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2018年2月 9日 (金曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・68

1970年代のマッコイ・タイナーは絶好調。次々と壮大な大作をリリースしていった訳だが、僕がジャズを本格的に聴き始めたのが、1978年。マッコイ・タイナーの人気がほぼ一段落し、ジャズの世界はフュージョン・ジャズの大ブーム。当時は、リアルタイムではなかなかマッコイ・タイナーのアルバムを聴き込むことは無かった思い出がある。

僕は21世紀になって、この盤を聴いた。McCoy Tyner『Trident』(写真左)。1975年2月、カルフォルニアのバークレーのファンタジースタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p, harpsichord, celeste), Ron Carter (b), Elvin Jones (ds)。待望のトリオ編成。しかも、コルトレーンの「黄金のカルテット」で共にしたエルヴィン・ジョーンズがドラムに据わる。そして、ベースにはロン・カーター。珍しい。

このアルバムでのハープシコードやセレステの使用にはビックリするが、目先を変える意味では、なかなかの工夫。「タイナーのガーン・ゴーンのハンマー奏法はワンパターン」という揶揄を笑い飛ばすには、ちょっとジョークが過ぎるかな(笑)。耳新しさにはちょっとだけ効果はあるかもしれないが、ハープシコードやセレステの使用が、演奏全体に大きな影響を与えているかといえば、そうではない。
 

Trident

 
しかし、このアルバムは、マッコイ・タイナーのピアノ・トリオ盤として秀逸の出来である。フロントの管楽器が無い分、タイナーのピアノが堪能できる。タイナーもそれを心得てか、ガーンゴーンと左手のハンマー奏法をかましつつ、右手のシーツ・オブ・サウンドが疾走する。いつものスタイルなのだが、トリオという編成が功を奏してか、何時にも増して迫力が凄い。火の玉の様なハンマー奏法に思わず仰け反る。

重厚かつスピリチュアルな演奏。コルトレーン・ジャズの継承であるが、ドラムのエルヴィン・ジョーンズはそれを良く心得ていて、限りなく自由度の高いポリリズムを叩き出しつつける。そして、ちょっと驚いたのだが、ロン・カーターのベースが、マッコイ・タイナーのピアノに良く合っている。幅広のロンのベースって、タイナーの右手のシーツ・オブ・サウンドとの相性がとても良い感じなのだ。

タイナーのトリオ編成のアルバムの中でも屈指の出来。地味で見栄えのしないジャケットで損をしているみたいだが、怯まずに手にすべき、ピアノ・トリオの好盤だと思います。トリオ演奏と思えないほどの、重厚かつ壮大な音の展開と音の重なり。ピアノ・トリオの可能性と限界を一度に聴かせてくれる優れものです。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年2月 8日 (木曜日)

「コルトレーン」の正統な後継

1970年代のタイナーは絶好調。相当数のリーダー作をリリースし、人気も上々。ソロからトリオ、カルテットからクインテット、ジャズ・オーケストラからアコースティック・フュージョン。様々な演奏形態で、優れた演奏力とアレンジ力を武器に、コンスタントに秀作をリリースし続けた。

McCoy Tyner『Atlantis』(写真)。1974年8月31日から9月1日、サンフランシスコのキーストンコーナーでのライブ録音。LP時代は2枚組の重厚な内容。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p, perc), Azar Lawrence (ts, ss), Joony Booth (b), Wilby Fletcher (ds), Guilherme Franco (perc)。パーカッション入りのオーソドックスなカルテット構成である。

が、出てくる音が凄い。重厚なのだ。最初、聴いていたら、ビッグバンドの音かしら、と思う位の重厚さ。タイナー独特の壮大なアレンジに加えて、アフロ・ジャズの色濃いフレーズ満載の「コルトレーン・ジャズ」の音世界。このアルバムの演奏は、1970年代、タイナーがコルトレーン・ジャズの正統な後継者であったことを感じさせる。
 

Atlantis

 
呪術的でスピリチュアルなフレーズ、官能的で高揚感が印象的なリフ、躍動感溢れ、疾走感漲るリズムが混在し、合体し、交錯する。オーソドックスなカルテット構成の音とは思えぬ、壮大で拡がりのある、奥行きのある重厚な音世界。圧巻である。圧巻な展開が、発売当時LP2枚組、圧倒的なボリューム感で、アフロなコルトレーン・ジャズを展開している。

そんな重厚なコルトレーン・ジャズの音の洪水の中、タイナーのガーン・ゴーンのハンマー奏法はクッキリと浮かび上がる。左手のハンマー奏法、右手の「シーツ・オブ・サウンド」、目眩く音符の羅列。それに続く高揚感。現代のハードで硬派なスピリチュアルなジャズの「源」のひとつがここにある。

フロントの弱さが玉に瑕ではあるが、逆に、タイナーのピアノは良く聴こえ、タイナーのハンマー奏法を愛でるには格好のライブ盤である。「タイナーのガーン・ゴーンのハンマー奏法はワンパターン」という揶揄はあるが「言わば言え」である。この盤を聴いていて思う。1970年代、コルトレーン・ジャズを継承したタイナーの音世界は、やはり当時、最強であった。

 
 

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2018年2月 7日 (水曜日)

マッコイ・タイナーの隠れ好盤

今週は「ジャズ・レジェンド」の週間。熟々とジャズ・レジェンドの名前を見ていて、この人のリーダー作、そう言えば最近、聴いて無かったなあ、と思い立ったレジェンドがもう一人。マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)である。ガーン・ゴーンのハンマー奏法の元祖。テナーの聖人=コルトレーンの懐刀。コルトレーン・ミュージックの伝道師。

1970年代のタイナーは絶好調。相当数のリーダー作をリリースしている。ソロからトリオ、カルテットからクインテット、ジャズ・オーケストラからアコースティック・フュージョン。様々な演奏形態で、優れたアレンジ能力を武器に、コンスタントに秀作をリリースし続けた。当時、人気もあって、タイナーは絶好調であった。

そんなタイナーがバリバリにピアノを弾きまくったアルバムがある。McCoy Tyner『Song for My Lady』(写真)。1972年9月6日と11月27日の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p, perc), Sonny Fortune (as, ss, fl), Calvin Hill (b), Alphonse Mouzon (ds), Michael White (vln),  Charles Tolliver (flh), Mtume (congas, perc)。タイナー+フォーチュン+ヒル+ムザーンのカルテットがベース。2曲のみ、バイオリン、フリューゲルホーン、コンガが加わる。
 

Song_for_my_lady

 
一言で言うと「ピアノで自由度溢れるモーダルなコルトレーンをやる」。左手ガーン、右手ガーンと入って疾走するシーツ・オブ・サウンド。ちょうど、インパルス・レーベルに移籍して以降、限りなくフリーな、相当に自由度の高いモード演奏をやりまくっていた頃のコルトレーンのアドリブ・フレーズをピアノに置き換えた様なフレーズの嵐。

どの曲でも、タイナーのピアノでの「シーツ・オブ・サウンド」は疾走感溢れ、爽快感、そして躍動感溢れる必殺技。聴いていて、そして聴き終えてスカッとする。フォーチュンのサックスも良い、フルートも良い。しかし、サックスを吹くフォーチュンがコルトレーンをフォーチュンの個性でアレンジしていて、忠実にフォローしていないのが面白い。

しかし、このアルバムって、タイナーの数あるリーダー作の中でも地味な存在。ジャズ紹介本でも採り上げられることがほとんど無い盤です。でも、僕にとっては「お気に入り盤」。現代ジャズでいう「スピリチュアル・ジャズ」の先駆的内容で、聴いていて心揺さぶられ、聴き終えて、スカッと爽快。タイナーのリーダー作の中での「隠れ好盤」。

 
 

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2018年1月29日 (月曜日)

こんなアルバムあったんや・96

久し振りに「マッコイ・タイナー」が聴きたくなった。マッコイ・タイナーと言えば、1960年代、ジョン・コルトレーンの「黄金のカルテット」のピアニストとして、その名を轟かせ、コルトレーン亡き後、特に1970年代は、そのメリハリの効いた、力強いタッチの「ハンマー奏法」によって、大人気ピアニストとなった。

1980年代以降、ジャズ者に飽きられたのか、その人気は鳴りを潜めたが、ピアニストとしての力量は昔のまま。奏法も買えること無く、流行に迎合することも無く、コルトレーンの「黄金のカルテット」からの、メリハリの効いた、力強いタッチの「ハンマー奏法」は一切、変えることは無い。実に硬派で実直な職人的ピアニストである。

そんなタイナーにも若かりし頃はあった訳で、まだまだ、彼の個性である、メリハリの効いた、力強いタッチの「ハンマー奏法」の萌芽は聴かれるには聴かれるが、まだ個性として確立していない、発展途上のタイナーもなかなかに味わい深いところがある。若々しいというか、瑞々しい堅実なタッチのタイナーが、1962年から1964年の「Impulse! レーベル」の諸作に聴くことが出来る。
 

Mccoy_tyner_plays_ellington

 
このアルバムは、そんな「Impulse! レーベル」の諸作の最後のリーダー作になる。McCoy Tyner『Plays Ellington』(写真左)。1964年12月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b), Elvin Jones (ds), Willie Rodriguez, Johnny Pacheco (Latin-perc)。コルトレーンの「黄金のカルテット」からコルトレーンを抜いた、リズム・セクションの演奏。

1964年12月と言えば、コルトレーンの「黄金のカルテット」は、かの傑作『A Love Supreme』を録音した時期、この『Plays Ellington』は、この『至上の愛』を録音する直前のリズム・セクションの演奏を捉えたものになる。この直後、『至上の愛』を録音するとは思えないほど、堅実でオーソドックスなピアノ・トリオ演奏。エリントンの曲を十分に理解し、タイナーなりに個性を活かしつつ上手くアレンジした、実に趣味の良い演奏が繰り広げられている。

特に尖ったところはないんだけど、とっても誠実で堅実なピアノ・トリオの演奏で、エリントン・トリビュートの企画盤としても、優れた内容の盤になっている。が、我が国では、なかなかジャズ盤紹介本などで採り上げられることが殆ど無い、知る人ぞ知る「隠れ好盤」である。いかついジャケットに怯まず、一度は耳にして欲しい好盤である。

 
 

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2016年4月 5日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・52

マッコイ・タイナーの初期のリーダー盤の聴き直し。あと2枚、感想文を書かせていただきたい。あと2枚で、Impulse!レーベル時代のマッコイのリーダー盤の聴き直しが完結する。実は2枚目と6枚目のリーダー盤をまだストックしているのだ。

このリーダー作は初期のマッコイの代表盤と言い切って良いだろう。初リーダー盤『Inception』の次のセカンド盤になる。このセカンド盤も初リーダー盤に次いでトリオでのチャレンジになる。素直に自らのピアノの個性を開花させた、サラリとした爽快感溢れる、若かりしマッコイの傑作である。

そのセカンド盤とは、McCoy Tyner『Reaching Fourth』(写真左)。1962年11月の録音。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Henry Grimes (b), Roy Haynes (ds)。ベースのヘンリー・グライムスの名前に「えっ」と思う。後のジャズ盤に名を連ねることが希少なベーシストである。逆に、ドラムのロイ・ヘインズの名前には「おっ」と思う。名盤請負人なドラマーの一人である。

さて、このセカンド盤には、マッコイのピアノの個性が満開である。リーダー盤に聴かれた緊張感もほぐれて、リラックスしながら、ケレン味無く弾きまくるマッコイのピアノは凄い。しかし、マッコイのピアノは、コルトレーンのシーツ・オブ・サウンドをピアノに置き換えたものでは無いことがこのアルバムで良く判る。
 

Reaching_fourth

 
どちらかと言えば、現代ジャズの基本スタイルである「ビ・バップ」の高速アドリブ・フレーズをモードに置き換えた様な感じかな。マッコイのピアノの基本は明らかに「モード」であり、伝統に根ざした「ハードバップ」である。ただ、高速に弾きまくるのでは無い。柔らかいフレーズの展開と、切れ味の良さと相対する「甘さ」を仄かに感じさせるところがニクイ。

バックを勤める二人、ドラムのロイ・ヘインズ、ベースのヘンリー・グライムス。この二人の貢献も特筆に値する。あまり録音の多く無い、どちらかと言えば無名に近い、ベースのグライムスが良い。多弁なマッコイの右手に絡む、グライムスのメロディアスにうねるようなベースライン。このベースラインがマッコイのピアノに推進力を与えている。

ヘインズのドラミングも特筆に値する。多彩なスティック捌きで、ポリリズムとはちょっと異なる響きを供給する。これが、トリオ全体のビートをガッチリと支え、落ち着きを与えている。良きテンションを与えてくれるドラミング。バップ出身のドラマーなのに、この柔軟性と適応力はどうだ。

理屈っぽく弾き回したり、コルトレーンの影を追い回したりしない、モーダルなピアノを爽やかに弾きまくるマッコイは良い。このリーダー作2枚目で、マッコイのピアノの個性は確立されていた、と思って良いだろう。マッコイのピアノを知るにはマスト・アイテム。ピアノ・トリオの代表的名盤としてもお勧め出来る好盤である。

 
 

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2016年4月 3日 (日曜日)

マッコイの「変わり種」な盤

マッコイ・タイナーの初期のリーダー作を聴き直しているんだが、マッコイ初期のリーダー作はどれもがマッコイのキャリア・個性にとって、重要なアルバムばかりである。後のマッコイの基本となる、ピアノの個性、アレンジの才のいずれもが、初リーダー作から5〜6枚程度で確立されていたことを再認識出来て興味深い。

このリーダー作も聴けば実に興味深い内容である。McCoy Tyner『Live At Newport』(写真左)。1963年7月5日、Newport Jazz Festival, Newport でのライブ録音である。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Bob Cranshaw (b), Mickey Roker (ds), Clark Terry (tp), Charlie Mariano (as)。

まず、パーソネルが面白い。リーダーのマッコイ・タイナーは1938年生まれで、当時25歳。ベースのボブ・クランショウは1932年生まれで、当時31歳。ドラムのミッキー・ローカーは同じく1932生まれで、当時31歳。しかしながら、アルトのチャーリー・マリアーノは1923年生まれで、当時41歳。そして、トラペットのクラーク・テリーは1920年生まれなので当時43歳。

リーダーのマッコイが圧倒的に若い。リズム・セクションを一緒に担うベースのクランショウ、ドラムのローカーは30歳そこそこの中堅。フロントのアルトとトランペットは40歳代のベテラン。マッコイ以外は、ビ・バップからハードバップを生き抜いて来た強者ジャズメンばかりである。
 

Live_at_nerport

 
ニューポート・ジャズ・フェスでの1回きりの共演である。そうなれば、やはり「年功序列」という意味合いで、マッコイが他の先輩メンバーに合わせて、ハードバップな演奏をやってしまいそうなものなんだが、そこはマッコイ、そうはならない(笑)。1963年という時代背景もあるだろう。ジャズ界はファンキー・ジャズなどのポップなジャズの流れと、モード奏法をベースとしたアートなジャズの流れが主流となっていた。

このライブでは基本が「モード・ジャズ」。マッコイからみれば大先輩のアルトのマリアーノとトランペットのテリーが必死になってモーダルなフレーズを吹きまくっている。で、これが不思議とかなり真っ当な「モード・ジャズ」になっていて、当時の一流ジャズメンの力量たるや、かなり高度なものがあったんやなあ、と心底感心する。

とにかく、マッコイは周りの先輩ジャズメンを差し置いて、徹頭徹尾「モード・ジャズ」で突っ走る。リズム・セクションを一緒に担っているベースのクランショウとドラムのローカーは、冒険すること無く、無難にモード・ジャズに追従しているので、リズム&ビート的には化学反応は起きていないが、フロントの大先輩二人のお陰で、なんとか、しっかりとした「モード・ジャズ」で完結している。

面白いライブ盤です。この面子でもしっかりとモード・ジャズになっているってことは、1963年当時、モード・ジャズはジャズの基本的な奏法のひとつとして定着していたことが窺い知れて、実に興味深いです。特に、クラーク・テリーがモードの適応するなんて、思ってもみなかった。当時の一流ジャズメンの力量をみくびっていました。ゴメンナサイ(笑)。

 
 

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2016年4月 2日 (土曜日)

マッコイの作曲&アレンジの才能

マッコイ・タイナーは、ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットのレギュラー・ピアニストとして有名。しかし、マッコイは単なるピアニストでは無い。その作曲能力、そしてアレンジの能力は素晴らしいものがある。

そのマッコイの優れた作曲能力、アレンジ能力は、マッコイのキャリアのどの辺りから発揮されていたのか。それはこの彼のリーダー作を聴けば判る。このアルバムは、マッコイのリーダー作の第2弾。つまりは、マッコイは彼のキャリアの初期の頃から、その作曲能力、そしてアレンジの能力は既に発揮されていたことになる。

そのアルバムとは、McCoy Tyner『Today and Tomorrow』(写真左)。1963年6月と1964年2月の録音のカップリング。ちなみにパーソネルは、1963年6月録音時はトリオ編成で、McCoy Tyner (p), Jimmy Garrison (b),Albert Heath (ds)。1964年2月録音時はセクステット編成で、McCoy Tyner (p), Butch Warren (b), Elvin Jones (ds), John Gilmore (ts), Thad Jones (tp), Frank Strozier (as)。

このアルバムに収録された曲は全てマッコイの作曲になっている。聴けば良く判るのだが、確かにマッコイ独特の曲想、節回し。既にこの時点で、マッコイの作曲の個性は確立されていたことになる。特にモーダルな曲に偏っている様な気もするが、これもマッコイ独特の個性として捉えるべきだろう。
 

Today_and_tommorow

 
そして、1曲目から3曲目は、テナー、アルト、トランペットの3管がフロントに立ったセクステット編成の演奏なのだが、このセクステットの演奏のアレンジがこれまた良い。しかも、マッコイ独特の響き、音符の重ね方を聴きとることが出来て、なるほど、既にこの時点で、マッコイのアレンジの個性は確立されていたことになる。

1964年と言えば、マッコイは26歳。この盤での作曲能力、アレンジ能力を聴けば、いかにマッコイが早熟だったかが判る。曲想や節回し、音の響き、音符の重ね方等々、後は如何にこなれていくか、だけの状態で、マッコイの個性の基本はもうこのアルバムで確立されている。

モーダルなジャズがメインの、その時代のトレンドを捉えたマッコイの初期の好盤だと思います。マッコイのファンである「マッコイ者」にはマスト・アイテム、そして、モード・ジャズとは如何なるものか、の問いに答える、モード・ジャズ初期のサンプルとしても有効な盤だと思います。

明らかに、それまでのビ・バップな、ハードバップなピアニストとは一線を画する、明らかに異なる奏法と響き、そしてフレーズ。もちろん、マッコイのピアノは実に良く鳴っています。

 
 

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2016年4月 1日 (金曜日)

マッコイの初リーダー作である

いつの頃からか、マッコイ・タイナーのピアノが意外と好みである。テクニック良く多弁でモーダルな右手、ハンマー打法と呼んでピッタリの「ガーン、ゴーン」と打ち付ける様に弾く左手。とにかく明確で良い。

マッコイ・タイナーは、ジョン・コルトレーンの黄金のカルテットのレギュラー・ピアニスト。しかしながら、僕はコルトレーンのカルテットでバックに回ったマッコイよりも、独立してリーダーとして、ならではの個性的なピアノを弾きまくるマッコイの方が好みである。ということで、マッコイ・タイナーのリーダー作の聴き直しを進めることにした。

まずは初リーダー作である。McCoy Tyner『Inception』(写真左)。1962年1月の録音。1960年にジョン・コルトレーンのカルテットに参入しているので、コルトレーンと共演していた時期に、初リーダー作をリリースしたことになる。

第一印象は、バリバリ硬派のピアノ・トリオである。ちなみにパーソネルは、McCoy Tyner (p), Elvin Jones (ds), Art Davis (b)。3人ともコルトレーン門下生の優秀どころ。演奏全体の雰囲気は明らかに「コルトレーン・ミュージック」である。しかも、フリーに傾いていない、モーダルな雰囲気。
 

Inception

 
ベースにアート・デイビス、ドラムにエルビン・ジョーンズという超弩級のトリオで、迫力のあるピアノ・トリオが聴ける。特に、エルビンのドラミングは迫力十分、超絶技巧の極み。アート・デイビスのベースは重量感溢れ、迫力十分。タイナーのピアノは、初リーダー作とはいえ、バリバリに弾きこなしていて立派。

奏法としては、既に「シーツ・オブ・サウンド」のピアノ版的な、音符を敷き詰めた様な、テクニックとスピード溢れる奏法は、コルトレーンをピアノに置き換えた様な雰囲気。それでも、冒頭の「インセプション」などは、初リーダー作ゆえ、前がかり気味な早弾きになりがちで、タイナーの緊張と意気込みが伝わってくるようで微笑ましい。

まだまだこなれていないところもあって、マッコイの個性の確立というところまではいかないが、マッコイのピアノの個性については、この初リーダー盤で十分に聴いて取れる。明らかに、それまでのビ・バップな、ハードバップなピアニストとは一線を画する、明らかに異なる奏法と響き、そしてフレーズ。

当時、このアルバムがリリースされた時、当時のジャズ者の皆さんは、結構驚愕したか戸惑ったか、したんでは無いでしょうか。それほど、この初リーダー作には、新しいジャズ・ピアノの響きが充満しています。ジャズ・ピアノ好きにはマスト・アイテムでしょうか。

 
 

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2015年10月27日 (火曜日)

マッコイのラテン・ジャズ

マッコイ・タイナー(McCoy Tyner)は、今やレジェンドの域に達したジャズ・ピアニスト。ジョン・コルトレーンの伝説のカルテットに所属し、コルトレーン亡き後は、コルトレーン・ミュージックを継承し、1970年代、絶大なる人気を獲得した。

しかし、1980年代に入って、純ジャズ復古の号令がかかると、新伝承派の若手ミュージシャンの勢いに押されて、その名前は一気にかき消されたかに見えた。が、ところがどっこい、1990年代、少しずつ復活の狼煙を上げつつ、今では、ジャズ・レジェンドの一人として、堅実に活動を続けている。

このアルバムなんか、そんなマッコイ・タイナーの多才な部分を良く表している。1998年7月の録音になる。翌年の3月にリリースされている。そのアルバムとは『McCoy Tyner and the Latin All-Stars』(写真左)。マッコイ・タイナーって結構器用なピアニストで、このアルバムではラテン音楽にチャレンジしている。

加えて、マッコイってアレンジの才能がある。このアレンジの才能を最大限に発揮したアルバムがこれである。ラテン音楽のアレンジで様々な曲を料理する。特に、3曲目のあのコルトレーンの演奏で有名な「Afro Blue」をラテン音楽のアレンジで、純ジャズ基調で聴かせてくれる。
 

Mccoy_tyner_and_the_latin_allstars

 
このアルバム全体の雰囲気は、ラテン音楽のフレイバーでありながら、どこか地に足着いて落ち着いた雰囲気が「大人の味」である。そう、このアルバム、タイトルだけ見て敬遠したら勿体ない、マッコイのアレンジの才能溢れる、ラテン・フレイバーなメインストリーム・ジャズなのだ。

といって、ラテンのリズムがガンガンに溢れた「大盛り上がり大会」風な演奏では無い。リズム&ビートが軽妙にアレンジされ、全体的に落ち着いた雰囲気が実に「大人」である。

ラテン・フレイバーなジャズだったら、もっとガンガンにやれば良いのに、という向きもあるが、マッコイのあの「ハンマー奏法」の様な左手ガーン・ゴーン、右手は超絶技巧な高速シーツ・オブ・サウンドで、ガンガンなラテンジャズをやったら、五月蠅くて仕方が無いではないか(笑)。

いや〜、本当に趣味の良い、粋なラテン・ジャズです。マッコイって本当に器用なピアニストだ。その器用さが決して鼻につかない、説得力のある器用さなのだから、これはもう聴き応え十分です。そう、ジャズ者よ、アルバム・タイトルと派手なジャケットに惑わされことなかれ、です。

 
 

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2015年8月30日 (日曜日)

こんなアルバムあったんや・49

このアルバムのジャケ写を見て、つくづく、偉大なフロント楽器のリーダーのバックを支えるリズム・セクションって大変なんだろうなあ、と思ったりする。

マイルスのバックを支えた、ハービー・ロン・トニーのリズム・セクションとか、コルトレーンのバックを支えた、マッコイ・ギャリソン・エルビンのリズム・セクションとかであるが、今日は後者のコルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションが、親分のコルトレーン抜きで集ったセッション盤の話題を。

Elvin Jones『Illumination!』(写真左)。1963年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Jimmy Garrison (b), McCoy Tyner (p), Sonny Simmons (as, English Horn), Charles Davis (bs), (William) Prince Lasha (cl, fl)。コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションに、アルト(またはイングリッシュ・ホルン)、バリトン、クラリネットの変則3管。

1963年と言えば、コルトレーンの伝説のカルテットからすると、リーダー作で見ると『John Coltrane』から『Live At Birdland』と、モーダルな純ジャズからフリー・ジャズへ急速に展開していった時期。とにかく、モード一色、フロントはコルトレーンの独壇場。バックのリズム・セクションの自由度がどんどん狭められていった頃である。

この『Illumination!』を聴いていると、当時のコルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションの気持ちが見え隠れして、とても面白い。このアルバムの全体的な雰囲気は、当時のコルトレーン・カルテットの雰囲気の正反対。モード中心のテンション高いインプロビゼーションの連続、応酬で、演奏の雰囲気やアンサンブルを余裕を持って楽しむ雰囲気では無い。
 

Illumination

 
リーダーは生真面目で集中し出したら止まらないコルトレーン。やはり、バックのリズム・セクションとしては疲れるんでしょうなあ。リラックスして、演奏の雰囲気やアンサンブルを楽しみながらのハードバップな演奏をしてみたいなあ、と思うのも無理は無い。

まあ、本当の気持ちは当時の本人達に訊かないと本当のところは判らないが、確かに、このアルバム『Illumination!』に詰まっている演奏の雰囲気は、当時のコルトレーン・カルテットは全く正反対の雰囲気。フロントの楽器構成を一工夫し(絶対にコルトレーン・カルテットに被らない様にしている)、ほんわかムードで、アレンジにも工夫を施し、余裕のあるハードバップな演奏である。

演奏の水準からすると、コルトレーン・カルテットに遙か及ばないかも知れないけれど、アルト(またはイングリッシュ・ホルン)、バリトン、クラリネットの変則3管のほんわかムードのアンサンブルとアドリブ・フレーズと、そのほんわかフロント3管をバックで支える、コルトレーンの伝説のカルテットのリズム・セクションの余裕ある和やかなバッキングがとても良い雰囲気を醸し出している。

当時、この『Illumination!』を聴いて、フロント親分のコルトレーンは何を思ったのだろう。もはや本人に確かめる術は全く無いが、訊いてみたかったなあ。しかし、さすがは生真面目で偉大なリーダー、コルトレーン。これしきのことで、我が道の進む方向を変えることは全く無かったのである。

 
 

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