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2018年6月15日 (金曜日)

ECMでの「ジャズ・ファンク」

1970年代のECMレーベルのアルバムはどれを取っても「ECMの音」が詰まっていて面白い。欧州の香りのする、透明度の高い、エッジの立った音で、限りなく自由度の高いモーダルな演奏、限りなくフリーに近いニュー・ジャズな演奏。ファンクネスは限りなく抑制され、ファンクネスが漂っても限りなく乾いている。明らかに、米国ジャズに相対する「欧州のジャズ」の音世界。

Bennie Maupin『The Jewel In the Lotus』(写真左)。1974年の作品。ECMの1043番。ちなみにパーソネルは、Bennie Maupin (sax, fl, b-cl, vo, glockenspiel), Herbie Hancock (key, p), Buster Williams (b), Billy Hart, Freddie Waits (ds, marimba), Bill Summers (perc), Charles Sullivan (tp)。ダブル・ドラムのセプテット構成。

ジャケットが酷い。ECMらしからぬ酷さ。蓮の花の真ん中にモウピンの横顔。誰のデザインなのか。しかし、このジャケットのイメージを見れば、スピリチュアル・ジャズな内容なのか、と想像する。とくれば、自由度の高いブロウがメインのコッテコテのフリー・ジャズなのか、と思う。ECMだからこそ、それがあり得る。心してCDプレイヤーのスタートボタンを押す。
 

The_jewel_in_the_lotus  

 
フリー・ジャズな演奏がくるか、と身構えていたら肩すかしを食らう。淡いファンク的なビートの上での浮遊感溢れる「印象派の絵画の様な」演奏。ファンク的なビートでも乾いているから、粘ることは無い。爽やかなファンク。ひたすら浮遊する感じのフレーズが続いて「水彩画を見るが如く」である。フロントのモウピンのテナーが印象的なソロを吹きまくることも無い。 

ふとパーソネルを見れば、ハービー・ハンコックが参加している。ECMにハービー、違和感満載である(笑)。そう、この水彩画を見るが如くの管楽器とキーボードの音の重なりは、ハービーの「Speak Like a Child」であり、淡いファンク的なビートの上での浮遊感は「Mwandishiバンド」。欧州の、ECMレーベルでの「ジャズ・ファンク」である。

熱い混沌としたフリー・ジャズでは無い。自由度は限りなく高いが、しっかりと規律を持った、ジャズ・ファンク志向のニュー・ジャズ。浮遊感溢れるリードとブラスとのユニゾン、宝石のように美しく散らばる珠玉のピアノ、そして、メンバー全員による荘厳なアンサンブル。何となく最初は面食らうが、聴き進めるにつれ、とても美しいニュー・ジャズなフレーズに耳を奪われる。不思議な魅力を持った「異色のECM盤」である。

 
 

東日本大震災から7年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年4月25日 (水曜日)

キースのヨーロピアン4の旗揚げ

さて、いよいよ、キース・ジャレットの「ヨーロピアン・カルテット」を語る時が来た。キースは奇妙なことに、1970年代をメインに、米国系ジャズメンで固めた「アメリカン・カルテット」と、欧州系ジャズメンで固めた「ヨーロピアン・カルテット」という、2つのカルテットを同時進行していた(その合間合間にソロ・ピアノもやっていた)。

どうしてそんな面倒くさいことをしたのか、本人にしか判らないが、僕にとっては今でも謎である。アメリカン4とヨーロピアン4で、演奏する内容が全く違っていれば、それぞれの地域のジャズメンの特質を活かしたものなんだな、ということになるが、これが、まあ、アメリカン4とヨーロピアン4で、意外と同じイメージの曲をやっていたりするのだ。比較して聴いてみると、キースの挑戦と実験、そして、試行錯誤が感じられて面白い。

Keith Jarrett『Belonging』(写真左)。キースの「ヨーロピアン・カルテット」の旗揚げ盤である。1974年4月24ー25日の録音。ECMからのリリース。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。フロント1管、サックスに、ECMの看板男、テナーのヤン・ガルバレクを擁している。ベースのダニエルソン、ドラムのクリステンセンは、硬質で透明度の高い、明確にヨーロピアンなリズム・セクション。
 

Belonging  

 
冒頭の「Spiral Dance」は、明らかにヨーロピアンなニュー・ジャズ風。それでも、リズム&ビートは実にブルージーでアメリカン。そんなハイブリッドな魅力的な楽曲をキースは、ヨーロピアンな響きを湛えたピアノを弾きまくる。そこに、明らかにヨーロピアンな響きを湛えたガルバレクのテナーが参戦する。この瞬間が実にスリリング。音は硬質で透明度が高い。リズムもエッジが適度に立っている。ヨーロピアンな響き。

続く2曲目の「Blossom」は一転、ヨーロピアンなフリー・ジャズの世界に突入する。フリーキーな演奏については、ガルバレクが強力でピカイチ。ガルバレクのフリーキーなブロウで、曲全体は一気に北欧化する。キースの存在が薄れる中、3曲目の「Long as You Know You're Living Yours」は、アーシーでゴスペルチックな米国ルーツ音楽風の展開。それを欧州系のジャズメンが追従する。

ニュー・ジャズ風の演奏、フリー・ジャズな演奏、アーシーでゴスペルチックな米国ルーツ音楽風な演奏、いずれもアメリカン4でもやっていた演奏。しかし、このヨーロピアン4、ガルバレクのテナーの威力が強力で、ガルバレクのブロウ一発で、演奏は一瞬にしてヨーロピアンな色に染まる。リーダーのキースより目立つガルバレク。この関係が今後どう影響するのか。それが楽しみに感じる、ヨーロピアン4ファースト盤である。

 
 

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2018年3月24日 (土曜日)

後のスムース・ジャズの先駆盤

「まつ農業」の為、ここ千葉県北西部地方を離れていました。基本的に農業中心の生活の為、音楽とは一切触れあうこと無し。よって、22、23日のブログをお休みしました。先ほど帰還、ブログを再開です。昨日辺りからいきなり暖かくなって、体がついていきません。でも、これだけ暖かくなったら、音楽を聴く気持ちもウキウキです。

僕の場合、音楽を聴く気持ちがウキウキしている時は、フュージョン・ジャズが定番。フュージョン・ジャズって、1970年代後半〜1980年代前半に一世を風靡した「フュージョン・ジャズ」。約10年間ほどブームが続いた訳ですから、意外と奥が深い。こんな盤もあったなあ、とか、こんな盤あったんや、なんて今更、ビックリするやら感心するやら。

John Klemmer『Magnificent Madness』(写真左)。1980年のリリース。ジョン・クレマーは、米国イリノイ州シカゴ生まれ。1946年の生まれなので、今年で72歳。この『Magnificent Madness』をリリースした頃は、34歳のまだまだ若手バリバリのサックス奏者であった。もともと、若かりし頃はニュージャズ系の太く豪快なテナーを吹くタイプ。しかし、フュージョン・ジャズ全盛期には、時代の波に乗って、ソフト&メロウな、後の「スムース・ジャズ」な雰囲気の好盤を幾枚かリリースしている。
 

Magnificent_madness  

 
この『Magnificent Madness』は、スタジオ・ミュージシャン達を中心とした、秀逸なテクニックを前面に押しだした、いわゆる「バカテク・フュージョン」とは一線を画する。それは冒頭のタイトル曲の雰囲気を聴けば良く判る。ゴスペル・シンガー、ビル・セットフォードをゲストに展開する、ソフト&メロウで心地良いミッドテンポの演奏は、それまでのフュージョン・ジャズには無い雰囲気。 

このソフト&メロウで心地良い雰囲気の演奏は、3曲目の「Don't Take Your Love Away」にも顕著で、フュージョンというよりは、後の「スムース・ジャズ」の雰囲気を先取りしている印象。逆にラストの「Adventures In Paradise」は、ミニー・リパートンの名曲のカヴァーなんですが、ファンキー&グルーヴィンなアレンジがライトなブラコン風に響いて、その音世界は明らかに1980年代のジャズの主要なトレンドのひとつを彷彿とさせるものです。

そんな雰囲気の中、主役のジョン・クレマーのテナーな骨太で力強く豪快なもの。この硬派なクレマーのテナーと、演奏全体を覆う、後の「スムース・ジャズ」的な、ソフト&メロウで心地良い雰囲気とのコントラストがとても印象的で、この盤をユニークな存在にさせています。フュージョン・ジャズとしてより、後の「スムース・ジャズ」の先駆として捉えた方がスッキリ腹落ちすると思います。好盤です。

 
 

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2018年3月17日 (土曜日)

久し振り「天文ジャケ」ジャズ盤

ネットのダウンロード・サイトを徘徊していると、とても素敵なジャズ盤に出会うことがある。それも、全く出会ったことの無い、全くその存在すら知らないジャズ盤である。ダウンロード・サイトの試聴とジャケットの様子を見て、思い切って全編聴いてみる。こういうやり方で「失敗盤」に出会うことは殆ど無い。

つい先日、出会ったジャズ盤がこれ。Maxime Bender『Universal Sky』(写真左)。2018年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、Maxime Bender (ts, ss), Manu Codjia (g), Jean-Yves Jung (org), Jérôme Klein (ds)。としたり顔でご説明しているが、実はこの盤のことは全く知らなかった。ほんと、たまたまネットのダウンロードサイトでジャケットを見て、「これは」と思ってゲットした。

というのも、僕の趣味の1つに「天文」がある。もう50年近くになるかなあ。かなり息の長い趣味である。そういうこともあって、ジャズ盤にしろ、ロック盤にしろ、天文に関するジャケットは即ゲット状態に近い。この盤のジャケットは「星」。試聴をして、これはいいなあ、と思いつつ、ついついゲットしてしまいました(笑)。
 

Universal_sky  

 
Maxime Bender=マキシム・ベンダー。1982年生まれルクセンブルク出身の若手サックス奏者。サックスの腕前だけで無く、作曲の能力も高く評価されているようだ。自身のビッグバンドでの作品もあり、マルチなタレントの持ち主である。2015年には来日経験もあるらしい。知らなかったなあ。

さて、本作はこのベンダーがリーダーのバンド「Maxime Bender Universal Sky」によるもの。サックス、ギター、ハモンド・オルガン、ドラムのカルテット構成。アルバム全体の雰囲気はスムース・ジャズっぽいが、意外と硬派な「今」の米国コンテンポラリーな純ジャズ。拍子の変化やユニゾン&ハーモニーの雰囲気が実にクール。ギタリスト、マヌ・コジャの音色や空間的エフェクトも「粋」。

米国のコンテンポラリーな純ジャズではあるが、どこか冷たい熱気を帯び、ファンクネスが極めて希薄な面もあって、どこか欧州ジャズ的雰囲気が漂うところが実にニクい。まことに趣味の良いコンテンポラリーな純ジャズで、演奏もなかなかに奥が深く飽きが来ない。我が国では全く知られていない盤だとは思うが好盤です。我がバーチャル音楽喫茶でのローテ盤になってます。

 
 

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2018年3月 2日 (金曜日)

ウェブスターの「白鳥の歌」

SteepleChaseレーベルは、欧州の「ブルーノート」と呼ばれる。確かにそう思う。欧州発のハードバップの宝庫でもあり、様々なジャンルのジャズ、ジャズメンのレコーディングも行っている。レーベルのカタログを見ると「え〜っ、こんなジャズメンのライブ、録ってるんや」と感心するアルバムがあって、ついつい深入りしてしまう。SteepleChaseの深い森、である。

Ben Webster『My Man : Live at Montmartre 1973』(写真左)。1973年1月と4月の録音。SteepleChaseレーベルの本拠地である、デンマークはコペンハーゲンのジャズハウス「モンマルトル」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Ben Webster (ts), Ole Kock Hansen (p), Bo Stief (b), Alex Riel (ds)。

リーダーのベン・ウェブスターはエリントン・オーケストラの最初のテナーのソリスト。スイング時代からの伝説のテナーマン。1909年生まれだから、もう生誕100年以上になる。ジャズ史上の伝説のテナーマンの一人。コールマン・ホーキンス、レスター・ヤングとともにスウィング期の3大テナーの一人と考えられている。
 

My_man  

 
この『My Man』は、そんなウェブスターがコペンハーゲンの地元のリズムセクションをバックに吹きまくった、実に魅力満点のライブ盤である。ウェブスターの音はとにかくでかい。そして、豪快で荒々しい。アドリブは意外と単調だが迫力満点。バラードでは一転して、サブトーンを使ってムードテナー的。情感を込めて歌い上げるバラード「Willow Weep For Me」などは絶品。

バックの地元出身者で固めたリズム・セクションも良好。特に、オーレ・コク・ハンセンのピアノは、実に北欧的で美しい。「Old Folks」でのピアノ・ソロなど絶品である。そんな優秀なリズム・セクションをバックに、ウェブスターは自然体で、魅力的なテナーを吹き上げる。淡々と朗々と悠然と豪快にテナーを歌わせる。

1964年、ウェブスターは渡欧、1969年にコペンハーゲンに移住。以降、気が向いた時に演奏するというスタイルで、人生最後の時を過ごしていたという。その一時を捉えたライブ盤『My Man』。1973年9月20日がウェブスターの命日。この『My Man』は、1973年1月と4月の録音。このライブ盤はウェブスターの「白鳥の歌」、ラスト・レコーディングと言われている。

 
 

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2018年2月26日 (月曜日)

チャーリー・ラウズの白鳥の歌

最近は良い世の中になったなあ、と感じる。ネットを徘徊していると、様々なジャズ盤と出会うことが出来る。ジャズを聴き初めて、早40年。アルバムを聴き込んだ枚数も相当数になるんだが、ジャズの世界は奥が深く、裾野が広い。今でも時々「こんなアルバムあったんや」と感じ入る好盤に出会うことがある。

Charlie Rouse 『Epistrophy - The Last Concert』(写真)も、そんな「こんなアルバムあったんや」と感じ入った好盤の一枚。1988年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Don Cherry (tp), Buddy Montgomery (vib), George Cables, Jessica Williams (p), Jeff Chambers (b), Ralph Penland (ds)。

収録曲はセロニアス・モンクの有名曲ばかり。それもそのはずで、サンフランシスコでの「1988 Jazz in the City! Festival」での、セロニアス・モンクのバースデー・トリビュートでのライブ録音。もともと、チャーリー・ラウズは、1959年から1970年まで、セロニアス・モンクのカルテットで活動、その間モンクの側近中の側近の存在で、モンクに一番近いジャズメンである。
 

Epistrophy_last_recording   

 
演奏内容はと言えば、さすがにモンクの側近中の側近の存在、モンクズ・チューンを朗々と吹き上げていく。ラウズの演奏するモンクの曲は説得力があって、本物っぽく聴こえる。やはり、10年以上もモンクと共にしたラウズである。モンクの曲のイメージを誰よりも理解しているのだろう。本当に素晴らしいパフォーマンスだ。

もう一人素晴らしいと感じ入ったのは、このライブ演奏での「モンク役」を担った、ピアノのジョージ・ケイブルスである。多弁なピアニスト・ケイブルスであるが、モンクの楽曲でアドリブ・フレーズを叩き出し、ラウズのテナーやチェリーのトランペットのバッキングをする雰囲気は、かなりのところ「モンク」。良い雰囲気の楽しいピアノである。

あれっと思って調べてみたら、ラウズの命日が1988年11月30日。このライブ盤の録音が1988年10月。ラウズの逝去の約1ヶ月半前の「ラスト・レコーディング」であった。肺がんのため、と聞いているが、このライブ盤のブロウの力強さを聴くと、肺がん末期のブロウとは思えない。このライブ盤は、ラウズの「白鳥の歌」。聴く度に万感の想いがこみ上げる。

 
 

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2018年2月11日 (日曜日)

続・ECMに冬の季節が良く似合う

昨日「ECMに冬の季節が良く似合う」と書いた。演奏内容は、基本的に欧州的なニュー・ジャズの音世界。ECMレーベル独特の深いエコーが、冬の寒い空気にピッタリ合う。ファンクネスは皆無。ハードバップの様な熱気溢れる演奏は基本的に無い。フリーな演奏も怜悧な熱気で覆われる。ECMの音は基本的に冬に良く似合う。

そんなECMレーベルには、レーベルの音を代表する「お抱え」ミュージシャンが何人か存在する。昨日、ご紹介したテナーのヤン・ガルバレク(Jan Garbarek)などは、そんなECMレーベルの「お抱え」ミュージシャンの一人。彼の硬質で切れ味の良い、怜悧でエモーショナルなテナーは、ECM独特の深いエコーに乗って、その個性が増幅されて、確かにECMレーベルの音のイメージにピッタリである。

そんなガルバレクの個性をしっかりと捉えた初期の好盤が、Jan Garbarek『Triptykon』(写真左)。1972年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ss, ts, bs, fl), Arild Andersen (b), Edward Vesala (perc)。ピアノレスのサックス・トリオ。ガルバレクのサックスが心ゆくまで堪能できる編成である。
 

Triptykon

 
冒頭の「Rim」から「Selje」「J.E.V.」「Sang」までの4曲は、ノンストップのインタープレイ。明らかに欧州系のニュー・ジャズ的雰囲気の、適度にテンションを張った中、3者3様の自由度の高いインタープレイが展開される。ECMの独特のエコーがかかっていて、音と音との間の静謐な「間」がクッキリと浮かび上がる。故に動と静のメリハリが効いて、インタープレイの躍動感が増幅される。

6曲目の「Etu Hei!」は、ガルバレクとヴェセラのデュオ。サックスとパーカッションのデュオで、ふと「コルトレーンとラシッド・アリのデュオ」を想起する。フリーな演奏であるが、ガルバレクのアドリブ・フレーズは破綻が無く、端正である。実に欧州的なフリーの演奏。ガルバレクが「欧州のコルトレーン」と呼ばれる理由がここにあるが、コルトレーンのテナーとは全く異なる個性ではある。

そして、ラストの「Bruremarsj」は実に興味深い。まず、この曲の タイトルって何て読むんだ、なんて思うのだが、ノルウェー民謡なんだそうだ。この北欧的なフレーズを持った佳曲を題材に、ガルバレクは素朴に土臭くフォーキーに吹き上げていく。これ、なかなかの内容だと思うのだが、如何だろう。とにかく、この盤、ECMらしい好盤だと思う。今の季節にピッタリで、思わず聴き込んでしまう。

 
 

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2018年2月10日 (土曜日)

ECMに冬の季節が良く似合う

僕がジャズを聴き始めた頃、1970年代後半になるが、純ジャズの世界では従来の老舗レーベルに加えて、欧州系の新興レーベルのアルバムが話題を集めつつあった。欧州系のレーベルとは、ECM、SteepleChase(スティープルチェイス)、Enja(エンヤ)などが代表的なところ。特に、ECMレーベルは日本でも人気のレーベルになっていた。

当時、ECMのLPは高価で、廉価盤などは皆無。雑誌などで採り上げられていないアルバムなどは情報不足で、聴いてみるまでその評価は不明という、新たに購入するには相当にリスキーなレーベルでもあった。しかも、通常のジャズ喫茶ではビ・バップでもハードバップでも無い、ニュー・ジャズと呼ばれるジャンルがメインのECMのアルバムは敬遠気味で、聴くことの出来る機会は少なかった。

そういう面では僕は恵まれていて、大学近くの例の「秘密の喫茶店」では、何故か、ニュー・ジャズと呼ばれる欧州系のレーベルのアルバムが結構キープされていた。ECMレーベルのアルバムは相当数、保有されていた記憶がある。これは有り難かった。特に、冬にはECMのアルバムが良く似合う。冬の季節、珈琲を飲みに行く度に、ECMのアルバムをよくリクエストさせて貰った。
 

Dis

 
ECMに冬の季節が良く似合う。そんなアルバムの一枚が、Jan Garbarek『Dis』(写真左)。1977年のリリース。アルバム・ジャケットを見るからに「冬の季節に合いそうな」面構えをしている。特に、ヤン・ガルバレクのテナーは、硬質で切れ味の良いもので、ECM独特の深いエコーに乗って、怜悧でエモーショナルなテナー。確かに冬の雰囲気によく合ったテナーの音である。

特に、このアルバムは、ガルバレクのテナーと12弦ギターのラルフ・タウナーのデュオが基本なので、ガルバレクの硬質で怜悧なテナーの個性が増幅されている。ファンクネスは皆無。欧州系独特のクリスタルで硬質な音は、ECM独特の音世界を実に良く表現している。ガルバレクのテナーは歌心もあって、聴いていてとても印象的なもの。印象に残る充実の内容。

北欧のコルトレーンと呼ばれるガルバレクではあるが、この盤ではフリーキーに傾くことも無く、アブストラクトに構えることも無い。メロディアスで印象的なフレーズを、硬質で怜悧な伸びのあるテナーで吹き上げていく。印象的なジャケットと相まって、確かに「冬の季節」にピッタリな雰囲気の音世界である。例の「秘密の喫茶店」では昼下がりによく聴いた思い出がある。

 
 

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2018年1月25日 (木曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・63

硬派な純ジャズを聴き続けていると、フッと休みたくなる時がある。気分転換したいなあ、という気持ちになる時がある。そんな時、70年代ロックを聴くのも「アリ」なのだが、やっぱりジャズを継続したいなあ、という時は「ジャズ・ロック」を聴くことが多い。クロスオーバーやフュージョンじゃあないところが自分でも面白い。

クロスオーバーやフュージョン・ジャズを聴くときは、確実に「クロスオーバー・ジャズ」や「フュージョン・ジャズ」を聴くのだ、と構えて聴くので、純ジャズの合間の気分転換という感じにはならない。純ジャズの合間の気分転換には「ジャズ・ロック」が良い塩梅なのだ。これは、ジャズを聴き初めて、3年目くらいからズッとである。

で、今日の昼下がりに選んだ「ジャズ・ロック」盤が、Ronnie Laws『Pressure Sensitive』(写真左)。1975年のリリース。パーソネルを眺めても、知らない名前ばかりなので割愛。しかし、70年代ブルーノートのアルバム・ジャケットのデザインって、犯罪的な「ダサさ」である(笑)。これでは、普通のジャズ者の方々は手に取らないだろう。でも、これが良いのだ。
 

Pressure_sensitive

 
聴けば、ライト感覚の、ビートの効いた、ファンクネス溢れる「ジャズ・ロック」である。ビートは「8ビート」。ビートの佇まいはファンク。軽めのファンク。どっしりとグルーブ感がのし歩くのでは無い。あっさりスッキリと軽くファンクネスをかましつつ、8ビートのジャズ・ロック。軽めの「ノリ」なので、聴き易い。1975年の音だが、あまり古さを感じさせないところが不思議。

リーダーのロニー・ロウズは、ヒューバート・ロウズの弟で、フュージョン系のサックス奏者。1950年生まれ。今年で68歳。有名なキャリア話としては、アース・ウインド&ファイアに加入し、彼等のCBSへのデビュー・アルバムに参加した、というところ。なるほど、ジャズらしからぬ、R&Bっぽいファンクネスが漂うのは、そういうキャリアが影響しているんやな。なるほど「合点、合点」である。

70年代ブルーノートは、こういう怪しげな「ジャズ・ロック」のアルバムが多くあって、なかなか味わい深いものがあります。しかし、ジャケットが酷い、というか、凄い(笑)。怪しげな、もしくは意味不明なジャケットがてんこ盛り。これが、ツボに填まるとなかなか味わい深くて、病みつきになったりする。70年代ブルーノートは、コレクターからすると、意外と面白い。

 
 

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2018年1月11日 (木曜日)

ジョーヘンのリーダー作第2弾

初リーダー作『Page One』でのジョーヘンは固かった。吹いている様は「コルトレーン」に似ていた。ジョーヘンの特性である「ちょっと捻れた、素朴でジャジーな」テナーがあまり現れなかった。ピアノのタイナーとの相性が悪かったのだろうか。タイナーがバックでピアノを弾くと、フロントのテナーは「コルトレーン」になってしまうのか。

こぢんまりした素朴でジャジーな「コルトレーン」。これではジョーヘンが、ちょっと可哀相である。ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンは「これではいけない」と考えたのかどうか、間髪を入れず、ジョーヘンのリーダー作第2弾を録音する。Joe Henderson『Our Thing』(写真左)。1963年9月の録音。ブルーノートの4152番。

ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Kenny Dorham (tp), Andrew Hill (p), Eddie Khan (b), Pete La Roca (ds)。初リーダー作『Page One』の録音が1963年6月。それから僅か3ヶ月後の録音である。ピアノは、若き鬼才アンドリュー・ヒルに交代。ドラムは、初リーダー作で相性の良かったドラムのラロカとフロントのパートナー、トランペットのドーハムは留任。
 

Our_thing

 
冒頭の「Teeter Totter」を聴けば、リラックスしたジョーヘンのブロウを感じることが出来る。初リーダー作『Page One』とは全く別人の、自然体のジョーヘンが、肩の力の抜けた、素朴でジャジーな個性的テナーを吹き上げていく。まだ、後の個性である「ちょっと捻れた」ところはまだまだ遠慮がちだが、ところどころ変則でモーダルなアドリブ・フレーズは独特の個性である。

そして、へぇ〜っと感心するのが、ケニー・ドーハムのトランペット。溌剌としていて淀みが無い。拠れるところも無く、端正にブリリアントに吹き切る。素朴で力の抜けたジョーヘンのテナーとは対照的な音の力強さで、逆にジョーヘンのテナーを支え、惹き立たせていく。このフロント二人の相性は抜群。ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンの慧眼恐るべしである。

ジャズ盤の紹介本では、マイナー調の佳曲「Blue Bossa」の存在ゆえ、初リーダー作『Page One』が優先されることがほとんど。リーダー作第2弾の『Our Thing』が採り上げられることは、あまり無いのだが、ジョーヘンの初期の個性を確認するのなら、この『Our Thing』の方が適している。

 
 

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