2020年7月10日 (金曜日)

ウィルバー・ハーデン知ってる?

今日も雨模様の空。各地で大雨による被害が続出している。心配である。ここ千葉県北西部地方は雨に関してはまだそんなに激しく降ってはいない。しかし、蒸し暑い。曇り空が続いているので、気温は30度手前で止まるのだが、湿度はMax。これだけ湿度が高いとちょっと動くだけで汗がジンワリ滲み出て、実に不快である。

Wilbur Harden『The King and I』(写真左)。1958年9月、NYのVan Gelder Studioでの録音。サヴォイ・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wilbur Harden (flh), Tommy Flanagan (p), George Duvivier (b), G. T. Hogan (ds)。リーダーのウィルバー・ハーデンのフリューゲルホーン1管のワンホーン・カルテットである。名盤請負ピアニスト、トミフラが参加。ベースにデュビビエ、ドラムにホーガンと渋いリズム隊。

リーダーのウィルバー・ハーデンは、1924年12月、アラバマ州生まれのジャズ・トランペット、フリューゲルホルン奏者。1969年に45歳で鬼籍に入っている。1958年後半に深刻な病気にかかったらしく、リーダー作は、1958年の元気な頃に出した4枚のみ。サイドマンとしても1957〜58年に集中しており、寡作のトランペッターである。
 
 
The-king-and-i
 
 
ハーデンのトランペットは聴き心地がとても良い。愛らしくてウォームな音色。決して派手派手しい立ち回りはしない。流麗というよりは「朗々」の方が言い得て妙。そんな「暖かで澄んでいて朗々とした」、この盤ではフリューゲルホーンで、有名ミュージカルの「王様と私」の、魅力的な楽曲の数々を吹き上げていく。楽曲の可憐な旋律と相まって、とても耳に心地良いハーデンのフリューゲルホーンである。

伴奏を務める、トミー・フラガナンこと「トミフラ」。名盤請負人と呼ばれるが、確かに、リーダー作のリーダーの楽器の音と個性に合わせた、個性が引き立つような弾き回しは「素晴らしい」の一言。本来は「バップ」なピアニストなんだが、ここでは、ハーデンのフリューゲルホーンの雰囲気にあった、可憐でウォームな、それでいて、そこはかとなくビートを効かせた弾き回しを披露している。このトミフラのピアノの弾き回し、聴きものである。

ホーガンの可憐で気品溢れるドラミング。デュビビエのベースが演奏の「底」そしっかりと押さえていて見事。ホーガンの愛らしくてウォームなフリューゲルホーンも良し。トミフラ率いるリズム・セクションも良し。アルバム全体、沁みる演奏のオンパレード。この盤によって、寡作の「ウィルバー・ハーデン」の名前が印象に残る。ハーデンにとって、この盤があって良かった。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・『You’re Only Lonely』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.06.28 更新。

  ・Zep『永遠の詩 (狂熱のライヴ)』

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  ・太田裕美『手作りの画集』

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2020年5月 7日 (木曜日)

ファーマーの個性が良く判る

トランペットの好盤の聴き直しをしていて、僕のジャズ・トランペッターのアイドルって誰なんだろう、と振り返ってみた。まず、絶対的存在として「マイルス・デイヴィス」。次いで「リー・モーガン」。その次が「クリフォード・ブラウン」。そして、何故か、ジャズを聴き始めた頃から好きなトランペッターが「アート・ファーマー」。

Art Farmer『Art』(写真左)。1960年9月の録音。Argoレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (tp), Tommy Flanagan (p), Tommy Williams (b), Albert Heath (ds)。ファーマーのトランペットがフロント1管のワンホーン・カルテット構成。ファーマーのトランペットの個性を心ゆくまで感じることが出来る、格好の演奏フォーマットである。

アート・ファーマーのエッジが円やかで、ブリリアントなトランペットの音色が良い。耳をつんざくようなソリッドな音では無い、音のエッジが丸くて耳に優しいが、しっかりと芯のある音。ブラスをブルブルと響かせる様な、心地良い黄金色の金属音が良い。

流麗なテクニックが良い。テクニックをひけらかすのでは無い、唄うが如く印象的なフレーズを表現する為に、自らの持つ高いレベルのテクニックを利用する。その奥ゆかしさが良い。
 
 
Art-art-farmer
  
 
冒頭、リズム・セクションの演奏が長々と続くが心配はいらない。スッと入ってくるファーマーのトランペットの音色が絶品なのだ。この盤の録音バランスがそもそもトランペット重視。リズム・セクションは奥に引っ込んだ感じ。ファーマーのトランペットだけがグッと前面に出てくる。ファーマーのリリカルなトランペットの特徴がスピーカーから飛び出してくる。良い音だ。

録音バランスのせいで、なかなか詳細が聴き取り難いバックのリズム・セクションだが、耳を傾ければ、なかなか洒落て粋なパフォーマンスであることに気付く。トミー・ウィリアムスの明るく、グイグイとスイングするベース。他に録音が少ない、無名に近いベーシストですが、好演。この盤では大活躍です。

ピアノのトミフラは「名盤請負人」の異名を持つ、バッキング上手な職人ピアノ。ファーマーのトランペットの雰囲気に合ったピアノのフレーズを弾きこなしていて流麗。ドラムのアルバート・ヒースは、破綻、乱れ、誇張の無い、端正なリズムを綿々と供給する。

最後にジャケットが良い。トランペットを持って椅子に座るファーマー。ファーマーのエッジが円やかで、ブリリアントなトランペットの音色が聴こえてきそうな、柔らかで和やかな色合い。印象派の肖像画を見るような、味のあるジャケット。

この盤、ジャケットから内容まで、全てが素晴らしい、ハードバップなトランペットの好盤である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.29更新。

  ・『Christopher Cross』 1979

 ★ まだまだロックキッズ       2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」   2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年4月24日 (金曜日)

豪放磊落なモンテローズ盤

以前、ジャズ盤蒐集の中で「幻の名盤」というものがあった。内容的に充実度合いが高く「名盤」の類なのだが、LPでリリースされた枚数があまりに少なく、入手したくても出来ない盤のことを「幻の名盤」と呼んだ。老舗ジャズ雑誌が特集記事や別冊を出したりして、「幻の名盤」を探し当てることがブームになった時期もある。

JR Monterose『The Message』(写真左)。1959年11月24日の録音。ちなみにパーソネルは、JR Monterose (ts), Tommy Flanagan (p), Jimmy Garrison (b), Pete La Roca (ds) 。バックのリズム・セクションに、名盤請負人バップ・ピアニストのトミー・フラナガン、ベースに重低音な鋼のベーシスト、ジミー・ギャリソン、モーダルなドラマー、ピート・ラ・ロッカというユニークなピアノ・トリオを配した、モンテローズのテナー1管のカルテット構成。

この盤は長年の間、「幻の名盤」扱いだった盤である。もともとは米国のジャズの中小レーベル「Jaro International(ジャロ)」からリリースされたが、このジャロというレーベルは、2年間という非常に短い活動期間において、僅か5タイトルしかリリースしていない幻級のマイナーレーベル。しかも、リリースされた盤については枚数が出ていないので、5タイトル全てが「幻の名盤」扱い。この『The Message』もそんな中の一枚。
 
 
The-message  
 
 
しかし、1997年、ヴィーナス・ステレオ盤CDとして、リイシューされたのだ。マスターテープがしっかり保管されていたらしく、このステレオ盤CD、音がとても良い。これでこの盤も「幻の名盤」では無くなった。さて、その内容であるが、テナー1管のワンホーン・カルテットであるが故、モンテローズのテナーの個性が良く判る。コルトレーン以降の「ストレートなブロウの新しいテナー」だが、豪快で角が立った、甘さとは無縁のビターでスクエアなブロウ。

フレーズがぶつ切りになったりするがお構いなし。勢いで吹き切る「豪放磊落」なテナーである。そんな「豪放磊落」なテナーで、全てのフレーズをしっかり吹き切るので、清々しさすら感じる。ゴツゴツしているけど切れ味は良いので、僕は気にならない。テナーマンの個性として、このモンテローズのブロウは聴いていて、実に興味深い。

バックのリズム・セクションも良い音を出している。ラ・ロッカのバスドラとギャリソンの重低音ベースが、アーバンで怪しい雰囲気を醸し出すが、名盤請負人トミフラの洒脱なピアノがそれを中和し、この盤のリズム&ビートに、ほんのり格調高さを加えているところがクール。そんなほんのり格調高いリズム・セクションをバックに、豪放磊落なモンテローズのテナー・サックス。個性のジャズです。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況
 

 ★ AORの風に吹かれて     【更新しました】2020.04.18更新。

  ・『Down Two Then Left』 1977
  ・『Silk Degrees』 1976

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.04.19更新。

  ・レッド・ツェッペリン Ⅰ

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.04.22更新。

  ・チューリップ 『TULIP BEST』
  ・チューリップ『Take Off -離陸-』
 
 
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2020年3月25日 (水曜日)

トミフラ「こんな盤あったんや」

長年、ジャズを聴いて、アルバムをコレクションして、ブログを書いていても、ジャズのレジェンド級のジャズマンについて、その存在を知らなかったり、聴き逃していたリーダー作が突然、出てきたりする。聴き逃しはまだ良いが、その存在を知らなかった、というのは、長年ジャズ者をやって来て、いやはや、まだまだ勉強不足ということを実感する。ジャズは意外と奥が深い。

Tommy Flanagan『Flanagan's Shenanigans』(写真左)。1993年4月2日の録音。パーソネルについては、Tommy Flanagan (p), Jesper Lundgaard (b), Lewis Nash (ds) のピアノ・トリオがメインで、Jesper Thilo (ts) が1〜4曲目まで、Henrik Bolberg Pedersen (tp), Steen Hansen, Vincent Nilsson (tb), Jan Zum Vohrde (as, fl), Uffe Markussen (ts, ss, b-cl), Flemming Madsen (bs, b-cl) が、1〜3曲目まで参加している。

リーダーのピアニスト、トミー・フラナガン(以下、トミフラと呼ぶ)が、デンマークのジャズバー賞を受賞した時に行ったライヴを収録した音源。ヤスパー・ルンゴー(b)とルイス・ナッシュ(ds)との味のある、職人芸的ピアノ・トリオの演奏をベースに、現地の優れものジャズメンが参加したノネット編成での、重厚でダイナミックで整然としたビッグバンドの様な演奏が冒頭から3曲、続く4曲目の「For Lena and Lennie」のみ、テナーのイェスパー・シロが参加したカルテット編成。
 
 
Flanagans-shenanigans  
 
 
5曲目以降、ラストの大団円「Tin Tin Deo」まで、トミフラのピアノ・トリオの演奏になる。まず、この盤、このピアノ・トリオ演奏の部分が秀逸である。トミフラのピアノが実に良い音している。もともと歯切れの良い、明確なタッチなんだが、この盤では、それに加えて、躍動感が際立つ。そして、流麗でジャジーで粋なアドリブ・フレーズ。そう、トミフラのアドリブ・フレーズは「粋」なのだ。聴いていて惚れ惚れする。

1曲目「Eclypso」から「Beyond the Bluebird」「Minor Mishap」の3曲は、ノネット編成の演奏なのだが、これが全て、トミフラの自作曲。こうやって、ビッグバンド風のアレンジで聴いてみて、トミフラの自作曲って良い曲なんだなあ、と再認識する。ノネット自体の演奏も、ビッグバンド風で迫力と疾走感があって、聴いていて清々しい気分になる。トミフラのピアノは、ノネットの中に入って伴奏に回った時、これまた「伴奏上手のトミフラ」の真価を発揮する。

ヤスパー・ルンゴー(b)とルイス・ナッシュ(ds)のサポートも見事。こんなトミフラ盤があったなんて、僕は今まで意識したことがなかった。トミフラは僕のお気に入りのピアニストの一人なので、彼のディスコグラフィーはしっかり確認していたのになあ。恐らく、1990年代のトリオ盤に注目するあまり、冒頭がノネット編成のライブ盤を見落としたと思われる。いやはや、サブスクの音楽サイトに感謝である。
 
 
 

《バーチャル音楽喫茶『松和』別館》

【更新しました】2020.03.02
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【更新しました】2020.03.15
  ★ 青春のかけら達 ・・・・ チューリップ『魔法の黄色い靴』
 

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2018年11月15日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・106

ジャズはシンプルなアレンジが良い。シンプルなアレンジは即興演奏を際立たせる。人工的なアレンジがゴテゴテしたジャズは、ジャズの本質である即興演奏が際立たない。シンプルなアレンジだからこそ、それぞれのジャズメンの楽器プレイが良く聴き取れ、その特徴が手に取るように判る。そういう意味で、即興演奏を楽しむには、シンプルなアレンジが良い。

Booker Ervin『The Book Cooks』(写真左)。1960年4月6日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Ervin (ts), Zoot Sims (ts), Tommy Turrentine (tp), Tommy Flanagan (p), George Tucker (b), Dannie Richmond (ds)。ベツレヘム・レーベルからのリリース。このなかなか興味深い組合せは期待が膨らむ。リーダーのブッカー・アーヴィンのテナーに、ズート・シムズのテナーがパートナー。

ジョージ・タッカーのベースとダニー・リッチモンドのドラムが意外とプログレッシブ。冒頭の「The Blue Book」を聴けばそれが良く判る。冒頭、いきなりタッカーのベース・ソロから始まる。このベース・ソロのラインが斬新。このベース・ソロに導かれるように、フロントのサックス2本のユニゾンがドーンと迫ってくる。バックでリッチモンドのドラムがシンプルに絡む。アレンジなど、殆ど施されていない。最低限の決め事だけで、この即興性の高さ。
 

The_book_cooks

 
アドリブ部に入って、トミフラのピアノが絶品。ハードバップの時の流麗で小粋なフレーズは全く聴くことが出来ない。アドリブ・フレーズはかなりプログレッシブ。これがトミフラのピアノか、と思わず感心する。さすが燻し銀のジャズ・ピアノ職人。何時になくモーダルな展開で新しい響きが魅力的。このプログレッシブなトミフラのピアノを受けて、トミタレのトランペットも何時になくモーダルに傾く。これがまた良い。冒頭の「The Blue Book」1曲で、この盤の魅力を十分に確認することが出来る。

主役のテナー2本のパフォーマンスは申し分無い。どちらのテナーもそれぞれの個性をふんだんに振り撒いていて、聴いていてとても楽しい。この盤には、特にリーダーのアーヴィンの個性が実に良く出ている。太くてブルージーで大らかなテナー。それでいて、ややアブストラクトでモーダルで予測不能なフレーズの飛び方が実にユニーク。そこに、オーソドックスなテナーのズートが絡む。アーヴィンとズートの対比。これが、この盤の最大の聴きどころ。

ベツレヘム・レーベルって不思議なレーベルで、録音された演奏は垢抜けないところが残るのだが、演奏自体は意外とプログレッシブなものが多い。この「垢抜けない」ところがこのレーベルの特徴だと思っていて、他のレーベルの様な、強烈なプロデュース力は感じられない。それでも、音はしっかりと太く、ジャジーなところが不思議。あまり人手に頼らず、自然でシンプルな演奏を基本とするところが良い結果を生んでいるのだろう。ジャズにオーバー・プロデュースは御法度である。

 
 

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2017年12月22日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・61

ジャズはやっぱりライブだろう。即興演奏が個性のジャズである。やはり、一期一会のライブ演奏が一番、ジャズを感じることが出来る。ライブ演奏を体感するには、ライブスポットやコンサートに出かける必要があるのだが、仕事を持っている以上、そんなに時間の自由は無い。

そうすると、ライブ盤の存在が実に貴重な存在になる。ライブの雰囲気や内容を追体験できるライブ盤は、とても大切な存在である。『Jazz At the Santa Monica Civic '72』(写真)。ジャズの白眉のライブ盤の一枚である。

キーマンは「ノーマン・グランツ」。ジャズ界の敏腕プロデューサーで、1940〜50年代のジャズシーンは、この人抜きには語れない。スイング時代から継続されるビッグバンドやジャズ・ボーカルなど、ベーシックなモダン・ジャズの隆盛はグランツ抜きには語れない。そんなグランツ、1960年代には、フリー・ジャズが台頭した米国ジャズ・シーンに愛想を尽かし、欧州に移住。

グランツのジャズは「明るく楽しいエンタテインメント」。眉間にしわをよせた様な、小難しいフリー・ジャズなどとは相容れ無い。しかしながら、フリー・ジャズが迷走を始めた1970年代初頭から、片隅に追いやられていたベテラン・ジャズメンたちが復権を果たす訳だが、それにひと役かったのが、グランツがジャズシーンへ復帰して創設したレーベル「Pablo」。

1972年8月、グランツは西海岸のサンタモニカ・シビック・オーティトリアムで、JATP復活のコンサートを大々的に行った。その時の模様をライブ録音したアルバムが、この『Jazz At the Santa Monica Civic '72』。メインアクトはカウント・ベイシー・オーケストラ、オスカー・ピーターソン・トリオ、エラ・フィッツジェラルド、トミー・フラナガン・トリオ(エラの伴奏を担当)。
 

Jazz_at_the_santa_monica_civic_72

 
すっごく良い雰囲気のジャズ演奏が全編に渡って展開される。どの演奏をとっても「モダン・ジャズ」なのだ。どの演奏にもエンタテインメント漂い、モダンでダイナミックでポップ。聴いていて単純に楽しい。全く小難しく無い。

全編2時間35分、ジャズの良いところがギッシリとこのライブ盤に詰まっている。どこから聴いても「モダン・ジャズ」。しかも、演奏のレベルは高度。テクニックも優秀。それでもそれが耳につくことは無い。ただただ聴いていて楽しい。LP時代は、LP3枚組のボックス・アルバムとして発売された。

LPの1〜2枚目には、カウント・ベイシー・オーケストラやオスカー・ピーターソン等が収録されていて、これはこれでとってもポップで楽しいのだが、とりわけ、その内容が素晴らしいのが、3枚目のエラ・フィッツジェラルド。カウント・ベイシー・オーケストラ+トミー・フラナガン・トリオという豪華なバックを従えて、歌いまくるエラはとても素敵だ。ポップで楽しいエラ。僕はこのライブ盤でエラを見直した。

ただ単に部屋で流しているだけで、ジャズの良いところが追体験できる。ライブ盤として白眉の出来。「ジャズを聴かせて」と要求されたら、この盤をかける。逆にこのライブ盤を聴いて、ジャズを感じることが出来なかったら、他の何を聴いても、その人はジャズを感じることは出来ないだろう。このライブ盤には「モダン・ジャズ」がギッシリと詰まっている。

 
 

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2017年11月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・91

1970年代のジャズは意外と面白い。ハードバップ期を生き抜いた一流ジャズメン達が「えっ、こんな演奏していたん」と感心してしまう様なアルバムが結構ある。1970年代のジャズ、電気楽器の活用が当たり前になった時代。電気楽器を活かして、クロスオーバーからフュージョン・ジャズが流行る。

しかし、面白いのはクロスオーバーやフュージョン・ジャズでは無い。1970年代のメインストリーム・ジャズが面白い。当時、ジャズと言えば、クロスオーバーからフュージョン・ジャズがメイン。それでも、メンストリーム・ジャズは生き残る。ハードバップ時代を生き抜いて来た、今ではレジェンドと呼ばれる一流ジャズメンの中で、メインストリーム・ジャズに留まったジャズメンの沢山いる。

例えば、トミー・フラナガン(Tommy Franagan)。燻し銀ピアニスト、名盤請負人、などと呼ばれた、レジェンド級のピアニストである。フラナガンは、クロスオーバーからフュージョン・ジャズの時代にも、頑なにメインストリーム・ジャズを貫き通した。そんなフラナガン、面白い内容の盤がある。
 

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Tommy Franagan『Something Borrowed, Something Blue』(写真左)。1978年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p, el-p), Keter Betts (b), Jimmie Smith (ds)。演奏フォーマットは「ピアノ・トリオ」。フラナガンの十八番。フラナガンがメインの場合は「ピアノ・トリオ」に限る。フラガナンのピアノが映える。フロント楽器があると駄目だ。フラナガンは極上の伴奏に回ってしまう。

この盤の面白いところは、フラガナンが電気ピアノを弾いているところ。フラガナンがローズを弾いている。これが意外と「イケる」。2曲目「Good Bait」を聴けば判る。フラガナンの「間」でエレピを弾く。フラナガンならでは、のエレピに仕上がっているのが面白い。一流と呼ばれるジャズメンは何を弾いても一流なんですね。

勿論、残りの曲はアコピのトリオ演奏なんですが、これがまた素晴らしい。もともとフラガナンはバリバリのバップ・ピアノなんですが、この盤でのアコピは完璧に「バップ・ピアノ」。確かなタッチでバンバン弾いてます。よって、この盤、フラナガンがエレピとアコピを弾きまくっている、意外と珍しい盤です。好盤です。

 
 

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2016年9月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・88

今日は朝から夏が戻って来た様な、陽射しの強い暑い日となったが、時は9月、いよいよ秋の気配がそこはかとなく漂う季節となってきた。部屋の中でジッとしている分には、暑さや湿度でイライラすることは無くなった。季節的にも、そろそろ純ジャズに耳を傾けるに良いシーズンになってきたと言える。

純ジャズというもの、裾野は広く、しっかりと地に足着けてその時の時代時代で、それぞれ確実な成果を残している。決して、1950年代のものだけでは無い。フリーやモード、ファンキーなど、ジャズの多様化の1960年代には1960年代の、クロスオーバーやフュージョン全盛の1970年代には1970年代の「純ジャズの成果」がしっかりと残っている。

ということで、ジャズというもの、アルバムの内容を実際に聴くこと無く、録音年やリリース時期だけで、そのアルバムの内容を判断するということは決して無い。やはり、ジャズのアルバムというものは「聴いてみてなんぼ」のものである。他人の評価や意見だけで、そのアルバムの良し悪しを判断するものでは無いなあ、とつくづく思う。

例えばこんなアルバムがある。Tommy Flanagan & Kenny Burrell『Beyond The Bluebird』(写真左)。1990年4月、オランダのMonsterにあるスタジオ44での録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Kenny Burrell (g), George Mraz (b), Lewis Nash (ds)。なんか、パーソネルを見ただけで、出てくることが想像出来る、充実したパーソネルですね。
 

Tommy_flanagan_beyond_the_blue_bird

 
録音当時は、純ジャズ復古の時代。若手中心にネオ・ハードバップが台頭した時代。そんな時代に、こんな純然とした「ハードバップ」なアルバムが録音され、リリースされる。なんてジャズって懐深く裾野の広い、流行に左右されない音楽ジャンルなんだろう、と改めて感心する。

パーソネルを見るだけで、上質の典雅なハーバップな演奏が展開されるのは十分に予想できるのだが、その予想に違わぬ、素晴らしい極上のハードバップ演奏が続々と展開される。それぞれのメンバーの演奏テクニックも優秀、グループ・サウンドとしての纏まりも良い。しっかりとリハーサルを積んだ、誠実なハードバップ演奏が記録されている。

しっかりと落ち着いた、決して揺らぐことの無い演奏トーン。落ち着いてはいるが躍動感がしっかりとしていて、ジャズとしての聴き心地が実に良い。加えて、リズム&ビートが秀逸。さすが、ムラーツとナッシュのリズム・セクションである。

フロントの二人、ピアノのトミフラとギターのバレル、どちらも申し分無い。使い古された形容ではあるが、敢えてここでは使いたい、「燻し銀のような」アドリブ・ライン。そこはかとなくファンクネス漂い、音の輪郭は明快。これだけ判り易い旋律はなかなか無い。

しっとりとした落ち着きと躍動感が同居する、良い内容のカルテット構成のアルバムです。ケニー・バレルのギターとトミフラ・トリオとの相性が抜群で、静かな部屋の中で、ズッと聴いていたくなるような、そんな趣味の良い、典雅な内容のアルバムです。

 
 

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2015年8月 5日 (水曜日)

実に粋なギターアルバムである

暑い。酷暑である。たまらない。我慢できない。でも、かといって騒いだからと言って暑さが和らぐ訳では無い。あと1ヶ月もすれば、きっと少しは涼しくなっている。

ということで、暑いからと言って、ジャズを聴かないということは無い。なんせ我々にはエアコンという文明の利器がある。エアコンの効いた部屋の中では、十分にジャズは聴ける。というか、意外とエアコンの効いた静かな部屋の中で聴くジャズって、なかなか良い感じなのだ。

今日は相当久し振りにこのアルバムを聴いた。Kenny Burrell『Blue Moods』(写真)。渋い渋いジャズ・ギター中心のアルバム。1957年2月の録音。初出の時のアルバムタイトルは『Kenny Burrell』。いわゆるデビュー盤っていうことかな。 『Blue Moods』というタイトルは、このアルバムがリイシューされた時に付けられたタイトル。

太く明確でブルージーで黒いギターのケニー・バレル。ファンクネスたっぷりのアーバンな雰囲気濃厚なジャズ・ギター。むっちゃ粋であり、むっちゃムーディーである。冒頭の「Don't Cry Baby」から聴き進めていくにつれ、バレルのギターの音色とフレーズに惚れ惚れする。
 

Kenny_burrell_blue_moods  

 
ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Cecil Payne (bs), Tommy Flanagan (p), Doug Watkins (b), Elvin Jones (ds)。今から思えば凄いメンバーだ。特に、バリトン・サックスのセシル・ペインの参加がユニークである。何を狙ってのバリトン・サックスの参入なのかは良く判らないんだけど(笑)。

名盤請負人の誉れ高い「いぶし銀ピアニスト」、トミー・フラナガンがいる。太っとくしなるような「しなやか」ベースのダグ・ワトキンス。そして、ポリリズムとはこれだ的なドラミングが素敵なエルビン・ジョーンズ。このリズム・セクションが凄い。実に躍動感溢れる、硬軟自在、変幻自在、遅速自在な柔軟性溢れるリズム&ビートを繰り出す。

このリズム・セクションを従えてのケニー・バレルのギターである。悪かろう筈が無い。とっても素敵な「ひととき」を提供してくれる。至高の5曲「Don't Cry Baby」「Drum Boogie」「Strictly Confidential」「All of You」「Perception」の37分弱があっと言う間である。

録音時期は1957年。ハードバップの最盛期。そんな充実した環境の中で、実に趣味の良い、実に粋なギターアルバムがリリースされていた。なかなかジャズ紹介本や入門本には載らないアルバムであるが、これは好盤である。初心者からベテランまでジャズ者のあらゆる方々にお勧めです。

 
 

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2015年3月31日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・42

ジャケットを見てもピンとこない。そう、僕はこのアルバムの存在を知らなかった。Tommy Flanagan『Positive Intensity』(写真左)。邦題は『白熱』。CBS/Sonyからリリースされたトリオ盤である。

1976年1月と10月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Ron Carter (b), Roy Haynes (ds)。面白い組合せだ。1970年代後半、CBS/Sonyからのリリースで、ベースがロンとくれば、ドラムはトニーなんだが、このアルバムは違う。ロイ・ヘインズである。

収録曲は全10曲。ロン、トミフラ、そして、プロデューサーのテオ・マセロの自作曲3曲以外、残りの7曲はスタンダード曲。フラナガンの自作曲は「Verdande」。かのフラナガンの有名盤『Overseas』からの再演である。これは興味津々である。

このトリオ盤を聴き通して感じるのは、ロイ・ヘインズの元気のよいドラミング。とにかくバッシャバッシャと叩きまくる。1970年代後半、商業ロックが幅を効かせていた時代。ジャズもリズム・セクションがガンガンにいってもおかしくない時代。これはこれで時代を感じるドラミングではある。

もともと、トミフラ(トミー・フラナガン)はバップ・ピアニストである。いぶし銀の様なサイドメンでのプレイが良い、トミフラはサイドメンとしてより輝く、などと誤解を生むような評価もあったが、トミフラはバップ・ピアニストである。ガンガンと歯切れの良いタッチで、バリバリ弾きまくるのがトミフラのスタイル。
 

Positive_intensity

 
そして、当然、リーダー作の場合は、トミフラはガンガン前へ出る。そして、トミフラはアドリブ・フレーズが多彩でバリエーションが豊か。トミフラが弾いている以上、アドリブ・フレーズで飽きることは無い。特に、スタンダード曲の場合にその傾向が強い。よって、トミフラはスタンダード曲を題材とする時、よりそのアドリブが惹き立つ。

このアルバム『白熱』でも、そのトミフラの個性は際立っている。そして、このアルバムでのロンのベースはなかなか良い。よく話題になる、ロンのベースのピッチもまずまず合っていて、ロンのアドリブ・フレーズが小気味よく響く。

僕はトミフラがバリバリ弾きまくっている分、ロイ・ヘインズの元気なドラミングは気にならない。このアルバムは、このロイ・ヘインズの元気なドラミングを良しとするか、駄目とするかで、評価が分かれるだろう。この盤でのトミフラの出来は良い。1970年代後半独特のトリオ盤として、僕はこの盤が気に入っている。

ジャケットのデザインは「やっつけ感」が満載で、感心できる出来では無い。このジャケットだと触手は伸びないだろう。このアルバムの内容を知ってこそ、このアルバムには触手が伸びる。

 
 

震災から4年。決して忘れない。まだ4年。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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