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2018年8月15日 (水曜日)

ソフト&メロウなマンジョーネ

夏の思い出のフュージョン・ジャズ。1980年の夏だったかと思う。このアルバムは良く聴いた。時はフュージョン・ジャズの大ブームの後期。ソフト&メロウなフュージョン・ジャズが売れに売れていた。このアルバムもそう。今思えば、なんでこのアルバムが売れに売れたのか、良く判らないところがあるが、とにかく、このアルバムは、1980年の夏、僕達のヘビロテになっていた。

Chuck Mangione『Fun and Games』(写真左)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Chuck Mangione (flh,el-p), Grant Geissman (g), James Bradley, Jr. (ds,perc), Charles Meeks (b), Bill Reichenbach Jr. (tb),  Chris Vadala (fl,sax)。1977年の『Feels So Good』の大ヒットで一躍、有名ジャズメンの仲間入りをしたマンジョーネの佳作。

まずは冒頭の「Give It All You Got」。邦題は「栄光をめざして~1980ウインター・オリンピックのテーマ」。ABCスポーツで使われた、1980年のレイクプラシッド冬季五輪のテーマソング。当時、フュージョン・ジャズの寵児として有名ジャズメンであったマンジョーネ。ここでも良い演奏しています。特に、彼のトレードマークのフリューゲル・ホーンの音が柔らかくて優しい。
 

Fun_and_games  

 
2曲目以降の楽曲も、どれもが「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの魅力溢れる演奏の数々。今の耳で聴いても、マンジョーネのフリューゲル・ホーンは柔らかで優しく優雅で、AORライクなバック演奏のアレンジと相まって、典型的なソフト&メロウなフュージョン・ジャズを展開している。やはり、この盤をソフト&メロウなフュージョン・ジャズの好盤としているのは、マンジョーネのフリューゲル・ホーン。

クリス・バダラのサックス&フルートも明確に「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの音をしている。しかも、エモーショナルなブロウが心地良く、力感あるダンディズム溢れるテナーとフルートの調べは聴いていて惚れ惚れする。ここにマンジョーネのフリューゲル・ホーンが絡むのだ。何をどう演奏しても「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズに仕上がってしまう。

今ではあまり語られないマンジョーネの『Fun and Games』であるが、どうして、今の耳で聴いても、上質のフュージョン・ジャズで聴き応え十分。マンジョーネ以外、僕としては良く知らないメンバーばかりなんですが、結構、高度で内容のあるバック演奏で、今回、久し振りに聴き返したのですが、いや〜感心しました。しばらく、この盤、バーチャル音楽喫茶『松和』ではヘビロテですね。

 
 

東日本大震災から7年5ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年8月 8日 (水曜日)

この盤も「新しいクールな何か」

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。明らかに「ジャズの進化」だと僕は感じている。

Christian Scott『Stretch Music (Introducing Elena Pinderhughes)』(写真左)もそんな「新しいクールな何か」の一枚である。2015年9月のリリース。この盤も明らかに従来のジャズとは全く異なり、スインギーな横乗りの4ビートや、パルシブでファンキーな8ビートの採用は全く無い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。

この盤の音世界については、他のジャンルの音楽との「融合」がベース。フリー・ジャズから現代音楽の音の要素を取り込みもあつつ、新しい雰囲気のリズム&ビートは、明らかにR&Bからブラコンなど、ブラック・ミュージックのグルーヴ感濃厚。それでいて、ファンクネスは希薄。従来のジャズにあった「粘り」や「黒さ」の要素は見当たらない。スッキリと切れ味の良い、透明度溢れる柔らかなエコーが「拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビート」を増幅する。
 

Stretch_music  

 
とりわけ、クリスチャン・スコットのトランペットの音が素敵である。とても良く鳴り、エッジが丸く、音の芯が「優しい」。それでいて、音の伸びが良くて、ロング・トーンは「スーッ」と伸びる。テクニックは確かで、アドリブ・フレーズの淀みが無い。このトランペットが「新しいクールな何か」なフレーズを印象的に吹き進めていく。

彼の音は「陰鬱で憂鬱が見え隠れする」ダークなテイストが個性とされるが、この盤ではその従来のテイストは明らかに後退している。各曲の音がポジティブで外向的で、アーバンで夜の雰囲気が漂う穏やかなサウンドにどこか仄かな明るさを感じる。エレナ・ピンダーヒューズ(Elena Pinderhughes)のフルートもとても印象的。その他のメンバーについては、僕の知っているメンバーはいない。

それでも、このアルバムを通じて判るのは、この盤のバックバンドって、結構な力量の持ち主ばかりが参加していて、明らかに新しく、高テクニックなバッキングを供給している。そんなバッキングを得て、この盤では、クリスチャン・スコットはとても気持ち良く「新しいクールな何か」を包含した、新しいトランペットのフレーズを聴かせてくれるのだ。

 
 

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2018年8月 7日 (火曜日)

ジャズ・トレンドの分水嶺

1980年代のハードバップ回帰、いわゆる「ネオ・ハードバップ」のムーヴメントを捉えて、帝王マイルスは「昔のジャズを焼き直して、何が面白いのか」とバッサリ切り捨てたのを覚えている。「過去の音楽を再びやるなんて、俺には考えられない。常に自分がクールと思う新しい音を追求する」。この革新性こそ、ジャズなんだな、と心底感心したことを覚えている(俺の音をジャズと呼ぶな、と帝王に怒られそうだが・笑)。

確かに、1980年代の「純ジャズ復古」のムーブメント以来、過去の音のトレンドの焼き直し、深化はあったが、新しいクールな何か、がジャズに現れ出でたか、と問えば、答えは「ノー」。もはや、ジャズは深化はするが進化はしない、のでは無いかと思っていたら、この5年ほど前から、そんな「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

ロバート・グラスパーやカマシ・ワシントンを中心とするムーブメントである。ジャズがメインなんだが、R&B、ロック、ヒップホップ、レゲエ、ブルースまで様々なジャンルを融合、ボイスやノイズを新しいソロ楽器の様に扱い、ボーカルに意味を持たせて「スピリチュアル」な響きを前面に押し出す。そして、一番特徴的なのは「リズム&ビート」の扱い。従来のジャズの基本要素だった「スインギーなオフ・ビート」は全く見向きもせず、最終的にビートを排除。
 

Keyon_harrold_the_mugician  

 
これを僕は「リズム&ビートのモード化」と呼んでいるが、拡がりと緩やかな抑揚をベースとしたビートが特徴。その上に、緩やかで音を選び間を活かした、落ち着いたアドリブ・フレーズが展開される。今までのモダン・ジャズの「正反対」なアプローチの数々。2010年を越えて、やっと「新しいクールな何か」がジャズに現れ出で始めた。

Keyon Harrold『The Mugician』(写真左)。2017年10月のリリース。新世代のジャズ・トランペッター、キーヨン・ハロルドの最新アルバム。いや〜、クールである。まさに、「新しいクールな何か」がこのアルバムに詰まっている。ジャズがベースではあるが、リズム&ビートがジャズでは全く無い。全く新しいクールなリズム&ビート。全く新しい響きのモーダルなトランペット。

従来のジャジーなリズム&ビートからの脱却。新しいクールな響きのモーダルなフレーズ。ジャズではあるが、今までのジャズでは全く無い。ボイスやノイズをもジャズに取り込み、融合する。やっと、ジャズに「新しいクールな何か」が現れ出で始めた。従来のモダン・ジャズと、これからの「ネオ・モダン・ジャズ」。意外と2010年辺りが、ジャズのトレンドの分水嶺になっていくのかも知れない。

 
 

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2018年7月25日 (水曜日)

猛暑には「端正なハードバップ」

湿度が高いのは相変わらずだが、今日はちょっとだけ涼しくなったようだ。太平洋上の発生した台風の影響なのか、東風が吹き抜けるようになった。ここ千葉県北西部地方は、この季節、東風が吹くと涼しくなる。しかし、グッと涼しくはならない。今年の暑さは「半端ない」ので、恐らく、広範囲に空気が暖まっているようだ。

これだけ湿度が高くて暑い夏になると、ジャズを聴くのも辛くなってくる。いきおいアルバムを選ぶことになるのだが、意外とオーソドックスな、趣味が良く聴き易いハードバップ盤が良い塩梅だということに気がついた。そもそも、涼を呼ぶジャズなんて有るわけが無い。基本的にジャズはリズム&ビートが命なので、どうしても熱気をはらむ様になる。

『Art Farmer Quintet Featuring Gigi Gryce』(写真左)。PRLP 7017番。1955年10月21日の録音。ハードバップ期のど真ん中。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Gigi Gryce (as), Duke Jordan (p), Addison Farmer (b), Philly Joe Jones (ds)。魅力的なパーソネル。クインテット構成である。これがまあ、絵に描いた様なハードバップな演奏で、フロントの2管、アート・ファーマーのトランペット、ジジ・グライスのアルト・サックスのユニゾン&ハーモニーが、ほんと、典型的なハードバップの響きなのだ。
 

Art_farmer_quintet_featuring_gigi_g  

 
切れ味良く、音のエッジがちょっと丸まったファーマーのトランペットが実に耳当たりが良い。グライスのアルトは吹き過ぎず、適度にウォームで、これまた実に耳当たりが良い。このフロント2管の音が実に耳に優しく、感性に適度な刺激を与えてくれる。バックのリズム・セクションも良い音を出している。ブルージーな哀愁のピアニスト、デューク・ジョーダンが良い音を出している。

適度にブルージーでアーバンなピアノは、どこか清々しさを感じる。スッキリしたタッチの良い音で、破綻の無いバッキングは聴いていてスッとする。ダイナミックでメリハリの良いドラミングは、フィリージョー。適度に「ビート」という刺激を供給してくれる。鮮度の良いドラミング。そして、ベースのアディソン・ファーマーは、リーダーのトランペッター、アート・ファーマーの双子の兄弟。堅実なベースは演奏の屋台骨を支える。安心感を感じる安定のベースライン。

典型的なハードバップな演奏、しかも、破綻無く端正な展開は、苛つくことの無い、安定の音世界を供給してくれる。端正でメリハリの効いたハードバップな演奏はどこか涼を感じ、一時、今年の猛暑を忘れさせてくれる。やはり、猛暑にはオーソドックスな、趣味が良く聴き易いハードバップ盤が良い。ちなみに、アディソンは、この盤の録音の8年後、1963年2月、SADS(突然不整脈死症候群)にて逝去。享年34歳であった。

 
 

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2018年7月20日 (金曜日)

こんなアルバムあったんや・100

1970年代から、1980年代半ばの「純ジャズ復古」まで、フュージョン・ジャズの全盛の時代。さぞかし米国では、純ジャズは形見が狭かっただろう、と想像するのだが、意外と内容充実、演奏充実の盤が多い。しかし、当時のジャズのメインでは無いので、ジャケットは奇天烈なものが多く、気恥ずかしい手抜きなものが多い。これでは触手は伸びない。最近、やっとダウンロード・サイトから試聴することが出来る様になったので、結構、聴く機会が多くなった。

Bobby Shew『Class Reunion』(写真)。Sutraレーベルからリリースした1980年のアルバム。ちなみにパーソネルは、Bobby Shew (tp, flgh), Gordon Brisker (ts, fl), Bill Mays (p, Fender Rhodes), Bob Magnusson (b), Steve Schaeffer (ds)。フュージョン全盛の1980年の米国のハードバップなアルバムなので、サイドメンについては、どの楽器も知らない人ばかり。

大丈夫なのか、と思いつつ、恐る恐る聴き始めると、あらまあ、本格的なハードバップ。1950年代のハードバップから1960年代のファンキージャズ辺りをミックスして、アドリブはモードな展開を欠かさず、決してポップスに迎合せず、安易に聴き易さ、判り易さを優先するような「拙速型」の内容では決して無い。誠実に堅実にメインストリーム・ジャズを展開しているところに好感度Maxである。
 

Class_reunion_1

 
ボビー・シューは、Woody HermanやBuddy Rich等のコンボでも活躍した、米国出身のトランペッター。1941年生まれだから、今年77歳になる大ベテラン。1941年というちょっと微妙な生まれなので、ビ・バップからハードバップの全盛期は経験していない。恐らく、ジャズ・トランペッターとして活躍し始めた頃は、ジャズが段々に他のジャンルの音楽にシェアを奪われていった頃で、単独ではもはや目立たなかったのでは無いか。

それでも、ボビー・シューのトランペット、そしてフリューゲル・ホーンは魅力的。トランペットは音の切れ味が良く、伸び・抜けとも優秀。フリューゲル・ホーンは、その丸い音でジェントルに流麗に吹き進めるフレーズは実に聴き応えがある。こんなトランペッターがいたんや、と思わずビックリである。

フリューゲル・ホーンの音がほのぼのしていて、テクニックも優秀。この盤でのボビー・シューのフリューゲル・ホーンは聴きものである。演奏全体もタイトでメリハリが付いていて、聴き応えがある。なかなかに聴き応えのあるハードバップ盤である。しかしなあ、僕はこのアルバムの存在を最近まで知らなかった。本当にジャズは奥が深い。

 
 

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2018年7月19日 (木曜日)

アーティスティックな電化ジャズ

1970年代後半から本格的にジャズを聴き始めた僕にとって、CTIレーベルはとっても思い出深いレーベルである。CTIは1967年、プロデューサーのクリード・テイラーによって創設されたジャズ・レーベル。クロスオーバー・ジャズの老舗レーベルで、僕が聴き始めた頃は、1970年代後半、フュージョン・ジャズの大ブームの最中であった。

CTIレーベルの音は厳密に言うと、フュージョン・ジャズでは無い。ほとんどのアルバムの音はクロスオーバー・ジャズで括られると思う。特に、ジャズとロックの融合、ジャズの電化について優れたアルバムが多い。クロスオーバー・ジャズの老舗レーベルでありながら、フレーズや展開は従来のハードバップ、演奏はエレ楽器中心、そんな新旧ハイブリッドな盤に優れたものが多い。

Freddie Hubbard & Stanley Turrentineの『In Concert Volume One』(写真左)と『In Concert Volume Two』(写真右)。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (key), Eric Gale (g), Ron Carter (b), Jack DeJohnette (ds)。1973年3月3日、シカゴの Opera Houseと1973年3月4日、デトロイトの Ford Auditorium でのライブ録音になる。
 

In_concert_volume_one_two  

 
この2枚のライブ盤がそんな「新旧ハイブリッドな盤」の好例になる。パーソネルを見れば、このライブ盤は、こってこて正統なハードバップからモード・ジャズをやるんではないか、と思ってしまう位の錚々たるメンバーである。エリック・ゲイルの存在だけが違和感があって、聴く前に「ありゃ〜」となる(笑)。

演奏内容はと言えば、演奏の内容、コンセプトは思いっきりハードバップ〜モード・ジャズである。それを電化された楽器でやる。しかし、楽器が電化されているとはいえ、この今ではそれぞれが、ジャズ・レジェンドと呼ばれるメンバーである、しっかりとメインストリーム・ジャズしている。電化されているからといって、決して、ポップに迎合していないし、決して俗っぽくなっていない。

電化されたジャズとはいえ、結構、アーティスティックなメインストリーム・ジャズである。CTIレーベルにはこれがあるから面白い。アルバムを聴き進めていくと、面白い発見が続々出てくる。このお洒落で硬派な電化されたモード・ジャズは、今の耳で聴くと意外と新鮮に響いて、思わず「おっ」と短い歓声を上げてしまう。やはりこのメンバーは、電化ジャズをやっても隅に置けない。

 
 

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2018年7月 3日 (火曜日)

程良く抑制されたハバードです

フュージョン・ジャズ系のアルバムが続いた。もともと、日本ではフュージョン・ジャズは1970年代後半から1980年代前半に咲いた「あだ花」的扱いを受けていて、ベテランの評論家の方々からは「あれは悪い夢だった」なんて言われる。なんとも無責任な話である。当時は皆さん「純ジャズはもう古い」だったのだが・・・。

と言う訳では無いのだが、メインストリーム・ジャズに戻る。最近、フレディ・ハバード(Freddie Hubbard)のアルバム、それもブルーノート時代のアルバムを聴き直している。それというのも、ブルーノート時代のハバードのアルバムと言えば、ジャズ盤紹介本の扱いが大体が初ソロ盤の『Open Sesame』以上、なのだ。そうだったかしら、と思いながらの聴き直しなのである。

う〜ん、確かにそうかも。ソロ・デビュー以降、ブルーノート時代のハバードは、他のジャズ者の大多数の皆さんが指摘している通り、テクニックはとびきり優秀なのに「吹きすぎる」「目立ちすぎる」トランペットである。ハバードのトランペット1本がフロントだと「とにかく吹きまくる」。他の管を入れると、負けじと「吹きまくり、目立ちまくる」。グループ・サウンドとしてのバランスに著しく欠け、耳に五月蠅い。
 

Ready_for_freddie

 
ブルーノートの総帥アルフレッド・ライオンも苦労したと見えて、如何にハバードの暴走トランペットを落ち着けるか、に腐心した苦労の跡がブルーノートのハバードの諸作に現れている。そんな諸作の中でも、1961年8月録音の『Ready for Freddie』(写真左)は、思わず、その思惑と苦心の跡にニンマリしてしまうパーソネルであり、内容なのだ。 

まずパーソネルを見ると、Freddie Hubbard (tp), Bernard McKinney (euphonium), Wayne Shorter (ts), McCoy Tyner (p), Art Davis (b), Elvin Jones (ds)。珍しい楽器ユーホニウムが入っている。ホンワカした柔らかく丸みのある音色。このユーホニウムを暴走トランペットのハバードと娶せて、ハバードの暴走を抑止し、落ち着かせる作戦、とみた。

これが、意外と成功している。ハバードはユーホニウムの音色に対比する様に、上手くユニゾン&ハーモニーを奏で、程良く抑制の効いたトランペットを聴かせてくれる。加えて、程良く抑制されたハバードのトランペットは、ウェイン・ショーターのテナーにピッタリ合う。ユーホニウム効果で、この『Ready for Freddie』では、ブルーノートの諸作の中で、唯一、少しだけ抑制が効いている。なかなかの聴きものである。

 
 

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2018年6月29日 (金曜日)

この季節にピッタリの爽快感

1970年代後半、ジャズを聴き始めた訳だが、硬派なジャズ者は「純ジャズ」がメイン。当時、キワモノとされたクロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズなど以ての外で、口が滑って「クロスオーバー・ジャズやフュージョン・ジャズが好き」などと言おうものなら、硬派なジャズ者の方々からボッコボコに反論された。しかし、である。

Donald Byrd『Places & Spaces』(写真左)。1975年のリリース。ビ・バップ時代から活躍してきたドナルド・バードが、43歳の時にリリースした、クロスオーバー・ジャズなアルバムである。ビ・バップ〜ハード・バップ時代に活躍してきたトランペッターが、ファンクネス豊かなクロスオーバー・ジャズに大変身。当時は、日和ったとか、寝返ったとか、散々、叩かれた様である。

じっくり聴けば、この盤が俗っぽくて聴くに値しない、軟弱なジャズ盤だという評価は当たらない、ということが良く判る。とても爽やかで躍動感のあるアレンジの下で、活き活きとしたバードのトランペットが響き渡る。ビートは8ビート、ラリー・マイゼルの高揚感たっぷりのサウンドがメイン。“Sky High Production”という形容がピッタリの爽やかファンキーなフュージョン盤。
 

Places_and_spaces

 
この盤はブルーノートからのリリース。これまた驚きだった。ブルーノートと言えば、正統な「純ジャズ」がメイン。が、1970年代のブルーノート盤は、後のクラブ・シーンでサンプリングのネタ元として大いに活用される、ファンクネス豊かな、ビートの効いたジャズ・ファンクな内容のものを多くリリースしている。ドナルド・バードはいち早く、このファンクネス豊かな、ビートの効いたジャズ・ファンク〜クロスオーバー・ジャズに鞍替えし、成功を収めている。

日本では「キワモノ」扱いされて、この様なジャズ・ファンクな盤は徹底的に排除されたように記憶している。しかし、聴けば判るのだが、チャック・レイニーとハーヴィー・メイソンのリズム隊がドライブ感抜群にビートを繰り出し、フロントのバードのトランペットが乱舞する。なかなかの内容のクロスオーバー・ファンクなのだ。

聴かず嫌いは良く無い。メロディアスで爽快感抜群、ファンクネス豊かでパンチの効いた8ビート。芳しいメロディと清々しいフレーズ。大人のクロスオーバー・ジャズ。青空に浮かぶ飛行機と雲の動きをコマ落としでとらえたジャケットも爽快で、アルバムの中身の内容を如実に表している。この季節にピッタリの爽快感がとても心地良い。

 
 

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2018年6月20日 (水曜日)

ベテランの魅力的なフロント2管

最近のジャズの新作を見ていると、ベテラン陣の活躍が目に付く。大ベテランが相次いで鬼籍に入る中、50歳〜60歳辺りのベテランのリーダー作が結構出てきている。若手のニュー・ジャズも聴いていて楽しいが、ベテラン陣のモーダルなジャズやネオ・ハードバップな演奏を聴くのも楽しい。

Joe Lovano & Dave Douglas Sound Prints『Scandal』(写真左)。今年2018年4月のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Lovano (sax),  (tp), Lawrence Fields (p), Linda May Han Oh (b), Joey Baron (ds)。ベテランと中堅がガッチリ組んだ、魅力的なクインテット構成。聴けば判るが、中堅中心のリズム・セクションは結構強力。

ジョー・ロヴァーノとデイヴ・ダグラスによるグループ、サウンド・プリンツによる初のスタジオ・アルバム。「サウンド・プリントの特徴は、フロントラインの絡まったクロストークにある」の評価の通り、ベテラン二人のサックスとトランペット、フロント2管の多彩なパフォーマンスが、とても良い効果を生み出している。
 

Sound_prints  

 
ウェイン・ショーターにインスパイアされ生まれた作品とされる。バンド名もショーターの楽曲「Footprints」に由来している。硬軟自在、変幻自在の硬派でバイタルなモード・ジャズが展開される。21世紀の新しい響きのする、「ネオ・モード・ジャズ」とでも名付けたい、現代の先端を行く先進的な展開である。

我が国において、知名度の割に人気が低いロバーノ、知名度自体が低いダグラス。しかし、この新作での演奏は特筆に値する。何故この二人について、我が国で人気が出ないのか、不思議でならない。豪放磊落、武骨で骨太なテナーとピリッとドライで渋いトランペットとの絡み、ユニゾン&ハーモニーは、他に無いのでは、と思う。

しかし、このジャケット・デザインは無いよな。余りに手間をかけなさすぎる。これでは内容のあるこの盤の演奏が可哀相。reenleaf Musicというレーベルらしいが、ジャズメンと演奏に関して、リスペクトがなさ過ぎ。ただ、このチープなジャケット・デザインに惑わされてはならない。聴けば判る。なかなかの内容の聴き応えのある好盤です。

 
 

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2018年6月12日 (火曜日)

長く付き合う事が出来る好盤

思い出した様に、ドナルド・バード(Donald Byrd)を聴いている。ドナルド・バードは息の長いトランペッターだった。リーダー作のデビューは1955年。ラストは1991年。約40年余り、ジャズの第一線で活躍していたことになる。ハードバップから始まり、ファンキー・ジャズからソウル・ジャズと、その時期その時期のジャズの流行の演奏スタイルを渡り歩いたことからも、応用力、適応力も抜きんでたものがあった。

今日の選盤は、Donald Byrd『Byrd in Flight』(写真左)。1960年1月と7月の録音。ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Jackie McLean (as), Hank Mobley (ts), Duke Pearson (p), Doug Watkins, Reggie Workman (b), Lex Humphries (ds)。フロントのモブレーのテナーとマクリーンのアルトが被る曲は無い。また、ワトキンスとワークマンのベースも被ることは無い。バードのトランペットにサックス、ピアノ、ベース、ドラムのクインテット編成が基本。

BNの4048番。ブルーノート・レーベルの割にジャケットが地味で、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で採り上げられることが非常に少ないアルバムである。このアルバムは、ラテン系あり、バラードあり、正統派のバップあり、と演奏スタイルが多彩で、スタイルが変化する中で、バードのトランペットは端正でブリリアント、シンプルで流麗という、とても判り易いもの。この盤でのドナルド・バードは実に魅力的。
 

Byrd_in_flight  

 
突出した個性を併せ持つ訳では無い。テクニックも優秀だが、ブラウニーの様に天才的なものでは無い。マイルスの様な革新性がある訳でも無い。それでも、中音域を中心にメロディックなフレーズを流麗に紡いでいく、適度な音量で伸びやかに唄うブリリアントなトランペットは、とても聴き易く、ジャズ・トランペットの入門には最適な音である。とにかく、聴いていて心地良く、聴いていて楽しい。

また、テナーのモブレーが意外と溌剌としていて健闘している。そして、アルトのマクリーンが絶好調。硬軟自在、緩急自在、抑揚自在なマクリーンのアルトのパフォーマンスは非常に優れたもの。そして、ピアソンのピアノが粋。シンプルではあるが、そこはかとなくファンキーで、コロコロ転がる様なよく回るが、音をよく選んだピアノは、ついつい耳をそばだてたくなる。

収録された曲と演奏のバランスがとても良く、ドナルド・バードのハードバップなトランペットを気軽に楽しむ、という面ではこの盤が一番良い。フロントのパートナーとリズム・セクションに恵まれ、バードはとても心地よさそうにペットを吹き鳴らす。端正でブリリアント、シンプルで流麗なトランペットは、聴いていて、とても「ハードバップ」を感じる。長く付き合う事が出来る隠れ好盤。

 
 

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