2019年10月 2日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・156

ドラマーがリーダーのアルバムって、演奏全体のバランスが良い。常にバンド演奏の後ろに控えて、演奏全体を見渡しつつ、リズム&ビートを供給する役割を担っているからだろうか。演奏の全体をよく聴き、はたまた演奏の詳細に耳を傾け、その雰囲気に合ったビートを供給する。時に鼓舞し、時に寄り添う。ドラマーはバンドの中での「女房役」である。

Jimmy Cobb『This I Dig of You』(写真左)。NYのジャズクラブ「Smoke」が運営する「Smoke Sessions Records」からのリリース。2019年2月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Peter Bernstein (g), Harold Mabern (p), John Webber (b), Jimmy Cobb (ds)。ピーター・バーンスタインのギターがフロントを務める。

演奏はアルバム全体から聴き取れる様に、上質なネオ・ハードバップな演奏である。リーダーのジミー・コブは、1929年生まれなので、今年で90歳。90歳のドラマーである。90歳でドラムを味良くバリバリに、ある時は爆発したかの様に、自由自在〜変幻自在に叩きまくる。印象的なドラミング。これが90歳とはとても思えない。
 

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バックのリズム・セクションが、実に良いメンバー。ピアノのメイバーンは1936年生まれ。惜しくも、つい先日、2019年9月19日に逝去した。83歳であった。このコブのリーダー作が2月7日の録音なので、メイバーンが亡くなる、僅か7ヶ月前になる。そんなことを全く感じさせない、多弁で切れ味が良い、メイバーン独特のフレーズが素晴らしい。

ギターのバーンスタインも大健闘。ゆったとしたテンポで、流麗で印象的なフレーズをキメまくる。メイバーンのピアノとバーンスタインの相性が良い。旋律楽器としてOK、リズム楽器としてもOK、ピアノとギターはその個性が似ている。下手をすれば、ギターとピアノの音って被ったりするのだが、この盤では皆無。ギターとピアノの相性の良さが際立つ。

ジョン・ウィーバーのベースも重心低く、堅実なプレイで演奏全体のベースラインをしっかりと押さえている。見事である。カルテットを構成する4人が4人とも演奏レベルは良好。音の響きは時にコード、時のモード。ハードバップの基本要素を上手く場面場面で使い分けていて、飽きが来ない。ネオ・ハードバップの好盤である。
 
 
 
東日本大震災から8年6ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。
 
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2019年9月16日 (月曜日)

ブラジリアン・クロスオーバー

マイルス・スクールの門下生のリーダー作をチョイスし、聴き直している。いずれの門下生もマイルス・スクールを卒業した後、何らかの形で、マイルスの「エレクトリック・ファンク」の影響を反映している。流石だなあ、と常々感心している訳だが、このパーカッション奏者は、マイルスの「Bitches Brew」から「Jack Johnson」などの重要作に参加し、ブラック・ファンクなビートの担い手の一人として重要な役割を果たした。

Airto Moreira『Identity』(写真左)。1975年の作品。パーソネルは、Airto Moreira (per, ds, vo), Herbie Hancock (key), Flora Purim (vo), David Amaro (g), Robertinho Silva (ds, per), Raul de Souza (tb), John Heard (b), John Williams (b), Louis Johnson (b), Ted Lo (org), Wayne Shorter (ss), Egberto Gismonti (g, key, arr)。プロデューサーはHerbie Hancock。

パーソネルを見渡せば、当時のクロスオーバー・ジャズの名うて達が大集合である。そんな「どんな志向の音でも大丈夫」なメンバーの中、ブラジル音楽の鬼才「Egberto Gismonti」の全面参加によって、ブラジル志向のブラジル人としての「アイデンティティ」を強く意識したアルバムに仕上がっている。クロスオーバー・ジャズの面目躍如である。
 
 
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パーカッションの奇才、アイアート・モレイラのリーダー作だけあって、多彩な「リズム・シャワー」が見事。ブラジルのリズムが蔓延していて、躍動的でポジティブな展開。過度のブラジル・サンバ臭さがこの盤の特徴。エグベルト・ジスモンチが大活躍で、ギター、アコピ/エレピ、シンセからウッド・フルートまで吹きこなしている。やはり、このジスモンチの全面参加がこのアルバムの個性を決定付けている。

ハンコック、ショーターもブラジル・クロスオーバーの雰囲気の中で、キッチリと「キメ」ているのはさすが。ほかの目立ったメンバーとしては、デヴィッド・アマロのギターが強烈、ハウル・ジ・ソウザのトロンボーンも好演。フローラ・プリムのボーカルも効果的。参加メンバーそれぞれが、実に良い音を出していて、どの曲も、ブラジリアン・クロスオーバーな音の饗宴です。

ビリンバウ(ブラジルの伝統的な打弦楽器)がいい音を出している。タイトルは「Identity=正体」。「俺って、やっぱ、ブラジル音楽がメインなんだよね〜」というアイアート・モレイラの声が聞こえてきそうな程の、ブラジリアン・フレーバー満載なクロスオーバー・ジャズ。ここまで、徹底してブラジリアン・フレーバーを全面に押しだしていると、もはやこのアルバム、「キワモノ」一歩手前の雰囲気です(笑)。でも好盤です。
 
 
 
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2019年8月21日 (水曜日)

4300番台の発掘リリース盤・1

ブルーノート・レーベルの4300番台は、リアルタイムで録音してリリースした盤と、以前に録音したが、何らかの理由でお蔵入りした音源を発掘リリースした盤とが混在している。理由は良く判らない。ただ、1960年代終盤、ロックとソウルが台頭し、音楽人気のメインになった頃。それでも、ハードバップやモード・ジャズは人気があったということなんだろうか。
 
ブルーノートの4300番台は、ブルーノートの創始者アルフレッド・ライオンが、ブルーノート・レーベルを大手レコード会社リバティーに売却した後、スタートしたシリーズ。当然、売上が大前提だったはず。リアルタイムでの録音は、当時の流行を反映しているので、そこそこ売れたとは思うのだが、発掘リリースの音は、ハードバップやモード・ジャズ。時代遅れではあるのだが、やはり売れ筋やったんやろな。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Roots & Herbs』(写真左)。BNの4347番。 1961年2月と5月の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Lee Morgan (tp), Wayne Shorter (ts), Bobby Timmons, Walter Davis, Jr. (p), Jymie Merritt (b)。フロント2管のクインテット構成。プロデューサーは、この頃はもちろん、ブルーノートの総帥、アルフレッド・ライオン。
 
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ウェイン・ショーターがテナー・サックス担当。ということは、この盤の音は「モード・ジャズ」。パーソネルを見渡すと、ジャズ・メッセンジャーズの音楽監督が、ベニー・ゴルソンから、ウェイン・ショーターに交代した頃。もしかしたら、まだ、モード・ジャズがジャズ・メッセンジャーズとして、熟れてなかったのかなあ、と思ったが、この盤の音を聴くと「それは違う」。
 
とっても魅力的な、とっても個性的なモード・ジャズが展開されている。しかも、どのモード・ジャズな演奏にもファンクネスが色濃く漂う。不思議な響き、ミステリアスな響きの、ファンキーがかったモード・ジャズ。この頃のショーターって、音楽監督になって覇気が溢れていたのだろう、自作のモード曲のミステリアス度、斬新度が非常に高い。一聴して直ぐに「モードやなあ」と判るほどの尖りぶり。
 
この『Roots & Herbs』、ブルーノート・レーベルのモード・ジャズ盤として「隠れ好盤」な一枚である。という非常に優れた内容でありながら、このジャケットはどうだろう。いや〜酷いジャケットですねえ。往年のブルーノート・レーベルの優れたデザインのジャケットはどこへ行ったのか。とにかく、ブルーノート4300番台のジャケット・デザインは押し並べて劣悪。これが実に残念。でも、この盤、モード・ジャズの好盤です。
 
 
 
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2019年8月10日 (土曜日)

こんなアルバムあったんや・118

こんなアルバムあったんや・118
 
ジャズは様々な奏法や表現方法があって、聴いていてとても楽しい。こんなんもジャズなんか、とか、これってジャズなん、っていうジャズもあって、いかにジャズって裾野の広い、表現の幅の広い音楽ジャンルだということが良く判る。しかし、どんな奏法も表現方法も、基本的に「即興演奏」がメイン。ということはジャズである。

Antonio Sanchez『Lines In the Sand』(写真左)。2018年5月の録音。現代を代表するドラマー、アントニオ・サンチェスの最新作品。レギュラー・バンドによる作品。ちなみにパーソネルは、Antonio Sanchez (ds, vo), John Escreet (p, rhodes, syn), Matt Brewer (b, el-b), Thana Alexa (vo, effects), Chase Baird( ts, EWI), Nathan Shram (viola), Elad Kabilio (cello)。

テーマは「現代アメリカに投げかける6編の楽曲」。現在のアメリカ合衆国への憂いと自らの強烈な思い。自らが筆をとったライナーノーツを読んでも、その「想い」が良く判る。このリーダーのサンチェスの「想い」を念頭に聴けば、この壮大な組曲の奏法や表現方法の意味することが理解出来る。
 
 
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メキシコからの移民者である彼の現在の米国大統領への怒りが、この壮大な組曲の中に表現されている。思わず、米国の公民権運動時代の、ベースのチャールズ・ミンガスや、ドラムのマックス・ローチ、サックスのジョン・コルトレーン等を思い出しました。ジャズは時として、政治に対する意志を表現したりする。サンチェスの今回の新盤もその流れのひとつ。

思想的な面を離れて演奏だけに着目してみると、リーダーのサンチェスは、壮大な組曲の中で、実に印象的な素晴らしいドラミングを披露しています。サンチェスの超絶技巧な意志の入ったドラミングを中心に、バンド全体に緊迫感のある空気を創り出して行く。壮大な交響曲の様な、壮大なプログレッシブ・ロックの様な先進的な演奏。

加えて、素晴らしいパフォーマンスを披露しているのが、サックスの「チェイス・ベアード」。説得力のある、骨太の重量のあるサックスが素晴らしい。ベアードは、マイケル・ブレッカーばりのEWIも操っていて、これがまた素晴らしい。この新盤、純粋にジャズとしても高く評価出来る好盤です。
 
 
 
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2019年7月12日 (金曜日)

この盤に詰まった「北欧の音」

正統なネオ・ハードバップやモード・ジャズを聴き続けていると、ふとECMレーベルの「ニュー・ジャズ」が聴きたくなる。もともと、19歳の頃、ジャズを本格的に聴いていこう、と決めた切っ掛けの1つが「ECMレーベルのアルバム」。それが原因なのか、ECMレーベルの音が無性に聴きたくなることがある。

Edward Vesala『Satu』(写真左)。1976年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Edward Vesala (ds), Tomasz Stańko (tp), Juhani Aaltonen (ss, ts, fl), Tomasz Szukalski (ss, ts), Knut Riisnæs (fl, ts), Palle Mikkelborg (flh, tp), Torbjørn Sunde (tb), Rolf Malm (b-cl), Terje Rypdal (g), Palle Danielsson (b)。総勢10名。いずれもECMレーベル御用達のジャズ・ミュージシャン達である。エンジニアはJan Erik Kongshaug。

リーダーはフィンランドのドラマー「エドワード・ヴェサラ」。この盤に詰まっている音は「北欧の音」。北欧の凛とした大地をイメージするような音世界。明らかに米国のジャズとは違う。ファンクネスは皆無、明確なオフビートも無い。緩急自在、変幻自在、無調のモード・ジャズ、そしてフリー・ジャズ。
 
 
Satu
 
 
リーダーだから当たり前と言えば当たり前なんだが、ヴェサラのドラムが良い。スケールが大きく、明確で力感のあるドラミング。ドラムの音が美しい。ドラムの表現力がダイナミックかつ繊細、そしてバリエーション豊か。連続して叩き出される緩急自在、変幻自在のドラミングは典雅ですらある。

そんなヴェサラの緩急自在でスリリングなドラムに、幽玄かつ伸びのあるエレギが絡み(これは聴けばリピダルだと直ぐに判る)、幻想的で感応的なフルートが絡む。ソリッドで堅実なベースが演奏の底をガッチリ支える。実にファンタスチックで柔軟なスピリチュアル・ジャズ。

大編成ならではの分厚い音ではあるが、耳に感じるのはクールな躍動感。民族音楽的なメロディや牧歌的な雰囲気も見え隠れして「北欧感」抜群。大音量でブワーッといくことは全く無く、繊細な音やきめ細かい音、印象的な音、官能的な音を絡ませ、組み合わせ、混ぜ合わせることで、独特の音世界を現出しています。好盤です。
 
 
 
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2019年7月11日 (木曜日)

スピリチュアルな新しい響き

新しいタイプのスピリチュアル・ジャズがほぼ定着したのでは無いかと思う。激情に走らず、穏やかでモーダルな「印象的フレーズ」を展開しながら、時にフリーに傾くが、それは演奏の中のアクセントとしてアレンジされ、音の響きとフレーズから「スピリチュアル」な面を増幅させ、聴く者に訴求する、という、新しいアプローチ。

僕はこの人がこの「新しいタイプのスピリチュアル・ジャズ」に手を染めるとは想像出来なかった。確かにこのピアニストの懐は深く、様々な表現の引き出しを持っている、とは思っていた。が、ここまでのアプローチをするとは思わなかった。そう言えば、メルドーって、マルチ・キーボード奏者としての才能も確かだったことを思い出した。

Brad Mehldau『Finding Gabriel』(写真左)。今年5月のリリース。ちなみにメインは、Brad Mehldau (ac-p, syn, key), Mark Guiliana (ds) の二人。そこに、Ambrose Akinmusire (tp), Michael Thomas (fl, as), Charles Pillow (ss, as), Sara Caswell (vln), Joel Frahm (ts), Kurt Elling (vo). Gabriel Kahane (vo), Becca Stevens (vo) などがゲスト参加。
 
 
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聖書からインスピレーションを得たというアルバムのタイトルからして「スピリチュアル・ジャズ」の香りがプンプン漂う。出てくる音は、現代のエレクトリック・ジャズ。ビートに乗った印象的なフレーズの洪水。冒頭の「The Garden」を聴いて、思わずぶっ飛ぶ。ファンクネスは皆無だが、かなりハイレベルなエレ・ジャズ。

そこに、疾走するビートに乗って、印象的な各種サックスの咆哮、フルートの響き、印象的に切れ込んでくるトランペット。ボイス、ボーカルも効果的かつ印象的な響きに貢献する。主役のメルドーはアコピは当然、OB-6 Polyphonic synthesizer、Moog Little Phatty synthesizeなど、印象的な音の出るシンセを駆使、Fender Rhodesも活用。とてもスピリチュアルで印象的なフレーズを連発する。マルチ・キーボード奏者の面目躍如。

ジュリアナのドラミングも新しい響き。マシン・ビートに血を通わせたような、人間的な温もりのある疾走感溢れるビートを叩き出し、撒き散らす。新しい響きの、新しいアプローチのエレクトリック・ジャズ。音の表現としては「新しいタイプのスピリチュアル・ジャズ」。まだ聴き始めたばかりの盤だが、これは「只者」ではない。暫く、折につけ、耳を傾けるつもり。新しいジャズのアプローチは腹に落ちるのに時間がかかる。
 
 
 
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2019年7月 2日 (火曜日)

Japanese Jazz Messengers

昨日に続いて、今日も日本人ジャズの新盤を。最近、日本人ジャズの新盤がコンスタントにリリースされている。最近は米国ジャズや欧州ジャズの新盤も比較的容易く入手することが出来る様になった。それでは日本人のジャズは日本人の手で創り出して、日本でいち早くリリースしようではないか、となったのかどうかは判らないが、内容の濃い、聴き応えのある新盤がコンスタントにリリースされている。
 
小林陽一 & J,Messengers『Niagara Shuffle』(写真左)。今年3月のリリース。バンド名を見ただけで、多くのジャズ者の方々は「Art Blakey & The Jazz Messengers」を想起する。この盤、それもそのはず。この盤はアート・ブレイキー生誕100周年記念盤。「日本のアート・ブレイキー」こと小林陽一によるアート・ブレイキーに捧げるトリビュート・アルバムである。
 
J,Messengersは「ジャパニーズ・ジャズ・メッセンジャーズ」の意。ちなみにパーソネルは、Yoichi Kobayashi (ds), Philip Harper (tp), Robin Eubanks (tb), Vincent Harring (as), Essiet Essiet (b), David Kikoski (p)。アルト・サックスのビンセント・ハーリング、トランペットのフィリップ・ハーパー、トロンボーンのロビン・ユーバンクスは実際にジャズ・メッセンジャーズのメンバーとして活躍したジャズメン達である。
 
 
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冒頭の「Niagara Shuffle」を聴けば思わずニンマリする。この盤は現代の「ネオ・ハードバップ」である。ハーパーのトランペットはまるで「リー・モーガン」。ハーリングのアルト・サックスはまるで「ベニー・ゴルソン」。キコスキーのピアノはまるで「ボビー・ティモンズ」。ジャズ・メッセンジャース全盛時代のメンバーの陰が、それぞれの楽器の音に見え隠れする。といって、皆、物真似では無い。しっかりとそれぞれの個性を発揮している前提でのニュアンスである。
 
といって、小林のドラミングは小林独特のもの。躍動感溢れ、ダイナミックかつ繊細なニュアンスは小林の唯一無二なもの。聴いていて「惚れ惚れ」するくらい、気持ち良いドラムの音。2曲目の「Along Came Betty」、そして「Moanin’ 」はメッセンジャーズの様でメッセンジャーズの音では無い。「ジャパニーズ・ジャズ・メッセンジャーズ」の音。これが良い感じなのだ。
 
3曲目の「Ping Pong」では、ユーバンクスのトロンボーンをフィーチャーして、3管フロント時代の「メッセンジャーズ」が再現される。ユーバンクスも大活躍。それでもこの盤のリーダーは日本人の小林陽一。ファンクネスは控えめで乾いている。そんな日本人によるファンキー・ジャズの雰囲気をしっかりと醸し出して、素晴らしい「ネオ・ハードバップ」の好盤に仕上がっている。見事。好盤である。
 
 
 
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2019年6月19日 (水曜日)

こんなアルバムあったんや・116

ジャズを聴き始めて40年以上になるが、それでもなかなか縁が無いアルバムというものが沢山ある。大学時代に「秘密の喫茶店」で聴かせて貰ってそれっきり、というアルバムが結構あって、それが今でもジャズのアルバム・コレクションのモチベーションになっている。あのアルバムをもう一度、自分のステレオ・セットで聴きたい。
 
そうやって日々リイシューされる昔のアルバムのチェックをしていると、たまに「おおっ、これはこれは」と嬉しくなるようなリイシューがあったりするから、アルバム・コレクションは楽しい。今回は「エルヴィン・ジョーンズ」。1970年代のエルヴィン・ジョーンズは精力的にリーダー作をリリースしていて、それぞれなかなかの内容なのだ。

Elvin Jones『On The Mountain』(写真左)。1975年の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Jan Hammer (p, el-p, syn), Gene Perla (b, el-b)。変わり種のジャズ・ピアニスト、ヤン・ハマーとのピアノ・トリオ編成。ハマーはアコピとエレピ、そしてシンセサイザーと、当時の最先端の出で立ちである。
 
 
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冒頭出てくるポリリズミックなドラミングは明らかに「エルヴィン・ジョーンズ」。1950年代からハードバップ、モード・ジャズ、フリー・ジャズなど、時代時代のジャズのトレンドを体験して来た、当時既に「レジェンド級」のドラマーである。それが、当時、新進気鋭のちょっと変わったピアニスト、ヤン・ハマーを共演者に選んで、トリオ演奏をするのだから、実に懐が深い。
 
そして、そのヤン・ハマーをしっかり支え、鼓舞し、グループ・サウンドをとりまとめている。エルヴィンをバックにして、ハマーは実にノビノビと演奏しているようだ。ハマーの個性、手癖がはっきりと出ていることからも、それが聴いて取れる。エレピとシンセの音がするので、安易なエレ・ジャズかと思うと怪我をする。
 
これは「コンテンポラリーな純ジャズ」である。1975年ってマイルスのアガルタの年。その時代に、エルヴィンはこんな先端を行く「コンテンポラリーな純ジャズ」をやっていた。大学時代に「秘密の喫茶店」で聴かせて貰った印象は正しかった。ヤン・ハマーのシンセのインタープレイは白眉なもの。エルヴィンのリーダーシップの賜である。
 
 
 
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2019年5月20日 (月曜日)

BN-LAの「ジャズ・ファンク」

4300番台とは違って、ブルーノート・レーベルのBN-LAシリーズは、新作アルバムの製作ポリシーに一貫性がある。1972年から1977年辺りまでのリリースは、クロスオーバー・ジャズからジャズ・ファンク、そして、フュージョン・ジャズまでのトレンドを網羅した、いわゆる「フュージョンの時代」を背景に、新作については一貫した製作ポリシーを貫いた。
 
新作については、と注釈をつけているのは、このBN-LAシリーズには、有名ジャズマンのベスト盤や、お蔵入り盤音源のリリースが入り乱れており、カタログとしてはかなり雑然としているのだ。それでもこのBN-LAシリーズ、新作については上質のクロスオーバー・ジャズあり、上質のジャズファンクあり。数は少ないが、フュージョン・ジャズな盤についても、なかなかの出来を誇る。
 
Alphonse Mouzon『Funky Snakefoot』(写真左)。1973年12月の録音。BN-LAの222番。 ファンクネス溢れる8ビートなクロスオーバー・ジャズが、限りなき疾走感のもとに展開される。口ずさんで踊れる圧倒的ジャズ・ファンク。音の雰囲気はうっすらとしたエコーを含め、明らかにブルーノート・レーベルの音で成り立っていて、この盤は「ブルーノート・レーベルが考えるジャズ・ファンク」といった内容。
 
 
Funky-snakefoot-alphonse-mouzon  
 
 
ちなみにパーソネルは、Alphonse Mouzon (ds, vo, syn, tack piano), Randy Brecker (tp), Barry Rogers (tb), Andy Gadsden (ts), Harry Whitaker (p, clavinet), Leon Pendarvis (el-p, org), Richie Resnicoff (g), Mark Harowitz (steel-g, banjo), Gary King (el-b), Ray Armando (conga, bongo), Angel Allende, Steve Berrios (perc)。ファンクな演奏やる分、リズム・セクションが充実している。楽器はエレクトリックが中心。
 
こってこてのファンクネスが実に芳しい。冒頭の「I've Given You My Love」で、ダンス・ジャズ・ファンクが幕を開け、ドラム・ブレイクが格好良い2曲目の「You Don't Know How Much I Love You」、シンセによるソフト&メロウな郷愁を帯びたメロディーが心地良い4曲目の「My Life Is So Blue」など、ソウルフルなジャズ・ファンクが炸裂、である。キレ味も良く、聴き応え十分である。
 
ウェザー・リポートの初代ドラマーであったアルフォンソ・ムザーン。 ウェザー・リポート後の、ブルーノート・レーベルからのソロ盤第2弾。ランディ・ブレッカーなどのフュージョン・ジャズの人気者達をバックに招聘した、とても素敵な「ジャズ・ファンク」盤。これがBN-LAシリーズの1つの製作ポリシー、いわゆる「ジャズ・ファンク」。聴き応え十分。聴いて楽しい「ジャズ・ファンク」。
 
 
 
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2019年4月28日 (日曜日)

意外とモード・ジャズの好盤です

ブルーノート・レーベルでのエルヴィン・ジョーンズとマッコイ・タイナーの録音を聴いていると、インパルス・レーベルに移籍したばかりの頃のコルトレーン・カルテットの音世界が一番良かったと思っていたのではないか。あの頃の演奏が、一番やりたかった演奏ではないのか、と思う。

Elvin Jones『The Ultimate』(写真左)。1968年9月6日の録音。ブルノートの4305番。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Joe Farrell (ts, ss, fl), Jimmy Garrison (b)。サックスがフロントのピアノレスの変則トリオ編成。サックスは、当時、新進気鋭のジョー・ファレルが担当している。

この盤ではピアノレスで録音している。この盤の演奏を聴けば判るが、この盤の演奏にピッタリ合ったピアノは、当時唯一、マッコイ・タイナーのピアノだけだったと思うのだが、タイナーを採用すると、明らかにコルトレーン・カルテットの音世界に酷似する可能性がある。であれば、ピアノをオミットしたのは正解だろう。
 
 
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エルヴィンはビートが効いた、ポリリズムの化身の様なドラミングが身上。ピアノは無くても、ベースのウォーキング・ラインさえあれば、十分にフロントの楽器を支え、鼓舞することが出来る。この盤に詰まった演奏は、一言でいうと「インパルス・レーベルに移籍したばかりの頃の、モーダルで自由度の高いコルトレーン・カルテット」の音である。上質のモード・ジャズ。
 
ギャリソンのベースは、モード・ジャズを支える上で、打って付けのウォーキング・ラインを弾き進める。明らかに「モーダル・コルトレーン」仕込みのベース・ライン。フロントのサックスに限りなく自由度を与えながら、しっかりと演奏の底をしっかりと支えている。聴けば、フロントのファレルがとても気持ち良いサックスを吹いている様に感じる。
 
当時31歳のファレルは若々しくエモーショナルなサックスを吹き上げる。限りなく自由奔放に吹きまくるファレル。コルトレーンをちょっとジェントルに、ちょっと柔和にした様なモーダルなサックスが、エルヴィンのポリリズムとギャリソンのゴリゴリベースに見守られながら、限りなく自由度高く乱舞する。モード・ジャズの好盤である。
 
 
 
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