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2019年4月 9日 (火曜日)

ジョシュアの個性を理解する

現代のジャズ。歴代のサックス奏者が長年受け継いできた系譜をしっかりと継ぐ者が何人かいる。その一人に「ジョシュア・レッドマン」がいる。1969年2月、米国はカリフォルニア州バークレー生まれ。スピリチュアル・ジャズを代表するサックス奏者、デューイ・レッドマンを父に持つ。
 
1991年にハーヴァード大学を卒業後、出場したセロニアス・モンク・コンペティションで優勝、ジャズ・シーンに身を投じることになる。以来、およそ四半世紀にわたってジャズ・シーンを牽引している。そんなジョシュア・レッドマンの初リーダー作、いわゆるデビュー盤を改めて聴いてみる。
 
『Joshua Redman』(写真左)。1992年の録音。ジョシュア・レッドマンの初リーダー作。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts), Kevin Hays (p), Christian McBride (b), Gregory Hutchinson (ds) がメイン。あと幾人かのゲスト・ミュージシャンが参加している。ベースのクリスチャン・マクブライドの参加がポイント。音全体の纏まりに大きく貢献している。
 
 
Joshua-redman-album  
 
 
当時 「テナー界に驚異の新人現る」 とされた一枚。収録曲を見渡すと、オリジナル曲はあるにはあるが、その他を聴けば、ブルース曲、モンク曲、モーダル曲、スタンダード曲等々、スローバラードあり、ファンクあり、バップあり、とごった煮の内容。なんでもござれの内容だが、どの演奏もクオリティ高く、新人のレベルとしては抜きんでている。ごった煮ではあるが、ジョシュアの優れたテクニックが故に、アルバム全体のトーンはブレることは無い。
 
ジョシュアのテナーのテクニックは素晴らしく、その高テクニックで演奏される楽曲のレベルは高く、ほぼ完璧な内容。これが新人のデビュー盤か、これが新人のテナーなのか、と思わずビックリしたことを覚えている。マクブライドのベースを牽引役にしたリズム・セクションの存在と演奏それぞれのアレンジとが、傍らでアルバムの統一感をしっかりと支えている。
 
ジョシュアのテナーの特徴は「キメのフレーズ」の格好良さ。アドリブ・フレーズが実に格好良く展開し、実に格好良く集結する。これって才能なんだ、と思う。ジョシュアのこのデビュー盤で、既にジョシュアのテナーの個性の全てを表現して、聴き手に聴かせた。これだけ全てをさらけ出して、次はどうするのかという不安すら覚えたデビュー盤。ジョシュアの個性を理解するにはまずこの盤を聴くこと。必須です。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年4月 3日 (水曜日)

スピリチュアルなオルガン・ジャズ

オルガン・ジャズが好きである。もともと子供の頃から、オルガンの音、いわゆる「ハモンド・オルガン」の切れ味良く、ちょっとノイジーでくぐもった様な音が好きで、そんなハモンド・オルガンの音さえ聴こえていたら、それだけで心地良い。オルガン・ジャズの場合、そんなハモンド・オルガンの音が、基本4ビートに乗って、アドリブ・フレーズを展開するのだ。これは僕にとっては堪らない。
 
今年の新盤を眺めていたら、Joey Defrancesco(ジョーイ・デフランチェスコ)の新盤が目についた。ジョーイは1971年生まれなので、今年で48歳。ジャズ界でいけば、まだまだ若い。バリバリの中堅である。風貌から僕はとっくに50歳は過ぎていたと思っていたので、今回、ジョーイのバイオグラフィーを押さえていて、ちょっとビックリした。マイルス晩年のバンドにも一時期参加していたほどで、ジョーイのオルガン・プレイはアグレッシブでテクニック優秀。
 
Joey Defrancesco『In the Key of the Universe』(写真左)。今年3月のリリース。出来たてホヤホヤである。ちなみにパーソネルは、Joey Defrancesco (org,key,tp), Pharoah Sanders (ts,vo), Troy Roberts (sax,b), Billy Hart (ds), Sammy Figueoa (per)。オルガンはベースのラインを担当することが出来るので、この盤ではベースがいない。オルガン、ドラムにフロントがテナーという、オルガン・ジャズの基本的構成である。そうそう、この盤ではジョーイはマルチ奏者ぶりを発揮していて、オルガンの他にシンセ、トランペットも担当している。
 
 
In-the-key-of-universe
 
 
ジョーイのオルガンは相変わらず、アグレッシブでテクニック優秀。弾き過ぎず、テクニックに頼ること無く、余裕を持った大らかなオルガンをこの盤でも弾きまくっている。聴いていて「あ〜良い感じ。これって、ジョーイだよね」と思う。で、この盤ではリーダーのジョーイのオルガンよりも、テナーの音の方が目立っている。ぐいぐい主張する力感溢れるテナー。誰だ、と思ってパーソネルを見たら、なんと「ファラオ・サンダース」。
 
そう言えばこの盤、冒頭の「Inner Being」から、スピリチュアル・ジャズの雰囲気は色濃く漂っている。それも今、ジャズ界で流行っている「穏やかでメロディアスな耳当たりの良い」スピリチュアル・ジャズの印象である。ファラオのテナーは「元祖スピリチュアル・ジャズ」なテナー。この盤でもその存在は大きく、ファラオのテナーがこの盤のスピリチュアル・ジャズっぽさを決定付けている。新しい今様のジャズの響きが心地良い。
 
スピリチュアルなオルガン、テナーを支え、リズム&ビートをコントロールする、ビリー・ハートのドラムの存在も見逃すことは出来ない。趣味の良い、チェンジ・オブ・ペース的なドラミングは柔軟度抜群。演奏全体の音のフレームをグッと締めている。「ジャズの今」を感じる、コンテンポラリーな純ジャズ盤として、なかなかの内容だと思います。好盤です。
 
 
 
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2019年4月 2日 (火曜日)

60年代末期ならではの純ジャズ

ニュー・ジャズを聴いていて、新しい響きのジャズを感じていると、その反動でジャズの本流、旧来の典型的なジャズと言われる「ハードバップ」が聴きたくなる。といって、1950年代のハードバップ時代ど真ん中にドップリと浸かるにはちょっと反動が過ぎる。ということで、ニュー・ジャズの雰囲気を少しだけ宿した、1960年代後半から1970年代のハードバップが良い。
 
Dexter Gordon『A Day in Copenhagen』(写真左)。1969年3月10日、デンマークはコペンハーゲンの「Metronome スタジオ」での録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Slide Hampton (tb), Dizzy Reece (tp), Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b), Art Taylor (ds)。米英+北欧の混成セクステット。
 
デックスは1960年初頭に、ハンプトンは1968年に、ドリューは1961年に、テイラーは1963年に渡欧している。いわゆる米国東海岸のハードバップ・ミュージシャンの渡欧組で、4人ともコペンハーゲンを活動の拠点の1つにしていた。リースはジャマイカ出身で、1960年代の大半は米国東海岸で活動したが結果が伴わず、以前の活動拠点のパリに戻ったはずなのだが、たまたまコペンハーゲンに来ていたのかなあ。ペデルセンはデンマーク出身でコペンハーゲンが活動拠点。
 
 
In-copenhagen  
 
 
ベースのペデルセン以外、他の5人は米国東海岸の本場「ハードバップ」を体験してきた強者ども。ジャズを芸術と理解して、しっかりと聴いて評価してくれる欧州の地で、バリバリ魅力的なハードバップな演奏を展開している。時代は1960年代の末期、当時の先端のジャズのトレンドを踏まえつつ、1950年代のハードバップとは一味違う、欧州仕様のモーダルなハードバップな演奏を繰り広げている。
 
主役のデックスのテナーは全く変わらない。朗々と大らかで悠然としたブロウは「我が道を往く」雰囲気である。テナー、トロンボーン、トランペットのフロント3管のうち、ハンプトンのトロンボーンが良い味を出している。フレーズと音色が先進的で、ハンプトンのモーダルなトロンボーンの存在がこの盤をユニークな存在にしている。そして、全く欧州風のペデルセンの骨太ソリッドなアコベが効いている。ペデルセンのベースが鳴ると、欧州ジャズの雰囲気が一気に濃厚になる。
 
ジャケットは何故かサイケデリック調で「あんまりやなあ」と思うのですが、この盤、由緒正しきレーベルからのリリース。ジャケットのマークを見たら「MPSレーベル」のアルバムなんですね。欧州ハードバップの専門レーベル「MPS」。なかなかにユニークなメンバー編成で、1960年代末期ならではの「モーダルな純ジャズ」を記録してくれていたとは、MPSレーベルもなかなかやるなあ。
 
 
 
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2019年3月31日 (日曜日)

今までに聴いたことの無いジャズ

クリス・チーク(Chris Cheek)というサックス奏者がいる。いわゆるブルックリン派の代表格のサックス奏者。1968年生まれなので、今年で51歳になる。1990年代、ポール・モチアンのエレクトリック・ビバップ・バンドでその名をアピール、NYのブルックリンを中心としたシーンの中核を担うメンバーに成長、同じサックス奏者のマーク・ターナーと共に、新しいサックスのサウンドを生み出し、深化させている。
 
チークのサックスは、今までのジャズに無い雰囲気である。サックスであれば、それまでは必ず、コルトレーンの影響を受けていたし、コルトレーンの奏法のどこかを反映したフレーズが必ず見え隠れした。が、チークの(ターナーも同様なのだが)サックスは違った。それまでの「ジャズ・サックス」の概念を一掃し、全く新しい「ジャズ・サックス」を世に出した。
 
まずもって、4ビートなどどこにも無い。いわゆる1970年代以降の「ニュー・ジャズ」である。加えて、バップ・フレーズの欠片も無い。サックスは絶対に熱く吹かれることは無い。どこまでもクールに淡々と情感を内に秘めつつ、淡々と音を紡いでいく。そんな音世界である。そんな音世界を支えるアレンジも、今までに無い斬新なアレンジ。つまりは今までに聴いたことの無いジャズがこの盤に詰まっていた。
 
 
Vine  
 
 
Chris Cheek『Vine』(写真左)。1999年、NYでの録音。Chris Cheek (ts,ss,comp), Brad Mehldau (p,fender rhodes), Kurt Rosenwinkel (g), Matt Penman (b), Jorge Rossy (ds) 。今の目で見ると、錚々たるメンバーである。現代ジャズ・ピアノの代表格の一人、ブラッド・メルドー、これまた現代ジャズ・ギターの中堅、クルト・ローゼンウィンケル。この二人の名前だけでも「おお〜っ」となる。
 
計8曲すべてチーク自身のオリジナル。これがまた、新しい響きを宿している。4ビート無し、バップ・フレーズ無し、どこまでもクールに淡々と情感を内に秘めつつ、淡々と音を紡ぐテナー。演奏の形式はしっかりと旧来のジャズの通り押さえられているので、フリー・ジャズを聴く様な苦行は無いが、曲のフィーリングは旧来のジャズとは全く異なるものなので、ジャズ者の中でもはっきりと「好き嫌い」が分かれるだろう。
 
といって、この新しい感覚のニュー・ジャズを理解出来ないと駄目だ、とは思わない。これもジャズ。旧来のジャズもジャズ。ジャズは懐深く、裾野の広い音楽ジャンル。だからこそ面白い。でも、このチークのニュー・ジャズって、我が国のジャズ者の間で広く認知され、相応の人気を獲得するには、まだまだ時間がかかる様な気がしている。旧来のジャズにも強烈な魅力があるからなあ。
 
 
 
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2019年3月15日 (金曜日)

ブルーノートの「純ジャズ復古」

ブルーノート・レーベルは、ジャズ界最大のジャズ・レーベル。ブルーノートのカタログには幾つかのシリーズがある。一番有名なのが、1500番台、4000番台など、カタログ番号を基本としたシリーズ。それから、カタログの分類記号を基本としたシリーズ。例えば「BN-LA」シリーズや「LT」シリーズがそれに当たる。どれもが好盤のオンパレードで、どのシリーズを聴いても、ジャズの醍醐味が味わえるところがブルーノート・レーベルの凄いところである。

そんなブルーノート・レーベルのシリーズの中で「85100」シリーズというのがある。1985年から1987年まで、僅か3年のシリーズで41枚の短期間のシリーズであった。しかし、このシリーズ、ちょうど1980年代半ばからの「純ジャズ復古」のムーヴメントの時代にリリースされたシリーズなのだ。どのアルバムも「純ジャズ復古」や「初期ネオ・ハードバップ」な雰囲気の演奏が詰まっていて、実は意外となかなか面白いシリーズなのだ。

Kenny Burrell & Grover Washington Jr.『Togethering』(写真左)。1984年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (ts, ss), Kenny Burrell (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。Blue Note 85100シリーズの BT 85106番。ワシントンJr.はこの録音の2年前に、アルバム『Winelight』でヒットを飛ばしている。
 

Togethering

 
ワシントンJr.のアルバム『Winelight』は、典型的なフュージョン・ジャズの好盤。ソフト&メロウな雰囲気と電気楽器を活用した8ビート主体の演奏は当時、受けに受けた。そんなフュージョン・ジャズのサックス奏者のワシントンJr.がフロントを担当するこのアルバム、僕は最初、フュージョン・ジャズのアルバムだと思った。が、聴いてみたら、新しい雰囲気のする、ライトなハードバップな演奏がギッシリ詰まっているではないか。

ロンのベースは往年のモードライクなベース。デジョネットのドラムは新しい感覚のポリリズム(この頃、デジョネットはキースと「スタンダーズ」を結成している)。ギターのバレルは明らかに新しい感覚のハードバップなギター。旧来のハードバップのギターをフュージョン・ジャズの手法で焼き直した雰囲気が聴いていて実に新しい。そして、ワシントンJr.のサックスも、聴き易いフュージョン・テナーの良い部分を踏襲した新しい感覚のハードバップなサックス。

全編に渡って、なかなか聴き応えのあるネオ・ハードバップな演奏です。これが1984年の録音。フュージョン・ジャズが衰退を始めて、純ジャズが見直され始めた頃。そんな微妙な時期に「純ジャズ復古」を先取りした様な、新しい感覚のハードバップな演奏。さすがブルーノート・レーベルだな、と感心することしきり。

 
 
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2019年3月12日 (火曜日)

クールで大人のテナーが清々しい

Mark Turner『Yam Yam』を聴いて、僕はこう書いた。マーク・ターナーのテナーは「クール・テナー」。芯のある浮遊感と繊細で知的なニュアンス。ブラッド・メルドーの弁を借りると「マーク・ターナーのホーンのサウンドは見紛いようがない。暖かく、深い優しさをたたえ、甘たるくなく、まさにこれぞ誘惑の味がする」。

それまでのジャズ・テナーの印象である「たくましい、豪快といった男性的なイメージ」を覆す、クール・スタイルのテナーが清々しい。スムース・ジャズのテナーをメインストリーム・ジャズにそのまま持って来た様なイメージ。それでいて、芯のしっかりある音で説得力がある。ユニークなスタイルのジャズ・テナーである。僕はすっかりファンになった。

Mark Turner『In This World』(写真左)。1998年6月の録音。ターナーのメジャー・レーベル第2弾。ちなみにパーソネルは、Mark Turner (ts), Brad Mehldau (ac-p, el-p), Kurt Rosenwinkel (g), Larry Grenadier (b), Brian Blade (ds), Jorge Rossy (ds)。今から見れば、なんと錚々たるメンバーではないか。現代ネオ・ハードバップの精鋭達が大集合である。
 

In_this_world_mark_turner  

 
メインは、ターナーのテナーをフロントに、メルドー=グラナディア=ブレイドのピアノ・トリオがリズム・セクションを担う。印象的で耽美的なギターはローゼンウィンケルで3曲に客演、ロッシーのドラムは2曲でブレイドとツインドラムを形成する。このワンホーン・カルテット+αの編成は、様々な曲調、曲想の演奏をいとも容易く、柔軟に展開する。素晴らしいポテンシャルである。

オーソドックスなネオ・ハードバップから、ショーターばりの捻れて思索的な展開、フリーな演奏から8ビートのジャズロック風の演奏まで、バラエティーの富んだ内容なんだが、不思議と統一感がある。その統一感を現出しているのが、マーク・ターナーのテナー。彼のクール・スタイルなテナーが一貫しているが故の「1本筋の通った統一感」が清々しい。

バックの演奏はいずれも素晴らしいが、特筆すべきはブレイドのドラミング。しっかりとバッキングに回りながら、鋭さと繊細さの相反した表現を融合した柔軟度の高いドラミングは当代随一のものだろう。クールで大人なネオ・ハードバップ。この盤、じっくり聴き進めていくと、ジワジワその良さが沁みてきます。

 
 
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2019年3月10日 (日曜日)

峰厚介の約8年振りとなる新作

日本のジャズも歴史を積み重ねてきた。戦後まもなくから徐々に積み上げ、1956年には穐吉敏子が、1962年には渡辺貞夫が渡米し、バークリー音楽院に留学している。1960年代には日本のジャズは若干停滞するが、1960年代終盤以降はジャズマンの数も一気に増え、1970年代後半のフュージョン・ブームにも乗り、ジャズは日本の主要な音楽ジャンルとして確固たる地位を確保している。

1970年代以降、活躍し続け、現時点において、日本ジャズのレジェンドとなったジャズメンも多く存在する。頼もしいことこの上無し、である。21世紀に入っても、日本ジャズのレジェンド達は、誰かしらが毎年、好盤をリリースしている。ジャズの場合は年齢を重ねるに従って、演奏テクニックが変に落ちない限りは、充実の一途をたどる傾向があるので、好ましいことこの上無し、である。

峰厚介『Bamboo Grove』(写真左)。今年1月のリリース。2018年8月の録音。日本ジャスのテナーのレジェンド、峰厚介(みね・こうすけ)の最新作である。ちなみにパーソネルは、峰厚介 (ts, ss), 清水絵理子 (p), 須川崇志 (b), 竹村一哲 (ds)。峰のテナー1本フロントのオール日本人ジャズメンでのカルテット編成。現在の日本人ジャズの力量を推し量るに最適な盤である。
 

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前作から約8年振りとなる新作であるが、一言で言うと「良い内容」。峰のテナーは申し分無い。ヴァイタルでエモーショナル、音が艶やかで伸びが良い。テクニックも申し分無く、1944年2月生まれの75歳とは思えない「溌剌さ」である。資料によると、レコーディング・セッションはセパレートブースを使わず、ワンルームでの一発録り、とのこと。自分のテナーに自信が無いと出来ない録音環境なんだが、この一発録りによって、ライブ録音独特の適度なテンションと疾走感を得ているのだから立派だ。

加えて、収録曲は7曲全てが峰の「自作」。まったく意欲的な75歳である。自作曲は、当然当人にとって吹きやすいのだろう、バップ風にモーダルに自由自在、変幻自在にテナーを吹き上げていく。バックの清水のピアノを中心としたリズム・セクションも良好。柔軟度が高く、硬軟自在、緩急自在なピアノ・トリオは結構、聴き応えがある。このピアノ・トリオだけを切り取って、特別にトリオ演奏を聴いてみたい。そんな気にさせる堅実で爽快なバッキング。

岡本太郎記念館の館長である平野暁臣をプロデューサーに迎え、 タワーレコードがスタートしたジャズレーベル「Days of Delight (デイズ・オブ・ディライト)」。なかなかの好盤をリリースしてきたなあ。今後のリリースが楽しみになってきた。

 
 
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2019年2月15日 (金曜日)

耽美的なスピリチュアル・ジャズ

ジョー・ロバーノ(Joe Lovano)。1952年12月、米国オハイオ州の生まれ。現在66歳。ジャズの世界では「ほぼレジェンド」の位置付け。とても雰囲気のある、硬派で骨太なサックスを聴かせてくれるのだが、我が国では全くといっていいほど人気が無い。何故かは判らないが、日本のレコード会社の宣伝対象にならなかったんだろう。ジャズ雑誌でも全くの「無視」状態。

僕もそのお陰で、ロバーノを知ったのは21世紀になってから。現代ブルーノート・レーベルのお陰、ジャズ盤のダウンロード・サイトのお陰である。21世紀になってからも、ロバーノのCDは日本のショップでは手に入らない。iTunesストアなど、ダウンロード・サイトにいわゆる「外盤」がアップされてから、ロバーノのアルバムも一部、手に入る様になった。

ロバーノのテナーはテクニック優秀、骨太で硬派で大らかで豪快で繊細。日本で人気が無かったのが不思議なくらい。日本で人気のロリンズでも無い、コルトレーンでも無い、ロバーノ独特の個性がある。特にロバーノの最大の個性は「芯のある繊細さ」。豪快なだけでは無い、表現力が豊かで、しっかり吹ききってはいるんだが、実に繊細な、心の揺らぎの様なブロウが個性。
 

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Joe Lovano『Trio Tapestry』(写真左)。 2018年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (ts), Marilyn Crispell (p), Carmen Castaldi (ds) 。なんとこのアルバムは、ECMレーベルからのリリース。録音場所はNYなんだが、ECMの総帥 Manfred Eicherがプロデュースしている。これは、と思って聴き始めると、スピーカーから出てくる音は「ECMの音」。1970年代からのECMお得意の「ニュー・ジャズ」の範疇。

カルメン・カスタルディの程良くエコーのかかったシンバルが演奏全体のビートを先導する。場面場面の音の雰囲気を最終的にコントロールしているのは、このカスタルディのリズム&ビート。このリズム&ビートの存在が、このアルバムの演奏をフリーに陥るのを踏みとどまらせている。静的でスピリチュアルな欧州の「ニュー・ジャズ」的雰囲気。耽美的なサックスとピアノの音の絡みが素敵に響く。

一言で表現すると「耽美的なスピリチュアル・ジャズ」。自由度がかなり高い即興演奏。端正な展開の部分はモーダルな演奏、自由度の高い展開の部分はフリーな演奏。ロバーノのサックスの個性が存分に発揮されている。そして、そのサックスに絡み、寄り添うのが、マリリン・クリスペルのピアノ。耽美的で繊細な音と力強い音とが織りなす「音のテクスチャー」。実にECMらしい好盤である。

 
 
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2019年2月14日 (木曜日)

ショーター翁の素晴らしき3枚組

ジャズ界のレジェンドはどこまで歳を取っても「超一流」である。老いの衰えから来るレベルダウンがあってもおかしくないのだが、意外とジャズ界のレジェンドは「老い知らず」である。現役の若手のみならず現役の中堅までも置き去りにして、バリバリ吹きまくる。そのレジェンドとは「ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)」。

ウェイン・ショーターはジャズ界のテナー・サックスのレジェンドの一人である。ショーターは1933年生まれ。今年で86歳になる。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズで頭角を現し、マイルスの1960年代黄金のクインテットの一角を担う。1970年代から1980年代半ばまで、伝説のエレジャズ・バンド、ウェザー・リポートの双頭リーダーを務めた。

以降、ソロになってからも、コンテンポラリーな純ジャズでの最先端をいく演奏成果の数々は、その年齢を全く感じさせない素晴らしいものばかり。年齢を重ねる毎に枯れていくどころか、張りのある若い頃のテナーのまま、深みがグッと増して、若い頃の自分のテナーを遙かに超えている。今年で86歳の翁が、である。
 

Emanon

 
Wayne Shorter『Emanon』(写真)。2016年の録音。ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (sax), Danilo Perez (p)、John Patitucci (b), Brian Blade (ds), Orpheus Chamber Orchestra。CD2枚組。オリジナルカルテット+オーケストラで1枚、ロンドンでのカルテット単独のライブが2枚、という構成の3枚組CD盤である。

オーケストラとの共演は意外と平凡なイメージ。良くあるパターンですからね。でも、自由度の低いオーケストラの演奏をバックに自由に吹きまくるショーターのサックスは素晴らしい。硬軟自在、変幻自在、遅速自在、縦横無尽にショーターのサックスが乱舞する。アドリブ展開のイマージネーションの豊かさたるや、唖然とする。

しかし、やはり聴きどころはカルテット単独のライブの2枚。相当にぶっ飛んだ、最先端を行くネオ・ハードバップ&フリー・ジャズ。限りなく自由度の高いショーターのテナーとブレイドのドラム。自由に乱舞するテナーとドラムをしっかりとサポートする、パティトゥッチのベースとペレスのピアノ。硬派でキレッキレ、キラキラ煌めく様なカルテット演奏。いやいや、ショーター翁、凄いリーダー作を出したもんだ。もっともっと聴き込みたい。先ずは速報まで。

 
 
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2019年2月 2日 (土曜日)

英国ハードバップの入門盤です

英国のジャズは面白い。まず、英国のジャズについては、ロックとの境界線が曖昧。ジャズメンと思ったらロックをやっていたり、ロッカーと思っていたらジャズをやっていたりで、よくよくパーソネルを確認しないといけない。そして、英国ジャズについては、「ビ・バップ」の演奏が最高とされる。ハードバップやモードなんか「目じゃない」。ビ・バップ至上主義である。

Tubby Hayes『Down In the Village』(写真左)。1962年5月17ー18日、ロンドンのThe Ronnie Scott Clubでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Tubby Hayes (ts, ss, vib), Freddy Logan (b), Allan Ganley (ds), Gordon Beck (p), Jimmy Deuchar (tp)。リーダーのタビー・ヘイズのテナーとドーチャーのトランペットの2管フロントのクインテット構成。

タビー・ヘイズは英国ロンドン出身のジャズ・テナー奏者でヴァイブも演奏出来る。1935年生まれで、1973年に38歳の若さで鬼籍に入っている。ヘイズは、リーダー作を聴けば判るが、中肉中背な印象ではあるが、パワフルかつ流麗な吹き回しが見事なテナー奏者である。そのテクニックは高く、アドリブ・ラインのイメージは「ビ・バップ」そのもの。そういう意味では英国ジャズ者好みのテナー奏者だと言える。
 

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吹きっぷりは「ビ・バップ」だが、演奏の組み立て、展開は「ハードバップ」そのもの。1962年といえば、米国ジャズはファンキー・ジャズが大流行していた時代であるが、ここ英国ロンドンでは、そんなファンキー・ジャズなど何処吹く風。質実剛健、硬派絢爛なハードバップをやっている。しかし、アドリブの部分だけ聴くと、雰囲気はまさに「ビ・バップ」。

ゴードン・ベックのピアノがタッチが明確で美しい響き。硬派でバイタルなヘイズのテナーと好対照で、陰影のある力強い音が魅力。ヘイズのソプラノ・サックスもなかなか良い響きで、良い音出してます。演奏全体のスイング感も抜群で、ローガンのベース、ガンリーのドラムスの両者の実力の程が知れます。

ジミー・デューカーの分厚いトランペットがヘイズの硬派なテナーと相まって、演奏が熱くドライブします。ライブ演奏の生々しさが伝わる録音も良好で、英国ジャズの個性が良く判ります。そうそう、ヘイズのヴァイブもなかなかの腕前で、このヴァイブも思いっきり「ビ・バップ」な弾き回してしていて、何となく微笑ましいです。英国ハードバップを理解する上で、絶対に外せない好ライブ盤です。

 
 

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