2021年2月25日 (木曜日)

ゴスペルな響きが素敵なデュオ

アーチー・シェップ(Archie Shepp)が元気である。シェップは1937年5月生まれ。今年で84歳。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者である。第一線に躍り出たのが1960年代後半だから、かれこれ60年、ジャズ界の第一線を走ってきたことになる。これだけ息の長いジャズメンはもう数えるほどしかいない。貴重な存在である。

ジェイソン・モラン(Jason Moran)は注目株。モランは1975年1月生まれ。今年で46歳。油の乗りきった中堅ピアニスト。1999年が初リーダー作なので24歳でメジャー・デビュー。一年に1作のペースで着実にリーダー作をリリースしている。特に最近、2015年辺りから馬力がかかってきた感がある。これからが実に楽しみな存在である。

Archie Shepp & Jason Moran『Let My People Go』(写真左)。2021年2月のリリース。リリースほやほや。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts,ss,vo), Jason Moran (p)。ジャズ界のレジェンド級のサックス奏者、アーチー・シェップと、油の乗りきった中堅ピアニスト、ジェイソン・モランとのデュオ盤である。シェップがボーカルを担当しているところが珍しい。
 
 
Let-my-people-go  
 
 
サックスとピアノのデュオは良くあるパターン。しかし、このデュオはその「響き」が個性的。シェップはフロリダ州フォートローダーデール生まれ。モランはテキサス州ヒューストン生まれ。どちらも「ブルースとゴスペル」米国南部出身。そう、このデュオの音の響きが、どこか「ゴスペルな雰囲気」。スピリチュアルなフレーズが、その「ゴスペルな雰囲気」に拍車をかける。

シェップのサックスがとてもスピリチュアル。シェップはもともとはコルトレーンの忠実なフォロワー。しかし、1970年代にはフリーからブラック・ファンクに走り、いち早くコルトレーンの影響下から脱している。1980年代以降は、オーソドックスなブロウをベースに「クールでスピリチュアル」な表現をメインとしている。この盤ではボーカルも担当しており、このボーカルはこれまた「スピリチュアル」。

ジェイソンのピアノがそんなシェップに呼応し、スピリチュアルなフレーズを連発しつつ、シェップのサックスを鼓舞する。そして、シェップがボーカルを担当すると、それはそれはリリカルで耽美的な、しっとりとした伴奏で応える。いやはや、素晴らしいデュオである。アフリカン・アメリカンの音の郷愁を聴く様な、素敵なスピリチュアル・デュオである。
 
 
 

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2021年2月20日 (土曜日)

ハートマンの歌唱が素晴らしい

ジャズの男性ボーカルは、フランク・シナトラ、メル・トーメ、ナット・キング・コールが専らの「お気に入り」。他のボーカリストについてはあまり聴かない、というか、他にメジャー・な存在がほとんどいないといえばいない。よって、この盤も最初は共演パートナーに惹かれてゲットした盤ではある。

『John Coltrane and Johnny Hartman』(写真左)。1963年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Hartman (vo), John Coltrane (ts), McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds)。ジョン・コルトレーンの「伝説のカルテット」に、ボーカルのジョニー・ハートマンが客演したイメージの共演盤である。

ジョニー・ハートマンは、1923年7月、米国ルイジアナ州生まれのジャズ・ボーカリスト。アール・ハインズ、エロル・ガーナーとの共演で頭角を現し、カントリーなどにも適応するが、メインはジャズ・ボーカル。この共演盤を録音した時点で40歳。ボーカリストとして油の乗りきった中堅でのパフォーマンスである。
 
 
John-coltrane-and-johnny-hartman
 
 
コルトレーンにとっては、名盤『Ballads』と同じ系統のアルバムになる。激しいシーツ・オブ・サウンドやフリーなブロウを封印し、内省的で耽美的でスローなブロウをメインに据えたパフォーマンスに終始している。この盤でのコルトレーンは限りなく美しく唄う様にブロウし、ハートマンに対抗するようにブロウする。

ハートマンについてはマイペース。バックがコルトレーンの「伝説のカルテット」なのだが、全く緊張感も気負いも感じられない。ただただ自然体で、ハートマンの個性を振り撒いて唄い上げていく。この盤でのハートマンの唄いっぷりは素晴らしく、聴き惚れるばかり。特に緩やかなバラードの歌唱は素晴らしい。

この盤、コルトレーンのテナーにばかり話題が集中するが、どうして、この盤はハートマンのバラードの歌唱が頭1つ抜きんでている。どうも、コルトレーンの「伝説のカルテット」は歌伴は似合わない。エルヴィンのドラムも不完全燃焼っぽい。マッコイのピアノだけがなんとか上手くハートマンの伴奏をしているのが微笑ましい。
 
 
 
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2021年1月24日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・136

このところ、ちょくちょくと、魅力的なリイシューが続いている。廃盤になって久しい好盤が、ネット時代の効果かもしれないが、全く知らないレーベルからリイシューされるのだ。それもCDショップなどを経由せず、ダイレクトにネット経由で入手出来る。21世紀に入った頃、ジャズの世界にもこんな「ネット時代」が来るなんて思いもしなかった。

Neil Swainson Quintet『49th Parallel』(写真左)。1988年の作品。ちなみにパーソネルは、Neil Swainson (b), Gary Williamson (p), Jerry Fuller (ds), Woody Shaw (tp), Joe Henderson (ts)。

実力派ベーシスト、ニール・スウェインソンの初リーダー作。ウッディ・ショウのトランペット、ジョー・ヘンダーソンのテナーのフロント2管のクインテット構成。1988年の作品だから、純ジャズ復古後の録音になる。

リーダーの「ニール・スウェインソン」は、カナダのブリティッシュ・コロンビア州生まれ。70年代終わりにトロントに移住し、ョージ・シアリングのバッキング・ベーシストとして名をあげ、数々のレジェンドと共演、ダイアナ・クラール、ナンシー・ウィルソン、メル・トーメといったシンガーのバックも務めた実力派ベーシストだそう。僕は知らなかった。1955年生まれなので、現在65歳の大ベテラン。
 
 
49th-parallel  
 
 
この盤、もともとは1988年にConcordからリリースされたものの廃盤になって久しく、「幻の名盤」化していた音源とのこと。この盤を聴き通して感じるのだが、さすが、ウッディ・ショウのトランペット、ジョー・ヘンダーソンのテナーのフロント2管のパフォーマンスが群を抜いている。「幻の名盤」化していた音源、というのも納得の一枚である。

ウッディ・ショウにとって、スタジオ録音のパフォーマンスとしては最後期に位置づけられるもので、これがなかなか素晴らしい。この盤でのウッディ・ショウの演奏はとりわけブリリアントで、鋭いハイノートも難なく吹きこなしている。特にモーダルなフレーズは、ジョーヘンと共に、硬軟自在、緩急自在な骨太でダイナミックな展開が見事。

バックのリズム・セクションは、リーダーのスウェインソンのベースを含め、カナダ人の面々であるが,演奏自体は堅実。しっかりと「重量級の」フロント2人をサポートしている。

この盤、1988年にConcordからリリースされた時(写真右)も、今回のリリース時(写真左)もジャケット・デザインがイマイチなので、パッと見、この盤、内容的に大丈夫なのか、と思うのだが「大丈夫です」。
 
 
 

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2021年1月23日 (土曜日)

整然と整ったモブレー=モーガン

ブルーノート・レーベルのアルバムは「ジャケット・デザイン」の面でも優れたものを多く残している。この盤も例に漏れず、実に粋なアルバム・ジャケットである。セッションを録音したであろうオープンリール・テープを運ぶキャリング・ケースをあしらったデザイン。そして、それにそぐった絶妙なロゴタイプ。

Hank Mobley & Lee Morgan『Peckin' Time』(写真左)。1958年2月9日の録音。ブルーノートの1574番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Lee Morgan (tp), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。双頭リーダーのハンク・モブレーのテナー、リー・モーガンのトランペットがフロント2管のクインテット構成。整然と整った躍動感溢れるスッキリとした演奏で、ジャズの良さがギッシリ詰まった盤。

共演者が同年代若しくは年下の時のモブレーは好調だ。ケリーのピアノもご機嫌。モーガンのペットも溌剌。アルバム全体を通して、モブレーのリーダー作の中で、一番、内容が整った盤ではないか。もともと、モブレーとモーガンの相性は良く、この2人の2管コンビには外れが無い。その2人が絶好調なこの盤。アレンジも良好、フロント2管のバランスも良くて、ほんと整った内容に惚れ惚れする。
 
 
Peckin-time  
 
 
特に、唯一のスタンダード、3曲目の「Speak Low」はアレンジも良好、フロント2管が朗々と鳴り響いて、とても素敵な演奏に仕上がっている。ほんと、この盤ではモブレーがテナーを伸び伸びと吹いている。伸び伸びと吹く分、テクニックにも良い影響を与えていて、ミスの無い流麗なアドリブ・フレーズは特筆すべきもの。もしかしたら、この盤、総合的に見て、ハンク・モブレーの一番出来の盤かもしれない。

バックのリズム・セクションの活躍も見逃せない。もともと、モブレーとベースのポール・チェンバースも相性が良い。そして、ハッピー・スインガーでそこはかとなくブルージーなウィントン・ケリーのピアノが、モブレー=モーガンのフロント2管のスピード感とバッチリ合っていて、演奏全体のスピード感の供給に貢献、そして、パーシップのドラムが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと「締めて」いる。

ブルーノート・レーベルのアルバムの中でも、ジャズの即興演奏でありがちな「破綻」が全く無い。スリリングな演奏を好む向きには、ちょっと物足りないかも。しかし、フロント2管の抑制がほどよく効いたバリバリな吹きまくりと、バックのリズム隊の躍動感と疾走感。アーティステックな側面を強く感じる、素敵なハードバップ盤である。
 
 
 

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2021年1月19日 (火曜日)

漆黒ソウルフルなタレンタイン

「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が個性のテナー、スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)。タレンタインは「ブルーノート御用達」。ブルーノート・レーベルのハウス・サックス奏者といっても良い。生涯のリーダー作の半数がブルーノート・レーベルからのリリース。

Stanley Turrentine with The Three Sounds『Blue Hour』(写真左)。1960年6月29日と12月16日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Gene Harris (p), Andrew Simpkins (b), Bill Dowdy (ds)。後のブルーノート・レーベルのハウス・サックス奏者とピアノ・トリオの共演。ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオン、なかなか小粋なマッチアップをする。

もともと、スリー・サウンズのリーダー・ピアニスト、ジーン・ハリスのピアノはファンキー&ブルージー、そしてソウルフル。バックを担うリズム隊の2人、シンプキンスのベース、ドゥディのドラムも「こってこてファンキー」。「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が個性のタレンタインのテナーを引き立てるのに恰好のリズム・セクションである。
 
 
Blue-hour  
 
 
冒頭の「I Want a Little Girl」から、こってこてのファンクネス全開。ゆったりと吹き上げるタレンタインのテナーは「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」。やり過ぎじゃないかと思えるくらいのファンクネス。オールド・スタイルとコルトレーン・スタイルの「間(あいだ)」をいくタレンタインのテナー。この「オールド・スタイル」を踏襲する部分がとりわけ「ソウルフル」。

バックのリズム・セクションがスリー・サウンズというのが完璧に効いている。ファンクネス&ソウルフルの相乗効果で、タレンタインのテナーは全編に渡って「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」。ジャケットのようにブルーに染まる、タレンタイン渾身のブロウが映える5曲。コンプリート盤も良いが、この盤は当初のオリジナル盤の5曲を聴いて欲しい。

この盤はタレンタインの「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」の個性が最大に発揮された好盤。逆にこれ以上に「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」に振れることは無い。タレンタインの「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」度合いの最高地点を記録した『Blue Hour』。リラックスして、じっくりと聴き込みたいですね。出来たら、まずまずのレベルのステレオ装置で。
 
 
 

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2021年1月18日 (月曜日)

タレンタインのBN初リーダー作

ちょっと前に、プレスティッジ時代のコルトレーンを聴き直して以来、ジャズ・テナーが気になっている。ロリンズやコルトレーンなど、レジェンド級の有名テナーマンのリーダー作については、このブログで順次取り上げてきたが、レジェンド級ですら、まだまだ残っている。例えば、スタンリー・タレンタイン(Stanley Turrentine)などは、ほとんど手付かずだ。

Stanley Turrentine『Look Out!』(写真左)。1960年6月18日の録音。ブルーノートの4039番。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Horace Parlan (p), George Tucker (b), Al Harewood (ds)。漆黒ブルージーなテナーマン、スタンリー・タレンタインのブルーノートでの初リーダー作になる。

タレンタインのテナーは「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が特徴。このブルーノート初リーダー作については、溌剌としたタレンタインのテナーが聴ける。恐らく、バックのリズム隊が新進気鋭のモード・ジャズ系ピアノ・トリオなのが影響しているのかもしれない。
 
 
Look-out  
 
 
タレンタインのテナーは、それまでのジャズ・テナーの代表格、ロリンズやコルトレーンのテナーのフォロワーでは無い。ましてや、パーカー直系のバップなサックスでも無い。タレンタインのテナーは、オールド・スタイルとコルトレーン・スタイルの「間(あいだ)」をいくもの。レトロでも無く最先端でも無い。流行のスタイルに対して「我関せず」と言わんばかりのオリジナリティー。

意外と溌剌と健康的に吹いてはいるが、ファンクネスはしっかりと漂い、唄うようなアドリブ・フレーズは既に「適度にソウルフル」である。それでも、ボートラの「Yesterdays」などは、タレンタインのトレードマークである、どっぷり「漆黒の滴り落ちるファンクネス」なテナーが鳴り響いている。逆に、LPリリース当時、お蔵入りになったのが判る。

豪快なテナーの音を繊細に出す。タレンタインのテナーのテクニックは堅実で真摯。そして、出てくる音は、「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が特徴。そんなタレンタインの「テクニックと音」がこのブルーノート初リーダー作にしっかりと捉えられている。さすがブルーノート、さすがアルフレッド・ライオンである。
 
 
 

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2021年1月17日 (日曜日)

「危険な関係」とは懐かしい。

21世紀に入って20年。今でも時々、その存在をすっかり忘れていた、懐かしいアルバムがリイシューされることがある。この盤もその類なんだが、パーソネルと曲名を見て、最初は未発表音源だと思った。が、資料を見るとそうでは無い。そして、中身を聴くとリイシューなんだが、テイク違いのボートラが何曲か入っている。これは以前からなのか、今回のリイシューからなのか。ボートラの存在って紛らわしい。

Art Blakey & The Jazz Messengers feat. Barney Wilen『Les Liaisons Dangereuses 1960』(写真)。1959年7月28-29日、ニューヨークでの録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Barney Wilen (sax), Lee Morgan (tp), Bobby Timmons (p), Duke Jordan (p, tracks: 3 only), Jimmy Merritt (b), John Rodriguez (Bongos), Tommy Lopez, William Rodriguez (Congas)。

アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャースがパリに演奏旅行に行った折の録音かな、と思ったら、なんとNYでの録音でした。バルネ・ウィランは、当時、仏ジャズきってのサックス奏者。この時はNYに呼ばれたのかな。タイトルの「Les Liaisons Dangereuses」は、邦題では「危険な関係」。おお〜懐かしい(笑)。
 
Les-liasons-dangereuses
 
この盤は、ロジェ・ヴァディム監督『危険な関係』(主演:ジェラール・フィリップ、ジャンヌ・モロー/1960年)のサントラ盤。映画本編では、セロニアス・モンク・カルテットと、アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの曲が使用されているが、この盤ではジャズ・メッセンジャーズのみの演奏を収録している。

内容的には上質のハードバップ&ファンキー・ジャズ。特にサックスのウィランは、単独では硬質なバップ系サックスなんだが、この盤では、ジャズ・メッセンジャーズのお陰で芳しいファンクネスが添加されて、雰囲気の良いファンキー・サックスに変化している。ここでのウィランのテナーは素晴らしいパフォーマンスで、彼の真価を遺憾なく発揮している。

本当に久し振りにこの盤を聴いたのですが、やっぱり良い雰囲気、良い内容のサントラ盤でした。ハードバップの良いところがアルバム全編に散りばめられていて、安心してその演奏に聴く耳を委ねることが出来る、懐かしい内容です。バルネ・ウィランのサックスの真価を確認出来る好盤としても評価できるかと思います。いや〜懐かしいリイシュー盤に出会いました。
 
 
 

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2021年1月16日 (土曜日)

久々にフリー・ジャズを楽しむ

緊急事態宣言下、巣ごもり生活が日常となって、ジャズをじっくりと聴く機会がまた増えた。しかも寒い。こういう時は、日頃なかなか聴くことの少なかったジャズ、例えばフリー・ジャズなどを聴いてみたりしている。ジャズの最大の特徴を「即興演奏」とするなら、その特徴を一番表現しているのが、このフリー・ジャズだろう。

フリーというから、感情のおもむくまま、好き勝手に吹きまくる印象があるが、どうして、一流のジャズマンのやるフリー・ジャズは、演奏の底にスインギーでジャジーなビートが流れ、必要最低限の決め事の中で自由度溢れるインプロビゼーションを展開する。

クラシックにおける不協和音を前提としたバルトークと同列のジャズがフリー・ジャズ。基本的に「音楽」の範疇にしっかりと軸足を置いている。まあ、メロディアスなフレーズはほとんど無いと思っていいから、こんなの「音楽」じゃない、と切り捨てられるのも判る。聴いて苦痛を感じるなら、このフリー・ジャズ、無理して聴く必要は無い。
 
 
Ricochet_sam-rivers  
 
 
Sam Rivers『Ricochet』(写真左)。1978年1月12日、米国サンフランシスコの「Keystone Korner」でのライヴ録音。リトアニアのフリー・ジャズ・レーベル、NoBusiness Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Sam Rivers (sax, fl), Dave Holland (b), Barry Altschul (ds)。昨年に発掘リリースされた、そんなフリー・ジャズの好盤である。

CD1枚にタイトル曲「Ricochet」、52分ちょっとのフリーな演奏1曲のみを収録。硬派で硬質で切れ味抜群のサム・リヴァースのサックスが、フルートが吹き抜ける。フリー・ジャズの名手は皆、テクニックが優秀。リヴァースも例に漏れず、凄まじいハイ・テクニックで、アブストラクトでフリーな、それでいて不思議とメロディアスな(不協和音がメインだが)フレーズを吹きまくる。

朗々と響き渡る、意外とメロディアスなホランドのベース、リヴァースのフリーなフレーズを受け止めて、最適なリズム&ビートを供給するアルトシュルのドラム。幾何学模様の様なスイング感、アーシーでスピード感溢れるビート。即興演奏の究極形がこの盤に記録されている。フリー・ジャズも立派なジャズのひとつだと再認識する。
 
 
 

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2021年1月13日 (水曜日)

クリフォード・ジョーダンの好盤

ジャズを聴くことを趣味にして、最初はジャズ盤紹介本を賑わすジャズ・ジャイアントのリーダー盤ばかりを聴き進めるのだが、徐々に、ジャズ盤紹介本の片隅に載っている、また、ジャズ喫茶でかかる小粋な好盤のリーダーの「隠れ名手のジャズマン」が気になり出す。また、ジャズの老舗レーベルのカタログを順に追っていって、突然出くわす「初めて出会うジャズマン」のリーダー作が聴きたくなる。

Clifford Jordan Quartet『Spellbound』(写真左)。1960年8月10日の録音。ちなみにパーソネルは、Clifford Jordan (ts), Cedar Walton (p), Spanky DeBrest (b), Albert Heath (ds)。クリフォード・ジョーダンのテナー1管がフロントのカルテット構成。クリフォード・ジョーダンのテナー・サックスが心ゆくまで楽しめる。

リーダーのクリフォード・ジョーダンは、1931年生まれ。惜しくも1993年3月に鬼籍に入っている(享年61歳)。この盤を録音した時、ジョーダンは29歳。少し歳はいっているが、まだまだ若手。ブルーノート・レーベルからリーダー作の機会を与えられ、3枚のリーダー作をリリース。ブルーノートを離れて、リヴァーサイド・レーベルからリリースした4枚目のリーダー作である。
 
 
Spellbound  
 
 
ジョーダンのテナーは「端正」「整然」「穏健」。テナーの音に乱れが無い。しっかり吹き切っている。そして、旋律の音の一つ一つを丁寧に紡ぎ上げる。例えば、ダブルタイムを殆ど吹かないし、婉曲的な節回しは無い。そして、そのブロウはしっかりと抑制されている。人の耳に聴き心地の良い音の大きさ、滑らかさでテナーを吹く。

この盤でもそんなジョーダンは健在だが、この盤、とても良い状態でリラックスして、実に楽しげにテナーを吹いている感じなのだ。ブルーノートでのセッションは緊張感もあったし、気負いもあっただろう。しかし、ブルーノートでの3枚のリーダー作は、クリフォード・ジョーダンに自信を与えたのではないか。その自信からくる余裕と、その余裕から来るのであろう、演奏全体を包む「暖かさ」がこの盤の特徴である。

バックのリズム・セクションも好演。シダー・ウォルトンのモーダルで洒脱なピアノがジョーダンの端正なテナーに絡み、それをアルバート・ヒースのドラミングが鼓舞し、ドライブ感で推し進める。スパンキー・デブレストのベースは、しっかりと演奏のビートを支え、演奏全体の安定感に貢献する。ハードバップの成熟を聴く様な、実に味のあるカルテット盤である。
 
 
 

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Never_giveup_4 
 

2020年12月24日 (木曜日)

プレスティッジ時代の最高傑作

プレスティッジ・レーベル時代のコルトレーンのリーダー作って、異なるセッションの寄せ集めであったり、他人名義にサイドマンとして参加した音源の再編成であったり、「訳あり」の盤が多いのだが、デビュー作の『Coltrane』とこの盤だけは違う。しっかりとコルトレーンのリーダー作であり、しっかりとコルトレーンのリーダーとしての「意志」が入っている。

John Coltrane『Soultrane』(写真左)。1958年2月7日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。レッド・ガーランドのピアノを核としたリズム・セクションをバックにした、コルトレーンのテナー一本、ワンホーン・カルテット編成である。

1958年の2月に録音して10月にはリリースされているので、プレスティッジ・レーベルとしては珍しい、コルトレーンのリーダー作の出し方である。しかも、1958年2月7日のセッションの演奏で固められ、曲順もしっかり吟味されている様に感じる。当時のコルトレーンのテナー・サックスの才能の全てが記録されていて、プレスティッジ時代のベスト的内容である。
 
 
Soultrane_20201224202301  
 
 
出だし冒頭のTadd Dameron作「Good Bait」が「良い」。コルトレーンの悠然としたテナーが「良い」。ロリンズとは異なる、ストレートでシュッとした大らかさが「良い」。続く「I Want to Talk About You」は、コルトレーンのバラード表現の完成形を聴く様だ。バックを締めるガーランド・トリオが、これまた良い味を出している。右手シングルトーン、左手ブロックコードのシンプルなガーランドのピアノがコルトレーンのテナーに実に合う。

LPのB面に回って「"You Say You Care」のストレートな吹き回し、「Theme for Ernie」のスローな吹き回しも絶妙。そして、ラストの「Russian Lullaby」で、コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」が炸裂する。高速電光石火の「ロシアの子守唄」。高速でありながら、原曲の良きフレーズをしっかり浮き出させている「シーツ・オブ・サウンド」恐るべし、である。

このプレスティッジ時代のコルトレーンのリーダー作は「白眉の出来」。1958年2月7日時点のコルトレーンの最高のパフォーマンスがこの盤にしっかりと記録されている。曲の並びも良いし、シンプルなデザインのジャケットもプレスティッジとしては上の部類。このプレスティッジのコルトレーンは間違い無く「買い」である。
 
 
 

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