2023年3月 2日 (木曜日)

ワシントンJr.のリーダー作第2弾

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア、以降、ワシントンJr.と略)。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの名サックス奏者。しっかりと情感が込めて、力感溢れエモーショナルでハードボイルドな吹きっぷりから、ソフト&メロウに囁くように吹く繊細な吹きっぷりまで、その表現力は高度で多彩。非常に優れたサックス奏者の1人だと思うのだが、何故か我が国では人気がイマイチ。

風貌が良くないのかなあ。クロスオーバー&フュージョン・ジャズの人気のあるジャズマンは、一様に「イケメン」揃い。そういう点では、ワシントンJr.はちょっと損をしているのかなあ。風貌はどう見ても、マッチョでガテン系の風貌で、どう見ても「イケメン」風では無いし、柔和な「優男」風でも無い。でも、良いサックスを吹くんですよ。ブリリアントで重心が低くてファンキーで、説得力があり、訴求力のあるサックスを吹くんだがなあ。

Grover Washington, Jr.『All The King's Horses』(写真)。1972年5ー6月の録音。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr. (sax), Bob James (key, arr, cond), Richard Tee (org), Gene Bertoncini, Cornell Dupree, Eric Gale, David Spinozza (g), Marvin Stamm (tp, Flgh), Gordon Edwards, Ron Carter (b), Bernard Purdie, Billy Cobham (ds), Airto Moreira (perc), Ralph MacDonald (congas)。ここに、ブラス・セクションとストリングスが加わるゴージャズな布陣。
 

Grover-washington-jrall-the-kings-horses

 
このワシントンJr.のセカンド盤もフュージョン畑の優れ者達が集結。特に、キーボードに、リチャード・ティー、エレギのコーネル・デュプリーとエリック・ゲイル、そして、ベースにゴードン・エドワーズと、後の伝説のフュージョン・バンド「スタッフ」のメンバーがほぼ集結しているのが目を引く。このメンバーが中心の演奏は、グルーヴ感&ファンクネス漂う「R&B志向」の素敵な演奏に仕上がっている。そう、このワシントンJr.のリーダー作第2弾は「R&B志向」の音作りがメインになっている。

ソウル・エレジャズ、と形容したら良いかと思う。ビル・ウイザースの「Lean On Me」のカバーや、エモーショナルにファンキーに吹き上げる「Love Song」、ソフト&メロウでスムースな雰囲気が素敵な「Where is The Love」等が如何にもソウルフル&ファンキー。そして、極めつけは、ジャズ・スタンダードの「Lover Man」。この「Lover Man」のエレジャズ化は、メロウな序盤からファンキーに展開していく雰囲気は、とっても「ソウルフル」。これ、本当に良い雰囲気です。この盤でイチ推しの名演。

ワシントンJr.には「ソウルフル」が良く似合う。初リーダー作は、シンプルでストレート・アヘッドな、純ジャズ志向のエレジャズだったが、今回は、アルバムの雰囲気を「ソウルフル」&「R&B」に絞ったプロデュースが大正解。この盤が「全米・Jazzチャ-ト・第1位」に輝いたのも頷ける。クロスオーバー&フュージョン・ジャズも捨てたもんじゃない。
 
 

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 ★ AORの風に吹かれて 

  ・『AirPlay』(ロマンチック) 1980

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 ★ 松和の「青春のかけら達」

  ・四人囃子の『Golden Picnics』

 
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2023年3月 1日 (水曜日)

ワシントンJr.の初リーダー作です

Grover Washington, Jr.(グローヴァー・ワシントン・ジュニア)。このサックス奏者は、ソフト&メロウなフュージョン・ジャズの代名詞『Winelight』が大ヒットしたが故、かなり誤解されているなあ、と感じることが多い。彼のリーダー作の全てを聴き直してみると、やっぱり、彼の評価に偏りがあるなあ、と感じることが多い。

グローヴァー・ワシントン・ジュニアと言うと、ベテランのジャズ者の方々は「ああ、あのソフト&メロウなサックス奏者ね」と冷ややかに反応することが多い。でも、ですね。このサックス奏者、意外と硬派で正統派なサックスを吹くんですよ。『Winelight』は、彼のサックスのテクニックと表現力が高い証明で、あの究極のソフト&メロウなブロウは、彼の表現パターンのひとつに過ぎないのだ。

Grover Washington, Jr.『Inner City Blues』(写真)。1971年9月の録音。 Kudu Recordsからのリリース。ちなみにパーソネルは、Grover Washington Jr.(sax), Bob James (el-p, arr, cond), Richard Tee (org), Eric Gale (g), Ron Carter (b), Idris Muhammad (ds), Airto Moreira (perc), Donald Ashworth (bs), Wayne Andre (tb), Thad Jones (tp, French horn), Eugene Young (tp, flh)。プロデューサーは、フュージョンの仕掛け人の1人、クリード・テイラー。

ということで、グローヴァー・ワシントン・ジュニア(以降、ワシントンJr.と略)の初リーダー作を聴いてみる。ジャズマンにおいて、初リーダー作は、そのジャズマンの個性と特徴をしっかり反映しているので、そのジャズマンの素姓を知るには、まず初リーダー作を聴くに限る。
 

Grover-washington-jrinner-city-blues

 
このワシントンJr.の初リーダー作、パーソネルを見渡すと、当時のフュージョン・ジャズの担い手ジャズメンがズラリと顔を揃えている。アレンジはボブ・ジェームス。プロデューサーはクリード・テイラー。1971年の作品だが、後のフュージョン・ジャズを見据えた、コンテンポラリーでクロスオーバーなエレ・ジャズに仕上がっていて、ちょっとビックリする。これ、硬派なフュージョン・ジャズそのもの、と言っても良い位の「内容充実」な盤である。

バックのボブ・ジェームス節をしっかり踏まえた、お洒落でクールで躍動感溢れるアレンジに乗って、硬派で正統派なワシントンJr.のサックスのエモーショナルで力強くて流麗なサックスが乱舞する。明らかにフュージョン志向のアレンジなんだが、ワシントンJr.のサックスは意外とブリリアントで重心が低くてファンキー。説得力があり、訴求力のあるサックスで、ソフト&メロウな軟弱さなんて、どこにも無い。

ワシントンJr.は唄う様にサックスを吹き上げる。力感溢れエモーショナルでハードボイルドな吹きっぷりから、ソフト&メロウに囁くように吹く繊細な吹きっぷりまで、その表現力は高度で多彩。それは決してテクニカルで無く、しっかりと情感がこもっている。後のフュージョン・ジャズのサックスの雰囲気を先取りしたかの様な、このワシントンJr.の表現力豊かなサックスは、当時としてはかなり先進的だったのでは無いか。

このワシントンJr.の初リーダー作は、ワシントンJr.のサックスマンとして、とても優れた資質と個性を持っていることが良く判る。我が国では、何故か「ソフト&メロウなフュージョン・サックス野郎」の位置づけで留まっているが、もっとワシントンJr.のサックスの本質を再評価して欲しいなあ、とこの初リーダー作を久し振りに聴いて、再び思った次第。お気に入りのフュージョン好盤です。
 
 

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2023年1月25日 (水曜日)

フルート主役のジャズ・ファンク

ジャズ・ファンクにジャズ・フルートをマッチさせた、ジャズ・フルートのレジェンドの一人「Hubert Laws(ヒューバート・ロウズ)」。その最初のアルバムと思われる『Romeo & Juliet』以降、フュージョン・ジャズ全盛期、1970年代後半から1980年代円半、ロウズは「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」志向をメインとする。

Hubert Laws『Family』(写真)。1980年の作品。ちなみにパーソネルは、Hubert Laws (fl, piccolo), Nathan East (b), Leon Ndugu Chancler (ds), Chick Corea, Bobby Lyle (key), Earl Klugh (g), David T. Walker (g) Debra Laws (vo) 等、そこにストリングスがバックに入る。ロウズの「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」の代表盤。

内容的には、ライトでアーバンな雰囲気の「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」。演奏全体に漂うファンクネスとグルーヴ感が半端ない。とにかく聴いていて自然と足が動き、腰が動く(笑)。そんなグルーヴィーなフュージョン・ジャズ満載で、これまでカヴァーからサンプリング・ネタに至るまで幅広い世代に支持され、特に、フリーソウル、ヒップ・ホップ方面から再評価の高い1枚である。

冒頭はクラシック曲のカヴァー「Ravel's Bolero」から始まるので「あれ〜っ」と思うのですが、この「ラベルのボレロ」も意外とファンキーでライトなグルーヴ感が漂う「ジャズ・ファンク仕様」。クラシックにも精通するロウズならではの選曲であり演奏であるかも、と意外と納得して次の曲にいく。
 

Hubert-lawsfamily

 
次曲「What a Night」から「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」に突入。この曲はサンプリング・ソースとしても人気のソフト&メロウなフュージョン・ジャズ。ミディアム・テンポの曲調にロウズのフルートが心地良く吹き進む。続いて「Wildfire」は、ファンキーなブラジリアン・フュージョン。疾走感が半端ない。ネイザン・イーストのベース・ラインが決まっている。

そして、極めつけは、やはり、タイトル曲の「Family」。ロウズの妹、デボラ・ロウズの魅力的なヴォーカルをフューチャーした、アーバンな雰囲気溢れる、ソフト&メロウなディスコ・フュージョン。フリーソウル・クラシックとしても人気の楽曲で、カヴァーやサンプリング・ソースの扱い多数。

あと「Memory of Minnie (Riperton) 」は、ゲスト参加のチック・コリアのピアノ・ソロが秀逸。そして、ラストの「Say You're Mine」は、バラードと思わせておいて、一気にファンキー・モードへ突入する、こってこての「ジャズ・ファンク曲」。

この盤、ジャケットが赤ん坊の写真をあしらったものなので、家庭で流せる優しいイージーリスニング・ジャズな盤なのか、という印象を持つんですが、とんでもない(笑)。中身は、アーバンで、むっちゃファンキーでグルーヴ感溢れる「ソフト&メロウなジャズ・ファンク」が満載。ジャケットに惑わされずに、フルートがメインのジャズ・ファンクを堪能して下さい。
 
 

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2023年1月21日 (土曜日)

ジャズ・ファンクに「フルート」

ジャズ・フルートについては、フルートという楽器が、元来、音が丸くて、線が細い印象があって、ジャズのフロント楽器としてはちょっと弱くて、ジャズでのフルートの活用は、当初は、クラシックのジャズ化やライトなラテン・ジャズなど、イージーリスニング・ジャズ志向がほとんどだった。

Hubert Laws『Romeo & Juliet』(写真左)。1976年の作品。Columbiaレーベルからのリリース。プロデュース&アレンジはボブ・ジェームスが担当している。当時、CTIレーベルの専属アレンジャーだったボブ・ジェームス。よくまあ、Columbiaレコードのこの盤の制作に協力できたもんだ、と感心する。恐らく、この後、ボブ・ジェームスはCBSに移籍するので、CTIとCBSの契約の端境期だったのかもしれない。

ちなみにパーソネルは、主だったジャズマンとして、Hubert Laws (fl), Bob James (key, Fender Rhodes), Mark Gray (key), Eric Gale, Richie Resnicoff, Barry Finnerty, Steve Khan (g), Gary King (b), Andy Newmark, Steve Gadd (ds), Ralph MacDonald (perc), Alan Rubin, Randy Brecker, Jon Faddis, Marvin Stamm, Bernie Glow (tp, flh), Allen Ralph, David Taylor, Wayne Andre (tb)。ここに豪華なストリングスとボーカル・グループが加わる。

いきなり冒頭ストリングスが大々的に入ってくるので、この盤って、ウィズ・ストリングス系のイージーリスニング・ジャズなのか、と思わず身構える。しかし、ボブ・ジェームスがプロデュースを担当している。それも、1970年半ば、ボブ・ジェームスは、フュージョン・ジャズの仕掛け人として、日の出の勢いの時期。で、程なくストリングスが去って、極上のファンク・グルーヴを伴ったタイトなリズム隊が出てきて、力強いロウズのグルーヴィーなフルートが絡んでくる。
 

Hubert-lawsromeo-juliet

 
それまで、クラシックのジャズ化、ファンキーなクロスオーバー・ジャズ、時々、ライトなラテン・ジャズで、どちらかと言えば、イージーリスニング・ジャズ志向の活躍をしてきたロウズが、ジャズ・ファンクにジャズ・フルートをマッチさせた優秀盤である。パーソネルも、ボブ・ジェームスのジャズ・ファンクなフュージョン・ジャズに欠かせない、ボブ・ジェームス御用達のリズム隊が集結している。

冒頭の「Undecided」は、ボブ・ジェームスのアレンジ志向が色濃い、CTIレーベルぽいジャズ・ファンク。メロウで渋いエレピ&ベース・フレーズに乗ったロウズのフルートが素敵な「Tryin To Get The Feeling」。「What Are We Gonna Do」「Guatemala Connection」のソフト&メロウなフュージョン・ファンクは魅力的。

バリー・マニロウ「歌の贈り物」(1975年11月リリースの大ヒット曲)や、クラシックのチャイコフスキーの「ロミオとジュリエット」をカヴァーしているが、ボブ・ジェームスの手によって、グルーヴィーなアレンジが施され、ファンキーでグルーヴィーなロウズのフルートが素晴らしいインプロビゼーションを披露している。アレンジとしては「ボブ・ジェームス色」濃厚。

この盤、ボブ・ジェームズのアレンジ&キーボードとヒューバート・ロウズのフルートの相性がとても良いことが良く判る。Columbiaレーベルからのリリースだが、音だけ聴くと、この盤は「CTIレーベル」からのリリースと勘違いするくらいだ。但し、このジャケのデザインはイマイチ。CTIレーベルとは似ても似つかない酷いもので、ジャケをみるだけでは、この盤には直ぐには触手は伸びないだろう(笑)。
 
 

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2023年1月13日 (金曜日)

ロウズ=B.ジェームスのライヴ盤

ふと、フュージョン・ジャズが聴きたくなる時がある。僕がジャズを本格的に聴き始めた頃は、フュージョン・ジャズの全盛期。フュージョン・ジャズについては全く拘りは無い。良い音楽と悪い音楽、という話があるが、純ジャズだろうが、フュージョン・ジャズだろうが「良い音楽」と感じればそれでいい、と思っている。

Hubert Laws『The San Francisco Concert』(写真左)。1975年10月4日、オークランドの「Paramount Theatre」でのライヴ録音。CTIレーベルからのリリース。ちなみにパーソネルは、Hubert Laws (fl), Bob James (el-p, arr, cond), Glen Deardorff (g), Gary King (b), Harvey Mason (ds) のクインテットがメイン、バックにオーケストラが付く。

全編に渡って、ヒューバート・ロウズのフルートが堪能出来る。オーケストラを従えた豪華な伴奏をバックにしながら、ロウズのフルートがしっかりと前面に出て、素晴らしいパフォーマンスを披露している。フルートの音は音が丸くて、線が細い印象があるのだが、ロウズのフルートは音は丸いが、太くて力強くてシャープ。切れ味の良いフレーズでグイグイ吹きまくる。
 

Hubert-lawsthe-san-francisco-concert

 
フュージョン・ジャズのロウズにはボブ・ジェームスのエレピとアレンジが欠かせないが、このライヴ盤でもボブ・ジェームスがエレピとアレンジ、そして指揮を担当している。そして、演奏される曲も「Feel Like Making Love」(『Bob James I』収録)、「Farandole」(『Bob James II』収録)と、ボブ・ジェームスのアルバムの中で、印象的なロウズのフルートが映える曲を選んでいる。

当時、リアルタイムでボブ・ジェームスのフュージョン盤を聴いていた僕達にとっては、このFeel Like Making Love」と「Farandole」でのロウズのフルートはしっかりと耳に残っている。「Scheherazade」も内容は充実していて、クラシックにも精通するロウズの面目躍如的フルートが堪能出来る。

クラシックとジャズの融合(フュージョン)という切り口で、このロウズ=ボブ・ジェームスのコラボは数々の印象的なパフォーマンスを残しているが、それが、この盤ではライヴ音源で聴けるのだから、フュージョン者にとっては、このライヴ盤は価値がある。ブラス・セクションのアレンジ、オーケストラのアレンジもボブ・ジェームス節炸裂で充実している。なかなか聴き応えのあるフュージョン盤である。
 
 

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2022年10月30日 (日曜日)

イエロージャケッツの最新作です

思えば、このフュージョン・バンド、イエロー・ジャケッツとても息が長い。1977年、ラッセル・フェランテを中心に結成され、1981年のフュージョン・ブームの最盛期にメジャー・デビュー、昨年メジャー・デビュー40周年を迎えている。レコード会社も幾つか変わり、メンバーも、リーダーのラッセル・フェランテ以外は全て入れ替わっているが、このフュージョン・バンドの音志向は40年以上、大きな変化は無い。

Yellowjackets『Parallel Motion』(写真)。2021年12月の録音。ちなみにパーソネルは、Russell Ferrante (key), Bob Mintzer (sax), Dane Alderson (el-b, MIDI sequencing), Will Kennedy (ds), guest: Jean Baylor (Vo) track 8。1ヶ月に及ぶ久々の欧州ツアーの終了後、スタジオに入り、録音されたもの。前作より、ベースがデイン・アルダーソンにチェンジしている。

まことに上質のフュージョン・ジャズである。演奏テクニックは高く、フレーズを奏でる「歌心」も十分。アーバンでポップな曲作りは健在。スムース・ジャズの様な、耳当たりの良いイージーリスニング風の音作りでは無い、しっかりとリズム&ビートが効いて、フレーズの展開についても、テクニック的に随所に工夫が見られ、聴いていて飽きることは無い。
 

Yellowjacketsparallel-motion

 
ユッタリ目の曲が全編に渡って続くが、これが、イエロージャケッツの音志向なので戸惑うことも無い。各曲共に、メンバーそれぞれの持ち味が発揮され、フレーズの展開もバリエーション豊かで、マンネリに陥ることは無い。8曲目「If You Believe」でのジーン・ベイラーのヴォーカルもいいアクセント。ボーカル曲がこの1曲に留めていて、演奏のバリエーション不足をボーカルで誤魔化すことの無いところに、イエロージャケッツの矜持を感じる。

パフォーマンスについては、バンドメンバー各人、それぞれの個性を発揮していて高いレベルを維持しているが、特に、リーダーのラッセル・フェンテのキーボードが好調。これまた好調のミンツァーのサックスと併せて、キャッチャーで耽美的で躍動感のあるソロを聴かせてくれる。そして、アルダーソンのベースも魅力的なラインを供給していて良い感じ。このアルダーソンのベースラインが演奏全体を引き締め、演奏自体を印象的なものにしている。

イエロージャケッツのフュージョン・ジャズの良いところは、演奏自体が人間っぽくて血が通った音だ、というところ。現代のフュージョン・ジャズだからといって、打ち込みに頼ること無く、メンバーそれぞれの血の通った演奏で展開されているという、1970年代後半のフュージョン全盛期のフュージョン・ジャズの良いところをしっかりと継承しているところが実に良い。この新作も暫く、ヘビロテになりそうだ。
 
 

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2022年10月 2日 (日曜日)

今の耳に『Heavy Weather』

さて、Weather Report(以下、WRと略す)のアルバムを今の耳で聴き直すシリーズ。いよいよ佳境である。前作『Black Market』で、エレベのイノベーター、ジャコ・パストリアスを発見し、正式メンバーとした。そして次作。あのWRの大ヒットしたアルバムの登場である。

Weather Report『Heavy Weather』(写真)。1977年の作品。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (sax), Jaco Pastorius (b, ds : Teen Town), Alex Acuña (ds), Manolo Badrena (perc)。 前作で課題だった「ドラマー問題」は解決しておらず、前作でパーカッションを担当していたアレックス・アクーナがドラムを担当している。この盤でもドラムについてはウィーク・ポイントになっているが次作を待つしか無い。

前作では「エスニック&ユートピア」志向のザヴィヌル、「黒魔術的な音世界」志向のショーター、「ファンキー&パンク」志向のジャコと3者の音志向のバランスが取れ始めていたが、この『Heavy Weather』では、この3者の良きバランスが見事に定着している。が、盤全体の雰囲気は「フュージョン・ジャズ」。耳当たりの良いキャッチャーな、聴き味の良いフレーズ満載の「ソフト&メロウ」な楽曲が目白押し。

冒頭の「Birdland」は、ザヴィヌルの「エスニック&ユートピア」志向の楽曲で、ビートの効いた、明るくポジティブでキャッチャーなフレーズ満載の傑作。即興演奏の妙は皆無。フュージョン・ジャズの強烈な味付け。続く「A Remark You Made」は、珍しい、ショーターの「フュージョン・バラード」。この曲も即興演奏の妙は無く、フュージョン系のイージーリスニング・ジャズな趣き。この2曲を聴いて判る通り、この盤は、ザヴィヌル&ショーターからすれば「売りたい」盤だったことが窺い知れる。
 

Weather-reportheavy-weather

 
1人気を吐いているのがジャコ。3曲目の「Teen Town」でのエレベの即興は見事。ドラムについても、アクーナのドラムを排除して自らがドラムを叩く気合いの入れよう。この曲はジャコの代表的パフォーマンスの1曲。ラストの「Havona」も、変に捻れたテーマを持つ不思議な雰囲気を持つ曲。ストレート・アヘッドなエレ・ジャズ。この「Havona」でのバンドのテンションは凄い。これぞ、ウェザー・リポートの真骨頂だ。

5曲目の「Rumba Mamá」の存在は今もって全く理解不能。アフリカンな打楽器メインの短いパフォーマンス。このフュージョン志向のWR盤に、この曲が何故入っているのか、未だに理解出来ない。打楽器担当にもスポットライトを当てたかったのかもしれないが、この曲は、この『Heavy Weather』の音志向からすると、全くの「不要な曲」だろう。

この盤は、ザヴィヌルとジャコの共同プロデュース。ジャコはプロデュース面で、ザヴィヌル&ショーターの「この盤を売りたい」という意向に協調している。「売れる」為のプロデュース。この面でも、ジャコの加入の貢献度は高い。

そして、どの曲においても、ジャコのエレベのベースラインが突出している。実に独創性の高い、実にテクニカルなベースラインをガンガン供給する。フレットレス・エレベの粘りのビートがビンビンに効いている。ソフト&メロウなフュージョン志向の楽曲を質の良いジャズに留めているのは、ひとえにこのジャコの天才的なベースラインのお陰だろう。

この盤は、どちらかと言えば、WRのバンドの音志向からすると、ちょっと外れた「異質のアルバム」だと思う。言い換えると、一番、フュージョン・ジャズに接近した盤と言えるだろう。バンドの課題であった「打楽器隊」も解決には至っておらず、この盤は、エレ・ジャズの「名盤」とするには、ちょっと疑問符が付く。ただ、この盤は売れに売れた。WRとして、大ヒットした「佳作」と僕は評価した。
 
 

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2022年9月29日 (木曜日)

今の耳で聴く『Black Market』

1970年代から1980年代前半のジャズ界を駆け抜けた、伝説のスーパー・バンド『Weather Report』(以降、WRと略)。僕はほぼリアルタイムでWRを聴いてきた訳だが、リアルタイムで聴いていた当時と、あれから約50年が経って、年齢を重ね、様々なジャズを聴き進めてきた「今のジャズ耳」で聴くのと、ある部分、印象が全く異なる部分があるのに気がついた。WRのアルバムを順に聴き直してみると、意外とこの「印象が異なる部分」が、かなり興味深く聴けるのが面白い。

Weather Report『Black Market』(写真)。1976年の作品。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (sax), Alphonso Johnson (el-b), Jaco Pastorius (el-b, tracks 2 & 6), Narada Michael Walden (ds, tracks 1 and 2), Chester Thompson (ds, track 1, tracks 3–7), Alex Acuña (perc, tracks 2–5, track 7), Don Alias (perc, tracks 1 and 6)。WRの第2期黄金時代の幕開けを告げる、マイルストーン的な名盤である。

名盤とは言え、リズム・セクションの迷走は続いていた。ドラムは2人、パーカッションも2人が分担して叩いている。それぞれの曲における打楽器系の音を聴いても、決定力にかけるパフォーマンス。悪くは無いんだが、躍動感に欠けるというか、迫力に欠けるというか。こういったドラム系の人選はマイルス・ティヴィスが一番。1970年代のマイルス・バンドのドラム系の人選の成果を思うと、どうにもこの時点でのWRのドラム系の人選はイマイチな感じが拭えない。

そして、ベースである。前作『幻祭夜話』で、アルフォンソ・ジョンソンに恵まれたWR。アルフォンソのエレベは、WRとして申し分無く、ビトウスの抜けた穴をやっとこさ埋めた感じたしていた。そんなところに「俺は世界で最高のベーシストさ、俺を雇う気はないか」と、とんでもないベーシストが自らをWRに売りにやってきた。伝説のエレベのイノベーター、ジャコ・パストリアスである。

ジャコはこの盤では「Cannon Ball」と「Barbary Coast」の2曲のみで、エレベを弾いているのだが、これが凄い。それまでに聴いたことの無いエレベに我々は驚愕した。
 

Weather-reportblack-market

 
リズム&ビートを供給するリズム隊としてのベースとしてのパフォーマンスについても、音がソリッドで太っとく、躍動感溢れ、破綻の無い滅茶苦茶テクニカルなベースラインが凄い。しかし、もっと凄いのが、ソロ・パフォーマンス。まるでエレギを弾くかのようにエレベを弾く。つまり、リズム隊ばかりで無く、エレベでフロント楽器の役割を担うベーシストが出てきたのだ。

当時のWRは、フロント楽器を真っ当に担えるのは、ウェイン・ショーターのサックスのみ。ザヴィヌルのキーボードは伴奏力に優れるが、フロント楽器としてのソロ・パフォーマンスは苦手にしていたフシがあって、WRはフロント楽器の華やかさに欠けるところがあった。が、ジャコの登場で、その弱点は一気に克服されている。「Cannon Ball」と「Barbary Coast」の2曲における、ジャコの「リズム&ビートを供給するリズム隊としてのエレベ」と「フロント楽器の役割を担うエレベ」は傑出している。

ソング・ライティングについても充実してきた。今までは「エスニック&ユートピア」志向のザヴィヌル、「黒魔術的な音世界」志向のショーター、この2人の作曲がほとんどだったが、ここにジャコの「ファンキーで高速フロント・ベース」を活かした楽曲が加わって、収録曲の内容もバッチリ充実している。この『Black Market』では秀曲揃いで、そういう意味でも、この盤は聴き応えがある。

全体的には、キャッチャーでアーシーな曲がずらりと並ぶ。そんな曲のリズム&ビートをしっかり支え、濃厚なファンクネスを供給するリズム・セクションが是非とも必要になるのだが、ジャコを発見することにより、エレベの目星は付いた。あとはドラム。だがWRに最適なドラマーについては、課題として次作に持ち越すことになる。

それでも、この『Black Market』での混成リズム隊は意外と健闘している。だからこそ、この盤はWRの第2期黄金時代の幕開けを告げる、マイルストーン的な名盤として評価できるのだ。もっと最適なリズム隊を得た時のWRの音世界はどんなものになるのか。WRのポテンシャルは相当に高いことをこの盤を聴いて再認識する。
 
 

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2022年9月27日 (火曜日)

『幻祭夜話』を今一度、聴き直す

Weather Report(以降WRと略)のアルバムの聴き直しを進めている。暫く期間が空いたが、いよいよ「第2期黄金時代」の幕開けの時代に入る。

前作『Mysterious Traveller』で、ザヴィヌルは、WRの音楽的志向を「エスニック&ユートピア」に舵を切る。リズム&ビートは「ファンク」なんだが、メロディーにはエスニックの味付け。エスニック志向のエレ・ファンクと形容しても良いかもしれない。

しかし、デビュー時代から、相応しいドラマーが見つからない。ベースについても、ビトウスの抜けた穴は大きい。リズム隊に傷を残し、ザヴィヌル自身もシンセの扱いに苦労し、ショーターは徐々にWRの活動に興味を失いつつあった。しかし、そんな時でも『Mysterious Traveller』という売れ線のアルバムを残したのだから、WRのバンドとしてのポテンシャルはまだまだ高いものがあった。

Weather Report『Tale Spinnin'』(写真左)。1975年の作品。邦題は『幻祭夜話』。ちなみにパーソネルは、Joe Zawinul (key), Wayne Shorter (sax), Alphonso Johnson (el-b), Leon "Ndugu" Chancler (ds), Alyrio Lima (perc)。ベースはアルフォンス・ジョンソン、ドラムはレオン・チャンクラー、ドラムを補佐するパーカッションはアリリオ・リマで、リズム隊は落ち着いた。

ザヴィヌル自身、シンセの扱いに苦労し、フロント楽器としての振る舞いが上手く出来ないということを前作で理解したのか、ショーターのバンドへの興味を元に戻すべく、ザヴィヌル好みの「エスニック&ユートピア」な音世界に、ショーター好みの「黒魔術」的な音世界を加味することを決断。楽曲もショーターが2曲、ザヴィヌルが4曲。ザヴィヌルの4曲もショーター好みのフレーズを散りばめている。
 

Tale-spinnin

 
前作『Mysterious Traveller』に比べて、それぞれの曲の内容が桁外れに良い。冒頭の「 Man in the Green Shirt」や、4曲目の「Badia」そして、続く「Freezing Fire」など、「エスニック&ユートピア」+「黒魔術」の名曲である。中には「およよ」的な曲もあるが、前作に比べて、総じて楽曲の内容と質は飛躍的に向上している。

その結果、この『Tale Spinnin'』では、ショーターが活き活きとサックスを吹いているのが印象的。やはり、ショーターが腰を据えて吹く、モーダルなサックスは魅力抜群。ザヴィヌル好みの「エスニック&ユートピア」な音作りに、「黒魔術」的な音を積極的に取り込むことにより、この盤での音は、より「黒く」、より「ジャジー」になった。この盤で、WRの第2期黄金時代の音の志向は固まったのでは無いか。

リズム隊も地味ではあるが、落ち着いたリズム&ビートを供給していて及第点。フロントのザヴィヌルのキーボードとショーターのサックスと対等の立場に立ったインタープレイを展開するほどでは無いが、WR独特のグルーヴ感を醸し出すのには成功している。特に、アルフォンソのエレベの音、そして、リマのパーカッションが効いている。

ザヴィヌルの試行錯誤と深慮遠謀が良く判る、そして、なんだかんだと言いながら、ショーターの存在意義を再認識した『Tale Spinnin'』。「俺一人でもいける」〜「俺一人では駄目だ」〜「でも売れなきゃ駄目だ」という志向の揺らぎが、結局、WRの第2期黄金時代の音の志向固めにダイレクトに繋がったのだから、WRというバンドは強運のバンドだった。
 
 

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2022年8月28日 (日曜日)

土曜日の「Super Guitar Trio」

1981年のリリースで、アル・ディ・メオラ、ジョン・マクラフリン、パコ・デ・ルシアという3人のギタリストによる、アコースティック・ギター3本だけの演奏を収録したライヴ盤があった。

超絶技巧なフュージョン系ギタリスト二人と、超絶技巧なフラメンコ・ギターの雄、3人でのライヴ・パフォーマンス。この3人の名前を見ただけでも「フュージョン(融合)」な取り合わせを感じて、今の耳で聴いても、素晴らしいライヴ・パフォーマンスの記録である。

そのライヴの記録とは『Friday Night In San Francisco(邦題:スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !)』(写真右)。 超絶技巧の限りを尽くした、目眩くアコギの弾きまくり。それが1人では無く、3人がかりでやるのだから、そのパフォーマンスたるや、それはそれは、ど迫力で呆れるばかりのハイテクニックの嵐。

1981年と言えば「フュージョン・ジャズ」の全盛期のピーク。もともと、フュージョン・ジャズはギターが人気で、そのギターは超絶技巧、目眩く速弾きフレーズの弾きまくりが「目玉」。そんなフュージョン・ギターの最高峰の演奏が、この『スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !』であり、そんなライヴ盤が、フュージョン・ジャズの全盛期のピークにリリースされ、人気を博した。ジャズの歴史の中で、象徴的なライヴ盤だった様な気がする。

Al Di Meola, John McLaughlin, Paco De Lucia『Saturday Night in San Francisco』(写真左)。1980年12月6日、米国サンフランシスコのウォーフィールド劇場でのライヴ録音。ちなみにパーソネルは、Al Di Meola, John McLaughlin, Paco De Lucia (g)。超絶技巧ギタリスト3人のライヴ・パフォーマンスの記録になる。
 

Saturday-night-in-san-francisco_1

 
先にご紹介した『Friday Night In San Francisco(邦題:スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !)』は、このライヴ盤が録音された前日のライヴ音源。録音場所は同じ「米国サンフランシスコのウォーフィールド劇場」。今回リリースされたライヴ音源は、既出の『スーパー・ギター・トリオ・ライヴ !』の収録日の翌日、全く同じメンバー・会場でのライヴ録音の音源になる。

しかし、こんな音源が21世紀になって発掘されるとは驚きである。この6日の公演はこれまで録音されていないと思われていたのだが、アル・ディ・メオラ所有の16トラックのテープを見直し、12月6日の公演から未発表の8曲を見つけ出した、のこと。なんせ、12月5日の公演で演奏した当の本人達も、第二夜を演奏したことを覚えてなかったらしい。よく発掘したもんだ。

さて、内容的にはどうか、と聴けば、12月5日の『Friday Night In San Francisco』の伝説的パフォーマンスと勝るとも劣らない、素晴らしいパフォーマンスが展開されてるから、二度驚き、である。

曲のレベルも遜色無い。例えば、「金曜日版」の出だしが「Mediterranean Sundance」に対して、この「土曜日版」の出だしが「Splendido Sundance」と、全曲、同じハイレベルの楽曲が並んでいる。

特に、この「土曜日バージョン」は、3人それぞれのソロ・パフォーマンス、無伴奏のソロ曲が3曲、記録されている。しかし、3人のギター・テクニックの凄まじさたるや、感動を通り超して、呆れるほどの超絶技巧さ。しかも、歌心が溢れ、即興性の高いインタープレイは見事という他は無い。
 
 

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