2020年7月 5日 (日曜日)

サド=メルの「イチ押しの一枚」

ジャズ・ボーカルとビッグバンドについては、自分の今までの「聴き方の遍歴」は普通では無い。王道であるボーカリストや楽団を最初に聴き込んでいない。ビッグバンドについては、最初は当然、デューク・エリントン楽団とカウント・ベイシー楽団から入るのだが、僕は違った。ジャズを聴き始めたのが、フュージョン全盛期の1970年代後半だったこともあるのだろうが、ビッグバンドへの入り方がちょっと通常とは変わっていた。

ビッグバンド・ジャズで最初にお気に入りになったのが「Gil Evans & Monday Night Orchestra」と「Thad Jones = Mel Lewis & The Jazz Orchestra」そして「Toshiko Akiyoshi-Lew Tabackin Big Band」。そして、1980年代に入ってからは、あろうことか「Jaco Pastorius & Word of Mouth Big Band」であった。エリントン楽団もベイシー楽団も聴くには聴いたんだが、どうもピンと来なかった。

Thad Jones = Mel Lewis & The Jazz Orchestra『Central Park North』(写真)。1969年6月17, 18日、NYのA&R Studios での録音。略称「サド=メル楽団」は、もともと一流ジャズメンがプレイを楽しむことを目的に編成されたリハーサル・オーケストラ。メンバーそれぞれのパフォーマンスの自由度が高いのが特徴。加えて、アレンジが多種多様、実にカラフル。
 
 
Central-park-north  
 
 
そんな「サド=メル楽団」の良いところが満載のスタジオ録音盤がこの『Central Park North』になる。アレンジ方針が固定されていないので、アルバム毎にその「音の色合い」は変わる。この盤については、8&16ビートの大々的導入など、ジャズ・ロック色が強いところが魅力。音の迫力、躍動感、グルーヴ感が半端ない。当時としては「新しいビッグバンド」の音の響きだったのだろう。僕もこの盤については、一聴して虜になった。

とにかく格好良いのだ。冒頭の「Tow Away Zone」のビートの効いたファンキーなリズムが単純に「格好良い」。しかも、ロックなビートにも関わらずスインギー。これが堪らない。この1曲だけでも「今までのビッグバンドとは違う音」を感じることが出来る。このジャズ・ロックなグルーヴ感は癖になる。2曲目の「Quietude」は逆に、コッテコテの「ハードバップ」。洒落たアレンジで古さを感じない。

どの曲にも新しいビッグバンドの響きが感じられるのだが、これは、恐らく、ハナのピアノ、ディヴィスのベース、そして、ルイスのドラムの「リズム隊」の成せる技では無いかと思っている。そして、それをしっかりと成立させているのが、サドの担当する「アレンジ」。リズム&ビートとアレンジの斬新さで、サド=メル楽団の魅力全開の一枚である。
 
 
 

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  ・『You’re Only Lonely』 1979

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  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

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  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年6月30日 (火曜日)

なかなか良いピアノ、弾いてます

遠く遠く学生時代にジャズを聴き始めた頃から、定期的に「日本人ジャズ」の新盤を追いかけている。もともと、日本人ジャズのレベルは高い。世界的に見ても上位のレベルに位置していると評価してよいだろう。特に、2001年、山中千尋がデビュー盤をリリースした頃から、日本人ジャズの逸材が多く出現する様になった。今でも毎年の様に、日本人ジャズの逸材が現れ出でている。

三輪洋子『Keep Talkin'』(写真左)。2019年のリリース。ちなみにパーソネルは、Yoko Miwa (p), Will Slater (b), Scott Goulding (ds), Brad Barrett (b on 11)。日本人の「正統派モダンジャズ・ピアノの担い手」の一人、三輪洋子のリーダー作。2年ぶりの新盤。

デビュー盤『In The Mist Of Time』が2000年のリリースだから、もうデビューして20年近くが経つのか。しかも1970年生まれだから、今年で50歳。経歴的にも年齢的にも、もはや中堅ジャズマンである。2011年にはバークリー音楽大学のピアノ科の助教授に任命されている。これは秋吉敏子以来、約30年ぶりに日本人女性がピアノ科のプロフェッサーに選ばれたという歴史的にも名誉ある出来事であった。
 
 
Keep-talkin  
 
 
ネットのどこかの紹介文にあった、三輪のピアノの特徴。「スクエアー・バピッシュ&ファンキー・ダイナミック」「耽美的でロマンティック」。確かに聴いたまま、文章で表現したらこうなるかな。加えて、力感のある左手の低音、耽美的なスイング感溢れる右手。そして、このところ、純ジャズな「ハードボイルド」にポップな雰囲気が加わってきて、とても聴き易いイメージになっている。

オリジナル曲に加え、モンク、ミンガス、ビートルズ、ジョニ・ミッチェルらの曲を取上げ、趣味の良いアレンジでカヴァっている。ネオ・スタンダード化の動きは以前からあるが、なかなか良いアレンジに恵まれなかった。しかし、この三輪のアレンジはなかなか良い。特にビートルズの「Golden Slumbers / You Never Give Me Your Money」の弾き回しには感心した。

僕は、三輪のアーシーな左手のブロックコードと右手のファンキー&スインギーな弾き回しが大のお気に入り。ジャズの歴史上の様々なピアニストの個性をよく研究して自らのものにしているのが良く判る。まだまだ我が国では認知度が低いが、日本人らしいメロディー感覚と乾いたファンクネスも心地良く、なかなか良いピアノ、弾いてます。
 
 
 

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2020年6月25日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・130

たまたま、ネットを徘徊していて見つけた「今までに聴いたことが無いアルバム」が、意外と好盤だった時は、なんだか幸せな気分になる。ジャズを聴き始めて、早40年余。それでも、未だに「今までに聴いたことが無いアルバム」に出会うことがある。ジャズ盤の蒐集については、ほとんど「底なし沼」のようなものである。

この盤もそんな盤で、音楽のサブスク・サイトをふらふらしていて、梅雨だなあ、サンバかボサノバを聴いて、スカッとしたいなあ、と思った瞬間、この盤のタイトルが目に飛び込んできた。そうか、サンバだ、サンバが良い。と思いつつ、この盤のタイトルの「ARS 001」の部分がちょっとチャラいかなあ、感じながら「ゲット」。

Allen Houser Sextet『No Samba ARS 001』(写真左)。1973年の作品。トランペッターの「アレン・ハウザー」の初リーダー作になる。ちなみにパーソネルは、Allen Houser (tp), Buck Hill (ts), Vince Genova (p), Steve Novosel (el-b, ac-b), Terry Plumeri (ac-b), Mike Smith (ds)。さすがに、1970年代に入っての「メインストリーム・ジャズ」。パーソネルを見渡しても、知っている名前がほぼ無い。
 
 
No-samba  
 
 
この盤、紙ジャケCDの「帯紙」のキャッチフレーズを見ると、どうもこの盤、当時、我が国のジャズ喫茶で人気のアルバムだった様である。ハウザーは、60年代には主にラテン・バンドで活動していた、という経歴の持ち主。たしかにハウザーの出すフレーズのそこかしこに、ラテンチックな哀愁が漂っている。これが「堪らない」。ラテン音楽の要素がそこはかとなく漂うパフォーマンスは聴いていて楽しい。

基本的には普通のハードバップな演奏なのだが、ベーシストが二人いる。一人が弓弾きに専念しているみたいで、これがアルバム全体に不思議な雰囲気を漂わせている。が、基本はラテン、なので、意外と気にならない。1973年という、メインストリーム・ジャズとしては受難の時代。アルバムのプロデュースも、ちょっと「奇天烈」な面があったのかもしれない。

ハウザーが全編、「オーソドックスでハードバップな」トランペットで押しているところが好感ポイント。シュッとしたフレーズと、どこか哀愁感漂う音色が良い。ほとんど無名に近いハウザーではあるが、こうやって21世紀になっても再発され「愛聴される盤」をものにした。ジャズの歴史に残る好盤、という類では無いが、メインストリームなジャズを楽しむ、という面では、この盤は好適である。
 
 
 

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  ・『Bobby Caldwell』 1978

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  ・Led Zeppelin Ⅲ (1970)

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  ・太田裕美『心が風邪をひいた日』
 

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2020年6月20日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・175

ジャズの中で、ハードバップ時代から、アフリカ音楽のエッセンスが色濃く反映された個性的なジャズが必ずある。アート・ブレイキー然り、ジョン・コルトレーン然り、デューク・エリントン然り、ウエザー・リポートもそうだったし、当然、マイルス・ディヴィスもそうだった。恐らく、アフリカン・アメリカンの血がそうさせるのだろう、と思っている。

現代においても、その「傾向」は脈々と受け継がれていて、ワールド・ミュージックの要素をしっかりと取り入れたジャズを、何ヶ月に一度は必ず耳にする。今ではアフリカ音楽のエッセンスのみならず、中近東のエスニックな雰囲気や、イスラエルのユダヤ民謡な雰囲気など、幅広くワールド・ミュージックの要素を取り入れている。ジャズは融合の音楽やなあ、と改めて思う。

Gilfema『Three』(写真左)。2020年4月のリリース。パーソネルは、Lionel Loueke (g), Massimo Biolcati (b), Ferenc Nemeth (ds)。Gilfema(”ジルフェマ”と読む) = Lionel Loueke Trio、リオーネル・ルエケがリーダーのキーボードレスのギター・トリオである。ちなみに、Gilfemaというバンド名は3人の名前からそれぞれ文字が取って名付けられた(Lionel Gilles Loueke, Ferenc Nemeth, Massimo Biolcati)とのこと。
 
 
Three-gilfema  
 
 
リオーネル・ルエケ(Lionel Loueke)は、西アフリカ・ベナン出身のギタリスト。ハンコックやブランチャード、グラスパーのバンドで個性あふれるギターを聴かせている。フェレンク・ネメス(Ferenc Nemeth)は、ハンガリー出身のドラマー。そして、マッシモ・ビオルカティ(Massimo Biolcati)は、スウェーデン生まれのイタリア人ベーシスト。これだけ「米国出身」では無いジャズメンが集まるのだ。普通の米国ジャズをやるとは思えないし、普通の欧州ジャズをやるとも思わない。

全編に渡って、アフリカ音楽のエッセンスが色濃く反映された個性的なジャズが展開されている。ルエケのギターはサステインが短かめでパーカッシヴ、どこかアフリカ的な響きがする。ネメスのドラミングが、これまたアフリカンなリズム&ビートを醸し出しながら、そんなルエケのアフリカ的なギターを後押しする。ビオルカティもベースラインもワールド・ミュージック風。米国ジャズや欧州ジャズの雰囲気は何処にも無い。

ワールド・ミュージックの要素を取り込んだジャズがお気に入りのジャズ者には「溜まらない」内容。ジミヘンの「Little Wing」の秀逸なカヴァーも魅力的。アフリカ音楽のエッセンスが、演奏されるジャズに広がりと躍動感を与えていて、スケールの大きい、ネイチャーな音世界は、どこかパット・メセニー・グループの音世界を想起させる。実に魅力的なワールド・ミュージック系のジャズである。
 
 
 

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2020年6月19日 (金曜日)

ジャズのシンガーソングライター

ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)の新作が出た。4年振り、2016年の『Day Breaks』以来のオリジナル・フルアルバムになる。昨年の『Begin Again』は全編28分のミニアルバムだった。しかも当面の間は、バンドプロジェクト、ガールズ・バンドの「プスンブーツ」の活動に専念すると思っていたので、今回は「ビックリぽん」である。

ノラ・ジョーンズは、2002年、デビューアルバム『Come Away with Me』で大ブレイク。しかし、このデビュー盤がリリースされた当時は、この盤については「これはジャズか?」と揶揄され、「ボーカルだけが目立つ」と散々な評価もあった。ジャズの老舗レベール「ブルーノート」からのリリースだから、やむなくジャズ盤としている、なんてことも言われた。しかし、この盤は世界的には2,500万枚を売り上げた。

ノラのボーカルだけが目立つからジャズでは無い、というのは暴論だろう。ノラ・ジョーンズは、ジャズで初のシンガーソングライターである。自作自演の曲で固めたジャジーなボーカル。そりゃあ目立つだろう。もともとジャズ・ボーカルというものは極力「小作自演」を避けてきた。コンポーザーでは無く、シンガーに徹してきたところがある。シンガーとは「声」が楽器。他の楽器と同列なので、ボーカルだけが突出して目立つことは無い。
 
Pick-me-up-off-the-floor  
 
Norah Jones『Pick Me Up off the Floor』(写真左)。今年6月のリリース。全て、ノラ・ジョーンズの自作自演(11曲中4作は共作)。ノラ自身はピアノを弾き、そして唄う。他のメンバーについては、彼女と親交が深いドラマー、ブライアン・ブレイドとのセッションをベースにしているものの、メンバーは固定せず、ジョン・パティトゥッチ(b)、ネイト・スミス(ds)など、総勢20名以上の名うてのジャズマンが立ち代わり登場する。

しかし、アルバム全編に渡って不思議な統一感がある。ピアノ・トリオをベースとしているが、やはり目立つのはノラの歌声。凄い存在感と説得力のあるボーカル。唄われる曲の雰囲気は穏やかでスピリチュアルなものばかり。しかし、ノラのボーカルが唄われる内容に合わせて、トーンや表現が変わる。これがまた見事に「変わる」ので、全編、音的にも不思議な統一感に支配されているにも関わらず、飽きが来ることは全く無い。

ノラの音世界は「ジャズ・ボーカルとシンガーソングライターとの融合」。自作自演なのだ。ボーカルだけが目立つのは当たり前。しかも、自作自演だからこそ、不思議な統一感が存在し、存在感と説得力が増すのだ。この盤を聴いて思う。従来のイメージを前提にした「これはジャズなのか、ジャズではないのか」の評価は不要だな。今回のノラの新作も「良い音楽」だと評価している。心地良いボーカルと演奏が蕩々と流れていく。
 
 
 

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2020年6月15日 (月曜日)

1970年代クインシーの第一歩

久々に「クインシー・ジョーンズ」を聴き直している。特に1970年代。クインシー・ジョーンズのビッグバンドが一番充実していた時代である。クインシーのアレンジは「融合」志向。1960年代から、ジャズをベースとしながらも、他のジャンルの音世界と融合して、クインシー独特の音世界を創り出してきた。

そして、1970年代のクインシーは「R&B」をメインとした米国ルーツ・ミュージック、アフリカン・アメリカンのルーツ・ミュージックをピックアップした、例えばソウル、R&B、そしてゴスペルとの融合。そして、いち早い「フュージョン・ジャズ」への適応。そんなクインシー独特の個性を反映したビッグバンド・ミュージックを収録したアルバムが多数リリースされている。その先鞭をつけたのがこのアルバム。

Quincy Jones『Smackwater Jack』(写真)。1971年の作品。ちなみにパーソネルは、メインストリーム・ジャズ系、クロスオーバー・ジャズ系の一流ミュージシャンが多数参加している。主だった者を上げると、Freddie Hubbard (flh), Eric Gale, Jim Hall, Joe Beck (g), Toots Thielemans (harmonica), Grady Tate (ds, perc), Bob James, Joe Sample (key), Jaki Byard, Monty Alexander (p), Jimmy Smith (org), Milt Jackson (vib), Chuck Rainey, Bob Cranshaw, Ray Brown (b) 等々、新旧織り交ぜた優れもの集団。
 
 
Smackwater-jack
 
 
アレンジが素晴らしい。かつ、選曲がユニーク。冒頭、タイトル曲の「Smackwater Jack」は、1971年のキャロル・キングの名盤 『Tapestry』収録の名曲。この名曲をいち早く採用し、グルーヴ感溢れる、クールでR&B風なアレンジを施している。続く2曲目の「Cast Your Fate To The Wind」はメロウな名演で、既に後のフュージョン・ジャズの「ソフト&メロウ」を先取りしている。

3曲目の「Ironside」は、邦題「鬼警部アイアンサイドのテーマ」。イントロのサイレン音、ブラスのユニゾン&ハーモニーを聴くだけで「ああ、あれか」とニンマリする有名曲。我が国でもテレビ番組やコマーシャルのBGMに使われている。続く4曲目の「What's Going On」はマーヴィン・ゲイの名曲のカヴァー。この曲はジャズの世界で結構カヴァーされているが、このクインシー版のカヴァーが秀逸。前半のボーカル部も良い雰囲気だし、後半のインストは、1971年にして極上のフュージョン・ジャズな展開。惚れ惚れする。

続く「Theme from "The Anderson Tapes”」は極上のジャズ・ファンク。ビル・コスビーのヴォーカルをフューチャリングした「Hikky Burr」もクールでジャジーなR&B風アレンジが効いている。1970年代のクロスオーバー〜フュージョン・ジャズの雰囲気を先取りした、クインシーのビッグバンド・サウンドは実に「新しい」。正統なビッグバンド・ジャズという観点では、このクインシーのビッグバンドは「異端」。しかし、今の耳で聴くと実に「新しい」。今でも古さを感じさせないのは流石だ。
 
 
 

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2020年6月12日 (金曜日)

「梅雨の時期」に聴きたくなる

アジマス(Azimuth)は、英国のジャズ・トリオ。トランペット奏者のケニー・ホイーラー、ボーカリストのノーマ・ウィンストン、ウィンストンの夫でピアニストのジョン・テイラーというトリオ構成。3人とも英国出身。「バップ命」の英国出身のジャズ系ミュージシャンが、ECMレーベルで「ニュー・ジャズ」をやるのだから面白い。

Azimuth with Ralph Towner『Départ』(写真)。1979年12月の録音。ECM 1163番。改めてパーソネルは、John Taylor (Pp, org), iNorma Winstone (voice), Kenny Wheeler (flh, tp), Ralph Towner (12-String and Classical Guitar)。アジマスのメンバー3人に、ECMのお抱えギタリストの一人、ラルフ・タウナーが客演したアルバムになる。

アジマスの音世界は「即興演奏をベースとしたアンビエント志向のニュー・ジャズ」。明らかにECMレーベル好みのニュー・ジャズな音世界で、従来のビートの効いたジャズとは全く異なる、即興演奏をメインとした、まるで印象派の絵画を見るような、カラフルな音を駆使したインタープレイ。ビート感は希薄だが、アドリブ展開など、インプロビゼーションの基本は「モード・ジャズ」だろう。
 
 
Depart  
 
 
クールなホイーラーのトランペットとテイラーのピアノ、そして、そこに流れるウィンストンの「女性スキャット」は、現代の「クールなスピリチュアル・ジャズ」に直結するもの。静的なエモーショナルは「ニュー・ジャズ」に相応しい。が、展開のバリエーションが少ないので、複数枚アルバムをリリースすると、その内容としては「金太郎飴」的なマンネリズムに陥り易い。

そこで工夫を凝らしたのが、この「with Ralph Towner」。タウナーのギターは、このアジマスの音世界に繋がる、クールで静的でエモーショナルなギター。アジマスの音世界にピッタリ合う。この盤を聴いていても違和感が全く無い。しかし、従来のアジマスのピアノ、トーンペット、ボイスの展開に、タウナーのギターが入るだけで、その内容はガラッと変わる。

タウナーのどこかクラシック風の、欧州のニュー・ジャズ志向の明快なタウナーのギターの音に導かれて、後にジャズの演奏トレンドの1つとなる、上質の「スムース・ジャズ」の世界に昇華している。ECMレーベルの総帥アイヒヤーのプロデュースの賜であろう。

クールで静的、透明感+清涼感のある音世界は、今の「梅雨の時期」に聴きたくなるジャズの代表格。冷たいアイスコーヒー片手に聴いてます。
 
 
 

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  ・『Another Page』 1983

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.05.24更新。

  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年6月11日 (木曜日)

復帰後ロイドのブロウの個性

いよいよ梅雨入りである。このところ暫く、好天が続いたので梅雨入りが遅れた感があるが、こうやって入梅してみると、やっぱり梅雨は鬱陶しい。とにかく湿度が高いのが困る。ちょっと動いただけで「ベトベト、ジメジメ」。じんわり変な汗までかいて、不快なことこの上無し。こういう時には、クールで静的な耳に優しいジャズが良い。

と言うことで、今日も昨日に引き続き、復活後の「チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)」。復活後のロイドは、こうやって振り返って聴くと、現代のジャズの新しいスタイルである「クールで穏やかなスピリチュアル・ジャズ」の先鞭を付けているように感じる。

恐らく、ECMレーベルの総帥アイヒヤーも、当のリーダーのロイドも、当時はあんまり意識はしていなかったとは思うが、1990年代のロイドのリーダー作は、そんな「新しいジャズの響き」に満ちている。

Charles Lloyd『All My Relations』(写真左)。July 1994年7月、ノルウェーはオスロの Rainbow Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts, fl, Tibetan oboe), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Billy Hart (ds)。パーソネルは、前作『The Call』と同じ。復活後、やっとメンバーが固定化された。ということは、いよいよ、復活後の演奏のコンセプトとモチーフが固まった、ということなのだろう。
 
 
All-my-relations  
 
 
ECMの音のカラーを踏襲した、クールで穏やかなモード・ジャズ。耽美的であり静的であり、それぞれの音に透明感が溢れ、そこに心地良いECM独特のエコーがかかる。ロイドは意外と昔の演奏スタイルに戻って来ている。基本はコルトレーン。しかし、複雑でエモーショナルなブロウは皆無。判り易くポップなコルトレーン。しかし、そこに加わるのは、復帰後の独特の個性である「クールでスピリチュアルな」ブロウ。これが復帰後のロイドのブロウの個性の「決め手」となっている。

この盤、全編に渡って聴いていると、このロイドの「クールでスピリチュアルな」ブロウは、ピアノのボボ・ステンソンに引き出されているのでは、と感じるのだ。キースほど難しくは無い、奥ゆかしく、シンプルで耽美的で透明感のある「北欧ジャズ」ならではのステンソンのピアノ。ヨルミンのベースとハートのドラムの良きサポートを得て、ステンソンのピアノがロイドのテナーを支え、鼓舞する。

ECMの総帥アイヒヤーが全体をほど良くプロデュースして、前作までの「北欧のスピリチュアルなジャズ」は、この盤で「ロイドならではの新しいスピリチュアル・ジャズ」に昇華されている。後にジャズ演奏のトレンドとなる「端正で透明度の高い、クールなスピリチュアル・ジャズ」にいち早く適応している。

コルトレーン・スタイルの「ECMレーベルとの邂逅」。その結果が、このロイドの「クールでスピリチュアルな」ブロウに結集している。
 
 
 

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  ・『Another Page』 1983

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  ・Led Zeppelin Ⅱ (1969)

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  ・チューリップ 『TULIP BEST』
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2020年6月10日 (水曜日)

北欧のスピリチュアルなジャズ

ジャズの世界では、第一線で活躍していたジャズマンが引退状態になって、何かの切っ掛けで「復活」する例が結構ある。人気が無くなってしまったが、時間をおいて復帰したら人気が戻って来た、とか、自らのプレイに自信が無くなって、しばらくライヴ・シーンから距離を置いて練習に勤しんで、自信を取り戻して復帰したり、理由は様々。

この人の場合は理由は良く判らない。1960年代後半、ピアノのキース・ジャレット、ベースにセシル・マクビー、ドラムにジャック・デジョネットという「とんでもないピアノ・トリオ」をリズム・セクションに従えて、コルトレーンを判り易くポップにしたブロウで人気を博した「チャールズ・ロイド(Charles Lloyd)」。ヒッピー・ムーヴメントに乗って人気を獲得し、時代の寵児となった。が、1970年代に入ると人気は失速、1980年代には録音が殆ど無い状態になった。いわゆる「過去の人」となってしまった。

Charles Lloyd『The Call』(写真左)。1993年7月、ノルウェーはオスロの Rainbow Studio での録音。ちなみにパーソネルは、Charles Lloyd (ts), Bobo Stenson (p), Anders Jormin (b), Billy Hart (ds)。リーダーのロイドとドラムのハートは米国人、ピアノのステンソンとベースのヨルミンはスウェーデン人。ロイドのテナー・サックスがワンホーンの米欧混合のカルテット編成。
 
 
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1989年、ECMレーベルから突如復活したチャールズ・ロイド。その復活を捉えたリーダー作が『Fish Out of Water』(2019年12月1日のブログ参照)。ステンソンのピアノをメインにした北欧人リズム・セクションを従えての復活。続く『Notes from Big Sur』(2019年12月12日のブログ参照)ではドラムが米国人に代わって米欧混合カルテットでの演奏。しかし、演奏内容は明らかに「北欧ジャズ」。北欧ジャズそのものの雰囲気の中で、ロイドは北欧ジャズらしい、透明度の高い、クールなブロウを披露。過去のロイドを知る我々は思わず仰け反った。

そして、この『The Call』が復帰第3作。ピアノのステンソンは変わらない。ベースは代わったが北欧人、ドラムも代わったが米国人。しかし、奏でる音は変わった、というか「落ち着いた」。透明度の高い、クールなブロウは変わらないが、北欧臭さはかなり抜けて、クールで耽美的でエモーショナルな「スピリチュアル」な要素を前面に押し出した音に「落ち着いて」いる。アルバム全体がスピリチュアルなので、途中出てくるフリーキーなフレーズも違和感無く響く。

以前はコルトレーンの判り易いコピー、コルトレーンを判り易くポップにしたブロウで人気を博したのだが、復活後は、モーダルなブロウは、そこはかとなくコルトレーンの影を感じさせるが、スピリチュアルな表現のベースは「北欧ジャズ」。米国人のロイドが「北欧のスピリチュアルなジャズ」をブロウする。過去には無かった静謐なフレーズも良い味を醸し出していて、ここにきて、ニュー・ロイドの音の方向性が定まったのでは、と感じる。なかなかの好盤である。
 
 
 

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2020年6月 6日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・173

緊急事態宣言は解除になったとは言え、東京、神奈川はまだまだ予断を許さない状況が続いている。しかしながら、季節は着実に前に進んでいて、一昨日、昨日は「梅雨前の真夏日」がいきなりやってきて、熱中症になるんじゃないか、と思う位の蒸し暑さ。そして、今日はほとんど梅雨に入ったかのような、どんより曇り空。梅雨になれば、また家に引き籠もる日が増える。またジャズを聴く機会が増える。

さて、現代の「コンテンポラリーな純ジャズ」基調のジャズ・ギターの特集3連発である。一昨日は「カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)」、昨日は「ウォルフガング・ムースピール(Wolfgang Muthspiel)」。次世代を担う中堅ギタリストと思われる二人の好盤をご紹介した。そして、今日は「ケヴィン・ユーバンクス(Kevin Eubanks)」。

Kevin Eubanks『East West Time Line』(写真左)。2017年の作品。パーソネルは2グループに分かれる。前半の1-5曲目については、Kevin Eubanks (g), Orrin Evans (p, rhodes), Dave Holland (b), Nicholas Payton (tp), Jeff ‘Tain’ Watts (ds)。後半の6-10曲目については、Kevin Eubanks (g), Rene Camacho (b), Mino Cinelu (per), Bill Pierce (ts), Marvin ‘Smitty’ Smith (ds)。
 
 
East-west-time-line  
 
 
ユーバンクス作曲の1-5曲目と、ジャズメン・オリジナル、その他カヴァー曲の6-10曲目とに分かれ、パーソネルも異なっている。前半のユーバンクス・オリジナルで固めた演奏は、演奏メンバーの個性通り、モーダルではあるが、自由度の高い演奏がメイン。ニュージャズ志向のイメージが強い。ファンキーなビートも見え隠れするんだが、ふんわりとした透明感が漂うところが「クールなスピリチュアル・ジャズ」の印象で、いかにも現代のジャズ・ギターらしい。

ジャズメン・オリジナル、その他カヴァー曲の6-10曲目は、規律に則ったネオ・ハードバップ志向が強くなる。エリントン作の「Take The Coltrane」、チック・コリアのRTF時代の名曲「Captain Señor Mouse」、レイ・ブライアントの人気曲「Cubano Chant」、そして、R&Bのマーヴィン・ゲイの大ヒット作「What's Going On」と魅力的な楽曲がズラリと並ぶ。ストレート・アヘッドな、グッと締まったネオ・ハードバップ。

この盤は、現代のジャズ・ギターの二面性である(と僕が考える)、「ニュージャズ志向のクールなスピリチュアル・ジャズ」と「規律に則ったストレート・アヘッドなネオ・ハードバップ」の両方がしっかりと確認出来る好盤。ケヴィン・ユーバンクスのクールで尖ったギターは歌心&テクニック共に冴え渡り、現代のジャズ・ギターを代表する好盤の一枚、一聴の価値ありかと思います。
 
 
 

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