2022年11月30日 (水曜日)

ロイド「Trio of Trios」の第二弾

3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾は『Trios: Chapel』(左をクリック)。2018年12月4日、テキサス州サンアントニオのコーツ・チャペルでのライヴ録音。良い意味であざとくもあるが、この10年間辺りの流行である「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を志向した、現代のモダン・ジャズである。

Charles Lloyd『Trios: Ocean』(写真左)。2020年9月9日、ロイドの故郷であるカリフォルニア州サンタ・バーバラの150年の歴史を持つロベロ・シアターでの録音。コロナ・パンデミックの最中、観客無しでライブ配信されている。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (as, ts, fl), Gerald Clayton (p), Anthony Wilson (g)。

3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第二弾。共演のジェラルド・クレイトンは、西海岸ベースの伝説的存在ジョン・クレイトンの息子。アンソニー・ウィルソンは著名なバンドリーダー&トランペッター、作曲・編曲家のジェラルド・ウィルソンの息子。この「Trio of Trios」の第二弾は、有名なミュージシャンを父に持つ2人のミュージシャンとの共演になる。
 

Charles-lloydtrios-ocean

 
この盤は、ジャズは「即興演奏の賜物」を再認識させてくれる。冒頭の「The Lonely One」は、クレイトンとウィルソンの伴奏に合わせてキーとテンポが決まった瞬間から、サックス、ギター、ピアノの3者対等な、自由度の高いモーダルなインタープレイが展開される。反芻的でありながら神秘的。静的でクールなスピリチュアルな音世界が厳かに展開される。

「Hagar of the Inuits」は、ブルース的なグルーヴを醸し出しつつ、ここでも、サックス、ギター、ピアノの3者対等な、自由度の高いモーダルなインタープレイが展開される。とりわけ、ウィルソンのギター・ソロが印象的。続く「Jaramillo Blues」もブルース志向で、明るいトーンが印象的。ブルース志向の自由度の高いインタープレイが実に「スピリチュアル」。クレイトンのピアノが演奏全体を仕切っているのにも感心した。

今回の「Trio of Trios」の第二弾は、自由度の高いモーダルなインタープレイがメインだが、ブルース曲を中心に純ジャズな雰囲気を強く感じつつ、曲によっては、ECM的な「ニュー・ジャズ」なサウンド志向も見え隠れする、ユニークな「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」を表現していて、実に興味深い。
 
 

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2022年11月15日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・254

1950年代の米国のウエストコースト・ジャズのアルバムは一聴すれば直ぐに判る、独特の「音の傾向」を持っている。小粋に洒脱にアレンジされ、バンド・アンサンブルは小洒落ていて、クールで落ち着いている。どのウエストコースト盤も、そういう音の傾向を持っていて、少なくとも冒頭から1〜2曲聴けば、ウエストコースト盤か否かが判る。

ビ・バップの様にそのテクニックを披露するジャズでもなければ、熱くブロウするジャム・セッションなスタイルでも無い。ウエストコースト独特のラウンジ・ジャズ志向、もしくは、室内でじっくり聴く鑑賞音楽としてのジャズ、つまり「聴かせるジャズ」でる。アレンジは、東海岸のハードバップよりも精緻でアカデミックで、しっかりと音楽理論に則った、事前にしっかり準備されたアレンジが大多数である。

Bud Shank and Bob Cooper『Blowin' Country』(写真左)。1956年11月29日と1958年2月18日の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Bud Shank (as, fl), Bob Cooper (ts, oboe), Claude Williamson (p), Don Prell (b), Chuck Flores (ds)。

西海岸ジャズの人気アルト奏者、バド・シャンクと、洒脱なテナー奏者、ボブ・クーパーが2管フロントのクインテット編成。CDリイシュー時には、5曲のボートラが追加されているが、ここでは、LP時代の10曲収録盤での聴き込み。
 

Bud-shank-and-bob-cooperblowin-country

 
冒頭の「Dinah」の前奏のアルトとテナーのユニゾン&ハーモニーを聴けば、これは直ぐに、ウエストコースト・ジャズの優秀盤だと感じる。どの曲にも施される小粋で洒脱なアレンジ。特に、シャンクのアルトとクーパーのテナーによる、ユニゾン&ハーモニー、チェイス、コール&レスポンス、対位法的な掛け合い等、とてもよくアレンジされていて、聴いていて気持ちが良い。

シャンクのアルト・サックスが絶好調で、とても良い音を出している。負けじとクーパーのテナー・サックスも魅力的なフレーズを吹き上げる。特に、バラード演奏における、シャンク&クーパーは絶品。「聴かせるジャズ」の面目躍如、情感豊かに、歌心豊かに、素敵な「聴かせる」フレーズを連発する。他にシャンクはフルート、クーパーはオーボエを吹いて、クインテットのジャジーな演奏に良いアクセントを付けている。

バックを司る、クロード・ウィリアムソンのピアノを核としたリズム・セクションも良い。特に、ウィリアムソンのピアノは、洒脱で小粋で味がある。ウエストコースト・ジャズの雰囲気を代表するピアノのパフォーマンスだろう。

良いウエストコースト盤です。本当に久し振りにこの盤を聴き直したのだが、実にウエストコーストしていて聴き応え抜群。ウエストコースト・ジャズの代表盤の1枚として良い優秀盤です。
 
 

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2022年11月12日 (土曜日)

ブルー・トレイン 65周年記念盤

ネットのジャズ関連の記事を眺めていて、「歴史的発掘!永遠の名盤『ブルー・トレイン』65周年記念完全盤が登場!」というタイトルが目に飛び込んできた。またまた「歴史的発掘」か。幾度と無くこのフレーズは繰り返されてきた感がある。マスターテープは切れ切れになっている訳では無いので、「歴史的発掘」が幾度と繰り返されることは無いとは思うのだが(笑)。

またか、とも思う。しかも「65周年」記念というところにも、中途半端感は拭えない。それでも、正式なアルバムリリースでは完全初出となる「別テイク7曲のうち4曲」が収録されているから、聴きたいなあ、という気持ちにもなる。別テイクは、1本のマスターテープに連続で録音されている筈なので、こんなに切れ切れにリリースしなくても、という思いにも駆られる(笑)。

John Coltrane『Blue Train / The Complete Masters』(写真)。1957年9月15日の録音。ブルーノートの1577番。ちなみにパーソネルは、John Coltrane (ts), Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Kenny Drew (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。伝説に残るセクステット編成である。

1枚目は、もともとのステレオ版『Blue Train』に、最新リマスタリングを施している。この手のリマスタリングについては、もう満腹感満載で(笑)、以前の「RVGリマスタリング」の衝撃ほどの感動は全く無い。CDのリマスタリングについては限界が来ていると思うので、ふ〜ん、こんな音にもリマスタリング出来るのね、と思うのみ。こんなにリマスタリングで捏ねくり回すのなら、いっそのこと、LPバージョンの音を聴いた方が良いなあ、とも思う。

2枚目は、初出音源含む、別テイク7曲を収録。これが意外と聴きもので、Blue Train [Alternate Take 7]、Blue Train [Alternate Take 8] と併せて、本テイクを聴くと、この曲を完成するのに、かなりの試行錯誤を経ていることが良く判る。
 

Blue-train_the-complete-masters  

 
イントロのユニゾン&ハーモニーの音の組みあわせの試行錯誤。それぞれのアドリブ展開の内容の試行錯誤。特に、コルトレーンのアドリブ展開の内容が各テイクによって全く違うことに驚く。演奏レベルは最高、それでいて各テイク毎に展開とテイストが違う。コルトレーンの凄まじき演奏テクニックの成せる技。他のジャズマンのアドリブも同様だが、コルトレーンが突出している。

用意周到にリハーサルを重ねて本録音に臨ませる方針のブルーノート・レーベル。この素晴らしい録音マナーが、この別テイクから垣間見える。「ブルー・トレイン」1曲でも少なくとも「Take8」。8回取り直しているんですよ。8回取り直そうとするミュージシャン側の粘りも凄いが、それに応えるレーベル側のプロデュースも半端ない。当時のブルーノートが良い録音を残すのは当たり前か、と感心する。

「ブルー・トレイン」1曲で、これだけの試行錯誤を重ねているのだ。演奏する側の演奏テクニックも相当高いものがあるのだろうし、アレンジ能力も優れたものがある。それでも、様々なバリエーションを織り交ぜて、最低8テイクを重ねているのだから凄い。今回の別テイク集を聴いていて、改めて、ジャズは「アート(芸術)の音楽」であるということを実感する。

そして、今回のもう1つの目玉が、別盤仕立ての「モノラル・バージョン」。僕は『Blue Train』のモノラル盤を初めて聴いたのだが、モノラルはモノラルで味わい深い。ステレオ盤の音を聴き馴れているのだが、ステレオは横に音が広がる。モノラルは奥に音が広がる。音の塊に奥行きがグッと出て、狭いライブハウスで、目の前で演奏を浴びる様に聴いている雰囲気に思わず仰け反る。これはこれで「アリ」やな。

手垢の付いた「歴史的発掘の記念盤」。またかいな、とも思うんだが、今回の様に、初出の別テイク音源や、聴く機会の無かったモノラル音源がついてくれば、やっぱり触手は伸びるなあ。そして、改めて、この『Blue Train』というアルバムの素晴らしさと、ブルーノート・レーベルの録音方針の素晴らしさを再認識する。やはり、歴史的名盤は「格が違う」。
 
 

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2022年11月 7日 (月曜日)

傑作ライヴ盤『8:30』を聴き直す

このライヴ盤は売れた。内容的にも充実している。ウェザー・リポートのメンバーが、やっと、テナー・サックスのワンホーンに、キーボード+ベース+ドラムのリズム・セクションの4人について、最適のメンバーが顔を揃え、最適なメンバーで固定された記念すべきライヴ盤である。

Weather Report『8:30』(写真)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (el-b), Peter Erskine (ds)。 ほとんどの曲がザヴィヌル作であり、大ヒットアルバム『Heavy Weather』の人気曲をメインに、他のアルバムから、同傾向の音志向の人気曲が選曲されている。WRが一番、フュージョン・ジャズに接近したライヴ盤である。

このライヴ盤は売れた。選曲は『Heavy Weather』と他のアルバムの人気曲が選ばれており、ポップでキャッチャーな楽曲ばかりが並んでいる。そりゃ〜当時は売れただろうな、と思う。しかし、今の耳で聴き直せば、ジャズとしての即興演奏の妙は、ジャコのベース・ソロ曲と、ショーターのサックス・ソロ曲だけに留まっていて、他の楽曲は既定路線に乗った、金太郎飴の様な聴き馴れたアレンジで統一されている。

前作の『Mr,Gone』からの選曲は全く無く、如何に前作がセールス的に「問題作」だったかが窺い知れる。が、このライヴ盤で、このライヴ盤『8:30』をジャズの範疇に留めているのは、ジャコのベースとアースキンのドラムである。このライブ盤の全編に渡って、この二人のリズム&ビートは半端ない。それまでのWRの人気曲に躍動感を与え、ジャジーな自由度を拡げている。どの曲もオリジナルよりもテンポが速く、ベースラインもドラミングも複雑極まりない。
 

Wr-830

 
加えて、何時になく、ショーターがサックスを吹きまくっている。吹きまくり、とはこのこと。しかも、誰にも真似できない、ショーターならではの宇宙人的に捻れたフレーズが満載。どの収録曲もザヴィヌルの楽曲で、ショーターの音志向である「エスニック&ミステリアス」な音は希薄でありながら、である。恐らく、ジャコとアースキンのリズム隊の「賜物」だろうと思う。ジャコとアースキンが、ショーターの「ジャズ魂」に火を付けたのだ。

一方、ザヴィヌルのキーボードは安全運転、というか、聴き馴れたフレーズばかりで、可も無く不可も無く。まるでスタジオ録音の演奏を聴いているようだ。せっかくのライブ音源なのに、もっと自由度を拡げて、もっと魅力的なフレーズを弾きまくって欲しかった。

なお、LP時代のD面のスタジオ録音については、発売当時、1980年代のジャズを予言するものとして、持てはやされたものだが、今の耳で聴くと、完成度は「道半ば」、ブラッシュアップ中の未完な雰囲気が漂っていて、僕はあまり評価していない。これをLP時代のLP2枚目のD面に入れるのなら、他の曲のライヴ音源を追加して欲しかった。今となっては、このLP時代のD面の存在意義が良く判らなくなっている。

ショーターとジャコ、アースキン。この3人の卓越したテクニックの下、ジャジーで自由度の高い、変幻自在な演奏が、このライヴ盤を「ジャズ」の範疇に留め、未だ、エレ・ジャズの傑作ライヴ盤の1枚としての評価を維持しているのだ。
 
 

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2022年11月 5日 (土曜日)

マイケルの素晴らしいライヴ音源

現代で活躍するジャズマンを見渡して見ると、ピアノ、トランペット、アルト・サックス、ベース、ドラムなどは、現代ジャズにおいて、演奏スタイルやトレンドをリードする「後を継ぐ者」がしっかりと存在している。が、テナー・サックスについては、ちょっと低調な感がある。

そもそも、マイケル・ブレッカーが、2007年早々に57歳で急逝してしまって、21世紀に入って、ブランフォードが活動を徐々にスローダウンさせて、それ以降、何人かの優れたテナーマンは現れ出でてはいるのだが、そんな中で突出した名前が浮かばない。

まあ、テナー・サックスについては、1967年に逝去した「ジョン・コルトレーン」という偉大な存在が未だに君臨していて、テナーマンの新人が出てくる度に、やれコルトレーンそっくり、だの、コルトレーンの方が優れている、だの、何かにつけ、コルトレーンと比較され、コルトレーンの存在は絶対で、常に低評価される傾向にあるので、正統な評価を得ることが出来無いのだろう。

Michael Brecker Band『Live at Fabrik, Hamburg 1987』(写真)。1987年10月18日、The Jazzfestival Hamburgでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Michael Brecker (sax), Joey Calderazzo (key), Mike Stern (g), Jeff Andrews (b), Adam Nussbaum (ds)。テナー・サックスの雄、マイケル・ブレッカーがリーダーの、ギター入りクインテット編成。ライヴ・アット・ファブリーク・シリーズ第3弾になる。

録音年の1987年は、マイケルにとって、自身単独の初リーダー作がリリースされた記念すべき年。このライヴ盤では、とても充実したマイケルのサックスが堪能出来る。そして、ライヴ盤であるがゆえ、マイケルのサックスの個性がとても良く判る。
 

Michael-brecker-bandlive-at-fabrik-hambu

 
マイケルもデビュー以降、常にコルトレーンと比較され、やれ、コルトレーンの後継だの、やれ、コルトレーン以下だの、マイケルのテナーは、概ねコルトレーンのフォロワーと評価されていたが、このライヴ盤のマイケルのテナーを聴くと「それは違う」ことが良く判る。コルトレーンと似ているのは、ヴィブラートやフェイク無しのストレートな吹奏だけ。

マイケルのバンドの音志向は、どちらかと言えば、当時の「復活後のエレ・マイルス」を志向していたと感じる。とてもヒップで疾走感溢れる「クールなジャズ・ファンク」。

リズム&ビートは切れ味良くコンテンポラリーでファンキー。そんなリズム&ビートをバックに、クールでモーダルなフレーズを吹きまくるマイケル。そのフレーズは、シーツ・オブ・サウンドでもなければ、エモーショナルでスピリチュアルなフリーでも無い。

バックの演奏もそうだ。ジェフ・アンドリュースとアダム・ナスバウムの叩き出す、ポリリズミックでファンキーなリズム&ビートに乗った、キーボードのジョーイ・カルデラッツォとギタリストのマイク・スターンのインプロは凄絶。まるで、1960年代後半のエレ・マイルスのチック・コリアとか、ジョン・マクラフリンとかを彷彿させる、その「ど迫力と自由度」。
 
マイケルのテナーは、当時の「復活後のエレ・マイルス」におけるマイルスのトランペットのフレーズをフォローし、自家薬籠中のものとしたもので、それが唯一無二の個性なのだ。マイケルは、決して、コルトレーンのフォロワーでは無かった。それがとても良く判る未発表ライヴ盤。こんなライヴ音源が残っていたなんて。1987年辺り、タイムリーにリリースして欲しかったなあ。
 
 

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2022年11月 1日 (火曜日)

1960年代の隠れた傑作盤です

1960年代は「ジャズの多様化」の時代。ハードバップが成熟仕切って、大衆受けを狙った志向と、ジャズをアーティスティックに捉えて、より即興演奏の自由度を求める志向など、ハードバップを根源として、ジャズは様々な志向に発展していった時代。そんな中、それまでのスタンダードな編成から、マンネリズムを避けて、ちょっと変化を付けた編成で演奏する、などという工夫も見られた。

Jimmy Raney, Zoot Sims & Jim Hall『Two Jims and Zoot』(写真左)。1964年3月11, 12日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Jimmy Raney, Jim Hall (g), Zoot Sims (ts), Steve Swallow (b), Osie Johnson (ds)。タイトル通り、二人の「Jims」、ジミー・レイニーとジム・ホールの2人のギタリストと、歌心溢れ、スインギーで小粋なテナーマン、ズート・シムズの3人並列のリーダー作。

ルイス・ボンファの名曲「カーニバルの朝」やアントニオ・カルロス・ジョビンの代表曲「エステ・ソー・オルハー」など、当時流行していた軽いボサノヴァ路線が中心の選曲だが、これが実に雰囲気が良い。ホールの自作曲を含め、この盤ではまず、レイニー&ホールのギターと、シムズのテナーを引き立てる様な「選曲の妙」が目に付く。
 

Two-jims-and-zoot

 
知的でセンシティヴ、切れ味良くプログレッシヴなレイニー&ホールのギターが傑出している。ツインリードと形容して良い、二人が平等に並び立つギターが実に良い雰囲気。ユニゾン&ハーモニーでの微妙なフレーズのズレも心地良く、二人のギターの相性は抜群。室内楽的に流麗に響く二人のギターは「歌心」も抜群。思わず聴き惚れてしまう。

どんな曲でも見事にスイングするズート・シムズのテナーも聴きもの。ボサノヴァ曲でのフンワリした力強いフレーズも心地良く、レイニー&ホールの二人のギターとの絡みもスインギー。特にこの盤では、レイニー&ホールの二人のギターに触発されたのであろう、実に味わいのある、歌心溢れるテナーを聴かせてくれる。

ギター2本&テナーの変則フロントに、それを引き立てる選曲&アレンジ。1960年代の「ジャズの多様化」の時代に「じっくりと聴かせる小粋なジャズ」。我が国ではあまりメジャーな存在では無いが、この盤は「1960年代の隠れた傑作盤」として良いと思う。サブスク・サイトにもしっかりアップされているので、気軽に一度は聴いて欲しい「隠れ名盤」である。
 
 
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ジャズ喫茶で流したい・254

ジャズの裾野は広い。一昨日、ご紹介した様な、最新のジャズ・エレクトロニカもあれば、ハードバップ時代の隠れ名盤もある。どちらも、聴いて楽しい「ジャズ」であり、どちらも、個人的嗜好においては好き嫌いはあるだろうが、客観的に見て、優劣を付けることの出来ない。歴史上、どちらも内容の優れた「ジャズ」である。

Eddie "Lockjaw" Davis & Johnny Griffin『The Tenor Scene』(写真左)。1961年1月6日、NYのミントンズ・プレイハウスでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Eddie "Lockjaw" Davis (ts), Johnny Griffin (ts), Junior Mance (p), Larry Gales (b), Ben Riley (ds)。

豪快なテキサス・テナーのスタイリストの一人、エディー・ロックジョー・デイヴィスと、テナー・リトル・ジャイアント、ジョニー・グリフィンとの2管フロントのクインテット編成。

このライヴ盤、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の推薦盤に、そのタイトルが挙がることが無いのだが、聴けば、何と実にハードバップらしい、ハードバップの良いところ満載の隠れ好盤である。1961年のライヴ録音なんだが、内容的には、完璧なまでのハードバップな演奏が展開されていて、聴いていて、バリバリにジャズを実感出来て、とても楽しい。
 

Eddie-22lockjaw22-davis-johnny-griffinth

 
テキサス・テナー・スタイルのロックジョー、リトル・ジャイアントと呼ばれたグリフィン、二人の豪快なテナーがなんとも素敵な響き。そして、この豪快な二人のテナーの「ユニゾン&ハーモニー」そして「テナー・バトル」が凄く良い雰囲気。

これぞ、ハードバップ時代のテナー、って感じの、豪快で迫力抜群、大らかでテクニカル、歌心溢れエモーショナル豊かなテナー。良い。難しい理屈抜きに直感的に「良い」。

バックのリズム・セクションも好調で良い感じ。特に、ピアノのジュニア・マンスが、躍動的でファンキーなピアノをガンガンに弾きまくっている。さすがライヴやなあ。マンスがこれだけバリバリ弾きまくるとは思わなかった。このマンスのピアノに煽られて、鼓舞されて、ロックジョーとグリフィンがテナーを更に吹きまくる。熱気溢れるライヴである。

このライヴ盤、ジャズを聴き始めて、20年目に出会った。ジャズの裾野は広い。長くジャズ盤を探索し、聴けば聴くほど、小粋な盤、隠れ好盤に出会う。そして、それが30年になり、40年になり、ジャズ盤の探索は終わりが無い。全く、ジャズの裾野は広い。いつまた、小粋な盤、隠れ好盤に出会うか判らない。よって、ジャズ盤の探索は止められない。
 
 

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2022年10月17日 (月曜日)

粋なオールド・スタイル・テナー

スイング時代からビ・バップを経験すること無く、中間派を経由して、ハードバップ期に至るまでの期間、三大テナーマンとして君臨したのが、コールマン・ホーキンス、ベン・ウエブスター、レスター・ヤング。この3人は、ロリンズとコルトレーンが新しいスタイルのモダン・テナーを流行らせるまで、テナー・サックスの吹奏スタイルを代表する3人だった。

今では「オールド・スタイル」と形容される、テナー・サックスの吹奏スタイルで、濃厚なビブラート、音のしゃくり、様々な装飾音、サブトーンの多用などが特徴。吹奏のテンポはスロー〜ミッドテンポで、高速フレーズは基本的に吹かない。この「三大テナーマン」は、この「オールド・スタイル」な吹奏で一世を風靡したのだ。

『Coleman Hawkins Encounters Ben Webster』(写真左)。1957年10月16日、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins, Ben Webster (ts), Oscar Peterson (p), Herb Ellis (g), Ray Brown (b), Alvin Stoller (ds)。そんな三大テナーマンのうちの2人、コールマン・ホーキンス、ベン・ウエブスターが共演した素敵なアルバム。

この盤のホーキンスとウエブスターのテナーを聴けば、オールド・スタイルと呼ばれる吹奏スタイルが良く判る。モダンだのモードだの全く眼中に無し。そこにあるのは「ジャズ・テナーの基本」。粋なジャズ・テナーである。

音が基本的に大きい。表現力は半端なく、歌心は豊か。吹奏テクニックはレベルが高く、ビブラート、しゃくり、装飾、サブトーン、どのテクニックも難なくこなす。そんな「ジャズ・テナーの基本」がこの盤に詰まっている。

吹奏のテンポもスロー〜ミッドテンポで固められ、2人のテナーを楽しむ、2人のテナーをじっくり聴く、いわゆる「聴かせるジャズ」が展開される。アドリブ・フレーズもバリエーション豊か。たまに「引用」などもかましながら、粋なジャズ・テナーを展開していく。
 

Coleman-hawkins-encounters-ben-webster_1

 
ヴァーヴは大手レーベルなので、実験的、先進的なジャズを追求すること無く、一般大衆に向けた「聴き心地の良いジャズ」をプロデュースする傾向にある。それが、この盤にバッチリ反映されている。

1つ間違えば「イージーリスニング的な軽音楽」に陥りそうなオールド・スタイルの吹奏だが、ホーキンスとウエブスターの卓越したテクニックと豊かな歌心を兼ね備えたテナーが聴き応え満点で、最後までじっくりと聴き込んでしまう。まるで唄うが如くのテナーで、一流のジャズ・ボーカルを聴き込んでいる錯覚に陥る様な、そんな感じがとても心地良い。

リズム・セクションの要、ドラムにアルヴィン・ストーラーを起用しているのも合点がいく。ストーラーは、フランク・シナトラをはじめ、シンガー御用達ドラマー。フロント2管、まるで唄うが如くのホーキンスとウエブスターのテナーをしっかりとサポートし、しっかりと鼓舞している。

バックに控えるリズム・セクションもふるっていて、当時、ヴァーヴ専属だった、ピアノの達人のピーターソン、燻し銀ギターのエリス、ベース職人ブラウンの、当時の「オスカー・ピーターソン。トリオをまるまる起用している。さすが、当時の大手ジャズ・レーベルのヴァーヴ。リズム・セクションにも一流どころをしっかりと起用して、全く手を抜かない。

1957年、ハードバップ成熟期の中での、オールド・スタイルのテナー盤。内容としてどうだろう、当時の流行だったモードやファンキーに迎合していないか、不安だったが、それは全くの杞憂であった。モダンやモード、ファンキーなど全く眼中に無し。自分達のスタイルである「オールド・スタイル」そのままに、モダンなジャズを展開している。いやはや豪気である。
 
 

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2022年10月16日 (日曜日)

ロイド「Trio of Trios」の第一弾

1960年代後半から1970年代前半にかけて、チャールス・ロイドは売れた。ロイドのテナーは「こじんまりしたコルトレーン」、言い換えれば「期待を裏切らない、予想を外さないコルトレーン」。アブストラクトにも振る舞うんだが、徹底的に、ということは無く「安全運転のコルトレーン」。

どうにもコルトレーンのコピーのイメージがつきまとう。当時のジャズ者の方々は、ロイドに「判り易いコルトレーン」を求めていた様に思う。ロイドもそれに応えた。しかし、人気を獲得したのもいきなりだったが、飽きられるのも早かった。1970年代後半以降、ほぼ忘れ去られた状態のテナーマンであった。

が、1989年、ECMレーベルに出会って復活。テナーの音志向は「北欧ジャズ」。しかし、テナーの音は、北欧ジャズの「クリスタルな切れの良い」音よりも暖かでエッジが丸い。加えて、米国ジャズ譲りの、クールな熱気をはらんだテナーは、欧州のテナーマンには無い独特の個性だった。21世紀に入って顕著になった、米国ジャズの「欧州ジャズへの接近」を先取りしていたと言える。

そして、2015年、ECMレーベルを離れて、ブルーノート・レーベルに移籍。欧州ジャズ志向のロイドのテナーはどうなるんだ、と思っていたら、当時、流行始めていた「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」に音の志向を大きく変えていた。

1960年代後半の「判り易いコルトレーン」、ECM時代の「欧州ジャズへの接近」、そして、現在の「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」と、それぞれの時代の「流行」をよく読んで、音の志向を変えている。機を見て敏なる、というか、意外と変わり身の早いテナーマンである。まあ、それぞれの音の志向が、水準以上のパフォーマンスを持って表現されるのだから、テナーマンとしての実力は一流である。
 

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Charles Lloyd『Trios: Chapel』(写真左)。2018年12月4日、テキサス州サンアントニオのコーツ・チャペルでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, Alto-fl), Bill Frisell (g), Thomas Morgan (b)。資料によると、3つのトリオによる3枚のアルバムからなる新プロジェクト「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾、とのこと。

この「トリオ・オブ・トリオズ」の第一弾は、ドラムレス、テナー、ギター、ベースの変則トリオ編成。ギターは、捻れスピリチュアル・エレギの達人、ビル・フリゼール。ベースは、フリゼールとの共演実績もある若手ベーシスト、トーマス・モーガン。コーツ・チャペルという、会場の礼拝堂の音響特性上、ドラムやパーカッションは排除したらしい。

ビリー・ストレイホーン作曲の「Blood Count」で始まるのだが、演奏の志向は「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」。ストレイホーンの楽曲を静的なスピリチュアル・ジャズにアレンジするところなどは、良い意味で実に「あざとい」。キューバのシンガーソングライター、ボラ・デ・ニエベの「Ay Amor」も、感情豊かにテナーを吹き上げて、スピリチュアルな響きが濃厚。アルト・フルートで演奏するオリジナル「Beyond Darkness」も、フルートの音色が聴き手の感情を揺さぶる。

限りなく自由度の高い、3人三様のインタープレイが素晴らしい。フリゼールのエレギの音はもともとスピリチュアルだし、トーマス・モーガンのベースは、自由度高く、スピリチュアルに展開するロイドとフリゼールをガッチリ受け止め、しっかりと的確なビートを提供している。適度なテンションの下、発想豊かで歌心溢れるインタープレイは、このトリオ3人の相性の良さが窺い知れる。

今から「トリオ・オブ・トリオズ」の第二弾が楽しみである。良い意味であざとくもあるが、「静的でクールなスピリチュアル・ジャズ」なロイドは充実している。このライヴ盤も、現代のモダン・ジャズとして一聴すべき好盤だろう。
 
 

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2022年10月14日 (金曜日)

ズートをリラックスして堪能

ズート・シムスは我が国では、あまり人気の無いテナーマンだった。レコード会社にとって、コマーシャルなところが少なくて、売れない、と踏まれたのだろう。でも、ズートの名盤を聴いたジャズ者の多くが、ズートのテナーのファンになる。

歌心溢れ、スインギーで小粋。そんなズートのテナーって、東海岸ジャズ志向でも無く、西海岸ジャズ志向でも無い独特なテナーで、扱いに困るところがあるんだろうなあ。でも、良いものは良い。そんなズートのテナーである。

Zoot Sims『Cookin'!』(写真)。1961年11月13〜15日、ロンドンの「Ronnie Scott Club」でのライヴ録音。ちなみに、Zoot Sims (ts), Stan Tracy (p), Kenny Napper (b), Jackie Dougan (ds)。

UKフォンタナ・レーベルに残されたズート・シムズの傑作ライヴ盤。ラストの「Desperation」だけが、トランペットで客演した Jimmy Deuchar (tp) のオリジナルだが、他はジャズ・スタンダード曲で固められている。歌心溢れ、スインギーで小粋なズートのテナーには、ジャズ・スタンダード曲が良く似合う。
 

Zoot-simscookin

 
「Desperation」1曲だけズートのテナーとドーチャーのトランペットの2管フロントだが、他はズートのテナー1管フロントの「ワンホーン・カルテット」の演奏なので、ズートのテナーが心ゆくまで楽しめる。ズートのテナーはワンホーンが良い。

「Stompin' At The Savoy」「Love For Sale」「Somebody Loves Me」「Gone With The Wind」「Autumn Leaves」と超有名スタンダード曲のオンパレード。どの曲も流麗でキャッチャーなメロディーを持つ佳曲ばかりで、ズートのテナーの歌心とスイング感が映えに映える。

バックのリズム隊は、皆、英国出身の「地元ジャズマン」。ズートのスインギーなテナー・サックスを精一杯サポートしている雰囲気が素敵で破綻が無い。皆、精一杯、健闘している。

このライヴ盤が録音された1961年。ハードバップは成熟し、多様化の時代、ポップ化の時代に入った時期。そんな時期に、成熟したハードバップなリズム隊をバックに、歌心溢れ、スインギーで小粋なテナーを吹き上げるズート。気軽にリラックスして、ズートのテナーが心ゆくまで堪能出来る佳作である。
 
 

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