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2017年6月 7日 (水曜日)

理路整然なビッグバンドのモンク

Columbiaレーベル時代のモンクは判り易い、と念仏のように唱えてはや3日目。Columbiaレーベル時代の第3弾は、これまた、モンク・ミュージックを判り易く、3つの演奏パターンで聴かせてくれる、モンクのリーダー作でも隠れ好盤的な盤である。

Thelonious Monk『Big Band and Quartet in Concert』(写真左)。1963年12月30日、ニューヨークのリンカーン・センターでのライブ録音。ビッグバンドとカルテット、そしてソロの3つの演奏パターンで聴かせてくれる。

カルテットのパーソネルは、Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (ts), Butch Warren (b), Frankie Dunlop (ds)。このカルテットのパーソネルを中心に、サド・ジョーンズのコルネットやスティーブ・レイシーのソプラノ、フィル・ウッズのアルトなど、さすが大手のColumbiaレーベル、人気の高いジャズメンをズラリと取り揃えている。数えたら「ノネット(9人楽団)」だった。

モンクの楽曲と演奏パターンをビッグバンドでやるなんて凄いなあ。モンクの飛んだり跳ねたりするタッチと予測不能な展開がミステリアスなアドリブ・フレーズをビッグバンドでトレースするなんて、ビッグバンドのメンバー一人一人が優秀なテクニックとモンク・ミュージックに対する見識の深さについて、改めて感心する。
 

Monk_big_band_and_quartet

 
加えて、このライブ盤でのアレンジは温厚で、Columbiaレーベル時代の判り易いモンクのイメージをベースに、ビッグバンドの演奏を組み立てている。確かに、このライブ盤でのビッグバンドの演奏は理路整然としていて聴き易い。フレーズのそこかしこにモンクのイメージを散りばめてはいるが、極端に飛んだり跳ねたりしない。あくまで、常識の範囲内で収めているところが「聴き易さの理由」。

カルテット構成で目を惹くのは、ベースのブッチ・ウォーレンの存在。前作『Criss-Cross』までのジョン・オーレから交代している。が、モンク・カルテットの音の本質は変わらない。当然、ベーシストが代わったからと言って、モンクのピアノも変わらない。判り易いモンク・ミュージックは変わらない。

このライブ盤でのモンクは、とりわけ、憑きものが落ちたようにスッキリと判り易い、そして、不思議なくらいに溌剌としている。僕が聴いたこのCD2枚組は、1964年発売のLP2枚組のライブ音源に未発表曲を併せてCD2枚組でリイシューしたもの。意外と貴重な2枚組CDである。

 
 

震災から6年2ヶ月。決して忘れない。まだ6年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年6月 6日 (火曜日)

前作と対をなす「兄弟盤」です

Columbiaレーベル時代のモンクはマンネリズムに陥ったという評価が浸透しているようだが、どうにもそれは納得出来ない。Columbiaレーベル時代のモンクは演奏が熟れていて、モンクとしては流麗な演奏が多く、聴き易くポップな雰囲気が「マンネリズム」という誤った表現になったんじゃないかな、と睨んでいる。

さて、今日はColumbiaレーベル第2弾、Thelonious Monk『Criss-Cross』(写真左)である。1962年11月と1963年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (ts), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)。当時の「鉄壁のカルテット」である。

もともとColumbiaレーベルはジャケット・デザインに一貫性が無く、あまりデザインに関して見識があるとは思えないレーベルである。さすが米国の大手レーベルである。この『Criss-Cross』も、ピアノに向いたモンクが、万華鏡の様に4つに分かれた鏡絵の様にあしらわれていて、ちょっと奇異なジャケット・デザインに映る。

音楽のアルバムってジャケットの印象って大事だと思うんだが、この『Criss-Cross』ってアルバム、この奇異なジャケット・デザインで相当損をしているのではないか。もともとモンクのキャラクター自体が「奇異」なものとして捉えられているのに加えて、この奇異なジャケット・デザイン。まるでモンクのあの個性的なピアノのフレーズが「奇異」なものであるように捉えられてしまうのではないか。
 

Criss_cross

 
が、そんなことは全く無いアルバムの内容である。前作『Monk's Dream』と同様、この『Criss-Cross』も判り易い。ジャズ者初心者の方々にも、この番のモンクは判り易い。冒頭の「Hackensack」を聴けば、ほんと、この盤のモンクは判り易いと感じる。アドリブ・フレーズの個性は確かにモンク。しかし、何て言ったら良いのか、そう「常識的な」モンクなのだ。

悪い意味で言っているのでは無い。良い意味で「常識的な」モンクなのだ。いわゆる「セロニアス・モンク入門」に適した盤である。そう言う意味では、前作の『Monk's Dream』の流れを組む内容で有り、『Monk's Dream』と『Criss-Cross』は対をなす「兄弟盤」と捉えて良いのではないか、と納得できる位の「判り易いモンク盤」である。

適度にスイングし、「常識の範囲内」でモンクのアドリブ・フレーズが飛んだり跳ねたりする。よって、今までのモンクになく、メロディアスで流麗。とっても聴き易いモンク・カルテットの演奏がとてもとても心地良い。もっと再評価されるべきアルバムではないでしょうか。ほんと「マンネリズム」なんて、とんでもない誤解ですよね。

 
 

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2017年6月 5日 (月曜日)

Columbiaのモンクは判り易い

そう言えば暫く、モンクのアルバムを聴いていないことに気がついた。そうそう、モンクのアルバムの聴き直しを進めていたんやった。ちょうど、Riversideレーベルの時代まで、聴き直しをしたんやなかったかなあ。ということで、今日から、Riversideレーベル時代の次、Columbiaレーベル時代の聴き直しである。

まずはこれ。Thelonious Monk『Monk's Dream』(写真左)。1962年10月の終わりから11月の初めの録音。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Charlie Rouse (ts), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)。モンク・ミュージックを奏でる為の一体となったカルテット構成。

このアルバムを聴けば良く判るのだが、このアルバムのモンクは判り易い。というか、モンクのキャリアの中で最後のレーベルであるColumbiaレーベル時代のモンクのアルバムはどれもが判り易い。特に、このColumbiaレーベル時代の最初の一枚『Monk's Dream』は判り易い。

若い時代のモンクは予測が出来ない。どうしてそんな和音になるの、とか、どうしてそっちに展開するの、とか、どうして、そこでそんな音を抜くの、とか、とにかく予測不能。その予測不能な意外性がモンクの面白いところでもあるのだが、常識の範囲を超えてはいるので、長時間聴いていると疲れてくる。
 

Monks_dream

 
しかし、『Monk's Dream』は判り易い。なんとなく予測できる、というか、なんとなく理屈がついて理解しやすい。なるほどその和音になるよね、とか、なるほどそっちに展開するよね、とか、なるほどそこはそう音を抜くよね、とか、なんとなく想定できて、なんとなく理屈がつく。これが、Columbiaレーベル時代のモンク盤の良いところで、ジャズ者初心者の方々にも、この時代のモンクは判り易い。

グループ・サウンドとしても充実している。特に、チャーリー・ラウズのテナーが良い。モンクにぴったり寄り添うようにテナーを奏でる。モンクの特異なフレーズを予測して、しっかりとモンクの個性的なフレーズに追従する。この盤でのラウズのテナーを聴いていると、やはり、モンクに最適なテナーはラウズのテナーだろう。それほどまでにモンクとラウズの相性は良い。

巷では、Columbiaレーベル時代のモンクはマンネリズムに陥ったという評価が浸透しているようだが「とんでもない」。演奏が熟れていて、モンクとしては流麗かつ印象的なフレーズが多いが、これはこれで、ポップなモンクとして聴き応えがある。カルテットとしても充実していた時代あり、特にモンク〜ラウズのラインが素晴らしい。ユニゾン&ハーモニー、そしてアドリブ。どれをとっても申し分な好盤です。

 
 

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2015年12月 3日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・71

昨日書いたが、ジャズ喫茶って、たまにはジャズ者の方々が「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけることが大事だと思う。とにかく「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。

例えば、このピアニストの音も、恐らく、ある程度ジャズを聴き込んだジャズ者の方々であれば、「これは知ってる」とか「これは誰が弾いているか知ってる」となるのではないか。聴けば直ぐ判るピアニストである。これだけ個性的なピアノは他に無い。というか、唯一無二である。

Thelonious Monk『Solo Monk』(写真左)。1964年10月、1965年3月の録音。孤高のジャズ・ピアニスト、バップの高僧と呼ばれる「セロニアス・モンク」のソロ盤である。セロニアス・モンクは1917年生まれだから、47歳の時の録音になる。ジャズメンとして中堅からベテランの域に達した、充実のソロ・ピアノ盤である。

モンクのピアノの個性を確認し愛でるには、ソロ盤が一番。バックの演奏を一切排除して、モンクのピアノのみが朗々と流れる。そういうシチュエーションが、モンクの個性を感じるのに一番である。

それほどまでに個性的なモンクのピアノである。まず、ボイシングが普通では無い。不協和音がガンガン出てくる。そして、独特のタイム感覚。そこで止まるか、と思いつつ、そこで走るか、と驚き、いきなり左手がガーンと入って、右手が不協和音を旋律していく。おおよそ、クラシック音楽には全く無いピアノ。
 

Solo_monk

 
クラシック・ピアノを聴き馴れた耳には、このモンクの独特なタイム感覚とボイシングを持つピアノは、かなり辛いだろう。でも、モンクのピアノって、アルバムを聴き重ねていくと癖になってくる。なんか、この独特なタイム感覚とボイシングが心地良くなってくる。癖の強いチーズの様な感覚。

逆に、クラシック音楽の不協和音を活用した、ストラビンスキーやバルトークの交響曲などを聴き馴れた耳には、モンクの不協和音フレーズは意外といけるのではないか。モンクの不協和音フレーズは意外と計算され、その構築美がたまらない。しかも、この不協和音フレーズはジャズの中でも唯一無二。これだけ効果的に不協和音を活用出来るピアニストはモンク唯一人。

そんなモンクのピアノは、その癖が強く出たものはちょっと聴くのがしんどい、というジャズ者の方も多い。特に、若い頃のモンクのピアノは、モンクの個性と癖が強く出たものが多い。確かに僕も若い頃は、このモンクの癖が強く出た盤はちょっと苦手だった。

そういう意味で、この『Solo Monk』のモンクのピアノはあっさりしている。モンクの癖がほど良くこなれていて、とても聴き易いモンクのソロ・ピアノである。穏やかな日に陽向ぼっこをしながら聴いている様な、そんなほのぼのとしたモンクのピアノは優しい。タッチも柔らかくて、聴き心地がとても良い。

一般万民向け、モンク入門盤として最適な盤でしょう。ジャズ喫茶で軽く流すのに良い盤です。そして、モンクの個性はしっかりと判る盤なので、この盤をジャズ喫茶でかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。そしてその得意げな顔がこう語る。「これ、セロニアス・モンクのピアノやね」。

 
 

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2015年8月19日 (水曜日)

愛しのモンク・イン・トーキョー

セロニアス・モンクのピアノは独特の個性である。孤高のピアニストである。この独特の癖のあるアドリブ・フレーズは唯一無二。真のフォロワーはいない。あの独特のタイム感覚はフォロワーを作らない。

僕はこのセロニアス・モンクのピアノが大好きだ。自分でもピアノを少し弾けるので感じるのだが、このモンクのピアノは面白い。弾いていて楽しい。恐らく、モンク自身も結構楽しんで弾いていたのではないか。

そんなモンクのピアノ、時々、無性に聴きたくなる。ので、結構、定期的にモンクのアルバムを聴く機会を作る。モンクのアルバムの聴き直しは一通り済んでいるので、今回はライブ盤を中心に聴き直している。

今日はこのライブ盤を聴く。Thelonious Monk『Monk in Tokyo』(写真左)。1963年5月21日、東京はサンケイホールでのライブ録音。来日公演のコピー「モダン・ジャズの未知の世界を聞く、高僧セロニアス・モンク四重奏団公演」。パーソネルは、Charlie Rouse (ts), Thelonious Monk (p), Butch Warren (b), Frankie Dunlop (ds) 。

僕はこのモンクの来日公演のライブ盤に、セロニアス・モンクの、セロニアス・モンク四重奏団の真面目さと純朴さと誠実さを感じて止まない。このライブ盤に収録されている演奏は、決して絶好調のモンクではない。とにかく硬い。そして、とにかく安全運転である。

そんなモンクの気持ち、モンク四重奏団の気持ちは良く判る。あまり良く知らない極東の地「日本」。黒い髪の毛、黄色い肌、背格好がちょっと小ぶりな人達。そんな人達がサンケイホールに集結。しかも、自分達の演奏を大いに評価し、大いに楽しみしているのだ。
 

Monk_in_tokyo

 
嬉しいやら、ちょっと怖いやら。そんなモンク四重奏団の気持ちが良く判る。その気持ちがこのライブ盤の演奏に反映されているようだ。自分達の演奏を大いに評価し、大いに楽しみしている、異国の地の人達。その期待に応えなければ、その想いに応えなければ、と思って、緊張して演奏に立ち向かう。

硬くもなるし、破綻を避けた、ミスタッチ、ミストーンを避けた、安全運転な聴き心地の良い、こぢんまりした演奏になってしまうのは否めない。とにかく精一杯、よそ行きを着た、カッチリした演奏に終始している。でも、僕はこのライブ盤のモンク四重奏団の演奏が愛おしい。

モンク四重奏団の真面目さと純朴さと誠実さを十分に感じる。モンク四重奏団からすると、日本人の聴衆ってほとんど初対面。日本も初めて訪れる遠い異国の地。そんな状態で、最高の演奏をいきなり出来る筈が無い。それでも、このライブ盤から感じるのは、モンク四重奏団の演奏は決して「ええかげんものでは無い」ということ。

実は、このライブ盤、日本ではあまり評判は芳しく無い。確かに、モンクの最高のインプロビゼーションと比べたら、硬いし、こぢんまりしている。よそ行きの演奏である。でもなあ、カッチリしてるし、大人しい演奏やけどミスは皆無やし。とにかく、モンクって誠実な人なんやな〜、と変なところに感心してしまうんやなあ。

とにかく、辛口の評に怯んで聴かないでおくには、ちょっと勿体ないと思う。カッチリしている分、軽い気持ちで気軽に聴ける、モンクのライブ盤です。僕は意外とこのライブ盤が好きです。

 
 

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2014年7月 4日 (金曜日)

これが初心者向け「モンク入門盤」

時には、ジャズ・レジェンドなピアノ・トリオが良い。ジャズ・レジェンドなアルバムは内容が濃く、聴く時代、聴く季節、聴く時間によって、様々な側面を聴かせてくれる。そんな様々な音の表情を聴かせてくれるのは、ジャズ・レジェンドなアルバムならではの懐の深さと奥行きの広さである。

このモンクの『Thelonious Monk Trio』(写真左)などがその好例だ。1952年と1954年の3つに分かれたセッションからの編集盤。ちなみにパーソネルは、Thelonious Monk (p), Art Blakey (ds), Max Roach (ds), Gerry Mapp (b), Percy Heath (b)。冒頭の「Blue Monk」と、5〜8曲目「Little Rootie Tootie」「Sweet And Lovely」「Bye-Ya」「Monk's Dream」がブレイキーとのセッション。

モンクは1917年10月だから、このアルバムが録音された1952年で35歳、1954年で37歳だから、ピアニストとして、体力気力ともにバランスが取れて、一番、ピアノ・プレイの覇気が素晴らしい時期の録音になる。確かに、このアルバムのモンクは絶好調。タッチも深く鋭く、間を活かした響き、不協和音な響きが全くもって「異常」なのだ。

力強いタッチで絶好調に弾きまくっているので、間を活かした、幾何学模様の様な不思議な響きとタッチがとてもよく判る。個性的な不協和音もこのアルバムでは控えめ。セロニアス・モンク入門盤として格好のアルバムである。 
 

Thelonious_monk_trio

 
加えて、このアルバムの収録曲が良い。というか、今の耳をもって振り返ると、モンクのピアノがとことん堪能できる、モンクの有名曲ばかりがズラリと並んでいるのだ。これは全くのお徳用盤である(笑)。ちなみにその収録曲は以下の通り。

  1. Blue Monk
  2. Just A Gigolo
  3. Bemsha Swing
  4. Reflections
  5. Little Rootie Tootie
  6. Sweet And Lovely
  7. Bye-Ya
  8. Monk's Dream
  9. Trinkle Tinkle
10. These Foolish Things

今から振り返ると、収録曲のほとんどがモンク作曲の「モンクズ・スタンダード」。このモンクズ・スタンダードを、モンク自身がモンクの個性全開な、間を活かした不思議な響きとタッチで、ポジティブにガンガン弾きまくっている。モンクはこの頃30歳台後半。一番、ガンガンに弾きこなせる頃。モンクは、モンクの個性的な曲を、モンクの個性的なタッチで弾き進めるのだ。

この『Thelonious Monk Trio』は、モンクのモンクによるモンクの為のアルバムである。モンクはポジティブに、モンクの個性を思いっきり振りまいて、モンクの曲を弾き続ける。ジャズ・レジェントとしてのセロニアス・モンクを堪能するのにピッタリのトリオ盤である。モンクの判り易さ、という点でも、このアルバムはジャズ者初心者にこそ、お勧めです。

 
 

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2010年12月17日 (金曜日)

ジャズ盤の鑑賞は面白い

ジャズは面白い。ジャズのアルバムは、色々な角度から聴くことができる。
  
リーダーのミュージシャンの切り口から聴くことは当たり前として、サイドメン達の切り口から聴くことも出来る。収録曲からスタンダード曲を選んで、他のミュージシャンの演奏と比べることも出来る。逆にオリジナル曲の出来を愛でることも出来る。ジャズ盤って、色々な切り口での楽しみ方があるんですよね。
 
例えば、今日ヘビーローテーションな一枚となっていた、セロニアス・モンク(Thelonious Monk)の『Brilliant Corners』(写真左)。主要メンバーは、Ernie Henry (as), Sonny Rollins (ts), Thelonious Monk (p), Oscar Pettiford (b), Max Roach (ds)。ラストの「Bemsha Swing」だけ、一悶着あって、 ベースのOscar PettifordがPaul Chambersに代わり、Clark Terry (tp)が加わる。
 
1956年12月録音のモンクの大傑作アルバムである。収録曲がモンクのオリジナル。これがもう、ですね。モンクの個性全開なんですよ。ギョワングワン、ギョゴンポロンとモンクのピアノの摩訶不思議な響きが「とても心地良い」。まあ、モンクのピアノを体験したいなら、この『Brilliant Corners』は最適の一枚。
 
しかし、サイドメンの切り口から聴いても、このアルバムは面白い。このアルバムの最大の興味を抱くサイドメンと言えば、テナー・サックスのソニー・ロリンズだろう。
  
ソニー・ロリンズは、当時、既に押しも押されぬ人気テナー奏者。そのテクニック、歌心溢れるアドリブ、他の追従を許さない独創的なフレーズ。どれを取っても、当時最高のテナー奏者である(今もだけれどね)。そのソニー・ロリンズが、ジャズ界最大の個性であるモンクのサイドメンを務めるのだ。どんな音になるのか、興味津々である。
 
 
Brilliant_corners
  
 
これが、である。もう長年モンクと連れ添ってきた様に、モンクのフレーズ、モンクのハーモニー、モンクのタイムの全てを理解して、モンクのサイドメンとして、モンクをシッカリと支え、シッカリと立て、そして、そこはなとなく自らの個性を表現する。この『Brilliant Corners』でのロリンズは、モンクにとってのベスト・パートナーである。
  
モンクとテナー奏者と言えば、ジョン・コルトレーンの名前が必ず挙がるが、僕は、コルトレーンガモンクのサイドメンとしてのベスト・パートナーとはどうしても思えない。コルトレーンは意外と唯我独尊なところがあって、モンクのフレーズ、ハーモニー、タイムと対峙し、競うことはあっても、寄り添い、支え、立てることはしない。しかし、サイドメンにはサイドメンなりの、リーダーに対する仁義ってものがあって然るべきだと僕は思っている。
 
ロリンズは違う。確かにブロウのスタイルは、絶対にロリンズなんだが、フレーズ、ハーモニー、タイムはシッカリと「モンクしている」。逆に、ロリンズが、この難解極まりないと言われるモンクの音世界を理解して、ガッチリと追従し、モンクにピッタリと合わせてくるところなんか、いや〜、驚きを超えて、これはもう感動の域である。サイドメンとして、プロ中のプロとして、きっちりと仕事を仕上げる。僕がロリンズを愛する理由のひとつである。
 
この『Brilliant Corners』は、リーダーのモンクの個性を愛でることが出来る名盤であることは当たり前のことであるが、ロリンズが、「類い希な柔軟性」と「突出した高度なテクニック」の持ち主であることを再認識させてくれる、サイドメンとしてのロリンズの名盤でもある。 
 
 
 
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2010年3月20日 (土曜日)

「記録」として価値のある盤

セロニアス・モンクのリーダーアルバムを中心に聴き直しを進めている訳であるが、モンクの絶頂期を捉えた、リバーサイド・レーベルのアルバムを聴き終えたと思ったら、一枚残っていた。『Thelonious Monk with John Coltrane』(写真左)である。正確に言えば「Jazzlandレーベル」での録音になる。

このアルバムは、ジャズ入門本やジャズ名盤紹介本に、モンクとコルトレーンの邂逅を捉えた名盤中の名盤として紹介されている。しかし、実は、僕はこの『Thelonious Monk with John Coltrane』は、あまり聴かない。皆がいうほどの「名盤中の名盤」なんだろうか。

確かに、コルトレーンが加入した「モンク・カルテット」はあまり録音が残っておらず、当時の様子を目撃した人々の話などにより、その演奏内容の素晴らしさ、凄まじさ、先進性について、脈々と伝えられ、今や伝説と化しているのだ。そのような背景の中で、録音状態が非常に良い、この『Thelonious Monk with John Coltrane』は貴重な「記録」としては価値があるだろう。

しかも、このアルバムは以下の2つのセッションに分かれている。つまりこのアルバムは、アルバム自体としては、『Thelonious Monk with John Coltrane』と銘をうつには、いささか苦しいところのあるオムニバス盤で、カルテットによる3曲を別にすれば、あとはアルバムの表題に合わせて、『Monk's Music』や『Thelonious Himself』のセッションの別テイクを、急拠探し出して来て補充したという格好になっている。

看板に偽りありとは言わないが、モンクとコルトレーンが一体となって、1枚のアルバムを残そうとしたセッションを収録したものでないことは確かである。ちなみに、ラストの「Functional」は、モンクのピアノ・ソロで、コルトレーンとは関係無いセッション。1957年の4月12日の録音である。

Ray Copeland (tp) Gigi Gryce (as) John Coltrane, Coleman Hawkins (ts)
Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) Art Blakey (d)
Reeves Sound Studios, NYC, June 26, 1957
3. Off Minor (take 4)
5. Epistrophy (alt. take)

John Coltrane (ts) Thelonious Monk (p) Wilbur Ware (b) Shadow Wilson (d)
Reeves Sound Studios, NYC, July, 1957
1. Ruby, My Dear
2. Trinkle, Tinkle
4. Nutty
 

Monk_coltrane

 
さて、それでは、その内容はと言えば、確かに、モンクをバックにしてのコルトレーンは素晴らしい演奏を繰り広げてはいるが、当時のコルトレーンとしては、体調がまともな状態であれば、このアルバムでのパフォーマンスは、コルトレーンの標準レベルだろう。別に、モンクをバックにして、なにかコルトレーンに目立った変化がある訳では無い。

どの曲でも、コルトレーンは、初めは、モンクに追従して、モンク節のコルトレーンとして吹いているが、途中で我慢できなくなったのか、徐々にコルトレーン独自のフレーズになっていき、最後は、十八番の「シーツ・オブ・サウンド」一色になる。確かに、モンクとの出会いは、コルトレーンにとって有意義なものであったのだろうが、共演して何か「化学反応」が起こって、モンク+コルトレーンならではの演奏が生まれ出でたのか、といえばそうでもない。

コルトレーンが最後には、十八番の「シーツ・オブ・サウンド」を繰り広げてしまうが、モンクは全くそんなことは意に介さず、モンク節を連発する。コルトレーンのテナーの音が大きいので、逆に、モンクは、心ゆくまでピアノを叩くことができるので、結構、メリハリとパンチの効いたモンク・ピアノが聴けるのが、このアルバムでのモンクの特徴といえば特徴。モンクのハンマー打法は強烈である。歌心あるハンマー打法は「モンクならでは」のもの。
 
コルトレーンはコルトレーンで素晴らしいし、モンクはモンクで素晴らしいのだが、これら演奏が収録された1957年という時期を考えると、コルトレーンもモンクも絶好調の時期である。これくらいの演奏は当たり前だったと思われる。

ちなみに、僕はラストのモンクのソロ「Functional」に一番惹かれる。このアルバムの最後を飾るソロ・トラックは「Thelonious Himself」のセッションで録音された、同じタイトルの曲の別テイク。曲は自作のブルースだが、ここでは、オリジナル曲とは、全く違った解釈で演奏してみせる。1950年代後半のモンクの創造力+演奏能力がいかに凄かったか、改めて感じさせてくれる名演奏である。

「記録」として価値のある盤。この『Thelonious Monk with John Coltrane』は、まさにそれだと思う。コルトレーン、モンク、それぞれの演奏力は素晴らしい。でも、共演して何か「化学反応」が起こって、モンク+コルトレーンならではの演奏が生まれ出でたのか、といえばそうでもない。

「記録」としての「名盤」ではあるが、ジャズ初心者の方々に「入門的名盤」としてお勧めする類のものではないでしょう。でも、コルトレーン、モンク、それぞれの演奏は素晴らしいです。ジャズ者中級者向けでしょう。
 
 
 
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2010年3月17日 (水曜日)

『5 by Monk by 5』は美しい

組織的に聴き進めてきたセロニアス・モンク。今回で、モンクの一番輝いていたリバーサイド・レーベルでのモンクは一応最終回を迎える。最後のアルバムは『5 by Monk by 5』(写真左)。

1959年6月の録音。パーソネルは、Thad Jones (cor), Charlie Rouse (ts), Thelonious Monk (p), Sam Jones (b), Art Taylor (ds)。パーソネルを見渡すと、Thad Jones (cor)とSam Jones (b), Art Taylor (ds)が、モンクにとっては「異質のメンバー」。よく見ると、 Charlie Rouse (ts)だけが、気心知れた「盟友」ではないか。しかし、どうして、こんなセッションをセットアップしたのかなあ。その動機が知りたくなるような、実に「異質」な組合せ。

タイトルの『5 by Monk by 5』は、モンク自身のオリジナルの5曲を5人で演奏、という意味とのこと。なるほど、と納得。オリジナルの5曲とは以下の5曲。なかなか良い曲が並んでいる。期待感が高まるが、サド・ジョーンズのコルネットがフロントに並ぶとどうなるのか。そして、ベースとドラムのリズムセクションが通常と違う。モンクはどうなるのか? 

1. Jackie-Ing
2. Straight, No Chaser
3. Played Twice
4. I Mean You
5. Ask Me Now

これが、ですね。Thad Jones (cor)とSam Jones (b), Art Taylor (ds)が、モンクにとっては「異質のメンバー」が並んでも、モンクは何処吹く風、ってな感じ。確かに、ちょっと捻れた感じを抑えて、少し、いつものモンクよりも判りやすく、簡素に弾いているんですが、モンクの個性的なフレーズと響き、タイム感覚については、決して「緩めない」。

Sam Jones (b), Art Taylor (ds)については、モンクの音楽を聴き込んでいたんだろう、録音された演奏を聴くと、大胆にアプローチ出来てはいないにせよ、モンクの個性を良く理解して、いつもより、判りやすく簡素に個性を抑えたモンクのピアノに良く反応している。リズム・セクションがしっかりすると、後はフロントである。
 

5by_monk_by5

 
しかし、サド・ジョーンズというミュージシャンも只者では無い。モンクと共演となると、あのモンクの個性的なフレーズと響き、タイム感覚に追従しながら、自らの個性を発揮できるか、ちょっと不安にもなったりするんだが、サド・ジョーンズも凄い。もともと、彼はバップ・ミュージシャンなんだが、モンクのバッキングの下、決してモンクに迎合しない、しかし、モンクのバッキングにしっかりと反応して、サド・ジョーンズなりのモンク・ミュージックを現出している。

「Played Twice」の3テイクが順を追って聴くと面白い。モンクとサドのコラボレーションの構築の順番、塩梅が良く判る。さすがに、このセッションでは、最後のテイクがマスターテイクとなっている。モンクとサド、如何に異質の組合せだったのかが良く判る。でも、さすがに一流のミュージシャンである。お互いの個性を消し合わず、迎合せず、お互いの個性を活かして、しっかりと「一期一会」のセッションを成立させているのは「お見事」。

サド・ジョーンズが、モンク相手に、たった3日の短時間のセッション中で、これだけの成果が残せたのは、やはり、もう1人のフロント、テナーのチャーリー・ラウズの存在だろう。彼は、モンクの「盟友」。モンクのことは熟知している。ラウズは、悠然としたテナーで、若干戸惑い気味のサドをサポートするように、モンクのバッキングに追従する「コツ」を伝授するようなソロを全編に渡って繰り広げている。まるで、モンクのバッキングの下にフロントを演奏する教科書のようなラウズのテナー。素晴らしいの一言。

このアルバムは、モンク作品の中での「隠れた名盤」の一枚だと思います。昔は、何軒かのCDショップを探し歩いても目にすることは無かったんですが、村上春樹さん・和田誠さんの「ポートレイト・イン・ジャズ Vol.1」で紹介されて以来、たまにCDショップで目にするようになりました。ネットショップでは、まず在庫ありの状態ですね。良かった良かった。

このアルバムは、ジャズ入門本やジャズ名盤紹介に名を連ねるアルバムではありませんが、実に優れた内容のアルバムです。サド・ジョーンズのブリリアントな、バピッシュなソロが、アルバムにアクセントを添え、実に親しみやすい内容に仕上がっている。モンクファンで無くても、ジャズ・ファンであれば、一度聴いて欲しい、親しみやすいモンクの一枚です。  
 
 
 
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2010年3月13日 (土曜日)

「Monk in Italy」を愛でる

昨日に続いて、聴き易いモンク・ミュージックのライブ盤。今日は『Thelonious Monk in Italy』(写真左)である。

このライブ盤、昨日ご紹介した『Monk in France』よりも、更に若干、音が悪い。けど、十分鑑賞に耐える音質ではある。しかし、このライブ盤も、『Monk in France』と同様、凄く聴きやすいアレンジと演奏内容なんですよね。

『Thelonious Monk in Italy』は、イタリアはミラノ、1961年4月21日のライブ録音。昨日ご紹介した『Monk in France』が、1961年4月18日なので、フランスのライブの3日後、である。つまり、この『Thelonious Monk in Italy』は『Monk in France』の続編、この2枚のライブアルバムは兄弟盤みたいなものである。どうりで、雰囲気が良く似ているはずだ。

当然、パーソネルは、『Monk in France』と同様、Charlie Rouse (ts), Thelonious Monk (p), John Ore (b), Frankie Dunlop (ds)。このアルバムでも、テナーのチャーリー・ラウズは好調。ジョン・オレのベース、フランキー・ダンロップのドラムも、とにかく、モンクのピアノに「ジャズト・フィット」。

このライブ盤のモンク・ミュージックも「判りやすく、初心者に優しい」。モンクの音楽は好き嫌いがハッキリでる事が多い。「ハマる」人はとことん「ハマる」が、「苦手とする」人はとことん「苦手とする」。
 

Monk_italy

 
でも、いきなり、リバーサイド時代の名盤と呼ばれるものを複数枚聴き続けたら、きっとそうなる。音は少し劣るが、聴きやすい「モンク・ミュージック」として、『Monk in France』『Thelonious Monk in Italy』から入るのも良いかな、と思います。

僕が、特に、この『Thelonious Monk in Italy』の「聞きもの」としている曲は、モンクのソロ・ピアノ演奏である3曲目の「Body and Soul」。モンクのソロは、モンク自身の作曲であるオリジナル曲より、他のスタンダード曲でのソロ・パフォーマンスの方が、モンクの特徴あるタイム感覚と不協和音が良く理解できると思っているんだが、この「Body and Soul」は格好の素材。モンクのソロ・パフォーマンスも適度に優しく、適度に判り易い表現になっている。良い感じである。

他のカルテットの演奏は『Monk in France』と同様、聴きやすい「モンク・ミュージック」が展開されていて良い雰囲気。聴き易い中に、しっかりと「モンク・ミュージック」のエッセンスがしっかりと織り交ぜられており、抵抗感無しに「モンク・ミュージック」に浸ることが出来る佳作だと思います。

この2枚の兄弟盤みたいなライブアルバムは『Thelonious Monk in Italy』は『Monk in France』と合わせて、一気に聴くのも一興ですね。この『Thelonious Monk in Italy』も、適当に(良い意味で)聴き流して、モンク・ミュージックを楽しむことの出来る「お手軽モンク・ミュージック入門盤」だと思います。

一気に暖かくなった我が千葉県北西部地方。気温はグングン上昇し、20度近くまで上がった。気温20度近くまで上がるなんて、4月下旬くらいの陽気ではないか。今はまだ3月上旬。ちょっと気温が先走り過ぎ。でも、明日は12度辺りまで下がるから、ちょうど3月上旬に逆戻りだな。でも、着実に春は近づいている。梅も満開、良い感じである。
 
通勤の コートも軽し 梅一輪
 
 
 
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