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2019年1月 8日 (火曜日)

これは良いよ「ウラ名盤」・3

米国西海岸ジャズの中で、人気ナンバーワンのトランペッターと言えば「チェット・ベイカー(Chet Baker)」。但し、ジャズ盤紹介本ではボーカリスト(アンニュイで中性的な唄声が個性)としてのチェットをクローズアップしているものが大多数で、チェット・ベイカーと言えば「ボーカリスト」と認識しているジャズ者の方々も多いのではなかろうか。

加えて、麻薬漬けでジャズメン人生の半分以上を棒に振った破滅型のミュージシャンの最右翼の一人でもあるので、真面目なジャズ者の方々からはあまりウケは良く無い。でも、ですね。チェット・ベイカーのトランペットって、とっても魅力的なんですよ。若かりし頃はテクニックは優秀、角の取れた程良く丸い芯の入った音色、ストレートな吹きっぷりで、アドリブ・フレーズは流麗。

『Chet Baker & Crew』(写真左)。1956年7月、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Chet Baker (tp), Phil Urso (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Bond (b), Peter Littman (ds), Bill Loughborough (timpani)。トランペットとテナーがフロントのクインテットに、ティンパニーが客演するというメンバー構成。
 

Chet_baker_crew  

 
この盤では、チェットはトランペットのみに専念している。CDのボートラにはラストの1曲だけボーカルが入っているが、オリジナル盤には入っていない。純粋にチェットのトランペットを心ゆくまで愛でることの出来る好盤である。特にこの盤については、チェットがトランペットをバリバリに吹きまくっているのが特徴。

バップ・スタイルの曲をバリバリに吹きまくっている。テクニックは優秀で流麗なアドリブ・フレーズ、芯の入った程良く丸いブリリアントな音色、中音域を中心に吹きまくるチェットのトランペットは魅力満載。力強くバイタルな吹きっぷりのチェットは珍しいといえば珍しい。思わず、上手いな〜と感心し、思わず聴き入ってしまう。

ジャケットも良い雰囲気。タイトル通り、ヨットの上にチェットと乗組員たち。進むべき方向を指し示すように身を反らして、片手でトランペットを吹くチェット。陽射しはうららか、明らかに米国西海岸の雰囲気。当時、チェットは27歳。若かりし日のチェットのトランペットはどれだけ素晴らしかったのか。この盤を聴けば、それが追体験出来る。

 
 
東日本大震災から7年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年11月 5日 (月曜日)

久々に「今日のスタート」受け

「クール・ジャズ(Cool Jazz)」というものがある。「クール・ジャズ」とは、ビバップの反動として1940年代後半に生まれた、白人寄りの傾向をもつジャズのジャンル(Wikipediaより)。洗練された控えめなテクニックとリズム。アンサンブルを始めとするアレンジの妙とそのアレンジを実現する楽器編成の妙。つまりは、喧噪に近い位に躍動的で、奔放なテクニックを旨とした「ビ・バップ」に対するアンチテーゼ。

テクニックの限りを尽くし、躍動感溢れるアドリブを旨とする「ビ・バップ」は、演奏家の閃きによるアドリブ展開が特徴で、時に単調になったり、マンネリに陥ったりした。加えて、喧噪に近い位の躍動感が故に、アクロバットとして楽しむのは良いが、演奏をじっくりと愛でるにはちょっと辛い面があった。そういう「ビ・バップ」のマイナス面を補うべく考案されたのが「クール・ジャズ」である。

クール・ジャズは、ピアニストのレニー・トリスターノを中心とした「トリスターノ派」と呼ばれる集団が牽引した。トリスターノの確立した音楽様式を基に「クール・ジャズ」なアルバムを発表していくのだが、代表的ジャズメンとしては、ウォーン・マーシュ(写真右)、リー・コニッツ、ジェリー・マリガン、ジョージ・シアリングなどの名前が挙がる。
 

Jazz_of_two_cities

 
Warne Marsh『Jazz of Two Cities』(写真左)。1956年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Warne Marsh. Ted Brown (ts), Ronnie Ball (p), Ben Tucker (b), Jeff Morton (ds)。この盤を聴けば「クール・ジャズ」の雰囲気が良く判る。トリスターノ派の主要メンバー、ウォーン・マーシュとテッド・ブラウンの2本のテナーの存在がポイント。「クール・ジャズ」を表現するのに、このテナー2管が大活躍する。

テナー2管でのユニゾンによるテーマ提示は一糸乱れぬもの。鑑賞に耐える「クール・ジャズ」ならではのアレンジのたまもの。アドリブ部ではテクニックを駆使するが、旋律は極力、流麗で耳に優しいもの。耳に刺激は全く無い。心地良く丸く、アドリブ・ソロが耳に入っていく。バックのピアノ・トリオは、ビ・バップと同じくリズム・キープがメインだが、フロントを支える音は流麗。

アルバム全編を聴き通して、やっていること、表現したいことは「クール・ジャズ」も「ビ・バップ」も同じ。しかし、その表現方法とアプローチは正反対。「ビ・バップ」は黒人中心に展開されたが「クール・ジャズ」は白人中心。「クール・ジャズ」によって、白人でもジャズが出来ることとなる。「クール・ジャズ」は、ジャズの裾野を一気に拡げた演奏トレンドであった。

 
 

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2018年8月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・103

ジャズの有名レーベルの盤をカタログ番号順に聴き進めて行くと、今まで、全く聴いたことが無かった盤に出会うことがある。思わず、こんなアルバムあったんや、なんて嬉しくなる。ジャズの有名レーベルの盤なんで、内容はそれなりにある。聴いてみて、そのパーソネルの組合せに感心したり、演奏されているスタイルに思いを馳せてみたり、興味津々である。

インパルス・レーベルの聴き直し、である。Chico Hamilton『Man from Two Worlds』(写真左)。カタログ番号A-59。1963年12月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl), Gabor Szabo (g), Albert Stinson (b), Chico Hamilton (ds) 。時は1963年。ハードバップ黄金時代は過ぎ去って、ハードバップを基本にジャズの多様化が始まった頃。この盤も例に漏れず、実に変わった盤である。

実は、今回、インパルス・レーベルの盤をカタログ順に聴き直していて、この盤の存在に初めて気がついた次第。今回、初めて聴いた。そもそも、リーダーのドラマー、チコ・ハミルトンのことを余り知らない。米国西海岸ジャズを代表するドラマーの一人ということは知っていたが、リーダー作は1950年代の数枚程度。今まで、僕にとって、リーダー作を聴く機会に恵まれないドラマーであった。
 

Man_from_two_worlds  

 
1950年代の米国西海岸ジャズの代表的ドラマーなので、あまり革新的なことはしないタイプと勝手に思っていたが、この盤を聴いて、その考え方は一気に変わった。まず音を聴いて、なんやこれ、と思ったのが「ギターの存在」。これは一度聴いたら、必ず覚えている。ガボール・ザボである。ガボール・ザボをギタリストに招聘している。

テナー・サックスとフルートの音も、これは誰だ、と思う。コルトレーンの様でコルトレーンでは無い。聴き易いコルトレーン。コルトレーンの良いところ、聴き易いところだけをピックアップした様なプレイ・スタイル。おお、これはもしや、チャールズ・ロイドではないか。当時はまだ駆け出しのロイドである。そんなロイドをフロント楽器に招聘している。

出てくる音は、新しい響きのするハードバップ。大衆受けを目指したファンキー・ジャズやソウル・ジャズの微塵も無い。硬派なメインストリームな純ジャズ路線。そこに、ザボのエスニック&なジプシー的な、不思議な響きのするギター、聴き易い、穏やかなスピリチュアルなテナー、それを支える柔軟かつ多彩なドラミング。加えて、この演奏、ピアノレス・カルテットである。野心的な純ジャズ路線極まりない、聴き応えのある盤である。

 
 

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2017年1月20日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・76

まず、ジャケットが良い。この線画の漫画チックな人物イラストが良い。見ていてほのぼのする。「The Poor People Of Beverly Hills」とタイトルを読んで、思わず口元が緩む。こういう印象のジャケットって絶対に内容は外れない。いわゆる「ジャケ買い」OKなアルバムである。

Terry Gibbs『A Jazz Band Ball』(写真左)。1957年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Max Bennett (b), Mel Lewis (ds), Lou Levy (p), Terry Gibbs (vib, marimba), Larry Bunker, Victor Feldman (vib, xylo), Marty Paich (arr)。テリー・ギブス、ヴィクター・フェルドマン、ラリー・バンカー。3人のヴィブラフォン(マリンバ、シロフォンも)の名手が顔を揃える。

なんてユニークなアルバムなんだろうか。なんせヴァイブ奏者が3人なんて、そんなジャズ盤、見たり聴いたりしたことがありません。しかも、この3人のヴァイブ奏者が丁々発止とやりあうんですから、これはもう堪らない。ヴァイブ3人のアドリブ・バトル、聴き応え満点です。これって、所謂ジャズの醍醐味ですよね〜。
 

A_jazz_band_ball

 
西海岸の幻のレーベル「モード」の、 西海岸の洗練と実験性が同居したプロジェクトでもある「Jazz Band Ball」の第二弾アルバムだそうで、何と無くその意味、判ります。まず、ヴァイブ3人のジャム・セッションなんて、実験的チャレンジ以外の何者でもありませんよね。しかも、その3人のアドリブ・バトルのレベルが高い。聴いていて思わずワクワクします。躍動感溢れるヴァイブのバトル。良いですね〜、ジャズですね〜(笑)。

マーティ・ペイチがアレンジを担当する。このペイチのアレンジが効いている。ペイチのアレンジあっての、ヴァイブ3人のジャム・セッション、その3人のアドリブ・バトルなんだな〜、ということを実感する。加えて、ルー・レヴィのピアノ、マックス・ベネットのベース、メル・ルイスのドラムスのリズム・セクションも堅実でご機嫌。しっかりとヴァイブ3人のアドリブ・バトルを支えるのだ。

米国西海岸ジャズの範疇の演奏なので、爽快感と清涼感が半端ない。しっかりとアレンジされた3人のヴァイブのバトルなんだが、演奏の雰囲気は自由でシンプル。ジャズの基本をしっかりと聴かせてくれる好盤です。

 
 

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2016年10月26日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・69

こういう音源がいきなり「コロッ」と出てくるから、ジャズは隅に置けない。必ず、ジャズ情報誌やネットでのジャズCDのリリース情報、それも国内だけでは無く、米国やドイツなど、海外の情報もしっかりとチェックしておく必要がある。

Barney Kessel『Live At The Jazz Mill』(写真左)。今年いきなり、こんな「未発表音源」がリリースされた。ジャズ・ギターのレジェンドの一人、バーニー・ケッセルのライブ音源。1954年の録音。当時ジャック・ミラーというジャズ・ファンがテープ・レコーダーに残していたもの。

ちなみにパーソネルは、Barney Kessel (g), Pete Jolly (p), Gene Stoffell (b), Art Kile (ds)。米国西海岸のジャズメン中心のチョイスと見える。まだ、時代は1954年。ハードバップの萌芽期。バックのリズム・セクションは、ビ・バップの「リズム&ビートを刻み続ける役割」を忠実に果たしている。
 

Barney_kessel_live_at_the_jazz_mill

 
このライブ盤では、明確にギターのバーニー・ケッセルだけが突出している。テープ・レコーダーでの録音なので、音は中の下程度。ちょっと「もやって」いて、音の輪郭もぼけている。それでも、ケッセルの弾き出すアドリブ・フレーズは迫力満点。音はイマイチではあるが、これだけケッセル節を楽しめる盤はなかなか無い。

バーニー・ケッセルのギターは、チャーリー・クリスチャンの延長線上にある、とジョンスコは言った。このライブ盤の高速アドリブ・フレーズを聴きながら、そんなジョンスコの「ケッセル評」を思い出した。確かに、ケッセルのギターの基本は「ビ・バップ」。しかし、その「ビ・バップ」に留まらない、イマージネーションと展開の妙を演奏のそこかしこに感じる。

Arizona州 Phoenixのライブ・ハウス「The Jazz Mill」での私蔵ライブ音源。音は「イマイチ」だが、ケッセル節は堪能できる、そんなジャズ者中級盤。ジャケットもオールディーズな雰囲気で「マル」。久し振りに「ケッセル節」を堪能させてもらいました。

 
 

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2016年10月20日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・92

米国西海岸ジャズ(ウエストコースト・ジャズ)は馴染みが無かった。というか、僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半、日本は東海岸の黒人ジャズ一辺倒。そして、フュージョン・ジャズの大ブーム。米国西海岸ジャズのアルバムなんて、通常のレコード屋には全く置いてなかった。

1991年の事であった、と記憶している。『スイングジャーナル・プレゼンツ〜ザ・ウエスト・コースト・ジャズ』なるオムニバスCD盤が発売された。タイトル通り、もちろん、老舗ジャズ雑誌スイング・ジャーナルの記事とのタイアップである。僕は、このオムニバスCD盤を通じて、初めて、米国西海岸ジャズにまともに触れた。

さて、僕はこのアルバムの良さが判らなかった。初めて聴いたのが1980年。例の「秘密の喫茶店」で聴かせてもらった。ほどよく、優れたアレンジに乗った、白人のジャズだということは感じ取れた。理路整然としていて破綻が無い。クールで爽快。東海岸ジャズを聴き馴れた耳には、何故か物足りない、と感じた。若さ故の過ちであった。

そのアルバムとは『Quartet: Russ Freeman/Chet Baker』(写真)。1956年11月の録音。真っ赤なバックに、チェット・ベイカーとラス・フリーマンの線画のイラストがとってもお洒落な盤である。この素晴らしい好盤が、1980年、ジャズを聴き始めて3年目の耳には、物足りない、と聴こえたのである。あぁ、穴があったら入りたい(笑)。

今の耳には、そんなことは全く無い。このアルバムは演奏的には、西海岸ジャズらしからぬ、硬派で尖った切れ味鋭いもの。アレンジが効いた聴き心地の良い、ライトなジャズでは全く無い。東海岸ジャズ顔負けの切れ味の鋭いアドリブ・プレイ。豪快な展開。これが米国西海岸ジャズなのか、と思わず、パーソネルを再確認してしまう。
 

Quartet_russ_freeman_chet_baker

 
そのパーソネルは、Chet Baker (tp), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。う〜ん、米国西海岸ジャズの名うての名手達が集結したカルテット構成。う〜ん、なんと素晴らしい布陣であろうか。

チェットのトランペットが凄い。マイルス顔負け。というか、音色はマイルスそっくり。しかし、切れ味と迫力という点ではマイルスを凌駕する。若さ「はち切れん」ばかりのブリリアントさ。人気という面でマイルスと双璧と謳われたチェット・ベーカーがこの盤に「いた」。チェットの伝説的な「トランペットの凄さ」が体感できる。

ラス・フリーマンのピアノも良い。こんなに多弁に弾きまくるピアニストとは思わなかった。ビ・バップのように多弁であるが、音の選択、音の展開が理知的で理路戦前としている。そこが東海岸ジャズのピアニストとは異なる。豪快に弾き回していても、お洒落な感覚は変わらない。これぞ、米国西海岸ジャズのピアノである。

そして、もう一つ。ラス・フリーマンのアレンジが良い。米国西海岸ジャズの面目躍如。このフリーマンの優れたアレンジがあるからこそ、このアルバムの中の演奏の全てが映える。アレンジされたジャズなんて、というジャズ者の方々がいるが、それは違う。アレンジもジャズのテクニック、じゃず演奏の必須要素の一つである。

ジャケット良し、演奏良し、音良し。揃いも揃った三拍子。好盤です。米国西海岸ジャズを感じるのにうってつけ、米国西海岸ジャズの入門盤としても最適な「好盤中の好盤」です。

 
 

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2016年4月28日 (木曜日)

爽快な「青空ジャケット」の好盤

このアルバムのジャケットが良い。この春の雰囲気にピッタリの青空。これが純ジャズのジャケットとは最初見た時は全く思いもしなかった。このジャケットを見たのは、遠く1980年の春だったかと記憶している。

このマニアックな盤が何故、あの例の「秘密の喫茶店」にあったのかは判らない。この盤を当時所有していた、ということは「かなりマニアックなジャズ喫茶」の証だと気がついたのは、それから15年も経ってからのことである。

さて、そのアルバムとは、Sonny Criss『Out of Nowhere』(写真左)。1975年10月の録音。1976年のリリース。カリフォルニアはロスでの録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Dolo Coker (p), Larry Gales (b), Jimmie Smith (ds)。1970年代半ばの米国西海岸の純ジャズシーンである。ソニー・クリス以外、知った名前は見えない。

亡くなる2年前のソニー・クリスの快作。ジャケット写真そのものの、カリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイが聴ける。テンション高く熱い演奏ながら爽快感抜群。頭のてっぺんから空へ突き抜けるような、爽快感溢れるアルトの伸びのある音色が実に良い。

冒頭の「All The Things You Are」が実に良い。ポジティブに明るく爽快に吹く「All The Things You Are」は実に良い。抜ける様に明るくメロウなフレーズの傍らに、ソウルなテイストが見え隠れするところが実に良い。ソフトで流麗なアドリブ・フレーズも心地良く、こういう吹き方もあるんやなあ、と単純に感心する。
 

Out_of_nowhere1

 
このクリスのブロウは、従来のメインストリーム・ジャズなブロウというよりは、録音の時は1976年、来るフュージョン・ジャズでのソフト&メロウなブロウに先んじるものではなかったか、と思う。これだけ聴き易く、躍動感があってポジティブな気持ちになれるブロウは、フュージョン・ジャズそのもの。

そういう印象を持って2曲目以降を聴き進める。やはり、明るいのびのびとしたトーンのアルトサックスのブロウが実に良い。「The Dreamer」などのバラード演奏も好調。やはり、この1970年代後半のクリスは好調期に当たる。このアルバムでのクリスのブロウを聴いていると、思わず口元が緩むのが判る。ポジティブで明快な演奏。爽やかである。

春の雰囲気にピッタリなアルバムである。春たけなわの暖かく晴れた日の昼下がり。陽光うららな午後の日光の煌めきを見ながら、このアルバムを聴くと、心に爽快感が吹き抜け、なんだか元気が沸いてくる。そんなポジティブな印象を与えてくれる好盤です。

しかし、こんなにカリフォルニアの青い空のようなのびのびとしたプレイを披露しているクリスが、このアルバムの録音の2年度、自ら命を絶ってしまう。胃がんを発病後、病苦に耐えかねた結果と聞く。僕の耳には、このアルバム『Out of Nowhere』が、クリスの「白鳥の歌」の様に響く。

 
 

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2016年4月26日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・34

この明るい雰囲気ジャケットに惹かれた。なんだか、あっけらかんとした明るい雰囲気のジャケット。録音された時代は1967年。ヒッピー・ムーブメントのはしり。ジャケット・ロゴの雰囲気がそれを物語る。

演奏はジャケットの印象を決して裏切らない。ポップスのカバーを織り交ぜた、明るく爽やかな疾走感溢れる演奏。初夏の晴れた日、穏やかな昼下がり。爽やかな風に吹かれながら耳を傾ける。そんな情景にピッタリな僕の「お気に入り」。

Sonny Criss『Up,Up and Away』(写真左)。1967年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Criss (as), Cedar Walton (p), Tal Farlow (g), Bob Cranshaw (b), Lenny McBrowne (ds)。その音が期待できる、なかなかに渋いメンバーである。

クリスは1927年生まれ。録音当時は40歳。脂の乗り切った中堅ジャズメン。このアルバムには、ソニー・クリスの明るい面が、溢れんばかりに輝いている。このアルバムの録音時はクリスの体調が万全だったことが窺い知れる。クリスは精神面で不調の時期があった。1960年代前半、1970年代前半は不調の時代。このアルバムの録音時の1960年代後半は好調の時代。
 

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冒頭の「Up, Up and Away」を聴けば、クリスのアルトの明るさ、爽快さを十分に聴き取ることが出来る。邦題「ビートでジャンプ」。フィフス・ディメンションのヒット曲のカバーなんだが、これが実に楽しい。テンション高く熱い演奏ながら爽快感抜群。頭のてっぺんから空へ突き抜けるような、爽快感溢れるアルトの伸びのある音色が実に良い。

ピアノを強打しまくるシダー・ウォルトン、タル・ファーロウのギター、ボブ・クランショウのベース、レニー・マクブラウンのドラムが乗り良く、爽やかに煽るようにがっちりとバッキング。このバッキングが思いのほか効いている。そんな安定感のあるバッキングを得て、クリスはアルトを吹きまくる。

他のスタンダード曲、バップ・チューンの演奏も良い。クリスって、基本は「バッパー」なんだなあ、と再認識する。5曲目の「Scrapple From The Apple」なんだどうだ。明らかに魅力的なバップな吹きっぷりの惚れ惚れする。2曲目のマイナー曲「Willow Weep for Me(柳よ泣いておくれ)」での泣きのアルトも魅力的だ。

このアルバムを録音した10年後。1977年に胃がんを発病して以来、ジャズから遠ざかる。そして、病苦に耐えかねた結果、同年ロサンゼルスで自殺して果てることになる。1970年代後半は好調な時代だっただけに残念な最期だった。

 
 

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2016年2月26日 (金曜日)

単純に「ジャズってええなあ」

こういうジャズを聴くと、単純に「ジャズってええなあ」と思う。雰囲気が良い。ほのぼのとした4ビート。ほどよく趣味良くアレンジされたユニゾン&ハーモニー。米国西海岸ジャズは聴き心地が良い。

Stan Getz『West Coast Jazz』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。米国西海岸ジャズのメイン・ジャズメンがズラリと名を連ねる。

リーダーはスタン・ゲッツ。テナーマンである。ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ。流れる様な典雅で爽やかなフレーズ。1950年代のゲッツのテナーは聴き心地が良い。1960年代にはボサノバ・ブームに乗って、大人気テナーマンとなって引っ張りだこ。

1970年代は改めて純ジャズに回帰するが、ゲッツの従来のスタイルが再評価されるのは、1980年代の純ジャズ復古の時代になってから。純ジャズ復古の波に乗って、スタン・ゲッツ再評価と相成ったが、ゲッツのブロウは意外と力強く、テクニック溢れるものになっていく。1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」に戻ることは無かった。そして、そうこうしているうちに、肝臓癌にて1991年、鬼籍に入ってしまう。
 

West_coast_jazz

 
1980年代から1991年、鬼籍に入るまでの、ストレート・アヘッドなゲッツのテナーも良いが、僕は、1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」なゲッツが大好きだ。当然、ボサノバにも染まっていない。純粋に、1950年代米国西海岸ジャズの雰囲気が凄く良い。

さて、このStan Getz『West Coast Jazz』を聴けば、ゲッツのテナーの全てが判る。フレーズ、アドリブ、どれをとっても天才的で、ゲッツは希有の「天才的インプロヴァイザー」ということがとても良く判る。収録曲もスタンダード曲が中心で、このスタンダード曲をベースに、様々なニュアンスのアドリブ・ラインが繰り出てくるところなんざあ、ほんと天才的です。

力まずにサラリと速く、魅力的なフレーズを吹くゲッツ。コンテ・カンドリのクールなトランペットは、ゲッツのテナーとの相性が抜群。ルー・レヴィの明るく歯切れの良い、雰囲気のあるピアノ。リロイ・ヴィネガーの太くて軽妙なベース。そして、リラックスしたクールなドラミングが見事なシェリー・マン。これぞ「米国西海岸ジャズ」な演奏です。

思わず聴き惚れてしまう。朝一番に聴くジャズにも良し。昼下がりのジャズ喫茶でほのぼのと聴くも良し。ほんと、良い雰囲気の「メインストリームなジャズ」。米国西海岸ジャズの個性である「アレンジの威力」はそこそこに、ゲッツのアドリブの実力と魅力が再認識できる盤。好盤です。

 
 

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2016年2月 8日 (月曜日)

フェルドマンの初お目見え盤

米国西海岸ジャズは「粋」である。テクニック優秀、ほど良くアレンジされ、心地良いユニゾン&ハーモニー。歌心あって聴き易いテーマの演奏、インプロビゼーションはテクニックを駆使した確かな展開。日本では東海岸のジャズとは違って、意外と阻害されていた。僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、米国西海岸ジャズのアルバムはほどんど見かけなかった。

そんな米国西海岸ジャズが日本の中で復権し始めたのは1980年代前半から。スイング・ジャーナル誌とのタイアップで米国西海岸ジャズのオムニバス盤が出た。それからである。それでも21世紀になった今でも、なかなか日本では米国西海岸ジャズの全貌には光が当たらない。そろそろ、その全貌を明らかにしないといかんと思うんだが如何だろう。

さて、そんな米国西海岸ジャズ、聴き心地が良くて、ハードなジャズの合間に必ず聴きたくなる。例えば、こんなアルバムがそんな存在である。Victor Feldman『The Arrival of Victor Feldman』(写真左)。1958年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Victor Feldman (vib, p), Scott LaFaro (b), Stan Levey (ds)。

この盤のリーダー、ビクター・フェルドマンが面白い存在。フェルドマンは米国出身のジャズメンでは無い。もともとは英国生まれで、ロンドンで活躍したジャズメン。ロンドンで彼の個性は確立され、その後、米国西海岸にやってきた。そういうことで、フェルドマンは米国ジャズの洗礼を受けていない。
 

The_arrival_of_victor_feldman

 
このアルバムを聴けばそれが良く判る。米国のジャズ・ピアニストは、バド・パウエルから何らかの影響を受けているが、フェルドマンのピアノにはその形跡が無い。所謂、ビ・バップな節回しの影響が希薄なのだ。フェルドマンのヴァイブもそうだ。ミルト・ジャクソンの様なアーシーさは無く、どちらかと言えば、ファンクネスが希薄な白人ジャズの雰囲気に通じる。

そんなフェルドマンの歯切れの良いピアノが「米国西海岸ジャズ」である。ファンクネス希薄で切れ味の良いピアノとヴァイブ。ジャズと言うよりはクラシック出身な典雅な雰囲気。そんなピアノとヴァイブが、ほど良くアレンジされた米国西海岸ジャズに乗って展開する。これぞ米国西海岸ジャズと言っても良い雰囲気。

巷ではスコット・ラファロのベースを云々するが、確かに、太っとく鋼のように鳴る彼のベースは、フェルドマンのピアノ&ヴァイブに相対して、良いアクセントにはなっている。が、アルバム全体の雰囲気、これぞ米国西海岸ジャズと言っても良い雰囲気を担っているのはフェルドマンのピアノ&ヴァイブである。ラファロのベースはあくまで「脇役」である。

アルバム・ジャケットを見れば、今まさにフェルドマンがボートで海を渡って米国西海岸に到着しました、という感じのデザインが「お洒落」。英国人フェルドマンが米国西海岸に移り住んでジャズを奏でる。そんなフェルドマンが米国西海岸ジャズに合致した瞬間を捉えた、なかなかに聴き応えのあるアルバムである。

 
 

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