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2019年6月19日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・116

ジャズを聴き始めて40年以上になるが、それでもなかなか縁が無いアルバムというものが沢山ある。大学時代に「秘密の喫茶店」で聴かせて貰ってそれっきり、というアルバムが結構あって、それが今でもジャズのアルバム・コレクションのモチベーションになっている。あのアルバムをもう一度、自分のステレオ・セットで聴きたい。
 
そうやって日々リイシューされる昔のアルバムのチェックをしていると、たまに「おおっ、これはこれは」と嬉しくなるようなリイシューがあったりするから、アルバム・コレクションは楽しい。今回は「エルヴィン・ジョーンズ」。1970年代のエルヴィン・ジョーンズは精力的にリーダー作をリリースしていて、それぞれなかなかの内容なのだ。

Elvin Jones『On The Mountain』(写真左)。1975年の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Jan Hammer (p, el-p, syn), Gene Perla (b, el-b)。変わり種のジャズ・ピアニスト、ヤン・ハマーとのピアノ・トリオ編成。ハマーはアコピとエレピ、そしてシンセサイザーと、当時の最先端の出で立ちである。
 
 
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冒頭出てくるポリリズミックなドラミングは明らかに「エルヴィン・ジョーンズ」。1950年代からハードバップ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、時代時代のジャズのトレンドを体験して来た、当時既に「レジェンド級」のドラマーである。それが、当時、新進気鋭のちょっと変わったピアニスト、ヤン・ハマーを共演者に選んで、トリオ演奏をするのだから、実に懐が深い。
 
そして、そのヤン・ハマーをしっかり支え、鼓舞し、グループ・サウンドをとりまとめている。エルヴィンをバックにして、ハマーは実にノビノビと演奏しているようだ。ハマーの個性、手癖がはっきりと出ていることからも、それが聴いて取れる。エレピとシンセの音がするので、安易なエレ・ジャズかと思うと怪我をする。
 
これは「コンテンポラリーな純ジャズ」である。1975年ってマイルスのアガルタの年。その時代に、エルヴィンはこんな先端を行く「コンテンポラリーな純ジャズ」をやっていた。大学時代に「秘密の喫茶店」で聴かせて貰った印象は正しかった。ヤン・ハマーのシンセのインタープレイは白眉なもの。エルヴィンのリーダーシップの賜である。
 
 
 
東日本大震災から8年3ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年5月20日 (月曜日)

BN-LAの「ジャズ・ファンク」

4300番台とは違って、ブルーノート・レーベルのBN-LAシリーズは、新作アルバムの製作ポリシーに一貫性がある。1972年から1977年辺りまでのリリースは、クロスオーバー・ジャズからジャズ・ファンク、そして、フュージョン・ジャズまでのトレンドを網羅した、いわゆる「フュージョンの時代」を背景に、新作については一貫した製作ポリシーを貫いた。
 
新作については、と注釈をつけているのは、このBN-LAシリーズには、有名ジャズマンのベスト盤や、お蔵入り盤音源のリリースが入り乱れており、カタログとしてはかなり雑然としているのだ。それでもこのBN-LAシリーズ、新作については上質のクロスオーバー・ジャズあり、上質のジャズファンクあり。数は少ないが、フュージョン・ジャズな盤についても、なかなかの出来を誇る。
 
Alphonse Mouzon『Funky Snakefoot』(写真左)。1973年12月の録音。BN-LAの222番。 ファンクネス溢れる8ビートなクロスオーバー・ジャズが、限りなき疾走感のもとに展開される。口ずさんで踊れる圧倒的ジャズ・ファンク。音の雰囲気はうっすらとしたエコーを含め、明らかにブルーノート・レーベルの音で成り立っていて、この盤は「ブルーノート・レーベルが考えるジャズ・ファンク」といった内容。
 
 
Funky-snakefoot-alphonse-mouzon  
 
 
ちなみにパーソネルは、Alphonse Mouzon (ds, vo, syn, tack piano), Randy Brecker (tp), Barry Rogers (tb), Andy Gadsden (ts), Harry Whitaker (p, clavinet), Leon Pendarvis (el-p, org), Richie Resnicoff (g), Mark Harowitz (steel-g, banjo), Gary King (el-b), Ray Armando (conga, bongo), Angel Allende, Steve Berrios (perc)。ファンクな演奏やる分、リズム・セクションが充実している。楽器はエレクトリックが中心。
 
こってこてのファンクネスが実に芳しい。冒頭の「I've Given You My Love」で、ダンス・ジャズ・ファンクが幕を開け、ドラム・ブレイクが格好良い2曲目の「You Don't Know How Much I Love You」、シンセによるソフト&メロウな郷愁を帯びたメロディーが心地良い4曲目の「My Life Is So Blue」など、ソウルフルなジャズ・ファンクが炸裂、である。キレ味も良く、聴き応え十分である。
 
ウェザー・リポートの初代ドラマーであったアルフォンソ・ムザーン。 ウェザー・リポート後の、ブルーノート・レーベルからのソロ盤第2弾。ランディ・ブレッカーなどのフュージョン・ジャズの人気者達をバックに招聘した、とても素敵な「ジャズ・ファンク」盤。これがBN-LAシリーズの1つの製作ポリシー、いわゆる「ジャズ・ファンク」。聴き応え十分。聴いて楽しい「ジャズ・ファンク」。
 
 
 
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2019年4月28日 (日曜日)

意外とモード・ジャズの好盤です

ブルーノート・レーベルでのエルヴィン・ジョーンズとマッコイ・タイナーの録音を聴いていると、インパルス・レーベルに移籍したばかりの頃のコルトレーン・カルテットの音世界が一番良かったと思っていたのではないか。あの頃の演奏が、一番やりたかった演奏ではないのか、と思う。

Elvin Jones『The Ultimate』(写真左)。1968年9月6日の録音。ブルノートの4305番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts, ss, fl), Jimmy Garrison (b)。サックスがフロントのピアノレスの変則トリオ編成。サックスは、当時、新進気鋭のジョー・ファレルが担当している。

この盤ではピアノレスで録音している。この盤の演奏を聴けば判るが、この盤の演奏にピッタリ合ったピアノは、当時唯一、マッコイ・タイナーのピアノだけだったと思うのだが、タイナーを採用すると、明らかにコルトレーン・カルテットの音世界に酷似する可能性がある。であれば、ピアノをオミットしたのは正解だろう。
 
 
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エルヴィンはビートが効いた、ポリリズムの化身の様なドラミングが身上。ピアノは無くても、ベースのウォーキング・ラインさえあれば、十分にフロントの楽器を支え、鼓舞することが出来る。この盤に詰まった演奏は、一言でいうと「インパルス・レーベルに移籍したばかりの頃の、モーダルで自由度の高いコルトレーン・カルテット」の音である。上質のモード・ジャズ。
 
ギャリソンのベースは、モード・ジャズを支える上で、打って付けのウォーキング・ラインを弾き進める。明らかに「モーダル・コルトレーン」仕込みのベース・ライン。フロントのサックスに限りなく自由度を与えながら、しっかりと演奏の底をしっかりと支えている。聴けば、フロントのファレルがとても気持ち良いサックスを吹いている様に感じる。
 
当時31歳のファレルは若々しくエモーショナルなサックスを吹き上げる。限りなく自由奔放に吹きまくるファレル。コルトレーンをちょっとジェントルに、ちょっと柔和にした様なモーダルなサックスが、エルヴィンのポリリズムとギャリソンのゴリゴリベースに見守られながら、限りなく自由度高く乱舞する。モード・ジャズの好盤である。
 
 
 
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2019年4月24日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・145

僕はこのドラマーの音が、このドラマーが創造する音が好きだ。初めて聴いた時からズッとだ。そのドラマーの名前は「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)。1970年7月、米国ルイジアナ州生まれ。現時点で48歳。脂ののりきった中堅ジャズマン。こんなにユニークなドラミングが聴けるとは思ってもみなかった。
 
硬軟自在、変幻自在、緩急自在、音の音色の豊かさ。変な喩えなんだが「パーカッションらしいドラミング」。従来のジャズ・ドラミングに無い、メロディアスなドラミング、とでも表現しようか。とにかく良い意味でユニークなドラミングなのだ。聴いているだけで、これだけ「面白い」ドラミングなのだ。一緒に共演して演奏したら、どれほど楽しいのだろうか。今では「ファースト・コール」ドラマーの一人である。
 
Brian Blade Fellowship『Perceptual』(写真左)。1999年9月の録音。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ac-g, ds, vo), Kurt Rosenwinkel (ac-g, el-g), Christopher Thomas (b, vo), Myron Walden (b-cl, as), Melvin Butler (ts, ss), Jon Cowherd (p, key), Dave Easley (steel-g), Daniel Lanois (ac-guitar, steel-g), Joni Mitchell – vocals ("Steadfast")。錚々たる同世代がメインのメンバー「Fellowship」。
 
 
Perceptual-brian-blade  
 
 
この『Perceptual』はフェローシップとしての作品の第2弾になる。米国の広々とした自然や空間を想起する、僕が勝手に呼んでいるのだが「ネイチャー・ジャズ」。パット・メセニーの音世界に近いものがある。これが僕にとっては「大好物」なのだ。美しい、とても印象的な演奏。メロディアスではあるが、決してイージーに陥らない。
 
メロディアスで耽美的な「スピリチュアル・ジャズ」と形容して良いくらい、充実した、クールに「熱い」演奏。勿論、ブレイドのドラミングは個性的で素晴らしいのだが、同じくらいに印象に残る音が、カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)のギター。特にエレギが印象的。ちょっとくすんだ伸びの良い、ちょっと捻れた、ちょっと尖ったエレギ。パットのギターのフォロワー的印象。
 
これ見よがしに変拍子、転拍子を見せつけてるようなところは見えない、フェローシップ全員、気合いの入った自然体な演奏。結構、難しいことをやっているんだが、決して難解には聴こえない。逆に自然にシンプルに聴くこえるから面白い。1970年代、ECMレーベルに展開された「ニュー・ジャズ」。この「ニュー・ジャズ」がジャズ界でもポピュラーな存在になったきた様です。このフェローシップの音を聴くと改めてそう思います。
 
 
 
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2019年4月19日 (金曜日)

純ジャズの深化を確実に感じる

最近、ドラマーがリーダーのアルバムがなかなか優れている。昔でいうと「アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ」。ジャズ・ドラマーのレジェンド、アート・ブレイキーが座長を務める「ジャズ道場」の様なバンドだった。ドラマーはバンドのバックに控えて、しっかりとリズム&ビートを司る役割。バンド演奏のバランスや機微をコントロールする役割、つまりリーダーとして最適な楽器なのでは、と思うのだ。
 
Mark Guiliana Jazz Quartet『Jersey』(写真左)。2017年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Mark Guiliana (ds), Jason Rigby (ts), Fabian Amazon (p), Chris Morrissey (b)。テナーがフロント1管のカルテット構成。ブラッド・メルドー、デヴィッド・ボウイ、アヴィシャイ・コーエンなどのグループで活躍してきた現代最高峰のドラマーの一人、マーク・ジュリアナのリーダー作。
 
現代最先端の「ネオ・ハードバップ」な演奏。正統な純ジャズといった内容。モーダルな浮遊感溢れる展開あり、端正ではあるが、ややスピリチュアルな響きが芳しい展開あり、正統な純ジャズの伝統を継承した様な、昔からジャズを長年聴き続けて来た耳にも違和感の無い、正統なジャズの雰囲気。
 
 
Jersey-mark-guiliana  
 
 
そんな中、ラテン・フレイヴァーをまとった演奏もある。3曲目の「Our Lady」。1960年代のソウル・ジャズの雰囲気もふっと感じたり、音の雰囲気はレトロなんですが、演奏の切れ味やアドリブのフレーズの響きなどは全く新しい現代のジャズの音。いわゆる「温故知新」的な演奏が聴き応え満点。レトロなアレンジの中に、キラリと光る現代ジャズの響き。良い感じだ。
 
4曲目の「BP」は不思議な雰囲気のする演奏。この不思議な雰囲気は何が原因なのか。バスドラ、なんですね。どうも、リーダーでドラマーのジュリアナがバスドラをずっと踏みながらドラムを叩いているんですよね。これって結構難しいテクニックだと思うんですが、ジュリアナって、ドラムのテクニックも抜群ですね。
 
ジャズの伝統に根ざした現代の純ジャズ。ちょっと聴いただけだと「これって昔のモード・ジャズやん」となるんですが、しっかり聴くとそうじゃないことが直ぐに判る。この盤の音の響きに織り込まれた音のトレンド音のジャンルが、1960年代に比べて格段に多い。純ジャズの深化を確実に感じることが出来る好盤です。
 
 
 
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2019年4月16日 (火曜日)

エルヴィンの理想の純ジャズ

このジャケットには参った。こういう変態ジャケットがところどころ存在するところも、BN-LAシリーズがイマイチ信頼されない所以なんだろう。ただでさえ、BN-LAシリーズはブルーノート・レーベルを電化〜フュージョン化して、純ジャズの世界をポップスに身売りしたと軽視されがちなシリーズなのに、だ。しかし、この首無しイラストに何か意味があったのかなあ(笑)。
 
Elvin Jones『Mr. Jones』(写真左)。BN-LA110-F。1972年7月の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Dave Liebman (ts, ss, fl), Steve Grossman (ts, ss), Jan Hammer (p), Gene Perla (b), Carlos "Patato" Valdes (congas), Frank Ippolito (perc), Pepper Adams (bs), Thad Jones (flh), Albert Duffy (timpani)。当時、ポスト・コルトレーンと目された、リーブマンとグロスマンがサックスを担当している。
 
パーソネルを見渡すと、リーブマンとグロスマンというポスト・コルトレーンのサックス新鋭二人とベテラン・バリサクのペッパー・アダムス、そして、サド・ジョーンズのフリューゲルホーンの4管フロントが超弩級の布陣である。ピアノは後の「捻れシンセの使い手」ヤン・ハマーで、テクニカルでモーダルな演奏が意外と目立つ。ドラムは当然、エルヴィン・ジョーンズ。その脇をコンガ、パーカッション、ティンパニが固める。
 
 
Mr-jones
 
 
この「首無しジャケット」で強い印象を与えてくれる盤だが、これ、ポリリズムの達人ドラマー、エルヴィン・ジョーンズのリーダー作である。中の演奏は徹頭徹尾、モーダルなジャズ。リーブマンとグロスマンがコルトレーン・ライクなテナーを聴かせるが、コルトレーンよりもスッキリ&ライトである。このテナー2管にアダムスのバリサクが絡んで「重厚感抜群」。コルトレーン・ライクであるが決して、アブストラクトに、フリーにならない。
 
この盤の演奏を聴いていると、エルヴィン・ジョーンズが気合い十分ながら、実に気分良く叩いている様に聴こえる。この盤に詰まっているモーダルなジャズは、コルトレーンがフリーに走る直前の、限りなく自由ではあるが統制の取れたモード・ジャズを彷彿とさせる。エルヴィンはあの頃のモード・ジャズが理想のジャズだったのかもしれないなあ、とこの盤を聴く度に思うのだ。
 
1972年と言えば、クロスオーバー・ジャズやジャズ・ロックが流行っていた頃。そんな時期に、こんなに硬派で素敵なモード・ジャズを録音していたなんて、意外とBN-LAシリーズは隅に置けない。録音も良く、モード・ジャズとして一流の内容。確実に斜陽の時代だったが、さすがはブルーノート・レーベルである。
 
 
 
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2019年4月 3日 (水曜日)

スピリチュアルなオルガン・ジャズ

オルガン・ジャズが好きである。もともと子供の頃から、オルガンの音、いわゆる「ハモンド・オルガン」の切れ味良く、ちょっとノイジーでくぐもった様な音が好きで、そんなハモンド・オルガンの音さえ聴こえていたら、それだけで心地良い。オルガン・ジャズの場合、そんなハモンド・オルガンの音が、基本4ビートに乗って、アドリブ・フレーズを展開するのだ。これは僕にとっては堪らない。
 
今年の新盤を眺めていたら、Joey Defrancesco(ジョーイ・デフランチェスコ)の新盤が目についた。ジョーイは1971年生まれなので、今年で48歳。ジャズ界でいけば、まだまだ若い。バリバリの中堅である。風貌から僕はとっくに50歳は過ぎていたと思っていたので、今回、ジョーイのバイオグラフィーを押さえていて、ちょっとビックリした。マイルス晩年のバンドにも一時期参加していたほどで、ジョーイのオルガン・プレイはアグレッシブでテクニック優秀。
 
Joey Defrancesco『In the Key of the Universe』(写真左)。今年3月のリリース。出来たてホヤホヤである。ちなみにパーソネルは、Joey Defrancesco (org,key,tp), Pharoah Sanders (ts,vo), Troy Roberts (sax,b), Billy Hart (ds), Sammy Figueoa (per)。オルガンはベースのラインを担当することが出来るので、この盤ではベースがいない。オルガン、ドラムにフロントがテナーという、オルガン・ジャズの基本的構成である。そうそう、この盤ではジョーイはマルチ奏者ぶりを発揮していて、オルガンの他にシンセ、トランペットも担当している。
 
 
In-the-key-of-universe
 
 
ジョーイのオルガンは相変わらず、アグレッシブでテクニック優秀。弾き過ぎず、テクニックに頼ること無く、余裕を持った大らかなオルガンをこの盤でも弾きまくっている。聴いていて「あ〜良い感じ。これって、ジョーイだよね」と思う。で、この盤ではリーダーのジョーイのオルガンよりも、テナーの音の方が目立っている。ぐいぐい主張する力感溢れるテナー。誰だ、と思ってパーソネルを見たら、なんと「ファラオ・サンダース」。
 
そう言えばこの盤、冒頭の「Inner Being」から、スピリチュアル・ジャズの雰囲気は色濃く漂っている。それも今、ジャズ界で流行っている「穏やかでメロディアスな耳当たりの良い」スピリチュアル・ジャズの印象である。ファラオのテナーは「元祖スピリチュアル・ジャズ」なテナー。この盤でもその存在は大きく、ファラオのテナーがこの盤のスピリチュアル・ジャズっぽさを決定付けている。新しい今様のジャズの響きが心地良い。
 
スピリチュアルなオルガン、テナーを支え、リズム&ビートをコントロールする、ビリー・ハートのドラムの存在も見逃すことは出来ない。趣味の良い、チェンジ・オブ・ペース的なドラミングは柔軟度抜群。演奏全体の音のフレームをグッと締めている。「ジャズの今」を感じる、コンテンポラリーな純ジャズ盤として、なかなかの内容だと思います。好盤です。
 
 
 
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2019年2月21日 (木曜日)

典型的なECMレーベルの演奏

若き日のポール・モチアンのどアップのジャケットに思わず「引く」。印象的なジャケットが多いECMレーベルにしては、これは珍しい、リーダーのどアップでリアルな写真ジャケ。しかも、当時は30㎝LPの時代なんで、このモチアンのどアップなジャケットで、ある意味、迫力があったでしょうね(笑)。

Paul Motian『Tribute』(写真・右は別ジャケ)。1974年5月の録音。ちなみにパーソネルは、 Paul Motian (ds, perc), Carlos Ward (as), Sam Brown (g), Paul Metzke (el-g), Charlie Haden (b)。モチアンのドラムに、ヘイデンのベース。カルロス・ワードのアルトに、ブラウンとメッツクのギター。ECMレーベルからのリリース。このパーソネルから、演奏の内容はフリーかアブストラクトなジャズやろうなあ、と当たりを付ける。

スピーカーから出てくる音は「純正のECMの音」。切れ味の良い、静的で深いエコーのかかった深みのある音。フリーな演奏ではあるが、演奏の底にしっかりとビートが乗っていて、今、流行の静的で硬派なスピリチュアル・ジャズの雰囲気。グルーヴ感もそこはかとなく漂い、意外と聴き応えのある「欧州スピリチュアル・ジャズ」。
 

Tribute  

 
2本のギターの浮遊感が効果的。ギターの美音が基本の浮遊感なので、透明度の高いスピリチュアル感が増幅される。そこにグッと硬派に入ってくるのがヘイデンのベース。この重低音溢れる、鋼がしなる様なベースが実に印象的で、浮遊感溢れる2本のギターのフレーズの中にグッとしっかりとした芯を与える。演奏全体が締まり、めくるめくアカデミックな展開に思わず耳をそばだてる。

モチアンのドラミングは硬軟自在、強弱自在、遅速自在。柔軟で自由度が高いが、しっかりとビートをキープしたポリリズミックなドラミングは見事。ヘイデンのベースとの相性が抜群で、この二人のリズム・セクションが、この盤に相当に分厚くて切れ味の良いリズム&ビートを供給している。このリズム&ビートがこれまた「スピリチュアル」。

アルバム全体で40分弱とちょっと短い収録時間ですが、聴き応えは十分。典型的なECMレーベルの音がこれでもかというくらい詰まっていて、ECMレーベル独特と言って良い、欧州的な、はたまた北欧的な、フリーな展開や静的なスピリチュアルな響きが堪りません。ちょっとマニアックな内容なので、ジャズ者初心者にはちょっと早いかなとも思いますが、ECMレーベルの音を体験するには、なかなか良い雰囲気のアルバムと思います。

 
 
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2019年2月18日 (月曜日)

ジャズ喫茶で流したい・141

「ジャケ買い」という言葉があるが、この盤は僕にとってまさに「ジャケ買い」盤。このアルバムのリーダーであろう人物の、座った迫力のあるイラストが思いっきり目を引く。「Quintet」の文字でこの盤はジャズ盤だと想像出来る。とすると、この盤の内容って、意外と骨太で硬派でゴリゴリした純ジャズじゃないか、と思ったら、思わず手にしていた。

The Dave Bailey Quintet『Two Feet in The Gutter』(写真左)。1961年10月6日、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Ben Tucker (b), Dave Bailey (ds), Billy Gardner (p), Frank Haynes (ts), Bill Hardman (tp)。パーソネルを見渡すと、決して、当時のスター・プレイヤーではないのだが、当時の中堅どころが大集合。

冒頭の「Comin' Home Baby」は、ベースのベン・タッカーの曲。元ジャズ・メッセンジャーズのトランペッター、ビル・ハードマンで軽快にスタート。フランク・ヘインズの雰囲気あるテナーも良い感じ。リーダーのデイブ・ベイリーのドラムが、演奏のリズム&ビートをさりげなくビシッと決めて、ああ、雰囲気のある踊れるハードバップではないか。
 

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デイブ・ベイリー。1926年2月の生まれ。米国ヴァージニア州出身。1950年代に入って、ハードバップ初期の頃より、頭角を現し、様々な一流ジャズメンとの共演を果たしている。1954〜68年まで、14年間、ジェリー・マリガンのグループで活躍しましたが、惜しくも1969年、ジャズ界より引退。1973年からニューヨークで音楽教育に携わっていますが、主だった活動はしていません。

彼のドラミングは、派手さは全く無いのですが、堅実で職人肌の「粋」なドラミング。この『Two Feet in The Gutter』でも、全編に渡って、良質で洗練されたハードバップを聴かせてくれていますが、もちろん、リーダーのデイブ・ベイリーのドラミングに依るところが大きいですね。これだけ、ドラミングが演奏全体の雰囲気をコントロールしているアルバムはあまりないのではないか、と思います。

ハービー・マンやメル・トーメ等でもおなじみのダンス・ジャズ・クラシックな曲を渋く、粋に演奏しているところが堪らない。ベン・タッカーのベースがさりげなくブンブン響いて、ベイリーの小粋なドラミングと相まって、とてもジャジーでハードバップなグルーヴ感を醸し出しています。あまり、ジャズ紹介本などではそのタイトルが挙がらない盤ですが、ハードバップ後期の隠れ好盤でしょう。

 
 
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2019年1月30日 (水曜日)

日本人ドラマーの2018年の新盤

ジャズ雑誌「ジャズライフ」の2018年度「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」が発表された。記事をつらつら読んでいて、今となっても未だにジャズの新盤はコンスタントにりりーすされているんやな〜、と感心することしきり。特に21世紀に入って、日本のジャズ新盤が明らかに充実してきたのは頼もしい限りである。

日本人は黒人じゃないので、真のジャズはできない、なんて的外れな評価はもはや過去の話で、日本人ジャズには日本人ジャズなりの良さがある。それをしっかり認識する中で、米国でも欧州でも無い、日本人ジャズを表現できる環境が整ってきたんだろう、と思う。

大坂昌彦『Tricollage(トリコラージュ)』(写真左)。2018年9月のリリース。日本ジャズのドラマー、大坂昌彦のリーダー作。ドラマーがリーダーのアルバムで、随所でドラミングにテクニックを披露しつつ、自らが考える「現代のネオ・ハードバップ」を、様々なゲストを呼んで表現する、という企画盤的雰囲気のアルバム。

1995年にリリースした大坂の初リーダー作「トゥエルブ・カラーズ」で採用した、ドラム&ベースを固定し、多数のゲストをフィーチャーしてトリオ演奏を楽しむコンセプトを踏襲して作成されたもの。2台ベース+ドラムという特殊なトリオ編成の音も収録されていて、とにかく聴いていて楽しい。演奏のベースは明確に「ネオ・ハードバップ」。収録曲と曲毎のゲストは以下の通り。
 

Tricollage_masahiko_ohsaka  

 
1. A Night In Tunijia(チュニジアの夜)feat. 曽根麻央 <tp>
2. I Mean You(アイ・ミーン・ユー)feat. 椎名 豊 <p>
3. Doxy(ドキシー)feat. 馬場孝喜 <g>
4. Everything Happens To Me
 (エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー)feat. 吉岡秀晃 <p>
5. Airegin(エアジン)feat. 大森 明 <a.sax>
6. Out Of Nowhere(アウト・オブ・ノーホエア)feat. 宮之上貴昭 <g>
7. Unpredictable Life(アンプレディクタブル・ライフ)feat. 西口明宏 <t.sax>
8. Peaceful Lament(ピースフル・ラメント)feat. 山田拓児 <s.sax>
9. Naima(ネイマ)feat. 今泉正明 <p>
10. Tea For Two(二人でお茶を)feat. パット・グリン <b>
11. Donna Lee(ドナ・リー)feat. 岡崎好朗  <tp>
<ボーナストラック>
12. But Not For Me(バット・ノット・フォー・ミー)feat. 馬場孝喜 <g>

 
選曲がスタンダード曲中心なのもこのアルバムの良いところ。トリオ演奏ということで音が「シンプル」。楽器の音の抜けが良くて、様々なニュアンスの音が捉えられている。演奏内容はどの曲も充実しており、全12曲、聴き通していて、ダレることが無い。日本人のジャズなので、ファンクネスはほぼ皆無なのだが、切れ味の良いオフビートが意外にジャジー。

ネオ・ハードバップの「今」と日本人ジャズのレベルの高さを再確認できる好盤です。一聴をお勧めしたいですね。

 
 

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