2022年12月26日 (月曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・20

ジャズ盤には、我が国のジャズ者だけにウケて、他国では全く知られていない盤が結構ある。例えば、ブルーノートの「女性の足元ジャケ」で有名な、Sonny Clark『Cool Struttin'』がそうで、我が国のジャズ者の方々の中では知らぬ者はいない位の人気盤だが、本場米国では全く知られていない。そもそも、リーダーのピアニスト、ソニー・クラーク自体がマイナーな存在。

このエピソードはジャズ雑誌で読んで、最初は「眉唾」と思っていたのだが、実際に米国にビジネス出張に行った折、先方のキーマンの1人が大のジャズ好きで、通訳を通して色々な話をさせて貰ったのだが、確かに、Sonny Clark『Cool Struttin'』については「?」だった。そして、Mal Waldron『Left Alone』もそうだった。しかし、その後、彼もこの2枚を聴いたらしく、「どちらも、なかなか良いハードバップ盤だ、ありがとう」という電子メールが届いたのを覚えている。

Mal Waldron『Left Alone』(写真左)。1959年2月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Mal Waldron (p), Jackie McLean (as :track 1のみ), Julian Euell (b), Al Dreares (ds)。マル・ウォルドロンのビリー・ホリディ追悼盤。基本はピアノのマルがリーダーのトリオ。1曲目の「Left Alone」のみ、アルト・サックスのジャッキー・マクリーンが客演している。

我が国ではこのマルの『Left Alone』は大人気盤で、ジャズ初心者向けのジャズ名盤紹介には必ずといっていいほど、この盤のタイトル名が上がってくる。しかし、である。それぞれの評論文を読むと、1曲目のタイトル曲「Left Alone」の「泣きのマクリーン」だけが絶賛されていて、この1曲だけで名盤扱いされているフシがある。確かにマクリーンのアルト・サックスは情感溢れ力強く、聴き応えのあるブロウなのだが、この盤のリーダーはマルであり、マルはピアニストである。

まず、この有名なタイトル曲「Left Alone」では、伴奏上手なマルのピアノが堪能出来る。なるほど、かの伝説の女性ジャズ・ボーカリスト、ビリー・ホリディがマルを伴奏者に指名したのが良く判る。情感を込めて唄う様にアルト・サックスを奏でるマクリーンに対して、絶妙なバッキングで応えるマル。この「伴奏のマル」は聴きもの。
 

Mal_left_alone_1

 
2曲目以降はマルがリーダーのピアノ・トリオの演奏になる。2曲目の「Catwalk」は名演だろう。なぜか、ジュリアン・ユールのベースとマルのピアノの絡みが良い感じなのだ。アル・ドリアースのドラムはあまり目立たないのだが。そうそう、「Catwalk」は曲自体も良い感じ。マルの作曲能力の高さを感じる。

が、である。3曲目の「You Don't Know What Love Is」から「Minor Pulsation」、演奏ラストの「Airegin」まで、内容的に悪くは無いんだが、なんだか演奏が重い。もう少し溌剌と、もう少し躍動感があっても良いと思うのだが、どうも良くない。この盤については、ベースとドラムのリズム隊のパフォーマンスに物足りなさを感じるのだが、このリズム隊がマルのピアノに上手く反応出来ていないというか、マルのピアノについていっていないのが惜しい。

そして、ラストのトラックには、マルが最晩年のビリー・ホリデイの伴奏者だったこともあってか、ビリー・ホリディの思い出についての「マルの語り」が収録されている。マルがとうとうとビリーについての思い出を語っているのだが、当然、英語で語っているので、ほとんど何を語っているのかが判らない。日本盤についても「対訳」が付いている訳でも無い。LP時代、この盤を入手して初めて聴いた時、このラストの「マルの語り」が出てきた時はビックリした(笑)。

このMal Waldron『Left Alone』について、名盤扱いされているのは、冒頭のタイトル曲「Left Alone」でのジャッキー・マクリーンのアルト・サックス、いわゆる「泣きのマクリーン」の素晴らしさだけがその理由で、マルの名盤、名演については他に沢山ある。

確かに、冒頭の「Left Alone」については、「泣きのマクリーン」の素晴らしさ故、ジャズ者であれば一度は聴いておく必要はあるかとは思う。しかし、2曲目以降については、決して、マルの代表的なパフォーマンスでは無いことを考慮しておく必要がある。ちょっと「こまったちゃん」な盤である。
 
 

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2022年3月14日 (月曜日)

マクリーン独特のモード&フリー

ジャキー・マクリーン(Jackie Mclean)は進化するジャズマンだった。1950年代前半にNYに出てきて、いきなり、マイルスらにいじられ、鍛えられ、ハードバップ時代を代表するアルト・サックス奏者の1人になった訳だが、マクリーンはハードバップに安住すること無く、コマーシャルに走ること無く、当時のジャズの先進的な演奏スタイルに敢然と挑戦していった。

Jackie Mclean『Let Freedom Ring』(写真左)。ブルーノートの4106番。1962年3月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Walter Davis, Jr. (p), Herbie Lewis (b), Billy Higgins (ds)。マクリーンのアルト・サックスがフロント1管の「ワン・ホーン・カルテット」。マクリーンのアルト・サックスのパフォーマンスが堪能出来る演奏編成。

前作『A Fickle Sonance』で、部分的に「少しフリーキーで自由度の高いモーダルな吹奏」にチャレンジしていたのだが、今回の『Let Freedom Ring』では、全面的に、時々フリーに、時々アブストラクトに傾きつつ、限りなく自由度の高いモーダルな演奏にチャレンジいている。マクリーンの吹奏には迷いが無く、確信に満ちた「フリー若しくはモーダル」な演奏は爽快である。
 

Let-freedom-ring

 
冒頭の「Melody for Melonae」を聴けば、それが良く判る。いきなり、アブストラクトにモーダルに力強くアルト・サックスを吹きまくるマクリーン。良く聴けば、コルトレーンのモード、オーネット・コールマンのフリーを上手く吸収して、マクリーンならではの「モード&フリー」な演奏を繰り広げている。

マクリーンの「モード&フリー」は、あくまで、軸足をハードバップに残しつつ、限りなく自由度の高い演奏を求めて「モード&フリー」な展開にチャレンジしている。この「軸足をハードバップに残しつつ」の部分が、マクリーン独特の感覚で、この『Let Freedom Ring』の4曲には、そのマクリーン独特の「モード&フリー」な演奏が詰まっていて、しかもそれが成功している。

バックのリズム隊、特に、ウォルター・ビショップJrのピアノの、マクリーン独特の「モード&フリー」な演奏に対する適応力にはちょっとビックリ。もともと能力に高いピアニストである。バックに回った時のサポートには、その能力の高さを再認識する。このリズム隊の健闘も含め、バンド全体が、マクリーン独特の「モード&フリー」な演奏に邁進している様は聴き応え十分である。
 
 

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2022年2月25日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・229

最近、ジャキー・マクリーン(Jackie Mclean)のリーダー作を聴き直しているのだが、マクリーンのリーダー作の一覧を見直してみると、今まで聴いたことが無かったリーダー作もちょっとあることが判った。

あれぇ〜、おかしいなあ、と思うのだが、何故か聴いたことが無かった盤がある。恐らく、パーソネルを事前に見て、後にしよう、と思ったか、ジャケットを見て、これはあかんやろ、と思ったかのどちらかが理由だったんだろう。

Jackie Mclean『Lights Out!』(写真)。1956年1月27日の録音。PrestigeレーベルのPRLP 7035番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Elmo Hope (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。 録音当時は、ハードバップ全盛期。録音メンバーも、ハードバップ黄金時代を彩った、一流どころで占められている。

リーダーのマクリーンのアルト・サックスと、ドナルド・バードのトランペットがフロント2管のクインテット編成。ピアノに早逝の天才バップ・ピアニスト、エルモ・ホープ、そして、これまた、早逝の天才ベーシスト、ダグ・ワトキンスと、伝説の職人ドラマー、アート・テイラーがリズム・セクションで、フロント2管を盛り立てる。
 

Lights-out

 
冒頭のタイトル曲、マクリーン作の「Lights Out」が良い演奏だ。いかにもハードバップらしい長尺の演奏で、13分の演奏時間の中で、参加メンバーそれぞれが、しっかりとアドリブ・パフォーマンスを聴かせてくれる。これがまあ、内容が濃く、マクリーンのアルト・サックスは、この時点で既に歌心溢れるブロウを備えており、バードのトランペットはジャジーでブリリアント。とにかく、フロント2管のパフォーマンスが実に見事に「ハードバップ」している。

ピアノを担当するエルモ・ホープのバッキングが見事。もともとビ・バップなピアニストなので、ハードバップとしてはどうかしら、と思っていたが、この盤のバッキングを聴いて考え方を変えた。切れ味の良い、エッジの少し立ったピアノのバッキングは「爽やか」な雰囲気。フロントのブロウのフレーズの合間合間を埋めて、フロントを鼓舞しつつ、しっかりとリズム&ビートのキープに努めるとこなどは「職人芸」である。早逝が惜しまれるピアニストであった。

ダグ・ワトキンスのベースは骨太でブンブン唸るウォーキング・ベースが凄く魅力的。アート・テイラーのドラミングは硬軟自在、演奏の「質」に合わせて、変幻自在に叩き分けるテイラーはこれまた見事な「職人芸」。

聴き終えて、この盤、実にハードバップらしい好盤ではないか、というのが僕の感想。なんで最近まで聴かなかったのか。恐らく、このジャケットが悪いのだと思う。プレスティッジお得意の「どーでもよいジャケ」(写真左)が、この盤をブート盤に見せたのかも。このジャケじゃあなあ、触手が伸びないよな。 
 
 
 
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2022年1月 6日 (木曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・12

ジャケットを見るだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。アルバムの1曲目を聴くだけで、これは名盤だな、と感じるアルバムがある。パーソネルを確認するだけで、これはきっと名演だろうな、と想像出来るアルバムがある。そんなアルバムは「ブルーノート・レーベル」に沢山ある。

Sonny Clark『Cool Struttin'』(写真左)。1958年1月5日の録音。ブルーノートの1588番。ちなみにパーソネルは、Sonny Clark (p), Jackie McLean (as), Art Farmer (tp), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。リーダーは、早逝の哀愁ファンキー・ピアノ、ソニー・クラークがリーダー。マクリーンのアルト・サックス、アート・ファーマーのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

最初に、この盤は「モダン・ジャズ」を強烈に感じることの出来る名盤である。特にハードバップの良いところが「てんこ盛り」。フロント2管のユニゾン&ハーモニーの重ね方&響き、ソニクラのピアノに、ポルチェンのベース、フィリージョーのドラムが叩き出す、切れ味良い、躍動感溢れる、クールなファンキー・ビート。ソニクラの書く名曲のキャッチャーなマイナー調のメロディー。
 

Cool-sreuttin_1

 
このアルバムに収録されている全ての演奏が「モダン・ジャズ」と言い切って良いかと思う。とにかく、リーダーのソニクラの書く曲が絶品。マイナー基調でファンキーで流麗。印象的なメロディーとキャッチャーなフレーズ。そのソニクラの書く秀曲の間で演奏されるスタンダード曲の選曲も実に良い。アルバム全体を包む「マイナーでファンキーで小粋なハードバップ」な雰囲気が実に芳しい。

演奏上の工夫も、どれもが「モダン・ジャズ」らしい。ユニゾン&ハーモニーとチェイスの合わせ技、切れ味の良いベースとドラムの効果的ソロ、ピアノ伴奏の印象的なコンピング、どれもがハードバップで培われた演奏上のテクニックなんだが、これらが実に良いタイミングで、要所要所に散りばめられていて、聴いていてとても楽しい。聴いていて「ジャズってええなあ」って思う。

最後にジャケットも本当に「秀逸」。この『Cool Struttin'』のジャケについては、語り尽くされた感があるが、とにかく「ジャズ」している。白黒基調の。妙齢の女性のスラッとした足だけのジャケ写、そして、絶妙なバランスで配置されるタイポグラフィー。この盤に詰まっている音が、このジャケットを通して聴こえてくる様だ。大名盤である。
 
 
 
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2021年9月 8日 (水曜日)

マクリーンの隠れ名盤の一枚

一流ジャズマンを俯瞰して見ると、その演奏スタイルが生涯、基本的に変わらないジャズマンと、時代毎のジャズの演奏スタイルのトレンドに合わせて、変化していくジャズマンと、ふた通りある。例えば、テナー・タイタン、ソニー・ロリンズは、その演奏スタイルはデビュー当時から基本的に変わらない。しかし、コルトレーンなどは、ハードバップからモード、フリー、スピリチュアルと変化していった。

どちらが良いか、という様な優劣を語っているのでは無い。それぞれ、一流ジャズマン、いわゆるプロ中のプロのジャズ演奏家については、各々の信念の下に、演奏スタイルを維持したり、変化させたりする。その演奏スタイルに対する拘りは、我々、聴き手であるアマチュアがその良し悪しを議論するものでは無いだろう。出てくる音を楽しむか否か、それだけである。

Jackie McLean『Bluesnik』(写真左)。1961年1月8日の録音。ブルーノートの4067番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Freddie Hubbard (tp), Kenny Drew (p), Doug Watkins (b), Pete La Roca (ds)。リーダーのマクリーンのアルト・サックスと若きハバードのトランペットの2管フロントのクインテット編成である。
 

Bluesnik

 
ジャキー・マクリーンは、時代毎のジャズの演奏スタイルのトレンドに合わせて、変化していくジャズマンであった。ハードバップ期初期にデビューして、ちょっとピッチの外れたユニークな音色と卓越したテクニック&歌心で、第一線のアルト・サックス奏者として活躍した。この盤では、まだハードバップには留まっているが、モード・ジャズ直前の成熟したコード・ベースのハードバップ演奏を聴くことが出来る。

コルトレーンを意識してなのか、シーツ・オブ・サウンドにも似た高速アドリブ・フレーズ。しかし、まだモードやフリーには傾倒しない。1961年の録音なので、コマーシャルなファンキー・ジャズやソウルフルなジャズに変化しても良さそうなものだが、マクリーンはあくまで、メインストリームな純ジャズを突き進む。そう、マクリーンは硬派なジャズマンだった。決して、ジャズにコマーシャルを求めない。

この盤、結構、内容の濃い演奏が詰まっていて、ハードバップの成熟した高度な演奏を聴くことが出来る。我が国ではあまり名前が挙がる盤では無いのだが、マクリーンの名盤群の1枚であり、ハードバップの傑作の一枚として評価して良い。この後、マクリーンは、モード・ジャズ、そして、フリー・ジャズに接近していく。これがまた「聴きもの」なのだ。
 
 
 
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2021年7月17日 (土曜日)

「進取の気性」のマクリーン

ブルーノートの1500番台から、4000〜4300番台については、ハードバップ期からメインストリーム・ジャズの衰退期まで、カタログに挙がったアルバムを聴き進めるだけで、ジャズの歴史、ジャズの演奏スタイルの変遷が良く判る、と言われる。確かに、ブルーノートのアルバムは「売り上げ」よりも、売り上げを度外視した「ジャズの芸術としての側面」を記録し続けている。

Jackie Mclean『Jackie's Bag』(写真左)。ブルーノートの4051番。1959年1月18日、1960年9月1日の録音。ちなみにパーソネルは、1959年1月18日の録音、Track1-3について、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。1960年9月1日の録音、Track4-6について、Jackie McLean (as), Tina Brooks (ts), Blue Mitchell (tp), Kenny Drew (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。

マクリーンのプレステッジからブルーノートに移籍した初リーダー・セッションの記録。全く異なる編成で、LP時代のA面とB面を分け合っている。しかし、それぞれのパーソネルを見ると、とりわけハードバップ期と変わった、新しいトレンドを担うメンバーが入っている訳では無い。この異なる編成の、異なる録音時期のセッションをひとつのアルバムに収録した、アルフレッド・ライオンの意図が最初は全く判らなかった。


Jackies-bag
 

 
1959年1月18日の録音、冒頭の「Quadrangle」を聴くと面白い。マクリーンは、既に、当時の新しいジャズの演奏トレンドに対峙した、フリー・ジャズ的なフレーズにチャレンジしている様子が窺えるが、他のメンバーについては、従来のハードバップな演奏に終始している。マクリーンのチャレンジなどには無関心。ちょっとバランスの悪いセッションになっているのだが、マクリーンの先取性を感じ取る事が出来る。

1960年9月1日の録音もメンバーは異なるが(ベースのポルチェンだけ一緒)、マクリーンの先取性が耳に残る。従来のハードバップな吹き方とはちょっと工夫して、新しい響きにチャレンジしている様に聴こえる。「Appointment in Ghana」など、テーマが意外と先進的。といっても、他のメンバーは1959年1月18日の録音と同様、従来のハードバップな演奏に終始しているが、皆、絶好調。演奏内容として上質の出来。

この盤を聴くと、マクリーンは「進歩するジャズマン」だったことが良く判る。それが、アルフレッド・ライオンの狙いだったのかもしれない。当時の新しいジャズの演奏トレンドにいち早く対峙して、自分なりに工夫して、新しい響きを獲得しようと努力する。そんなマクリーンの先取性がこの盤から聴いて取れる。この後、マクリーンは、ブルーノート・レーベルの録音の中で、新しいジャズの演奏トレンドに積極果敢に挑戦していくのだ。
 
 
 
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2021年7月 9日 (金曜日)

「小粋なジャズ」を聴き直す。

以前より「小粋なジャズ」をテーマにジャズ盤を集めていたのだが、その集めた「小粋なジャズ」盤を順番に聴き直し始めた。

小粋とは「どことなく、さっぱりした気立てで垢抜けがし、仄かに色気も漂うさま。洗練されていること」。つまり「小粋なジャズ」盤とは、ハードバップな演奏をメインに「どことなく垢抜けて洗練されていて、仄かに健全な色気も感じる」ジャズを聴くことが出来る盤ということになる。

George Wallington『Complete Live At The Café Bohemia』(写真左)。1955年9月9日、The Cafe Bohemia でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Donald Byrd (tp), George Wallington (p), Paul Chambers (b), Arthur Taylor (ds)。

ピアニストのジョージ・ウォリントンがリーダー、ジャキー・マクリーンのアルト・サックスとドナルド・バードのトランペットが2管フロントのクインテット編成。もともとは、プレスティッジ・レーベルからリリースされた、George Wallington『Live At The Café Bohemia』(写真右)のコンプリート盤になる。

このライヴ盤の目玉は、ジャキー・マクリーンのアルト・サックスとドナルド・バードのトランペットが2管フロント。このライヴ盤では、マクリーンのアルト・サックス、バードのトランペットのベストに近いパフォーマンスが確認出来る。
 

Complete-live-at-the-cafe-bohemia-1

 
ジョージ・ウォリントンのピアノは、ビ・バップ調でありながら、優雅な響きが特徴。決して下品に弾かない。決してテクニックをひけらかさない。優雅な響きと確かなテクニックでしっかりとしたハードバップなピアノなんだが、如何せんちょっと地味で目立たない。

ただ、リーダーとしての統制力は優れていたとみえて、このライヴ盤でのパフォーマンスは、ウォリントンの統制力をしっかりと確認することが出来る。このライヴ盤で、ウォリントンのピアノが大々的にフィーチャーされているかと言えば、そうでは無い。如何せん地味なのだ。

ライヴ当日、この2管フロントは終日絶好調だった様で、今回のコンプリート盤以前の通常盤でのパフォーマンスも凄かったが、これがコンプリート盤で追加された演奏でも漏れなく素晴らしい。つまり、ライヴ収録されたパフォーマンスのほぼ全てが素晴らしいパフォーマンスで埋め尽くされていたということになる。

演奏の内容は「完璧なハードバップ」。2管フロントのアドリブ・パフォーマンスは、効果的な「引用」も含めて、小粋なものばかり。そういう意味で、このライヴ盤は「小粋なジャズ」盤の一枚にノミネートしました。ハイ。
 
 
 
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2021年6月30日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・210

ブルーノート・レーベルは、売れるであろう人気ジャズマンのリーダー作ばかりで無く、将来有望な新人を発掘〜初リーダー作を作らせたり、作曲の才能に着目、その自作曲がメインの作品を作らせたり、はたまた、ジャズのルーツである「アフリカン」なリズム&ビートに特化した企画盤を作ったり、ジャズを総合芸術とした捉え、多面的なジャズ音源を残してくれている。

Freddie Redd Quintet『Shades of Redd』(写真左)。1960年8月13日の録音。ブルーノートの4045番。ちなみにパーソネルは、Freddie Redd (p), Jackie McLean (as), Tina Brooks (ts), Paul Chambers (b), Louis Hayes (ds)。マクリーンのアルト・サックス、ブルックスのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

この盤に収録された曲の全てが、リーダーのフレディ・レッドの作。この盤のイメージは「フレディ・レッド作品集」。フレディ・レッドの作曲の才能に着目して制作されたアルバムと思われる。そう言えば、4027番の『The Music From The Connection』も、フレディ・レッドの書いたミュージカルの曲を収録していて、フレディ・レッドの作曲の才能を十分に確認出来るものだった。
 

Shades-of-red

 
レッドの作品の特徴はジャジーでブルージーで、マイナー調な哀愁感が色濃く漂う独特なもの。セロニアス・モンクの様に聴けばすぐ判る「癖」は無いが、レッドの作品は、ジャジーでアーバンな「大人のジャズ」の雰囲気が素敵な曲が多い。明るい曲調でも、どこか哀愁感が漂うところが興味深い。とにかく、聴いていて、この哀愁感が耳に心地良い曲ばかりが詰まっている『Shades of Redd』である。この哀愁感漂う、ジャジーで

なレッドの曲を演奏するのに、ピッタリ合ったサックス奏者が「ジャキー・マクリーン」。『The Music From The Connection』でもマクリーンのアルト・サックスがレッドの曲にピッタリだったのだが、この盤でのその人選を踏襲している。加えて、これまた哀愁テナーのティナ・ブルックスを2管フロントの相棒に招聘し、レッドの曲の「哀愁感」を増幅している。

「ジャジーでブルージーで、マイナー調な哀愁感が色濃く漂う」ところが、レッドの自作曲の特徴であれば、日本のジャズ者の感性にピッタリ合うように感じるのだが、この盤、あんまり話題に上ることがないんですよね。これが昔から不思議。ジャズ盤紹介本などで取り上げられることが殆ど無い盤なのが原因だと思っていて、一度聴けば、結構、皆、お気に入りになりと思うのですが、どうでしょう。
 
 
 

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2021年6月24日 (木曜日)

ストイックで真摯なマクリーン

ジャキー・マクリーン(Jackie McLean)は、進化に向かって努力するアルト・サックス奏者であった。ハードバップ初期に頭角を現し、ハードバップを代表するアルト・サックス奏者の1人になった。しかし、当時のジャズは急速に進化していた。マクリーンは、そのジャズの急速な進化に乗り遅れる事無く、積極的に進化に向かってチャレンジしていった「改革者志向」のジャズマンであった。

Jackie McLean『Capuchin Swing』(写真左)。1960年4月の録音。ブルーノートの4038番。 ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Blue Mitchell (tp), Walter Bishop, Jr. (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。リーダーのマクリーンのアルト・サックスとブルー・ミッチェルのトランペットの2管フロント。クインテット編成である。

この盤を聴くと面白いのは、演奏の響きの中に、ハードバップな音からモーダルな音にシフトする兆しが見え隠れするところ。いわゆる後の「新主流派」の音の雰囲気が、この盤のところどころに顔を覗かせている。ただし、この「兆し」は、マクリーンのアルト・サックスのパフォーマンスにのみ感じるもので、他のメンバーのパフォーマンスについては、基本的に「ハードバップ」の雰囲気を色濃く踏襲している。
 

Capuchin-swing

 
マクリーンのアルト・サックスは、何時でも「真摯で実直」。遊びや破綻とは無縁の、ストイックなアルト・サックス。アドリブ・フレーズでの「他の名曲のフレーズの引用」などの遊びは全く無い。この盤では、コードをベースにしたハードバップのアドリブ展開の中で、如何に自由度高く吹くことが出来るか、に挑戦しているかのような、「思考している」アドリブ・フレーズが印象的。

ミッチェルのトランペットもファンキー・ジャズな吹き回しを封印し、ストイックなマクリーンのフレーズに追従する。面白いのはハッピー・スインガーのビショップJr.のピアノが、まるで「新主流派」の様な、ちょっとモーダルなフレーズを取り込んでいるところ。そう、この盤には、マクリーンの「新主流派」への進化「一歩手前」の、ストイックで真摯なハードバップな演奏が詰まっている。

クインテットのメンバー全員好調で、選曲についても、ジャズ・スタンダード曲は1曲のみと潔い。聴き手に迎合すること無く、ジャズの進化に積極的にチャレンジしていたマクリーンのパフォーマンスがこの盤に記録されている。我が国ではほとんど話題に上る事の無い盤だが、音的にもブルーノートらしい、ハードバップ者の方々には必聴の「隠れ好盤」です。
 
 
 

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2021年5月27日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・205

ジャキー・マクリーンはいかにも「ジャズらしい」アルト・サックス奏者である。マクリーンのアルトはピッチが「少しフラット」している。クラシックの世界からすると「論外」。しかし、ジャズの世界ではこれが「味」になり「個性」になる。これがジャズの面白いところ。聴いた時の感覚と雰囲気がジャジーであれば、それは「ジャズ」である。

Jackie McLean『Swing Swang Swingin'』(写真左)。1959年10月20日の録音。ブルーノートの4024番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Walter Bishop Jr. (p), Jimmy Garrison (b), Art Taylor (ds)。なかなか玄人ごのみのリズム・セクションをバックに、マクリーンのアルト・サックス1管のカルテット編成。ブルーノート盤らしく、しっかりリハーサルを積んだようで、演奏について破綻が全く無い。充実のハードバップである。

マクリーンのワンホーン・カルテット。マクリーンの癖のある、ピッチが「少しフラット」したアルト・サックスが心ゆくまで楽しめる。まず、これがこの盤の一番の「売り」ポイント。加えて、収録曲全7曲中、マクリーンの自作曲は1曲のみ。残りの6曲は全てスタンダード曲で、マクリーンのスタンダード曲の解釈が良く判り、個性的なアルトの音色が上手く活かされているのに感心する。
 

Swing-swang-swingin
 

冒頭の「What's New?」を聴けば、それが良く判る。このバラード曲のテーマを朗々とユッタリ情感豊かに吹くと、マクリーンのピッチが「少しフラット」したアルトが「良く無い方向」に目立つ。短くストレートに硬派に吹き上がることにより、マクリーンの個性あるアルトが「良い方向」に作用する。勢いがついて、このスタンダード曲の持つ印象的なフレーズがダイレクトに耳に残る。マクリーンは自分のアルトの音色の長所ち短所を良く把握している。

バックにリズム・セクションも実に良い雰囲気を醸し出す。マクリーンはピッチが「少しフラット」する。吹くだけで「マイナー調」。バックのピアノはハッピー・スインガーが良い。明朗で楽しく元気の良いピアノの方がバランスが良い。そして、ギャリソンの骨太ベースがしっかりと演奏のベースラインを支えていて、安心してアドリブを吹きまくれる。テイラーのドラムは変幻自在、硬軟自在、様々なパターンのリズム対する要求に柔軟に応える。

良きリズム・セクションに恵まれ、好調のマクリーンのアルトは無敵だ。ジャケットのデザインもブルーノートらしく、アーティスティックで実に雰囲気が良い。選曲良し、内容良し、ジャケット良しの「揃いも揃った三拍子」。とてもブルーノートらしい好盤である。
 
 
 

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