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2018年2月26日 (月曜日)

チャーリー・ラウズの白鳥の歌

最近は良い世の中になったなあ、と感じる。ネットを徘徊していると、様々なジャズ盤と出会うことが出来る。ジャズを聴き初めて、早40年。アルバムを聴き込んだ枚数も相当数になるんだが、ジャズの世界は奥が深く、裾野が広い。今でも時々「こんなアルバムあったんや」と感じ入る好盤に出会うことがある。

Charlie Rouse 『Epistrophy - The Last Concert』(写真)も、そんな「こんなアルバムあったんや」と感じ入った好盤の一枚。1988年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Don Cherry (tp), Buddy Montgomery (vib), George Cables, Jessica Williams (p), Jeff Chambers (b), Ralph Penland (ds)。

収録曲はセロニアス・モンクの有名曲ばかり。それもそのはずで、サンフランシスコでの「1988 Jazz in the City! Festival」での、セロニアス・モンクのバースデー・トリビュートでのライブ録音。もともと、チャーリー・ラウズは、1959年から1970年まで、セロニアス・モンクのカルテットで活動、その間モンクの側近中の側近の存在で、モンクに一番近いジャズメンである。
 

Epistrophy_last_recording   

 
演奏内容はと言えば、さすがにモンクの側近中の側近の存在、モンクズ・チューンを朗々と吹き上げていく。ラウズの演奏するモンクの曲は説得力があって、本物っぽく聴こえる。やはり、10年以上もモンクと共にしたラウズである。モンクの曲のイメージを誰よりも理解しているのだろう。本当に素晴らしいパフォーマンスだ。

もう一人素晴らしいと感じ入ったのは、このライブ演奏での「モンク役」を担った、ピアノのジョージ・ケイブルスである。多弁なピアニスト・ケイブルスであるが、モンクの楽曲でアドリブ・フレーズを叩き出し、ラウズのテナーやチェリーのトランペットのバッキングをする雰囲気は、かなりのところ「モンク」。良い雰囲気の楽しいピアノである。

あれっと思って調べてみたら、ラウズの命日が1988年11月30日。このライブ盤の録音が1988年10月。ラウズの逝去の約1ヶ月半前の「ラスト・レコーディング」であった。肺がんのため、と聞いているが、このライブ盤のブロウの力強さを聴くと、肺がん末期のブロウとは思えない。このライブ盤は、ラウズの「白鳥の歌」。聴く度に万感の想いがこみ上げる。

 
 

東日本大震災から6年11ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年1月17日 (水曜日)

モンク・トリビュートの変わり種

モンクの楽曲はフレーズが独特。テーマの旋律の流れが独特。少なくとも、クラシックの楽曲の様に、例えば、モーツアルトやシューベルトの様に、流麗で聴き心地の良い旋律の流れでは決して無い。あっちこっち飛んだり跳ねたり。立ち止まったかと思ったら走り出す。硬軟自在、緩急自在、高低自在、既成概念に囚われないフレーズの数々。

モンクの楽曲はそんな独特のフレーズ、独特の旋律の流れが真骨頂。クラシックの流麗で聴き心地の良い旋律が全てとするオーディエンスの方々からすると、絶対に許せない、不協和音にも似た「予測不可能」なフレーズ。決して、スコアに落とすことの無い、自由度の高い、即興性の高い旋律の流れ。これが「填まる」と、こんなにも刺激的で心地良いフレーズって他に無いと、思いっきり「クセ」になる。

『Monk Suite : Kronos Quartet Plays Music of Thelonious Monk』(写真左)。1985年の作品。そんなセロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れを愛でることが出来る、格好の「変わり種」盤である。Kronos Quartet(クロノス・カルテット)は米国の「弦楽四重奏」。1978年より現在までサンフランシスコを拠点に活動を続けている。日本でクロノス・カルテットが一般的に認知されたのはこのアルバムが出た時だった、と記憶している。
 

Monk_suite_kronos_quartet_plays_mus

 
クラシックの弦楽四重奏が「ジャズ」を「モンク」をやる。クラシックが「ジャズ」に、クラシックが「モンク」にアプローチする、という体で、この弦楽四重奏はクラシックでは無いが、なんとかジャズになっている。弦楽四重奏なので、即興のアドリブ・フレーズを弾きまくる、という訳にはいかないだろう。しっかりとスコアに落として、即興風なアドリブ・フレーズを展開するのだが、これがまずまず「ジャズ」の雰囲気を漂わせている。

この弦楽四重奏の演奏で、しっかりと浮き出てくるのが、セロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れである。スコアに落としているので、余計にその「ユニークさ」が露わになっているのが面白い。モンクの楽曲の特徴がしっかりと捉えられていて意外と飽きない。ただ、残念なのは、ロン・カーターのベースの存在。オーソドックスなウォーキング・ベースで、この弦楽四重奏のバックに入っている存在意義が良く理解出来ない。

あっても無くても良かったロンのベースは差し置き、この弦楽四重奏の「モンク・トリビュート」なアルバムは、セロニアス・モンクの楽曲の独特のフレーズ、独特の旋律の流れをしっかりと浮き立たせていて、これはこれで面白い取り組みだと言える。即興を旨とする本格的なジャズを求めるものでは無いが、モンクのユニークさを愛でる上では、なかなか面白い内容の「変わり種」盤である。

 
 

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2018年1月16日 (火曜日)

モンク・トリビュートの好盤

そんなモンクの楽曲であるが、プロのジャズメンとしても、モンクの楽曲は無視出来ない存在みたいで、いつの時代でも「モンク・トリビュート」なアルバムがコンスタントに定期的にリリースされている。即興性や自由度の高い、そして意外性のあるジャズならではの展開がてんこ盛りなモンクの楽曲は、ジャズメンにとっても取り組み甲斐のある素材なのだろう。

と、昨日書いた。確かにそうで、僕はこの「モンク・トリビュート」なアルバムが好きだ。まず、そのジャズメンのスキルが明確に判る。演奏する楽器のテクニック、モンクの楽曲のアレンジ能力、そして、なにより、その演奏するジャズメンの個性が、手に取るように判る。モンクの楽曲って、モンクの奏法って、本当に不思議だ。

Paul Motian『Monk in Motian』(写真)。1989年のリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Motian (ds), Joe Lovano (ts), Bill Frisell (el-g), Geri Allen (p), Dewey Redman (ts)。純ジャズ復古の号令がかかって、純ジャズの良作がどんどん量産され始めた頃。良質の「モンク・トリビュート」なアルバム。
 

Monk_in_motion

 
ポール・モチアンは柔軟でハイテクニックな職人ドラマー。メインストリームなジャズもいける。しかも、1970年代は、フリーなジャズをガンガンやった。メインストリームなドラミングも、フリーなドラミングもどちらも優秀。そんな柔軟かつ想像性豊かなドラマーがモンク・トリビュートをやる。つまり、モンクの楽曲の「リズム&ビート」に着目した「モンク・トリビュート」。

モンクの奏法のパーカッシヴな個性は、フロントのロバーノのテナーとフリゼールのエレギで緩和しつつ、モンクの楽曲の個性的なフレーズを浮き彫りにすることに成功している。そこにガッツリ絡む、モチアンのドラミング。モンクの楽曲の持つ独特の「リズム&ビート」をしっかりと印象付けてくれる。

面白いのは、ジェリ・アレンのアコピ。多くのアコピの使い手が陥る状態なんだが、モンクが乗り移ったが如く、モンクのコピーの如く、モンクそっくりに弾く。これではピアニストの個性が全く判らん(笑)。どうも、アコピの使い手にはモンクの楽曲は鬼門なのかもしれない。このアレンのアコピはご愛嬌。このモチアンの『Monk in Motian』、「モンク・トリビュート」の好盤である。

 
 

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2017年6月 7日 (水曜日)

理路整然なビッグバンドのモンク

Columbiaレーベル時代のモンクは判り易い、と念仏のように唱えてはや3日目。Columbiaレーベル時代の第3弾は、これまた、モンク・ミュージックを判り易く、3つの演奏パターンで聴かせてくれる、モンクのリーダー作でも隠れ好盤的な盤である。

Thelonious Monk『Big Band and Quartet in Concert』(写真左)。1963年12月30日、ニューヨークのリンカーン・センターでのライブ録音。ビッグバンドとカルテット、そしてソロの3つの演奏パターンで聴かせてくれる。

カルテットのパーソネルは、Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (ts), Butch Warren (b), Frankie Dunlop (ds)。このカルテットのパーソネルを中心に、サド・ジョーンズのコルネットやスティーブ・レイシーのソプラノ、フィル・ウッズのアルトなど、さすが大手のColumbiaレーベル、人気の高いジャズメンをズラリと取り揃えている。数えたら「ノネット(9人楽団)」だった。

モンクの楽曲と演奏パターンをビッグバンドでやるなんて凄いなあ。モンクの飛んだり跳ねたりするタッチと予測不能な展開がミステリアスなアドリブ・フレーズをビッグバンドでトレースするなんて、ビッグバンドのメンバー一人一人が優秀なテクニックとモンク・ミュージックに対する見識の深さについて、改めて感心する。
 

Monk_big_band_and_quartet

 
加えて、このライブ盤でのアレンジは温厚で、Columbiaレーベル時代の判り易いモンクのイメージをベースに、ビッグバンドの演奏を組み立てている。確かに、このライブ盤でのビッグバンドの演奏は理路整然としていて聴き易い。フレーズのそこかしこにモンクのイメージを散りばめてはいるが、極端に飛んだり跳ねたりしない。あくまで、常識の範囲内で収めているところが「聴き易さの理由」。

カルテット構成で目を惹くのは、ベースのブッチ・ウォーレンの存在。前作『Criss-Cross』までのジョン・オーレから交代している。が、モンク・カルテットの音の本質は変わらない。当然、ベーシストが代わったからと言って、モンクのピアノも変わらない。判り易いモンク・ミュージックは変わらない。

このライブ盤でのモンクは、とりわけ、憑きものが落ちたようにスッキリと判り易い、そして、不思議なくらいに溌剌としている。僕が聴いたこのCD2枚組は、1964年発売のLP2枚組のライブ音源に未発表曲を併せてCD2枚組でリイシューしたもの。意外と貴重な2枚組CDである。

 
 

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2017年6月 6日 (火曜日)

前作と対をなす「兄弟盤」です

Columbiaレーベル時代のモンクはマンネリズムに陥ったという評価が浸透しているようだが、どうにもそれは納得出来ない。Columbiaレーベル時代のモンクは演奏が熟れていて、モンクとしては流麗な演奏が多く、聴き易くポップな雰囲気が「マンネリズム」という誤った表現になったんじゃないかな、と睨んでいる。

さて、今日はColumbiaレーベル第2弾、Thelonious Monk『Criss-Cross』(写真左)である。1962年11月と1963年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (ts), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)。当時の「鉄壁のカルテット」である。

もともとColumbiaレーベルはジャケット・デザインに一貫性が無く、あまりデザインに関して見識があるとは思えないレーベルである。さすが米国の大手レーベルである。この『Criss-Cross』も、ピアノに向いたモンクが、万華鏡の様に4つに分かれた鏡絵の様にあしらわれていて、ちょっと奇異なジャケット・デザインに映る。

音楽のアルバムってジャケットの印象って大事だと思うんだが、この『Criss-Cross』ってアルバム、この奇異なジャケット・デザインで相当損をしているのではないか。もともとモンクのキャラクター自体が「奇異」なものとして捉えられているのに加えて、この奇異なジャケット・デザイン。まるでモンクのあの個性的なピアノのフレーズが「奇異」なものであるように捉えられてしまうのではないか。
 

Criss_cross

 
が、そんなことは全く無いアルバムの内容である。前作『Monk's Dream』と同様、この『Criss-Cross』も判り易い。ジャズ者初心者の方々にも、この番のモンクは判り易い。冒頭の「Hackensack」を聴けば、ほんと、この盤のモンクは判り易いと感じる。アドリブ・フレーズの個性は確かにモンク。しかし、何て言ったら良いのか、そう「常識的な」モンクなのだ。

悪い意味で言っているのでは無い。良い意味で「常識的な」モンクなのだ。いわゆる「セロニアス・モンク入門」に適した盤である。そう言う意味では、前作の『Monk's Dream』の流れを組む内容で有り、『Monk's Dream』と『Criss-Cross』は対をなす「兄弟盤」と捉えて良いのではないか、と納得できる位の「判り易いモンク盤」である。

適度にスイングし、「常識の範囲内」でモンクのアドリブ・フレーズが飛んだり跳ねたりする。よって、今までのモンクになく、メロディアスで流麗。とっても聴き易いモンク・カルテットの演奏がとてもとても心地良い。もっと再評価されるべきアルバムではないでしょうか。ほんと「マンネリズム」なんて、とんでもない誤解ですよね。

 
 

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2017年6月 5日 (月曜日)

Columbiaのモンクは判り易い

そう言えば暫く、モンクのアルバムを聴いていないことに気がついた。そうそう、モンクのアルバムの聴き直しを進めていたんやった。ちょうど、Riversideレーベルの時代まで、聴き直しをしたんやなかったかなあ。ということで、今日から、Riversideレーベル時代の次、Columbiaレーベル時代の聴き直しである。

まずはこれ。Thelonious Monk『Monk's Dream』(写真左)。1962年10月の終わりから11月の初めの録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (ts), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)。モンク・ミュージックを奏でる為の一体となったカルテット構成。

このアルバムを聴けば良く判るのだが、このアルバムのモンクは判り易い。というか、モンクのキャリアの中で最後のレーベルであるColumbiaレーベル時代のモンクのアルバムはどれもが判り易い。特に、このColumbiaレーベル時代の最初の一枚『Monk's Dream』は判り易い。

若い時代のモンクは予測が出来ない。どうしてそんな和音になるの、とか、どうしてそっちに展開するの、とか、どうして、そこでそんな音を抜くの、とか、とにかく予測不能。その予測不能な意外性がモンクの面白いところでもあるのだが、常識の範囲を超えてはいるので、長時間聴いていると疲れてくる。
 

Monks_dream

 
しかし、『Monk's Dream』は判り易い。なんとなく予測できる、というか、なんとなく理屈がついて理解しやすい。なるほどその和音になるよね、とか、なるほどそっちに展開するよね、とか、なるほどそこはそう音を抜くよね、とか、なんとなく想定できて、なんとなく理屈がつく。これが、Columbiaレーベル時代のモンク盤の良いところで、ジャズ者初心者の方々にも、この時代のモンクは判り易い。

グループ・サウンドとしても充実している。特に、チャーリー・ラウズのテナーが良い。モンクにぴったり寄り添うようにテナーを奏でる。モンクの特異なフレーズを予測して、しっかりとモンクの個性的なフレーズに追従する。この盤でのラウズのテナーを聴いていると、やはり、モンクに最適なテナーはラウズのテナーだろう。それほどまでにモンクとラウズの相性は良い。

巷では、Columbiaレーベル時代のモンクはマンネリズムに陥ったという評価が浸透しているようだが「とんでもない」。演奏が熟れていて、モンクとしては流麗かつ印象的なフレーズが多いが、これはこれで、ポップなモンクとして聴き応えがある。カルテットとしても充実していた時代あり、特にモンク〜ラウズのラインが素晴らしい。ユニゾン&ハーモニー、そしてアドリブ。どれをとっても申し分な好盤です。

 
 

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2015年12月 3日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・71

昨日書いたが、ジャズ喫茶って、たまにはジャズ者の方々が「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけることが大事だと思う。とにかく「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。

例えば、このピアニストの音も、恐らく、ある程度ジャズを聴き込んだジャズ者の方々であれば、「これは知ってる」とか「これは誰が弾いているか知ってる」となるのではないか。聴けば直ぐ判るピアニストである。これだけ個性的なピアノは他に無い。というか、唯一無二である。

Thelonious Monk『Solo Monk』(写真左)。1964年10月、1965年3月の録音。孤高のジャズ・ピアニスト、バップの高僧と呼ばれる「セロニアス・モンク」のソロ盤である。セロニアス・モンクは1917年生まれだから、47歳の時の録音になる。ジャズメンとして中堅からベテランの域に達した、充実のソロ・ピアノ盤である。

モンクのピアノの個性を確認し愛でるには、ソロ盤が一番。バックの演奏を一切排除して、モンクのピアノのみが朗々と流れる。そういうシチュエーションが、モンクの個性を感じるのに一番である。

それほどまでに個性的なモンクのピアノである。まず、ボイシングが普通では無い。不協和音がガンガン出てくる。そして、独特のタイム感覚。そこで止まるか、と思いつつ、そこで走るか、と驚き、いきなり左手がガーンと入って、右手が不協和音を旋律していく。おおよそ、クラシック音楽には全く無いピアノ。
 

Solo_monk

 
クラシック・ピアノを聴き馴れた耳には、このモンクの独特なタイム感覚とボイシングを持つピアノは、かなり辛いだろう。でも、モンクのピアノって、アルバムを聴き重ねていくと癖になってくる。なんか、この独特なタイム感覚とボイシングが心地良くなってくる。癖の強いチーズの様な感覚。

逆に、クラシック音楽の不協和音を活用した、ストラビンスキーやバルトークの交響曲などを聴き馴れた耳には、モンクの不協和音フレーズは意外といけるのではないか。モンクの不協和音フレーズは意外と計算され、その構築美がたまらない。しかも、この不協和音フレーズはジャズの中でも唯一無二。これだけ効果的に不協和音を活用出来るピアニストはモンク唯一人。

そんなモンクのピアノは、その癖が強く出たものはちょっと聴くのがしんどい、というジャズ者の方も多い。特に、若い頃のモンクのピアノは、モンクの個性と癖が強く出たものが多い。確かに僕も若い頃は、このモンクの癖が強く出た盤はちょっと苦手だった。

そういう意味で、この『Solo Monk』のモンクのピアノはあっさりしている。モンクの癖がほど良くこなれていて、とても聴き易いモンクのソロ・ピアノである。穏やかな日に陽向ぼっこをしながら聴いている様な、そんなほのぼのとしたモンクのピアノは優しい。タッチも柔らかくて、聴き心地がとても良い。

一般万民向け、モンク入門盤として最適な盤でしょう。ジャズ喫茶で軽く流すのに良い盤です。そして、モンクの個性はしっかりと判る盤なので、この盤をジャズ喫茶でかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。そしてその得意げな顔がこう語る。「これ、セロニアス・モンクのピアノやね」。

 
 

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2015年8月19日 (水曜日)

愛しのモンク・イン・トーキョー

セロニアス・モンクのピアノは独特の個性である。孤高のピアニストである。この独特の癖のあるアドリブ・フレーズは唯一無二。真のフォロワーはいない。あの独特のタイム感覚はフォロワーを作らない。

僕はこのセロニアス・モンクのピアノが大好きだ。自分でもピアノを少し弾けるので感じるのだが、このモンクのピアノは面白い。弾いていて楽しい。恐らく、モンク自身も結構楽しんで弾いていたのではないか。

そんなモンクのピアノ、時々、無性に聴きたくなる。ので、結構、定期的にモンクのアルバムを聴く機会を作る。モンクのアルバムの聴き直しは一通り済んでいるので、今回はライブ盤を中心に聴き直している。

今日はこのライブ盤を聴く。Thelonious Monk『Monk in Tokyo』(写真左)。1963年5月21日、東京はサンケイホールでのライブ録音。来日公演のコピー「モダン・ジャズの未知の世界を聞く、高僧セロニアス・モンク四重奏団公演」。パーソネルは、Charlie Rouse (ts), Thelonious Monk (p), Butch Warren (b), Frankie Dunlop (ds) 。

僕はこのモンクの来日公演のライブ盤に、セロニアス・モンクの、セロニアス・モンク四重奏団の真面目さと純朴さと誠実さを感じて止まない。このライブ盤に収録されている演奏は、決して絶好調のモンクではない。とにかく硬い。そして、とにかく安全運転である。

そんなモンクの気持ち、モンク四重奏団の気持ちは良く判る。あまり良く知らない極東の地「日本」。黒い髪の毛、黄色い肌、背格好がちょっと小ぶりな人達。そんな人達がサンケイホールに集結。しかも、自分達の演奏を大いに評価し、大いに楽しみしているのだ。
 

Monk_in_tokyo

 
嬉しいやら、ちょっと怖いやら。そんなモンク四重奏団の気持ちが良く判る。その気持ちがこのライブ盤の演奏に反映されているようだ。自分達の演奏を大いに評価し、大いに楽しみしている、異国の地の人達。その期待に応えなければ、その想いに応えなければ、と思って、緊張して演奏に立ち向かう。

硬くもなるし、破綻を避けた、ミスタッチ、ミストーンを避けた、安全運転な聴き心地の良い、こぢんまりした演奏になってしまうのは否めない。とにかく精一杯、よそ行きを着た、カッチリした演奏に終始している。でも、僕はこのライブ盤のモンク四重奏団の演奏が愛おしい。

モンク四重奏団の真面目さと純朴さと誠実さを十分に感じる。モンク四重奏団からすると、日本人の聴衆ってほとんど初対面。日本も初めて訪れる遠い異国の地。そんな状態で、最高の演奏をいきなり出来る筈が無い。それでも、このライブ盤から感じるのは、モンク四重奏団の演奏は決して「ええかげんものでは無い」ということ。

実は、このライブ盤、日本ではあまり評判は芳しく無い。確かに、モンクの最高のインプロビゼーションと比べたら、硬いし、こぢんまりしている。よそ行きの演奏である。でもなあ、カッチリしてるし、大人しい演奏やけどミスは皆無やし。とにかく、モンクって誠実な人なんやな〜、と変なところに感心してしまうんやなあ。

とにかく、辛口の評に怯んで聴かないでおくには、ちょっと勿体ないと思う。カッチリしている分、軽い気持ちで気軽に聴ける、モンクのライブ盤です。僕は意外とこのライブ盤が好きです。

 
 

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2014年7月 4日 (金曜日)

これが初心者向け「モンク入門盤」

時には、ジャズ・レジェンドなピアノ・トリオが良い。ジャズ・レジェンドなアルバムは内容が濃く、聴く時代、聴く季節、聴く時間によって、様々な側面を聴かせてくれる。そんな様々な音の表情を聴かせてくれるのは、ジャズ・レジェンドなアルバムならではの懐の深さと奥行きの広さである。

このモンクの『Thelonious Monk Trio』(写真左)などがその好例だ。1952年と1954年の3つに分かれたセッションからの編集盤。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Art Blakey (ds), Max Roach (ds), Gerry Mapp (b), Percy Heath (b)。冒頭の「Blue Monk」と、5〜8曲目「Little Rootie Tootie」「Sweet And Lovely」「Bye-Ya」「Monk's Dream」がブレイキーとのセッション。

モンクは1917年10月だから、このアルバムが録音された1952年で35歳、1954年で37歳だから、ピアニストとして、体力気力ともにバランスが取れて、一番、ピアノ・プレイの覇気が素晴らしい時期の録音になる。確かに、このアルバムのモンクは絶好調。タッチも深く鋭く、間を活かした響き、不協和音な響きが全くもって「異常」なのだ。

力強いタッチで絶好調に弾きまくっているので、間を活かした、幾何学模様の様な不思議な響きとタッチがとてもよく判る。個性的な不協和音もこのアルバムでは控えめ。セロニアス・モンク入門盤として格好のアルバムである。 
 

Thelonious_monk_trio

 
加えて、このアルバムの収録曲が良い。というか、今の耳をもって振り返ると、モンクのピアノがとことん堪能できる、モンクの有名曲ばかりがズラリと並んでいるのだ。これは全くのお徳用盤である(笑)。ちなみにその収録曲は以下の通り。

  1. Blue Monk
  2. Just A Gigolo
  3. Bemsha Swing
  4. Reflections
  5. Little Rootie Tootie
  6. Sweet And Lovely
  7. Bye-Ya
  8. Monk's Dream
  9. Trinkle Tinkle
10. These Foolish Things

今から振り返ると、収録曲のほとんどがモンク作曲の「モンクズ・スタンダード」。このモンクズ・スタンダードを、モンク自身がモンクの個性全開な、間を活かした不思議な響きとタッチで、ポジティブにガンガン弾きまくっている。モンクはこの頃30歳台後半。一番、ガンガンに弾きこなせる頃。モンクは、モンクの個性的な曲を、モンクの個性的なタッチで弾き進めるのだ。

この『Thelonious Monk Trio』は、モンクのモンクによるモンクの為のアルバムである。モンクはポジティブに、モンクの個性を思いっきり振りまいて、モンクの曲を弾き続ける。ジャズ・レジェントとしてのセロニアス・モンクを堪能するのにピッタリのトリオ盤である。モンクの判り易さ、という点でも、このアルバムはジャズ者初心者にこそ、お勧めです。

 
 

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2010年12月17日 (金曜日)

ジャズ盤の鑑賞は面白い

ジャズは面白い。ジャズのアルバムは、色々な角度から聴くことができる。
  
リーダーのミュージシャンの切り口から聴くことは当たり前として、サイドメン達の切り口から聴くことも出来る。収録曲からスタンダード曲を選んで、他のミュージシャンの演奏と比べることも出来る。逆にオリジナル曲の出来を愛でることも出来る。ジャズ盤って、色々な切り口での楽しみ方があるんですよね。
 
例えば、今日ヘビーローテーションな一枚となっていた、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の『Brilliant Corners』(写真左)。主要メンバーは、Ernie Henry (as), Sonny Rollins (ts), Thelonious Monk (p), Oscar Pettiford (b), Max Roach (ds)。ラストの「Bemsha Swing」だけ、一悶着あって、 ベースのOscar PettifordがPaul Chambersに代わり、Clark Terry (tp)が加わる。
 
1956年12月録音のモンクの大傑作アルバムである。収録曲がモンクのオリジナル。これがもう、ですね。モンクの個性全開なんですよ。ギョワングワン、ギョゴンポロンとモンクのピアノの摩訶不思議な響きが「とても心地良い」。まあ、モンクのピアノを体験したいなら、この『Brilliant Corners』は最適の一枚。
 
しかし、サイドメンの切り口から聴いても、このアルバムは面白い。このアルバムの最大の興味を抱くサイドメンと言えば、テナー・サックスのソニー・ロリンズだろう。
  
ソニー・ロリンズは、当時、既に押しも押されぬ人気テナー奏者。そのテクニック、歌心溢れるアドリブ、他の追従を許さない独創的なフレーズ。どれを取っても、当時最高のテナー奏者である(今もだけれどね)。そのソニー・ロリンズが、ジャズ界最大の個性であるモンクのサイドメンを務めるのだ。どんな音になるのか、興味津々である。
 
 
Brilliant_corners
  
 
これが、である。もう長年モンクと連れ添ってきた様に、モンクのフレーズ、モンクのハーモニー、モンクのタイムの全てを理解して、モンクのサイドメンとして、モンクをシッカリと支え、シッカリと立て、そして、そこはなとなく自らの個性を表現する。この『Brilliant Corners』でのロリンズは、モンクにとってのベスト・パートナーである。
  
モンクとテナー奏者と言えば、ジョン・コルトレーンの名前が必ず挙がるが、僕は、コルトレーンガモンクのサイドメンとしてのベスト・パートナーとはどうしても思えない。コルトレーンは意外と唯我独尊なところがあって、モンクのフレーズ、ハーモニー、タイムと対峙し、競うことはあっても、寄り添い、支え、立てることはしない。しかし、サイドメンにはサイドメンなりの、リーダーに対する仁義ってものがあって然るべきだと僕は思っている。
 
ロリンズは違う。確かにブロウのスタイルは、絶対にロリンズなんだが、フレーズ、ハーモニー、タイムはシッカリと「モンクしている」。逆に、ロリンズが、この難解極まりないと言われるモンクの音世界を理解して、ガッチリと追従し、モンクにピッタリと合わせてくるところなんか、いや〜、驚きを超えて、これはもう感動の域である。サイドメンとして、プロ中のプロとして、きっちりと仕事を仕上げる。僕がロリンズを愛する理由のひとつである。
 
この『Brilliant Corners』は、リーダーのモンクの個性を愛でることが出来る名盤であることは当たり前のことであるが、ロリンズが、「類い希な柔軟性」と「突出した高度なテクニック」の持ち主であることを再認識させてくれる、サイドメンとしてのロリンズの名盤でもある。 
 
 
 
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