2020年7月 9日 (木曜日)

ジャズの原風景を見るような音

大雑把に言えば、おおよそ、ジャズの演奏トレンドは、1930年代は「スイング」、1940年代は「ビ・バップ」、1950年代は「ハードバップ」となる。時代毎のジャズの演奏トレンドに適応し、演奏スタイルを変えていったジャズマンもいれば、一旦、その演奏トレンドを極めたら、世の中の演奏トレンドが何に変わろうが、その演奏スタイルを変えないジャズマンもいた。

Lester Young & Teddy Wilson『Pres & Teddy』(写真左)。1956年1月13日の録音。リリースは3年後の1959年4月。ちなみにパーソネルは、Lester Young (ts), Teddy Wilson (p), Gene Ramey (b), Jo Jones (ds)。1956年のハードバップの時代には、あまり馴染みの無いジャズマンの名前が並んでいる。

双頭リーダーの片割れ、レスター・ヤングは、パーカーなど、ビ・バップ時代のジャズマン達から敬愛された「プレジデント(代表)」=愛称「プレス(Pres)」。そして、もう一方のリーダーであるテディ・ウィルソンは、スイングの雄、ベニー・グッドマンのコンボで活躍した、スイング・ピアノの代表格。スイング時代から第一線で活躍したレジェンド級のジャズマン。
 
 
Pres-teddy  
 
 
この盤が録音された時代は「ハードバップ」時代のど真ん中。しかし、盤に詰まっている音は「スイング」。プレスのテナーは、ビブラートもしっかり入ったオールド・スタイルなテナー。それでも存在感&説得力が抜群。テディのピアノはどこまでもスインギー。アドリブ・フレーズの弾き回しのリズム&ビートが「スイング」。それでいて、フレーズの響きは新しい。

ジョー・ジョーンズは、カウント・ベイシー楽団初期の「オール・アメリカン・リズム・セクション」のドラマー。そして、ジーン・レイミーは、地味ながらスイング時代に活躍したベーシスト。この二人のリズム隊のリズム&ビートは明らかに「スイング」。ジャズの原風景を見るような、4ビートの横揺れスインギーなリズム&ビートが心地良い。

時代毎のジャズの演奏トレンドに適応し、演奏スタイルを変えていったジャズマンもいれば、一旦、その演奏トレンドを極めたら、世の中の演奏トレンドが何に変わろうが、その演奏スタイルを変えないジャズマンもいた。この盤のカルテットは明らかに「後者」。この盤を聴くと、ひとつの演奏トレンドを極めたジャズマンの奏でるジャズに宿る、強烈な「普遍性」に感動するのだ。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・『You’re Only Lonely』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年5月 6日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・168

コロナウイルスに関する緊急事態宣言が発効されて以来、ステイホームの日々が続いている。週2回の食料の買い出し、一日一回の人通りを避けての散歩以外、ステイホームの毎日である。ステイホームを始めてから、振り返って見ると、ジャズ盤を聴く機会より、ジャズ盤を探索する機会が増えた。そして、「こんな盤、あったんや」という盤を見つけたりしている。

この盤はつい数年前まで、その存在すら知らなかった。もともと、オールドスタイルもテナーマンと、バリトン・サックス(略してバリサク)の名手との「ミーツもの」である。どちらのジャズマンに対しても、強い興味を持っていなかったこともある。ジャズ盤紹介本や幻の名盤本にも、まず、この盤の名前が挙がっていたのを、見たことがなかった。か、見過ごしていたのかも知れない。

『Gerry Mulligan Meets Ben Webster』(写真)。1959年11月3日と12月2日の録音。「ミーツもの」お得意のVerveレーベルからのリリースになる。ちなみにパーソネルは、Ben Webster (ts), Gerry Mulligan (bs), Jimmy Rowles (p), Leroy Vinnegar (b), Mel Lewis (ds)。米国西海岸ジャズのリズム・セクションをバックに、オールドスタイルのテナーマン、ウェブスターとバリサクの名手マリガンの2管フロント。
 

Gerry-mulligan-meets-ben-webster

 
選曲はオールドスタイルのウェブスターに合わせたのか、バラード曲中心、ミッド〜スローテンポな曲がメインの選曲。これがまあ、オールドスタイルのテナーの音とバリサク特有の重低音に「ジャスト・フィット」なのだ。オールドスタイルのテナーの中低音とバリサクの重低音のユニゾン&ハーモニーの心地良い響き。思いっ切りジャジーでファンキーでムード満点。

二人の息の合った絶妙なバラード、冒頭の「Chelsea Bridge」が素晴らしい出来。テーマ部のユニゾン&ハーモニー、そして、悠然とした、硬派ではあるが、限りなくジェントルなアドリブ展開の吹き回し。惚れ惚れする。以下「Tell Me When」「In A Mellow Tone」「"What Is This Thing Called Love」など、アレンジも良好で、スイングな吹き回しが素敵な、極上のハードバップを聴くことが出来る。

バックのリズム・セクションも絶妙のパフォーマンスを聴かせてくれる。歴代の女性ジャズボーカリストの伴奏を務めたロウルズのピアノが、とりわけ素晴らしい。堅実ベースラインのビネガー、堅実ドラムのルイスのリズム隊も硬軟自在なリズム&ビートを供給し、フロント2管のブロウを惹き立たせている。こんなに素晴らしい内容の盤が、ジャズ盤紹介本に挙がらないなんて。ここに、我がジャズ喫茶の「ジャズ喫茶で流したい」盤にエントリーさせていただきます。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.29更新。

  ・『Christopher Cross』 1979

 ★ まだまだロックキッズ       2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年5月 3日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・169

ジャズ・トランペットの好盤の聴き直し、というか、トランペットの好盤の中で、このブログでご紹介しそびれていた盤を選んで聴き直している。14年もブログを運営していて、このトランペットで「ブログでご紹介しそびれていた盤」が結構数ある。

もともと、一番好きな楽器がピアノ、そして、サックス、その次がトランペットなので、取り扱いの優先順位が低かったからかなあ、と思っている。

『The Magnificent Thad Jones』(写真左)。1956年7月の録音。ブルーノートの1527番。ちなみにパーソネルは、Thad Jones (tp), Billy Mitchell (ts), Barry Harris (p), Percy Heath (b), Max Roach (ds)。CDリイシューで追加された、ラストの7曲目「Something to Remember You By」にだけ、Kenny Burrell (g) が入る。

ジョーンズ3兄弟の次男、トランペッターのサド・ジョーンズの3枚目のリーダー作。一応、ビリー・ミッチェルとの2管フロントではあるが、明らかにサドのトランペットがフィーチャーされている。全編に渡って、このサドのトランペットが良い音を出している。速いフレーズは無いが、ミッド・テンポからスロー・テンポの曲で、少し丸い、伸びの良いブリリアントなトランペットの音が素敵だ。
 
 
The-magnificent-thad-jones
 
 
加えてアレンジが良い。どの収録曲も、この優秀なアレンジが、その曲の持つイメージをしっかりと惹き立たせている。バックのリズム・セクションもムーディーで良い雰囲気を醸し出している。ブルーノート・レーベルには珍しいトリオ構成で、職人肌バップ・ピアノのバリー・ハリス、職人肌の堅実ベースのパーシー・ヒース、そして、バップ・ドラマーのレジェンド、マックス・ローチ。雰囲気のある、上品で質感豊かなリズム&ビートを繰り出している。

CDのボートラ(ボーナス・トラックの略)については、LP時代のオリジナル盤の統一感を損ねるといった否定的な意見が多いが、この盤については「I've Got a Crush on You」「Something to Remember You By」どちらも雰囲気的に申し分無い。特に、後者には漆黒ブルージーなバレルのギターが加わっていて、ジャジーで小粋でスインギーな雰囲気がさらに色濃くなっている。

実は、僕はジャズを聴き始めた、かなり早い時期から、この盤を所有している。しかし、速いテンポのアグレッシブな演奏のが皆無の、ミッド・テンポからスロー・テンポの曲ばかりのこの盤がどうにも苦手だった。若い頃の自分にとっては、刺激不足でノンビリした雰囲気に感じた。

しかし、歳を取るにつれて、この盤のテンポとアレンジが心地良く感じる様になった。今では完璧な「お気に入り盤」。特にこの「ミッド・テンポからスロー・テンポの曲ばかり」のこの盤は、ジャズ喫茶の昼下がりに最適である。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.29更新。

  ・『Christopher Cross』 1979

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2020年4月24日 (金曜日)

豪放磊落なモンテローズ盤

以前、ジャズ盤蒐集の中で「幻の名盤」というものがあった。内容的に充実度合いが高く「名盤」の類なのだが、LPでリリースされた枚数があまりに少なく、入手したくても出来ない盤のことを「幻の名盤」と呼んだ。老舗ジャズ雑誌が特集記事や別冊を出したりして、「幻の名盤」を探し当てることがブームになった時期もある。

JR Monterose『The Message』(写真左)。1959年11月24日の録音。ちなみにパーソネルは、JR Monterose (ts), Tommy Flanagan (p), Jimmy Garrison (b), Pete La Roca (ds) 。バックのリズム・セクションに、名盤請負人バップ・ピアニストのトミー・フラナガン、ベースに重低音な鋼のベーシスト、ジミー・ギャリソン、モーダルなドラマー、ピート・ラ・ロッカというユニークなピアノ・トリオを配した、モンテローズのテナー1管のカルテット構成。

この盤は長年の間、「幻の名盤」扱いだった盤である。もともとは米国のジャズの中小レーベル「Jaro International(ジャロ)」からリリースされたが、このジャロというレーベルは、2年間という非常に短い活動期間において、僅か5タイトルしかリリースしていない幻級のマイナーレーベル。しかも、リリースされた盤については枚数が出ていないので、5タイトル全てが「幻の名盤」扱い。この『The Message』もそんな中の一枚。
 
 
The-message  
 
 
しかし、1997年、ヴィーナス・ステレオ盤CDとして、リイシューされたのだ。マスターテープがしっかり保管されていたらしく、このステレオ盤CD、音がとても良い。これでこの盤も「幻の名盤」では無くなった。さて、その内容であるが、テナー1管のワンホーン・カルテットであるが故、モンテローズのテナーの個性が良く判る。コルトレーン以降の「ストレートなブロウの新しいテナー」だが、豪快で角が立った、甘さとは無縁のビターでスクエアなブロウ。

フレーズがぶつ切りになったりするがお構いなし。勢いで吹き切る「豪放磊落」なテナーである。そんな「豪放磊落」なテナーで、全てのフレーズをしっかり吹き切るので、清々しさすら感じる。ゴツゴツしているけど切れ味は良いので、僕は気にならない。テナーマンの個性として、このモンテローズのブロウは聴いていて、実に興味深い。

バックのリズム・セクションも良い音を出している。ラ・ロッカのバスドラとギャリソンの重低音ベースが、アーバンで怪しい雰囲気を醸し出すが、名盤請負人トミフラの洒脱なピアノがそれを中和し、この盤のリズム&ビートに、ほんのり格調高さを加えているところがクール。そんなほんのり格調高いリズム・セクションをバックに、豪放磊落なモンテローズのテナー・サックス。個性のジャズです。
 
 
 

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  ・『Down Two Then Left』 1977
  ・『Silk Degrees』 1976

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2020年4月23日 (木曜日)

パーカーは避けて通れない。

サックスの好盤の聴き直しをしていて、やはり、この人は絶対に外せないなあ、と思うのだ。チャーリー・パーカー(Charlie Parker)。ビ・バップの開祖の一人で、サックスの神様と言われる。1920年8月生まれ、1955年3月逝去。僅か34歳7ヶ月の命だった。現役時代は天才アルト・サックス奏者であったが、反面、重度のジャンキー。破滅型の人生を駆け足で走り抜けた天才であった。

Charlie Parker『The Complete Savoy & Dial Master Takes』(写真左)。録音時期は、1945年から1948年に渡る。チャーリー・パーカーがサボイ・レーベル(Savoy)とダイアル・レーベル(Dial)に録音したマスタートラックのみを集めたコンプリート盤。

ジャズ入門本を紐解くと、「サックスはパーカーが一番」とある。そして、そのパーカーの名演をきくには「サボイとダイアル」が絶対、必須とされる。その絶対とされる2つのレーベルの録音がこれ。しかし、1940年代後半の録音なので、音質は悪い。パーカーのフレーズはちゃんと追える。でも、鑑賞音楽としての音質ではない。

そして、ジャズ入門本は、ジャズは別テイク、失敗テイクの存在も重要、と説く。が、別テイクは結局、マスターテイクの選から漏れた「マスターテイクに比べて、内容的に落ちるテイク」であり、即興演奏を旨とするジャズとしては、別テイクで、マスターテイクとは異なるアドリブ展開のイメージを捉えたいのだろうが、内容的に落ちるので、聴いていてもあまり楽しく無い。加えて、内容的に落ちるテイクとマスターテイクを比較しても、あんまり意味が無い。

ましてや、失敗テイクなどは「何をか言わんや」である。失敗テイクを聴いて何を「感じろ」というのか。ああ、優秀なジャズマンもこうやって間違うのか、なるほどね、と感心するのに、何か意味があるのだろうか、と思う。そのジャズマンの研究家の方々には、必要な資料かもしれないが、我々ジャズ者リスナーにとっては、あまり意味の無い代物ではある。
 
 
The-complete-savoy-dial-master-takes-1  
 
 
そう言う意味では、この盤、マスターテイクのみを集めているので、天才サックス奏者、チャーリー・パーカーの素晴らしいパフォーマンスが心ゆくまで楽しめる。パーカーの絶頂期と言われる、サボイ・レーベル(Savoy)とダイアル・レーベル(Dial)でのマスターテイク。悪いはずが無い、というか「凄い」。

この流麗で淀みの無い、歌心溢れる、高速アドリブ展開には思わず仰け反る。この盤を聴けば、パーカーのジャズマンとしての優秀性と天才度合いを体感することが出来る。後続のジャズ・サックス奏者がこぞってパーカーを第一目標とすることが良く判る。

アドリブ展開の取り回し方、前奏のアレンジ、テーマ部の扱いと吹き回し方、エンディングの扱い、ジャズ演奏の基本となるパーツ毎に、このパーカーの演奏の中にしっかりとお手本が示されている。後続のジャズ・サックス奏者は、このパーカーの偉大な遺産を理解、継承し、その遺産を発展、進化、深化させているのだ。パーカーの様に吹けないと次が無い。パーカーを理解しないと次が無い。

そんなジャズ・サックスのお手本となり、目標となる演奏が、この3枚組CDにギッシリと詰まっている。音質は悪いし、目立つのはパーカーのアルト・サックスだけ。それでも、パーカーの素晴らしいアドリブ展開を聴いているだけで、この3CDの3時間10分はあっと言う間である。

ただし、さすがにこの盤、チャーリー・パーカーがサボイとダイアルに録音したマスタートラックのみを集めた盤とは言え、ジャズ者初心者の方々には荷が重い。ジャズを聴き慣れて、ジャズマンの個性の違いが判別できる様になった、ジャズ者中級者の方々には絶対に体験して頂きたい。
 
 
 

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2020年4月21日 (火曜日)

スインギーなテナーのズート

サックスの好盤・名演の聴き直しをしているのだが、そんな好盤・名演の類にも「人気に恵まれなかった」サックス奏者が存在する。本当の原因は何故かは判らない。しかし、こうやって、好盤・名演の聴き直しをしていて、その内容は歴史に残るくらいに素晴らしいのに、どうして人気が出なかったのか、理由が良く判らないものが多い。

Zoot Sims『Down Home』(写真左)。1960年6月7日の録音。ベツレヘム・レコードからのリリースになる。ちなみにパーソネルは、Zoot Sims (ts), Dave McKenna (p), George Tucker (b), Dannie Richmond (ds)。バックのリズム/セクションも渋いメンバーで固めた、ズートのテナー・サックス1管のカルテット盤。

ズートのテナー・サックスは温和で適度な力感があって、テクニック優秀なもの。アドリブ・フレーズは音の芯が太く流麗。他に無い、音の柔らかさと芯の強い吹きっぷり。安定安心の個性的なテナー・サックスで、とにかく聴き心地が良い。僕はジャズ者初心者の頃、この盤に出会い、それ以来、40年来の愛聴盤である。

選曲がまた渋くて、冒頭の「Jive at Five」をはじめとして、古い時代の「スタンダード曲」が多く取り上げられている。1960年という時代の中で、この盤の演奏のトレンドは「ハードバップど真ん中」。モード・ジャズやファンキー・ジャズには目もくれていないところに、ズートのジャズマンとしての矜持を感じる。
 
 
Down-home-zoot-sims  
 
 
演奏それぞれに「ノリが良い」。とてもスインギーなのだ。バックのリズム・セクションの役割が大きく、ダニー・リッチモンドが叩き出すスインギーなリズム&ビートを基に、ジョージ・タッカーのウォーキング・ベースが躍動感を醸し出し、マッケンナのピアノが推進力を増幅する。このリズム・セクション、かなり強力なのだ。

そんなリズム・セクションに乗って、ズートは気持ちよさそうに、スインギーなフレーズを連発する。そう、この盤のズートのテナー・サックスは、爽快でスインギーなのだ。ズートのテナー・サックスには「癖」というものが無いので、ややもすれば、単調に聴こえてしまうきらいがあるが、この盤には、そんな懸念は全く無い。

これだけ素敵なテナーを吹きこなせるズート。もっともっと優秀盤の名前が挙がってきても良いと思うのだが、両手に余る数なのが意外。メジャーなレーベルにあまり恵まれず、そして、癖の無い流麗な聴き易いテナーが故、特に我が国では、硬派なジャズ者の方々に敬遠されたことが原因かなあ。

とにかく、ズートは「人気に恵まれなかった」サックス奏者というイメージがあるのが残念。でも、この『Down Home』は良いですよ。ジャズ者初心者からベテランまで、ジャズ者万人にお勧めです。
 
 
 
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★ 青春のかけら達  2020.04.01更新。

  ・チューリップのセカンド盤の個性



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2020年3月 5日 (木曜日)

チェットのトランペットが映える

3月である。今日は朝から北風がかなり強くて、日中、気温が上がれど体感気温は下がりっぱなしで、冬に逆戻りの感があるが、今年は暖冬傾向で暖かい日が多い。一昨日などは、4月上旬の陽気だったのだから、ちょっと早いけど春である。関西では、東大寺二月堂の「お水取り」が終わったら春、と言われるが、確か、お水取りは12日だったから、如何に今年は暖かいか、が判る。

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「春は米国西海岸ジャズ」である。暖かくホンワカした気候にピッタリやなあ、と昔から思っていて、春やなあ、と思ったら、選盤は暫く米国西海岸ジャズに偏る。お洒落なアレンジ、響きが心地良いユニゾン&ハーモニー、流麗でキャッチャーなアドリブ展開。耳に優しく、心に穏やかに響く、それでいて、やっていることはかなり高度。僕にとっては「春のジャズ」って感じなんですよね。

『Chet Baker & Crew』(写真左)。1956年7月の録音。ちなみにパーソネルは、 Chet Baker (tp), Phil Urso (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Bond (b), Peter Littman (ds), Bill Loughborough (chromatic timpani)。フロント2管(トランペット&テナーサックス)のクインテット編成に、一部、ティンパニが入る。リーダーのチェット・ベイカーについては、トランペットに専念している(CDのボートラにはボーカル入りがあるが、正式なアルバムとしては割愛)。
 
 
Chet-baker-crew  
 
 
この盤でのチェットのトランペットは溌剌としている。流麗にストレートに吹きまくっている。チェットのトランペッターとしての才能を遺憾なく発揮している。とても、当時、重度の「ジャンキー」だったとは思えない。しかし、良く聴くと、溌剌としたトランペットの響きの裏に「愁い」というか「翳り」がそこはかとなく漂っている。しかし、これが良いのだ。健康優良児のチェットなんてありえない。アンニュイで翳りがないと物足りない。

演奏の印象は明確に「米国西海岸ジャズ」。冒頭の「To Mickey's Memory」を聴くだけで直ぐに判る。整った演奏、爽快なスイング感、適度な演奏の熱量、適度にアレンジされ、熱くも無くクール過ぎることも無い。爽快感溢れる演奏がズラリと並ぶ。バックの演奏も良い感じなのだがあ、やはり、この盤はチェットのトランペットを聴く盤だろう。この盤のチェットのトラペットを聴くと、当時、トランペッターとして人気絶大だったことが良く判る。

タイトルを訳すと「チェット・ベイカーと乗組員たち」。ジャケ写がヨットなので、チェットが船長(リーダー)、バックが乗組員(サイドメン)とかけた、ちょっとお洒落なタイトル。そんな和気藹々とした雰囲気が伝わる「心地良い演奏」がギッシリと詰まっている。歴史に残る名盤とは思わないが、米国西海岸ジャズの「レベルの高さ」と「楽しい雰囲気」をよく伝えてくれる好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.02
  まだまだロックキッズ ・・・・ クールで大人な『トリロジー』

【更新しました】2020.03.01
  青春のかけら達 ・・・・ 荒井由実『MISSLIM (ミスリム)』 

 

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2020年2月23日 (日曜日)

まだまだ若い者には負けない盤

ジャズの世界では「レジェンド」と呼ばれる現役のジャズマンが、意外と元気である。生楽器って意外と体力を使うのだが、60歳、70歳を過ぎても、バリバリに吹きまくり、弾きまくる「レジェンド」が多いのには驚く。「レジェンド」級のジャズマンって、当然、演奏テクニックは高度なものを持っている。このテクニックが高度なほど、無駄な体力や肺活量を使わないのかもしれない。とにかく「レジェンド」級のジャズマンが元気に吹きまくる、弾きまくる盤に出会うと無条件に嬉しくなる。

George Coleman『The Quartet』。2019年5月20日、NYのSear Sound Studio C での録音。ちなみにパーソネルは、George Coleman (ts), Harold Mabern (p), John Webber (b), Joe Farnsworth (ds)。ジャズ・テナーの存命レジェンドの一人、ジョージ・コールマンがリーダーのアルバム。コールマンって、1935年3月生まれだから、録音当時は84歳。う〜ん凄い。

というのも、この盤でのコールマン、吹きまくっている。演奏の編成は、テナー・サックスがワンホーンのカルテット構成。フロント楽器がテナー・サックス1本なので、とにかく一人で吹きまくりである。84歳の高齢でこの吹きっぷり。テナー・サックスの音だけ聴けば、40歳〜50歳代の油の乗りきった、ベテランのサックス奏者が吹いていると感じるんだが、いやはや、コールマンは84歳です。
 
 
The-quartet  
 
 
しかも、この盤、選曲が面白い。冒頭は、ジャズクラブ「Smoke」のオーナー、Paul Stache に捧げたコールマンのオリジナル「Paul’s Call」から始まるのですが、続く2曲目は、シャンソン歌手、シャルル・トレネの美しいラブソング「I Wish You Love」。3曲目は、エリントンの小粋な名曲「Prelude to a Kiss」。続く4曲目は雰囲気がガラリと変わって、ハーブ・アルパート&ティファナ・ブラスの演奏でもお馴染み「Lollipops and Roses」。

他にもアート・ブレーキーの名作『モーニン』に収録されているゴルソン作「Along Came Betty」、カール・フィッシャー作の素敵なバラード曲「You’ve Changed」、はたまた、アントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ曲「Triste」等々、様々なスタイル、様々な志向の楽曲が並んでいる。ベテランになれば、自分の得意とするスタイルや志向の曲を固めて、演奏の負担を軽減したくなるのだが、この盤での「レジェンド」コールマンには頭が下がる思いだ。

今年85歳、モダンジャズ・テナーの至宝ジョージ・コールマンの最新作。バラエティにとんだ選曲が素晴らしく、これを全て、演奏仕切ってしまうコールマンも素晴らしい。バックを支えるリズム・セクションのピアノには、レジェンドの盟友ピアニスト、ハロルド・メイバーンが座る。このメイバーンのバッキングも見事。とにかく、この盤、二人のレジェンドのパフォーマンスが聴きもの。まだまだ若いもんには負けへんで、です。
  
  
 
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2019年12月20日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・122

ジャズのアルバムはキラ星の如くある。聴いても聴いても、新しい盤がリリースされるし、聴いても聴いても、聴いた事の無い魅力的な内容のアルバムが見つかったりする。これはいい、と自分の感性にあった素晴らしい盤に出会ったりするし、これはどうにも、とどうしても自分の感性に合わない盤もある。しかし、いずれもプロのジャズメンが創り出した素晴らしい音世界である。

昔はCDショップをはしごして、今ではネットショップやサブスクの音楽サイトを徘徊して、ジャズのアルバムを探し歩いている。まず、この探し歩いている行為自体が楽しい。そして、時々、これは、という盤に出会う。そして、その盤が一時期、ヘビロテ盤になり、そして、お気に入りの好盤となる。これこそがアルバム蒐集の醍醐味である。

『Hank Jones Trio With Mads Vinding & Al Foster』(写真)。1991年の録音。ちなみにパーソネルは、Hank Jones(p), Mads Vinding(b), Al Foster(ds)。どういう経緯で、このトリオが組成されたか判らないが、パーソネルを見ただけで聴きたくなるトリオである。どうやったら、この組合せを思いつくのだろう。
 
 
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バップ・ピアノの大御所、ハンク・ジョーンズに、ニールス・ペデルセンに並ぶデンマークの重鎮ベーシスト、マッズ・ヴィンディング、、マイルスいわく「みんなが好きなことを演奏できるリズム・パターンを設定して、そのグルーヴを永遠に保つことの出来るドラマー」、アル・フォスター。この3人がピアノ・トリオを組んだ、スタンダード・アルバム。どんな音が出てくるのか、ワクワクである。

録音当時、ハンクは73歳、マッズは43歳、アルは48歳。濃厚で成熟したハードバップが展開されるかと思いきや、非常にシャープで洗練された切れ味の良いモーダルなトリオ演奏に驚く。出てくる音は古き良きスタンダードの旋律、しかし、その響きは新しい。ファンクネスを絞り込んだ、ソリッドなアドリブ展開。縦ノリ・スインギーなリズム&ビート。当時の新伝承派よりもモダンでウォームな音作り。

いや〜、これは掘り出し物です。温故知新を地で行くような、成熟メンバーのピアノ・トリオ。ポップでお洒落でウケ狙いのピアノ・トリオとは無縁の、意外と硬派なピアノ・トリオです。アルバム・ジャケットは新装されているそうですが(写真左)、オリジナル盤のジャケット(写真右)よりは味わいがあって良いですね。とにかく、このトリオ盤、意外と好盤です。お勧め。
 
 
 
東日本大震災から8年9ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年10月 1日 (火曜日)

ポール・ブレイの未発表ライヴ盤

キース・ジャレットが「スタンダーズ」を解散して5年になる。キースの「スタンダーズ」の様な、トリオを構成する達人3人による、切れ味良く高い透明度、そして、限りなく自由度の高いインタープレイをメインとした、ECMレコードらしい、ピアノ・トリオのアルバムが途絶えて5年になる。寂しいなあ、と思っていた矢先、こんなライブ盤がリリースされた。

Paul Bley Trio『When Will the Blues Leave』(写真左)。1960年代から親交の深い「盟友」三人による、1999年3月にスイスのルガーノ-トレヴァで録られていた未発表ライヴ音源。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Gary Peacock (b), Paul Motian (ds)。達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイ。

ピアノ・トリオの「間を活かした」インプロビゼーションに最適な、ECM独特の深く透明度の高いエコーがタップリかかって、達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイの音を増幅し、それぞれの楽器の音をクッキリと浮かび上がらせる。特に、ECMレコードの創る音は、ピアノのポール・ブレイの音にピッタリ。
 
 
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ポール・ブレイのピアノは、透明感と清涼感に溢れ、クリスタルな響きのピンとエッジの立った硬質なタッチ。切れ味良く、しっかりとピアノが鳴っているなあ、と感じる、芯のしっかり入った、明確な音の響き。ああ、このピアノはECMレコード御用達のピアノの音だし、ECMレコード向きの音の響き。叩き出されるフレーズも、どこか「キースっぽい」、クラシック・ピアノの様な独特の響きを底に宿している。

ベースのピーコックのテクニックが素晴らしい。ほとんどフリーなんだが、しっかりと伝統のジャズの雰囲気をキープしたアコベ。アドリブ・フレーズは創造性に富んで、柔軟な弾きっぷり。ピーコックしか出せない自由なベースライン。モチアンのドラムも同様に創造性に富む。リズム&ビートをしっかりとキープしながら、自由度の高いドラミングを披露してくれる。モチアン唯一六のドラミング。

ピアノでリーダーのポール・ブレイは1932年、カナダはモントリオールの生まれ、2016年、84歳で逝去。ベーシストのゲイリー・ピーコックは1935年、米国アイダホ州生まれ、まだまだ現役。ドラムのポール・モチアンは1931年、米国ペンシルヴェニア州の生まれ、2011年、80歳にて逝去。トリオの3人中、2人が鬼籍に入っている。が、この残された音源の内容は素晴らしい。久々のECMレコードらしいピアノ・トリオ盤の出現である。
 
 
 
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