2024年5月12日 (日曜日)

アメリカン4の「契約消化」盤

キースのアメリカン・カルテット。『The Survivors' Suite(邦題:残氓)』を録音した時点で、グループとして終わっていた。続く、ライヴ盤『Eyes of the Heart(邦題:心の瞳)』では、もうカルテットの演奏としても終わっている。キースの曲をキースの指示通り演奏することに「痺れを切らした」レッドマンが、完全にキースのカルテットから離反した。

このアメリカン・カルテットの終焉を記録した2枚のアルバムは、ECMレーベルからのリリース。元々、アメリカン・カルテットは、インパルス・レーベル主体に録音を進めてきた。もうアメリカン・カルテットとしては終わっていたにも関わらず、インパルス・レーベルには、契約が残っていた。キースをはじめとしたアメリカン・カルテットのメンバーは、この契約消化のために、アルバム2枚分の演奏を残さなければならなかった。

Keith Jarrett『Byablue』(写真左)と『Bop-Be』(写真右)である。どちらのアルバムも録音は、1976年10月14–16日。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, misc. perc), Dewey Redman (ts, misc. perc), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, perc)。「アメリカン・カルテット」再集結。記録によると、14-16日の間に、全19曲を録音している。いわゆる「アメリカン・カルテットのマラソン・セッション」である。
 

Keith-jarrettbyabluebopbe

 
それまでのアメリカン・カルテットのアルバムの収録曲は全て、キースが書いていたのだが、このアメリカン・カルテットの契約消化アルバムについては、キースだけでなく、メンバーそれぞれの自作曲を演奏している。例えば、『Byablue』は、全7曲中、キースの曲は1曲だけ、あとはヘイデンの曲が5曲、マーゴット(キースの妻)の曲が1曲。『Bop-Be』では、全7曲中、キースの曲は1曲だけ。レッドマンの曲が3曲、ヘイデンの曲が2曲、ジャズ・スタンダード曲が1曲。

それぞれのアルバムで、キースは1曲ずつしか提供していない。『Bop-Be』は、レッドマン、ヘイデン、キースの曲が混在。ピアノは全てキースが弾いているので、何とか、アルバムの音の一貫性は最低限保たれているが、アルバム全体の印象はバラエティーに富んだ印象。『Byablue』は7曲中5曲がヘイデンの曲なので、キースのアメリカン・カルテットの音というよりは、ヘイデンのリーダー作の様な雰囲気。

『Byablue』と『Bop-Be』、どちらのアルバムも、キースのアメリカン・カルテットの音世界と捉えることは難しい。それぞれの曲の出来は良いし、演奏自体のレベルは高く、内容もある。だが、アメリカン・カルテットとしての一体感、個性は薄まっていて、アメリカン・カルテットならではの演奏として印象に残るものは無い。やはり、この2枚、アメリカン・カルテットの「消化試合」やったんやなあ、と改めて感じた次第。実に残念なラスト2枚である。
 
 

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2024年5月 7日 (火曜日)

アメリカン・カルテットの終焉

聴くたびに思うのだが、キース・ジャレット率いる「アメリカン・カルテット」って何だったんだろう。モードからフリー、スピリチュアルから、アフリカン・ネイティヴなビートから、アーシーでフォーキーなアメリカン・サウンドから、キースのやりたかった音をごった煮にした音世界。キースは一体、何を表現したかったのか。

Keith Jarrett『Eyes of the Heart』(写真)。邦題「心の瞳」。1976年5月、オーストリアのブレゲンツのコルンマクルト劇場でのライヴ録音。ECMレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p, ss, misc. perc), Dewey Redman (ts, misc. perc), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, perc)。

キースの「アメリカン・カルテット」の最後のライヴ録音盤である。ECMでのスタジオ録音盤の『The Survivors' Suite(邦題:残氓)』の録音の一ヶ月後のライヴ録音になる。このスタジオ録音盤の「The Survivors' Suite」の充実度から期待値が高まるライヴ盤だが、たった一ヶ月で雰囲気はガラッと変わっている。

このライヴ盤の冒頭、妖し気な雰囲気のアフリカンなパーカッションから始まり、そのパーカッションのビートに乗って、レッドマンのテナー・ソロが始まる。レッドマンらしからぬ、耽美的でメロディアスでノーマルな展開のテナーが沁みる。キースは感動を示すうめき声を出す。すると、レッドマンはソロを終えるといなくなってしまう。

しかし、ここから、キース、ヘイデン、モチアンの極上のトリオ演奏が始まる。レッドマンの存在の有無に関係なく、明らかにキース独特の音世界を色濃く宿したトリオ演奏が展開される。このトリオ演奏がなかなか秀逸で、後のスタンダーズ・トリオの音世界を想起させる素晴らしさ。
 

Keith-jarretteyes-of-the-heart

 
この「Eyes of the Heart」の演奏を聴くと、当時、キースが、カルテット内部で問題を抱えていたことを示唆してくれる。もはや、アメリカン・カルテットのグループ・サウンドとしては成立していない。LP時代の「Eyes of the Heart」の後半、パート2に入って10分が経過しても、レッドマンは帰ってこない。キース・トリオの極上演奏は続く。

そして、レッドマンが帰ってきて、再び、極上のテナー・ソロを吹き上げるが、トリオは意に介することなく、演奏をほどなく終える。ラストは息絶える様に、唐突に「パタリ」と終わる。もはや、聴衆に向けての「聴かせる音楽」の質が明らかに低下している。

そして、ラストの「Encore (a-b-c)」は、8ビートに乗った、アーシーでライトなゴスペルチックな響きを宿した明るい演奏。ここでは、レッドマンがテナー・サックスを吹く中、キースがソプラノ・サックスで乱入。テナーのレッドマンを差し置いて、キースがこれまた極上の、スピリチュアルなソプラノ・サックスを吹きまくる。

レッドマンの立つ瀬がない。レッドマンが割り込んでくるが、キースは意に介さない。レッドマンのテナーはらしくない、耽美的でメロディアスでノーマルな展開のテナーのまま、吹くのをやめる。

このライヴ盤を聴いて、キースが、このアメリカン・カルテットでやりたかったのは、「キースの考えるスピリチュアル・ジャズ」では無かったのか。そして、それは、レッドマンの考えるスピリチュアル・ジャズでは無かった。

ものこのライヴ盤のセッションの中では、レッドマンの居場所は無かった。キースとしても、自分の目指すスピリチュアル・ジャズに追従しないテナー・マンと一緒に演奏する訳にはいかない。

このライヴ盤のセッションでは、アメリカン・カルテットは既に終わっている。恐らく、前作『The Survivors' Suite(邦題:残氓)』を録音した時点で終わっていたのだろう。もはや、このライヴ盤には、キースのアメリカン・カルテットの残骸しか残っていない様に感じる。但し、演奏内容は充実している。キースの次なるステップを暗示する音がそこかしこに漂っている。
 
 

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2024年5月 6日 (月曜日)

アメリカン・カルテットの「陽」

今までのキースのアメリカン・カルテットの評価って、どうなんだろう、と思うことがある。同一日、同一メンバーによる2枚のアルバム、『Death and the Flower』と『Back Hand』。

『Death and the Flower』は、我が国では大受けで、スイングジャーナルでゴールド・ディスク賞まで受賞している。しかし、『Back Hand』については、全くの低評価。しかし、ちゃんと聴いて見ると、『Back Hand』も十分に内容のある秀作だと僕は思っている。

Keith Jarrett『Back Hand』(写真左)。1974年10月9–10日の録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p, fl, perc), Dewey Redman (ts, musette, perc), Charlie Haden (b), Paul Motian (ds, perc), Guilherme Franco (perc)。キースのアメリカン・カルテットの6枚目のアルバムになる。

冒頭「Inflight」。アーシーなキースの個性全開。アーシーでアフリカンなフレーズを振り撒いて疾走するキースのピアノ。それに追従する、これまた疾走感溢れるモーダルなレッドマンのテナー。そんな疾走するフロントの音のベースを抑え、リズム&ビートをキープする、ヘイデンのベースとモチアンのドラム。

自由度の限りなく高いモーダルな熱い演奏が繰り広げられるのだが、途中から、徐々にフリーに傾いていく。フリーの突入するのかな、と思いきや、また、自由度の限りなく高いモーダルな熱い演奏に戻る。全編、疾走感溢れる演奏に圧倒される。キースのアメリカン・カルテットの真骨頂。

2曲目の「Kuum」では、雰囲気はガラッと変わって、キースの吹くフルートがフリーな唸りをあげ、アフリカンなパーカッションが入っていたと思いきや、今度はレッドマンの吹くミュゼット(17世紀から18世紀にかけてフランスの貴族階級の間で大流行したバグパイプ)が怪しい音色とフレーズでフリーな演奏に参入する。バックのリズム&ビートは、アフリカン・ネイティヴなパーカッションの響き。キースのアメリカン・カルテットでしか聴けない音世界。
 

Keith-jarrettback-hand

 
3曲目の「Vapallia」は、自由度の限りなく高いモーダルなバラード。キースのピアノとレッドマンのテナーが織りなすインタープレイが美しい。極上の耽美的でリリカルでスピリチュアルなフレーズの応酬は、聴いていて惚れ惚れする。この透明度の高いキースのピアノって、どちらかと言えば、ヨーロピアン・カルテット仕様の様な気がする。

ラストのタイトル曲「Back Hand」は、8ビートに乗って、キース流のジャズロック風。根明な躍動感溢れるリズム&ビートに乗って、キースのピアノがどこか少しファンキーに根明に、アメリカンで陽気なジャンプ風のフレーズを弾き進めていく。キースのイメージネーション豊かな長尺のアドリブ展開が見事。

バックでヘイデンの捻れたウォーキング・ベースが唸りをあげている。モチアンの自由度の高い、ポリリズミックなドラミングも見事。この演奏もキースのアメリカン・カルテットでしか聴けない、ならでは、の演奏である。

聴き終えて、この『Back Hand』は、キースのアメリカン・カルテットの「陽」の部分、同一日、同一メンバーによる『Death and the Flower』は、キースのアメリカン・カルテットの「陰」の部分。そう、『Back Hand』と『Death and the Flower』と併せて、アメリカン・カルテットの音世界の全貌を捉えることができる。

米国では、この『Back Hand』については、高い評価を与えられている。我が国では評価が低い、もしくは、アメリカン・カルテットの好盤として、そのアルバム・タイトルが挙がっているのを見たことが無い。

「陽」と「陰」、どちらも優劣つけ難い内容のはずなんだが、たまたま2枚のアルバムに分かれただけで、評価が大きく変わるとは不思議なことである。これって、LP2枚組のアルバムでリリースされていたら、『Back Hand』に収録されている演奏について、我が国での評価はどうなっていたのだろう。
 
 

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2022年11月 4日 (金曜日)

ソロライヴ「ボルドーのキース」 『Bordeaux Concert』

2017年2月15日の米「カーネギーホール」でのコンサート以降、一切公演を行っていないキース・ジャレット。その後、2018年2月と5月、2度の脳卒中を起こし、左半身が麻痺。1年掛けてかなりリハビリしたものの、片手でしか演奏できず、キースいわく「両手演奏のピアノ曲を聴くと、非常にもどかしく感じる」。それから、3年が経過している。キースの状態はどうなんだろう。

最近、キースはNPRからのインタヴューを受けたらしく、現在はニュージャージー州北西部の自宅で静かにリハビリを続けていて、ピアノの前に座り、インプロヴィゼーション、スタンダード、ビバップを右手で弾いていると明かしているそうだ。復帰する、しないに関わらず、回復して欲しいと切に思う。

Keith Jarrett『Bordeaux Concert』(写真左)。2016年7月6日、フランスのボルドーでのライヴ録音。キース・ジャレットのソロ・パフォーマンスの記録。

キースの最後の欧州ツアーの最初に録音された『ブダペスト・コンサート』、その欧州ツアーの最後に録音された『ミュンヘン2016』は既にリリースされている。今回リリースされた『ボルドー・コンサート』は、同じ最後の欧州ツアーにおけるブダペストのコンサートから3日後、ミュンヘンのコンサートの10日前に録音された作品。

ブタペストでは、前半は「バルトークへの生涯の愛着にインスパイアされたソロ・パフォーマンス」、後半は「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジーなパフォーマンス」で構成されていた。
 

Keith-jarrettbordeaux-concert

 
ミュンヘンでは、前衛音楽の様なフリーキーな即興演奏から、アーシーなリズム&ビートを伴ったアメリカン・フォーキーな演奏、モーダルで限りなく自由なスタンダード演奏まで、なかなかバリエーションに富んだ内容だった。
 
このボルドーでは、ブダペストやミュンヘンと同じく、往年の「長尺の演奏で、起伏のある抒情的なメロディアスな曲」とは異なる、短尺の曲が志向を変えて入れ替わり立ち替わり展開されるという構成は変わらない。

オープニングは抑えめな曲調で、現代音楽風の無調なインプロから始まるが、後半になるに従って、ブタペストの様な「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジーなパフォーマンス」になって、特に「美しい曲想」のパフォーマンスが多い。前半は「現代音楽〜現代クラシック」の志向が強く、後半は「極上の耽美的で躍動的なジャズ」の志向が強くなる。

キースのソロ・パフォーマンスのショーケースの様な内容で、適度なテンションの中、切れ味の良い、ダイナミックかつ繊細な、極上なピアノ・ソロの連続に、これはこれで良いよな、と一気に13の即興演奏を聴き通してしまう。

最近のインタヴューで、同じツアーで既に発売されている2作(ブタペスト、ミュンヘン)と本作以外に、他に訪れてライヴ演奏をした、ウィーンとローマも発表したいとのこと。そちらのリリースも大いに期待したい。
 
 
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  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2022.03.13 更新。

   ・遠い昔、懐かしの『地底探検』

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   ・四人囃子の『Golden Picnics』
 
 
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2022年1月30日 (日曜日)

キースのクラシックとの融合音楽 『Arbour Zena』

キース・ジャレットが体調不良を理由に、2017年2月15日、NYのカーネギー・ホールで行われたソロコンサートを最後に活動を休止してから5年になる。その間、2018年に脳卒中を2回発症、2020年10月の時点で左半身が部分的に麻痺しており、そのためピアノ演奏に復帰できる可能性が低いことを明らかにしている。

キースが「引退」状態になって寂しい限りである。ふと、キースのピアノの個性について再確認したくなった。キースは活動期間後半の「スタンダーズ・トリオ」ばかりがクローズアップされるが、キースのピアノは「スタンダーズ」だけでは無い。かなり多岐に渡る個性で、それぞれが「優れた個性」。そんな、それぞれの「優れた個性」があちらこちらに突然に顔を出す。その「優れた個性」を確認するのに、ちょっと面倒くさいピアニストである。

Keith Jarrett『Arbour Zena』(写真左)。邦題『ブルー・モーメント』。1975年10月の録音。全曲キース・ジャレットのオリジナル。オーケストラとの共演。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Jan Garbarek (ts, ss), Charlie Haden (b) に、Stuttgart Radio Symphony Orchestraがバックに着く。キースの「いくつかの個性」と交響楽団との共演。

ここでのキースの音世界は、リズム&ビートと即興演奏をキーワードに「ジャズとクラシックの融合」。ジャズ側にはドラムがいない。演奏全体の定形なリズム&ビートは交響楽団に任せている。つまり、ジャズ演奏における「リズム・セクション」を交響楽団が担っている。
 

Arbour-zena_blue-moment

 
そんな交響楽団をバックに、キース率いる「ジャズ側メンバー」は、ジャズお得意の即興演奏を繰り広げるわけだが、その即興部分のリズム&ビートは、ヘイデンのベースが担っている。この交響楽団とヘイデンのベースとの「リズム&ビートの役割分担」が絶妙。この両者のリズム&ビートが明らかに「ジャズ」なのだ。

演奏全体のイメージは「キースの考える欧州ジャズ」。印象派クラシックの様に耽美的で叙情的で幽玄、そして流麗。この雰囲気は、キースの「ヨーロピアン・カルテット」に通じる音世界。ガルバレクのクリアで切れ味の良いサックスがその印象を更に強くする。そして、時々、ジャズ側メンバーと交響楽団が一体となって、時々「アーシーでゴスペルチック」なジャズを展開。これがまた、キースのピアノの個性。

2曲目の「Solara March (dedicated to Pablo Casals and the sun) 」を聴けばそれが良く判る。10分弱の長尺な演奏だが、前半は耽美的で叙情的で幽玄、そして流麗な「ヨーロピアン」な演奏が続く。そして、この演奏の半ば辺り、キースのピアノが「荒城の月」の出だしの「春、高楼の〜」の様なフレーズを叩き、それを合図に「アーシーでゴスペルチック」なジャズ演奏に展開。これが、とにかく「見事」。

この盤、キースの音楽性の幾つかが効果的に絡み合って、素晴らしい「ジャズとクラシック」の融合音楽を成立させている。これは、ECMレーベルにしか出来ない盤。総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーの敏腕も見逃すわけにはいかない。この盤は、ECMとキースの個性とがガッチリ組んだ、新しい響きを湛えた「ジャズ」である。
 
 
 
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  ・The Brothers Johnson『Light Up the Night』&『Winners』

 ★ まだまだロックキッズ     【New】 2021.08.11 更新。

  ・『ヘンリー8世と6人の妻』を聴く

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【New】 2021.08.11 更新。

  ・伝説の和製プログレ『四人囃子』

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2021年1月27日 (水曜日)

キースのソロ・ピアノの集大成 『Budapest Concert』

2017年2月15日の米「カーネギーホール」でのコンサート以降、一切公演を行っていなかったキース・ジャレットが、2度の脳卒中を起こし、音楽活動の復帰が困難な状況にあることを米『ニューヨークタイムズ』紙が報じて3ヶ月が過ぎた。キースは、2018年2月と5月に脳卒中を起こし、左半身が麻痺とのこと。何てことだ。

キースいわく、1年掛けてかなりリハビリしたものの、片手でしか演奏できず、「両手演奏のピアノ曲を聴くと、非常にもどかしく感じる」。本当に辛いだろうな、もどかしいだろうな。自分も死線を彷徨い、大きな手術を経て、リハビリに励みつつ、徐々に社会生活に復帰していった経験があるだけに、キースの状態を思うと胸が苦しくなる。

Keith Jarrett『Budapest Concert』(写真左)。2016年7月、ブダペストのBélaBartók(ベラ・バルトーク)国立コンサートホールでのライヴ録音。2020年10月のリリース。キースのソロ・ピアノ盤である。昨年リリースされた『ミュンヘン2016』のコンサートよりも2週間前に録音されたもの。祖父母がスロベニア系であるキースが、このコンサートを故郷への帰郷のようなものと捉え、特別な想いを携えてのソロ・パフォーマンスだったようだ。
 
 
Budapest-concert-keith-jarrett  
 
 
ライヴ盤の前半を聴いていると、聴衆にも説明している通り、バルトークへの生涯の愛着にインスパイアされたソロ・パフォーマンスになっている。いつものフリーな演奏と比べると、その傾向がより強く感じるパフォーマンスだと感じるが、イマージネーション豊かで飽きが来ないのはさすが「キース」。というか、フリーな演奏のベストに近い内容と思料。

この盤の後半がより素晴らしい。「ケルン・コンサート」や「マイ・ソング」での、キース独自の「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジー」なパフォーマンスが繰り広げられる。いろいろと評価は分かれるが、この「耽美的でメロディアスで躍動的でジャジー」なキースも他のジャズ・ピアニストの追従を許さない、キースの独特の「孤高の個性」なのだ。これも「キース」。

この盤、聴き通せば、キースのソロ・ピアノの集大成なイメージが漂う。ECMの総帥プロデューサー、マンフレート・アイヒャーが伝えたかったのは、『今のキース・ジャレットのソロ演奏』=「キース・ジャレットのソロ演奏の集大成」だったのではないか。キースのソロ演奏のベストは「過去」にあるのでは無く「今」にある。そんな想いを強く感じる、素晴らしい内容のソロ・ピアノ盤である。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて        【久々に更新しました】 2021.01.22 更新。

  ・『The More Things Change』1980

 ★ まだまだロックキッズ     【久々に更新しました】 2021.01.22 更新。

  ・The Band『Stage Fright』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【久々に更新しました】 2021.01.22 更新。

  ・僕達は「タツロー」を聴き込んだ

 

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2020年9月 8日 (火曜日)

ゲイリー・ピーコックが逝去 『Tales of Another』

ゲイリー・ピーコックが亡くなった。2020年9月4日逝去。享年85歳であった。一昨日、訃報が流れたのだが、「デマ」ということで一旦落着。ホッとしたのもつかの間、今日になって、正式に逝去の方が流れて、今回はさすがに「デマ」では無かった。WIkipediaの「Gary Peacock」の項でも、命日が刻まれた。ああ、今回は本当なんだなあ、と妙に納得した。
 
Gary Peacock『Tales of Another』(写真左)。1977年2月2日、NYの Generation Sound Studios での録音。ECMの1101番。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。この3人の名前を並べてみれば、あれれキースの「スタンダーズ」である。スタンダーズのファースト盤は1983年のリリースなので、それより5年も前に「スタンダーズ」の原型がこの盤にある。

収録された6曲、全て、ゲイリー・ピーコックのオリジナル曲。演奏は、硬派でシビアでモーダルなピアノ・トリオ。フリー直前で「限りなく自由度の高い」モード・ジャズに留まる。リーダーのピーコックのベースが先導するが、3者の力加減は均等。限りなく自由度の高いモーダルな演奏の下で、丁々発止と変幻自在な、鬼気迫るインタープレイが繰り広げられる。
 
 
Tales-of-another  
 
 
ピーコックのベースは重厚かつ流麗。ピアノ・トリオの演奏に心地良い重量感を与えている。決して五月蠅くない、前に前に出ない、それでいて、ピアノ・トリオのインタープレイの中で、展開の方向性を先導し、ピアノのアドリブを支え鼓舞し、ドラムとリズム&ビートの自由度の高いコラボレーションを展開する。ピアノ・トリオの中で、理想的なベースの音のひとつが、この盤に詰まっている。

ECMレーベルらしからぬ、ストレートアヘッドなピアノ・トリオ演奏である。特に3者が渾然となった、ほとんどフリー一歩手前、完璧モーダルなパフォーマンスが凄い。高いテンションの中、「鬼気迫る」とはこの雰囲気を言う。3者共にそれぞれお互いの音をしっかり聴き、そして、それぞれの音に対してしっかりと応える。理想的なインタープレイの実例がこの盤に詰まっている。
 
実は、この盤、僕がジャズを聴き始めた1978年、ジャズ者一年生の頃に、パーソネルに引かれて入手した。難しかった。それでも、この盤のお陰で「モーダルな演奏」を体感し、現代ジャズの先端を行くジャズ・ベースを体感した。特に、ピーコックの重厚かつ流麗なベースは耳に残った。それ以来、ピーコックは僕のお気に入りベーシストであり続けたのだ。そして、一昨日、ピーコックは鬼籍に入った。残念ではあるが、ご冥福をお祈りしたい。合掌。
 
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて    【更新しました】 2020.09.02 更新。

  ・『Restless Nights』 1979

 ★ まだまだロックキッズ     【更新しました】 2020.09.02 更新。

  ・『The Best of The Band』

 ★ 松和の「青春のかけら達」 【更新しました】 2020.09.02 更新。

  ・僕達は「タツロー」を発見した



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2020年6月13日 (土曜日)

キースのソロ・ライヴの節目 『La Scala』

ジャズ・ピアノのレジェンドの一人、キース・ジャレット。1996年の秋、慢性疲労症候群の為に、一切の活動を休止した。

僕達はキースの演奏の記録を、演奏の結果を聴き続けていた訳で、リアルタイムにキースの演奏を聴き続けてきた訳ではない。しかも、アルバムにされるのは、その時点でのベスト・パフォーマンスに近いもののみ。アルバムを追い続けてきた我々にとっては全く兆しの無い状況の中で、当時、あまりに突然の事にビックリした。

Keith Jarrett『La Scala』(写真左)。1995年2月13日、イタリアはミラノの Teatro alla Scala でのライヴ録音。キース・ジャレットのソロ・パフォーマンスの記録。当時『ウィーン・コンサート』以来、5年ぶりのソロ・ライヴ盤。キースが慢性疲労症候群の為にリタイアする直前の録音の1つ。

その他のリタイア直前の記録は、ソロとしては、2016年にリリースされた『A Multitude of Angels』(キース本人DATを持ち込んでが録音していたものらしい)、「スタンダーズ・トリオ」の記録としては『Tokyo '96』(2018年3月8日のブログ参照)がある。この2020年になって、その頃の録音を振り返って聴き直してみると、やはり、1995年以降、キースはそれまでの勢いとテンションをスローダウンさせていたと感じるのだ。
 
La-scala  
 
さて、この『La Scala』であるが、冒頭の長編「La Scala, Part 1」は、それまでのキースのソロらしからぬ、マイナー調で思索的、ほの暗く瞑想的。アドリブ展開など、キースのソロが落ち着いている。あのキースの「唸り声」も目立たない。しかし、とても判り易いキースのソロである。この「判り易さ」もキースらしからぬところ。どこか諦念感が漂う感じがとても気になる。

続く「La Scala, Part 2」は、フリーキーな無調の演奏がメインで、いつものキースのソロが復調している。アグレッシブでメリハリが効いていて、ところどころフレーズが捻れていて複雑なところがあって、唸り声が絶好調。しかし、良く聴くと繰り返しの手癖がところどころ出てきて、弾きながらの思索が見え隠れして、どうもキースはソロ・パフォーマンスについてマンネリズムを感じているのか、と感じた。

そして、極めつけは、ラストの「Over the Rainbow」。オズの魔法使いの挿入歌で、ジャズの有名なスタンダード曲。それまでキースはソロ・パフォーマンスでは、スタンダード曲をソロ・パフォーマンスのモチーフに一切選ばなかった。この辺がキースの硬派なところなんだが、このライヴ盤のラストに突如として、有名スタンダード曲を持って来た。これは何を意味することだったのか。

ソロの即興演奏のコンセプトとモチーフのベースとなった『ケルン』以降、『ケルン』が1975年だから、それ以降20年。『ケルン』とこの『ラ・スカラ』含めて9枚のソロ盤を積み重ねてきたが、この『ラ・スカラ』で一旦の区切り、節目を見たのではないか。そんな感じのする、僕にとって象徴的なソロ・ライヴ盤なのだ。
 
 

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2020年6月 9日 (火曜日)

スタジオ録音の『ケルン』である 『Staircase』

このところ、キース・ジャレットを聴き直している。当ブログで採り上げていないアルバムを洗い出して、聴き直しているんだが、「あれ〜、こんな有名盤、アップしてなかったけ」という盤が幾つかある。基本的にはブログのアップについては、録音年月日順に、順番にアップしているはずなんだが、時々、飛ばして、そのまま忘れているんだろうなあ。面目ない。

Keith Jarrett『Staircase』(写真)。1976年5月、仏はパリの Davout Studios での録音。キース・ジャレットのソロ・ピアノ盤。ECMレーベルから、当時、LP2枚組でリリースされている。キースのソロ・ピアノ盤としては、『Facing You』『Solo Concerts: Bremen/Lausanne』『The Köln Concert』に次いで4枚目のアルバム、スタジオ録音としては『Facing You』に次いで2枚目になる。

僕はこのソロ・ピアノ盤を「スタジオ録音の『ケルン』」と呼んでいる。ソロの即興演奏のコンセプトとモチーフについては、先にリリースされている『ケルン』に準じているように思う。初のソロ盤だった『Facing You』、初のライブ盤だった『Solo Concerts』については、試行錯誤、手探り状態が見え隠れして、『The Köln Concert』に至っては、キースの体調は絶不調、ピアノの調律は最悪という状態で録音された、工夫に工夫を重ね、どうにかこうにか最後まで行き着いた感が満載の、普通であれば「捨て録音」。
 
 
Staircase_20200609201801    
 
 
しかし、この『The Köln Concert』の出来が素晴らしく良かった。トラブルの連続の中で録音されたとはいえ、プレイバックを聴いて、ECMの総帥アイヒヤーもキース本人もアルバム化することに同意しているのだから、その出来は素晴らしい。怪我の功名というか、瓢箪から駒というか、キースもアイヒヤーも意識して生み出した好盤では無かったが、この『ケルン』のコンセプトとモチーフが、当時のキースのソロの基本となった節がある。

基本的にデッドなスタジオ録音なので、エコーは浅い。というか『ケルン』が深すぎるんだろう。ECM独特のエコーに乗って、キースのソロが冴え渡る。『ケルン』で聴き親しんだフレーズの「骨格」がここかしこに聴かれるのが楽しい。スタジオ録音とはいえ、一発録りだったらしいので、演奏毎に張り詰めるテンションが心地良い。コンセプトとモチーフが予めしっかりしているので、キースのタッチに淀みはなく、フレーズの展開に「試行錯誤」が無い。

このソロ盤には、キースの「試行」「何とかしようとする想い」が無い分、後にキースの個性として定着した「唸り声」も無く、スッキリとした、ストレートな弾き回しのソロ・パフォーマンスになっている。トラブルの連続の中で録音された『ケルン』の様な、一種ハラハラするような「スリリング」な要素は無い。このソロ盤でのキースは「確信」に満ちているように感じる。キースのソロ盤の中でも屈指の好盤です。
 
 
 
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2020年6月 8日 (月曜日)

もはや無敵のインタープレイ 『Always Let Me Go』

キース・ジャレットが活動を停止して2年になる。キース・ジャレットが2018年の活動をすべてキャンセルの報が流れたのが、2018年の6月。理由は「健康上の理由」。それ以来、キースに関する情報は何も流れてこない。スタンダーズを解散したのが2014年。その4年後にキース自身が活動停止。キースは1945年生まれ。今年で75歳。奇跡の復活はあるのだろうか。

Keith Jarrett『Always Let Me Go』(写真左)。2001年4月、東京のオーチャード・ホールと東京文化会館でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Keith Jarrett (p), Gary Peacock (b), Jack DeJohnette (ds)。キースの「スタンダーズ・トリオ」の3人だが、このライヴ盤で演奏されている内容はスタンダード曲では無い。完全なオリジナル、完全即興演奏一色の内容。

もともと、2001年4月23日~30日まで5夜に渡るライブ公演の内容は、全体の5分の3が「スタンダード曲」残りの5分の2が「オリジナルな即興演奏」という構成だったらしいが、本作はその内の5分の2に当たる「オリジナルな即興演奏」部分だけを抽出した内容になっている。キースの「スタンダーズ’トリオ」の3人の名前をジャケットで見ただけで、これは「スタンダード曲集」だな、と思って買うとビックリする位の「オリジナルな即興演奏」がギッシリ詰まっている。
 
 
Always-let-me-go  
 
 
とにかく全編、徹底した即興演奏が繰り広げられている。確かにキースの「スタンダーズ・トリオ」は、たまに「完全即興演奏」のアルバムを突如リリースするのだが、その演奏内容については、リーダーのキースが中心だった。基本的にキースのパフォーマンスが目立つような展開だったのだが、今回のライヴ盤については「3者均等」なのだ。ベースのピーコックも、ドラムのデジョネットも、キースと同じくらいの時間割り当てで、同じくらい目立っている。

キースのピアノについては尖った部分が穏やかになり、悟りを開いたような流麗感がそこかしこn漂う。『慢性疲労症候群』からの復活以降のキースの個性なので、気にはならない。一番目立っているのは、ドラムのデジョネット。あらん限りのテクニックを駆使して、凄まじいばかりの、鬼気迫る様な即興ドラミングを繰り広げている。それに呼応する様にブンブン唸りをあげるピーコックのベースも何時になく目立ちまくっている。

この3者3様のインタープレイを聴くと、やっぱりこの3人の演奏って「抜きん出ている」。他のジャズメンもなかなかやるなあ、なんて思っているのだが、この完全即興演奏をCD2枚分聴かされると、やっぱりこの3人の演奏って素晴らしい。前作『Inside Out』の続編のような内容だが、こちらの盤の方が、デジョネットとピーコック、リズム隊の2人が目立ちに目立っている。3者均等の「スタンダーズ・トリオ」。トリオのインタープレイとしては、もはや「無敵」の内容である。
 
 
 

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