2023年2月10日 (金曜日)

ベツレヘムのブレイキー好盤

ベツレヘム・レーベルのアルバムを聴き直している。ベツレヘムにはボーカルのアルバムが多いのだが、ハードバップ系のアルバムにも優れた内容のアルバムが多くある。ベツレヘムのアルバムについては、あまりジャズ盤紹介本やジャズ雑誌の特集記事に上がることが無いので、いわゆる「隠れ名盤」化しているものがほとんど。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Hard Drive』(写真左)。1957年10月 9,11日の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Bill Hardman (tp), Johnny Griffin (ts), Junior Mance (p), Sam Dockery (p, track 3のみ), Spanky DeBrest (b)。

1950年代のジャズ・メッセンジャーズの「停滞の時代」のアルバムである。翌年、ブルーノート・レーベルに移って、大名盤『Moanin'』で再起〜躍進を遂げるわけだが、それまでは、ホレス・シルバーと袂を分かって以降、既存のジャズマンでメンバーを編成し、メンバーも流動的で、決定打に欠ける時代が続いた。

しかし、内容的にはそんなに悪い訳では無かった。既存のジャズマンのチョイスがまずまずで、ハードバップとして、意外と整った内容のアルバムを量産している。ただ、何かが足りない。決定打に欠ける。そんな「停滞の時代」だった。
 

Art-blakey-the-jazz-messengershard-drive

 
この『Hard Drive』もそんなアルバムの1枚。内容的には意外と充実している。まず、テナーのグリフィンが良い。バリバリ吹きまくっている。全編に渡って溌剌としたグリフィンが実に良い。トランペットのハードマンも健闘はしている。グリフィンに煽られているが、何とか、バリバリ吹きまくっている。

ジュニア・マンスがピアノを担当している。ファンキー・ピアノのマンスのドライブ感溢れる弾き回しが、この盤の「ハードバップらしさ」を増幅している。ファンクネスを湛えつつ跳ねるようなタッチでバリバリ弾きまくる。マンスのピアノが意外と良い雰囲気を醸し出している。

当然、ブレイキー御大もバッシバッシ叩きまくる。ブレイキー独特のアクセントで叩きまくるファンキー・ドラム。ただ、代名詞の「ナイアガラ・ロール」や、カカカカカッという個性的なリムショットは、まだ表舞台に出てきていない。そんなところが「何かが足りない」と感じる所以だろう。

2曲目の「Right Down Front」などは、ゴスペル風のファンキー・チューンで、翌年以降、流行となる「ファンキー・ジャズ」の先駆け的な演奏が素敵だ。他のハードバップ・チューンも粒が揃っていて、なかなかのもの。だけど、どこか、決定打に欠ける雰囲気が漂う。それでも、内容的には「ハードバップな優秀盤」で、これはこれで聴き応えは十分ある。ベツレヘムのジャズ・メッセンジャーズは聴く価値あり、だ。
 
 

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2023年1月19日 (木曜日)

禅問答の様なピアノ・トリオ

ピーター・アースキン(Peter Erskine)と言えば、伝説のエレジャズ・バンド「Weather Report」の黄金期のドラマーなので、フュージョン・ジャズ畑のドラマーという先入観があるんだが、どうして、硬派なメインストリーム系の純ジャズで叩かせても、相当の腕前を持っていることが判る。

Peter Erskine featuring John Taylor and Palle Danielsson『Juni』(写真左)。1997年7月、オスロの「Rainbow Studio」での録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Peter Erskine (ds), John Taylor (p), Palle Danielsson (b)。ドラマーのピーター・アースキンがリーダーのピアノ・トリオ編成。

ピアノにジョン・テイラーが座る。ジョン・テイラーのピアノは昔から好きで、当ブログではあまり記事にしないが、ちょくちょくとその名を思い出しては聴いている「お気に入りのピアニスト」の一人である。そこにスウェーデン出身のベーシスト、パレ・ダニエルソンがいる。英国のピアニストと北欧のベーシスト、そして、アースキンは米国のドラマー。録音はECM。ということで、出てくる音は、ECM印の欧州ジャズ・トリオな音。
 

Peter-erskinefeaturing-john-taylorand-pa

 
水墨画を見る様なトリオ演奏である。「侘び寂び」を忍ばせつつ、硬質でクリスタルで深いエコーを伴って、幽玄な拡がりをもって、力強く漂う楽器の音。ビートをしっかり効かせた、限りなく自由度の高いモーダルな展開。禅問答の様な、集中してお互いの音に耳を傾けながら、打てば響く響いては打つ、一体感溢れる高度なインタープレイ。現代音楽に通じる前衛的なタッチでフリーの如く迫る即興演奏。

独特の響きを湛えたピアノ・トリオ演奏である。北欧ジャズ風ではあるが、北欧ジャズほど流麗でリリカルでは無い。ジョン・テイラーのタッチはどこかバップ、そして、前衛風。アースキンのドラムは柔軟度が高く、ポリリズミックなドラミングは変幻自在であり硬軟自在。ダニエルソンのベースは、しっかりと安定したビートを効かせて、バンド全体の自由度の高いインプロを破綻させることは無い。

「禅問答の様なトリオ」と形容されるこのピアノ・トリオ、その特徴と個性がこの盤に溢れている。現代ジャズにおける、ニュー・ジャズな響きを宿したピアノ・トリオとして「ピカイチ」の出来だろう。あまり話題に上らないピアノ・トリオだが、ECMで4枚のアルバムをリリースしていて、どれもが秀逸な出来。もっと注目されてもいいピアノ・トリオのパフォーマンスである。
 
 

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2023年1月12日 (木曜日)

明るくライトなメッセンジャーズ

昨日「柔道着のブレイキー(Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』)」について語ったついでに、Art Blakey and The Jazz Messengers(ジャズ・メッセンジャーズ)盤の落ち穂拾いを再開。

ブレイキーはジャズ・メッセンジャーズも含めて、とにかく多作のジャズ・レジェンド。しかも、凡作駄作の類は殆ど無い。全てのリーダー作を聴いて、その感想を記事にするにはかなりの労力と時間がかかる。故に、まだまだ全てのリーダー作を網羅するには至っていない。

ブレイキーは、ブルーノート・レーベルのお抱えドラマー的ポジションにいたので、ブルーノートにリーダー作が集中している。が、他のジャズ・レーベル、それも傍系のマイナーなレーベルにもリーダー作を残していたりして、全リーダー作の音源を押さえるのに骨が折れる。

Art Blakey and The Jazz Messengers『Soul Finger』(写真左)。1965年5月12, 13日、NYでの録音。Limelightレーベル(Mercury Records傘下の傍系レーベル)からのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard, Lee Morgan (tp), Gary Bartz (as), Lucky Thompson (ss), John Hicks (p), Victor Sproles (b)。いやはや、曲者揃いのパーソネル。

パーソネルだけ見ると、どんな音が出てくるのか、想像するのが困難。まず、トランペットが2本、それも、ハバードとモーガンである。前へ出すぎるハバードに頭にきて喧嘩しないのだろうか、心配になる(笑)。
 

Soul-finger

 
ベテランの曲者リード奏者トンプソンがソプラノを吹き、新進気鋭のゲイリー・バーツがアルト・サックスを吹く。新旧まぜこぜになって、ユニゾン&ハーモニーは大丈夫なんだろうか。ベースのスプロールズは1950年代半ばから1960年代まで活動したマイナーなベーシスト。リズム・セクションは大丈夫なのか。

で、出てくる音を聴くと、この盤も例の「柔道着のブレイキー(Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』」と同傾向の音の志向で、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音の雰囲気を踏襲した、ファンキーで小粋で、この盤ではとてもリラックスした展開が印象的。全体的な音のトーンは「明るくライトでポップ」。

ソフト&メロウなユニゾン&ハーモニー、流麗で優しいアドリブ展開。曲者揃いのパーソネルなのに、これだけソフト&メロウなファンキー・ジャズに仕上がってのが不思議。さすが、ブレイキー御大のリーダーシップの成せる技だろう。曲者揃いのパーソネルでありながら、キッチリと「ジャズ・メッセンジャーズの音」に仕上げている。

バンド演奏全体で、リフ、ユニゾン&ハーモニーをビシッと決めて、ブレイキーならではのドラム・ロールが、ソフト&メロウなファンキー・ジャズをビシッと締める。参加メンバーが大きく代わっても、ジャズ・メッセンジャーズの音志向は変わらない。
 
 

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2023年1月11日 (水曜日)

柔道着を着たブレイキー御大

ブルーノート・レーベルやECMレーベル、スティープルチェイス・レーベルのお陰か、ジャズ盤のジャケット・デザインは優れている、とされる向きがある。が、よくよく見直してみると、優れたデザインが約半分、残りの半分の3割がどっちつかずの平凡なデザイン、そして、後の2割はどうしてこうなるのか理解に苦しむ、どうみても「トホホ」なデザインである。

Art Blakey & The Jazz Messengers『Golden Boy』(写真左)。1963年の録音。ちなみにパーソネルは、Art Blakey (ds), Freddie Hubbard, Lee Morgan (tp), Curtis Fuller (tb), Charles Davis (bs), Wayne Shorter (ts), James Spaulding (as), Cedar Walton (p), Reggie Workman (b), Julius Watkins (French horn), Bill Barber (tuba)。フロント6管+リズム・セクションの9人編成(ノネット)がメイン。

パーソネルを見渡すと、この11人編成の大所帯が面白い楽器構成になっている。フロント管がトランペット2本、トロンボーン1本、バリトン、テナー、アルトのサックスで計3本、ジャズ・メッセンジャーズとしては珍しいのだが、ここにフレンチホルンとチューバが加わる。誰のアイデアだったのだろうか。

リズム・セクションは、ブレイキー御大のドラムに、ピアノ、ベースのオーソドックスなもの。アレンジに、テナーのショーター、トロンボーンのフラー、ピアノのウォルトンの3人がそれぞれ分担して腕を振るっている。
 

Art-blakey-the-jazz-messengersgolden-boy

 
ブロードウェイのミュージカル『Golden Boy』での楽曲を元に、Colpixというレーベルからリリースされた企画盤。ミュージカルからの楽曲のジャズ化なので、曲の粒は揃っていてアルバム全体の構成は充実している。フロント6管+リズム・セクションの9人編成+リズム・セクションにフレンチ・ホルン、チューバが加わるので、しっかりとしたアレンジが施されている様子が良く判る。

フロント管のユニゾン&ハーモニーは、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音の雰囲気を踏襲した、ファンキーで小粋で迫力と覇気溢れるもの。3管フロントにトランペット、アルト・サックス、バリトン・サックスをそれぞれ1本、さらにフレンチ・ホルンとチューバを加えているので、音の彩りが華やかになり、迫力と音圧が増していて、豊かで豪華な音作りが良い感じ。

加えて、ハバード、モーガン、フラー、スポルディングのソロイストのパフォーマンスが好調で聴き応えがある。リズム・セクションも優れたバッキングでフロント管を支えている。我が国では馴染みのないミュージカルからの楽曲のジャズ化なので、馴染みが全く無いが、アルバム全体、当時の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音志向をしっかり引き継いでいて、内容的に充実している。

ただし、である。このジャケットはなあ(笑)。柔道着を着こなしたブレイキー御大が腕組みをして仁王立ちのアップ。これだけ見たら、このアルバム、ジャズのアルバムとは思わないでしょうねえ(笑)。でも内容は良い感じのファンキー・ジャズであり、当時充実の3管フロントのジャズ・メッセンジャーズの音が堪らない好盤。このジャケに怯むこと無く聴いて欲しい好盤です。
 
 

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2022年12月11日 (日曜日)

"キング・オブ・カルテット" である

コロナ禍でどうなることかと思ったが、現代ジャズはコロナ禍に負けること無く、その活動と深化を継続している。コロナ禍当初は、スタジオ録音が出来なかったり、ライヴ演奏が出来なかったりで、ジャズのみならず、音楽活動というものが潰えてしまうのでは無いか、と不安になったが、何とか厳しい時期を乗り越えた様だ。

その現代ジャズであるが、深化は脈々と続いている。21世紀に入って、ネオ・ハードバップの成熟、クールで静的なスピリチュアル・ジャズ、21世紀版フュージョン&スムース・ジャズの充実など、1950年年代〜1960年代のジャズに回帰すること無く、モダン・ジャズの「クラシック化」は進んでいない。

Redman Mehldau McBride Blade『LongGone』(写真左)。2019年9月10–12日の録音。ちなみにパーソネルは、Joshua Redman (ts, ss), Brad Mehldau (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)。現代ジャズのおける「若きレジェンド」が集結した、レッドマンのサックスが1管のワンホーン・カルテットの編成。

2020年リリースの前作『RoundAgain』は強烈だった(2020年10月8日のブログ参照)。モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏あり、アーシーでちょっとゴスペルチックでファンキーな演奏あり、コルトレーン・ライクなスピリチュアルな演奏あり、現代のネオ・ハードバップをより洗練し、より深化させた演奏内容となっていた。振り返って見ると、2020年までのモダン・ジャズの総括的な内容だった気がしている。

今回のアルバムは、その先を行くものと認識した。落ち着いた、クールで静的なネオ・ハードバップ。しかし、録音年月日を見てみると、前作『RoundAgain』と同一録音ではないか。そして、ラストに「2007年のSFJAZZの25周年記念のライブ演奏」から1曲追加して、今回の新作となっている。う〜ん、前作と同じ録音なのか〜。
 

Redman-mehldau-mcbride-bladelonggone

 
今回の新作と前作と基本的な雰囲気が全く違う。前作はエネルギッシュに、2020年までのモダン・ジャズの総括し、今回の新作は、これからのモダン・ジャズをクールに静的に落ち着いた雰囲気で披露する。

しかも、今回はラストのライヴ音源以外、全6曲がジョシュア・レッドマンのオリジナルで固められている。そういう意味では、このカルテット、ジョシュアがリーダー的立場なんだろうな。

この新作を聴いて、痛く感心したのが、モーダルで自由度と柔軟度の高い演奏がメインなんだが、フレーズや音の響きの新鮮さ。決して、過去のジャズの焼き直しでは無い、「どこかで聴いたことがある」感が無い、鮮烈で機微に富むモーダルなフレーズがこれでもか、と出てくる。

前作でもそう感じたが、この新作では更に、フレーズや音の響きの新鮮さが増している。さすが、現代ジャズにおける「キング・オブ・カルテット」である。

アルバム全体の雰囲気が「落ち着いた、クールで静的」な演奏がメインだったので、ちょっと地味ではないのか、と感じたのは最初だけ。聴き込めば聴きこむほど、このカルテットの演奏は滋味深い。

このカルテットの演奏、しばらく、続けて欲しいなあ。聴く度に、現代のモダン・ジャズの到達点のひとつを確認出来る。現代のモダン・ジャズ、現代のネオ・ハードバップの最高レベルの演奏のひとつである。
 
 

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2022年12月 3日 (土曜日)

ジュリアナの傑作カルテット盤

ドラマーがリーダーのアルバムは、その意図が分かりやすいものが多い。ドラマーは「リズム・セクション」のリズム&ビート供給の要の楽器。演奏するジャズのスタイルや演奏のトレンドの全てに対応出来るのが「ドラム」。そんなドラマーがリーダーを務めるリーダー作は、リーダーのドラマーが演奏で表現したい「志向」がメインになることが多い。

Mark Guiliana『The Sound of Listening』(写真左)。2022年3月、NYのブルックリンでの録音。ちなみにパーソネルは、Mark Guiliana (ds; syn on 3, 5, 7; drum programming on 7; Perc on 10), Chris Morrissey (b), Shai Maestro (p; Mellotron on 1, 5, 7; Ampliceleste on 1, 5, 7; Fender Rhodes on 2), Jason Rigby (ts; b-cl on 1, 3, 5, 7; cl on 1, 5; fl on 5)。

現代最高峰のドラマー&作曲家のマーク・ジュリアナ(Mark Guiliana)のリーダー作。ジェイソン・リグビーのサックスがフロント1管のカルテット編成。メンバー全員がマルチ・インストルメンタル。この盤の多彩は表現力は、この「マルチ・インスト」の成せる技である。現代ジャズの最新の表現技術を投入した、現代の新しいジャズの響きで満たされた音世界。

リーダーでドラマーのジュリアナは、本職のドラム以外に、シンセやドラム・プログラミングもこなす。ピアノ担当のシャイ・マエストロは、ピアノ以外のメロトロンやローズを弾きこなす。サックス担当のジェイソン・リグビーは、テナー・サックス以外に、バスクラやクラリネットも吹きこなす。
 

Mark-guilianathe-sound-of-listening

 
静的で流麗なスピリチュアアルなニュー・ジャズ志向の音世界がこの盤を支配する。基本はアコースティックな演奏だが、効果的にエレクトロニクスの手法を取り込んで、表現の幅を大きく拡げている。

ユーロ・ビートの要素も感じるし、アンビエント・ミュージックの要素も感じる。ECMっぽいニュー・ジャズな雰囲気も良い。しかし、リズム&ビートはジャジー。演奏全体に適度なテンションが張り巡らされて、緩んだところは微塵も無い。現代の静的で印象的なスピリチュアル・ジャズの好例。

静的で印象的でスピリチュアルな音世界の中で、やはり「要」となるのは、ジュリアナのドラミング。そして、クリス・モリッシーのベースが、演奏の音の底をしっかりと支えている。シャイ・マエストロのキーボードは、旋律楽器、リズム楽器の両方で八面六臂の大活躍。そんな充実しまくったリズム・セクションをバックに、ジェイソン・リグビーのリード楽器が心地良く吹き上げられていく。

「ドラミングのエキサイティングなニュースタイルの最前線に立っている」と評されたドラマー。デヴィッド・ボウイのアルバム『ブラックスター(★)』への参加でも知られる新世代ドラマー。そんなジュリアナの、アコースティックとエレクトロニクスの要素が効果的に統合された、静的で印象的なスピリチュアル・ジャズ。聴き応え十分です。
 
 

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2022年11月16日 (水曜日)

ジャズ・ファンクなヘインズ盤

ドラマーがリーダーのジャズ盤を聴き直している。最近、ロイ・ヘインズのリーダー作を何作か聴き直した訳だが、なかなかの内容の優秀盤が多い。その時代ごとのジャズの演奏志向、トレンドを捉え、メンバーもなかなか考えた人選で、コンテンポラリーな純ジャズを溌剌とやっている。

ただし、何故か、ロイ・ヘインズは我が国では人気がイマイチ。ロイ・ヘインズのリーダー作については、『We Three』『Out of the Afternoon』ばかりが紹介されて、他のリーダー作については、まともな評論はあまり見たことが無い。ハードバップ初期から、21世紀に入るまで、ずっと第一線を走ってきたのドラマーなのに、この過小評価な扱いは未だに納得しかねる。

Roy Haynes『Hip Ensemble』(写真左)。1971年の録音、作品。ちなみにパーソネルは、Roy Haynes (ds, timpani), George Adams (ts, fl), Marvin Peterson (tp), Mervin Bronson (el-b), Elwood Johnson (bongo, tambourine), Lawrence Killian (conga), Carl Schroeder (p), Teruo Nakamura (b)。

全体の音志向は、当時流行っていた「ジャズ・ファンク+クロスオーバー」なジャズ。純ジャズ畑のロイ・ヘインズが、ジャズ・ファンクに手を染めている訳で、ど〜なるの、と思って聴き進めたら、意外と思いっ切り雰囲気のあるジャズ・ファンクがバッチリ決まっているから面白い。
 

Roy-hayneship-ensemble

 
パーソネルを見渡すと、若き日のハンニバル・マーヴィン・ピーターソンのトランペット、ジョージ・アダムスのテナー・サックスがフロントに控えていて、こりゃ〜、思いっ切りスピリチュアルに傾くのか、と思って聴いていたら、ピーターソンのトランペットは、アグレッシブにハイノートでグイグイ攻め、アタムスのテナーは骨太で豪快。しっかりと従来のジャズの枠に填まって熱演している。
 
グルーヴ感溢れるファンキーなヘインズのドラミングに、ベースはエレベ、ボンゴやコンガのパーカッションが、そのグルーヴ感を増幅して、グルーヴ感濃厚なジャズ・ファンクが展開されている。ヘインズ中心に叩き出すビートが意外にアーバンでクールなので、下世話な「どファンク」になっていないところが、この盤の小粋なところ。

メインストリームな純ジャズからは外れる、ジャズ・ファンクな演奏なんだが、純ジャズ感は濃厚。特に、疾走するハンニバルのトランペットとアダムスのテナーは聴き応え満点。バックのリズム&ビートがジャズ・ファンクなのに、そんなことお構いなしに、ストレート・アヘッドなアドリブを吹きまくる。
 
 

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2022年11月 7日 (月曜日)

傑作ライヴ盤『8:30』を聴き直す

このライヴ盤は売れた。内容的にも充実している。ウェザー・リポートのメンバーが、やっと、テナー・サックスのワンホーンに、キーボード+ベース+ドラムのリズム・セクションの4人について、最適のメンバーが顔を揃え、最適なメンバーで固定された記念すべきライヴ盤である。

Weather Report『8:30』(写真)。1979年のリリース。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (ts,ss), Jaco Pastorius (el-b), Peter Erskine (ds)。 ほとんどの曲がザヴィヌル作であり、大ヒットアルバム『Heavy Weather』の人気曲をメインに、他のアルバムから、同傾向の音志向の人気曲が選曲されている。WRが一番、フュージョン・ジャズに接近したライヴ盤である。

このライヴ盤は売れた。選曲は『Heavy Weather』と他のアルバムの人気曲が選ばれており、ポップでキャッチャーな楽曲ばかりが並んでいる。そりゃ〜当時は売れただろうな、と思う。しかし、今の耳で聴き直せば、ジャズとしての即興演奏の妙は、ジャコのベース・ソロ曲と、ショーターのサックス・ソロ曲だけに留まっていて、他の楽曲は既定路線に乗った、金太郎飴の様な聴き馴れたアレンジで統一されている。

前作の『Mr,Gone』からの選曲は全く無く、如何に前作がセールス的に「問題作」だったかが窺い知れる。が、このライヴ盤で、このライヴ盤『8:30』をジャズの範疇に留めているのは、ジャコのベースとアースキンのドラムである。このライブ盤の全編に渡って、この二人のリズム&ビートは半端ない。それまでのWRの人気曲に躍動感を与え、ジャジーな自由度を拡げている。どの曲もオリジナルよりもテンポが速く、ベースラインもドラミングも複雑極まりない。
 

Wr-830

 
加えて、何時になく、ショーターがサックスを吹きまくっている。吹きまくり、とはこのこと。しかも、誰にも真似できない、ショーターならではの宇宙人的に捻れたフレーズが満載。どの収録曲もザヴィヌルの楽曲で、ショーターの音志向である「エスニック&ミステリアス」な音は希薄でありながら、である。恐らく、ジャコとアースキンのリズム隊の「賜物」だろうと思う。ジャコとアースキンが、ショーターの「ジャズ魂」に火を付けたのだ。

一方、ザヴィヌルのキーボードは安全運転、というか、聴き馴れたフレーズばかりで、可も無く不可も無く。まるでスタジオ録音の演奏を聴いているようだ。せっかくのライブ音源なのに、もっと自由度を拡げて、もっと魅力的なフレーズを弾きまくって欲しかった。

なお、LP時代のD面のスタジオ録音については、発売当時、1980年代のジャズを予言するものとして、持てはやされたものだが、今の耳で聴くと、完成度は「道半ば」、ブラッシュアップ中の未完な雰囲気が漂っていて、僕はあまり評価していない。これをLP時代のLP2枚目のD面に入れるのなら、他の曲のライヴ音源を追加して欲しかった。今となっては、このLP時代のD面の存在意義が良く判らなくなっている。

ショーターとジャコ、アースキン。この3人の卓越したテクニックの下、ジャジーで自由度の高い、変幻自在な演奏が、このライヴ盤を「ジャズ」の範疇に留め、未だ、エレ・ジャズの傑作ライヴ盤の1枚としての評価を維持しているのだ。
 
 

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2022年10月26日 (水曜日)

80年代のモード・ジャズの創造

ジャズ・ドラマーがリーダーのアルバムを色々聴き直しているのだが、今回はエルヴィン・ジョーンズに戻る。

エルヴィンは1960年代、ジョン・コルトレーンの伝説のカルテットに在籍したこともあって、エルヴィン単独になっても「コルトレーン・ミュージックの継承者」とか、「コルトレーン・ジャズのスピリッツの伝承者」とか、特に我が国のジャズ評論家の方たちが、こぞって、そんな「レッテル」を張るので、エルヴィン独自のソロ・リーダー作はかなり誤解されながら、その評価が世の中のジャズ者の方々に伝わっていたのだと思う。

Elvin Jones-McCoy Tyner Quintet『Love And Peace』(写真左)。1982年4月13&14日、Rudy Van Gelder Studioでの録音。Trioレコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Elvin Jones (ds), McCoy Tyner (p), Richard Davis (b), Pharoah Sanders (ts), Jean-Paul Bourelly (g)。ファラオ・サンダースのテナーとジャン=ポール・ブレリーのギターがフロントのクインテット編成。
 
リーダーのエルヴィンがドラム、マッコイ・タイナーがピアノ、サックスにファラオ・サンダース、そして、タイトルに「Love」が入っていて、これが「A Love Supreme(至上の愛)」を想起するらしく、この盤「すわ、コルトレーン・ミュージックの再現」と思われる傾向がとても強い。

当時のLP評やCDリイシュー時の評を見ると「コルトレーン・ジャズのスピリットを80年代によみがえらせた」とか「コルトレーンのスピリッツを踏襲した傑作」とか、安直にコルトレーンと結びつけて終わり、という、少しイージーな評価ばかりである。
 

Elvin-jonesmccoy-tyner-quintetlove-and-p

 
しかし、この盤をよくよく聴いてみると、コルトレーン・ミュージックとの共通点は「モード・ジャズである」ということだけだと思う。フレーズの組立てとか、ユニゾン&ハーモニーとか、リズム&ビートとか、コルトレーンの時代とは異なる、より深化したモード・ジャズが展開されていて、コルトレーン・ジャズを踏襲しているところは殆ど見当たらない。

ウィントン・マルサリス一派が標榜した様な「1960年代のモード・ジャズの難度を飛躍的に上げて再現する」様なアプローチでは無く、あくまで、1960〜70年代のモード・ジャズをより深化させた、1980年代のモード・ジャズを具現化するアプローチを志向していると僕は思う。

サンダースのサックスだって、音がストレートなところが共通点だけで、コルトレーンとは似ても似つかぬブロウに終始していると思う。リーダーのエルヴィンだって、ピアノのタイナーだって、ベースのデイヴィスだって、1960年代のコルトレーンの伝説カルテットのリズム・セクションとは異なる、より深化した、モーダルなリズム&ビートを供給している。

この盤、日本のレーベルである「トリオ・レコード」の制作なのが余計に誤解を生むのだろうが、トリオ・レコードの名誉の為に言うと、この盤、決して、コルトレーン・ミュージックの焼き直しでも無ければ、コルトレーン・ジャズの再現でも無い。

トリオ・レコードは、エルヴィン以下のクインテットのメンバーに、1980年代のモード・ジャズの創造を要求している様に感じる。そして、クインテットはそれにしっかり応えている。ちゃんと聴けば、この盤、1980年代のモード・ジャズの傑作の1枚だと思う。
 
 

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2022年10月25日 (火曜日)

ウエストコースト・ジャズの頂点

シェリー・マンは、米国ウエストコースト・ジャズの代表的ドラマーであったと同時に、ウエストコースト・サウンドの体現者でもあった。ドラマーとしても超一流だが、バンド・サウンドのプロデュース&コントロールについても優れた実績を残している。シェリー・マンのリーダー作を聴くと、米国ウェストコースト・ジャズの音が、たちどころに判る、と言っても良い。

Shelly Manne and His Men『Vol.4・Swinging Sounds』(写真左)。1956年1ー2月の録音。ちなみにパーソネルは、Shelly Manne (ds), Stu Williamson (tp, valve-tb), Charlie Mariano (as), Russ Freeman (p), Leroy Vinnegar (b)。ウィリアムソンのトランペット&トロンボーン、マリアーノのアルト・サックスのフロント2管、リーダーのマン、ピアノのフリーマン、ベースのヴィネガーのリズム・セクションのクインテット編成。

収録全曲、とてもウエストコースト・ジャズらしいアレンジが施されている。フロント2管のユニゾン&ハーモニーの響きだけで、この盤はウエストコースト・ジャズの盤だということが判るくらいの、典型的なウエストコースト・ジャズのアレンジ。この盤を聴くだけで、ウエストコースト・ジャズのアレンジの特徴と個性が把握できる。
 

Shelly-manne-and-his-menvol4swinging-sou

 
バド・パウエルのビ・バップの名曲「Un Poco Loco」まで、ウエストコースト・ジャズのアレンジで染められて、フロント2管のユニゾン&ハーモニーで「Un Poco Loco」のテーマを奏でると、「Un Poco Loco」の持つ素晴らしいフレーズがグッと浮き出てくる。「聴かせる」、さすが「聴いて楽しむ」、ウエストコースト・ジャズの面目躍如である。

演奏メンバーのパフォーマンスもそれぞれ好調で聴き応えがある。そんな中でも、やはり、リーダーのマンのドラミングが傑出している。相当に高いテクニックと「歌心」を感じさせるドラミングは、ジャズの歴代のドラマーの中でも「指折り」だろう。特に、この盤でのマンのドラミングは素晴らしい。

このマンのリーダー作を聴くと、録音年の1958年、ウエストコースト・ジャズは、更なる進化の「のりしろ」が見当たらないくらい、完全に成熟していたことが良く判る。ウエストコースト・ジャズのアーティステックな頂点を捉えた名盤だろう。
 
 

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