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2016年8月30日 (火曜日)

成熟仕切った大人のフュージョン

このアルバムは、フォープレイの3枚目のアルバムになる。これだけのフュージョン・ジャズの玄人職人集団でも、ちょっとマンネリ気味な雰囲気が漂う、良く言えば「実が落ちる寸前の成熟しきった状態」。とにかく、テクニック抜群、歌心抜群、アレンジ抜群。もうこれ以上の発展はあり得ないほどの成熟度である。

Fourplay『Elixir』(写真左)。1995年のリリース。フュージョン・ジャズの玄人職人集団「フォープレイ」のパーソネルは、Bob James (key), Nathan East (b), Harvey Mason (ds), Lee Ritenour (g)。何遍みても凄いメンバーやなあ。1970年代から始まったフュージョン・ジャズの究極の「進化形」である。

このフォープレイの音世界を「スムース・ジャズ」と評する方もいるが、僕にとっては「スムース・ジャズ」では無く、あくまで「フュージョン・ジャズ」。聴き心地優先、耳当たり優先のソフト&メロウな演奏というよりは、テクニックに優れ、しっかりとリズム&ビートが入っていて、クールだけれど熱い演奏。やはりこれは「フュージョン・ジャズ」の進化形だろう。
 

Elixir_1

 
ギターがフロントのカルテット構成ではあるが、これだけのフュージョン・ジャズの玄人職人集団であるが故、それぞれが表現できる全てを出し尽くして、さすがにアルバムも3枚目になると、フロント楽器の部分でマンネリ感が出てきてしまうのは仕方のないことである。でも、演奏内容は超一級品なんですよ。他のフュージョン・バンドには出来ない演奏の数々がこのアルバムに詰まっています。

このアルバムを聴き通して改めて思う。このフォープレイの音世界は唯一無二であろう。アーバンな雰囲気ではあるが、ファンクネスは控えめ、ベッタベタ、コッテコテな展開にはならない。クールで切れ味良く、ジックリ聴けば聴くほど判る「ハイ・テクニックな展開」。全くもってアダルトな雰囲気ではあるが、絶対に懐古趣味な展開にならない。音の質は時代の先端をいくもの。

これだけのスーパースター集団である。3枚もアルバムを出せばマンネリ感が漂い、いきなり解散して、ハイお終い、という有りがちな展開が見え隠れするのだが、このフォープレイはそうはならない。次作ではマンネリ感打破の為、思い切った手を打つ。フロント楽器であるギタリストの交代である。やはり、フュージョン・ジャズの玄人職人集団。やることが違う。

 
 

震災から5年5ヶ月。決して忘れない。まだ5年5ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2015年12月15日 (火曜日)

真の「大人のフュージョン」

こういうアルバムを聴かされると「流石やなあ」と心から感心してしまう。そのバンドの面子を見渡すと、Bob James (key), Lee Ritenour (g), Nathan East (b), Harvey Mason (ds)。フュージョン・ジャズの立役者、レジェンドと呼んで良い強者ばかりがズラリと並ぶ。これは凄いなあ、と改めて感心する。

そのバンドとは「Fourplay(フォープレイ)」。1990年、ボブ・ジェームスのリーダー作「グランド・ピアノ・キャニオン」にて、4人揃ってセッションを行い意気投合しグループを結成。翌年にセルフ・タイトルでデビュー(2014年12月17日のブログ参照・左をクリック)。 http://v-matsuwa.cocolog-nifty.com/blog/2014/12/post-675e.html

このデビュー盤は素晴らしい内容だった。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のフュージョン・ジャズである。とにかく、演奏のレベル、テクニックが異常に高い。そして、フレーズの洗練度合いが高い。リズム&ビートも当時として新しい響き。いずれも1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズのレベルは軽く凌駕している。

こんな素晴らしいフュージョン盤を出して、メンバーがレジェンドと呼んで良いフュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人がメンバーである。2作目を出そうとするかなあ、と懐疑的に見ていた。次のアルバムのコンセプトが描きにくいのでは、と危惧した。そして、それならば「や〜めた」といきなり解散するのでは、と思って見ていたら、このセカンド盤がリリースされた。

セカンド盤とは『Between the Sheets』(写真左)。1993年のリリース。パーソネルがデビュー盤と同じ。このフュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人が、Fourplayとして2枚目のアルバムを出すとは思わなかった。嬉しい誤算というか、嬉しい不意打ちだった。で、このアルバム、更なるフュージョン・ジャズの進化形を提示してくれたのか、と思いきや、その予想は覆された。
 

Between_the_sheets

 
この『Between the Sheets』は、上質のスムース・ジャズである。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のスムース・ジャズである。レジェンドと呼んで良いフュージョン・ジャズの重鎮達が本気で取り組むと、これだけ上質で内容の濃いスムース・ジャズが創出される。そんなベテラン4人の矜持を強く感じさせてくれる、充実のセカンド盤である。

収録されたどの曲も、適度なテンションが張り巡らされ、ゆったりと歩くような余裕のリズム&ビートに乗って、決して速弾きでは無い、間と奥行きを活かした余裕のハイテク・フレーズが繰り出されている。丁々発止とやりあったり、悠然とフレンドリーにユニゾン&ハーモニーをかましたり、変幻自在、硬軟自在にスムースで印象的なフレーズを冷静にバッシバッシと叩き出して行く。

大向こうを張る大立ち回りがある訳では無い。どちらかと言えば地味で落ち着いた展開である。それでも、一度聴けば、また頭から聴き直したくなるような充実感がある。それだけ、内容的に充実し洗練され、かつ印象的な演奏が詰まっているんだろう。ちなみにボーカルは、Chaka KhanとPhillip Baileyがゲスト参加している。

真の「大人のフュージョン・ジャズ」。フュージョン・ジャズやスムース・ジャズなんてジャズじゃ無いという硬派なジャズ者の方々には絶対に受けないですが、往年のフュージョン・ジャズ者の方々でしたら、このアルバムは一聴の価値があるでしょう。オーディオ的にも良質なアルバムで、特にネイザン・イーストのベースの音が良好な音圧できめ細やか、クリアな低音が魅力的です。

 
 

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2015年6月 3日 (水曜日)

デジタル時代のボブ・ジェームス

さすがはボブ・ジェームスである。1983年のこのアルバムを聴けば、デジタルな機材をコントロールし、デジタルな楽器を使いながら、アナログな雰囲気を再構築し、それでいて、デジタルな個性をしっかりと表出している。

ボブ・ジェームスの限りないセンスを感じる。他のミュージシャンは、ロック、ジャズを問わず、アナログからデジタルへの移行に苦しんでいる。デジタルに手を染めて、ポシャっちゃったミュージシャンも数知れず。

特にキーボードは難しい。例えば、アナログ・シンセサイザーとデジタル・シンセサイザーでは音が全く違うし、アタックのタイミングも全く違う。音の太さも違う、響きも違う。アナログで培った個性が、デジタルでは全く輝かない。

さて、そんなボブ・ジェームスがデジタル機材をコントロールし、アナログ時代の個性を取り戻したアルバムが、Bob James『Foxie』(写真左)。1983年の作品。ジャケットが前作の「人骨のレントゲン写真」を使った驚きジャケから一変して「ポップかつセクシーなイメージ」に変わった。

この「ポップかつセクシーなイメージ」がこのアルバムの音世界を如実に表している。まず、冒頭の「Ludwig」が往年のボブ・ジェームスの雰囲気を再現している。この「Ludwig」とは、かの有名なベートーベン(Ludwig van Beethoven)のファーストネームから借用され、この「Ludwig」という曲は、様々なベートーベンの作品をコラージュして一曲に仕立て上げたもの。

イントロの「第9」の部分は判るんですがね〜(笑)。しかし、ボブ・ジェームスって、こういうクラシックの曲を素材として、フュージョン・ジャズに展開するのがとても上手い。アレンジの才が冴え渡る。そして、いつも感心するのだが、ボブ・ジェームスはシンセサイザーの扱いがとても上手い。
 

Foxie

 
シンセサイザーを扱わせたら、恐らく、ジャズの世界でいくと、チック・コリア、ジョー・ザビヌルに比肩するレベルである、と睨んでいる。特に、シンセサイザーをポップに扱わせたら、恐らく、ジャズ界一ではないか。

この冒頭の「Ludwig」を聴くと、アナログ時代の往年のボブ・ジェームスが、デジタル時代に甦って来たことを強く感じる。以降、2曲目の「Calaban」以降、どの曲にも、アナログ時代からのボブ・ジェームスの音の個性と手癖の個性が「そこここ」に散りばめられている。

当時サントリーのCMで使用されたという6曲目の「マルコポーロ」は、今の耳で聴いても良い出来な楽曲。単に、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズでは無い、時にハードな展開を見え隠れさせながら、独特の音世界の展開が楽しい。

CMで採用された曲だからといって、ゆめゆめ軽く聴くなかれ、である。さすが、ボブ・ジェームスは凡人では無かった。この1983 年リリースのアルバムを聴けば、その才能とセンスが只者で無いことが良く判る。

アナログからデジタルへの大変革にも耐え、ポジティブにイメージ・チェンジに成功。このアルバム以降、デジタルの世界の中で、ボブ・ジェームスの個性が様々な形態で展開されていく。

 
 

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2015年3月19日 (木曜日)

デジタル環境の中「復調の証」

時代は1980年代に入って、録音環境も録音機材もアナログからデジタルへとドラマチックに変化していく。この『Sign of the Times』では、そんなデジタルな世界での音作りに苦闘するボブ・ジェームスが見え隠れする。シンセサイザーもアナログからデジタルへ。音は洗練されてはいるが細くデリケートになる。

さて、次作のBob James『Hands Down』(写真左)ではどうなったのか。1982年のリリースになる。ボブ・ジェームス10作目のリーダー・アルバムなので指が10本のレントゲン写真。加えて、タッパンジー・レーベルを設立して、CBSに移籍後、7枚目のアルバムなので、指のレントゲン写真の上に薄っすら「7」の文字が浮かぶ。

パーソネルは大量になるので書かない。当時の名うてのフュージョン畑のミュージシャン総出といった風情のパーソネル。さすがは、フュージョン・ジャズの大御所ボブ・ジェームスである。曲によって、メンバーの構成をダイナミックに組み替えている。こんなことが出来るのは、一握りの超一流のミュージシャンに限られる。

さて、冒頭の「Spunky」、このブギーなフュージョン・ナンバーを聴けば、このアルバムでのボブ・ジェームスの好調さが良く判る。格好いいなあ。前作ぐらいから、シンセサイザーが目立つが、デジタル・シンセサイザーは音が細い。前作はそれが弱点だったんだが、今回の『Hands Down』ではその弱点もしっかりと克服されているところが凄い。
 

Hands_down

 
さすがはボブ・ジェームス、アレンジの妙で、デジタル・シンセの音の細さを克服して、クッキリとした音色として聴かせてくれる。これだけクッキリとした音色であれば問題無い。6曲目の「It's Only Me」などはシンセが演奏の中心で、テクノ・ポップなフュージョンという趣。シンセの音もデジタル臭さを克服しつつ、エッジの立った新しい時代のシンセ音を聴かせてくれる。

3曲目の「Shamboozie」も良い。ファンクネスが色濃く漂う、リズム&ビートが渦巻く、アーバン・フュージョン・チューンである。とにかくクールで爽快。ここでも、ボブ・ジェームスはフェンダー・ローズを上手く使って、デジタルチックな雰囲気を中和している。こういうアレンジはとにかく上手い。

このボブ・ジェームス10枚目のリーダー作『Hands Down』は、録音環境がデジタルに移行する中、ボブ・ジェームスがその卓越したアレンジ能力を発揮して、着実に復調していることを感じさせてくれる、なかなかの佳作だと思います。

ちなみに、ボートラが加わっている盤には、そのボートラに「Theme From "Star Trek"(スター・トレックのテーマ)」が入っている。スター・トレックにリアルタイムに接してきた僕達の世代にとっては、これがまた楽しい演奏。出だしのフレーズを聴くと、思わずニンマリしてしまう。

 
 

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2015年3月12日 (木曜日)

70年代Bob Jamesの集大成

ボブ・ジェームスのアナログ録音の雰囲気満載なアルバムの最後だろう。1980年のリリースになる。Bob James『H』(写真左)。リーダーでのスタジオ録音作の8作目。8作目だからアルバム・タイトルはアルファベットの8番目の「H」。タイトルが「H」で、ジャケットが「HOT DOG」。ちょっと無理があるなあ(笑)。

1980年と言えば、フュージョン・ジャズのピーク。トレンドはソフト&メロウ。この「H」は、ボブ・ジェームス流のソフト&メロウな盤である。いわゆる「ボブ・ジェームスの考えるソフト&メロウ」である。

その典型的な演奏が1曲目の「Snowbird Fantasy」。アコースティックなボブ・ジェームスが素晴らしい。アレンジも秀逸。従来、ボブ・ジェームスはブラスのアレンジが秀逸なのだが、この「Snowbird Fantasy」では更に秀逸。アナログ録音なブラス・アレンジの集大成。

2曲目「Shepherd's Song (From Haute-Auvergne)」以降、このアルバムには、アコースティックなボブ・ジェームス楽団の音が印象的に詰まっています。リズム・セクションはエレクトリックなんですが、このエレクトリックなリズム&ビートに乗って、アコピやアコギが乱舞します。このアコピやアコギの音が前面に押し出される、フィーチャーされるアレンジはさすがボブ・ジェームス。
 

Bob_james_h

 
ゲスト・ミュージシャンも、このボブ・ジェームスの秀逸なアレンジに乗って、いつになく吹きまくり、弾きまくる。Glover Washington,Jr.の流麗なソプラノサックス、そして、Hiram Bullockの飛び道具的なエレギが特に印象に残る。

そして、何よりも、このアルバムでのボブ・ジェームスのアコースティック・ピアノの音に耳を奪われる。もともと純ジャズな尖ったピアニストだったボブ・ジェームスなんですが、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズに転身していく中で、フェンダー・ローズやシンセサイザーの使い手として認知され、アコピ弾きのボブ・ジェームスは忘却の彼方へ。

しかし、このアルバムでは、ボブ・ジェームスのアコピが際立っている。この8枚目のリーダー作『H』は、ボブ・ジェームスのアコピを愛でることのできる優秀盤である。ボブ・ジェームスのアレンジについても、このアコースティック・ピアノを際立たせるアプローチがそこかしこに施されている。

1970年代ボブ・ジェームスの集大成的なアルバムです。リリース年も1980年と節目の年。アナログ録音の雰囲気満載なアルバムの最後を飾るアルバムで、次作の『Sign of the Times』からはデジタルな録音環境に挑んでいくことになります。

 
 

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2015年3月10日 (火曜日)

ファンキーなボブ・ジェームス

最近、タッパンジー・レーベルのボブ・ジェームスのアルバムが、廉価盤でリイシューされた。いやはや、僕にとっては待望のリイシューで、ボブ・ジェームスの9枚目のリーダー作以降をCDでコレクション出来るのだ。やっとである。

さて、久々のボブ・ジェームス。久々のBob James『Sign of the Times』(写真左)。ボブ・ジェームスの9枚目のリーダー作である。1981年のリリース。本作では全6曲中の半分にあたる3曲をロッド・テンパートンの曲を取り上げており、ボブ・ジェームスのアルバムの中でも、一番「ファンクネス」が前面に押し出されている盤となっている。

ボーカル入りの曲、コーラス入りの曲がフィーチャーされていて、とにかくファンキー。ボブ・ジェームスにはファンクネスは似合わない、と思っているが、確かに「らしくない」(笑)。しかし、ボブ・ジェームスのアレンジとキーボードがしっかりとそんなとっ散らかった「ファンキーな音」をグッと引き締めている。

時代は1980年代に入って、録音環境も録音機材もアナログからデジタルへとドラマチックに変化していく。この『Sign of the Times』では、そんなデジタルな世界での音作りに苦闘するボブ・ジェームスが見え隠れする。シンセサイザーもアナログからデジタルへ。音は洗練されてはいるが細くデリケートになる。
 

Sign_of_the_times

 
切れ味は良いが硬質で尖った音とエコーが、幾ばくかの違和感を持って展開される。デジタルの時代は、アナログの時代の様に脳天気に弾きまくれば良い時代では無くなった。よくよく計算して音を重ねないと、逆にアンサンブルが薄っぺらくなる。そうならないように、入念にボブ・ジェームスはアレンジする。

冒頭の「Hypnotique」のファンクネスに思わず狼狽えるが、曲が進むにつれ、ボブ・ジェームスならではの音世界になっていくので、ホッとする。ボブ・ジェームスならではの音世界って、ボブ・ジェームスのオリジナル曲なんですね。納得です。それでも、デジタルな雰囲気が色濃く漂っていて、1970年代フュージョン・ジャズは遠くなりにけり、という感慨にふけってしまう(笑)。

ロッド・テンパートンの曲で展開される、ボブ・ジェームスのファンクネスな音世界と、自作曲で展開されるボブ・ジェームスの従来からの音世界との対比が興味深い『Sign of the Times』です。ボブ・ジェームスの冒険心を感じる、チャレンジブルなアルバムだと思います。

 
 

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2014年12月17日 (水曜日)

フュージョン・ジャズは進化する

このアルバムを聴いて、僕は「うへ〜」と唸った。良い意味で心から感心したのだ。フォーマットはフュージョン・ジャズである。しかし、1970年代後半から1980年代前半、フュージョン・ジャズ全盛時代の音では無い。確実に進化している。

そのアルバムとは『FourPlay』(写真左)。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテランの4人で結成された、大人のフュージョン・ジャズ・グループ。その名も「FourPlay(フォープレイ)」。そのフォープレイのデビュー盤である。1991年のリリースになる。

そのフォープレイのオリジナル・メンバーは、Bob James (key), Nathan East (b), Harvey Mason (ds), Lee Ritenour (g) の4人。いずれも、フュージョン・ジャズの重鎮であり、人気ミュージシャンであり、キーマンである。

しかし、この4人のメンバーの名前を見ていると、ありきたりな、大物ミュージシャン同士の「やっつけ感」満載の企画型セッションでは無いのか、と警戒してしまう。耳当たりの良い、差し障りの無いフュージョン・ジャズを「昔の名前で出ています」状態でピロピロやって終わってしまうような、内容の薄い企画盤では無いかと思ってしまう。
 

Fourplay_album

 
しかし、このデビュー盤『FourPlay』は違った。フュージョン・ジャズの重鎮、ベテラン4人の入魂のフュージョン・ジャズである。とにかく、演奏のレベル、テクニックが異常に高い。そして、フレーズの洗練度合いが高い。リズム&ビートも当時として新しい響き。いずれも1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズのレベルは軽く凌駕している。

1991年のリリースなので、スムース・ジャズの範疇では無いのか、という声が聞こえるが、このアルバムの演奏を聴いてみると判るのだが、音と展開は、フュージョン・ジャズ独特のもの。決して、後のフュージョン・ジャズの発展形であるスムース・ジャズとは一線を画する。

このデビュー盤『FourPlay』を聴いて、フュージョン・ジャズは進化しているんやなあ、と感慨深く思った。フュージョン・ブームを学生時代、リアルタイムで体験した自分にとって、フュージョン・ジャズは過去のものだとばかり思っていた。スムース・ジャズに変化し、フュージョン・ジャズは過去のものになったと思い込んでいた。

しかし、この『FourPlay』の音を聴いてビックリ。僕は「うへ〜」と唸った。フュージョン・ジャズの音ではあるが、1970年代後半から1980年代前半のフュージョン・ジャズ全盛時代の音では無い。確実に、そして大胆に進化していたのだ。

 
 

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2014年7月28日 (月曜日)

駄作無しの職人芸的フュージョン

Fourplay『Esprit De Four』(写真左)。『エスプリ・ドゥ・フォー』は、フォープレイの13枚目のアルバム。2012年のリリースになる。

フォープレイは、ベテラン・フュージョン集団。この13枚目のアルバムでのパーソネルは、Bob James (key), Nathan East (b), Chuck Loeb (g,syn), Heavey Mason (ds,per,vib,syn)。ギタリストがラリー・カールトンよりチャック・ローブに交代してからの第2弾。

これだけ充実した、高テクニックで内容のあるフュージョン・ジャズを聴くと、フュージョン・ジャズはしっかりとした、アーティステックなジャズの演奏形態のひとつなんだなあ、と改めて感じ入ってしまう。まあ、メンバーがメンバーだけに、その出来は相当に良いものになる、と想像できるんだが、このフォープレイという集団は、それをいとも簡単そうに成し遂げてしまう。

とにかく、これだけのメンバーがしっかりと曲とアレンジを仕込んで、加えて、しっかりとリハーサルもするんだから、そりゃあ良いアルバムが出来るでしょう。でも、それを実際に実現してしまうところが、このベテラン・フュージョン集団の凄いところ。

このアルバムでは、ギターのチャック・ローブが大活躍。フォープレイの音世界は、ジャジーでブルージーな、いかにもジャズ、って感じの音世界とは正反対の、クリアでフォーキーでクロスオーバーな音世界が身上。チャック・ローブのギターがそんな音世界にピッタリ。このアルバムは、チャック・ローブの為にある様なアルバムだ。 
  

Esprit_de_four  

 
それでは、このアルバムにジャズ的な要素は無いのか。いやいや、それがあるんですね(笑)。表立って「ジャジーでブルージー」って感じを醸し出すのでは無く、演奏する音の端々で、そこはかとなく「ジャジーでブルージー」な雰囲気を漂わせる。そんな感じのネイザン・イーストのベースが憎い。そして、適度にラフなハービー・メイソンのドラムそのものが「ジャジーでブルージー」。

曲も良いが、メンバーそれぞれの楽器の演奏が素晴らしい。演奏の音それぞれをいろいろに楽しめる、感じ入る、感動する、そんな魅力的な演奏がギッシリ詰まったアルバムです。演奏自体を楽しむ、という面は「ジャズの原点」のひとつ。このベテラン・フュージョン集団は、やはり只者ではありません。駄作無しの職人芸的フュージョン。聴けば聴くほど味が出る。

これだけ優れた内容のフュージョン・ジャズを聴けば、1970年代から始まったフュージョン・ジャズも年を経る毎に進化して来たことが良く判る。フュージョンは今やしっかりとした、アーティステックなジャズの演奏形態のひとつである。フュージョン・ジャズを聴いて感じ入っていた自分が恥ずかしいなどというジャズ者の方々もいるが、アートとして音として楽しめれば、それはそれで良いのではないかと思う。

ボブ・ジェームスが東日本大震災の復興のために書き下ろした「Put Our Hearts Togather」を収録。歌手の松田聖子がゲスト参加したヴォーカル・ヴァージョンも収録しているが、ジャズとして聴くと出来はパッとしない。松田聖子のボーカルもジャズとして聴けば古風な佇まい。どうもこれは蛇足だろう。

 
 

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2013年12月23日 (月曜日)

フュージョンなXmas企画盤

さあ、いよいよ明日はクリスマス・イヴ。今年のクリスマス・シーズンは、今まで書き溜めた「クリスマス・ジャズ」のお話しを、大々的に蔵出ししてきましたが、今日がラストです。

昔から、フュージョンの世界には、優れたクリスマス特集のアルバムは少ないなあ、と思っていたのですが、その気になって探してみればあるもので、このアルバムなどは、なかなかの内容で、今でも愛聴しています。そのアルバムとは、Fourplay『Snowbound』(写真左)。1999年のリリースになる。

Fourplay(フォープレイ)とは、Bob James (key), Lee Ritenour (g), Nathan East (b), Harvey Mason (ds)の錚々たるメンバーで1990年に結成された、大人で小粋な「フュージョン職人のおじさまバンド」。

1997年にmLee Ritenour (g) が、Larry Carlton (g) に代わり、この『Snowbound』に参加している。メンバーの顔ぶれを見れば、従来からのフュージョン・ファンの方々は、これは凄いメンバー構成だと感じ入るでしょうね。

しかしながら、フュージョン畑では大ベテランの部類に入る4人ゆえ、この顔ぶれが紡ぎ出すサウンドはテクニックよろしく、手慣れたフレーズの連発、上手いけれども緊張感と迫力に欠ける、所謂、ぬるま湯的な演奏を想像しがちです。手練感満載とでも言うのでしょうか(笑)。
 

Snowbound

 
それがどうして、この大人で小粋な「フュージョン職人のおじさまバンド」では、良い意味で、そんな悪い期待を裏切られます。この、4人の演奏、とにかく素晴らしい。これぞ、本当のフュージョンと言って良い、実にハイレベルな演奏です。そんなハイレベルな演奏を維持する「フォープレイ」が、1999年出したクリスマス企画アルバムが『Snowbound』。

1曲目の「あらののはてに(Angels We Have Heard On High)」の出だしからグッとくる。適度に抑制された、品格のある小粋な演奏。決して派手でなく、かと言ってメロウなだけでもない。しっかり、芯の入った大人の演奏が繰り広げられる。

このアルバム、全曲、クリスマスソングをカバーしたアルバムだが、その中でも、アルバムのタイトルにもなっている「Snowbound」は異色。スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンの曲で、1993年発表された『カマキリアド(KAMAKIRIAD)』に収録されていたものを実に上手くカバーしている。

フュージョン・ジャズのベテラン達が演奏するクリスマス・ジャズなんて、手練感満載でしょ、などと侮ってはいけません。このアルバムは内容充実、優れたジャズのクリスマス企画アルバムとして、大推薦の一枚です。

 
 

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2013年9月19日 (木曜日)

Bob Jamesの魅力的ライブ盤

CD庫の棚卸しをしていると、時々「あれ、足らない」と思って探すが、実は元々所有していなかった、ということがたまにある。また、その元々所有していなかったアルバムが内容の優れたアルバムだと、「なんでもってへんのかなあ」と愕然としたりする。主原因は、LPからCDへの移行漏れ。

このアルバムもそんなアルバム。今回のCD庫の棚卸しの際、実は元々所有していなかったことに気が付いた。Bob James『All Around the Town』(写真左)。1980年リリース。フュージョン・ジャズ時代の、ボブ・ジェームズ絶頂期のライブの記録である。

ライナーノーツやアルバムのコメントを読むと、このライブ盤の音源は、1979年のクリスマス前の4日間、NYの3つの会場で、それぞれ異なった編成と趣向で、ボブ・ジェームスの音楽を表現するというライブ企画からチョイスされたライブ音源であることが判る。

その3つの異なった編成と趣向とは、以下の通りになる。

・ボトムライン(レギュラー・バンド)
 Bob James (kb), Mark Colby (ts), Hiram Bullock (g), Wilbert Longmire (g),
 Gary King (b), Idris Muhammad (ds)

・タウンホール(アコースティック・バンド)
 Bob James (p), Joanne Brackeen (p), Richard Tee (p), Eddie Gomez (b),
 Billy Hart (ds), Steve Gadd (ds)

・カーネギホール(ビック・バンド)
 Bob James (kb), Mike Lawrence (tp), Ron Tooley (tp), Tom Browne (tp),
 Dave Taylor (tb), Jim Pugh (tb), Tom Scott (as), Mark Colby (ts),
 George Marge (ts), Earl Klugh (g), Gary King (b), Idris Muhammad (ds)
 

Bob_james_all_around

 
どの編成も魅力的だが、フュージョン・ジャズ全盛の1979年にアコースティック・バンドとビッグ・バンドの趣向が興味を引く。特に、アコースティック・バンドの編成は、ボブ・ジェームス、ジョアン・ブラッキーン、リチャード・ティーというタイプの異なるピアニストが、アコースティック・ピアノ3台の連弾で対応するというもの。フュージョン・ジャズがベースのビッグ・バンド編成のライブというのも、意外とありそうであまり無いので興味津々。

収録曲と「編成と趣向」の関係は以下の通り。

Disc1
1. Touchdown (Carnegie Hall)
2. Stompin' at the Savoy (Town Hall)
3. Angela (Theme from "Taxi") (Bottom Line)
4. We're All Alone (Carnegie Hall)

Disc2
1. Farandole (Le'arlesienn Suite #2) (Carnegie Hall)
2. Westchester Lady (Bottom Line)
3. The Golden Apple (Town Hall)
4. Kari (Carnegie Hall)

特に、タウンホールのアコースティック・バンド編成、ボブ・ジェームス、ジョアン・ブラッキーン、リチャード・ティーとタイプの異なる三人のピアニストが、グランドピアノを並べて演奏した「Stompin' at the Savoy」「The Golden Apple」が良い。意外とメインストリーム・ジャズっぽい演奏が、実に硬派で良い。

他の編成での演奏も、フュージョン・ジャズ全盛の時期のライブなので、ソフト&メロウな演奏が続くと思いきや、意外とハードでタイトな演奏が実に爽快である。ボブ・ジェームスのアルバムに収録された有名曲がズラリ。とても楽しい内容です。

フュージョン・ジャズ全盛時代のライブ盤なので、たいしたことないのでは、とお思いの方、とんでも無いですぜ。ハードでタイトで、意外とメインストリーム・ジャズ風な演奏に惚れ惚れします。

 
 

大震災から2年半。決して忘れない。まだ2年半。常に関与し続ける。
がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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