2022年7月 5日 (火曜日)

ジョン・スコフィールドの凄み

ジョン・スコフィールド(John Scofield・愛称「ジョンスコ」)のギターがお気に入りである。初めて、ジョンスコを聴いたのが1979年。確か『John Scofield Live』だった。独特の捻れたエレギの音。間と音の伸びを活かした、音のスペースが絶妙なアドリブ展開。1回聴いただけで、ぞっこん、である。

当時のジャズ・ギターの世界の中でも、ジョンスコは、ジョン・アバークロンビーと双璧の「尖ってプログレッシヴ」なジャズ・ギタリストだった。

『John Scofield』(写真左)。2021年8月、ニューヨーク、カトナ、トップ・ストーリー・スタジオにての録音。キャリア初となるソロ・アルバムになる。ECMレーベルからのリリース。ECMレーベルからのリリースは、2020年の『スワロウ・テイルズ』に続き、本作が2枚目。

このジョンスコのソロ・パフォーマンス。独特の雰囲気が漂う、唯一無二な内容。リズム&ビートは、ジョンスコ好みのコードとリズムをループ・マシンに入れて、それを使用したもののみ。即興パフォーマンスのフレーズの流れの中に、ジョンスコ独特のグルーヴが存在する。

ジョンスコの強烈に個性的なエレギの音が、延々と流れる様に、浮遊する様に広がっていく。それでいて、決してマンネリに陥らない。常に新しいフレーズ、新しい響き、新しい音色が湧き出てきて、聴いていて、とても楽しめる。
 

John-scofield-solo-2022

 
この新盤に関するインタビューの中で、ジョンスコの印象的な言葉がある。「家で一人で演奏することで身についた繊細さがあると思う」。コロナ禍の影響が窺える。その中で「バンド演奏がなくなってしまって、弦楽器の美しさをピンポイントで表現するような、より繊細なアプローチに取って代わった」とある。

そのジョンスコの言葉通りのこの新盤の音世界。ジョンスコのエレギの個性はそのままに、とても繊細にフレーズを紡ぎ、とても繊細にピッキングの表情を変えていく。このテクニックの高さも特筆すべきもの。そして、捻れた独特のフレーズの中に、濃厚に横たわる歌心。

特に、この盤では、ジャズ・スタンダード曲が秀逸。数々のスタンダード曲を独自の解釈で演奏していて、これがどの曲も素晴らしい出来なのだ。「My Old Flame」では、ループ・マシンを止めて、ジョンスコのギターだけが鳴り響く。これが、また良い。それだけでは無い。ジョンスコ自身の作曲した楽曲も良好。ジョンスコのギターの個性と独自の解釈が冴えに冴える。

ジャズとは即興の音楽である。そんな言葉をこのジョンスコの新盤を聴いて、再認識する。ジョンスコはループ・マシーンと対話しながら「即興演奏の妙」を綿々と弾き進めていく。そして、その即興演奏のフレーズが常に新しい想像力に満ちている。ジョンスコのジャズ・ギタリストとして凄みを感じる。そんな新盤である。
 
 

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2022年7月 1日 (金曜日)

Miles Davis『Bitches Brew』

エレクトリック・マイルス、マイルス・デイヴィスのエレ・ジャズ時代のアルバムを順に聴き直している。今の耳で聴き直してみると、10〜15年前には聴こえなかった音や見逃していた音が聴けたりして、意外と面白い。

現代ジャズでは、エレクトリック・ジャズは、ジャズの1ジャンルとして認められていて、意外とエレ・ジャズをやるジャズマンは結構いる。その現代のエレ・ジャズの担い手は、皆、エレ・マイルスの音世界をしっかりと踏まえつつ、自らのエレ・ジャズを表現している。立派である。

Miles Davis『Bitches Brew』(写真左)。1969年8月の録音。ちなみに、パーソネルは、Miles Davis (tp), Bennie Maupin (bcl), Wayne Shorter (ss), Chick Corea, Joe Zawinul (el-p), John McLaughlin (g), Dave Holland (b), Harvey Brooks (el-b), Jack DeJohnette (ds), Lenny White (ds), Don Alias (cga), Jim Riley (shaker)。当時のジャズの先端を行く一流どころがズラリと顔を並べている。

この盤はマイルスのリーダー作の歴史の中で、「大名盤」の扱いを受けていて、今更、その詳細を語るのは憚られる。書籍やネット記事に多くの評論が載っているので、一般的な評論については、そちらを参照されたい。ここでは、僕の個人的な、主観的な印象を語らせていただく。

前作『In a Silent Way』で、「エレ・マイルス」の方法論、エレ・ジャズの基本は「ビート」、という方法論を確立した訳だが、この盤ではその方法論に則り、当時、米国で流行していた「サイケデリック・ロック」や「プログレッシブ・ロック初期」の音を「エレクトリック・ジャズ」でやることが音のコンセプト。サイケやプログレをやるには、ビートの幻想的な広がりや揺らぎが必要なので、どうしても電気楽器の力が必要になる。
 

Miles-davisbitches-brew

 
マイルスの場合、必要に応じた電気楽器の導入しているので、電気楽器の活用が前提のジャズでは無く、ジャズとして表現したい音世界に電子楽器が不可欠だっただけなのだろう。マイルスの音楽に「コマーシャル」な側面は無い。録音当時、どんな音がヒップでクールか、だけを考えて、それに応じて、参加ジャズマンを選定し、必要な楽器を厳選している。

この『Bitches Brew』は、今の耳で聴くと、突拍子も無いエレ・ジャズでは無く、必要に応じて電気楽器を導入した、限りなく自由度の高いモード・ジャズ、言い換えると、当時のメインストリーム志向のコンテンポラリーな純ジャズだといえる。クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの原点がこの盤にある、とする評論もあるが、違う様な気がする。

この盤の音世界は、当時の(現代でもだが)メインストリームな純ジャズであり、必要が故に電気楽器を導入しているだけ。電気楽器の導入が前提でロックビートを採用したクロスオーバー・ジャズや、聴き心地の良い、ソフト&メロウでソウルフルなフュージョン・ジャズとは、音作りの志向が全く異なる。

この盤でも、マイルスは、ジャズの原点である「即興音楽の可能性」について執拗に追求しているだけで、音のコンセプトに関して、「サイケデリック・ロック」や「プログレッシブ・ロック初期」の音の要素を引用しているに過ぎない。そうして、出来上がった音世界が、限りなく自由度の高いコンテンポラリーな純ジャズであり、サイケやプログレを彷彿とさせるポリリズミックで変則拍子なビートの採用だったのだ。

エレ・マイルスの基本は「ジャズ」。この盤も今の耳で聴くと、しっかりと「メインストリームなジャズ」であり、クロスオーバーでも無ければ、フュージョンでも無い。この盤に表現されているのは、サイケでプログレなビートに乗った「即興演奏を旨とするジャズ」である。
 
 

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2022年6月30日 (木曜日)

真夏のヘビロテ・ピアニスト

暑い。暑すぎる。酷暑である。ここ千葉県北西部地方で、気温36〜7℃。朝の9時あたりで30℃を越える。もう朝から真夏日。外へ出ることは出来ない。身の危険を感じる。しかし、この猛暑の夏になると聴きたくなるジャズがあるから面白い。Dollar Brand(Abdullah Ibrahim)である。彼の「アフリカン・ネイティヴ」なジャズの音世界が無性に聴きたくなる。

Dollar Brand(Abdullah Ibrahim)『Zimbabwe』(写真左)。1983年5月29日、独ルートヴィヒスブルクの「Tonstudio Bauer」での録音。ちなみにパーソネルは、Dollar Brand /Abdullah Ibrahim (p, ss), Carlos Ward (as, fl), Essiet Okun Essiet (b), Don Mumford (ds)。アフリカ回帰なレジェンド・ピアニスト、アブドゥーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)の好盤である。

ジャズはアフリカン・アメリカンが育んだ音楽であるが、アブドゥーラ・イブラヒム(ダラー・ブランド)は、そんなジャズを生み出したアフリカン・アメリカンのルーツであるアフリカの「ルーツ音楽」をベースにジャズを展開したユニークなピアニスト。この盤でも、そんな「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気の音世界がてんこ盛り。これが、猛暑の夏の雰囲気に合うんですね〜(僕だけかなあ)。
 

Dollar-brandabdullah-ibrahimzimbabwe

 
アフリカの土着音楽の響き、哀愁感と郷愁感がない交ぜになった、パーカッシヴでエスニックな音世界。このユニークな音世界を彷彿とさせるフレーズを、ハイテクニックなピアノで紡ぎ上げて、モーダルなジャズに昇華している。そして、イブラヒム自らのソプラノ・サックスや、カルロス・ワードのアルト・サックスやフルートの音色が、そんな「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気を増幅している。

この盤の良さは「適度な余裕」。ロックで言うと「レイドバック」しているところ。「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気だからといって、過度のストイックにならず、どこかポップさを宿して、「くつろいだ、リラックスした」ホンワカなアフリカの土着音楽の響きがとても良い。聴いていて、スッとリラックスしていく感じがとても素敵だ。

もともとの名前が「Dollar Brand(ダラー・ブランド)」。1970年前後に、イスラム教に改宗し「Abdullah Ibrahim(アブドゥーラ・イブラヒム)」に改名したので、ダラー・ブランド=アブドゥーラ・イブラヒム、同一人物である。僕は、イブラヒムの「アフリカン・ネイティヴ」な雰囲気の音世界が大好き。特に、真夏に良く聴く「真夏のヘビロテ・ピアニスト」である。
 
 

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2022年6月28日 (火曜日)

猛暑の日々にラテン・ジャズ

先日、梅雨が明けた関東地方。梅雨明けしたら、しばらく暑い日が続くと言うが、それにしても暑い。暑過ぎる。連日の真夏日。朝からエアコンが無ければ、家の中でも過ごせない。これだけ暑いと思考も鈍る。もはや難しいジャズは聴きたくない。聴いて良く判る、聴いて楽しいジャズが良い。

『The Latin Jazz Quintet』(写真)。1960~61年、NYにて録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (fl, b-cl, sax), Felipe Diaz (vib), Bobby Rodriges (b), Artur Jenkins (p), Tommy Lopez (congas), Luis Ramirez (timbales)。こってこてポップなラテン・ジャズ。しかし、フロント管に、エリック・ドルフィーが参加している異色盤である。

パーソネルを見て「なんなんだ、この盤」と思った。ドルフィー以外、ほとんど知らないメンバーばかり。タイトルから「ラテン・ジャズ」をやっている盤。しかも、ドルフィーがラテン・ジャズをやる、とな? これは途方も無い「駄盤」か、意外と面白い「異色盤」かのどちらかだ。しかし、この最近の酷暑で、難しいジャズは嫌だ。ということで、この不思議なラテン・ジャズ盤を聴くことにした。
 

The-latin-jazz-quintet_1

 
ドルフィーは独特に捻れたサックスを封印して、メンバーの一員として、調和の取れたパフォーマンス。しかし、サックスの基本が相当しっかりしているのだろう、良い音出している。フルートもバスクラも良い音出している。ラテン・ジャズの独特の旋律を、とても良い音で、とても良いブロウで吹き上げている。ドルフィーの全く違った、しかし別の優れた側面を聴いた様な気がして、不思議な高揚感にかられる。

収録曲が面白い。ラテン・ジャズの演奏でありながら、収録曲はジャズ・スタンダード曲がメイン。ラテン・ジャズの企画盤なので、ラテン・ミュージックのヒット曲などを選曲するのが常套手段だが、この盤は違う。ラテン・ジャズの企画盤なのに、収録された演奏は、ジャズ・スタンダードをラテン・ジャズ風にアレンジしたものばかり。これが聴いていて面白い。難しいことを考えること無く、ラテン・ジャズ風にアレンジするとこうなるのか、とあっけらかんと感心するばかりである。

全体の雰囲気は「ラウンジ・サウンド」風なんだが、演奏の基本がしっかりしているので、意外と聴き応えのある「ラテン・ジャズ」に仕上がっているのだから面白い。猛暑の日々に、肩肘張らずにリラックスして楽しんで聴けるジャズ。こういうジャズもたまには良い。
 
 

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2022年6月27日 (月曜日)

マルティーノの初リーダー作

3日連続の真夏日。家にいても、エアコンをかけていても、動くと汗がジンワリ出てくる。精神的にも変に疲れてきた様な気がする。これだけ暑いとジャズを聴くどころでは無い。が、やっぱりジャズを聴いて、気分だけでもスカッとしたい。ちょうど最近「小粋なジャズ」を探しては聴いている。「小粋なジャズ」にはシンプルで爽快感溢れる盤が多く存在する。今の「酷暑の日」にピッタリだ。

これだけ暑くなると、まず、フリー・ジャズや、自由度の限りなく高いモーダルなジャズは、難度が高くて、この「酷暑の日々」には、絶対に向かない。1曲聴くだけで、額に汗が噴き出してくる。ガンガンにノリの良い「熱い演奏」のハードバップも駄目だ。1曲聴くと、目の前がクラクラしてくる(笑)。切れ味の良い、スインギーで聴き心地の良い、判り易いジャズが良い。聴いて楽しい「小粋なジャズ」が良い。

Pat Martino『El Hombre』(写真左)。1967年5月1日の録音。Prestigeレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Pat Martino (g), Danny Turner (fl), Trudy Pitts (org), Mitch Fine (ds), Vance Anderson (bongos), Abdu Johnson (congas)。ボンゴとコンガ入り、リーダーのマルティーノのギターがメイン、管楽器にフルートを配し、オルガンを入れた6人編成。マルティーノ、弱冠22歳での初リーダ作の録音であった。
 

Pat-martinoel-hombre

 
遅れてきたバップ・ギタリスト、マルティーノの初リーダー作。そのマルティーノのギターが爽快。絶好調である。コンガとボンゴを入れてリズム隊を増強した「ファンキー・ジャズ」の範疇の演奏ではあるが、マルティーノのギターは、ストレートで変な捻りが皆無。少し骨太な音で、高速フレーズを弾き進めていく。このマルティーノのギター・パフォーマンスは爽快そのもの。

聴き手に迎合すること無く、硬派で真摯で男気溢れるハードバップな演奏をグイグイ引っ張っていく。飄々と速いフレーズを弾き進めていくので、聴き流している分には単純な弾き回しに聴こえるが、しっかり聴くと結構、複雑なことをやっている。ファンクネスはしっかり備わっているのだが、粘ること無く、黒くなること無く、乾いて、どちらかと言えば「白いファンキーなジャズ・ギター」が当時として新しい個性。

ハイテクニックで意外と複雑なことをやっているのに、切れ味の良い、スインギーで聴き心地の良い「判り易いジャズ」な、聴いて楽しい「小粋なジャズ」な、演奏に仕上げっているのに感心する。シンプルで切れ味が良くて骨太な、単旋律がメインのマルティーノのギター。迫力抜群、グイグイ耳に訴求するマルティーノのギター。爽快抜群で、聴いた後、スカッとします。
 
 

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2022年6月16日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・239

もともとベースは「縁の下の力持ち」的存在。ベーシストの個性はその楽器の特性上(ソロやフレーズのバリエーションが少ない)、管楽器や鍵盤楽器ほど、明確にはならない。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっているか、若しくは、担当のプロデューサーが、リーダーのベーシストの何を表現したいかが明確になっていないと、良いリーダー作にはなかなかならない。

Jimmy Haslip『Arc』(写真左)。1993年の作品。ちなみにパーソネルは、Jimmy Haslip (b), Peter Erskine (ds) のリズム隊のみ固定メンバーで、あとは曲毎にメンバーを選定して演奏に臨んでいる。次世代を担う中堅ベーシスト、ジミー・ハスリップの初リーダー作。リリース当時42歳(今年で72歳)。録音当時はバリバリな中堅ベーシストである。

ハスリップはフュージョン・ジャズ畑のベーシストで、彼は長年、Yellowjackets(イエロージャケッツ)のオリジナルメンバー、ベーシストとして活動している(2012年、フェリックス・パストリアスと交代し脱退)。良く唄うエレベで、リズム&ビートを堅実に押さえて、ソロでは旋律楽器の如く「唄う」エレベである。ほど良く角の取れたジャコ・パストリアスといった風情。
 

Jimmy-haslip-arc

 
この盤に詰まっている音は「ウエザー・リポート」。そこはかとなく、ウエザー・リポート全盛期、『ミステリアス・トラベラー』から『ナイト・パッセージ』辺りまでの音が、そこはかとなく、このハスリップの初リーダー作に反映されている。しかし、音のカヴァーでは無い。雰囲気が「ウエザー」で、演奏自体は「ウエザー」の音をスムース・ジャズ化した様な音世界。

ベースとドラムだけを固定して、後は色々なゲストが演奏する、そして、アレンジャーも複数名が担当しているが、アルバム全体の雰囲気の統一感は見事。純ジャズ基調のコンテンポラリーなエレジャズとして、その出来は良い。さすが、イエロージャケッツのオリジナルメンバーとして、フュージョン・ジャズを極めて来ただけはある、見事な初リーダー作である。

ハスリップのベースがほどよく角の取れたジャコの雰囲気、ドラムはウエザー全盛期のドラマー、アースキンそのもの。このベースとドラムのリズム隊だけで、「ウエザー・リポート」の音の雰囲気のベースをしっかり表現しているのは、凄いなあ、と感心するばかり。リーダーである当の本人が何をやりたいかが明確になっている「ベーシストのリーダー作」は聴いていて気持ちが良い。
 
 

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2022年6月 9日 (木曜日)

北欧のピアノ・トリオの「今」

「ECM(Edition of Contemporary Music)」。創立者はマンフレート・アイヒャー。演奏家としての素養と録音技術の経験を基に、自らが選んだ「今日的」な音楽を記録し、世に問うべく、自らのレーベルを1969年に立ち上げる。西洋クラシック音楽の伝統にしっかりと軸足を置いた「ECMの考える欧州ジャズ」。限りなく静謐で豊かなエコーを個性とした録音。

21世紀に入っても、ECMレーベルの活動は衰えることは無い。北欧系、東欧系、イスラエル系の有望なジャズマンを積極的に発掘し、ECMらしいニュー・ジャズをリリースし続けている。マンフレート・アイヒャーは今年で79歳。ECMの総帥プロデューサーとしてまだまだ盛んである。

Tord Gustavsen Trio『Opening』(写真左)。2021年10月、スイスにての録音。ちなみにパーソネルは、Tord Gustavsen (p, electronics), Steinar Raknes (b, electronics), Jarle Vespestad (ds)。リーダーのピアニスト、トルド・グスタフセンは、ノルウェー出身のジャズ・ピアニスト。ECMからのトリオ作品としては5作目になる。
 

Tord-gustavsen-trioopening

 
墨絵の様な、漂うが如き、芯の入った音の広がり。ゆったりとした展開のインタープレイ。そこに、ECMレーベル独特の「限りなく静謐で豊かなエコー」がかかる。静謐かつ深遠にて耽美的な、そして、どこか一筋の光が差し込んで来る様な音世界。マイナーな和音の重ね方が「北欧ジャズ風」。北欧ジャズ独特の「不思議な開放感」が心地良く耳に響く。

グスタフセンの内省的で耽美的なピアノが映える。広がりと間に重きを置いた、ゆったりとした弾きっぷりだが、しっかりとしたタッチで音を重ねる。ノルウェーの実力派ベーシスト、スタイナー・ラクネスが、変幻自在なベースで、演奏のベースラインを際立たせる。同じくノルウェー出身のヤール・ヴェスペスタの繊細なスティック捌きと硬軟自在なブラシワークが演奏全体のリズム&ビートをしっかりと支える。

叙情的でリリカルな旋律が淀みなく淡々と流れて行く、スイング・ジャズの対極にある演奏。時に出てくるマイナー調のゴスペルっぽい響きは北欧ジャズ独特の響き。この盤は、現代の北欧ジャズの「今」を、ECMレーベルのピアノ・トリオの「今」をじっくりと聴かせてくれる。
 
 

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2022年6月 8日 (水曜日)

2014年のホールズワースです。

アラン・ホールズワース(Allan Holdsworth)が亡くなったのは、2017年4月15日。既に4年が経過したことになる。享年70歳は今では「若すぎる」。前年の2016年に16年振りのソロ・アルバムをリリースした矢先の出来事であり、2017年4月10日にサンディエゴで、彼の最後のギグを元気に演奏していたというのだから、余りに急すぎる「死」であった。

Allan Holdsworth『Jarasum Jazz Festival 2014』(写真左)。2014年10月5日、韓国ジャラサムのジャズフェスでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g), Jimmy Haslip (b), Gary Husband (ds)。ホールズワース、鉄壁のトリオ演奏。ホールズワースのオフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズの第5弾になる。

ホールズワースのエレギは、アームを駆使した捻れフレーズに、独特で流麗なレガート奏法をメインにバリバリ弾きまくるのだが、このライヴ盤でも同様な、テンションの高い、ハイテクニックで疾走感溢れる演奏が繰り広げられている。このライヴ録音当時、ホールズワースは67歳。このガンガンに高速フレーズを、アームを駆使してグチョングチョンに弾きまくるのだから凄い。還暦を過ぎた大ベテラン・ギタリストの仕業とは思えない。
 

Allan-holdsworthjarasum-jazz-festival-20

 
即興性を重んじたパフォーマンスなので、ジャズの範疇に留まっているが、このホールズワースのエレギは従来のジャズの範疇から、はみ出している。しかし、リズム&ビートはジャジーで、決してロックでは無い。加えて、ファンクネスは皆無。とにかく高速なカッ飛び&捻れフレーズを弾きまくる訳で、伝統的なモダン・ジャズの範疇の演奏では無い。いわゆるニュー・ジャズの範疇で、そこがホールズワースの個性であり、孤高の存在である所以である。

このライヴ盤でのホールスワーズのパフォーマンスは若かりし頃のそれと全く変わらない。こんな過激なエレギをフロントにした、バックのリズム隊、ハスリップのベース、ハズバンドのドラムについては、これまた「凄い」の一言。ホールズワースの最高レベルのパフォーマンスを向こうに回して、全くひけを取らない、対等に相対し、強烈なインタープレイを丁々発止とやりあう。このバンドの最高に近いパフォーマンスの記録である。

これだけ、先進的で過激、強烈な個性の下、アームを駆使した捻れフレーズ、独特で流麗なレガート奏法を弾きまくる、ジャズ・ギタリストにおける「代表的スタイリスト」の1人でありながら、生前はなかなか環境に恵まれなかったようだが、死後、リリースされ続けている「オフィシャル・ライヴ・アーカイヴ・シリーズ」はどれもが素晴らしい内容。このアーカイヴ・シリーズのリリースによって、ホールスワーズのギターが再評価されることを強く願っている。
 
 

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2022年6月 7日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・237

Gilad Hekselman(ギラッド・ヘクセルマン)。ヘクセルマンはイスラエル出身のジャズ・ギタリスト。ファンクネスやスイング感は皆無。リリカルで情緒豊かでネイチャー風、少し捻れていてエキゾチック。ちょっとパット・メセニーを想起する面はあるが、基本的に、今までの米国のジャズ・ギターには無い個性である。

Gilad Hekselman『Far Star』(写真左)。2020年3月〜12月にテルアビブ、2020年12月〜2021年6月にNY、2020年9月にフランス、3ヶ所での録音。ちなみにパーソネルは、Gilad Hekselman(g, key, b, whistle, tambourine, body percussion, voice), Eric Harland (ds), Shai Maestro (key), Ziv Ravitz (ds), Amir Bresler (do-production, ds, perc), Nomok (do-production & key), Nathan Schram (viola, violin), Alon Benjamini (ds, perc), Oren Hardy (b)。

ギラッド・ヘクセルマンの新盤になる。冒頭、口笛で始まる「Long Way From Home」から、哀愁感&寂寞感溢れる、マイナー調のリリカルで情緒豊か、エキゾチックな響き濃厚なサウンドに思わず耳を奪われる。今回の新盤では、ネイチャーな響きは薄れ、エキゾチック&エスニックなマイナー調の、不思議な浮遊感が際立つ哀愁フレーズがメインになっている。
 

Gilad-hekselmanfar-star

 
演奏の大本は、エキゾチック&エスニックなマイナー調の哀愁フレーズをベースにしたニュー・ジャズ風の展開だが、ところどころにフリーに傾いたり、アバンギャルドに走ったりと、意外と硬派でシビアな純ジャズ。過去のジャズの遺産の継承はあまり感じられない、プログレッシヴな、今まで聴いたことの無いフレーズがてんこ盛り。イスラエル・ジャズの個性である「音の広がりと間を活かした耽美的でリリカルな音世界」はしっかりと押さえられている。

3曲目の「I Didn’t Know」ではアコースティックギターを弾いているが、どこかノスタルジックでネーチャーな音世界が実に良い。この音の雰囲気は今までに聴いたことが無い。5曲目「Magic Chord」は奇妙なヴォイシングのコードの連続だが、耽美的で哀愁感溢れる雰囲気が独特。ラストの「Rebirth」は変拍子に乗って、耽美的でポジティヴな響きのエレギが芳しい。逆回転風の効果音も散りばめられ、実にミステリアスでプログレッシヴな音世界だ。

ギラッド・ヘクセルマンいわく「パンデミックに見舞われ、突然、この音楽を実現するために残されたのは、楽器とマイクとコンピューターだけだった」。コロナ禍によって、自室に閉じ込められたヘクセルマンが、先行きが見通せないまま、作り続けてきた音楽。様々な想いが交錯し、様々な想いが込められた楽曲。どこか敬虔でスピリチュアルな響きがするのは、そういう背景があったからなのだろう。現代ジャズの秀作の一枚である。
 
 

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2022年6月 6日 (月曜日)

メルドーの考える「プログレ」

今や、ブラッド・メルドー(Brad Mehldau)は、現代ジャズ・ピアノの代表格。「キース・チック・ハービー」のジャズ・ピアノの第2世代の後継、第3世代の筆頭と言っても良い。

しかし、メルドーのピアノは、歴史的に著名なスタイリストの要素を多角的に取り入れつつ、自らの個性を添付しているスタイルなので、その個性が見えにくい。しかし、総合力を武器とするピアニストでは無い。明らかに、現代ジャズ・ピアノのスタイリストの1人であることは確かである。

加えて、メルドーは、他のジャンル、特にロック&ポップス畑の楽曲に着目し「ジャズ化」するのが得意である。しかもその「ジャズ化」がほぼ成功を収めているのだから凄い。

以前の第2世代のピアニストにも、ロック&ポップス畑の楽曲の「ジャズ化」を目論んだケースもあったが、基本的に成功を収めた例は少ない。ロック&ポップスの楽曲の持つキャッチャーなメロディーを踏襲しすぎて、ジャズの本質である「即興性=アドリブ展開」を置き去りにした失敗例が多い。

Brad Mehldau『Jacob's Ladder』(写真左)。2022年3月のリリース。ちなみにパーソネルは、Brad Mehldau (p, key,sinth, etc.), Mark Guiliana (ds), Becca Stevens, Pedro Martins (vo), Joel Frahm (ss), John Davis (ds programming), Chris Thile (mandolin) etc.。ブラッド・メルドーがマーク・ジュリアナのサポートを得て制作した電子音アプローチの第3弾。

往年のプログレッシヴ・ロック(以降、略して「プログレ」)好きのメルドーによる、プログレからの音楽的インスピレーションをジャズに交えて、プログレの楽曲を「ジャズ化」した、実にユニークなリーダー作。プログレを「ジャズ化」するのだから、電子音アプローチを採用しているのか。なるほど、と至極納得である。
 

Brad-mehldaujacobs-ladder

 
メルドーは次のように語る。「ラッシュやジェントル・ジャイアント、エマーソン、レイク&パーマーらによるプログレは、ジャンルがもつコンセプト性、コンセプト的な部分、そして感情的な部分の幅を示唆している」。確かに、プログレはジャズに通じるものが多い。僕も高校時代はバリバリの「プログレ小僧」だったので、それが良く判る。

この『Jacob's Ladder』は、ジャズ側から見た「プログレ」。音の全体の雰囲気はジャズだが、演奏自体は「プログレ」そのものと言って良い位だ。2曲目「Herr und Knecht」は、まるでEL&P。ラストの「Heaven」については、耽美的なピアノ・フレーズに続いて,Yesの「Starship Trooper」の「Life Seeker」が出てくる。その他、Rush, Gentle Giant, Peripheryをカヴァーしている。

う〜ん、このメルドーの新盤、純粋にジャズ盤として取り扱って良いのやら(笑)。メルドーが表現する「ジャズの衣を着たプログレ」かな。プログレを聴き親しんだ「プログレ小僧」にとっては、ジャズというよりは、純粋にプログレに聴こえる。

そうか、演奏の底のリズム&ビートが「プログレの持つ変拍子の複雑なリズム」を取り入れているからか。そう、この盤のリズム&ビートは「ジャズ」とはちと違うのだ。これが、恐らく、妙な違和感の理由だろう。

しかし、現代ジャズ・ピアノの代表格のブラッド・メルドー、良い意味で「厄介な」アルバムをリリースしたもんだ。恐らく、ジャズ者の方々の中では賛否両論だろうなあ。僕は「これはアリ」です。僕の頭の中では「ジャズ ≒ プログレ」ですから。何も「プログレ」はロックでしかやってはいけない、なんて決まりも無いですしね。僕は楽しんで聴くことが出来ました。
 
 

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