2023年9月15日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・266

キャノンボール・アダレイは、ファンキーで明るいアルト・サックスが身上。しかし、デビューから暫くは、エマーシー・レーベルの下、明るい明確なアルト・サックスをメインに、ストリングスやジャズオケをバックにした、大衆受け狙いの「イージーリスニング・ジャズ」志向のリーダー作を連発。

リヴァーサイド・レーベルに移籍して、ハードバップなジャズにやっと立ち戻ったが、ファンキー・ジャズには未だ至らす。しかし、1959年の『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』で一気にファンキー・ジャズ志向に大転換。以降、暫く、キャノンボール・アダレイは、ファンキー・ジャズ一直線で、売れっ子人気ジャズマンの仲間入り。

Cannonball Adderley『Them Dirty Blues』(写真左)。1960年2月1日はNY、1960年3月29日はシカゴでの録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cornet), Bobby Timmons (p, tracks 5–9) , Barry Harris (p, tracks 1–4), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

ピアノをバップなピアニストであるバリー・ハリスとファンキーなピアニストであるボビー・ティモンスとで使い分けているが、編成の基本はアダレイ兄弟がフロント2管のクインテット編成。こってこてバップなピアニストのハリスが、とってもファンキーなピアノを弾いている。こってこてファンキーなティモンズのピアノよりファンキーなのでは、と思う位、ファンキーなハリスのピアノが効いている。
 

Cannonball-adderleythem-dirty-blues  

 
ナット・アダレイのファンキー・チューンの名曲、冒頭の「Work Song」が突出して良い出来。コール・アンド・レスポンスでゴスペルチックなテーマ、展開部は徹底的にファンキーなフレーズで埋め尽くす。根明でストレートなキャノンボールのアルト・サックスと、根明でブリリアントなナットのトランペットが映えに映える。

ちなみに、CDリイシュー盤では、バリー・ハリスがピアノを弾いているテイクと、ボビー・ティモンズがピアノを弾いているテイクとを聴き比べることが出来る。聴き比べると判るのは、LP時代、正式に採用されたのは、バリー・ハリスがピアノを弾いたテイク。ハリスがこってこてファンキーに切れ味良く、ファンキーなバップ・ピアノよろしく、フロントのアダレイ兄弟をバッキングしている。うん、やはり、これはハリスのテイクの方が良い。

2曲目以降もファンキー・ジャズ志向の演奏がてんこ盛り。ハリスのファンキー・ピアノが目立っているが、ティモンズのソウルフルなファンキー・ピアノが良い味を出している。

この『Them Dirty Blues』、スタジオ録音での、アダレイ兄弟のファンキー・ジャズ志向を決定付けたエポック・メイキングな盤という位置づけで、ファンキー・ジャズの名盤の1枚として良いのではないか。アルバムのどの曲を聴いても「ファンキー・ジャズ」。アダレイ兄弟の「ファンキー・ジャズ事始め」を、『The Cannonball Adderley Quintet in San Francisco』と併せて聴いて確かめたい。
 
 

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2023年9月13日 (水曜日)

機を見るに敏なバードの器用さ

ドナルド・バードというトランペッターは「機を見るに敏」なトランペッターだった。ジャズのその時代毎の流行、トレンド、志向を機敏に読み取り、リーダー作に反映した。もともと器用なトランペッターが故、採用した流行、トレンド、志向を深く掘り下げて極めるほど、深く追求せず、次から次へ、流行、トレンド、志向を乗り換えていったので、意外と決定打にかけるところが玉に瑕である。

ドナルド・バードのトランペットは素姓が非常に良い。テクニックも上々、拠れたり外したりすることが全く無い。音も大きく伸びが良く、ブリリアントに響く音色は、とにかくとても素姓が良い。どの流行、トレンド、志向の下でも、ドナルド・バードのトランペットは映える。とても、モダン・ジャズらしいトランペットである。

Donald Byrd『Free Form』(写真左)。1961年12月11日の録音。ブルーノートの4118番ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp), Wayne Shorter (ts), Herbie Hancock (p), Butch Warren (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのドナルド・バードのトランペットとショーターのテナーの2管フロント。バックのリズム隊は、ハンコック率いる新主流派志向のリズム隊。

前リーダー作『Royal Flush』で、それまで進めていた理知的なファンキー・ジャズのファンキー度を更に上げ、「ファンク度が増した理知的なモード・ジャズ」な演奏志向にチャレンジした。そして、当盤である。
 

Donald-byrdfree-form

 
パーソネルを見渡して、「これは本格的な、新主流派のモード・ジャズを本格追求やな」と思って聴き始めると、冒頭の「Pentecostal Feelin」のジャズロックに思わず仰け反る。しかも、こってこてのジャズロックをショーターが吹いている。あらら、と思う(笑)。

しかし、2曲目のハンコックが書いたバラード「Night Flower」では、ハードバップ時代に戻った様な、リリシズム溢れるブリリアントなバードのトランペットが鳴り響く。あれれ、モードは何処へ行ったと思ったら、3曲目からこってこての「新主流派志向のモード・ジャズ」が展開される。

しかし、バードのモード・ジャズって、ショーターとハンコックに任せっぱなし、な印象。ハンコックとショーターが喜々としてモダールなフレーズを連発する中、バードが器用さにまかせて、癖の無い平易なモーダル・フレーズで、ショーターやハンコックに追従する、って感じの展開で終始している。

内容的には「機を見るに敏」なトランペッターの面目躍如的内容だが、ドナルド・バード流のモード・ジャズ、という切り口が希薄なのが残念。器用に新主流派なモード・ジャズを展開するのは「機敏」だが、借りてきた様な内容に終始するのはどうだろう。

モード・ジャズの好例として、この『Free Form』が話題に上ったことが無いのは、そういうことなんだろう。演奏内容は結構良いのに、「機を見るに敏」なバードの器用さだけが印象に残る残念な盤である。
 
 

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2023年9月11日 (月曜日)

ジャズロック志向にロックオン

ハードバップ時代に、彗星の如く現れたトランペットの若き天才、リー・モーガン。1956年、初リーダー作『Indeed!』でデビューしたのが、なんと弱冠18歳。そしてこの初リーダー作が素晴らしい出来。以来、人気トランペッターとして第一線を走ってきたモーガン。1960年代の「ジャズの多様化」の時代は、22歳〜31歳の若手だが、彼のプレイは既に成熟し完成されていた。

Lee Morgan『The Rumproller』(写真左)。1965年4月の録音。ブルーノートの4199番。ちなみにパーソネルは、Lee Morgan (tp), Joe Henderson (ts), Ronnie Mathews (p), Victor Sproles (b), Billy Higgins (ds)。リーダーのモーガンのトランペットとジョーヘンのウネウネ捻れモードのテナー・サックスがフロント2管のクインテット編成。

編成はオーソドックス。奇をてらったところが無いのはモーガンのリーダー作の良いところ。録音年は1965年。ジャズは多様化の時代のピーク。前作『Search for the New Land』で、モーガン流のモード・ジャズを確立した訳だが、今回の『The Rumproller』は、前々作『The Sidewinder』の内容に戻している。
 

Lee-morganthe-rumproller

 
冒頭のタイトル曲「The Rumproller」は、怒濤のジャズ・ロック。大ヒット曲「The Sidewinder」に比肩するファンキーでロックな出来。以降、モード有り、ラテン〜ボッサ有り、リリカルなミュートによるバラード有り、とバラエティーに富んだ内容に仕上がっている。この辺も大ヒット盤『The Sidewinder』を踏襲している。

この頃のモーガンは「ジャズ多様化の時代」の中で、どの方向に自らの音志向を持っていこうと、いろいろ迷っていた時代だったのではなかろうか。そして、この『The Rumproller』で、ジャズ・ロックをベースに定め、ジャズ・ロック志向の演奏の中で、モーダルなアドリブや、こってこてハードバップなフレーズなど、ジャズ・トランペットの演奏トレンドや演奏志向を展開する、そういう方向に舵を定めたのでは、と感じている。

話題としては「Desert Moonlight」、我々日本人にとってはお馴染みの童謡「月の沙漠」のジャズ化が2曲目にある。なかなかのアレンジで、日本の童謡を上手くジャズ化している。こういう器用さもモーガンの良き個性。次作『The Gigolo』以降、ジャズロックをベースとした演奏志向を追求〜深化していく。モーガンの鯔背なトランペットが映えに映える。
 
 

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2023年8月27日 (日曜日)

ハバードのブルーノート最終作

ハイテクニックな伝説のトランペッターのフレディ・ハバード。22歳の若さで初リーダー作『Open Sesame』をリリースして以来、ブルーノート・レーベルには、鍛えられ、教えられ、一流のトランペッターに成長させてもらったのでは、と思っている。特に、総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンには本当に世話になっただろう。

ハバードはテクニックが抜群に優れているがゆえ、どんなジャズでも、どんなスタイルでも吹き切ってしまう。いわゆる「器用貧乏」なところがあって、何でも出来るよ〜、というアプローチが見え隠れするところを、ライオンがグッと手綱を引いて、時にファンキー・ジャズ、時に、モード・ジャズの名盤をハバードに残させた。

また、ハバードには「目立ちたがり屋」なところがあって、先輩ジャズマンとのセッションでは前へ前へ出て、自分の凄さをアピールしようと頑張りすぎるところがある。逆に、仲の良い同輩や後輩ジャズマンとのセッションでは、一歩引いて、同輩・後輩を前に出させて、ハイテクニックなトラペットでしっかりサポートする「男気」ある振る舞いをするところもある。

ライオンは、こういったハバードの長所・短所をしっかり把握して、時にはセッションのメンバーの人選に工夫を凝らしたり、ハバードをしっかりコントロール出来る、リーダー肌の先輩ジャズマンを充てたり、ハバードのテクニックが映える選曲をしたり、とにかく、ハバードが持っている才能を良い方向に発揮出来るよう、様々なプロデュースをしていたように思う。

Freddie Hubbard『Blue Spirits』(写真左)。ブルーノートの4196番。フレディ・ハバードのブルーノートでの最終作である。ブルーノートとしては珍しく、3つのセッションから成る。
 

Freddie-hubbardblue-spirits

 
1965年2月19日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), James Spaulding (as, fl), Joe Henderson (ts), Harold Mabern (p), Larry Ridley (b), Clifford Jarvis (ds), Big Black (congas), Kiane Zawadi (euphonium)。

1965年2月26日のセッションのパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Hank Mobley (ts), James Spaulding (as, fl), McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Pete LaRoca (ds), Kiane Zawadi (euphonium)。

1966年3月5日のセッションは、Freddie Hubbard (tp), Joe Henderson (ts), Hosea Taylor (as, bassoon), Herbie Hancock (p, harpsichord), Reggie Workman (b), Elvin Jones (ds)。

パーソネルに一貫性が無いが、やっているジャズは「ジャズ・ロック志向」。ベッタベタなウケ狙いのジャズ・ロックでは無く、そこはブルーノート、「Corny(陳腐な)」なジャズロックは回避して、ファンキー志向のジャズロック、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロックを「格調高く」やっているのはさすが。

ただ、肝腎のハバードが、どの志向の、どのテイストのジャズロックで行くか、迷っている風でもあり、メンバーを取っ替え引っ替え、演奏の志向、スタイルも取っ替え引っ替え、大凡3種類やっている。ただ、一貫しているのは「メインストリームな純ジャズ志向のジャズロック」はしっかり根っこにあるので、アルバム全体の統一感はしっかり維持されている。さすが、ブルーノートである。

内容的にもチャレンジブルで、大衆受けをする俗っぽい8ビートのジャズロックは横に置いておいて、ファンクネスは全ての演奏の統一の味付けに使いつつ、モダンで硬派な8ビートの下、モーダルなジャズロック、ソウル・ジャズなジャズロック、ハードバップなジャズロックを志向している。

ジャズロックに手を染め始めた頃のハバードが記録されている、聴いていて意外と面白いハバード盤。ハバードはこの盤を最後にブルーノートからアトランティックに移籍する。メインストリーム志向のブルーノートのハバードは過去のものとなり、途方も無くハイテクニックな持ち主がゆえ、イケイケではっちゃけた、何でもござれのハイテクニックなトランペッターとして弾けていく。
 
 

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2023年8月19日 (土曜日)

全曲「春」にちなんだ企画盤

1958年7月録音の『Portrait of Cannonball』で、やっと、メインストリームな純ジャズをメインとする「リヴァーサイド・レーベル」に移籍したキャノンボール。このリヴァーサイドで、当時のモダン・ジャズの最前線、小コンボでの演奏を実現した。さすが希有なインプロヴァイザー、キャノンボール・アダレイ、小コンボでのソロ・パフォーマンスは素晴らしい。 

Kenny Dorham & Cannonball Adderley『Blue Spring』(写真)。1959年1月20日 (#5-6) , 2月18日 (#1-4) の2セッションからの選曲。ちなみにパーソネルは、Kenny Dorham (tp), Cannonball Adderley (as), David Amram (French horn), Cecil Payne (bs), Cedar Walton (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds, tracks 1-4), Philly Joe Jones (ds, tracks 5-6)。

基本の編成は、ドーハムのトランペットとキャンボールのアルト・サックスのフロント2管、ウォルトンのピアノ、チェンバースのベース、そして、コブとフィリージョーの2人が別々に担当するドラムのクインテット編成。アレンジの彩りにフレンチ・ホルンやバリトン・サックスが入っている。

この盤、タイトルからも判る様に、全曲「春」にちなんだ曲ばかりを集めた企画盤。こういうコンセプトがハッキリしたセッションにドーハムは強い。迷いがなくなるのだろう。
 
Kenny-dorham-cannonball-adderleyblue-spr  
 
かつ、この盤はミドル・テンポの曲がメイン。ミドル・テンポの曲にドーハムは強い。速いテンポの曲では、時々フレーズがふらつく、拠れるの悪い癖が出るが、ミッド・テンポでは全くそんなことは無く、堂々と柔らかくてブリリアントなフレーズを吹き上げていく。

ただ、ドーハムのトランペットは、モノトーンっぽくて、すんだようなフレーズが主なので、どこかメリハリと抑揚に欠ける嫌いがあるのだが、この盤ではそんな「気になる」ところを、キャノンボールの明るくメリハリの効いた切れ味の良いアルト・サックスをフロント管のパートナーに充てることで、良い意味でクリアしている。

確かに、ドーハムのトランペットとキャノンボールのアルト・サックスとのコントラストが実に良い雰囲気を出している。リヴァーサイドの総帥プロデューサーのオリン・キープニュースの手腕が映えに映えた内容になっているのだから見事という他ない。

良い雰囲気のハードバップ盤です。バリバリと丁々発止としたバップなパフォーマンスは無いんですが、アレンジも良好、コンセプトもしっかりしていて、聴かせるハードバップな内容に仕上がっています。歌心溢れるドーハムとキャノンボール。良い内容の良いハードバップ盤だと思います。
 
 

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2023年8月12日 (土曜日)

教会音楽志向のソウル・ジャズ

ブルーノートの4100番台は、ジャズの多様化の時代を反映した、当時のジャズのトレンド、ジャズの奏法のほぼ全てに対応した多様なラインアップが素晴らしかった訳だが、4100番台も終わりの頃になると、ジャズの多様化の度が過ぎて、従来のモダン・ジャズの範疇を逸脱した、不思議な内容のジャズも出現してきた。

Donald Byrd『I'm Tryin' To Get Home』(写真左)。1964年12月の録音。ブルーノートの4188番。ドナルド・バードのビッグバンド編成でパフォーマンスした、こってこての「ソウル・ジャズ」。ジャジーなリズム&ビートが無ければ、ビッグバンド編成で奏でる、スピリチュアル・ジャズの先駆け的響きも見え隠れした、ホーリーでゴスペルチックな「教会音楽」である。

ちなみにパーソネルは、Donald Byrd (tp, flh), Stanley Turrentine (ts), Herbie Hancock (p), Freddie Roach (org), Grant Green (g), Bob Cranshaw (b), Grady Tate (ds) のセプテットに、Joe Ferrante, Jimmy Owens, Ernie Royal, Clark Terry, Snooky Young (tp), Jimmy Cleveland, Henry Coker, J.J. Johnson, Benny Powell (tb), Jim Buffington, Bob Northern (french horn), Don Butterfield (tuba) の管セクションが付いたビッグバンド編成。
 

Donald-byrdim-tryin-to-get-home

 
冒頭の「Brother Isaac」でぶっ飛ぶ。男女コーラスの軽妙な(奇妙な?)スキャットと、ソウルフルな響きが怪しいビッグバンドが高揚しながらスイングする、摩訶不思議なソウル・ジャズ。というか、ゴスペル・コーラスを彷彿とさせる、ジャジーな教会音楽風で、さすがに、この演奏をコンテンポラリーな純ジャズとして聴くには無理がある。僕は、ジャズと教会音楽との融合がメインの、過度にソウルフルなジャズ・ファンクとして捉えている。

しかし、演奏の中核となるのは、リーダーのバード以下のセプテットの面々で、それぞれのソロ演奏は、当時のジャズの最新の演奏志向や奏法を捉えて、意外と尖った演奏をしている。2曲目「Noah」では、バードはファンキーなモーダル・フレーズでソロを展開し、ハンコックはモーダルなハーモニーでバッキングする。ソウル・ジャズな雰囲気の演奏の中で、モーダルな響きが飛び交う様はシュールですらある。この辺りはジャズと教会音楽との融合の中での「実験ジャズ」的な響きである。

サブタイトルが「Brass With Voices」。その通り、ブラスの響きとスキャット&コーラスを効果的にアレンジに反映した、教会音楽志向のソウル・ジャズがこの盤の中に充満している。内容的にあまりに尖っていて一般受けはしないだろう。しかし、内容的には実にアーティステックなチャレンジであり、こういった一般受けしそうもない尖った内容の「融合」ジャズをしっかりとアルバム化してリリースする、当時のブルーノートは、単純に凄いと思う。
 
 

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2023年8月 1日 (火曜日)

日野皓正の欧州なフリー・ジャズ

今日の関東地方は不安定な天気。明け方、雨が降って、朝は久し振りに曇天。陽射しが無い分、気温はさほど上がらず、蒸し暑さは回避。昼間は東京ではゲリラ雷雨で大変だったみたいだが、我が方はチョロッと降っただけで、昼過ぎからは日が射したりして、最高気温は34℃。猛暑日は避けられたみたいだが、結局、真夏日となった。

今日は日中はほぼ曇り空で、部屋のエアコンの効きが良い。涼しい快適な湿度の部屋の中で、今日は久し振りに「フリー・ジャズ」を聴いてみようと思った。フリー・ジャズはいろいろあるが、最近は1970年代の「Enja(エンヤ」」レーベルのフリー・ジャズを選んで聴く様にしている。

エンヤ・レーベルは、1971年、ジャズ愛好家のマティアス・ヴィンケルマンとホルスト・ウェーバーによって、ドイツのミュンヘンで設立された、欧州ジャズ・レーベルの老舗のひとつ。ハードバップからモード、フリー、スピリチュアル・ジャズまで、モダン・ジャズの奏法、スタイルをほぼ網羅するが、とりわけ、前衛ジャズに造詣が深い。

ジャズの演奏スタイルの1つ「フリー・ジャズ」。従来のジャズの奏法を踏まえることなく、自由に演奏するスタイル、いわゆる「音階(キー)」「コードあるいはコード進行」「リズム(律動)」、以上3要素から自由になって演奏するのが「フリー・ジャズ」。しかし、これら3要素を全て自由にすると「音楽」として成立しないので、「必要最低限の取り決め」のもと、フリーに演奏するということになる。

日野皓正『Vibration』(写真)。1971年11月7日、ベルリンでの録音。ENJAー2010番。ちなみにパーソネルは、日野皓正(tp), Heinz Sauer (ts), Peter Warren (b), Pierre Favre (ds)。日野のトランペットとザウアーのテナーがフロント2管、ピアノレスのカルテット編成。演奏スタイルはフリー・ジャズ。欧州ジャズのフリー・ジャズ。
 

Vibration

 
日野皓正といえば、僕が本格的にジャズを聴き始めた頃は、NYに渡ってフュージョン・ジャズにドップリだったので、NYの渡る以前のハードボイルドで前衛的な日野皓正を聴いた時は、最初はビックリ。しかし、しっかり対峙して聴くと、かなり高度で難度の高い純ジャズをやっていて、フリー・ジャズはそのバリエーションのひとつ。

日野以外のメンバーは3人とも僕は知らなかった。この人選、ホルスト・ウェーバーによる人選だったらしく、録音当日、全員、初顔合わせだったらしい。しかし、録音された演奏を聴くと、初顔合わせとは思えない、フリー・ジャズ志向な演奏の中、メンバー間の連携と熱気が凄い。ピアノレスな分、フロントの2人の自由度が限りなく高い。

前衛的でアバンギャルド、激しいフレーズと無調のアドリブ。米国のコルトレーン直系の、心の赴くまま、とにかく「熱く吹きまくって力づく」というフリー・ジャズでは無く、クールでソリッドで硬質、切れ味良く、「前衛音楽の響きを秘めた欧州ジャズの範疇」でのフリー・ジャズ。加えて、高度なテクニックと音楽性を有しないと、フリー・ジャズとしての音楽を表現出来ないのだが、この盤のカルテット・メンバーの演奏テクニックはかなり高い。

日野の自由度の高い、シャープなトランペットの咆哮、ザウアーのゴリゴリと尖ったテナー、自由奔放にクールに暴れまくるファーヴルのドラム、そして、フリーな演奏の底をガッチリと押さえる、重心低くソリッドなウォーレンのベース。混沌とした無調のフリー・ジャズだが、「間」としっかり取って、それを活かしたフリーな展開が、この盤のフリー・ジャズを聴き易いものにしている。

定速ビートが無い分、聴くのに骨が折れるが、しっかり聴いていると、フリーな演奏の底に自由度の高い変則ビートが流れている様で、このフリーな演奏をどこか整然とした印象を持たせてくれる。限りなく自由度の高いモーダルなジャズのすぐ先にある、そんな感じのフリー・ジャズ。
 
 

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2023年7月29日 (土曜日)

ハバードにはジャズ・ロック

前作『High Blues Pressure』では、ジャズロックとモード・ジャズが混在、アルバム全体の印象がちょっと散漫になって、本当にジャズロック路線で攻めていって良いのか、世間の評価をどうなるのか、まだまだハバードには迷いがあったように感じた。しかし、僕の印象としては「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」。

Freddie Hubbard『A Soul Experiment』(写真左)。1968年11月11日(#3, 7, 9),13日(#1-2, 10),1969年1月21日(#4-6, 8)の録音。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp), Carlos Garnett (ts, #3-9), Kenny Barron (p), Gary Illingworth (org), Billy Butler (g, #3, 7, 9), Eric Gale (g, # 1–2, 4–6, 8, 10), Jerry Jemmott (b), Grady Tate (ds, #3, 7, 9), Bernard Purdie (ds, #1, 2, 5)。

タイトルを訳すと「ソウルの実験」。おお、遂にハバードも吹っ切れたか、と期待する。そして、聴いてみて、ジャズファンク、ソウル・ジャズで統一されたジャズロック志向のアルバムに仕上がっている。加えて、すべての演奏がエレギ&エレベの、完全「エレジャズ」な布陣の演奏になっている。思い切っているなあと感じる。
 

Freddie-hubbarda-soul-experiment

 
タイトルは「ソウルの実験」だが、演奏全体の雰囲気は「お試し」。ハバードが試しにソウル・ジャズをやってみた、それも、エレ・ジャズな編成で、かつ、ジャズロック志向で、といったところか。「お試し」とは言え、このアルバムについては、きっちりジャズロック志向で揃えているので、中途半端な感じが無い。実に潔い。

冒頭「Clap Your Hands」は、エキサイトなソウル・ジャズ。エレ楽器メインのジャズロックな8ビートに乗って吹くハバードのトランペットが心地良い。指がよく動き、テクニックが優れているので、8ビートに流麗に乗った、滑らかなアドリブ展開は違和感が全く無い。4曲目「Lonely Soul」は、ハードボイルドなハバードの哀愁感溢れるバラード・プレイが聴けて、これまた良好。

確かにタイトルは「ソウルの実験」なので、本格的にジャズロック志向に舵を切ったのかどうかは、次のリーダー作以降を聴かないと判らないが、このオール・ジャズ・ロックな盤を聴く限り、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」という感覚は「確定」だろう。
 
 

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2023年7月28日 (金曜日)

過渡期のフレディ・ハバードです

フレディ・ハバードは、そのテクニックは卓越したものがあるのだが、如何せん、吹きすぎる盤が多い。メンバーによるのだが、自分から見て後輩のメンバーばかりの時は、アニキ風を吹かせるのか、後輩に花を持たせて、自分は抑制の効いた、余裕あるブロウを展開する。これは良い。優れたテクニックの持ち主でありながら、抑制の効いた、余裕あるブロウを披露するハバードは凄みすらある。

逆に、メンバーが同年代から先輩になる時は、とにかく目立ちたいのか、吹きに吹きまくる。「俺は凄いんだぞ」と言わんばかりに、ハバードの持つ卓越したテクニックを最大限に発揮して、五月蠅いくらいに吹きまくる。他のメンバーとのバランスや対比など、全くお構い無し。これは困る。優れたテクニックが、悪い印象に作用して、ただ五月蠅いトラペットになったりするのは困る。

Freddie Hubbard『High Blues Pressure』(写真左)。1967年11月13日の録音。アトランティック・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Freddie Hubbard (tp, flh), James Spaulding (as, fl), Bennie Maupin (ts, fl), Herbie Lewis (b), Roman "Dog" Broadus (conga)、ここまでは全曲参加なんだが、Weldon Irvine (p, track 1), Kenny Barron (p, tracks 2-6), Freddie Waits (ds, tracks 1-3), Louis Hayes (ds, tracks 4-6), Howard Johnson (bs, tuba, tracks 2-6), Kiane Zawadi (tb, euphonium, tracks 2-6)。

前作『Backlash』で転身したジャズロック路線を踏襲したアルバムになる。しかし、面白いのは曲が進むにつれて、ジャズロック色は薄れていって、後半は「新伝承派」のモード・ジャズになっている。ハバードのトランペットにはジャズロックが合うんだがなあ。この盤の時点では、まだハバードには迷いがあったように感じる。意外とハバードは他のジャズマンからの評価を気にするタイプだったのかもしれない。
 

Freddie-hubbardhigh-blues-pressure

 
前半のジャズロック志向の演奏は実に良い。ハバードのトランペットには8ビートが良い。卓越した速いフレーズう吹きまくるに、速い8ビートがちょうど良い。そして、ジャズロックの十八番である「テーマのユニゾン&ハーモニー」では、抑制が効いて余裕あるハバードの吹きっぷりが実に良い響き。やっぱり、ハバードのトランペットには「ジャズロック」が良く似合う。

後半のモード・ジャズも良い演奏なんだが、ジャズロックのハバードに比べて、ハバードの悪い癖、驚異的なテクニックで吹きすぎるハバードが目立ちに目立つので、折角のハバードの優秀テクニックのトランペットが、ちょっと五月蠅く響く。しかも録音年は1967年。モード・ジャズは最初の成熟期を迎えていて、ハバードのモード・ジャズには「新しい発見」は無いのが惜しい。

テクニックが優秀なので、優れたジャズロックも出来るし、優れたモード・ジャズも出来る。俺は何でも素晴らしい演奏が出来るんだ、という自信がちょっと裏目に出た盤。アルバム全体の印象がちょっと散漫になっている分、この盤は損をしている。ジャズロック志向に専念するかどうか、少し迷っている「過渡期」的な内容ではある。

それでも、ジャズロックの部分は、ハバードの特質が100%活かされていて良い出来。前作『Backlash』と併せて、「ハバードのトランペットには、ジャズロックが良く似合う」ということを証明したハバードのリーダー作である。しかし、アトランティック・レーベルのプロデューサーって何をしてたのかなあ。ハバードに「おんぶに抱っこ」な印象で、全くもって勿体ない盤である。
 
 

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2023年7月27日 (木曜日)

硬派でバップなキャノンボール

キャノンボール・アダレイ。1959年以降、ファンキー&ソウル・ジャズでヒット作をリリースして人気ジャズマンになった訳だが、人気者になればなるほど、我が国では「ファンクの商人」と揶揄され、硬派なジャズ者の方々から煙たがられた。しかし、キャノンボールのジャズは確かなもの。デビュー当時のハードバップをバリバリ吹きまくるキャノンボールをもっと評価しても良いと僕は思っている。

彼が人気者になった、ファンキー&ソウル・ジャズだって、そのベースには、ハードバップ時代のバリバリ硬派にアルト・サックスを吹きまくる実績があったからこそ。どうも、以前は、ジャズというもの、コマーシャルに走るのは「恥」という傾向が我が国のジャズ・シーンにはあったように思う。僕には全く理解出来なかったけど。

Cannonball Adderley『Cannonball's Sharpshooters』(写真左)。1958年3月4日と6日の録音。ちなみにパーソネルは、Cannonball Adderley (as), Nat Adderley (cor), Junior Mance (p), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds)。アルト・サックスのキャノンボール・アダレイがチーダーのクインテット編成。小コンボ編成のハードバップな演奏に変わっての3作目。
 

Cannonball-adderleycannonballs-sharpshoo

 
この盤は、前年の『ソフィスティケイテッド・スウィング』や、それに続く『キャノンボール・アンルート』の流れの中にある盤で、硬派にハードバップにアルト・サックスを吹きまくるキャノンボールを確認することが出来る。スタンダード曲を伸び伸び、切れ味良く吹き上げるキャノンボールは、自由奔放でブリリアント。このストイックに硬派にアルト・サックスを吹きまくるキャノンボールは聴き応え十分。

フロントのパートナー、弟ナットのコルネットも良い味を出している。破綻無く切れ味良くブリリアントなトランペットを随所で吹きまくる。マンスのピアノは小粋だし、ジョーンズのベースは堅実。コブのドラミングは、この盤のハードバップな要素をしっかり把握し、しっかりとハードバップなリズム&ビートを供給する。

『ソフィスティケイテッド・スウィング』『キャノンボール・アンルート』に続く、小コンボでハードバップな演奏なんだが、スタンダード曲とミュージシャンズ・チューンズを混在して選曲したこの盤の演奏は「小粋」そのもの。録音年は1958年、ハードバップが成熟した頃の録音。良い内容で聴き応え満点。いかにも「やっつけ」なジャケだけが減点対象。もうちょっとましなジャケにならんかったのかいな、とこの盤を聴く度に思う。
 
 

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