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2018年7月18日 (水曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・72

このところ、ジャズ・ドラマーのリーダー作を聴き進めている。ジャズのリーダー作は、どれもがバランスが良い。ドラマーがリーダーなので、ドラムが全面的に押し出てきて、圧倒的にドラムが目立つアルバムをイメージするのだが、どうして、基本的にそういうドラマーのリーダー作はほとんど無い(たまにあるけど・笑)。

そんなジャズ・ドラマーがリーダーのアルバムを物色していて、この盤の存在を思い出した。Jeff "Tain" Watts『Megawatts』(写真左)。1991年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Fambrough (b), Kenny Kirkland (p), Jeff "Tain" Watts (ds)。1960年1月生まれ、今年58歳のジェフ・ティン・ワッツのピアノ・トリオ盤である。

この盤では、リーダーのジェフ・ワッツの多彩でネオ・ハードバップなドラミングを心ゆくまで楽しめる盤なのだが、もう1つ、大きな「お目当て」がある。ピアノの「ケニー・カークランド」である。1980年代後半、純ジャズ復古のムーブメントの中で、ウィントン・マルサリスをメインとする「ネオ・ハードバップ」を主に演奏する新主流派のピアニストとして活躍したが、惜しくも、1998年、43歳で没した、伝説のピアニストである。
 

Megawatts_1  

 
僕はこのピアニストのタッチとアドリブ展開が大好きで、そもそもリーダー作は1作のみなので、カークランドがサイドメンのアルバムは見つける度にゲットしている。といっても、ウィントン&ブランフォード・マルサリスとの共演と、スティングの諸作への参加が主なアルバムで、本格的に活動したのが、約10年ほどなので、彼の演奏に触れることの出来るアルバムはそう多くない。

カークランドのピアノは、ネオ・ハードバップならぬ「ネオ・ビ・バップ」的な節回しとアドリブ展開を個性とするピアノで、一聴するとハービー・ハンコックのフォロワーかとも思うが、タッチの力強さ、アドリブ展開の幅広さ、モーダルな展開のナチュラルさ、それぞれがカークランドならではの個性として成立している。爽快かつ繊細、純ジャズ復古以降のビル・エヴァンスの様な温故知新なネオ・ビ・バップなジャズ・ピアノ。

オリジナル曲もスタンダード曲も、ジェフ・ワッツのドラムに堅実にサポートされた、カークランドのピアノが聴きもの。ジェフ・ワッツのドラミングは、ネオ・ハードバップに特化した「トニー・ウィリアムス」の様な響きが今の耳にも新しい。兎にも角にも、早逝が惜しまれるピアニストであった。ジェフ・ワッツのネオ・ハードバップなドラミングと同時に、カークランドのネオ・ビ・バップなピアノを愛でることが出来る稀少盤である。好盤です。

 
 

東日本大震災から7年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年7月17日 (火曜日)

聴き心地良い爽やかなオルガン

夏のオルガン・ジャズは爽やかな耳当たりのものが良い。こってこてファンキーな、レズリー・スピーカー全開のゴワーッというダイナミズムの極致の様なオルガンの音はちょっと夏には堪える。趣味良く、洒落てて、粋なフレーズをシンプルな音で聴かせてくれる。そんなオルガン・ジャズが良い。

最近リリースの新盤を物色していて、おおっこれは、という盤を発見。Larry Goldings Trio『Toy Tunes』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Larry Goldings (org), Peter Bernstein (g), Bill Stewart (ds)。ベースのパートはラリー・ゴールディングスがフットペダルでやっている。ベースレス、エレギ入りの典型的なオルガン・トリオである。

実力派オルガン奏者のラリー・ゴールディングス、ギター名手のピーター・バーンスタイン、万能ドラマーのビル・スチュワート。見るからに良い音が出てきそうなオルガン・トリオである。ゴールディングスは、米国ボストン出身のオルガニスト。1968年8月生まれなので、今年50歳。中堅からベテランの域に差し掛かった、脂の乗り切った年齢。余裕を感じる、シンプルで爽やかなオルガンを聴かせてくれる。
 

Toy_tunes

 
ほど良く抑制された、ファンクネス控えめ、趣味良く粋な落ち着いたフレーズが流れる様に次々と出てくる。とっても聴き心地の良い、爽やかなオルガン。流麗でメロディアスな演奏あり、ちょっとアブストラクトにフリーに傾いた演奏もあり、よくよく聴くと、結構バリエーションに富んだ、様々な表情のオルガンを聴かせてくれる。いや〜上手いのなんのって。とっても良い意味で上品なオルガンです。

加えて、ギターのバーンスタインが好調だ。すっきりファンキーな、ちょっとくすんだ音のエレギがとってもブルージー。ゴールディングスのオルガンがファンクネス控えめな分、バーンスタインのエレギでファンクネスを充填している。バーンスタインのエレギも趣味良く粋で落ち着いていて、ゴールディングスのオルガンにピッタリとフィットする。相性の良いエレギである。

そして、演奏全体のリズム&ビートを押さえて、フロントのオルガンとエレギをしっかりと支えるスチュワートのドラミングも見事だ。抑揚と緩急がほど良くコントロールされ、ダイナミックかつ繊細なドラミングで、アルバムの演奏全体をグッと締める。これぞ、正統なオルガン・ジャズ、という雰囲気の音世界が実に心地良い。知らず知らずのうちに「隠れヘビロテ盤」になっていたりする。お勧めの好盤です。

 
 

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2018年7月 9日 (月曜日)

2018年の Steve Gadd Band

伝説のドラマー、縦ノリのレジェンド、スティーヴ・ガッドが元気である。「Steve Gadd Band」および「The Gaddabouts」名義で、2010年からほぼ毎年のペースでリーダー作をリリースしている。異種格闘技な、ロック・ミュージシャンとの共演も多く、今年、満73歳にも拘わらず、凄く精力的である。

『Steve Gadd Band』(写真左)。今年2018年3月のリリース。シンプルなアルバム名なので、Steve Gadd Bandの旗揚げ盤かな、と勘違いしそうになるが、この盤、Steve Gadd Band名義での5作目になります。スタジオ・レコーディング作としては3年ぶり、レコーディングは2017年の後半、米国西海岸はノース・ハリウッドにて行われました。

ちなみにパーソネルは、Steve Gadd (ds), Michael Landau (g), Jimmy Johnson (b), Walt Fowler (tp), Kevin Hayes (key)。 CDをトレイに載せてスタートスイッチを押せば出てくる音は「レイドバック」。とっても適度に力が抜けていて、歌心溢れる中に、シッカリと芯のある、コンテンポラリーな純ジャズ風のインスト・ナンバーはどれもが魅力的。
 

Steve_gadd_band_2018  

 
う〜ん、何と表現すれば良いのか、そう適度にレイドバックした、ミッドテンポをベースとした「後期ウェザー・リポート」の音世界をエレギ入りのバンドで再現した様な音作り。黒いファンクネスを抑えた、白いファンクネスを偲ばせた、ヨーロピアン志向のニュージャズな音作り。しかも、タイトな音作りでありながら適度に緩やかで、しっかりとメリハリの効いたリズム&ビート。

ガッド御大の縦ノリなドラミングは相変わらず。ドラムの音を聴けば、直ぐにガッドだと判る強烈な個性。ストンストトンと縦ノリでバンド全体を揺らしつつ、新しい響きを宿した演奏の数々。演奏の爽やかさは、米国西海岸の音世界の影響か。2017年にこの世を去ったアラン・ホールズワースの『テンポラリー・フォールト』のカヴァーの出来が秀逸。

70歳を過ぎて、これだけ精力的な活動を見ていると、この先大丈夫なん、とガッドの体調が心配になるのだが、ライブ演奏の動画なんかを見ていると、それは杞憂であることが良く判る。とにかく「元気」。まあ、元気でなければ、良質のドラミングなんて出来ないもんな。しかし、優秀なドラマーがリーダーのアルバムって、どうして、こんなに味わい深いものが多いんやろ?

 
 

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2018年7月 6日 (金曜日)

カマシの『Heaven and Earth』

「スピリチュアル・ジャズ」と聞いて連想するのは、感情のおもむくままに楽器を吹き鳴らし、精神性の部分を強調したフリー・ジャズのバリエーション、ということ。その激しいアブストラクトな吹奏は、時に「馬の嘶き」にも匹敵し、音楽鑑賞という行為の中では、かなりの苦行を強いられる。つまり、一般的には敬遠されがちなジャンルではあった。

が、最近、その「スピリチュアル・ジャズ」の様相が変わってきている。穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、ゴスペルチックなコーラスなどを導入して、音の響きとフレーズから「スピリチュアル」な面を増幅させ、聴く者に訴求する、という、新しいスタイルの「スピリチュアル・ジャズ」が現れ出でている様に感じている。

Kamasi Washington『Heaven and Earth』(写真左)。その代表的存在が「Kamasi Washington(カマシ・ワシントン)」。そのカマシが実に魅力的な新盤をリリースした。「Earth」盤と「Heaven」盤のCD2枚組の大作である。曲名を眺めていると、宗教的な雰囲気が漂うが、アルバムを聴いてみると、意外とそうでも無い。しかし、内容的には、ニュータイプの「スピリチュアル・ジャズ」である。
 

Heaven_and_earth   

 
音楽的にはクワイアも入っているのだが、さり気なくポップにアレンジされていて、宗教的な雰囲気に傾くことは無い。コルトレーンの様に「真理を探究する」という生真面目さは無いし、哲学的な雰囲気はあっても、宗教的な信念のため、真理に到達するためにジャズをやっている、という堅苦しさは全く無い。よって、1960年代後半の「スピリチュアル・ジャズ」の様に、閉塞感が漂うことも無い。

様々な音楽的要素がごった煮に入っている。ジャズの過去のスタイルがさり気なく総動員されていて、バップあり、モードあり、フリーあり、クロスーバーあり、フュージョンあり、と「ジャズのスタイルの万華鏡」の様で、聴いていてとても楽しい。ラップやユーロ・ビート、ノイズ・ミュージックの要素も散りばめられていて、加えて「台詞」の独白もあったりして、これぞ、他の音楽ジャンルとの融合を得意とする「ジャズの究極の姿」って感じが新しい。

誰かが、現代の「ビッチェズ・ブリュー」だ、って言ってたなあ。それは言い過ぎだとは思うが、それに匹敵する位のインパクトのある内容だとは思う。ロバート・グラスパーとはまた違った新世代ジャズへのアプローチ。1960年代後半の「スピリチュアル・ジャズ」が、21世紀も20年程度入ったところで、再構成されるとは思わなかった。音の要素それぞれには目新しさは無いが、音の様々な要素が融合した姿はやはり「新しい」。今後の展開が楽しみである。

 
 

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2018年7月 4日 (水曜日)

日本発オルガン・ジャズ・ユニット

ジャズ・オルガンが好きである。あのファンキーな、太くて芯のあるちょっと掠れた音。ピアノの音も好きだが、オルガン、それもハモンド・オルガンの音が大好きだ。しかし、何故か我が国では、ジャズ・オルガンは「キワモノ」とされる。ファンクネスだだ漏れ、どっぷりブルージーな雰囲気は「俗っぽい」とされた。他の楽器と比べて、正当に評価されなかった時期が長かった。

それでも、21世紀に入って、ジャズ・オルガンは正当に評価される様になったのではないか。特に、この2〜3年前から、オルガンを入れたジャズが多くなってきた様に感じる。ソウルフルなジャズが復活している傾向で、ファンキー&ソウルフルな音をメインに添えたアンサンブルが多くなってきていて、そこにオルガンがピタッと填まるんだと思う。

Mahogany Organ All-Stars『100 Landscape』(写真左)。今年6月のリリース。ちなみにパーソネルは、山本研 (org), 石井裕太 (ts), 鈴木洋一 (g), 岡田真帆 (ds)。純日本のメンバーによるカルテット構成。キャッチーなテーマが印象的なオリジナルを中心とした盤。ジャズとポップスの間を行くユニークな音作りが個性である。
 

100_landscape

 
改めて「マホガニー オルガン オールスターズ(以降、MOAと略)」である。2015年3月に結成。古き良きオルガンジャズのサウンドを、有名なポップス曲やクラシック曲、懐メロをカバーしつつ現代風に蘇らせている、とのこと。確かに、彼らの演奏はシンプルで判り易い。かつ、各楽器の音が実に良い。特にオルガン、良い音出してます。

加えて、アレンジが良い。よくよく考えたアレンジで、それぞれの曲の個性を活かしつつ、オルガン・ジャズに合ったユニゾン&ハーモニーが実に魅力的。オルガンの持つ「過度にファンキーな」「ソウルフルな雰囲気濃厚な」個性に頼ることなく、あっさりと受け流しながら、他の楽器とアンサンブルする中で、オルガンの音が浮かび上がってくる。工夫のアレンジ。

とにかく全編、楽しそうに演奏されているのであろう、その雰囲気は徹頭徹尾「ポジティブ」。緩急のメリハリもシッカリついているので、全編聴き通す中で飽きが来ることは無い。こんなポップでソウルフルなオルガン・ジャズ・ユニットが日本から発信されるとは、素直に驚きである。ポップで聴き易い雰囲気は心地良い。好盤である。

 
 

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2018年6月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・122

最近の新盤の傾向として、内容の素晴らしさに反比例して、これは一体なんなんだ、と呆れるくらいのチープなデザインのジャケットが多い様に感じる。確かにCDのサイズになって以来、LP時代の様にジャケット・デザインに腕を振るうことは少なくなった。が、それにしても、最近「とほほ」な内容のジャケット・デザインが多すぎる。これは実に残念なことである。

Reis Demuth Wiltgen『Once in a Blue Moon』(写真左)。今年6月のリリース。録音はECMの第3スタジオ、アルテスオーノ。ちなみにパーソネルは、Michel Reis (p), Marc Demuth (b), Paul Wiltgen (ds)。イタリアの名門CAM JAZZレーベルからのリリース。ルクセンブルク出身のピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲンのピアノ・トリオである。

この「とほほ」なジャケットからは想像出来ない、知的で透明感のある欧州ジャズなサウンドである。曲毎に、しっかりと起承転結のある、メロディアスでドラマチックな楽曲も良い内容。全13曲中9曲がレイスのオリジナル。リリカルでフォーキーな良い曲を書く。レイスのピアノはクラシックな雰囲気が底に漂いつつ、紡ぎ出されるフレーズは親しみ易くポップなイメージ。過去にありそうでない、欧州ジャズ的な唄うが如くのピアノである。
 

Once_in_a_blue_moon  

 
デムスのベースも良い音を出している。骨太でしなやかで張りのあるベース。レイスの知的で透明感のあるピアノによく絡む。絡むが決してピアノの邪魔はしない。しっかりと支え、寄り添うようなベース。決して、耳触りで無い、唄う様なベース。ジョニ・ミッチェルの名曲'「Both Sides Now」のカバーでは、このデムスのベースがフィーチャーされ、ただひたすらに、骨太でしなやかで張りのあるベースが唄う。

ウィルトゲンのドラムも特筆もの。ポリリズミックで、硬軟自在、変幻自在なドラミング。それでいて、リズム・キープ力は抜群。揺らぐことは皆無。チェンジ・オブ・ペースも的確、かつ柔軟で、レイスのピアノをしっかりと支えている。リズム&ビートをデムスのベースと的確な役割分担をしつつ、これまた唄う様なドラミングを披露する。

この「ピアノ=レイス、ベース=デムス、ドラム=ウィルトゲン」のピアノ・トリオは「唄うピアノ・トリオ」。3者が一体となったインタープレイはキャッチャーでインテリジェンス溢れる、唄うが如く、欧州的な響きを湛えたピアノ・トリオの音である。ドラマチックでダイナミックな展開も多々あって、全編を通じて飽きることは全く無い。好盤である。

 
 

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2018年6月20日 (水曜日)

ベテランの魅力的なフロント2管

最近のジャズの新作を見ていると、ベテラン陣の活躍が目に付く。大ベテランが相次いで鬼籍に入る中、50歳〜60歳辺りのベテランのリーダー作が結構出てきている。若手のニュー・ジャズも聴いていて楽しいが、ベテラン陣のモーダルなジャズやネオ・ハードバップな演奏を聴くのも楽しい。

Joe Lovano & Dave Douglas Sound Prints『Scandal』(写真左)。今年2018年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (sax),  (tp), Lawrence Fields (p), Linda May Han Oh (b), Joey Baron (ds)。ベテランと中堅がガッチリ組んだ、魅力的なクインテット構成。聴けば判るが、中堅中心のリズム・セクションは結構強力。

ジョー・ロヴァーノとデイヴ・ダグラスによるグループ、サウンド・プリンツによる初のスタジオ・アルバム。「サウンド・プリントの特徴は、フロントラインの絡まったクロストークにある」の評価の通り、ベテラン二人のサックスとトランペット、フロント2管の多彩なパフォーマンスが、とても良い効果を生み出している。
 

Sound_prints  

 
ウェイン・ショーターにインスパイアされ生まれた作品とされる。バンド名もショーターの楽曲「Footprints」に由来している。硬軟自在、変幻自在の硬派でバイタルなモード・ジャズが展開される。21世紀の新しい響きのする、「ネオ・モード・ジャズ」とでも名付けたい、現代の先端を行く先進的な展開である。

我が国において、知名度の割に人気が低いロバーノ、知名度自体が低いダグラス。しかし、この新作での演奏は特筆に値する。何故この二人について、我が国で人気が出ないのか、不思議でならない。豪放磊落、武骨で骨太なテナーとピリッとドライで渋いトランペットとの絡み、ユニゾン&ハーモニーは、他に無いのでは、と思う。

しかし、このジャケット・デザインは無いよな。余りに手間をかけなさすぎる。これでは内容のあるこの盤の演奏が可哀相。reenleaf Musicというレーベルらしいが、ジャズメンと演奏に関して、リスペクトがなさ過ぎ。ただ、このチープなジャケット・デザインに惑わされてはならない。聴けば判る。なかなかの内容の聴き応えのある好盤です。

 
 

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2018年6月15日 (金曜日)

ECMでの「ジャズ・ファンク」

1970年代のECMレーベルのアルバムはどれを取っても「ECMの音」が詰まっていて面白い。欧州の香りのする、透明度の高い、エッジの立った音で、限りなく自由度の高いモーダルな演奏、限りなくフリーに近いニュー・ジャズな演奏。ファンクネスは限りなく抑制され、ファンクネスが漂っても限りなく乾いている。明らかに、米国ジャズに相対する「欧州のジャズ」の音世界。

Bennie Maupin『The Jewel In the Lotus』(写真左)。1974年の作品。ECMの1043番。ちなみにパーソネルは、Bennie Maupin (sax, fl, b-cl, vo, glockenspiel), Herbie Hancock (key, p), Buster Williams (b), Billy Hart, Freddie Waits (ds, marimba), Bill Summers (perc), Charles Sullivan (tp)。ダブル・ドラムのセプテット構成。

ジャケットが酷い。ECMらしからぬ酷さ。蓮の花の真ん中にモウピンの横顔。誰のデザインなのか。しかし、このジャケットのイメージを見れば、スピリチュアル・ジャズな内容なのか、と想像する。とくれば、自由度の高いブロウがメインのコッテコテのフリー・ジャズなのか、と思う。ECMだからこそ、それがあり得る。心してCDプレイヤーのスタートボタンを押す。
 

The_jewel_in_the_lotus  

 
フリー・ジャズな演奏がくるか、と身構えていたら肩すかしを食らう。淡いファンク的なビートの上での浮遊感溢れる「印象派の絵画の様な」演奏。ファンク的なビートでも乾いているから、粘ることは無い。爽やかなファンク。ひたすら浮遊する感じのフレーズが続いて「水彩画を見るが如く」である。フロントのモウピンのテナーが印象的なソロを吹きまくることも無い。 

ふとパーソネルを見れば、ハービー・ハンコックが参加している。ECMにハービー、違和感満載である(笑)。そう、この水彩画を見るが如くの管楽器とキーボードの音の重なりは、ハービーの「Speak Like a Child」であり、淡いファンク的なビートの上での浮遊感は「Mwandishiバンド」。欧州の、ECMレーベルでの「ジャズ・ファンク」である。

熱い混沌としたフリー・ジャズでは無い。自由度は限りなく高いが、しっかりと規律を持った、ジャズ・ファンク志向のニュー・ジャズ。浮遊感溢れるリードとブラスとのユニゾン、宝石のように美しく散らばる珠玉のピアノ、そして、メンバー全員による荘厳なアンサンブル。何となく最初は面食らうが、聴き進めるにつれ、とても美しいニュー・ジャズなフレーズに耳を奪われる。不思議な魅力を持った「異色のECM盤」である。

 
 

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2018年5月25日 (金曜日)

ジャズは深化し多様化している

ジャズは深化している。ジャズは多様化している。ジャズが生まれて約100年。それぞれの時代で、ジャズ演奏のトレンドがあった。スイング、ビ・バップ・ハードバップ、ファンキー、モード、エレ・ファンク、クロスオーバー、フュージョン、ネオ・ハードバップなどなど。そんなジャズ演奏のトレンドそれぞれに「後を継ぐ者」が現れ出でている。

いわゆるフォロワーなジャズメン達が、それぞれのジャズ演奏のトレンドを引き継いで、深化させていく。今では、それぞれの時代のジャズ演奏のトレンド毎に、後を継ぐジャズメンが必ず存在する。そして、それぞれのジャズ演奏のトレンドを深化させ、極めていく。ジャズは死なない。ジャズは生きている。ジャズは多様化し、深化している。

Lynne Arriale『Give Us These Days』(写真左)。2017年12月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Lynne Arriale (p), Jasper Somsen (b), Jasper van Hulten (ds), Kate McGarry (vo on 9)。素敵なピアノ・トリオである。実は、この盤を入手した動機は「ジャケ買い」。この魅力的な笑顔の女性ジャズメンの横顔が素敵なジャケットを見て、珍しく、内容を確認せず、いきなり購入を決意した。
 

Give_us_these_days

 
リーダのピアニストは「Lynne Arriale(リン・アリエル)」。1957年、米国ウィスコンシン州ミルウォーキー生まれ。今年で61歳になる。過去、dmp、TCB、Motema Music、In+Out等から続々とリーダー作をリリースしてきている。61歳だから、大ベテランの入り口にいるアリエルであるが、日本ではほとんど無名。しかし、そのタッチといい、節回しといい、1970年代のECMレーベルのピアノ・トリオを彷彿とさせる内容に思わずニンマリする。

素敵なピアノ・トリオ。内容はヨーロピアンなピアノ・トリオ。耽美的であり、構築美を誇りつつ、自由度の高い、フリー一歩手前の演奏で疾走する、いわゆる「ヨーロピアンな」ピアノトリオ演奏。モード・ジャズからニュー・ジャズ辺りのトレンドをしっかり押さえて、お手本の様なピアノ・トリオ演奏を披露する。

ベースのイェスパー・サムセン、ドラムのイェスパー・ファン・フルテン、というオランダ出身の腕利き2人が秀逸なバッキングを聴かせてくれる。非常に優れたモード・ジャズ。自由度高く、堅実でもあり、歌心もある。良いピアノ。ついつい一気に聴き通してしまう位の、適度なテンションを張った、よく考えられた、よく寝られたトリオ演奏。こういうアルバムがポッといきなり出てくるから、今でもジャズから目を離せない。

 
 

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2018年5月24日 (木曜日)

ドラムの音がとても素敵に響く

ドラマーがリーダーのアルバムはとても興味深い。ドラムはフロントを張る楽器では無い。メロディアスな旋律を表現できる楽器では無い。リズム&ビートだけで表現する楽器。この楽器を担当するドラマーがリーダーを張る。どういうアルバムに仕上がっていくのか。ドラマーがリーダーのアルバムを聴くことは、いつも楽しみなのである。

Terri Lyne Carrington『Structure』(写真左)。2003年11月の録音。ちなみにパーソネルは、Terri Lyne Carrington (ds, perc, vo), Greg Osby (as), Jimmy Haslip (b), Adam Rogers (g)。テリ・リン・キャリントンは女性ドラマー。1965年の生まれ。ジェームズ・ムーディーやクラーク・テリー、ショーター、サンボーンら、名だたるジャズメンと共演。力量確かなドラマーである。21世紀に入ってから、2〜3年に1枚の頻度でリーダー作をリリースしている。

実は僕はそのリーダー作の中で、初めて聴いた番が、この『Structure』である。で、聴いて最初に感心したのが、多彩なワザを織りまぜた、センシティブな、ダイナミズム溢れるドラミング。手数も多いのだが、決してうるさくない、硬軟自在、変幻自在なドラミングで、フロント楽器を鼓舞し、グループ・サウンド全体をコントロールする。リーダーのドラミングである。
 

Structure_2

 
ここまで多彩で柔軟なドラミングである。打楽器としての役割も担えるピアノは必要無い。よって、このアルバムはピアノレスである。確かに。テリ・リン・キャリントンのドラミングがあれば、ピアノは敢えて必要無いなあと納得する。それほど、素晴らしいドラミングである。いいもの聴かせて貰ったなあ、と僕は正直、感心した。

こんなに素晴らしいドラミングがバックに控えているのである。フロントのオズビーのアルトが適度な緊張感を保ちつつ、唄う様に、軽く気持ち良く雄叫ぶ様にアルトを吹き上げていく。本当に気持ちよさそうに吹いている。ロジャースのギターも同様。爽快に気持ち良さげにギターを弾き進めていく。

スッキリ爽快なメインストリーム・ジャズ。耳に心地良いドラムの響き、スネアの響き、ハイハットの響き。さすがリーダーはドラマー。ドラムの音がとても素敵に響き渡っている。実は、この盤で、テリ・リン・キャリントンは素敵なボーカルも披露しているが、それはサラッと流して、メインはドラミングですよ、と素敵なパフォーマンスを聴かせてくれる。筋金入りの職人堅気なベテラン・ドラマーである。

 
 

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