2021年2月 2日 (火曜日)

T-SQUAREの無観客ライヴ

フュージョン・ジャズの大ブームの中、我が国では2つのフュージョン・ジャズを代表するバンドが出現した。1つは「カシオペア」もうひとつは「THE SQUARE」。どちらもコッテコテのバカテク集団。スクエアはどちらかと言えば「ロック&ポップ」の部分を押し出した音作り。そのスクエアは、1989年、「T-SQUARE」と改称して、現在も活躍中である。

『T-SQUARE 2020 Live Streaming Concert ”AI Factory” at ZeppTokyo』(写真左)。2020年7月23日、ZeppTokyoにて行われた無観客生配信コンサートの収録音源。ちなみにパーソネルは、安藤正容 (g), 伊東たけし (sax), 坂東慧 (ds), 河野啓三 (key), 田中晋吾 (b)。白井アキト (key) が、河野のサポートとして参加している。

コロナ禍により全ホールのコンサートをやむなくキャンセル、その後、約半年ぶりに参集したメンバーの演奏。体調管理とリハビリを優先しながら、今後自身のペースで音楽活動する為、T-SQUARE退団の意向を表明したキーボード担当「河野啓三」がメンバーとして参加するラストステージでもある。
 
 
Tsquare-2020-live-streaming-concert  
 
 
同時にDVDも出ているが、今回は「音」のみのレビューになる。が、その凄まじい迫力の演奏にちょっとビックリ。いつものT-SQUAREのポップな音をイメージしていると思わずぶっ飛ぶ。T-SQUAREの代表曲をバンバン演奏していくので、聴いていて思わず「ウハーッ」と叫んでしまいそうな、爽快感溢れるハイテクニックなパフォーマンス。

無観客のコンサートホールでの録音なので、音がとても良い。ドラムがバッシバッシ決まり、コンサートではこもりがちのベースの音もかなりクリア。このリズム隊の音の良さとクリアさが、いつものT-SQUAREの音世界をさらに躍動感溢れ、さらに疾走感を増幅した音世界にバージョンアップしているんだなあ、と感じる。

キーボードの河野は右手中心のパフォーマンスだが、これがなかなかの「渾身プレイ」で思わず引き込まれる。やはり楽器演奏というのはテクニックが全てでは無い、と再認識させてくれる。DVDはドキュメンタリーも収録されていて、T-SQUAREの動く姿を確認するには最適なもの。しかし、この無観客生配信コンサート、その音だけでも、T-SQUAREの歴史と今の力量をバリバリに体感出来る。
 
 
 

《ヴァーチャル音楽喫茶『松和』別館》の更新状況》
 
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  ・僕達は「タツロー」を聴き込んだ
 

Matsuwa_billboard
 
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2021年1月21日 (木曜日)

ジャズ喫茶で流したい・197

寒い日が続いている。これだけ寒いと外に出るのが憚られる。ましてや、2回目の緊急事態宣言下でもある。こういう厳寒の日は、部屋の中で、好きなジャズを聴いて過ごすに限る。それでも、厳寒は体力を奪う。体力が落ちた耳にハードな純ジャズは辛い。こういう時は「フュージョン・ジャズ」。聴き心地の良い電気楽器がメインのフュージョン・ジャズで厳寒に耐える。

Allan Holdsworth『None Too Soon』(写真左)。1994年10月の録音。ちなみにパーソネルは、Allan Holdsworth (g, SynthAxe), Gordon Beck (el-p), Kirk Covington (ds), Gary Willis (b)。テクニカル&変態ギタリストの雄、アラン・ホールズワースが1996年に発表したアルバム。CTIからリリースされた『Velvet Darkness』から数えると通算9枚目の作品になる。

この盤、主にジャズ・スタンダードの個性的な解釈と、ピアニストで長年の協力者であるベックによって書かれた2曲のオリジナル作品で構成されている。ホールスワーズの「スタンダードの個性的な解釈」と書くと、すわ一大事、という感じになるが、曲名を確認すると、コルトレーンの「 Countdown」、ジャンゴ・ラインハルトの「Nuages」、ヘンダーソンの「Isotope」「Inner Urge」など、かなりマニアックで「捻くれた」ミュージシャンズ・チューンがメイン。
 
 
None-too-soon-allan-holdsworth  
 
 
これらのスタンダード曲を、ホールスワーズ独特の捻れギターによる、「フリージャズ的アプローチ」と「捻れたモーダルなフレーズ」で解釈している。これは以前からのホールスワーズ独特のスタンダード曲に対する解釈の定石で、この盤ならではの特筆すべき事柄では無い。しかし、このホールスワーズ独特のスタンダード曲に対する解釈が全編に渡り聴くことが出来るので、ホールスワーズの捻れギターが好みのジャズ者に関しては、実に嬉しい盤ではある。

但し、どスタンダード曲の「How Deep Is the Ocean?」と、レノン=マッカートニーの「Norwegian Wood」については、この盤ならではの、ちょっと面白い内容になっている。「How Deep Is the Ocean?」はハードバップ風のアレンジがユニーク。「Norwegian Wood」については、原曲のテーマを生かしながら、ゴードン・ベックのエレピとホールスワーズのエレギがモーダルなソロを展開する。

電気楽器がメイン、ビートは8ビートがメインなので、フュージョン・ジャズかとも思うが、ソフト&メロウな雰囲気が希薄で、フュージョン・ジャズ特有の流麗でキャッチャーなフレーズは皆無なので、アルバム全体の内容としては、コンテンポラリーな純ジャズと評価して良いかと思う。意外と硬派な内容で聴き応えがあります。好盤です。
 
 
 
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2021年1月 8日 (金曜日)

ノーマン・ブラウンって知ってる?

寒い。年末から正月にかけても寒かったが、それ以上に今回は寒い。コロナ禍のお陰で「ステイ・ホーム」が染みついたので、朝早く外を出歩くことが無くなったので、早朝の厳しい寒さを体感することは無いが、それにしても寒い。外出が憚れるくらいで、こういう日は「巣ごもり」に限る。巣ごもって、ジャズを聴く。

とにかく寒いのと、昨日の夕方から緊急事態宣言下になっているので、シビアでハードな純ジャズはちょっと辛い。こういう時はフュージョン・ジャズやスムース・ジャズが良い。ただ単に耳当たりの良いものは飽きるので敬遠している。どちらかと言えば、ジョージ・ベンソンやラリー・カールトンなど、ブラック・ミュージックをベースにしたコンテンポラリーなAOR風なものが好み。

Norman Brown『Heart to Heart』(写真左)。2020年8月のリリース。スティーヴィー・ワンダーやボーイズIIメンなどの作品に参加、自身も90年代モータウンからリーダー・アルバムもリリースしてきたスムース・ジャズ系ギタリスト、ノーマン・ブラウンのアルバムである。プロデュース陣にポール・ブラウン、ジェフ・ローバー、クリス・”ビッグドッグ”・デイヴィスの名が見える。
 
 
Heart-to-heart  
 
 
もともと僕は若い頃から、ジャズを聴かなかったら「モータウン」に走っていたかもしれない位、R&Bやブラコンなど、ブラック・ミュージックがお気に入り。なので、ブラック・ミュージックのエッセンスが入った、フュージョン・ジャズやスムース・ジャズを耳にすると、絶対に聴きたくなる。このノーマン・ブラウンの新作もそうである。ちょっとサブスク・サイトで試聴して「これ良い」と即ゲット。

この盤については、このブラック・ミュージックをベースにしたコンテンポラリーなスムース・ジャズで、ノーマン・ブラウンの「クリーンで端麗なトーン」が映えに映える。プロデューサーでもあるジェフ・ローバーがプレイヤーとしても全11曲中4曲で参加していて、盤全体の音の傾向は「ジェフ・ローバー」風だが、ノーマン・ブラウンのギターはどこか「フュージョン風」でジョージ・ベンソンなどを想起させて、なかなか聴き応えがある。

ブラック・ミュージックをベースにしている感じなので、演奏全体に快い躍動感があり、メリハリが効いているところがとても素敵である。これだけ内容の良い盤をリリースするギタリストなんだけど、ノーマン・ブラウンって、我が国では人気が低いんですよね。「スムース・ジャズ系」というところがウケないのかなあ。でも、このギタリスト、フュージョン・ジャズ全盛期だったら、絶対に人気ギタリストの1人になっていたと思うんですよね。一聴をお勧めの一枚です。
 
 
 

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2020年12月21日 (月曜日)

ブーム終焉の象徴的なアルバム

フュージョン・ジャズの流行は、1970年代後半から1980年代前半。とにかく、老いも若きもジャズ者総出の大ブームだったように思う。ミュージシャン側だってそうだ。フュージョン・ジャズ御用達のミュージシャンがごまんと出てきた。しかし、その流行も1980年代に入ってからは下降線の一途だった。

Larry Carlton『Friends』(写真)。1983年のリリース。ちなみにパーソネルは、Larry Carlton (g), Abe Laboriel (b), Jeff Porcaro (ds) を核に、曲毎にゲスト・ミュージシャンが参加。

フュージョン・ジャズのブームの後期、流行のほぼ終わりの時期の好盤。タイトル通り、数多くの名プレイヤーがゲスト参加したアルバム。フュージョン・ジャズとしてやることを全てやり尽くしてしまった時期、マンネリズム回避によくやる「企画」である。そのゲストの大凡は以下の通りかと。

B.B. King (g, tracks: A4), Don Freeman (el-p, tracks: A3), Joe Sample (el-p, tracks: A2, A3), Terry Trotter (el-p, tracks: A1, B1 to B4), Brian Mann (org, tracks: A4, B1), Alex Acuna (perc, tracks: B2), Paulinho Da Costa (perc, tracks: A1, A2, A3, B1), Don Freeman (p, tracks: A3), Michael Brecker (ts, tracks: A3, B3, B4), Jim Horn (fl, tracks: B1), Brian Mann (syn, tracks: A1, A3, B1 to B4), Al Jarreau (vo, tracks: A3)。
 
 
Friends-larry-carlton
 
 
BB・キング、マイケル・ブレッカー、アル・ジャロウ、ジョー・サンプル、パウリーニョ・ダ・コスタ等、そうそうたる面子である。重厚なブラス・セクションも従えて、ソフト&メロウな雰囲気濃厚な、フュージョン・ジャズの大仕掛けな一大絵巻が展開されている。

ここまでソフト&メロウな雰囲気を増幅させると、甘々なイージーリスニング・ジャズに陥る危険性があるが、その一歩手前で留まっているところがこの盤の「ミソ」。エイブ・ラボリエルのベースとジェフ・ポーカロのリズム隊が切れ味の良いリズム&ビートを供給して、甘めのフロントのメロディー・ラインに「喝」を入れている。

リズム隊に「喝」を入れられた、リーダーのカールトンのギターが活き活きと切れ味の良いフレーズを連発する。演奏全体のアレンジが大仕掛けで甘いので、カールトンの切れ味の良いギターが余計に目立つ。これがこの盤の好要素として作用している。切れ味の良いカールトンのギターに触発されて、ゲスト・ミュージシャン達の演奏も躍動感溢れるものになっている。

一聴すると、これは甘々なイージーリスニング・ジャズか、と身構えるが、聴き進めるにつれて、意外となかなかの内容にホッとする。甘々のアレンジによる、切れ味の良いフュージョン・ジャズ。後の「スムース・ジャズ」の萌芽ともとれる内容は興味深い。フュージョン・ジャズのブーム終焉の「象徴的な内容の盤」である。
 
 
 

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2020年12月16日 (水曜日)

懐かしいフュージョン盤に出会う

懐かしいフュージョン・ジャズ盤を見つけた。以前、我がコレクションにあった筈なんだが、何処かでドロップしたのかもしれない。フュージョン・ブームの終焉時期にリリースされたアルバムで、結構、ヘビロテ盤だった筈なんだけどなあ。しかし、こういう懐かしい、思い出の盤に再会すると、なかなか楽しいものである。

Joe Sample『The Hunter』(写真)。1983年のリリース。クルセイダ―ズのキーボード奏者 ジョー・サンプルのソロ5作目である。リリース当時、この「やっつけ感」満載のジャケット・デザインに戸惑った思い出がある。フュージョン・ジャズのブームの終焉時期、売上にも翳りが見えて、レコード会社の扱いも既に軽かったのかもしれない。

パーソネルについては、Joe Sample (key, syn), Percussion – Paulinho da Costa (perc)、後は曲によってメンバーが代わって、ベースは 1曲目だけ Marcus Miller、残りは Abraham Laboriel。ドラムも同様に 1曲目だけ Steve Gadd、残りは Bob Wilson。ギターは、ちょっと複雑で、1曲目だけ David Spinozza、3曲目だけ Phil Upchurch、残りは Dean Parks。

ゲスト参加として、John Phillips (b-cl, tracks: 6), Tom Browne (tp, tracks: 1), John Phillips (Woodwind, tracks: 2)。そして、ホーンセクションが2曲目以外の全曲に参加。
 
 
The-huner-joe-sample  
 
 
「やっつけ感」満載のジャケット・デザインではあるが、内容的には、1980年代前半の、フュージョン後期らしい、華のあるアーバンなアレンジが良好な、好フュージョン・ジャズ盤である。

冒頭1曲目のタイトル曲「The Hunter」が、NYのミュージシャンをバックにしての演奏になっていて、ちなみにドラムにスティーヴ・ガッド、ベースにマーカス・ミラー、ギターにデヴィッド・スピノザ。この1曲目の演奏だけが、2曲目以降と雰囲気が違う。ちょっとサンプルらしくない演奏に仕上がっていて、この曲だけ聴くと、ちょっと違和感を感じる。

しかし、2曲目以降はリズム・セクションが代わって、雰囲気がいつものサンプルらしいものになる。サンプルのキーボードの手癖やアレンジの個性もてんこ盛りで、ライトでアーバンなフュージョン・ジャズに仕上がっていてホッとする。ディーン・パークスの職人ギターが大活躍。3曲目のみだが、フィル・アップチャーチのギター・ソロは絶品。ギターが大活躍の2曲目以降が、楽曲的にもサンプルらしくてグッド。

アーバンだけどライトな、軽めのフュージョン・ジャズ。サンプルらしさが良く出た佳作だと思います。
 
 
 

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2020年12月 3日 (木曜日)

「メローなロンドンの週末」

もともとはマイルス・バンドに呼ばれる位に、先進的でロック寄りのジャズ・エレギを弾く新進気鋭のギタリストだった。そして、1970年代に入って、クロスオーバー・ジャズからフュージョン・ジャズの大ブームの中で、ソフト&メロウを「ウリ」にしたギタリストとして有名になる。そして、遂にはソフト&メロウなフュージョンの中で歌を披露するようになる。

で、この歌が「とても素晴らしい」。ギタリストなのに歌も上手い。唄って弾きまくるギタリストとなり、遂には、上手いギターも弾くボーカリストになった。しかし、この人、ギターを弾かせると超一流な腕前なんだけどなあ。僕は今でも、この人のギターが大好きで、ギター弾きまくりの1970年代のリーダー作を、今でも好んで聴いているくらい。

George Benson『Weekend in London』(写真左)。先月のリリース。ジャズ・ギターのレジェンド、ジョージ・ベンソンが2019年、ロンドンの老舗ジャズ・クラブ、Ronnie Scott'sで行ったライヴを収録。このジャズ・クラブのキャパは250人。小さなジャズ・クラブでのライブならではの、熱気がダイレクトに伝わる、デッドな音空間が素敵なライヴ盤である。
 
 
Weekend-in-london
 
 
収録曲はベンソンの「ベスト集+カヴァー集」的なもの。まず「Give Me The Night」からスタートするところが良い。1980年に全米TOP5ヒット曲、懐かしい。十八番の代表曲「Love X Love」や「In Your Eyes」の選曲も良い。カヴァー曲は渋い選曲で、ダニー・ハサウェイの「The Ghetto」なぞ、思わず感嘆の声を上げてしまう。

このライヴ盤のベンソンの基本的スタンスは「上手いギターも弾くボーカリスト」。冒頭から唄いまくっている。時々、間奏のレベルでギターを弾くが、これが流石に「上手い」のだが、物足りない。しかし、ラストの「Cruise Control」ではスキャットは入るが、久し振りにセミアコを弾きまくっている。これが圧巻。やっぱり、ベンソンには「ギター弾きまくり」だけのアルバムを出して欲しいなあ。

ベンソンは1943年生まれなので、今年で77歳。もう大御所も大御所、レジェンドもレジェンド過ぎる年齢ではあるが、このライヴ盤での歌声は「まだまだ現役バリバリ」。衰えは全く感じ無い。ギターについても堂々とした弾きっぷりで、指が縺れることは全く無い。いやはや、凄いジャズ・ギター&ボーカルのレジェンドである。
 
 
 

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2020年11月13日 (金曜日)

ベノワのメジャー・デビュー作

デイヴィッド・ベノワ(David Benoit)、1953年5月生まれ。今年で67歳。米国カリフォルニア州出身。フュージョン・ジャズ〜スムース・ジャズのジャンルで活躍するピアニストであり、コンポーザー、アレンジャー&プロデューサーでもある。デビューが1977年だが、暫くは裏方の仕事がほとんどで、1987年にGRPレーベルからアルバムをリリースして以来、メジャーな存在となった。

David Benoit『Freedom at Midnight』(写真左)。1987年のリリース。パーソネルは、曲によってメンバーを使い分けている。主だった名前をひろうと、Russ Freeman (g), John Pattitucci (b), Jeff Porcaro (ds) と、どちらかと言えば、スムース・ジャズ、AOR畑からの人選が主。よって音的には、ブルージーな雰囲気やファンキーな要素は希薄である。

ベノワはピアニストではあるが、ピアニストとしてのベノワを前面に押し出すのでは無く、作曲やアレンジ、プロデュースの才能を前面に押し出している様であり、そういう面では、先達として「ボブ・ジェームス」がいる。彼もピアニストではあるが、コンポーザー、アレンジャー&プロデューサーでもある。ボブ・ジェームスはどちらかと言えば、米国東海岸の雰囲気だが、ベノワは出身がカルフォルニアで、1970年代後半からハリウッドで活躍していたこともあり、米国西海岸の雰囲気が濃厚。
 
 
Freedom-at-midnight  
 
 
ベノワの音の重ね方、フレーズの作り方は、米国西海岸のフュージョン・ジャズの要、デイヴ・グルーシンに通じるものがある。ピアノの個性は「リリカルで耽美的」。ビル・エヴァンスを敬愛する、とあるが納得である。曲作りとアレンジを一手に引き受けることで、ベノワ自身のピアノをしっかりと印象付けている。そんな、ベノワのコンポーザー、アレンジャー&プロデューサーの能力全開のアルバムがこの『Freedom at Midnight』である。

良い曲ばかりである。そして、ベノワ独特のテンポがあって、そのテンポは「ミッド・テンポ」。速弾きは全く無い。ミッド・テンポで「リリカルで耽美的」なピアノを、硬質のタッチで、しっかりと、くっきりと響かせるので、とても印象的で心地良い。そして、フレーズに独特の「間」があって、その「間」が実に印象的。このベノワ独特な「ミッド・テンポ」と「間」に填まれば、もうベノワの音世界にドップリである。

意外に中毒性のある「ミッド・テンポ」と「間」だと感じていて、そんなベノワの個性がこのGRPレーベルからのメジャー・デビュー盤に満載。そういう意味では、ベノワの初期の代表作であり、ベノワの個性を確認するには格好の好盤。僕はベノワの紡ぎ出す、フレーズのテンポ、音の上げ下げの塩梅が大好きで1995年の頃から愛聴している。
 
 

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2020年10月29日 (木曜日)

コーズの10年振りのオリジナル盤

ジャズを聴き始めて40年以上になるが、クロスオーバー&フュージョン・ジャズや、スムース・ジャズを蔑視することは無い。逆に積極的に聴くほうで、特にクロスオーバー&フュージョン・ジャズについては、CD盤について、結構、充実したコレクションとなっている。同じ「ジャズ」の範疇の音楽なのに、どうして蔑視されるのか、いろいろ理由を聞かされても、その辺が良く判らない。

Dave Koz『A New Day』(写真左)。2020年10月のリリース。David Sanborn、Bob James、Brian McKnight、Paul Jackson Jr.、Meshell Ndegeocelloなど豪華なゲスト陣が目を引く。オリジナル・リーダー作のリリースが10年振りとなるデイヴ・コーズの新譜である。スムース・ジャズの代表格のコーズのリーダー作が10年振りとは意外である。

さて、リーダーのコーズのアルトは、素直にスッと伸びた、耳当たりの良い響きが個性のアルト・サックス。一聴すると、デイヴィッド・サンボーンか、と思うが、その音の「スッと伸びる」伸び具合がサンボーンよりシンプル。捻りや小節が無いシンプルさがコーズの個性。耳当たりは良いが、音の芯はしっかり太く、アルト・サックスの真鍮の響きがとてもブリリアント。とても「良い音」で鳴る。
 
 
A-new-day
 
 
そんなコーズのアルト・サックスが、とても良い音で鳴っている。フレーズは常に流麗かつ典雅。スムース・ジャズのお手本の様な音がこの盤にギッシリ詰まっている。といって、決して「甘くない」。とても切れ味の良い、音の芯の太いブリリアントな音色は正統派。スムース・ジャズのアルト・サックスなので、イージーリスニングじゃないの、とすると「怪我をする」。

レノン=マッカートニーの「Yesterday」のカヴァー以外、全てオリジナル曲で固めているが、どの曲も良い出来で、アレンジも良好。特に「Yesterday」のアレンジは秀逸。このスイートな歌を、そこはかとなくリズム&ビートを効かせた、凛としたジャズのフレーズとして聴かせてくれる。マット・キューソン(Matt Cusson)のアレンジ力の勝利である。

コーズのバックを支える演奏もとても充実している。緩さ甘さは全く無い。見れば、フュージョン&スムース・ジャズを代表する超一流のメンバーが大集結。演奏のレベルの高く、とにかく、皆、楽器が良い音出している。非常に質の高い「ジャズ」がこの盤に詰まっている。このようにレベルの高いスムース・ジャズを「聴かず嫌い」で遠ざけるのは勿体ない、と思うのだが。とにかく、この盤、好盤です。
 
 
 

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2020年10月14日 (水曜日)

TRI4THのメジャー3作目です

TRI4TH(トライフォース)は、日本の5人組ジャズバンド。ダイナミックなフュージョン系エレ・ジャズをメインとする。結成されたのが、2006年なので、今年で結成12年目になる。もう12年になるのか。日本のフュージョン・バンドと言えば「Casiopea」と「T-Square」の2バンドが大勢を占め、後が続かない状態だった。

が、この「TRI4TH」が出てきて、やっと次世代の日本のフュージョン・バンドが出てきたなあ、と嬉しくなったのを昨日のように覚えている。今では、2004年にバンド名を、固定しアルバムをリリースするなど定期的な活動を開始した「TRIX(トリックス)」とこの「TRI4TH(トライフォース)」が、日本のフュージョン・バンドの「次世代」を担っている。どっちも個人的に「お気に入り」なバンドである。

TRI4TH『Turn On The Light』(写真左)。今年10月のリリース。出来たてホヤホヤである。改めて、ちなみにパーソネルは、伊藤隆郎 (ds), 竹内大輔 (p), 藤田淳之介 (sax), 関谷友貴 (b), 織田祐亮 (tp)。メジャーでの3rd.盤になる。音的には「TRI4TH」のバンドとしての「音世界」がしっかりと確立された印象を受ける。オリジナリティーもあるし、フュージョン・ジャズとしての汎用性もあるし、「TRI4TH」としてのバンドサウンドがしっかりと固まった印象を受ける好盤である。
 
 
Turn-on-the-light-tri4th  
 
 
冒頭の「Move On」を聴けば、「TRI4TH」やな〜、と思わずニヤリとする。こういうダイナミックなフュージョン・ジャズ、大好きです。続く2曲目の「For The Loser」は、Kemuri Hornsとのコラボ。ホーンのアンサンブルが「TRI4TH」のダイナミズムと相まって、極上ダンサフルな「スカ」サウンドが心地良い。そして、3曲目の「The Light」至っては、SANABAGUN.のリベラルa.k.a岩間俊樹をフィーチャーし、フュージョン・ジャズとラップのコラボを実現。

冒頭の3曲でかなり「かまされる」のだが、4曲目の「Bring it on」以降は、充実した「TRI4TH」サウンドが展開される。面白いものとしては、6曲目の「Moanin'」。Art Blakey and the Jazz Messengersの名曲なんだが、最初はこのジャズ・メッセンジャースと同じ雰囲気、いわゆるファンキー・ジャズな演奏が繰り広げられ「あれれっ」と思うのだが、途中から、「TRI4TH」サウンドにアレンジされた「Moanin'」が展開される。ホッとするやら、ハッとするやら(笑)。

メジャー3作目ということで、ある意味、今作は3部作的な集大成な、これぞ「TRI4TH」的な内容になっている。現代の先端をいくフュージョン・ジャズな音作りは実に魅力的。テクニックも非常に高度で、一糸乱れぬアンサンブルは疾走感抜群。ボンヤリした頭の中を覚醒させるのに最適な「ながら聴き」ジャズ盤でもあります。ジックリ聴くも良し、ながら聴きで覚醒するも良し。とにかく格好良い、現代フュージョン・ジャズの好盤です。
 
 
 

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2020年9月29日 (火曜日)

コリエルとカーンのデュオ盤

フュージョン・ジャズの時代って、あるところからは評判が悪い。あれは時代の徒花、ジャズ者もジャズ喫茶も「どうかしていた」なんて自己批判めいた記事を目にしたことがあるが、フュージョン・ジャズって、そんなに酷いものでは無い。あれだけ大ブレイクした訳で、当時のジャズ者の方々の耳って、確かなものだったろうから、音楽的にも優れたものが多く、演奏テクニックも優秀なものが多いのは当然。

とにかく、当時、大ブレイクしたフュージョン・ジャズ。アルバムを出せばバンバン売れるわけで、レコード会社はそれぞれ、こぞって、フュージョン・ジャズのアルバムをバンバンにリリースした。バンバンとリリースするからには、アルバムをバンバンと制作せねばならない。当時、アルバムを制作する意図で、様々な企画盤が録音〜リリースされた。

Larry Coryell & Steve Khan『Two for the Road』(写真左)。1977年のリリース。ちなみにパーソネルは、Larry Coryell, Steve Khan (g) のみ。コリエルとカーンのギター・デュオ盤である。60年代後半から、ジャズ・ロック〜クロスオーバーの寵児的ギタリストとして活躍していたラリー・コリエルと、70年代後半にボブ・ジェームスの見出されて、フュージョンの人気ギタリストとなった、スティーヴ・カーンとのコラボ盤。
 
 
Two-for-the-road  
 
 
冒頭のチック・コリアの名曲「スペイン」から始まる。コリエルもカーンも全編アコースティック・ギター(略して「アコギ」)でガンガンに弾きまくる。弦はスチールなので、その音色は切れ味良く疾走感抜群。そして、コリエルは、ジャズ・ロックなギター・フレーズで終始攻めまくり、カーンは硬派なジャズ寄りのフュージョン・ギターで迎え撃つ。

全く音色とアプローチの異なるアコギなんだが、それはそれは素晴らしいデュオ演奏が繰り広げられている。二人の共通点は「ロックなテイスト」がギター・フレーズに見え隠れするところ。この「ロックなテイスト」の部分で、この個性的な2人のギターは、絶妙にシンクロする。この絶妙なシンクロが実に心地良い。このシンクロをベースに奏でられる「ユニゾン&ハーモニー」は聴きものである。

このデュオ企画、コリエル宅で行われた1回のリハーサルがもとになったらしい。よほど相性が良かったのか、それが切っ掛けでツアーに出るんやから、思い切りが良いというか、向こう見ずというか(笑)。それでも、これだけ内容のあるアルバムが出来るのだから、二人のギタリストとしての力量たるや素晴らしい。フュージョン全盛時代らしい企画盤。懐かしい響き。それでも今の耳にも十分に耐える。好盤です。
 
 
 

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