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2018年12月 8日 (土曜日)

伝説のハイノート・ヒッター

アメリカンなビッグバンドは基本的に白人中心。一聴すると直ぐに判る。明るくメリハリが効いていてダイナミック、その展開やソロについてはキャッチャーで「ウケてなんぼ」的。ショー的な要素も見え隠れする。ファンクネスは希薄で、都会的で洗練されたアレンジ。1970年代には電気楽器を率先して導入。流行に節操なく追従する「脳天気」さも見え隠れ。そんな「あっけらかん」としたアメリカンなビッグバンドは聴き応え満点である。

『The Maynard Ferguson Sextet』(写真左)。1965年9月の録音。セクステット=6人編成なのでビッグバンドでは無いのだが、アレンジ含め、演奏全体の雰囲気が思いっきり「ビッグバンド」しているので、今回取り上げさせて頂いた。加えて、リーダーの「メイナード・ファーガソン」はビッグバンドの主宰者でもあり、ビッグバンドのトランペッターによくある「ハイノート・ヒッター」の代表格でもある。

パーソネルを見渡しても、ファーガソン以外、知っている顔は一人もいない。しかし、アルバムを聴いて思うのは、皆、上手い。6人編成でありながら、ビッグバンドと聴き間違えそうなほどの「迫力」と「音の独特な重ね方」が聴いて取れる。演奏はそれぞれ、明るくメリハリが効いてダイナミック。明らかに、アメリカンなビッグバンドの音の雰囲気である。なんだか聴いていて楽しくなってくる。
  

Maynard_ferguson_sextet  

  
ファーガソンはハイノート・ヒッター。彼のトランペットのハイノートは「成層圏まで轟くハイ・トーン」と形容される。これがまあ、耳をつんざく鋭いもので、不慣れの人には完全に「ノイズ」だろう。この「成層圏まで轟くハイ・トーン」がいわゆるアメリカンなビッグバンドの「ウケてなんぼ」なショー的要素の代表的なもの。ファーガソンはこのハイノートでビッグバンドの人気者になった。

とにかくアメリカンなビッグバンドの演奏は「派手」。この「派手」さが我が国のジャズ者の方々にはウケないのか、アメリカンなビッグバンドや、伝説のハイノート・ヒッター、メイナード・ファーガソンは意外と我が国では人気が無い。このアルバムだって、ジャズ盤紹介本にそのタイトルが挙がることは先ず無い。でもなあ、あっけらかんとしていて明るくて、聴いていて楽しいけどなあ。

メイナード・ファーガソンは1928年5月、カナダ・ケベック州生まれ。2006年8月にこの世を去った。1949年、21歳の時にアメリカに移住し、スタン・ケントン楽団で活躍。その後、パラマウント・ピクチャーズに入り、『十戒』などの映画でリードトランペットを担当。1976年のモントリオールオリンピックの閉会式では、トランペットのソリストを務めている。つまり、米国ではトランペッターとして有名な存在なのだ。我が国で今一度、再評価されてしかるべき、伝説のトランペッターである。

 
 
東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年11月27日 (火曜日)

楽器が鳴るということは重要

ジャズにおいて「楽器が鳴る」ということは重要なことである。「楽器が良く鳴る」ということは、フレーズが乱れること無く、割れること無く、揺らぐこと無く、しっかりスッと通る。ストレートにフレーズのニュアンスが伝わる。加えて「楽器が鳴る」ということは、それだけの優れたテクニックがあるということだ。

Charles Sullivan『Re-Entry』(写真左)。1976年8月17日の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Sullivan (tp), Rene Mclean (as, ts), Kenny Barron (p), Buster Williams (b), Billy Hart (ds)。トランペッターのチャールズ・サリヴァンがリーダーのクインテット構成。我が国のトリオ・レコードのスタッフがニューヨークで録音した盤である。

サリヴァンのトランペットが良く鳴っている。ブラスのブリリアントな響きが実に魅力的だ。この良く鳴るトランペットがこのアルバムの最大の聴きどころ。速いフレーズのバップ曲、ゆったりとスローなバラード曲、思わず体が動くスインギーな曲、それぞれに「良く鳴るトランペット」が映える。ほんと、良い音で鳴るトランペットである。この盤、楽器が良く鳴っているのは、サリヴァンだけでは無い。
 

Reentry  

 
若かりしケニー・バロンのピアノも良く鳴っている。バロンがこれだけダイナミックでドライブ感のあるバップ・ピアノを弾きまくっていたとは。バスター・ウィリアムスのベースも良く鳴っている。重心の低い、しなりのあるベース音は官能的ですらある。ビリー・ハートのドラムもよく鳴っている。趣味の良いポリリズムがバンド全体を鼓舞する。おっと、サックスのレーン・マクリーン(ジャッキー・マクリーンの息子)は健闘している。ちょっとしんどそうなところがあるが「健闘」している。

この盤が録音された1976年、ジャズ界はフュージョン・ジャズが興隆を極め始めた頃。そんな中、こういう硬派な純ジャズ盤がリリースされていたとは知らなかったなあ。いや〜、ジャズは奥が深い。しかもこの盤、日本のレーベルからのリリースなんだが、日本のレーベル主導の「企画もの」臭さが無い。好盤です。

チャールズ・サリヴァンは、1944年11月8日、米国NY生まれ。今年で74歳になる。これだけ良い音、良いテクニックなトランペットなのにリーダー作は3作ほどしかない。Tolliver、Hannibal、Shawと並ぶ70年代を代表するトランペッターとして忘れてはならない存在と言われるが、どうにも過小評価なトランペッターである。

 
 

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2018年11月 7日 (水曜日)

目立ちたがり屋が目立たない時

トランペットのフレディー・ハバード、根っからの「目立ちたがり屋」で、どんなセッションでも、とにかく目立ちたがる。大きな音で、テクニック豊かに吹きまくる、飛ばしまくる。それ故、グループ・サウンドのバランスが崩れることがほとんどで、1960年代のハバードのリーダー作は「いまいち」な感が強い。しかし、あるケースではそうはならずに、意外と好盤に仕上がっている盤もあるのだ。

Freddie Hubbard『The Hub of Hubbard』(写真左)。1969年12月9日の録音。ちなみにパーソネルは、 Freddie Hubbard (tp), Eddie Daniels (ts), Roland Hanna (p), Richard Davis (b), Louis Hayes (ds)。このパーソネルがこの盤の「肝」になる。この「一国一城の主」的イメージのジャズメンがハバードの「目立ちたがり屋」根性を抑制するのだ。

そのパーソネルを見渡すと、先ず目を惹くのは、ジャズクラリネットの大家、エディ・ダニエルズがテナー・サックスで参加。次いでバックのリズム・セクションは、卓抜したテクニックと強烈なスイング感が武器のローランド・ハナのピアノ、骨太重低音ベースのリチャード・ディヴィス、そして、ファンキー&スピリチュアルなドラマー、ルイス・ヘイズ。この盤、リーダーのハバードのバックに錚々たるメンバーがズラリ。しかも曲者ばっかり。

ハバードはいつもの様に「目立ちたがり」トランペットを早々に吹きまくるのだが、バックの4人、ハバードに負けず劣らず、テクニックに優れ、楽器をよく響かせた大きな音で吹きまくり、弾きまくり、叩きまくるのだ。
 

The_hub_of_hubbard

 
目立ちたがりのハバードが目立たない位にガンガンにやるのだから、リーダーのハバードも何時もと違う面持ちで、トランペットを吹いている。どうにもこうにも「お山の大将」の様に自分だけが目立つことが叶わない。これがハバードによっては良い方向に作用するのだ。

ダニエルズのテナーは、コルトレーンを少し聴きやすくした感じ。テクニックに優れ、大きな音で吹きまくる。これが結構凄い。ハバードの大きな音のトランペットが霞むくらいなのだ。さらにデイヴィスのベースはブンブンと重低音を轟かせ、ルイス・ヘイズのドラムはフロントを煽りまくる様に叩きまくっている。これだけ他のメンバーがガンガンにやっているのだ。

ハバードも自らがこれ以上大きな音を出すと、グループ・サウンドのバランスが崩れることは判っている。さすがの「目立ちたがり屋」もこの盤では観念しているようだ。他のメンバーの大きな音とテクニック溢れる展開に対抗すること無く、逆に殊勝に溶け込み、しっかりと良好なグループ・サウンドを成立させている。他のメンバーとのバランスが取れた中で、速い展開と大きな音でガンガンにハードバップをやっている。

こういうケースは数少ないのだが、ハードバップの中で良きトランペッターとして君臨するのは、この「他のメンバーが、目立ちたがりのハバードが目立たない位にガンガンにやる」ケース。この数少ないケースをハバードの参加セッションから探し出すのも、ジャズ盤コレクションの楽しみのひとつである。

 
 

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2018年11月 2日 (金曜日)

ウッディ・ショウを思い出した

ジャズを聴き始めた頃から、その名前は知っていた。しかし、そのジャズメンのリーダー作は日本ではほとんど見なかった。その後、ジャズ喫茶で、そのジャズメンのリーダー作を聴かせて貰った。テクニック優秀、流麗でブリリアント、吹きすぎず、吹かなさすぎず、丁度良い塩梅の手数のトランペット。そのトランペットの名前は「ウッディ・ショウ(Woody Shaw)」。

ウッディ・ショウは1944年生まれ。米国はニュージャージー州ニューアーク出身。1962年18歳で初レコーディング。ハード・バップからアバンギャルドまで、様々な演奏スタイルに適応するテクニックを持つ。1960年代後半以降から1970年代にかけてフレディ・ハバードと並ぶ実力派のトランペッターとされた。しかし、何故か人気が無い。

はしたないまでに吹きすぎるハバードがそこそこの人気を得ていたのに比べて、ショウのトランペットは人気が無かったなあ。恐らく、1970年代、クロスオーバーからフュージョン・ジャズのブームの中、ハバードはジャズロックへ上手く転身して人気を得たが、ショウは伝統的なスタイルを踏襲し、フュージョン・ブームの中にその名は無かった。この辺がショウの人気の無さの原因だと僕は思っている。
 

Woody_shaw_live_in_bremen

 
しかし、今回、このライブ盤を聴いて、やっぱりショウのトランペットって凄いなあと思った。Woody Shaw Quartet『Live in Bremen, 1983』(写真左)。1983年1月のブレーメンでのライヴ演奏を収録したアルバム。ちなみにパーソネルは、Woody Shaw (tp, flh), Mulgrew Miller (p), Stafford James (b), Tony Reedus (ds)。ピアノにお気に入りのピアニスト、マルグリュー・ミラーが参加している。

ウッディ・ショウのトランペットは申し分無い。アグレッシヴで覇気に満ちていて流麗。何と言っても、ショウは吹きすぎないところが良い。高いテクニックの持ち主ながら、それをひけらかすことも無い。とても趣味の良い、ブリリアントなトランペットを披露してくれている。このトランペットについては「何故人気が無いのか」。不思議でたまらない。

ショウは、1989年、ブルックリンで地下鉄のホームから転落し左腕を切断。その後、同年5月に死去している。44歳。早過ぎる死であった。1970年代はクロスオーバーからフュージョン・ジャズの時代。伝統的なスタイルを踏襲したショウのリーダー作はあまり多く無い。が、この際である。改めて、ショウのリーダー作を順に聴き直してみようと思った。

 
 

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2018年11月 1日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・132

最近、Dusko Goykovich(ダスコ・ゴイコヴィッチ)の新作を聴いて、無性に彼のトランペットが聴きたくなった。そう言えば、しばらく聴いてなかったんなや〜。好きなトランペッターなんですよ、ゴイコヴィッチって。初めて聴いたリーダー作が『After Hours』(1971年の録音)。ジャズを聴き初めて15年くらい経ってからかなあ。

ダスコ・ゴイコヴィッチは、旧ユーゴスラヴィア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)ヤイツェの出身。1931年生まれなので、今年で87歳になります。この旧ユーゴスラビア出身というところがポイント。ユーゴスラビアとは「南のスラブ民族の国」という意味で、彼のトラペットって、どこかスラブの民俗音楽の響きが漂うんですね。これが僕には堪らない。

Dusko Goykovich『Slavic Mood』(写真左)。1974年、イタリアでの録音。ちなみにパーソネルは、Dusko Goykovich (tp),  Bert Thompson (b), Joe Nay (ds), Vince Benedetti (p), Andy Scherrer (ts, ss)。タイトルのとおり東欧(スラブ)を素材にしたモーダルな作品。ゴイコヴィッチの初リーダー作が1966年なので、彼のキャリアの中ではまだまだ初期の頃の傑作です。
 

Slavic_mood

 
1974年ながら録音の悪さがちょっと気になりますが、スラブ民族の民俗音楽の旋律を宿した様な、独特のマイナー調で哀愁溢れるゴイコヴィッチのフレーズが実に芳しい。特にこの盤はタイトルが「スラブのムード」というくらいなので、このスラブ民族の民俗音楽の旋律を宿したフレーズがてんこ盛りです。しかもところどころ、中近東を想起させるフレーズも織り込まれて、なかなかに聴き応えがある。

「東欧のエキゾチックな哀感感」が独特で、この盤を思いっきり個性的なものにしているのですが、もともとゴイコヴィッチのトランペットは正統なハードバッパー。コードもモードも両方こなし、テクニックは優秀、端正かつ歌心溢れるアドリブ・フレーズは米国の一流トランペッターと比較してもひけを取らない。「東欧のエキゾチックな哀感感」だけで、この盤を好盤に押し上げているのでは無い。

ゴイコヴィッチのデビュー盤である『Swinging Macedonia』を彷彿とさせる、哀愁に哀愁を帯びたメロディーがユニーク。さすが欧州ジャズだけあって、ファンクネスは皆無、リズム&ビートは粘ること無く、ソリッドでシャープなもの。全編に渡って、これぞ欧州ジャズ、これぞ東欧ジャズっていう雰囲気が堪らない。

 
 

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2018年10月27日 (土曜日)

伊のバカテク・トランペッター

特に21世紀に入って、ジャズは結構グローバル・サイズに広がっているんやなあ、と強く感じる。20世紀ではジャズは米国と欧州の一部、そして日本辺りで盛んなのかなあ、と思っていた。

21世紀に入って、欧州に旅行することが多くなって気がついたのが、欧州各国にジャズが存在していて、ライブ・スポットなどもあって、意外と音楽文化の中に根を下ろしているなあ、と実感した。

ジャズ・ミュージシャンの出身もグローバル・サイズに広がっている、と感じている。20世紀では、僕の見識も浅かったせいもあるが、米国のアフリカン・アメリカンがメインで、欧州では北欧出身がメイン、と思っていた。しかし、インターネットが発達し、情報がふんだんに入手出来る様になって、ジャズ・ミュージシャンの出身もグローバル・サイズに広がっていることを理解するようになった。

Franco Ambrosetti『Heart Bop』(写真)。1981年2月, NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp, Flh), Phil Woods (as, cl), Hal Galper (p), Mike Richmond (b), Billy Hart (ds)。ドイツの名門ジャズ・レーベル、Enja(エンヤ)レーベルからのリリース。パーソネルを見渡せば、当時、既にベテランの域に達していたフィル・ウッズがアルト・サックスで参戦している。
 

Herat_bop  

 
FRANCO AMBROSETTI=フランコ・アンブロゼッティは、イタリア系スイス人。スイスのルガーノ(イタリア語圏)の生まれ。1941年生まれ。録音当時は40歳、ベテランの域に達しつつある中堅トランペッター。今年で77歳。1960年代以降は主にイタリアを中心に活動している。

さて、この盤はアンブロゼッティのエンヤにおけるリーダー作の第2弾で、演奏はアルバムタイトルのとおり「心のこもった」熱いハードパップな演奏である。とりわけ、リーダーのアンブロゼッティのトランペットはテクニック優秀、音色とフレーズに癖が無い流麗なもの。決して、前面に出てテクニックをひけらかすことはしない。でも、やっていることは結構高度なものだ。知らず知らずのうちに、演奏に入り込んで、じっくり聴き入ってしまう。

バックの面々の演奏も充実している。フィル・ウッズのアルトは絶好調で、バップなフレーズを吹きまくり、得意の引用技まで飛び出す。リズム隊である、ハル・ギャルパーのピアノ・トリオも健闘していて、良いバッキングをしている。

僕は21世紀に入った頃、イタリアでは古くからジャズが盛んだったことに気がついた。それが証拠にこの素敵な内容のハードバップ盤は、フュージョン・ジャズ全盛の1981年の録音である。好盤である。ジャズはなにも米国だけのものでは無い。

 
 

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2018年10月23日 (火曜日)

ウィントンの考えるブルース集

ウィントン・マルサリスは、ジャズ・トランペットの代表的存在、とされるが、振り返ってみると「決定打」に乏しい、と僕は感じている。デビュー盤の『ウィントン・マルサリスの肖像』は素晴らしかった。しかし、それ以降、どうにも良いアルバムは出すには出すんだが、聴いていて「どこかつまらない」。

ウィントンがリーダーのそれぞれのアルバムにはテーマがあるみたいなんだが、それを生真面目に100%の力で表現しようとする。しかも、そのテーマについて、研究に研究を重ね、あらゆる好要素を集めて演奏に散りばめる。そこにウィントンの途方も無いテクニックを駆使して、その好要素を全て完璧に演奏してしまう。見事という他ない。しかし、ちょっと窮屈で遊びが無くて息が詰まる思いに駆られる。

Wynton Marsalis『Thick in the South : Soul Gestures in Southern Blue, Vol. 1』(写真左)。1991年のリリース。タイトルからも判る様に企画ものである。今回のテーマは「ブルース」。Vol. 1〜3まで、3枚のブルース集を1991年に集中してリリースしている。

しかしなあ。先のスタンダード集は頭でっかちで作られている感が強く、高い演奏テクニックを嫌と言うほど聴かされ、はっきり言って、Vol. 1以外は「面白く無かった」。このブルース集もその二の舞ではあるまいか。
 

Thick_in_the_south

 
Wynton Marsalis (tp), Joe Henderson (ts), Marcus Roberts (p), Robert Hurst (b), Elvin Jones, Jeff "Tain" Watts (ds)。パーソネルを見て、ちょっとホッとする。

フロントの相棒に、捻れテナーのベテラン、ジョーヘンを配し、ドラムには、伝説のポリリズム、レジェンド級のドラマー、エルビンが座る。この2人の存在が大きい。マルサリスの仲間である「新伝承派」で固めていない分、頭でっかち感、作られている感、テクニックひけらかし感が押さえられていて、なかなか充実した内容になっている。

テナーのジョーヘンが気持ちでブルースを吹き上げ、エルビンは「血」でブルージーなポリリズムを叩きまくる。そこに、マルサリスを始めとする「新伝承派」の面々が絡んでいく。頭でっかちでは太刀打ち出来ない。「損伝承派」の面々も気持ちと「血」でブルースを紡ぎ上げていく。

テクニックひけらかし感は抑制されたが、まだまだテクニックを前面に出しすぎるきらいはあるが、まずまずよく出来たブルース集に仕上がっている。ブルースのジャズ的解釈には「独りよがり感」は感じるが、ウィントンの解釈として聴けば、これはこれでアリかな、と思う。我が国ではあまり話題に挙がるアルバムでは無いが、一聴に値する好盤だと思います。

 
 

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2018年10月22日 (月曜日)

久し振りのゴイコヴィッチ盤

Dusko Goykovich(ダスコ・ゴイコヴィッチ)を久し振りに聴いた。ダスコ・ゴイコヴィッチは1931年生まれ、旧ユーゴスラヴィア(現ボスニア・ヘルツェゴビナ)出身のトランペット、フリューゲルホーン奏者。「バルカン〜ヨーロッパ的哀愁に満ちたフレーズ」と正統派バッパーとして「テクニック優秀+力強く高速なフレーズ」とが融合した独特の個性が魅力。

この20年来、僕の「隠れたお気に入りトランペッター」である。まあ、ダスコ・ゴイコヴィッチのトランペットが好きだ、と言っても、普通のジャズ者の方々は「誰?それ」となるので、まず通常の会話の中では言わない。でも、ですね。この人のトランペットって、本当に良い音するんですよ。特に、先に書いた「バルカン〜ヨーロッパ的哀愁に満ちたフレーズ」が僕には堪らない。

Dusko Goykovich『RE:BOP』(写真左)。2017年の録音。2018年6月、Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Dusko Goykovich (tp), Jesse Davis (ts), Alvin Queen (ds), Dado Moroni (p), Mads Vinding (b)。ピアノ・トリオのリズム・セクションに、ダスコ・ゴイコヴィッチのトランペットとジェシー・デイヴィスのテナーの2管フロントのクインテット構成である。
 

Rebop  

 
ダスコ・ゴイコヴィッチが年齢的に「最後のリーダー作」になるかも、という覚悟で臨んだスタジオ録音盤。徹頭徹尾、素晴らしいハードバップ演奏で占められている。変にモードに走ったり、フリーに走ったりしない、ネオ・ハードバップとは一線を画する、現代の現在のダスコ・ゴイコヴィッチを始めとするベテラン・ジャズメンのテクニックと経験を基にした、旧来の「ハードバップ」の焼き直し的演奏。

これがまあ、とても素晴らしい演奏なのだ。いやはやビックリしました。ダスコ・ゴイコヴィッチのトランペットについては、ちょっとだけ、年齢的な衰えを感じる部分もあるんですが、テクニックと節回しで上手くカバーしていて及第点。ダスコ・ゴイコヴィッチのトランペットの個性も十分に反映されている。特にオープンな吹き上げなどは、まだまだブリリアントな「ブラスの輝き」を維持していて立派。

ジェシー・デイヴィスのテナーもバックのリズム・セクションも素敵に「ハードバップ」している。こういう旧来型のハードバップ盤って、現代ジャズにおいては貴重である。特にこの盤は録音が良く、それぞれの演奏は切れ味が良く、それぞれの楽器の響きはとても心地良い。好盤です。ジャズ者の方々全般にお勧め。

 
 

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2018年10月19日 (金曜日)

ジャズロックのハバードは良い

フレディー・ハバード(Freddie Hubbard)のリーダー作の聴き直しをしている。ほぼ全リーダー作を聴き直し終えた訳であるが、ハバードって、つまるところ、目立ちたがり、吹きたがり、という癖は、年齢を重ねても無くなることはなかった。無くならなくても年齢を重ねれば、徐々に穏やかになっていくのだが、ハバードは違った。

そんなハバードを形容した「ハバードはプレイヤーではあったが、アーティストでは無かった」という「けだし名言」がある。つまり演奏家ではあるが芸術家では無かった、ということ。テクニックは素晴らしく優秀、音も大きく運指も速い。ジャズの歴史の中でも5指に入る、優れたトランペッターであった。それでも、他のメンバーを押しのけて目立ちたがり、誰よりも多く吹きたがった。抑制の美学の欠片も無い、時には五月蠅いと感じるトランペッターであった。つまり「アートの要素に乏しい」トランペッターであった。

そういうハバードである。純ジャズのリーダー作は基本的に全てが吹きすぎという印象が残る。とにかくアルバムを聴いていて、途中から耳が疲れてくるのだ。リーダー作ばかりでなく、他のリーダー作に客演した時でも目立ちたがり、吹きたがる。それも相当高いレベルのテクニックで吹きまくるので、とにかく耳に付く。今でも「抑制」ということを幾ばくかでも覚えておれば、「アーティスティックなトランペッター」として、ジャズ史にその名を残したのになあ、とつくづく惜しいことをした、と思うのだ。
 

Backlash  

 
そんなハバード、純ジャズは似合いそうで似合わない。それではハバードは問題を抱えたままだったのか、と言えば、このジャズの演奏ジャンルだけはハバードの「目立ちたがりの吹きたがり」のトランペットがピッタリと填まった、と思っている。「ジャズロック」である。ジャズロックはその演奏にメリハリが効いていることが大事で、そういう点ではハバードの「目立ちたがり、吹きたがり」の癖が良い方向に作用しているのだ。

Freddie hubbard『BackLash』(写真左)。1966年10月の録音。Atlanticレーベルに移籍しての第一弾。レイ・バレットのコンガ入り、セクステット構成。ばりばりのジャズロック盤である。まだまだ、アコースティックな8ビートのリズム&ビートを得て、ハバードが目立ちたがる、吹きたがる。それでも、ジャズロックのバックを背負えば、演奏の音のバランス的に丁度良いのだ。ハバードの速い運指には8ビートが実にフィットする。

ジャズロックの演奏においては、ハバードは水を得た魚の様に、リラックスして喜々として吹きまくっている。しかも、ジャズロックの演奏では、テーマ部のユニゾン&ハーモニーがピタッとあって、それぞれの楽器の音のレベルが同じでないと、フレーズとブレイクが決まらない。そういう特質があるジャズロックでは、ハバードは他の楽器の音を聴きながら「合わせる」という、抑制のプレイをせざるを得ない。このテーマ部のユニゾン&ハーモニーを奏でる「抑制のハバード」が実に心地良く、実に格好良い。一聴の価値ありです。

 
 

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2018年10月18日 (木曜日)

モスクワ出身のトランペッター

ネットのお陰なんだろうか。この10年ほど前から、様々な外盤の情報が入って来る様になり、CDショップもジャズ盤の品揃えが圧倒的に豊富になった。1990年代後半から2005年くらいまで、CDショップでも外盤の品揃えは薄く、一部の大手のCDショップでしか外盤はなかなか手に入らなかった。

そんな環境なので、米国に出張があったりしたら、プライベートな時間はCDショップに繰り出して、ジャズ盤を漁りに漁った思い出がある。帰りのトランクの中にはジャズCDが30〜50枚、ぎっしり入っていたなあ(笑)。なんしか日本盤には無いアルバムばかりである。ジャズ盤鑑賞についてはかなり重宝した。しかし、今は違う。ネット上での外盤の品揃えは圧倒的。ポチッとするだけで、明日には手元に来るのだから良い時代になったものだ。

Valery Ponomarev『Profile』(写真左)。1991年5月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Valery Ponomarev (tp), Joe Henderson (ts), Kenny Barron (p), Essiet Essiet (b), Victor Jones (ds)。Valery Ponomarev=ヴァレリー・ポノマレフは、ロシアはモスクワの出身。1943年生まれなので、今年75歳。この盤を録音した時は48歳。脂の乗り切ったベテランのトランペッターだった。
 

Profile_calery_ponomarev  

 
1991年は、1980年代後半の純ジャズ復古の大号令以降、ネオ・ハードバップが根付き始めた頃。ポノマレフは、1976年〜1980年の間、ジャズ・メッセンジャーズに所属していたこともあり、この盤での演奏スタイルは「ネオ・ハードバップ」。フロントの相棒としてテナーのジョー・ヘンダーソン、リズム・セクションにピアノのケニー・バロンの名が見えるように、なかなか味のあるネオ・ハードバップな演奏が展開されている。

ポノマレフのトランペットはブラスが良く鳴る、ブリリアントで端正なトランペット。どんなテンポの演奏にも柔軟に反応し、とっても伸びの良い明るいトーンで、魅力的にトランペットを吹き上げていく。見事という他ない。ピアノのバロンも端正で堅実なバッキングを聴かせてくれ、ちょいと捻れたヘンダーソンのテナーは、ポノマレフの端正なトランペットに相対する、とても良いアクセントになっている。

良いアルバムです。なんだこれ、って感じで耳に引っ掛かる「癖」が全く無く、聴いていて心地良い演奏がズッと続きます。リズムもジャズロック風、ラテン風など、バリエーションに富んでおり、聴いていてとても楽しい雰囲気で聴き応え十分。そして、この盤、録音がとても良い。高い天井の自然なリバーブと生々しく自然な音の響きは明らかにヴァン・ゲルダー・スタジオの音。そこにちょっと深めのエコーが心地良い。好盤です。

 
 

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