2020年12月 1日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・193

ブルーノート・レーベルの素晴らしいところは色々あるが、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオン自らが自らの耳で、それまで無名だった優秀なジャズマンを見出して、リーダー作を録音させていたところが一番感じ入る。他のレーベルは優秀なのかどうかも判らず、売れるかどうかも判らないので見向きもしない(笑)。

そんな優秀ではあるが無名だったジャズマンを、ブルーノートはその才能を見出して、リーダー作を録音させたり、サイドマンとして、他のリーダー作に参加させていたりする。ブルーノートのお陰で、ハードバップ時代、人気ジャズマン以外にも優れたジャズマンは沢山いて、ジャズというのは演奏家のレベルで見ても、かなり裾野の広い音楽ジャンルだったことが良く判るのだ。

Clifford Jordan『Blowing In From Chicago』(写真左)。1957年3月3日の録音。ブルーノートの1549番。ちなみにパーソネルは、Clifford Jordan, John Gilmore (ts), Horace Silver (p), Curly Russell (b), Art Blakey (ds)。ブルースの街シカゴからニューヨークにやって来たクリフォード・ジョーダンとジョン・ギルモア、テナー・サックス2管がフロントの変則クインテット編成。
 
 
Blowing-in-from-chicago  
 
 
ホレス・シルヴァーが見出したそうだ。「シカゴに凄いテナーマンがいたぜ」とライオンに耳打ち。それでは、とブルーノートがリーダー作の録音をセットアップ。シルヴァー=ラッセル=ブレイキーの黒々としたリズム・セクションを用意し、素晴らしいセッションが実現した。無骨でバキバキゴツゴツと硬派なハードバップ、そして、マイナー・ブルース。

テクニックがどう、とか、フレーズの創造性がどう、とか、この盤を聴く時にはそんなものは「野暮」というもんだ。ハードバップの良いところがこの盤に詰まっている。ジャズっぽい、力強くブルージーなテナー2管の音がとても心地良い。そして、ブルース・ナンバーには、ニューヨークではない、どこかシカゴ・ジャズの雰囲気が漂う。

こういう盤を録音し、その音源が残っているから、ブルーノート・レーベルはジャズの老舗レーベルとしてリスペクトされ続けているのだ。ハードバップの宝の山であるブルーノートの1500番台の中でも、今でも有名盤では無いが、これはひときわ「ブルーノートらしい」1枚だと思っている。
 
 
 

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2020年11月28日 (土曜日)

シェップが「バラード曲」を吹く

ヴィーナス・レコードは日本発のジャズ・レーベル。「昔の名前で出ています」的な、昔、第一線で活躍していたジャズ・ミュージシャンを再発見して、スタンダード曲をメインに演奏させるという、「従来の日本人好みの純ジャズ」的なアルバム作りをするレーベル。こんなミュージシャンにスタンダード曲をやらせるのか、なんていう「違和感満載」なプロデュースが賛否両論を巻き起こしている。

Archie Shepp Quartet『True Ballads』(写真左)。1996年12月7日、NYの「Clinton Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Archie Shepp (ts), John Hicks (p), George Mraz (b), Idris Muhammad (ds)。リーダーのアーチー・シェップのみならず、バックのリズム・セクションも、ベースのムラーツを除いて、その名を確認すると「昔の名前で出ています」的な、昔、第一線で活躍していたジャズ・ミュージシャンの再発見である。

スピリチュアル・ジャズ、そして、ジャズ・ファンクがメインのシェップに、スタンダード曲をやらせるのもどうかと思うが、加えて、バラード曲をやらせるなんて、かなり「違和感満載」なプロデュースである。しかも、ギャラが良いのか、シェップ自身がそんなオファーを受けて、スタンダード&バラード曲を神妙に吹き上げるのだから、これはこれで「違和感満載」(笑)。
 
 
True-ballads-archie-shepp  
 
 
収録曲を見渡しても、バリバリというか、まあ、「ど」の付く位のスタンダードなバラード曲がズラリ、である。そんなバラード曲を情感タップリに吹き上げていくシェップ。シェップの昔を知る我々としては「違和感満載」である(笑)。しかし、その演奏内容は素晴らしいもの。シェップって、実はメインストリーム志向のハードバップが一番合っていたりして。それほどまでの、極上のバラード、極上のテナー・サックスである。

1. The Thrill Is Gone ( R. Henderson )
2. The Shadow Of Your Smile ( J. Mandel )
3. Everything Must Change ( B. Ighner )
4. Here's That Rainy Day ( J. Van. Heusen )
5. La Rosita ( P. Dupont )
6. Nature Boy ( E. Ahbez )
7. Yesterdays ( J. Kern )
8. Violets For Your Furs ( M. Dennis )

バックのリズム・セクションも大健闘。ベースのムラーツだけは、当時、現役バリバリな存在だったので心配は無い。ピアノのヒックスなんて大丈夫か、と思ったりもしたが、神妙にリリカルで明確なタッチを駆使して、シェップのバラード・テナーをしっかりとサポートしていて立派。ドラムのムハンマドも堅実なドラミングで「まだまだやれるやん」。ヴィーナスお得意の「意外性と違和感満載」な好盤の一枚である。
 
 
 

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2020年11月20日 (金曜日)

「やっつけ録音」が大当たり

一昨日、昨日と里芋の収穫の為にブログをお休みしました。里芋の収穫、今年の夏の天候不順と酷暑で出来はイマイチでしたねえ。残念です。ついでに、畑のメンテナンス(収穫終了となった作物を抜いたり、雑草を刈り取ったり)も実施したので、一日が終わった後には、ブログを更新するエネルギーは残っていませんでした。

さて、プレスティッジ・レーベルである。手当たり次第に暇そうなジャズメンに声をかけ、スタジオで繰り広げるジャム・セッション〜リハーサル無しの一発勝負の録音。録音時期の整合性を無視した、フィーリングだけを頼りにした「寄せ集め的なアルバム編集」。ブルーノートとは正反対のレーベル運営。そんなプレスティッジだが、その「いい加減さ」が良い方向に作用したアルバムもあるから面白い。

Red Garland『All Mornin' Long』(写真左)。1957年11月15日、NYのVan Gelder Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。ピアノのレッド・ガーランド名義のリーダー作となっているが、内容的にはリーダー無しの「ジャム・セッション」。たまたま、ガーランドがリーダーになっちゃんだろう。
 
 
All-mornin-long  
 
 
ワッとメンバーを集めて、ジャム・セッションを録音し、適当に編集してリリースする。プレスティッジのお得意の「仕業」なんだが、この盤はそれが良い方向に作用している。ネーム的にもベースだけがちょっと弱いが、他は錚々たるメンバー。そんな錚々たるメンバーが順番にソロを取って、自分の個性全開でパフォーマンスしているが、それがとても素晴らしい出来なのだ。

特にコルトレーンが良い。素晴らしいテクニックと併せて、これだけのびのびとハードバップなマナーでテナーを吹き上げているコルトレーンはなかなか聴けない。ドナルド・バードのトランペットも負けていない。ブリリアントなトランペットをテクニック宜しく吹き上げる。ガーランドの右手シングル・トーンも良いし、テイラーのドラミングも味が合って惚れ惚れする。

ワッとメンバーを集めて録音したら、それはそれは素晴らしい内容のジャム・セッションが録れちゃった、という感じの内容で、この日の音源はこの盤に収録された3曲以外に他に7曲ほどあるが、どれもが負けず劣らず素晴らしい内容。この日のジャム・セッションは何かが降りてきていたんじゃないか、と思われるくらいで、プレスティッジの「やっつけ録音」も大当たりすることがあるという好例である。
 
 
 

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2020年11月14日 (土曜日)

安らぎのコルトレーンならこれ

頭がヘトヘトに疲れたら、上手くリラックスできるジャズが欲しくなる。そんな時に選ぶのが、コルトレーンのプレスティッジ時代のアルバム。リラックスして聴ける、それでいてしっかりと耳に心地良い刺激を残してくれる、ハード・バップ時代のコルトレーンは「上手くリラックス出来る」ジャズだ。安らぎが欲しい時のコルトレーンは、絶対に「プレスティッジ時代」。

John Coltrane『Settin' the Pace』(写真右)。1958年3月26日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts) Red Garland (p) Paul Chambers (b) Art Taylor (ds)。名作『Soultrane』の1ヵ月後に同じメンバーで吹き込まれたアルバムである。プレスティッジには珍しく、同一日、同一パーソネルで固めている。お得意の「寄せ集めアルバム」で無いことはなによりである。

この盤では「安らぎのコルトレーン」が心ゆくまで堪能出来る。とりわけ、冒頭の1曲目「I See Your Face Before Me」と、2曲目「If There Is Someone Lovelier Than You」が「安らぎ」の名演。特に、1曲目「I See Your Face Before Me」の、イントロの後に出てくるコルトレーンのテナー・サックスの音色は安らぎに満ちて、美しく、思わずため息をついてしまうほどのロマンティシズムに満ちている。
 
 
Settin-the-pace
 
 
これほどまでに、優しく安らぐコルトレーンのテナーはそうそう無いだろう。後のインパルス時代の好盤『バラード』での、あっさり気味で素朴な雰囲気のテナー・サックスとは全く異なる、しっかりと情感を込めた、力強い、それでいて「安らぎ」溢れるテナーが、このアルバムの全てである。コルトレーンの名作と呼ばれる基本コレクションの次にコレクションに加えたい1枚である。

コルトレーンを聴くなら、必ず聴いて欲しい必ず聴いて欲しいプレスティッジの諸作。プレスティッジ・レーベルでのコルトレーンのリーダー作には外れが無い。そんなプレスティッジの諸作の中でも、この『Settin' the Pace』はお勧めの一枚。プレスティッジ以降のコルトレーンは、モードとフリーに傾いていって、エモーショナルなテナー&ソプラノ・サックスは聴いていてドッと疲れる。

ただなあ、ジャケットが「味もしゃしゃらもない」。中身は「名作・好盤」の類なのだが、このジャケットがなあ。何の工夫も無いというか、ただコルトレーンの顔写真にアルバム・タイトルを適当なタイポグラフィーであしらっただけというか、とにかく「名作・好盤」の風格に欠けることだけは確か。プレスティッジ時代のコルトレーンのリーダー作の唯一の難点が「ジャケット」である。
 
 
 

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2020年11月12日 (木曜日)

コルトレーンのスタンダード集

プレスティッジ契約時に数多くの録音を行なったコルトレーンだが、彼のキャリアの中で、このプレスティッジ時代のコルトレーンが、一番「ジャズ」らしかったのではないかと思う。この後、レギュラー・カルテットを持って、フリーでエモーショナルな演奏を行ったインパルス時代のアルバムがジャズ入門書などで絶賛されて推薦盤となっているが、僕はちょっと違和感を感じる。

コルトレーンのフリーでエモーショナルな演奏は、構えて聴く類ものであって、リラックスして聴けるものでは無い。ましてや、ジャズ者初心者向けでは無いし、ジャズ入門書に載せるのにも注意がいる。決して、コルトレーンのフリーでエモーショナルな演奏が悪いとは言っていない。僕は、今ではこのスタイルのコルトレーンも好きだ。

でも、ジャズ者初心者の頃は、はっきり言うと「嫌いだった」。ジャズ者初心者の耳には、やかましくてメチャクチャに聴こえる。到底、音楽とは思えなかった。ましてや、何が何やら判らない。確かに「ジャズとしての即興演奏」の究極の姿のひとつ、というのは今では判るが、我々ジャズ者が通常聴くジャズ、初心者向けのジャズは「ジャズ」らしく、リラックスして素直に聴けるのが良い。

やはり「ジャズ」らしいコルトレーンは、インパルスの時代よりプレシティッジの時代に軍配が上がる。プレスティッジ時代のコルトレーンのリーダー作には駄作は無い。というか、リーダー作ばかりで無く、サイドマンとしてプレスティッジに録音したコルトレーンのテナー・サックスには外れが無い。
 
 
Standard-coltrane  
 
 
プレスティッジ時代のコルトレーンのリーダー作の難点はプレスティッジらしく「酷いジャケット」(笑)。アルバム・ジャケットは平凡で酷いデザインばかりだけど、このプレスティッジ時代のコルトレーンは、このデザイン・センスの欠片も無いジャケットに騙されてはいけない。

John Colrtane『Standard Coltrane』(写真左)。1958年7月11日の録音。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Wilbur Harden (tp, flh), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。このアルバムは、1958年7月11日の全8曲のセッションから、4曲を選曲したスタンダード・ソング集。取り上げられている曲も、実にマニアックで充実している。難点と言えば、曲数がちょっと少ないだけである。

コルトレーン・ジャズの発展途上段階のアルバムではあるが、そのとても優れた内容に改めて感服。これ、インパルス時代の「バラード」より内容が良いのではないか。ストレートにしっかりとした音で吹くテナー・サックス。そして、耳に付かない、適度な長さの高速早弾き「シーツ・オブ・サウンド」のテクニック。歌うように感情の抑揚をくっきり付けて、時には優しく時には激しく、聴いていて、全く飽きの来ないその構成力。

インパルス時代のコルトレーンも優れている。でも、プレスティッジ時代の隠れ好盤にもスポットライトを当てて欲しい。ジャケットの稚拙さとインパルス時代盲信主義だけで見過ごしてしまうには、あまりに惜しい。リラックスして聴きたい時のコルトレーンは「インパルス時代よりプレスティッジ時代を」ですね。
 
 
 

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2020年11月11日 (水曜日)

ミスマッチのようで実は相性抜群

ジャズって面白いもので、演奏者の組み合わせを見て、そのそれぞれの演奏スタイルを思い浮かべて、どう考えてもミスマッチで「こんな組み合わせは聴きたく無いな、聴いたってロクなことは無い」と思うことがたまにある。が、意外と実はそんな組み合わせにこそ「組み合わせの妙」的な好盤が生まれることがある。ジャズには先入観って危険。まずは自分の耳で聴いてみることが大事である。

『Kenny Burrell & John Coltrane』(写真左)。1958年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), John Coltrane (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。素敵なメンバーでのクインテット構成。特にリズム・セクションに「名盤請負人」トミフラのピアノと「燻し銀ドラマー」のコブが配置されているところがミソ。まあ、プレスティッジからのリリースなので、この素敵なメンバー構成も偶然なんだろうけど(笑)。

さて、このプレスティッジの企画盤『ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン』って、シーツ・オブ・サウンドが「ウリ」のエモーショナルで切れ味の良いコルトレーンのテナーと、夜の雰囲気が良く似合うブルージーな漆黒ギターのバレル、どう考えたって「合う訳が無い」と思うのだが、これが実は「合う」んですよね。
 
 
Kenny-burrell__john-coltrane
 
 
出だしの1曲目「Freight Trane」は「あ〜やっぱり合わないな」なんて、コルトレーンとバレルのミスマッチの予感を実際に確認して、直感は当たっていた、とほくそ笑んだりする。が、2曲目の「I Never Knew」、3曲目の「Lyresto」と聴き進めていくと、「ん〜っ」と思い始める。コルトレーンがバレルに合わせ始めるのだ。シーツ・オブ・サウンドで吹きまくるコルトレーンでは無く、ブルージーなバレルの漆黒ギターに合わせて、歌心溢れるブルージーなテナーに変身し始めるのだ。

そして、4曲目の優しいバラード曲「Why Was I Born?」。この演奏、コルトレーンとバレルのデュオなのだが「これが絶品」。ブルージーで黒くて優しくて骨のあるバレルの漆黒ギターの伴奏に乗って、コルトレーンが、それはそれは歌心溢れる優しいテナーを奏でる。すると、代わって、黒くて優しくて骨のあるバレルの漆黒ギターが「しっとり」と語りかける。この演奏を聴くだけの為に、このアルバムを手に入れても良い位の名演である。

こんな時、ジャズって柔軟な音楽だなって、改めて感心する。昔、ジャズ盤紹介本で、この盤ってミスマッチの極致の様に書かれていた記憶があるが、パーソネルを見ただけで評価したのではないだろうか。ようは「如何に相手の音をしっかり聴いて、最適の音でしっかり返すか」である。つまりはバレルとコルトレーン、ミスマッチのようで実は相性抜群。なんだかジャズの世界って、人間の男女の仲に良く似ている。
 
 
 

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2020年11月10日 (火曜日)

逆「ジャケ買い」のトレーン

プレスティッジって、ブルーノートと並んで、ジャズ・レーベルの老舗中の老舗なんだが、プレスティッジほど、いい加減なレーベルはないのではないか。内容、質については、そのセッションの偶発性、演奏するジャズマンのパフォーマンスに因るところが大きく、アルバムによってバラツキがある。

そして、手当たり次第に暇そうなジャズメンに声をかけ、スタジオで繰り広げるジャム・セッション〜リハーサル無しの一発勝負の録音。録音時期の整合性を無視した、フィーリングだけを頼りにした「寄せ集め的なアルバム編集」。ブルーノートとは正反対のレーベル運営。

そんなプレスティッジだが、ジョン・コルトレーンについては「プレスティッジのコルトレーン」を愛聴している。ハードバップのマナーに則ったコルトレーンのテナー・サックスはそれはそれは極上のもの。テクニックも申し分無く、この頃のコルトレーンは、高速のシーツ・オブ・サウンドを多発することなく、エモーショナルな雄叫びは全く無く、素直でバップなブロウを心ゆくまで堪能出来る。

John Coltrane『Lush Life』(写真左)。1〜3曲目が1957年8月の録音で、4曲目が1958年1月の録音、5曲目が1957年5月の録音。そして、パーソネルは、1〜3曲目が、John Coltrane (ts), Earl May (b), Art Taylor (ds)。4曲目が、John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Louis Hayes (ds)。5曲目が、John Coltrane (ts), Red Garland (p), Paul Chambers (b), Albert Heath (ds)。プレスティッジらしく、収録されたセッションはバラバラである。

加えて、このアルバム、プレスティッジのアルバムらしく、ジャケットがイマイチ。コルトレーンの写真は良いとして、この「LUSH LiFE JOhN COLTRaNE」という、いい加減なロゴはなんなんだ。
 
 
Lush-life  
 
 
このアルバム・ジャケット、LPサイズだと、結構、ドン引きする。このジャケットでは購入意欲が湧かないなあ。CDのサイズになって、やっとなんとか我慢して購入できるレベル(笑)。

しかしながら、このアルバム、ハードバップ時代のコルトレーンの「隠れ好盤」だと思う。冒頭の「LIke Someone In Love」なんぞ、ピアノレスの演奏でコルトレーンのテナー・サックスが心ゆくまで堪能できる代物。真っすぐで力強い音色、それでいて、どこかエッジが丸い、少し優しい響きのするコルトレーンのテナー。この時代のコルトレーンが、一番、彼の素晴らしいテナーをシンプルに堪能できる。

表題曲の「Lush Life」も絶品。この頃のコルトレーンって、バラードを吹かせるとピカイチ。13分56秒と長尺な演奏だが、コルトレーンのテナーは、聴き手を飽きさせない。素晴らしいテクニックと表現力。是非、一度は聴いていただきたい名演である。

このアルバムでのコルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」は、早弾きされても喧しくなく、耳につかない。適度な早さと長さの「シーツ・オブ・サウンド」は、そのエモーショナルな雰囲気が良い方向に出ていて心地良い。

40歳過ぎるまで、この『Lush Life』っていうアルバムはジャケットにドン引きして、なかなか手に入れるには至らなかった。が、40歳過ぎて、思い切って入手して何度も聴き返してみると、あら不思議、「思い切って手に入れて良かった」と心から思える、「ジャケ買い」とは正反対の、逆「ジャケ買い」隠れ好盤である。人は見かけによらず、と言うが、このアルバムは「見かけによらず」である。
 
 
 

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2020年11月 8日 (日曜日)

時には「ジャケ買い」の逆もある

「ジャケ買い」という言葉がある。ジャズのアルバムで、ジャケット・デザインの良いものは中身の演奏も良いものが多い。つまり、ジャケットが良ければ、その場で衝動買いしても悔いは残らないことが多い、という格言みたいなものなんだが、時には「ジャケ買い」の逆もある。だから、アルバムのコレクションって楽しいのかもしれない。

Hank Mobley『The Jazz Message Vol.2』(写真左)。1956年の録音。前半2曲が11月の録音。パーソネルは、Lee Morgan (tp), Hank Mobley (ts), Hank Jones (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。後半3曲が遡ること7月の録音。パーソネルは、Donald Byrd (tp), Hank Mobley (ts), Barry Harris (p), Doug Watkins (b), Kenny Clarke (ds)。サボイ・レーベルからのリリースになる。

ハード・バップ全盛に向かって、若きジャズ・ミュージシャン達が技を競い合った時期。いや〜錚々たるメンバーやなあ。サボイ・レーベルにしては珍しい、ハードバップの第一線で活躍している、メジャーなスター・ジャズマンを一斉に集めている。このメンバーを見ただけで、このアルバムの内容の良さは約束されたようなものだ。
 
 
The-jazz-message-vol2
 
 
リーダーのモブレーをはじめとして、若きドナルド・バードやダグ・ワトキンス、リー・モーガンが熱気溢れるハード・バップを展開。とりわけ、リーダーの若きハンク・モブレーの荒削りで野太い、それでいて歌心を感じさせるテナー・サックスは「これぞハードバップ、これぞモダン・ジャズ」的な音で、聴いていて心が和む。

トランペットのモーガンやバードは、もうこの頃、既に彼らそれぞれ特有の「クセ」が、ところどころに見え隠れして個性的。思わず口元が緩む。ワトキンスのベースは太くて堅実。ブンブン鳴る。早逝が惜しまれる。ハードバップの美味しいところが詰め込まれていて、代表的名盤で無い分、リラックスして聴ける。しかし、このアルバム、ジャズ盤紹介本などで、そのタイトルが挙がることは少ない。

恐らく、このアルバムのジャケットに問題があるんじゃないかと睨んでいる。悩みに悩んだモブレーの横顔。しかも、額に手を当てて痛々しいことこの上ない。アルバムのジャケットに、こんな写真、使うかなあ。タイポグラフィーはサボイ・レーベル特有の古くさい、どうでも良い感じのタイポグラフィー。このジャケットじゃあ、触手は伸びないな。でも、内容はなかなかの好盤です。
 
 
 

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2020年11月 6日 (金曜日)

モブレーの作曲の才能の高さ

ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンの価値基準は、ジャズというジャンルの音楽を「総合芸術」として捉えていたところにあるんじゃなかろうか、思っている。

ブルーノート・レーベル、特に1500番台、4000〜4200番台にかけて「駄盤無し」と言われる。確かに「駄盤無し」なのだが、初めて聴いた時に「ライオンって、どうしてこの音源をアルバム化したんやろ」と思うものがある。逆に「当時、お蔵入り」した音源については、どれもが「なんでお蔵入りしたんやろ」と思うものばかりである。

『Hank Mobley And His All Stars』(写真左)。1957年1月13日、お馴染みVan Gelder Studioでの録音。ブルーノートの1544番。ちなみにパーソネルは、Hank Mobley (ts), Milt Jackson (vib), Horace Silver (p), Doug Watkins (b), Art Blakey (ds)。

フロントにヴァイブのミルト・ジャクソンを加え、リズム・セクションにホレス・シルヴァーのピアノを加えた、確かに、当時のブルーノートの「オールスターズ」である。この人選、このアルバムを聴き終えた後で、なるほどなあ、と感心することになる。

ブルーノートの総帥、プロデューサーのアルフレッド・ライオンは、テナーのハンク・モブレーを「買っていた」。特に、1957年はハンク・モブレー使いまくり。全部で4枚のリーダー作を作らせ、他のリーダーのセッションにも、参加させまくり、である。その「こころ」は何処にあったのか。

この盤はブルーノートにおいて、モブレーにとって2枚目のリーダー作。収録曲はモブレーの自作曲で固めている。当時27歳の若手だったモブレー。そんな若手の自作曲で固めたリーダー作に、ミルトやホレスなど、当時、ハードバップのスター・ジャズメンを参加させている。聴く前はその真意が分からなかった。
 
 
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ハンク・モブレーは好不調の波が激しい。どうもセッションのメンバーによるところ、つまり相性が強く出る感じなのだ。この盤では、モブレーのテナーは萎縮している訳では無いが(指はしっかり動いている)「神妙で大人しい」。どうも周りを固めたメンバーが、モブレーにとって「気さくに相対できる相手」では無かったようである。加えて、自作曲をこのメンバーで演奏して貰うことに「恐縮」していたのではないか。

逆に、モブレー以外のメンバーは溌剌と演奏している。特にミルト・ジャクソンのヴァイブ、ホレス・シルヴァーのピアノは絶好調。モブレーの自作曲の中で、喜々として素敵なアドリブ・パフォーマンスを展開している。これって、恐らくモブレーの自作曲の出来が素晴らしいのだと思う。曲の出来によって、アドリブの質は変わる。ジャズとはそういうものなんだが、この盤がそれを証明しているようだ。

スタンダード曲を一曲も入れずに、モブレーの自作曲で固めた、アルフレッド・ライオンの真意。恐らく、ライオンはモブレーの作曲の才能を、テナーのプレイ以上に「買って」いたのではないだろうか。だからこそ、リーダーのモブレーが「慎重で大人しい」プレイに終始して、サイドマンのプレイの方が目立つセッションにも拘わらず、この音源をアルバム化したのではないかと感じている。

モブレーのテナー・プレイに着目していたのならば、この盤は「お蔵入り」では無かったか。しかし、ライオンはモブレーの作曲の才能を「買って」いた。だから敢えてこの音源をアルバム化した。そして、サイドマンの溌剌としたアドリブ・パフォーマンスがそれを証明している。この盤は「モブレーの作曲の才能の高さ」を確認する盤だと理解している。

モブレーが控えめに「得意げに」楽譜を差し出している、このアルバムのジャケ写もそれを物語っているようだ。
 
 
 
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2020年10月25日 (日曜日)

ロイド・カルテットの温故知新

ブルーノートはジャズ界最大のジャズ・レーベル。ブルーノートのカタログには幾つかのシリーズがある。一番有名なのが、1500番台、4000番台など、カタログ番号を基本としたシリーズ。もう1つはカタログの分類記号を基本としたシリーズ。「BN-LA」シリーズや「LT」シリーズがそれに当たる。どのシリーズを聴いても、その時代のトレンドを反映したジャズを味わえるところがブルーノートの凄いところ。

そんなブルーノート・レーベルのシリーズの中で「85100」シリーズというのがある。1985年から1987年まで、僅か3年のシリーズで41枚の短期間のシリーズであった。しかし、このシリーズ、ちょうど1980年代半ばからの「純ジャズ復古」のムーヴメントの時代にリリースされたシリーズなのだ。どのアルバムも「純ジャズ復古」や「初期ネオ・ハードバップ」な雰囲気の演奏が詰まっていて、実は意外となかなか面白いシリーズなのだ。

Charles Lloyd Quartet『A Night In Copenhagen』(写真左)。1983年7月11日、デンマークの「The Copenhagen Jazz Festival」でのライヴ録音。リリースは1985年。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, Chinese oboe), Michel Petrucciani (p), Palle Danielsson (b), Woody Theus (ds), Bobby McFerrin (vo)。
 
 
A-night-in-copenhagen-charles-lloyd  
 
 
この頃のロイドは相変わらず「コルトレーン」しているが、クロスオーバー〜フュージョンの時代を経た「ポップでライトな」コルトレーンになっているところが面白い。とっても軽やかなテナーと爽やかなフルート。それをコルトレーン・ライクに吹き上げるのだから、個性的といえば個性的。

そして、この盤の聴きどころは、バックのリズム隊。とりわけ、ペトルシアーニのピアノが斬新。1960年代後半、ロイドのカルテットでピアノを担当していたキース・ジャレットを彷彿とさせるが、この盤でのペトはキースよりアグレッシブで革新的。切れ味の良いタッチ、創造的で個性的なモーダルなフレーズ。「ミューズ」と呼ばれる所以である。そして、ベースのダニエルソンは欧州のニュー・ジャズなベース・ラインで、このロイドのカルテットを多国籍化している。

ブルーノート・レーベルの復活を記念して行われた「One Night With Blue Note」が1985年。純ジャズ復古のムーヴメントの中で、このロイド・カルテットの演奏内容は象徴的。後の「ネオ・ハードバップ」のベースがこの演奏に詰まっている。このライヴ盤を聴いていて、孔子の「故きを温ねて新しきを知る(温故知新)」という諺を思い出した。
 
 
 

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