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2017年4月25日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・52

オールド・スタイルのテナーには昼下がりが良く似合う。と昨日、書いた。確かにそうやなあ、と思う。昼ご飯が終わった後、食後の珈琲を飲みつつ、天気が良ければ、外の陽射しを楽しみつつ、ちょっと微睡みながら聴くオールド・スタイルのテナーは絶品である。

オールド・スタイルのテナーと言うことで昨日は「ベン・ウェブスター」のリーダー作を聴いた。オールド・スタイルのテナーと言えば、オールド・スタイルのテナーの次に、コールマン・ホーキンスが浮かぶ。ウェブスターは情感溢れるテナーが個性だが、ホーキンスのテナーは元気一杯、明朗に吹きまくるテナーが魅力。

そんな明朗に吹きまくるホーキンスのテナーが楽しめるリーダー作がこれ。Coleman Hawkins『The Hawk Flies High』(写真左)。1957年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins (ts), Idrees Sulieman (tp), JJ Johnson (tb), Hank Jones (p), Barry Galbraith (g), Oscar Pettiford (b), Jo Jones (ds)。ギター、トロンボーンも入ったセプテット構成。Riversideレーベルからのリリース。
 

The_hawk_flies_high

 
ホーキンスは収録された全ての曲において、明朗に吹きまくっている。豪快かつ大らかに吹きまくるホーキンスは、とっても頼もしい。加えて、トランペットのシュリーマンが凄く元気に吹きまくる。とにかくすっごく元気なトランペットが明らかに目立っている。ピアノのハンクは渋いバッキングを披露し、J.J.のトロンボーンもアンサンブルの良いアクセントになっている。

1957年の録音だが、演奏の内容は当時のハードバップ最先端にはほど遠い、どちらかと言えば、スイング時代からビ・バップ時代へ移行する時期の、オールド・スタイルのモダン・ジャズという風情。昭和30年代のジャズ喫茶の雰囲気がプンプンする。決して、テクニックに過ぎることは無く、ジャズとして楽しい演奏を繰り出していく。

ホーキンスは明朗に吹きまくるテナーなんだが、そこはかとなく、ブルージーでマイナーな雰囲気が漂うところが良い。春の儚さと良く似た雰囲気。楽しゅうてやがて悲しき、というか、楽しゅうてやがてブルージー。そんなホーキンスのテナーは、ジャズ喫茶の昼下がりによく似合う。

 
 

震災から6年1ヶ月。決して忘れない。まだ6年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっとずっと復興に協力し続ける。 

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2017年4月24日 (月曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・51

ジャズにおいて、テナー・サックスはフロント楽器の花形である。ジャズのフロント楽器と言えば、テナー・サックスとトランペットが人気を二分する。特に、テナー・サックスは、音が太く大きく、音の表現のバリエーションが豊か。リード楽器が故に、長い時間、ソロを取ることが出来るところは無敵である。

ジャズの世界で、テナー・サックス奏者は多い。様々な個性、スタイルのテナー奏者がキラ星の如く顔を並べ、ほんと飽きない。飽きないどころが、どんどんテナー奏者の個性の「沼」にずぶずぶと填まっていく。あれも良い、これも良い、としている間に自分の好みが判らなくなる(笑)。

オールド・スタイルのテナーも良い。Ben Webster『Soulville』(写真左)。1957年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Ben Webster (ts), Ray Brown (b), Herb Ellis (g), Stan Levey (ds), Oscar Peterson (p)。アーリー・ジャズ期から活躍したベン・ウェブスターのワンホーン、ギター入りクインテット。ヴァーヴ・レコードからのリリースだけど、ジャケットは「やっつけ」(笑)。
 

Soulville_ben_webster  

 
ウエブスターが難しいこと無く、ただ漆黒のブルージーなテナーを吹き上げる。太く力強く、時に優しく、時に繊細に、そして、時々、豪快にテナーを吹き上げる。とっても味のあるテナー・サックスに惚れ惚れする。モードだのコードだの、ビ・バップだのハードバップだの、何処吹く風。ウエブスターは悠然と自分のテナーを吹き上げる。

伴奏上手のオスカー・ピーターソンが何時になく神妙にバッキングし、ウエブスターを支え、レイ・ブラウンのベースがビートの底をガッチリ支える。そして、小粋なハーブ・エリスのギターが渋くファンキーにウエブスターのテナーの音色に彩りを添える。スタン・リービーの乾いたドラムが意外と個性的。バックを支えるジャズメン達は、皆、ウエブスターを支え惹き立てる。

ハードバップ時代の演奏ですが、スイング時代の演奏の様でもあり、時代を超えた、ベン・ウエブスターならではのモダン・ジャズな演奏がここにあります。収録されたどの演奏も明らかに「モダン・ジャズ」。音質に問題のある箇所もあるんだけど気にしない。オールド・スタイルのテナーには昼下がりが良く似合う。

 
 

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2017年4月23日 (日曜日)

グリフィンとドリューの好演

いきなり初夏の陽気が数日続いたと思ったら、天候は不安定になって、昨日から4月上旬の気候に逆戻り。これだけ寒暖の差が激しいと身体がついていかない。我が千葉県北西部地方、今年の春は気候が不順でいけない。

せめてジャズは不順は避けたい。こういう天候不順で体調が優れない時は、鉄板の「ハードバップ」な演奏が良い。ハードバップとはいえ、1950年代後半から1960年代前半の伝統的なハードバップでは無く、1980年代の「純ジャズ復古」以降の洗練され尽くしたハードバップが安心で良い。しかし、そんなアルバムあったっけ?

Johnny Griffin Quartet feat. Kenny Drew『Catharsis』(写真左)。1989年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Kenny Drew (p), Jens Melgaard (b), Ole Steenbert (ds)。リトル・ジャイアント、ジョニー・グリフィンのカルテット。ベースとドラムは、ごめんなさい、僕は知りません。しかし、ピアノには大ベテラン、ケニー・ドリューが座る。
 

Catharsis_1

 
録音場所はコペンハーゲン。といって、スティープルチェイスの本拠地モンマルトルでは無い。しかし、音の雰囲気は確かに北欧。欧州ジャズらしい、スッキリとしてはいるが、音に芯の入った切れ味の良いもの。グリフィンの豪快で切れ味の良いテナーが心地良く響くところが良い感じ。

アルバム全体の演奏は明らかに「ハードバップ」。モーダルなアドリブ・ラインもあるが、全体の傾向は明らかに伝統的はハードバップ。エネルギッシュでパワフルなグリフィンのテナーが素晴らしい。加えて、そんなグリフィンに呼応するように力の入ったバップ・ピアノを披露するケニー・ドリューも聴きものだ。グリフィン〜ドリューの掛け合い、アドリブの応酬。

僕は知らないとしたドラムとベースも堅調。しっかりとリズム&ビートの底を支えています。1980年代後半、二人のレジェンド(グリフィンとドリュー)が、これだけ洗練し尽くされたハードバップを演奏していたとは、ちょっと驚きです。当時のグリフィン・カルテットの実力の高さが窺い知れます。

 
 

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2017年4月22日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・80

我が千葉県北西部地方、不安定な天気が続いている。曇ったと思ったら晴れ間が覗き、ちょっと濃い灰色の雲が近づいてきたと思ったら、パラパラとにわか雨が降ってくる。こういう日はなんとなく気分が優れず、なんとなく憂鬱な雰囲気に包まれる。

憂鬱な雰囲気につつまれる中で聴くジャズもなんとなく、アンニュイな雰囲気に包まれる。なんか乗らないなあ、なんて思って、アルバムの棚を眺めながら・・・・、あれっ、こんなアルバム持ってたっけ、と不謹慎な思いを持ってしまうアルバムが出てくる。決して声を出して言えない。声を出して言おうものなら、嫁はんに聞かれたら絶対に怒られる(笑)。

そんな、ちょっとした驚きをもって発掘したアルバムが、松本英彦『Four Wings』(写真左)。1979年10月の録音。パーソネルは、松本英彦 (ts, fl /1926年生まれ), 菅野邦彦 (p/1936年生まれ), 鈴木勲 (b/1933年生まれ), ジョージ大塚 (ds/1937年生まれ) 。このパーソネルは一期一会セッションで、結果的にはラストとなった貴重な記録になります。

こんなアルバム、持ってたんや〜、と思いつつ、アルバムを手に取ると、1979年の録音。加えて、パーソネルは基本的に日本ジャズのベテラン中心の構成。ふ〜ん、あんまし期待できへんなあ、と思いながらも、ジャケットのデザインの趣味の良さから、とにかく聴いてみることにした。
 

Four_wings

 
日本のジャズ界において伝説のカルテット、リーダーのスリーピーこと松本英彦を筆頭に、スガチンのピアノ、オマスズのベース、ジョージのドラム。ちょっとレトロな響きのジャズが出てくるかな、と思いつつ、CDプレイヤーのスタートボタンを押すと、冒頭の「Speak Low」の楽器の音の生々しさ、演奏全体を包む強烈なスイング感に思わず身を乗り出します。

ハードバップなモダンジャズの良いところを全て集めたような、非常に内容のある演奏がギッシリ詰まっています。加えて、日本人のモダンジャズらしく、ファンクネスは希薄、切れ味の良い乾いたオフビートが底に流れている。いや〜びっくりしました。このアルバムの演奏内容は「目から鱗」です。

当時53歳、既に大ベテランの域に達していた松本英彦がこんな緊張感溢れる、先進的な内容のアルバムを出していたなんて、とにかくビックリ。とりわけ、菅野邦彦 (p), 鈴木勲 (b) の参加が効いているなあ、と思います。二人の先進的なハードバップな演奏が、受け狙いのドラミングに傾きがちなジョージ大塚のドラミングを堅実かつ味のあるドラミングに変身させているようです。

この菅野・鈴木・大塚のリズム・セクションがこのアルバムの先進性を決定付けている。そんなリズム隊をバックに悠然とスリーピーこと松本英彦がテナーをフルートを吹き上げている。誠に上質のハードバップ。一期一会の好盤です。日本ジャズも隅に置けない。

 
 

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2017年4月16日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・79

あまたあるジャズ・レーベル、それぞれのレーベルによって個性があって面白い。例えば、ジャズ・レーベルの中でも「やっつけ仕事」で有名なPrestigeレーベル。ジャズメンに手当たり次第に声をかけ、全てをジャズメンに任せての「一発録り」。そうやって録音した音源を適当に集めてアルバムにして発売する。

よって、アルバムによっては、録音日が異なったり、パーソネルが異なったりで、演奏内容や録音音質にバラツキがあったりで何かと評判が悪い。演奏は全てジャズメン任せになっているので、録音内容についてレーベルとしての統一感は殆ど無い。

それでも、手当たり次第に録音をしてアルバム化していったので、音源の数としては莫大なものになり、ジャズ演奏の記録として貴重なものになっている。今では、Bluenoteレーベル、Riversideレーベルと並んで「モダン・ジャズの3大レーベル」と呼ばれているくらいである。

そんな玉石混交としたPrestigeレーベルのアルバムの中には、これは、と目を見張る様な、いや「耳」を見張る様な内容のアルバムに出くわすことがある。そんなところが、このPrestigeレーベルの面白いところで、このレーベルのアルバムはカタログの順番に聴き進めていくのが面白い。
 

Jug_dodo1
 

このアルバムなんか、たまたまダウンロード・サイトを徘徊していて、見つけたアルバムで、レーベルを見れば、あれまあPrestigeレーベルのアルバムではないか。それでは、と聴いてみて「目から鱗」。とっても良い内容のハードバップ盤なのだ。正に典型的なハードバップな演奏が繰り広げられている。実に魅力的な盤である。

Dodo Marmarosa & Gene Ammons『Jug & Dodo』(写真)。May 4, 1962年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Gene Ammons (ts), Dodo Marmarosa (p), Sam Jones (b), Marshall Thompson (ds)。オールド・スタイルのテナーマン、ジーン・アモンズと伝説のバップ・ピアニスト、ドド・マーマローサの出会いの記録が貴重である。

バップなマーマローサの端正なピアノに、オールド・スタイルで唄う様なジーン・アモンズの豪快なテナーの共演が実に良い塩梅である。テクニックとか奏法とか、小難しいことは全く関係無し、それぞれの素材になる曲をベースに魅力的なアドリブを展開していく。ただそれだけなんだけど、この盤には聴いて楽しいハードバップな演奏がギッシリ詰まっている。

こんな盤が膨大なカタログの中に隠れているのだから、Prestigeレーベルは隅に置けない。ちなみにタイトルの「Jug」とは、ジーン・アモンズの愛称。LP時代のジャケット(写真左)を見ると「Jug(水差し)」と「Dodo(ドードー鳥)」のイラストがあしらわれている。これもPrestigeレーベルでは珍しい、小粋なジャケットである。

 
 

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2017年4月 7日 (金曜日)

根明なスピリチュアル・ジャズ

春にはスピリチュアル・ジャズが良く似合う。春のうららかな雰囲気が、フリーでアブストラクトに傾くアドリブ・フレーズを愛でる余裕を持たせてくれる。春の儚い雰囲気が、心震わせるスピリチュアルなブロウを増幅する。

そんなスピリチュアルなジャズであるが、黒人差別の問題、公民権運動やベトナム戦争が米国に影を落としていた時代である1960年代、基本的に悲しみ怒りに傾いたエモーショナルなブロウが多かった。我が国でも、1960年代は安保問題、学園紛争と国内に陰が差した時代で、この悲しみ怒りに傾いたエモーショナルなブロウが、一部ではあるが受けに受けた。

1970年代に入って、ロックの台頭によって、ジャズは大衆音楽の座から滑り落ちる。ジャズはマニア向けのマイナーな音楽になりつつあった。フリー・ジャズやスピリチュアル・ジャズは全くの下火となってしまったのである。が、どっこい、それでも細々と絶えることなく生きていたのだからジャズは意外にしぶとい。

Pharoah Sanders『Rejoice』(写真左)。女性のナレーションに導かれて始まる冒頭のタイトル曲はポシティブな雰囲気に満ち溢れている。このアルバムは1981年の作品。もはやジャズを取り巻く時代は変わったのである。このファラオ・サンダースのアルバムは、ポジティブな雰囲気が蔓延している。楽園的な雰囲気のスピリチュアル・ジャズ。
 

Rejoice1

 
2曲目の「Highlife」などは思いっきり「カリプソ」である。ポップでファンキーな明るい「カリプソ」。思わず踊り出してしまいそう。そこに、思いっきりスピリチュアルでフリーキーなサンダースのアドリブが炸裂する。それでも、サンダースのソロは伝統の範囲をはみ出すことは無い。ギリギリのところで伝統的な枠に踏みとどまる。

3曲目の「Nigerian Juju Highlife」は思いっきり「アフリカン」。ゴスペルチックな要素も振り撒きつつ、それでも基本的に雰囲気はポジティブ。4曲目の「Origin」などは女性コーラスをフィーチャーしたもの。以前のスピリチュアル・ジャズでは考えられない、思いっきりポップで怠いポジティブな雰囲気。

6曲目のコルトレーンの「Moments Notice」のボーカル付きバージョンなど、全く以て脳天気極まりない(笑)。怠くてファンキーでスピリチュアル。スピリチュアル・ジャズが精神性を追求したシリアスなものである時代は去った。このサンダースのスピリチュアル・ジャズ、シリアスなジャズ者の方々からは思いっきり怒られそう(笑)。でも、これが実に良い雰囲気なのだ。

根明なスピリチュアル・ジャズ。ちょっと地味なジャケット・デザインで損をしているが、内容的には折り紙付きのスピリチュアル・ジャズ盤です。フリーキーでアブストラクトなブロウも伝統の枠を逸脱することは無い、意外と伝統的な純ジャズの枠の中に収まったところが聴き易い好盤です。

 
 

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2017年4月 6日 (木曜日)

春はスピリチュアル・ジャズ

昨日、アルバート・アイラーの初リーダー作について語った。アルバート・アイラーのテナーはフリーでもなければ、アブストラクトでもない。しかし、明らかに「スピリチュアル」である。心揺さぶられる様な、心を鷲掴みにされる様な、スピリチュアルなテナーの嘶き。

アイラーのテナーはフリー、フリーと言われるが、今の耳でしっかり聴けば、しっかりと伝統的なジャズに根ざした演奏である。しかし、フレーズの取っ掛かりが、それまでの常識とは異なるところから始まるので、限りなく自由度の高さを感じるパフォーマンスになっている。つまりは当時のジャズ・アドリブの既成概念を取っ払ったユニークさを大いに湛えたブロウと言える。

Albert Ayler『Goin' Home』(写真)。1964年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Albert Ayler (ts, ss), Call Cobbs (p), Henry Grimes (b -2,4/7), Sunny Murray (ds -2,4/7)。パーソネルを見渡してみると、この盤って、アルバート・アイラーのテナーに絞って愛でる、そんな盤ではないか、と予想する。ちょっとワクワクする。
 

Albert_ayler_goin_home

 
冒頭のタイトル曲「Goin' Home」を聴く。邦題は「家路」。ドヴォルザークの交響曲第9番 ホ短調 作品95『新世界より』の第2楽章 Largoのイングリッシュホルンによる主部の主題。「遠き山に日は落ちて」などの愛唱歌に編曲されている。夕方5時になると、地方のあちこちで有線放送で鳴り響く「懐かしの」旋律。ちょっと俗っぽくて、旋律そのままに吹くと、聴いている方としてはちょっと気恥ずかしくなるような曲。

そんなポピュラーな大衆曲を、アイラーは「スピリチュアル」に吹き上げる。それまでの常識とは異なるところからテーマのブロウが始まる。そんなユニークな主題の流れから、これまたユニークな旋律によるアドリブ展開。この当時のジャズ・アドリブの既成概念を取っ払った、ユニークな展開が明らかに「フリー」である。心の趣くまま、気の向くままのブロウではない。伝統に根ざした、それまでのアドリブの既成概念を取っ払ったブロウ。

2曲目以降の選曲を見て、昔の評論を思い出す。この盤、アイラーとしては異色作と言われていて、黒人霊歌ばかりをストレートに演奏している。そう黒人霊歌ばかりを演奏しているところが僕にとって「ツボ」なのだ。米国ルーツ・ミュージックをベースにしたジャズ。これが良い。そして、それを「スピリチュアルな」テナーで吹き上げる。じっくり聴いて、ほんのり感動の好盤である。

 
 

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2017年4月 5日 (水曜日)

春はフリー・ジャズが似合う

ここ千葉県北西部地方でも桜がほぼ満開状態になった。今年もやっと春らしい日になってきた。今年はなかなか暖かくならなくて、先週まで、通勤の朝なんて寒いまま。冬のダウンコートが手放せなかった。昨日、やっとのことで春先のハーフコートに替えたくらいだ。

この春の桜の季節、この桜が散り出す頃。陽光麗らかな春の暖かい季節の中、ふっと悲しくなるような、ふっと侘しくなるような、そこはかとない「寂寞感」に襲われることがある。散る桜を見ながら、ふっと涙してしまう様な、胸が締め付けられる様な「寂寞感」。そんな寂寞感の中に潜む「狂気」。この季節はそんな「春の狂気」を感じる瞬間が時々ある。

そんな桜が散り出す季節、ジャズ盤の鑑賞について、フリー・ジャズが解禁になる。これって僕だけかもしれないんだが、春になるとフリー・ジャズが聴きたくなる。冬は陽射しが弱くて寒くて、そんな時、フリー・ジャズを聴いたら「鬱々」してしまうので、基本的には聴かない。夏は暑苦しくていけない。秋は寂寞感が増幅されてそれどころではなくなるので控え気味。

春はフリー・ジャズが似合う。この季節の持つ「春の狂気」がフリー・ジャズを聴きたい感覚を刺激するのかもしれない。ということで、今日は『My Name Is Albert Ayler』(写真左)を選択する。1963年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Albert Ayler (ts,ss), Niels Brosted (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b), Ronnie Gardiner (ds)。
 

My_name_is_albert_ayler_2

 
この盤はフリー・ジャズの盤として紹介されることが殆どだが、今の耳で聴くと意外と伝統的なジャズの中でインプロビゼーションが展開されていることに気付く。リズム&ビートについてもしっかりとジャズの基本を踏まえたもの。アブストラクト度合いも軽度なもので、フリーな度合いも穏やかなもの。今の耳では、この演奏は正統な「純ジャズ」として聴くことが出来る。

しかしながら、この盤の収録曲、スタンダードの「Bye Bye Blackbird」「Billie's Bounce」を聴けば、テナーのアドリブ・フレーズの展開の仕方がユニークなのが良く判る。それまでに無いところを基音にして、モーダルな展開をするユニークさ。そのユニークさを以てしても、この演奏は明らかに自由度の高い「純ジャズ」。

フリーでもなければ、アブストラクトでもない。しかし、明らかに「スピリチュアル」である。心揺さぶられる様な、心を鷲掴みにされる様な、スピリチュアルなテナーの嘶き。それは「Summertime」「On Green Dolphin Street」を聴けば良く判る。それまでに無い、気持ちのこもったスピリチュアルなブロウ。決してアブストラクトには傾かない。伝統的な枠をはみ出しそうで、はみ出さない、絶妙なブロウ。

アイラーのテナーのテクニックは正統派。だからこそ、ユニークなアドリブ・フレーズの展開が可能になる。この季節の持つ「春の狂気」にピッタリなスピリチュアルなアイラーのテナー。心揺さぶられ、そこはかとない寂寞感に襲われる。しかし、この春の暖かさの中、ネガティブになることは無い。春の狂気を感じつつ、スピリチュアルなブローにジャズの持つ「妖気」感じる。これが楽しい。

 
 

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2017年4月 3日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・103

最近の愛読書である『僕が選んだ「いい音ジャズ」201枚 〜オーディオファンも聴いておきたい優秀録音盤』。音楽鑑賞の場合、音が良いに越したことは無い。演奏が良ければ音は二の次、なんていう意見もあるが、僕はジャズにおいては「音の良さ」を追求したい。ジャズにおいては楽器の鳴る音も聴きどころ、だと思っている。

そんな「音の良いジャズ」のアルバムをチョイスした本がこの「いい音ジャズ」なんだが、この本にチョイスされたアルバムはどれもが確かに音が良い。単に音が綺麗にとれているのでは無くて、ジャズ演奏の躍動感や楽器の鳴りなど、ジャズ演奏を楽しむのに必須の「音的な要素」をしっかりと捉えているのだ。

Tubby Hayes『Tubby's Groove』(写真左)。1959年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Tubby Hayes (ts, vib), Terry Shannon (p), Jeff Clyne (b), Phil Seamen (ds)。リーダーのタビー・ヘイズは、英国はロンドン出身のハード・バップ系のテナー奏者、加えてヴァイブ奏者。そんな英国ジャズを代表するテナー奏者のリーダー作である。
 

Tubbys_groove

 
音が良い。凄く音が良い。ヘイズのテナーの音が生々しい。生き物のように呼吸するように唄う様にヘイズのテナーが鳴っている。透明度抜群に響くヴァイブの音も生々しい。これが1959年の録音なん?、とビックリする。時はハードバップ時代の真っ只中。ジャズ独特の「ブルーノート」が黒くてファンキー。この盤のジャケットのイメージそのまま。

この音の感覚を「Groove」と形容するのが一般的。「Groove」って何と問われたら、この盤をかけたりする。黒くてブルージーでファンキーなジャズ独特の「ノリ」、それが「Groove」。このタビー・ヘイズのリーダー作には、その「Groove」感がギッシリと詰まっている。この「Groove」感が生々しい音で記録されている。英国ジャズ万歳である。 

この盤でのヘイズのテナーは凄い。他のメンバーを置き去りにして、漆黒のファンキー・グルーブなテナーを吹きまくる。あっと言う間の40分間。そう言えばタイトルは「タビーのグルーブ」。けだし名タイトルである。こういう盤があるからジャズのアルバム漁りは止められない。最近の我がバーチャル音楽喫茶『松和』の「隠し球」的なアルバムである。

 
 

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2017年3月21日 (火曜日)

キャンディドらしい音・2

キャンディド・レーベル(Candid Label)のアルバムは「ならでは」の特徴がある。音はジャズメンの志向、意向をストレートに演奏に反映したもので、当時として先進的な、挑戦的な内容のものが多い。加えて、音の厚みと中低音域の充実した音圧は、キャンディド・レーベルならではのもの。そして、ジャケット・デザイン。ロゴタイプが独特なものが多い。

例えば、このアルバムも明かに「キャンディド・レーベル」らしい。Pee Wee Russell & Coleman Hawkins『Jazz Reunion』(写真左)。1961年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Emmett Berry (tp), Bob Brookmeyer (tb), Pee Wee Russell (cl), Coleman Hawkins (ts), Nat Pierce (p), Milt Hinton (b), Jo Jones (ds)。

スイング時代から活躍してきた、当時でベテランの域に達していた「オールド・スタイル」のジャズメンにスポットを当てたメンバー構成とみた。演奏スタイルは1961年の録音なので「ハードバップ」ではあるが、アドリブ・ソロをとる各楽器の雰囲気は、ほんのりと「スイング」な雰囲気が漂っている。故事成語で喩えると「温故知新」の様な演奏内容である。
 

Jazz_reunion

 
楽器はそれぞれ良く鳴っている。特に双頭リーダーの、ピー・ウィー・ラッセルのクラリネットとコールマン・ホーキンスのテナーはとても良く鳴っている。響きは「スイング」なれど、演奏の内容は明確な「ハードバップ」ど真ん中。音も太いので迫力満点、抑揚強弱もメリハリ良く効いていて、演奏自体に聴き応えがある。これぞ「ジャズ」的な、典型的なハードバップ。

とりわけ、ピー・ウィー・ラッセルのクラリネットがこんなに素晴らしいとは思わなかった。明らかに嬉しい誤算。スイング時代のクラリネット名手であるピー・ウィー・ラッセルが、1961年になって、ハードバップという当時のジャズのトレンドなフォーマットの中で、これだけ素晴らしいインプロビゼーションを聴かせてくれるとは思わなかった。

収録された演奏といい、録音された音といい、アルバム・ジャケットのデザインといい、この盤は明らかに「キャンディド・レーベル」ならではの盤である。もう一人のリーダー、ホーキンスのテナーもボボボボッとオールドスタイルよろしく、素敵に鳴っていて、これも聴きもの。良いアルバムです。キャンディド・レーベル入門盤の一枚としてお勧めです。

 
 

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