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2014年7月13日 (日曜日)

寺井尚子はガンガンに弾きまくる

日本を代表するジャズ・バイオリン奏者の寺井尚子。最新作『Very Cool』は、久し振りに「ジャジーな雰囲気」が嬉しいアルバムであった。

どうも『My Song』あたりから、ジャズ・アルバムというよりは、イージーリスニング寄りの耳当たりの良い、聴き心地の良いアルバムをリリースするようになったなあ、という印象があって、どうにもこれはなあ、という感じで、どうにも具合が良くなかった。

しかし、遡れば、この『Adagio(アダージョ)』(写真左)までは、しっかりと純ジャズ基調の「ジャジーな雰囲気」の内容で、今一度聴き直してみても、なかなか聴き応えがある。

今日、つらつらとこの『Adagio』を聴き直してみたんだが、ジャズ・バイオリンの音って、夏の雰囲気になかなか合う。といっても、部屋の外の夏の強い日差しを眺めながらのエアコンの効いた静かな部屋の中でのこと(笑)。決して、汗をダラダラ流しながら聴いて爽快な音では無い。

さて、この『Adagio(アダージョ)』は、冒頭の「Time To Say Goodbye」から、超絶技巧なクラシック・バイオリンの様に、テクニックを駆使して、バイオリンを弾き倒している。鬼気迫るアドリブ。あまりのテンションに、このアルバム・タイトルはちょっと違うんやないのか、とも思ってしまう。ちなみに、「Adagio(アダージョ)」の意味は「くつろぐ」という意味。

3曲目の「Premier Amour」から、落ち着いた雰囲気の、まさに「Adagio(アダージョ)」な雰囲気になる。それでも、寺井のバイオリンは超絶技巧なアドリブ展開を緩めない。ガンガン弾きまくる。う〜ん、これでは確かに、バイオリン・ジャズにムーディーな雰囲気を求める向きには合わんなあ。でも、僕にはこの純ジャズ貴重な雰囲気が良いんやなあ。
 

Naoko_terai_adagio

 
もともと、ジャズ・バイオリンのマイナー調の響きには、ラテン調、スパニッシュ調の調べがバッチリと合うんだが、この5曲目の「Sometime Ago - La Fiesta」には参った。僕の大のお気に入りピアニスト、チック・コリアの名曲である。これがまあ、バイオリンの調べがバッチリ合う。

結構、難度の曲なんだが、寺井尚子は超絶技巧なテクニックを駆使して、思いっきり弾き倒していく。特に「La Fiesta」の部分のアドリブ展開には惚れ惚れする。よくぞこの難曲をバイオリンで制圧した、天晴れである。チック者の僕にとっては、この『Adagio(アダージョ)』というアルバムは、この「Sometime Ago - La Fiesta」の名演だけで満足のアルバムである。

以降、「Clignancourt」「The Key Of The Heart」等々、ひとつ間違えば、甘い砂糖菓子の様なムード音楽に陥りそうな曲を、超絶技巧なジャズ・バイオリンで、テンション高く弾き倒していく。とにかく「爽快感抜群」である。

ちなみにパーソネルは、寺井尚子 (vln), 北島直樹 (p), 店網邦雄 (b), 中沢剛 (ds, per)。純日本のメンバーによるカルテット編成。このアルバムで、寺井尚子のジャズ・バイオリンの個性が定まったといっても良い。しかし、あまりにしっかりと純ジャズ基調の「ジャジーな雰囲気」の内容で、バイオリン・ジャズにムーディーな雰囲気を求めるニーズには応えられない。

あくまでこれは想像ではあるが、このアルバムを境に、「人気を上げ、アルバムの売り上げを向上する」という厄介なレコード会社の要請にも応えるべく、次のアルバムからは、イージーリスニング寄りの耳当たりの良い、聴き心地の良いアルバムを指向する様になる。

これもまた、プロのミュージシャンとして仕方の無いこと。決して批判されることでは無い。が、寺井のジャズ・バイオリンのジャズ性を評価する「聴く方」としては、どうにもこれはなあ、という感じで、どうにも具合が良くない時期が暫く続くことになる。

 
 

震災から3年4ヶ月。決して忘れない。まだ3年4ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

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2014年5月26日 (月曜日)

寺井尚子の最新作『Very Cool』

もともと、寺井尚子のジャズバイオリンはお気に入りである。ジャズバイオリンと言えば、純ジャズ系ではステファン・グラッペリ、フュージョン系ではジャン・リュック・ポンティくらいしか、演奏家の名が浮かばない。ジャズとして、いわゆる「希少」な楽器ジャンルである。

寺井尚子のジャズバイオリンは、純ジャズとしてはステファン・グラッペリ、フュージョンとしてはジャン・リュック・ポンティと比肩するテクニックとセンスを持っており、世界のレベルで十分勝負出来るものだ。

初リーダー作『Thinking of You』は、バップ・チューン「Donna Lee」の超絶技巧な演奏をベースに、純ジャズとしてのジャズバイオリンの秀作だった。それから、ずっと純ジャズとフュージョンを上手くミックスした「ジャジーなアルバム」をリリースしてきた。

しかし、どうも『My Song』あたりから、ジャズ・アルバムというよりは、イージーリスニング寄りの耳当たりの良い、聴き心地の良いアルバムをリリースするようになったなあ、という印象があって、どうにもこれはなあ、という感じで、寺井尚子のアルバムからは暫く遠ざかっていた。

が、今回の新作、寺井尚子『Very Cool』(写真左)は久し振りに「ジャジーなアルバムの雰囲気」。北島直樹 (p), 店網邦雄 (b), 中沢剛 (ds) による気心知れたレギュラーメンバーのトリオ演奏をバックに、寺井尚子がバイオリンを弾きまくるという、従来のジャジーな演奏スタイルが戻って来たようなのだ。
 

Naoko_terai_very_cool

 
しかも、ヴァイブの山本玲子、クオシモードのパーカッション松岡Matzz高廣がゲスト参加。バイオリン一本のフロントだと曲によっては、どうしてもイージーリスニング風の展開になってしまいがちなところを、ヴァイブの参加が上手くクリアしている。パーカッションの参加もグッド。ドラム一本で単調になりがちなリズム&ビートをバリエーション豊かにしている。

選曲もジャズっぽくて良い。1曲目の「Manha De Carnaval」、3曲目の「Cantaloupe Island」、7曲目の「Tempus Fugit」、8曲目の「Everything Happens To Me」の存在に思わずニンマリ。

加えて、ヴァイブの山本玲子、クオシモードのパーカッション松岡Matzz高廣のゲスト参加ということで、今回はきっと、純ジャズとフュージョンを上手くミックスした「ジャジーなアルバム」になっていると踏んで、久し振りにアルバムをゲット。

確かに、この『Very Cool』は、久し振りにジャジーな内容。2曲目の「Quizas. Quizas. Quizas」の存在には首を傾げたくなるが、その他の曲の選曲とアレンジ、プロデュースについては、純ジャズとフュージョンを上手くミックスした「ジャジーな雰囲気」。最後まで、ジャジーな感覚で楽しむことが出来ます。

やはり先に挙げた「ニンマリする選曲」である、「Manha De Carnaval」「Cantaloupe Island」「Tempus Fugit」「Everything Happens To Me」が良い出来だと思います。山本のヴァイブも松岡Matzz高廣のパーカッションも、ファンクネスは仄かに香る程度で、シンプルでストレート。様々なアレンジ、ニュアンスに適応するもので、これもグッド。

寺井尚子のバイオリンは優秀。テクニックも更に高みに達した感がある。バイオリンの音も豊か。アルバム全体の録音も優秀。久し振りに寺井尚子のアルバムをジャジーな感覚で楽しむことが出来ました。

 
 

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2013年9月 7日 (土曜日)

寺井尚子は「硬派」が似合う。

昨日ご紹介した『Princess T』で完璧なフュージョン・アルバムに転身し、その後、今までの活動の総括的なライブアルバム『NAOKO LIVE』(2011年6月23日のブログ参照・左をクリック)を出したことで、寺井尚子の活動の第一幕は閉じた感があった。

次なる新たな展開は何か。実はあんまり期待はしていなかった。大レコード会社のイメージ先行型の販売展開は、ミュージシャン本人の意思に関わらず、常軌を逸した形となり、ひいては演奏家の個性と才能をつぶしがちなのだが、寺井尚子もその波に飲み込まれたかに見えたからだ。

が、しかし、この4th.アルバム『All For You』(写真左)はその不安をうち消して余りあるアルバムに仕上がっている。リリース当時、ホッと安堵したことを覚えている。

再び「硬派な純ジャズ的雰囲気をバイオリンで力ずくって感じ」を引っさげ、耳に優しいフュージョン的な演奏も「硬派なフュージョン・ジャズ」で押し通し、演奏家としての意志の強さがしっかりと感じられる、素晴らしい演奏の数々がこのアルバムの中に溢れんばかりに詰まっている。
 

All_for_you

 
その「強さ」は冒頭の2曲で感じ取ることができる。1曲目「おいしい水」はボサノバの名曲。しっかりと純ジャズよろしく、寺井はアドリブを繰り広げていく。

2曲目は「ビ・バップ」。ビ・バップの創始者の一人ディジー・ガレスピーの名曲で、この演奏こそが、このアルバムのハイライトで、バイオリンの純ジャズの名演として記憶されるべき名曲と思う。実に硬派な演奏で、胸がすくような名演だ。

4曲目と6曲目は、アコーディオンの名手リシャール・ガリアーノとの競演。これが「目からウロコ」で、 バイオリンとアコーデオンは実に良く合う。

前に『バイオリンの音色の最大の特色は「哀切感」である』ってなことを書いたが、この「哀切感」が、アコーディオンの音色に増幅されて、さらに浮き出てくるのだ。これって「ジャズ」しているよなあ。「ジャズ」以外なにものでもない、この組み合わせの妙。ドビュッシーの「月の光」も、展開部はジャズしていて良し。

このアルバムでの寺井尚子は、良い意味で、純ジャズとフュージョンのいいとこ取りをしている。バイオリンという楽器の性質がそうさせるのだろう。

 
 

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2013年9月 6日 (金曜日)

フュージョン・ジャズに早変わり

1作目・2作目と、純ジャズとフュージョンを上手くハイブリットさせた、ジャズ・バイオリンの佳作を世に出した寺井尚子。

さて3作目は如何に、と思いきや、かのフュージョン・ギターの大御所、リー・リトナーをプロデューサーに迎えて、大フュージョン大会のアルバムを世に出したのだった。いや〜、これはこれは、明らかに商業主義に走った、寺井尚子を「ジャズ・プリンセス」に祭り上げた内容と相成った。

この3枚目のアルバムは『Prinsess T』(写真左)。Tは寺井のイニシャルの「T」なんでしょうが、いかにも大手レコード会社の悪ノリ。「イメージ路線一直線」ってな感じがなんだか気持ち悪いタイトルである。しかも、ジャケットの寺井の格好って、これでは、完全に「アイドル」のノリではないか(笑)。

リー・リトナーがプロデューサーなので、内容としては前2作と異なり、 完全にフュージョン基調のアルバム内容になっていて、純ジャズの路線は微塵もない。

ファースト盤『シンキング・オブ・ユー』の硬派な純ジャズ的雰囲気である、「バイオリンで体育会系のノリで硬派な純ジャズ」って感じを期待すると見事に裏切られる。
 
プロデューサーのリー・リトナーは、プロデューサー業に加えて、自らもほとんどの曲でギターを弾く気の入れよう。まあ、寺井のような女性が相手だと気合いが入るのは、男であれば皆同じ(笑)。
 

Princess_t

 
アルバム全編に渡り、耳当たりの良い、実に心地よいフュージョン的演奏がぎっしり。ウエザー・リポートの名演で有名な「ブラック・マーケット」も、ソニー・ロリンズの大名曲「セント・トーマス」も、そのオリジナルの硬派な雰囲気は微塵も無く、耳当たりのよいフュージョンに大変身。

しかしながら、演奏の内容自体は密度が濃く、アレンジも優れており、フュージョン全盛時によくあった、単に耳当たりが良いだけのフュージョン演奏とはまったく違う、実に良質なフュージョンがこのアルバムに溢れている。それが救いと言えば救いである。

この盤、スピーカーの前で相対して聴くアルバムではなく、生活のBGMとして聴くというスチュエーションがぴったりのアルバムではある。

でも、僕は不満。やはり、バイオリンという、ジャズの中で、実にユニークな存在の楽器をソロ楽器として引っさげ、ジャズ界に殴り込みをかけたような「硬派」的雰囲気が失われたのは実に惜しい。

この盤だけ聴いて、フュージョンなバイオリン・ジャズも良し、とすれば、それはそれで幸せなんだが、こちらは、1作目・2作目と、純ジャズとフュージョンを上手くハイブリットさせた、ジャズ・バイオリンの佳作を経験している。

このまま、寺井尚子もジャンル不明な「癒し系」の音楽にひた走るのか、と、ちょっと寂しさを感じる内容なのは正直なところではある。

 
 

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2013年9月 4日 (水曜日)

寺井尚子の初期の傑作アルバム

ファースト・アルバム『Thinking of you』(2011年7月19日のブログ・左をクリック)は、デビューアルバムだけに、積極果敢、「なにがなんでも頑張るぞ」的な初々しさと、チャレンジ精神が旺盛だった。そのがむしゃら感と硬派な純ジャズな雰囲気が魅力の好盤だった。

続くセカンド・アルバム『Pure Moment』(写真左)は、1999年のリリース。ちなみにパーソネルは、寺井尚子 (vln), 奥山勝 (p,syn), 池田達也 (b), 藤井摂 (ds), 横山達治 (conga)。オール日本人のメンバーで、充実の演奏を繰り広げている。

このセカンド・アルバムは、客観的かつ冷静に「ジャズにおけるバイオリン」を最大限活かすには、どの様な選曲が良くて、どの様なアレンジが良いのか、じっくり考えて作られている。そして、細部に渡ってきめ細やかな配慮が行き届いた、充実度の高いアルバムに仕上がっている。

「ジャズにおけるバイオリン」を最大限に活かすには、と検討した一つの結果が、ラテン・フレーバーだったのだろう。ラテン音楽を下敷きにした、1曲目の「Adios Nonino」と、5曲目の「Spain」が素晴らしく、バイオリンの音色が、その曲想にマッチしている。
 

Pure_moment_1

 
特に、チック・コリア作の「Spain」は、バイオリン演奏における、苦手な音階の部分を上手くアレンジで処理しながら、バイオリン演奏が映える音階の部分は、堂々とバイオリン演奏の為に書かれたような、素晴らしい演奏が繰り広げられる。

6曲目の「Estate」だって、ほんのりとラテン調。こんなに、ラテン調のジャズがバイオリンに合うとはねえ。やはり、バイオリンの音色の最大の特色は「哀切感」であり、寺井尚子は、その「哀切感」を最大限に引き出しており立派だ。

それと、4曲目のスティングの名曲「Fragile」では、ピチカート奏法を披露する。冒頭の旋律は語りかけるようなピチカートで、静かに、そして力強く歌いかけながら、サビの展開部では朗々とボウイングで歌い上げていく。この展開はなかなか感動的だ。歌心溢れるその名演を是非とも皆さんも体験して下さい。

そして、7曲目では、なんと、あの宇多田ヒカルの名バラード、「First Love」を堂々と歌い上げるのだ。これはなかなかの演奏で、「今」のJポップ・シーンが、十分にジャズの素材として、将来、ジャズ・スタンダードとなりうる優れた楽曲を送出していることに感動を覚える。

この『Pure Moment』は彼女の初期の傑作である。純ジャズにおけるバイオリンがリーダーのアルバムとしても秀逸で、バイオリン・ジャズとして名演に位置する好盤だと僕は思う。

 
 

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2011年7月19日 (火曜日)

酷暑の夏は「バイオリン・ジャズ」

今年の夏は酷暑。しかも蒸し暑い。もうハードな純ジャズは駄目。暑くて駄目。出来る限り爽快感のあるシンプルなジャズが良い。爽快感ってなあ、っと思案投げ首していたら、「バイオリン・ジャズ」を思い出した。バイオリンの音って、シンプルな爽快感がありますよね(ちょっと強引か?)。

ジャズにおけるバイオリンの存在は、かなり異端な存在で、海外でも、ジャズ演奏家としての有名どころは、ステファン・グラッペリをはじめ、数名を数える程度。楽器としては、基本的には、ジャズ・ベースと同じ弦楽器なので、楽器としての構造上、ジャズの旋律が弾きにくいという訳ではないのだが、なぜか、ジャスのジャンルで、バイオリンをソロ楽器として、弾きこなすミュージシャンはとても少ない。

その、なぜか異端的な楽器、バイオリンを引っさげて、寺井尚子がデビューしたのが、1998年。まず、そのデビューに関する記事を雑誌で見たときは、その顔立ちとスタイルの良さとバイオリンによるジャズ演奏という物珍しさから、人気優先型のいわゆる「レコード会社によって、売るために作られたミュージシャン」だと思った。
 

Thinking_of_you

 
そのデビュー盤が『Thinking of you』(写真)。寺井尚子の顔立ちの良い容貌と「ジャズでバイオリンを弾きこなす」ということが何故かアンバランスで、実に作為的に感じたのだった。故に、当初は避けて通った。が、このデビュー盤の1曲目と3曲目、10曲目を見て、「これはちょっと聴いてみるか」という気になった。

その1曲目は、名盤「ブルースの真実」中の名曲「ストールン・モーメンツ」。そして、3曲目は、ビ・バップの名曲、チャーリー・パーカーの名演で有名な「ドナ・リー」。10曲目は、ジャズの高僧、その特徴的な旋律で、ワン・アンド・オンリーな光彩を放ち続けるセロニアス・モンクの「ストレイト・ノー・チェイサー」。

いずれの曲も、正統派ジャズの代表的名曲中の名曲で、この名曲を、デビューアルバムで、しかも、バイオリンで演奏するなんざあ、ひ弱なタレント・ミュージシャンのすることでは無い、と感じたのだ。

そして、「買って正解、聴いて正解」。そのテンションの高い、チャレンジブルな内容は、特筆に値する。バイオリンを使ったジャズ演奏が、こんなに楽しいものとは知らなかった。特に、10曲目の「ストレート・ノー・チェイサー」なんぞは「かっこええなあ」の一言。彼女自身の自作の曲もなかなかの出来で満足。見かけで判断は禁物、まずは聴くべし。

 

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2011年6月23日 (木曜日)

日本のバイオリン・ジャズの名盤

バイオリン・ジャズ。純ジャズでは、ステファン・グラッペリ、フュージョンでは、ジャン・リュク・ポンティが浮かぶが後が続かない。絶対数が少ないのだ。日本では寺井尚子。希少価値である。デビューの頃は尖った純ジャズでならしていたが、最近はムード音楽化してきたので、なかなか手が伸びない。
 
それでも、寺井尚子のバイオリン・ジャズは、結構、僕のツボに入っていて、デビュー作以来、ほとんどのアルバムを所有している。でも、やはり、最近の寺井尚子のリーダー作は、完全にムード音楽化してきたので、どうしても触手が伸びない。
 
そんな中、寺井尚子のアルバムの中で、一番、バーチャル音楽喫茶『松和』でかかるアルバムは何か、と振り返って見たら、圧倒的に『NAOKO LIVE』(写真左)であることが判った。ちなみにパーソネルは、寺井尚子(vln)、Lee Ritenour(g)、Alan Pasqua(p)、Harvey Mason(ds)、Dave Carpenter(b)、Jochem Van Del Saag(syn)。2000年12月9日の録音になる。
 
この寺井尚子のライブ、寺井のバイオリン・ジャズの最高傑作と思っているが、それはそのはずで、バックのメンバーが凄い。ギターにリー・リトナー、ドラムにハービー・メイソン、ベースにデイブ・カーペンター。つまりは、バックのリズムセクションに、フュージョン・ジャズの錚々たるベテランが控えている。
 
つまりは日本人ジャズ・ミュージシャンでバックを固めなかったことが、このアルバムの成功を生んでいる。それほど、ジャズにおいて、バイオリンの音色は扱い難いものなんだろうな、ということが再認識される。哀愁を帯び過ぎた、マイナーすぎる、加えて、アブストラクトな音色が圧倒的に不得意な弦楽器である。如何にして、その「厄介な楽器」を効果的にサポートするかが「鍵」になる。
 
Naoko_live
 
そう言う意味で、この『NAOKO LIVE』は、寺井尚子のバイオリン・ジャズのテクニックの高さもさることながら、そのテクニック溢れる寺井尚子のバイオリンを効果的にサポートする、バックのミュージシャンの演奏能力の高さが、このアルバムの成功を肝になっている。
 
冒頭のチック・コリアの名曲「Spain」などは絶品で、チックのスパニッシュな哀愁を帯びた印象的な旋律に、バイオリンの音色はピッタリである。しかも、簡単そうに見えてかなり難度の高いこの曲をしっかりとバックでサポートする名うてのフュージョン・ジャズの名手達。「Spain」のカバーの優れた成果のひとつといって良いでしょう。
 
2曲目の「Stolen Moments」は、この曲の持つ哀愁溢れるファンキーな旋律はバイオリンの音色にピッタリくるということを再認識させてくれるし、3曲目の「Black Market」は、このウエザー・リポートの名曲が、こんなに魅力的なバイオリン・ジャズに変身するとは思いもしなかった。アレンジの勝利である。
 
7曲目「Cantaloupe」〜8曲目「Tokyo-La Jam」〜9曲目「Rio Funk」の3曲の流れは、ファンキー・ジャズの大団円。バイオリンの哀愁溢れる音色は、なんとファンキー・ジャズにもフィットする。しかし、これもバック・バンドの力量あってこそ。このライブでは、寺井尚子はバックバンドに恵まれた。これだけ、寺井のバイオリンの長所を引き出すバックは他に無い。 
 
その他の演奏曲も、ライブならではの躍動感と相まって、どれもが非常に優れた演奏になっていて、とにかく、最後まで聴かせてくれる。やっぱり、ジャズってライブやな、って思う。特に、ジャズにちょっと向かないかな、と思われる楽器ほどライブが良いと、このライブ盤を聴いていて、なんとなく思った。恐らくきっとそうだ。他のバイオリン・ジャズのアルバムを掘り下げてみる必要がありそうだ。
 
 
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