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2019年4月19日 (金曜日)

純ジャズの深化を確実に感じる

最近、ドラマーがリーダーのアルバムがなかなか優れている。昔でいうと「アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ」。ジャズ・ドラマーのレジェンド、アート・ブレイキーが座長を務める「ジャズ道場」の様なバンドだった。ドラマーはバンドのバックに控えて、しっかりとリズム&ビートを司る役割。バンド演奏のバランスや機微をコントロールする役割、つまりリーダーとして最適な楽器なのでは、と思うのだ。
 
Mark Guiliana Jazz Quartet『Jersey』(写真左)。2017年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Mark Guiliana (ds), Jason Rigby (ts), Fabian Amazon (p), Chris Morrissey (b)。テナーがフロント1管のカルテット構成。ブラッド・メルドー、デヴィッド・ボウイ、アヴィシャイ・コーエンなどのグループで活躍してきた現代最高峰のドラマーの一人、マーク・ジュリアナのリーダー作。
 
現代最先端の「ネオ・ハードバップ」な演奏。正統な純ジャズといった内容。モーダルな浮遊感溢れる展開あり、端正ではあるが、ややスピリチュアルな響きが芳しい展開あり、正統な純ジャズの伝統を継承した様な、昔からジャズを長年聴き続けて来た耳にも違和感の無い、正統なジャズの雰囲気。
 
 
Jersey-mark-guiliana  
 
 
そんな中、ラテン・フレイヴァーをまとった演奏もある。3曲目の「Our Lady」。1960年代のソウル・ジャズの雰囲気もふっと感じたり、音の雰囲気はレトロなんですが、演奏の切れ味やアドリブのフレーズの響きなどは全く新しい現代のジャズの音。いわゆる「温故知新」的な演奏が聴き応え満点。レトロなアレンジの中に、キラリと光る現代ジャズの響き。良い感じだ。
 
4曲目の「BP」は不思議な雰囲気のする演奏。この不思議な雰囲気は何が原因なのか。バスドラ、なんですね。どうも、リーダーでドラマーのジュリアナがバスドラをずっと踏みながらドラムを叩いているんですよね。これって結構難しいテクニックだと思うんですが、ジュリアナって、ドラムのテクニックも抜群ですね。
 
ジャズの伝統に根ざした現代の純ジャズ。ちょっと聴いただけだと「これって昔のモード・ジャズやん」となるんですが、しっかり聴くとそうじゃないことが直ぐに判る。この盤の音の響きに織り込まれた音のトレンド音のジャンルが、1960年代に比べて格段に多い。純ジャズの深化を確実に感じることが出来る好盤です。
 
 
 
東日本大震災から8年1ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年4月13日 (土曜日)

フランス・ジャズの魅力的トリオ

フランスという国も昔からジャズが盛んである。古くはサックスの「バルネ・ウィラン」、1980年代から90年代にかけてはピアノの「ミシェル・ペトルチアーニ」とパッと浮かぶ人気ジャズ奏者がいつの時代にもいる。フランスはもともと芸術を尊ぶ国。米国で生まれたジャズについても「即興の芸術」として長く扱われている。
 
EYM Trio『Genesi』(写真左)。2013年のリリース。ちなみにパーソネルは、Elie Dufour (p), Yann Phayphet (b), Marc Michel (ds)。ブルガリア人の血を引くピアニストのエリー・デュフールを中心に、ベーシストのヤン・ファイフェット、ドラマーのマーク・ミシェルという3人がリヨンの音楽院で出会い、結成したピアノ・トリオが「EYM Trio」。そのデビューは2011年。タイトルの「Genesi」はイタリア語で「創世記」の意。彼らの記念すべきデビュー盤である。
 
演奏の音を聴けば、明らかに米国ジャズにおけるピアノ・トリオとは全く異なった雰囲気であることが良く判る。まず、リズム&ビートにファンクネスが希薄。陰影のある奥深い響きのオフビートがユニーク。演奏の根幹に「ブルージー」な響きがほとんど感じられない。欧州ジャズはクラシック音楽の響きをメインにしており、EYM Trioも例外では無い。
 
 
Genesi-eym-trio  
 
 
テクニックは高いレベル。演奏に破綻は全く無く、走りすぎたり遅速に陥ることも無い。テクニックの高いレベルでのインタープレイはスリリング。この「スリル」が適度なテンションを産んで、このトリオの音を詰め込まない、即興の「のり代」を残したアドリブ・フレーズは不思議な落ち着きを生み出す。アドリブ・フレーズから感じる「哀愁感」が独特。
 
東ヨーロッパには中東風ともヨーロッパ風ともいえない不思議なメロディーやリズムが存在するが、EYM Trioはその東ヨーロッパのメロディーやリズムに影響を受けた響きが存在するように感じる。アドリブ・フレーズから感じる、この「哀愁感」は恐らくは東ヨーロッパのメロディーやリズムからの影響と推察する。この他の欧州ジャズのピアノ・トリオとはちょっと違う「哀愁感」という響きの個性。填まると癖になる。この見え隠れする不思議なメロディーとリズムが聴いていて心地良い。
 
アルバムのジャケットのデザインもユニークでアーティスティック。哀愁とスリルに満ちた楽曲がてんこ盛り。耽美的でアーシーで堅実な現代のピアノ・トリオ。こういうピアノ・トリオを生み出すフランス・ジャズ。現代のジャズ・シーンの中でも隅に置けない存在、隅に置けない国あることは間違い無い。
 
 
 
東日本大震災から8年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年4月12日 (金曜日)

ロシア出身のジャズ・ピアニスト

欧州ジャズのことを熟々と考えていて、第一にイタリア、そして英国、ドイツのジャズ、最近ではイスラエル、そしてポーランドのジャズが流行になってきている、と書いたが、そうそうロシアを忘れていた、と思った。ロシア出身のジャズメンも実は沢山いるんですね。忘れてました。そうそう、ロシアって、欧州で元々ジャズが盛んな国のひとつでした。
 
Eugene Maslov『When I Need to Smile』(写真左)。 1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、Eugene Maslov (p), Eddie Gomez (b), Omar Hakim (ds)。ユージン・マスロフ(Eugene Maslov)。ロシアのサンクトペテルブルク出身のジャズ・ピアニストである。バックにジャズ・ベーシストのレジェンド、エディ・ゴメスとポリリズミックなドラマー、オマー・ハキムが控えています。
 
ユージン・マスロフは1959年生まれ。今年で満60歳、還暦になるベテラン・ピアニスト。「ムソルグスキー音楽カレッジ」でクラシック・ピアノを学んでいる。が、後にジャズ・ピアノに転身。1989年には米国に移住。現在ではマサチューセッツ州ボストンを拠点に活動している、ということである。ロシア出身の米国在住のジャズ・ピアニストである。
 
 
When-i-need-to-smile-eugene  
 
 
出てくる音は明確に欧州ジャズの音。バックにゴメス、ハキムという米国ジャズのベテラン・ジャズメンを起用しているにも拘わらず、出てくることは「欧州ジャズ」。つまり、マスロフのピアノが明らかに欧州ジャズの特質を多く保有しており、バックの米国ジャズの二人は、二人の持つ高テクニックを駆使して、欧州ジャズの雰囲気に忠実に追従しているからだ、と認識している。
 
耽美的で「クールな熱さ」が第一の個性。透明感とダイナミズムに溢れ、幽玄な音の広がりとクラシック仕込みの明確で硬質なタッチが「欧州ジャズ」の雰囲気を増幅する。紡ぎ出されるフレーズは流麗。演奏全体の雰囲気は「ネオ・ハードバップ」。クールな熱気溢れるジャズ・ピアノがバップ風に飛翔し、バップ調のアドリブ・フレーズを繰り出している。
 
マスロフのオリジナル曲はポジティブなバップ調で、聴いていて思わず活き活きとしてくる。スタンダード曲はそれぞれ、実にユニークなアレンジが施されており、ネオ・ハードバップのお手本の様な音世界が展開されている。「The Man I Love」から「Dindi」〜「Milestones」の流れには惚れ惚れします。好盤です。
 
 
 
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2019年4月10日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・144

欧州ジャズは、ECM、Steeplechase、Enjaの三大レーベルがメインで発展した来た様に思う。他の欧州のマイナー・レーベルの貢献もあろうかと思うが、米国、そして日本という欧州以外のリージョンについては、やはりこの三大レーベルを介して、欧州ジャズを体験していった様に思う。

地域的にはコペンハーゲンを中心とする北欧ジャズと欧州に移り住んだ米国ジャズメン達のジャズが大半だったという思い出が強い。しかし、この10年間のうちに欧州ジャズの出身地が急速に拡がってきている。第一にイタリア、そして英国、ドイツのジャズが我が国にもやってきて、最近ではイスラエル、そしてポーランドのジャズが流行になってきている。

Simple Acoustic Trio『Habanera』(写真左)。2000年のリリース。ちなみにパーソネルは、Marcin Wasilewski (p), Sławomir Kurkiewicz (b), Michał Miśkiewicz (ds)。Simple Acoustic Trioとは、ポーランド・ジャズ界を代表するピアニスト、マルチン・ボシレフスキを中心とする、純ポーランドなピアノ・トリオである。
 
 
Habanera-simple-acoustic-trio  
 
 
ベタなトリオ名からして、大スタンダード曲中心のカクテル・ピアノっぽいトリオ演奏かしら、と訝しく思いながら、聴き始めると「あらビックリ」。俗っぽさなど微塵も無い。欧州ジャズらしい流麗なメロディ、透明感溢れるサウンド。北欧ジャズとの違いは哀愁感溢れるマイナーでエコーたっぷりな響きが希薄なところ。意外と質実剛健なところが見え隠れする、ロマンチックなピアノ・トリオ演奏。
 
欧州ジャズの共通項としてロマンティックではある。が、意外と硬派で質実剛健なところを加味した音が、ポーランド・ジャズの個性だろうと感じている。最初はロマンに流されるか、と心配になるが、そこにコーンとドラムが入り、ブンブンとベースが引き締めれば、グッと硬派なエッジの立った、上質で流麗な、明確で一本筋の通ったタッチが清々しいピアノの響きが現れる。
 
静的なフレーズが全体を覆うのだが、適度なテンションを保ったインタープレイとニュー・ジャズ特有のファンクネス希薄で自由度の高いビートが意外とホットで、飽きるどころか、聴けば聴くほどに奥の深い演奏に思わず聴き入ってしまう。ジャケットも思いっきり欧州ジャズ風で趣味の良いもの。これは絶対にジャズ喫茶でかけたい盤である。
 
 
 
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2019年4月 9日 (火曜日)

ジョシュアの個性を理解する

現代のジャズ。歴代のサックス奏者が長年受け継いできた系譜をしっかりと継ぐ者が何人かいる。その一人に「ジョシュア・レッドマン」がいる。1969年2月、米国はカリフォルニア州バークレー生まれ。スピリチュアル・ジャズを代表するサックス奏者、デューイ・レッドマンを父に持つ。
 
1991年にハーヴァード大学を卒業後、出場したセロニアス・モンク・コンペティションで優勝、ジャズ・シーンに身を投じることになる。以来、およそ四半世紀にわたってジャズ・シーンを牽引している。そんなジョシュア・レッドマンの初リーダー作、いわゆるデビュー盤を改めて聴いてみる。
 
『Joshua Redman』(写真左)。1992年の録音。ジョシュア・レッドマンの初リーダー作。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts), Kevin Hays (p), Christian McBride (b), Gregory Hutchinson (ds) がメイン。あと幾人かのゲスト・ミュージシャンが参加している。ベースのクリスチャン・マクブライドの参加がポイント。音全体の纏まりに大きく貢献している。
 
 
Joshua-redman-album  
 
 
当時 「テナー界に驚異の新人現る」 とされた一枚。収録曲を見渡すと、オリジナル曲はあるにはあるが、その他を聴けば、ブルース曲、モンク曲、モーダル曲、スタンダード曲等々、スローバラードあり、ファンクあり、バップあり、とごった煮の内容。なんでもござれの内容だが、どの演奏もクオリティ高く、新人のレベルとしては抜きんでている。ごった煮ではあるが、ジョシュアの優れたテクニックが故に、アルバム全体のトーンはブレることは無い。
 
ジョシュアのテナーのテクニックは素晴らしく、その高テクニックで演奏される楽曲のレベルは高く、ほぼ完璧な内容。これが新人のデビュー盤か、これが新人のテナーなのか、と思わずビックリしたことを覚えている。マクブライドのベースを牽引役にしたリズム・セクションの存在と演奏それぞれのアレンジとが、傍らでアルバムの統一感をしっかりと支えている。
 
ジョシュアのテナーの特徴は「キメのフレーズ」の格好良さ。アドリブ・フレーズが実に格好良く展開し、実に格好良く集結する。これって才能なんだ、と思う。ジョシュアのこのデビュー盤で、既にジョシュアのテナーの個性の全てを表現して、聴き手に聴かせた。これだけ全てをさらけ出して、次はどうするのかという不安すら覚えたデビュー盤。ジョシュアの個性を理解するにはまずこの盤を聴くこと。必須です。
 
 
 
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2019年4月 6日 (土曜日)

今の時代にジャストに響く音

今も昔も、ブルーノート・レーベルの先取性は変わらない。1950年代は、後にジャズ界の中心人物となるジャズマンの若い頃、その才能にいち早く着目して、リーダー作を吹き込ませていた。今から遡るこの10年の間は、コンテンポラリーな純ジャズや他のジャンルとクロスオーバーした現代のフュージョン・ミュージックなど、旧来のジャンルに囚われない、新しい響きのアルバムを多くリリースしている。
 
このアルバムもそんな先取性溢れるアルバムである。Trombone Shorty『Parking Lot Symphony』(写真左)。2017年4月のリリース。ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者&シンガー・ソングライターである「トロンボーン・ショーティ」のブルーノート・レーベル移籍第1弾アルバムである。トロンボーン奏者と一言でいうが、クラプトンなど、ロック界の大御所達のアルバムやツアーに参加するなど、異種格闘技的な活動が目を惹く若手有望株である。
 
この最新作もその内容は只者では無い。ブルーノート・レーベルからのリリースだからといって、純ジャズが展開される訳では無い。様々なジャンルの音楽的要素がごった煮の様に散りばめられているが、洗練されたアレンジによって効果的に融合され、新しい響きのフュージョン・ミュージックに仕上がっていることに驚く。特にブラス・セクションの音の重ね方に個性があって、洗練されたファンクネスの響きが芳しい仕上がりになっている。
 
 
Parking-lot-symphony-trombone-shorty  
 
 
ボーカルものを聴くとR&Bからブラコンな音かとも思うが、そのファンクネスが洗練されシンプルに表現されている分、ライトでお洒落な印象にアレンジされて、耳にスッと入ってくる。ショーティのトロボーンが鳴り響き、アドリブ展開するところなどは、現代の先端のコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気が蔓延して心地良い。効果的に電気楽器を使用するところはフュージョン・ジャズの深化形の雰囲気が芳しく、楽器の分厚いユニゾン&ハーモニーはドラマチックで、どこかプログレッシブ・ロックな雰囲気を醸し出す。
 
この盤のどこがジャズなのか、と言われることが多いが、確かにこの盤の音世界はジャズという単独ジャンルに留まっているものでは無い。ジャズを基本にしてはいるが、そこに様々な音楽要素を融合して、今までに無い、新しい響きの音世界を獲得している。個々のどこがどう、という類の盤では無く、演奏全体として、トータルな融合音楽として、この盤に蔓延している旧来のジャンルに囚われない新しい響きについて、十分に評価に値するアルバムであると僕は思う。
 
ファンキーでありソウルフルであるが、決して、旧来のファンキー・ジャズでも無ければ、旧来のソウル・ジャズでも無い。「今」のフュージョン・ミュージックがこの盤に詰まっている。ジャズか否か、という議論はこの盤の前では不毛な議論だろう。僕はこの盤は「良い音楽」だと認識している。さすがブルーノート・レーベルで、ジャケットも素敵。意外とヘビロテになってます。
 
 
 
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2019年4月 5日 (金曜日)

ボボ・ステンソンの新トリオ盤

ECMレーベルには、素敵な内容のピアノ・トリオ盤が多く存在する。恐らく、ECMレーベルの、西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置き、電化サウンドを排除し、アコースティックな表現を基本とし、限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音がジャズ・ピアノにフィットするんだろう。特に、ファンクネス希薄な欧州のニュー・ジャズ系のピアノがとりわけフィットする。
 
ECMレーベルの「お抱えピアニスト」の一人に、Bobo Stenson(ボボ・ステンソン)がいる。ステンソンは、1944年、スウェーデン出身。10 代の時から演奏活動を始め、ソニー・ロリンズ、スタン・ゲッツ、ドン・チェリーなどとセッションを重ねていたそう。1970年代には盟友ヤン・ガルバレクと共に活動を開始し、ECMレーベル中心に好盤をリリース。現在では、ベースのアンデルス・ヨルミンとドラムのヨン・フェルトとトリオで活動を続けている。
 
そんなステンソンの最近の好盤の一枚がこれ。Bobo Stenson Trio『Contra la Indecisión』(写真左)。2017年5月の録音。ちなみにパーソネルは、 Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Jon Fält (ds)。現在、好調に好盤をリリースしているトリオでの新盤である。選曲がふるっている。バルトーク、サティが採用され、キューバのシルヴィオ・ロドリゲスの哀愁溢れるアフロ・キューバンな佳曲が彩りを添えている。
 
 
Contra-la-indecision-bobo  
 
 
ボボ・ステンソンのピアノがとても美しい。キースのピアノから尖ったところ、アブストラクトなところをそぎ落として、しっかりした明確なタッチでの、硬派で耽美的なフレーズが特徴。ピアノの音のエッジが適度に丸く、耳に優しく馴染む。流麗で耽美的なフレーズを駆使する曲では、限りなく美しく、暖かくてクールなピアノが響き渡る。ヨルミンのベースは唄うが如く、ベースラインを抑え、フェルトのドラムは自由自在にリズム&ビートを紡ぎ出す。
 
フリーな演奏では切れ味の良い、煌めきの様なフレーズが続くが、どこか優しく丸い。それはピアノだけでは無い。ヨルミンのベースも自由度高く、弾ける様なうねるようなフレーズを連発するが、どこか優しくしなやか。フェルトのドラムはポリリズミックで閃き抜群。様々な表情のフレーズを繰り出し、素晴らしく高度なテクニックで最上の表現力を発揮する。意外とこのフリーな演奏の部分が聴きものだったりする。
 
このトリオの演奏には北欧の自然をイメージする、クリアでクールでアーシーな音がぎっしりと詰まっている。紡ぎ出すフレーズも現代音楽っぽい幾何学的で耽美的で印象的なフレーズがてんこ盛り。北欧では、キース・ジャレットと双璧をなすジャズ・ピアノのレジェンドとして評価されているそうだが、それも納得できるこの新盤の内容。ECM好きには堪らない好盤である。
 
 
 
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2019年4月 4日 (木曜日)

現代の「ECMの考えるジャズ」

欧州の正統派ジャズ、ニュー・ジャズの老舗レーベルである「ECM」。コンスタントに新盤をリリースし続けている。出てくる音は、あくまで「ECMの音」。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考えるジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。この「ECMの音」については、今も昔も変わらない。
 
ECMレーベルは北欧ジャズが得意ジャンル。もともとECMレーベルのメイン・スタジオがノルウェーのオスロにある「レインボー・スタジオ」なんで、やはり北欧ジャズには造詣が深い。ECMレーベルの専属ジャズメンを眺めてみても、北欧出身のジャズメンが多く名を連ねている。北欧ジャズがECMレーベルの音の個性にフィットするんだろう。
 
Tord Gustavsen Trio『The Other Side』(写真左)。2018年1月、オスロのレインボー・スタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、Tord Gustavsen (p, electronics), Sigurd Hole (b), Jarle Vespestad (ds)。 リーダーのトルド・グスタフセン、ドラマーのジャール・ヴェスペスタッド、ベーシストのスィッガード・ホール、いずれも皆がノルウェー出身。「Norwegian Trio」と名付けても良い位だ。
 
 
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グスタフセンのピアノは耽美的で硬質で暖かい。ミッドテンポの柔らかいタッチで印象的なフレーズを紡いでいく。北欧ジャズ独特の哀愁感も深く濃く漂っている。ヴェスペスタッドのベースがソリッドで重心が低い。中高音のソロ・フレーズが明らかに耽美的で、グスタフセンのピアノを有効にサポートする。ホールのドラムは柔軟でバリエーション豊か。緩急自在なポリリズムがグスタフセンのピアノに有効に絡んでいる。
 
柔らかく暖かくクリアなキース・ジャレット的な趣きなんだが、キースよりもシンプルで判り易い。ECM録音の特徴である、豊かなエコーが乗ったスピリチュアルなフレーズがグスタフセンの個性だろう。途中、突然、初期のキースみたいな、ゴスペルっぽいアーシーなフレーズが出てくるんだが、これにはビックリする。そういう意味では、グスタフセンはキースのフォロワーと面が強いのかもしれない。
 
最近、我が国ではECMレーベルの人気は以前に比べて下火に感じるが、どうして、本家本元の「ECMレーベル」は今でもコンスタントに「ECMの考えるジャズ」をリリースし続けている。今回のグスタフセンの新盤もそんな一枚。ジャケットも明らかに「ECMレーベル」していて、ECM者の我々からすると、もうワクワクドキドキである。
 
 
 
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2019年4月 3日 (水曜日)

スピリチュアルなオルガン・ジャズ

オルガン・ジャズが好きである。もともと子供の頃から、オルガンの音、いわゆる「ハモンド・オルガン」の切れ味良く、ちょっとノイジーでくぐもった様な音が好きで、そんなハモンド・オルガンの音さえ聴こえていたら、それだけで心地良い。オルガン・ジャズの場合、そんなハモンド・オルガンの音が、基本4ビートに乗って、アドリブ・フレーズを展開するのだ。これは僕にとっては堪らない。
 
今年の新盤を眺めていたら、Joey Defrancesco(ジョーイ・デフランチェスコ)の新盤が目についた。ジョーイは1971年生まれなので、今年で48歳。ジャズ界でいけば、まだまだ若い。バリバリの中堅である。風貌から僕はとっくに50歳は過ぎていたと思っていたので、今回、ジョーイのバイオグラフィーを押さえていて、ちょっとビックリした。マイルス晩年のバンドにも一時期参加していたほどで、ジョーイのオルガン・プレイはアグレッシブでテクニック優秀。
 
Joey Defrancesco『In the Key of the Universe』(写真左)。今年3月のリリース。出来たてホヤホヤである。ちなみにパーソネルは、Joey Defrancesco (org,key,tp), Pharoah Sanders (ts,vo), Troy Roberts (sax,b), Billy Hart (ds), Sammy Figueoa (per)。オルガンはベースのラインを担当することが出来るので、この盤ではベースがいない。オルガン、ドラムにフロントがテナーという、オルガン・ジャズの基本的構成である。そうそう、この盤ではジョーイはマルチ奏者ぶりを発揮していて、オルガンの他にシンセ、トランペットも担当している。
 
 
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ジョーイのオルガンは相変わらず、アグレッシブでテクニック優秀。弾き過ぎず、テクニックに頼ること無く、余裕を持った大らかなオルガンをこの盤でも弾きまくっている。聴いていて「あ〜良い感じ。これって、ジョーイだよね」と思う。で、この盤ではリーダーのジョーイのオルガンよりも、テナーの音の方が目立っている。ぐいぐい主張する力感溢れるテナー。誰だ、と思ってパーソネルを見たら、なんと「ファラオ・サンダース」。
 
そう言えばこの盤、冒頭の「Inner Being」から、スピリチュアル・ジャズの雰囲気は色濃く漂っている。それも今、ジャズ界で流行っている「穏やかでメロディアスな耳当たりの良い」スピリチュアル・ジャズの印象である。ファラオのテナーは「元祖スピリチュアル・ジャズ」なテナー。この盤でもその存在は大きく、ファラオのテナーがこの盤のスピリチュアル・ジャズっぽさを決定付けている。新しい今様のジャズの響きが心地良い。
 
スピリチュアルなオルガン、テナーを支え、リズム&ビートをコントロールする、ビリー・ハートのドラムの存在も見逃すことは出来ない。趣味の良い、チェンジ・オブ・ペース的なドラミングは柔軟度抜群。演奏全体の音のフレームをグッと締めている。「ジャズの今」を感じる、コンテンポラリーな純ジャズ盤として、なかなかの内容だと思います。好盤です。
 
 
 
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2019年4月 2日 (火曜日)

60年代末期ならではの純ジャズ

ニュー・ジャズを聴いていて、新しい響きのジャズを感じていると、その反動でジャズの本流、旧来の典型的なジャズと言われる「ハードバップ」が聴きたくなる。といって、1950年代のハードバップ時代ど真ん中にドップリと浸かるにはちょっと反動が過ぎる。ということで、ニュー・ジャズの雰囲気を少しだけ宿した、1960年代後半から1970年代のハードバップが良い。
 
Dexter Gordon『A Day in Copenhagen』(写真左)。1969年3月10日、デンマークはコペンハーゲンの「Metronome スタジオ」での録音。ちなみにパーソネルは、Dexter Gordon (ts), Slide Hampton (tb), Dizzy Reece (tp), Kenny Drew (p), Niels-Henning Orsted Pedersen (b), Art Taylor (ds)。米英+北欧の混成セクステット。
 
デックスは1960年初頭に、ハンプトンは1968年に、ドリューは1961年に、テイラーは1963年に渡欧している。いわゆる米国東海岸のハードバップ・ミュージシャンの渡欧組で、4人ともコペンハーゲンを活動の拠点の1つにしていた。リースはジャマイカ出身で、1960年代の大半は米国東海岸で活動したが結果が伴わず、以前の活動拠点のパリに戻ったはずなのだが、たまたまコペンハーゲンに来ていたのかなあ。ペデルセンはデンマーク出身でコペンハーゲンが活動拠点。
 
 
In-copenhagen  
 
 
ベースのペデルセン以外、他の5人は米国東海岸の本場「ハードバップ」を体験してきた強者ども。ジャズを芸術と理解して、しっかりと聴いて評価してくれる欧州の地で、バリバリ魅力的なハードバップな演奏を展開している。時代は1960年代の末期、当時の先端のジャズのトレンドを踏まえつつ、1950年代のハードバップとは一味違う、欧州仕様のモーダルなハードバップな演奏を繰り広げている。
 
主役のデックスのテナーは全く変わらない。朗々と大らかで悠然としたブロウは「我が道を往く」雰囲気である。テナー、トロンボーン、トランペットのフロント3管のうち、ハンプトンのトロンボーンが良い味を出している。フレーズと音色が先進的で、ハンプトンのモーダルなトロンボーンの存在がこの盤をユニークな存在にしている。そして、全く欧州風のペデルセンの骨太ソリッドなアコベが効いている。ペデルセンのベースが鳴ると、欧州ジャズの雰囲気が一気に濃厚になる。
 
ジャケットは何故かサイケデリック調で「あんまりやなあ」と思うのですが、この盤、由緒正しきレーベルからのリリース。ジャケットのマークを見たら「MPSレーベル」のアルバムなんですね。欧州ハードバップの専門レーベル「MPS」。なかなかにユニークなメンバー編成で、1960年代末期ならではの「モーダルな純ジャズ」を記録してくれていたとは、MPSレーベルもなかなかやるなあ。
 
 
 
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