2020年11月27日 (金曜日)

久し振りにフライド・プライド

Fried Pride(フライド・プライド)は日本のジャズ・デュオ ユニット。ギターとボーカルの2人組。類まれな歌唱力を持つボーカリストShihoと超絶技巧のギタリスト横田明紀男の2人からなるジャズユニット。日本のみならず、世界的に見て、ジャズの世界で「ギターとボーカル」のパーマネント・ユニットはとても珍しい存在だった。

以前、デビュー作を聴いて、これがまあ、唖然とするくらい凄いギターとボーカルで、こいつは凄いユニットがデビューしたもんだ、と思った。しかし、2012年に横田明紀男が脳梗塞にて入院、その後回復したが、2016年12月23日をもって活動終了。活動期間は15年。アルバムは12枚をリリース。どれもが、「ギターとボーカル」のユニットの特性を最大限に活かした、ユニークな内容のものばかり。愛聴してましたねえ。

Fried Pride『Musicream』(写真左)。タイトルは「ミュージックリーム」と読む。フライド・プライドの6thアルバム。2006年6月のリリース。改めて、ちなみにパーソネルは、Shiho (vo), 横田明紀男 (g)。タイトル「Musicream」は「最上級の」という意味である「Cream」と「Music」の合体造語。つまりフライド・プライドによる「最上級な音楽」を意味する、とのこと。
 
 
Musicream-fried-pride  
 
 
日本語ボーカルが秀逸である。言っておくが、ボーカルのShihoは日本人。しかし、以前、デビュー・アルバムを聴いたときは、Shihoは絶対にハーフかクォーターで、英語圏で長年生活してきたネイティヴだと思ったくらい、英語でのボーカルが上手い。が、この盤では、フライド・プライド始まって以来であると思われる、日本語ボーカルが興味深い。日本語での「コンテンポラリー・ジャズ・ボーカル」が見事。

例えば、2曲目「リバーサイド・ホテル」(井上陽水)、3曲目「接吻 KISS」(Original Love)、7曲目「Midas Touch」(山下達郎)、8曲目「永遠に」(The Gospellers)など、Jポップの名曲を日本語ボーカルでカヴァーしていくのであるが、これがかなり良くできていて感心する。

日本語ボーカルでのカヴァーだと、どうしても歌謡曲的な雰囲気が漂って「いけない」のではないか、と思ったが、テンション溢れ切れ味の良いギター・アレンジと、ジャジーで情感豊かなボーカルで、これは「かなりイケる」。特に、井上陽水の「リバーサイド・ホテル」には参りました。久し振りに聴き返したのだが、やはり「フライド・プライド、侮り難し」である。
 
 
 

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2020年11月26日 (木曜日)

ルエケならではのジャズ・ギター

Lionel Loueke(リオーネル・ルエケ)。ベナン共和国の出身。ジャズ・ギタリスト兼ボーカリスト。1973年生まれなので、今年で47歳。ジャズで言うと「中堅ジャズマン」。1999年、バークリー音楽院に奨学生として入学。ハービー・ハンコックの秘蔵っ子としてメジャーな存在になり、初リーダー作は、2004年の『Incantation』。ルエケのギターは変幻自在。スキャットを交えた彼独特の奏法は唯一無二。

Lionel Loueke『HH』(写真左)。今年10月のリリース。リオーネル・ルエケの超個性的なソロ・ギター演奏集(一部多重録音あり)。タイトルの「HH」は、Herbie Hancockの頭文字か、若しくはHead Huntersの意味か。この盤は、丸々、師匠のハービー・ハンコックの楽曲をカヴァー、若しくは、彼に捧げたルエケのオリジナル曲で固められている。

ルエケのギターは「7弦ギター」。実にユニークな音がする。その7弦ギターで、ハービー・ハンコックの有名曲の馴染み深いリフを見事に表現している。リフを表現しつつ、その流れの中でアドリブを展開していく様は見事という他は無い。音色は流麗で流れようなものでは無い。弦に指を軽く叩き付けたり、指で弾いたり、躍動感溢れる独特のフレーズが個性的。
 
 
Hh_lionel-loueke  
 
 
ハービー・ハンコックの楽曲の選曲も良く、1曲目「Hang Up Your Hang Ups」、4曲目「Actual Proof」、6曲目「Butterfly」、8曲目「Watermelon Man」、11曲目「Rockit」などなど、ハンコックの曲に特徴をよく表した楽曲が選ばれている。そんなハンコックの楽曲をルエケのユニークなギターが、切れ味良いファンクネスを湛えた鋭いタッチで、新しい解釈を施していく。

ルエケのオリジナル曲もユニークだ。10曲目「Voyage Maiden」と13曲目「Homage to HH」の2曲がルエケのオリジナル曲。「Voyage Maiden」は、明らかにハンコックの名曲「Maiden Voyage(処女航海)」をもじったタイトルだろう。リズム&ビートは原曲からもろに引用されていて、途中、ボサノヴァの雰囲気が漂うユニークな展開。「裏メイデン・ヴォヤージュ」と形容して良いくらいの秀作だ。

数曲でスキャット&ヴォイスも披露しているが、「Homage to HH」では不思議な言語で唄っている。アフリカ南部のター語やナマ語、コサ語などに特徴的なクリック音(舌打ちに近い発音の子音)を用いているらしく、これもまた実にユニークな個性。全編に渡って、今までに聴いたことの無い、ルエケならではの「ジャズ・ギター」が聴ける。ソロ・ギター盤なので、彼の個性が心ゆくまで堪能出来る。
 
 
 

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2020年11月11日 (水曜日)

ミスマッチのようで実は相性抜群

ジャズって面白いもので、演奏者の組み合わせを見て、そのそれぞれの演奏スタイルを思い浮かべて、どう考えてもミスマッチで「こんな組み合わせは聴きたく無いな、聴いたってロクなことは無い」と思うことがたまにある。が、意外と実はそんな組み合わせにこそ「組み合わせの妙」的な好盤が生まれることがある。ジャズには先入観って危険。まずは自分の耳で聴いてみることが大事である。

『Kenny Burrell & John Coltrane』(写真左)。1958年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), John Coltrane (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。素敵なメンバーでのクインテット構成。特にリズム・セクションに「名盤請負人」トミフラのピアノと「燻し銀ドラマー」のコブが配置されているところがミソ。まあ、プレスティッジからのリリースなので、この素敵なメンバー構成も偶然なんだろうけど(笑)。

さて、このプレスティッジの企画盤『ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン』って、シーツ・オブ・サウンドが「ウリ」のエモーショナルで切れ味の良いコルトレーンのテナーと、夜の雰囲気が良く似合うブルージーな漆黒ギターのバレル、どう考えたって「合う訳が無い」と思うのだが、これが実は「合う」んですよね。
 
 
Kenny-burrell__john-coltrane
 
 
出だしの1曲目「Freight Trane」は「あ〜やっぱり合わないな」なんて、コルトレーンとバレルのミスマッチの予感を実際に確認して、直感は当たっていた、とほくそ笑んだりする。が、2曲目の「I Never Knew」、3曲目の「Lyresto」と聴き進めていくと、「ん〜っ」と思い始める。コルトレーンがバレルに合わせ始めるのだ。シーツ・オブ・サウンドで吹きまくるコルトレーンでは無く、ブルージーなバレルの漆黒ギターに合わせて、歌心溢れるブルージーなテナーに変身し始めるのだ。

そして、4曲目の優しいバラード曲「Why Was I Born?」。この演奏、コルトレーンとバレルのデュオなのだが「これが絶品」。ブルージーで黒くて優しくて骨のあるバレルの漆黒ギターの伴奏に乗って、コルトレーンが、それはそれは歌心溢れる優しいテナーを奏でる。すると、代わって、黒くて優しくて骨のあるバレルの漆黒ギターが「しっとり」と語りかける。この演奏を聴くだけの為に、このアルバムを手に入れても良い位の名演である。

こんな時、ジャズって柔軟な音楽だなって、改めて感心する。昔、ジャズ盤紹介本で、この盤ってミスマッチの極致の様に書かれていた記憶があるが、パーソネルを見ただけで評価したのではないだろうか。ようは「如何に相手の音をしっかり聴いて、最適の音でしっかり返すか」である。つまりはバレルとコルトレーン、ミスマッチのようで実は相性抜群。なんだかジャズの世界って、人間の男女の仲に良く似ている。
 
 
 

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2020年11月 4日 (水曜日)

ニュー・ジャズ志向の新進ギター

昨日、テリエ・リピダルのギターについて語った折、このリピダルの様な、幽玄で浮遊感のある、かつ切れ味良く、適度に捻れたフレーズを多用した「ニュー・ジャズ」志向の音が特徴の、次世代を担う若手のジャズ系ギタリストはいるのか、と思い立った。端正なネオ・ハードバップ志向の若手ギタリストは何人かの名前が浮かぶのだが、どうなんだろう。

Nir Felder『Ⅱ』(写真左)。ちなみにパーソネルは、Nir Felder (g), Matt Penman (b), Jimmy MacBride (ds)。シンプルなギター・トリオ編成になる。エレギをフロントに据えてはいるが、アコースティックギターやバンジョー、シンセサイザーなどが多重録音されて、アルバムに詰まっている音は意外に分厚い。加えて、録音後のポストプロダクションに時間をかけている分、音の完成度はかなり高い。

このリーダーのギタリスト、ニア・フェルダー(Nir Felder)は、1982年生まれ。今年で38歳、まだまだ若手である。米国ニューヨーク州出身、2005年にバークリー音楽大学を卒業、数多くのネオ・ハードバップ、ニュー・ジャズ系のミュージシャンとの共演を重ね、ロック・ミュージックから多大な影響を受けた、かなり独創的なギタープレイで徐々にその名を売っている。
 
 
_nir-felder  
 
 
使用ギターは、ジャズとしては珍しいフェンダーのストラトキャスター。逆にストラトでないと出せない音、幽玄で浮遊感のある、かつ切れ味良く、適度に捻れたフレーズを個性とする若手ギタリストである。リピダルなど、先達の「ニュー・ジャズ」志向のギタリストと異なるのは、リズム&ビートへの乗りが明確で、浮遊感のある音でも空間を漂う様な音では無い。

しっかりと、リズム&ビートに乗った、ロックっぽいところがファルダー独特の個性と言える。古き良き米国の景色に誘い込むようなギターのアルペジオ、エレクトロニクスを多用したロック・テイストなフレーズ、ディストーション溢れる音で浮遊感と捻れを孕みつつ切れ味の良い、エレ・ジャズ志向の即興パフォーマンス。

新しい感覚の、ニュー・ジャズ志向のギター・トリオ・サウンドがこの盤に詰まっている。2014年にリリースしたファースト盤『Golden Agen』から6年の歳月を経て完成した新盤であるが、フェルダーのギタリストとしての個性の確立を確認出来、次の展開を大いに期待させてくれる好盤に仕上がっている。ポストロックの如き先鋭性とジャズの即興の融合。フェルダーの次作が待ち遠しい。
 
 
 

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2020年11月 3日 (火曜日)

テリエ・リピダルの陰謀・謀略

Terje Rypdal(テリエ・リピダル)。ノルウェー出身、ECMレーベルの看板ギタリスト。彼のキャリアにおいて、2〜3枚の例外はあるが、リーダー作については、ほぼECMレーベルからのリリースになる。リピダルは1947年生まれ。今年で73歳。初リーダー作が1968年なので、ジャズ・ギタリストとしてのメジャーなキャリアとしては52年。半世紀以上に渡って活躍する「レジェンド級」のギタリストである。

リピダルのギターについては、恐らく1〜2分聴き続けたら絶対にリピダルだと判るくらい、とても個性的な音である。幽玄で浮遊感のあるフレーズを多用した「ニュー・ジャズ」志向の音が得意で、ファンクネスは皆無であり、ブルージーな要素は微弱。そういう面では欧州ジャズ独特といえる。ジャズ・ギターというよりは、ロック・ギターと言った方が良いか、プログレ・ギタリスト的な音を出す。

浮遊感のある、ビートに乗らない、ロングトーンでフリーな独特とフレーズ。ジャズなのか、ロックなのか、どちらかにしろ、と詰問されたら、やはり「ジャズ」と答えてしまう。そんな不思議な音を持ったギタリスト。そして、リピダルは、半世紀を越えるメジャーなキャリアの中で「決してブレない」。ECMレーベルでのメジャー・デビュー盤『Terje Rypdal』の音が、マンネリに陥らず、ずっと今まで続いている。これって意外と凄いことだと思っている。
 
 
Conspiracy-terje-rypdal
 
 
Terje Rypdal『Conspiracy』(写真左)。2019年2月、ノルウェーはオスロのRainbow Studioでの録音。ちなみにパーソネルは、Terje Rypdal (el-g), Ståle Storløkken (key), Endre Hareide Hallre (b), Pål Thowsen (ds, perc)。プロデューサーは当然、マンフレッド・アイヒャー。ノルウェー出身のメンバーで固めた、リピダルの約20年ぶりのスタジオ録音作品になる。

このリピダルの新作は、リピダルのリピダルらしい個性満載。往年のメジャー・デビュー当時の、幽玄で浮遊感溢れるサステインの効いたエレクトリック・ギターが再現されている。しかし、フレーズの作りが現代的で、その音はノスタルジックでは無い、現代の新しい響きのするもの。キーボードの参加が目新しく、ハモンド・オルガンの音がリピダルのエレギに溶け込み、創造的で耽美的なユニゾン&ハーモニーを奏でる様は今までにリピダルには無い要素。

アルバム・タイトルの「Conspiracy」は「陰謀・謀略」の意。この盤を聴くと、リピダルはまだまだ深化している。この個性は全くブレていないが、この盤で聴かれる音はノスタルジーとは全く無縁。初期のリピダルの個性を現代のニュー・ジャズの要素と合わせてリコンパイルし、新しいリピダルの音世界を創造しようとしている様に感じる。それが「陰謀・謀略」であるなら、聴き手の我々としては全くウエルカムである。
 
 
 

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2020年10月27日 (火曜日)

土岐のアルト・サックス絶好調

日本人によるジャズ(ここでは「和ジャズ」と呼ぶ)はレベルが高い。しかも歴史がある。戦後まもなく、1940年代後半からジャズが演奏され始め、1950年代には、ビ・バップをお手本としたジ日本人ャズ・ミュージシャンが出現する。今も第一線で活躍している秋吉敏子、渡辺貞夫などがそのメンバーである。

1960年代には、日本のレコード会社が日本ジャズ・ミュージシャンのリーダー作をリリースするようになり、1970年代後半には、フュージョンの大ブームに乗って、カシオペアやT-スクエアといった優れたグループが活動を始めた。1990年代の終わりから、女性中心に優れたジャズ・ミュージシャンが多数出現、以降、現在まで、和ジャズは高いレベルを維持している。

土岐英史『The Guitar Man』(写真左)。2020年9月のリリース。ちなみにパーソネルは、土岐英史 (as), 竹田一彦 (g), 宮川 純 (org), 奥平真吾 (ds)。土岐のアルト・サックスと竹田のギターがフロントの、渋い渋いオルガン・カルテットである。オルガンがベースを兼ねるので、ベーシストはいない。最近、アルト・サックス奏者、土岐の活動が活発である。
 
 
The-guitar-man-hidehumi-toki  
 
 
最近、和ジャズのアルバムと、ちょっと御無沙汰であった。御無沙汰している間に、好盤が山積みに。これはいかん、ということで、しばらく和ジャズがメインでジャズを聴き始めた。その聴き始めに出会った盤がこの『The Guitar Man』。日本アルト・サックス奏者のレジェンド、土岐が、これまた、日本のジャズ・ギタリストのレジェンド、竹田と組んだ好盤である。竹田一彦については、今年84歳である(!)。

宮川のオルガンの存在が、このカルテットをとってもジャジーな雰囲気に仕立てている。もともとこの盤、ブルース&バラード集なので、オルガンの音が実にジャジーに響く。但し、日本のジャズ・ミュージシャンが弾くオルガン、やはりファンクネスはかなり控えめ。しかし、ジャジーな雰囲気は濃厚。耳にも穏やかで、土岐のアルト・サックス、竹田のギターのフレーズがグッと浮き出てくる様な感じは、オルガン・ジャズならではの感覚だろう。

土岐のアルト・サックスは絶好調、竹田のギターは耽美的で、どこまでもジャジー。決して、米国ジャズっぽく無い。ファンクネスかなり控えめなパフォーマンスは「和ジャズ」ならでは。演奏レベルはとても高い。加えて、土岐と竹田の「歌心」がとてもキャッチャーで、聴いていて、しみじみ心に染み渡る。和ジャズでは珍しいオルガン・ジャズ。良い雰囲気のハードバップ・ライクな演奏で、知らず知らずのうちに、ヘビーローテーション化している。
  
 
 

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2020年10月26日 (月曜日)

ジョンスコの4ビート・ジャズ

ジョン・スコフィールド(John Scofield、以降、略して「ジョンスコ」)という、ほぼレジェンド級のギタリストって、フュージョン・テイストのコンテンポラリーなジャズから入って、ジャズ・ファンク、そして、ワールド・ミュージック志向なニュー・ジャズをやったり、個性的な、良い意味で「捻れた変態エレギ」を駆使して、新しいジャズ・ギターのイメージを拡げてきた。

ニュー・ジャズ志向の演奏も多々あるにも関わらず、今までに渡り歩いたジャズ・レーベルは、Enja(エンヤ)、Blue Note、Verve(ヴァーヴ)、EmArcy(エマーシー)などで、ECMレーベルでの録音が、2006年リリース(録音は2004年)の『Saudades』が初めてだったのは意外だった。そして、ニュー・ジャズの老舗レーベルで録音した盤が、意外や「メインストリーム志向」なアルバムだったとは驚いた。

John Scofield『Swallow Tales』(写真左)。Recorded March 2019年3月、NYでの録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (g), Bill Stewart (ds), Steve Swallow (b)。キーボードレスのギター・トリオ編成。ドラムとベースのリズム隊は、レジェンド級の思索的なベーシスト、スワローと、変幻自在で柔軟なドラミングが身上のスチュワート。
 
 
Swallow-tales  
  
 
この盤のジョンスコは「メインストリーム志向」。パッキパキ硬派で4ビートが中心の「メインストリーム・ジャズ」を展開する。この盤でのジョンスコは不必要に「捻れない」。フレーズを伸ばすときに軽く捻るが、ジャズ・ファンクをやる時の様に大胆に捻れることは無い。エッジの丸い、芯の太いエレギの音色がフレーズの伸びの最後に捻れる。聴けば、やはり個性的な、唯一無二なギターである。

ニュー・ジャズっぽい、硬質で欧州的なベースを弾きまくるスワローが、意外とジョンスコとマッチするのだから、ジャズって面白い。そして、ジョンスコが4ビートなジャズをやる時、欠かさない存在になりつつある、ビル・スチュワートの4ビート・ドラミングも聴きもの。ポリリズミックな適度な手数のドラミングは新鮮な響きが満載だ。

アルバム全体の雰囲気が、ニュージャズ志向のECMレーベルぽくない音作りが意外に新鮮に響く。ジョンスコのエレギの志向に揺らぎが無いのがポイントで、その志向に応じて叩きまくスチュワートのドラミングもECMレーベルらしくなくて新鮮。そんなECMレーベルらしくないところに、ECMレーベルらしいスワローのベースが聴こえると何故かホッとするから不思議。実に聴き応えのあるECMレーベルの4ビート・ジャズである。
 
 
 

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2020年10月21日 (水曜日)

ECMのフュージョン・ジャズ

この盤を聴いた時、これって何時の録音、これってどこのレーベルのリリース、と思わず資料を見直した。Arild Andersen(アリルド・アンデルセン・写真右)が筆頭リーダー作である。アンデルセンはノルウェー出身のベーシスト。ECMレーベルのハウス・ベーシストの様な存在。ということは、ECMレーベルからのリリースなんだが、出てくる音は「ジャズ・ロック」風。硬派でメインストリーム志向のクロスオーバーな音に思わず身を乗り出す。

Arild Andersen『Molde Concert』(写真左)。1981年8月、ノルウェーの「The Molde Jazz Festival」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Arild Andersen (b), Bill Frisell (g), John Taylor (p), Alphonse Mouzon (ds)。しかし、ユニークなカルテット編成。ノルウェー出身の硬派なベーシスト、アンデルセンに、良い意味で変態捻れギタリストのフリゼール、そして、ジャズ・ファンクでならしたムザーンがドラム、そして、モーダルなピアニスト、テイラー。

このユニークな個性の集まりのカルテットが、フリゼールの「攻撃的で切れ味良く捻れる」エレギが8ビートに乗って弾きまくる。バンド全体がこのフリゼールのジャズ・ロックなエレギに引き摺られて、硬派でメインストリーム志向、モーダルで自由度が高い「エレジャズ・ロック」を展開する。音的にはクロスオーバー・ジャズの雰囲気を引き摺っているが、テイラーのピアノは限りなくモーダルで、アンデルセンのベースは明確に「純ジャズ」なベース。
 
 
Molde-concert  
 
 
録音年は1981年、フュージョン・ジャズの全盛後期であるが、この盤の「ジャズ・ロック」は大衆に迎合した俗っぽいジャズ・ロックでは無い。リズム&ビートとフレーズの展開は「ジャズ・ロック」風を踏襲してはいるが、演奏内容自体は、モーダルでかなり硬派な純ジャズ志向のパフォーマンスになっている。ムザーンのドラムが元気だ。フリゼールのロックテイストな捻れギターに触発されて、切れ味の良い、アーティスティックな8ビートを叩きだしている。

ECMレーベルらしからぬ、ポジティブで元気なドラム。この盤の内容、ECMレーベルなりのフュージョン・ジャズと感じた。それでも、メインストリーム志向のパフォーマンスは見事。アンデルセンのベースが、このジャズ・ロックな演奏をメインストリーム志向に留めている。強靱で確かなメインストリーム志向のベース。演奏全体のジャズ・ロック志向をものともせず、テイラーのピアノはモーダルなフレーズを叩き出す。

メインストリーム志向のジャズ・ロック、メインストリーム志向のクロスオーバー・ジャズ。全てを聴き終えた後、やはりこの盤の内容は、ECMレーベルならではのフュージョン・ジャズ。しかし、俗っぽくならずに、凛としたメインストリーム志向をしっかりキープしているところは、アンデルセンのベースとテイラーのピアノに因ることが大きい。さすがECMの総帥アイヒャーである。
 
 
 

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2020年9月29日 (火曜日)

コリエルとカーンのデュオ盤

フュージョン・ジャズの時代って、あるところからは評判が悪い。あれは時代の徒花、ジャズ者もジャズ喫茶も「どうかしていた」なんて自己批判めいた記事を目にしたことがあるが、フュージョン・ジャズって、そんなに酷いものでは無い。あれだけ大ブレイクした訳で、当時のジャズ者の方々の耳って、確かなものだったろうから、音楽的にも優れたものが多く、演奏テクニックも優秀なものが多いのは当然。

とにかく、当時、大ブレイクしたフュージョン・ジャズ。アルバムを出せばバンバン売れるわけで、レコード会社はそれぞれ、こぞって、フュージョン・ジャズのアルバムをバンバンにリリースした。バンバンとリリースするからには、アルバムをバンバンと制作せねばならない。当時、アルバムを制作する意図で、様々な企画盤が録音〜リリースされた。

Larry Coryell & Steve Khan『Two for the Road』(写真左)。1977年のリリース。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell, Steve Khan (g) のみ。コリエルとカーンのギター・デュオ盤である。60年代後半から、ジャズ・ロック〜クロスオーバーの寵児的ギタリストとして活躍していたラリー・コリエルと、70年代後半にボブ・ジェームスの見出されて、フュージョンの人気ギタリストとなった、スティーヴ・カーンとのコラボ盤。
 
 
Two-for-the-road  
 
 
冒頭のチック・コリアの名曲「スペイン」から始まる。コリエルもカーンも全編アコースティック・ギター(略して「アコギ」)でガンガンに弾きまくる。弦はスチールなので、その音色は切れ味良く疾走感抜群。そして、コリエルは、ジャズ・ロックなギター・フレーズで終始攻めまくり、カーンは硬派なジャズ寄りのフュージョン・ギターで迎え撃つ。

全く音色とアプローチの異なるアコギなんだが、それはそれは素晴らしいデュオ演奏が繰り広げられている。二人の共通点は「ロックなテイスト」がギター・フレーズに見え隠れするところ。この「ロックなテイスト」の部分で、この個性的な2人のギターは、絶妙にシンクロする。この絶妙なシンクロが実に心地良い。このシンクロをベースに奏でられる「ユニゾン&ハーモニー」は聴きものである。

このデュオ企画、コリエル宅で行われた1回のリハーサルがもとになったらしい。よほど相性が良かったのか、それが切っ掛けでツアーに出るんやから、思い切りが良いというか、向こう見ずというか(笑)。それでも、これだけ内容のあるアルバムが出来るのだから、二人のギタリストとしての力量たるや素晴らしい。フュージョン全盛時代らしい企画盤。懐かしい響き。それでも今の耳にも十分に耐える。好盤です。
 
 
 

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2020年9月17日 (木曜日)

メセニー者には避けて通れない

孤高のアメリカン・ルーツなギタリスト、パット・メセニーも今年で66歳。もはや大ベテラン、若しくはレジェンドの域に達している。そして、盟友のキーボード奏者、ライル・メイズが今年の2月に亡くなって、パット・メセニー・グループ(PMG)は開店休業状態。盟友を亡くしてさぞかし落胆しているだろうと思っていたら、6年振りのスタジオ録音盤が今年の2月にリリースされた。

Pat Metheny『From This Place』(写真)。ちなみにパーソネルは、コアとなるパットのグループとして、Pat Metheny (g, key), Gwilym Simcockv(p), Linda May Han Oh(b, voice), Antonio Sanchez (ds)。そこに、Meshell Ndegeocello (vo), Gregoire Maret (Harmonica), Luis Conte (perc) がゲストで加わり、ストリングスとして「The Hollywood Studio Symphony」が参加している。

今回のパットの新盤、ストリングスを大々的に取り入れていて、素直に聴いていると「ジャズ臭さ」が希薄で、リズム&ビートも決してジャジーでは無いし、ストリングスのアレンジも従来型で平凡。ストリングを活かしたイージーリスニングなフュージョン・ミュージックという雰囲気が濃厚になっている。ここまでストリングスを取り入れ、スインギーなビートを押さえた内容については、ジャズと呼んで良いものか、という疑問を持ってしまった。
 
 
From-this-place  
 
 
しかし、ギターの音色、フレーズについては、明らかにパット・メセニーで、ジャズか否かと思う前に、濃厚な「パット・メセニー節」に包み込まれる。フォーキーで、米国の自然の風景を彷彿とさせる「ネイチャー」な響きの音世界。スイング感やファンクネスを排除した、ニュー・ジャズなリズム&ビート。冒頭の「America Undefined」のギターを聴くだけで、この盤はパットのリーダー作だと判るのだから、その個性たるやユニークかつ濃厚。

それでも、演奏全体の雰囲気については、ジャズらしさは希薄である。従来のライル・メイズが存命の頃のパット・メセニー・グループ(PMG)の音世界とは打って変わって、今回の新盤の音世界は、壮大で叙事詩的な、イージーリスニングなフュージョン・ミュージックと僕は解釈した。ここまでジャズっぽさを排除して、パット・メセニーの音世界だけを全面に押し出した盤は今回が初めてだろう。

ジャズの醍醐味である「即興演奏やインタープレイの妙」もこの新盤の中ではほとんど聴かれず、しっかりと譜面に書かれたであろう、壮大なオーケストラ・ミュージックが展開される。音楽としてはしっかりと聴き応えがある。この盤はジャズか否かということを考えず、パット・メセニー独特の音世界をしっかりと楽しむ、パット・メセニー者の方々には避けて通れない新盤だろう。
 
 
 

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