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2019年2月28日 (木曜日)

JLCOのジョン・ルイス作品集

リンカーン・センターは、ニューヨークのアッパー・ウエスト・サイドにある総合芸術施設。そのセンターの1部門が「Jazz at Lincoln Center(略称JALC)」。JALCの芸術監督はウィントン・マルサリス。このウィントンが率いるジャズ・オーケストラが「Jazz at Lincoln Center Orchestra(JLCO)」。JALCの常設オーケストラである。ウィントンが主宰するジャズ・オーケストラなので、設定されるテーマは真面目そのもの。

そう言えば、最近、ウィントンの新作を見なくなった。いつの頃からか、ブルーノート・レーベルからの新作のリリースが途絶え、マイナー・レーベルから何枚かリリースしている。逆に、ウィントンが出演するアルバムはJLCOものが半数以上を占めるようになる。つまり、21世紀に入ってからは、ウィントンを聴くなら「JLCOもの」は外せない、という状況になっている。

Jazz at Lincoln Center Orchestra『The Music of John Lewis』(写真左)。今回、なかなか楽しめたJLCOものがこれ。2013年1月19日の録音。モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)のピアニストであり、音楽監督でリーダーでもあるジョン・ルイスの作品集。ジョン・ルイスはクラシックに根ざした音楽理論をジャズに持ち込んだりして、ちょっとアカデミックなところがあるんだが、作曲家としてはなかなか印象的な曲を沢山書いている。
 

The_music_of_john_lewis_jlco  

 
そんなジョン・ルイス作の名曲の数々を、ウィントン・マルサリス率いる名門JLCOがスモールコンボ編成からビッグバンド・スタイルまで様々なフォーマットで演奏している。これが聴きもの。全編に渡ってアレンジがふるっている。演奏の編成ごとに最適なアレンジが施されていて、曲毎に明確な変化があって聴いていて楽しい。ジャズならではのアレンジの多彩さを存分に楽しむ事が出来る。

このアルバムでも、ウィントンのトランペットは申し分無い。非の打ち所が無くて逆に印象に残りにくいのが玉に瑕ではある。逆に、ニューオリンズのジャズピアニスト、ジョナサン・バティストをフィーチャーした演奏の数々は印象に強く残る。ジョン・ルイスの曲のフレーズが米国南部のルーツ色豊かなジャズ・ピアノにぴったり合うとは、ちょっとビックリである。

ジョン・ルイス作の楽曲を判り易くポップにアレンジして、オーケストラで演奏するなんて発想がユニークですね。そんなユニークな発想を、ジャズとして先端をいく「ネオ・ハードバップ」な演奏に昇華しているところはJLCOのポテンシャルの高さを物語っています。ジョン・ルイス作の楽曲のフレーズを楽しむも良し、ジャズ・オーケストラの変幻自在な演奏を楽しむも良し、この「JLCOもの」は、なかなかの内容です。

 
 
東日本大震災から7年11ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年10月23日 (火曜日)

ウィントンの考えるブルース集

ウィントン・マルサリスは、ジャズ・トランペットの代表的存在、とされるが、振り返ってみると「決定打」に乏しい、と僕は感じている。デビュー盤の『ウィントン・マルサリスの肖像』は素晴らしかった。しかし、それ以降、どうにも良いアルバムは出すには出すんだが、聴いていて「どこかつまらない」。

ウィントンがリーダーのそれぞれのアルバムにはテーマがあるみたいなんだが、それを生真面目に100%の力で表現しようとする。しかも、そのテーマについて、研究に研究を重ね、あらゆる好要素を集めて演奏に散りばめる。そこにウィントンの途方も無いテクニックを駆使して、その好要素を全て完璧に演奏してしまう。見事という他ない。しかし、ちょっと窮屈で遊びが無くて息が詰まる思いに駆られる。

Wynton Marsalis『Thick in the South : Soul Gestures in Southern Blue, Vol. 1』(写真左)。1991年のリリース。タイトルからも判る様に企画ものである。今回のテーマは「ブルース」。Vol. 1〜3まで、3枚のブルース集を1991年に集中してリリースしている。

しかしなあ。先のスタンダード集は頭でっかちで作られている感が強く、高い演奏テクニックを嫌と言うほど聴かされ、はっきり言って、Vol. 1以外は「面白く無かった」。このブルース集もその二の舞ではあるまいか。
 

Thick_in_the_south

 
Wynton Marsalis (tp), Joe Henderson (ts), Marcus Roberts (p), Robert Hurst (b), Elvin Jones, Jeff "Tain" Watts (ds)。パーソネルを見て、ちょっとホッとする。

フロントの相棒に、捻れテナーのベテラン、ジョーヘンを配し、ドラムには、伝説のポリリズム、レジェンド級のドラマー、エルビンが座る。この2人の存在が大きい。マルサリスの仲間である「新伝承派」で固めていない分、頭でっかち感、作られている感、テクニックひけらかし感が押さえられていて、なかなか充実した内容になっている。

テナーのジョーヘンが気持ちでブルースを吹き上げ、エルビンは「血」でブルージーなポリリズムを叩きまくる。そこに、マルサリスを始めとする「新伝承派」の面々が絡んでいく。頭でっかちでは太刀打ち出来ない。「損伝承派」の面々も気持ちと「血」でブルースを紡ぎ上げていく。

テクニックひけらかし感は抑制されたが、まだまだテクニックを前面に出しすぎるきらいはあるが、まずまずよく出来たブルース集に仕上がっている。ブルースのジャズ的解釈には「独りよがり感」は感じるが、ウィントンの解釈として聴けば、これはこれでアリかな、と思う。我が国ではあまり話題に挙がるアルバムでは無いが、一聴に値する好盤だと思います。

 
 

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2018年9月 7日 (金曜日)

なんだか扱いが難しいモンク集

ウィントン・マルサリスの「Standard Time」シリーズは全6作。ウィントンの考える「スタンダード曲の演奏」がズラリと並ぶ。スタイルは、オールド・スタイルからネオ・ハードバップ。いわゆるデキシーランド・ジャズからハードバップまで。どうも、ウィントンのジャズの範疇は、この「デキシーランド・ジャズからハードバップまで」らしい。

しかも、このスタンダード曲集はどれもが「作り込んだ感」が満載。過去のハードバップを研究し、自分にとって良い響きのハードバップの良いところを寄せ集め、考え抜いたアレンジに乗せる。感性に任せた即興演奏の産物ではない。「頭を使ったジャズ」である。演奏自体もハイテクニックな非の打ち所のないもの。クールを通り越して人工的ですらある。

Wynton Marsalis『Standard Time, Vol. 4: Marsalis Plays Monk』(写真左)。1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Wessell Anderson (as), Wycliffe Gordon (tb), Eric Reed (p), Ben Wolfe, Reginald Veal (b), Herlin Riley (ds), Walter Blanding, Victor Goines (ts)。う〜ん、ほとんど知らないジャズメンばかり。辛うじて、ピアノのエリック・リードはお気に入りのピアニストの一人。
 

Standard_time_vol4

 
このスタンダード・タイムの4作目はタイトル通り「セロニアス・モンク集」。セロニアス・モンクのオリジナル曲が13曲。圧巻である。このセロニアス・モンク集でも「頭を使ったジャズ」は全開。過去のセロニアス・モンクの演奏をよく聴き込み、セロニアス・モンクの曲をよく研究している。セロニアス・モンクの曲の良いところを集めて凝縮し、新しい響きのセロニアス・モンクを「再構築」している。即興演奏の香りはあまりしない。

頭で考え、頭で演奏した「セロニアス・モンク」。モンク独特の響き、音の飛び方がいかにも「人工的」。知力を尽くして、今までのセロニアス・モンクの演奏の中で、ウィントンが好きな音を、ウィントン好みのアレンジと高テクニックで再現している。理路整然としたセロニアス・モンク。しっかりとアレンジされているので、モンク本人の様な「サプライズ」は全く無い。

ここまで、理路整然とされると、セロニアス・モンク集と言われても、どこがセロニアス・モンクなんだろう、と思ってしまう。確かによく考え、よく作り込んだなあ、と感心する。内容はなかなかのもの。でも、モンクの曲と演奏を理路整然と再構築するには無理があると思うなあ。よって、聴いてみると、上手いんだが、なんだかつまらない雰囲気が漂う。モンクの曲を理路整然と演奏してもなあ。でも、中の演奏は高度で内容の濃いもの。なんだか扱いが難しいアルバムです。

 
 

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2018年9月 6日 (木曜日)

ジャズ演奏の優れた例のひとつ

ジャズにとって「スタンダード曲」は無くてはならない存在で、この「スタンダード曲」を通じて、それぞれのジャズメンの個性の違いを確認したり、それぞれのジャズメンの解釈を楽しんだりする。テーマ部の旋律は同じだけれど解釈も違う。アドリブ部に入ると、テーマ部の旋律のコード進行から発展したり、基音からモーダルなアドリブが展開されたりする。これがまあ、それぞれ演奏毎に違っていて、いわゆる「ジャズの醍醐味」の1つである。

新伝承派のリーダー、ウィントン・マルサリスは、このスタンダード曲だけを採用した企画盤を6枚出している。ジャズとして、一番優れた演奏・アレンジ・展開を提示した格好になっているが、今から振り返ると、このウィントンのスタンダード曲の演奏・アレンジ・展開は、ジャズの「スタンダード曲」を基にした演奏の「優れた例のひとつ」に留まっている。そう、ジャズは懐深く、裾野が広い。優れたジャズ演奏といっても、1つのパターンに収束することはあり得ない。

Wynton Marsalis『Standard Time, Vol. 3: The Resolution of Romance』(写真左)。1990年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp, vo), Ellis Marsalis Jr. (p), Reginald Veal (b), Herlin Riley (ds)。ウィントンの父君である、エリス・マルサリスがピアノで共演している。スタンダード曲だけを採用した企画盤の3枚目になる。
 

Standard_time_vol3  

 
サブタイトルが「The Resolution of Romance」なので、リリカルでロマンチックなバラード曲やスロー〜ミッドテンポな曲で固められている。刺激的なところは全く無い、耳当たりの良い、暖かい演奏が展開される。聴いていて思うのは、選曲にも配慮行き届き、アレンジも十分に練られ、演奏も十分にリハーサルを積んだ、しっかり、じっくりと作り込まれたスタンダード曲のジャズ演奏という感じが強く出ている。ジャズの即興性を追求するというよりは、ジャズ演奏の良いところばかりをグッと凝縮した企画盤である。

そんなウィントンのアルバム・コンセプトに従い、父君エリスのピアノが実に良い雰囲気を出している。控えめながらよく唄うピアノで、コードな展開もモードな展開もそれぞれの個性を織り込んで、実に渋く、硬派にメインストリームなジャズ・ピアノを展開為ている。父君エリスは、ハードなモード演奏もこなす「オールマイティー」なジャズ・ピアノなんだが、ここでは実にきめ細やかでリリカル、タッチは堅実でありながら、ロマン溢れるフレーズを供給してくれる。

そんな父君のピアノをバックに、ウィントンのトランペットは相変わらず、ハイテクニックで優等生的な音の伸びと輝き。作り込み感満載なんだが、企画盤として、これは「アリ」でしょう。ジャズの「スタンダード曲」を基にした演奏の「優れた例のひとつ」。作られたジャズという雰囲気が強くする内容で、何度も繰り返し聴く様な盤ではない。意外と「困ったちゃん」なアルバムである。

 
 

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2018年8月31日 (金曜日)

オールド・スタイルなウィントン

ウィントン・マルサリスの考えるジャズは基本的に判り難い。聴き手に迎合することは一切無い、どころか、聴き手を教育する、というか、聴き手を教え導く様なアプローチが見え隠れする。選曲だって、アレンジだって、それまでの通常のジャズとは異なるアプローチをするのだから、何というのか、とても「取っ付き難い」のだ。

Wynton Marsalis『Standard Time, Vol. 2: Intimacy Calling』(写真左)。1991年3月のリリース。録音は1987年9月と1990年8月の2回に分かれる。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Wessell Anderson (as), Todd Williams (ts), Marcus Roberts (p), Robert Hurst, Reginald Veal (b), Jeff "Tain" Watts, Herlin Riley (ds)。ウィントンの「スタンダード曲集」の第2弾である。 

選曲からして、ちょっと変わっていて、全編、スローからミッドテンポの曲ばかりで占められている。オールド・スタイルなディキシーランド・ジャズの雰囲気が色濃い演奏から、クールでニュー・ジャズな音の響きが芳しい演奏まで、幅広な展開になっているのが特徴。選曲はアルバム・タイトルからも判る様に「スタンダード曲」ばかりであるが、有名どころから、知る人ぞ知る、までバリエーションに富んでいる。
 

Standard_time_vol2

 
この盤では「オールド・スタイル」なジャズの演奏を再現している。ニューオリンズ・ジャズからスイング・ジャズ辺り。この盤では、ビ・バップは全く無縁。ハードバップもゆったりしたテンポで、決して速いフレーズを吹き回したり、ハイノートを吹き上げたりはしない。静的で理知的で、ハイテクニックなトランペットが響き渡っている。

ピアノのマーカス・ロバーツが良い音を出している。ちょっとウィントンには悪いが、ウィントン抜きのピアノ・トリオの演奏「East of The Sun」が絶品。ロバーツのピアノは理知的でちょっと捻れている。この理知的なところがウィントンのトランペットと実に良く合う。逆に、捻れているところは、絶対にウィントンにはぶつけない。ロバーツのソロで、ロバーツはその「捻れ」をモードに変えて変幻自在に弾きまくる。

静的で理知的で、ハイテクニックな「スタンダード曲集」である。アルバム全体の雰囲気は実にアーティスティック。逆に、ジャズの持つエモーショナルで熱い展開は全く無くて、聴いていて不完全燃焼に陥り兼ねない部分はあるにはあるんですが、アルバム全体の出来も抜群で、これはこれで、トランペットの「スタンダード曲集」として大いに評価出来る盤です。

 
 

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2018年8月30日 (木曜日)

「ウィントン」とは何だったのか

ジャズ・トランペッター、ウィントン・マルサリス(Wynton Marsalis)は1961年生まれなので、もう今年で57歳になる。あの衝撃の初リーダー作『ウィントン・マルサリスの肖像』が1981年、ウィントンが20歳の時なので、もうあれから37年が経ったことになる。ちなみに、僕は23歳。大学4回生の頃である。しかし、こうやって改めて見てみると、ウィントンと僕って3歳しか違わない。いわゆる同世代なのだ。

ウィントンは、1980年代半ばからの「純ジャズ復古」のリーダー格。以降、ネオ・ハードバップの牽引役として活躍。しかし、ハードバップがジャズの一番優れた姿とする姿勢はジャズの世界で軋轢を生む。一時期は、生前、まだまだ現役で活躍していた「エレ・マイルス」を公然と批判。ジャズに対する「裏切り者」呼ばわりしたのだから穏やかで無い。しかし、そこは帝王マイルス。反論一言「俺たちが30年も前にやっていた昔の音を再現して何が創造的なんだ?」。

ジャズって即興が旨の音楽で、クラシックと違って同じ演奏は2度と無い。つまり、学校の試験問題みたいに絶対的な評価基準が無い。自分のスタイルを評価するのは全く問題無いが、他のスタイルを批判しても、その理由については全く説得力が無い。聴く人が違えば評価もガラッと変わる、それがジャズなのだ。ウィントンって聡明なので、そんなこと判っていたはずなのに、なぜ、ハードバップ以外はジャズでは無い、なんてこと言っちゃったのか。その発言以来、ウィントンは現在までずっと曲解されたままである。
 

Marsalis_standard_time_vol1  

 
Wynton Marsalis『Marsalis Standard Time, Vol.1』(写真左)。1986年の録音。1987年のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Marcus Roberts (p), Robert Leslie Hurst III (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。ウィントンのトランペット、ワンホーンのカルテット構成。タイトル通り、ウィントンがスタンダード曲ばかりを吹きまくっている。当時、思いっきり話題になったリーダー作である。併せて、賛否両論の嵐となったアルバムでもある。

確かに上手い。相当に上手い。過去のハードバップ演奏をよく聴き込み、よく研究している。ハードバップ演奏の良いところを集めて凝縮し、新しい響きのハードバップを「再構築」している。そう「再構築」している。「構築」はしていない。しかも響きが、アドリブの展開が良い意味で「人工的」。知力を尽くして、今までのハードバップ演奏の中で、一番、印象的な音を自らの高テクニックで再現している。言い換えると、良い意味で「頭を使ったジャズ」。

この「頭を使ったジャズ」が賛否両論を生む。以来、ウィントンは恐らくジャズメンの中で、極端に好き嫌いの差が激しいジャズメンになる。しかし、この盤のリリースから32年が経って、ウィントンが大好きだ、と言うジャズ者の方に出会うことは殆ど無い。純ジャズ復古のリーダー格でありながら、ネオ・ハードバップを牽引しきれず、現代の「新しいニュー・ジャズ」には感心すら寄せない。では、この「ウィントン」とは何だったのか。彼のスタンダード集のシリーズを聴き直しながら、今一度、考えてみたい。

 
 

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2018年1月12日 (金曜日)

ウィントン・マルサリスの再評価

ウィントン・マルサリスは、ジャズの歴史の中でも屈指のトランペッターだと思う。テクニックは素晴らしく優秀、アドリブ・フレーズは流麗、歌心もしっかりと併せ持って、その端正かつ切れ味の良い吹きっぷりは、確かに「屈指のトランペッター」として良いと思う。しかしながら、一般のジャズ者の方々から、はたまた、仲間のジャズメンからも、先達のジャズメンからもどうにも評判が悪い。困ったものである。

1980年代、純ジャズ復古の流れの中で、新伝承派のリーダーとして祭り上げられ、ウィントン自身もその気になって、あれやこれや、過去のジャズメンや現役のジャズメンのやることなすことを、歯に衣を着せずに批判する。そして、自分たち「新伝承派」を始めとする、アコースティックな純ジャズを極めようとする若手ジャズメンだけを「真のジャズメン」とする言いようと振る舞いに、基本的に「嫌われた」。

その普段の言いようと振る舞いが災いして、リリースするリーダー作はどれもが優秀な内容ながら、ウィントン自体に対する評判が芳しく無い。あまりにその内容が完璧なので、完璧が故に面白く無いとも評された。それでも、ウィントンはその普段の言いようと振る舞いを修正しようとしない。しかし、彼の社会的地位は相当に向上した。逆に、ジャズの世界の中では、最近、あまり話題にならなくなった。ほんと、最近、どうしているのだろう。
 

Marsalis_standard_time_vol1

 
彼の名誉の為に、フラットな気持ちで語るならば、ウィントンのリーダー作はどれもが素晴らしい内容なのだ。例えば、このアルバムを聴けば、その素晴らしい内容をダイレクトに体験出来る。Wynton Marsalis『Marsalis Standard Time, Vol. I』(写真左)。1987年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Marcus Roberts (p), Robert Leslie Hurst III (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。当時にして「鉄壁」のワンホーン・カルテットである。

ウィントンのットランペットを始めとして、カルテットの他のメンバーを含め、そのテクニックは凄まじく、アンサンブルは端正、フレーズを流麗、歌心満載、繊細かつ大胆なアドリブを展開。有名どころのスタンダード曲を演奏しているのだが、その内容は秀逸。アドリブ・フレーズまで譜面に落としているかの様に、あまりに端正かつ流麗。あまりに端正かつ流麗、あまりに優等生な演奏の為、何度か繰り返し聴いていると「飽き」がくる。そこが難点と言えば難点。

ウィントンは誤解されている。しかし、その問題となる、普段の言いようと振る舞いを止めようとしない「大人げの無さ」も確か。勿体ないなあ、と思う。社会的地位は極めた感のあるウィントンではあるが、本業のジャズメン単体としては、どうにも評価が定まらない。そのジャズメンの持つ「心根」がダイレクトにパフォーマンスに反映されるのがジャズの面白いところ。今一度、ウィントン・マルサリスを聴き直して再評価をしてみよう、最近、そう思い至った次第。

 
 

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2015年12月20日 (日曜日)

ウィントンらしいXmas曲集

この頃の季節になると、クリスマス曲が街中に流れる様になる。クリスマスの言葉が聞ける季節になると、今年も押し詰まってきたなあ、と感慨深い思いに包まれる。なんだかしみじみしてしまう。

クラシックのジャンルでは、クリスマス曲と言えば、バロック系のバッハとかの宗教音楽系や賛美歌がメインになる。クラシックについては、さすがに歴史があるジャンルなので、曲のバリエーションが豊富。それでも曲の作りはバロック時代のものが殆どなので、飽きると言えば飽きる。

ポップスのジャンルでは、定番のクリスマス・ソングをカバーするが、アレンジが一様なのであまり面白く無い。ポップスで採り上げられる曲は、スタンダード系で数十曲で、様々なミュージシャンが寄ってたかって、その数十曲を一様なアレンジでやるもんだから、基本的に飽きる。

ジャズのジャンルについては、採り上げられる曲の数については、ポップスと事情は似たり寄ったりなんだが、アレンジのバリエーションが圧倒的に豊富だ。ジャズの演奏スタイルについても数十種類のスタイルがあり、ジャズメンの数だけ個性がある。同一曲でも同じアレンジ、表現になることは無く、そういう意味では一番飽きが来ない。

例えば、このアルバムは、そんなジャズのジャンルにおけるクリスマス曲のアレンジの面白さを伝えてくれる。Wynton Marsalis『Crescent City Christmas Card』(写真左)。1989年リリースの、ジャズ・トランペットの貴公子、ウィントン・マルサリスの初クリスマス・ソング集である。
 

Crescent_city_christmas_card

 
この頃のウィントンは「自分のルーツ探し」にご執心の時期で、ブルースだのディキシーだの、ジャズのルーツと言われる米国ルーツ・ミュージックに触手を伸ばしていて、このクリスマス曲集でも、内容的にはオールド・ジャズをベースにしたスタイルのアレンジで固めている。いわゆる「ニューオリンズらしさ」を出したデキシーランド・ジャズなスタイルの演奏が特徴的。 

とにかく優秀なメンバーを集めて、優等生なウィントンが完璧なテクニックと理屈っぽいアレンジを施して制作したクリスマス曲集である。とにかく全編、ある種の「生真面目さ」が充満している。思わず襟元を正して聴いてしまう、そんな堅苦しさはある。

しかし、聴いて楽しいばかりがジャズでは無い。このアルバムには、真摯なジャズを前提にした、ある種、敬虔な雰囲気が漂う、優れたクリスマス曲集に仕上がっている。ポップスのクリスマス曲集の様な楽しさは無いが、メインストリームなジャズとしては聴き応えのある作品ではある。

このクリスマス曲集は、ダイレクトに当時のウィントンらしさが反映された作品でしょう。しかし、サンタの格好をして、トランペットを片手にはにかんでいるウィントン・マルサリスの写真をあしらったアルバム・ジャケットには、いつもながら「ひき」ますね〜(笑)。

 
 

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2014年4月29日 (火曜日)

魅力的な若かりし頃のウィントン

ウィントン・マルサリスがメジャー・デビューを飾った年が1981年。アルバム『Wynton Marsalis』、邦題『ウィントン・マルサリスの肖像』であった(2007年12月10日のブログ・左をクリック)。この初リーダー作でのデビューには、当時、ビックリしたのを覚えている。とにかく上手い。そして、トランペットを素晴らしく魅力的に鳴らし切っている。そして、アドリブ・ラインの魅力的なこと。惚れ惚れした。

メジャー・デビュー当時、ウィントンは弱冠20歳。弱冠20歳でこのパフォーマンスには驚いた。確かにこの時代、若かりし頃のウィントンは相当に魅力的なトランペッターだった。一心不乱に吹きまくるウィントンは素晴らしい。特に、そんな若かりし頃の魅力的なパフォーマンスを愛でるにはライブ盤が一番相応しい。

ここに『With Art Blakey's Messengers I』(写真左)と『With Art Blakey's Messengers II』(写真右)の2枚のライブ盤がある。ウィントンが、アート・ブレイキーが主宰する「Jazz Messengers」に所属していた時代のライブ音源である。

1980年10月、フロリダのレストランでの録音になる。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Bobby Watson (as), Charles Fambrough (b), Jimmy Williams (p), Billy Pierce (ts), Art Blakey (ds)。Art Blakey & Jazz Messengersとしてのライブ演奏である。

演奏内容としては、コッテコテのハードバップである。1980年のジャズ・メッセンジャーズ。まずまずの演奏内容であり、まずまずの演奏レベルである。そんな中、さすがである、ウィントン・マルサリスのトランペットとアート・ブレイキー御大のドラムが突出している。後のメンバーはまずまずの出来かな。突出はしていないが平凡では無い。
 

Wynton_with_art_blakey_12

 
とにかくバリバリに吹きまくる19歳のウィントンが魅力的である。まだ弱冠19歳なので、バリバリ吹きまくるアドリブ・フレーズに音のニュアンスとしての深みは感じられない。とにかく最高なテクニックで吹きまくる。しかし、そのテクニックのレベルが半端ではない。恐らく、ジャズ史上の最高レベルに匹敵するテクニック。思わず、クリフォード・ブラウン、フレディ・ハバードを想起する。

Art Blakey & Jazz Messengersとしてのライブ演奏なので、演奏される曲のほどんどがスタンダード曲なのも嬉しい。ウィントンの非凡なスタンダード曲の解釈が良く判る。これが19歳の解釈であり、これが19歳での演奏なのか、と感じ入ってしまう。メジャー/デビュー当時、天才ウィントンと謳われたのも改めて納得出来る。

このライブ盤『With Art Blakey's Messengers I & II』については、準ブートレグ的なアルバムであり、様々なジャケットで販売されていたり、CD2枚組にまとめて販売されていたりで実に紛らわしい。もし、このライブ音源を所望するのであれば、是非とも間違わずに選んで欲しいなあ、と願っています。

ウィントンの若かりし頃の魅力的なパフォーマンスを愛でるにはライブ盤が一番相応しい。というか、ウィントンの本質を確認するにはライブ・パフォーマンスが一番。ライブ・パフォーマンスにおいては、そのジャズメンの本質が如実に表れる。ウィントンは熱い魂と矜持を持ったジャズ・トランペッターである。

 
 

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2014年4月28日 (月曜日)

ウィントンの盤はしっかり選ぶ

ウィントン・マルサリスは、若くから、素晴らしいテクニックの持ち主で、しかも切れ者で、リンカーンセンターのジャズ音楽監督も務める才人です。が、とかく、誤解されやすいミュージシャンです。ハッキリものを言い過ぎというか、品行方正が過ぎるというか、とにかく真面目。その真面目が類い希な才能を持ち合わせている訳です。まあ、誤解され易いタイプそのものですよね(笑)。

しかし、彼の持つジャズ・スピリッツは素晴らしいものがあります。ウィントン・マルサリスと言えば、10歳台の若さから、天才的なテクニックの持ち主として名を馳せる一方、才人でもある。例えば、ニューヨークのリンカーンセンターのジャズ音楽監督としても知られ、学術的な一面も持ち合わせる。

父は、ジャズ・ピアニストのエリス・マルサリス。兄は、同じジャズのサックス奏者として有名な、ブランフォード・マルサリス。所謂、音楽一家に育った、ジャズ界のエリートとも言える存在である。

さて、そのウィントン、若い頃は、ジャズ界の先進気鋭の若手ミュージシャンとして将来を嘱望され、評論家筋からも評判は上々、日本でも人気はうなぎ登りだった。が、しかし、その絶妙なテクニックを駆使してクラシック界へ進出、幾つかのアルバムも発売し、クラシック界からも注目されるに至った頃から、ウィントンに対する風向きが変わりだした。

先にも書いたニューヨークのリンカーンセンターのジャズの音楽監督に就いて、ジャズの歴史を遡ったジャズ・オーケストラ中心の学術的なアルバムを数々発表。決定的だったのは、これを判らないのはジャズが判らないのと同じだ、と評論家筋とやりあったり、ジャズのルーツはニューオリンズで、ニューオリンズのデキシーランド・ジャズを評価出来ない奴はおかしい、とか挑発的な言動をやったことだった。それ以来、やれ「あいつは生意気だ」とか、「あいつは頭でっかちで、ジャズ・スピリッツが無い」とか、散々な評価を頂戴した。
 

Wynton_standard_time_5

 
まあ、リンカーンセンターのジャズの音楽監督としての活動を通じてのアルバムには、確かに、ちょっといただけないアルバムが幾つかあるので、評論家やアンチ・ウィントン派の批判は、部分的には当たっていると言えば当たっているなあ、と思うが、「あいつには頭でっかちで、ジャズ・スピリッツが無い」と一方的に決め付けるのはどうかと思う。

その証拠のひとつがこのアルバム。Wynton Marsalis『Standard Time, Vol.5:The Midnight Blues』(写真左)。1998年のリリース。ちなみに中核となるパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Eric Reed (p), Reginald Veal (b), Lewis Nash (ds)。

というのも、このアルバムはウィズ・ストリングス盤である。オーケストラの伴奏にのって、ウィントンがトランペットを朗々と吹き上げていく。しかも、曲はスタンダードが中心。様々なミュージシャンがチャレンジして、その解釈に手垢がついた曲ばかりだが、ウィントンはこともなげに唄い上げていく。

なにしかトランペットの音が凄い。ブリブリと真鍮がビビットに震える様な音を出しながら、朗々と数々のスタンダードを奏でていく。それはそれは、素晴らしい演奏で、このトランペットのどこが、ジャズ・スピリッツの欠落と言えようか。

でも、リンカーンセンターのジャズ音楽監督関連のウィントンの作品には首を傾げたくなる作品がある。クラシックに走ったアルバムについては、ジャズメンという観点で見た時に、その必然性については疑問符満載(笑)。

でも、反面、凄い盤もあるんだ。若き日のウィントンには、同じウィズ・ストリングス盤で『Stardust』というアルバムがある。そして『Marsalis Standard Time, Vol.1』がある。ジャズ史に残る名盤である。ウィントンのアルバムは「しっかりと選ぶ」必要がある。そして、その選択を誤るとウィントンを嫌いになるし、その選択が正解だとウィントンは素晴らしいと思う。なかなか厄介なジャズメンではある。

 
 

大震災から3年1ヶ月。決して忘れない。まだ3年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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