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2019年7月15日 (月曜日)

現代のジャズ・トロンボーンです

ここ千葉県北西部地方、今年の梅雨は天気がかなり悪い。先月末からほとんど曇りか雨。晴れたのは1日程度ではないかしら。この3連休も結構まとまった雨が降って、今日、昼間少しだけ日が射しただけ。精神的にもちょっと参ってきた。でも、気温は低めで、昨年のように、連日猛暑という状態では無いことだけが救い。
 
さて、そんな鬱陶しい日が続く千葉県北西部地方、我がバーチャル音楽喫茶『松和』で聴くジャズ盤の志向も確実に変わった。とにかく聴き易い、聴き心地の良いジャズが良い。爽快感溢れるフュージョン・ジャズ、そして、純ジャズなら耳当たりの良い楽器、ピアノやオルガン、トロンボーンがメインのものをよく選盤する。

Steve Davis『Correlations』(写真左)。2018年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Steve Davis (tb), Joshua Bruneau (tp), Wayne Escoffery (ts), Xavier Davis (p), Dezron Douglas (b), Jonathan Barber (ds), Cyro Baptista (per on 3曲目「Batista’s Revenge」のみ)。リーダーのトロンボーン奏者、スティーヴ・ディヴィス以外、知らないメンバーばかり。
 
 
Correlations-steve-davis
 
 
スティーヴ・ディヴィスは、1967年4月生まれなので、今年で52歳。ジャズ界での優れた中堅メンバーの一人。 ジャズ・メッセンジャーズや One For Allへの参加で名前だけは知っていたが、リーダー作についてはつい最近まで聴く機会に恵まれなかった。というか、トロンボーン奏者として、我が国では結構マイナーな存在である。しかし、彼のプレイは堅実。トロンボーンという楽器を実に正確に端正にプレイすることが出来る。
 
とても内容の濃いネオ・ハードバップな演奏が詰まったアルバムである。取り巻くバック・ミュージシャンは僕にとっては無名だが、演奏を聴くとかなり優れた名うてのメンバーが揃っていると感じる。どの曲でも、端正で躍動的なプレイで、リーダーのスティーヴ・ディヴィスのトロンボーンを始めとするフロント3管を盛り立てる。
 
スティーヴ・ディヴィスのトロンボーンは端正かつ正確。ピッチもバッチリ合っていて、速いフレーズも緩むことは無い。トロンボーンでありながらファンクネスは控えめ。切れ味の良い、緩みの無いフレーズが心地良い。これだけ端正なトロンボーンはなかなか無い。現代のジャズ・トロンボーンの第一人者として相応しいプレイはなんとも清々しい。
 
 
 
東日本大震災から8年4ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年6月29日 (土曜日)

フラーとハンプトンの2ボーン

ここ千葉県北西部地方、なんだか今年の梅雨は湿度が高い様な気がするのだが、気のせいだろうか。気温は25度前後が最高気温なので暑い筈はないのだが、何故か汗が流れてくる。不快指数MAXである。とにかく湿度の高い状態ってとても苦手で、体は怠く、頭は少々の頭痛が出て、早く梅雨が明けないかなあ、と梅雨明けを心待ちにして過ごすことになる。
 
こういう精神的に参っている時にはハードなジャズはいけない。ノンビリきける「ほんわかジャズ」が良い。そう「ほんわかジャズ」と言えば、まず浮かぶのが「ジャズ・トロンボーン」。トロンボーンの音自体が、ほんわかしていて、それでいてシッカリと芯があって、ブラスを震わせるブリリアントな響きは、ゆったりとジャズを聴きながら、脳髄にもしっかりと良い刺激を与えてくれる。この季節に最適なジャズ楽器である。

今日の選盤は、Curtis Fuller『Two Bones』(写真左)。1958年1月の録音、リリースは1980年。いわゆる「お蔵入り盤」。タイトル通り、フラーとハンプトンの2本トロンボーンがフロント。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller, Slide Hampton (tb), Sonny Clark (p), George Tucker (b), Charlie Persip (ds)。ピアノは哀愁のファンキー・ピアニストのソニクラ。タッカーとパーシップのリズム隊は玄人好み。
 
 
Two-bones
 
 
柔らかく丸みを帯びたアンサンブルやソロなど聴き所満載。ちょっと聴いただけでは判りにくいが、フラーは正統派でバップなトロンボーン、ハンプトンはちょっとプログレッシブで切れ味の良いトロンボーン。出て来る音の僅かな「軟と硬」。音のエッジの僅かな「丸みと尖り」。全く正反対の個性のトロンボーンがフロント2管を張っているのが、この盤の最大の魅力。ちなみに、この二人が正面切って共演しているのは、この盤だけのようですね。他を知りません。
 
バックのリズム・セクションもこの盤の魅力のひとつ。特にタッカーの重量級なベースも聴きもの。「Da-Baby」ではタッカーのそんな重量級ベースのソロが堪能出来ます。パーシップのドラミングは堅実。テクニック豊かで職人肌。そして、ソニー・クラークのピアノは堅実かつメロディアスで、ファンクネスそこはかと無く漂い、哀愁感溢れるもの。トロンボーンのファンクネスを増幅する。
 
この盤、ブルーノート・レーベルで、フラーのリーダー作として4枚目に作成されたものなんですが、録音当時、何故かお蔵入りになっています。でも何回聴いても、お蔵入りの理由が判らない。先の3枚の内容に比肩するものに感じるんですがどうでしょう。ハンプトンについてはこの盤での参加が唯一のブルーノート・レーベルでの演奏。もっと、このフラーとハンプトンの2トロンボーンの作品を聴いてみたかったですね。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年6月23日 (日曜日)

ボーンとバリサクの低音の魅力

未だに、九州北部、中四国、そして近畿地方は梅雨入りしていないが、ここ千葉県北西部地方では昨日から今日にかけて、梅雨らしいドンヨリとした曇り空とイライラするほどの湿気。時に雨が降り、ドンヨリとした曇り空が戻ってくる。もともと子供の頃から、梅雨は大嫌い。早く梅雨が明けないかなあ。

梅雨時には、ゆったりとした気分で聴けるジャズ盤を選択することが多くなる。今日の選盤は、Curtis Fuller『Bone & Bari』(写真左)。1957年8月の録音。ブルーノート・レーベルの1572番。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb), Tate Houston (bs), Sonny Clark (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。パーソネルを確認するだけで出てくる音に期待感が高まる。
 
タイトルの「Bone」は、Trombone(ボーン)の「Bone」、「Bari」は、Baritone Sax(バリサク)の「Bari」。タイトル通り、この盤は、テート・ヒューストンのバリサクとカーティス・フラーのボーンの2管フロントが特徴。どちらも低音が魅力の楽器なのだが、このボーンとバリサクが奏でる「低音の魅力」がこの盤の最大の魅力である。
 
 
Bone-and-bari
 
 
1曲目「Algonquin」や3曲目「Bone and Bari」の元気な演奏では、トロンボーンとバリサク、どちらの低音も切れ味良く、フレーズも流麗なので、低音のユニゾン&ハーモニーながら、重たさは全く感じ無い。逆に清々しさ感じるほどだ。5曲目「Again」は、トロンボーンとバリサクのホンワカほのぼのとした低音の相乗効果が醸し出すメロウな雰囲気が実に良い。
 
バックのリズム・セクションの存在も隅に置けない。ピアノにソニー・クラーク。コロコロ転がる様な聴き心地の良いマイナーなフレーズの陰に、そこはかとなく漂うファンキー&ブルージーな感覚。このソニー・クラークのピアノのバッキングが、この盤の全体的なトーンを「ファンキーでブルージーなもの」にしている。ベースにチェンバース、ドラムにテイラーが控え、鉄壁のリズム・セクションである。 
 
これだけ魅力的な内容を備えているのにもかかわらず、人気はイマイチで、知る人ぞ知る隠れ好盤の評価に甘んじている。どうも、ブルーノート・レーベルの標準からは外れる、ちょっとアンニュイなアルバム・ジャケットがちょっと人気の足を引っ張っているのかもしれないなあ。最後に、1957年のフラーは「よく鳴る」。この盤でもフラーのトロンボーンはとても好調に「よく鳴って」いる。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年6月21日 (金曜日)

日本人の向井滋春、大健闘

フュージョン・ジャズに対する評価は厳しいものが多い。時代の徒花だの、一時の気の迷いだの、電気楽器中心のソフト&メロウなジャズは駄目で、やっぱり純ジャズが良いね、などという声もある。しかし、である。ちゃんと聴けば、フュージョン・ジャズにも優れた盤が多くあるのだ。電気楽器だって、電気楽器なりの繊細なニュアンスがしっかり出る。アコースティック楽器が唯一、というのはちょっと違う。

向井滋春『Pleasure』(写真左)。1980年4月の録音。ちなみにパーソネルは、向井滋春 (tb), 松岡直也 (key), Warren Bernhardt (key), Jorge Dalt (key), 川崎燎 (g), Jeff Mironov (g), Neil Jason (b), Steve Gadd (ds), Raphael Crus (per), Nana Vasconcellos (per), Ed Walsh (key,prog)。いやはや、このパーソネル、振り返って見れば、錚々たるメンバーではないか。
 
松岡直也プロデュースによるニューヨークでのレコーディング。先方で待ち構えるのは錚々たるメンバー。その中でとりわけ目立っているのが「スティーヴ・ガッド」。フュージョン・ドラムの第一人者、スクエアで縦ノリなドラミングが唯一無二の個性で、ワンフレーズ聴けば「ガッド」と判る。この『Pleasure』でも、冒頭の「Dragon Fanatic」の出だしのドラムの音を聴くだけで「ガッド」と判る個性的なドラミング。
 
 
Pleasure-mukai
 
 
リーダーのトロンボーン奏者、向井も負けていない。ブラジリアン&ラテン・フュージョンなフレーズをグイグイ展開する。ガッドのドラムのノリにしっかり乗って、トロンボーンを吹きまくる。トロンボーンはジャズの中では難しい楽器。音のエッジが丸く、音の瞬発力が弱い。トランペットやサックスみたいにブワーッと吹き上げることが出来ない。そこで向井は流麗なブラジリアン&ラテン・フレーズを吹きまくることで、存在感を維持することに成功している。
 
逆に、ドラムがガッドで良かった、と思う。ガッドのドラミングはメリハリとエッジが効いていて、ダイナミズムに優れる。つまりトロンボーンと正反対の音の性格をしている。このガッドのドラムと向井のトロンボーンの対比が実に「きまっている」。この盤の肝はこの「対比」だろう。そして、この「対比」をしっかり支えるバックには、バーンハート&ダルトのキーボード、ミロノフのギター、ヴァスコンセロスのパーカッション、ジェイスンのベース等が控える。無敵のフォーメーション。
 
それぞれの演奏曲もメリハリがしっかり効いていて、聴き応えがある。電気楽器もそれぞれ、電気楽器なりの素敵な音が魅力的で、アコースティック楽器の演奏には無い、電気楽器ならではの個性的な音がこの盤に充満している。文字で表現するのは難しい。自らの耳で聴いて欲しい。キーボードの松岡はプロデューサー兼務。名うての米国のフュージョン・ジャズメンの中で、純粋に演奏者として、日本人は向井ほぼ1人。向井滋春、大健闘である。
 
 
 
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2019年6月16日 (日曜日)

これはハードバップど真ん中

今日は昨日の雨とは打って変わって、ほぼ快晴の一日。風は強く日差しも強く、気温は30度を超えて真夏日に。風があって心地良いと油断していると、水分補給が疎かになる。気をつけなければ。で、これだけ気温が上がると、ほんわかホノボノなジャズが聴きたい。ほんわかホノボノなジャズと言えば「トロンボーン・ジャズ」。
 
『Curtis Fuller Volume 3』(写真左)。1957年12月の録音。ブルーノートの1583番。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb), Art Farmer (tp), Sonny Clark (p), George Tucker (b), Louis Hayes (ds)。ファーマーのトランペットとの2管フロント。ブルーノートらしい、若手〜中堅どころの精鋭を揃えた、充実のパーソネルである。切れ味良く、活きの良い典型的なハードバップが展開されている。

何か革新的なことをやっている訳では無いんだが、充実した演奏内容。フラーのトロンボーンは、ジャズを感じさせる濁りや重厚感が個性。決してテクニックに走らず、音のふくよかさ、フレーズの聴き心地の良さを前面に押し出したフラーのトロンボーンは聴き心地は満点。ファーマーのトランペットは、フラーのトロンボーンと相性が良い。後に「ジャズテット」のメンバーとして活動を共にしたくらいだ。
 
 
Curtis-fuller-vol3
 
 
ファーマーのトランペットは暖かい。ほんわかエッジの丸いトランペットの響きは耳に優しい。そして、クラークのピアノが効いている。クラークのピアノは良く回る右手のフレーズと、そこはかとなく漂う濃厚なファンクネスが個性。このピアノのファンクネスがこの「ほんわかフロント2管」の音をアーバンでブルージーな雰囲気にドップリと染め上げるのだ。
 
収録されたどの曲も良い内容。冒頭の「Little Messenger」は、ルイス・ヘイズのスネア連打から始まる、ジャズ・メッセンジャーズ風のフロント2管の音の響きも心地良いハードバップ。ソニー・クラークのピアノがファンクネスを供給する。左手のブロックコードのファンキーな響きはホレス・シルヴァーを想起する。しかし、シルヴァーよりマイナー調。どっぷりとアーバンでブルージーな雰囲気がこれまた「ジャジー」。
 
さすがはブルーノート・レーベル、さすがはハードバップのお宝ザクザクの「1500番台」。ハードバップど真ん中な演奏の数々に思わず聴き惚れてしまいます。最後にアルバムのタイトル「Volume 3」の表記についてですが、ジャズ者初心者の頃、「Volume 1」や「Volume 2」を探したのを懐かしく思い出しますが、単にブルーノートからリリースしたフラーの3作目、という意味だそう。意外とブルーノートってアルバム・タイトルに拘らないところがあって、これはこれで面白いエピソードです。
 
 
 
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2019年5月15日 (水曜日)

ブルックマイヤーの決定盤です

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では、この初夏の季節はトロンボーン・ジャズの季節である。5月のGWが終わって、グッと気温が上がって湿度が上がってきたら、毎年、なんだかトロンボーン・ジャズが聴きたくなってくる。不思議なことだが、決まって毎年である。あのトロンボーンのホンワカ、ホノボノととした音色が、僕の中ではこの初夏の季節にぴったりフィットするのかもしれない。
 
トロンボーン・ジャズの名手と言えば、J.J.ジョンソン、そして、カーティス・フラー。僕の中ではこの2人が圧倒的な存在。そして、続くは「ボブ・ブルックマイヤー(Bob Brookmeyer)」かな。1929年、カンザスシティー生まれ。2011年に鬼籍に入っている。1954年にデビュー作をリリースしてから、毎年一枚のペースでリーダー作をリリース。しかし、1965年から1977年までブランクがある。
 
西海岸でスタジオ・ミュージシャンになり、アルコール依存症に陥っていた。しかし、この依存症を見事克服し、NYに戻っている。復活を遂げた時点での素晴らしいライブ録音がある。『The Bob Brookmeyer Small Band』(写真左)。1978年7月、Sandy's Jazz Revivalでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Bob Brookmeyer (tb), Jack Wilkins (g), Michael Moore (b), Joe LaBarbera (ds)。
 
 
Bob-brookmeyer-small-band  
 
 
マサチューセッツ州ビバリーのナイトクラブでのライブ録音。このライブ盤は、リリース当時LP2枚組。トータル時間約2時間弱のボリューム。スモール・バンドといっても、編成はギター・トリオをバックにした、ブルックマイヤーのワンホーン編成。ブルックマイヤーのトロンボーンの技と力量を心ゆくまで堪能出来る。ソロ、デュオ、トリオ、ワンホーン・カルテット。様々な編成の演奏が楽しめる。

バックのリズム・セクションの演奏レベルも高い。ドラムのラバーベラの音が素晴らしい。ベースのムーアの音も良い。味のあるウィルキンスのギターも捨てがたい。いずれの楽器もブルックマイヤーのトロンボーンとの相性はとても良い。よくこれだけの人選をしたもんだ。ブルックマイヤーのトロンボーンの良さを惹き立てる。
 
J.J.ジョンソンほどでは無いが、ブルックマイヤーも相当に上手い。硬軟自在、緩急自在、強弱自在。しかも、演奏自体のアレンジがまた良い。とりわけブルックマイヤーの歌心が最大限に表現されている。トータル時間2時間弱が全く飽きない。このLP2枚組のライブ盤で、ブルックマイヤーのトロンボーンの全てが理解出来る。そんなライブ好盤である。
 
 
 
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2019年5月10日 (金曜日)

ジャズ・トロンボーンの第一人者

初夏の季節にジャズ・トロンボーンの音が良く似合う。ということで、この初夏の季節にジャズ・トロンボーン盤を聴きまくっている私こと「松和のマスター」。ホンワカ、ホノボノなトロンボーンの音色。それでいて、速いアドリブ・フレーズもいける。しかも魅惑的な低音の響きが堪らない。
 
そんなジャズ・トロンボーン、ジャズ入門書やジャズ盤紹介本で真っ先に出てくるジャズマンの名前が「J.J.Johnson(略してJ.J.)」。ジャズ・トロンボーンと言えば「J.J.ジョンソン」が最高のトロンボーン奏者と言うのが定番。J.J.は1924年生まれ。2001年に77歳で他界。スイング時代から頭角を現し、特に1950年代、ビ・バップ〜ハードバップ期に活躍。その「光速フレージング」がJ.J.の代名詞で、わざわざジャケット上に「バルブトロンボーンに非ず」との注記まで付けられた位である。
 
活動期間は1966年から77年までの11年間のブランクを挟んで、大きく前後半の2つに分かれる。しかし、前後半どちらの活動時期でも、J.J.のブロウ・スタイルは「ビ・バップ」。速いフレーズも緩やかなフレーズも、どちらも明かな「ビ・バップ」の音色がする。J.J.はバップなトロンボーンから発展することも、変化することも無かった。J.J.は、バップなトロボーンを深く深く掘り下げた。そして、トロボーン奏者の第一人者となった。
 
 
Quintergy-jj  

 
J.J.Johnson『Quintergy』(写真左)。1988年7月、NYのVillage Vanguardでのライブ録音。ちなみにパーソネルは、J. J. Johnson (tb), Ralph Moore (ts), Stanley Cowell (p), Rufus Reid (b), Victor Lewis (ds)。20年以上も西海岸でスタジオ・ワークに勤しんでいたJ.J.が、久々にVillage Vanguardに出演、本格的なジャズ活動を再開した瞬間を捉えたライブ盤である。
 
J.J.のトロンボーンとムーアのテナーの2管フロント。バックはカウエルのピアノにリードのベース、ルイスのドラムという、ネオ・ハードバップの音色が芳しい、職人芸なリズム・セクション。J.J.以外はネオ・ハードバップ期に現れた、次世代を担うであろう若手ジャズメンで、そんな新しい響きのするリズム・セクションを従えながら、J.J.は明らかに「バップ」なトロンボーンを吹きまくっている。
 
このジャズ・トロンボーン盤はアレンジやアンサンブルを楽しむものでは無く、明らかにJ.J.のトロボーンだけを可能な限り堪能することがメインの「J.J.のJ.J.によるJ.J.の為の」ライブ盤である。マイルスのモードな名曲「Nefertiti」などもピックアップ、モーダルな音色にチャレンジしている。当時64歳とは思えない、新しい感覚のジャズ・トロンボーンにも取り組んでいて立派だ。
 
 
 
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2019年5月 9日 (木曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・69

いろいろと異論はあるだろうが、私、松和のマスターにとっては、ジャズ・トロンボーンを愛でるのは、この初夏の季節が一番である。初夏の心地良く暖かな気候の中で聴く、ホンワカ、ホノボノなトロンボーンの音色。かなり心地良く耳に響いて、心が晴れ晴れ。スカッとストレス解消と相成る。
 
ということで、最近、トロンボーンが主役のアルバムを聴きまくっている。ジャズ・トロンボーンの奏者って、数が少ないのだけれど、ジャズの歴史を振り返って、結構、好盤の率が高い。トロンボーンの音色って、ホンワカ、ホノボノしているので、なかなか単体だと印象が薄くなる。そこでアレンジの出番。トロンボーンがメインのジャズ盤って、押し並べて、アレンジが優れている。

『3 Bones And A Quill』(写真左)。1958年の録音。ちなみにパーソネルは、Frank Rehak, Jim Dahl, Jimmy Cleveland (tb), Gene Quill (as), Whitey Mitchell (b), Charlie Persip (ds), Hank Jones, Nat Pierce (p)。リーダー格で、フロントを担当するのが、アルト・サックスのジーン・クイル(写真右)。フィル・ウッズと結成した、2アルト・サックス・ユニット「フィル&クイル」での活動が有名。
 
 
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そして、もう一方のフロントを担当するのが、なんとなんと、ジミー・クリーブランド、ジム・ダール、フランク・リハクという当時最高のトロンボーン奏者3人がフロントを張っているのだ。このトロンボーン3本による、豊かで趣味の良いアンサンブルが、チャーリー・パーカー直系のクイルのアルト・サックスを際立たせている。

演奏自体はハードバップだが、とにかく、トロンボーン3本のユニゾン&ハーモニーのアレンジがとても優れている。加えて、トロンボーン3本それぞれのアドリブ・ソロも端正で流麗。しっかりとフレーズを立たせていて、聴いていてワクワクする。フロントのアルト・サックス、そしてトロンボーン、それぞれの音色はファンキー際立つジャジーな雰囲気が濃厚。
 
選曲も捻りが効いていて、聴いていて楽しい。トロンボーン3管の特徴を生かしたユニークな演奏。癒し系のトロンボーンとクイルの超高速アルトのアンサンブル&チェイスが印象的。演奏自体もアレンジが良く効いていて聴き易い。この初夏の季節、ジャズ喫茶の昼下がりにピッタリの好盤です。
 
 
 
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2019年4月 6日 (土曜日)

今の時代にジャストに響く音

今も昔も、ブルーノート・レーベルの先取性は変わらない。1950年代は、後にジャズ界の中心人物となるジャズマンの若い頃、その才能にいち早く着目して、リーダー作を吹き込ませていた。今から遡るこの10年の間は、コンテンポラリーな純ジャズや他のジャンルとクロスオーバーした現代のフュージョン・ミュージックなど、旧来のジャンルに囚われない、新しい響きのアルバムを多くリリースしている。
 
このアルバムもそんな先取性溢れるアルバムである。Trombone Shorty『Parking Lot Symphony』(写真左)。2017年4月のリリース。ニューオーリンズ出身のトロンボーン奏者&シンガー・ソングライターである「トロンボーン・ショーティ」のブルーノート・レーベル移籍第1弾アルバムである。トロンボーン奏者と一言でいうが、クラプトンなど、ロック界の大御所達のアルバムやツアーに参加するなど、異種格闘技的な活動が目を惹く若手有望株である。
 
この最新作もその内容は只者では無い。ブルーノート・レーベルからのリリースだからといって、純ジャズが展開される訳では無い。様々なジャンルの音楽的要素がごった煮の様に散りばめられているが、洗練されたアレンジによって効果的に融合され、新しい響きのフュージョン・ミュージックに仕上がっていることに驚く。特にブラス・セクションの音の重ね方に個性があって、洗練されたファンクネスの響きが芳しい仕上がりになっている。
 
 
Parking-lot-symphony-trombone-shorty  
 
 
ボーカルものを聴くとR&Bからブラコンな音かとも思うが、そのファンクネスが洗練されシンプルに表現されている分、ライトでお洒落な印象にアレンジされて、耳にスッと入ってくる。ショーティのトロボーンが鳴り響き、アドリブ展開するところなどは、現代の先端のコンテンポラリーな純ジャズな雰囲気が蔓延して心地良い。効果的に電気楽器を使用するところはフュージョン・ジャズの深化形の雰囲気が芳しく、楽器の分厚いユニゾン&ハーモニーはドラマチックで、どこかプログレッシブ・ロックな雰囲気を醸し出す。
 
この盤のどこがジャズなのか、と言われることが多いが、確かにこの盤の音世界はジャズという単独ジャンルに留まっているものでは無い。ジャズを基本にしてはいるが、そこに様々な音楽要素を融合して、今までに無い、新しい響きの音世界を獲得している。個々のどこがどう、という類の盤では無く、演奏全体として、トータルな融合音楽として、この盤に蔓延している旧来のジャンルに囚われない新しい響きについて、十分に評価に値するアルバムであると僕は思う。
 
ファンキーでありソウルフルであるが、決して、旧来のファンキー・ジャズでも無ければ、旧来のソウル・ジャズでも無い。「今」のフュージョン・ミュージックがこの盤に詰まっている。ジャズか否か、という議論はこの盤の前では不毛な議論だろう。僕はこの盤は「良い音楽」だと認識している。さすがブルーノート・レーベルで、ジャケットも素敵。意外とヘビロテになってます。
 
 
 
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2019年2月 7日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・139

ハードバップは演奏時間が長くなった分、それぞれの楽器の演奏を心ゆくまで堪能できる様になった訳だが、加えて、演奏のアレンジにも腕を振るうことが出来るだけの演奏時間の余裕が出来た。ビ・バップの様に短い演奏であれば、アレンジの腕を振るう余裕はほとんど無いのだが、演奏時間が長くなると、様々なアレンジのアイデアを盛り込むことが出来るのだ。

Bob Brookmeyer『The Street Swingers』(写真左)。1957年12月の録音。ちなみにパーソネルは、    Bob Brookmeyer (valve-tb, p), Jim Hall, Jimmy Raney (g), Bill Crow (b), Osie Johnson (ds)。バルブ・トロンボーンにギターが2台、そして、ベースとドラム。ピアノはトロンボーンのブルックマイヤーが兼任する。かなりチャレンジャブルな構成である。

聴いて見ると、冒頭の「Arrowhead」からチャレンジャブルな展開に思わずニンマリする。トロンボーンとギターが洗練された少ない音で会話を展開する。トロンボーンとギターが洗練された少ない音でユニゾン&ハーモニーを奏でる。トロンボーンとギターが木訥とした少ない旋律でアドリブ展開する。この洗練された少ない音を前提としたアレンジが絶妙である。
 

The_street_swingers

 
ブルックマイヤーは、バルブ・トロンボーン奏者で、ピアノも弾くという才人。加えて、アレンジにも腕を振るうとあって、このアルバムの格調高い室内楽を思わせる上品なアレンジが実にチャレンジャブルで「粋」。音が少ない分、演奏に「間」が出来るのだが、この「間」の存在が絶妙。この「間」が適度な緊張感と適度な余裕をもたらして、聴く耳にとても心地良いインプロビゼーションが展開されている。

ジム・ホールとレイニーのギターも隅に置けない。相対するのがトロンボーンなので、甘い雰囲気に流れていきそうなのだが、ホールとレイニーのギターはそうはいかない。丸いトロンボーンの音に、鋭角に硬派に切れ込むようなフレーズが斬新である。流麗とは正反対の、ゴツゴツとした木訥とした骨太なアドリブ・フレーズ。気合い十分である。

バルブ・トロンボーンにギターが2台がフロントで、アレンジ次第な一枚であるが、この盤は「アレンジの勝利」。ブルックマイヤーの思慮深い、考え抜いたハードバップがとても素敵に響く。このアレンジが1957年に実現されていたことに驚く。ジャズって隅に置けないなあ。バリバリ吹きまくるだけがハードバップでは無い。思慮深い思索に富んだハードバップもある。ハードバップは奥が深い。

 
 
東日本大震災から7年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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