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2017年4月25日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・52

オールド・スタイルのテナーには昼下がりが良く似合う。と昨日、書いた。確かにそうやなあ、と思う。昼ご飯が終わった後、食後の珈琲を飲みつつ、天気が良ければ、外の陽射しを楽しみつつ、ちょっと微睡みながら聴くオールド・スタイルのテナーは絶品である。

オールド・スタイルのテナーと言うことで昨日は「ベン・ウェブスター」のリーダー作を聴いた。オールド・スタイルのテナーと言えば、オールド・スタイルのテナーの次に、コールマン・ホーキンスが浮かぶ。ウェブスターは情感溢れるテナーが個性だが、ホーキンスのテナーは元気一杯、明朗に吹きまくるテナーが魅力。

そんな明朗に吹きまくるホーキンスのテナーが楽しめるリーダー作がこれ。Coleman Hawkins『The Hawk Flies High』(写真左)。1957年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins (ts), Idrees Sulieman (tp), JJ Johnson (tb), Hank Jones (p), Barry Galbraith (g), Oscar Pettiford (b), Jo Jones (ds)。ギター、トロンボーンも入ったセプテット構成。Riversideレーベルからのリリース。
 

The_hawk_flies_high

 
ホーキンスは収録された全ての曲において、明朗に吹きまくっている。豪快かつ大らかに吹きまくるホーキンスは、とっても頼もしい。加えて、トランペットのシュリーマンが凄く元気に吹きまくる。とにかくすっごく元気なトランペットが明らかに目立っている。ピアノのハンクは渋いバッキングを披露し、J.J.のトロンボーンもアンサンブルの良いアクセントになっている。

1957年の録音だが、演奏の内容は当時のハードバップ最先端にはほど遠い、どちらかと言えば、スイング時代からビ・バップ時代へ移行する時期の、オールド・スタイルのモダン・ジャズという風情。昭和30年代のジャズ喫茶の雰囲気がプンプンする。決して、テクニックに過ぎることは無く、ジャズとして楽しい演奏を繰り出していく。

ホーキンスは明朗に吹きまくるテナーなんだが、そこはかとなく、ブルージーでマイナーな雰囲気が漂うところが良い。春の儚さと良く似た雰囲気。楽しゅうてやがて悲しき、というか、楽しゅうてやがてブルージー。そんなホーキンスのテナーは、ジャズ喫茶の昼下がりによく似合う。

 
 

震災から6年1ヶ月。決して忘れない。まだ6年1ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっとずっと復興に協力し続ける。 

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2017年4月11日 (火曜日)

ハワード・マギーって誰?

長年、そうやなあ、かれこれ40年、ジャズを聴き続けているんだが、名前は聞いたことがあるが、そのジャズメンのリーダー作を聴いたことがない、未だにそんなことがたまにある。

そういうジャズメンのリーダー作って、そもそも人気が無くてリイシューされないとかが理由なんだけど、人気が無い、というのは、そもそもジャズ評論家がそのジャズメンのリーダー作を好んで紹介しない、それに併せて、レコード会社がリイシューしない、というのが、日本では殆どではないか、と思っている。

そんな可哀相な境遇に陥ったジャズメンの一人が「ハワード・マギー(Howard Mcghee)」。ディジー・ガレスピー, ファッツ・ナヴァロ、アイドリース・シュリーマンなどと並んでビバップの最初のトランペット奏者の一人である。が、日本では殆どその名を聞くことは無い。マイナーな存在に甘んじている。

ハワード・マギーは麻薬禍で、何度か引退〜復帰を繰り返している。一定期間、コンスタントに成果を上げた期間が無く、そういう点が評論家筋から受けないのだろうか。麻薬が教育的に良く無い、とは理由にならない。なぜなら、従来のジャズ評論がこぞって良い良いとべた褒めもチャーリー・パーカーやバド・パウエルなんて筋書き入りのジャンキーである。麻薬が過ぎて命を縮めたクチである。

ネットの世の中になって、一般のジャズ者の方々が思い思いもアルバム評論をアップする様になり、やっと、このハワード・マギーのリーダー作が評価される様になり、最近になって、やっと米国本国でCDリイシューされたり、ダウンロードサイトにアップされたりし出した。最近では、幾枚かのリーダー作が入手可能になっている。
 

Dusty_blue

 
さて、そんなハワード・マギーのアルバムで最初に僕が触れた盤が、Howard Mcghee『Dusty Blue』(写真左)。マギーの最高傑作の誉れ高い、1960年6月録音のリーダー作。ベツレヘム・レーベルからのリリースで、このジャケットとタイトルの雰囲気で、この盤の内容が楽しみになる。「ダスティ・ブルー(くすんだ蒼)」とは「けだし名タイトル」。

全9曲。4曲は、マギーのペットに、ベニー・グリーンのボーン、ペッパー・アダムスのバリサク、ローランド・アレキサンダーのテナーの4管フロントに、トミフラのピアノ、ロンのベース、ボルデンのドラムのリズム・セクションをバックにしたセプテット構成。アレンジの妙が決め手の聴いて楽しいハードバップ。

残りの5曲は、トミフラのピアノ、ロンのベース、ボルデンのドラムのリズム・セクションをバックにマギーのペットのワン・ホーンな演奏。速い運指、高音で知られたハワードのトランペットが堪能出来る。これが良い。

ハワードのペットってどっかで聴いたことのある音やなあ、と聴いていたら、そうそう、ケニー・ドーハムに似ている。溌剌とした切れ味の良いドーハムって感じがする。ブルージーではあるが、決してマイナーに偏らない。ポジティブでビ・バッパーなペットが個性的。いや、年代的にはドーハムがハワードに似ているのか(笑)。

アルバム・ジャケットがベツレヘムらしからぬ洒脱さ。盤全体を覆う「ブルージーでアーバンな雰囲気」。これがたまらなく良い。ドラッグに溺れながらも見事な復活を遂げた盤であるが、1960年代中期に再び、麻薬禍にて引退状態に。次に録音したのは1976年というから凄い。筋金入りジャンキーの「つかの間の傑作」である。

 
 

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2017年4月 8日 (土曜日)

典型的なハードバップな演奏

風邪をひいた。喉が腫れて咳が酷い。今日は一日「風邪の週末」。朝は内科へ整骨院へ。午後からはとにかく寝る。こうなってくると、なかなか薬も効かず、憂鬱な時間を過ごすことになる。

床に伏せりながらも、無音の状態は気分が塞ぐので、ジャズをBGMっぽく流しながらの寝床になる。こういう時は難しいジャズはいけない。判り易く聴き易い、典型的なハードバップな盤が良い。典型的なハードバップを耳に刺激を与えぬよう、心地良い音量で流すのだ。

今日の選盤は『Dizzy Atmosphere』(写真)。1957年2月の録音。パーソネルを見渡せば、このメンバー、親分のディジー・ガレスピー抜きの当時のガレスピー楽団。有名どころでは、Wynton Kelly (p), Lee Morgan (tp) らが参加している。演奏を聴けば判るが、ビッグバンドのアレンジを施した典型的なハードバップな演奏。
 

Dizzy_atmosphere_1

 
とりわけピアノのウィントン・ケリーが元気だ。コロコロと転がる様なフレーズを繰り出すハッピー・スインガーなんだが、そこはかとなく漂う哀愁感がたまらない、そんなケリーのピアノがこの盤には溢れている。

この盤ではホーン・セクションは皆元気である。そんな元気なホーン・セクションの中でも、とりわけリー・モーガンのトランペットが絶好調。バリバリに吹きまくる「鯔背なトランペッター」モーガン。ウィントン・ケリーの哀愁感漂うバッキングを受けて、とりわけブルージーに吹き上げるモーガンのトランペットは絶品。

この盤、僕がジャズを聴き始めた頃、LPで入手して、以来40年、聴き続けている好盤です。ビッグバンドのアレンジがメインの演奏なので、ハードバップでありながら、そこはかとなくスインギーな雰囲気や、ガレスピーが活躍したビ・バップなアドリブ展開があったりして、正統派なジャズの香りが漂う、それが魅力のエバーグリーンな好盤です。

 
 

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2017年3月22日 (水曜日)

キャンディドらしい音・3

このアルバムもキャンディド・レーベル(Candid Label)らしいアルバムだろう。収録された演奏といい、録音された音といい、アルバム・ジャケットのデザインといい、この盤も明らかに「キャンディド・レーベル」ならではの盤である。アルバムとしての佇まいはとても良い雰囲気である。

Richard Williams『New Horn In Town』(写真)。1960年9月の録音。CJM 8003番。ちなみにパーソネルは、Richard Williams (tp), Leo Wright (as, fl), Richard Wyands (p), Reginald Workman (b), Bobby Thomas (ds)。フロントがトランペットとアルトサックスの2管フロントのクインテット構成。

この番、音が良い。リチャード・ウィリアムスのトランペットがとっても良く鳴っている。ブリリアントに朗々とトランペットが鳴る。トランペットの音がこれほど良く朗々と鳴っている盤も珍しい。バックバンドの音もキャンディドの音らしく、音の厚みと中低音域の充実した音圧が心地良い。
 

New_horn_in_town

 
アップテンポの曲では優れたテクニックを駆使して、よどむこと無く流麗な運指でトランペットを吹き進めていく。スローテンポのバラードでは、ブラスの音をブリブリ振るわせるように響かせながら、説得力のある堅実なフレーズを滑らかに力強く吹き上げる。いや〜リチャード・ウィリアムスって上手いね〜、とほとほと感心する。

そんなトランペットの演奏の中で、特にバラードプレイが秀逸である。2曲目の「I Remember Clifford」、6曲目の「Over the Rainbow」のバラードプレイは落涙ものである。主旋律を捻ること無く素直に朗々と吹き上げ、アドリブ・フレーズではスローテンポではあるが、揺らぎの無い堅実で芯のある音で惹き付ける。

フロントの相棒、レオ・ライトのアルトも大健闘、バックのリズム・セクションも良好なパフォーマンスを繰り広げていて、アルバム・トータルの出来としても上々。ハードバップなトランペットの好盤の一枚です。ジャズ盤の紹介本には、なぜかその名前が挙がることが少ない盤ですが、ジャズ者万民にお勧めの好盤です。

 
 

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2017年3月20日 (月曜日)

キャンディドらしい音・1

キャンディド・レーベル(Candid Label)。ポップス・シンガーとして有名なアンディ・ウィリアムスを社長とするケーデンス・レコードのジャズ専門の子会社として1960年にスタート。監修者にジャズ評論家として名高いナット・ヘントフを迎え、ジャズメンの志向、意向をストレートに演奏に反映することをポリシーに活動したが活動期間はわずか2年。

活動期間はわずか2年と短いが、キャンディド・レーベルに残されたアルバムはいずれも内容が濃い。キャンディドならではのアルバムも存在する。代表的なものとしては、チャールズ・ミンガスやセシル・テイラーや、あるいはブッカー・リトルやブッカー・アービンのリーダー作はいずれもキャンディドらしい内容である。

わずか2年の活動の中でアルバム化されたアルバムは27枚。そんな僅か27枚については、全てのアルバムを俯瞰して見ると、いかにもキャンディド・レーベルらしいものばかりである。例えば、Benny Bailey『Big Brass』(写真左)。CJM 8011番。1960年11月の録音。

ちなみにパーソネルは、Benny Bailey (tp), Julius Watkins (French horn), Les Spann (fl, g), Phil Woods (as, b-cl), Tommy Flanagan (p), Buddy Catlett (b), Art Taylor (ds)。 フレンチ・ホルンの参加がユニーク。ピアノのトミフラ、アルトのウッズ、ドラムのテイラーなど、要所要所に粋なジャズメンが脇を固める。
 

Big_brass

 
クインシー・ジョーンズ・オーケストラの花形ソリストとして活躍したビ・バップ出身のトランペッター、ベニー・ベイリーのリーダー作である。ベイリーのリーダー作は20枚弱とそんなに多く無い。1960年代は5枚程度。この『Big Brass』は初リーダー作になる。ベイリーの艶やかなトランペットの音色が実に印象的。

加えて、ジュリアス・ワトキンスのフレンチ・ホルンとのアンサンブルにより、ベイリーのトランペットのフレーズに厚みが加わる。アルバム全体を通じて優れたアレンジが印象的で、アルバム全体にとても内容の整ったハードバップな雰囲気が蔓延している。音の厚みと中低音域の充実した音圧は、キャンディド・レーベルならではのもの。

「現代のジャズにおいては、ラウドでビッグな音やハイノートをヒットするばかりが良きトランペットとは限らない」という言葉が頭をよぎる。1950年代半ばまではラウドでビッグな音やハイノートをヒットするばかりが良きトランペットであった。しかし、1960年代に入るに従い、その基準は揺らぎ、ジャズ・トランペットは深化していった。そんなジャズ・トランペットの深化を感じるベイリーの初リーダー作である。

ちなみに新生キャンディド・レーベルは「英キャンディド」としてロンドンに本社をおき、ステイシー・ケントやジム・トムリンソン等の新録音等を活発に始めている。

 
 

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2017年3月15日 (水曜日)

イタリアン・ジャズは魅力的だ

イタリアン・ジャズは実に魅力的だ。最近、イタリアン・ジャズの好盤を定期的に聴くように心がけているのだが、聴けば聴くほど、どんどんその魅力に惹き込まれていく。日本では最近まで情報が少なかっただけに、聴けば聴くほど、そのイタリアン・ジャズの深い森の中に、どんどん惹き込まれていくかのようだ。

このライブ盤だって、相当に魅力的だ。Enrico Intra & Franco Ambrosetti『Live In Milan 〜 Duo, Trio, Quartet』(写真左)。2009年3月の録音。ちなみにパーソネルは、Franco Ambrosetti (tp), Enrico Intra (p), Lucio Terzano (b), Tony Arco (ds)。う〜ん、ほとんど知らん顔ばかり。

さて、Enrico Intra(エンリーコ・イントラ)とは、ネットの情報を紐解くと「欧州の歴史ある音楽をベースに、米ジャズの語法に頼ることなく早くも50年代に独自の『イタリアン・モード』を確立した巨匠」とある。ピアニストである。明らかに欧州的なピアノを弾くが、確かに米国ジャズっぽくない、欧州的ではあるが、ある種、独特の響きとフレーズが個性。

かたや、Franco Ambrosetti(フランコ・アンブロゼッティ)とは、やはりネットの情報を読むと「スイス出身で欧州を代表するトランペットの巨匠」とある。マイルス・デイヴィスをしてその「黒さ」を認めさせた、とあるが、確かにこの人のトランペットは欧州らしからぬファンクネスを感じるから不思議な存在だ。
 

Live_in_milan_duotrioquartet

 
この二人が対等に「双頭リーダー」となって、イントラのレギュラー・トリオにアンブロゼッティが加わる形で、サブタイトルにもあるように「デュオ、トリオ、カルテット」の3種の演奏形態で、こってこてメインストリームなジャズを展開する。明かに米国ジャズとは異なる、欧州的なメインストリーム・ジャズ。

透明度の高い音の響き、流麗で印象的なアドリブ・フレーズ。決して俗っぽくは無い。どこかしっかりアートな側面を宿したアレンジ。バックのリズム・セクションにファンクネスはほとんど感じない。それでいて、先にも書いたが、アンブロゼッティのトランペットが意外と「黒い」。これが実に個性的で面白い。このトランペットのみにファンクネスが宿っている。

加えて、このライブ盤、音が良い。というか、響きが実に印象的。なぜかなあ、と思って解説を見ると、ミラノ市内の歴史的建造物である「la Sala Certificati del Comune di Milano」という、大理石が使われた優雅なホールにてのライヴ・レコーディングだそうだ。なるほど、だから独特な響きがするのか。思わず惹き込まれそうになる、透明度が高く、豊かで混じりけのない響き。

冒頭の、Enrico Intra & Franco Ambrosettiのデュオ演奏「Take The "A" Train」を聴けば、欧州的ではあるが、ある種、独特の響きとフレーズがいかに個性的なのかが判っていただけるかと思う。半世紀に渡って二人の巨匠が眺めてきた「欧州的ヴィジョン」。それをしっかり体感できる、とても内容のある好盤です。

 
 

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2017年3月12日 (日曜日)

メインストリームなラテンジャズ

イタリア・ジャズが充実している。欧州ジャズが一般的になって久しいが、イタリアのジャズはなかなか日本には届かなかった。21世紀になって、ネットでの情報流通が早くなって、やっとイタリア・ジャズの全貌が日本に伝わるようになったと感じている。最近のことですよね、イタリアのジャズ盤を日常で聴くようになったのは。

イタリアのジャズ・トランペット奏者である「ファブリッツィオ・ボッソ(Fabrizio Bosso)」も最近、やっと馴染みのトランペットになってきた。1973年生まれなので、今年で44歳。もう若手では無い、現代のジャズを支える、中堅のジャズ・トランペッターである。このファブリッツィオ・ボッソの「聴いて楽しい」純ジャズ盤がある。

Fabrizio Bosso & Javier Girotto『Sol!』(写真左)。2008年の作品。ちなみにパーソネルは、Fabrizio Bosso (tp,flh), Javier Girotto (ss,bs,per), Natalio Mangalavite (p,key,vo), Luca Bulgarelli (el-b), Marco Sinscalo (el-b), Lorenzo Tucci (ds), Bruno Marcuzzi (per)。う〜ん、トランペットのファブリッツィオ・ボッソしか判らない(笑)。
 

Sol

 
ファブリッツィオ・ボッソがサックス奏者ハビエル・ジロットと組んだラテン・プロジェクトのアルバムである。ふむふむ、タイトルの『Sol!』とアルバム・ジャケットから何となく想像出来るラテン・プロジェクトである。選曲もラテン調の曲を持ってきているが、単純なラテン・ジャズの饗宴になっているかというと、そうでないところがこのアルバムの「ニクい」ところである。

ラテン調の明るいトーンのフレーズ展開ではあるが、基本的に「ラテンのリズムにモーダルな」演奏。メンストリーム・ジャズのアーティステックな面とラテン調の楽曲のポップスな面とが上手く融合して、聴いて楽しい、聴いて聴き応えのある、なかなか内容のあるアルバムに仕上がっている。

ボッソのトランペットとジロットのサックスの都会的で小粋な熱いブロウが心地良い。ラテン調の楽曲、ラテンのリズムにモーダルな演奏がとても楽しい。録音も良好、ジックリと聴き耳立てるも良し、あっさりと聴き流して「ながら聴き」で楽しむも良し、なかなか充実した内容の企画盤です。メインストリームなラテン・ジャズ。イタリア・ジャズも隅に置けませんな。

 
 

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2017年2月20日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・101

外ではちょっと強めではあるが、暖かい雨が降っている。温かい雨。いよいよ春が近づいてきたなあ、という実感が嬉しい。今年の冬は寒かったからね。こういう暖かいワクワクする雨の日には、ポジティブな、切れ味の良いハードバップ、ストレートアヘッドなジャズ盤が良い。

この盤の存在を知った時、やはり老舗のジャズ喫茶のマスターは隅に置けないなあと思った。とてもブリリアントに気持ち良く鳴る、切れ味の良いトランペット。小気味良く躍動感のあるリズム・セクション。そのトランペットのリーダーの名を聞いて、どっかで聞いた名前なんだが、と首を捻ったのが2年前。

Charles Tolliver『The Ringer』(写真左)。1969年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Tolliver (tp), Stanley Cowell (p), Steve Novosel (b), Jimmy Hopps (ds)。盟友カウエルらとのカルテット編成。そうか、ピアノはカウエルか。どうりで、モーダルな響きがすると思った。
 

The_ringer

 
この盤、とにかくトリバーのトラペットが素敵。とっても良く鳴るトランペットで、実にクリアな響きなのだ。こんなに伸びの良い、気持ち良く鳴るトランペットは他にありそうで無い。全編、気持ち良く鳴って格好良い。こういうシンプルに素敵なトランペットはなかなか無い。

カウエルのピアノも素敵だ。聴けば判るが、当時として明らかに新しい音がする。ハードバップなピアノ・フレーズとは確実に一線を画する、モーダルで個性的な和音の重ね方がユニークだ。そんな新しいストレートアヘッドなフレーズがバックに鳴り響く。このバックのリズム・セクションの音だけでも「聴きもの」だ。

こういうアルバムを、ヒョコッと紹介してくれるのだから、老舗のジャズ喫茶のマスターは隅に置けない。いや〜、勉強になりました。そう、チャールズ・トリバーって、ジャッキー・マクリーンのグループへの参加でデビューを果たしていて、ブルーノートにその演奏を残していたことを思い出しました。他のアルバムも早速聴いてみようと思います。

 
 

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2017年2月 3日 (金曜日)

ながら聴きのジャズも良い・16

ジャズ・トラペッターって、何故か「ラテン・ジャズ」をやりたがる。常にではないのだが、ジャズ・トランペッターとして、第一線で活躍している間、どこかで必ず「ラテン・ジャズ」をやる。トランペットという楽器が「ラテン音楽」にフィットする、という感覚があるんだろう。

ジャズ・トランペッターで「ラテン・ジャズ」をやりたがる代表格が「ディジー・ガレスピー」。お祭り男と呼ばれるほど、ライブでその真価を発揮する。そして、ライブでよくやる演奏が「ラテン・ジャズ」。ハイノートをバッチリ決めながら、ラテンのリズムに乗って、バリバリに吹きまくる。ラテン・ジャズはダンサフル。

逆に僕はこのトランペッターがラテン・ジャズに手を染めるとは思わなかった。そのトランペッターとは「Brian Lynch(ブライアン・リンチ)」。1956年イリノイ州生まれ。今年で61歳になる。現在ニューヨークで活躍するジャズ・トランペット奏者。端正で流麗でメロディックなアドリブ・ソロが個性。音はふくよかで切れ味が良い。非常にアーティスティックなトランペットを吹く。

Brian Lynch『Madera Latino : A Latin Jazz Interpretation on the Music of Woody Shaw』(写真左)。そんなリンチが「ラテン・ジャズ」に手を染める。昨年のリリースになる。ウディ・ショウの音楽のラテン・ジャズ的解釈、とでも訳せば良いか。リズムと旋律は「ラテン音楽」。演奏スタイルは正統派、メインストリーム路線のモーダルな演奏。
 

Madera_latino

 
とってもアーティスティックな香りのする「ラテン・ジャズ」。ラテン・ジャズと聞くと、思わず「俗っぽい」コッテコテなラテンチックなリズムと旋律を思い浮かべる。聴いていて、ちょっと気恥ずかしくなる、あからさまにラテンチックな旋律とリズム。しかし、このブライアン・リンチのラテン・ジャズは違う。とってもアーティスティックな、とってもメインストリーム・ジャズな響きと旋律が特徴。

全11曲、トータル1時間50分と、結構なボリュームのアルバムなんだが、聴いていて意外と疲れないし飽きない。このアーティスティックな雰囲気を宿した、ということろが、聴き疲れと聴き飽きを防止している。しかし、これだけ生真面目にアーティスティックな側面を追求したラテン・ジャズを僕は他に知らない。

基本はラテン・ジャズなので、演奏される旋律は「馴染みやすく躍動感のある明るい雰囲気」。聴いていてしっかりとメロディ・ラインは追えるし、リズミカルなリズム&ビートは、しっかりと心にポジティブに響く。

意外と「ながら聴き」に適した「ラテン・ジャズ」である。しかし、結構、難しい高度なこと、やってるんですけどね。そう思わせないところが、リンチのトランペットの優れたところである。「ながら聴き」のヘビロテ盤。異色と言えば異色の盤ではあるが、意外とメインストリームな演奏がこれまた「好感触」。好盤です。

 
 

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2017年1月18日 (水曜日)

ジックリと聴き耳を立てる盤

パット・メセニー・グループ(Pat Metheny Group=PMGと略)に、専門のトランペッターが参入したのが、1995年リリースのアルバム『We Live Here』で、Mark Ledfordであった。このトランペットの参入は、PMGの音世界の彩りをワンステップ拡げた。ちょっとジャズっぽくなった。

そして、2002年リリースの『Speaking of Now』から、専門のトランペッターは、Cuong Vu(クオン・ヴー)に交代した。このクオン・ヴーが当たりで、PMGの音世界にピッタリな音色と音の拡がりに、初めて聴いた時はちょっと驚いた。パットのギターシンセとのユニゾン&ハーモニーが素晴らしい。PMGの唯一無二な音世界である。

そんなクオン・ヴーがリーダーとなってトリオを結成、そこに親分のパット・メセニーがギターで参加する、という、それって実はPMGとちゃうん、みたいなアルバムが出た。『Cuong Vu Trio Meets Pat Metheny』(写真左)である。昨年の5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Cuong Vu (tp), Stomu Takeishi (b), Ted Poor (ds), Pat Metheny (g)。

それって実はPMGとちゃうん、と思っていた『Cuong Vu Trio Meets Pat Metheny』であるが、パーソネルを見て気が変わった。これは第2のPMGを狙った盤では無い。まず、PMGの音の要であるライル・メイズに該当するキーボードが無い。とすれば、PMG十八番のフォーキーでネイチャーなフュージョン・ジャズは期待薄である。
 

Cuong_vu_trio_meets_pm

 
そもそもクオン・ヴー・トリオからして、トランペット+ベース+ドラムのピアノレス・トリオ。フロント楽器(ここではトランペット)がリーダーでのピアノレス・トリオの主な目的は「限りなく自由度が高い」ということ。心情の趣くままに限りなく自由にフロント楽器を吹きまくりたい。そういう欲求が前面に押し出たのがピアノレス・トリオ。

そんな「限りなく自由度の高い」ピアノレス・トリオにパットがギターで参入する。ということは、PMGな音世界では無く、パット個人な音世界が狙いとなるだろう。そう、このアルバムは「限りなく自由度の高い」メインストリーム・ジャズである。部分的にはフリー・ジャズと言い切ってよいだろう自由でアブストラクトなアドリブ・フレーズが宙を舞う。

録音テクニックが優れていることもあって、4人編成の演奏ではあるが、音がとても厚い。フロント楽器がトランペットとギターであるが、音がとても厚くて豊か。この盤は、現代の硬派なメインストリーム・ジャズとして聴いた方が良い。戸惑うこと無く、この盤の素晴らしい演奏を堪能出来る。逆に、PMGな音世界を前提とすると、まず戸惑うだろう。

現代のメインストリーム・ジャズの好盤です。決して甘くは無い、どちらかと言えば硬派でシリアスな内容で、聴き流しなどには合いませんね。ある程度のボリュームで、良好なステレオ装置に相対して、ジックリと聴き耳を立てて聴き込むタイプのアルバムだと思います。

 
 

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