2022年1月17日 (月曜日)

The Remarkable Carmell Jones

ジャケットを見て「これは」と思う。そして、その盤の素姓をネットで調べて、気に入れば即ゲット。そうやって、今まで聴いたことの無い盤に出会い、その内容がクールだったり、小粋だったりすると、何だか幸せな気分になる。ジャズ盤の蒐集の醍醐味である。

Carmell Jones『The Remarkable Carmell Jones』(写真左)。1961年、Pacific Jazzからのリリース。ちなみにパーソネルは、Carmell Jones (tp), Harold Land (ts), Frank Strazzeri (p), Gary Peacock (b), Leon Pettis (ds)。パーソネルを見渡せば、米国西海岸ジャズの面子で占められている。カーメル・ジョーンズのトランペットとハロルド・ランドのテナーがフロント2管のクインテット編成。

実は、カーメル・ジョーンズについては、その名前しか知らなかった。じっくり聴いたことが無い。数年前、この盤に出会った時、まず思ったのが「何とイカしたジャケではないか」。そして、タイトルの「Remarkable(注目に値する)」が目を引いた。何か良さそうな盤やな〜、と思って、即ゲット。
 

The-remarkable-carmell-jones1

 
何とも端正でブリリアントな、そして、テクニックが確かなトランペットである。調べてみれば、アイドルは「クリフォード・ブラウン(ブラウニー)」。至極納得である。確かに、ブラウニーばりの美しいトーン、ちょっと線が細いのが気にはなるが、それを補ってあまりある、気負いの無い、素姓の良い端正なフレージングは新人離れしている。

2管フロントの相棒「ハロルド・ランド」のテナー・サックスも好調。"ブラウン&ローチ・クインテット時代よりも伸び伸び吹いているかもしれない。カーメル・ジョーンズのトランペットとの相性は良い。このフロント2管が充実しているので、このクインテット盤の内容はグッと締まったものにしている。良い雰囲気のハードバップ・ジャズだ。

雰囲気的には西海岸ジャズというよりは、東海岸ジャズに向いたトランペットだと思うのだが、調べて見たら、ホレス・シルヴァー(Horace Silver)の名作『Song for My Father』に参加している。そうか、あの印象的な、ちょっとファンキーで端正なトランペットは「カーメル・ジョーンズ」だったのか。ブルーノートの音に実にフィットしたトランペットだった。カーメル・ジョーンズ、東海岸で活動していたら、結構、人気トランペッターになっていたかも、とちょっと思った。
 
 
 
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2021年11月30日 (火曜日)

ヴィーナスの硬派な純ジャズ・5

昔に活躍したジャズマンを起用してスタンダード曲を演奏させる、そんな「昔の名前で出ています」的なアルバムを制作してリリースする。ヴィーナス・レコードの十八番であるが、如何せん、評判が良くない。しかし、この「昔の名前で出ています」的なアルバムの中にも、優れた内容の盤もあるのだから、見逃すわけにはいかない。

Claude Williamson Trio『South of The Border West of The Sun』(写真)。邦題『国境の南・太陽の西』。1992年12月15日、North Hollywoodの「The Bakery ecording Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Claude Williamson (p), Andy Simpkins (b), Al "Tootie" Heath (ds)。

収録曲を見渡すと「スタンダード曲」ばかりが並ぶので、第一印象は「昔の名前で出ています」的なアルバムかあ、と思ってしまう。解説を読むと、村上春樹のベストセラー恋愛小説『国境の南・太陽の西』に登場するスタンダードの名曲を取り上げた企画盤とのこと。なるほど、ちょっと理屈を付けてみたのね、と苦笑いしてしまう。

クロード・ウィリアムソンは、米国西海岸ジャズを代表するピアニストの1人。テクニック優秀、とにかく端正でタッチが歯切れ良く、アクや癖はほぼ無い。ライトで流麗な弾き回しが素敵なピアノである。米国西海岸ジャズにおける「バップなピアノ」として僕は捉えている。
 

South-of-the-border-west-of-the-sun

 
が、ウィリアムソンのリーダー作は「決定打」に欠けていたと思うのだ。ジャズ盤紹介本を紐解いても、ベツレヘム・レーベルからのリリースした『'Round Midnight』か、後続の『Claude Williamson』の2枚しか、代表作としてタイトルが挙がらない。この2枚、確かに内容的には良いのだが、米国西海岸ジャズの特徴である「お洒落なアレンジ」が逆効果なのか、ジャズ・ピアノとしては、何か今1つ足らない感じが残る。

その点、このヴィーナス盤の『国境の南・太陽の西』は、アレンジは「ハードバップど真ん中」の王道アレンジ。そんな旧来のハードバップなアレンジに乗って、クロード・ウィリアムソンは「バップなピアノ」をバリバリ弾きまくる。録音当時66歳なのだが、とにかく、バリバリ弾いている。

「ハードバップど真ん中」の王道アレンジの下でバリバリ弾きまくることで、ウィリアムソンは「総合力」で勝負するタイプのピアニストであることが良く判り、「総合力」で勝負するタイプであるが故に「テクニック優秀、とにかく端正でタッチが歯切れ良く、アクや癖はほぼ無い、ライトで流麗な弾き回し」という個性が、バリバリ弾き回すことによって、良い方向に作用している。

このヴィーナス盤の『国境の南・太陽の西』は、クロード・ウィリアムソンの代表作として良いと思っている。アレンジを気にすること無く、聴き手の「ウケ」を気にすること無く、バリバリと、本来の個性である「バップなピアノ」を弾きまくっている分、1950年代の米国西海岸ジャズでの代表盤より優れていると思う。
 
 
 
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2021年9月28日 (火曜日)

ゴルソン・ハーモニーは不滅です

最近のアルバム音源のサブスク・サイトは隅に置けない。CDでリイシューされる音源については、かなりの確率でサブスク・サイトにアップされる。これが実に便利。CDのオンライン・ショップを徘徊する必要も無く、聴こうと思ったらすぐに聴ける。しかも、音質についてはダウンロード音源でありながら、ハイレゾ環境を組めば、CD音源並みの高音質で提供されるのだから、これは本当に便利だ。

Benny Golson Quintet Feat. Curtis Fuller『One More Mem'ry』(写真)。1981年8月19, 20日、ロサンゼルスでの録音。日本の Baystateレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Curtis Fuller (tb), Bill Mays (p), Bob Magnusson (b), Roy McCurdy (ds)。ジャズテットを組んでいたベニー・ゴルソンとカーティス・フラーが1981年に西海岸で録音した再会セッション。フロント2管のクインテット編成。

この盤は懐かしい。この盤はLPでリアルタイムに聴いている。1981年の『カルフォルニア・メッセージ』の続編で、ゴルソン=フラーの名コンビ復活の第2弾という触れ込みで、リリースされたと記憶している。ロサンゼルスでの録音で、演奏の雰囲気は「米国西海岸ジャズ」。キャッチャーな楽曲を、ポップで洒落たアレンジで「聴かせる」ジャズを展開している。
 

One-more-memry-1

 
全7曲中、6曲がゴルソン作。1曲のみフラーの作となる。1曲目の「One More Mem'ry」は、我が国の童謡「月の砂漠」をモチーフにしたゴルソンのオリジナル曲。ゴルソン作曲の名曲「Five Spot After Dark」も再演されている。ゴルソン=フラーの名コンビ、そして、元ジャズ・テットとくれば、「ゴルソン・ハーモニー」は当然、反映されている。全編、芳しき「ゴルソン・ハーモニー」の調べに酔いしれる。

1981年の録音なので、バックのリズム・セクションの音は、どちらかと言えば「米国西海岸フュージョン」の雰囲気。ボブ・マグナッソンのベースはアタッチメントで電気的に増幅された音だが、ピッチがまずまず合っているので、聴き難くは無い。逆に、1970年代から1980年代前半の「時代のベース音」という観点で懐かしくもあり、今の耳で聴き直すと毛嫌いするほどでは無い。これはこれでアリだと思う。

ビル・メイズのピアノもスウィンギーでよく唄っている。フレーズに翳りが無く、米国西海岸ジャズの爽やかさをしっかりと踏襲している。前作『カルフォルニア・メッセージ』と同様、なかなかの内容だと思います。1980年代初頭、フュージョン全盛時代に爽やかで聴き心地の良いコンテンポラリーな純ジャズ。意外とイケます。そして、ゴルソン・ハーモニーは不滅、です。
 
 
 
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2021年9月14日 (火曜日)

ハロルド・ランド再評価である

ジャズ盤の特徴のひとつに「未発表音源」というのがある。「未発表音源」とは、以前、公式な録音はコンプリートしたのだが、何らかの理由で発売に至らず、マスター・テープが倉庫の中に収納されてしまった、いわゆる「お蔵入り」の音源である。

もうひとつは、公式では無く、プライベートにスタジオのオンボード音源、ライヴの隠し撮り、若しくは、許可を取ったプライベート録音などの音源で、非公式音源ながら音もまずまず、内容も充実していた場合、その音源権利を買い取って発売に至るものもある。

そして、この「未発表音源」が、何らかの切っ掛けで倉庫から発見され、聴き直してみたら充実した内容なので、今になって、正式な形で発売に至ったものが「未発表音源」発掘盤である。

以前はジョン・コルトレーンが「未発表音源」発掘のトレンド。ビル・エヴァンスは、人気が根強く、未だに定期的に「未発表音源」発掘盤がリリースされる。マイルス・デイヴィスは、ほんのたまにリリースされるくらいかな。つまり、今でも人気のあるジャズマンをメインに「未発表音源」発掘盤はリリースされる傾向にある。

Harold Land『Westward Bound!』(写真左)。ハロルド・ランドの「未発表音源」発掘盤。クラブが保有していたオリジナル・テープからのリマスタリング音源。1962年12月12日(#1, #2, #3), 1964年9月10〜17日(#4, #5), 1965年8月5日(#6, #7, #8, #9) の3回に録音日は分かれる。ちなみにパーソネルも、リーダーのハロルド・ランドとベースのモンク・モンゴメリー以外、3回の録音日毎に分かれる。

Harold Land (ts), Monk Montgomery (b)は3セッション共通。1962年12月12日(#1, #2, #3)が、Carmell Jones (tp), Buddy Montgomery (p), Jimmy Lovelace (ds)。1964年9月10〜17日(#4, #5)が、Hampton Hawes (p), Mel Lee (ds)。1965年8月5日(#6, #7, #8, #9) が、John Houston (p), Philly Joe Jones (ds)。

1962年12月12日だけが、ハロルド・ランドのテナーとトランペット2管フロントのクインテット編成。他の2セッションは、ハロルド・ランドのテナー1管フロントのワンホーン・カルテットである。録音場所は、いずれも、米ワシントン州シアトルのジャズクラブ「The Penthouse」。
 

Westward-bound

 
ハロルド・ランド(Harold Land)は、米西海岸ジャズのハードバップ系テナー・さっクスのの代表的名手。1928年、米国テキサス州ヒューストン生まれ。2001年、カリフォルニア州ロサンジェルスで逝去。クリフォード・ブラウン~マックス・ローチ・クインテットのメンバーとして、1950年代半ばに名を挙げたが、それ以外、意外と掴みどころの無い、サックス奏者という印象が強い。

なので、このハロルド・ランドの「未発表音源」発掘盤がリリースされたという記事を見た時、正直なところ「?」であった。ハロルド・ランドって、そんなに人気のあるサックス奏者だったっけ。しかも、収録されたセッションは3種類に分かれている。その「とあるセッション」に何か特別なものがあった風でも無い。何とも不思議な「未発表音源」発掘盤という印象があって、恐る恐る聴き始めた。

が、である。この3セッションのハロルド・ランドのテナー・サックスが、溌剌とした安定したプレイをベースに、好調で個性溢れるブロウを繰り広げている。ブラウン〜ローチ・クインテットの時は、何か少しぼんやりとしたテナーやなあ、という印象があったのだが、どうして、この「未発表音源」では溌剌としたエネルギッシュなブロウを繰り広げている。いや〜、これにはビックリした。

ハロルド・ランドのテナー・サックスについては、中高音域は音のエッジは丸みがあって柔らではあるが、しっかりとした弾力感がある。低音部はゴリッとした骨太さと芯の入った堅牢さ特徴。この「未発表音源」発掘盤では、滑らで硬軟自在、緩急自在なフレーズを連発、ハロルド・ランド絶好調である。

特に、1964年9月10〜17日(#4, #5)と、1965年8月5日(#6, #7, #8, #9) の、ハロルド・ランドのテナー1管フロントのワンホーン・カルテットが、バックのリズム・セクションのパフォーマンスを含め、聴きどころ満載。さすがワンホーン・カルテットだけあって、ハロルド・ランドのテナー・サックスの特徴が良く判って聴き応え満点。

なるほど、この「未発表音源」発掘盤のリリースの意義が何となく判った気がする。つまりは、この「未発表音源」発掘盤は、ハロルド・ランド再評価の好ライヴ盤なのだ。確かに、この「未発表音源」発掘盤を聴き終えて、ハロルド・ランドのテナー・サックスを見直した。
 
 
 
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2021年8月20日 (金曜日)

ヴィクター・フェルドマンの個性

ジャズのアルバム蒐集の中で「ジャケ買い」という言葉がある。アルバムの内容を全く知らない状態で、店頭などで見かけたジャケットの好印象だけでアルバムをゲットするという行為を指すのだが、ジャズのアルバムについては、この「ジャケ買い」が意外と良く当たる。ジャズ盤には「好盤には好ジャケット」という法則が存在する位だ。

しかし、当然、その逆も存在する訳で「こんなジャケットで内容が良い訳がない」と判断して、そのアルバムをジャケットのイメージだけで、敬遠する事だってある。いわゆる「逆ジャケ買い」である(笑)。ジャズ盤には、これはなあ、と呆れるイメージのジャケットもある訳で、こういう「逆ジャケ買い盤」は、ジャズ盤紹介本などで内容が良い事を確認していても、特にLP時代は、レコード屋のカウンターに持って行くのには、かなりの勇気が必要だった。

『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月21 & 22日、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。ヴァイブとピアノの二刀流、ヴィクター・フェルドマンのトリオ盤である。ベースに伝説の早逝ベーシスト、スコット・ラファロの名前がある。ドラムは、西海岸ジャズの燻し銀ドラマー、スタン・レヴィーが担当している。

このジャケットを見れば、まず進んで購入する気にはならないだろう(笑)。この盤は、フェルドマンが英国から米国LAへ移住したタイミングで録音されたトリオ盤なので「ヴィクター・フェルドマンの到着」となっている。つまり、米国西海岸に来たぞ、という意味なんだが、それが、このお茶目なジャケットになるかなあ(笑)。とにかく、このジャケットは「キワモノ」。でも、内容的には、フェルドマンのピアノとヴァイブの個性がとても良く判る、充実したものになっている。
 

The-arrival-of-victor-feldman-1

 
ヴィクター・フェルドマンのピアノは、音数を選んだ、シンプルでスピード感が爽やかなフレーズが個性。言い換えると、レッド・ガーランドのピアノからファンクネスを半分減じた感じ。後にマイルスがガーランドの後任候補として目を付けたのも頷ける。ちなみに、マイルスの十八番チューンの「Seven Steps to Heaven」はフェルドマン作である。フェルドマンはLAでのスタジオワークを優先すべく、マイルスの誘いを断っている。その代わりにマイルスの下に参加したピアニストがハービー・ハンコック。

そんなフェルドマンのピアノを堪能出来る。改めて、聴き耳を立ててみると、フェルドマンのピアノの「爽やかなスピード感」が印象に残る。流麗という表現とは異なる、クールで爽やかな滑らかさは、フェルドマン独特の個性だろう。フェルドマンのヴァイブはピアノと同じイメージの「クールで爽やかな滑らかさ」が個性。ファンクネスが皆無のヴァイブは硬質な透明感だけが残って、まるで欧州ジャズの様な響き。これまた、ファルドマン独特の個性だろう。

この盤、スコット・ラファロのベースを聴くべき盤とする向きもあるが、確かに、この盤でのラファロのベースはハイテクニックで唄うが如くのベースは素晴らしい。しかし、トリオ演奏におけるインタープレイを前提に考えると、あまりに前面に出すぎて、バランスに欠ける。とにかく、俺は凄いんだ、という感じの自己顕示欲が滲み出るベースで、「トリオ演奏の中でのベース演奏」として聴くと、ちょっと前へ出過ぎかな、と思う。ラファロのベースだけを聴く、という向きには、確かに最適のアルバムの一枚ではある。

しかし、このジャケット、誰が考えたのだろう。ユーモアがあって面白い、という評価もあるが、今の審美眼で見直してみても、これはちょっと酷いなあ、と思ってしまうのだ(笑)。
 
 
 
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2021年8月17日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・3

「僕なりの超名盤研究」の第3回目。僕はジャズを聴き始めた頃から、アルト・サックスと言えば「アート・ペッパー(Art pepper)」がお気に入り。1925年、米国カリフォルニア出身、破滅型のジャズ・レジェンド。麻薬禍との葛藤の中、刑務所に出たり入ったり。そんな劇的な人生の中で、多くのジャズ名盤を残しつつ、1982年6月、56歳で鬼籍に入っている。

ペッパーのアルト・サックスは「力強くて流麗」。力感溢れる、しっかりとした吹きっぷりだが、出てくるアドリブ・フレーズは「流麗」。アルト・サックスがフルフルで良く鳴っている。ペッパーのアルト・サックスによる「力強くて流麗」なアドリブ・フレーズは、何時聴いても「惚れ惚れ」する。

1960年代後半、薬物中毒者のためのリハビリテーション施設シナノンに収監されるが、その前後で、ペッパーの演奏スタイルは180度変わるとされるが、僕はそうとは思わない。

シナノン収監前は、典型的な米国西海岸ジャズ、西海岸のハードバップなスタイル。シナノン収監後は、コルトレーンのフォロワーとして、フリーキー&スピリチュアルな吹奏が加わるが、どちらの演奏スタイルも根っ子は「力強くて流麗」なアルト・サックス。シナノン収監後は、演奏スタイルの幅が広がったと解釈すべきだろう。
 

Surf_ride

 
そんなペッパーのシナノン収監前の名盤が、Art Pepper『Surf Ride』(写真左)。1952年3月の録音。アート・ペッパーの初リーダー作である。ちなみにパーソネルは、Art Pepper (as), Hampton Hawes (p), Joe Mondragon (b), Larry Bunker (ds)。アート・ペッパーのアルトのワンホーン作である。

アルバムの内容は聴けば判る、典型的な米国西海岸ジャズ。ほど良いアレンジが施された「聴かせるジャズ」である。ペッパーの「力強くて流麗」なアルト・サックスが、この米国西海岸ジャズの特徴である「聴かせるジャズ」に拍車をかける。収録された全ての曲において、ペッパーのアルト・サックスの「力強くて流麗」な吹きっぷり、「力強くて流麗」なアドリブ・フレーズが印象に強く残る。

加えて、このアルバムの演奏を聴くと、米国西海岸ジャズの特徴と個性がとてもよく判る。良くアレンジされた構成。響きが心地良いユニゾン&ハーモニー。演奏の質は中音域を十分に活かして「軽やか」。アドリブ・フレーズは「小粋で洒脱」。ポップで聴き心地の良いアンサンブル。米国西海岸ジャズの好例としてもお勧め。

『Surf Ride』=「波乗り」=黄色ビキニのお嬢さん、的なイラスト・ジャケット。いや〜、飛び切り「アメリカン」である。初めて目にした時には「ドン引き」したなあ。が、このジャケットに臆すること無く、この盤はジャズ者万民の方々に聴いて欲しい超名盤である。
 
 
 
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2021年7月25日 (日曜日)

西海岸のソウルフルなジャズ

ジャズ盤の裾野は広い。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌に「優秀盤」としてその名前が挙がるジャズ盤ばかりが全てでは無い。特に、インターネットが普及して、海外のジャズ盤の情報が入ってきたり、ジャズ盤の音源が気軽にダウンロードして聴くことが出来る様になって、まだまだ未知の「小粋なジャズ盤」の存在に気がつく様になった。

Curtis Amy & Frank Butler『Groovin' Blue』(写真左)。1960年12月10日と1961年1月10日、ハリウッドの「Pacific Jazz Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Curtis Amy (ts), Frank Butler (ds), Carmell Jones (tp), Bobby Hutcherson (vib), Frank Strazzeri (p), Jimmy Bond (b)。

カーティス・アミー(写真右)のテナー・サックスとカーメル・ジョーンズのトランペットの2管フロント、ボビー・ハッチャーソンのヴァイブが入った、セクステット(6人)編成。米国西海岸で活躍した黒人テナー奏者カーティス・アミーと名ドラマー、フランク・バトラーの双頭リーダーによる「小粋なジャズ盤」である。

米国西海岸ジャズの範疇なので、馴染みの無い名前であるが、カーティス・アミーは、ファンクネス溢れるブロウが心地良い黒人サックス奏者。フランク・バトラーは西海岸ジャズの中での味のあるドラマー。
 

Groovin-blue
 

演奏全体の雰囲気は、西海岸では珍しいアーシーかつソウルフルなもの。しばらく聴いていると、東海岸のジャズかしら、と思ってしまう。

洒落たヴァイブはボビー・ハッチャーソン。ここでのハッチャーソンは、乾いて洒落たファンクネスを底に忍ばせた、クリアで耽美的なヴァイブ。アミーのこってこてなファンキーなサックスとの好対照な音と相まって、この盤独特の「聴かせるアーシーでソウルフル」なジャズ演奏を創り出している。

バトラーの小粋なドラミングもこの米国西海岸ジャズ独特の「聴かせる」ファンキー・ジャズに貢献していて、この盤を米国西海岸ジャズの中で「独特な音」にしている。

この盤は、米国西海岸ジャズの中での「聴かせる」ファンキー・ジャズ。珍しい存在で、こういう盤があるから、ジャズは面白い。ジャケットと出てくる音で、米国東海岸ジャズの「隠れた秀作」と勘違いしないで下さいね。私は最初聴いた時、完全に勘違いしました(笑)。
 
 
 
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2021年6月 2日 (水曜日)

やはりズートのテナーは良い

Zoot Sims(ズート・シムス)を聴いている。1925年10月、カリフォルニア州イングルウッドに生まれ。レスター・ヤングの足跡を追ってサックス奏者になり、生涯を通じて、様々な著名なビッグバンドと共演している。1950年代と1960年代は、アル・コーンと共同名義のクィンテットで「アルとズート」名義での録音を多く残した。しかし、1985年、59歳の若さで急逝している。

昔から、このズート・シムスというサックス奏者、我が国ではかなりの「過小評価」ジャズマンの1人に甘んじている様に見える。聴けば「このテナー奏者、ええよな」となって、幾枚かリーダー作を漁り、遂にはお気に入りサックス奏者の1人に名を連ねるのだが、ジャズ盤紹介本とかジャズの歴史本などでは、ほんの少ししか触れない、若しくは無視である。

恐らく「アルとズート」名義での録音が多いこと、そして、単独リーダー名義の盤は結構な数があるのだが、以前より意外と入手し難くかったこと、西海岸出身なので「米国西海岸ジャズ」のジャズマンとして括られてしまっていて、レアなサックス奏者と誤解されていること、これらが絡まって、ズート・シムスを「知る人ぞ知る」存在に追いやっている様に思われる。一度聴けば、ドップリ填まる可能性は高いサックスなんだけどなあ。
 

Zoot-sims-in-paris-1961

 
『Zoot Sims in Paris』(写真左)。1961年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Zoot Sims (ts), Henri Renaud (p), Bob Whitlock (b), Jean-Louis Viale (ds)。フランス映画のナイトクラブのセットに客入れして本物のクラブの雰囲気そのままで演奏されたもの、とのこと。いわゆる擬似ライヴ録音ということですね。紹介アナウンスがあったり、拍手など観客の雰囲気があるのはそれが理由。納得。

この盤、ズートのワンホーン・カルテットなので、ズートのテナーの個性と特徴が良く判る。スケールの大きいブロウ、スイングの雰囲気がそこはかと漂いながらも、吹きっぷりはテクニックは確かでハードバップ。中高音域を好んで用いるらしく、テナーにしてはフレーズの音が高い。これがテナーのワンホーン盤ながら、軽快な聴き心地の良さに貢献している。

良いテナーです。コルトレーンの様にシーツ・オブ・サウンドする訳でなく、ロリンズの様に豪放磊落に吹き上げる訳でも無い。力強くはあるが、堅実で少し柔らかなテナーは個性的。音のブレやブロウの癖はほとんど無く、ブロウの質については、全くヨレること無く、しっかりとハードバップしている。心地良い、力強くも柔らかなズートのテナー。僕はこの擬似ライヴ盤で「ズートを再認識」です。やはり、ズートのテナーは良い。
 
 
 

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2021年5月24日 (月曜日)

西海岸の異色のピアノ・トリオ盤

米国西海岸ジャズ、いわゆる「ウエストコースト・ジャズ」は奥が深い。もともと我が国では「一度は忘れ去られたジャズ」だった米国西海岸ジャズである。圧倒的に情報が不足していた。21世紀に入って、単行本含めて、米国西海岸ジャズについての紹介本が発刊されたりで、以前よりは情報が整理されてきた。それでも、まだまだ、その全貌は掴みきれていないのが正直なところ。

『Bernie Nerow Trio』(写真左)。1957年7月、ハリウッドでの録音。ちなみにパーソネルは、Bernie Nerow (p), Max Wayne (b), Dick Stein (ds)。ピアノの「バーニー・ニーロウ」がリーダーのピアノ・トリオ編成。イラストのジャケットが特徴の、幻の西海岸ジャズレーベルである「モード・レーベル」からのリリース。

他にリーダー作が無い、バーニー・ニーロウの稀少な作品。稀少な作品なので、このバーニー・ニーロウというピアニスト、結構、悲劇的なキャリアをしているのかと思ったら、ネットの情報を紐解くと「後年ピーター・ネロと名乗り、イージー・リスニングの世界に身を投じ一世を風靡した」とのこと。おお、ピーター・ネロって名前は聞いたことがあるぞ。なんだ、後年はイージー・リスニング畑の有名人なのね。
 

Bernie-nerrow-3
 

ジャズへの傾倒については、これもネットの情報を紐解くと「幼少の頃からクラシック音楽を学びコンサート・ピアニストを目指していた彼がアート・テイタムとの出会いからジャズに目覚めた」とある。クラシック・ピアノの素養がかなりある、加えて、アート・テイタムに感化されたということは、ピアノ弾きのテクニックは相当なものがあると見た。

で、このトリオ盤である。聴くとその内容はユニーク。おおよそ、当時流行っていたハードバップ志向のジャズでは無い。米国西海岸ジャズの特徴である「アレンジに優れた聴かせるジャズ」でも無い。クラシック・ピアノの様な端正な弾き回しとアート・テイタムばりのジャジーな高速弾き回しで聴き手を圧倒する。ピアノ・トリオ編成ではあるが、ピアノだけが前へ出て弾きまくる。ベースとドラムのリズム隊はリズム・キープに徹している。

「クラシック音楽とジャズの融合」と「ジャズピアノにおけるオーケストラ奏法への挑戦」がテーマとのこと。その情報を得て合点がいった。内容的には「ビ・バップ」に近いが、フレーズの雰囲気が「どっぷりジャズ」では無く、どこか「クラシック風」なのだ。ハイ・テクニックにまかせて高速な即興フレーズを弾きまくるのは、バド・パウエルばりだが、ジャジーな雰囲気が希薄なところが、どこか米国西海岸ジャズっぽくて面白い。クラシック風の高速な即興フレーズが個性の「異色のピアノ・トリオ盤」として聴くと違和感は無い。
 
 
 

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2021年5月22日 (土曜日)

西海岸ジャズらしいベーシスト

ウエストコースト・ジャズ、いわゆる「米国西海岸ジャズ」は1960年代後半から1980年代半ばまで、我が国では「忘れ去られたジャズ」化していた。つまりは、我が国は「米国東海岸ジャズ」偏重だったのだが、21世紀になった今では、もうそういう偏った傾向は無い。

Don Bagley『Basically Bagley』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Don Baglay (b), Jimmy Rowles (p), Shelly Mane (ds)。ベーシスト、ドン・バグレーをリーダーとしたピアノ・トリオ編成。リーダーのベーシストのテクニックと西海岸ジャズならではの「聴かせる」ピアノ・トリオ演奏の両方が楽しめる好盤である。

僕はこの「ドン・バグレー」というベーシストを21世紀に入るまで知らなかった。ネットの時代になって、ダウンロードで、我が国ではあまり知られていない米国西海岸ジャズの好盤の数々を聴くことが出来る様になって、初めて知った次第である。この盤は和訳すると「要はバグレー」。
 

Basically-bagley
 

この盤でのバグレーはひたむきにジャズ・ベースを弾いていて、これがこのピアノ・トリオ演奏における好サポートにつながっている。この盤のピアノ・トリオ演奏を内容の濃いものにしているのは、このバグレーのベースなのだ。バグレーのベースが演奏の底のビートをしっかり押さえているので、ドラムのシェリー・マンは丁々発止と変幻自在な技を披露できるのだし、ロウルズのピアノは歌心溢れるフレーズを一糸乱れず弾き切るのだ。

バグレーはベーシストだけに、リーダー作は数作しかない。しかし、スタン・ケントン楽団から始まって、リー・コニッツ、ショーティー・ロジャース、ベン・ウエブスターなどのバックを担当した、サイドマン志向のベーシストであったことが窺える。いわゆる「演奏の底のビートをしっかり押さえる」のに長けているベーシストなのだ。

21世紀なった今でも、西海岸ジャズを聴き進めて行くと、聴いたことの無いジャズマンに出くわして、ちょっと「あたふた」するのだ。今回、このバグレーもそんなジャズマンの1人。しかし、この人のベースを聴くと、とにかくひたむきにベースを弾いていて、音も歯切れが良くて清々しい。米国西海岸ジャズらしいベーシストと言えるのではないだろうか。
 
 
 

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