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2024年4月12日 (金曜日)

清々しいブレイクのドラミングです。

ジョナサン・ブレイク(Johnathan Blake)。1976年7月生まれ。今年で48歳。現代ジャズにおけるファースト・コール・ドラマーの一人。ブレイクのドラムは伝統的なハードバップ〜モード・ジャズのドラミングの継承。テクニックが高い分、彼のドラミングには幅と余裕があるが、叩きだすビートはポジティヴで「攻めのドラミング」である。

Johnathan Blake『Passage』(写真左)。2023年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Johnathan Blake (ds, cymbals), Immanuel Wilkins (as), Joel Ross (vibes), David Virelles (p,key,Rhodes), Dezron Douglas (b)。

ドラマーのジョナサン・ブレイクがリーダー、アルト・サックスとヴァイブがフロントのクインテット編成。出て来る音は、正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズ。ストイックでクールで硬派なパフォーマンスが展開される。

テンションを張り巡らして、切れ味の良いハイ・テクニックな演奏が爽快。正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズに、ブレイクのドラミングが映えに映える。

さすがブルーノート・レコードでのリリース。パーソネルが「ふるっている」。それぞれが優秀な力のあるジャズマンばかりが集結。そんな精鋭部隊が、現代ジャズの最先端を行く「ネオ・ハードバップ & ネオ・モード」をやる。
 

Johnathan-blakepassage

 
テクニック素晴らしく迫力満点、伝統的なフォービートからフリー寄りの攻撃的なサウンドまで、これまでの硬派でストイックなジャズのトレンド&スタイルそれぞれに適応する。しかも、内容充実、聴きどころ満載なのだから、もうお腹いっぱい(笑)。

そんな伝統的なフォービートからフリー寄りの攻撃的なサウンドまで、全編に渡って、ジョナサン・ブレイクのドラミングが演奏の先頭に立ち、演奏をリードする。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、この盤でのブレイクのドラミングを聴いていると至極納得。全編に渡って、曲調&曲想によって、変幻自在、硬軟自在、緩急自在にドラミングの内容を変えつつ、バンド・サウンドを牽引するブレイクは見事。

奇をてらわない、バリバリ正統派なネオ・ハードバップ & ネオ・モードなジャズに真正面から取り組むブレイクのドラミングは清々しい。伝統的なジャズなので、過去のジャズと比較されることが多いと思うのだが、そんな心配は無用。現代ジャズの最先端の音とドラミングがこの盤に詰まっている。決して、過去を振り返っていないところが、これまた清々しい。好盤です。
 
 

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2024年4月11日 (木曜日)

ブライアン・ブレイドの初リーダー作

現代のファースト・コール・ドラマーの一人、アントニオ・サンチェスのリーダー作を聴いていて、他のファースト・コール・ドラマーのリーダー作を聴き直してみたくなった。まずは「ブライアン・ブレイド(Brian Blade)」。1970年生まれだから、今年54歳。ジャズ界では引っ張りだこのドラマーの一人である。

ブレイドのドラムは、多彩かつ大胆かつ繊細。非常に味のあるドラミングを披露してくれる。聴いていて惚れ惚れするくらい耳に心地良い、小粋なドラミング。シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出すのが最大の特徴。このブレイドのシンバル・ワークが秀逸。このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミングを披露する。

『Brian Blade Fellowship』(写真左)。1998年の作品。ブルーノート・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Brian Blade (ds), Melvin Butler (sax), Jon Cowherd (ac-p, el-p), Dave Easley (pedal steel g), Daniel Lanois (mando-g), Jeff Parker (ac-g, el-g), Christopher Thomas (ac-b), Myron Walden (as)。ブライアン・ブレイドの初リーダー作になる。

ブライアン・ブレイド・フェローシップ(以降、BBF)、1997年、ブライアン・ブレイドをリーダーとして結成されたバンド。楽器構成がユニークで、ペダル・スチール・ギターやマンドギター、ウーリッツァー・エレクトロニック・ピアノなどのジャズには珍しいエレ楽器も入れての8人編成。言い換えると「ブライアン・ブレイド・オクテット」である。
 

Brian-blade-fellowship
 

出てくる音は、コンテンポラリー・ジャズ、いわゆる「ニュー・ジャズ」である。即興演奏をメインに、それぞれの楽器がモーダルにフリーにスピリチュアルにインタープレイを展開しつつ、フュージョン、フォーク、ゴスペルな音要素をも包含して、21世紀に通じる「ニュー・ジャズ」を展開。様々な表現を反映して楽曲がバリエーション豊かに収録されている。

そんなバリエーション豊かな内容の楽曲の中で、ブライアン・ブレイドのドラミングは白眉の出来。「シンバルをパルシヴに小刻みに刻んで、ビートの波を叩き出し、このシンバル・ワークをベースに、硬軟自在、緩急自在、変幻自在のドラミング」というブレイドのドラミングの個性がこの盤の中に溢れている。

ブレイドの多彩なドラミングが推進エンジンとなって、様々なニュアンスの即興演奏&インタープレイが展開される。どの楽器も音は好調。4ビート・ジャズとは全く正反対の、エモーショナルでクールな「ニュー・ジャズ」志向のパフォーマンスは、このBBFの最大の個性。エレ楽器を包含しているが、このバンドの音はあくまで「純ジャズ」の範疇に軸足がしっかりある。

ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このブレイドの初リーダー作はその例に漏れない。ブレイドのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。21世紀の「ニュー・ジャズ」としても聴き応え十分。好盤です。
 
 

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2024年4月10日 (水曜日)

サンチェスの初リーダー作を聴く

昨日、アントニオ・サンチェス(Antonio Sánchez)の『Three Times Three』(2014年)を聴いて、彼は現代ジャズの先端を行くドラマーの一人だということを再認識。そういえば、まだ、当ブログで、彼の初リーダー作を記事にしていないことに気がついた。と言うことで、早急に彼の初リーダー作を聴き直してみた。

Antonio Sánchez 『Migration』(写真左)。2007年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Antonio Sanchez (ds), David Sanchez, Chris Potter (sax), Scott Colley (b), 特別ゲストとして、Pat Metheny (g), Chick Corea (p)。2002年にパット・メセニー・グループに招聘されて以来、メセニーとの共演の傍での初リーダー作。そのメセニーとチック・コリアが特別ゲストとして招かれている。

主役のサンチェスのドラミングの個性とスキルがはっきりと聴き取れる。スネアを中心にスネア・タムとをマシンガンの如く、高速で切れ味よく叩きまくる。どこか、トニー・ウイリアムスを彷彿とさせるところがあるのだが、トニーほどデジタルチックな叩きっぷりではない。サンチェスの高速ドラミングはウェーヴを生み出すような、抑揚のある叩きっぷり。このドラミングはとても個性的。以前のジャズ・ドラマーには無い個性である。
 

Antonio-sanchez-migration

 
演奏全体の雰囲気は、上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モード。サックスの二人は一聴すれば、何となくコルトレーン風に聴こえるところはあるが、コルトレーンより、フレーズがシャープで活度が高く、爽快感があってアドリブのイマージネーションが豊か。二人ともしっかりとオリジナリティーを確保している。二人のサックス奏者は「コルトレーンのそっくりさん」では無い。

この二人のサックスのバックでのドラミングと、特別ゲストのチックのバック、メセニーのバック、それぞれでのドラミングは明らかに異なる。二人のサックス、チックのピアノ、メセニーのギター、それぞれの個性が活きるよう、それぞれのフロント楽器の推進力となるよう、サンチェスは、サンチェスの個性そのままに、ドラミングの内容を変えている。これは見事。サンチェスのドラミング・スキルの高さがよく判る。

上質のネオ・ハードバップ & ネオ・モードの演奏の中で、サンチェスのドラミングの個性をはっきり浮き上がらせ、特別ゲスト二人と共演することで、サンチェスのドラミング・スキルの高さを証明する。ジャズの世界で「初リーダー作」は、そのリーダーのジャズマンの個性が明確に出る、というが、このサンチェスの初リーダー作はその好例の一つ。サンチェスのドラミングを理解する上で、必聴のリーダー作だと言える。
 
 

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2024年4月 9日 (火曜日)

ドラマー、サンチェスの力量

現代の一流ドラマーの一人、アントニオ・サンチェス(Antonio Sanchez)。1971年11月1日生まれ。今年で53歳、バリバリの中堅ドラマー。2002年の作品『Speaking of Now』にて、パット・メセニー・グループ(PMG)に参加。初リーダー作は、2007年の『Migration』。これまで9枚のリーダー作をリリース。現在では、押しも押されぬ、現代のジャズ・ドラマーの代表格の一人になっている。

Antonio Sanchez 『Three Times Three』(写真左)。2013年10-12月の録音。トリオというフォーマットにこだわって制作した企画盤。CD2枚組の大作で、3種類のトリオ編成は、1)スタンダードなピアノ・トリオ、2)ギター入りのピアノレス・トリオ、3)テナー入りのピアノレス・トリオ の3種類。

スタンダードなピアノ・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), Matt Brewer (b), Brad Mehldau (p)。担当する楽曲は、1枚目の1曲目「Nar-this」、2曲目「Constellations」、3曲目「Big Dream」。

ギター入りのピアノレス・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), Christian McBride (b), John Scofield (g)。担当する楽曲は、2枚目の1曲目「Fall」、2曲目「Nook And Crannies」、3曲目「Rooney And Vinski」。

テナー入りのピアノレス・トリオのパーソネルは、Antonio Sánchez (ds), John Patitucci (b), Joe Lovano (ts)。担当する楽曲は、2枚目の4曲目「Leviathan」、5曲目「Firenze」、6曲目「Firenze」。
 

Antonio-sanchezthree-times-three

 
スタンダードなピアノ・トリオのピアノ担当は、ブラッド・メルドー。ベースがマット・ブルーワー。メルドーのピアノとサンチェスのドラム、さすが、超一流の演奏家同士、素晴らしいインタープレイを聴かせてくれる。そこに一回り若いブルーワーのベースが入るのだが、このブルーワーのベースが現代のネオ・ハードバップ、ネオ・モードを牽引するかの如き、柔軟で新しい感覚のベースで、インタープレイの底をガッチリと支えている。

ギター入りのピアノレス・トリオのギター担当は、ジョン・スコフィールド。ピアノレスが効いていて、ジョンスコのギターとサンチェスのドラムとが、ダイレクトにインタープレイの交歓をするところがスリリング。そこにダイレクトに絡むハイ・テクニックで骨太なマクブライドのベースが、これまたスリリング。

テナー入りのピアノレス・トリオのテナー担当は、ジョー・ロバーノ。こちらもピアノレスが効いていて、ロバーノが自由奔放にテナーを吹き上げる。そこに効果的にリズム&ビートを絡ませるサンチェスのドラミングは見事。そんな柔軟自在なインタープレイを整え前へ進める推進役のパティトゥッチのベー氏がこれまた見事。

3種類のトリオ演奏の中で、明らかにドラミングの内容を変えて、それぞれのトリオでの楽器、共演者の個性に対して、一番、効果的でバンド・メンバーそれぞれの個性が一番はえるドラミングをするサンチェスは素晴らしいの一言。

演奏内容と共演メンバーを活かすも殺すもドラマー次第、というが、このサンチェスの企画盤を聴いていて思わず納得。この企画盤、ドラマー、サンチェスの力量をしっかり確認できる好盤だと思います。ジャズ・ドラマーのリーダー作として白眉の出来です。
 
 

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2024年3月10日 (日曜日)

成熟&極上の Fourplay 『4』

フュージョン・ジャズの世界では、伝説的な人気グループが多くある。パッと頭に浮かんだだけでも、「スタッフ」「ジェントル・ソウツ」「クルセイダーズ」「ブレッカー・ブラザーズ」「ステップス・アヘッド」「スパイロ・ジャイラ」「イエロージャケッツ」など、個性溢れるバカテク集団がずらり。そして、僕が愛してやまないのが「フォープレイ」。

Fourplay『4』(写真左)。1998年の作品。ちなみにパーソネルは、Bob James (p, key, program), Larry Carlton (g), Nathan East (b, vo), Harvey Mason (ds)。ギター担当がリー・リトナーから、ラリー・カールトンの代わった最初のアルバム。フォープレイとしては、通算4枚目のスタジオ録音盤。

この「フォープレイ」は、フュージョン・シーンのレジェンド級の名うてのトップ・プレイヤー4人が集結したスーパー・グループ。管楽器は無く、ギター、キーボード、ベース、ドラムの「ギター・カルテット」。

フロントはギター、キーボードが担当する。メンバー4人とも、実績十分、貫禄十分、人気十分、テクニック十分。そんな4人がガッチリとグループを組んで奏でる、極上のソフト&メロウなフュージョン・ミュージック。

この盤は、ギターがリトナーからカールトンに代わった最初の盤。カールトンのギターがソウルフルでブルージーな分、大人のフュージョンというイメージがより強くなっている。カールトンのギターの個性に合わせているのか、全体的には、ミドルからスローなテンポがメイン。これが、極上のソフト&メロウでブルージーなグルーヴを醸し出している。

このカールトンのギターが良い。バンド・サウンドの中にしっかり溶け込むカールトンのギター。カールトン入りのフォープレイの音の雰囲気をしっかりと決定づけている。
 

Fourplay4

 
ボブ・ジェームスのキーボードが良い。カールトンに寄り添う様に鼓舞する様にソフト&メロウに、時に切れ味よくシャープに乱舞する。ボブ・ジェームスはアコピにエレピに八面六臂の大活躍。マイルドでメロウなキーボード・ワークだが、押さえるべきところは、しっかりとメリハリあるフレーズで押さえているところはさすが。

ネイザン・イーストのエレベが良い。ゴリっと鋼質な粘りのあるベース音。ソフト&メロウな雰囲気の演奏全体を引き締めている。特に、演奏のビートの底をしっかりと支えているベース・ワークは極上の職人芸。

そして、ハービー・メイソンのドラムが良い。バンド全体のリズム&ビートの要。演奏全体の調子、雰囲気を柔軟にコントロールする。抑制の効いた、変幻自在、硬軟自在なドラミングは「大人のドラミング」。叩きまくるだけがドラムでは無い。味のある小粋なドラミングはメイソンならでは、である。

とりわけ、3曲目のマーヴィン・ゲイの名曲「Sexual Healing」は、R&Bっぽい、黒いソウルフルなサウンドが特徴的。カールトンのギターの個性にぴったりの雰囲気で、仄かにファンクネス漂うボブ・ジェームスのキーボードがこの曲のアレンジにバッチリ合う。この演奏はカールトンの参加ならではの選曲&演奏だろう。

全体に淡い霞がかかった様な、淡く広がる様な、奥行きのあるサウンド。それでいて、リズム&ビートはしっかりと効いていて、ブルージーなグルーヴ感が濃厚、ゆったりとしたオフビートが「立って」いる。

よりマイルドな、よりソフト&メロウな「成熟した大人のフュージョン」な作品に仕上がっている。フュージョン・ジャズの最高峰に位置する、極上のパフォーマンス。好盤です。
 
 

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2024年3月 7日 (木曜日)

ダブル・ドラムの優秀な企画盤

ジャズ・ドラムというのは、意外と「個性の塊」である。フロント管を交えたバンド演奏の中で、リズム&ビートを供給する役割のドラム。リズム&ビートを供給するだけ、と思いがちなので、ドラムには個性は必要無い、と言われそうなんだが、それは「違う」。

ドラミングの個性によって、演奏の雰囲気は変わるし、演奏全体のトーンによって、ドラミングの質は変わる。ジャズにおいては、ドラミングは演奏の雰囲気やトーンを決定づける重要な役割を担っている。ゆえに、ドラミングのテクニックは高度なものが要求されるし、そのドラマーならではの個性や特徴は当然、要求される。

Elvin Jones and Philly Joe Jones『Together!』(写真左)。1961年2月2日の録音。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), Philly Joe Jones (ds), Blue Mitchell (tp), Curtis Fuller (tb), Hank Mobley (ts), Wynton Kelly (p), Paul Chambers (b)。

ハードバップど真ん中なバップ・ドラムの第一人者、フィリー・ジョー・ジョーンズ(フィリージョー)と、新しい響きを宿した・バップ・ドラムの第一人者、エルヴィン・ジョーンズのダブル・ドラム、ダブル・リーダーの企画盤。

フロントに、ミッチェルのトランペット、フラーのトロンボーン、モブレーのテナーの3管を配して、ダブル・ドラムの重厚な布陣。個性溢れるジャズ・ドラマーの代表する2人がリズム&ビートを担うので、フロント3管くらいの重厚なアンサンブルで十分にバランスが取れる。
 

Elvin-jones-and-philly-joe-jonestogether  

 
二人のドラマーが主役なんだが、この二人の個性溢れるドラミングが素晴らしい。典型的なハードバップ・ドラムな、ダイナミックで切れ味の良いフィリージョー、少しラフで印象的なオフビートで今までに無い叩きっぷりのエルヴィン、どちらのドラミングも素晴らしいの一言。これぞ、ハードバップなドラミングという個性を遺憾無く発揮していて、聴き応えがある。

これだけ優れたドラミングに鼓舞されるのである。フロント3管は好調に吹きまくる。ミッチェルもフラーも良いが、特に、モブレーが好調。このセッションでのモブレーのテナーは「当たり」である。覇気溢れるエネルギッシュな吹奏で聴き応え満点。

加えて、これだけ優れたドラミングが様々なニュアンスのリズム&ビートを繰り出すのである。ピアノ、ベースのリズム隊も健闘に次ぐ健闘。ハッピー・スインガーなケリーのピアノは、翳りを封印し、ファンクネス溢れる明快なタッチの弾き回しでドラムに調子を合わせ、ポルチェンのしなやかでソリッドなベースが、リズム・セクションの「底」をガッチリ支える。

演奏全体の雰囲気は、明確に「絵に描いた様なハードバップ」。ドラムが優れていると、ちゃんとこう言った優れたハードバップな演奏が展開されるという好例。ダブル・ドラムの効果も十分出て、重厚なアンサンブルは聴いていて気持ちがスッとする。良い企画盤です。ジャケ・デザインはイマイチだけど(笑)。
 
 

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2024年3月 6日 (水曜日)

好盤、Elvin Jones 『Elvin!』

僕は長年、この盤がエルヴィン・ジョーンズの初リーダー作だと思っていた。この盤より先に『Keepin' Up with the Joneses』で、The Jones Brothers名義で、エルヴィンが共同リーダーとして、初リーダー作をリリースしていたのを知ったのは、21世紀に入ってから。

ただし、この盤はエルヴィンの単独リーダー名義で、エルヴィンのドラムが全面に出ていて、エルヴィンのドラミングが堪能できる内容なので、こちらが初リーダー作としても良いくらいだ。

Elvin Jones『Elvin!』(写真左)。1961年7月11日, 1961年12月27日, 1962年1月3日の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、 Thad Jones (cor), Frank Wess (fl), Frank Foster (ts), Hank Jones (p), Art Davis (b), Elvin Jones (ds)。

サドのコルネット、ウエスのフルート、フォスターのテナーのフロント3管、ハンクのピアノ、デイヴィスのベース、エルヴィンのドラムのリズム隊、総勢6名のセクステット編成。サド、ハンク、エルヴィンの「ジョーンズ3兄弟」揃い踏み。この盤はエルヴィンがリーダー。ジョーンズ3兄弟プラス3の重厚な6人編成。録音日は3つに跨った「寄せ集め」盤の様に見える。

が、セクステットのメンバーは変わらないので、3セッションに跨った選曲だが、演奏内容に違和感は無いし、トーンはしっかり合っている。この辺は、リヴァーサイド・レーベルのプロデュースの優れたところだろう。
 

Elvin-joneselvin  

 
冒頭「Lady Luck」の前奏から、エルヴィンのドラミングが炸裂する。豪放磊落、ちょっとラフでダイナミックでメリハリのバッチリ効いた、重心の低いオフビートなドラミング。

まだ後年のポリリズミックなドラミングでは無いが、独特のスイング感&グルーヴ感が心地良い。そんな魅力あるエルヴィンのドラミングがアルバム全編に渡って堪能できる。

アート・デイヴィスの軽快でスインギーなベースがピッタリと寄り添って、エルヴィン独特のスイング感&グルーヴ感を増幅する。

そんなエルヴィンのドラミングに乗って、フォスターが豊かなニュアンスのテナーを、ウエスがエモーショナルで流麗なフルートを、サドが朗々とブリリアントなコルネットを吹き上げる。

小気味良くスインぎーな「Lady Luck」、フロントがオリエンタルな雰囲気を紡ぎ出す「Shadowland」、エルヴィンのブラシが小粋な「Pretty Brown」など、好演奏が目白押し。

パーソネルもしっかり選定されたエルヴィンの単独リーダー名義のアルバム。エルヴィンの独特のスイング感&グルーヴ感に乗った、ハードバップの成熟した演奏がとても心地良い。好盤です。
 
 

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2024年3月 5日 (火曜日)

エルヴィンの初リーダー作です

ジャズ・ドラマーの中では、アート・ブレイキー、エルヴィン・ジョーンズ、スティーヴ・ガッドの3人がお気に入り。3人のディスコグラフィーをまとめ直していて、まだまだアルバム評をブログ記事にしていないリーダー作があることに改めて気がついた。どうも、ドラム、ギターは後回しになってしまう傾向にあって、反省、反省。

The Jones Brothers『Keepin' Up with the Joneses』(写真左)。1958年3月24日の録音。ちなみにパーソネルは、Thad Jones (flh, tp), Hank Jones (p). Eddie Jones (b), Elvin Jones (ds)。サド、ハンク、エルヴィンのジョーンズ3兄弟に、姓が「Jones」繋がりで、エディ・ジョーンズが入ったカルテット編成。実はこの盤の存在を全く失念していて、今回、初聴きになる。

エルヴィン・ジョーンズのディスコグラフィーをまとめ直していて、エルヴィンの初リーダー作は『Elvin!』(1961・Riverside)だと思っていたら、この盤があった。といっても、The Jones Brothers名義で、エルヴィンはそのユニットの一部、ではあるが、リーダー作といえば、立派なリーダー作である。

「The Jones Brothers」とは、姓が「Jones」のメンバーの集まり。その内訳は、トラペットのサド、ピアノのハンク、ドラムのエルヴィンの3人は実の兄弟。そして、ベースのエディは他のメンバーと血のつながりは無く、姓が同じというだけのメンバー。それでも、4人とも姓が「Jones」なので「The Jones Brothers」としている。

収録曲全7曲、全曲ゆったりとしたミッド・テンポの演奏がメインで、4ビートの心地良いスイング感が良い感じ。この4ビートの心地良いスイング感を醸し出しているのが、エルヴィンのドラミング。この盤では、エルヴィンはブラシを使ってドラミングで、サドのトランペットやハンクのピアノのソロの邪魔にならず、引き立て役に回りながら、サドやハンクのソロをしっかり支え鼓舞している。
 

The-jones-brotherskeepin-up-with-the-jon

 
エルヴィンの硬軟自在、緩急自在、メリハリの効いた抑揚が絶妙なドラミングはこの初リーダー作で確立されている。特に、この盤ではブラシを使ったドラミングで、繊細なニュアンスも付加していて、見事にモダンなドラミングを叩き出しているのは立派。

そんなエルヴィンの優れたドラミングをバックに、サドはトランペットを朗々とブリリアントに吹き上げる。もともとサドはミッド・テンポからスロー・テンポのフレーズの吹奏に優れている。この盤では、朗々とブリリアントな音色で、音も大きく溌剌と、その実力を遺憾無く発揮している。

ハンクのピアノも絶好調。よほどエルヴィンのドラミングとの相性が良いのだろう、洒脱で流麗バップなピアノを氣持ち良さそうにグイグイ弾きまくる。2曲目のタイトル曲「Keepin' up With the Joneses」では、小粋でファンキーなオルガンを披露している。これがまた味があって良い感じ。

全曲ゆったりとしたミッド・テンポの演奏がメインで、速弾き、速吹きなバカテクな展開は無いが、歩くスピードの4ビートの心地良いスイング感に乗った、サドのトランペット、ハンクのピアノは聴き味抜群。そして、そのリズム&ビートを叩き出しキープするエルヴィンのドラミングはこれまた見事。

何の変哲もない、シンプルで上質のハードバップ演奏の数々ですが、とにかく味があって小粋。丁々発止としたインタープレイとは全く無縁な、バップでモダンなミッド・テンポの演奏。グループのアンサンブルに、メンバー個々のソロに、意外と聴き応えがある好盤です。
 
 

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2024年2月29日 (木曜日)

縦ノリのグルーヴ 『Gaddabout』

久々にフュージョン・ジャズ盤をチョイス、である。

年配のジャズ者ベテランの方々からは、概ね「ジャズの徒花」扱いされるフュージョン・ジャズであるが、クロスオーバー・ジャズも含めて、内容のある、聴き応えのある傑作、好盤は多々ある。ジャズの裾野は広く、ジャズは柔軟。フュージョン・ジャズの中にも「良い音楽」は沢山ある。

Steve Gadd『Gaddabout』(写真左)。1984年7月、NY「A&R Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、Steve Gadd (ds, vo), Lew Soloff (tp), George Young (sax), Ronnie Cuber (bs), Jeff Mironov (g), Richard Tee (key, syn), Neil Jason (b), David Matthews (arr)。

日本のフュージョン・ジャズ・レーベルの「Electric Bird」から、1984年のリリース。「Electric Bird」は日本のジャズ・レーベルながら、フュージョン系の好盤を多数リリースしている。今回の『Gaddabout』は、そんな中の一枚。

パーソネルを見渡すと、バリサクにロニー・キューバー、キーボードにリチャード・ティー、そして、ドラムにリーダーのスティーヴ・ガッド。後に、ガッドが1986年に結成する「The Gadd Gang」のメンバー5人中、3人がこのセッションに参加している。そして、この盤に詰まっている「音」がファンキー&ソウルフル、縦ノリのグルーヴが、まさに「The Gadd Gang」のプロトタイプ。
 

Steve-gaddgaddabout

 
トランペットにルー・ソロフ、サックスにジョージ・ヤングは、マンハッタン・ジャズ・クインテット(MJQ)のフロント2管。アレンジに、MJQのリーダー&ピアノ担当のデヴィッド・マシューズなので、その縁での召集だったのだろうか。この2管がキューバーのバリサクと組んで、見事なフロント3管を形成している。

このフロント3管のアンサンブル、ユニゾン&ハーモニー、そして、ソロ・パフォーマンスが見事で訴求力抜群。この盤での一番の聴きもの。ガッドの縦乗りグルーヴに鼓舞されて、ファンキー&ソウルフルなフレーズを、ダイナミックに骨太に吹き上げている。これがとても良い。

ジェフ・ミロノフのギターがユニーク。職人ワザが光るカッティング。ソウルフルな泣きのフレーズ。渋いバッキングで、バンド全体にファンキーな風味を色濃くする。ニール・ジェイソンのジャズ・ファンクなエレベもファンクネス濃厚。重心の低いベース・ラインが演奏全体の「底」をガッチリ支えている。

「gadabout=ブラブラ歩き」に引っかけたタイトルも「粋」。気ままに鼻歌交じりに楽しくドラムを叩きまくるガッドが素敵。ガッド独特の縦乗りのグルーヴが、ファンキー&ソウルフルな曲想にバッチリ。

フュージョン・ジャズの好盤の一枚です。こんなに内容のある、素敵なフュージョン・ジャズ盤が、日本のレーベル「Electric Bird」からリリースされたことを嬉しく思います。「Electric Bird」はなかなか隅におけないフュージョン・ジャズのレーベルですね。
 
 

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2024年2月14日 (水曜日)

ショーターの「白鳥の歌」

2023年3月2日、ウェイン・ショーター(Wayne Shorter)は、89歳で逝去した。ジャズを聴き始めてから、リアルタイムでずっと聴き続けてきたジャズマンが逝去するのは単純に辛い。

ショーターのサックスのベースは「モード」。ショーターのモード奏法は、マイルスのモードの個性とコルトレーンのモードの個性を極端に拡張〜融合した、当時のモード奏法の究極形の様な吹き回し。

確実にステップアップしたモード解釈で、音の「スペースと間」を活かし、音の広がりを活かしたモーダルな展開は、明らかにショーターならではの音世界。確実にショーターは、ジャズ・サックスの偉大なスタイリストの一人だったし、後進に与える影響は大きかった。

Wayne Shorter, Terri Lyne Carrington, Esperanza Spalding, and Leo Genovese『Live at the Detroit Jazz Festival』(写真左)。2017年9月3日、デトロイト国際ジャズフェスティバルでのライヴ録音。2017年6月に逝去した、ピアニストで作曲家のジェリ・アレンの追悼のパフォーマンスでもあった。

ちなみにパーソネルは、Wayne Shorter (sax), Leo Genovese (p, key), Esperanza Spalding (b, vo), Terri Lyne Carrington (ds)。ショーターのサックスがフロント1管の「ワンホーン・カルテット」。

ショーターがテリ・リン・キャリントンやエスペランサ・スポルディング、レオ・ジェノヴェーゼと共演、という「一期一会」のライヴ音源。プロデュースは、テリ・リン・キャリントンが担当している。2022年9月にアルバムとしてリリース。今のところ、2023年に亡くなる前のショーターにとって最後のレコーディングでもあった。
 

Live-at-the-detroit-jazz-festival

 
しかし、このカルテットの編成は凄い。こういう組み合わせもあったのか、と唸った。ショーターのモーダルなサックスは、その個性と特徴をよく理解していないと共演できない類のものだと思うのだが、この「一期一会」のカルテットは、まるでパーマネント・カルテットの様な、一体感溢れる、濃密なつながりの中で、モーダルなインタープレイを展開している。

キャリントンのドラム、スポルディングのベース、ジェノヴェーぜのピアノ、このリズム・セクションがショーターの個性と特徴に精通し、ショーターの音楽性にリスペクトの念を強く抱いていることが、とても良く判る。特に、ジェノヴェーぜのピアノが凄い。変幻自在、緩急自在、硬軟自在なピアノでショーターの音世界に追従する。

フロントのショーターもそれを感じて、実に楽しそうにサックスを吹き上げている。時々、顔を出す「深刻なフレーズ」や「宇宙人との交信フレーズ」が無い。このライヴではショーターは地球人ジャズ・ミュージシャンとのみ、交信している。変に捻れたところが無く、ポジティヴで健康的なショーターのフレーズの数々が印象深い。

スポルディングが参加していることもあって、ボーカル曲も沢山入っている。しかし、そのボーカルも「ショーター調」がしっかり踏まえられていて、「ショーター節」を踏襲した唄い回しが実に微笑ましい。ネオ・ハードバップ&ネオ・モードの最先端の演奏であるが、このエスペランサのボーカルは決して邪魔にならない。どころか、ショーターのモード・ジャズに新しい彩りを添えている。

このショーターのワンホーン・カルテットでの演奏がもっと聴きたかったなあ。この4人でのカルテットの演奏はこのライヴの時だけ。真に「一期一会」のパフォーマンスを捉えた素晴らしいライヴ音源である。

この後、ほどなくショーターは引退し、2023年3月、鬼籍に入る。
 
 

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