2023年3月17日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・261

以前「幻の名盤」ブームがあって、そこには聴くことはなかなか叶わないが、小粋で味のある雰囲気の、知る人ぞ知る優秀盤のタイトルが多く上がっていた様に思う。しかし、最近、そんな「幻の名盤」の類が、サブスク・サイトからダウンロードで鑑賞出来る様になってきた。良い事である。

Joe Newman with Frank Foster『Good 'n' Groovy』(写真)。1960年3月17日、Van Gelder Studioの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Newman (tp), Frank Foster (ts), Tommy Flanagan (p), Eddie Jones (b), Bill English (ds)。ジョー・ニューマンのトランペット、フランク・フォスターのテナーがフロント2管のクインテット編成。

ジョー・ニューマンは、1922年、米国ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。1992年に69歳で鬼籍に入っている。ニューマンの主なキャリアは、カウント・ベイシー楽団の人気トランペッターとして活躍、1967年には、設立に尽力した「ジャズ・インタラクション」の社長に就任した。1970年代から1980年代にかけては数枚のリーダー作を残している。基本的には知る人ぞ知る、玄人好みのトランペッターである。

フランク・フォスターも、カウント・ベイシー楽団の人気テナーマンで、この盤のフロントは、カウント・ベイシー楽団の人気トランペッターとテナーマンがフロントを張っていることになる。そう言えば、ベースのエディー・ジョーンズもカウント・ベイシー楽団の所属ベーシスト。クインテット5人中、3人がベイシー楽団絡みということになる。
 

Joe-newman-with-frank-fostergood-n-groov

 
演奏全体の内容は「ご機嫌なハードバップ・セッション」。モードとかフリーなど、当時のハードバップの先を行く、ジャズ演奏の先進的トレンドに全く関係無く、躍動感溢れるジャジーでバップな演奏がこの盤の最大の個性。

ニューマンのトランペットはブリリアントで水準の上を行くバップ吹奏だし、フォスターのテナーはオーソドックスでオールドスタイルな、モダン・ジャズを地で行くような正統で明らかにハードバップな吹奏。

そして、そこに「名盤請負人」のトミー・フラナガンがピアノで参加している。この盤でのフラガナンは何時にも増して、バップで味のあるモダン・ピアノを聴かせてくれる。速い演奏ではバップなメリハリのある弾き回し、バラードでは典雅で小粋でお洒落なフレーズ連発で、思わず「惚れ惚れ」する。トミフラのピアノは、ニューマンとフォスターの吹奏を見事にサポートして、見事に彩りを添える。そして、トミフラ単体でも、実に魅力的な「小粋な」ピアノを効かせてくれる。

このニューマンのリーダー作、名盤紹介本などでは「トミフラのピアノを聴くべき」アルバムとする向きが多く見受けられるが、どうして、ニューマンのトランペットとフォスターのテナーの寛ぎ溢れる、小粋で味のある吹奏も実に魅力的。アルバム全体の雰囲気、噛めば噛むほど味が出る様な「モダン・ジャズ」は、その魅力満載です。
 
 

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年3月16日 (木曜日)

ラヴァの硬派な「純ジャズ」

2日ほどお休みをいただきましたが、本日、ブログ再開です。

さて、久々にイタリアン・ジャズのお話しを。イタリアン・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァである。1972年に初リーダー作をリリースしている。約50年間、イタリアン・ジャズの第一線を走ってきた。1939年の生まれなので、今年で84歳。イタリアン・ジャズのレジェンド中のレジェンドである。

Enrico Rava Quartet『Ah』(写真)。1979年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Franco D'Andrea (p), Giovanni Tommaso (b), Bruce Ditmas (ds)。エンリコ・ラヴァのトランペット1管がフロントの「ワンホーン・カルテット」な編成。ラヴァのトランペットの本質と個性がとても良く判る編成での演奏になる。

まず、ラヴァのトランペットの素姓の良さを強く感じる。輝く様にブリリアントなトランペットの響き。スッと伸びるロングトーン。切れ味の良い高速パッセージ。とにかくラヴァのトランペットの音は美しい。そして、流麗なアドリブ・フレーズを吹き切るテクニックの高さ。音の「質」は、米国ジャズのトランペットの様な「ファンクネス」は希薄。クラシック音楽の端正で粒立ちの良い響きを踏襲している様で、それが「欧州ジャズ」特有の「質」なんだろう。
 

Enrico-rava-quartetah

 
演奏の基本は「欧州モダン」。しかし、アドリブ展開に入ると、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開し、アブストラクトにブレイクダウンする。と思いきや、統制の取れた構築力の高いアンサンブルで疾走する。1979年というフュージョン・ジャズ全盛時代に、こんなバリバリ硬派でモダンな「ニュー・ジャズ」が演奏されていいたとは。さすがにECMレーベルである。

イタリア出身のジョヴァンニ・トマッソのベース、米国出身のブルース・ディトマスのドラムもラヴァに負けずとも劣らない、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開にガッチリ追従し、柔軟に応対する。このリズム隊のレベルの高さも、このラヴァ盤の内容充実に大いに貢献している。

実にECMらしい、欧州モダンらしいニュー・ジャズがてんこ盛り。実はこの盤、ECMレーベルからのリリースでありながら、プロデューサーがマンフレート・アイヒャーではなく、トーマス・ストウサンド(Thomas Stöwsand)で、その結果、ECMの「ニュー・ジャズ」というよりは、ECMレーベルの中では、ちょっと異色の「メンストリーム系の純ジャズ」の雰囲気が濃厚になっている。ガッシガシ硬派な欧州系の純ジャズです。
 
 

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2023年3月 5日 (日曜日)

ラヴァとハーシュのデュオ新盤

イタリア・ジャズも隆盛を維持して久しい。レジェンド級のベテランから、若手新人まで、コンスタントに好盤をリリースし続けている。聴き比べると意外と良く判るが、イタリア・ジャズにはイタリア・ジャズなりの独特の雰囲気があって「統一感」がある。マイナー調でクラシック風のモーダルなフレーズが個性的。

Enrico Rava & Fred Hersch『The Song Is You』(写真左)。2021年11月、スイスのルガーノでの録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (flgh), Fred Hersch (p)。イタリア・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァと、リリカルで耽美的なピアノ詩人のフレッド・ハーシュ、2人のみの「デュオ演奏」。

エンリコ・ラヴァはイタリア・ジャズの至宝。1972年に初リーダー作をリリース、今年84歳、レジェンド級の大ベテランである。1975年にECMでの初リーダー作をリリース、1986年の『Volver』で一旦ECMを離れるが、2003年、『Easy Living』でECMにカムバック。以降、2〜3年に1枚のペースで、ECMからリーダー作をリリースしている。

ラヴァは、ピアニストとのデュオがお気に入りらしく、5〜6人の第一線級のジャズ・ピアニストとのデュオ・アルバムを録音している。ラヴァのトランペットは、イタリア・ジャズらしく、哀愁感漂うマイナー調をメインに、流麗でブリリアントで、端正なクラシック風のモーダルなフレーズが身上。

心ゆくまでトランペットを吹き上げるには、ベースやドラムのいないピアノとのデュオが一番なんだろう。ピアノは打楽器の要素も備えていて、リズム&ビートとベースラインはピアノ一台でまかおうと思えば、まかなえるのだ。今回は、ハーシュのリリカルで耽美的なピアノに合わせたのか、ラヴァは、音の丸い、柔らかで暖かな音色のフリューゲルホーンを吹いている。
 

Enrico-rava-fred-herschthe-song-is-you1  

 
フレッド・ハーシュは、米国オハイオ州シンシナティ生まれ。今年55歳の中堅ピアニスト。初リーダー作が1985年。結構な枚数のリーダー作をリリースしているが、所属レーベルは定着せず、マイナーレーベルからのリリースがほとんど。

また、1984年にHIVウイルスに感染、2008年にはウイルスが脳に転移し2ヶ月間の昏睡状態に陥っている。そんな大病の影響もあって、我が国には、ハーシュの情報はほとんど入って来なかった。

1990年代の終わりに、Palmettoレーベルにほぼ定着したが、それでも我が国で、ハーシュの名前が流通しだしたのは、つい最近のこと。今回、このラヴァとのデュオで、ECMレーベルでの初録音になる。

ハーシュのピアノは耽美的でリリカル。米国のピアニストでありながら、ファンクネスは限りなく希薄。どちらかといえば、欧州ジャズのピアノに近い響きを有していて、そういう点でも、今回のECMでの録音は、ハーシュのピアノの個性にピッタリである。

さて、アルバムの内容であるが、2人のオリジナル曲も良いが、やはり、アントニオ・カルロス・ジョビン、ジェローム・カーン&オスカー・ハマースタインII世、そして、セロニアス・モンクのスタンダード曲でのデュオ演奏が白眉。ECMレーベルの音作りに即した「リリカルで耽美的、透明度が高く、端正でスピリチュアルな」ニュー・ジャズ志向のデュオ演奏が素晴らしい。

ラヴァのリリカルで耽美的で流麗なニュー・ジャズ志向のフリューゲルホーンは意外に珍しいのでは無いか。でも、とても良い。どの曲でも、ラヴァのフリューゲルホーンは朗々と暖かく、ブリリアントに柔軟に鳴り響く。そして、ハーシュのピアノは、ラストの「Round Midnight」のソロ演奏に収束される。独り対位法をちりばめながら、鍵盤をフル活用して、ダイナミックに、モンクの名曲を弾き上げる。

近年で白眉の出来のフリューゲルホーンとピアノの「デュオ演奏」。即興演奏の妙もふんだんに聴くことが出来て、音の展開の美しいことこの上無い。良いアルバムです。
 
 

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2023年2月28日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・23

 エリック・ドルフィーは、お気に入りのアルト・サックス奏者。ジャズを聴き始めた頃、ドルフィーに出会って、これが即興演奏の極致か、とぶっ飛んで以来、ずっとドルフィーは聴き続けている。

twitter で「朝一番のジャズ盤」や「昼下がりのジャズ盤」、そして、寝る前の「今日のラストのジャズ盤」のご紹介のツイートをしているのだが、ここにはドルフィーなど、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を踏まえながら、アブストラクトにフリーに、限りなく自由度の高いジャズは登場させていない。刺激が強すぎる、というのが理由。

よって、ドルフィーは、個人的に、バーチャル音楽喫茶『松和』で聴いているのだが、ドルフィーはどのリーダー作を聴いても「駄盤」が無い。どのブロウの平均点以上の優秀なパフォーマンスばかりなので、ドルフィーを感じる上で、アルバムを選ぶ必要は無い。その中でも、敢えてどれが良いのか、と問われれば、僕はこのアルバム2枚を推すことにしている。

Eric Dolphy『At The Five Spot, Vol.1 & Vol.2』(写真左)。1961年7月16日、NYの「Five Spot」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Eric Dolphy (as, b-cl, fl), Booker Little (tp), Mal Waldron (p), Richard Davis (b), Ed Blackwell (ds)。エリック・ドルフィーのアルト・サックスと、ブッカー・リトルのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

このパーソネルのメンバーを今から振り返れば、力量十分、テクニック十分の中堅ジャズマンの中でも「曲者」揃い。出てくる音は、当然「曲者」で、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を踏まえながら、アブストラクトにフリーに、限りなく自由度の高いジャズが展開される。恐らく、当時、最高レベルの「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」だと思う。
 

Eric-dolphyat-the-five-spot-vol1-vol

 
まず、Vol.1、1曲目の「Fire Waltz」での、冒頭のドルフィーのアルト・サックスの捻れフレーズを聴くだけで、このライヴ盤は「穏やかではない」ことを感じる。捻れてブッ飛んで疾走するドルフィーのアルト。そこに、負けずに捻れてブッ飛んで疾走するブッカー・リトルのトランペットが絡んでくる。限りなく自由に、従来の穏やかなフレーズを踏襲すること皆無の、鋭角にスクエアにスイングする唯一無二なアドリブ・フレーズ。

Vol.1では、スリリングでハイ・テンションな「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」が、これでもか、と言わんばかりに展開する。ジャズとしての「即興演奏」の極致がここにある。

Vol.2は、やや穏やかで懐深い「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」が繰り広げられる。オリジナルLPでは、「Aggression」と「Like Someone in Love」の2曲のみ。ほとんどが「即興演奏の嵐」なんですが、やはり、ドルフィーは尋常では無い。特に、バスクラの「異次元さ」が極めつきで、もうこれは癖になる(笑)。ブッカー・リトルのトランペットも熱くて良いんですが、ドルフィーの「変態度合い」が凄くて、これはまあ(笑)。

Vol.2を聴いていて、ドルフィー&リトルのフロント2管は唯一無二で凄いなあ、と改めて感動。「限りなく自由度の高いモーダルな演奏」がどんどん自由度高く、自由度高くなって、アブストラクトにフリーに展開しそうになるのだが、決して、メインストリーム志向のジャズの伝統的な展開を逸脱することは無い。このジャズの伝統的な展開にグッと踏みとどまって演奏するところが良い。何度聴いてもグッとくる。

このEric Dolphy『At The Five Spot, Vol.1 & Vol.2』を聴くと、ジャズとしての「即興演奏」というものが良く判る。ジャズの一番の特徴は「即興演奏」というが、このライヴ盤でのドルフィー&リトルのフロント2管のパフォーマンスは、その「即興演奏」の好例だろう。このライヴ盤を聴く度に、ジャズって凄いなあ、と思うのだ。
 
 

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2023年2月17日 (金曜日)

定着するイスラエル・ジャズ

21世紀に入って「イスラエル・ジャズ」が認知される様になった。それまで、ジャズの本場と言えば「米国」、その米国のジャズが欧州に飛んで、英・独・仏・伊などの「欧州ジャズ」、そして、スカンジナビアに飛んで「北欧ジャズ」が定着した訳だが、21世紀には入って、ジャズのグローバル化が進み、この「イスラエル・ジャズ」、そして、旧共産圏の「東欧ジャズ」が台頭してきた。

イスラエル・ジャズは、その名の通り、ジャズの中心地が「イスラエル(テルアビブを含む)」。従来のメインストリームなジャズのスタイルをベースに、中東地域の伝統音楽の要素を融合して、明確にエスニックな雰囲気が漂う独特の音世界が特徴。イスラエル・ジャズは、その音の特徴を活かした「静的なスピリチュアル・ジャズ」に長けている。4ビートのジャズというよりは、1970年代のECMの様な「ニュー・ジャズ」の範疇の音世界が多数を占めている。

Avishai Cohen『Naked Truth』(写真左)。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Avishai Cohen (tp), Yonathan Avishai (p), Barak Mori (b), Ziv Ravitz (ds)。テルアビブ出身のトランペッター、アヴィシャイ・コーエンのECMレーベルからの5作目になる。コーエンのトランペットのみがフロントの「ワンホーン・カルテット」である。
 

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曲名と曲順を見ると、ジャズ即興による組曲のような形を取っている。冒頭「Naked Truth Part 1」から始まり、コーエンの吹き上げるテーマを基に、即興演奏として、その瞬間瞬間に音の意味を解釈〜理解し、音世界を刻々と変化させ、フレーズをバリエーション良く発展させていく。Naked Truth Part 1から、Naked Truth Part 8まで、そして、ラストの「Naked Truth: Departure」まで、静的なスピリチュアル・ジャズ志向の即興演奏が粛々と展開されていく。

音の基本は「耽美的でリリカル」。リズム&ビートは曲想に合わせて柔軟に変化するので、ネオ・ハードバップの様な雰囲気は全く無い。ECMレーベルお得意の「ニュー・ジャズ」の範疇である。この盤の音世界は「精神性」を追求している様に感じるので、やはり、この盤の音は「静的なスピリチュアル・ジャズ」だろう。アルバムの終演で、イスラエルの詩人、ゼルダ・シュナーソン・ミシュコフスキーのヘブライ語の詩「Departure」をコーエンが朗読しているところからも、「静的なスピリチュアル・ジャズ」な雰囲気を濃厚にしている。

フレーズはどこかエスニックな雰囲気が漂い、イスラエル・ジャズの面目躍如的な演奏が素晴らしい。米国ジャズにも欧州ジャズにも無い、21世紀ならではの、ジャズの「第三極」的な音志向である「イスラエル・ジャズ」。一時の流行で終わるなどと揶揄された時期もあったが、2023年の今、イスラエル・ジャズは、ジャズの「1ジャンル」として、しっかりとその「範疇」を確立している。
 
 
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2023年1月18日 (水曜日)

エレ・バードの未発表ライヴ盤

ネットでジャケットを見た時は、最初はCDリイシューかと思った。ドナルド・バードの1973年のモントルー・フェスでのライヴ音源。ジャケットが、以前にブルーノートからリリースされた一連の「ライヴ:クッキン・ウィズ・ブルーノート・アット・モントルー」のシリーズと全く同じデザイン。これじゃあ、CDリイシューだと思いますわね(笑)。

ロニー・フォスター、マリーナ・ショウ、ボビー・ハッチャーソン等の優れた内容の「モントルー・ライヴ盤」があって、なんだドナルド・バードのライヴもあったんか、と思っていたが、薄らとした記憶を辿って、それは違うなあ、とネットでググってみたら、なんと「新たな発掘音源」だった。まだ、こんな優れた内容のライヴ音源が眠っていたのか。

Donald Byrd『Live: Cookin’ With Blue Note At Montreux』(写真左)。1973年7月5日、スイスで行われたモントルー・ジャズ・フェスティバルでのライヴ録音。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp, flh, vo), Fonce Mizell (tp, vo), Allan Barnes (ts, fl), Nathan Davis (ts, ss), Kevin Toney (el-p), Larry Mizell (syn), Barney Perry (el-g), Henry Franklin (el-b), Keith Killgo (ds, vo), Ray Armando (congas, perc)。ライヴ録音されたマスター・テープはブルーノートの保管庫に眠っていたらしい。
 

Donald-byrdlive-cookin-with-blue-note-at

 
マイゼル・ブラザーズやネイサン・デイヴィスなど10人によるエレクトリックなバンド編成。あのバードのエレクトリック・ジャズの名盤『Black Byrd』の録音の翌年のモントルー・ジャズ・フェスでのライヴ音源。さすが、マイゼル・ブラザーズ擁するバードのエレ・バンド。エレクトリックな楽器が乱舞する、熱狂&強烈なジャズ・ファンクが展開されている。

エレ・ジャズ・ファンクの名曲「Black Byrd」は、スタジオ録音よりも熱気溢れる良い内容。未録音のバードのオリジナル曲「The East」「Kwame」「Poco-Mania」の収録は貴重だし、これまた良い内容。そして、最大の聴きものは、スティーヴィー・ワンダーの「You've Got It Bud Girl(悪い娘)」のカヴァー。これがまた素晴らしい出来。ジャズ・ファンクの名カヴァーである。

以前から我が国では人気はイマイチみたいだが、ドナルド・バードのエレ・ファンクは、マイルスのエレ・ファンクを判り易くポップにした様な内容で、ちょっと俗っぽく下世話なところがあるが、これはこれで十分に内容のあるエレ・ファンクだと思っている。

そのライヴ音源が、こうやって50年の時を経て耳にすることが出来た。ライヴ音源を聴いてみて、やっぱりバードのエレ・ファンクは良い、と再評価である。しかし、こんなライヴ音源を眠らせていたなんて。ブルーノート、もっともっと音源発掘に力を入れて欲しいなあ(笑)。
 
 

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2022年12月28日 (水曜日)

マイルスのブルーノート録音・1

マイルス・デイヴィスのリーダー作は、どの盤も「奥が深い」。まず、駄盤、凡盤の類が無い。各リーダー作には、それぞれ、録音時の「音の背景」とか、録音時の「音の志向」とか、が必ずあって、マイルスのリーダー作は、それぞれの盤毎に必ず「意味や意義」が存在する。マイルスは立ち止まったり、振り返ったりすることが無い。そして、マイルスには「適当に」という言葉は存在しない。

『Miles Davis Volume 1』(写真左)。1952年5月9日, 1953年4月20日の録音。ブルーノートの1501番。ちなみにパーソネルは、1952年5月9日:Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jackie McLean (as), Gil Coggins (p), Oscar Pettiford (b), Kenny Clarke (ds)。1953年4月20日:Miles Davis (tp), J. J. Johnson (tb), Jimmy Heath (ts), Gil Coggins (p), Percy Heath (b), Art Blakey (ds)。どちらもセクステット編成。

1949年-1950年録音の『Birth of the Cool』の後、ブルーノートへの初録音と第2回目の録音から選曲された12-inch LP仕様のアルバム。当初は10-inch LP3枚に分けてリリースされたものを、12-inch LPへの移行時、2枚のLPに再編したものの最初の1枚である。

録音当時、マイルスは重度の麻薬禍に陥っており、録音も激減していたのだが、ブルーノートの総帥プロデューサー、アルフレッド・ライオンは、マイルスの才能を高く評価していて、重度の麻薬禍の状態にあったマイルスに録音の機会を与えている。マイルス自体、麻薬禍から何とか立ち直りたいと努力していた時期でもある、ライオンはそんなマイルスに救いの手を差し伸べた訳である。
 

Miles-davis-volume-1_1

 
マイルスはそんなライオンの恩義に報いるかの様に、麻薬禍の真っ只中にありながら、素晴らしい録音をブルーノートに残している。時代はビ・バップの流行が下火になり、ハードバップの萌芽を感じられる録音がちらほら出だした頃。マイルスは、ブルーノートの録音に、いち早く、ポスト「ビ・バップ」な、後のハードバップの先駆けとなる音を残している。

まだ編成楽器によるインタープレイは無いにしろ、演奏を「聴くこと」を意識したアーティスティックなアレンジ、聴き手に訴求する為のアドリブ展開におけるロング・プレイ、ビ・バップの熱気溢れる演奏志向からクールでヒップな演奏志向への変化は、既にこの1952年5月9日, 1953年4月20日の録音で、マイルスは「ものにしている」。

収録曲については、1952年5月9日録音は「How Deep Is the Ocean?」「Dear Old Stockholm」「Chance It」「Yesterdays」「Donna」「Woody 'n' You」の6曲、1953年4月20日録音は「Tempus Fugit」「Kelo」「Enigma」「Ray's Idea」「C.T.A」「C.T.A" (Alternate Take)」の6曲。

1952年5月9日録音の演奏の方が、ちょっと「くすんだ様な」大人しい演奏でクール度が高い。1953年4月20日録音の演奏の方は、溌剌とした度合いが高く、フレーズも明るめで健康的。でも、そんなに大きな変化は無くて、総じて、流麗で張りのある力強い演奏で統一されている。特にマイルスのトランペットは素晴らしい。当時のジャズ・シーンの中で、最高レベルのトランペットである。

マイルスは、ライオンの恩義に報いるように、ブルーノートに「ハードバップの萌芽」を感じさせ、トランペッターとして最高レベルのブロウを残したのだ。決して、やっつけの録音では無い、しっかりリハーサルされ、しっかり集中して演奏された素晴らしい録音の数々。やはり、当時から「マイルスは只者では無かった」のだ。
 
 

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2022年12月24日 (土曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・19

僕は、マイルス・デイヴィスとギル・エヴァンスのコラボレーションが大のお気に入りだ。Columbiaレコード移籍後の(レコーディングは前だが)『'Round About Midnight』から『Miles Ahead』『Milestones』『Porgy and Bess』『Kind of Blue』『Sketches of Spain』まで、ギルが直接関与したものから、間接的なものまで、マイルスとギルのコラボの成果はどのアルバムを聴いても、今でも惚れ惚れする。

時期的には、1955年から1960年初頭、ジャズでいうと「ハードバップ全盛期」である。そんな「ハードバップ全盛期」に、マイルスはいち早く、ポスト・ハードバップを打ち出し、モード・ジャズへのチャレンジと確立に取り組んでいる。この辺が、魔王ルスの「先取性」であり「革新性」の優れたところなんだが、マイルスが「ジャズの帝王」と呼ばれる所以だろう。

『'Round About Midnight』で、いち早く、ハードバップの演奏フォーマットを確立させ、次作の『Miles Ahead』から、ギルとのコラボで、モード・ジャズに取組み始める。最初の明確な成果が『Milestones』、そして、そのモード・ジャズを確立し、奏法的にも「けりを付けた」のが『Sketches of Spain』だろう。

Miles Davis『Sketches of Spain』(写真左)。1959年11月、1960年3月の録音。ちなみにパーソネルは、と言いたいところだが、細かいメンバー紹介は割愛する。
 

Sketches_of_spain_1
 

なんせ、この盤の演奏は、Miles Davis (tp) が主役、Gil Evans (arr, cond) とのコラボで、バックに錚々たるメンバーのジャズ・オーケストラ。それもフレンチ・ホルン,バスクラ、オーボエ、チューバ、バズーン、加えて、ハープが入る、ギル・エヴァンスならではの楽器構成。

スペインの作曲家ロドリーゴの人気曲をギル独特のアレンジで再編した、アルバム冒頭を飾る「Concierto De Aranjuez(アランフェス協奏曲)」の人気でこの盤は評価されるが、それは違う。この盤は、マイルス=ギルのコラボがモード・ジャズに「けりを付けた」、モード・ジャズを確立させた、ジャズの歴史的にも意義のある名盤である。

このアルバムに収録された曲は、殆どがいわゆるスパニッシュ・モードによる演奏。マイルスのスパニッシュ・モードの的確な解釈とギルの個性的なアレンジと共に、スパニッシュ・モードをベースとした演奏によって、モード・ジャズを「ものにしている」。この盤での、淀みの無いマイルスのモーダルな演奏は素晴らしいの一言。

それまでのジャズは「猥雑、庶民的、アクロバット的」で「クラシックの様な芸術性には無縁」という定評を覆し、ジャズというフォーマット、ジャズという音楽ジャンルが、モード・ジャズの確立によって、アーティスティックな側面を全面に押し出し、芸術性の高い音楽的成果を残すことが出来る、それを証明できる最高の一枚である。
 
 

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2022年12月 1日 (木曜日)

ジョーダンとファーマーの共演盤

デューク・ジョーダン(Duke Jordan)。欧州に渡った後、1970年代に、スティープルチェイス・レーベルに残したリーダー作は良好盤ばかりで駄盤が無い。スティープル・チェイスの総帥ディレクター、ニルス・ウィンターがデューク・ジョーダンの才能を高く評価していたこと、そして、なにより、双方の相性が相当良かったのだろう。

Duke Jordan『Duke's Artistry』(写真)。1978年6月30日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Duke Jordan (p), Art Farmer (flh), David Friesen (b), Philly Joe Jones (ds)。フロント管にアート・ファーマーのフリューゲルホーン1管のカルテット編成。ファーマーのフリューゲルホーンが優しく唄い上げ、ジョーダンのピアノのバッキングの巧みさ、そして、ジョーダンの書く曲の良さが、とても良く判る盤である。

全曲デュークによりオリジナル曲で占められており、これがまた、どの曲も出来が良い。作曲家としてのデューク・ジョーダンの才能を改めて認識出来る内容。この良き曲に恵まれて、ファーマーの暖かくて丸みのある、それでいて、相当にテクニカルで力感溢れるフリューゲルホーンが映えに映える。
 

Duke-jordandukes-artistry

 
デューク・ジョーダンのピアノ、デイヴィット・フリーゼンのベース、フィリー・ジョーのドラムによるトリオのバッキングがこれまた見事。特に、ジョーダンの伴奏上手なピアノには感心する。フリーゼンのベースは厚みのある骨太な音で堅実、そして、フィリージョーは意外と整ったバップ・ドラミングで、リズム&ビートを供給する。

ジョーダンの曲はどれもが「ユッタリ&シットリ」していて、どの曲も良好。5曲目の「Lady Dingbat」はバラード曲。ジョーダンのバラード曲は絶品。ジョーダンのピアノがイントロから映えに映える。ファーマーの丸いフリューゲルホーンによるアドリブ展開も優しくて良し。そうそう、ブルース曲も良いですね。ラストの「Dodge City Roots」など、小粋で格好良くて、気品溢れる展開が聴き応え十分。

この盤、裏面の解説を紐解くと、ファーマーが当日夕刻のフライトで移動するという、相当タイトなスケジュールの中の録音だった様です。そんな中、リーダーのデューク・ジョーダンの周到な準備によって、メンバー集まり次第、即、録音に臨むことが出来、1曲当たり多くても2テイク、トータルで2時間で録音を完了したとのこと。そんなタイトな録音環境を全く感じさせ無い、とても充実した内容のアルバムです。
 
 

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2022年11月10日 (木曜日)

ランディの素晴らしいライヴ音源

2022年11月5日のブログ「マイケルの素晴らしいライヴ音源」でご紹介した、弟マイケル・ブレッカーのライヴ音源と同一日、同じジャズフェスでの兄貴のランディ・ブレッカーのライブ音源がある。同一日なので、一日で、ブレッカー兄弟それぞれのバンドのライヴが聴けた訳か。ええなあ。

Randy Brecker『Live at Fabrik Hamburg 1987』(写真)。1987年10月18日、The Jazzfestival Hamburgでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Randy Brecker (tp), Bob Berg (sax), Dieter Ilg (b), David Kikoski (p), Joey Baron (ds)。ハンブルグ・ジャズフェスにて、ランディ・ブレッカーバンドを率いて演奏した折の未発表ライヴ音源。

演奏にクインテットを選んだのは、ホレス・シルヴァーを意識した、とのこと。確かに、ネオ・ファンキー・ジャズと呼んで良い位に、とても洗練された、とてもお洒落でテクニカルなファンキー・ジャズが展開されている。どこか、当時のエレ・マイルスのジャズ・ファンクを判り易い演奏にリコンパイルし、ポップに味付けした様な、エレ・マイルスにインスパイアされた印象を持つのは僕だけかなあ。
 

Randy-breckerlive-at-fabrik-hamburg-1987

 
ただし、ランディはトランペッター。エレ・マイルスの影響をそのまま出したら、マイルスの物真似に聴かれると困る。そこで、一捻りして、ファンクネスの表現の部分はシルヴァーのファンクネス表現をリニューアルし、新しいファンキー・ジャズの雰囲気に乗って、マイルスを口語体に直した様な、判り易いポップなフレーズを吹きまくる。これは良い。これは聴かせるファンキー・ジャズだ。

メンバーも厳選されている。特に、サックスは、エレ・マイルスを経験しているボブ・バーグが担当していて、ストレートでファンキーなサックスを吹きまくっている。キコスキーのピアノはファンキーな弾きこなしで切れ味抜群。ブレイキー、ミンガス、シルバー、モンクら、ジャズのレジェンドへの敬意に満ちた、ストレート・アヘッドな、軽快なファクネス溢れる展開は効き応え抜群。

ランディ・バンド、マイケル・バンド、メンバーも音志向も異なるんですが、演奏の音の「底」はしっかり繋がっているなあ、と改めて感心。特に、ストレート・アヘッドなランディのトランペットが秀逸。確かに、ランディのトランペットは純ジャズの系譜でも一流でした。今回のライヴ盤を聴いて再認識しました。
 
 

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