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2017年8月 1日 (火曜日)

エアコンに「北欧ジャズ」である

午後から雨が降って、湿度は高いがちょっと涼しくなった我が千葉県北西部地方。ちょっと涼しくなったが、湿度の高さは相変わらずで、仕事帰りの疲れた体に良くないので、結局、部屋にはエアコンである。エアコンをかけると、当然、窓を閉めるので、室内は静かになる。エアコンで湿度が和らいで静かな室内。

そんな部屋には「北欧ジャズ」である(笑)。いや、冗談無しにエアコンで湿度が和らいだ部屋には「北欧ジャズ」が良く似合う。北欧の純ジャズは一定の傾向がある。透明感のある音とエコー。ファンクネス皆無。クラシック音楽に根ざした正統なフレーズ回し。スピリチュアル&エモーショナルのバランス取れた情感表現。決して熱くならない、冷徹に盛り上がるクリスタルな表現。思わず「北欧やな〜」と唸ってしまう(笑)。

今日選んだ「北欧ジャズ」盤は、Hans Ulrik & Lars Jansson『EQUILIBRIUM+』(写真左)。デンマークの人気サックス奏者ハンス・ウルリク(写真右)をフロントに迎えた、スウェーデンの抒情派ピアノ名手ラーシュ・ヤンソン率いるトリオの作品である。
 

Equilibrium

 
タイトルに「+」が付いているのは何故か。この盤は、収録曲をよくよく見ると判るのだが、2012年録音の新作『Equilibrium』全11曲から9曲をセレクト、更に、同じくウルリクとヤンソンの共演による1994年録音のウルリク名義の『Strange World』全12曲からの5曲をプラスした日本独自編集盤である。だから「+」が付くのか。なるほど。

冒頭の「Downward Dog」から、完璧な「北欧ジャズ」である。ところどころ、4ビートのゴスペルチックなフレーズが出てくるんだが、これが実に良い雰囲気。僕はこの展開が大好きだ。でも、決して「黒くならない」。ファンクネスも漂わない。それでも、思いっきりジャジーなビートが実にスインギー。フォーキーで牧歌的な寛ぎのフレーズが心地良い。

ウルリクの開放感溢れる、ストレートに伸びた大らかなサックスと、ほど良く抑制された躍動感&透明感溢れるヤンソンのピアノ。ウルリクとヤンソンの持つ「北欧ジャズ」特有のリリカルな美しさがこの盤に満載である。いや〜「北欧ジャズ」は素晴らしい。

 
 

東日本大震災から6年4ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年7月28日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・56

この2日ほど、ここ千葉県北西部地方はとても涼しい。天気は良くないのだが、最高気温が25度程度なので涼しく感じる筈だ。当然、夜寝る時もエアコンは不要。送風で十分。雰囲気は「戻り梅雨」状態である。今日も最高気温は32度まで上がったが、それでも夕方から夜にかけて、風が吹いてとりあえず涼しい。

これだけ涼しいと、スピリチュアルで朗々としたバラードチックなジャズをゆったりと聴きたくなる。暑い夏には、どうにも朗々としたバラードチックなジャズは聴いていると、じんわりと汗ばんでくるようで、あんまし宜しくないんだが、この2〜3日の陽気はそうでも無い。で、そんな盤を物色する。

Dayna Stephens『Peace』(写真左)。2014年のリリース。僕は、この盤のジャケットに思いっきり惹かれた。明らかにこの盤は、スピリチュアルで朗々としたバラードチックなジャズがぎっしり詰まっていますよ、って面構えをしている(笑)。実はこの盤は、そんな「ジャケ買い」。で、聴いてビックリ、そのイメージ通りの演奏がぎっしり詰まっている。
 

Dayna_stephens_peace

 
Dayna Stephens(デイナ・ステファンズ)。ブルックリン生まれのサックス奏者。1978年生まれなので、今年で39歳。バリバリ中堅のテナー奏者である。朗々とテナーを鳴らす。ブリリアントなテナー。ブラスがブルブルと心地良く鳴る。そんなテナーで全編、バラードチックな演奏でギッシリと埋め尽くす。こんなにテナーが素敵に鳴るアルバムはそうそう無い。

ちなみにパーソネルは、Dayna Stephens (ts,ss,bs), Brad Mehldau (p), Julian Lage (g), Larry Grenadier (b), Eric Harland (ds)。この盤、聴いていて、とっても印象的なピアノが鳴っているんだが、なんとブラッド・メルドーだったんですね。なるほどなるほど。伴奏上手なメルドー。フロントのデイナを鼓舞し、しっかりと支える。ほんと充実した密度の濃い演奏の数々。

ジャズ喫茶の昼下がりの「ノンビリとした静寂」にピッタリのバラード集。スピリチュアルで朗々としたバラードチックなジャズ。そんなジャズを約50分間に渡って、聴き手を飽きさせずに聴かせるのだ。充実のバラード集。こんなに素敵に朗々となるテナー。そう言えば、今までに無いことに気が付いた。

 
 

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2017年7月18日 (火曜日)

ジェームス・ムーディーを知る

ジャズはマイナーな音楽ジャンルだ、と言われるようになって久しいが、マイナーマイナーと言われながら、ジャズメンの全体数は相当数にのぼる。ジャズを聴き始めて40年、結構数のジャズメンを知るようになったが、それでも「これって誰」と言いたくなるジャズメンもまだまだいる。

ジェームス・ムーディー(James Moody)がそういう「これって誰」と言いたくなるミュージシャンだった。そもそも、ムーディーの名前を初めて見たのが、Prestigeレーベルのカタログを入手した頃だから、2000年辺りではないか。ジェームス・ムーディーのリーダー作って、Prestigeレーベルのカタログの中である一定数あって、当時、それなりにメジャーな存在だったことが窺い知れる。

でも、僕は知らなかった。ムーディーは、ジャズ界の巨匠、ジャズ・テナーのマスターと呼ばれるが、僕は全く知らなかった。1925年生まれ、2010年、85歳で逝去。1950年代は、30歳を超えたくらいの年齢なので、ハードバップ時代は中堅ジャズメンの位置づけ。それでも親しみが無かったのだから、よっぽど縁が無かったのだろう。
 

James_moody_hifi_sax_and_flute

 
Prestigeレーベルの7011番は、James Moody『Hi Fi Party』(写真左)。1955年8月の録音。ハードバップ時代前期の終わり。パーソネルは今から見れば無名のジャズメンがほとんど。ムーディーの気心知れたジャズメン達と推察する。ハードバップ前期のクラシカルなコンボの好盤と評価される向きもある盤である。アンサンブルの良さはあるが、ムーディーのテナーを愛でるには、ちょっと地味なパフォーマンスである。

逆に、James Moody『Sax & Flute Man』(写真右)は、タイトル通り、ムーディーのテナー・サックスとフルートを十分に堪能出来る好盤。全編に渡ってムーディーのブロウがフィーチャーされている。バックを務めるオルガンの音もファンクネスだだ漏れ。1973年PAULAに残したマイナー作品ではあるが、実に雰囲気のあるグルーヴィーなソウル・ジャズの好盤に仕上がっていて立派。こちらの盤の方がムーディーを体験するのには良いと思います。

21世紀になってその存在とそのプレイの個性を知った「ジェームス・ムーディー」。Prestigeレーベルの他のリーダー作を中心に、もっともっと掘り下げている所存。ジャズの裾野は広く奥が深い。今回、ジェームス・ムーディーのリーダー作を聴いて、改めて思った。

 
 

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2017年7月15日 (土曜日)

チャールズ・ロイド・リターンズ

ジャズを聴き始めた頃、ジャズ盤紹介本で「チャールズ・ロイドは良い」とあちらこちらで書かれていて、どうかな〜、と思っていたんだが、評論を書いている人は皆、バックのキース、デジョネット、マクビーのリズム隊を絶賛しているついでに、ロイドのテナーを「判り易いコルトレーン」風に評価している。なんだか胡散臭いので長年聴くことは無かった。

そもそも、ロイドの人気が高かったのは、1960年代後半、Atlanticレーベル時代の時。「Love & Peace」のフラワー・ムーブメントの波に乗って、ロイドのテナーは人気があった。しかし、その人気は、ロイドのしたたかなビジネス手腕と時代を見据えたアンテナの成果。ポスト・コルトレーンとしては荷が重すぎたのか、1970年代、フュージョン・ジャズのブームの中、その名は徐々にマイナーな存在になった。

が、1966年録音の人気ライブ盤『Forest Flower』(写真右)を聴いてみると、演奏全体に爽やかな風が吹き向けるような「フォーキー」な演奏全体の雰囲気が実に印象的です。僕はこの『Forest Flower』を初めて聴いたのは、2000年になってから。聴いてみて、確かにバックのリズム隊の凄まじさが前面に押し出ているんですが、ロイドのテナーも爽やかでシンプルで聴き易いもので、これはこれで一つの個性です。
 

Charles_lloyd_i_long_to_see_you

 
そんなロイドですが、2015年からブルーノート・レーベルに転籍したのですが、このAtlanticレーベル時代の時。「Love & Peace」のフラワー・ムーブメントの波に乗っていた頃の、演奏全体に爽やかな風が吹き向けるような「フォーキー」な演奏に戻った様な感じがします。逆に「したたかなビジネス手腕と時代を見据えたアンテナ」が不要になった今の時代、ロイドの爽やかでシンプルで聴き易いテナーが意外とマッチします。

Charles Lloyd & Marvels『I Long To See You』(写真左)。2015年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts,fl), Bill Frisell (g), Greg Leisz (pedal steel), Reuben Rogers (b), Eric Harland (ds)。捻れ不思議ギターのビル・フリーゼルの参加が目を惹く。グレッグ・レイズのスチール・ギターも目新しい。どんなジャズになるんや?

ロイドという人はつくづく、バック・ミュージシャンに恵まれてこそ、この個性を発揮できる人なんやなあ、と思う。フリーゼルとレイズの参加で、米国ルーツ・ミュージックをベースにした、フォーキーでカントリーな雰囲気が見え隠れする、コンテンポラリーな純ジャズな展開になっている。これが実に心地良い響きで、安らぎの雰囲気満載なのだ。

 
 

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2017年7月11日 (火曜日)

ライトハウスのエルヴィンです

ジャズのライブ録音で有名な「ライブハウス」がある。例えば、米国東海岸ニューヨークでは、ブルーノート、ヴィレッジヴァンガード、バードランドなどが有名。それでは、米国西海岸では、と問えば、まず、ロサンゼルスのハモサビーチにある「ライトハウス」が浮かぶ。「ライトハウス」かあ。

ライトハウス、と聴いて、まず思い浮かぶライブ盤が、Elvin Jones『Live at the Lighthouse』(写真左)。1972年9月9日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Steve Grossman (ts, ss), Dave Liebman (ts, ss, fl), Gene Perla (b)。ブルーノート・レーベルからのリリース。

リーダーのエルヴィンのドラムにフロントの2サックス、そしてベース。おや、ピアノがいない。そう、このライブ演奏、ピアノレスの変則トリオ。フロントにサックスが2本。当時、中堅に差し掛かった頃のスピリチュアルなブロウの担い手、スティーヴ・グロスマンとデイヴ・リーブマン。バックにポリリズムの権化、エルヴィン・ジョーンズが控える。
 

Elvin_jones_live_at_the_lighthouse

 
ピアノが無い。打楽器の役割も果たせるピアノが無い。ドラムのエルヴィンはより自由に叩きまくる。メロディー楽器の役割も果たせるピアノが無い。コードを規定するピアノが無い。フロントの2サックスは、思いっきり自由に吹きまくる。マイルス・バンドから抜けたばかりのグロスマンと、これからマイルス・バンドに参加するリーブマン。目眩く、凄い素晴らしい「吹きまくり」。

しかし、である。当然ながら、リーダーのエルヴィン・ジョーンズのドラミングがとても素晴らしい。フロントの2テナーを鼓舞するばかりか、巧みなドラミングでビートもしっかりと供給しており、これではベースは不要ではないか。確かにベースのジーン・パーラは「しんどそう」。エルヴィンの盟友らしいのだが、このライブでのエルヴィンは手加減しない。何かに取り憑かれたが如く、バッシバッシと叩きまくる。

コンプリート盤も出ているが、まずはリリース時と同様のLP2枚組編成のCDをお勧めしたい。録音のトータル時間も適度で、飽きること無く、心地良いテンションの下、このライブ盤を愛でることが出来る。そうそう、このアルバムのジャケットのイラストには「引いてはいけない」。中身はホットで、吹きまくりテナー&叩きまくりドラムの好盤です。

 
 

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2017年7月 2日 (日曜日)

ヘインズ meets 怪人テナー

10年ぶりにCDプレイヤーを買い換えた。というか、前のプレイヤーはDVDとのコンパチだったので、純粋な単体CDプレイヤーとしては、23年ぶりの買い換えになる。今回はもしかしたら、生涯で最後のモデルになる可能性もあるので、アンプとのバランスを取りつつ、予算的には十分に考慮した。で、やはり良い音が鳴る。暫くは、手持ちのCDを全て聴き直せる。

聴き直しCDの中で、最近の僕のジャズCD鑑賞のトレンドである「ドラマーがリーダーのアルバム」が幾枚かがある。その中でも、その出来に一番感心したのが、Roy Haynes『Out of the Afternoon』(写真左)。1962年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Roy Haynes (ds), Roland Kirk (ts, manzello, stritch, C flute, nose flute), Tommy Flanagan (p), Henry Grimes (b)。

チャレンジのレーベル「Impulse!」からのリリース。百戦錬磨の強者ドラマー、ロイ・ヘインズが、怪人テナー、ローランド・カークを従えてのワンホーン・カルテット。怪人テナーのカークをヘインズがリーダーとして、どうコントロールするのか、聴きものである。バックのリズム・セクションの重要な相棒のピアノには、燻し銀ピアニスト、トミー・フラナガンが控える鉄壁の布陣である。

冒頭の「Moon Ray」の出だしから、ロイ・ヘインズ親分はドラムソロで一発かます。その豪快で柔軟なドラミングを聴きつつ、神妙にテナー・ソロに入るローランド・カークが可愛い。まずは無難な出だし。少し新しい響きを宿した純正なハードバップ風の演奏に終始する。まずは基本から、である。
 

Out_of_the_afernoon1  

 
続く「Fly Me to the Moon」でも、出だしヘインズ親分が一発かますが、後に出てくるカークのソロについては、最大限の自由を与えている。好きに吹き始めるローランド・カークが迫力満点。怪人テナーの面目躍如。フリーでは無い、限りなく自由度の高い、カーク独特のモーダルなテナーソロに思わず「のけぞる」。これが「ローランド・カーク」だ、と言わんばかりの迫力のブロー。ヘインズ親分はバッシバッシ鼓舞する。

軽やかで柔軟なヘインズのドラミングが秀逸。収録されたどの曲でもヘインズのドラミングは絶好調。ヘインズのドラミングを体験するだけでもこの盤は存在価値がある。加えて、ローランド・カークの素晴らしいパフォーマンス。もともとバップなピアニスト、トミフラも積極参戦して、3曲目を過ぎる辺りで、先進的で硬派なメインストリーム・ジャズと相成る。

ジャケット・デザインは「?」。森の中にそれぞれの楽器を持って佇んでいる訳だが、リーダーのロイ・ヘインズはシンバルだけを持って立っている。なんてジャケットなんだ。このジャケットだけは意味不明だが、内容的には先進的で硬派なメインストリーム・ジャズが詰まっているのだから、大目に見ようではないか。今の耳にも新鮮な響きが詰まった好盤である。

 
 

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2017年6月23日 (金曜日)

ジャズ・テナーの裾野は広く深い

梅雨に入ったには入ったらしいが、あまり梅雨らしい日が無い、雨が降っても続かない、我が千葉県北西部地方である。朝は結構涼しいし、夜は夜で、湿ってはいるが涼しい風が吹き抜ける。今年はなかなか良い感じの夏至の季節である。こういう時は、スカッと吹き抜けるテナーの音色が良い。バリバリ吹き上げるテナーが良い。

誰が良いかな〜、とアルバムを物色して選んだアルバムがこれ。Booker Ervin『Booker 'N' Brass』(写真左)。1967年9月の録音。フレディ・ハバード、チャールズ・トリヴァーらが参加したブラス・アンサンブルをバックに、ブッカー・アービンがテナーを吹きまくる。ブッカー・アービン with ブラス・セクション。

ブッカー・アービンのテナーは、フリージャズ基調のブロウという印象が強いが、意外とオーソドックスなブロウが多い。確かに、モーダルなブロウがメインで、限りなく自由度の高いブロウが得意ではあるが、決して、フリー・ジャズの人では無い。意外と伝統の範囲内で、限りなく自由度を高めつつも、従来のジャズの枠の中に留まるブロウで、これはこれで好ましい。
 

Booker_n_brass1

 
バックのブラス・アンサンブルもテクニック豊かでドライブ感も抜群なのだが、それにも増して、アービンのテナーが素晴らしい。フリーなブロウは限りなく封印して、意外と正統派な、重厚なテナーを聴かせてくれる。そう、この盤はブッカー・アービンのテナーを心から愛でる盤である。それほどまでに、アービンのテナーは素晴らしい。

ブルージーである。そしてソウルフル。シュッとしたスッキリしたファンクネス濃厚。速いフレーズが耳に心地良く響く。もしかしたら、アービンのベストプレイのひとつかもしれない。コッテコテの電光石火のアービンのブロウ。ジャズのテナーってこれほどまでに吹きまくることが出来るんやなあ、と変に感心してしまう。

シンプルな旋律が個性のアービン。ジャズ・テナーを愛でるのに最適の一枚である。僕がこの盤に出会ったのは10年ほど前。この盤を聴いた時は「目から鱗」ならぬ「耳から鱗」(笑)。コルトレーンとロリンズに比肩するテナーは無い、と思っていたが、アービンも凄い。ジャズ・テナーの裾野は広く深い。以来、僕はジャズ・テナーの森を彷徨っている。

 
 

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2017年6月 9日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・54

ジャズを聴き続けてはや40年以上になるが、それでもまだまだ「この盤は聴いたことがないなあ」という盤に出会うことも時々ある。特に1980年代から1990年代の純ジャズ復古の時代、ネオ・ハードバップ系の盤はこの10年くらいかなあ、やっとリイシューされてきた状況で、初めて聴く盤も多くある。

そんな「聴いたことがないなあ」盤の一枚が、Charlie Rouse『Soul Mates』(写真左)。1988年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Rouse (ts), Sahib Shihab (bs), Claudio Roditi (tp), Santi Debriano (b), Victor Lewis (ds), Walter Davis Jr. (p) 。

リーダーにいぶし銀テナーのチャーリー・ラウズ(録音当時64歳)。バリトン・サックスの怪人、サヒブ・シハブ(録音当時63歳)がこの盤の隠し味。加えて、ブラジル出身の溌剌トランペットのクラウディオ・ロディッティ(録音当時42歳)。まず、この3人のフロントが素晴らしい。一番の若手でロディッティの42歳だから、ベテランの味、ベテランの演奏が心ゆくまで味わえる。

チャーリー・ラウズのテナーが好調である。悠然とタメを入れながらブイブイ吹き上げる。64歳のブロウとは思えない。この盤の録音の3ヶ月後、鬼籍に入るなんて全く想像できない。振り返れば、この盤でのラウズのブロウって「白鳥の歌」ではないか。ユッタリしたバラード調の情感を込めたブロウも良い。疾走感溢れる速い吹き回しも良い。
 

Soul_mates

 
サヒブ・シハブのバリトン・サックスも好調である。低音をブリブリいわせながら唄う様にスイングする。低音ブリブリがスイングする音って実にファンキー。芯がしっかり入ったバリサクの音。加えて、シハブのアドリブ・フレーズは常に「捻れて」いる。捻れてスイングする「バリサクの怪人」サヒブ・シハブ。実は、このシハブもこの盤の録音から1年2ヶ月後に鬼籍に入った。

そうそう、クラウディオ・ロディッティのトランペットも絶品。ブリリアントという形容がピッタリの、溌剌としてポジティブで、ブラスの明るい輝きが眩しい感じの根明なトランペット。なるほどブラジル出身なのか。ブラジル出身という雰囲気が実に頼もしい。テクニックも確かでフレーズは流麗。聴きどころ満載である。

パナマ出身のベーシストサンティ・デブリアーノ(録音当時33歳)、フレキシブルでシャープなビクター・ルイス(録音当時38歳)のドラミング、端正かつファンクネス忍ぶウォルター・デイヴィス・ジュニア(録音当時56歳)のピアノ。新旧のジャズメンががっちりとタッグを組んだ様な、ドライブ感溢れる端正なリズム・セクション。ウォルター・デイヴィス・ジュニアは、この盤の録音から1年10ヶ月後に鬼籍に入っている。

ラウズ、シハブ、ウォルター・デイヴィス、3人の「白鳥の歌」に近い演奏なんですが、そんなことを全く感じさせない、躍動感溢れ、小粋でコクのあるインプロビゼーションは凄く魅力的です。加えて録音が良い。調べてみたら、ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音でした。この盤、ジャズ者の方々の全てにお勧めの「隠れ好盤」です。

 
 

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2017年6月 8日 (木曜日)

ショーターの初リーダー作です

セロニアス・モンクのピアノは「個性が強い」。唯一無二。決して真似することは出来ない。そして、ウェイン・シューターのテナーは、モンクに負けずに「個性が強い」。こちらも唯一無二。決して真似をすることは出来ない。両者とも、フォロワーがいそうでいない。それだけ、個性が強すぎるのだ。

そんなウェイン・ショーターの聴き直しを2年ほど前、進めていた。が、聴き逃しているリーダー作もまだまだあって、今回、落ち穂拾い的に、ウェイン・ショーターの聴き直しを再開した。そう言えば、ショーターの初リーダー作、いわゆるVee-Jay レーベルの3部作を聴き逃していた。いかんいかん。

まずは、Wayne Shorter『Introducing Wayne Shorter』(写真左)。1959年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (ts), Lee Morgan (tp), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。当時のジャズ・メッセンジャーズのフロント2管にマイルス・バンドからリズム・セクションを借りてきた様なクインテット構成である。
 

Introducing_wayne_shorter1

 
ジャズメンの個性は初リーダー作に詰まっているというが、このウェイン・ショーターの初リーダー作についても例外では無い。明らかにそれまでの「ハードバップ」的な常識的なフレーズは全く感じられない。基本はモード。でも、どこからどうとっ掛かってモーダルなフレーズを展開するのかが皆目判らない。

当の本人は「宇宙と交信しながらフレーズを紡ぐ」なんて言っているが、このショーターのあまりに個性的でモーダルなフレーズを聴いていると、それって本当かも、と思う瞬間があるから怖い(笑)。それほど、この盤でのショーターのフレーズは個性的。トランペットのモーガンを始めとした他のジャズメンは「ハードバップ」的な常識的なフレーズ。ショーターは突出していて全く異なる。

アルバム全体の演奏はまだまだ未熟なところはあるが、リーダーのショーターを始めとして、参加したジャズメンの個性がハッキリと掴める、宝石の原石の様な盤である。錚々たる参加メンバーなんだが、そんな中で、ショーターのテナーだけが「浮いている」。しかし、この「不思議ちゃん」な個性溢れるショーターのテナーは意外と填まる。中毒性のある「宇宙人との更新」テナーである。

 
 

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2017年5月27日 (土曜日)

(欧州ジャズ+米国ジャズ) な盤

このところ、梅雨空の様に鬱陶しい曇り空が続く。昨日などは午前中はまとまった雨。久し振りに雨道具総動員である。が、今日は朝から回復基調。午前中は夏の到来を告げるような蒸し暑い陽気。午後から空気が入れ替わったのか、涼しい風が吹き抜けて、半袖ではちょっと肌寒さを感じる清々しい陽気に。

こういう清々しい初夏の陽気の中、耳を傾けるジャズは「欧州ジャズ」が良い。しかし、ブルージーでファンクネス濃厚な米国ジャズも捨てがたく、その双方のジャズの雰囲気を併せ持つジャズ盤は無いのか、と思いを巡らす。と、あったあった。欧州ジャズと米国ジャズのハイブリッド盤の様な雰囲気を持った盤が。

Sacha Distel & John Lewis『Afternoon In Paris』(写真左)。1956年12月、パリでの録音。ちなみにはパーソネルは、John Lewis (p), Sacha Distel (g), Barney Wilen (ts), Pierre Michelot, Percy Heath (b), Connie Kay, Kenny Clarke (ds)。オリジナルLPのA面3曲のベースとドラムがPierre MichelotとConnie Kay、B面3曲がPercy HeathとKenny Clarkeとなっています。
 

Afternoon_in_paris1

 
以前より、パリに対する限りない憧れを抱いていたジョン・ルイス(写真右)が、フランスの人気ジャズ・ミュージシャン、サッシャ・ディステル、バルネ・ウィラン、ピエール・ミシェロとパリで録音した盤。この盤のタイトル『Afternoon In Paris』は録音事情「そのまま」。フランスのジャズメン3人の演奏の内容が良い。米国ジャズメンと対等の濃密で個性的な演奏に耳を奪われる。

盤全体、とても洒脱な演奏になっています。とっても趣味の良いハードバップ。繊細さ流麗さ有り、ダイナミックな力感のある展開も有り。それでいて、演奏の雰囲気は、ブルージーでファンクネス濃厚な米国のジャズとは少し異なる、ちょっとあっさりとしたファンクネス希薄な、そう、欧州ジャズ独特のクラシックの素養をベースとした、耽美的でリリカルな音の響き。

録音も良く、演奏の良さと相まって、実に清々しい堅実な内容のハードバップです。フランスのジャズって、お国柄、ちょっとラフな印象があったので、この盤のカッチリした内容にちょっとビックリ。大向こうを張る様なジャズではありませんが、玄人好みの渋い内容の盤についつい耳を傾ければ、今日もそろそろ夕暮れ時。良い一日でした。

 
 

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