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2017年2月20日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・101

外ではちょっと強めではあるが、暖かい雨が降っている。温かい雨。いよいよ春が近づいてきたなあ、という実感が嬉しい。今年の冬は寒かったからね。こういう暖かいワクワクする雨の日には、ポジティブな、切れ味の良いハードバップ、ストレートアヘッドなジャズ盤が良い。

この盤の存在を知った時、やはり老舗のジャズ喫茶のマスターは隅に置けないなあと思った。とてもブリリアントに気持ち良く鳴る、切れ味の良いトランペット。小気味良く躍動感のあるリズム・セクション。そのトランペットのリーダーの名を聞いて、どっかで聞いた名前なんだが、と首を捻ったのが2年前。

Charles Tolliver『The Ringer』(写真左)。1969年6月の録音。ちなみにパーソネルは、Charles Tolliver (tp), Stanley Cowell (p), Steve Novosel (b), Jimmy Hopps (ds)。盟友カウエルらとのカルテット編成。そうか、ピアノはカウエルか。どうりで、モーダルな響きがすると思った。
 

The_ringer

 
この盤、とにかくトリバーのトラペットが素敵。とっても良く鳴るトランペットで、実にクリアな響きなのだ。こんなに伸びの良い、気持ち良く鳴るトランペットは他にありそうで無い。全編、気持ち良く鳴って格好良い。こういうシンプルに素敵なトランペットはなかなか無い。

カウエルのピアノも素敵だ。聴けば判るが、当時として明らかに新しい音がする。ハードバップなピアノ・フレーズとは確実に一線を画する、モーダルで個性的な和音の重ね方がユニークだ。そんな新しいストレートアヘッドなフレーズがバックに鳴り響く。このバックのリズム・セクションの音だけでも「聴きもの」だ。

こういうアルバムを、ヒョコッと紹介してくれるのだから、老舗のジャズ喫茶のマスターは隅に置けない。いや〜、勉強になりました。そう、チャールズ・トリバーって、ジャッキー・マクリーンのグループへの参加でデビューを果たしていて、ブルーノートにその演奏を残していたことを思い出しました。他のアルバムも早速聴いてみようと思います。

 
 

震災から5年11ヶ月。決して忘れない。まだ5年11ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年2月 3日 (金曜日)

ながら聴きのジャズも良い・16

ジャズ・トラペッターって、何故か「ラテン・ジャズ」をやりたがる。常にではないのだが、ジャズ・トランペッターとして、第一線で活躍している間、どこかで必ず「ラテン・ジャズ」をやる。トランペットという楽器が「ラテン音楽」にフィットする、という感覚があるんだろう。

ジャズ・トランペッターで「ラテン・ジャズ」をやりたがる代表格が「ディジー・ガレスピー」。お祭り男と呼ばれるほど、ライブでその真価を発揮する。そして、ライブでよくやる演奏が「ラテン・ジャズ」。ハイノートをバッチリ決めながら、ラテンのリズムに乗って、バリバリに吹きまくる。ラテン・ジャズはダンサフル。

逆に僕はこのトランペッターがラテン・ジャズに手を染めるとは思わなかった。そのトランペッターとは「Brian Lynch(ブライアン・リンチ)」。1956年イリノイ州生まれ。今年で61歳になる。現在ニューヨークで活躍するジャズ・トランペット奏者。端正で流麗でメロディックなアドリブ・ソロが個性。音はふくよかで切れ味が良い。非常にアーティスティックなトランペットを吹く。

Brian Lynch『Madera Latino : A Latin Jazz Interpretation on the Music of Woody Shaw』(写真左)。そんなリンチが「ラテン・ジャズ」に手を染める。昨年のリリースになる。ウディ・ショウの音楽のラテン・ジャズ的解釈、とでも訳せば良いか。リズムと旋律は「ラテン音楽」。演奏スタイルは正統派、メインストリーム路線のモーダルな演奏。
 

Madera_latino

 
とってもアーティスティックな香りのする「ラテン・ジャズ」。ラテン・ジャズと聞くと、思わず「俗っぽい」コッテコテなラテンチックなリズムと旋律を思い浮かべる。聴いていて、ちょっと気恥ずかしくなる、あからさまにラテンチックな旋律とリズム。しかし、このブライアン・リンチのラテン・ジャズは違う。とってもアーティスティックな、とってもメインストリーム・ジャズな響きと旋律が特徴。

全11曲、トータル1時間50分と、結構なボリュームのアルバムなんだが、聴いていて意外と疲れないし飽きない。このアーティスティックな雰囲気を宿した、ということろが、聴き疲れと聴き飽きを防止している。しかし、これだけ生真面目にアーティスティックな側面を追求したラテン・ジャズを僕は他に知らない。

基本はラテン・ジャズなので、演奏される旋律は「馴染みやすく躍動感のある明るい雰囲気」。聴いていてしっかりとメロディ・ラインは追えるし、リズミカルなリズム&ビートは、しっかりと心にポジティブに響く。

意外と「ながら聴き」に適した「ラテン・ジャズ」である。しかし、結構、難しい高度なこと、やってるんですけどね。そう思わせないところが、リンチのトランペットの優れたところである。「ながら聴き」のヘビロテ盤。異色と言えば異色の盤ではあるが、意外とメインストリームな演奏がこれまた「好感触」。好盤です。

 
 

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2017年1月18日 (水曜日)

ジックリと聴き耳を立てる盤

パット・メセニー・グループ(Pat Metheny Group=PMGと略)に、専門のトランペッターが参入したのが、1995年リリースのアルバム『We Live Here』で、Mark Ledfordであった。このトランペットの参入は、PMGの音世界の彩りをワンステップ拡げた。ちょっとジャズっぽくなった。

そして、2002年リリースの『Speaking of Now』から、専門のトランペッターは、Cuong Vu(クオン・ヴー)に交代した。このクオン・ヴーが当たりで、PMGの音世界にピッタリな音色と音の拡がりに、初めて聴いた時はちょっと驚いた。パットのギターシンセとのユニゾン&ハーモニーが素晴らしい。PMGの唯一無二な音世界である。

そんなクオン・ヴーがリーダーとなってトリオを結成、そこに親分のパット・メセニーがギターで参加する、という、それって実はPMGとちゃうん、みたいなアルバムが出た。『Cuong Vu Trio Meets Pat Metheny』(写真左)である。昨年の5月のリリース。ちなみにパーソネルは、Cuong Vu (tp), Stomu Takeishi (b), Ted Poor (ds), Pat Metheny (g)。

それって実はPMGとちゃうん、と思っていた『Cuong Vu Trio Meets Pat Metheny』であるが、パーソネルを見て気が変わった。これは第2のPMGを狙った盤では無い。まず、PMGの音の要であるライル・メイズに該当するキーボードが無い。とすれば、PMG十八番のフォーキーでネイチャーなフュージョン・ジャズは期待薄である。
 

Cuong_vu_trio_meets_pm

 
そもそもクオン・ヴー・トリオからして、トランペット+ベース+ドラムのピアノレス・トリオ。フロント楽器(ここではトランペット)がリーダーでのピアノレス・トリオの主な目的は「限りなく自由度が高い」ということ。心情の趣くままに限りなく自由にフロント楽器を吹きまくりたい。そういう欲求が前面に押し出たのがピアノレス・トリオ。

そんな「限りなく自由度の高い」ピアノレス・トリオにパットがギターで参入する。ということは、PMGな音世界では無く、パット個人な音世界が狙いとなるだろう。そう、このアルバムは「限りなく自由度の高い」メインストリーム・ジャズである。部分的にはフリー・ジャズと言い切ってよいだろう自由でアブストラクトなアドリブ・フレーズが宙を舞う。

録音テクニックが優れていることもあって、4人編成の演奏ではあるが、音がとても厚い。フロント楽器がトランペットとギターであるが、音がとても厚くて豊か。この盤は、現代の硬派なメインストリーム・ジャズとして聴いた方が良い。戸惑うこと無く、この盤の素晴らしい演奏を堪能出来る。逆に、PMGな音世界を前提とすると、まず戸惑うだろう。

現代のメインストリーム・ジャズの好盤です。決して甘くは無い、どちらかと言えば硬派でシリアスな内容で、聴き流しなどには合いませんね。ある程度のボリュームで、良好なステレオ装置に相対して、ジックリと聴き耳を立てて聴き込むタイプのアルバムだと思います。

 
 

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2016年12月18日 (日曜日)

ジャズ喫茶で流したい・96

ジャズ・トランペットの「隠れ好盤」を聴き直している。このアルバムは、意外とジャズ盤の紹介本には載らない。けど、ジャズ者中堅からベテランの方々は、この盤の渋さを良く知っている。

Kenny Dorham『Matador』(写真左)。1962年4月の録音。パーソネルは、Kenny Dorham (tp), Jackie McLean (as), Bobby Timmons (p), Teddy Smith (b), J.C. Moses (ds)。リーダーのドーハム、アルトのマクリーン、フロントの2人は強力。この二人のバックに、ピアノのティモンズは珍しい。ベースとドラムの二人は玄人好み。

この幾何学模様の様なジャケットがちょっと問題なのかも知れない。ジャズ臭が希薄なのだ。恐らく、ジャズ者初心者の方々は、なかなか触手が伸びないだろう。まさか、この盤が、なかなかのハードバップな内容だとは、なかなか聴く前は想像できない。

オープニングのエキゾティックな5拍子の「El Matador」が良い。これを聴けば、もうこの盤の内容は保証されたも同然。アルバム全体に漂うスパニッシュ・ムードが心地良い。この盤でのドーハムは吹けている。ドーハムはアルバムによってバラツキがあるんだが、この盤は良い、吹けている。
 

Matador

 
聴いていて清々しい気持ちになる。どこを取っても、どこを聴いてもハードバップ。1962年、時はハードバップ成熟期を経て、ボサノバ・ジャズやファンキー・ジャズが、そして、最新鋭のジャズとして、モード・ジャズが流行りだした頃。そんな時代に、このアルバムは、思いっきり成熟したハードバップを聴かせてくれる。

マクリーンも好調だ。モード・ジャズにも果敢にチャレンジしていたマクリーンだが、この盤のブロウを聴くと、やはり、マクリーンにはハードバップが良く似合う。でも、よく聴くと、意外とところどころにモーダルに吹きまくるマクリーンがいたりして、これはこれでなかなか面白い。ジャズは生きている、ジャズは進化しているなあ、と感じます。

この盤はどうもジャケットで損をしている。どう見たってハードバップな感じがしないもんなあ。よって、ジャズ紹介本にもなかなか載らない。見栄えがせんもんなあ。以前より、ジャズ喫茶で良く聴かれる隠れ好盤だ、と聞かされてきましたが、至極納得です。しかし、思い切って手を出して聴けば、「当たり」な内容に思わず、感嘆の声を上げてしまいます(笑)。

 
 

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2016年12月13日 (火曜日)

鯔背なリー・モーガンを堪能する

ジャズ・トランペットの「隠れ好盤」を聴き直している。ジャズ・トランペットの通な選択の一つは「リー・モーガン(Lee Morgan)」。僕は彼のトランペットを「鯔背なトランペット」として、長年愛聴している。僕は、彼のライブ盤が殊の外お気に入り。

Lee Morgan『Live at The Lighthouse』(写真左)。1970年7月10〜12日、カリフォルニアのHermosa Beachにある「Lighthouse Café」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp, flh), Bennie Maupin (ts, fl, b-cl), Harold Mabern (p), Jymie Merritt (el-b), Mickey Roker (ds)。5曲目の「Speedball」のみJack DeJohnette (ds)。

リーダーのリー・モーガンのトランペットとベニー・モウピンのテナーの2管クインテット。1961年である。音の雰囲気は「モード・ジャズ」。限りなくフリーに、時にアブストラクトに吹きまくるモーガンとモウピン。モーガンの「鯔背で端正」なトランペットと自由度の高い「うねる」テナーのモウピン。自由に疾走するフロントの二人。

バックのピアノ・トリオも良い音出している。特に、多弁なピアニスト、ハロルド・メイバーンの流麗な多弁フレーズが印象的。バリバリに弾きまくるメイバーン、アップライトのエレベをブンブン、ウネウネ響かせて、しっかりと演奏のビートを押さえるメリット。そして、モーダルで多彩なドラミング、職人技が冴えるローカー。それぞれのジャズメンの演奏レベルが高くて、聴いていて爽快。
 

Lee_morgan_live_at_the_lighthouse

 
当初,Blue Note から2枚組LP、全4曲でリリースされましたが、僕が聴いたのは、CD3枚組、全13曲のボックス盤。さすが13曲もあるので、かなり聴き応えがある。しかも、このライトハウスでのライブ、モーガンが絶好調。トランペットをブリブリ響かせながら吹きまくる。どの曲も演奏時間が10分以上と長いが、決して飽きることは無い。

初期の頃の若々しく溌剌としたモーガンも良いが、余裕をかましながら鯔背にブリブリ吹きまくる「大人になった」モーガンも良い。このライブ盤でのプレイは、モーガン晩年のベストプレイのひとつと言って良い。とにかく、キラキラ煌めく様に、ポジティブで爽快なアドリブ・フレーズを吹きまくるモーガンは、とにかく「格好良い」。

しかし、構造上、長時間のソロが苦手なトランペットという楽器で、アドリブ・ソロを相当時間、吹きまくるモーガンの馬力とテクニックには驚愕する。トランペットを吹く、というテクニックが優れていないと、トランペットは長時間吹くとかなり疲れて、音程が「撚れる」。しかし、モーガンのトランペットは決して「撚れる」ことは無い。

良いライブ盤です。CD3枚、トータルで約3時間弱の長尺ライブですが、決して、聴き飽きることはありません。リー・モーガンの真髄を感じることが出来る、凄まじい内容のライブ盤です。ジャズ・トランペット者の方々は必聴です。

 
 

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2016年12月10日 (土曜日)

ブッカー・リトルのラスト盤

今、聴き直しを進めているトランペッターが、ブッカー・リトル(Booker Little)である。1938年生まれの1961年没。なんと23歳にて早逝。1958年の初リーダー作、1961年没だから、活躍したのはたった3年。それでも、彼のトランペットのスタイルはジャズの歴史上で重要。

Booker Little『Booker Little And Friend』(写真左)。1961年の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little (tp), Julian Priester (tb), George Coleman (ts), Don Friedman (p), Reggie Workman (b), Pete LaRoca (ds)。ベツレヘム・レーベルからのリリース。ジャケット・デザインもなかなかジャジーで良い感じだ。

ブッカー・リトルの死の数週間前にレコーディングされたもの。パーソネルを見渡せば、何と無く想像できるのだが、かなり新しい感覚のハードバップである。1961年なので、まだバリバリ「モード・ジャズ」まではいかない。が、明らかに、ハードバップの成熟型、というか、そのすぐ先に「モード・ジャズ」を見据えた、当時としては最先端の自由度の高いハードバップであろう。
 

Booker_little_and_friend

 
アルバム全体の完成度も高い。アレンジも良く考えられたものであり、それぞれの新進気鋭のサイドメンの演奏力も高い。そんな中、やはり、リーダーのブッカー・リトルのトランペットが突出している。また、6曲を占めるブッカー・リトルのオリジナル曲の出来もかなり良い。インテリジェンス溢れるリトルの楽曲はハードバップの枠を超えている。

このアルバムのレコーディングの後、1961年10月、わずか23歳で尿毒症により帰らぬ人となった。このアルバムの完成度、このアルバムでのブッカー・リトルのブロウと感じてみて、もし、ブッカー・リトルが生きていたら、このアルバム以降、どんなアルバムを創り出していったのか、を想像すると、この余りに早すぎる死は実に惜しい。

「クリフォード・ブラウン」のスタイルをベースに、バランスの取れた、柔和で少しエッジの丸いフレージング。ブッカー・リトルのプレイ・スタイルは、このアルバムで完成されている。この時点で23歳であったというのが、信じられないほどの完成度である。だからこそ、彼の早逝には「無念」の想いがする。聴いてその完成度に感嘆し、やがて悲しき好盤である。

 
 

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2016年12月 7日 (水曜日)

ブッカー・リトルを再び体感する

最近、トランペットのジャズ盤を聴き直している。と言って、マイルスなどの超有名どころというよりは、ちょっとマニアックな、中堅どころのトランペッターのリーダー作を漁って、聴き直している。

漁っていて、実はこのトランペッターのリーダー作を久しく聴いていないことが判明した。ブッカー・リトル(Booker Little)である。1938年生まれの1961年没。なんと23歳にて早逝。1958年の初リーダー作、1961年没だから、活躍したのはたった3年。それでも、彼のトランペットのスタイルはジャズの歴史上で重要。

ブッカー・リトルのスタイルは、明らかに「クリフォード・ブラウン」をルーツにしている。「クリフォード・ブラウン」のスタイルをベースに、バランスの取れた柔和なフレージングが特徴。流麗なテクニックではあるが、それをひけらかすことは無い。円熟したアドリブ・フレーズが新しい感覚。

そんなブッカー・リトルのトランペットの特徴が良く判るアルバムがこれ。『Booker Little 4 & Max Roach』(写真左)。ブッカー・リトルの初リーダー作になる。1958年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Little (tp), George Coleman (ts), Tommy Flanagan (p), Art Davis (b), Max Roach (ds)。

簡単に言えば「ブッカー・リトル5重奏団」なんだが、自己顕示欲の強い目立ちたがり屋のマックス・ローチが、自分の名前をタイトルに出すことを強要したのだろうか、ちょっと変ちくりんなアルバム・タイトルである。ただし、マックス・ローチは、ブッカー・リトルのスタイルのルーツ「クリフォード・ブラウン」と双頭バンドを組んでいたドラマーである。
 

Booker_little_4_max_roach

 
ブッカー・リトルとしては初リーダー作では、ドラマーにそんな「マックス・ローチ」を採用したかったのだろうか。確かに、このアルバムでのローチのドラミングは効果的。リトルのトランペットを上手く鼓舞している。しかも、いつものように前面にしゃしゃり出てこない。これが不思議なんだが、クリフォード・ブラウンのバックで叩いている時のローチである。

恐らく、リトルのトランペットにクリフォードの面影を感じたんだろうなあ。確かに、この初リーダー作でのリトルのトランペットは、ウッカリ聴いていると、クリフォード・ブラウンか、と聴き間違いてしまいそうになるほど、その雰囲気は似ている、が、柔和で少しエッジの丸いトランペットのフレージングがリトルの個性。かつ音の芯が太い。

溌剌と吹きまくるブッカー・リトルが眩しい。初リーダー作なのでトラペットの音は若い。加えて「クリフォード・ブラウン」の陰をしっかりと背負っている。リトルの個性がまだ前面に出たブロウにはなっていないが、それでも、そこかしこにリトルの個性のフラグメンツを聴き取ることが出来る。

初リーダー作なんで、初々しい雰囲気が微笑ましい、温和しめの演奏で、ちょっと地味な印象のアルバムですが、リトルの個性を理解するには避けて通れない盤です。他のサイドメンにも恵まれ、初リーダー作としては及第点の好盤です。

 
 

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2016年12月 4日 (日曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・44

ジャズの世界では「この人にこれ一枚だけ」という盤がある。そういう盤は決まって内容が良い。ジャズ喫茶でもジャズ者ベテランの方を中心にリクエストされることが多い。意外とこの「この人にこれ一枚だけ」という盤は人気盤となっている場合が多い。

Cal Massey『Blues to Coltrane』(写真左)。Cal Massey =「カル・マッセイ(カール・マジーとも)」と読むそうだ。カル・マッセイはトランペット奏者。コンポーザーとしては結構成果を残していて、ミュージシャンズ・チューンが結構残されています。

この『Blues to Coltrane』、カル・マッセイのリーダー作はこれ一枚のみ。つまり、カル・マッセイの「この人にこれ一枚だけ」という盤である。ちなみにパーソネルは、Jimmy Garrison (b), G.T.Hogan (ds), Julius Watkins (French Horn), Patti Bown (p), Hugh Brodie (ts), Cal Massey (tp)。1961年1月の録音。

この盤でのリーダー、カル・マッセイのトランペットは一級品。テクニックも一級、歌心も良好。なかなかに聴き応えのあるトランペット。ベースとドラムが重量級でシッカリしている。このベースとドラムがこのアルバムを一級品にしている。ピアノのパティ・ボウンは無名だがまずまず健闘している。
 

Blues_to_coltrane

 
フロントの、何故これが入っているのか理解出来ないが「フレンチ・ホルン」と、可も無く不可も無い「テナーサックス」が弱いとされる。が、今回、改めて聴き直してみて、確かに弱いことは弱いが、耳につくほどでは無い。カル・マッセイのトランペットの彩り的な効果を醸し出していて、これはこれで良いかと。

なかなか文書で表現しにくいのですが、とっても良い雰囲気のトランペットです。端正で音に芯もしっかり入っていて、ブラスの響きも心地良く、全編、とっても気持ち良く聴き通してしまいます。取り立てて、どこがどう素晴らしいのか、表現しづらいのですが、ジャズ・トランペットを愛でるに相応しい好盤です。

上手さや凄さよりも「味」で聴かせてくれるアルバムだと思います。アルバム全体で、収録された曲全体で、その演奏の持つ「味」がこの盤の良さです。音も良くて、1960年代のジャズの音の雰囲気をしっかりと伝えてくれます。ジャズ喫茶の昼下がりに是非聴きたい好盤です。

 
 

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2016年12月 3日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・95

季節は秋から冬に変わる。ここ千葉県北西部地方では、もう最低気温が4〜7度、最高気温が10〜14度。これだけ気温が下がると、いよいよ純ジャズ、しかも、バリバリ吹きまくるトランペットを愛でる季節である。相当にハードなブロウも心地良く感じる季節である。

昨日の続き。今日はハードなブロウなトランペットを聴く。この人のトランペットを初めて聴いた時は「なんて五月蠅いトランペットだ」と無碍無く思った。が、歳を重ねていくにつれ、この人のトランペットは素晴らしい、と思うようになった。テクニックが高く、歌心が溢れている。そんなハードヒッターなトランペッターはライブ盤が良い。

Hannibal Marvin Peterson『Hannibal in Berlin』(写真左)。1976年11月のベルリンジャズフェスティバルでのライブ録音。パーソナルは、Hannibal Marvin Peterson (tp), George Adams (ts), Michael Cochrane (p), Diedre Murray (cello), Steve Neil (b), Allen Nelson (ds)。

ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン。ギル・エヴァンス・オーケストラのレギュラー・トランペッターとしても活躍、「トランペットのコルトレーン」「ジャズ・トランペット界のモハメッド・アリ」とも称されるトランペット奏者である。1948年11月生まれなので、今年で68歳になるが、最近は主だった活動はしていない。

さて、この『Hannibal in Berlin』である。冒頭の曲は「The 23rd Psalm(賛美歌第23番)」。賛美歌からスタートするのか、と思って油断して聴くと、思わず仰け反ります。いきなりソロでブリブリブリと、疾走するかの如く吹き上げるハンニバル。本当にこれ原曲って賛美歌か。熱い、熱すぎる。しかもハイ・テクニック。思わずスゲ〜と感心することしきり。
 

Hannibal_in_berlin

 
続く曲は「Willow Weep for Me」。な〜んだ、2曲目でもうバラードチックな緩やかな曲を吹いて、聴衆を和ませる手か、と思いきや、これがまたまた熱い、熱すぎる。この曲をですね、こんなに熱く吹き上げて疾走してしまって良いんでしょうか(笑)。こんなにぶっ飛んだ「柳よ泣いておくれ」を聴いたことが無い。でも五月蠅くない。なんか爽やか。これもアリかな、って思ってしまう位の説得力。

3曲目「Bessie's Blues」は普通のブルース曲ですが、まだまだ疾走します。聴いている方は全く休む時間が無い。4曲目の「Swing Low Sweet Chariot」は黒人霊歌。ロックではエリック・クラプトンがレイドバックしてノンビリ歌っていましたが、ここでは、まず、チェロとベースのデュオから始まりつつ、いい具合に揺れるテンポに乗りつつ、ハンニバルのペットがブヒャ〜。熱い、熱過ぎるペットが疾走する。

そして、ラスト「My Favorite Things」。もうここまで来たら、最後まで熱くブワ〜とやっちゃって下さい。で、全メンバー、ブリブリと熱く熱く疾走します。しかも、アレンジも決まってるし、アドリブ・フレーズも決まっている。コルトレーンのバージョンを超えているんやないか、と思いつつ、ハンニバルのペットの吹き上げに大喝采です。

ジャズにムーディーな要素や静謐感を求める向きには、絶対にお勧め出来ないライブ盤です(笑)。しかし、この熱い熱いブロウ、熱い熱い演奏がジャズの良いところでもあります。このライブのメンバーそれぞれ、テクニックが高く、ハイテンションな高速な演奏が耳触りにならないところが凄い。好盤です。

 
 

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2016年12月 2日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・94

初夏から真夏にかけて、晩夏から秋にかけては、もちろん気温が高い。しかも湿度も高い。そういう季節に純ジャズ、特にバリバリ吹きまくるトランペットは全く「合わない」。暑い、暑すぎる。聴いているだけで汗が噴き出てきて「バテる」そして「疲れる」(笑)。

しかし、季節は秋から冬に変わる。ここ千葉県北西部地方では、もう最低気温が4〜7度、最高気温が10〜14度。これだけ気温が下がると、いよいよ純ジャズ、しかも、バリバリ吹きまくるトランペットを愛でる季節である。相当にハードなブロウも心地良く感じる季節である。

まずは、丸くてゆったり朗々と鳴るトランペット盤から、とくれば「アート・ファーマー」だろう。Art Farmer『Yesterday's Thoughts』(写真左)。1975年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Ceder Walton (p), Sam Jones (b), Billy Higgins (ds)。アルバム・ジャケットはチープだが、スルーしてはいけない。

日本のレーベル、イースト・ウィンドからのリリース。日本のレーベルから、と聴けば、日本人好みの絵に描いた様なハードバップ、大スタンダード大会の企画盤かあ、と眉をひそめたくなるが、この盤は違う。アート・ファーマーの丸くてゆったり朗々と鳴るフリューゲル・ホーンをグッとしっかり聴かせてくれる。
 

Yesterdays_thoughts

 
丸くてゆったり朗々と鳴るフリューゲル・ホーンなので、甘ったるい雰囲気にならないか、と不安になるが、そうはならない。このワンホーン・カルテット、毅然と誠実にメインストリーム・ジャズをやっている。切れ味良く整然と、活き活きと優しく、小粋で個性的なハードバップをやっている。

選曲もまた良し。誰もが聴いたことがある選曲、平々凡々とした「大スタンダード大会」にはなっていない。ちょっと捻りを効かせた、ちょっとマニアックなスタンダード曲の選曲がニクい。制作側のプロデュースの勝利であろう。このちょっとマニアックなスタンダード曲を、職人芸よろしく「しっくりと」聴かせてくれる。

バックのピアノ・トリオが良い。1970年代、ジャズメンとして旬な時期を迎えていたピアニストのウォルトン、ベーシストのサム・ジョーンズ、そして、ドラマーのヒギンス。このリズム・セクションの音が素晴らしく良い。こんなリズム・セクションがバックに控えているのである。ファーマーは安心して、朗々とフリューゲル・ホーンを吹きまくる。

フリューゲル・ホーンの音の良さがダイレクトに伝わってくる好盤です。しかも録音が良い。ファーマーのフリューゲル・ホーンの音がグッと前面に出てくるような、中音域の豊かなサウンドは実にグッド。オーディオ的に録音の良さでも楽しめるお勧め盤です。

 
 

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