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2018年2月 2日 (金曜日)

彼の個性は「ハイテクニック」

マイルスは怒っていた。「テクニックばかりを追求する奴は駄目だ」。それでも、テクニックをひけらかせて吹きまくる。マイルスは さじを投げる。「あいつは駄目だ」。1958年のニューヨーク進出から、ずっと目をかけてきた若手トランペッターだけに、マイルスも忸怩たるものがあったろう。確かにこのトランペッターの若い頃のリーダー作を聴けば、マイルスの気持ちが良く判る。

その若きトランペッターとは「フレディー・ハバード(Freddie Hubbard)」。当時、最高のテクニックを誇るトランペッター。あまりのハイテクニックなトランペッター故、様々なジャズメンと共演していて、一体どれがハバードなんだ、と考え込んでしまうほど。ハバードの個性とは「ハイテクニック」。これは個性とは言えんだろう、というのがマイルス御大のお言葉。

Freddie Hubbard『Hub Cap』(写真左)。1961年4月9日の録音。ブルーノートの4073番。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Julian Priester (tb), Jimmy Heath (ts), Cedar Walton (p), Larry Ridley (b), Philly Joe Jones (ds)。リーダーのハバードのトランペット、ヒースのテナー、プリースターのトロンボーンの3管フロントのセクステット構成。
 

Hub_cap

 
初リーダー作『Open Sesame』、2枚目のリーダー作『Goin' Up』では、先輩ジャズメンに十分過ぎる程の気遣いを見せたハバード。この3枚目のリーダー作は3管フロント。よって、自分以外のヒースのテナーにも、プリースターのトロンボーンにも、十分なソロ・スペースを与える、先輩ジャズメンに気遣いのハバードか、と思いきや、ヒースもプリースターもほったらかしにして、ハバードは吹きに吹きまくる。

さすがにリーダー作3枚目。もう共演する先輩ジャズメンに気を遣うこともないだろう、って感じでバリバリに吹きまくる。さすがに、この頃のハバードのテクニックは凄い。ペラペラ、早口言葉の様な、流れる様なフレーズを連発する。凄いなあ、とは思う。でも、それだけなんだが、でも「それだけ」でも凄いテクニックなのだ。確かに、この頃のハバードの個性は「ハイテクニック」。それだけです(笑)。

マイルス御大は怒っていたが、これはこれで「若気の至り」で許してあげたいなあ。それほどまでに凄まじいテクニックなのだ。この盤では、セクステット構成なのだが、聴き終えて印象に残るのは「ハバード」ひとり。聴き直して、やっと、この盤は上質のハードバップ盤だということが判る。ハバードのテクニックを体感するのに手っ取り早いハードバップ盤である。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年1月12日 (金曜日)

ウィントン・マルサリスの再評価

ウィントン・マルサリスは、ジャズの歴史の中でも屈指のトランペッターだと思う。テクニックは素晴らしく優秀、アドリブ・フレーズは流麗、歌心もしっかりと併せ持って、その端正かつ切れ味の良い吹きっぷりは、確かに「屈指のトランペッター」として良いと思う。しかしながら、一般のジャズ者の方々から、はたまた、仲間のジャズメンからも、先達のジャズメンからもどうにも評判が悪い。困ったものである。

1980年代、純ジャズ復古の流れの中で、新伝承派のリーダーとして祭り上げられ、ウィントン自身もその気になって、あれやこれや、過去のジャズメンや現役のジャズメンのやることなすことを、歯に衣を着せずに批判する。そして、自分たち「新伝承派」を始めとする、アコースティックな純ジャズを極めようとする若手ジャズメンだけを「真のジャズメン」とする言いようと振る舞いに、基本的に「嫌われた」。

その普段の言いようと振る舞いが災いして、リリースするリーダー作はどれもが優秀な内容ながら、ウィントン自体に対する評判が芳しく無い。あまりにその内容が完璧なので、完璧が故に面白く無いとも評された。それでも、ウィントンはその普段の言いようと振る舞いを修正しようとしない。しかし、彼の社会的地位は相当に向上した。逆に、ジャズの世界の中では、最近、あまり話題にならなくなった。ほんと、最近、どうしているのだろう。
 

Marsalis_standard_time_vol1

 
彼の名誉の為に、フラットな気持ちで語るならば、ウィントンのリーダー作はどれもが素晴らしい内容なのだ。例えば、このアルバムを聴けば、その素晴らしい内容をダイレクトに体験出来る。Wynton Marsalis『Marsalis Standard Time, Vol. I』(写真左)。1987年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Wynton Marsalis (tp), Marcus Roberts (p), Robert Leslie Hurst III (b), Jeff "Tain" Watts (ds)。当時にして「鉄壁」のワンホーン・カルテットである。

ウィントンのットランペットを始めとして、カルテットの他のメンバーを含め、そのテクニックは凄まじく、アンサンブルは端正、フレーズを流麗、歌心満載、繊細かつ大胆なアドリブを展開。有名どころのスタンダード曲を演奏しているのだが、その内容は秀逸。アドリブ・フレーズまで譜面に落としているかの様に、あまりに端正かつ流麗。あまりに端正かつ流麗、あまりに優等生な演奏の為、何度か繰り返し聴いていると「飽き」がくる。そこが難点と言えば難点。

ウィントンは誤解されている。しかし、その問題となる、普段の言いようと振る舞いを止めようとしない「大人げの無さ」も確か。勿体ないなあ、と思う。社会的地位は極めた感のあるウィントンではあるが、本業のジャズメン単体としては、どうにも評価が定まらない。そのジャズメンの持つ「心根」がダイレクトにパフォーマンスに反映されるのがジャズの面白いところ。今一度、ウィントン・マルサリスを聴き直して再評価をしてみよう、最近、そう思い至った次第。

 
 

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2017年12月19日 (火曜日)

ハバードの真摯なセカンド盤

初リーダー盤『Open Sesame』で、神妙かつ堅実なブロウを披露、その才能を遺憾なく発揮したフレディ・ハバード。しかし、彼の高テクニックで自由奔放なブロウは「抑制」状態だったことは否めない。それが証拠に、この初リーダー作は、ハバードの抑制のトランペットを評価する反面、ブルージーな雰囲気を増幅させる、ティナ・ブルックスの哀愁のブロウを評価する声も高かった。

それでは、とブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンはリーダー作第2弾をセットアップする。Freddie Hubbard 『Goin' Up』(写真左)。1960年11月の録音。ブルーノートの4056番。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), McCoy Tyner (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds)。初リーダー作とは打って変わって、第一線級の人気ジャズメンで周りを固める。

テナーのモブレー、ベースのチェンバース、ドラムのフィリー・ジョー。もとマイルス楽団のスター・ジャズメン達。相手にとって不足は無い。ピアノだけは初リーダー作同様、当時、まだまだ駆け出し若手のマッコイを継続している。恐らく、マッコイのピアノは伴奏上手だけあって、ハバードにとって吹きやすかったのだろう。
 

Goin_up

 
この盤でのハバードは吹きまくっている。初リーダー作では「抑制」したが、このセカンド盤ではテクニックを駆使して、しっかりと吹きまくっている。フロントのパートナーにテナーのモブレーがいるので、胸を借りる感じで、テクニックを駆使しつつ、ハバードは力強くトランペットを吹いている。併せてハバードに刺激されて、相対するモブレーが、何時になく溌剌としているのが面白い。

ベースのチェンバースは太いベースでビートを支え、ドラムのフィリー・ジョーは、迫力のドラミングでフロントを鼓舞する。アタックにメリハリのあるマッコイのピアノは、ノリが良くフロントをスイングさせる。さすがに第一線級のジャズメン達である。ハバードのハイテクニックでしっかりしたブロウをしっかりと受け止めている。故にハバードのトランペットが映えに映える。

この盤でのハバードは真摯である。まだまだ前面に出て目立ちたがることは無い。第一線級の先輩ジャズメン達を相手に、真摯に胸を借りるつもりで、相手に敬意を表しつつ、思い切ってぶつかっていくようにトランペットを吹きまくるハバードは実に愛らしい。密度の濃い、ハイテクニックなブロウは決して耳に付かない。どころか、耳にとても心地良い。

 
 

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2017年12月18日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・115

若い頃、フレディ・ハバードが苦手だった。周りが超一流のジャズメンの場合はまだ大人しくしているんだが、周りが自分より若い、もしくは、一段低いレベルのジャズメンだったりすると、途端に前へグイグイ出て吹きまくる。とりわけ、自分がリーダーのアルバムについては、絶対に前へ出て目立ちまくって吹きまくる。

これが凄く耳につく時があって、ハバードのリーダー作は敬遠していた。当方も歳をとって、ハバードの目立ちたがり屋もそれはそれで可愛いところがあるよな、と思えるようになって、何時の頃からか、そう50歳を過ぎた頃から、ハバードのリーダー作をしっかりと聴く様になった。これがまあ、とにかく上手い。歌心よりも何よりもテクニックよろしく目立ちたがる、吹きまくる。

しかし、そんなハバードにも、初リーダー作の時代があった。Freddie Hubbard『Open Sesame』(写真左)。1960年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Tina Brooks (ts), McCoy Tyner (p), Sam Jones (b), Clifford Jarvis (ds)。よくよく見れば、実にユニークな人選である。まず、ベテランな先輩ジャズメンがいない。基本的に若手から中堅で固めている。

さすがにハバードの初リーダー作である。当時23歳。さすがに若い。確かに、この若さで、周りをベテランな先輩ジャズメンで固めたら、バリバリとテクニック良く吹きまくる、ハバードの個性が陰る危険性がある。恐らく、ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンはそのリスクを未然に防いだ感がある。
 

Open_sesame

 
決して、前に出てバリバリに吹きまくることは無い。他のメンバーの音を良く聴きながら、時にユニゾン&ハーモニーに溶け込み、アドリブ・ソロに入っても、吹きまくることは無い。堅実に確実にテクニック豊かなアドリブ・ソロを吹き進めていく。これだけ、神妙でかつ堅実なハバードは後にも先にも、このリーダー作のみと思われる。

しかし、抑制の美と言う言葉があるが、このハバードの初リーダー作を聴いていて、その「抑制の美」を強く感じた。テクニックも抜群、馬力もあって、となれば、この初リーダー作の様に抑制の美を発揮しつつ、しっかりと歌心を追求する、としていけば、恐らく、マイルスの逆鱗に触れることもなかったろうに、とつくづく思う。

アルバムの演奏全体に漂うマイナー調、どっぷりブルージーな雰囲気は、思いっきり「ジャズ」を感じることが出来る。ハバードのトランペットもしっかりとブルージーに鳴り響く。そして、ティナ・ブルックスのちょっとマイナーにピッチがズレたような哀愁のブロウがそんなブルージーな雰囲気を増幅させる。昔、我が国のジャズ喫茶の人気盤だったと聞くが、それも十分に合点がいく。

ブルーノート・レーベルの音が満載。ハードバップの良いところがギッシリと詰まった好盤である。この盤を聴く度に「ハードバップ・ジャズ」ってこういう演奏を言うんやなあ、と感心する。ジャケットもしっかりとブルーノートしていて、やっぱりこの盤はいいなあ、と思うのだ。この盤でのハバードは「粋」である。

 
 

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2017年11月16日 (木曜日)

円熟のロイ・ハーグローブである

ネットのジャズ盤紹介を読み直して「これは聴いてないぞ」盤の聴き直し。ネットのジャズ盤紹介のブログは、ジャズ評論家の方々が扱わない、本当に内容の良い「隠れ好盤」について語ってくれているので助かる。自分の耳でしっかり聴いて、自分の感じたことを赤裸々に書いてくれているので、本当に参考になる。

例えば、この盤などはネットのジャズ盤紹介のブログから教えて貰った。Roy Hargrove『Earfood』(写真左)。2008年の作品。レギュラー・クインテットでの純ジャズ盤。聴き込むうちにその素晴らしさがじわじわと沁みる。ちなみにパーソネルは、Justin Robinson (as, fl), Danton Boller (b), Montez Coleman (ds), Gerald Clayton (p), Roy Hargrove (tp,fgh)。

ロイ・ハーグローヴ(以降、略して「ロイハー」)のEmarcy移籍第一弾作品。このクインテット盤は「純ジャズ」追求盤。ロイハーのストレートなブロウ、精巧なフィンガリングを駆使して、流麗で歌心のあるトランペットが飛翔する。ちょっと抑え気味のブロウなので、最初聴いた時は「なんか地味やなあ」と思うんだが、聴き込む毎にその素晴らしさがじわじわジワジワ沁みてくる。ブリリアントで滑らかなトランペット。
 

Roy_hargroveearfood

 
ピアノのジェラルド・クレイトンが良い。聴いていて惚れ惚れする様な、艶があって音の抜けが良く、切れ味抜群なピアノは個性的。クレイトンは和蘭生まれ、南カリフォルニアア育ちで、ベーシストのジョン・クレイトンの息子。素性確かなジャズ・ピアノである。アドリブ・ソロに感心する。良く練れているというか、直感的な反応が良いというか、センスを感じる、理知的なフレーズを感じる。以降「要注目」ピアニストである。

アルト・サックスのジャスティン・ロビンソンは、ロイハーのトランペットと相性が良い。ユニゾン&ハーモニーなど、アンサンブルの響きが抜群である。前作からメンバーは一新されているのだが、アルトのロビンソンだけ残ったというのも頷ける。作り込み過ぎない、吹きすぎないシンプルなアドリブ・フレーズは印象に残る。また聴きたくなる。

ロイハーは、この盤をリリースした時が39歳。中堅トランペッターとして、ロイハーの円熟度合いをしっかり確認出来る、バリバリのハードバップ盤である。聴き込み度にじわじわ沁みてくる、噛めば噛むほど味が出る「スルメの様な」好盤である。ジャズ者の皆さん全般にお勧め。

 
 

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2017年11月10日 (金曜日)

これぞ、ファンキー・ジャズな盤

ファンキー・ジャズは、1950年代終盤から1960年代中盤にかけて流行ったジャズの演奏トレンドのひとつで、ハードバップのサブカテゴリー、若しくは後継のトレンドとされる。演奏の基本はメインストリーム・ジャズ。電気楽器はエレクトリック・ピアノ、若しくはオルガンのみ。ゴスペル的な要素が大幅に取り入れられ、これがファンクネスを強調する。

そんなファンキー・ジャズの代表盤の一枚が、Cannonball Adderley『Mercy, Mercy, Mercy(Live at 'the Club')』(写真左)。1966年10月、ロスのキャピトルでのスタジオ・ライブの音源。Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Joe Zawinul (ac-p, el-p), Victor Gaskin (b), Roy McCurdy (ds)。アダレイ兄弟がフロントに座ったクインテット構成。

後に、Weather Reportを結成するジョー・ザヴィヌルがキーボード担当と音楽監督を兼任している。このザヴィヌルの存在が「キモ」で、このザヴィヌルの書いた曲がすべからく「こってこてのファンキー」。その代表作がタイトル曲の「Mercy, Mercy, Mercy」。もう、これでもか〜、という位の「オーバー・ファンク」な演奏。
 

Mercy_mercy_mercy

 
この「Mercy, Mercy, Mercy」の存在が、音が、このアルバムの雰囲気を決定付けている。教会の賛美歌の様な響き、ゴスペルのようなフレーズの「畳みかけるような繰り返し」。そこに、スタジオ・ライブならではの、タイミングの良い観客の掛け声と口笛。徐々に高揚していく繰り返しフレーズに、どんどん高まっていくファンクネス。

この徐々に高揚していくリフの繰り返しがファンキー・ジャズの「ミソ」で、この繰り返すリフがブルージーなコードであれば、その時点で「ファンクネス抜群」ってな感じになる。ビートはロックなビートの「エイト・ビート」。これがファンキー・ジャズ特有の粘りを伴って、まるで「うねり」のように耳に迫ってくる。迫力も満点である。

他の人達から「ファンキー・ジャズ」ってどんな音なのか、と問われた時、取り出すアルバムの一枚がこの『Mercy, Mercy, Mercy』。ファンキー・ジャズって、「純ジャズが全て」という様なシリアスなジャズ者の方々からすると、あまり評価の良くないジャンルですが、聴いていてノリが良く、聴いていて楽しいので、僕にとっては結構お気に入りです。音が楽しい、だから「音楽」。お後がよろしいようで(笑)。

 
 

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2017年10月30日 (月曜日)

5000番台も聴き所満載である

ブルーノート・レーベルは「ジャズの老舗レーベル」と呼ばれる。確かに、ブルーノート・レーベルは、ジャズのあらゆる演奏スタイルや、後の一流ジャズメンの若き時代の演奏をしっかり残していて、ブルーノート・レーベルのアルバムを聴き通すだけで、ジャズの歴史の全てが判る、とまで言われる。

例えば、このアルバムなどもブルーノートならでは、の盤である。『Howard McGhee's All Stars - The McGhee-Navarro Sextet』(写真左)。BLP 5012番。1950年1月23日の録音。特に、前半分『Howard McGhee's All Stars』の部分がブルーノートならでは、である。

何故って、ハワード・マギーって、オクラホマ州タルサ生まれ、デトロイト育ち。ディジー・ガレスピー, ファッツ・ナヴァロ、アイドリース・シュリーマンなどと並んでビ・バップの最初のトランペット奏者の一人。しかし、1950年代は麻薬中毒で没落した為、ビ・バップ時代、若き優秀なトランペッターとしての音源は少ない。

つまり、ハワード・マギーのトランペットの素晴らしさを感じることの出来る音源は稀少。稀少と言われる中、このブルノート盤は、ハワード・マギーの、テクニック優秀、溌剌としたトランペットをしっかりと捉えているのだ。こういうところが、ブルーノートの優れたで、さすが、総帥のアルフレッド・ライオンの慧眼恐るべしである。
 

Howard_mcghees_all_stars_the_mcghee  

 
よくこんな音源をLPでリリースしたものだと感心する。ちなみにパーソネルは、Howard McGhee (tp), Jay Jay Johnson (tb),  Brew Moore (ts), Kenny Drew (p), Curly Russell (b), Max Roach (ds) 。やはり、まずは、マギーの溌剌とした、高テクニックのビ・バップなトランペットが清々しい。良く鳴るトランペットだ。

そして、バックのリズム・セクションの中でキラリと光るフレーズを紡ぎ出しているのが、若き日のケニー・ドリュー。この盤でのドリューのピアノはもはや「ビ・バップ」なピアノでは無い。そこはかとなく黒いファンクネスを漂わせつつ、タッチのハッキリとした、内省的で思索的なアドリブ・フレーズを展開する。これがまた「良い」。

伝説化したハワード・マギーの稀少音源といい、若かりし頃のドリューの黒いファンキーなピアノといい、ブルーノートは、しっかりと当時のジャズの美味しいところを押さえている。1950年の録音ながら、音もまずまずで、ビ・バップ期からハードバップ期へ移行する時期の「ビ・バップのハード・バップ化」の過程を捉えた盤として、この盤は価値がある。

さすがはブルーノート・レーベル、目の付け所が違う。1500番台や4000番台のカタログばかりが、もてはやされがちではあるが、このブルーノートの5000番台のアルバムも隅に置けない。聴き進めて行くと、この5000番台は5000番台で聴き所満載である。ブルーノート、恐るべしである。

 
 

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2017年10月24日 (火曜日)

スピリチュアル・ジャズの先駆け

最近のジャズを聴いていると、昔の「スピリチュアル・ジャズ」が復権しているような気がする。「スピリチュアル・ジャズ」とは、ジャズの演奏ジャンルの1つで、精神的な高揚や深い安らぎを狙いに、アフリカ回帰や黒人独自の精神性などをさらに追求した演奏スタイル。

ちょっと宗教がかっている雰囲気がするが、教会のゴスペルなんかも、この「スピリチュアル」の範疇に入るので気にしない。1960年代から1970年代の「スピリチュアル・ジャズ」は、フリー・ジャズのバリエーションで、自由に個々の趣くままに演奏し、その高揚感やエモーショナルな雰囲気をメインに展開したものが大多数でした。

しかし、最近の「スピリチュアル・ジャズ」は、従来のエモーショナルな展開に穏やかで安らかな展開の要素を加味した、バリエーション豊かなものに進化しているように感じます。しかしながら、1960年代のジャズをよくよく聴き直してみると、エモーショナルな展開に穏やかで安らかな展開の要素を加味した最近の「スピリチュアル・ジャズ」の先駆けの様なアルバムがあります。

例えば、Donald Byrd『A New Perspective』(写真左)などは、当時は「スピリチュアル・ジャズ」とは呼ばれなかった様に思いますが、今の耳で聴くと、明確に「スピリチュアル・ジャズ」を感じます。
 

A_new_perspective1

 
改めて『A New Perspective』は、1963年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Hank Mobley (ts), Herbie Hancock (p), Kenny Burrell (g), Donald Best (vib, vo), Butch Warren (b), Lex Humphries (ds), Duke Pearson (arr)。フリー・ジャズ畑のジャズメンはいませんね。バリバリ中堅のブルーノート御用達のジャズメンばかりで固めています。

しかし、アルバムを聴いてみると、多用されるコーラス、印象的に挿入されるボーカル、印象的なヴァイブの響き。全編聴き通すと、柔らかなゴスペルっぽい響きが充満していて、これって、現代の「スピリチュアル・ジャズ」の雰囲気そのままでないかい?

決して、フリー・ジャズには走らない。それでいて、自由度の高いモーダルな演奏スタイルでアドリブを展開する。熱い展開ではあるが音的にはクール。そこに柔らかにアレンジされたコーラスとクールでエモーショナルなボーカル、そして冷たい熱気をはらんだヴァイブの音が絡んできて、演奏の雰囲気はグッとスピリチュアルなものになる。

昔、1990年代前半に『A New Perspective』を聴いた時には「スピリチュアル」な要素は感じ無かったなあ。ゴスペルの要素を取り入れた、ユニークなモード・ジャズという雰囲気だったのですが、今の耳で聴くと、現在の「スピリチュアル・ジャズ」の雰囲気満載です。うむむ、なるほど。この盤って、最近の「スピリチュアル・ジャズ」の先駆けだったんですね。脱帽です。

 
 

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2017年10月12日 (木曜日)

不思議ちゃんな企画盤である

Electric Bird(エレクトリック・バード)。純日本のジャズ・レーベルである。1980年代、フュージョン系メインストリーム・ジャズなる志向を追求したレーベル。日本のジャズ・レーベルなので、企画に問題があることが多い。このElectric Birdにも「これはなあ〜」と溜息が出るような「不思議ちゃんな企画盤」がある。

Dizzy Gillespie『Closer To The Source』(写真左)。1985年の作品。当時「あのディジー・ガレスピーがフュージョン・ジャズをやった」と話題になったアルバムである。バックに、Sonny Fortune (as), Branford Marsalis (ts), Kenny Kirkland (key), Hiram Bullock (g), Marcus Miller (el-b), Buddy Williams (ds) らの名前がある。加えて、Stevie Wonder (syn,harmonica) が参加。う〜ん、さすがバブル時代の企画盤である。

しかし、である。ディジーのトランペットであるが、バックがフュージョン系メインストリーム・ジャズであるが故、ちょっと聴くと「チャック・マンジョーネ」を想起してしまう。ちょっとディジーに失礼やね(笑)。よくよく聴くと、音にしっかりと芯が入っていて、音が限りなくブリリアント、トランペットが凄くよく鳴っている感じが「これは只者ではないぞ」と襟元を正したりするのだ。
 

Closer_to_the_source

 
さすがはディジー、バックの音がフュージョン系メインストリーム・ジャズであろうがなかろうが、我関せず、ディジーならではのトランペットを朗々と鳴らしまくる。そういう意味では、この盤、ディジーのトラペットのお陰で「平凡なフュージョン・ジャズ盤」とならずに、グッと内容が締まったフュージョン系メインストリーム・ジャズの好盤に仕上がっている。ディジーのトランペットさまさまである。

よくよく聴くと、バックの音は、フュージョン系メインストリーム・ジャズとは言うが、どちらかと言えば「フュージョン・ジャズ」寄り。ファンキーな雰囲気も色濃く見え隠れして、よくまあ、ディジーが収録をOKしたもんだ、と感心することしきり。この盤、もっと純ジャズ寄りにアレンジしたら、もっと素晴らしいフュージョン系メインストリーム・ジャズの好盤に仕上がっていたのでは、と思います。

しかし、当時として、ジャズ・トランペットのレジェンド、ビ・バップ創始者の一人、ディジー・ガレスピーににフュージョン・ジャズをやらせるなんて、凄く乱暴な発想であり企画ではある。ディジーのレベルのトランペットになれば、何もバックの音をフュージョン仕立てにする必要も無いでしょうにね。「これはなあ〜」と溜息が出るような「不思議ちゃんな企画盤」である。

 
 

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2017年10月11日 (水曜日)

ルー・ソロフのトランペット

Electric Bird(エレクトリック・バード)。純日本のジャズ・レーベルである。1980年代、フュージョン系メインストリーム・ジャズなる志向を追求したレーベル。エレクトリック中心のフュージョンのブームの後、メインストリーム・ジャズの要素をしっかり押さえたフュージョン系のジャズは、当時、結構、人気があった。そのElectric Birdレーベルのアルバムを一気聴きの最中である。

今日の選盤は、Lew Soloff『Yesterdays』(写真左)。1986年の作品。ちなみにパーソネルは、Lew Soloff (tp), Charnett Moffett (b), Elvin Jones (ds), Mike Stern (g)。ルー・ソロフのトランペット1管のバックのリズム・セクションは「ギター+ベース+ドラム」のピアノレス。

この1管+ピアノレスなカルテット編成については、フロントのソロフのトランペットが心ゆくまで堪能出来る。エルヴィンのドラミングはダイナミックなポリリズム。ピアノがいると、ピアノのリズムキープとバッティングすることが多い。するとリズムが増幅されて、フロントの管の音が目立たなくなってしまう。今回の「ピアノレス」はそれを未然に防止する。
 

Lew_soloff_yesterdays  

 
この盤は、ルー・ソロフのトランペットの個性がとても良く判る、ソロフのトランペットの個性を愛でる盤である。ハイノート・ヒッター、かつ流麗でメロディアス。加えて、ダイナミックでテクニカル。聴き応えのある、素晴らしい内容のトランペットである。惚れ惚れする。

さすが、1968〜73年の間、ブラス・ロックを代表するスーパー・バンド「ブラッド・スウェット&ティアーズ」の一員として、はたまた、ギル・エヴァンスのオーケストラに、ギルが亡くなる1988年まで参加し活躍しただけはある、実力あるトランペッターの優れたパフォーマンスがこの盤に記録されている。

このルー・ソロフ、あまりに上手過ぎる、という理由で日本では人気がイマイチだった。日本のジャズ者として実に残念であり、ばかばかしくもある。この盤のソロフのプレイを聴いて欲しい。当時、人気がイマイチだったことが信じられない。それほど、溌剌としてブリリアントなソロフのプレイがこの盤には記録されている。お勧めの好盤です。

 
 

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