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2019年5月22日 (水曜日)

ライトでポップなハードバップ盤

ブルーノート・レーベルの4300番台には、アルフレッド・ライオンがお蔵入りにした音源をアルバム化したものが幾枚かある。先にご紹介した、84310番のGrant Green『Goin' West』、4311番のDon Cherry『Where Is Brooklyn?』がそうだった。そして、この盤もそんな「お蔵入り発掘盤」の一枚である。
 
Lee Morgan『Charisma』(写真左)。ブルーノート・レーベルの4312番。1966年9月29日の録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Jackie McLean (as), Hank Mobley (ts), Cedar Walton (p), Paul Chambers (b), Billy Higgins (ds)。ちなみに録音時のプロデューサーは「フランシス・ウルフ」。

モーガン、マクリーン、モブレーのトランペット+アルト・サックス+テナー・サックスの3管フロント。リズム・セクションは、ウォルトンのピアノに、チェンバースのベース、そして、ヒギンスのドラム。粋で洒落たリズム・セクション。出てくる音は成熟したハードバップそのものである。いわゆる「corney(コーニー)」な出来の曲が多く、ライトでポップなジャズがお気に入りの向きにはなかなかの内容ではないだろうか。
 
 
Charisma-lee-morgan
 
 
録音年の1966年からして、この盤の演奏内容そのものは「流行遅れ」である。ただ、この3管フロントがジャズをやると、やっぱり自然と「1950年代のハードバップ」になってしまうのだろう。メンバー全員、とても自由にとても楽しそうにハードバップをやっている。発売当時からすると「懐かしいハードバップ」で、今の耳からすると「上質のハードバップ」である。
 
ファンキー・ジャズと呼ぶには、演奏の底に漂うファンクネスは「軽く」、アドリブ・フレーズも平易で聴き易い。ウォルトンのピアノも流麗で美しい。1曲目の「Hey Chico」の様にラテン風ジャズロックあり、モーガンのリーダー作の中では、一番ポップな雰囲気に仕上がっている。恐らく、演奏内容そのものが「流行遅れ」で、過度な「ライトでポップな雰囲気」がお蔵入りになった理由だろうと思料。
 
それでも、時代を越えて聴き直すと、上質のハードバップであり、モーガンのリーダー作としても出来は上位にランクされるのではないか、と思われる。ジャケットが古いイラスト調で、従来のブルーノート・レーベルらしからぬところが「玉に瑕」。それでも、モーガンのリーダー作として十分に楽しめる内容になっている。
 
 
 
東日本大震災から8年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年5月19日 (日曜日)

4300番台のドン・チェリー

ブルーノートの4300番台は一貫性が薄い。とにかく売りたい、売上を上げないとレーベルとして存続出来ない、という危機感の表れだと思っている。ポップさを最優先にしたアルバムがあると思えば、当時、コルトレーンを中心として流行だったフリー・ジャズなアルバムもあったりして、とにかく一貫性が薄い。
 
Don Cherry『Where Is Brooklyn?』(写真左)。1966年11月11日の録音。1969年のリリース。ブルノートの4311番。ちなみにパーソネルは、Don Cherry (cor), Pharoah Sanders (ts, piccolo), Henry Grimes (b), Edward Blackwell (ds)。明らかに、当時流行のフリー・ジャズ。コルトレーン一派のフリー・ジャズである。
 
冒頭の「Awake Nu」を聴くと、これはドン・チェリーだと直ぐに判る音である。ただし、1969年のリリースにしては、フリー・ジャズの音がちょっと古い。1969年、コルトレーン亡き後のトレンド、激情型&魂の咆哮的なフリー・ジャズでは無い。伝統的なハードバップを無理矢理フリーに転身した様な、初期のフリー・ジャズ的な音世界。
 
 
Where-is-brooklyn-don-cherry
 
 
この盤、リリースは1969年。ブルーノート・レーベルの総帥、アルフレッド・ライオンが引退したのが1967年8月。この盤は、録音年が1966年。アルフレッド・ライオンのプロデュースである。ライオンのブルーノートは、ジャズの最先端を行くレーベルである。確かにこのアルバムの音は、当時として、メインのフリー・ジャズである。最先端では無い。
 
恐らく、ライオンはそこが気になって、録音当時、リリースを見送ったのでは無いか。とにかく、パーソネルの顔ぶれを見れば、この顔ぶれで、当時メインの、誰もがやっているコルトレーン流のフリー・ジャズをやっているのは、ちょっと物足りないなあ。ライオンの慧眼、恐るべし。であるが、1969年になって、ライオンの意志に反して、この盤は世に出たことになる。
 
しかし、この盤の名誉の為に言っておくと、当時メインの、誰もがやっているコルトレーン流のフリー・ジャズとは言え、内容は充実している。ブルーノート・レーベルでなければ、アルフレッド・ライオンでなければ、録音即リリースである。確かにフリー・ジャズは当時の流行ではある。しかし、このお蔵入り盤をリリースする必要があったかどうかは疑問である。
 
 
 
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2019年5月11日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・114

ジャズでは今でも毎月、結構な数の新盤がリリースされている。クラシック音楽の教育が充実している国には決まって、何らかのその国独特のジャズが存在する確率が高いので、全世界で見ると結構な数の新盤がリリースされていても不思議では無い。特に、インターネットが発達し、全世界レベルで情報の共有がやりやすくなり、世界各国でリリースされたジャズ盤の情報が潤沢に入手出来る様になった。
 
毎月、ジャズの新盤を追いかけていると、ジャズの「今」のトレンドが良く判る。日本には無い、ジャズメンに対する人気の度合いの傾向の違いが良く判る。我が国の場合、その内容の如何に関わらず、ジャズ盤販売がビジネスならない盤やその盤のリーダーであるジャズマンを紹介することは少ない。つまり、内容が良くても、我が国で売れる可能性が低ければ、一般のジャズ者の方々にその盤の情報が渡ることは先ず無い。
 
Ingrid Jensen & Steve Treseler『Invisible Sounds : For Kenny Wheeler』(写真左)。2018年10月のリリース。ちなみにパーソネルは、Ingrid Jensen (tp), Steve Treseler (ts, cl, b-cl), Geoffrey Keezer (p), Martin Wind (b), Jon Wikan (ds), Katie Jacobson (vo), Christine Jensen (soprano)。 カナダ出身の女性トランぺッターであるイングリッド・ジェンセンとサックス奏者スティーヴ・トレセラーの双頭リーダーの作品。ネット上でもほとんど紹介されていないが、この盤、なかなかの内容なのだ。
 
 
Invisible-sounds-for-kenny-wheeler
 
 
サブ・タイトル「For Kenny Wheeler」からも判る様に、2014年に亡くなった、ECMの「お抱えトランペッター」Kenny Wheelerへのトリビュート・アルバムである。ケニー・ホイーラーがトリビュートされるなんて、思ってもみなかった。我が国では、キース・ジャレットがサイドマンを務めたということで注目された『Gnu High』(ECM 1975年)が扱われる位だ。恐らく、双頭リーダーの一人、イングリッド・ジェンセンがカナダ出身のトランペッターということで、同じ国出身の先輩トランペッター、ホイーラーの存在は大きかったのだろう。
 
この盤の音世界は明らかに「ケニー・ホイーラー」の音世界。ファンクネス皆無、限りなく自由度の高い、即興中心の演奏形態。音に広がりがあって、なんとなく薄い霧がかかったような、ちょっとくすんだような音の響き。そんなケニー・ホイーラーの音世界を上手く再現している。それでも、ケニー・ホイーラーの音世界よりは、アップテンポで躍動感あふれる曲が多いかな。エコーの深さや切れ味の良い深みのある音は、ECMレーベルの音世界を彷彿とさせてくれる。
 
毎月リリースされるジャズの新盤。その全てを聴くことなど全く不可能で、ジャズの新盤を毎月毎月追いかけるのは並大抵のことでは無い。それでもできる限り、ジャズの新盤を追いかけるようには心がけている。現在でもジャズは深化し続けている訳で、新盤を追いかけていかなければ、ジャズの「今」が判らなくなる。「今」が判らなくなると、自分の中でジャズは「クラシック音楽」の一部になる。逆に「今」を押さえていけば、自分の中でジャズは「ポップス音楽」の一部として存在し続けることになる。
 
 
 
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2019年4月23日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・113

ジャズはこの約100年間、絶え間なく進化・深化してきた。しかし、進化・深化するだけがジャズでは無い。ある時代の演奏トレンドに戻って、現代でそれを再現するというアプローチもある。ある時代のトレンド、例えば「ハードバップ」時代の演奏の雰囲気を現代の環境で再現する、という企画型アプローチもあるのだ。
 
これはこれで意味のあることで、現代の現時点でのジャズを踏まえてハードバップをやるので、当然、1950年代のハードバップとは全く違った音世界になる。それでも、音の底には1950年代のハードバップのエッセンスがしっかり宿っている。いわゆる「温故知新」なジャズ演奏である。
 
リーダーのジェームス・サッグスは変わったキャリアを持っている。16歳からプロとして活動し、グレン・ミラーやトミー・ドーシーのオーケストラで活躍。その後、アルゼンチンのブエノスアイレスへ渡り、同地で8年間プレイ。現在は米国に舞い戻ってフロリダ州St. Petersburgにて活動しているという。とにかく、我が国ではほとんど無名のトランペッターである。
 
 
Youre-gonna-hear-from-me-james-suggs

 
James Suggs『You're Gonna Hear from Me』(写真左)。2018年12月のリリース。ちなみにパーソネルは、James Suggs (tp), Houston Person (ts), Lafaette Harris (p), Peter Washington (b), Lewis Nash (ds) 。パーソネルを見ると、大御所テナーのヒューストン・パーソンを迎えた2管フロントのクインテット。ベテランの味のあるドラマー、ルイス・ナッシュもいる。
 
まず、ジェームス・サッグスのトランペットの音が凄く良い。すぅ〜っと伸びた淀みの無いブリリアントな音。揺らぎの無い、破綻の無い、ちょっとレトロな雰囲気(これが粋なのだ)の節回し。ハードバップなトランペットである。そして、バックの演奏も明らかに惑うこと無い「ハードバップ」。それぞれの楽器の音が、どらもがハードバップな音を出している。硬派でバップな演奏がズラリと12曲が並ぶ。
 
1950年代の明快で明るいハードバップがここにある。バップな吹きっぷりの中に、出てくるアドリブ・フレーズは仄かにブルージーであり仄かにジャジー。これが実に粋な雰囲気なのだ。今の時代にこんな徹頭徹尾、ハードバップな演奏がてんこ盛りのアルバムがリリースされようとは。ジャズって面白い。
 
 
 
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2019年3月28日 (木曜日)

ECMの「お抱えトランペッター」

欧州ジャズの雄、ニュー・ジャズのショーケース的レーベル「ECM」。楽器別に見てみると、意外や意外、トランペットが手薄なのに気がつく。何の資料も見ずに、いきなり「ECMレーベルのトランペッターは?」と問われたら、ケニー・ホイーラーがまず浮かんで、エンリコ・ラバ、う〜ん、それまで。って感じ。調べたらもっといるんだろうけど、どうも僕の印象は「ECMレーベルはトランペッターが手薄」なのである。本当のところ、どうなんだろう?
 
さて、ECMレーベルのトランペッターといえば、まず浮かぶのが「ケニー・ホイーラー」。そのホイーラーの初期の好盤がこれ、Kenny Wheeler『Gnu High』(写真左)。1975年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Wheeler (flh), Keith Jarrett (p), Dave Holland (b), Jack DeJohnette (ds)。リーダー、ケニー・ホイーラーの、この盤ではフリューゲルホーンのワンホーン・カルテット。
 
ケニー・ホイーラーはカナダ出身、英国を活動拠点とするトランペッターである。2014年9月、惜しくも84歳で鬼籍に入った。生涯のキャリアの中で、ECMレーベルにかなりの数のリーダー作をはじめ、演奏参加した多数の作品があって、ECMレーベルの「お抱えトランペッター」と言って良いだろう。
 
そして、バックに控えるリズム・セクションが凄いメンバー。ピアノにキース・ジャレット、ベースにデイブ・ホランド、ドラムにジャック・ディジョネット。ECMレーベルだからこそ出来る、思いっきり贅沢なワンホーン・カルテットである。「これ、ホイーラー、名前負けしないのか」と思わず心配になる位のリズム・セクションである。ECMの総帥マンフレート・アイヒャーだからこそ出来たブッキングである。
 
 
Gnu-high-1
 
 
で、その内容であるが、基本は「ECMのニュー・ジャズ」。ファンクネス皆無、限りなく自由度の高い、即興中心の演奏形態。この盤ではモード・ジャズから入るが、途中から軽いフリー・ジャズに突入。アブストラクトでは無いが、相当に自由度の高いフリー・ジャズ。それぞれの楽器が必要最小限のルールを守りながら、思い思いに即興演奏を繰り広げる、インタープレイ中心のフリー・ジャズ。ホイーラーのフリューゲルホーン、大健闘である。
 
面白いのは、キース・ジャレット。キースが他の誰かのバックを務めることは希である。この盤では、どういう経緯でバックを務めるようになったかは知らないが、聴けば確かにキースは誰かのリーダー作のバッキングには向かないと感じる。この『Gnu High』でも、リーダーのホイーラーのフリューゲルホーンを全く気にせず、自分の個性を思いっきり前面に押し出した即興ピアノを延々と弾き続けている。
 
キースのピアノだけピックアップしたら、キースのピアノのソロアルバムが出来るのでは、と思う位だ。恐らく、そんなキースの「我が道を行く」雰囲気が、ECMのマンフレート・アイヒャーをもってしても、以降、キースをバックのリズム・セクションにほとんど採用しなかった大きな理由である様な気がしている。
 
欧州ジャズのフリー・ジャズのひとつのサンプルがこの盤に詰まっている。アブストラクトに偏らず、エモーショナルに溺れず、聴き易いライト感覚で端正な欧州のフリー・ジャズ。そんな雰囲気の色濃いこの盤の中で、やはりリーダーのホイーラーのフリューゲルホーンが一番目立っている。キースの参加ばかりが取り立たされるアルバムではあるが、実際には、ホイーラーのフリューゲルホーン(トランペット)を体験するに良い盤と言える。
 
 
 
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2019年3月16日 (土曜日)

ECMの中では異質な内容だけど

ECMレーベルは、欧州ジャズを代表する老舗レーベル。レーベルの音の傾向は基本的に「ニュー・ジャズ」。米国で発展した「ビ・バップ〜ハードバップ」のトレンドを踏襲すること無く、ハードバップ以降のモード・ジャズやフリー・ジャズ、スピリチュアル・ジャズに取り組むのだが、それらに「欧州ジャズ」の個性を反映させて「ニュー・ジャズ」に仕立て上げている。

Tomasz Stańko『Balladyna』(写真左)。1975年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Tomasz Stańko (tp), Tomasz Szukalski (ts, ss), Dave Holland (b), Edward Vesala (ds)。リーダーのトーマス・スタンコはポーランド出身のトランペッター。サイドマンのサックスのトーマス・シュカルスキーもポーランド出身。ドラマーのエドワード・ヴェサラはフィンランド出身。そして、ベースのディブ・ホランドはイングランド出身。オール欧州のピアノレス・カルテットである。

ECMレーベルでは珍しいのだが、出てくる音はハードバップ系の音。モーダルなハードバップである。ただし、欧州ジャズの老舗、ECMレーベルのモーダルなハードバップである。まず、ファンクネスは皆無。出てくる音はシャープで切れ味が良い。ECM独特のエコーが効いて透明度の高い音。ジャズをイメージする「汗と煙」については全く無縁。米国のモーダルなハードバップとは正反対の雰囲気。
 

Balladyna  

 
「クールな熱気」と表現したら良いのか、この盤の演奏についてはいずれも「クールな熱気」溢れる、ダイナミズム溢れる演奏が清々しい。実に真摯な音世界にポーランド・ジャズの矜持を感じる。ジャズをアートと捉えて、演奏する側も聴く側も出てくる音にしっかりと相対する。特に冒頭の1曲目の「First Song」については、そのハードで創造的な演奏に度肝を抜かれる。

2曲目の「Tale」はサックス抜きのトランペット+ベース+ドラムの変則トリオ。静的な演奏なんだが切れ味の良い、結構テンションの高い演奏で、欧州ジャズの真髄に触れた気分になる。基本はモードなんだが、ところどころでフリーな演奏やスピリチュアルな演奏を織り交ぜて、ECMの十八番である「ニュー・ジャズ」がしっかり展開されている。

欧州ジャズ仕込みのハードバップな演奏であるが、聴いていてしっかりと印象に残るのは、ホランドのベース。重低音が練り歩く様な、骨太でしなやかな粘りとソリッドな弦の響きが印象的。この盤のどの演奏にもホランドのベースがしっかりとビートの根元を押さえています。ECMレーベルの中では異質な内容ではあるが、音の雰囲気は明らかにECMレーベルのモーダルなハードバップ。好盤です。

 
 
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2019年3月11日 (月曜日)

スピリチュアルなソウル・ジャズ

21世紀に入って、様々なジャンルのジャズCDが入手出来る様になった。ネットショップで外国盤が直接購入出来る様になったことが大きい。それまでは日本盤に頼るしか無く、日本盤は売れ筋しかCDリイシューしないので、なかなかソウル・ジャズはリイシューされない。日本では人気がイマイチだから仕方が無い。

1990年代までは、米国盤については、海外出張でNYやSFOに行った折に、大手CDショップを訪問して、しこたまジャズCDを購入して日本に持ち帰ったもんだ。大体1回の出張で20〜30枚は買って帰った。今から考えれば、一体、何をしにNYやSFOに出張していたのか。え、勿論仕事です(笑)。

Benny Bailey Sextett『Soul Eyes (Jazz Live at Domicile Munich)』(写真左)。最近聴いたソウル・ジャズ盤。初見だった。1968年1月11日、ドイツはミュンヘンの "Domicile"でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Benny Bailey (tp), Nathan Davis (ts), Mal Waldron (p), Jimmy Woode (b), Makaya Ntshoko (ds), Charly Campbell (congas)。
 

Soul_eyes  

 
メンバーを見渡すと、ハードバップ期から活躍している有名なメンバーはピアノのマルくらいかなあ。ソウル・ジャズのパーソネルの特徴は、それまでのビ・バップ〜ハードバップの流れとは異なる個性を持ったメンバーを選んでいること。これがハードバップを聴き込んできたジャズ者の方々からすると取っ付きが悪いのかなあ。

演奏は熱気ムンムン、コッテコテのソウル・ジャズ。聴いていて思わず体が動いて、とても楽しい気分になる。ベニー・ベイリーはトランペッター。彼の肉厚でファンキーなトランペットがソウルフルに鳴り響く。ゴリゴリなネイザン・デイヴィスのテナーも良い感じ。このフロント2管の、ソウル・ジャズながら、アーシーでスピリチュアルな響きが印象的です。

ファンクネスが滴るような数々の演奏。ソウル・ジャズは聴いているだけでハッピーな気分になります。気分転換にピッタリ。気分をガラリと変えたい時にはソウル・ジャズですね。1968年のリリースながら、ジャケットもタイポグラフィーがばっちり決まって、なかなか格好良いです。ソウル・ジャズの好盤としてお勧め。

 
 
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2019年2月19日 (火曜日)

ライトポップなフュージョンです

こういうジャズもたまには良いなあ、と思う。というか、これってジャズか、とも思うんだが、フュージョン・ジャズを正と捉えて早幾年、この新盤に詰まっている音、ぎりフュージョン・ジャズと解釈して良いのかな。まあ、こういうコンテンポラリーなフュージョン・ジャズが我が国から出てきたとは、なんか嬉しくなるやら、ホッとするやら。

三角関係 feat.三浦拓也『素敵関係』(写真左)。今月のリリース。ちなみにパーソネルは、山崎 千裕 (tp, fih), 園田 涼 (p, key), 三浦 拓也 (g)。なぜ「feat.」が付いているのか判らぬが、3人トリオの「三角関係」ということ。当然、バックにサポート・メンバーが入っていて、主だったところは、紺野 光広 (el-b), 村石 雅行 (ds), 前田 仁, 山下 智 (perc)。

ポップで明るい、聴き易くて耳当たりの良いフュージョン・ジャズがメイン。それでいて、ソフト&メロウには流れず、意外とビートの効いた、爽快感溢れるところが「ニクい」。音的にも、しっかりエッジが立っていて、音像は明確で曖昧なところは無い。かなりしっかりと作り込まれたフュージョン・ジャズである、ということが良く判る。
 

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山崎 千裕(やまざき ちひろ)は中堅トランペッター。東京芸大卒。2010年、自身のバンド山崎千裕+ROUTE14bandを立ち上げ、本格デビュー。女性トランペッターではあるが、音はしっかりしている。音の大きさについては割り引いても、無理をしない演奏テクニックとふらつきの無いブロウは聴き易く、好感が持てる。この盤では、ブリリアントさが加わって、シンプルに「良い音している」。

園田 涼のピアノは堅実でキラキラしている。純ジャズなピアノとしては、ちょっと深みに欠けるか、と思うが、フュージョン・ジャズとしては、切れ味も良く、タッチもキビキビしていて及第点。三浦 拓也のギターも良い感じ。フュージョン・ギターって音で爽快感抜群。弾きっぷりも意外と骨太で、ソロにリズムに大活躍です。

ジャケットがキャピキャピしていて、ちょっと気恥ずかしいのですが、アルバムの中に詰まっている「インストポップなフュージョン・ジャズ」な音世界とイメージが合致していて、まあここは「我慢」(笑)。演奏もレベルが高くて、聴き心地も良い。ながら聴きに最適なライト・ポップなフュージョン・ジャズ盤です。次作では本格的な「コンテンポラリーな純ジャズ」に挑戦して欲しいですね。期待してます。

 
 
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2019年2月 1日 (金曜日)

若手日本人男子がやっと出てきた

日本人ジャズの中で若手男子の影が薄い、というのがここ10年来の僕の悩み。若手女性はどんどん有望株が出てきて、なかなかの内容のリーダー作が沢山リリースされた。しかし、である。若手男子は下火で、ここ10年の若手男子のニュースターについては、あまり具体的な名が浮かばない。しかし、最近、やっと頭角を現す若手男子のジャズメンが出てきた。

今回、ジャズ雑誌「ジャズライフ」の2018年度「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」で紹介されたアルバムを聴き進めているんだが、この人の名前は実は初めて知った。「曽根 麻央」である。曽根は1991年生まれ。ネットで彼のバイオグラフィーを読むと「幼少期よりピアノを始め、ルイ・アームストロングに憧れ8歳でトランペットを手にし、9歳で音楽活動をスタートさせる」とある。

16歳でタイガー大越と出会って渡米を志す。18歳でバークリー音楽大学へ、2016年には同大学の修士課程の第1期生として首席で卒業。おお、エリートやん。2018年メジャー・デビュー。う〜ん、経歴は素晴らしいなあ。今年で28歳になる。若手バリバリのニュースターである。で、今回、この曽根のリーダー作を初めて聴いた訳である。

で、このアルバムに詰まっている音を聴いて、僕はほとほと感心した。やっと、日本人男子若手も出てきたなあ。この盤の音は、これまでの様な「米国ジャズの背中を追ったもの」では全く無い。東欧、イスラエルから中近東、東南アジア、そしてアフリカ、そして沖縄、ラテン。多国籍な音が融合した、エスニックな雰囲気が濃厚な純ジャズである。
 

Infinite_creature  

 
曽根 麻央『Infinite Creature』(写真左)。セルフ・プロデュースによる2枚組デビューアルバムである。ちなみにパーソネル、Ⅰ枚目はAcoustic Bandで、曽根麻央 (tp, p, per, voice) , 伊藤勇司 (b),  中道みさき (ds), 山田拓斗 (vln, mandolin), 西方正輝 (cello)。2枚目はElectric Bandで、曽根麻央 (tp, flh, p, syn, per, voice), 井上銘 (el-g),  山本連(el-b), 木村紘(ds)。 純日本人メンバーで固められている。

アコースティック・バンドは、不思議な浮遊感と流麗感漂うモーダルな展開がエキゾチックな雰囲気を漂わせる。当然、ファンクネスは希薄。日本人ジャズの特性がダイレクトに反映されている。オリジナリティー溢れ、良い雰囲気、良い響き。静と動、そして緩急ついた展開がスリリング。

エレクトリック・バンドは、1980年代エレ・マイルスを現代に持って来て、洗練してファンクネスを差し引いた感じ。ハードなドラミングに和なテーマ。スタンダードナンバーである「I Fall In Love Too Easily」はエレ・マイルスの傑作『アガルタ』収録の「麗しのマイシャ」を想起させるアレンジ。良い。とても良い。「Japanama」は「Japan」と「Panama」を組み合わせた造語で、音のイメージも同様。面白い。

メジャー・デビュー盤が2枚組。聴く前はちょっと重いんじゃないかなあ、飽きるんじゃないかなあ、なんて危惧していましたが、何てことは無い。一気に聴き切ってしまいました。少し硬さは残りますが、そこはまだまだ若い、ご愛嬌です。逆に初々しくて良い。ジャケットもピアノとトランペットの二刀流をイメージしていて「格好良い」。日本人男子もここまでやる。好盤です。

 
 

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2019年1月23日 (水曜日)

クロスオーバーなビッグバンド

この盤は典型的な1970年代の米国でのクロスオーバーなビッグバンドの音である。電気楽器を大々的に使用して、アレンジは仰々しいほどにダイナミックで、効き過ぎるほどメリハリが効いている。展開は大掛かりで派手なもの。加えてここに、ハイノート・ヒッター、ファーガソンのトランペットが加わるのだ。まことに米国らしいド派手な演奏である。

Maynard Ferguson『Primal Scream』(写真左)。1975年の作品。プロデューサーは、クロスオーバー・ジャズの時の人「ボブ・ジェームス」。当時はクロスオーバー・ジャズが流行。コロンビア・レコードからのリリースなのだが、ボブ・ジェームスの起用は「なりふり構わず」な感じ。クロスオーバー・ジャズとして、ファーガソンを売りたい。そんなレコード会社の思惑が感じられて面白い。

ビッグバンドのメンバーを見渡して見ると、ドラムにスティーヴ・ガッド、ベースにゲイリー・キング、ギターにエリック・ゲイル、ジェフ・ミロノフ、パーカッションにラルフ・マクドナルド、テナーにジョー・ファレル、アルトにデヴィッド・サンボーン、と何だか名前を見ていると、CTIレーベルのオールスターの様な様相である。チック・コリアも1曲だけだが参加している。とにかく「売りたい」というレコード会社の気合いが感じられるパーソネルである。
 

Primal_scream  

 
この盤でのメイナード・ファーガソンのトランペットは申し分無い。ハイノート・ヒッターとして効果的に場面を選んでバッチリ決めているし、通常のトランペットのソロも落ち着いていて、フレーズのイマージネーションも充実している。ビッグバンドの演奏は確かにド派手で大掛かりなものだが、ファーガソンのハイノート・トランペットを受け切るには、ある程度、必要なものなんだろう。

キーボードは明らかにボブ・ジェームス。ボブ・ジェームスの独特の手癖、フレーズが出てくる出てくる。それでも、アーバンで流麗なボブ・ジェームスのキーボードは、鋭角で切れ味鋭いファーガソンのトランペットとは対照的で、意外と相性が良い。クロスオーバー志向のビッグバンドとして、演奏全体もしっかりまとまっていて、聴き心地も良好。

タイトルの「Primal Scream」とは「感情をそのまま解き放ったような金切り声」の意味だが、恐らく、ファーガソンのトランペット、特にハイノート・ヒッターとしてのファーガソンを連想させるタイトル。そんなファーガソンのトランペットを、豪華メンバーが控えるクロスオーバー・ジャズ志向のビッグバンドをバックに堪能出来る。なかなかの好盤である。

 
 

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