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2018年1月23日 (火曜日)

スターンの5年振りの新作です

この季節のジャズの楽しみのひとつ。雑誌「ジャズライフ」のディスク・グランプリ、「ジャズ・アルバム・オブ・ザ・イヤー」をぼ〜っと眺めていて、マイク・スターン(Mike Stern)が新作をリリースしているのに気がついた。おぉ、完全に見落としていたぞ。マイク・スターンって、意外と聴くんですよね、私。その新作とは、Mike Stern『Trip』(写真左)。

前作はエリック・ジョンソンとの2人名義で、2014年にリリースされた『Eclectic』だが、スターン単独の名義では『All Over The Place』以来5年ぶりの新盤になる。相変わらずの「スターン節」が聴ける好盤である。しかし、アルバムの後半に進むにつれて、新境地を開拓していることに気がつく。冒頭のタイトル曲「Trip」から暫くは、これまでの「スターン節」。スターンって、本当にマイルスが好きだったんだろうなあ、と思うくらい、スターンが在籍した頃の「エレ・マイルス」を彷彿とさせる音世界が広がっている。

この「エレ・マイルス」を踏襲した曲でのスターンは、以前からの「スターン節」。金太郎飴の如く、口の悪いジャズ者の方々からすると「マンネリのスターン」である。でも、このスターン節が良いんだよな。好みというのはそういうもの。スターンはそこは徹底していて、初ソロ盤からずっと同じ「スターン節」で通している。
 

Trip_mike_stern

 
が、この盤の後半の曲で「あれっ」と思う瞬間がある。7曲目のボーカル入り「Emilia」から「Hope For That」「I Believe You」 は、ぼんやり聴いていたら「これって、パット・メセニー」っと思ってしまう。スターンがフォーキーでネイチャーなエレギを弾いている。ラス前、10曲目の「Scotch Tape And Glue」から、ラストの「B Train」は、スターンお得意のロック・フュージョンでは無く、コンテンポラリーな純ジャズっていう風情の、硬派でメインストリームなジャズを展開している。

新境地という意味では、この「硬派なメインストリームなジャズ」の路線が良い様に思う。フォーキーでネイチャーなエレギはあまりにパットに似すぎている。しかし、スターン、良い感じでエレギを弾いているなあ。しかし、スターン自身は大変な状況に瀕している。この新盤『Trip』の録音の後だったようだが、スターンは、昨年の7月、マンハッタンの自宅前でタクシーを降りたところで建築物の破片に躓き、両腕を折るという大事故に遭っている。

両腕を骨折しただけでなく、神経の損傷もおこし、右手でピックを持つことさえも出来ない大事故。その後2回目の手術を行い、神経の状態は良くなってはきたが、まだ、右の指に糊でピックをくっつけて弾く状態らしい。まだまだ大変な状態の様だが、早く確実に良くなって欲しい。そして、これからもずっと、スターン節を聴かせて欲しいのだ。

 
 

東日本大震災から6年10ヶ月。決して忘れない。常に関与し続ける。がんばろう東北、がんばろう関東。自分の出来ることから、ずっと復興に協力し続ける。 

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2018年1月19日 (金曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・62

ネットの音楽ダウンロード・サイトって、かなり便利である。アルバムを検索出来るし、1〜2分間、曲の試聴も出来る。また、リコメンド・メニューが充実しているサイトもあって、これがとっても便利。例えば、日頃、愛用しているApple Musicの「For You」というリコメンド・メニューは重宝である。

New Music Mixというメニューでは、事前にお気に入り登録しているジャンルの新盤から、お勧めの曲を選んで聴かせてくれる。このメニューでは、特にジャズのジャンルの新盤をチェック。そして、Chill Mixというメニューでは、リコメンド・エンジンが選んだ、お勧めのアルバムから1曲ずつ選曲して聴かせてくれる。このメニューでは、聴いたことの無いアルバムを試聴でチェックする。

今回、このChill Mixを覗いていて、見つけたアルバム。これは通常、ネットを徘徊しているだけでは見つけることが難しいアルバムである。こういう時、コメンド・エンジンが選んでくれる、僕の好みにあったアルバムは実に参考になるし、あれこれ探し続ける手間が省ける。そのアルバムとは、L'Image『2.0』(写真左)。L'Image=リマージュ。元々は30数年前の幻のグループの最新盤。2009年4月のリリース。

この盤のキャッチコピーが「一枚もアルバムを残すことなく消滅した70年代の幻のスーパーバンドが、30余年を経てついに全貌を現す!伝説のホワイト・エレファントとステップスの間に存在した、正真正銘の幻のスーパーバンドがついに登場!」。ん〜っ。ホワイト・エレファントと言えば、マイク・マイニエリやブレッカー兄弟らのことか、なんて、思わずワクワクする。
 

Limage_2

 
パーソネルを並べた方が早いだろう。Mike Mainieri (vib), Warren Bernhardt (key), David Spinozza (g), Tony Levin (b), Steve Gadd (ds)。うへ〜、なんちゅうメンバーじゃ。もう一度言う。「マイク・マイニエリ、ウォーレン・バーンハート、デビッド・スピノザ、トニー・レヴィン、スティーヴ・ガッド」。フュージョン・ジャズを創り上げた、名うての名手達である。

出てくる音は、絵に描いた様な往年のフュージョン・ジャズ。マイニエリのヴァイブ、バーンハートのキーボード、スピノザのギター、レヴィンのベース、そして、ガッドのドラム。どれをとっても、1970年代、フュージョン全盛時の音がてんこ盛り。しかし、さすがに21世紀に入ってからのリリース。シュッと垢抜けしている。それが、とっても粋である。

ソフト&メロウな演奏が心地良い。キャッチャーなフレーズが心地良い。このアルバムには、フュージョン・ジャズの美味しいところが全て揃っている。こういう、絵に描いた様なフュージョン・ジャズのアルバムが、21世紀になってリリースされるなんて。いやはや、びっくりぽん、である(笑)。

このリリース当時、平均年齢が70歳にならんとする、フュージョン・ジャズのレジェンド達のパフォーマンスの巧みさと爽快感。いや〜聴き応え満点。音楽喫茶の昼下がりにピッタリの、レジェンド達による「現代のフュージョン・ジャズ盤」。こういう盤があったなんて、全く知らなかった。ありがとう「Chill Mix」である(笑)。

 
 

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2018年1月18日 (木曜日)

音楽喫茶『松和』の昼下がり・61

寒い冬の昼下がり。南向きの窓から射す陽射しがちょっと眩しい。暖房が効いて暖かな部屋。昼ご飯を食べた体はちょっとホカホカして、とにかく眠い。昼下がりの音楽喫茶は人がまばら。皆、眠そうに目をトロンとさせている。そういう時に流すジャズは、流麗でキャッチャーな「フュージョン・ジャズ」が良い。

加えて、耳に心地良い刺激を与えてくれるギター・フュージョンが良い。キーボードなどの「流麗なフレーズ」が来ると、絶対に寝る(笑)。リズム&ビートが小粋に効いて、お洒落なグルーヴ感が心地良い、ギター・フュージョンが良い。ちょっと人がまばらな、ホカホカ暖かい音楽喫茶に流すにピッタリな、ギター・フュージョンのアルバムを選盤する。

Yellowjackets『Mirage a Trois』(写真左)。邦題『マリブの旋風』。1983年のリリース。あたたかい音のキーボードを主体としたサウンド。そこにロベン・フォードのエレギがうまく絡む。このエレギの音が結構、心地良い刺激で、ほんわかした冬の昼下がりの耳に、とっても心地良い刺激に響く。ロベン・フォードは「Top Secret」「Goin' Home」「Man In The Moon」「Pass It On」の4曲にクレジットされいる。
 

Mirage_a_trois

 
心地良いエレギの使い手はもう一人いる。マイク・ミラーである。キーボードが主役のサウンドに、でしゃばらず、ほど良き主張をしつつ、心地良い刺激を醸し出す。良い感じのエレギで、僕は主役のキーボードよりも「主役」だと感じる。「Elamar」「Man In The Moon」「Nimbus」「I Got Rhythm」の4曲にクレジットされている。

アルバム全編に渡って、明るく幸福感溢れる、ポジティヴなフュージョン・ジャズが展開される。軽快感、爽快感も心地良く、タイトでリズミカルなリズム&ビートは、そこはかとなく「ファンクネス」も漂っている。後のスムース・ジャズど真ん中な、リリコンのパフォーマンスもメロディアスで、とても聴いていて心地よさ抜群。

ラッセル・フェランテのキーボードがメインのサウンドなんですが、そこに実に効果的に絡むロベン・フォードとマイク・ミラーのエレギが印象的。僕はこのフュージョン盤は、ラッセル・フェンテのキーボードがメロディアスで魅力的ですが、実は「エレギがメイン」だと感じています。そういう意味では、ギター・フュージョンというよりは、ギターが効果的に響くフュージョンと言った方が良いですね。好盤です。

 
 

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2017年12月20日 (水曜日)

アンサンブルの良さが際立つ

リターン・トゥー・フォーエヴァー(Return to Forever=以降RTF)のオリジナル・メンバーであり、チック・コリアの盟友である「スタンリー・クラーク(Stanley Clarke)。エレベとアコベ、両刀使い。エレベのブンブン唸りとチョッパー、そして、ギターの様に旋律を奏でる弾き回しは、エレベのイノベーターの一人として差し支えないだろう。

アコベも上手い。弦と胴をブンブン唸らせながら、低音から高音まで、フルスケールでアドリブ・ソロを弾く様は、これはこれで素晴らしいもの。そんな両刀使いのベースを堪能出来る、スタンリー・クラークのソロ・サード盤がこれ。Stanley Clarke『Journey to Love』(写真)。 1975年の作品。パーソネルからチック・コリアの名前がアコピのみに後退し、キーボードには、ジョージ・デュークの名前がフィーチャーされている。

冒頭から「ファンキー・フュージョン」なエレ・ジャズが展開される。クラークのファンキーなエレベが心地良い。音の雰囲気は、チックがいないにも関わらず、第2期RTFのファンキー・フュージョンの雰囲気を踏襲しているようだ。不思議なんですが、スタンリー・クラークだって、RTFのオリジナル・メンバーであり、作曲だってする。当然、アレンジにも参加するだろう。
 

Journey_to_love

 
そういう意味で、クラークのソロ盤に第2期RTFの音の雰囲気が漂うって、当たり前のことだと思うんだが、如何だろう。このクラークのソロ第3弾は、上質のファンキー・フュージョンなエレ・ジャズがギッシリと詰まっているのだ。本家の第2期RTFの演奏と比較しても遜色は無い。逆に、クラークのベース・ソロがフューチャーされているので、クラークのベースを感じるには打って付けのアルバムである。

パーソネルを見渡していると、ジャズの世界ではちょっと異質のギタリストの名前があるのに気が付く。あの三大ロック・ギタリストの一人「Jeff Beck(ジェフ・ベック)」がタイトル曲と「Hello Jeff」に客演している。ベックは自身のライヴでクラークの曲「Power」を演奏したことがあり、その後クラークの自宅を訪れて共演を希望したという。

ふむふむ。ジェフ・ベックのストラトが響き渡ってますね。さすが、ロック・インストって感じで弾きまくっています。トーンの特異さで聴かせてしまう独特の演奏は聴きものです。そして、全編に渡ってアレンジが実に上手い。演奏全体のアンサンブルの良さが際立つ好盤です。フュージョン・ジャズの傑作の一枚として、もっと採り上げられても良い好盤だと思います。

 
 

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2017年11月 7日 (火曜日)

ザ・プレイヤーズの4thアルバム

「ザ・プレイヤーズ」という伝説のフュージョン・バンドがあった。このバンドは純日本のメンバー構成。ピアニスト兼作編曲家の鈴木宏昌のバンド「コルゲン・バンド」を前身とし、和製ウェザー・リポートの異名をと持つ。まあ、この異名はさておき、オリジナルのパーソネルは、鈴木宏昌 (key), 松木恒秀 (g), 岡沢章 (b), 渡嘉敷祐一 (ds), 穴井忠臣 (per), 山口真文 (ss, ts)。

そのザ・プレイヤーズの4thアルバムが、The Players『Space Travel』(写真)。1982年のリリース。サックスが、山口真文より、ボブ斎藤にメンバーチェンジ。数原 普(tp)と西山健治(tb)がホーンセクションとして参加し、音の厚みが増している。テクニック優秀、音は厚いが流麗。リズム・セクションは、メインストリーム・ジャズ寄りの切れ味の良いフュージョン風。

ウェイン・ショーターからの影響が顕著な山口真文のサックスが、フュージョン〜スムース・ジャズ系のボブ斎藤のサックスに変わっただけで、ザ・プレイヤーズの音世界はガラッと変わる。
 

Space_travel

 
ザビヌル主導のウェザー・リポートからコマーシャルな要素を差し引いた、硬派で実直でジャジーなウェザー・リポートな音、これがこの「ザ・プレイヤーズ」の音世界だったが、この『Space Travel』では、アーバンなフュージョン・ジャズな、硬派なスムース・ジャズな雰囲気の音世界にガラッと変わっている。

その確かな演奏力、演奏の構築力、そして、アドリブ・フレーズの爽快感。とにかく、硬派で実直真面目な、ファンクネス皆無な日本人のフュージョン・ジャズの特徴は変わらない。これだけ、ハイ・レベルのフュージョン・ジャズが日本人の手によって創作されたことに誇りを感じる。本場米国のフュージョン・ジャズのレベルに全くひけを取らない。

そんな好盤なのですが、2016年まで全くCD化されませんでした。理由がよく判らない。現在ではタワーレコードまたはソニー・ミュージック・ショップ限定で細々と販売されているみたいです。しかも価格は3,000円弱。高い。どうにもこうにも、いつ無くなるか、いつ廃盤になるか判りませんね。これだけの好盤が勿体ないことです。

 
 

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2017年10月26日 (木曜日)

80年代の「ブラジルの渡辺貞夫」

ナベサダさん(渡辺貞夫)には、ビ・バップの顔、フュージョン&スムースの顔、そして、ブラジルの顔がある。日本人ジャズメンとして、いち早く、ボサノバ&サンバの「ブラジル音楽」に着目し、早くも、1966年12月には『JAZZ & BOSSA』を吹き込んで、日本中にボサノバブームを巻き起こした。

そんなナベサダさんが、1980年代に残した「ブラジルの顔」の面での好盤がある。Sadao Watanabe『ELIS』(写真左)。988年の作品。1960年代後半、音楽に文化に魅せられ続けたブラジルで実現した20年振りの念願のレコーディング。歌姫、エリス・レジーナに捧げたアルバム。米のラジオ&レコード誌ジャズ・チャート4週連続1位を獲得した好盤である。

ちなみにパーソネルは、渡辺貞夫 (as), セザール・カマルゴ・マリアーノ (key), エイトール・テイシェイラ・ペレイラ (g), ニコン・アスンサゥン (b), パウリーニョ・プラーガ (ds), パペーチ (perc), そして、ゲスト参加のトッキーニョ (g, vo)。う〜ん、トッキーニョ以外、知らない名前ばかりだ。しかし、この盤を聴けば判るが、凄く上手い。ブラジルのミュージシャンのレベルの高さに驚く。
 

Watanabe_sadao_elis

 
ブラジルの歌姫「エリス・レジーナ」の追悼盤。この『ELIS』の魅力は、ほのぼのとした情の深い音。優しく愛情たっぷりな柔和な音。聴いていてなんだか、心から「ほっこり」としてしまう、そんな素晴らしい感覚が満載のフュージョン・ジャズ盤。バックのリズム・セクションが素晴らしく優秀なので、ナベサダさんは安心しきって、芯のある力感溢れる、とびきり優しいフレーズを吹き上げる。

しかし、ブラジルって凄いなあ。改めて「音楽王国」であることを再認識。なに、このハイレベルのバッキング。さすが、ボサノバ&サンバの原点。セザールのアレンジも実に良好。なるほど、米のラジオ&レコード誌ジャズ・チャート4週連続1位も納得の内容である。収録された全ての演奏の内容が良い。甲乙付けがたい演奏が満載。

このナベサダさんの「ブラジルの顔」、とても素敵である。ボサノバ&サンバな曲については、とってもダンサフル。芯のある力感溢れる、とびきり優しいフレーズと相まって、実にメリハリのある、飽きの来ない、充実の内容になっている。そして、1980年代のナベサダさんのアルバムは、どれも「デジタル臭く無い」。アナログっぽくて柔軟な音はもっと評価されても良い。好盤です。

 
 

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2017年10月25日 (水曜日)

硬派で熱いワシントン・ジュニア

Grover Washington Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア)と言えば、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの代表ジャズメンの一人。1980年の『Winelight』がその代表盤。シングルカットされた「Just the Two of Us(クリスタルの恋人たち)」は大ヒットした。

しかし、ワシントン・ジュニアは、デビュー当時からずっと「ソフト&メロウ」なアルト・サックスを吹いていた訳では無い。ワシントン・ジュニアは意外と多作の人で、このソフト&メロウの代名詞的アルバム『Winelight』までに、先行して10作のリーダー盤がある。この頃のワシントン・ジュニアって、結構、ソウルフルでエモーショナルなアルトを吹いていたのだ。

それがよく判るライブ盤が、Grover Washington jr.『Live At the Bijou』(写真)。1977年5月、ペンシルベニア州フィラデルフィアの「Bijou Cafe」でのライブ録音。パーソネルを見渡しても、当時のフュージョン・ジャズにおける有名なジャズメンの名は見当たらない。つまり、ワシントン・ジュニアは、クロスオーバーからフュージョンへの主要ラインから、少し「外れていた」と思える。
 

Live_at_the_bijou_cafe

 
このライブ盤『Live At the Bijou』を聴けば、それが良く判る。出てくる音は、クロスオーバーでも無ければフュージョンでも無い。演奏は電気楽器が交じったクロスオーバー風だが、ワシントン・ジュニアのサックスは、バラードチックな曲では限りなくソウルフルに、アップテンポの曲では限りなくフリーでエモーショナルに吹き上げる。意外に硬派なメインストリームなジャズの響き。

このライブ盤には、ソフト&メロウなワシントン・ジュニアはいない。ソウルフルでエモーショナルなワシントン・ジュニアがいる。実に硬派でハードなエレクトリック・ソウル・ジャズが展開されている。このライブ盤でのワシントン・ジュニアのサックスは芯の入った重心の低い、男気溢れるテナーを吹き上げる。なんと、バリサクやテナーまでも吹いている。力感溢れるワシントン・ジュニアのサックスは熱い。

このライブ盤のプロデューサーはクリード・テイラー。ワシントン・ジュニアの本質である「硬派でハードなエレクトリック・ソウル・ジャズ」な個性をこのライブ盤で見事に浮き上がらせている。『Winelight』の印象しか無いフュージョン者の方々には、この『Live At the Bijou』のテナー奏者が「グローヴァー・ワシントン・ジュニア」であることを見抜けないだろう。しかし、この盤は明らかに、ワシントン・ジュニアの好盤の一枚である。

 
 

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2017年10月19日 (木曜日)

クライスバーグを聴かねば

1980年代後半、マンネリがたたって、飽きられ廃れたフュージョン・ジャズ。ソフト&メロウなフュージョン・ジャズは、その音世界の洗練度合いを向上させて「スムース・ジャズ」というサブ・ジャンルを形成するに至り、これが一定の人気を維持している。

しかし、21世紀になった今でも、1970年代後半から1980年代前半が全盛期の「フュージョン・ジャズ」の雰囲気をしっかりとキープした好盤が一定量リリースされ続けている。「時代の徒花」なんて揶揄する評論家の方々もいらっしゃるが、やはり、フュージョン・ジャズの音作りと演奏全体の雰囲気に魅力があるということだろう。

Jonathan Kreisberg『The South of Everywhere』。2007年のリリース。「ジョナサン・クライスバーグ」。長い名前だ。1972年生まれだから、今年で45歳。中堅である。元プログレバンドのテクニシャン・ギタリストが、ギターをホーンのように使用した奏法を多用した演奏が印象的。聴いていて、フュージョンやなあ、と心から思えるアルバムである。
 

The_south_of_everywhere

 
「ジョナサン・クライスバーグ」は我が国での知名度は低い。不思議である。これだけ手を抜かない、ハイテクニックで流麗なエレギ。アダム・ロジャース、カート・ローゼンウィンケルと並ぶコンテンポラリー系ギタリストを代表する一人。しかし、この盤などを聴いて貰えれば、この気持ち、判って貰えると思います。

クライスバーグ自身のオリジナル6曲にスタンダード2曲の構成。時に流麗に、時には攻撃的に展開するクライスバーグのギターは聴き所満載です。もともとロック畑のギタリストである。今のフュージョン・ギタリストのフレーズの中に、おやっと思うくらいに明確なロックなフレーズがとっても素敵である。エレギの取り回し、アドリブ・フレーズはしっかりとフュージョン・ジャズの雰囲気をキープしている。

現代のコンテンポラリーなジャズの中で、注目すべきギタリストの一人だと思います。クライスバーグの持つ、ギタリストとしてのテクニックと感性は素晴らしい。クライスバーグをもっと聴き込まねば、とこの盤『The South of Everywhere』を聴いて自省した次第です。

 
 

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2017年10月17日 (火曜日)

一聴瞭然なフュージョンの音

1970年代後半から1980年代前半がフュージョン・ジャズのブームだったんだが、この頃のアルバムを聴くと、フュージョン・ジャズにはフュージョン・ジャズなりの「音の雰囲気」がある。口で言葉で表現するのはちょっと難しいのだが、アルバムの音を聴いていただければ「一目瞭然」ならぬ「一聴瞭然」である。

John Tropea『Short Trip to Space』。1977年の作品。ジャズ者駆け出しの頃、学生時代、ヘビロテだったトロペイの好盤。ソロ第2弾。当時、邦題は訳の判らん『宇宙楽園』。ギター・フュージョンのお手本みたいな盤である。アレンジは、クロスオーバー・ジャズの寵児デオダート。ホーン&ストリングスを贅沢に使った、明らかにフュージョン・アレンジの先鞭をつけたような、ソフト&メロウな雰囲気。

トロペイは、フル・アコースティック・ギターを抱えたフュージョン・ギタリストの一人。他に、スタッフのエリック・ゲイル、ウェスト・コーストの名手デヴィッド・T・ウォーカーがいる。これが独特の音で、ウォームなソフト&メロウな音にウットリする。この音が「フュージョン・ジャズ」の音世界の特徴である。
 

Short_trip_to_space

 
加えて、ダンサフルな「ディスコ・ミュージック」を意識したメリハリのある音作りも「フュージョン・ジャズ」の音世界の特徴。あからさまにやると、ちょっと耳につくが、上品にやると、実にリズミカルでダンサフルな、小粋で程良いビートの効いた音になる。しかも、R&Bからの影響というよりは、ソウル・ミュージックからのフレーズの引用というところが工夫である。自然と「ソフト&メロウ」となる。

しかも、この盤は音が分厚い。親友デヴィッド・スピノザとのツイン・ギター、スティーヴ・ガッド、リック・マロッタのツイン・ドラム、ドン・グロルニックのキーボード、ウィル・リーのベース。加えて、ブレッカー・ブラザースを含む豪華なホーン・セクション。名うての名手達が一堂に会して、様々なバリエーションのフュージョン・ジャズを繰り広げている。 

この盤の優秀なところは、大向こうを張った派手なアレンジとか、目の覚めるような超絶技巧なテクニックを前面に押し出すのではなく、余裕のある、聴き応えのある、悠然とした演奏をメインに据えているところ。「せせこましく」無く、大味な音でも無い。メリハリの効いた明らかに優秀な「ソフト&メロウ」なフュージョン・ジャズの音。フュージョン者におかれては、一聴をお勧めしたい。

 
 

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2017年10月16日 (月曜日)

チャック・ローブを偲んで ・・・

我がバーチャル音楽喫茶『松和』は、フュージョン・ジャズも分け隔て無く聴く。特に、僕がジャズを聴き始めた頃は1970年代後半で、ジャズ界は「猫も杓子もフュージョン・ジャズ」の大ブームであった。アコースティック楽器メインの純ジャズなんて「古い」と言われて、片隅に追いやられていた。

それだけ、当時のフュージョン・ジャズは多くのファンを持っていた。1980年代に入って、さすがにマンネリ化して、飽きられ廃れたが、マンネリ化して飽きられただけである。フュージョン・ジャズの黄金期、1970年代後半から1980年代初頭にかけての、フュージョン・ジャズには好盤が多い。フュージョン・ジャズ自体のコンセプトに問題があった訳では無い。

それでも1980年代後半、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズは、その音世界の洗練度合いを向上させて「スムース・ジャズ」というサブ・ジャンルを形成するに至り、これが一定の人気を維持している。しかし、21世紀になった今でも、フュージョン・ジャズの雰囲気をしっかりと維持した好盤がリリースされたりして、フュージョン者の耳を楽しませてくれる。
 

Unspoken

 
Chuck Loeb『Unspoken』。2016年のリリース。このアルバムは、聴けば判るのだが、しっかりと、1970年代後半のフュージョン・ジャズの雰囲気をキープしている。今でも、フュージョン・ジャズは生きている。このギター・フュージョン盤がそれを証明している。スムース・ジャズとは一線を引く、フュージョン・ジャズの雰囲気。

フュージョン独特の軽快・爽快なリズムに乗って、チャックの華麗なエレギのフレーズが煌めく様に乱舞する。チャックのギターは、目立つように、大ぶりな高速フレーズを弾きまくるのでは無い、音を選んで、シンプルなフレーズをメインに、短く印象的なアドリブ・フレーズを積み上げていく。そんな「粋」なフュージョン・ギターである。そして、アレンジが秀逸。

ボーカルをフィーチャーした、ソフト&メロウな曲もあり、アルバムとしてのバランスも良い。実は、今年7月31日、チャック・ローブは他界しました。享年61歳。ジャズメンとしては、まだまだ、これから成熟、老練の域に入る年頃だったのに実に残念です。このチャックのギターの個性が堪能出来る盤『Unspoken』が遺作になりました。合掌。

 
 

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