2023年3月16日 (木曜日)

ラヴァの硬派な「純ジャズ」

2日ほどお休みをいただきましたが、本日、ブログ再開です。

さて、久々にイタリアン・ジャズのお話しを。イタリアン・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァである。1972年に初リーダー作をリリースしている。約50年間、イタリアン・ジャズの第一線を走ってきた。1939年の生まれなので、今年で84歳。イタリアン・ジャズのレジェンド中のレジェンドである。

Enrico Rava Quartet『Ah』(写真)。1979年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Franco D'Andrea (p), Giovanni Tommaso (b), Bruce Ditmas (ds)。エンリコ・ラヴァのトランペット1管がフロントの「ワンホーン・カルテット」な編成。ラヴァのトランペットの本質と個性がとても良く判る編成での演奏になる。

まず、ラヴァのトランペットの素姓の良さを強く感じる。輝く様にブリリアントなトランペットの響き。スッと伸びるロングトーン。切れ味の良い高速パッセージ。とにかくラヴァのトランペットの音は美しい。そして、流麗なアドリブ・フレーズを吹き切るテクニックの高さ。音の「質」は、米国ジャズのトランペットの様な「ファンクネス」は希薄。クラシック音楽の端正で粒立ちの良い響きを踏襲している様で、それが「欧州ジャズ」特有の「質」なんだろう。
 

Enrico-rava-quartetah

 
演奏の基本は「欧州モダン」。しかし、アドリブ展開に入ると、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開し、アブストラクトにブレイクダウンする。と思いきや、統制の取れた構築力の高いアンサンブルで疾走する。1979年というフュージョン・ジャズ全盛時代に、こんなバリバリ硬派でモダンな「ニュー・ジャズ」が演奏されていいたとは。さすがにECMレーベルである。

イタリア出身のジョヴァンニ・トマッソのベース、米国出身のブルース・ディトマスのドラムもラヴァに負けずとも劣らない、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開にガッチリ追従し、柔軟に応対する。このリズム隊のレベルの高さも、このラヴァ盤の内容充実に大いに貢献している。

実にECMらしい、欧州モダンらしいニュー・ジャズがてんこ盛り。実はこの盤、ECMレーベルからのリリースでありながら、プロデューサーがマンフレート・アイヒャーではなく、トーマス・ストウサンド(Thomas Stöwsand)で、その結果、ECMの「ニュー・ジャズ」というよりは、ECMレーベルの中では、ちょっと異色の「メンストリーム系の純ジャズ」の雰囲気が濃厚になっている。ガッシガシ硬派な欧州系の純ジャズです。
 
 

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2023年3月13日 (月曜日)

北欧ジャズ・ピアノの風が吹く

ラーズ・ヤンソンは、1951年、スウェーデン生まれ。1975年にアリルド・アンドレセンのグループに加わり、プロとしての活動がスタート。自己のトリオを結成した1979年以後は、北欧ジャズの第一線で活躍している。北欧ジャズの担い手としては「古参」の存在。1980年代に、優れた内容のリーダー作を連発し、国際的に、北欧ジャズの担い手なる一流ジャズ・ピアニストとして認知された。

Lars Jansson Trio『Invisible Friends』(写真左)。1995年1月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Lars Jansson (p), Lars Danielsson (b), Anders Kjellberg (ds)。全曲オリジナルで固められた、北欧ジャズらしい、風が吹くように爽やかで、美しく親しみ易いメロディー満載のピアノ・トリオ盤。

面白いのは、何かと「キース・ジャレット」と比較されるヤンソンのピアノだが、この盤の前半では「ビル・エヴァンス」の影響が感じられるフレーズと響きが満載。しかし、ビル・エヴァンスのコピーでは無く、フレーズの弾き回しと「間」の取り方が似ているが、和音の重ね方はヤンソンのオリジナル。響きは深く透明度の高いエコーがかかった北欧ジャズらしい響き。北欧ジャズらしく、ヤンソンの解釈する「ビル・エヴァンス」といった風のピアノがユニーク。
 

Lars-jansson-trioinvisible-friends

 
後半は、いつも通りの北欧ジャズらしい、美しく親しみ易い「ヤンソン節」満載の、耽美的でリリカル、深遠でメロディアスなピアノの弾き回しが堪能できる。しっかり聴くと「キース・ジャレット」のヨーロピアン・カルテットのピアノとは、やっぱり違ってて、ヤンソンのピアノは、キースと比べて、表現がシンプルでトーンが暖かく、フレーズは判り易く親しみ易い。この盤の後半部分の音を聴いていても、ヤンソンのピアノは、キースのピアノとは「似て非なるもの」だと感じる。

バックのリズム隊もいかにも北欧ジャズらしい音で、演奏全体のリズム&ビートをしっかり支え、牽引している。ダニエルソンのベースは、しなやかな鋼の様なシャープな弦鳴りで、エモーショナルに堅実に、ベースラインを供給する。シェルベリドラムも柔軟なスティック捌きで、硬軟自在、緩急自在、フロントのフレーズに的確に反応するドラミングは相変わらず見事だ。

前作の初リーダー作であったトリオ盤から、4年を経てのリーダー作第2弾であるが、出てくる音世界にブレは無い。冒頭の「Invisible Friends」から、ラストの「Under The Bodhi Tree」まで、北欧ジャズのピアノ・トリオの音が満載。これだけ、耽美的でリリカルな音世界なのに、スピリチュアルな世界に入り込まず、美しく親しみ易いニュー・ジャズなトリオ演奏を展開するところが、ラーズ・ヤンソン・トリオの真骨頂。北欧ジャズの好盤の1枚です。
 
 

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2023年3月 9日 (木曜日)

ピアノでジャズの歴史を駆け巡る

ジャズは死んだ、なんて言われて久しいが、2023年になった今でも、ジャズの新盤はコンスタントにリリースされているし、有望な新人もコンスタントに現れ出でている。今回も、なかなか将来有望な、米国東海岸の新進気鋭のジャズ・ピアニストの最新のリーダー作を聴く機会に恵まれた。

Emmet Cohen『Uptown in Orbit』(写真左)。2021年12月1ー2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Emmet Cohen (p), Russell Hall (b), Kyle Poole (ds), Patrick Bartley (as), Sean Jones (tp)。米国東海岸の新進気鋭のジャズ・ピアニスト、エメット・コーエンがリーダーのクインテット編成。トリオ演奏とクインテット演奏、2種類にフォーマットで演奏している。

エメット・コーエンは、1990年、米国フロリダ州マイアミの生まれ。今年33歳のバリバリ若手のジャズ・ピアニストである。クラシック音楽にも造詣が深く、コーエンのピアノを聴いていると、確かにクラシックの影響が垣間見える。2011年に初リーダー作『In the Element』をリリース。以降、1年に1枚のペースでコンスタントにリーダー作をリリースしている。

さて、このコーエンの『Uptown in Orbit』、内容的に面白い。冒頭、ラグタイム風のピアノに面くらう。そして、ラグタイム〜ストライド〜デキシーランドな雰囲気濃厚な「Finger Buster」へと展開する。
 

Emmet-cohenuptown-in-orbit

 
オールド・スタイルなピアノだが、実にスインギーに弾き進めていく。オールド・スタイルのジャズへのオマージュ的な内容かと思いきや、2曲目のタイトル曲は、6/8拍子で、硬派でハードバップなモード・ジャズをガンガン展開する。

この2曲目の「Uptown in Orbit」では、バートリーのアルト・サックスとジョーンズのトランペットが参入して、クインテットの演奏になっているが、熱気溢れる演奏で聴き応え十分。クインテットの演奏も実に魅力的だ。で、3曲目の「My Love Will Come Again」は、非4ビートでメロディアスな演奏に早変わり。

以降、ジャングルスタイルやラテン的な要素も見え隠れ、コンテンポラリーな純ジャズ、ポスト・バップな8曲目「Distant Hallow」、9曲目の「Mosaic」のアップテンポな演奏は見事。

恐らく、このコーエンの『Uptown in Orbit』は、デキシーランド〜現代までのジャズの歴史がテーマになっているのだと思うが、コーエンのピアノ・トリオが、この様々なスタイルのジャズに対して、変に拘ること無く、サラッと柔軟に素直に対応しているのには凄く感心した。このコーエン、ホール、ポールのトリオのポテンシャルは相当なものと推察する。

とりわけ、コーエンが実に楽しそうにピアノを弾きまくっている様子が、このアルバムの各演奏から伝わってきて、実に微笑ましい。テクニック優秀、歌心も備わっていて、ピアノの弾き回しに勢いがあって、疾走感が溢れる。これから、コーエンのピアノからは目が離せない。歳を重ね、今のピアノに成熟が伴ってきたら、どんな素晴らしいピアノに進化するのだろうか。今から楽しみである。
 
 

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2023年2月26日 (日曜日)

北欧ジャズの好トリオ盤です

北欧ジャズが好きだ。1970年代後半、本格的にジャズを聴き始めた頃、友人からECMレーベルのアルバムを紹介されて、その耽美的でリリカルで流麗なフレーズと余裕のある大らかで包容力のあるリズム&ビートに驚いた記憶がある。それまで「ジャズ」と思って聴いていた米国ジャズと全く異なる雰囲気。これが欧州ジャズか、とひどく感心した。

Helge Lien Trio『Revisited』(写真左)。2020年3月31日、10月3日の録音。ちなみにパーソネルは、Helge Lien (p), Johannes Eick (b), Knut Aalefjaer (ds)。ノルウェーのヘルゲ・リエン (p) がリーダーのピアノ・トリオの、2019年の『10』以来となる最新作。演奏曲は、過去に演奏したもののセルフ・カヴァーである。

一聴して「これは北欧ジャズやな」と思うくらいの、北欧ジャズの特徴溢れるピアノ・トリオ演奏。北欧ジャズの雰囲気をグローバル・サイズで知らしめたのは、キース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットの功績が大きいと思うが、確かに、キースのピアノで聴いたことのある雰囲気、フレーズが出てくる。が、基本的に「タッチと手癖」が異なるので、キースの物真似とは感じ無い。逆に「北欧ジャズ」の典型的な演奏が出てきたぞ、と嬉しくなる。
 

Helge-lien-triorevisited

 
オール・ノルウェーのメンバー構成。ゆったりとした、少しほのぼのとした、仄かに明るく、耽美的でリリカルで流麗な音世界。硬質ながら、ややエッジの丸いリエンのピアノ、程良く絡むエイクのベース、多彩で柔軟度の高いオーレフィアールのドラム。透明度の高い楽器の響き。印象的なエコー。

リエンのピアノが個性的で良い。クールで冷たい熱気が伝わってくるのだが、どこかほのぼのと暖かい響きがする。雰囲気的には「北欧の夏」の様な、明るく暖かなピアノの響き。テクニックに優れ、速い弾き回しには淀みは無い。でも、そのテクニックをひけらかすことは無い。北欧ジャズらしい、耽美的でリリカルで流麗なフレーズを、余裕を持った、ゆったりとした雰囲気で、しっかりと聴かせてくれる。このリエンのピアノは「癖になる」。

4ビートのスイングでなければ、ファンクネスは皆無、ジャム・セッション風のバトルも無い。それでも「ジャズ」である。冷たい熱気溢れる、クールでスタイリッシュな展開。硬軟自在、緩急自在の柔軟度の高い、即興性溢れるアドリブ。エコーのかかった独特の透明度の高い響きは「北欧ジャズ」の最大の個性。そんな「北欧ジャズ」の雰囲気満載の好トリオ盤である。
 
 

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2023年2月24日 (金曜日)

ネオ・ハードバップ志向の快作

しかし、Smoke Sessions Records って、良いアルバムをリリースするよな、とつくづく思う。日本ではあまり知られていない、ベテラン・ジャズマンを中心に、ネオ・ハードバップ志向の内容の濃いアルバムをコンスタントにリリースしている。しかも、ジャケット・デザインに統一感があって、以前のブルーノート・レーベルの様な雰囲気がとても良い。

Steve Davis『Bluesthetic』(写真左)。2022年2月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Steve Davis (tb), Peter Bernstein (g), Steve Nelson (vib), Geoffrey Keezer (p), Christian McBride (b), Willie Jones III (ds)。トロンボーンのスティーヴ・デイヴィスがリーダー、デイヴィスのトロンボーン、バーンスタインのギター、ネルソンのヴァイブがフロントのセクステット編成。

面白い編成である。定番のトランペット、サックスがフロント楽器に「居ない」。力感溢れるホンワカ・ブロウのトロンボーン、線が細くて繊細なギター、流麗で硬質な響きのヴァイブ。そんな、ジャズにおいて、ややマイナーな楽器がフロント張っているのだ。通常の純ジャズとは音の響きが異なる。これが、この盤の個性であり、一番の特徴。
 

Steve-davisbluesthetic_20230224210901

 
内容的には、時代の先端を行く「ネオ・ハードバップ」の響きが色濃く漂う。お洒落なモーダルなメロディ−・ライン、ややアブストラクトにブレイクダウンする、限りなくフリーに近い自由な響き、フロント楽器のユニゾン&ハーモニーも響きは新しく洗練されており、昔のモード・ジャズの焼き直しで留まっていないことが良く判る。

バックのリズム隊が、そんな新しい響きを湛えた「ネオ・ハードバップ」な雰囲気作りに、大いに貢献している。キーザーのピアノ、マクブライドのベース、ジョーンズIIIのドラム。現代の最先端のネオ・ハー痔バップなリズム&ビートを叩き出している。実に現代のネオ・モードらしいフレーズとビート。このリズム隊があって、ユニークなフロント3楽器が更に輝きを増している。

安定感抜群の懐深いネオ・ハードバップ。ストレート・アヘッドでメインストリーム志向の純ジャズは聴いていてスカッとする。全ての曲がオリジナル曲ではあるが、親しみのあるフレーズがてんこ盛りで、小難しいところが無いところも評価出来るところ。ジャズはまず「判り易い」が重要なことを再認識させてくれる好盤。
 
 

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2023年2月19日 (日曜日)

桑原あいの10周年記念ライヴ盤

「Disc Grand Prix 年間グランプリ」を眺めていて、このピアニストの名前が目に入った。「桑原あい」。ジャズ・ピアニスト。1991年生まれ。そろそろ、ジャズ・ミュージシャンとしては、まだまだ若手。

幼い頃より、天才エレクトーン少女として頭角を現し、中学生後半よりピアノに転向。2012年5月、完全セルフ・プロデュースによる初リーダー作、桑原あい Trio Project『from here to there』をリリース。実は、僕はこの「桑原あい」については、デビュー盤から、リーダー作をほぼ聴き続けているクチである。

彼女のピアノは、明確に「日本人のジャズ・ピアノ」。ファンクネスは希薄、端正で切れの良いオフビートでジャジーな雰囲気を醸し出し、芯の入った繊細でロマンティシズムが仄かに香るタッチと流れる様な弾き回しが特徴。チック・コリア、ブラッド・メルドーに通じるリリカルで切れ味の良い、現代音楽に通じる硬質なタッチが個性。

桑原あい ザ・プロジェクト『Making Us Alive』(写真左)。2022年4月から7月にかけて、全国4ヶ所で開催した「Recording Tour 2022 “Live Takes”」を全編録音し、その中からベスト・テイクを厳選して収録。ちなみにパーソネルは、桑原あい (p), 鳥越啓介 (b), 千住宗臣 (ds)。桑原あいデビュー10周年記念作。日本全国で繰り広げた白熱のトリオ・ライヴ盤である。
 

Making-us-alive

 
真面目である。真摯である。とにかく、息をつく間もない、「真面目で真摯」でストイックなジャズが展開される。聴き手の期待する「コンテンポラリーな純ジャズ志向」のパフォーマンスを堅実に実行している。

なんせ、冒頭の曲が、あのデューク・エリントンの「Money Jungle」である。こんなに硬派で玄人好みの選曲があるだろうか。このエリントンの名演を、桑原なりに解釈し、桑原オリジナルの「Money Jungle」になっている。いや〜、硬派やなあ。

全編ストイックでコンテンポラリーな純ジャズ、正統派のメインストリーム・ジャズで埋め尽くされる。選曲がユニークで、ルー・リードの「Pale Blue Eyes」や、ローリング・ストーンズ「She's a Rainbow」、ウエストサイド・ストーリーから「Cool」、歌劇カルメンから「Habanera」など、他のジャズ・ミュージシャンが選ばない曲を、個性的なアレンジで、なかなか洒落たカヴァーに仕立て上げている。

途中、現代音楽風にアブストラクトに展開したり、フリーに展開したりするところがあるが、これはちょっと「肩に力が入り過ぎ」かな。全編、かなり真面目で真摯でストイックなジャズで統一されているので、硬派にアブストラクトやフリーに展開するなら、ちょっとポップに、ちょっとソウルフルに展開した方が良いアクセントになるんではないかなあ、と思った次第。
 
 

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2023年2月17日 (金曜日)

定着するイスラエル・ジャズ

21世紀に入って「イスラエル・ジャズ」が認知される様になった。それまで、ジャズの本場と言えば「米国」、その米国のジャズが欧州に飛んで、英・独・仏・伊などの「欧州ジャズ」、そして、スカンジナビアに飛んで「北欧ジャズ」が定着した訳だが、21世紀には入って、ジャズのグローバル化が進み、この「イスラエル・ジャズ」、そして、旧共産圏の「東欧ジャズ」が台頭してきた。

イスラエル・ジャズは、その名の通り、ジャズの中心地が「イスラエル(テルアビブを含む)」。従来のメインストリームなジャズのスタイルをベースに、中東地域の伝統音楽の要素を融合して、明確にエスニックな雰囲気が漂う独特の音世界が特徴。イスラエル・ジャズは、その音の特徴を活かした「静的なスピリチュアル・ジャズ」に長けている。4ビートのジャズというよりは、1970年代のECMの様な「ニュー・ジャズ」の範疇の音世界が多数を占めている。

Avishai Cohen『Naked Truth』(写真左)。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p), Barak Mori (b), Ziv Ravitz (ds)。テルアビブ出身のトランペッター、アヴィシャイ・コーエンのECMレーベルからの5作目になる。コーエンのトランペットのみがフロントの「ワンホーン・カルテット」である。
 

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曲名と曲順を見ると、ジャズ即興による組曲のような形を取っている。冒頭「Naked Truth Part 1」から始まり、コーエンの吹き上げるテーマを基に、即興演奏として、その瞬間瞬間に音の意味を解釈〜理解し、音世界を刻々と変化させ、フレーズをバリエーション良く発展させていく。Naked Truth Part 1から、Naked Truth Part 8まで、そして、ラストの「Naked Truth: Departure」まで、静的なスピリチュアル・ジャズ志向の即興演奏が粛々と展開されていく。

音の基本は「耽美的でリリカル」。リズム&ビートは曲想に合わせて柔軟に変化するので、ネオ・ハードバップの様な雰囲気は全く無い。ECMレーベルお得意の「ニュー・ジャズ」の範疇である。この盤の音世界は「精神性」を追求している様に感じるので、やはり、この盤の音は「静的なスピリチュアル・ジャズ」だろう。アルバムの終演で、イスラエルの詩人、ゼルダ・シュナーソン・ミシュコフスキーのヘブライ語の詩「Departure」をコーエンが朗読しているところからも、「静的なスピリチュアル・ジャズ」な雰囲気を濃厚にしている。

フレーズはどこかエスニックな雰囲気が漂い、イスラエル・ジャズの面目躍如的な演奏が素晴らしい。米国ジャズにも欧州ジャズにも無い、21世紀ならではの、ジャズの「第三極」的な音志向である「イスラエル・ジャズ」。一時の流行で終わるなどと揶揄された時期もあったが、2023年の今、イスラエル・ジャズは、ジャズの「1ジャンル」として、しっかりとその「範疇」を確立している。
 
 
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2023年2月15日 (水曜日)

「たなかりか」のボーカルが良い

前のブログで「Disc Grand Prix 年間グランプリ」でも、日本のジャズ・ミュージシャンの優秀盤が結構な数、上がっている」と書いた。このジャズ・ライフ誌の年間グランプリは、ジャズ評論家の方々が、忌憚の無い、自らが良いと感じたアルバムをノミネートしている雰囲気が伝わってきて、ノミネートされたアルバムに関して、以前の様な商業主義は殆ど感じ無い。

たなかりか『Japanese Songbook "Winter" with Jazz standards』(写真左)。2022年の作品。ちなみにパーソネルは、たなかりか (vo), 鈴木正人 (b), ハタヤテツヤ (key), 小沼ようすけ (g), 坂田 学 (ds)。ジャパニーズ・ポップスを日本語のままジャズ・カバーする、たなかりかのプロジェクト「ジャパニーズ・ソングブック」の10周年を記念した企画盤。

ジャケット・デザインを見て、ちょっと「眉をひそめる」。これって、バブル時代に量産された、聴き心地が良いだけの「お洒落なイージーリスニング・ジャズ」では無いのか。でも、それでは、ジャズ・ライフ誌の年間グランプリにそのタイトルが上がる筈が無い。でもなあ、このジャケはなあ。でも、パーソネルを見れば、現代の和ジャズの腕利き達がズラリと並ぶ。やっぱり、これは大丈夫や、と聴き始める。

アルバム構成は2枚組で、Disc1:ジャパニーズ・ポップス“冬”の名曲。Disc2:プロジェクト初収録のジャズ・スタンダード。Disc1に収録されたジャパニーズ・ポップスは「冬」をテーマに選曲。Disc2は、人気のジャズ・スタンダード曲集。どちらも、ライトでコンテンポラリーな純ジャズ志向にアレンジされていて、聴き応え十分。

Disc1は「12月のエイプリル・フール(EPO)」から始まって、冬の定番「恋人がサンタクロース(松任谷由実)」、そして、「氷の世界(井上陽水)」「白い恋人達(桑田佳祐)」「ネイティブダンサー(山口一郎)」「恋人よ(五輪真弓)」と続き、「CHRISTMAS TIME IN BLUE(佐野元春)」で締める。
 

Japanese-songbook-22winter22-with-jazz-s

 
ジャパニーズ・ポップス“冬”の名曲の選曲が、僕にとっては素晴らしい。全て学生時代から社会人の生活の中でリアルタイムに聴いた名曲ばかりで「僕好み」の曲が並ぶ。それらが、ライトでコンテンポラリーな純ジャズ志向にアレンジされて、たなかりかが軽快に情感込めて唄い上げる。「恋人がサンタクロース」「氷の世界」「恋人よ」など、涙涙の絶品、絶唱である。

そして、Disc2の人気のジャズ・スタンダード曲集が、これまた絶品。「Fly me to the moon」「My favorite things」「L-O-V-E」「Come rain or come shine」「Bye bye blackbird」「Devil may care」「That’s all」の全7曲。これまた「僕好み」のスタンダード曲がズラリ。特に「Fly me to the moon」「L-O-V-E」「Bye bye blackbird」など、涙涙の絶品、絶唱である。

たなかりかのボーカルは素姓良く、力感もあり、アーバンでスマート。ストレートな歌唱は、現代のコンテンポラリーな純ジャズ志向のアレンジにピッタリで、違和感無く適応している。表現力も豊かで、決して単調にならず、CD2枚組、全14曲を一気に聴かせるパワーを秘めている。

良質な「現代の和ジャズのコンテンポラリーなボーカル」を聴かせてもらった気分。「ジャパニーズ・ソングブック」10周年は「伊達では無い」。バックのリズム・セクションも素晴らしい。フロントのボーカルとバックのリズム隊が一体となった、たなかりかのボーカルの力量がダイレクトに伝わってくる好盤である。
 
 

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2023年2月14日 (火曜日)

メリッサ・アルダナを初めて知る

毎月、新しくリリースされる盤を聴いていると、ジャズは生きているなあ、と実感する。未だに、ジャズの新人はコンスタントにデビューしてくるし、新人の有望株は着実にリーダー作を重ねて、中堅にステップアップしている。中堅ジャズマンは、着実に経験と年齢を重ねて、ベテラン・ジャズマンへと昇華していく。

Melissa Aldana『12 Stars』(写真左)。2022年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Melissa Aldana (ts), Sullivan Fortner (key), Pablo Menares (b), Kush Abadey (ds), Lage Lund (g)。メリッサ・アルダナのブルーノート・レーベルのデビュー作である。

メリッサ・アルダナ(Melissa Aldana)は、チリのサンチャゴ出身。ブルックリンを拠点に活動する33歳の女流テナー・サックス奏者。ソニー・ロリンズを聴いて、テナーを持ったと聞く。

初リーダー作は2010年。マイナー・レーベルのインナーサークルからのリリースだった。そして、今回、メジャー・レーベルのブルーノートからのリリースである。メリッサの「ジャイアント・ステップ」である。
 

Melissa-aldana12-stars

 
メリッサのテナーを初めて聴いたが、テクニックは申し分無し。それでいて、そのテクニックをひけらかす様な、シーツ・オブ・サウンドを吹き回すことはしない。排気量の大きい車が、悠然とゆっくりと走る様な、良い意味での「余裕」を感じる吹きっぷり。これって、ベテランの吹きっぷりやん、と突っ込みを入れたくなる(笑)。

各曲の演奏自体の「組立て、展開、トーン選び」がしっかりしていて感心する。テナーを技倆良く吹くだけでなく、演奏のオーガーナイザーとしての才能もしっかり持っていると聴いた。近い将来、アレンジ&コンポーズにも長けた、総合力で勝負するテナー奏者に成長するのではないか、という「伸びしろ」をこの盤を聴いていて感じる。

ギターのラージ・ルンドの存在も良いアクセント。音の志向としては、メリッサと同じ志向をしている様で、思索的で瞑想的な「静的なスピリチュアル」な響きが実に印象的。そんなルンドが、この盤のプロデュースを担当しているもの興味深い。

静的なスピリチュアル・ジャズを志向している様なメリッサの新盤。とても思索に富み、とても考慮に富んでいる、数々のフレーズを聴いているうちに、ついつい引き込まれていく。不思議な魅力を持ったメリッサの新盤である。
 
 

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2023年2月13日 (月曜日)

「ショパン曲のカヴァー集」再び

カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)は、僕がずっと注目しているギタリストの1人。1970年、米国フィラデルフィア生まれ。今年で53歳になる。若手ギタリストが今や「中堅」ギタリストになって、その個性は確立され、テクニックは成熟の域に達している。リーダー作は、2〜3年に1枚程度のペースで、優れた内容のアルバムをコンスタントに残している。

カートは、バークリー音楽大学に入学、約2年半の在籍後、ゲイリー・バートンのツアーのサポート・メンバーとして誘われ、そのまま活動拠点をニューヨークへ移しプロとしてのキャリアをスタートさせたている。いわゆる「ゲイリー・バートン組」のギタリスト。パット・メセニーの後輩的なギタリストである。

Kurt Rosenwinkel & Jean-Paul Brodbeck『The Chopin Project』(写真左)。2022年の作品。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g), Jean-Paul Brodbeck (p), Lukas Traxel (ac-b), Jorge Rossy (ds)。カート・ローゼンウィンケルのギターが飛翔する、スイスの気鋭ピアニスト、ジャン・ポール・ブロードベックがアレンジとプロデュースを手掛けた、カルテット編成のフレデリック・ショパン曲集。改めて、この盤を聴き直した。

ショパンは「ピアノの詩人」。ピアノの特性を知り尽くし、ピアノを美しく唄わせ、ピアノを美しく響かせる。ショパンの書く楽曲は「難曲揃い」と言われる。真にピアノを美しく唄わせ、ピアノを美しく響かせるには、それ相応の高度なテクニックが必要とされる。その必要とされる高度なテクニックを音符に置き換えたのが、ショパンの書くピアノ曲である。
 

Thechopinproject_2

 
そんなピアノ曲の数々を、ジャン・ポール・ブロードベックのアレンジの下、カートがバリバリ、ギターで弾きまくる。ピアノの鍵盤を弾くタッチとフレーズをギターに置き換えて弾く。これは意外と困難な作業だと思われる。音階を流麗に上り下りするのは同じ様な感じがするが、ブロックコードや、音を大きく飛び越えるところはピアノとギターでは勝手が違う、弾き方が違う。

果たして、ショパンの難曲をギターに置き換えて、ショパンの難曲を本来のピアノで弾く様にギターで弾けるのか、ピアノで弾くクオリティーと同様のフレーズがギターで出せるのか。ピアノは弦を叩くが、ギターは弦を弾く。この難題にカートとブロードベックは果敢にチャレンジしている。

結論から言うと「カートのギタリストの才能」と「ブロードベックの秀逸なアレンジ」の賜物だろう。とても良く出来た「ショパン曲のカヴァー集」に仕上がっている。クラシックとジャズの融合、ショパンの新解釈とかの「俗っぽい表現」では無い、カートの流儀、カートの感性によるショパン曲の優れたカヴァー演奏。

ピアノ曲をギターでやるのだ。ジャズ・カルテットでやるのだ。アレンジは当然、必要だろう。そのアレンジが秀逸。その秀逸なアレンジに応える様に、カートのギターが、ショパン曲を自らの個性とテクニックで、カート自身の流儀でカヴァーしている。そこが見事なのだ。カートが、ショパンの曲に乗って、バリバリ弾きまくっている。頼もしいことこの上無い。

このショパン曲のカヴァー集で、カートのギターは「ひとつの極み」に達した感がある。テクニックのレベルは高く、クールでダイナミックで流麗。次作では、カートはどんなジャズ・ギターをやってくれるのか。今から楽しみである。ワクワクする。
 
 
 
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