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2018年5月22日 (火曜日)

究極のヨーロピアン・カルテット

1970年代のキース・ジャレット。アメリカン・カルテットとヨーロピアン・カルテットの平行活動。この2つの対照的なカルテットの音が実に面白い。キースはどちらのカルテットでも、そのパフォーマンスは変わらない。結果として、テナー・マンの音の個性がバンド全体の音の個性を決定付けている。アメリカン・カルテットのテナーは「デューイ・レッドマン」。ヨーロピアン・カルテットのテナーは「ヤン・ガルバレク」。

素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的でクール、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いガルバレクのテナーが、キースの「ヨーロピアン・カルテット」の音作りの鍵を握っている。ガルバレクのテナーの音がスッと入ってくるだけで、そのカルテットの演奏は「ヨーロピアン・カルテット」の音の雰囲気に包まれる。

これがキースにとって良かったのか、悪かったのか。ナルシストで自己顕示欲の強いキースである。自分より目立つ、バンドの音を決定付けるテナー・マンの存在。最初の頃は、キース自身はソロ・ピアノも平行してやっていたので、ソロ・パフォーマンスについては、テナーに一歩譲る余裕があったかもしれない。でも、テナー・マンの人気が上がってくると、ちょっとなあ、って気分になったんやないかなあ。
 

Sleeper

 
Keith Jarrett『Sleeper』(写真左)。1979年4月16日、東京は中野サンプラザでのライブ録音。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。2012年7月、約33年の時を経て、突如、リリースされたライブ音源である。この音源、何故、お蔵入りしていたのか。暫くの間、不思議で仕方が無かった。

最近思うに、ガルバレクのテナーがあまりに素晴らしく、主従が逆転した様な演奏が多いことが原因ではないか、と睨んでいる。思わず「ヤン・ガルバレク・カルテット」かと思う位の内容。当時、キースはまだ34歳の若さ。この主従が逆転した様なカルテット演奏は、世に出したくなかったのかもしれない。それほどまでに、このライブ音源でのガルバレクのテナーは素晴らしい。ベースのダニエルソンも、ドラムのクリステンセンも、ガルバレクを鼓舞する様にビートを刻む。

ゴスペル風のアーシーな展開、モーダルで自由度の高い、時々フリーキーな演奏。素晴らしい内容である。演奏の整い方、楽曲の構成、想像性豊かなアドリブ・ソロ、どれをとっても、ヨーロピアン・カルテットの録音成果の中で、この『Sleeper』が頭1つ抜きん出ている。ヨーロピアン・カルテットの代表盤。ガルバレクが目立つ、これがまた、キースのヨーロピアン・カルテットの良き個性のひとつでもある。好ライブ盤である。愛でられたい。

 
 

東日本大震災から7年2ヶ月。忘れてはならない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年5月18日 (金曜日)

ヨーロピアン4の集大成的な盤

キース・ジャレットの「ヨーロピアン・カルテット」を聴いている。ガルバレク、ダニエルソン、クリステンセンという北欧の新進と組んだ「ヨーロピアン・カルテット」。キースのピアノの美意識が最高に映える、硬質でクールでメロディアスな音世界。決して、勢いに任せているのでは無い、クールな熱気を帯びてフリーキーに展開する、自由度の高さ。

Keith Jarrett『Personal Mountains』(写真左)。1979年4月、中野サンプラザでの来日公演のライブ録音。ECMの1382番。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。ちなみにこのライブ盤、1989年になってECM創立20周年の企画として、リリースされている。

この盤には、ヨーロピアン・カルテットの全てが詰まっている。ゴスペル基調のアーシーでファンキーな演奏から、自由度の高い、クールで硬質なフリー・ジャズな音世界、そして、ジャズの王道のひとつ、モーダルなジャズの自由な展開。アメリカン・カルテットでも、演奏されるスタイルを、このヨーロピアン・カルテットでも演奏する。
 

Personal_mountain  

 
熱気溢れる、時にきまぐれではあるが、熱くフリーキーな展開が得意な「アメリカン・カルテット」。比べて、硬質でクールでメロディアスな、あくまで冷静な「ヨーロピアン・カルテット」。どちらがキースのピアノとの相性が良いのか、どちらがキースのピアノを目立たせることが出来るのか。この答えが、このライブ盤に有るように感じている。

キースはその比較、ヨーロピアン・カルテットとアメリカン・カルテットとの比較をずっとしてきた様な気がするが、この盤を聴くと「ヨーロピアン・カルテット」の方がキースのピアノとの相性が良いように感じる。ECMらしい独創性と前衛性に富んではいるが、決して難解では無い、逆に、アメリカン・カルテットに比べて、ポップで穏やかで聴き易い。

ファンクネスが皆無な分、キースのピアノが持つ独特な旋律が一層映える。演奏全体の雰囲気も、アメリカン・カルテットに比べて、明らかに端正。感情に任せた破綻は全く無い。その内容の良さに、聴くたびに惚れ惚れする。このライブ音源は、録音されてから約10年、お蔵入りになっていた理由が良く判らない。ヨーロピアン・カルテットの集大成的なアルバムである。

 
 

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2018年5月17日 (木曜日)

ヨーロピアン・カルテットの本質

キースのヨーロピアン・カルテットを聴いている。ヨーロピアン・カルテットとは、キースがリーダーとなって、ECMレーベルをメインに録音したカルテットのこと。1970年代中盤〜後半を中心に、約6年の活動期間だった。2012年までは、公式アルバム数は「4枚」だったが、2012年に『Sleeper』が追加リリースされて「5枚」。

そんなキースのヨーロピアン・カルテットなのだが、相対する「アメリカン・カルテット」と好対照な演奏内容なのかしら、と思うのだが、意外と演奏のコンセプトは同じ。同じ演奏コンセプトを、ヨーロピアンなテナーとリズム・セクションでやるとどうなるか。逆に、アメリカンなテナーとリズム・セクションでやるとどうなるか、キースはそれぞれ比較していたような気がしている。

Keith Jarrett『Nude Ants』(写真左)。邦題『サンシャイン・ソング』。1979年5月、NYのヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音。ECMの1171/72番。LP2枚組のボリューミーな盤である。改めてパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。所謂「ヨーロピアン・カルテット」な4人である。
 

Nude_ants  

 
このライブ盤、演奏内容が面白い。ヨーロピアン・カルテットでありながら、ゴスペル・タッチのピアノをベースとした、米国ルーツ・ミュージックな、自由度の高い即興演奏がメインなのだ。ミッド・テンポでアーシーな演奏が心地良い。ガルバレクのサックスはあくまで「透明度溢れクール」。この盤での激しさはコントロールされた「激しさ」。アメリカン・カルテットの様な「気持ちの昂ぶりにまかせた激しさ」の微塵も無い。

加えて、ゴスペルタッチでアーシーな即興演奏でありながら、ファンクネスは皆無。ソリッドで硬質でクリアなリズム&ビートで、ゴスペル、カリプソな演奏を繰り広げる様は「爽快」。乾いたブルージーな旋律は明らかに「欧州的」。これぞ、ヨーロピアン・カルテットの演奏である、と言わんばかりの圧倒的パフォーマンス。

タイトルの「Nude Ants=裸のアリ」どういう意味かなあと思って調べてみたら、『Nude Ants』と収録曲「New Dance」の音が似ているところからつけられたタイトルとのこと(「ジャズ批評88キース・ジャレット大全集」より)。いわゆる言葉遊びですね。タイトルにはあまり意味が無いことが判りました。しかし、このライブ盤の演奏こそが、ヨーロピアン・カルテットの本質ではないか、と思っています。それほどまでに充実した内容のライブ盤です。

 
 

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2018年5月11日 (金曜日)

テナー・マンが音の鍵を握る

1970年代のキース・ジャレットの活動を振り返ってみると、とても面白い。代表的なのは、アメリカン・カルテットとヨーロピアン・カルテットの平行活動。なんで、こんな平行活動をしたのか、本人に訊いてみないと判らないのだが、正反対の演奏アプローチをしていて、比較して聴くと本当に面白い。

このアルバムは、音的には「ヨーロピアン・カルテット」。しかし、パーソネルを見ると面白いのは、ベーシストがアメリカン・カルテットと同じということ。それで、これだけ「ヨーロピアン・カルテット」な音が出るということは、カルテットの音の個性の鍵を握っているのは「テナー・マン」の個性ということになる。

そのアルバムとは、Keith Jarrett『Arbour Zena』(写真左)。邦題『ブルー・モーメント』(写真右)。全曲キース・ジャレットのオリジナル。オーケストラとの共演。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Charlie Haden (b) に、Stuttgart Radio Symphony Orchestraがバックに着く。
 

Arbour_zena  

 
聴けば聴くほど「ヨーロピアン・カルテット」なんだけど、ベースの粘りが「ヨーロピアン・カルテット」と違う。もともと「ヨーロピアン・カルテット」のベーシストは、パレ・ダニエルソン(Palle Danielsson)。この「ブルー・モーメント」のベーシストは、チャーリー・ヘイデン。もともとは「アメリカン・カルテット」のベーシストである。

面白いのは、キースもヘイデンも意識して奏法や音を変えている訳では無いこと。意外とアメリカン・カルテットでもヨーロピアン・カルテットでも同じ音を出している。それでいて、どうして「アメリカン・カルテット」と「ヨーロピアン・カルテット」とで正反対の、対照的な音が出るのか。鍵を握っているのは「テナー・マン」。「ヨーロピアン・カルテット」では、ヤン・ガルバレクである。

素直でエモーショナルな、音的には明らかに欧州的でクール、ファンクネス皆無の流麗かつ透明度の高いガルバレクのテナーが、キースの「ヨーロピアン・カルテット」の音作りの鍵を握っているのだ。ちなみに「アメリカン・カルテット」はデューイ・レッドマン。テナー・マンの音の個性がバンド全体の音の個性を決定付ける。この『ブルー・モーメント』は見事なまでの好例である。

 
 

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2018年4月25日 (水曜日)

キースのヨーロピアン4の旗揚げ

さて、いよいよ、キース・ジャレットの「ヨーロピアン・カルテット」を語る時が来た。キースは奇妙なことに、1970年代をメインに、米国系ジャズメンで固めた「アメリカン・カルテット」と、欧州系ジャズメンで固めた「ヨーロピアン・カルテット」という、2つのカルテットを同時進行していた(その合間合間にソロ・ピアノもやっていた)。

どうしてそんな面倒くさいことをしたのか、本人にしか判らないが、僕にとっては今でも謎である。アメリカン4とヨーロピアン4で、演奏する内容が全く違っていれば、それぞれの地域のジャズメンの特質を活かしたものなんだな、ということになるが、これが、まあ、アメリカン4とヨーロピアン4で、意外と同じイメージの曲をやっていたりするのだ。比較して聴いてみると、キースの挑戦と実験、そして、試行錯誤が感じられて面白い。

Keith Jarrett『Belonging』(写真左)。キースの「ヨーロピアン・カルテット」の旗揚げ盤である。1974年4月24ー25日の録音。ECMからのリリース。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Palle Danielsson (b), Jon Christensen (ds)。フロント1管、サックスに、ECMの看板男、テナーのヤン・ガルバレクを擁している。ベースのダニエルソン、ドラムのクリステンセンは、硬質で透明度の高い、明確にヨーロピアンなリズム・セクション。
 

Belonging  

 
冒頭の「Spiral Dance」は、明らかにヨーロピアンなニュー・ジャズ風。それでも、リズム&ビートは実にブルージーでアメリカン。そんなハイブリッドな魅力的な楽曲をキースは、ヨーロピアンな響きを湛えたピアノを弾きまくる。そこに、明らかにヨーロピアンな響きを湛えたガルバレクのテナーが参戦する。この瞬間が実にスリリング。音は硬質で透明度が高い。リズムもエッジが適度に立っている。ヨーロピアンな響き。

続く2曲目の「Blossom」は一転、ヨーロピアンなフリー・ジャズの世界に突入する。フリーキーな演奏については、ガルバレクが強力でピカイチ。ガルバレクのフリーキーなブロウで、曲全体は一気に北欧化する。キースの存在が薄れる中、3曲目の「Long as You Know You're Living Yours」は、アーシーでゴスペルチックな米国ルーツ音楽風の展開。それを欧州系のジャズメンが追従する。

ニュー・ジャズ風の演奏、フリー・ジャズな演奏、アーシーでゴスペルチックな米国ルーツ音楽風な演奏、いずれもアメリカン4でもやっていた演奏。しかし、このヨーロピアン4、ガルバレクのテナーの威力が強力で、ガルバレクのブロウ一発で、演奏は一瞬にしてヨーロピアンな色に染まる。リーダーのキースより目立つガルバレク。この関係が今後どう影響するのか。それが楽しみに感じる、ヨーロピアン4ファースト盤である。

 
 

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2018年3月 8日 (木曜日)

キースらしからぬ「例外の一枚」

キース・ジャレットの「スタンダーズ」の新盤がリリースされた。慢性疲労症候群という難病に冒され、1996年のソロ・ツアー以降、休養状態に、このまま、引退かとも思われた。しかし、1998年に復帰。その復帰後初となった1998年の「スタンダーズ」でのライヴ・レコーディングが、今回、リリースされた。

が、この盤のお話しは後日に譲るとして、休養前、唯一枚、聴き直しを漏らしていた、スタンダーズのライブ盤について、ここで語っておこうと思う。Keith Jarrett『Tokyo '96』(写真左)。1996年3月30日、東京渋谷のBunkamura・オーチャードホールでのライブ録音。改めて、パーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。いわゆる「スタンダーズ」の3人である。

休養に入った年が1996年なので、この東京でのライブは、休養直前、キースとしては体調はほぼ最悪であったと思われる。確かにそうやな、と思われる「ふし」が幾つかある。まず、演奏全体、特にキースのソロが落ち着いている。落ち着いているが故に判り易い。あまりに判り易い。そして、あのキースの「唸り声」がかなり小さめで発生も少ない。
 

Tokyo_96  

 
むむ、で、この盤の評判を見てみると、評判は上々。キースの演奏は「落ち着いていて、判り易い」。キースのピアノを理解するには最適である、という、このライブ盤は「スタンダーズ」のベスト盤という感想まである。そう言えば、例のキースのソロ盤『ケルン・コンサート』も似たような状況だったような。確かあの時もキースは体調が最悪だったはず。キースってちょっと可哀相。体調の悪い時の演奏ほど、評判が上々だったりするのだ。

で、僕の感想は、やはり、このライブ盤のキースは「いつものキースでは無い」。いつもは、もっとアグレッシブでメリハリが効いていて、ところどころフレーズが捻れていて複雑なところがあって、唸り声が絶好調なはず。僕にとってそんなキースが絶好調なキースであって、この盤でのキースはどこか「いつものキースと違うという違和感」が色濃く漂っていて、楽しんで聴くことは出来るんだが、聴き終えてから、なんだかちょっと違うなあ、という思いに駆られるのだ。

そして、このライブ盤、いつになく、ジャック・デジョネットのドラムが大きくフューチャーされている。ポリリズミックなデジョネットのドラムは素晴らしいのだが、スタンダーズはキースのピアノが一番目立たなければならない筈なんだが、これも違和感。この違和感が色濃く漂うライブ盤、振り返れば、この後、難病に取り憑かれ休養を余儀なくされる、そんな厳しい状況下で録音された、キースらしからぬ「例外の一枚」である。

 
 

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2018年3月 7日 (水曜日)

キースのアメリカン4の決定盤

ずっと、キースのアメリカン・カルテットの諸作を聴き直して来て、つまるところ「キースのアメリカン・カルテット」って何やったんや、という思いが強い。Impulse!レーベルの諸作を順番に聴き直してみて、これは、と思う素晴らしい部分もあるんだが、あれれ、とちょっとズッこける部分もあって雑然としている。全体を通して、まんべんなく充実しているアルバムが無いのだ。

それが「アメリカン・カルテット」の面白さと言えば面白さ。きちっとまとまっていない、ちょっと雑然として、ちょっと散漫とした部分が味と言えば味なのだ。音楽性としても、フォーキーでアーシーなフォービートの曲想もあれば、フリーキーでアブストラクトな曲想もあれば、思いっきりモーダルな自由度の高い曲想もあれば、瞑想的な幽玄でスピリチュアルな曲想もある。とにかく、キースのやりたいことがごった煮。

雑然、ごった煮のアメリカン・カルテットが、なんと欧州の純ジャズ・レーベルの雄、ECMレーベルに2枚のアルバムを残している。1枚はスタジオ録音、もう1枚はライブ録音。アメリカン・カルテットって、その名の通り、米国っぽいカルテットで、大雑把で雑然としていてごった煮。これが、欧州のレーベル、それも現代ジャズの宝庫、ECMレーベルにアルバムを残しているのだ。
 

The_survivors_suite_2  

 
Keith Jarrett『The Survivors' Suite』(写真左)。邦題『残氓』。1976年4月の録音。アメリカン・カルテットなのにドイツでの録音である。ここからしてユニーク(笑)。ちなみに改めて、パーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, celeste, ds), Dewey Redman (ts, per), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, per)。キースはピアノだけでなく、ソプラノ・サックスを吹いたり、ドラムを叩いたり。やりたい放題である(笑)。

ちなみに、このECMの『残氓』、アメリカン・カルテットの諸作のなかで、一番カッチリとまんべんなく充実してまとまっているアルバムなのだ。キースの大好きな「フォーキーでアーシーなフォービートの曲想」だけを省いて、フリーキーでアブストラクトな曲想と、思いっきりモーダルな自由度の高い曲想と、瞑想的な幽玄でスピリチュアルな曲想がバランス良く、織り込まれていて、素晴らしいパフォーマンスとして記録されている。

ECMの総帥、マンフレッド・アイヒャーのプロデュースの成せる技なのか、あの雑然、ごった煮のアメリカン・カルテットの音世界が、実にアーティスティックにきっちりとまとまっている。メンバーのパフォーマンスもバランスが良く、キースだけが目立つことも無い。この『残氓』こそが、キースのアメリカン・カルテットのスタジオ録音の決定盤だと僕は思う。アメリカン・カルテットについて、やっと溜飲が下がった思いだ。

 
 

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2018年2月14日 (水曜日)

ごった煮の「アメリカン4」

キースのアメリカン・カルテットを聴き直しているんだが、アメリカン4って、演奏内容がちょっととっちらかっているところがあって、洗練度合いが足らないと言ったら良いのか、決め手に欠けると言ったら良いのか、キースらしいと言えばキースらしい、やりたいことがてんこ盛りなアルバムがほとんど。

もう少し演奏内容を整理して、やりたいことを整理して、アルバム単位の演奏内容を整えたら良いのに、と常々思うのだが、このアメリカン4においては、そうはいかなかったみたいだ。それと、このアメリカン4、テナーのデューイ・レッドマンの存在感というものが良く判らなくて、これはこれで釈然としない感がどうしても残る。

Keith Jarrett『Expectations』(写真)。このアルバムだって、そういう傾向を引き継いでいる。1972年4月の録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, conga), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, conga), Dewey Redman (ts), のアメリカン4に加えて、Sam Brown (g), Airto Moreira (perc)。ギターとパーカッションが客演した、キースのアメリカン4である。
  

Expectations

 
内容はと言えば、ギターとパーカッションが加入したことにより、キースの「やりたいことがてんこ盛り」な面が思いっきり出た内容になっている。ピアノの響きが豊かで流麗な正統派なピアノ・トリオな演奏があれば、アフリカン・ネイティブなゴスペル調のフォーキーな演奏あり、アブストラクトな演奏あり、現代音楽風の完全フリーな演奏あり、とにかくごった煮。

やりたいことのそれぞれを単発で聴けば、どれもが優れた内容である。勿体ないなあ。もう少し演奏内容を整理して、やりたいことを整理すれば良いのに、と改めて思ってしまう。そして、どの演奏を聴いても、この盤でも、デューイのテナー、ブラウンのギター、アイアートのパーカションの存在の意味が何と無く良く判らない。

この盤、ジャケットを見て、キース盤として見ると違和感を感じるんだが、キースのアルバムの中で、この盤だけ「Columbiaレーベル」からのリリースになっている。LPだと2枚組、そして曲によってストリングスやブラスが配されていて、さすが大手レーベルって感じなのだが、なんとなく、キースに合わないなあ、というのが僕の本音。そういう意味で、この盤は、キースのアルバムの中でも異色盤として捉えて良いかと思います。

 
 

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2018年2月13日 (火曜日)

『Shades』と『Mysteries』

「キースのアメリカン・カルテット」は、フォーキーでゴスペルチックな「アーシーな演奏」と自由度の高い「フリーキーな演奏」との2面性が個性。その2面性を活かしながら、躍動感に満ちた「動」の演奏と、静的な美しさを追求した「静」の演奏を織り交ぜて、変化を付けている。

アメリカン・カルテットにおける、その「動」と「静」の緩急の付け方が良く判るアルバムがある。Keith Jarrett『Shades』(写真左)と、Keith Jarrett『Mysteries』(写真右)の2枚。キースのアメリカン・カルテットのアルバムとしては地味で目立たないもので、ジャズ盤紹介本やキースの代表盤の紹介には、まず挙がってこないアルバムである。

まず、Keith Jarrett『Shades』。1975年の録音。後にご紹介する『Mysteries』と同時期に録音された演奏集。こちらのアルバムは、本作はバラエティーに富んだ、躍動感にあふれるパフォーマンスが楽しめる。冒頭の「Shades Of Jazz」から、高速4ビートに乗って、モーダルな限りなく自由度の高いインプロビゼーションが展開されます。適度の熱気とテンションが耳に心地良い。
 

Shades_mysteries

 
もう一枚が、Keith Jarrett『Mysteries』。これも1975年の録音。先にご紹介した『Shades』と同時期に録音された演奏集。バラエティーに富んだ、躍動感にあふれる『Shades』に対し、本作は静的な美しさを追求したパフォーマンスが楽しめる。フリーっぽいアプローチの曲や民族音楽的アプローチの曲もあって、バラエティーに富んでいるのは『Shades』と同じ。

どちらのアルバムも聴けば、なかなかの内容やないか〜、と感心するのですが、ヘビロテすることが無いんですよね。何故かなあ、と思い返して見ると、やはり、演奏内容がちょっととっちらかっているところがあって、散漫な印象が残るからかなあ、と思っています。洗練度合いが足らないと言ったら良いのか、決め手に欠けると言ったら良いのか、キースらしいと言えばキースらしい、やりたいことがてんこ盛りな演奏内容です。

改めて「アメリカン・カルテット」。パーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, fl, osi drums, per), Dewey Redman (ts, per), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, per)。キースはピアノだけでなく、ソプラノ・サックスやフルートも吹くし、ドラム&パーカッションも叩いている。メンバーの中にテナーもドラムのいるのにも関わらず、である。何がキースの狙いだったのか。僕にとっては、今でも不明である(笑)。

 
 

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2018年2月12日 (月曜日)

アメリカン・カルテットの初録音

振り返ると、どうも「キースのアメリカン・カルテット」について、しっかりと聴いていないのではないか、と最近思うようになった。ので、このところ、しっかりと「キースのアメリカン・カルテット」のアルバムを聴き直してきた。意外とアメリカン・カルテットはとっちらかっていて、意外とまとまりのないカルテットだった様な気がしている。

さて、この「キースのアメリカン・カルテット」の始まりはこのアルバム2枚に記録されている。Keith Jarrett『The Mourning of a Star』(写真左)と『El Juicio』(写真右)。1971年7月と8月の録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, conga), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, conga), Dewey Redman (ts)。

まず、最初は『The Mourning of a Star(邦題:流星)』らしい。この盤のパーソネルは、キース+ヘイデン+モチアンの「アメリカン・トリオ」な編成で、テナーのレッドマンは入っていない。ソプラノ・サックスの音がするが、これはキースが吹いている。フリー・ジャズの影響と、キース特有のリリシズムが不思議なバランスで同居した一枚。キースのフォーキーでゴスペルチックなピアノが懐かしい。初期のキースは、米国ルーツ音楽への傾倒が特徴のひとつだった。
 

The_mourning_of_a_star_el_juicio

 
同じ時期の録音として、『The Mourning of a Star』の4年後にリリースされた盤が『El Juicio(The Judgement)』。邦題は『最後の審判』。こちらは、レッドマンのテナーが参加していて、キース+ヘイデン+モチアン+レッドマンの混じり気無しの「アメリカン・カルテット」な演奏。この盤でも、キースはフォーキーでゴスペルチックなピアノとフリーキーなピアノの2面性が明確である。

レッドマンはこのフリーキーなピアノのキースに反応して、イマージネーション溢れるテナーを吹き上げている。それでも、オーネット・コールマンに捧げられた「Piece for Ornette」では、キースはソプラノ・サックスを吹きまくっている。テナーのレッドマンがいながらのこの振る舞い。まだ、フロントのテナーが必要なのかどうか、迷っていたのかもしれない。

この初期の2枚の録音には、「キースのアメリカン・カルテット」の特徴である、フォーキーでゴスペルチックな「アーシーな演奏」と、自由度の高い「フリーキーな演奏」との2面性がしっかりと記録されている。ただし、収録曲はどれもが少し「とっちらかった印象」で、洗練度が足らない。キースがあまりに閃き中心に演奏を進めていた印象があって、この後どうなるのか、期待と不安が入り交じった内容に留まっている。

 
 

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