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2016年9月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・88

今日は朝から夏が戻って来た様な、陽射しの強い暑い日となったが、時は9月、いよいよ秋の気配がそこはかとなく漂う季節となってきた。部屋の中でジッとしている分には、暑さや湿度でイライラすることは無くなった。季節的にも、そろそろ純ジャズに耳を傾けるに良いシーズンになってきたと言える。

純ジャズというもの、裾野は広く、しっかりと地に足着けてその時の時代時代で、それぞれ確実な成果を残している。決して、1950年代のものだけでは無い。フリーやモード、ファンキーなど、ジャズの多様化の1960年代には1960年代の、クロスオーバーやフュージョン全盛の1970年代には1970年代の「純ジャズの成果」がしっかりと残っている。

ということで、ジャズというもの、アルバムの内容を実際に聴くこと無く、録音年やリリース時期だけで、そのアルバムの内容を判断するということは決して無い。やはり、ジャズのアルバムというものは「聴いてみてなんぼ」のものである。他人の評価や意見だけで、そのアルバムの良し悪しを判断するものでは無いなあ、とつくづく思う。

例えばこんなアルバムがある。Tommy Flanagan & Kenny Burrell『Beyond The Bluebird』(写真左)。1990年4月、オランダのMonsterにあるスタジオ44での録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Kenny Burrell (g), George Mraz (b), Lewis Nash (ds)。なんか、パーソネルを見ただけで、出てくることが想像出来る、充実したパーソネルですね。
 

Tommy_flanagan_beyond_the_blue_bird

 
録音当時は、純ジャズ復古の時代。若手中心にネオ・ハードバップが台頭した時代。そんな時代に、こんな純然とした「ハードバップ」なアルバムが録音され、リリースされる。なんてジャズって懐深く裾野の広い、流行に左右されない音楽ジャンルなんだろう、と改めて感心する。

パーソネルを見るだけで、上質の典雅なハーバップな演奏が展開されるのは十分に予想できるのだが、その予想に違わぬ、素晴らしい極上のハードバップ演奏が続々と展開される。それぞれのメンバーの演奏テクニックも優秀、グループ・サウンドとしての纏まりも良い。しっかりとリハーサルを積んだ、誠実なハードバップ演奏が記録されている。

しっかりと落ち着いた、決して揺らぐことの無い演奏トーン。落ち着いてはいるが躍動感がしっかりとしていて、ジャズとしての聴き心地が実に良い。加えて、リズム&ビートが秀逸。さすが、ムラーツとナッシュのリズム・セクションである。

フロントの二人、ピアノのトミフラとギターのバレル、どちらも申し分無い。使い古された形容ではあるが、敢えてここでは使いたい、「燻し銀のような」アドリブ・ライン。そこはかとなくファンクネス漂い、音の輪郭は明快。これだけ判り易い旋律はなかなか無い。

しっとりとした落ち着きと躍動感が同居する、良い内容のカルテット構成のアルバムです。ケニー・バレルのギターとトミフラ・トリオとの相性が抜群で、静かな部屋の中で、ズッと聴いていたくなるような、そんな趣味の良い、典雅な内容のアルバムです。

 
 

震災から5年6ヶ月。決して忘れない。まだ5年6ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2015年8月 5日 (水曜日)

実に粋なギターアルバムである

暑い。酷暑である。たまらない。我慢できない。でも、かといって騒いだからと言って暑さが和らぐ訳では無い。あと1ヶ月もすれば、きっと少しは涼しくなっている。

ということで、暑いからと言って、ジャズを聴かないということは無い。なんせ我々にはエアコンという文明の利器がある。エアコンの効いた部屋の中では、十分にジャズは聴ける。というか、意外とエアコンの効いた静かな部屋の中で聴くジャズって、なかなか良い感じなのだ。

今日は相当久し振りにこのアルバムを聴いた。Kenny Burrell『Blue Moods』(写真)。渋い渋いジャズ・ギター中心のアルバム。1957年2月の録音。初出の時のアルバムタイトルは『Kenny Burrell』。いわゆるデビュー盤っていうことかな。 『Blue Moods』というタイトルは、このアルバムがリイシューされた時に付けられたタイトル。

太く明確でブルージーで黒いギターのケニー・バレル。ファンクネスたっぷりのアーバンな雰囲気濃厚なジャズ・ギター。むっちゃ粋であり、むっちゃムーディーである。冒頭の「Don't Cry Baby」から聴き進めていくにつれ、バレルのギターの音色とフレーズに惚れ惚れする。
 

Kenny_burrell_blue_moods  

 
ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Cecil Payne (bs), Tommy Flanagan (p), Doug Watkins (b), Elvin Jones (ds)。今から思えば凄いメンバーだ。特に、バリトン・サックスのセシル・ペインの参加がユニークである。何を狙ってのバリトン・サックスの参入なのかは良く判らないんだけど(笑)。

名盤請負人の誉れ高い「いぶし銀ピアニスト」、トミー・フラナガンがいる。太っとくしなるような「しなやか」ベースのダグ・ワトキンス。そして、ポリリズムとはこれだ的なドラミングが素敵なエルビン・ジョーンズ。このリズム・セクションが凄い。実に躍動感溢れる、硬軟自在、変幻自在、遅速自在な柔軟性溢れるリズム&ビートを繰り出す。

このリズム・セクションを従えてのケニー・バレルのギターである。悪かろう筈が無い。とっても素敵な「ひととき」を提供してくれる。至高の5曲「Don't Cry Baby」「Drum Boogie」「Strictly Confidential」「All of You」「Perception」の37分弱があっと言う間である。

録音時期は1957年。ハードバップの最盛期。そんな充実した環境の中で、実に趣味の良い、実に粋なギターアルバムがリリースされていた。なかなかジャズ紹介本や入門本には載らないアルバムであるが、これは好盤である。初心者からベテランまでジャズ者のあらゆる方々にお勧めです。

 
 

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2015年3月31日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・42

ジャケットを見てもピンとこない。そう、僕はこのアルバムの存在を知らなかった。Tommy Flanagan『Positive Intensity』(写真左)。邦題は『白熱』。CBS/Sonyからリリースされたトリオ盤である。

1976年1月と10月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Ron Carter (b), Roy Haynes (ds)。面白い組合せだ。1970年代後半、CBS/Sonyからのリリースで、ベースがロンとくれば、ドラムはトニーなんだが、このアルバムは違う。ロイ・ヘインズである。

収録曲は全10曲。ロン、トミフラ、そして、プロデューサーのテオ・マセロの自作曲3曲以外、残りの7曲はスタンダード曲。フラナガンの自作曲は「Verdande」。かのフラナガンの有名盤『Overseas』からの再演である。これは興味津々である。

このトリオ盤を聴き通して感じるのは、ロイ・ヘインズの元気のよいドラミング。とにかくバッシャバッシャと叩きまくる。1970年代後半、商業ロックが幅を効かせていた時代。ジャズもリズム・セクションがガンガンにいってもおかしくない時代。これはこれで時代を感じるドラミングではある。

もともと、トミフラ(トミー・フラナガン)はバップ・ピアニストである。いぶし銀の様なサイドメンでのプレイが良い、トミフラはサイドメンとしてより輝く、などと誤解を生むような評価もあったが、トミフラはバップ・ピアニストである。ガンガンと歯切れの良いタッチで、バリバリ弾きまくるのがトミフラのスタイル。
 

Positive_intensity

 
そして、当然、リーダー作の場合は、トミフラはガンガン前へ出る。そして、トミフラはアドリブ・フレーズが多彩でバリエーションが豊か。トミフラが弾いている以上、アドリブ・フレーズで飽きることは無い。特に、スタンダード曲の場合にその傾向が強い。よって、トミフラはスタンダード曲を題材とする時、よりそのアドリブが惹き立つ。

このアルバム『白熱』でも、そのトミフラの個性は際立っている。そして、このアルバムでのロンのベースはなかなか良い。よく話題になる、ロンのベースのピッチもまずまず合っていて、ロンのアドリブ・フレーズが小気味よく響く。

僕はトミフラがバリバリ弾きまくっている分、ロイ・ヘインズの元気なドラミングは気にならない。このアルバムは、このロイ・ヘインズの元気なドラミングを良しとするか、駄目とするかで、評価が分かれるだろう。この盤でのトミフラの出来は良い。1970年代後半独特のトリオ盤として、僕はこの盤が気に入っている。

ジャケットのデザインは「やっつけ感」が満載で、感心できる出来では無い。このジャケットだと触手は伸びないだろう。このアルバムの内容を知ってこそ、このアルバムには触手が伸びる。

 
 

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2015年1月13日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・43

ジャズというジャンルの音楽を聴き始めて約40年になる。よくまあ飽きずに聴いてきたなあ、と思うし、それだけ、ジャズは裾野が広くて奥が深いということになる。とにかく飽きない、というか、毎回毎回、新しい発見というか、新しい感覚があって面白い。

そんなジャズ者ベテランにも、ジャズ者初心者の時代が絶対にある。いきなり、ジャズを聴き始めて、一朝一夕にジャズ者ベテランになる訳が無い。今から思えば、ジャズ者初心者の頃に聴いたら、もっと早くジャズに親しめたのになあ、と思うアルバムがある。

そんなジャズ者初心者向けのジャズ盤が幾枚かある。時折、我がバーチャル音楽喫茶『松和』でもかけるアルバムである。そのアルバムとは、The Super Jazz Trio『The Standard』(写真左)。1980年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds) 。

フラガナンをリーダーにした、企画型のピアノ・トリオである。スーパー・ジャズ・トリオなんていう、凄い「ベタ」なバンド名が付いているが気にしないでおこう。収録曲を見渡せば、全編通して超有名曲ばかりが続く「凄まじい選曲」。これは、硬派なジャズ者ベテランの方々から不評を買いそうな「問題盤」である(笑)。

まあ、確かに、硬派なジャズ者ベテランの方々からは、「こんな超スタンダード曲ばかりのピアノ・トリオ盤なんて、今更聴けるかい」というブーイングが聴こえて来そうだ。でもね、ジャズ者初心者って何時の時代にも存在するし、ジャズ者ベテランの方々だって、必ずジャズ者初心者の時代があったはず。
 

The_super_jazz_trio_the_standard

 
こんな超スタンダード曲ばかりのピアノ・トリオ盤って、ジャズ者初心者にとっては助かるんですよね。ジャズを聴き進める上で、超スタンダード曲というのは「必須科目」みたいなもので、超スタンダード曲に馴れ親しむには、ジャズ者初心者にとっては早ければ早いほど良い。

確かに、超スタンダード曲を詰め込んだお気楽な出来の悪い企画盤も無いでは無いが、このアルバムは違う。内容も充実していて、聴き応え十分。このアルバムは、ジャズ者初心者の方々に最適なピアノ・トリオ盤。加えて、ジャズ者ベテランの方々にも聴いて貰いたい「超スタンダード充実盤」である。 

「いぶし銀の様なピアニスト」とか「名盤請負サイドメン」とか評されるが、僕はそうは捉えていない。ピアニストのトミー・フラナガンは「ハード・バッパーなピアニスト」である。メリハリ効いたタッチで、グイグイ弾き倒す、そんなピアニストである。だからこそ、バラード演奏が繊細で美しく映えるのだ。

そんな「ハード・バッパーなピアニスト」を支えるベースのレジー・ワークマンが、これまた「凄い」。テクニックを駆使して、ブンブン低音響かせ弾きまくる弾きまくる。そして、ジョー・チェンバースも、これまた「凄い」。テクニックを駆使して、コンコンドンドコ低音響かせ叩きまくる叩きまくる。

このピアノ・トリオ盤、企画ものでありながら、ジャズ者ベテランの耳にも十分に響く「優れもの盤」だと思います。とにかく聴き易くて、かつ退屈しない。内容的にもかなり充実していて聴き応え十分。良いピアノ・トリオ盤です。ジャケットも雰囲気があって良し。

 
 

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2014年6月17日 (火曜日)

一息つきたくなる時に聴くジャズ

いろいろと様々なフォーマット、様々なスタイルのジャズ盤を聴く。アコースティックもあれば、エレクトリックもある。それぞれにそれぞれの良さがある。そして、様々な種類のジャズを聴いて疲れて、ホッと一息つきたくなる時がある。

そんな時は、やっぱり1950年代のハードバップのアルバムに戻るのが一番。やっぱり、ハードバップ黄金時代のアルバムの音というのは、聴いていてホッとするし、聴いていてしっかりと癒される。ジャズの音をイメージする時、やっぱりハードバップの音が一番にしっくりくる。

今日の「ホッと一息つきたくなる時に聴くジャズ」は、Tommy Flanagan『The Cats』(写真左)。1957年4月の録音になる。ちなみにパーソネルは、Idrees Sulieman (tp), John Coltrane (ts), Tommy Flanagan (p), Kenny Burrell (g), Doug Watkins (b), Louis Hayes (ds)。トランペットとテナーの2管+ギターがフロントのセクステット構成。

このアルバムは、プレスティッジ・レーベルお得意のジャム・セッション構成。セクステットとはいえ、その日の急造セクステット。プレスティッジだから、ギャラをケチって、お得意のほとんどリハーサル無しの本番演奏。リハーサル無しのいきなり本番なので、セクステット構成は危険。このアルバムは大丈夫なのか、と不安になる。

しかし、そこはジャズの面白いところ。意外と皆、健闘しているのだ。なかなか上手くまとまったハードバップ演奏。フラナガンのリーダーシップの成せる技である。フラナガンは「名脇役」とか「いぶし銀のバッキング」など、バックに控えて、しっかり支えるという縁の下の力持ち的な印象が流布しているが、どうして、リーダーに立った時のバンド全体の統率力は相当なものがあると、僕は睨んでいる。
 

Tommy_flanagan_cats

 
名脇役として「名盤請負人」とか言われるが、意外とこのプレスティッジなどのジャム・セッション形式では、寄せ集めのメンバーの中で、しっかりとリーダシップを発揮しての「名盤請負人」なのではないだろうか。そんなことを想起させる、このアルバム『The Cats』の内容である。

全編、典型的なハードバップの内容。適度にラフなのはご愛嬌。寄せ集めのいきなりジャム・セッションだから、テンションが多少緩むのは仕方の無いこと。アレンジも単純なもの。それも個々の演奏力でカバー。そう、このアルバムは、参加ジャズメンの個々の演奏力を楽しむアルバムである。

しかし、そんな中、トランペットのIdrees Sulieman(アイドリース・シュリーマン)だけが「置いてきぼり」。テクニックは中庸、アドリブ・ラインは凡庸。音だけはトランペットらしい、輝く様なブラスの響きがあるが、テクニックがなあ。このシュリーマンのトランペットだけが、やけに音が大きいがフレーズは退屈。

コルトレーンはさすが音が大きく、テクニックもあるが、演奏内容としては中程度。耳をそばだてるほどでは無い。ケニー・バレルのギターがなかなか洒落ている。アドリブ・フレーズは短めだが、メンバーの中で、一番イマージネーション溢れるプレイを展開している。

リーダーのフラナガンのピアノは申し分無いです。大向こうを張っ大袈裟な展開とは全く無縁なフラナガンなんですが、このアルバムでも、じっくりと渋いアドリブを聴かせてくれます。おおっと耳をそばだてるような、一期一会なフレーズはそうそうありませんが、全編に渡って、落ち着いた小粋なアドリブを聴かせてくれます。

ダグ・ワトキンスもベースも良し、ルイ・ヘイズのドラミングも堅調。ピアノのフラナガンと併せて、このアルバムのリズム・セクションは優秀です。意外と、このアルバム『The Cats』は、ピアノ+ベース+ピアノのリズム・セクションを楽しむのが正解のアルバムなのかもしれませんね。

 
 

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2013年10月10日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・27

ジャズ盤とは不思議なところがあって、どうしてか理由は良く判らないのだが、ずっと昔にお蔵入りした録音が、ある日突然、陽の目を見ることがある。

例えば、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)とジャッキー・バイアード(Jaki Byard)のピアノの名手2人が録音した『The Magic Of 2』(写真左)などがその好例である。

このピアノ・デュオ盤、録音は1982年2月の録音。1970〜80年代初頭、アメリカ西海岸のジャズ・ライヴの拠点であったキーストン・コーナーでの貴重な未発表音源。そんな魅力的な未発表音源が、突如、今年の2013年3月になってリリースされた。まさに「こんなアルバムあったんや」である(笑)。

トミー・フラナガンは、ハード・バップ時代から活躍したピアニスト。メロディアスでバップなピアノが個性。数々の名盤にピアニストとして名を連ね、「名盤請負人」なる異名を持つ。また、歌伴プレイが絶品で、あのエラ・フィッツジェラルドのバックを長年務めた。

ジャッキー・バイアードは、マルチ・リード奏者としての顔も持ち、チャールス・ミンガスの下で頭角を現したピアニスト。伝統的なアプローチをベースに、今までのジャズ・ピアノの様々なスタイルを織り交ぜ、自由自在な展開が個性。

フラガナンとバイアード、伝統的なアプローチをベースとしたところは同じだが、フラガナンは「メロディアスで端正」、バイアードは「様々なスタイルを持った自由自在な展開」と、やや正反対の個性を持つ、正統派ピアニストである。
 

The_magic_of_2

 
この2人が丁々発止とピアノ・デュオでやりあうのだ。面白く、楽しいに決まってる。確かに、このデュオ・ライヴ盤『The Magic Of 2』を聴くと、本当に楽しい雰囲気がビンビンに伝わって来る。キーストンコーナーでリアルに聴いている聴衆も、歓声を上げたり温かい拍手を送ったりと、とても楽しそう。

各々の個性を尊重しお互いを立てつつ、それぞれのテクニック溢れる個性的な展開が、実に美しい対比を生んでいて、聴いていてとても楽しいライヴ盤に仕上がっています。

二人とも、ハードバップな伝統的なアプローチをベースにしており、二人が連弾すると、リズム&ビートが増幅されて、ダイナミックなドライブ感が生まれているところが見事。

フラナガン、バイアード共にそれぞれ3曲ずつソロ・ピアノも披露していますが、これまた、これが絶品。特に、バイアードのソロ・ピアノは、僕はこの盤が初めての体験で、なかなか興味深いソロ・ピアノを堪能しました。フラガナンのソロ・ピアノは当然「絶品」です。

フラガナンとバイアード、息の合ったプレイで、聴き応え十分です。正式なライヴ録音では無かったらしく、音は「中の下」で、クリアな雰囲気に欠けるところがありますが、フラガナンとバイアードのデュオ演奏の楽しさが、その「音の悪さ」をカバーしてくれています。ジャズ・ピアノ好きのジャズ者中級者以上の方々にまずはお勧めかな。

 
 

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2013年6月13日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・42

こんなに「小粋でハードボイルド」なピアノ・トリオは、是非ともジャズ喫茶で流したい。

このアルバムは、1975年2月、エラ・フィッツジェラルドの伴奏メンバーとして来日したトミー・ フラナガンを起用して吹き込まれたもの。Tommy Flanagan『Tokyo Recital』(写真左)。

フラナガンとして、初の日本でのレコーディングという点で、また、彼のリーダー作としては、1960年に吹き込まれたムーズヴィル盤以来(なんと15年ぶり)、という意味でも貴重なアルバムである。ちなみにパーソネルは、Keter Betts (b), Bobby Durham (ds), Tommy Flanagan (p)。

フラナガンと言えば落ち着きのある、いぶし銀のような「洒落た面」と、良くスイングした趣味の良い「ハードでダイナミックな面」を併せ持つピアニストである。とにかく、絵に描いたような「隠れ名手」的で「小粋なハードボイルド」的な、実に趣味の良いピアニストなのだ。

良くジャズの入門書では「サイドマンとして彼のピアノは輝く」なんて書いてあることが多いが、とんでもない。このアルバムを聴いてみれば良く判る。やはり、彼もまた、リーダーアルバムで最高に輝くのだ。
 

Flanagan_tokyo_recital_2

 
このアルバムの1曲目と2曲目で彼の特質が良く判る。1曲目の「All Day Long」では、彼のほど良くスイングした、趣味の良い「ハードでダイナミックな面」が良く出ており、のっけから実に楽しい、ノリの良いピアノ・トリオを聴かせてくれる。

2曲目の「UMMG」は打って変わって、味わいのある落ち着きのある、いぶし銀のような「洒落た面」が堪能できる。このアルバムは、この彼の持つ相反した2つの面が、バランス良く配置された名盤であると僕は思う。

サイドマンの貢献度も高く、ドラムスのボビー・ダーハムは、フラナガンの2つの面「ノリの良い面」と「落ち着きのある面」それぞれに合わせて、柔軟なドラミングでバッキングを確かなものにし、ベースのキーター・ベッツは、堅くて野太い、リズム感満載のベースでスイング感を盛り上げる。

録音も良く、選曲もありきたりのジャズ・スタンダードのオンパレードではなく、「デューク・エリントン=ビリー・ストレイホーン作品集」というコンセプトに則り、ちょっと小粋な曲や隠れた名曲を随所に散りばめ、とても楽しく、かつ、小粋なアルバムに仕上がっていて立派だ。

このようなアルバムが、日本での録音で生まれたことは誇らしいことだ。なにはともあれ、理屈抜きに楽めるアルバムです。

 
 

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2013年4月30日 (火曜日)

ジャズのウエストサイド物語・2

Tommy Flanagan『Lonely Town』(写真)。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Joe Benjamin (b), Elvin Jones (ds) 。1959年3月10日の録音。

LP時代は超幻の名盤。映画「ウェスト・サイド・ストーリー」をテーマに、エルヴィン・ジョーンズをドラムスに迎えた、もう一枚の『Overseas』(エルヴィンと組んだトミー・フラナガンの名盤)。

トミフラ全盛期の貴重なるピアノ・トリオ・アルバム、という触れ込みで発売されたときには、正直言ってビックリした。ピアニストとして、裏方に徹してでの「いぶし銀的な名演」が多くあるトミー・フラナガンが、こんな大衆受けする、実に趣味の良い、企画もののアルバムを作っていたとは知らなかった。

ジャケット・デザインもなかなかで、ジャケット・デザインが良いジャズ盤に駄盤無しという、そんな「嬉しい期待」を持たせてくれるアルバムだ。

曲を見渡すと「ウエストサイド物語」からの曲は、1曲目と3曲目の2曲のみ。あとは他のミュージカルの楽曲ではあるが、すべてがバーンスタインの作曲。どれもが美しく楽しい佳曲ばかり。
 

Tf_lonely_town

 
1曲目の「アメリカ」を聴いただけで、「ウエストサイド物語」に代表される、アメリカの現代ミュージカルの、壮大で楽しい雰囲気が広がってくる。その雰囲気を見事に現出しているのが、エルビン・ジョーンズのダイナミックなドラミングと、トミー・フラナガンのしっかりと粒だったピアノ・タッチ。

2曲目以降、その雰囲気は崩れることは無く、アメリカ・ミュージカルの壮大かつ楽しい雰囲気の乗って、エルビンは必殺技であるポリリズムを繰り出し、フラナガンは、そのダイナミックなドラミングに乗って、品の良い、いぶし銀のような、洒落たタッチのピアノで、バースタインの作曲した佳曲を料理していく。

ベースのジョー・ベンジャミンはちょっと音が細いかなあ。バップ・ピアニストのフラナガンとポリリズムの権化であるエルヴィン相手に、ちょっと苦しそうではあるが、なかなかに健闘している。思わず「頑張れ」と声をかけたくなる(笑)。

このアルバムは、良質のピアノ・トリオ・アルバムとして、トミー・フラナガンの「いぶし銀」ピアノとジャズ・ドラミングのひとつの完成形である「ポリリズム」の担い手、エルビン・ジョーンズのダイナミックなドラミングを、ミュージカルの楽曲を通して、心ゆくまで堪能できる佳作である。

 
 

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2012年2月 2日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・34

「ジャズ喫茶で流したい」シリーズの第34回目。今日は、僕のとっておきのピアノ・トリオ盤について語りたい。

アルバム・タイトルは『Let's Play the Music of Thad Jones』(写真左)。いぶし銀ジャズ・ピアノ職人、トミー・フラナガン(略称トミフラ)がリーダーの、知る人ぞ知る、ピアノ・トリオの「隠れ名盤」である。

1993年4月の録音。トミフラの旧友サド・ジョーンズが書いた名曲の数々をプレイした「サド・ジョーンズ作品集」。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan(p)、Jesper Lundgaard(b)、Lewis Nash(ds)。実に良い雰囲気のピアノ・トリオである。絵に描いた様なピアノ・トリオである。

トミフラのタッチは端正で力強い。しかも、繊細な表現にも長ける。ほど良く抑制され、コントロールされたバップ・ピアノ。そう、トミフラの基本はバップ・ピアノ。バピッシュな演奏のスタイルは、いつの時代も全く変わらない。良い意味で「金太郎飴」的と言って良い。でも、マンネリに陥ることは決して無い。ピアノを使っての表現の幅と深さが圧倒的に備わっているのだ。

そんなピアノを使っての表現の幅と深さを駆使して、このアルバムの様な企画物をやるから、絶対にマンネリに陥らない。逆に、演奏する曲毎に、新しい響き、新しい展開を感じさせてくれたりして、トミフラは「名盤請負人」の名をほしいままにする。

これだけ歌モノを魅力的に弾き綴るジャズ・ピアニストは他にいないだろう。トミフラに美しいメロディーを持ったスタンダードをやらせたら、彼の右に出る者はいない。

Lets_play_thad_jones

この「サド・ジョーンズ名曲集」を聴くと、サド・ジョーンズ作の楽曲は、耳に馴染む、美しいメロディーを湛えているのがよく判る。そして、トミフラは、このサド・ジョーンズの手なる名曲達を、素晴らしいテクニックと歌心で弾き紡いでいく。このアルバムに収録された、そんな珠玉のサド・ジョーンズの名曲は以下の通り。

1. Let's
2. Mean What You Say
3. To You
4. Bird Song
5. Scratch
6. Thadrack
7. A Child Is Born
8. Three In One
9. Quietude
10. Zec
11. Elusive

2曲目の「Mean What You Say」や、7曲目の「A Child Is Born」などなど、収録されたどの曲も、それはそれは絶品である。そんな絶品を、トミフラをリーダーとしたトリオは、更に魅力的なピアノ・トリオ演奏へと昇華させていく。

見事である。ドラムのナッシュの至芸も見事、イエスパーの重量級のウォーキング・ベースも見事。派手さは無いが、聴き込むほどに味わいが豊かになり、味わいが深くなる。実に聴き応えのあるピアノ・トリオ盤です。

 
 

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Fight_3

がんばろう日本、がんばろう東北。自分の出来ることから復興に協力しよう。

2011年4月28日 (木曜日)

ピアノ職人は優れたベースと組む

名盤請負人、ジャズ・ピアノの職人、トミー・フラナガンは、僕の大のお気に入り。愛称トミフラ。名盤あるところにトミフラあり、トミフラに駄盤無し、と良く言われるが、けだし「名言」。パーソネルにトミフラの名前を確認出来れば、その盤は期待を裏切らない。特に、ピアノ・トリオは絶対に大丈夫だ。

特に、トミフラの場合、良きベーシストと組むと、その「職人魂」は一層引き立つ。良くトミフラは「伴奏の名手」で、伴奏に回ってこそ、バックに回ってこそ、その実力を遺憾なく発揮する、などという、もっともらしく、酷い「誤解」的な評論があったりするが、とんでもない。1970年代半ばまで、トミフラのリーダー・アルバムが僅少だったことが主な理由なんだが、とんでもない評論をする人もいたもんだ。

また、トミフラは派手な、ポリリズムを駆使した超絶技巧な激情派ドラマーと組むと、ドラマーの音にあわせて、無理矢理マッチョな、バップ奏者の様な、激しく力強いタッチのピアノを弾かされてしまうので「好ましくない」などどいう、これまた、とんでもない誤解があったりするが、何を隠そう、トミフラは「ハード・バピッシュな」ピアニストである。彼のタッチは、バップ・ピアニストのそれであり、力強いフレーズは、これまた、トミフラの個性のひとつでもあるのだ。

力強いタッチ、流麗なフレーズ、小粋な指回し、絶妙の間合い、これらがひとつとなって、トミフラの個性を形成している。

そのトミフラの個性は、ポリリズムを駆使した超絶技巧な激情派ドラマーなどでは揺らがない。というか、トミフラのタッチと流麗なフレーズを考えれば、柔なドラマーだとトミフラのバックは勤まらない。ドラマーよりも、トミフラの個性を良い方向へ増幅させるッ鍵を握っているのは、僕は「ベーシスト」だと睨んでいる。

ここに、Tommy Flanagan Trioの『Jazz Poet』というアルバムがある。ピアノ・トリオの佳作。私、松和のマスターが長年、密かに愛聴してやまない優れもの。トミフラに駄盤無しと言うが、優れたベースとドラムが伴えば「無敵」という好例だと思う。
 

Jazz_poet

 
ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), George Marz (b), Kenny Washington (ds)。1989年1月17日、19日の録音。録音場所は「Englewood Cliffs, New Jersey」とあるので、録音技師は、かの「ルディー・バン・ゲルダー」である。

ドラムのケニー・ワシントンは、ポリリズムを駆使した超絶技巧な激情派ドラマー。ポリリズムを駆使した超絶技巧な激情派ドラマーの総本山、エルビン・ジョーンズに非常に良く似たドラミングを披露する。うっかり聴いていると、エルビンとキッチリ間違えて聴き込んでしまう。

そして、秀逸なのが、ベーシストのジョージ・ムラーツ。ブンブンと心地良く響く胴鳴りに、ピッチの気持ち良くあった、タイトで太いベース音。テクニック優秀、いかなる場面でも、いかなる展開でも破綻の無い、堅実かつ豪放磊落なベースが実に素晴らしい。これだけ、太く安定したベーシストに恵まれると、ピアノは右手中心の旋律に集中できるのか、このアルバムのトミフラは、いつになく小粋で、いつになくホットなアドリブを随所で聴かせてくれる。

そうですね、どの曲も、どの演奏も良いですね。この『Jazz Poet』の中に収録された演奏は、どの演奏も優れたもので、3者共に、非常に優れた演奏を繰り広げていて、それはそれは、上質なピアノ・トリオ演奏を聴かせてくれます。

「ピアノ職人は優れたベースと組む」。ジャズ・ピアノの職人と呼ばれる範疇のジャズ・ピアニストは、ベーシストを選ぶのかもしれませんね。確かにそうかもな。ビル・エバンスにスコット・ラファロ。ハービー・ハンコックにロン・カーター、チック・コリアにスタンリー・クラーク。レッド・ガーランドにポール・チェンバース等々。優れたジャズ・ピアニストの傍らには、相棒と呼ばれる優れたベーシストが必ず横に寄り添っている。

『Jazz Post』、訳すと「ジャズ詩人」。このアルバムでのトミフラのピアノの語り口は確かに「詩的」。このアルバム・タイトルって、なかなかに「言い得て妙」である。

 

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