2020年3月10日 (火曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・75

今日は朝から雨。夕方には風も強くなって、大荒れの天気。3月に入って短い周期で天気が変わる。それでも、朝はずいぶん暖かくなった。暖かくなってくると、昼下がりには穏やかでホンワカしたジャズが聴きたくなる。そうなると、選盤に偏りが出てきて、毎年、春になると、米国西海岸ジャズの盤を選ぶ頻度が高くなる。

『Max Bennett』(写真左)。1955年12月14日、NYでの録音。ベツレヘム・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Max Bennett (b), Nick Travis (tp), Charlie Mariano (as), Jack Nimitz (bs), Carl Fontana (tb), Dave McKenna (p), Mel Lewis (ds)。 フロント4管のセプテット(七人)編成。

マックス・ベネットは、スタン・ケントン楽団出身、独立後、数々の名セッションに参加している米国西海岸ジャズの主要ベーシスト。ベーシストは基本的にリーダー作が少ない。ベネットも例に漏れず、リーダー作は少ない。そんな彼の貴重なリーダー作品であり代表作。洒落たアレンジによる典型的な「西海岸サウンド」を展開する傑作である。
 
 
Max-bennett-1  
 
 
ベーシストのリーダー作の理想形は、ベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックをグループ・サウンズを通じて、自分志向のジャズ演奏の中で演出する形態。この盤はその理想形を踏襲していて、まず、典型的な米国西海岸ジャズの演奏の中で、ベネットのベースがしっかりと活躍している。適度な低音、軽やかなウォーキング・ベース。ベネットの個性がしっかり聴きとれる。

フロントが4管だが、その編成が「トランペット・アルトサックス・バリトンサックス、トロンボーン」と、テナーサックスが無くて、低音を司るバリサクとボーンの存在が目を引く。このユニークな編成の4管が、洒落たクールなアレンジによって、実に魅力的に響く。特にユニゾン&ハーモニーが絶妙な響き。

実は、この盤の演奏、米国西海岸ジャズにしては、かなりハードな演奏になっている。東海岸のハードバップのハードな演奏をちょっと想起するのだが、フロント4管をベースとした洒落たアレンジが、そんなハードさを和らげて「円やかなハードさ」に落ち着いて、やっぱりこれって、米国西海岸ジャズやなあ、とつくづく思うのだ。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

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2020年3月 5日 (木曜日)

チェットのトランペットが映える

3月である。今日は朝から北風がかなり強くて、日中、気温が上がれど体感気温は下がりっぱなしで、冬に逆戻りの感があるが、今年は暖冬傾向で暖かい日が多い。一昨日などは、4月上旬の陽気だったのだから、ちょっと早いけど春である。関西では、東大寺二月堂の「お水取り」が終わったら春、と言われるが、確か、お水取りは12日だったから、如何に今年は暖かいか、が判る。

我がバーチャル音楽喫茶『松和』では「春は米国西海岸ジャズ」である。暖かくホンワカした気候にピッタリやなあ、と昔から思っていて、春やなあ、と思ったら、選盤は暫く米国西海岸ジャズに偏る。お洒落なアレンジ、響きが心地良いユニゾン&ハーモニー、流麗でキャッチャーなアドリブ展開。耳に優しく、心に穏やかに響く、それでいて、やっていることはかなり高度。僕にとっては「春のジャズ」って感じなんですよね。

『Chet Baker & Crew』(写真左)。1956年7月の録音。ちなみにパーソネルは、 Chet Baker (tp), Phil Urso (ts), Bobby Timmons (p), Jimmy Bond (b), Peter Littman (ds), Bill Loughborough (chromatic timpani)。フロント2管(トランペット&テナーサックス)のクインテット編成に、一部、ティンパニが入る。リーダーのチェット・ベイカーについては、トランペットに専念している(CDのボートラにはボーカル入りがあるが、正式なアルバムとしては割愛)。
 
 
Chet-baker-crew  
 
 
この盤でのチェットのトランペットは溌剌としている。流麗にストレートに吹きまくっている。チェットのトランペッターとしての才能を遺憾なく発揮している。とても、当時、重度の「ジャンキー」だったとは思えない。しかし、良く聴くと、溌剌としたトランペットの響きの裏に「愁い」というか「翳り」がそこはかとなく漂っている。しかし、これが良いのだ。健康優良児のチェットなんてありえない。アンニュイで翳りがないと物足りない。

演奏の印象は明確に「米国西海岸ジャズ」。冒頭の「To Mickey's Memory」を聴くだけで直ぐに判る。整った演奏、爽快なスイング感、適度な演奏の熱量、適度にアレンジされ、熱くも無くクール過ぎることも無い。爽快感溢れる演奏がズラリと並ぶ。バックの演奏も良い感じなのだがあ、やはり、この盤はチェットのトランペットを聴く盤だろう。この盤のチェットのトラペットを聴くと、当時、トランペッターとして人気絶大だったことが良く判る。

タイトルを訳すと「チェット・ベイカーと乗組員たち」。ジャケ写がヨットなので、チェットが船長(リーダー)、バックが乗組員(サイドメン)とかけた、ちょっとお洒落なタイトル。そんな和気藹々とした雰囲気が伝わる「心地良い演奏」がギッシリと詰まっている。歴史に残る名盤とは思わないが、米国西海岸ジャズの「レベルの高さ」と「楽しい雰囲気」をよく伝えてくれる好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

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2020年2月26日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・74

つい最近、僕はこの2管フロントのアルバムの存在を知った。知った瞬間「こんな組合せってアリなの」と嬉しくなった。片方のフロントが「ジョニー・ホッジス」。デューク・エリントン楽団における看板アルト・サックス奏者である。1951年から55年まで楽団を離れたが、その4年間以外、1928年から逝去する1970年まで、38年間、デューク・エリントン楽団に、花形ソロイストとして在籍した。

もう片方のフロントが「ジェリー・マリガン」。バリトン・サックス奏者のレジェンドである。1952年から1956年の間、カリフォルニア州に移り、米国西海岸ジャズの仕掛人の一人となった。特に「ピアノレス・カルテット」の組成は画期的な出来事。モダン・ジャズ黎明期からクール・ジャズ、ウェストコースト・ジャズを牽引した「プロデューサー」的存在であった。

『Gerry Mulligan Meets Johnny Hodges』(写真)。1959年11月17日、Los Angelesでの録音。ちなみにパーソネルは、Gerry Mulligan (bs), Johnny Hodges (as), Claude Williamson (p), Buddy Clark (b), Mel Lewis (ds)。当時の米国西海岸ジャズの名うての人気ジャズメンを集めて、ジョニー・ホッジスを客演に迎えた、2管フロントのクインテット編成。
 
 
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音の作りは、パーソネルからも判る様に明らかに「米国西海岸ジャズ」である。しっかりとアレンジされた、破綻の無い整然とした「聴かせる」ジャズ。そんな音の作りの中で、フロントの2人、ホッジスのアルト・サックスと、マリガンのバリトン・サックスのユニゾン&ハーモニーが実に映える。美しい音色とフレーズを誇るホッジスのアルト・サックスと、魅力的な低音と粋な吹き回しで耳を奪うマリガンのバリトン・サックスとの「クールな対話」が一番の聴きどころ。

とりわけ、ホッジスのアルト・サックスが良い。ビブラートを効かせた美しい音色。長く伸びるトーン。官能的ですらある、渋く輝く様なブラスの響き。この美しいアルト・サックスのトーンが、いわゆる「聴かせる」ジャズである、米国西海岸ジャズのアレンジ、展開にバッチリ合うのだ。ほどよくアレンジされたバックの演奏とホッジスのアルト・サックスの相性は抜群である。

サックスの名手が二人寄れば、ライバル心が芽生えるが故に意外とまとまらないのでは、と危惧するが、この盤ではマリガンのホッジスに対するリスペクトの念がライバル心に勝っているようで、ホッジスとマリガンの2管のユニゾン&ハーモニーは全く破綻が無く、とても美しくとてもエモーショナルに響く。この盤の演奏を聴きながら、ジャズ喫茶の昼下がりの光景が頭に浮かんだ。そう、この盤の小粋で心地良い雰囲気、ジャズ喫茶の昼下がりにピッタリなのだ。
 
 
 
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2020年2月19日 (水曜日)

ミュージカル曲限定のプレヴィン

昨日、アンドレ・プレヴィン(André Previn)のピアノ・トリオ盤をご紹介した。プレヴィンは「作曲家、編曲家、映画音楽、ジャズ・ピアニスト、クラシック・ピアニスト、指揮者」と多彩な才能の持ち主だが、実はミュージカルの音楽監督も多数経験している。「マイ・フェア・レディ」などでアカデミー賞を受賞している位だ。そうそう、この「マイ・フェア・レディ」の楽曲をジャズにアレンジして、シェリー・マン、レロイ・ビネガーとのトリオ盤をリリースしている。

プレヴィンのジャズ・ピアノは、流麗で爽快感あふれる弾きっぷりで、「ソフィストケイトされた」タッチや限りなく端正で全く破綻の無い、高テクニックなもの。このプレヴィンのぴあのは、印象的なメロディや流麗なフレーズを持つ楽曲、例えば、ジャズ・スタンダード曲との相性が抜群。実は、ジャズ・スタンダード曲は、1920年代から40年代のミュージカル曲が多い。そういう意味で、プレヴィンのジャズ・ピアノは、ミュージカル曲をアレンジして演奏するのに向いている。

André Previn『Give My Regards to Broadway』(写真左)。1960年5月31日、Los Angelesでの録音。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), Red Mitchell (b), Frank Capp (ds)。なんか出来レースみたいな話だが、この盤、ミュージカルの音楽監督として活躍したアンドレ・プレヴィンがミュージカルの有名曲を集めて、アレンジして、ピアノ・トリオで演奏したアルバムなのだ。
 
  
Give-my-regards-to-broadway   
  
 
収録曲は以下のとおり。括弧の中が、曲を引用されたミュージカル名である。実を言うと、4曲目の「The Sound Of Music」以外、他のミュージカルの名前を知らない。この盤の録音は1960年なので、その頃には結構有名なミュージカルだったのだろう。
 

1. Give My Regards To Broadway (Little Johnny Jones)
2. Take Me Along (Take Me Long)
3. Almost Like Being In Love (Brigadoon)
4. The Sound Of Music (The Sound Of Music)
5. Put On A Happy Face (Bye Bye Birdie)
6. Too Close For Comfort (Mr. Wonderful)
7. When I'm Not Near The Girl I Love (Finian's Rainbow)
8. Everything's Coming Up Roses (Gypsy)
9. Diamonds are a girl's best friend (Gentlemen prefer blondes)
10. Too Darn Hot (Kiss Me Kate)
 
 
今の時代からすると、あまり馴染みの無いミュージカルからの楽曲であるが、さすがにどれもミュージカルで演奏された楽曲で、印象的なメロディや流麗なフレーズを持つ楽曲ばかり。プレヴィン独特の爽快感あふれるスインギーなフレーズがフィットし、「ソフィストケイトされた」タッチや限りなく端正で全く破綻の無い、高テクニックなピアノが際立つ。速いテンポの演奏もスローなバラード曲も、明確なタッチが、それぞれの楽曲の持つ、美しいフレーズを浮き立たせる。

ほとんど、ジャズ盤紹介本やジャズ雑誌で紹介されることを見たことの無い企画盤であるが、内容は充実している。さすが、ミュージカルの音楽監督も担当していたプレヴィンである。その才能を活かして、なかなかに良い曲ばかりをそれぞれのミュージカルからピックアップしている。アレンジもライトなハードバップ・ジャズ的雰囲気を楽しく聴かせてくれるもので、その出来映えに感心する。プレヴィンの代表盤の一枚に加えて良い内容の好盤である。
 
 
 
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2020年1月22日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・73

ジャズ演奏家の人口って、思ったより多い。40年以上、ジャズを聴いてきて、それでも「こんなジャズマン、いたっけ」という名前にぶち当たることがまだまだある。ジャケ写を見て「これって結構年配だよな」と思い、ググってみて、これが結構経験のある「イケてる」ジャズマンだったりして、「そんなん知らんかった」と愕然とするのだ。

Johnathan Blake Trio『Trion』(写真左)。2018年1月21 and 22日、NYの「The Jazz Gallery」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Johnathan Blake (ds), Chris Potter (ts), Linda Oh (b)。クリス・ポッターは、現代の優れたジャズ・テナー奏者ということは知っているが、他の2人の名前に馴染みがない。特にリーダーのジョナサン・ブレイクを知らない。

ジョナサン・ブレイクはNYを拠点に活躍する、ミンガス・ビッグ・バンド、トム・ハレル・グループなどのレギュラー・ドラマーとのこと。う〜ん、どこかで聴いていたかもしれない。でも馴染みがない。リンダ・オーは、マレーシア出身の注目の女性ベーシストとのこと。この女性ベーシストの名前は全く初めて聞いた。
 
 
Trion_20200122203601  
 
 
ピアノレスのテナー、ベース、ドラムのシンプルなトリオ編成。しかも、リーダーがドラマー。ピアノが無い分、フロントのテナー1本はシンプル過ぎはしないか。CD2枚組のボリュームなので、純ジャズでも飽きるかな、と危惧しながら聴き始める。冒頭、テクニック高く、硬軟自在なドラミング。さすがドラマーのリーダー作なんて、変な感心をしながら聴くが、このドラミング、只者では無い。

とにかく音が良い。活きが良い。躍動感が良い。ポリリズミックでハードバップな正統派ジャズ・ドラム。良い。良い感じだ。そこにクリス・ポッターが熱くテナーを吹き上げ、これが変幻自在のテナーで、ポッターのインプロビゼーションだけでも全く飽きない。ブレイクの躍動的なドラミングの鼓舞に応えて、ポッターのテナーが絶好調。

そして、そこのリンダがベースが絡み、ソロではブンブン、鋼をしならせ、かき鳴らす。これが実に太くて硬質。女性の手なるアコベとは俄に信じ難い。3者対等のインタープレイ。演奏の内容は充実、レベルは高く、CD2枚組のボリュームであるが、全編に渡って全く飽きが来ない。というか一気に聴き切ってしまう。音楽喫茶『松和』の昼下がりに、じっくり聴き入る純ジャズとして、お勧めのライヴ盤です。
 
 
 
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2020年1月15日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・72

我が国では、1970年代後半から徐々に純ジャズ・レコードの新盤がリリースされつつあった。電気楽器がメイン、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの反動もあっただろうし、ハービー・ハンコックの「V.S.O.P.」の成功もあった。僕がジャズを聴き始めた頃の話で、この新しい純ジャズのレコードは耳に心地良く響いた。僕もせっせと当時の新盤の純ジャズ・レコードを入手した「くち」だ。

Roland Hanna『GLOVE』(写真左)。1977年10月15日、青山ビクタースタジオでの録音。ちなみにパーソネルは、 Roland Hanna (p), George Mraz (b), Motohiko Hino (ds)。録音場所からお判りのとおり、日本のレーベルの制作盤。当時、TRIOレーベル初のダイレクト・カッティング・ レコードであった。

帯紙のメッセージが振るっている。「音のトリオが自信を持ってお送りする、ダイレクト・カッティング・レコード第一弾。かって、これほど音楽性を生かしたダイレクト・カッティング・レーコードが存在したか !!」。とにかく、音の良さを前面に押し出したキャッチ・コピーであるが、このピアノ・トリオ盤、パーソネルのジャズメンそれぞれの素晴らしい演奏が体感できる好盤なのだ。
 
 
Glove-roland-hanna  
 
 
ジャケットを見て、まずは懐かしさがこみ上げてくる。こんな安易なジャケット・デザインもないよな、とか思いながら、この盤をかけて貰って、スピーカーから出てきた音に、思わず絶句したのを覚えている。素晴らしい。ローランド・ハナのピアノは強烈な個性は無い。いわゆる「総合力」で勝負するタイプのピアニスト。タッチが切れ味良く明快で典雅。まず、ハナのアドリブ・フレーズの弾き回しに「ハッ」とし、聴き惚れる。

バックのジョージ・ムラーツのベースがこれまた「良い」。バッチリとピッチが合った、ソリッドで骨太なウォーキング・ベース。躍動感豊かなベースにサポートされながら、ハナが気持ちよさそうに典雅でファンキーなフレーズを弾き回す。そして、我らが日本人ドラマーの代表格、日野元彦。大胆かつ細心なドラミングで、演奏全体のリズム&ビートをシッカリと支えている。

このトリオ、スイング感が半端ない。ハナのファンクネス、ムラーツの躍動感、日野のダイナミズム。この3者が一体となって、切れ味の良い、ソリッドなスイング感を醸し出している。これがこの盤の一番の「良さ」。そして、ハナのためらいを感じさせない、勢いのある弾き回しが牽引するドライブ感。これがこの盤の二番目の「良さ」。ダイレクト・カッティングの緊張感も心地良い。ジャズ喫茶の昼下がりにピッタリの好盤です。
 
 
 
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2020年1月 6日 (月曜日)

ドリューにミュージカルの楽曲

ケニー・ドリューのピアノは、ジャズ者初心者の頃から大好きである。典型的なバップ・ピアニストで、テクニックも十分、明確なタッチでダイナミックな展開が身上。ファンクネスを漂わせながら、唄うようにメロディアスで典雅なフレーズを弾き回す。そんなドリューのピアノがお気に入りである。

Kenny Drew『Pal Joey』(写真左)。1957年10月15日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Drew (p), Wilbur Ware (b), Philly Joe Jones (ds)。ドリューお得意のピアノ・トリオ編成。明確なタッチでダイナミックに弾き回すドリューにとっては、旋律を奏でるフロントの役割は自分のピアノで十分なんだろう。

この盤は、人気ミュージカル「Pal Joey」(1940年初演で1950年代には繰り返し上演。1957年にはフランク・シナトラ主演、邦題『夜の豹』で映画化されている)の楽曲を採り上げている。主人公はプレイボーイな流れ者シンガーとのことで、収録された楽曲はどれもが魅力的な曲ばかり。そんな楽曲から8曲を選んで、ピアノ・トリオとして演奏している。
 
 
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ミュージカル曲がベースなので、ドリューのピアノの個性のひとつである「唄うようにメロディアスで典雅なフレーズを弾き回す」部分がバッチリ填まっている。明確なタッチと相まって、ベースの楽曲の良い旋律がクッキリと浮かび上がり、そのコード展開を基にしたアドリブは、ドリューのダイナミックな弾き回しで典雅に展開する。ドリューのピアノに「ミュージカル曲」が良く似合う。

バックのリズム隊も良い味を出している。ドラムのフィリー・ジョーは、バップなドラムをダイナミックにバッシバッシ叩きまくる印象があるが、この盤では、バラード曲は繊細なシンバル・ワークを、軽快な曲ではダイナミックではあるが、楽曲の旋律の邪魔にならないよう、配慮の行き届いた「味のある」ドラミングを聴かせてくれる。フィリー・ジョーの実力を遺憾なく発揮している。

ちょっと奇妙に捻れたベースが個性のウエアもこの盤では、しっかりと低音を響かせた、しなやかなウォーキング・ベースを聴かせてくれる。この端正なウエアのアコベは聴きどころ満載。ウエアのベストプレイのひとつとしても良いのでは、と思う。

「Pal Joey」という人気ミュージカルの楽曲を採用することで、実に魅力的なピアノ・トリオ演奏をものにしている。好盤です。
 
 
 
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2019年11月14日 (木曜日)

どこを切っても「ベノワ節」です

ジャケットの写真を見て、この人、幾つになったのかな、とまず思った。デヴィッド・ベノワ(David Benoit)。1953年生まれなので、今年で66歳。そうか66歳か。ちょっと歳を取り過ぎている雰囲気が気になる。ここは現在の「姿形」の写真を使わなかった方が良かったのでは、と下世話に思う。

『David Benoit and Friends』(写真左)。今年8月のリリース。デイヴィッド・ベノワが豪華ゲストを迎えたスムース・ジャズ盤である。パーソネルを見渡すと、 Dave Koz, Marc Antoine, Rick Braun, Vincent Ingala, Lindsey Webster 等々、スムース・ジャズの「手練れ達」がずらりと名を並べる。

ここまで優秀なメンバーを集めると、演奏のテクニックと表現力については申し分無い。あとはリーダーの統率力と演奏のアレンジである。まあ、この優秀なメンバーを生かすも殺すも「統率力とアレンジ」次第ということだが、ベノワ翁については全く問題無い。この盤の冒頭の「Ballad Of Jane Hawk」を聴くだけで直ぐ判る。
 
 
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この盤、徹頭徹尾、どこを切っても「ベノワ節」満載。ちょっと懐かしさを感じる、フォーキーでネーチャーで印象的なフレーズの数々。シュッとした透明度の高い「深めのエコー」。歩くテンポがメインの「ベノワ・ビート」。演奏全体の雰囲気は明快に「スムース・ジャズ」。クロスオーバーでもフュージョンでも無い。このベノワの音世界こそ「スムース・ジャズ」である。

ベノワのキーボードは完璧に「スムース・ジャズ」の響き。そんなベノワのキーボードにディヴ・コーズのサックスが映える。リンジー・ウェブスターの艷やかなヴォーカルがもそこはかと無くファンキーでビューティフル。マーク・アントワンの「スムースな」アコギが実にムーディー。そこに少し聴くだけで判る、ベノワ独特のアレンジ。

 
ラストのコールドプレイの「Viva La Vida」が絶品。ベノワのアルバムを聴いていると「スムース・ジャズ」もええなあ、と思う。ベノワのスムース・ジャズは「硬派で骨太」。軟弱なところ、聴き手に迎合するところは全く無い。ベノワのスムース・ジャズは「プロの技」。聴き応え十分。我が国で人気がイマイチなのが不思議なくらいである。
 
 
 
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2019年9月10日 (火曜日)

サッチモの素晴らしさを聴く

ジャズを聴き始めた頃、僕は「ルイ・アームストロング(愛称サッチモ)」の良さが良く判らなかった。もともと彼の事をボーカリストだと思っていたこともある。あの「ダミ声」がどうにも理解出来ない。また、ジャズ者初心者なので、彼のトランペットの凄さも判らない。いやはや、若気の至り、汗顔の至りである。

それでも、あのマイルス・デイヴィスをして「サッチモは偉大だ。彼が歴代での最高のトランペッターだ」とべた褒めである。というか、有名なジャズメンというジャズメンが全て、サッチモは最高だ、と言う。これには焦った。なんで僕はサッチモの良さが判らないのか。サッチモの存在は僕のコンプレックスのひとつだった。

『Louis Armstrong Plays W.C. Handy』(写真)。1954年7月12日の録音。Columbiaレコードからのリリース。プロデューサーは George Avakian。Louis Armstrong and His All-Starsの演奏になる。パーソネルを見渡しても、知っている名前はいない。演奏の雰囲気を聴いていると、皆、スイング・ジャズ時代からのメンバーであろう。これが実に良いジャジーな雰囲気を醸し出している。
 
 
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ジャズ者初心者の時代以降、この盤を再び聴いたのは、今から20年ほど前、年齢的に40歳を過ぎた頃である。さすがに、20年ほどジャズを聴き続けて来たことはある。サッチモの「ダミ声」ボーカルが、ダンディズム溢れる、良い雰囲気のボーカルだと感じる様になり、この魅力的な低音「ダミ声」ボーカルで、W.C. Handyの名曲を歌い、トランペットを吹き上げるのだから堪らない。

そして、サッチモのトランペットにも参った。まず音が大きく綺麗でブリリアント。トランペットはこうならして欲しい、という好例がこのサッチモのトランペットにある。そして、歌の伴奏でのサッチモの吹き回しが、これまた「素敵」だ。歌の合間に鼻歌のように入るチェイスや、間奏でのソロ・パフォーマンスは歌心とダンディズム溢れるブリリアントな吹き回しで、ボーカルの存在を一層、際立たせる。

ジャズを聴き初めて20年ほど経って、やっとサッチモの素晴らしさが理解出来た。嬉しかった。コンプレックス解消である。今では、時々、サッチモ盤を引っ張り出しては、我がバーチャル音楽喫茶『松和』の昼下がりに流している。サッチモの魅力的な低音「ダミ声」ボーカルに身を委ね、ブリリアントなトランペットに耳を傾ける。全く以て「至福の時」である。
 
 
 
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2019年7月13日 (土曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・71

我らが千葉県北西部地方、今年の梅雨はいかにも梅雨らしい。6月の終わりに台風が房総半島を掠め去った後、梅雨前線が北上し、それ以来、ほとんど晴れた日が無い。今日で7月も13日。もう2週間以上、ほとんど晴れた日を体験していない。それでも、昨年に比べると気温は低めで、湿気は多くて閉口するが、暑くて我慢できない、ってことは今年は今の所、ほとんど無いのはありがたい。

こういう梅雨の湿気が多くて蒸し暑い気候では、難しいものはいけない。何でもシンプルなものが良い。ジャズでもシンプルなものが良い。加えて、爽快なものが良い。そういう観点からすると、シンプルなハードバップ、ネオ・ハードバップが判り易くてシンプルで爽快感が高い。そう言えば確かに、梅雨時はハードバップ系のあんまり難しく考えなくても、スッと聴き耳をたてることが出来る、シンプルなジャズを好んでかける傾向がある。

『Bud Shank Plays Tenor』(写真左)。1957年11月29日の録音。ちなみにパーソネルは、 Bud Shank (ts), Claude Williamson (p), Don Prell (b), Chuck Flores (ds)。バド・シャンクと言えば、米国西海岸ジャズのアルト・サックスの使い手。アート・ペッパーと並んで、「西海岸アルト・サックス」の代表的存在である。そんなシャンクが全編テナー・サックスを吹いた異色盤。
 
 
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収録された全8曲はスタンダード曲がメイン。シャンクのテナー・サックスは中高音が中心。シャンクがテナー・サックスを持って吹いている、ということを知らなければ、意外とこのブロウが「テナー・サックス」のものとは思わず、ちょっとだけ低めの音がメインのアルト・サックスだと思うだろう。しかし、このシャンクのテナー、流麗でシンプルで、耳に心地良い音はとても印象的。
 
バックのクロード・ウィリアムソンのピアノを中心とするリズム・セクションは堅実。個性的な展開は全く無く、どちらかと言えば、シンプルに正確にリズム&ビートを供給する事に徹していて、どちらかと言えば、1世代前の「ビ・バップ」のリズム・セクション風。しかし、これが良くて、バックの演奏がシンプルで判り易い分、シャンクのテナーのフレーズがほど良く、クッキリスッキリと聴ける。
 
アルト・サックスと同様に、流麗で明確でポジティブなテナー・サックスのアドリブ・フレーズを、ふんだんに聴くことが出来る。これだけ流麗な、流れる様なフレーズの連発、爽快感が半端ないです。乾いた雰囲気が米国西海岸ジャズらしくて、この梅雨の季節には良い感じで耳に響きます。明るい雰囲気のブロウなので、ジャズ喫茶の昼下がりに流すのに最適かと。好盤です。
 
 
 
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