2021年2月25日 (木曜日)

ゴスペルな響きが素敵なデュオ

アーチー・シェップ(Archie Shepp)が元気である。シェップは1937年5月生まれ。今年で84歳。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者である。第一線に躍り出たのが1960年代後半だから、かれこれ60年、ジャズ界の第一線を走ってきたことになる。これだけ息の長いジャズメンはもう数えるほどしかいない。貴重な存在である。

ジェイソン・モラン(Jason Moran)は注目株。モランは1975年1月生まれ。今年で46歳。油の乗りきった中堅ピアニスト。1999年が初リーダー作なので24歳でメジャー・デビュー。一年に1作のペースで着実にリーダー作をリリースしている。特に最近、2015年辺りから馬力がかかってきた感がある。これからが実に楽しみな存在である。

Archie Shepp & Jason Moran『Let My People Go』(写真左)。2021年2月のリリース。リリースほやほや。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts,ss,vo), Jason Moran (p)。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者、アーチー・シェップと、油の乗りきった中堅ピアニスト、ジェイソン・モランとのデュオ盤である。シェップがボーカルを担当しているところが珍しい。
 
 
Let-my-people-go  
 
 
サックスとピアノのデュオは良くあるパターン。しかし、このデュオはその「響き」が個性的。シェップはフロリダ州フォートローダーデール生まれ。モランはテキサス州ヒューストン生まれ。どちらも「ブルースとゴスペル」米国南部出身。そう、このデュオの音の響きが、どこか「ゴスペルな雰囲気」。スピリチュアルなフレーズが、その「ゴスペルな雰囲気」に拍車をかける。

シェップのサックスがとてもスピリチュアル。シェップはもともとはコルトレーンの忠実なフォロワー。しかし、1970年代にはフリーからブラック・ファンクに走り、いち早くコルトレーンの影響下から脱している。1980年代以降は、オーソドックスなブロウをベースに「クールでスピリチュアル」な表現をメインとしている。この盤ではボーカルも担当しており、このボーカルはこれまた「スピリチュアル」。

ジェイソンのピアノがそんなシェップに呼応し、スピリチュアルなフレーズを連発しつつ、シェップのサックスを鼓舞する。そして、シェップがボーカルを担当すると、それはそれはリリカルで耽美的な、しっとりとした伴奏で応える。いやはや、素晴らしいデュオである。アフリカン・アメリカンの音の郷愁を聴く様な、素敵なスピリチュアル・デュオである。
 
 
 

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2021年2月14日 (日曜日)

ケイブルスの初リーダー作です。

ジャズにとって1970年代は「大変革」の時代だったと思う。それまで、アコースティック楽器がメインの、4ビートのスインギーな演奏が基本だったが、1970年代は、エレクトリック楽器の台頭、そして、8ビートの採用とそれまでのジャズの基本、ジャズの常識が根本的に覆された時代だった。

それでも、旧来の4ビートのスインギーな演奏が基本である「メインストリーム・ジャズ」、いわゆる「純ジャズ」はしっかり存続していて、今の耳で振り返ると、なかなかの内容の好盤が沢山残っている。1970年代はクロスオーバー〜フュージョン・ジャズの時代だったというが、その傍らで「メインストリーム・ジャズ」もしっかり存続している。1970年代は、更なる多様化が進んだ時代とした方が座りが良い。

George Cables『Why Not』(写真左)。1975年10月7日、ロサンゼルスでの録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Tony Dumas (b), Carl Burnett (ds)。ジョージ・ケイブルスの初リーダー作。ピアノ・トリオ編成。ジョージ・ケイブルスは1944年生まれ。録音時は31歳。今年77歳になるが、まだ現役で活躍しているレジェンド。
 
 
Why-not  
 
 
ケイブルスは時代が純ジャズにとって不遇の時代であったが故に、色々と損をしている。これだけの力量を持ったピアニストであれば、20歳台前半に初リーダー作をリリースしていても良いのだが、31歳にしてやっと、である。それでも記するところがあったのだろう、収録曲全てがケイブルスのオリジナル。その中でも、Jazz Messengersに提供した「Dark Side-Light Side」、軽快なラテン・ビートが楽しい「Quiet Fire」などはとても良く出来た曲だと思う。

また、この盤、内容的に優れていて、ケイブルスの「モーダルなピアノであるが難解では無く、ファンキーでメロディアスな右手」がしっかり確認出来る好盤である。良く聴くと全曲、モーダルなアプローチがなされている感じなのだが、ケイブルス自作曲がキャッチャーな旋律を持っているのと、ケイブルスの右手がメロディアスなのが相乗効果で、モーダルな演奏にありがちな難解さが無い。

全曲、ノリの良い演奏が楽しい。アタッチメントで増幅されたであろうベースと、バッタバタでやたら手数の多いドラムが玉に瑕ではあるが、そんな1970年代っぽいリズム隊を従えて、ケイブルスのピアノは快調に「飛ばして」いる。ジャズの名盤紹介に登場するような盤では無いと思うが、ピアノ・トリオ盤として、肩肘張らずに楽しめる好盤だと思う。
 
 
 

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2021年2月12日 (金曜日)

チック・コリアが逝去、である。

チック・コリアが逝去した。2021年2月9日、享年79歳。まれな種類のがんを患っていたことがごく最近になって判明していたとのことだが、全く予想も想定もしていない、全くの「急逝」であった。今朝、ネットのニュースで知って、真偽のほどが判らず、米国の複数のニュース・サイトに飛んでいって、情報収集したところ、その訃報は真実だった。

去年はマッコイ・タイナーが逝去、キース・ジャレットが復帰困難、今回はチック・コリアが逝去。僕のお気に入りのジャズ・ピアニストが次々と伝説になっていく。人の寿命の事なので以前から覚悟はしているのだが、実際、そういう事実に直面すると、さすがに悲しい。自分自身も若くは無いので、身につまされる思いもある。

特に、チックについては、昨年の8月の終わりに、NHKのニュースで、福島の高校吹奏楽部の部員とのオンラインワークショプでの交流の様子が伝えられていて、コロナ禍真っ只中にも拘わらず、元気な様子だったので、チックも暫くは元気に活躍してくれるだろう、と勝手に思い込んでいた。いやほんと、とても元気だったんだよな。

チックについては、僕の3つの指に入る「お気に入りで音楽家として尊敬する」ジャズマンで、ジャズを聴き始める切っ掛けとなったアルバムの中に、チックのアルバムもあった。Chick Corea & Gary Burton『Crystal Silence』(写真左)である。この素晴らしいデュオ演奏を聴いて、これがジャズなのか、と驚愕した。それまでのジャズに対する印象が一気に変わった瞬間である。
 
 
Chick-corea-died  
 
 
そして、ほどなく手に入れて感動したのが、Chick Corea『Piano Improvisations Vol.1』(写真右)。チック初のソロ・ピアノ集だったが、心地良い微風が吹き抜けていくような、硬質で印象的で爽やかなフレーズが堪らなかった。こういうピアノを弾きたい、そんな気持ちを強く持たせてくれるピアノだった。そう、チックのピアノは「憧れ」だった。

逝去に伴う発表文では、チックが生前に残したメッセージも掲載されたとのこと。それをここに引用掲載させていただく。

「私と旅を共にし、音楽の火を明るくともし続けることに協力してくれたすべての人に感謝したい。私の願いは、演奏や制作、パフォーマンスなどをしたいという気持ちがある人には、それをしてほしいということ。自分のためでなくとも、ほかの人々のために。世界にはもっとアーティストが必要だというだけでなく、単に本当に楽しいものなのだから」。

あの世で、マイルスやパコ・デ・ルシアなどと、再会セッションを繰り広げるのかなあ。そうそう、ザヴィヌルとのダブル・キーボードというのも凄いぞ。はたまた、スタン・ゲッツに懇願されて、バックのリズム・セクションをやるのかな、トニー・ウィリアムスも既にあちらにいるしな。

本当に残念です。心よりお悔やみ申し上げます。
 
 
 

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2021年2月11日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・199

日本の音楽シーンは、ジャズに造詣が深い。ジャズ専門雑誌は1947年に創刊されているし、ジャズ盤もレコード会社が、1950年代以降、積極的に米国ジャズ盤を企画販売したりして、1960年代にはレコード屋の主要音楽ジャンルの1つを占める様になっている。

僕がジャズを聴き始めた1970年代後半は、レコード屋では「クラシック、ロック、ジャズ、日本のニューミュージック」が大きなジャンルの括りだった。そんなジャズの造詣が深い音楽シーンでも、長年ジャズ盤を蒐集していると「何故、このジャズ演奏家のリーダー作が採り上げられないのか」と不思議に思うことが幾度と無くある。

我が国のジャズ雑誌がそのジャズ演奏家を採り上げない、加えて、レコード会社のジャズ担当も採り上げない、ということが主な原因だと思う。罪作りなことだと思うが、ネット時代になって、情報が直接、音源が入手出来る様になって、海外からそんな「我が国におけるマイナーなジャズ演奏家」の隠れ好盤を聴くことが出来る様になったのは有り難いことである。

Mary Lou Williams(メアリー・ルー・ウィリアムス)も、そんな「我が国におけるマイナーなジャズ演奏家」の1人。ジャズ界のレジェンドたちからの敬愛を一身に集めた女性ピアニストの草分け、作曲・編曲家である。1910年、米国ジョージア州はアトランタの生まれ。1981年、71歳で逝去している。
 
 
Mary-lou-williams-plays-in-london  
 
 
彼女の経歴を紐解けば、米国では著名で実績豊富な、ジャズ史にその名を留めるべきジャズ演奏家であることが判る。が、我が国ではマイナーな存在で、当然、人気は無い。21世紀に入って、ネットの記事を通じて、やっと彼女の名前、彼女のリーダー作について情報が出てきて、彼女のピアノ・パフォーマンスに触れることが出来る様になった。喜ばしいことである。

『Mary Lou Williams Plays in London』(写真)。1953年の作品。当時、Vogue Recordsから10インチLPでのリリース。ちなみにパーソネルは、Mary Lou Williams (p), Kenny Napper (b), Allan Ganley (ds), Tony Scott (bongos)。メアリー・ルー・ウィリアムズがロンドン訪問の際に当地で録音した音源らしい。

彼女の経歴としては、スイングからビ・バップを経験しているはずだが、彼女のピアノは、そのどちらにも影響を受けていないように感じる。端正でエレガントで流麗な、そこはかとなくファンキーで、ゴスペルチックな和音もところどころで聴くことができるユニークなもの。1953年の録音時点で、ハードバップ色が濃厚なピアノとしても全く違和感は無い。

とてもジャジーなピアノで、テクニックも確か、シンプルな右手に、スインギーでファンキーな左手。スタンダード曲の解釈も小粋で、聴いていて気持ちの良い演奏がアルバムに詰まっている。何故、このピアノが、我が国ではマイナーな存在に甘んじていたのか。本当にジャズは奥が深い。
 
 
 

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2021年2月 8日 (月曜日)

ザイトリン、80歳過ぎてなお盛ん

Denny Zeitlin(デニー・ザイトリン)が元気だ。「精神科医とジャズピアニスト」という二足の草鞋を履く異色のジャズマン。本業である精神科医の仕事をこなす傍ら、プロのピアニストとしての活動も続けてきたザイトリン。しかも双方の仕事において、それぞれ一流の域に達していたと言うのだから凄い。

Denny Zeitlin『Live At Mezzrow』(写真左)。2019年3月3ー4日、NYのGreenwich Villageにあるクラブ「Mezzrow」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Denny Zeitlin (p), Buster Williams (b), Matt Wilson (ds)。ピアノのザイトリンをリーダーとした「ピアノ・トリオ」盤である。リリースは昨年の5月。ザイトリンは1938年生まれなので、82歳での録音になる。

タッチは深く、しっかりと端正に弾きまくる様はエヴァンス・ライクな個性なんだが、フレーズの作りが異なる。流麗というよりドライブ感豊か。フレーズはゴツゴツしていて変幻自在。柔軟性が高く、幾何学模様の様なカクカクした、セロニアス・モンクの様なちょっと突飛なフレーズ。エヴァンスのフレーズは流麗だが、ザイトリンのフレーズはドライブ感溢れる幾何学模様。
 
 
Live-at-mezzrow  
 
 
とても82歳のパフォーマンスとは思えない、エネルギッシュな弾き回しにちょっとビックリ。現代の新しいバップ・ピアノを聴くようだ。タッチは硬質で溌剌としていていて明確。左手はハンマー奏法の様に低音を「ガーン、ゴーン」とは弾かない。右手のドライブ感をサポートする、低音を活かした躍動感溢れるベースラインは見事。何度も言うが、これが82歳のパフォーマンスとは思えない。

ドライブ感は豊かだが、追い立てられるような切迫感は皆無。少しだけユッタリと「間」を活かした、ほどよい余裕のある弾き回しが適度なグルーヴを生み出している。弾き回しは正統派でモーダルなハードバップだが、要所要所でユニークで典雅な和音が飛び交い、アブストラクトなアプローチが飛び出してくる。ザイトリンのピアノの個性全開の弾き回しに思わずニンマリする。

ウィリアムスのベースとウィルソンのドラムのリズム隊も、このザイトリンの「現代の新しいバップ・ピアノ」にしっかりと追従し、しっかりとサポートしていて立派だ。そう言えば、2018年の作品『Wishing On the Moon』(2018年6月18日のブログ参照)も良い出来だった。ザイトリン、80歳過ぎてなお盛ん、である。
 
 
 

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2021年1月22日 (金曜日)

邦題「フレッド アステアを歌う」

若い頃、ジャズ者初心者の頃、ジャズ・ボーカルが苦手だった僕も、今ではそこそこジャズ・ボーカルは聴くようになった。女性ボーカルは基本的に「コンテンポラリーな」ボーカルを好んで聴く。例えば、ダイアナ・クラールやケイコ・リーなど。男性ボーカルは「正統派な」ボーカル、例えば、フランク・シナトラやメル・トーメを好んで聴く傾向にあるようだ。

『Mel Tormé Sings Fred Astaire』(写真左)。1956年11月10-11日、ロスでの録音。西海岸ジャズに強い「ベツレヘム・レーベル」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Mel Tormé (vo), Marty Paich (arr, cond), Herb Geller (as), Jack Montrose (ts), Jack DuLong (bs), Pete Candoli, Don Fagerquist (tp), Max Bennett (b), Alvin Stoller (ds), Bob Enevoldsen (valve-tb), Vince DeRosa (French horn), Albert Pollan (tuba)。

邦題「フレッド アステアを歌う」。ミュージカル映画の大スター、フレッド・アステアが歌った、ガーシュインやアービングバーリン作品を、マーティー・ペイチ楽団のバッキングで、メル・トーメが歌う企画盤。マーティー・ペイチのアレンジが好調で、アルバム全体の音作りは、明らかに米国西海岸ジャズの雰囲気をふんだん湛えている。
 
 
Sings-fred-astaire
 
 
メル・トーメについては、一般的な知名度はシナトラに譲るが、ジャジーな歌のうまさは抜群。朗々として健康的な唄声はシナトラの対極に位置して、実に個性的。「ベルベット・ヴォイス」と称されるトーメの唄声は、その卓越した表現力や歌唱力と合わせて、実に魅力的なもの。そんなトーメが、ガーシュイン兄弟5曲、アービング・バーリン4曲を含む12曲を唄いまくる。

白人独自のヴォーカルを洗練させていったトーメの面目躍如である。とにかく「二枚目」な唄声は聴き易く判り易い。もともと、フレッド・アステアのリズム感に溢れ、判り易い歌唱スタイルは、後進のメル・トーメらに多大なる影響を与えた、とされる。そんな話を実感出来るトーメの歌唱である。ポップでソフト&メロウな歌唱はずっと聴いていても飽きない。

バックのマーティー・ペイチ楽団の演奏も名手揃いで、何気に優れていて良い感じ。アレンジも正統派なもので安心して聴ける。グルーヴィー&スウィンギンなバッキングは、この盤の聴きどころのひとつ。ジャケットがかなりレトロなので、なかなか触手が伸びないが、内容はポップで判り易い。ジャズ・ボーカルの好盤の一枚としてお勧め。
 
 
 

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2021年1月17日 (日曜日)

「危険な関係」とは懐かしい。

21世紀に入って20年。今でも時々、その存在をすっかり忘れていた、懐かしいアルバムがリイシューされることがある。この盤もその類なんだが、パーソネルと曲名を見て、最初は未発表音源だと思った。が、資料を見るとそうでは無い。そして、中身を聴くとリイシューなんだが、テイク違いのボートラが何曲か入っている。これは以前からなのか、今回のリイシューからなのか。ボートラの存在って紛らわしい。

Art Blakey & The Jazz Messengers feat. Barney Wilen『Les Liaisons Dangereuses 1960』(写真)。1959年7月28-29日、ニューヨークでの録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Barney Wilen (sax), Lee Morgan (tp), Bobby Timmons (p), Duke Jordan (p, tracks: 3 only), Jimmy Merritt (b), John Rodriguez (Bongos), Tommy Lopez, William Rodriguez (Congas)。

アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャースがパリに演奏旅行に行った折の録音かな、と思ったら、なんとNYでの録音でした。バルネ・ウィランは、当時、仏ジャズきってのサックス奏者。この時はNYに呼ばれたのかな。タイトルの「Les Liaisons Dangereuses」は、邦題では「危険な関係」。おお〜懐かしい(笑)。
 
Les-liasons-dangereuses
 
この盤は、ロジェ・ヴァディム監督『危険な関係』(主演:ジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー/1960年)のサントラ盤。映画本編では、セロニアス・モンク・カルテットと、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの曲が使用されているが、この盤ではジャズ・メッセンジャーズのみの演奏を収録している。

内容的には上質のハードバップ&ファンキー・ジャズ。特にサックスのウィランは、単独では硬質なバップ系サックスなんだが、この盤では、ジャズ・メッセンジャーズのお陰で芳しいファンクネスが添加されて、雰囲気の良いファンキー・サックスに変化している。ここでのウィランのテナーは素晴らしいパフォーマンスで、彼の真価を遺憾なく発揮している。

本当に久し振りにこの盤を聴いたのですが、やっぱり良い雰囲気、良い内容のサントラ盤でした。ハードバップの良いところがアルバム全編に散りばめられていて、安心してその演奏に聴く耳を委ねることが出来る、懐かしい内容です。バルネ・ウィランのサックスの真価を確認出来る好盤としても評価できるかと思います。いや〜懐かしいリイシュー盤に出会いました。
 
 
 

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2020年12月28日 (月曜日)

冬に聴く「ボサノバ・ジャズ」

いよいよ、今年もあと3日。コロナ禍で始まり、コロナ禍で終わった2020年。来年以降は「Withコロナ」の生活が日常になる。そんな日常の中、巣ごもり生活が主になったお陰で、家でジャズ盤を聴く機会が増えた。そして冬。冬に聴く「ボサノバ・ジャズ」も意外と「オツなもの」だということが、この盤を聴いていて再認識した。

L.A.4『Pavane Pour Une Infante Defunte』(写真左)。邦題「なき王女のためのパヴァーヌ」。1976年10月、カリフォルニア、ロサンゼルスのWarner Brothers Recording Studiosでの録音。ちなみにパーソネルは「L.A.4」= Ray Brown (b・写真右), Shelly Manne (ds), Laurindo Almeida (g), Bud Shank (sax, fl)。

米国西海岸ジャズのレジェンド3人(ブラウン・マン・シャンク)に、ボサノバ・ギターの名手の4人、ピアノレスのカルテット編成。この盤はイーストウィンド・レーベル(日本フォノグラム)からのリリース。日本の純ジャズ志向のレーベルの企画盤。特に、この「L.A.4」の人選はいかにも、日本のコアな「純ジャズ者」らしい人選だ。
 
 
Pavane-pour-une-infante-defunte-la4
 
 
タイトル曲「なき王女のためのパヴァーヌ」は、ラヴェルの管弦楽曲。ラヴェルいわく「昔、スペインの宮廷で小さな王女が踊ったようなパヴァーヌ」を、米国西海岸ジャズらしく、軽快で流麗なギター・ジャズにアレンジしている。この様なクラシック曲のカヴァーも日本発のレーベルらしい企画もの。西海岸ジャズらしい、聴かせるジャズ。

ボサノバ・ギターの名手、アルメイダの存在が良い味を出している。単なるレジェンドの集まりだと、旧来の米国西海岸ジャズをなぞるだけの「懐メロ風」の演奏に終始しがちなのだが、ここにアルメイダのギターが入っているのが良い。爽やかで軽快な、そしてどこか哀愁漂うボサノバ・ジャズの響きがこの盤を特別なものにしている。

録音された時代はクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズへの移行期。エレ・ジャズ主流の中、アコースティック楽器がメインの純ジャズが、しかも、この盤の様に「内容のある」盤が録音されていたのは、ちょっとした驚きだったけど、日本発のレーベルの企画と知って、しかと「納得」。でも、この企画盤は良い内容で良かったです。
 
 
 

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2020年12月 7日 (月曜日)

1993年の「米国西海岸ジャズ」

この盤は明らかに「ジャケ買い」。ジャジーな雰囲気溢れるイラスト。イラストのテイストは、1960年代の米国西海岸。イラストの二人、双頭リーダーの「ボブ・クーパー」と「コンテ・カンドリ」、どちらも、米国西海岸ジャズ(ウエストコースト・ジャズ)の人気ジャズマン。期待出来るよね、このジャケットだと・・・。

『Bob Cooper Conte Candoli Quintet』(写真左)。1993年6月25日、Newportでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Bob Cooper (ts), Conte Candoli (tp), Ross Tompkins (p), John Leitham (b), Paul Kreibich (ds)。テナーのクーパーとトランペットのカンドリは判るが、リズム・セクションの3人は馴染みが無い。

しかし、このジャケットである。期待は全く裏切られない。1993年のライヴ録音に拘わらず、全編、極上の「米国西海岸ジャズ」が展開される。米国西海岸ジャズが下火になったのが、1960年代前半。ボサノバ・ジャズの大ブームと入れ替えに、米国西海岸ジャズは徐々に勢いを失っていった。が、このライヴ盤では「どっこい生きていた」である。
 
 
Bob-cooper-conte-candoli-quintet-1993  
 
  
1980年代半ばに始まった、純ジャズ復古のムーヴメント。演奏内容は、米国東海岸のハードバップを焼き直し〜深化させた「ネオ・ハードバップ」がメインで、米国西海岸ジャズは復活することは無かった。純ジャズ復古のムーヴメントは東海岸限定で推し進められた訳だが、どっこい、このライヴ盤を聴けば、しっかりと西海岸ジャズも部分的ではあるが、復活していたことが判る。

この盤を録音した時点で、クーパーは1925年生まれなので68歳。1993年8月5日に亡くなっているので、逝去する1ヶ月ちょっと前の「白鳥の歌」になる。かたや、カンドリは1927年生まれなので66歳。レジェンド級の大ベテランが、実に楽しそうに、実に心地よさそうに演奏している。アレンジも良好、アドリブ展開も小粋なフレーズの連発で、やっぱり西海岸ジャズも良いよな、と感心する。

とはいえ、米国西海岸ジャズが深化した形で、現代のネオ・ハードバップの一角に食い込んだ、ということは無く、米国西海岸ジャズは完全に過去のジャズ・トレンドとなっている。米国西海岸ジャズにはそんなに深化の「糊しろ」は無いのかなあ。優れたアレンジ、聴かせるジャズを現代のトレンドで再現するだけでも価値あるアプローチだと思うのだが。素人考えかな。ともあれ、このライヴ盤、良い感じです。好盤。
 
 
 

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2020年11月20日 (金曜日)

「やっつけ録音」が大当たり

一昨日、昨日と里芋の収穫の為にブログをお休みしました。里芋の収穫、今年の夏の天候不順と酷暑で出来はイマイチでしたねえ。残念です。ついでに、畑のメンテナンス(収穫終了となった作物を抜いたり、雑草を刈り取ったり)も実施したので、一日が終わった後には、ブログを更新するエネルギーは残っていませんでした。

さて、プレスティッジ・レーベルである。手当たり次第に暇そうなジャズメンに声をかけ、スタジオで繰り広げるジャム・セッション〜リハーサル無しの一発勝負の録音。録音時期の整合性を無視した、フィーリングだけを頼りにした「寄せ集め的なアルバム編集」。ブルーノートとは正反対のレーベル運営。そんなプレスティッジだが、その「いい加減さ」が良い方向に作用したアルバムもあるから面白い。

Red Garland『All Mornin' Long』(写真左)。1957年11月15日、NYのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。ピアノのレッド・ガーランド名義のリーダー作となっているが、内容的にはリーダー無しの「ジャム・セッション」。たまたま、ガーランドがリーダーになっちゃんだろう。
 
 
All-mornin-long  
 
 
ワッとメンバーを集めて、ジャム・セッションを録音し、適当に編集してリリースする。プレスティッジのお得意の「仕業」なんだが、この盤はそれが良い方向に作用している。ネーム的にもベースだけがちょっと弱いが、他は錚々たるメンバー。そんな錚々たるメンバーが順番にソロを取って、自分の個性全開でパフォーマンスしているが、それがとても素晴らしい出来なのだ。

特にコルトレーンが良い。素晴らしいテクニックと併せて、これだけのびのびとハードバップなマナーでテナーを吹き上げているコルトレーンはなかなか聴けない。ドナルド・バードのトランペットも負けていない。ブリリアントなトランペットをテクニック宜しく吹き上げる。ガーランドの右手シングル・トーンも良いし、テイラーのドラミングも味が合って惚れ惚れする。

ワッとメンバーを集めて録音したら、それはそれは素晴らしい内容のジャム・セッションが録れちゃった、という感じの内容で、この日の音源はこの盤に収録された3曲以外に他に7曲ほどあるが、どれもが負けず劣らず素晴らしい内容。この日のジャム・セッションは何かが降りてきていたんじゃないか、と思われるくらいで、プレスティッジの「やっつけ録音」も大当たりすることがあるという好例である。
 
 
 

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