2023年3月20日 (月曜日)

プレヴィンの晩年を愛でる。

小粋なジャズ盤、それも「ピアノ・トリオ」盤を探していると、必ず出会うピアニストがいる。アンドレ・プレヴィンなど、そんなピアニストの1人で、クラシックのピアニスト&指揮者、そして、ジャズ・ピアニストと「3足の草鞋を履く」音楽家だが、アレンジ能力にも優れ、スタンダード曲やミュージカル曲のジャズ・アレンジは、どれもが素晴らしい。

André Previn with Mundell Lowe & Ray Brown『Uptown』(写真左)。1990年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、André Previn (p), Mundell Lowe (g), Ray Brown (b)。アンドレ・プレヴィンがリーダー格、プレヴィンのピアノとロウのギター、ブラウンのベースという、オールド・スタイルのピアノ・トリオ。

通常、今では「ピアノ・トリオ」と言えば、ピアノ+ベース+ドラムの楽器編成が基本。これは、モダンジャズ・ピアノの開祖「バド・パウエル」が恒常的に採用した編成。それ以前は、ピアノ+ベース+ギターの楽器編成が「ピアノ・トリオ」の基本編成だった。このプレヴィンのリーダー作では、敢えてオールド・スタイルのピアノ・トリオ編成を採用して、3種の楽器に「フロント楽器」としての役割を担わせて、3人それぞれのインタープレイの妙が楽しめる内容になっている。
 

Andre-previn-with-mundell-lowe-ray-brown

 
それにしても、プレヴィンのピアノは上手いし、とってもジャジーだ。プレヴィンと言えば、クラシックのピアニスト&指揮者、そして、ジャズ・ピアニストと「3足の草鞋を履く」アーティストだが、ジャズ・ピアニストとしての能力はかなり高い。クラシック・ピアノ出身らしく「端正で歯切れが良く破綻の無い」ピアノが個性。しかも、ファンクネスは皆無なんだが、オフビートが効果的に効いていて、流麗に弾き回すフレーズがとてもジャジー。

ギターのマンデル・ロウのギターも小粋なバッキング。プレヴィンのピアノとの相性がとても良いみたいで、音がぶつかったり重なったりすることが無い。ロウの職人芸的ギターもこの盤の聴きもの。当然ながら、レイ・ブラウンのベースは素晴らしい。ジャズ・ベースのレジェンド中のレジェンドなんだが、この盤でのブラウンのベースは演奏全体のリズム&ビートをしっかり掌握しコントロールしている。安心安定のブラウンのブンブン・ベースはこれまた聴き応え十分。

選曲も一捻りしていてユニーク。全13曲中、ハロルド・アーレンの曲が6曲、デューク・エリントン関連の曲が6曲と、2つの系統のスタンダード曲で固めていて、不思議な統一感がある。この盤を録音した時、プレヴィンは61歳。大ベテランの域に入ったプレヴィンは、若かりし頃の様に弾き過ぎること無く、余裕ある滋味溢れる流麗で躍動感のあるピアノを弾きまくっている。プレヴィンの晩年を愛でるべき好盤である。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年3月19日 (日曜日)

小粋なジャズの相性抜群なコンビ

小粋なジャズ盤を探索して聴き漁っているうちに、小粋なジャズ盤に必須の「小粋な演奏」を量産出来る「相性抜群のコンビ」というものが存在するんじゃないか、と思い始めた。オスカー・ピーターソンとハーブ・エリスとか、ビル・エヴァンスとジム・ホールとか、この二人をコンビを組んで演奏すれば、絶対に「小粋なジャズ」が出来上がる。そんな「相性抜群なコンビ」というものがどうもあるみたいなのだ。

『Teddy Wilson Meets Eiji Kitamura』(写真左)。1970年、テディ・ウィルソンが来日時に北村英治とレコーディングしたセッションをLP化したもの。ちなみにパーソネルは、北村英治 (cl), Teddy Wilson (p), 原田政長 (b), Buffalo Bill Robinson (ds), 増田一郎 (vib)。第5回(1971年度)ジャズ・ディスク大賞(スイング・ジャーナル誌主催)最優秀録音賞を受賞した優秀盤である。

ウィルソンと北村が「相性抜群なコンビ」によってつくりあげたスタンダード集。『After You've Gone』(写真右)というタイトルで再発されているものもあるみたいだが、どちらの盤も聴いてみたが違いは無い。冒頭の「On The Sunny Side Of The Street」から抜群に良い雰囲気。リラックスして、穏やかだが力強い。ゆったりとしたスイング感。ゆったりとしたテンポに漂うファンキーなグルーヴ感。
 

Teddy-wilson-meets-eiji-kitamura

 
この盤に漂う抜群のスイング感とグルーヴ感は、北村のクラリネットのウィルソンのピアノによる「賜物」。北村のクラリネットは穏やかだが力強くスインギー。そのバックでリズム・セクションとして北村のクラリネットをサポートし鼓舞するウィルソンのピアノがファンキーでグルーヴィーでスインギー。この二人の相乗効果で、この素晴らしくスインギーで小粋なスタンダード集が出来上がっている。

北村のクラリネットは「スイング・ジャズ」志向。ウィルソンのピアノは「スイングからハードバップ直前の中間派」志向。どちらもハードバップ志向のジャズとは雰囲気が違うが、モダンなジャズには変わりが無い。スタンダード曲の解釈とアドリブ部の展開について、北村とウィルソン双方の嗜好がバッチリ合っているみたいで、二人のユニゾン&ハーモニー、そして、インタープレイに淀みが無い。

こんな「中間派」の小粋なジャズって、聴いていて、ほのぼのして、リラックス出来て、しみじみする。そして、ずっと演奏を聴き進めて行くと、このクインテットの演奏って、それぞれの楽器のテクニックと歌心が抜群で、凄く聴き応えがあるのが判ってくる。こういう「小粋なジャズ」って捨てがたい魅力満載。今でも、たまに引っ張り出しては聴く好盤です。
 
 

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2023年3月18日 (土曜日)

「和製のヴァイブの新人」出現

我が国のジャズ・シーンにおいても、コンスタントに有望新人が出ている。何時頃からか、そう、21世紀に入って、2002年、ピアニスト山中千尋が初リーダー作を出した頃から、一気に将来有望な新人がどんどん出てきた。商業主義が反映されたボーカルを除けば、どの楽器でも、出てきた新人の多くは、今でも中堅として活躍している。

吉野智子(Tomoko Yoshino) Quartet『Kaleidoscope』(写真左)。2023年1月のリリース。ちなみにパーソネルは、吉野智子 (vib), 雨宮彩葉 (p). 鉄井孝司 (b), 小田桐和寛 (ds)。パーソネルを見渡して、リーダーの吉野智子を含め、僕にとっては初見のメンバーばかり。特に、リーダー吉野の担当楽器は「ヴィブラフォン」。

吉野智子。東京都出身。10歳よりマリンバ、国立音楽大学に進学し、本格的に打楽器全般を演奏し始める。在学中、第13回JILA音楽コンクールマリンバ部門第1位を獲得。同大学ビッグバンド・サークルに所属しヴィブラフォンを担当、第40.41回山野ビッグバンドコンテストにて最優秀賞受賞。ジャズヴァイブ・作曲を赤松敏弘に師事。

アマチュア・ビッグバンド所属のヴァイブ担当が独立して、プロのヴァイビストになった訳で、確かに、吉野のヴァイブは素姓が良い。
 

Tomoko-yoshino-quartetkaleidoscope

 
音の個性としては、ファンクネスは皆無。硬質で透明度の高い音で、ヴァイブの音の質としては、4本マレット奏法を駆使している面も含めて「ゲイリー・バートン」に通じるものがある。音がバートンよりも暖かい感じなので、いわゆる「温和なバートン」という雰囲気。

ヴァイブのパフォーマンス自体は申し分無い。テクニックも優秀、弾き回しは流麗。アドリブ展開のスピード感も十分、速いパッセージは切れ味良く、スローなフレーズは歌心十分。初リーダー作とは思えない、完成度の高いヴァイブである。全9曲中、7曲が自作曲で、これがまた出来が良い。作曲の才能にも注目したい。

演奏全体の雰囲気は、モード奏法がメインの「ネオ・ハードバップ」。特にモーダルな展開は、過去の成果を踏まえながら、現代ジャズの響きを湛えていて立派。即興演奏のフレーズには淀みが無く、ポジティブな響きで清々しい。特にスタンダード曲の「I Hear a Rhapsody」では、アレンジが従来のジャズには無いユニークなもので、アレンジ能力も良さも垣間見える。チャレンジ精神も旺盛。

初デビュー作としては申し分の無い出来。吉野のヴァイブの個性も良く判るし、コンポーズ&アレンジの才能も注目に値する。特に、ジャズ演奏の絶滅危惧種の1つである「ヴィブラフォン」を担当する、将来有望な新人の出現である。次作についても、しっかりと見守っていきたい。
 
 

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2023年3月17日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・261

以前「幻の名盤」ブームがあって、そこには聴くことはなかなか叶わないが、小粋で味のある雰囲気の、知る人ぞ知る優秀盤のタイトルが多く上がっていた様に思う。しかし、最近、そんな「幻の名盤」の類が、サブスク・サイトからダウンロードで鑑賞出来る様になってきた。良い事である。

Joe Newman with Frank Foster『Good 'n' Groovy』(写真)。1960年3月17日、Van Gelder Studioの録音。ちなみにパーソネルは、Joe Newman (tp), Frank Foster (ts), Tommy Flanagan (p), Eddie Jones (b), Bill English (ds)。ジョー・ニューマンのトランペット、フランク・フォスターのテナーがフロント2管のクインテット編成。

ジョー・ニューマンは、1922年、米国ルイジアナ州ニューオーリンズ生まれ。1992年に69歳で鬼籍に入っている。ニューマンの主なキャリアは、カウント・ベイシー楽団の人気トランペッターとして活躍、1967年には、設立に尽力した「ジャズ・インタラクション」の社長に就任した。1970年代から1980年代にかけては数枚のリーダー作を残している。基本的には知る人ぞ知る、玄人好みのトランペッターである。

フランク・フォスターも、カウント・ベイシー楽団の人気テナーマンで、この盤のフロントは、カウント・ベイシー楽団の人気トランペッターとテナーマンがフロントを張っていることになる。そう言えば、ベースのエディー・ジョーンズもカウント・ベイシー楽団の所属ベーシスト。クインテット5人中、3人がベイシー楽団絡みということになる。
 

Joe-newman-with-frank-fostergood-n-groov

 
演奏全体の内容は「ご機嫌なハードバップ・セッション」。モードとかフリーなど、当時のハードバップの先を行く、ジャズ演奏の先進的トレンドに全く関係無く、躍動感溢れるジャジーでバップな演奏がこの盤の最大の個性。

ニューマンのトランペットはブリリアントで水準の上を行くバップ吹奏だし、フォスターのテナーはオーソドックスでオールドスタイルな、モダン・ジャズを地で行くような正統で明らかにハードバップな吹奏。

そして、そこに「名盤請負人」のトミー・フラナガンがピアノで参加している。この盤でのフラガナンは何時にも増して、バップで味のあるモダン・ピアノを聴かせてくれる。速い演奏ではバップなメリハリのある弾き回し、バラードでは典雅で小粋でお洒落なフレーズ連発で、思わず「惚れ惚れ」する。トミフラのピアノは、ニューマンとフォスターの吹奏を見事にサポートして、見事に彩りを添える。そして、トミフラ単体でも、実に魅力的な「小粋な」ピアノを効かせてくれる。

このニューマンのリーダー作、名盤紹介本などでは「トミフラのピアノを聴くべき」アルバムとする向きが多く見受けられるが、どうして、ニューマンのトランペットとフォスターのテナーの寛ぎ溢れる、小粋で味のある吹奏も実に魅力的。アルバム全体の雰囲気、噛めば噛むほど味が出る様な「モダン・ジャズ」は、その魅力満載です。
 
 

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2023年3月16日 (木曜日)

ラヴァの硬派な「純ジャズ」

2日ほどお休みをいただきましたが、本日、ブログ再開です。

さて、久々にイタリアン・ジャズのお話しを。イタリアン・ジャズの至宝トランペッター、エンリコ・ラヴァである。1972年に初リーダー作をリリースしている。約50年間、イタリアン・ジャズの第一線を走ってきた。1939年の生まれなので、今年で84歳。イタリアン・ジャズのレジェンド中のレジェンドである。

Enrico Rava Quartet『Ah』(写真)。1979年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Enrico Rava (tp), Franco D'Andrea (p), Giovanni Tommaso (b), Bruce Ditmas (ds)。エンリコ・ラヴァのトランペット1管がフロントの「ワンホーン・カルテット」な編成。ラヴァのトランペットの本質と個性がとても良く判る編成での演奏になる。

まず、ラヴァのトランペットの素姓の良さを強く感じる。輝く様にブリリアントなトランペットの響き。スッと伸びるロングトーン。切れ味の良い高速パッセージ。とにかくラヴァのトランペットの音は美しい。そして、流麗なアドリブ・フレーズを吹き切るテクニックの高さ。音の「質」は、米国ジャズのトランペットの様な「ファンクネス」は希薄。クラシック音楽の端正で粒立ちの良い響きを踏襲している様で、それが「欧州ジャズ」特有の「質」なんだろう。
 

Enrico-rava-quartetah

 
演奏の基本は「欧州モダン」。しかし、アドリブ展開に入ると、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開し、アブストラクトにブレイクダウンする。と思いきや、統制の取れた構築力の高いアンサンブルで疾走する。1979年というフュージョン・ジャズ全盛時代に、こんなバリバリ硬派でモダンな「ニュー・ジャズ」が演奏されていいたとは。さすがにECMレーベルである。

イタリア出身のジョヴァンニ・トマッソのベース、米国出身のブルース・ディトマスのドラムもラヴァに負けずとも劣らない、限りなく自由度の高いモーダルな展開から、フリーにスピリチュアルに大胆に展開にガッチリ追従し、柔軟に応対する。このリズム隊のレベルの高さも、このラヴァ盤の内容充実に大いに貢献している。

実にECMらしい、欧州モダンらしいニュー・ジャズがてんこ盛り。実はこの盤、ECMレーベルからのリリースでありながら、プロデューサーがマンフレート・アイヒャーではなく、トーマス・ストウサンド(Thomas Stöwsand)で、その結果、ECMの「ニュー・ジャズ」というよりは、ECMレーベルの中では、ちょっと異色の「メンストリーム系の純ジャズ」の雰囲気が濃厚になっている。ガッシガシ硬派な欧州系の純ジャズです。
 
 

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2023年3月13日 (月曜日)

北欧ジャズ・ピアノの風が吹く

ラーズ・ヤンソンは、1951年、スウェーデン生まれ。1975年にアリルド・アンドレセンのグループに加わり、プロとしての活動がスタート。自己のトリオを結成した1979年以後は、北欧ジャズの第一線で活躍している。北欧ジャズの担い手としては「古参」の存在。1980年代に、優れた内容のリーダー作を連発し、国際的に、北欧ジャズの担い手なる一流ジャズ・ピアニストとして認知された。

Lars Jansson Trio『Invisible Friends』(写真左)。1995年1月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Lars Jansson (p), Lars Danielsson (b), Anders Kjellberg (ds)。全曲オリジナルで固められた、北欧ジャズらしい、風が吹くように爽やかで、美しく親しみ易いメロディー満載のピアノ・トリオ盤。

面白いのは、何かと「キース・ジャレット」と比較されるヤンソンのピアノだが、この盤の前半では「ビル・エヴァンス」の影響が感じられるフレーズと響きが満載。しかし、ビル・エヴァンスのコピーでは無く、フレーズの弾き回しと「間」の取り方が似ているが、和音の重ね方はヤンソンのオリジナル。響きは深く透明度の高いエコーがかかった北欧ジャズらしい響き。北欧ジャズらしく、ヤンソンの解釈する「ビル・エヴァンス」といった風のピアノがユニーク。
 

Lars-jansson-trioinvisible-friends

 
後半は、いつも通りの北欧ジャズらしい、美しく親しみ易い「ヤンソン節」満載の、耽美的でリリカル、深遠でメロディアスなピアノの弾き回しが堪能できる。しっかり聴くと「キース・ジャレット」のヨーロピアン・カルテットのピアノとは、やっぱり違ってて、ヤンソンのピアノは、キースと比べて、表現がシンプルでトーンが暖かく、フレーズは判り易く親しみ易い。この盤の後半部分の音を聴いていても、ヤンソンのピアノは、キースのピアノとは「似て非なるもの」だと感じる。

バックのリズム隊もいかにも北欧ジャズらしい音で、演奏全体のリズム&ビートをしっかり支え、牽引している。ダニエルソンのベースは、しなやかな鋼の様なシャープな弦鳴りで、エモーショナルに堅実に、ベースラインを供給する。シェルベリドラムも柔軟なスティック捌きで、硬軟自在、緩急自在、フロントのフレーズに的確に反応するドラミングは相変わらず見事だ。

前作の初リーダー作であったトリオ盤から、4年を経てのリーダー作第2弾であるが、出てくる音世界にブレは無い。冒頭の「Invisible Friends」から、ラストの「Under The Bodhi Tree」まで、北欧ジャズのピアノ・トリオの音が満載。これだけ、耽美的でリリカルな音世界なのに、スピリチュアルな世界に入り込まず、美しく親しみ易いニュー・ジャズなトリオ演奏を展開するところが、ラーズ・ヤンソン・トリオの真骨頂。北欧ジャズの好盤の1枚です。
 
 

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2023年3月12日 (日曜日)

タルのドラムレスのトリオ名盤

CDの時代になって、アルバム1枚単位の収録時間が、LP時代よりも飛躍的に長くなった。それに伴って、LP時代には収録されなかった、お蔵入りの演奏や他のセッションでの演奏を「ボーナストラック(略してボートラ)」として収録されることが多くなった。

すると、困ったことが起きる訳で、LP時代のオリジナル盤に収録されていなかった演奏が追加収録されて、全く違った内容のアルバムになってしまうのだ。これが厄介で、オリジナル盤の「オリジナリティー」が全く損なわれる訳で、このボートラの存在は全くの「必要悪」だと僕は思っている。未収録の演奏は未収録だけを集めた別のアルバムにしてリリースすべきだろう。

Tal Farlow『Tal』(写真左)。1956年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g), Eddie Costa (p), Vinnie Burke (b)。前作まで、ピアノ入りのカルテット編成で「聴かせる」パフォーマンスだったが、この盤では、ちょっと珍しい、ドラムレスのギター・トリオの演奏になっている。

さて、デビュー当時のリーダー作でのトリオ演奏では、速弾き過ぎて多少拠れようが、難度の高いフレーズを弾き切ってしまう強引さが魅力だったが、この『Tal』では、さすがにスタジオ録音では、リーダー作の5枚目。トリオ演奏に戻しても、タルはデビュー当時の強引さを封印して、余裕のある、テクニカルな弾き回しで、スタンダード曲を魅力的に聴かせてくれる。
 

Tal-farlowtal

 
しかし、タルのフレーズは、スケールの幅が広くて、よく指が届くなあ、と感心する。いわゆる「オクトパス奏法」が炸裂、タルのギターの個性と特徴が最大限に活かされた、スタンダート曲集になっている。ベンドやエフェクターを使用しない、リアルなピッキングが、スタンダード曲の持つ美しい旋律をより一層引き立たせている。

バックのリズム隊、エディ・コスタのピアノ、ヴィニー・バークのベースも良い味を出していて、ドラムがいない分、コスタのピアノが上手くリズム&ビートの供給役をこなしていて、バーグのベースが、演奏全体のベースラインをしっかりと押さえている。ドラムレスということが全く気にならない、全く意識させない、素晴らしいピアノ+ベースのリズム隊である。

このタル・ファーロウの名盤の誉れ高い『Tal』も、CDリイシュー時(2010年だったと思う)、7曲の未収録曲が追加されて、大混乱に陥った。ドラムレスのギター・トリオの傑作、というのが、この『Tal』の定評だったが、追加された未収録曲は、1958年2月NY録音のカルテットの演奏が追加されていたのだ。初めてこのCDリイシューの『Tal』を聴いた人は、それまでの『Tal』の評論文を読んで、かなり戸惑ったのではないか。

もともとのLP時代のオリジナル盤は、先頭の「Isn't It Romantic?」から「Broadway」までの全8曲が、正式な収録曲になる。この8曲が、1956年3月、NYでの録音。そして、以前より名演と言われる「ドラムレスのギター・トリオの演奏」になる。オリジナル盤同様、この8曲に絞ったCDリイシュー、サブスク音源もあるので、『Tal』を純粋に鑑賞しようというのであれば、このオリジナル盤と同じ収録曲、曲順のものが良いだろう。

 

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2023年3月11日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・260

小粋なジャズ盤を探索していると、我が国のジャズ・シーンでは、ほとんど名前が売れていないジャズマンの好盤に出くわすことが多い。

こんなに優れたアルバムを出すジャズマンを僕はこれまで知らなかったのか、と思って慌ててネットでググって見ると、ほとんどが、ビッグバンドで長年活躍していたり、サイドマンがメインで活躍していたジャズマンで、ビッグバンドなど所属するバンドの中に埋没して、その個人名が表面に出てこないのだ。

David Kikoski『Sure Thing』(写真左)。2016年2月3日、ブルックリンでの録音。ちなみにパーソネルは、David Kikoski (p), Boris Kozlov (b)。耽美的でリリカル、バップでモーダルなデヴィッド・キコスキーのピアノと、堅実実直なボリス・コズロフのベースとのデュオ作品になる。

デヴィッド・キコスキーは、1961年、ニュージャージ生まれのジャズ・ピアニスト。今年で62歳のベテランである。1985年辺りから、NYで活動。様々な人気ジャズマンのグループに参加、特に、ミンガス・ビッグ・バンド等の活躍がよく知られるピアニストとのこと。僕はランディ・ブレッカーのグループで、キコスキーの名前を薄らと覚えているが、彼のピアノをじっくりと聴いたことはなかった。

本作は全8曲。キコスキーのオリジナルが4曲、その他の曲は、ジャズメン・オリジナルやスタンダード等。ベースのコズロフは、キコスキーと同じ、ミンガス・ビッグバンドの一員で、ビッグバンドの活動の中で共演している、お互いのことを良く知った間柄。まず、キコスキーのオリジナル曲では、キコスキーとコズロフの2人が、素敵なアレンジの下、お互いの音をよく聴き、お互いの音を引き立たせ、適度なテンションの中、気心知れた即興演奏の妙を繰り広げている。
 

David-kikoskisure-thing

 
ジャズメン・オリジナルは、チック・コリアの「Quartet #1」、ジョン・コルトレーンの「Satellite」を取りあげている。どちらの曲も「ピアノとベースのデュオでやる曲か」と思ったが、聴いてみて、とても上手くアレンジされていて、原曲の雰囲気も残っていて、デュオ演奏としても秀逸。スタンダード曲は「Sure Thing」。これもなかなかにマニアックな選曲だと思うのだが、バップっぽく演奏されていて、これも良い出来だ。

そして、ビックリしたのが「Fugue from “The Endless Enigma”」。聴いていて「これは昔かなり聴いた曲、これはロック」と思って、しばらく聴いていて、エマーソン・レイク&パーマー(EL&P)の4th.盤『Trilogy(トリロジー)』の中の「永遠の謎」であることに気がついた。即、ネットで調べて見て「ビンゴ!」。このフーガは注目度大。

資料によると、『Trilogy(トリロジー)』は、キコスキーが 12~13歳の頃のお気に入りのアルバムで、ロック・ミュージシャンがブルースやロックンロール、ブギウギやクラシックまでを演奏することに感動、自分もそのようなキーボード奏者になりたかったそうだ。いつかこの曲を演奏をしたかったとのこと。

このEL&PのFugue from “The Endless Enigma”」、キコスキーが言うように、かなりこの曲を聴き込んでいたのが、とても良く判る。原曲のイメージをしっかり押さえつつ、ジャズ化〜デュオ化のアレンジも秀逸、ジャズらしくアドリブ展開も良好、ロック曲の単なるカヴァーでは無い、良好にジャズ化されている。

キコスキーのピアノと、コズロフのベースとのデュオ演奏だが、キコスキーのピアノが前面に出ていて、キコスキーのピアノの個性がじっくりと味わえるバランスになっている。コズロフはキコスキーのフロントとしての演奏のベースラインと、演奏全体のリズム&ビートのコントロールを担っていて、地味ではあるが、堅実なベースで、このデュオ演奏に貢献している。

良いデュオ盤です。ジャズ盤紹介本や、ジャズ雑誌にそのタイトルが上がることがほぼ無い、それでいて、こういう優れた内容のジャズ盤がまだまだ沢山あると思ってます。小粋なジャズ盤の探索は止められませんね。
 
 

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2023年3月10日 (金曜日)

グループ・サウンズ重視のタル盤

タル・ファーロウを聴いている。パッキパキのシングルトーンがなのだが、ファンクネスは控えめ。バップでリリカルな疾走感のあるテクニカルなギターが身上。この辺が他の黒人系のギタリストと一線を画すところ。とにかく、シュッとしていて切れ味の良いシングルトーンでバリバリ弾きまくる。一転、バラード演奏は味のあるシングルトーンのフレーズを響かせて、印象的に唄い上げていく。

『The Interpretations Of Tal Farlow』(写真左)。1955年1月7日、ロサンゼルスでの録音。Tal Farlow (g), Claude Williamson (p), Red Mitchell (b), Stan Levey (ds)。タル・ファーロウのVerveレーベルからの第3弾。バックのピアノ・トリオは、米国ウェストコースト・ジャズの精鋭達で編成されている。演奏の基本は「ウエストコースト・ジャズ」。いわゆる「洒落たアレンジで聴かせるジャズ」である。

スタンダード曲中心の選曲。これが実に良い。これまでのタルのリーダー作3枚は、どちらかと言えば、タルの弾きまくり、タルの高速テクニック、バップなフレーズがメインだったが、このリーダー作4作目『The Interpretations Of Tal Farlow』は、それまでのリーダー作と趣きが違う。バックのリズム隊が、ウィリアムソンのピアノ、ミッチェルのベース、レヴィーのドラムと、ウエストコースト・ジャズを代表するピアノ・トリオ、という影響もあるのだろうか。
 

The-interpretations-of-tal-farlow

 
この盤でのタルは、バリバリ弾くというよりは「じっくり味わい深く」弾いている。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも、じっくり味わい深く弾き進めている。もともとテクニックに優れ、歌心を備えたギタリストである。そんなギタリストが腰を据えて「じっくり味わい深く」スタンダード曲を弾くのだ。良いに決まってる(笑)。

この盤の「キモ(肝)」は、バックのリズム隊。ウィリアムソンのピアノが効いている。タルのギターとの相性が良い様で、タルのバックに回って、タルのギターを引き立て、タルのギターの良き相棒の如く、心地良いユニゾン&ハーモニーを奏でている。そこに、西海岸の職人ベーシストのミッチェルが演奏の底を支え、西海岸の技のドラマー、レヴィーが演奏全体のリズム&ビートをリードする。この西海岸の精鋭リズム隊をバックに、タルは気持ちよさそうにギターを弾き進めている。

ジャケットもお洒落で良い。アレンジ良し、演奏良し、ジャケット良し。ジャズ・ギターの紹介本や紹介記事に、あまりそのタイトル名が上がることがほどんど無いアルバムだが、タルのギターで、グループ・サウンド重視でスタンダード曲を聴くのに最適なアルバムだと思う。タルのギターが少し引っ込むが、その分、グループ・サウンズ・トータルとして内容が充実したアルバムでしょう。
 
 

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2023年3月 9日 (木曜日)

ピアノでジャズの歴史を駆け巡る

ジャズは死んだ、なんて言われて久しいが、2023年になった今でも、ジャズの新盤はコンスタントにリリースされているし、有望な新人もコンスタントに現れ出でている。今回も、なかなか将来有望な、米国東海岸の新進気鋭のジャズ・ピアニストの最新のリーダー作を聴く機会に恵まれた。

Emmet Cohen『Uptown in Orbit』(写真左)。2021年12月1ー2日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Emmet Cohen (p), Russell Hall (b), Kyle Poole (ds), Patrick Bartley (as), Sean Jones (tp)。米国東海岸の新進気鋭のジャズ・ピアニスト、エメット・コーエンがリーダーのクインテット編成。トリオ演奏とクインテット演奏、2種類にフォーマットで演奏している。

エメット・コーエンは、1990年、米国フロリダ州マイアミの生まれ。今年33歳のバリバリ若手のジャズ・ピアニストである。クラシック音楽にも造詣が深く、コーエンのピアノを聴いていると、確かにクラシックの影響が垣間見える。2011年に初リーダー作『In the Element』をリリース。以降、1年に1枚のペースでコンスタントにリーダー作をリリースしている。

さて、このコーエンの『Uptown in Orbit』、内容的に面白い。冒頭、ラグタイム風のピアノに面くらう。そして、ラグタイム〜ストライド〜デキシーランドな雰囲気濃厚な「Finger Buster」へと展開する。
 

Emmet-cohenuptown-in-orbit

 
オールド・スタイルなピアノだが、実にスインギーに弾き進めていく。オールド・スタイルのジャズへのオマージュ的な内容かと思いきや、2曲目のタイトル曲は、6/8拍子で、硬派でハードバップなモード・ジャズをガンガン展開する。

この2曲目の「Uptown in Orbit」では、バートリーのアルト・サックスとジョーンズのトランペットが参入して、クインテットの演奏になっているが、熱気溢れる演奏で聴き応え十分。クインテットの演奏も実に魅力的だ。で、3曲目の「My Love Will Come Again」は、非4ビートでメロディアスな演奏に早変わり。

以降、ジャングルスタイルやラテン的な要素も見え隠れ、コンテンポラリーな純ジャズ、ポスト・バップな8曲目「Distant Hallow」、9曲目の「Mosaic」のアップテンポな演奏は見事。

恐らく、このコーエンの『Uptown in Orbit』は、デキシーランド〜現代までのジャズの歴史がテーマになっているのだと思うが、コーエンのピアノ・トリオが、この様々なスタイルのジャズに対して、変に拘ること無く、サラッと柔軟に素直に対応しているのには凄く感心した。このコーエン、ホール、ポールのトリオのポテンシャルは相当なものと推察する。

とりわけ、コーエンが実に楽しそうにピアノを弾きまくっている様子が、このアルバムの各演奏から伝わってきて、実に微笑ましい。テクニック優秀、歌心も備わっていて、ピアノの弾き回しに勢いがあって、疾走感が溢れる。これから、コーエンのピアノからは目が離せない。歳を重ね、今のピアノに成熟が伴ってきたら、どんな素晴らしいピアノに進化するのだろうか。今から楽しみである。
 
 

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