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2017年12月 6日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・114

ファンキー・ジャズにおいて、米国ルーツ・ミュージックの中で切っても切れない音楽要素が「ゴスペル」。米国の黒人教会で歌われている歌唱。誰か一人が歌い出し、皆が総立ちになり、手を叩いたりステップを踏んだりしながら、声を張り上げて全身全霊で歌う様は、生で聞けば圧巻。

この「ゴスペル」の歌唱の中で「コール・アンド・レスポンス」や「コーラスの独特な響き」「躍動するビート感覚」をジャズに織り込むと、不思議とあらまあ、ファンキー・ジャズになるのである。もともと「ゴスペル」の音世界は「ファンクネスがこってこて」なので、この「こってこてなファンクネス」の存在がファンキー・ジャズに不可欠な要素なのだ。

このゴスペルの要素を大々的に導入して、ジャズ・ピアノソロとして1枚のアルバムに仕立て上げた盤が、Cyrus Chestnut『Spirit』(写真左)。ピアノ・トリオでの演奏活動を中心に行なっているチェスナットが、珍しくソロ・ピアノを選択したアルバムです。タイトル通り、この盤ではスピリチュアル〜ゴスペル系の曲を集めたもの。
 

Cyrus_chestnut_spirit  

 
トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイとは異なった、ゆったりしたテンポで、ゴスペル独特のファンクネス溢れる、黒く美しい旋律をシンプルに弾き進めるチェスナットは意外と魅力的です。恐らく、ゴスペルって、チェスナットのルーツ音楽の1つなんでしょうね。実にエモーショナルに、実に厳かに、ゴスペルちっくな曲をソロ・ピアノで弾き進めていきます。

ソロ・ピアノであるが故の静的な厳かな響きと旋律。静謐なスピリチュアル・ジャズ。9曲目のサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のカバーが目を惹きますが、他の曲はゴスペルや賛美歌のオーソドックスな名曲みたいで、ほんと、米国ルーツ・ミュージック好きの私にとっては、もう耳が惚れ惚れしてしまう、印象的なソロ・ピアノ集です。

トリオ演奏の時の様に、豪快にスイングするプレイが身上のチェスナットが、これだけ陰影豊か、硬軟自在、緩急自在にソロ・ピアノを弾き進めるとは思いませんでした。チェスナットのポテンシャル、恐るべしです。こってこてファンキーなゴスペルの要素がてんこ盛りのこの盤、ファンキー・ジャズの最右翼に位置する好盤だと思います。

 
 

東日本大震災から6年8ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2017年11月24日 (金曜日)

キースだけの「長時間即興演奏」

僕は最初、このライブ盤のパフォーマンスの良さが全く判らなかった。というか、パフォーマンスの内容が理解出来なかった、と言った方か良い。この延々と続く即興のパフォーマンス。LPにして3枚組のボリューム。しかも楽器はピアノのみ。

1970年代半ばから、ジャズの世界で暫くの間続いた「ソロ・ピアノ」ブーム。その中心にいたピアニストが「Keith Jarrett(キース・ジャレット)」。そのキースのソロ・ピアノのアルバムの中で、1979年当時、一番有名だったのが、このアルバムだった。Keith Jarrett『Solo Concerts: Bremen/Lausanne』(写真左)。1973年3月20日がLausanne(ローザンヌ)で、1973年7月12日がBremen(ブレーメン)でのライブ録音。

アルバムはブレーメンのライブから始まる。最初の15〜6分辺りまでは、クラシックをポップに崩したような、クラシック・ピアノで、即興の軽音楽を弾いているような、なんだかはっきりしない、手探りのような演奏が続く。僕は最初の頃、この始まりから15〜6分辺りまでのパフォーマンスが退屈で我慢できなかった。これがいかんかった。始まりから16分辺りからライブの音世界は一変する。左手のブロック・コード、右手のアドリブ・フレーズの節回しがジャジーなオフビートを叩き始める。

そうなったらしめたもので、キースのソロ・ピアノの世界は明らかに「ジャズ」一色に染まる。ジャジーなビートから、ゴスペルチックなビートまで、米国ルーツ・ミュージックを彷彿とさせるオフビート。印象的なアドリブ・フレーズのイメージが湧き出てくるまでは、パーカッションなビート演奏で乗り切る。イメージ湧き出てくると、途端にキャッチャーで流麗なアドリブ・フレーズが疾走する。そして、延々45分以上、ブレーメンの演奏が終わるまで続く。
 

Solo_concerts_bremenlausanne

 
ローザンヌの演奏は難物だ。こちらの前半部は、クラシックの即興演奏も出来るのですよ、な感じの、クラシックをポップに崩したような、クラシック・ピアノで即興の軽音楽を弾いているような自己顕示欲の強い演奏が続く。これが辛い。が、時々、思い出した様に、ジャジーなビートから、ゴスペルチックなビートが顔を出し、いきなり「ジャズ」な展開になる。しかし、今度は現代音楽的なフリーでアブストラクトな展開に陥り、途端に我慢を強いられる。そして、リリカルで耽美的な展開に転身して、いきなり終焉を迎える。

キースの即興演奏の個性は、突如として現れるジャジーなビートから、ゴスペルチックなビートに乗った印象的なアドリブ・フレーズがある程度長い時間続く「カタルシス」である。このある程度長い時間続く「カタルシス」が、一種のスピリチュアル・ジャズ的な効果を生み出している。このスピリチュアルな要素、これがキースの即興演奏の「ミソ」であると理解した。これが判るまでに僕は20年かかった。やっと、このLP3枚組ライブ盤の内容を理解出来たことになる。

キースの即興演奏はフォロワーを生まない。ジャズの即興演奏は「ビ・バップ」の3〜4分の演奏の中での、一発勝負的な瞬間芸の様なアドリブ演奏が理想とされる。それでは短い、とハードバップでは数分のアドリブ演奏が良しとされた。他のジャズメンにはこれが基準。キースの即興演奏は数十分から長い時は1時間にも及ぶ。他のジャズメンには必要の無い演奏時間の長さ。キースの即興演奏に必要となるのは、長時間の演奏に絶え得る「体力」というよりは、飽きることが無い、強い「精神力」。

キースのみにしか為し得ない、キースにしか必要の無い長時間の即興演奏。その記録がこのLP3枚組のボックス盤に詰まっている。この盤を皮切りに、キースはこの、ある程度長い時間続く「カタルシス」をトコトン追求することを選択する。そして、現在まで、10枚以上のソロ・ピアノ盤をリリースする。完成形・最終形の無い即興演奏の世界。この追求は何時まで、何処まで続くのだろうか。トコトン付き合うつもりである。

 
 

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2017年10月15日 (日曜日)

ながら聴きのジャズも良い・28

昨日は土曜日にもかかわらず、午前中は買い出し〜通院。午後は、先週から引き摺っていた、ネットの音楽再生環境の重大な不具合の対応に忙殺されて、ブログを更新する暇がありませんでした。天気は悪いし、ネットの音楽再生環境を再構築することになって、てんやわんやの一日でした。やれやれ。

しかし、今朝、やっとリカバリー完了。再び、安定した音楽再生環境が整うこととなり、ほっと一息。しかし、今日は朝から雨。それもまとまった雨で外出するのも憚られる。今日は終日、新しい再生環境の整備に勤しむこととなりました。そうなれば、BGMが欲しくなる。それも、作業の邪魔にならない、ながら聴きに最適な音。

流麗で耽美的なソロ・ピアノ盤を選択する。Fred Hersch『Open Book』。今年の9月、つい先月のリリース。今年で62歳。ブラッド・メルドーなど数々の後進からもリスペクトを受ける、最近やっと人気が出てきた耽美派、フレッド・ハーシュのソロピアノ盤。ジャケットだけを見れば、ECM盤か、と思うんですが違います(笑)。
 

Open_book

 
とても耽美的なソロ・ピアノである。しかし、クラシック系の流れる様な流麗さとはちょっと違う。そこはかとなく、しっかりとビートが効いていて、ジャジーな旋律が豊かな、明らかにジャズだ、と確信出来る「流麗なソロ・ピアノ」。テクニックは優秀。陰影抑揚もしっかり効いていて、聴き流していても飽きることが無い。

ソロ・ピアノとは言え、心の趣くままに弾きまくる訳では無い。良く考えられ、良くアレンジされている。例えば、2曲目の「Whisper Not」を聴けばそれが良く判る。これだけ攻めのアレンジを施された「Whisper Not」を僕は他に知らない。耽美的ではあるが、アドリブのフレーズは「攻めのフレーズ」。流麗さに甘えることは無い。硬派な滑らかさ。

耽美的なソロ・ピアノではあるが、陰影抑揚がしっかり効いている。どの曲も良く考えられたアレンジが施されていて、ながら聴きをしながらも、しっかりと音の印象が耳に残って、決して飽きることは無い。耽美的なフレーズの中に、しっかりと底にビートが流れているので、音に流されることも無い。意外とながら聴きしながらの仕事がはかどる、理想的な「ながら聴き」盤である(笑)。いや〜、ちょっと驚きの好盤である。

 
 

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2017年9月14日 (木曜日)

セルビアはベオグラードのジャズ

欧州を旅して思うのだが、訪れたどの国にもジャズがある。地元のエンタメ系の雑誌やお店の案内カードを見ていると、必ず、ジャズのライブ・ハウスの紹介がある。ということで、その国を訪れたら、必ず、その国のジャズを探し、その国のジャズを聴く。すると、それぞれ、国によってジャズの音が違うのだ。国毎の個性とでも言うのだろうか。これって、意外と面白い。

アップル・ミュージックなど、ダウンロード・サイトが充実してきたお陰で、様々な国のジャズを聴ける様になった。ネットの中でも、様々な国のジャズに関する情報が充実してきており、知識レベルの情報の入手も楽になった。良い時代になった。昔は、米国ジャズでも情報不足の感があって、情報を得るのに雑誌を読んだり、本を読んだり。大変でした。

Bojan Zulfikarpasic『Solobsession』(写真左)。今日聴いた欧州ジャズ。ピアニストである。2008年の作品。まず、リーダーの名前を何て呼んだら良いか、判らない(笑)。「Bojan Zulfikarpasic=ボヤン・ズルフィカルパシチ」と読むそうだ。ボヤンは判る。でも、セカンド・ネームが判らない。この名前からすると「北欧系」か、と思うが、冒頭の演奏を聴くと「違う」。

北欧系独特の響きの拡がりとクリスタル感が希薄。加えて、ファンクネスは皆無。タッチは骨太でそれでいて品の良い力強さ。流麗ではあるが無骨。そうすると、英国系若しくは仏蘭西系は無い。ましてや独系でも無い。ん〜、どこのジャズなん?
  

Bojan_zulfikarpasicsolobsession

 
実は、旧ユーゴスラビア、ベオグラード出身でフランスを舞台に活躍するジャズ・ピアニストとのこと。名前が長いので、通称「Bojan Z」で通しているらしい。なるほど、ベオグラードだから、今の国名で言うと「セルビア」。この盤に詰まっていろ音は「セルビア」のジャズ、東欧のジャズである。

この『Solobsession』は、ボヤンのソロ・ピアノ盤である。よって、ボヤンのピアノの個性が露わになる。ファンクネスは皆無。タッチは骨太でそれでいて品の良い力強さ。流麗ではあるが無骨。アドリブ・フレーズはどこかポップな雰囲気が親しみ易く、ピアノの響きを美しい。テクニックも優秀。緩急自在なインプロビゼーションで、アルバム全編を一気に聴き切ってしまう。

ピアノの特殊奏法を駆使した演奏、プログレの様な変拍子の演奏、フリーキーな展開をところどころ「チラ見せ」しつつ、どこかポップな響きのインプロビゼーションは今風のスピリチュアルな響き。今までにありそうで無かったピアノ・ソロで、一度填まると、暫く、病みつきになるほどの個性。

しかし、アルバム・ジャケットの雰囲気と「Bojan Zulfikarpasic」という姓名の文字の雰囲気から、これ「北欧ジャズ」系ね、と思ってしまうんだが、これがまあ、全く違うんですね。でも、タッチは骨太でそれでいて品の良い力強さ。流麗ではあるが無骨。アドリブ・フレーズはどこかポップな雰囲気が親しみ易い。と良い方に転んで、この盤の魅力にドップリと填まってしまいます。

 
 

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2016年10月22日 (土曜日)

マル晩年のソロ・ピアノ盤です

秋である。やっと気温も落ち着いた様で、秋たけなわの気温、湿度に落ち着いた感がある。加えて、知らないうちに日が短くなった。ここ千葉県北西部地方では、夕方の6時になればもう辺りは暗い。肌寒くなるわ、湿度は低くなるわ、日は短くなるわ、で物寂しいこと限りなし、である。

そんな物寂しい「秋の夜長」、久し振りにジャズ・ピアノのソロ盤にじっくりと耳を傾ける。秋の夜長は室温もほど良く、世の中の喧噪も落ち着いて静かである。そんな空気の中、ピアノ・ソロのパフォーマンスは耳に沁みる。

ピアノ・ソロ盤というと「キース・ジャレット」となるが、それではあまりに「工夫が無い」。あまりに当たり前のチョイスは、どうにもいけない。何かちょっと捻りが効いたピアノ・ソロ盤は無いか、と探していてチョイスした盤がこれである。

そのタイトルはずばり『Mal Waldron』(写真左)。2003年2月のリリース。マルと最後の7年をすごした「3361*BLACKレーベル」の伊藤秀治氏が、自ら所有する音源で構成した未発表ソロ。1995〜99年の間に録音されたソロ・パフォーマンスからの選曲。2002年12月に逝去したマル追悼として、この盤はリリースされた。

選曲を見渡せば、マルの「おはこ」が、ズラリ揃えられている。マルのピアノの個性といえば、かなり特徴的なピアノで、一聴すれば直ぐに判るほどである。
 

Mal_waldron_solo

 
ガンゴンと硬質なタッチに、不協和音中心のおどろおどろしい旋律が前衛っぽく響く。硬質なテンション高い速弾きのフラグメンツ。突然響く、セロニアス・モンクを彷彿とさせる不協和音のブレイク。幾何学模様のような、スクエアに展開する硬派なアドリブ。現代音楽を想起させる、ちょっと取っ付き難い、硬い頑固なピアノだが、底に流れるブルージーな雰囲気が、明らかに「ジャズ」を感じさせる。

しかし、そんな硬質で尖った、ちょっと取っ付き難い、硬い頑固なタッチが、ちょっと優しく穏やかなイメージに変わっている。基本的には硬い頑固なタッチではあるけれど、ちょっと柔らかで暖かな雰囲気が漂っていて、聴いていてとても心地良い。

晩年の録音であること、そして、録音したスタジオが山中湖湖畔のペンションのスタジオであることから、恐らく、適度にリラックスして、穏やかな精神状態の中でのパフォーマンスに至ったのではないか、と睨んでいる。マルのピアノ・ソロのベスト・パフォーマンスのひとつとして良いかと思う。

良いピアノ・ソロ盤です。録音状態も良好で、オーディオ的にもお勧めの一枚。優しく穏やかなマル・ウォルドロンのピアノを体感できる好盤です。

 
 

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2016年9月22日 (木曜日)

こんなアルバムあったんや・66

今日は秋分の日。秋分の日と言えば「お彼岸の中日」。例年であればまずまず爽やかに晴れるのであるが、今日は朝から大雨の千葉県北西部地方。今年の9月はほどんど晴れ間を見ていない。

外は大雨。外出することも叶わず、それでも涼しくなった部屋の中で、窓の外の雨音を仄かに聞きながら、じっくりとピアノ・ソロのアルバムに耳を傾ける。

George Shearing『My Favorite Things』(写真左)。ジャズ・ピアノのレジェンドの一人、ジョージ・シアリングのソロ・パフォーマンス。1997年、Telarcレーベルからのリリース。Telarcなので、録音がちょっとクラシックっぽいのが面白い。

ジョージ・シアリング晩年のソロ演奏。英国生まれ、28歳で米国に渡っており、シアリングのピアノ・タッチには、そこはかと無く欧州的な雰囲気が漂うところが個性。大英帝国勲章を受勲しており、英国出身のジャズメンとしては破格のレジェンドである。

さて、このソロ・パフォーマンス集であるが、冒頭のタイトル曲を聴けば、恐らく、大多数のジャズ者の方々は頭の上に「?」が付くのではないか、と思う。それもそのはず、アレンジが実にクラシックっぽいのだ。
 

George_shearing_my_favorite_sings

 
ジャズ臭さはほどんど無く、もとより、ファンクネスは希薄。それでも、流麗なシアリングのタッチは絶品で、心地良いテンションのもと、燻し銀の様に渋く輝く様な、落ち着いたタッチに思わす耳を傾けてしまう。

クラシックっぽいアレンジで、かなりオーソドックスな演奏なので、アドリブの妙とかアレンジの妙という楽しみ方は皆無なソロ・アルバムなのですが、シアリングのタッチが流麗かつ誠実で、演奏が進むにつれ、どんどん惹き込まれていきます。

ばりばりジャズっぽいピアノ・ソロを楽しみたい向きには全く合いませんが、ピアノ・ソロのパフォーマンスを純粋に楽しむ分には、このアルバムは実に良い雰囲気を持っていると思います。

僕もこのソロ・アルバムを聴く時は、ジャズのソロ・パフォーマンスである、という前提を忘れるようにしています。純粋にピアノのソロ演奏を楽しむ、そんな向きにピッタリなシアリングのソロ・アルバムです。

 
 

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2016年2月21日 (日曜日)

ポール・ブレイのソロ・ピアノ

今年は早々から、様々なジャンルでの有名人、著名人が鬼籍に入っている。ジャズ界でもその動きに呼応する様に、ジャズの歴史に名を残したレジェンド・レベルのジャズメンの逝去が相次いでいる。

今年早々、1月3日に逝去したのが、Paul Bley(ポール・ブレイ)。ビバップ・スタイルからスタートし、フリー・ジャズ、アヴァンギャルドへ音楽性を変遷させながら、独自の耽美的な演奏スタイルを築き、独自の地位を確立したジャズ・ピアニストのレジェンドの一人。享年83歳。

その耽美的なピアノは、僕はジャズを聴き始めた、ジャズ者初心者早々の時期から知っていた。1972年録音のPaul Bley『Open, to Love』(2014年12月5日のブログ参照・左をクリック)は、ジャズ者初心者の頃の愛聴盤である。

おおよそジャズとは異なる、どちらかといえば現代音楽の雰囲気が強い「凛とした」静謐感溢れるソロ・ピアノ盤。ジャズ・ピアノに思わず足でリズムを取ってしまう様なスィング感とか、耳に聴き易い、滑らかで綺麗なコード進行とかキャッチャーなメロディーとかを期待する人は裏切られてしまう確立大です。

しかし、私が初めてこの盤を聴いた時には、この盤のソロ・ピアノには新しいジャズのスタイル、新しいジャズ・ピアノの形を強く感じました。それからというもの、現在まで、パーソネルにポール・ブレイの名前が入ったアルバムは見当たる度に聴いてきました。
 

Alone_again

 
ポール・ブレイのジャズ・ピアノの個性を愛でるには、『Open, to Love』の様なソロ・ピアノが1番相応しい演奏スタイルの様に思えるが、そのポール・ブレイのソロ・ピアノの中で、マスト・アイテム的な内容を誇るアルバムが、Paul Bley『Alone Again』(写真左)。1974年8月、ノルウェーはオスロでの録音。

先にご紹介した『Open, to Love』よりもジャジー、左手のリズム&ビートが明瞭で、この『Alone Again』の方がジャズのソロ・ピアノ盤として聴き易い、親しみ易い内容になっている。奏でられるフレーズも耳に聴き易い、滑らかな響きを持つもので、ブレイのピアノの持つ個性、官能的、かつ耽美的、硬質でクリスタルなタッチが、この『Alone Again』の方が楽しめる。

内容のアカデミック加減は『Open, to Love』、ソロ・ピアノ盤として聴き易い、親しみ易い内容は『Alone Again』。ポール・ブレイのソロ・ピアノの個性を愛でるには、この2枚は必須アイテムでしょう。ジャケットの抽象画もポール・ブレイのソロ・ピアノのイメージと良く合っていて良好です。

しかし、これでまた一人、強烈な個性を持ったジャズ・ピアノのレジェンドを失ったことになります。どんどん寂しくなるなあ。ご冥福をお祈りします。

 
 

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2015年12月 3日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・71

昨日書いたが、ジャズ喫茶って、たまにはジャズ者の方々が「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけることが大事だと思う。とにかく「これは知ってる」とか「これは誰が吹いているか知ってる」という盤をかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。

例えば、このピアニストの音も、恐らく、ある程度ジャズを聴き込んだジャズ者の方々であれば、「これは知ってる」とか「これは誰が弾いているか知ってる」となるのではないか。聴けば直ぐ判るピアニストである。これだけ個性的なピアノは他に無い。というか、唯一無二である。

Thelonious Monk『Solo Monk』(写真左)。1964年10月、1965年3月の録音。孤高のジャズ・ピアニスト、バップの高僧と呼ばれる「セロニアス・モンク」のソロ盤である。セロニアス・モンクは1917年生まれだから、47歳の時の録音になる。ジャズメンとして中堅からベテランの域に達した、充実のソロ・ピアノ盤である。

モンクのピアノの個性を確認し愛でるには、ソロ盤が一番。バックの演奏を一切排除して、モンクのピアノのみが朗々と流れる。そういうシチュエーションが、モンクの個性を感じるのに一番である。

それほどまでに個性的なモンクのピアノである。まず、ボイシングが普通では無い。不協和音がガンガン出てくる。そして、独特のタイム感覚。そこで止まるか、と思いつつ、そこで走るか、と驚き、いきなり左手がガーンと入って、右手が不協和音を旋律していく。おおよそ、クラシック音楽には全く無いピアノ。
 

Solo_monk

 
クラシック・ピアノを聴き馴れた耳には、このモンクの独特なタイム感覚とボイシングを持つピアノは、かなり辛いだろう。でも、モンクのピアノって、アルバムを聴き重ねていくと癖になってくる。なんか、この独特なタイム感覚とボイシングが心地良くなってくる。癖の強いチーズの様な感覚。

逆に、クラシック音楽の不協和音を活用した、ストラビンスキーやバルトークの交響曲などを聴き馴れた耳には、モンクの不協和音フレーズは意外といけるのではないか。モンクの不協和音フレーズは意外と計算され、その構築美がたまらない。しかも、この不協和音フレーズはジャズの中でも唯一無二。これだけ効果的に不協和音を活用出来るピアニストはモンク唯一人。

そんなモンクのピアノは、その癖が強く出たものはちょっと聴くのがしんどい、というジャズ者の方も多い。特に、若い頃のモンクのピアノは、モンクの個性と癖が強く出たものが多い。確かに僕も若い頃は、このモンクの癖が強く出た盤はちょっと苦手だった。

そういう意味で、この『Solo Monk』のモンクのピアノはあっさりしている。モンクの癖がほど良くこなれていて、とても聴き易いモンクのソロ・ピアノである。穏やかな日に陽向ぼっこをしながら聴いている様な、そんなほのぼのとしたモンクのピアノは優しい。タッチも柔らかくて、聴き心地がとても良い。

一般万民向け、モンク入門盤として最適な盤でしょう。ジャズ喫茶で軽く流すのに良い盤です。そして、モンクの個性はしっかりと判る盤なので、この盤をジャズ喫茶でかけると、ジャズ者の方々はパッと明るくなって得意げな顔になる。そしてその得意げな顔がこう語る。「これ、セロニアス・モンクのピアノやね」。

 
 

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2015年8月11日 (火曜日)

ブライアントのソロ・ピアノ盤

少し暑さが和らいだ千葉県北西部地方。暑さが和らいでくれば、ジャズも聴き易くなる。聴き易くなってくると、聴きたくなるのが、得意ジャンルのジャズ・ピアノ。

もともと、子供の頃、8年ほどクラシック・ピアノを習っていたこともあって、ピアノは今でも少し弾ける。ジャズを聴きはじめて、やはり自ら弾ける楽器に親近感を覚える。ということで、ジャズを聴き始めて37年。37年間、ずっとジャズ・ピアノは僕の得意ジャンルである。

好きなピアニストは結構いるが、このレイ・ブライアントなどは僕の大のお気に入りのピアニスト。ブライアントが両掌を開いた印象的なジャケ写で有名な、ソロ・ピアノの大名盤『Alone At Montreux』に出会ってファンになって以来、ずっとお気に入りのピアニスト。

僕はこのブライアントのソロ・ピアノが好きで、良く唄うジャジーな右手にビートの効いた的確で重量級の左手、上品なファンクネス濃厚、ジャジーなスイング感良好なフレーズは、一度填まったら、その魅力から逃れることは出来無い。ジャズの良いところがてんこ盛りのソロ・ピアノ。

そんなブライアントのソロ・ピアノ盤で、僕が愛して止まない盤がもう一枚ある。そのアルバムとは、Ray Bryant『Alone With The Blues』(写真左)。1958年12月の録音。もちろん、パーソネルはピアノのレイ・ブライアントただ一人。
 

Alone_with_the_blues

 
ブルースを弾くというコンセプトが明瞭なこのアルバム、ブルージーでファンキーなピアノを弾くブライアントの個性を十分に感じ取ることができる好盤である。右手でブルースの旋律を唄い、左手でブルースのリズム&ビートを的確に雄弁に叩き出す。上品なメリハリを効かせたビハインド・ザ・ビート。

悪名高きプレスティッジ/ニュージャズからのリリースなので、アルバム・ジャケットのデザインはイマイチ。それでもコーティングの効いたブルー一色のブライアントのポートレイトは、このアルバムに詰まっているピアノの音のイメージを的確に伝えている。

エバンスやピーターソンの様に、大向こうを張る様な目を見張るようなテクニックや仰々しいまでのフレーズの展開はありませんが、印象的な左手、黒くてファンクネス溢れる右手のフレーズは、いぶし銀の様な滋味溢れる、「小粋」で小気味良い雰囲気満載です。ドラムとベースが不在でも十分にスイングしているところが凄い。

良いジャズ・ピアノ、良いソロ・ピアノです。派手派手の『Alone At Montreux』も大好き、でも、このいぶし銀の様な滋味溢れる『Alone With The Blues』も大好き。この2枚で、まずはレイ・ブライアントのピアニストとしての個性の主な部分を十分に感じ取ることが出来ます。お勧めの「隠れ名盤」です。

 
 

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2015年5月18日 (月曜日)

目標となるジャズ・ピアノの技術

5月14日のブログ(左をクリック)で「基準となるジャズ・ピアノの技術」と題して、バド・パウエルの『The Genius Of Bud Powell』をご紹介した。このアルバムについて、以下の様に評した。

このアルバムは、ジャズ・ピアノのテクニックの基準である。ジャズ・ピアノにおける「優れたテクニック」とは何か。このアルバムを聴けばたちどころにそれが理解出来る。このアルバムに詰まっているテクニックは凄い。思わず笑いがこみ上げて来るハイ・テクニック、そして併せ持つ「歌心」。

このバド・パウエルが目標にした伝説のピアニストがいる。アート・テイタムである。アート・テイタムは「ジャズ・ピアノの神様」と呼ばれる。そのテクニックは超絶技巧、史上最高と言われる。1956年に亡くなっているので、そのテクニックを確かめる音源はそんなには多く無い。

そんな中で、このアルバムが一番、アート・テイタムのテクニックを確かめるに最適なアルバムだろう。そのアルバムとは、Art Tatum『Piano Starts Here』(写真左)。最初の4曲は1933年の演奏、残りの曲は1949年の演奏。どちらの演奏も超絶技巧。しかしながら、細部に渡って繊細かつ端正に構築されたフレーズ。

エンタテインメントとしての超絶技巧なピアノ。聴かせる超絶技巧なピアノ。このソロ・ピアノをジャズ・ピアノと断じるのには無理がある。ビートだって、左手のベースラインだって、モダン・ジャズのそれとは若干異なる。しかし、聴いて楽しい、聴き心地の良い、超絶技巧が楽しめる、超一級のエンタテイメントなピアノ。
 

Piano_starts_here

 
バド・パウエルとアート・テイタムを比較しても意味は無い。そもそも、超絶技巧なピアノに対するアプローチが違う。バドは荒削りではあるが、道を極めるような、テクニックを極めるような、ストイックで触れば切れるような壮絶さがある。

一方、アート・テイタムはエンタテイメントである。テイタムの超絶技巧は聴く人々の為にある。聴いて楽しく、見て楽しい。細部に渡って繊細かつ端正に構築されたフレーズは「エンタテインメント性」に溢れている。このアルバム『Piano Starts Here』の1曲目「Tea For Two」を聴けば、それが良く判る。

そして、3曲目の「Tiger Rag」のテクニックには唖然とする。これぞ、目標となるジャズ・ピアノの技術だろう。もはや「神様」の領域。人間の技とは思えない。でも、聴いていてワクワクする。思わず口元が緩む。

とにかく聴いていてとても楽しい。それが、アート・テイタムのソロ・ピアノの特徴。20世紀を代表するクラシックのピアニストのホロヴィッツや大指揮者トスカニーニがテイタムの演奏を聴きに訪れたことは有名な話。このアルバムを聴けば、その逸話も納得する。

このアルバムには、「目標となるジャズ・ピアノの技術」が満載。何度聴いても飽きない。それほどまでに、この即興演奏の中に、ジャズとして目標になるテクニックが散りばめられている。

 
 

震災から4年2ヶ月。決して忘れない。まだ4年2ヶ月。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから復興に協力し続ける。 

Never_giveup_4

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