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2017年5月21日 (日曜日)

このドラマーは僕にとって初顔

ピアノ・トリオが聴きたい耳になって、今度は最近作を聴きたくなる。今のピアノ・トリオの状況はどうなんだろう。と、ジャズ雑誌のディスク・レビュー欄を1年間ぐらい振り返ってみる。さすがに知らない名前が多くなったなあ、と感じる。でも、ということは、まだまだジャズは深化しているということ。喜ばしいことではある。

今日の選盤はこれ。Gerry Gibbs & Thrasher People『Weather or Not』(写真左)。今年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Hans Glawischnig (b), Gerry Gibbs (ds, per), Alex Collins (p, org)。日本ではほとんど馴染みの無い、ドラマーのジェリー・ギブスがリーダーのピアノ・トリオ盤。

CD2枚組の構成。1枚目は「The Music Of Weather Report」。ウェザー・リポートのカヴァー12曲を収録。2枚目は「The Music Of Gerry Gibbs (The Life Suite 1981-2016) 」。リーダーのドラマ−、ジェリー・ギブスのオリジナル曲集。 この1枚目のウェザー・リポートのカヴァー集が良い。かなりの「聴きもの」になっている。
 

Weather_or_not_1

 
曲目を見渡すと、ウェザー・リポート4枚目の『Mysterious Traveller』から9枚目『Mr. Gone』まで、いわゆるウェザー・リポート黄金時代の名曲が選ばれている。特に面白いのは『Mr. Gone』から3曲選曲されていること。『Mr. Gone』と言えば、僕は大好きだったが、一般的にはリリース当時はあまり評判の芳しく無かった盤。やっと『Mr. Gone』が再評価されつつあるのか、と嬉しくなる。

とにかくアレンジが素晴らしい。ウェザー・リポートの特徴を上手くピアノ・トリオに置き換えているところがニクい。冒頭の「Teen Town」を聴けばそれが良く判る。ジャコのエレベ高速フレーズをピアノで再現。決して、オリジナルと「タイマン」で勝負することは無い。アレンジの妙で勝負する。これ、なかなか粋ですよ。

2枚目のギブスの自作曲集については、メインストリームな純ジャズを踏襲したコンテンポラリーな内容は、ギブスの作曲の才が優れたものであることを証明している。ギブスのドラミングはピーター・アースキンばりの今様のもの。いやいや、なかなか粋なドラマーである。他のアルバムも聴きたくなった。

 
 

震災から6年2ヶ月。決して忘れない。まだ6年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年5月19日 (金曜日)

好調ベニー・グリーンを感じる

ピアノ・トリオが聴きたい。一昨日辺りから、その欲求がかなり高まってきた。恐らく、心身が疲れてきているのだろう。昔から、心身が疲れてくると、ピアノ・トリオが聴きたくなる。特に、バリバリ弾きまくるピアノ・トリオが良い。

Benny Green『Happiness! Live at Kuumbwa』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Benny Green (p), David Wong (b), Rodney Green (ds)。 2016年6月のライブ録音。場所は、カリフォルニア州サンタ・クルーズにあるクンブワ・ジャズ・センター。リーダーでありピアニストであるベニー・グリーンのホーム・グラウンドである。

僕はベニー・グリーンのピアノが好きだ。1963年4月生まれ。今年で54歳になる。基本はバップ・ピアノ。ビ・バップな雰囲気で、テクニック溢れ、強いタッチでバリバリ弾きまくる。加えて、1963年生まれなので、ジャズの演奏傾向として、モードな演奏が得意。バリバリ、バップなピアノでモードな演奏を弾きまくる。これが爽快なのだ。

さすがにベニー・グリーンのホーム・グラウンドである「クンブワ」。雰囲気が凄く良い。冒頭のグリーンのMCに対する反応なんて、ほんと良い感じ。そんな良い感じのライブ会場で、ベニー・グリーンのトリオはのっけからリラックスした演奏を繰り広げる。
 

Happiness_benny_green

 
このリラックス度合いが絶妙で、バップなピアノはテクニックが高ければ高いほど、鬼気迫る感じで緊張を強いられがちだが、このグリーンのピアノは違う。程良くリラックスしているので、緊張を強いられることは無い。逆に、心地良いテンションが聴く耳を和ませてくれる。

前作の『Live in Santa Cruz』(2015年12月26日のブログ・左をクリック)とはうって変り、今回の新作ライブ盤はスタンダード・ナンバーが中心。

これがなかなか聴きもの。ホレス・シルヴァー、フレディ・ハバード、シダー・ウォルトン、サド・ジョーンズ、デューク・ピアソン、ウェス・モンゴメリーといった、ジャズ・レジェンド達の知る人ぞ知る、渋い佳曲が並ぶ。

好調ベニー・グリーンをビンビンに感じます。デヴィッド・ウォンのベース、ロドニー・グリーンのドラムも好調。実に良い雰囲気のピアノ・トリオのライブ盤です。好盤です。

 
 

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2017年5月17日 (水曜日)

夜の静寂にクールなジャズ・1

ジャズには、汗が飛び散らんばかりに熱気を帯びて吹きまくる演奏もあれば、その反対に、グッとムーディーにそしてアーバンなムードを湛えたクールな演奏もある。夜、寝る前の一時、夜の静寂の中、耳を傾けるジャズは後者の「クールな演奏」のジャズが良い。心からリラックス出来て、寝付きが良くなる。

Charlie Haden『Nocturne』(写真左)。2000年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Charlie Haden (b), Gonzalo Rubalcaba (p), Ignacio Berroa (ds) のピアノ・トリオを中心に、Joe LovanoとDavid SanchezのサックスとFederico Britos Ruizのバイオリンが客演し、加えて、2曲目の「Noche de Ronda (Night of Wandering)」にのみ、Pat Methenyのアコギが単独で参加する。

アルバム・タイトルの「Nocturne」とは「夜想曲」のこと。「夜想曲」とは「夜の情緒を表現しようとする曲」のこと。そんな「夜想曲」な曲想、曲調の曲をズラリ11曲、収録している。落ち着いたリズム&ビートに乗って、趣味良くムーディーにアーバンな雰囲気を醸し出しつつ、限りなくクールな演奏を繰り広げる。

「夜想曲」の演奏の底をしっかりと支えて、曲全体のとりまとめをするのは、リーダーであるベースの哲人、チャーリー・ヘイデン。骨太でゴリッとした安定のベースはヘイデンならではのもの。このアルバムでは、ヘイデンのベースがとっても良い音で録れてます。聴いていて惚れ惚れしますね〜。ジャズ・ベース、ここに極まれり、です。
 

Nocturne_1

 
そして、このアルバムの最大のハイライトは、ゴンサロ・ルバルカバのピアノ。ラテンチックな躍動感溢れるピアノが得意なゴンサロなんですが、このアルバムでは、実にリリカルな、それでいて音の芯が太く、音のエッジが程良くラウンドしている、どっしりとした重心の低いピアノで聴かせてくれる。全編に渡って、ゴンサロのピアノ、聴きものです。

イグナシオ・ベローアというパーカッショニストも実に良い。ゴンサロと同じキューバ出身とのこと、実にムーディーなパーカッションである。パットのアコギもむっちゃ雰囲気あるし、フェデリコ・ブリトス・ルイスのバイオリンもクールでムーディー。そうそう、ジョー・ロヴァーノとダヴィッド・サンチェスのテナーも凄く良い。

アルバム・タイトルが、ほんとにシックリ来る演奏です。こういうグッとムーディーにそしてアーバンなムードを湛えたクールな演奏ができるのもジャズなんですね。そんな演奏をガッチリとサポートし、まとめ上げているのが、チャーリー・ヘイデンのベース。

夜の静寂にピッタリのジャズです。ベースの哲人が、ピアノにゴンサロ、ドラムにベローアを従え、テナーやギター等を客演に「夜想曲」を奏でる。秀作です。

 
 

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2017年5月13日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・81

ジャズは昔から「異種格闘技」が得意である。ラテン音楽のリズムやフレーズを取り込んだり、ボサノバやサンバのリズムやフレーズを取り込んだり、果てはロックの要素を取り込み、R&Bと融合し、最終的には「クロスオーバー・ジャズ」や「フュージョン・ジャズ」というジャンルを確立したり、極言すると「ジャズは融合の音楽」である。

21世紀に入ると、この「融合」はバリエーションを広げ続け、こんな楽器とコラボしてジャズやんの、なんて組合せもある。例えば、2007年リリースのデュオ作品『The Enchantment』は、ピアノのレジェンド、チック・コリアのバンジョーのベラ・フレックとのデュオ作品。バンジョーですよ、カントリー&ウエスタンの花形楽器のバンジョーとピアノで即興演奏をする。この組合せにはビックリした。

ビックリしていたら、今回、こんなデュオが出てきた。ブルーグラス界(いわゆるカントリー&ウエスタンですね)を代表するChris Thileと、ジャズ・ピアニスの重鎮 Brad Mehldauの組合せ。パーソネルは、Chris Thile (mandolin, vo) & Brad Mehldau (p, vo)。クリス・シーリはマンドリンを弾き、ボーカルを担当する。そして、ブラッド・メルドーはピアノを弾き、ボーカルも担当している。
 

Chris_thile_brad_mehldau1

 
そのアルバムとは『Chris Thile & Brad Mehldau』(写真左)。今年の1月のリリース。ブルーグラスのマンドリンの弾き語りをどうやってジャズ・ベースのピアノとデュオ演奏するのか、と首を捻るのであるが、聴いてみると、クリス・シーリのマンドリンがしっかりとジャズのビートに適応して、ブルーグラス側がジャズに歩み寄っている風情。としつつ、ブラッド・メルドーはマンドリンの繊細な響きに寄り添うように、優しくインプロビゼーションする。

ボーカル曲も多く収録されており、純粋なジャズというよりはカントリー、ブルーグラス系も混ざったようなポップスの様な風情ですが、底に流れるリズム&ビートとコード進行がジャズの雰囲気をしっかりと残していて、良い感じのフュージョン・ジャズに仕上がっています。純ジャズのデュオではありませんが、融合の音楽としてのジャズの面目躍如的な内容です。

ジャズの「異種格闘技」としての成功例でしょう。さすが伴奏上手なブラッド・メルドー、マンデリンの繊細な音によく対応しています。美しい旋律、ビート感を強調したリズムの採用、そして、親しみのある旋律を持つ楽曲の選曲。聴いて楽しいポップなフュージョン・デュオ盤に仕上がっています。

 
 

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2017年5月12日 (金曜日)

現代ジャズの「深化」の成功例

「ジャズは死んだ」という評価は1970年代から始まった。しかし、僕は1970年代後半にジャズを聴き始めた。ジャズを聴き始めた頃、ジャズ界は空前の「フュージョン・ジャズ」のブーム。フュージョン・ジャズも沢山聴いた。でも「ジャズは死んだ」とは感じなかった。逆に「進化している」と感じた。

1950年代後半に大ブームとなった「ハードバップ」がジャズの全て、とする極端な意見もある。ジャズの進化は「コルトレーンの死と共に終わった」と言い切る人もいる。1970年代以降のフュージョン・ジャズはジャズじゃない、と切り捨てる人もいる。でも今、21世紀になってもジャズは世界中で多くの人に聴かれている。

さすがに21世紀になって、革新的な演奏方式やアプローチが出てくる可能性は少なくなってきたように思う。しかし、旧来の演奏方式、例えば「ハードバップ」や「モード・ジャズ」などを深く掘り下げたり、新たな演奏バリエーションを生み出すこと、また、他の音楽ジャンルとの融合、いわゆるフュージョンの裾野を広げること、など、まだまだジャズは「深化」していると感じる。
 

Symbols_of_light

 
Greg Osby『Symbols of Light』(写真左)。2001年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Greg Osby (sax), Scott Colley (b), Nioka Workman (cello), Marlon Browden (ds, perc), Jason Moran (p), Judith Insell-Stack (viola), Christian Howes, Marlene Rice-Shaw (vln)。パーソネルを見れば判るが、サックスのワンホーン・カルテットに弦楽四重奏が絡む。

結構「キワモノ」の編成であるが、この盤は「成功例」。サックスのワンホーン・カルテットのジャズに弦楽四重奏が違和感無く溶け込んでいる。新たな演奏バリエーションの成功例である。弦楽四重奏のメインはクラシックであり、ジャズにクラシックの要素をしっかりと溶け込ませている。いわゆる、フュージョンの裾野を広げているのだ。

アルバムの演奏を聴けばヒシヒシと感じるのだが、アレンジが行き届いている。適当にワンホーン・カルテットと弦楽四重奏を合わせている訳では無い。実に良く考えてアレンジされている様がとても良く伝わってくる。これだけ優れたアレンジを施しているとは、オズビー恐るべしである。結果、新しいジャズの響きを生み出している。これぞ、ジャズの「深化」である。

 
 

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2017年4月28日 (金曜日)

ジャケットに惚れて入手した盤

実はこの盤はジャケットに惚れて入手した。イラストっぽいジャズメン達も良し、タイポグラフィーも良し。とにかくデザインが良い。とてもジャズっぽい。見た瞬間に「これは」と思った。ジャズ盤のジャケットって、こんなデザイン的に優れたものが多い。

ジャケットのデザインが優れたジャズ盤の内容に外れは無い。この盤もその格言に外れることは無い。1996年当時の優れた内容のネオ・ハードバップ。パーソネルを見渡すと、オールスター・ジャムセッションか、と思うんだが、どうして、しっかりとアレンジされた、一期一会のまさにジャズらしい演奏がぎっしりと詰まっている。これには感心した。

そのジャズ盤とは、Jerry Bergonzi & Bobby Watson『Together Again For The First Time』(写真左)。1996年の作品。ちなみにパーソネルは、Jerry Bergonzi (ts), Bobby Watson (as/ss), Kenny Barron (p), David Finck (b on 1-4,6,9), Curtis Lundy (b on 5,7,8), Victor Lewis (ds)。

バーガンジィーのテナー、ワトソンのアルト&ソプラノの2管フロントのクインテット構成。全編に渡って、バーガンジィーのテナーとワトソンのアルト&ソプラノの2管による応酬は聴き応え十分。破綻無く、とても端正で流麗。アドリブフレーズは歌心満載で聴いていてウキウキする。
 

Together_again_for_the_first_time1

 
そうそう、ジェリー・バーガンジーとは、いわゆるボストン派テナー・サックスの重鎮。圧倒的なテクニックと鮮やかなアドリブ・フレーズが個性。1947年生まれなので、今年で70歳になる。この盤の録音時は49歳。ベテランの域に達しつつある充実の頃。

バックのリズム・セクションも良い。ピアノがケニー・バロン、これがまあ、端正で堅実なバッキングを繰り広げている。この盤の安定はバロンのピアノによるところが大きいのでは。そして、ビクター・ルイスのドラミングが素敵だ。凄くハードバップしている。この盤の爽快感とスピード感はルイスのドラミングによるところが大きい。

1996年の時代に、これだけ内容のあるネオ・ハードバップな演奏が繰り広げられていたとは改めて感心した。ジャズって確実に進化していたんですね。しっかりとアレンジされた、一期一会のまさにジャズらしい演奏は、その爽快感とスピード感がゆえ、1950年代のハードバップには無いものです。1996年の時代だからこそ為し得た、ジャズの成果だと感じます。

ジャケットに惚れて入手して、その盤聴いて感心する。ジャズ盤をずっとコレクションして聴き続けてきて、なんだか幸せだなあ、と思う瞬間です。

 
 

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2017年4月19日 (水曜日)

「音が良い」ということは尊い

アルバム鑑賞において「音が良い」ということは尊いことである。ジャズ発祥約100年、ジャズには古い録音が多々ある。古い録音であればあるほど録音の質は落ちる。それでも演奏が良いと録音の質には目をつぶって、我慢してその素晴らしい演奏に耳を傾ける。

硬派なジャズ者の方々の中には「ジャズの良し悪しに録音の質は関係無い」と言い切る人もいる。でも、ですね。録音の質が良ければ良いほど、楽器演奏のテクニックの良さ、楽器の出す音の響き、ニュアンスの豊かさの詳細がダイレクトに伝わってくる。録音の質の良さは、ダイレクトにその「ジャズの良さ」を明確に伝えてくれる。

まあ、一言で言うと「ジャズも録音の質が良いに越したことは無い」ということですね。録音の質の良し悪しって、ジャズにとっては、その「ジャズの良し悪し」の正しい理解をしっかりサポートしてくれる、そんな役割でしょうか。

『The Earl Klugh Trio, Volume. One』(写真左)。1991年のリリース。ちなみにパーソネルは、Earl Klugh (ac-g), Ralphe Armstrong (ac-b), Gene Dunlap (ds)。ありそうで無かった「ナイロン弦でのジャズ・ギター」。そんなありそうでなかったことを実現したナイロン弦の名手アール・クルーが1991年リリースしたトリオ編成のアルバム。
 

The_earl_klugh_trio_volume_2

 
アール・クルーと言えば、フュージョン・ジャズの人、というイメージが強い。アコースティックな純ジャズを好んでやるタイプでは無い。そもそもアコギという楽器自体、意外と「音の表現力」という面で、他の楽器と比べて劣るところがある。しかも、ナイロン弦である。音の表現の幅は意外と狭い。そういう面で、アコースティックな純ジャズで勝負するにはちょっとハンデが大きい。

しかし、アール・クルーは敢えて、この盤ではドラム+アコベとのトリオ編成で、かつスタンダード曲を全面的に取り上げ、内容的にかなり純ジャズなアルバムになっています。演奏の質はライトでアーバンなフュージョン・タッチなものですが、出てくる音は間違い無く「純ジャズ」なのが凄く良い。

この盤、抜群に録音の質が良い。アコベがブンブン唸りを立てて響き、ドラムのスネア、シンバルの音は生々しくダイナミズム抜群。そこにアール・クルーのテクニック豊かな「ナイロン弦なジャズ・ギター」がフロントに座る。オール・アコースティック楽器での音の響き、ニュアンス豊かなスタンダード演奏の饗宴。躍動感、透明感抜群の純ジャズである。

決して黒く無く、決してファンクネス過多でも無い。ライトでアーバンな、落ち着いた大人の純ジャズ、という面持ちが実に良い。アール・クルーのメロディラインは美しく音色も繊細。それをこの盤は「録音の質の良さ」でしっかりと豊かに聴かせてくれる。好盤です。

 
 

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2017年3月15日 (水曜日)

イタリアン・ジャズは魅力的だ

イタリアン・ジャズは実に魅力的だ。最近、イタリアン・ジャズの好盤を定期的に聴くように心がけているのだが、聴けば聴くほど、どんどんその魅力に惹き込まれていく。日本では最近まで情報が少なかっただけに、聴けば聴くほど、そのイタリアン・ジャズの深い森の中に、どんどん惹き込まれていくかのようだ。

このライブ盤だって、相当に魅力的だ。Enrico Intra & Franco Ambrosetti『Live In Milan 〜 Duo, Trio, Quartet』(写真左)。2009年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp), Enrico Intra (p), Lucio Terzano (b), Tony Arco (ds)。う〜ん、ほとんど知らん顔ばかり。

さて、Enrico Intra(エンリーコ・イントラ)とは、ネットの情報を紐解くと「欧州の歴史ある音楽をベースに、米ジャズの語法に頼ることなく早くも50年代に独自の『イタリアン・モード』を確立した巨匠」とある。ピアニストである。明らかに欧州的なピアノを弾くが、確かに米国ジャズっぽくない、欧州的ではあるが、ある種、独特の響きとフレーズが個性。

かたや、Franco Ambrosetti(フランコ・アンブロゼッティ)とは、やはりネットの情報を読むと「スイス出身で欧州を代表するトランペットの巨匠」とある。マイルス・デイヴィスをしてその「黒さ」を認めさせた、とあるが、確かにこの人のトランペットは欧州らしからぬファンクネスを感じるから不思議な存在だ。
 

Live_in_milan_duotrioquartet

 
この二人が対等に「双頭リーダー」となって、イントラのレギュラー・トリオにアンブロゼッティが加わる形で、サブタイトルにもあるように「デュオ、トリオ、カルテット」の3種の演奏形態で、こってこてメインストリームなジャズを展開する。明かに米国ジャズとは異なる、欧州的なメインストリーム・ジャズ。

透明度の高い音の響き、流麗で印象的なアドリブ・フレーズ。決して俗っぽくは無い。どこかしっかりアートな側面を宿したアレンジ。バックのリズム・セクションにファンクネスはほとんど感じない。それでいて、先にも書いたが、アンブロゼッティのトランペットが意外と「黒い」。これが実に個性的で面白い。このトランペットのみにファンクネスが宿っている。

加えて、このライブ盤、音が良い。というか、響きが実に印象的。なぜかなあ、と思って解説を見ると、ミラノ市内の歴史的建造物である「la Sala Certificati del Comune di Milano」という、大理石が使われた優雅なホールにてのライヴ・レコーディングだそうだ。なるほど、だから独特な響きがするのか。思わず惹き込まれそうになる、透明度が高く、豊かで混じりけのない響き。

冒頭の、Enrico Intra & Franco Ambrosettiのデュオ演奏「Take The "A" Train」を聴けば、欧州的ではあるが、ある種、独特の響きとフレーズがいかに個性的なのかが判っていただけるかと思う。半世紀に渡って二人の巨匠が眺めてきた「欧州的ヴィジョン」。それをしっかり体感できる、とても内容のある好盤です。

 
 

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2017年3月12日 (日曜日)

メインストリームなラテンジャズ

イタリア・ジャズが充実している。欧州ジャズが一般的になって久しいが、イタリアのジャズはなかなか日本には届かなかった。21世紀になって、ネットでの情報流通が早くなって、やっとイタリア・ジャズの全貌が日本に伝わるようになったと感じている。最近のことですよね、イタリアのジャズ盤を日常で聴くようになったのは。

イタリアのジャズ・トランペット奏者である「ファブリッツィオ・ボッソ(Fabrizio Bosso)」も最近、やっと馴染みのトランペットになってきた。1973年生まれなので、今年で44歳。もう若手では無い、現代のジャズを支える、中堅のジャズ・トランペッターである。このファブリッツィオ・ボッソの「聴いて楽しい」純ジャズ盤がある。

Fabrizio Bosso & Javier Girotto『Sol!』(写真左)。2008年の作品。ちなみにパーソネルは、Fabrizio Bosso (tp,flh), Javier Girotto (ss,bs,per), Natalio Mangalavite (p,key,vo), Luca Bulgarelli (el-b), Marco Sinscalo (el-b), Lorenzo Tucci (ds), Bruno Marcuzzi (per)。う〜ん、トランペットのファブリッツィオ・ボッソしか判らない(笑)。
 

Sol

 
ファブリッツィオ・ボッソがサックス奏者ハビエル・ジロットと組んだラテン・プロジェクトのアルバムである。ふむふむ、タイトルの『Sol!』とアルバム・ジャケットから何となく想像出来るラテン・プロジェクトである。選曲もラテン調の曲を持ってきているが、単純なラテン・ジャズの饗宴になっているかというと、そうでないところがこのアルバムの「ニクい」ところである。

ラテン調の明るいトーンのフレーズ展開ではあるが、基本的に「ラテンのリズムにモーダルな」演奏。メンストリーム・ジャズのアーティステックな面とラテン調の楽曲のポップスな面とが上手く融合して、聴いて楽しい、聴いて聴き応えのある、なかなか内容のあるアルバムに仕上がっている。

ボッソのトランペットとジロットのサックスの都会的で小粋な熱いブロウが心地良い。ラテン調の楽曲、ラテンのリズムにモーダルな演奏がとても楽しい。録音も良好、ジックリと聴き耳立てるも良し、あっさりと聴き流して「ながら聴き」で楽しむも良し、なかなか充実した内容の企画盤です。メインストリームなラテン・ジャズ。イタリア・ジャズも隅に置けませんな。

 
 

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2017年3月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・78

ラリー・コリエルが亡くなった。僕にとってのコリエルとは、クロスオーバー・ジャズの代表的ギタリストの一人で、彼のエレギはほとんどロック。それもほとんどハード・ロック。バックのリズム・セクションがなんとかジャズのビートに軸足を乗せているので、演奏全体はクロスオーバー・ジャズで落ち着いてはいるが、コリエルのエレギは明らかに「ハード・ロック」。

そんな「ハード・ロック」なクロスオーバー・エレギ、1970年代辺りでその流行は終わったんやろなあ、と思いつつ、コリエルだけが意外と晩年もハード・ロックなクロスオーバー・エレギをやってたんで、コリエルだけが「絶滅危惧種」なんやなあ、なんて感慨に耽っていた。しかし、である。

Csaba Toth Bagi『Aved Ivenda』(写真左)。2012年の作品。チャバ・トス・バギと読むらしい。ここでは「バギ」と呼ばせていただく。宣伝のふれこみは「セルビアが生んだフュージョン・ギターの貴公子」。セルビア出身とは珍しい。さて、このバギのエレギが凄い。徹頭徹尾、ハード・ロックなクロスオーバー・エレギなのだ。ハード・ロックの如く、ギンギンのエレギを弾きまくっている。
 
   
Aved_ivenda1
 
 
しかし、である。アドリブ・フレーズの響きがちょっと「面白い」。どう考えても普通のフレーズでは無い。明らかに「ワールド・ミュージック」がかっている。面白いフレーズがどしどし飛び出てきて、これは単純にハード・ロックなクロスオーバー・エレギでは無い、ワールド・ミュージックを融合したハード・ロックなフュージョン・エレギである。

ネットで調べてみると「両親の故郷ハンガリーやマケドニアなど自身のルーツをベースにしたフュージョン盤」とあって至極納得。なるほど、だから、ワールド・ミュージックを融合したハード・ロックなフュージョン・エレギな雰囲気が色濃く漂っている訳やね。エレギはギンギンに弾きまくり。ハンガリーのゲイリー・ムーアと呼ばれ、欧州ではガッツあるギタリストとして知られる、とある。

このアルバムのバギのプレイを聴いていて、なるほど、と思う。21世紀になって今年で2017年。今の時代に、フュージョン・ジャズの世界で、こんなギンギンに弾きまくる、ハード・ロックなエレギが聴けるとは思わなかった。
 
 
 

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