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2017年2月17日 (金曜日)

ヴィーナス御用達ジャズメン・1

日本人好みのジャズの雰囲気を一手に引き受けている日本発のジャズ・レーベル、Venus Records(ヴィーナス・レコード)。演出過剰なほどに、スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。録音は優秀、演奏のテクニックも優秀。音の傾向は「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」。

そんなヴィーナス・レコードには、何人かの「御用達」ジャズメン、いわゆる「ハウス・ミュージシャン」が存在する。例えば、ピアニストのDavid Hazeltine(デビッド・ヘイゼルタイン)などは、そんなヴィーナス・レコートの「ハウス・ピアニスト」的存在である。スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアスなピアノ。それが必要最低限の要件である。

1958年、ミルウォーキー生まれ。今年で59歳。「中堅」どころの脂の乗った「今が旬のピアニスト」である。バップからモードまで、幅広いスタイルに精通し、その多様性溢れるフレーズが個性といえるでしょう。バップからモードまで様々なスタイルを駆使しつつ、ピアノの奏でる雰囲気は「スムース・ジャズ」。こういう個性が、ヴィーナス・レコートの「ハウス・ピアニスト」的存在になっている大きな理由と言えるかと思います。
 

Alfie_david_haseltine

 
David Hazeltine Trio『Alfie』(写真左)。2006年3月の録音。パーソネルは、David Hazeltine (p), David Williams (b), Joe Farnsworth (ds)。バート・バカラックの曲を中心に、ヘイゼルタインの多様性溢れるピアノが「スムース・ジャズ的な純ジャズ」の雰囲気をベースに新しい解釈を提示していきます。

バート・バカラックの曲がメインだからでしょうか、いつになく、ヘイゼルタインはリラックスしてバップなタッチのピアノを弾き回していきます。端正で良く回る右手は「聴きもの」です。響きの豊かな録音で、彼のピアノはさらに「惹き立ち」ます。ウッド・ベースのブンブン響く音も、ドラムの小粋なテクニックを駆使したリズム&ビートも大変心地良い。

絵に描いた様な「日本人好みの純ジャズなピアノ・トリオ」の音を聴かせてくれます。確かにオーバープロデュース気味の、明らかに「作られた」ジャズの音ではありますが、これだけ徹底されると、これはこれで、レーベルの音の個性として、十分に鑑賞に耐えるレベルだと思います。嫌いならば聴かない、それで良いかと思います。

 
 

震災から5年11ヶ月。決して忘れない。まだ5年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年2月16日 (木曜日)

日本人好みのジャズのレーベル

日本人好みのジャズというものがある。スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。そして、ウッドベースがブンブン唸り、ドラムが小粋にリズム&ビートを刻む。ピアノは限りなく印象的なエコーがかかって豊かに響く。そして、テクニックに優れていなければならない。曲はスタンダードがメイン。そんなジャズが日本人は好き、という通説がある。

僕は全くそういう傾向は無いんだけれど、やっぱり、日本人好みのジャズって、そういう印象になるのかな。そんな日本人好みのジャズの雰囲気を一手に引き受けている日本発のジャズ・レーベルがある。Venus Records(ヴィーナス・レコード)である。演出過剰なほどに、スインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。録音は優秀、演奏のテクニックも優秀。音の傾向は「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」。

Aaron Heick and Romantic Jazz Trio『Europe(哀愁のヨーロッパ)』(写真左)。この盤は、そんなヴィーナス・レコードの音を代表する音がてんこ盛り。宣伝キャッチには「現代人に究極のセクシャル・ヒーリングの癒しを与えてくれる必聴のアルバム」とある。セクシーで耽美的な音作り、スムース・ジャズ志向の癒やしの響き。
 

Aaron_heick_europe1

 
タイトル曲である冒頭の「Europe」からして、明確にヴィーナス・レコード志向の音。この曲、サンタナの1976年の名バラード曲。ヴィーナス・レコードの盤って、こういう日本人のおじさま好みの曲が必ず一曲は入っている。1970年代ロックのバラード曲で、日本で売れに売れたサンタナの名曲。アレンジはまずまず。思わず懐かしさがこみ上げる。

他の楽曲も「スタンダード曲」が中心で、どの演奏もスインギーでマイナー調で、耽美的でメロディアス。果たして、この演奏がリーダーを始めとするジャズメン達の本意なのか、と思ってしまうが、兎にも角にも、オーバープロデュース気味の、明らかに「作られた」ジャズの音である。つまりは「日本人好みのジャズ」を増幅した様な音作りである。

ここまで増幅した音作りになれば、極端に「賛否両論」になる。好きな人もいれば、大嫌いという人もいる。それでも、このヴィーナス・レコードの音は、「スムース・ジャズ志向の純ジャズ」と解釈すれば合点がいき、納得感も増す。そういう観点で聴き耳を立てれば、ヴィーナス・レコードの諸作も意外と、ジャズとして「アリ」ということになる。

 
 

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2017年2月13日 (月曜日)

スティーヴ・トゥーレの名を知る

トロンボーンの音色が好きである。ジャズにおいても、トロンボーンの存在はユニーク。その楽器の構造上、速いアドリブ展開は苦手とされるが、そのホンワカした太く丸い音色は、テナーやトランペットに無い、ユニークなアドリブ展開を聴かせてくれる。

ジャズ・トロンボーン奏者の数はあまり多くはない。新しいトロンボーン奏者の名を聴くことも希である。そんな中、このトロンボーン奏者の名を知った。スティーヴ・トゥーレ(Steve Turre)である。 J.J.ジョンソン亡き後、最高のトロンボーン奏者のひとりに数えられる実力者。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズやローランド・カーク、ウディ・ショウのバンド等で活躍してきた。

僕はこのスティーヴ・トゥーレを全く知らなかった。昨年、このアルバムで彼の名を知った。Steve Turre『Colors for the Masters』(写真左)。昨年のリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Turre (tb), Kenny Barron (p), Ron Carter (b), Jimmy Cobb (ds), Javon Jackson (ts), Cyro Baptista (per)。
 

Colors_for_the_masters1

 
パーソネルを見渡すと、ピアノのバロン、ベースのカーター、ドラムのコブ、この大ベテラン揃いのピアノ・トリオがバックのリズム・セクションを司るのだ。この盤の内容、絶対に期待出来るぞ、と思わせてくれる。いやいや、しかし、バロン、カーター、コブと以前よりありそうで無いトリオ編成。このピアノ・トリオのバッキングだけでもワクワクする。

既に大ベテランの域に達している、リーダーのトゥーレのトロンボーンは端正かつ流麗。ほのぼのとしたトロンボーン独特の音色を活かしつつ、ブルージーにファンキーに、多彩なナンバーを吹き分けつつ、朗々とアドリブを唄い上げる。絶妙の余裕を持たせた、溜めの効いたアドリブ展開は「匠の域」の技である。

いや〜、久し振りに良質のハードバップなトロンボーン・ジャズを聴きました。スティーヴ・トゥーレは現在68歳。もう大ベテランというか、生きるレジェンド状態なジャズメンではある。が、この『Colors for the Masters』という盤は、このトゥーレの他のアルバムも是非聴いてみたい、という気にさせるご機嫌な内容の好盤です。

 
 

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2017年2月11日 (土曜日)

ジャズは進化しているなあ・・・

ニューリリースのアルバムを聴いていて、ジャズは生きているなあ、ジャズは進化しているなあ、と思う瞬間がある。明らかに現代の新しい音を吸収して融合して、新しいジャズの響きを獲得している盤を聴くと、まだまだジャズは死んでないなあ、と心から思う。

Throttle Elevator Music『Throttle Elevator Music IV Featuring Kamasi Washington』(写真左)。西海岸を拠点に活動するスピリチュアル・ジャズ・バンドの4thアルバム。この盤の演奏を聴くと、もはやジャズなのかロックなのか判別が難しい。それほど、それぞれのジャンルの音の要素をしっかりと融合して、新しい音の響き、新しいグルーヴを獲得している。

そんな新しいジャズの音の中、むっちゃ目立つサックスが真っ直ぐに耳に入る。聴いた瞬間、只者では無い、そんじょそこらのサックス奏者ではないことは判る。誰だ、とパーソネルを確認したら、なんと「カマシ・ワシントン」が全曲に渡って参加しているのですね。
 

Throttle_elevator_music_iv  

 
ちなみにパーソネルは、Kamasi Washington (ts), Matt Montgomery (b, p, org, g), Gregory Howe (g, p), Mike Hughes (ds), Erik Jekabson (tp, flh)。カマシ・ワシントン以外のメンバーはさすがに馴染みが無いなあ(笑)。最近の新進のジャズメンについては起きかけるのは大変だ。

ヒップホップ、ユーロ、ハウス、などなど、新しいポップ・ミュージックの要素を巧みに取り入れ、ずっと聴いていてると、エレクトリック・マイルスを思わず想起する。ジャズとロック、エレ・ポップの見事な融合。融合の結果、新しい音の響きを獲得している。現代の、現在のスピリチュアル・ミュージック。新しい。新しい響きが心地良い。

こういう最新のジャズを聴いていると、なんだか楽しくなる。明らかに現代の新しい音を吸収して融合して、新しいジャズの響きを獲得している。確かなテクニックと歌心でそれを実践する。まだまだジャズは進化する。若手のジャズを聴くと、こういう体験が出来るから面白い。

 
 

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2017年2月 9日 (木曜日)

クールなピアノ・トリオの音です

寒い。とびきり寒い。雪である。雪が降っている。鉛色の空から白い雪が降ってくる。こういう時に音楽を聴くなんて、と思う人もいるんだろうが、僕はそうは思わない。こういう時こそ、こういう特別な瞬間に合うジャズは無いか、とアルバムを物色する。

身が切れるほどに寒い日には、クリスタルな硬質な響きのピアノが良い。切れ味の良い硬質な響きのドラムが良い。鋼の様なしなやかで硬質なアコベの音が良い。静謐感溢れる、耽美的ではあるが決して甘くない、逆に甘さを一切排除したストイックでクリスタルな響き溢れるピアノ・トリオが良い。

Jim Black Trio『The Constant』(写真左)。2015年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Jim Black (ds), Elias Stemeseder (p), Thomas Morgan (b)。ピアノ・トリオである。Jim Black(ジム・ブラック)はドラマー。このピアノ・トリオのリーダーはドラマー。ドラマーとベースが米国出身、ピアニストはオーストリア出身。面白い組合せ。どんな音が出てくるんだろう。

リーダーのジム・ブラックは、1967年8月、米国はシアトル生まれ。今年で50歳、ベテランの域である。僕はこのアルバムに出会うまで、このジム・ブラックの名前を全く知らなかった。そういう意味ではピアノもベースも初見。このアルバムを初めて手にした時はどんな音が出てくるのか、皆目見当がつかなかった。
 

The_constant1_2

 
クールなピアノ・トリオの音である。ファンクネスは全く皆無。音だけ聴けば「欧州ジャズ」の系列の音。バップな雰囲気は皆無。静謐で耽美的でクールなピアノ・トリオの響きが淡々と続く。それでも、リズム&ビートはしっかりしていて静かな躍動感が演奏全体を包む。ブラックのドラムとモーガンのベースの相性の良さと絶妙な絡みの成せる技。

ステメスダーのピアノが良い。ずばり、クリスタルな硬質な響きのピアノ。彼はオーストリアはザルツブルクの生まれ。1990年生まれだから、今年27歳の将来有望な若手ピアニスト。時にアブストラクトに現代音楽風のプレイや響きを聴かせてくれる。ファンクネスは皆無。明らかに明快に「欧州ジャズ・ピアノ」の音と響き。

ブラックのドラムの響きも明らかに「欧州ジャズ」のドラミング。ファンクネスは皆無。甘さを一切排除したストイックでクリスタルな響きが個性の、切れ味の良い硬質な響きのドラムである。時にフリーなアブストラクトなドラミングがシュール。静謐感と躍動感が相まみえた、切れ味の良い硬質な、それでいてしなやかなドラミング。

リーダーのドラマーとベースが米国出身なのに、アルバム全体の音世界はオーストリア出身のピアニストの個性によって決定されている。現代の欧州ジャズの音世界。身が切れるほどに寒い日にピッタリな雰囲気の静謐感。ピアノの自然さに対するベースとドラムが迫り来る音。好盤です。

 
 

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2017年2月 6日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・99

ジャズのアルバムって、なにも1950年代から1960年代のジャズ・ジャイアント達の定盤ばかりが好盤ではない。ジャズの裾野は広い。優秀な一流ジャズメンの数は意外と多い。何気なくダウンロード・サイトなどを彷徨っていると、これは、と思わず口元綻ぶ好盤に出会うことがよくある。

英国ジャズのアルバム・カタログを手にダウンロード・サイトを彷徨っていて、John Taylor(ジョン・テイラー)というピアニストに出会った。どこかで聞いたことのある名前やなあ、とつらつら記憶を辿っていたら、そうでした、ECMで素敵なアルバムを出しているピアニストであることを思い出した。

ジョン・テイラーは、1942年英国マンチェスター生まれ。惜しくも2015年に鬼籍に入りました(72歳没)。そうそう、僕はこのジョン・テイラーについては、1973年の作品『 Decipher(邦題:覚醒)』が愛聴盤だったことも思い出しました。明確に欧州的な、しっかりした骨太のタッチでありながら、リリシズム溢れるピアノが個性。
 

Whiripool1

 
そんな彼の2007年リリースの盤にバッタリと出会った。John Taylor『Whirlpool』(写真左)。ピアノ・トリオ盤である。ちなみにパーソネルは、John Taylor (p), Palle Danielsson (b), Martin France (ds)。ベースが、これまたECM御用達のベーシスト、パレ・ダニエルソンである。このトリオ盤、きっと内容は良いぞ、と期待する。

リリカルで耽美的な、豊かな響きの流麗なピアノ。骨太でソリッドなアコースティック・ベースが唸りを上げてベースラインを支える。そして、そこに切れ味の良くエッジの立った、とってもテクニック豊かなドラムがビートを供給する。ファンクネスはほぼ皆無。透明感溢れる旋律。明らかに欧州的な音世界。

ピアノ、ベース、ドラムが対等に渡り合う、丁々発止と繰り広げられるインタープレイが素晴らしい。全8曲、全編計55分の長さですが、決して飽きない、どころかあっと言う間の55分です。適度なテンション、緩みの無いアドリブ展開、豊かな曲想の収録曲。それらが相まって、聴きどころ満載の好盤に仕上がっています。

 
 

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2017年2月 5日 (日曜日)

ローゼンウィンケルを思い出した

冬にジャズ・ギターが良く似合う、なんて呟きながら、先週木曜日から、暖かい部屋の中で珈琲をすすりながら聴くアコースティック・ギター(略してアコギ)の好盤を2枚ほど選盤してきた。

で、今度は、現代ジャズのエレクトリック・ギター(略してエレギ)で、冬の季節にぴったり合う好盤は無いか、選盤してみる。シンプルでクールで伸びの良いエレギの音は、意外と冬の季節に合う。特に、冬の静かな昼下がり、一人部屋の中で聴く、クールで伸びの良いエレギのフレーズは何だかしみじみして良い。

ジャズ雑誌の記事を見ていて、このギタリストの名前を久し振りに思い出した。カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)。アメリカ生まれ、現在ドイツのベルリン在住のギタリスト。伸びの良いクールで単音と複雑なコード進行を織り交ぜて弾くアーバンでスムースなエレギが個性。とにかく聴いていて心地良いことこの上無し。
 

Reflections_kurt_rosenwinkel

 
2009年リリースの、Kurt Rosenwinkel『Reflections』(写真左)を聴く。ジャケットのイメージがバッチリの「クールでアーバンでスムースなエレギ」が炸裂。収録された曲名を見ると、これは「ジャズ・スタンダード集」ではないか。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g), Eric Revis (b), Eric Harland (ds)。

トリオ編成によるジャズ・スタンダード集である。むっちゃ良い感じな演奏内容。聴き耳たてつつ惚れ惚れしてしまうくらいの心地良さ。ただし、素直な「スタンダード集」では無い。曲を見れば、思わず口元が緩む。モンクの「リフレクションズ」「アスク・ミー・ナイ」、ウェイン・ショーターの「フォール」「アナ・マリア」などが選曲されている。思い切り捻りの効いた選曲。

実にオーソドックスな純ジャズ路線のジャズ・エレギである。「静謐な熱気」をはらんだクールなジャズ・ギターは、今までにありそうで無い、ローゼンウィンケルならではの音世界である。彼の繊細で静謐で美しいジャズ・ギターは、現代のジャズ・ギターの先端を行く響きに溢れている。聴き応え良し。好盤です。

 
 

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2017年1月29日 (日曜日)

北欧ヤンソンのセルフ・カヴァー

最近、欧州ジャズのピアノが楽しい。欧州ジャズのピアノは、一言で言うと、ファンクネスが希薄で透明度が高い。テクニックがあって端正で破綻が無い。アドリブ・フレーズは流麗。タッチは硬質。クラシック・ピアノと相対しても遜色の無い、アーティスティックなインプロビゼーション。

ジャズ雑誌に掲載される2016年の「ディスク・グランプリ」の結果を見ていて、Lars Jansson(ラーシュ・ヤンソン)のアルバムが挙がっていた。ラーシュ・ヤンソンも日本ではメジャーな存在になったなあ。ラーシュ・ヤンソンは、1951年スウェーデン生まれ。今年65歳。いかにも北欧のピアニストらしい繊細なピアノを弾く。ファンクネスは皆無。しかも湿り気無く、とことんドライ。このカラッとしたところが、ラーシュ・ヤンソン独特の個性。

そんなラーシュ・ヤンソンのセルフ・カヴァー集が、このLars Jansson Trio『More Human』(写真左)である。昨年の作品になるのだが、これがまあ素晴らしい内容なのだ。ちなみにパーソネルは、Lars Jansson (p), Thomas Fonnesbeak (b), Paul Svanberg (ds)。鉄壁のトリオ。

もともとラーシュ・ヤンソンは良い曲を書く。北欧ジャズ独特のリリカルで繊細なピアノが十二分に活きる、透明度の高い印象的な旋律を持った秀曲ばかり。ヤンソンの場合は、彼のオリジナル曲ばかりでアルバム全体を構成されていても全く問題が無い。逆に、北欧ジャズの特質がグッと浮き出てくる。
 

More_human1

 
このアルバムでは、そんなラーシュ・ヤンソンの自作曲の中から人気の高い「モア・ヒューマン」「マリオネット」「マザーズ・イン・ブラジル」「ホープ」を始めとして、ラーシュ・ヤンソン自身が15曲を厳選してセルフ・カヴァーしているのだ。ジャズではこういうセルフ・カヴァー集は珍しいのだが、ヤンソンとしては、この若手のベースとドラムを迎えた「このトリオ」で再録したかったのだろうと推察する。

その目論見はバッチリ当たっている。もともとの曲が良いのだから、もちろん、この現時点でのラーシュ・ヤンソン・トリオでの演奏は素晴らしいの一言。適度な緊張感、心地良い演奏の「音の密度」、北欧ジャズ独特の透明感、どれをとっても極上の演奏である。新旧の演奏を比較すれば良く判るのだが、現時点でのトリオの「表現力の柔軟性の高さ」と「創造力のバリエーションの豊かさ」が良く判る。

こういうセルフ・カヴァー集もありやなあ、と思わず確信してしまうほど、このセルフ・カヴァー集はその狙いをしっかりと実現している。非常に優れた内容の企画盤である。また、ジャケット・デザインも秀逸。最近のアルバム・ジャケットを描いているのは孫娘のヒルダで、今作品のジャケットも彼女の作品とのこと。まさに「優れた内容のジャズ盤のジャケットは決まって優秀」である。

 
 

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2017年1月28日 (土曜日)

なんとも魅力的なパーソネルです

ジャズ雑誌に掲載される2016年の「ディスク・グランプリ」の結果を見ていて、これは素敵だなあ、と思わせてくれるパーソネルを発見。これは素敵なパーソネルだ。レジェンドレベルのリーダーのアルバムに、中堅のジャズメンから現代の若手ジャズメンまでが集う。ジャズの歴史をしっかりと追うようなパーソネル。

Dr.Lonnie Smith『Evolution』(写真左)。昨年1月のリリース。宣伝の触れ込みは「伝説のオルガン奏者が、45年ぶりにBlue Noteレーベルに復帰!ロバート・グラスパー、ジョー・ロヴァーノをスペシャル・ゲストに迎えた新作をリリース」。まさに、そんな宣伝どおり、出てくる音は、ジャズの基本であるハードバップであったり、現代の先端を行くニュー・ジャズだったり。

白髭を蓄えた怪しげなターバン姿のオルガン奏者ロニー・スミス。ジャズ・オルガンのレジェンドである。パーソネルを整理すると以下の様になる。

Dr. Lonnie Smith (B3 organ, key), Robert Glasper (p)1, Joe Dyson (ds)1,2,3,5,7, Jonathan Blake (ds)1,2,3,4,5,6,7, John Ellis(ts, fl)1,2,3,5,7, Joe Lovano (ss, ts)2,3, Jonathan Kreisberg (g)1,2,3,4,5,6,7, Keyon Harrold (tp)1,2, Maurice Brown (tp)5。

ジャズのレジェンドからベテラン、中堅、若手まで、なんとも魅力的なパーソネルである。収録曲はスミス曲が5曲と、モンクの「Straight No Chaser」、リチャード・ロジャースの「My Favorite Things」で全7曲。スミス作の曲の出来が良い。スミス作の曲の出来の良さが、このリーダー作の内容を濃くしている。
 

Evolution1

 
ロニー・スミスのオルガンがメインのアルバムなので、ファンキーなオルガン・ジャズを思い浮かべるが、この最新作の内容はそうでは無い。このジャズのレジェンドからベテラン、中堅、若手まで、ジャズの歴史をしっかりと追うようなパーソネルが「それ」をさせないのだ。

フロント楽器は、ネオ・ハードバップからニュー・ジャズの路線を踏襲する。柔軟度を高める為のモード・ジャズの展開や、聴き易さを高めるためのハードバップ的なシンプルで判り易いユニゾン&ハーモニー。ロニー・スミスのオルガンは、しっかりとバックに回って、フロントの演奏を支える。

このバッキングに回った時のロニー・スミスのオルガンが実にプログレッシブ。ジャズのレジェンド的な存在でありながら、出てくる音は現代の最先端を行く先進的な音なのだ。今までに聴いたことの無い、ジャズ・オルガンでのバッキング。良いものを聴いたなあ、という気持ちを高めてくれる。

ファンクネスを撒き散らしながら、前面にこれでもかと押し出てくるジャズ・オルガンも良いが、このアルバムの様に、変幻自在でバッキングに回った時の先進的で小粋なジャズ・オルガンは新しい発見だ。ジャズ・オルガンの新しい音を聴かせてくれるこのアルバム、とっても気に入った。好盤です。 

 
 

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2017年1月22日 (日曜日)

2010年代後半の新しい純ジャズ

年が明けて1月から2月になると、ジャズ雑誌では前年にリリースされたジャズ盤の中から「優秀盤」を選定する「ディスク・グランプリ」の季節になる。2016年の「ディスク・グランプリ」の結果がジャズ雑誌に掲載されるのだ。

意外とこの「ディスク・グランプリ」って面白い。前年のジャズのトレンドが良く判るし、評論家と一般のジャズ者の方々と感じ方、捉え方の違いが興味深い。実は一般のジャズ者の方々の方が、その時代時代のジャズのトレンドを的確に捉えている事の方が多いのだ。評論家というもの、音楽業界の中ではいろいろとしがらみがあるのかなあ、なんて想像したりする(笑)。

さて、この「ディスク・グランプリ」を眺めていると、何枚か聴き逃したアルバムがあるのに気付く。ありゃりゃ、これはいかんいかん、ということで、2016年の優秀盤の落ち穂拾いをするのが、これまたこの1月から2月にかけての季節になる。そんな「落ち穂拾い」の一枚がこれ。

New Century Jazz Quintet『ARISE』(写真左)。宣伝の触れ込みは「古き良きジャズのエッセンスを基に若い感性で創造する新時代のジャズをニューヨークから発信する」カルテットである。2014年6月にデビュー以来、着実に成果を挙げてきている。その存在は雑誌を通じてしってはいたが、この新作については、ついうっかり「ノーマーク」。

ちなみにパーソネルは、Benny Benack Ⅲ (tp), Tim Green (as), Yasushi Nakamura (b), Takeshi Ohbayashi (p), Ulysses Owens Jr. (ds)。日本人ミュージシャンが2名参加している。ピアノの大林武司、ベースの中村恭士の2名。他はNYのジャズ・シーンの中での期待の若手ジャズメン達である。
 

Arise1

 
ジャズ界において、こういう若手ジャズメンを中心とした「古き良きジャズのエッセンスを基に若い感性で創造する新時代のジャズをニューヨークから発信する」バンドは、10年に1つ位、必ず発生する。

1980年代後半の「Out of Blue」がそうだったし、1990年代後半の「One for All」もそうだった。2000年代後半は「European Jazz Trio」がそうだったかな。で、今回、2010年度後半にさしかかる2016年にこの「New Century Jazz Quintet」である。

このアルバムに詰まっている音は、1950年代後半の「ハードバップ」、そして、1960年代のメインストリーム・ジャズのトレンドだった「モード・ジャズ」。1980年代、純ジャズ復古以降の「ネオ・ハードバップ」。それぞれの時代のメインストリーム・ジャズのメインとなったトレンドを振り返り、現代の新しい感覚で再構築している。

面白いのは、ジャズの個性の代名詞だった「ファンクネス」が希薄になってきていること。コッテコテのファンクネスは希薄になって、洗練されたブルーノートな響きがそれにとって代わり、その洗練されたブルーノートな響きの中に「マイナーでジャジーな雰囲気」が漂っていて、その中にそこはかとなく「ファンクネス」が残っているのみ。

洗練された、硬質でテクニカルなブルーノートがメインの「「古き良きジャズのエッセンスを基に若い感性で創造する新時代のジャズ」である。これから2010年代後半に深く時代が進む中、この現代のメインストリーム・ジャズはどう変化していくのだろうか。興味津々である。

 
 

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