2023年9月23日 (土曜日)

ジョンスコ・ジャズの原点回帰

ジョンスコは自らの音作りについて、幾つかのスタイルの変換を経験している。スタイルの変換とはいっても、ジョンスコのギターの個性はそのままで、演奏の音志向を変換する方式なので、全く違和感の無いスタイルの変換ではある。

最初は「メンストリーム志向のエレ・ジャズ」から入って「ジョンスコ流ジャズ・ロック」、そして、1980年代前半〜中盤は「ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンク」にスタイルを変化させている。今日はその次のスタイルの変換のお話。

John Scofield『Flat Out』(写真左)。1988年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Don Grolnick (Hammond B-3 org), Anthony Cox (b), Johnny Vidacovich (ds, exc. 3,7,9), Terri Lyne Carrington (ds, track3,7,9)。この盤ではハモンド・オルガンを導入。ベテラン、ドン・グロルニックが担当。これは、ファンクネス増強を担うのか、と思わず身構える。

が、聴けば、その予想については完全に「肩すかし」。『Electric Outlet』から始まり、『Blue Matter』『Pick Hits Live』『Loud Jazz』の3枚の「ジョンスコ・ファンク全盛期」にて、ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンクを確立。さて、次はどうするのかな、と思ったら、エレギのボリュームを上げ、音色の出し方を工夫して、それまでのエレギのファンク度合いを2倍にも3倍にも引き上げたジョンスコの「ファンキー捻れギター」そのままに、ジャズの原点回帰にチャレンジ。
 

John-scofieldflat-out

 
ファンクネスはそのままだが、ファンク度は後退、アコースティック路線へと大きく変換。冒頭3曲はスタンダード曲を演奏。これも新鮮。それまではオリジナル曲がメイン、スタンダード曲はほとんど採用しなかったので、この冒頭スタンダード曲の「3連発」にはビックリした。

確実に、メインストリームな純ジャズ志向に戻りつつある雰囲気濃厚。1988年2月のジョンのコメントに「ファンク路線もそろそろ満足のいくところまできた。この次は、もう少しアコースティックなムードのジャズをプレイしたいと思っている」と発言している。その発言そのものズバリのリーダー作がこの『Flat Out』ということになる。いわゆる「ジョンスコ・ジャズ」の原点回帰である。

大きく分けて、ニューオリンズ・ジャズ志向とストレート・アヘッドな純ジャズ志向で固められた本作。ただし、ジョンスコのギター、ジョンスコの「ファンキー捻れギター」はそのままなのが「安定度抜群」。あくまで、演奏の志向を転換しただけで、ジャズ・ギターのテイストまでは絶対に変えない、というジョンスコの矜持を強烈に感じる。

実際にこの次のリーダー作『Time on My Hands』では、ストイックで硬派なメインストリームな純ジャズ志向で固めた音世界を展開することになる。そういう意味では、この『Flat Out』では、ジョンスコの「3つ目の転換点」を記録したエポック・メイキングなリーダー作、という位置づけになる。
 
 

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2023年9月17日 (日曜日)

ジョンスコのエレ・ファンク。

マイルスの下で活躍するにつれ、エレ・マイルスの洗礼を思いっ切り受けて、ジョン・スコフィールド(以降、略して「ジョンスコ」)の音志向はジャズ・ファンクへ傾倒する。

ただし、マイルスのエレ・ファンクを、そのまま真似するとマイルス御大に怒られること必至。ジョンスコは、マイルスのエレ・ファンクをベースに、ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンクを追求することになる。

マイルスの楽器はトランペット。マイルスのエレ・ファンクの肝はベースとドラム。ベースとドラムが重量級のファンク・ビートを醸し出して、その上にマイルスのトランペットが飛翔する。トランペットの音は基本的に切れ味良く大きい。ブリリアントでメリハリがある音で、トランペットの音は、ベースとドラムが重量級のファンク・ビートに負けない。

ジョンスコの楽器はエレギ。ギターの音は基本的に弦を弾いて出すので、トランペットに比べて音が細い。マイルスのエレ・ファンクの肝だったベースとドラムをそのまま活かすと、主役のエレギの音が負けてしまう。重量級のベースとドラムの音が目立ってしまう。

ジョンスコのエレ・ファンクへのチャレンジの証し、『Electric Outlet』と『Still Warm』『Blue Matter』の3枚で、どうも、ベースとドラムの重量級のファンク・ビートを活かす方向は、エレギが主役のジョンスコのエレ・ファンクには無理があることが判った。

John Scofield『Loud Jazz』(写真左)。1987年12月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Robert Aries (key), George Duke (key), Gary Grainger (b), Dennis Chambers (ds), Don Alias (perc)。
 

John-scofieldloud-jazz

 
タイトルは直訳すると「騒々しいジャズ」なんだが、この盤、フュージョン&スムース志向のエレ・ファンクが特徴の盤である。決して「騒々しい」ジャズでは無い。

『Blue Matter』で目立ちに目立ったデニチェンのドラムとグレンジャーのベースが、温和に後ろに下がって、スムースなファンク・ビートを醸し出す。そして、ジョンスコのエレ・ファンクの肝となったのは、ジョンスコ自身のエレギ。ジョンスコ自身のエレギのボリュームを上げ、音色の出し方を工夫して、それまでのエレギのファンク度合いを2倍にも3倍にも引き上げた。

不思議に「ねじれた」というか、ちょっと外れた、というか、とにかく一聴するだけで「ジョンスコ」と判る、とても個性的なエレギに、スムースなファンクネスを纏わせて、ジョンスコのエレ・ファンクを確立させている。

ジョンスコのエレ・ファンクのファンクネスは、ジョンスコのエレギが醸し出し、バックのリズム隊がそのファンクネスを支え、演奏全体に振り撒く。エレギがメインの、エレギがフロントに据わった、フュージョンでスムースなエレ・ファンクが爽やかである。

この盤にて、マイルスのエレ・ファンクをベースに、ジョンスコ・オリジナルなエレ・ファンクを確立する。ジョンスコのエレ・ファンクのファンクネスは、ジョンスコ自身のエレギが醸し出す。リズム隊はそれを支え、演奏全体に伝播する。これがジョンスコのエレ・ファンクの基本。そして、その底には、マイルスのエレ・ファンクのエッセンスが流れている。
 
 

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2023年9月14日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・265

この盤はジャズ者初心者の頃、バイト代を叩いて買った思い出の「名盤」。

当時、ブルーノートのLPは値が張った。他のレーベルでは「廉価盤」と銘打って、LPの通常の値段の千円ほど安い、手に入れやすい価格の盤があったのだが、ブルーノートにはそれが無い。

学生時代のバイト代では、ブルーノートのLPは1ヶ月に1枚がせいぜい。他のLPも買いたいので、これは「廉価盤」で数枚買う、という感じで、ブルーノートのLPは、ジャズ者初心者の僕にとっては、特別な存在だった。

Kenny Burrell『Midnight Blue』(写真左)。1963年1月8日の録音。ブルーノートの4123番。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), Stanley Turrentine (ts), Major Holley (b), Bill English (ds), Ray Barretto (conga)。

リーダーのバレルのギターとタレンタインのテナーがフロント2管の、コンガ入り、キーボードレスのクインテット編成。バレルのギターとタレンタインのテナーの相性が抜群で、2つの楽器の相乗効果で、漆黒ファンクネスがだだ漏れ。
 

Kenny-burrellmidnight-blue

 
ブルージーでアダルト・オリエンテッドなファンキー・ジャズ。バレルの漆黒ギターとタレンタインの漆黒テナーが、アーバンな夜の雰囲気を醸し出す。コンガが良いアクセントとなった小粋な曲もあって、アルバム全体を通して、大人のファンキー・ジャズをとことん楽しむ事が出来る名盤。

とにかく、バレルのギターが良い。ブルージーでファンクネス濃厚。そして、どこか洗練された都会的な雰囲気が底に流れている。タイトルの「Midnight」が言い得て妙。都会の深夜のブルージーで漆黒な雰囲気がアルバム全体を覆っているのだ。

この盤は理屈で、蘊蓄で聴く名盤では無い。この盤は雰囲気で、直感で聴くべき名盤である。

特に、CDリイシュー時のボートラ含め、1963年1月8日のセッションの全てを欲しい。セッション全曲、捨て曲無し。充実仕切ったバレル・クインテットのセッションの全てを味わい尽くして欲しい。

この盤は、ジャズ者初心者、ジャズを聴き始めて2年位で手に入れた盤だが、まず、このジャケットに惚れた。そして、LPに針を落として、冒頭の名演「Chitlins con Carne」でドップリ感じ入り、そのまま、一気に聴き切った後、直ぐにA面の戻して、繰り返し聴き直した思い出のある名盤。

ジャズ者初心者でもこの盤の良さが直ぐに判る、ジャズ者初心者にとても優しいジャズ名盤である。
 
 

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2023年9月 9日 (土曜日)

ジョンスコのエレ・ジャズの発展

心地良く捻れた、プログレッシヴなジャズ・ギタリスト、ジョン・スコフィールド(以降、ジョンスコと略)。1982年にマイルス・デイヴィスのバンドに参加。3年の在籍の間に『Star People』『Decoy』『You're Under Arrest』という、1980年代マイルスの傑作盤のパーソネルに名を連ねた。

このマイルス・バンドへの参加が切っ掛けで、ジョンスコのエレ・ジャズは「ファンク色」が強くなった。軽めの切れ味の良いファンクネス。エレギのエフェクトのかけ方も工夫が凝らされていて、この「ファンク色」を効果的に醸し出すエフェクトが大活躍。このエフェクトと従来からの「心地良く捻れたエレギ」のフレーズとが相まって、ジョンスコならでは、のファンク色が成立している。

John Scofield『Blue Matter』(写真左)。1986年9月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g), Mitchel Forman (key), Hiram Bullock (el-g), Gary Grainger (b), Dennis Chambers (ds), Don Alias (perc)。

マイルス・バンドの経験から、ジャズ・ファンクの肝は「ドラムとベースにある」と確信したのか、この盤では、当時、若手ドラマーの最精鋭、デニス・チェンバース(略してデニチェン)を、チョッパー・ベースの雄、ベースのゲイリー・グレンジャーを招聘している。
 

John-scofieldblue-matter

 
まず、このデニチェンの「ファンク」なドラミングがバッシバッシ効いている。ジョンスコの心地良く捻れた、プログレッシヴなエレギとタイマンが張れるほど、デニチェンのオフビートの重量級ドラミングが効きに効いて、この『Blue Matter』は、ジョンスコのエレ・ジャズの中でも、一番「ファンク色」が濃厚なアルバムに仕上がっている。

加えて、ゲイリー・グレンジャーのチョッパー・ベースが大暴れする曲では、デニチェンのドラムで色濃くなった「ファンク色」が、さらに濃厚に、1980年代当時の「デジタルチックなエレ・ファンク」の音志向が強烈に響いてくる。

このデニチェンのドラムとグレンジャーのエレベが、この盤での「ジョンスコのエレ・ジャズ」の音世界を創出している。が、このリズム隊が余りに強烈過ぎて、ジョンスコのエレ・ジャズの肝である「ファンク色」が、どこかよそ行き、他人行儀に聴こえてしまうのが、この盤の「玉に瑕」なところ。

この『Blue Matter』、ジョンスコのエレ・ジャズの中でも、一番「ファンク色」が濃厚なアルバムに仕上がっているが、ジョンスコのエレ・ジャズの最終形では無い。発展途上、最高に「ファンク色」が濃くなったところで、ジョンスコは、ジョンスコ志向のエレジャズを確立すべく、調整に入る。その成果は次作『Loud Jazz』にある、と僕は睨んでいる。
 
 

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2023年9月 6日 (水曜日)

ジョンスコのエレ・ジャズの基礎

心地良く捻れた、プログレッシヴなジャズ・ギタリスト、ジョン・スコフィールド(以降、ジョンスコと略)。そんなジョンスコの1980年代のリーダー作の落ち穂拾い。当ブログで、まだ記事化されていないリーダー作を順に聴き直している。すると、1980年代って、ジョンスコにとって、エポックメイキングな年代だったことが良く判る。

1980年代は、1982年にマイルス・デイヴィスのバンドに参加。3年の在籍の間に『Star People』『Decoy』『You're Under Arrest』という、1980年代マイルスの傑作盤のパーソネルに名を連ねた。この途方も無い「マイルス体験」が、ジョンスコの個性に、更なる魅力的な個性を積み重ねることになる。

John Scofield『Electric Outlet』(写真左)。1984年4〜5月の録音。ちなみにパーソネルは、John Scofield (el-g, b), Ray Anderson (tb), David Sanborn (sax), Pete Levin (key), Steve Jordan (ds)。エレ・ジャズにトロンボーンの参加がユニークな、クインテット(5人)編成。良く見ると、ジョンスコがベースを兼任、ジョンスコ自身による「打ち込み」である。

聴けば直ぐに判るが、マイルスのエレ・バンドに参加した影響がモロに出ているのが微笑ましい。心地良く捻れた、プログレッシヴなエレギのジョンスコ、1980年代はどの方向に、自らの音の志向を持って行くのか、興味津々だったが、ちょうど良いタイミングで、マイルス・バンドに参加したようで、マイルスからの影響がとても良い方向に反映されている。
 

John-scofieldelectric-outlet

 
まずは「ファンク色」が強くなった。軽めの切れ味の良いファンクネス。エレギのエフェクトのかけ方も工夫が凝らされていて、この「ファンク色」を効果的に醸し出すエフェクトが大活躍。このエフェクトと従来からの「心地良く捻れたエレギ」のフレーズとが相まって、ジョンスコならでは、のファンク色が成立している。

続いて「強力なグルーヴ感」の醸成。ベースがジョンスコの打ち込みにも関わらず、コンピューター&デジタル臭が希薄で、強烈なグルーヴ感が生み出されているのにはビックリ。エレ・マイルスの強烈なグルーヴ感の応用とでも表現出来る、マイルスほど重力級では無いが、ソリッドでうねるようなグルーヴ感を生み出すことに成功している。

そして、マイルスの曲の作り方&組立て方の応用がみられること。絶対的にジャズをベースにしつつ、ブルースあり、ロックあり、クロスオーバーあり、ソウルあり、バラードあり、シャッフルありの、他のジャンルの音楽志向を取り込み、ジャズ化するという、ジャズの得意とする「融合音楽」をエレ・ジャズの中で実現する。これはマイルスの薫陶の中で育まれたものだろう。

このリーダー作で、ジョンスコは、ジョンスコ独自のエレ・ジャズの基礎を確立している様に感じる。エレ・マイルスのサウンド志向は、ジョンスコの「心地良く捻れたプログレッシヴなジャズ・エレギ」という個性を、更に魅力的に発展させる作用があった。そして、ジョンスコはそのエレ・マイルスのサウンド志向をジョンスコ仕様としてコンパイルし、その最初の成果がこの『Electric Outlet』。ジョンスコの捻れギターが心地良く聴ける、ジョンスコの80年代の傑作の1枚。
 
 

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2023年9月 5日 (火曜日)

浅利史花の初リーダー作です

我が国のジャズ・シーンについては、まだまだ有望な若手ミュージシャンがデビューしてくるので、毎月の新盤のチェックは欠かせない。

今年の4月26日に、浅利史花のセカンド盤『Thanks For Emily』(左をクリック)について語った訳だが、それでは彼女のデビュー盤はどうなんだろう、とアルバムを遡ってみた。

Fumika Asari(浅利史花)『Introducin'』(写真左)。2020年の作品。ちなみにパーソネルは、オール・ジャパンなメンバーで、浅利史花 (g), 中牟礼貞則 (g), 江澤茜 (as), 駒野逸美 (tb), 北島佳乃子, 石田衛 (p), 小杉敏, 三嶋大輝 (b), 木村紘, 柳沼佑育 (ds)。

ベースとドラムは2人ずつ、曲毎に使い分けているが、演奏の基本は、浅利のギターがフロントに、バックにベースとドラムが付くトリオ編成。曲によりピアノが客演(4曲かな)。アルト・サックス、トロンボーンは2曲のみの客演。中牟礼貞則のギターは、3曲目「Black Orpheus」のみの客演。客演の楽器も浅利のギターより目立つことは無く、しっかりとサポートに回っている。

セカンド盤を聴いて感心下「スインギーでジャジー、テクニックも優秀な、正統派ジャズ・ギター」は、このデビュー盤でもしっかり個性を発揮している。テクニックも優秀だが、そのインプロビゼーションは堅実そのもの。速弾きやオクターブ奏法など、決して無理はしない。
 

Fumika-asariintroducin

 
伝統的なジャズ・ギターを着実に堅実に弾き回しているところは実に初々しい。しかも、歌心も備えているのだから隅に置けない。この浅利の個性と弾きっぷりは、デビュー盤として大いに評価して良いだろう。

初々しいからといって、稚拙なところは微塵も無い。堅実に弾き回している故、破綻は無い。安全運転と言えば安全運転で、スリリングな面に欠ける、といった辛口の評価もあろうかと思うが、僕は、この堅実な安全運転な弾き回しは好ましいと感じている。何故なら、堅実でミッドテンポがメインなのだが、特にアドリブ部で露わになるスイング感が、堅実で安全な弾き回しが故に、しっかりと前面に出ている。これはプロデュースの賜物だろう。

加えて、ギターの音が抜群に良い。ギター自体が、恐らく、相当質の良いヴィンテージものだと思われる。そして、録音が良い。浅利の弾きっぷりによるギターの響きや胴鳴りがダイレクトにスピーカーを通じて伝わってきて、聴いていてとても心地良い。アコギ、セミアコギの音はこうでなくては。浅利の弾きっぷりも良いが、このギターの音の良さが、浅利の個性を更に引き立てている。

良きアレンジ、良きプロデュースに恵まれた、浅利のファースト・リーダー作。浅利史花は1993年生まれ。今年で30歳。ジャズ界ではまだまだ「若手」。意外と、これだけ、オールドスタイルのヴィンテージ・ジャズギターはなかなかいない。デビューは堅実、安全運転で良し。焦らず、しっかり個性とテクニックを着実に進化していって欲しい。
 
 

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2023年7月30日 (日曜日)

今を行く硬派なギター・トリオ

当代のジャズ・ドラマーで、信頼して聴くことが出来るドラマーが幾人かいる。 ブライアン・ブレイド(Brian Blade)は、そんな「当代の信頼出来るジャズ・ドラマー」の1人。この人のドラミングは、初リーダー作『Brian Blade Fellowship』(1998年)から、ずっと聴いているが、リーダー、サイドマンどちらのドラミングも見事なもので、僕は「ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と思っているくらいである。

Jeff Denson, Romain Pilon, Brian Blade『Finding Light』(写真左)。2022年1月17日,18日の録音。ちなみにパーソネルは、Jeff Denson (b), Romain Pilon (g), Brian Blade (ds)。米国中堅ベーシストのデンソン、フランス出身の才人ギターのピロン、そして、僕が信頼する当代きってのジャズ・ドラマーのブレイド、の3人が邂逅したギター・トリオ。

トリオの3名、並列の共同リーダー作。確かに、3人3様、それぞれがリーダーシップを取り合いながら、素晴らしいパフォーマンスを披露している。オーソドックスなスイング志向あり、変拍子な演奏あり、ジャズ・ファンクあり、ストイックで硬派なインプロビゼーションありで、それぞれのインタープレイの応酬が見事。
 

Jeff-denson-romain-pilon-brian-bladefind  

 
コロナ禍で収録スケジュールを3度、変更せざるを得なかったらしいが、間延びせず、鮮度の高いパフォーマンスを繰り広げている。演奏の基本はモード。現代の最先端の「ネオ・モード」な音が実に良い。何気なく、弾き流している様に感じるが、どうして、適度なテンションを張りつつ、かなりマニアックな、かなり難度の高いパフォーマンスが凄い。特に、ピロンのギターが流麗かつ耽美的、そしてリリカル。それでいて、ジャジーな雰囲気をしっかり湛えていて、かなり聴き応えのあるギターが印象的。

ベースとドラムのリズム隊は「素晴らしい」の一言。デンソンのベースは、トリオ演奏の「底」をしっかりと押さえて、他の2人が安心してパフォーマンス出来るベースラインを供給する。ブレイドのドラムは緩急自在、硬軟自在、変幻自在。ポリリズミックな展開も芳しく、トリオというシンプルな演奏の中、リズム&ビートに、ブレイドならはの「彩り」を添えていて、トリオ演奏をバラエティー豊かなものにしている。

現代のコンテンポラリー・ジャズ、「今」を行く硬派なギター・トリオとして、内容ある好盤だと思います。トリオ演奏として、音数は決して多くはないが、それぞれの「間」を上手く活かした、流麗でクールでエモーショナな演奏に、思わず聴き込んでしまう。ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤は無い」と感じて久しいが、この盤もブレイドがドラムを担当していて、その内容に「間違いは無い」。
 
 

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2023年7月21日 (金曜日)

グリーンとヤングとエルヴィンと

ブルーノートの4100番台の後半のアルバムの中で、このブログに記事として上げていないアルバムをメインに聴き直して、せっせと記事にしている。4100番台は、メインストリーム志向の純ジャズの範疇の中で、1960年代前半の「ジャズの多様化」の時代を確実に捉えて、当時のジャズのバリエーションを漏らさず網羅したアルバムを漏らさずリリースしている。

4100番台を通して聴けば、当時の成熟したジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」の全てが追体験できる。これは素晴らしいことである。そして、この4100番台で記録された、ジャズの「演奏の志向」や「演奏のスタイル」が、1980年代中盤以降の「純ジャズ復古」のベースとなっていて、現代のジャズに繋がっている。

Grant Green『Talkin' About!』(写真左)。1964年9月11日の録音。ブルーノートの4183番。ちなみにパーソネルは、Grant Green (g), Larry Young (org), Elvin Jones (ds)。リーダーのグラント・グリーンのギター、プログレッシヴなモーダル・オルガニストのラリー・ヤング、そして、ポリリズムの塊ドラマーのエルヴィン・ジョーンズのトリオ編成。

この盤は、思いっ切り聴き応えがある。まず、リズム隊が、オルガンでモード・ジャズを演奏する、先進的で進歩的なオルガンと、ポリリズミックで自由度の高い革新的なドラムで構成されている。このリズム隊の叩き出すリズム&ビートは、従来のハードバップには無い、最先端のもの。
 

Grant-greentalkin-about

 
この最先端のリズム&ビートをバックに、パッキパキ硬派で、こってこてファンキーなシングル・トーンが個性のグラント・グリーンが先鋭的なフレーズを弾きまくる。演奏の基本は「ファンキー&ソウル」なジャズなんだが、演奏全体の雰囲気は先進的、先鋭的、進歩的な、実に硬派で、とてもストイックな演奏になっている。そして、アドリブの弾き回しは何時になく「熱い」。

が、グリーンのギターにも増して、ラリー・ヤングのオルガンが凄い。「ファンキー&ソウル」なグリーンを向こうに回して、プログレッシヴでストイックな「モーダルな雰囲気のオルガン」を弾きまくる。モーダルな雰囲気の中で、ファンキー&ソウルなフレーズを織り込んでくる。責めに攻めるヤングのオルガン。グリーンもこの先鋭的なオルガンをしかと受け止めて、熱くて硬派なソウルフル・フレーズを弾きまくる。

そして、そんな二人をしっかりと支え、しっかりと鼓舞しつつ、演奏全体のリズム&ビートをコントロールするのが、エルヴィンのドラミング。グリーンのギターとヤングのオルガンを前面に押し出し、引き立たせるエルヴィンのドラミングは相変わらず見事。このエルヴィンのポリリズミックで切れ味の良いドラミングがアルバム全体の雰囲気をビシッと締めている。

このブルーノートの4183番、ジャズ盤紹介本や雑誌記事に上がることが殆ど無い、地味な存在に甘んじている作品だが、どうして、この盤、グリーンの代表作の1枚だと思うし、1960年代半ばの「ジャズ多様化の時代」のクリエイティブで熱い、当時のジャズの「深化」をタイムリーに記録した名盤だと思う。
 
 

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2023年7月17日 (月曜日)

ウェスを愛でる為にあるライヴ盤

今年で生誕100年を迎えるウェス・モンゴメリー。生まれは1923年、逝去は1968年。今年は生誕100年で、逝去して55年になる。そうか、ウェスが亡くなってから、もう半世紀以上が経つのか。僕がウェス盤と出会った時は、既に鬼籍に入っていたので、生前、リアルタイムの自由に動くライヴ画像って数えるほどしか無くて、一度はライヴでこの目でウエスの名演ギターを聴きたかったなあ、と強く思うのだ。

Wes Montgomery『One Night In Indy featuring The Eddie Higgins Trio』(写真左)。1959年1月18日、Indianapolis Jazz Club でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g), Eddie Higgins (p), Walter Perkins (ds), ドラムスは誰が担当しているかが判らない。エディ・ヒギンズ・トリオをフィーチャーしている。ウェス・モンゴメリーの単独フロントのワン・ギター・カルテット。当時、ウェス36歳でのライヴ録音である。

ウェスの地元、インディアナポリスでのライヴ録音。バックにエディ・ヒギンスのピアノをメインとするリズム隊が控えるが、ベーシストの名前が不明などと、ジャズ録音ではあり得ない「演奏情報の欠落」がある。それでも、このライヴ盤を聴いて感じるのは、ウェスのギターの素晴らしさ。
 

Wes-montgomeryone-night-in-indy-featurin

 
全て同一日録音の、実質上、ウェスの初リーダー作になる。当時のウェスのギターの先進性や独特の個性を感じるにはライヴ盤が一番。このライヴ盤では、ウェスはバップをギターを自家薬篭中の物としつつ、オクターヴ奏法など、ウェス独特の奏法が駆使して、ウェスのギターの個性を愛でる上では、なかなか良く出来たライヴ盤に仕上がっいる。

ヒギンス・トリオが目立たない。ヒギンスのピアノは個性が希薄で「総合力で勝負」するタイプ。ヒギンスのピアノはミスは殆ど無いが、強烈な個性というものがあまり感じられない。逆に、ウエスのギターに催促され、ヒギンスのピアノに躍動感が立ち直り、リリカルな表現に磨きがかかるくらいである。しかし、ヒギンス・トリオが目立たない分、ウェスの個性的なギターが前面に押し出されるという感じのプロデュースがなされているように感じる。

それでも、水準もしくはやや上のリズム・セクションをバックに、前面に出て、バリバリとウェスは弾きまくる。オクターヴ奏法はまだ頻繁には出てこないが、このライヴ盤の録音時点では、オクターヴ奏法を含め、ウェスのギターの個性、在り方は既に完成の域に達している。このライヴ盤は、ウェスの初期の完成されたパフォーマンスを愛でる為にあるライヴ盤である。
 
 

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2023年7月16日 (日曜日)

リラックス度満点のウェス盤。

モダン・ジャズ・ギターの巨匠ウェス・モンゴメリー(1923-1968)。今年3月6日に生誕100周年を迎えたそうである。

全く意識していなかったなあ、面目ない。ウェスは1960年代以前のモダン・ジャズ・ギタリストの中で、3本の指に入るお気に入りのギタリスト。それなのに生誕100周年を忘れていたとはなあ。

確かに、ジャズ雑誌などを読んでいて、が遺した名盤のリイシューやベスト・アルバム、ムック本のリリースの宣伝が結構目についていたのだが、「最近、ウェスの再評価の機運が盛り上がっているのかなあ」と呑気に捉えていた。

Wes Montgomery『Movin' Along』(写真)。1960年10月12日の録音。リヴァーサイド・レーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Wes Montgomery (g, bass-g), James Clay (fl, ts), Victor Feldman (p), Sam Jones (b), Louis Hayes (ds)。

ウェス・モンゴメリーのギターとジェームス・クレイのテナー&フルートがフロントを担う。ジェームス・クレイは当時、米国ウエストコースト・ジャズで活躍していたテナー奏者。ピアノのヴィクター・フェルドマンも西海岸で活躍していたピアニスト。2人の西海岸ジャズの名手を招いたクインテット編成になっている。

『The Incredible Jazz Guitar of Wes Montgomery』と『Full House』ばかりが、もてはやされるウェスのリヴァーサイド盤だが、この盤、こってこてモダン・ジャズの雰囲気濃厚な内容で、聴き心地がとても良いギター・クインテット盤。ジャケも単純なデザインなので、かなりの長きに渡って触手が伸びなかったのだが、10年ほど前、ウェスのリーダー作の一気聴きの折、この盤を初めて聴いて「おおっ」と思って、以来、愛聴盤の1枚になっている。
 

Wes-montgomerymovin-along_20230716213801  

 
ウェスはバリバリ弾きまくるのでは無く、しっかり抑制の効いた、とても余裕あるパフォーマンスを披露しており、とてもリラックスして聴くことが出来る。メンバー全体が適度にリラックスして演奏している様子が伝わってくる。恐らく、このアルバムを録音する前に、メンバー全員で意思統一したとみえる。

この抑制の効いた、余裕溢れる弾きっぷりのウェスのギターが凄く良い。排気量の大きいスポーツカーが、速度を落として余裕をかましてゆったりと走っているかのような、余裕はあるが、力強くしっかりと凄みのある弾きっぷりには、思わず「ええなあ」と思いつつ耳を奪われる。こういうウェスのギター、好きやなあ。

フェルドマンのピアノが「粋」。この人のピアノが実に良いバッキングをしていて、この盤の余裕ある演奏の雰囲気は、フェルドマンのピアノの存在に寄るところが大きい様な気がする。そんな「粋」なバッキング。さすが、ウエストコースト・ジャズの人気ピアニストである。流麗でリリカルで「聴かせる」ピアノがニクい。

クレイはテナーとフルートを担当しているが、この盤ではフルートが主体の吹奏。恐らく、ウェスのギターの音色の太さを考慮しての選択だと思われる。

テナーの場合、ギターと交互に演奏しあう場合は、その音の対比が良い方向に作用するが、ユニゾン&ハーモニーになるとテナーの音が買ってしまう。その点、フルートは、ギターと交互に演奏しあうにも、ユニゾン&ハーモニーを取るにせよ、ギターの音色とのバランスが格段に良い。

そして、リズム隊のベースのサム・ジョーンズが良い音を出している。ルイス・ヘイズのドラムも堅実。端正で歯切れのいいスイング感を生み出すベースとドラムはこの盤のリズム&ビートをより豊かなものにしている。
 
 

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