最近のトラックバック

2018年6月12日 (火曜日)

長く付き合う事が出来る好盤

思い出した様に、ドナルド・バード(Donald Byrd)を聴いている。ドナルド・バードは息の長いトランペッターだった。リーダー作のデビューは1955年。ラストは1991年。約40年余り、ジャズの第一線で活躍していたことになる。ハードバップから始まり、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズと、その時期その時期のジャズの流行の演奏スタイルを渡り歩いたことからも、応用力、適応力も抜きんでたものがあった。

今日の選盤は、Donald Byrd『Byrd in Flight』(写真左)。1960年1月と7月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Hank Mobley (ts), Duke Pearson (p), Doug Watkins, Reggie Workman (b), Lex Humphries (ds)。フロントのモブレーのテナーとマクリーンのアルトが被る曲は無い。また、ワトキンスとワークマンのベースも被ることは無い。バードのトランペットにサックス、ピアノ、ベース、ドラムのクインテット編成が基本。

BNの4048番。ブルーノート・レーベルの割にジャケットが地味で、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で採り上げられることが非常に少ないアルバムである。このアルバムは、ラテン系あり、バラードあり、正統派のバップあり、と演奏スタイルが多彩で、スタイルが変化する中で、バードのトランペットは端正でブリリアント、シンプルで流麗という、とても判り易いもの。この盤でのドナルド・バードは実に魅力的。
 

Byrd_in_flight  

 
突出した個性を併せ持つ訳では無い。テクニックも優秀だが、ブラウニーの様に天才的なものでは無い。マイルスの様な革新性がある訳でも無い。それでも、中音域を中心にメロディックなフレーズを流麗に紡いでいく、適度な音量で伸びやかに唄うブリリアントなトランペットは、とても聴き易く、ジャズ・トランペットの入門には最適な音である。とにかく、聴いていて心地良く、聴いていて楽しい。

また、テナーのモブレーが意外と溌剌としていて健闘している。そして、アルトのマクリーンが絶好調。硬軟自在、緩急自在、抑揚自在なマクリーンのアルトのパフォーマンスは非常に優れたもの。そして、ピアソンのピアノが粋。シンプルではあるが、そこはかとなくファンキーで、コロコロ転がる様なよく回るが、音をよく選んだピアノは、ついつい耳をそばだてたくなる。

収録された曲と演奏のバランスがとても良く、ドナルド・バードのハードバップなトランペットを気軽に楽しむ、という面ではこの盤が一番良い。フロントのパートナーとリズム・セクションに恵まれ、バードはとても心地よさそうにペットを吹き鳴らす。端正でブリリアント、シンプルで流麗なトランペットは、聴いていて、とても「ハードバップ」を感じる。長く付き合う事が出来る隠れ好盤。

 
 

東日本大震災から7年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年6月11日 (月曜日)

バードのブルーノート・デビュー

そう言えば、ドナルド・バード(Donald Byrd)の存在をちょっと忘れていた。今から、40年ほど前、ジャズを聴き始めた頃、ドナルド・バードのアルバム『Fuego』はお気に入りのアルバムだった。特に、ラストの「Amen」は大のお気に入りチューン。このファンキーでゴスペルタッチな名曲&名演は、当時、僕にとっての「ジャズ」だった。

ドナルド・バードはトランペッター。アレンジが巧いとか、作曲が良いとか、トランペッターとは違ったところに評価が集まる、ちょっと気の毒なジャズメンなのだが、実は、トランペッターの実力は超一流なものがある。品良くブリリアントで艶やか、そして堅実。テクニックは優秀、アドリブ・フレーズが小粋で印象的。決して、騒がしくならない。紳士的で真摯なブロウである。

そんなバードのブルノート・レーベルでのデビュー盤が、Donald Byrd『Byrd in Hand』(写真左)。1959年5月31日の録音。BNの4019番。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Charlie Rouse (ts), Pepper Adams (bs), Walter Davis, Jr. (p), Sam Jones (b). Art Taylor (ds)。バード、ラウズ、アダムスのフロント3管のセクステット構成。
 

Byrd_in_hand  

 
フロント3管のバード、ラウズ、アダムスの名を確認するだけで、そして、ウォルター・ジュニア、ジョーンズ、テイラーのリズム・セクションのメンバーを見るだけで、この盤はハードバップの好盤では無いのか、という想像を巡らせることが出来る。そして、冒頭の「Witchcraft」を聴くだけで、この盤はハードバップの上質の好盤だと確信する。

バードのトランペットとペッパー・アダムスのバリトン・サックス(略して「バリサク」)とのユニゾン&ハーモニーが良い。これはファンキー・ジャズの典型であり、ハードバップの肝である。アダムスのバリサクは豪快かつ歌心溢れるもので、バードのトランペットと対照的。アダムスのバリサクはバードのトランペットととても相性が良い。

ブルーノート・レーベルは優秀な若手ジャズメンの登竜門。この盤は、バードのブルーノートでのデビュー盤で、僕は最初、初リーダー作と勘違いしていた。しかし、聴けば内容充実、そして上手すぎる。調べれば、バードは、なんとこの盤以前に既に15枚以上のリーダー作をリリースしている、押しも押されぬ中堅ジャズメン。満を持してのブルーノートでのアルバムのリリース。そんな「満を持した」ドナルド・バードの覇気のあるトランペットが実に頼もしい。

 
 

東日本大震災から7年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年6月 4日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・121

トランペットという楽器は、この楽器の特徴なのだが、思い切り「ハイトーン」が出る楽器である。ハイテンポの曲だったりすると、気合いが入って、このハイトーンを吹きまくり、落ち着いて耳を傾けておれない状態に陥ることがある。それが判っていて構えて聴く分には「ハイトーン」も高度な技術なので、それはそれで楽しみなのだが、リラックスして聴くにはちょっと辛い。

Lee Morgan『Candy』(写真左)。1957年11月の録音と1958年2月の録音のミックス。BNの1590番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Sonny Clark (p), Doug Watkins (b), Art Taylor (ds)。当時、弱冠20歳の鯔背なトランペッター、リー・モーガンのワンホーンの傑作盤である。純粋にトランペット吹きの名演として、この盤は十指に入る名演だろう。

モーガンは、決して気合いが入りすぎて、若しくは、感情をコントロール出来ずに、ハイトーンを連発することは無い。モーガンが奏でるハイトーンは、常に抑制されコントロールされている。ハイトーンばかりでは無い。持ち合わせた凄まじいばかりのテクニック、そのテクニックを良い方向に使って、硬軟自在、緩急自在、自由自在、縦横無尽に、様々な表現を聴かせてくれる。吹きすぎない、歌心優先のトランペット。良い意味で老成したトランペットである。
 

Candy  

 
そういう意味で、この盤は万人に勧めることのできる、ジャズ・トランペットの傑作盤である。この盤でのモーガンのトランペットは力強く優しい。僕のお気に入りの一人、ケニー・クラークのピアノ・トリオをバックに、ワンホーンで朗々とトランペットを吹き上げるモーガンはとても素敵だ。ベース、ドラム共に、職人気質のワトキンスとテイラーで万全。4人(カルテット)一体となった演奏に惚れ惚れする。

3曲目のミュージシャンズ・チューンの「C.T.A.」を除いて、古い歌もののスタンダードで占められている。テーマのメロディも美しく、モーガンの歌心の神髄が聞けるのも嬉しい。この盤でのモーガンは絶好調。トランペットの一発録りにはつきものの「ミストーン」も無く、緩急も強弱も自由自在。日本の演歌でいう、いわゆる『こぶし』を回すような「小粋な節回し」を奏でながら、モーガンは爽快に疾走する。

軽く鼻歌を歌うがごとく、軽やかに、自由に、輝くように、モーガンのペットは唄う。アップテンポの曲も、スローなバラードも見事にこなして素晴らしいの一言。また、バックをつとめるピアノのソニー・クラークも、このアルバムを名盤としている要素の一つ。独特の間と、少しくすんだ、憂いをおびたようなシングル・トーンのクラーク節が、このアルバムをより素晴らしいものにしている。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年6月 2日 (土曜日)

「クリフォードの思い出」の名演

リー・モーガンは天才トランペッターであった。初リーダー作は18歳での作品。テクニックは優秀、演奏スタイルは既に確立されていた。途方も無く巧いトランペッター。しかも、そのテクニックをひけらかすこと無く、良い方向に活かして、スタンダード曲、自作曲を様々な表現を用いて、歌心豊かに聴かせてくれる。

1956年が初リーダー作リリースの年。ハードバップのスタイルがほぼ確立されていた頃。いわゆる「安定の時期」にモーガンは表舞台に立った訳で、モーガンはただただ、ハードバップのスタイルに身を委ねて、テクニックを駆使して、歌心豊かなトランペットを吹くだけで良かった。よって、この時代、モーガンは、ジャズの歴史に影響を与える様な「変革」を旨としたアルバムとは全く無縁であった。

ということで、この時代、モーガンの初期のリーダー作を聴く楽しみは、アルバム収録曲の中で「これ一曲」という秀でた名演を目当てに聴き進める、この一点に尽きると僕は思う。そういう意味で、リーダー作第2弾の『Lee Morgan Sextet, Vol. 2』の「ウィスパー・ノット」がそんな位置づけの秀でた名演の1曲であった。
 

Lee_morgan_vol3  

 
『Lee Morgan Vol. 3』(写真左)。1957年3月24日の録音。BNの1557番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Benny Golson (ts), Gigi Gryce (as, fl), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。モーガンのトランペット、ゴルソンのテナー、グライスのアルトの3管フロントにピアノ・トリオ。セクステット構成である。収録曲は全て、ゴルソンの手になるもの。さしずめ「ゴルソン・トリビュート」盤である。

そんな収録曲で、曲の出来、演奏の出来が白眉なものが、3曲目の「I Remember Clifford」。邦題「クリフォードの思い出」。1956年、交通事故で非業の死を遂げたクリフォード・ブラウン追悼の名曲である。これがまあ、溜息をつきたくなる様な名演なのだ。「ゴルソン・ハーモニー」のアレンジをバックに、モーガンはブリリアントで優しく豊かなトランペットで、情感を込めつつ吹き上げていく。美しい。こんな美しいトランペットの音色はなかなか無い。

決して大向こうを張る様なテクニックをひけらかしている訳では無い。それでもこの名演でのモーガンのトランペットは、とびきりテクニックが豊かで歌心が溢れていることが直ぐ判る。ゴルソンのアレンジ、それを演奏するメンバー、いずれも素晴らしいが、飛び抜けて素晴らしいのが、モーガンのトランペット。モーガン初期の名演と言い切らせていただきたい。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
  

2018年5月29日 (火曜日)

「ウィスパー・ノット」の名演

リー・モーガンの初リーダー作は衝撃だった。弱冠18歳のトランペットとは思えない。凄まじいばかりのテクニック、そのテクニックを良い方向に使って、硬軟自在、緩急自在、自由自在、縦横無尽に、様々な表現を聴かせてくれる。このプレイを聴くだけだと、若さ溢れ溌剌とはしているが、良い意味で老成したプレイである。

『Lee Morgan Sextet, Vol. 2』(写真左)。December 2, 1956年12月2日の録音。BNの1541番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Hank Mobley (ts), Kenny Rodgers (as), Horace Silver (p), Paul Chambers (b), Charlie Persip (ds)。ファースト・アルバムのわずか1ヵ月後に録音されたリーダー第2作。ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオンの強烈なプッシュが感じられる。

アルトがケニー・ロジャースに代わり、テナーのハンク・モブレーが新たに参加している。ベースはポール・チェンバースに、ドラムはチャーリー・パーシップに代わっている。サックス系が2本になったお陰で、やっとリー・モーガンのトランペットとのバランスがとれた様な気がする。モーガンの迫力満点のトランペットには、アルト1本では明らかに弱い。
 

Lee_morgan_sextet_vol2

 
このセクステットの演奏を聴いて、ハンク・モブレーのテナーって、リー・モーガンのトランペットと相性が良いなあ、とふと思う。人見知りのモブレーは、参加メンバーによっては、必要以上に萎縮したり、緊張したりするのだが、この盤では意外と伸び伸びと吹いている。モーガンの迫力あるトランペットとほぼ互角に渡り合い、魅力的なユニゾン&ハーモニーを聴かせてくれる。

ベニー・ゴルソン作の名曲「ウィスパー・ノット」がその好例。ゴルソン・ハーモニーをモーガン、モブレー、ロジャースの3管で魅力的に聴かせてくれる。この冒頭の「ウィスパー・ノット」の出来が突出している。そして、モーガンのミュート・トランペットが実に良い。上手い。やはり、モーガンには天賦の才がある。このミュートの繊細さと表現力は特筆すべきものだ。

冒頭の「ウィスパー・ノット」の出来が突出しているので、2曲目以降の曲が完全に割を食っているんだが、ハードバップらしい、フロント3管による洒落たアンサンブルが魅力だ。やはり、ゴルソンの手になる曲が「ウィスパー・ノット」以外に3曲あって、これらのゴルソン・ハーモニーが実に効果的である。そういう意味で、この盤も典型的なハードバップの好盤だと言える。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年5月28日 (月曜日)

途方も無いトランペッターがいた

リー・モーガンのトランペットは我が国では、地味な存在に甘んじているように思う。どうも、トランペットと言えば「マイルス・デイヴィス」で決まり、という風潮があり、譲って、クリフォード・ブラウン。どうも、トランペットって、日本人ジャズ者の方々って、サックスと比べて、あまり好きなんじゃないかしら、とも思える、裾野の狭さである。

Lee Morgan『Lee Morgan Indeed!』(写真左)。1956年11月4日の録音。BNの1538番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Horace Silver (p), Clarence Sharpe (as), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)。鯔背で小粋でファンキーなモーガンのトランペットを支えるべく集められた、ベテラン・ジャズメンの面々。天才モーガン、弱冠18歳の初リーダー作。

テクニック的にもほぼ完成されていて、後は熟成からくる余裕だけか。素晴らしいトランペット。どう聴いても、18歳の「ガキ」のプレイではない。テクニック的には全く申し分無い。また、それを前面にひけらかす「若さ」も無い。とにかく吹きまくる。ビ・バップなトランペットを基本としつつ、当時、最先端のハードバップ風のロングソロをいとも問題なさげに吹ききっていく。
 

Indeed  

 
とにかく、当時のトラペッターのリーダー作としては、マイルス・デイヴィスを除いてであるが、出色の出来である。天性のテクニックの素晴らしさ、これに尽きる。この素晴らしいテクニックを駆使して、それをひけらかすことなく、テクニックを良い方向に駆使して、硬軟自在、緩急自在、自由自在、縦横無尽に、様々な表現を聴かせてくれる。なんと老成したプレイであることか。

クリフォード・ブラウンのトランペットは、堅実であり優等生であり模範であった。そういう面では、モーガンのトランペットは、鯔背であり、小粋であり、ちょっと不良っぽかった。ソロのブロウの最後の音を「キュウッ」と捻りを入れるところなんぞ、鯔背の最たるところ。どっぷりファンキーなフレーズをバリバリ鯔背に吹くところなんざあ、ちょっと不良っぽくて格好良い。

1956年の録音。演奏の雰囲気としては、まだ「ビ・バップ」の延長線上にあるアドリブ・ソロではあるが、やはり、モーガンのトランペットが突出している。音が多すぎるという指摘もあるが、若さ故、それは仕方の無いことだろう。しかし、モーガンは品が良い。この途方も無いテクニックをひけらかしにかかってはこない。僕はモーガンの「ここ」に惚れる。
 
 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年4月 3日 (火曜日)

ネオ・ハードバップの良い一例

ハードバップが流行したのは1950年代。1960年代前半には、ハードバップが分岐して、アーティスティックなモード奏法や、ポップなファンキー・ジャズやソウル・ジャズに発展。その後、一旦は、クロスオーバー&フュージョン・ジャズに席巻されたが、1980年代後半、純ジャズ復古の大号令と共に、ハードバップが復権。

1980年代後半、マイルスは、若手ミュージシャンの一部が「ハードバップ」の焼き直しに熱中する様を見て、「昔、自分たちがやり尽くしたハードバップを焼き直して何が面白いのか」とその保守性を揶揄した。確かに純ジャズ復古の初期の頃は、ハードバップのコピー、焼き直しな演奏が多く、今の耳で聴けば、確かに保守的やなあ、と感じるものが多かった。

しかし、21世紀に入って、純ジャズ復古でハードバップを知った世代が、若手ジャズメンとして活躍する環境になって、その「ハードバップ」は深化する様になった。アプローチや展開、アレンジ、奏法などに工夫を施し、ハードバップではあるが、新しい「何か」を宿した「ネオ・ハードバップ」な演奏がコンスタントにリリースされる様になった。
 

Walk_the_walk  

 
Eric Siereveld's Organic Quintet『Walk the Walk』(写真左)。2018年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Eric Siereveld (tp), Tony Barba (ts), Jonathan Kreisberg (g), Steve Snyder (hammond b3 organ), Mitch Shiner (ds)。 アルバム・タイトルを見ると、ギターのJonathan Kreisbergをフィーチャーしている。冒頭の「The Last Innovator」から、立派な内容のハードバップな演奏である。

リーダーのトランペッター Eric Siereveldは端正で明朗なブロウで魅了する。本当に素敵に鳴るトランペットだ。演奏のスタイルは明らかに「ハードバップ」。しかし、1950年代のハードバップでは無い。明らかに深化した「ハードバップ」な響きに耳を奪われる。効果的に織り込まれる Jonathan KreisbergのギターとSteve Snyder のオルガン。

ギターとオルガンが織り込まれたからといって、演奏の雰囲気は決して「ファンキー・ジャズ」にならないところが、この盤の演奏の理知的なところ。そんな理知的なハードバップは、21世紀の新しいジャズの響きに満ちている。対峙して聴き込むも良し、何かしながらの「ながら聴き」にも良し。この盤の演奏こそが「ネオ・ハードバップ」の良い一例だろう。

 
 

東日本大震災から7年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年3月28日 (水曜日)

山崎千裕のソロ・セカンド盤

ここ2〜3年の、最近の日本のジャズを聴いている。ジャズって、マイナーな音楽ジャンルだと思っているので、毎月毎月、日本のジャズの世界で、新人が出てくるのにはちょっと当惑する。その新人ジャズメンが食べていけるだけの需要が、今の日本にあるのか、と思わず心配になる。CDの売上やライブの売上、そんなにあるのかなあ。

加えて、このマイナーな音楽ジャンルで、かつ、ほとんどが男性で占められるマニアな音楽ジャンルなのに、数年に一人は「かわい子ちゃん」なミュージシャンがデビューする。これがとっても不思議で、男性で占められるマニアな世界だから、アイドルっぽい女性ジャズ・ミュージシャンはウケる、とレコード会社は考えているのだろうか。

山崎千裕『Sweet thing』(写真左)。2017年の作品になる。アルバム・ジャケットを見てみるとお判りの様に、ピンク地の背景をバックに、これは完全にアイドル路線まっしぐら、である(笑)。これは硬派なジャズ者に方々、特に年配の方々がCDショップで直接購入するにはハードルが高い。僕もそうで、ダウンロードサイトがあって良かったなあ、とつくづく思ったものである(笑)。
 

Sweet_thing  

 
この盤は、山崎千裕のソロセカンドアルバムになる。山崎千裕はトランペッター。東京芸大卒。2010年、自身のバンド山崎千裕+ROUTE14bandを立ち上げ、本格デビュー。女性トランペッターではあるが、音はしっかりしている。当然、音の大きさについては割り引いても、無理をしない演奏テクニックとふらつきの無いブロウは聴き易く、好感が持てる。ん〜、なかなかやるやん、って感じかな。

スタンダード曲を持って来て、従来のモードやコードの純ジャズをやって、ハードバップって良いですね、なんて演奏をせず、自作曲を中心に、演奏全体のアレンジも、ありきたりのハードバップ基調ではない、どちらかといえば、パット・メセニーなどの、ファンクネス皆無のフォーキーでネーチャーな、米国ルーツ・ミュージック的な雰囲気。これが今までにありそうで無い、なかなかユニークなもの。

演奏全体のアレンジと雰囲気が今までに無い、個性豊かなもので、それが故に、インストものが実に聴きやすく印象的に響く。爽快感と暖かみのある音作りは聴き心地が良く、意外と飽きずに全編を聴き通してしまう。春のジャズ喫茶の昼下がりにさりげなく流す、なんてシチュエーションが思い浮かぶ様な、ながら聴きに好適な盤である。

 
 

東日本大震災から7年。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年3月 4日 (日曜日)

粋なモーガンのジャズ・ロック

ジャズ・レーベルの正統派、ジャズ・レーベルの老舗「ブルーノート・レーベル」。ジャズのその時代時代のトレンドをいち早く察知し録音し、後のジャズ・ジャイアンツ達の若かりし頃、その才能をいち早く発掘し録音する。今、残されている音源はジャズの歴史そのものである。

そんなジャズのメインストリーム、老舗レーベルのブルーノートであるが、ファンキー・ジャズやジャズ・ロック、そして、ジャズ・ファンクの宝庫でもあるのだ。ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンからすると「コーニー(corny)だ」とする、いわゆる「俗っぽい」ジャズについてもなかなかに造詣が深いレーベルなのだ。

Lee Morgan『The Gigolo』(写真左)。1965年6月25日、7月1日の録音。ブルーノートの4212番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Harold Mabern (p), Bob Cranshaw (b), Billy Higgins (ds)。1963年録音の『The Sidewinder』からのジャズ・ロックな雰囲気を引き継いだ、とてもグルーヴィーでファンキーな内容が特徴。
 

The_gigolo

 
まず、リーダーのリー・モーガンのトランペットが絶好調。音に覇気が漲り、スーッと良く伸びたトーン。音はキラキラ、ブリリアントに輝き、速いフレーズは切れ味抜群。この頃のモーガンは絶好調。というか、モーガンのトランペットはジャズ・ロックにピッタリと合うのだ。音の溜めとフレーズが基本的に鯔背にオフビートで、人より速いアドリブ展開が8ビートにシックリ合う。

バックのリズム・セクションは、当時の新鋭ジャズメンがメイン。基本的には、硬派なハードバップやモーダルな演奏が出来るテクニックを持ったリズム・セクションが8ビートなジャズ・ロックのリズム&ビートを供給する。ドッシリとした重心の低い、安定感溢れるジャズ・ロックなリズム&ビートがこの盤の特徴。

弱冠18歳でリーダー作を発表した若き天才トランペッター。若さに似合わぬ、鯔背で粋なトランペットが素敵なリー・モーガン。そんなモーガンのトランペットが一番輝くのが「ジャズ・ロック」。この『The Gigolo』は、モーガンのジャズ・ロック盤のイチ押し。タイトルの「ジゴロ」も言い得て妙。「モテ男」モーガンの面目躍如な盤である。

 
 

東日本大震災から6年11ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

2018年3月 1日 (木曜日)

ダウケレン、侮り難しである。

ジャズは「深化」している。「進化」はなかなか難しくなったが、「深化」は確実に進んでいる。今回、このアルバムを聴いて、その感覚を再確認した。Jan Van Duikeren『Jan Van Duikeren's Fingerprint』(写真左)。「ヤン・ヴァン・ダウケレンズ・フィンガープリント」と読む。2011年2月のリリース。

紹介記事を読んでみると、キャンディー・ダルファー、トレインチャ、ザ・ジャズインヴェーダーズ、ニュー・クール・コレクティヴ・ビッグバンド、ジャズ・オーケストラ・オブ・ザ・コンセルトヘボウ、それら全てに参加するオランダ・ジャズ・シーンのファースト・コール・トランペッター「ヤン・ヴァン・ダウケレン」初のリーダー作だそうだ。

確かに「良い」。トランペットの音がとてもポジティヴに、躍動感溢れ、響きまくる。素直ではあるが、ちょっとだけ捻れた「鯔背な」トランペット。現代の「鯔背な」トランペットである。なるほど、このヤン・ヴァン・ダウケレンが、和蘭でファースト・コール・トランペッターだと言われるのが、とても良く判る。
 

Jan_van_duikerens_fingerprint

 
こんなポジティヴなトランペット、確かに欲しいし、一緒にやってみたくなるよな〜。アルバム全体の雰囲気は「現代のファンキー・ジャズ」。これまでのファンキー・フュージョンやジャズ・ファンク、ソウル・ジャズの要素を取り込みながら、全体の雰囲気は、コンテンポラリーでクールな「ファンキー・ジャズ」。

ファンキー・ジャズでありながら、ファンクネスはあっさり目。こってこてなファンクネスとは全く無縁。さすがは欧州は和蘭のジャズである。爽快感抜群、ポジティブで鯔背な「ファンキー・ジャズ」。そして、ずっとダウケレンのトランペットを聴いていて、どこか温和な雰囲気が漂っているところがユニーク。ほど良く抑制が効いている、というか、ポジティヴに「温和」なのだ。

ハードバップなジャズに定盤な雰囲気、所謂「熱気溢れ、汗が飛び散る熱いブロウ」というところが無く、力感はしっかりあるが、どこか温和なトランペットの音が実に面白い。他のトランペッターにはちょっと見当たらない「温和で鯔背な」トランペット。これが以外と癖になり、何度も繰り返し聴くハメに陥っている。ダウケレン、侮り難しである。

 
 

東日本大震災から6年11ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

★Twitterで、松和のマスターが呟く。名称「松和のマスター」でつぶやいております。ユーザー名は「v_matsuwa」。「@v_matsuwa」で検索して下さい。
 

より以前の記事一覧

その他のカテゴリー

AOR | ECMレーベル | jazz | Miles Reimaginedな好盤 | Pops | R&B | rock | SteepleChaseレーベル | The Great Jazz Trio | Yellow Magic Orchestra | こんなアルバムあったんや | ながら聴きのジャズも良い | アキコ・グレース | アダムス=ピューレン4 | アブドゥーラ・イブラヒム | アラウンド・マイルス | アル・ディ・メオラ | アンドリュー・ヒル | アート・ブレイキー | アート・ペッパー | イエス | イスラエル・ジャズ | イタリアン・ジャズ | イタリアン・プログレ | インパルス!レコード | イーグルス | ウィントン・ケリー | ウィントン・マルサリス | ウェイン・ショーター | ウェザー・リポート | ウェス・モンゴメリー | ウエストコースト・ジャズ | エリック・クラプトン | エリック・ドルフィー | エルトン・ジョン | エンリコ・ピエラヌンツィ | オスカー・ピーターソン | オーネット・コールマン | カシオペア | カーラ・ブレイ | キャノンボール&ナット・アダレイ | キャンディド・レーベル | キング・クリムゾン | キース・ジャレット | ギル・エバンス | クインシー・ジョーンズ | クイーン | クリスマスにピッタリの盤 | クロスオーバー・ジャズ | グラント・グリーン | グレイトフル・デッド | ゲイリー・バートン | コンテンポラリーな純ジャズ | サイケデリック・ジャズ | サザンロック | サンタナ | ザ・クルセイダーズ | ザ・バンド | ジャケ買い「海外女性編」 | ジェフ・ベック | ジミ・ヘンドリックス | ジャキー・マクリーン | ジャコ・パストリアス | ジャズ | ジャズの合間の耳休め | ジャズロック | ジャズ・アルト | ジャズ・オルガン | ジャズ・ギター | ジャズ・テナー | ジャズ・トランペット | ジャズ・トロンボーン | ジャズ・ドラム | ジャズ・ピアノ | ジャズ・フルート | ジャズ・ボーカル | ジャズ・レジェンド | ジャズ・ヴァイオリン | ジャズ喫茶で流したい | ジョニ・ミッチェル | ジョン・コルトレーン | ジョン・スコフィールド | ジョン・レノン | ジョージ・ハリソン | ジョー・ヘンダーソン | スタン・ゲッツ | スティング | スティング+ポリス | スティービー・ワンダー | スピリチュアル・ジャズ | セロニアス・モンク | ソウル・ミュージック | ソニー・クラーク | ソニー・ロリンズ | ソロ・ピアノ | タンジェリン・ドリーム | チック・コリア | チューリップ | デイブ・ブルーベック | デイヴィッド・サンボーン | デクスター・ゴードン | デュオ盤 | デューク・ジョーダン | デヴィッド・ボウイ | トミー・フラナガン | トランペットの隠れ名盤 | ドゥービー・ブラザース | ドナルド・バード | ハンプトン・ホーズ | ハービー・ハンコック | バリトン・サックス | パット・メセニー | ビッグバンド・ジャズは楽し | ビル・エバンス | ビートルズ | ビートルズのカヴァー集 | ピアノ・トリオの代表的名盤 | ファンキー・ジャズ | フィル・ウッズ | フェンダー・ローズを愛でる | フュージョン・ジャズの優秀盤 | フリー | フリー・ジャズ | フレディー・ハバード | ブッカー・リトル | ブラッド・メルドー | ブランフォード・マルサリス | ブルース・スプリングスティーン | ブルーノート | ブレッカー・ブラザース | プレスティッジ・レーベル | プログレッシブ・ロックの名盤 | ベーシストのリーダー作 | ホレス・シルバー | ホレス・パーラン | ボサノバ・ジャズ | ボビー・ハッチャーソン | ボブ・ジェームス | ポップス | ポール・サイモン | ポール・マッカートニー | マイケル・ブレッカー | マイルス・デイヴィス | マッコイ・タイナー | マンハッタン・ジャズ・クインテット | ミシェル・ペトルチアーニ | ミルト・ジャクソン | モダン・ジャズ・カルテット | ヤン・ハマー | ラテン・ジャズ | ラリー・カールトン | リトル・フィート | リンダ・ロンシュタット | リー・モーガン | リー・リトナー | レイ・ブライアント | レジェンドなロック盤 | レッド・ガーランド | レッド・ツェッペリン | ロック | ロッド・スチュワート | ローランド・カーク | ヴィーナス・レコード | 上原ひろみ | 北欧ジャズ | 吉田拓郎 | 和ジャズの優れもの | 四人囃子 | 夜の静寂にクールなジャズ | 天文 | 天文関連のジャズ盤ジャケ | 太田裕美 | 寺井尚子 | 尾崎亜美 | 山下達郎 | 山中千尋 | 旅行・地域 | 日本のロック | 日本男子もここまで弾く | 日記・コラム・つぶやき | 映画・テレビ | 書籍・雑誌 | 欧州ジャズ | 歌謡ロック | 渡辺貞夫 | 渡辺香津美 | 米国ルーツ・ロック | 荒井由実・松任谷由実 | 西海岸ロックの優れもの | 趣味 | 青春のかけら達・アーカイブ | 音楽 | 音楽喫茶『松和』の昼下がり | 高中正義 | 70年代のロック | 70年代のJポップ

リンク

  • 松和 / ジャズ・フュージョン館
    ホームページを一新しました。「ジャズ・フュージョン館」と「懐かしの70年代館」の入り口を一本化し、内容的には、当ブログの記事のアーカイブを基本としています。  
  • 松和 / 懐かしの70年代館入口
    更新は停止し、新HPへ一本化中。新しいブラウザーではレイアウトが崩れたりと申し訳ありません。
2018年6月
          1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

カテゴリー

常連さんのブログ

  • 70年代思い出の名曲
    music70sさんのブログ。タイトル通り、定期的に、70年代の懐かしのアルバムを紹介されています。なかなか、マニアックなアルバム選択、曲選択に、思わずニンマリしてしまいます。
  • いそいそジャズ喫茶通い
    yuriko*さんのブログ。都内のジャズ喫茶への訪問記録。ジャズと言えば『ジャズ喫茶』。敷居が高くて、と思っている方々に是非読んで頂きたいブログ。実際の訪問記録ですから読んでいて楽しく、実際の訪問時の参考になります。
無料ブログはココログ