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2018年6月16日 (土曜日)

フリードマンの魅力を再認識

ジャズの世界は、21世紀に入って、若手もどんどんレビューしてくるのだが、意外とベテラン勢も健闘している。この辺がジャズの面白いところで、若くて勢いがあれば良いという単純なものでは無い。年齢を重ねての「味」や「深み」もジャズにとって重要な要素で、かなりの年齢を重ねたベテランも、モチベーションとテクニック次第で十分に活躍できるのだ。

ドン・フリードマン(Don Friedman)。もそんなベテランの一人である。1962年録音の『Circle Waltz』だけが、突出して代表作として紹介されるピアニストである。個性の基本は「ビル・エヴァンス」。評論家筋からはエヴァンス派の一人で、エヴァンスと瓜二つな個性とされるが、フリードマンのピアノはエヴァンスの耽美的で流麗なタッチの部分だけをピックアップしたもので、エヴァンスの単なるコピーでは無い、と僕は評価している。 

但し、エヴァンスの潜在的資質であるバップ・ピアノの部分、いわゆるバリバリ弾きまくる部分がフリードマンには希薄なので、耽美的で流麗なタッチが中心の中で、どこまで演奏にメリハリを付けるか、という部分がポイントになる。この部分が疎かになると、フリードマンのリーダー作は一気に「地味な」パフォーマンスになってしまう。
 

Prism  

 
Don Friedman『Prism』(写真左)。1997年7月、ミラノでの録音。2008年のリリース。ちなみにパーソネルは、Don Freidman (p), Marco Ricci (b), Stefano Bagoli (ds)。イタリア人リズム陣と吹き込んだピアノ・トリオ作品になる。ホールで演奏しているかのような、余韻を残した澄んだ音色が心地よく、欧州の録音やなあ、と感心する。

21世紀に入って、活発な活動が頼もしいフリードマンであったが、従来の耽美的で流麗なタッチに加えて、力強いタッチを織り交ぜる様になり、以前よりプレイにメリハリが付いていて、アルバム全編に渡って緩むことは無い。逆に、柔軟でタイトなイタリア人リズム隊を得て、硬軟自在にアドリブ・フレーズを展開する。

フリードマンは、1935年生まれなので、この盤の録音時は62歳。脂がのりきった大ベテランの域に達した年齢。その年齢と経験を活かした、充実感溢れるピアノ・トリオのパフォーマンスは見事である。そして、この盤を録音した19年後、2016年に81歳で永眠する。忘れかけていたフリードマンの魅力を再認識させてくれた、今回のこの1997年録音のリリースの意義は大きい。

 
 

東日本大震災から7年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月26日 (日曜日)

「ハッピーな演奏」が実に良い

ジャズはコンスタントに新作をリリースし続けている。我が国では、ジャズはマイナーな音楽ジャンルと言われて久しい。しかも難解な音楽で苦手だ、聴く気にならない、という人が多い。それなのに我が国でも、なぜ一定数、毎月毎月、コンスタントに新作がリリースされ続けているのか。不思議と言えば不思議である。

ジャズは年齢がいけばいくほど、奥が深く渋みが出て、味わいの深いものになる。これは演奏する方も聴く方も同じで、ジャズにおいては、ベテランの役割は重要である。60歳以上のベテランの新作も、かなりの割合でリリースされ続けている。これは実に喜ばしいことである。ベテランのプレイは滋味に富んでいる。聴き心地が良く、聴き応えがあるものが大多数である。

Vincent Herring『Hard Times』(写真左)。先月の下旬のリリース。ちなみにパーソネルは、Vincent Herring (as, ss), Cyrus Chestnut (p, fender rhodes), Yasushi Nakamura (b), Carl Allen (ds)。special guests : Nicolas Bearde (vo), Russell Malone (g), Steve Turre (tb), Brad Mason (tp), Sam Dillon (ts)。サイラス・チェスナットのピアノをベースにしたリズム・セクションに、ヴィンセント・ハーリングのサックスのワンホーン・カルテットがメイン。
 

Vincent_herring_hard_times

 
現代ジャズ・アルトのレジェンド、ハーリングが溌剌としたプレイを繰り広げている。バックは、長年の盟友、チェスナットのピアノ・トリオ。これがまた、実に具合が良い。極上のハードバップ演奏が実に心地良い。この盤の演奏を聴いていると、難しい理屈などいらないよ、と言われているみたいな「ハッピーな演奏」が実に良い。

「音楽は常に私にとってポジティブなものでした。音楽によって私はいつも気分を持ち直すことができたのです」とはハーリングの弁。よって「少なくとも1時間くらいは、現代生活の混乱を和らげられるような作品にしたい、と願って制作」された、とのこと。良い話である。確かに、この作品は「ハッピーな内容」で埋め尽くされている。

聴いていて、心から「ジャズって良いなあ」と思える、素敵な盤である。ネオ・ハードバップの良いところがギッシリと詰まっている。こういう盤が、今、この時代にリリースされることを頼もしく思う。ジャズを聴いてきてよかったなあ、と思える瞬間である。

 
 

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2017年5月27日 (土曜日)

(欧州ジャズ+米国ジャズ) な盤

このところ、梅雨空の様に鬱陶しい曇り空が続く。昨日などは午前中はまとまった雨。久し振りに雨道具総動員である。が、今日は朝から回復基調。午前中は夏の到来を告げるような蒸し暑い陽気。午後から空気が入れ替わったのか、涼しい風が吹き抜けて、半袖ではちょっと肌寒さを感じる清々しい陽気に。

こういう清々しい初夏の陽気の中、耳を傾けるジャズは「欧州ジャズ」が良い。しかし、ブルージーでファンクネス濃厚な米国ジャズも捨てがたく、その双方のジャズの雰囲気を併せ持つジャズ盤は無いのか、と思いを巡らす。と、あったあった。欧州ジャズと米国ジャズのハイブリッド盤の様な雰囲気を持った盤が。

Sacha Distel & John Lewis『Afternoon In Paris』(写真左)。1956年12月、パリでの録音。ちなみにはパーソネルは、John Lewis (p), Sacha Distel (g), Barney Wilen (ts), Pierre Michelot, Percy Heath (b), Connie Kay, Kenny Clarke (ds)。オリジナルLPのA面3曲のベースとドラムがPierre MichelotとConnie Kay、B面3曲がPercy HeathとKenny Clarkeとなっています。
 

Afternoon_in_paris1

 
以前より、パリに対する限りない憧れを抱いていたジョン・ルイス(写真右)が、フランスの人気ジャズ・ミュージシャン、サッシャ・ディステル、バルネ・ウィラン、ピエール・ミシェロとパリで録音した盤。この盤のタイトル『Afternoon In Paris』は録音事情「そのまま」。フランスのジャズメン3人の演奏の内容が良い。米国ジャズメンと対等の濃密で個性的な演奏に耳を奪われる。

盤全体、とても洒脱な演奏になっています。とっても趣味の良いハードバップ。繊細さ流麗さ有り、ダイナミックな力感のある展開も有り。それでいて、演奏の雰囲気は、ブルージーでファンクネス濃厚な米国のジャズとは少し異なる、ちょっとあっさりとしたファンクネス希薄な、そう、欧州ジャズ独特のクラシックの素養をベースとした、耽美的でリリカルな音の響き。

録音も良く、演奏の良さと相まって、実に清々しい堅実な内容のハードバップです。フランスのジャズって、お国柄、ちょっとラフな印象があったので、この盤のカッチリした内容にちょっとビックリ。大向こうを張る様なジャズではありませんが、玄人好みの渋い内容の盤についつい耳を傾ければ、今日もそろそろ夕暮れ時。良い一日でした。

 
 

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2017年2月15日 (水曜日)

角の丸い優しい低音のバリサク

トロンボーンの魅力的な低音も良いが、僕はバリトン・サックス(略してバリサク)の低音も大好きだ。ジャズの世界では、バリサクはちょっと変わり種ではあるが、その魅力的な低音を武器に、意外と人気のフロント楽器である。

そんなバリサク奏者のレジェンドに「Gerry Mulligan(ジェリー・マリガン)」がいる。米国西海岸ジャズの重鎮であり、そのバリサクの腕前もさることながら、アレンジの才に優れ、米国西海岸ジャズのキーマンの一人として、今や「伝説的存在」となっている。

そんなジェリー・マリガンであるが、マリガンのバリサクは、通常のバリサクとはちょっと違う。通常のバリサクの印象は「男性的な骨太なブリブリッとした豪快な重低音」が魅力であるが、マリガンのバリサクは違う。マリガンのバリサクは優しい。マリガンのバリサクの低音は角の丸い優しい低音である。

そんな角の丸い優しい低音のバリサクを心ゆくまで堪能するには、現代の録音技術を駆使した、良い音で録れたアルバムが一番良い。そんなアルバムあるかいな、と探したら、あったあった。Gerry Mulligan『Dream a Little Dream』(写真左)。ジャケットもなかなか好印象。このジャケットを見る限り、内容は良い、と見た(笑)。
 

Dream_a_little_dream1

 
1994年の作品。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Dean Johnson (b), Ron Vincent (ds), Bill Mays, Ted Rosenthal (p)。テッド・ローゼンタルのピアノを核にしたピアノ・トリオをリズム・セクションに、フロントにマリガンのバリサクのワンホーン。所謂「ワンホーン・カルテット」である。

ワンホーン・カルテットの良いところは、フロント楽器の良さを心ゆくまで感じることが出来ること。この盤はマリガンのバリサクが実に良く録れている。選曲も良い。マリガンの自作曲を織り交ぜながらも、渋いスタンダード曲中心の選曲。優しい低音のマリガンのバリサクが、印象的なフレーズを吹き上げていく。

バリサクの印象がガラッと変わる好盤です。バックのテッド・ローゼンタル中心のピアノ・トリオの演奏が実に小粋。とっても趣味の良い、小気味の良いピアノ・トリオの演奏がマリガンのバリサクをしっかりと支え、盛り立てていきます。輪郭がハッキリクッキリ、穏やかな躍動感が魅力のピアノに、小技が冴える堅実なドラム、そして、しっかりと演奏の底を支えるベース。

バックのリズム・セクションが優秀なワンホーン・カルテットに駄盤無し。この盤は、とりわけ、フロントのバリサクがレジェンド級のジェリー・マリガンですから悪かろう筈が無い。ジャケットのイメージ通り、夜の静寂の中でしっとりと聴き込むのに最適な、優しいバリサクの音色が魅力の好盤です。ジャズ者万民にお勧め。

 
 

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2016年12月16日 (金曜日)

エロル・ガーナーは素晴らしい

最近、日本の若手ジャズ・ピアニストの談話の中で、このピアニストの名前が良く出てくる。聞けば意外に感じる「エロル・ガーナー(Erroll Ganer)」。バップ系のピアニストでは無い。それ以前、モダン・ジャズ以前、スイング系のピアニストで「ビハインド・ザ・ビート」と形容される独特の演奏が個性とされる。

そんなエロル・ガーナーであるが、このピアニストの代表作が『Concert By The Sea』(写真右)。しかし、このアルバムはLP時代、1枚のアルバムで収録時間は40分そこそこ。その40分そこそこの中にノリノリの「ビハインド・ザ・ビート」が展開される。

なんとなく、エロル・ガーナーの個性を理解し始めた頃に終わってしまう、僕にとっては、そんな物足りなさが「てんこ盛り」のアルバムだった。収録時間が短いのか、乗りきれないまま、理解しきれないまま、終わってしまうような、そんな物足りなさ。

それが、である。長生きしているものである(笑)。昨年のことである。この『Concert By The Sea』のコンプリート盤がいきなり出た。『The Complete Concert By The Sea』(写真左)。1955年9月のライブ録音。ちなみにパーソネルは、Erroll Garner (p), Edie Calhoun (b), Denzil Decsta Best (ds)。一応、ピアノ・トリオの体である。

CD3枚組、トータルで2時間半強。これだけ長尺だと、やっとのことで、エロル・ガーナーのピアノ・プレイを心ゆくまで堪能出来る。逆に、途中で飽きるのではないか、という懸念も出てくる。とにかくトータルで2時間強の中で、ノリノリの「ビハインド・ザ・ビート」が展開。
 

Concert_by_the_sea

 
しかし、聴き終えて「圧倒的」であった。2時間半強の「ビハインド・ザ・ビート」の饗宴。飽きるどころか、ノリノリの一気に聴き終える。迫力満点、ドライブ感満点のガーナーのアドリブ展開。エロル・ガーナーと言えば「ビハインド・ザ・ビート」ばかりがクローズアップされるが、それだけでは無い。

ガーナーのピアノは、スイング・ピアノの雰囲気そのままに、アドリブ展開が「ビ・バップ」。ノリの幅が広く、スイング感が強烈。アドリブ展開の時の右手の展開がクラシック・ピアノの様に「流麗」。それでいて「ビハインド・ザ・ビート」を織り込むことで、ファンクネスを強烈に印象付ける。

ガーナーのピアノは「ノリに乗る」。ソロ・ピアノの展開だって、トリオ演奏の展開だって「ノリに乗る」。しかし、展開の流麗さが、その「ノリ」を「いやらしく」聴かすことは無い。かつ、加えてタッチが硬質。フレーズの音を拾いやすい程の硬質なタッチ。明朗で判り易い、そしてノリが良くスインギー。

なるほど、このコンプリート盤を聴いて、ガーナーのピアノ・プレイの良さが十分に理解出来て、彼のピアノの良さが良く判った。最近の若手ピアニストの中で人気が高いのも頷ける。温故知新。21世紀も15年が過ぎた現時点において、エロル・ガーナーのプレイ・スタイルって、意外と新しく響くのかもしれない。

 
 

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2016年9月29日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・89

やっと秋の空気が流れ込んできた。昨日は真夏日近くまで気温が上がって蒸し暑かったが、今日の夕方は一転涼しくなった。ここまで涼しくなると、純ジャズが聴きやすくなる。

Buddy Defranco『Cooking The Blues & Sweet & Lovely』。久し振りにジャズ・クラリネットのレジェンドのアルバムを選盤。僕がジャズを聴き始めた1970年代後半、ジャズ・クラリネットと言えば、ベニー・グッドマンか、このバディ・デフランコだった。

このアルバムは『Cooking The Blues』(写真左)と『Sweet & Lovely』(写真右)という2枚のアルバムの「2LP on 1CD」盤。どちらのアルバムも好盤なので、この「2LP on 1CD」盤はお買い得である。この「2LP on 1CD」盤を聴き通すことで、バディ・デフランが、スイング・ジャズの花形楽器であったクラリネットをモダン・ジャズに導入した第一人者であることが良く判る。

『Cooking The Blues』は1955年から1956年の録音。パーソネルは、Buddy DeFranco (cl), Sonny Clark (p), Tal Farlow (g), Eugene 'Senator' Wright (b), Bobby White (ds) 。パーソネルを見渡せば、メンバーは皆、ハードバップ初期の強者ばかりである。演奏のベースは明快に「ハードバップ」。それぞれのアドリブ演奏は優れたものばかりで、実に聴き応えがある。
 

Cooking_the_blues_sweet_lovely

 
『Sweet & Lovely』は1954年から1955年の録音。パーソネルは前出の『Cooking The Blues』と同じ。ピアノのソニー・クラークが、この盤ではオルガンを弾いている。実はこのオルガンの存在が実に印象的なのだ。後のファンキー・ジャズによく聴かれる、こってこてファンキーなオルガンでは無い。

ファンクネスをそこはかとなく抑えた、趣味の良いオルガンの音色が、デフランコのクラリネットに絡んで、実に良い雰囲気を醸し出している。そこに、ハードバップ初期の強者ジャズメンが入れ替わり立ち替わりアドリブを展開する。端正でテクニック溢れるアドリブ展開は、やはり聴き応え十分。

バディ・デフランコのクラリネットは端正かつ典雅。滑らかで大らか。テクニックが抜群で音の抜けが良い。この2枚のアルバムのデフランコのクラリネットのプレイを聴けば、デフランコがジャズ・クラリネットの第一人者であることが再認識できる。とにかく上手い。クラリネットでこれだけ、陰影とスピード感のあるフレーズを吹ききるジャズメンはほとんどいない。

聴き応えのある好盤2枚です。バディ・デフランコのジャズ・クラリネットを心ゆくまで愛でることの出来る好盤だと思います。「2LP on 1CD」盤ですが、一気に聴き切ってしまいます。充実の演奏、充実のジャズ・クラリネットです。

 
 

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2016年4月 8日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・78

ジャズ本になかなか挙がることの無い、もとよりジャズ入門盤になど絶対に選択されない、よってジャケットだって見たことが無い。それでも内容優秀なジャズのアルバムって実は沢山ある。そんな所謂「隠れ好盤」を見出すこと、これがジャズ盤コレクションの醍醐味のひとつである。

最近、そんな盤に出会った。『Young Men from Memphis - Down Home Reunion』(写真左)。誰がリーダーという訳では無い、ジャム・セッションを捉えたアルバムである。1959年4月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little, Louis Smith (tp), Frank Strozier (as), George Coleman (ts), Phineas Newborn Jr. (p), Calvin Newborn (g), George Joyner (b), Charles Crosby (ds)。

アメリカ合衆国のテネシー州西端、ミシシッピー川に面する都市メンフィス。この街はブルースの発祥地としても有名な土地です。んなメンフィス出身のアーティストをフィーチャーしたジャム・セッションなアルバムです。

まず、パーソネルを眺めると、この盤が「只者で無い」ことが判ります。早逝のトランペットの天才、ブッカー・リトル(写真右)。小粋なハードバップなトランペッター、ルイ・スミス。モーダルなテナーの先駆者、ジョージ・コールマン。疾走する天才ピアニスト、フィニアス・ニューボーンJr.。この辺の名前をみると、どんな演奏が展開されているのか、ワクワクします。
 

Down_home_reunion

 
冒頭の「Things Ain’t What They Used to Be」を聴くと、そのプレイの先進性が良く判ります。1959年なので、典型的な絵に描いた様な、優等生的なハードバップな演奏が繰り広げられているのではないか、と予想したのですが、前奏のテナーとトラペットのユニゾンの響きを聴いたら、これはまあ、只者ではないぞ、と身構えて(笑)。

ついつい座り直して、集中してその音に耳を傾けてしまいます。端正なハードバップなんてもんじゃない。これはもうフリー一歩手前の自由度の高いハードバップ。しかもそのフレーズはゴツゴツしていて骨太。そして、ところどころでモードな展開が今の耳にも新しい響きを持って展開される。

冒頭の1曲目のみならず、収録された全4曲とも「只者ではない」演奏で、当時としては突出して新しい、今の耳にも新鮮な響きがこのアルバムの中にギッシリと詰まっています。ジャム・セッションな演奏とは言え、息の合ったユニゾン&ハーモニーは聴いていて楽しく、アドリブのフレーズはどれもが新鮮な響きに溢れていて、全く時代を感じさせない。

良いアルバムです。出身地が同じというのも「好要素」になっているみたいで微笑ましいですね。ジャズ本やネットで採り上げられることが全く少ないアルバムなんですが、このアルバムは、ジャズを聴くことに慣れ、ジャズの好みがはっきりした中級以上のジャズ者の方々にお勧め。「目から鱗」の好盤です。

 
 

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2016年3月10日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・57

この盤は全く知らんぞ〜(笑)。資料を見ると、エディ・ロックジョウ・デイヴィスに見初められてデビューした、シンシナティのジャズ・コンボだそう。のちにカウント・ベイシー楽団に参加するサックス奏者、カーティス・ピーグラーを中心とする5人組とのこと。全く知らんかった。

このアルバムは、そのジャズ・コンボの名前を冠したデビュー盤『The Modern Jazz Disciples』(写真左)。1959年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Curtis Peagler (as,ts), William Kelley (normaphone, euphonium), Bill Brown (p), Lee Tucker (b), Ron McCurdy (ds)。5重奏団編成である。ノーマフォン&ユーフォニウムという珍しい楽器が目を引く。

うわ〜、パーソネルを眺めても知らない名前ばかり。それでも、ピーグラーの力強いサックス、そして、ウィリアム・ケリーの吹くノーマフォン(サックス風の形をしたヴァルヴ・トロンボーン)の独特のサウンド。そして、このサックスとノーマフォンのユニゾン&ハーモニーが、実にほのぼのとした、良い味出してるんですよね。

バックのピアノ・トリオもしっかりしているんですよ。どっかで聴いた音っぽいんですが、誰かと訊かれたら、全く判りません(笑)。このピアノ・トリオのバッキングが実に効いているんですよね。正統派な歌伴トリオって感じで、典雅な響きとそこはかとないファンキーな音色。良いですね。絵に描いた様なハードバップです。
 

The_modern_jazz_disciples  

 
録音された音を聴いていると、やっぱりどこかで聴いた音って感じがするんですよね。で、このアルバムって、Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffsでの録音でした。そうですよね〜。このアルバム、Prestigeレーベルの傍系New Jazzからのリリースですから、やっぱり「RVG」ブランドの音でした。良い音してるんですよね。

このアルバム、とあるジャズ盤紹介本で最近知ったんですが、情報を何度読んでもどんな音がするのか全く判らず、とにかくダウンロードサイトから入手して聴いてみました。ら、これ「当たり」でした。実に良好でハードバップな演奏が全編に渡って繰り広げられています。

2年半ほど前に、プレスティッジ・レーベル65周年記念「プレスティッジ7000番台クロニクル」のスピンオフ企画でリイシューされましたが、意外とまだまだマイナーな存在みたいですね。ネット上でもほとんどレビューは見当たりませんでした。たしかに「モダン・ジャズ・ディサイプルズ」ってコンボ名、パチモンっぽいもんな(笑)。

アルバム・ジャケットもさすがPrestigeレーベルの傍系New Jazzからのリリースなので地味も地味。それでも、このアルバムに詰まっている音って、しっかりハードバップしていて意外といけますよ。そうそう、このアルバムで「ブラインド・テスト」したら面白いでしょうね。絶対に当たりません(笑)。

 
 

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2016年2月26日 (金曜日)

単純に「ジャズってええなあ」

こういうジャズを聴くと、単純に「ジャズってええなあ」と思う。雰囲気が良い。ほのぼのとした4ビート。ほどよく趣味良くアレンジされたユニゾン&ハーモニー。米国西海岸ジャズは聴き心地が良い。

Stan Getz『West Coast Jazz』(写真左)。1955年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Stan Getz (ts), Conte Candoli (tp), Lou Levy (p), Leroy Vinnegar (b), Shelly Manne (ds)。米国西海岸ジャズのメイン・ジャズメンがズラリと名を連ねる。

リーダーはスタン・ゲッツ。テナーマンである。ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ。流れる様な典雅で爽やかなフレーズ。1950年代のゲッツのテナーは聴き心地が良い。1960年代にはボサノバ・ブームに乗って、大人気テナーマンとなって引っ張りだこ。

1970年代は改めて純ジャズに回帰するが、ゲッツの従来のスタイルが再評価されるのは、1980年代の純ジャズ復古の時代になってから。純ジャズ復古の波に乗って、スタン・ゲッツ再評価と相成ったが、ゲッツのブロウは意外と力強く、テクニック溢れるものになっていく。1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」に戻ることは無かった。そして、そうこうしているうちに、肝臓癌にて1991年、鬼籍に入ってしまう。
 

West_coast_jazz

 
1980年代から1991年、鬼籍に入るまでの、ストレート・アヘッドなゲッツのテナーも良いが、僕は、1950年代の「ほのぼのと朗々とした、優しく囁くような、それでいてしっかり芯のあるブロウ」なゲッツが大好きだ。当然、ボサノバにも染まっていない。純粋に、1950年代米国西海岸ジャズの雰囲気が凄く良い。

さて、このStan Getz『West Coast Jazz』を聴けば、ゲッツのテナーの全てが判る。フレーズ、アドリブ、どれをとっても天才的で、ゲッツは希有の「天才的インプロヴァイザー」ということがとても良く判る。収録曲もスタンダード曲が中心で、このスタンダード曲をベースに、様々なニュアンスのアドリブ・ラインが繰り出てくるところなんざあ、ほんと天才的です。

力まずにサラリと速く、魅力的なフレーズを吹くゲッツ。コンテ・カンドリのクールなトランペットは、ゲッツのテナーとの相性が抜群。ルー・レヴィの明るく歯切れの良い、雰囲気のあるピアノ。リロイ・ヴィネガーの太くて軽妙なベース。そして、リラックスしたクールなドラミングが見事なシェリー・マン。これぞ「米国西海岸ジャズ」な演奏です。

思わず聴き惚れてしまう。朝一番に聴くジャズにも良し。昼下がりのジャズ喫茶でほのぼのと聴くも良し。ほんと、良い雰囲気の「メインストリームなジャズ」。米国西海岸ジャズの個性である「アレンジの威力」はそこそこに、ゲッツのアドリブの実力と魅力が再認識できる盤。好盤です。

 
 

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2016年2月25日 (木曜日)

緑のコニッツと海岸のコニッツ

リー・コニッツの聴き直しをしている。コニッツの出身は「クール・ジャズ」。レニー・トリスターノに師事し、意識的に抑制し、抑制のコード、フレーズを駆使して創造する「クール・ジャズ」。理知的でアーティスティックではあるが、大衆向けで無いことは何となく感じる。

トリスターノ門下生だったコニッツ。何時の頃からか、ホットなアドリブ・フレーズを吹くようになる。ほどよく抑制された「クール・ジャズ」の良いところを残しつつ、その正反対のホットなブロウを織り交ぜて、聴き応えのあるフレーズを展開する。あれれ、クール・ジャズの旗手なコニッツはどこへいったのか。

そんなコニッツの転換点を捉えた好盤が2枚。緑一色のジャケットが印象的な『In Harvard Square』と青一色のジャケットが印象的な『Konitz』。僕は『In Harvard Square』については、ズバリ「緑のコニッツ」と呼んでいる。『Konitz』はよく見ると海岸の写真。こちらはジャズ者の方々が以前から「海岸のコニッツ」と呼んでいる。

まずは「緑のコニッツ」。Lee Konitz『In Harvard Square』(写真左)。2つの録音のカップリング。 リーダーのLee Konitz (as )と Jeff Morton (p) は共通。1954年4月の録音ベースとドラムは、Peter Ind (b),  Jeff Morton (ds)。1955年2月録音のベースとドラムは、 Percy Heath (b),  Al Levitt (ds)。ボストンで録音されているので、基本的には米国東海岸ジャズの範疇になる。
 

In_harvard_square_konitz

 
一方「海岸のコニッツ」。Lee Konitz『Konitz』(写真右)。パーソネルは、Lee Konitz (as), Ronnie Ball (p), Peter Ind (b), Jeff Morton (ds)。1954年4月の録音。「緑のコニッツ」と比べると、ピアノがロニー・ベルに代わっているが、基本的な演奏の雰囲気は同じ傾向。

この頃のコニッツは「ハードバップな」ホットでテクニック溢れるアドリブ・フレーズと、もともとトリスターノ門下生だった頃の「クール・ジャズな」抑制されたアドリブ・フレーズを上手くミックスして、簡潔な表現美を聴かせてくれる。演奏の基本はホットでポップなところにあって、クール・ジャズはアクセント付けに上手くあしらっている感じ。

このホットとクールのバランスが実に良いのだ。トリスターノの難解なクール・ジャズが、ホットなハードバップな演奏の対比で、良い感じのカウンター・アクセントになっているのだ。これって、コニッツ、してやったりな気分、ではなかったか。それほどに、この「緑のコニッツ」と「海岸のコニッツ」は聴き味が良い。

ハードバップな、鑑賞音楽として十分に耐えるコニッツの「ホット&クール」。寛ぎのフレーズ、ウォームなフレーズ満載の中に、アクセント良く「クール・ジャズ」なフレーズが忍び込む。この2枚のアルバムを聴いていると「ああジャズってええなあ」と心から思える、そんなリラックスしてジャズを心から楽しめる好盤の2枚です。

 
 

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