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2015年6月 7日 (日曜日)

真面目にバドカンの2nd盤を語る

今日は日曜日、70年代ロック盤の話題を。ジャズの合間の耳休めに、昔からよく70年代ロックのアルバムや70年代Jポップのアルバムを聴く。もともと、70年代と言えば、中学〜大学の間で若かりし学生時代、リアルタイムに体験した70年代ロックと70年代Jポップである。隅に置いておくには及ばない(笑)。

さて、今日はバッド・カンパニー。先週の日曜日に、当ブログでデビュー盤の『Bad Company』の思い出話を語ったわけだが、今日は彼らのセカンド盤、Bad Company『Straight Shooter』(写真)である。1975年4月のリリース。チャート順位は、英米で3位、日本でも21位を記録し、世界的に大ヒットしたアルバムである。

デビュー盤『Bad Company』については、バンド結成の勢いで一気に作った感じが溢れていて、基本はブルース基調のブリティッシュ・ロックの雰囲気が濃厚。ボール・ロジャースのボーカルが秀逸で判り易く、サイモン・カークのドラミングの乾いた小気味よさが功を奏して、米国でも受けた。

そして、2枚目はバンドとして良く考え、明らかに米国というマーケットを意識して、曲作り、アレンジに工夫を施し、デビュー盤よりもアメリカン・ロックへ志向をシフトした音作りになっている。ブルース基調の曲作りから、シンプルなロックンロール基調の曲作りにシフトし、リズム&ビートも重心を高めに、乾いたキレの良さを前面に押し出した、シンプルで判り易いものに変化している。

米国というマーケットを意識して、良く考え、良く練られたアルバムである。確かにこのアルバムはヒットした。特に米国ではチャート第3位の大ヒットである。彼らの米国マーケットに対する戦略は大成功を収めた訳である。しかし、面白いことに、英国でもチャート3位と意外な大ヒットを記録している。
 

Straightshooter

 
このアルバムを聴くと、確かに、アルバム全体の音作りは米国マーケットを意識した、アメリカン・ロック志向な音作りになってはいるが、さすがにメンバーは英国中心、アルバムの音作りのそこかしこに、少しマイナーな音の翳り、くすんだやや深いエコー、重心の低いビートというブリティッシュ・ロックの雰囲気がそこはかとなく残っているのだ。

おそらく、このそこかしこに、そこはかとなく残ったブリティッシュ・ロックの雰囲気が良い方に左右して英国でも受けたのだろう。米国ロックとして聴いても、気になるほどのブリティッシュ・ロックの雰囲気では無い。それよりも、西海岸ロックを意識したコーラスやシンプルで判り易いギターソロに耳を奪われるので、指摘するほどの個性には至っていない。

そういう意味で、このセカンド盤『Straight Shooter』までが、ブリティッシュ・ロックのバッド・カンパニー。サード盤以降は、明らかに米国ロックのバッド・カンパニーに宗旨替えしている。実は僕はつい最近まで、バッド・カンパニーのアルバムはファイーストとセカンド盤の2枚しか持っていなかった。

3枚目以降の米国ロックのバッド・カンパニーの面白さに気が付いたのがつい最近。3枚目以降のバッド・カンパニーについては、また後日、どこかで語ってみたいと思っている。

 
 

震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2015年5月31日 (日曜日)

『Bad Company』の遠い思い出

バッド・カンパニーというバンドがあった。ボーカルのポール・ロジャースとドラムスのサイモン・カーク(元フリー)、ギターのミック・ラルフス(元モット・ザ・フープル)、ベースのボズ・バレル(元キング・クリムゾン)の4人によって結成された、ブルース・ロックを基調とした、シンプルな英国ロック・バンドである。

日本ではまずシングル「キャント・ゲット・イナフ」が売れた。そして、ファースト・アルバム『バッド・カンパニー(Bad Company)』(写真左)がリリースされた。1974年夏のことである。このアルバムも、当時の日本ではヒットの部類に入る、ヒットチャート最高位24位にチャート・イン。

この英国ロックの名作がリリース40周年を記念して、デラックス・エディション化された。特にリマスターの具合が良く、アルバム自体の音が劇的に改善されている。CDのフォーマットとしては最上のものだろう。もともと、内容の優れたファースト盤である。音のキレ、バランス、密度、スピード感、いずれをとっても申し分無い。

さて、このファースト盤『Bad Company』が我が映研に持ち込まれたのは高校2年の頃、1975年の初夏のちょうど今頃、5月の終わりか6月上旬だったと記憶している。かの映研女子が持ち込んだ。部室に入った時には、既にSide Twoの1曲目「Bad Company」が鳴り響いていたことを覚えている。

1年遅れではあるが、この『Bad Company』は映研でもヒットした。ヒットしたんだが、部室に行く毎日毎日この『Bad Company』がかかっている。というか、かかり過ぎだ。3週間も続けて部室に入ると『Bad Company』が流れている。これには閉口した。

どうも一年生男子どもが入れ替わり立ち替わり、この『Bad Company』をかけて聴き耳を立てているらしい。こいつらそんなに英国ロックが好きだったけ。というより、まだ高校生になって2ヶ月。英国ロックとは何たるか、なんてまだ全く理解していないはず。

おかしいなあ、と思いつつ、その理由を訊いた。一年生男子WとYが深刻な顔をして答えた。「このアルバムを理解出来ないと、英国ロックは理解出来ないんです」。「はぁ?」。つまりは、英国ロックを理解したいが為に、毎日毎日『Bad Company』を聴いているとのことである。
 

Bad_company

 
一年生男子WとYが続ける。「でも、ロック・ミュージシャンにとって大切なことも教えて貰いました」。「教えて貰った?」。「ボーカルのポール・ロジャースは英国ロックで最高のボーカリストで、奥さんが日本人なんです。つまり、優れたロック・ミュージシャンは奥さんが日本人なんです」。「はぁ?」。

一体誰だ、そんな変なことを教えたのは・・・。確かに、当時、ポール・ロジャースの奥さんは日本人のマチさんだったが、他の優れたロック・ミュージシャンの奥さんは日本人だったかなあ。少なくとも、ジョン・レノンの奥さんは日本人のヨーコさんだったけど、他は思い当たらない。

どうも、かの映研女子Uの仕業らしかった。かの映研女子Uいわく「そんな変なこと教えてへんって。ポール・ロジャースのボーカルは最高やろ、彼の奥さんは日本人なんやで、とは言ったけど」。「でも『Bad Company』の良さが判らんようやったらアカンね、とは言ったなあ」。

なるほど。当時、一年生男子どもに、一年上のお姉さんとして一目置かれていた映研女子Uの発言力には絶大なものがあった。ロックについては映研に入って洗礼を浴びてまだ2ヶ月。カルガモの子供と一緒で、最初に教えられたことが「絶対」になる。英国ロックと優れたロック・ミュージシャンの条件については、かの映研女子Uの発言が一年生男子どもには「絶対」となった訳。

罪作りなことするなあ。部長の僕がそれは違うと教え直しても、一年生男子どもはなかなか納得しない。一年上のお姉さんとして一目置かれていた映研女子Uの発言力は絶大である。あこがれのお姉さん先輩の言うことは「絶対」なのだ。「あこがれ」かあ、高校時代の誤解と思い込みほど厄介なものは無い。一年生男子どもが『Bad Company』の良さを語ることが出来るまで、『Bad Company』は映研の部室で響き続けた(笑)。

この今回の『Bad Company』のリマスター盤を聴きながら、このエピソードを突如思い出した。リマスター優秀の優れた音は忘れた思い出を想起させてくれる。青春時代の誤解と思い込みほど厄介なものは無い。ゆめゆめ後輩にいきなり変なことを教えてはいけない。遠い昔、高校時代の教訓である(笑)。

 
 

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2014年4月 6日 (日曜日)

好調フリーの傑作ライブ盤です

フリー(Free)は、ブルースを指向するミュージシャンによって結成されたイギリスのロックバンド。ブルースを指向するロック・バンドとしては、ファースト盤の『Tons Of Sobs』やセカンド盤の『Free』が、フリーの在り方を如実に表している。弾きまくるエレギのコゾフとしては『Tons Of Sobs』、弾きまくるエレベのフレイザーとしては『Free』が素晴らしい。

そして、ブルースを指向するロック・バンドとしてのパフォーマンスの記録が、このライブ盤『Free Live!』(写真左)。1970年1月のサンダーランド、1970年9月のクロイドン、2つのコンサートからのライブ音源である。このライブ盤に、ブルースを指向するロック・バンドとしての、ハード・ロックを基調としたフリーの最高のパフォーマンスが詰まっている。

冒頭の「All Right Now」の前奏を聴けば、このライブ音源は絶対に、我々の期待を裏切らないことが判る。ポール・コゾフのエレギに気合いが入っており、指がしっかりと回っている。凄まじいリフ。やはり、このフリーというバンドのパフォーマンスの良し悪しは、このコゾフのエレギの出来次第なんだなあ、と改めて思う。

コゾフが好調の時の、このフリーというバンド・メンバーの結束は「凄まじい」の一言。泣きのエレギのポール・コゾフが先導するなか、ドシンドシンと重心の低いドラミングのサイモン・カーク、弾きまくるベースのアンディ・フレーザー、そして、渋くガッツあるボーカルのポール・ロジャース。この4人の化学反応が凄い。

このライブ盤でのコゾフのエレギは好調を維持。テクニックに優れ、乾いたブルース感覚と印象的なリフを武器に、すっ飛ばす。まともな時のポール・コゾフは凄い。完璧にブルースを基調とした、クールな「泣きのギター」。
 

Free_live

 
他のブルース基調のギタリストは、ウェットに泣くギターで、ややもすれば「演歌っぽい」べったべたな響きが個性ではあるが、ポール・コゾフの「泣きのギター」は乾いている。実にクールなのだ。このクールさが堪らない。

フリーを語る時、あまりその名が出ないポール・ロジャースであるが、勿論、素晴らしい。時に、このライブ盤でのボーカルは、彼の代表的歌唱の一つだろう。テクニックに優れ、ガッツのある、それでいて意外と端正なボーカルは、唯一無二の個性。そう、ポール・ロジャースのボーカルには雑なところが無い。しっかりと端正なのだ。

さすが、フロントのヒーロー、エレギのコゾフが好調の時は、きっと叩き甲斐があるんだろう、このライブ盤でのサイモン・カークは、いつになく叩きまくっている。重心の低いタイトなドラミングで、ガンガンに好調のコゾフを鼓舞する。好調コゾフのバックで、叩きまくるカークは、これまた凄い。

そして、好調のコゾフ、歌いまくるロジャース、叩きまくるカークをしっかりと支え、ガッチリと束ねるのが、フレーザーのベースである。結構好き勝手に、独特のフレーズを弾きまくるフレーザーではあるが、押さえるところはしっかりと押さえている。やはり、ベースがバンドの要なんやね〜。このライブ盤を聴いていて良く判ります。 

良いライブ盤です。ブルースを指向するロック・バンドとしての、好調なパフォーマンスが記録されていて、なかなか聴き応えがあります。フリーというバンド・メンバーが結束した時のパフォーマンスは「凄まじい」の一言。フリーを理解する上で、必須のライブ盤です。

 
 

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2014年4月 5日 (土曜日)

フリーは音楽的に進化していく

フリー(Free)は、ブルースを指向するミュージシャンによって結成されたイギリスのロックバンド。初期のアルバムは、ブルースを基調としながらも、当時の流行であったプログレ&サイケの雰囲気を織り交ぜて、実に攻撃的なブルース・ロックを表現している。

このフリーというバンドの代表作と言えば、どのロック盤紹介本でも、このアルバムが出てくる。というか、日本では、ほとんど、このアルバムしか出てこない。そのアルバムとは、フリーのサード作『Fire and Water』(写真左)。1970年の作品。

フリーの代表作として名高い『Fire and Water』であるが、僕にはどうしても、このアルバムがフリーの代表作とは思えない。というか、フリーの在り方をこの一枚が表しているとは思えないのだ。

ブルースを指向するロック・バンドとしては、ファースト盤の『Tons Of Sobs』やセカンド盤の『Free』の方が、フリーの在り方を如実に表している。弾きまくるエレギのコゾフとしては『Tons Of Sobs』、弾きまくるエレベのフレイザーとしては『Free』が素晴らしい。

で、このサード盤の『Fire and Water』については、どうも前の2枚に比べると内容的に「過渡期のアルバム」に感じるのだ。ブルースを指向するロック・バンドとしては、冒頭のタイトル曲「Fire and Water」やラストの「All Right Now」が収録されているのだが、どうもブルースを指向するロック・バンドとしては、この2曲くらいではないか、と思われる。
 
 
Fire_and_water_2
 
 
他の曲については「渋い曲」の一言で済まされているが、どうも、このサード盤にして、フリーは「ブルースを指向するロック・バンド」の次を目指し始めていたのでは無いかと僕は思っている。

「ブルースを指向するロック・バンド」の次とは、例えば、英国・米国のルーツ・ミュージックへの志向などが上げられる。なんとなく、ブルースを基調としつつも、このサード盤では、とにかく「ブルースを指向するロック・バンド」を脱皮しようとしている様に感じるのだ。

それでも、あまりチャレンジの側面を全面に出して、アルバムのセールスに支障を出したら大変なので、きっちりと冒頭とラストに、ブルースを指向するロック・バンドとして、「Fire and Water」と「All Right Now」を収録しているのではないか、と睨んでいる。

同時期のライブ音源『Free Live!』でのフリーの演奏の方が、ブルースを指向するロック・バンドとしてのフリーの姿を捉えていると思う。
 
このサード盤の『Fire and Water』については、ブルースを指向するロック・バンドとしてのフリーの姿というよりは、音楽的に進化するフリーの過渡期を捉えたアルバムという評価を僕はしている。

 
 

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2014年3月23日 (日曜日)

クールな英国ブルース・ロック

Free(フリー)という英国バンドがあった。1967年の結成なので、このバンドも他の例に漏れず、ブルース・ロックを指向したバンドである。オリジナル・メンバーは、Paul Rodgers (vo), Paul Kossoff (g), Simon Kirke (ds), Andy Fraser (b, p)。

ブルース・ロックを指向したバンドではあるが、他のバンドの比べて個性的である。エレギが弾きまくるのが、英国ブルース・ロック・バンドの定番であるが、このフリーというバンド、確かにポール・コゾフが弾きまくる側面もあるが、その弾き方は一言で言うと「クール」。

テクニックの全てを尽くして弾きまくるんだが、そのアドリブの底には、冷静に演奏をコントロールするクールさが漂っている。サイモン・カークのドラムとアンディ・フレイザーのベースもクールだ。決して、叩きすぎず、弾きすぎず、リズム・セクションのリズム&ビートとして、他のブルース・ロック・バンドと比べて、とてもクールだ。

しかし、このセカンドアルバム『Free』(写真左)のリリース時、1969年10月時点で、ポール・ロジャースは19歳、ポール・コゾフも19歳。サイモン・カークは20歳。アンディ・フレイザーは17歳。平均年齢19歳弱の、もの凄い若さである。この若さで、この冷静なクールさは驚きである。

そんなクールなフリーは、このセカンド・アルバムの『Free』で、十二分に感じ取ることが出来る。このアルバムの基本はブルース・ロック。しかし、どの曲も凄く落ち着いた、冷静なコントロールが行き届いている。とにかく渋い。平均年齢19歳弱のバンドとは思えない。なんとも「老成した」クールさである。
 

Free_free

 
音数も少なめ。音の隙間と感覚をほど良くコントロールした、クールなブルース・ロックのオン・パレードである。そして、クールなブルース・ロックの底にソウルフルな雰囲気が見え隠れするところも、このフリーというバンドの個性だろう。僕にとっては、このクールさがたまらない。

ポール・ロジャースのボーカルも至ってクールだ。他のブルース・ロック・バンドの様に、力任せにシャウトしまくることは無い。適度に抑制されたクールなボーカルは、相当なポテンシャルを感じさせてくれる。そして、単純に「上手い」。

そして、とりわけ、このセカンド・アルバムで特筆すべきは、アンディ・フレイザーのベース。流れる様に唄う様に、印象的なフレーズを弾きまくるフレイザーのベースは驚異的だ。このフレイザーのベースが、現在に至り、定番の伝説として残らなかったことが不思議でならない。

もともと、日本ではフリーは何故か人気が無かった。ましてや、そのフリーのベーシストのアンディ・フレイザーなど、日本では完全に「知る人ぞ知る」ベーシストだった。というか、アンディ・フレイザーの名を知っているだけで「英国ロックのヲタク」と呼ばれた(笑)。

他のバンドの追従を許さない、音の隙間と感覚をほど良くコントロールした、クールなブルース・ロック。もっとちゃんと評価して欲しいなあ、このフリーというバンドのことを・・・。

 
 

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2011年7月 9日 (土曜日)

フリーの「1st.アルバム」

さて、土日は、バーチャル音楽喫茶『松和』の「懐かしの70年代館」の日。今日は「ロックの1st.アルバム」シリーズの話題。

久しぶりに、Freeのデビュー盤『Tons Of Sobs』(写真)を聴いたが、その尖った内容に驚いた。基本はブルース・ロックだがエッジが立って切っ先鋭く、ハードなブルース・ロック。半端じゃない。こんな硬派な盤が1968年にリリースされていた・・・。ロックもなかなか奥が深い。

改めて、Freeとは、ブルースを指向するミュージシャンによって結成されたイギリスのロックバンド。1967年に結成され、1度解散し72年にオリジナルメンバーで再結成された1973年に解散(Wikipedia)とある。なんだか判ったような判らないような説明だが、このFreeというバンドの特徴は、ファーストアルバムである『Tons Of Sobs』を聴けば、たちどころに判る。

このFreeの『Tons Of Sobs』は1968年のリリースではあるが、70年代ロックの基本コンセプトの一つである「ブルース・ロック」の起点となるアルバムのひとつなので、70年代ロックの範疇に加えて良いだろう。

音数が少なくシンプルだが、個性的でパワフル。「地味さ」と「暗さ」が共存し、タイトル通り「悲しみ」がアルバム全編を覆う。これが、二十歳そこそののメンバーが創ったファーストアルバムなのか、とつくづく思う。どう考えたって「老成」している。こんな渋いアルバムが二十歳そこそこのメンバーが創るなんて・・・。当時の英国ロック・シーンの懐の深さを実感する。
 

Tons_of_sobs

 
ブルースを基調としながらも、当時の流行であったプログレ&サイケの雰囲気を織り交ぜて、実に攻撃的なブルース・ロックを表現している。とにかく「激しい」。触れば切れそうな、触れば怪我をしそうな「激しさ」である。この「激しさ」は、70年代ロックのビギナー向けでは決してない。70年代ロック、特にブルース〜スワンプ・ロックのマニアの方々に聴かれるべき、英国ブルース・ロックの名盤である。

ベースのアンディ・フレイザーの柔軟かつ堅実で、テクニック溢れるベースラインは特筆もの。サイモン・カークの切れ味の良い、クールなドラミングがアルバム全体の雰囲気を支配する。ポール・ロジャースのボーカルは天才的。ロッド・スチュワートに次ぐ、ロック界の天才的なボーカルを惜しみなく披露する。

しかし、やはり凄いのは、今は亡きポール・コゾフのギターだろう。まだまだ重度のジャンキーに陥る前(まあジャンキーではあったんだろうが・・・笑)、このアルバムでのコゾフのギターは、とにかく凄い。ブルース・ロック・ギターの最高レベルのプレイを満喫できる。クラプトンなんてなんのその。ジェフ・ベックですら真っ青な「狂気のフレーズ」が炸裂する。

改めて聴いて、やはり凄いブルース・ロックなアルバムです。その内容は実に「玄人好み」な内容が満載。逆に、ロックのビギナーにはちょっとハードすぎる内容だと思います。しかし、このアルバムの内容は、70年代ロックを代表する内容のひとつ。

「商業ロック」なんて有り難くないレッテルを貼られがちな70年代ロックですが、70年代ロックが、ここまでストイックにアーティスティックな側面を追求することの出来る音楽ジャンルだった、ということを認識させてくれる、凄いアルバムです。

 

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Fight_3
 
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2011年7月 3日 (日曜日)

忘却の彼方・伝説のギタリスト

70年代前半、英国ロックに「フリー」というバンドがあった。完璧にブルースを基調にしたロックバンド。しかも当時としてはハイテク集団。1967年に結成、1度解散、72年に再結成されたが、結局1973年に解散。
 
デビューが早すぎた早熟なギター・バンドと言える。今の耳で聴けば、それはそれは内容のあるパフォーマンスを繰り広げている。当時は、録音環境も悪かったし、特に再生系の問題は大きかった。今では、リマスタリングの施されたCDが出回っており、演奏の詳細に渡って、十分に聴き込める環境になった。「フリー」はもっと評価されるべきだと思っている。
 
そんな「フリー」のオリジナル・ギタリストがポール・コゾフ。コゾフが真っ当な人間であれば、ペイジ、クラプトン、ベックという「三大ロックギタリスト」に比肩するギタリストとして勇名を馳せいていたと思う。しかし、彼は筋金入りのジャンキーだった。結局、ドラッグ癖が原因で1976年、心臓病により死去してしまった。 
  
しかし、まともな時のポール・コゾフは凄い。完璧にブルースを基調とした、クールな「泣きのギター」が特徴。他のブルース基調のギタリストは、ウェットに泣くギターで、ややもすれば「演歌っぽい」べったべたな響きが個性ではあるが、ポール・コゾフの「泣きのギター」は乾いている。実にクールなのだ。このクールさが堪らない。
 
そのクールな「泣きのギター」が堪能出来る、ポール・コゾフのソロアルバムが『Back Street Crawler』(写真左)。1973年のリリース。このソロ・アルバム一枚で、ポール・コゾフの「泣きのギター」の魅力が存分に楽しむことが出来る。
 
Back_street_crawler
 
冒頭のインストナンバー「Tuesday Morning」が堪らない。18分弱に及ぶ長尺のインスト。「まともな」コゾフの「泣きのギター」が凄い。しかも乾きながら、マイナーにむせび泣く。ミディアムなテンポで紡ぎ上げるソロ・フレーズが実に格好良い。
 
コゾフに関してネットでいろいろ調べていたら、面白い話が掲載されていた。コゾフのギターの弦はセット弦ではなく、意識して「意図に合った」弦を張っていたらしい。6弦〜4弦はギブソンのミディアムゲージ、3弦には何とハワイアンギターで使われる巻き弦、そして1弦と2弦はギブソンのライトゲージ。
 
多くのギタリストはチョーキングがし易いよう、エキストラ・ライトゲージを使うのに対して、コゾフの弦は太い。しかし、チョーキングの要である3弦にハワイアンギターの巻き弦を使用することで、あの独特なチョーキングの音を醸し出していたのだ。
 
なるほど、1弦と2弦のライトゲージが肝なんやなあ。乾いた雰囲気は、この太い弦のチョーキングから来るものなのか。しかも「泣きのギター」を印象づけるのが、3弦のハワイアンギターで使われる巻き弦なのかあ。昔は、コゾフって、単なるジャンキー野郎かと思っていたが、やっぱり繊細な感性の持ち主だったんやなあ。こんなに、きめ細やかな弦の工夫をしているギタリストはそうそうはいない。
 
全編に渡って、コゾフのギターの個性が詰まっているソロ・アルバム。このコゾフのギター中心の演奏を聴いていると、やはり「フリー」というバンドは、このコゾフのギターがあってこそのブルース・ロック・バンドだったんやなあ、と単純に感心したりする。
 
もうほとんどのロック・ファンからは忘れ去られたソロ・アルバムだと思う。既に、1970年代ロック・ファンの中でも、マニアと類する方々の中にしか、記憶に留められていないソロ・アルバムだと思う。でも、そのアルバムの中には、1970年代前半、ブルース・ロックの素晴らしい成果の一つがギッシリと詰まっている。
 
最近、リマスター再発盤やアウトテイクを追加収録したデラックス盤もリリースされている。今一度、忘却の彼方に置き去りにされた伝説のギタリスト、ポール・コゾフを追体験してみてはいかがかと・・・。そして、僕は今一度、「フリー」にも目を向けてみたいと思い出した。
 
 

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