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2018年11月15日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・106

ジャズはシンプルなアレンジが良い。シンプルなアレンジは即興演奏を際立たせる。人工的なアレンジがゴテゴテしたジャズは、ジャズの本質である即興演奏が際立たない。シンプルなアレンジだからこそ、それぞれのジャズメンの楽器プレイが良く聴き取れ、その特徴が手に取るように判る。そういう意味で、即興演奏を楽しむには、シンプルなアレンジが良い。

Booker Ervin『The Book Cooks』(写真左)。1960年4月6日の録音。ちなみにパーソネルは、Booker Ervin (ts), Zoot Sims (ts), Tommy Turrentine (tp), Tommy Flanagan (p), George Tucker (b), Dannie Richmond (ds)。ベツレヘム・レーベルからのリリース。このなかなか興味深い組合せは期待が膨らむ。リーダーのブッカー・アーヴィンのテナーに、ズート・シムズのテナーがパートナー。

ジョージ・タッカーのベースとダニー・リッチモンドのドラムが意外とプログレッシブ。冒頭の「The Blue Book」を聴けばそれが良く判る。冒頭、いきなりタッカーのベース・ソロから始まる。このベース・ソロのラインが斬新。このベース・ソロに導かれるように、フロントのサックス2本のユニゾンがドーンと迫ってくる。バックでリッチモンドのドラムがシンプルに絡む。アレンジなど、殆ど施されていない。最低限の決め事だけで、この即興性の高さ。
 

The_book_cooks

 
アドリブ部に入って、トミフラのピアノが絶品。ハードバップの時の流麗で小粋なフレーズは全く聴くことが出来ない。アドリブ・フレーズはかなりプログレッシブ。これがトミフラのピアノか、と思わず感心する。さすが燻し銀のジャズ・ピアノ職人。何時になくモーダルな展開で新しい響きが魅力的。このプログレッシブなトミフラのピアノを受けて、トミタレのトランペットも何時になくモーダルに傾く。これがまた良い。冒頭の「The Blue Book」1曲で、この盤の魅力を十分に確認することが出来る。

主役のテナー2本のパフォーマンスは申し分無い。どちらのテナーもそれぞれの個性をふんだんに振り撒いていて、聴いていてとても楽しい。この盤には、特にリーダーのアーヴィンの個性が実に良く出ている。太くてブルージーで大らかなテナー。それでいて、ややアブストラクトでモーダルで予測不能なフレーズの飛び方が実にユニーク。そこに、オーソドックスなテナーのズートが絡む。アーヴィンとズートの対比。これが、この盤の最大の聴きどころ。

ベツレヘム・レーベルって不思議なレーベルで、録音された演奏は垢抜けないところが残るのだが、演奏自体は意外とプログレッシブなものが多い。この「垢抜けない」ところがこのレーベルの特徴だと思っていて、他のレーベルの様な、強烈なプロデュース力は感じられない。それでも、音はしっかりと太く、ジャジーなところが不思議。あまり人手に頼らず、自然でシンプルな演奏を基本とするところが良い結果を生んでいるのだろう。ジャズにオーバー・プロデュースは御法度である。

 
 

東日本大震災から7年8ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年12月22日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・61

ジャズはやっぱりライブだろう。即興演奏が個性のジャズである。やはり、一期一会のライブ演奏が一番、ジャズを感じることが出来る。ライブ演奏を体感するには、ライブスポットやコンサートに出かける必要があるのだが、仕事を持っている以上、そんなに時間の自由は無い。

そうすると、ライブ盤の存在が実に貴重な存在になる。ライブの雰囲気や内容を追体験できるライブ盤は、とても大切な存在である。『Jazz At the Santa Monica Civic '72』(写真)。ジャズの白眉のライブ盤の一枚である。

キーマンは「ノーマン・グランツ」。ジャズ界の敏腕プロデューサーで、1940〜50年代のジャズシーンは、この人抜きには語れない。スイング時代から継続されるビッグバンドやジャズ・ボーカルなど、ベーシックなモダン・ジャズの隆盛はグランツ抜きには語れない。そんなグランツ、1960年代には、フリー・ジャズが台頭した米国ジャズ・シーンに愛想を尽かし、欧州に移住。

グランツのジャズは「明るく楽しいエンタテインメント」。眉間にしわをよせた様な、小難しいフリー・ジャズなどとは相容れ無い。しかしながら、フリー・ジャズが迷走を始めた1970年代初頭から、片隅に追いやられていたベテラン・ジャズメンたちが復権を果たす訳だが、それにひと役かったのが、グランツがジャズシーンへ復帰して創設したレーベル「Pablo」。

1972年8月、グランツは西海岸のサンタモニカ・シビック・オーティトリアムで、JATP復活のコンサートを大々的に行った。その時の模様をライブ録音したアルバムが、この『Jazz At the Santa Monica Civic '72』。メインアクトはカウント・ベイシー・オーケストラ、オスカー・ピーターソン・トリオ、エラ・フィッツジェラルド、トミー・フラナガン・トリオ(エラの伴奏を担当)。
 

Jazz_at_the_santa_monica_civic_72

 
すっごく良い雰囲気のジャズ演奏が全編に渡って展開される。どの演奏をとっても「モダン・ジャズ」なのだ。どの演奏にもエンタテインメント漂い、モダンでダイナミックでポップ。聴いていて単純に楽しい。全く小難しく無い。

全編2時間35分、ジャズの良いところがギッシリとこのライブ盤に詰まっている。どこから聴いても「モダン・ジャズ」。しかも、演奏のレベルは高度。テクニックも優秀。それでもそれが耳につくことは無い。ただただ聴いていて楽しい。LP時代は、LP3枚組のボックス・アルバムとして発売された。

LPの1〜2枚目には、カウント・ベイシー・オーケストラやオスカー・ピーターソン等が収録されていて、これはこれでとってもポップで楽しいのだが、とりわけ、その内容が素晴らしいのが、3枚目のエラ・フィッツジェラルド。カウント・ベイシー・オーケストラ+トミー・フラナガン・トリオという豪華なバックを従えて、歌いまくるエラはとても素敵だ。ポップで楽しいエラ。僕はこのライブ盤でエラを見直した。

ただ単に部屋で流しているだけで、ジャズの良いところが追体験できる。ライブ盤として白眉の出来。「ジャズを聴かせて」と要求されたら、この盤をかける。逆にこのライブ盤を聴いて、ジャズを感じることが出来なかったら、他の何を聴いても、その人はジャズを感じることは出来ないだろう。このライブ盤には「モダン・ジャズ」がギッシリと詰まっている。

 
 

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2017年11月 9日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・91

1970年代のジャズは意外と面白い。ハードバップ期を生き抜いた一流ジャズメン達が「えっ、こんな演奏していたん」と感心してしまう様なアルバムが結構ある。1970年代のジャズ、電気楽器の活用が当たり前になった時代。電気楽器を活かして、クロスオーバーからフュージョン・ジャズが流行る。

しかし、面白いのはクロスオーバーやフュージョン・ジャズでは無い。1970年代のメインストリーム・ジャズが面白い。当時、ジャズと言えば、クロスオーバーからフュージョン・ジャズがメイン。それでも、メンストリーム・ジャズは生き残る。ハードバップ時代を生き抜いて来た、今ではレジェンドと呼ばれる一流ジャズメンの中で、メインストリーム・ジャズに留まったジャズメンの沢山いる。

例えば、トミー・フラナガン(Tommy Franagan)。燻し銀ピアニスト、名盤請負人、などと呼ばれた、レジェンド級のピアニストである。フラナガンは、クロスオーバーからフュージョン・ジャズの時代にも、頑なにメインストリーム・ジャズを貫き通した。そんなフラナガン、面白い内容の盤がある。
 

Something_borrowed_something_blue

 
Tommy Franagan『Something Borrowed, Something Blue』(写真左)。1978年1月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p, el-p), Keter Betts (b), Jimmie Smith (ds)。演奏フォーマットは「ピアノ・トリオ」。フラナガンの十八番。フラナガンがメインの場合は「ピアノ・トリオ」に限る。フラガナンのピアノが映える。フロント楽器があると駄目だ。フラナガンは極上の伴奏に回ってしまう。

この盤の面白いところは、フラガナンが電気ピアノを弾いているところ。フラガナンがローズを弾いている。これが意外と「イケる」。2曲目「Good Bait」を聴けば判る。フラガナンの「間」でエレピを弾く。フラナガンならでは、のエレピに仕上がっているのが面白い。一流と呼ばれるジャズメンは何を弾いても一流なんですね。

勿論、残りの曲はアコピのトリオ演奏なんですが、これがまた素晴らしい。もともとフラガナンはバリバリのバップ・ピアノなんですが、この盤でのアコピは完璧に「バップ・ピアノ」。確かなタッチでバンバン弾いてます。よって、この盤、フラナガンがエレピとアコピを弾きまくっている、意外と珍しい盤です。好盤です。

 
 

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2016年9月17日 (土曜日)

ジャズ喫茶で流したい・88

今日は朝から夏が戻って来た様な、陽射しの強い暑い日となったが、時は9月、いよいよ秋の気配がそこはかとなく漂う季節となってきた。部屋の中でジッとしている分には、暑さや湿度でイライラすることは無くなった。季節的にも、そろそろ純ジャズに耳を傾けるに良いシーズンになってきたと言える。

純ジャズというもの、裾野は広く、しっかりと地に足着けてその時の時代時代で、それぞれ確実な成果を残している。決して、1950年代のものだけでは無い。フリーやモード、ファンキーなど、ジャズの多様化の1960年代には1960年代の、クロスオーバーやフュージョン全盛の1970年代には1970年代の「純ジャズの成果」がしっかりと残っている。

ということで、ジャズというもの、アルバムの内容を実際に聴くこと無く、録音年やリリース時期だけで、そのアルバムの内容を判断するということは決して無い。やはり、ジャズのアルバムというものは「聴いてみてなんぼ」のものである。他人の評価や意見だけで、そのアルバムの良し悪しを判断するものでは無いなあ、とつくづく思う。

例えばこんなアルバムがある。Tommy Flanagan & Kenny Burrell『Beyond The Bluebird』(写真左)。1990年4月、オランダのMonsterにあるスタジオ44での録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Kenny Burrell (g), George Mraz (b), Lewis Nash (ds)。なんか、パーソネルを見ただけで、出てくることが想像出来る、充実したパーソネルですね。
 

Tommy_flanagan_beyond_the_blue_bird

 
録音当時は、純ジャズ復古の時代。若手中心にネオ・ハードバップが台頭した時代。そんな時代に、こんな純然とした「ハードバップ」なアルバムが録音され、リリースされる。なんてジャズって懐深く裾野の広い、流行に左右されない音楽ジャンルなんだろう、と改めて感心する。

パーソネルを見るだけで、上質の典雅なハーバップな演奏が展開されるのは十分に予想できるのだが、その予想に違わぬ、素晴らしい極上のハードバップ演奏が続々と展開される。それぞれのメンバーの演奏テクニックも優秀、グループ・サウンドとしての纏まりも良い。しっかりとリハーサルを積んだ、誠実なハードバップ演奏が記録されている。

しっかりと落ち着いた、決して揺らぐことの無い演奏トーン。落ち着いてはいるが躍動感がしっかりとしていて、ジャズとしての聴き心地が実に良い。加えて、リズム&ビートが秀逸。さすが、ムラーツとナッシュのリズム・セクションである。

フロントの二人、ピアノのトミフラとギターのバレル、どちらも申し分無い。使い古された形容ではあるが、敢えてここでは使いたい、「燻し銀のような」アドリブ・ライン。そこはかとなくファンクネス漂い、音の輪郭は明快。これだけ判り易い旋律はなかなか無い。

しっとりとした落ち着きと躍動感が同居する、良い内容のカルテット構成のアルバムです。ケニー・バレルのギターとトミフラ・トリオとの相性が抜群で、静かな部屋の中で、ズッと聴いていたくなるような、そんな趣味の良い、典雅な内容のアルバムです。

 
 

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2015年8月 5日 (水曜日)

実に粋なギターアルバムである

暑い。酷暑である。たまらない。我慢できない。でも、かといって騒いだからと言って暑さが和らぐ訳では無い。あと1ヶ月もすれば、きっと少しは涼しくなっている。

ということで、暑いからと言って、ジャズを聴かないということは無い。なんせ我々にはエアコンという文明の利器がある。エアコンの効いた部屋の中では、十分にジャズは聴ける。というか、意外とエアコンの効いた静かな部屋の中で聴くジャズって、なかなか良い感じなのだ。

今日は相当久し振りにこのアルバムを聴いた。Kenny Burrell『Blue Moods』(写真)。渋い渋いジャズ・ギター中心のアルバム。1957年2月の録音。初出の時のアルバムタイトルは『Kenny Burrell』。いわゆるデビュー盤っていうことかな。 『Blue Moods』というタイトルは、このアルバムがリイシューされた時に付けられたタイトル。

太く明確でブルージーで黒いギターのケニー・バレル。ファンクネスたっぷりのアーバンな雰囲気濃厚なジャズ・ギター。むっちゃ粋であり、むっちゃムーディーである。冒頭の「Don't Cry Baby」から聴き進めていくにつれ、バレルのギターの音色とフレーズに惚れ惚れする。
 

Kenny_burrell_blue_moods  

 
ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Cecil Payne (bs), Tommy Flanagan (p), Doug Watkins (b), Elvin Jones (ds)。今から思えば凄いメンバーだ。特に、バリトン・サックスのセシル・ペインの参加がユニークである。何を狙ってのバリトン・サックスの参入なのかは良く判らないんだけど(笑)。

名盤請負人の誉れ高い「いぶし銀ピアニスト」、トミー・フラナガンがいる。太っとくしなるような「しなやか」ベースのダグ・ワトキンス。そして、ポリリズムとはこれだ的なドラミングが素敵なエルビン・ジョーンズ。このリズム・セクションが凄い。実に躍動感溢れる、硬軟自在、変幻自在、遅速自在な柔軟性溢れるリズム&ビートを繰り出す。

このリズム・セクションを従えてのケニー・バレルのギターである。悪かろう筈が無い。とっても素敵な「ひととき」を提供してくれる。至高の5曲「Don't Cry Baby」「Drum Boogie」「Strictly Confidential」「All of You」「Perception」の37分弱があっと言う間である。

録音時期は1957年。ハードバップの最盛期。そんな充実した環境の中で、実に趣味の良い、実に粋なギターアルバムがリリースされていた。なかなかジャズ紹介本や入門本には載らないアルバムであるが、これは好盤である。初心者からベテランまでジャズ者のあらゆる方々にお勧めです。

 
 

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2015年3月31日 (火曜日)

こんなアルバムあったんや・42

ジャケットを見てもピンとこない。そう、僕はこのアルバムの存在を知らなかった。Tommy Flanagan『Positive Intensity』(写真左)。邦題は『白熱』。CBS/Sonyからリリースされたトリオ盤である。

1976年1月と10月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Ron Carter (b), Roy Haynes (ds)。面白い組合せだ。1970年代後半、CBS/Sonyからのリリースで、ベースがロンとくれば、ドラムはトニーなんだが、このアルバムは違う。ロイ・ヘインズである。

収録曲は全10曲。ロン、トミフラ、そして、プロデューサーのテオ・マセロの自作曲3曲以外、残りの7曲はスタンダード曲。フラナガンの自作曲は「Verdande」。かのフラナガンの有名盤『Overseas』からの再演である。これは興味津々である。

このトリオ盤を聴き通して感じるのは、ロイ・ヘインズの元気のよいドラミング。とにかくバッシャバッシャと叩きまくる。1970年代後半、商業ロックが幅を効かせていた時代。ジャズもリズム・セクションがガンガンにいってもおかしくない時代。これはこれで時代を感じるドラミングではある。

もともと、トミフラ(トミー・フラナガン)はバップ・ピアニストである。いぶし銀の様なサイドメンでのプレイが良い、トミフラはサイドメンとしてより輝く、などと誤解を生むような評価もあったが、トミフラはバップ・ピアニストである。ガンガンと歯切れの良いタッチで、バリバリ弾きまくるのがトミフラのスタイル。
 

Positive_intensity

 
そして、当然、リーダー作の場合は、トミフラはガンガン前へ出る。そして、トミフラはアドリブ・フレーズが多彩でバリエーションが豊か。トミフラが弾いている以上、アドリブ・フレーズで飽きることは無い。特に、スタンダード曲の場合にその傾向が強い。よって、トミフラはスタンダード曲を題材とする時、よりそのアドリブが惹き立つ。

このアルバム『白熱』でも、そのトミフラの個性は際立っている。そして、このアルバムでのロンのベースはなかなか良い。よく話題になる、ロンのベースのピッチもまずまず合っていて、ロンのアドリブ・フレーズが小気味よく響く。

僕はトミフラがバリバリ弾きまくっている分、ロイ・ヘインズの元気なドラミングは気にならない。このアルバムは、このロイ・ヘインズの元気なドラミングを良しとするか、駄目とするかで、評価が分かれるだろう。この盤でのトミフラの出来は良い。1970年代後半独特のトリオ盤として、僕はこの盤が気に入っている。

ジャケットのデザインは「やっつけ感」が満載で、感心できる出来では無い。このジャケットだと触手は伸びないだろう。このアルバムの内容を知ってこそ、このアルバムには触手が伸びる。

 
 

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2015年1月13日 (火曜日)

ピアノ・トリオの代表的名盤・43

ジャズというジャンルの音楽を聴き始めて約40年になる。よくまあ飽きずに聴いてきたなあ、と思うし、それだけ、ジャズは裾野が広くて奥が深いということになる。とにかく飽きない、というか、毎回毎回、新しい発見というか、新しい感覚があって面白い。

そんなジャズ者ベテランにも、ジャズ者初心者の時代が絶対にある。いきなり、ジャズを聴き始めて、一朝一夕にジャズ者ベテランになる訳が無い。今から思えば、ジャズ者初心者の頃に聴いたら、もっと早くジャズに親しめたのになあ、と思うアルバムがある。

そんなジャズ者初心者向けのジャズ盤が幾枚かある。時折、我がバーチャル音楽喫茶『松和』でもかけるアルバムである。そのアルバムとは、The Super Jazz Trio『The Standard』(写真左)。1980年2月の録音。ちなみにパーソネルは、Tommy Flanagan (p), Reggie Workman (b), Joe Chambers (ds) 。

フラガナンをリーダーにした、企画型のピアノ・トリオである。スーパー・ジャズ・トリオなんていう、凄い「ベタ」なバンド名が付いているが気にしないでおこう。収録曲を見渡せば、全編通して超有名曲ばかりが続く「凄まじい選曲」。これは、硬派なジャズ者ベテランの方々から不評を買いそうな「問題盤」である(笑)。

まあ、確かに、硬派なジャズ者ベテランの方々からは、「こんな超スタンダード曲ばかりのピアノ・トリオ盤なんて、今更聴けるかい」というブーイングが聴こえて来そうだ。でもね、ジャズ者初心者って何時の時代にも存在するし、ジャズ者ベテランの方々だって、必ずジャズ者初心者の時代があったはず。
 

The_super_jazz_trio_the_standard

 
こんな超スタンダード曲ばかりのピアノ・トリオ盤って、ジャズ者初心者にとっては助かるんですよね。ジャズを聴き進める上で、超スタンダード曲というのは「必須科目」みたいなもので、超スタンダード曲に馴れ親しむには、ジャズ者初心者にとっては早ければ早いほど良い。

確かに、超スタンダード曲を詰め込んだお気楽な出来の悪い企画盤も無いでは無いが、このアルバムは違う。内容も充実していて、聴き応え十分。このアルバムは、ジャズ者初心者の方々に最適なピアノ・トリオ盤。加えて、ジャズ者ベテランの方々にも聴いて貰いたい「超スタンダード充実盤」である。 

「いぶし銀の様なピアニスト」とか「名盤請負サイドメン」とか評されるが、僕はそうは捉えていない。ピアニストのトミー・フラナガンは「ハード・バッパーなピアニスト」である。メリハリ効いたタッチで、グイグイ弾き倒す、そんなピアニストである。だからこそ、バラード演奏が繊細で美しく映えるのだ。

そんな「ハード・バッパーなピアニスト」を支えるベースのレジー・ワークマンが、これまた「凄い」。テクニックを駆使して、ブンブン低音響かせ弾きまくる弾きまくる。そして、ジョー・チェンバースも、これまた「凄い」。テクニックを駆使して、コンコンドンドコ低音響かせ叩きまくる叩きまくる。

このピアノ・トリオ盤、企画ものでありながら、ジャズ者ベテランの耳にも十分に響く「優れもの盤」だと思います。とにかく聴き易くて、かつ退屈しない。内容的にもかなり充実していて聴き応え十分。良いピアノ・トリオ盤です。ジャケットも雰囲気があって良し。

 
 

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2014年6月17日 (火曜日)

一息つきたくなる時に聴くジャズ

いろいろと様々なフォーマット、様々なスタイルのジャズ盤を聴く。アコースティックもあれば、エレクトリックもある。それぞれにそれぞれの良さがある。そして、様々な種類のジャズを聴いて疲れて、ホッと一息つきたくなる時がある。

そんな時は、やっぱり1950年代のハードバップのアルバムに戻るのが一番。やっぱり、ハードバップ黄金時代のアルバムの音というのは、聴いていてホッとするし、聴いていてしっかりと癒される。ジャズの音をイメージする時、やっぱりハードバップの音が一番にしっくりくる。

今日の「ホッと一息つきたくなる時に聴くジャズ」は、Tommy Flanagan『The Cats』(写真左)。1957年4月の録音になる。ちなみにパーソネルは、Idrees Sulieman (tp), John Coltrane (ts), Tommy Flanagan (p), Kenny Burrell (g), Doug Watkins (b), Louis Hayes (ds)。トランペットとテナーの2管+ギターがフロントのセクステット構成。

このアルバムは、プレスティッジ・レーベルお得意のジャム・セッション構成。セクステットとはいえ、その日の急造セクステット。プレスティッジだから、ギャラをケチって、お得意のほとんどリハーサル無しの本番演奏。リハーサル無しのいきなり本番なので、セクステット構成は危険。このアルバムは大丈夫なのか、と不安になる。

しかし、そこはジャズの面白いところ。意外と皆、健闘しているのだ。なかなか上手くまとまったハードバップ演奏。フラナガンのリーダーシップの成せる技である。フラナガンは「名脇役」とか「いぶし銀のバッキング」など、バックに控えて、しっかり支えるという縁の下の力持ち的な印象が流布しているが、どうして、リーダーに立った時のバンド全体の統率力は相当なものがあると、僕は睨んでいる。
 

Tommy_flanagan_cats

 
名脇役として「名盤請負人」とか言われるが、意外とこのプレスティッジなどのジャム・セッション形式では、寄せ集めのメンバーの中で、しっかりとリーダシップを発揮しての「名盤請負人」なのではないだろうか。そんなことを想起させる、このアルバム『The Cats』の内容である。

全編、典型的なハードバップの内容。適度にラフなのはご愛嬌。寄せ集めのいきなりジャム・セッションだから、テンションが多少緩むのは仕方の無いこと。アレンジも単純なもの。それも個々の演奏力でカバー。そう、このアルバムは、参加ジャズメンの個々の演奏力を楽しむアルバムである。

しかし、そんな中、トランペットのIdrees Sulieman(アイドリース・シュリーマン)だけが「置いてきぼり」。テクニックは中庸、アドリブ・ラインは凡庸。音だけはトランペットらしい、輝く様なブラスの響きがあるが、テクニックがなあ。このシュリーマンのトランペットだけが、やけに音が大きいがフレーズは退屈。

コルトレーンはさすが音が大きく、テクニックもあるが、演奏内容としては中程度。耳をそばだてるほどでは無い。ケニー・バレルのギターがなかなか洒落ている。アドリブ・フレーズは短めだが、メンバーの中で、一番イマージネーション溢れるプレイを展開している。

リーダーのフラナガンのピアノは申し分無いです。大向こうを張っ大袈裟な展開とは全く無縁なフラナガンなんですが、このアルバムでも、じっくりと渋いアドリブを聴かせてくれます。おおっと耳をそばだてるような、一期一会なフレーズはそうそうありませんが、全編に渡って、落ち着いた小粋なアドリブを聴かせてくれます。

ダグ・ワトキンスもベースも良し、ルイ・ヘイズのドラミングも堅調。ピアノのフラナガンと併せて、このアルバムのリズム・セクションは優秀です。意外と、このアルバム『The Cats』は、ピアノ+ベース+ピアノのリズム・セクションを楽しむのが正解のアルバムなのかもしれませんね。

 
 

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2013年10月10日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・27

ジャズ盤とは不思議なところがあって、どうしてか理由は良く判らないのだが、ずっと昔にお蔵入りした録音が、ある日突然、陽の目を見ることがある。

例えば、トミー・フラナガン(Tommy Flanagan)とジャッキー・バイアード(Jaki Byard)のピアノの名手2人が録音した『The Magic Of 2』(写真左)などがその好例である。

このピアノ・デュオ盤、録音は1982年2月の録音。1970〜80年代初頭、アメリカ西海岸のジャズ・ライヴの拠点であったキーストン・コーナーでの貴重な未発表音源。そんな魅力的な未発表音源が、突如、今年の2013年3月になってリリースされた。まさに「こんなアルバムあったんや」である(笑)。

トミー・フラナガンは、ハード・バップ時代から活躍したピアニスト。メロディアスでバップなピアノが個性。数々の名盤にピアニストとして名を連ね、「名盤請負人」なる異名を持つ。また、歌伴プレイが絶品で、あのエラ・フィッツジェラルドのバックを長年務めた。

ジャッキー・バイアードは、マルチ・リード奏者としての顔も持ち、チャールス・ミンガスの下で頭角を現したピアニスト。伝統的なアプローチをベースに、今までのジャズ・ピアノの様々なスタイルを織り交ぜ、自由自在な展開が個性。

フラガナンとバイアード、伝統的なアプローチをベースとしたところは同じだが、フラガナンは「メロディアスで端正」、バイアードは「様々なスタイルを持った自由自在な展開」と、やや正反対の個性を持つ、正統派ピアニストである。
 

The_magic_of_2

 
この2人が丁々発止とピアノ・デュオでやりあうのだ。面白く、楽しいに決まってる。確かに、このデュオ・ライヴ盤『The Magic Of 2』を聴くと、本当に楽しい雰囲気がビンビンに伝わって来る。キーストンコーナーでリアルに聴いている聴衆も、歓声を上げたり温かい拍手を送ったりと、とても楽しそう。

各々の個性を尊重しお互いを立てつつ、それぞれのテクニック溢れる個性的な展開が、実に美しい対比を生んでいて、聴いていてとても楽しいライヴ盤に仕上がっています。

二人とも、ハードバップな伝統的なアプローチをベースにしており、二人が連弾すると、リズム&ビートが増幅されて、ダイナミックなドライブ感が生まれているところが見事。

フラナガン、バイアード共にそれぞれ3曲ずつソロ・ピアノも披露していますが、これまた、これが絶品。特に、バイアードのソロ・ピアノは、僕はこの盤が初めての体験で、なかなか興味深いソロ・ピアノを堪能しました。フラガナンのソロ・ピアノは当然「絶品」です。

フラガナンとバイアード、息の合ったプレイで、聴き応え十分です。正式なライヴ録音では無かったらしく、音は「中の下」で、クリアな雰囲気に欠けるところがありますが、フラガナンとバイアードのデュオ演奏の楽しさが、その「音の悪さ」をカバーしてくれています。ジャズ・ピアノ好きのジャズ者中級者以上の方々にまずはお勧めかな。

 
 

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2013年6月13日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・42

こんなに「小粋でハードボイルド」なピアノ・トリオは、是非ともジャズ喫茶で流したい。

このアルバムは、1975年2月、エラ・フィッツジェラルドの伴奏メンバーとして来日したトミー・ フラナガンを起用して吹き込まれたもの。Tommy Flanagan『Tokyo Recital』(写真左)。

フラナガンとして、初の日本でのレコーディングという点で、また、彼のリーダー作としては、1960年に吹き込まれたムーズヴィル盤以来(なんと15年ぶり)、という意味でも貴重なアルバムである。ちなみにパーソネルは、Keter Betts (b), Bobby Durham (ds), Tommy Flanagan (p)。

フラナガンと言えば落ち着きのある、いぶし銀のような「洒落た面」と、良くスイングした趣味の良い「ハードでダイナミックな面」を併せ持つピアニストである。とにかく、絵に描いたような「隠れ名手」的で「小粋なハードボイルド」的な、実に趣味の良いピアニストなのだ。

良くジャズの入門書では「サイドマンとして彼のピアノは輝く」なんて書いてあることが多いが、とんでもない。このアルバムを聴いてみれば良く判る。やはり、彼もまた、リーダーアルバムで最高に輝くのだ。
 

Flanagan_tokyo_recital_2

 
このアルバムの1曲目と2曲目で彼の特質が良く判る。1曲目の「All Day Long」では、彼のほど良くスイングした、趣味の良い「ハードでダイナミックな面」が良く出ており、のっけから実に楽しい、ノリの良いピアノ・トリオを聴かせてくれる。

2曲目の「UMMG」は打って変わって、味わいのある落ち着きのある、いぶし銀のような「洒落た面」が堪能できる。このアルバムは、この彼の持つ相反した2つの面が、バランス良く配置された名盤であると僕は思う。

サイドマンの貢献度も高く、ドラムスのボビー・ダーハムは、フラナガンの2つの面「ノリの良い面」と「落ち着きのある面」それぞれに合わせて、柔軟なドラミングでバッキングを確かなものにし、ベースのキーター・ベッツは、堅くて野太い、リズム感満載のベースでスイング感を盛り上げる。

録音も良く、選曲もありきたりのジャズ・スタンダードのオンパレードではなく、「デューク・エリントン=ビリー・ストレイホーン作品集」というコンセプトに則り、ちょっと小粋な曲や隠れた名曲を随所に散りばめ、とても楽しく、かつ、小粋なアルバムに仕上がっていて立派だ。

このようなアルバムが、日本での録音で生まれたことは誇らしいことだ。なにはともあれ、理屈抜きに楽めるアルバムです。

 
 

大震災から2年3ヶ月。決して忘れない。まだ2年。常に関与し続ける。

がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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