2024年4月27日 (土曜日)

コブハムが目指す「融合」ジャズ

『A Funky Thide of Sings』(1975)のリリース後、ブレッカー兄弟が抜けて、エレクトリックなジャズ・ファンクの橋頭堡が不在となったビリー・コブハムのバンド。クロスオーバーなエレ・ジャズ・ファンクを捨てて、次作では、いきなりハードで硬派なクロスオーバー・ジャズに転身した。

Billy Cobham『Life & Times』(写真左)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、Billy Cobham (ds, perc, syn), Dawilli Gonga (key), John Scofield (g), Doug Rauch (b)。コブハムのアトランティック・レコードでの最後のスタジオ盤になる。

パーソネルの中の「Dawilli Gonga」は、George Duke (key) の契約上の理由からの変装名。ギターのジョンスコはそのままに、新たに加わったキーボードのジョージ・デューク、エレベの元サンタナのダグ・ロウチと、リーダーのコブハムのドラムを交えたカルテット編成のクロスオーバー・ジャズである。

前作『A Funky Thide of Sings』までのホーン・セクションを配した、分厚いジャズ・ファンクな演奏をガラッと変えて、リズム&ビートを主体とする、コンパクトなメンバーでの、ジャズとロックの融合がメインのハードなクロスオーバーなエレ・ジャズを展開している。
 

Billy-cobhamlife-times

 
1970年代前半、マイルスが推し進めていたジャズ・ファンクなエレ・ジャズからファンクネスを差し引いて、ポップでキャッチーな音作りを加味したクロスオーバーなエレ・ジャズ。

シンセが唸りを上げ、エレギが捻れ響くインスト中心の演奏。まるで「プログレ」な雰囲気だが、ジャジーなビートと途方も無い演奏テクニックが、この演奏は「ジャズ」に軸足をしっかり置いていることを確信させてくれる。

コブハムのドラムは、徹底して「千手観音ドラミング」で叩きまくり。ジョンスコのギターは、意外とストレートな伸びのロック・ギターの様な迫力と疾走感溢れる骨太なフレーズを聴かせてくれる。

冒頭のタイトル曲「Life & Times」など、やたらハードでアクセル全開なナンバーが印象に残るが、爽やかでクールなファンクネスを忍ばせた4曲目の「East Bay」のヒップで小粋な演奏など、この盤のリリース後、すぐに結成された「The Billy Cobham - George Duke Band」の音世界がこの盤で確立されている。

ちなみに、ジャケの写真はコブハムの幼少期。それを持っている手は、アルバム制作当時のコブハムの手。このジャケが何を意味するのか、コブハムの真意は測りかねるが、時代はソフト&メロウをメインとしたフュージョン・ジャズの入り口の時代。この盤に詰め込まれた演奏は、エレクトリックなクロスオーバー・ジャズの成熟形と捉えることも出来る。
 
 

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2024年4月21日 (日曜日)

シェリー・マンの絶妙な職人芸

米国ウエストコースト・ジャズは「小粋に聴かせるジャズ」。演奏の基本はハードバップだが、優れたアレンジを施し、演奏テクニックは極上、個の演奏よりグループサウンズを優先。アンサンブルとインタープレイがメイン、聴き手にしっかりと訴求する、聴き応えがあって、聴き味の良いジャズ演奏を「聴かせる」。

そんなウエストコースト・ジャズにおいて、ドラマーの役割は重要。演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第なのがジャズ演奏であり、特に、グループサウンズ優先、アンサンブルとインタープレイがメインのウエストコースト・ジャズでは、アレンジから演奏全体の雰囲気や志向を把握し、リズム&ビートで的確に誘うドラマーの役割はとりわけ重要である。

Shelly Manne『2-3-4』(写真左)。1962年2月5, 8日の録音。Impulse!レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins (ts, tracks 1, 3, 5, 6 & 8), Hank Jones (p, tracks 1, 3, 5 & 8), Eddie Costa (p, vib, tracks 2, 4 & 7), George Duvivier (b, tracks 1–5, 7 & 8), Shelly Manne (ds)。

タイトルの「2-3-4」については、デュオ演奏(2人の演奏)、トリオ演奏(3人の演奏)、カルテット演奏(4人の演奏)を表している。

リーダーでドラマーのシェリー・マンは全ての演奏でドラマーを務めているが、コールマン・ホーキンスとのデュオ演奏、エディ・コスタのピアノ&ヴァイブ、ジョージ・デュビビエのベースとのトリオ演奏、コールマン・ホーキンスのテナー、ハンク・ジョーンズのピアノ、ジョージ・デュビビエのベースとのカルテット演奏と3つの演奏編成の演奏集になっている。
 

Shelly-manne234

 
デュオ、トリオ、クインテットという演奏編成ごと、演奏する曲の曲想&曲調ごと、演奏するメンバーの個性&特徴ごと、ドラミングの内容を自在に変化させ適応し、演奏志向をコントロールするシェリー・マンの絶妙な職人芸が堪能出来る。

とにかく、シェリー・マンのドラミングのテクニックがずば抜けている。絵に描いた様な「緩急自在、硬軟自在、変幻自在」なドラミング。このシェリー・マンのドラミングこそが、「緩急自在、硬軟自在、変幻自在」なドラミングの究極だろう。聴いていて、本当に上手いなあ、と感心する。

馬力だけのドラミングではない、繊細なシンバル・ワーク、瀟洒なブラシ・ワーク、躍動感と切れ味が同居した小粋なドラミングが、デュオ演奏、トリオ演奏、クインテット演奏の中で、効果的に適用される。そして、彼のドラミングには、ドラムで唄うが如くの「歌心」がしっかりと備わっている。そんなところにも、シェリー・マンのドラミングのセンスの良さが表れていて素晴らしい。

ウエストコースト・ジャズのドラマーの第一人者、シェリー・マンのドラミングの優秀性が如実に表れた、ジャズ・ドラミングの教科書の様なアルバムである。聴く度に、そのドラミングに感心する、シェリー・マンの名盤の一枚。
 
 

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2024年4月19日 (金曜日)

ニュー・ジャズなドラミング

ジャック・デジョネット(Jack DeJohnette)。John Abercrombieの『Timeless』(1974)辺りから、サイドマンとしては、ECMレーベルのハウス・ドラマーとして、数々のアルバムのドラムを務めている。1983年からは、キース・ジャレット率いる「スタンダーズ」の専任ドラマーとして、キースが引退状態になる2018年まで継続した。

特に、ECMサウンドには欠かせない「臨機応変で柔軟でポリリズミックなドラマー」の役割については、ECMレーベルの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの信頼は絶大だった様で、様々なスタイルの「ECMのニュー・ジャズ」でドラムを叩いて、しっかりと成果を出している。

アイヒャーはプロデューサーとして、演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、ということをしっかりと理解していたのだろう。ECMの活動初期の頃から、デジョネットをハウス・ドラマーとして起用したアイヒャーの慧眼恐るべし、である。

『Terje Rypdal / Miroslav Vitous / Jack DeJohnette』(写真左)。1978年6月、オスロの「Talent Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (g, g-syn, org), Miroslav Vitouš (b, el-p), Jack DeJohnette (ds)。ECMレーベルからのリリース。

当時のECMレーベルのハウス・ミュージシャンの3人が集結したキーボードレス・トリオ。音の厚みを求めてキーボードが欲しい時は、リピダルがオルガンを、ビトウスがエレピを弾いている。ピアニストでもあるドラマー、デジョネットは今回はキーボードには手を出していない。

出てくる音はフロント楽器を司るリピダルのギター、ギターシンセの雰囲気を踏襲して、幽玄な、音の伸びと広がりを活かした、スピリチュアルな、官能的な音世界。そんなリピダルのギターに、ビトウスのプログレッシヴなアコベと、デジョネットの臨機応変で柔軟でポリリズミックなドラムが、変幻自在、硬軟自在、緩急自在に絡みに絡む。
 

Terje-rypdal-miroslav-vitous-jack-dejohn

 
全編、幽玄な、音の伸びと広がりを活かした、スピリチュアルな、官能的な音世界なので、聴き進めていくにつれ、飽きがきそうな懸念があるのだが、ビトウスのベースとデジョネットのドラムの変幻自在、硬軟自在、緩急自在な絡みがバリエーション豊かで、全く飽きがこない。

リピダルのギターも、そんなビトウスのベース、デジョネットのドラムが叩き出すリズム&ビートに触発されて、いつになくアグレッシヴで表現豊かな、躍動感あふれる、それでいて繊細でクールでリリカルなパフォーマンスを聴かせているから面白い。

これだけ、バリエーション豊かにギターを弾きまくるリピダルも珍しい。この3人の組み合わせが、各演奏のそこかしこに「化学反応」を起こしている様がしっかり聴いて取れる。

この盤のリピダルって、彼のペスト・パフォーマンスの一つとして挙げて良いくらい、内容充実、優れたパフォーマンスである。

リピダルの潜在能力を効果的に引き出し鼓舞し、そのリピダルの音世界をしっかりとサポートし、より魅力的にするリズム&ビートを、ベースのビトウスと共に創造し叩き出すデジョネットのドラミングがアルバム全編に渡って堪能出来る。

ECMレーベルの活動前期に、ECMレーベルのニュー・ジャズな音世界に欠かせない「リズム&ビート」を担うデジョネットのドラミング。例えば、この『Terje Rypdal / Miroslav Vitous / Jack DeJohnette』を聴けば、その意味が理解出来る。従来のジャズの枠を超えた、ニュー・ジャズなドラミング。デジョネットのドラミングの本質だろう。
 
 
 

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2024年4月15日 (月曜日)

Brufordの『Feels Good to Me』

ジャズを本格的に聴き出す前は「ロック小僧」だった。高校に入って、いきなりプログレッシブ・ロック(略して「プログレ」)に嵌った。EL&Pから始まって、イエス、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、フォーカス、ジェネシス、ムーディー・ブルース等々、クラブの先輩達とガッツリ聴きまくった。

このプログレ好き、バカテク+インスト中心の楽曲好きが昂じて、即興演奏がメインのインストの「ジャズ」に興味が移行した訳で、今でも自分では、プログレについては造詣が深いと思っている。

Bill Bruford 『Feels Good to Me』(写真左)。1977年8月の録音。ちなみにパーソネルは、Bill Bruford (ds, perc), Allan Holdsworth (el-g), Dave Stewart (key), Jeff Berlin (b)。ゲストに、Kenny Wheeler (flh, on tracks 3, 7, 9), Annette Peacock(vo), John Goodsall (rhythm-g)。英国の人気プログレ・バンドのイエス、キング・クリムゾンのドラマーを歴任したビル・ブルーフォードの初ソロ・アルバムである。

プログレのドラマーがジャズをやるの、と訝しく思われる方もいるかと思うが、もともと英国の音楽シーンでは、ロックとジャズの境界が曖昧。ロック畑のミュージシャンがジャズをやったり、ジャズ畑のミュージシャンがロックをやったりして、特にプログレとクロスオーバー・ジャズ、ジャズ・ロックの境界線は他の国と比べて圧倒的に曖昧である。

このブルーフォードの『Feels Good to Me』も、聴けば判るが、プログレ・フレーヴァー満載の「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」である。決して、プログレでは無い。演奏の根っこは、あくまで「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」である。

ブルーフォードのドラミングに個性は、驚異の「変則拍子」ドラミング。プログレ・バンドのイエス、キング・クリムゾンの時代から、綿々と叩きまくっているブルーフォード独特の「変則拍子」。
 

Bill-brufordfeels-good-to-me

 
この「変則拍子」は他のジャズ・ドラマーには無い。基本的に2拍目4拍目の「裏」にスネアのアクセントがストンストンと入って、ブルーフォード独特のグルーヴ感を生み出す。これが意外と快感で病みつきになる。

冒頭の「Beelzebub」の変則拍子を聴くと「来た来た〜」と思わず嬉しくなる。全編に渡って、このブルーフォードの変則拍子ドラミングが独特のグルーヴ感を醸し出して、他のジャズ・ロックやクロスオーバー・ジャズに無い音世界を形成している。

そして、このブルーフォードの変則拍子ドラミングにバッチリ乗ってエレギを弾きまくるのが、ジャンルを跨いだ英国の奇才ギタリスト、アラン・ホールズワースである。このホールズワースのエレギが大活躍。このホールズワースの変態捻れギターが、この盤の音世界の「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」志向にしている。

ゲスト・ミュージシャンを見渡せば、ECMのニュー・ジャズ系トランペッターのケニー・ホイーラーがジャジーなトランペットを聴かせる反面、女性ボーカリストのアーネット・ピーコックが、いかにもプログレっぽい、怪しい雰囲気のイコライジングがかかったボーカルを聴かせてくれる。

アルバム全体の音志向は「クロスオーバー・ジャズ&ジャズ・ロック」だが、どこか英国カンタベリー・ミュージック風の音作りも見え隠れして、もしかしたらプログレ、なんて思ったりする瞬間があるから、この盤、聴いていてとても面白い。

演奏陣のテクニックも申し分なく、英国独特のロックとジャズの境界線が曖昧な、かなりハイレベルのクロスオーバー&ジャズ・ロックを確認することが出来る。そんな中で、ブルーフォードの驚異の「変則拍子」ドラミングだけが突出して目立っていて、この盤を凡百のクロスオーバー&ジャズ・ロック志向に留めていないところが素晴らしい。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、この盤でのブルーフォードのドラミングはその典型的な例の一つだろう。
 
 
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2024年4月12日 (金曜日)

清々しいブレイクのドラミング

ジョナサン・ブレイク(Johnathan Blake)。1976年7月生まれ。今年で48歳。現代ジャズにおけるファースト・コール・ドラマーの一人。ブレイクのドラムは伝統的なハードバップ〜モード・ジャズのドラミングの継承。テクニックが高い分、彼のドラミングには幅と余裕があるが、叩きだすビートはポジティヴで「攻めのドラミング」である。

Johnathan Blake『Passage』(写真左)。2023年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Johnathan Blake (ds, cymbals), Immanuel Wilkins (as), Joel Ross (vibes), David Virelles (p,key,Rhodes), Dezron Douglas (b)。

ドラマーのジョナサン・ブレイクがリーダー、アルト・サックスとヴァイブがフロントのクインテット編成。出て来る音は、正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズ。ストイックでクールで硬派なパフォーマンスが展開される。

テンションを張り巡らして、切れ味の良いハイ・テクニックな演奏が爽快。正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズに、ブレイクのドラミングが映えに映える。

さすがブルーノート・レコードでのリリース。パーソネルが「ふるっている」。それぞれが優秀な力のあるジャズマンばかりが集結。そんな精鋭部隊が、現代ジャズの最先端を行く「ネオ・ハードバップ & ネオ・モード」をやる。
 

Johnathan-blakepassage

 
テクニック素晴らしく迫力満点、伝統的なフォービートからフリー寄りの攻撃的なサウンドまで、これまでの硬派でストイックなジャズのトレンド&スタイルそれぞれに適応する。しかも、内容充実、聴きどころ満載なのだから、もうお腹いっぱい(笑)。

そんな伝統的なフォービートからフリー寄りの攻撃的なサウンドまで、全編に渡って、ジョナサン・ブレイクのドラミングが演奏の先頭に立ち、演奏をリードする。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、この盤でのブレイクのドラミングを聴いていると至極納得。全編に渡って、曲調&曲想によって、変幻自在、硬軟自在、緩急自在にドラミングの内容を変えつつ、バンド・サウンドを牽引するブレイクは見事。

奇をてらわない、バリバリ正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズに真正面から取り組むブレイクのドラミングは清々しい。伝統的なジャズなので、過去のジャズと比較されることが多いと思うのだが、そんな心配は無用。現代ジャズの最先端の音とドラミングがこの盤に詰まっている。決して、過去を振り返っていないところが、これまた清々しい。好盤です。
 
 

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2024年4月11日 (木曜日)

名手ブレイドの初リーダー作です

現代のファースト・コール・ドラマーの一人、アントニオ・サンチェスのリーダー作を聴いていて、他のファースト・コール・ドラマーのリーダー作を聴き直してみたくなった。まずは「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」。1970年生まれだから、今年54歳。ジャズ界では引っ張りだこのドラマーの一人である。

ブレイドのドラムは、多彩かつ大胆かつ繊細。非常に味のあるドラミングを披露してくれる。聴いていて惚れ惚れするくらい耳に心地良い、小粋なドラミング。シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出すのが最大の特徴。このブレイドのシンバル・ワークが秀逸。このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングを披露する。

『Brian Blade Fellowship』(写真左)。1998年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (sax), Jon Cowherd (ac-p, el-p), Dave Easley (pedal steel g), Daniel Lanois (mando-g), Jeff Parker (ac-g, el-g), Christopher Thomas (ac-b), Myron Walden (as)。ブライアン・ブレイドの初リーダー作になる。

ブライアン・ブレイド・フェローシップ(以降、BBF)、1997年、ブライアン・ブレイドをリーダーとして結成されたバンド。楽器構成がユニークで、ペダル・スチール・ギターやマンドギター、ウーリッツァー・エレクトロニック・ピアノなどのジャズには珍しいエレ楽器も入れての8人編成。言い換えると「ブライアン・ブレイド・オクテット」である。
 

Brian-blade-fellowship
 

出てくる音は、コンテンポラリー・ジャズ、いわゆる「ニュー・ジャズ」である。即興演奏をメインに、それぞれの楽器がモーダルにフリーにスピリチュアルにインタープレイを展開しつつ、フュージョン、フォーク、ゴスペルな音要素をも包含して、21世紀に通じる「ニュー・ジャズ」を展開。様々な表現を反映して楽曲がバリエーション豊かに収録されている。

そんなバリエーション豊かな内容の楽曲の中で、ブライアン・ブレイドのドラミングは白眉の出来。「シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出し、このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミング」というブレイドのドラミングの個性がこの盤の中に溢れている。

ブレイドの多彩なドラミングが推進エンジンとなって、様々なニュアンスの即興演奏&インタープレイが展開される。どの楽器も音は好調。4ビート・ジャズとは全く正反対の、エモーショナルでクールな「ニュー・ジャズ」志向のパフォーマンスは、このBBFの最大の個性。エレ楽器を包含しているが、このバンドの音はあくまで「純ジャズ」の範疇に軸足がしっかりある。

ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このブレイドの初リーダー作はその例に漏れない。ブレイドのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。21世紀の「ニュー・ジャズ」としても聴き応え十分。好盤です。
 
 

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2024年4月10日 (水曜日)

サンチェスの初リーダー作を聴く

昨日、アントニオ・サンチェス(Antonio Sánchez)の『Three Times Three』(2014年)を聴いて、彼は現代ジャズの先端を行くドラマーの一人だということを再認識。そういえば、まだ、当ブログで、彼の初リーダー作を記事にしていないことに気がついた。と言うことで、早急に彼の初リーダー作を聴き直してみた。

Antonio Sánchez 『Migration』(写真左)。2007年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Antonio Sanchez (ds), David Sanchez, Chris Potter (sax), Scott Colley (b), 特別ゲストとして、Pat Metheny (g), Chick Corea (p)。2002年にパット・メセニー・グループに招聘されて以来、メセニーとの共演の傍での初リーダー作。そのメセニーとチック・コリアが特別ゲストとして招かれている。

主役のサンチェスのドラミングの個性とスキルがはっきりと聴き取れる。スネアを中心にスネア・タムとをマシンガンの如く、高速で切れ味よく叩きまくる。どこか、トニー・ウイリアムスを彷彿とさせるところがあるのだが、トニーほどデジタルチックな叩きっぷりではない。サンチェスの高速ドラミングはウェーヴを生み出すような、抑揚のある叩きっぷり。このドラミングはとても個性的。以前のジャズ・ドラマーには無い個性である。
 

Antonio-sanchez-migration

 
演奏全体の雰囲気は、上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モード。サックスの二人は一聴すれば、何となくコルトレーン風に聴こえるところはあるが、コルトレーンより、フレーズがシャープで活度が高く、爽快感があってアドリブのイマージネーションが豊か。二人ともしっかりとオリジナリティーを確保している。二人のサックス奏者は「コルトレーンのそっくりさん」では無い。

この二人のサックスのバックでのドラミングと、特別ゲストのチックのバック、メセニーのバック、それぞれでのドラミングは明らかに異なる。二人のサックス、チックのピアノ、メセニーのギター、それぞれの個性が活きるよう、それぞれのフロント楽器の推進力となるよう、サンチェスは、サンチェスの個性そのままに、ドラミングの内容を変えている。これは見事。サンチェスのドラミング・スキルの高さがよく判る。

上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モードの演奏の中で、サンチェスのドラミングの個性をはっきり浮き上がらせ、特別ゲスト二人と共演することで、サンチェスのドラミング・スキルの高さを証明する。ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このサンチェスの初リーダー作はその好例の一つ。サンチェスのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。
 
 

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2024年4月 9日 (火曜日)

ドラマー、サンチェスの力量

現代の一流ドラマーの一人、アントニオ・サンチェス(Antonio Sanchez)。1971年11月1日生まれ。今年で53歳、バリバリの中堅ドラマー。2002年の作品『Speaking of Now』にて、パット・メセニー・グループ(PMG)に参加。初リーダー作は、2007年の『Migration』。これまで9枚のリーダー作をリリース。現在では、押しも押されぬ、現代のジャズ・ドラマーの代表格の一人になっている。

Antonio Sanchez 『Three Times Three』(写真左)。2013年10-12月の録音。トリオというフォーマットにこだわって制作した企画盤。CD2枚組の大作で、3種類のトリオ編成は、1)スタンダードなピアノ・トリオ、2)ギター入りのピアノレス・トリオ、3)テナー入りのピアノレス・トリオ の3種類。

スタンダードなピアノ・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), Matt Brewer (b), Brad Mehldau (p)。担当する楽曲は、1枚目の1曲目「Nar-this」、2曲目「Constellations」、3曲目「Big Dream」。

ギター入りのピアノレス・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), Christian McBride (b), John Scofield (g)。担当する楽曲は、2枚目の1曲目「Fall」、2曲目「Nook And Crannies」、3曲目「Rooney And Vinski」。

テナー入りのピアノレス・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), John Patitucci (b), Joe Lovano (ts)。担当する楽曲は、2枚目の4曲目「Leviathan」、5曲目「Firenze」、6曲目「Firenze」。
 

Antonio-sanchezthree-times-three

 
スタンダードなピアノ・トリオのピアノ担当は、ブラッド・メルドー。ベースがマット・ブルーワー。メルドーのピアノとサンチェスのドラム、さすが、超一流の演奏家同士、素晴らしいインタープレイを聴かせてくれる。そこに一回り若いブルーワーのベースが入るのだが、このブルーワーのベースが現代のネオ・ハードバップ、ネオ・モードを牽引するかの如き、柔軟で新しい感覚のベースで、インタープレイの底をガッチリと支えている。

ギター入りのピアノレス・トリオのギター担当は、ジョン・スコフィールド。ピアノレスが効いていて、ジョンスコのギターとサンチェスのドラムとが、ダイレクトにインタープレイの交歓をするところがスリリング。そこにダイレクトに絡むハイ・テクニックで骨太なマクブライドのベースが、これまたスリリング。

テナー入りのピアノレス・トリオのテナー担当は、ジョー・ロバーノ。こちらもピアノレスが効いていて、ロバーノが自由奔放にテナーを吹き上げる。そこに効果的にリズム&ビートを絡ませるサンチェスのドラミングは見事。そんな柔軟自在なインタープレイを整え前へ進める推進役のパティトゥッチのベー氏がこれまた見事。

3種類のトリオ演奏の中で、明らかにドラミングの内容を変えて、それぞれのトリオでの楽器、共演者の個性に対して、一番、効果的でバンド・メンバーそれぞれの個性が一番はえるドラミングをするサンチェスは素晴らしいの一言。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、このサンチェスの企画盤を聴いていて思わず納得。この企画盤、ドラマー、サンチェスの力量をしっかり確認できる好盤だと思います。ジャズ・ドラマーのリーダー作として白眉の出来です。
 
 

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2024年3月10日 (日曜日)

成熟&極上の Fourplay 『4』

フュージョン・ジャズの世界では、伝説的な人気グループが多くある。パッと頭に浮かんだだけでも、「スタッフ」「ジェントル・ソウツ」「クルセイダーズ」「ブレッカー・ブラザーズ」「ステップス・アヘッド」「スパイロ・ジャイラ」「イエロージャケッツ」など、個性溢れるバカテク集団がずらり。そして、僕が愛してやまないのが「フォープレイ」。

Fourplay『4』(写真左)。1998年の作品。ちなみにパーソネルは、Bob James (p, key, program), Larry Carlton (g), Nathan East (b, vo), Harvey Mason (ds)。ギター担当がリー・リトナーから、ラリー・カールトンの代わった最初のアルバム。フォープレイとしては、通算4枚目のスタジオ録音盤。

この「フォープレイ」は、フュージョン・シーンのレジェンド級の名うてのトップ・プレイヤー4人が集結したスーパー・グループ。管楽器は無く、ギター、キーボード、ベース、ドラムの「ギター・カルテット」。

フロントはギター、キーボードが担当する。メンバー4人とも、実績十分、貫禄十分、人気十分、テクニック十分。そんな4人がガッチリとグループを組んで奏でる、極上のソフト&メロウなフュージョン・ミュージック。

この盤は、ギターがリトナーからカールトンに代わった最初の盤。カールトンのギターがソウルフルでブルージーな分、大人のフュージョンというイメージがより強くなっている。カールトンのギターの個性に合わせているのか、全体的には、ミドルからスローなテンポがメイン。これが、極上のソフト&メロウでブルージーなグルーヴを醸し出している。

このカールトンのギターが良い。バンド・サウンドの中にしっかり溶け込むカールトンのギター。カールトン入りのフォープレイの音の雰囲気をしっかりと決定づけている。
 

Fourplay4

 
ボブ・ジェームスのキーボードが良い。カールトンに寄り添う様に鼓舞する様にソフト&メロウに、時に切れ味よくシャープに乱舞する。ボブ・ジェームスはアコピにエレピに八面六臂の大活躍。マイルドでメロウなキーボード・ワークだが、押さえるべきところは、しっかりとメリハリあるフレーズで押さえているところはさすが。

ネイザン・イーストのエレベが良い。ゴリっと鋼質な粘りのあるベース音。ソフト&メロウな雰囲気の演奏全体を引き締めている。特に、演奏のビートの底をしっかりと支えているベース・ワークは極上の職人芸。

そして、ハービー・メイソンのドラムが良い。バンド全体のリズム&ビートの要。演奏全体の調子、雰囲気を柔軟にコントロールする。抑制の効いた、変幻自在、硬軟自在なドラミングは「大人のドラミング」。叩きまくるだけがドラムでは無い。味のある小粋なドラミングはメイソンならでは、である。

とりわけ、3曲目のマーヴィン・ゲイの名曲「Sexual Healing」は、R&Bっぽい、黒いソウルフルなサウンドが特徴的。カールトンのギターの個性にぴったりの雰囲気で、仄かにファンクネス漂うボブ・ジェームスのキーボードがこの曲のアレンジにバッチリ合う。この演奏はカールトンの参加ならではの選曲&演奏だろう。

全体に淡い霞がかかった様な、淡く広がる様な、奥行きのあるサウンド。それでいて、リズム&ビートはしっかりと効いていて、ブルージーなグルーヴ感が濃厚、ゆったりとしたオフビートが「立って」いる。

よりマイルドな、よりソフト&メロウな「成熟した大人のフュージョン」な作品に仕上がっている。フュージョン・ジャズの最高峰に位置する、極上のパフォーマンス。好盤です。
 
 

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2024年3月 7日 (木曜日)

ダブル・ドラムの優秀な企画盤

ジャズ・ドラムというのは、意外と「個性の塊」である。フロント管を交えたバンド演奏の中で、リズム&ビートを供給する役割のドラム。リズム&ビートを供給するだけ、と思いがちなので、ドラムには個性は必要無い、と言われそうなんだが、それは「違う」。

ドラミングの個性によって、演奏の雰囲気は変わるし、演奏全体のトーンによって、ドラミングの質は変わる。ジャズにおいては、ドラミングは演奏の雰囲気やトーンを決定づける重要な役割を担っている。ゆえに、ドラミングのテクニックは高度なものが要求されるし、そのドラマーならではの個性や特徴は当然、要求される。

Elvin Jones and Philly Joe Jones『Together!』(写真左)。1961年2月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Philly Joe Jones (ds), Blue Mitchell (tp), Curtis Fuller (tb), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b)。

ハードバップど真ん中なバップ・ドラムの第一人者、フィリー・ジョー・ジョーンズ(フィリージョー)と、新しい響きを宿した・バップ・ドラムの第一人者、エルヴィン・ジョーンズのダブル・ドラム、ダブル・リーダーの企画盤。

フロントに、ミッチェルのトランペット、フラーのトロンボーン、モブレーのテナーの3管を配して、ダブル・ドラムの重厚な布陣。個性溢れるジャズ・ドラマーの代表する2人がリズム&ビートを担うので、フロント3管くらいの重厚なアンサンブルで十分にバランスが取れる。
 

Elvin-jones-and-philly-joe-jonestogether  

 
二人のドラマーが主役なんだが、この二人の個性溢れるドラミングが素晴らしい。典型的なハードバップ・ドラムな、ダイナミックで切れ味の良いフィリージョー、少しラフで印象的なオフビートで今までに無い叩きっぷりのエルヴィン、どちらのドラミングも素晴らしいの一言。これぞ、ハードバップなドラミングという個性を遺憾無く発揮していて、聴き応えがある。

これだけ優れたドラミングに鼓舞されるのである。フロント3管は好調に吹きまくる。ミッチェルもフラーも良いが、特に、モブレーが好調。このセッションでのモブレーのテナーは「当たり」である。覇気溢れるエネルギッシュな吹奏で聴き応え満点。

加えて、これだけ優れたドラミングが様々なニュアンスのリズム&ビートを繰り出すのである。ピアノ、ベースのリズム隊も健闘に次ぐ健闘。ハッピー・スインガーなケリーのピアノは、翳りを封印し、ファンクネス溢れる明快なタッチの弾き回しでドラムに調子を合わせ、ポルチェンのしなやかでソリッドなベースが、リズム・セクションの「底」をガッチリ支える。

演奏全体の雰囲気は、明確に「絵に描いた様なハードバップ」。ドラムが優れていると、ちゃんとこう言った優れたハードバップな演奏が展開されるという好例。ダブル・ドラムの効果も十分出て、重厚なアンサンブルは聴いていて気持ちがスッとする。良い企画盤です。ジャケ・デザインはイマイチだけど(笑)。
 
 

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