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2016年3月14日 (月曜日)

ナイロン弦のリー・リトナー

ナイロン弦でのジャズ・ギターと言えば「アール・クルー」が頭に浮かぶ。アール・クルーがナイロン弦ギターで、ジャズの第一線に躍り出たのが1970年代半ば。しかし、なかなか他には拡がらない。そして時は経ち、1980年代半ばに差し掛かる。

1987年のことである。Lee Ritenour『Portrait』(写真左)がリリースされる。アルバム・ジャケットの下の方に横たわっているのは、ナイロン弦のギターでは無いか。もしかして、リー・リトナーがナイロン弦ギターに手を染めたのか、と思って、思わず即ゲット、である。

そして、聴いてみて「当たり〜」。このアルバム『Portrait』は、リー・リトナーのナイロン弦ギター・シリーズの第一弾だったのだ。そして、音作りのトレンドは「ブラジル・サウンド」。冒頭の「ASA」を聴けばそれが良く判る。明らかな「ラテン・フレイバー」。テーマの部分はまだストラト系のエレギなんだが、途中からナイロン弦ギターのカッティングが入ってくるところが「イカしている」なあ。

3曲目の「Windmill」はミディアムテンポの綺麗な曲。ナイロン弦ギターの世界が満載で、心地良いことこの上無し。ナイロン弦ギターを柔らかい伸びのあるエレギの様に弾くリトナー。リトナーのナイロン弦ギターの個性が良く判ります。
 

Portrait

 
6曲目には「G-Rit」という、読んで字の如く、ケニーGとリトナーとの共演があったりで、全体的な雰囲気はフュージョン・ジャズというよりは、後のスムース・ジャズの先取りという音世界です。ナイロン弦のアコギのパートが殆どなので、エレギ中心のフュージョン・ジャズと比べると、柔らかで優しい落ち着きのある雰囲気が特徴ですね。

1987年当時と言えば、デジタル録音が主流になった頃。それでもデジタル録音には問題が山積。特にエレギ中心の演奏は、エレギの音がやせ気味になって、キンキンと高音が耳につく、アナログ録音時代には思いもつかないプアな音になったりしていた。そういう問題を回避するのにも、このナイロン弦アコギでの演奏は良かったのではないか、と思う。

ジャケットの下にも記されている様に「デジタル・マスター」のアルバムですが、意外と良い音で録音されています。ナイロン弦アコギの音とデジタル録音の相性が良かったのでは、と睨んでいます。スムース・ジャズの先駆け、ナイロン弦ギターの好盤です。

 
 

震災から5年。決して忘れない。まだ5年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2016年3月12日 (土曜日)

ダイレクト・カッティングの好盤

今週の「今日のスタート」は久し振りに、クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの主要ギタリストの一人、リー・リトナーのアルバムの聴き直しを進めてきました。そこで懐かしい1970年代後半のアルバム2枚を久し振りに聴き直して、思わず当時の想い出に浸りきってしまいました。

さて、1970年代後半、LPをベースとするピュア・オーディオの世界は新たな録音方式に手を染める。「ダイレクト・カッティング方式」である。この「ダイレクト・カッティング方式」は、オーバーダビング等による音質劣化を避けるために、演奏と同時にマスター・ディスクの溝を刻んでいく方法である。

当然、演奏は一発録り。どころか、LPのA面・B面それぞれの収録曲を通しで演奏しなければならない。ミキシング等も後でやり直すことも出来ず、演奏する方も録音する方も大変だったと思います。この「ダイレクト・カッティング方式」の話を雑誌で読んだ時、心底「そこまでやるか〜」と良い意味で呆れたことを思い出します。

そんなダイレクト・カッティング方式は、ジャズではフュージョン・ジャズのアルバムで幾つか採用されました。その中で、当時、聴き込んだアルバムが2枚。Lee Ritenour『Sugar Loaf Express』(写真左)と『Friendship』(写真右)である。ジャケット写真を見れば、中に詰まった音が流れてきそうな、それだけ、当時ヘビロテだったアルバムである。
 

Sugar_loaf_express_friendship

 
『Sugar Loaf Express』は1977年のリリース。アルバムの音は、当時フュージョン・ジャズの音作りのトレンドだった「ソフト&メロウ」を先取りした様な、マイルドで流麗で爽快感満載のエレクトリック・ジャズ。そんな雰囲気にリー・リトナーのエレギがピッタリ。カルフォルニアの陽光眩しい雰囲気を踏襲した明るいトーン、軽快で疾走感溢れるアレンジは、米国西海岸フュージョン独特の音世界ですね。

『Friendship』は1978年のリリース。冒頭の「Ssa Dance」のジャマイカな、カリビアンな音に思わず仰け反ります(笑)。他の曲にはラテン・フレーバーやブラジリアンな雰囲気をアレンジに織り込んだ楽曲もあって、このアルバムは、当時フュージョン・ジャズのもう一つのトレンドだった「ワールド・ミュージックとの融合」を先取りした様な、ジャズやロックからはみ出した、様々な各国のルーツ・ミュージックとの「融合」が楽しいアルバムです。

どちらもアルバムも、当時のフュージョン・ジャズの個性と特徴をしっかりと捉えていて、さすが、リー・リトナー、1970年代後半、当時のフュージョン・シーンの先頭を切って走っていたことが良く判ります。

録音方式が「ダイレクト・カッティング」ですから音も良い。どちらのアルバムも聴いていて楽しい、聴いて心地良いアルバムです。難しいことを考えずに寛いで聴き流すことの出来る、フュージョン・ジャズの好盤です。

 
 

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2015年12月15日 (火曜日)

真の「大人のフュージョン」

こういうアルバムを聴かされると「流石やなあ」と心から感心してしまう。そのバンドの面子を見渡すと、Bob James (key), Lee Ritenour (g), Nathan East (b), Harvey Mason (ds)。フュージョン・ジャズの立役者、レジェンドと呼んで良い強者ばかりがズラリと並ぶ。これは凄いなあ、と改めて感心する。

そのバンドとは「Fourplay(フォープレイ)」。1990年、ボブ・ジェームスのリーダー作「グランド・ピアノ・キャニオン」にて、4人揃ってセッションを行い意気投合しグループを結成。翌年にセルフ・タイトルでデビュー(2014年12月17日のブログ参照・左をクリック)。 http://v-matsuwa.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-675e.html

このデビュー盤は素晴らしい内容だった。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のフュージョン・ジャズである。とにかく、演奏のレベル、テクニックが異常に高い。そして、フレーズの洗練度合いが高い。リズム&ビートも当時として新しい響き。いずれも1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズのレベルは軽く凌駕している。

こんな素晴らしいフュージョン盤を出して、メンバーがレジェンドと呼んで良いフュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人がメンバーである。2作目を出そうとするかなあ、と懐疑的に見ていた。次のアルバムのコンセプトが描きにくいのでは、と危惧した。そして、それならば「や〜めた」といきなり解散するのでは、と思って見ていたら、このセカンド盤がリリースされた。

セカンド盤とは『Between the Sheets』(写真左)。1993年のリリース。パーソネルがデビュー盤と同じ。このフュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人が、Fourplayとして2枚目のアルバムを出すとは思わなかった。嬉しい誤算というか、嬉しい不意打ちだった。で、このアルバム、更なるフュージョン・ジャズの進化形を提示してくれたのか、と思いきや、その予想は覆された。
 

Between_the_sheets

 
この『Between the Sheets』は、上質のスムース・ジャズである。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のスムース・ジャズである。レジェンドと呼んで良いフュージョン・ジャズの重鎮達が本気で取り組むと、これだけ上質で内容の濃いスムース・ジャズが創出される。そんなベテラン4人の矜持を強く感じさせてくれる、充実のセカンド盤である。

収録されたどの曲も、適度なテンションが張り巡らされ、ゆったりと歩くような余裕のリズム&ビートに乗って、決して速弾きでは無い、間と奥行きを活かした余裕のハイテク・フレーズが繰り出されている。丁々発止とやりあったり、悠然とフレンドリーにユニゾン&ハーモニーをかましたり、変幻自在、硬軟自在にスムースで印象的なフレーズを冷静にバッシバッシと叩き出して行く。

大向こうを張る大立ち回りがある訳では無い。どちらかと言えば地味で落ち着いた展開である。それでも、一度聴けば、また頭から聴き直したくなるような充実感がある。それだけ、内容的に充実し洗練され、かつ印象的な演奏が詰まっているんだろう。ちなみにボーカルは、Chaka KhanとPhillip Baileyがゲスト参加している。

真の「大人のフュージョン・ジャズ」。フュージョン・ジャズやスムース・ジャズなんてジャズじゃ無いという硬派なジャズ者の方々には絶対に受けないですが、往年のフュージョン・ジャズ者の方々でしたら、このアルバムは一聴の価値があるでしょう。オーディオ的にも良質なアルバムで、特にネイザン・イーストのベースの音が良好な音圧できめ細やか、クリアな低音が魅力的です。

 
 

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2015年11月17日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・53

今でもネットショップを冷やかしていると「おお、これは」と思わずポチッとしてしまうアルバムに出くわすことがある。例えば、最近の「おお、これは」なアルバムはこれ。

Lee Ritenour『Earth Run』(写真左)。1986年リリースのアルバム。懐かしいジャケットである。このアルバムの「唯一無二の個性」はこのジャケットに隠されている。リー・リトナーが持っているギターみたいな楽器「SynthAxe(シンタックス)」(写真右)である。

シンタックスは、ギターに似た形状を持つMIDIコントローラー。シンセサイザーを音源に使用し、ギターのネックに似た形状のコントローラーで音を操作する。弾き方はギターなんですが、音色はキーボード、というか、基本はシンセなんで、どんな音でも出せる。

フュージョン・ギターの貴公子、リー・リトナーが、このシンタックスというMIDIコントローラーを駆使したアルバムがこの『Earth Run』。このアルバムほど、好き嫌いが分かれるアルバムは無いのでは、と常々思っている。ギタリストのリー・リトナーがシンセを弾くのである。確かにこのアルバムがリリースされた時は「賛否両論」。

まずは「シンセサイザー」という楽器にどういう評価、感情を持つかがカギになる。好意的なジャズ者にとっては「面白れ〜この音」ということでこのアルバムが好きになるし、否定的なジャズ者にとっては「なんだこれ、シンセやん」ということでこのアルバムを忌み嫌うことになる。
 

Earth_run_2

 
で、私こと「松和のマスター」は、このアルバム、好きです。非常にバラエティーに富んだ音色が出てくる出てくる。シンセ好きには堪えられないアルバムです。このアルバム一枚で、僕は「SynthAxe命」になりましたねえ。今でもリーズナブルな値段だったら欲しいですね。シンタックスは七変化。

このアルバム、純粋にフュージョン・ジャズのアルバムとしても一流品。ちなみに参加ミュージシャンを並べてみると、リー・リトナー(g), デイヴ・グルーシン(key), ドン・グルーシン(key), デイヴィット・フォスター(key), ジミー・ジョンソン(b), モーリス・ホワイト(cho) 他。フュージョン・ジャズの名うて達が大集合。それぞれ良い仕事してます。

デジタル録音を大々的に全面に出した録音で一世を風靡したGRPレーベルからのリリースで、音的にもシンタックスの音が活き活きと録音されていて秀逸。ジャケット・デザインのテイストもGRPレーベルの個性を思いっきり反映したもので良好。

フュージョン・ジャズの変わり種盤として良好。ギターかシンセかという前に、このシンタックスという楽器を駆使した、リー・リトナーの実験精神とテクニックに着目すべきでしょう。単純に「楽器」として良い音出しています。フュージョン者の方々にお勧めの好盤です。

 
 

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2015年10月25日 (日曜日)

いわゆる「大人のコラボ」盤です

こういうのが「大人のコラボレーション」と言うのだろう。お互いを意識するあまり、差し障りの無い演奏に終始するコラボもあれば、ライバル心むき出しで、相手を如何に凌駕するかだけを目的に前へ出るだけのチープでエゴなコラボもある。

しかし、この今やレジェンドの域に達したギタリスト二人のコラボは素晴らしい。お互いを認め合い、お互いの音を聴き、お互いを惹き立て合いつつ、自らの個性の主張もしっかりする。まったくもって「大人のコラボ」である。

その「大人のコラボ」盤とは、Lee Ritenour & Larry carlton『Larry & Lee』(写真左)。1995年のリリース。リリースされた時は、このコラボって成立するんだろうか、なんていらぬ心配したものだが、全くの杞憂だった。

良く考えると、二人のレジェンド・ギタリストの個性は全く異なる。リー・リトナーは乾いたファンクネスを隠し味に、ジャズに力点を置いたギタリスト。逆に、ラリー・カールトンは柔軟性あふれ、応用力に優れた、全方位なギタリスト。どちらかと言えば、フュージョン色が強い。
 

Larry_lee

 
そんな個性の全く異なる二人である。それぞれの人間性が良ければ、まあ個性がぶつかることは無い。というか、ぶつからないので、あまり打合せやリハーサルをすること無く、ジャム・セッションなイメージで、自然に弾いて自然にコラボレーションが成立している雰囲気なのだ。

二人はフュージョン・ジャズを代表するギタリストであり、さすがに、こういうフュージョン・ジャズ系の演奏については、非常に優れた、味のある演奏を繰り広げてくれる。特に、ミドル・テンポの演奏が秀逸。余裕あるインプロビゼーションが実に心地良い。

まあ、つまりは、このアルバムを聴く前は、個性がぶつかりあって、このコラボって成立するのか、と心配したが、よくよく考えると、これだけ個性の異なる二人のギターである。まず、悪意でもなければ、個性がぶつかることなんてないんですよね。

演奏の雰囲気もリラックスしたカジュアル色の豊かな演奏なので、変な刺激やイメージが残ることは無い。逆に、ことある毎に聴き直しすることができる「金太郎飴」的な魅力を持ったコラボ盤である。

 
 

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2015年7月13日 (月曜日)

フュージョン・ブームの終焉

1980年代に入って、フュージョン・ブームの果てに、いよいよ、フュージョン・ジャズでも無い、AORとも言い切れず、ブラコンとも言い切れない、所属不明な耳当たりが良いだけの不思議な雰囲気のアルバムが、フュージョン・ジャズと称して多く出回る様になる。

クロスオーバー〜フュージョン・ジャズの雄、西海岸ギタリストのリー・リトナーだって、例に漏れず、これってAORなブラコンやん、て感じてしまうアルバムをリリースしていた。2014年8月7日のブログ(左をクリック)でご紹介した、Lee Ritenour『Rit』がそんなアルバムだった。1981年のことである。

続く1982年、Lee Ritenour『Rit2』(写真左)がリリースされる。「2」が着いているので、前年の『Rit』の続編である。エリック・タッグのヴォーカルを、前作にも増して、更に前面に押し出し、もはやこのアルバムは、エリック・タッグのヴォーカル盤であり、リトナーのギターはそのサポートに徹している雰囲気。

さり気なく7曲目の「Voices」で、今は亡きTOTOのドラムスだったジェフ・ポーカロが参加していたりで、前年の『Rit』では、フュージョン・ジャズっぽい部分も残ってはいたのだが、このアルバムは完璧に「AORなブラコン」化している。全編に渡って聴き通して、改めて思う「これって、もはやジャズでは無い」(笑)。
 

Rit2

 
しかし、演奏全体のレベルは非常に高い。パーソネルを見渡せば、フュージョン・ジャズの強者ミュージシャン達が集結し、テクニックと経験にまかせて、非常に質の高い演奏を繰り広げている。エリック・タッグのヴォーカルが前面に押し出ているので、なかなか耳に届かないが、バックの演奏はかなりエグい。

1982年当時、この『Rit2』というアルバムを聴いて、僕はフュージョン・ジャズを一旦諦めた。当時のフュージョン・ジャズは例に漏れず、ボーカル入りのアルバムを量産し、ジャズっぽさをどんどんそぎ落とし、逆に「AORなブラコン」化を加速させていた。セールス的にはその展開の方が絶対に良いんだが、ジャズからすると形骸化が進むというゆゆしき事態に陥りかけていた。

これはもはやフュージョン・ジャズでは無い。1980年代前半、こういう「AORなブラコン」化したフュージョン・ジャズ盤が量産された。今の耳で聴いても、ジャズとして聴けるものは少ない。逆に、米国ポップスの一形態として、この「AORなブラコン」化した盤は十分に評価できる。

まあ、一般のジャズ者の方々は、こういう「AORなブラコン」化したフュージョン・ジャズ盤を聴く必要は無いと思います。逆に、こういう「AORなブラコン」化した盤を聴くと、思いっきりがっかりしてしまうような気がします。1980年代には、フュージョン・ジャズの有名どころが、こぞってこの「AORなブラコン」化した盤を、結構リリースしているので注意が必要です(笑)。

 
 

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2015年7月10日 (金曜日)

ギタリストにとっての偉大な存在

いろいろとジャズのアルバムを聴き続けているが、色んな硬派な純ジャズを聴き続ける中で、こういうアルバムに出会うと、なんだかホッとする。いわゆるフュージョン・ジャズでは無いんだが、フュージョン・ジャズ基調のメインストリーム・ジャズ。いわゆる「コンテンポラリーな純ジャズ」。

例えば、このLee Ritenour 『Wes Bound』(写真左)なぞ、そんな「コンテンポラリーな純ジャズ」な一枚。1993年の録音&リリースになるが、音の雰囲気はフュージョン・ジャズからスムース・ジャズなんだが、出てくるフレーズは、かなり「メインストリーム・ジャズ」している。

冒頭のタイトル曲「Wes Bound」を聴くと、まずは「これは、ウエス・モンゴメリー」と思う、が、バックの演奏を聴くと、これは「ウエス・モンゴメリーでは無い」と考え直す。バックの演奏が、思いっきりフュージョン・ジャズしているのだ。でも、フュージョン・ジャズとは言っても、傾向としては「メインストリーム・ジャズ」と言って良い位、硬派で純ジャズっぽい雰囲気を漂わせている。

リトナーのウエス風ジャズ・ギター、良い感じです。ジャズ・ギタリストにとって、ウエスは神様に近い存在。このアルバムの演奏を聴けば、リトナーも例に漏れず、ウエスの信奉者であり、ウエスを敬愛する「ウエス者」であることが良く判る。とにかく、ウエスを良く聴き、ウエスによく学び、ウエスを敬愛している。そんな雰囲気が本当に良く判る演奏だ。
 

Wes_bound

 
ウエスの手になる曲も10曲中5曲を占め、ウエスの曲では、特にリトナーは喜々として、オクターブ奏法を駆使して、ウエス節を展開する。うっかり聴いていると、これってウエスのギターじゃないのか、と誤解するほど、リトナーのウエス節は堂に入っている。う〜ん、なるほど、リトナーはウエスが飛び切り好きなんやね〜。

バックのリズム・セクションは、ハービー・メイソンのドラムが思いっきり効いている。そこにボブ・ジェームスのキーボードが被って、ボブ・ジェームスが被るのだから、フュージョン・ジャズになってしまうのか、と思いきや、意外と「コンテンポラリーな純ジャズ」な響きに思わず感心する。ウエスにはやはり「コンテンポラリーな純ジャズ」なリズム・セクションだろう。

ジャケットも優秀。実に雰囲気のあるジャケットだ。1993年という時代を考えると、もはや純ジャズ的な雰囲気って、なかなかお耳にかかれなくなっていくんだろうなあ、とちょっと危惧していた時代なので、このアルバムとの出会いは嬉しかったし、ある確信を持った。

音の雰囲気はフュージョン・ジャズからスムース・ジャズなんだが、出てくるフレーズは、かなり「メインストリーム・ジャズ」という、新しい雰囲気を湛えた「コンテンポラリー・ジャズ盤」が、これからどんどん出てくると思った。1980年代中盤からの「純ジャズ復古」を切っ掛けにした、新しいジャズの進化の形態である。

 
 

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2014年12月17日 (水曜日)

フュージョン・ジャズは進化する

このアルバムを聴いて、僕は「うへ〜」と唸った。良い意味で心から感心したのだ。フォーマットはフュージョン・ジャズである。しかし、1970年代後半から1980年代前半、フュージョン・ジャズ全盛時代の音では無い。確実に進化している。

そのアルバムとは『FourPlay』(写真左)。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人で結成された、大人のフュージョン・ジャズ・グループ。その名も「FourPlay(フォープレイ)」。そのフォープレイのデビュー盤である。1991年のリリースになる。

そのフォープレイのオリジナル・メンバーは、Bob James (key), Nathan East (b), Harvey Mason (ds), Lee Ritenour (g) の4人。いずれも、フュージョン・ジャズの重鎮であり、人気ミュージシャンであり、キーマンである。

しかし、この4人のメンバーの名前を見ていると、ありきたりな、大物ミュージシャン同士の「やっつけ感」満載の企画型セッションでは無いのか、と警戒してしまう。耳当たりの良い、差し障りの無いフュージョン・ジャズを「昔の名前で出ています」状態でピロピロやって終わってしまうような、内容の薄い企画盤では無いかと思ってしまう。
 

Fourplay_album

 
しかし、このデビュー盤『FourPlay』は違った。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のフュージョン・ジャズである。とにかく、演奏のレベル、テクニックが異常に高い。そして、フレーズの洗練度合いが高い。リズム&ビートも当時として新しい響き。いずれも1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズのレベルは軽く凌駕している。

1991年のリリースなので、スムース・ジャズの範疇では無いのか、という声が聞こえるが、このアルバムの演奏を聴いてみると判るのだが、音と展開は、フュージョン・ジャズ独特のもの。決して、後のフュージョン・ジャズの発展形であるスムース・ジャズとは一線を画する。

このデビュー盤『FourPlay』を聴いて、フュージョン・ジャズは進化しているんやなあ、と感慨深く思った。フュージョン・ブームを学生時代、リアルタイムで体験した自分にとって、フュージョン・ジャズは過去のものだとばかり思っていた。スムース・ジャズに変化し、フュージョン・ジャズは過去のものになったと思い込んでいた。

しかし、この『FourPlay』の音を聴いてビックリ。僕は「うへ〜」と唸った。フュージョン・ジャズの音ではあるが、1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズ全盛時代の音では無い。確実に、そして大胆に進化していたのだ。

 
 

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2014年8月 7日 (木曜日)

フュージョン・ブームの果てに

1970年代に入って、ジャズとロックの融合したクロスオーバー・ジャズが流行し、1970年代の後半は、クロスオーバーがソフト&メロウに洗練されたフュージョン・ジャズが流行。1980年代に入って、いよいよフュージョン・ジャズがAORを取り込んで成熟、というか、徐々にマンネリな雰囲気が漂ってくる。

1980年に入って、当時、リアルタイムにフュージョン・ジャズの洗礼を受けていた僕達は、そんなフュージョン・ブームの果てが近づいているなんて、これっぽっちも思わなかった。でも、リリースされるフュージョン・ジャズの新譜を聴きながら、このフュージョン・ジャズって、これからどうなっていくのだろうか、と不安に思ったのも正直なところ。

そんな1981年にリリースされた、フュージョン・ジャズのエレギ盤がある。 Lee Ritenour『Rit』(写真左)である。前半4曲はボーカルをフィーチャーした演奏で、思いっきりAORなフュージョン・ジャズである。というか、このボーカル入りの演奏を聴いていると、「これってジャズなのか」と訝しく感じる。

ソウルとジャズが融合したソウル・ジャズもあった。R&Bとジャズが融合したフュージョン・ジャズもあった。しかし、この『Rit』のボーカル入り演奏は、その雰囲気はもはやジャズでは無い。これはジャズな雰囲気を漂わせたブラコン(ブラック・コンテンポラリー)だ。AORな要素とR&Bな要素が全面に押し出されているのだが、ジャジーな要素は完全にどっかに行ってしまった。

でも、冒頭の「Mr. Briefcase」のソフト&メロウなシンセの音を聴けば、そこにブワーっとAORな音世界が広がる。そして、ボーカルが入ってくれば、やっぱ、これってAORやん(笑)。フュージョン・ジャズなAORである。それも、ライトなR&Bなボーカルの雰囲気は、もうブラコン。これって、AORなブラコンやん(笑)。
 

Lee_ritenour_rit

 
さすがにここまでくれば、このアルバムの前半4曲の音世界は、もはやフュージョン・ジャズでは無い。AORとも言い切れず、ブラコンとも言い切れず、それでも、フュージョン・ジャズな要素とAORな要素とブラコンの要素がごった煮になっていて、そのごった煮もクールでスマート、実に趣味の良いごった煮なので、聴き心地が凄く良い。

5曲目の「Dreamwalk」からは、硬派なフュージョン・ジャズが繰り広げられる。が、楽器の性能が上がったせいもあるのだが、メリハリの強い、ちょっと大味なフュージョン・ジャズに仕上がっている。そこまでせんでもええのに、という感じのメリハリ効いた演奏は、確かに1980年代のフュージョン・ジャズの音。

音の雰囲気的には、ハードなAORって感じで時代を感じる音なんだが、AORな雰囲気が全面に押し出されている分、聴き心地は悪く無い。冒頭から前半の4曲が、思いっきり「ブラコン」していた分、こちらはフュージョン・ジャズな感じが強調されているみたいで、これはこれで聴き応え十分。

今の耳で振り返れば、これってフュージョン・ジャズなんか、と思うんだが、1981年当時、僕達はこの盤の音世界は、十分にフュージョン・ジャズだと感じていた。でも、正直言えば、冒頭からの4曲のボーカル入りの演奏を立て続けに聴いて、これってブラコンやん、とも思ったし、AORやん、とも思った。

1980年代に入って、フュージョン・ブームの果てに、いよいよ、フュージョン・ジャズでも無い、AORとも言い切れず、ブラコンとも言い切れない、所属不明な耳当たりが良いだけの不思議な雰囲気のアルバムが、フュージョン・ジャズと称して多く出回る様になる。そして、それに呼応するように、純ジャズ復古のムーブメントが沸き起こるのだ。

 
 

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2013年7月18日 (木曜日)

生粋のフュージョン・ギタリスト

出世作「Gentle Thoughts」に続くリーダー第3作目。Lee Ritenour『The Captain's Journey』(写真左)。1978年のリリースになる。ここでのリトナーは、自信に満ちあふれたプレイを縦横無尽に繰り広げている。

ソフト&メロウ、時に鋭く、時に煌めくようなテクニックを披露しつつ、ストリングスを入れた大仕掛けのアレンジやファンキーなボーカル入りの曲、ドラマチックな曲の展開など、後のフュージョンのスタンダードとなる演奏スタイルのほぼ全てが、ショーケースの如く並んでいる。

このアルバムは、フュージョンのギタリストのリーダー・アルバムとしては最高の一枚だろう。このアルバムと同じコンセプト、同じ展開、同じ構成で、このアルバムを凌駕したフュージョン・ギタリストのアルバムは無いと思う。

ジョージ・ベンソンは、純ジャズの出身のギタリストとして、煌めくようなテクニックに走るよりは、味のあるギターとメロウなボーカル路線で一世を風靡した。パット・メセニーは、純ジャズの世界からフュージョンへアプローチし、決してジャズのテイストを忘れず「純ジャズからフュージョンへのアプローチ」にこだわった。
 

The_captaions_journey

 
そういう意味で、このアルバムから判るのは、リー・リトナーというギタリストは、フュージョンから生まれた、生粋のフュージョン・ギタリストなんだ、ということだろう。リトナーの演奏の中に「純ジャズ的」な要素がかなり希薄なのだ。

その生粋のフュージョン・ギタリストの名演中の名演は、3曲目の「Sugarloaf Express」。この曲でのリトナーのプレイは、リトナーのギターの特徴と長所を余すことなく伝えている。甘く流れることのないソフィストケイトされた、それでいて力強いギター・ソロ。打ち込みやサンプリングでは出せない、ハイテクニックで人間味のあるリズム。

そして、意外にも、このアルバムは、全編を通じて、リトナーはファンキー。意外とコッテコテのファンクネスを漂わせて、エレギをブイブイ言わせている。

そう、この時代のフュージョンの名演は、まだまだ、人間が人間の手でリズムを刻み、人間の手でメロディーを奏でていた。プロのミュージシャンがプロとして君臨し、最高の羨望を集めていた頃の素晴らしい演奏の数々。僕は好きだ。

 
 

大震災から2年4ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。
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