2024年1月 3日 (水曜日)

ガーランド5 の 『Soul Junction』

1950年代「ハードバップ・マイルス」の良き相棒、レッド・ガーランド。ガーランドのピアノはシンプルでバップでブルージー。バックに回れば伴奏上手。フロント管を引き立て鼓舞する、合いの手を打つような、シンプルなピアノ。そんなガーランド。意外とハードバップ時代のコルトレーンのバッキングにも、上質の「伴奏上手の妙」を発揮する。

Red Garland『Soul Junction』(写真左)。1957年11月15日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。ピアノのガーランドがリーダー。コルトレーンのテナーとドナルド・バードのトランペットがフロント2管のクインテット編成。

コルトレーンとガーランドの共演はたくさんある。録音年1957年としては、例えば、『John Coltrane with the Red Garland Trio』=『Traneing In』がある。ただ、この盤はパーソネルが雑然としていて、あまり「パーソネルは関係無し」な盤で、初期の「シーツ・オブ・サウンド」だけを体感できる、少し偏った盤であった。

だが、この『Soul Junction』は違う。ガーランドがリーダーの盤なので、コルトレーンはあくまでサイドマンとして振る舞っている。しかも、フロントの相手が大先輩のドナルド・バード。『Traneing In』はコルトレーンはバックをおいて吹きまくるのだが、この盤では違う。しっかり、グループ・サウンドの中で、周りの音を聴きながら、サックスを吹き回す。ところどころ、「シーツ・オブ・サウンド」を控えめに吹きまくるのはご愛嬌。
 

Red-garlandsoul-junction

 
冒頭のタイトル・ナンバー「Soul Junction」は絶品のスロー・ブルース。冒頭、絶妙なガーランドのピアノ。コルトレーンとバードのソロは中盤。リラックスした雰囲気で悠々と流れていく、絶品のスロー・ブルース。続く有名スターダードの「Woody’N You」は小粋で絶品のハードバップ。コルトレーンとバードのフロントのパフォーマンスも申し分ない。

しかし、このコルトレーンの「我慢」がガーランドにも伝わったのか、ラストの「Hallelujah」は熱いバップ・パフォーマンス。この曲だけは、コルトレーンは存分に「シーツ・オブ・サウンド」を吹き回す。

演奏の形式がモードではないので、ガーランドもバードもコルトレーンに付き合って、「シーツ・オブ・サウンド」のパフォーマンスを披露する。ドラムのテイラーもバッシバッシとバップなドラミングで応戦する。微笑ましいバンド・パフォーマンスである。

さすが、人気のガーランドのリーダー作。パーソネルの人選も良く、ガーランドのピアノが一番に映える内容になっている。コルトレーンはさすがに、ガーランドを差し置いて好き勝手に吹くことはしない。この辺のバランスがとても良い、ガーランドがリーダーのクインテット盤。コルトレーンの「シーツ・オブ・サウンド」も五月蝿くなく聴けます。
 
 

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2023年10月 1日 (日曜日)

ガーランドとホーキンスの佳作 『Blue World』

伴奏上手のレッド・ガーランドのピアノ。フロント管の担い手が代わったら代わったで、サポートのやり方を微妙に変えて、その時そのロキのフロント管に合ったバッキングをする。しかも、ガーランドの個性を損なわず、にである。いかにガーランドがプロフェッショナルで、優れたテクニックを持っているかが良く判る。

Coleman Hawkins & The Red Garland Trio『Swingville, Vol.1・Blue World』(写真左)。1959年8月12日の録音。ちなみにパーソネルは、Coleman Hawkins (ts), Red Garland (p), Doug Watkins (b), Charles "Specs" Wright (ds)。プレスティッジ・レーベルの傍系レーベル「Swingville」からのリリース。

Swingvilleレーベルの特徴は、スイング・ジャズの名手達がハードバップのスタイルで演奏すること。スイング・ジャズの演奏形態、演奏マナーをベースにしつつ、ハードバップに準じて、「聴かせる」演奏のアレンジをしっかり施し、ロングレンジのアドリブ・ソロで、演奏者の個性をしっかりと表現する。これが意外と聴き応えがある。

このコールマン・ホーキンス(写真右)のテナー・サックスがフロント1管のワン・ホーン・カルテット編成。コールマン・ホーキンスだけがスイング時代から第一線で活躍してきたジャズマンで、バックを司るガーランド・トリオはハードバップ時代の手練のメンバー。どんな内容に仕上がっているだろう、と興味津々。
 

Coleman-hawkins-the-red-garland-trioswin

 
ホーキンスはオールド・スタイルのスイング風のテナー・サックスなんだが、ガーランド・トリオをバックにして、演奏スタイルはハードバップ。テクニックに優れ、ダンディズム溢れる、骨太で悠然とした、低音が魅力のホーキンスのテナーは演奏スタイルやトレンドを選ばない。

しかし、ホーキンスのテナー・サックスよりも優れたパフォーマンスを発揮しているのは、ガーランドのピアノ。ガーランドの伴奏は機微に溢れ、小粋に、絶妙にホーキンスのテナーを支え、鼓舞する。しかも、ガーランドの個性はちゃんと前面に押し出されていて、ホーキンスのテナーより、ガーランドのピアノの方が目立っている。

ガーランドのピアノが目立つということは、ガーランドのハードバップ志向がしっかり出ているということ。そんなハードバップ志向バリバリのリズム・セクションをバックに、ホーキンスがオールド・スタイルのテナーを吹きまくる。

違和感は全くない、どころか、ホーキンスのテナーはハードバップ志向でも全然いける。逆に、ホーキンスのテナーを改めて見直した。スイングとハードバップの邂逅というよりは、ホーキンスのテナーの柔軟性とテクニックの優秀性。それをしっかりと理解し支える、ガーランドの伴奏テクニックの優秀性。その2つの優秀性の「化学反応」を聴くことが出来る、ガーランドとホーキンスの佳作である。
 
 

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2023年9月30日 (土曜日)

ガーランドとロックジョウの佳作 『The Blue Room』

レッド・ガーランド(Red Garland)の「ブロック・コード+右手のシングル・トーン」のシンプル・ピアノは、実は伴奏上手でもある。

そのシンプルなピアノと伴奏上手に目をつけて、マイルス御大が、1950年代黄金のクインテットを結成する際、レッド・ガーランドをピアノ担当に招聘した訳で、確かに、マイルスのバックで伴奏をするガーランドのピアノを聴いていると、決して、マイルスのトランペットの邪魔をせず、絶妙な間合いで伴奏のタッチを入れていく。

あくまで、マイルスのトランペットが引き立つように引き立つように、伴奏の「合いの手」を入れていく。これが実に絶妙なのだ。この伴奏上手な面を、他の管担当のフロント・メンバーとカルテットやクインテット編成を組んで、優秀作を多数リリースしている。

Red Garland Trio & Eddie "Lockjaw" Davis『Moodsville Volume 1・The Blue Room』(写真左)。1959年12月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Eddie "Lockjaw" Davis (ts), Sam Jones (bs), Art Taylor (ds)。ベースがポール・チェンバースからサム・ジョーンズに代わったガーランド・トリオをバックに、フロント1管にロックジョウのテナーが据わるという、ワンホーン・カルテットな編成。
 

Red-garland-trio-eddie-22lockjaw22-davis

 
プレスティッジ・レーベルが、求愛中のカップルにムード音楽を提供することを目的としたレーベル「ムーズヴィル」からのリリース。しかし、中身は意外と硬派なハードバップ。特に、ロックジョウのテナーがダンディズム溢れる骨太なテナーなので、その印象を更に強くしている。

切れ味の良いガーランドのシンプル・ピアノは、ロックジョウのテナーと「効果的な対比」を醸して出していて、なかなかの内容のハードバップが成立している。純粋に「メインストリーム志向の純ジャズ」盤として、十分鑑賞に耐える優れた内容となっている。ロックジョウのテナーが力感溢れるもので、ムーディーというにはちょっとメリハリが効き過ぎている。しかし、純ジャズとしては「そこが良い」。

アルバム・タイトル「The Blue Room」の通り、盤全体に「ブルージーな雰囲気」が蔓延していて、これがまた実に良い雰囲気。特にロックジョウのテナーがとりわけ「ブルージー」で、ロックジョウのベスト・プレイの1つなのでは、と密かに思っている。

ガーランド・トリオはコルトレーンのテナーと組んでのアルバムを幾枚か出しているが、どうしてもコルトレーンが暴走するので、フロント管とガーランド・トリオとのバランスと相性が「イマイチ」だと感じているのだが、このロックジョウと組んでのカルテット盤については、バランスと相性が抜群で、とにかく聴いていて楽しいし、難しいこと無しにリラックスして聴ける。隠れ名盤の1枚としても良い位の佳作である。
 
 

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2023年9月29日 (金曜日)

ムーディーと言うよりはクール 『Bass-Ment Blues』

私生活でいろいろと悩ましい出来事が続くと、心が疲れてくる。そういう時に、硬派で最先端を行くアーティスティックなジャズはいけない。心からリラックスして聴くことの出来る、小粋で味のあるモダン・ジャズが良い。それも「管無し」が良い。管は疲れた心に刺さってくる。こういう時は「ピアノ・トリオ」である。

Red Garland Trio『Moodsville Volume 6 ・Bass-Ment Blues』(写真左)。1958年11月21日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。ガーランド「鉄壁のトリオ」である。「Moodsville」は、1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けてムーディーな音楽を提供しようと作ったシリーズ。そのシリーズの6枚目のアルバムになる。

レッド・ガーランド・トリオの音は「金太郎飴」。ガーランドの「ブロック・コード+右手のシングル・トーン」のシンプル・ピアノに、骨太で安定感抜群のチェンバースのベース、多彩で安心感抜群のテイラーのドラム、絵に描いた様な、ジャズのピアノ・トリオの「標準」の様なパフォーマンス。どんなスタンダード曲でも、オリジナル曲でも、このトリオの演奏トーンは変わらない。それでも、ガーランドのピアノについては、不思議と「マンネリ感」が希薄。またか、と思わせない様に、弾き方やニュアンスに色々と工夫を凝らしているように感じる。
 

Red-garland-triomoodsville-volume-6-bass

 
1950年代の終盤にプレスティッジが始めた、恋愛中にカップルに向けての1枚、このガーランド・トリオの演奏は実に小粋で味がある。ミッドテンポからスローテンポ、ブルースからバラード、ムーディーな曲を、ガーランドの「ブロック・コード+右手のシングル・トーン」のシンプル・ピアノが弾き進めている。寛ぎ度合いマックス、伸び伸びリラックスしたパフォーマンスがとても良い雰囲気を醸し出す。
 
バックのポルチェンのベース、テイラーのドラムも、切れ味良く、小粋に洒脱にガーランドのピアノを支え、鼓舞する。この職人芸的リズム・セクションのリズム&ビートが、この「恋愛中にカップルに向けてムーディーなピアノ・トリオ演奏」を、イージーリスニング志向では無く、優れたハードバップ志向のモダン・ジャズに昇華させている。

ムーディーではあるが、内容の濃いハードバップなピアノ・トリオ。決して、イージーリスニング志向になっていないところが立派。切れ味の良いガーランドのシンプル・ピアノは、ムーディーと言うよりは「クール」。温かみのある「クール」なトリオ演奏は、ガーランド「鉄壁のトリオ」の真骨頂。「Moodsville」からのリリースとは言え、内容は「硬派」。素敵なピアノ・トリオ盤です。
 
 

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2023年8月26日 (土曜日)

もう1つのコンガ入りガーランド 『Rojo』

プレスティッジ・レーベルって、アルバムの編集方針も理解出来ないところが多々あるのだが、録音方針も良く判らないところがある。例えば、このレッド・ガーランド・トリオにバレットのコンガの入ったセッションは3つある。 

1つは 1958年4月11日の『Manteca』セッションの全6曲。全てコンガ入りで全曲タイムリーにアルバム化。2つ目は 1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッション。全12曲あったがコンガ入りは7曲。しかし、録音当時は全てアルバム化されず、1963年に何と、コンガ抜きのトリオのみの4曲だけがアルバム化。コンガ入り7曲は全てお蔵入り。

3つ目は 1958年8月22日の『Rojo』セッション。全6曲中、コンガ入りは4曲。しかし、これらも録音当時は全てアルバム化されず。こちらは1961年にアルバム化されている。今日はこの『Rojo』 を取り上げる。

Red Garland『Rojo』(写真左)。1958年8月22日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), George Joyner (b), Charlie Persip (ds), Ray Barretto (congas)。録音当時は「何故かお蔵入り」盤。リリースは1961年の初夏の頃。3年弱、倉庫に眠っていた音源になる。

バレットのコンガ入りは4曲。トリオのみの演奏は2曲。しかし、アルバムをずっと通して聴いていると、曲が進むにつれ、コンガの有無が判らなくなる。コンガがハードバップなトリオ演奏にしっかり溶け込んで、ラテンな雰囲気が薄れている。

それでも、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートが、トリオ演奏に良い雰囲気を加味している。トリオのみの演奏よりも、リズム&ビートがクッキリ浮き出て、メリハリの効いた演奏に仕上がっている。
 

Red-garlandrojo

 
コンガ入りのトリオ演奏の最初は1958年4月11日の『Manteca』セッション。この時のコンガの役割は、ガーランド・トリオの演奏にラテン・ジャズの風味を加味すること。そして、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすること。これがピッタリ当たって、『Manteca』は充実した内容の盤に仕上がった。

この『Rojo』では、ラテン・ジャズの風味を加味することよりも、コンガの音をハードバップなジャズ演奏に適応させて、コンガの乾いた切れ味良い低音のビートで、トリオ演奏のビートをより明確にすることに主眼が置かれている様な感じがする。そういう点で、この『Rojo』セッションは充実した内容だと思うのだが、録音当時はお蔵入り音源。1961年にアルバム化されただけ、良かったと思うくらいの内容の充実度だと僕は思う。

それを思うと、1958年6月27日の『Can't See for Lookin'』セッションのコンガ入りは7曲はアルバム化されず、1977年に未発表音源集『Rediscovered Masters』の中でリリースされただけ。今ではストリーミングで聴くことは出来るが、正式なアルバム化はされなかったのは残念である。

しかし、プレスティッジ・レーベルって、どうして、1958年だけ、コンガ入りのガーランド・トリオのセッションを4月、6月、8月の短期間に3セッションも持ったのか。タイムリーにアルバム化したのは4月のセッションのみ。しかも、6月のセッションのコンガ入り7曲は未発表音源集でリリースされただけ。どうも、この辺りのプレスティッジの録音方針が理解出来ないなあ。

ガーランド・トリオのコンガ入り企画盤は、ガーランド・トリオの演奏の「金太郎飴」感を緩和させる効果があって、良い内容だと思っている。『Manteca』と『Rojo』の2枚が正式盤としてリリースされたことは幸運だった。いつもとは違う、コンガでビートが強化されたガーランド・トリオの演奏が新鮮に響く。
 
 

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2023年8月25日 (金曜日)

隠れ名盤だと思う 『Manteca』

ブロックコードと流麗なシングル・トーンが得意技のレッド・ガーランド。ガーランドは、何故か、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げるプレスティッジ・レーベルから多くのリーダー作をリリースしている。プレスティッジのハウス・ピアニストとしても良い位である。

しかし、ガーランドの場合、セッションの寄せ集めアルバムがお得意のプレスティッジのリーダー作の中で、プレスティッジには珍しい、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」である。これ、ガーランドならではの「傾向」だと思うのだが、この「傾向」を指摘するジャズ者の方には今まで出会ったことが無い。そういう「傾向」が明らかにあると思うんだがなあ。

Red Garland『Manteca』(写真左)。1958年4月11日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds), Ray Barretto (congas)。1958年4月11日のセッション、全6曲を全てチョイスした盤。ガーランドの「定番トリオ」にレイ・バレットのコンガを入れたカルテット編成の「企画盤」。

同一セッションの中から編集されたリーダー作であり、企画盤である。ガーランドは「企画盤」に強い。この盤は、バレットのコンガ入りで、ラテン色強めのアルバム。コンガの心地良い低音弾けるビートがラテン・ジャズの雰囲気を掻き立てて、ガーランドのブロックコードが、ラテン・ビートに乗って、切れ味良く弾むようにビートを刻む。テクニックに優れるガーランド、ラテン・ビートも「お手のもの」である。
 

Red-garlandmanteca

 
冒頭のディジー・ガレスピー作の「Manteca」が良い。このアフロ・ジャズの名曲に、バレットのコンガとガーランドのラテン・ビートなブロックコードが絡まって、爽やかで乾いた聴き心地の良いラテン・ジャズの雰囲気を添加している。ネチっこく俗っぽいラテン・ジャズに陥らないところが、ガーランド・トリオの真骨頂。

そして、このチェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番トリオ」が真価を発揮するのが、ラストのコンガ抜きのトリオ演奏「Portrait of Jenny」。CDリイシュー時のボートラになるが、これが絶品。お得意のスロー・テンポのバラードだが、柔和な雰囲気、心地良いスイング感、玉を転がすようなタッチ、流れる様なフレージング、そして、味のある品の良いリズム&ビート。ガーランドの「定番トリオ」の名演のひとつである。

この『Manteca』というアルバム、コンガ入りの企画盤のイメージがつきまとって、しばらくの間、敬遠していたのだが、聴いてみて「あらビックリ」。コンガがビートの良いアクセントになっていて、ガーランド・トリオとして新しい響きを湛えているところが「高評価」。ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』に匹敵する名盤だと思うのだが如何だろう。

でもなあ、我が国のベテランのジャズ者の方々は「コンガ嫌い」だし、このシンプル過ぎるジャケだとちょっと無理かなあ。でも、演奏内容は絶対、ガーランドの名盤の誉れ高い『Groovy』と比肩する出来だと思います。コンガとシンプルなジャケに怯まず「聴くべし」です。
 
 

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2023年8月23日 (水曜日)

ブロック・コードの凄さを愛でる 『It's a Blue World』

プレスティッジ・レーベルは、何の脈略も無しに、別々のセッションから直感頼りで演奏曲をセレクトして、1枚のアルバムに仕立て上げる、という、とんでもないアルバム編集方針を持ったジャズ・レーベル。セッションの寄せ集めアルバムはかなりの数に上る。

アルバムを聴き進めて行くと、突如、演奏編成が変わったり、演奏の雰囲気が変わったりするので、セッションの寄せ集めと直ぐに分かるものも多い。ジャズマンの演奏能力やジャズマンの演奏志向は刻々の変化するので、出来れば同一セッションの中で演奏曲をセレクトして欲しい。

Red Garland『It's a Blue World』(写真左)。1958年2月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。いわゆる「1950年代ガーランドの黄金のトリオ」の演奏。しかし、この1958年2月7日のセッションは当時、お蔵入りになって、正式リリースされたのは1970年になってから。

当時、お蔵入りになった音源だが、この盤は1958年2月7日のセッションの音源だけで編集されていて、アルバム全体の雰囲気は統一感があって聴いていてシックリくる。
 

Red-garlandits-a-blue-world

 
1958年2月7日のトリオでの録音は全6曲。1曲は失敗演奏だったので、この盤は1958年2月7日のセッションで正式に録音された音源の全て、全5曲をアルバム化している。

タイトル通り、収録された演奏は「ブルーな雰囲気を湛えたスタンダード曲」で占められ、3曲目の「Carzy Rhythm」(アルバム『Dig It』に収録されていた曲と同一)を除いて、全曲スローバラードで統一されている。実に滋味溢れる、落ち着いた雰囲気のトリオ演奏。

特に、ガーランドのブロック・コードを聴くには最適な盤で、高速ブロック・コードの「Crazy Rhythm」にまず「仰け反る」。1曲目「This Can't Be Love」、5曲目の「It's A Blue World」でのシングル・トーンとブロック・コードの弾き回しは見事。2曲目「Since I Fell For You」、4曲目「Teach Me Tonight」のどっぷりブルージーなブロック・コードが印象的。収録されたどの曲もブロック・コードの妙がしっかり聴ける。

ガーランドの場合、同一セッションの中から編集されたリーダー作はいずれも「優秀盤」。そして、この『It's a Blue World』はガーランドのブロック・コードを愛でるのに最適な盤。この盤を聴けば、ガーランドのブロック・コードの凄さが追体験できる。ブロック・コードのバイブル的優秀盤である。
 
 

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2023年8月22日 (火曜日)

ガーランドは伴奏上手 『High Pressure』

レッド・ガーランドは伴奏上手。マイルスが自らのバンドに引き入れる為、白羽の矢を立てたくらいの伴奏の腕の持ち主である。様々なフレーズのバリエーションは豊か、リズム&ビートへの適応力は人一倍優れていて、右手のシングルトーンは、フロント楽器とぶつかることは無く、フロント楽器を邪魔することは皆無。

Red Garland『High Pressure』(写真左)。1957年11月15日(「Undecided」「What Is There to Say?」)、12月13日(「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」)の2セッションの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts), Donald Byrd (tp), George Joyner (b), Art Taylor (ds)。

ちなみに11月15日のセッションは10曲。このアルバムにチョイスされたのは「Undecided」「What Is There to Say?」の2曲のみ。他の8曲は他の2枚のアルバムに収録。12月13日のセッションは全5曲。このアルバムにチョイスされたのは「Soft Winds」「Solitude」「Two Bass Hit」の3曲。残りの2曲は別のアルバムに収録。

プレスティッジって、どうして同一日セッションの演奏を1つに集めてアルバム化しなかったのか、理解に苦しむ。複数枚のアルバムを聴かないと、そのセッションの全貌が捉えられないのは、ジャズ盤鑑賞上、面倒くさい。
 

Red-garlandhigh-pressure

 
閑話休題。この『High Pressure』は、フロント2管のクインテット編成。フロント2管は、コルトレーンのテナーとバードのトランペットが務めている。といって、この盤はガーランドのリーダー作。よって、ガーランドのフロント2管に対する「伴奏上手」な面を愛でるのが筋。決して、コルトレーンやバードのパフォーマンスを追いかける類のものでは無い。

ガーランドはフロント管の個性によって、弾き方・アプローチを微妙に変える。コルトレーンは音が太くてストレートでテクニカル。ガーランドはブロックコード優先で、フレーズの全てをコルトレーンに任せて、リズム&ビートの供給のみに集中する。バードのトランペットは明確でリリカル。ガーランドは、右手のシングルトーン、左手のブロックコードの小粋に駆使して、バードのトランペットにしっかりと寄り添っている。

コルトレーン、バードも好調だが、このフロント2管の好調を引き出しているのは、ガーランドの伴奏だろう。ガーランドの伴奏を聴いていると、フロント管が気持ち良く心地良くアドリブ・ソロを展開する理由が良く判る。ガーランドの伴奏は、フロント管の実力を引き出す能力に長けているようで、ガーランドが伴奏に座るとき、コルトレーンのアドリブ・ソロは更に輝きを増すようだ。ドナルド・バードも同様。

この盤を聴くと、ガーランドって「伴奏上手」やなあ、とほとほと感心する。
 
 

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2023年8月 6日 (日曜日)

ガーランドの面倒くさい編集盤 『Dig It!』

レッド・ガーランドは、1950年代、その人気は結構高かったと見えて、プレスティッジ・レーベルから相当数のリーダー作がリリースされている。しかも、1セッションでLPに収録出来ない位の曲数を録音しているので、当然、未収録の曲が出る。

それを寄せ集めて、リーダー作を編集してリリースする。これが実に扱いに困る。演奏傾向の違うものが混在していたりで、録音年月日を確認して、もともと、どのセッションに入っていたのかを突き止めて評価する必要が出てくる。

The Red Garland Quintet『Dig It!』(写真左)。1957年3月と12月、1958年2月の3つのセッションからの寄せ集め。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), John Coltrane (ts, tracks 1, 3, 4), Donald Byrd (tp, tracks 1, 4), George Joyner (b, tracks 1, 3, 4), Paul Chambers (b, tracks 2), Art Taylor (ds)。

1曲目「Billie's Bounce」と4曲目「Lazy Mae」が、1957年12月13日の録音。2曲目「Crazy Rhythm」が、1958年2月7日の録音。3曲目「CTA」が、1957年3月22日の録音。未発表音源としてはここまで。3曲目の「CTA」は、Art Taylor『Taylor's Wailers』に既に収録された演奏をそのままこちらに持って来ている。プレスティッジお得意の寄せ集めとはいえ、つきつめると、かなり「面倒くさい」。

この盤のサブタイトルが「with John Coltrane」。収録曲4曲全てにコルトレーンが頑張っているのかと言えば、そうでは無くて、2曲目の「Crazy Rhythm」にはコルトレーンはいない。3曲目の「CTA」にはコルトレーンはいるが、これはアート・テイラーのリーダー作からの「借り物」なので、純粋には4曲中、2曲しかコルトレーンはいない。これで、The Red Garland Quintetの演奏としてまとめて、しかもご丁寧にサブタイトルに「with John Coltrane」を付けるから、ますます判らない内容になる(笑)。

もともと、1957年12月13日の録音は「The Red Garland Quintet With John Coltrane And Donald Byrd」として録音。全5曲を録音しているが、そのうちの2曲をこの『Dig It!』へ収録、「Solitude」のみThe Red Garland Quintet With John Coltrane『High Pressure』へ切り売り。残りの2曲は未発表音源のまま。ベーシストはジョージ・ジョイナー。

1958年2月7日の録音は、そもそも「The Red Garland Trio」として録音しており、コルトレーンはいない。純粋なガーランド・トリオの録音。よってベーシストは、この録音だけポール・チェンバース。
 

The-red-garland-quintetdig-it

 
1957年3月22日の録音は、もともと「Art Taylor's All Stars」として録音されており、このセッションのリーダーはアート・テイラーであり、ガーランドでは無い。しかし、録音記録を見てみると、同一日に「The Red Garland Trio」の録音が8曲あって、主に『Red Garland's Piano』の為のトリオ演奏だった。

が、その後、何故かコルトレーンが参加して、この「CTA」だけを録音しているみたいなのだ。そして何故か、この曲だけ『Taylor's Wailers』に唐突に収録されている。『Taylor's Wailers』が1957年のリリース。今回ご紹介の『DIg It!』は1962年のリリースなので、この曲だけコルトレーンが入っているので、コルトレーン人気に便乗して、ガーランドのリーダー作の中に混ぜ込んだみたいなのだ。

とにかく、サブタイトルに「with John Coltrane」が付いているので、あの伝説のガーランド・トリオ、ガーランド・チェンバース、テイラーをバックに、コルトレーンが吹きまくった盤かと思うのだが、中身はそうではない。そもそもタイトルに「Quintet(5人編成)」とあるので、フロント管として、コルトレーンともう1人の誰かがいるわけで、それはトランペットのドナルド・バード。

しかも、3曲目の「CTA」は「Quintet(5人編成)」の演奏では無く、コルトレーンのワンホーン参加の「Quartet(4人編成)」で、バックはガーランド・チェンバース、テイラーだが、リーダーはテイラー。しかも、テイラーのリーダー作『Taylor's Wailers』に収録済みの曲を、この『Dig It!』に再掲、使い回しをしている。

タイトルに偽りあり。いかにもプレスティッジ・レーベルらしい仕業なのだが、それぞれの曲の演奏自体は申し分無い。が、この盤をガーランドのリーダー作として捉えるには無理がある。聴いてみると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なる。セッションの中の同一録音曲とは思えないのだが、この収録曲毎の収録年月日を追ってみて、その理由が判った。

ジャズのアルバムは録音年月日が重要な要素として扱われるが、ジャズは即興演奏がメインであるが故、セッション毎にアレンジやニュアンス、響き、そして、その時点でのテクニックや志向が異なってくる。

そういう意味でジャズの録音を評価する上で、録音年月日が重要なのだが、このガーランドの『Dig It!』を聴いていると、録音年月日毎にニュアンスや響きが微妙に異なっていて、その重要性が良く理解出来る。これはプレスティッジ・レーベルの「セッション切り売り」の功績だろう。
 
 

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2023年7月23日 (日曜日)

ガーランドの「再訪」 『Red Garland Revisited!』

レッド・ガーランドは、ハードバップ時代、人気絶大のジャズ・ピアニストだった。1956年の初デビュー作『A Garland of Red』から、1962年、一時活動を中断する直前の『When There Are Grey Skies』まで、30枚ものリーダー作をリリースしている。

右手の転がる様に流麗なシングル・トーン、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コード。シンプルな奏法だが、ガーランドの手にかかると、とても芳醇でハードバップなジャズ・ピアノになるから不思議。当時の人気のほども理解出来る。

しかし、ガーランドのリーダー作は「プレスティッジ・レーベル」に集中する。プレスティッジ・レーベルの出すアルバムの最大の特徴は、セッションの単位を無視して、幾つかのセッションの「あちらこちら」から曲を寄せ集めてアルバム化する「寄せ集め盤」が多いということ。ガーランドのアルバムにもそんな「寄せ集め盤」が多々あって、どの時点でのガーランドの演奏なのか、ちゃんと理解して聴かないと、曲毎に異なるニュアンスの違いが理解出来ない。

『Red Garland Revisited!』(写真左)。1957年5月24日の録音。プレスティッジの PR 7658番。ちなみにパーソネルは、Red Garland (p), Kenny Burrell (g, tracks 3, 7), Paul Chambers (b), Art Taylor (ds)。基本は、リーダーのガーランドのピアノ、チェンバースのベース、テイラーのドラムの「定番のトリオ」演奏。そのトリオ演奏に2曲だけ、バレルの漆黒アーバンなファンキー・ギターが入る。

この盤はプレスティッジには珍しく、単一セッションの録音でアルバムがまとめられている。が、この盤、録音当時はリリースされずにお蔵入り。12年を経て、1969年にリリースされている。
 

Red-garland-revisited

 
プレスティッジの総帥プロデューサー、ボブ・ワインストックについては、この辺の感覚が僕には理解出来ない。聴くと判るが、内容的に全く問題が無い、どころか、ガーランドのピアノも好調、バレルの参加も効果的、という感じなのだが、どうして12年もの間、倉庫に眠っていたのか。

タイトルに「Revisited!(再訪)」とあるのだが、何故「再訪」だったのか、その理由は定かでは無い。恐らく、前述の様に12年もの間、お蔵入りしていて、1969年にようやくリリースしたので「再訪」としたのかもしれない。全く、罪作りなプレスティッジである。

さて、その内容であるが、名盤『Groovy』を録音した時と同時期の演奏なので悪かろう筈が無い。ガーランド、チェンバース、テイラーのトリオは絶好調。2曲に加わるバレルも良い味を出している。

テンポのいい曲とスロー・バラードがバランスよく配置されていて、バレルの入るカルテットの演奏も、バレルがホーンの代わりをしていて、良い耳直し的な演奏になっている。チェンバースが弾くベース・ラインがメロディアスで素晴らしく、テイラーのドラミングは柔軟で小粋。

テンポの良い曲での、ガーランドの右手、転がる様に流麗なシングル・トーンが走る様には、思わず体がスインギーに動く。スロー・バラードでは、ガーランドの左手、絶妙のタイミングでスイング感を醸成する左手のブロック・コードが小気味良く、思わずじっくりと聴き入ってしまう。

ギター入りのカルテット演奏も良いアクセントになっていて、ガーランドのトリオ演奏としても非常に良好。この音源がセッションごとお蔵入りになっていた理由が判らない(笑)。ピアノ・トリオとしても絶妙な好盤だと思う。
 
 

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