2023年3月12日 (日曜日)

タルのドラムレスのトリオ名盤

CDの時代になって、アルバム1枚単位の収録時間が、LP時代よりも飛躍的に長くなった。それに伴って、LP時代には収録されなかった、お蔵入りの演奏や他のセッションでの演奏を「ボーナストラック(略してボートラ)」として収録されることが多くなった。

すると、困ったことが起きる訳で、LP時代のオリジナル盤に収録されていなかった演奏が追加収録されて、全く違った内容のアルバムになってしまうのだ。これが厄介で、オリジナル盤の「オリジナリティー」が全く損なわれる訳で、このボートラの存在は全くの「必要悪」だと僕は思っている。未収録の演奏は未収録だけを集めた別のアルバムにしてリリースすべきだろう。

Tal Farlow『Tal』(写真左)。1956年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g), Eddie Costa (p), Vinnie Burke (b)。前作まで、ピアノ入りのカルテット編成で「聴かせる」パフォーマンスだったが、この盤では、ちょっと珍しい、ドラムレスのギター・トリオの演奏になっている。

さて、デビュー当時のリーダー作でのトリオ演奏では、速弾き過ぎて多少拠れようが、難度の高いフレーズを弾き切ってしまう強引さが魅力だったが、この『Tal』では、さすがにスタジオ録音では、リーダー作の5枚目。トリオ演奏に戻しても、タルはデビュー当時の強引さを封印して、余裕のある、テクニカルな弾き回しで、スタンダード曲を魅力的に聴かせてくれる。
 

Tal-farlowtal

 
しかし、タルのフレーズは、スケールの幅が広くて、よく指が届くなあ、と感心する。いわゆる「オクトパス奏法」が炸裂、タルのギターの個性と特徴が最大限に活かされた、スタンダート曲集になっている。ベンドやエフェクターを使用しない、リアルなピッキングが、スタンダード曲の持つ美しい旋律をより一層引き立たせている。

バックのリズム隊、エディ・コスタのピアノ、ヴィニー・バークのベースも良い味を出していて、ドラムがいない分、コスタのピアノが上手くリズム&ビートの供給役をこなしていて、バーグのベースが、演奏全体のベースラインをしっかりと押さえている。ドラムレスということが全く気にならない、全く意識させない、素晴らしいピアノ+ベースのリズム隊である。

このタル・ファーロウの名盤の誉れ高い『Tal』も、CDリイシュー時(2010年だったと思う)、7曲の未収録曲が追加されて、大混乱に陥った。ドラムレスのギター・トリオの傑作、というのが、この『Tal』の定評だったが、追加された未収録曲は、1958年2月NY録音のカルテットの演奏が追加されていたのだ。初めてこのCDリイシューの『Tal』を聴いた人は、それまでの『Tal』の評論文を読んで、かなり戸惑ったのではないか。

もともとのLP時代のオリジナル盤は、先頭の「Isn't It Romantic?」から「Broadway」までの全8曲が、正式な収録曲になる。この8曲が、1956年3月、NYでの録音。そして、以前より名演と言われる「ドラムレスのギター・トリオの演奏」になる。オリジナル盤同様、この8曲に絞ったCDリイシュー、サブスク音源もあるので、『Tal』を純粋に鑑賞しようというのであれば、このオリジナル盤と同じ収録曲、曲順のものが良いだろう。

 

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2023年3月10日 (金曜日)

グループ・サウンズ重視のタル盤

タル・ファーロウを聴いている。パッキパキのシングルトーンがなのだが、ファンクネスは控えめ。バップでリリカルな疾走感のあるテクニカルなギターが身上。この辺が他の黒人系のギタリストと一線を画すところ。とにかく、シュッとしていて切れ味の良いシングルトーンでバリバリ弾きまくる。一転、バラード演奏は味のあるシングルトーンのフレーズを響かせて、印象的に唄い上げていく。

『The Interpretations Of Tal Farlow』(写真左)。1955年1月7日、ロサンゼルスでの録音。Tal Farlow (g), Claude Williamson (p), Red Mitchell (b), Stan Levey (ds)。タル・ファーロウのVerveレーベルからの第3弾。バックのピアノ・トリオは、米国ウェストコースト・ジャズの精鋭達で編成されている。演奏の基本は「ウエストコースト・ジャズ」。いわゆる「洒落たアレンジで聴かせるジャズ」である。

スタンダード曲中心の選曲。これが実に良い。これまでのタルのリーダー作3枚は、どちらかと言えば、タルの弾きまくり、タルの高速テクニック、バップなフレーズがメインだったが、このリーダー作4作目『The Interpretations Of Tal Farlow』は、それまでのリーダー作と趣きが違う。バックのリズム隊が、ウィリアムソンのピアノ、ミッチェルのベース、レヴィーのドラムと、ウエストコースト・ジャズを代表するピアノ・トリオ、という影響もあるのだろうか。
 

The-interpretations-of-tal-farlow

 
この盤でのタルは、バリバリ弾くというよりは「じっくり味わい深く」弾いている。速いフレーズもゆったりとしたフレーズも、じっくり味わい深く弾き進めている。もともとテクニックに優れ、歌心を備えたギタリストである。そんなギタリストが腰を据えて「じっくり味わい深く」スタンダード曲を弾くのだ。良いに決まってる(笑)。

この盤の「キモ(肝)」は、バックのリズム隊。ウィリアムソンのピアノが効いている。タルのギターとの相性が良い様で、タルのバックに回って、タルのギターを引き立て、タルのギターの良き相棒の如く、心地良いユニゾン&ハーモニーを奏でている。そこに、西海岸の職人ベーシストのミッチェルが演奏の底を支え、西海岸の技のドラマー、レヴィーが演奏全体のリズム&ビートをリードする。この西海岸の精鋭リズム隊をバックに、タルは気持ちよさそうにギターを弾き進めている。

ジャケットもお洒落で良い。アレンジ良し、演奏良し、ジャケット良し。ジャズ・ギターの紹介本や紹介記事に、あまりそのタイトル名が上がることがほどんど無いアルバムだが、タルのギターで、グループ・サウンド重視でスタンダード曲を聴くのに最適なアルバムだと思う。タルのギターが少し引っ込むが、その分、グループ・サウンズ・トータルとして内容が充実したアルバムでしょう。
 
 

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2023年2月27日 (月曜日)

エリスとパスの爽快弾きまくり

コンコード・レコードは、1972年にカール・ジェファーソンによって設立されたジャズのレーベル。米国西海岸のビバリーヒルズに本拠を置く。

1970年代、クロスオーバーからフュージョンが台頭する中、従来のメインストリーム系ジャズに留まった中堅〜ベテランのジャズマンを中心にピックアップして、玄人好みの純ジャズな内容のアルバムをリリースしていたのが「コンコード・レコード」。

我が国では、日本のレコード会社との契約が上手くいかなったのか、日本盤として、コンコード・レコードのアルバムがリリースされた枚数はかなり少なかった思い出がある。今では、幾度か、有名盤がCDリイシューされ、音楽のサブスク・サイトにも、まずまずの数のアルバムがアップされているので、コンコード・レコードのジャズ盤を聴く機会が多くなった。喜ばしいことである。

Herb Ellis & Joe Pass『Seven, Come Eleven』(写真)。1973年7月29日の録音。コンコード・レコードからのリリース。ちなみにパーソネルは、Herb Ellis (g), Joe Pass (g), Ray Brown (b), Jake Hanna (ds)。ジャズ・ギタリストのバーチュオーゾ、ハーブ・エリスとジョー・パスの2人がフロントを務める変則カルテット編成。カルフォルニアの「Concord Boulevard Park」でのライヴ録音。
 

Herb-ellis-joe-passseven-come-eleven

 
1973年で、この硬派なハードバップ。エリスとパスのギターのユニゾン&ハーモニーが切れ味良く、2人の秘術を尽くした、熱気溢れるアドリブ合戦が聴き応え満点。特に、アドリブ合戦の展開では、2人のギタリストが、フロントの役割とバックの役割を交代しながら、速いテンポのアドリブが展開されるところが実にスリリング。

歌心も満点で、熱気溢れる弾きまくりながら、聴いていて爽快。演奏される曲は、ラストの「Concord Blues」以外、渋いスタンダード曲。そんな渋いスタンダード曲を、切れ味の良い、やや速いテンポのアレンジで、バーチュオーゾの2人は、秘術を尽くしてギターを弾きまくる。

丁々発止と技を繰り出してギターのアドリブ合戦を展開するバックで、レイ・ブラウンの重低音ベースが、ブンブンと胴鳴りの唸りを響かせて、しっかりとリズム&ビートをキープする。ジェイク・ハナのドラミングは堅実で、リズム&キープを冷静にコントロールする。

このジャズ・ギターのバーチュオーゾの2人の弾きまくり、バックのリズム隊の熱いサポートの演奏をライヴで聴く聴衆の盛り上がりも凄い。熱気ムンムン、気合い十分、1973年という時期で、この純ジャズの演奏がこれだけ聴衆に受けている。つまりは、何時の時代も「良いものは良い」ということだろう。
 
 

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2023年2月13日 (月曜日)

「ショパン曲のカヴァー集」再び

カート・ローゼンウィンケル(Kurt Rosenwinkel)は、僕がずっと注目しているギタリストの1人。1970年、米国フィラデルフィア生まれ。今年で53歳になる。若手ギタリストが今や「中堅」ギタリストになって、その個性は確立され、テクニックは成熟の域に達している。リーダー作は、2〜3年に1枚程度のペースで、優れた内容のアルバムをコンスタントに残している。

カートは、バークリー音楽大学に入学、約2年半の在籍後、ゲイリー・バートンのツアーのサポート・メンバーとして誘われ、そのまま活動拠点をニューヨークへ移しプロとしてのキャリアをスタートさせたている。いわゆる「ゲイリー・バートン組」のギタリスト。パット・メセニーの後輩的なギタリストである。

Kurt Rosenwinkel & Jean-Paul Brodbeck『The Chopin Project』(写真左)。2022年の作品。ちなみにパーソネルは、Kurt Rosenwinkel (g), Jean-Paul Brodbeck (p), Lukas Traxel (ac-b), Jorge Rossy (ds)。カート・ローゼンウィンケルのギターが飛翔する、スイスの気鋭ピアニスト、ジャン・ポール・ブロードベックがアレンジとプロデュースを手掛けた、カルテット編成のフレデリック・ショパン曲集。改めて、この盤を聴き直した。

ショパンは「ピアノの詩人」。ピアノの特性を知り尽くし、ピアノを美しく唄わせ、ピアノを美しく響かせる。ショパンの書く楽曲は「難曲揃い」と言われる。真にピアノを美しく唄わせ、ピアノを美しく響かせるには、それ相応の高度なテクニックが必要とされる。その必要とされる高度なテクニックを音符に置き換えたのが、ショパンの書くピアノ曲である。
 

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そんなピアノ曲の数々を、ジャン・ポール・ブロードベックのアレンジの下、カートがバリバリ、ギターで弾きまくる。ピアノの鍵盤を弾くタッチとフレーズをギターに置き換えて弾く。これは意外と困難な作業だと思われる。音階を流麗に上り下りするのは同じ様な感じがするが、ブロックコードや、音を大きく飛び越えるところはピアノとギターでは勝手が違う、弾き方が違う。

果たして、ショパンの難曲をギターに置き換えて、ショパンの難曲を本来のピアノで弾く様にギターで弾けるのか、ピアノで弾くクオリティーと同様のフレーズがギターで出せるのか。ピアノは弦を叩くが、ギターは弦を弾く。この難題にカートとブロードベックは果敢にチャレンジしている。

結論から言うと「カートのギタリストの才能」と「ブロードベックの秀逸なアレンジ」の賜物だろう。とても良く出来た「ショパン曲のカヴァー集」に仕上がっている。クラシックとジャズの融合、ショパンの新解釈とかの「俗っぽい表現」では無い、カートの流儀、カートの感性によるショパン曲の優れたカヴァー演奏。

ピアノ曲をギターでやるのだ。ジャズ・カルテットでやるのだ。アレンジは当然、必要だろう。そのアレンジが秀逸。その秀逸なアレンジに応える様に、カートのギターが、ショパン曲を自らの個性とテクニックで、カート自身の流儀でカヴァーしている。そこが見事なのだ。カートが、ショパンの曲に乗って、バリバリ弾きまくっている。頼もしいことこの上無い。

このショパン曲のカヴァー集で、カートのギターは「ひとつの極み」に達した感がある。テクニックのレベルは高く、クールでダイナミックで流麗。次作では、カートはどんなジャズ・ギターをやってくれるのか。今から楽しみである。ワクワクする。
 
 
 
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2023年2月 8日 (水曜日)

ジャズ喫茶で流したい・258

Jazz Lifeの「2022年度 Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を見ていると、日本のジャズも頑張ってるなあ、って思う。バブルが弾けた後、1990年代前半、日本のジャズは沈滞して行ったが、1990年終盤から少しずつ上向き始め、2000年代にはいって、ピアニストの山中千尋がデビュー盤をリリースすることから、日本のジャズは復活し、活性化していった。

そして、こうやって、ジャズライフ誌の「Disc Grand Prix 年間グランプリ」の記事を毎年読んできて、日本のジャズ・シーンは完全に復活し、深化している。最近、有望新人の出現が緩やかになってきているが、既に中堅〜ベテランの域に達した、2000年代に出現した有望新人達が堅実に活躍している。

『魚返明未 & 井上銘』(写真左)。2022年の作品。 ちなみにパーソネルは、魚返明未 (p), 井上銘 (g)。ピアノとギターのデュオ。「魚返 明未」= おがえり あみ、と読む。「井上 銘」= いのうえ めい、と読む。難度の高い「ピアノとギターのデュオ」のチャンジブルなパフォーマンスの記録である。

魚返明未(おがえり あみ)は、1991年東京都生まれ。4歳からピアノを始め、高校でモダンジャズ研究部に入部し、ジャズピアノに転向。 2015年7月、初リーダーアルバムをリリース。 2017年3月に東京芸術大学音楽学部作曲科を卒業。新進気鋭のピアニストとして、ジャズ・シーンをメインに活動中。

井上 銘(いのうえ めい)は、1991年生まれ、神奈川県出身の日本のギタリスト/コンポーザー。幼少期よりピアノ、ドラムなどの楽器に親しみ、15歳でマイク・スターンの演奏に触れて、ギターを始める。高校在学中よりジャズ・クラブで演奏活動を始め、高校3年で鈴木勲のグループに参加。2011年、初リーダーアルバムをリリース。中堅ギタリストとして、様々なシーンで活躍中。
 

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ピアノとギターのデュオは難しい、と言われる。楽器の音量が違いすぎて、アンサンブルで、デュオ演奏で一番大事な「お互いに聴きあう」ということが難しい。そして、どちらの楽器も、メロディーとコード、どちらも弾けるので、メロディー弾きとコード弾きが、双方の意に背いて重なる危険性が高い。特にジャズは「即興の音楽」ゆえ、どちらのリスクも突発的に連続して起きる可能性がある。

ピアノとギターのデュオで思い出すのは、ビル・エヴァンスとジム・ホールのデュオ。この2人のデュオは見事だった。ピアノとギターのデュオのリスクを、綿密なリハーサルで乗りきり、高テクニックで疾走感溢れ、歌心満点でスリリングな、奇跡的な、唯一無二のデュオ演奏を残している。

そのデュオ演奏と単純に比較するのは酷だが、それでも『魚返明未 & 井上銘』のデュオは大健闘している。リハーサルをしっかり積んだんだろう、ということは演奏を聴いて直ぐに判る。とても堅実に慎重に演奏を進めている様子が良く判る。それでも、演奏の疾走感は保たれているし、ユニゾン&ハーモニーに淀みが無い。日本人ジャズ独特の「ファンクネスは希薄だが、切れ味の良いオフビート」が心地良い。

印象派絵画の様な、耽美的でリリカルな風景を見るような印象的なデュオ演奏は、どこか、パット・メセニーとライル・メイズのデュオを想起する。想起するどころか「比肩」するレベルではないか。と、僕は聴いた。

少しだけの「もったり感」が気になる部分があったが、あと2枚ほど、この2人のデュオを聴いてみたい。出来れば、チック・コリア&ゲイリー・バートンの様な「パーマネントな名デュオ・ユニット」として名を残して欲しい、位に思っている。
 
 

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2023年1月23日 (月曜日)

レイジのブルーノート盤・第2弾

数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリスト。パット・メセニーの様な「ネイチャーな響き」もあり、ジョンスコに「くすんで捻れる」ところもあり、それでも、他にありそうでない、ワン・アンド・オンリーな個性が見事である。そのギタリストとは「Julian Lage(ジュリアン・レイジ)」。

官能的な「くすんだ音色」と「前のめりでアグレッシブなフレーズ」は、ジュリアン・レイジのギターの独特な個性。テクニックはもちろん卓越したものだが、その「超絶技巧」を売りにした様な、派手派手しい弾き回しは無い。逆に、レイジの超絶技巧な弾き回しはとてもクールで流麗。うっかりすれば、レイジのテクニックのレベルの高さに気がつかないくらいである。

あくまで、ネオ・ハードバップな、モーダルなフレーズを聴かせる中で、そこはかとなく「ハイ・テクニック」が見え隠れする程度の奥ゆかしいもの。この「奥ゆかさ」が実に好ましい。この「奥ゆかしい」クールで流麗な弾き回しが、実は凄みがあって、聴き応えがある。

Julian Lage『View With A Room』(写真左)。2022年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、Julian Lage (g), Jorge Roeder (b), Dave King (ds) と前作同様のトリオ編成。そして、この盤では、このトリオに、米国ルーツ音楽に根ざした「捻れギター」のレジェンド、Bill Frisell (g) がゲスト参加している。ギターのメインは、当然、リーダーのレイジ。"レジェンド" フリゼールは伴奏に徹している。
 

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このレイジとフリゼールのギター2本の絡みがこの盤の聴きどころ。レイジとフリゼールは音色が似通っているので、音が重なると訳が判らなくなるのだが、この二人はそんなリスクを容易く回避していく。フリゼールの伴奏フレーズはレイジと決してぶつからない。レイジの音の間を埋めて、レイジと重なる時は、印象的なハーモニーで重なる。そうすることで、レイジの個性である「くすんだ音色」を際立たせている。

レイジのもう1つの個性である「前のめりでアグレッシブなフレーズ」については、フリゼールが少しずらして応答し、レイジのフレーズを前面に押し出す。そして、ホルヘ・ローダーのベースとデイヴ・キングのドラムが、クイックに効果的に、緩急自在に硬軟自在に反応する。

このレイジのリズム隊に対する「呼びかけ」に対するリズム隊の応答のリズム&ビートが、このレイジの「前のめりでアグレッシブなフレーズ」に効果的に響いていて、盤全体に心地良いグルーヴを醸し出している。

レイジのフレージングはアイデア満載で、今までに聴いたことの無いフレーズがどんどん飛び出してきて、聴いていてとても面白い。この盤でも、前作同様、フリゼールと合わせて、ジャズをはじめ、ロック、ブルース、カントリーなど、米国ルーツ・ミュージックの音要素を引用されていて(これが僕には堪らない)、レイジ独特の音世界が展開されている。この盤で、ジュリアン・レイジは確実に、僕のお気に入りギタリストになった感じがする。次作がもう楽しみになっている。
 
 

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2022年12月27日 (火曜日)

フリゼール・スタイルのエレギ

Bill Frisell(ビル・フリゼール)。米国ボルチモア〜デンヴァー出身のジャズ・ギタリスト。しかし、出てくるギターの音は伝統的なジャズ・ギターの音では無い。軽くサスティーンが聴いて、複雑にねじれ、自由度の高いモーダルなフレーズで、無調に展開することもしばしば。

1970年代以来、ECMレーベルに代表される「ニュー・ジャズ」を地で行くようなエレギで、伝統的なジャズ・ギターを愛でるジャズ者の方々からは、とにかく評判が悪い。でも、僕は初リーダー作『In Line』を聴いて以来、フリゼールはお気に入りのギタリストの1人である。

とにかく自由度の高いエレギで、伝統的な4ビートに収まることは「まず無い」。しかし、フリゼールのギターは、硬軟自在、緩急自在で、変幻自在なモーダルなフレーズを駆使して、即興性溢れるインプロを展開するところは、ジャズの最大の特徴である即興演奏という面ではその個性は突出している。

Bill Frisell『Four』(写真左)。2022年11月のリリース。ちなみにパーソネルは、Bill Frisell (g), Greg Tardy (ts, cl, b-cl), Gerald Clayton(p), Johnathan Blake (ds)。ブルーノート・レーベルでの3作目となるリーダー作になる。パーソネルを見るとベーシストがいない。ベースレスの変則カルテットでの演奏。
 

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フリゼールというレジェンド・ギタリストはブレが無い。初リーダー作の『In Line』(ECM, 1983)以来、エレギの音は一貫して「軽くサスティーンが聴いて、複雑にねじれ、自由度の高いモーダルなフレーズ」を維持。伝統的な4ビートのハードバップな演奏をやることは一切無い。一貫して「ニュー・ジャズ」なエレギを弾きまくっていて立派だ。

この新作でも、フリゼールは変わらない。冒頭「Dear Old Friend (for Alan Woodard)」の一発目のエレギのフレーズを聴けば、直ぐに「フリゼールのギターや」と判るくらいに個性的な音。以降、エレギの展開はフリゼールの個性のショーケース的内容。とにかく自由度が高い変幻自在なエレギはフリゼールの独壇場。

そんなフリゼールを、ジェラルド・クレイトン(p)、ジョナサン・ブレイク(ds)という若手バリバリのリズム隊が、これまた、柔軟に臨機応変に、フリゼールのギターにガッチリ適応し、フリゼールのギターにクイックに反応し、フリゼールのギターをバッチリ際立たせている。そして、グレッグ・タルディ(sax, cl)が、フロントの片翼を担って、フリゼールのインプロにしっかりと寄り添っている。

若き良きサイドマンに恵まれ、今年で71歳になる大ベテラン、レジェンド・ギタリストのフリゼールは、そのテクニックを惜しみなく披露し、思う存分、ねじれたエレギを弾きまくっている。以前は「変態ギター」なんて形容された時代もあったが、この新作を聴いていて、もはやこれは「フリゼール・スタイル」のジャズ・エレギなんだなあ、と感じた。しかし、本当にフリゼールのエレギは「ブレが無い」。
 
 

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2022年11月27日 (日曜日)

タル・ファーロウのサード盤

タル・ファーロウは、ブルーノートでの初リーダー作から、そのギターの個性は完成されていた。超絶技巧の限りを尽くした「弾きまくりバップ・ギター」。初リーダー盤から次作のセカンド盤は、歌心溢れるバラード・プレイも素晴らしかったが、とにかく、超絶技巧の弾きまくりギターが目立ちに目立っていた。

Tal Farlow『The Artistry Of Tal Farlow』(写真左)。1954年11月15日、LAでの録音。ちなみにパーソネルは、Tal Farlow (g), Gerry Wiggins (p), Ray Brown (b), Chico Hamilton (ds)。

ヴァーヴ・レコードからのタルのリーダー作第2弾。米国ウエストコースト・ジャズの人気ジャズマンのトリオをバックに、超絶技巧で余裕溢れるバップ・ギターを弾きまくった、タル初期の名盤。

さすがに、3枚目のリーダー作で、大手ジャズ・レーベルのヴァーヴからの2枚目のリーダー作。収録されたそれぞれのギター・プレイには、濃厚な「余裕」が感じられて、超絶技巧なパフォーマンスにせよ、歌心溢れるバラード・プレイにせよ、程良いテンションの下、アドリブ・フレーズにも、どこか柔らかな「余裕」が感じられて、超絶技巧なタルのプレイが、更に迫力を持って迫ってくる。
 

Tal-farlowthe-artistry-of-tal-farlow
 

特に、僕は「歌心溢れるバラード・プレイ」の代表的パフォーマンスとして、3曲目の「Autumn In New York(ニューヨークの秋)」を愛して止まない。1本の弦を1オクターヴ低く調律して低音域を広げて、豊かな表現の幅を拡げたソロ・プレイが素晴らしい。ギターの一本弾きをメインにして、このタルの豊かな表現力は驚異的。この1曲だけでも、このタルのリーダー作の3作目は名盤に値する。

超絶技巧なパフォーマンスも素晴らしい。ギンギンにテンションを張った超絶技巧な弾き回しも聴き応えがあるが、ちょっと「疲れる」。しかし、この盤でのタルの超絶技巧な弾き回しには「余裕」が感じられて、その「余裕」が豊かな表現力に直結していて、カッ飛ぶ高速な弾き回しでも歌心は満点。

冒頭の「I Like To Recognize The Tune」から「Strike Up The Band」の余裕ある超絶技巧なプレイは聴き応え満点。ラストの「Cherokee」など、高速な弾き回しには、しっかりした歌心が宿っていて、これまた聴き応え満点。

安定した高速弾き回しと「余裕」が感じられるアドリブ・パフォーマンスの下、超絶技巧なパフォーマンスと歌心溢れるバラード・プレイが良好に共存しているこの盤は、タルの初期の名盤として良い内容だと思う。
 
 

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2022年11月26日 (土曜日)

タル・ファーロウのセカンド作

純ジャズ系のギター盤を聴く上で、タル・ファーロウのアルバムは避けて通れない。と言って、何処から聴いたらよいか、ということになるが、タルのリーダー作の場合は、ビ・バップ時代の鍛錬が効いていて、1954年、ブルーノートに吹き込んだ初リーダー作にして、タルのギターの個性は完成していたので、初リーダー作から順に聴き進めて行くのが良いだろう。

『The Tal Farlow Album』(写真左)。1954年6月2日、NYでの録音。Norgranレコード(後のVerveレコード)からのリリース。ちなみにパーソネルは、Barry Galbraith, Tal Farlow (g), Oscar Pettiford (b), Joe Morello (ds)。編成的には、ブルーノートの初リーダー作(1954年4月11日の録音)と同じ。タル・ファーロウとバリー・ガルブレイスの2ギター+ピアノレス、変則カルテットの編成。

演奏形態がブルーノートの初リーダー作と同じなので、音的にはそれと変わらない。ただ、リーダーとしてセカンド盤なので慣れてきたのか、タルは硬さが取れて、ちょっとリラックスして弾いている様に感じる。卓越した超越技巧なソロ弾きは、さらに流麗になり、流れるが如く軽快。タルのパッキパキなフレーズが映えに映える。
 

The-tal-farlow-album_1

 
有名スタンダード曲が中心の選曲なので、他のギタリストのパフォーマンスと比較し易くて良い。結論から言うと、タルのギターって、そのテクニックの高さについては、純ジャズ系ギタリストの中では最高峰の1人だろう。速いバップな曲もバラードの曲も、簡単そうに「そつなく」弾きまくる。ピッキングも力強く、音は硬質。しかし、出てくる音は歌心満点。とても聴き応えのある順ジャズ系ギターである。

ガルブレイスとのユニゾン&ハーモニーも流麗で、ガルブレイスのリズムギターも良い感じ。それでも、ガルブレイスのギターに負けること無く、埋もれること無く、タルのギターは、音が太くとピッキングが協力なので、くっきりハッキリ浮き出てくる。力強く流麗で超絶技巧な弾きっぷり、チャーリー・クリスチャン直系と評されるのは納得。

CDリイシュー時にボートラで追加された、9曲目~12曲目の4曲は、1955年4月25日、ロサンゼルス録音でギター、ピアノ、ベースのトリオ編成で録音されたもの。オリジナルLPには収録されていないものなので注意が必要。ピアノレスで聴くと、タルの個性がとても良く判る。『The Tal Farlow Album』としては、1曲目〜8曲目の前半8曲で鑑賞されたい。
 
 

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2022年11月25日 (金曜日)

タル・ファーロウの初リーダー作

僕のジャズ盤週集で、一番後回しになった楽器が「ギター」。もともと、アルバム蒐集はロックから入ったので、ロックギターの派手派手しいフレーズがお気に入りになっていて、純ジャズのギターは、コード弾きと一本弾きのシンプルというか、地味なものだったので、どうしても、純ジャズ系のギターの盤には触手が伸びなかったのが正直なところ。

それでも、年齢を重ねて、ジャズを聴き始めて20年位経った頃、やっと純ジャズ系のギターのシンプルさが良い方向に聴こえる様になってきて、一本弾きのアドリブ・フレーズが、実は超絶技巧、小粋に唄うものだ、ということが判った瞬間、ジャズ・ギター盤の蒐集が本格的に始まった。以来、ジャズ・ギターの週集もやっと、人並みになったかなあ、と思う今日この頃。

『Tal Farlow Quartet』(写真左)。1954年4月11日の録音。ブルーノートの5042番。ちなみにパーソネルは、Don Arnone, Tal Farlow (g), Clyde Lombardi (b), Joe Morello (ds)。

純ジャズ・ギターの最高テクニシャンの1人、タル・ファーロウの初リーダー作。何故か、タル・ファーロウとドン・アルノーンの2ギター+ピアノレスの変則カルテットの編成。それでも、ピアノが無い分、ギターのパフォーマンスが十分に楽しめる。

2ギターの意味が聴けば判る。ドン・アーノンをサイド・ギターに据え、タルの縦横無尽のソロ・プレイの妙技を全面に押し出した恰好。
 

Tal-farlow-quartet

 
なるほど、時にソロ、時にコード弾きとなると、タルのソロのテクニックの部分が薄まるので、サイド・ギターを据えて、基本的にはリズム(コード弾き)を担当させて、タルには、心ゆくまでソロを弾きまくらせるプロデュース。さすがはブルーノートである。

聴けば聴くほど、その超絶技巧さに舌を巻くタルのギター・ソロ。チャーリー・クリスチャン直系、ビ・バップあがりの驚異的な速さソロ・フレーズのスピード。この速さで、ハードバップの特徴の1つである「ロングなアドリブ・ソロ」をやるのだから圧巻である。

冒頭の「Lover」の高速弾き回しを聴くだけで、思わず「ごめんなさい」(笑)。2曲目のバラード「Flamingo」の、ハーモニクスを効果的に活かしつつ、情感溢れる正確無比な弾き回しに、これまた思わず「ごめんなさい」(笑)。以降、胸が空くような圧倒的速弾きパフォーマンス。いや〜、聴いていて思わず感動して「頭が下がる」。

タルの弾き回しの特徴の1つ、巨大な手を一杯に広げて縦横無尽にフレーズを紡ぎ出す様は「オクトパス・ハンド」と呼ばれるのだが、このダイナミックなフレーズの拡がりもこの盤で堪能出来る。

もともと10インチ盤でのリリースなので、曲数は6曲、トータル24分と短いが、そんなことは全く気にならない。圧倒的な超絶技巧、かつダイナミックなタルの純ジャズ・ギターの弾き回しである。
 
 

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