性「こってこてなファンクネス」を引き立てるには、当盤の様なオルガン・トリオが正解だろう。ピアノ・トリオがバックでは上品過ぎる。そういう面では『First Session』をお蔵入りにしたのは正解と言えば正解。ブルノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンの慧眼、恐るべしである。

この初リーダー作において、パッキパキ硬質なグリーンのシングル・ノート奏法は既に確立されている。ブルージーでファンキー漂う、シングル・トーンが基本のギター・フレーズはとても個性的。一聴すれば直ぐに「グラント・グリーン」と判るほどの判り易さ。グリーンのギターの持つ「こってこてなファンクネス」が、ファンキーなオルガンの伴奏で増幅されている。

初リーダー作なので、グラント・グリーンのギターがちょっと「神妙」になっているところが微笑ましい。グリーンのギターって意外とアグレッシヴ。しかし、負けずにウィレットのオルガンがアグレッシヴかつプログレッシヴで、全編に渡ってかなり硬派でアグレッシヴな、加えて、無骨で先進的な響きを宿しているところがこの盤の特徴。ソフト&メロウな俗っぽいファンキー・ジャズでは決して無い。
 
 
 
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2021年7月14日 (水曜日)

聴かせるオルガン・ジャズ盤

ジャズ・オルガンと言えば、まずは「ジミー・スミス(Jimmy Smith)」だろう。1956年、バブス・ゴンザレスに「絶対に見るべきだ」と言われ、老舗ジャズ・クラブ「スモールズ・パラダイス」に赴いた、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンと共同経営者のフランク・ウルフ。

確かなテクニックで、電気ハモンド・オルガンを用いることでアンプを通したパワフルな音楽を展開するジミー・スミス。2人は即座に彼と契約。以降、ジミー・スミスはブルーノート・レーベルでデビュー。以降、1962年初、大手のヴァーヴ・レーベルに移籍するまで、ブルーノート・レーベルの「ドル箱」スターとして、多くの秀作を残した。

Jimmy Smith『Home Cookin'』(写真左)。ブルーノートの4050番。1958年7月15日と1959年5月24日、そして、7月16日の録音の寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Kenny Burrell (g), Donald Bailey (ds), Percy France (ts, tracks 1, 4-6)。ベースレス・トリオ(ベースはオルガンが兼ねる)をメインに、全7曲中、4曲にテナー・サックスが加わる(1959年7月16日の録音)。
 

Home-cookin

 
ブルーノートからデビューして2年以上が経過し、当初は電気オルガンをガンガン弾きまくって、とにかく五月蠅い位に前面で出張って目立っていたジミー・スミスが、ブルージーでアーバンな雰囲気のもと、聴かせるオルガン・ジャズに落ち着いた頃の秀作である。しっくり落ち着いていて、大人の渋くて粋なオルガン・ジャズがこの盤に蔓延している。

気負いの無い、リラックスしたジミー・スミスのオルガンがとてもジャジー。ファンクネスもコッテリ効いていて、まさに「大人のジャズ」である。ミッドナイトでアーバンな雰囲気を増幅するのは、ケニー・バレルのギター。落ち着いたスミスのオルガンとアーバンなバレルのギターが絡んで、ブルージーな雰囲気が蔓延する。この盤では、レイ・チャールズ・ナンバー「I Got a Woman」をカヴァーしていて、R&Bなフィーリングがいつも以上に色濃くて、実に素敵だ。

ジミー・スミスのブルーノート盤は、ジャケットがカラー写真なものが殆ど。当時、コストがかかったと思うのだが、それだけ、ブルーノートは、総帥のアルフレッド・ライオンは、ジミー・スミスのオルガン・ジャズを最大限に評価し、その音楽性に惚れていたのだと思う。落ち着いたスミスのアーバンでブルージーなオルガンが詰まったこの盤など、何度、聴き直しても、聴き終えて「あ〜、ジャズっていいなあ」と必ず呟いてしまうのだ。
 
 
 
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