2022年1月22日 (土曜日)

「高中」流のフュージョンの傑作

高中正義は日本のギタリストのレジェンド。日本の既成の音楽ジャンルに収まらないボーダーレスでクロスオーバーのギターが個性。加えて、ハイ・テクニック。音の志向の個性として特徴的なのは、マンボやサンバなど、ラテン・ミュージックに造詣が深いこと。そんな高中正義のアルバムが、ほぼ全部、サブスク解禁になったようで、めでたいことである。

高中正義『Saudade(サダージ)』(写真左)。1982年9月10日にリリースされた、高中の9枚目のオリジナルアルバムである。キャッチコピーは「身体(からだ)が揺れて心も揺れて…」。何ともこそばゆい、バブルの入口の時代の成せるキャッチコピーである。ちなみにパーソネルは、高中正義 (g), Joaquin Lievano (g), Narada Michael Walden (ds), T.M. Stevens (b), Frank Martin (key), Sheila Escovedo (perc)。プロデューサーにドラムも担当している、ナラダ・マイケル・ウォルデンを起用している。

時代はフュージョン・ジャズの流行後期。この盤の音世界はフュージョン・ジャズ、時々、スムース・ジャズな雰囲気で、エコーがタップリ効いている分には、スムース・ジャズ的な傾向が強い。しかし、ビートがしっかり立った楽曲については、スピード感も豊か、演奏テクニックも「バカテク」で、この辺は、当時、流行真っ只中のフュージョン・ジャズど真ん中。
 

Saudade_masayoshi_takanaka

 
冒頭の「A Fair Wind」は、エコーがたっぷり効いた、爽快でキャッチャーなフレーズが心地良い「スムース・ジャズ」志向の演奏。メンバーそれぞれの演奏のテクニックも素晴らしく、とても端正で整った演奏には、思わず聴き入ってしまう。いつもの高中盤と雰囲気がちょっと違うのは、プロデュースを他人に任せて、高中自身は「1人のフュージョン・ギタリストに徹している」ところだろう。高中はギター小僧よろしく、喜々としてエレギをアコギを弾きまくっている。

スチール・パンやパーカッションが活躍して、雰囲気は「カリビアン」なのに、出てくる旋律はマイナー調で、和風な哀愁感がそこはかとなく漂うタイトル曲「Saudade」は、いかにも和風なフュージョン・ジャズ」といったもので、これぞ高中の音世界らしい演奏。その他、ディスコ・チューンあり、ジャム・ナンバーな曲あり、ラストの「Manifestation」では、高中がロックなエレギをギンギンに弾きまくっている。

この盤、「高中正義」流のフュージョン・ジャズの傑作盤だろう。音の要素はジャズあり、ロックあり、ディスコあり、カリビアンあり、ラテン調あり、シャッフルあり、高中が得意とする音楽ジャンルをごった煮して、ギターを弾きまくった傑作。米国西海岸フュージョンの強烈なリズム隊に乗って、高中のギターが唄いまくっている。
 
 
 
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2022年1月16日 (日曜日)

スティーヴ・カーンのアコギ。

Steve Khan(スティーヴ・カーン)のギターは、心地良くスッと伸びたサスティーン、キャッチャーなフレーズ、癖の無いナチュラルな音が個性。エレギばかりがクローズアップされてきたが、本来のギタリストとしてのテクニックはどのレベルなのか。そういう場合、アコギの演奏も聴きたくなるのだが、そんな声に応えてくれたのがこの盤。

Steve Khan『Evidence』(写真)。1980年7月の録音。東海岸フュージョン最高のギタリストと誉れ高い、スティーヴ・カーンによるソロ・ギター盤(曲によって多重録音)。カーンがアコギを弾きまくる。タップリとかかるエコー、硬質でクリスタルなアコギの響き。耽美的でロマンティシズム溢れるフレーズの連続。

ただのソロ・ギター盤では無い。演奏する楽曲が、ウェイン・ショーター、ジョー・ザヴィヌル、リー・モーガン、ランディ・ブレッカー、ホレス・シルバー、そして、セロニアス・モンク。一癖も二癖もある「ミュージシャンズ・チューンズ」のてんこ盛り。モンクの楽曲については、当時LPのB面全部を占める「Thelonious Monk Medley」として、連続して演奏される。
 

Evidence_steve-khan

 
LPのA面の「ミュージシャンズ・チューン」集のアレンジが見事。ショーター、ザヴィヌルの楽曲については、かなり癖のある、ニュー・ジャズっぽい難曲なんだが、耽美的でロマンティシズム溢れるアレンジを施していて、このショーター&ザヴィヌルの難曲に新しい魅力を加えている。加えて、カーンのアコギの魅力がダイレクトに伝わってくる。

LPのB面の「セロニアス・モンク・メロディー」についても、やはりアレンジが見事。思いっ切り癖のあるモンクの楽曲を、モンクの癖のあるフレーズを残しつつ、基本はバップの楽曲を、これまた、耽美的でロマンティシズム溢れる楽曲に変身させている。これ、結構、聴き応えがある。モンクの楽曲にこういうアレンジで、こういうアコギで攻めるんだ、と感心する。

聴いていると、どこか、ECMレーベルのニュー・ジャズ系のアコギ盤を聴いている様な気分になる。決して、フュージョンっぽく無い、メインストリーム系の硬派な純ジャズ・アコギの調べに思わず聴き込んでしまう。やっぱ、このギタリスト、ただ者では無いなあ、と改めて思う。
 
 
 
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2022年1月11日 (火曜日)

カーンのフュージョン・ファンク

Steve Khan(スティーヴ・カーン)のエレギが「お気に入り」。初めて聴いてから、かれこれ40余年、カーンのギターをずっと聴いてきた気がする。1947年4月生まれだから、聴き始めた時で、カーンは30歳過ぎ。今ではカーンは74歳。大ベテランの域を超えて、もはや、フュージョン・ギターのレジェンド級ギタリストである。]

カーンについては、不思議と我が国ではメジャーな存在では無い。知る人ぞ知る、フュージョン・ジャズにおいては、隠れ「エレギの名手」の様な扱い。知っている人はカーンに「ぞっこん」の場合が多く、知らない人はその名前すら聞いたことが無い、と言い放つ(当たり前かw)。

いわゆる「玄人好み」のギタリスト。米国では「グラミー賞」に時々ノミネートされるくらいメジャーな存在なのに不思議なことである。

Steve Khan『Arrows』(写真)。1979年の作品。ちなみにパーソネルは、Steve Khan (g), Randy Brecker (tp), David Sanborn (as), Michael Brecker (ts), Will Lee (b), Steve Gadd, Rick Marotta (ds), -Jeff Mironov (g), Don Grolnick, Rob Mounsey (key), Errol "Crusher" Bennett (per)。フュージョン畑の錚々たるメンバーが名を連ねる。
 

Arrows

 
スティーヴ・カーンの単独名義リーダー作の第3作目。パーソネルは見わたせば、フュージョン畑の豪華すぎる面子に驚く。フロント管にブレッカー兄弟、ディヴィット・サンボーン。ドラムにスティーヴ・ガッド、ベースにウィル・リー、と、フュージョン・ジャズの中でも、R&B志向な、フュージョン・ファンクの音の要素が、そこはかとなく漂うところが「ミソ」。

カーンのギターは、心地良くスッと伸びたサスティーン、キャッチャーなフレーズ、癖の無いナチュラルな音、が個性なのだが、バックの音にファンクネスがしっかり漂っていて、アルバム全体の雰囲気は「ライトなフュージョン・ファンク」な感じに仕上がっている。この辺りが、米国でウケて、我が国ではウケない理由なのかもしれない。

でも、僕はこの「ライトなフュージョン・ファンク」な雰囲気がお気に入りで、この乾いたライトなファンクネスは、どちらかと言えば「日本人ジャズな志向」だと思うのだが、如何だろう。

演奏メンバーがメンバーだけに、かっちりとキメた、ハイ・テクニックで流麗な、極上なフュージョン・ジャズが展開されている。フュージョン・ジャズ盤として優秀な内容である。
 
 
 

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2021年12月20日 (月曜日)

冬のボサ・ノヴァ・ジャズ・4

この盤の音世界は。ボサ・ノヴァ・ジャズに括るには憚れる。ボサ・ノヴァやサンバなど、ブラジル音楽の要素は色濃いが、ラテン音楽、ゴスペルなどの教会音楽からの影響が強く感じられ、果てはロックや米国ポップス、ソウルの要素も偲ばせている。リズム&ビートは疾走感溢れる軽快で爽快なもの。そして、フレーズはネーチャーでフォーキーな、自然な景観や雰囲気を感じさせる、美しく郷愁溢れるもの。

Milton Nascimento『Milton』(写真)。1976年の作品。米国L.A.での録音。ちなみにパーソネルは、Milton Nascimento (g, vo, arr), Toninho Horta (el-g), Wayne Shorter (ss, ts), Raul De Souza (tb), Herbie Hancock (p), Hugo Fattoruso (p, el-org), Novelli (b), Roberto Silva (ds, perc), Laudir De Oliveira (perc)。

ミルトン・ナシメント(Milton Nascimento)は、1942年10月、ブラジル、リオ・デ・ジャネイロの生まれ。「ブラジルの声、ブラジルの心」の異名を持つMPB(Música Popular Brasileir)=「ブラジルのポピュラー音楽の総称」の代表的ソングライター。そんなミルトンの通算4作目、ミルトン・ナシメントが米国に渡って、ウェイン・ショーターやハービー・ハンコックをゲストに迎えて録音、1976年にリリースした名盤である。
 

Milton-1976

 
この盤は、冒頭からラテンチックでブラジリアン、ワールド・ミュージック志向の「融合」音楽が展開される。そして、賛美歌の様な「祈るような」スキャット、自然の風を感じさせるパーカッション&ピアノの響き。様々な音楽ジャンルの要素が、MPBの名の下に「融合」された、上質の「フュージョン・ミュージック」。

演奏の展開は「即興性」が前提、リズム&ビートはジャジー。そういう意味で、この音世界は、コンテンポラリーな、ワールド・ミュージック志向のフュージョン・ジャズとして良いかと思う。ショーターのソプラノ・サックス、ハンコックのピアノが要所要所で良い音を出していて流石だ。この2人の参加が、ミルトンの音世界にジャジーな要素を色濃く反映させている。

そんな、1970年代ジャズ~フュージョン的要素が濃厚な音世界ながら、ブラジリアンな音の要素はしっかり前面に出ていて、ブラジルの大地に吹く風を思い起こさせるような、ネーチャーでフォーキーな音世界に思わず引き込まれる。MPBをベースとした、フュージョン・ジャズのアーティスティックな傑作。優れたフュージョン・ジャズは、何も米国だけのものでは無い。
 
 
 

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2021年12月13日 (月曜日)

冬のボサ・ノヴァ・ジャズ・1

夏はボサ・ノヴァ・ジャズ、と言うが、冬のボサ・ノヴァ・ジャズも「乙なもの」である。冬になると、余りの寒さに表に外出すること無く、家の中で一日を’過ごす日が時々出てくる。部屋の中はエアコン暖房と加湿器で快適な環境。思わず、気持ちはホンワカして、ちょっと微睡む瞬間がある。そんな時、BGMとしてかけるジャズは「ボサ・ノヴァ・ジャズ」が良い。

『The Look of Love and the Sounds of Laurindo Almeida』(写真左)。1968年の作品。ギターを弾くのは、ボサ・ノヴァの先駆者ローリンド・アルメイダ。アルメイダのボサ・ノヴァ・ギターが心地良い響きで、ほのぼのリラックス。ストリングスを交えて、小粋なアレンジを施した「イージーリスニング・ジャズ」である。

アルメイダの小気味良い、切れ味の良いギターのフレーズに、ボサ・ノヴァのリズム&ビートが良く似合う。演奏全体の雰囲気は、軽音楽風のボサ・ノヴァ・ジャズ。ポップで俗っぽさに流れると思いきや、アルメイダのギターが硬派で凛としていて、イージーリスニングの様な俗っぽさは無い。
 

The-look-of-love

 
バカラックなどのポップス・カヴァーがメインだが、ジャズ・スタンダードでもある「Angel Eyes」「The Look Of Love」「Alfie」「When I Look In Your Eyes」など、優れたアレンジと相まって、アルメイダのボサ・ノヴァ・ギター独特の躍動感溢れる、切れ味の良いカッティングとピッキングで、引き締まった内容の、聴き応えの良い演奏に仕上がっている。

アレンジについては、Clare Fischerが3曲、Dick Groveが1曲、Lex De Azevedoが7曲を分担して担当しており、どのアレンジもなかなかの内容で、アレンジの雰囲気も統一感があって良い。1960年代後半のストリングス入りのアレンジなので、ちょっとチープな、俗っぽいものだと嫌やなあ、と思っていたが、このアレンジはなかなか良い。聴いていて違和感は無い。

スピーカーに向かって、前のめりに聴き込む様な純ジャズとは全く正反対の、心地良い響きで、ほのぼのリラックスして、ホンワカ聴き流す様なイージーリスニングなボサ・ノヴァ・ジャズだが、これはこれで、たまには良い。テクニックは確か、内容充実のアルメイダのボサ・ノヴァ・ギターならではの聴き応えである。
 
 
 

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2021年11月15日 (月曜日)

グリーンのギターに惚れ惚れ

Grant Green(グラント・グリーン)。この人のギターは癖になる。ファンキーなジャズ好きなら絶対に填まる。パッキパキ硬質なピッキング。訥々と流麗なフレーズから溢れ出る「こってこてなファンクネス」。ファンキーでありながら、俗っぽさとは全く無縁のストイックな響き。シンプルな一本弾きでグイグイ出てくる「ノリの良さ」。

ブルージーでアーバンでムーディーな音が主流のジャズ・ギターの中で、グラント・グリーンのギターは個性が際立っている。従来のジャズ・ギターとは明らかに一線を画する、ファンキーでソウルフルなギター。後のクロスオーバー&フュージョン・ジャズのエレギに通じる様な、ポジティヴでアグレッシヴな弾きっぷり。唯一無二の個性派ギタリストである。

Grant Green『Grantstand』(写真左)。1961年8月1日の録音。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Yusef Lateef (ts, fl), Brother Jack McDuff (org), Al Harewood (ds), Ben Tucker (b)。ギターのグラント・グリーンをリーダーに、ユセフ・ラティーフのテナーがフロント1管の、ピアノの代わりにオルガンが入ったクインテット編成。
 

Grantdtand-grant-green

 
ファンキーなギターにはオルガンの音が良く似合う。この盤を聴く度にそう思う。グラント・グリーンのギターはシングルトーンで、ややもすれば、旋律弾きの線が細くなる傾向にあるところを、今回はテナー・サックスを旋律楽器のお供に採用して、きっちりカヴァーしている。が、グラント・グリーンは、そんなテナーの存在など関係無しに、自分の個性的なギターをパッキパキと弾き上げている。グラント・グリーンのギターは、良い意味で「唯我独尊」である。

ただこの盤でのテナーが、当時、新進気鋭のラティーフで、ラティーフ独特の個性的な「こじらせテナー」を吹いているので、グラント・グリーンのギターの個性にフィットしていたかどうかは、ちょっと疑問ではある。ラティーフのテナーが、伝統のジャズからちょっとはみ出した、独特な個性的テナーであるが故、ラティーフのテナーの存在が演奏全体の中で浮き気味なのが惜しい。

「シンプル・イズ・ベスト」という形容がピッタリのグリーンのパフォーマンス。変に装飾を加えず、フレーズの引用も控えて、独特のシングルトーンで、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなギターだけを弾きまくる。グリーンとマクダフが、どこか和みながら、楽器を通じて語り合うようなフレーズの交歓を聴いていると、思わず「ジャズってええなあ」と思ってしまう。
 
 
 

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2021年11月13日 (土曜日)

レイジのブルーノート・デビュー盤

Julian Lage(ジュリアン・レイジ)。数々の有望新人を発掘してきた、ヴァイブのゲイリー・バートンが新たに発掘した天才ギタリスト。僕は、2016年頃から注目し始めたので、レイジのギターに着目してから、かれこれ5年になる。

パット・メセニーの様でもあるが、ジョンスコの様でもある。が、官能的な「くすんだ音色」と「前のめりでアグレッシブなフレーズ」は、ジュリアン・レイジの独特の個性。テクニックはもちろん卓越したもの。

そんなレイジも、1987年生まれなので、今年で34歳。若手を通り越して、立場的には、ジャズ界の「中堅」になる。アタッチメントを駆使したくすんだ伸びのあるフレーズ。音の芯がしっかりしていて、紡ぎ出すフレーズに揺るぎは無い。速弾きなどのテクニックに頼らず、ミッドテンポで、それぞれの収録曲の持つ美しい旋律を浮かび出させるように、ゆったりと堅実に弾き進めていく。僕は、このレイジのエレギの音が大好きだ。

Julian Lage『Squint』(写真左)。2021年8月のリリース。ちなみにパーソネルは、Julian Lage (g), Jorge Roeder (b), Dave King (ds)。ジュリアン・レイジのブルーノート・デビュー作になる。リーダーのレイジのギター1本がフロントの、シンプルでピアノレス、ホーンレスなトリオ編成。レイジのギター一本でフロントを張るとは、全く以て、ポジティヴでアグレッシヴなギタリストである。
 

Squint_julian-lage

 
トリオ編成とは言え、全編に渡ってトリオ演奏するのでは無く、ギターソロのパートあり、ドラムとのデュオあり、三者一体となったトリオ演奏あり、三者三様のインタープレイあり。全編に渡って、変化に富んでいて、あっと言う間に聴き終えてしまうくらいの充実度。ローダーのベース、キングのドラム、共に素姓は確か、堅実かつエモーショナルなリズム&ビートを供給する。

三者一体となった硬派でストイックなモード演奏あり、どこか郷愁を誘う「古き良き米国ルーツ・ミュージック」を踏まえた耽美的な演奏あり、感情移入が好ましい「静的でスピリチュアルな」演奏あり。レイジのエレギの音は「明るくて骨太でポジティヴ」。エレギの音は、従来のロックの音なんだが、出てくるフレーズは、ジャジーであり、ブルージーでなのだから面白い。

ジャズをはじめ、ロック、ブルース、カントリーなど、米国ルーツ・ミュージックの音要素もふんだんに引用し、音楽ジャンルを越え、融合した音世界はこの盤でも健在。そう、この米国ルーツ音楽の引用が良い雰囲気、醸し出しているだよな〜。

ジャズ・ギタリストについては、ギラッド・ヘクセルマン、カート・ローゼンウィンケルらと併せて、人材豊富な時代になった。喜ばしいことである。
 
 
 
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2021年11月 6日 (土曜日)

オルガン・ジャズの傑作&名盤

昨日のブログで、スタンリー・タレンタインのテナー・サックスはオルガンと相性が良い、と書いて、そう言えば、このジャズ・オルガンのレジェンドの強烈な音とアドリブ展開に負けずに、対等な立場で「タイマン」を張ったテナー・サックスって、タレンタインだったなあ、ということを思い出した。

Jimmy Smith『Midnight Special』(写真左)。1960年4月25日の録音。ブルーノートの4078番。ちなみにパーソネルは、Jimmy Smith (org), Stanley Turrentine (ts), Kenny Burrell (g), Donald Bailey (ds)。オルガンのレジェンド中のレジェンド、ジミー・スミスの大ヒット盤。テナーにタレンタイン、ギターにバレルという「漆黒ブルージー」な布陣。

この盤のジミー・スミスのオルガンは、限りなくダンディーで優しい。いつもはプログレッシヴでオフェンシヴなオルガンで、前へ前へ、前のめりに、圧倒的テクニックをもって、凄まじい迫力のアドリブ・フレーズを弾きまくるのだが、この盤は違う。圧倒的テクニックはそのままに、力強くも優しい印象的なフレーズを弾きまくる。とても美しく流麗なフレーズ。

ジミー・スミスのオルガンは、プログレッシヴでオフェンシヴであるが故に、ファンクネスは控えめなのだが、そこに、タレンタインの「こってこてファンキー」で「ドップリ漆黒ブルージー」なテナーが溶け込む様に入ってくる。スミスの切れ味良いオルガンが浮き出てきて、タレンタインのテナーのお陰で、バックのトーンは「アーバンな真夜中なファンクネス」一色に染まる。
 

Midnight-special

 
そんなバックのトーンに、これまた「アーバンでジャジー」なバレルのギターが参入する。スミスのオルガンとはまた違った切れ味の、ギター独特のフレーズが「お洒落で小粋なファンクネス」を付加する。このバレルにギターの参入が、今までのスミス盤に無い、特別なファンクネスの要素を供給する。

そして、ドナルド・ベイリーのドラムが、これまた良い仕事をしている。スミスの長年の相棒ドラマーは、スミスのそれぞれの弾き回し毎に、最適なリズム&ビートを供給する。スミスにとって、安心&安定のドラミング。

オルガン・ジャズを代表する名盤である。オルガン・ジャズを聴きたい、と言った向きにには、まずこの盤を聴いて頂きたい。この盤でのジミー・スミスのオルガンが、ジャズ・オルガンの「第一の基準」だろう。

この盤は売れたらしい。零細企業だったブルーノートの懐を潤したと聞く。それも納得の内容。オルガン・ジャズとして充実した内容を誇り、演奏の心地良さ、聴き易さ、歌心も抜群。これは売れるよな。スミスは、この盤の後、4100番の『Plays Fats Waller』にて、ヴァーヴ・レーベルに移籍する。この盤は、ブルーノートへの「売り上げ」の置き土産となったアルバムでもある。
 
 
 
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2021年9月24日 (金曜日)

ジャズ喫茶で流したい・218

ボサノバ&サンバのジャズについては、こってこてにボサノバ、若しくはサンバの要素を前面に押し出して、リズム&ビート、及び即興演奏部分だけが「ジャズ」を踏襲しているものもあれば、演奏全体はフュージョン、若しくはコンテンポラリーな純ジャズで、その中にボサノバ&サンバの要素を織り交ぜているものもある。

どちらもボサノバ&サンバのジャズには違いないのだが、前者は明らかにウケ狙いで、1960年代から1970年代に多く存在する。フュージョン・ジャズの時代から以降は、ジャズに他ジャンルの音楽要素を融合する手法が確立していて、1980年代以降については、コンテンポラリーな純ジャズのカテゴリーに、ボサノバ&サンバの要素を融合したジャズが多く存在する。

Toninho Horta『Moonstone』(写真左)。アメリカとブラジルのミュージシャンの混成メンツによるかなり豪華な顔触れ。特にパット・メセニー・グループ(PMG)関係のミュージシャンが多数参加。ちなみにパーソネルは以下の通り。

Toninho Horta (g, vo), Pat Metheny (g), Eliane Elias (p), Onaje Allan Gumbs, Willa Bassen, Russell Ferrante (key, Syn), Mark Egan, Steve Rodby, Luizão Maia (b), Danny Gottlieb, Paulinho Braga (ds), Randy Brecker (fly), Billy Drewes, Billy Egan (sax), Rudi Berger (vln), Armando Marçal, Robertinho Silva, Steve Thornton (perc), Boca Livre, Lourenco Baeta, Mauricio Maestro, José Renato, David Tygel (vo), Naná Vasconcelos (perc, vo)。
 

Moonstone-toninho-horta

 
Toninho Horta(トニーニョ・オルタ)は1948年ブラジルのミナス・ジェライス州生まれのギタリスト。1960年代後半から現在まで多方面でコンスタントに活躍。初リーダー作が1980年になるので、1960年代の最初のボサノバ&サンバ・ジャズのブームとは無縁。オルタの音世界は「演奏全体はフュージョン、若しくはコンテンポラリーな純ジャズで、その中にボサノバ&サンバの要素を織り交ぜているもの」に近い。

この『Moonstone』だってそうだ。初めて聴いた時「これってパット・メセニーちゃうん」と思った。ただ、良く聴くと主役のオルタのギターがパットとは違う。切れ味の良いアコギ風で、それも弾き込むのでは無い、適度に緩く適度にテンションを張った独特のギターの音色であり、リズム感である。リーダーの名前を確認して、このギターがボサノバ&サンバ系のギターであることで合点がいった。

確かにこの盤、PMG系のミュージシャンが多く参加しているので、PMGの音世界に近づくのも無理は無い。というか、意識してそうしているように感じる。フォーキーでネーチャーなコンテンポラリーなニュー・ジャズ、ワールド・ミュージック志向のコンテンポラリーな純ジャズをバックに、ボサノバ&サンバ系のギターが乱舞する。これがとても心地良い。聴いていて、ストレスがスッと抜けて、大きく深呼吸して大いにリラックス出来る、素敵な内容のネーチャー・ジャズである。

パット・メセニーの音世界の様で、そうではない。オルタのボサノバ&サンバ系のギターが、オルタの音世界のオリジナリティーをしっかりと留めている。しかし、本当に聴いていて心地良い、耳に心地良いボサノバ&サンバ系のギターであることか。好盤である。
 
 
 
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2021年9月19日 (日曜日)

マクラフリン、5年振りの新作

1975年1月、マイルス・デイヴィスが来日、途方も無いエレクトリック・ジャズを展開。FMでその実況録音を聴いて以来、エレクトリック・ジャズが大のお気に入りである。クロスオーバー&フュージョン、そして、ジャズ・ロックでのエレクトリック・ジャズが大好物。更に、エレクトリックな純ジャズにおいては、もう諸手を挙げて大のお気に入りである。

John McLaughlin『Liberation Time』(写真左)。2021年7月のリリース。ちなみにパーソネルは、John McLaughlin (g, p), Sam Burgess, Etienne Mbappe, Jerome Regard (b), Vinnie Colaiuta,Nicolas Viccaro (ds), Jean-Michel Aublette (b, ds), Gary Husband (key), Roger Rossignol,Oz Ezzeldin (p), Ranjit Barot (ds, vo), Julian Siegel (ts)。

クロスオーバー&フュージョン、そして、ジャズ・ロックにおけるエレギのレジェンド、ジョン・マクラフリンの5年振りのスタジオ・アルバムになる。ジョン・マクラフリンは、1942年生まれなので、今年で79歳。もう大ベテランの域を過ぎて、レジェンドの域に達している。僕が、ジョン・マクラフリンのエレギに出会ったのは、マイルスの『Bitches Brew』。クロスオーバーでプログレッシヴ、切れ味抜群でパワフルなエレギは聴いて直ぐにお気に入りになった。
 

Liberation-time-ohn-mclaughlin

 
今回の新作も、パワフルなグルーヴ、超絶技巧な弾き回し、適度に捻れて適度にプログレッシヴなマクラフリンのエレギは健在。1曲目の「As the Spirit Sings」から無茶苦茶に格好良いエレギを披露してくれる。うむむ、何時も何時の時代もマクラフリンのエレギは裏切らない。全編に渡って、往年のマクラフリンのエレギが疾走する。これで、今年79歳か。素晴らしいの一言。

今回の新作には、アコースティックなジャズの雰囲気も入っていて「粋」。マクラフリンはピアノを弾いていて、マクラフリンのピアノ・ソロの短曲2曲、4曲目の「Mila Repa」と、6曲目の「Shade of Blue」は、とても余芸とは思えない位に美しい響き。パワフルでグルーヴィー、超絶技巧な弾き回しの曲の合間の「一服の清涼剤」である。

マハヴィシュヌ・オーケストラ、シャクティ、スーパー・ギター・トリオ、ファイヴ・ピース・バンド等々、数々の伝説的グループを生み出してきた、クロスオーバー&フュージョン、そして、ジャズ・ロックにおけるエレギのレジェンド、ジョン・マクラフリン。今回は、ザ・フォース・ディメンションを率いての5年振りのスタジオ盤。傑作である。
 
 
 
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