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2018年9月24日 (月曜日)

「これは聴いてみよ」な盤・1

ジャズの歴史が100年という。その100年の中で、ジャズのアルバムって、ほんと凄い枚数がリリースされている。最近、ネットのダウンドード・サイトが充実してきて、様々なジャズのアルバムが聴くことが出来るようになった。そんなサイトをお目当てのジャズメンのアルバムを検索している途中で、これは聴いてみよ、とビビッとくるアルバムに出くわすことがある。

Roy Hargrove『With The Tenors Of Our Time』(写真左)。今回出会った「これは聴いてみよ」盤である。1994年のリリース。タイトルの通り、ネオ・ハードバップで優れた中堅トランペッター、ロイ・ハーグローヴが歴代のテナー・マンをゲストに迎えて演奏する企画盤である。メインのハーグローヴのカルテットのパーソネルは、Roy Hargrove (tp,flh),  Ron Blake (ss, ts), Cyrus Chestnut (p), Rodney Whitaker (b), Gregory Hutchinson (ds)。

客演したテナーマンは、以下の5人。Johnny Griffin, Joe Henderson, Branford Marsalis,  Joshua Redman, Stanley Turrentine。大ベテランから中堅まで、渋いマニア好みの大御所的なテナーマンが客演している。これは魅力的だ。実はこの盤、今まで聴いたことが無くて、ハーグローヴのトランペットが好きなのと、このテナーマンのラインナップに魅力を感じて、今回、初聴きした次第。
 

Roy_hargrove_with_the_tenors_of_our  

 
メインのハーグローヴの演奏自体が実に充実している。まず、ハーグローヴのトランペットが端正で艶やかで流麗でとても良い。我が国で人気がイマイチなのかが理解出来ないほど、この盤では充実したトランペットを聴かせてくれる。サイラス・チェスナットをピアノに据えたリズム・セクションも歌心があって堅実で端正。このハーグローヴのカルテット演奏だけでも、この盤、十分に聴ける。

そこに、魅力的なテナーマンが加わるのだ。悪かろう筈が無い。大御所達を前にブレイクも脇に回って、アンサンブル役に徹している。これが好客演のテナーがバンドサウンドとして溶け込む切っ掛けとなっていて、良いアクセントになっています。5人の大御所テナーマンはさすがで、それぞれ、しっかりとした個性が素晴らしい。聴いていて、これはグリフィンかな、これはヘンダーソンとはっきり判る位の個性はやっぱり凄い。

この5人とテナーマンの明確な個性が、この盤のそれぞれの演奏に彩りと特徴を与えていて、この盤の演奏はどれもがバリエーションに富んでいて、聴いていてとれても楽しい。今まで、この盤の存在を全く知らなかったのだが、これが本当に得した気分。良い盤に出会いました。ハーグローヴの素敵なトランペットと共に、聴き応えのある企画盤です。

 
 

東日本大震災から7年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年9月14日 (金曜日)

「新主流派」な演奏がギッシリ

ジョーヘン(ジョー・ヘンダーソン/Joe Henderson)のブルーノート以降のリーダー作を聴き直している。聴き直すというのも、昔、一度は聴いているはずなんだが、当時、ジョーヘンについては苦手意識があって、あんまり気合いを入れずに聴き流していたようである。反省することしきり、である。そこで、今回は気合いを入れて聴いている。

Joe Henderson『Power to the People』(写真左)。1969年5月の録音。Milestoneレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Mike Lawrence (tp), Herbie Hancock (ac-p, el-p), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。このパーソネルを見れば、当時の最先端をいく新主流派の音が聴こえてくる。

そう、この盤は当時の最先端をいく「新主流派」な演奏がギッシリ詰まった好盤である。主役のジョー・ヘンダーソンは、ヘンにフニャフニャうねうねなテナーを封印し、圧倒的にモーダルでクールなテナーを吹き回している。決して熱くブロウすることは無い。あくまでクールに、あくまで冷静にモーダルで限りなくフリーなフレーズを吹き回していく。
 

Power_to_the_people  

 
ハービーも圧倒的に新主流派な響きのアコピ、エレピを弾き分けている。モーダルな展開に切れ味がある、と言う感じで、アドリブ・プレイは鬼気迫るものがある。当時のハービーのベスト・プレイの1つでではないか。しかし、良く聴くとこの頃のハービーって、アコピもエレピも同じ弾き方をしているみたい。それでも、フレーズは実に先進的で美しいので、アコピとエレピと同じ弾き方というのは「ご愛嬌」。

加えて、ドラムのデジョネットのポリリズミックなドラミングが凄い。このドラミングは当時最先端だろう。今の耳にも新しく響くリズム&ビートは凄い。思わず聞き耳を立てる。そして、この盤で一番感心したのがロンのベース。まず「ピッチが合っている」。そして、ベースの音が引き締まって、鋼の様に固くて「しなやか」。こんなに整ってダイナミックなロンのベースはなかなか聴くことが出来ない。

この盤は、ジョーヘンを愛でるというよりは、この盤にギッシリ詰まっている、当時最先端の新主流派な音の響きを心ゆくまで愛でる盤ことが出来る好盤。ジョーヘンのテナーもニャフニャうねうねすること無く、シンプルで判り易い、クールなテナーに仕上がっている。この盤にして、ジョーヘンのフレーズはもはや「コルトレーンの再来」とは形容されない。ジョーヘンはジョーヘン。この盤では、ジョーヘンの個性の最終形が記録されている。

 
 

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2018年9月 5日 (水曜日)

この盤でやっとジョーヘンを理解

40年以上、ジャズを聴き続けてきて、それでも疎遠なジャズメンというのが幾人かいる。そもそも、聴く機会が無かった、つまり縁が無かった、というジャズメンもいれば、若い頃、聴いてはみたんだが、どうにもこうにも耳にフィットせずに、そのまま疎遠になってしまったジャズメンもいる。

ジョー・ヘンダーソン(Joe Henderson・略して「ジョーヘン」)というテナーマンがいる。このテナーマンは、さきほどの疎遠なジャズメンの一人で、その疎遠になった動機は後者。ジャズ者初心者の頃、ブルーノートの諸作をジャズ喫茶で聴かせてもらったのだが、これがどうにもこうにも耳にフィットしない。フニャフニャうねうね、という感じに聴こえて、何が良いのか判らなかったのだ。

それから38年。それまで時々、ブルーノートのジョーヘンについては聴いてはみたが、やはり、どうもピンとこない。それでも、ジャズ盤紹介本でも、ジャズ雑誌でも、ネットのブログでも、ジョーヘンは良い、という表現をよく見る。う〜ん、そうかなあ、と悩んでいたら、そうか、ブルーノート以外のジョーヘンを聴いてみよう、と思い立って、ブルーノート以降のジョーヘンを聴くことにした。
 

Joe_henderson_tetragon  

 
Joe Henderson『Tetragon』(写真左)。1967年9月(#4, 6-7)と1968年5月(#1-3, 5)の2回の録音に分かれる。ちなみにパーソネルは、Joe Henderson (ts), Ron Carter (b) は全曲共通、ピアノとドラムは録音日によって分かれていて、(#1-3, 5)では、Don Friedman (p), Jack DeJohnette (ds)、(#4, 6-7)は、Kenny Barron (p), Louis Hayes (ds)。マイルストーン・レーベルからのリリース。

聴いての第一声は「ブルーノートの諸作に比べて、かなり聴き易くて判り易い」。それまでの「フニャフニャうねうね」なテナーを吹いていない。カッチリとした堅実で判り易いアドリブ・ソロを吹いている。シュッとして聴き易く判り易いコルトレーン、といった風情のテナーに思わず「おおっ」と思う。ブルーノート時代のアドリブ・ソロに芯がグッと入ったような感じで、とにかくこの盤のジョーヘンは「よく判る」。

1968年のリリースだからなのか、ジャケットのデザインが奇抜で、これはこれで「ひく」のだが「ひいてはならない」(笑)。他のジャズ者の方々の評判を確認させてもらって、やはり、この盤、ジョーヘンのリーダー作の中でも判り易い盤とのこと。なるほどねえ。この盤のジョーヘンは良く判る。シュッとして聴き易く判り易いコルトレーン+芯がグッと入ったような「フニャフニャうねうね」ソロ。彼の個性はこれだ。ということで、この盤から以降のリーダー作を聴き進めることにする。

 
 

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2018年8月24日 (金曜日)

新しい音的要素の「異種格闘技」

この5年くらい前からだろうか。少なくとも、感覚的には、2010年代に入ってから、その傾向は顕著になったと感じている。いわゆる「21世紀のニュー・ジャズ」のムーブメントである。ジャズはもともと「異種格闘技」が得意な音楽ジャンル。他の音楽ジャンルの音を取り込むのが得意。

この2010年代に入ってから、ボイスやスピリチュアル、ノイズやラップを取り込んで、新しい響きを獲得した「21世紀のニュー・ジャズ」がトレンドになりつつある。1980年代後半からの「純ジャズ復古」の様に、過去のジャズの演奏スタイルの焼き直しというか、深化を旨とした動きとは異なり、もともとジャズの特質である「異種格闘技」な面を見直した、新たな「融合」を旨とした演奏トレンドである。

Donny McCaslin『Fast Future』(写真左)。2015年のリリースであるが、この盤も、そんな「異種格闘技」な面を見直した、新たな「融合」を旨とした演奏トレンドをベースとしている佳作である。ちなみにパーソネルは、Donny McCaslin (ts), Jason Lindner (el-p, ac-p, syn) Tim Lefebvre (el-b), Mark Guiliana (ds), David Binney (vo, syn), Nina Geiger (vo), Nate Wood (g), Jana Dagdagan (spoken word) 。 
 

Fast_future_1

 
ボーカルと朗読。ボーカルについては、激情的では無い、温和で穏やかなスピリチュアルな要素を表現する為に存在し、spoken word=朗読 が、ジャズにとっては「新しい響き」。リズム&ビートは、全く「従来のジャズ」っぽくない。まず、スインギーな4ビート、若しくは8ビートが存在しない。スイングせず、ファンクネスは希薄な、新しいジャズのリズム&ビート。20世紀の時代の様に「欧州ジャズ」専門では無い、ファンクネスが希薄な、パルシヴな4ビート&8ビート。

アドリブ・フレーズの基本は、力感溢れる漂う様な広がる様なモード演奏。演奏全体の雰囲気は明らかにジャズであるが、フレーズの特徴は「明るくポップ」。リズム&ビートは「従来のジャズ」っぽくないが、限りなく「多彩」。リズム&ビートに関しても「異種格闘技」。他の音楽ジャンルのビートを上手く取り入れて、ジャジーなビートに融合させている。

新しい音的要素の「異種格闘技」とリズム&ビートの「異種格闘技」。21世紀のニュー・ジャズは、新たな「異種格闘技」的な、他の音楽ジャンルからの「新たな音の要素の融合」が基本。ダニー・マッキャスリンのテナーも良い音してるし、ティム・ルフェーヴルのエレベも新時代のエレベの音。ジェイソン・リンドナーのピアノ&シンセが要所要所で効いていて、「21世紀のニュー・ジャズ」の音は心地良い。

 
 

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2018年8月 5日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・102

まず、レオ・リチャードソン(Leo Richardson)という名を知らない。どうも英国ジャズのサックス奏者らしい。どうりで知らないはずだ。ジャケットの雰囲気を見ても、実にレトロっぽくて、リリース年が2017年。これは1970年代辺りの英国ジャズのリイシュー盤だと思った。

Leo Richardson『The Chase』(写真左)。2016年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Leo Richardson (ts), Rick Simpson (p), Mark Lewandowski (b), Ed Richardson (ds)。ラストの8曲目にのみ、 Alan Skidmore (ts) が、2曲目と4曲目にのみ、Quentin Collins (tp) が加わる。

レオ・リチャードソンは英国の若手テナーサックス奏者。これがデビューアルバムとのこと。1曲目の「Blues for Joe」を聴けばビックリする。どこから聴いても、正統なハードバップなジャズが思いっきり展開されている。しかし、録音が良い。ということで、この盤、実は最初聴いた時は、1970年代の隠れハードバップ盤だと思った。
 

Leo_richardson_the_chase

 
ストレート・アヘッドな純ジャズ一本のアルバム。テナーはテナーらしい音を出し、ピアノはモーダルに堅実なバッキングでフロントを支え、ベースはブンブン音を立て、ドラムは硬軟自在にポリリズムを叩き出す。1960年代中盤〜後半のモーダルなハードバップがこの盤に詰まっている。こんなアルバムが、新盤として2017年にリリースされた、という事実に驚く。

よくよく聴くと、アドリブ・フレーズや、バックのリズム&ビートに今風な雰囲気が漂っていて、どう考えても1960年代中盤〜後半には無かった響きがところどころに聴かれて、そこでやっとこの盤が、1970年代のハードバップ盤のリイシューで無いことに気がつく。気がついた時はビックリした。いわゆる「ネオ・ハードバップ」にまだ、これだけの「ジャズ表現の工夫の余地」が残っていたとは恐れ入った。ジャズは奥が深い。

プレイスタイルは、コンテンポラリーかつストレート・アヘッド。これが英国ジャズから生まれたことにまた驚く。英国と言えば、ジャズの正統なスタイルは「ビ・バップ」と言い切るほどの硬派なジャズ者の集まる国である。そこで生まれ出でた、この「ネオ・ハードバップ」盤。これが「格好良い」のだ。次作が楽しみ。こういう盤が新盤でリリースされるから、ジャズって奥が深くて面白い。

 
 

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2018年8月 4日 (土曜日)

意外と無名な盤だけど好盤です

今年の夏は酷暑である。とにかく蒸し暑い。通勤の往き帰り、特に最寄りの駅から自宅までの徒歩が辛い。加えて、最寄りの駅から会社までの徒歩が辛い。汗だくだくになる。家に帰り着いて、就寝前のひととき、エアコンの効いた涼しい部屋の中で、ゆったりとした気分で聴くECMレーベルの諸作は格別なものがある。

極力、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音をベースにした、欧州ジャズのお手本の様なECMレーベルの諸作。酷暑の夏、エアコンの効いた部屋の中で聴くECMレーベルのアルバムは、非常に心地良い。確かに、夏の夜はECMレーベルのアルバムを選ぶことが多い。

Jan Garbarek-Bobo Stenson Quartet『Witch-Tai-To』(写真左)。1973年11月27日の録音。ECM 1041番。ちなみにパーソネルは、Jan Garbarek (ts, ss), Bobo Stenson (p), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。ECMレーベルのお抱えリズム・セクション、ボボ・ステンソン・トリオをバックに、これもECMレーベルの看板サックス奏者、ヤン・ガルバレク、フロント1管のカルテット構成。
 

Witchitaito

 
ヤン・ガルバレクの透明度溢れる、クリスタルで硬質な、切れ味の良く伸びの良いサックスが素晴らしい。ガルバレクのサックスの音が鳴り響くだけで、その音世界は「ECMレーベルの音世界」に染まる。ガルバレクのサックスは硬軟自在、伸びの良い柔軟なフレーズを繰り出していく。特にその「飛翔感」は彼独特の個性。これが非常に涼しげで「清涼感」抜群。

バックのボボ・ステンセンのピアノ、パレ・ダニエルソンのベース、ヤン・クリステンセンのドラム、このECMお抱えのリズム・セクションの音も実に印象的。ガルバレクと同様に、透明度溢れる、リリカルで硬質なステンセンのピアノ。これがガルバレクのサックスと実に相性が良い。絵に描いた様なECMレーベルの音。清涼感抜群、間の静謐感を活かした、独特のアドリブ・フレーズ。

ダニエルソンのベースは重量感溢れ、弦の響きが心地良い。クリステンセンのドラムは堅実かつ多彩。正確でタイトなリズム&ビートを叩き出す。このECMお抱えのカルテットの繰り出すフレーズのインスピレーションとバリエーションは特筆もの。ファンクネス皆無な、間を活かしたオフビート。欧州ジャズの典型的な音世界がこのアルバムに詰まっている。意外と無名なアルバムだが好盤である。

 
 

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2018年7月31日 (火曜日)

ゴルソン・ハーモニーを楽しむ

ジャズにはアレンジも大事な要素である。ジャズメンが一堂に会しての最低限のルールだけでアドリブ演奏をしまくるジャム・セッションも聴いていて面白いが、演奏の出来にバラツキがあるのが難点。それぞれの演奏が同一レベルで、お互いの演奏が上手くかみ合えば良いが、纏まりが悪ければ聴くに堪えないか、聴いていて退屈になる。

逆にアレンジがしっかりしておれば、テーマ部も聴き応えがあり、アドリブ部もバックの伴奏をアレンジすることで、ある程度の統一感が生まれる。優れたアレンジはジャズの演奏の内容を整え、安定させる働きがある。ジャズの世界ではアレンジャーとして優れたジャズメンが結構な人数いる。クインシー・ジョーンズ、ベニー・ゴルソン、ギル・エヴァンス、デヴィッド・マシューズなどなど、通常のジャズメンでもアレンジをやらせたら超一品というのも多数。

僕がこのジャズのアレンジを一番最初の意識したのが「ゴルソン・ハーモニー」。Art Blakey & The Jazz Messengers『Moanin'』を聴いて、テーマ部のユニゾン&ハーモニーの響きが独特で「これは一体なんなんだ」と思った。そして、ライナーノーツを読んで、これが、ベニー・ゴルソンの独特のアレンジの個性で「ゴルソン・ハーモニー」と呼ばれることを知った。
 

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Benny Golson『The Modern Touch』(写真左)。1957年12月の録音。リバーサイド・レーベル RLP 12-256。成熟したハードバップ盤がメインの「リバーサイド200番台」の真ん中辺り。ハードバップ時代真っ只中の「こってこてのハードバップ」。ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Kenny Dorham (tp), J. J. Johnson (tb), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Max Roach (ds)。

フロント3管のセクステット構成。このフロント3管がミソで、ゴルソン・ハーモニーが一番美しく響くフロント構成である。さすがにこの盤は、ベニー・ゴルゾンのリーダー作だけあって、随所に「ゴルソン・ハーモニー」が仕掛けられている。しかも、こってこてではなく、あっさりと仕掛けられている。さすが「ゴルソン・ハーモニー」の本家本元だけあって、「ゴルソン・ハーモニー」が一番アーティスティックに響く術を良く知っている。その「術」がこの盤で心ゆくまで堪能出来る。

この盤、何故かは判らないが、我が国では意外と知られていなくて、ジャズ盤紹介本に載ることはまず無い。ゴルソンのテナーの評判が悪いからかなあ。ユルユルの締まりの無いテナーという形容をした大御所ジャズ評論家の方がいて、ゴルソンのテナーについてはケチョンケチョンだったなあ。でもご心配なく。それは誤解です。ゴルソンのテナーを優秀です。この盤のテナーを聴けば良く判ります。「ゴルソン・ハーモニー」と共に、硬派なゴルソンのテナーもお楽しみ下さい。

 
 

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2018年7月28日 (土曜日)

インパルス・レーベルの隠れ好盤

暑い夏は意外とスタンダードな純ジャズが良い。もともとジャズって、ビートの効いたポジティブな演奏が基本なので、涼しいジャズなんてものは無いのだ。激しさや破綻ちは全く無縁の、ジェントルで端正な純ジャズが良い。耳当たりが良くて、安心してアドリブに耳を委ねることが出来て、ちょっとした破綻に苛つくことも無い。

インパルス・レーベルのアルバムについても聴き直しを進めている。インパルス・レーベルは、プロデューサー、クリード・テイラーによって1960年に設立されたジャズ・レーベル。 フリー・ジャズのレーベルとして有名だが、カタログを見渡して見ると、従来のハードバップのアルバムも散見され、内容的にも先進的なものが多い。ジャケット・デザインについては、見開きのジャケットで、黒とオレンジ色で統一されたデザインが特徴。

Paul Gonsalves『Cleopatra Feelin' Jazzy』(写真左)。1963年5月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Paul Gonsalves (ts), Hank Jones (p), Dick Hyman (org), Kenny Burrell (g), George Duvivier (b), Roy Haynes (ds)。エリザベス・テイラー主演の映画『クレオパトラ』を題材にして、映画制作年に録音。
 

Cleopatra_feelin_jazzy

 
1曲目「Caesar and Cleopatra Theme」、2曲目「Antony and Cleopatra Theme」が映画の曲になる。ポールはエリントン・バンドの名テナー奏者である。5曲目「Action in Alexandria」については、デューク・エリントンが曲を提供したりしている。この盤、選曲が良い。聴き心地の良い、聴き応えのある楽曲を上手く取り込み、鑑賞するに楽し。いきなり集まってのジャム・セッションとは異なり、鑑賞を前提とした小粋なアレンジが随所に施されている。

ポール・ゴンザルベスは端正で、力感も豊かな正統派テナー。流麗かつ破綻無く全く安心して聴けるテナー。そこに、ディック・ハイマンの安定かつ明朗なオルガンが実に効果的。音の彩りとして、バレルのギターが素敵に響く。リズム&ビートは、デュビビエのベースとヘインズのドラミングがガッチリと支えてくれる。パーソネルを見て「悪かろう筈が無い」。極上の成熟した「鑑賞用のハードバップ」がこの盤に詰まっている。

この盤、ジャズ盤紹介にはほとんど名前が挙がらない盤なんだが、どうして、聴いて見ると極上のハードバップである。ジャズ盤紹介本ばかり頼っていては、恐らく出会うことは無い。こういう「知る人ぞ知る」アルバムって、ジャズ・レーベルをカタログ順に聴き進めて行くと、確実に出会うことが出来る。これもジャズ鑑賞の醍醐味。

 
 

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2018年7月19日 (木曜日)

アーティスティックな電化ジャズ

1970年代後半から本格的にジャズを聴き始めた僕にとって、CTIレーベルはとっても思い出深いレーベルである。CTIは1967年、プロデューサーのクリード・テイラーによって創設されたジャズ・レーベル。クロスオーバー・ジャズの老舗レーベルで、僕が聴き始めた頃は、1970年代後半、フュージョン・ジャズの大ブームの最中であった。

CTIレーベルの音は厳密に言うと、フュージョン・ジャズでは無い。ほとんどのアルバムの音はクロスオーバー・ジャズで括られると思う。特に、ジャズとロックの融合、ジャズの電化について優れたアルバムが多い。クロスオーバー・ジャズの老舗レーベルでありながら、フレーズや展開は従来のハードバップ、演奏はエレ楽器中心、そんな新旧ハイブリッドな盤に優れたものが多い。

Freddie Hubbard & Stanley Turrentineの『In Concert Volume One』(写真左)と『In Concert Volume Two』(写真右)。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (key), Eric Gale (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。1973年3月3日、シカゴの Opera Houseと1973年3月4日、デトロイトの Ford Auditorium でのライブ録音になる。
 

In_concert_volume_one_two  

 
この2枚のライブ盤がそんな「新旧ハイブリッドな盤」の好例になる。パーソネルを見れば、このライブ盤は、こってこて正統なハードバップからモード・ジャズをやるんではないか、と思ってしまう位の錚々たるメンバーである。エリック・ゲイルの存在だけが違和感があって、聴く前に「ありゃ〜」となる(笑)。

演奏内容はと言えば、演奏の内容、コンセプトは思いっきりハードバップ〜モード・ジャズである。それを電化された楽器でやる。しかし、楽器が電化されているとはいえ、この今ではそれぞれが、ジャズ・レジェンドと呼ばれるメンバーである、しっかりとメインストリーム・ジャズしている。電化されているからといって、決して、ポップに迎合していないし、決して俗っぽくなっていない。

電化されたジャズとはいえ、結構、アーティスティックなメインストリーム・ジャズである。CTIレーベルにはこれがあるから面白い。アルバムを聴き進めていくと、面白い発見が続々出てくる。このお洒落で硬派な電化されたモード・ジャズは、今の耳で聴くと意外と新鮮に響いて、思わず「おっ」と短い歓声を上げてしまう。やはりこのメンバーは、電化ジャズをやっても隅に置けない。

 
 

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2018年7月 6日 (金曜日)

カマシの『Heaven and Earth』

「スピリチュアル・ジャズ」と聞いて連想するのは、感情のおもむくままに楽器を吹き鳴らし、精神性の部分を強調したフリー・ジャズのバリエーション、ということ。その激しいアブストラクトな吹奏は、時に「馬の嘶き」にも匹敵し、音楽鑑賞という行為の中では、かなりの苦行を強いられる。つまり、一般的には敬遠されがちなジャンルではあった。

が、最近、その「スピリチュアル・ジャズ」の様相が変わってきている。穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、ゴスペルチックなコーラスなどを導入して、音の響きとフレーズから「スピリチュアル」な面を増幅させ、聴く者に訴求する、という、新しいスタイルの「スピリチュアル・ジャズ」が現れ出でている様に感じている。

Kamasi Washington『Heaven and Earth』(写真左)。その代表的存在が「Kamasi Washington(カマシ・ワシントン)」。そのカマシが実に魅力的な新盤をリリースした。「Earth」盤と「Heaven」盤のCD2枚組の大作である。曲名を眺めていると、宗教的な雰囲気が漂うが、アルバムを聴いてみると、意外とそうでも無い。しかし、内容的には、ニュータイプの「スピリチュアル・ジャズ」である。
 

Heaven_and_earth   

 
音楽的にはクワイアも入っているのだが、さり気なくポップにアレンジされていて、宗教的な雰囲気に傾くことは無い。コルトレーンの様に「真理を探究する」という生真面目さは無いし、哲学的な雰囲気はあっても、宗教的な信念のため、真理に到達するためにジャズをやっている、という堅苦しさは全く無い。よって、1960年代後半の「スピリチュアル・ジャズ」の様に、閉塞感が漂うことも無い。

様々な音楽的要素がごった煮に入っている。ジャズの過去のスタイルがさり気なく総動員されていて、バップあり、モードあり、フリーあり、クロスーバーあり、フュージョンあり、と「ジャズのスタイルの万華鏡」の様で、聴いていてとても楽しい。ラップやユーロ・ビート、ノイズ・ミュージックの要素も散りばめられていて、加えて「台詞」の独白もあったりして、これぞ、他の音楽ジャンルとの融合を得意とする「ジャズの究極の姿」って感じが新しい。

誰かが、現代の「ビッチェズ・ブリュー」だ、って言ってたなあ。それは言い過ぎだとは思うが、それに匹敵する位のインパクトのある内容だとは思う。ロバート・グラスパーとはまた違った新世代ジャズへのアプローチ。1960年代後半の「スピリチュアル・ジャズ」が、21世紀も20年程度入ったところで、再構成されるとは思わなかった。音の要素それぞれには目新しさは無いが、音の様々な要素が融合した姿はやはり「新しい」。今後の展開が楽しみである。

 
 

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