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2018年1月12日 (金曜日)

ウィントン・マルサリスの再評価

ウィントン・マルサリスは、ジャズの歴史の中でも屈指のトランペッターだと思う。テクニックは素晴らしく優秀、アドリブ・フレーズは流麗、歌心もしっかりと併せ持って、その端正かつ切れ味の良い吹きっぷりは、確かに「屈指のトランペッター」として良いと思う。しかしながら、一般のジャズ者の方々から、はたまた、仲間のジャズメンからも、先達のジャズメンからもどうにも評判が悪い。困ったものである。

1980年代、純ジャズ復古の流れの中で、新伝承派のリーダーとして祭り上げられ、ウィントン自身もその気になって、あれやこれや、過去のジャズメンや現役のジャズメンのやることなすことを、歯に衣を着せずに批判する。そして、自分たち「新伝承派」を始めとする、アコースティックな純ジャズを極めようとする若手ジャズメンだけを「真のジャズメン」とする言いようと振る舞いに、基本的に「嫌われた」。

その普段の言いようと振る舞いが災いして、リリースするリーダー作はどれもが優秀な内容ながら、ウィントン自体に対する評判が芳しく無い。あまりにその内容が完璧なので、完璧が故に面白く無いとも評された。それでも、ウィントンはその普段の言いようと振る舞いを修正しようとしない。しかし、彼の社会的地位は相当に向上した。逆に、ジャズの世界の中では、最近、あまり話題にならなくなった。ほんと、最近、どうしているのだろう。
 

Marsalis_standard_time_vol1

 
彼の名誉の為に、フラットな気持ちで語るならば、ウィントンのリーダー作はどれもが素晴らしい内容なのだ。例えば、このアルバムを聴けば、その素晴らしい内容をダイレクトに体験出来る。Wynton Marsalis『Marsalis Standard Time, Vol. I』(写真左)。1987年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Marcus Roberts (p), Robert Leslie Hurst III (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。当時にして「鉄壁」のワンホーン・カルテットである。

ウィントンのットランペットを始めとして、カルテットの他のメンバーを含め、そのテクニックは凄まじく、アンサンブルは端正、フレーズを流麗、歌心満載、繊細かつ大胆なアドリブを展開。有名どころのスタンダード曲を演奏しているのだが、その内容は秀逸。アドリブ・フレーズまで譜面に落としているかの様に、あまりに端正かつ流麗。あまりに端正かつ流麗、あまりに優等生な演奏の為、何度か繰り返し聴いていると「飽き」がくる。そこが難点と言えば難点。

ウィントンは誤解されている。しかし、その問題となる、普段の言いようと振る舞いを止めようとしない「大人げの無さ」も確か。勿体ないなあ、と思う。社会的地位は極めた感のあるウィントンではあるが、本業のジャズメン単体としては、どうにも評価が定まらない。そのジャズメンの持つ「心根」がダイレクトにパフォーマンスに反映されるのがジャズの面白いところ。今一度、ウィントン・マルサリスを聴き直して再評価をしてみよう、最近、そう思い至った次第。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年12月23日 (土曜日)

チックとガッドの新プロジェクト

チック・コリアは、僕のお気に入りピアニストの筆頭。1941年生まれなので、今年で76歳。結構な高齢になってきたのだが、まだまだ現役。もはや「生きたレジェンド」状態なのだが、まだまだ時代の最先端をいく、コンテンポラリーな純ジャズを中心に活動している。そんなチックがドラムのスティーヴ・ガッドと組んで、新しいバンドを立ち上げた。

Chick Corea & Steve Gadd『Chinese Butterfly』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Chick Corea (p, key), Steve Gadd (ds), Lionel Loueke (g), Steven Wilson (sax, fl), Carlitos Del Puerto (b), Luisito Quintero (per)。チック・コリアとスティーヴ・ガッドという巨匠二人による新プロジェクトのデビュー盤。日本で11月22日発売。世界に先駆けて日本大幅先行発売である(海外は来年の1月18日のリリース予定)。

もともとチックは、ガッドのドラムと相性が良い。たまにしか組まないのだが、組んだ時のパフォーマンスはどれもが素晴らしい出来。切れ味良く固いタッチのチックのピアノに、縦ノリの柔軟度の高いガッドのドラミングは、硬のチック、軟のガッドという対比で相性が良いのだと理解している。
 

Chinese_butterfly  

 
このチックとガッドの新しいコラボの成果である『Chinese Butterfly』においても、その相性は抜群で、演奏全体の雰囲気としては、アコに拘らずエレに偏らない、アコとエレが見事に融合したフレッシュなサウンドが良い。現代のコンテンポラリーな純ジャズとは「かくあるべし」と言う感じの示唆に富んだ展開の数々が魅力的。

ジョン・マクラフリン作が1曲目、ルエケとチック・コリア作が7曲目、他は全曲コリア作。どの演奏もチックとガッドの相性がとても良いことが良く判る。メロディアスでメリハリが効いていて、硬軟自在、変幻自在、まあ、チックとガッドが組んでのコンテンポラリーな純ジャズである。悪かろう筈が無い。

6曲目「Return To Forever」の再演では、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのフィリップ・ベイリーがゲスト参加している。この辺が今回の新プロジェクトのキモなのかなあ、と睨んでいる。現在における成熟した「Return to Forever」を再現するつもりなのかなあ、とボンヤリと感じた次第。次作が楽しみである。

 
 

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2017年12月13日 (水曜日)

明らかに新しいジャズ・オルガン

昨日に引き続き、この人のオルガンも、ほんのりファンキーなんだけど「軽快でスッキリ」している。逆に、アグレッシブで音の太い、ストレートな音がこの人の個性。従来のジャズ・オルガンの音からすると、あきらかに対極にある音。この人とは、サム・ヤヘル(Sam Yahel)。1970年生まれだから今年で47歳。バリバリの中堅オルガニスト。

『Yaya3』(写真左)というアルバムがある。Yaya3=ヤヤ・キューブド(cubedは数字の3乗)と読む。2002年の作品。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts), Sam Yahel (org), Brian Blade (ds)。ヤエルがNYのジャズ・クラブ「スモールズ」で行なっていたライヴにジョシュアが参加して、このプロジェクト=Yaya3 は立ち上がった。

このプロジェクト=Yaya3の実質的なリーダーは、サム・ヤヘル。そして、このヤヘルのオルガンが実に魅力的なのだ。こってこてのファンクネスはかなり希薄。つまり、オルガンの演奏スタイルは、ジャズ・オルガンの大御所、ジミー・スミスの様なものでは無く、オルガンのコルトレーンと呼ばれたラリー・ヤングに近い。軽快でスッキリ、アグレッシブで音の太い、ストレートな音。
 

Yaya3

 
ストイックなまでにアグレッシブなオルガンの音色は、ストレートなグルーブ感を生み出して、シャープにうねる。音の雰囲気とくすみは明らかにジャズのものであり、このアルバムでのヤヘルのオルガンは、ストレート・アヘッドな純ジャズ系のオルガンである。コマーシャルに走らず、あくまで硬派にモード・ジャズを極めていく。

そんなヤヘルのオルガンに、ジョシュアのテナーが魅力的に絡む。ジョシュアのテナーは、コルトレーンとロリンズを足して2で割って、ロリンズ寄りに個性を寄せた感じ。硬派でストレートではあるが歌心に富んだテナーは、他に有りそうで無い個性。それが、軽快でスッキリ、アグレッシブで音の太い、ストレートなヤヘルのオルガンに絡むのだ。新しいオルガン・ジャズの響きが芳しい。

そして、そんな二人を鼓舞する、ポリリズミックな千手観音ドラミングのブライアン・ブレイド。硬軟自在、緩急自在なドラミングが、旋律をアドリブ・ラインを自由度高く司るフロント二人を手厚くサポートする。そして、アルバムを聴き終えた後、耳に一番残っているのはヤヘルのオルガン。現代の、明らかに新しいジャズ・オルガンの音である。

 
 

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2017年12月11日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・93

最近のネットのダウンロード・サイトって、とっても便利。時々、サイトの中を彷徨って、これは、という盤に出会ったら、試聴をかまして吟味する。そうやって「こんなアルバムあったんや〜」とビックリするやら、感心するやら、今まで聴いたことの無い盤に出会って、感謝感謝である。

Allan Holdsworth『Blues for Tony』(写真左)。そうやって、ダウンロード・サイトで出会った好ライブ盤。2009年のリリースになる。かつてホールズワースが在籍していた、トニー・ウィリアムス・ニューライフタイムの再現ライブ。トニーは1997年2月に亡くなっているので、このライブは、亡くなったトニーに捧げる演奏を記録したものになる。

2007年5月のヨーロピアン・ツアーの模様を収めたもので、パーソネルは、Allan Holdsworth (g), Alan Pasqua (key), Chad Wackerman (ds), Jimmy Haslip (b) のカルテット構成。凄まじいばかりのハイテクニックを駆使してのエレ・ジャズではあるが、決してフュージョンでは無い。演奏を聴けば判るが、明らかに硬派な純ジャズ系のエレ・ジャズ。
 

Blues_for_tony

 
収録曲は、ホールズワースが在籍していた、トニーのニューライフタイム名義のアルバム『Believe It』に収録されている「Fred」「Proto-Cosmos」「Red Alert」を中心に、メンバーのオリジナル曲を併せて全11曲。CD2枚組のボリュームですが、全演奏時間は90分程度で、演奏のテンションが高くて、内容もバラエティに富んでいるので、一気に聴いても飽きることは無い。充実にライブ演奏です。

スピード感を十分、それぞれの楽器の音もタイトで切れ味良く、とても気持ち良く聴けます。特にホールワースのギターは絶好調で、切れ味良く、クイックに捻れ、ポジティブな音は「ホールワースやなあ」と感心し笑みがこぼれるばかりの強烈な個性です。パスクアのキーボードも素敵に歪みつつ、切れ込むような疾走感を伴ってガンガン弾きまくります。

この弾きまくるホールワースは、あらゆるロック・ギターの演奏を吹っ飛ばしてしまうばかりの迫力とテクニック。しかも、アドリブ・フレーズにも聴きどころ満載で、こんなライブ盤が2009年にリリースされていたなんて、とにかくビックリしました。以前のニューライフタイムの演奏よりも緻密で高度。聴きどころ満載の好ライブ盤です。

 
 

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2017年11月27日 (月曜日)

ECMレーベルらしい音・4

僕はこのアルバムで、パット・メセニーに出会った。大学の友人宅で聴かせて貰った。当時、ロックしか知らない音楽野郎で、ジャズは全く知らなかった。そして、その友人は「お前のキャラからするとECMやなあ」とブツブツ良いながら、このアルバムをかけてくれた。スピーカーから出てきた音は、今までの音楽体験の中で、全く、聴いたことの音世界だった。

Pat Metheny『Watercolors』(写真左)。1977年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g, 12-string g, 15-string harp-g), Lyle Mays (p), Eberhard Weber (b), Danny Gottlieb (ds)。Pat Metheny Group(PMGと略)で盟友となるピアノのライル・メイズとの初共演盤になる。

こんなジャズがあったんや、と感動した。それまでのジャズの印象とは全く違う、というか、全く新しいジャズの形だと思った。ファンクネスは皆無。黒さは全く感じられず、逆に米国ルーツ・ミュージックの1つである「フォーク、カントリー、ポップス」の要素を取り込み、自然の風景や気候を感じさせる、フォーキーでメロディアスなフレーズが特徴。僕は勝手に「ネーチャー・ジャズ」と形容している。
 

Watercolors

 
タイトルが「色とりどりの水」なので、全編聴き通すと「水」にまつわる様々な景色、模様が浮かんできます。面白いです。印象画の様なコンテンポラリー・ジャズとでも言いましょうか、穏やかではあるが、濃密かつ親密な音世界がとても魅力的です。音で情景を紡ぎ上げていく。そして、適度に豊かなエコー。典型的な「ECMレーベル」の音世界です。

ゴットリーブのドラムが印象画の様な音世界に適した「躍動感」を与えている。ウェーバーの柔軟で流麗なアコベとエレベが、パットのギターのベース・ラインに寄り添って、パットのギターをグッと浮き立たせ、グッと惹き立たせている。そして、ライル・メイズのピアノは「言わずもがな」、パットのギターに最適なピアノの音を止めども無く供給し続ける。とにかくリラックス出来る好盤。

フォーキーでメロディアスなフレーズが爽やかで優しい。パットの切れ味良く、やや捻れ気味にウォームなエレギの音は一度聴いたら忘れられないほど「個性的」。このパットのギターの音色とひねり出すフレーズが気に入るか、気に入らないかで、パットの評価は正反対に二分されるだろう。で、僕はパットのギターが大好きです。ジャズを聴き始めた頃に、この『Watercolors』に出会ったことは、僕にとって実に幸運な出来事でした。

 
 

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2017年11月26日 (日曜日)

「ハッピーな演奏」が実に良い

ジャズはコンスタントに新作をリリースし続けている。我が国では、ジャズはマイナーな音楽ジャンルと言われて久しい。しかも難解な音楽で苦手だ、聴く気にならない、という人が多い。それなのに我が国でも、なぜ一定数、毎月毎月、コンスタントに新作がリリースされ続けているのか。不思議と言えば不思議である。

ジャズは年齢がいけばいくほど、奥が深く渋みが出て、味わいの深いものになる。これは演奏する方も聴く方も同じで、ジャズにおいては、ベテランの役割は重要である。60歳以上のベテランの新作も、かなりの割合でリリースされ続けている。これは実に喜ばしいことである。ベテランのプレイは滋味に富んでいる。聴き心地が良く、聴き応えがあるものが大多数である。

Vincent Herring『Hard Times』(写真左)。先月の下旬のリリース。ちなみにパーソネルは、Vincent Herring (as, ss), Cyrus Chestnut (p, fender rhodes), Yasushi Nakamura (b), Carl Allen (ds)。special guests : Nicolas Bearde (vo), Russell Malone (g), Steve Turre (tb), Brad Mason (tp), Sam Dillon (ts)。サイラス・チェスナットのピアノをベースにしたリズム・セクションに、ヴィンセント・ハーリングのサックスのワンホーン・カルテットがメイン。
 

Vincent_herring_hard_times

 
現代ジャズ・アルトのレジェンド、ハーリングが溌剌としたプレイを繰り広げている。バックは、長年の盟友、チェスナットのピアノ・トリオ。これがまた、実に具合が良い。極上のハードバップ演奏が実に心地良い。この盤の演奏を聴いていると、難しい理屈などいらないよ、と言われているみたいな「ハッピーな演奏」が実に良い。

「音楽は常に私にとってポジティブなものでした。音楽によって私はいつも気分を持ち直すことができたのです」とはハーリングの弁。よって「少なくとも1時間くらいは、現代生活の混乱を和らげられるような作品にしたい、と願って制作」された、とのこと。良い話である。確かに、この作品は「ハッピーな内容」で埋め尽くされている。

聴いていて、心から「ジャズって良いなあ」と思える、素敵な盤である。ネオ・ハードバップの良いところがギッシリと詰まっている。こういう盤が、今、この時代にリリースされることを頼もしく思う。ジャズを聴いてきてよかったなあ、と思える瞬間である。

 
 

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2017年11月25日 (土曜日)

従来の純ジャズに無い響きが新鮮

僕はこの人のドラミングが気に入っている。Brian Blade(ブライアン・ブレイド)。1970年7月25日生まれ。今年で47歳になる。中堅ドラマー。ポリリズミックなドラミング、理知的なハイハット、切れ味の良いバスドラ。今までのジャズ・ドラマーに無い「佇まい」を感じる。

そんなブライアン・ブレイドがデビュー以降、現在まで活動を続けているフェローシップ・バンド。このアルバムは、このフェローシップ・バンドを率いての約3年ぶり新作。Brian Blade & The Fellowship Band『Body and Shadow』(写真左)。今年の10月のリリース。

ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Jon Cowherd (p, harmonium, mellotron), Chris Thomas (b), Melvin Butler (ts), Myron Walden (as, b-cl), Dave Devine (g)。コンテンポラリー・ジャズな響きをしっかりと宿した演奏で、従来の純ジャズに無い音の響きが新鮮。ハーモニウム、メロトロンなど、珍しい鍵盤楽器の存在が面白い。
 

Body_and_shadow

 
音作りの根底に、ジャズを始めとして、ロック・カントリーなどの音の要素が取り込まれている様で、意外とポップ。ファンクネスは適度に抑えられていて、流麗で耳当たりの良い音は、ちょっと聴いていると「スムース・ジャズか」と感じる。全編抑え気味というか、全体的に静謐な感じ。しかし、しっかりと適度なテンションが張っていて、全編聴き通して飽きることは無い。

しかし、ブレイドのドラムとクリス・トーマスのベースが、しっかりとメンストリーム・ジャズなリズム&ビートを供給するので、この流麗で耳当たりの良い音は「純ジャズ」の範疇にしっかりと留まっている。ゆったり目の演奏が多い中、リズム・セクションの「引き締め」と「鼓舞」は重要な役割を果たすのだが、ブレイドのドラムとトーマスのベースは素晴らしいの一言。

ジャケットを見れば、これは「スムース・ジャズ」ですね。とても、コンテンポラリーな純ジャズな盤だとは思えない。これだけがマイナス点かな(笑)。実に知的で流麗、それでいて適度に張ったテンションが心地良い、なかなかの好盤だと思います。聴けば聴くほど味が出る、そんな盤です。

 
 

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2017年11月16日 (木曜日)

円熟のロイ・ハーグローブである

ネットのジャズ盤紹介を読み直して「これは聴いてないぞ」盤の聴き直し。ネットのジャズ盤紹介のブログは、ジャズ評論家の方々が扱わない、本当に内容の良い「隠れ好盤」について語ってくれているので助かる。自分の耳でしっかり聴いて、自分の感じたことを赤裸々に書いてくれているので、本当に参考になる。

例えば、この盤などはネットのジャズ盤紹介のブログから教えて貰った。Roy Hargrove『Earfood』(写真左)。2008年の作品。レギュラー・クインテットでの純ジャズ盤。聴き込むうちにその素晴らしさがじわじわと沁みる。ちなみにパーソネルは、Justin Robinson (as, fl), Danton Boller (b), Montez Coleman (ds), Gerald Clayton (p), Roy Hargrove (tp,fgh)。

ロイ・ハーグローヴ(以降、略して「ロイハー」)のEmarcy移籍第一弾作品。このクインテット盤は「純ジャズ」追求盤。ロイハーのストレートなブロウ、精巧なフィンガリングを駆使して、流麗で歌心のあるトランペットが飛翔する。ちょっと抑え気味のブロウなので、最初聴いた時は「なんか地味やなあ」と思うんだが、聴き込む毎にその素晴らしさがじわじわジワジワ沁みてくる。ブリリアントで滑らかなトランペット。
 

Roy_hargroveearfood

 
ピアノのジェラルド・クレイトンが良い。聴いていて惚れ惚れする様な、艶があって音の抜けが良く、切れ味抜群なピアノは個性的。クレイトンは和蘭生まれ、南カリフォルニアア育ちで、ベーシストのジョン・クレイトンの息子。素性確かなジャズ・ピアノである。アドリブ・ソロに感心する。良く練れているというか、直感的な反応が良いというか、センスを感じる、理知的なフレーズを感じる。以降「要注目」ピアニストである。

アルト・サックスのジャスティン・ロビンソンは、ロイハーのトランペットと相性が良い。ユニゾン&ハーモニーなど、アンサンブルの響きが抜群である。前作からメンバーは一新されているのだが、アルトのロビンソンだけ残ったというのも頷ける。作り込み過ぎない、吹きすぎないシンプルなアドリブ・フレーズは印象に残る。また聴きたくなる。

ロイハーは、この盤をリリースした時が39歳。中堅トランペッターとして、ロイハーの円熟度合いをしっかり確認出来る、バリバリのハードバップ盤である。聴き込み度にじわじわ沁みてくる、噛めば噛むほど味が出る「スルメの様な」好盤である。ジャズ者の皆さん全般にお勧め。

 
 

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2017年10月13日 (金曜日)

オールスター・セッションの理想

ブルーノート・レーベルはジャズの老舗レーベル。クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズが席巻した1970年代から1980年代前半は全くその姿は見えなかったが、ハードバップ黎明期から全盛期の1950年代から、ジャズの多様化の時代1960年代にかけて、はたまた、純ジャズ復古の1980年代以降、現代に至るまで、ブルーノート・レーベルはジャズ・シーンを常にリードしてきた。

さすが、それぞれの時代のジャズを牽引してきたレーベル、その時代毎に、魅力的なメンバー選択で、オールスター・セッションを立ち上げ、それぞれの時代の先端を行くジャズのトレンド、ジャズの演奏スタイルを具現化してきた。ブルーノートのオールスター・セッションは、他の人気取り優先のオールスター・セッションとは異なる、実に真摯で誠実なパフォーマンスを提供してきた。アルフレッド・ライオンを始めとした、その時代毎のプロデューサーの慧眼と敏腕の成せる技である。

Blue Note All-Stars『Our Point of View』(写真左)。つい先日2017年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Ambrose Akinmusire (tp), Marcus Strickland (ts), Lionel Loueke (g, vo), Robert Glasper (p, rhodes), Derrick Hodge (ac-b, el-b), Kendrick Scott (ds), Guests : Wayne Shorter (ss), Herbie Hancock (p) Disc Two 1。いや〜魅力的なメンバーがずらり。どんな音が出てくるんだ、と期待が高まるパーソネル。
 

Our_point_of_view

 
この盤もブルーノート・レーベルお得意の、現代の若手選りすぐりのオールスター・セッションである。メンバーを見渡せば、ブルーノートと契約のある若手から中堅の優れものジャズメンが集結。現代の現時点での先端を行くジャズのトレンドな音を創造し、我々に具体的に聴かせてくれている。ネオ・ハードバップ+モード・ジャズ、加えて、フリー一歩手前の耳に優しいスピリチュアル・ジャズ。そして、ボイスを活かした静的なラップ的な雰囲気も今の耳に新しく響く。

選曲がふるっている。ウェイン・ショーターの代表作『スピーク・ノー・イーヴル』に収録されている「ウィッチ・ハント」そして、「マスカレロ」が選ばれているところがグッと目を惹く。特に「マスカレロ」では、スペシャル・ゲストとしてウェイン・ショーター本人とハービー・ハンコックが参加しているが、このオールスターズのメンバーは、このレジェンド2人にひけを取るどころか、音の新しさという面で、レジェンド2人を置き去りにしている。

新進気鋭の若手から中堅ジャズメン達の創造する、現代の、今の最先端を行くジャズのトレンド、ジャズの演奏スタイル。その時代毎に、ブルーノート・レーベルのオールスター・セッションは、その時代毎の先端を行くジャズのトレンド、ジャズの演奏スタイルを具現化してきた。この盤『Our Point of View』もそうである。CD2枚組だが一気に聴き通してしまうくらい、充実した内容のある演奏が詰まっている。好盤。

 
 

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2017年10月12日 (木曜日)

不思議ちゃんな企画盤である

Electric Bird(エレクトリック・バード)。純日本のジャズ・レーベルである。1980年代、フュージョン系メインストリーム・ジャズなる志向を追求したレーベル。日本のジャズ・レーベルなので、企画に問題があることが多い。このElectric Birdにも「これはなあ〜」と溜息が出るような「不思議ちゃんな企画盤」がある。

Dizzy Gillespie『Closer To The Source』(写真左)。1985年の作品。当時「あのディジー・ガレスピーがフュージョン・ジャズをやった」と話題になったアルバムである。バックに、Sonny Fortune (as), Branford Marsalis (ts), Kenny Kirkland (key), Hiram Bullock (g), Marcus Miller (el-b), Buddy Williams (ds) らの名前がある。加えて、Stevie Wonder (syn,harmonica) が参加。う〜ん、さすがバブル時代の企画盤である。

しかし、である。ディジーのトランペットであるが、バックがフュージョン系メインストリーム・ジャズであるが故、ちょっと聴くと「チャック・マンジョーネ」を想起してしまう。ちょっとディジーに失礼やね(笑)。よくよく聴くと、音にしっかりと芯が入っていて、音が限りなくブリリアント、トランペットが凄くよく鳴っている感じが「これは只者ではないぞ」と襟元を正したりするのだ。
 

Closer_to_the_source

 
さすがはディジー、バックの音がフュージョン系メインストリーム・ジャズであろうがなかろうが、我関せず、ディジーならではのトランペットを朗々と鳴らしまくる。そういう意味では、この盤、ディジーのトラペットのお陰で「平凡なフュージョン・ジャズ盤」とならずに、グッと内容が締まったフュージョン系メインストリーム・ジャズの好盤に仕上がっている。ディジーのトランペットさまさまである。

よくよく聴くと、バックの音は、フュージョン系メインストリーム・ジャズとは言うが、どちらかと言えば「フュージョン・ジャズ」寄り。ファンキーな雰囲気も色濃く見え隠れして、よくまあ、ディジーが収録をOKしたもんだ、と感心することしきり。この盤、もっと純ジャズ寄りにアレンジしたら、もっと素晴らしいフュージョン系メインストリーム・ジャズの好盤に仕上がっていたのでは、と思います。

しかし、当時として、ジャズ・トランペットのレジェンド、ビ・バップ創始者の一人、ディジー・ガレスピーににフュージョン・ジャズをやらせるなんて、凄く乱暴な発想であり企画ではある。ディジーのレベルのトランペットになれば、何もバックの音をフュージョン仕立てにする必要も無いでしょうにね。「これはなあ〜」と溜息が出るような「不思議ちゃんな企画盤」である。

 
 

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