2019年10月 1日 (火曜日)

ポール・ブレイの未発表ライヴ盤

キース・ジャレットが「スタンダーズ」を解散して5年になる。キースの「スタンダーズ」の様な、トリオを構成する達人3人による、切れ味良く高い透明度、そして、限りなく自由度の高いインタープレイをメインとした、ECMレコードらしい、ピアノ・トリオのアルバムが途絶えて5年になる。寂しいなあ、と思っていた矢先、こんなライブ盤がリリースされた。

Paul Bley Trio『When Will the Blues Leave』(写真左)。1960年代から親交の深い「盟友」三人による、1999年3月にスイスのルガーノ-トレヴァで録られていた未発表ライヴ音源。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Paul Bley (p), Gary Peacock (b), Paul Motian (ds)。達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイ。

ピアノ・トリオの「間を活かした」インプロビゼーションに最適な、ECM独特の深く透明度の高いエコーがタップリかかって、達人レジェンド3人による限りなく自由度の高いインタープレイの音を増幅し、それぞれの楽器の音をクッキリと浮かび上がらせる。特に、ECMレコードの創る音は、ピアノのポール・ブレイの音にピッタリ。
 
 
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ポール・ブレイのピアノは、透明感と清涼感に溢れ、クリスタルな響きのピンとエッジの立った硬質なタッチ。切れ味良く、しっかりとピアノが鳴っているなあ、と感じる、芯のしっかり入った、明確な音の響き。ああ、このピアノはECMレコード御用達のピアノの音だし、ECMレコード向きの音の響き。叩き出されるフレーズも、どこか「キースっぽい」、クラシック・ピアノの様な独特の響きを底に宿している。

ベースのピーコックのテクニックが素晴らしい。ほとんどフリーなんだが、しっかりと伝統のジャズの雰囲気をキープしたアコベ。アドリブ・フレーズは創造性に富んで、柔軟な弾きっぷり。ピーコックしか出せない自由なベースライン。モチアンのドラムも同様に創造性に富む。リズム&ビートをしっかりとキープしながら、自由度の高いドラミングを披露してくれる。モチアン唯一六のドラミング。

ピアノでリーダーのポール・ブレイは1932年、カナダはモントリオールの生まれ、2016年、84歳で逝去。ベーシストのゲイリー・ピーコックは1935年、米国アイダホ州生まれ、まだまだ現役。ドラムのポール・モチアンは1931年、米国ペンシルヴェニア州の生まれ、2011年、80歳にて逝去。トリオの3人中、2人が鬼籍に入っている。が、この残された音源の内容は素晴らしい。久々のECMレコードらしいピアノ・トリオ盤の出現である。
 
 
 
東日本大震災から8年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年9月25日 (水曜日)

モダンなスイング・テナーが良い

モダン・スイング・テナーの重鎮スコット・ハミルトン(Scott Hamilton)。ロードアイランド州プロヴィデンス出身、1954年9月12日の生まれ、今年で65歳。1977年のデビュー盤『Scott Hamilton Is a Good Wind Who Is Blowing Us No Ill』を、僕は1980年に聴いている。これが当時「モダンなスイング・テナー」として、ちょっとした変わり種ジャズマンとして評価されたと記憶している。

あれから早40年。変わり種、モダンなスイング・テナーのスコット・ハミルトン(僕は「スコハミ」と呼んでいるので、この後は「スコハミ」で通します)は、ずっと元気に、スイング・テナーを吹き上げている。スコハミの素晴らしいところは、彼は演奏スタイルが全く変わらない。演奏スタイルの基本は「ハードバップ」。これが40年間、一貫して続いている。感服の至りである。

Scott Hamilton『Street of Dreams』(写真左)。今年7月のリリース。ちなみにパーソネルは、Scott Hamilton (ts), Dena Derose (p), Ignasi Gonzalez(b), Jo Krause (ds)。2017年作『Moon Mist』と同メンバーで録音されたスコハミのワンホーン・カルテット。実力派弾き語り女性ピアニスト、デナ・ディローズのピアノをフィーチャーしている。
 
 
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冒頭の1曲目から「If I Were A Bell」から、余裕と安心のハードバップである。有名なイントロ、キンコンカンコンというチャイムの音を模したテナーのゆったりとしたブロウ。このゆったりとしたイントロから味がある。とにかく、スコハミのテナーの音が実に良い。スッと伸びた暖かいトーンと鼻歌を唄うようなフレーズ。歌心満点のアドリブ展開には惚れ惚れする。

デナ・ディローズのピアノをメインとしたリズム・セクションが、これまた、暖かで弾力があって温和な音で良い雰囲気。絵に描いた様な「ハードバップなリズム・セクション」。良い感じだ。こんなにハードバップなリズム・セクションをバックにしているのだ。スコハミはとても気持ちよさそうに、スイング・テナーを吹きまくる。演奏される曲はどれもが、お馴染みのスタンダード・ナンバー。これがまた良い。

ハードバップの全盛期から既に半世紀以上が経っている。ハードバップを基調とするスタンダード・ナンバーの演奏。手垢が付いて聴き飽きた演奏かと思いきや、まだまだ新鮮な響きが美しく、アドリブの展開はイマージネーション豊かで、全く以て飽きが来ない。不思議なことだが、これがジャズの面白いところ。まだまだ、ハードバップな演奏は深化していくに違いない。
 
 
 
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2019年9月20日 (金曜日)

王様「サッチモ」は最高である

この2〜3日で一気に涼しくなった千葉県北西部地方。もう夏の猛暑が戻ってくることは無い。と感慨に耽っている間に、もう秋分の日である。確かに日が短くなってきたことを強く感じるようになった。いよいよ、物寂しい秋の夕暮れである。しかし、これだけ涼しくなると、どんな内容のジャズもOKである。

Louis Armstrong and His All-Stars『Satch Plays Fats』(写真左)。1955年4月26日、5月3日の録音。Columbia レコードからのリリース。プロデュースは「George Avakia」。1954年録音の『プレイズ・W.C.ハンディ』と1955年録音の本作が「コロンビアの傑作2枚」である。

1954年録音のハンディ集で緊迫感が心地良かったが、この1955年録音は「ファッツ・ウォーラー集」。一聴すれば直ぐ判るが、アルバムの演奏全体がリラックスした雰囲気に包まれている。これがこの盤の一番の聴きどころ。サッチモ(ルイ・アームストロングの愛称)のボーカルもホンワカ長閑で暖かく、トランペットは温かみのある「ブリリアントな音」に包まれる。
 
 
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トロンボーンのトラミー・ヤングをはじめ、クラリネットのバーニー・ビガードなど、サッチモと気心の知れた仲間の演奏がとても心地良い。そんなバックに恵まれて、サッチモはボーカルにトランペットに、実にリラックスした、溌剌としたプレイを聴かせてくれる。マイルス・デイビスいわく「ルイが悪かったときは記憶にない」。

もちろん、演奏のスタイルはハードバップやモードではない。スイング・ジャズのスタイルではあるが、極端なスタイルへの傾倒は無い。ここにあるのは、聴いて心地良い「ジャズ」である。サッチモのジャズ。4ビートが心地良く、サッチモのダミ声ボーカルが心地良く、サッチモのブリリアントなトランペットが心地良い。

僕は若かった頃、このサッチモのダミ声ボーカルが苦手で、トランペットの凄さが理解出来なかった。若気の至り。いつ頃からだろう、サッチモの良さが理解出来る様になったのは。確か40歳を過ぎた頃かな。つまりは、サッチモを理解するには年齢が必要なのかなあ。でも、歳を取ることで、若い頃よりもアドバンテージが取れるというのは、意外と嬉しいものだ。
 
 
 
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2019年9月10日 (火曜日)

サッチモの素晴らしさを聴く

ジャズを聴き始めた頃、僕は「ルイ・アームストロング(愛称サッチモ)」の良さが良く判らなかった。もともと彼の事をボーカリストだと思っていたこともある。あの「ダミ声」がどうにも理解出来ない。また、ジャズ者初心者なので、彼のトランペットの凄さも判らない。いやはや、若気の至り、汗顔の至りである。

それでも、あのマイルス・デイヴィスをして「サッチモは偉大だ。彼が歴代での最高のトランペッターだ」とべた褒めである。というか、有名なジャズメンというジャズメンが全て、サッチモは最高だ、と言う。これには焦った。なんで僕はサッチモの良さが判らないのか。サッチモの存在は僕のコンプレックスのひとつだった。

『Louis Armstrong Plays W.C. Handy』(写真)。1954年7月12日の録音。Columbiaレコードからのリリース。プロデューサーは George Avakian。Louis Armstrong and His All-Starsの演奏になる。パーソネルを見渡しても、知っている名前はいない。演奏の雰囲気を聴いていると、皆、スイング・ジャズ時代からのメンバーであろう。これが実に良いジャジーな雰囲気を醸し出している。
 
 
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ジャズ者初心者の時代以降、この盤を再び聴いたのは、今から20年ほど前、年齢的に40歳を過ぎた頃である。さすがに、20年ほどジャズを聴き続けて来たことはある。サッチモの「ダミ声」ボーカルが、ダンディズム溢れる、良い雰囲気のボーカルだと感じる様になり、この魅力的な低音「ダミ声」ボーカルで、W.C. Handyの名曲を歌い、トランペットを吹き上げるのだから堪らない。

そして、サッチモのトランペットにも参った。まず音が大きく綺麗でブリリアント。トランペットはこうならして欲しい、という好例がこのサッチモのトランペットにある。そして、歌の伴奏でのサッチモの吹き回しが、これまた「素敵」だ。歌の合間に鼻歌のように入るチェイスや、間奏でのソロ・パフォーマンスは歌心とダンディズム溢れるブリリアントな吹き回しで、ボーカルの存在を一層、際立たせる。

ジャズを聴き初めて20年ほど経って、やっとサッチモの素晴らしさが理解出来た。嬉しかった。コンプレックス解消である。今では、時々、サッチモ盤を引っ張り出しては、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の昼下がりに流している。サッチモの魅力的な低音「ダミ声」ボーカルに身を委ね、ブリリアントなトランペットに耳を傾ける。全く以て「至福の時」である。
 
 
 
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2019年6月22日 (土曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・70

このサックスのレジェンドも、我が国での人気はイマイチの様な気がする。そのサックスの魅力に填まったジャズ者の方々は「大のお気に入り」のテナー・サックス奏者の1人に絶対になるのだが、何故か日本のジャズ盤紹介本やジャズ雑誌のアルバム紹介には、なかなかこのテナー・サックスのレジェンドの名前は挙がらない。
 
そのレジェンドの名は「デクスター・ゴードン(Dexter Gordon)」。愛称「デックス」。1923年、米国ロサンゼルスの生まれ。1940年代後半にはビ・バップの流行の中で優れた内容のリーダー作をリリース。『Dexter Rides Again』などがそうである。1950年代前半では『Daddy Plays the Horn』『Dexter Blows Hot and Cool』などのハードバップ初期の好盤をリリース。日本のジャズ盤紹介本などで「デックス」の名前が挙がるのはこの辺のリーダー作である。

しかし、1950年代後半は麻薬の影響でスランプに陥る。そして、1960年代初頭から1976年にかけて渡欧し、フランスやデンマークを拠点に活動。この期間には、ブルーノートやスティープルチェイスに内容の濃い好盤を結構な数、リリースしているのだが、我が国のジャズ盤紹介本でそのアルバム名が挙がることは殆ど無い。そして、1976年、米国に戻り、米国での活動を再開する。コロンビアを中心に好盤を連発するのだが、これがまた、我が国のジャズ盤紹介本にそのアルバム名が挙がることは無い。
 
 
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Dexter Gordon Quartet『Manhattan Symphonie』(写真左)。1978年5月の録音。ちなみにパーソネルは、George Cables (p), Eddie Gladden (ds), Rufus Reid (b), Dexter Gordon (ts) 。デックスのサックス1管、ワンホーン・カルテットである。リズム隊は、ケイブルスをピアノに、ベースにリード、ドラムにグラッデン。優れた中堅どころの名手達である。

LP時代では2枚組のボリューム。デックスのテナー・サックスは1940年代から殆ど変わらない。どこか哀愁漂う、大らかで豪快&繊細なテナー。テクニックにも優れるが、彼のブロウは常に「歌心」優先。John Coltraneの名演カバーの「Moment’s Notice」、Donald Byrd作「Tanya」、12分超に及ぶ有名スタンダード「Body And Soul」等、歩く速さの様なミッドテンポの曲がメインで、悠然としたデックスのテナーが心ゆくまで楽しめる。

決してテクニックに走ることは無い。しっとりしたメロウな演奏をメインに、デックスのテナー・サックスが悠然と鳴り響く。どこか哀愁漂う、大らかで豪快&繊細なデックスのテナー。実に魅力的で思わず聴き惚れてしまう。LP2枚組のボリュームも決して飽きることは無い、どころか一気に聴き切ってしまうほど。バックのリズム隊の健闘しており、サックス1管、ワンホーン・カルテットとして、クオリティの高い、ナイスな内容の好盤である。
 
 
 
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2018年6月16日 (土曜日)

フリードマンの魅力を再認識

ジャズの世界は、21世紀に入って、若手もどんどんレビューしてくるのだが、意外とベテラン勢も健闘している。この辺がジャズの面白いところで、若くて勢いがあれば良いという単純なものでは無い。年齢を重ねての「味」や「深み」もジャズにとって重要な要素で、かなりの年齢を重ねたベテランも、モチベーションとテクニック次第で十分に活躍できるのだ。

ドン・フリードマン(Don Friedman)。もそんなベテランの一人である。1962年録音の『Circle Waltz』だけが、突出して代表作として紹介されるピアニストである。個性の基本は「ビル・エヴァンス」。評論家筋からはエヴァンス派の一人で、エヴァンスと瓜二つな個性とされるが、フリードマンのピアノはエヴァンスの耽美的で流麗なタッチの部分だけをピックアップしたもので、エヴァンスの単なるコピーでは無い、と僕は評価している。 

但し、エヴァンスの潜在的資質であるバップ・ピアノの部分、いわゆるバリバリ弾きまくる部分がフリードマンには希薄なので、耽美的で流麗なタッチが中心の中で、どこまで演奏にメリハリを付けるか、という部分がポイントになる。この部分が疎かになると、フリードマンのリーダー作は一気に「地味な」パフォーマンスになってしまう。
 

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Don Friedman『Prism』(写真左)。1997年7月、ミラノでの録音。2008年のリリース。ちなみにパーソネルは、Don Freidman (p), Marco Ricci (b), Stefano Bagoli (ds)。イタリア人リズム陣と吹き込んだピアノ・トリオ作品になる。ホールで演奏しているかのような、余韻を残した澄んだ音色が心地よく、欧州の録音やなあ、と感心する。

21世紀に入って、活発な活動が頼もしいフリードマンであったが、従来の耽美的で流麗なタッチに加えて、力強いタッチを織り交ぜる様になり、以前よりプレイにメリハリが付いていて、アルバム全編に渡って緩むことは無い。逆に、柔軟でタイトなイタリア人リズム隊を得て、硬軟自在にアドリブ・フレーズを展開する。

フリードマンは、1935年生まれなので、この盤の録音時は62歳。脂がのりきった大ベテランの域に達した年齢。その年齢と経験を活かした、充実感溢れるピアノ・トリオのパフォーマンスは見事である。そして、この盤を録音した19年後、2016年に81歳で永眠する。忘れかけていたフリードマンの魅力を再認識させてくれた、今回のこの1997年録音のリリースの意義は大きい。

 
 

東日本大震災から7年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月26日 (日曜日)

「ハッピーな演奏」が実に良い

ジャズはコンスタントに新作をリリースし続けている。我が国では、ジャズはマイナーな音楽ジャンルと言われて久しい。しかも難解な音楽で苦手だ、聴く気にならない、という人が多い。それなのに我が国でも、なぜ一定数、毎月毎月、コンスタントに新作がリリースされ続けているのか。不思議と言えば不思議である。

ジャズは年齢がいけばいくほど、奥が深く渋みが出て、味わいの深いものになる。これは演奏する方も聴く方も同じで、ジャズにおいては、ベテランの役割は重要である。60歳以上のベテランの新作も、かなりの割合でリリースされ続けている。これは実に喜ばしいことである。ベテランのプレイは滋味に富んでいる。聴き心地が良く、聴き応えがあるものが大多数である。

Vincent Herring『Hard Times』(写真左)。先月の下旬のリリース。ちなみにパーソネルは、Vincent Herring (as, ss), Cyrus Chestnut (p, fender rhodes), Yasushi Nakamura (b), Carl Allen (ds)。special guests : Nicolas Bearde (vo), Russell Malone (g), Steve Turre (tb), Brad Mason (tp), Sam Dillon (ts)。サイラス・チェスナットのピアノをベースにしたリズム・セクションに、ヴィンセント・ハーリングのサックスのワンホーン・カルテットがメイン。
 

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現代ジャズ・アルトのレジェンド、ハーリングが溌剌としたプレイを繰り広げている。バックは、長年の盟友、チェスナットのピアノ・トリオ。これがまた、実に具合が良い。極上のハードバップ演奏が実に心地良い。この盤の演奏を聴いていると、難しい理屈などいらないよ、と言われているみたいな「ハッピーな演奏」が実に良い。

「音楽は常に私にとってポジティブなものでした。音楽によって私はいつも気分を持ち直すことができたのです」とはハーリングの弁。よって「少なくとも1時間くらいは、現代生活の混乱を和らげられるような作品にしたい、と願って制作」された、とのこと。良い話である。確かに、この作品は「ハッピーな内容」で埋め尽くされている。

聴いていて、心から「ジャズって良いなあ」と思える、素敵な盤である。ネオ・ハードバップの良いところがギッシリと詰まっている。こういう盤が、今、この時代にリリースされることを頼もしく思う。ジャズを聴いてきてよかったなあ、と思える瞬間である。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年5月27日 (土曜日)

(欧州ジャズ+米国ジャズ) な盤

このところ、梅雨空の様に鬱陶しい曇り空が続く。昨日などは午前中はまとまった雨。久し振りに雨道具総動員である。が、今日は朝から回復基調。午前中は夏の到来を告げるような蒸し暑い陽気。午後から空気が入れ替わったのか、涼しい風が吹き抜けて、半袖ではちょっと肌寒さを感じる清々しい陽気に。

こういう清々しい初夏の陽気の中、耳を傾けるジャズは「欧州ジャズ」が良い。しかし、ブルージーでファンクネス濃厚な米国ジャズも捨てがたく、その双方のジャズの雰囲気を併せ持つジャズ盤は無いのか、と思いを巡らす。と、あったあった。欧州ジャズと米国ジャズのハイブリッド盤の様な雰囲気を持った盤が。

Sacha Distel & John Lewis『Afternoon In Paris』(写真左)。1956年12月、パリでの録音。ちなみにはパーソネルは、John Lewis (p), Sacha Distel (g), Barney Wilen (ts), Pierre Michelot, Percy Heath (b), Connie Kay, Kenny Clarke (ds)。オリジナルLPのA面3曲のベースとドラムがPierre MichelotとConnie Kay、B面3曲がPercy HeathとKenny Clarkeとなっています。
 

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以前より、パリに対する限りない憧れを抱いていたジョン・ルイス(写真右)が、フランスの人気ジャズ・ミュージシャン、サッシャ・ディステル、バルネ・ウィラン、ピエール・ミシェロとパリで録音した盤。この盤のタイトル『Afternoon In Paris』は録音事情「そのまま」。フランスのジャズメン3人の演奏の内容が良い。米国ジャズメンと対等の濃密で個性的な演奏に耳を奪われる。

盤全体、とても洒脱な演奏になっています。とっても趣味の良いハードバップ。繊細さ流麗さ有り、ダイナミックな力感のある展開も有り。それでいて、演奏の雰囲気は、ブルージーでファンクネス濃厚な米国のジャズとは少し異なる、ちょっとあっさりとしたファンクネス希薄な、そう、欧州ジャズ独特のクラシックの素養をベースとした、耽美的でリリカルな音の響き。

録音も良く、演奏の良さと相まって、実に清々しい堅実な内容のハードバップです。フランスのジャズって、お国柄、ちょっとラフな印象があったので、この盤のカッチリした内容にちょっとビックリ。大向こうを張る様なジャズではありませんが、玄人好みの渋い内容の盤についつい耳を傾ければ、今日もそろそろ夕暮れ時。良い一日でした。

 
 

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2017年2月15日 (水曜日)

角の丸い優しい低音のバリサク

トロンボーンの魅力的な低音も良いが、僕はバリトン・サックス(略してバリサク)の低音も大好きだ。ジャズの世界では、バリサクはちょっと変わり種ではあるが、その魅力的な低音を武器に、意外と人気のフロント楽器である。

そんなバリサク奏者のレジェンドに「Gerry Mulligan(ジェリー・マリガン)」がいる。米国西海岸ジャズの重鎮であり、そのバリサクの腕前もさることながら、アレンジの才に優れ、米国西海岸ジャズのキーマンの一人として、今や「伝説的存在」となっている。

そんなジェリー・マリガンであるが、マリガンのバリサクは、通常のバリサクとはちょっと違う。通常のバリサクの印象は「男性的な骨太なブリブリッとした豪快な重低音」が魅力であるが、マリガンのバリサクは違う。マリガンのバリサクは優しい。マリガンのバリサクの低音は角の丸い優しい低音である。

そんな角の丸い優しい低音のバリサクを心ゆくまで堪能するには、現代の録音技術を駆使した、良い音で録れたアルバムが一番良い。そんなアルバムあるかいな、と探したら、あったあった。Gerry Mulligan『Dream a Little Dream』(写真左)。ジャケットもなかなか好印象。このジャケットを見る限り、内容は良い、と見た(笑)。
 

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1994年の作品。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Dean Johnson (b), Ron Vincent (ds), Bill Mays, Ted Rosenthal (p)。テッド・ローゼンタルのピアノを核にしたピアノ・トリオをリズム・セクションに、フロントにマリガンのバリサクのワンホーン。所謂「ワンホーン・カルテット」である。

ワンホーン・カルテットの良いところは、フロント楽器の良さを心ゆくまで感じることが出来ること。この盤はマリガンのバリサクが実に良く録れている。選曲も良い。マリガンの自作曲を織り交ぜながらも、渋いスタンダード曲中心の選曲。優しい低音のマリガンのバリサクが、印象的なフレーズを吹き上げていく。

バリサクの印象がガラッと変わる好盤です。バックのテッド・ローゼンタル中心のピアノ・トリオの演奏が実に小粋。とっても趣味の良い、小気味の良いピアノ・トリオの演奏がマリガンのバリサクをしっかりと支え、盛り立てていきます。輪郭がハッキリクッキリ、穏やかな躍動感が魅力のピアノに、小技が冴える堅実なドラム、そして、しっかりと演奏の底を支えるベース。

バックのリズム・セクションが優秀なワンホーン・カルテットに駄盤無し。この盤は、とりわけ、フロントのバリサクがレジェンド級のジェリー・マリガンですから悪かろう筈が無い。ジャケットのイメージ通り、夜の静寂の中でしっとりと聴き込むのに最適な、優しいバリサクの音色が魅力の好盤です。ジャズ者万民にお勧め。

 
 

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2016年12月16日 (金曜日)

エロル・ガーナーは素晴らしい

最近、日本の若手ジャズ・ピアニストの談話の中で、このピアニストの名前が良く出てくる。聞けば意外に感じる「エロル・ガーナー(Erroll Ganer)」。バップ系のピアニストでは無い。それ以前、モダン・ジャズ以前、スイング系のピアニストで「ビハインド・ザ・ビート」と形容される独特の演奏が個性とされる。

そんなエロル・ガーナーであるが、このピアニストの代表作が『Concert By The Sea』(写真右)。しかし、このアルバムはLP時代、1枚のアルバムで収録時間は40分そこそこ。その40分そこそこの中にノリノリの「ビハインド・ザ・ビート」が展開される。

なんとなく、エロル・ガーナーの個性を理解し始めた頃に終わってしまう、僕にとっては、そんな物足りなさが「てんこ盛り」のアルバムだった。収録時間が短いのか、乗りきれないまま、理解しきれないまま、終わってしまうような、そんな物足りなさ。

それが、である。長生きしているものである(笑)。昨年のことである。この『Concert By The Sea』のコンプリート盤がいきなり出た。『The Complete Concert By The Sea』(写真左)。1955年9月のライブ録音。ちなみにパーソネルは、Erroll Garner (p), Edie Calhoun (b), Denzil Decsta Best (ds)。一応、ピアノ・トリオの体である。

CD3枚組、トータルで2時間半強。これだけ長尺だと、やっとのことで、エロル・ガーナーのピアノ・プレイを心ゆくまで堪能出来る。逆に、途中で飽きるのではないか、という懸念も出てくる。とにかくトータルで2時間強の中で、ノリノリの「ビハインド・ザ・ビート」が展開。
 

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しかし、聴き終えて「圧倒的」であった。2時間半強の「ビハインド・ザ・ビート」の饗宴。飽きるどころか、ノリノリの一気に聴き終える。迫力満点、ドライブ感満点のガーナーのアドリブ展開。エロル・ガーナーと言えば「ビハインド・ザ・ビート」ばかりがクローズアップされるが、それだけでは無い。

ガーナーのピアノは、スイング・ピアノの雰囲気そのままに、アドリブ展開が「ビ・バップ」。ノリの幅が広く、スイング感が強烈。アドリブ展開の時の右手の展開がクラシック・ピアノの様に「流麗」。それでいて「ビハインド・ザ・ビート」を織り込むことで、ファンクネスを強烈に印象付ける。

ガーナーのピアノは「ノリに乗る」。ソロ・ピアノの展開だって、トリオ演奏の展開だって「ノリに乗る」。しかし、展開の流麗さが、その「ノリ」を「いやらしく」聴かすことは無い。かつ、加えてタッチが硬質。フレーズの音を拾いやすい程の硬質なタッチ。明朗で判り易い、そしてノリが良くスインギー。

なるほど、このコンプリート盤を聴いて、ガーナーのピアノ・プレイの良さが十分に理解出来て、彼のピアノの良さが良く判った。最近の若手ピアニストの中で人気が高いのも頷ける。温故知新。21世紀も15年が過ぎた現時点において、エロル・ガーナーのプレイ・スタイルって、意外と新しく響くのかもしれない。

 
 

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