2023年8月26日 (土曜日)

もう1つのコンガ入りガーランド

プレスティッジ・レーベルって、アルバムの編集方針も理解出来ないところが多々あるのだが、録音方針も良く判らないところがある。例えば、このレッド・ガーランド・トリオにバレットのコンガの入ったセッションは3つある。 

1つは 1958年4月11日の『Manteca』セッションの全6曲。全てコンガ入りで全曲タイムリーにアルバム化。2つ目は 1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッション。全12曲あったがコンガ入りは7曲。しかし、録音当時は全てアルバム化されず、1963年に何と、コンガ抜きのトリオのみの4曲だけがアルバム化。コンガ入り7曲は全てお蔵入り。

3つ目は 1958年8月22日の『Rojo』セッション。全6曲中、コンガ入りは4曲。しかし、これらも録音当時は全てアルバム化されず。こちらは1961年にアルバム化されている。今日はこの『Rojo』 を取り上げる。

Red Garland『Rojo』(写真左)。1958年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), George Joyner (b), Charlie Persip (ds), Ray Barretto (congas)。録音当時は「何故かお蔵入り」盤。リリースは1961年の初夏の頃。3年弱、倉庫に眠っていた音源になる。

バレットのコンガ入りは4曲。トリオのみの演奏は2曲。しかし、アルバムをずっと通して聴いていると、曲が進むにつれ、コンガの有無が判らなくなる。コンガがハードバップなトリオ演奏にしっかり溶け込んで、ラテンな雰囲気が薄れている。

それでも、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートが、トリオ演奏に良い雰囲気を加味している。トリオのみの演奏よりも、リズム&ビートがクッキリ浮き出て、メリハリの効いた演奏に仕上がっている。
 

Red-garlandrojo

 
コンガ入りのトリオ演奏の最初は1958年4月11日の『Manteca』セッション。この時のコンガの役割は、ガーランド・トリオの演奏にラテン・ジャズの風味を加味すること。そして、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすること。これがピッタリ当たって、『Manteca』は充実した内容の盤に仕上がった。

この『Rojo』では、ラテン・ジャズの風味を加味することよりも、コンガの音をハードバップなジャズ演奏に適応させて、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすることに主眼が置かれている様な感じがする。そういう点で、この『Rojo』セッションは充実した内容だと思うのだが、録音当時はお蔵入り音源。1961年にアルバム化されただけ、良かったと思うくらいの内容の充実度だと僕は思う。

それを思うと、1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッションのコンガ入りは7曲はアルバム化されず、1977年に未発表音源集『Rediscovered Masters』の中でリリースされただけ。今ではストリーミングで聴くことは出来るが、正式なアルバム化はされなかったのは残念である。

しかし、プレスティッジ・レーベルって、どうして、1958年だけ、コンガ入りのガーランド・トリオのセッションを4月、6月、8月の短期間に3セッションも持ったのか。タイムリーにアルバム化したのは4月のセッションのみ。しかも、6月のセッションのコンガ入り7曲は未発表音源集でリリースされただけ。どうも、この辺りのプレスティッジの録音方針が理解出来ないなあ。

ガーランド・トリオのコンガ入り企画盤は、ガーランド・トリオの演奏の「金太郎飴」感を緩和させる効果があって、良い内容だと思っている。『Manteca』と『Rojo』の2枚が正式盤としてリリースされたことは幸運だった。いつもとは違う、コンガでビートが強化されたガーランド・トリオの演奏が新鮮に響く。
 
 

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2023年8月25日 (金曜日)

『Manteca』は名盤だと思う

ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技のレッド・ガーランド。ガーランドは、何故か、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げるプレスティッジ・レーベルから多くのリーダー作をリリースしている。プレスティッジのハウス・ピアニストとしても良い位である。

しかし、ガーランドの場合、セッションの寄せ集めアルバムがお得意のプレスティッジのリーダー作の中で、プレスティッジには珍しい、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」である。これ、ガーランドならではの「傾向」だと思うのだが、この「傾向」を指摘するジャズ者の方には今まで出会ったことが無い。そういう「傾向」が明らかにあると思うんだがなあ。

Red Garland『Manteca』(写真左)。1958年4月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds), Ray Barretto (congas)。1958年4月11日のセッション、全6曲を全てチョイスした盤。ガーランドの「定番トリオ」にレイ・バレットのコンガを入れたカルテット編成の「企画盤」。

同一セッションの中から編集されたリーダー作であり、企画盤である。ガーランドは「企画盤」に強い。この盤は、バレットのコンガ入りで、ラテン色強めのアルバム。コンガの心地良い低音弾けるビートがラテン・ジャズの雰囲気を掻き立てて、ガーランドのブロックコードが、ラテン・ビートに乗って、切れ味良く弾むようにビートを刻む。テクニックに優れるガーランド、ラテン・ビートも「お手のもの」である。
 

Red-garlandmanteca

 
冒頭のディジー・ガレスピー作の「Manteca」が良い。このアフロ・ジャズの名曲に、バレットのコンガとガーランドのラテン・ビートなブロックコードが絡まって、爽やかで乾いた聴き心地の良いラテン・ジャズの雰囲気を添加している。ネチっこく俗っぽいラテン・ジャズに陥らないところが、ガーランド・トリオの真骨頂。

そして、このチェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番トリオ」が真価を発揮するのが、ラストのコンガ抜きのトリオ演奏「Portrait of Jenny」。CDリイシュー時のボートラになるが、これが絶品。お得意のスロー・テンポのバラードだが、柔和な雰囲気、心地良いスイング感、玉を転がすようなタッチ、流れる様なフレージング、そして、味のある品の良いリズム&ビート。ガーランドの「定番トリオ」の名演のひとつである。

この『Manteca』というアルバム、コンガ入りの企画盤のイメージがつきまとって、しばらくの間、敬遠していたのだが、聴いてみて「あらビックリ」。コンガがビートの良いアクセントになっていて、ガーランド・トリオとして新しい響きを湛えているところが「高評価」。ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』に匹敵する名盤だと思うのだが如何だろう。

でもなあ、我が国のベテランのジャズ者の方々は「コンガ嫌い」だし、このシンプル過ぎるジャケだとちょっと無理かなあ。でも、演奏内容は絶対、ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』と比肩する出来だと思います。コンガとシンプルなジャケに怯まず「聴くべし」です。
 
 

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2023年8月23日 (水曜日)

ブロック・コードの凄さを愛でる

プレスティッジ・レーベルは、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げる、という、とんでもないアルバム編集方針を持ったジャズ・レーベル。セッションの寄せ集めアルバムはかなりの数に上る。

アルバムを聴き進めて行くと、突如、演奏編成が変わったり、演奏の雰囲気が変わったりするので、セッションの寄せ集めと直ぐに分かるものも多い。ジャズマンの演奏能力やジャズマンの演奏志向は刻々の変化するので、出来れば同一セッションの中で演奏曲をセレクトして欲しい。

Red Garland『It's a Blue World』(写真左)。1958年2月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。いわゆる「1950年代ガーランドの黄金のトリオ」の演奏。しかし、この1958年2月7日のセッションは当時、お蔵入りになって、正式リリースされたのは1970年になってから。

当時、お蔵入りになった音源だが、この盤は1958年2月7日のセッションの音源だけで編集されていて、アルバム全体の雰囲気は統一感があって聴いていてシックリくる。
 

Red-garlandits-a-blue-world

 
1958年2月7日のトリオでの録音は全6曲。1曲は失敗演奏だったので、この盤は1958年2月7日のセッションで正式に録音された音源の全て、全5曲をアルバム化している。

タイトル通り、収録された演奏は「ブルーな雰囲気を湛えたスタンダード曲」で占められ、3曲目の「Carzy Rhythm」(アルバム『Dig It』に収録されていた曲と同一)を除いて、全曲スローバラードで統一されている。実に滋味溢れる、落ち着いた雰囲気のトリオ演奏。

特に、ガーランドのブロック・コードを聴くには最適な盤で、高速ブロック・コードの「Crazy Rhythm」にまず「仰け反る」。1曲目「This Can't Be Love」、5曲目の「It's A Blue World」でのシングル・トーンとブロック・コードの弾き回しは見事。2曲目「Since I Fell For You」、4曲目「Teach Me Tonight」のどっぷりブルージーなブロック・コードが印象的。収録されたどの曲もブロック・コードの妙がしっかり聴ける。

ガーランドの場合、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」。そして、この『It's a Blue World』はガーランドのブロック・コードを愛でるのに最適な盤。この盤を聴けば、ガーランドのブロック・コードの凄さが追体験できる。ブロック・コードのバイブル的優秀盤である。
 
 

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2023年8月22日 (火曜日)

レッド・ガーランドは伴奏上手

レッド・ガーランドは伴奏上手。マイルスが自らのバンドに引き入れる為、白羽の矢を立てたくらいの伴奏の腕の持ち主である。様々なフレーズのバリエーションは豊か、リズム&ビートへの適応力は人一倍優れていて、右手のシングルトーンは、フロント楽器とぶつかることは無く、フロント楽器を邪魔することは皆無。

Red Garland『High Pressure』(写真左)。1957年11月15日(「Undecided」「What Is There to Say?」)、12月13日(「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」)の2セッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。

ちなみに11月15日のセッションは10曲。このアルバムにチョイスされたのは「Undecided」「What Is There to Say?」の2曲のみ。他の8曲は他の2枚のアルバムに収録。12月13日のセッションは全5曲。このアルバムにチョイスされたのは「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」の3曲。残りの2曲は別のアルバムに収録。

プレスティッジって、どうして同一日セッションの演奏を1つに集めてアルバム化しなかったのか、理解に苦しむ。複数枚のアルバムを聴かないと、そのセッションの全貌が捉えられないのは、ジャズ盤鑑賞上、面倒くさい。
 

Red-garlandhigh-pressure

 
閑話休題。この『High Pressure』は、フロント2管のクインテット編成。フロント2管は、コルトレーンのテナーとバードのトランペットが務めている。といって、この盤はガーランドのリーダー作。よって、ガーランドのフロント2管に対する「伴奏上手」な面を愛でるのが筋。決して、コルトレーンやバードのパフォーマンスを追いかける類のものでは無い。

ガーランドはフロント管の個性によって、弾き方・アプローチを微妙に変える。コルトレーンは音が太くてストレートでテクニカル。ガーランドはブロックコード優先で、フレーズの全てをコルトレーンに任せて、リズム&ビートの供給のみに集中する。バードのトランペットは明確でリリカル。ガーランドは、右手のシングルトーン、左手のブロックコードの小粋に駆使して、バードのトランペットにしっかりと寄り添っている。

コルトレーン、バードも好調だが、このフロント2管の好調を引き出しているのは、ガーランドの伴奏だろう。ガーランドの伴奏を聴いていると、フロント管が気持ち良く心地良くアドリブ・ソロを展開する理由が良く判る。ガーランドの伴奏は、フロント管の実力を引き出す能力に長けているようで、ガーランドが伴奏に座るとき、コルトレーンのアドリブ・ソロは更に輝きを増すようだ。ドナルド・バードも同様。

この盤を聴くと、ガーランドって「伴奏上手」やなあ、とほとほと感心する。
 
 

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2023年8月 6日 (日曜日)

ガーランドの面倒くさい編集盤

レッド・ガーランドは、1950年代、その人気は結構高かったと見えて、プレスティッジ・レーベルから相当数のリーダー作がリリースされている。しかも、1セッションでLPに収録出来ない位の曲数を録音しているので、当然、未収録の曲が出る。

それを寄せ集めて、リーダー作を編集してリリースする。これが実に扱いに困る。演奏傾向の違うものが混在していたりで、録音年月日を確認して、もともと、どのセッションに入っていたのかを突き止めて評価する必要が出てくる。

The Red Garland Quintet『Dig It!』(写真左)。1957年3月と12月、1958年2月の3つのセッションからの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts, tracks 1, 3, 4), Donald Byrd (tp, tracks 1, 4), George Joyner (b, tracks 1, 3, 4), Paul Chambers (b, tracks 2), Art Taylor (ds)。

1曲目「Billie's Bounce」と4曲目「Lazy Mae」が、1957年12月13日の録音。2曲目「Crazy Rhythm」が、1958年2月7日の録音。3曲目「CTA」が、1957年3月22日の録音。未発表音源としてはここまで。3曲目の「CTA」は、Art Taylor『Taylor's Wailers』に既に収録された演奏をそのままこちらに持って来ている。プレスティッジお得意の寄せ集めとはいえ、つきつめると、かなり「面倒くさい」。

この盤のサブタイトルが「with John Coltrane」。収録曲4曲全てにコルトレーンが頑張っているのかと言えば、そうでは無くて、2曲目の「Crazy Rhythm」にはコルトレーンはいない。3曲目の「CTA」にはコルトレーンはいるが、これはアート・テイラーのリーダー作からの「借り物」なので、純粋には4曲中、2曲しかコルトレーンはいない。これで、The Red Garland Quintetの演奏としてまとめて、しかもご丁寧にサブタイトルに「with John Coltrane」を付けるから、ますます判らない内容になる(笑)。

もともと、1957年12月13日の録音は「The Red Garland Quintet With John Coltrane And Donald Byrd」として録音。全5曲を録音しているが、そのうちの2曲をこの『Dig It!』へ収録、「Solitude」のみThe Red Garland Quintet With John Coltrane『High Pressure』へ切り売り。残りの2曲は未発表音源のまま。ベーシストはジョージ・ジョイナー。

1958年2月7日の録音は、そもそも「The Red Garland Trio」として録音しており、コルトレーンはいない。純粋なガーランド・トリオの録音。よってベーシストは、この録音だけポール・チェンバース。
 

The-red-garland-quintetdig-it

 
1957年3月22日の録音は、もともと「Art Taylor's All Stars」として録音されており、このセッションのリーダーはアート・テイラーであり、ガーランドでは無い。しかし、録音記録を見てみると、同一日に「The Red Garland Trio」の録音が8曲あって、主に『Red Garland's Piano』の為のトリオ演奏だった。

が、その後、何故かコルトレーンが参加して、この「CTA」だけを録音しているみたいなのだ。そして何故か、この曲だけ『Taylor's Wailers』に唐突に収録されている。『Taylor's Wailers』が1957年のリリース。今回ご紹介の『DIg It!』は1962年のリリースなので、この曲だけコルトレーンが入っているので、コルトレーン人気に便乗して、ガーランドのリーダー作の中に混ぜ込んだみたいなのだ。

とにかく、サブタイトルに「with John Coltrane」が付いているので、あの伝説のガーランド・トリオ、ガーランド・チェンバース、テイラーをバックに、コルトレーンが吹きまくった盤かと思うのだが、中身はそうではない。そもそもタイトルに「Quintet(5人編成)」とあるので、フロント管として、コルトレーンともう1人の誰かがいるわけで、それはトランペットのドナルド・バード。

しかも、3曲目の「CTA」は「Quintet(5人編成)」の演奏では無く、コルトレーンのワンホーン参加の「Quartet(4人編成)」で、バックはガーランド・チェンバース、テイラーだが、リーダーはテイラー。しかも、テイラーのリーダー作『Taylor's Wailers』に収録済みの曲を、この『Dig It!』に再掲、使い回しをしている。

タイトルに偽りあり。いかにもプレスティッジ・レーベルらしい仕業なのだが、それぞれの曲の演奏自体は申し分無い。が、この盤をガーランドのリーダー作として捉えるには無理がある。聴いてみると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なる。セッションの中の同一録音曲とは思えないのだが、この収録曲毎の収録年月日を追ってみて、その理由が判った。

ジャズのアルバムは録音年月日が重要な要素として扱われるが、ジャズは即興演奏がメインであるが故、セッション毎にアレンジやニュアンス、響き、そして、その時点でのテクニックや志向が異なってくる。

そういう意味でジャズの録音を評価する上で、録音年月日が重要なのだが、このガーランドの『Dig It!』を聴いていると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なっていて、その重要性が良く理解出来る。これはプレスティッジ・レーベルの「セッション切り売り」の功績だろう。
 
 

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2023年7月23日 (日曜日)

レッド・ガーランドの「再訪」

レッド・ガーランドは、ハードバップ時代、人気絶大のジャズ・ピアニストだった。1956年の初デビュー作『A Garland of Red』から、1962年、一時活動を中断する直前の『When There Are Grey Skies』まで、30枚ものリーダー作をリリースしている。

右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コード。シンプルな奏法だが、ガーランドの手にかかると、とても芳醇でハードバップなジャズ・ピアノになるから不思議。当時の人気のほども理解出来る。

しかし、ガーランドのリーダー作は「プレスティッジ・レーベル」に集中する。プレスティッジ・レーベルの出すアルバムの最大の特徴は、セッションの単位を無視して、幾つかのセッションの「あちらこちら」から曲を寄せ集めてアルバム化する「寄せ集め盤」が多いということ。ガーランドのアルバムにもそんな「寄せ集め盤」が多々あって、どの時点でのガーランドの演奏なのか、ちゃんと理解して聴かないと、曲毎に異なるニュアンスの違いが理解出来ない。

『Red Garland Revisited!』(写真左)。1957年5月24日の録音。プレスティッジの PR 7658番。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Kenny Burrell (g, tracks 3, 7), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。基本は、リーダーのガーランドのピアノ、チェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番のトリオ」演奏。そのトリオ演奏に2曲だけ、バレルの漆黒アーバンなファンキー・ギターが入る。

この盤はプレスティッジには珍しく、単一セッションの録音でアルバムがまとめられている。が、この盤、録音当時はリリースされずにお蔵入り。12年を経て、1969年にリリースされている。
 

Red-garland-revisited

 
プレスティッジの総帥プロデューサー、ボブ・ワインストックについては、この辺の感覚が僕には理解出来ない。聴くと判るが、内容的に全く問題が無い、どころか、ガーランドのピアノも好調、バレルの参加も効果的、という感じなのだが、どうして12年もの間、倉庫に眠っていたのか。

タイトルに「Revisited!(再訪)」とあるのだが、何故「再訪」だったのか、その理由は定かでは無い。恐らく、前述の様に12年もの間、お蔵入りしていて、1969年にようやくリリースしたので「再訪」としたのかもしれない。全く、罪作りなプレスティッジである。

さて、その内容であるが、名盤『Groovy』を録音した時と同時期の演奏なので悪かろう筈が無い。ガーランド、チェンバース、テイラーのトリオは絶好調。2曲に加わるバレルも良い味を出している。

テンポのいい曲とスロー・バラードがバランスよく配置されていて、バレルの入るカルテットの演奏も、バレルがホーンの代わりをしていて、良い耳直し的な演奏になっている。チェンバースが弾くベース・ラインがメロディアスで素晴らしく、テイラーのドラミングは柔軟で小粋。

テンポの良い曲での、ガーランドの右手、転がる様に流麗なシングル・トーンが走る様には、思わず体がスインギーに動く。スロー・バラードでは、ガーランドの左手、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コードが小気味良く、思わずじっくりと聴き入ってしまう。

ギター入りのカルテット演奏も良いアクセントになっていて、ガーランドのトリオ演奏としても非常に良好。この音源がセッションごとお蔵入りになっていた理由が判らない(笑)。ピアノ・トリオとしても絶妙な好盤だと思う。
 
 

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2023年7月22日 (土曜日)

ブルース基調のガーランドが素敵

ブログでは暫く御無沙汰だったが、レッド・ガーランドは、僕のお気に入りのピアニストの1人である。右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、合いの手の様に絶妙のタイミングで入ってくる左手のブロック・コード。聴けば直ぐに判るほどの個性。「金太郎飴」とか、揶揄されることもあるが、どうして、こんなに個性的なジャズ・ピアノ、ガーランドの他にはいないのだから、唯一無二のスタイリストとして評価するべきだろう。

Red Garland『The P.C. Blues』(写真左)。1956年5月11日、1957年3月22日と8月9日の3つのセッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Philly Joe Jones (ds, track 1), Art Taylor (ds, tracks 2-5) 。このアルバムは、録音から13年後の1970年になってようやくリリースされた、それまでのアルバムに収録されなかった「未収録音音源」を基にした編集盤。

プレスティッジ・レーベルお得意のセッション寄せ集め盤なんだが、これが意外と複雑怪奇。1曲目が1956年5月11日、Miles Davis『Workin' with the Miles Davis Quintet』に収録された演奏をそのまま再収録。2,4,5曲目が1957年8月9日、名盤『Groovy』セッションの未収録音源。3曲目が1957年3月22日の『Red Garland's Piano』セッションの未収録音源。
 

Red-garlandthe-pc-blues

 
タイトル通り、ブルース基調の演奏を集めた編集盤。未収録音源の寄せ集めっぽいイメージだが、収録された未発表音源の内容は良い。寄せ集め盤とは言え「捨て曲」は無し。いかに『Groovy』セッションと『Red Garland's Piano』セッションが優れていたかが良く判る。ガーランドのピアノは絶好調。しかも、お得意の「ブルース基調」の演奏なので、右手のシングル・トーン、左手のブロック・コードは映えに映える。

そして、そんなガーランドのバックに就くリズム隊、ポール・チェンバースのベースとアート・テイラーのドラムが、良く聴けば、ハードバップの演奏の中でも、先進的なリズム&ビートを捻り出していて、ガーランドのピアノを引き立て、ピアノ・トリオの演奏に「粋」でアーティスティックな響きを醸し出している。ガーランドのピアノ・トリオがマンネリしないのは、この2人のリズム隊が故である。

プレスティッジ・レーベルお得意の「セッション寄せ集め盤」で、しかも、直近の録音から10年以上経ってのリリースなんだが、内容はとても良い。ブルース基調な演奏が得意なガーランドのピアノの特質がしっかりと押さえられている。きっと、プレしティッジのプロデューサー、ボブ ワインストックはガーランドのピアノが好きだったんやないかなあ。この盤の選曲、ガーランドの個性と特質をしっかり理解していないと、こんなに上手い選曲にはならないだろう。良いピアノ・トリオ盤です。
 
 

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2022年2月16日 (水曜日)

バップなガーランドの魅力。

レッド・ガーランドのピアノは「右手はコロコロと唄う様な繊細なシングルトーン、左手は合いの手を入れるが如く、タイミングが絶妙のブロックコード」。マイルスのバンドに入った時に「アーマッド・ジャマルの様に弾け」とマイルスに言われる。その結果が、前述のガーランドのピアノの個性なんだが、これって、マイルス仕様のガーランドでは無いかと最近思うのだ。

Red Garland『Bright and Breezy』(写真左)。1961年7月19日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Sam Jones (b), Charlie Persip (ds)。ガーランドお得意のトリオ編成。1961年当時、中堅の名手だった、サム・ジョーンズがベース、チャーリー・パーシップがドラムを務める。

冒頭の「On Green Dolphin Street」から、ガーランド・トリオは快調に飛ばしていく。僕はこのスタンダード曲が大好きで、様々なジャズマンの演奏を多く聴いている。このガーランド・トリオの演奏は元気が良い。この元気さが、実は、レッド・ガーランドのピアノのもう1つの個性だと思うのだ。

2曲目以降も、この盤については、ガーランド・トリオは、スタンダード曲、ミュージシャンズ・チューンを快調に演奏していく。ガーランドのピアノの右手は、思いっ切り「バップなピアノ」。左手のブロックコードがとても個性的に響く。明るくて明快で爽快なガーランドのピアノである。 
 

Bright-and-breezy_1

 
マイルス・バンド時代のアーマッド・ジャマルの様に「右手はコロコロと唄う様なシングルトーン、左手は合いの手を入れるが如く、タイミングが絶妙のブロックコード」で弾くガーランドが彼の個性の全て、とする向きには、マイルス・バンドを辞した後のガーランドのピアノは、繊細が無くなって演奏が荒くなった、と評されて、酷い評だと、マイルスの下を辞した後のガーランドは聴くに及ばず、というものさえある。

でも、よく聴くと、ガーランドのピアノって「バップ・ピアノ」がもう1つの個性だと思うのだ。右手のコロコロと唄う様な繊細なシングルトーンは、マイルスのバックで、マイルスの邪魔にならないよう、マイルスのトランペットを引き立てる為の特別仕様では無かったか、と思うのだ。

引き立てるべきフロント楽器が無くなって、自分がフロントを勤めるトリオ編成では、自分が前へ出て、メインの旋律を弾く必要がある。加えて、ガーランドはバップ時代バリバリのピアニストである。確かに、マイルスの下を辞して以降のガーランドの右手は「バップの右手」になった。

まあ、ジャズ盤の評価って色々な感じ方があるから、一概には言えないが、この「バップな」右手には軽快な躍動感と歌心があって、僕には、この「バップな」ガーランドの右手も魅力的だと思うのだ。
 
 
 
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2022年2月11日 (金曜日)

レッド・ガーランドの遺作です

僕が所有したジャズ盤の中には、LP時代、購入資金が足りなくて、貸レコードでカセットにダビングして聴いていたものもある。そんな「カセット・ダビング盤」の中には、カセットデッキが壊れて、その盤は聴けなくなって、CDでもリイシューされないという、悲劇的なアルバムもある。

Red Garland『Misty Red』(写真)。1982年4月14,15日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Jamil Nasser (b), Frank Gant (ds)。1984年4月に亡くなったガーランドの遺作になる。昨年の12月に、目出度く再リイシューされた(サブスクにもアップされている)。喜ばしいことである。ただ、再リイシューのジャケは良く無い(写真右)。やはり、LP時代の日本盤のお洒落なジャケが良い(写真左)。

この盤は、僕にとっては「カセット・ダビング盤」で、カセットデッキが不調に陥った後、聴くことが叶わなかった盤である。レッド・ガーランドのリーダー作を全て、まとめて聴き直し始めたのが、2010年の頃からだったので、このガーランドの遺作の『Misty Red』の音源が入手出来なくて、ずっと困っていた。で、今回、再リイシューが叶った訳で、やっと30年ぶりに『Misty Red』を聴くことが出来た。
 

Misty-red_1

 
この盤、ガーランドが58歳の時の「遺作」で、ガーランドはピークを過ぎていて、弾き回しがイマイチ、という評が多いが、僕はそうは思わない。もともと、ガーランドはバップなピアニスト。シンプルな右手もバリバリ弾き倒すのがガーランドで、コロコロと印象的にリリカルに弾く右手の個性は、マイルスのカルテットに所属していた時の、マイルスのリクエストに合わせた弾き方だろう。

マイルスの下を離れたガーランドは、結構、バリバリ弾き倒す右手で、左手のブロックコードも結構、ガンゴン、強いタッチで弾き倒している。そういう点からすると、この盤『Misty Red』でも、ガーランドはバリバリ弾き倒している訳で、意外とこの「遺作」でも、ガーランドは好調だったと思うのだ。

録音時、ガーランドは58歳。ジャズマンとしては、充実した中堅バリバリで、ピアニストとして衰えを見せる年齢でも無い。その証拠に「Misty」などのバラード曲のガーランドの弾き回しは絶品である。意外とこの「遺作」にはガーランドらしさが満載なのだ。ガーランドは60歳で鬼籍に入るまで、ガーランドらしさを失わなかったと言える。
 
 
 
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2021年11月 2日 (火曜日)

僕なりのジャズ超名盤研究・9

マイルス・デイヴィスは僕のジャズの「最大のアイドル」である。マイルスの足跡、イコール、ビ・バップ以降のジャズの歴史でもある。ジャズの演奏スタイルについては、揺るぎない「信念」があった。フリー、スピリチュアル、フュージョンには絶対に手を出さない。マイルスはアコースティックであれ、エレクトリックであれ、いつの時代も、メインストリームな純ジャズだけを追求していた。

Miles Davis Quintet『The Legendary Prestige Quintet Sessions』(写真左)。1955年11月16日(The New Miles Davis Quintet)と1956年5月11日、10月26日(マラソン・セッション)の録音。ちなみにパーソネルは、Miles Davis (tp), John Coltrane(ts), Red Garland (p), Paul Chambers(b), Philly Joe Jones(ds) 。

マイルス・デイヴィス・クインテットのマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』と、デビュー盤『The New Miles Davis Quintet』のプレスティッジ・レーベルに残したスタジオ録音の音源を録音順に並べたもの(と思われる)と、NYのBasin Streetでのライヴ音源(1955年10月18日)と フィラデルフィアのライヴ音源(1956年12月8日)を収録。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源が録音順に並んでいる(と思われる)のが、この企画ボックス盤の良いところ。マラソン・セッションの録音の流れとスタジオの雰囲気が追体験出来るようだ。4部作は、プレスティッジお得意の仕業、アルバム毎の収録曲については、曲と演奏の雰囲気だけで、てんでバラバラにLPに詰め込んでいる。アルバムとしては良いのだろうが、録音時期がバラバラなのはちょっと違和感が残る。
 

The-legendary-prestige-quintet-sessions_

 
さて、このマラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』の音源は、CBSからリリースされた『'Round About Midnight』と併せて、「マイルスの考えるハードバップ」の完成形である。全てが一発録り、アレンジは既に用意されていたようで、それまでに、ライブ・セッションで演奏し尽くしていた曲ばかりなのだろう。

今の耳で聴いても、相当にレベルの高い演奏である。即興演奏を旨とするジャズとしては、この一発録りが最良。マイルスはそれを十分に理解して、このマラソン・セッションを敢行したと思われる。細かいことは割愛するが、一言で言うと「非の打ち所」の無い、珠玉のハードバップな演奏である。これぞジャズ、という演奏の数々。素晴らしい。

1955年10月から1956年12月に渡って、録音順に並んだ音源集なので、振り返ってみるとたった1年2ヶ月の短期間だが、マイルス・デイヴィス・クインテットのバンドとしての成熟度合いと、コルトレーンの成長度合いが良く判る。

バンド・サウンドとしてはもともとレベルの高いところからスタートしているが、段階的に深化、成熟していくのが良く判る。コルトレーンについては、たった1年2ヶ月であるが、最初と最後では全く別人といって良いほどの「ジャイアント・ステップ」である。

マラソン・セッション4部作『Cookin'』『Relaxin'』『Workin'』『Steamin'』をアルバム毎に分けて聴くも良し、録音順に追体験風に聴くも良し、これら「マイルスの考えるハードバップ」の完成形は、ジャズとして「欠くべからざる」音源である。ジャズ者としては、絶対に聴いておかなければならない音源である。
 
 
 
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