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2018年6月 6日 (水曜日)

ホレスの質実剛健なハードバップ

ホレス・シルヴァーのピアノが好きである。ファンキーなピアノ、と言えば、このホレスのピアノのことである。しかも、ホレスは作曲の才がある。彼は「売れる曲」を書く。「Sister Sadie」「The Preacher」「Song for My Father」など、大衆的な、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンの表現を借りると「コーニー(corny)」な曲を書く。これがまた、ホレスの魅力である。

しかし、そんなホレスが、質実剛健なハードバップ一本槍でプレイしまくるアルバムが存在する。このアルバムを初めて聴いた時は、ピアニストが誰か判らなかった。ホレスらしくはある。しかし、演奏全体の雰囲気は、質実剛健な、当時、最先端を行くハードバップな演奏。大衆的な曲、ファンクネスだだ漏れの「コーニー(corny)」な曲は一曲も無い。つまり、ホレスのリーダー作という認識を全くモテなかった。

Horace Silver『Silver's Serenade』(写真左)。1963年5月の録音。ブルノートの4131番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。数々の名演を生み出してきた、ホレス・シルヴァー鉄壁のクインテットである。
 

Silvers_serenade

 
全体が非常に締まった、硬派なハードバップである。録音年は1963年。ジャズのトレンドは、ファンキー・ジャズ、そして、モード・ジャズがメイン。1950年代後半のハードバップは過去の演奏トレンドの様な扱い。しかし、この『Silver's Serenade』には、質実剛健な、当時の最先端を行くハードバップな演奏がぎっしりと詰まっている。非常に迫力があり、スリリングな演奏がてんこ盛り。そういう意味では、この盤は、ホレスのリーダー作の中では、異色と言えば異色な存在。

フロントのミッチェルのトランペットが何時になく饒舌であり流麗。そして、クックのテナーのテクニックが素晴らしい。何処か、ハードバップ時代のコルトレーンを彷彿とさせるアドリブ・フレーズを連発する。この盤でのフロントの2人は一言で言って「巧い」。ミッチェルとクックってイマイチだよね〜、とする評論家の方々もいるが、とんでも無い。ここでのミッチェルとクックは充実のブロウ、充実の展開を叩き出す。

テイラーのベース、ブルックスのドラムの安定度は抜群。そんなリズム&ビートを得て、ホレスは熱い、質実剛健なハードバップなフレーズを弾きまくる。疾走感溢れ、テクニック極上。こんなに高度のハードバップしたホレスのピアノはなかなか他の盤では聴けない。我が国では、ホレスのリーダー作としては地味な存在だが、中身は超一級品。ハードバップ者にお勧めの好盤です。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年2月 6日 (火曜日)

最もブルーノートらしい盤

今週は「ジャズ・レジェンド」の週間ということで、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)を聴いている。2014年、85歳で鬼籍に入るまで、ずっとファンキー・ジャズ一直線の「ファンキー・ジャズの職人」である。ファンキー・ジャズの職人だけあって、1950年代終盤から1960年代半ばまで、ファンキー・ジャズのブームの中で、シルヴァーは大活躍。

シルヴァーは、ブルーノート・レーベル一筋でもあり、ブルーノートの看板ジャズメンでもあった。そういう意味で、ブルーノートらしいジャズメンは、と問われれば、確かに「ホレス・シルヴァー」の名前が浮かぶ。しかも、このリーダー作は、どこかのジャズ本で「一番ブルーノートらしい」アルバムとして紹介されていた記憶がある。

Horace Silver『Horace-Scope』(写真左)。1960年7月8〜9日の録音。ブルーノートの4042番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Roy Brooks (ds)。ブルー・ミッチェルのトランペット、ジュニア・クックのテナーの最強の2管をフロントに配した「鉄壁のクインテット」である。
 

Horacescope

 
冒頭の「Strollin」から、ファンキー・ジャズ全開。2曲目のアップテンポの「Where You at?」の決めフレーズの連発に思わず仰け反る。3曲目の「Without You」のバラード演奏も絶品。ブルーノートの1520番『Horace Silver Trio and Art Blakey-Sabu』に収録された「Horoscope」をアレンジし直し改題した「Horace-Scope」と「Yeah!」の2曲の再収録ナンバーも出来が良い。

そして、極めつけはラストの「Nica's Dream(ニカの夢)」。シルヴァー作のニカ夫人に捧げた曲。ニカ夫人とは、パノニカ・ドゥ・コーニグズウォーター男爵夫人。離婚後、ニューヨークに移住し、数多くのジャズ・ミュージシャンを援助、いわゆる「パトロン」ですね。憂いのあるメロディアスな曲、そして演奏。良い曲、良い演奏です。

「ホーンのような右手、ハンマーのような左手」と表現される、シルヴァーのファンキーなピアノ・スタイルがとても良く判る盤である。ブルーノートよろしく、しっかりとリハーサルを積んだであろう演奏は、高テクニックでありながら、破綻が全く無い。アンサンブルもソロもバッチリ決まった素晴らしい内容です。こういうところも、本当にブルーノートらしい。

 
 

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2018年2月 5日 (月曜日)

シルヴァーのファンキーな好盤

今週は「ジャズ・レジェンド」の週間。熟々とジャズ・レジェンドの名前を見ていて、この人のリーダー作、そう言えば最近、聴いて無かったなあ、と思い立った。ホレス・シルヴァー(Horace Silver)である。ファンキー・ジャズの職人。2014年、85歳で鬼籍に入るまで、ずっとファンキー・ジャズ一直線。

ということで、ホレス・シルヴァーのリーダー作を聴き直し始める。まずは、Horace Silver『Blowin' the Blues Away』(写真左)。1959年8月29〜30日と9月13日の録音。ブルーノートの4017番。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Blue Mitchell (tp), Junior Cook (ts), Gene Taylor (b), Louis Hayes (ds)。ブルー・ミッチェルのトランペット、ジュニア・クックのテナーの最強の2管フロント。

冒頭のタイトル曲から、こってこてのファンキー・ジャズ。ミッチェルのトランペットとクックのテナーのユニゾン&ハーモニーがむっちゃ雰囲気である。シルヴァーのピアノはバッキングしている時からファンキーそのもの。ソロに入れば完璧にファンキー。明確なタッチにファンクネス色濃く漂うアドリブ・フレーズ。ミスター・ファンキーなアコピである。
 

Blowin_the_blues_away

 
あまり話題にならないが、ベースのジーン・テイラー、ドラムのルイス・ヘイズのリズム隊もむっちゃファンキーなリズム&ビートを叩きだしている。クインテットが一丸となって、ファンキー・ジャズを演奏しまくっている。オリジナル盤の収録曲は全て、シルヴァーの作。アレンジも優秀で、シルヴァーの総合力が最大限に発揮されている。

そして、極めつけは、LP時代のB面の1曲目、CDでは5曲目の「Sister Sadie(シスター・セイディ)」。これ、ファンキー・ジャズの屈指の名曲。もう前奏の「コール・アンド・レスポンス」風のユニゾン・ハーモニーを聴くだけで、ファンクネスだだ漏れ。ファンキーで楽しい、気持ちが躍動する。確かに、聴いていると自然と体が動き、遂には踊り出している。

そして、ジャケットがまた素晴らしい。このシルヴァーのアコピを弾く後ろ姿の線画がむっちゃ格好良い。右肩にあしらわれたタイプグラフィーがこれまた格好良い。ブルーノートのジャケットは優れたものが多いが、この『Blowin' the Blues Away』のジャケットは飛び切り格好良い。曲良し、アレンジ良し、演奏良し、ジャケット良し。ファンキー・ジャズの屈指の名盤である。

 
 

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2014年11月 7日 (金曜日)

ハード・バップ成立の時と場所

ジャズ評論家の行方均さんが、『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』の演奏を捉えて、「もしハード・バップ誕生の時と場所というものが世の中にあるとしたら、本作の録音された1954年2月21日深夜のバードランドをおいて他にない」とした。
 
よって、ジャズ入門本やジャズ雑誌などでは、ハードバップの誕生の時期の演奏と言えば『バードランドの夜』となる。ブルーノートの1521番と1522番である。

しかし、どうして、僕はこちらのライブ盤も『バードランドの夜』に負けてないぞ、と思っている。そのライブ盤とは、『The Jazz Messengers At The Cafe Bohemia, Vol. 1&2』(写真)。ブルーノートの1507番と1508番。1955年11月23日、ニューヨークのライブ・スポット、カフェ・ボヘミアでのライブ音源になる。

ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Hank Mobley (ts), Horace Silver (p), Doug Watkins (b), Art Blakey (ds)。ピアノのホレス・シルバーとドラムのアート・ブレイキーは『バードランドの夜』と変わらない。ベースがダグ・ワトキンスに代わり、ペットのケニー・ドーハムとテナーのハンク・モブレーがフロントの2管を張る。

この『カフェ・ボヘミア』の演奏の充実した内容、演奏のレベルの高さを聴けば、もしかしたら、「もしハード・バップ誕生の時と場所というものが世の中にあるとしたら、本作の録音された1955年11月23日のカフェ・ボヘミアをおいて他にない」となっても、不思議は無いと思う。

演奏全体を見渡して、それぞれのジャズメンの力量と演奏レベルのバランスが実に良くとれていて、それぞれの楽曲の演奏内容がかなりのレベルで充実している。『バードランドの夜』の個々の演奏と比べて、僕はこの『カフェ・ボヘミア』の演奏の方が、演奏全体のまとまりとしては上位に来ると感じている。
 

At_the_cafe_bohemia

 
まず、ケニー・ドーハムのトランペットが絶好調である。僕は、このライブ盤を聴いて、このトランペットはケニー・ドーハムだとは思わなかった。芯のある豊 かでふくよかな音色、よれることの無い確かなテクニック、端正で疾走感のある速くて正確な運指。これって、ドーハム一世一代の名演である。
 
そして、テナーのハンク・モブレーも絶好調である。力強く滑らかなブロウ。ポジティブで誠実なテクニック、端正で疾走感のある速くて正確な運指。これがモブレーか、と一瞬、耳を疑う、モブレーに失礼なんだが、らしからぬブロウ(笑)。それほどまでに、第一線をゆくテナー。これがモブレーの真骨頂なのだ、と改めて感心する。

ホレス・シルバーも何時になく好調。ブルージーなフレーズを連発。確かなテクニック、正確な運指。濃厚に漂うファンクネス。ダグ・ワトキンスのベースは太くて伸びやか。あまり話題にならないワトキンスのベースだが、どうして、このベースは当時のベースとしてはかなりモダンである。

アート・ブレイキーのドラミングを聴けば、『バードランドの夜』は『カフェ・ボヘミア』の1年7ヶ月も前の演奏なんだ、ということを再認識する。『カフェ・ボヘミア』でのブレイキーのドラミングは確実に進化している。『カフェ・ボヘミア』では、確信を持って「ハードバップな」ドラミングを披露する。揺るぎないブレイキーのハードバップ・ドラミング。

『バードランドの夜』を「ハード・バップ誕生の時と場所」とするなら、この『カフェ・ボヘミア』は「ハード・バップ成立の時と場所」とでも形容しようか。この『カフェ・ボヘミア』で、ハードバップは成立し、その演奏スタイルが確立された。そして、ハードバップが要求する演奏レベルもここにサンプルとして提示されたのである。

しかし、『バードランドの夜』といい、この『カフェ・ボヘミア』といい、ブルーノート・レーベルは本当に良いライブ録音をする。さすがは、アルフレッド・ライオン。その慧眼の成せる技である。

 
 

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2014年10月21日 (火曜日)

ハードバップの夜明けである。

『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』の Vol. 1と Vol. 2(写真)。ブルーノートの1521番と1522番。パーソネルは、Clifford Brown (tp), Lou Donaldson (as), Horace Silver (p), Curly Russell (b), Art Blakey (ds)。1954年2月、ジャズクラブ、バードランドでのライブ録音。

Pee Wee Marquette(ピー・ウィー・マーケット)の高音けたたましいアナウンスで始まる。これからやって来るハードバップ時代の「始まり」を高らかに宣言しているような、このピー・ウィーのアナウンスが良い。そして、出てくる演奏が「Split Kick」。これがまあ、すんごく格好良い演奏。

出来れば、この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』の Vol. 1と Vol. 2は連続して聴いてもらいたい。ピー・ウィーのアナウンスが要所要所に挿入されていて、まるでライブ演奏を目の前にして聴いている感覚になる。演奏のバリエーションも豊かで、2枚のアルバムを連続して聴いても飽きることが無い。

さて、ハードバップは、曲のコードをより細かく分けたり、テンポの速くして演奏をより複雑にしたり、演奏のニュアンス、バリエーション豊かにして、演奏の表現力を豊かにした、いわゆる「聴かせること」そして「アーティスティックなこと」を前面に押し出したジャズ演奏のスタイル。ジャズとして、一番ジャズらしいスタイルである。

この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』には、そんなハードバップの要素がぎっしり詰め込まれている。しかも、このアルバムはライブ録音盤である。つまり、1954年には、皆が皆では無いにしろ、このハードバップ的な演奏がライブで行われていたのである。当時のジャズの演奏レベルの高さというものを改めて感じる。
 

Art_blakey_live_at_birdland_2

 
ハードバップは演奏の表現力の幅とバリエーションが広くなるので、当然、ミュージシャンとしての高い演奏能力が要求される。そんじょそこらのジャズメンではハードバップに追従出来ないということになる。当然、プロのジャズメンとしての選別も進む。ハードバップ時代を生き抜いたジャズメンは、皆、演奏能力については相当に高いものがある。 

行方均さんが、この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』の演奏を捉えて、「もしハード・バップ誕生の時と場所というものが世の中にあるとしたら、本作の録音された'54年2月21日深夜のバードランドをおいて他にない」と表現されているが、確かにそう思う。

このアルバムからハードバップが始まったというのはちょっと誇大広告風だが、確かに、このアルバム以前の年代のジャズ盤については、ハードバップ的な、ハードバップの萌芽を聴くことができるものはあるが、この『A Night At Birdland With Art Blakey Quintet』ほど、徹頭徹尾、ハードバップとしての演奏が成立しているアルバムは無い。

職人録音師、ルディ・バン・ゲルダーのお陰で、1954年のライブ録音の割に音が良く、それぞれの楽器の演奏のニュアンスやテクニックがダイレクトに伝わってきて、ジャズの持つアーティスティックな面が体験できるところもこのアルバムの素晴らしいところ。

ジャズを聴き始めて、いきなりこのアルバムに飛びつくのは、ちょっと無謀だとは思うのですが、ジャズを聴き始めて、ジャズが心地良くなって、これからずっとジャズを聴いて行こうと思い立った時に、このハードバップの夜明け的な名盤を聴いて欲しいな、と思います。ジャズの表現力、芸術性、即興性に改めて感じ入って下さい。

 
 

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2014年9月30日 (火曜日)

僕は「旗のシルバー」と呼ぶ

ブルーノート・レーベルには、ブルーノート御用達の「ハウス・ミュージシャン」が幾人かいる。ピアノのホレス・シルバーも、そんなブルーノート付きのジャズメンの一人。長年、デビュー当時から、ブルーノート・レーベルからリーダー作をリリースし続けた。

そんなホレス・シルバーの個性を、ブルーノートのオーナー&プロデューサーのアルフレッド・ライオンは十分に理解し、ブルーノートからリリースするアルバムは全て、その時点その時点でのホレス・シルバーの個性を最大限に表現されていて、どれもが聴き応え十分である。

例えば、Horace Silver『The Stylings Of Silver』(写真左)。ブルーノートの1562番。国連ビルの前でのポーズをとった、当時としては珍しいカラー写真のジャケットを見ても、ライオンがどれだけ、ホレス・シルバーを買っていたかが判るというもの。加えて、ホレス・シルバーの人気のほどが判るというもの。

ブルーノートのアルバムについては、そのタイトルがその内容をズバリ表しているものが多く、このアルバムのタイトル「The Stylings Of Silver」もそんな秀逸なタイトルのひとつ。「シルバーのスタイル(型)」。確かに、このアルバムには、ホレス・シルバーの個性がギッシリと詰まっていて、ホレス・シルバーのピアノ、アレンジ、作曲センスがしっかりと理解出来る内容となっている。
 

The_stylings_of_silver

 
1957年5月の録音。Art Farmer (tp), Hank Mobley (ts), Horace Silver (p), Teddy Kotick (b), Louis Hayes (ds)。まだ、シルバーがパーマネントなグループを持つ前、シルバーの曲、ピアノ、アレンジに合ったミュージシャンを選んで、セッションに臨んでいる。

どの曲もどの曲も、判り易い切れ味の良いテーマ、軽快にスイングするお洒落な4ビート、クールに畳みかけるようなファンクネス。 ユニゾン&ハーモニーは、どこから聴いてもそれと直ぐ判る、クールでお洒落なシルバー節。激しさとは無縁のクールで印象的なアレンジ。

フロントを張る、柔らかでメロディアスなファーマーのトランペットとモブレーのテナーが、シルバーのピアノをバックに、心地良く気持ち良く響く。シルバーの曲にアレンジに、このファーマーのトランペットとモブレーのテナーが良く合う。プロデューサーのアルフレッド・ライオンの慧眼恐るべし、である。

いろいろなニュアンスや表情の曲が並んでいて、聴いていてとても楽しい。ハードバップの良い部分ばかりが詰まっていて、ハードバップ入門としてもこのアルバムはお勧めである。

国連ビルの階段に佇むシルバーが実に格好良い。万国旗のハタメキ加減、少しくすんだレトロなカラーの色調、むっちゃクールでお洒落である。このジャケットの印象とピッタリの演奏の数々。僕は、このアルバムに敬意を払って「旗のシルバー」と呼ぶ。

 
 

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2014年9月 6日 (土曜日)

僕は「ベンチのシルバー」と呼ぶ

アート・ブレイキー(Art Blakey)と共に「The Jazz Messengers」を立ち上げたホレス・シルバー(Horace Silver)。立ち上げ当時のネーミングは「Horace Silver And The Jazz Messengers」。シルバーがリーダーだった。

その後、宗教上の理由とかで、ブレイキーと袂を分かつことになる。ブレイキーに「The Jazz Messengers」の名前のみを譲り、他のメンバーはシルバーに付いた。その後、ブレイキーについては低迷状態が続く。逆に、シルバーはハードバップ初期の代表的名盤の一枚をリリースし、順風満帆な音楽活動を展開する。

そのハードバップ初期の代表的名盤の一枚が、Horace Silver『6 Pieces of Silver』(写真左)。ブルーノート1539番。コートに身を固めたシルバーがベンチに座り新聞を読む写真も格好良いジャケットが印象的。僕は勝手に「ベンチのシルバー」と呼ぶ。

1956年11月の録音。ちなみに主要なパーソネルは、Horace Silver (p), Donald Byrd (tp), Hank Mobley (ts), Doug Watkins (b), Louis Hayes (ds)。「Horace Silver And The Jazz Messengers」から、ドラムのアート・ブレイキーを抜いて、ルイ・ヘイズに代えただけの布陣。

しかし、このルイ・ヘイズへのドラマー交代で、グループのサウンドはガラッと変わっている。野太いタイトなダグ・ワトキンスのベースと合わせたリズム&ビートは、カッチリとまとまったシャープな印象。シルバーのピアノには、こんな輪郭のクッキリとした、タイトでシャープなリズム&ビートが良い。
 

6_pieces_of_silver

 
このアルバムでは、ラストの「For Heaven's Sake」以外、収録7曲中6曲をシルバーが手がけている。それでもってタイトルが『6 Pieces of Silver』。1曲目の「Cool Eyes」からハードバップな展開が印象的。それぞれがしっかりとソロを取り、そのソロもイマージネーション溢れるアドリブ・フレーズ満載。そして、曲の旋律から滲み出るシルバーのファンクネス。

2曲目の「Shirl」が、この新生ホレス・シルバー・クインテットを象徴する演奏。ホレス・シルヴァーのピアノから始まるバラード曲で、ドラムのルイス・ヘイズと歩調を合わせるようにシルバーのピアノに追従し、ダグ・ワトキンスのベースが演奏の底を締める。ホーンセクションは参加しないピアノ・トリオ作品で、この表現が新しく、このクインテットの特徴的な音でもある。

5曲目の「Senor Blues(セニョール・ブルース)」は名曲。ホレス・シルバーの音の個性がギッシリ詰まっている。ダンディズム溢れるペットとテナーの響き。底に流れる小粋なファンクネス。演奏全体のトーンは「アーバンなクール」。都会の夜のクールでアダルトな音の味わい。印象的なテーマの旋律。ハードバップ初期のヒット曲である。

ジャズとして、ハードバップとして、アーティスティックにまとめ上げられた良盤。さすがはブルーノート、さすがはアルフレッド・ライオン。ややもすれば猥雑となりがちな「ファンキーなハードバップ」を、しっかりとしたリハーサルとシルバーのペンの力で、ハードバップ初期の代表的名盤の一枚に仕立て上げられた。その手腕に脱帽である。

 
 

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2014年7月 1日 (火曜日)

続「追悼、ホレス・シルバー」

去る2014年6月18日、ファンクネス溢れるバップなピアノが個性のピアニスト、ジャズ・レジェンドの一人、ホレス・シルバーが逝去した。ジャズを聴き始めて今年で37年目。ジャズ者初心者の時代から、ホレスのピアノを聴き親しんで来た自分にとっては、とても悲しい出来事であった。

そこで、最近は、何かにつけ「追悼、ホレス・シルバー」として、ホレス・シルバーゆかりのアルバムを物色しては聴いている。今日は、Dee Dee Bridgewater『Love And Peace: A Tribute To Horace Silver』(写真左)。僕の大好きな女性ジャズ・ボーカリスト、ディー・ディー・ブリッジウォーター(略してディーディー)のホレス・シルバー・トリビュートなアルバムである。

1994年12月の録音。1995年9月のリリース。バック・ミュージシャンは知らない顔ばかり。それでも極上のファンキー・ジャズ・ボーカルが展開されている。「Nica's Dream」と「Song for My Father」の2曲で、ホレス・シルバー御大自身がピアノを弾いて居る。加えて「Filthy McNasty」と「The Jody Grind」では、ジャズ・レジェンド、オルガンのジミー・スミスが参加している。

ディー・ディー・ブリッジウォーター(Dee Dee Bridgewater)は、1950年5月生まれ。今年で64歳、このホレス・トリビュートのアルバムを録音した時は44歳。ジャズ・ボーカリストとして成熟し始めた、一番、良い時期の録音になる。テネシー州メンフィス出身。土地柄から、随分若い頃から、ジャズを歌い始めていたらしい。ボーカリストとしてのキャリアのスタートは1972年。
 

Deedee_love_and_peace

 
僕は、このディーディーのボーカルがお気に入り。ジャズ者初心者の頃、1979年頃からずっとお気に入り。歌って踊れる女性ジャズ・ボーカリストとしての彼女が大のお気に入りだった。が、当時、ジャズ者の先輩からは「際物」呼ばわりされて憤慨したのを覚えている。そう言えば、女性ジャズ・ボーカリストって、立ちつくして歌うのが標準のスタイルだったなあ。つまり、歌って踊るなんて、以ての外だったらしい(笑)。

でも、僕はディーディーのボーカルが好き。ファンクネス漂い、パンチのある高テクニックなボーカルに、ダンサフルなリズム&ビート。ディーディーのボーカルは、1970年代の若かりし頃より、エネルギッシュでファンキーだった。正統派の純ジャズなボーカルというよりは、フュージョンでコンテンポラリーなジャズ・ボーカルの類である。

そんなディーディーが歌いまくる、ホレス・シルバー・トリビュートな曲曲曲。ディーディーのファンクネス漂い、パンチのある高テクニックなボーカルが、ホレスのファンクネス溢れる楽曲にピッタリ。むっちゃ雰囲気の良いボーカルがてんこ盛りです。

ホレスの手なる曲は、どれもがノリが良くて、ファンキー。ディーディーのボーカルはダイナミックでパワフル。ホレスの曲のファンクネスとディーディーのパワフルな歌唱との相性がとても良く、ディーディー自身、思いっきりノリノリのボーカルを全編に渡って聴かせてくれます。

全13曲、あっと言う間に聴き終えてしまいます。これぞ、現代の、コンテンポラリーなジャズ・ボーカルと言えましょう。ホレスの楽曲に歌詞を付けて唄ったボーカル・アルバムとしては白眉の出来です。「追悼、ホレス・シルバー」として格好のアルバムですね。良いアルバムです。

 
 

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2014年6月29日 (日曜日)

「追悼、ホレス・シルバー」です

ホレス・シルバーが鬼籍に入りました。2014年6月18日に逝去、85歳。ホレス・シルバーは、コネチカット州ノーウォーク出身のジャズ・ピアニスト。ファンクネス溢れるバップなピアノが個性のピアニストでした。最近、活動の情報が伝わって来なかったので、ちょっと心配していた矢先の訃報だった。

ホレスのピアノは、叩き出すフレーズというフレーズにファンクネスを湛え、ホレスのピアノはファンキーそのもの。ファンキーなピアノとは如何なるものか、と問われれば、僕は、このホレスの代表作を2〜3枚、聴いて貰うことにしています。

そんなホレスが遂に鬼籍に入ってしまいました。残念です。最近、生存するジャズ・レジェンドが次々と鬼籍に入っていくので、ちょっと精神的に参ってしまいますよね。元気に演奏していた、若いことから馴れ親しんでいたジャズ・レジェンドが鬼籍に入るのを見届けるのは辛いものがあります。

さて、そんなホレス・シルバーを追悼するに相応しいアルバムは、と思い、色々とCD棚を物色してみました。ブルーノート時代のハードバップなリーダー作は当然なんですが、僕は、このアルバムのホレスのプレイが好きで、今回、追悼・ホレス・シルバーとしては、この1997年リリースの『A Prescription For The Blues』(写真左)を選択しました。

この『A Prescription For The Blues』は、邦題は『ブルースに処方箋』。1997年5月の録音になります。ちなみにパーソネルは、Horace Silver (p), Randy Brecker (tp), Michael Brecker (ts), Ron Carter (b), Louis Hayes (ds)。
 

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ホレスに、ベースのロン、ドラムのヘイズというベテランというか、ジャズ・レジェンド級のピアノ・トリオをリズム・セクションに、ランディとマイケルのブレッカー兄弟がフロントを張るという魅力的な布陣です。

アルバム全体の雰囲気は、ファンクネス溢れるハードバップ大会。まず、ホレスとロン、ヘイズのピアノ・トリオのファンクネス溢れる展開がアルバム全体の雰囲気をガッチリと固める。そして、ブレッカー兄弟の登場である。これだけ、ファンキー・ハードバップな雰囲気で固められているのだ。ブレッカー兄弟もそれに応えなければならない。

いやいや、素晴らしいですね。ランディのペット、マイケルのテナー、どちらも思いっきりハードバップしています。しかも、これだけファンクネスを漂わせたアドリブが展開できるなんて、ちょっとした驚きです。器用というより才能でしょう。実に懐の深い演奏を繰り広げていて良い雰囲気です。

そう言えば、ブレッカー兄弟って、若いころ、彼らはホレスのバンドに在籍していたことを思い出しました。道理でファンキー・ジャズにフィットするはずです。納得。

このアルバムでの、ホレス御大のプレイについては申し分ありません。1997年と言えば、1928年生まれのホレスは69歳。レジェンドの域に達したホレスのプレイはもはや揺るぎはありません。ファンクネス抜群のバップなピアノを叩き出して行きます。

ホレスのピアノは、ファンクネス溢れるバップなピアノが個性。これは意外と唯一無二。実に個性溢れるファンキー・ピアニストでした。多くのリーダー作を残してくれているので、彼のファンキー・ピアノを愛でるには事欠きませんが、彼の元気な姿を見ることが出来無くなると思うと、やはりちょっと寂しいですね。合掌。

 
 

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2008年6月25日 (水曜日)

このシルバーは上級者向け....

昨日、ブルーノートの1518番、ファンキー・ジャズの原点と言われる『Horace Silver and the Jazz Messengers』をご紹介しました。実は、ブルーノートの1520番に同じジャケット写真で、赤いシルバーのアルバムがある(1518番は青のシルバーでしたね)。

そのアルバムとは『Horace Silver Trio And Art Blakey-Sabu』(写真左)。1952年、1953年にそれぞれ録音されたアルバムです。昨日ご紹介した1518番は、1954年、1955年の録音ですから、カタログ番号が後でも、今回ご紹介する『Horace Silver Trio And Art Blakey-Sabu』の方が古い録音になります。

さて、このアルバム、ピアノのホレス・シルバーとドラムのアート・ブレイキー、そして曲によってベースが変わり、コンガのサブーが加わる変則ピアノ・トリオ編成。ファンキー・ピアノでならしたシルバーのピアノ・トリオですから、変則編成とはいえ、期待が高まるのですが、これがそうではない。

このアルバムは、シルバーの初の自己名義アルバム。しかも、録音年は1952ー53年。まだ、ファンキー・ジャズの言葉は無い。冒頭の一曲目「Safari」を聴けばビックリ。ファンキー・ジャズどころか、最初聴いた時は、バド・パウエルが弾いているのかと思った。1952ー53年のジャズ界。ジャズ・ピアノについては、まだまだバド・パウエルの影響が大きかったんだろう。
 

Horace_blakey_sabu

 
このアルバムでのシルバーは、バド・パウエルによく似ていて、まだ、彼特有の個性が前面に出ていない。左手の使い方が、ちょっとパウエルとは違うかな、くらい。楽曲は全てビ・バップ調。しかし、ブレイキーのドラムは違う、ビ・バップのドラミングとは明らかに違う。ハード・バップにつながるドラミングをこのアルバムで既に自分のものにしているのは立派。

加えて、このアルバム、4曲目「Message from Kenya」で、ブレイキーのドラムとサブーのコンガのデュオが展開される。出だし、いきなりサブーの雄叫び。ビックリである。加えて、またまたビックリなのが、10曲目「Nothing But the Soul」。ここでは、ブレイキーのドラムソロが展開される。この2曲でのブレイキーのドラミングは凄い。でも、このアルバムって、ホレス・シルバー名義のトリオアルバムじゃなかったっけ。

このアルバムは、何をテーマにとりまとめたのか? プロデューサーのアルフレッド・ライオンに訊いてみたい。よく判らん。でも、1952ー53年のジャズ・シーンが、このアルバムを透して見えるようで、ジャズの歴史、スタイルの歴史に興味のある方には、実に面白い聴きものだと思います。決してジャズ初心者向けのアルバムではありません。どちらかと言えば、上級者向けかと思います。

ちなみに、このアルバムの1952年の録音は、当初は、ルー・ドナルドソン(as)のリーダー・セッションの予定だったのが、ドナルドソンが都合で来られず、やむなくリズム隊だけで録音することになったそうです。その時、シルバーはオリジナル曲を持ち合わせており、この録音になった次第。シルバーのリーダー・デビュー録音はひょんなことから生まれたんですね〜。

ということで、ビートルズのベスト盤「青盤」「赤盤」のように、このシルバーの「青盤」と「赤盤」は、必ずしも対で所有しなくても良いと思われます(笑)。「青盤」はジャズ初心者の方々にお勧め、「赤盤」はジャズ上級者の方々にお勧め、って感じですね。
 
 
 
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