2020年1月28日 (火曜日)

この日本人ベーシスト、良い。

最近、日本人ジャズの好盤が結構出ている。そんな好盤のリーダーの名前を見渡していて「あれ、この人の名前、知らんなあ」ということが、ままある。この人もそんな一人。須川 崇志(すがわ たかし)。日本人ベーシストである。1982年2月生まれ、群馬県伊勢崎市出身。バークリー音楽大学卒。今年で38歳。ジャズマンとして、ベテランの域に入りつつある年齢である。

しかし、僕はこのベーシストを知らなかった。申し訳ない。バークリー卒業後、2006年夏に自己のトリオを結成するほか、多国籍即興バンド“Bim Clatox”の一員などで豪・仏・中米に来訪。2007年に拠点をニューヨークへ。スイスのモントルージャズフェスティバルや多くのミュージシャンとセッションを重ねたのち、2008年9月に帰国。と資料にあるが、印象に全く無い。

Takashi Sugawa Banksia Trio『Time Remembered』(写真左)。ちなみにパーソネルは、須川 崇志 (b), 林 正樹 (p), 石若 駿 (ds)。そんなベーシスト須川が、今年、リーダー盤をリリースした。今年1月のリリース。リリースしたてホヤホヤである。内容的には、実にオーソドックスな「メインストリーム・ジャズ」。いわゆる現代のネオ・ハードバップである。
 
 
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演奏全体の印象として「切れ味が良い」「透明感のある響き」「耽美的かつ適度な躍動感」。日本人ピアノ・トリオとして、確かな個性を持ったパフォーマンスである。日本人ジャズマンの演奏なので、ファンクネスはほぼ皆無。乾いた硬質のオフビートが、独特の「ジャズ感」を増幅させている。典型的な「日本人ジャズ」の良いところが、このトリオ演奏に詰まっている、と感じる。

そんな中、須川のベースの音が実に良い。ソリッドで躍動感があり、硬質で弾力のあるブンブン唸るベース。雰囲気的には、レイ・ブラウンやエディ・ゴメスの様な、バッキングにも長け、ソロを取ればフロント楽器顔負けのソロを取る。ベース音は旋律が明確に浮かび上がる、ウォーキング・ベースは躍動感よろしくフロント楽器をグイグイと鼓舞する。とってもイメージの良いベースである。

ベーシストがリーダーの盤。ジャズ演奏の中での理想的なベースの役割、ベースの音色、そしてそのテクニックを、グループ・サウンズを通じて演出されている。ジャズ演奏におけるベースの役割の明確化と理想的なベースの演奏モデルの提示。本来のベーシストがリーダーを張る、リーダー作のあるべき姿の1つであろう。加えて、ベーシストが弾くベースの音がとっても魅力的。ベースって格好良いと思わせてくれる好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年10ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2020年1月22日 (水曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・73

ジャズ演奏家の人口って、思ったより多い。40年以上、ジャズを聴いてきて、それでも「こんなジャズマン、いたっけ」という名前にぶち当たることがまだまだある。ジャケ写を見て「これって結構年配だよな」と思い、ググってみて、これが結構経験のある「イケてる」ジャズマンだったりして、「そんなん知らんかった」と愕然とするのだ。

Johnathan Blake Trio『Trion』(写真左)。2018年1月21 and 22日、NYの「The Jazz Gallery」でのライブ録音。ちなみにパーソネルは、Johnathan Blake (ds), Chris Potter (ts), Linda Oh (b)。クリス・ポッターは、現代の優れたジャズ・テナー奏者ということは知っているが、他の2人の名前に馴染みがない。特にリーダーのジョナサン・ブレイクを知らない。

ジョナサン・ブレイクはNYを拠点に活躍する、ミンガス・ビッグ・バンド、トム・ハレル・グループなどのレギュラー・ドラマーとのこと。う〜ん、どこかで聴いていたかもしれない。でも馴染みがない。リンダ・オーは、マレーシア出身の注目の女性ベーシストとのこと。この女性ベーシストの名前は全く初めて聞いた。
 
 
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ピアノレスのテナー、ベース、ドラムのシンプルなトリオ編成。しかも、リーダーがドラマー。ピアノが無い分、フロントのテナー1本はシンプル過ぎはしないか。CD2枚組のボリュームなので、純ジャズでも飽きるかな、と危惧しながら聴き始める。冒頭、テクニック高く、硬軟自在なドラミング。さすがドラマーのリーダー作なんて、変な感心をしながら聴くが、このドラミング、只者では無い。

とにかく音が良い。活きが良い。躍動感が良い。ポリリズミックでハードバップな正統派ジャズ・ドラム。良い。良い感じだ。そこにクリス・ポッターが熱くテナーを吹き上げ、これが変幻自在のテナーで、ポッターのインプロビゼーションだけでも全く飽きない。ブレイクの躍動的なドラミングの鼓舞に応えて、ポッターのテナーが絶好調。

そして、そこのリンダがベースが絡み、ソロではブンブン、鋼をしならせ、かき鳴らす。これが実に太くて硬質。女性の手なるアコベとは俄に信じ難い。3者対等のインタープレイ。演奏の内容は充実、レベルは高く、CD2枚組のボリュームであるが、全編に渡って全く飽きが来ない。というか一気に聴き切ってしまう。音楽喫茶『松和』の昼下がりに、じっくり聴き入る純ジャズとして、お勧めのライヴ盤です。
 
 
 
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2020年1月17日 (金曜日)

デジョネットの「音の志向」とは

リーダー作を持つジャズ・ドラマーの数は限られる。しかも、コンスタントにリーダー作をリリースし続け、生涯10枚以上のリーダー作を残すジャズ・ドラマーは10名程度しかいないのではないか。しかし、リーダー作を多数残すジャズ・ドラマーのリーダー作は、グループ・サウンドとして優れたものばかり。ドラマーがリーダーの場合、そのグループ・サウンドの音の志向を示し、その志向をとりまとめる、そんな役割を果たすのだろう。

ジャズ・ドラマーのリーダー作は、ジャズとしての「音の志向」が明確である。しかもその「音の志向」がブレない。例えば、アート・ブレイキーは「ハードバップ」、スティーヴ・ガッドは「コンテンポラリー・ジャズ」、エルヴィン・ジョーンズやトニー・ウィリアムスは「モード・ジャズ」と「音の志向」をバッチリと決めている。

Jack DeJohnette『The Jack DeJohnette Complex』(写真左)。December 26 & 27, 1968年12月26&27日の録音。ちなみにパーソネルは、Jack DeJohnette (ds, melodica), Bennie Maupin (ts, wood-fl, fl), Stanley Cowell (el-p, ac-p), Miroslav Vitous (b), Eddie Gómez (b), Roy Haynes (ds, perc)。モーダルなドラマー、ジャック・ディジョネットのデビュー・アルバムである。
 
 
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デジョネットはピアニストでもある。彼の弾くメロディカ(鍵盤ハーモニカ)の旋律が印象的。ドラムについても、モーダルでポリリズミックなドラムをバッシバシと叩いていて迫力満点。出てくるグループ・サウンドは、パーソネルを見渡すと何となく想像できるのだが、モーダルでエレクトリックな、そして時々フリーなコンテンポラリー・ジャズ。1968年という録音ならではの音世界である。

純ジャズでモーダルなアドリブ・フレーズから、時々フリー&スピリチュアルに傾き、あれれと思っていたら、前衛的なファンクに走る、という幅広く多彩な、「音の万華鏡」の様な音世界。ごった煮で散漫になりそうなんだが、これがそうはならずに、しっかりとした統一感が心地良い。デジョネットのドラムがガッチリとその「統一感」を維持している。

しかし、凄いメンバーが集まったものだ。「志」を同じくするものが集まった感じのパーソネル。この盤には「デジョネットの考えるコンテンポラリーな純ジャズ」が詰まっている。メンバー全員、当時の最先端のモード・ジャズに真っ向から取り組んでいて、その多彩な音世界は「Complex」そのもの。エレクトリックも含めたモーダルな音世界。さすがデビュー盤、デジョネットの「音の志向」が良く判る。
 
 
 
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2020年1月 7日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・123

この1〜2年で、音楽のストリーミング・サイトについてはコンテンツが急速に充実してきた。ストリーミング・サイトをあてもなく徘徊していると、「こんなアルバム、アップされてるんや」とビックリすることがある。CDでは廃盤になって久しい、CDとしては、いわゆる「入手不能」なジャズ盤の音源がストリーミング・サイトにアップされていたりするのだ。

Elvin Jones Introduces Takehisa Tanaka『When I Was at Aso-Mountain』(写真)。1990年12月 10&11日、NYでの録音。Enjaレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Sonny Fortune (fl, ts), Takehisa Tanaka (p), Cecil McBee (b)。当時メインストリーム・ジャズ系の精鋭部隊。そこに、僕には見慣れない名前があった。

ピアノ担当の「Takehisa Tanaka」=「田中武久」である。「田中武久」とは誰か。僕はつい先日まで知らなかった。面目無い。「田中武久」って、関西を代表するピアニストでジャズクラブ、セント・ジェームスのオーナーピアニストとのこと。知らんかった。 1934年(昭和9年)3月生まれ。惜しくも、2014年の12月28日に逝去されている(享年80歳)。
 
 
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このカルテットの演奏については、ブラインドフォールド・テストすると全く誰だか判らない。辛うじて、ドラマーについては、自由度の高い、明らかにポリリズミックなので「これって、エルヴィン?」とうっすら判るが、ベースは骨太で歯切れの良い躍動的なもの。しかも、アドリブ展開がお洒落にモーダルだ。暫く聴き耳を立て、アルバムのパーソネルを確認すると「セシル・マクビー」。納得である。

ドラミングは明らかにエルヴィン。特徴的なポリリズム、ダイナミズム溢れるシンバル・ワーク。印象的かつ劇的なタムタムの連打。エルヴィンのドラム、マクビーのベースに支えられ、鼓舞されて、端正で印象的な「ノリ」のピアニストが弾きまくる。誰有ろう「田中武久」である。一聴して直ぐに誰だか判る様な「強烈な個性の持ち主」ではないが、堅実かつ端正なミッドテンポのピアノが身上。

そんな玄人好みのリズム・セクションをバックに、ソニー・フォーチュンが素敵なテナーを聴かせてくれる。この盤、ストレート・アヘッドなモードジャズ。田中のピアノも独特な日本人ならではの音で健闘している。LP時代からEnjaレーベルの盤は有名なもの以外は入手し難かったが、最近のストリーミング・サイトでは結構な数がアップされている。良い時代になりました。
 
 
 
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2020年1月 3日 (金曜日)

正月のジャズ・メッセンジャーズ

2020年が始まりました。昨年の年末、ちょっと冷え込みましたが、このお正月は穏やかな良い天気続きで、特に日中は暖かな三が日でした。と、ボーッと生きていたら、2020年になって、はや3日が経ちました。21世紀になってもう19年が経った訳で、2010年代はあっと言う間に終わっちゃった訳で、なるほど歳を取る訳です。ということで、今年も、我がバーチャル音楽喫茶『松和』をよろしくお願いします。

新年になって初めて聴くジャズ、いわゆる「今年最初のジャズ盤」である。いつも頭を悩ます問題ではある。まあ、拘る必要が無いと言えば、拘る必要の無い問題で、そんなん、その時聴きたいジャズ盤を聴いたらええやん、というドライなジャズ者の方もいらっしゃるだろうが、僕はそれが出来ない。なんかしら理由を付けて、その理由を反芻し悦に入って、今年のジャズ盤鑑賞を始めたい。

Art Blakey & The Jazz Messengers ‎『A Day With Art Blakey(Live In Japan 1961)』(写真)。1961年1月2日、Sankei Hall(サンケイホール・東京)でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Jymie Merritt (b), Bobby Timmons (p), Wayne Shorter (ts), Lee Morgan (tp)。アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズの初来日時のライヴ録音。
 
 
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昨年(2019年)は、アート・ブレイキーの生誕100周年の記念の年であった。ということで、Art Blakey & The Jazz Messengersのアルバムをまとめて聴き直している途中である。その流れの中でこのライヴ盤。正月の録音と言えば、真っ先にこのライヴ盤が浮かぶ。当時、相当センセーショナルな出来事で、当時、とても珍しかった外タレが来る、ということで社会現象にもなったほど。大歓迎につぐ大歓迎。おもてなしにつぐ、おもてなしだったそうである。

で、このライヴ盤の演奏内容であるが、かのファンキー・ジャズの大名盤『Moanin'』のパーソネルから、テナー・サックスだけが、ベニー・ゴルソンからウェイン・ショーターに代わっている。いわゆる「音楽監督」的存在が交代した訳で、メンバーの「持ち味」を活かしたアレンジをするゴルソン、自分のやりたいことをバンドにやらせるショーター。ということで、このライヴ盤では「モーダルなジャズ」の雰囲気が濃厚に漂っている。『Moanin'』の演奏イメージを想定していた当時の我が国のジャズ者の皆さんは、かなり面食らったそう。

ハードバップ〜ファンキー・ジャズだ、と思っていたら、全く異なる「モード・ジャズ」が鳴り響いたのだからたまらない。当時の「ジャズの進化」の洗礼を思いっ切り浴びた格好ではある。しかし、それでも、ライヴ盤に記録されている拍手や歓声は熱狂的。演奏中の静寂も含めて、当時の我が国のジャズ者の方々は、ジャズを「アート」と認識していたことがとても良く判る。とても含蓄に富むライヴ盤である。
 
 
 
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2019年12月26日 (木曜日)

70年代のブレイキー&スティット

1970年代は、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの全盛時代で、電気楽器がメインのロックとジャズの融合音楽や、ソフト&メロウな融合音楽が流行に流行った。当時はアコースティック楽器がメインの「純ジャズ」なんて過去の遺物扱いで、誰も見向きもしない様な状況だった。しかし、である。それでも「純ジャズ」の新盤はリリースされ続けていた。コアなマニアが居たんですねえ。「純ジャズ」は死なず、です。

Art Blakey & the Jazz Messengers『In Walked Sonny』(写真)。1975年5月16日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Sonny Stitt (as, ts), Art Blakey (ds), Walter Davis, Jr. (p), Bill Hardman (tp), David Schnitter (ts), Yoshio "Chin" Suzuki (b)。ゲストにソニー・スティットのテナー。ビル・ハードマンとデイビット・シュニッター、2管ジャズ・メッセンジャーズとの共演。

1970年代半ばに上質のハードバップ。そのリズム&ビートの雰囲気は往年のジャズ・メッセンジャーズそのもの。1970年代半ばのクロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの全盛時代に、こんな上質のハードバップが新盤として録音されていたとは、ちょっとビックリした。1970年代の「純ジャズ」冷遇時代にも、ジャズ・メッセンジャーズは、こんなに格好良いハードバップをやってたんですねえ。
 

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よく聴けば、ジャズ・メッセンジャーズの全盛時代と比べると見劣りする部分があるかもしれない。それでも、この盤に記録されているハードバップは、十分に水準をキープした、まずまずの内容のハードバップである。そして、肝心の部分をしっかりと締め、しっかりと鼓舞しているのが、客演したソニー・スティットのアルト&テナー・サックスである。

ソニー・スティットのバップ基調の味のあるサックスが良い雰囲気だ。録音当時51歳。さすが、ビ・バップからハードバップを生き残ってきたベテランである。この盤のハイライトは、冒頭のベニー・ゴルソン作の「ブルース・マーチ」、3曲目のフレディ・ハバードの「バードライク」。ソニー・スティットのサックスがこんなにジャズ・メッセンジャーズに合うなんて。良い雰囲気のハードバップである。

ジャケット写真を見ると、ブレイキーもスティットも1970年代のファッションに身を包んでいて、なんだかジャズメンらしくないんですが、この盤に詰まっているジャズは、紛れも無い「ハードバップ」である。さすがはジャズ・メッセンジャーズ。さすがは総帥のアート・ブレイキー。1970年代のジャズ・メッセンジャーズはスランプの時代だ、と言われていますが、どうして、なかなかのハードバップやってます。
 
 
 
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2019年12月25日 (水曜日)

ラロカは「変わり種」のドラマー

ピート・ラロカ(Pete La Roca)は変わり種のドラマーである。ピート・ラロカは芸名。本名は「ピーター・シムズ(Peter Sims)」。ジャズ・ドラマーで弁護士である。1957年から1968年までは「ジャズ・ドラマー」。1968年から1979年までは法曹界に身を置いて「弁護士」。1979年からジャズ界に復帰している。この経歴だけでも「変わり種」である。

そのドラミングもちょっと風変わり。ジャズ・ドラマーでありながら、ファンキーな雰囲気は希薄。ジャズっぽくないドラミング。それでいてスイング感はあるが、そのスイング感はスクエア。幾何学模様のような、理詰めでキメたような「リズム&ビート」。このドラミングの個性って、新主流派のモーダルな展開にピッタリ。そう、ラロカのドラミングは「モーダルな」ドラミングである。

Pete La Roca『Turkish Women at the Bath』(写真左)。1967年5月25日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、John Gilmore (ts), Chick Corea (p), Walter Booker (b), Pete La Roca (ds) 。中世(?)の女風呂の絵がジャケットになっている。これだけ見れば、この盤の内容が硬派な「モード・ジャズ」、いわゆる「新主流派」の音がギッシリ詰まっているなんて思わないだろうな(笑)。
 
 
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実はこの盤を初めて聴いた時、パーソネルを確認せずに聴いた。しばらく聴いていると、その展開は「新主流派」。ばりばりのモード・ジャズである。カルテットの演奏なのも判る。そして、ピアノがどうにも、どこかで聴いた音なのだ。それもかなり聴き込んだ音。高音域を中心にモーダルな、そしてどこかスパニッシュな雰囲気が漂う硬質でメカニカルなタッチ。そう、このピアノは「チック・コリア」である。

加えて、ライトでポップな、テクニックに走らず、平易でモーダルなテナーが良い。ジョン・ギルモアである。ウォルター・ブッカーのタイトなベースも良好。そして何より、さすがリーダーだけに、ラロカのドラミングが素晴らしい。ダイナミックでドライヴィングするドラミングはあまりに個性的。スクエアなスイング感、そして、縦ノリのリズム。バップではない。モーダルなドラミング。

アルバム・タイトルの『Turkish Women at the Bath』=「トルコの女が風呂に入っている」。なんとジャズらしからぬタイトルではないか。それでも中に詰まっている音は、思いっ切り「モーダルなジャズ」。4人がそれぞれ、より自由でアグレッシヴなプレイを展開しつつ、有機的に絡んだモーダルなジャズを演出する。特にチックが良い音出してます。チック者にはマスト・アイテムですね。
 
 
 
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2019年12月21日 (土曜日)

ネオ・ハードバップのブレイキー

先週の日曜日に、ウィントン・マルサリス参加のジャズ・メッセンジャーズの『Art Blakey in Sweden』をご紹介した。確かに、ウィントン・マルサリス参入後のジャズ・メッセンジャーズのハードバップ演奏については、全く新しい響きが充満している。今の耳で振り返れば、いわゆる「ネオ・ハードバップ」の先駆だったことが良く判る。今でも十分に通用する内容に思わず「目から鱗」である。

Art Blakey & the Jazz Messengers『Live At Bubba's Jazz Restaurant』(写真左)。1980年の録音。ウィントン・マルサリス参加のジャズ・メッセンジャーズについては、どのアルバムも内容十分の「ネオ・ハードバップ」を聴くことが出来るが、僕はこの盤を推すことが多い。ウィントンが18歳のデビュー直後にブレイキーのジャズ・メッセンジャーズのメンバーとして、フロリダのジャズ・クラブ「バッバス」に出演した時の録音。

ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Winton Marsalis (tp), Bobby Watson (as), Billy Pierce (ts), Jimmy Williams (p), Charies Fambrough (b)。見渡すと、ウィントンとワトソン、ピアースが突出した存在。ネオ・ハードバップな響きはこの3人が醸し出していたことになる。今から思えば、凄いフロント3管である。
 
 
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まず、有名なスタンダード曲、例えば「Angel Eyes」や「'Round Midnight」「My Funny Valentine」などの演奏を聴けば、このバンドの演奏の「全く新しい響き」を感じることが出来る。まず、スタンダード曲の旋律に対するアプローチが全く新しい。過去のハードバップ時代の定番フレーズを踏襲することは全く無い。自ら、新たなアプローチとアレンジを施し、それを前提に新しい響きのモーダルなアドリブを展開する。

そして、ジャズ・メッセンジャーズの十八番である「Moanin'」についても、全く新しいアプローチが施されていて、新しい魅力が詰まった「Moanin'」の演奏が実に楽しい。こういう新しいアレンジとアプローチがあるんだ、なんて妙に感心したりする。この盤が初めてリリースされた当時、18歳で抜擢され堂々とフロントを務めるウィントンのプレイに誰もが衝撃を受けた、とあるが、納得である。

しかし、一番驚くのは、アート・ブレイキー御大の柔軟性と応用力の高さ。ウィントン達がネオ・ハードバップな解釈ものもと、新しい響きとアプローチを披露するのだが、ブレイキー御大のドラムはその新しい響きにビビットに反応して、ならではのドラミングに切り替え、逆に、若きフロント達をリードし鼓舞する。なんて懐の深いドラマーだ。超一流なレジェンドは物が違う。この盤では既に「ネオ・ハードバップ」を支え、鼓舞している。
 
 
 
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2019年12月16日 (月曜日)

Jing Chiというフュージョン楽団

1970年代後半から1980年代前半にかけて、猛威を振るったフュージョン・ジャズのブーム。それでも、1980年代半ばの「純ジャズ復古」に併せて、フュージョン・ブームは沈静化に向かい、口の悪いジャズ者の方々からは「フュージョン・ブームは終わった」「フュージョン・ジャズは間違いだった、一時の気の迷いだった」などと揶揄され、ジャズ雑誌などからは見向きされなくなった。

しかし、21世紀に入っても、フュージョン・ジャズは生きている。今の耳で聴く、1970年代後半のフュージョン・ジャズも、今のフュージョン・ジャズも内容的にはなかなかのもの。フュージョン・ジャズにはフュージョン・ジャズのトレンドと展開というものがあって、やはり、一世を風靡しただけある、ジャズのひとつのスタイルになった、と言って良いだろう。

Vinnie Colaiuta, Robben Ford, Jimmy Haslip『Jing Chi』(写真左)。2002年のリリース。「Jing Chi」はバンド名でもある。「Vital Energy」の中国語読みだそうだ。元Yellowjacketsのジミー・ハスリップが提唱し、ギターのロベン・フォード、ドラムのヴィニー・カリウタが加わり結成したトリオ編成のフュージョン・バンドである。
  
 
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このバンドの音は「フュージョン」。「クロスオーバー」では無い。基本はジャズとロックの融合なんだが、「クロスオーバー」は、ジャズ:ロックの割合が「7:3」か「6:4」でジャズの割合が高い。「フュージョン」は「5:5」か「4;6」でロックの割合が少し高くなる。言い換えると「クロスオーバー」の方がやや難解、「フュージョン」の方がポップで判り易い、と僕は解釈している。

この「Jing Chi」というバンドは、もともと、ギターのロベン・フォードがハード・ロック寄りのギンギンのエレギを弾きまくるので、このエレギの音に引き摺られて、ハスリップのエレベは重低音なウォーキング・ベースを轟かせ、カリウタのドラムはロック調のポリリズムで叩きまくる。エレギはハード・ロック基調なんだが、ベースとドラムはフュージョン・ジャズ時代のアプローチを基調としている。

そして、フュージョン・ジャズの「高テクニック」という面は、この「Jing Chi」というバンドについては申し分無い。3者の個性とテクニックがぶつかり合って、しっかりと「化学反応」を起こしている。ロック基調のフュージョン・ジャズとして、心ゆくまで楽しめる。実は僕がこの「Jing Chi」を知ったのは、つい数年前。しかし、それ以来、僕のお気に入りのフュージョン・バンドのひとつとして愛聴している。
 
 
 
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2019年12月15日 (日曜日)

ジャズ・メッセンジャーズの復活

つい最近知ったのだが、今年って、アート・ブレイキーの生誕100年だそう。そうか、ブレイキーは1919年10月11日生まれだから、確かに今年で100歳になるのか。うっかりしていたなあ。どうりでジャズ雑誌とかで、ブレイキーの特集が組まれてる訳だ。そう言えば、ブレイキーは1990年10月16日に亡くなっているので、来年は没後30周年になる。

アート・ブレイキーと言えば「ジャズ・メッセンジャーズ」。リーダーのブレイキーが1990年に亡くなった時点で活動終了となる迄、35年以上に渡って存在したジャズ・コンボで、優秀な若手ジャズマンの登竜門として、多くの一流ジャズメンを輩出している。そういう面から「ブレイキー・ジャズ道場」とも呼ばれている。

活動のピークは2度ある。最初のピークは、1950年代後半、ベニー・ゴルソンを音楽監督として迎えた時期に「モーニン」「ブルース・マーチ」などのヒットを放った頃から1960年代中盤まで。2回目のピークは、1980年、わずか18歳のウィントン・マルサリスが加入して以降、1980年代後半までである。特に、トランペット奏者に恵まれた時期に、コンボとしての充実期が被る傾向にある(と僕は思っている)。
 
 
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Art Blakey & the Jazz Messengers『Art Blakey in Sweden』(写真左)。1981年の作品。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Wynton Marsalis (tp), Bobby Watson (as), Bill Pierce (ts), James Williams (p), Charles Fambrough (b)。ウィントン・マルサリスとボビー・ワトソン、ビル・ピアースをフロントにフィーチャー。新しい響きだらけのハードバップ。

1970年代後半、スターと呼ぶべき魅力のある若手サイドメンが不在となり、ジャズ・メッセンジャーズの暗黒時代と呼ばれる時期を経て、1980年代初頭、天才トランペッターウィントン・マルサリスの参加によって、ジャズ・メッセンジャーズは完全に息を吹き返し、2度目の活動のピークを迎えることになる。その片鱗が、このライブ盤に詰まっている。とにかく、ハードバップではあるが響きが全く新しい。

1980年代半ばの「純ジャズ復古」に向けて、この新生「ジャズ・メッセンジャーズ」から、新しい時代の、新しいハードバップが始まった。ジャズは即興の音楽。アドリブの音楽。自由度の高い音楽。この新生「ジャズ・メッセンジャーズ」の音を聴いていると、ジャズの可能性はまだまだ無限だなあ、と改めて感じる。『Art Blakey in Sweden』、良いライブ盤である。
 
 
 
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