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2017年8月11日 (金曜日)

コンテンポラリーなボーカルもの

我が故郷、大阪は最高気温35度と猛暑なんだが、こちら千葉県北西部地方は最高気温24度と思いっきり涼しい一日。東阪の間で10度の気温差がある夏というのは記憶が無い。大阪の友人は暑い暑いと呟くのだが、こちらは涼しすぎて、窓を開けっ放しにしていると、ちょっと肌寒くて、窓を少し閉めたりする。

涼しいということは、ジャズ鑑賞にとっては良いことで、様々なジャンルのジャズを聴くことが出来る。特に、熱いブロウを繰り広げるライブ盤やボーカルものをじっくり落ち着いて聴くことが出来るから良い。今日の様に一日涼しい日は、ジャズ鑑賞のアルバムの枚数が一気に増える。

実は、僕はジャズ・ボーカルが苦手。とりわけ正統なジャズ・ボーカルについては常に苦手意識がつきまとう。正統派なジャズ・ボーカルよりは、ライトなポップ系、フュージョン系のボーカルものが好みだったりする。ジャズ・ボーカルが専門のジャズ者ベテランの方々からお叱りをうけそうな話なんだが、好きなものは仕方が無い。そんなちょっと変わった好みのジャズ・ボーカル。今日はこの盤に舌鼓ならぬ「耳鼓」を打った。
 

Bop_city

 
Ben Sidran『Bop City』(写真左)。1983年の作品。マイルス、コルトレーン、モンクらの代表曲にオリジナルの歌詞を付けて歌い上げる意欲作。パーソネルもふるっていて、Ben Sidran (p, vo),  Phil Woods (sax), Mike Mainieri (vib), Steve Khan (g), Eddie Gomez (b), Peter Erskine (ds)。基本的にフュージョン・ジャズ畑の強者が名を連ねている。

第一印象は、コッテコテの「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズをバックにしたシドランのボーカルなんだろう、なんて思うんだが、いやいやちょっと待て、マイルス、コルトレーン、モンクらの代表曲が集浪曲にズラリと並んでいる。これはフュージョン・ジャズやないやろう。と思って、冒頭の「Solar」から「Big Nick」と聴き進めて感じる。これ、上質のコンテンポラリーな純ジャズのボーカル盤。

ベン・シドランの手なる歌詞をつけられ、コンテンポラリーな雰囲気のライトな純ジャズをバックに、シドランが爽やかに唄い上げていく。フュージョン・ジャズの雰囲気の良いところを踏襲した「コンテンポラリーな純ジャズ」と言った風情がとても素敵である。フュージョン・ブームのピークが過ぎた後だからこそ出来る「コンテンポラリーな純ジャズ」。素敵です。

 
 

東日本大震災から6年4ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年8月10日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・86

昨日は「真夏の台風一過」で晴れ渡りはしたものの、思いっきり蒸し暑い一日になった。で、今日は朝はまだ蒸し暑かったが、夕方になって、涼しい乾いた東風が吹き始めて、一気に涼しくなった千葉県北西部地方。窓を開け放していると肌寒いくらい。これだけ涼しくなると、ジャズも聴きやすくなって、日頃あまり手にしないアルバムを聴いてみたくなったりする。

今日のそんなアルバムがこれ。Elements(MarkEgan & Danny Gottlieb)『Elements』(写真)。January, 1982年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Mark Egan (b), Danny Gottlieb (ds, perc), Clifford Carter (key), Bill Evans (sax)。フュージョン後期の「粋なメンバー」が集う。

バンド名は「Elements」。1982年、米国で結成されたフュージョン、若しくはジャズ・ロックがメインのバンドである。ベースのマーク・イーガン、ドラムのダニー・ゴットリーブが双頭リーダー。歴代メンバーとして、サックスのビル・エヴァンス、ギターのスティーヴ・カーン、ピアノのギル・ゴールドスタインがいる。いわゆる「伝説のフュージョン・バンド」である。
 

Markegan_danny_gottliebelements

 
しかし、このバンド(Elements)のファースト盤『Elements』を聴くと、それまでの「ソフト&メロウ」をウリにした聴き心地の良いフュージョン・ジャズの音世界では全く無く、フュージョン基調ではあるが、音のメインは「メインストリーム・ジャズ」。意外と硬派なコンテンポラリー・ジャズな内容に、今の耳でも「聴き惚れる」。

今で言う「スピリチュアル」な自由度の高いアドリブあり、フォーキーな「ネイチャー・ジャズ」っぽい展開あり、はたまた硬派な「モード・ジャズ」っぽい展開あり、そういう面では、このアルバムはもはや「フュージョン・ジャズ」では無い。ちょっと、パット・メセニー・グループ(PMG)を想起させる様な音の雰囲気もあり、あれれ、と思ったら、イーガンもゴットリーブもPMG出身でした。

このアルバムの存在、約30年もの間、ずっと忘れていた。PMGを集中して聴いていた1980年代は意識していたのだが、1990年代に入ってすっかり忘れてしまっていた。今回、30年ぶりに聴いて、疾走感と爽快感溢れるリズムと、浮遊感が半端無いフェンダー・ローズやキーボードの音色が心地良く、すっかりこのバンドの虜になりました。

 
 

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2017年7月29日 (土曜日)

アフロビートなハードバップ

毎月毎月、途切れること無くジャズの新盤がリリースされる。若手のコンテンポラリーな純ジャズもあれば、アーバンでお洒落なスムース・ジャズもある。そして、ベテランの渋いネオ・ハードバップなジャズもある。そんな中、初顔のものもある。かなりのベテランの新盤でも「初顔」の場合もある。

Tony Allen『A Tribute To Art Blakey and the Jazz Messengers』(写真左)。今年の5月のリリース。収録曲は4曲。ミニアルバム、レコードの仕様からすると「10inch vinyl」である。ジャケットからして雰囲気がある。

しかし、僕は「Tony Allen(トニー・アレン)」の名を知らない。ジャケット写真から見ると「ドラマー」であることは判る。タイトルからすると「アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャース(以降「JM」と略す)」のトリビュート作品だということは判る。この雰囲気あるジャケットが凄く気になる。さて、トニー・アレンとは。調べれば「ナイジェリア出身の伝説のドラマー」。1940年8月生まれなので、今年で77歳になる大ベテランである。
 

A_tribute_to_art_blakey_and_the_jaz

 
アフロビートの創始者、フェラ・クティの右腕として活動とある。僕がメインストリートなモダン・ジャズを中心に聴いてきて、アフロビートな音を聴き始めたのはつい10年前から。恐らく、出会う機会が無かったのだろう。そんなトニー・アレンが、ドラム叩くきっかけとなった若き頃からのアイドルがJM。なるほど、それでトリビュート盤なのね。

とても雰囲気のあるコンテンポラリーな純ジャズである。JMのトリビュート盤であるから、収録曲は全てJMの代表曲ばかりだが、この盤での演奏の雰囲気は決して「ハードバップ」では無い。さすがアフロビートがメインのドラマー、トニー・アレンである。アフロビートなジャズ・メッセンジャースがここにある。トニー・アレン含む8ピース・バンドが同じ部屋でライヴ一発録り。音も良い。でも、音の雰囲気は「アフロビート」。

むっちゃ魅力的なネオ・ハードバップである。アフロビートなネオ・ハードバップ。ミニアルバムでは無い、フルサイズの音が聴きたい。そんな思いを強く抱かせる秀作である。ブレイキーはビバップ、ハード・バップ、アレンはアフロ・ビートの創生者の一人。アレンはまだ現役である。

 
 

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2017年7月28日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・56

この2日ほど、ここ千葉県北西部地方はとても涼しい。天気は良くないのだが、最高気温が25度程度なので涼しく感じる筈だ。当然、夜寝る時もエアコンは不要。送風で十分。雰囲気は「戻り梅雨」状態である。今日も最高気温は32度まで上がったが、それでも夕方から夜にかけて、風が吹いてとりあえず涼しい。

これだけ涼しいと、スピリチュアルで朗々としたバラードチックなジャズをゆったりと聴きたくなる。暑い夏には、どうにも朗々としたバラードチックなジャズは聴いていると、じんわりと汗ばんでくるようで、あんまし宜しくないんだが、この2〜3日の陽気はそうでも無い。で、そんな盤を物色する。

Dayna Stephens『Peace』(写真左)。2014年のリリース。僕は、この盤のジャケットに思いっきり惹かれた。明らかにこの盤は、スピリチュアルで朗々としたバラードチックなジャズがぎっしり詰まっていますよ、って面構えをしている(笑)。実はこの盤は、そんな「ジャケ買い」。で、聴いてビックリ、そのイメージ通りの演奏がぎっしり詰まっている。
 

Dayna_stephens_peace

 
Dayna Stephens(デイナ・ステファンズ)。ブルックリン生まれのサックス奏者。1978年生まれなので、今年で39歳。バリバリ中堅のテナー奏者である。朗々とテナーを鳴らす。ブリリアントなテナー。ブラスがブルブルと心地良く鳴る。そんなテナーで全編、バラードチックな演奏でギッシリと埋め尽くす。こんなにテナーが素敵に鳴るアルバムはそうそう無い。

ちなみにパーソネルは、Dayna Stephens (ts,ss,bs), Brad Mehldau (p), Julian Lage (g), Larry Grenadier (b), Eric Harland (ds)。この盤、聴いていて、とっても印象的なピアノが鳴っているんだが、なんとブラッド・メルドーだったんですね。なるほどなるほど。伴奏上手なメルドー。フロントのデイナを鼓舞し、しっかりと支える。ほんと充実した密度の濃い演奏の数々。

ジャズ喫茶の昼下がりの「ノンビリとした静寂」にピッタリのバラード集。スピリチュアルで朗々としたバラードチックなジャズ。そんなジャズを約50分間に渡って、聴き手を飽きさせずに聴かせるのだ。充実のバラード集。こんなに素敵に朗々となるテナー。そう言えば、今までに無いことに気が付いた。

 
 

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2017年7月26日 (水曜日)

マイルス・ミュージックの再現

この人のトランペットは気になりながらも、あまり聴く機会が無かった。Nicholas Payton(ニコラス・ペイトン)。1973年、ニュー・オーリンズ生まれ。音楽一家に育ったサラブレット。力感溢れる、それでいて流麗でブリリアントなトランペットは、明らかに、ウィントン・マルサリスに次ぐ、次世代トランペッターの代表の一人である資格は十分。

そんなペイトンも今年で44歳、中堅の年頃に差し掛かり、ジャズメン人生の中で、一番充実した時間を過ごしつつあるのではないか。そして、今年リリースされた新盤が、Nicholas Payton『Afro-Caribbean Mixtape』(写真)。ちなみにパーソネルは、Nicholas Payton (tp, p, vo), Kevin Hays (key), Vicente Archer (b), Joe Dyson (ds), Daniel Sadownick (per), DJ Lady Fingaz (turntablist)。

本作は、タイトル通り、アフロ〜カリビアンなカリプソな雰囲気漂うサウンドから、アーバンかつクールなモード・ジャズから、硬派なアコ・ジャズから柔軟なエレ・ジャズまで、基本的に「クールでコンテンポラリーなジャズ」を収録していて、ミックステープのような曲間の無い作りになっている。
 

Afrocaribbean_mixtape

 
ペイトンは基本的にはトランペッターですが、マルチプレイヤーの側面も持ち合わせていて、キーボードやドラム・プログラミング等の楽器や、はたまたボーカルもこなす。そんなマルチな個性を活かして、R&Bやヒップホップ、ワールドミュージックといった要素も織り込んで、フュージョン寄りのコンテンポラリーな純ジャズを展開する。

こういう音を聴いていると、マイルス・デイヴィスを思い出す。マイルスも常にその時代時代のクールな「音楽のトレンド」を取り込み、当時として革新的な「クールでコンテンポラリーなジャズ」を誰よりもいち早く展開していた。ペイトンの音世界は革新的ではないにせよ、現代の「音楽のトレンド」を積極的に取り込み、マイルス・ミュージックの現代版を表現している様で、とても意欲的だ。

収録された演奏はどれもが充実していて聴き応えがある。が、CD2枚組、トータル時間2時間以上の収録時間の長さはさすがに「トゥー・マッチ」。それぞれの演奏のメインテーマを整理して、2枚の異なったアルバムに収斂した方が良かったと思う。プロデュースしきれなくて「ミックステープ」風にアルバム化してしまうにはあまりに惜しい。それほど、個々の演奏の内容は濃いものがある。「トゥー・マッチ」ではあるが好盤。

 
 

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2017年7月25日 (火曜日)

このライブ盤は「聴く人を選ぶ」

この5年ほど前から気になるトラペッターがいる。Ambrose Akinmusire、片仮名表記すると「アンブローズ・アキンムシーレ」と書く。1982年生まれ。ナイジェリアの血を引き、カリフォルニア州オークランド育ち。今年31歳になる若き中堅ジャズ・トランペッター。今年で35歳。中堅に差し掛かる年頃である。

アンブローズ・アキンムシーレのトランペットは知的。乾いてはいるが、重心が低く、ぶ厚く骨太な音色。緩やかにウネウネと不思議な抑揚を伴った思索的なフレーズ。ちょっとくすんだような、夕暮れ時の様な、やや薄暗い雰囲気のトランペットはとっても個性的。そんなアキンムシーレが、NYの老舗ライブハウス、ビレッジ・バンガードでライブ録音をした。

Ambrose Akinmusire『A Rift In Decorum : Live At the Village Vanguard』(写真左)。CD2枚組のボリューム。4晩に渡り録音し、その中から厳選した16曲を収録。ちなみにパーソネルは、Ambrose Akinmusire (tp), Sam Harris (p), Harish Raghavan (b), Justin Brown (ds)。今年の6月のリリースになる。
 

A_rift_in_decorum

 
アキンムシーレのトランペットは「スピリチュアルな」ブロウが個性と思っていたが、このライブ盤を聴けば、その印象は脆くも崩れる。基本は限りなく自由度の高いモード・ジャズなんだが、かなりの割合でフリー・ジャズの演奏が入っている。かなり高度なテクニックを前提とした、限りなく現代音楽的なフリー・ジャズ。アーティスティックな響きをビンビンに感じる。

このフリーな演奏は明らかに以前の「フリー・ジャズ」の焼き直しである。決して、最近流行のスピリチュアルな演奏では無い。本当に「フリー」なのだ。このフリー・ジャズな演奏をどう聴くか、によって、このライブ盤の評価は変わるだろう。しかし、無手勝流のフリー・ジャズでは無い。しっかりと練られた、思索に溢れる、現代的なフリー・ジャズである。

このライブ盤は「聴く人を選ぶ」。ジャズを「アート」と捉え、現代音楽の一種と捉えることが出来る人のみが、このライブ盤を観賞可能な盤にすることが出来る。決してポップでは無い。聴いて楽しむ演奏では無い。この自由度の高い演奏を「アート」として捉えてのみ、このライブ盤の楽しさは倍増する。

 
 

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2017年7月15日 (土曜日)

チャールズ・ロイド・リターンズ

ジャズを聴き始めた頃、ジャズ盤紹介本で「チャールズ・ロイドは良い」とあちらこちらで書かれていて、どうかな〜、と思っていたんだが、評論を書いている人は皆、バックのキース、デジョネット、マクビーのリズム隊を絶賛しているついでに、ロイドのテナーを「判り易いコルトレーン」風に評価している。なんだか胡散臭いので長年聴くことは無かった。

そもそも、ロイドの人気が高かったのは、1960年代後半、Atlanticレーベル時代の時。「Love & Peace」のフラワー・ムーブメントの波に乗って、ロイドのテナーは人気があった。しかし、その人気は、ロイドのしたたかなビジネス手腕と時代を見据えたアンテナの成果。ポスト・コルトレーンとしては荷が重すぎたのか、1970年代、フュージョン・ジャズのブームの中、その名は徐々にマイナーな存在になった。

が、1966年録音の人気ライブ盤『Forest Flower』(写真右)を聴いてみると、演奏全体に爽やかな風が吹き向けるような「フォーキー」な演奏全体の雰囲気が実に印象的です。僕はこの『Forest Flower』を初めて聴いたのは、2000年になってから。聴いてみて、確かにバックのリズム隊の凄まじさが前面に押し出ているんですが、ロイドのテナーも爽やかでシンプルで聴き易いもので、これはこれで一つの個性です。
 

Charles_lloyd_i_long_to_see_you

 
そんなロイドですが、2015年からブルーノート・レーベルに転籍したのですが、このAtlanticレーベル時代の時。「Love & Peace」のフラワー・ムーブメントの波に乗っていた頃の、演奏全体に爽やかな風が吹き向けるような「フォーキー」な演奏に戻った様な感じがします。逆に「したたかなビジネス手腕と時代を見据えたアンテナ」が不要になった今の時代、ロイドの爽やかでシンプルで聴き易いテナーが意外とマッチします。

Charles Lloyd & Marvels『I Long To See You』(写真左)。2015年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts,fl), Bill Frisell (g), Greg Leisz (pedal steel), Reuben Rogers (b), Eric Harland (ds)。捻れ不思議ギターのビル・フリーゼルの参加が目を惹く。グレッグ・レイズのスチール・ギターも目新しい。どんなジャズになるんや?

ロイドという人はつくづく、バック・ミュージシャンに恵まれてこそ、この個性を発揮できる人なんやなあ、と思う。フリーゼルとレイズの参加で、米国ルーツ・ミュージックをベースにした、フォーキーでカントリーな雰囲気が見え隠れする、コンテンポラリーな純ジャズな展開になっている。これが実に心地良い響きで、安らぎの雰囲気満載なのだ。

 
 

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2017年7月13日 (木曜日)

CTIレーベルの純ジャズ盤

CTIレーベルって、1960年代の終わりから1980年代前半まで、初期はイージーリスニング・ジャズから始まって、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズまでがメインの老舗レーベルなんだが、そんな中に、上質な「メインストリーム・ジャズ」が混じっているのだから不思議。そして、これがまた、内容的に素晴らしいものなのだから隅に置けない。

Gerry Mulligan & Chet Baker『Carnegie Hall Concert』(写真左)。1974年11月24日、ニューヨークのカーネギー・ホールでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Chet Baker (tp), Ed Byrne (tb), Bob James (p, el-p), Dave Samuels (vib, per), John Scofield (g), Ron Carter (b), Harvey Mason (ds)。

このライブ盤、パーソネルは見渡せば、なかなかユニークな人選に思わずニヤリ。バリサクのマリガンとペットのチェットはハードバップ時代からの純ジャズ出身のベテラン。そこに、フュージョン・ジャズの仕掛け人、ボブ・ジェームスがキーボードを担当する。そして、若き日の捻れギタリスト、ジョンスコがいる。R&Bっぽいドラミングが小粋なメイソン、どう弾いても純ジャズの雰囲気を抜け出ないロンのベース。
 

Gerry_mulligan_chet_baker_carnegie_

 
この新旧ジャズメン入り乱れた、純ジャズ志向とフュージョン志向が入り乱れたパーソネルで、メインストリーム・ジャズをやるんだから堪らない。音世界は、いわゆる「1970年代のメインストリーム・ジャズ」。アコ楽器とエレ楽器を上手くブレンドし、それぞれの音の良さをしっかりとアピールする。これって、アレンジが良いからですよね。さりげないアレンジが実に見事。

CTIレーベルって不思議なレーベルで、確かにカタログを見渡すと、上質な「メインストリーム・ジャズ」盤がそこかしこに転がっていて、いずれも内容がとても良い。しかも、新旧ジャズメンが入り乱れた、ジャズメンの組合せの妙が絶妙なのだ。この組合せでこの音かあ、と聴いて感心する盤が多々あるから素晴らしい。

このライブ盤、まず、ハードバップ時代からの純ジャズ出身のベテランの二人、マリガンとチェットがとても元気。それでいて、吹き回す音の雰囲気は1970年代の音をしているから、この二人の力量たるや素晴らしいものがある。決して古くならない。その時代時代のトレンドにしっかりと追従する。よくよく考えれば、このライブ盤自体がそうである。

 
 

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2017年7月 7日 (金曜日)

ドラムでモードをやっている

ドラマーがリーダーの作品って、録音されたその時代の最先端を行くジャズのパフォーマンスの「トレンド」を採用し、展開するケースが多い。自らも先進的なドラミングを披露しつつ、パーソネルの人選もそれを意識して、最先端を行くジャズのパフォーマンスを体現できるジャズメンをチョイスする。

例えば、Pete La Roca『Basra』(写真左)。1965年5月の録音。ちなみにパーソネルは、Pete La Roca (ds), Joe Henderson (ts), Steve Kuhn (p), Steve Swallow (b)。録音年とパーソネルを見ただけで、このアルバムに詰まっている音が「只者では無い」ことが容易に想像出来る。

Pete La Roca=ピート・ラロカと読む。ラロカのドラミングは、一聴すると「あれ、ロイ・ヘインズかな」と思うんだが、聴き進めるにつけ、このドラマーの持つ、よりモダンで現代的な響きと、整然としているが重心が低く、ちょっと野太い音が「ロイ・ヘインズとは異なる」。叩き方がまるでドラムでモード・ジャズをやっている感じなのだ。
 

Basra1

 
ピート・ラロカの、ドラムでモードをやっている様な、限りなくフリーだが伝統的な枠内にギリギリ残ったドラミングが、今の耳にも新鮮に響く。この自由度の高いモダンなドラミングに鼓舞されて、これまた、モード・ジャズの申し子の様な、モーダル・テナーの第一人者、ジョーヘンがウネウネブララ〜と吹き上げる。

そこに不思議なラインとタイム感覚を持ったスワローのベースが底を支える。そして、耽美的な響きではあるが、切れ味良く妖気漂う様な、少し危険な響きが芳しいスティーヴ・キューンのピアノ。冒頭の「Malaguena」なんて、イスラムを感じさせる独特なメロディーラインにラテンな雰囲気を塗したような、妖艶な捻れが魅力のモード・ジャズの典型。

とにかく「アクの強い」ドラマーがリーダーの盤。こういう先進的な音をしっかりと捉えてアルバムとして後世に残しているなんて、さすがブルーノート・レーベルである。後にジャズ・ドラマーから弁護士に転職するという変わった遍歴を持つピート・ラロカ。しかし、こういう先進的なリーダー作を残し、後世に名を残している。たいしたものである。

 
 

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2017年7月 3日 (月曜日)

デジタルな千手観音ドラミング

ドラマーの個性。聴けば聴くほど面白い。叩き方度合いというか、間の取り方というか、叩く密度についてもドラマーは皆それぞれ異なる。間を取って叩く密度が粗いものもあれば、間が無く叩く密度が高いものがある。

この人のドラミングは「間が無く叩く密度が高い」ドラミングの最右翼に当たる。「腕が何本あるのか判らない」くらいの手数の多さ、いわゆる「千手観音ドラミング」である。1980年代、新しいメインストリーム・ジャズの世代から現れ出でた、新しいタイプのジャズ・ドラマーである。その名は「Dave Weckl(デイヴ・ウェックル)」。

そんなデイヴ・ウェックルの「千手観音ドラミング」は、このアルバムで堪能出来る。Dave Weckl『Master Plan』(写真左)。1990年の作品。当時のチック・コリア一派から(Chick Corea (p), Eric Marienthal (sax))、新しいメインストリーム・ジャズの担い手たち(Michael Brecker (ts), Steve Gadd (ds), Anthony Jackson (b))が全面的にバックアップした、ウェックルの初リーダー作である。
 

Dave_weckl_master_plan

 
この盤でのウェックルの手数の多さに「いったいどうやって叩いているのやら」全くのところ理解に苦しむ、圧倒的な「千手観音ドラミング」である。とにかく賑やかこの上無い。一聴すると「無駄な音もあるよな」なんて揶揄したくなるのだが、聴き込むにつれ「これはこれでありやなあ」なんて感心してしまうドラミング。ありそうでなかなか無い「千手観音ドラミング」である。

「千手観音ドラミング」と言えば、1970年代、ビリー・コブハムが初代「千手観音ドラミング」で一世を風靡した。このコブハムのドラミングに比べて、ウェックルのドラミングはデジタルっぽく切れ味が鋭い。コブハムの「千手観音ドラミング」はアナログっぽく、ウェックルの「千手観音ドラミング」はデジタルっぽい。

圧倒的に聴き応えのあるドラミング。コンテンポラリーな純ジャズ風の演奏の中で、「腕が何本あるのか判らない」くらいの手数の多さ、いわゆる「千手観音ドラミング」が映えに映える。喧しい、と怒るなかれ。これもジャズ・ドラミングの個性のひとつである。圧倒的な高テクニックの産物である。

 
 

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