2024年2月 6日 (火曜日)

純ジャズ志向の『Trio 99→00』

パット・メセニーは何の前触れもなく、いきなり「コンテンポラリーな純ジャズ」に転身することがある。

通常のパットは、パット・メセニー・グループ(PMGと略)での活動がメインで、音の基本は「コンテンポラリーなクロスオーバー・ジャズ、もしくは、硬派な純ジャズ志向のジャズ・ロック。パットの個人名義での活動もあるが、こちらは「オーネット・コールマン」を踏襲したフリー・ジャズがメイン。しかし、突如として「コンテンポラリーな純ジャズ」に志向を変えたりするから面白い。

Pat Metheny『Trio 99→00』(写真左)。1999年8月の録音。2000年2月のリリース。ちなみにパーソネルは、Pat Metheny (g), Larry Grenadier (b), Bill Stewart (ds)。パット・メセニーのソロ・プロジェクト。今回は「ギター・トリオ」である。演奏の基本は、コンテンポラリーな純ジャズ。

1996年リリースの『Quartet』で、PMGとして、いきなり純ジャズ化。しかし、PMGとして違和感を覚えたのか、次作の『Imaginary Day』で、ワールド・フュージョンな音世界に軌道修正している。で、この『Trio 99→00』は、パットのソロ・プロジェクトの範疇での「コンテンポラリーな純ジャズ」化である。

パットのソロ・プロジェクトでの直近のトレンドは「デュオ」演奏だった。当アルバムは、そのデュオの演奏を一歩進めて、ギター・トリオでの「コンテンポラリーな純ジャズ」化である。ベースにラリー・グレナディア、ドラムにビル・スチュワートを迎えた、本気で硬派なギター・トリオである。
 

Pat-methenytrio-9900

 
収録された曲を見渡すと、コルトレーンの「Giant Steps」やウェイン・ショーターの「Capricorn」といった、シーツ・オブ・サウンドや、モード・ジャズなど、パッキパキ硬派な純ジャズ曲と、「Lone Jack」や「Travels」のパットメセニーグループ時代の曲を、本気で硬派なギター・トリオでやるといった「快挙」。

ただし、パットの「コンテンポラリーな純ジャズ」である。スインギーな4ビートでもなければ、マイルス流やショーター流のベーシックなモーダルなジャズでも無い。パットの個性全開、浮遊感溢れる、それでいて、フレーズの芯がしっかりしたフォーキーなフレーズで、パット流の即興モード・ジャズを展開する。

グレナディアのベース、スチュワートのドラム、共にそんな「パット流の即興モード・ジャズ」に的確に反応し、しなやかで力感溢れるリズム&ビートで、パットをしっかりとサポートする。今回、この盤で初めてトリオを組んだとは思えない、しっかりと意思疎通された、臨機応変なトリオ・サウンド。見事である。

録音時、パットは45歳。人生の半ばに差し掛かり、「コンテンポラリーな純ジャズ」に回帰する気になったのだろうか。そして、パットは、この『Trio 99→00』で、「パット流の即興モード・ジャズ」として、見事なパフォーマンスを捉えている。今の耳で聴き直して、現代のネオ・ハードバップの名盤として良い内容かと思う。
 
 

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2024年2月 5日 (月曜日)

パットのソロ『Dream Box』

パット・メセニーは、今年70歳。盟友ライル・メイズが2020年に亡くなって、パット・メセニー・グループの活動は停止した。ソロ活動のみに集中して現在に至る。2021年リリースの『Side-Eye NYC(V1.IV)』は、久しぶりに「PMGサウンドに通じるパット」らしい内容で、聴いていてワクワクしたが、その後が続かない。どうしたのか、と思っていたら、昨年、突如、ソロアルバムが出た。

Pat Metheny『Dream Box』(写真左)。2023年6月のリリース。パット・メセニーの声明文によると「この盤は、僕にとって珍しい録音で、ツアー中に聴いて発見した数年間に録音されたソロ曲のコンピレーションです」。タイトルの「Box」は、スラングで、フルアコのエレキ・ギターを指す。そう、このアルバムは、パットのフルアコ・エレギのソロ・パフォーマンス集。

全編に渡って、絶妙にコントロールされたフルアコ・エレギのソロ・パフォーマンスが繰り広げられる。フルアコ・エレギの表現力の豊かさ。パットのフルアコ・エレギをコントロールするテクニックの高さが良く判る。ビートの効いたスインギーな純ジャズ志向の演奏では無い。限りなく耽美的でリリカル、静的で哀愁感溢れる、即興演奏をメインとした「ニュー・ジャズ」な音世界。静かなエレキ・ギター。
 

Pat-methenydream-box

 
演奏しているのはパット一人なのだが、ギター1本だけの完全なソロは1曲だけ。他の曲は、バックのギターにソロを重ねて録音している。パット曰く「ツアー中に思いつくまま、バラバラに録り溜めておいた演奏が、聴き直してみるとその一貫性に驚いた」ということだが、確かに、このアルバムの収録された曲にはしっかりとした一貫性が感じられる。

語りかける様な繊細なダイナミズム、哀愁感漂うマイナー調の流麗なフレーズ、決して熱くならない緻密な音の積み重ね、しっとりとした静的で穏やかなリズム&ビート。これらの音の個性を融合して、パットは即興演奏の極致を表現する。即興演奏というところで、このパットのソロ・パフォーマンスは、ギリ「ジャズ」の範疇に留まっている。

「エレギをアコギのように静かに情感豊かに弾くにはどうしたらいいか」という命題に取り組んでいる様な、パットの思索的な、沈思黙考的なソロ・パフォーマンス。聴いていて、ECMからデビューした時の『Bright Size Life』(1976年) での、パットの透明感溢れる、耽美的でリリカルなパットのパフォーマンスを思い出した。
 
 

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2024年1月31日 (水曜日)

ECMのギター・トリオの秀作

3日ほど前まで、しばらくの間、冷たい北西の季節風が吹き荒れ、外出するのが憚られた。とにかく冷える。気温は上がらない。そんな日に外出〜散歩なんて、とんでもない。風邪をひいたらどうするんだ、ということで、暖房の効いた室内で、終日、読書とジャズ鑑賞に勤しむことになる。

こんな真冬の冷え冷えした日の昼下がり、暖かい室内で聴くジャズは、意外とECMレコードの「耽美的で静的でクリスタルでリリカル」な即興演奏メインの欧州風ニュージャズのアルバムが良い。真冬の寒い昼下がり、そんなECMの現代の欧州風ニュー・ジャズにじっくりと聴き耳を立てるのが僕の好み。

Wolfgang Muthspiel, Scott Colleyf & Brian Blade『Dance of the Elders』(写真左)。2022年2月、米国オークランドでの録音。ちなみにパーソネルは、Wolfgang Muthspiel (g), Scott Colley (b), Brian Blade (ds)。ヴォルフガング・ムースピールのギター、 スコット・コリーのベース、ブライアン・ブレイドのドラム、ピアノレスのギター・トリオ編成の演奏。

以前より聴いたことの無い、初聴きのアルバムに出会った時、聴く前にする幾つかの見極めポイントがあるんだが、その見極めポイントの一つに「ブライアン・ブレイドがドラムを担当するアルバムに駄盤はない」というのがある。このムースピール、コリー 、ブレイドの3者共同リーダーの新盤についても、ドラムにブレイドの名前を見つけて、これは聴いて大丈夫、と踏んで、初聴きと相成った。

ヴォルフガング・ムースピールは、オーストリア出身のギタリスト。1965年生まれなので、今年で59歳、還暦一歩手前のベテラン・ギタリスト。1989年に初リーダー作をリリースして以来、1〜2年に一枚のペースでリーダー作をコンスタントにリリース、特に、2014年の『Driftwood』から、ECMお抱えのギタリストとして、今回のアルバム含めて、5枚のリーダー作をECMからリリースしている。
 

Wolfgang-muthspiel-scott-colleyf-brian-b

 
ムースピールの名前を真っ先に挙げたのは他でもない、この3者共同リーダーの新盤については、共同リーダー作でありながらも、ムーズピールのギターが全面に押し出されていて、このムースピールのギターを心ゆくまで堪能できるアルバムとして仕上がっている。

少しくぐもった、ストレートな伸びの素性の良いギター。明らかに欧州風でECM好みの「耽美的で静的でクリスタルでリリカル」なギターの音世界。冒頭の1曲目「Invocation」から、明らかにECMレコードの音の傾向をしっかり踏まえていて、録音も含め、ECMレコードの音世界を堪能できる。

フォーキーで耽美的なムースピールのギターが心地良い響き。今回の新盤ではクラシックな響きも見え隠れする。そんなムースピールの魅惑的なギターを、コリーのソリッドで重量感溢れるベースと、ブレイドの変幻自在、硬軟自在、緩急自在でポリリズミックなドラムがしっかりサポートしている。

そして、このムーズピールのギター、コリーのベース、ブレイドのドラムの3者一体となった、濃密なインタープレイな展開も聴き応え満点。よくよく聴けば、コリーのベースもかなりゴリゴリアコベの低音を轟かせ、ブレイドのドラムもかなりダイナミックでスケールの大きいドラミングを披露している。それでいて、ダイナミックな展開の傍で、繊細でスリリングな表現も抜群。

なるほど「3者共同リーダー」なのも納得、3者均等の素晴らしいパフォーマンスである。ECMの音世界、欧州的な響きが芳しい。即興演奏が基本のギター・トリオのパフォーマンス。そんなECMの現代の欧州風ニュー・ジャズは聴き応え十分。
 
 

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2024年1月28日 (日曜日)

ジャンゴの名盤『Djangology』

Django Reinhardt(ジャンゴ・ラインハルト)は「ジャズ・ギターの創始者」とされる。

ジャンゴ・ラインハルトは1910年、ベルギー生まれ。父母ともに旅芸人の音楽家&ダンサー、つまりジプシー。旅から旅へのキャラバン育ち。ジャンゴの音楽性に、この「ジプシーのキャラバン育ち」の影響は明らかで、汎欧州的、欧州の様々な国の音楽の要素が混ざった、ユニークな音楽性がジャンゴのギターの個性。

18歳の頃、キャラバンが火事を出し、ジャンゴは火を消し止める為、火に飛び込び、左手の薬指と小指に大火傷を負う。ところがジャンゴは、残った3本の指だけで健常者のギタリストを凌駕する、超絶技巧のスタイルを生み出す。しかし、1953年5月、スイス公演を行っていたジャンゴは指の障害や頭痛に悩まされるようになり、フランスへ戻った5月16日、友人の経営する店で突然倒れ、その日の夕方に脳出血にて逝去している。

Django Reinhardt『Djangology』(写真左)。1949年1月~2月、ローマでの録音。ちなみにパーソネルは、Django Reinhardt (g), Stéphane Grappelli (vln), Gianni Safred (p), Carlo Pecori (b), Aurelio de Carolis (ds)。ローマのクラブに出演した際に、アマチュアの手で録音されたものらしい。

ジャンゴ・ラインハルトとステファン・グラッペリ率いるフランス・ホット・クラブ五重奏団の代表作。というか、ビ・バップ期の欧州ジャズの名盤中の名盤。録音状態は中の下だが、逆に、ジャンゴのギターが硬質でアグレッシブな音で捉えられているので、ジャンゴの超絶技巧さを感じるには、こんな感じの録音が良いのかもしれない。
 
Django-reinhardtdjangology
 
しかし、凄まじいほどの、オーバー・ドライブ気味の思いっきりスインぎーなジャンゴのギターとグラッペリのバイオリン。どちらも超絶技巧、疾走感溢れるアドリブは思わず「手に汗握る」迫力がある。それでいて、意外と耳につかないのが面白い。アドリブ・フレーズが流麗で淀みがないからだと思われる。

米国東海岸のビ・バップなど目じゃないほど、圧倒的なスイング感と迫力ある流麗なアドリブで圧倒するジャンゴ。ほんまに3本指での演奏なんかい、と突っ込みたくなる。

そして、その傍らで、ジャンゴのパフォーマンスをしっかと受け止めて、ジャンゴと同様、圧倒的なスイング感と迫力ある流麗なアドリブで、ジャンゴに応戦するグラッペリのバイオリン。この二人のインタープレイは見事という他ない。聴いていて、自分の口があんぐり開き始めるのが判る。

ジャンゴは「ジャズ・ギターの創始者」と言われる。チャーリー・クリスチャンは「バップ・ギターの祖」とされる。ジャズ・ギターは、このジャンゴとクリスチャンの二人の途方も無い、超絶技巧で歌心溢れるギターから始まったと思って良い。特に、ジャンゴは「欧州ジャズ」の雰囲気を色濃く宿していて、「欧州ジャズの祖」と評価しても良いかと思う。

それほどまでにジャンゴのギターは凄い。ジャンゴを知るにはこの盤が一番の近道。ちなみに。ジョン・ルイス作曲、MJQの名演、多くのジャズマンのカヴァー演奏で有名な名曲「ジャンゴ」は、このジャンゴ・ラインハルトにちなんだ名曲。ジャンゴの持つ個性的な「哀愁感」を的確に捉えている。
 
 

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2024年1月27日 (土曜日)

ジェリとカートの孤高のデュオ盤

形体が全く異なるのだが、ピアノとギターは良く似た性格の楽器である。ピアノとギターは音のスケールも似通っている。

ギターについては、単音のみならず和音も出る。アルペジオも出来る。弦を掻きむしることもできるし、和音をストロークで連続することで、リズム楽器としての機能を果たすことも出来る。

ピアノについては、和音と単音を右手と左手に分けて別々に同時に出せるし、リズム部と旋律部を同時に奏でることが出来る。つまりは、ピアノ一台で楽器表現の全てを出すことが出来る訳で、ピアノは「一人オーケストラ」という異名を持つくらいである。

良く似た楽器同士のデュオ演奏は難度が高い。演奏者同士が我を出すと音がぶつかったり、伴奏と旋律との役割分担がスムースに行かなくなる。音のコンフリクト(ぶつかり)を瞬時に感じて、それを回避するには、演奏者に相当のテクニックが必要になるし、何より、相手の音をしっかり聴き分ける高い能力が必要になる。

ピアノとギターのデュオは難度が高い。双方の演奏家としての力量のバランスが取れていないと成立しないし、お互いに演奏家としての人間性の高さが要求される。とにかく、俺が私がと「我を出しては」ピアノとギターのデュオは成立しない。

Geri Allen, Kurt Rosenwinkel『A Lovesome Thing』(写真左)。2012年9月5日、フィルハーモニー・ド・パリでのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Geri Allen (p), Kurt Rosenwinkel (g)。2017年に惜しくも逝去した、女流ジャズ・ピアニスト最高峰の1人、ジェリ・アレンと、現代ジャズ・ギターの雄の一人、カート・ローゼンウィンケルとのデュオでのライヴ音源。
 

Geri-allen-kurt-rosenwinkela-lovesome-th

 
ジェリ・アレンのピアノは「男勝り」の力強いタッチのモーダルなピアノ、というイメージがあるが、それは彼女のピアノの「一面」。このデュオでは柔軟で繊細なタッチで、相棒のギターに寄り添うが如く、語らうが如く、囁くが如く、リリカルで耽美的なピアノを弾き進めている。

ローゼンウィンケルのギターは、オーソドックスなトーンでありながら「新しい」響きとフレーズが芳しい、現代ジャズ・ギターの正統派で繊細な弾き回しで、ジェリのリリカルで耽美的なピアノに相対する。ギターの暖かい丸いエッジと、ピアノの切れ味の良い硬質のタッチとの対比が美しい。

1〜2曲目のスタンダード曲でも、双方、攻めに攻めているが、お互い、相手の音をしっかり聴き、持ち味はしっかり出しているのが良く判る。しかも、お互いの持ち味をしっかり確認して、二人共通の「音の個性」を紡ぎ出している様に感じる。双方の音の個性の底が「似通っている」ことが良く判る。

そして、双方の技術の高さは、5曲目の「Ruby My Dear」で良く判る。このセロニアス・モンクの難曲をジェリとカートは二人で見出した、二人共通の「音の個性」で、二人なりのモンク曲の解釈で、ガンガンに攻めまくる。この難曲をリリカルに耽美的に、難なく弾き進めるデュオ。素晴らしいパフォーマンスである。

素晴らしいピアノとギターのデュオ演奏。これがライヴで演奏された音源だとは。あのピアノとギターのデュオ演奏の名作、ビル・エヴァンス&ジム・ホールの『Undercurrent』に匹敵する、すばらしいデュオ盤の登場である。

ジェリは生前、このカートとのデュオ演奏によるスタジオ・アルバムの制作を熱望していたそうだが、このライヴ音源を聴けば、それが実感できる。しかし、こんなに素晴らしいデュオ演奏のライヴ音源が約10年もの間、お蔵入りだったとはなあ。今回、よくリリースされたなあ。その幸運を素直に喜びたい。
 
 

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2024年1月11日 (木曜日)

隠れ名盤 Live at the Half-Note

アート・ファーマーは、ジャズ・トランペッターとしてお気に入りの一人。ジャズを聴き始めた頃から、ずっとファーマーのトランペット&フリューゲルホーンを聴いてきた。アート・ファーマーの「力感溢れ端正でブレが無く流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いトランペット」がずっとお気に入り。

Art farmer Quartet featuring Jim Hall『Live at the Half-Note』(写真左)。1963年12月、NYの「ハーフノート」でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Art Farmer (flh), Jim Hall (g), Steve Swallow (b), Walter Perkins (ds)。このライヴでは、ファーマーはフリューゲルホーンを吹いている。フロントの相棒にジム・ホールのギター、ピアノレスの変則カルテット編成。

録音時は1963年。ハードバップをベースに、ジャズは多様化の時代に突入。純ジャズ志向としては、モード・ジャズが主流になり、エンタテインメント志向としては、ファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズなど、聴いて楽しいジャズが主流に、そして、新しいジャズとしては、フリー&スピリチュアル・ジャズが出現していた。

しかし、ここでのアート・ファーマーは、ハードバップを極める「志向」でパフォーマンスしている。演奏志向はあくまでハードバップ。しかし、従来のハードバップのフレーズとは違う、従来のコード進行とは違う、クールで静的な響きを持ったフレーズ展開で、当時として新しい響きのハードバップな演奏を繰り広げる。
 

Art-farmer-quartet-featuring-jim-hallliv

 
いわゆる「ジャズのライヴ演奏」と聞いて、熱いバトルチックな演奏を想起するが、このファーマー・カルテットの演奏はクールで静的。ファーマーはフリューゲルホーンを使って、流麗でウォーム、エッジがラウンドしていて聴き心地の良いフレーズを吹き上げる。しかし、そのフレーズの響きは、1950年台のハードバップのそれでは無い。それまで聴いたことのないフレーズで攻める。

おそらく、ジム・ホールの、それまでに無い新しい響きのコード進行と間を活かしたインプロに触発されたのではないか。ジム・ホールのギターは、意外と「プログレッシヴ」。従来のブルージーでジャジーな定型的な響きではない、そこはかとなく捻れて少し破調なフレーズは、今の耳にも新しい。このホールのプログレッシヴなギターがファーマーのフリューゲルホーンのフレーズを刺激する。

そして、そんなプログレッシヴな響きと間を活かしたフレーズの「底」を支えるのが、スティーヴ・スワローのベース。スワローのベースもプログレッシヴ。まるでモーダルなベースラインを弾くように、それまでに無い、新しいベースラインで、ファーマーとホールをガッチリ支える。

クールで静的な響きがメインのライヴ盤なので、一聴すると地味な印象を感じるが、じっくり繰り返し聴くうちに、それぞれの演奏の「プログレッシヴ」さを感じて、何の変哲もない、手垢の付いたハードバップ演奏なのに、滲み出てくる「新しさ」に引き付けられる。

そして、このハードバップな演奏は「只者では無い」ことに気が付く。気がついて、このライヴ盤は隅に置けない、と思う。そんな「隠れ名盤」がこの『"Live" At the Half-Note』である。
 
 

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2024年1月 6日 (土曜日)

「バレル & コルトレーン」再聴

コルトレーンの共演盤はフリー&スピリチュアル志向のものは「それなり」に評価されているが、ハードバップ時代の共演盤については評価が芳しくない傾向にある。特に、20世紀の我が国の評論にその傾向が強い。どうも、コルトレーンには「共演」が許されていない感じなのだ(笑)。

『Kenny Burrell & John Coltrane』(写真左)。1958年3月7日の録音。ちなみにパーソネルは、Kenny Burrell (g), John Coltrane (ts), Tommy Flanagan (p), Paul Chambers (b), Jimmy Cobb (ds)。ケニー・バレルのギターとジョン・コルトレーンのテナーが2管フロントのクインテット編成。

そもそも、ギターとテナー。音の線の細いギターと音が太くて力感のあるテナー。そもそも、フロントとして相立ち、相入れることが出来るのか。漆黒ブルージーでアーバンなバレルのギターと、豪快でエモーショナルで光速切れ味の良いコルトレーンのテナー。ムードで聴かせるバレルとテクニックで聴かせるコルトレーン。聴く前は、合わないよなあ、と感じる。

冒頭の1曲目「Freight Trane」では、いつもより音量を上げたバレルのギターを全く気にせず、我が道を往くテナーのコルトレーン。この曲ではまだ「良好な一体感」は無い。しかし、これは「我が道を往来たがる」コルトレーンの性格によるものではないか。

2曲目の「I Never Knew」、3曲目の「Lyresto」と聴き進めていくと、コルトレーンがバレルに歩み寄るのが判る。コルトレーンが、シーツ・オブ・サウンド風に光速に吹きまくるのでは無く、、歌心溢れるブルージーなテナーとなって、ブルージーなバレルの漆黒ギターに合わせ始める。いい感じの共演フロントになってくる。
 

Kenny-burrell-john-coltrane

 
そして、4曲目の優しいバラード曲「Why Was I Born?」。この演奏、コルトレーンとバレルのデュオなのだが「絶品」。いつもより音量を上げて音が太くなった、漆黒ブルージーでアーバンなバレルのギターの伴奏に乗って、コルトレーンが歌心溢れる優しいテナーを奏でる。

すると、代わって、漆黒ブルージーでアーバンなバレルのギターが、いつになく「しっとり」と語りかける。「絶品」。この演奏を聴くだけの為に、このアルバムを手に入れても良い位の名演である。

以前、ジャズ盤紹介本で、この盤ってミスマッチの極致の様に書かれていた記憶があるが、本当に自分の耳でしっかり聴いた上での評論だったのだろうか。頭で考えるとバレルとコルトレーンはミスマッチの様に感じるが、聴いてみると実は相性は良い。

バレルとコルトレーン、どちらも優れた一流ジャズマン。フロントに相立ったら、相手の音をしっかり聴きながら、良好なマッチングに持ち込もうとするのがプロと言うものだ。このバレルとコルトレーンの共演盤は正式にリリースされている。アマチュアの我々が聴いて「ミスマッチの極致」などとは決して思わない。

このバレルとコルトレーンの共演盤。バレルとコルトレーンの相性は良いです。迷うことなく聴くことをお勧めします。こういう、フロントのパートナーに寄り添うコルトレーンも聴き応え十分です。
 
 

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics
 

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2023年12月14日 (木曜日)

Al Di Meola『Flesh On Flesh』

12月、師走である。今のところ、今年は総じて暖かい冬。それでも、時々、冷える日が出てきた。天気が優れず、冷えた日は体にさわらぬよう、なるべく外出しない様にしている。部屋の中でストレッチなどしながら、ジャズを聴いている。

12月に暖かい室内で聴くジャズ。僕は結構フュージョン・ジャズを聴く。師走の慌ただしい雰囲気の中、流麗で聴き心地の良い、それでいて、しっかりジャズしているフュージョン盤を聴くことが多い。

Al Di Meola『Flesh On Flesh』(写真左)。2002年3-4月の録音。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola (g), Gonzalo Rubalcaba (key), Anthony Jackson (b), Gumbi Ortiz (per), Mario Parmisano (p, synth, marimba), Alejandro Santos (fl, b-fl), Jean Valdes, Guillermo Ruiz (as), Williams Polledo(tp), Ernie Adams(ds), Monserat(vo)。

しばらくの間、ラテン・フュージョンまっしぐらのディメオラ。もう超絶技巧なクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョンには戻らないだろうな、と思っていたら、なんと、この盤で戻ってきた。しかも、録音時、ディメオラは48歳。年齢的にも脂が乗り切った、ジャズマンとしてバリバリの中堅。実に味のある、余裕のあるクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョンを引っ提げて戻ってきた。
 

Al-di-meolaflesh-on-flesh

 
ゴンサロ・ルバルカバがキーボードを担当、ベースにアンソニー・ジャクソンを起用。この辺りにディメオラの本気を感じる。超絶技巧なクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョンなので、当然、出てくる音は、超絶技巧が映える凝った曲とアレンジ、そして、ディメオラ独特のエキゾチック&エスニックなフレーズと響き。若きディメオラが戻ってきた様な演奏の数々。

冒頭の「Zona Desperata」を聴けば、それが良くわかる。ドラマチックで哀愁感濃厚で密度の高いクロスオーヴァー・ジャズ。続く2曲目「Innamorata」は、さらに哀愁感が増して、ディメオラらしい大掛かりな展開。いや〜、若き日のディメオラが成熟して帰ってきた様な音世界。

そして、ラストは「Senor Mouse」。チック・コリア率いる、第二期リターン・フォーエヴァー(RTF)の名曲である。ディメオラ、RTFは過去のもの、今は全く関わりがない、なんて言っていたのに、ここで「Senor Mouse」である。これが名演。ディメオラとしては、スタジオ録音では初出なのだが、余裕綽々の超絶技巧な弾き回しで、ディメオラのエレギが良い音を出している。

エレクトリックとアコースティックと両刀使いで、ディメオラのギターが映えに映える。久しぶりのディメオラの超絶技巧なクロスーオーヴァー志向のギター・フュージョン。

でもまあ、この妖艶なジャケットですから、そんな硬派でバリバリのギター・フュージョンが展開されているなんで、思いもしませんぜ(笑)。この妖艶なジャケットに惑わされずに、この盤を存分にお楽しみ下さい。
 
 

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2023年12月11日 (月曜日)

シンタックスの最初の成果です。

アラン・ホールズワースのアルバムを聴いていると、ホールズワースって、クロスオーバー&フュージョンなジャズ・ギターの範疇だが、アレンジを聴いていると、プログレッシヴ・ロック濃厚なものも多々あって、さすが英国らしい、ジャズとロックの境界が曖昧な、英国独特のクロスオーバー&フュージョン・ジャズの個性をしっかり引き継いでいるなあ、と思うのだ。

Allan Holdsworth『Sand』(写真左)。1987年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Alan Pasqua (key), Gary Husband (ds, tracks 1, 3), Chad Wackerman (ds tracks 4, 5, perc track 6), Jimmy Johnson (b, except track 6), Biff Vincent (b, track 6), John England (sound effects)。

ギター・シンセサイザー「シンタックス」に手を染めた最初のリーダー作『Atavachron』に続くアルバム。この盤、この「シンタックス」については、かなり使いこなした、効果的な弾き回しが印象的なアルバムに仕上がっている。さすが、ギターが基本のシンセである「シンタックス」。ばりばりギタリストのホールズワーズからすると、フレーズが作り易いのだろう、エレギの延長線上にあるシンセの「シンタックス」を効果的に弾き回している。
 

Allan-holdsworthsand

 
アルバム全体の雰囲気は、シンタックスを大々的に活用した、プログレッシヴ・ロック風のクロスオーバー・ジャズ。ロックというにはフレーズが複雑で、リズム&ビートはジャジー。音全体の作りは、間違いなく「ホールズワース」ワールドが展開されている。独特の捻れた変態エレギに、シンタックスの独特のシンセ・フレーズが拍車をかけて、「ホールズワース」ワールド濃厚になっている。

この辺りのホールズワースの音世界って、英国出身のジャズマンらしく、ロックとジャズの境界が曖昧で、プログレとエレ・ジャズが混じり合った、ホールズワース独特の音世界になっている。そんな独特の音世界を的確に表現するには「シンタックス」は必要不可欠な楽器だったのだろう。プログレとエレ・ジャズの融合。そして、そのプログレ・テイストの音を表現するホールズワースの「捻れ変態エレギ」と「捻れ変態シンタックス」。その最初の納得いく成果がこのアルバムだろう。

アルバム全体を覆う、どこかクールで落ち着いた雰囲気が、このアルバムの完成度を物語る。シンセ独特の音だけに囚われると、シンセはキーボード系のシンセで十分、となるのだが、ギタリスト独特の手癖とフレーズを反映したシンセの音は、キーボード系のシンセでは出せない。ホールズワースはギタリスト。ギタリストがシンセの響きを欲するなら「シンタックス」は必須の楽器。それを、この『Sand』は証明している様に感じている。
 
 

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2023年11月30日 (木曜日)

初シンタックスのホールズワース

超「変態捻れエレギ」の雄、Allan Holdsworth (アラン・ホールズワース) 。4枚目のリーダー作『Metal Fatigue』で、エレギ一本の「変態捻れエレギ」で勝負して、ホールズワースにしか作れない、捻れエレギの傑作を手にした。次はどうするんやろ、と思って聴く5枚目のリーダー作である。

Allan Holdsworth『Atavachron』(写真左)。1986年の作品。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Rowanne Mark (vo, track 7), William Edward Childs (key, tracks 2, 5), Alan Pasqua (key, tracks 3, 4, 6), Gary Husband (ds, tracks 1, 2, 4, 6), Chad Wackerman (ds, tracks 3, 7), Tony Williams (ds, track 5), Jimmy Johnson (b)。クロスオーバー・ジャズ的アプローチに力点が移ったイメージの音作り。

ホールズワースがシンタックスに手を染めた最初のリーダー作になる。シンタックスとは、シンセサイザー+アックス(斧)の合成造語。ギターを斧に見立てて名付けられた「ギター・シンセサイザー」である。

エレギ命の「ホールズワース者」からすると、許しがたい楽器みたいだが、ホールズワースの音作りやフレーズの中に潜む「プログレッシヴ・ロック」な音の要素を全面に押し出すには最適の楽器と僕は評価している。

エレクトリック・ギターとシンタックスが混在して活用されているが違和感がない。それくらい、この盤でのホールズワースはシンタックスに精通している。
 

Allan-holdsworthatavachron

 
英国プログレッシヴ・ロック等で活躍してきたシンセサイザーの基本はキーボード。シンタックスの基本はギター。シンタックスから出てくる音はシンセサイザーの音だが、出てくるフレーズはギターという楽器ならではのフレーズが出てくる。キーボード系のシンセサイザーのフレーズを聴き慣れた耳に新鮮に響く。これが「肝」。

キーボードとギターは運指のアプローチが全く違う。よって、ギターにとっては、キーボード系シンセとのユニゾン&ハーモニーは意外と取りにくいし、フレーズの受け渡しも意外と難しい。シンタックスは基本がギターなので、ギター的アプローチが容易。エレギとのユニゾン&ハーモニーは取り易いし、フレーズの受け渡しもスムーズ。その点に着目して導入に至ったのだろう。

この盤を聴いて思うのだが、ホールズワースはエレギと絡めたシンタックスの使い方が上手い。今までのキーボード系シンセのキーボード的アプローチとは全く異なる響きのギター的響きのシンセの音。これが新しいエレギの音として鳴り響いている。明らかに「エレギの弾き手」の表現の幅が広がっている。

アルバム・タイトルは「Atavachron=アタヴァクロン」。Atavachron (アタヴァクロン) とは、米国のSFテレビドラマ「Star Trek (スター・トレック) 」の中に出てくるタイム・トラベル用の装置の名前だそう。確かに、ジャケのアートワークに描かれたホールズワース本人もスタートレックの衣装を着ている。しかし、その逸話とアルバムの内容との因果関係は、と問われると、「?」と返答するしかないんですけど(笑)。
 
 

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