2023年2月18日 (土曜日)

西海岸の小粋な「2テナー」盤

「小粋なジャズ」を探し当てては聴いている。最新の新盤や昔のフリー・ジャズを聴き込んだ後、耳休めと気分転換に「高貴なジャズ」盤を聴く。以前から聴き込んだアルバムも良いが、これは聴いたことが無いなあ、とか、前に聴いたけどもう一度聴きたい、といった「小粋なジャズ」盤に出会えた時が一番嬉しい。

Bill Perkins『Tenors Head-On』(写真左)。1956年7月の録音。Libertyレーベルの LRP 3051番。ちなみにパーソネルは、Bill Perkins (ts, b-cl), Richie Kamuca (ts), Pete Jolly (p), Red Mitchell (b), Stan Levey (ds)。米国西海岸ジャズのテナー・マン、ビル・パーキンスとリッチー・カミューカがフロント2管のクインテット編成。フロント楽器がテナー2本なので、変則な「ワンホーン・カルテット」と解釈しても良い編成。

昔、旧スイング・ジャーナル誌の別冊「幻の名盤読本」でこの盤の存在を初めて知った。東海岸ジャズでフロント2管がテナー同士だったら、即、テナー・バトルがウリのジャムセッションか、と構えるのだが、西海岸ジャズでのフロント2管がテナー同士である。優れて小粋なアレンジが施されて、2本のテナーをどう活かして、どう聴かせてくれるのか、と聴く前からワクワクする。
 

Bill-perkinstenors-headon

 
聴けば、さすが西海岸ジャズ、アレンジ優秀、テクニック優秀、聴かせるジャズでグイグイ押してくる。まずは、タイトル通り、パーキンスとカミューカのテナーの「ユニゾン&ハーモニー、そして、チェイス」がアーバンで小粋でお洒落。俺が俺が、と前に出ようとするテナー・バトルでは無く、相手の音をちゃんと聴いて反応して、その瞬間その瞬間に相応しいフレーズを紡ぎ上げている。もともと2人ともテクニックで勝負するタイプでは無い。2人のテナーが双方で良い方向に共鳴して、良い雰囲気を醸し出している。

セッション・メンバー間のチーム・ワークが抜群。特に、ピート・ジョリーのピアノ、レッド・ミッチェルのベース、スタン・レヴィーのドラムのリズム・セクションが良い音を出していて小気味良い。さすが西海岸ジャズのリズム隊、出てくるリズム&ビートがクールでお洒落。それぞれの楽器のソロも「小粋」。それでいて、リズム・キープ感はバッチリで、このリズム隊あっての「2テナー」の快演である。

アルバムを聴き通して、この盤、典型的な「ウエストコースト・ジャズ」な内容。ジャズ盤紹介本やジャズ誌の名盤紹介では、そのタイトルが上がることが先ず無い盤ですが、録音年を見れば「1956年」。ウエストコースト・ジャズ全盛期の中で録音された「隠れ名盤」でしょう。ジャケがちょっと平凡ですが、そこは「ご愛嬌」ということで....(笑)。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

   ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

   ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

   ★ 松和の「青春のかけら達」

     ・四人囃子の『Golden Picnics』
  
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年12月 6日 (火曜日)

ヴィクター・フェルドマンの到着

ジャズには「ジャケ買い」という言葉がある。ジャケットのデザインが優れているアルバムは、押し並べて良好な内容のアルバムである、という経験則からの言い回しなんだが、確かにこれが、ジャズに限っては当たることが多い。

特に、ジャケットのデザインに全く無頓着なジャズ・レーベルにおいても、これが当たるから面白い。ジャズ名盤のジャケットは、確かに優れたものが大多数である。

但し、逆もある。もともとジャズ・レーベルは、ブルーノートを除いて、ジャケットにはあまり感心が無いようなんだが、「これは一体どうしたんだ」とビックリする様な、劣悪なデザイン、ふざけたデザインがたまに出てくる。

こういう問題のあるジャケットの場合、LP時代は特に、レコード屋でカウンターに持って行くのが憚られた。店員がジャズに明るい場合は良いのだが、その逆の場合、カウンターに持って行った当方の感性が疑われる(笑)。

Victor Feldman『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月21, 22日、ロサンゼルスでの録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。リーダーのフェルドマンがヴァイブとピアノを担当、伝説の早逝ベーシスト、スコット・ラファロの参加が目を引く。ドラムには、ウエストコースト・ジャズの職人ドラマー、スタン・レヴィーが控えている。

ジャケットが「ふざけたデザイン」(笑)。フェルドマンは英国ロンドン出身。1955年にロニー・スコットの強い勧めもあって、米国に移住。1957年にはロサンゼルスに定住。そして、その翌年早々に、この米国での初リーダー作『The Arrival of Victor Feldman』を録音している。
 

The-arrival-of-victor-feldman

 
このタイトル、直訳すると「ヴィクター・フェルドマンの到着」。つまり、英国から米国西海岸にフェルドマンがやって来たぞ、という意味だろう。しかし、フェルドマン(ラファロもレヴィーも同様だ)も良く、このパロディー風のジャケ写の撮影に付き合ったもんだ。

しかし、アルバムの内容はまずまず良好。ウエストコースト・ジャズの範疇での録音だと思うが、英国ジャズのフェルドマン、東海岸がメインのラファロの志向が前面に出ているのか、ウエストコースト・ジャズの範疇でありながら、ウエストコースト・ジャズ特有の「聴かせるアレンジ」「アーティスティックなアレンジ」の形跡はほどんど無い。

といって、東海岸特有の丁々発止としたインタープレイでも無い。趣味良く流麗で小粋なハードバップな演奏が小気味良い。この盤の聴きものはやはり、フェルドマンの洒脱なヴァイブとシンプルで軽快なピアノが良い。クールで乾いたヴァイブ&ピアノの音を聴けば、やはりこの盤は、ウエストコースト・ジャズの範疇の録音なんやなあ、と感心する。

以前から、この盤は、ラファロのベースが凄い凄い、と評判だが、ブンブン唸るベース音が、フェルドマンのシンプルで軽快な流麗なヴァイブ&ピアノと対照的で、逆にフェルドマンのクールで乾いたヴァイブ&ピアノの音が前面に出てくるから面白い。ラファロは我関せずとマイペースに弾きまくってはいるんだが、こういう効果も見越して、フェルドマンはベースにラファロを調達したんだろう。

スタン・レヴィーのドラム。彼の叩き出す、正確でスインギーなリズム&ビートが、フェルドマンのヴァイブ&ピアノと、ラファロの重低音ベースとのバランスを上手く取っている。フェルドマンはリーダーとして、上手くベースとドラムの選定をしているなあ、つくづく感心する。

ヴァイブ&ピアノにベースとドラム。変則な編成ではあるが、なかなか内容の良いトリオ盤。スタンダード曲を中心に、フェルドマンのシンプルで軽快な流麗なヴァイブ&ピアノが良い雰囲気です。 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ    【New】 2022.12.06 更新。

   ・本館から、プログレのハイテク集団「イエス」関連の記事を全て移行。

 ★ 松和の「青春のかけら達」 

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 

2022年12月 5日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・255

ジャズの関連本などで紹介されていて、名前は知っているのだが、リーダー作をまともに聴いたことが少ないジャズマンに出会った。クレア・フィッシャー(Clare Fischer)である。

1928年10月22日ミシガン州デュランド生まれのピアニスト、アレンジャー。1962年のリーダー作『First Time Out』で高評価を得ている。メインストリーム・ジャズばかりでなく、ポップなラテン・ジャズやボサノバ・ジャズも演奏し、多くのリーダー作ををリリースしている。ちなみに、ハービー・ハンコックに大きな影響を与えたジャズマンの1人とされる。

1970年代以降、オーケストラのアレンジなども手掛けるようになり、R&Bやロック畑のチャカ・カーン、ポール・マッカートニー、セリーヌ・ディオン、そしてプリンス等、多くのR&Bやロック畑のアーティストとコラボしている。僕は、クレア・フィッシャーについては、こちらのR&Bやロック畑のアーティストとの協働の印象の方が強い。

Clare Fischer『Surging Ahead』(写真)。1963年の録音。米国ウエストコースト・ジャズのメイン・レーベルのひとつ「Pacific Jazz」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Clare Fischer (p), Albert Stinson (b, #1-4), Colin Bailey (ds, #1-4), Ralph Pena (b, #5-7), Larry Bunker (b, #5-7), Gary Peacock (b, #8), Gene Stone (ds, #8)。

パーソネルはちょっと複雑だが、気にすることは無い。ベースとドラムのリズム隊は、リズム・キープにほぼ専念していて、担当が代わっても、大きく音が変化することは無い。このトリオ盤は、クレア・フィッシャーのピアノだけを前面に押し出した、クレア・フィッシャーのピアノだけを愛でる為にあるトリオ盤である。
 

Clare-fischersurging-ahead  

 
録音年は1963年だが、フィッシャーのピアノはオーソドックスなバップ・ピアノ。ところどころ、モードに展開するところやアブストラクトにブレイクダウンするところはあるが、概ね、伝統的なバップ・ピアノな弾き回すに終始している。しかし、これが意外と新鮮に響くのだからジャズは面白い。

演奏全体の雰囲気は、米国のウエストコースト・ジャズな雰囲気で、音はカラッと乾いていて、響きは流麗。しかし、ウエストコースト・ジャズ特有の「聴かせるアレンジ」「アーティスティックなアレンジ」の形跡はほどんど無く、どちらかと言えば、東海岸のバリバリ弾きまくるバップ・ピアノの雰囲気なのだ。収録曲8曲のうち、フィッシャーの自作曲は1曲のみ、他は小粋なスタンダード曲が選曲されていて、聴き心地がとても良い。

但し、テクニックのレベルは、フィッシャーは勿論のこと、リズム隊のメンバーも併せて高く、流麗な弾き回しはとても端正で爽快感がある。この辺は、ウエストコースト・ジャズの雰囲気。加えて、ファンクネスは希薄。爽快なウエストコースト・ジャズにおける「バップ・ピアノ」という感じがユニークに響く。

良い感じのピアノ・トリオ盤。爽快なウエストコースト・ジャズにおける「バップ・ピアノ」が聴き心地が良くて、聴き始めると、ついつい引き込まれて、一気にラストの「Without a Song」まで聴き切ってしまう。クレア・フィッシャーを体験するのに好適なトリオ盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年11月15日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・254

1950年代の米国のウエストコースト・ジャズのアルバムは一聴すれば直ぐに判る、独特の「音の傾向」を持っている。小粋に洒脱にアレンジされ、バンド・アンサンブルは小洒落ていて、クールで落ち着いている。どのウエストコースト盤も、そういう音の傾向を持っていて、少なくとも冒頭から1〜2曲聴けば、ウエストコースト盤か否かが判る。

ビ・バップの様にそのテクニックを披露するジャズでもなければ、熱くブロウするジャム・セッションなスタイルでも無い。ウエストコースト独特のラウンジ・ジャズ志向、もしくは、室内でじっくり聴く鑑賞音楽としてのジャズ、つまり「聴かせるジャズ」でる。アレンジは、東海岸のハードバップよりも精緻でアカデミックで、しっかりと音楽理論に則った、事前にしっかり準備されたアレンジが大多数である。

Bud Shank and Bob Cooper『Blowin' Country』(写真左)。1956年11月29日と1958年2月18日の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Bob Cooper (ts, oboe), Claude Williamson (p), Don Prell (b), Chuck Flores (ds)。

西海岸ジャズの人気アルト奏者、バド・シャンクと、洒脱なテナー奏者、ボブ・クーパーが2管フロントのクインテット編成。CDリイシュー時には、5曲のボートラが追加されているが、ここでは、LP時代の10曲収録盤での聴き込み。
 

Bud-shank-and-bob-cooperblowin-country

 
冒頭の「Dinah」の前奏のアルトとテナーのユニゾン&ハーモニーを聴けば、これは直ぐに、ウエストコースト・ジャズの優秀盤だと感じる。どの曲にも施される小粋で洒脱なアレンジ。特に、シャンクのアルトとクーパーのテナーによる、ユニゾン&ハーモニー、チェイス、コール&レスポンス、対位法的な掛け合い等、とてもよくアレンジされていて、聴いていて気持ちが良い。

シャンクのアルト・サックスが絶好調で、とても良い音を出している。負けじとクーパーのテナー・サックスも魅力的なフレーズを吹き上げる。特に、バラード演奏における、シャンク&クーパーは絶品。「聴かせるジャズ」の面目躍如、情感豊かに、歌心豊かに、素敵な「聴かせる」フレーズを連発する。他にシャンクはフルート、クーパーはオーボエを吹いて、クインテットのジャジーな演奏に良いアクセントを付けている。

バックを司る、クロード・ウィリアムソンのピアノを核としたリズム・セクションも良い。特に、ウィリアムソンのピアノは、洒脱で小粋で味がある。ウエストコースト・ジャズの雰囲気を代表するピアノのパフォーマンスだろう。

良いウエストコースト盤です。本当に久し振りにこの盤を聴き直したのだが、実にウエストコーストしていて聴き応え抜群。ウエストコースト・ジャズの代表盤の1枚として良い優秀盤です。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年10月25日 (火曜日)

ウエストコースト・ジャズの頂点

シェリー・マンは、米国ウエストコースト・ジャズの代表的ドラマーであったと同時に、ウエストコースト・サウンドの体現者でもあった。ドラマーとしても超一流だが、バンド・サウンドのプロデュース&コントロールについても優れた実績を残している。シェリー・マンのリーダー作を聴くと、米国ウェストコースト・ジャズの音が、たちどころに判る、と言っても良い。

Shelly Manne and His Men『Vol.4・Swinging Sounds』(写真左)。1956年1ー2月の録音。ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Stu Williamson (tp, valve-tb), Charlie Mariano (as), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b)。ウィリアムソンのトランペット&トロンボーン、マリアーノのアルト・サックスのフロント2管、リーダーのマン、ピアノのフリーマン、ベースのヴィネガーのリズム・セクションのクインテット編成。

収録全曲、とてもウエストコースト・ジャズらしいアレンジが施されている。フロント2管のユニゾン&ハーモニーの響きだけで、この盤はウエストコースト・ジャズの盤だということが判るくらいの、典型的なウエストコースト・ジャズのアレンジ。この盤を聴くだけで、ウエストコースト・ジャズのアレンジの特徴と個性が把握できる。
 

Shelly-manne-and-his-menvol4swinging-sou

 
バド・パウエルのビ・バップの名曲「Un Poco Loco」まで、ウエストコースト・ジャズのアレンジで染められて、フロント2管のユニゾン&ハーモニーで「Un Poco Loco」のテーマを奏でると、「Un Poco Loco」の持つ素晴らしいフレーズがグッと浮き出てくる。「聴かせる」、さすが「聴いて楽しむ」、ウエストコースト・ジャズの面目躍如である。

演奏メンバーのパフォーマンスもそれぞれ好調で聴き応えがある。そんな中でも、やはり、リーダーのマンのドラミングが傑出している。相当に高いテクニックと「歌心」を感じさせるドラミングは、ジャズの歴代のドラマーの中でも「指折り」だろう。特に、この盤でのマンのドラミングは素晴らしい。

このマンのリーダー作を聴くと、録音年の1958年、ウエストコースト・ジャズは、更なる進化の「のりしろ」が見当たらないくらい、完全に成熟していたことが良く判る。ウエストコースト・ジャズのアーティステックな頂点を捉えた名盤だろう。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年7ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年10月13日 (木曜日)

米国西海岸ジャズのお手本

米国西海岸ジャズを代表するドラマーと言えば、シェリー・マン(Shelly Manne)。というか、シェリー・マンしか浮かばないほど、シェリー・マンのドラマーとしての存在は突出している。

Shelly Manne and His Men『Vol.1 : The West Coast Sound』(写真左)。1953年4月, 7月, 9月の3つのセッションの寄せ集め。シェリー・マンの2枚目のリーダー作。フロントは、トロンボーン、バリサク、テナー、アルトの4管フロント。リズム隊はスタンダードな「ピアノ・ベース・ドラム」。全部合わせて、セプテット(七重奏団)構成。米国西海岸ジャズお得意の「アレンジ」が映える大人数の編成である。

ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Bob Enevoldsen (valve-tb), Jimmy Giuffre (bs) の3人は3つのセッションに全参加。セッション毎の参加については、1953年4月と7月の2セッション参加は、Bob Cooper (ts), Marty Paich (p)。1953年4月のみは、Art Pepper (as), Curtis Counce (b)。1953年7月のみは、Bud Shank (as), Joe Mondragon (b)。1953年9月はガラッと変わって、Joe Maini (as), Bill Holman (ts), Russ Freeman (p), Ralph Peña (b)。

米国西海岸ジャズらしく、アレンジは6人が分担して担当している。が、このシェリー・マンの3つのセッションについては。6人のアレンジ担当が分担しているにも関わらず、当時の米国西海岸ジャズの音の傾向をしっかり踏まえた、バラツキの無い、一貫性のあるアレンジになっているのには感心する。
 

Vol1-the-west-coast-sound

 
いわゆる、小粋で洒落たアレンジを施し、演奏者の高テクニックと豊かな歌心による、「聴かせる」ジャズ &「鑑賞する」ジャズ。そんな米国西海岸ジャズのお手本の様なジャズが、このアルバムの中にギッシリ詰まっている。

しかも「聴かせる」ジャズに必須アイテムのスタンダード曲が、アルバム全12曲中、半分の6曲。残りの6曲は、セッション参加メンバーのオリジナル曲なんだが、これがなかなかの出来。スタンダード曲の中に混じりながら、メンバーのオリジナル曲に違和感が無い。洒落たアレンジを施されて、スタンダード曲と並べて遜色の無い、メロディアスでキャッチャーなフレーズを持った佳曲の数々。

3セッションの参加メンバーは、何れも米国西海岸ジャズの名手揃い。この盤が録音されたのは1953年。この1953年で、米国西海岸ジャズの「音の志向」は確立されていたことが良く判る。「小粋で洒落たアレンジ」と「演奏者の高テクニックと豊かな歌心」。この2要素が、米国西海岸ジャズにおいて重要であることが、この盤を聴いていて良く判る。

名手シェリー・マンのドラミングについては申し分無い。米国西海岸ジャズにおける、ドラマーの第一人者であることが良く判る。演奏全体の出来も米国西海岸ジャズらしくて良し、リーダーのマンのドラミングも良し。申し分無い、マンの2枚目のリーダー作である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年10月 9日 (日曜日)

シェリー・マンの初リーダー作

最近、ドラマーがリーダーのアルバムを聴き直している。特に、エルヴィン・ジョーンズ、ロイ・ヘインズを中心に聴き直していて、今の耳で聴くと、以前、若かりし頃に聴いた印象とは異なる音、もしくは、若かりし頃には気が付かなかった音が聴けて面白い。

そんな中、まだ、有名なジャズ・ドラマーを忘れているぞ、と思って、ライブラリーを見渡したら、米国ウエストコースト・ジャズのレジェンド・ドラマーであるシェリー・マンのリーダー作をしばらく、聴き直していないのに気がついた。これはこれは、大物ドラマーを見落としていた。即、ライブラリーからリーダー作をチョイスして、聴き直しを始めた。

Shelly Manne『The Three & The Two』(写真左)。"The Three" が 1954年9月10日、"The Two" が 同年9月14日の録音。ちなみにパーソネルは、"The Three" が、Shelly Manne (ds), Jimmy Giuffre (cl, ts, bs), Shorty Rogers (tp)。"The Two" が、Shelly Manne (ds), Russ Freeman (p)。リリース順でいくと、シェリー・マンの初リーダー作になる。

かなり変則な編成である。"The Three" が、リーダーのドラムに、クラリネット&サックス、トランペットの変則トリオ。"The Two" が、リーダーのドラムにピアノのデュオ編成。メンバーそれぞれの演奏力がとても高く、アレンジが優れているので、各曲の演奏それぞれが凄く充実している。
 

Shelly-mannethe-three-the-two

 
演奏の密度、演奏の充実度、演奏のレベル、どれもがかなり「高い」。トリオ演奏、デュオ演奏とは思えないほどである。特に「Autumn in New York」や「Steeplechase」「Everything Happens to Me」「With A Song In My Heart」など、スタンダード曲に、そんな「演奏の妙」が炸裂している。

リーダーがドラマーである。そして、ウエストコース・ジャズ全盛期の録音である。当時のウエストコースト・ジャズの大きな特徴である「優れて洒落たアレンジ」が、シェリー・マンのドラミングを引き立たせ、シェリー・マンのドラミングの妙を前面に押し出している。そして、演奏メンバーそれぞれが、そんな「優れて洒落たアレンジ」に、余裕を持って応えている。

そんな演奏の中、シェリー・マンのドラミングのテクニックは素晴らしいものがある。硬軟自在、変幻自在、緩急自在、シンバルワークのテクニックから、叩き出すリズム&ビートの洗練度合いまで、ウエストコースト・ジャズ独特の個性を反映した「聴かせるドラミング」がアルバムにギッシリ詰まっている。

採用理由は判らないが、異色のペンギンのイラスト・ジャケットが印象深い。可愛いジャケットだが、中身は硬派なハードバップ。ベースレス&ピアノレスの変則トリオ編成とドラムとピアノという異質なデュオ編成。実験的アプローチ満載のシェリー・マンの、とってもウエストコースト・ジャズらしい初リーダー作。名盤である。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年7月15日 (金曜日)

小粋な Herbie Harper Sextet

「小粋なジャズ」を探し当てては聴いている。そもそも「小粋」とはどういう意か。辞書を紐解くと「どことなく粋(気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること)なこと。洗練されていること」とある。ジャズで言うと、米国のウエストコースト・ジャズ(西海岸ジャズ)がそんな感じかな。洗練されていて、垢抜けていて、仄かな色気がある。うん、米国西海岸ジャズがズバリかな(笑)。

『Herbie Harper Sextet』(写真左)。1957年7月、でハリウッドでの録音。米国西海岸ジャズの御用達レーベル「Mode」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Herbie Harper (tb), Jay Core (ts), Marty Paich (p), Howard Roberts (g), Red Mitchell (b), Frankie Capp, Mel Lewis (ds)。ドラムだけ複数人で分担しているが、演奏の基本編成は「セクステット(6重奏団)」。

リーダーのハービー・ハーパーはトロンボーン奏者。比較的地味な存在で、リーダー作も10作に届かない「寡作」のジャズマン。特に、この『Herbie Harper Sextet』を録音した1957年以降は、スタジオ・ミュージシャンとして活動した為、逝去する2012年1月まで、リーダー盤は2枚程度。これでは、なかなか印象に残らない。僕はハーパーの名前については、CDリイシュー時、2007年に、初めて知った。
 

Herbie-harper-sextet_1

 
しかし、このハービー・ハーパーのトロンボーン、なかなか良い感じなのだから面白い。端正な吹きっぷり。安定したピッチ。流麗な節回し。米国西海岸ジャズの特徴である、ほど良くアレンジされた、鑑賞に耐える「聴かせる」ジャズなバッキングに乗って、明るく流麗なトロンボーンが乱舞する。西海岸ジャズらしく、ファンクネスは薄ら、ユニゾン&ハーモニー、そして、アンサンブルが良くアレンジされていて、聴いていて楽しい。

バックのパーソネルも、当時の米国西海岸ジャズの名手ぞろい。テナー・サックスのジェイ・コアだけが無名。ペイチのピアノも滋味溢れる、実に小粋なバッキングでフロント2管を盛り上げる。レッド・ミッチェルのベースは演奏全体のベースラインをグイグイ牽引する。ドラムの2人も洒落たドラミングで、演奏の良いアクセントになっている。

この盤、聴いて思うのは、米国西海岸ジャズの良いところをしっかり捉えた好盤だということ。ハービー・ハーパーのトロンボーンも良い感じ。片割れは無名のテナーマンではあるが、2管フロントもそこそこ良い感じ。「小粋なジャズ」盤とは、こういう盤のことを言うのだろう。時々、繰り返して聴く、長いレンジのヘビロテ盤。米国西海岸ジャズ、特に「Mode」レーベルにそういう「小粋なジャズ」盤が潜んでいるのだ。Mode」レーベルは隅に置けない。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!

 ★ AORの風に吹かれて        【New】 2022.03.13 更新。

      ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980
 
 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4
 

2022年6月13日 (月曜日)

1970年代のギブス盤に感心する

テリー・ギブス(Terry Gibbs)は、米国のジャズ・ヴァイブ奏者。1924年生まれなので、今年で98歳。まだ存命中。いわゆる「伝説」のヴァイブ奏者である。久し振りに、テリー・ギブスのリーダー作をサブスク・サイトで目にして、思わず、即「ジャケ聴き」である。

ヴァイブのスタイルはライオネル・ハンプトンに代表される「オールド・スタイル」。旋律楽器=フロント楽器として、両手を使った単音の旋律弾きがメイン。後のジャズ・ヴァイブの代表格、ミルト・ジャクソン、ゲイリー・バートンとは、基本的に奏法が異なる「シンプル」なもの。

Terry Gibbs Dream Sextet『4am』(写真左)。1978年7月30日、米国カリフォルニア州の「Lord Chumley's」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Terry Gibbs (vib), Bob Cooper (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Bob Magnusson (b), Jimmie Smith (ds)。フュージョン華やかりし頃の、米国西海岸での「純ジャズ」ライヴの記録である。

この ”ドリーム” セクステットは、当時の米国西海岸ジャズの一流どころを招聘していて、とても充実している。ライヴの記録を聴いてみて、米国西海岸ジャズの良き時代の音が、このライヴ盤で再現されている。
 

Terry-gibbs-dream-sextet_4am

 
しかも、このライヴ盤に収録されている曲は全てギブスの自作曲で占められている。1970年代後半のライヴなので、古き良き時代の「ジャズ・スタンダード曲」ばかりが演奏された方が、聴衆ウケが良いのではと思うのだが、そうでは無い。ライヴ盤から伝わってくる聴衆の様子が意外にも「盛り上がっている」のだ。

この「ギブスのオリジナル曲で占められている」ところに、フュージョン華やかりし時代でも、メインストリームな純ジャズは生き残っていたんやなあ、懐メロに成り下がっていなかったんやなあ、と妙に感心する。

ギブスの曲はどれもが非常にメロディックで叙情的。また、ギブスの曲は、演奏する側に立つと、コードの変更が演奏していてとても楽しいらしく、このライヴ盤でも、ギブスをはじめ、他のフロント管のメンバーが実にリラックスして楽しげに演奏している様子が伝わってくる。とても「往年の純ジャズ」らしいジャズがこのライヴ盤の中で、魅力的に演奏されている。

全く、一般に知られていないライヴ盤だと思うが、聴けば、内容的には、とても「往年の純ジャズ」らしいジャズが展開されていて、聴いていてとても楽しい。1970年代後半、米国西海岸で、こんなメインストリームな純ジャズが息づいていたなんて、ちょっと感動した。良い内容のライヴ盤だと思います。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

2022年5月19日 (木曜日)

よく唄う「小粋」なトランペット

「小粋」の意味=「どことなくさっぱりした気立てで、あかぬけがし、色気もただようこと」。最近、「小粋」なジャズ盤を探してきては聴いている。名盤の類を聴いていると、どこか疲れてくることがある。そんな時、小粋な盤を聴くと、意外とリラックスして、ジャズの楽しさ&良さを再認識できる。これが意外とあるから面白い。

Carmell Jones『Business Meetin'』(写真左)。1962年4月25日の録音。ちなみにパーソネルは、2つのユニットに分かれて、1つは、Carmell Jones (tp), Harold Land (ts), Frank Strazzeri (p), Gary Peacock (b), Donald Dean (ds)。

もう1つのユニットが、Carmell Jones (tp), Harold Land (ts), Bud Shank (as), Wilbur Brown (ts), Joe Splink (ts), Don Rafell (bar), Frank Strazzeri (p), Leroy Vinnegar (b), Ron Jefferson (ds)。

演奏の基本は「西海岸ジャズ(ウエストコースト・ジャズ)」。美しくアレンジされたブラスのユニゾン&ハーモニーの響き。そこに、スッと滑り込む様に、粋に入ってくる、リーダーのカーメル・ジョーンズのトランペット。流麗にリズミカルにフロント管をサポート&鼓舞するフランク・ストラゼリのピアノ。ピーコック&ヴィネガーのベース隊がかなり強力にベースラインを弾き上げる。地味だがドラムの2人は堅実。
 

Carmell-jonesbusiness-meetin

 
ウエストコースト・ジャズの「良いところ」がグッと詰まった好盤。特に、カーネル・ジョーンズのトランペットが良い音をしている。流麗かつブリリアント、力感もあり、テクニックも優秀。とても爽やかで、聴いていて気持ちの良いトランペット。「小粋」なトランペットとはこのことを言うのだろう。何とも端正でブリリアントな、そして、テクニックが確かなトランペットである。

調べてみれば、アイドルは「クリフォード・ブラウン(ブラウニー)」。至極納得である。確かに、ブラウニーばりの美しいトーン、ちょっと線が細いのが気にはなるが、それを補ってあまりある、気負いの無い、素姓の良い端正なフレージング。こんなに小粋で優秀なトランペットが地味な存在に甘んじているのが不思議なくらいである。

雰囲気的には西海岸ジャズというよりは、東海岸ジャズに向いたトランペットだと感じるのだが、その個性が故に、ウエストコースト・ジャズの特徴にバッチリとフィットするのだから、ジャズって面白い。ウエストコースト・ジャズの端正なアレンジに、カーメル・ジョーンズのトランペットがよく唄う。そんな「組合せの妙」を強く感じる。良い雰囲気の「小粋」なジャズ盤としてお勧め。
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館 の更新状況》 更新しました!
 
 ★ AORの風に吹かれて        
【New】 2022.03.13 更新。

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

  ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2022.03.13 更新。

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
Matsuwa_billboard

★ コメント&TBは、全て「松和のマスター」が読んでから公開される仕組みです。表示されるまで少し時間がかかります(本業との兼ね合いで半日〜1日かかる時もあります・・・ごめんなさい)。公開されたくないご意見、ご感想はその旨を添えて送信してください。

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。

東日本大震災から11年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。

Never_giveup_4 
 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

AOR Bethlehemレーベル Blue Note LTシリーズ Blue Noteレーベル Candidレーベル CTIレーベル ECMレーベル Enjaレーベル jazz Miles Reimaginedな好盤 Pabloレーベル Pops Prestigeレーベル R&B Riversideレーベル rock Savoyレーベル Smoke Sessions Records SteepleChaseレーベル T-スクエア The Great Jazz Trio TRIX Venusレコード Yellow Magic Orchestra 「松和・別館」の更新 こんなアルバムあったんや ながら聴きのジャズも良い アイク・ケベック アキコ・グレース アダムス=ピューレン4 アブドゥーラ・イブラヒム アラウンド・マイルス アラン・ホールズワース アル・ディ・メオラ アンドリュー・ヒル アート・アンサンブル・オブ・シカゴ アート・ファーマー アート・ブレイキー アート・ペッパー アーネット・コブ アーマッド・ジャマル アール・ハインズ アーロン・パークス イエロージャケッツ イスラエル・ジャズ イタリアン・ジャズ イタリアン・プログレ インパルス!レコード イーグルス ウィントン・ケリー ウィントン・マルサリス ウェイン・ショーター ウェザー・リポート ウェス・モンゴメリー ウエストコースト・ジャズ ウディ・ショウ ウラ名盤 エディ・ハリス エリック・クラプトン エリック・ドルフィー エルトン・ジョン エルヴィン・ジョーンズ エンリコ・ピエラヌンツィ エンリコ・ラヴァ オスカー・ピーターソン オーネット・コールマン カウント・ベイシー カシオペア カーティス・フラー カート・ローゼンウィンケル カーラ・ブレイ キャノンボール・アダレイ キャンディ・ダルファー キング・クリムゾン キース・ジャレット ギラッド・ヘクセルマン ギル・エバンス クインシー・ジョーンズ クイーン クリスチャン・マクブライド クリスマスにピッタリの盤 クリフォード・ブラウン クロスオーバー・ジャズ グラント・グリーン グレイトフル・デッド グローバー・ワシントンJr ケイコ・リー ケニー・ギャレット ケニー・ドリュー ケニー・ドーハム ケニー・バレル ケニー・バロン ゲイリー・バートン コンテンポラリーな純ジャズ ゴンサロ・ルバルカバ サイケデリック・ジャズ サイラス・チェスナット サザンロック サド=メル楽団 サム・リヴァース サンタナ ザ・クルセイダーズ ザ・バンド ジャケ買い「海外女性編」 シェリー・マン シャイ・マエストロ ジェフ・ベック ジェラルド・クレイトン ジミ・ヘンドリックス ジミー・スミス ジム・ホール ジャキー・マクリーン ジャコ・パストリアス ジャズ ジャズの合間の耳休め ジャズロック ジャズ・アルト ジャズ・オルガン ジャズ・ギター ジャズ・テナー ジャズ・トランペット ジャズ・トロンボーン ジャズ・ドラム ジャズ・ピアノ ジャズ・ファンク ジャズ・フルート ジャズ・ベース ジャズ・ボーカル ジャズ・レジェンド ジャズ・ヴァイオリン ジャズ・ヴァイブ ジャズ喫茶で流したい ジャック・デジョネット ジャン=リュック・ポンティ ジュニア・マンス ジュリアン・レイジ ジョシュア・レッドマン ジョニ・ミッチェル ジョニー・グリフィン ジョン・アバークロンビー ジョン・コルトレーン ジョン・スコフィールド ジョン・テイラー ジョン・マクラフリン ジョン・ルイス ジョン・レノン ジョーイ・デフランセスコ ジョージ・ケイブルス ジョージ・デューク ジョージ・ハリソン ジョージ・ベンソン ジョー・サンプル ジョー・パス ジョー・ヘンダーソン スタッフ スタンリー・タレンタイン スタン・ゲッツ スティング スティング+ポリス スティービー・ワンダー スティーヴ・カーン スティーヴ・ガッド スティーヴ・キューン スナーキー・パピー スパイロ・ジャイラ スピリチュアル・ジャズ スムース・ジャズ スリー・サウンズ ズート・シムス セシル・テイラー セロニアス・モンク ソウル・ジャズ ソウル・ミュージック ソニー・クラーク ソニー・ロリンズ ソロ・ピアノ タル・ファーロウ タンジェリン・ドリーム ダスコ・ゴイコヴィッチ チェット・ベイカー チック・コリア チック・コリア(再) チャーリー・パーカー チャールズ・ミンガス チャールズ・ロイド チューリップ テテ・モントリュー ディジー・ガレスピー デイブ・ブルーベック デイヴィッド・サンボーン デイヴィッド・ベノワ デクスター・ゴードン デニー・ザイトリン デビッド・マシューズ デュオ盤 デューク・エリントン デューク・ジョーダン デューク・ピアソン デヴィッド・ボウイ デヴィッド・マレイ トニー・ウィリアムス トミー・フラナガン トランペットの隠れ名盤 トリオ・レコード ドゥービー・ブラザース ドナルド・バード ナット・アダレイ ネイティブ・サン ネオ・ハードバップ ハロルド・メイバーン ハンク・ジョーンズ ハンク・モブレー ハンプトン・ホーズ ハービー・ハンコック バディ・リッチ バド・パウエル バリトン・サックス バリー・ハリス バーニー・ケッセル バーバラ・ディナーリン パット・マルティーノ パット・メセニー ヒューバート・ロウズ ビッグバンド・ジャズは楽し ビッグ・ジョン・パットン ビリー・チャイルズ ビル・エヴァンス ビル・チャーラップ ビル・フリゼール ビートルズ ビートルズのカヴァー集 ピアノ・トリオの代表的名盤 ファラオ・サンダース ファンキー・ジャズ フィニアス・ニューボーンJr フィル・ウッズ フェンダー・ローズを愛でる フュージョン・ジャズの優秀盤 フランク・ウエス フリー フリー・ジャズ フレディー・ハバード ブッカー・リトル ブラッド・メルドー ブランフォード・マルサリス ブルース・スプリングスティーン ブルー・ミッチェル ブレッカー・ブラザース プログレッシブ・ロックの名盤 ベイビー・フェイス・ウィレット ベニー・グリーン (p) ベニー・グリーン (tb) ベニー・ゴルソン ペッパー・アダムス ホレス・シルバー ホレス・パーラン ボサノバ・ジャズ ボビー・ティモンズ ボビー・ハッチャーソン ボブ・ジェームス ポップス ポール・サイモン ポール・デスモンド ポール・ブレイ ポール・マッカートニー マイケル・ブレッカー マイルス・デイヴィス マイルス(エレ)改訂版 マイルス(エレ)旧版 マックス・ローチ マッコイ・タイナー マル・ウォルドロン マンハッタン・ジャズ・オケ マンハッタン・ジャズ・4 マンハッタン・トランスファー マーカス・ミラー ミシェル・ペトルチアーニ ミルト・ジャクソン モダン・ジャズ・カルテット モード・ジャズ ヤン・ガルバレク ヤン・ハマー ユセフ・ラティーフ ラテン・ジャズ ラリー・カールトン ラリー・コリエル ラルフ・タウナー ラーズ・ヤンソン リッチー・バイラーク リトル・フィート リンダ・ロンシュタット リー・コニッツ リー・モーガン リー・リトナー ルー・ドナルドソン レア・グルーヴ レイ・ブライアント レジェンドなロック盤 レッド・ガーランド レッド・ツェッペリン ロイ・ハーグローヴ ロック ロッド・スチュワート ロン・カーター ローランド・カーク ローランド・ハナ ワン・フォー・オール ヴィジェイ・アイヤー 上原ひろみ 僕なりの超名盤研究 北欧ジャズ 吉田拓郎 和ジャズの優れもの 和フュージョンの優秀盤 四人囃子 増尾好秋 夜の静寂にクールなジャズ 大江千里 天文 天文関連のジャズ盤ジャケ 太田裕美 寺井尚子 小粋なジャズ 尾崎亜美 山下洋輔 山下達郎 山中千尋 敏子=タバキンBB 旅行・地域 日本のロック 日本男子もここまで弾く 日記・コラム・つぶやき 書籍・雑誌 本多俊之 桑原あい 欧州ジャズ 歌謡ロック 深町純 渡辺貞夫 渡辺香津美 米国ルーツ・ロック 英国ジャズ 荒井由実・松任谷由実 西海岸ロックの優れもの 趣味 青春のかけら達・アーカイブ 音楽 音楽喫茶『松和』の昼下がり 高中正義 70年代のロック 70年代のJポップ

リンク

  • まだまだロックキッズ(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のロック」盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代ロックの記事を修正加筆して集約していきます。
  • 松和の「青春のかけら達」(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    この「松和・別館」では、懐かしの「1970年代のJポップ」、いわゆるニューミュージック・フォーク盤の感想や思い出を率直に語ります。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、70年代Jポップの記事を修正加筆して集約していきます。           
  • AORの風に吹かれて(バーチャル音楽喫茶『松和』別館)
    AORとは、Adult-Oriented Rockの略語。一言でいうと「大人向けのロック」。ロックがポップスやジャズ、ファンクなどさまざまな音楽と融合し、大人の鑑賞にも堪えうるクオリティの高いロックがAOR。これまでの、ジャズ喫茶『松和』マスターのひとりごと・ブログの中で不定期に掲載した、AORの記事を修正加筆して集約していきます。  
2023年3月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31  

カテゴリー