2019年8月20日 (火曜日)

欧州での純ジャズの「深化」

1970年代、メインストリーム・ジャズ(純ジャズ)は欧州で深化していた。米国ではジャズのポップス化、いわゆるクロスオーバー〜フュージョン・ジャズがメインとなり、メインストリーム・ジャズは絶えずに深化してはいたが、1960年代前半までの様に活発な状況では無かった。米国のジャズメンも米国では仕事が無くなり、欧州へ移住する者も少なくなかった。

ジャズを聴き始めた1970年代後半、いろいろと数少ないジャズ本を読んで、欧州にもジャズが根付いていることを知って、驚いた事を覚えている。そうか、ジャズって米国と日本だけのものじゃ無かったんだ、欧州にも広がっていたんや、と妙に感動した。その時に知った欧州のレーベルが、ECMレーベルであり、Enjaレーベルであり、Steeplechaseレーベルであった。
 
Jackie McLean featuring Gary Bartz『Ode to Super』(写真)。Steeplechaseレーベルの「SCS1009番」。1973年7月17日、デンマークはコペンハーゲンの「Soundtrack Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean, Gary Bartz (as, vo), Thomas Clausen (p), Bo Stief (b), Alex Riel (ds)。
 
 
Ode-to-super
 
 
このSteeplechase盤を聴けば、メインストリーム・ジャズが欧州、それも北欧で深化していたことが良く判る。リーダーのマクリーンはもともと進化を旨とするジャズマン。ブルーノート・レーベルでの諸作を聴けば、リーダー作を重ねる毎に自らのジャズを進化させているのが良く判るのだが、1970年代のSteeplechaseでの諸作でも、マクリーンは絶えず「深化」している。常に新しいイメージのマクリーンを聴かせてくれる。

この『Ode to Super』でも、マクリーンは、フリーでスピリチュアルなアルト・サックス奏者のゲイリー・バーツとガッチリ組んで、バーツと比べても遜色ない、スピリチュアルなブロウを聴かせてくれる。スピリチュアルな響きが魅力の「Ode To Super」、ばっちり決まったファンキー・チューン「Great Rainstreet Blues」、モダンでスインギーな「Red Cross」など、全編に渡って、新しい響きのメインストリームなジャズを聴かせてくれるのが嬉しい。
 
1970年代のメインストリーム・ジャズの「深化」については、欧州のジャズ・シーンの貢献度が高い。1970年代のジャズの「深化」を追体験するには、SteepleChaseレーベルの諸作は欠かせない。そう言う意味でも、SteepleChaseレーベルって、あって良かったなあ、と思うのだ。
 
 
 
東日本大震災から8年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年3月24日 (日曜日)

適度な泣きのマクリーンを聴く

1970年代以降のニュー・ジャズや現代のネオ・ハードバップやネオ・スピリチュアルなジャズを最近良く聴く。その演奏の創造性の高さや演奏テクニックの素晴らしさを愛でる訳だが、さすがに同じ傾向のジャズを聴き続けると耳が疲れる。そうするとふと聴きたくなるのがハードバップ。それも1950年代の「純正ハードバップ」な演奏にドップリ浸かりたくなる。
 
Jackie Mclean『A Long Drink of the Blues』(写真左)。1957年8月30日の録音 (#1-2)と同年2月15日の録音 (#3-5)とに分かれる。録音時期が違うので、当然、パーソネルを2つに分かれる。リーダーの Jackie Mclean (as, ts) は変わらないが、8月30日の録音は、Webster Young (tp), Curtis Fuller (tb), Gil Coggins (p), Paul Chambers (b), Louis Hayes (ds)、2月15日の演奏は、Mal Waldron (p), Arthur Phipps (b), Art Taylor (ds)。
 
こういうアルバム曲の編成って「プレスティッジ・レーベル」の仕業と睨んで間違い無い。LP時代のA面、1曲目と2曲目のタイトル曲「A Long Drink of the Blues」はマクリーンのオリジナル曲。1曲目は「false start(出だしの失敗)」で2曲目がやり直しテイクで、フロント3管のセクステット構成。マクリーンは珍しくテナーも吹いている。LP時代のB面、3曲目から5曲目についてはスタンダード曲で、マクリーンのアルト・サックスがフロント1管のカルテット構成。
 
  
A-long-drink-of-the-blues
 
 
演奏の編成が異なる演奏が2種類、分かれているのだが、この盤については意外にそれが気にならない。というか気がつかない。マクリーンのアルト・サックスの音色と演奏が実に目立っていて印象的で、このマクリーンのアルト・サックスが、2種類に分かれる編成の演奏に「統一感」を持たせているのだ。確かに、マクリーンのアルト・サックスは個性的すぎるほど個性的。
 
クラシックではありえないであろう、ピッチが少しフラットした音色。フレーズのほぼ8割がピッチがフラットしているので、聴けば「これはマクリーン」と直ぐに判る。そんな超個性的なマクリーンのアルト・サックスを心ゆくまで愛でることの出来るアルバムの一枚がこの『A Long Drink of the Blues』である。適度にリラックスした雰囲気の中で、朗々とややピッチがずれたアルト・サックスで「鼻歌を唄うように」アドリブ・フレーズを繰り出していく。
 
特に3曲目から5曲目の3曲についてはいずれも有名なバラードで、情感がこもった適度な「泣き」のマクリーンの片鱗を聴くことが出来る。確かにマクリーンはバラード演奏が上手い。この「泣き」のマクリーンが堪らなく良いのだ。アルバム・ジャケットは「やっつけ風」で損をしているが、ハードバップ好きには堪らない内容だと思います。好盤です。


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2018年2月15日 (木曜日)

SteepleChaseの成せる技

SteepleChaseレーベルとは。マイルス・コレクターとして有名なデンマークのニルス・ウインターが、1972年立ち上げたジャズ・レーベル。1970〜80年代を中心に、ジャズ史に残る名盤を数多く生み出した欧州ジャズ・レーベルの老舗。このレーベルは欧州のレーベルとしては、比較的、米国系のレーベルに近い演奏の色や雰囲気を持っていて、ハードバップ系の演奏に秀作が多い。

さしずめ欧州の「ブルーノート」と言っても良い「欧州発ハードバップ」の宝庫である。このSteepleChaseレーベルのアルバムを、ある程度、カタログ番号順に確保できたので、順番に聴き始めている。デンマークのコペンハーゲンにある、ライブハウス・モンマルトルをホームグラウンドにしたライブ音源が貴重。1970年代の欧州ハードバップの状況がとても良く判る。

Jackie Mclean『A Ghetto Lullaby』(写真左)。1973年7月18〜19日、デンマークはコペンハーゲン、ライブハウス・モンマルトルでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Kenny Drew (p), Niels-Henning Ørsted Pedersen (b), Alex Riel (ds)。マクリーンのアルト一本、ワンホーン・カルテット編成である。
 

A_ghetto_lullaby_1  

 
SteepleChaseレーベルのライブ録音は、モンマルトルでの一発録りがほとんどで、このモンマルトル、音的にデッドで意外に音が良い。素直でナチュラルな音という感じ。音の分離が良く、ジャズの様な小編成の楽器演奏に向いている。そして、この一発録りのライブ音源をほとんど加工すること無く、アルバムにしているようで、これがとても良い。所謂、当時のライブ演奏そのままをアルバムにしている感じなのだ。

このマクリーンのライブ盤も、ライブ録音そのままの感じで、何の細工も加工も無い感じ、これが良い。1970年代、ジャズはクロスオーバー〜フュージョンの時代で、米国本国では純ジャズが角に追いやられている感じだったが、欧州では、純ジャズがメインだった、そんな当時の状況が、このマクリーンの熱いブロウを聴いていて良く判る。

ドリューのピアノはエモーショナルで典雅、ペデルセンのベースは骨太で躍動感抜群。リールのドラムは堅実。そんなリズム・セクションをバックに、マクリーンは自由度の高いブロウを思う存分繰り広げている。モンマルトルの聴衆の雰囲気も上々。何の装飾も無いライブ盤なんだが、結構、聴き応えのあるところが、さすがは、SteepleChaseレーベルの成せる技である。

 
 

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2017年8月30日 (水曜日)

ジャキー・マクリーンは進化の人

ジャキー・マクリーンは進化の人であった。デビューはハードバップ前半期。ちょっとピッチの外れたストレートなブロウが個性で、クラシックの世界であれば、絶対にあり得ない「アルト・サックス」であった。しかし、ちょっとピッチの外れたストレートなブロウを個性と捉えて愛でるのが「ジャズ」である。懐が深いというか、柔軟性が高いというか(笑)。

そんなマクリーン、ハードバップから端を発しているが、そこに留まらなかった。ハードバップからモーダルなジャズへ、そして、フリーキーでアブストラクトなジャズに世界にスタイルを広げる。1960年代後半の諸作は「決して成功作とは言えない」などど揶揄されたが、この1970年代前半の録音成果を聴くと、マクリーンのスタイルの拡大は意外と成功を収めていたのでは無いか、と感じている。

Jackie Mclean & The Cosmic Brotherhood『New York Calling』(写真左)。1974年10月の録音。SteepleChaseレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (ts), Billy Skinner (tp), René McLean  (ss, as, ts), Billy Gault (p, arr),  James Benjamin (b), Michael Carvin (ds)。フロントが3管のセクステット構成である。
 

New_york_calling

 
René McLeanは、リーダーJackie Mclean =ジャッキー・マクリーンの息子(ジャッキー・マクリーンは継父)。それ以外のメンバーは実は知らない。しかし、この盤を聴けば判るが、それなりの実力を持った、ハードバッパーなジャズメン達である。演奏を聴いていても安心感があるし、抑揚もよく効いていて、聴いていてダレるところが無い。

演奏全体の雰囲気は、モーダルなコルトレーンである。フリーに手を染める前、モード・ジャズを追求していたコルトレーンから、シーツ・オブ・サウンドを引いた雰囲気と形容したら良いだろうか。徹頭徹尾、自由度の高いモード・ジャズの嵐である。適度に勢いも有り、爽快感もある。コルトレーンに比べれば、ちょっと迫力不足ではあるが、アンサンブルなどはカッチリとまとまっていて清々しい。

コルトレーンのモード・ジャズよりは、シンプルで難しく無く聴き易い。1950年代のハードバップ時代のジャキー・マクリーンのアルトをイメージするとかなり戸惑うが、単純にコルトレーンのモード・ジャズを踏襲していることを意識しながら聴くと、意外と聴き易く親しみ易い演奏であることに気付く。コルトレーンのモード・ジャズを踏襲したマクリーンもなかなかのもの。好盤です。

 
 

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2016年12月18日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・96

ジャズ・トランペットの「隠れ好盤」を聴き直している。このアルバムは、意外とジャズ盤の紹介本には載らない。けど、ジャズ者中堅からベテランの方々は、この盤の渋さを良く知っている。

Kenny Dorham『Matador』(写真左)。1962年4月の録音。パーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jackie McLean (as), Bobby Timmons (p), Teddy Smith (b), J.C. Moses (ds)。リーダーのドーハム、アルトのマクリーン、フロントの2人は強力。この二人のバックに、ピアノのティモンズは珍しい。ベースとドラムの二人は玄人好み。

この幾何学模様の様なジャケットがちょっと問題なのかも知れない。ジャズ臭が希薄なのだ。恐らく、ジャズ者初心者の方々は、なかなか触手が伸びないだろう。まさか、この盤が、なかなかのハードバップな内容だとは、なかなか聴く前は想像できない。

オープニングのエキゾティックな5拍子の「El Matador」が良い。これを聴けば、もうこの盤の内容は保証されたも同然。アルバム全体に漂うスパニッシュ・ムードが心地良い。この盤でのドーハムは吹けている。ドーハムはアルバムによってバラツキがあるんだが、この盤は良い、吹けている。
 

Matador

 
聴いていて清々しい気持ちになる。どこを取っても、どこを聴いてもハードバップ。1962年、時はハードバップ成熟期を経て、ボサノバ・ジャズやファンキー・ジャズが、そして、最新鋭のジャズとして、モード・ジャズが流行りだした頃。そんな時代に、このアルバムは、思いっきり成熟したハードバップを聴かせてくれる。

マクリーンも好調だ。モード・ジャズにも果敢にチャレンジしていたマクリーンだが、この盤のブロウを聴くと、やはり、マクリーンにはハードバップが良く似合う。でも、よく聴くと、意外とところどころにモーダルに吹きまくるマクリーンがいたりして、これはこれでなかなか面白い。ジャズは生きている、ジャズは進化しているなあ、と感じます。

この盤はどうもジャケットで損をしている。どう見たってハードバップな感じがしないもんなあ。よって、ジャズ紹介本にもなかなか載らない。見栄えがせんもんなあ。以前より、ジャズ喫茶で良く聴かれる隠れ好盤だ、と聞かされてきましたが、至極納得です。しかし、思い切って手を出して聴けば、「当たり」な内容に思わず、感嘆の声を上げてしまいます(笑)。

 
 

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2016年6月29日 (水曜日)

個性は初リーダー作で感じる

ジャズメンの個性は初リーダー作を聴けば判る、とよく言われる。長年、ジャズを聴いてきて、確かにそれは言える、と思う。

ロックのアルバムは、僕は「セカンド盤」だと思っている。録音環境に慣れてライブ演奏も上手くなって、満を持しての「セカンド盤」。ロックのファースト盤は意外と内容に乏しかったり、演奏が硬かったりする。

しかし、ジャズは違う。サイドメンとしての演奏の時間が結構あったりして、サイドメンとして録音環境に十分に慣れて、ライブ演奏にも手慣れてくる。つまり、プレイヤーとしてほぼ充実してきたところに初リーダー作の声がかかる訳で、確かに、ジャズでは初リーダー作で、そのジャズメンの基本的な個性が良く判る。

例えば、この初リーダー作など、その好例である。Jackie McLean『Presenting... Jackie McLean』(写真)。1955年10月の録音。ちなみにパーソネルは、 Jackie Mclean (as), Donald Byrd (tp), Mal Waldron (p), Doug Watkins (b), Ronald Tucker (ds)。メンバー的には、ハードバップな強者ども大集合である。

これだけのメンバーを集めれば、そりゃ〜良い演奏が残せるだろう。期待に違わぬ、ハードバップ初期の溌剌とした演奏が繰り広げられている。
 

Presenting_jackie_mclean

 
演奏のアレンジ的には、まだまだシンプルで、音と音の隙間はスカスカなんだけど、瞬間芸的な演奏を競うビ・バップとは明らかに違う、長いアドリブ・フレーズの展開の中で、その演奏のイマージネーションとテクニックを披露するところがハードバップである。

初リーダーのマクリーンはと言えば、もう最初から最後まで「マクリーン節」全開である。最初の「It's You Or No One」を聴くだけで、この演奏のアルト・サックスはマクリーンのそれだとハッキリと判る位の個性である。節回し、アドリブの癖、音色、どれもが、後につながる「マクリーン節」である。

面白いのは、マクリーンのフレーズって、ピッチが低めにずれるのが特徴なんだが、この初リーダー作では、ほんのちょっとズレているだけ。まずまずピッチがあっているところが実に初々しい。恐らく、ピッチが低めにずれる個性は、マクリーンが一流ジャズメンとして内外に認められてからのことなんだろう。

ちなみに、このマクリーンの初リーダー作のジャケットは、写真左の猫のジャケットなんだが、僕が、ジャズを聴きだした頃、1970年代後半のジャケットは写真右のデザインだった。この写真右のイラスト、僕はフクロウかと思ったんだが、これも実は「猫」だそうです(笑)。まあ、どちらも「猫のジャケット」という面ではイーブンと言うことで・・・。

 
 

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2016年3月27日 (日曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・33

1950年代のハードバップの時代は、ジャズの最も充実した、最も創造的な時代だった。ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌などに毎度毎度紹介される定盤意外にも、無名の盤や何の変哲も無いジャケットな盤にも、これは、といった充実した内容のものがゴロゴロしている。

例えば、この、Kenny Dorham And Jackie McLean『Inta Somethin'』(写真左)。ジャケットも平凡と言えば平凡。それでも、ケニー・ドーハムとジャキー・マクリーンの名前が並列で並んでいるところを見れば、この盤はなんだか、もしかしたら、という気分にさせられる。

実際、この盤は、1961年11月、San Francisco の The Jazz Workshopでのライブ音源で、ケニー・ドーハムとジャキー・マクリーンが結成した双頭クインテットが西海岸へ遠征したものを捉えたライブ盤になります。彼らにとっては初めての米国西海岸でのツアーだったらしく、何時になく、演奏に気合いが入っている様子が伝わってくるような、溌剌とした演奏がこのライブ盤に詰まっています。

ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jackie McLean (as), Walter Bishop Jr. (p), Leroy Vinnegar (b), Art Taylor (ds)。ベースに、西海岸のベーシスト、リロイ・ビネガーが入っているので、西海岸に来ての即席クインテットだと思うが、メンバーそれぞれがかなりの実力の持ち主なので、グループ・サウンドとして実に充実した内容になっています。
 

Inta_samethin

 
ケニー・ドーハムのトランペットが良く鳴っています。ドーハムは意外と好不調の波があると睨んでいるのですが、このライブ盤でのドーハムは好調の部類。バックのピアノ・トリオとの相性が良いのでしょうか。好調時のドーハムは、中音域中心に端正で良く鳴るトランペットで、聴いていて心地が良いものです。

マクリーンはアドリブ・フレーズに少しずつ工夫を凝らしている様に聴こえます。マクリーンは常にジャズのトレンドに気を配り、その時代その時代にあったジャズのスタイルにチャレンジしていった「進化のジャズメン」でした。ここでも、従来のアドリブ・フレーズに工夫を凝らして、マンネリに陥らないよう努力している風です。モーダルなフレーズが見え隠れするところが実にマクリーンらしい。

バックのリズム・セクションも堅調なバッキングを繰り広げていて好感が持てる。安心してフロントのドーハムとマクリーンが吹き上げているのが伝わってくる。特に、録音機会があまり多く無い、ピアノのウォルター・ビショップ・ジュニアのバッキングの様子は興味深く聴くことが出来る。

何の変哲も無いハードバップのライブ盤なんですが、演奏が結構充実していて、良く聴けばマスターテープに問題があるらしく、音がよれる箇所があるんですが、そんなことも気にならない、聴いて楽しいライブ盤です。

 
 

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2016年2月27日 (土曜日)

BNLTシリーズの聴き直しは楽し

ブルーノート・レーベルは1967年、リバティに買収される。当然、ブルーノートの録音テープは全てリバティのものになった。1970年代に入り、純ジャズは過去の音楽資産になった。ブルーノート・レーベルは忘れ去られた存在になる。

しかし、ジャズはそう簡単に「死なない」。1979年、UA社のレコード部門をEMIが買収したのを好機と捉え、音源発掘男マイケル・カスクーナはキャピトルと談判、ブルーノートの未発表音源を発掘した。BNLTシリーズである。

1979〜81年に発掘盤ばかりLP40数タイトルが発表された時にはビックリした。まだ、こんな純ジャズな音源が残っているんやなあ、とジャズの懐の深さに感心することしきりであった。

このBNLTシリーズは、もともとはブルーノート・レーベルの下、総帥のアルフレッド・ライオンが録音したにはしたが、何らかの理由でLPとしての発売を見送った(お蔵入りの)音源のアルバム化である。

お蔵入りの音源なので、通常のジャズ・レーベルでは演奏自体に問題があるものばかりなのだが、ブルーノートの場合はそうではない。お蔵入りの音源とはいえ、一定以上の演奏水準を保ったものばかりで、「何故この音源がリリースされなかったのか」が判らない優れた内容の音源も多々ある。

このブルーノートのBNLTシリーズを順番に聴き直すのが、最近の密かな楽しみである。意外と優れた演奏が多いのだ。しかも、リラックスして聴けるものが多く、肩肘張らずに楽しめる。シビアなジャズを聴いた後、ちょっと箸休めの感じで、このBNLTシリーズのアルバムを聴くのは、なかなか「オツ」なものである。
 

Jackie_mclean_consequence

 
今日のBNLTシリーズのアルバムは、Jackie Mclean『Consequence』(写真)。1965年12月の録音。LT-994番である。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Lee Morgan (tp), Harold Mabern (p), Herbie Lewis (b), Billy Higgins (ds)。

ハードバップ時代からのベテランの二人、マクリーンとモーガンをフロントに据え、当時、まだ若手だったリズム・セクションを起用した、新旧ジャズメンの邂逅的なアルバムである。

新旧ジャズメンの邂逅とは言え、何か特殊な化学反応が起こったかと言えばそうではない。フロントのマクリーンとモーガンが絶好調で、明らかにベテランのフロント二人の「勝利」である。とにかく、この絶好調のベテラン二人がこのアルバムに収録されたセッションを牽引している。演奏の内容が徹頭徹尾「良質なハードバップ」で占められている。

録音された時期が1965年なので、この徹頭徹尾「良質なハードバップ」という内容は逆に違和感がある。この演奏が1960年前後に録音されていたら、それはそれで座りが良いのだが、1965年という録音時期、そして、バックのリズム・セクションが当時の優れた若手陣を採用していることから、「良質なハードバップ」な中身は明らかに時代遅れと取られても仕方が無い。

でも、今の耳で振り返ると、この未発表音源の内容って「優れたハードバップ」で、これはこれで内容のあるアルバムだと僕は思う。絶好調なマクリーンのアルト、そして、モーガンのトランペットは溌剌としていて、1960年前後でもこれだけ吹きまくる二人の演奏にはなかなか出会わないだろう。

1965年の優れたハードバップ盤として、今の耳には好盤の一枚です。リラックスして聴けるハードバップ盤として、ジャズ者ベテランの方々にお勧めの一枚でしょうか。BNLTシリーズって、聴き直すと新しい発見が結構あったりして面白いですよ。

 
 

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2016年1月 9日 (土曜日)

モード・ジャズなマクリーン

今週の「聴き始め」週間は、図らずも「アルト・サックス」週間。締めはジャキー・マクリーン。マクリーンは先取性の高い「進化のアルト・サックス」。ひとつの演奏スタイルに留まらない、チャレンジブルでイノベートなアルト・サックスである。新年を迎えて、聴き始めに相応しいジャズメンである(ちょっとこじつけか・笑)。

Jackie Mclean『It's Time』(写真左)というアルバムがある。1964年8月の録音。ブルーノートの4179番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Charles Tolliver (tp), Herbie Hancock (p), Cecil McBee (b), Roy Haynes (ds)。

昨日のブログでご紹介した、ほぼ一年前の『One Step Beyond』では、オーネット・コールマン系のフリー・ジャズに適応したマクリーンであったが、このアルバムでは、変わり身早く、当時、ジャズの最先端の演奏スタイルである、モード・ジャズ、いわゆる新主流派のジャズ・スタイルを採用している。

まずはバックのミュージシャンを若手の精鋭を中心に固めている。一番年長のドラマー、ロイ・ヘインズですら、録音当時39歳。トランペットのチャールズ・トリヴァーは22歳、ベースのセシル・マクビーは29歳、ピアノのハービー・ハンコックは24際。主役のマクリーンが33歳。平均年齢は30歳を下回る。

このアルバムでのキーマンは、当時弱冠24歳の若き精鋭の一人、ピアノのハービー・ハンコックだろう。冒頭のトリヴァー作の「Cancellation」のハービーのピアノの響き、フレーズが何から何までモードであり、新主流派なのだ。実はこのアルバム全編に渡って、このハービーのモーダルなピアノが、演奏全体の雰囲気を決定付け、フレーズ展開の方針を指し示す。
 

Its_time

 
そこに二人目のキーマン、当時29歳のセシル・マクビーのベースが、演奏全体を支えリードし、盛り立てる。「ポスト・バップ・ジャズの最も進歩的で多才なベース奏者」と評されるマクビーのベースが、これまた何から何までモードであり、新主流派なのだ。このマクビーのベースが、ハービーのピアノとコラボして、コッテコテのモード・ジャズの雰囲気を撒き散らす。

そして、主役のマクリーンである。昨日も書いたが、マクリーンは、ジャズの新しい演奏スタイルに対しての適応力が高い。楽器のテクニックもさることながら、ジャズの新しい演奏スタイルに適応しやすいアレンジを施すのが実に上手い。

実際には、ヘッド・アレンジなのか、デスク上のライティングなのか、本人に訊いてみないと判らないが、彼のアレンジ能力の高さが、ジャズの新しい演奏スタイルに対しての適応力がの高さに繋がっていると思う。

この『It's Time』は、意外とモード・ジャズ、新主流派ジャズの雰囲気が色濃く、モード・ジャズの入門盤としてもお勧めできるものです。録音当時は1964年。この辺りからジャズはフリー・ジャズの洗礼を受けつつ、ロック・ミュージックに「大衆音楽」の座を奪われ、混迷の時代を迎えていくことになります。

アルバム・ジャケットも良いですね。エクスクラメーション・マークを並べ立てて、上部に印象的なタイポグラフィー。主役の写真は小さく右上に飾られる。現代アートの好例としても楽しめる、優れたデザイン・センスには脱帽です。

 
 

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2016年1月 8日 (金曜日)

先取性の高いマクリーン

今週の「聴き始め」週間は、図らずも「アルト・サックス」週間となっている。初日、リー・コニッツから始まって、フィル・ウッズ、そして、アート・ペッパーと来た。そう来たら、次は「ジャキー・マクリーン」である。

ジャキー・マクリーンは前進する、進歩するアルト・サックス奏者であった。ハードバップ全盛期にデビューするが、彼はハードバップに安住することは無かった。オーネット・コールマンが出現するや、オーネットの限りなく自由度の高いジャズに手を染め、新主流派のモーダルな演奏が出現すれば、モーダルな演奏にチャレンジする。マクリーンは先取性の高いジャズメンであった。

さて、そんな先取性の高いマクリーンを象徴するアルバムの一枚がこれ。Jackie McLean『One Step Beyond』(写真左)。1963年4月の録音。ブルーノートの4137番。ちなみにパーソネルは、Jackie McLean (as), Grachan Moncur III (tb), Bobby Hutcherson (vib), Eddie Khan (b), Tony Williams (ds)。 

このアルバムは、パーソネルを見れば判るように、当時の先端のジャズの演奏トレンドを追求したアルバムである。聴くと判るのだが、このアルバムでは、オーネット・コールマン系のフリー・ジャズを追い求めているように感じる。

それでいて、ハードバップの様に演奏における構成、展開については、しっかりとアレンジされていることを感じる。単純にオーネットのフリー・ジャズを追い求め、コピーする様な安易で単純なアプローチに飛びつかない、マクリーンのしたたかさを感じる。
 

One_step_beyond

 
冒頭の「Saturday and Sunday」のテーマを奏でるバンドの音を聴くだけで、ただならぬ雰囲気を感じる。もはやこの雰囲気はハードバップでは無い。明らかに、ハードバップの次に来るべき新しいジャズの演奏トレンドである。フリーでありモードである。

このアルバムでは、まだモードの影は薄い。明快に感じるのは、オーネット・コールマンの様な、限りなく自由度の高いハードバップ的な演奏。オーネットほどにはフリーでは無いが、明らかにハードバップよりは遙かに自由度が高い。

ハードバップからモードへの移行の過渡期ならではのユニークな演奏の雰囲気がこのアルバムの個性である。いわゆる「フリーの要素を持つ4ビート」なスタイルで、この時期だけの、特別にユニークなスタイルである。

限りなく自由度の高いフリーなサウンドだが、作編曲がきっちりとしている。恐らく、ブルーノートの総帥であり、プロデューサーである、アルフレッド・ライオンの指導の賜ではないかと想像する。フリーなサウンドではあるが調性を保っているところがユニークである。マクリーンのアレンジ力を感じる。

アルバムを録音する時点でのジャズの演奏トレンドをしっかりと取り入れ、自分のバンド・サウンドに反映する。マクリーンの先取性と応用力の高さを強く感じる。さらに、そんなマクリーンのトレンドを取り入れる「柔軟性の高さ」を実感出来る好盤です。

 
 

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