最近のトラックバック

2017年12月10日 (日曜日)

「動」の宇宙人的モードの演奏

ショーターのディスコ・グラフィー上では、『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める音源で、黒魔術っぽい怪しげで神秘的な宇宙人モードから、正統派な限りなく自由度の高い宇宙人モードへの移行期の音がここにある。Wayne Shorter『The Soothsayer』(写真)。1979年、日本での発売時の邦題が『予言者』。

1965年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as), McCoy Tyner (p), Ron Carter (b), Tony Williams (ds)。録音当時はお蔵入りになった盤。1979年にようやくリリースされている。3管編成でアレンジが非常に凝っている。ショーターの捻れた音世界満載。

『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める、という意味では、この『Et Cetera』と『The Soothsayer』が、当時「お蔵入り」の兄弟盤の様な位置づけで存在しており、この『Et Cetera』は「静」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。ちなみに『The Soothsayer』は「動」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。この盤においてショーターは絶好調である。
 

The_soothsayer

 
ショーターのテナーは、「動」の宇宙人的モードを繰り出して、捻れに捻れる。この「捻れ」が絶品。フロント3管のパートナーの一人、アルトのジェームズ・スポルディングも大健闘。60年代に活躍したセッション・ミュージシャンなんだが、力感豊かに疾走感溢れるアルトが見事。スポルディングのアルトは、パーカーの影響が感じられない新しいタイプのアルト。どちらかと言えば、ハードバップ後期のコルトレーンの様だ。

トランペットのハバードは、とにかく上手い。しかし、ハードバップ期の様に、俺が俺がと前へ出て目立ちに目立つということは無い。但し、ハバードが大人になった訳では無いようだ。ハバードの上手さが埋もれてしまうほどに、ショーターの「捻れ」が凄まじく、スポルディングの力感溢れるプレイが圧巻なのだ。ハバードは埋もれぬよう、懸命にトランペットを吹き上げる。

フロントを支え煽るリズム隊、トニーのドラム、ロンのベース、タイナーのピアノの内容も素晴らしい。トニーとタイナーは初顔合わせらしいが、全く違和感無く、一体となってフロントを煽っている。この盤も『Et Cetera』同様、録音当時、何故お蔵入りになったのか、理解に苦しむ。モードがベースの新主流派の演奏の良いところが満載。怖じけず入手して後悔の無い、ジャズ者中級者向けの好盤です。

 
 

東日本大震災から6年9ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年12月 7日 (木曜日)

青く燃える様なモーダルな演奏

ウェイン・ショーターは、宇宙と交信しながらアドリブ・インプロビゼーションを展開する。本人がインタビューで度々言及しているので、本当のことなんだろう(笑)。しかし、ショーターのモーダルなアドリブ展開を聴くと、その並外れた変則感と聴いたことの無い音の使い方と重ね方があまりにユニークで、もしかしたら本当に宇宙人と交信しながら演奏しているのか、と思ってしまう。

Wayne Shorter『Et Cetera』(写真)。1965年6月の録音。しかし、録音当時は「お蔵入り」。1980年に初めて陽の目を見た。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Cecil McBee (b), Joe Chambers (ds)。ハービーをピアノに据えたリズム・セクションをバックに、なんと、この盤、ショーターのテナーがワンホーンのカルテット構成。

ショーターのテナーがワン・ホーンなので、ショーターのテナーが心ゆくまで感じ、楽しめる。ショーターのディスコ・グラフィー上では、『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める音源で、黒魔術っぽい怪しげで神秘的な宇宙人モードから、正統派な限りなく自由度の高い宇宙人モードへの移行期の音がここにある。
 

Etcetera

 
『Speak No Evil』と『The All Seeing Eye』の間を埋める、という意味では、この『Et Cetera』と『The Soothsayer』が、当時「お蔵入り」の兄弟盤の様な位置づけで存在しており、この『Et Cetera』は「静」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。ちなみに『The Soothsayer』は「動」の宇宙人的モードの演奏が収録されている。

ブルーノートの録音・蓄積の「発掘王」マイケル・カスクーナは本作をショーターの「最高作の一つ」と称え、何故当時発売されなかったか謎だと語っている。この盤では、ショーターの静かに青く燃える炎の様なモード演奏を聴くことが出来る。マクビーのベースは音域広く、かなり個性的。チェンバースの叩き出すドラミングは重力感抜群。ハービーは何かに取り憑かれたかのように、限りなくモーダルな演奏を切れ味良く展開する。確かに僕もカスクーナの意見に激しく同意する。

静謐に展開するモードなアドリブ展開の中に、青く燃える様な熱気を感じるモーダルな演奏。他に無い、ショーターならではの独特の個性。ショーターのアルバム鑑賞の中で、この『Et Cetera』はマスト・アイテム。録音当時「お蔵入り」で、後にリリースされた、ということで、この盤を「訳あり演奏」盤と見切ってはいけない。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年11月28日 (火曜日)

ECMレーベルらしい音・5

そのレーベルの名は「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

Jan Garbarek『Sart』(写真)。1971年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, bs, fl), Bobo Stenson (p, el-p), Terje Rypdal (g), Arild Andersen (b), Jon Christensen (per)。北欧中心の欧州ジャズ軍団の面々である。そして、担当楽器にドラムが無い。そう「ドラムが無い」ところがミソ。

この盤は典型的なECMの音作りをしている。欧州ジャズにおける「フリー・ジャズ」もしくは「アブストラクト・ジャズ」は、こういう音世界を言う。ジャズの本場、米国で展開された、必要最低限のルールの下、心のおもむくままに、熱気溢れる咆哮の様なスピリチュアルなブロウでは無い。
 

Jan_garbarek_sart

 
ファンクネスと熱気は皆無。怜悧で透明度が高く、静謐で音数を厳選しつつ間を活かした、まるで現代音楽の様な自由度の限りなく高いパフォーマンス。ヤン・ガルバレクのテナーが怜悧で熱い。切れ味良く端正に響き、格調高くアブストラクトに崩れる。ECM独特のエコーと相まって、本当に良い音を出している。

リピダルのギター・エフェクトについてはさすがに古さを感じるが、気にするほどのことでは無い。逆に「時代の音」として楽しめるので、さほど気にならない。ステンソンのピアノがなかなか隅に置けない。ステンソンのピアノが、この欧州スタイルのフリー・ジャズの音世界の中で、とってもよいアクセントになっている。

ECMレーベルにあって、他のレーベルに無い音世界が、この「ファンクネスと熱気は皆無。怜悧で透明度が高く、静謐で音数を厳選しつつ間を活かした、まるで現代音楽の様な自由度の限りなく高いパフォーマンス」。このECM独特の音世界を受け入れてこそ、ECMレーベルの「ECMの考える欧州ジャズ」を身近にすることが出来る。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年11月22日 (水曜日)

モード奏法の最終結論のひとつ

爽やかに捻れ、悠然とモーダルに吹き上げる「テナーの怪人」ウェイン・ショーター。真顔で「自分は宇宙と交信しながらテナーを吹いている」とカミングアウトし、どこでどうしたらそういうフレーズになるか、全く、凡人の我々には判らないのだが、他のテナーには絶対に無い、爽やかに捻れた「正統派」テナーのアドリブ・フレーズを聴かせてくれる。

そんなショーターの面目躍如的なアルバムが、Wayne Shorter『Schizophrenia』(写真左)。1967年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Curtis Fuller (tb), James Spaulding (fl, as), Herbie Hancock (p), Ron Carter (b), Joe Chambers (ds)。タイトルの『Schizophrenia』とは「統合失調症」、いわゆる分裂した精神状態の意。おおよそ、ジャズのアルバムのタイトルではない(笑)。

こんなにモーダルで捻れた、当時最先端のモード・ジャズなのに、フロントにばりばりハードバッパーのカーティス・フラーがトロンボーンを担当しているところが面白い。目新しいところとしては、アルトにジェームス・スポルディングが参加、健闘している。そして、意外と、ハービー×ロン×ジョーチェンのリズム・セクションがカッ飛んでいる。
 

Schizophrenia

 
前作の『Adam's Apple』は捻れに捻れ、思いっきりモーダルしていると思ったのだが、なんと、この盤ではその度合いが更に増している。もうハードバップ時代のストレートでシンプルなアドリブ・フレーズは存在しない。全てが捻れ、全てがモードしている。もはやコードという概念は存在しない。そういう意味で、モード・ジャズの最先端をいく演奏がギッシリ詰まっている盤、と言える。

演奏の雰囲気はモードを基調としたジャズ・ロック。モードを基調としているので、ジャズ・ロック的雰囲気とは言え、俗っぽくなく、判り易くは無い。思いっきりモーダルな演奏が8ビートを採用している、という形容の方が判り易いのでは無いか。この盤では、ハービーのピアノが異様に格好良い。躍動的であり、美しくもあり、硬軟自在、伸縮自在の完璧モーダルなアドリブ・ソロを聴かせてくれる。これがまた良い。

僕は、旧来のモーダルな演奏がメインの純ジャズ系のショーターのアルバムの中では、この盤が一番好きなのだが、日本では意外にマイナーな存在に甘んじている。1990年代、日本では廃盤状態。僕は、1999年米国はサンフランシスコのタワレコでリマスター再発CDを入手して狂喜乱舞。ホテルに帰って、パソコンで聴いた『Schizophrenia』の音は忘れられない。 

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年11月20日 (月曜日)

ファンキーなタレンタインを聴け

ファンキー・ジャズに凝っている。判り易くて、簡単に「のれる」。沈みがちな心がパッと明るくなる。寒い冬にはピッタリ。暖かい部屋の中で、ファンキー・ジャズに聴き入り「のる」。足で手でリズムを取って「のる」。少し体がポカポカする。ファンキー・ジャズを聴く季節は「冬」が良い。

今日は、Stanley Turrentine『That's Where It's At』(写真左)。1962年1月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Stanley Turrentine (ts), Les McCann (p), Herbie Lewis (b), Otis Finch (ds)。バックのリズム・セクションの面子を見ると、完璧な「ファンキー仕様」。このパーソネルを見るだけで、この盤は「ファンキー・ジャズ」盤と推察出来る。

スタンリー・タレンタインのテナーは「ど漆黒、どファンキー、どソウルフル」と、「ど」の3連発が付くほどの「滴り落ちるファンクネス」が特徴。吹き方は、オールド・スタイルとコルトレーン・スタイルの間をいくもの。レトロでも無く、最先端でも無い。流行のスタイルに対して「我関せず」と言わんばかりのオリジナリティー。
 

Thats_where_its_at_1

 
この盤の面白いところは、ファンキー・ジャズに必須のアイテムである「ギターやらオルガンやら」が一切入っていないところ。タレンタインのテナー1本がフロント。まずこれだけでかなりファンキー。加えて、バックにアコピ・ベースのピアノ・トリオがあるのみ。それでもこってこてファンキーなジャズをやるのに不足は無いところがこのメンバーの凄いところ。

レス・マッキャンのアコピがパワフル。勢い余ってリズムを乱すところはご愛嬌(笑)。ブルージーでアーシーなサウンドがファンキー・ジャズにピッタリ。ベースのハービー・ルイス、ドラムのオーティス・フィンチのリズム隊もアーシーでファンキー。よくよく聴けば、ファンキー一色のリズム・セクションである。

ゆったりした演奏なんだが、音はパワフル。音に芯がグッと入っていて、しなやかでソウルフル。しかし、ブルーノート・レーベルって凄く柔軟なレーベルなんだなあ、と改めて感心する。さすがはブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオン。ハード・バップのみに固執せず、どんどん新しいトレンドを取り入れ、ミュージシャンに録音の機会を提供し続けた、そのセンスと手腕に脱帽である。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年11月17日 (金曜日)

爽やかに捻れ、悠然とモーダル

ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)は実にユニークなテナー・マン。インタビューなんかでは、真顔で「自分は宇宙と交信しながらテナーを吹いている」。宇宙との交信の成果が、ショーターの個性的なアドリブ・フレーズを生むということだ。彼のテナーは唯一無二。捻れたテナーなのだが、そのフレーズは、メインストリーム・ジャズど真ん中。モダン・ジャズの王道を行くテナーである。

確かに、初めて聴いた時、この人のテナーは唯一無二だと思った。テナーと言えば「コルトレーン」。コルトレーンは自由度を求めれば求めるほど、フリー・ジャズに、アバンギャルド・ジャズに傾倒し、一般のジャズ・ファンを失っていった。しかし、ショーターは違う。ショーターは自由度を求めれば求めるほど、爽やかに捻れ、悠然とモーダルに変化する。そして、一般のジャズ・ファンを惹き付ける。

Wayne Shorter『Adam's Apple』(写真左)。1966年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds)。ジャズ界は「多様化」の時代。ショーターは新主流派と呼ばれる、新しい響きを宿したモーダルがメインの自由度の高いジャズ。
 

Adams_apple

 
ショーターのテナーのアドリブ・フレーズって、ほんとに「ユニーク」。他を寄せ付けない、フォローを許さない、思いっきり個性的な捻れ方。真似出来ない、予測が出来ない捻れ方をする。しかも、テナーの音色が豊か。太くてシャープで流麗。しかも余裕を噛ました悠然としたロングなアドリブも得意で、このショーターのテナーって、他のテナー・マンには決して真似が出来無い。

ピアノは、若き日のハービー・ハンコック。ワンフレーズ聴けば直ぐに「ハービーやなあ」と判るくらいに個性的なフレーズを叩き出している。本当に、この頃のハービーのピアノは「イカしている」。理知的で幾何学的、ほど良く抑制された、意外と高速なパッセージ。左手のブロックコード、右手の自由度の高い弾き回し。この頃のハービーって輝いている。 

レジー・ワークマンのベースが面白い。モーダルなフロントのアドリブ・フレーズには、こういうモーダルなベースと当てろ、というような、新主流派にとっての「教科書」の様なウォーキング・ベースに惚れ惚れする。このリズム隊が、アルバム全体を統制し、アルバム全体をコントロールする)。

純ジャズなショーターのテナーを愛でるに最適な一枚。ジャケットもブルーノート・レーベル独特のデザイン性の溢れた素晴らしいもの。内容も決して難しく無く、取っ付き易い。ジャズ者初心者の方々にも安心してお勧め出来る好盤です。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2017年11月 6日 (月曜日)

ファンキー・ジャズの隠れ好盤

ファンキー・ジャズは、ハードバップからの派生したサブ・ジャンル、若しくは、ハードバップ後継の演奏スタイルである。1950年代終盤から1960年代前半に、そのスタイルはほぼ確立されている。ブルースや教会音楽(ゴスペル)を基本にした展開が主で、ファンクネス溢れ、アーシーでブルージー、ややスピリチュアルな要素も見え隠れする音世界。

1960年代中盤にはファンキー・ジャズは成熟、1960年代後半には、R&Bとの融合が行われ「ソウル・ジャズ」とも呼ばれた。ソウル・ジャズになると、後続の「クロスオーバー・ジャズ」な要素が強く出てきて、純ジャズな要素は希薄になっていくのだが、ファンキー・ジャズの場合は、まだまだ純ジャズな要素もしっかりと残っていて、意外と聴き応えのある演奏が多い。

例えば、この盤などが好例だと思う。Johnny Griffin & Matthew Gee『Soul Groove』(写真左)。1963年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Johnny Griffin (ts), Matthew Gee (tb), "Big" John Patton (org - tracks 1, 5 & 8), Hank Jones (p, org - tracks 2-4, 6 & 7), Aaron Bell (b, tuba), Art Taylor (ds), Carlos "Patato" Valdes (cong, bong)。
 

Soul_groove1

 
リトル・ジャイアント・テナー、ジョニー・グリフィン(写真右)とマシュー・ジーのトロンボーン、2管フロントの好盤。グリフィンのテナーはもともとファンクネス濃厚なテナーなので、ファンキー・ジャズにしっかりとフィットする。マシューはテキサス出身の隠れ名手。テキサス・テナーならぬ「テキサス・トロンボーン」である(笑)。音感は力強く、ユーモラスな部分はほどほど、音色の基本は暖かく、じっくり和み系。

このグリフィンのファンクネス溢れる豪放磊落なテナーと力強くはあるが、基本的に暖かくジックリ和み系のマシューのトロンボーンの対比がこの盤の「ミソ」。そして、もう一つ、ハンク・ジョーンズの端正で暖かく和み系のオルガンと、ジョン・パットンの攻撃的で切れ味の良いオルガンとの対比もこの盤の「ミソ」。この2つの対比が、程良くブレンドされて、なかなか聴き応えのあるファンキージャズに仕上がっている。

ファンキー・ジャズの好盤とは言え、こってこてファンキーな演奏では無い。ちょっとサラッとした爽やかな雰囲気が漂うファンキー・ジャズに仕上がっていて、聴いていて実に聴き心地が良い。ジャズ盤紹介本などではほとんど見かけない盤なのだが、これがなかなかの雰囲気で、思わず、ニンマリとしてしまう。ファンキー・ジャズの隠れ好盤ですね。

 
 

東日本大震災から6年7ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

保存

2017年11月 5日 (日曜日)

サイケデリック・ジャズの好盤

1960年代後半は、ジャズにとって激動の時代。ビートルズを筆頭としたロックの波に押され、ジャズはポピュラー音楽の中での人気に翳りが見え始め、多様化が進んで演奏スタイルは迷走状態。加えて、メインストリーム・ジャズの牽引者の一人、精神的支柱的存在のジョン・コルトレーンが逝去するという、ハプニングにも見舞われた。

そんな中、ポピュラー音楽の中での地位を確保し続けるべく、ジャズとロックの融合、いわゆる「クロスオーバー・ジャズ」へのシフトが始まりだしたのが、1960年代の終わり。当時、ロック界の演奏トレンドであった「サイケディック」な要素を取り込んで、サイケデリックなジャズ演奏も目立ってきた。今の穏健な「スピリチュアル・ジャズ」にも通じる、観念的で幻想的な音世界が特徴。

ジャズを聴きだした頃、ジャズ者初心者の頃は「何ていい加減なアプローチなんだ」なんて思ったりしたが、今の耳で聴くと、意外とテクニックもしっかりしていて、アレンジも工夫がみられ、意外と鑑賞に十分に耐えるアルバムが一定数あることに気がついた次第。ハードでシリアスなジャズの合間に聴く「サイケデリック・ジャズ」は意外と耳休めに丁度良い塩梅なのだ。

そんな「サイケデリック・ジャズ」の好盤の一枚が、Steve Marcus『Tomorrow Never Knows』(写真)。1968年のリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Marcus (sax), Mike Nock (p), Larry Coryell (g), Bob Moses (ds), hris Hills (b)。 ラリー・コリエルがギターで参加、ドラムがボブ・モーゼス。当時のクロスオーバー・ジャズ寄りのメンバー構成。
 

Steve_marcus_tomorrow_never_knows

 
その昔、ジャズのプレーヤーがビートルズを演奏するということで話題になった盤らしい。そのビートルズの曲の1曲が、なんとジョンのサイケデリック・ロックの代表曲「Tomorrow Never Knows」である。聴く前は「え〜っ」と思ったんだが、聴いてみると、スティーブ・マーカスのサックスが適度にサイケデリックしていて、意外と「Tomorrow Never Knows」のジャズ化に成功している。

他の曲も同様で、恐らくテクニックがしっかりしているのだろう、サイケデリックなアドリブ展開にも破綻すること無く、なかなか聴き応えのある展開に持ち込んでいて立派である。少なくとも耳触りにはならない。十分に鑑賞に耐える、クロスオーバー・ジャズの先駆的な演奏内容に感心する。

バーズの「Eight Miles High」、ドノバンの「Mellow Yellow」、ハーマンズ・ハーミッツの「Listen People」、そしてビートルズの「Rain」と、当時のロックの人気曲をクロスオーバー・ジャズとしてアレンジし、まずまずの成果を収めている。サイケデリック・ジャズだからといって、敬遠するのは勿体ない。意外とリラックスして聴けるクロスオーバーなジャズ盤として楽しめます。

 
 

東日本大震災から6年7ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

2017年9月28日 (木曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・60

今日は朝から雨。結構、激しい雨で、久し振りにレインコートのズボンを履いて駅まで歩く。そして、グッと涼しくなった。もう秋の気温。明日から天気も良くなるみたいだし、やっと暑さを追いやったなあ、とホッと一息である。ここまで涼しくなると、ジャズを聴くのが楽しくなる。

僕の中では、スムース・ジャズは「あり」である。メインストリーム・ジャズしか認めない、フュージョン・ジャズは時代の徒花だ、なんて意見もあるが、僕は自分にとって「良い響きやなあ」とか「良いフレーズやなあ」と感じる音がある演奏であれば、ジャンルは問わない。スムース・ジャズでも「良い物は良い、悪いものは悪い」。

Jeff Kashiwa『Fly Away』(写真左)。今年の新作である。ジェフ・カシワ。サックス奏者。聞いたことがあるような名前なんだが、思い出せない。それでも、この盤を聴くと、良い音だしている。スッと伸びて、まろやかなエモーショナルを湛えた、ブリリアントなサックス。一度聴くと、グッと惹き込まれる。
 

Fly_away

 
Jeff Kashiwa=ジェフ・ユキオ・カシワ。米国出身の日系アメリカ人3世。スムース・ジャズで活躍するサックス奏者である。1963年生まれなので、今年で54歳。意外とベテランである。1991年にサックス奏者としてザ・リッピントンズに加入、1999年には脱退しソロ活動を開始。2009年に再びリッピントンズに復帰している。

伸びやかで爽やかなサックス。アルバム全編でそのサックスを存分に楽しめる。スムース・ジャズなので、耳当たりがとても良い楽曲がてんこ盛り。ちょっと似通った曲が多いのが玉に瑕だが、ジェフ・カシワのサックスが流れる様に吹き上げられていくので、あんまり気にならない。

ジャズ喫茶の昼下がりに、こっそり流すのが良い雰囲気です。ジェフ・カシワのまろやかなエモーショナルを湛えた、ブリリアントなサックスがとっても印象的。心地よさ満点、心からリラックスして聴き流すことができます。これが「スムース・ジャズ」の良いところですよね。良いアルバムです。

 
 

東日本大震災から6年6ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

2017年9月27日 (水曜日)

アル・コーンの個性と人気

ジャズとは面白いもので、初リーダー作がそのジャズメンの個性を如実に表す、なんて言うんだが、初リーダー作でなくても、そのジャズメンの個性が良く判るリーダー作というものがある。リーダーが管楽器であれば、ワンホーンか、2管フロントくらいがそのジャズメンの個性が良く判る。

例えばこの盤、Al Cohn『Cohn On the Saxophone』(写真左)。1956年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Al Cohn (ts), Frank Rehak (tb), Hank Jones (p), Milt Hinton (b), Osie Johnson (ds)。米国西海岸ジャズ寄りのメンバー構成。コーンのテナー、レハックのトロンボーンの2管フロント。

長年コンビで活躍した相棒のズートに比べると人気の点では劣って見えるアル・コーン。特に、我が国では、アル・コーンというテナー奏者の名前を知っている、というだけで「ジャズ者中級者」と目されるくらい。どうしてだろう、と不思議に思いつつ、この『Cohn On the Saxophone』を聴いて、何となく、その理由が判ったような気がした。
 

Cohn_on_the_saxophone_1

 
冒頭「We Three」から、アル・コーンのテナーは全開である。しっかりと吹き上げられた、しっかりとした音程、大らかで大きな音、流麗なアドリブ・ライン。2曲目「Idaho」以降、クセの無い、伸びの良いブリリアントなテナーが全開。アル・コーンのテナーサックスは良い意味で「無臭」。昨日、ご紹介した、チャーリー・マリアーノのアルトサックスと同じ雰囲気だ。

スーッと真っ直ぐな伸びの良い爽やか音。ちょっと引っ掛かりに欠け、印象に残りにくい。恐らく、そういうテナーだからこそ、テクニックも申し分無く、演奏のレベルも高いにもかかわらず、人気という面で遅れをとったのだと思う。この「無臭」で、演奏的に総合点の高いところが、逆に聴き手にとってはクセにならないのだろう。

とはいえ、この盤でのアル・コーンのテナーの演奏レベルは高い。歌心も満載である。この盤には、アル・コーンの個性がギッシリと詰め込まれている。それでも、人気の面では劣るとはジャズって面白い。ジャズでの人気ジャズメンって、そう言えばクセのあるプレイヤーばっかりですな。ジャズにとって「無臭」「端正」「クセが無い」というのは禁句なのかもしれない。

 
 

東日本大震災から6年6ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

保存

保存

保存

保存

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

AOR | ECMレーベル | jazz | Miles Reimaginedな好盤 | Pops | R&B | rock | The Great Jazz Trio | Yellow Magic Orchestra | こんなアルバムあったんや | ながら聴きのジャズも良い | アキコ・グレース | アダムス=ピューレン4 | アブドゥーラ・イブラヒム | アラウンド・マイルス | アート・ブレイキー | アート・ペッパー | イエス | イスラエル・ジャズ | イタリアン・ジャズ | イタリアン・プログレ | インパルス!レコード | イーグルス | ウィントン・ケリー | ウィントン・マルサリス | ウェイン・ショーター | ウェザー・リポート | ウェス・モンゴメリー | ウエストコースト・ジャズ | エリック・クラプトン | エリック・ドルフィー | エルトン・ジョン | エンリコ・ピエラヌンツィ | オスカー・ピーターソン | オーネット・コールマン | カシオペア | キャノンボール&ナット・アダレイ | キャンディド・レーベル | キング・クリムゾン | キース・ジャレット | ギル・エバンス | クインシー・ジョーンズ | クイーン | クリスマスにピッタリの盤 | グレイトフル・デッド | ゲイリー・バートン | コンテンポラリーな純ジャズ | サイケデリック・ジャズ | サザンロック | サンタナ | ザ・クルセイダーズ | ザ・バンド | ジャケ買い「海外女性編」 | ジェフ・ベック | ジミ・ヘンドリックス | ジャキー・マクリーン | ジャズ | ジャズの合間の耳休め | ジャズロック | ジャズ・アルト | ジャズ・オルガン | ジャズ・ギター | ジャズ・テナー | ジャズ・トランペット | ジャズ・トロンボーン | ジャズ・ドラム | ジャズ・ピアノ | ジャズ・フルート | ジャズ・ボーカル | ジャズ・レジェンド | ジャズ・ヴァイオリン | ジャズ喫茶で流したい | ジョニ・ミッチェル | ジョン・コルトレーン | ジョン・スコフィールド | ジョン・レノン | ジョージ・ハリソン | スタン・ゲッツ | スティング | スティービー・ワンダー | スピリチュアル・ジャズ | セロニアス・モンク | ソウル・ミュージック | ソニー・ロリンズ | ソロ・ピアノ | タンジェリン・ドリーム | チック・コリア | チューリップ | デイブ・ブルーベック | デイヴィッド・サンボーン | デクスター・ゴードン | デュオ盤 | デューク・ジョーダン | デヴィッド・ボウイ | トミー・フラナガン | トランペットの隠れ名盤 | ドゥービー・ブラザース | ハンプトン・ホーズ | ハービー・ハンコック | バリトン・サックス | パット・メセニー | ビッグバンド・ジャズは楽し | ビル・エバンス | ビートルズ | ビートルズのカヴァー集 | ピアノ・トリオの代表的名盤 | ファンキー・ジャズ | フィル・ウッズ | フェンダー・ローズを愛でる | フュージョン・ジャズの優秀盤 | フリー | フリー・ジャズ | ブッカー・リトル | ブラッド・メルドー | ブランフォード・マルサリス | ブルース・スプリングスティーン | ブルーノート | ブレッカー・ブラザース | プレスティッジ・レーベル | プログレッシブ・ロックの名盤 | ベーシストのリーダー作 | ホレス・シルバー | ボサノバ・ジャズ | ボビー・ハッチャーソン | ボブ・ジェームス | ポップス | ポール・サイモン | ポール・マッカートニー | マイケル・ブレッカー | マイルス・デイヴィス | マッコイ・タイナー | マンハッタン・ジャズ・クインテット | ミシェル・ペトルチアーニ | ミルト・ジャクソン | モダン・ジャズ・カルテット | ヤン・ハマー | ラテン・ジャズ | ラリー・カールトン | リトル・フィート | リンダ・ロンシュタット | リー・リトナー | レイ・ブライアント | レジェンドなロック盤 | レッド・ガーランド | レッド・ツェッペリン | ロック | ロッド・スチュワート | ローランド・カーク | ヴィーナス・レコード | 上原ひろみ | 北欧ジャズ | 吉田拓郎 | 和ジャズの優れもの | 四人囃子 | 夜の静寂にクールなジャズ | 天文 | 天文関連のジャズ盤ジャケ | 太田裕美 | 寺井尚子 | 尾崎亜美 | 山下達郎 | 山中千尋 | 旅行・地域 | 日本のロック | 日本男子もここまで弾く | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 欧州ジャズ | 歌謡ロック | 渡辺貞夫 | 米国ルーツ・ロック | 荒井由実・松任谷由実 | 西海岸ロックの優れもの | 趣味 | 青春のかけら達・アーカイブ | 音楽 | 音楽喫茶『松和』の昼下がり | 高中正義 | 70年代のロック | 70年代のJポップ

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2017年12月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31            

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ