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2017年1月20日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・76

まず、ジャケットが良い。この線画の漫画チックな人物イラストが良い。見ていてほのぼのする。「The Poor People Of Beverly Hills」とタイトルを読んで、思わず口元が緩む。こういう印象のジャケットって絶対に内容は外れない。いわゆる「ジャケ買い」OKなアルバムである。

Terry Gibbs『A Jazz Band Ball』(写真左)。1957年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Max Bennett (b), Mel Lewis (ds), Lou Levy (p), Terry Gibbs (vib, marimba), Larry Bunker, Victor Feldman (vib, xylo), Marty Paich (arr)。テリー・ギブス、ヴィクター・フェルドマン、ラリー・バンカー。3人のヴィブラフォン(マリンバ、シロフォンも)の名手が顔を揃える。

なんてユニークなアルバムなんだろうか。なんせヴァイブ奏者が3人なんて、そんなジャズ盤、見たり聴いたりしたことがありません。しかも、この3人のヴァイブ奏者が丁々発止とやりあうんですから、これはもう堪らない。ヴァイブ3人のアドリブ・バトル、聴き応え満点です。これって、所謂ジャズの醍醐味ですよね〜。
 

A_jazz_band_ball

 
西海岸の幻のレーベル「モード」の、 西海岸の洗練と実験性が同居したプロジェクトでもある「Jazz Band Ball」の第二弾アルバムだそうで、何と無くその意味、判ります。まず、ヴァイブ3人のジャム・セッションなんて、実験的チャレンジ以外の何者でもありませんよね。しかも、その3人のアドリブ・バトルのレベルが高い。聴いていて思わずワクワクします。躍動感溢れるヴァイブのバトル。良いですね〜、ジャズですね〜(笑)。

マーティ・ペイチがアレンジを担当する。このペイチのアレンジが効いている。ペイチのアレンジあっての、ヴァイブ3人のジャム・セッション、その3人のアドリブ・バトルなんだな〜、ということを実感する。加えて、ルー・レヴィのピアノ、マックス・ベネットのベース、メル・ルイスのドラムスのリズム・セクションも堅実でご機嫌。しっかりとヴァイブ3人のアドリブ・バトルを支えるのだ。

米国西海岸ジャズの範疇の演奏なので、爽快感と清涼感が半端ない。しっかりとアレンジされた3人のヴァイブのバトルなんだが、演奏の雰囲気は自由でシンプル。ジャズの基本をしっかりと聴かせてくれる好盤です。

 
 

震災から5年10ヶ月。決して忘れない。まだ5年10ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年10月26日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・69

こういう音源がいきなり「コロッ」と出てくるから、ジャズは隅に置けない。必ず、ジャズ情報誌やネットでのジャズCDのリリース情報、それも国内だけでは無く、米国やドイツなど、海外の情報もしっかりとチェックしておく必要がある。

Barney Kessel『Live At The Jazz Mill』(写真左)。今年いきなり、こんな「未発表音源」がリリースされた。ジャズ・ギターのレジェンドの一人、バーニー・ケッセルのライブ音源。1954年の録音。当時ジャック・ミラーというジャズ・ファンがテープ・レコーダーに残していたもの。

ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Pete Jolly (p), Gene Stoffell (b), Art Kile (ds)。米国西海岸のジャズメン中心のチョイスと見える。まだ、時代は1954年。ハードバップの萌芽期。バックのリズム・セクションは、ビ・バップの「リズム&ビートを刻み続ける役割」を忠実に果たしている。
 

Barney_kessel_live_at_the_jazz_mill

 
このライブ盤では、明確にギターのバーニー・ケッセルだけが突出している。テープ・レコーダーでの録音なので、音は中の下程度。ちょっと「もやって」いて、音の輪郭もぼけている。それでも、ケッセルの弾き出すアドリブ・フレーズは迫力満点。音はイマイチではあるが、これだけケッセル節を楽しめる盤はなかなか無い。

バーニー・ケッセルのギターは、チャーリー・クリスチャンの延長線上にある、とジョンスコは言った。このライブ盤の高速アドリブ・フレーズを聴きながら、そんなジョンスコの「ケッセル評」を思い出した。確かに、ケッセルのギターの基本は「ビ・バップ」。しかし、その「ビ・バップ」に留まらない、イマージネーションと展開の妙を演奏のそこかしこに感じる。

Arizona州 Phoenixのライブ・ハウス「The Jazz Mill」での私蔵ライブ音源。音は「イマイチ」だが、ケッセル節は堪能できる、そんなジャズ者中級盤。ジャケットもオールディーズな雰囲気で「マル」。久し振りに「ケッセル節」を堪能させてもらいました。

 
 

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2016年10月20日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・92

米国西海岸ジャズ(ウエストコースト・ジャズ)は馴染みが無かった。というか、僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半、日本は東海岸の黒人ジャズ一辺倒。そして、フュージョン・ジャズの大ブーム。米国西海岸ジャズのアルバムなんて、通常のレコード屋には全く置いてなかった。

1991年の事であった、と記憶している。『スイングジャーナル・プレゼンツ〜ザ・ウエスト・コースト・ジャズ』なるオムニバスCD盤が発売された。タイトル通り、もちろん、老舗ジャズ雑誌スイング・ジャーナルの記事とのタイアップである。僕は、このオムニバスCD盤を通じて、初めて、米国西海岸ジャズにまともに触れた。

さて、僕はこのアルバムの良さが判らなかった。初めて聴いたのが1980年。例の「秘密の喫茶店」で聴かせてもらった。ほどよく、優れたアレンジに乗った、白人のジャズだということは感じ取れた。理路整然としていて破綻が無い。クールで爽快。東海岸ジャズを聴き馴れた耳には、何故か物足りない、と感じた。若さ故の過ちであった。

そのアルバムとは『Quartet: Russ Freeman/Chet Baker』(写真)。1956年11月の録音。真っ赤なバックに、チェット・ベイカーとラス・フリーマンの線画のイラストがとってもお洒落な盤である。この素晴らしい好盤が、1980年、ジャズを聴き始めて3年目の耳には、物足りない、と聴こえたのである。あぁ、穴があったら入りたい(笑)。

今の耳には、そんなことは全く無い。このアルバムは演奏的には、西海岸ジャズらしからぬ、硬派で尖った切れ味鋭いもの。アレンジが効いた聴き心地の良い、ライトなジャズでは全く無い。東海岸ジャズ顔負けの切れ味の鋭いアドリブ・プレイ。豪快な展開。これが米国西海岸ジャズなのか、と思わず、パーソネルを再確認してしまう。
 

Quartet_russ_freeman_chet_baker

 
そのパーソネルは、Chet Baker (tp), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。う〜ん、米国西海岸ジャズの名うての名手達が集結したカルテット構成。う〜ん、なんと素晴らしい布陣であろうか。

チェットのトランペットが凄い。マイルス顔負け。というか、音色はマイルスそっくり。しかし、切れ味と迫力という点ではマイルスを凌駕する。若さ「はち切れん」ばかりのブリリアントさ。人気という面でマイルスと双璧と謳われたチェット・ベーカーがこの盤に「いた」。チェットの伝説的な「トランペットの凄さ」が体感できる。

ラス・フリーマンのピアノも良い。こんなに多弁に弾きまくるピアニストとは思わなかった。ビ・バップのように多弁であるが、音の選択、音の展開が理知的で理路戦前としている。そこが東海岸ジャズのピアニストとは異なる。豪快に弾き回していても、お洒落な感覚は変わらない。これぞ、米国西海岸ジャズのピアノである。

そして、もう一つ。ラス・フリーマンのアレンジが良い。米国西海岸ジャズの面目躍如。このフリーマンの優れたアレンジがあるからこそ、このアルバムの中の演奏の全てが映える。アレンジされたジャズなんて、というジャズ者の方々がいるが、それは違う。アレンジもジャズのテクニック、じゃず演奏の必須要素の一つである。

ジャケット良し、演奏良し、音良し。揃いも揃った三拍子。好盤です。米国西海岸ジャズを感じるのにうってつけ、米国西海岸ジャズの入門盤としても最適な「好盤中の好盤」です。

 
 

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2016年4月28日 (木曜日)

爽快な「青空ジャケット」の好盤

このアルバムのジャケットが良い。この春の雰囲気にピッタリの青空。これが純ジャズのジャケットとは最初見た時は全く思いもしなかった。このジャケットを見たのは、遠く1980年の春だったかと記憶している。

このマニアックな盤が何故、あの例の「秘密の喫茶店」にあったのかは判らない。この盤を当時所有していた、ということは「かなりマニアックなジャズ喫茶」の証だと気がついたのは、それから15年も経ってからのことである。

さて、そのアルバムとは、Sonny Criss『Out of Nowhere』(写真左)。1975年10月の録音。1976年のリリース。カリフォルニアはロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Dolo Coker (p), Larry Gales (b), Jimmie Smith (ds)。1970年代半ばの米国西海岸の純ジャズシーンである。ソニー・クリス以外、知った名前は見えない。

亡くなる2年前のソニー・クリスの快作。ジャケット写真そのものの、カリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイが聴ける。テンション高く熱い演奏ながら爽快感抜群。頭のてっぺんから空へ突き抜けるような、爽快感溢れるアルトの伸びのある音色が実に良い。

冒頭の「All The Things You Are」が実に良い。ポジティブに明るく爽快に吹く「All The Things You Are」は実に良い。抜ける様に明るくメロウなフレーズの傍らに、ソウルなテイストが見え隠れするところが実に良い。ソフトで流麗なアドリブ・フレーズも心地良く、こういう吹き方もあるんやなあ、と単純に感心する。
 

Out_of_nowhere1

 
このクリスのブロウは、従来のメインストリーム・ジャズなブロウというよりは、録音の時は1976年、来るフュージョン・ジャズでのソフト&メロウなブロウに先んじるものではなかったか、と思う。これだけ聴き易く、躍動感があってポジティブな気持ちになれるブロウは、フュージョン・ジャズそのもの。

そういう印象を持って2曲目以降を聴き進める。やはり、明るいのびのびとしたトーンのアルトサックスのブロウが実に良い。「The Dreamer」などのバラード演奏も好調。やはり、この1970年代後半のクリスは好調期に当たる。このアルバムでのクリスのブロウを聴いていると、思わず口元が緩むのが判る。ポジティブで明快な演奏。爽やかである。

春の雰囲気にピッタリなアルバムである。春たけなわの暖かく晴れた日の昼下がり。陽光うららな午後の日光の煌めきを見ながら、このアルバムを聴くと、心に爽快感が吹き抜け、なんだか元気が沸いてくる。そんなポジティブな印象を与えてくれる好盤です。

しかし、こんなにカリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイを披露しているクリスが、このアルバムの録音の2年度、自ら命を絶ってしまう。胃がんを発病後、病苦に耐えかねた結果と聞く。僕の耳には、このアルバム『Out of Nowhere』が、クリスの「白鳥の歌」の様に響く。

 
 

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2016年4月26日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・34

この明るい雰囲気ジャケットに惹かれた。なんだか、あっけらかんとした明るい雰囲気のジャケット。録音された時代は1967年。ヒッピー・ムーブメントのはしり。ジャケット・ロゴの雰囲気がそれを物語る。

演奏はジャケットの印象を決して裏切らない。ポップスのカバーを織り交ぜた、明るく爽やかな疾走感溢れる演奏。初夏の晴れた日、穏やかな昼下がり。爽やかな風に吹かれながら耳を傾ける。そんな情景にピッタリな僕の「お気に入り」。

Sonny Criss『Up,Up and Away』(写真左)。1967年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Cedar Walton (p), Tal Farlow (g), Bob Cranshaw (b), Lenny McBrowne (ds)。その音が期待できる、なかなかに渋いメンバーである。

クリスは1927年生まれ。録音当時は40歳。脂の乗り切った中堅ジャズメン。このアルバムには、ソニー・クリスの明るい面が、溢れんばかりに輝いている。このアルバムの録音時はクリスの体調が万全だったことが窺い知れる。クリスは精神面で不調の時期があった。1960年代前半、1970年代前半は不調の時代。このアルバムの録音時の1960年代後半は好調の時代。
 

Up_up_and_away

 
冒頭の「Up, Up and Away」を聴けば、クリスのアルトの明るさ、爽快さを十分に聴き取ることが出来る。邦題「ビートでジャンプ」。フィフス・ディメンションのヒット曲のカバーなんだが、これが実に楽しい。テンション高く熱い演奏ながら爽快感抜群。頭のてっぺんから空へ突き抜けるような、爽快感溢れるアルトの伸びのある音色が実に良い。

ピアノを強打しまくるシダー・ウォルトン、タル・ファーロウのギター、ボブ・クランショウのベース、レニー・マクブラウンのドラムが乗り良く、爽やかに煽るようにがっちりとバッキング。このバッキングが思いのほか効いている。そんな安定感のあるバッキングを得て、クリスはアルトを吹きまくる。

他のスタンダード曲、バップ・チューンの演奏も良い。クリスって、基本は「バッパー」なんだなあ、と再認識する。5曲目の「Scrapple From The Apple」なんだどうだ。明らかに魅力的なバップな吹きっぷりの惚れ惚れする。2曲目のマイナー曲「Willow Weep for Me(柳よ泣いておくれ)」での泣きのアルトも魅力的だ。

このアルバムを録音した10年後。1977年に胃がんを発病して以来、ジャズから遠ざかる。そして、病苦に耐えかねた結果、同年ロサンゼルスで自殺して果てることになる。1970年代後半は好調な時代だっただけに残念な最期だった。

 
 

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2016年2月26日 (金曜日)

単純に「ジャズってええなあ」

こういうジャズを聴くと、単純に「ジャズってええなあ」と思う。雰囲気が良い。ほのぼのとした4ビート。ほどよく趣味良くアレンジされたユニゾン&ハーモニー。米国西海岸ジャズは聴き心地が良い。

Stan Getz『West Coast Jazz』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。米国西海岸ジャズのメイン・ジャズメンがズラリと名を連ねる。

リーダーはスタン・ゲッツ。テナーマンである。ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ。流れる様な典雅で爽やかなフレーズ。1950年代のゲッツのテナーは聴き心地が良い。1960年代にはボサノバ・ブームに乗って、大人気テナーマンとなって引っ張りだこ。

1970年代は改めて純ジャズに回帰するが、ゲッツの従来のスタイルが再評価されるのは、1980年代の純ジャズ復古の時代になってから。純ジャズ復古の波に乗って、スタン・ゲッツ再評価と相成ったが、ゲッツのブロウは意外と力強く、テクニック溢れるものになっていく。1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」に戻ることは無かった。そして、そうこうしているうちに、肝臓癌にて1991年、鬼籍に入ってしまう。
 

West_coast_jazz

 
1980年代から1991年、鬼籍に入るまでの、ストレート・アヘッドなゲッツのテナーも良いが、僕は、1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」なゲッツが大好きだ。当然、ボサノバにも染まっていない。純粋に、1950年代米国西海岸ジャズの雰囲気が凄く良い。

さて、このStan Getz『West Coast Jazz』を聴けば、ゲッツのテナーの全てが判る。フレーズ、アドリブ、どれをとっても天才的で、ゲッツは希有の「天才的インプロヴァイザー」ということがとても良く判る。収録曲もスタンダード曲が中心で、このスタンダード曲をベースに、様々なニュアンスのアドリブ・ラインが繰り出てくるところなんざあ、ほんと天才的です。

力まずにサラリと速く、魅力的なフレーズを吹くゲッツ。コンテ・カンドリのクールなトランペットは、ゲッツのテナーとの相性が抜群。ルー・レヴィの明るく歯切れの良い、雰囲気のあるピアノ。リロイ・ヴィネガーの太くて軽妙なベース。そして、リラックスしたクールなドラミングが見事なシェリー・マン。これぞ「米国西海岸ジャズ」な演奏です。

思わず聴き惚れてしまう。朝一番に聴くジャズにも良し。昼下がりのジャズ喫茶でほのぼのと聴くも良し。ほんと、良い雰囲気の「メインストリームなジャズ」。米国西海岸ジャズの個性である「アレンジの威力」はそこそこに、ゲッツのアドリブの実力と魅力が再認識できる盤。好盤です。

 
 

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2016年2月 8日 (月曜日)

フェルドマンの初お目見え盤

米国西海岸ジャズは「粋」である。テクニック優秀、ほど良くアレンジされ、心地良いユニゾン&ハーモニー。歌心あって聴き易いテーマの演奏、インプロビゼーションはテクニックを駆使した確かな展開。日本では東海岸のジャズとは違って、意外と阻害されていた。僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、米国西海岸ジャズのアルバムはほどんど見かけなかった。

そんな米国西海岸ジャズが日本の中で復権し始めたのは1980年代前半から。スイング・ジャーナル誌とのタイアップで米国西海岸ジャズのオムニバス盤が出た。それからである。それでも21世紀になった今でも、なかなか日本では米国西海岸ジャズの全貌には光が当たらない。そろそろ、その全貌を明らかにしないといかんと思うんだが如何だろう。

さて、そんな米国西海岸ジャズ、聴き心地が良くて、ハードなジャズの合間に必ず聴きたくなる。例えば、こんなアルバムがそんな存在である。Victor Feldman『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。

この盤のリーダー、ビクター・フェルドマンが面白い存在。フェルドマンは米国出身のジャズメンでは無い。もともとは英国生まれで、ロンドンで活躍したジャズメン。ロンドンで彼の個性は確立され、その後、米国西海岸にやってきた。そういうことで、フェルドマンは米国ジャズの洗礼を受けていない。
 

The_arrival_of_victor_feldman

 
このアルバムを聴けばそれが良く判る。米国のジャズ・ピアニストは、バド・パウエルから何らかの影響を受けているが、フェルドマンのピアノにはその形跡が無い。所謂、ビ・バップな節回しの影響が希薄なのだ。フェルドマンのヴァイブもそうだ。ミルト・ジャクソンの様なアーシーさは無く、どちらかと言えば、ファンクネスが希薄な白人ジャズの雰囲気に通じる。

そんなフェルドマンの歯切れの良いピアノが「米国西海岸ジャズ」である。ファンクネス希薄で切れ味の良いピアノとヴァイブ。ジャズと言うよりはクラシック出身な典雅な雰囲気。そんなピアノとヴァイブが、ほど良くアレンジされた米国西海岸ジャズに乗って展開する。これぞ米国西海岸ジャズと言っても良い雰囲気。

巷ではスコット・ラファロのベースを云々するが、確かに、太っとく鋼のように鳴る彼のベースは、フェルドマンのピアノ&ヴァイブに相対して、良いアクセントにはなっている。が、アルバム全体の雰囲気、これぞ米国西海岸ジャズと言っても良い雰囲気を担っているのはフェルドマンのピアノ&ヴァイブである。ラファロのベースはあくまで「脇役」である。

アルバム・ジャケットを見れば、今まさにフェルドマンがボートで海を渡って米国西海岸に到着しました、という感じのデザインが「お洒落」。英国人フェルドマンが米国西海岸に移り住んでジャズを奏でる。そんなフェルドマンが米国西海岸ジャズに合致した瞬間を捉えた、なかなかに聴き応えのあるアルバムである。

 
 

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2015年8月29日 (土曜日)

秋の気配に「米国西海岸ジャズ」

毎年8月後半のこの時期、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の恒例の「1970年代ロック祭り」を終えて、さて、今日からジャズ主体の話題に戻りましょう。

しかし、涼しくなりました。我が千葉県北西部地方、今日の最低気温は20度、最高気温は22度。これは10月上旬の陽気。しかも、秋雨前線の影響で、朝からしとしと霧雨が降り続く鬱陶しい一日。まだ8月なんですが、こんなに気温が下がったのは、ここ30年間で記憶がありません。とにかく涼しい。

さて、涼しくなると、様々なジャンルのジャズを聴く気になります。暑い時は、硬派なメインストリーム・ジャズや、熱気溢れるフリー・ジャズなどは絶対に避けたくなるんですが、ここまで涼しくなると大丈夫です。と言いつつ、今年の夏は「酷暑」。酷暑の後の余韻に浸りつつ、涼しい夜、聴き心地の良い、西海岸ジャズのアルバムを選択しました。

そのアルバムとは、Gerry Mulligan『What Is There to Say?』(写真左)。1958年12月から1959年1月にかけての録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Art Farmer (tp), Bill Crow (b), Dave Bailey (ds)。西海岸ジャズの雄、バリトン・サックスのジェリー・マリガンのリーダー作です。
 

What_is_there_to_say

 
このアルバム、冒頭のタイトル曲を聴けば良く判るんですが、明快に「米国西海岸ジャズ」の特徴を満載しています。ほど良くアレンジされた聴き心地の良い旋律、独特の響きを持った洒落たユニゾン&ハーモニー、落ち着いたクールなアドリブ展開、という米国西海岸ジャズの個性が、このアルバムにしっかりと根付いています。

そして、やはり聴きどころは、ジェリー・マリガンのバリトン・サックスでしょう。マリガンのバリトン・サックスは、クールで柔軟でマイルドな音作りが特徴で、実に粋で実にお洒落。それと、このアルバムを聴いていて思うのは、マリガンとファーマーの相性の良さ。良い感じですね。

加えて、このカルテット演奏は「ピアノレス」。ピアノのブロック・コードにリズム&ビートを制御されること無く、フロントのバリトン・サックスとトランペットが、柔軟にアドリブ・フレーズを展開していて、このアルバムについては、ピアノレス・カルテットの演奏として「成功」を収めている優れものです。

涼しくなって秋の気配。そんな秋の気配濃厚な季節、程良くコントロールされ程良くアレンジされ、楽器の重なり&響きがクールな米国西海岸ジャズに耳を傾けるひととき。至福のひとときです。

 
 

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2014年11月17日 (月曜日)

テンション高く熱い西海岸ジャズ

米国西海岸ジャズというのは、程良くアレンジされ、ユニゾン&ハーモニーが心地良い、落ち着いたお洒落で粋な演奏、というのが定説。しかし、このライブ盤は違う。僕はこのライブ盤を初めて聴いた時、東海岸のハードバップな演奏だと思った。

そのアルバムとは、Shelly Manne & His Men『Complete Live At The Black Hawk』(写真左)。もともとは5枚のアルバム、つまり、Shelly Manne & His Men『Live At The Black Hawk Vol.1』から『Live At The Black Hawk Vol.5』までの5枚に分かれていた音源を1つのパッケージにまとめて、録音順に並べた優れもの。

このShelly Manne & His Menの『Live At The Black Hawk』シリーズの演奏が凄いのだ。1959年9月22〜24日、サンフランシスコのライブ・スポット、ブラックホークでのライブ録音。 ちなみにパーソネルは、Monty Budwig (b), Shelly Manne (ds), Victor Feldman (p), Richie Kamuca (ts), Joe Gordon (tp)。

このライブは「熱い」。西海岸ジャズの「程良くアレンジされ」という部分はしっかりと存在している。収録された全26曲のいずれもアレンジが良い。さすが西海岸ジャズというところ。ユニゾン&ハーモニーも心地良い。しかし、「落ち着いたお洒落で粋な演奏」という部分は全く無い。

まず、リーダーのシェリー・マンのドラミングが熱い。そもそも、シェリー・マンって過小評価されているんだよな。なんか勝手に、シェリー・マンのドラミングって、米国西海岸ジャズの落ち着いたお洒落で粋なドラミングで、東海岸ジャズのドラマーほどに熱くない、と決めつけられている様な気がする。
 

Shelly_manne_black_hawk

 
熱くないジャズってジャズじゃ無い。なんて言い方で、シェリー・マンのドラミングは過小評価されてきた。でも、このライブ盤のドラミングを聴けば、そんな偏った見方は一掃されるのではないか、と思われる。

そして、僕が一番ビックリしたのが、ジョー・ゴードンのトランペット。このライブ盤でのゴードンのトランペットはかなり「熱い」。しかも、テクニックもかなり高度。速いパッセージにもよれることなく、スローなバラードでもよれることもない。ミストーンは皆無。

そして、バンド全体の充実した演奏テクニックは、長尺の演奏でもアドリブ・ラインがマンネリズムに陥ることが無い。長いアドリブでもダレることが無い。しっかりと充実した熱いアドリブ・ラインが展開される。ウッカリ聴いていると、このライブ演奏って東海岸のハードバップかな、と勘違いしてしまうくらいの「熱さ」。

このライブ盤は、米国西海岸ジャズのレベルの高さを見せつけてくれる。しかも、米国西海岸ジャズはライブでこそ、その真の姿を聴かせてくれる、ということを教えてくれる。

スタジオ録音は、確かに、程良くアレンジされ、ユニゾン&ハーモニーが心地良い、落ち着いたお洒落で粋な演奏が多い。しかし、ライブ音源はちょっと違う。東海岸ジャズに負けないほどテンション高く熱い、しかも、西海岸ジャズ独特の「程良くアレンジされ、ユニゾン&ハーモニーが心地良い」演奏が展開されるのだ。

 
西海岸ジャズを総合的に理解するには、より沢山、ライブ音源に耳を傾ける必要があるということ。このライブ盤を聴いて再認識した。勉強の仕直しである。

 
 

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2014年8月20日 (水曜日)

蒸し暑い夏に爽やかなアルトです

蒸し暑い夏に難しいジャズは辛い。特に、ハードなフリー・ジャズはチト辛い。耳当たりの良い、スムースな音が良い。エモーショナルなブロウはしんどい。耳当たりの良い爽やかなブロウが良い。

耳当たりの良い爽やかなブロウ。それでいて、しっかり芯の入った質の良いジャズ。う〜ん、と思いを巡らせて選んだアルバムがこれ。Art Pepper『The Art Pepper Quartet』(写真左)。1956年11月の録音。

タンパ・セッションと呼ばれるカルテット盤。そう『タンパのペッパー』。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Russ Freeman (p), Ben Tucker (b), Gary Frommer (ds)。

このタンパ・セッションは聴き応え十分。1950年代のアート・ペッパーのブロウを心ゆくまで堪能出来ます。艶やかな音色と歌心溢れるアルト・サックスは、それはそれは爽やか。冒頭の「Art's Opus」から「Val's Pal」まで、ペッパーが流れる様に、印象的なフレーズを吹き続けます。
 

The_art_pepper_quartet

 
そして、やはりこの『タンパのペッパー』のハイライトは、5曲目の「Bessame Mucho(ベサメ・ムーチョ)」。「ベサメ・ムーチョ」とはスペイン語で「もっとキスして」という意味。このマイナー調のラテン音楽チックな楽曲はムード満点。主旋律もキャッチャーで、スタンダード曲になり得る要素満載の佳曲です。

このラテン音楽チックなムーディーな楽曲を、楽曲の持つムーディーな雰囲気に流れること無く、ペッパーはあっさりと爽やかに吹き上げていきます。意外と切れ味の良い、ちょっと硬派なしっかりと芯の入ったブロウ。良いですね。マイナー調のラテン音楽チックな楽曲に迎合しないペッパーのブロウ。人気のある所以です。

バックのリズム・セクションの演奏も聴きもの。ベン・タッカーの乾いたファンクネス・ベース。ラス・フリーマンのパキパキした硬質タッチの、それでいて歌心あるピアノ。さほど上手くは無いのだが、弾むようなリズム&ビートが、ペッパーのスインギーなブロウに、不思議とフィットするゲイリー・フロマーのドラム。

アルバムに収録された楽曲のアレンジも、実はなかなかふるっていて、さすが米国ウエストコースト・ジャズですね。そんなウエストコースト・ジャズの香りが色濃く漂いつつ、ソフト&メロウなスイング感に溢れた、お薦めの佳盤です。

 
 

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