2022年8月17日 (水曜日)

優れた「現代のネオ・モード盤」

スティーヴ・デイヴィス(Steve Davis)。1967年4月生まれ、米国マサチューセッツ州出身。今年で55歳。ベテランの域に達したトロンボーン奏者である。リーダー作は1994年以来、平均1〜2年に一枚のペースでリーダー作をリリースし続けている。

1989年には、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズに加入している。若かりし頃からの有望なトロンボーン奏者だったことが判る。サイドマンとしてのアルバム参加も多く、人気のトロンボーン奏者である。が、我が国では、ほとんど無名。Criss Crossレーベルの殆ど専属状態だったので、日本のレコード会社が扱うことも無く、CDショップも直輸入するには、無名であるが故、リスクが高かったのだろう。

僕は、Chick Corea+Originの『Live at The Blue Note』で、サイドマンとして参加している、スティーヴ・デイヴィスを知った。テクニックが確かなトロンボーンで、複雑なモーダル・フレーズを多種多彩に吹き上げるトロンボーンに、ちょっとビックリした思い出がある。また、1997年に結成された「ネオ・ハードバップ」専門のグループ「One for All」のメンバーとしてのプレイも度々耳にしている。

Steve Davis『Bluesthetic』(写真左)。2022年2月、NYでの録音。Smoke Sessions Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Steve Davis (tb), Peter Bernstein (g), Steve Nelson (vib), Geoffrey Keezer (p), Christian McBride (b), Willie Jones III (ds)。トロンボーン+ギター+ヴァイブがフロント3管のセクステット編成。管はスティーヴ・デイヴィスのトロンボーンのみ。あくまで、リーダーのディヴィスのトロンボーンが前面に出るラインナップ。
 

Steve-davisbluesthetic

 
冒頭の「Encouragement」を聴くだけで、これは優れたモード・ジャズの演奏がメインだと判る。前奏の雰囲気などは、1960年代の新主流派の音世界を彷彿とさせるもの。いかにも「モード・ジャズ」的なフレーズの積み重ねで、モード好きの僕などは、この1曲だけでワクワクしてしまう。

確かに、1960年代の新主流派のモーダルな音世界が下敷きにあるのだが、アドリブ・フレーズの展開は「新しい」現代のモード・ジャズ風。ネオ・ハードバップならぬ「ネオ・モード」と言って良い位、新しい響きに満ちている。それでいて、難解なところは無く、スムーズでスインギーで判り易い。全曲、デイヴィスのオリジナル曲で固められているのだが、ディヴィスの作曲の才にも感心する。

これって重要なことで、モードを採用しているので、硬派な純ジャズ風に聴こえるが、フレーズの展開は「流麗」そのもの。それだけ取り出せば、スムース・ジャズと言っても通用するくらいの「滑らかさ」。丸みを帯びて、柔らかい拡がりのある、それでいて音の芯がしっかりとしたトロンボーンの音色。その流麗さについては、ディヴィスのトロンボーンの特徴的な音色が貢献している。

現代のモード・ジャズ、今のモード・ジャズの優れた演奏がこの盤に詰まっている。モーダルなフレーズが芳しいジェフ・キーザーのピアノをメインとしたリズム・セクションも良い演奏で、バンド全体の音を支え、盛り立てている。ギターとヴァイブは、あくまで、ディヴィスのトロンボーンの引き立て役に徹していて清々しい。優れた内容の「現代のモード・ジャズ盤」である。
 
 

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2022年8月 8日 (月曜日)

トロンボーンの「小粋なジャズ」

「小粋なジャズ」盤を求めて、色々と探索している。色々な切り口から「小粋なジャズ」盤の情報を収集しているのだが、Twitterのジャズ盤に関するツイートは貴重な情報源だったりする。時々、こんな盤があるのか、と感じて、音源を検索したりして「小粋なジャズ」盤をゲットしている。

Lawrence Brown『Slide Trombone』(写真左)。1955年1月26日と9月14日の2セッションの録音になる。

ちなみにパーソネルは、1月26日の録音は、Lawrence Brown (tb, arr), Sam Taylor (ts), Leroy Lovett (p), Lloyd Trotman (b), Louis Bellson (ds)。9月14日の録音は、Lawrence Brown (tb), Ralph Burns (ar), Alvin Cohn , Arthur Clarke (ts), Daniel Bank (bs), Ernie Royal , Phillip Sunkel (tp), Hank Jones (p),Wendell Marshall (b), Jo Jones (ds)。

Verveレーベルらしいオールスター・ジャムセッションの様なメンバー編成。ただ、ミュージシャンの名前を見渡すと、9月14日の録音のリズム隊に、ハンク・ジョーンズ、ウェンデル・マーシャル、ジョー・ジョーンズという「馴染みの名前」があるが、その他は、ビ・バップ以降のいわゆる「モダン・ジャズ」を賑わせた名手達では無い。

他は1920年前半生まれのメンバーが多数なので、スイング・ジャズ世代のジャズマン達ということになる。ということで、この盤の演奏の雰囲気は「スイングもしくは中間派」なジャズの音である。
 

Lawrence-brownslide-trombone

 
しかし、モダン・ジャズに親しんだ「ジャズ耳」にも違和感は無い。4ビートのスインギーな聴いて楽しいジャズがてんこ盛りである。スタイルが古かろうが、楽しいジャズには変わりは無い。聴いていて、自然と足でリズムを取って、体が4ビートに横揺れする。

リーダーのローレンス・ブラウンのトロンボーンは個性的。ゴリゴリ、ブリブリな太くて丸い、とても重厚なトロンボーンらしい音で、流麗なフレーズを吹きまくる。あまりに流麗なので、バルブ・トロンボーンかと思うが、タイトルにドーンと「スライド・トロンボーン」とあるので、スライドである(笑)。

スライドでこれだけ速いフレーズを流麗に吹き切るテクニックは相当、高いものがある。加えて、トロンボーンの音色は肉声に近いものがあるが、ローレンス・ブラウンのトロンボーンは歌心も兼ね備えている。唄う様なアドリブ・フレーズは聴いていて、とても心地良い。

バックのメンバーもそれぞれ、質の高い演奏を繰り広げていて、「スイングもしくは中間派」なジャズであるが、ジャズの楽しさの基本をしっかり押さえていて、聴き応えがある。さすが、この時期のVerveレーベルのジャズ盤は、少し古いスタイルのジャズでも質が高い演奏ばかりである。

実は、僕はこの盤を知らなかった。Twitterのジャズ盤に関するツイート「さまさま」である。ジャケットのイラスト(写真左)も、古き良きジャズを彷彿とさせ、ジャジーな趣きがあって良い。そう、この盤、「ジャケ買い」盤でもある。

ツイートを見て「こんな盤、あったんや」と思って、ジャケを見て「これは良さそう」と思い、ゲットして聴いて「これは良い」。「小粋なジャズ」との出会いはいつも突然である。
 
 

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2022年7月15日 (金曜日)

小粋な Herbie Harper Sextet

「小粋なジャズ」を探し当てては聴いている。そもそも「小粋」とはどういう意か。辞書を紐解くと「どことなく粋(気質・態度・身なりなどがさっぱりとあかぬけしていて、しかも色気があること)なこと。洗練されていること」とある。ジャズで言うと、米国のウエストコースト・ジャズ(西海岸ジャズ)がそんな感じかな。洗練されていて、垢抜けていて、仄かな色気がある。うん、米国西海岸ジャズがズバリかな(笑)。

『Herbie Harper Sextet』(写真左)。1957年7月、でハリウッドでの録音。米国西海岸ジャズの御用達レーベル「Mode」からのリリース。ちなみにパーソネルは、Herbie Harper (tb), Jay Core (ts), Marty Paich (p), Howard Roberts (g), Red Mitchell (b), Frankie Capp, Mel Lewis (ds)。ドラムだけ複数人で分担しているが、演奏の基本編成は「セクステット(6重奏団)」。

リーダーのハービー・ハーパーはトロンボーン奏者。比較的地味な存在で、リーダー作も10作に届かない「寡作」のジャズマン。特に、この『Herbie Harper Sextet』を録音した1957年以降は、スタジオ・ミュージシャンとして活動した為、逝去する2012年1月まで、リーダー盤は2枚程度。これでは、なかなか印象に残らない。僕はハーパーの名前については、CDリイシュー時、2007年に、初めて知った。
 

Herbie-harper-sextet_1

 
しかし、このハービー・ハーパーのトロンボーン、なかなか良い感じなのだから面白い。端正な吹きっぷり。安定したピッチ。流麗な節回し。米国西海岸ジャズの特徴である、ほど良くアレンジされた、鑑賞に耐える「聴かせる」ジャズなバッキングに乗って、明るく流麗なトロンボーンが乱舞する。西海岸ジャズらしく、ファンクネスは薄ら、ユニゾン&ハーモニー、そして、アンサンブルが良くアレンジされていて、聴いていて楽しい。

バックのパーソネルも、当時の米国西海岸ジャズの名手ぞろい。テナー・サックスのジェイ・コアだけが無名。ペイチのピアノも滋味溢れる、実に小粋なバッキングでフロント2管を盛り上げる。レッド・ミッチェルのベースは演奏全体のベースラインをグイグイ牽引する。ドラムの2人も洒落たドラミングで、演奏の良いアクセントになっている。

この盤、聴いて思うのは、米国西海岸ジャズの良いところをしっかり捉えた好盤だということ。ハービー・ハーパーのトロンボーンも良い感じ。片割れは無名のテナーマンではあるが、2管フロントもそこそこ良い感じ。「小粋なジャズ」盤とは、こういう盤のことを言うのだろう。時々、繰り返して聴く、長いレンジのヘビロテ盤。米国西海岸ジャズ、特に「Mode」レーベルにそういう「小粋なジャズ」盤が潜んでいるのだ。Mode」レーベルは隅に置けない。
 
 

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2022年4月 4日 (月曜日)

最近出会った小粋なジャズ盤・3

ハービー・ハンコックが主宰してヒットしたグループ「V.S.O.P.」の余波だったのか、1970年代終わりから、徐々にメインストリーム指向の純ジャズの録音が復活し出した。特に、日本発のレーベルはその機会を捉え、米国に渡って、ベテラン・ジャズマン中心に、意外と小粋な「ハードバップ盤」を録音・リリースしている。

Benny Golson Quintet Feat. Curtis Fuller『One More Mem'ry』(写真左)。August 19 and 20 1981年8月19, 20日、LAの「A&M Studios」での録音。ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Curtis Fuller (tb), Bill Mays (ac-p, el-p), Bob Magnusson (ac-b, el-b), Roy McCrdy (ds)。ゴルソンのテナー・サックスとフラーのトロンボーンがフロント2管のクインテット編成。

渋いテナー・サックス奏者&コンポーザー/アレンジャーのベニー・ゴルソンが、1959年から1962年にかけて、ジャズ・グループ「The Jazztet(ジャズテット)」を組んでいた相棒カーティス・フラーを迎えて、日本の「Baystate」に吹込んだハードバップ盤。1981年というフュージョン・ジャズ全盛期に吹き込まれたハードバップ盤で、聴き易さに重点を置いた録音になっている。

タップリとかかったエコーがちょっと気持ち悪いが、そこそこ良い音で録れている。さすが伝説の「ジャズテット」のフロントの2人、ユニゾン&ハーモニーがバッチリ填まっている。控えめではあるが、ゴルソン・ハーモニーもしっかり聴くことが出来て良好。さすがにゴルソン・ハーモニーは強烈で、聴けば直ぐにそれと判るハーモニーは素晴らしい個性である。
 

One-more-memry_golson_fuller

 
フラーのトロンボーンが好調である。良い音出している。この人のトロンボーンって、攻撃的では無くて、どこかホンワリ丸くて、中音域が充実した、実にほのぼのとしたトロンボーン。しかし、テクニックは抜群で、速く難度の高いフレーズもいとも容易く吹き切ってしまう。この盤でのフラーは何時になく「力強い」。ちょっとマッチョなトロンボーンに驚く。

加えて、ゴルソンのテナーが力強い。豪快で骨太でストレートに吹き上げる。こんなに力感溢れるテナーを吹く人だったっけ。1950年代の吹奏は「うねうねテナー」なんて揶揄されていた時もあるんで、この1981年の録音時のゴルソンのテナーの力強さにはビックリした。録音当時、ゴルソンは52歳。脂の乗りきったベテランの時期で、一番、充実していた頃なのかもしれない。

超有名曲「Five Spot After Dark」の再演も収録されている。フラーとゴルソンの力強い吹き回しのお陰で、オリジナルとは違った印象を受ける。力強く切れ味鋭い「ファイブ・スポット・アフター・ダーク」。オリジナルは、ちょっと霞がかかったような、深夜でアーバンな雰囲気が特徴だったのだが、今回の再演はその逆、とも言える力強さ。さしずめ「1980年代版アフター・ダーク」である。でも、内容は端正で熱演。出来は上々だと思う。

ピアノとベース、そしてドラムのリズム隊が、如何にも1980年代って感じで、若干、緩急・抑揚・陰影に乏しいところがあるが(特にエレ楽器にそれが言える)、ゴルソンとフラーの力強い吹き回しが断然上回っていて気にならない。当時の日本発レーベルでの録音としては、内容良好なものだと言える。ジャケットはイマイチだけど...。「小粋なジャズ」として、時々聴くのにうってつけの内容。好盤です。
 
 
 

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2021年11月 3日 (水曜日)

無名だが粋なブルックマイヤー盤

音楽のサブスク・サイトを彷徨っていて、ボブ・ブルックマイヤー(Bob Brookmeyer)の、とあるリーダー作に出会った。これは今までに聴いたことが無い。しかも、調べてみると、2003年の作品とのこと。確か、ブルックマイヤーって、2011年に亡くなっているので、彼のかなり晩年の、74歳の時点での録音になる。

ボブ・ブルックマイヤーは、トロンボーン & ピアノ奏者。1929年、ミズーリ州カンザスシティ生まれ。西海岸ジャズの重鎮、ジェリー・マリガンのカルテットに在籍して、その名が知られることとなる。1960年代終盤にはスタジオ・ミュージシャンになるが、1979年のサド=メルのジャズ・オケの音楽監督にてジャズ界にカムバック。

彼は生涯で8つのグラミー賞にノミネートされていて、逝去する直前の2011年、 Vanguard Jazz Orchestra『Forever Lasting』が、8回目のグラミー賞ノミネートだった。

Bob Brookmeyer『Stay Out Of The Sun』(写真左)。2003年7月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bob Brookmeyer (valve-tb, p), Larry Koonse (g), Tom Warrington (b), Michael Stephans (ds)。リーダーのブルックマイヤーが、バブル・トロボーンとピアノを兼ねた、ギター入りのカルテット編成、楽器的にはクインテットな編成になっている。
 

 Stay-out-of-the-sun-1

 
ブルックマイヤーが演奏する「バルブ・トロンボーン」は、スライドではなく、トランペットのように3本のピストンを備えたトロンボーン。トロンボーンらしい輝かしくウォームな音色を持ちながら、バルブの操作による切れの良い運動性を得ることが出来るのが特徴なのだが、この特徴がこの盤でも遺憾なく発揮されている。とにかく、トロンボーンの音が柔らかく暖かく優しく、それでいてフレーズが流麗で切れ味が良い。聴いていて、とても心地良い響きに魅了される。

全9曲中、3曲がスタンダード曲、残りの6曲がブルックマイヤー自身、もしくはバンド・メンバーの作曲。スタンダード曲もオリジナル曲も、どちらも演奏の出来は上々。ブルックマイヤーのトロンボーンは柔らかく暖かく優しく、クーンズのギターは硬質で切れ味良く、ブルックマイヤーのトロンボーンとの対比が抜群。

ユニゾン&ハーモニーも心地良く、落ち着いた、味のある「粋」な演奏が盤全体に展開される。ブルックマイヤーのピアノも味わい深く、ワリントン+ステファンのリズム隊はソリッドで堅実。

まず、書籍やネットでのジャズ盤紹介で、取り上げられたところは見たことが無いが、この盤、なかなかジャジーで「粋」で、ジャズ・トロンボーンの音をとことん楽しめる、聴いていて、これはジャズやなあ、と思わず演奏に身を委ねてしまう好盤である。
 
 
 
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2021年9月28日 (火曜日)

ゴルソン・ハーモニーは不滅です

最近のアルバム音源のサブスク・サイトは隅に置けない。CDでリイシューされる音源については、かなりの確率でサブスク・サイトにアップされる。これが実に便利。CDのオンライン・ショップを徘徊する必要も無く、聴こうと思ったらすぐに聴ける。しかも、音質についてはダウンロード音源でありながら、ハイレゾ環境を組めば、CD音源並みの高音質で提供されるのだから、これは本当に便利だ。

Benny Golson Quintet Feat. Curtis Fuller『One More Mem'ry』(写真)。1981年8月19, 20日、ロサンゼルスでの録音。日本の Baystateレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Benny Golson (ts), Curtis Fuller (tb), Bill Mays (p), Bob Magnusson (b), Roy McCurdy (ds)。ジャズテットを組んでいたベニー・ゴルソンとカーティス・フラーが1981年に西海岸で録音した再会セッション。フロント2管のクインテット編成。

この盤は懐かしい。この盤はLPでリアルタイムに聴いている。1981年の『カルフォルニア・メッセージ』の続編で、ゴルソン=フラーの名コンビ復活の第2弾という触れ込みで、リリースされたと記憶している。ロサンゼルスでの録音で、演奏の雰囲気は「米国西海岸ジャズ」。キャッチャーな楽曲を、ポップで洒落たアレンジで「聴かせる」ジャズを展開している。
 

One-more-memry-1

 
全7曲中、6曲がゴルソン作。1曲のみフラーの作となる。1曲目の「One More Mem'ry」は、我が国の童謡「月の砂漠」をモチーフにしたゴルソンのオリジナル曲。ゴルソン作曲の名曲「Five Spot After Dark」も再演されている。ゴルソン=フラーの名コンビ、そして、元ジャズ・テットとくれば、「ゴルソン・ハーモニー」は当然、反映されている。全編、芳しき「ゴルソン・ハーモニー」の調べに酔いしれる。

1981年の録音なので、バックのリズム・セクションの音は、どちらかと言えば「米国西海岸フュージョン」の雰囲気。ボブ・マグナッソンのベースはアタッチメントで電気的に増幅された音だが、ピッチがまずまず合っているので、聴き難くは無い。逆に、1970年代から1980年代前半の「時代のベース音」という観点で懐かしくもあり、今の耳で聴き直すと毛嫌いするほどでは無い。これはこれでアリだと思う。

ビル・メイズのピアノもスウィンギーでよく唄っている。フレーズに翳りが無く、米国西海岸ジャズの爽やかさをしっかりと踏襲している。前作『カルフォルニア・メッセージ』と同様、なかなかの内容だと思います。1980年代初頭、フュージョン全盛時代に爽やかで聴き心地の良いコンテンポラリーな純ジャズ。意外とイケます。そして、ゴルソン・ハーモニーは不滅、です。
 
 
 
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2021年7月27日 (火曜日)

パブロのJ.A.T.Pの極上ライヴ

パブロ・レコード(Pablo Records)は1973年にノーマン・グランツによって設立されたジャズ・レコード・レーベル。グランツは、1956年にヴァーヴ・レコード(Verve Records)も設立している。

グランツは、ジャズ・コンサートの先がけとなるJ.A.T.P(Jazz at the Philharmonic)を開催し、このヴァーヴ・レコードにて実況録音盤を制作。このJ.A.T.P.にはオスカー・ピーターソン、ビリー・ホリデイ、レスター・ヤング、ベン・ウェブスター、エラ・フィッツジェラルド、チャーリー・パーカー、スタン・ゲッツなど数々のビッグ・ネームが参加し、人気の企画盤シリーズとなった。

『The Exciting Battle : J.A.T.P Stockholm '55』(写真)。1955年2月、スウェーデンのストックホルムでのライヴ録音。ノーマン・グランツ率いるJ.A.T.P(Jazz At The Philharmonic)のライヴ音源。パブロ・レーベルからのリリース。

ちなみにパーソネルは、Ray Brown (b), Louis Bellson (ds), Herb Ellis (g), Oscar Peterson (p), Flip Phillips (ts), Bill Harris (tb), Dizzy Gillespie, Roy Eldridge (tp)。ビ・バップのスターから、1940年代終盤に頭角を現したハードバップ初期の人気ジャズマンがずらりと並ぶ。
 

The-exciting-battle
 

1955年の録音ということは、ハードバップど真ん中の時代だが、演奏内容は、スイング・ジャズから、ビ・バップを省略して、ハードバップに行き着いたような、スイング・ジャズのマナーを色濃く残したハードバップ。いわゆる「中間派」な演奏内容である。この「中間派」の音は実にジャズっぽい。ビ・バップの様に瞬間芸的なものでも無く、ハードバップの最先端の様に尖ったものでも無い。聴き易いジャズである。

ルイ・ベルソンのドラム、ビル・ハリスのトロンボーン、デジー・ガレスピー&ロイ・エルドリッジのトランペットが特に元気。冒頭「Little David」での長時間のベルソンのドラム・ソロは充実していて、聴いていて飽きが来ない。ハリスのトロンボーンは、やたらトロンボーンらしい、ブラスのブルブル震える良い音で吹きまくっている。ガレスピー&エルドリッジのトランペットはブリリアントで躍動的。

パブロ・レーベルの総帥プロデューサーのノーマン・グランツ、さすがにJ.A.T.Pは自らが企画〜立ち上げをし、ヴァーヴ・レーベル時代にガンガン録音しただけあって、残った音源はどんな内容で、どんな感じで残っているのか、良く判っていたのだろう。パブロ・レーベルを立ち上げて間もなく、満を持してこのライヴ盤をリリースしている。「したたか」やなあ(笑)。
 
 
 
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  ・Santana『Inner Secrets』1978

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2021.06.10 更新。

  ・イエスの原点となるアルバム

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  ・この熱い魂を伝えたいんや

 
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2021年7月 7日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・212

昨日、サヴォイ・レーベルの代表的なヒット作の一枚として、Milt Jackson『Opus De Jazz』をご紹介した。が、サヴォイ・レーベルの代表的なヒット作はまだまだある。

例えば、昨日の『Opus De Jazz』の名が挙がれば、必ず、続いてそのタイトルが挙がるアルバムがある。このアルバムも、サヴォイ・レーベルお得意の音「リラックスした正統でハードバップな演奏」がしっかり記録されている「サヴォイ名盤」の一枚。

Curtis Fuller『Blues-ette』(写真左)。1959年5月21日、NJのVan Gelder Studio での録音。プロデューサーはオジー・カディナ。ちなみにパーソネルは、Curtis Fuller (tb), Benny Golson (ts), Tommy Flanagan (p), Jimmy Garrison (b), Al Harewood (ds)。カーティス・フラーのトロンボーンとベニー・ゴルソンのテナー・サックス、2管フロントのクインテット編成。

この盤、冒頭の名曲「Five Spot After Dark」にとどめを刺す。ベニー・ゴルソン作曲の名曲で、ジャジーでブルージーでアーバンな雰囲気がたまらない。そんな名曲に、これまたベニー・ゴルソンの専売特許である「ゴルソン・ハーモニー」のアレンジを施していて、これがまた、この名曲の底に流れるファンクネスを強調して、それはそれは、実にジャズらしい音の響きを提供してくれる。
 

Blues_ette

 
この「ゴルソン・ハーモニー」って、トロンボーンとテナー・サックスのユニゾン&ハーモニーが一番フィットしていて、そのアレンジの効果を一番発揮した楽曲がこの「Five Spot After Dark」だと思っている。とにかく、この曲の持つ「メロディー・ラインとハーモニーの美しさ」は特筆もの。不思議と「都会の夜の雰囲気」をビンビンに感じる楽曲で、僕はこの曲が大のお気に入りです。

そして、名盤には必ず優れた「リズム隊」がバックに控えている。この盤のリズム隊は、トミフラのピアノ、ギャリソンのベース、ヘアウッドのドラムなのだが、これが実に「良い」。

トミフラの落ち着いていて小粋なピアノのバッキングは、まるで「スパイス」のよう。演奏の中でキラリと光るフレーズを供給していて、これが良いアクセントとなっている。ギャリソンの骨太ベースは演奏の安定感に大いに貢献しているし、ヘアウッドのドラムは、決してフロントの邪魔をしないが、小粋なビートでしっかりとフロントを支え、鼓舞する職人芸的ドラミングが良い感じ。

ルディ・ヴァン・ゲルダーの録音で、実に「ハードバップらしい」音をしている。ジャケもサヴォイらしいもの。この盤も、初めて聴いて良し、聴き直して良しと、この盤もジャズ者全ての方にお勧めの名盤です。
 
 
 
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2021年4月28日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・203

ブルーノート・レーベルは、ジャズのメインとなった老舗レーベル。1950年代から1970年代半ばにかけて、ジャズの演奏トレンドをいち早く押さえ、有望なジャズマンを発掘し、いち早くリーダー作を作成させ、ジャズの要となる音をしっかりと音源に残した、ジャズの重要レーベルなのだ。

しかし、1500番台、そして4000番台、4100番台のカタログを見ていると、ジャズの演奏トレンド毎に重要となるジャズマンの秀作かズラリと並ぶ中で、ジャズの演奏自体を楽しむ、ジャズの本質を愛でることを目的としているような、セールスやトレンドを超越した、聴いて楽しい、聴いて心地良い「モダン・ジャズ」盤が幾枚か存在する。

Bennie Green『Walkin' & Talkin'』(写真左)。ブルーノートの4010番。1959年1月25日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb), Eddie Williams (ts), Gildo Mahones (p), George Tucker (b), Al Dreares (ds)。リーダーのベニー・グリーンのトロンボーンとエディ・ウィリアムスのテナー2管がフロントのクインテット構成。

メンバーの名前を見渡すと、リーダーのベニー・グリーンの名前以外、他の盤ではあまり聴かない名前ばかり。演奏を聴くと、それなりのレベルのジャズマンばかりなので、恐らく、ベニー・グリーンの気心知れた仲間で固めたのであろう。スイング・ジャズでも無い、ハードバップでもない、その中間の「モダン・ジャズ」な演奏が実に良い。
 

Walkin-talkin

 
冒頭の「The Shouter」を聴くだけで、この盤の演奏は「絶対に間違い無い」と確信する。ゆったりとしたテンポに乗って、エッジの丸い、ふくよかなトロンボーンとテナーのユニゾン&ハーモニーが長閑に響き、ラフではあるが、グルーヴ感濃厚なリズム&ビートが耳に心地良く響く。

あくせくしない、尖らない、誰よりも自分たちが、一番「モダン・ジャズ」な演奏を楽しんでいる、そんな穏やかであるが、ダンディズム溢れる演奏は魅力満載。特にリズム隊のゆったりとうねるようなグルーヴ感溢れるビートは癖になる。

そんなミッド・テンポがメインの演奏の中で、ベニー・グリーンのトロンボーンが良い雰囲気を醸し出す。決して速いフレーズを吹く訳では無い、ミッド・テンポの中で、ほんわか長閑にトロンボーンのブラスを響かせる。アドリブ・フレーズがどれも印象的で、ベニー・グリーンのベスト・プレイを集めた様な充実したパフォーマンスにしっかり耳を奪われる。

ベニー・グリーンが、ブルーノート・レーベルに残した4枚のリーダー作の中でも、とりわけグルーヴィーでアーシーでスインギーな内容は充実度満点。ブルーノートの4000番台のカタログの中で異彩を放つ、聴いて楽しい、聴いて心地良い「モダン・ジャズ」盤である。
 
 
 

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2021年3月23日 (火曜日)

聴けば聴くほど味わい深い

ブルーノートには総帥プロデューサーのアルフレッド・ライオンの他に名物男が幾人かいる。Bennie Green(ベニー・グリーン)もそんな1人。この人のリーダー作は、いずれも録音当時のジャズのトレンドや志向について全く意に介さない、というか、自らのスタイルを貫き通したジャズマンで、ブルーノートの1500番台の中で「異質な存在」である。

Bennie Green『Soul Stirrin'』(写真左)。ブルーノートの1599番。1958年4月28日の録音。ちなみにパーソネルは、Bennie Green (tb, vo), Gene Ammons, Billy Root (ts), Sonny Clark (p), Ike Isaacs (b), Elvin Jones (ds), Babs Gonzales (vo)。トロンボーン奏者のベニー・グリーンのリーダー作。トロンボーンとテナー・サックス2本のフロント3管の変則セクステット編成にボーカルが3曲に加わる。

ベニー・グリーンは1923年生まれなので、録音当時35歳。ジャズマンとしては中堅の若手といったところで、決して歳を取っている方では無い。むしろ若い方だ。しかし、出てくる音は当時としても「古い」。スイング時代のトロンボーンのマナ−で吹きまくるのだ。スインギーで唄うが如くの部分は後の「ソウル・ジャズ」を先取りしているともいえる。とにかく、録音当時のハードバップの流行もマナーも全く無い。

  
Soul-stirrin-1

 
これがベニー・グリーンというトロンボーン奏者の個性であり、これが実にユニーク。ジャズ・トロンボーンであれば、当時としては、ジャズ・トロンボーンのバーチュオーゾ、J.J.Johnson(ジェイ・ジェイ・ジョンソン)が最高峰で、ジャズ・トロンボーン奏者であれば、この「ジェイジェイ」に追従するのだが、ベニー・グリーンは全くその気配すら無い。あくまで、スイングであり、あくまでソウルフルである。

今回のセッションでは、セクステットの中に、若きソニクラとエルヴィンが入っている。ソニクラはハードバッパーであり、ファンキー・ジャズ志向のピアニスト。エルヴィンは新進気鋭、ポリリズムとモード・ジャズ志向のドラマー。スイングでソウルフルなベニー・グリーンの下で、神妙にベニー・グリーンの音の志向に全く違和感無く追従している。

この2人も音の志向が全く違えど、これまた「プロ」である。1920年代生まれと1930年代生まれの世代が分かれたメンバーでのセッションであるが、明らかにリーダーのベニー・グリーンが音の志向のイニシアチヴを取っている。我が国では全く人気の無いベニー・グリーンであるが、聴けば極上のモダン・ジャズにありつけること間違い無い、素敵な隠れ好盤だと僕は評価している。ほんわか伸び伸び、聴けば聴くほど味わいは深くなる。
 
 
 

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