2022年6月20日 (月曜日)

ブレイキーとモンクの相性の良さ

ジャズの過去の優秀盤については、長年の間に「定期的に選盤しては再度聴く」盤と「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤に分かれる。「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤については、だいたい、新装リイシューされるタイミングで、その存在を思い出し、おもむろに聴き直して、再び感動する、この繰り返しである。

『Art Blakey's Jazz Messengers with Thelonious Monk』(写真左)。1957年5月14–15日の録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Art Blakey (ds), Bill Hardman (tp), Johnny Griffin (ts), Spanky DeBrest (b)。ドラマーのアート・ブレイキーが率いるグループ、ジャズ・メッセンジャーズとピアノのセロニアス・モンクのコラボレーションの記録である。

この盤は20年ほど前に「Deluxe Edition」で入手、10年ほど前に聴いて、そのまま「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤になった盤である。今回、またまた「Deluxe Edition」で、CDリイシューされたタイミングで、その存在を思いだし、おもむろに聴き直した次第。もともと、アート・ブレイキーとセロニアス・モンクは相性が良く、その内容には期待が持てる盤ではある。

しかしながら、この時期のジャズ・メッセンジャーズは、ブルーノートとの長期契約を開始する寸前、1950年代の「低迷期の最後のメンバー編成」で、演奏内容に問題は無いのか、聴く前は不安になる。ジャズも知識が付くと、意外と聴く前に変な先入観を持つようになるから、十分に気をつけないといけない。
 

Art-blakeys-jazz-messengers-with-theloni

 
というのも、このジャズ・メッセンジャーズとセロニアス・モンクのコラボ盤、意外と骨太で硬派で内容の濃いハードバップがぎっしり詰まっているのだ。これには驚いた。もちろん、アート・ブレイキーとセロニアス・モンクは相性の良さは全編に渡って十分に感じられて、思わず、聴き込んでしまう。

ブレイキーのモンクのパフォーマンスに対する鼓舞の仕方、タイミングが絶妙。モンクの変則フレーズにしっかりと変則ビートでクイックに反応する、ブレイキーのテクニックの凄さ。そんなブレイキーのドラミングをバックに、モンクは気持ちよさそうに独特の変則フレーズを弾き上げて行く。ブレイキーのドラミングをバックにした時のモンクの弾き進めるフレーズには全く淀みが無い。

低迷期のメンバーとされた、メッセンジャーズのメンバー、それぞれもパフォーマンス好調。グリフィンはモンクの変則フレーズに乗って、ごりごりハードバップなフレーズをブリブリ吹きまくり、変則フレーズのモンクのバッキングに関わらず、ハードマンのトランペットもモンクのフレーズにしっかり乗って、ブリリアントで流麗に吹きまくる。このフロント2管のパフォーマンスに緩んだところは全く無い。

10年前に聴き直して以降、「長期間、選盤せず全く聴き直すことの無い」盤になっていた訳だが、今回、聴き直して、その内容の濃さにビックリした。以前はこの盤の何を聴いていたのやら。録音年は1957年、ハードバップ全盛期。この盤にもハードバップの良いところを十分に表現した、充実したパフォーマンスが記録されている。そして、改めて、ブレイキーとモンクの相性の良さを再認識した。ちなみに、このリイシュー盤、ボートラも充実していて捨て曲無し。良いリイシュー盤です。
 
 

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2021年12月17日 (金曜日)

聴き易い「モンクの強烈な個性」

リヴァーサイド・レコード(Riverside Records)は、1953年にオリン・キープニュースとビル・グラウアーによって設立されたジャズ・レーベルである。グラウアーは財政面を管理、キープニュースはプロデューサー。クラシック・ジャズの復刻専門としてスタートしたが、1955年、セロニアス・モンクと契約したのを機に本格的なレコード制作活動を始めている。

リヴァーサイドの成り立ちを読んでも判る通り、リヴァーサイドは、セロニアス・モンクに対して正統な評価をしていた。モンクのピアノについては、あまりに個性的が故、ブルーノートについても、プレスティッジについても、モンクの好きな様に演奏させ、その記録をそのまま、アルバムにしていた。個性が強すぎて、プロデュースは「必要悪」と判断した結果である。しかし、モンクの気持ちの赴くままにピアノを弾かせても、個性が強すぎて一般受けせず、売れなかった。

モンクのピアノは、バップ・ピアノとして最良のパフォーマンスであり、モンクのピアノは実にモダンである。しかし、その引き方、フレーズの音の飛び方があまりに個性的過ぎて、一般受けしない。しかし、その問題点をキープニュースはプロデューサーとして劇的に改善した。リヴァーサイドのモンクのリーダー作はどれもが「強烈な個性と聴き易さ」のバランスが取れた秀作揃いで、モンクはやっと優れたバップ・ピアニストとして認知された。リヴァーサイドの功績の一つである。
 

Thelonious-monk-plays-duke-ellington

 
『Thelonious Monk Plays Duke Ellington』(写真)。1955年7月の録音。リヴァーサイドからのリリース。盤番号は「RLP-201」。リヴァーサイドの新盤制作の第1号である。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Oscar Pettiford (b), Kenny Clarke (ds)。ピアニストの個性が良く判る「トリオ」編成。ジャズマンの皆が敬愛する「デューク・エリントン」の作品集である。

デュークの曲は、ほぼスタンダード化していて、多くのジャズマンが演奏している。そんな「スタンダード曲」を、モンクが強烈な個性で弾く。きっと訳が判らない感じにまで、デフォルメされているのだろうなあ、と諦め気味に聴き始めたら、モンクの強烈な個性と、デュークの曲が持つポップス性とが、絶妙にバランスが取れているではないか。モンクの強烈に個性的な弾き方で、デュークの曲の持つポップス性もしっかり出す。絶妙な「モンクの弾くデューク曲」である。

モンクのピアノはリヴァーサイドに移籍することで、個性的なアクロバティックなピアノという印象から、聴かせる的なアーティステックなピアノという印象に変化した。確かに、モンクのリヴァーサイドの諸作はどれもが、聴き易い、それでいて強烈な個性的なピアノはそのまま、という秀作揃い。キープニュースはモンクのピアノを誰よりも理解していたのだろう。キープニュースの慧眼恐るべしである。
 
 
 
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2021年11月28日 (日曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・11

ジャズ・ピアニストの中で、一番ユニークな存在が「セロニアス・モンク(Thelonious Monk)」。ジャズ・ピアノを聴き始めて、ジャズ・ピアノ盤の紹介本を見ながら、名盤を聴き進めて行って、まず、ぶち当たる壁が「セロニアス・モンク」である。クラシックやポップスのピアノをイメージして、モンクのピアノを聴くと、まず訳が判らなくなる。

通常のクラシック・ピアノなどのフレーズの流れが「常識」だとすると、モンクのピアノは「非常識」。和音の作り、旋律の流れ、間の取り方、アクセントの取り方、どれもが唯一無二。協調和音中心という次元から、かなり離れたもので、リズム的にも自然発生的な変則拍子が中心という、おおよそポップス中心の音楽とは正反対の、クラシック音楽とは対極にあるモンクのピアノである。

Thelonious Monk『Thelonious Himself』(写真左)。1957年4月の録音。セロニアス・モンクのソロ・ピアノである。モンクのキャリアの絶頂期でのソロ・ピアノなので、モンクのピアノの真の個性が良く判る。違和感をバリバリに感じる不協和音。決してメロディアスとは言えない、ゴツゴツしたフレーズ。独特のスクエアな、幾何学的なスイング感。外れているようで、しっかりと独特なフレーズが流れている。おおよそ、普通の人達にとっては、今までに聴いたことが無いピアノ。
 

Thelonious-himself_1

 
しかし、僕が思うに、これが「ジャズ」であり、これが「ジャズ・ピアノ」の最右翼なのだ。即興演奏を旨とするジャズ、新しい音を創造するジャズ、そういうジャズが、本来の「ジャズ」とするなら、このモンクのピアノは明らかに「ジャズ」の極みに位置するものだ、と僕は思う。ジャズをとことん好きになるかどうかは、このモンクのピアノを受け入れられるかどうかにある位に思っている。

Original CD reissue (1987) のバージョンがお勧めなのだが、このバージョンのラストに入っている「'Round Midnight (In Progress)」を聴いて欲しい。22分に及ぶ長いトラックの中で、モンクはあれこれ考えながら、何度も慎重に音を選び直しながら、ブツブツと「あーでもないこーでもない」とつぶやきながら、演奏を組み立てていく。和音の作り、旋律の流れ、間の取り方、アクセントの取り方が、即興演奏を前提として、考え抜かれたもの、選び抜かれたものだということが良く判る。

この究極の即興演奏の様なモンクの音世界は、填まればとことん癖になります。僕がジャズを本格的にジャズを聴き初めて、これはジャズやなあ、と初めて心底感心したのが、このモンクのピアノであり、このモンクのソロ盤『Thelonious Himself』でした。ジャズを聴く、って理屈では無くて、パッと聴いてパッと感じるものだと思いました。その感覚は「ジャズを聴く時の心構え」として、僕の中にあります。いわゆる「モンクのピアノの教え」ですね。
 
 
 
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2021年4月30日 (金曜日)

「モンク者」の必聴アルバム

ジャズライフ誌の「2020年度 Disc Grand Prix 年間グランプリ」で、その対象になった好盤を眺めていて、いつの時代にも、内容の優れた「モンクもの」はあるなあ、と妙に感心した。

「モンクもの」とは、ジャズ・ピアノの奇才「セロニアス・モンク(Thelonious Monk)」の楽曲や奏法を研究し、新たな付加価値を付けたり、新たな解釈を付けたりして演奏するものなんだが、これが何時の時代にも必ずある。ジャズの世界で、モンクの存在は「ミュージシャンズ・ミュージシャン」の最右翼に位置する存在なのだなあ、と改めて感じ入る。

John Beasley『MONK’estra Plays John Beasley』。2020年8月のリリース。セロニアス・モンクの楽曲をビッグ・バンドにアレンジしたプロジェクト「モンケストラ」での演奏。パーソネルは以下の通り。

John Beasley (p), John Patitucci (ac-b), Vinnie Colaiuta (ds), Bob Sheppard (ts), Ralph Moore, Danny Janklow (sax), Adam Schroeder (bs), Francisco Torres, Wendell Kelly (tb), Ulysses Owens, Jr., Terreon Gully (ds), Bijon Watson, Kye Palmer Brian Swartz (tp), Benjamin Shepherd (b), Gregoire Maret (harmonica), Joey DeFrancesco (org), Hubert Laws (woodwinds), Jubilant Sykes (vo), Joey De Leon (congas) 。
 

Monkestra-plays-john-beasley_1

 

「モンケストラ」とは錚々たる顔ぶれである。リーダーのジョン・ビーズリーはピアニスト。ベースにジョン・パティトゥッチ、ドラムにビニー・カリウタとは超強力。このピアノ・トリオを核に、現代のメインストリーム系純ジャズの名うてのミュージシャンが集って、とても演奏力の高い、ドライブ感溢れるビッグバンドを形成している。

モンクの楽曲は、そのフレーズが幾何学模様的にあっちこっちに音が飛ぶ。リズム&ビートについては、変則拍子を伴って、絶妙な「間」とユニークなタイム感覚が個性。音があっちこっちに跳んだり、スクエアにスイングしたり、いきなり「間」が訪れ、いきなり高速フレーズが走る。これらをビッグバンドで一糸乱れぬアンサンブルで表現しようって言うんだから、凄いというか「無謀」である(笑)。

しかしこの「モンケストラ」、セロニアス・モンクの楽曲を4曲アレンジし演奏、そして、ビーズリー自身のモンクの音楽の自由なスピリッツと共鳴するヒップな楽曲を8曲、事も無げに、スカッとアンサンブルをかまして、疾走感と爽快感溢れるビッグバンドな演奏を繰り広げている。見事である。

モンク・ミュージックの優秀な即興性と自由なスピリッツをものの見事に「モンケストラ」は表現している。今風のモーダルでネオ・ハードバップな響きも満載、より洗練されより深化したモンク・ミュージックを展開している。聴き応え十分。この盤「モンク者」には必聴アイテムですね。
 
 
 

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2021年3月13日 (土曜日)

ハキムのモンク・トリビュート盤

セロニアス・モンクという天才ピアニスト&コンポーザーがいた。そのピアノは「ユニーク」。音の飛び方&重ね方、そして音の間、リズム&ビート、どれをとってもユニーク。実際の音を聴かないとピンとこないと思うが、このモンクのピアノは唯一無二なピアノ。ジャズの即興演奏の極みの様な、意外性抜群なアドリブ展開。

モンクは作曲も「ユニーク」。彼の書く曲は、ピアノのプレイと同様に、音の飛び方&重ね方、そして音の間、リズム&ビート、どれをとってもユニーク。とにかく演奏していて楽しい、そして意外性抜群。モンクの手なる曲は「ミュージシャンズ・チューン」。様々なジャズマンに演奏され、今や「ジャズ・スタンダード化」した曲が沢山ある。

Sadik Hakim『A Bit of Monk』(写真)。1978年10月27日、NYのDowntown Sound Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Sadik Hakim (p), Errol Walters (b), Satguro Singh (ds)。ビ・バップなピアニスト、サディク・ハキムがリーダーのトリオ盤。タイトル通り「セロニアス・モンク」トリビュート盤。LP時代収録の8曲中、4曲がモンク作の名曲、残り4曲がハキム作のモンク・トリビュート曲。

 
A-bit-of-monk
 

パーソネルを見渡して、ベースとドラムは全く知らない。ハキムだって良く知っている訳では無い。なのに、1978年というフュージョン・ジャズ全盛期に、こんなにしっかりした内容の「モンク・トリビュート」盤が企画され、録音されたことにちょっとビックリする。ハキムのピアノは力強いタッチ、流麗なラインでイマジネーション豊かなアドリブ・フレーズ。これがモンクの楽曲にピッタリとフィットしているのだから、ジャズは面白い。

モンクの難解な曲を前に、淀み迷いの一切無い切れ味の良いハキムのタッチがモンクの楽曲を、モンクの楽曲のユニークな旋律を的確に捉え、的確にその特徴を表現していく。そして、そんな難解でユニークなモンクの楽曲を自家薬籠中のものとして、ハキムのピアノは縦横無尽に弾き紡いでいく。ハキムのピアノがモンクの楽曲にこんなにフィットするとは「目から鱗」である。

聴いていて爽快感を感じる、とても内容のある「モンク・トリビュート」盤である。今回、リイシュー盤を聴いたのだが、ボートラが2曲ついているが、この2曲も良い内容。ハキムはこの盤の録音の5年後、63歳で亡くなる訳だが、この盤の内容、ハキムの晩年の快作として、記憶に留めておくべき好盤だろう。
 
 
 

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2020年11月 2日 (月曜日)

52年振りのモンクの未発表音源

「ジャズ・ジャイアント」と呼ばれるジャズの偉人レベルの中で、ビル・エヴァンス、セロニアス・モンク、ジョン・コルトレーンについては、21世紀に入って20年経った今でも、未発表音源が発掘され続けている。その未発表音源については、どこかでのライヴ音源がほとんど。しかも非正式録音、いわゆる「ライヴでの隠し撮り」音源である。しかも、その音源、意外と音が良い。

Thelonious Monk『Palo Alto』(写真左)。1968年10月27日、カリフォルニア州パロ・アルト高校にてライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (sax), Larry Gales (b), Ben Riley (ds)。これまでどこにも発表されてこなかった、セロニアス・モンク・カルテットの1968年に行われたライヴの音源。今年創立60周年を迎えたジャズの名門インパルス・レーベルからリリースになる。

録音の経緯が興味深い。キング牧師が暗殺され、全米が人種差別に揺れていた1968年10月、ジャズを通して人々の結束を願う一人の男子高校生の思いに応えてモンクが出演した学内コンサートを全編収録。この録音は、その学校の用務員によって行われた。そして、本アルバムの音源は、今日に至るまで、このライヴの発案者で当時高校生だった、ダニー・シャーの自宅屋根裏で保管されていた、とのこと。録音されてから、今回、52年経って陽の目を見たことになる。
 
 
Palo-alto  
 
 
1968年の頃のセロニアス・モンク・カルテットの演奏は、モンク初期の、独特の「アク」と「癖」が抜けて、幾何学模様的にスイングするモンクのピアノ・パフォーマンスが聴き易い判り易いレベルになっていて、聴いていて、とてもワクワクする内容になっている。このライブ、健康状態が優れなかった時期のモンクではあるが、明らかにモンクの気分が良い時のパフォーマンスである。

収録されている曲は「Ruby, My Dear」「Well, You Needn’t」「Don’t Blame Me」「Blue Monk」「Epistrophy」「I Love You Sweetheart of All My Dreams」の6曲だが、どの曲もモンクの代表曲ばかり。演奏も音楽的に評価の高い時代のカルテットであり、とても充実している。冗長なところ、散漫なところが全く無い。好調のモンクを、他の3人が大いに盛り立てている様がありありと伝わってくる。

半世紀も経っているのだ。内容的にはイマイチだが骨董的価値がある、というレベルで未発表音源でリリースされるのなら判るが、これだけの優れた内容で、音も良好のレベルで、こんな音源がまだ残っていたなんて驚きである。今年出た未発表音源ではあるが、1960年代後半のセロニアス・モンク・カルテットの代表盤の一枚に加えても良いだろう。
 
 
 

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2020年7月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・176

ジャズ・トランペットについては、意外とバリエーションが狭い。ジャズの歴史において、著名なトランペッターとしては、ビ・バップの祖の一人「ディジー・ガレスピー」、早逝の天才「クリフォード・ブラウン」、そして、ジャズの帝王「マイルス・ディヴィス」。この3人の名が挙がった後、しばらく間が空く感じなのだ。確かに、ジャズ・トランペットとしては、まずこの3人を押さえないと話にならない。

『Bird And Diz : The Genius Of Charlie Parker #4』(写真左)。ビ・バップ晩期、1949ー50年の録音。ビ・バップの祖、Charlie Parker (as), Dizzy Gillespie (tp) の共演盤。ビ・バップの祖であるパーカーとガレスピー、意外と共演盤は少ない。あっても時代が時代だけに音が悪かったりするが、この盤は音も良く、いずれの演奏も水準以上。ビ・バップの完成形を見る想いのする好盤。加えて、ガレスピーのトランペットを理解するのに最適な盤でもある。

この盤に詰まっている演奏は「典型的なビ・バップ」。ビ・バップの教科書の様な演奏がギッシリ詰まっている。アバンギャルドで躁状態の尖った演奏が主で、ビ・バップが流行した頃、一般の音楽マニアからは「うるさくて、騒々しい、ジャズのどんちゃん騒ぎ」に感じたことが良く判る。今の耳には、メリハリの効いた、テクニック優秀な、切れ味抜群な即興演奏で、アレンジだけ見直せば、現代でも充分に通用するポテンシャルの高い演奏である。
 
 
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この盤の「ビ・バップ」は聴き易い。パーカーのアルト・サックスも、ガレスピーのトランペットも、即興演奏のパフォーマンスについては「安定」しているのだ。ビ・バップなので、アクロバティックにオーバードライブ気味に即興演奏をかましがちなのだが、この盤では、抑え気味に流麗な吹き回しを心がけている様に感じる。これがまあ、見事なアドリブ・パフォーマンスなのだ。特に、ガレスピーのトランペットが判り易い。聴き手を意識した時のガレスピーのトランペットは絶品だ。

クインテットのピアノはセロニアス・モンク。モンクのピアノはご存じの様にタイム感覚と音の重ね方が独特で、通常のビ・バップなピアノでは無い。そして、ドラマーのバディ・リッチも、典型的バップ・ドラムでは無い。リッチ独特のスインギーなドラミングだが、後のハードバップに繋がる、聴かせるドラミング。このモンクとリッチの存在が、パーカーとガレスピー、フロント管の演奏に適度なテンションとスリルを与えている。

ビ・バップとは何か、パーカーのアルト・サックスとは何か、ガレスピーのトランペットとは何か、これらの問いにズバリ答えるような内容の好盤である。パーカーとガレスピーの顔写真、またはイラストをあしらったジャケットにはちょっと「ひく」が、内容はピカイチ。ビ・バップの教科書の様な内容がギッシリ詰まっています。ジャズ者初心者の方々には是非一度は聴いて頂きたい盤でもあります。
 
 
 

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2020年2月17日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・125

ジャズは良い意味で「何でもアリ」な音楽ジャンルである。そういう意味で自由度の高い、融通の利く音楽ジャンル、と言える。クラシックともポップスとも違う。もちろん、ロックとも違う。クラシックは極力、譜面通りに演奏するのが基本だし、ポップスやロックは「繰り返し」の音楽だ。ジャズは、必要最低限の決め事の下での即興が基本で、ベースとなるフォーマットやビートは自由。つまりは「やったもん勝ち」という志向が強い。

Monty Alexander『Wareika Hill Rastamonk Vibrations』(社員左)。2019年の作品。セロニアス・モンクの楽曲にスカやレゲエなどのジャマイカのテイストを加えた作品。タイトルの「Wareika Hill」とは、ラスタファリアンの聖なる山のこと。モンティの本気度が窺い知れる。しかし、あのジャズの中でも、とびきりユニークな楽曲の作り手、セロニアス・モンクの楽曲をスカやレゲエのリズム&ビートでジャズるとは。これは実にユニーク。

さて、リーダーのピアニスト、モンティ・アレキサンダーは、1944年6月6日、ジャマイカのキングストン生まれ。クラシック・ピアノを学び、ハイスクール入学後はポピュラー系もこなしつつ、ニューヨークへ進出。演奏スタイルはラテン的フレーズを宿しつつ、パワフルでハッピー。とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多い。ジャズ者によっては「五月蠅い」と敬遠する向きもあるくらいである。しかし、そんなフレーズは品格が漂い、決して俗っぽくない。
 
 
Wareika-hill-rastamonk-vibrations-1  
 
 
モンクの楽曲は「間とタイミング」を活かした楽曲が多く、そんな楽曲に2拍子のレゲエ・ビートを当てて、ピアノを弾きまくるのだが、面白いのは、とにかく多弁、弾き倒すスタイルで音符が多いモンティ・アレキサンダーのピアノが、2拍子に当てるが故に、適度に音が散って、適度に音が間引かれて、モンクの楽曲のユニークなフレーズがくっきりと浮かび上がるのだ。これは面白い。

モンクの楽曲をレゲエ・ビートでアレンジするなんて発想が凄い。もともとモンティ・アレキサンダーはジャマイカのキングストン生まれ。もちろん、レゲエは子供の頃から親しんだビートだろうし、ボブ・マーリーはヒーローだろう。しかし、ボブ・マーリーの楽曲をジャズにするのでは無く、モンクの楽曲をレゲエ・ビートでジャズるなんて。モンティの品格漂うパワフルなピアノ・タッチと相まって、ツービートに乗って、明るく陽気に唄うモンクス・ミュージック。

モンクス・ミュージックとレゲエ、絶対合わない様な感じがするんだが、こうやってアレンジしてみると、しっかりと融合してジャズになるのだから、ジャズの懐の深さ、融通度の高さに改めて感じ入るばかりである。レゲエのビートに乗って、パワフルでハッピー、多弁で陽気なモンティのピアノがポジティヴに印象的に響き渡る。この盤、モンティのピアノを愛でるのにも良い好盤である。いや〜、今回は面白いチャレンジを聴かせて貰った。
 
 
 
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2018年2月26日 (月曜日)

チャーリー・ラウズの白鳥の歌

最近は良い世の中になったなあ、と感じる。ネットを徘徊していると、様々なジャズ盤と出会うことが出来る。ジャズを聴き初めて、早40年。アルバムを聴き込んだ枚数も相当数になるんだが、ジャズの世界は奥が深く、裾野が広い。今でも時々「こんなアルバムあったんや」と感じ入る好盤に出会うことがある。

Charlie Rouse 『Epistrophy - The Last Concert』(写真)も、そんな「こんなアルバムあったんや」と感じ入った好盤の一枚。1988年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Don Cherry (tp), Buddy Montgomery (vib), George Cables, Jessica Williams (p), Jeff Chambers (b), Ralph Penland (ds)。

収録曲はセロニアス・モンクの有名曲ばかり。それもそのはずで、サンフランシスコでの「1988 Jazz in the City! Festival」での、セロニアス・モンクのバースデー・トリビュートでのライブ録音。もともと、チャーリー・ラウズは、1959年から1970年まで、セロニアス・モンクのカルテットで活動、その間モンクの側近中の側近の存在で、モンクに一番近いジャズメンである。
 

Epistrophy_last_recording   

 
演奏内容はと言えば、さすがにモンクの側近中の側近の存在、モンクズ・チューンを朗々と吹き上げていく。ラウズの演奏するモンクの曲は説得力があって、本物っぽく聴こえる。やはり、10年以上もモンクと共にしたラウズである。モンクの曲のイメージを誰よりも理解しているのだろう。本当に素晴らしいパフォーマンスだ。

もう一人素晴らしいと感じ入ったのは、このライブ演奏での「モンク役」を担った、ピアノのジョージ・ケイブルスである。多弁なピアニスト・ケイブルスであるが、モンクの楽曲でアドリブ・フレーズを叩き出し、ラウズのテナーやチェリーのトランペットのバッキングをする雰囲気は、かなりのところ「モンク」。良い雰囲気の楽しいピアノである。

あれっと思って調べてみたら、ラウズの命日が1988年11月30日。このライブ盤の録音が1988年10月。ラウズの逝去の約1ヶ月半前の「ラスト・レコーディング」であった。肺がんのため、と聞いているが、このライブ盤のブロウの力強さを聴くと、肺がん末期のブロウとは思えない。このライブ盤は、ラウズの「白鳥の歌」。聴く度に万感の想いがこみ上げる。

 
 

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2018年1月17日 (水曜日)

モンク・トリビュートの変わり種

モンクの楽曲はフレーズが独特。テーマの旋律の流れが独特。少なくとも、クラシックの楽曲の様に、例えば、モーツアルトやシューベルトの様に、流麗で聴き心地の良い旋律の流れでは決して無い。あっちこっち飛んだり跳ねたり。立ち止まったかと思ったら走り出す。硬軟自在、緩急自在、高低自在、既成概念に囚われないフレーズの数々。

モンクの楽曲はそんな独特のフレーズ、独特の旋律の流れが真骨頂。クラシックの流麗で聴き心地の良い旋律が全てとするオーディエンスの方々からすると、絶対に許せない、不協和音にも似た「予測不可能」なフレーズ。決して、スコアに落とすことの無い、自由度の高い、即興性の高い旋律の流れ。これが「填まる」と、こんなにも刺激的で心地良いフレーズって他に無いと、思いっきり「クセ」になる。

『Monk Suite : Kronos Quartet Plays Music of Thelonious Monk』(写真左)。1985年の作品。そんなセロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れを愛でることが出来る、格好の「変わり種」盤である。Kronos Quartet(クロノス・カルテット)は米国の「弦楽四重奏」。1978年より現在までサンフランシスコを拠点に活動を続けている。日本でクロノス・カルテットが一般的に認知されたのはこのアルバムが出た時だった、と記憶している。
 

Monk_suite_kronos_quartet_plays_mus

 
クラシックの弦楽四重奏が「ジャズ」を「モンク」をやる。クラシックが「ジャズ」に、クラシックが「モンク」にアプローチする、という体で、この弦楽四重奏はクラシックでは無いが、なんとかジャズになっている。弦楽四重奏なので、即興のアドリブ・フレーズを弾きまくる、という訳にはいかないだろう。しっかりとスコアに落として、即興風なアドリブ・フレーズを展開するのだが、これがまずまず「ジャズ」の雰囲気を漂わせている。

この弦楽四重奏の演奏で、しっかりと浮き出てくるのが、セロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れである。スコアに落としているので、余計にその「ユニークさ」が露わになっているのが面白い。モンクの楽曲の特徴がしっかりと捉えられていて意外と飽きない。ただ、残念なのは、ロン・カーターのベースの存在。オーソドックスなウォーキング・ベースで、この弦楽四重奏のバックに入っている存在意義が良く理解出来ない。

あっても無くても良かったロンのベースは差し置き、この弦楽四重奏の「モンク・トリビュート」なアルバムは、セロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れをしっかりと浮き立たせていて、これはこれで面白い取り組みだと言える。即興を旨とする本格的なジャズを求めるものでは無いが、モンクのユニークさを愛でる上では、なかなか面白い内容の「変わり種」盤である。

 
 

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