2024年1月 9日 (火曜日)

八代亜紀『夜のアルバム』再聴

演歌の代表的女性歌手・八代亜紀さんが昨年12月30日に逝去していたとの報道が流れた。なんてことだ。

八代亜紀さんは、1973年に「なみだ恋」のヒットででメジャーに。その後「愛の終着駅」「もう一度逢いたい」「おんな港町」「舟唄」など数々のヒット曲をリリース、1980年には「雨の慕情」で第22回日本レコード大賞の大賞を受賞している。とにかく歌が上手い。声量、テクニック、申し分なく、演歌がメインでありながら、心を揺さぶられる様な情感溢れる歌声は、ジャンルを超えて、僕は好きだった。

情報によると、八代亜紀さんは若い頃、ジャズ・ボーカルもやっていた、とのこと。昔取った杵柄のひとつの「ジャズ・ボーカル」を、還暦過ぎて、もう一度やってみようじゃないの、というノリだったのだろうか、ジャズ・ボーカルの企画盤を2枚、リリースしている。

当ブログでも、以前、八代亜紀さんのジャズ・ボーカル盤についての記事をアップしている。が、2013年3月のことで、すでに10年以上が経過している。今回、以前のブログ記事に加筆修正を加えたリニューアル記事をアップして、八代亜紀さんの逝去を悼みたいと思います。

八代亜紀『夜のアルバム』(写真左)。2012年のリリース。ちなみにパーソネルは、八代亜紀 (vo), 有泉一 (ds), 河上修 (b), 香取良彦 (p, vib), 田辺充邦 (g), 岡淳 (as, ts) がメインのバンド編成。八代亜紀のボーカルに、サックス、ギター入りのクインテットがバックに控える。

加えて、曲ごとにゲストが入る。ゲストについては、渡辺等 (b) <3>, 布川俊樹 (g) <5>, 田ノ岡三郎 (accordion) <6>, 松島啓之 (tp) <8>, 山木秀夫 (ds) <9>, 江草啓太 (p), 織田祐亮 (tp), 藤田淳之介 (as), 石川善男 (fh) <12>, 木村 "キムチ" 誠 (perc) <4,7,9>, CHIKA STRINGS (strings) <4,9>。

演歌の女王、八代亜紀さんがジャズ・ボーカルに挑戦した企画盤がこの『夜のアルバム』。その内容はなかなかのもの。さすが、若い頃、ジャズ・ボーカルにも手を染めていただけはある、堂々とした歌いっぷり。もともと、歌が素晴らしく上手い歌手である。とにかく上手い。情感を込めて、きめ細やかに、隅々にまで心配りをしながら、魅力的なジャズ・ボーカルを披露してくれる。
 

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2曲目の「クライ・ミー・ア・リヴァー」や、5曲目の「サマータイム」、ラストの「虹の彼方に」の、英語の歌詞での歌いっぷりを聴くと、これが素晴らしい出来で、もう「参りました」と謝ってしまいそうな位、素晴らしい歌唱。完璧なジャズ・ボーカル。味わいも豊か、情感がこもっていて、それはそれは素晴らしい。

それぞれが大スタンダード曲で、何百人何千人というボーカリストが唄った、いわゆる「手垢が付いた」曲で、独特の個性を出しつつ唄いこなすには難しい曲ばかりなんだが、演歌出身など関係なく、今までに無い独特の個性を発揮しつつ、完璧にこれらの大スタンダード曲を朗々と唄い上げている。

逆に、このアルバムには、日本語の歌詞のボーカル曲が幾つかある。冒頭のジャズ・スタンダード曲「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」は、途中で日本語の歌詞に変わる。ちょっとズッこけるが、これは「ご愛嬌」。

リリィの「私は泣いています」、松尾和子の「再会」、伊吹二郎の「ただそれだけのこと」のカヴァーであるが、純ジャズ風のアレンジに乗って、魅力的なボーカルで唄い上げていく。ただ、出来映えは素晴らしいのだが、日本の歌謡曲のカヴァー故、ジャズ・ボーカルというよりは、ジャズ風のムード演歌風に聴こえる。ジャズ・スタンダード曲と混在させると、ちょっと「浮いて」聴こえるのが「残念」。

これならば、日本語の歌詞のボーカル曲なんか織り交ぜずに、完全に英語歌詞のジャズのスタンダード曲で勝負すれば良かったのに、と思ってしまうのは僕だけだろうか。完全に英語歌詞のジャズのスタンダード曲だけで勝負して欲しかったなあ。なんせ、ジャズ・ボーカル歌手専門として、十分やっていける位、英語の歌詞での歌いっぷり、どの曲も本格的で素晴らしいんですから。

良い内容のジャズ・ボーカル盤。八代亜紀さんのジャズ・ボーカリストとしてのポテンシャルが並外れたものであることは良く理解出来る。日本の女性ジャズ・ボーカル盤の優秀盤です。
 
 

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2023年12月22日 (金曜日)

貞夫さんの「35年ぶりの邂逅」

和ジャズの重鎮といえば「渡辺貞夫」さん。貞夫さんは今年で90歳。しかし、ジャズマンは年齢では計れない。未だ、第一線で活躍している。しかも、貞夫さんのアルト・サックスには「衰え」が無い。いつでもどこでも「バップ」なアルト・サックスが爽快である。

『渡辺 貞夫 meets 新日本フィルハーモニー交響楽団』(写真左)。2023年4月29日、すみだトリフォニーホールにてライヴ録音。パーソネルは、渡辺貞夫 (as), マルセロ木村 (g), 養父貴 (g), 小野塚晃 (p, key), コモブチキイチロウ (b), 竹村一哲 (ds), 村田陽一 (cond), with 新日本フィルハーモニー交響楽団。

35年前、1988年に錦糸公園にて、新日本フィルとの公演を実施。以来、35年ぶりの新日本フィルとの奇跡の邂逅の記録。ジャズ・バンド側は、貞夫さんのアルト・サックス、マルセロ木村と養父貴のギター2本、そして、ピアノ・トリオがリズム・セクションに控えるセクステット編成。そして、新日本フィルが共演。ジャズになるんかいな、と心配になる。

ジャズはリズム&ビートが「キモ」。切れ味良いオフビート、切れ味の良いブレイク。クラシックのオーケストラは、弦楽器がメイン。音の伸び、音の連続が「キモ」。ジャズ・バンドの方は切れ味の良いリズム&ビートで疾走する。オーケストラ側は音の伸び・つながりが全面に出る。
 

Meets

 
オーケストラの音の伸び・つながりの「広がり」に包まれて、ジャズの音にラップがかかったようになって、切れ味の部分が丸くなることがある。聴き味は良いのだが、ビートが効いていない分、イージーリスニング風の音作りになる。これだと、貞夫さんの爽快な「バップ」なアルト・サックスを全面的に活かせない。

イージーリスニングな貞夫さんのアルト・サックスは聴きたく無いなあ、と思いながら、この盤を聴き始めたのだが、冒頭1曲目の「Nice Shot」を聴いて、それは杞憂だということが良く判った。新日本フィルの演奏の切れ味が抜群なのだ。ジャズの切れ味良いオフビート、切れ味の良いブレイクにバッチリ合わせてくる。歯切れ良く、エッジの立った、爽快感のあるパフォーマンス。素晴らしい。

この素晴らしいオーケストラの音である。貞夫さんの爽快な「バップ」なアルト・サックスが映えに映える。以降、「Mzuri」「Tsumagoi」「Boa Noite」「Only in My Mind」「Eye Touch」「Requiem for Love」「Sun Dance」「My Dear Life」とお馴染みの曲が演奏が爽快感を振りまいて疾走する。

ラス前「Sun Dance」でノリノリ、そして、ラストは「My Dear Life」で大団円。とりわけ、貞夫さんのアルト・サックスが、往年の輝きそのまま、ブリリアントで切れ味良く、歌心満載。本当に、いつ聴いても良い貞夫さんのアルト・サックス、やはり、これが一番。まだまだ現役、まだまだ第一線のアルト・サックスが映えに映える、秀逸な内容のジャズ・ウィズ・ストリングスである。
 
 

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2023年11月22日 (水曜日)

ユッコ・ミラー『Ambivalent』

ユッコ・ミラー。我が国の若手女子の実力派サックス奏者。エリック・マリエンサル、川嶋哲郎、河田健に師事。19歳でプロデビュー。 2016年9月、キングレコードからファーストアルバム「YUCCO MILLER」を発表し、メジャーデビュー。「サックスYouTuber」としても爆発的な人気を誇る。

そんなユッコ・ミラーのサックスがお気に入りである。特に、ながら聴きのフュージョン系ジャズとしていい感じ。ユッコ・ミラー自身のアルト・サックスの音がとても良い。アクがなく、すっと素直に伸びで、変に捻ることなく、ストレートにフレーズを紡ぐ。音は明るく軽くブリリアント。テクニックは確か。印象にしっかり残るが、決して耳障りではない。

ユッコ・ミラー『Ambivalent』(写真)。2023年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、ユッコ・ミラー (as, vo, bs), 曽根麻央 (p, key, tp), 馬場桜佑 (tb)、中村裕希 (b)、山内陽一朗 (ds)。ユッコ・ミラーの6枚目のリーダー作になる。収録曲を見渡すと、まず、チャレンジングなカバー曲が目を引く。

4曲目の「KICK BACK」は、米津玄師の手になるアニメのテーマ曲。バリバリ、シャウト系ハードロックっぽいボーカル曲なんだが、この原曲の持つ雰囲気を上手くアルト・サックスで再現している。トロンボーンとトランペットとサックスというブラス・セクションが大活躍。曲の旋律をなぞるだけではない、原曲のコード進行を拝借して、正統派ジャズのごとく、しっかりとしたアドリブを展開する。

もう一曲は、7曲目の「可愛くてごめん」。日本のクリエイターユニット・HoneyWorksの楽曲。TVアニメ『ヒロインたるもの!〜嫌われヒロインと内緒のお仕事〜』のキャラクターソング。これまた、今年大流行りのJ-Pop曲を曲想に合った「可愛らしい」アレンジでガンガン、ジャズしている。しかも、アドリブ部は「可愛くない」アレンジ(笑)。うむむ、ユッコ・ミラー恐るべし、である。
 

Ambivalent

 
正統派フュージョン・ジャズの楽曲っぽい、5曲目の「Morning Breeze」 は、MBSお天気部秋のテーマ曲。そして、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズにおける代表的名曲、グローヴァー・ワシントン・ジュニア & ビル・ウィザースの「Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)」をカヴァっている。これがまた、コッテコテのソフト&メロウなアレンジで「攻めに攻める」。

ユッコ・ミラーの素晴らしいところは、この様な、フュージョン・ジャズ全盛期の名曲や、J-Pop系のアニメ関連の主題歌やキャラクターソングといった「チャレンジングなカバー曲」を、ラウンジ・ジャズっぽく、楽曲の持つ有名な旋律をなぞるだけでなく、それぞれの曲が持つコード進行を拝借して、しっかりと即興演奏っぽく、正統派ジャズっぽいアドリブを展開するところ。

そういう「意欲的」なところが全面に押し出されているからこそ、ユッコ・ミラーのアルバムは決して「ラウンジ・ジャズ」にはならない。どころか、バックの優秀なリズム隊の、切れ味の良い、躍動感あふれるリズム&ビートを得て、高度な内容の「現代のフュージョン・ジャズ」を展開している。そう、聴き手やレコード会社に迎合することなく、しっかり「ジャズ」しているところが凄い。

ユッコ・ミラーが、雑誌インタビューで「すごく幅広いし、それが面白いし、まったく飽きないアルバムになりました」と語っているが、全くその通りだと思う。ユッコ・ミラーの自作曲も内容充実。

チャレンジングなカバー曲と相まって、とてもバラエティーに富んだ、表情豊かな、実に人間っぽいアルバムに仕上がっている。アルバム・タイトルの「Ambivalent」は言い得て妙。ながら聴きに最適な「爽やかな」内容の好盤です。
 
 

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2023年11月 5日 (日曜日)

黒田卓也『Midnight Crisp』良好

我が国の中堅ジャズ・トランペッターの黒田卓也。1980年2月21日生まれ。兵庫県芦屋市出身。20歳でバークリー音楽大学へ短期留学。2003年に渡米、NYのニュースクール大学ジャズ科に進学。2014年、リーダー作『Rising Son』(Blue Note)でメジャー・デビュー。日本国内では、JUJU、orange pekoeなどのアルバムにアレンジャーやプレイヤーとして参加している。

黒田卓也『Midnight Crisp』(写真左)。2022年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Takuya Kuroda(黒田卓也) (tp), Corey King (tb, vo), Craig Hill (ts), Lawrence Fields (p, key), Rashaan Carter (b), Adam Jackson (ds)。前作『Fly Moon Die Soon』から約2年ぶりとなった最新作。前作同様、プログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートに乗った、現代のコンテンポラリーなエレ・ジャズ的な内容。「Miles Reimagined」な好盤である。

前作からの音志向を踏襲。基本はエレ・ファンク。メインストリーム志向の展開をしているので、黒田がトランペッターということもあって、まるで1970年代から1980年代のマイルス・デイヴィスのエレ・ファンクを聴いている気分になる。しかし、ファンクネスは日本人らしく、乾いていて軽い。それでも、プログラミングしているのであろうビートが切れ味よく効いていて、「Miles Reimagined」な好盤として楽しむことができる。
 

Midnight-crisp

 
トータルで33分程度の演奏なので、EP扱いとなっているみたいだが、内容が濃いので、ひとつのフル・アルバムとして聴いても何の違和感もない。これまでの「ファンク、ソウル、ジャズ、バップ、フュージョン、ヒップホップ」などの音の要素を取り込んで、現代における、21世紀における「Miles Reimagined」なエレ・ファンクに仕上がっているところが聴きどころ。特に、プログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートの処理が上手い。

そんなプログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートをバックに、黒田の切れ味良く、伸びの良い、テクニック優秀な、存在感抜群のトランペットが映えに映える。エレピやシンセなどのキーボード類の弾き回しも、しっかりエレ・ファンクしていて聴き味抜群。プログラミングと生演奏が絶妙に融合したリズム&ビートとエレ・ファンクしたエレピやシンセとが相乗効果を生んで、独特のグルーヴ感を醸し出している。

トランペット、テナー、トロンボーンのフロント3管が強力なアンサンブルを奏で、活力あるインタープレイを繰り広げる。リーダーの黒田として、トランペッターとしてのみならず、プロデューサー&コンポーザー、ビートメイカーとしての能力を遺憾無く発揮したエレ・ファンク基調のコンテンポラリーな純ジャズとして、十分に鑑賞に耐える、内容良好のなかなかの力作だと思う。
 
 

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2023年11月 1日 (水曜日)

小沼ようすけ『Jam Ka Deux』

21世紀に入ってから頭角を表した、優れた日本人ジャズ・ギタリストの一人「小沼ようすけ(おぬま、と読む)」。1974年生まれ。今年で49歳になる。秋田県能代市出身。ジャズの世界でいけば、若手と言うにはちょっと歳は取っていて「中堅」レベルの存在。心身共々やっと落ち着いて、自らの個性を最大限発揮出来る年代である。

ギターの音の個性とは、エッジの丸いマイルドな音色。それもそのはず。ピックを使わないフィンガー・ピッカーとのこと。それでいて硬質な切れ味の良い音。ネットの情報を見れば、ギブソン・ES-275を愛用しているとのこと。

小沼ようすけ『Jam Ka Deux』(写真左)。2016年の作品。ちなみにパーソネルは、Yosuke Onuma (g), Reggie Washington (b), Arnaud Dolmen (ds, ka & vo), Olivier Juste, Sonny Troup (ka), Grgory Privat (p & Rhodes), Herv? Samb, Jacques Schwarz-bart (g), Joe Powers (harmonica), Simone Schwarz-bart (poetry reading)。

カリブ海に浮かぶ、フランス海外県グアドループの民族リズム「グオッカ」を採り入れた『Jam Ka』(2010)の続編。5年の歳月を経て、オリジナル・メンバーが再集結。

ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズな音作りが新鮮。この盤を聴いていて、ウエザー・リポートの3rd.盤『Sweetnighter』や、4th.盤『Mysterious Traveller』、5th.盤『Tale Spinnin'』辺りの音世界を想起した。キーボードがメインではない、小沼のこの盤は、ギターがメインの「ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズ」。
 

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担当楽器の欄に「ka」とある。「Ka」とは、カリブ海の島グアドループの民族音楽「グオッカ・ドラム」のことで、この「Ka」がパーカッシヴな独特な音を出す。これが実にユニーク。この「Ka」の音、どうも癖になる(笑)。打楽器好きには堪らない。この「グオッカ・ドラム」の音が、この盤の音世界のワールド・ミュージック志向をより濃厚にしている。

メインストリーム系コンテンポラリー・ジャズな音。フレーズが聴きやすく耳当たりが良いので、フュージョン・ジャズかな、と思って聴くが、リズム&ビートとアドリブ部の展開がジャジー。ギターの音が、しっかり芯は入っていて、マイルドで心地良い。そして、フェンダー・ローズの音が良い雰囲気を醸し出す。カリビアンな音の響きがとても爽やかで印象的。今までのコンテンポラリーなエレ・ジャズの中で「ありそうで無い」、新しい響きを宿したパフォーマンス。

ギターがメインの「ワールド・ミュージック志向のメインストリーム系コンテンポラリー・ジャズ」と言えば、パット・メセニーを想起するが、メセニーの様な「ネイチャー志向」ではない。小沼の音世界は「カリビアン・ミュージック志向」であり、「シーサイド志向」である。この音世界って、今までのジャズに「ありそうで無い」。

今までのジャズにありそうで無い、小沼独特の音世界である「Jam Ka」の続編。今までに聴いたことの無いジャズ・ギターの音にあふれている。何度も聴き直したくなるような、新しい音世界がこの盤に詰まっている。

前作『Jam Ka』の音世界を、よりワールド・ミュージック志向を色濃くし、コンテンポラリーなジャズ度合いを色濃くした『Jam Ka Deux』。僕はこの『Jam Ka Deux』は通過点と感じている。次の「Jam Ka」盤では、このワールド・ミュージック志向とコンテンポラリーなジャズ度合いを、さらに高めた音世界を聴かせてくれるのだろうか。大いに楽しみである。
 
 

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2023年10月31日 (火曜日)

ジャズ喫茶で流したい・267

グローバル・レベルで見ると、ジャズ・ギタリストについては、新しい世代の「跡を継ぐもの」として、それぞれの時代でメジャー・デビューする新進気鋭のギタリストが現れ出てくる。が、我が国では、それぞれの時代でメジャー・デビューしてくる新進気鋭のジャズ・ギタリストの数は少ない。

日本のジャズ・ギタリストは、と問われたら、まず頭に浮かぶのが、渡辺香津美、増尾好秋、川崎燎、井上銘、小沼ようすけ、くらい。圧倒的に数が少ない。現在、第一線で活躍しているメジャーな存在は、井上銘、小沼ようすけ、辺りかな。

しかし、地方やライブハウスをメインに活動している「マイナーな存在」に目を向けると、我が国の中でも意外と多くのジャズ・ギタリストが存在する。ネットのアルバムのニュー・リリースの情報を見ていると、時々、単発でリーダー作をリリースしたりするので、その存在をキャッチでき、そのリーダー作を拝聴できたりする。良い時代になったものだ。

竹田一彦『St. Louis Blues』(写真左)。2022年6月2日、京都「BF Garden Studio」での録音。ちなみにパーソネルは、竹田 一彦 Kazuhiko Takeda (g), 神田 芳郎 Yoshirou Kanda (b)。実に渋い内容のギターとベースのデュオ演奏。

竹田一彦は、1936年奈良県天理市生まれ。関西地方をメインに、1950年代後半から現在まで、65年に渡り活躍を続けてきた関西ジャズ界の重鎮ジャズマン、ベテラン・ギタリスト。今年で87歳。今回、新リリースの『St. Louis Blues』は、昨年の録音なので、86歳でのパフォーマンスになる。今回は、たまたま、この新リーダー作をアップル・ミュージックで見かけて、即日、拝聴した。
 

St-louis-blues

 
一言で言うと「凄くクールで渋い」ジャズ・ギターが堪能できる優秀盤。コクのある味わい深いトーン、切れ味よく微妙にノイジーでジャズっぽいフレーズ。テクニックは確か、アドリブ展開は流麗かつアーシー&ブルージー。極上の本格派、メインストリーム志向のジャズ・ギター。冒頭のタイトル曲「St. Louis Blues」を聴くだけで、この竹田と神田のデュオ演奏の世界に引き込まれる。

ソリッドで鋼性の高い、弾力あふれる重低音のアコースティック・ベースがイントロを担う。そこに、適度なテンションを張った、切れ味よく、芯の入った、アーシーでブルージーな竹田のギターが絡んでくる。凄くクールで渋いフレーズの連発。

ギターとベースのデュオなので、演奏の基本は「静謐の中のダイアローグ」。時にユニゾン&ハーモニー、時にウォーキング・ベースをバックにギターのソロ、時にギターのリズムをバックにベースのソロ。職人芸よろしく、高いテクニックに裏打ちされた充実のフレーズ展開。

シンプルでリリカルでアーシーでブルージー、こんな魅力的なジャズ・ギターがあるんや、と感心を通り越して「感動」した。小粋なスタンダード曲をメインに、竹田のアーシーでブルージーなギターが、唄うがごとく、囁くがごとく、語るがごとく、弾き進んでいく。そこにピッタリ寄り添い、フレーズの「底」を押さえ支える神田のベース。

これはこれは、素晴らしい内容のギター&ベースのデュオである。今は晩秋、晩秋の夜に一人耳を傾けるジャズ盤に最適な一枚。良いアルバムに出会えた。心がほっこり暖かくなる。
 
 

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2023年10月25日 (水曜日)

「たをやめオルケスタ」の最新盤

ビッグバンドには、そのバンド毎に「志向」がある。とにかく、アーティステックにストイックにビッグバンドの「芸術性を追求するバンド」。エリントンやベイシーなどのレジェンドなビッグバンドの音を「研究〜現代で再現しようとするバンド」。元々はダンス・ミュージックなのだからと、多人数のアンサンブルやユニゾン&ハーモニーを楽しみ、ソロ演奏を楽しむ「エンタテイメント性を追求するバンド」などなど。

ビッグバンドの音は追求すればするだけ面白いのだが、多人数がゆえ、バンド全体の運営が厳しい。世界的に見ても、テンポラリーにビッグバンドを編成し、演奏することはままあっても、恒常的にバンド活動を維持し、コンスタントにアルバムをリリースしているビッグバンドは数少ない。我が国においては、宮間利之ニューハード、東京キューバンボーイズ、ちょっとジャズから外れるが、東京スカパラダイスオーケストラ。メジャーなところでこれくらいしか、名前が浮かばない。

たをやめオルケスタ『祝宴フィフティーン』(写真左)。2023年9月のリリース。 活動15周年を迎える女性16名のビッグバンドの最新フル・アルバム。2021年にリリースされた二枚の7inchに納められた楽曲を含む計11曲を収録。

「たをやめオルケスタ」とは、女性のみで構成されるトロピカル楽団として、岡村トモ子 (as, fl) を中心として2008年に結成。「たおやめ」は「手弱女」と書くのだが、どうして、迫力のあるブロウ、力感溢れるアンサンブル、ドライブ感豊かなユニゾン&ハーモニー、手に汗握るインタープレイと、その音だけ聴けば、女性のみで構成されるビッグバンドとは思えない。
 

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収録された楽曲を見渡すと「Take the A train」「Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)」「A Night in Tunisia(チュニジアの夜)」などの有名ジャズ・スタンダード曲や、ラテン・ジャズやカリプソ、アフター・ビートルズ、アメリカン・ポップス、はたまたヒップホップなどの楽曲をカヴァーしていて楽しい。そして、このバラエティーに富んだ楽曲を、工夫とアイデアに富んだアレンジで、とっても楽しいビッグバンド曲に変身させている。

じっくり聴いてみて、とにかく演奏テクニックが確か。とにかく上手い。揺らぎもなければ、ふらつきもない。一糸乱れぬユニゾン&ハーモニー、ズレのないバッチリ合ったアンサンブル。音の迫力、音の厚み、音の輝き、どれをとってもビッグバンドとして一級品。ソロイストのパフォーマンスも及第点(ちょっと安全運転風。ライヴだと違うのかな)。

そして、このビッグバンドの一番は「聴いていて楽しい」こと。適度なスイング感、アクセント確かダンサフルなオフビート、そして、流麗で明るいフレーズ。そんなビッグバンドが、デューク・エリントンの「Take the A train」や、ジョージ・ハリソンの「I've Got My Mind Set On You」、カーペンターズの「Close to You」なんかをブイブイやるのだ。聴いていて楽しいことこの上ない。たをやめオルケスタって「エンタテイメント性を追求するバンド」の優れものである。

たをやめオルケスタ。バンド名だけは知っていたが、こんなに素晴らしいビッグバンドだとは知らなかった。スミマセン(笑)。結成以来15年というが、その間、たをやめオルケスタの音源に全く出会えなかったのだから、こういうこともあるもんだなあ、と(笑)。今回、やっと、たをやめオルケスタの音源に出会えた。聴いて思う。良いビッグバンドに出会えたと....。
 
 

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2023年10月19日 (木曜日)

新しいビッグバンド・サウンド

ジャズのビッグバンドについては、コロナ禍にも関わらず、有名ビッグバンドについては、その組織を堅調に維持し、録音も順調にこなし、内容充実の好盤をリリースし続けている。これは素晴らしいことで、コロナ禍ゆえ、バンドのメンバー全員が集まってリハーサルをこなすことなど、なかなか出来なかったと思うのだが、その高度なテクニックとアンサンブルを維持する努力は並々ならぬものがあったのだろう。本当に頭の下がる思いである。

挾間美帆 feat. Danish Radio Big Band『Imaginary Visions』(写真左)。2021年3月の録音。挾間美帆の作曲&指揮、デンマーク・ラジオ・ビッグバンドの演奏。デンマークは2020年12月から2021年の2月までロックダウンで、そのロックダウンが解けたあとの録音とのこと。挾間美帆が作曲したオリジナル作品をビッグバンドで演奏するというのは初めて、とのこと。

2019年に彼女がデンマーク・ラジオ・ビッグバンドの首席指揮者に就任して以来、満を持してのオリジナル作品。これまで彼女の作品は、彼女自身が主宰するM_unitでの活動&レコーディングがメインだったので、本格的な正統派ビッグ・バンドでの初の録音になる。これは注目盤である。
 

Feat-danish-radio-big-bandimaginary-visi

 
まず、アレンジが個性的。伝統的なビッグバンドの正統派なアレンジなんだが、今までの正統派ビッグバンドのアレンジと響きと音の重ね方が違う。音の重なり方は重厚なのだが、どこが明るい感じのオープンな音の重ね方で、響きが軽快。重厚で複雑なビッグ・バンドのパフォーマンスでありながら、フレージングは軽やかで躍動感がある。今までに聴いたことがない、ビッグバンドのアレンジについつい引き込まれる。

かつ、ギル・エヴァンスのアレンジの如く、アドリブ・ソロをとる楽器のみならず、一つ一つの楽器の力量と個性を活かし、その集合体として相乗効果溢れるアンサンブルが素晴らしい。特に楽器一つ一つの音が分離して聴こえる様で、それがバラバラにならず、一体となって、バンドの音となり個性となる。狭間美帆の書く楽曲が良いのだろうし、そのアレンジも十分に考え抜かれたものなんだろう。このビッグバンドのアンサンブルも個性的。

狭間美帆ならではのビッグバンド・サウンドがこの盤にある。21世紀の新しい響きと新しい響きのアンサンブルを個性とした、新しいビッグバンド・サウンドの出現である。あまり、話題に上がっていない様だが、この狭間美帆の初のビッグバンド・サウンドは要チェックだろう。とりわけ、ビッグバンド者の方々には是非一聴を、と思う。
 
 

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2023年10月18日 (水曜日)

小沼ようすけのソロ・ギター盤

マイルスの聴き直しをちょっと離れて、最近のジャズの新盤のストックが溜まったので、順に聴き進めている。ここ1年、グロ=バルなジャズにおいても、和ジャズにおいても、内容の優れたアルバムが多いので、世界的にジャズのレベルはさらに上がったなあ、と感じるし、聴いていてとても楽しい。

現代ジャズ・ギターの名手の一人、カート・ローゼンウィンケルのギター・ソロ盤を聴いていて、我が国の現代ジャズ・ギターというのは、どういう状況になっているのだろうと思った。そういえば、ホーン楽器やピアノについては、我が国では古くから、優秀なミュージシャンが多く出ているが、ギターは? と問われれば、すぐに名前が出てこないのが正直なところ。

小沼ようすけ『Your Smile』(写真左)。2023年9月のリリース。名実ともに日本を代表するジャズ・ギタリスト小沼ようすけによる初のソロ・ギター・アルバム。仰向けに寝転びながらギターを弾く猫のイラストのジャケットが可愛い。アルバム『Jam Ka』(2010年)以降からコロナ禍までに書き溜めた曲から厳選されて録音されている、とのこと。

21世紀に入って、我が国のジャズ・ギター・シーンについては、確かに、小沼ようすけが第一人者だろう。純ジャズからワールドミュージックまで、幅広く音楽志向を広げて、様々な楽曲を展開してきたので、このソロ・アルバムもバラエティーに富んだ音楽志向のソロ演奏かと思いきや、徹頭徹尾、メインストリームな純ジャズ志向のソロ・パフォーマンスで埋め尽くされているのには、小沼の矜持を強く感じて、頼もしく感じた。
 

Your-smile

 
ウォームでエッジが丸い、やや太めの音色が個性的。テクニックは抜群。和ジャズらしく、ファンクネスはとても希薄、それでいて、しっかりオフビートしていて、ブルージーでジャジーな音色は、ガッツリ「ジャズしている」。小沼のオリジナル曲で占められているが、どの曲も流麗で温和で聴き心地が良いので「独りよがり感」は全くない。逆に、オリジナル曲がゆえ、小沼のギターの個性が強く感じられて良い。

テンポ的には、ミッド・テンポがメインなので、曲を聴き進めるうちに「飽きるかなあ」とちょっと危惧していたが、どうして、小沼のギターは、ところどころにアレンジや弾き方の面で、様々な工夫を施していて(これは相当高度なテクニックが無いとできない)、へ〜っ、ほ〜っと感心したり、聴き耳を立てているうちに、あっという間にラスト曲になってしまう。演奏の展開のバリエーションの豊かさと表現方法の引き出しの多さには感心することしきり、である。

2001年にデビュー・アルバム『nu jazz』をリリースして以降、ジャズ・ギターの優れた内容のリーダー作を順調にリリースしているが、まだ、我が国で人気がイマイチなのが残念。僕は、小沼ようすけのリーダー作はリリースされる度に聴いているのだが、ネット上を見てみても、小沼の人気はまだまだ。

しかし、小沼のジャズ・ギターは素性が良い。個性も独特の個性を持っていて、まだまだ伸びしろはある。人気の伸びしろもまだまだある。このソロ盤辺りから、そろそろブレイクして欲しいなあ。
 
 

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2023年9月27日 (水曜日)

「CASIOPEA-P4」の2nd.盤

日本のフュージョン・ジャズ(和フュージョン・ジャズ)の名盤・好盤を聴き直していると、必ず、ぶち当たるフュージョン・ジャズのグループが2つある。ひとつは、1977年結成の「CACIOPEA(カシオペア)」、もうひとつは、1976年結成の「T-SQUARE(ティー・スクエア)」。和フュージョン・ジャズの老舗中の2つの老舗バンド。

その老舗バンドのひとつ、カシオペアは、バリバリ硬派な、思いっ切りハイ・テクニックな、疾走感と切れ味抜群のフュージョン・バンドだった。デビューは1977年。幾度かのメンバー変遷と2006年から2011年までの活動休止期間を経て、第1期〜第2期「CACIOPEA」、第3期「CASIOPEA 3rd」、第4期「CASIOPEA-P4」とバンド名をマイナーチェンジしながら、現在も活動中。

CASIOPEA-P4『New Beginning(Live at EX THEATER ROPPONGI Dec.11.2022)』(写真左)。2022年12月11日、EX THEATER ROPPONGIでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、野呂一生 (g), 大高清美 (key), 鳴瀬喜博 (b), 今井義頼(ds)。CASIOPEA-P4名義の2枚目のアルバムになる。

もともと、カシオペアは、フロント楽器がギターで、バックにリズム・セクションという編成で、長らくギター・サウンドが前面に押し出された「ギター・バンド」志向なフュージョン・ミュージックが身上だった。
 

Casiopeap4_new-beginning

 
が、CASIOPEA-P4になって、野呂のギターはそのままだが、大高のキーボードがフロントの一定の割合をコンスタントに担う様なサウンド構成に変化している。今回のこのライヴ盤は、そんなギター+キーボードが双頭フロントのバリバリ硬派な、思いっ切りハイ・テクニックな、疾走感と切れ味抜群のフュージョン・バンドのパフォーマンスが、CD2枚組の中にギッシリ詰まっている。

CASIOPEA-P4名義の初アルバム『NEW TOPICS』では、キーボードがかなり前面に出ていた印象があるが、このライヴ盤では、イーブン・イーブンの割合になっていて、バランスが取れている印象。

1970年代のプログレッシブ・ロック、もしくは、キーボードがメインのジャズ・ロックの様な音志向に変化はしたが、このライヴ盤を聴く限り、デビュー当時のバンドのキャッチ・フレーズである「スリル・スピード・スーパーテクニック」はしっかり踏襲されている。

逆に、キーボードが前面に出たことによって、アダルト・オリエンテッドな雰囲気が濃厚になって、大人のフュージョン・ジャズという雰囲気がとても魅力的。まだまだ、我が国における、最高峰のエレ・ジャズ・バンドの位置をキープしている。僕はこのCASIOPEA-P4の音を好ましく聴いた。
 
 

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